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1974-04-04 第72回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月四日(木曜日)    午前十時二分開会     ————————————— 昭和四十九年三月三十日予算委員長において、左 のとおり本分科担当委員を指名した。                 小笠 公韶君                 大竹平八郎君                 鹿島 俊雄君                 川野辺 静君                 寺下 岩蔵君                 中村 登美君                 原 文兵衛君                 加瀬  完君                 戸叶  武君                 塩出 啓典君                 野末 和彦君     —————————————    分科担当委員異動  三月三十日     辞任         補欠選任      寺下 岩蔵君     大松 博文君      中村 登美君     林田悠紀夫君      野末 和彦君     喜屋武眞榮君  四月一日     辞任         補欠選任      川野辺 静君     岩動 道行君      塩出 啓典君     柏原 ヤス君      喜屋武眞榮君     野末 和彦君  四月二日     辞任         補欠選任      柏原 ヤス君     鈴木 一弘君  四月三日     辞任         補欠選任      林田悠紀夫君     川野辺 静君      大松 博文君     桧垣徳太郎君      戸叶  武君     佐々木静子君      鈴木 一弘君     塩出 啓典君      塩出 啓典君     藤原 房雄君      野末 和彦君     喜屋武眞榮君  四月四日     辞任         補欠選任      岩動 道行君     高橋 邦雄君      小笠 公紹君     玉置 和郎君      桧垣徳太郎君     寺下 岩蔵君      佐々木静子君     小柳  勇君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         大竹平八郎君     副主査         加瀬  完君     分科担当委員                 岩動 道行君                 川野辺 静君                 高橋 邦雄君                 玉置 和郎君                 寺下 岩蔵君                 原 文兵衛君                 小柳  勇君                 佐々木静子君                 藤原 房雄君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      町村 金五君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       二階堂 進君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       小坂徳三郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       保利  茂君    政府委員        人事院事務総局        管理局長     真田 善一君        内閣総理大臣官        房会計課長兼内        閣参事官     升本 達夫君        内閣総理大臣官        房総務審議官   佐々 成美君        総理府恩給局長        事務代理     菅野 弘夫君        警察庁長官官房        会計課長     室城 庸之君        行政管理庁長官        官房審議官    木下  薫君        沖繩開発庁総務        局長       岡田 純夫君        沖繩開発庁総務        局経理課長    和田 善一君        沖繩開発庁振興        局長       渥美 謙二君        厚生省医務局次        長        宮嶋  剛君        農林大臣官房審        議官       松本 作衛君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  住田 正二君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     小林 功典君        内閣総理大臣官        房参事官     宮川 知雄君        法務省民事局第        二課長      田代 有嗣君        大蔵省主計局共        済課長      鈴木 吉之君        大蔵省主税局税        制第一課長    伊藤田敏雄君        厚生省公衆衛生        局企画課長    今泉 昭雄君        厚生省児童家庭        局母子福祉課長  岩佐キクイ君        厚生省年金局企        画課長      持永 和見君        農林大臣官房地        方課長      結城 庄吉君        農林省農蚕園芸        局果樹花き課長  北野 茂夫君        農林省食品流通        局砂糖類課長   永井 和夫君        労働省婦人少年        局婦人労働課長  赤松 良子君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————   〔年長者大竹平八郎主査席に着く〕
  2. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条により、年長のゆえをもちまして私が主査及び副主査選任につきその議事を主宰いたします。  これより主査及び副主査選任を行ないます。  つきましては、選任方法はいかがいたしましょうか。
  3. 岩動道行

    岩動道行君 主査及び副主査選任は、投票の方法によらないで、主査大竹平八郎君、副主査加瀬完君を推薦することの動議提出いたします。
  4. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 ただいまの岩動君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 御異議ないものと認めます。  それでは、主査に私大竹平八郎、副主査加瀬完君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  6. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 皆さまの御推挙によりまして主査を相つとめることになりました。何とぞ御協力のほどをお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  7. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 分科担当委員異動について御報告いたします。  本日、小笠公韶君委員辞任され、その補欠として玉置和郎君が選任されました。     —————————————
  8. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 審査に入ります前に、議事の進め方についておはかりいたします。  本分科会は、昭和四十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、皇室費国会裁判所会計検査院内閣及び総理府のうち防衛庁、経済企画庁及び科学技術庁を除く部分、及び法務省所管並びに他の分科会所管外事項を審査することになっております。  八日の委員会において主査報告を行なうことになっておりますので、議事を進める都合上、主査といたしましては、本四日は内閣及び総理府、明五日は国会皇室費及び会計検査院、明後六日は裁判所及び法務省、八日は環境庁という順で進めていきたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  10. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 昭和四十九年度予算内閣及び総理府所管一括議題といたします。  政府からの説明はこれを省略し、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  12. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、私は、これから総理府に対して主として質問をさしていただきます。  実は、本年の三月二十九日に、かねて総理府婦人に関する諸問題調査会議というものを持たれまして、その結論がまとめられたということが発表されておりますけれども、そしてその内容について私もこれをいただいたわけでございますか、この事柄について少しお尋ねしてみたいと思います。  この「婦人に関する諸問題の総合調査報告書」、これは非常に貴重な資料であり報告であろうと思うわけでございますが、そもそも総理府でこのような婦人問題についての総合調査をなさるようになったいきさつというようなものを簡単にお述べいただきたいと思います。
  13. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 御承知のように、戦後における社会では、婦人地位及び婦人社会における活動、また家庭内における子供の教育等背景とした活動というものが非常に大きくクローズアップされ、日本の民主的な社会発展のためには欠くことのできない重要な役割りを果たすに至ったわけでございますが、こうしたことの背景といたしまして昭和四十五年の十二月に衆参婦人議員懇談会から婦人対策をもっと明確なものを総合的に立てたらいいではないかというお話もあり、また、当時、総理府において持っておりました婦人関係の諸問題に関する懇談会からも同じような趣旨の提言があったので、四十七年の五月に総理府婦人に関する諸問題調査会議を設けて、民間の有識者方々にお集まりを願って、四十七年、四十八年の二カ年にわたっての調査をお願いをいたしたといういきさつでございます。
  14. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは貴重な資料だと思うのでございますが、それに関しましてこの婦人に関する諸問題調査会議委員というものが選任されておりますね。そのほか、婦人に関する諸問題調査会議専門委員、あるいは婦人に関する諸問題調査会議役員選任されておりますけれども、この中に非常に著名な方もたくさん入っておられるわけでございますが、この役員とか委員人選方法なんかはどういうことでお進めになったのですか。
  15. 宮川知雄

    説明員宮川知雄君) この調査の始まる契機の一つといたしまして、婦人関係の諸問題に関する懇談会がございました。四十二年から発足しておりまして、いろいろ婦人についての御提言等をいただいていたわけでございますが、その懇談会からの御要望もあり、こうした調査をするようになったという経緯がございまして、懇談会の諸先生方には引き続き調査会議構成員になっていただく、そういう方針で進めてまいりました。ただ、いろいろ先生方の御都合もあり、二十名いらっしゃいましたが、そのうち半数の十名が調査会議メンバーとしてお残りいただき、あとの十名の方につきましては、各界の御推薦とか、お話し合いとか、あるいは懇談会にいままでいらっしゃった先生方の御要望も入れまして、さらに新しくお加わりいただいた。それから専門委員皆さん方につきましては、本委員であります二十名の委員先生方の大体御推薦というような形でお願いしてございます。それから実際に非常に膨大な調査でございますので、いつも調査会議全員がそろってというわけにはまいりませんので、企画小委員会というものを構成いたしましたが、議長と並びまして企画小委員会メンバーにつきましては、調査会議構成員先生方の事実上の互選というような形でお願いしたと、そういう次第でございます。
  16. 佐々木静子

    佐々木静子君 この委員の方あるいは専門委員の方は、なかなか各界で有名な方で、お一人お一人は非常にけっこうだと思うのでございますけれども、たとえばこの委員二十名のうちに労働者からの代表の方が一人も入っておらない。たとえば総評の婦人部長とか、まあたとえばですけれども、労働者代表の方が一人も入っておらずに、いわゆる大不動産会社社長とか、あるいは百貨店の社長さんとか、個人的にどうこうというわけではありませんが、もう少し各層から選ぶような人選ができなかったか。その点を、一部の民主団体あるいは特に婦人団体などから、この人選は片寄っているのではないかという批判がかねてあったのですが、そのあたりはどうなんですか。
  17. 宮川知雄

    説明員宮川知雄君) この調査会議発足自体が、婦人の問題というものは、特に戦後と申しましようか、婦人社会的な進出が非常に目ざまさくなっている一方で、いろいろな問題が出ている。もちろん、労働界にも出ていると思いますが、それ以上にまず家庭の問題としてあるいは男女の問題として非常に大きな問題があるということでこの調査会議の計画が持たれたという経緯もございまして、何よりもまず婦人についての経験者学識の豊かな方にお願いしようと、そういうことでたまたまデパート社長さんもお入りになっておりますが、これはもう御存じのとおり、若い女子がそれこそ非常にたくさんいる職場でございまして、朝から晩まで若い婦人を相手にして豊かな職場をつくるのにはどうしたらいいかということに腐心されている方ということで学識経験者ということでお集まりいただいたのでございまして、その点御了解いただきたいと思います。
  18. 佐々木静子

    佐々木静子君 デパート社長さんがいかぬというわけでは全然ないのですけれども、やはり、ものの見方が、経営者側からの見方とそれから働いている者側見方ということで非党に角度が違ってくると思うのです、同じ一つの問題をとらえても。それで、特にこの「婦人に関する諸問題の総合調査報告書」、この膨大なものを拝見しましても、そのうちの四つの柱のうちの一つが働く婦人地位とか権利の問題としてとらえられているわけでございますので、そういう場合に、経営者側委員だけというのでは、だけと言うとちょっとことばがきつ過ぎるかもしれませんが、国民全体から見たときには経営者よりも労働者のほうがずっと多いのですから、少なくとも労働者代表をこの委員の中に二十人もいるんですから入れるべきではないか。これは労働者側の人間というのが学識経験豊かでないということはとうてい言えないと思うわけでございまして、婦人労働問題に取り組んでいる有能な方も何人もいらっしゃるわけでございますから、そのあたりもう少し御検討いただきたいと思うわけです。  今度、この会議は、ずっと継続するわけでございますか、これでもう報告したら解散しちゃうわけですか、どうなっているんですか。
  19. 宮川知雄

    説明員宮川知雄君) 四十二年から総理府に置かれておりました懇談会をいわば発展的に解消させましてこの二年間の調査会議に当てたわけでございます。したがいまして、形式的にはこの二年で報告書が完成すれば調査会議は終わるということになっておりますので、そのままになってしまうわけでございますが、事実上は、さらにまた従前のような、あるいはさらにそれにいろいろ加味いたしました学識経験者方々、あるいは場合によっては労働界方々ということもあろうかと思いますが、またお集まりいただきまして、いろいろ御意見を伺う機会をつくっていきたいと、そういうふうに考えております。
  20. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいまとりあえず発展的解消というおことばを述べられましたが、続いて今後こういう調査会を設けられるとすれば、これは当然働く者側からのものを入れないと、経営者ばかり集まって働く婦人の問題などを議論しても、これはやはり国民のうちの幾ら学識経験は豊かであっても一部の意見としか言えないのじゃないか。これはたいへん二万六千人という方からのアンケートをおとりになって、そして非常に大がかりな調査をなすって総まとめなさったというようなたいへんな作業なんでございますから、やはり国民全体の各層有識者が出れるように、今後ぜひともそういう御配慮をしていただかないと、ただ一方の方々ばかりの結論であると、なかなか国民は納得できないのじゃないか。そこら辺について今後そういう労働界代表の人もぜひ入れるというお約束はできますですか。
  21. 宮川知雄

    説明員宮川知雄君) いま申し上げましたように、この調査会議報告書提出いたしまして、形の上では解散ということになりますが、引き続きましてまた各界有識者方々にお集まりいただき、御相談申し上げ、御意見も伺いながら、総合的な施策を進めていきたいと、それが政府の基本的な考え方でございます。その際に労働界方々の御意見を伺うということもまた当然であろうと、そういうふうに考えております。
  22. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは無理なことを言っているのではなくて、あたりまえのことを申し上げているわけで、ぜひともそれはそういうふうにしないと、正しい調査というものはできないのじゃないか、国民の総意がこの中に反映していかないのじゃないかというふうに思うわけです。  さしあたりこの調査報告の結果を拝見しまして、これはしかし私どもの考えているところとそう大きく開きがあるわけではなくて、現在の社会では憲法上男女同権というものが保障されておっても非常に男性上位社会であって、なかなか男女平等というものが各般にわたって当たってみても実質的には保障されておらないという御意見が圧倒的なわけでございますけれども、その点については私も全く同感に思うわけでございますが、そうして、これはいろいろな事柄についてこういうことではだめだからこういうふうにすべきだというふうなことがいまあなたのおっしゃった学識経験者方々の御意見としてそれぞれの分野においてまとめられているわけでございますが、これは、総理府とすると、調査をしてこういうものができたというだけじゃ何にもならないと思うわけですが、そのまとめられている意見をどのように実際の行政なりあるいはまた立法についての参考資料になさるおつもりなのか、具体的にどのように総理府はこの総合調査ということの結果を実現するように取り組んでおられるのか、そのあたりを述べていただきたいと思います。
  23. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 三月の二十九日に資料の御提出がありまして、四月の二日の閣議に報告をいたしました。その席で、この婦人に関する二カ年にわたる労作は非常に貴重なものでもあるし、今後政治の中で婦人の問題をもっと積極的に取り上げる必要があると思うので、各省でこれをそれぞれ十分に検討して、そうして政策の中に生かそうではないかということをきめたわけでございます。したがいまして、今後は、連絡会議を持ちまして、ここに盛られているいろいろな内容についてそれぞれの省からの対策対案等も出してもらって、さらにそれを総括的に生かしていきたいという考えでございます。
  24. 佐々木静子

    佐々木静子君 それで、きょう、具体的に特に関係の深いと思われる省の方に来ていただきまして、この総合調査の結果をどのようにそれぞれの省庁で実現方に努力なさるのかということを具体的に承りたいと思うわけですけれども、まず、この婦人に関する報告書の中にかなりうたわれております点は、これは家庭内における婦人権利とか地位の問題でございますね。そして、男女平等ということになっておっても、現実的には経済的な面を男性が握って、夫のほうが非常に優位な立場で経済力を持っているために経済的な平等保障というものが計られておらないため妻の地位が非常に低くなっておる。特に、婚姻関係において、妻の実質収入を得るのは一般家庭の場合に夫の収入に依存している場合が多いので、夫婦間における財産関係をもっと是正しなければ、ほんとうの意味の妻の権利というものは確保されない。特に、これがたまたま離婚とかあるいは夫の死亡とかというように婚姻関係が終了するときにはじめて妻の潜在的な持ち分というものがいまの法律では浮かび上がってくるけれども、実質的には婚姻継続中でも夫の収入に対する妻の財産権利というものをもっと保障しなければ、実際のところは口では平等と言ってもとうてい平等ははかれないのではないかというようなことがここに提言されておるわけでございます。この事柄について、主として民法上の夫婦財産制度とか、あるいは財産分与制度、あるいは遺産相続に関する問題などがこれにつながってくると思いますし、また、税制面で、婦人収入、主として家庭婦人労働に対する経済的評価というようなことなどがこの結論から当然出てくるのじゃないか。また、そのあたりを是正しなければ、とうてい婦人地位の向上というようなことははかれないのじゃないかということがかなりに取り上げられているわけでございます。私も経済的平等なくしてほんとうの平等というものはあり得ないと考えるわけでございますが、まず、いまの点につきまして簡単に言いますと、夫の収入はだれのものかというようなことでかねがねいろいろな婦人団体で夫の収入はだれのものであるかというようなことが論ぜられておりますし、また、私も、これは自分のささやかな経験でも、主として阪神間の婦人学級などに出向きまして二百件ほどこのことについてかつてアンケートをとったことがあるわけなんです。それから男の方の集まりにもつとめて参りまして、男の方は夫の収入はだれのものと考えておられるかということについてもアンケートをとったことがあるわけですけれども、これが非常に詳しくここに載せられておるわけでございまして、この報告結論から言いますと、大多数のほとんどの妻が、半分ずつだと、夫婦がまあ五〇%・五〇%ぐらいの権利を持っていると思う、あるいは一部ではもっとたくさんあると御主張なさっている奥さんもおられますけれども、まずそのような御意見が圧倒的であり、また、男の方の御意見の中にも半分半分だとおっしゃっている御意見が非常に多いというわけなんでございますけれども、そのあたり、いまの民法規定でいきますと、夫婦別産制をとっておりますので、夫の収入はこれ全く夫のもの、かせいできた者の収入だというふうになっておりますが、そのあたり、この報告書要望されているところと民法のいまの規定というのが非常に食い違っているわけでございますが、法務省とすると、これをごらんになってどのような案をお考えになっていらっしゃるか、御検討中であるとすれば具体的にお述べいただきたいと思うわけです。
  25. 田代有嗣

    説明員田代有嗣君) この問題につきましては、ただいま先生のおっしゃったような要望が最近強うございますし、戦後の民法の大改正の再検討と申しますか、そういったことも含めまして最近その問題が法制審議会で審議されているわけでございます。昨年は大体その問題が多く討議されたようでございますが、夫婦当事者間の財産内部関係と、それから対内的な関係が第三者にどういうふうに影響を及ぼすかということがあって、相当検討もされ、やはり現行のままでは問題があるのではないかということが議論されまして、いろいろな問題点が研究されると同時に、諸外国の制度につきましても、英、米、独、仏、等の制度につきましてそのほうの専門先生方に御研究の結果を御報告いただいたと、こういうことでございます。しかし、まだ十分な結論が出ないまま昨年の十月に我妻先生がおなくなりになりまして、その後後任がまだきまっておりませんので、その後中断しているという状況でございます。
  26. 佐々木静子

    佐々木静子君 いろいろと御検討いただいているということを伺いましたのですが、いまも申し上げましたように、民法の現在の規定では、かせいできた者の個人の所得になる。幾らその陰に内助の功があっても、自分がかせいでこない限りその人の所得にはならない。ところが、いまも申し上げましたように、月給袋の中身はだれのものかと世の中の奥さんに尋ねると、夫のものだと答える人は百人のうちの一人もないわけでございまして、たいていは、いまも言ったように、共有だとか、あるいは七割ぐらいが自分のものだとおっしゃる方もいらっしゃるくらいで、社会考え方と民法考え方とが非常にずれている。ということは、ひいては社会のわれわれの常識的な線よりも民法規定というものが婦人の経済的な権利の保障に欠けているということにつながってきているわけでございますけれども、いまその審議は中断しているというような状態でございましたが、今後どういう姿勢で取り組もうというふうに法務省としてはお考えになっていらっしゃるのか、まずそれを伺いたいと思います。
  27. 田代有嗣

    説明員田代有嗣君) この問題は、さきに、昭和三十七年までの一応の検討の結果では、夫婦財産共有制は現行のままとすると、そういう答申の仮決定が出ております。しかし、その後、ただいまおっしゃいましたように、社会の意識も非常に変わってきておりますし、たしか昭和三十四年の国民の意識調査でも、サラリーマンのような場合に、夫の収入の半分は妻のものであると、そういうふうな意識も当時から出ております。この問題につきましては、法務省といたしましては、やはり法制審議会というものがございますので、この御審議の結果を待つよりしかたがないと、一応形式的にはそういうたてまえでおります。しかし、私ども事務局といたしましても、そういった社会の意識というものは十分考えて補佐の仕事をしていくつもりでおります。
  28. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういうふうな考え方から、いまの別産制にはなっているけれども、たとえば離婚に際しての財産分与請求権などというものは、夫の名義になっておっても、潜在的に妻に持ち分があるというふうな考え方から財産分与制度というものが生まれているのだと思うのでございますけれども、これももともとたとえば五〇・五〇の割合で夫と妻とのものをいまあらためて分与といりようなことはおかしいのじゃないか。これは少なくとも財産分与じゃなくて財産分割ではないか。財産分割という名前に早急に直すべきだということが、これは全国の婦人税理士連合会などを中心にいろいろな婦人団体から要望が出されているわけでございまして、おそらく法制審議会のほうにも婦人税理士連合会をはじめとするところから出ていると思いますが、そこら辺のところはわりに部分的な改正ということも簡単にできるのじゃないかと思うのですが、その点についての法務省のお考えはどうですか。
  29. 田代有嗣

    説明員田代有嗣君) 財産分与の場合とそれから相続の場合では、若干似た面とやはり違う面があるということは言われておりますし、私も考えております。相続の場合、いろいろ潜在的に持ち分を持っておる子供であるとかあるいは実の親であるとか、こういう者がおりますので、必ずしも離婚の場合と同じようにはいかない。それから財産分与の場合も、全く先生おっしゃるような性質がございますので、相続の場合とは別でございますが、そういう問題もあるということは十分私どもも婦人団体等の要望もありまして認識はしておりますけれども、それを立法の上にどのように反映するかということについては、まだ十分な検討はなされていないように聞いております。
  30. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま相続の話が出ましたので、話を相続のほうに入りますと、現行の妻の相続分が子供のいる場合三分の一というのが一般的な感覚とすると少な過ぎるのじゃないか。というのは、いま申し上げましたように、夫婦共同して何年かかかってやっと一生がかりで家を持つ、そして夫の名義で普通社会常識的には登記をしておく。そうすると、今度、その夫がなくなったときに、それに対して妻自身はこれは自分が建てた家だと、自分がつくった家だと思っていたところが、夫の名義になっておるのが普通でございますから、相続が始まると、自分のところにはわずか三分の一、それも相続税でいろいろとなくなった中からさらに三分の一で、あとの三分の二は子供のところへ行ってしまう。まあ子供がその家は住みたくない、もうほかへ移るというようなことで家を売ろうかということになれば、住むところもないというような状態になるということで、これも国民一般的な感情からして合わない。やはり同じゼネレーション、同じ夫婦を単位として見て、少なくてもこれは二分の一は妻のもの、配偶者のものとするべきじゃないかというのが、これは婦人層の間ではもちろん、夫の側からもそういう要望がたいへんに多いわけでございまして、私も個人的にそれを調査しておったのでございますけれども、この報告書にも同じ趣旨のことが出ておるわけでございますが、その相続分についてどのようにお考えでございますか。
  31. 田代有嗣

