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1974-03-30 第72回国会 参議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月三十日(土曜日)    午前十一時三分開会     —————————————    委員異動  三月三十日     辞任         補欠選任      内藤誉三郎君     橋本 繁蔵君      中村 登美君     林田悠紀夫君      寺下 岩蔵君     大松 博文君      小柳  勇君     瀬谷 英行君      中村 波男君     工藤 良平君      柏原 ヤス君     藤原 房雄君      小平 芳平君     塩出 啓典君      栗林 卓司君     中村 利次君      須藤 五郎君     加藤  進君      野末 和彦君     喜屋武眞榮君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鹿島 俊雄君     理 事                 片山 正英君                 嶋崎  均君                 西村 尚治君                 細川 護煕君                 吉武 恵市君                 小野  明君                 加瀬  完君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君     委 員                 今泉 正二君                 小笠 公韶君                 大竹平八郎君                 梶木 又三君                 川野辺 静君                 木村 睦男君                 熊谷太三郎君                 黒住 忠行君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 高橋 邦雄君                 竹内 藤男君                 玉置 和郎君                 寺下 岩蔵君                 内藤誉三郎君                 中村 禎二君                 中村 登美君                 橋本 繁蔵君                 原 文兵衛君                 米田 正文君                 上田  哲君                 神沢  浄君                 工藤 良平君                 瀬谷 英行君                 辻  一彦君                 戸叶  武君                 中村 波男君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 宮之原貞光君                 沢田  実君                 塩出 啓典君                 藤原 房雄君                 中村 利次君                 岩間 正男君                 加藤  進君                 野末 和彦君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  中村 梅吉君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚生大臣臨時代        理        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       内田 常雄君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  徳永 正利君        郵 政 大 臣  原田  憲君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (近畿圏整備長        官)        (中部圏開発整        備長官)        (首都圏整備委        員会委員長)   亀岡 高夫君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      町村 金五君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 二階堂 進君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       小坂徳三郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       保利  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山中 貞則君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       森山 欽司君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        防衛施設庁長官  田代 一正君        防衛施設庁総務        部長       安斉 正邦君        防衛施設庁施設        部長       平井 啓一君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁物価        局長       小島 英敏君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        経済企画庁調査        局長       宮崎  勇君        科学技術庁原子        力局長      牟田口道夫君        科学技術庁原子        力局次長     伊原 義徳君        科学技術庁原子        力局次長     生田 豊朗君        外務省中近東ア        フリカ局長    田中 秀穂君        外務省条約局長  松永 信雄君        大蔵大臣官房審        議官       大倉 眞隆君        大蔵省主計局長  橋口  收君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       松川 道哉君        厚生省環境衛生        局長       石丸 隆治君        厚生省医務局長  滝沢  正君        農林大臣官房長 大河原太一郎君        農林大臣官房予        算課長      渡邉 文雄君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        農林省農蚕園芸        局長       松元 威雄君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        食糧庁長官    三善 信二君        林野庁長官    福田 省一君        水産庁長官    内村 良英君        通商産業審議官  森口 八郎君        通商産業省基礎        産業局長     飯塚 史郎君        工業技術院長   松本 敬信君        資源エネルギー        庁次長      北村 昌敏君        資源エネルギー        庁石油部長    熊谷 善二君        資源エネルギー        庁石炭部長    高木 俊介君        資源エネルギー        庁公益事業部長  岸田 文武君        中小企業庁次長  小山  実君        労働大臣官房長  北川 俊夫君        労働省労政局長  道正 邦彦君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省労働基準        局安全衛生部長  中西 正雄君        労働省職業訓練        局長       久野木行美君        建設大臣官房長  高橋 弘篤君        建設省計画局長  大塩洋一郎君        建設省河川局長  松村 賢吉君        建設省道路局長  菊池 三男君        自治省財政局長  松浦  功君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○昭和四十九年度一般会計暫定予算内閣提出、  衆議院送付) ○昭和四十九年度特別会計暫定予算内閣提出、  衆議院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関暫定予算内閣提  出、衆議院送付) ○分科会に関する件     —————————————
  2. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会開会いたします。  この際、委員異動に伴う理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事木島則夫君を指名いたします。     —————————————
  4. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 昭和四十九年度一般会計暫定予算  昭和四十九年度特別会計暫定予算  昭和四十九年度政府関係機関暫定予算  以上三案を一括して議題といたします。  三案の取り扱いにつき、理事会におきまして、審査期間は本日一日間とし、質疑時間は百三十五分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ四十五分、公明党二十分、民社党及び日本共産党をそれぞれ十分、第二院クラブ五分とし、質疑順位につきましては、お手元に配付いたしました質疑通告表順位とすることに協議決定いたしました。  そのように取り運ぶことに御異議ございませんか、    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、まず、福田大蔵大臣から暫定予算三、案の趣旨説明を聴取いたします。福田大蔵大臣
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) このたび、昭和四十九年四月一日から十日までの期間について暫定予算を編成することといたしましたが、その概要について御説明いたします。  まず、一般会計について申し上げます。  今回の暫定予算におきましても、暫定予算が本予算成立までの応急的な措置であることにかんがみ、暫定予算期間中における人件費事務費その他行政運営上必要最小限度経費を計上することといたしております。  なお、新規の施策にかかわる経費につきましては、教育及び社会政策上等の配慮から特に措置することが適当と認められるもの、たとえば、生活扶助基準等引き上げ社会福祉施設入所者生活費等引き上げ失業対策事業賃金日額引き上げ国立大学の学生の増募等を除き、原則として計上しないことといたしております。  また、公共事業関係費につきましては、新規発生災害にかかわる直轄災害復旧事業費のほか、直轄事業維持修繕費等について暫定予算期間中における所要額を計上することといたしております。  歳入につきましては、税収及び税外収入についての暫定予算期間中の収入見込み額及び前年度剰余金を計上することといたしております。  以上の結果、今回の一般会計暫定予算歳入総額は七千六百十六億円、歳出総額は九千九百九十八億円となり、二千三百八十二億円の歳出超過となりますが、国庫の資金繰りにつきましては、二千五百億円を限度として、必要に応じ大蔵省証券を発行することができることといたしております。  次に、特別会計政府関係機関につきましては、いずれも以上申し述べました一般会計の例に準じて編成いたしております。  なお、財政投融資につきましても、暫定予算期間中に必要となると見込まれる最小限度の額として、国民金融公庫及び中小企業金融公庫に対し、合計三百四十億円の資金運用部資金運用を予定いたしております。  以上、昭和四十九年度暫定予算につきまして、その概要を御説明いたしました。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同いただきたいと存じます。     —————————————
  7. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) これより質疑を行ないます。小野君。(拍手)
  8. 小野明

    小野明君 暫定予算の質問に入ります前に、総理並びに外務大臣に二、三点お尋ねをいたしたいと思います。  まず、総理でありますが、昨日の衆議院での審議におきまして、日中航空協定早期決着を強調されたようでございました。これについて本国会にぜひ提案をすると、こういうことがお述べになられたようでありますが、これについて御所見をまず伺いたいと思います。
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日中航空協定につきましては、現に北京におきまして日中両国機関において交渉継続中でございます。この交渉がまとまればできるだけすみやかに国会批准を求めたい、こういうことでございます。現に進行中の問題でございますので、これが円満早期妥結をこいねがっておるわけでございます。
  10. 小野明

    小野明君 今国会にどうしても提案をなさる決意であると、そしてそれができない場合は公の責任をとると、このように御発言になっておられるわけでありますが、この御発言経緯なり真意を伺いたいと思います。
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そう端的に申し上げておるわけじゃないのでございます。これは現に相手のある仕事でございますし、日中両国間において交渉継続中である、こういうことでございます、しかし、もうすでに日中の国交の正常化が行なわれてから時日もたっておるわけでございますし、航空協定早期締結が望ましいということは両国共通考え方でございます。そういう意味で、早期に円満妥結することを願っておるということがまず第一でございます。そうして、これが妥結をしたら本国会提案をするかと。これは国会開会中でございますから、開会中にまとまれば当然批准手続をとるように努力をいたしますと。これは第二点でございます。  それでどういう経緯があったか、私もさだかに記憶しておりませんが、新聞に報道しておるように、端的に公の責任、この国会に是が非でも出します、通らなかったら公の責任を負いますと、こう言ったんじゃないんです、それは。これは現に進行中でございますと。早期妥結をすることを両国とも念願しておると思いますから、こちらもそのとおりでございます。国会開会中にまとまれば提案するかと。それはもちろん提案いたしますと、出す予定でございますと。その場合に、自民党の中にいろいろな議論があるが、それで提案できなかったような場合はどうかというようなことだったと思いますよ。そんなことはございませんと。自民党も長いキャリアを持つ政府与党経験政党でございますし、党議はきまっておるし、この党議の線に沿って日中航空協定締結をせられるということであれば、まとまらないことなど万に一ございません。まとまらなかったらどうすると。まとまらないというようなことになれば、公の責任が云々せられるでございましょうと。しごくすなおに申し上げているわけでございまして、すなおにおとりいただきたい。
  12. 小野明

    小野明君 しごく事務的な御答弁であります。そうしますと、いまのような流れからいきますと、今国会提案ができないような事態もあり得ると、このように解していいわけですか。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、この国会は四月の二十九日までということでございますが、その後どうなるかは、これは皆さんおきめいただくわけです。この国会、法律的に言えばまだ七月の七日まではやれるわけです。しかし、これは政府が要請するような段階でございませんし、政府はできるだけ、四月の二十九日までまだ日もございますし、提出法案は可及的すみやかに成立をいただきたいと、こういうことを真に念願しておる立場にございまして、この国会というものがいつまでやるのか、まあ現在は四月二十九日までということでございますが、一回延長ができるということですので、どのようになるのか、それはもう国会の御決定ということでございまして、私がみだりに予測をして申し上げられる段階にないということでございます。いずれにしましても、日中の航空協定というものは現に交渉継続中でございますが、できるだけ早い機会にこの交渉妥結することが望ましいということで政府は全力を傾けております。これが締結せられれば党内所定手続をとりまして、それで国会批准を求めるということは当然の路線として考えておるわけでございます。ですから、交渉継続中でございますし、相手のある話でございますし、そういう意味で、いつまでに出せるということは申し上げられないわけです。で、これが六月、七月までかかるというようなことではないと思うんです。私は、少なくとも今国会中、いまの四月二十九日前に調印ができれば、党内手続をとりながら早急に国会審議を仰ぎたい、こういうことでございまして、その場合、ほんとうに短い間でもばたばたっとこう通していただくかもしらぬし、もう少しこういう問題は慎重にやるために審議期間が要るということは、これは国会自体の問題でございますから、政府は、行政府として政府にゆだねられておる日中航空協定という外交案件をできるだけすみやかに国会批准を求めるべく鋭意努力中であるということで理解をいただきたい。
  14. 小野明

    小野明君 いま北京で行なわれておりますいわゆる実務交渉、かなり進捗を見ているようでありますが、外務大臣、このあたりはいかがですか。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 実務者レベルにおきまして前後四回会合を重ねております。また、外相・大使レベルで一回交渉が行なわれました。交渉内容につきましては、小野さんも御案内のとおり、つまびらかにこの段階でできないことは残念でございますが、いま総理からも仰せになりましたとおり、できるだけ早く仕上げなければならないという考えで鋭意交渉を重ねておる状況でございます。
  16. 小野明

    小野明君 見通しです、見通しは。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 見通しでございますが、これは相手のあることでございまして、いつまでにこれが仕上がるかということについて確たる展望を申し上げられる段階にはまだございませんが、できるだけ早く妥結に至るように努力をいたしておるわけでございます。
  18. 小野明

    小野明君 どうなっておるのかさっぱりわからぬわけですが、そうすると総理、まあ北京でまとまれば、自民党内にもいろいろあるようだけれども、これは総理責任でまとめ、早い機会提案をすると、こういうことでございますね。
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 外交案件政府の責務でございますから、政府責任において締結をいたします。しかし、国会批准を求めるという過程においては、これは議院内閣制でございます、政党政治でございますので、これは与党との間の調整が必要であるということは事実でございます。調整が必要でございますが、本件に関する与党の態度は決定いたしております。そういう意味で、この党議決定の線で、党議決定を踏まえて国会批准を求める手続をとるということでございますから、これはもう私も、締結批准案提出というのは内閣側でございますが、党の党議を守るということに対しては党の総裁でもありますので、これらは十分所定手続を了して国会批准を求めたいと、こう考えております。
  20. 小野明

    小野明君 次に、外務大臣お尋ねをしたいと思いますが、植村会長ソ連に行かれた際の、シベリア開発の問題であります。新しい提案でありますけれども政府はどうこの提案を受け取っておられるのか、お尋ねをいたします。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 植村永野両氏に対しまして、ソ連の首脳から、シベリア開発につきまして従来私どもが承知していなかった新たな提案が行なわれたようでございます。私は、まだ直接御両氏から報告を承る機会を持っておりませんけれども担当局長をして聴取せしめましたところ、鉄道敷設を含めまして、いま申しましたように新たな提案の部分があるようでございます。この問題は確かに重要な問題でございまするので、とっさに政府考えを述べろというても、それは無理でございまして、十分検討をさしていただかなければならぬと思います。で、その検討にあたって、まず、従来私どもが伺っておるプロジェクトと新た、提案との関係がどういう関係にあるのか、そういう点がまず第一に究明しなければならないことではないかと思っております。それから新たな提案を含めまして、全体として経済界自体がどのように判断するか、その規模、信用供与の条件その他いろいろ検討すべき問題がたくさんあるようでございまして、そういった点は十分吟味しないと、政府考えを述べるわけにはまいらないわけでございまして、いまの段階は、先方から御提案がありましたことを詳細に承りまして、そこの問題点を拾う、拾いつつあるということでございます。
  22. 小野明

    小野明君 私がお尋ねをいたしましたのは、経済開発という範囲の問題ももちろん中心ではあります。その他を含めて、政治的な受けとめ方、こういうもの、いわばいま検討されようとしておるテーマというのは一体どういうものがあるのか、それらを含めてどう受けとめておられるかと、こういうふうにお尋ねをいたしたわけです。再度ひとつ御答弁をいただきたい。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま日ソ間にある懸案として検討されておるプロジェクトは、御案内のように第二次の木材開発プロジェクトが一つございます。それからヤクーツク原料炭プロジェクトヤクーツク天然ガスプロジェクトチュメニ石油プロジェクト、それからサハリン沿岸の大陸だなの開発プロジェクト、そういったものがあるわけでございまして、そのそれぞれにつきまして、関係業界先方の当事者の間で検討が行なわれておるわけでございます。もちろん、これらは大きなプロジェクトでございまして、政府も無関心でおられないわけでございますから、関係各省から局長級のオブザーバーを派遣いたしまして、成り行きは十分フォローいたしておることは事実でございます。しかしながら、そういう検討が固まってまいりまして、あなたが言われる、経済的な判断に加えて政治的な考量をいたすという段階にはまだ至っていないわけでございまして、いずれそういう段階がくるものと思うのでございますけれども、いままだそういう段階にはきていないということを御承知いただきたいと思います。
  24. 小野明

    小野明君 昨日、外務大臣植村会長とお会いになられたわけですね、この問題。会っておられませんか。——それではけっこうです。  暫定予算の問題に入りたいと思いますが、総理、今回も暫定予算になりました。昭和四十八年度も暫定予算であったわけです。田中内閣成立をいたしまして、二回も年度内成立というのが不可能になった。まあこれは解散でもあれば別ですけれども、そういうこともない。この責任をどう感じておられるのか、お尋ねをします。
  25. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 年度総予算は国民のために非常に重要な案件であることは申すまでもありません。政府予算編成を行ないまして国会の議決を求めなきゃならないということでございまして、早期成立年度内成立ということを目途にいたしまして、予算編成に全力を傾けたわけでございます。成案を得て、一月開会劈頭、国会提案をいたしておるわけでございます。その後の問題は国会の問題でございまして、これはいかんともなしがたいわけでございます。きのうも衆議院予算委員会でも御要求ございましたが、責任を感じておらぬかということでございます。これは国会に対して、審議国会にゆだねるということでございまして、国会審議に、できるだけ審議を促進していただきますように、資料の提供、また答弁等も、国会審議が進むように努力を傾けてきたわけでございますが、その後の問題は国会の自主的な運営でございまして、行政府はいかんともなしがたいことでございます。しかし、多数党の総裁としても責任を感じないか、こういうことになりますと、これは多数党でございますからといって、多数決でやっとやるというわけにはまいりません。こういうところはもうしごく民主的に運営しておりまして、党の総裁ではございますが、国会の運営に対してはなるべく政党間でもって話し合うように、これが議院内閣制、また議会制民主主義、政党政治というたてまえから考えても、総裁ではあるが、三権の一翼をになっている内閣総理大臣国会の運営まで一々指揮してはならぬ、慎むべきであるということで、国会の運営にすべてゆだねておる、こういう立場にございますから、そういう意味で、どうも政府責任を問われてもいかんともお答えのしようがない、これはすなおな答弁でございます。その中で、政府が資料提供とか、いろいろなことをもっと迅速にやればというようなことありとせば、そういう問題、将来ひとつ十分努力をいたしますし、できるだけもっと早く、提案ができれば、国会提案をできるだけ早くするように将来の問題として努力をいたしたいと存じますと、こういうことで御理解をいただいたわけでございます。ことしも一月の初めから御審議をいただこうかということで、いろいろ国会側の御意見も打診したわけでございますが、一月の二十日、再開劈頭提案すれば足る、こういうことでございましたので、政府としてはそのような措置をとったわけでございまして、国会の問題、国会審議中に政府にいろいろ御注文があれば、将来の問題として十分国会の御意思に沿うようにしてまいりたい、こういうことで御理解いただきたい。
  26. 小野明

    小野明君 総理のお話を聞いておりますと、野党にも半分責任のあるような話になりまして、まことにけしからぬ。暫定予算で三千万国費が乱費をされた、こういうことになっている。四十九年度は年度内、年内編成をやりまして、言われるように早目に御提案があったわけです。この国会暫定予算を組まなければならないようになりました一番大きな原因というのは、結局衆議院で、証人と参考人の問題であなたが総裁である自由民主党ががんばって、そして今日まで遅延をしたということに相なっておるわけです。野党が半分責任があるような話は、これはいただけない。しかも、国費がそれだけ使われておると、これらの責任をどう感じておられるかということをお尋ねをいたしておるわけです。
  27. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、ですから国会の問題でございまして、行政の長である私が遺憾の意を表明すべき問題じゃないのです。これは、証人とするか参考人とするかは国会でおきめになる問題でございます。この問題に対して、私は意見を問われましたから、私はこの法律制定の経緯を知っておりますので、この法律はみだりに発動すべきものではないと、こういうことはすなおに申し上げました。この法律は、御承知のとおり、非米活動委員会法というのと軌を一にした非日活動委員会の基本法として、メモランダムで提示をされ立法したわけでございます。それで、この法律によってたいへん迷惑を受けた政党もあるわけでございます。それが非常にまだ、この法律運用の過程において、まあ国会と司令部との意見が対立をしたというようなことで、後には団体等規制令という占領軍命令によっていろいろな事項が行なわれたという経緯を持つ問題でありまして、この法律そのものは非常にむずかしいものであると、特に昭和二十二年十二月公布のものであって、新憲法による新しい刑事訴訟法は二十四年一月一日から施行されておるわけであります。そういう意味で、国会の国政調査権の上に必要であるといってつくられた法律、これは魚でいうと半身の法律だけは残ったわけであります。非日活動委員会法は、ついに日の目を見なかったということでありまして、その後、不当財産取引調査特別委員会または行政監察委員会ということでこの法律が運用させられました。しかし、これは国政調査権の発動というにはあまりにも問題になる法律だということで、その後、決算委員会等で二、三発動されたこともございますが、憲法の精神からいっても問題があると、その後新しい憲法のもとでつくられた刑事訴訟法の中でも、新憲法に沿った制度がちゃんと制度化されております。九十九人の罪人をのがしても一人の無事の民を罰するなかれ、こういうことで、黙秘権やいろいろなものが制定せられたわけでございます。しかし、その前につくられたメモランダムケースである、尤なるこの法律においては、三親等以内の姻族、四親等以内の親族は刑事訴追を招くおそれのある場合署名をした後証言を拒否することができるという、非常にきつい法律でございまして、これは新憲法の基本的人権という面に背反するおそれがあるというような議論が、過去にたくさんあったことは御承知のとおりであります。そういう意味で、この法律は、ほとんど死文のような状態で四半世紀過ごしてきたということでございます。これは、もろ刃の剣である、へたをすると民主政治そのものを破るあれがある。それだけではなく、野党の皆さんや学界の発言としては、この法律を多数党が使ったならば、これは小数党を根絶するような法律となるおそれがあるということで、非常にこの法律の適用には慎重であったという歴史的事実に徴して、私は今日の段階において、この法律の運用に対して慎重を期せらるべきであるという意見は述べました。これは、当時この法律に参画をした人は、すべて与野党の別なく承知をしておりますし、野党の諸君は、特にこの問題に関しては、かかる法律が多数党の現在のもとで行使をせられることは、議会制民主主義の根底を破るおそれがあるということが議論された経緯のある法律でございますので、シカを追う者山を見ずというような考えで、目的のために、この法律があるから、そこにあったからこれを使うのだというような立場で安易に行使すべきではなかろうということを私は述べただけでございますが、しかし、これは問われて述べたのであって、私が発言を求めて述べたわけじゃありません。経緯を述べろ、考え方を述べなさいと言うから、多数党の総裁としてではなく、私も立法府の一員として席を置く者として、本法の成立経緯を知っているだけに申し上げます、こういうまくらをつけてちゃんと申し上げておるわけです。あときめるのは、これは議院でおきめになったことでございまして、自民党が証人に反対をしたということで——まあそれは確かに審議は中断したかもしれません。それだから私の責任だと言われても、遺憾でございましたとも申し上げられないことでございまして、私は遺憾のときは遺憾だと申し上げます。あやまるときはあやまると申し上げますが、これはこの法律の運用というのは、これは議会としては、非常にむずかしく、慎重に考えなければならない法律であるということだけは事実でございますので、この法律の運用問題が契機になって日が延びたということは、それなりに私は国会としても御勉強になったものだと思っております。そういう意味で、ここでどうも多数党の総裁としてのおまえの責任を述べろと、こういうことではなく、ひとついろいろ過去の経緯考えながら御判断を賜わりたい。
  28. 小野明

    小野明君 非常に長い御答弁でありますが、それでは、いまのようなお気持ちであれば、この狂インフレ、物価狂乱と、こういう事態でありますが、これがまあ企業が十一月、十二月、先取り値上げをやったと、反社会的企業だと、こういうふうならく印を社会的に押されておる。だからこれは総理の御見解を聞くわけですが、全部がその参考人ということではなくて、やはり非常に反社会的なことがはっきりしている企業というものは、やはり証人としてこれは喚問さるべきではないか、すべきではないかと私は思うのです。ひとつ御見解をいただきたい。
  29. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は国会の意思で本法が適用せられるならば、これはもうそれに従わざるを得ませんが、個人的見解を求められるとすれば、この法律は国会運用すべきではないという考えでございます。あくまでも証人としてではなく、参考人として国政調査権を発動すべきである。この証人及び証言等に関する法律というものを発動するというときには、いま申し上げたように、非米活動委員会法の一体の法律、非日活動委員会という、いわゆる叛乱罪とか、そういういろいろな国家安全保障の面から立法せられたものであるものが、その後、不当財産取引調査特別委員会や行政監察委員会や決算委員会でやられて、行政監察委員会という特別委員会は廃止になったという経緯を持つものであります。与野党とも賛成して廃止をしたということであって、国政調査権にもおのずから限界があることはもう申すまでもないことであります。国政調査権で無限大に力があると、この立法府の無限大の力は憲法に規定するとおりです、立法権のみにおいては。問題のあるものに対しては立法権を行使する。現に、法律を修正する、新しく改廃できるという面に対しては、憲法が定めておる権限でございますが、行政との紛淆、それから司法との紛淆というような問題に対しては、厳密に境を置くべきことは、三権分立の立場から当然のことであると私は理解しております。そうしていま、反社会的行為とか、一口でただ観念的に申すべきではないと思うのです。これはちゃんと法律があるわけです。違法行為があれば、刑法によって罰せられます。その他いろいろな法律によって、司法がこれを罰するわけです。国民はこれを訴追する権利を持っておる、こういうことでございますから、これはもう当然司法の分野に委任すべきことでございますし、行政的な問題としては、税を執行するということもございます。税務検査を行なう。過酷じゃいけませんが、それは法律どおり厳刑峻法ということで、ちゃんとこれ処置する権能が与えられておりますから、与えられておる範囲で行政権を発動する。そうすれば今度は、国会は、その上にいろんな議論はあっても、今度の会社利得税法案のように、これは普通なら法定主義でありますから、四月一日以降取りますよというのがほんとうでございます。しかし、さかのぼって、本法成立後は三月三十一日に終結する決算の年度においてもこの法律の適用を受けると、こう言えば、少し法律論から言えば荒っぽい法律論だと思いますが、国会の意思が定まれば国民はそのとおり法の適用を受けるわけでありますから、そういう面はやはりきちんとお互いが自分の分をちゃんとわきまえて、自分に委託された権限内において権力を行使すると、こういうことになりますと、国会における国政調査権というものはやっぱり司法にゆだねべきものはゆだねる、行政にゆだねるものはゆだねる、立法府で行なうものは立法権限を行使するということに、おのずから明らかな限界というものは置くべきだという考え方を私は持論として持っております。ですから、本法の適用に対しては私は個人的には反対であります。これ、もし発動した場合、憲法違反でもって訴訟が起こるというのは、これは過去からそういう問題が行なわれておるわけであります。これは御承知のとおり、この法律ができたときに、議院証言法によって、河野一郎先生がいわゆるこの法律によって起訴されるという問題がございました。それで議院から——私も高裁に出まして、この法律は親告罪である、議院は告発をしないということになっておる、こういう証言をしたために、占領軍はついに身柄を拘束しながらも国内法の適用をすることができなくして、政令違反で処断をしたという経緯を持つものでございまして、これらの問題に対してはそう簡単にこの法律を国政調査の名のもとに発動すべきでないという考えは現在依然として私は持っております。明確に申し上げておきます。
  30. 小野明

    小野明君 長くなりますから、この問題はこれでやめますが、それじゃ会社利得税はそれでいいのかと。私ども、この内容についてはもちろん不満。さらに、それじゃその他の、たとえば国民生活安定法、これが至急発動されたか、非常に発動が甘い。したがって、この反社会的企業の根元にメスを入れた解決、今日のインフレ解決というのはでき得ないのではないか、こういう感じを持つわけです。  そこで、大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、暫定予算の御説明がございました。この公共事業の中に新規発生災害費一億八千四百万計上してございますが、予見しがたい突発事故といえば、別に予備費五十億円計上してございます。したがいまして、昨年度の例を見ても同様額が計上されておりますが、この暫定期間中は使用されておりませんですね、四十八年。別に予備費が五十億円計上されておりますから、この一億八千四百万円というのは不必要ではないか、こういう質問であります。
  31. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 予備費は、予見しがたい事態が発生した場合に、それに充当するものであります。新規発生災害、これは予見し得ないというんでなくて、もう発生しておるんです。その続きの災害に使用しようと、そういうことでございまして、これはまあ予備費をもって充当するという性格のものじゃないんです。
  32. 橋口收

    政府委員(橋口收君) いま大臣からお答えがございましたのは、やや実態と違っておりますので、私から補足して御説明申し上げます。  現に発生している災害に対する手当てではございませんで、四月一日から十日まで十日間でございますが、その間に万一災害が発生した場合の用意として計上いたしておるのでございまして、まあ過去の経験値から申しましても、この程度のものは用意する必要があると。したがいまして、大臣が冒頭にお答えになりましたように、予見しがたい予備費という性格のものではなくて、まあその期間中万一発生した場合の過去の経験値からとったものでございます。
  33. 小野明

    小野明君 いまの御説明ではっきりいたしました。すでに発生しておる災害なら、もう四十八年度でやっておるはずですからね。  それで、まあここに新たに一億八千四百万というものを計上するということは、予備費が五十億円あり、その上にさらに予備費的な、予備費の上に予備費を重ねるというような結果になるのではないかと、こういう批判であります。再度お尋ねをいたします。
  34. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 予備費のほうは、これは災害ばかりじゃないのです。どういう事態が起こるかもしらぬと、国費は災害ばかりに限ったわけじゃございませんから。もちろん、五十億、これは災害に使えないというわけじゃないんですが、災害を含め予見しがたい経費に充当すると。それから、予算のほうに組んでありましたのは、これは主計局長から御説明申し上げましたように、過去の経験値からこのくらいの災害はあるであろうと、つまり予見しがたいのじゃなくて、どうもそれくらいの災害はあるであろうという事態に備えるものであると、こういうふうに御理解願います。
  35. 小野明

    小野明君 次の問題点は中小企業対策経費であります。この説明にもございますように、社会保障関係費、これは失対だとか、あるいは生活保護だとか、若干の政策費的なものが入っておる。文教関係についても学生増募の関係から入っておりますね。これは御説明のとおりでありますが、中小企業対策費というのは、わずか事務費を一千三百万円しか計上してございません。先般の委員会でも御説明になっておりますように、中小企業の三月危機、倒産が九百件になんなんとしておる、こういう事態を受けるならば、当然これは中小企業に対しても政策的な経費というものの計上、配慮があってしかるべきではないのか、これは中小企業無視の暫定予算ではないのか、こういう意見を持っております。御意見をいただきます。
  36. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、あと十日たちますと本予算成立いたしまして、それで中小企業対策費を含め四十九年度に予定しております国の施策が一斉に開始し得る状態になるんです。まあ、その間十日間です。十日間につきましては、中小企業としては事務費だとか、そういう系統の費用は要るわけでございますが、最も緊急を要する費用は何であるかというと、これは融資の仕事である、こういうので、融資につきましては、これは十日間といえどもゆるがせにすることはできないというので、十日間の所要額を十分見積もったと、こういう次第でございます。
  37. 小野明

    小野明君 御意見もございましたが、まあ、私の見方から言えば、経費の計上が非常に場当たりである、悠意的である、暫定予算とはいえ、多少ずさんではないかという意見を持っております。  次に、本予算の問題、四十九年度予算の問題に移りたいと思います。  これは、総需要抑制のために緊縮予算、いわゆる一般会計を一九・七%、二〇%以下に押えてまいったと、これまでるる説明がございました。そこで、これだけのインフレでございます。思い起こしますのは、昭和二十四年度ですね、予算編成に対するドッジ発言でございます。これは若干要約いたしますと、「予算に関する討議および交渉が何時も全予算の一部に過ぎない一般会計のみに限定されて来たことである。」という点があげられております。その弊害として、「一方では収支の均衡または黒字を示しても、他方では大きな赤字を計上することが出来る。」——一般、特別会計両方操作をできるではないか、こういう点の指摘があります。「公共資金による政府事業の一部を示すに過ぎない一般会計の帳ジリだけを強調することによって国民に誤った認識を許し、またはこれを奨励するようなことのないように」すべきである、こういう発言がございます。竹馬財政を切って荒療治をする、均衡財政を打ち立ててインフレを収束したという経験があるわけです。一般的に議論が一般会計ばかりを見て、この際も論じられておるように思うわけです。そこで、特別会計も合わせた議論、あるいは政府関係機関予算も合わせた検討というものがあってしかるべきではないかと思うわけです。御見解をまず伺います。
  38. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 予算の取扱いの態度としては、まさに御説のとおりであります。これは一般会計だけで論ずるわけにはいきません。政府には特別会計もあり、また政府関係機関もあるわけでありまして、これを総合いたしまして論ずる。特にいま総需要抑制対策、そういうことが財政運営の基本になっておる。そういうときには、もう一般会計だけではなくて、総合的に国の財政全般を見回さなければならぬと、こういうふうに思います。昭和四十九年度の予算につきましては、これはほんとうにそういう総合的な立場からやったんです。総合的な見地から言いますと、これは政府関係予算の純計から申しますと二〇・四%の増加になります。それからそのうち一般会計につきましては一九・七%の増加でございます。この一般会計の増加自体が一体どうしてそんなに伸びたのだと、こう言いますと、こういう際でありますので、これはもう社会保障、これを重視しなければならぬ、こういうので、こっちのほうが三七%の増加を示すと、こういうことになる。それからたとえば公共事業費につきましても、社会保障関係等につきましてはこれらを伸ばすと、こういうような配意をしたその結果なんですが、他面におきまして、公共事業費の全体——一方において社会保障だ、住宅だ、そういうものを伸ばす、が、そういうことを含めましても全体としては前年度、四十八年度よりも少なくすると、こういうことにしたんです。その総合が一九・七%と、こういうことになるんですが、かたがた、財政投融資だ、そういう方面も十分にらんでおりまして、国の全体の財政規模、つまり予算純計の中におきまして問題になりますのは、社会保障とか、あるいは人件費の増加とか、これはそれが全然景気に関係のないというわけではございませんけれども、ほんとうに直接的に関係のあるのは何であるかというと、公共事業並びに公共事業的経費なんであります。そこで、これは各一般、特別、政府関係機関全部を総合いたしまして、そうして厳重にこれを査定する、こういうふうにいたしておりますが、その公共事業並びに公共事業的経費昭和四十八年度に比べて二%の増加になる、こういう状態で、これはもう物価の水準等を考えてみたときにたいへんな抑圧をしていると、抑制をしておると、こういうふうにいま御理解願いたいのでありまして、決して一般会計だけを見ておるんじゃない、全体をにらんで総需要抑制対策に取り組んでおると、かように御理解願います。
  39. 小野明

    小野明君 御説明ございましたけれども一般会計で一九・七%の伸びである、だから緊縮予算だということを非常に強調をされたわけですね。そこで、特別会計を見ますと三十兆円になっている。前年度四十八年が二十四兆円でありますから六兆三千億円余りの大きな伸びになっておる。一般、特別、この純計を見ますと、四十七年−四十八年の間は二一・一%でありましたが、昨年から今年度にかけての伸びは二二・三%という大きな数字になっております。で、この特別会計の増加した原因というのは一体何であるのか、食管会計ではないかと思いますが、その他理由があれば御説明いただきたいと思います。
  40. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 先ほど大臣からお答えがございましたのは、一般会計特別会計政府関係機関、三つの純計が二〇・数%ということでございます。で、いま小野先生がおっしゃいましたのは、一般会計特別会計の純計についての伸び率の御指摘でございまして、四十九年度は御指摘のように二二・三%でございます。で、四十八年度は二一・一%でございます。特別会計が大幅にふえました理由といたしましては、一番大きいのは社会保障関係特別会計でございまして、たとえば厚生保険特別会計、これは四九・四%の増でございます。それから船員保険が四六・一、国民年金保険が八八・二、労働保険が二四・一ということで、特別会計の中でも、その振りかえ所得としての性格を持つ社会保障関係費の特別会計の伸びが、量的にも、また。パーセントにいたしましても非常に大きく伸びているということがおもな原因でございます。  それから、大臣からお答えがございましたように、公共事業の関係特別会計の伸びはほとんどございませんで、たとえば港湾整備で申しますならば〇・六%、道路整備で申しますと〇・二%、治水で申しますと増減なしということで、特別会計の中でも性格によりまして非常に大きな金額並びに伸び率の違いが出ております。これが実情でございします。
  41. 小野明

