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国務大臣(
田中角榮君) これは、ですから
国会の問題でございまして、行政の長である私が遺憾の意を表明すべき問題じゃないのです。これは、証人とするか参考人とするかは
国会でおきめになる問題でございます。この問題に対して、私は意見を問われましたから、私はこの法律制定の
経緯を知っておりますので、この法律はみだりに発動すべきものではないと、こういうことはすなおに申し上げました。この法律は、御承知のとおり、非米活動
委員会法というのと軌を一にした非日活動
委員会の基本法として、メモランダムで提示をされ立法したわけでございます。それで、この法律によってたいへん迷惑を受けた政党もあるわけでございます。それが非常にまだ、この法律
運用の過程において、まあ
国会と司令部との意見が対立をしたというようなことで、後には団体等規制令という占領軍命令によっていろいろな事項が行なわれたという
経緯を持つ問題でありまして、この法律そのものは非常にむずかしいものであると、特に
昭和二十二年十二月公布のものであって、新憲法による新しい刑事訴訟法は二十四年一月一日から施行されておるわけであります。そういう
意味で、
国会の国政調査権の上に必要であるといってつくられた法律、これは魚でいうと半身の法律だけは残ったわけであります。非日活動
委員会法は、ついに日の目を見なかったということでありまして、その後、不当財産取引調査特別
委員会または行政監察
委員会ということでこの法律が
運用させられました。しかし、これは国政調査権の発動というにはあまりにも問題になる法律だということで、その後、決算
委員会等で二、三発動されたこともございますが、憲法の精神からいっても問題があると、その後新しい憲法のもとでつくられた刑事訴訟法の中でも、新憲法に沿った制度がちゃんと制度化されております。九十九人の罪人をのがしても一人の無事の民を罰するなかれ、こういうことで、黙秘権やいろいろなものが制定せられたわけでございます。しかし、その前につくられたメモランダムケースである、尤なるこの法律においては、三親等以内の姻族、四親等以内の親族は刑事訴追を招くおそれのある場合署名をした後証言を拒否することができるという、非常にきつい法律でございまして、これは新憲法の基本的人権という面に背反するおそれがあるというような議論が、過去にたくさんあったことは御承知のとおりであります。そういう
意味で、この法律は、ほとんど死文のような状態で四半世紀過ごしてきたということでございます。これは、もろ刃の剣である、へたをすると民主政治そのものを破るあれがある。それだけではなく、野党の皆さんや学界の
発言としては、この法律を多数党が使ったならば、これは小数党を根絶するような法律となるおそれがあるということで、非常にこの法律の適用には慎重であったという歴史的事実に徴して、私は今日の
段階において、この法律の
運用に対して慎重を期せらるべきであるという意見は述べました。これは、当時この法律に参画をした人は、すべて与野党の別なく承知をしておりますし、野党の諸君は、特にこの問題に関しては、かかる法律が多数党の現在のもとで行使をせられることは、議会制民主主義の根底を破るおそれがあるということが議論された
経緯のある法律でございますので、シカを追う者山を見ずというような
考えで、目的のために、この法律があるから、そこにあったからこれを使うのだというような立場で安易に行使すべきではなかろうということを私は述べただけでございますが、しかし、これは問われて述べたのであって、私が
発言を求めて述べたわけじゃありません。
経緯を述べろ、
考え方を述べなさいと言うから、多数党の総裁としてではなく、私も立法府の一員として席を置く者として、本法の
成立の
経緯を知っているだけに申し上げます、こういうまくらをつけてちゃんと申し上げておるわけです。あときめるのは、これは議院でおきめになったことでございまして、
自民党が証人に反対をしたということで——まあそれは確かに
審議は中断したかもしれません。それだから私の
責任だと言われても、遺憾でございましたとも申し上げられないことでございまして、私は遺憾のときは遺憾だと申し上げます。あやまるときはあやまると申し上げますが、これはこの法律の
運用というのは、これは議会としては、非常にむずかしく、慎重に
考えなければならない法律であるということだけは事実でございますので、この法律の
運用問題が契機になって日が延びたということは、それなりに私は
国会としても御勉強になったものだと思っております。そういう
意味で、ここでどうも多数党の総裁としてのおまえの
責任を述べろと、こういうことではなく、ひとついろいろ過去の
経緯を
考えながら御判断を賜わりたい。