-
-
-
-
-
○
宮之原貞光君 最初に
大蔵大臣に質問いたしたいと思いますが、
政府は
財政金融政策の当面の課題を
物価問題に置きまして、そのためには、まず何を差しおいても総
需要抑制と、それこそ
抑制一本で進んできておるわけでございますが、最近の
新聞論調、特に
経済界におきましてはこのことに
危惧を示し始めておると、こう訴えておる。たとえば、このままの形でいくならば、スタグフレーションヘの
危惧がありはしないかと、こういう心配などが見えておるわけでありますが、
大蔵大臣としては、やはりあくまでも当初の
方針のように
物価を押えると、このことでやっぱり総
需要を
抑制をするということを中心に今後ともやられるつもりなのかどうか、そこをまずお伺いしたい。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 総
需要抑制政策は、だんだんと効果が出てきておるように見ております。二月の
物価は多少
落ちつきぎみになってきておる。おそらく今月は横ばいというような
状態になるんじゃないか。さらに、この総
需要抑制政策を進めますと、そういう形勢が定着してくるんじゃないか。それも非常に一、二カ月、そういう早い時期じゃないか。つまり、私どもが
考えておりますのは、この仮
需要を誘発するというような
状態、つまり
物価状態が
混乱をするというような
環境が、もう非常に急スピードで
鎮静化が進んでおる、そういうふうに見ておるわけであります。で、その後一体どうなるかということにつきましては、これは春闘という主として
コスト要因の問題がある。それから、
電力料金をどういうふうに処置するか、そういう問題もあるし、国鉄、私鉄というような問題もある。
コスト要因、そういうものが重なってくる、そういう段階を迎えると、こういうふうに思いますが、そういう
事態におきましても、とにかくいまの総
需要抑制政策を進めますれば、これはもう
混乱を起こすというような
状態はないと、こういうふうに
確信をいたしておるわけであります。
それから、もう一つは、
物価問題と並び、
物価問題よりもさらに本質的な問題が一つあるのです。それは
国際収支という問題であります。これが、現状を放置しておきますと非常に憂慮すべき
状態になる。これをどうしても
均衡状態に向かってもろもろの
改善を加えなきゃならぬと、こういう問題がある。でありまするから、まあ総
需要抑制政策は、緩急よろしきを得なければなりませんけれども、この
基本姿勢というものは、しばらくの間は堅持していかなければならない、こういうふうに
考えております。
そういう過程におきましては、いわゆる
不況状態というものも一やってくると、これは
宮之原さんの御
指摘の、一部の人に
危惧感があるという問題だろうと、こういうふうに思いますが、まじめに働きましてそういう
政策のしわ寄せを受けるというような向きに対しましては、これはそうあってはならない。それ相応の手当てをする必要がある。そういう必要に対しましてはそのような方策をとります。しかし、
基本姿勢といたしまして総
需要抑制政策、これはとにかく
物価を安定し、
国際収支の
見通しがつく、こういうまでは堅持してまいらなきやならぬ、これが
基本的な
考えであります。
-
○
宮之原貞光君 なお、先般
石油の新
価格の決定をした場合も、当面はやはり諸
物価へのはね上がり、いわゆる
物価への目張りをするということで、できるだけ押えるんだという
方針だという
説明があったわけでありますが、最近また、たとえば
産業問題研究会あたりには、それでは困る、早くやはり新
価格体系をつくってもらいたい、
電力料金も早く
値上げしてもらいたい、こういう強いまた要望が最近出ておるようでございますが、それに対してはどういうような
考え方をお持ちですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 私は、
物価問題を
統制的手法で片づけようとする
考え方、これではその目的は達せられない、こういうふうに思うのです。やっぱり総
需要抑制といいますか、
需給関係、これが
基本にならなきやならぬ。その
需給調整的手法で漏れる部分につきまして補完的に
個別物資対策というものが必要になる、こういうふうに
考えておるのでありまして、
個別物資につきましても、
国家権力の介入というのはできる限り幅が狭く、しかも期間が短いほうがよろしい、そういうふうに
考えております。いうふうに
考えております。
で、いま
電力料金というようなお話がありますが、こういう問題は、いま総
需要抑制政策の結果、とにかく
経済界のムードというものが
鎮静化に向かって急速度に動いておるわけであります。で、そういう
電力料金の
値上げという問題が行なわれましても、再び
物価先高見通しというようなことで仮
需要を起こすというおそれがないと、こういうことを見きわめて、そしてその
確信の上に立って
生産費、
コスト要因によるところの諸問題を処理していくというのが妥当じゃあるまいか、そういうふうに
考えておるわけであります。まあ
電力料金をいついかなるタイミングでどうするということは、もう少し
事態の推移を見守る必要がある、そういう所見でございます。
-
-
-
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君)
山下次官の
報道は全面的に正確に伝えられていないのではないかと思います。それは当面は
標準価格に移行することはできない、そういう
意味であると思います。すなわち現在の
情勢では
石油の
原油の
値段自体がまだ必ずしも決定的に確定しているわけではございません。たとえば
ミナスの
原油のようなものは、いままで十ドル八十セント、バーレルが、最近は十四ドル程度に
追加代金が請求されてきておりますし、ほかの
原油につきましてもそういう傾向がございます。それから
為替相場につきましても、一応二百九十円と踏んで
計算はいたしましたが、これが二百八十二円とか二百八十三円とか、多少いま動いておりますし、また五、六月ごろになりますと
石油のユーザンスの期限が切れまして、大量の膨大な
石油代金の支払いが
日本に発生いたします。これらに関するドルの
需要を見ますというと、円がそれほど強くなるとは限りません。そういうような条件から、いまの
石油の
値段を
標準価格というやや固定的なものに移行することはまだ
危険性があります。そういう
意味で、当面いますぐすることはないと言っているのだと思います。しかしこれが
安定性を回復しましたら、なるたけ早くできるものにつきましてやることは望ましい、そう
考えておる次第でございます。
-
○
宮之原貞光君 そういたしますと、いわゆる将来はともかく、いまは
考えられないというものの
言い方は、いわゆる
石油製品の
値段の問題については、その問題の
見通しがつくならば可能な限り早くやっぱり
標準価格に移行するという、
政府の従来の
説明とはそごがないと理解してよろしゅうございますか、どうですか。
-
-
-
-
○
宮之原貞光君 それならば、四月から九月ぐらいまでのものを見て再度検討します
云々というのは、これは誤りですね、どうなんです。
-
-
○
宮之原貞光君 まあこれはもちろん私も
議事録は持っておりませんから、言うならば、やはり
新聞紙上にあらわれたところの
通産省のものの
考え方が
報道されておるわけですからね。
国民は、率直に申し上げて、非常なやはりあれを感じておるんですよ、疑問を。ここでは、何としてもやっぱり
国民の
生活を安定させるんだと、ここに第一義を置くのが
政府の
方針だと、こう言いながら、
業者向けには、もうしばらく待ってくれ、がまんしてくれというものの
言い方のような印象を与えるような
新聞報道というのは、
一体通産省の顔はどっちを向いているんだろうと、二十面相ならぬ二面相じゃないかという、やはり素朴な気持ち、
疑惑を
国民に抱かせておるということは事実なんですよ、これは。したがって私は、いま
通産大臣がそうおっしゃるならば、そういうような
国民に
誤解を与えるようなものの
発言というものは、やはりあんたの官僚にも慎ませていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君)
山下事務次官はなかなか注意深い、周到な人柄ですから、私は、たぶん
発言はそう間違ったことは言ってないと思いますが、あるいは
報道において必ずしも意を尽くしていないところがあったんではないかと思います。しかし、もしそういうような
誤解を与えるようなことがあれば、これは遺憾でございますから、調べまして、もしそういう事実がございますれば注意をいたします。
-
○
宮之原貞光君 まあ、あんたそうおっしゃいますけれどもね、いままでは
山下次官は非常にいいことを言っておったんですよ。たとえば諸悪の根源が
石油企業だという、なかなか
国民の言わんとするところをずばりこう言ったかと思うと、一方ではそういうようなことを言う。一体これは、やっぱり癒着がはなはだしいんじゃないかという
疑惑を、従来もここで
指摘をされておりましたけれども、そういうようなものが私は倍加すると思うんですよ。したがって、そのことは今後私は厳重に慎んでもらうように指導してもらいたいということを申し上げておきたいと思います。
次に、
原油の
輸入の
見通し、あるいは今後の
産業構造の転換の問題について
通産大臣にお聞きいたしたいと思いますが、四十八年度の
原油の
輸入量及びその額は、最終的には幾らになるという
見通しになりましょうか。
-
-
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) いま手元に資料はございませんが、約六十億ドル前後ではないかと思います。
-
○
宮之原貞光君 四十九年度のほうは、いままでの
通産大臣なり
大蔵大臣の言明からいたしまして、大体二億七千万キロ
リッター、いわゆる百五十億ドル前後と、こう見てよろしゅうございましょうか。
-
-
-
-
○
宮之原貞光君
供給側は
云々と、これはいざ知らず、
通産省当局のものの見方をこの人は代弁して言っておられるわけでしょう。これはいままでの二億七千万というのとはだいぶ開きがありますから、一体どっちがほんとうですかということを私聞いておるんですよ、
見通し。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) やはり二億七千万キロ
リッターというものが
予算の基準になっておりまして、その線でわれわれは
経済運営というものを
基本的には
考えてまいります。しかし、今後の
経済の
情勢によりまして、それが若干調整されるということはあり得ると思います。われわれは
自由経済をやっておりまして、輸出入に関して
石油について、これを規制するというようなことはやっておりません。
-
○
宮之原貞光君 そういたしますと、それはいわゆる
外貨との
関係の、その
値段の問題がやはりそれの一番ポイントになるというふうに理解してよろしゅうございましょうか。この間の発表では、一ドル二百九十円だという
計算だという話ですがね。あるいは、いま言われておるところの二百八十円という今日の
相場から見て、場合によっては、
外貨ということを
考えれば、二億九千万キロ
リッターぐらいも入れることができるんだと、こういうことを言ったんだというふうに理解していいですか。どうですか、
そこらあたりは。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 私は、
山下事務次官の談話の内容を承知しておりませんので、どういう真意で申し述べたか知りませんが、
外貨やその他の問題よりも、総
需要抑制、そういう面からくる
国内需要の面から制約が出てくるんではないかと思います。ことしの
事業量は、大体、量として四十七年度
スケールである。
金額にして四十八年度
スケールである。そういうことでございますから、かなり総
需要は
抑制されてきて、
石油を必要とする
需要自体がそう起きないんではないか。また、値も上がってきておりますから、したがって、これを使う側におきましても極力節約するという風潮が出てまいりまして、
需要自体がそれほど伸びないんではないかと私は見ておりますし、そういう
経済運営をすることがまた望ましいと思っております。
-
○
宮之原貞光君 そうしますと、この間、
通産大臣も
大蔵大臣も明確に、両方の面から大体二億七千万キロ
リッターぐらい前後ですと、こう明言をされていました。この点はね。だから、そういう形になるというふうに理解してよろしゅうございますね。
-
-
○
宮之原貞光君 これは今後の中期的な
見通しについてお聞きしておきたいんですけれども、いわゆる五十年以降の
見通しですね。まあ私は、いままでのこの経緯から見て、当分の間は三億キロ
リッター以上をこえるということはなかなかないんじゃないかと、こう思いますが、いわゆるV字型の回復ですね、そういうようなことが中期的な
見通しとして見通されますかどうですか、あり得ないと思いますけれども。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) たぶんあり得ないと思います。われわれはこれから省資源、省エネルギー型の
産業構造に転換するようにいま努力をしておる最中でございますし、また、エネルギー自体の質的変化、つまり多面性という方向に
政策自体も進めていきたいと思っております。
-
○
宮之原貞光君 それなら、
通産省が七月までに出すと言われておりますところの
産業構造の、いま大臣が言われたところの問題を前提とした転換構想というものについて、七月には結論を出すと言われますが、もちろん具体的な話でなくて、ものの
考え方ということを一応
通産大臣からお聞きしておきたい。
-
-
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) まあ、一言に申し上げますと、いわゆる知識集約型産業に移行していこうと、そうして、できるだけ資源を節約するタイプのものにしていこうと、言いかえれば、
石油多消費で肥満児化したいわゆる重化学工業型タイプから、もう少し付加価値の高い、資源を節約した知識集約型産業のほうへ移行していこうと。ただ、その移行の過程をいかにしていくかということは非常にむずかしい問題がございます。知識集約型産業といっても、まだそのモデルやタイプがすでに国際的にできているわけではございません。コンピューターであるとか、あるいは飛行機であるとか、あるいはファッション産業であるとか、そういうようなことが言われておりまして、一つの産業体系としていま現前しているわけではないわけです。部分的に現出しておる。それでやはり、これだけ、一億の人口を養って、相当量の海外投資、
経済協力を実行していくということになりますと、ある程度の
外貨もかせがなきゃなりません。そうなると、やっぱり重化学工業というものの基礎を離れて一億の人口を養うことはできない現状でもございます。そういう面を
基本的にどういうふうにして徐々に移行変動させていくかというところに問題点があるのでありまして、いまその青写真をつくらしている最中であります。
-
○
宮之原貞光君 まあ確かに、言われているように、知識集約型産業への転換といっても、ことばではやさしいけれども、中身はなかなかたいへんだと思うんです。現に、このことばは田中総理が
通産大臣のころから言われておったところのことばなんですが、私はやはり、これらの問題のポイントになるのは、いま大臣の
指摘したところの
石油資源の多消費型産業の軸となりますところの、言うならば
石油精製企業あるいは
石油化学産業を今後どうしていくかということが一番ポイントになるんだろうと思うんですがね。その方面に対するところの今後のあり方として、どういう方向にいかなきゃならないとお
考えですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 資源多消費型の産業については、国内に立地すべき部分と海外立地すべき部分と出てくるだろうと思います。そのバランスを経費的にも、また国際協調の面からも、どういうふうにとっていくかということが非常に重要な一つのポイントでございまして、いままでのように国内立地だけを
考えるという
政策から転換していくべきものであると
考えます。
-
○
宮之原貞光君 そうしますと、いわゆる
石油産業に対するもろもろの知識集約型産業への移行のポイントは、海外のほうにやはりそういう企業の面の進出を今後積極的にはかっていく。あるいはOPEC諸国が
原油の産地国でそういうものをつくりたいというところの意向に、
政府としても積極的に今後協力をしていくという
考え方なんだというふうに理解してよろしゅうございますか、どうですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) そういう要素も非常に大事なポイントとして取り入れていきたいと思います。現にイラン、イラクあるいはサウジアラビア、あるいはそのほかの国々におきまして、
石油の精製施設あるいは
石油化学のプロジェクトについて、
日本の商社も相手国
政府と取り組んでおるわけでございます。そういうものを
政府も好意的に見守って、どういう成果が出てくるか見ておるところでございます。そういう
情勢でございますから、いままでのような
日本の沿岸、いわゆる太平洋岸とか
日本海沿岸のみを頭に置いた
石油精製所あるいはペトロケミカルというものからもう一歩飛躍して、国際的な性格を持っていくようにしていかなければならぬと思います。
-
○
宮之原貞光君 国外のはわかりましたですがね。国内的のものはそういう方向に持っていきたいというお
考えで、それでいて先ほど、一方では
自由経済だからというような形で、それに対するところの何ら指導的な姿勢というものがうかが身ないんですがね。私は、やはりこの
石油ショックの問題からいろいろこう、
考えてみれば、かつてまあ「鉄は国家なり」と言われたぐらいに、鉄鋼産業、鉄というものは非常にもう重視をされてきた。今日の
事態を招いたところの一番のポイントは
石油産業、
石油という問題にあるとするならば、
石油に対してもう少しやはり国家の中で、
政府の中で管理を強めていくという方向の
政策が今後指向されなきゃならないと、こう
考えておるのですが、
そこらあたり、どうお
考えになりますか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) その方向としては同感でございます。それを具体的にどういうふうに法的ないし行政的措置を持ってくるかということは、これは慎重に検討を要すると思います。
-
○
宮之原貞光君 たとえば、そのやり方として、いわゆる
輸入段階におけるところの現在の
石油開発公団を少し改組をして、いわゆる
原油の
輸入の機能の問題について持たせていくとか、あるいは民族系の
石油会社をもう少しやっぱり積極的に強めていくとか、さらには、製油段階の現在の許可制をさらに強めていくとか、あるいは流通段階で現在以上にこの
石油の問題についてしかるべき手を打つとか、いわゆる
輸入と、あるいは精製あるいは流通という段階に総合的に、私は、やはりこの問題については手を打たなきゃならないと思いますし、現に、まあいろいろその問題について検討されているとも報ぜられておるんですが、
そこらあたりに対するところのものの
考え方というのはどうです。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 大まかな方向としては、私も同感の面が多いと思います。ただ、具体的な措置になりますと、これは国際的にも、また国内的にも、かなり
影響力のある問題でございますので、これは慎重にやりたいと思います。現在、総合エネルギー調査会におきまして、
日本の各
資源エネルギーの間のバランス、それからこれをどういうふうにつくっていくか、運営していくかということについて諮問をしておる最中で、その結果を待ちましていまのような諸点について検討を加えていきたいと思います。
-
○
宮之原貞光君 方向性としては、
政府もその方向で進むんだというふうに理解しておってよろしいですか、どうですか。
-
-
○
宮之原貞光君 なお、との