    説明員田代有嗣君) 戦後の民法の改正で妻の相続分が三分の一となりました点につきましては、当時その改革に従事されました我妻先生のお話ですと、大体妻は子供の一人よりも多くという趣旨であったと。当時は、子供は五、六人普通いたので、妻に三分の一やれば、残りの子供は十五分の二か三でございますか、その程度になるので、妻は子供一人より多くという趣旨で三分の一にしたのだということをおっしゃいました。ところが最近では、核家族化で子供が二人ぐらいでありますと、まあほとんど妻と同じになるわけでございます。それで妻より多くという思想があるとすれば、若干割合的には相対的に低下しているということは考えられると思います。まあ今度の報告で妻は二分の一という御意見が出ておるようでございますが、それは一つの参考になろうかと思います。
  32. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは大蔵省に主として税制の面で伺いたいのでございますけれども、たとえば相続の場合ですけれども、これはいまも申し上げたように、夫婦の住んでいる家がですね、一例をとりますと、夫婦で築いた財産である、そういうことですが、日本の普通の場合はこれが夫の個人で登記されている場合が多い。夫が死亡した場合に、夫の遺産として処理される。ところが、実質は、これは夫婦で築いた財産であるので、そもそもこの持ち分は潜在的に半分ぐらいは妻の協力によってできたわけです。そういう意味から考えますと、少なくとも妻の寄与分というものを大幅に、相続財産から——これは民法にも関係しますが、思い切って除外をして、その残りを遺産と見るべきじゃないか。かりに現行法によるとしても、寄与分が三分の一ある、二分の一あるということであれば、まずこれは妻の財産として相続財産から除外して、その夫固有の財産の中から三分の一とかあるいは二分の一とかいうような割合で分けるべきじゃないかというふうに理屈の上からも考えるわけでございます。ところが、いわゆる税制面ではなかなかそのようなお取り扱いはいただけないわけでございまして、そもそも夫婦で一生懸命築いた財産であっても、夫の個人の名義で登記するということ自身が、これは夫婦共有登記にしておけばいいと思っても、妻の家事労働というものが経済的評価をされていないために、二分の一ずつの登記をすれば、そこで立ちどころに税務署のほうから贈与税がかけられるというふうな事柄から、わかってはいるけれども、夫の個人名義にしなければならないというのが一般の平均的な家庭の実情ではないかと思うわけです。そういうことなどから考えますと、この相続税のあり方などにつきましても、だいぶ妻の権利を認めてはいただいてきておりますけれども、もっと大幅に、いま申し上げた例など考えていただきましても、相続財産から除外して考えなければならないものがたくさんあるのじゃないかと思うんですが、そのあたり大蔵省としたらどのようにお考えでございますか。
  33. 伊藤田敏雄

    説明員伊藤田敏雄君) 夫婦間の贈与の問題、あるいは夫婦間の相続の問題につきましては、いろいろ問題があることは十分承知しておりまして、この点につきましては税制調査会等の審議を経ましていろいろ検討をこれからさせていただきたいと考えております。ただ、税といたしましても、税の執行にはおのずから限界がございまして、やはり基礎になります民法その他の点につきましても、それにある程度そろったところまでしか税はなかなか執行がむずかしいという実際上の問題がございます。現段階では夫婦間の相続につきましては相当多額の控除を認めているということによって過ごさしていただいているわけでございますので、基本的には民法の問題とあわせまして十分検討さしていただきたいと考えております。
  34. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは大蔵省のほうでも相当御検討いただいて、妻に少なくとも相続税がかかってこない限度というものをだいぶ引き上げてはいただいておるわけでございます、いまの論点とちょっと変わりますけれども。ところが、いま御承知のとおり、地価も高騰いたしておりますために、買ったときは安い自宅であっても、いまでは相続税のかかる段階になるとびっくりするほど高い値段がかかっている。それで、結局、その相続税を払うために少々最低限の免税点を上げていただいても、地価の高騰がものすごいのでなかなか追っつかない。そういうことで、数字の上では妻が相続税の上で有利になっているようでも、実質的にはなかなか有利になっておらないというのが実情なわけでございますね。そういうことなどを考えましても、いまの法務省の御答弁とあわせましてやはり大幅な改革をしていただかないと、一般的な国民感情とは合わないのじゃないかと思うわけなんです。そういうことをぜひお願い申し上げたいと思いますと同時に、いま税制調査会のことが出ましたけれども、かつて、東畑さんですか、会長が、この問題について夫婦財産として妻の固有の財産権を認めるように努力していきたいということを発表していらっしゃるわけですが、それはその後どうなっているわけでございますか。
  35. 伊藤田敏雄

    説明員伊藤田敏雄君) 各年度の改正の際にそれぞれ問題とされている場合もございますが、その後実際上は実現していないという状況でございます。もちろん税制調査会では検討はされております。
  36. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 私から一言佐々木君の質疑に関連して申し上げますが、本問題はもうだいぶ前からの問題でして、相当な世論の支持を得ている大きな問題であります。したがいまして、検討中というのはこれは役所の常套語で、ひとつもっと前向きに検討すべきではないか。いわゆる言うところの検討中であってはならない。そういう意味におきまして一言私からもふえんを申しておきますから、よろしく真剣な御検討をやっていただきたい。
  37. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまもお話がございましたように、税制調査会の東畑会長がそういう趣旨の御発言をなすったのは、私の手元にある新聞で見ましても、これは四十四年の新聞、そして四十三年の七月の税制調査会でそのような見解を発表されているわけでございまして、それが一向に前に進んでいないというのは、これはたいへんに行政の面で怠慢じゃないか。しかもこういうものがまたさらに重ねて総理府のほうからはっきりと出ており、総理府の御報告によると、非常に学識豊かな専門職の方々を全国から集めてこの問題を検討された結果も、やはり同じように、もっと税制面で抜本的な改革をすべきだという意見になっているとすれば、これは早急に取り組んでいただかなくっちゃいけないのじゃないか。もう少し具体的に大蔵省の姿勢を述べていただきたい。
  38. 伊藤田敏雄

    説明員伊藤田敏雄君) 昭和四十六年の九月におきます税制調査会の長期答申におきましても、「民法財産制度とも密接な関連を有するので、これとの調和を保ちつつ、かつ、今後の法制審議会における審議状況の推移にも配意しつつ、引き続き慎重に検討することが適当である。」ということで十分に意識をさしていただいておりまして、なお、年次の改正におきましても、三千万円の限度につきまして、法定相続分の三千万円を実際の相続額の三千万というふうに改めて実質的にかなり改善を加えるというふうな方法もとっておりますが、なお、ただいまいろいろお話のございましたように、十分真剣に検討を進めさしていただきたいと考えます。
  39. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは昭和四十四年の衆議院の予算委員会で、当時の福田大蔵大臣が、妻の権利を認めるために二分二乗方式を採用するということを述べておられるわけです。御承知のとおり、二分二乗方式というのは、消費を一つの単位として見て、夫の収入を妻と夫といまの話のように半分ずつの五〇・五〇の収入と見て課税していくというふうな考え方で、家事労働に従事している妻の財産的評価というものをこれで大幅に打ち出したものだと思うわけでございますが、この二分二乗方式というものはその後どうなっているか。これは大臣がはっきりと国会で答弁していられるのですけれども、その後どういうふうに採用されてきておるか、お述べいただきたいと思います。
  40. 伊藤田敏雄

    説明員伊藤田敏雄君) 二分二乗方式の問題につきましては、一昨年あるいは昨年、税制調査会専門員が各国を回りまして調査を行ない、その調査報告も得ております。しかしながら、二分二乗方式と申しますものはなかなかやはりいろいろな問題がございまして、考え方としては私は非常にけっこうだと思いますのですが、世界的にこれを調査してまいりますと、やはり、問題としては、共かせぎ夫婦とのバランスとか、あるいは独身者の問題をどのようにしていくかとか、あるいは男やもめについて子供がいる場合にどんなふうに考えていったらいいか、あるいは相当基本的な問題といたしましては二分二乗方式のメリットと申しますものが高額所得者に片寄ります。片寄るというか、そちらに非常に強く及びますので、そういう問題がある。さらに、世界的な全体の傾向といたしまして、消費者、要するに一つの家族あるいは夫婦、こういうものを単位に見ますものよりも、むしろ稼得者主義のほうに全体としては動いているのではないだろうかという問題がございます。特に、たとえば、現在N分N乗をとっておりますフランス、あるいは二分二乗をとっておりますドイツ、こういうふうなものにつきましても、稼得者主義からそちらへ行ったのでなく、夫婦合わせてもともと普通の課税が行なわれていたのにそこに二分二乗を導入したというふうな経緯になっております。むしろ、スウェーデンのように合算から稼得者主義に動いている。あるいは、アメリカのように二分二乗をとりながらもなおその間に複数税率表を使っております。そういうふうにしないと実際は調整がつきませんので、そういうふうな問題もございますので、非常に問題が多いということから、昨年の税制調査会における結論におきましては、なおやはりもう少し慎重に検討を進めないとこれに乗り切れない問題がある、さらには民法の問題も考えなければならぬ、そういうふうな状況になっております。
  41. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは私も二分二乗方式が一〇〇%いいと言っているのじゃないわけなんです。いろいろおっしゃるとおりに、ほかの部面とのバランスの問題もあるとは思うのですけれども、やはりいまのままのほうがよけい悪いのじゃないか。そういう意味においては、国会で大蔵大臣がはっきりと採用すると答弁しておきながら何年もたつのにそれが放置されているというのは、これはゆゆしい政府の責任だと思うわけなんでございます。ですので、やはり早急に抜本的な改革をしていただかないと、これは国民の期待を裏切ることになる。これも、やはり、同じく全国婦人税理士会が毎年大会を開きまして、早急にこの方式を採用しなければ妻の権利は守れないということで猛運動をやっているわけでございますが、ぜひデメリットは是正され、このいい点を早く法制の上で生かしていただきたいと思うわけです。  それからいま共働き夫婦のことが出ておりましたけれども、これについても、最初は妻が扶養家族として夫の所得税から控除されておった。ところが、扶養というんじゃなくて、このごろは配偶者控除ということで控除されてきておるけれども、その妻自身に年額二十一万円以上の所得のある場合にはこれは配偶者控除から除外されるという規定になっておりまして一それが、結局、年額二十一万円の収入といっても全く微々たるものですけれども、妻がアルバイトをする、あるいはパートで働きに出る、しかし収入が二十一万円をこえれば夫の税金が高くなるために、二十一万円の限度で働いている。もう二十万円になったからこれで働くのはやめると言っておられる妻が多いので、これは婦人労働意欲を非常に阻害すると思うわけです。また、それにつけ込んで経営者の側が、家庭婦人に高額なパート料を出せば二十一万円を超過するからということで、それを口実に低賃金で婦人のパートを雇っているというのもこれは実情でございますので、この二十一万円の配偶者控除というのはあまりにも非現実的なので、この配偶者控除に限度を設けることは私は非常におかしいと思うのです。たとえば共働きの場合は、どうしてもクリーニング代などもかさむ、外食をする機会も多い、あるいは留守番を頼まなければならないこともあるということで、年額二十一万円というのは月に二万円足らずのお金ですね。そのぐらいの支出は、共働きの場合は、家事専門の主婦の家庭よりも月二万円ぐらいの支出のオーバーは当然なことなんですね。ところが、年額二十一万円妻がかせいできたからといって配偶者控除を認めないというのは、これは全く現実離れした、妻が働くチャンスを奪う、あるいは妻にいま以上の低賃金を押しつける、たいへんな悪政策だと思うわけなんです。この配偶者控除というものは無制限になさるべきじゃないか。そうじゃなければ、妻の労働意欲というものもなくなるし、妻の社会権利というものは保障されないと私は思うわけなんですが、そのあたりについて大蔵省はどのようにお考えでございますか。
  42. 伊藤田敏雄

    説明員伊藤田敏雄君) 四十八年度、この平年度までは二十一万でございましたが、今回税法を改正させていただきまして、ただいまは平年度二十四万と変わっております。実は、共働き夫婦の問題につきましては、その二十四万のほかに、いわゆる給与所得控除につきまして大きな改正がございまして、結果的には二十四万プラス五十万、もし共働きのそれが給与所得である場合には、実際上は収入金額で七十四万まではかりに共働きで収入を得ておられましても配偶者控除が受けられるというふうに改正になっておりますので、まあ、給与所得者ばかりの問題ではないと思いますけれども、そういう意味で相当の改正が加えられておるということと考えております。
  43. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、いまも申し上げたように、何としてでも配偶者控除に対する制限をなくさなければ、これが妻を雇っている経営者の側からの口実にいま言っているように使われるわけなんです。これ以上あなたに給料をもっと出したいけれども、出せば税金面で御主人のほうが税金がたくさんかかるからという殺し文句で低賃金が余儀なくされている。で、いま、二分二乗方式は、有産階級にとって利益であって、無産階級にとってはあまりプラスにならぬからというお話でございましたが、まあ働いている婦人がみな無産階級に属するとは言えないとは思いますけれども、大体において共働きの婦人のうちの五〇%は経済的理由で働いているということから考えましても、それならば、無産階級といいますか、労働者階級の保護のためにも、配偶者控除というものを無制限に認めていただきたい。これは全くそこに制限をつける社会的意味というものはほんとうにないと思うのです。でございますので、ぜひともそれの実現方に努力していただきたいと思うわけですが、そのあたりもう少し前向きな御答弁をいただけないですか。
  44. 伊藤田敏雄

    説明員伊藤田敏雄君) 配偶者控除を基礎控除並みに現在二十四万円にしておりますという問題と、それから若干ただいまは混乱してしまいましたけれども、いわゆる配偶者控除を適用するための適用条件としてその所得限度を二十万にこのたび上げさしていただいておりますが、二十万になっているという問題と二つ実はございまして、配偶者控除の二十四万をさらに上げますということにつきましては、いわば考え方自体の非常に大きな転換がございまして、むしろただいまのわれわれのとっております考え方からすれば、それは基礎控除以上に上げることは無理だということになるかと思います。  それからなお、配偶者控除を適用する場合の、たとえば内職等をなさっている方の収入についての問題につきましては、ただいま申しましたように、一部は給与所得者の問題として相当程度解決されている。なお、それ以外のものについては、今後なお十分に検討させていただきたいと、このように考えております。
  45. 加瀬完

    加瀬完君 関連して。  給与所得者の場合の基礎控除というのは、はなはだ合理的でないわけですね。たとえばほかの所得の場合は、必要経費というものは確実に計算されて控除されますわね。しかしながら、給与所得者の場合は、基礎控除イコール必要経費ということにはならないわけですね。いま佐々木委員の指摘したように、共働きのような場合で、子供を保育所に預けるとか、あるいはお手伝いを頼むということになれば、これはぜいたくではなくて必要経費なんです、その家庭にとっては。しかし、必要経費だからといって基礎控除の中にその必要経費が合理的に計算されて控除されるという形にならないわけです。私は数年前の予算委員会でこの問題を提出したわけでありますが、ですから、基礎控除というものを大幅にふくらませば、すべてのものがそれに包含されるということになりますが、いまそういう状態ではありませんから、ですから、佐々木委員の指摘するような対象の場合は、必要経費というものをある程度計算して、それに見合う控除額というのを基礎控除の中にふくらますか、別に控除の新しいワクをつくるかということにしなければ未解決だと思うのです。クロヨンとかいろいろいわれますが、そういうことを私は問題にしようとは思いませんが、給与所得者の場合の課税というのは、まだまだ検討する余地がたくさんあると思うのです。特にこういう時代になって共かせぎが多くなってまいりますと、こういう家庭に対しましては、弱者救済の意味からも、所得税の方法でやはりくふうがあってしかるべきだと思うのです。こういう点、今後研究していただけるものと考えてよろしゅうございますか。
  46. 伊藤田敏雄

    説明員伊藤田敏雄君) 給与所得者の必要経費問題につきましては、いろいろなお考えもございますと思いますが、今回の改正におきましても従来に比べましてきわめて大幅な給与所得控除の引き上げを行なっております。したがいまして、そういう意味で、必要経費というものは相当程度その中に十分含まれているというふうにわれわれは考えております。したがいまして、今後、物価その他の変動、所得水準の向上等があればまた編み直しは考えるべきかと思いますが、ただいまの段階では、給与所得者の必要経費の問題については十分に考慮されているものと考えております。
  47. 加瀬完

    加瀬完君 関連が長引いて恐縮ですが、大蔵省はいつもそういう御説明をするけれども、現実的にトーゴーサンだとかクロヨンだとかという議論は起こらないですよ、給与所得者の側からみてなるほどもっともだという控除額に達していれば。不公平というか、不平等というか、こういうものはどうしたって徴税技術上の関係もありましょうけれども残らざるを得ない。これは戦前と比べてみると、給与所得者の税金というのはどれくらい重いかということがはっきりすると思う。それから戦前の可処分所得というものといまの可処分所得というものを比べてみても、これはやっぱり前のほうが税金が勤労者にとっては楽であったということはいなめないと思う。ですから、自由業とか作家とか弁護士さんとか、こういう方の収入に対する課税と、いわゆる月給取り、サラリーマンの課税と比べてみますと、必要経費というのは公平ではありませんよ。たとえば、国立大学の先生が本を買っても、書籍を買っても、必要経費になりませんよね。しかし、自由業の者が本を買えば、書籍を買えば、これは必要経費になりますよ。調査研究のために自由業の者が旅行をすれば、必要経費として引かれます。しかし、国立大学の先生調査研究のために出張したってこれは自分の金を出したって必要経費としては認められておりませんよ。こういう点、私はまだまだ研究してもらわなきゃならない点がたくさんあろうと思う。いまこれは税金の話じゃありませんから、第一分科会の機会でありますから、そういう点で共働きの妻の税金といったような点についてもいろいろ御考慮はいただいておることは認めますけれども、もう少しやはり御研究御工夫をいただかなければ、税金をかけられる側の不平というのは、これでけっこうですという状態にはとてもならないです。意見がましく申し上げて恐縮ですが、そういう点、御返事はけっこうですが、御研究を望みます。
  48. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、次に労働省のほうに伺いたいと思いますが、この報告書の中にも働く婦人の問題がかなり大きく取り上げられておりますが、やはり働く婦人地位が非常に低い。労働条件もたいへんに差別されているということで、私もこれは婦人少年局から出している「婦人労働の実情」というのも拝見しているわけでございますけれども、これを拝見しましても、やや賃金格差が狭まったとはいえ、四十八年度においても男を一〇〇とすると女性は五〇・二となっておりますね。このように、憲法上は同一労働同一賃金、平等に保障されているにもかかわらず、その格差というものは、まあ半額で労働力を提供している、そういうふうな実情でございますが、そのあたりについて、婦人少年局も非常に御努力はしていらっしゃると思うのでございますが、この格差をなくするために具体的に今後どのような方法を積極的に進めていこうとお考えなのか。特にこの表で見ましても、既婚婦人の就業率が非常にふえておりますですね。いままでは五〇%ぐらいだったところが五六・五%に昨年はなっておって、働く既婚婦人が多くなった。ということは、一般的に婦人労働者の年齢が高くなってきた。いままでは結婚前の腰かけで仕事につく人が多かったけれども、それよりもむしろ結婚しても子供ができても働こうという人がたいへんに多くなってきた。にもかかわらずに、賃金格差がある。一〇〇対五〇というような非常な差別をされている。そのあたりについてどういう方法でこの格差をなくそうと努力されているかということを具体的にお述べいただきたい。
  49. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) ただいまの問題について御説明申し上げますが、先生の御指摘のように、男子一〇〇として女子が五〇・二というのは、確かに諸外国に比べても大きな格差だというふうに認識いたしております。しかし、その原因は、必ずしも同一労働同一賃金の違反と言うことはできないのではないかと思うわけでございます。むしろ女子が賃金の低い部門にたくさん就職している。あるいは、中高年になってから就職する場合に、先生も御指摘のようにそういう方たちは非常にふえているわけでございますが、一度職業を離れて再就職するというような場合に、わが国においては年功序列型の賃金制度が大多数の企業で採用されておりますために、一度やめてもう一度就職するという場合には、初任給並みの非常に低い賃金でしか就職できないというような実情にあるわけでございます。したがって、男子一〇〇、女子五〇という賃金格差は、これはあくまでも全国的な平均のものでございますので、これをなくすためには、賃金の高い部門、つまり知識だとか技術だとかが必要でありかつ企業の中でも非常に高く評価されているような部門に婦人がもっとたくさん進出しなければならない。それからまた、再就職の場合に、ある程度無技能で全く新しく就職するのと同じような就職のしかたではなくして、もう少し有利に取り扱われるような就職のしかたができるようにしなければならないというふうに考えるわけでございます。  それからまた、もう一点は、やはり企業の中で同じような仕事をしていながら差別を受けているというような点ももちろん見のがすことはできないかと思いますので、一つのことをしていれば足りるというわけではなくして、総合的な婦人労働対策というものが必要なのではないかというふうに考えるわけでございます。  そこで、有利な部門といいますか、賃金の高い部門へもっと就職するためには、婦人自身の職業人としての資質の向上ということがまず第一の条件ではないかと思いますので、その点について、  一昨年できました勤労婦人福祉法にも書かれておりますように、資質の向上のための努力をするということ、それからもう一つ職場における差別の問題につきましては、これは近年諸外国等でも職場における男女の差別というものについて注目され、日本でも大きな声になってきておりますので、これについては具体的に差別をなくすための処理の方法というものをもっと具体的に考えなければならないのではないか。賃金以外の職場における差別につきましては、何ら法制的には保障がされておりません。したがって、具体的に非常に差別があからさまになった場合には裁判等で救われる道もございますが、それはほんの一部分であろうかと思いますので、行政的に何らかの差別に対する救済あるいは苦情処理というような問題についても考える必要があるのではないか、こういうふうに考えまして、近い将来そのための具体的な検討に入りたい、このように考えております。
  50. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのお話にもございましたように、この統計で見ましても、結婚前の腰かけでつとめている若い十代、二十代のお嬢さんは、職場において男女差別というものをあまり意識しておらない。ところが、三十過ぎた御婦人は、同年齢の男の方が非常に昇進されるのに比べて給与がほとんど上がらないというところから、主として経済的な面における不満を職場に非常に多く持っておられる。それからそのあと四十、五十代になった婦人の場合は、賃金差別よりも、むしろ自分の職業人としての能力が十分にその職場において評価されずに、いつまでも女であるということによって下積みであるということについての不満がたいへんに多いという統計が出ておりまして、私もたいへんおもしろい資料だと思ったのでございますが、そういうふうな結果も踏まえてひとつ婦人に対する労働行政というものをこの不満解消の方向に向かって進めていただきたい。特にいま労働問題についての不満というものが訴訟に持ち込む以外方法がないというのでは非常に悲しい現実でございますので、そういう問題についての苦情処理機関というもの、これはこの意見書にも出ておりますけれども、これは早急に具体的に取り組んでいただけるわけなんですか、この設置について。いつごろのめどで労働省でやっていただくおつもりなのか、どうなっているのか、ちょっと具体的にお述べいただきたい。
  51. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 赤松課長に申し上げますが、ここは第一分科会でございますので、労働省は四分科会になっていますから、答弁は簡単にひとつお願いします。
  52. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) 恐縮でございます。  いまの御質問について簡単にお答え申し上げますと、具体的な苦情処理機関につきまして検討のための予算要求をいたしておりまして御審議をいただいておるところでございます、検討の機関について。
  53. 佐々木静子