    小野明君 大臣は、社会保障関係の増に大きな原因があるんだと、こういうふうに御説明がございました。ところで、一般会計の社会保障の増を見ますと、なるほどパーセンテージは大きいようです。しかし、中身は、これ、医療費値上げに大部分がいくわけでありまして、一般の社会保障がそれほどふえたというふうには私ども見ておりません。で、御説明のように、政府関係機関予算の三会計合わせますと二〇・四、前年度を見ますと一九・八である、その前を見ますと一七・七、こういうふうに、この純計はやはり前年度を順調に踏襲して、決してこれは、言われるような緊縮予算、こういう内容のものではないのではないか、こういう見解を持つわけであります。いかがでしょうか。
  42. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま御説明申し上げたように、この純計は幾らか増加しておるわけです。しかし、総需要抑制政策の見地から見たらどうだ、こういう問題になるわけですが、純計の伸び率が増加したというわけは、社会保障関係、これがまあ非常な伸びを示したわけです。これはまあ、一般会計では三七%もふやす、しかも、いま医療費がこれはだいぶ食っちゃったんだというお話でございますが、これは医療費の伸びがうんと高くて一般の社会保障の伸びが圧縮されたのかというと、そうじゃないのです。これは大体平準化された伸び率をしておるわけです。そういう見方は、私は当たらないと思うのでありますが、ともかく社会保障費が特に特別会計で非常にふえた、そういうような関係で、いま、これだけの物価高の際に、社会保障的施策をなおざりにするわけにはいかぬという配慮からそうしたわけでありますが、総需要抑制の見地からいたしますと、公共事業並びに公共事業的経費が一体どうなったんだ、こういうことでございます。これは、総合いたしまして、政府関連財政全体で四十八年度に比べて二%ふえておる。これは、物価の推移ということを考えますと、かなり思い切った削減である、こういうふうに御理解願いたいと存じます。
  43. 小野明

    小野明君 そこで、公共事業費についてお尋ねをいたしますが、昭和四十八年の公共事業の進捗率をお尋ねをしたい。これは去年の八月三十一日に、三会計並びに財投、あるいは地方財政を含めて総額一兆四百二十七億、一兆五百億ばかり、これ繰り延べの決定をしております。これらをあわせて、ひとつ進捗状態を御説明いただきたい。
  44. 橋口收

    政府委員(橋口收君) ただいまお示しがございましたように、昨年の八月、閣議で正式におきめいただきまして、公共事業関係経費等の繰り延べをいたしておりますが、それは御質問の中にもございましたように、約一兆五千億でございまして、正確に申しますと一兆四百二十八億でございます。で、そのうち三千四百億は地方財政でございまして、中央政府としましては七千二十八億の繰り延べをいたしております。で、その後十二月になりまして、経済情勢から見まして、再度、新規の着工なりあるいは工事の完成に相当期間のかかるものにつきましては事業の実施を差し控えるということをおきめいただきまして、それによって現在さらに繰り延べを追加いたしております額が千八百五十六億円でございます。七千二十八億円と千八百五十六億円とを足しますと八千八百八十四億円でございまして、これは財政投融資、金融事業も全部含んでおりますので、繰り延べの率といたしましては約九・二%になっております。  で、進捗状況でございますが、大体この繰り延べをおきめいただきました線で進んでおりまして、契約率も例年に比べますと相当落ちております。したがいまして、三月末でも契約率は九〇%をちょっと上回ったぐらいで推移するのではないかという推定をいたしております。
  45. 小野明

    小野明君 総額はわかりましたが、各会計ごとに執行の状況、繰り延べの状況を御説明いただきたい。
  46. 橋口收

    政府委員(橋口收君) トータルの数字で申しますと、一般会計が千二百八億円、率にいたしまして八・七%でございます。特別会計が千八百四十八億円、九・四%。政府関係機関が千四百九十一億円、八・二%。ここまでの計で八・八%でございます。それから財政投融資が六千三十二億円、率にしまして九・二%。で、重複分がございますので差し引きまして、先ほど申し上げました八千八百八十四億円、九・二%ということになっております。
  47. 小野明

    小野明君 これはいつの時点ですか。
  48. 橋口收

    政府委員(橋口收君) これは十二月二十二日に閣議で方針をおきめいただきまして、その後、関係省庁と折衝いたしました現在の計数でございます。
  49. 小野明

    小野明君 自治大臣、地方財政の関係を御説明いただきたいと思います。
  50. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 地方自治体の公共事業も、いまお話しがございましたように。総需要抑制の見地から繰り延べ等が相当に行なわれておるわけでありますが、いま私どもの手元にある材料といたしましては、大体十二月末現在が六九・三%これは前年の七二・一%に比べると、かなりのおくれが出ておるというのが実情でございます。
  51. 小野明

    小野明君 大蔵大臣、いまのような繰り越しの状況でありますと、四十九年度第一四半期の契約率についても、当然これは抑制方針を貫かなければならぬと思います。第一四半期の契約率、契約目標、これらについて御方針を説明いただきたいと思います。
  52. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十八年度から四十九年度への繰り越し、これはもうかなり多額にのぼると思うのです。つまり、繰り延べをしておる額がすでにいま御説明のような数字になっておる。そのほかに、事実上繰り越しというふうに整理されるものがかなり出てくるのじゃあるまいか、そういうふうに見ております。そういう繰り越し額と、今度御審議いただきまして成立をする予算、これを合計したものが、これが昭和四十九年度において使用し得る予算、つまり予算現額ということになるわけでございますが、この第一四半期のその予算の使い方というものは、いまこの景気情勢から見て非常に重要な問題だろうと、こういうふうに思っております。  それで、第一四半期だけについて見ますと、四十四年度が四五・八%、これは契約率であります、それから四十五年度が四二・四%、それから四十六年度が四八・五%、四十七年度が四六・九%、四十八年度が三七・九%とこういうふうになっております。しかし、四十九年度につきましてどの程度にしますか、まだ予算決定していただかない今日、正確なところはきめておりませんけれども、かなりこれは抑制ぎみにやらなければならないのじゃないか。したがって、四十八年度が最近の最低の契約率でありますが、三七・九%、これを相当下回る、そういう額にしなければならぬかなあと、こういう見当で、ぼつぼつ各省との間に話を始めようとしております。
  53. 小野明

    小野明君 そうすると、昨年度契約率を下回るのがめどであると、こういうことですね。そうしますと、当然これは補正で減額という事態になるのではないか、減額補正、こういうふうに考えられますが、いまの総需要抑制方針とあわせてどのように見通しておられるか。
  54. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは御決定をいただく予算でありますので、それを年度内において修正するんだということは予定はいたしておりませんです。第一四半期、第二四半期、第三四半期、第四四半期と、こういうふうにある中で、第一四半期の契約額を少な目にする。したがって、景気等の情勢に見合いまして、たとえば第三四半期、第四四半期において第一四半期のおくれを取り戻すと、こういうことが一応の考え方になるわけであります、いま直ちに、これだけはもう昭和五十年度に繰り越してしまって、そして使わないんだという考え方じゃないんであります。
  55. 小野明

    小野明君 そうしますと、第一四半期、この四−六月の間は総需要抑制を改めるというような転換はないと、抑制方針をきびしく貫いていくんだと、このように受け取ってよろしいですか。
  56. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまさように考えております。
  57. 小野明

    小野明君 総理お尋ねをいたしますが、物価動向につきましていろいろ御説明もあっておりますが、現在の段階で、狂乱物価の鎮静の見通し、これらについて御見解をいただきたいと思います。
  58. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物価は鎮静の方向に向きつつあるということは、きのう発表しました東京都の卸売り物価、それから消費者物価指数から見ても、そうは言い得るわけでございます。しかし、卸売り物価が対前月比ゼロである、消費者物価が〇・七であるということから見ますと、非常に落ちついてきたということは言い得るわけですが、ただ、これは一時的な小康状態であって、長期的に見てまだ波動があるだろうという見方もございます。それはなぜならば、いま石油を押えたということで、石油もとにかく一応のめどはつけましたし、石油製品その他五十三品目に対しては行政上の措置をとっておりますし、百四十八品目に対しても民間に要請もしておりますし、財政の支出等も抑制ぎみであるので、おおむね落ちついたという見方がある一方、これからまた電気料金、ガス料金、私鉄料金、また十月になれば鉄道運賃や米だというようなものに加えて、三万円といういわゆる春闘が行なわれた場合これはどうなるのだ。どっちにしたって、物が下がるというような要素は非常に少ない。そういう意味で小康を得たという一つの現象であって、まだまだ政府がよほどの考え方で行政をやっていかないと、必ずしも物価安定ということが定着できたというふうに見るのは早計であると、これも正しい考えだと思います。ただ政府としては、過去十一ヵ月、十二ヵ月連騰であったというような問題、中には異常物価、狂乱物価と言われたようなものがあったにもかかわらず、対前月比ゼロの卸売り物価、また消費者物価が〇・七と、こういうことになれば、とにかく落ちついてきたということは事実でございますし、その後、なおいま大蔵大臣が述べましたとおり、四十八年度の予算の繰り越しもございますし、四十九年度の第一四半期、四−六月は十分配慮いたしますと。そこへもう一つは、春闘もあるし、いろいろあるけれども、いままで水ぶくれだと言われ、仮需要だと言われておりました、そういう原因の一つをなしておった金融の超緩慢ということを、まあ超緩慢を緩慢に、緩慢から正常に、正常からもう少し引き締めぎみにと、こういう体制をずうっと続けていくつもりでございます。  そういう状態でございますから、まあいろいろな、普通から言うとたいへんむずかしい問題だなと、こういうことは私も理解はいたしておりますが、それよりも、いわゆる十一月、十二月のあの物価高というようなものに対しては正常なものに押える、そういう方向に向かって動き出すような政策をいま進めておると、こういうことでございまして、まあ春闘がどういう結果になろうが、まあ夏までには——これは三月の中旬のいま数値を出したわけですから、これが三月の下旬になり、四月の上旬になり、中旬になり、四月の下旬になる、四月の下旬の数字には少なくとも春闘物価というものを吸収しても、何とかこれを正常な状態にしていって、六月、七月、夏には下降ぎみにと——まあ下降ぎみというのはなかなかむずかしいんです。むずかしいんですが、そういうところまで持っていかないと、去年の十一月ごろのノーマルな状態——まあ去年の十一月をノーマルだと思っているわけじゃないんです。もっと先がノーマルだと思っているんですが、まあとにかく国民が、物価は落ちついてきたなあというような状態まで持っていきたいというのが政府考え方であります。
  59. 小野明

    小野明君 いま、いろいろな見方があるようでありますが、六、七月、夏までと、鎮静するという、以前の御答弁と変わらないわけです。そこで、それではまあ参議院選挙までということではないかと。それが済めば一斉に金融引き締めを緩和し、物価が軒並みまた反騰してくる、こういうことではないのかと、こう思われるわけであります。その点はいかがですか。
  60. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 参議院選挙までなんということ、考えてないんです。参議院選挙は、どっちにしてもですな、日本人の間のものでございまして、これは自民党であろうが社会党であろうが、それはそうその国民に——まあ国民に影響あるとは思っていますが、いずれにしても、そんなことを目標にやっていません。そうじゃないんです。これはことし一ぱい、来年三月までかかってもこれは正常なものにしなければ、もうこれは政治の責任は果たせない、こういう考えなんです。ですから、それなりに私はここで申し上げますと、いままで皆さんにも、私も相当言われたわけですよ。列島改造論を君が出したから土地が上がったんだと。私はそうじゃないと、こう言ったんです。そうじゃないだけでなく、列島改造論が両院を通過するころには土地は下がりますよと、こう言っておったでしょう。そんなことあるかと、こう言ってましたがね、あるんですよ、こういうふうに。  申し上げます。財政がどうであるとか、こんなことを全然国民に知らしめないところも、まあ私たちも問題があると思いますが、これはなかなか一年か半年過ぎなければこういう数字が出てこないというところに問題があるんです。ですから、土地は一体何で上がったのかということを考えますと、それは列島改造論が出たから上がったというなら、列島改造論をやめて下がるならいつでもやめますよと、私はこう言うのです。メンツじゃないのです、これは。そうじゃなく、やってみましたら、数字はちゃんと出てきましたよ。長い間かかりましたけれども昭和四十四年にですな。これは財政の問題じゃないんです。財政の一兆円とか五千億円とかという問題とはるかに違う原因があるんです。昭和四十四年から四十七年までの約四ヵ年において土地のために払われた金融、金融上土地のために国民に散布された金は一体幾らあるか、十兆円あるんです。四十四年度に一兆三百五十九億円、四十五年度に一兆七千億円、四十六年度に三兆三千五百億円、四十七年度に三兆二千三百億円、こうあるんですよ、十兆円。これに四十八年度を入れれば十四兆円ないし十五兆円という金が土地のために出ているわけです。これは税のもとになっているのです。そこはわかるのです。四十四年四月一日から税の特例法を出したわけです。五%、一〇%、一五%、今度二〇%になるわけです。これからこの国庫に納入された税金、税金から押えた金でございますから、年間八百億しか入ってなかった土地の売買に対する税金が千五百十億円、千七百億円、三千三百五十億円、四千八百五十億円と、こう納まっておるんです。ですから、この金はどうしてかというと、これは先ほど申し上げましたように、前から申し上げておりますように、ドルの問題でもって過剰流動性があったというような問題、設備投資が行なわれなかったために銀行に返済が行なわれなかった、土地や株式に回った——株式の代金を入れれば一体幾らだとお思いになります。七十二兆円の中の約四〇%近いものがこういうものに振り向けられれおる事実、これは事実です、数字ですから。土地は上がるわけですよ。これは仮需要です。仮需要です。やっとこれ、つかんだんです、私は。ですから、これはいま企業が土地として持っているわけです。それで四月一日から今度売ると二〇%重課されるというから、売ろうか売るまいかと、こういって、なかなか土地が下がらないということであります。  しかし、これはこのままにしてはおけない、財政だけでやれるわけはありませんから、これを全部引き揚げれば、一ぺんに地価は半分に下がります。半分以下になります。私は明確に申します。しかし、それをすればみんな倒産になっちまう、倒産。ですから、いま銀行局をして調査をせしめているわけです。ですから、これは土地は持っておっても、株は持っておっても、引き揚げれば倒産になりますから、倒産させないようにするには、正規な営業金融はやりますと、やりますが、貸し増しにはしませんよと、いまあっているものを四月の三十日まで幾ら一体売って回収してくれますか。五月の三十一日まで、六月三十日まで、七月三十一日まで、九月三十日まで、この十数兆円のうち——ここらまあ正確にしていくと二十兆円になると思いますよ、その他の仮需要といわれたものを合わせると。そのうち半数、約半数ぐらいは金融機関へ吸収しているのじゃないかと思いますが、これもまあ長くひとつ企業別に計算をします。これは出るんです。昭和四十六年の四月一日を現在として一五%で、年率一五%で日銀券の増発を押えて、そして、現在までの貸し出しのラインとの間を見れば、それが仮需要だと言い得るわけですから、大ざっぱには。これはあなた方がいつでもそう言われてきたんです。日銀券の増発というものはそのまま仮需要とは言いがたいとか、それが物価を押し上げているものでないとは政府答弁してきましたけれどもね。一つの物価上昇の要因であることは事実であります。これが流通経路において在庫投資としてちゃんと物を抱いておれたんですから、物は上がるまで売らんでいようと。しかし、金を締めれば売らざるを得ないんです。だから流通経路には品物はあります。通関統計で入ってきている物が、国民が使ってない物がどこかにあるはずなんです。ですからそれは何でささえられておった、こういう金で仮需要としてささえられ、物価を押し上げておったことは事実ですから、これはびっしり今度倒産をさせないように、半年ぐらいかかりますよ。これは半年ぐらいかけなけりゃ、とてもそれは恐慌が起こってくると思いますから、パニックらしいものを起こさないで正常なものにする。これは、糖尿病のようになっているものを、一ぺんにめしを食わさんでいりゃ血糖は下がるかもしれませんが、まいっちまうと悪いから、飯は五はい食ったものを四はい、三ばい、二はい、一ぱい、あと水を飲めと。水を飲むだけではだめですから……。そういうことで、これと同じことなんですよ。これ、正常な数値まで金融を締めていくということを考えますと、物価は下がります、必ず。ですから、そうでなければ、三万円のとにかく春闘をやっているときに、物価を夏まで下げますなどと言えるわけがないんです。それはそうですよ。そういう意味で、やっと数字をつかんでおるということだけは事実でございますので、こういう仮需要、いわゆる不必要な下ざさえというような、そういうようになっているものを取っ払って正常にする。いろいろな物価を抑制するには悪い条件がありますよ、どう考えだって。あなたが私の立場になれば、たいへんだなということはわかると思います。三万円もこれ、上がったり、ストライキが行なわれたりしたら、物価は下がるどころじゃない、上がると、こうみんな思っておるけれども、それでも私も大蔵大臣も、夏までには依然として安定的にしますと、こう言っているには、それなりの理由があるということを考え、そういうものをしぼっていくということでございますので、それに財政の健全運営、国民の協力を得れば、私は物価の正常な状態は期し得る、また、期さなければならない。これは明確に申し上げておきます。
  61. 小野明

    小野明君 まあ、この春闘といいますか、賃上げの問題は、あとでまた議論を、質問がありますから質問したいと思いますが、列島改造の問題、金融の問題まで触れられたので一言申し上げたいんですが、それだけ手元流動性がある、だぶつきがある、おまけに為替変動で差益でがっぽりもうけた、事態は超低金利である、そういう中で列島改造を打ち出されたものですから、そのだぶつきが全部土地に走った、あるいはちょっとおくれて株に走ったと、これが実態ではないですか、私はそのように見ますよ。
  62. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 使うところがなかったんです。なかったのに貸したものですから、何かもうかるところということで、ボーリング場をつくったり、それはもう、四百ヵ所のゴルフ場が二年間に千五百ヵ所以上、二千ヵ所も計画されたということであります。これは、土地がもうかるというんじゃなく、ゴルフ人口がふえるということでもってやったんだと思います。それは列島改造論がバラ色の夢を与えたと——与えたのではないということは言いません。とにかく、なるほど考えてみれば、東京や大阪にだけ住めないなと、北海道の湿地もやがては緑濃きわが郷里になるんだという夢を持ったかもしれませんが、しかし、それがすべてのものを上げたと言われることはどうも首肯できない、こういうことですな。
  63. 小野明

    小野明君 列島改造は、これはやると長くなりますから、端的に、経済見通しと物価指数の問題であります。今年度の見通しは、卸一四・六、年度間上昇率四・八と、消費者物価九・六、年度間五・二、御承知のとおりであります。昨日、多少前年度比が消費者物価も頭を打った、あるいは卸もそうである。しかし、全国的に見ますと、前年同月比で二六・三%の水準を維持しておる。これらを見ますと、とても今年度経済見通し予算の基礎になっておるこの見通しの物価指数ではおさまり得ないと見るのが常識ではないでしょうか。当然これは手直しをする時期ではないのか、こう思います、以上……。
  64. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 引き締め政策は依然として堅持してまいりますし、いま申し上げたように、そこに銀行局長もおりますけどね、いずれにしても、とにかくきのうは、大蔵大臣、目張りをいたしますと。それは系統金融機関として農協が員外貸し付けを行なっておると。私はそれよりもまだ押しているんです。これはゴルフ場などがあって、もう何年もたつのに、まだなぜ一体十分の一でも継続できているのかというと、個人的にみんな社員がノルマをかけられまして、金融機関からローンをずうっと借りまして、それでそれが百人集まれば一億五千万円になるということでやっているんですよ。ですから、そういうものに対して大蔵大臣も、農林大臣と話をして系統金融機関もちゃんと締めますと、これはもうやむを得なくなれば国債だけ買ってくださいと、少なくとも八割は上部機関である農中へ上げてくださいという行政指導をやればできるわけですから、それは急にやって社会的混乱を起こしてはならないということでありますので、長期的に見ながら金融もよくやっていきますと、開発銀行やその他もほんとうに社会開発や必要なもの以外は押えますと、きのうの閣議でもそういう話があったように、ホテルとかいろんなもの、いますぐ必要でないもの、これ、貸し出しの対象から押えればいいじゃないかと、こういうふうにいよいよ本格的にすべてのものに目が届いて金融も財政も引き締め基調に入ろうと、こういうことでありますので、私は、物価が異常に上がったものであるということでありますから、少なくとも主要工業十ヵ国の中から日本を引いた九ヵ国の平均、ここまでは安定させられるはずなんです。させられないとしたなら、それは遺憾なところがあるんですよ。それは原材料や石油を全部海外に仰がなければならないという面から見ると、ほかの主要工業国と比べて日本はマイナスハンデがあります。ところが、国民総生産に占める国防費のウエートを考えればそれは帳消しにするだけの特性も日本はあるわけです。同時に、自由陣営の一〇%に及ぶ輸出力を持っている日本が国内物価を下げられないことはないです。ないはずなんです、理論的に。ですから私は、所得政策をとりません、こう言っているんですよ。所得政策をとらざるを得なければ、どこの国で失敗しておっても、所得政策をとらなければ物価は下がらぬということになれば所得政策とります、こう私は言います。それの可否は信を国民に問います。そういうことを言えますけれども、そうじゃなく、それなりの理由があるから所得政策もやらないようにします、それで春闘もまあとにかく労使の間で話をしてください、政府は仲裁の裁定は全額ちゃんと実行しますと、こう言っておきながら物価を下げようというには異常の決意を持っている。それがあさってから年度が始まろうというときに、来年度を、国会に対して政府が申し述べたその物価指数を一日前に変更しなければいかぬ——それはちょっと待ってくださいよ、これからやるんですから。国会の皆さんの、与野党を問わず皆さんの協力も得ながら、国民的理解と支持のもとに物価安定をさせる。できないことじゃない。世界各国がやっていることがこれだけの生産力を持っている日本ができないことはない。こういう自信ばかりでなく。自信じゃないです、これは。決意なんです。それが決意を実行しない前に変えろというのは、走り出さぬうちにやめろという話と同じことですから、そこらはひとつ御声援のほどを切に願いたい。
  65. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      —————・—————    午後一時五分開会
  66. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、暫定予算三案に対する質疑を行ないます。小野君。
  67. 小野明

    小野明君 先ほどお尋ねをいたしたわけでありますが、私は、これほど消費者物価あるいは卸売り物価等が上がっておれば、当然これはすべての経済計画をこの際修正すべきではないか、その時期等についても御説明があるものと、こう思っておりました。総理のお話を聞いておりますと、経済という大きな怪物に竹やりでいどんでいくような感じがするわけで、それでまあ決意のほどはよくわかるんですよ。お気持ちはよくわかるんですが、どうもそういう感じがしてならぬ。もっと合理性というか、科学的な根拠をもってこのインフレを退治をすると、こういうことでなければならぬのではないかと思うんです。いかがですか。
  68. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、それは竹やりじゃありません。行政力というものはそんな竹やりのたぐいではない、ここらはひとつ御理解いただきたい。行政力という背景には国会があるわけです。国会ではとにかく国民生活安定法という法律もつくっていただいておりますし、これはもう行政というものはそんな竹やりごときしろものではない、これだけはひとつ十分信頼していただきたい。  しかも、物価の要因というのは三つしかないわけです。一つは、国際的物価要因であります。それからもう一つは、国民が品物を流通段階において抱けるような、抱いておれるような金融的な素地があったわけです。同時に、第三の問題としては、消費者も、値上がりがする、たいへんなんじゃないかということでありましたが、それが政府も今度やってきたし、石油の価格もきまったし、石油が上がったら倍になるんじゃないかといわれておった灯油もくぎづけになったし、灯油を買ったのはばかをみたと、私がここで何回も申し上げたように、そのうちに自殺をするとマンションごと爆発しますよと言ったら、二日に一ぺんずつ出ているわけですよ。それでもう国民も、それはほんとうにやっぱり田中の言うとおりだということがわかってきているわけですな。だから、灯油売れないでしょう、実際において。ですから、そういうことになっていますし、それで目減りだ目減りだというけれども、貯金はとにかくうんとふえているんですよ、実際。ですから、国民も非常に健全な状態になっておるということであります。  ですから、そういう意味でいろんな条件がありますが、そういうものは国際物価というものに対しての手もだんだんと打ってきたし、石油に関してはわかってきたし、あとは春闘の問題と、いかにして過剰流動性といういわゆる仮需要を吸い上げられるかということがございますし、あとは春闘というものがどの程度一体物価に影響するのかという問題もこれはたいへんな問題です、いずれにしても。これは数字を持っていますから私はまた御質問があればお答えしますけれども、もうやっぱりコストプッシュの要因としてどうしても考えざるを得ないような状態になっていますが、しかし、それも国民各位が物価抑制というために貯蓄をしてもらえるというほうに誘導できれば、物価は主要工業国十ヵ国から日本を引いた九ヵ国の水準まではこれはやり得ると、こういうことですから、相当科学的な考え方を持っているわけです。ただ、急速に金融を引き揚げたりすると、これは倒産とかいわゆる国内的な波動が起こりますから、そういうものを起こさせないためにはやはり六ヵ月とか四ヵ月とか三ヵ月かかるということでありまして、画一、一律的にがちっと締めればそれは物価は押えられるにきまっています。それは不況的なムードにもなってくると思いますが、そうじゃなく、やはり角をためて牛を殺すようなことではならない。ですから、そういう意味で非常にしさいな観察をもって物価問題に対処しておるということでございますから、そういう意味では竹やりだなどということではなく、ひとつわれわれも応援するから政府はしっかりやりたまえと、こう言ってもらうと、国民もこれは物価は下がるな、買わぬでいようと、これはよき循環が起こるわけですよ。どうも小野さんが、どんなことを言ったって君だめだよと、こう言っていると、まだ上がるかもしらぬから少し買っていこう、こういうことになると、これはもうほんとうに国民が買うか買わぬかと、それはたいへんな影響があるわけです。ですからそういうところ、とにかく政府に二、三ヵ月みっちりやらしていただく、とにかく四十八年度が終わっていよいよあさってから四十九年度だ、政府はひとつ国民の負託にこたえろと、こういうことでひとつ御声援のほどをお願いします。
  69. 小野明

    小野明君 いや、それは物価狂乱をどう押えるか、政府の施策は誤りはないのかという立場でいろいろわれわれも目を詰めておるんですから、あなたの政策を全部賛成だと言うわけにはいかぬです、これはありとあらゆるところから。是正をすべきものは是正をすべきである、こういう立場です。  それで、大蔵大臣にお尋ねしますが、今後の金融政策、引き締めなり窓口規制と、こういうものは変わらないわけですね。
  70. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 金融引き締めの基調は、これは変えませんです。
  71. 小野明

    小野明君 通産大臣にお尋ねいたしますが、先般石油に五千億の融資をする、これは市中銀行に特別ワクを設ける、こういうことが報道されております。これは事実であるのか、この経緯をお知らせいただきたい。
  72. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 事実ではまだございません。その問題はいま検討中の過程でございます。と申しますのは、石油の支払い代金が非常に高く膨大になりつつあるわけです。それでユーザンスで外国または国内的に支払い期限を延ばしてもらっているわけです。それがたまりたまって支払い期限が一番高くなると思われるのは五月ごろから始まる、そういう意味においてかなりの支払い代金が必要とする、石油会社は国内で売った代金回収でそれで充てるべきでありますけれども、それだけでは足りないと思われる分がかなり出てまいります。そういう場合に一時の金融のつなぎとして何とか対策を講じてやらなければならぬ、そういう意味におきまして、そういう時期が近づくにつれて大蔵省とわれわれで相談をして、つなぎの資金の対策を講じてやるという必要を感じておりまして、いずれ大蔵省とも相談したいと思っております。
  73. 小野明

    小野明君 検討しておると言うけれども、それはもう大体大蔵省と相談をするというふうに方針としては固まっておるようにいま承ります。先般もああいう石油価格をきめられた、その際に過去の便乗値上げ先取り分六百五億円と、そういうこともはじかれて、この水ぶくれを取るんだ、これでやっていけるんだという方針であの八九四六という数字はきめられた。結局五月からユーザンスが消えていくと、こうなれば、いまの金融引き締め政策というのが当然そのころからしり抜けになる。これはつなぎ融資ではなくて赤字対策である。反社会的な企業ということで天下に名を売った石油に対して、何でこの石油業界に赤字対策をしなければならぬのか、こういう当然私疑問を持つわけです。この点を御説明いただきたい。
  74. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先般の八千九百四十六円という価格をきめまして、それによって石油会社の帳じりを概算してみますと、大体やはり三月末で千三百億円程度の赤字にはなるようです。その中には六百五億円と推定される去年の年末の利益を吐き出した上でございます。したがいまして、石油会社、特に民族系の会社においてはかなり経理が苦しいという実情であることは間違いないと思います。だからといって赤字補てんのために金融をするという考えよりも、いま申し上げたユーザンスの期限の到来に基づく決済のためにつなぎ融資が必要である、そういう考えに立って時期的にもそういう時期に融資の方策を講じておく必要があると感じまして、その辺についていまいろいろ具体的に検討をし、検討が終わったら大蔵省に相談をすると、そういう段階でございます。
  75. 小野明

    小野明君 大蔵大臣、この問題は五千億と言えば相当な額である、いまお話しのとおりであります。石油企業にはもちろん問題もあるし、これらの点をどのようにお考えであるのか、お尋ねしたい。
  76. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 石油会社につきましては、ただいまは非常に切り詰めましてほとんど増加しておらぬ、こういうような状態でございます。それから、これから先のことにつきましてはまだ通産省から何も承っておりませんけれども、どういう事情があるのか、私どもにもはかりかねます。
  77. 小野明

    小野明君 十分、石油価格値上げの経緯から、大臣、赤字対策であると、何で石油だけがという批判もこれはあるわけでございますから、これは慎重に両大臣、この問題については対処をいただきたいと思います。  それから総理が非常に春闘春闘ということで、あたかも物価を押し上げるのは春闘の賃上げであるというような演説でございます。で、まあたびたび節度ある賃上げと、こういうふうなことも引用されておるのです。そこで、これは賃上げがどういう経路で物価高を引き起こすのか、これをひとつ御答弁をいただきたい。これは経企がいいと思いますがね、どうですか。
  78. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) わが国の賃金は、総理大臣がしばしば述べられておりますように、過去十年間を通じまして諸外国に比べますと非常に上がっております。しかし、その期間はわが国の経済成長が成長がし過ぎだといわれるくらいに成長した時期でもございましたし、したがって、賃上げ相当分が生産性の上昇によって吸収されたというような資料を私どもしばしば見出し得るわけであります。しかし、四十九年度に関します限りでは、しばしば御説明申し上げましたように、経済成長の実質率が非常に落ち込むと、まあきのうもここに見えました下村治博士のごときは、実質成長ゼロだとさえも言われるわけでありますが、しかし、ゼロではないといたしましても、それは従来から比べますと数分の一ぐらいと、こういう状況のもとにおいて賃上げが行なわれますと、これは当然物価ばかりではなしに有効求人倍率というようなものを小さくしたり、つまり就職の機会を小さくしたり、あるいはまた失業率にも影響を及ぼしたり、したがってまた、まあ国民総生産のワク、パイが小さいものでございますから、そのままの状態が続く限りにおいてはそれは物価を引き上げる、こういうようなこと、これは何かいろいろの試算があるようでございますが、その試算の一つ一つは全く当たっておらないにいたしましても、全体を通ずる傾向としてはいま申し述べたようなことにならざるを得ない、こういうことでございます。
  79. 小野明

    小野明君 お聞きをしておりましても、やはり賃金と物価の悪循環論というものが長官の御答弁からうかがわれる。先ごろ経済企画庁で、もし二五%アップしたならば消費者物価が一九・四%と、こういう試算があるわけですね。これは一体どういう性格の数字なのか。今日のインフレというものの性格をどう見ておられるのか、再度お尋ねいたしたいと思います。
  80. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) お尋ねの数字は、一、二の新聞に出た二月のころの数字であったと思いますが、それは実は長官である私とか、あるいはまた物価局長等が関与してつくったものでは全くございません。もうよく小野さんも御承知のように、経済企画庁には非常に勉強家のエコノミストがたくさんおるものでございますから、あれは一つのモデル、ある条件を据え置いて、そのモデルを使ったりあるいはマクロ的な見方でいつもそういう試算的な検討をいろいろのものについて進めておる、その過程のもので、そういうものを、一部マスコミの方々が取り上げることになったというものでございまして、私どもが政策として打ち出そうとするものでは全くございません。したがって、あれを持ち出して、いわゆる今度の賃上げ闘争における賃金を押えるというようなことは全く考えておらないものでございます。しかし、そこにあがっておりましたような数字のどれをとっても、同じことになると思いますが、先ほども申しましたように、いまのような実質成長率が低いという前提のもとに、賃上げが、それは二五%であれ、三〇%であれ、それ以上であれ、行なわれますと、それは付加価値の増加、すなわち、実質生産の増加によって吸収されないと、こういうことになりますので、先ほど申し上げましたような事態を引き起こすということについては間違いのないわけでありましょうけれども、しかし、それを持ち出してどうこうというものではないことをあらためて私はここで申し述べさしていただきます。
  81. 小野明

    小野明君 そこに、生産性の上昇、付加価値の上昇に吸収し得ないというところが、私どもと全く対立するところなんです。長官は、こういう重大な春闘賃上げの時期に、こういうものをまるで政府見解のように、春闘の賃上げを押えると、国民に賃上げが罪悪であるかのように宣伝をした効果を持っておるわけです。こういうことは、きびしくやっぱり戒めてもらわないといかぬと思うんです。  今日のインフレ性格についての御答弁がないようですが、再度お尋ねしておきます。
  82. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) いまも申し上げましたように、その試算というものは、経済企画庁として公式に取り上げんとする意図もなければ、そういう性格のものでないことをあらためて申し上げましたし、また、時期が時期でございますので、私から若いエコノミストの諸君にも、うかつにそんなものをマスコミの方々に利用されるようなことがないようにということは十分注意をいたしておきました。  インフレにつきましては、先ほど来小野さんからのお話に対する総理大臣のお答えのとおり、インフレというのは、物の供給の増加に対しまして、購買力のほうがふえ過ぎるために、異常な物価現象を起こすという見方が簡単な説明だろうと思いますが、そういうことにつきましては、あらゆる政策を駆使しながら——もうこれは繰り返しませんけれども、そういう事態を押える政策を続ける。したがってまた、本年度におきましては物価の上昇がゼロとは言わないけれども、昨年におけるような、当初の物価についての見積りがけたを違えてしまうようなことは、これは私はあり得ない。つまり、別の表現で言いますと、インフレというものは、これは私ども初めからそのことばを避けておりましたが、そういう状況は、四十九年度の過程においては私は心配がないような状況に持っていく努力を続けておると、また、そうなるだろうと思います。
  83. 小野明