石油精製企業の今後のあり方について若干お伺いしておきたいと思います。
いま、わが国の現在の
石油精製の能力は、どれくらいになっておりますですかね。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) お答えいたします。
本年の三月末現在で、五百四十一万バーレル・パー・デーの能力と
考えております。
それから先般の、昨年十一月に審議をいたしました
石油審議会での設備許可につきましては、先生御承知のように、現在許可の問題につきましては凍結措置ということにいたしております。御了承いただきたいと思います。
-
○
宮之原貞光君 それは、
原油の幾らに当たりますかね、大体。五百四十一万バーレルというのは、どれくらいの
原油の
輸入量があればできますかね。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) この能力で約三億キロの生産が可能であろうと
考えております。
-
○
宮之原貞光君 そういたしますと、昨年の十一月十三日の
石油審議会で一応認めてありますところの百十三万三千バーレルですね、これをそのまま入れるとするならば、五十二年度末の
石油の供給量は幾らという前提のもとにこれは認められたんですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君)
石油業法によりまして五年ごとに大体
需給の計画を策定しておりますが、たしか私の記憶では、五十二年末に三億三千万キロ
リッターというのが供給目標に一応内定しておったと思います。それに見合う数字以内にあると思います。
-
○
宮之原貞光君 そういたしますと、いわゆる先ほど来尋ねてまいりましたところの
石油事情からして、いわゆるこのような三億三千万キロ
リッターというものは、五十二年前後までには、そう、それ以上は見込まれないと、こういうふうに
考えるのが常識的だと思いますが、いかがでしょう。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) この三億三千万キロ
リッターの供給目標も、今回の
石油事情の大きな変化がございましたから、これは近く審議会を開いてもう一回検討してもらおうと、そう思っております。それがふえるか減るか、まあいまの新しい大きな変化に即して専門家に見てもらおうと、そう思っておるわけであります。
-
○
宮之原貞光君 そのふえるかどうかという
意味深な話ですがね、ふえるということはないでしょう。先ほどからのいろいろな
外貨との
関係上、
値段の問題、量の問題、あるいはあなたが言った今後の産業転換ということを
考えるならば、減るという、それは
考えられるにしても、ふえるかどうかということはないでしょう。言うならば、ことし開かなければならない
石油審議会は、
情勢の変化があるからですよ。それに再検討を加えるためのやはり審議会としては任務を持つというふうに理解するのが当然でないでしょうか。どうでしょうか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) そのとおりでございます。しかし、
委員の皆さんは独自の見解を持っていますから、
通産省があらかじめ予見を加えることはまずいと思いましたので、ふえるか減るかと自由に判断していただくと、そういう
意味で表現したのであります。
-
○
宮之原貞光君
政府としては、これはやはりふえるということは
考えられない、こういう
見通しをもっておるんだけれども、審議会には一応白紙で検討してもらいたい、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
-
-
○
宮之原貞光君 そういうことになりますと、いわゆる現在
石油審議会から答申のあった百十三万バーレルのいろんな施設の増設という問題は、いま凍結をしておるということでございますけれども、当分の間はやはりこれは凍結というものが続くと、こう見てよろしゅうございますか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) これは
石油審議会の
需給関係の結論も待ちまして、また、その後の国内の
石油事情の変化、国際的な変化、それから海外における
日本の
石油投資等の
情勢等も踏まえまして考うべきもので、着工の認可につきましては当分凍結して慎重に見守っていたいと思います。
-
○
宮之原貞光君 それで、もう三月末ですがね。
石油審議会は、いわゆる
石油供給計画の問題について、皆さん
政府のほうから出して審議を願っておるんですか、どうですか。やっておるなら、その現在の状況をお聞かせ願いたいと思う。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) お答えいたします。
石油審議会につきましては、毎年度五カ年計画について見直しをすることになっております。で、今年度年度内にその見直しのための作業もいたしておるわけでございますが、
原油の事情はなお流動的な点が多うございます。先行きの
経済の
見通しにつきましても流動的な要素が多うございますので、近く審議会にこの間の事情につきまして御
説明を申し上げ、長期にわたります、たとえば五十三年度の
需給の
見通し等につきましては、直ちには作成がむずかしい点があろうかと思いますので、もう少し、
情勢が固まります段階の適当な時期に計画の決定ということをいたしたいというふうに現在
考えておりまして、そういう案で近く審議会にもおはかりをし、御了承をいただきたいというふうに
考えておるわけでございます。
-
○
宮之原貞光君 去年は三月の十四日に審議会が持たれておるようでございますけれども、そうしますと、
見通しとしては、年度内には審議会はなかなか開かれる
見通しはないというふうに理解してよろしゅうございますか。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) 私どもとしましては、三月、まあ今週一ぱいでございますが、会長がいま海外出張中でございまして、実はきょうお帰りになりますので、会長とも御相談をして日取りをきめ、今後の扱いにつきまして御相談申し上げたいというふうに
考えております。
-
○
宮之原貞光君 それなら、審議会に出されますところの
石油供給計画ですね、これはできておると思いますが、どういう計画の内容ですか。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) お答えいたします。
先ほども申し上げましたように、五カ年間のいわゆる供給計画自体につきましては、五十三年度を取り込んだ計画になるわけでございますが、これにつきましては、ごく近い機会に計画を策定するということがなかなか実際問題としては困難ではないかというふうに
考えておるわけでございますが、したがいまして、近く審議会にはかります際には、本年度の計画の実績別での改定、これは明年度二億七千万キロ、
政府見通しとしましてすでに申し上げておりますこの線に沿いました明年度の計画の策定、これが重点になろうかというふうに
考えておるわけでございます。
-
○
宮之原貞光君 そうすると、
石油業法にあります五年後を
見通した
石油供給計画というものはまだできておらないと、こういうことになりますわね、どうですか。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) 現段階では五年後の計画は作成がなかなか困難な
情勢であるというふうに
考えております。
-
○
宮之原貞光君
石油事情の
見通しが非常に困難だということはわかりますが、そうなりますと、この
石油業法の施行規則にありますところの年度内にきめる
云々ということとはどういう
関係になりましよう。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) お答えいたします。
この規則につきましては、現在改正の手続をいま検討いたしております。
-
○
宮之原貞光君 改正の手続というのは何ですか。法律上の改正の手続ですか。
-
-
○
宮之原貞光君 都合が悪いから今度は規則を変えるというわけですね。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) お答え申し上げますが、現在の
石油情勢が流動的でもございますので、もう少し
情勢につきまして先行きのめどが持てる段階まで、この計画につきましてはしばらく策定を待たざるを得ないというふうに現在
考えておりまして、それに対応いたしました所要の省内的な手続を定めたいというふうに
考えているわけでございます。
-
○
宮之原貞光君 私は、これは規則だから何も国会に出さぬでもいいという問題の成り立ちもあるかと思いますけれどもね。それならそういうふうに、やはりざっくばらんに国会に、いわゆる非常に
石油事情が流動的だからこういう問題についてはこういう処置をしながらやっていきたいということを明確にしておくということは私はきわめて大切だと思うのですがね。言われてみて困ったから、これは内々で規則を変えるんですと、これでは私は、規則がその官庁の都合のいいようにいつでも変えられるという不安感だけを残すことになると思うんですがね、その点はどうなんですか、大臣。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) これは、審議会の会長が外遊しておりまして、御相談をする機会が延びてきたわけでございます。それで、きょうたぶんお帰りになるということでございますから、会長とも御相談をして、そしてとりあえず開くことは年度内に開いて継続して審議してもらうと、そういう形がいいのではないかと。結論を得るのは時間がかかると思います。これだけの
石油の大変動がいまありまして、
価格の問題や供給の問題につきましても、まだ国際的に不安定な要因がございますから、軽々にきめることは慎まなきゃならぬと思っておりますから、これはやむを得ない
事態であると思います。これが普通の正常な
情勢で国際
関係が動いておればそういうことはないのでございますけれども、ことしのような年はまるで不正常な年でございますから、そういうような規則を改正することもやむを得ないと、そういうように思います。
-
○
宮之原貞光君 それほどに今後の
石油の
輸入量あるいは
石油というものはどういうかっこうになっていくかということが非常に判断がむずかしいと、そういうことはそれなりに私はまあ理解できますが、そこで私はふしぎに思うのは、去年の十一月十三日の
石油審議会で一もうこれは
石油騒ぎが始まった前後ですわね。それなのに、今後の
見通しさえも非常に困難であるのに、五十二年までの設備投資を何で従来の慣行を破ってぴしゃっときめたかということについて、どうも理解しにくいんですよ。従来の審議会は、当該年度以降の四年度目に操業を開始するところの設備の新増設を認めると、こういうのが私は従来の慣例であったと思います。言うならば、その慣例に従えば、五十一年までの
石油のいろんな設備の増設の問題について答申を出すというのが従来の慣習であったと思う。事実四十六年八月十九日付の
通産省の文書の「特定設備の許可について」という文書の中には、毎年度当該年度の三年後の年度における許可を行なうものとする、こういうような
説明書きもあるぐらいなんですよね。また、これは去年の三月十四日に当時の
石油計画課長が審議会で言っておるように、特定設備の許可については五十年度まできまっているが、五十年度末の設備能力に対しては五十一年度は約三%不足するだけなので、五十一年度分の設備許可は必要ないものと
考える、というものの
言い方を、おたくのほうの計画課長は——当時のこれはだれですか、
鈴木さんですか、は言っておるんです。こういういままでの例から
考えてみれば、何で急に五十二年度末までの分を急遽きめなければならなかったのかどうか。どうもこれは私は、いわゆる審議会の圧力に屈して、そこまで従来の慣行を破って、
石油騒ぎがあるからたいへんだからこの際増設しておこうと、こういうようなやり方ではなかったかと勘ぐられてもしかたがないと思いますが、この間の事情はどうなんですか。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) お答えいたします。
昨年の十一月の審議会、最終審議会の前に、九月に同じく審議会に、今後の審議の前提としましての設備許可の完成年度を幾らと
考えるかと、こういう点につきまして、五十二年度末までに稼働する特定設備について特定設備の許可を行なうと、こういう
考え方を前提としてすべきだと、こういう答申をいただいておるわけでございます。
なお、従来三年という
考え方でやっておりましたのをなぜ四年にしたかという点につきましては、最近の
石油のこういった立地につきましてはやはり地元のいろいろな受け入れ事情その他で時間を要します。たとえば、現地で御理解をいろいろいただいて、また公害のいろんな点、設備を強化をするとか、いろいろな地元との話し合いがございまして、こういう大型立地につきましてはかなりの長期の期間をあらかじめ見ておくということが必要であるということで、従来の経験にかんがみまして五十二年度末までの分を対象として検討するということになった次第でございます。
-
○
宮之原貞光君 その地元との話し合いに時間を要するということは、何も去年から始まったことじゃないんでしょう。これは事
石油企業の問題について非常にあちこちでトラブルが起きているところの問題なんで、何も去年から始まったことじゃないのですから。それを急に、地元との話し合いが長くかかるから四年に直したんだというこの
説明では、これは私は納得ができませんです。やはりこう、何と言っても、いわゆる
石油審議会のメンバー——あとから申しますけれども、ほとんど
石油業界の代表でしょう。その皆さんから押しまくられて、もうこのどさくさ騒ぎに、この際五十二年度まできめちゃえと、こういうようなかっこうになったんじゃないかということしか勘ぐらないと思いますよ。
それで、もう一つ私は聞きますが、去年の十一月二日に、瀬戸内海
環境保全臨時措置法というものが施行されることになりましたですね。そうすると、この間認めた中には、丸善、出光、九州
石油、
日本石油と、いわゆる瀬戸内海に面したところの工場が四つもあるわけなんですね。そうなりますと、私は当然
環境庁とのこの問題についての話し合いというものが事前になされてしかるべきだったと思うのですが、その点、
環境庁のほうにこの問題について事前に話があったのかどうか、まず三木長官からお聞きいたしたいと思います。
-
○
国務大臣(三木武夫君)
環境庁には話はありませんでしたけれども、現に瀬戸内海
環境保全臨時措置法が公布になっておりますから、将来この手続に従って、きわめて厳重な手続を規定しておりますから、その手続によって許可をとらなければならぬということになるわけでございます。
-
○
宮之原貞光君 そうすると、この法律が施行されたのは十一月二日でしょう。こっちは十一月十三日に答申をしてきめておるのです。その事前に、やはり法が現に施行されておるんですから……。そうすると、せっかく十一月二日につくったところの法律は、これは
石油云々ということから
考えれば、無視されたと、こう言われても私はしかたがないと思うんですが、その点どうなんですか、長官。
-
○
国務大臣(三木武夫君)
石油審議会でそういう問題が承認をされたとしても、いよいよ実施ということになれば、これは、いま言ったような瀬戸内海の沿岸においてはその臨時措置法が適用になりますから、ごらんになってもわかるように、臨時措置法はもうこまかい手続を規定してありますから、これによらなければならぬわけでありますから、審議会でそういうことをきめたということによって直ちにそういう実際に実施するということにはならぬわけでありますから、まあ弊害がないと思っております。
-
○
宮之原貞光君 そうしますと、
石油審議会にかける場合には、そういう
関係官庁との調整ということもしないで一応かけるものですか、どうですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 大体申請を受け付けるときには、地元との大体の了解をとってきてほしい、そういうことで、知事さんとか、あるいは市長さんとか、そういう方々の了解というものをわれわれとしては希望して、それがついてきておる。したがって、それがいよいよ実行されるという段階になりますと、今度は具体的に、公害防止協定とか、公害規則の順守とか、排出基準とか、そういう問題が厳然として出てまいりまして、それを突破して合格してこなければできないわけでございます。したがって、その段階において
環境庁あるいは地元のいろいろな市町村、自治団体との調整が成功するということが、これはもう当然必要となってくるわけであります。
-
○
宮之原貞光君 そうしますと、答申と、それから最終決定は別だという、まあ
衆議院で
通産大臣が答弁したものとは筋が一致しますけれども、しかし実際的には、もう
石油業界の中では、答申、
石油審議会の決定即認可ということが慣例になっておりはしませんか、どうなんですか、それは。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君)
環境基準がこういうふうにきびしくなってまいりまして、また住民パワーもこういうふうにきびしくなってまいりますと、審議会では一応認められても現実にはできないものも中には出てくるのではないかと私たちは見ております。
-
○
宮之原貞光君 そうしますと、答申があったものはすべて許可をするということには今後はならないと、あるいはいままでもそうだったと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) もちろん、公害規則とか、地方自治団体との協調ができないものは、これはなかなか認可しにくい、認可の条件としてはまだ熟していないと、そういうふうにわれわれは
考えます。
-
○
宮之原貞光君 いや、私がさっき、審議会の決定イコール
通産省の決定というふうになっておりはしないかと、こう言ったのに対して、大臣はそうでないという答弁なんですよ。たとえば、東亜燃料工業が昨年の十二月に清水市に提出したところの書類、特に公害防止計画書には、こう書いてあるのですよ。「幸いこのたび、地域社会の御理解と御協力を頂き、」「併せて去る十一月
通産省より
原油処理能力十五万八千五百バーレルの設備許可を頂きましたので」と、こういうように明確に、清水市に出してあるところの公文書の中に東亜燃料は書いておるんですよ。しかも、これは清水工場の、東亜燃料のパンフなんですけれども、このPRのパンフにも、「さらに同年十一月、工場拡張につき
石油業法に基づく
政府の設備増設の許可を得ることができました。」と、こうして地元には宣伝をしておる。あるいは、地元の市長には申請をしておるんですよ。これは間違いですか。どうですか。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) ただいまの先生御
指摘の点につきましては、会社側のほうでも表現に適切さを欠いたということで、
通産省のほうにその点の陳謝を申し入れておるわけでございます。審議会の審議、答申をいただきまして許可をするのは
通産省でございます。その許可につきましては現在凍結措置を行なっているわけでございまして、先般の審議会の答申をいただきました内容のものにつきましては現在すべて中止をしておるわけでございますので、この点につきましての具体的な工事その他は一切行なっておりません。それが現状でございます。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) その点は、たしか当
委員会でも御答弁申し上げましたが、貯油タンクを四基つくるというときの話だったと思います。これは、備蓄量をふやせと、そういうところで、去年の
石油危機勃発以前の、たしか三月か四月ごろから始まって、着工をすでに認めておったものの話であったというふうに私記憶しております。
-
○
宮之原貞光君 これは大臣ね、答弁が違いますよ。確かにこの文書の中には、「