    佐々木静子君 じゃ、もう時間がないようでございますので、労働省のほうにはぜひ婦人少年局で積極的に取り組んでいただくことをお願いしまして、あと厚生省にお越しいただいておりますので一言お尋ねしたいと思いますが、いまの労働省のお話でも、婦人が一度退職して再就職するために職場での差別が一そうひどくなるというお話がございましたが、これは出産とか育児のために一時退職するケースがたいへんに多いと思うわけでございますが、そのためにはやはり労働省のほうで保育所の完備というようなことを積極的に考えていただかなくちゃならないわけでございますが、これは全国的な自治省の統計によりましても、四十八年度でも二百二十九万人が保育を求めている子供の数ですね。ところが、現実に保育所に受け入れられている子供の数というものは百二十万余りだということで、これは半数にも満たない状態で、働きたくても母親が保育所がないために働けないというのが現状でございますので、この保育所の充実というようなことについてどういう姿勢で取り組んでおられるか。  それからもう一つの問題は、いま幼児保育はかなり充実してきておるわけですけれども、やはりゼロ歳児の保育ができなければ婦人は退職しなけばならないというのが実情でございますので、ゼロ歳児からの保育の問題と、さらに学童保育ですね、学校から帰ってきてかぎっ子というのでは子供の教育上よくないので、学童保育の必要が叫ばれているわけでございますが、その三点について時間がございませんので簡単にお答えいただきたいと思います。
  54. 岩佐キクイ

    説明員岩佐キクイ君) ただいまの要保育児童の問題につきましてでございますが、先生がおっしゃいましたように、約二百三十万ぐらいの保育に欠ける子供があるということでございましたけれども、私どもが押えておりますところは、厚生省が行ないました調査に基づきましてその後婦人労働力が増加してまいりましたものを加えて推計をいたしますと、昭和五十年までに百六十二万五千人ということでございます。したがいまして、これを四十六年度から五十年度までの保育所緊急整備計画をつくりまして年次的に計画を進めておるところでございまして、現時点におきまして、四十八年の九月一日現在でございますが、保育所は一万六千四百カ所ほどでございまして、定員は百四十七万人というふうに考えておるところでございます。したがいまして、この保育所の設置につきましては、国庫補助あるいはその他の方法をもちまして整備をいたしておるところでございますが、これにつきましては、大体年度末に建物ができ上がってまいりますので、したがいまして、今年度におきましても約九万人は整備できるものというふうに考えておりまして、昭和五十年度までには目的が達成できるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから乳児保育の問題でございますが、乳児保育につきましては、働く母親の強い主張と、それから母親にせめて乳児期間は保育をしてもらいたいという子供の保育を受ける権利とでも申しましょうか、そういうふうなものをどの点で接点を見出していくかというのはなかなかむずかしい問題でございます。しかしながら、中央児童福祉審議会等におきまして相当慎重に審議をしてもらいましたところによりましても、子供の年齢が低ければ低いほど家庭でその子供が保育を受けることが最も望ましいという結論になっておるところでございまして、行政といたしましては、これを受けておるところでございますが、現実はどうしても預けなければならないという家庭もございますので、それらに対応いたしますために乳児の特別保育対策を進めておるところでございまして、四十九年度におきましてもさらに特別対策の対象者の数をふやすことによりましてこれに対応してまいりたい、このように考えておるところでございます。  それから第三点の学童保育でございますけれども、御指摘のように、確かに、学童保育につきましては、働く母親たちが困難しているという状況も多いようでございます。したがいまして、これにつきましては、子供の健全育成、それから余暇を善導するというふうな立場に立ちまして児童館のような対策を進めておるところでございまして、これはまだ不足している状況でございますので、今後とも積極的に増設をはかってまいりたい、このように考えております。
  55. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間がございませんので、いま各省からあらかた伺いましたから、総理府のほうにおきましてもこの調査をむだにしないで十分な連絡をとっていただいてこの実現方に鋭意御努力いただきたいということを特にお願いして、時間の関係で私の質問を終わりたいと思います。
  56. 藤原房雄

    藤原房雄君 第一分科会におきましては総理府関係ということでございます。私も北海道の者ですから、北海道開発行政のことについて二、三お伺いしたいと、こう思うわけであります。  北海道の開発のことにつきましてはいままでもいろいろ議論のあったところでございまして、また現在三期計画の推進というものが進行している途上でもございまして、現時点から考えましても私ども非常に考えなければならないいろいろな問題がある。三期計画の中の三つの柱といわれております苫東、また石狩新港、新酪農村、ここにも社会変動の大きな波が押し寄せておる。こういう観点からいたしまして、開発庁の姿勢といいますか今後の問題についてお伺いしたいと思うのであります。  最初に、過日予算委員会におきましても、大きなプロジェクトで進んでおります開発、これは石狩に焦点を当てまして、そこの開発に泣く農民の声、具体的な問題についてお話ししたわけでありますが、何といいましても、この前もいろいろ申し上げましたように、政治的な渦巻きの中に入りたくないという河本さんのお話もございまして、私もあまり大きな問題として声を張り上げるようなことでなくして、何とか話し合いの中で現在の当面する問題を解決してもらいたい、こういうことを大臣にお話しいたしました。大臣も積極的に話し合いを進めていくというお話でございました。あれから十日ほどたったわけでございますので、何かと手を打ってくださったのではないかと、このように思うのですが、その後のことについてちょっとお聞きしたいと思うのです。  ただ、私がここで申し上げたいのは、すぐ企業と行政との癒着ということに結びつけてなんでもかんでも考えたくないと思うのですけれども、この前申し上げたように、電灯線の撤去のことにつきまして河本さんから電話があってこれを切ったというのですね。電話があって切ったなんていうのはとんでもない話でしてね。そのあとから盗難届けが出ているとか、こういう北電の一貫しない、そしてまた筋の通らない、そういう企業の姿勢がいろいろなところにあらわれ出ている。こういうことから、北海道開発にあたりましては、何といったって大臣出身でございますから、こよなく北海道を愛するということから、いままでのような姿勢でなくして、やっぱり住民に十分な納得のいく今後の推進というものを私はお願いしたいと思います。  伊達の火力発電所の建設問題につきましても、ずいぶんもめました。私も地元に何回も行きましたけれども、これとても、開発を推進する建設する側の論理とまたされる立場とあるわけですけれども、いろいろな観測データなんかにつきまして、私もこれは農林水産委員会調査に行ったわけですけれども、とにかく各委員とも漁民にまた住民に納得させるだけのデータというものがあまりないということや、データそのものについても非常にあいまいさがあるとか、こういうことで非常に不信感が巻き起きている。ただ政治的な背景だけではなくして、素朴な住民の方々あるいは知識階級の方々が、こういう開発のあり方というものはどうも北海道だけじゃないか、本土のほうではもう通用しないことが北海道で問答無用で進められている、そうとしか思えないという、こういう声が渦巻いております。こういうことからいたしまして、北海道出身の大臣が開発庁長官としてお立ちになっていらっしゃるこういう機会に、ほんとうに北海道開発のあり方という基本的な姿勢というものを、住民本位ということで、いままでの過去のことについて私は一々触れて申し上げませんけれども、ひとつ一新した気持ちで今後のことについて取り組んでいただきたい、こう思うのですけれども、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  57. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 北海道開発のあり方についていろいろ御指摘があったわけでありますが、申し上げるまでもなく、一体、北海道の開発というのはだれのために、何のためにやるのかという基本的な立場に立って考えてまいりまするときに、これは言うまでもなく北海道地域住民の生活の向上ということが一番大きなねらいでなければならぬということは、申し上げるまでもございません。したがって、今日のような価値観がずいぶん多様化してまいってきておるというような時代でございますので、おのずから住民の意見と申しましょうか、意思といったようなものもかなり多様化しておることはこれは事実でございます。したがって、私どもは、そういった開発を進めるにあたりまして、住民の意向なり考えなりというものをできるだけ尊重するというたてまえをとっておることは、申し上げるまでもございません。しかし、いま御指摘もございましたが、住民の意思が全く無視せられ、問答無用的な態度で開発が進められておると、こういう御指摘もあったわけでございますが、いま御指摘になりましたたとえば伊達火力発電所の問題等につきましても、確かに一部の方の間にはこれに対してたいへん強い反対の意向を持っていらっしゃる方があることも事実でございます。しかし、やっぱり住民の大部分の方はこれに対して強い支持、賛成の態度をとっておられたということは、御承知のように関係の市町村議会の議決の内容をごらんになっても明らかでございますし、また、その際選挙等がこの問題を中心として行なわれたという場合におきましても、圧倒的にこういうことを推進すべしという考えの人がたいへん大きく勝利を占められたというようなことから考えてみまして、これはまあやってもやらぬでもどうでもいいということであれば別でございますけれども、やはり北海道におきましても電力の需要が次第にふえておるというような状態から、どうしても火力発電所をつくらなきゃならぬということは、これは私ども避けることのできない問題である。だといたしまするならば、つとめて一人でもほんとうは反対のないような姿でこれが実現されることが望ましいということはこれは申し上げるまでもございませんけれども、しかし、先ほども申し上げましたように、昨今は漁民の間に意見が多様化して違った意見をお持ちになる方がずいぶんある、そういった場合において、少しでも反対があれば一切やらぬのだということで済む仕事であればよろしゅうございますけれども、これはどうしてもやっぱり電力の開発ということはやらなければならぬということに相なりますれば、できるだけ漁民の方々の理解を求めるために全力を尽くさなきゃならぬということは申し上げるまでもございませんけれども、しかし、最終的には、やはり多数の方の意思がこれに御賛成だということになり、しかもこのことはやらなければならぬという場合には、どうしてもこれは踏み切らざるを得ない。したがって、一部の方からごらんになると、われわれの意思を無視してやられたというような御批判の出るということは、これはそれらのお立場の方からすればそうでございましょうけれども、しかし、まあ今日のような民主主義社会においては、そういった段取りを十分踏みながら最終的にはどこかでやっぱりいずれかに決定をするということをやらざるを得ないわけでございますので、私ども今後北海道の開発を進めてまいりまする場合におきましては、従来とは違いましてずいぶんいろいろな御意見が住民の間に出てぐるということは十分念頭に置きまして、しかし、そういった点についてもできるだけ御理解を求めるということには全力を尽くさなきゃいかぬと思いますけれども、しかし、最終的にはやはり住民の多数の方が御賛成になるという場合にはこれを強行するということも残念でございますけれどもやむを得ないのではないかと、かように考えておるわけであります。
  58. 藤原房雄

    藤原房雄君 まあ大臣のお話でありますけれども、全くいまの北海道開発は大臣おっしゃったお話のようなやり方でやっている。私はいま火力発電所つくるなということを言っているのじゃないんですけれども、その進め方ですね。他県にない、何といいますか、住民の説得とかまた話し合いのあり方というものに民主的な進め方というのは北海道は非常におくれて、強圧的な感じ、私もまあ全国あっちこっち歩くものですから特に感ずるわけなんですけれども、おことば返すようで申しわけないんですけれども、議会で議決したという伊達のことですね。議決したわけでございませんし、選挙もこれリコールが通ったんで、そのあとにまあそれは圧倒的多数で当選したかもしれませんけれども、リコールが通ったあとにまた選挙で大きな差でなったことですから、これにもまたいろいろ問題があるんでして、このことだけで云々はできないことだと思います。要するに、私が言いたいことは、こういう建設反対というんじゃないんですが、最近漁民の方々も公害のことについては非常に勉強しておりまして、まあ専門家が負けるぐらいいろいろなことを研究し、いろいろな勉強会をやっております。また現地も見ておる。そういう人たちに、特に北電、また道ですか、開発庁も入るかもしれませんが、おまえたちに何がわかるんだと言わんばかりの態度が見えるわけです。この前農林水産委員会で視察に行ったときに、そのことについて、公害がないというなら、それはないといういろいろなデータなり何なりではっきり示してもらえばいいけれども、データが十分に示されない、また、いままで自分たちが見たりまた勉強した専門的な知識からいってこれではどうも不安が残る、こういうことが異口同音に出ました。これは道のほうにも強く申し入れたことなんですけれども、あるところへ行ったら、観測機器がときどき故障を起こして十分な正確なデータが出るのかどうかというそういう不信感なんかもございまして、そういう不信感におおわれている人たちがおるという。これはやはりこちらの努力を重ね、そしてまた、説得力あるデータなり、また不信を起こさないような何か説明によって話し合いはできるわけでありまして、何から何まで反対しているわけではないのでありまして、この前賛成、反対両方の方々意見を聞きまして、われわれ行った者が異口同音に感じたことなんです。最近農民でも漁民の方々でも公害等については非常に専門的に勉強し、各地の実態というものもよく知り、北海道は決して別天地ではございませんで、こういうことについても本土のような公害におおわれるようなことになっちゃならぬという、同じ轍を踏んではならぬという、こういう素朴な非常に真剣な気持ちが反対運動になっている。こういう方々が非常に多いということを私は言いたいわけでして、火力発電所を建設するなというような、頭から何の論理もなくして言っているわけでは決してないのですけれども、こういう住民の多様化した時代でございます。その多様化の意味にもいろいろとれると思うのですけれども、ただ自分の利害だけではなくして、もっと説得力あるいろいろな観測データ、またはその理論、いま漁民も農民も非常に専門的な知識をたくさん持っているというそういう人たちに対しての説得力ある説明がなければいかぬ。それが北海道の場合はあまりなされないで、問答無用で押し通すような姿がいかにも多いのじゃないか、こういう感じがしてならないわけです。ひとつ、北海道の開発についても、もう新しい時代に来ている、北海道をよごしてはならぬという、こういう素朴な人たちの気持ちというものは踏みにじってはならぬ、このように私は思う。そういう点から実は言っているわけです。そういう点についていかがですか。
  59. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 私ども、北海道の開発を進めていく上におきまして最も神経質に注意をしておりますことは、いわゆる先進地における公害発生の轍を踏むことが北海道においては断じてないようにしなければならないという基本的な考え方に立って北海道の開発を進めるということにいたしておるのでございます。いま藤原委員によりますれば、どうも北海道におけるやり方というものが本州に比べてみますると問答無用的な態度が非常に強いという御指摘でございます。この点の御指摘は、私どもも今後北海道の開発を進めていく場合、十分私も承って念頭に置き、関係者にもそのことを十分徹底をさせるように努力をいたすことはもとよりでございます。何と申しましても、先ほど申し上げましたように、北海道の開発というのは北海道民のしあわせのためのものであるという考えに私どもは立っておるわけでございますので、そのことが住民の方々に納得を得られないということは、これはまあ一見いたしまするところまことに矛盾したようなことにも相なるわけでありまして、そういった点について漁民の方々の間にとかく不安が残る、あるいは不信感を抱かれるということは、これは先ほども申し上げましたような今日の意見の多様化しておりまするときには当然のことでございますが、しかし、私どもといたしましては、その点は十分そういったことを念頭に置きまして、できるだけつとめて不安の残らないように、不信感を払拭するというためには、従来も私は関係者としてはかなり努力はいたしておったと考えますけれども、なおその点は今後一そう十分念頭に置きまして、まあ私ども北海道の開発というのは先進地には見られないような新しい地域の開発をやるんだと、進めなければならぬのだという考え方でございますので、御指摘になりまするような公害について先進地帯の二の舞いになるというようなことは断じて北海道においては繰り返してはならぬという基本的な考え方で私どもはおるわけでございますけれども、具体的にはいろいろの問題が起こることも重々わかるわけでございます。いま御指摘になりましたような私どもは基本的な態度をもって臨みますけれども、しかし、それでもなおかつ十分御納得がいただけないという場合もございますので、それにつきましてはさらに慎重に、しかも十分熱意をもって関係の反対をされる方々に御理解を求めるということには十分努力をしていくべきだと、こう考えております。
  60. 藤原房雄

    藤原房雄君 私、全然努力していなかったと言うつもりはないのですけれども、各地を回って特にそういう感じがしましたので申し上げたわけであります。いま大臣から相当決意のほどのお話がございましたので、どうかひとつ、先ほどお話ありましたように、だれのための何のための開発かという原点を忘れずに、なお意思を尊重した明るい北海道を建設していただきたいと思います。  三期計画でございますが、これは一つ一つやっておりますとたいへんな時間がかかりますが、三期計画の柱になっております三つの柱、これも社会の大きな変動の前に検討を加えなきゃならない段階に来たのじゃないか。苫小牧の東部開発にいたしましても、当初三期計画の計画した時点から今日では、公害に対するきびしい規制、考え方等についても非常に変わってまいりました。これも一つ一つ申し上げる時間もないのであれでありますけれども、開発庁といたしましても、公害を呼ぶようなものについては厳重にチェックするというこういうことを何度か表明しているようであります。また、石狩新港につきましても、当初の規模というものがこのままでいいのかどうか。そしてまた、当初計画どおりの推進がなされているかどうか。いろいろな数字、データを私も用意したのですけれども、時間もございませんので一々申し上げる時間もございませんが、石狩新港につきましても、取り扱い貨物等、また公害問題を考えますと、後背地のレイアウト、こういう問題についても非常な検討がなされなければならない。また、新酪農村計画、これも今後大きな問題として私ども取り組まなければならないことだと思うのでありますが、毎年繰り返されております乳価の問題、今日まで多頭化することが酪農経営の安定合理化の唯一のきめ手のように進んできたわけでありますが、これも地価の高騰、こういうこともございまして新酪農村計画も当初の計画からいたしましてなかなか思うように進むものかどうかという疑問点、それからまた、農民の方々にいたしますと、農政がしょっちゅう変わるといいますか、時代の変化に対応できない、こういうことで非常に不安を抱いている方々も多いようであります。ここは農林水産委員会ではございませんので、農業のことについて長々お話しすることは避けますけれども、別海町あたりの大規模の酪農農家についても、このたびの飼料の高騰や営農諸資材の値上がりというのは非常に経営を悪化さしておる。もっと小さいところですとたいへんなことでありまして、こういう新酪農村計画そのものについても現在の社会の大きな変化の波の中で対応し得ないようないろいろな問題も出つつある、このように思うのです。これは、やっぱり、新酪農村計画の大きな推進のためには、ただ多頭化を進めるというだけではなくして、もっと抜本的な対策が組まれなければならないのじゃないか。それは加工原料乳と飲用乳価の大きな差、北海道では市乳化率が大体一割ぐらい、一〇%と、こういわれておるわけですけれども、これはやっぱり飲用乳の促進をはかるということが大きな問題だろうと思うのです。この点については町村大臣はその間のことについてはよく御存じだと思うのですが、この販路を積極的に開くということで去年私予算委員会でこの問題をいろいろ申し上げましたら、江崎当時の開発庁長官は、本土への北海道と京浜地方を結ぶ生乳のフェリーですね、これを事務当局にいま検討さしておるのだという積極的な発言がありましたが、現在もう御存じのように、当時の不足払い制度の法の根本問題からかんがみましても、いたずらに今日のようなことが繰り返されるのじゃなくて、市乳化を大きく推進するということも絶対北海道にとっては忘れてはならないことで、現在、冷凍とか滅菌技術、こういう技術的な面が非常に進んでおるだけに、積極的な対策考えられなければならないのじゃないか。こういうことが、背後関係といいますか、十分な対策か講じられないで、ただ多頭化のほうだけが推進されても、やはり同じことを繰り返すようになるのじゃないか。特に畜産危機が叫ばれ、酪農の危機が叫ばれておるわけでありますが、頭数も農家もずっと減っておる。そこで、生産量もほとんど停滞状態である。こういうことを考えるにつきまして、北海道に酪農ということで非常なお金をかけ、今日まで計画が推進されてきておりますけれども、どうしてもやっぱり根本的な何かが足りない。ただ時代の波だけではなくて、北海道開発庁として、これは当然農林省が考えなきゃならないことだと思うのですけれども、開発庁としても大きな見地の上から今後の開発推進という上から考えるべきだ、こう思うのです。北海道出身の大臣でもございますのでこういう酪農のことについては特に強い御関心をもっていろいろなお考えを持っていらっしゃるのじゃないかと思うのですけれども、大消費地京浜地区へ運ぶという高速の専用船とか専用列車とか、こういうもので市乳化を大いに推進しようという、こういうことについて大臣のお考えがありましたらお聞きしたいと思います。
  61. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 新酪農村の建設ということに関連をいたしまして北海道の酪農の問題についてのお尋ねでございますが、これは本来から申しますと農林大臣がお答えするのがたてまえではございますけれども、私どもも新酪農村の建設ということには片棒をかつぐ立場にあるわけでございますのでお答えを申し上げたいのでございます。  北海道は、何と申しましても、地域的にはやはり酪農を主体にしていかなければならない農業地帯であるということは、これはもう申すまでもございません。したがって、いま御指摘のございました根釧地帯に大きな新酪農村を建設するというような問題も、あの地域はもっぱら酪農以外には農業を経営することが不可能だと、ほとんど至難だという地域でございますし、しかもわりあいに広大な地域がまだ未開発のままに放置されておるということに着眼しての新酪農村の建設であるわけでございます。しかし、最近、御承知のように、物価の高騰に伴いまして、ことに飼料が著しく高騰する。もちろん、北海道の酪農は、本州の酪農に比べますると、自給飼料の度合いは本州よりははるかに高い。したがって、購入飼料が高くなりましてもその影響を受ける度合いは若干低いという長所は持ってはおりますものの、先ほど御指摘のございましたような、飼料ばかりじゃございません、営農機械機具類も相当に上がっておるというような次第でございまして、酪農家の経営がまことに困難な状態になってきたということは、御指摘のとおりでございます。  そこで、本年のいわゆる乳価の問題ということがたいへんやかましい問題になり、まあ、先般の政府の加工原料乳の価格については、かなり大幅の値上げである、それが直ちに消費者に影響をもたらすということで、消費者方面からはかなりのこれに対する不満というものが出されておるということも事実でございますけれども、今日の日本では石油というものが日本の産業経済の下部機構と申しましょうか基盤にあるわけでございます。この石油の値段が四倍半にもなるということになりますれば、やはりどうもそれに伴っての諸物価の高騰ということはやむを得ないのじゃないか。政府が関与しておりまするたとえば米であるとか酪農だけを押えてしまうということになって、他のものはそれに伴った自然の価格の高騰が行なわれるということになりますれば、米であるとかあるいはいまの酪農といったようなものはことごとく総倒れになってしまわざるを得ない。したがいまして、そういった石油の価格の高騰に伴います物価がバランスのとれた引き上げが行なわれ、しかもそれが他に波及することのできるだけ少ないような新しい新物価体系というものが当然ここにでき上がらなければならぬような情勢にあるものだと。したがって、今度の加工原料乳の価格がいままでの例を見ないような大きな上げ幅になったということは、その面に関する限りはいろいろな影響をもたらしておる。北海道の農民にしてみますれば、必ずしもこれで十分だとは言っておりません。が、しかし、まあまあある程度将来に見通しをつけることができるようになったという感じを関係酪農民は持つようになったのではないかと、こう私は見ておるわけでございますが、いずれにいたしましても、いま御指摘のございましたようないわゆる飲用牛乳と加工原料乳というものは、今度上がりましたけれども、なおかっまだ市乳に比べますると低いわけでございます。ですからして、本州の酪農地帯のように市乳一点ばりのものに比べてみますると、なおはなはだ不利な状態にある。したがって、北海道としては、いままではほとんど全部といいましょうか八五%程度は加工原料乳でございましたけれども、これをやはりできるだけ市乳化するということが農民の経済を潤していく上においてはたいへん大事なことでありまして、このことは前からもずいぶん実は各方面でいろいろ御研究を願っておるところでございます。あるいは船で持ってまいりまする方法、あるいは濃縮牛乳にいたしまして鉄道で運ぶといったような問題、いろいろなことが研究されており、漸次その研究も進んでまいりましたし、また、一面におきましては、ホクレン等が中心になりまして東京あるいは関西方面にかなり生乳を市乳として持っていくというようなこともだんだん進んではおりますものの、まだしかしこれが本格的な軌道に乗ったというところまでは残念でございますけれども至っておりません。これはやっぱり受け入れ体制その他にばく大な施設を必要とするというような問題等もございまして簡単にはまいりませんけれども、私は、一面において、いま申し上げたような加工原料乳の価格が大体北海道の酪農が経営できる程度にまでやはり適正な価格を常に維持できるようにしていくということが一つと、もう一つは、できるだけ北海道の加工原料乳を市乳化するというためには、何と申しましても北海道の消費基盤というものはきわめて小さい、しかも生産はきわめて大きいということでございますから、いまの八五%程度になっておりまする加工原料乳の比率をもっとできるだけ市乳のほうに回していくというための諸般の対策というものをこれからさらに積極的に進めていかなければならぬと思うのでありまして、農林省もその点はかなり検討をしておられるのでありますが、やはり本格的に進めてまいりまするのにはなおまだ不十分なことが非常に多い。したがって、あんまりそう大きく進捗していないというのが現状でございますので、その隘路となっておりまするものは大体見当がついておりまするので、今後その隘路の打開ということに全力をあげてまいることによって北海道の酪農というものが常に前途に明るい希望を持ちながら発展をしていけるようにつとめてまいるということを私どもは基本の方針として進んでまいりたい、こう存じておるところであります。
  62. 藤原房雄