    小野明君 昨年十一月に企業経営者の意識調査というのが行なわれております。これによると、大体、二〇%ないし二五%の賃上げを予測しておるようであります。その後の物価上昇を考えてみますと、さらに高くなってもこれはおかしくない。また、昨年末の製品価格の引き上げというのは、春闘分のベア分を先取りしたものも少なくないと言われておる。これは、例の物価凍結の際にも、そういう長官の御意向が出たと思うんです。ですから、相当高い率での収束もやむを得ないと感じておる経営者も少なくないと言われておる。先ごろ、生産性本部で発表した賃金白書では、賃金交渉のものさしは、消費者物価上昇率プラスアルファ、こういうことになっておるようであります。このアルファというのは、長期的な経済成長率あるいは労働生産性の伸びをマクロ基準とした五%の範囲内、こういう提案があります。経団連も、過去一年の平均物価上昇率二二%に生産性向上分定昇込み七ないし八%、二〇ないし二一%のアップはやむを得ないという見解のように聞いておるんです。労働組合のほうは三〇%以上、三万円。こういうふうなことを考えますと、おのずから賃金交渉の幅というものははっきりしてまいるわけでありますが、先ごろから申し上げておる、節度ある幅というのは一体どういうことなのか。かりに、組合の要求する三〇%という賃上げが行なわれた場合には、物価あるいは雇用の面にどういう影響があるのか、その根拠をあげて労働、経企両大臣の御説明をいただきたいと思います。
  84. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 昨年秋の経営者の意識調査というものは、いまの石油事情が昨年の暮れにおいてあのような危機的状態がないその時代のものであったと思われますので、当然、高度成長と言われておった過去十ヵ年の経済成長というものを前提としての考えであったと思います。現に、昭和四十八年、昨年の賃金上昇の平均率というものは、これはもううそも隠しもない二〇%ないし二一%ぐらいであったわけでございますが、しかし、それも、政府の昨年の経済成長の見通しというものは実質一〇・七、名目で一四・六というようなことで、物価に至っては、まるで、あなた、いまから私どもが想像がつかないような卸売り物価の上昇二%、消費者物価の上昇率五・五%というような前提でございましたから、そういう前提のもとにおいての経営者の意識調査であったと思います。しかし、もう多くを要する必要はございませんけれども、石油事情その他で日本の経済構造あるいは経済環境というものはすっかり変わってしまっておりますので、その意識調査というものは、今日では全く通用しない。しかし、一、二、不心得な企業がございまして、先取り値上げでもやったところもありまして、中間の賞与も出したというような話も耳にいたしたことがありますので……。
  85. 小野明

    小野明君 大入り袋。
  86. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) そういうようなところは、それは中からはんらんが起こらないように、自分のところは、三〇%でもその給与を出そうというところ、それはない。おそらくいまおっしゃる大入り袋のような、将来の賃金ベースに関係のない一時的な賞与というようなものぐらいは出そうというところはあったかもしれませんが、今日では、経営者の意識を調査し直しますならば、繰り返して申しますように、経済の実質成長率が非常に小さい。また、今後日本の経済の条件変更を考えますときには、昔のような一〇%以上の経済成長というものは、とうてい考えられないということになりますと、その付加価値の増加なり生産性の増加なりの範囲に吸収され得る賃金の上昇でなければ、非常に経済のあり方というものは混迷をすると私は思います。私は、進歩的な人間で、そういう考え、思想を持つものでありまして、ある意味で日本の経済をここまで引っぱってきたのは、庶民大衆が車を持つようになったことにもあらわれますように、大衆の所得というものは、経済成長とともに上がってきたことにもよるものでありましょうから、私は、いつでも賃金アップは悪いと、悪かったんだということを決して申すわけではありませんけれども、日本の経済環境というものや、その内容が変わってくれば、それに応じた賃上げでなければ、自分で自分の首を締めるようなことになりかねないと。私どもは、試算ではありますけれども、どんな調査をやってみましても、経済成長率を二・五%のもとに——パーセンテージは一つのガイドラインになるといけませんから私は申しませんけれども、過当な賃上げをいたしますと、自分の職場を狭めるという、先ほども申しましたことに降りかかってまいるというようなことはまず間違いがないので、勤労者をも含む日本国民の将来の生活をささえるためにも、お互い、また、政府が所得政策などを持ち出すつもりはありませんけれども、持ち出す必要がないように、十分理解のある話し合いでこの問題を解決することを強く私なども期待をいたしております。
  87. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) ただいま、御承知のとおり、労使の間で賃金交渉が行なわれております。その場合に、いろんなエコノミスト、アナリストが出す意見あるいはまた労働組合側から出す意見、それぞれ違いがございます。しかしながら、賃金交渉は労使が自主的に平和的にやると、これが原則でございまして、いままで総理、大蔵大臣、あるいはあなたへの御質問を通じて、いかに今日の情勢の中にお互いが物価抑制につとめているか。それがお話しのように〇・七という、下がったような努力のあとのあるときに、そういう自主交渉が円満に行なわれながら、こういうときに私は難関を切り抜けてもらいたいと、こう思っている次第であります。
  88. 小野明

    小野明君 私は、直ちに賃上げが物価の上昇にはね返るとこういうふうには言えないと思うんです。  というのは、日本賃金研究センターの、まあ公労委の公益委員でもありますが、金子さんが指摘をしておられますね。賃金のコストが価格に占める割合は、製造業平均で一一%にしかすぎないと。五〇%をこえる原材料費に比べれば相対的に小さいんだと。だから、一一%前後に当たる資金コストの部分がかりに二五%上がっても、総コストに対する増加率というのは三%足らずで済むんだと、しかも、先取り値上げで利潤をべらぼうにふやした部分がかなりあるんですから、人件費の増加率によるコスト上昇分は物価上昇の十分の一にも当たらない、こういう意見であります。いわゆる賃金、物価の悪循環論は、他の物価上昇要因というものを無視しておるんではないか。賃金だけが物価上昇の要因だと、こういうふうに故意にしぼって説明をされておるように思うんです。同時にまた、国際的に見ても、労働分配率が、大臣、日本の場合はかなり低い。そして実質生活も一月あるいは二月もかなり下回っておるという数字が出ておるわけですね。これはもう労働大臣、労働省が発表されたとおりであります。これらの見解があるんで、付加価値の増大に見合うものがなければだめだというような、昔のいわゆる生産性基準原理といいますか、そういう言い方は、私ども納得できないと思うんです。御答弁をいただきます。
  89. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 去年の秋からの物価の異常さというものは、まさに、これはほんとうに異常でございまして、賃金が上がったから物価が上がったのじゃありません。御承知のとおり、これは世界的ないろんな変化が日本に押し寄せて、それがこういう異常物価ということでございます。  一般論として賃金と物価の循環論というものが言われておりますけれども、日本の場合、従来は生産性の中にお互いの努力によってそれが吸収されている。しかしながら、今度の場合は、もし異常なようなことが起こった場合には、ずっとスムーズにいくものがいかないんじゃないか。そういうものが、せっかくやり出している総需要抑制あるいはまた物価抑制というところに響くんじゃないかという心配などをされているだけに、まさに、国民的視野に立って、国民的連帯感の中に妥結されるようにということを実は祈っているわけであります。
  90. 小野明

    小野明君 経企庁。
  91. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 労働大臣の言われたことと私は同じような基礎的な考え方を持っております。
  92. 前川旦

    ○前川旦君 関連。  私は経企庁長官と労働大臣にお尋ねをしたいと思いますが、去年の十二月の段階で六兆円のボーナスになると。六兆円のボーナスが出ると、これは狂乱物価にたいへんな拍車をかけるということで、非常にエコノミストも心配し、ジャーナリストも心配をし、いろいろ論議されました。しかし、実際に六兆円のボーナスが出てみると、その六兆円はどこへ消えたんだろうか。その六兆円のボーナスが物価を押し上げただろうか。決してそうじゃないと思いますよ。実際、十二月の百貨店の売り上げの伸び率を見ましても、実質は落ちているでしょう。去年、一年前に比べると、名目は若干伸びていても、一つ一つの物価は上がっているわけですから実質は伸びていない。ですから、六兆円のボーナスのほとんどというのは、ほんの家計の赤字の充てんにのみ向けられて、決して物価を押し上げるような、仮需要をつくり出すようなほどの効果はなかった。つまり、それほど貧しくなっていたということでもあると思うんです。同じように、これは三万円の賃上げが心配だと総理は言われるけれども、しかし、実際問題として残業もなくなって、残業手当が狂うだけで手取りが一万や二万円は減るんですよ。実際減っている。レイオフだってこれから始まる。それから週休二日制も定着してくる。あるいは公共事業も抑制される、設備投資も抑制される、そうしますと、それは三万円の賃上げだ賃上げだというけれども、実質はそんなに、三万円賃上げになったとしても、実質はやっぱり労働者というのは低いところで分配がとどまらざるを得ない。決して物価を押し上げる要因にはならないと私は思いますけれども。その点について、労働大臣と経企庁長官の明確なお答えをいただきたいと思うんです。
  93. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 六兆円の購買力がプラスされますと、それだけその購買力によって——供給が増加しない限り、これはもう労働問題とは別に、だれが六兆円を——これは配当でも私は同じことでございましょうけれども、それだけ物価を押し上げる要因になるということを私どもは心配をいたしたわけでございまして、そのための貯蓄政策その他をとったことは、前川さん御承知のとおりであります。その際に問題は、先ほどから繰り返して申しますように、経済の規模が大きくなる場合には、私は六兆円でなくても十兆円でもいいのかもしれませんけれども、ああした状況のもとに供給力が狭められてきて、どこへいっても、たとえば、生活必需物資一つとりましても、トイレットペーパーとか洗剤とか、その他いろいろのものの供給が円滑にいっていないというようなことがいわれている状態にその六兆円が出回ることを非常に心配をいたしたわけであります。でありますから、日本の経済が、私どもの見積もりが間違いまして、四十九年度の実質成長率が二・五ではないと、もっと、私どもが将来期待をいたしておりますように、それが六%とか七%というような、正常な経済成長になるような事態でありますならば、それに応じて、これは経営者といいますか、資本を提供する人ばかりでなしに、それは勤労者の分け前というものも、当然、私はふえてしかるべきだと思いますけれども、いまのような経済がこう縮まる一方の際においてやりますことは、それは勤労者の給料がふえて悪いのと同じように、経営者の配当も、あるいは家賃も地代も、そういうものも、要するに、付加価値の分け方というものを合理的にしないと、どっか一方の階層だけ取るということになると、経済の普通の動き方というものはくずれるということは、間違いがないと思います。ただ、一部の学者には、くずすんだと、くずしたほうがいいんだと、資本と労働との関係とか、あるいは資産所得と勤労所得との関係を、いままでのような状況のもとに置かないで、そういう配分比率なり、自然的な合理性によらないで、思い切ってくずしてしまうということが一つの新しい経済秩序、所得水準をつくるためのショック的な行き方だから、この際、思い切ってそれはベースアップ、賃上げというものをやるべきであるという、一部の学者もあるようでございます。しかし私は、経済企画庁におりましても、その説には私は左祖をできないものでございます。
  94. 前川旦

    ○前川旦君 ぼくの言うこと、ちょっと正確に把握していただきたいと思うのは、六兆円のボーナスが出るとまた物価を押し上げるといって、ずいぶん年末には心配したでしょう、これは確かですね。ところが、実際に出てみると、長官のいまの御答弁では、六兆円のボーナスが出ても心配ないだけの経済成長が、十二月にあったかというと、そうじゃないでしょう、経済成長率で吸収したわけじゃないわけです。その六兆円のボーナスはどこへ消えたんだろうか、あれだけ物価を押し上げるという心配をしたあの六兆円のボーナス、どこへ消えたんだろうかと、そのことを真剣にお考えになってもらいたいということなんですよ。目減りがするとわかっていながら、将来のことを考えたら貯蓄に回さざるを得ないと、それから実質賃金下がっていましたから、生活程度を維持するためには、もう生活費の補てんに回さざるを得ない、それが精一ぱいだったわけですよ。同じことが、この春闘の賃上げの状態の場合にも、やっぱり言えると思うんです。ですから、決して六兆円のときの心配は、あのときも、これだけボーナス出たらずいぶんこれは物価が上がるぞというふうな話がいろいろ出ましたけれども、決してその心配はなかった。同じように、私は、今度三万円の賃上げがあっても、いま町工場の労働者やサービス産業の、末端の零細の労働者に聞いてみると、日曜出勤がなくなって実質賃金が減った、残業がなくなって月に二万円違うとか、落ちたと、こういうことが非常に言われているわけなんです。ですから、決して物価を押し上げる要因にはならないと、私どもはそう思うんですが、その点についての明確な見通しを、私ははっきり出してもらいたいというのが質問の趣旨なんですから、その点はどうですか。
  95. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) はい、わかりました。それにも触れたつもりでございますけれども、その六兆円は、確かに私は新しい積み立てといいますか、新しい種類の貯蓄に回ったものも——あのとき金利を上げまして、六ヵ月の定期預金というようなものもつくりましたので、そういうところに回った部分もございましょうけれども、一部は、前川さんが御指摘されるように、その所得者の生計費の不足分に回ったものも当然あったろうと思います。しかし、今後さらに、一般の毎月の給与を引き上げるということ自体は、私はそれを押えようという反動主義者ではありませんよ、ありませんが、それをかりにやったとしますると、それは一体どこからその配分の対象になる付加価値なり、生活資材というものがくるかというと、それはたとえばいろんな企業が資産を評価がえして、そしてその評価がえ利益をもって配当に回すのと同じで、何ら富も生産もふえるものではないと思います。先ほど前川さんが私へのお尋ねの中でちょっといみじくもお触れになりましたように、勤労者の職場が狭まると、これからレイオフも出てくると、また、所定外の賃金というものも減っていると、でありますから、事実、そういう現象がことしの一月の数字にも出ておりまして、所定内の賃金に関する限りは、物価の値上がりは割り込んでいると——あれはたしか〇・四%でございましたか、そのくらいの、むしろ所定内の所得の赤字が勤労者にとって出ていると、こういうことになりますので、私どものやるべきことは、賃金を押えようということではないんで、付加価値なりの分け方というものを、日本の経済をつぶさないように、合理的な話し合いで、今度のその賃金アップも片づけることが必要だと。しかりしこうして、いつまで二・五%というような経済成長率ではなしに、これは六%なり七%なりのその生産性が回復するように、政府も、経営者も、勤労者も、エコノミストも、みな、その知恵と努力によってやらなきゃならないが、その間の、今回の賃上げの問題については、私はそれを繰り返して言うと、資本家が資産評価をすれば済むというものではないと同じように、給与所得者も、ただ上がれば上がるほどいいという問題ではない。これはいろいろ業種によってでこぼこもございましょうし、また、大企業と中小企業とか、あるいは農業労働者などの所得の関係もございますので、一がいには言えない問題がありましょうけれども、そういうことを捨象してみますると、私はいま——私は実は学者じゃないんで、一介のいなかの代議士でございますけれども、そういうように私には考えられます。
  96. 前川旦

    ○前川旦君 労働大臣にもお答え願いたいんですけれども、いまの議論は、実質の賃金が下がっているということを前提にしない議論なんですね。そこのところ、実質の賃金は下がっていて、そいつをどうもとへ返して、三万円値上げしたって、もとへ返るのはそこそこぐらいなところだと思うんですけれどもね、ですから、三万円値上げしてもそれはもとへ返ると同じぐらいになるんです。それを非常に大きく上がるというふうな、そこの前提がちょっと私は論議がおかしいと思うんで、その辺は労働大臣からしっかりお答えをいただきたいと思います。
  97. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) ただいま経済企画庁長官からお話しのありました中にも、一月の実質賃金は〇・四下がっていると、こういうことも含まれまして、今日の賃金改定のときには、それぞれ労使双方が実態を見ながら、私は自主的交渉をやってもらいたい。それに対して私たちの一番願うことは、それをやるのに、何かしら、ストライキというふうなかまえでやると、せっかく組合の中からも、自分たちは賃金は取れると、しかしながら、そのことによって物価が上がっちゃかなわぬから、個別物資を指導をしながら、ぜひ抑制をしてもらいたいという、そういう話もあるわけです。でありますから、そういうことを見ますというと、その当然の権利とおっしゃるかもしらぬが、ときには違法ストなどというふうなことを言われながら、日本国じゅうに何かこう全体が麻痺するようなかっこうで、逆に物価が上がる、人心がいらいらすると、こういうことなども防ぎながら、労使がひとつ自主的な話し合いの中に、自分たちの経済情勢を考えつつ、将来の日本の経済の発展の中に、自分たちをどう確保していくかということの中に話をしてもらいたいということを要望しているんでして、私たちは労働者の立場、さらには、また、いまの日本の経済のいかにむずかしいかということは、ここで御議論されている国民的なその問題をとらえながら、その円満なる解決というものを願っているわけであります。
  98. 小野明

    小野明君 これは物価問題、個人消費の問題で、ストライキの問題は、これは見解が違うんだ。これは当然スト権がある、法律上の対立もあるわけですから。そういうことで、これにかこつけてストライキを押えようなんというような議論は、これはいただけぬ。  それで、これは総理も貯蓄性向が非常に強いと、健全であると、こういうふうに言われましたが、もうこれは庶民の、インフレから生活を守ろうという悲しい知恵で、これは貯蓄に回していると、しかも、預金利子は少ないと、こういうところに目をつけていただかなきゃいかぬわけです。  それで経済企画庁長官、先ほど製造業平均で確かに人件費は一一%前後なんですよ。コスト計算の場合に、これに原材料費とかあるいはマージンと、こういうものが当然かかってくるわけで、この人件費部分が非常に少ない。これが二五%、三〇%影響しても、そう大して物価にはね返らない、コストにはね返らないんだと、企業自身に問題があるんじゃないかという指摘なんです。これに対する見解がないんですね。
  99. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) それは小野さんにお答え申し上げますと、私と金子教授と議論をするだけになるわけでございますので……。
  100. 小野明

    小野明君 トータルは金子さんが言おうと、私が言おうと同じなんです。
  101. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 同じなんですが、それは私と金子さんといろいろ言い合わないと議決も判断もできないようにも思います。でありますから、それは金子さんの表現といいますか、考え方をここへお持ち出しになりました小野さんが、金子説をおとりになったということを私は銘記をいたすにとどめますけれども、しかし問題は、一体金子さんの言うような、それこそ産業連関表における、原油が上がったら物が幾ら上がるかというのと私はわけは同じ考え方でありまして、あの考え方にはいろいろの前提条件を、幾つかのソフトウェアを電子計算機の中にぶち込んでやらないと、ただ石油が上がったりしたことを直接のファクターとし、また、それに対するごくわずかの間接のファクターだけを電子計算機にたたき込んで入れた産業連関表というものが、それがそのまま採用されるのではないと私は同じ考え方を実は持つものでございます。しかし、これはもしほんとうにやるとすると、所得政策の問題になってしまうものでありまして、価格形式におけるいろいろなコストの分野あるいは利潤の分野、機材の分野、利子の分野、賃金の分野というものを、総合的連関表のようなものをつくりまして、ガイドラインをつくったり、あるいはその法律で割合をつくったりというようなことにもならざるを得ない点にもなりますので、この点につきましては、いまの時点で、私がこういうポストにおりますときに、これ以上の批判をいたしますことは差し控えたいと思います。
  102. 小野明

    小野明君 節度ある賃上げということを総理がいろいろ言われておるですがね、いろいろなことを抜きにしてすばりこの内容を。
  103. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 労働賃金が上がるということは望ましいことでございまして、これは別にしてお答えします。これはあなた、賃金が上がっても、それは物価上昇に寄与することは少ないんじゃないかと、これは少ない多いはありますけれども、影響はあるということだけはもう当然であります。これはいままでのように賃金が上がったものが生産性の向上によって補なわれておれば賃金の上昇は物価に影響しません、こういうふうに言えます。しかし、戦後足かけ三十年間の賃金と生産性の向上を見てきますと、確かにだんだんと西欧先進型になりつつある、これは数字が示しておるんです。これは六一年から六五年までの間には賃金コストが二・四、生産性が七・六、賃金の実質賃金は九・七上がっているとわかっているわけです。これは、六五年から七〇年までには、賃金コストが一・一、生産性が一〇・三、賃金の上がった分が一五・五、それが七〇年から七三年になると、一一・四に対して一七・六%と、賃金が生産性を上回っておるということでありますから、賃金の上昇分は、いわゆる生産性の向上でもって相殺できないという状態になり、これはまあコストプッシュ要因になっておるということは、これはここにアメリカもイギリスも西ドイツの例もみんなございますが、賃金上昇が必ずしも、日銀券の増発と物価と同じような問題で、これは全く相関関係が完全に一致するものではないけれども、一つの指数として計算をすると西ドイツの場合、イギリスの場合、アメリカの場合に賃金が物価にどう反映しているかという数字が出ておりますから、その意味において、日本においてもこういう事態において賃金が上がった場合、物価に影響はないということは言えない、これは理解できると思うのです。どの程度の一体影響になるのかという問題になると、これは計算のしようによって相当ございます。これはまあ賃金が総支出に対して二五%といいますが、鉄道とかバス事業とか、輸送事業の中では五五%ないし六〇%まで賃金であるということもあります。そうすれば、賃金が上がれば私鉄運賃はもう自動的に上がらなければならない。これはもう電力に対する重油の価格が上がれば二〇%のウエートは四〇%になると、これと同じことであって、しごく簡単な算術計算で出るわけでございますから、これが全然物価に影響ないということはどう勘定しても言えないわけでございます。ですから、それはあなたが指摘をされたように、いろいろ物価が上がる要因はございますが、ただ、一番わかりやすいことを国民的に言えば、国民総支出、GNPの伸びが百十二兆円ということで、四十八年度の計算をする場合には、このうち七十兆円が賃金及び給与所得であると、給与所得七十兆円というものが、これ二〇%上がれば十四兆円上がりますから八十四兆円、七十兆円のうちの二〇%が貯蓄性向であるということになれば、十四兆円は貯蓄をしてもらうということになれば、上がった分が全部貯蓄になって、四〇%に貯蓄性向が上がればこれは別ですが、そうでなく、それが支出に回るということになれば、当然、その需要と供給という面に作用するということは、これはもう否定できないことでございます。そういう意味で、生産性が賃金上昇分を全部カバーできないということになれば、その部分が物価押し上げ要因として働くということは、算術計算としてこれはもう避けがたい事実である。だからそういうことで賃金を抑制するとか、そんなことではなく、また前川さん言ったように、実質的に、その問題とは別に、実質賃金が減っておるのだという問題は別な問題なんです。そうではなく、賃金が二〇%上がった場合には物価に影響があるかないかという小野さんの御質問に対しては、これはないとは言えない、これはあるということを言わざるを得ない、あると。ですから、これはあるから、物価押し上げ要因の、それは全部が全部賃金なんというのは不当だよ、そんなこと言っていません、そんなこと言っていませんよ。それはもう材料は上がり、何は上がり、みんなしているのですから、電力は上がり、何は上がりということになれば、それは当然、企業別のウエートがみな違うわけですから、そんなこと言いません。言いませんがね、賃金が上がっても物価押し上げ要因にならないのだということにはなりません。これはなります、幾ばくかなります。考えようによっては相当なるということもあるわけです。いや、それだから、それが全部、だからまあ今度いま何預金かに預金といって、預金でもって優遇して、とにかく短期のものであるなら、上がった分だけすぐ六ヵ月間そのまま預金してもらうなら何とかいい方法がないかというんで、大蔵大臣いま検討しているということで、物価押し上げ要因を幾らかでも減殺しようということでいま政府努力しておるというのであって、理論的に、これが押し上げ要因にならぬということにはなりませんと、これはもうすなおな答弁でございます。
  104. 小野明

    小野明君 これは西独の場合は、やっぱりコストプッシュということがストレートに出てくる、それと日本経済の体質というのは、多少私は違うように思うのです。それで、そういう大きな影響は与えないということを申し上げたいわけです。  それで、次の問題に行きますが、会社臨時特別税、これ税額幾ら取れるのか。それから四十八年度の自然増収は幾らなんだと、同時に、この見通しと使い方という問題をひとつ大蔵大臣から。
  105. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、昭和四十八年度の自然増収はどうなるかということでございますが、租税収入の最近までの収納ぐあいを見ておりますと、どうも幾らか自然増収がありそうでございます。ありそうだというところまでは見ておるんでありますが、これがどのくらいになるか、そうたくさんにはなるはずはありませんけれども、幾らか自然増収が出る、こういうことになります。これは整理してみなけりゃわかりませんけれども、もし何がしかの自然増収が出ますれば、これは本年度の剰余金昭和四十八年度の剰余金として次の年に繰り越される、こういうことになります。  それから、四十九年度におきましては、会社臨時特別税収入、これは事務当局で検討してみますと、千七百億ないし千七百五十億ぐらいじゃあるまいか、そういうふうに言っております。これはもちろん、国庫に収納する。そして四十九年度の歳入になる、こういうことでございますが、もし補正予算を編成するというような事態がなければ、これは自然に国債の発行額を減らすと、こういうことになります。  それから、もし何らかの事態が起こりまして補正予算を編成するというようなことになりますれば、その際、補正予算の財源として充当するということも考えられるわけであります。
  106. 小野明

    小野明君 たとえば、これ、年金等の緊急スライドですね、このインフレ弱者に対する手当て、これとか、たとえば、年税額一万円以下の所得税ですね、足切り、計算ですと、約四百万で三百億ぐらいで済むようであります。これらについて減額すると、こういうことはいかがですか。
  107. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまとにかく、昭和四十九年度の予算を御審議を願っているわけでありまして、この予算は、私ども昭和四十九年度の経済を見通しまして、そうして最も適正なる予算である、こういうふうに考えておるわけであります。歳出においてもしかり、また歳入、つまり税制においてもしかり、そういうふうに考えておるわけでありまして、いまそれを変更するというようなことは、これは毛頭考えておらぬことである、こういうふうに御承知願いたいんでありますが、これから経済が変わってくる、私ども見通しと狂うというような事態があり、何らかの手当てをしなけりゃならぬという問題があるいは起こるということがないとは言えない。それからまた、天変地異、そういうものが、またなしということは断言できません。その際には、予備費という備えもあるわけでございまするけれども、それでも足らぬというような際に、さあ、補正予算を編成するかという問題なしとしないんです。そういうふうには考えますが、それは、いまのこの時点では、いずれも予見せざる事態である。私どもはそういう事態が起こることを想像しておりませんです。でありまするから、この時点におきまする私の見解といたしましては、これはただ単に国庫に収納する。つまり、昭和四十九年度の歳入として受け入れるというにとどめ、その使途につきましては、今回ただいまは特定はいたしておりません、そういうことでございます。
  108. 小野明

    小野明君 当然これは、この趣旨からいいまして、インフレで不当にもうけた、それは当然、弱者に還元をする、すべきものであると、そういう機能を果たさなきゃいかぬという観点から申し上げたわけですが、そういうことから、このインフレ弱者に何らかの手当てをするというお考えは、現在のところ、ないわけですか。
  109. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 昭和四十九年度予算は、これはもう総需要抑制というので、非常に抑制ぎみに組んであるわけです。でありますけれども、社会保障費のような社会弱者、こういうものに対しましては、これはこういう際であるだけに特別の配慮をしなければならぬというので、それは画期的というか、大幅な拡大をいたしておるわけなんです。この予算で、ただいま経済見通し、消費者物価でいいますれば、九・六%という高騰を考えておるわけでございますが、そういう事態におきましては、これはもう万全のかまえをとった予算であるというふうにいま考えておるわけでありまして、ただいまこの時点では、この予算につけ加えまして上のせをいたしまして対策をとるということにつきましては、全然考えておりませんです。
  110. 小野明

    小野明君 貯蓄性向が強い、これは悲しい庶民の一つのインフレヘッジといえばそういうことになるでしょうが、この前、一般質問の際に、預金利子について、六月時点で、十二月の七・二五という措置が切れるのであらためて考える、こういうことでございました。そこで、再度のお尋ねでありますが、六ヵ月程度の定期、一〇%程度の措置はできないものかどうか、再度お尋ねいたします。
  111. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 預金利子問題につきましては、これはたいへん多数の方々から引き上げの意見を聞かされるわけであります。ただ、その際に、皆さんの頭にありますのは、これは共通のことだと思いますが、欧米においてはそういうふうにやっておるじゃないか、わが日本だけなぜやらないというが、それは逆なんです。欧米のほうでは、零細な貯蓄者に対する預金の利子の配慮というのは非常に少ない。これは一〇何%、ドイツでは出しております、イギリスでも出しておりますという人がありまするけれども、先進諸国の大体の傾向は、これは大口の預金ですね、つまり法人預金です。これにつきましては一〇何%という高い金利をつける。しかし、零細な個人預金になりますると、これは五%、六%、七%、そのような程度でありまして、わが日本では法人預金であれ、個人預金であれ、これは平等に扱っておるわけです。  ところが、どういう理由でほかの国々はそういう零細預金を優遇しないのか、せめて法人預金並みくらいにしたらいいじゃないかというような感じを持つんでありますが、要するに、大口の預金というのは手間ひまがかからない。そこで、それに対してちゃんと厚い金利をつける。ところが、零細な個人貯蓄になりますと、貯金のための手間ひまがかかる。そういうことを配慮してのことじゃないか、そういうふうに思うんですが、わが日本はそこにいきますと、とにかく幾ら多額の貯金でありましても、零細な貯金でありましても差別はしない、原則として。むしろ、零細な貯蓄を保護しておる、こういうような状態でございます。それはそれといたしまして、預金がこういう情勢のもとでいわゆる元本利子につきまして目減りがするということはこれは事実なんです。私は大蔵大臣といたしまして、とにかくそういう貯蓄をもって国の経済に協力をされておるという方々に対しましては非常に気の毒でなりません。さらばといってこの目減り問題、これは金利を引き上げるということを考えましても、これだけの物価の変動のあるさなかにおいて、それを償うのに足る、あるいは償ってなお貯金利子としてのきき目があるくらいな利率ということを考えたらたいへんなことになる。いま小野さんは、二けたくらいな金利ということをおっしゃいますが、さあ、その貯金の金利を上げます、あるいは零細だけに限ってもそうでございますが、それを上げましたら、これはもうほかの金利にみんな影響するんです。そうすると、日本の国の金利水準というものが上がっちゃうわけだ。日本の国はとにかく輸出をしなけりゃならぬ。ことに、今日の石油の価格が四倍にもなってきたという際におきましては、とにかく国際収支という観点を考えましても、この激動の国際社会の中で生き抜く、それにはやっぱりこれは貯蓄です。したがって、この金利水準、これを安定、また、そう引き上げないというような態勢、コストをなるべく低く押えておくということで、国際競争力というものによほど配慮しないと、これは物価高どころの話じゃありません。日本の国の根底がひっくり返っちゃうと、こういうことになるわけでありまして、一般の金利水準を引き上げ、そしてコストが高くなってくるということは、これは非常に憂慮すべき状態だと、こういうふうに考えます。  それからさらに、これを技術的に考えまして、それで、まあその金利を引き上げますその財源を一体どこに求めるんかということを考えましても、財源は金融機関が持てということになりますれば、金融機関は貸し出しの金利を上げますと、こういうことになっちゃうんですよ。それは一体企業に対してどういう影響を及ぼすか、また特に中小企業に対してどういうことになるか、これはもう考えれば問題はすぐわかってくる問題だと、こういうふうに思いますし、それじゃ、人によると政府が財政で負担したらいいじゃないかと、こういう話もありますが、これはもう全くいまの総需要抑制、財政の緊縮化という方針とまっこうから対立する問題で、どう考えましても、一般の金利水準を、これをうんと引き上げるような形の預金利子の引き上げというものはできないんです。  そこで私は、そうは言いましても、零細な貯蓄者をどうするかということについてはたいへん心配をしておる。そこでいわゆるマル優、税金のかからない貯蓄の額をふやすことを考えてみるとか、あるいは暮れには六ヵ月定期ということを考えてみるとかですね、まあいま、これは預金者の気持ちにぴったりくるかどうかわかりませんけれども、割増金付貯蓄ということを考えてみるとか、いろいろしておるんですが、いずれにいたしましても、当面の政治課題としますと、四月からこの割増金付貯蓄が始まるんです。これはおそらく一兆五千億から二兆円ぐらいの金がそれに吸収されるんじゃないかと、そういうふうに思うわけでありますが、ですからこの四月、五月ぐらいの時点で、新しい貯蓄手段というもの、これはちょっと考えることがむずかしい環境になってきておるんじゃあるまいか、そういうふうに考えるんです。しかし六月になれば、どうしてもこれはボーナスシーズンになります。それから暮れに始めました六ヵ月定期、これも期限が来るわけであります。まあ、この六月の時点では何か考えてみなけりゃならぬかなあと、こういうふうに思っておりまして、前向きに熱意を持っていまそういう問題を考えておりますので、ひとつ御理解お願い申し上げます。
  112. 前川旦

    ○前川旦君 関連。  一問だけいまの大蔵大臣の御答弁に対して関連質問をしますけれども、高金利にするとコストを引き上げる要因になるということだったと思いますね。それはいまの現状を前提にすれば、そういうふうになると思いますけれども、たとえば一総資本の中に占める自己資本の割合といいますか、まあ何といいますかね、自己資本の割合というのは一七%ぐらいだといわれていますね。これは先進国に比べると非常に率が低い、これも一般的にいわれていることなんです。ですから企業が借金が多ければ多いほど、これはインフレ待望論になりますね、どうしても。インフレになればなるほど何といいますか、たくさん銀行から借りているものが得になると、全体としてこのインフレマインドを押し上げるという悪い効果があると思うんです。ですから金利を上げるということで、今度いままでの体質を先進国並みに変えていく契機にしていくことはできるのではないでしょうか。それについてのお考えはどうなんですか。
  113. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、まあ自己資本が非常にわが国の企業は少ないという点は憂慮しておるんです。これはいまお話もありますが、借金でやっている。そうすると、どうしても企業じゃインフレマインドになると、こういうお話ですが、そういう傾向はあると思うんです。しかし、これを是正するというのは時間がかかります、これは。これは五年やそこらで解決する問題じゃない。逐次解決しなけりゃならぬ。いまそういう状態になってきたのはどういうことかといいますと、経済の成長がえらいスピードできたわけですよ。その高度成長、まあ超高度成長といいますか、そういう中からいろいろな問題が生まれてきておるわけですね。物価の問題も、国際収支の問題もいろいろ出てきておりますが、いまのお話しの点も、企業が成長発展していく。しかし、それに対する金が間に合わない。その金は自己資本では充足できない、そこで銀行に行って借りると、こういう形になって、それでいま自己資本比率が悪くなっているという一つの原因は、その成長発展のスピードの問題にも原因があるのですが、これをさて直していくとなるとかなりこれは時間がかかります。いま金利を上げたらどうですかと、こういう話でございますが、金利を上げて一体どうなるかと言うと、いまわが国の金利水準というのは国際社会の中でちょうど中とこです。そこで、とにかくいまわが国の国際収支というものがああいう形になっておるわけでございますが、この国際収支が非常な問題だと、そこへ持っていってまた金利が、中とこの立場のわが国の金利水準というものがまた上位のほうへ行っちゃったということになったら、なかなかこれは国際収支というものは悪化すればといって改善はされない、そういう問題があるんです。  まあ理想論、将来の問題としては前川さんのお話よくわかりますけれども、いまは命がもつかもたないかとこういう問題でありまして、そういうことを考えますと、金利引き上げ論というのは、今日のわが国の経済の立場から言うと、はなはだ寒心すべき考え方ではないか。寒心というのは寒い心のほうなんです。そういうことかと存じます。
  114. 小野明

