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国務大臣(
田中角榮君) 時間を効率的に進めるために、ちょっと用意してまいりましたから、メモで申し上げます。
まず第一、
メスメル首相には弔意を表しました。モナリザの貸与に対して礼を述べました。
濃縮ウランは、前回の訪仏の結果、
メスメル首相と書簡を往復し合って実現したものでございまして、
石油危機発生前から取り上げたことであり、
お互いに先見の明があったという証左であるということで、向こうは非常にそういう点を強調し、これは
日仏間の
友好増進、これから新しいいろんな
プロジェクト推進のために有意義であったということでございます。
それから
ガボンの
鉄道建設につきまして、アフリカ諸国との協力
関係増進のため第三国と協調してやっていくものである。これは非常に高く
フランス側も評価をしておりまして、
ガボンのボンゴ
大統領も私に会いたがっておったわけでございますが、双方時間のやりくりがつかなくて実現できなかったわけでございます。また、リビアのジャルディ首相その他とも連絡がございましたが、帰国を急がざるを得なかったために
会談はあきらめたわけでございますが、まあ
日仏間においては重要な問題が二つもう軌道に乗っておりますし、その前に、アブダビの
石油資本、三分の一、
日本が割譲を受けたという問題もありましたので、大きな問題三つきまっているということで、非常に
日仏間は具体的に接近をしたわけであります。
ブラント首相との間には、
日独資源合同
委員会が提案をされておりますので、近く
日本案を提示をして、これを進めるということにいたしました。欧州をめぐる諸
情勢の問題では、
石油危機の問題とか対ソ
経済協力の
問題等、具体的に話し合ったわけでございます。
シベリア開発に対しても、場合によれば
参加をしてもよろしいと、まあいろんな問題に対して
お互いに
意見の
交換をしようということで別れたわけでございます。また、
石油の
共同開発その他に対しても、
資源石油等の
開発に対しても、ジョイントベンチャー方式等を採用することに対して
両国は積極的に協力しようということであります。
ウィルソン首相との間には、訪英の際会う
予定でございましたが、たまたまブラックプールでの労働党大会
出席とかち合ったために実現できなかったわけでございますが、今回は非常に有意義な
会談ができたと思います。まあ初対面の第一印象は老練な政治家と、こういう感じでございます。
会談では話題にはなりませんでしたが、いろんな話をしておる過程において得ましたのは、ヒース首相がECに傾斜しておったのに対して、新首相は、米国との
関係の一そう緊密化ということに非常な
熱意も持ち、腐心をしておるということが看取されたわけでございます。
また、
北海油田につきましては、国有化するとの
意見もあるようだがどうだと、それから
日本は東南
アジアや
アジア地域における
石油資源や鉱物
資源開発に対して
イギリスとの間にスワップ協定をやってもいいんだという話等も出しましたから、先方から、いずれ
北海油田開発について六カ月以内ぐらいに案をつくりたいと、その結果、
日本にも話し合いをいたしたいと、こういうことでありましたから、これは
日本の動向を十分承知しておっての発言であると、こういうふうに理解をしたわけであります。
それから
ニクソン大統領との間は、貿易収支の不均衡がすっかりいま解決し、
日米はきわめて良好な
関係にある。まあ
物価、
資源エネルギー、食糧等、共通の困難な問題に直面しており、今後とも相協力していく必要があると、こういうことでありました。
特に
ブラント首相やその他と会ったときのヨーロッパ及び
ソ連は、ことしは暖冬でありまして雪が降らないということで、食糧は必ずしも増産態勢にないというような問題から考えてみても、
アメリカ、
カナダは今度はうんと食糧を増産をしてもらわないと、
世界的に食糧が逼迫すると
物価問題が困るから、少し
アメリカ、
カナダは十分食糧増産をして安定、低廉なる食糧を
供給せられたい、これが