    藤原房雄君 これは北海道開発庁がせっかくあるわけでありますし、他の都道府県とは違ってそういう国家的な大きな問題については積極的に取り組む体制というものができているわけでありまして、これはまあ農林省に強力に働きかけるということも出てくるわけでありますが、町村大臣でいらっしゃるときに何らかの方途というものを見出していただきまして、北海道は農業基地ということで、その柱に酪農があるわけです。根釧原野または天北地方に酪農がどんどん推進される、そういうさなかに今度の問題が起きまして低迷状態を続けておる。じゃ北海道はこれからの農業を一体どうするのか。三期計画の新酪農村計画という柱は一体どうするかという、こういう大きな問題にまでつながってくるわけでありまして、もちろん加工原料乳の乳価の適正な価格ということも必要なことだと思いますけれども、抜本的な市乳化推進といいますか促進の問題につきましてもひとつ道を大きく開いていただきたい、このように思うのであります。  さて、時間ももうなくなってしまったのですが、この北海道の開発についていろいろな問題にぶつかるわけでありますが、やはり、一つは、ほかの県の総合開発と違った北海道の開発、これは北海道開発法によって進められておる。この北海道開発法自体が、昭和二十五年の、戦後の混乱期から北海道をひとつ国家的に見直そうということで、その前ずっと拓殖計画もありまして、それを踏まえた上での開発でありますけれども、こういう北海道開発法という法律の上に乗った北海道の開発、この点は他の県の総合開発等々と違う大きな問題であるわけでありますが、そこで、北海道開発法これ自体ほんとうに北海道の開発のために大きな推進役をしているのかどうか。二十四年も前のことであります当時とはずいぶん考え方も変わってきた、社会情勢も変わってきた、経済情勢も変わってきた、こういうことからいきまして、田中総理がよく言われる発想の転換ということ、こういうことからいたしまして、北海道開発法、この第一条を見ましても、第二条を見ましても、現在の時点ではもうそぐわない問題がたくさん山積しておる。こういうことについて、まあいままでも議論があったのじゃないかと思うのですが、大臣、こういう点についていろいろ御検討なさったり、お考えもあったと思うのですが、その点、ひとつお伺いしたいと思うのですが。
  63. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 現在の北海道開発法というものは、いまも御指摘がございましたが、昭和二十五年に制定をされた。しかも、あの当時は、申し上げるまでもなく、まだ戦後の収拾をいたさなければならぬ、すなわち、国内的には、食糧不足、さらには外地からの引き揚げ者がたくさんあるというようなことで、北海道はそういった引き揚げ者を受け入れる場所であり、同時に、不足な日本の食糧を自給させるための一つの重要な基地にしなければならぬということが当時北海道開発法の発足したゆえんであるということは、あらためて申し上げるまでもございません。したがって、いまこの法律の条文というものをごらんになりますると、何か現在の日本には必ずしもそぐわないのではないかという印象をお持ちになりますことは、これは私は無理からぬことだと、こう思うのでございますけれども、御承知のとおり、北海道の開発計画も、すでに第一期の第一次、二次、それからさらに第二期計画というものを終わって、そうして現在では第三期計画の進行の過程中にあるわけでございます。そこで、北海道の開発計画それ自体をごらんになりましても、当初の開発計画と現在とではかなり内容が変わってきておるのであります。時代の進展とともに北海道の開発の目標とするところのものも次第に変わってくるというのはこれは当然でございまして、開発計画をちょっとごらんになりましても、御承知のとおり、北海道の「産業の開発振興」ということと並べまして北海道の「社会開発基盤の強化」というようなことも現在の開発計画の中ではきわめて重要な柱になっておるということは、あらためて申し上げるまでもございません。したがって、そういう角度からこれをごらんになってまいりますると、私は、法律というものは、時代の進運とともに、次第にそれが特に存在をいたしておりますることが非常に障害になるというような事態が起こればそれは別でございますけれども、障害にならなければ、やっぱり時代の進運に伴って内容というものも自然に充実されていくというようなものではなかろうかと、こう考えるのでございまして、したがって、今日北海道の開発法というものの当時できましたものをそのままごらんになると、何かそぐわないような感じがなさると思いますけれども、現実に北海道開発計画において行なわれておりますることは、今日の時代の要請に十分こたえるということを念頭に置いて今日の計画が進められておるという次第から考えてみますると、北海道の開発計画というものはかなりそういった点では有効な働きをしておるものであろうと、私はこう見ておるのであります。
  64. 藤原房雄

    藤原房雄君 何も、私、無意味な開発計画、それを否定する、そんな気持ちで言っているわけじゃないのですけれども、少なくとも法律ですから、拡大解釈して見ていけば大臣のおっしゃるようなことになるのかもしれませんが、「資源の総合的な開発に関する基本事項」云々ということですから、もう現時点から考えてみましてもどの時点から見たって、どんなに拡大解釈しましても、もうこの目的というものは現時点にそぐわない。また、総合開発計画、これは国が人口問題の解決等のため総合開発計画を樹立する、それによって実施するということなんですけれども、国が総合開発計画を樹立し実施するという、こういうことについての考え方、それからまた三条の「関係地方公共団体の意見の申出」、現在はもう住民の声を十分に——冒頭きょう質疑にありましたけれども、参酌しなけりゃならない、話し合いを進めにやならぬ、こういうときに、「開発計画に関し、内閣に対して意見を申し出ることができる。」というこういうことは確かにもう二十何年前の話でして、現在はもっと民主化されたスタイルにしなきゃならぬ、システムをつくらなきゃならぬ。しかし、現実、そういう形は整えられつつあることも私は一部は認めますけれども、冒頭に申し上げたように、この北海道の開発というものは、どうも強圧的といいますか、非常に強い姿勢で、他の府県とは違う面が目に映ってならないということを私は冒頭に申し上げたのですけれども、現在の北海道開発法のこういう規定そのものの中にもまだ厳然とそういう姿が残っておる。「意見を申し出ることができる。」というんですけれども、まあ時間がありませんから、一々これ、どういう意見をどういうふうに取り上げてどうなったのかということをお聞きしたい、こう思ったんですけれども、まあそれはよろしいんですが、こういう、一条、二条、三条を見ましても、こういう形というものは、もう時代にそぐわない、もっと民主的なものに変えなきゃならぬ。こうなりますと、北海道開発法そのものが一体どうなるのかという次のまた議論も出てくるかと思うのですけれども、こういうことからいたしまして、現在ちゃんとやっているからいいじゃないかという言い方ではなくて、やはりもっと現在に即したものに改めるという、こういう積極的なお考えがないのかどうか、これをお聞きしたいと思います。  それと、一期、二期、三期と経てまいりまして、「資源開発」から「産業構造の高度化」また「高、生産一高福祉社会の建設」、このように一期、二期、三期それぞれ進んでまいりました。こういうことからいいまして、この開発法の使命というのはもうそろそろ終わりに来ているような感じがするわけでありますけれども、どのようにお考えになっておるのか。この三期の次にはどういうものを目標にして、まあこれはまだ五十五年まで三期計画があるわけですから、先の話になりますけれども、この開発法をもとにして開発法というものがここにまだいまでも生きているんだという大臣のお考え方からすると、次の段階にはどういうことをお考えになっていらっしゃるのか。  それからもう時間もありませんのでこれでやめまずけれど……。
  65. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 藤原君、簡潔に願います。
  66. 藤原房雄

    藤原房雄君 苫小牧の開発につきましても、福田大蔵大臣また環境庁長官は、わが国の大型プロジェクトはわが国の経済の鎮静化、国際収支問題、物価抑制、環境問題などの情勢変化を踏まえて根本的に考え直さなきゃならないと、こういうことから苫小牧も例外ではないという福田大蔵大臣のお話がありました。北海道の三期計画につきましても、わずかの時間で十分な論議は尽くされませんけれども、こういう福田大蔵大臣の言われたことを踏まえますと、三期計画そのものについても見直さなきゃならない、検討しなきゃならぬ大事なときに来ているのじゃないか。最近、田中総理大臣も列島改造については柔軟な発言をしているようでありますけれども、こういうことからいきまして、北海道開発三期計画についての見直しということについてそういう意思がおありなのかどうか、こういう三点についてお伺いしたいと思います。
  67. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) いろいろ御指摘がございましたが、先ほど来もお答えを申し上げておりまするとおり、私ども、北海道の開発を進めるというのは北海道民のしあわせのためのものだというふうにその目標を明確に掲げておる次第でございまするので、その開発というものが道民の意思というものが全く無視せられて強圧的に行なわれておるという御指摘をいただくとするならば、これはそういったことについての努力なりそれを道民の方々によく納得していただくということについての私どもの努力の足りなさを御指摘になったものと承って、十分この点は注意いたしてまいらなければならぬと考えております。  この第三条でございますか、開発計画について地方公共団体が意見を申し述べる、これはきわめて忠実に実は行なっておるのでございまして、この開発計画というものは確かに政府が決定をするという段取りになっておることはもとよりでございますけれども、しかし、実質的にはこれは北海道知事が具申をいたしてまいりました内容がほとんどそのまま第三期計画になっておるというわけであり、しかも知事はこれを作成をするにあたりましてはいろいろな角度から道民の意思を反映させる、吸収するということには非常な努力をいたしておることは、申し上げるまでもございません。したがって、私どもは、この開発計画というものが政府が北海道に押しつけた、強圧的な上からのものであるというふうには実は全く考えていないのでございまして、むしろこの点はかなり民主的な方法でもってつくり上げられた、ちょっと日本にも他に例のない内容を持っておるものではないかと、私はかように考えておるところでございます。
  68. 藤原房雄

    藤原房雄君 意見を申し述べるだけで、いろいろなことを聞く機関がないのじゃないですか。
  69. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) いや、その点はまたあとでお答えしてもよろしゅうございますが、とにかくそういった点もございます。さらに、この北海道開発法はもうすでに相当の年月が来たんだからやめたらいいじゃないかと、あるいはこういうものはもう一ぺん全部出直したらどうかというような御意見もいま承ったわけでございまして、これも確かにそういった御意見のあることは私もよくわかるわけでございます。しかし、御承知のとおり、すでに北海道はある程度経済的な力というものが、かりにこれを県民所得というようなものから申しますると、もちろん第一級のところには至っておりません。まあ、しかし、二級の上位ぐらいのところに行っておるわけでございまして、そういうことから考えると、むしろ一部の本州の方々の間には、北海道開発法なんというものはやめてしまって、北海道はいままでの他の府県並みにしたらいいじゃないかという御意見もございます。それはなぜそういうことが言われるかといいますと、北海道開発にはかなり財政上の特例が与えられておるわけであります。開発法をやめるということはこの財政上の特例をやめてしまうということになるわけでございまして、私どもは日本の新しいフロンティアとしての北海道の開発というものを本州とは違った形でモデル的に発展をさせたいということから考えますと、この財政特例というものはなおしばらく存続させてしかるべきものだ、かような考えもございまして、私どもはいま直ちに北海道の開発法をやめるということにはにわかに御賛成申し上げかねるというふうに考えておる次第でございます。  さらに、苫小牧等の大型プロジェクト等について、三木長官あるいは福田蔵相から、これに対してきわめて消極的な御意見等が述べられたということに関連しての御発言でございます。確かに、そういった意味の角度からの御発言もございましたけれども、しかし、私は、三木さんにしても、福田さんにしても、現在の三期計画そのものをやめてしまうとか、あるいは北海道の開発についてはもう一切いままでのようなことはやらないというようなお考えだとは考えておりません。たとえば大型プロジェクトの問題につきましても、いろいろ問題がある。問題があるし、いまは御承知のとおり総需要抑制の今日の時期でございますから、こういった大型プロジェクトをいまほかとは関係なしに無理無理にこれをどんどん推進していくんだということについてはにわかに賛成いたしかねるというのが私は大蔵大臣の御所見であったように思うのでありまして、私どもまたそれでけっこうだ。先ほども申し上げましたように、苫小牧東部開発はおそらく全国に例を見ない新しい工業地帯として発展をさせなきやならぬ、少なくとも大型ではあるけれども公害のない、日本には類を見ないものをつくり上げたい。それには何もあわててやる必要は毛頭ないのでありまして、むしろ今日のようないわば総需要抑制の時期にこそいろいろな問題を十分検討をする時期である。そういう検討の中において過去の先進地帯におけるところの失敗を一切繰り返さないという考え方で進んでまいるべきものではないか、私はかように考えておるところでございます。
  70. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時三分開会
  71. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) ただいまから予算委員会第一分科会を再開いたします。  分科担当委員異動について御報告いたします。  本日、岩動道行君、佐々木静子君が委員辞任され、その補欠として高橋邦雄君、小柳勇君が選任されました。
  72. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) それでは午前に引き続き、昭和四十九年度予算中、内閣及び総理府所管一括議題として質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  73. 小柳勇

    小柳勇君 私は、公的年金の総合調整の問題について、先般の総括質問のあとを受けて質問いたします。先般の総括質問のときの速記録を拝見いたしまして、総理の答弁もしどろもどろでございまして、とるべきところもない。また、総務長官は前向きの答弁でございましたけれども、時間がなかったものですから、深く質問していません。したがって、この総括質問のあとを受けて、少し具体的に深く質問していきたいと思います。  御存じのように、現在の日本の公的年金は、十の省庁に分かれておってばらばらでございまして、スライドの制度の問題なり、最低保障の問題なり、あるいは給付額自体もばらばらでございます。また、国家公務員、地方公務員間のお互いの勤続年数の相互加算はできますが、たとえば国家公務員から公企体に出向した場合は年金の加算ができないというようないろいろな矛盾があります。私は、もう数年前から、公的年金を早く総合調整して、少なくとも二つぐらいに統一すべきであると、一つは被用者年金、いわゆる職場で働く勤労者のグループと、それから一つ国民年金的なもの、いわゆる奥さん方、家庭におられる方々、そういう二つぐらいに分けて、二本立てにして、しかも晩年は年金で食える体制、そういうわが党の方針を主張しながら、現在の年金の矛盾について再三再四質問をし、意見を具申してまいりました。しかし、今日なおこの問題が解決しない。しかも、先日の総理の答弁に至りましては、ほとんどもうつかみどころもない、医療体制と年金体制とを一緒にごちゃまぜにして答弁しておる。この速記録を読んでみましてまことに残念でありますが、言ってもしょうがありませんから質問してまいります。  そこで、総務長官にお尋ねいたします。  昭和四十二年の六月二十一日に、時の内閣総理大臣佐藤榮作に対して、総理府社会保障制度審議会の会長大内兵衛氏から、各種公的年金の給付額の調整などについて申し入れがあります。この申し入れば、給付額の調整、そしてなるべく早くバランスをとれるようにという趣旨の申し入れでございました。この申し入れについて、総理府総務長官は、現段階において、この申し入れの趣旨をどういうふうにとって、どういうふうな処置をしてこられたか、お聞きをいたします。
  74. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) お答え申し上げます。  四十二年の六月の大内会長からの総理に対する給付額の調整等についての申し入れでございますが、これを受けて政府は公的年金制度調整連絡会議を設けて検討を始めたわけでございます。この場合に、その目標は、あくまで種々の年金制度がございます、そうしたものに共通の基準あるいは共通の方式というものを求めたいということで自来四十六年までそうした形態の中で検討を続けてまいったようでありますが、しかし、結論が、共通の尺度と申しますか、共通の基準、方式というものがどうしてもいろいろな年金、成立の状態その他から見てむずかしいということになって、四十六年にさらにこれを各年金をグループに分けまして、そしてそのグループの内部においてさらに共通の基準、方式を求めたわけであります。その結果におきまして、厚生・国民年金、船員保険については、一応物価スライド制というものが四十六年からの検討の中で結論が出たわけであります。しかし、その後もなおこのグループ別の検討を加えながらもさらに共通な尺度、方式というものを求めようという努力をしてまいったようでありますが、しかし、それは年金制度そのものの根本的なあり方にも関連を持つということから、むしろこうした政府内部の調整連絡会議というものよりも、学者を中心にするところの社会保障制度審議会のほうにおまかせをしたほうがよろしかろうという考えの中で、四十八年十二月十七日に社会保障制度審議会に今日までの報告をして問題の処理を重ねてお願いをしたというようなことになっております。
  75. 小柳勇

    小柳勇君 先般も予算委員会長官は答弁になりましたが、社会保障制度審議会に再度諮問しておりますという答弁でありましたが、そういう事実はありますか。
  76. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) いや、諮問というよりも、そうした今日までの報告社会保障制度審議会のほうにいたしたわけでございます。
  77. 小柳勇

    小柳勇君 これは三月十六日の速記録ですけれども、ここに小坂長官の答弁にこう書いてありますよ。「修正と、あるいはスライドというような問題については、やはり学者の意見を十分聞いてやったほうがいいということで、昨年末に再び社会保障制度審議会のほうに御検討をお願いするという段取りになっております。」と、こう答弁しておる。社会保障制度審議会に再び検討を願われたのですか。「昨年末に」と書いてある。
  78. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) それは、審議会に対しましていままでやりました検討の結果の報告をいたして、そうしてさらに、これからの問題でございます、お願いをするほうがいいのではないかというふうに現在考えておるわけでございます。
  79. 小柳勇

    小柳勇君 それでは、この答弁については、これは修正してもらわなきゃ困りますよ。前の総括のこの予算委員会長官の答弁はうそであったと。  それからいまここに持っています、十二月十四日に内閣総理大臣官房審議室が「各種公的年金制度のスライド制に関する検討結果」というものをまとめています。それにはこう書いてあります。「当初期待した結論を得ることは、残念ながらきわめて困難といわざるを得ない。すなわち、すべての年金制度について年金額改定の統一的な基準及び方式を求めるためには、各制度の性格、目的等についての根本的な再検討が必要であるが、そのような制度の根幹に触れる問題は、本会議よりもむしろ学識経験者等による検討の場での審議になじむ性格のものと考えられる。」と書いてある。それが結果ですね。したがって、長官、いま発言されたことばと二つあわせまして、早急に社会保障制度審議会あるいはそれに相当するものに対して私が冒頭に述べたような方向で総理大臣から諮問される、そう考えていいですか。
  80. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) こうした問題は、やはり社会保障制度審議会のほうにお願いをするということが適当ではないかと考えておるわけでございまして、もちろんそれを諮問をするということになりますれば、政府内部でもさらによく検討しなければなりません。しかし、また、同時に、制度審議会のほうとしても、こうした年金問題の非常に複雑な問題を政府から頼まれても、よろしゅうございますというふうにすぐ出るかどうか、その辺のところは厚生省その他大蔵省等々関連のあるところとよく内部的な打ち合わせをしてから行動したいというふうに思います。が、しかし、一方から言うと、年金制度の非常に複雑な問題をどこで討議をしどこで検討するのが一番適当かということについても、さらに基本的に政府内部でももう一回よく考えてみる必要もあるのではないかという議論もあるようでございます。目下検討中ということで御了解願います。
  81. 小柳勇