    小野明君 しかしまあ、いまのまま預貯金が目減りをして、それを全然補わないというのは、まあ補うのに何らかの策がないと、これは私は問題だと思うんですね。ですから六月時点で、この前申し上げたように、ひとつ魅力ある制度をこしらえていただきたい、検討していただきたいと思うんです。まあ一案としては、三百万以下の預貯金者、これは郵貯を含めて割り増し利子をつけるというような方法も考えられないことじゃないと私は思うんですが、それはいかがですか。
  115. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 三百万円以下の貯蓄といいますと、これはまあ……
  116. 小野明

    小野明君 所得の人です。
  117. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そうですか。これは安定貯蓄の大半になりますので、これなかなかむずかしいんですが、所得三百万ですか。
  118. 小野明

    小野明君 そうです。
  119. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういう問題になりますと、これはやっぱりその金利の差額を財政で持つかとか、そういう問題になってくるんです。いまとにかく物価がこういうふうに変動するというときのいわゆるインフレ被害者ですね、これはまあたくさんあるわけなんです。金銭債権者というものがみんなその被害者になるわけなんです。貯蓄をする人、そういう人は一部に過ぎないわけであります。一番の被害者は何といっても低所得であって、そして低額収入しかないと、これは一番被害者なんです。まあ財政手段を用いるということになれば、まずそっちのほうの対策ですね。いわゆる社会保障対象者に対する対策というものがまず先行しなけりゃならぬ、そういうことになり、預金をできる立場の人というものの処置、それはインフレ弱者、社会保障対象者、そういうようなものに対する処置が済んだあとの問題、こういうふうに思います。  また、目減りに対しまして、ある特定の階級の人に何らかの財政的の処置をする、こういうことになりますれば、これはいろいろ問題が波及してまいりまして、金銭債権者全体に対して一体どうするか、こういう問題。金銭債権者うちうちの問題を一体どういうふうにするかという問題にも波及して、なかなか締めくくりのむずかしい問題になるのです。しかし私は、いま小野さんの提起されている目減り問題、これに対する対策というものは、もうそんないろんなことを考えるというよりは、インフレを一体早く断ち切れるか、この問題ですね。インフレをやめちゃえばそんな問題全部ふっ飛んじゃうのです。私どもは、それこそがいまのインフレ弱者、インフレ被害者に対するほんとうの取り組むべき道じゃあるまいか、そういうふうに考えて、先ほど総理からもお話がありましたが、やっとめどもつきつつあるという状態でありますので、そっちのほうに専念をしたい。しかし、何も考えないというわけじゃありませんですから、六月のボーナス期あたりに何かひとつ適切な手段はないかということをいま頭をめぐらしておる、かような状態です。
  120. 小野明

    小野明君 次に、電気料金の値上げ問題でありますが、電気料金の申請状況とその取り扱いについて御説明をいただきたいんです。通産大臣。
  121. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 電気料金につきましては、二十日に中間答申が出まして、いままでの原価主義に基づきながら、電力と電灯との格差を是正して、しかも民生安定を心がけた福祉型の答申が出てまいりました。中身はおおむね妥当であると思います。  しこうして、電力会社におきましてはかなりきびしい経営状態になっておりまして、値上げの申請をしたい要望が次第に強まってきております。しかし、われわれのほうでは、値上げの申請をできるだけ自重するように、電力会社のほうに強く要請をしておりまして、この石油の価格の引き上げが経済にどういう反応を及ぼすか、ようやく卸売り物価も鎮静してまいってきておるところでございますから、これを確実に定着せしめて、民心がさらに安定する、そういう情勢を見きわめた上で電力料金問題に政府与党相ともに四つに組んでいこう。まだ政府与党でこれを本式の問題として組む段階でない、そういう情勢で時間を待っておるということでございます。
  122. 小野明

    小野明君 ガス料金の値上げ云々ということがいわれておりますが、この値上げ申請状況とその取り扱いについて明らかにしていただきたいと思うのです。
  123. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ガス会社は大体中小企業が九五%以上を占めておりまして、最近の諸般の情勢から見て、経営が非常に苦しくなってきているのがございます。そういう意味から、ローカル的なものは内容をよく審査いたしまして、最小限の値上げはある程度部分的に認めております。最近出ましたのは東邦瓦斯の問題でございますが、東邦瓦斯の申請の内容を見ますと、平均改定率四二・四五%、最低料金は現行の二百七十円を六百円にすることを申請としておりますが、急激な家計に対する影響を考慮して、七月三十一日までの期間は五百円とすると、そういう申請の内容で、理由としては原材料費の高騰、資本費の高騰、労務費の上昇、導管保安対策修繕費の増加、あるいはさらにそのほかの問題点をあげております。政府としましては、この申請内容を詳細に検討するとともに、東邦瓦斯に対して特別監査を実施しまして経理業務内容の把握につとめ、さらに公聴会を開催して消費者の意見を聴取する等、所定手続を進める予定であります。  ちなみに東邦瓦斯の四十八年度下期の決算によりますと、経常利益は五億六千九百万円の赤字になっておりまして、このまま推移しますと、四十九年度上期の決算は四十一億千二百万円の大幅な赤字になることは確実に見通され、任意に処分可能な利益をすべて取りくずしても配当はほとんど不可能になるという情勢であります。
  124. 小野明

    小野明君 電気料金の値上げ問題に戻りますが、これは電事審もほぼそういう方向に出ておりますが、それを一歩進めて、一般家庭については現行水準に据え置く、そして産業用の値上げで対処する、そういう方針でいくべきだと思いますが、いかがですか。
  125. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その方針に賛成でございます。家庭用のものは民生福祉を考えまして、できるだけ現状に近づけておく、産業用のものは上がるのもやむを得ない、そういうような福祉優先型ということを考慮して行なうことが妥当であると思います。
  126. 小野明

    小野明君 公取委員長お尋ねをいたします。  総合商社に対する調査報告というのを出されておりますが、これに対する規制策を公取としてはどのようにお考えであるのか、御見解を賜わりたいと思います。
  127. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 確かにいま私どもこの総合商社の問題については、何らかの規制が必要であるということは痛感しております。決して現状のまま放置しておいていいとは思いません。しかし、一回目の調査でほぼその全体の姿、それから日本の経済の中に占める地位とか、いろいろの内部的な行動、活動の状態をある程度浮き彫りにしたのですが、実は突っ込みが足りません。私ども実際に規制しようと思えば、さらにこれはもっとやらなければならぬということで、最近これはもうすでにスタートしておりますが、さらに六社ばかりでなくて、若干会社の数をふやします。そうしていままで調べたこと以上に、もうちょっとほんとうの姿をつかんでみたいということでございます。そうしていま考えられている可能性あるといいますか、一番現実的なものとしては、やはり持ち株の制限じゃないかということでございまして、商社活動を行なうにあたって、商社が縦の系列を非常に強化しています。ですから、商社同士の間には依然として相当な競争があることは私は認めます。ですけれども、一たんこれがある場合になると、非常な協調に転化するわけです。そうして、それがおのおの自分のいわば企業集団の中のほんとうの中核体としての地位を固めるために、系列の強化をはかっている。そうしてその系列の強化をはかるためには、ほとんどもう限界がないといわれるぐらいの金融調達力ですね。自己資本が何しろ平均して三%台なんですから、ほとんどが借金です。借金のしほうだいというような形で従来きたと、最近、大蔵省では引き締めをやっておられますけれども、長期的に見た場合に、いまのような姿で伸びていったらどうなるのか。日本経済の中における、いわゆる独禁法の目的の中にありますところの事業支配力の過度集中ということが非常に目立ってきて、それはむしろマイナスになって働くであろう。いずれかの大きな集団の中に企業が入らなければ、大企業、特別の大企業は別としまして、中堅以下の企業はそのかさの下に入らないとやっていけないというようなふうになると、これは問題である。そういうことを予見いたしまして、そういうことに対する規制方法を考えていきたい。しかし、まだいますぐ私は適切な手を考えつきません、はっきり申しまして。これから研究をしなければなりませんが、さしあたりは、株式を保有することによって系列化をはかる、あるいは金融にもからみもございますが、そういう面で既往の総合商社のあまりにも広範かつ多岐にわたる、まあ腕力的なといいますか、そういう活動のあり方について、この際抑制的な方向で措置を、規制をはかるべきじゃないかと、こう考えておりますが、ただいま残念ながら、こういう方法がいいということを具体的に申し述べる段階にまでは至っておりません。
  128. 小野明

    小野明君 おっしゃるように、不公正取引の部分は、これは現行独禁法でいいと思うんですね。ところが、やっぱり第一条にいう「事業支配力の過度の集中」——これはやはり筆頭株主で千五十七社、上場で。これは確かにこの第一条にぴたり当てはまることでありまして、この制限は当然すべきであると思います。  ただ、金融問題について、これをどうするかというのは、私もあとで大蔵大臣に尋ねてまいりたいと思うんですが、卸小売り向け融資の十兆何がしの四分の一、これも大き過ぎる金融力だと思うんですね。これをどう制限するか、その方向を出していただきたいと思うんです。
  129. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 金融の点につきましては、私どものほうからあまり強く言っているわけじゃありませんが、大蔵省のほうに向かいまして、こういう貸し付けのあり方をどう考えられるかということを申し上げたわけでございまして、まあ、事務的な連絡でございますが、それに従いまして、最近ですか、もうすでに行なっておられますか、だいぶ日銀の考査局も一緒になって、そういう金融、特に商社なども含めて、金融の実態をはっきりさせるということをやっておられる。こういうことを通じまして、特に大口貸し出しの最たるものは、これはもう商社にきまっておるんです。どこの大きな銀行へ行っても、これはきわ立って大きい。これは何を意味するんだろうかということですね。まあ、預金の出どころというのはいろいろありますが、債務者預金は別にしまして、あとはいわゆる一般国民の預金でございます。それを特定のところに思い切って集中的に貸すと、その結果が、ほかの者は借りられないということでございますから、やはりそこに金融のあり方から起こってきた問題もずいぶんあるんじゃないかと思うんです。株を持つにしても、これは借金で持っているわけです。そういう点が、私どもも、借り入れ金をもって、自己資本が三千数百億であるのに、いまはもう八千、九千億ぐらいの、六社だけで株式簿価で持っているわけですね、簿価で。こういうあり方に対して、これを放置しておいていいということはないんじゃないか。私どもは不公平であるとかなんとかという観点よりも、やはり日本の経済の将来におけるそういうものの地位、これが憂うべき事態になることもある。世界には例がないですね。こういう商社がそういうとんでもない多角経営をやり、むしろメーカーもみんなその商社を通さなければ貿易もうまくいかないような仕組みになっているというようなことはないのじゃないか。メーカーがダイレクトにやっているという国もずいぶんあるわけでして、まあ、一種独特の日本の産物である。これはおそらく戦前の三井、三菱を中心とするそういう商社活動のその流れだと思います。それが戦後にほかのものにもみな伝染してしまった。本来の専門業者であったものが、みな総合商社になった。総合というのがべらぼうに幅が開いてくることはもう周知の事実でございますから、そういうことで、大蔵省のほうにもそういった金融機関の融資のあり方というものをお考えいただく。私どものほうとしては、また別な不公正な取引方法についてももちろんでございますが、制度的には株式保有を中心としてそのほかのやり方があれば、——私はなければならないと思います。株式保有以外にも考えていきたいと思いますが、これには若干時間がかかると思います。そういうことです。
  130. 小野明

    小野明君 そこで総理お尋ねをいたしたいと思うんですが、この総合商社の問題は、もう衆議院でも議論になっておりますから、御承知のとおり。これは独禁法だけの対処ではなくて、商社の事業活動全般に対して包括規制をはかるべきではないかと、こう思うんです。その点はいかがですか。
  131. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 商社には問題があります。ありますから、商社法のようなものをつくってはどうかという議論がございますが、いま商社法に直ちに踏み切るということは危険だと私は考えておるのです。  それはなぜかといいますと、いま公取委員長も述べましたとおり、戦前の日本の商事会社、これが財閥の基礎をなしたということで、戦後日本の民主化という名のもとに財閥解体が行なわれたわけでございます。もう一つは、経済力集中排除法というのがメモランダムの強い要求によってできたわけであります。で、戦後は全くばらばらになった。ある意味においては無資本の状態になったことは御承知のとおりであります。旧財閥の株は持株整理委員会にあずけられて、全部これは細分化された。それで朝鮮戦争が終わるまで、戦後の第一期、昭和二十八年、二十九年までは、日本の経済は全く国際的には見るべきもののない敗戦経済の状態でございました。  それでどうにもならないということで、だんだん国際競争力をつけるということで、経済力集中排除法が廃止になり、それから今日までずっと続いてきたわけです。で、その結果、国際競争力もできましたし、日本の輸出も強大になったし、戦後の経済復興も行なわれた。  しかし、足かけ三十年たった今日、また経済力集中排除法を新たにつくらなければならないというような状態が商社に行なわれておるじゃないか。これは事実そういう面があります。しかも、財閥と同じように日本の経済自体を壟断するおそれがある。物価は、大きな意味で、もう他の業者とのカルテル行為などを行なわなくても、商社の指令一本で、相当部分の価格のつり上げも行なわれると、こういう事態が散見せられる現在、商社法をつくってはどうかという議論が必然的に生まれてきておる。まあ、商社法というのは経済力集中排除法と同じ目的を持つものでございます。だから、二十七年に廃止をされたものをまたつくってはどうか、名前を変えようと、こういうことであります。これも銀行法とか、電気事業法とか、そういうようなもののようにして完全にやらなければいかぬのか。  これにいい例が一つあります。百貨店法というのが戦後できているわけです。百貨店法をつくったときよりも商社のほうがよほど問題が大きいぞと。まあこれは常識的には考えられます。そこで、いろいろな議論があるわけでありますが、私は少なくともいまの状態で百貨店法と同じような趣旨で商社法というものをつくるには、どうも慎重でなければならないとこう考えます。  しかし、これは、まあ、いまも高橋委員長が述べましたとおり、あらゆることをやっているわけです。はっきり言いますと、もうホテルからパーマネントまでやっているわけです。これはもう豚や鶏から屠殺場まで経営しているわけでございますから、これは全く強大なものである。これは事実でございますので、それが結局、戦前のように六一%も自己資本比率があってこういうことが行なわれておれば、財閥解体なり、経済力集中排除法が行なわれなければなりません。第一次農地解放令と同じような状態であるということになるわけですが、そうじゃなく、金融ということに基準がないために、集中的に金融が行なわれておる。その金融で支配できるような株主となって、何千億かの株式を保有しておるというところに問題があるわけですから、金融を締めればこれはできるわけであります。外国に例はないかといえばあります。一企業に対する一金融機関の融資は、自己資本比率の二〇%をこしてはならない、こういう規定はあります。  それともう一つは、払い込み資本金の二十倍をこして間接金融をしてはならない。自己資本比率の十倍をこして貸し出すことはできない。それが野党の皆さんが言っておる銀行法の改正ということであります。ですから、私はこういうものが国会において議論されていることをまじめに検討しているんです。これは野党もゆえなくして要求しているわけはありません。また野党の要求はなくとも、自民党政府も現状に目をおおっているわけありません。物価抑制ということを具体的にやっていきますと、必ずそういう問題が出てくるわけです、これは。ですからそういう意味で、金融の問題、自己資本比率を拡大する問題、それから一つの企業が他の企業の株式を、法人が法人の株式を持つ場合、その払い込み資本金をこして持つことはできない。これは何も銀行法の改正がなくとも、これは金融の融資準則でもつくっておけば行政指導でできるわけです。いままでやってきているわけです。それにはちょうどいいように日銀法も、——大蔵大臣が相当強い権限がございますし、銀行法もございまして行政指導できるわけですから、これは。そういうことで、やっぱり具体的にこれらの問題を事態に合うように計画を立てて軌道に乗していかないと、最終的にはいままだ、相当果断の意見を述べる高橋公正取引委員長でも、どうもいまだ具体的に意見を述べる段階にないと、こう言っているぐらい影響がある問題でございますから、慎重に述べておられます。私たちも慎重なんです。しかし、現在のままでいいということはとてもこれはなかなかありませんので、まあ、端的に商社法に踏み切るということではなく、具体的にどうしてセーブをしていくかということ、角をためて牛を殺さないで、商社活動は十分できるようにしておきながら、いわゆる独占をしたり支配が大きくなったり、物価そのものに対する一つのかんぬきになるような、そういう状態を排除するために、非常にこまかい、具体的な勉強を続けていかなきゃならぬと、こう思っております。これは与党の中でも、政府部内でも勉強はしております。
  132. 小野明

    小野明君 なるべく早くその具体的な規制内容をひとつ出していただきたい。  それから当面の問題として、大蔵大臣、いまもお話ありましたように、反社会的企業の融資規制、この要綱が、大蔵基準というのがもう練られておるようでありますが、これについて見解をいただきたいと思います。
  133. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは政府関係金融機関の融資基準のお話かと思いますが、これは先般来、私どもそういうルールをつくろうと思いまして相談をいたしております。まあ大体煮詰まりつつあるわけでありますが、その細目を皆さんに御報告できるのは来週になろうかと思うんです。まだ今日この時点ではまだ政府内で多少意見の調整を要する点がありまして、確定をいたしておりません。これはこういうことなんです。つまり企業が、政府関係金融機関に融資の申請をしてまいります。その際に、政府関係金融機関が企業の申請を見まして、はたしてこの企業は問題のない企業かということを考えるわけですが、そのとき問題として考えられたい事項、そういうものをまずきめてなけりゃならぬ。それが何法に違反する行為だとか、あるいはいろいろの積み重ねでお行儀が悪い、こういうような企業でありますとか、いろいろその基準があるのですが、その基準を詰めておるわけです。それから、その基準がきまりますと、その基準に該当する企業の申し入れだと、こういうので、その金融機関は大蔵省へそれを取り次いでくるわけです。大蔵省はそれをまたその企業の所管官庁、主としてこれは通産省になりますが、通産省等にこれ、この融資はどうしましょうかと、こういうことを照会をするわけです。その照会を受けまして企業所管の通産省などの所管官庁が、この融資はこうしたいという意見をきめまして、そして大蔵省へ持ってくる、その企業の主管大臣たる通産大臣などが、どういう基準でこの態度をきめるかという、その方針をきめるという問題もあるわけであります。それでこれは企業の名誉に関する問題でもありまするし、国益に関する問題でもありまするし、なかなか事こまかな配慮を要する問題でありますので、慎重にしたい。もともとこれは企業に対する制裁でございますから、これは普通ならば罪刑法定主義で、法律でこれはこういう罪に該当するからこういう制裁を与えるぞというのを、それを行政でやろうというのですから、よほど慎重にしなければならぬと、まあ、最後の詰めを行なっております。
  134. 小野明

    小野明君 ちょっと総理に念を押すのを忘れておりましたが、包括的規制で新規立法をおやりになるということでございますね。総合商社の規制のために新しく立法をするということですね。
  135. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 商社法のごとき立法をすべしという議論が野にあることは承知をいたしておりますが、角をためて牛を殺すようなことはできませんので、いま立法に踏み切ることは時期尚早だと考えておりますと、いま商社法をつくるという考えはありません。しかし、行政的な面から見まして、現に財閥と同じような、また経済力集中排除法を適用しなければならないような、そういう状態があるということは、これは考えられます。百億の会社が何千億も借りておるということでございます。その何千億もが本来の商社活動ではないのです。ないものもあるわけです。もうかるといえば、土地もやりますし、ホテルもやりますし、建設事業でもって大手商社として建設省のA級登録業者として登録しているわけです、これは。ですから橋でも何でも、ビルでも商社が請け負うと、外国のビルを請け負うなら別でございますが、日本の官庁営繕工事のA級業者として五社も六社も登録をしておると、国会で問題になっておることも事実です。建設大臣はそういうものはA級業者の指名からはずしますと、こう述べておるわけです。そういうことをやっておりまして、それはホテルを経営し、何を経営し、しかもホテルでもって経営すると、そこに納入する野菜から魚からすべて冷蔵庫まで、会社まで経営をしておるという実態がこれは財閥じゃないかと、まさに経済力集中排除法をつくらなければならぬじゃないかということで、経済力集中排除法とはいいませんが、百貨店法をつくってると同じように商社法をつくれと、こういうことになっておるわけです。なっておりますが、まあ、商社というものが国民生活に対して戦後担当してきた功績も非常に大きいことでございますし、商社がいま急に商社の力をうんとセーブをしまして国益をどう守れるかという問題もあります。ですから、いまの段階において商社法を端的につくるという考えはありませんが、しかし、融資の規制とか、少なくともいろいろな面で行政指導を行なってまいる。行政指導というよりも、融資の問題ならすぐできるわけです。それでまたこれは法律をつくると、電波法や放送法によって放送会社は他の放送会社の株を一〇%以上持っちゃいかぬとか、新聞社は一〇%以上持っちゃいかぬとか、銀行法によって銀行は一社の株を一〇%以上保有してはならないというふうに法律で規制する前に、少なくとも商社は、自分の払い込み資本金または自己資本金を基準にしてそれ以上の株を持たせないように、持たせないようにといっても、それは自分で増資をして他の会社に増資をするというやつまでをいまとめるには時期尚早でございます。これはもう、とにかくメーカーや商社が関連企業などに金を出しているものを引き上げようものなら、日本の関連企業は将棋倒しになってしまうという実情がありますから、そんなことはできません。できませんが、しかし、融資をして、どこの会社の株でも全部買ってしまえるような状態を放置すべきではないと、こういうことで、行政的に相当コントロールをしていく段階だと思います。いずれにしても、いますぐ商社法をつくる考えはありませんと、こう述べたわけです。
  136. 小野明

    小野明君 だいぶん後退をしたんですが、大蔵大臣、問題になっておる商社というのはもうはっきりしておるわけですね。これは六大商社プラスアルファと、公取委員長言われておるように。これは大蔵省がきめようとするいわゆる反社会的企業に該当するわけですね。
  137. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま世上いろいろ取りざたされる商社あるいは事業会社があるわけです。あるわけですが、それらに対してどういう処置をするか、今度きめる融資ルールですね、それに該当するかという、そこがいま問題なんです。その基準をまずつくらなきゃならぬと、こういうことでありまして、その基準がきまりませんと、世上とやかく言われておる企業が、はたして融資を規制する企業になるかどうか、これはきまりません。しかし、きまらぬといって、ただのほほんとしているわけでもないのでありまして、とかく問題になりそうだというような商社等につきましては、いまそういう方から開発銀行だとかあるいは輸出入銀行だとかそういうところに申し入れがありましても、融資の申し込みがありましても、それは留保しておると、そういう状態でございます。
  138. 小野明

    小野明君 これがどうかというようなあいまいなことでは、このきめられようとする基準なんというのは全くのこれは問題にならぬものなんです。三井物産、三菱商事、丸紅、伊藤忠、あるいは日商岩井、トーメン、問題になった企業ばっかりですよ。これが該当しないというな基準は、これはもうつくらぬほうが——意味がないですね、これは。そこで、これらの企業に日本輸出入銀行からどれぐらい貸しておるのか、融資をしておるのか、四十八年九月−十二月でひとつトータルを示してもらいたい。
  139. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまの数字は政府委員からお答えしますが、まだどういう処置をするかという基準がきまらないんですから、基準のきまらないその前に基準に該当すると、こういうものがきめられるはずがないのでありまして、しかし、大蔵省としては注意深く、いろいろうわさがあると、そういうものにつきましては、基準が出るその前といえども、融資の申し込みがありましてもそれを融資しないでこれを留保することにしたいと、基準が出てから正式にどうするかということをきめたいと、こういうふうなことを考えておるわけであります。
  140. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) いわゆる十大商社に対する日本輸出入銀行からの貸し付け残高につきましては、昨年の九月末で約六千百億でございます。
  141. 小野明

    小野明君 これを各社別に言ってもらいたい。
  142. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 有価証券報告書によりますと、三井物産が千六百四十九億、三菱商事が千四百五十四億、丸紅が八百九十億、伊藤忠が六百二十七億、住友商事が四百四十九億、日商岩井が四百三十億、トーメンが三百五十一億、兼松江商が百二億、安宅産業が百億、日綿実業が八十二億でございます。
  143. 小野明

    小野明君 大蔵大臣、いまあげられたトータルでありますが、これらが対象にならぬというような融資規制の基準というのは問題にならぬと思いますが、大臣はもうこれはこの予算委員会、衆参通じてもう指摘されておるんですよ。しかも商社規制という対象は、もう公取委員長総理もまあ、弱いけれども行政指導で金融でやろうと、こういうことなんですから、当然これは対象になると、こう見なきゃいけませんね。
  144. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ融資規制の対象となるともならないとも言えない段階であると、こういうことを申し上げているわけなんです。つまり融資規制の対象にするかしないかという基準ができないんだと、基準ができればすぐそれは検討できるわけでございますけれども、まだ基準ができないから、しかし、そうかといってこの問題を放置しておくわけにもまいりませんものですから、用心深く、何かいろいろ問題のありそうなそういう商社や企業につきましてはたとえ開発銀行に、輸出入銀行に申し出がありましても、まだそれに対して融資はしない、留保しておる、そういう段階なんです。これはまあ御了解いただけることかと思います。
  145. 小野明

    小野明君 いまあげられたような十大商社というのは問題にならぬわけですか。新規融資というのはとめておるようなことをいま言われましたが、これらは反社会的な企業と言えないんですか。
  146. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この反社会的企業であるかどうか、これは一般的にはいろいろむずかしい問題でありますが、いやしくもいま具体的な問題なんです、お話は。つまり政府関係機関が反社会的企業であるがゆえに融資をするかしないかと、そういう企業の選別をどうするかと、こういう問題なんです。これはまあ非常に重要な問題でありますのは、反社会的企業であるというレッテルを押すと、これは普通なら、反社会的行為につきましては法律でこういうことをしちゃいかぬということはきめられておるわけです。それに違反したらこういう刑罰が加えられますよと、こういうことになっている。これは憲法の保障する罪刑法定主義ですよ。それを今度行政的裁量で何かの制裁を加えようと、こういうんです。行政的制裁を加えるにいたしましても、これは罪刑法定主義の精神というものは尊重しなきゃならぬ。ある会社に対して反社会的行為をしたというようなレッテルを押すことは、これはその会社の名誉のためにも非常に重大な問題だろうと、こういうふうに思うので、その辺の基準づくりはよほど慎重にしなきゃならぬと、こういうふうにいま考えておりまして、その基準づくりに問題点を先ほど申し上げましたが、そういう諸点で問題があると、こういうのでまだ最終的な煮詰まりに至っておらぬと、こういうことなんです。それで基準ができないんですから、その基準に該当する商社はどうだ、企業はどうだということがきまるはずはないのであります。
  147. 小野明

    小野明君 それでは、丸紅は米、食管法違反でやられた、日商岩井は材木のあれと、その他あるいは脱税と、こういうことがもう国会の中で明らかになっておる。これらは該当しないんですか。
  148. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ該当するともしないとも言えないのであります。ただし、該当しそうなおそれのある商社等につきましては、たとえそれらの商社等が融資の申請をしてまいりましても、これはまだ基準がきまってからどうなるかわからぬというので、その申請に対しましては融資をいたしておりませんと、こういう非常に合理的かつ慎重なかまえをとっているわけであります。
  149. 小野明

    小野明君 これらの企業が反社会的行為をやったのは輸出入銀行の貸し出し残高の三七%ぐらい占めておるんです。政府関係機関が手助けをしてやっておるようなもんですよね、これは。しかもおまけに、いま言われたのは四十八年九月末のトータル、これが十二月末になりましたら、また一千三百億ほど輸出入銀行は上のせをして貸し付けておるんですよ。これじゃ全くもう商社規制なんというのは、これは机上の空文だと、こう言わざるを得ぬですよ。こんなはっきりした事態は、もっと厳正な態度でやっぱり処置せにゃいかぬじゃないですか。
  150. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、繰り返しになって申しわけございませんが、制裁を加えるということは、これは非常に重大な問題です。社会的規範にそむいたということになりますと、これはもう刑法その他の刑事規定がありまして、そうして制裁を加えられるわけです。しかし、この行政裁量によって、その上に上のせをしてなお制裁を加えようと、こういうんですから、その制裁というものは非常なこれは慎重な配慮のもとに基準をきめてやらなければならぬ。そうしますと、憲法のいわれるところの罪刑法定主義の精神に反する。これは何か新聞に出たから、さあ、あれは制裁を加えなければならぬというようなわけにはまいりません。そこで、政府として、公に権利として借りにくる、その借金の要請に対しましてこれを受理いたしませんという行動をとる、これは非常に厳粛な基準に当てはめて判定しなければならぬ、こういうふうに考えまして、その辺非常にことこまかに関係各省との間で詰めを行なっているのです。いろいろ御所感があるようであります。私は、いま大蔵省がとっておるこの趣旨というものは、まことに合理的でかつ慎重なやり方をしている、こういうふうに考えております。
  151. 小野明

    小野明君 そうすると、あれだけ便乗値上げ、先取り値上げというのがあった、十二月末は九月よりもふえた、こういう制度金融からまだまだこれはどんどんこれらの商社に対しては金を貸し出すんだと、こういう方針ですか。
  152. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 開発銀行なんかになりますと、渉外関係がありませんから、わりあいに規制が容易であります。ところが輸出入銀行になりますと、これは渉外関係、つまり対外的関係があるわけです。それを無視して融資の打ち切りをするということは非常にむずかしいケースが多いのじゃあるまいか、そういうふうに考えますが、そういうようなケースに対してどういうふうにするかというようなことまで含めましていまルールづくりをしておると、こういうんです。開発銀行なぞはわりあいにこれはむずかしいデリケートな問題がないのでありますが、輸出入銀行となると、これはかなり国益として考えなければならぬいろいろな問題がありますので、そう抽象的な結論は出ない。やっぱりケース・バイ・ケースでよほど検討しなければならぬ。その検討の際の基準をいま練っておるというのが現実でございます。
  153. 小野明

    小野明君 もう国会で問題になった、そうすると貸し出し抑制もこれらの企業に対してはしないと、こういうことですか。
  154. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 何か疑わしい企業につきましては、これは融資の申し入れがありましたその融資を実行しておらないんです。留保しておる。そうして基準がきまりましたならば、その基準に照らし合わせまして、これは融資してよろしいとか、あるいは融資しちゃならぬとか、そういうことをきめようと思っているのです。
  155. 小野明

    小野明君 もうこれは話にならぬ。  それで、時間がないですから、最後に総理お尋ねしたいんですが、公社公団に対する官僚の天下り、こういうのが問題になっている。政府関係労働組合からもこの実態が発表されまして、きびしく禁止をしてほしいと、こういう要望が出ております。これは公社公団あるいは民間、まあ民間は——これも癒着を起こしますが、地方自治体、これら天下りをきびしく禁止をすべきだと思いますが、最後にひとつ総理の御見解をいただきたい。
  156. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 官吏の職にあった者が公社公団、また民間へ再就職をする場合の問題に対して、いろんな議論の存在することは承知をいたしております。おりますが、現在の制度の中において、人事院が法律に基づいて承認を行なった場合は民間に再就職をすることができるということになっております。また法律では、公務員が在職中に地位その他を利用しながら、将来自分の再就職のために約束をしたり、利益を供与したりしてはならないというようなことが目的になった条文もございます。それから再就職をしたら、かつての地位を利用して行政権を動かしたりしてはならぬと、こういう趣旨で規則もあり法律もあるわけでございまして、私は、この制度の中で適法に処理されておる再就職は、これは憲法上も当然認めらるべきものだと、こう考えております。そうでないと、これは公務員になり手もいないわけでございますし、公務員といえども日本国民でございまして、憲法に定める職業選択の自由の権利もございますし、当然でございます。これは公務員が就職をしてはならないということであれば、それなりの国家保障が前提でなければなりません。もう公務員というものは永久就職であって、これは再就職しないでいいような給与や身分の保障がなければいかぬわけでございますし、そうでなければ、どこかへ行かなければ、とても五十五歳くらいの定年でもって勧奨退職でございます、全然再就職する場所がないといったら公務員になり手がない。なり手がないだけではなく、これは基本的人権の問題で職業選択の自由の問題でございますから、これらの問題を軽々に断ずるわけにはまいりません。これは制度上の問題でございまして、だから、再就職の道は禁止はしておりませんが、恩給その他の待遇によって再就職をしないでも済むような戦前の制度は、ある意味においては合理的だったと言わざるを得ません。現在の状態では、勧奨退職でもって五〇%の加給をしてもらっても、人生において五十五歳といえばまだ七十五歳まで二十年間もあるわけです。下の子供を何人か大学までやるには十年働かなければならぬというときに、公務員に在職したゆえをもって再就職に限制を受けるということは、これは非常にむずかしいことでございます。  ですから、公務員法は厳正にこれが適用されなければならないということでございまして、公務員であったというゆえをもってこれを制限するようなことは、これはやはり世論の一部にあることは私承知しておりますが、日銀から人をもらわなくても、ずっと下から育った人を頭取にすればいいじゃないかという、相互銀行や信用金庫や地方銀行の例も知っておりますし、いろいろな公社公団に対する理事や役員がほとんど官庁の高級職員であった人に占められておると、これは回り持ち人事で、何かやたらまた別な公団に移っていくと、公団屋というふうに言われておるということも承知しております。おりますが、全部が全部代議士になるわけにもまいりませんし、これはなかなかむずかしい問題であって、やはりそれが弊害を起こさないということでなければいかぬので、感情論で私はこの問題を解決するわけにいかぬ、これはほんとうにそう思います。これはどういうことがあっても、どんな御発言があっても、そういう憲法の条章はちゃんと守っていかなければならぬ。そうでなければ……(「忌まわしい問題があるのじゃないですか」と呼ぶ者あり)忌まわしい問題とか、いろいろな問題があれば他の法律で処理をすべきでありまして、私は、やはりその意味では、世論のあることは承知しております。ですから、政府も厳正にやっておりまして、三選を禁止するとか、公団に渡り歩くようなことをしないとか、いろいろやっておりますが、これは事業との関連で、どうしてもその人がもう一期とは言わず、一年間はいてもらいたいという国民の声も背景にしながらやむを得ず特例でもってやっているのもありますが、政府は人事に対しては非常に厳正な態度を持っておるということで理解いただきたいと思います。
  157. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。  佐藤内閣の木村官房長官のときに、木村さんは、閣議の決定でございますと、三選四選ということはさせません、また三転四転ということもさせません、こうお答えになっておる。内閣は変わりましたけれども自民党でありますことは変わりありませんから、これも撤回ですか。
  158. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 撤回はいたしません。これは前内閣の決定を内閣でも確認をいたしております。それで、各大臣にはこれを厳正に運用するように言っております。ですから、各省から出してきても閣議はこれを認めない場合もあり得る。特に二選の場合は八年とか、三選はしないとかということになっております。そういうようなこまかい規定をつくっておりまして、その除外例の場合は、特に必要である理由が国会でもって申し上げられるような、そういうものであり、国民側でぜひというような、そういう事情が明確にならない限りこの原則はくずさない、こういうことであります。
  159. 小野明