アメリカがやっぱりやるべき一番大きな使命だろうということに対して、これは大いに協力しましょうと、こういうことでありました。
シベリア開発問題については、
アメリカの
参加が望ましいということに対して、これはもう
参加ということが
アメリカ側でも非常に大きな関心事であるということでございました。
それからトルード首相等につきましては、これは招請も受けておりますし、この間特使を送ってくれたということもありますので、これはとにかく先方からたずねてこられたので、一時間余にわたって十分なる
会談を行ない、
日加両国の問題に対して
討議をいたしました。
五月に開かれる
日加経済閣僚
委員会におきましては、去年行なえなかった分も、来年分も、三年分ぐらい一緒にやろうと、とにかく
日本も
カナダを必要とし、
カナダも
日本を必要としておる。
世界の平和、
世界のいろんな問題解決するためにも、
両国の利益のみならず非常に必要であると、これは官僚的な
会談というよりも、全くフランクな
会談でありまして、
意見の一致を見たわけでございます。まあ、特に自主多極外交というものに対して、米国との協調を基調としながらも、
日本も
カナダも
お互いひとつ兄弟のような力でいろんな問題に対して協調しようということでございました。
コスイギン首相やポドゴルヌイ議長との問題につきましては、モスクワ及び
フランスで個別に会ったわけでございますが、
シベリア開発を進めるとの
日本側の方針に変わりはないが、
ソ連のほうから種々新しい提案が出て、かえって問題を複雑化し、
交渉にブレーキをかける結果となっているのが事実だと、だから、
日本が故意にこれを延ばしているというような事実はないと、また各
プロジェクトの具体的
交渉、価格等にあたりまして、
ソ連側からいろんな変わった条件が出るというようなことが問題の解決を遷延さしているんじゃないかということも率直に述べておきました。これに対して
コスイギン首相は、
ソ連はチュメニ
石油の輸送の一部を従来の
パイプラインにかえて
シベリア新
鉄道の建設により行なうこととしたが、この問題と
日ソ間のすべての
プロジェクトをパッケージとして結びつけるつもりはない旨、指摘をしました。まあいろんなことを言ってくるもので、次次次々と提案があるんで、これは
日本はまじめだからどうもその結論が出ないんだと、
日本も
世界各地と
交渉をし、もうこの間には多数の
プロジェクトが決定しているんだから、何で
シベリアだけが決定しないんだということに対してよく考えてもらいたいと、これはもう解決する気持ちがあれば必ず解決しますと。買うほうが注文つけるよりも売るほうが腹をきめれば直ちに問題は解決する、これは人類の歴史に明らかである。こういことを明確にしてさましたら、スピーディーにきめましょうやということでありました。
ソ連としても、互恵平等の原則のもとに、
日本との協力を進める方針であることを再確認したわけでございます。
これらのやりとりの結果、私は
コスイギン首相との間で、
日ソ間の
プロジェクトはできるものから
一つずつ個別にきめていこう、こういうことで完全に
意見の一致を見ました。それからポドゴルヌイ議長との
会談でも同様、私と
コスイギン首相との間の前記了解事項が確認され、
日ソ双方は、
シベリア開発を互恵平等の原則のもとに推進することに
意見の一致を見ました。
以上述べた
ところにより明らかなように、今回の
会談の結果、
シベリア開発について、これを
ワンパッケージではなく、個別的にまとまるものから
一つずつ取り上げていくこと、また、価格等具体的条件の決定にあたっても、あくまで互恵平等を指針として話し合いを詰めることにつき、
日ソの最高
首脳間で明確な
合意が達せられたことは、本件をめぐる
日ソ関係者の今後の話し合いの促進に裨益するものと信じておるわけでございます。
メモにすると、こういうことでございまして、まあ一時間ぐらいずつの
会談でございましたが、相当具体的な問題を
お互いに提案をし合った一これは一回目でなく、二回目、三回目でありますから、相当ドラスティックなものの考え方で具体的に話が出、そういう問題に対してこちら側の考えも率直に述べて、意義ある
会談が続いたと、こう理解をしております。