石油業法に基づく
政府の設備増設の許可を得ることができました。」と、去年の十一月。いまの大臣の答弁でしたら、その許可の中にはそのことも含まれておったんですね、そうすると。でなければ、こういう文書を出すはずがないでしょう。しかも、このことについて同社の企画室長は、いや、これは一月二十八日の国会で問題になってから、
通産省のほうから電話で、着工をしばらく待てという通達があったんだと、通知があったんだと、こういうものの
言い方なんですね。私は、さっき
石油部長が適切でなかった
云々と言っていますけれども、適切であったか適切でないかで済まされぬと思うんです。もしこれが
通産省が明確に許可していなければ、あれは間違いでありましたと、これをきちんとさせるのが私は
通産省の厳然たるやはり指導の姿勢だと思うんですが、その点はどうですか。それでは済まされませんよ、適切でなかったぐらいの答弁では。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) 会社側のほうからは、先ほど申しましたように、この表現が正確ではないということで御迷惑をかけた、各方面に
誤解を与えたことにつきましては申しわけないということで申し入れてきているわけでございます。私どもも、今後その点につきましては厳重に注意するよう申し渡してございます。
なお、大臣が先ほど申し上げましたのは、許可の対象になっておりませんタンクの建設問題で先般
委員会で問題になったことがございましたので、その点を先ほど大臣が申し上げたわけでございます。
-
○
宮之原貞光君 厳重に注意するだけじゃなくて、私はやはり東亜燃料に、あれは間違いであったということを清水市民にきちんと知らせるところの手だてをすべきだと思いますが、どうですか、それは。それを
行政指導をやることを約束してくれますか。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) 清水市におきましてはその間の事情はもう十分わかっているかとは思いますが、もしその間に
誤解がなおあるようでございますれば、明確な措置をとるよう会社側を指導いたしたいと
考えております。
-
○
宮之原貞光君 指導をするということを確認してもらえますね、その点は。よろしゅうございますね。
それで、このパンフなども膨大な金をかけてやっていると思いますけれども、こういう市民の判断を迷わすような、こういう業界のやり方こそ皆さんは姿勢を正してやはり指導すべきですよ。そういうことをやらないでおって、幾ら答えだけよくしたって、これは
国民は納得しませんよ。そのことを私はやはり厳重にこの機会に申し上げておきます。したがいまして、東燃に対しまして、その文書の回収なり、それは間違いだったということを清水市民に周知をさせるということを約束されたと、こういうふうに理解をして次の問題に移ろうと思います。いいですね。どうですか、
石油部長。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) 適当な措置をとらせるよう指導いたします。
-
○
宮之原貞光君 そこで、先ほどちょっとお答えもあったんですが、いわゆる
石油タンクの問題ですね、清水工場の。これは、
原油タンクなどの付属施設と
通産省の凍結しているやつとは別なんだという
考え方なんですか、
通産省は。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) お答えいたします。タンク自体が許可の対象になっておりません。したがいまして、それ自体が先般の審議会におきまして凍結措置を行ないました対象にはなっていないわけでございます。
-
○
宮之原貞光君 私どもは、これもおかしいと思うんですよ。十二基という
原油タンクの増設ということは、当然新しい増設分の十一万五千バーレルを入れるものでしょう。しかも、パンフにあります、宣伝をされておりますところの、あるいは示されているところの、東亜燃料がすでに示しているところの、いわゆる新しい工場計画の青写真の中にもセットとして含まれておるんですよ、この中にきちんと。したがって、これとあれとは別なんだという解釈自体が私はおかしいんじゃないかと思います。第一、
原油タンカーの接岸埠頭や
原油タンクというものは、これは製油設備の本体とは一体的なものでしょう。これぐらいは私は小学生でもわかると思うんですよ。それをタンクと精製の分とは別なんだというものの
言い方は、指導のしかたということは、これは非常に御都合主義だと思うんですが、それはどうなんですか。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) 実は、この清水工場の
原油タンクは、八基の計画を
考えていたわけでございますが、そのうち四基が完成をしているわけでございますが、これは四十八年の三月着工の許可を受けまして、八月から使用しているというものでございます。それからまた八号は、四十八年の四月に着工いたしまして十月から使用いたしておる、こういうものでございます。九号も同じく四十八年の九月、十号も九月ということで、工事着工の許可を受けましたのは、すでに対象の、いま先生御
指摘の新しい増設設備という問題とは別個に、先に消防法によります許可その他をとりまして工事を進めてまいったものでございまして、残った四基につきましては、地元での防災計画あるいは公害防止という観点からの議論もございまして、まだ着工の許可を受けていないわけでございますが、本件につきましては、そういった状況を踏まえまして現在はタンクの工事を中止しているというのが実情でございます。
-
○
宮之原貞光君 私はあなたから実情をお聞きしておるんじゃないんですよ。それを別々だというものの
考え方、指導のしかたがおかしいんじゃないか、こう言っているんです。実情を知っておるからあなたに質問しておる。そこはどうなんですか。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) お答えいたします。
備蓄のタンクにつきましては、いま
日本の備蓄の水準が各国に比べまして非常に低いという点から、
政府は備蓄の増進のための各種の助成策をとってまいってきたわけでございまして、四十九年度末六十日を目ざした従来のいろんな諸方策の中で、この備蓄用のタンクの建設、そのための特別償却等につきましては、今後ともやはり
政府の助成を続けていく必要があるというふうに
考えておるわけでございます。他方、設備のほうにつきましては、全体の
需給の状況を見ながら計画に沿って不足分を許可していくと、こういうのが従来のやり方でございまして、その点は、たとえば許可の対象になっております重油常圧装置その他のいわゆる精製設備の本体につきましては、公害その他のいろんな点の配慮、とりわけ重点を置いて審議を今日まで行なってきたわけでございます。ただ、それと比較いたしますと、この備蓄タンクにつきましては公害上の心配というのはそれほどない。安全性の問題その他は消防法その他でチェックはいたしますが、精製企業本体におきます設備と比較いたしますと、このタンクは特に問題はそれほどないものと私どもは
考えておるわけでございます。
-
○
宮之原貞光君 私は単独にCTS
云々のことについて審議会の、あるいは
通産省の許可が要るかどうかという問題を論じているんじゃない。言うならば、製油工場のやはり付属設備と施設としてこれは一体的にとらえるのが至当だと思うんです。したがって、どうしてもそれは理解できませんけれども、時間がありませんので、次に急ぎます。
続いては、製油、精製工場の認可の条件ですね、この中で私は公害の防止、工場災害防止の確立ということが一番大事だと思うんですがね。その点はどうお
考えですか、大臣。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) いま御
指摘のとおり、公害防止という点につきましては、先般の審議会におきましても特に重点を置いて審査すべき項目として
指摘をされまして、私どももそういうふうに
考えておるわけでございます。
-
○
宮之原貞光君 もう一つ私は大事な条件として、地元の同意ということが大事だと思うんですがね。その地元というのはどういう解釈なんですか。
-
○
政府委員(
熊谷善二君) 通常私どもこの審議会に各案件を付議いたします前に、各府県の当局の御意見といったものを何らかの形で把握をいたしました上で審議会におかけしているわけでございますが、地元と言った場合には、通常当該府県並びに当該立地いたします市町村並びに地元の住民という方々が対象になろうと思います。これらの方々の意向というのは、具体的なケースに即しまして、私どもケースごとに判断をしていく必要があると
考えているわけでございます。
-
○
宮之原貞光君 これは大臣にお聞きしたほうがいいと思うんですがね。政治的な判断を必要としますがね。私は、地元というのは、なるほど県それから工場の立地されるところの市町村だけだという、画一的、機械的にそういうふうに認定すべきかどうかというところの問題なんです。先ほど私がお尋ねしましたら、公害防止、工場災害防止策の確立ということも条件にとっては非常に大事だと、こういう点を答弁されていましたけれども、この二つを組み合わせた場合に、もしその当該市町村だけじゃなくて、公害の問題なり災害の問題で隣の村にまでその問題が及ぶということになるとするならば、当然地元というのは、そういう問題も含めたところの隣接市町村ということも対象にならなければならないと
考えるのですが、その点はどうなんですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 奄美大島でもそういう問題が起きておりますが、やはり県並びにその施設が設置される市町村が第一義的であり、それから周辺の市町村というものも第二義的に関連があるとわれわれは思っております。
-
○
宮之原貞光君 少なくとも隣の、いま答弁されたように奄美の問題なら奄美の問題でもいいですが、やはり排水口が隣村に向いている、あるいは潮流の
関係で隣村のところのサンゴ礁に大きな被害を及ぼすかもしれない。こういう
情勢の中では、当然地元というのは隣接町村ですね。そういう被害が及ぶ。それがやはり判断されてしかるべきではありませんか。それがやはり画一的にやるものの
考え方というのはおかしいと思いませんか、どうなんですか、その点は。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、やはり県それから設置される市町村並びにこれに隣接する当該市町村——やはり第一義的には県とそれから設置される市町村だろうと思うんです。そして第二義的に、それに
関係する周辺の市町村、みんな
関係があると、こういうふうに
考えております。
-
○
宮之原貞光君 そうしますと、地元というのは、あくまでも工場が立地されるところの市町村だけだと、こう画一的にコンクリート化するということは、これは間違いですね。
-
-
○
宮之原貞光君 これは、
環境庁長官ね。これは
環境保全とも非常に
関係があるわけですが、先ほど触れられた、
通産大臣から答弁のありましたところの奄美の枝手久の問題を
考えますと、これは排水口が隣村のところに向いておる。この間国定公園になりましたところのいわゆる海中公園というものは、また隣の町にずっとつながってくるんですよ。そういうことになりますれば、この問題は
環境保全あるいは国定公園をどうするかという問題ともきわめて私は重大な関連があるというふうに
考えるのですがね。その点やはり
通産大臣の答弁のように、地元というのは単にその当該市町村だけじゃなくて、そういう
関係ならば周辺のものについてもこれは当然しかるべきだと、こういうお
考えに立つのが妥当だと思うのですが、その点いかがでしょう。
-
○
国務大臣(三木武夫君) 奄美群島の枝手久島は国定公園が隣接しておるわけであります。奄美群島の国定公園の申請は県知事がすることになっている。県知事の申し出に対して
環境庁長官がこれを指定するということになっている。鹿児島県から申し出のあった中に枝手久島は入っていないわけです。だから国定公園の範囲の外にあるわけでございます。だからわれわれは、そういう自然公園法による
環境保全という面からはこれは除かれておるわけですし、また入っていないわけです。しかし、ここに対して、あるいは貯油所をつくったり、あるいは製油所をつくったりということになれば、その海域に与える
環境というものに対しては無関心たり得ないわけであります。
環境のいろいろなアセスメントもしなければならぬわけでありますから、そういう場合に
環境庁は、地元というのは一体どの範囲内であるかということよりも、われわれはそういうことよりも、その製油所をつくったときにその海域に対する
環境にどういう
影響を与えるかということの観点からこれに対して
環境庁が関与することになるんで、地元の範囲がどうだということには直接
環境庁はタッチをしないわけでございます。
-
○
宮之原貞光君 時間がありませんから、もう一点だけお尋ねしたいと思いますが、その件ですが、現地の事情は、私は
通産大臣も御存じのとおりだと思うのです。非常に流血の惨事を引き起こさせかねないような
状態に、一触即発の
状態にあるわけなんです。しかも、先ほど来いろいろ問いただしてきたところの今後の
石油事情、こういうところ等から
考えますれば、私は最低、いま会社が行なっておるところの測量調査、これぐらいは一時やはり中止をさせて、冷却期間を置くべきだと思うのですが、そういう指導をするところの御意思はございませんか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) まず
基本政策として、
石油の備蓄をふやさなくてはならぬということは、われわれとしては国家的要請であるだろうと思います。これは、本
委員会におきましても、
衆議院におきましても、各党の議員からそういう強い御
指摘があったわけであります。ですから、CTSもできるだけつくりたいとわれわれ
考えておりますし、そういう点については
通産省は非常な熱意と積極的な姿勢を持っておるわけでございます。しかし、具体的にどういうところへつくるかという具体的な問題になりますと、やはり地元との調整、
環境との調整、自然破壊に連ならない、そういうことが非常に重要な要素でありまして、それらの点については深甚なる配慮を要すると思います。いまのような問題については、むしろこれは県当局が
関係市町村の間をうまく調整をとって、何といっても地方自治体のことでございますから、県が一番
関係して深い理解を持っているものでございますから、善処されるように要望したいと思います。
-
○
宮之原貞光君 奄美の場合には、CTSの問題じゃないんですよね。五十万バーレルの製油基地を設けるという話でしょう。大臣も知っておるように、そういう問題なんだ。しかも、こういうものはみんな県だと、こう言いながら、前の閣僚の皆さんは現地へ行って、みんなぶっているじゃありませんか。今日
石油基地に反対する者は公害や科学を知らないやつらなんだと、こういうような暴言を片一方ではかせておいて、それは県の指導にまたなきゃならぬというふうに逃げていいものでしょうか、どうでしょうか。私はやはり、この通産行政を預かるところの責任者としては、この点についてはしかるべく指導していいと思うのですが、どうなんです、それは。やっぱり県だと言って逃げられるつもりですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 別に逃げるわけじゃありませんが、やはり地元との調整ということが非常に大事であると、そういうことは
石油業者にもわれわれは指示しておりますし、認可許可をやるという場合には、そういう問題は非常に重要視しているポイントであります。
-
○
宮之原貞光君 いや、私は以前の問題として、いま紛糾しておるところの調査活動というぐらいは、しばらく待たせたらどうですかと……。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) この点は、やはり内情をよく知っておられる県当局でしかるべく善処されるように、非常に期待をいたしたいと思います。
-
○
宮之原貞光君 それはおかしいですよ。ひきょうです、それは。
じゃ終わります。
-
-
-
○
和田静夫君 まず、自治大臣に伺いますが、参議院選挙の投票日はいつになります。
-
○
国務大臣(町村金五君) まだ実は明瞭にきめていないというのが現在の実情でございます。
-
○
和田静夫君 報ぜられる記事というのは、いろいろまちまちです。で、選挙を管理される自治大臣にお聞きをするわけですが、たとえば
福田大蔵大臣は、六月中に終わらせるほうがよいと、こう述べられる。あるいは
橋本幹事長は、平日にやったらどうかと言う。これらを勘案をしながら、自治省としての検討はどの辺まで進んでいますか。平日か、日曜か。
-
○
国務大臣(町村金五君) 投票日を祝祭日にするか、あるいは普通の週日にするかという問題は、これまでも、御承知のとおり、たびたび両方とも行なわれた例がございます。まあ、いずれにいたしましても、できるだけ投票率をよくしたいということは、これはもう当然の事柄でございまして、そういう角度から、いずれを選ぶべきかというようなことで私どもも検討はいたしておるところでございます。ただ、従来の例によりますると、必ずしも普通の週日にやったから投票率がよくなる、あるいはまた、投票時間の終了の時間を延ばすということによって直ちに投票率が非常によくなったという過去の例は、必ずしも私どもの検討の結果では出ていないのでございまして、それらをあれこれ勘案して今後きめていくべきものだと、こう存じております。
-
○
和田静夫君 自治省としては、いつごろまでに結論を出されますか。
-
○
国務大臣(町村金五君) まあ、いずれにいたしましても、今回改選をされる方の任期というものがあるわけでございます。したがって、そういった点から
考えてみまして、選挙の執行に十分支障のないようなときまでには、当然、私どもとしての見解と申しましょうか、自治省としてきめなきゃならぬものだと、さように存じております。
-
○
和田静夫君 選挙の執行に支障のない期日というのは、いつですか。
-
○
国務大臣(町村金五君) これは私があらためて申し上げまするまでもなく、選挙には、自治団体側におきまして選挙執行の管理をいたしまする分としては、相当の日数を必要とするということは申し上げるまでもございません。したがって、少なくとも投票日はいつということにきめますれば、それから逆算をいたしまして、この程度の日数はどうしても必要だというところがございますので、そういったところをあわせて勘案しながら決定をしていくということに相なるものと存じます。
-
○
和田静夫君
大蔵大臣にお聞きをしますが、六月中に投票を終えたほうがよいと
発言をされたようでありますが、その趣旨はどういうことでしょう。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 私の個人的
考えを、
新聞社との座談の席で述べたわけなんですが、私は、選挙が目の前にぶら下がっておるという
状態だと、どうしても、ずいぶん気をつけましても、国政が選挙によってゆがめられる、国政の運営がそういう傾向があるんじゃないかと思うんです。私が六月末と申し上げましたのは、別に六月末という
意味じゃないんですが、一刻も早く選挙が終わったほうがいい、そして、そういう国政のかじとりの方向をゆがめるような要因なしにこの重大な時局に取り組むということが妥当じゃないか、そういう所見でございます。
-
○
和田静夫君 自治大臣、
大蔵大臣がこの
予算委員会にあたって以上のような見解を述べられました。その見解を是とされて作業を進められますか。
-
○
国務大臣(町村金五君) 申し上げるまでもなく、いま
大蔵大臣が言われましたようなことも当然ございます。私どもは、やはり、いまの
情勢から
考えてみますると、かなりいろいろなところで浮き足立っているといったような状況もございますので、できれば私なども選挙というものはきまった以上はなるべく早く行なわれるということが実際は望ましいと、こう