    小柳勇君 内閣総理大臣に対する答申でありまして、しかも、この前の総括質問では総理の答弁も満足でないから分科会に持ち込んでいま具体的に質問をやっているわけです。重要な予算の審議の段階ですから、ただ検討いたしますということで、その場のがれの、きょうの委員会だけ答弁して済ませるということでは私は済まないと思う。そういう審議なら必要がないんです。時間のむだです。したがって、前もってこれは公的年金の総合調整を私質問することを言ってあるのですから、長官が本気で誠意があるならば、閣議でも朝開いて持ってくるべきですよ。しかも、この社会保障制度審議会から総理大臣に対する申し入れは四十二年です。七年前の話です。それを六年間かかって審議した。しかも、スライドアップを検討したけれども、それもまた抽象的です。それはこれから質問していくけれども。民間グループだけは一応の結論が出ましたとおっしゃるけれども、これも非常に抽象的なものです。国民生活というものはもっと逼迫しております。ここでただ言いのがれだけすれば何か予算が通るような、そんな審議ならする必要ないですよ。このインフレ物価の中で特に年金生活者などはどうして食っていくかということで逼迫していますよ。そんなちゃらんぽらんな答弁じゃ通りません。わざわざこれだけの担当官がそろっているのだから、必要があればちょっと中座して、いまから各省検討しましょうぐらいの熱意を持たなきゃ、この委員会は私は休憩させてもらいたいと思うのだが、まあこれから質問していきます。  それじゃ、根本に返りましょう。長官、よく聞いておいてくださいよ。四十二年の申し入れの第一項にこう書いてある。いろいろ前に並べて、「公的年金の種類は多いが、それが純粋に社会保障に属すると否とを問わず、その根底に生活保障的な意味をもつ。スライド制の確立が強くさけばれるゆえんである。とくに経済の高度成長、生活水準の向上、物価の騰貴等に伴い、その実質価値維持のため、調整が問題となるのは当然である。」と書いてある。この申し入れについて、いま長官はどういう見解ですか。そのとおりだと思われるか、いや、もうそういう時期ではないとおっしゃるのか、もう少し時期をかしてくれとおっしゃるのか、いずれですか。
  82. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) この第一項の中でも、民間グループと称する厚生・国民年金、船員保険については、物価スライドという方針は少なくとも過去の検討の中から具体化をしておるわけでございまして、そうした面から申しますれば、いずれにいたしましても物価の状態が現在のような状態である場合には、当然これには調整が必要なことは、もうあなたの御指摘を待つまでもなく、私も年来そう思っておるわけでございます。そういう意味で、物価のスライドであるか、賃金スライドであるか、いずれかにいたしましても、年金というものが経済情勢や社会情勢の通貨的あるいは貨幣的な表現とある程度連関を十分持ちながら進んでいくのが私はほんとうの筋道だというふうに考えております。  それで、実はいま小柳先生からたいへんきびしいお話がございましたが、先月の初旬でございますが、実は大河内一男会長においでいただいたときに、非公式でございますが、今後の年金問題についてのスライド等についてどのような御用意があるかということを総理官邸で官房長官と私と厚生大臣と労働大臣と四人でお目にかかったときにいろいろお話をしております。その時点の中で、一応われわれは、まだ正式にはこの年金、この年金、この問題というふうにこまかくは分けておりませんけれども、スライド制という問題についての前向きなわれわれの考え方も申し述べて、大河内先生も、それは自分のほうも考えておるということでお別れをしたわけです。大河内さんはそれからすぐ審議会にお帰りになって、四人の閣僚からそうした話があったということを委員に御報告になって、そして、そうした準備を心づもりとして始めたということを非公式に私のほうにお話があったわけでありまして、そのような形で、実質的にはいまの大内さんの申し入れというものの方向の中でわれわれとしては考えておるということを申し上げたいと思います。
  83. 小柳勇

    小柳勇君 それでは、そういう私的な話もいま聞きましたが、もう一度あらためて、各種公的年金の給付額の調整など、統合的な、しかもそれがばらばらでない、日本国民の全部をある線で統一するような年金体系に改正することも含んで、政府としてあらためて制度審議会に諮問する意思があると理解していいですか。
  84. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 小柳委員のおっしゃいます国民年金と被用者年金の二つに大きく分けるというこのお考えは、私は非常に卓抜なお考えだと思います。が、しかし、現状では十に余るいろいろなシステムがすでにありまして、これを一挙に二つのグループに分けていくということは、それ自体行政的な面から見ても非常に困難であるという判断が行政内部にあるわけでございます。そうしたようなことを踏まえますると、一挙にこの二つのグループに分けて小柳委員の言われるような年金システムというものを確立するのには、なお検討をさせていただかなければならないと、率直に申し上げてそういうふうに私は思います。もちろん、ですから、同時に小柳委員のそうしたお考えも含めてわれわれは十分検討していきたいと思います。が、しかし、それがすぐ実現するかどうかということについては、なお検討を要するという点を御了解いただきたいと思います。  それからもう一つは、社会保障制度そのものは今日の資本主義社会においては非常に重要であるという認識を持っておりまして、これをいまのような形のままで走らしていいとは思わない。しかし、すでにそういうものが長い歴史の中で個別に走ってしまっておって、なかなかこれを統括するということがむずかしいというわけでございますが、まあグループ別に分けた努力もしたようでございますけれども、それもたいした成果もあがらなかったけれども、しかし、それでは、別に今度はそれぞれおのおのに物価スライドなり賃金スライドなりそうしたいまの社会情勢の進展に伴う修正が可能なようなそうした方向で社会保障制度というものをもう一回見直すことは少しも私は反対ではない。そうした意味合いでの努力を今後したいと思います。ただ、それを制度審議会のほうにいつ申し出すかという点につきましては、なお各省間の調整を必要といたしますので、その時期をいまここで明確に申し上げることができないわけでございますが、しかし、いずれにいたしましても、そうした方向をとるということは四省間で閣僚間では一応の了解になっておると私は思っております。
  85. 小柳勇

    小柳勇君 前向きの答弁でありまして、時期が早いことを期待いたします。私は何回でもこれは実現するまで質問いたしますから。  それから基本的な問題で二つ質問しておかなきゃなりません。これは総務長官に質問するのは少し場違いかと思いますけれども、やはり閣僚の一人でありますから、しかも内閣の大番頭でありますから、質問しておかなきゃなりませんが、公的年金の目的は一体何かということです。それは、この前も、私、生活保護者には今回年末のインフレ手当が若干でも出る、ところが、それよりも低い年金生活者にはインフレ手当が出ないことで総理に食いついた。ところが、総理の答弁の中に、年金生活者と生活保護者というのは違うんだと、そういう発言がありました。そこのところに非常に問題がありますから、その点も総務長官のお考えを聞いておきたいんです。公的年金というのは一体何のためにあるのか。この大内先生の申し入れの中にもありますが、「純粋に社会保障に属すると否とを問わず、その根底に生活保護的な意味をもつ。」と、こう書いてあります。特に現在のようなインフレの激しいとき、かつて年金で老年を食べることを楽しんで働いた公務員あるいは準公務員など、あるいは年金生活者が、このインフレのために年金で食えない。そこで、年金の給付というものは掛け金によってきまるものじゃないと、私はそう思う。たとえば生命保険のように保険料だけを給付されるというものではない。年金掛金というものは、晩年最低生活を保障するための準備のその積み立て金の一部である。しかも、最低保障を守るということは憲法に保障してありますから、憲法二十五条に健康で文化的な生活、そこまでいきませんにしても、したがって、私は、公的年金というものは、われわれがいま掛けて掛け金だけで給付されるというそういうものではないと思う。その点を長官はどうお考えか。これが第の問題です。
  86. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 最低生活の保障は私はやっぱり生活保護によるべきだというふうに思いまして、年金というものは、ちょっと委員の言われた掛け金でというか、あるいは生活保障という意味は私もちろん否定はいたしません。しかし、最低生活ということになれば、これは私は生活保護というものでカバーをしていくものであるというように考えておりまして、その辺がちょっと、ただいまの委員の御質問の意味がよくわかりかねるのでございますが、先般も予算委員会のときに委員からの御質問を私聞いておりまして、何か御質問の意味が、たいへん失礼でございますが、よく私にはわかりませんでしたので、いまの私の答弁もまたチンプンカンプンであったかもしれませんが、私はそのように理解をいたしております。
  87. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。それじゃもう少し二つの問題をひっくるめて質問します、根本の問題ですからね。総括質問に関連をして言っているんですから、少し場違いかと思いますけれども、こういうことです。  私が、年金生活者も非常にきびしいのだから、この際、生活保護基準よりも少ないような年金をもらっている人には一時金、インフレ手当を出すべきではないかと言ったら、年金はちゃんと掛け金をかけておる、それの分に応じて給付がされるのであるから、それは生活保護基準というものと全然別個でございます、したがっていまインフレ手当を出すつもりはありませんと、こういう答弁でございました、総理の答弁は。  いま一つは、財政方式です。いま年金はみんな積み立て金方式ですね。それを賦課方式にして、現在働いている勤労者が税金を納めて、それで老齢者に対して年金を支払う賦課方式にしたらどうですかと言ったら、総理は、外国でも税金が四三%にもなって青年が自分の国を逃げ出す者がたくさんおりますよと、そういう不見識な発言をされた。その場限りではありません。最近も、慶応大学の教授との対談で総理はそういうことを言っておられる。賦課方式をやるというと、うんと掛け金がふえるから、いまの青年が勤労意欲をなくしてどこかへ行ってしまいますと、そういうことを堂々と言っておられる。まことにもってけしからぬと思う。いまのインフレの時代で年金生活者は食っていけない。それで、恩給に準じて年金はいま修正はしています。これは正式なスライドアップでありません。自動スライドでありませんね。そのことはあとでまた言いますよ。したがって、こういう時代ですから、この際に保険料と同じように積み立てた分で分相応の給付をやるというような考えではなくて、現在働いている者の年金料というのか税金というのか、そういうもので積み立てた金で、そうしていま現在積み立て金がありますから、これをいろいろな方法がありましょう、それで取りくずして、そしてこの際年金生活者に生活できる年金を支給したらどうかと、そういうことを言ったわけです。そのときにそういう総理の答弁もありましたから、総務長官にはこの前質問していませんでしたが、まあ厚生大臣に質問すべきものであろうと思いますけれども、基本問題ですから、この前ちゃんと速記録にそんなことが載っていますから、しかも、その後、総理の発言を再々聞きますから、総務長官の御意見を聞いておきたいと思って質問しているわけです。
  88. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 総務長官という立場では自分の考えをあまり率直に述べられない面もあることは、委員にひとつ御了解いただきたいのであります。  私は、高度の発達した社会においては、年金というものは、これは一つ社会保障、生活保障という意味で欠くべからざる重要な柱だと考えております。その考え方は申し述べたとおりであります。ところが、だんだんとそうした最底生活水準の上がってくる中において、現在のような積み立てあるいは掛け金制度的なそうしたもののりターンだけで生活保障ができるかというと、必ずしもそれだけではいきっこない。もっと大規模でありもっと深い幅のある生活保障あるいは社会保障というものが特に自由主義社会においては必要であるという考え方から言うと、そうしたことの可能な方式というものには、いま委員の言われた賦課方式というものも十分検討に値するものだということ、むしろそれを重点的に検討していく時期が来ているように私は思っておりますが、しかし、いまも委員がおっしゃるように、こうした問題については厚生大臣の考えを聞かなければというお話でございます。まさにそのとおりだと思いますが、賦課方式というものをこの現時点の中である程度導入していくという考えがやはり社会保障としての公的年金というものの性格をもっと幅広いものにするのじゃないか。ただ、それについては閣内においてまだ全くそういう話し合いをされたことは私が就任してからございません。同時にまた、したがって、この公的な場で私が答弁するということも非常に実は困るのでありますけれども、しかし、賦課方式というものを検討に値するんだということは、はっきり申し上げたいと思います。
  89. 小柳勇

    小柳勇君 きょうこの分科会で公的年金の総合調整という看板を掲げて質問するその場で総理府総務長官からそういう発言があったということを私は非常に意義あるものだと思います。いままでのような考えでいきますと、年金制度はほとんど頼れなくなってくる。そういうことで、この際賦課方式にということを私ども主張しているわけです。特に積み立て金が、国民年金、厚生年金だけでも約八兆円あります。したがって、その使い方につきましても、毎年毎年これは論議されるところでありますが、年金掛け金をかける者の身になりますと、ほかの財政投融資などに使われること自体にやっぱり矛盾を感ずる。もちろん、このような物価上昇の時代には、現金で置かないで、品物をつくる、あるいは病院をつくる、そういうことも必要ではありますが、年金生活者が生活保護基準よりも低いような生活をしておるのに、かつて自分たちが積み立てた金が何兆円にもなって、それが財政投融資で大企業に使われている。これはやっぱり気持ちの上では許せないことです、制度としていままでやってきましたからしようのないことでありますけれども。そういうものも含んで私はいま言っております。したがって、正式にひとつこの委員会で問題になったのでありますから、総務長官が中心になって、各国とも積み立て方式から賦課方式に切りかえたのがインフレが非常にひどいときになされたというそういう歴史も承知していますから、ひとつ積極的に閣内で御発言あって検討していただきたいと思います。  そこで、審議室長にこれから質問いたしますが、十二月十四日のこのおまとめになったのは、ただいまの総務長官の御答弁が大体結論だと思うけれども、それ以外に、いままでの審議の経過と、それからまとめたこの結論と、これから将来に対する期待と、そういうものをお話しを願いたいと思います。
  90. 小林功典

    説明員(小林功典君) 大部分先ほど総務長官のお答えしたとおりだと思いますけれども、先生御承知のように、昭和四十二年に社会保障制度審議会から申し入れがあった直後に、政府としてはこういう公的年金制度の調整連絡会議を設けたわけでございます。  そこで、まず最初、審議の当初におきましては、各種の公的年金制度全般を通じまして、それについてスライド制を実施する場合のいわば共通のものさしと申しますか、基準と申しますか、そういりものについていろいろ議論したわけでございます。ところが、なかなか、先ほどの総務長官の御答弁にもありましたけれども、それぞれの制度が沿革それから目的も違いますし、また、財源調達方式、制度の仕組み、いろいろな点で非常に異なった点が多うございますために、どうもマクロ的に見て共通の基準なり方式を求めるのは非常に困難であろう。これをさらに実のある審議をするためには、マクロで見たのではどうも困難であろうから、そこで各グループをつくって、それぞれ制度の似通ったグループごとに分けて、そこでもう少し突っ込んだ議論してみたらどうかと、こういう提案がございまして、それで四十六年から四つのグループ、つまり第一は民間グループ、これは厚生年金、国民年金、船員保険でございます。それから第二は公務員グループ、これは国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、それから公企体職員共済組合、この三つでございますが、この公務員グループと、第三は私学・農林グループと申しまして、私立学校教職員の共済組合、それから農林漁業団体職員の共済組合、それからさらに第四として労災グループ、これは労災と公務員災害補償でございますが、この四つに分けまして、それぞれ全体的に見た場合に掘り起こせなかったいろいろな問題について詳細な検討をやったわけでございます。  そこで、いろいろ議論をした結果、先ほど申しましたような、たとえば厚生年金等におけるいわゆる物価スライド制の導入といった、そういう成果もありました。それからまた私共済組合がいろいろ制度改正をやります場合に、相互に平仄をとって改正をするという意味の調整あるいは連絡、それもいたしました。そういうことで、まあある程度の成果というのはあがったと思います。しかしながら、振り返って制度全体に返って見まして、そこでスライド制についての共通の基準を求めるという当初の目標につきましては、これは遺憾ながらあまりぴったりした結論が出なかった、こういうことでございます。なぜならば、制度全体について統一的な基準あるいは方式を求める場合には、先生も十分御承知のように、どうしても制度の根幹に触れると申しますか、制度自体の仕組み等についての掘り下げが必要でございますが、こうなりますと、いわば事務連絡会議的な色彩が強いこの公的年金制度の調整会議ではどうも率直に申し上げて無理ではなかろうかということになったわけでございます。そこで、そういう制度の根幹に触れるようなあるいは基本問題に触れるような大きな問題につきましては、ここでは社会保障制度審議会とは書いてありませんけれども、「むしろ労識経験者等による検討の場での審議になじむ性格のものと考えられる。」と、こういうことを結論づけまして、そこで昨年の十二月に社会保障制度審議会に対してこれの審議結果をありのままに御報告して御了解を求めたと、こういうことでございます。さっき先生お使いになりました審議室でまとめたレポートでございますが、これは実は昨年十二月に制度審議会に対して御報告するときの資料でございまして、したがいまして、いま読み上げました「制度の根幹に触れる問題は本会議よりもむしろ学識経験者等による検討の場での審議になじむ性格のものと考えられる。」と、こういうことを制度審議会に対して御報告を申し上げたと、こういうことでございます。大体以上でございます。
  91. 小柳勇

    小柳勇君 各グループの意見をまとめられたあなたとして、これでは初めの四十二年の大内会長の申し入れの趣旨には合致しないですわね。これはもっと高いものを望んでおると私は思う。あなたは、違う、いやそうじゃありませんよと、何か狭義に解しておられましたけれども、この考えは私はさっき長官のおっしゃったようなのが正しいと見ていますよ。いまばらばらにあるやつをもっと調整しなさいと。この四つのグループが論議しおって、うちのほうはあんまりまずいから何とかしよう、ほかのいいやつにみならおうなんという意見はなかったですか。四つのグループがこういう意見を出しましたと、さあこれで結論でございますと、それでいいと思っているんですか。
  92. 小林功典

    説明員(小林功典君) 確かに、昭和四十二年の制度審議会からの申し入れ書をよく読みますと、まあいろいろ読み方はあろうと思いますけれども、確かに、年金額のスライド制の問題以外に、たとえば通算問題とか、そういう問題に触れられたことは、これは事実でございます。ただ、先生のおっしゃっているような、たとえば制度全体の統合でありますとか総合調整ということは、私どもこの申し入れには含まれていないのではないかと考えております。  実は、昭和四十二年の九月にこの公的年金制度調整連絡会議を開きました際に、制度審議会の申し入れ書の起草に当たられたと称しております今井先生にこの会合においでをいただきましていろいろその趣旨をお聞きした記録が現在メモとして残っておりますけれども、それによりますと、「年金各制度間の調整が重要な課題となる。」というくだりのあとで、「しかし、この申入れの趣旨は、年金を社会保障制度的趣旨で統一すること、又は制度の統合を図ることにあるのではなく、制度間の相互の調整連絡を図ることにある。また、年金においては、生活保障的意味はいずれも根底にあり、スライドの実施、その基準の調整等が重要である。」と、こういうことで、制度全体を統合したり、あるいは抜本的に総合調整するという意味合いではなくて、幾つかに分かれている年金制度のアンバランスな点、不合理な点、こういうものを是正していく、そういう意味の調整というのがどうも社会保障制度審議会のほうのお申し入れの趣旨であったと、かように理解しておりますので、そういった意味で、その中でもなかんずくスライド制の問題が一番焦眉の急だという認識を持ちまして、先ほど来申し上げているような連絡会議ではそこに重点を置いて審議を進めたと、こういうのが実情でございます。
  93. 小柳勇

    小柳勇君 問題はたくさんありますが、一つ、じゃスライド制についてどうされましたか。
  94. 小林功典

    説明員(小林功典君) スライド制につきましては、先ほど来申しておりますように、鋭意検討を重ねまして、民間グループについては昨年いわゆる物価スライドの形で一応この会合の成果としてはあらわれていると、こう理解してよろしかろうと思います。もちろん、物価スライドか賃金スライドかとか、実施の時期とか、いろいろ問題点があることは十分承知しておりますけれども、一応物価スライドというのは制度的に確保されたという意味で一応実効はあがったと言ってもよろしかろうと、かように考えます。  それから公務員グループにつきましては、これは担当者も来ていますので、こまかくはそちらからお答えがあるかもしれませんが、まあ制度こそございませんが、一応去年からですか、いわゆる賃金、公務員給与に準じた引き上げがいわばルール化されつつあるということでございますので、まあそれもそれなりの一応の成果があったのではなかろうかと、かように考えております。
  95. 小柳勇

    小柳勇君 厚生省から見えておりましょう、担当の方が。この間の総括質問でも大臣はスライド制について胸を張ってお答えになったが、具体的にはいつの時期でいつ上げて何%どこで上げるのか、もう具体的に案は出ましたか。
  96. 持永和見

    説明員(持永和見君) 厚生年金と国民年金のスライド制の問題でございますけれども、昨年の制度改正で新しく導入されたわけでございますが、これは法律の規定によりまして、四十八年度におきます四十七年度に対する物価上昇率を基準として、厚生年金につきましては四十九年の十一月分から、国民年金については五十年の一月分から年金額を改定すると、こういう法律の規定になっております。現在私どもの段階といたしましては、四十九年度の予算案におきましては、昨年末に政府予算編成方針を策定する際にあわせて出されました経済見通しが、四十八年度対四十七年度の物価上昇率が一四%という見通しでございますので、それを基礎に予算上の必要な給付額を計上してございます。ただ、しかし、先ほど法律の規定を申し上げましたように、実際には、年度の消費者物価上昇率を見て、それを基準としてかけるということでございますから、本年の三月までの四十八年度対四十七年度の消費者物価上昇率が出てまいりますのが大体五月の初めごろというふうに承っております。それが出ましたら、一四%ということがその数字に修正されまして物価上昇率が法律の規定によって動いてくる、こういうことだというふうに理解しております。
  97. 小柳勇

    小柳勇君 予算は一四%で組んでおりますというのが一つと、それから四十七年に対する四十八年の平均スライドアップですね、それだけは上げるんですと。したがって、予算が足らなければ、たとえば三〇になれば一六だけ足りませんから、それは別途出しますと。その出すのは、いつ出しますか。
  98. 持永和見

    説明員(持永和見君) これはいずれも国民年金も厚生年金も特別会計の予算でございます。特別会計の予算におきまして、一応その一四%というのは年末の経済見通しで見込みで出しておる数字でございますから、したがって、これは当然修正があり得べしという前提のもとに必要な予備費は計上してございまして、それでまかなえるものと考えております。
  99. 小柳勇