    小野明君 最後に、一般論で言っておるのではなくて、一部高級官僚が就職をする、そうすると、二年か三年、二年くらいで二千万、三千万、二千万、こういう多額の退職金を受け取って渡り鳥として歩いていく、こういう事例をそのまま一般論に当てはめて、憲法違反では困るからこのまま見過ごしますというのが田中内閣の姿勢ですか。
  160. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) その問題は、私も長いこと閣僚をやっておりますので、非常に真剣なんです。そういう意味で、ここ三十年ぐらいで人生が二十年も延びているわけですから、五十五歳ぐらいでやめさせないで、官僚という、官庁の機構は六十五歳ぐらいまでやったらどうかということも真剣に研究している。その場合の給与がどうなるかとか、いろいろなこともやっております。そういうものもやっておりますし、もう一つは、公社公団で一々退職金を受けるというのじゃなく、通算をしまして一番最後に、もう公社公団には行かないというときにこの退職金を払ったらどうかというようなことも考えているのですが、その間にだんだん改善されているものもあります。大蔵省の職員が輸銀に行くときは、これは大蔵省をやめて行っております。また、帰ってくるときには大蔵省に再就職することになっておりますが、大蔵省から何々県に副知事やなんかで行くときにはまたどうなっておるのか、いろいろなケースがあるのですが、何かもっと明確にしてやったほうがいいということで、人事の交流も必要である。交流も必要であるけれども、いま御指摘のようなこともある。そのたびに退職料をもらうというようなこと、公社公団ではどうも私も答えに窮するようなことがありますので、そういう意味で、公社公団は必要があって行くのですから、そして公社公団というのは法律に基づいて設置をしていただいておりますとおり、民間ではない。しかし同時に、公務員法を準用しておるというような、そういう特殊なものであるだけに政府関係機関から人材が行くというのは常道であります。民間からとろうと思っても来ないのです。公社公団も高いと思うけれども、民間の給与はもっと高いので、公社公団に来手がないわけです。そうすると、結局、高級官僚が行くというようなところになるわけです。ですから、非難されるべき事項があれば、そういうものを是正していくということに対しては真剣に人事院の検討にも待っております。政府部内でも検討いたしております。
  161. 小野明

    小野明君 終わります。
  162. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) これにて小野君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  163. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 片山君。
  164. 片山正英

    ○片山正英君 総理はじめ全閣僚の御出席で質問をいたすのは、私は初めてでございます。したがって、あるいは素朴な質問が多いかもしれません。あるいは角度を変えた質問があるかもしれません。お許しをいただきたいと思います。  まず、私は、日本人としての心がまえと申しますか、主として経済的の側面を踏まえた日本人としての心がまえということについてお伺いしたいと思います。  経済大国といわれる日本が、しかし、また資源小国でもございます。狭い国土に過剰な人口を擁しまして、しかも、重要な原材料という資源は何一つ持たない日本が、壊滅的な打撃を受けた経済を復興し、少なくともヨーロッパ並みの生活水準にまで成長し、世界の一員として大きな地位を占めてきた。この理由は、私は、わが国の技術水準の高さ、わが国の勤勉な国民性にある、こういうふうに言われているのを読んでいるわけでございます。しかし、最近、経済の成長と申しますか、国民所得の向上とともに、働き過ぎる日本人、こういうことが言われだしております。余暇を楽しむ権利、余暇への権利、これが基本的な人権として主張され、むしろ仕事は苦痛なのだ、したがって、余暇をできるだけとることがいいのだ、そしてその余暇を楽しむことが人間らしいことであるのだ、こういう主張があるのを聞きます。また一方、より人間らしく働くこと、あるいは働くことに人間としての生きがいをよみがえらせる、こういう主張もあるのを聞くのでございます。総理は、このような主張をどう判断され、どう指導されようとしているのか。また、そのような指導は必要ないのだ、もう個人個人ばらばらでけっこうなのだという、そういう主張もございます。これらを踏まえて日本人として、あるいは資源小国としての心がまえとして総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  165. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日本人は三十七億のうちの一億一千万人でございまして、世界の平和を維持しながら、人類の平和に貢献しながらも、しかし、自分の生活というものを向上さしていかなければならないし、自分の子孫のためによりよい生活基盤を築こうという考えを持っていることは、これは当然でございます。その背景には、狭隘な国土に一億一千万人という人が過密の中で生存をしながら、全く無資源国であるということでございまして、それを補うということは、勤勉で補うということが一つと、もう一つは学問をすることによって知識の活用によってみずからの経済基盤を拡大するという現状にあることは否定できないことでございます。ですから、やはり働かなければならない、生産をしなければならない。生きている限り、みずからも生産に寄与し、みずからを養うとともに、働けない人のための分も働かなければならないという基本的な考え方なくして、私は、社会保障の拡充などはできるものではない、こう考えております。社会に生まれた一人として応分の貢献と寄与をなすべき勤労の義務がある、こう考えます。しかし、働くことと、それから生きることと考えると、やはりどちらが主かというと、生きることが主であります。これは働くために生まれたのではないと思います。これは生きるためにその生産手段を考え、勤労するということでありますから、勤労で一生が終わってしまうということよりも、やはり短い人生の中で、勤労をしながら人生に対して平和な人生環境を享受するような時間的余裕が与えられなければならない。これは当然のことだと思います。そういう意味で、私は、週に一日ということで、土曜日半どんということはなかなか合理的なことを人類は考えてきたなあという感じでございます。私は特に新潟の生まれでございますから、雪が非常に多いところでございまして、九ヵ月くらいで十二ヵ月分働いていかぬと、あとの三ヵ月生きていけないという宿命の中に生まれ育ってまいったものでございますから、勤労に対してはいやな気持ちは全く持っておりません。しかし、これは公の問題として提起をするときには、   〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕 やはりその勤労の中に余暇を得なきゃならないということは、これはもう制度の上でも考えていかなきゃならぬことだと思います。ただ、余暇を得るということと働かなくてもいいのだという考え方、これを全く混淆して考えることには問題がございまして、やはりいま申し上げたような前段の第一の条件、第二の自然的な条件、取り去ることのできない民族の宿命的なものは国民が土台として踏んまえて、そうして公の立場においても私的立場においても、勤労というものに対して、生産というものに対して貢献をし、寄与しなければならない義務を考えながら、お互いがその余暇の利用とか人間性を豊かにするという本来の目的達成のための具体的な政策はだんだんと向上していかなきゃならないだろうと、こう考えます。
  166. 片山正英

    ○片山正英君 ちょっと哲学めいてしまったんですけれども、私、二、三の例を通してもう一度お伺いしたいと思います。  私は、やはり余暇というものは非常に貴重なものだと思いますし、週休二日制は大賛成の一人でございます。ただ、その働くということがどうも苦痛なんだという、そういう意味合いから余暇をうんとふやすということ、こういう思想がヨーロッパあたりに出てきつつあるということを本で読んだんです。したがって、そういう点に対して、資源小国の日本が成り立つのだろうかという素朴な気持ちを持つわけであります。  それからもう一つは、世界各国でエコノミックアニマルと日本人がいわれる、どうも働き過ぎるのじゃないか、こういう話がある。しかし、それは私は、相手国の立場を考えないいわゆる商道徳がそういう批判を受けたのであって、何も日本人の勤勉性を否定したものじゃないと、私はそのように思うわけです。さらにまた私は、一つ一つの個々人の集合体が社会だと、したがって、社会がよくなるためには個人個人がよくならなければならないと、こう自然的に思います。しかし、個人個人がかってな行動をすれば、それだけ社会としてはマイナスの面が多くなるのは当然と私は思います。個人の行為が大きな社会の一こまである以上、一つの歯車である以上、その一つの歯車が停滞すれば全部の歯車に影響することも当然だと思います。そういう意味で、私は、社会の連帯の思想、こういうものを、日本人は幸い同一民族でございますから、もっともっと進めなければならない、そういう姿勢がなければならないというような気がいたします。わが国が置かれている立場というものをもっとよく見きわめて、そうして行くべき方向を国民に訴えるということが——だんだんむずかしくなってくる経済状態の中で、ほんとうに訴えるべきじゃないか、こういうふうに思うのでございますが、もう一度、非常に簡単でけっこうでございますから、お答えをいただきたいと思います。
  167. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはもう御指摘のとおりでございます。端的に申し上げたら、戦前の問題を前提にして考えるときに、どうも戦後、自由それから民主主義というような人権、こういうものの大前提を確保するためにいろいろな努力をしてまいりましたが、その間に、どうもまだその大前提にあることが少し忘れられておるきらいはあります。これは私も、いま少しことばが多かったかもしれませんが、率直に申し上げますと、この世に生まれてきたなら、やっぱりさっき言ったように働かなきゃいかぬのだ、生産に対してはちゃんと寄与し、貢献しなきゃならないのだと、それで、やっぱり社会連帯の思想の上にも、みずからが果たさなければならない責任があるんだという前提を踏まえて、そういう前提の上に基本的人権、また平和、民主主義、まず個人が得られる権利というものとの調和がはかってこられないと、自分は何をしておっても、それは社会が、国が見るべきだというような考えを国の大方針とするわけにはまいりません。  私は、それなりの戦前、戦後の一つの境がございましたから、こうなる一つの道があったと思うんですが、ここらでやはり日本人はどうあるべきかということに対して真剣に——いままでそういうこと言うのはタブーだったと思うのですよ、実際教育の問題でも、国民の義務の問題でも。いわゆる国民というのか国家というのか、国家という考え方はもう戦後タブーになっております。では、ほかの国は全部国家と言わぬのか。そういう問題に対してタブー視しておりますが、これはやっぱり私は、もうテーブルの上に全部上げて、国民が将来のために検討して、理想的な日本のやっぱり基本になるものに対して合意に達していかなきゃいかぬだろうと、こう思うんです。  私自身が昭和六十年展望でいまいろんな数字をやっておりますが、いま考えられるのは、主要工業国十ヵ国、日本を入れて十ヵ国のうち、日本をはずすと九ヵ国になりますが、このうちで理想的だと思われるのは、西ドイツがまず政策をうまくやれば、賃金を上げて国民生活はよくなり、社会保障は完備しながら物価を押えていけるという体制になると思うんです。その他の国は、一次産業と二次産業人口と三次産業人口の比率を見ると、十人がつくったものを、二十人が流通過程におって四十人の人が消費しておるというようなこの状態で、物価が下がるわけはないんですよ、これは。名目的な賃金が上がる。名目的な数字においては社会保障のレベル上がります。上がるかわりに、自動的に国民の税負担が大きくなっていくというようなことで……。これはそういう意味から見て、日本は、いまで見ても、私は、北海道の一次、二次、三次産業比率を見ますと、これはアメリカと同じ比率になっています。フランスと同じような比率になっています。こういうような状態を見て、日本人というのは、やはりあなたが指摘された、資源もないんだ、そしてこの水準まで国民生活を上げなければならないんだというなら、やっぱり一次、二次、三次産業の比率はこうあるべきだと、それに対して異論があったらば国民的合意ができるまでに修正すればいいんです。  ですから、どこの国がもう全部二日だから五日間は働いて二日にすればいいんだ、アメリカは週三日もあるじゃないかということだけど、私は週休二日、これは賛成なんです。賛成ですが、その前に週休二日になったら、奥さんも一緒に、家族がやれるように家をつくらなきゃいかぬ、社会教育制度もつくらなきゃいかぬ、つくらないままで、家もできない、物価も上がるという中で週休二日全部やったら、物価にどう一体影響するかという問題もすなおに考えていかなければいかぬのじゃないかということを申し上げておるわけです。何も私、週休二日反対じゃありません。私も人生幾ばくもないわけでありますから、これはもう数える、刻むがごとき人生だから、ほんとうにそう思いますがね。それかといって、政治の責任の立場にある者が、やはり国民的な理解を得るときにそういう個人的な考えだけでいけるものじゃない、やはり全国民に真実を訴えて国民的合意を求めるということは、もう絶対必要だと私は思います。
  168. 片山正英

    ○片山正英君 この話はそのくらいにいたしまして、経済企画庁長官にお伺いいたします。  経済大国を基盤としてわれわれは福祉社会を建設していかなければならない、そう思います。ただ、福祉社会を建設していく場合に、経済成長とは無関係ではあり得ない、むしろ経済成長を足場としてこそこの福祉社会というものが達成していくというふうに考えるわけでございますが、簡単にお答えいただきたいと思います。
  169. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) それは片山さんのおっしゃるとおりであります。でありますから、「GNPくたばれ」ということばが二、三年前はやったことがございますが、それではいま御発言がありましたような福祉の上昇というものはできないということになりましょう。ただし、いままでの経済の進め方というものは、生産の上昇とか輸出第一主義ばかりであったということもまた私どもは間違いと思うわけでありまして、経済は人間のためであることを思いますと、福祉の上昇とか国際協調とかいうものをやはり正面に出してきて、それとともに生産、輸出ということをやらなければならないこともまた真実の面がございますが、しかし、おっしゃるとおりのことは私も同感でございます。
  170. 片山正英

    ○片山正英君 そこで、経済成長の見通しでございます。四十九年度は二・五%の経済成長の中で福祉対策というものが少なくとも大幅に、従来とは比較にならない姿で予算が組まれたということは、私は非常に努力された姿であろうというふうに拝察をいたします。  そこで、次に、経済社会基本計画というのをおつくりになっておりますが、この年平均の伸び率が九・四%と見込んでおられる。しかし、石油等世界資源の問題や国際収支の問題から再検討を要するとそういう意味で、あるいは若干の成長率を下げなければいかぬという御発言経済企画庁長官からあったようでございますが、その理由がしかと明確に私はまだ了解ができないのでございます。ただ、世界資源の面から見ましても、基本計画というものは、私当然、いまの五ヵ年計画では資源消費計画が書かれてありますけれども、それはちょっと問題ではないかというふうに考えるわけでございます。高度成長から安定成長と、こう言われるその内容はどういうものなんであろうか、私なりに判断いたしますと、高度成長から安定成長と言われる大きな主体は、公害の問題、それから世界資源に目を転じてこれを解決しなければならない問題、こういうふうな二つの面があるように私は思うわけでございます。いま企画庁長官が言われました、成長は多少ダウンしなければならないという、あるいはダウンを余儀なくされるであろうという理由を、もう少し明確にしていただきたいと思います。
  171. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 片山さんは御存じのとおり、釈迦に説法でございますが、わが国の過去十年間の経済成長率というものは、実質一〇・六とか一一とかいう非常に高いものでございましたけれども、それはやはり海外からの輸入の資源とか、それによるエネルギーとかいうものにたよらざるを得なかった経済環境のもとであるし、また何と申しましても、戦後、復興の過程を急ぎました。また、先ほど論議をいたしておりました賃金上昇の問題もございますので、やはりパイを大きくするというような考え方が、政府にもまた企業にも、日本国民の多くにあったと思いますので、そういういわゆる大きな経済成長政策が続けられてきたと思います。しかし、いま私がここに持っておりますが、昨年の二月つくりました経済社会基本計画におきましては、そういう状態は資源の面からいっても、また先ほど述べましたように経済成長、輸出第一主義ではなしに、社会福祉第一主義というものを並べてとります場合には、そういう高い経済成長をやるべきではないと、むしろおっしゃったように、九%台の成長ということで、福祉重視というような構想を取り入れておりました。  しかし、昨年からの状況によりますと、石油危機というようなものは、この計画を昨年つくりましたときにはまだ想定されておりませんでしたが、こういう事態になってまいりますと、その九%台の経済実質成長ということもたいへん無理ではないか、やはり六%とか七%とか、先進国並みとまでは申しませんけれども、日本は人口も多いし、また国土が狭いわけでありますから、いろいろ違う面がございます。完全雇用政策もとらなきゃならないということになりましても、やはり六%か七%の経済成長ということが私はいいところだろうというふうに思わざるを得なくなりましたので、そういうことを頭に置きまして、現在この計画のフォローアップをやっております。  しかし、その場合にも、この計画がとってまいりました福祉優先、現にこの計画には「活力ある福祉社会のために」という副題がついておりますことは、お持ちのようでございまして、すでに昨年二月の段階自民党政府は、そういう新しい考え方を取り入れておりますので、そこのところは経済成長をのがすけれども、それと一緒に福祉はダウンさせるんだという考え方は持たないほうがいいと思います。たとえば、九十兆の社会投資計画というものがこの中に載っておりますが、やはり生活関連の社会投資とか、あるいは教育でございますとか、というものに対する設備投資というようなものは、それはそのシェアを落とすどころではなしに、私は上げていくというような構想のもとに周囲の状況に照らしてこの計画をフォローアップする、こういうことを考えたらいかがかと思っております。
  172. 片山正英

    ○片山正英君 資源が無尽蔵だといわれたのが、いまや有限であると、かつまた、その資源は急速に減少しつつあると、こういうような意味合いのことのローマレクラブの報告がございます。それを踏まえて一、二点質問をいたしたいと思います。  最近の十ヵ年の統計を見ますと、世界の資源がどれだけ伸びているかというと、毎年五%ぐらいずつ世界の資源が増産されてきているというようでございます。ところが、一方わが国の状況を見ますと、十年間国民所得が大体一一%伸びた、それを背景として鉱工業生産指数が大体一四%伸びておる、さらにそれを維持するために資源の消費の伸び率は年率二〇%であるというのがわが国のいままでの現状でございます。とするならば、その二〇%はおそらく大部分が輸入に仰いでおるというのも当然の姿でございます。そうすると、世界の資源の伸び率が五%である、日本が二〇%の伸び率を継続しておる、こういう姿がいま国際協調といわれる中で一つ石油ばかりじゃなしに問題になるのではないだろうか、鉄鋼であれ何であれ木材であれ、なりゃせぬかということを私は杞憂をするわけでございます。  したがって、そういう意味合いで高度成長というものがもう一度見直され、そしてそれにつながる産業構造というものが基本的に検討される時代になりつつあるのではないだろうか、こういうふうに実は思います。したがって、そういう意味合いから、経済社会の基本計画というのは、前提条件がおつくりになったときとは多少変わってきているのじゃないか、そういう意味で、経済社会基本計画というものを検討しておられるのではないだろうかと、その点と、もし、おられるとすれば、そのような改定の方向の要点だけを、あるいは進捗状況を、簡単でいいですからひとつお聞かせいただきたいと思います。
  173. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 先ほど来の片山さんとかわしました問答のとおりでございます。あなたのおっしゃる線で私は進めるべきだと思います。ただし、発展途上国におきましては、総理がしばしばおっしゃるように、日本からの物資の供給、ことに石油二次製品その他肥料等を非常に待望している面もございますので、日本が経済成長をダウンして、海外のそういう諸国に対しては供給を落としてしまうということが、かえって国際協調を害する面があることも配慮いたしつつ、あなたのお考えに私は賛成いたします。
  174. 片山正英

    ○片山正英君 次に、通産大臣にお伺いいたします。  石油問題この方、わが国の資源エネルギー問題にいかに対処すべきか、また、これに対してわが国の産業構造をどんな形態に持っていくべきか、きわめて私は重要な問題であると、ただいまの経済企画庁長官のおことばをかりるまでもなく考えるわけでございます。この問題について大臣はどうお考えか。  あわせて、産業計画懇談会という財界の三十人ばかりの人の発表している本がございます。それによりますと、産業構造の相当大幅な転換を考えるべきだということが書かれてございますが、これらの考え方について、あわせて通産省としてのお考えをお伺いしたい。
  175. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり省資源、省エネルギー、知識集約型に日本としてはできるだけ早く移行すべきであると思います。しかし、当面現実としては、一億の人口を養っていく上については、重化学工業に基礎を置かなければ生きていけないということも事実でありますから、その間に移転の順序、手順を間違わないように、慎重にまたやる必要があります。それから日本にとって一番大事なことは人的資源であります。物的資源はありませんけれども、これだけの技術力を持った人的資源、それから企業の総合力、これはもう百年かかってできたものでありまして、これをそこなわないように、これをさらに前進させるようにということは非常に重要なことである、この二つが私は一番重要であると思います。
  176. 片山正英

    ○片山正英君 時間がありませんので飛ばしていきますけれども、次に、物価問題についてお伺いいたします。  物価問題がいろいろ議論になっているわけでございますが、私は物価問題の見方として二つあると思います。一つは、需給のアンバランスから生ずるもの、もう一つは、ちょうど最近におけるように輸入物資が非常に上がってくる、あるいは労賃が非常に上がってくるといういわゆるコストアップによるものと、こう二つあるように思います。  前者の需給アンバラによる価格の変動、あるいは最近におきます暴騰は、需要増に対し供給の不足傾向、あるいは先高を見越したそういう意味合いにおいて暴騰を起こしたいわゆる水ぶくれ暴騰と、こういうふうに私思うわけでございます。この意味で、総需要の抑制はこれにこたえる大方針だというふうに思いますし、最近の卸売り物価が非常に鎮静傾向を示したということは、まことに私は喜ばしいことだと思います。しかし、後者のコストアップによる物価上昇は、一時的なあるいは鎮静策、あるいは総需要抑制だけでは解決できない問題が私は残っておるんじゃないだろうか。たとえば春闘によりまする大幅賃上げは、特に合理化によって吸収され得ない現状において、私は物価上昇に多少なりとも拍車をかけるんじゃないだろうか。今後の物価と今春の春闘のベースアップとの関連でどのように考えたらいいか、これまた簡単でけっこうですから、企画庁長官にお伺いします。
  177. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) さっきも小野委員からいろいろお話があったことでございますけれども、それは経済が伸びてまいりますとき、景気が上昇してまいりますときには賃金の上昇を経済の環境が吸収する、あるいは生産性の上昇が吸収し得るわけでありますけれども、現在日本が立たされておりますような景気後退の心配もあるような時期、あるいはまた、実質の経済規模が落ち込んでいくような時期におきまして賃金を上げるということは、それは先ほど申しましたような、労働の機会を狭めたり、あるいは賃金を押し上げる機会があると思います。  なお、この際申し上げておきますが、先ほど金子さんの所説で、賃金を上げても、それはコストに占める割合がほとんどネグリジブルだという御説がございましたが、これは先ほどは申し上げませんでしたけれども、金子さんのとられた取材は、日本銀行の掲げておるいろいろな企業のうちで、大企業だけをとりまして、その金子さんがとられました大企業におきましては、コストに占める賃金の割合が一一%ぐらいのものをとっておられますけれども、全体のサービス業、中小企業等等に占める賃金の割合というものは決して一一%ではない。総理が言われましたように、サービス業等におきましては一八、九%、一九%ぐらいあることも事実でありますので、まず第一そこのところが違いますし、それから先ほど私もちょっと触れましたように、いろんな前提があるし、一次波及効果ばかりでなしに、二次波及によるはね返りというものも計算をいたしますならば、まあ金子説は金子説として、内田説によると金子説とは違った結果が出てくるということにもなりますので、賃金上昇というものは、いまの時代においては、この時期においては慎重であってほしいということを、これは私が所得政策に干渉することでは全くございませんが、そういう念願を持つものでございます。
  178. 片山正英

    ○片山正英君 労働大臣に関連してお伺いいたしますが、春闘はいままでは私は大企業中心の労働者のベースアップであったと思います。ことしは高物価への対処として、中小企業あるいは一般国民も含めた春闘だといわれております。しかし、私は企業の自主的な判断によってベースアップが行なわれるというのが主体とならざるを得ないと実は思うわけでございます。したがって、国民春闘ということばではありますが、あるいはそういう形はとっておられますけれども、やはり大企業労務者のベースアップとして、二万五千円かあるいは何%かわかりませんけれども決定されてくるのではないかと、こういうふうに思います。その場合に、中小企業の労務者に対してこの大きなベースアップがはたしてできるかどうか、これに準ずることができるか、こういう角度から見ますと、私は従来とも不可能であったし、今度もそれは非常にむずかしい問題であろうというふうに思います。そうしますと、大企業と中小企業の労賃のアンバラというのがこの春闘においてますます余儀なくされるということに相なろうかと思いますが、これに対して労働大臣の見解を伺います。
  179. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えします。  その点、私も非常に心配しているのです。この際に申し上げますが、私たちが把握している勤労者数というものは三千五百万、そのうち一五%が大企業、すなわち五百人以上の大企業が一五%、あと五百人以下が八五%。ただそこで、賃金は自主的労使交渉でおきめいただくんですが、最近の趨勢としますと、中小企業と大企業の賃金の差がだんだん縮まってきているというところは非常にいいことだと思っています。  一つは、人手不足だということ。それから若年層の諸君が中心に人手不足の上に、やはり賃金が世間相場になっている。その一つの例を申し上げておきましょう。四十七年度に五百人以上のところを一〇〇といたしますと、百人から四百九十九人のところが八二・三%、小であればあるほど格差が出てきます、これが三十人から九十九人が六九・七%。四十八年度は、百人から四百九十九人が八二・〇%、三十人から九十九人が七〇・九%。こういうふうにして、大きいところと小さいところとはだんだんに格差がついている。しかしながら、先ほど申し上げたように、大企業と中小企業の差が縮まっている証拠は、昨年大企業が二〇・一%の賃上げでしたが、中小企業は二一・一%。その前の年も大企業は一五・三%でしたが、中小企業は一六・五%、こういうことになっているわけでありまして、こういうものがどう吸収されるかというところは、先生と同じように実は心配しておるものであります。
  180. 片山正英

    ○片山正英君 私は、いまの大企業のベースアップが価格にはあまり影響しないのだ、労賃は一一%だから、幾ら上がってもそれほど影響しないのだということを言われている論者の方もおられますけれども、やはり合理化というものにはなかなかそれに即応しない、現段階においてはだんだんそれが吸収し得ない、物価に影響するというふうに思わざるを得ないわけですが、よしんば、大企業にはそれがないと仮定いたしましても、私は中小企業の賃金アップというのは即価格に影響していく体質を持っておるのじゃないだろうかというふうに実は考えます。  卑近な例で申しわけありませんが、私の近所にとうふ屋があります。大体毎日二百丁ぐらいしかつくらぬそうでございます、需要が……。ところが、もしベースアップが二万五千円あったとすれば、そのとうふ屋では、おやじさんとおふくろさん二人で朝早くから起きてつくっております。そうすると、二万五千円上がったとすれば、一日に換算すれば千円です、ボーナスも入れれば千五百円。そうすると、だんなさんと奥さんと二人ならば、三千円上がらなければいかぬ。そうすると、二百丁としますとそれだけで一丁あたり十五円上がる、これはもう自然な形だと思います。それを押えるということは無理なことかもしれぬとさえ思います。そういう意味合いにおいて、私は中小企業のベースアップというのは、残念ながら物価にはね返らざるを得ないという体質を持っておるのじゃないか。その点について企画庁長官の御見解を伺います。
  181. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) おっしゃるとおり、そういう影響が当然あるものと考えます。しかし、その場合に、中小企業の生産性を高めるという別の政策をほうっておけばいいものだというものでは、もちろんございません。
  182. 片山正英

    ○片山正英君 時間もたいへんなくなってきたわけでございますので、少し飛ばしていきたいと思います。  実は、建設大臣に、私が考えております、いまの社会的に何かこう不自然だ、何かどうも一般の人たちが不自然に考えるというものを三つ実はとっておったわけでございます。  たとえば土地の問題——土地を持っている人と持たない人との問題。それからもう一つは、働いている人と、もう働きをやめて老人として生活をしている人とのこの問題。それからもう一つは、金を貸している人と金を預金をしている人。その人たちのどうもアンバラ、不公平の問題が物価騰貴を契機として非常に浮き彫りにされてきた。この問題を何とか明確にしていかなければならないのじゃないだろうか。たとえば土地の場合でも、昭和三十年から四十七年の企画庁の例を見ますと、賃金は五・五倍になった、物価は一七%しか卸売り物価は伸びておらぬ。しかし、東京あるいは全国の市街地の平均の価格の伸び率は何と二十倍だと、こういうふうにいわれております。そうしますと、どうも不当利得という表現はよくはないのかもしれませんが、しかし、普通の売買をした製品であっても、需給のアンバラによって非常にもうけ過ぎたというのはやはり不当利得ではないだろうか。何もカルテル行為をしなくても、需給のアンバラからこの際もうけてやれということでもうけたのはやっぱり不当な利得じゃないかといわれるとするならば、土地についてもどうもそのようなきらいがあるのじゃないか。とするならば、ここにやはり公共優先の土地政策というものをもっともっと出していかないと無理なんじゃないかというふうに実は思いながら、二、三点の質問を用意して建設大臣にお伺いしようと思いました。しかし、時間もありませんので飛ばしていきたいと思います。いずれまたお伺いする機会があると思いますので、その節はよろしくお願い申し上げます。なれないものですから、こんなに時間が早くたつとは実は思っておらなかったのです。  それでは次に、ほかの人があまり質問しない問題でございますが、水の問題について建設大臣にお伺いします。利水に関する調査というのを建設省が発表されております。それによりますと、日本全国では水不足というのはない、しかし、特定地域においては水不足がある、こういうことでございます。  それを具体的に申しますと、昭和四十五年のわが国における水需要はラウンドナンバーで八百億トン、これが使われた。しかし、昭和六十年になりますと、それが千百六十億トンになる。したがって、三百六十億トンの水の需要増がある。それに対しまして供給増加というものを見ますと、八兆円の投資の中において四百六十億トンがまかなわれるということを見ますと、大体つじつまは合う、余って十分だ、こういうふうに実は考えられます。しからば、この八兆円という投資が六十年までにほんとうに現在の投資規模を考えて可能なのかどうか、この点を一点お伺いいたします。  それからもう一つは、それでもなお全国の八地域においては四十二億トンの水不足があるのだと、そして南関東、京阪神、北九州からは千九百万人の人が移動しなければつじつまが合わないのだと、こういうこともまた書いてあるわけでございますが、これらと関連をいたしまして、その見通し、これをひとつ簡単に御説明をいただきたいと思います。
  183. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 水は、御指摘のとおり、きわめて国民にとって重要な問題でございまして、昭和六十年になりますと、関東圏、近畿圏においては非常に逼迫した情勢になりますことはただいま御指摘を受けたとおりでございます。そこで、私も就任以来この水の問題に特別関心を持って取り組んでおるわけでございますけれども、さらにいままで以上に積極的な利水、治水の面からの開発を進めていかなければならないという点につきましては、もう御指摘のとおりでございます。  そこで、毎年これから、いままでの予算のつきぐあいの三〇%増くらいの速度でまいりませんと実はたいへんなことになるという試算を一応出しておるわけでございます。したがいまして、建設省といたしましては、ダム地点として開発し得る可能なところは、四十九年度から大蔵省にもよく協力していただきまして、要求した全部の個所の予算づけをしていただいたということでございまするし、さらに五十年度以降の問題につきましても、治水、利水という面、特に利水の面におきましては、雨水の表面水、地下水のみならず、いわゆる下水道の整備によって、一ぺん使った水を再び使っていくというような面にも思いをいたしてまいりませんと、ほんとうに水の足りない時代がもう目の前にやってくるという危険がありますので、そういうことを絶対に来たさないようにしていきたいということで、鋭意検討整備を進めておる次第でございます。
  184. 片山正英

    ○片山正英君 ただいまのお話を伺いましたが、私はやはり水の問題というのは、特に不足をしてくるというような問題を解決するのは短日月に解決できる性格のものではないはずでございます。したがって、長期展望の中にこそその安定化をはからなければならないと思うのでございます。すでに昨年、一昨年、東京において水飢饉がちょっとありました。近畿、山陰においても水飢饉が問題化したわけでございます。それだけに、水に対する対策というものは私はあらかじめ予定されて、非常に計画的にやらねばならぬ、こう思います。  そこで、国土開発をそういう意味から大いに見直すこと、そうして都市政策というものもそういう面からひとつ検討さるべきこと、そういうものを、私は経済社会基本計画にもっともっと明確に織り込んでいくべきだというふうに思いますが、その点について企画庁長官の御見解を伺います。
  185. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 片山さんのおっしゃるとおりでして、この経済社会基本計画の中には水そのものの供給増加等に関連する長期計画は示されておりません。ただ、治山治水でありますとか、あるいはその他の水に関連する施策等について、大ざっぱな、社会投資計画のようなものは九十兆円の五ヵ年間の社会投資の中に計上されておりますが、しかし必ずしも明確ではありません。そこで、今後これをフォローアップいたします際に、水の重要性に関するお説については私も異存ございませんので、その点をより明確にするようにつとめたいと思います。  ただ、水をどんなに引っぱってこようと思いましても、そこにすべての人間あるいは工業というものを集めることは当然不可能でありますから、水が活用できるところへ人口や工業というものを持っていくという、これは国総法的な考え方というものもやはり一緒に進めていかなければならないことも私は考えなければなるまいと思います。
  186. 片山正英

    ○片山正英君 次に、農業問題に触れたいと思いますが、あと時間がありませんので、主食の問題等も伺いたいのですが、一点だけ伺うことにいたします。  それは林業と山村の問題でございます。山村への投資、それから山村への公共投資、特に森林への投資と申しますと造林、林道等でございますが、私はこの投資は景気の刺激剤とはならない、鉄を使うわけじゃない、セメントを使うわけじゃない等々、それほど物資を使うわけじゃない。そしてまた公害の心配もない。むしろ公益事業といわれるものでございます。したがって、一般投資の抑制から山村はむしろ除外すべきではなかろうか。山村にとどまっている者、あるいは都市労務者がこういうある程度の抑制においてはUターンをして山村に帰ってまいります、そういう人の生活の安定のためにも一般の公共投資の抑制とは多少趣を異にした問題として処理していくべきではないだろうか。特に過疎化防止ということが政府の大きな方向でもございます。工場まで誘致してこれをやろうという大きな政府の方針の一つとなっておる際でございますから、かつまた公益機能という一つの方向でもございますから、むしろ公共事業と違った福祉政策の一環とすら私考えられる性格のものじゃないか。ことしの予算をどうというわけではございません。たいへん御配慮いただいておりますが、今後の方向として、私は総需要抑制というものとからんで、この問題をお伺いしたいと思います。これは大蔵大臣にひとつお願いいたします。
  187. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 長期的な問題とすると、私もまさにあなたの御所見のように考えます。ただ、来年度の予算のことにつきましては、御指摘はありませんけれども、来年は非常にむずかしいときでありますので、たとえば林道というものあるいは造林というようなものをとらえてみましても、これはまた多少景気とのつながりもあるというので、これを野放しにするわけにもまいらぬ。そこで、これも抑制的にお願いをしたわけでございますが、しかし、いまお話しのような事情もありますので格別の配慮はしておる、こういうつもりでございます。長期的には全く御所見のとおりで、私もさような考えで山村の問題は大事にしたい、かように考えます。
  188. 片山正英