考えておりますけれども、御承知のように、今後、
政府といたしましては、国会に種々の法案等を提案いたしておりますので、やっぱりそういうものが大体どういうかっこうになるかという
見通しも
政府としてはつけなければならぬという立場にあることは申し上げるまでもございませんので、そういったことをあれこれ勘案いたしまして選挙の期日を決定するということに私は相なるものだと、かように存じておりますが、自治省といたしましては、そういった場合の選挙の執行に万違算なきを期するということでそういった準備はいたしておるというのが段階でございます。
-
○
和田静夫君 自治大臣、もう一つだけ尋ねますが、いわゆる平日に過去に行なわれた選挙、投票率の結果などというのは、必ずしも日曜に行なわれたものよりもすぐれてよいということにはなっていないことは、御存じのとおりであります。したがって、自治省としては、今回の場合は、いままでの検討の結果に基づく限り、大体日曜日に行なう、こういうふうに理解しておいていいわけですか。
-
○
国務大臣(町村金五君) これは、実は、選挙の期日をどうするかということは、御承知のとおり、もう少し広い視野から検討をせられ、決定されるということになると思うのであります。自治省といたしましては選挙執行管理の責任をしょっておるわけでございますから、そういった点で私どもは違算なきを期する準備をしておるということでございます。
-
○
和田静夫君 自治体におけるところの実務者というのはたいへん迷っているわけでしてね。したがって、やはり早急に結論を出して指示をされる、こういうことが自治大臣としてはしかるべき措置だと思うのですが、よろしいですか。
-
○
国務大臣(町村金五君) 私どもといたしましては、
政府がこれを決定をするという場合に際しましては単なる思いつきだけで行なうことが適当でないことは言うまでもございません。やはり、今日の諸般の
情勢と、さらには過去における実際の実績というものを十分勘案いたしまして選挙日が決定されるというのは、私は、
政府として当然のことであろうと、こう
考えておりますので、そういった点につきましての準備と申しましょうか、過去における諸般の事情の調査というようなものは私どものほうで抜かりなく行なっておるというところでございます。
-
○
和田静夫君 地方財政の問題で二、三質問いたしますが、古来、地方財政の問題は、主として歳入論でもあっ、た。どうして地方財政を充実するか、地方財源を充実するか、そういうことであったわけですが、いまなお総歳入中に占める税収入の割合が半ばをこす地方団体がきわめて少ない、こういう現状であります。こういう現状においては、歳入論の重要性というのはなお失われていないと、こう思います。しかし、国、地方を通ずる
国民の租税負担が限界に近いとされています。また、税源の偏在が容易に是正されない、こういう現状であります。そうすると、こういう現状においては、地方歳入の充実という問題というのは、単なる税収入の増強論から一歩進んで、より広く地方交付税やあるいは国庫支出金をも含めた、より広い範囲に立脚したいわゆる地方自主財源増強論、こういうような形で進めなければならないと少なくとも私は
考えますが、その点についてきょう議論をやっていれば時間がありませんから十分な議論は別の機会に行なうとしても、一点だけ
基本的な点で
大蔵大臣にまず確認をいたしたいのは、自治、大蔵両省間で地方財政のあり方をめぐって若干の意見の相違がどうもあるように思われてしかたがない。地域住民の
生活に直接関連する
生活道路であるとか、あるいは上下水道、あるいは住宅、学校、社会福祉施設、あるいは公園緑地、廃棄物処理施設というようなものの整備ですね、それから住宅などを含んでの住民福祉の向上、あるいはこれらの緊急性にかんがみて、地方自主財源の強化という方向においてはこれは意見の不一致はないだろう、当然一致しているはずだと
考えますが、そう確認してよろしいですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 地方財政は、
和田さん御承知のように、
昭和二十九年に非常な危機がありまして、それから十年間、一進一退というような
状態を続けましたが、
昭和三十九年から四十年にかけましてまたたいへんな危機を迎えたわけです。
昭和四十年にその根本的な強化策を講じ、そのとき交付税の今日のように三二%引き上げということが税率引き上げが実現をいたしたわけなんです。自来、地方財政は、私の見るところでは、ずっと
改善を見つつある。
昭和四十九年度を見ましても、全地方団体の平均租税収入ですね、その地方財政総収入の中における比率というのは四〇%をこえるんです。それから安定収入というか、固有の財源というか、租税収入と並んで重要な歳入である交付税の収入額、これが約二〇%、合計しますと六〇%が安定財源だと、こういうことになる。その上、国からの支出金というか、補助金なんか、これが二五、六%に相なると、こういう状況で、今日の地方財政というものは非常に安定した形になってきておる。でありまするから、国では二兆円をこえる公債を発行する、その依存度が一二・六%になる。ところが、地方のほうではわずかに一兆円の公債を発行する、依存度からいいますと五%台まで来ておると、こういうことになってきておるわけであります。
私は、国と地方とは、これは相携えて
日本社会を建設する、そういうたてまえから車の両輪論だというふうに
考えておりますが、そういう
意味合いにおきまして地方財政が健全に運営されるということをこいねがっております。そういう
意味において、安定財源というものが地方に確保されるということにつきましては深くこれを期待しておりますが、中央とのやっぱりバランス、また協調、こういうことも、そのときどきの
経済情勢、また両者の財政事情、そういうものを見ながらやっていかなけりゃならぬ、そういうふうに
考えております。
-
○
和田静夫君 ともあれ、地方の自主財源の強化ということについては御異論がないと、こういうことでありますから、それが確認をされれば、自治大臣に伺いますが、地方交付税制度の改革についても私は保守的であってはいけないんだと、こう思うのです。
そこで、特別交付税なんですが、この制度の存在理由は何ですか。
-
○
国務大臣(町村金五君) 私が申し上げるまでもなく、交付税の総額のうち九四%までは普通交付税ということにし、六%が特別交付税に相なっておるわけでございまして、そこで、地方交付税というものは、できるだけ地方団体に安定した財源を確保するということがその大きな目的であることは、申し上げるまでもございません。したがって、きわめて緻密ないろいろな
計算方法をもちまして現在普通交付税が地方自治体にそれぞれ配付をされるということに相なっておるわけでございます。そこで、特別交付税というのは、そういったいわば交付税
計算を定型化することが非常にむずかしいというようなものを特別交付税として扱っておる。たとえて申し上げますれば、その一番典型的なものは私は災害でないかと思うのであります。災害は、いつなんどき、しかもどこに集中的に起こるかわからないというような状況でございますので、しかも、どの程度のものになるかもこれもわからない。一切が不明なものでございますので、これはやっぱり普通交付税に入れるというのにはたいへんなじまない性格のものだ。したがいまして、現在、特別交付税といたしましては、やはりそういった災害に要する地方の経費の負担をこれに充てていくとか、あるいは、また、最近は、御承知のように、公害といったような
事態が起きてまいりました。きわめて緊急を要することを地方団体としては行なわなければならぬというような
事態等もございます。そういったいわば臨時緊急でしかもあらかじめそう予見することのできないような
事態に対処するということが特別交付税というものの存在の理由であろうかと、かように私は判断をいたしております。
-
○
和田静夫君 そこで、大臣、個々の地方公共団体の特別交付税のいわゆる額がきまるまでの手順ですね、ちょっと示してもらいたいのですが。
-
○
国務大臣(町村金五君) 少し事務的なことになりますればあるいは財政
局長からお答えをいたさせますが、私が承知いたしておるところによりますと、特別交付税はやっぱりその年間を通じまして最終段階で配付を決定するというのが、今日の場合、そういう方法をとるのが一番適切であろうと、こう私は
考えておるのでございまして、御承知のように、三月になりまして交付税を決定いたしましてこれを地方団体に配付をするという段取りを今日までとっておるところでございます。
-
○
和田静夫君 ちょっと質問の趣旨があれでしたが、いわゆる特別交付税の具体的な算定の方法というのは自治省
関係のいろいろの著述に明らかでありますが、結局、普通交付税の算定と同様に、一つは恣意の入らないように、それからまた、地方団体の現実の支出額なりあるいは収入の減少額を算定の基準とすることはなるべく避けて、できるだけ客観的な数値を基準として間接的に算定をする、こういうふうにわれわれは教えられているわけです。この原則は、自治大臣、いまもお守りになっているという自信をお持ちですか。
-
○
国務大臣(町村金五君) もちろん、そのことは、いまも固く守り、励行しておると、こう
考えております。
-
○
和田静夫君 それでは聞きますが、特定項目の中にあるんですが、公害対策費、この算定のしかたですね、これはどういうふうにやっていますか、お示し下さい。
-
○
政府委員(松浦功君) お答え申し上げます。
公害対策の経費につきましては、これは理論的に客観的な数値を用いるということが困難でございますので、現実に地方公共団体の支出額、これを御報告を願いまして、それに一定の割合を用いて
計算をするという方法をとっております。ただし、先生御承知のように、一般の普通交付税の中にも標準的なものは盛り込んでおりますので、そういうものは除外をして
計算をすると、こういうやり方をいたしております。
-
○
和田静夫君 大臣ね、いまの答弁を要約すると、いわゆる地方団体がこれだけかかったと言ってくる、それを全額見てやるかあるいはどれだけ引いてやるか、自治省のさじかげんでどうにでもなるような算定という感じを受けますが、現実にはそういう行なわれ方ではないだろうか。個別の例を示せば私は幾らでもあげることができますが、それは個々の地方団体に非常に迷惑をかけますからやめますけれども、そこでそういうことを頭に置きながら特別交付税を
考えてみたんですよ。そうすると、特交というのは普通交付税の算定に対する補完措置が算定の原則ですから、地方団体の財政運営の拙劣さに原因をする歳入欠陥ですね、これやら、あるいは積極的に特別の事業を実施したことによるそういう財政窮迫等のいわば赤字補てん的なものは策定の対象とされない、このことも特別交付税算定上のもう一つの原則でしょう。
-
-
○
和田静夫君 大臣、
指摘したとおりだということで、財政
局長が言うんですから、これは。そうしますと、地方団体の財政運営の拙劣さに原因する歳入欠陥ですね、これやら、積極的に特別の事業を実施したことによる財政窮迫等の赤字補てん、これはしないということですから、そうすると、減額項目の中に特別の事業の実施やらあるいは期末やら勤勉の問題を入れるというのは、これは特別交付税の性格からして首長経験者の大臣ですから非常におかしいとお思いになっていませんか。
-
○
国務大臣(町村金五君) いま御
指摘になりましたのは、おそらく、最近、各地方団体におきまして、給与等につきまして特別ないわゆるプラスアルファといったようなものをずいぶん大幅にだんだんやりだしておられるところがあるわけでございます。申し上げるまでもなく、私どもは、地方公務員の給与というものも、大体において国家公務員に準ずるということで給与というものが定められていくというのがやっぱりいまの現状においては適当なのではないか、さように
考えておるわけでございます。そういたしますと、特に一部の地方公共団体はたいへんにそういったプラスアルファ的なものを多くなさる。一向そういうことはあんまりなさらないで国家公務員に準ずるような扱いをされておるところと地方団体におきましては扱いが最近はずいぶん違っておるところがございます。それに対処いたしまして私ども交付税を配付いたします場合にはいま申し上げたような一定の基準でいたしておるわけでございますので、やはりそういうことができるというのは、私どもの見るところではそういうプラスアルファを出せるようなところは、やや財源的に、こちらがわかりませんけれども、ゆとりがあるんじゃないか。したがって、それは他のほうに回してあげるということが必要であろうというようなことを、いま特別交付税の扱いとしては、御承知のようにそのプラスアルファ分の九割程度のものは差し引くという扱いをいたしておるのでございまして、これにはいろいろ御議論のあることも私も伺い承知をいたしておるところでございますけれども、これは私はやっぱり全体の公務員の給与というものは比較的平準化されていく必要があるんじゃ、ないかというようなふうに
考えますと、いまいたしておりますることはそれなりに私は十分理由があるんだと、こう
考えておるのであります。
-
-
○
国務大臣(町村金五君) 先ほど財政
局長も大体答えておるところでございますが、私どもこれを厳密にいろいろ申してみますと、確かにそういった私はお説も成り立ち得ると、こう思うのでございますけれども、まあ私どもとしてはいまのこのやり方というものは現状においてはむしろ妥当性があるものだと、こう
考えておるのであります。
-
○
和田静夫君 それでは、北海道知事当時にはどういうことでもって、たとえばプラスアルファというものに判断をされましたか、自治大臣は。
-
○
国務大臣(町村金五君) 私どうも少し古いことになりましたので記憶を明らかにいたしておりませんけれども、私が知事をいたしておりました時代にはあまりプラスアルファの問題というのは起きなかったんではないかと、こう私承知をいたしております。
-
○
和田静夫君 いや、それはそんなことありませんよ。町村知事というのはたいへん職員に対する理解度が高かったですからね。やっぱり
生活指数の問題だとかいろいろのことが全国的にはアンバラとして作用をいたしますね。それらをやっぱり勘案をするというのはすぐれて自治体の首長の問題でしょう。これは否定をされないでしょう。
-
○
国務大臣(町村金五君) 何と申しましても、自治体の職員が少なくとも
生活を営み、しかも比較的今後豊かな
生活を営むことができるような給与をしていくということは、これはまあ自治体をお預かりをする首長としては当然
考えなければならぬことであることは、これは言うまでもございません。しかし、御承知のようにそうは申しながらも現実の地方公共団体の財政を見ますると、給与費の占める割合というものは、かなり
予算が膨張をしておるのにかかわりませず、なお次第にこう少しずつ高まっていっているのではないかということにもまた私どもとしては十分着目をいたさなければなりませんので、やはりできるだけ人員はあまりふやさないで、そのかわり給与はできるだけこれをよくしていくというのが私は地方団体の首長として心すべき事柄だと。私などはそういうつもりであまり人をふやすということには当時賛成をいたさないで、できるだけ彼此融通をしながら比較的重要度の高くない業務に従事しておる者は数を減らしていく、そのかわり必要なものにはできるだけ人員を配置するというようなことをいたしながら、いまの給与の問題につきましても、いわゆる少数精鋭でできるだけの配慮をするというのが、私ども実は
基本的な
考え方でやってまいったところであります。
-
○
和田静夫君 肝心なところ答弁されないわけですけれども、まさに知事時代にやられたことが、いわゆる自治省というのはやっぱり原則どおりにやってくるから、そのことによって特交が
影響を受けるなどということは夢想だにしなかった、そういう立場でおやりになったはずです。それがいまあなたが自治大臣になられて、そのことをすっかり——まだわずか三年ぐらい前の話ですからね、そんなにお年でもないし、お忘れになったということにはならないので、そのころのことをやっぱり思い返してもらって、やっぱり原則は原則としてしっかり守っていただく、このことを求めたいと思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(町村金五君) 原則はもう先ほど来私もお答えを申し上げ、また
和田議員からも御
指摘がございましたように、その原則は私もあくまで順守していくべきだと、こう
考えておるのであります。ただ、実際問題といたしましては御承知のとおりいろいろな問題がその間に起きてきておるということも事実でございます。その間の調和をどうはかるかということが私どもの当面特に心すべきことだと、こう
考えて対処しておるところでございます。
-
○
和田静夫君 これはどういうふうに抗弁されようとも私のほうの主張が正しい。いまの特別交付税の算定の中にはやっぱり自治省の恣意がかなり入っていることはどうも否定ができません。私はまあ時間と、私が要求をする資料さえいただければこれは幾らでもそれを証明して見せます。
そこで大臣、私はやっぱり特別交付税が千八百二十五億円にもなっているというこのことが問題だと思うんです。制度の発生当初はこれは百八億四千五百万ですか、そういう
状態でありました。交付税率が、先ほど
大蔵大臣答えられました三二%になった
昭和四十一年度というのはこれは四百六十九億三千八百万円だったのであります。こういうことを
考えてみますと、今日はたいへんな額です、これは。地方団体が特別交付税の交付を当てにして
予算を組んで、そしてその実際の交付に目の色を変える、こういう
状態というのは改められなければならないと思うんです。自治大臣、あなたの勇断で普通交付税、特別交付税の率、先ほど言われた九四対六、これを改めて、そして特交分の率を減らして普通交付税に繰り入れる、そういう努力をされるおつもりはありませんか。
-
○
国務大臣(町村金五君) 交付税の総額が非常に少なかった時代、いま御
指摘もございましたが、六%の特別交付税というものは、先ほどもお答えを申し上げましたような災害その他の不時の出費に備えるというためには私は当時としては必要な額であったと、かように
考えておるのでございます。しかし、最近交付税の額も非常にふえてまいりまして、はたしてこの六%がいまなお最小限度の必要額であるかどうかということについてはこれは私も確かに多少問題があると思います。ことにいままで特交でもって支出をいたしておりました事項の中にも普通交付税になじむような仕組みというものをだんだんと最近は
考えておるのでございまして、たとえば本年は公立大学の運営費でございますか、こういうものにつきましても、これを普通交付税に四十八年からでございますか、これを持っていくというふうなこともできたわけであり、現在特別交付税で支出をいたしておりまするものの中には、やはりそういうことの可能なものもあるかもしれません。だといたしますれば、いまの六%を多少減らすという、そこに余地も出てくるかもしれないのでありまして、今後私どもといたしましては、いま申し上げたような普通交付税に持っていくことの妥当性もあり、またそれがうまく実行のできるというようなもの等のひとつ検討ともあわせまして、いまの六%をどうするかという問題はひとつ真剣に検討をさせていただくことにしたいと、こう
考えております。
-
○加瀬完君 関連。
さっき
和田委員が
指摘をいたしました交付税の原則論、これは認めるような認めないような、はっきりしない御返事でありましたが、その原則というものはお認めになると思うのです。その原則というのは、法律で示された交付税法ということになろうと思うのです。ところが、この交付税法の解釈が
和田委員が
