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説明員(石川達郎君) 会計検査というものも、そのときどきの経済事情等を十分考慮した上で行なわなければならない点は、まさに御
指摘のとおりであろうかと存じます。その点につきましては、われわれも本年度の検査におきまして十分配意していくつもりでございます。
一般的にはさような心がまえをまず申し上げておきます。
そこで、最初の
お尋ねでございますが、不当な便乗値上げにつきましての検査院の考えということでございます。物品の購入等が適正に行なわれているかどうか、これは会計検査院が最も重要な検査項目の一つとしているところでございます。すなわち契約の方法でありますとか、物品の数量、品質、価格等の適否につきましては、常に注意を払って検査を行なっているところでございます。このように会計検査院の
立場からは、昨今の異常な物価上昇、これが購入価格に及ぼす影響につきまして、先ほど申し上げましたように、本年度の検査の一つの
検討項目としているわけでございますが、具体的に申し上げまして、物品購入の予定価格積算にあたりまして、正当な実勢価格、これを採用して積算しているということでありますれば、これは問題はないわけでございますが、昨今の異常な値上がりの時期におきまして、時価の適正な把握ということはきわめて困難でございます。したがいまして、契約担当官が契約を締結するにあたりまして、通常の場合と異なりまして、格別周到な注意を払う必要があることは、これは申すまでもないことでございます。それに関連いたしまして、私
ども検査に当たる者といたしましても、検査対象の契約時における適正な価格の把握という問題、これはまことに適切な御
質疑でございますけれ
ども、なかなか言うべくして非常にむずかしい問題でございます。
一般論として申し上げますと、まあ市場性のある物品の場合には市場における流通価格、これが予定価格の基礎となるわけでございます。したがいまして、その
調査把握の努力を当該契約担当官が全うしているかどうか、これが最も問題となるであろうかと考えます。また市場性のない物品につきましては、業者から示されました価格をチェックするためにどれほどの努力をしたかということが問題となるのはこれは当然でございます。したがいまして、その努力が十分でないということが明らかであり、またその努力を払ったならば購入価格より低くなったであろうというような確信が持てました場合には、その会計経理は一応不当であるということが言えようかと考える次第でございます。
次に、価格の適否を判断する基準という
お尋ねでございます。おっしゃるとおり、価格の適、不適の検査を行なう必要はきわめて重要なことでございますし、この面の検査は先ほ
ども申し上げましたように、従来から行なっている重要項目の一つであるわけでございます。まあいかなる価格が適正かということを、なかなかこれは一律に言うことはできませんし、実際の検査にあたりまして、個々の具体的な契約ごとに究明していかなければならないものと考えております。検査に際しまして、物価に関する
資料あるいは
資料との比較におきまして、適、不適を判断することになるわけでございますが、この
資料収集をできるだけ多角的かつ広範囲にわたって行なうよう努力を傾注したい考えでございます。
次に、入札時から納入時までの間に価格変動がある場合、どのように考えていくべきものであるかという
お尋ねでございます。物品購入にあたりまして、数量でありますとか、金額、品質、納入時期等につきまして合意が成立し、契約が締結されました以上は、履行のときまでに極端な事情の変更がない限りは契約が変更されないというのが、これが契約法上の原則でございます。変更を安易に認めるということは、さかのぼって安易な契約締結の傾向を招くということになりまして、非常に問題があろうかと考えております。しかしながら、契約から履行の時期まで、相当の期間が経過いたしまして、その間通常の判断では契約の時期には予期することができなかったような極端な値上がりのために、当初契約の価格で納入させた場合に、納入業者が重大な損失をこうむるということが明らかであり、また客観的に見ましても、その損失が納入業者としては十分な努力を払っているのに生じたものである、業者に一方的に負担させるのは社会正義に反すると考えるようなやむを得ない事情というものもあろうかと存じます。その際には、契約変更という措置が当然とられるべきものと考えております。
そこで、検査にあたりましては、契約変更の必要の有無について慎重な
調査検討を要するものと考えられますし、また、契約価格変更を実施したものがあった場合には、契約担当が行なった
調査資料に基づいて変更の必要の有無を十分吟味して検査を全うしたいと考えておる次第でございます。
次に、これはだいぶ会計検査院としてもむずかしい問題でございますが、会計検査院は国等の会計経理につきまして、その当否を事後に検査しているわけでございますが、かりにある官庁で、ある時期に購入した物品につきまして、その購入予定価格の基礎となりました購入当時の市場価格が、実は市場価格上昇を意図した出荷抑制のために形成されたものであるというようなことが、検査を実施する時期におきまして、たとえば公正取引
委員会等の
調査の結果判明していたといたしましても、その時期にその物品を購入する必要があり、またその価格でなければ購入することができなかったということが明らかでありまするならば、そのような出荷操作をしたメーカーあるいはディーラーなりの反社会的行為に対しまして、社会的な批判でありますとか、あるいは社会的制裁は加えられるべきものであると私
ども考えております。ただ、しかしながら、それをもって会計経理上直ちに不当であるかどうかということにつきましては、別に十分
検討しなければならない点があろうかと考えております。