    ○片山正英君 非常に飛び飛びのかけ足で、多少不適正なことばも使ったような気もいたしますけれども、ごかんべんをいただきまして、最後に一つだけ暫定予算についてお伺いいたします。  今年も、昨年同様、十日間の暫定予算を組まざるを得なくなったということはまことに残念でございます。しかし、この暫定予算をしたことによって、いろいろな諸施策の実行がおくれるということは、私はわずかな日数でございますから、ないと思います。昨年、高橋委員の御質問の中で、この暫定予算を組んだことによって二千三百万円の経費が使われたということを伺っております。非常に必要な経費ではあったと思いますけれども、これはまたもったいない経費であったなというふうにも実は考えるわけでございます。  経費はさておきまして、私はこの暫定予算によって少なくとも十日間本予算が延びざるを得ないということになったわけでございますが、この延びたことによって公共事業を主体とする事業が十日間なら十日間おくれるという結果になるのか、あるいはもっと発注がおくれるということに準備の都合でなるのか、あるいはほとんど影響ないというふうに判断していいのか、あるいはまたことしは物価抑制という大看板がございますから、そういう意味合いにおいてその発注のあり方は多少従来とは違った方向をとらざるを得ないということであるのか、工事を行なうそれらのいろいろな人たちに安心感を与えるのも必要ではないかという意味であえてお伺いするわけですが、ひとつ御方針を御明示いただいて、私の質問を終わりたいと思います。したがいまして、これは一番大きな事業を控えている建設大臣と、おそれ入りますが大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  189. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回も暫定予算という事態になりまして、本予算のスタートが十日間おくれる、こういうことになるわけでありますが、したがって暫定予算に計上してあるものは契約もできますし支払いもできますが、それ以外のものにつきましては契約、支払いはできないわけです。それだけ理屈としてはおくれるわけでございまするけれども、まあ十日間のことでありますので、この十日間、必要なものにつきましては準備を進めまして、本予算成立したならば直ちに執行できる、こういう状態ができ上がるようにいたしたい、支障はそれでなかろう、こういうふうに思います。
  190. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 実は、暫定予算という問題が起きる前から、四月当初の中小業者の建設業界の受注問題については、私一番頭を悩ましてきたところでございます。しかも、その上に暫定予算十日間ということになりますと、これはもう各県からの各業者の業界の話を聞きますと、きわめて深刻な話が実は持ち上がってきておるわけでございます。  そこで実は一ヵ月ほど前から、建設省といたしましては、もう中小関係の工事につきましては特に準備の万全を期して、国会予算を承認していただいたら次の日にでも契約のサインができるように、とにかく準備を整えなさいということで指導をいたしてきておるわけであります。したがいまして片山委員御心配のように、十日間の暫定予算、まあ大蔵大臣はたいした影響はあるまいというふうな状態で対処できるといいなと、こう私自身も実は思っておるわけでありますが、その間に倒産というようなことのないように、いろいろと実は配慮をいたしておる次第でございます。  以上で答弁を終わります。
  191. 片山正英

    ○片山正英君 以上で終了いたします。たいへんありがとうございました。
  192. 吉武恵市

    理事(吉武恵市君) これにて片山君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  193. 吉武恵市

    理事(吉武恵市君) 矢追君。(拍手)
  194. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、最初に、先日来政府のほうから生活関連物資の値上げ抑制につきまして百貨店、スーパー等に指導がされておりますが、その点についてどのような指導をされたのか、まず通産大臣と農林大臣からお伺いしたい。
  195. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 百貨店及びスーパー並びに中小企業団体に対しまして事前にいろいろ連絡をし、各企業別に物価抑制を要請いたしました。そうして実施と同時に、正式の文書を各社長ごとにたしか八百通ばかし出したと思っております。そうして自分たちの行なっておる、大体三月十日、つまり実行前の価格においてこれを抑制しておいてもらいたい、そういうことを強く要望して、その後、通産省におきましても監視隊をつくりまして、本省並びに通産局を動員して適時巡回監視を実行しておるところでございます。
  196. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私ども所管の物資につきましては種類がさまざまに違っておりますので、そこでいまお話がございましたような生活必需物資、そういうものにつきましては九品目は買い占め売り惜しみの指定、それから最近きめられました五十三品目のうち、直接のものが五品目、それから農機具等七品目、そういうものは価格を動かす場合には事前に協議をするようにということで指導をいたしております。
  197. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま通産大臣は企業に八百通出したと言われますが、これはあくまでも要請ですか、どの程度の指導力というのがあるのですか。
  198. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もちろん要請でございます。しかし、先方は自由意思をもって現下の情勢にかんがみ社会的責任をもって協力するという返事をいただいております。
  199. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この文書によりますと、おそくとも三月二十三日までにできるだけ幅広く貴社としての具体的対象品目を選定することとなって、そのことが報告されるようになっていますね、三月二十五日までに通産省に。この報告について具体的にお伺いしたい。政府委員でけっこうですから。
  200. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) お答え申し上げます。  百貨店、スーパー等に対しまして、軽衣料、雑貨等につきまして約百四十八品目の基準品目を示しまして価格抑制を要請いたしたところであります。各百貨店につきましては、現在、三月の二十六日から本日までパトロール中であります。  お尋ねの対象品目につきましては、各百貨店がどの程度実施しておるかということは、現在報告書はもらっておりますけれども、なかなか各百貨店、各店によって商品分類あるいは価格抑制品目等の範囲が異なっておりますために、これを計数的にとらえることはむずかしいわけでございます。これを大手百貨店五社について一応の取りまとめをした結果によりますと、平均で品目数は雑貨百四十五、衣料三十六、計百八十一ということになっておりまして、当方で要請いたしました百四十八を上回っておるという状況でございます。
  201. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いままでその八百通のうちどれだけ報告がきましたか、まず数の上で。
  202. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 各店舗からほとんど報告がきております。
  203. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 だから、八百通出したうちで幾ら報告が返ってきたかということです。三月二十五日まで、一応義務づけられているわけですから。
  204. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 大臣は八百と申し上げましたが、私のほうで要請しました数は、百貨店、スーパー合しまして社数で四百十五社であります。それから店舗数では二千九百、約三千に近い店舗数にのぼるというのが現状であります。
  205. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 その回答率を聞いているんです。
  206. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) お答え申し上げます。  ほとんど全部来ております。
  207. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 けさ、私がおたくの政府委員の方から聞いたときは、まだ五〇%程度だと言ったんですけれども、その点いかがですか。詳しい数をはっきり報告してくださいよ、ごまかさないで。
  208. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 確認してお答え申し上げます。
  209. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 朝、見せてもらったんだからね、朝ちゃんと聞いたんですよ。  二十五日、一応締め切りになっているんでしょう、それはおくれることもあると思いますよ、だけど、きょうは三十日なんですからね。いままで来ているだけの数、いま言われたでしょう四百十五社で店舗数が二千九百、それだけ文書を出して、どれだけ回答が来たかびしっとした数を出して何が悪いんですか、はっきりしてください。ほとんど全部とか半分とか、わかんないですよ。
  210. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 確認いたしますので、時間をいただきたいと思います。
  211. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 きのうからちゃんと通告して、けさ私はおたくの方といろいろ話し合っているんですからね、もうあなた四時ですよ。すぐ連絡して報告してください、これはおいておきますから。
  212. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) はい。
  213. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 その報告が出ないと困るんですが、いま品目のほうは平均百四十八品目と言われましたが、実際は品目だけではなくて、品種もきめられておるわけですね、数が。大体、これは傾向だけでけっこうですから、いま言われた大手五つの百貨店について数を報告してください。
  214. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 審議官がいま電話をかけている最中でありますから、私から御答弁申し上げますが、品種、品目は相当膨大にのぼっておりまして、家庭生活用品それから衣料品等々、大体家庭生活を維持していく上について日常使う、しかも生活にかなり影響のあるものというものを選んでおります。たとえばフライパンとか料理道具とか、そういうものまでも入っております。
  215. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これは、大臣、審議官がいないからとおっしゃいますけれども、ちゃんと数はもう公表されているわけです。百貨店へ行ったらちゃんと書いてあるんです。ポスターも張ってありますし、事実新聞広告も全部出ているわけです。  私のほうでいろいろそういった資料を、また直接行って調べましたところが、政府のほうから出ませんが、こっちで調べたあれを申し上げますけれども、合計いたします、日用雑貨、軽衣料、食料全部含めますが、三越では品目数で百八十六、品種数で七千四百十。大丸が二百四十四、品種数で二千二百七。松坂屋が品目数で二百五十九、品種数で千七百。西武がちょっとはっきりいたしませんが、これが品目が出ておりませんで品種のほうが出ておりまして二百四十四。伊勢丹が品目が百七十八、品種が二千四百九十五。小田急が品目が百八十二、品種数が三千七百七十五。松屋が品目が百八十、それから品種数で千八百五十九。ダイエーが品種でいきますと五百二十四、西友が五百、東光ストアが六百、そういうふうになっておるわけですが、各デパートで非常に違いがあります。  非常に極端なばらつきを——これで見ますと、特に西武ですね、西武が品目ではなくて品種数で二百四十四と、非常に他のところと比べて少ないわけです。これは非協力的であるという見方をされておりますが、その点どうですか。
  216. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一がいに非協力的であるかどうか言えませんが、これは行政指導で、やはり自由意思をもってやっておることでございますから、こちらから無理に強制するということもどうかと思いまして、自発的協力を求めておるわけであります。
  217. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 自主的な点はある程度やむを得ないかもわかりませんが、これだけいま狂乱物価で、政府もとにかく指導しなきゃならぬということで、昨年から法律もできました、生活二法もできたわけですし、そうして石油の値上げのあと、この間からの大臣の答弁等を聞いておりますと、この凍結品目をもってかっちり押えるんだと、非常に大きな宣伝をされておったわけです。しかし、いまのお話だと、これはもう百貨店にまかせるんだと、全然指導能力というのはないじゃないですか。報告だってちゃんと来ないし、来た数もわかんないし、それからいま言ったこういうばらつきも、私なんか軽くきょう一時間くらいで調べたやつですからね、あっという間にこんなのはわかるんですよ。  その点について、だから私は最初に要請だけではだめだと、もう少しきちっとした指導が必要だと、そういう意味でお聞きしたんですが、その点重ねてお伺いします。
  218. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 問題は実行でございますから、さっき申し上げましたように、通産省では相当数にのぼる監視隊を設けまして、随時百貨店、スーパーを回って、あるいはそのほかの小売り店等も回って、そうして値段をそのとおり守っているかどうか監視しておるわけでございます。実際の情勢を見ますと、かなりよく履行されているという報告を私は受けております。百貨店によりまして品種や品目が違うのは、これはやはりやむを得ないところでありまして、要は、そういう基準的なものが守られているかどうかということが非常に大事であるだろうと思います。
  219. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そんなにパトロールたくさん出しておられて、もうすでに、この通達出されたのは三月十六日ですから、約二週間、今日までたっているわけですよね。それで、いま言ったことがわかってないとなれば、一体どういうパトロールをされているんですかね。具体的に、パトロール、パトロールって、どうされているんですか、大臣でなくてけっこうですから、お伺いしたいと思います。
  220. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 先ほどの発言を訂正いたします。  現在着いておりますのは、四百十五店舗中二百十店舗であります。ただし、おくれておりますのは、北海道、仙台、福岡等遠隔の地域でありますので、おそらく郵便の都合上おくれておるのではないかというように考えております。  それから第二に、パトロールの問題でございますが、これは通産局が中心になってパトロールをいたしております。当然通産局のほうにはその名簿はついておるはずでございますから、通産局のほうで組を組んでパトロールをするということになっております。  それからもう一つ、百貨店、スーパー、店舗の数が多うございますので、行政管理庁の御協力をお願いいたしまして、スーパーにつきましては主として行政管理庁のほうでパトロールをしていただくということで、各通産局ごとに話し合いをしておるということでございますが、一部出おくれておるところがあるやに聞いております。
  221. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 どういう。パトロールをしているか聞いているんです、具体的に。
  222. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 各百貨店から、どういう品目の価格抑制をするかということについて、品目と銘柄についての表と、それから三月十五日現在の価格の届け出を受けておりますので、そういうような価格が価格どおり表示されておるかどうかということについて現場確認をいたしております。
  223. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 第一回のパトロールは三月二十六日から三月三十日の間に実施する、それで第一回のパトロールでは目標件数は百貨店が百店舗、それからスーパーが三百店舗、沖繩は別途指示すると、そういうことで全国をやっておるわけでございます。
  224. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまパトロール——その前に報告ですが、国会に対する報告としてははなはだいいかげんだと思います。実際は半分しか来ていないと、もう一つは、遠いところが来ていないと言いますけれども、いま郵便のストライキで、私聞いたことないのですけれども、郵便はまともに届いているはずです。だから、この点は非常に怠慢であると思いますから、きちんと指導していただきたいと思います。  それから。パトロールのしかたですが、実際いま言われたように、百貨店に行かれて抜き打ちで行って調べたのですか、それとも、向こうへ行って、ちゃんと全部書類を持っていって、一々全部チェックをされているのかどうか、その点どうですか。具体的なやり方を聞いているんです。
  225. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 大体二人ぐらいが一組になりまして百貨店のほうに行きまして、売り場主任等に案内をさせまして、その各売り場において品目表と現認しながら確かめておるというのが現状でございます。
  226. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 売り場主任には事前に通告してから行かれているのですか。
  227. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 通告はいたしません。
  228. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでは、具体的にちょっとお伺いいたしますけれども、これは具体的に百貨店の名前を言いますと、松屋で買ってきた大学ノートですが、これ四種類あります。値段を先に申し上げますが、二百二十円と、それから百八十円と、それから百三十円と、六十円と四つあるわけですが、このうちどれが凍結品目になっておりますか、大臣、御存じですか。これはそのまま買ってきたんです、何も言わぬと。
  229. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 品目表では確認できないと思います。売り場に行きまして、売り場のほうで、各店によってやり方が違うんですが、これは値上げ抑制品目であるというような表示をしておる方法で売っておりますところもありますれば、単に店内に表示をしてこれこれの品目は値上げ抑制品目でありますということでやっておるところもありますので、やり方はいろいろ各店によって異なりますので、その現物を見ただけで値上げ抑制品目であるかどうかという点は何ともお答え申し上げかねます。
  230. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあそれはこれだけ持ってきてわからないのはわかりますが、一応ノートは凍結品目に入っておるわけですね。そうした場合、この四種類のノートは、本来であれば、全部が凍結品目として価格凍結はされなければならないのではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  231. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 百貨店、スーパー等に対して値上げ抑制を要請いたしておりますのは、あくまでも要請であります。一応品目は百五十八品目を示しておりますが、これはあくまでも基準でありまして、各店ごとの事情によって基準表にのっとって各店のほうで具体的な値上げ抑制品目をきめていただきたいという要請をしておるわけでございますので、百四十八品目に載っております品目については相当数の百貨店が自己の値上げ抑制品目の中に含んでおるというように期待はいたしておりますが、必ずしも全部の店舗が当該品目を含んでおるということではございません。
  232. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いや、私の聞いているのは、このノート四種類全部を一応しなければならないのじゃないですかと。実際を言いますと、この六十円のノートだけが松屋の場合はこういう価格安定商品というラベルを売り場に置いてあるわけです。これでこれが凍結品目だと一応わかるようにはなっているわけです。しかし、それは六十円のノートだけなんです。ほかの三つの種類のノートについてはこれは出てないわけです。だから、私は、ノートといえば、本気になって価格凍結をやるならば、一応たとえ短期間であっても全部やらなくちゃいけないと思うのです。これはほかの問題にもあるわけですけれども、その点どうですか。
  233. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 百貨店によりまして若干事情が異なりまして、ノート全部をやるということではございませんので、ノートのうちのある種類のもの、あるいは、化粧品ですと、特定の商品の特定のブランドのものを相当期間値上げを抑制するということで表示をするということといたしておりますので、必ずしもノート全部が値上げ抑制になっておるということではございません。
  234. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それはどこの店でもどの商品においてもそうなっておりますか。それでいいわけですか。大臣、どうですか。
  235. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 統制経済や物統令による全面価格凍結をやっておるのではないので、行政指導ですから、大体結節部分を押えようと、そういうわけで、まあ主要銘柄、代表的銘柄について協力を求めておるので、そういう方式でいいと思っております。
  236. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうすると、いま大臣の言われた結節銘柄というものは、このノートの場合を例にとりますと、六十円だけか縛られると、それさえ縛られればある程度の物価抑制になると、こういう判断ですか。
  237. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ノートで言いますと、値下げの指導をしたものは、A五判学習帳九十円のものとか、六号B五判ノート百十円のものとか、六号ノート百四十円のものとか、そういうものをおのおの六十六円、七十五円、九十五円に値下げした、こういうふうに、やはり代表的銘柄について押え込んで、そしてほかのものもこれにならうように、これは自由意思をもって協力してもらうと。あんまりこれが開いておったのでは、お客さんのほうでも変ですし、売るほうだって良心の痛みを感ずるだろうと思うわけです。
  238. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私の質問しているのは、通産大臣の先ほどの答弁だと、銘柄どれか一つを凍結価格にしてしまえばほかがならうだろうと、こういうことですよね。だから、ノートでいうと六十円のノートがそれに当たるんですかと。じゃ、しょうゆの例を言いますよ、私。これはキッコーマンのしょうゆですが、実はこのしょうゆの並んでおるこの百貨店においては、この品物だけが凍結価格になっているんです。この店はこういうラベルが上に置いてあるのです。価格凍結商品と、こういう宣伝をして、これが置いてあって、しょうゆの種類がいっぱいあります。これはキッコーマンですが、キッコーマンでも同じものがある中でこの分だけなんです、このビニールでね。このものだけが凍結価格になっておるのです。だから、これを締めればあとは締まると、こういう大臣の考えですけれども、それでよろしいですか。
  239. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それでまあやむを得ないと。ベストではありませんけれども、まあ自由経済を基本にして行政指導で協力を求めていくというやり方を考えますと、もう全商品について網の目を漏らさないようにやるということは事実上不可能ですし、そういうこと自体が膨大な人員を要しますし、やむを得ない。それ以上は良心に訴えると、そういう考えに立ってやっておるわけです。
  240. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 その良心に訴えるというのもけっこうですが、再三本予算委員会でもまた衆議院予算委員会でも指摘されてきたのは、いろいろ最近の商法に問題があると、こういうことですから、あんまり良心にばっかり私は期待できないと思うのですね。その一つの証拠といたしまして、実はこのしょうゆだけが凍結価格になっておるので、私はそこの店の店員に聞いたわけです。これだけはどうして安いんですかと、ほかと同じようなのがあるけれどもこっちはどうして安いんですかと聞いたら、この百貨店の、まあ具体的名前を言いますと三越です、三越の百貨店に出ておるしょうゆの中で、これは三越が直接大量仕入れを契約して入れているから安うございますと。要するに、通産省から指導されておる凍結価格という、だから消費者の皆さんに御迷惑をかけちゃいかぬのでこれだけは凍結するんですという答えではないんですよね。要するに、これは何も凍結価格として押えなくても、もとから二百円であったものなんです。事実ほかの百貨店に行きますと、これより安く売っているところもあるんです、この同じものが。これはまあしょうがないと思いますよ、百貨店のあり方ですから。  それからもう一つは、これは松坂屋の場合ですが、価格安定商品という広告が出ているわけです。そこにどう書いてあるかといいますと、大量計画仕入れです、商品廉価です、品数豊富です、当分の間値上げはいたしませと。要するに、通産省から指導されたから押えたんじゃなくて、これはもともと安かったものでございますと、大量で計画仕入れされたものだと、こういうことになっているわけですよ。だから、そういう品物だけはまあ指導もされたし、国民に対してもある程度責任も果たさなくちゃいかぬというまあ良心とかりにとっても、こういうものを置いてあるわけなんです。実際そのものが、ほんとうに政府がこの間からずっと言われたような、本気になって高物価を押えなくちゃいけないと、そういうことで業界がこれについては利益が薄くなってもかまわぬから安くしますと、まあほかのものでそのバランスはある程度かりにとるとしてもですね、そういうものじゃないわけですよ。だから、先ほど通産大臣がこのもとを締めればあともならうんだと。そういうものじゃない。もとが締まってないんですよ。もともとこれは安いものなんですよ。その点についていかがですか。   〔理事吉武恵市君退席、委員長着席〕
  241. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、石油が上がったのについて便乗値上げを防ぐという意味で、上げませんと、そういう約束をしていただいた品物ですから、いままでの値段以上に上げないというものもあって、いまのようなラベル、あるいは表示ですか、話の出ているのもあると思います。しかし、デパートによっては、これは通産省の指導による価格ですと、そういうことを書いたコーナーを持っているデパートもありますし、また、あるところでは、通産省の指導より安い値段の価格ですと、そういうものもあるということを報告で聞きました。それは百貨店によっていろいろ仕入れ事情やその他によって千差万別ですが、ともかく上げないと、そういう約束がなされていることが大事であると思っております。
  242. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあそう簡単に言われますけれども、それは確かに上げないことは私は悪いとは言わないですよ。ところが、せっかく通産省が出されたことも、確かに、いま言われたように、これはちゃんと凍結価格商品とはっきり書いてあるんですね。それからこれに類するポスターも張ってあるわけです。ところが、私は非常に疑問に思うのは、そういう価格凍結商品でございますということ、これを一つのたてにとって、いわゆる特価バーゲン売りの宣伝に非常に使っておる。たとえば、このしょうゆは、実はこれは価格安定商品というラベルが張ってあるんです。これは価格安定シリーズというキャンペーンを張っているわけです、いま、この百貨店は。その品物なんです。で、価格凍結品というのはまた別なんですよ、ラベルが。これが張ってないといかぬのです、ほんとうは。たまたま競合したということになるかもしれませんけれどもね。だから、各デパートでいまどういうことをやっているかといいますと、たとえば、いま言った三越では「物価安定シリーズ」、小田急では「物価安定協力セール」、ダイエーでは「物価値上がり阻止運動推進中」、それから松坂屋では「価格安定商品」で、「ストップ」というラベルが出ています。それから高島屋は「価格据置商品」、あるいは松屋の「物価安定協力商品」、伊勢丹では「物価安定協力商品」と、これをちょっと大臣見ていただきます。——これは最近出た新聞の広告です。だから、それに非常に価格を押えます、落とします、こんな安く売っておりますと。まあ宣伝もしろということがこの行政指導の中に確かに入っておりますから、これは私宣伝して悪いと思いませんが、私は、その価格凍結ということに対する行政指導がなくても、それは本来もう安くなってきているものだと、こう思うわけです。その実証をいまから一つはデータでやりたいと思うのですが、その前にお伺いしたいのは、凍結品目百五十八と先ほど言われましたが、その中で、小売り物価、卸売り物価がこの一月、二月に下がっているもの、あるいは二月、三月にかけて下がっているものについて、あるいは値段が同じものについて、報告をしてください。
  243. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 設定いたしました基準は必ずしもそういうことではございませんので、消費者が日常使うものという基準で選定をいたしたわけでございます。したがいまして、先生がおっしゃったような基準では必ずしも選んでないわけでございますが、衣料等につきましては全体的に一般的に値下がり傾向があるというように承知いたしております。
  244. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は具体的に聞いているんです。ちゃんと政府のデータも出ているんです。また、消費者からのデータも新聞にも出ています。はっきり答えてください。
  245. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 選びました中で、衣料等は、申し上げましたとおり、値下がりをいたしておるように考えております。
  246. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私が聞いているのは、百五十八品目の中で、どれとどれが値くずれしているか、下がっているか、卸売り物価、小売り物価としてですね。具体的に聞いているんですよ。何ですか。
  247. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 抑制凍結しておるのは百四十八品目、それから五十三品目でございますが、いま手元に資料でないようでございますから、あらためて御報告申し上げます。
  248. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私はきのうから要求しているんですが、非常に残念だと思いますが、あとから出してくだださい。  具体的に総理府の小売り物価統計から見ましても、下がっているものは、合成洗剤、それからたわし、それからちり紙、ノート、便箋、おとな運動ぐつ、電球、自転車、砂糖、小麦粉、それからインスタントラーメン、これはまあ農林省関係ですが、こういうふうに下がっておるわけです。また、卸売り物価を見ましても、砂糖も一月から二月に下がっております。それからちり紙も下がっております。ノートも一月、二月下がり、三月は大体同じと、鉛筆も一月、二月で下がって、三月は平行と、まあこういうふうに来ておるんです。  それで、いまさっき、そういった価格を考えないでこの品目を選んだと、生活に関連が強いので一応凍結品目に選んだと、こう言われておりますが、といいますと、物価抑制という面から見てこの凍結品目のきめ方というのははなはだ非科学的であり、ずさんであると言わざるを得ないと思うのですが、その点いかがですか。
  249. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 基礎物資の五十三品目は、これはセメントとか丸鋼とかあるいは洗剤とか、ともかく生活並びに産業の結節線に当たるものでこれを押えればほかに波及が非常に妨げると、そういうものをまず選んだわけです。それからそれ以外の生活関連のものでは、日用雑貨の中では茶わんとかさらとかナイフとかフォークとか弁当箱とか、食卓用品では魔法びんとかしょうゆ・ソース入れとか砂糖入れとか、ともかくそういうふうな洗たくばさみ、あるいはたわし、クレンザー、バケツ、ヘアトニック、クリーム、口紅等等、わりあいに日常使うものでわりあいに消費物件として関心の強い大事なものをほとんど選んでおりまして、何も安いものを選んだというわけではございません。
  250. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 安いものを選んだのじゃなくて、私の聞いているのは、凍結品目というのは何の目的でどういうふうな基準でどう選ばれたのかと。ただ生活に関係があるだけでしょう。私が言いたいのは、いま言った値くずれしているのもある、下がってきているやつがあるんです。それをわざわざどうして凍結品目に入れなきゃならないのかと。ほんとうに価格を安定させるというなら、そういう下がってきているものはほっておいたって下がるわけですから、その点がどうかと言っているんです。
  251. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは今月に入りましてから総需要抑制のきき目がぐっと出まして、そのために下がってきたという現象、また、われわれがそういうふうに監視制度を強化しているということもあって下がってきたと、両々相まってきておるので、その下がるか下がらないかということの中のわれわれの関心としては日常生活品で民衆の使うもの、そしてわりあいに家計に響くもの、そういうものを中心に選んだわけであります。
  252. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあ、いまいろんなこと言われましたけどね、実際三月のデータはまだ三月十六日の時点できまらなかったとしても、少なくも一月から二月に下がっているようなものについては、わざわざ入れる必要なかったんじゃないですか、どうですか。
  253. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石油の値段を八千九百四十六円にしたにからんで、また便乗値上げされては困ると、そういう考えからこういう特別の措置をしたのでありまして、これは石油の便乗値上げを防ぐというのが非常に大きな要素を持っておったわけであります。
  254. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあ、いまその便乗値上げを防ぐからと、そういうことでと言われますけれども、実際私は、この凍結品目のきめ方がそういうことであったにせよ、非常にずさんである。いま言った高値安定に、結局は高値に安定して凍結をさしたという結果になっているわけです。これの中でもし今後下がるものはどんどんはずされるのかどうか、これもお伺いしたいですが、その次に、この中に入っていないもので、そうして国民生活にとってまだ非常に必要なものもあるわけです。たとえば加工食品、乳製品、菓子類、酒、ウイスキー——ビールは入っておりますが——皮製品あるいはビニール袋、こういうようなものが入ってない。しかもこういうものはむしろ上がる傾向にある。この点についてはいかがですか。これは農林大臣にお聞きする。
  255. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 加工食品につきましては、御指摘のように確かに一部値上がりを示しているものもございます。したがいまして、これにつきましても当然値上がりの動向が出てまいりますればおそらく措置をとらなければなりませんけれども、これは先生御承知のように、一般の工業製品と違いまして中小企業が非常に多いわけでございます。したがって、いま先ほどちょっとノートで御指摘ございましたけれども、非常に品質、規格が多様でございます。そういうふうなこともございまして、なかなか実効ある行政指導というのがむずかしい場合がかなりございますので、私どもとしましては、こういったような事情を考慮いたしながら、なるべくある程度の押えのきく生産集中度のあるようなもの、しかも国民生活に影響のあるようなもの、そういうふうなものにつきまして、今後海外の市況等、やむを得ざるコストアップというふうなものでなしに、値上がりする傾向が出てくれば、直ちにこれは行政指導その他で対応できるように常時目を光らかすというふうな感じでおるわけでございます。
  256. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ビールが入って、酒、ウイスキーの入らなかった理由はどういうところにありますか。
  257. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ビール、酒、ウイスキー、これは自由価格でございますが大蔵省のにらみが相当きくんです。実際はそう自由がきかないと、こういう状態にある商品でございます。そこで、酒、だとかウイスキーにつきましては、まあこういう物価情勢でありますので値上げをしなければもうやっていけないと、こういうような要素もあるんです。それを押えに押えて今日に至っておると、こういう特殊な事情がある。そういうことを勘案し、それから一方物価対策上にらみのきく酒、ウイスキーなんかの値上げをどうするか、どういうにらみをきかすかと、こういう立場もありまして非常に扱いのデリケートな商品でございます。そういうことから、値上げ事情は全然それらと違ったビールにつきましてはですね、これは今後まあにらみというか、この事前届け出商品として価格を抑制しようと。しかし、酒とウイスキーにつきましては、これはもう少しどういうふうなにらみ方をするかということを政府のほうでも考えてみようと、こういうことでございます。
  258. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま大蔵大臣だと、酒、ウイスキーについてはにらみがきくと、ビールはききにくいからビールは価格凍結の商品に入れたと。どうしてビールはにらみがきかないんですか、酒とウイスキーと比べて。
  259. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ビールがにらみがきかぬということを申し上げたわけではないんです。ビールのほうもにらみはきくんです。しかし、ビールのほうはそう切迫した価格事情というものがないと、こういうことです。しかし、これはほっておけばやっぱり値上げをするおそれがあるというので、事前届け出品目の中にこれを入れる。それから酒やウイスキーにつきましては非常に窮迫した事情があるんでありまして、まあ倒産寸前というような酒造業者もずいぶんあると。そういう状態の中でこのにらみのきかし方、これは非常にデリケートなんでございますが、まあ物価政策の立場も考えなければならぬ。しかし、にらみのほうもどうするかということも、そういうことを考えて慎重にしなければならぬ、そういう特殊な商品でございますので、ビールと扱いを異にして事前届け出品目からはこれを削除したと、こういうことでございます。
  260. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、ビールが入った理由は、要するにこの間上げたばかりなんです。要するに、昨年の十月ごろに全部上げているわけですね。だからこれはずれているんです。酒とかウイスキーはこれからも上がる可能性の非常に強いものなんです。だから私は入っていないんじゃないかと。これはほかのものでも全部言えるわけです。要するに、いま言われた加工食品、乳製品等はもうきょうかあしたか、この辺でいろいろと上がろうとしてきたわけですよ、肉とかあるいは乳製品関係も。だからそういうものは入っていないわけです。要するに、これからも上がる、非常に政府の指導のもとに上げられるようなもの、特に。そういうものは全部はずしている。すでに上がったものは入れていると。それじゃほんとうの価格凍結ということは言えないと、こう私は指摘をしたいんですが、その点についてはいかがですか。
  261. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 酒、ビールに、またウイスキーにつきましては、最大のそういう物価政策的配慮をしているつもりでございます。つまり、いまお話しのようにビールなんかはこれは自由品目でございます。まあにらみにもかかわらず自由品目であるというので、昨年の秋でしたか値上げが行なわれておる、差し迫った事情はないんですが。酒はこれは非常な窮迫した状態なんです。そういう状態でまあ適当な時期には酒の値上げという動きが出てくるんじゃないかと、そういうふうに思います。そういうことが予見されるような状態でありますので、これは事前届け出というような品目に入れておくのもいかがかと、こういうふうに存じて、その品目からははずしたわけですが、物価政策につきましては万全の配慮をしているわけでありまして、その点につきましては、私どもはほんとうにこれは物価問題こそはと、こういう決意でやっております。
  262. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 農林大臣、いかがですか。加工食品と乳製品と入れなかったのは、これから上げるからでしょう。
  263. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 農林省で指定しております品目は御存じのことだと思いますが、その中に乳製品のようなものがないと、肉もないということでありますが、これはもう御承知のように、今回、まあきょう、あすに乳価とか豚価とかきめます。そういうような状況にあります前に、これをうんと値上げすべきだという御要求が国会の中でも、全国からわき起こっておることは御存じのとおりでありまして、まあそういうようなこともありまして、この点は非常に流動的であります。しかも飼料はほとんど外国品でありますし、そういう関係もございまして、しかも乳製品というのは不足払いをいたしまして政府が援助をいたしておりますので、価格決定にあたりましては御承知のように畜産振興事業団も関与いたしておるような状態でありますので、特にこれはそういうところに入れる必要がないと、こう考えておったわけであります。
  264. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 だから、総理にお伺いしますが、いまさっきずっと議論を聞いておられておわかりのように、凍結品目に入れる入れないという問題、また凍結品目のきめ方、これは非常に私はずさんと言ったらちょっと極端かもしれませんが、要するに便乗値上げがまた石油が上がったことによって起こるんじゃないか、それを押えるために一応生活関連物資だけはこうやっておけと、そして百貨店の五十二と、全然政府の力はというと、じゃ統制経済にしていいんですかと、こう開き直られるわけですけれども、そうじゃなくて、やはりこれから非常に上がろうとしていることに国民は非常に不安があるわけですから、それを一時は何とかしても、がんばって押えてもらうと、これでなくちゃならぬわけでしょう。総理もしばしばそれを言っておられたのでしょう。だから、いままで過去の例を見ましても売り惜しみ買い占めの法律もあまり発動しないまま来た。また、石油についても標準価格等がきめられましたけれども、また先日来の値上げによってその辺も非常に問題になっている。また、この凍結品目についても、いま私が指摘しましたように、ほんとうに国民が入れてほしいものは入ってないんですよ。もちろん全部要らぬとは言いませんよ。凍結品目の中にあったもの、いいものもありますが、それは先ほど言ったように、本来安くてもいけるようなものということがはっきりしているわけです。  また、もう一つデータを申し上げますと、消費者物価指数の中に占める凍結品目の割合というのを消費者物価指数の中から見てみました。時間がありませんので私が申し上げますが、総合で一万に対して凍結品目は千百四十三、わずか一一・四%なんです。そのうち食料が一〇・三、住居が八・〇、光熱が二四・九、被服関係が一五・二、雑費が一〇・九%となっているわけです。ということは、かりに一世帯の支出が一万円としますと、その一万円の支出の中で凍結品目になっておるものの値段は千百四十三円ということです。わずか一割程度のものが凍結されたということにしか指数の上でならない。要するに、九割のものは極端に言うと野放しということです。しかもこの中で見ますと、やっぱり食料、住宅というのは一番必要ですよね。そういったものの割合はやっぱり一〇・三、八・〇と低いのです。光熱費というのは確かに必要かもしれませんが、家計の中で占めるウエートというのは非常に小さいのです。そういうものは凍結のあれが高いのです、二四・九と。だから、結局凍結についても、今回の価格凍結についても、ほんとうにいま国民がこの狂乱物価で困っておるときに対する政府の指導としてはあまりにも私はずさんなものであったと指摘せざるを得ないのですが、その点についての総理のお考えをお聞きしたい。
  265. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 石油価格をきめる場合に、石油価格が上がることによって他の国民の生活必需物資が上がっては困るということで諸般の対策をとったわけでございます。これは三段階にしておるわけでございます。一つは、まず物価を抑制する、安定をせしめる、また高騰を事前に防ぐということで、灯油のような問題は国民生活安定法による指定物資にいたしておるわけでございますし、また五十三品目については行政指導価格をきちっときめておるわけでございます。また、他の百四十八品目につきましては品目を明示をして、最終販売機関の協力を求めて守ってもらおうと、国民が必要とする場合選択をしないで、たとえばノートだったら、ノートを必要とするという場合になれば安い価格で手に入るというようにいたしておるわけでございます。ですから、すべてのものを全部統制価格にするとか、標準価格にするとか、抑制価格にするとかというわけにはいままいらないわけでございますが、さしあたり石油価格決定に対して最小限押えなければならないと思われるものに対してはこのような措置をしたわけであります。しかし、これから事態がだんだんとわかってくることにおいて、なお国民生活に必要かものがありとせば、そういうものは追加もいたしてまいりますと、こういうことでありますから、まあ政府は誠意をもってやったと、こういうことで御理解をいただきたい。いずれにしても凍結価格ではなく行政指導価格は守られておるということでございますが、あなたは、しかし、その中にはもっと市場において安い価格のものもあるということになれば、指導価格をもっと下げてくれということになるわけでございますから、そういうことで行政指導を徹底させることによって、より実をあげようと、こういう意図に出るものであることは事実でございます。
  266. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 最後。いまの総理の話だと、いまの品目についてももう一回全部総洗いをして、再検討をして、はずすものははずすと、それから非常に国民がまだこれから不安に思っておるようなものについては追加をして、きちんと入れてやっていきたいと、こう理解してよろしいですか。
  267. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 事態に対処して当然実があがるようにするためには、ほうっておいても下がるものに対して——政府は指導価格をしているので、幾ばくかでも高い値段を表示をしておるということがあっては、これは今度高値安定どころではない、下のかんぬきになるわけでありますから、物価抑制、安定、物価を引き下げることに役立つために行なったことが、かんぬきになっちゃ困りますので、そういうものははずしていかなければならない。また、新しく国民的要請がある問題が具体的にわかれば、これを追加をしていくということは当然のことであります。
  268. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) これにて矢追君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  269. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 中村君。(拍手)
  270. 中村利次