指摘するように、特に特別交付税では恣意を差しはさむ余地のないようになっておるわけですね。それがだんだんだんだんゆるめられて恣意が差しはさまれるように、もらうほうも与えるほうも解釈を広げている。これは、原則にはなはだしくはずれると思うのです。もしも地方が要求するあるいは自治省が配付をする特別交付税の内容が規定されているような形ではなくて、交付税の内容にしなければならない必要があるというのであれば、これは交付税法を改正をして、交付税の中でいかがわしい、特別交付税というような形で、悪くいえばごまかしているような問題は処理をすべきであって、原則そのものを適当に解釈をするということはこれは許されない問題ではないかと思う。最初は交付税法なり、特別交付税なりを解釈をする自治省の解釈書も非常にきびしかった。このごろは特別交付税というのは、こういうように解釈をし、運用しなければならないという指針を出しておきながら、それを自治省自身が破っていると、これは例を出せといったら幾らでもあります。こういうことでは、いろいろな政治介入が入れば、特別交付税というのはどんぶり勘定にならざるを得ない。交付税法の違反ですよ。こういうような運営ではいけないと、そういう運営はしておらないと、こういう点は御確認をいただけるでしょうね。
-
○
国務大臣(町村金五君) 特別交付税については、そこに自治省として恣意を差しはさんだり、あるいは客観的な妥当性を失わせるようなことを私どもとしてやってはならないということは、これは申し上げるまでもございません。その原則は私はあくまで順守されているものと、かように
確信はいたしておりますけれども、いま加瀬
委員から御
指摘になりますようなことは、私は万々ないと
確信はいたしておりますけれども、なお今後特別交付税の運用と申しましょうか、については、そういったいやしくも一般から
疑惑を招くというようなことの断じてないようにひとつしていかなければならぬということは申し上げるまでもないと存じ、今後十分指導上注意をいたしていきたいと
考えております。
-
○
委員長(
鹿島俊雄君) 午後一時まで休憩いたします。
午後零時五分休憩
—————・—————
午後一時五分開会
〔
理事吉武恵市君
委員長席に着く〕
-
○
理事(吉武恵市君) ただいまから
予算委員会を再開いたします。
午前に引き続き、質疑を行ないます。
和田君。
-
○
和田静夫君 まず外務大臣に伺いますが、お急ぎのようですから。この「対韓援助減らさぬ」、「
日本側が約束か」というやつに、「ソウルの有力筋が二十三日明らかにしたところによると、
日本政府はこのほど、韓国
政府に対し、援助額を削減するような形で対韓援助方式を変更することはない、と約し、二十六、七の両日にパリで開かれる「対韓援助協議グループ」の例会では、韓国側が要請する総額十億ドル、うち公共借款五億ドルの獲得に側面からの援助を惜しまないとの約束を与えた」、という
報道がなされていますが、これは事実ですか。
-
○
国務大臣(大平正芳君) 私は全然承知いたしておりません。
-
○
和田静夫君 そうすると、この援助額削減問題というのはかなり懸案の問題としてありましたですね、方式のいわゆる変更を含んで。それらの問題はどういうふうになっているわけですか。
-
○
国務大臣(大平正芳君) 援助を削減するとかふやすとかいう問題をそういう問題として取り上げたことはないのであります。いままで取り上げました問題は、日韓
経済閣僚会議で援助額についてのネゴシエーションをやるというようなことは好ましくない。閣僚会議自体は、双方の閣僚が、複数の閣僚が集まりまして、共通の関心を持っておる問題について腹蔵のない意見の交換をして理解を深めるということであってほしいし、それ以上のものであってはならないという
考え方から、去年の暮れ、東京で開きました第七回閣僚会議からそのようにいたしたわけでございます。今後もそういう
方針で対処したいと
考えております。
それから第二に、韓国自体の
経済もテークオフする段階にだんだんなってまいりまして、将来
政府対
政府の援助は要らないようになるであろうということは、すでに第六回の閣僚会議のあと出されました共同コミュニケとも明らかにされておるとおりでございまして、それはわれわれの望むところでもあるし、韓国自体もそうあらねばならぬと
考えておるわけでございます。つまり、
政府ベースの援助は将来はなくなる、そうして民間の
経済交流に座をゆだねるという方向をたどるであろうということは、第六回閣僚会議のあとから明らかになってまいりました線でございます。しかし、これは
経済協力自体が少なくなるとか多くなるとかいう問題ではないので、いわばやり方の問題として御理解をいただきたいと思うのでございまして、現実に援助額が多くなるか少なくなるかという問題は、そういうプロジェクトがあるかないかという問題と、わが国の援助供与能力、わが国の財政事情等を十分勘案してその年々において慎重に吟味してきめられるべきものと私は
考えております。
-
○
和田静夫君 外務大臣、この前のゲリラによる在クウェート大使館占拠の際、人質になった人の名前、そしてその身分を明らかにしてもらいたい。
-
○
政府委員(田中秀穂君) お答え申し上げます。
在クウェート大使館占拠事件の際、人質になりました者の数が十六名でございまして、その中には大使館
関係六名、そのほか大使館の現地補助員六名、計十二名、その他四名が民間の方で、たまたま来合わせておりました方が巻き添えになったということになっております。
身分は、大使石川良孝、それから二等書記官木村光一、それから二等書記官伊藤庄亮、二等
理事官杉村曄、三等
理事官
和田収平、現地補助員八重樫美和子、そのほか現地雇い——これは現地人でございます。それからそのほか四名は、
石油連盟よりの長期出張者、土屋寿久、日商岩井・板倉忠輝、茶谷産業・音羽敏宏、アラビア
石油・山本典行、この四名でございます。
-
○
和田静夫君 大臣、いま言われた土屋寿久——外務省から届いた資料によれば、長期出張者と、こうなっているんですが、これは大使館員であり、かつ
石油連盟の職員ではないですか。アラビア
石油のテレックスには、あのとき石連の土屋さんと、こう入ったわけですが……。
-
○
政府委員(田中秀穂君) 土屋氏は、外務省の委嘱によりまして、
石油連盟から中東の
石油事情調査のため、長期出張として派遣されたものでございます。昨年十月から現地に行っております。
-
○
和田静夫君 この出張旅費、滞在費はどちらが持ったのですか。
-
○
政府委員(田中秀穂君) 外務省が正式に委嘱をして、調査をしていただく
関係上、外務省が負担をいたしております。
-
○
和田静夫君 こういう例はほかにもあるのでありませんか。
-
-
○
和田静夫君 そこで、いわゆる外務省が旅費やら滞在費を負担し、しかも、
経済協力
関係などで民間に長期的な委嘱を行なう、こういう形のことが明らかになったのですが、企業の職員が官庁に入ってきていて、仕事をしながら情報をとっているという例は、まあ国会でも以前に問題にされたことがありますが、大使館員にもそういう人がいたという形になるわけですね。在外大使館にもそういう人がいた。これは非常な驚きであります。
政府の資源外交が、全く企業ペースで行なわれている証左ではないかという感じがするわけです。
日本政府の要人が、中東諸国のトップに会うのに、大使館が全く役に立たなくて、商社マンが仲介をしたというような例も伝えられましたけれども、アブダビ
石油の常務の松浦清人氏という人のことばをかりれば、今度の
原油価格の引き上げに最初に火をつけたのは、実は
日本の企業であるとはっきり証言をしています。そうしますと、そういう企業のペースの中に、
日本の外務省の出先がある以上、まあ言ってみればろくな外交ができるはずがない、こういう感じを、この在クウェート大使館占拠事件の際の人質になった石連の土屋さんという例から
考えざるを得ないんですが、外務大臣はどうお
考えになりますか。
-
○
国務大臣(大平正芳君) いま、当面資源に関する外交が問題になっておりますけれども、資源ばかりじゃなく、あらゆる外交の分野におきまして、私どもはベストを尽くさなければならぬ責任を持っているわけでございます。したがいまして、
日本人の知謀をできる限り吸収活用する姿勢でなければいけないと存じます。外務省の者だけが閉鎖的な社会をつくりまして、外交を独占してまいるというような心がまえでは、とてもこの荒海をこなしてまいることは、なかなか至難のわざであると思います。したがいまして、われわれとしては、できるだけ民間の方々、あるいは学界の方々、
報道界の方々その他の御協力を得て、十分な情報もとらなければなりませんし、その解明にあたりまして、間違いをおかしてはならぬと
考えるわけでございまして、土屋君の場合も、そういう
意味で、
石油の専門家として、調査部の外国調査の経験を持った方でございますので、去年の十月からしばらくおかりをいたしまして、調査の仕事を委嘱いたしたわけでございます。ただ、いま御
指摘のように、こういうことはその立場から申しますと理解いただけると思うんでございますけれども、官庁は官庁としての規律を保たなければなりませんので、外交におかしがたい機密もあるわけでございまして、そういった点につきましては、われわれとして
十分配慮して御委嘱を申し上げているつもりでございます。
-
○
和田静夫君 一月二十五日の参議院の本会議でも、
石油問題については昨年四月十八日のニクソン・エネルギー教書を中心にしながら、若干の私の見解は述べたところでありますが、いまの大臣のことばではありますが、どうも企業利益を代表する諸君が、中心的に外交全体というものの展望の上に立たずに、
石油なら
石油といういわゆる狭い視野でものごとを判断をし、しかも、
日本国内の企業の利益という形でのものの判断の上に立っていろいろ
考え方を出す、そのペースに巻き込まれていった外交というものを、やはり私たちは経験をしたんじゃないか、そういうふうに
考えますが、大臣はいかがですか。
-
○
国務大臣(大平正芳君) 問題は、外交を運営するにあたりまして、専門的な知識を専門的な造詣を持たれた方から十分吸収するということは、御理解いただけるといたしまして、問題はそういうものをどのように駆使してまいりますかの主体的な判断は、われわれがやるわけでございまして、御委嘱を申し上げた民間の方々に外交
方針をゆだねるわけにはまいらないと思うんでございまして、そのけじめは私ども厳重に守ってまいるつもりであります。
-
○
和田静夫君
大蔵大臣にひとつまずお聞きをしますが、昨日
報道されたところによりますと、建設大臣は家賃が適正な額を上回る場合、その差額を国が補助する家賃補助制度を、四十九年度以降に実施する
方針をきめ、建設省事務当局にその制度を実施するための要綱づくりを指示した、こういうふうに
報道されているんですがね、これはたいへん画期的なことだと私も
考えますが、
大蔵大臣、これは賛成をしてよい問題ですが、そういう態度ですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 私も
新聞でそういう記事を見たわけですが、これは
考え方とするとなかなかむずかしい問題だと、こういう結論になります。
つまり、家賃が一般のサラリーマンあたりでどのくらいになりますか、収入の一五%とか二〇%とか、見方はありますが、それをこえる額を国が補助する。そういう際に、青天井で補助するということは
考えられません。おそらく天井の制限が、あるいは所得につきましてもあると思うし、あるいは家賃を支払う額ですね、その額につきましても制約があるべしと、こういうふうに思います。そういう前提のもとでの私は建設大臣の
発言かと思いますが、それにいたしましても、これは膨大な財政資金が要るわけです。
そういう際に、税でそういう措置はできないかということが一つは
考えられる。そういう議論があります。ありますが、税の面におきましても、これは一人一人の個人的な事情によるそういう家賃というものを、所得税の
計算上これを控除する、こういうようなことはとうていできない。そこで、サラリーマンについていいますれば、必要経費を大幅に控除しようじゃないかというこの四十九年度税制構想、こういうものも出てくるわけです。そこで、課税最低限が百五十万円、四十九年度にはそこまで引き上げられる。五十年度になりますと百七十万円までそれが引き上げられる。それだけ大幅な控除をすれば、家賃問題というような問題もこれを包摂、解消し得るのじゃないか、そういうような配意も入っての税制でございます。そういう税制があるにかかわらず、今度は国の歳出面でまた何かを
考えるということになりますと、これはまたそれなりにたいへんの財源が要る。その財源を一体どこに求めるかという問題もあるんです。
まあ、そういう思想と、そういうつまり家賃に対して国が補給するという
考え方をとるならば、そのうらはらといたしまして、あるいは空閑地税問題でありますとか、あるいは過剰住宅税問題、そういうような過剰土地、過剰宅地、あるいは過剰住宅、そういうものに対する配慮をどうするかという問題も、当然うらはらとして検討されなければならぬ問題なんでございます。
これがまた技術的に非常にむずかしい問題で、私もそういう思想につきましては積極的な
考え方を持っているんですが、なかなかこれは技術的にむずかしい。そこでまだその実現にも至らぬと、こういうような
状態ですが、いずれにいたしましても、家賃に対しましてその何がしかを国が補助するという問題は、それだけの問題じゃない。これは国の資源配分という非常に広範な角度から
考えなければならぬ問題である。こういうふうに
考えられますので、せっかく
新聞で建設大臣がそういう構想を述べられておるということを見ましたけれども、私はにわかにこれに賛成することはできない、かように御了承願います。
-
○
和田静夫君 厚生大臣に尋ねますが、昨年の十二月の二十六日付で児童福祉法の施行令の改正が行なわれました。その内容と、改正の趣旨をお示しください。
-
○
国務大臣(
内田常雄君) 御承知のように、齋藤厚生大臣が本日からエカフェの会合でセイロン島コロンボに出張せられましたので、私がその間臨時代理を仰せつけられましたので、ただいまのお尋ねにつきましてのお答えを申し述べさせていただきます。
昨年末の児童福祉法施行令の改正は、実体的の改正ではないと私は聞いております。それは従来の改正部分の表現がまことにあいまいであって、国庫金の負担の幅等につきまして、実際に今日までやってきていることに対しまして
疑惑といいますか、解釈上の疑いを持たせるような表現でございますので、それを二点にわたって改正した。
第一点は、設備費に対する国庫負担の
金額の算定方法であり、第二点は、保育所の運営費に対する同じような国庫負担の改正、国庫負担の
計算についての
金額算定の明確化、こういうことだと聞いております。
-
○
和田静夫君 そこで、この児童福祉法第三十五条第三項というのは、「市町村その他の者は、政令の定めるところにより、都道府県知事の認可を得て、児童福祉施設を設置することができる。」となっているわけです。そうすると、今度の政令改正で厚生大臣の承認を受けたもののみを補助するような書き方になっているんですよね。これは問題だとお思いになりませんか。
-
○
国務大臣(
内田常雄君) 国庫負担でございますから、国が現実にそれだけの財政負担をする。その場合に、国をのけものにしておいて、保育所を設置する市町村が都道府県知事の承認を受けてどのような程度のものを設置をしましても、寄付金とかあるいは別途収入を除いたものについては国がその全額を補助するようなことになるのも、これまた青天井の国庫負担のような形にもなるということをおもんばかりまして、元来保育所に対する設備費、運営費の国の負担、補助というものは、これは実は私も厚生大臣の職にあったことがございますが、その当時から、最近の社会
情勢やまた産業、労働構造などの変動に応じまして保育所の必要性が高まりましたことに相応じて、ずっとその
改善の一途を続けてまいったことは
和田さんも御承知と思いますが、そういう中におきましても、青天井のような国の負担ということではない。厚生大臣が承認した、たとえば収容の子供の数、それに対しまして一定の基準坪数、それに対しまして、これは超過負担の問題なんかがございましょうけれども、その一定の単価というようなものをかけましたものを総設備費として、その二分の一を国が見るんだという点をはっきりさせておいたほうがよかろうと。
従来は、お恥ずかしい話でございますが、私が厚生大臣をしておった初めのほうでは、全く保育所の設置補助費は、何といいますか、つかみ金のような形でございまして、百万円とか百五十万円しか出しませんでした。そういう時代から今日までの、この政令の改正に至るまでの間の国の負担の状況というものは、非常に
改善をされてきておりますので、地方公共団体などにおきましても、今度の政令の改正の趣旨は十分了承をされておるものと私は思います。
-
○
和田静夫君 摂津市が、御存じのとおり、保育所の超過負担問題で訴訟を起こしていますよね。この政令改正というのは、どうもそことの関連が一体あるのかないのか。まさか補助対象の保育所を狭めようという意図で出されたものじゃないと思いますけれども、それはいかがでございますか。
-
○
国務大臣(
内田常雄君) それは全くそのとおりでございまして、今日の社会
経済構造からいいますと、保育所の数なんかもまだ私は相当足りないと思いますので、それの設置につきましては、これも御承知のように、緊急整備計画というものを四十六年以来立てておりますので、毎年国の助成する保育所の個所数をふやしておりまするし、また単価などにつきましては、ここに
大蔵大臣がおられまして、もちろん厳密にして、けちな査定をされるようでありますけれども、厚生省といたしましては、大蔵省にもかけ合いまして、超過負担など起こさないような努力をいたしておりますので、摂津市の場合におきましても、いま
和田さん御了解のように、何も事を狭めようという趣旨では全くございません。
-
○
和田静夫君 そうしますと、この引き続く
物価上昇の中で、四十八年度、厚生省は二度ほどこの保育所の建設の実施単価を引き上げたんですよ。これは四十九年度も期待できるんですか。
-
-
○
政府委員(翁久次郎君) お答え申し上げます。
四十九年度におきましては、ただいまのところまだ単価の決定はいたしておりませんけれども、財政当局と協議いたしまして、できるだけ実勢に近づけるような努力をいたしたいと、こういうように
考えております。
-
-
○
政府委員(翁久次郎君) 努力をいたしたいと思います。
-
○
和田静夫君 ちょっと
通産大臣が二時まで見えないようなので前提の問題が少しあれなんですが、ゴルフ場の問題との
関係で財政問題を若干尋ねてみたいんですが、——厚生大臣もうけっこうです。
金融機関と人的、資金的に密着したゴルフクラブというのは非常に多いわけですね。大蔵省は金融機関がゴルフクラブとそうした
関係を持つことについて、まずどういうふうにお
考えなんでしょう。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 金融機関は融資をする、こういうことです。その前提として預金を吸収する。そういう仕事が本体でございます。金融機関自体がゴルフ場の経営に
関係する、こういうことは私はこれは好ましくないし、そういうことはまたないのじゃないかと、そういうふうに
考えております。
-
○
和田静夫君 三月二十日の
報道によりますと、たとえば永代信用組合というのが債権回収のためにゴルフ会員権の募集をみずから行なった、こういう大きな
報道があるんですが、これに対して
大蔵大臣はどういう見解をお持ちですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 信用組合は、これはもともと大蔵省は直接の監督権を持っておらないんです。これは地方団体、都道府県において監督をする、こういうことになっておるわけでありますが、私もその
新聞を見まして、銀行
局長に、これはどういうことなんだろう、調べてくれぬかと、こういうことをお願いしたんです。それで銀行局では、東京都につきましてその状況を聴取いたしております。まだ東京都のほうがその問題の調査中であって、結論的なものは出ておらないようでございますが、しかし経過的に今日までの段階ではどうかということにつきましては、銀行
局長のほうから御報告申し上げます。
-
○
政府委員(
吉田太郎一君) 東京都から事情を聴取いたしましたところ、大要次のとおりでございます。
永代信用組合が、その取引先であるボウリング場経営の三社に対して債権を有しておりましたが、これを焦げつかしておりました。これを回収するために、昨年の十月中ごろ、十五日でございますが、あるゴルフ会社、これは