    小柳勇君 四十九年の三月までの物価上昇ですから、四十九年の四月から十月までの半年分は、そうすると、調整できない、損するということですか。
  100. 持永和見

    説明員(持永和見君) 先ほど申し上げましたように、法律で四十八年度の四十七年度に対する消費者物価上昇率を基準にしまして四十九年の十一月から年金額を改定すると、こういう規定になっております。したがいまして、いま先生おっしゃいますように、四十九年四月以降の物価上昇率はその中では加味されてはおらないということになります。
  101. 小柳勇

    小柳勇君 四十七年、四十八年度の平均ですから、四十九年の一月以降、この十二月以降のようなべらぼうな物価上昇、そんなものは全部ネグレクトされながら平均化されて、それで支給は十一月でしょう。もう少なくとも一年おくれで一四、五%年金生活者は苦しい生活をしているということは事実認めますね。
  102. 持永和見

    説明員(持永和見君) まあ物価スライド制の導入という非常に技術的な手法をいつから実施できるか。実は、厚生年金、国民年金の受給者数というのは三百万人近くおりますから、そういう人たちに対して一斉に年金額の改定をするという大量の事務が実はございます。そういった関係で、事務的に可能な限度という問題がございますけれども、実際問題としまして今日のような非常に異常な物価上昇のもとでは、実際問題といたしましては、いま先生おっしゃっておりますように、確かに、十一月から改定いたしますのは四十八年対四十七年の物価上昇率でございますから、積み残しと申しますか、四十九年の四月以降になります分はこれは乗らないというのは事実だと思います。
  103. 小柳勇

    小柳勇君 それから大蔵省から見えていますね。国家公務員の恩給、年金などは、スライド制はない、毎年法律改正をやっていますね。この総合調整の審議で民間グループだけきまりまして、公務員グループはスライド制の法制化というのができなかったのですが、どういうふうな見解ですか。
  104. 鈴木吉之

    説明員鈴木吉之君) 公務員グループの年金スライド制の検討問題につきましては、一昨年来何回となく検討を重ねてまいったわけでございますが、厚生年金と同様に公務員の年金制度につきましてもスライド制を導入してはどうかという意見もあったわけでございますが、従来から社会保険的な性格を共済年金が当然に持っておると同時に、恩給の制度を引き継いだという関係もございまして、その両方の面を持っております関係もございまして、なかなか結論が得られないという状況であったわけでございます。そこで、当面年金額の改定につきましては従来からの方式に従いまして恩給の改定にならうということにいたしまして、先生御承知のとおり、四十八年度におきましては、四十六年度と四十七年度の公務員の給与の上昇率によりまして年金額の改定を行ないましたし、また、今四十九年度におきましても、目下法案を御提出し、御審議をいただくことになっておりますが、その改正法の中でも、四十八年度の公務員給与同じく恩給にならいまして、四十八年度の公務員給与の改善率による年金額の引き上げと、さらに公務員の給与水準と年金水準との格差を是正するという分も含めまして、二三・八%という大幅な年金額の引き上げを最高限度として引き上げるようなそういう対策をとっておるわけでございます。このスライド制の問題につきましては、なお引き続きまして関係省庁と十分連絡をとりながら協議いたしまして、また、国家公務員の場合でございますと、国家公務員共済組合審議会にもはかりまして十分検討を重ねてまいりたいと考えておるわけでございます。
  105. 小柳勇

    小柳勇君 それはいつやりますか、審議会にはかるのは。
  106. 鈴木吉之

    説明員鈴木吉之君) 審議会におきましても従来から御意見を伺っておりますし、御検討をいただいておるわけでございますが、先ほど申し上げましたとおり、厚生年金の方式にならってスライド制を取り入れるかというような御意見もあったわけでございますが、恩給制度との関連も十分考慮しなければならないという現状を踏まえまして、当面は現在行なっておるような改定方式に従ってやるという御意見にただいまのところはなっておるわけでございますが、審議会におきましても引き続き検討をいただく事項としてあげられておるということでございます。
  107. 小柳勇

    小柳勇君 せっかく給付額の調整なりの申し入れがある。さっき審議室長の話でもスライド制だけでも調整しようといたしましたと。いまの公務員のスライドアップというのは、賃金の半分と物価上昇を加味してあるわけですね。中途半端なんですよ。賃金なら賃金にスライドアップしますとまだ言い分が立ちますね。物価なら物価にスライドしますと言い分が立ちますけれども、賃金の上昇の半分をとってそして物価を加味しましょうというようなことでやっておられる。非常に中途半端じゃないかと思う、やり方も。もちろんそれは恩給もあります。恩給の問題についてはあとでちょっと触れますけれども、したがって、こういう時期でありますから、たとえば厚生年金のスライド制というものが法制化されてちゃんと取り入れられたならば、共済年金もこれに準じてせめてスライド制ぐらいはぴしゃっと一緒にするということはできないものですか。
  108. 鈴木吉之

    説明員鈴木吉之君) ただいま先生のお話の中に物価と給与との関係というお話がございましたが、おっしゃるとおり、四十七年度までは公務員の給与の問題と消費者物価の上昇と両方を勘案して年金額の改定を行なってきたことは確かでございますが、四十八年度は、先ほど申し上げましたとおり、四十六年度と四十七年度の両年度の公務員の給与改定率そのものによりまして年金額の改定を行なったということでございますし、引き続き四十九年度におきましても、恩給にならいまして、公務員の四十八年度における給与改善率によって引き上げるほかに、さらに過去において生じたことになります公務員の給与水準と年金の水準との格差を是正するという要素も加味いたしまして、年金額を大幅に引き上げるということにいたしておるわけでございまして、従来から実質的な価値の維持については十分配意しているというふうに考えておるわけでございます。
  109. 小柳勇

    小柳勇君 恩給ということば自体にも少しいま抵抗を感ずるのですが、前の憲法からのね。しかして、いま、恩給、国家公務員共済年金というのを一本にして、いわゆる共済年金というようなそういう表現も変えるというようなそういう意見はなかったのですか。
  110. 鈴木吉之

    説明員鈴木吉之君) 御承知のとおり、三十四年に新しい年金制度というものができまして現行制度が施行されておるわけでございますが、恩給は恩給として法律に基づいて行なわれておるものでございますし、戦後の社会保険の進展等を考慮いたしまして新しい共済年金ができたという事情もございますので、共済年金自体として今後の水準の上昇、内容の充実等については十分今後とも引き続き配意をいたしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  111. 小柳勇

    小柳勇君 それから公企体のグループですけれども、公企体のグループは最低保障もございませんし、公企体のグループとして他の年金グループとのバランスなどについての審議の状況について御発言を願いたいと思います。
  112. 住田正二

    政府委員(住田正二君) いま御指摘ございましたように、公企体の年金と国家公務員の年金制度との間には幾つかの点において違っている問題があるわけでございます。大きな点は、年金の基礎俸給額が公企体の場合には最終俸給額、国家公務員の場合には従来は三年平均、今回の改正で一年平均という点、それから公企体の場合には最低保障がないかわりに最高制限もない、また支給率についての最高制限もないという点が違っております。また、それに関連いたしまして、退職手当についても公企体のほうは国家公務員より少ないというような現状になっております。こういう点につきまして、できれば調整をはかりたいということで、私どもも、今回の公企体年金の改正法律を国会にお出しする前に関係省とも相談し、いろいろ調整案をつくって公企体関係者にお示ししたわけでございますけれども、やはり調整ということになりますと利害関係が伴いまして、公企体関係者の了解を得るに至らなかったということで、やむを得ず調整をあきらめて今回のような改正案を出したという経緯がございます。
  113. 小柳勇

    小柳勇君 特に四十九年の二月二十八日に大河内会長から徳永、福田、原田各関係大臣に答申が出されていますね。この実施状況について具体的に質問いたします。   〔主査退席、副主査着席〕  まず最低保障の問題、いまお話がありましたが、次は「国庫負担が未だ実現を見ないのは遺憾である。」と書いてございますね、この点についてのあれはどうですか。
  114. 住田正二

    政府委員(住田正二君) 社会保障制度審議会の答申の中で公企体年金が最低保障制度を持っていないのは非常におかしいのじゃないかという御指摘があったわけでございますが、年金制度といたしまして最低保障制度がないということは、われわれとしても非常に問題があるということで、これまで、先ほど申し上げましたように、制度全体の調整の中で最低保障制度を設ける方向で検討を進めておったわけでございます。しかし、最低保障制度を設ける場合にはやはり最高制限の問題もからんでまいりますので、そういう最高制限の問題との関連において先ほど申し上げましたように最低保障制度の問題の解決はできなかったということでございます。しかし、この問題をこのまま放置していいということではございませんで、今後とも最低保障制度の採用について関係者との間で調整を進めていきたいというふうに考えています。  それから国庫負担の問題でございますが、これは先生御承知のように、国鉄が公経済の主体としての地位においてこの年金制度を維持しているということで国鉄が国庫負担の分を負担しているわけでございますが、現在国鉄の財政がこの国庫負担によって大きな圧迫を受けているかどうかということになりますと、現在御承知のように国鉄の財政再建を進めておりまして、国鉄に対してはいろいろな面で助成をいたしております。その助成はいわば総合助成主義というような形で行なわれているわけでございまして、個別の問題、たとえば、地方閑散線の赤字を取り上げて補助するとか、あるいは手荷物の赤字についてはこれは補助するとか、あるいは通勤・通学割引について補助するというような個別の補助制度でなくて、総合的に補助して最終年度に黒字になるという形で補助をいたしておるわけでございますので、広い意味では国は国鉄の年金財政について一部負担をしているということも言えるわけでございまして、将来国鉄に対する補助制度が変わりました場合にはあるいはこういう問題も取り上げて補助するということもあり得るかと思いますけれども、現在のような助成の方式からいいますと、現在公経済の主体として国鉄が負担しているという点を改めるという段階にはなっていないのではないかというふうに考えます。
  115. 小柳勇

    小柳勇君 以前からもそういう意見を聞くのですが、主体が違うんだと、国の財政あるいは公企体の予算支出というものは違うんだという意見もいろいろ聞くのですけれども、これだけ法改正について諮問をしたあと社会保障制度審議会からわざわざ答申が出ておるんですから、いろいろ理屈はあろうだろうが、他の年金とのバランスを考慮して調整をはかるという意味から言うなら、この答申が出た機会にきれいさっぱりに合わせていくのが至当じゃないかと思うんですよ。また問題が出てきますよ。法律改正のときに毎年毎年同じ議論をしなきゃならぬでしょう。まあ予算も若干はかかりますけれども、もう少し前向きに、よそのバランスを考えながらなたでぶった切るようなことができぬものかといつも思います。答弁は答弁でいいですよ。きれいな答弁がなされますから、われわれもそれ以上追及することはできないけれども、毎年このような議論をしなきゃならぬことはまことに残念です。  第三点は、国家及び地方公務員と公企体職員の勤続年数の総合通算など、あるいは年金の通算などなぜできないのか、それを考えなさいと書いてありますが、これはどうですか。
  116. 住田正二

    政府委員(住田正二君) 国と公企体との間で人事交流を行なうということは非常に望ましいことではないかというように考えております。現在のところでは、国と公企体との間で人事交流が行なわれるということはレアケースになっておりますが、将来の問題といたしましては、できるだけ交流を進めたほうがいいのじゃないかというように考えております。その場合に、やはり問題になります点が幾つかあるわけでございまして、一つは、国と公企体との間の給与制度であるとかあるいは年金制度が異なっている問題があるわけでございます。したがって、やり方によりますと一方交通になってしまう。まあ、こういう例はないかと思いますけれども、やめる場合には国から国鉄に行って国鉄でやめたほうが年金も高くつくというようなことで一方交通になるおそれもあるわけでございまして、やはり人事交流という前提ではそういう給与制度あるいは年金制度の調整、先ほどから申し上げておりますような調整が前提の条件として必要ではないかというように考えております。  それからもう一つ、これは法律の問題ではないのでありますが、従来国と公企体との人事交流を公企体のほうであまり歓迎しないという空気もあったわけでございまして、そういう点についての国と公企体との間の話し合いも必要となるのではないかというように考えております。
  117. 小柳勇

    小柳勇君 これは総務長官の御意見も聞いておきたいのですが、公企体から地方に地方公務員の職務で出る人もいるわけです。あるいは国家公務員から公企体に入る人もいるようです。これは下級公務員よりもむしろ上級公務員のところに行く。具体的に言いますと、たとえば国鉄から県警本部長に出たり、あるいは警察庁から国鉄に入ったりしています。その場合に、国家公務員と地方公務員の間の通算はできるけれども、公企体の間では一応退職して行くわけですね。年金を切って行くわけですよ。非常に矛盾じゃないかと思うんですね、この辺も。それを大河内会長から答申が出ているんですよ。「理解に苦しむ。」と書いてある。いまいろいろ答弁はありましたけれども、総合調整の立場からどうですか、長官意見を聞いておきたい。
  118. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 老齢年金については通算が全部実施されていると聞いておりますのですが、いまのような問題につきまして、御指摘の点もあるので、さらによく検討してみたいと思います。こういうような問題が途中でこま切れになっているということはやっぱり働いている人にとってはたいへんな問題でございますが、それが、いろいろな規則だとか、あるいは企業体が違うとか、あるいは所属が違うということでこま切れになっていって、それは運が悪いんだと言って済ましていてはいけないことだというふうに私は思います。そうした意味で、さらにただいまの御指摘等につきまして審議室中心によく検討してみたいと思います。
  119. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。そういうふうに前向きに答申が出ているんですから、前向きにひとつ検討してもらいたいと思うんです。いろいろこう幅狭く公務員の皆さんが動くよりも、他のところにも出向いて行ってうんと勉強して、またほうぼうに仕事をやることが日本のためになるのじゃないかと思いますがね。もちろん、一つの仕事に精通されてそのオーソリティーになることもりっぱな道でしょうけれどもね。だから、そういう人が身分の上で将来晩年に心配がないようにしておく。お互いに一生懸命若いとき働いて、晩年になったらもう年金で暮らせるというような改正をいま希望しながら質問しているわけですから、いまの長官の前向きの答弁を実施していただくようにひとつ動いてもらいたいと、こう思います。  それからもう一つは、退職手当を三%削減しておるのはなぜかという問題点を提起されておりますが、これはどういうことですか。
  120. 住田正二

    政府委員(住田正二君) 現在公企体の退職手当は百分の九十七、すなわち三%削減されておるわけでございます。これは、先ほど申し上げましたように、国家公務員の年金の基礎俸給が三年平均であるということに対しまして、公企体の場合には最終俸給で年金が計算される。そういうアンバランスになっているために退職手当のほうの削減を行なっているということでございます。それで、従来三年平均でやった場合にどれぐらい違うかという計算は非常にむずかしいわけでございますけれども、計算によっては一〇%違うとか、あるいは五%違うとかまあいろいろな計算が出るわけでございます。この計算は、大体幾つぐらいでやめるとか、あるいは今後幾つぐらいまで生きられるだろうかとか、あるいは今後毎年年金改定が何%ぐらいの率で行なわれるかというようなことで計算が変わってくるわけでございまして、計算が非常にむずかしい点があるわけでございます。今回国家公務員の場合に三年平均が一年平均に変わったわけでございますので、従来三%減らしておる点についていろいろ検討いたしてみたわけでございます。今回の一年平均の改正と最終俸給との差についてはいろいろな条件によって異なるわけでございますが、五%ぐらい違うという数字も出てまいりますし、あるいは三%を割る二・何%というような数字が出てくる場合もあるわけでございますが、そういう点いろいろ検討いたしたわけでございますけれども、三%の削減を何%にするかについて十分根拠のある数字が出なかったという経緯もございまして、先ほど申し上げました調整の一環として実は解決したいと考えておったわけでございますけれども、その調整ができなかったために従来のままになっておるという現状でございます。
  121. 小柳勇

    小柳勇君 それでは、今度地方公務員も一年、退職年になったのですから、この三%という意味がなくなったからこの削減はやめることになりますね。
  122. 住田正二

    政府委員(住田正二君) いま申し上げましたのは、三年平均が一年平均になったといいましても、最終俸給との間にはかなり差があるわけでございます。その差が何%であるかという計算が非常にむずかしいということでございます。国家公務員の場合には年四回昇給期日があるわけでございまして、したがって、一年平均ということは、大体昇給額の半分ぐらいが計算されるということになるわけでございます。それに対しまして公企体の場合には四月一日の昇給が原則となっておりますので、最終俸給というのは一年間フルに働いたと、そういう点が異なるとか、あるいは公企体の場合にはいろいろな理由で退職年の一カ年にいろいろな名目でベースアップが行なわれているということで、実際上国家公務員よりもやめる際の俸給は公企体のほうが高いというのが現状でございます。そういう点をいろいろ計算して何%が妥当であるかということを計算するわけでございますが、その計算が非常にむずかしいということもあって、場合によっては三%以上の開きがあるという数字も出てまいりますし、場合によっては二・九%という数字も出てくるということで、結局三%の数字をどういうふうに変えるかということについての根拠ある数字は出てこなかったという経緯もあって、今回見送ったということでございます。
  123. 小柳勇

    小柳勇君 おかしいですよ、そういうことは。理由薄弱ですね。退職手当を三%削減するということはもってのほかじゃないかと思うんですよ、そういう答弁であれば。かちっとした根拠がありまして三%削減してちょうどバランスとれますという話ならなんだけれども、全然根拠の数字ははっきりわかりませんと。しかし、わかりませんからそのまま残しましたでは、逆に私言いたいのは、それはもう疑わしきは罰せずで三%削減しないことのほうをぱっととると、そうしなきゃおかしいですよ。だから、こういうふうにちゃんと権威ある社会保障制度審議会の会長が言っているでしょう。「退職手当がいぜんとして三パーセント削減されている事情は首肯しがたい。」と書いてある。あなたのいまの答弁では首肯できないですよ。私は納得できない。そんなものは矛盾点はどんどん変えていくのがあなた方の仕事ですよ。なるべくもう問題があるのはそおっとしておいて次の時代に送ろうなんという、それはさもしいですよ、そういうことは。まああなたはそうじゃないと思うよ。あなたは一生懸命やっておられると思うが、どうも、公務員の皆さんは、特に高級官僚は、なるべく問題のあるのには手を触れぬでおいて、そおっとして次の時代に送っていこうと。そういうのはよくないのじゃないかな、世の中は。今度はもういい答申が出た機会に、そういうふうにやりましょうと。がっちりした理論があれば別ですよ。私が納得するような理屈があれば別だけれども、大河内さんも「首肯しがたい。」と言っている。首肯しがたいですよ。早急にこの三%削減をやめるということを答弁できますか。
  124. 住田正二

    政府委員(住田正二君) 先ほども申し上げましたとおり、この問題は年金の基礎俸給額をどうするかということに関係があるわけでございまして、私どもといたしましては、国家公務員と公企体との間で基礎俸給の調整をはかりたいというのが私どもの気持ちでございます。これが調整でさましたら当然この削減を落とすということになるわけでございますが、その調整をはかることは非常にむずかしいと。私どももいろいろ案を出して調整をはかったわけでございますけれども、どうしても納得が得られなかったという経緯があるわけでございます。
  125. 小柳勇

    小柳勇君 まあ問題が非常に重大ですから、ここでいま答弁できぬと思いますけれども、検討してください、前向きに。納得できませんですよ、そういう答弁では。これはちょうどいい機会だ、公的年金制度の調整のね。おそらくこれで最終段階ではないかと思う。そのことを聞いておきましょう。審議室長、こういう方向が出たが、これからあなた方はどうするのか。もうこれで解散でございますと。新たに社会保障制度審議会から何かの申し入れがあるまではもう私どもはこれで終わりですよとおっしゃるのか。いや、一応の成果は出ましたけれども、これから、私がいま問題にしたような問題は、さらにグループに分かれるとか、あるいは二グループに——今度は四グループでなくて、もっとやっぱり近い調整をして、いま四グループだったから今度は二グループにして同じものを見出そうではないかくらいの努力をしなければ、国民がかわいそうですよ。あなた方自体は早晩この年金生活の部類に入るでしょう。やはりその時代の人が苦労ですけれども、前向きにアンバランスをなくしていくという努力をしなければ、同じたとえば国家公務員及び公企体の職員の年金すらこんなにばらばらではどうしようもないでしょう。そういうものを審議室長はどうしようと考えているか、見解を聞きます。
  126. 小林功典

    説明員(小林功典君) 昨年十二月に社会保障制度審議会に報告をいたしましたけれども、われわれのこの公的年金制度調整連絡会議はそれで解散するということは考えておりません。引き続き組織としては残ると、こういうことでございます。  ただ、率直に申し上げますが、報告の中身になりましたところのスライド制につきましてはこれは一応これでまあ打ちどめと。ただ、そのあと制度の抜本的な問題にからむ問題で制審側から御意見があればまたそこで検討することになろうかと思いますが、事務的にやれる範囲はこれだけであろうと、これは率直に申し上げておきたいと思います。ただ、スライド制以外にいろいろ先生の御指摘の点も幾つかございました。通算の問題とかいろいろございます。今後この調整連絡会議でどういう問題を取り上げ、どういう方針で審議していこうかという点、現在検討中でございます。ですから、そこで、いま先ほど来お話が出ております問題の中で、制度の根幹に触れる問題はこれはむずかしゅうございますけれども、そうでなくて事務的にある程度連絡あるいは調整がはかられるという性質のものにつきましてはこれからも検討する余地はあると、かように考えております。
  127. 小柳勇

    小柳勇君 あなたはスライド制の問題についてはもう大体一応の結論が出たようにおっしゃるけれども、ちっとも結論は出ていませんよ。厚生年金だってこれはまだ矛盾だらけでしょう。このようなインフレの時代に四十七年と四十八年度の平均ベースで、しかもそれを十一月にやりますよでは納得できませんでしょうが。しかも、今度は国家公務員あるいは公企体も他の共済年金はスライド制はきまっていないんですから、法制化していないんですから。ただ法律改正でやっているだけですから、毎年。そうでしょう。そういうものをいまほうっておいては困りますよ。したがって、もうちょっと前向きに、もし必要があるならまたもう一ぺん逆に総理から社会保障制度審議会に問題を返してもらって、あんな申し入れがあったけれども、これは問題が重要だからもっとひとつ慎重に論議してくださいぐらいのことをやるべきだと思うんですよ。ただもう事務的にやってもらってはだめです、それは。またこれから五年、六年かかりますよ。もうこれで七年かかっているんですから、これが出てから。それじゃ国民がかわいそうですよ。したがって、これは総務長官、いまお聞きのとおりです。時間がありませんから結論的なことになりますけれども、もう事務的だけでですね。審議室長はそれは気の毒だ、ただ産婆役をやっておられる、取りまとめをやっておられるのだから。ほんとう言えば総理がみずから出てやられるべきだと思うけれども、まあそのかわりに総理の指名を受けて審議室長が中心になってやっておられると思いますから、もっと積極的に、こういう国民的にも非常に要請があるでしょう、年金問題については。もう少し前向きに、逆に言えば、もうこれは事務的にいきませんから一ぺん社会保障制度審議会に問題を返しましょうぐらいに、それも一つ方法じゃないかと思うんですが、長官、いかがでしょうか。
  128. 小林功典