    中村利次君 昨年の石油ショック以来、わが国の産業活動、国民生活はまことに重大な危機を迎えているわけでありまして、特に物価高に悩む国民は、現在の物価がどうなっていくのか、あるいは今日以降、将来の物価がどうなっていくのかということに対して期待とたいへんな不安を持っておると思います。まず、私はこういう点について、政府はどういうぐあいにお考えになっているかお伺いをしたい。
  271. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) だれに……。
  272. 中村利次

    中村利次君 通産大臣と総理にお答えいただけますか。通産大臣は当面のあれでしょう。だれでもいいですよ。
  273. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 現在、物価の状況は、政府が短期決戦、総需要抑制と、こういうふうに言い出したそういうラインに沿って動いておると思うのです。卸物価について言いますれば、これがまず先行する問題ですが、これは二月から実質的に横ばいに近い水準になり、三月は大体これは横ばいに来ておる。総需要抑制政策がかなり響いておりますから、これは春闘のことを心配しておるのですがね、その春闘でけたはずれのことがなければ、これは私は、この一、二ヵ月で、いままでの狂乱ムードというか、この値上がりムードというものは一変をする、そうして需給の関係からいえば、もう仮需要というものはない。多少供給過剰型で経済界は推移する、そういうふうな見通しでございます。まあ展望としますと、狂乱物価討伐作戦は大体見通しはついたと、こういうふうにいま申し上げて支障ないのじゃないか、そういうふうに思います。  また、消費者物価はこれを追っかけて、どのぐらいのタイムラグになりますか、通例は四月とか五月とかあるいは六ヵ月とか、そういうラグがありますが、追っかけてまた鎮静してまいる、こういうふうに見ておりますが、ただこれから先、需給要因の面、物価は申し上げるまでもなく需給の問題とコストの問題がありますが、需給問題はもう解決される、こういうふうになりますが、コスト問題があるんです。それは電力料金問題がある。あるいは私鉄、国鉄問題がある。そういう需給問題でない他の一つの重大問題、つまりコストが上がるという問題があるんです。その中に、特に私は気がかりなのは春闘による賃上げですね。これはコストとしてどういうふうな影響をするか、こういう問題があるんですが、そういうコストの問題も、需給が鎮静しておる、そういうさなかにおけるコスト要因でありますので、そのコストがまた需給に反射して物価事情が非常に混乱する、こういう状態は私はないと、こういうふうに見ておるのでありまして、大体夏ごろまでには物価全体として安定するという方向に動いておる、かように見ております。
  274. 中村利次

    中村利次君 確かに物価は需給とコストによって左右されることになると思うんですね。ところが、去年の石油ショックは、これはまず最初は量だったわけでありますけれども、量と価格の両面で需給の問題がたいへんにくずれた。あるいはこの国会でも明るみに出されてまいりましたけれども、その中には反国民的な便乗値上げもあり、あるいはやみカルテル等のいろんなことがあった。そしてコスト要因によらないたいへんな狂乱があったわけですね。それに対して対処をしておるんだというお答えだったと私思いますけれども、しかしながら、やっぱりコスト要因というものは、それは私自身も国民とともにたいへんに不安を持っておるんです。原油は驚くべき高値になりましたけれども、しかしなお産油国は値上げの姿勢をくずしておりませんし、なおメジャーズも追徴金をかけて、そしてやっぱり原油高の傾向はいまだに改まらない。こういう状態の中で、二百品目をこえる行政指導価格と総理はおっしゃっておりますけれども、これには法的強制力も監視体制も十分ではない、行政指導によってこれをわずかにささえておるということになりますと、たとえば、いま大蔵大臣も御指摘になりましたし、またそれに加えてアルミ、紙・パルプ、鉄鋼、石油化学、あるいは海運では内航船等々がすでにもう値上げのかまえを示しておる。これはすべてが原油価格の高騰によるものでありまして、こういうことに対してどう対処されるのか。私は、これはあるいは失礼な言い方かもしれませんが、お互いに選挙目当ての政治性で目先を何とかする、しかしながら、そのあとのツケは全部、容易ならざる事態を伴って国民にツケを求めなければならないということになると、これは破滅的事態に立ち至ると思うんですが、こういう点についてはどうお考えでしょうか。
  275. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま中村さんの御指摘のように、昨年の混乱した物価状態というものは、これはもう非常に異常です。つまり物価というものは、これはコストというものがあるわけですね、それに適正利潤というものがつけ加わって、これが一つの重要な基準になるわけですが、その基準をもとにして、そのときのその商品の需給の関係で多少のフレがある。これが物価です。ところが、昨年の暮れから正月にかけてのこの物価の状態というのは、そういう正常な物価の動きじゃありません。全くこれは投機の動きなんです。つまり、先高である、何でも買っておけば有利である、事業者はもうかる、家庭におきましてはそのほうが安買いであったと、こういうことになると、みんな買うわけですよ。そういう状態で仮需要というものが起こった。また、その仮需要による混乱であるがゆえに収拾の道があるわけです。コストが上がっちゃった。その物価をどういうふうに下げようか。コストを一つ一つ詰めて下げようとしたって、これはなかなかむずかしい。ところが、そういう仮需要の呼んだ価格、つまり私はもう物価じゃない、これは投機相場だと、こう言っているのですから、そういう状態ですから、これは先は商品が下がるんだなという見通しを事業家も国民も持つようになれば、持っている品物を吐き出すに違いないです、それは。先は価格は上がらないのだ、その上がらないということはどこからくるかといえば、需要が足りない、供給のほうが過剰である、こういう状態にすることだろうと思います。  そこで需要のほうを詰める総需要抑制政策というものをとってきたわけです。それが功を奏しつつある。こういう段階で、需給要因というものは全部抜かれちゃうわけです、解決されちゃうわけなんです。解決して、もう経済の動向は鎮静した、狂乱というようなムードはない、多少のことがありましてももう大きな混乱は起こらないという状態が、まあ来月になりますか、五月になりますか、出てくる。その中で生産費の上がる要因というものを一つ一つ解決していくというのですから、多少それは水準は上がりますよ、一方において総需要抑制で物価は下がる勢いにある、またコスト要因から上がる勢いにある、そのいずれが勝つかということは予断はできませんけれども、一つ一つのコスト要因というものが出尽くす。その際には、いままでと違った新しい価格体系というものができて、そこで安定する。  ただ一つ解決されない問題があるんですが、それは海外要因です。世界の物価が下がればわが日本も下がる。上がればまたわが日本もそれに追随して上がる。そういう要因はありまするけれども、世界水準を越えてわが日本の価格が上がるという要素はないし、いま油のことをたいへん御心配ですが、これは一年間にとにかく過去においては四倍上がっちゃったのですが、そんなようなことはもうあり得ざることである、さように考えております。
  276. 中村利次

    中村利次君 これは私はどうも時間がないものですから、あまりしゃべっていると時間が切れちゃいますから。いま、いみじくも大蔵大臣から新しい価格体系という御答弁があった。新価格体系についてお伺いをしたいと思います。どなたからでもけっこうです。
  277. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 日本の経済構造が価格を通じて私は変わりつつあると思います。したがいまして、私どもがいつも申し上げております対前年同月の卸売り物価指数とか消費者物価指数とかいうものは、たいへん飛び離れないようにすることはもちろん大切でありますな、しかし、それが前年と同じであればいいというような形を続けることでは、今後の日本経済の構造変化に対応できない。海外からの原材料資材、石油をはじめとしてそういうものが上がってきて、その原因はどうであろうと、日本国内にいろいろの波及的影響を与えます場合には、その波及的影響を織り込んだ価格水準というもののもとで総合物価指数というものが落ちつかなければならないと思いますので、そういうことを想定をいたしながら、今後の物価体系というものを私どもは指導してまいりたいと思います。しかし、その場合、だから電力が上がる、あるいは農産物、飼料あるいは畜産が上がっていいのだということでは、今日は貨幣経済を中心に経済は動いておりますから解決できる問題ではありませんので、まあ一口に言うと新価格体系、中村さんのおっしゃる新価格体系というものを実は頭の中に描きながら、物価の情勢というものが非常な狂乱状態におちいらないようにおさめていくことと同時に、新物価体系というものを編成をしていくことがほんとうは必要だろうと私は考えます。そういう論を、じゃいま直ちにやれと、それは石油と一緒に電力も上げてしまえ、私鉄も上げてしまえ、それに関連する公共料金も上げろ、あるいは卵でも牛乳でも、飼料でも、あるいは食肉でも、あるべき姿は直ちに出せという論者も実はあるんです。あるが、そういうことをやりますと、それは物価の総合的上昇率というものがいまの貨幣経済の中では非常な混乱におちいることもまた明らかでありますので、その辺を十分織り込みながらいろいろと苦労をしておる、こういうことでございます。
  278. 中村利次

    中村利次君 そうしますと、その新価格体系というのはいつごろでき上がる見通しですか。
  279. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) それは私は一ぺんにつくらないほうがいいと思います。物価の先ほど申しました総合指数が狂乱状態にならないように、幸い最近非常に卸売り物価も消費者物価も落ちついてまいってきておりまするし、また大蔵大臣を中心に総需要の抑制もやっおりますから、他の要素なしとすれば、物価は横ばいからむしろ下がってまいる方向にいく状況にもあると思います、そればかりからしますと。しかし、いま申しましたような、新価格体系の原因になりますようなコストアップの要因がありますから、そういうものを価格の正常化する過程の中で織り込んでいくのがよいと考えますので、たとえば公共料金にいたしましても無理があるものは一ぺんに上げてしまうとか、農産物にいたしましても一ぺんにやってしまうということではなしに、じわじわと、将来の日本経済の姿を考えて、しかも物価全体としては失敗がないように持っていく、こういう非常にむずかしい幾つかの要素を織り込んだ経済的芸術をやってまいる、こういうことであります。
  280. 中村利次

    中村利次君 新価格体系はまた後ほどお伺いしましょう。  たびたび電力料金の問題が出てまいりましたが、通産大臣にお伺いをしますけれども、電力が四十九年度に使う油は大体どれくらいの見通しですか。
  281. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) お答えいたします。  概算でございますと、年約六千万キロリットルぐらいではないかと思います。
  282. 中村利次

    中村利次君 来年ですか、四十九年ですか。——昭和四十五年当時に比べ、現在ただいまの原油価格は幾らになっておるのか、また去年の石油ショック以前、九月現在に比べてどれくらい値上がりしているのか、お伺いしたい。
  283. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 電力会社ではミナス原油及び中近東原油、両方使用しております。ミナス原油の例で御報告いたしますと、昨年上期に輸入しました油はFOB、バーレル当たり三ドル七十三でございました。その後十月、十一月と上がりまして、四十九年一月一日以降はこれが十ドル八十になっております。それから中近東原油の場合でございますと、昨年上期に使用しました油は二ドル若干こえた程度でございます。最近ではこれが八ドルないし九ドル、あるいはそれをオーバーするというような水準で輸入されておるように思います。
  284. 中村利次

    中村利次君 倍数で言ってみてくれよ。大体何倍ぐらいになっているか。
  285. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 昨年上期を基準にいたしますと、三倍ないし四倍という水準であろうと思います。
  286. 中村利次

    中村利次君 これは私はどうもその資料には疑問がありますけれども、議論をしているひまがありません。  そこで、そうなりますと、電力が四十九年度どれくらいの赤字が出ると想定されますか。
  287. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 電力会社の経理を見ておりますと、一番大きな費用の項目としては燃料費でございます。それから人件費あるいは償却費等々がおもな項目でございます。当面コスト上昇が一番大きな影響としてあらわれておりますのは燃料費でございまして、四十八年上期は一期の間に大体二千六百億円ぐらいの燃料費を使用しておりまして、この二千六百億円が先ほど申しましたような形でコストを上昇させておるという面、それから他面では人件費、物件費等の値上がり、これらが合成をされて四十九年度の経理を圧迫するというような関係になるわけでございます。これらの社別あるいは合計の積算につきましては、私どももいまいろいろな資料から推計を重ねておるという段階でございます。
  288. 中村利次

    中村利次君 どうもね、それではどうしようもないじゃないですか、政府は。公共料金に対してどういう考えを持っておるのか、実態はどうなのか、そういうのがわからないでいま検討中であるというのじゃ、これはもう納得できませんな。
  289. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体九電力でいま値を上げないでじっとやらせるとすると、概算試査で一兆六千億円程度の赤字になりそうです。
  290. 中村利次

    中村利次君 としますと、これはもう経済の原則からいって、これは気持ち、感情はどうあろうとも、これを一日延ばせば一日延ばすだけ、金利を含めて——その前に聞きましょう。これは一兆六千億の赤字が想定される。それは値上げしなくても済む赤字ですか、それともいずれは値上げしなきゃならない赤字ですか。どうでしょう。
  291. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれは自由経済を基本にしてる経済体制を最善と信じておるものでありますから、やはりある段階に来たら値上げをして正常経営ができるようにさせていく。もちろんあれは公益事業ですから、適正利潤ということで監査しなければなりませんが、そういう方向にいくべきものである。ただ、その時期をいつに選ぶかということは、物価政策を考えて慎重に行なうべきものであると考えます。
  292. 中村利次

    中村利次君 そうなりますと、これは一ヵ月値上げをおくらせても一千数百億の赤字がずうっと累積されていきますね。これは金利がかかっていきますね。このツケは国民に回っていくんだということになりますと、物価政策上から、いま国民がやっぱり被害を受けるのか、まあ被害というか負担をさせられるのか、あるいは将来金利分を含めた、しわ寄せも含めたものを負担させられるのか。こういう点の判断はどうでしょう。
  293. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点はアメリカでも経験がありまして、ニクソン大統領がやった物価凍結、フェーズ1からフェーズ4までやりましたが、人為的に凍結をし過ぎるというと、フェーズ4が終わって自由に戻した場合に暴発的に物価が上って、その決算が国民にしわ寄せしていったという例がございます。私は電力の場合も同じようになってはいかぬと思います。ですから適切な時期を選んで適切な値上げを行なって、そして正常経営が行なえるようにしていくということが方向であると思います。しかし、それをいつを時期に選ぶかということは、物価政策等を考えて慎重にやらなきゃいかぬと、そう思っております。
  294. 中村利次

    中村利次君 経済原則を否定した物価政策があるのかどうか、伺いたいと思います。
  295. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政治ですから、やはり国民生活を中心に考えて物価をできるだけ低位に安定していくという要請が第一でありますが、しかし、それを小手先であんまりいじっておくというと、経済にゆがみができてきたり、あるいはある時期に物価が暴発的に高くなったり、あるいは品物が影をひそめたり、非常に矛盾が出てきて、そして国際間との隔離が非常にはなはだしくなって、外国からはダンピングであるという非難も受けかねまじき情勢も出てくると思います。そういう意味において、やはり市場機能、価格のメカニズムというものを大事にいたわりながら、しかも政治目的を達成するようにしていくことが今日重大であると思います。
  296. 中村利次

    中村利次君 これは何も電気料金問題だけじゃありませんね。すべての物価がそういう要因を持っておる。いま通産大臣がお答えになりましたように、一定時期になるとそいつが爆発的に値上がりを誘発するということになりますと、私は政治の責任はどこにあるんだということを考えざるを得ないんですよ。やはり国民がひとしく現在、目先何とか物価が安定してほしいということを熱望すると同時に、将来どうなんだと、これが失敗したら、私は政治に対する不信なんてものは、これはもう救いがたいものになると思う。御答弁をいただきたい。
  297. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれはやはり自由主義あるいは資本主義を基本にした政治をやろうと思っておるものでございますから、電力料の問題についても、やはりそういう経済原則というものは貫いていかなければ長続きのする政治はできないと思っております。で、そういう場合に選挙等をあまり意識することはいけないと思います。やはり長い目で見て、国民に福祉が長期に保障されるということをわれわれは考うべきである。そういう意味において、物価もようやく鎮静しかけてきつつもあり、そろそろ日本国民経済というものを段階的にどういうふうに正常化していくかと、そういう方向にわれわれは考慮を働かすべき段階にきつつあると、そういうように考えます。
  298. 中村利次

    中村利次君 原油価格の問題について、これはまあたいへんな関心だと思うんですが、将来の見通しお伺いします。
  299. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 情報は幾つもございますが、大体最近の情報を見ると、横ばいないし多少は長期的に見れば下がるかもしれぬと、その下がるという場合も、まあ御祝儀程度にちょっと下がるというのが大かたの情報ではないかと思います。もちろん、上がるという気配も情報なきにしもあらずですけれども、長期的に見て、サウジアラビアがアメリカの禁輸を解いて増産に踏み切るということがはっきり出てきますれば、上がるという情勢は消えていくんではないかと、むしろ横ばいないしは少し下がると、そういうのがまず一応の情勢ではないかと思います。
  300. 中村利次

    中村利次君 これは、この石油問題でも私はずいぶんやっぱりただしておきたい点があるんですが、時間がございませんので……。  この資源外交について、これは通産大臣はたいへん楽観的な御意見のようでありますけれども、私はもっと深刻です。資源外交について、通産大臣外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  301. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれは省資源、省エネルギーの政策を進めていきますけれども、やはり当分の間は重化学工業を基礎にした国家としていかなければ、一億の国民は食っていけないと思います。そういう現実を考えますと、資源外交というものは非常に重要な要素を占めて、この間うち石油問題でわれわれはひどい目にあったわけであります。このことは、銅においても、あるいは錫においても、あるいは食糧においても戒心しなければならない要素であると思っております。そういう点において通産当局、外務当局はもちろん、内閣全体として、周到な用意をもって、長期的展望のもとに外交やそのほかの政策を進めていくべきであると思います。
  302. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一つには、資源保有国がその保有する資源に対する主権を強く主張してまいっておりますことは理解しなければならぬと思います。したがって、資源外交はそういう国々との間の対立という姿において、対決という姿において展開すべきものではないと思います。消費国と資源保有国との間の協調体制をつくり上げなければならぬと思います。同時に、消費国は資本を持ち、魅力ある技術を持っておるわけでございまして、この資源の交流と、資本及び技術の交流というものを組み合わせた上で、協調体制を鋭意つくり上げることによりまして円滑な必要資源の確保をはかってまいることを基本としなければならぬと考えております。
  303. 中村利次

    中村利次君 原油問題が、この石油資源の全くない、そしてなお日本を工業基地としてたよっておる発展途上国に与える深刻な影響については、どういうぐあいにお考えですか。
  304. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一年間に、半年たたないうちに四倍も上がるというようなことは、わが国のように、外貨を持ち、抵抗力を持ちました国にとりましてもたいへんな重圧であったわけでございまして、それが、資源もない、技術もない、抵抗力もない国々にとりましていかに深刻であるかということは想像にかたくないわけでございまして、このことはひとり資源保有国、消費国という問題ばかりでなく、世界全体の問題として取り上げなければならぬと思うのでありまして、国連におきましても四月九日から特別総会が開かれることになっておりまするし、消費国は消費国で、その問題についての討議を始めておるわけでございまするし、一国あるいは一グループだけの仕事ではなくして、世界全体が取り組んでいかなければならない問題であると思います。
  305. 中村利次

    中村利次君 OAPECへの外貨偏在に伴うこの世界的な通貨不安については、大蔵大臣、どういうお考えでしょうか。それとその対策。
  306. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ国際社会もたいへんないま困難な時期に当面しておるわけなんですが、あの石油の値上げの結果、石油消費国、これの国際収支の赤字が六百五十億ドル内外に及ぶであろうというふうに国際社会では見ておるわけです。まあいまお話もありましたが、そういう間におきまして、わが国のように、たまたま外貨は多量に持っておったというような国でもこれだけの混乱が起こるのですから、そういう外貨準備なんかのなかった国々の混乱、困難も想像に絶するものがあるわけです。  そこで、いまこれをどういうふうに切り抜けていくかということを国際社会で相談を始めておるわけです。一つはIMFですね。これを中心にいたしまして、そしてその過剰なアラビア諸国のドルをIMFを通じまして再配分すると、そういう仕組みはできないかと、こういうことであります。その勉強が始まっておるのです。わが国もこれに参加をいたしております。もう一つはアメリカが提唱したワシントン石油会議ですね。この会議の結果、調整グループというものができまして、まあ同様の問題——これはまあ少し幅の広い——国際収支ばかりじゃないですね、まあ資源の問題、現在の資源の問題、また将来の資源の問題、そういうようなものまでも含めての協議でありますが、そういう話し合いが始まっており、わが国もまたこの話し合いに参加をいたしておる。まだ、ほかにも国連でそういう動きが始まっておりますが、当然わが国も国連の場においてその問題の処理に参加し協力をすると、こういう立場にあるわけですが、これはどうしても、わが国一国でどうのこうのというわけにもまいりません。わが国は多数のそういう関心を持った国々と相寄り、何か具体的な調整工作を見つけると、そうして、この難局を切り抜ける、そういうほかはないのじゃないか。まあ私は大蔵大臣といたしまして、特にこのIMFを中心とする国際収支のこの難局の処理と、こういう問題に関心を持ち、また六月にはそういう種類の会議がワシントンで開かれますが、それにも出席を予定しておりますが、まあとにかく、これはもう世界の指導者たちがもうほんとうに最高の良識、最高の英知を発揮して乗り切らなきゃならぬ問題である。わが国なんかは資源小国である、油はほとんど国内から出ないという国でありますから、ほんとうに重大な関心を持って国際協力に臨まなきゃならぬ、そういうふうに考えております。
  307. 中村利次

    中村利次君 これは石油問題はいろんな課題をかかえてきわめて深刻です。そこで、通産大臣、いかがですか、代替エネルギーについてはどういう方向をお考えですか。
  308. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはりまず石炭、それから原子力、それからタールサンドやオイルシェール、それから太陽エネルギー、地熱、あるいはさらに長期的なものでは水素の直接還元、こういうようなものについてわれわれは本格的に取り組んでいかなければならぬと思います。
  309. 中村利次

    中村利次君 目先、中期、長期と分けなきゃいけないと思うんですが、まず当面はいかがでしょう。
  310. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 当面はやっぱり石炭と原子力と太陽エネルギーだろうと思います。
  311. 中村利次

    中村利次君 太陽エネルギーは、これはあんた、ずいぶん——二十一世紀の課題でしょう。
  312. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それから水力があります。  太陽エネルギーを軽視なさいますけれども、実際は各家庭で温水器を屋根に置いておくというと、テレビをつけるぐらいの電力は技術を開発すればすぐできるわけです。テレビとかルームクーラーの電力というのはばかにできないんです。太陽エネルギーを、一つで二十万キロとかを集中するのは非常にむずかしいですけれども、各家庭に分散してとるということになると、日本のようなこういう太陽の多い国においては非常に適切なんです。ですから、通産省はサンシャイン計画というのをやろうと思っております。(笑声)
  313. 中村利次

    中村利次君 サンシャイン計画は承知しています。これも議論をしていると時間がありませんから……。やっぱり私は、当面原子力以外にはエネルギー源としてはないと思うんです。原子力行政について、これはひとつ科学技術庁長官。
  314. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 先ほど代替エネルギーについて通産大臣からお話がございました。私は、私見を申し上げますれば、確かに太陽熱とか、地熱とか、あるいは石炭の液化、気化ということはきわめて重要な研究課題であると思いますが、中期というふうに考えてみますと、大きく期待することはなかなか容易ではないと私は考えております。当面やはりエネルギーで期待をするということになりますれば、何といっても、お話がありましたとおり、原子力ではないかというふうに考えております。  これは一つは、石油の問題は、先ほどいろいろお話がございますが、世界の石油の生産量に対する消費率とか、あるいは世界の輸出数量に対する輸入比率とかいう点から考えて、量的な限界もございまするし、また質的に見ましても、最近のような非常な値上がりでございますから、外貨も非常に食うということでもございますし、それだけに日本経済がどの程度たえていかれるかどうかという大きな問題もかかえておるわけであります。  また、最近稲葉原子力委員が試算したところによりますと、キロワットアワー当たりの原価は石炭で少なくとも六円。ところが原子力の場合につきましては、濃縮ウランの値段が上がりましても三、四円強というのが常識でございますから、今日の段階において、わが国のエネルギー対策、特に電力対策を考えまするならば、原子力発電でこの場を切り抜けていくことが最も大事であるというふうに私ども考えております。  御案内のとおり、これにつきましては、昭和五十五年三千二百万キロワット、昭和六十年六千万キロワットという計画がございます。しかしながら、遺憾なことに、現在まで完成しております原子力発電は、昨日稼動いたしました島根の発電所がございますので、六基二百三十万キロワットということに相なりました。昨日までは五基百八十万キロワットでございましたが、若干ふえたわけでございます。現在あるものが全部できましても二十三基千六百万キロワットでございますから、このままでいきますと予定の半分程度になるわけであります。というのは、昭和四十七年度における原子力発電所の申請はわずかに一ヵ所、四十八年度はゼロでございますから、こういう調子でいけば、もう昭和五十年度、来年度の八月の電力を最も食う時期に、すでに電力の需要に対する供給のゆとりは、通常八ないし一〇%要るものが来年は五%ぐらいの程度になるのじゃないかということになり、もう来年、再来年、その次ぐらいの年の三ヵ年間は、予備率の低下ということで、全国各地に停電がぼつぼつ起きてくるというような事態になりますし、昭和五十三年度以降というのは、もう供給自体のほうが需要に追いつかないということになって、ゆゆしき大事であるというふうに考えております。でございますから、何とかして実現可能な方策を立てて、原子力発電の立て直しをやりたいということで万全の努力をいたしておる次第でございます。
  315. 中村利次

    中村利次君 原子力は安全性と環境問題がこれはきわめて重大ですけれども、ところがこの安全性についてたいへんどうも国民が不安を持ち、心配をするようないろんな事件がありますね。最近は岩佐さんという方が皮膚炎を起こされて、そして阪大の医学部の附属病院で診断をされたら、放射線皮膚炎という診断をされたという。放射線皮膚炎になるにはどれくらいの被曝をすればなるのですか、お伺いをしたい。
  316. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 事務当局をして答弁いたさせます。
  317. 牟田口道夫

    政府委員牟田口道夫君) ICRPの、国際放射線防護委員会の数字によりますれば、一応二十五レムが身体障害を起こす基準となっております。
  318. 中村利次

    中村利次君 それは身体に与える影響であって、皮膚炎を起こすあれはどのぐらい違うでしょう。
  319. 牟田口道夫

    政府委員牟田口道夫君) 皮膚炎は二千ないし四千ということになっております。
  320. 中村利次

    中村利次君 委員長、違うんですよ、答弁が。
  321. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 御質問には答えておると思いますが、再答弁求めますか。
  322. 中村利次

    中村利次君 再答弁求めます。——ミリレムで言ってください。
  323. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) ミリレムで申しますと、一般的に専門家の御意見でございますと、皮膚炎になりますのが二百万ミリレムないし四百万ミリレムと、こう言われておるようでございます。
  324. 中村利次

    中村利次君 この診断書をごらんになりましたか、科技庁長官
  325. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 一度見ました。
  326. 中村利次

    中村利次君 どうも科技庁のあれが足りない。四十万ミリレムから百万ミリレムの被曝をすると放射線皮膚炎になるおそれがあるとこの田代医師は言っているんですよ。それが事実かどうか、お伺いしたい。
  327. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) これは専門家の方の間でも多少幅がございますので、先生御指摘のように、四十万から百万というところで出た例もあると思います。私が先ほど申し上げましたのは、もう少し高い二百万という数字もあると申し上げたわけでございますが、かなり幅がある数字でございますので、田代先生の御指摘の数字でもあるいは出るケースはあるかと思われます。
  328. 中村利次

    中村利次君 これは田代医師がそう言ったんであって、それは確かに二百万というのも一つの医学界の常識であると思います。  それでは敦賀でどのような作業をして、どのような被曝をしたのか。
  329. 牟田口道夫

    政府委員牟田口道夫君) 原子炉補機冷却系海水配管の穴あけ作業をいたしまして、一ミリレムを被曝をしたという記録になっております。
  330. 中村利次

    中村利次君 もっと詳しく言ってください。
  331. 牟田口道夫

    政府委員牟田口道夫君) 本人が作業いたしましたところは、汚染区域ではなくて汚染監視区域でございまして、そこで、いま申し上げました海水配管の穴あけ作業をいたしました。そこで、それを出ましたときにポケット線量計と、それからハンド・フット・クロス・モニター、手と足と衣服を調べる計測器によって調べましたならば、一ミリレムを被曝をしたという記録に相なっております。
  332. 中村利次

    中村利次君 医療用のレントゲンで被曝する線量はどれくらいでしょう。
  333. 牟田口道夫

    政府委員牟田口道夫君) レントゲンで胸部の間接撮影をいたしました場合には、数百ミリレムと承知いたしております。
  334. 中村利次

    中村利次君 自然界の放射線量はどれくらいですか。
  335. 牟田口道夫

    政府委員牟田口道夫君) いわゆる自然放射能と申しますのでは、場所によって異なると思いますが、たとえば日本では、関東では八十ないし九十ミリレム、関西では九十ないし百四十ミリレムぐらいではなかろうかと記憶いたしております。
  336. 中村利次

    中村利次君 まことにおかしな話ですね。自然界に数十ミリレムから百ミリレムの放射線があって、それで医療用のレントゲンで数百ミリレムの被曝をして、そして皮膚炎を起こすには四十万から百万、二百万ミリレムの被曝をしなきゃ起こさないと、こういうときに、たった一ミリレム、それで放射線皮膚炎を起こしたという診断があるのは、これはどういうことですか。
  337. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) ただいまお話しのとおり、私どもは、身体的放射線障害を生ずる線量は二万五千ミリレム——二十五レム、すなわち二十五レム——二万五千ミリレム以上であると、国際的な学界でそういうことが言われております。また、放射線により通常皮膚炎を起こす線量は五百レム、すなわちそのさらに二十倍であります。しかるに、今回被曝したと考えられる線量はわずかに一ミリレムでございますから、そういうことはあり得ないのではないかというふうに私ども考えておるわけであります。それで、はなはだふしぎに思いましたから、会社を招致し、また会社のほうへ参りまして事情を調査いたしましたし、これは黒柳先生から熱烈なる御質疑がございましたものですから、それにお答えする意味で調査をいたしました。また三月二十五日には、現地に専門家を送って調査をさせた次第でございます。まあ私ども、いままで調査したところによりますれば、これが放射線皮膚炎であるということはとうてい考えられないところではございまするけれども、しかしながら、やはりそういう診断が一部に出てきたということもあり、また本人の健康という点を十分考えまして、御本人の健康のために、かつは国民の疑惑を解くために、専門的な医師によってこの問題で真相を明らかにするように、目下鋭意努力中でございます。
  338. 中村利次

    中村利次君 四十万ミリレムから二百万被曝しなければ起きないような皮膚炎が、一ミリレムの被曝で皮膚炎を起こしたと言っておる。厚生大臣、これをひとつ、この診断書をごらんになってどうお考えになりますか。
  339. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 私は厚生大臣です。臨時代理をいたしております。  中村さんからそういうお話があるということで、この新聞の切り抜きに載っておりまする——診断書というものがこれに載っております。それはまあしかし念のためにいただいておきます。それで、お尋ねがあってはいけないかと思いまして、厚生省の専門当局に、そもそも診断書とはいかなるものかということを問いただしておりまして、私が間違うといけません、臨時でありますから。書いたものを読み上げます。一般的に、医師は診察した時点における患者の訴え、症状、既往症、医学的所見等を踏まえて、患者の状態について専門の学識経験をもとにして診断を下すが、その場合に、いかなる原因によってその患者の病状がもたらされたものであるかは、容易に明らかにされる場合もあり、また病状によってはきわめてむずかしい場合もあると、こういうことが書いてありますが、そこで、一体診断書というものには原因を書くものかということを私が重ねて確かめておきましたので読み上げますと、診断書について、医師法上は診断書について定義、様式等は規定していない。したがって、診察の結果に関する判断が必要かつ十分に表示されておれば診断書といえる。この新聞に載っておりますものの診断書というものが——まあここにある、これを見ながら私はこれを考えておりますが、ただ、それに加えて、病状の原因について必要に応じて触れる場合はある。しかし、これは触れることが診断書の要件ではないそうであります。診断書とは何かということに関しては判例もあるそうであります。大審院の判決があるそうでありますが、いわゆる医師の診断書とは、医師が診察の結果に関する判断を表示して人の健康上の状態を証明するため作成する文書を指称するということでありますから、この患者が……。
  340. 中村利次

    中村利次君 その診断書についてどうですか。
  341. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) この患者が皮膚炎を起こしておったという診断に間違いはないが、この原因についてここに何か書かれておるといたしますと、それは診断書の必ずしも必要要件ではない。これは正しい場合も、違う場合もあり得るそうでございます。そういうものでありますから、まあ診断書としてはこれ、十分認められるものでございましょうけれども、原因について作業中の放射線被曝が考えられるということは、これは私は、よけいなこととは言いませんけれども、あっても差しつかえないし、なくても診断書である。また、これに書いてあるところを見ますると、原因については間違う場合もしばしばあるが、それは、たとえば後の科学的その他の理由によってその理由は訂正されても差しつかえないし、訂正される場合もときどきある、ことに解剖などによってですね。この場合は違いますけれども、その病状の理由が訂正されることもあるそうでございますから、これはまあ診断書としては、診断書の一種には相違ないと、こういうことでございます。
  342. 中村利次