新聞にも出ておりましたが、共立総業という会社との間に、ゴルフクラブ会員の募集を引き受けまして、その入会金の九〇%に相当する
金額を焦げついた債権の回収に充当するという協定を結びまして、この協定に基づきまして、組合はその職員を募集に当たらせていたようでございます。なお、このゴルフ場会社は昨年暮れに倒産したわけでございます。
東京都は、こういう信用組合のゴルフ会員の募集の取り扱いという事実を究明するために、先ほど大臣からお答えいたしましたように、三月の二十日、組合に立ち入り調査をいたしました。なお現在続行中でございますが、こういう取り扱いは中小企業等協同組合法に定める組合の事業範囲を越える疑いがあると判断いたしまして、東京都は三月二十二日、とりあえず組合側の担当者を呼びまして、その取り扱いの中止を指示しております。
なお、法令違反の有無等の判断あるいはそれに対する措置等につきましては、調査の完了を待って早期に行ないたいということになっております。
-
○
和田静夫君 そこで大臣、私この協定書を実は持っているのだけれども、ちょっと……。(資料を示す)これは他の金融機関との
関係でやはりはっきりさせておかなきゃいかぬと思うのですがね。いま渡した協定書と同じようなやり方で債権の回収を他の金融機関がはかるとしたら、一体どういうことになるのだろうか。この辺を一ぺんきちっと見解を出しておかないと、同じようなことが起こり得る、そういうふうに
考えますが。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) この
新聞を見まして、私は二つの点が問題になるのかと思うのです。
一つは、先ほど申し上げましたように、金融機関というものは預金を集めて、それを貸す、これが業務なんです。それに付帯する仕事、これはもちろんできますが。ところが、ゴルフ会員権の販売、これが債権回収のためとはいえ、一体定款に定むる業務の範囲に入るのか、あるいはその前提の問題として、金融機関としての業務の範囲を越えることになるのかならないのか、こういう問題が一つあると思うのです。
それからもう一つは、
新聞記事を見ますと、また銀行局からの報告を聞きますと、ゴルフ場がすでに倒産をしておる。倒産をしておるというそういう事情を、倒産をするであろうというようなことを
見通しながら、そういう倒産ゴルフ会社の会員権を募集したのかしないのか。そういう情を知りながら募集に当たったというと、これは信義の問題というような、モラルとしての問題があると、そういう両面の問題があるようなんです。
私は、たまたまその信用組合の
理事長をしておる山屋さんというのは私の同郷の人でありまして、長くおつき合いもし、よく承知しておる人なんですが、非常に練達な人でありまして、どうも間違いを起こすようなこともなかろうかと、こういうふうに一応思われるのですが、問題としてはそういう両面の問題がありますので、これは東京都ともよく連絡をとりながら、よく事情を調査してみたい、かように
考えます。
-
○
和田静夫君 昨年十二月二十五日付の「当面の
経済情勢に対処するための金融機関の融資のあり方について」、銀行
局長の通達ですね、これはどういう趣旨で出されたものですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) これは総
需要抑制政策を全面的にとらなきゃならぬ、財政、金融両面から
抑制政策、そういう
方針を打ち出したのです。
そこで、財政につきましては、御承知のように四十八年度の実行上の
予算の繰り延べ、これを強力にやる。それから金融上におきましては、量的規制がそれまでもずっと続けられてきておったのでありますが、さらに一段と質的規制の方向へ努力の方向を振り向けなきゃならぬ、こういうふうに
考えまして、その質的規制ですね、その方法として選別融資、つまり娯楽でありますとか、あるいはビルだとかあるいは不動産投資でありますとか、そういう不要不急の融資につきましては、これを厳に
抑制するように、そういう
方針を打ち出したわけです。そういう
方針にのっとりまして、銀行
局長が各金融機関に対しまして通牒を発する、こういうことになったわけです。
-
○
和田静夫君 その中では当然このゴルフの会員権に対するローンも規制されていると
考えられますけれども、それはそれでよろしゅうございますか。
-
○
政府委員(
吉田太郎一君) ゴルフの会員権に対する信用供与というのは個人消費者信用という中に入れておりまして、その中で規制いたしております。
なお、ゴルフ場そのものに対する融資につきましては、これは映画、娯楽業という業種の中で
抑制すべきもの、かように扱っております。
-
○
和田静夫君 そうすると、大臣、この通達はまだ生きていますか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) これはまだ出したばかりで、ぴんぴんしているわけであります。
-
○
和田静夫君 出したばかりでぴんぴんしているわけですが、そうすると、
日本不動産銀行会長湯藤実則氏が会長をやって、
日本不動産銀行頭取の勝田龍夫氏が
理事長をやって、住友銀行の副頭取の安藤太郎氏らが
理事をやるこの都留カントリー倶楽部が、つい最近、縁故者に限って会員募集をしているのを御存じですか。
-
-
○
和田静夫君 ここにありますが、縁故者に限って会員募集をやっている。しかも個人の正会員に限ってはローンの相談にも応ずる。「ローンの取扱」「個人正会員に限りローンのご相談に応じます。」、こういうふうに明記されているのです。大蔵省はこれは黙認をされるおつもりですか。
-
○
政府委員(
吉田太郎一君) 先ほど申し上げましたように、現在の選別融資による規制は、総体としての個人信用の純増を押えるようにという規制でございます。したがいまして、個別のものに一切そういうものはやってはいけないというやり方は、やっておりません。ただ、銀行が提携ローンというような形でやっておるということは、私どもその後の状況を主として都市銀行を通じて聞いておりますと、現在のところは提携ローンは行なってないという報告を得ております。
ただ、なお不動産銀行につきましても、不動産銀行というものが御承知のように長期信用銀行法により設立されたものでございますので、こういうゴルフ会員権ローンというような個人金融は行なってないと、かように承知いたしております。
なお、住友銀行その他については詳細を調査してからお答えさせていただきます。
-
○
和田静夫君 先ほど外務大臣と
石油問題の
関係で若干やりとりがあったんですが、
通産大臣、あなたはさきの
石油の危機にあたって、外務省からどのような情報を得られましたか。あなたはむしろ外務省筋の情報よりも企業の情報にたよって、それに
影響をされて、
原油の
輸入量が減ってもいないのに減っているものと錯覚をして、いたずらに
混乱を招いたのではないか、そういうふうに一般的には
考えられますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 十月以降の
石油危機が勃発しましてからは、在外公館から電報をずいぶんとってみましたけれども、在外公館からの電報も同じように危機を訴えて、
石油関係の業界から来た情報とほとんど一致しておる情報が多かったように思います。
-
○
和田静夫君 先ほど
石油関係の業界から、外務省が委嘱をして、そして在外大使館に置いておいて、いわゆるその委嘱をしたところの人間の判断によって外務省が採用されたという問題について、
通産大臣お見えにならなかったから、この辺ちょっと飛び飛びでたいへんつまらぬ論議になってしまいましたが、その辺を
指摘したところなんです。それと、
石油関係業者の情報というものは変わりがなかったんだという形のことは当然なんで、そういう配置でしがなかったんですから、その辺を
通産大臣としては一体どういうふうにお
考えなのか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 外務省の在外公館では、クウェートには石川大使がおり、あるいはベイルートには猪名川大使がおり、あるいはサウジアラビアには高杉大使がおり、みんな
石油関係のベテランであり、イランには有田大使もおりました。そういう連中が、やはり
石油の専門家を在外公館の中に一等書記官とか二等書記官、嘱託等で持っておりまして、それらがみんな中東
関係の
石油の専門誌の連中、たとえばミーズという一番サウジアラビアのヤマニさんに近い雑誌の編集長等ともつき合っておって、年じゅう情報をとっておったわけです。そういう各公館からの電報等も詳細に目を通して、われわれは予測を立てておったわけであります。
-
○
和田静夫君 それでは、あなたが、
石油原価を凍結すれば
輸入量を二五%削減するという通告をメジャーから受けたと、あるとき
新聞発表されましたが、そんな通告がメジャーからほんとうにあったんですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君)
石油原価を凍結すればという
意味がよくわかりませんが、あのころは、OAPECが、たしか十月戦争が六日に始まって十七日に五%の削減をやって、十一月四日に二五%の削減をきめて、それからさらに毎月五%、ずつ削減するということをOAPECがきめました。それが公表されましたので、現実にこれが出てくるかどうかということは、タンカーを持っておるメジャー及び
日本の民族資本が具体的にどう引き取ってきているかということを見る以外に正確な実績はわからないわけです。でありますから、各タンカーごとに、どれぐらい入ってきつつあるかということを毎旬ごとにとっておったわけで、そういう情報をもとにしてやったわけです。それで当時は世界じゅうが騒いで、
日本の国内も大騒ぎをして、そしてメジャーや
日本の民族系のタンカーの入着状況等を見ておりますと、あまり芳しくない状況が刻々と出てまいりました。そしてメジャーのほうからの通告がありまして、一番ひどいのはシェルであったと思いますが、二八%削減になるという通知すら当時はありまして、われわれは、しかしそれほどではないだろうというので、十一月十六日に緊急対策をやるときには、まず下期一六%削減ということを踏んでやり、それが十二月になりましてから、
事態は悪化したと見て一月は二〇%削減までいかなきゃいかぬのかなと、そういうふうに一応観測しておったところであります。
-
○
和田静夫君 そのメジャーから、たとえばシェルで二八%削減と、それは結局文書であったわけですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 文書じゃないと思います。これは、常時接触をとって入着状況を報告しろと、そういうことを言っておりましたから、電話かあるいは通知か何かで、人が来て言うとか、情報として言ってきたんではないかと思います。
-
○
和田静夫君 ないかと思われるということは、
通産省のうちのだれかがそういうふうに判断をして大臣に報告をし、大臣はそれを了とした、こういうことですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) これは各メジャー別に、シェルはどうである、モビールはどうである、エクソンはどうである、そういうのをとっておりましたから、それらを集計しますとメジャーごとに非常に数字は違っておりました。エクソンなんかがわりあいに削減率が低かったように思います。英国糸が削減率が非常に多かったように思います。それをなべて、大体平均どの程度でいけるかという総量を握ろうとしておったわけです。それでそのとき一六%というものを第一回の基準にしたというわけであります。
-
○
和田静夫君 そうすると、大臣が二五%削減という数字を、いわゆる出されたということは、全体としてそういうふうに判断をされたと、こういうことですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) これはOAPECの会議でそういうふうに発表いたしまして、イギリスとフランスは友好国である、したがって、これは九月水準のものは受けられる。それ以外は、友好国でない国は二五%ずつ削減を受ける、そういうことを言って、その後さらに五%ずつ毎月削減される。そういうことが正式にOAPECの会議として発表になったわけであります。だから、
日本は当然その適用を受けるというふうにわれわれは
考えたわけで、それがはたしてそのとおりであるかということも在外公館についていろいろ情報もとってみて、大体それは間違いないということでわれわれは覚悟しておったわけですけれども、しかし現実問題として、タンカーの入着状況を見なければそれは確認できないわけです。発表はしたけれども、現実にどうであるかということをトレースしなければいけない。その現実のトレースは、やはり
石油を運んでおるメジャーズからとらざるを得ませんから、そういうふうにやったわけです。
-
○
和田静夫君
通産大臣にお尋ねしますが、このゴルフクラブの倒産が続発をしていますが、どの程度把握をされていますか。
-
○
政府委員(森口八郎君) お答え申し上げます。
現在の段階では、法律等による措置がございませんので、私のほうで必ずしも十分に実情を把握をしておりませんが、最近御
指摘のように倒産事例があるということは承知をいたしております。
-
○
和田静夫君 倒産がある。大臣、それに伴って会員権を買った人々の中に犠牲者が多発をしているわけですね、こういう現状というものは放置をしておいてよいというふうにお
考えになりますか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) これは私企業の契約で申し込みをやり契約をやったということでありまして、国が直接介入すべき問題ではないように思います。まあ民事
関係の仕事になるとも思いますが、しかし、やはりあのようなブームみたいなものが起きて、ゴルフ場が至るところで募集を開始したという当座においては、会員の保護と同時にやはり乱開発に伴う自然の保護、
環境保護ということも
考えなきゃいかぬとわれわれは当時思っておりました。それでゴルフ場の規制ということをやったらどうかと、私は部内でも言いまして、私の大体の構想みたいなことを部内にも検討をさしたことはあります。しかし、その後、国会議員の皆さんの間にゴルフ場の規制法案をつくろうということが前後して起こりました。それでこれはまあ大衆保護の問題だから議員の皆さんがそういうふうにお
考えになることも適切である、そちらのほうに御協力しなさい、そう言って、
通産省でもそちらのほうにいろいろ御協力しまして、ゴルフ場規制法案という法案が前国会に提案されて、現在まで継続審議になっているわけであります。あの法案が成立すれば、かなりそういうことは今後は防止できると思います。
-
○
和田静夫君 このゴルフクラブには、かなり問題のあるものが実は多いように思うのです。その代表的なものの一つとして太平洋クラブがありますね。その太平洋クラブについては各所で問題点が
指摘をされていますから、いま詳しく触れようとは思いませんが、二、三の点について
政府の見解をただしておきたいのです。
その第一点というのは、太平洋クラブが
昭和四十八年の四月一日から第一次会員権募集で、五百三十万円の会員権を、同年の十月一日からの第五次募集で一千万円になると大々的に宣伝しつつ売り出した。結果は、まだ第一次募集したままである点、それから、しかもこの入会をいざなう国内の十六コースのうちで、その大半が着工のめどさえついていない架空のコースでありますね。あたかもすぐにでもプレーできるかのような装いで募集をした。そういう点、この二点について
政府は何らかの措置をとるべきではないですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 太平洋クラブにつきましては、ゴルフ場のほかに、たしかいろいろレクリエーションセンターもやっており、単にゴルフコースだけの利用だけではないように思います。それからゴルフ場につきましても、このような総
需要カット、
石油危機という、いままでにないようなまれなケースに遭遇したということもあって、計画が予定どおり進行しないという部面もあるだろうと思います。しかし、いずれにせよ会員に約束したことを実行しないということはこれは遺憾なことでございまして、これは株式会社になっているかどうなっておりますか、できるだけ早期に約束を履行するようにさしていきたい、指導したいと思います。しかし、私が聞いた範囲では、二、三のコースは開場になったと、それから開場にならないところも、契約をして借り上げるとか、あるいは使わしてもらうとか、そういうような便法を講じて、その会員に対する便宜をはかって代替していると、そういうことも聞いております。いずれにせよ、何らかの方法によって、約束は約束でありますから、できるだけ早期に履行するようにやらしてみたいと思います。
-
○
和田静夫君 このゴルフの会員権の法的性格なんですがね。株式会社太平洋クラブが会員募集をして、そして入会金を取って資金調達をする点に着目をして
考えてみますと、それは株券あるいは社債的な性格を持っています。しかるに、太平洋クラブの場合私は問題になると思うのは、株式会社太平洋クラブのほかに、もう一つ任意団体の太平洋クラブというのがある。その入会ということが、この任意団体太平洋クラブヘの入会を
意味するにすぎない点、ここに実はあるのだと思うのです。それであるにもかかわらず、その金というものは株式会社太平洋クラブに支払われる、こういう仕組みになっているわけですね。すなわち、この会員権というのは、資産を持っていて、そしてそれを管理する株式会社太平洋クラブに対しては権利として機能をしないわけです。したがって、万一この会社が倒産でもしたような場合には、財産処分などへの参画はもちろんできないということになります。さらにひっかかる点は、株式会社太平洋クラブそのものが土地を所有をしている、そして地上権というものをそこに設定をして、そして建設申請を行なっておらずに、太陽グリーンランドであるとか、あるいは富士工とか、総武都市開発とか、あるいは北
日本開発とか、房総むつ開発といった、いわゆる子会社や関連会社が代理してそれを行なっている、こういう点なんです。こうして、この会員権の物的担保というのはますます根拠のないものになって、そうした内容を持つ会員募集がそのまままかり通るとすれば、これはたいへんゆゆしい問題であると
考えるんですが、いかがですか。
-
○
政府委員(森口八郎君) 御
指摘のとおり、太平洋クラブだけではなしに、相当のクラブが、そのゴルフ事業を行なうものとは別個に、親睦団体としてのゴルフクラブをつくっており、会員はその親睦団体としてのゴルフクラブに会員という形式で入っておるということでございます。こういうような場合に、この会員権の法的性格でございますが、この親睦団体の単なるメンバーシップにすぎないのか、それとも事業者に対する何らかの権利を持つのかというのは、現在の法律上は、御
指摘のとおり確かに不明確な点があるわけでございます。先ほど大臣が申し上げましたとおり、現在国会で継続審査案件になっておりますゴルフ事業者に対する規制法案には、この点は、会員とゴルフ事業者との
関係につきまして、直接の
関係としてその権利内容を明確にいたしておりますので、このゴルフ事業規制法案の成立を待ちまして、会員の権利保護に遺憾のないように指導してまいりたいというように
考えております。
-
○
和田静夫君 この太平洋クラブが予定しているゴルフ場の建設計画に融資をしている銀行というのはどこになりますか。
-
○
政府委員(
吉田太郎一君) この太平洋クラブに対する融資先として、金融機関は
日本不動産銀行がございますが、それ以外は建設業者のように聞いております。
-
○
和田静夫君 銀行からの融資には、過剰融資の疑いが濃厚だという感じがするんですが、そういうことはありませんか。
-
○
政府委員(
吉田太郎一君) 先ほど申しましたように、この太平洋クラブに直接融資しておる金融機関としては、過剰融資ということはございませんが、それ以外に、その太平洋クラブに対する株主と申しますか、融資しておるところに金融機関が過剰融資があるかどうかということでございますが、現在のところ法律的に資本金の二割をこえるという中小金融機関に対する法律の規制がございますが、それをこえておるものはございません。