    説明員(小林功典君) 先ほど若干ことばが足りなかったかもしれませんが、先生おっしゃっている中でスライド制だけの問題についてしぼって申し上げますと、これは社会保障制度審議会に先ほど読み上げましたこのレポートを出しましてお話をしたわけでございます。それで、ここでははっきりは社会保障制度審議会と書いてございませんけれども、「本会議よりもむしろ学識経験者等による検討の場での審議になじむ性格のものと考える。」ということの文言があるわけでございます。これは制度審議会もこの意は十分了解してくださいまして、スライド制についてだけ申し上げれば、制度審議会のほうは一応私どものほうのレポートを了とし、場合によっては向こうのほうで審議をしてくださるという意向も示しておられると理解しておりますので、その点についてはそういうふうに御了解願いたいと思います。先ほど申しましたのは、抜本的な総合調整につきましてはいまもちろん諮問をしておりませんけれども、スライド制だけについて申しますとそういう経緯でございます。
  129. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) いまの室長のことばにこだわるわけではないのですが、前回の予算委員会のときに私のお答えしたことは、そのときにはそうした意味のことを申しておるのでございますから、これは誤解のないようにお願いします。  それからもう一つは、やはり幾つもグループがあり、それがばらばらであり、たとえばいま私実は初めて見たのでありますが、三%の問題とか、むしろこっけいじゃないかと思うのです、実際のところ。なぜこんなことを大きな行政機関として三%なんてことをやったり取ったりしているのかと。そういう面から見ると、こうしたいわゆる年金制というようなものの本質的な考え方に基本的なやっぱり考え方の一つの変化がなければいけないということを前から考えておりましたし、また、本日の委員の御発言等を通じてみましても、また、同時に、社会保障制度審議会そのもののいろいろな今日までの活動を見ておりましても、やはりこの際大きな社会的なニードといいますか、社会的な要求のあるこの問題についてはほんとうに前向きというおざなりのことばでなしに、本気になって取り組んでいくことが非常に大事な時期だという、そうした認識を持っておりまして、まあ連絡調整程度の役割りしか与えられておらないかもしれませんけれども、閣僚の一人としては、ぜひこの基本的な国民や市民の生活というものの年をとってからの問題ということに対して情熱をもって当たっていくという気持ちをはっきり申し上げたいと思います。
  130. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。審議室長、何回でも言いますけれども、私は不満なんです。今度きまりましたね。皆さんがやられるせっかくの努力は買います。ただ、スライドのやり方が、少なくと四十七年、四十八年の物価スライドでは、ほんとうにスライドになりません。だから、事務的にたとえば半年間ならば半年のところの基準でそうして賃金スライド、給与のスライドにしてスライドいたしましたと。あるいは事務的なものが変わるのはそれはやむを得ませんね。その分を考えながら前年度と比べて十月一日からなんていうことが不満だということと、物価スライドでは不十分でございます。公務員がやりましたように賃金スライドでなきゃなりませんでしょう。いろいろ問題ありますが、しかも、それはいま民間グループだけしかまだ適用していませんし、全般的に問題も残りますから、しかし、それはまたあとで根本的な問題として論議してまいります。  最後の問題は、昨年の十月の共済組合法の改正のときに問題になったものでありますが、旧満州国政府、満鉄などの期間通算の問題で質問いたします。国家公務員共済組合法の長期給付に関する施行法第七条一項六号の規定により旧満州国政府、満鉄などに勤務していた者がその後引き続き職にとどまった場合には、当該外国政府などに勤務していた期間は職員期間に通算されることになった。ところが、大蔵省が通達を出しまして、他に就職することなく内地帰還後国家公務員に就職した場合云々と、こういうふうになったんです。これは、公企体の職員でもそれに準じてまいりました。そこで、そこ後、「他に就職することなく政令で定める期間内」にとなりましたが、その政令を三年ときめられたから、満鉄あるいは満州国政府に勤務していた者が上陸してきます三年間のうちにどこかの仕事に入っておった人は在職年数が通算されないという、そういう人が出てきたわけです。だから、三年間もただ遊んでおれなかった、あの終戦後の混乱時代では。何かの仕事をしておった。それを正直に履歴書に書いたために現在外地勤務の期間が通算されてない。したがって、三年はしかたございませんから、その後「他に就職することなく」、これを削除してもらいたい。そうして日本に上陸後三年以内に就職したものは在職期間を通算すると、そういうように改正を願いたい。これは政令のようでありますから、政令をお改め願いたいという要望でありますが、この点いかがでございましょう。これは国家公務員と公企体のほうからの御答弁を願います。
  131. 鈴木吉之

    説明員鈴木吉之君) 旧満鉄等の職員期間を有しておった方が引き揚げられまして公務員となった場合の扱いにつきましては、ただいま先生からお話がございましたとおり、従来は一年でありましたものを、昨年の法律改正によりまして三年ということにいたしたわけでございますが、これは現行の共済制度のたてまえの問題がからんでまいりますので、多少内容に触れて申し上げたいと思いますが、昭和二十四年に旧共済法ができまして、三十四年に恩給公務員等を含めました新しい現在の共済制度ができたわけでございますが、その二十四年以前の公務員期間、主としてこれはいわゆる昔の雇用人関係でございますが、その身分を有しておったその期間の扱いにつきましては、現行の制度ができました三十四年まで引き続いておりました場合には、二十四年以前の期間も年金計算の中で見るようになっておりますが、二十四年以前の期間が切れておりますと、それは資格期間として計算をするというたてまえになっております。さらに、その切れた期間がさらにまた旧共済法の間に切れるという事態が起こりますと、その二十四年以前の切れた期間は全く計算の中には入ってこないという現在の制度のたてまえになっておるわけでございます。ところで、旧満鉄等から引き揚げられた方につきましては、これを引き続く公務員期間であるというふうにみなしまして、それを最大限三年にいたしておるわけでございますから、もしこの期間内に正式に他に就職ということになりますと、その前後の期間に一体性というものが認められないことになりますので、現在の制度のたてまえにももとるという問題が、あるいは現在の制度の運用にも波及してまいるという問題が出てくることになりますので、三年というところへ最大限延ばしたわけでございますが、同時に「他に就職することなく」という条件をはずすことは、なかなか現在の制度のたてまえから見て困難であるということになるわけでございますが、そのようなことでひとつ政令もきめてございますので御了承いただきたいと存じます。
  132. 小柳勇

    小柳勇君 時間が参りましたからくどくど言いませんけれども、一年の場合は、それは書いてなかったわけですよ、一年以内で就職した場合はね。「他に就職することなく」はなかったわけだ。ところが、三年になったところが、それじゃということで「他に就職することなく」が入っちゃったものだから、まあいろいろ法の運用、それはむずかしく言えば、あなたの言うことはわかりますが、何人おられるかわかりませんけれども、たいしたことはないと思う。ただ、そのことによって十年なり十五年満州で苦労した人が勤務年限が加算されないで、「他に就職することなく」、それが書いてなかった人は三年以内に入った人はみなそれを適用されているじゃありませんか。まじめに書いた人がその書いた履歴書のために削られている。ごくわずかじゃないかと思うから、この際、あなた方大蔵省として書いたことを忘れることはできぬかという話、まあ公にこれは話はできぬけれども、そういう指導はできませんか。
  133. 鈴木吉之

    説明員鈴木吉之君) 従来は運用という形で一年と、ただいま先生からお話がありましたとおり一年ということでこの期間を考えておったわけでございますが、その場合にも、ただいま御指摘ございました「他に就職することなく」という条件は同じようにつけられておったわけでございまして、その期間がさらに現状、実情を考慮いたしまして三年に延ばされたということでございますので、制度のたてまえの関係等もございまして、この辺のところは現在の取り扱いということで御了承をいただきたいと考えるわけでございます。
  134. 小柳勇

    小柳勇君 それじゃ、また別途それは具体的にお話をして交渉することにいたしまして質問を終わります。ありがとうございました。
  135. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 まず、初めに、農林省にお尋ねいたします。  平和な明るい豊かな沖繩県づくりを目標とする十カ年計画の沖繩振興開発計画は洗い直さなければいけないと、こういう情勢に立ち至っておりますことは、今日までの論議の中で明確になっておるのであります。そこで、特に振興開発計画がいままでの計画は農業部面を実質的に切り捨てたという考え方に立っておったと言っても過言ではないと私思うのですが。しかも、そういう情勢の中で、農業面が当初の計画どおり農業振興が進められておらない、こういう状態であると判断されますが、これに対する農林省の考え方はいかがでしょうか。
  136. 松本作衛

    政府委員(松本作衛君) 沖繩の農業関係の振興につきましては、ただいまお話がありましたように、振興開発計画に基づいて農林省としても努力をいたしておるところでございます。特に沖繩の農業につきましては、亜熱帯の特色なり営農の特色もございますので、そういうふうな特色を生かしました農業の振興というようなことで、サトウキビなりパイナップルなりを中心といたしまして、畜産、野菜、養蚕等々努力をしておるところでございますが、御指摘がございましたように、やはり、沖繩の農業につきましては、基盤整備の立ちおくれなり、地力が非常に低い、ないしは特殊な病害虫の発生、また一般的な技術が十分に固まっていないというような困難な問題に直面いたしておりまして、計画が必ずしも順調に進んでおらないというような点については、私どもも認めるところでございます。しかし、そういうふうな事情がございますればあるほど、われわれといたしましては、この沖繩振興計画に基づきまして、特に計画に従った事業が実施できますように、基盤整備なり、機械化の促進、技術の開発というような基礎的な分野にも力を入れまして、この計画達成に努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございまして、四十九年度の予算におきましても、約百億の沖繩関係予算を計上いたしまして、鋭意努力を進めたいというふうに考えておるところであります。
  137. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 実のところ、計画どおりに行なわれてきておらぬということを率直に述べられたのですが、そのおくれた理由を幾つか述べられましたが、そのほかに理由はないと思っておられるのか。いま三つの条件をあげられましたが、そのほかに大きな理由がないでしょうか、どうでしょうか。
  138. 松本作衛

    政府委員(松本作衛君) ただいま基礎的な問題と考えられます点を申し上げたわけでございますが、やはり、この計画の事業実施の際に、いろいろと実施上の問題、農業以外からの条件がたまってくるというような問題があるということも私ども承知をいたしておりまして、たとえば、労賃が非常に上がって計画どおりに事業ができないというような点も問題であろうというふうに考えております。
  139. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 では私からももっとはっきり基本的な問題を指摘いたしたいのですが、基盤の整備とか、技術とか、あるいは他の要因とか、あとの答えはあいまいなんですが、ずばり申し上げますならば、そのようにおくれた要因の第一には、海洋博事業による農業破壊、これはもういなめない重大な農業破壊の要因の一つであるということをはっきり理解してもらわぬと、把握してもらわぬといけない。第二点は、本土資本による土地の買い占め、本土資本によるなりふりかまわない土地の買い占め、これは農地を含めて。第三が、したがって、そういう現象から起こったところの農業人口の流出、それから農地の手放し、そうして離農、こういうことが最も根本の要因であるということを理解してもらわなければいけないと、こう思うのですが、いかがですか。
  140. 結城庄吉

    説明員(結城庄吉君) 一般的に沖繩の中で言われておりますのは先生御指摘のとおりでございますが、海洋博にいたしましても、復帰後の事業といたしまして最大の事業として進めていくということになっておるわけでございまするので、農業部門につきましても、海洋博をやめるという方向ではなくて、うまくやっていくということに協力をすべきじゃないかというふうに思うわけでござ  いますが、それから出てまいりますいろいろの問題につきましては、またそれぞれ対応してまいるべき筋ではないかというふうに思うわけでございます。  それから木土資本の土地買い占めにつきましても、先生おっしゃられるとおり、かなりそれぞれの島におきましてあるわけでございますが、これにつきましては、沖繩開発庁においても検討されておりますし、近く土地利用の地域設定ということが行なわれまするので、その地域の設定に基づきましてうまく工業振興地域というような区分けをしていただきまして、農業に必要な優良農地は確保してまいりたいというふうに思うわけでございますが、それと申しまするのも、本土資本等に対して土地を手放さないという農家の意欲を期待いたしたいというふうに思うわけでございます。
  141. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 さらに沖繩の開発プラン、まあ農業も含めて、を進めていく最も根本の障害になっている一つは、結局膨大な基地があるということなんです。その膨大な基地の返還、整理統合計画が具体的に年次的に進められない限り、そのプランは絵にかいたもちにしかすぎないということなんです。その縮小の度合いによってしかその計画は伸びていかない。ここにさらに根本問題があるということを、これはいまさら申し上げるまでもありませんが、そのことをいつでもどこでも私は大前提に強調いたすわけでありますが、そこで、県あるいは農業団体は、目下、第一次産業いわゆる農業を軽視されておるこの振興開発計画をどうしても洗い直さなければいけないという考え方に立って、第一次産業を重視する方向に計画の修正を要求すべくいま検討が進められておるわけなんです。そこで、農林省自体がそういった現地から盛り上がってくるところのこの内容に対して、積極的にその問題点を吸い上げていく、こういう基本姿勢がなければこれまたいけないと思いますが、いかがでしょう。
  142. 結城庄吉

    説明員(結城庄吉君) 私ども承っております範囲で申し上げますと、例のCTSの問題からまいりまして基本計画を検討し直そうという空気が地元にあるということを承知いたしております。せっかく県で五月ごろを目標にいろいろ作業を進めていると聞いておりまするので、それらが出てまいりました段階でまた検討さしていただきたいというふうに思うわけでございます。
  143. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖繩開発に関係の深い長官もおいででありますので、開発庁長官、この問題に対していかがお考えでしょう。
  144. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) ただいまの農林省からの御答弁で尽きていると思います。しかし、私といたしましては、昨日も沖繩特別委員会において御答弁申し上げたと記憶いたしますが、やはり、この振興開発計画は十年計画でありますし、また、そのねらうところが沖繩県民の所得の増大、そして平和な生活ということであることは、私はこの計画そのものは大きな意味を持っていると思います。が、しかし、これをどのような形でどういう年次で進めていくかというその進め方について、昨今のように二次産業に対する県民の諸君の反応があまり芳しくないというようなことがあり、また、一方においては農業問題についての県民の方々の関心が非常に高まってきているというようなその時点の中では、いまおそらく沖繩県自身でも中期的あるいは短期的な計画をもう一回考えておられるようでございますが、そうした中で、この進め方自体については、現時点においては農業をやや前に出していくということ、あるいはある時点においては第二次産業をやや前に出していくというようなことがいろいろと変化の中で思考されていっていいのじゃないかというふうに私は思っております。そういうようなむしろ非常に弾力的な長期計画の運用というものが沖繩県で実現できますと、これは私はまた非常に新しい開発計画の実践につながるのではないかというふうに期待をしております。
  145. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 さきの予算委員会におきましても、開発庁長官、農林大臣、お二人ともそろって、特に沖繩の農業の特性を生かすには亜熱帯農業にあるということを力説されましたが、この亜熱帯農業の育成に対する具体的な内容、このことについてひとつ農林省のほうから御見解をお伺いしたい。
  146. 結城庄吉

    説明員(結城庄吉君) 沖繩が亜熱帯に位置するということにつきましての農業面からのその特質を生かすということは、農業振興をはかる上に当然考えるべきことであろうと思うわけであります。そういう意味におきまして、先般大臣もお答えしましたように、復帰と同時に熱帯農業研究センターを石垣に設置いたしまして病害虫その他基礎条件の研究をすることにいたしておるわけでございますが、そのほかにも、亜熱帯農業の特性を生かしていくということになりますれば、当然中心作物はサトウキビなりあるいはパインであろうかと思うわけでございますが、これらの振興の面におきましても、地力が相当低下をいたしておりまするので、特にサトウキビ等禾本科の作物でございますから、連作をいたしますと地力は低下するという宿命を持っておるわけでございますので、畜産の取り入れ、あるいは牧草の輪作、そういう形で地力を回復して経営を安定さしていくということを考える必要があろうかと思います。  なお、地域によりましては、たばことか、あるいは野菜とか、花とか、桑とか、そういうものが適する立地もあるわけでございますので、それらのそれぞれの立地に適合した作物を取り入れ振興しまして、作物の多様化を進めてまいりたいというふうに基本的には思っておるわけでございます。
  147. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの農林省の御答弁で基本的なお考え方はよくわかりましたが、私も、沖繩が今後どういう開発の方向に行くといたしましても、第一次産業における基幹作目としてのサトウキビ、パイン、これは絶対に守らなければいけないものだと、こう思うわけであります。  そこで、お尋ねしたいのですが、このパインについて、そのような重要な立場にあるパインでありながら、国としてはそのパインに対する助成策が非常に手薄じゃないか、助成策が非常に弱いのではないか、こう思うわけなんです。そこで、パインの保護政策に関する農林省の基本的な考え方をお聞きいたしたい。同時に、その四十九年度予算措置がどうなっておるか、パイン保護育成に対する基本的な考え方とその裏づけの予算措置はどうなっているか、そのことについてお伺いしたい。
  148. 北野茂夫

    説明員(北野茂夫君) 沖繩におきますパインは、サトウキビと並んで最も重要な農作物の一つでございますので、農林省におきましては、復帰と同時にその基本的な対策検討いたしまして、四十八年の三月に果樹農業振興特別措置法の対象品目に加えましてその基本方針をきめまして、今後の生産の目標、需要の動向、あるいは労働生産性、あるいは経営規模、そういうようなものをいろいろ策定いたしまして、現在のところ、生産性の向上、あるいは土壌改良、あるいは機械化、あるいは優良種苗の増殖普及というような事業をやっているわけでございますけれども、また、加工面におきましても、企業の合併、近代化等のために低利の融資等も行なっておりまして、なお、栽培関係でも、植栽のために必要な低利の資金も融資しておりますが、このように生産、加工の両面にわたって、基本的な面、あるいは今後の発展の方向に沿っていろいろの対策を今後とも実施していくことにしております。  予算関係でございますけれども、優良種苗の供給促進事業につきましては、四十九年度は一千七十万円、それから生産合理化促進事業につきましては二千百六十万円の予算を用意しておりまして、なお、沖繩振興開発金融公庫関係の融資ワクといたしましては、果樹園経営改善資金としまして一億一千二百万円、企業設備改善資金に二億円、それから企業合理化資金に三億二千万円、利率は五ないし四%でございますが、そのような資金を用意しております。
  149. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 まあ保護育成に具体的に取り組んでおられる意図、方向はよくわかるわけですが、非常に気になりますのは、沖繩にとってほおってはおけない基幹作目であるにもかかわらず、国際情勢の中でとらえた場合に、沖繩産パインは年々国際競争に太刀打ちできないような状態になりつつある。こういうことをたいへん気にするものです。ところが、どうしても政府の思い切った助成策がなければ、これは自然淘汰される心配があると、こういうことを思いますときに、いままで述べられたことも当然なお積極的にやってもらわなければいけないが、ひとつ、一番目に、広域出荷場の設置、二番目に、さっき述べられたか、ちょっと聞き漏らしましたが、品種の改良、それから三番目に、パイン製品の多角化といいますか、こういう方向に持っていって、それに対する助成策を講じてもらわなければいけない。また、もらうことによって、それがだんだん伸展していくと、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  150. 北野茂夫

    説明員(北野茂夫君) 広域出荷場等につきましては今後検討してまいりたいと思います。  それから品種改良につきましては、目下のところ農林省の中で育種体制検討会というのがございまして、ほかの作物と同等に、それぞれの作目について今後どのようにやっていったならばいいかということを目下検討している段階でございます。
  151. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一つお聞きしたいことは、キビにしても、パインにしても、生産意欲を高めていくというこのことが最も大事でありますが、パインの生産意欲を高めていくために原料価格に対する保証制度、パイン原料に対する価格保証制度を確立していくというこのことがまた最も大事であると思いますが、この点についてはどうお考えでしょうか。
  152. 北野茂夫

    説明員(北野茂夫君) 沖繩のパインは、その生産量の約九八%がかん詰め加工に供されているわけでございます。したがいまして、そのかん詰めにつきまして、品質的には立地条件の関係から外国のものに対してやや劣る面もあるわけでございますので、国際競争力をつけるために、現在のところ、パインの加工品、特にかん詰め、果汁等につきましては非自由化品目にしておりまして、しかも、暫定関税を五五%課しておりまして、これによりまして保護することにしておりまして、そういう措置によって価格保証とほぼ同等の効果をあげているというふうにわれわれは思っておりまして、現在のところ直接的な価格保証をとるという考えは持っておりません。
  153. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これはまあ現在のところ持っておらなくても、生産意欲を高め、安心していい質のものをたくさんつくっていくというこういう裏づけのためにも、これは今後ひとつぜひ前向きで検討してもらいたいことを要望しておきます。  次に、最も基幹作目とされておるサトウキビです。先ごろ農林省は沖繩県製糖事業団の設立を明らかにされたようですが、一体、その構想の内容はどういうものであるか、また、いつ具体的に設立されるのであるか、そのことについてお聞きしたい。
  154. 永井和夫