    中村利次君 最後に。  これはわかったようなわからないような、全く答弁になってないんですよ。私が質問しているのは、一ミリレムの被曝があったということは、これはみんな関係者は確認をしておる。科技庁も責任を持ってそれは言えますね。それが人体に何らかの影響を及ぼすのはその二万五千倍、皮膚炎になる可能性があるのは四十万倍から二百万倍、いま御答弁もあった。それに、そういう状態の中で、その原子力発電所の被曝によるものと思われるという診断書がある。私はこのことに対して、診断に対してどうお考えになるかを言ってるんですから。——いや、もういいですよ、いいですよ、時間がおしまいですから。——一般論としてでは困るんです。  それから、なおかつ私は、やっぱり文部大臣にもお伺いをしておきたい。もしこの診断書が——大体専門家によりますとね、医学的に疾病について業務の基因性を証明することは事実上できない、特に原子力、こういう場合はですね。経企庁長官のおっしゃる一般論とはこの現実論は違うんです、これは。できない、こういうことが一般の専門家のこれはあれですよ。その場合、これはね、原子力というものはきわめて不安なものである、こういう印象をやっぱり国民が持つでしょう、これは。事実に反することとしたら、その責任はどうするんです。阪大は国立ですよ。監督官庁は文部省のはずなんです。私は文部大臣に御答弁を求めるとともに、それから原子力の開発については、安全性については、総理も科技庁の長官政府責任を持つとおっしゃっている。そういう事実に対して、各閣僚のお答えは何ですか、このだらしないお答えは。わかったようなわからないような、何か責任のがれをするような、納得できません。ひとつ明快なお答えを要望して私の質問を終わります。
  343. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 阪大における診察結果のことでございますので、きのう事務当局からいろいろ話を伺いまして、私自身たいへん首をかしげておったことでございました。病院で外来患者を診察する。一般的にはそれぞれ専門領域についての診察でございますので、個々の医師がそれぞれの能力を最大限度に発揮してしかるべきでございますけれども、問題のようなケースにつきましては、やはり医師の合議制によって結論を出すのが大学病院のたてまえになっているわけでございます。このことは、不幸にしてそういう合議制の診断の結論ということになっておりませんので、やはり私はそういうような慎重な診察の結果を待つべきだと、そういうように考えているわけでございます。しかしながら、たまたまそういうことがとられておりませんので、阪大当局に対しましても、私としてはいまのようなたてまえに立った配慮を求めたいという気持ちを抱いているところでございます。
  344. 中村利次

    中村利次君 私はあらゆる調査をしていますよ、あらゆる調査を。
  345. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 私は、毎回委員会で、この種の問題について申し上げるのでありますが、何と申しましても、原子力開発自身は軍事利用から発達して、そして平和利用に進み、その歴史は必ずしも長くないわけでございます。また、それだけに、この新しい技術あるいは新しい産業といたしまして、技術的なアセスメントを常に行なっている。安全性等の問題は念には念を入れて気にしていくという、これが産業であり技術でございます。そういうことではございますが、だからといって安全でないということは間違いだ。もう今日世界で五千万キロワットの発電をし、アメリカだけでも四十三基、二千五百万キロワットすでに発電をして、すでにあと五十三基建設中と。世界の大勢から見まして、そんなあぶないものなら、こんなに原子力発電が急速に進むというわけはないのでございます。でございますから、私どもは安全性の問題についてはいささかも疑念を持っておりません。しかしながら、そういう種類の産業でありますだけに、今回のような常識では考えられないことでもやはり国民の一部に不安を持つ、あるいは不安を持たせようという者もあるわけでございますから、やはりこういう問題について一つ一つしらみつぶしに真相を究明していかなければならないというふうに考えておる次第でございます。今度の国会ではいろいろたくさん問題が出ました。私自身は小さい胸を痛めておるわけでございまするけれども、しかしながら、十分この原子力の安全性については確信を持ち、自信を持って、また責任を持って前進してまいりたいと思っておる次第でございます。
  346. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 非常に重要な問題でありますから、この際明らかにいたしておきますが、日本は原子力発電にたよらざるを得ないという現実の前に立っております。そしてまた世界的に見ても、いま科学技術庁長官が述べましたように、アメリカではすでに稼働しております。フランスは近く全部原子力発電所に切りかえると言っております。私は、ソ連訪問のときには——ソ連の東欧諸国に対する発生電力の送付は送電線だけによってやっているわけでございまして、原子力発電所はソ連の領内に設置をし、そして発生電力だけを送っているわけでございます。それで、日本が電力を必要とするならば、南樺太に大型の原子力発電所をつくって電力だけを供給してもよろしいと言われておる。これが世界の情勢でございます。そういう中において、現実的に原子力発電所が必要であるという現実の上に立って、しかも国民には、新しいエネルギーでございますから、絶対安全であるということを証明し、そして、それに対しては政府責任を持たなきゃならないということを申しておるわけでございます。あなたが御指摘になったように、実際、普通の空気の中にも、常人でも数十倍、数百倍という放射線の中に住んでおるわけでございますが、それよりも、非常にもう考えられないほどの安全性ということも、新しい技術であるだけに、これはもう国民が納得してもらうために万全の措置を講じておるわけでございます。まあそのときにあたってこのような問題が起きました。これはある意味において、しかもこれは国会においてお示しになられたことでございますから、政府はこの原因や実態を究明しなきゃならない責務を持っております。ですから、あなたの御指摘された事情は理解ができることでございます。しかし、どういう事情でそのような診断が行なわれ、そのような症状が起こったのかは、これは専門家でない私としては申し上げられないのであります。どのような原因、どのような経路というものは本件に関しては政府は明らかにいたしたいと思います。そして、それをもって原子力発電所の安全性というものが国民に理解できる一助にもなればとも思うわけでございまして、本件に対しては、国会における正式な御提示でございますので、政府責任を持ってこの実態を明らかにいたします。
  347. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  348. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 速記を起こして。
  349. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 私が先ほど申し上げました発言中不適当な発言があったといたしますれば、これを取り消さしていただきます。
  350. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) これにて中村君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  351. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 岩間君。
  352. 岩間正男

    ○岩間正男君 田中総理に伺います。  目下、石油、電力料金の値上げなど、相次ぐ国民生活の重大な危機の中にあって、政府は従来とり続けてきた石油中心、メジャー依存の政策に対して、一体どのような反省を持ち、教訓を引き出しているのか。政府のエネルギー対策について総理に伺いたいと思います。
  353. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) エネルギーの九九・八%、また原材料の相当部分を海外に仰がなければならない日本としては、やっぱり資源政策、資源外交というような面から、やはり相当やらなきゃいかぬなということをしみじみ感じました。私がヨーロッパへ参りましてやってまいりましたときには、どうも田中は資源ばかりやっているというような批評も一部あったようでございますが、誤りでなかったと、こういうふうにしみじみと感じ、なお国際的にも、地球上全体の状態把握に対しては相当な先見性に立って努力をつちかわなければならぬと、こう思っております。  もう一つは、やはり現状に目を奪われることだけではなく、やはり長期的視野に立ち、より広い視野に立って日本の産業政策、エネルギー政策等等、各般にわたって常に勉強していくべきである。で、一部反対があっても、これは真実を訴えるためには全力を傾けなきゃならぬ、そういう意味では国総法などはほんとうに、やっぱり正しい道だと、こう考えておるのであります。
  354. 岩間正男

    ○岩間正男君 国内資源としての石炭の問題ですね、総合エネルギー政策について聞いているんですから、そういう点でもっと具体的にお答えを願いたい。
  355. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まだ日本には、水資源としての水力発電所の直ちに開発できるものが三千四、五百万キロございますし、それから石炭は非常に採算に合わないということで終、閉山のやむなき状態に至ってはおりますが、石油価格が上がったことによって、石炭も見直されるという経済的価値が出てきておるわけでございます。また、外国からの輸入炭との混炭による石炭の利用ということも十分考えられるわけでございます。その他太陽エネルギー、潮流発電とか、いろんな問題がございます。こういう問題に対して広範な立場から検討を進めております。
  356. 岩間正男

    ○岩間正男君 石炭を重視すると、こういうふうに考えていいですか。
  357. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 石炭は二千万トン程度を下らないという答申を得ておるわけでございますが、これは総合エネルギー調査会で石炭の見直しも必要であると言われておるわけでございますので、これは調査会の結論を待って政府としては勉強してまいりたいと思います。
  358. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ石炭を重視する立場に立って総合エネルギー政策を考える、そういう立場から、では具体的にお聞きしたいと思います。  政府は三月十九日、三年前に閉山して合理化事業団に買い上げさせた常磐炭艦の第六鉱区を、再び会社側に売り戻して再開発することを決定したようです。  そこでお聞きしますが、事業団が買い上げたときの理由はどのようなことであったのか。またそのとき買い上げた価格は幾らであったのか、これをお聞きしたい。
  359. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 四十六年七月十五日、旧常磐炭礦の炭が非常に硫黄分が多うございまして、ますますふえてまいりましたために需要が減退をいたしまして、閉山のやむなきに至っております。この場合、閉山交付金として交付いたしました金額は七十三億千七百万円でございます。
  360. 岩間正男

    ○岩間正男君 ところで、それを三年後に今度は売り戻したわけですね。その理由はどういうことなんですか。そしてその価格は幾らですか。
  361. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 常磐炭礦の西部炭礦は東二斜坑区域、これをメインの稼行区域としてやっておったんでございまするが、その区域におきまして摂氏八十度の高温水が噴出をいたしてまいりまして、これ以上の開発工事の続行は保安上きわめて危険ということで工事中断のやむなきに至った次第でございます。このために、西部炭礦の操業を継続いたします必要上、前の閉山区域でございますそのうちの五斜坑と六斜坑区域につきまして鉱区調整を行なったものでございます。その場合の合理化事業団から処分いたしました価格は一億三千六百万円でございます。
  362. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあそんなに簡単に再開発できるものを、なぜ閉山したか。これはだれでも疑問に思うところですね。こんなのは非常にこれは無計画と言わなきゃならぬと思うのですけれども、どういうことですか。
  363. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 先ほどもお答え申し上げましたとおり、あの地区の炭のサルファ分が非常に増加をいたしてまいりましたために、著しい需要の減退を見まして、操業の続行が不可能であったためでございます。
  364. 岩間正男

    ○岩間正男君 いまは安全だって言うんですか、硫黄分どうなんです。
  365. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 現在石油の危機の問題が発生してまいりまして、石炭に対する需要も当時、四十六年ころと変わっておることも事実でございます。
  366. 岩間正男

    ○岩間正男君 答弁になってないじゃないですか。硫黄分は変わりないんでしょう。そしてそれを開発した。簡単に閉山して、今度はまた再開発に踏み切っているんです。その原因はどうなんだ、ここのところを聞いているんです。
  367. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 非常に低サルファの太平洋炭鉱の炭を二十万トンぐらい持ってまいりまして、当該地区の需要に、常磐炭礦の炭とまぜでやっておる次第でございます。   〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕
  368. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじゃ、いまでは採算とれるというわけですか、今度の常磐のやつは。
  369. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 石炭の採算につきましては、かなりの政府助成をやっておりまするが、なお経理状況は非常に苦しいことは常磐を含め全般的に共通の問題でございます。先般石油価格が大幅に値上がりをいたしまして、それとの見合いにおきまして、現在新しい、適正な石炭価格の設定の話し合いがこれから進められることとなっておる次第でございます、
  370. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは資料を要求します。  山の閉山のときの理由ですね。それから今度これを再開発するとき、そのときの理由。そして、そこには条件の変化があるだろうが、要するに炭鉱の閉山、開山というのはだれがやっているか。これは電力会社などユーザーの必要によって左右されている、これは争うことのできない事実だと思うんです。で、今度はそのことを示しているんでね、こんなにネコの目のように変わって、一体一国のエネルギー政策が維持できるかどうか。これは非常に重要なことですが、田中総理いかがですか。
  371. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ諸般の情勢を検討しながら国益を守ってゆかなければならないということは事実でございます。そういう意味で、石炭というものと比べて安い石油が豊富に入るという事態に対して、国内石炭というものは掘らなくともどこへもいくもんではないと、いつでも掘れるものだからという観点に立って、まず安い石油にということが世論であったということでございます。そういう意味で、石油に対応できない石炭鉱山は終・閉山ということのやむなきに至ったわけでございます。しかし、このためには、国民の理解を得て関税から千億以上の戻し税をやっておるわけでございまして、調査会、審議会の議を経て政府はこのような方向をたどっておるわけでございます。ところが、石油が一回に四倍になると何びとが一体予想できたでありましょうか。こういう事態の変化において、新しい服を買うよりも、うちに昔のやつがあったのだと、こういうことであれば、それを出して着てみるというのは当然のことであります。
  372. 岩間正男

    ○岩間正男君 私の聞いているのは、こういう経済の原則だけで、そこだけでエネルギー政策は維持できるかと、重大な一国の基本的な政策の一つになるので、そういう点で、しかもユーザーに左右される、そういうことでいいかと聞いているのです。
  373. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どうもあなた、一口ずつでもってしゃべられるもんですからよく理解できないのですが、これ、何か石炭の鉱山と電力会社がというようなこと、またこの審議会の委員に電力会社の社長がおるというようなことで、そういう人の決定によって石炭をつぶしたり、また掘り起こしたりということで一体エネルギー政策はいいのかと、こう聞いておられるのですか。そうでしょう。(笑声)もう少し時間ありますから、少しはっきり言ってくださいよ。
  374. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことでエネルギー政策というのは、基本的な政策は維持できないのじゃないか。これについてもっとしっかりした方針を立てるべきだと、こう言っておるのです。
  375. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ですから、先ほど目を世界に転じて長期的視野に立ち、エネルギー政策というものは広範な立場から検討していくべきであると、目の前のことだけに、現状に目を奪われることなく、しさいな調査、研究によって計画をきめるべきであるということは私が申し上げたとおりでございます。
  376. 岩間正男

    ○岩間正男君 角度を変えて聞きましょう。今度の問題は、常磐のような山でも再開発の可能性があるということを示した点では重要であると私は考えておる。これは一面そういう性格を持っています。  それでは、日本最大の産炭地である北海道の場合ですね、これはどうか。いまどんな山が対象になっているか、これはお示しを願いたい。
  377. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 北海道に限らず、現在、全国各地の閉山鉱区の再開発の可能性につきまして、石炭合理化事業団を中心に検討を行なっておりまするが、何ぶん保安上の問題、あるいは公害上の問題、あるいは経済性の問題等々問題がございまして、なお具体的なこの再開発の可能性につきまして、あとしばらくの検討時間をいただきたいと思っております。  なお、先生いま御指摘の、旧住友の奔別礦を例にとって話せばどうだという御指摘でございまするが……。
  378. 岩間正男

    ○岩間正男君 聞いていないよ、そんなことは。
  379. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 失礼いたしました。(笑声)
  380. 岩間正男

    ○岩間正男君 あわてないで答弁しなさいよ。何を言っているんだ。  それではお聞きしますけれども、北海道の石炭の、全体の日本の石炭産業の中に占める位置。全国的に調べているとか言ったって話にならない。どうなんですか。
  381. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 現在六割でございます。
  382. 岩間正男

    ○岩間正男君 最重点的にこれは北海道を検討しているということでいいですか。
  383. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 仰せのとおり、最重点的に検討いたしております。
  384. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじゃ奔別の場合、これはあなたがさつき言ったけれども、住友奔別炭礦の場合を考えると、これは六千カロリー以上の良質炭で、しかもこれは可採炭量は一億トンはかたいと言われている。それを、操業中この前突如閉山してしまった、それはどういう理由だったのか。最も期待された山であったと思いますから、これを再開発に踏み切るべきじゃないか、こういうふうに当然これは考えられるわけだが、いかがですか。
  385. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 奔別礦のごときは、現在再開発検討中の対象炭鉱であることはもちろんでございますし、先ほども申し上げましたとおり、合理化事業団を中心といたしまして目下鋭意検討中でございまするので、その結論を待たなければ正確なことは申し上げられませんが、奔別の場合の状況をちょっと申し上げますると、現在水没中でございまして、水量約三百万トン程度という状況でございます。したがいまして、これをポンプアップするにあたりましては、きわめて保安上問題が多いということで、揚水による再開発というのは技術的にはむしろむずかしいのではないか。別に立て坑を起こしまして、海抜千百メーター以下を採掘するというようなやり方の場合に、それがコストがどのぐらいかかるか、あるいは保安上などの問題につきまして、そういう見地からの検討を合理化事業団でやっておると、こういうふうに聞いております。
  386. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは、事業団がいままでに閉山にした炭鉱数、推定埋蔵量、それから年産、可能性、こういうものはどんなものですか。
  387. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 合理化事業団が保有いたしまする鉱区の埋蔵量は六十二億トンでございます。
  388. 岩間正男

    ○岩間正男君 炭鉱の数。
  389. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 炭鉱数にして八百八十でございます。
  390. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは全部検討してますか。
  391. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 事業団において現在検討中でございます。
  392. 岩間正男

    ○岩間正男君 廃山の全部がこれで再開発に踏み切るということはいま考えられないと思いますが、しかし、非常に可能性の多い山も多いわけですね。だから、もっと長期的な展望に立って開発計画を立て直すべきだと、こういうふうに思うわけですが、この用意がございますか。いかがですか。
  393. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石油事情の大きな変化に伴いまして、いま総合エネルギー調査会で石油、原子力、そのほか諸般のエネルギーの再開発調整の問題を審議してもらっています。この答申がたしか六月ごろ出る予定ですが、それが出ましたら石炭審議会にはかりまして、本格的にどういうふうに取り扱うか検討してまいるつもりです。
  394. 岩間正男

    ○岩間正男君 その諮問の要旨言ってください。どんなことで諮問しましたか。
  395. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 総合エネルギー調査会に対する諮問は、いま私が申し上げましたように、今般の石油事情の大きな変化に伴って日本のエネルギーのバランス、あるいは今後の方針、経営の方法、そういうような諸般の問題について総合的に諮問しているわけであります。
  396. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじゃ今後の討論のために、私、たちは再開発にあたってわれわれの意見を述べたいと思うのですが、二つの問題があると思うのですね。一つは、山をもとの持ち主に売り戻すだけでいいかという問題です。こういうやり方だと、政府の石炭政策がぐらつけば、また買い戻すような羽目におちいらざるを得ないのではないか。過去十三年間に、閉山対策費だけでも約一兆円を使って山をつぶしておきながら、今度は再開発だといって大騒ぎをやっている。すべては大企業擁護のそのような政策、そういう立場に立って、しかもこれが進められてきたところに特徴がある。今日の原因の一つには、そこが非常に大きくなっています、したがって二つ目には、このような政策を検討して終止符を打つと、そのためには、当然総合エネルギー公社のような公的機関を設けて、その民主的な指導のもとに再開発を行なうべきであると、こう思います。この二つが再開発に当たっての基本的態度として最も重要であると思いますが、いかがでしょうか。
  397. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御意見として承っておきます。総合エネルギー調査会の答申が出ましたら、その答申の内容を点検いたしまして、いまの御意見も参酌しながら考えてみたいと思います。
  398. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじゃお聞きしますが、この諮問の中に労働力の確保の問題とか、保安の問題、これは入っておりますか、おりませんか。
  399. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは石油危機にかんがみて、日本の今後のエネルギー政策全般について諮問しているわけでありまして、労働ということを特に取り上げてやっているわけではございません。しかし、いずれ石炭というものが重要視されてくれば当然労務者の問題は出てくる問題であります。石炭を開発していくために非常に大きなポイントは、労務対策をどうするかというポイントにあると考えます。
  400. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは労働力の確保の問題が石炭の再開発の中で最重点的な問題だと、こういうふうにこれは私も考えます。そういう点から言いますと、労働力を確保するための条件としては、当然賃金の問題が出てくるだろうと思うのです。もう一つは保安の確立の問題がこれは出てくると思います。この二つの問題について政府はどんな積極的な政策を持っておられるか、この点が非常に私は石炭の開発のためには重要な課題だと思います。
  401. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まさに二点、そのとおりであると思います。賃金の問題については、単価をきめる際にいつも努力をしておりまして、大体非鉄金属の鉱山の労働者と同じレベルにまで改革したいと。格差がいま約二万円以上あると思います。そういうことを目標にしてわれわれは努力していきたいと思っておりますし、それにも増して保安という問題はまた大事な問題であり、全般的に見れば、石炭というものが有望な産業であるという安心感を与えるということが非常に大事だと思います。   〔理事吉武恵市君退席、委員長着席〕
  402. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはここに資料がありますけれども、金属との差は二万でありませんな。われわれの資料ではもう四万もあります。こういうことで、しかも非常に劣悪です。それで具体的にこれはつかんでおられるかどうかということです。私は、だから具体的にお尋ねをしたい。ここに大手炭鉱の一つ、北炭夕張の例があります。ここに俸給の支払い表があるわけです。年齢五十二歳、勤続二十七年のしかも採炭夫です。しかもいわゆる大先山といわれる、普通の工場だったら当然これは技師長ともいうべき最も熟練した労働者の賃金、ところがこれを調べてみますと驚くなかれ手取り八万五千円です。こういう低賃金で、それも完全請負制をとっている。したがいまして、収入は常に一定していないんです。こういう現状で、このような劣悪な一体実情について、労働大臣はこれは御存じですか。
  403. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) いま岩間議員のおっしゃった具体的事例は存じ上げませんけれども、こういう大事なエネルギー激変のときでございますから、私のほうは最低賃金というものを炭鉱労働者にかぶせておりまして、そして低労働者というものを守っております。そういう役割りがございます。  そこで、この一月三十日に最低賃金を改正いたしました。先ほど通産大臣からも話がありましたけれども、改正前よりも八百円上げまして五三%、一日二千三百円で、改正前は千五百円です。五三%引き上げたところであります。そしてやはり労働条件というものをよくして、魅力ある若い諸君の定着すること、炭鉱の環境をよくすること、これが私たちの責任である、こう思っております。
  404. 岩間正男

    ○岩間正男君 新賃金で食えると思いますか、二千三百円、日額。こういうようなことで、これはこういう告示をやっている。結局それが、炭鉱資本家が労働者に対して餓死的賃金を押しつけているこれは根拠になっている。ここに労働行政の大きな問題があると思うんです。で、この告示について再検討しないと、とてもこれはいまの労働力の確保ということはできないだろうということは、これは明らかです。さらにまた、全産業と比較をしましても、この炭鉱労働者の賃金というのは、もう仕事の内容からいっても高額なものにしなきゃならぬ、こういうふうに考えられるんですが、この点についての用意がありますか。
  405. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) だんだんよくなることは私たちも願うことでございますが、ただいま一月十日のものも、これは公益、労、使三者構成の中央最低賃金審議会がおきめいただいたんですから、しかも関係各労働組合からの要望がありましして、この三者が審議会で全会一致で意見をきめられましたのを採用したような次第でありまして、だんだん将来の問題については考えていきたい、こう思っております。
  406. 岩間正男

    ○岩間正男君 だからその構成がいつでも問題になっているんです。そこでやっぱり労働省主導、政府のそういうようなものでそういう賃金が押しつけられている根拠になっているんですから、これは再検討すべきです。  さらに、これは低賃金と相まって労働者の命を奪い、石炭産業の崩壊に拍車をかけているものに保安無視の生産第一主義があると思います。炭鉱は全産業でこれは第一の災害、それから死傷者を調べてみますというと、全産業平均のまさに十五倍というような悲惨な状況に現在あるわけですね。そこに残っているものはだれか、どういうものかとなりますと、まあ世界一非常に高いノルマ、年齢は平均で四十五歳、これまた産業別第一位の高齢の労働者です。こういうことでどうして一体石炭の増産ができるでしょうか。この点についてはっきり労働問題、保安の問題、これに徹底的に政府がもっと本気になって身を入れてこの問題を解決することなしに、いまの石炭の増産の問題はこれは問題にならぬと思う。いかがですか。通産大臣と労働大臣。
  407. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 石炭産業は国内にある資源でございますから、こういうときに新しく見直すということはほんとうに大事なことだと思います。先ほど申し上げたように、私たちとしますと最低賃金の問題等等も下のワクをきめておるんでありまして、あとは上のほうで労使で賃金をひとつおきめいただきたい。これは最低のワクでございます。  さらにまた、御報告がおくれましたけれども、生産協力一時金というのが三月七日に妥結しまして、一人四万円ずつ四月の下旬を目途として支給されるということも聞いておりますが、将来ともに労働条件の改善のためには努力してまいりたい、こう思っております。
  408. 岩間正男

    ○岩間正男君 大体実態をもっと調べたらどうですか。それでもうとにかく災害が相次いでいるんですね。ここに低賃金のこれは具体的な支払いがありますから、これは総理見てください。
  409. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 岩間君に申し上げます。時間でございますから、結論をお急ぎいただきたい。
  410. 岩間正男

    ○岩間正男君 最後に、私は総理に伺いたいと思います。  わが党は、石炭、石油、電力その他の新しいエネルギーの国有もしくは公有化による総合エネルギー公社案というものをいち早く訴えてきております。これでなければエネルギー問題の根本的な解決はあり得ないと考えていますが、政府は少なくとも現在の石油危機に対処するこの段階で、大企業本位の需要と供給のバランスのためからだけでなく、労働力の確保の問題、石炭問題の研究を深める、あるいは技術者の養成など、こういう基本的な問題をもととした科学的でしかも長期的な石炭開発計画を総合テネルギー政策の一環として打ち立てる、このことは非常に私は重大な問題だと思うんです。したがいまして、こういう決意がありますかどうか、田中総理のこれは決意のほどをお伺いしたいと思います。
  411. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 石油事情を契機にしまして国内エネルギーというものの見直しが必要であるということは、間々申し上げておるとおりでございます。本件につきましては、総合エネルギー調査会に諮問をしておる段階でございますので、この諮問を待って政府が結論を出さなければなならいという考え方でございます。  石炭を新エネルギー源としてこれを再開発をするということになれば、そのような方向で政策を進めるわけでございますが、これはやはり買山を行ない、また事業を始め、またやめるというようなことがあってはなりませんので、中長期の計画を立てなければならない、その中に石炭の位置づけを十分しなければならないということは申すまでもありません。そしてその石炭鉱山の中で再開の場合一番問題になるのは労働力の確保でございます、他産業に比べて、山の中へ戻るということだけでもたいへんなことでございます。そういう意味で、一体これからの労働力というものを確保するにはどうしなければならないかということに対しては、待遇やいろいろな問題を検討しなければならぬことは言うをまちません。それだけではなく、日本は露天掘りではなく立て坑で、相当の問題がありますので、機械化のウエートをどうするかという問題も考えなければなりません。それで一番最後に残るのが、あなたがいま提起をされた企業体の問題でございます。これは政府がやるか、公団がやるか、特殊会社がやるか、民間がやるか、ということでございますが、これはなかなかそう簡単に、あなたがいま指摘されるようにして、公社をつくって国がやるべしということで、はい、さようでございますかというわけにはまいらないのです。これは国民の利益を守らなきゃならぬという立場もございます。ですから労働者が集まるようなことでなければいかぬし、石炭産業が安定するものでなければいかぬし、同時に保安は万全に行なわれるものでなければならぬ、そうして政策目的を達する道はどうであるかということは、もうしさいに検討の結果、石炭鉱山には歴史があるわけですから、十分新しい立場を踏まえて結論を出してまいりたい、こう考えます。
  412. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) これにて岩間君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  413. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 野末君。(拍手)
  414. 野末和彦

    野末和彦君 電力業界は、俗に政治献金の御三家だといわれているようですけれども、自治省の資料によりますと、たとえば国民協会への分だけ見ても、寄付が四十八年上期で四億円もあったんですね。それから会費のほうは、新聞によれば九電力合わせて去年は六千万。とにかくたいへんな金額だと思うんです。で、これは表向きで、裏の部分もたぶんあるんじゃないかと思いまして、いまかりに法人税法施行令の七十三条によって、東京電力一社の四十八年九月期の決算における寄付金の損金算入限度額ですね、あれを計算したんですよ。これが計算ですけれども、すると、これでいきますと、五十一億二千七百十五万円、これが寄付金の損金算入限度額になっているのですね。九電力を合わせたらもう十億、二十億になるかもしれないのですが、これが税金がかからず寄付できる金です。まさかこの五十一億なんという限度額全部が自民党系の政治献金に回っていると思っていませんよ、もちろん。しかし通産大臣にお伺いしたいんですよ、通産省が電力の値上げ申請を前にして各電力会社の経理状況を概算なさったようですけれども、その中に東電あたりどのくらい政治献金が出ていると推定なさっているか、自治省の表に出てない部分でかなりいっているんじゃないかと思うんですが、その辺どう推定なさっているんですか。
  415. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は手元に資料もございませんし、またそういう部面まで深く精査しているかどうか、これは事務当局に聞いてみないとわかりません。
  416. 野末和彦

    野末和彦君 それでは事務当局のほうがどの程度まで知っているかを答えてください。
  417. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) いま私ども下期の経理状況の調査をいたしておりますが、御指摘のような経費は雑経費という項に一括されておりまして、これらが前期に対してどのくらいの伸びを示すかというような点から調査をしておるわけでございまして、内容についてはまだ調査をいたしておりません。
  418. 野末和彦

    野末和彦君 まだ調査しないといっても、いずれは調査するわけですね。
  419. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 経理全体の見通しを推定いたしますためには、いわば雑経費全般という形でとらえるので一応十分ではないかと思っております。
  420. 野末和彦

    野末和彦君 しかし、全体でとらえるといいましても、たとえば寄付とか献金とか交際費とか広告宣伝費とか人件費とか、そういう諸経費全部一一こまかく検討しないと、はたして値上げの是非を検討できるかどうか、これは必要なデータじゃないんですか。
  421. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 私ども推定をいたしますときには、前期横ばいというような前提に立ったらどうなるかというような調査のしかたをするわけでございます。
  422. 野末和彦

    野末和彦君 じゃ、今期の調査をするときに資料を出してほしいんですがね。東電だけじゃない、全部ですよ、九電力全部。寄付とか献金どのくらい、交際費はどのくらいで、広告宣伝費はどのくらいで、人件費はどのくらいでという、こまかいのを出してほしいんですよ。なぜならば、とにかく公益事業ですから、電力会社は公共性の強い企業で、しかも値上げ申請が出ようというときに、経理内容をすみからすみまで国民に明らかにしておかなきゃ、これじゃ責任を果たせないと思うんです。だって、寄付とか交際費とか広告宣伝費という名目で出ている金でも、総理、はたしてほんとうにそれが電力業務上必要かどうかわからない、不要不急のものがあるかもしれないし、冗費として節約できる部分があるかもしれないし、そういうことをすべてこまかく検討する必要がある。ましてや、その中に政治献金なんというものが入っていたとすれば、これはますます国民の疑惑を招くわけだし、いずれにしても、この電力会社の詳しい経理内容の内訳をチェックしなくちゃいけないとそういうふうに思うんです。資料出してくれますね。
  423. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 先ほど御説明いたしましたのは、いわば経理の見通しの作業の手順を御説明いたしましたが、経理の結果につきましては有価証券報告書に取りまとめられますので、その内容について御報告をいたします。
  424. 野末和彦

    野末和彦君 そこで総理にちょっと今度は総理じゃなくて自民党総裁としてお聞きしたいんですが、何しろかなりな赤字なわけでしょう。で、自民党はとにかくこれらの会社からこれまでに億の単位で金をもらっているわけですね。電力業界の赤字というのは、いわば自民党への政治献金も一役買っているわけですよ。ですからそのつけが料金値上げで国民に回ってきたんじゃたまらないから、詳しく国民の立場でチェックしてみたいと思うのはこれは当然なわけですよ、大体赤字の会社から金をもらうというのは病人の首を締めるようなものですからね。(笑声)いままで赤字じゃなかったけれども、これからもう赤字がわかっているんです。そうしたら、何かおたくは苦しいだろうからもらった分は返そうというぐらいの気持ちを持つのがあたりまえなのに、何か国民協会あたりは、電力各社に会費の値上げを五倍、六倍と要求している。これが大体、良識ある政党のやることかどうかと非常に疑問を持つんですが、まず赤字をカバーするためにも、ここにもらった金を返してやるぐらいの気持ちを持つのは当然じゃないですか。
  425. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 企業も私個人と同じように政治活動を援助するために基金を拠出することは、権利として認められておるわけでございます。政治に対しては、直接投票を行なうという直接参加もあります。法定の範囲内において選挙運動を行なうということもあります。基金を拠出するということもあります。これは国民の最大の権利であります。政治資金を拠出することが罪悪であるというようなことを考えておって、これはとても民主政治を育てるなんという考えの人とは思えませんよ。ここらは少し、もう少し御勉強をいただきたい。そうしてこれはもらったのを拠金を受けているというのは国民協会であります。国民協会の問題は国民協会が答えるべきであって、これは自民党の総裁として、第三者である国民協会に指示するような権能はありません。
  426. 野末和彦

    野末和彦君 献金をもらうのが悪いなんて言ってないんですよ。公益企業からもらって——私企業の話をしているんじゃないんだから、公益企業からもらって、しかもそれが赤字でたいへんだというときにも、積極的政治参加だからとかいって金をもらっている、そういう気持ちがどう考えても理解できないと、そういうふうに言っているんですよ。値上げしなければならないほど苦しい公益企業に対しても、まだ民主政治を育てるためだからといって金を平気で取れるんですか。そういう何かピラニアみたいな根性はぼくは絶対だめだと思うんですよ。(笑声)いや、ほんとうですよ、総理。絶対そうだと思うんです。政治姿勢の根本を疑われるのはそこだと思うんですね。  ですから企業の中には、いやほんとうに企業の中には、自民党は吸血鬼みたいだという声だってあるんですよ。アンケートにちゃんと書いてきているんですよ。ですからぼくはこれで自民党総裁としての田中さんに要望したいんですよ。今後こんな赤字を理由で値上げを申請してきて、値上げになった公益企業からはいやしくも政治献金なんかもらうんじゃないと、ほかの私企業でもうけているところからもらうんならこれはまた——いろいろ論議はあるでしょうが、少なくとも公益企業の赤字の電力会社からもらって、そうして値上げの是非を論ずる資格はないとこう思っておるわけなんです。  ですから、最後にお聞きしたいのは、もうこれからはここからは献金をもらわない、赤字の公益企業、電力からはもらわないという約束をしてほしいですがね。
  427. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あなたのものさしはよく理解しました。あなたのものさしはよく私にもわかったようですが、東北電力といえども、東京電力、九電力といえども、これは私企業であります。私企業は、法律に違反をして政治基金を拠出することが許されるはずはありません。法律が国会決定を経て、この範囲内において寄付金を出すことはできると、こういう範囲内において拠出をするということに対しては私は議論を申し上げる立場ではありません。  もう一つ、国民協会というのから自民党は受けておりますが、国民協会が会費を徴収し、いろいろな企業から拠金を受けるということに対して、私がとやかく申し述べる立場にないということは明確にしておきます。
  428. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) もう一問、野末君。
  429. 野末和彦

    野末和彦君 総理もだいぶちょっと勉強が足りない。電力会社は私企業じゃない。公共性の強い公益事業だということで、三井物産とか何とか商事と一緒に電力会社を考えているのはこれは大間違い。それだけはやっぱり考え違いだと思うんで、そこの辺は同じ政治献金だといって一緒くたにしないでもらいたい。それだけは間違いないですよ。
  430. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 法律に基づいて、その範囲内に行なう企業の代表の政治資金の拠出ということに対して意見を申し上げる立場にありません。
  431. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) これにて野末君の質疑は終了いたしました。(拍手)  質疑通告者の発言は全部終了いたしました。よって、暫定予算三案の質疑は終局いたしました。     —————————————
  432. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 討論は、理事会においてこれを行なわないことに申し合わせました。  これより採決を行ないます。  昭和四十九年度一般会計暫定予算昭和四十九年度特別会計暫定予算昭和四十九年度政府関係機関暫定予算、以上三案を問題に供します。三案に賛成の方の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  433. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 多数と認めます。よって、三案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  434. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  435. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 次に、分科会に関する件についておはかりいたします。  分科会の日数は、来たる四日、五日、六日及び八日の四日間とすること、分科会の個数、所管事項、分科担当委員数及び各会派への割り当ては、お手元に配付いたしましたとおりとすること、分科担当委員選任は前例どおり委員長の指名、並びに分科担当委員の変更につきましてはその取り扱いを委員長に一任すること、分科会におきまして参考人の出席を決定いたしましたときはその取り扱いを委員長に一任すること、以上のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  436. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  明後四月一日は午前十時から公聴会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十六分散会      —————・—————