-
○
和田静夫君 固有名詞ですから、それでは私は、ここのところを大蔵省に調査を求めておきますが、読み違いがあるかもしれませんが、益子コース、この場合、株式会社富士工が所有する栃木県芳賀郡益子町大字七井田子谷台の原野千六百三十九平方メートル、それから同じく大字小宅字勝見沢の山林一万四十平方メートル、これは平和相互銀行が株式会社国土コソサルタントを債務者として極度額十五億円の根抵当権を設定している。あるいは六甲コースの場合、兵庫県美嚢郡吉川町奥谷字田代、これは富士工所有の土地に十八億円、それから羽鳥湖コースの場合、福島県岩瀬郡天栄村大字田良尾字芝草ですね、北
日本開発株式会社所有の土地に極度額十二億円、これもそれぞれ平和相互銀行によって根抵当権が設定されている。これらの融資には、私は過剰融資の疑いが非常に濃厚だと実は思っているんだけれども、いまのお答えとの
関係で調査をしてもらいましょうか。
-
○
政府委員(
吉田太郎一君) 調査をいたします。
なお、平和相互銀行の自己資本はかなり高額でございます。内部留保はかなり優秀でございまして、それの二割というのはかなり高い限度でございまして、私が現在承知しておる限りにおいては、その範囲内であることは間違いございません。
-
○
和田静夫君 自治大臣に最後に伺いますが、最近、たとえば県政総合センターだとかいうような形で、あちこち県の庁舎の分室的なものが建って、たとえば一例をあげれば神奈川県で県政総合センターというのがありますね。そうすると、これらの庁舎の管理一切を下請に出す、そういう傾向が非常に強まっているんですよ。この点はどういうふうにお
考えになりますか。
-
○
国務大臣(町村金五君) 最近、地方公共団体といたしましては、従来は役所が小使さんというようなものを使ってやっておったような仕事が、だんだんそういう人を得にくくなってくるというようなことで、民間にそういうようなものを請け負うような会社がだんだんふえてきておる。そういうものに委託をしておる例というものは相当にあるようでありまして、私はそれは自治体の御判断でおやりになって一向差しつかえないものではないかと、そう
考えております。
-
○
和田静夫君 そこで、たとえば神奈川県の県政総合センターのことを
考えてみましても、受付、エレベーター、機械設備、電話交換、警備、清掃、これは一切が下請です。そして年度契約をする。そこには当然従業員が働く。その従業員に対して、これは適性を持っていないからこちらに配置がえをしたらどうだろうというような人事の介入が伴う、県の側からね。いわゆる庁舎の管理者という
意味で。で、それに従う。一年たった。契約がその会社に落ちなくて、ほかのところへ落とされる。そこで全員が解雇になる。こういう場合のいわゆる行政機関の社会的責任、こういうものについてお
考えになりませんか。
-
○
国務大臣(町村金五君) いま御
指摘になりました事柄というのはどういう経緯で起きたものか、それは私も全くわかりませんけれども、いま申し上げたようなそういった業務は、いわゆるサービス業務とでも申しましょうか、そういうようなものは、だんだん民間に委託をするという傾向がたいへん私はこれから多くなっていくのではないか、こういうふうに見ておるわけでありますが、ただその場合、いま御
指摘になりましたような
事態がどうして一体起きたのか、それは全く私どもには見当がつきませんけれども、いずれにいたしましても、請負契約者が十分責任と申しましょうか、契約を十分に履行しなかったというようなことで、その契約を破棄をしたということでなかろうかと思うのでありますが、いずれにいたしましても、それによりますると、
関係従業員がたいへん困るという
事態の起こり得ることは私どもも想像にかたくないわけでありますが、それらはやはり私は公共団体と、当該のそういったものを引き受ける会社との間でひとつ十分話し合いをつけてもらう、そのためにいろいろ多数の従業員がとほうにくれるというようなことはぜひないように私どもはありたいものだと、そう存じております。
-
○
和田静夫君 最後にしますが、いまのような事例というのは一例ではなくて、非常に下請が進んでおる過程においてはあり得ることなんですよ。それに伴って起きるところの行政上の
混乱というものを避けるためには下請問題、その問題については、もっとやっぱり慎重な行政の指導というものが必要だと思いますが、やられますか。
-
○
国務大臣(町村金五君) 自治省が直接そういう問題を指導するということまでやってしかるべきかどうか、なお慎重に検討をさせていただきますが、いずれにいたしましても、りっぱな地方団体のそれぞれの首長がおられるのでありますから、そういったことは私は、いろいろな角度から問題が起こらないように処理をされるものであろうというふうに、私は一応
考えております。
-
-
-
○辻一彦君 私は、先日の総括で残した原子力の、もう一度発電所の安全性の問題と農業問題、それに若干繊維問題と、過疎地における住民の足確保の私鉄、こういう問題について伺いたいと思います。
第一に、まず通産、科学両大臣に伺いますが、今日、原子力発電の安全にかかわる疑問点を明らかにするということは、発電所周辺地の住民の不安を取り除くためにも、また、
国民の理解を広めるためにもぜひ必要と思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 安全性確保の問題は非常に重要な問題であり、
政府も責任をもって住民の皆さんに安心感を与えなければならぬと思います。
-
○辻一彦君 科学技術庁。
-
-
○辻一彦君
通産大臣に伺いますが、
通産省に原子力技術顧問会というのがありますが、どういう性格で、どういう位置づけになっておるか、お伺いします。
-
○
政府委員(岸田文武君)
通産省の原子力発電技術顧問会は、
通商産業大臣の諮問機関といたしまして、原子力発電に関する各専門分野の学識経験者によって構成されております。
通商産業大臣は、電気事業法に基づきまして、原子力発電所の設置の許認可の申請があった場合に、その審査に当たりまして、この顧問会の意見を聞きますとともに、随時、原子力発電所の安全性を中心とした技術上の諸問題について、その意見を聞くことといたしております。
-
○辻一彦君
通産大臣、このメンバーは安全審査の
委員の方と非常に重なっているように思いますが、その点どうお
考えになりますか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 私どもの技術顧問会のメンバーは、科学技術庁に設けられておりまする審議会とかなりの部分重複をいたしております。これは原子力の技術に関する専門家を選びまして、それがたまたま合致をいたしたという
関係になっております。
-
○辻一彦君 福島と福井に非常に発電所が集中しておりますが、福井にも、県に安全協議会とかいうのがありますが、そこに京都大学の若林教授が顧問としておられるが、このことについてわかっておればお伺いしたい。
-
○
政府委員(岸田文武君) 私ども、まだ正確なところは存じませんが、聞きました限りで、原子力に関して福井県に二人ですか、顧問の方がおいでになりまして、そのお一人の方が、いま御
指摘になりました若林教授であるというふうに聞いております。
-
○辻一彦君 土曜日にこの
委員会で要求しました資料が出ましたが、まあ非常に不満足でありますが、とにかく提出をされた。そこで、これは私の要求した通産の顧問会議に提出された資料のコピーか、あるいは、関西電力から
通産省に、もしくは顧問会議に直接出された資料のコピーか、お伺いいたしたい。
-
○
政府委員(岸田文武君) 先回の
委員会で御要求になりました資料は、目下取りまとめ中でございまして、一両日中に先生のお手元に出せると思います。土曜日にお渡しいたしました資料は、私どもが別個の立場からいろいろ調査をいたしました結果を整理をいたしまして、御参考に供するために提出したものでございます。
-
○辻一彦君 ちょっと技術的なことを伺いますが、検査ではそのシッピング、テレビカメラ、すき間ゲージ、それはそれぞれいつごろ測定をしているか、お伺いします。
-
○
政府委員(岸田文武君) 昨年の十月十日から十八日までに第一回のシッピングの調査をいたしました。それから二十日から二十六日までに水中テレビによる観測をいたしました。さらに、翌二十七日に再シッピングを六体について行なった次第でございます。またそれを追いかけまして、二十九日から二十日にかけましてテレスコープによる観察を実施いたしました。さらに、十一月二十六日から二十八日までの間でございますが、水中テレビによる観察及びすき間ゲージに関する観測を八体について行ないました。また、さらにそれを追いかけまして、十二月六日から九日までの間に水中テレビによる観測及びすき間ゲージによる観測を十六体について行ないました。引き続きまして、十二月十二日に同様水中テレビ、すき間ゲージによる観測二体、それから十二月十九日から二十一日にかけまして同様水中テレビ及びすき間ゲージに関する観測二十七体、以上が私どもの調査の経過でございます。
-
○辻一彦君 この資料を見ると、テレビカメラはすき間ゲージの二ヵ月前に測定をしている。ところが、出された資料によると、すき間ゲージのほうを先に並べて、私が要求した水中テレビの観察の結果は備考欄に載っている。非常にこの資料の配列は意図的な配列のように
考えますが、いかがですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 水中テレビによる観測は、いわば目による観測でございまして、何ミリであるということについての正確な把握がなかなか困難な面がございます。その
意味におきまして、すき間ゲージによる観測というものを重視いたしましてまず御報告したというような経緯ではないかと思います。
-
○辻一彦君 提出資料によると、テレビのいわゆる検査結果は全部数値が出ていますね。ところが、問題のA16という、ここに出ているこれは、A16は何ら数値が示されていない。これは一体どういうことですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 土曜日にお渡ししました資料のAの16に関する部分につきましては、お手元の資料の注に一応
説明を付してございます。その注にもございますように、水中テレビで観測しました結果では、燃料棒同士は接触はしていないけれども、クリアランスがごく少ないように観察をされたという経過でございますので、その後、すき間ゲージによりましてさらに調査をいたしました結果、備考欄にございますような数値が出てまいったという経緯になっております。
-
○辻一彦君 クリアランスというのは何ですか、
日本語ではっきりおっしゃってください。
-
○
政府委員(岸田文武君) 燃料棒の間のすき間の広さということでございます。先ほど水中テレビではなお問題があるということを申し上げましたのは、カメラと被写体との角度の問題、あるいはテレビの画面での周辺部のゆがみの問題それから光の当たり方の問題等々の問題がございますので、やはりすき間ゲージで観測をしてみたいと思った経緯でございます。
-
○辻一彦君 この十六体の全部は数字が出してある。〇・二五ミリとか、小さい数字がですね。そのA16という燃料体だけが数字が示されていないということはどうしても私は理解ができない。
そこで、関西電力はこのA16に数字を入れずに
通産省に報告したのかどうか、いかがですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 関西電力の私どもへ出されました報告では、ゼロに近いという形で報告をされておるようでございます。
-
○辻一彦君
通産省の顧問会議はその数字なしの報告を認めたのかどうか、いかがですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 先ほど申しましたような経緯でございまして、私どもとしては、目で見るものよりはすき間ゲージの数値を尊重すべきものというふうに
考えた次第でございます。
-
○辻一彦君 私が前回も聞いたのは、テレビのカメラによっでどうとらえたか、その数値を示してもらいたいということなんですね。聞けば、ゼロという数字が出て、すき間ゲージは二カ月もかかって、
日本にないからつくって差し込んでさがしたということを聞いていますが、その経過は一体どうなのか、伺いたい。
-
○
政府委員(岸田文武君) 先ほど水中テレビで観察したときの問題点を一通り御披露申し上げました。私どもが一応テレビで見まして、ある程度の余裕が——クリアランスと先ほど申しましたが、余裕があるかどうかということについての見当をつけました後、実質的にこまかい詰めばすき間ゲージでやるということがやはり調査の筋としても本道でございましょうし、また実体的に何ミリから何ミリまでの幅の範囲内にあるというような決定を行なうには適当な手段であると
考えた経緯でございます。
-
○辻一彦君 A16は、その報告された原簿には何と載っておるんですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) もとの資料にはゼロにひげがついておるという形で書いてございまして、私どもの解釈としてはゼロに近い数値ということを示したものではないかと思っております。
-
○辻一彦君 もう一度お伺いしますが、ゼロに何がついているんですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 私、正確な表現方法は存じませんが、ゼロに横に波のついた記号がついておりまして、聞いてみますと、これはやはりゼロに近いという数値を示す符号であると聞いております。
-
○辻一彦君 重ねて聞きますが、ゼロと載っておったんですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) ゼロに近いと載っておったわけでございます。
-
○辻一彦君 いや、ゼロに近いというのは、数字であらわすとどうなるのか。
-
○
政府委員(岸田文武君) このゼロに近いという数値の見方でございますが、水中テレビでは〇・〇〇幾つというようなことが判読しがたいのでそのような数値を記載したものと思います。おそらく実体的には〇・一とかあるいは〇・二とか、あるいはその前後の数字であったのではないかと思われます。
-
○辻一彦君 〇・二五というのはあるのでしょう。〇・一なら〇・一と原簿に書かれるべきであるが、ゼロと書いて波形をつけた。しかし、ゼロは載っておったんでしょう。載ってなかったのか、どうなんですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 繰り返し申しますが、ゼロではございませんで、ゼロに近いという数値でございます。
-
○辻一彦君
通産大臣、お伺いしますが、ゼロに近いって、〇・〇〇幾らなんですか。私はこれはもうゼロと数字が報告されたと間違いないと思いますが、いかがなんですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 私は学生のころ数学が一番きらいでして、(笑声)そういうことはかいもくよくわからないので、専門家にお聞き願いたいと思います。
-
○辻一彦君 いや、笑いごとじゃない。ゼロであるかどうかということは、燃料が接触をしているかいないかということ、燃料棒の、原子力発電所の心臓部の安全性につながる問題ですよ。だから、ゼロと数字が出ておったのかどうであったか、その事実だけを私は知らしてもらえばいい。それだけ報告してください。
-
○
政府委員(岸田文武君) 結局、水中テレビで見ますと、そこの辺の〇・〇というような段階になりますと、数値がなかなか実際的に把握できませんので、先ほど申しましたように、すき間ゲージによってその内容を明らかにし、その結果を御報告するという段取りをとった次第でございまして、これは接触していたというふうににわかに判断することができないと私どもは思います。
-
○辻一彦君 〇・〇〇以下というならば接触に近いと、あるいは接触していると、こう言っていいんですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 後ほどすき間ゲージで調査いたしました結果では、そのAの16の燃料体につきましては、少なくとも〇・八ミリのクリアランスが記録されておりますので、接触していたのではないと私どもは判断いたしております。
-
○辻一彦君 では、零以下の数字を幾ら言っても
意味がないから、関西電力が実際に通産に報告した原簿を出してください。それを確認すればわかる。
-
○
政府委員(岸田文武君) 提出するようにいたします。
-
○辻一彦君 いつ出しますか。
-
○
政府委員(岸田文武君) いま準備を進めておりますので、おそらく明日ぐらいには提出できると思います。
-
○辻一彦君 私はきょうも重ねて、朝ですね、通産に対して、この観測の結果もしくは観念化されている報告書の原簿を現場に持ってきていただきたいと念を押しておるんですよ。二回——前回もそうですよ。きょうも念を押して持ってきていらっしゃらない。どういうことですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) いま御
指摘の点は原簿でございますか、それとも報告書でございますか。
-
○辻一彦君 数字が明確に出されている原簿と報告書。
-
○
政府委員(岸田文武君) 原簿につきましては発電所に所在をいたしております。したがいまして、これはちょっと簡単にこっちに持ってこれるかどうか自信がございません。報告書につきましては提出できると思います。
-
○辻一彦君 いや、いつ出せるの。いますぐ出し
てください。
-
○
政府委員(岸田文武君) 電力会社から顧問会へ提出しました資料の写しを明日提出するようにいたします。
-
○加瀬完君 ちょっと関連。
これは何回も辻
委員のほうから
指摘をしておった点ですね。それで報告書が手元にあると言うなら、資料として出すのがあしたでもここで報告書を見せるということはできるでしょう。それはどうですか。あれだけ
指摘を受けておるわけですから、少なくもその準備は当然皆さんのほうではなされておらなければおかしいじゃないですか。お答えをいただきます。あるなら見せなさいよ。
-
○
政府委員(岸田文武君) きょう報告書を持参せよという話でございましたので、担当者が持っておりましたのをいま調べてみました。当初提出されました報告では、すき間の長さにつきましてはABCDというような分類でやっておりまして、一ミリ以下という符号がこのA16番には付されております。その後、その一ミリ以下の内容いかんということを別途調査しまして、先ほど申しました水中カメラによる報告及びすき間ゲージによる報告が作成されたという経緯になっております。
-
○辻一彦君 ちょっとそれ、見せてちょうだい。(
政府委員岸田文武君資料を示す)
-
○加瀬完君 ちょっと
委員長。
ないしょ話みたいなことをしておっては質問した者以外にはさっぱりわからないよ。前から
指摘されているとおり、どうなんだと聞いたら、原本は会社側にあるからここではお答えができないと、しかし、報告書があるからと、こういうお話であったから、それではその報告書は明日提出するという話だけれども、報告書の原本がそこにあるなら質問者にお見せしてはどうですかと、こう伺ったわけであります。いま見せたのですか、それが報告書ですか、それが会社から報告された報告書ですか、答えてください。
-
○
政府委員(岸田文武君) いまごらんに入れましたのが会社から当初申請された報告書でございまして、三部からなっておるわけでございます。いま手元に持ってきております。
-
○辻一彦君 いや、三部あるなら、一部は一ミリ以下で、それはわからない。だから二部、三部を持ってきてください。
-
○
政府委員(岸田文武君) お手元にごらんに入れます。(資料を示す)
-
○辻一彦君 ゼロという数字にコンマ以下幾つがつくのかわからないが、ゼロに近い数字、その数字をそれでは確認することはできない。関電はそれを報告しているということですが、数字で見ることはできません。その資料をひとつ私は提出をいただきたい。いつ出してもらえるか、はっきりしてください。