    説明員(永井和夫君) 先生の御質問でございますが、私ども直接に砂糖事業団というようなものを設立するというような形で構想を立てておるということではございません。ただ、御質問の趣旨は、おそらく一月末に若干新聞報道の手違いかとも存じますが、一部の新聞にそのような記事が出たことがございまして、私どももその内容を聞きまして当たったのでございますが、必ずしも出所が明確ではなかったわけでございます。ただ、私ども、現在、沖繩の工業につきまして、基本的には、先ほど来審議官、地方課長の申しておりますような生産関係の改善ということが必要と同時に、生産意欲を高める意味におきましてのキビ価格の大幅引き上げとか、奨励金の交付を行なったわけでございます。もう一方の柱でございます企業が非常に過剰設備によって経営不振におちいり、現在累積赤字が十数億にのぼっておるというような現状がございます。これが本来の琉政時代から計画されましたキビの振興計画を満度に満たせば、当然それだけの工場設備というのは必要になってきましょうけれども、現実の問題といたしまして考えるときに、相当な過剰投資になっておることはいなめないということを考えますと、そういう過剰設備を何らかの意味でもってやはりその負担を軽減していくということが糖業全体の発展に必要ではないかということで、今回御審議をいただいております予算の中に、業界が全体として過剰設備部分をスクラップ化いたしまして、本来でございますと、それが簿価と時価との間に相当な差額があることによってその償却は非常に困難でございます。それを業界全体が協会なり何なりを設立してこのスクラップを買い取って一時的な金融措置を講ずるというような措置を行なう場合に、金融機関が融資をいたす場合の利子補給をいたしたいということで、私ども、今回の予算に、これは南西諸島ともどもでございますが、三千万円の利子補給を初年度分として計上しておるわけでございます。おそらく、先ほどの新聞報道は、そういうようなものを業界全体として構造改善をはかっていくというようなことが若干先ばしって伝えられたのではないかというふうに推察する次第でございます。
  155. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 おっしゃるとおりに、一月二十八日の新聞で見たわけでありますが、それで内容を具体的にどの程度どのように進められているかということを確認したかったわけですが、これも、どうしても企業の合理化といいますか合併再編、これはもう非常に重要な問題であると思いますので、前向きでこれもひとつ検討してもらうことを申し入れておきます。  次に、沖繩のサトウキビ値が戦前戦後にない生活の危機、農業破壊だというこういう危機感をもって、六万農民が決起して一千名余の大集団が東京まで政府要請に来たわけですが、一万三千円がトン当たり最低の要求であった。それに対して一万円の原料価格になったわけですが、この一万円が沖繩の農民の生産意欲がそれによって十分裏づけられておると考えておられるかどうかお伺いしたい。   〔副主査退席、主査着席〕
  156. 永井和夫

    説明員(永井和夫君) 昨年のサトウキビの生産者価格の決定に際しまして、御要望は一万三千円でございました。私ども、御要望の全額は無理といたしまして、価格といたしまして八千七百円のほかに特別な奨励金を加算いたしまして、農家手取りを一万円、前年度比約四四%アップといたしましたわけでございます。私ども、これによりまして農家の生産意欲も高まっているというふうに承知しておるところでございます。
  157. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それは逆ですね。それは個人的には高まっていないとは否定いたしませんが、大勢としましては、最低一万三千円の要求に対して、パリティによるアップば八千七百ですか、あと奨励金として一千三百ですか、合わせて一万円、この差額——最低要求の一万三千円と一万円の差額を国で補償せよ、これがいま沖繩のキビ作農民の不満であり、怒りであり、強い要望であるということを強く私は強く指摘いたしたい。決して満足しておるものではない。そのように受けとめられたのでは、これはたいへんなことであると、こう思います。  それでお聞きしたいが、昨年十二月における対前年同月比のパリティ指数は一体幾らになっておりますか。
  158. 永井和夫

    説明員(永井和夫君) 昨年の十二月では一二三・九三でございます。
  159. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 パリティ指数ですか。それは違うでしょう。
  160. 永井和夫

    説明員(永井和夫君) 指数そのものは二九一でございます。対前年との比較におきましては一二三でございます。
  161. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 食糧庁発表には二三・九%でしょう。
  162. 永井和夫

    説明員(永井和夫君) 一二三・九三で、二一二・九三%アップでございます。
  163. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その中には、沖繩の海洋博による労賃の上昇や、あるいは諸物価の上昇、このことは加味されておりますかどうか。
  164. 永井和夫

    説明員(永井和夫君) 具体的に申しますと、パリティ指数というのは全国の農家の支出構造を指数の形で出しておりますので、広い意味におきましてはそういうものも入っているということが言えると思います。
  165. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いや、具体的には加味されていないのでしょう。沖繩のそういう特殊事情から来るものは、いまおっしゃる一般論の中には加味されておるのですか、いないのですか。
  166. 永井和夫

    説明員(永井和夫君) パリティ指数は全国一本で出しておりますので、特に沖繩のパリティとか北海道のパリティというような形ではございませんが、まあ全国の中の一部といたしましての沖繩の状況もその分において入っているといえば入っております。特別に考慮をしたかどうかといえば、それは特別の措置として考えているというわけではないということでございます。
  167. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そこに問題があるわけであります。こう一般論として取り上げられて、そうして沖繩の特殊事情から来るところの問題が常に取り残されがちである。一万円にトン当たりなりましても、そのアップは一二六・八%、それから食糧庁の一二三・九%、この数字の開きからすると、これは満足していいのじゃないかと、すぐいわゆる数字の単なる機械的な比較からする。ところが、沖繩の実態は、沖繩の特殊事情を勘案した上に立たないというと沖繩のこういったサトウキビの問題もほんとうに本質に触れた解決にはならないと、こういうことを私は特に強調して、この一万円アップは、二六・八%ですが、物価高、労賃高、これと比較いたしますというと、むしろ結果的には上がったことにはならない、こういうことが実情であるわけなんです。そこで、このことを特に踏まえていただいて、一貫した強い要望は、生産費所得補償方式に切りかえることが根本的な解決であると、こういうことを絶えず沖繩の農業関係、あるいは沖繩の県庁、またわれわれも強調するわけですが、そのことに対する見解はいかがですか。
  168. 永井和夫

    説明員(永井和夫君) これは再々国会でも御議論があったところでございます。私どもといたしましては、米にとっている生産費所得補償方式を他の農産物に直ちに当てはめるということについては、現在では適切ではないというふうに考えているわけでございます。
  169. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これは、結局、米価方式、糖価方式とよく言いますけれども、甘味資源という立場からすると、これはもう米価と同じ性格を持つものであるというこういう前提に立って、どうしてもこのパリティは改めてもらわなければいけないというのが強い要望でありますので、その方向にひとつ前向きに、いままでの答弁ではずっと困難でできないできないといううしろ向きの答弁しかなかったわけですが、ぜひこの強い要望を前向きで検討してもらうことを特に要望いたします。  次に、厚生省関係にハンセン氏病対策についてお尋ねをいたします。  沖繩のハンセン氏病患者の実際はどうなっているか、まず概略その実態を御報告願います。
  170. 宮嶋剛

    政府委員(宮嶋剛君) 今日全国で患者数は約一万一千人と推定されておりますけれども、その中で、らい予防法によりまして病院に収容するというたてまえで現在収容されております患者は全国で約九千五百人でございまして、残り約一千五百人程度の方が、なお未収容の状態でお宅におられるという状況でございますが、なかんずく沖繩県につきましては、この一千五百人の未収容の方の中でその多くの約一千人の方がなお在宅で治療を受けておられるという状況でございまして、その面が特に本土と変わっておる現象かと思います。もちろん、このことにつきましては、二十七年間に及ぶ米国の統治下にありまして、米国関係のやり方と申しますか、いわゆる病院をオープンにして通院治療をやるという方式を米側が特に琉政を指導いたしましたこともございますけれども、なおこれだけの未収容の患者があるという実態はきわめて心配でございまして、今後ともこの収容は促進をしなくちゃいかぬ、かような考えを持っております。
  171. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの数字で、千五百人ですか、千九百人……。
  172. 宮嶋剛

    政府委員(宮嶋剛君) 全国で在宅の未収容の方が約千五百名でございます。そのうち、沖繩の関係の在宅の方が約千名でございます。
  173. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この数ですね、四十七年の十二月現在で千九百四十名という数字が出ておりますが、これは、あなたのほうのはいつ現在ですか。
  174. 宮嶋剛

    政府委員(宮嶋剛君) ちょっと先生のほうと行き違いがあるかと思いますが、私が申し上げましたのは、いま未収容患者につきまして沖繩に約千名の方がいらっしゃるということを申し上げたわけでございますが、そのほかに、沖繩県には国立療養所が先生もすでに御存じのとおり二カ所ございまして、そこに約九百二十名の患者の方が入院をしていらっしゃるという状況でございます。
  175. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 特に四半世紀の断絶の中でいろいろな面で立ちおくれがある。特にこういった医療福祉面での格差が著しいこともお認め願っておると思いますが、愛楽園の園長さんの率直な話によると、医療体制のおくれはもう本土よりも三十年もおくれておるのだと、こういうことを述べておられるのでありますが、この医療体制の立ちおくれを本土並みに持っていくには一体どのような計画を持っておられるか。そうして、一気に一年、二年というわけにもいかないでしょうが、何年計画で本土並みに持っていこうと、こういう計画を持っておられるか。それをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  176. 宮嶋剛

    政府委員(宮嶋剛君) らい療養所につきまして問題を分けますと、一つは職員の関係、それから一つは施設の整備の関係、いま一つは患者の処遇の関係、この三つがあろうかと思います。その中で、患者の処遇につきましては、患者に対する給与金であるとか、あるいは作業賞与金であるとか、あるいは食料費であるとか、日用品費であるとか、こういう面につきましては復帰後全く本土と同じ水準でやっておりまして、従来の琉球政府時代から比べますと相当に上がりましたために喜んでいらっしゃるという状況でございまして、要するに残り二つの問題、すなわち、職員の充足の問題と、いま一つ施設の整備の問題があろうかと思います。職員の充足の問題につきましては、四十七年の五月の復帰の時点におきまして、政府といたしましても、特にいま御指摘がございましたように二十七年の間に相当おくれておったことも事実でございますので、当時一挙に三十人の増員ということをいたしました。また、その後四十八年度に八名の増員を行ない、また四十九年度は沖繩の宮古及び愛楽園につきまして十二名の職員の増を考えております。以上合わせますと約五十名になるわけでございますが、そもそも四十七年の五月の十五日に復帰いたしましたときに宮古及び愛楽の二園におきましておられました職員の方は約百五十名でございました。その百五十名に対しまして、四十七、四十八、四十元の三年度間でその三分の一に当たる五十人を増員したということでございますので、まだまだ不足の声が強うございますけれども、わがほうの努力の状況は十分ひとつ御了承を願いたいと、かように思っております。  なお、特にこの職員の面で本土と比較いたしました場合に足らざる分野を申し上げますと、俸給表でいいます行政職の(二)、いわゆる現場の職員につきまして木土と比べた場合になお不十分ではないか、そのうらみがあると、かように存じております。で、私ども、実は、四十七年度から、特に現業の職員の中でも、本土同様この二園において見られますように、患者の方が相当老齢化された、それで、身のまわりのことにつきまして、あるいはまたその他療養所内におけるいろいろなお世話の関係で、従来患者のやっておりました部分につきまして、それをできるだけ職員に切りかえるということで、一つには付き添いの関係につきましてはこれを病院の職員にする、あるいはまた、作業の関係につきましてはこれを賃金職員をもって切りかえるというふうな方向をとっておりますが、端的にただいまの付き添いの患者を病院の職員に切りかえるという計画の面から申しますと、四十八年度に実は付き添いの切りかえで六人増員をいたしましたし、四十九年度におきましては十一人の付き添い切りかえをしたいと思っておりますが、五十年度になりますればおおむねこの付き添いを完了したいと、かように思っております。  なお、御参考までに申し上げれば、四十九年度の十一人といいますのは、全国のらい療養所は十三療養所ございますが、その全体における付き添いの切りかえの増員は三十五名でございますが、その中の十一人、すなわち約三分の一は沖繩に持っていくというふうなことで重点を置いております。そういうこともひとつ御理解を願いたいと思うわけでございます。  次に、施設整備の関係でございますが、全国のらい療養所を通じまして患者の老齢化の現象もございますので、特にニードの高いのは不自由者棟の整備の問題でございます。身体の不自由な患者の方たちを収容する病棟を整備するという問題でございますが、この不自由者棟の整備につきまして、特に四十七年度あるいは八年度に私どもは沖繩の二園につきまして相当力を入れたつもりでおります。具体的に申し上げますと、四十七年度におきましては、全らい療養所の整備の予算が約八億円あったわけでございますが、そのうちの二億円、すなわち約二五%の整備費を沖繩の二園につぎ込みました。実際上患者の数から申しますと、全国らい療養所の患者数の約一割が沖繩にあるわけでございますが、一割の患者の実態であるにもかかわらず、施設整備費においては全予算の二割五分をつぎ込んだ。また、四十八年度におきましても、施設整備費につきましては、全体で七億の予算中一億七千二百万ということで約二四・五%の金をつぎ込みました。いずれも重点は不自由者棟の整備に置いたわけでございます。私ども、このように、重点的に今後とも沖繩二園につきましては整備費を傾斜的に配分するということによりまして整備を急ぎたいと思いますけれども、何さま全体として整備費の額には限度もございますし、なかなか一挙にいかないことは歯がゆうございますけれども、とにかく傾斜配分を行なうことによって沖繩の整備をできるだけおくれを取り戻すということを急ぎたいと思っております。
  177. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この実態調査の一覧表も十分ごらんになっておられると思いますが、これから見ましても、類似園に比較しましていまだに格差があるということは、これいなめない事実であります。それをいかにして格差を是正していくかということについて努力しておられることもわかりますが、いま、定員につきましては、そうすると、五十年までには本土並みに持っていくと、こういう確たる計画を持っておられるわけですね。そう理解していいですね。
  178. 宮嶋剛

    政府委員(宮嶋剛君) 私、職員全体について一般的に申し上げて、その中で特に格差の強い患者付き添いの職員への切りかえという部分に着目して、その部分については五十年を目途に格差をなくしてみたいとかように考えているということを申し上げました。なお、そのほか、医師についてもある程度本土よりも格差があるとかいう問題もございますが、しかし、その他職員につきましては、現地における専門の職員の確保の余裕の問題、現地に実際上そういう人が得られるかどうかというふうな問題も含めましていろいろ問題もございます。そういうこともございますが、まあその他の問題につきましてもできるだけ早く本土との格差がなくなりますように努力をしたいと思っているわけでございます。
  179. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これもごらんになったかと思いますが、向こうの機関紙も絶えず送ってくれますが、復帰後特に全国との比較検討が具体的に出てまいりますので、ますます入園者はその格差に対して差別だと、そういう考え方に立って不平不満を持っておることも事実でありますが、昨年の七月の全患協の要求行動の中で、厚生省の担当官から、愛楽園には五十六名、南静園には五名の配分予定をすると、こういうことをその陳情の中で受けて帰っておる。それが、最近、いや、それはそうではなかったといったようなことを言ったことが非常に大きな問題になってこの機関紙の中にも書き立てられておるわけでありまして、これについて私が一つ聞きたいことは、そのような前向きの要望にこたえていくというこういう御配慮があるならば、それを否定せずに、万難を排して実現してもらうことが、その強い要望、また格差を埋めていくことになるわけでありますので、そのことについてぜひひとつ再検討、再考慮をしてもらいたいということと、それから最近私もこの愛楽園を視察したのでありますが、特に建物、施設が、昭和二十七年に米軍が建ててくれた、全くいまから見るともうお粗末な簡単なものであります。それが危険きわまりないものであります。また、衛生状態からも、もう物置き小屋にひとしいような、危険でありお粗末である。これの改築も早急に迫られておる実情であります。さらに、新築も間に合わないと、こういう二重、三重の問題点がひそんでおるわけですが、どうかひとつその点も配慮くださって、いままでのものがあるからそれがパーセントになるのじゃなくて、それさえもさらにもう改築の危険に迫られておると、こういうことを特に配慮してもらわなければいけないということですが、これに対してどういう見解をお持ちでしょうか。
  180. 宮嶋剛

    政府委員(宮嶋剛君) 最初の増員の問題につきましては、本土との間に格差があることはもう事実でございまして、私どもはこの点を早急に直すということにつきまして今後とも関係方面とも十分折衡いたしまして増員をはかる。特に愛楽園あるいは宮古の実態というものをよくよく見きわめていきまして、必要なものは取るように努力をしたいと思います。  第二の施設整備の関係でございますが、先生仰せのとおり、建物が古くなっております。ただ、らい療養所が全国十三ございますが、本土のほうの状況を見ますと、ほとんど大部分が実は木造ということでございます。しかも、歴史が古く相当老朽化しております。片や沖繩の宮古、愛楽園につきましては、いずれ一般的に鉄筋でやっておりますが、本土のほうは木造から鉄筋への転換ということで整備を急がなければなりませんし、また、いま先生仰せのとおり、宮古とそれから愛楽園につきましては、鉄筋ではあったけれどもどうも工法がずさんでいたみがひどいということも私どもも承知しております。らい療養所全般につきまして施設整備についての声がきわめてやかましいものがございますけれども、本土及び沖繩の二園につきまして全体的にらい療養所の整備を急ぐということで今後とも予算の増額にはつとめたいと思います。特に沖繩の二園につきましては、先ほどから申しますように、不自由者棟を中心にまず整備をしていきますが、それ以外の鉄筋化された一般の建物につきましても当面困ることがないように補修費その他の手当てにつきましても十分配意してまいりたい、かように考えております。
  181. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 時間も参りましたので、最後に、これも詳しく問答する時間を持ちませんので、一応趣旨を申し上げて結論的な回答を求めたいと思いますが、それは沖繩在住の被爆者の援護についてであります。御承知のとおり、沖繩の被爆者、それは広島、長崎における被爆者でありますが、本土では昭和三十二年に制定されておる。沖繩は十年おくれて四十二年になってそれがまあ準用された。ところが、その間における国の援護措置というのは全くこう放置されてきておる。そこで、まあいまからでもおそくないから、この十年間の医療費の補償、これをぜひひとつ支給してほしいと、こういう強い要望があることも御承知だと思います。ところが、それはまあ法的にはどうしても無理だと、こういうことも言われておるということも聞いております。ところが、やってやろうという意思さえ政府にあれば、何らかの方法がある。この一例に前例がある。それは、四十七年にいまさっき私が申し上げた沖繩のハンセン氏病患者に対して約四千五百万円が見舞い金として一人五万円の八百九十三人の見舞い金として支給された例がある。前例がある。とするならば、これは何としても沖繩がアメリカ施政下にあって日本の行政下になかったという、そういう立場に追いやられたということから生まれた犠牲でありますので、見舞い金という立場でもこれはけっこうでしょう。法律上困難であればそういう立場から、政治的な道義的な立場からの責任を十分感じていただいて、それをぜひ支給していただくことが当然の道であると、こう思って、強くこれを要望するわけなんです。そして、衆議院でもこの問題が取り上げられて、三月八日の質疑の中で、厚生省は何らかの方法がないか検討したいと、こういう前向きの答弁もしておられることも私は知っております。その前向きの姿勢で具体的にひとつ検討してもらっておるかどうか、また、これから前向きで検討していくと、こういう意思があるかどうか、そのことについて伺いたい。
  182. 今泉昭雄

    説明員(今泉昭雄君) ただいまの問題につきましては、ライ患者に対する給付金につきましては、入所患者の日用品費の本土と沖繩との差額について四十四年から四十七年度までの一人当たりの差額であると、それを四十七年度の予算で支給したというような趣旨のように私は聞いておりますが、そういう趣旨は別といたしまして、沖繩の被爆者の関係といたしましては、四十年度から沖繩におきます医療機関の不足なり立地条件なりを勘案いたしまして、検診員の派遣なり、あるいは被爆者の本土への渡航費の補助と、こういうような施策をやっておりますが、こういう問題は今後とも続けてまいりたいと考えております。ただいまおっしゃいました、前例のような給付金の問題につきまして、このもの自体につきましてただいますぐ私のほうでいろいろ前向きの面で検討するということはなかなか困難性もございますが、なお問題点といたしまして十分検討させていただきたいと思っております。
  183. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 最後に。この問題は、困難であるかもしれませんが、不可能ではない。困難と不可能を混同せずに、その困難を克服して空砲にならぬように、ぜひひとつ実らしてもらうように前向きで検討していただきたいことを強く要望します。  それから被爆者の実態調査ですね。実態調査昭和四十年に行なわれて、これは十年置きになされるということになって、そして十年というと来年ということになりますが、沖繩の場合に四十年の調査にも入っておらぬ、漏れたわけですね。ところが、五十年の調査というと来年、もう来年までは待てぬから、沖繩はすぐことし四十九年で実態調査をしてほしいと、こういう強い要望がありますので、そのようにこの要望にこたえてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  184. 今泉昭雄

    説明員(今泉昭雄君) 実態調査につきましては、ただいま五十年の実施を控えまして四十九年度からいろいろと全国的な問題として検討いたしておるわけでございますが、そのいろいろな調査項目その他の問題につきましてじっくりと検討しなければなりませんので、沖繩県だけを取り上げまして四十九年度に実施するというのはおそらく非常にむずかしい面があるだろうと思いますが、五十年度の実態調査におきましては、ただいま先生おっしゃいましたように、沖繩県は四十年度もやっていないという点もございますので、特に慎重に考慮の対象にいたしたいと、このように考えております。
  185. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 総理府長官にひとつお尋ねいたします。これは、私は所管内閣総理府かはっきりつかんでいないのですが、まあ国務大臣としてお尋ねしたいのですが、内閣政府委員もその関係総理府政府委員もいらっしゃらないようですから、あなたに直接お伺いしますが、これはだいぶ前から問題になっています青年の船という大きな問題があるわけなんですね。たしか前尾衆議院議長が代表のような形になって、それから衆参両院、これは超党派かどうかはよく覚えていませんが、それから民間がこれに協力をしまして、大阪商船、三井船舶、あそこの「さくら丸」ですか、あの船を使って何回か青年を乗船さして社会教育をやって非常な好評を博している。そこで、これは借り船でいつまでやっておるよりは、むしろひとつ新船をつくってそうして大きく恒久的にやったらどうかという、こういう声が民間からも起きまして、たしか七十億円、去年かおととしの値段ですからいまはそんなことではできないと思いますが、七十億円ぐらいの造船料としてこの青年の船をひとつつくってもらいたいということを要望を再三しておるんですが、その後、そのいきさつなり今後の問題等について何かお聞きになりましたか。
  186. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 青年の船を建造する話は、四十九年度の予算では残念ながら落とされたわけです。それは、アジア青年の船というのが入ってきまして、そっちのほうが優先であるというようなことで、各党からの強い御要望があってわれわれも努力をいたしましたのですが、四十九年度予算では残念なから落ちております。しかし、この青年の船というものは、見方によれば非常に効果のある教育が可能な場でございますので、御要望はよく理解しておりますので、今後引き続いて努力いたしたいと思います。
  187. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) どうぞよろしくお願いいたします。  ほかに御発言がなければ、内閣及び総理府所管に関する質疑は終了したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十五分散会      —————・—————