-
○
政府委員(岸田文武君) 先ほど申しましたように、関電自体が当初顧問会に提出した資料は三部からなっておるということを申し上げましたが、これはまあ複製の時間の都合によりまして明日提出さしていただくということになっております。ただし、その報告書には問題のA16に関するすき間については符号でAと書いてあり、そのAの
意味は一ミリ以下であるという分類が書いてあるにすぎませんので、直接の御要望には沿いにくい面が入っておるわけでございます。したがいまして、追っかけてゼロに近いという数値を示す指標を出せということでございますが、これは私どもがいろいろ調査しました結果を先ほど御報告したわけでございまして、その内容については土曜日提出しました資料の中に含まれておるわけでございます。
-
○辻一彦君 いや、土曜日に出された資料には、このすき間については注という
説明があるだけでしょう。こんなものじゃ私は了解できませんよ。さっき零に波形がついたその数値の根拠ですね、いつ出していただけるか、これは大臣ひとつはっきり御答弁いただきたい。
-
○
政府委員(岸田文武君)
通産省の調査の結果につきましてもあわせて至急に提出するようにいたします。
なお、原本は私手元に持っておりますので、必要あればごらんいただきたいと思います。
-
○辻一彦君 いま通産が持っておられる資料を確認しますとゼロと出ている。数字はゼロ。波形がついております。私はやはり数字はゼロか一か二か三、四、五、六、七、八、九までしかないはずです。数字はゼロです。そこにゼロとあることをもう一度私は確認いたしたい。いかがですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 繰り返して恐縮でございますが、ゼロに近いという数値がこの欄に記載されております。
-
○辻一彦君 私が見てゼロという数字を確認しました。
そこで、前に参議院の科学の
委員会においてこの問題を追及するために通産に資料を要求した。そのときにわざわざこの数字が出されましたが、この報告書の資料の最後に書いてあることを通産のほうで読み上げていただきたい。
-
○
政府委員(岸田文武君) 該当部分を読ましていただきます。
「燃料棒の相互間隔が正規寸法より狭まった燃料体十六体の寸法の明細について、水中テレビによる表面検査の結果は、最小相互間隔寸法が一ミリ以下のもの八体、一ミリから一・五ミリ程度のもの八体であった。さらに念のため、すき間ゲージによる検査した結果は次のとおりである」ということで表が入っております。で、最後になお書きといたしまして、「なお、水中テレビによる検査の結果、燃料棒同士が接触していたものはなかった」というふうに書いてございます。
-
○辻一彦君 ゼロに近いというか、私の見た数字はゼロなんですが、ゼロということは、接触状況はないんですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 目で見た限りにおいては非常に接近していてゼロに近い
状態であったということでございますが、それは実態としてはすき間ゲージで示したような数字の状況になっていたというふうに私どもは推察をして、以上の報告を申し上げた次第でございます。
-
○辻一彦君 このテレビカメラは、初めてゼロに近ければたいへんなことだから、何回も何回も見ているはずですよ。そんな見誤りをするようなものじゃない。したがって、あとですき間ゲージで調べた結果については私はいろんな疑問がやはりある。ここにテレビによる検査の結果は接触していないということをわざわざ断わっているけれども、ゼロという数字が出ている。それにやっぱり近かったとすれば、これは接触状況じゃないんですか。こういう報告をわざわざ断わり書きで最後に出すということは、国会の審議に対して偽りを報告している、こういうふうに私は思わざるを得ないが、いかがですか。これは
通産大臣、お伺いしたい。
-
-
○辻一彦君 私に出された数字とこの資料とを、テレビカメラの実測のゼロというのは食い違いがあるじゃないかと、こういうことを言っておるんです。
-
○
政府委員(岸田文武君) 先ほどちょっと触れましたが、テレビによる観察というのは、やはり事の性質上、おのずから限界があるように私どもは思っておるわけでございます。カメラの据えつける位置、これが正面にほんとうに九十度になっているかどうか、非常にこまかい間隔を測定するものでございますから、まずその辺が問題になってまいります。また、テレビの画面というのは、やはり性質上、〇・何ミリというようなこまかい調査をいたしますにはおのずから限界があると私どもは判断をした次第でございます。特に個別のケースについて見ますと、いわば光の当たりぐあいでうしろに影ができる。その影の部分の読み方の点につきまして、こまかい観察についてはおのずから限界がある。その
意味において、すき間ゲージを一つ一つ入れまして、実際にどのぐらいの実測があるのかということを調査した次第でございまして、先ほど注の書き方が不適切であるということをお話しございましたが、私どもとしてはむしろ十分良心的に調査をしましたということを申し上げたいために注をつけた次第でございます。
-
○辻一彦君 通産の原簿にはゼロと載っており、そして私のほうに出されたこの報告にはくっついてないと、こういうことが出されております。非常に私は矛盾しておると思う。しかし、これを、では、もう一度確認するために関電の原簿を私は早急にひとつ出していただくようにお願いしたい。いかがですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 御
指摘のございましたA16に関する関電の原簿、さっそく関電に申しまして至急に提出するように指導いたします。
-
○辻一彦君 私の見た目でゼロを確認して、次に移ります。
原子力発電所における企業の安全に関する挙証義務とはどういうことか。
-
○
政府委員(岸田文武君) どうも一般的に挙証義務ということばはまだ熟していないのではないかという気がいたしますが、そのおことばから私ども察せられることは、やはり原子力発電所というような施設をつくる場合には、企業としても十分安全について責任を持ち、そうしてそれについての立証に積極的努力を払うべきであるというような感じではないかと思います。
-
○辻一彦君 まあ、その
説明は不十分ですが、関電側で美浜二号炉の安全を実証するために出した資料は何々か、伺いたい。
-
○
政府委員(岸田文武君) 一般的に発電所の建設に際しまして、安全審査のために各種の資料を提出いたしますし、また、
通産省に対する許認可に関する資料等々がそれに該当するのではないかというふうに
考えられます。
-
○辻一彦君 それは一般的な話でしょう。美浜の二号炉の原子炉を再開するについて安全と実証する資料を出したんでしょう。それは何々ですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 当面御
指摘の問題が美浜の二号炉に関する燃料棒の曲がりの問題であるということでございますれば、先ほど、明日ぐらいには提出いたしたいと
考えております。当初顧問会に提出された資料がそれに該当するのではないか。また、私どもが各種の調査を行ないます場合に関電の協力を得た、そういったことも、いま申し上げました資料に関連をした安全性に関する関電の資料ということが申し述べられるかもしれないと思います。
-
○辻一彦君 関電はコロンビア大学の実験例とウエスチングの見解とを添えて出したのと違うんですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 関電から当初出されました資料の中に参考としまして、ウエスチングハウスの意見というものが引用されております。コロンビア大学の資料がこの中に含まれておるかどうか、少し精査しないと、いまの段階ではちょっと即答いたしかねる状況でございます。
-
○辻一彦君 その関電が美浜の二号原子炉の運転を再開するにあたって、これで安全だと言って出した資料を見て通産はどういう見解を示しましたか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 関電から提出されました資料をもとに原子力に関する顧問会におきまして前後三度にわたる審議をいたしまして、それらの結果、外国では曲がりのままの
状態で、その後も修正を加えることなく操業を開始した例もございますが、やはり安全第一というような
考え方に立ちまして、燃料体の問題の部分をかえること、それから上下にクリアランスをとること、さらに一般的に申しまして、支持体の強度というものが次第に弱まる傾向にあること等を考慮いたしまして、以上のような措置を実施した上で操業を継続すべしというような結論に達した経緯でございます。
-
○辻一彦君 関電が出した資料を見て技術的検討に耐えられると確認しましたか、いかがですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) これは申請者側と審査をする側の立場の相違もあろうかと思います。関電としてはこのような
考え方を持っておるとしても、審査の側からしまして、これらを一つの素材としながら、さらに多くの人の意見を聞いて、より公平な、より安全な答えを出していきたいというのが私どもの態度でございました。
-
○辻一彦君 何を一体答弁しているのかね。土曜日に原子力発電課長——第一線の課長が来て明確に、関電の資料に目を通したがとても無理であり、技術的検討に耐えられないと言っているじゃないですか。第二は、メーカー・サイドの実験であってお粗末な内容である。第三は、これでは曲がったまま使うことは自信が持てないと、こういうことを資料を持ってきて私に明確に
説明をしている。何を一体答弁しているんですか、はっきりしなさい。
-
○
政府委員(岸田文武君) 私、そのやりとりを存じませんので失礼を申し上げますが、おそらくは、そのような議論が出されたとすれば、いまの燃料棒の曲がったままでそのまま継続して使用してよいかどうかということが議論の焦点だったのではないかというふうに
考えられます。私どもも、この曲がりの問題については当時からいろいろ議論をいたしました。先ほども申しましたように、外国でそのままの継続使用を認めておるという例のあることは事実でございます。ただ、私どもとしましては、議論としてはそのまま継続しても安全だという意見もあるし、また、そうでないという意見がある。この両論についていわばきめ手となるような実証的な研究というものがまだ十分供給されていないと。そういった、ただいまの
状態であれば、やはり安全サイドに立って、取りかえるというほうがよりベターな答えではないかというふうに
考えた次第でございます。
-
○辻一彦君 だいぶはっきりしてきましたが、曲がったままの燃料棒を使用していったならば、それを使えと、再使用したいといっても、その資料は技術的検討に耐えないし、その実験内容は、コロンビア大学の内容はウエスチングが出しておりますが、企業メーカーのサイドである、これでは自信が持てぬと、こういうことですか。確認したい。
-
○
政府委員(岸田文武君) 大要そのように御理解いただいてけっこうでございます。
-
○辻一彦君 通産の顧問会の見解はいかがでしたか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 原子力発電技術顧問会の意見もいろいろ参酌をいたしましたわけでございますが、私どもといたしましては、さきにも申しましたように、燃料体が曲がって燃料棒同士が接触することによる熱
影響について公表されている十分な実験がないこと、それから曲がった燃料棒を取り出してそれ自体を解析をするというような面でのデータもまだ十分でないというようなことから、接触するおそれのある燃料を炉の中にとどめることは安全上好ましくないということを
考えた次第でございまして、こういった
考え方を受けまして、先ほど申しましたようにいろいろ事後の万全の措置を講じ、なおかつ、モニターによりまして常時汚染の
状態を監視するというような付加的な措置も合わせ講じました上で使用を許すという態勢をとった次第でございます。
〔
理事吉武恵市君退席、
委員長着席〕
-
○辻一彦君 簡単に聞きますが、曲がったまま使うのでは自信が持てぬという先ほど通産の見解と同様の見解を顧問会が示したのか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 正確に申しますと、曲がったままというのではなくて、接触した
状態でそのまま継続使用するというような点についての自信が持てないというのが答えであったと思います。
-
○辻一彦君 もう一度聞きますが、関電のほうは接触してもだいじょうぶだというコロンビア大学の資料を出していますね。しかし、通産並びに顧問会は、接触した場合にこれを使っていくということは自信が持てないと、こういうことを確認していいですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) そのとおりでございます。いわば念には念を入れというようなつもりでそのような措置をとった次第でございます。
-
○辻一彦君 関電は燃料棒を取りかえるのに強く抵抗したといいますが、事実ですか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 燃料棒の交換についてその必要があるかどうかということにつき、関電と私どもとずいぶんいろいろな議論をいたしたことは事実でございます。ただし、私どもも顧問会を通じまして勉強いたしましたし、関電自体もおそらく独自の勉強を積み重ねた結果、先ほど申し上げましたような措置をとることについては関電は異存がなかったと聞いております。
-
○辻一彦君 これは重要な点で、もう一度確認したいんですが、関西電力は燃料棒の再使用を要求をしたが、この申請の資料を見て、これは接触してもいいんだというコロンビア大学のその中身は、検討した結果、技術的検討に耐えないと、そういう点で再使用を認めずに燃料体を取りかえさしたと、こう確認していいか。
-
○
政府委員(岸田文武君) 先ほども申しましたように、接触した
状態においてそのまま継続使用できるかどうかという点につきましては、まさにいろいろの学説があるというのがただいまの状況でございます。逆にいいますと、確定した実験結果が報告されていない状況でそのような意見がいろいろ出ておるというのがただいまの状況かと思います。その
意味から、私どもとしては、とりあえず念のために交換をいたし、今後も引き続きこの問題については検討していきたいという
考え方を持っております。
-
○辻一彦君 答弁が答弁ごとにあいまいになりますですね。この点は非常に重要なんですが、いまの答弁の中で、明らかに接触をした場合、接触に近い、あるいは接触と
考えられるのがある。接触した場合にはそれを曲がったまま使っていくことについては技術的に検討しても実証はなかなかできないと、そこでこの燃料棒を交換をしたんだと、それは安全のためであると、こう言われますが、それは安全のためでしょう。これは非常に大事なことなんですね。で、私はお伺いしたいんですが、科学技術庁は一月三十日に原子力局の名によって美浜の運転再開についての公式文書を発表していますが、その中に出先でも記者会見で見解を発表している。ところが、その中身は、関電の言い分を丸のみにした発表をしているにすぎないと私は思う。通産の見解と技術的な、科学的な根拠において大きな開きがあると思いますが、これはどうですか。
-
○
政府委員(伊原義徳君) 科学技術庁の発表の内容は
通産省と十分打ち合わせをいたしました上で発表したものでございまして、内容的に大きな食い違いがあるとは
考えておりません。
-
○辻一彦君 じゃ科学技術庁が発表した文書の、これの最後の「参考」というところを読み上げてください。
-
○
政府委員(伊原義徳君) 先生の御
指摘の点はこの「参考」のところかと思いますので、そこを読み上げさせていただきます。「H・Bロビンソン2号およびポイントビーチ一号におけるギャップ変化と米国原子力
委員会のとった措置」といたしまして、「燃料棒の相互間隔が正規寸法の二分の一以下に狭まっているものが一九七三年春にH・B・ロビンソン2号炉で七体、一九七二年末にポイントビーチ一号炉で十一体発見されている。米国原子力
委員会は、上記報告に対し熱水力学的に与える
影響等を検討した後、燃料棒の相互間隔の狭まっている燃料の再使用と一〇〇%出力運転を認めた。」。——よろしゅうございますか。
-
○辻一彦君 もういいです。
さらに出先の科学技術庁の係官は記者会見を行なって、もし運転再開以後再びゆがみが起きて燃料棒同士が接触することがあっても、コロンビア大学の実験と熱
計算から見て十分余裕があると、こう言ってますね。これは通産が顧問会議あるいは通産の検討でコロンビア大学のこの実験例では十分実証はできないから、自信が持てないから、曲がったままでは使えないと言っている。ところが科学技術庁は、これを使えないという、技術的に検討ができないというその条項を引用して、接触しても安全だと、こう言っている。これは重大な見解の相違じゃないですか。いかがですか。
-
○
政府委員(伊原義徳君) 科学技術庁といたしましては
通産省と十分連絡をとりましてこの見解に達しておりますので、見解に相違があるとは
考えておりません。
-
○辻一彦君 おかしいじゃないの。コロンビア大学の例では実証はできないと、まだ確定されたものじゃないと、こう通産は言いながら、片方ではコロンビア大学の例をもって安全だと言っている。これは矛盾していませんか。
-
○
政府委員(伊原義徳君) コロンビア大学の調査の結果を採用いたしますとすれば、米国における例のごとく、燃料棒が接触をいたした
状態でも安全であるということになると思われますけれども、わが国の場合は、さらに十分な運転結果のデータ等をとりまして、一十分自信がもてる段階でなければ、この曲がった
状態のままで使用させることは適当でないと、こういう判断、すなわち安全性により重点を置いた判断を行なったという次第でございます。その点におきまして
通産省と科学技術庁の見解は一致いたしております。
-
○辻一彦君 ますますおかしいのと違いますか。くっついたってだいじょうぶだと言いながら、曲がったままを使うのは安全を
考えると無理であると、こういうようになったんだと。これはもう全然言っていることが違うんじゃないですか、この科学技術庁の言っていることは。
-
○
政府委員(伊原義徳君) 補足
説明させていただきますが、科学技術庁としては、燃料棒同士が接触した
状態で運転しても安全であるというふうに一〇〇%
考えておると、こういうことを、見解を述べたことはございません。米国の例としてこういうものがあるということを申し上げた次第でございます。どうも
説明が不十分でございましたが、米国の例でこういう例があるということを科学技術庁として申し上げた次第でございます。
-
○辻一彦君 科学技術庁の出先が、もし運転再開後再びゆがみが起きて燃料棒同士が接触することがあっても、コロンビアの例によって余裕があると、安全だと、こう言っているのは、これは違うんですか。
-
○
政府委員(伊原義徳君) 現地におきます連絡調整官の
説明について詳細にただいまの時点で存じておりませんが、その申しました趣旨は、米国の例はこういうことであると、こういうことを申し上げたものと理解いたしております。
-
○辻一彦君 それはあとで確認しましょう。
そこで、さきに科学技術庁は、燃料棒を取りかえたのは科学的判断じゃなしに行政的判断という答弁をしておりますが、現在の論議の経過をたどれば、これは行政的判断ではない。
通産省が技術的に検討して科学的に実証できないと、だから安全のために取りかえたほうがいいと、こういうことだったんですよ。これは行政的判断で私はないと思う。これはいかがですか。
-
○
政府委員(伊原義徳君) 本件につきましては科学技術庁と
通産省と十分打ち合わせをいたしまして、まず米国の例をどう理解するか、わが国の専門家の意見がどのようであるか、そういう全体的な総合判断をいたしまして、行政庁としての総合的判断として取りかえをするように指導をしたと、こういう趣旨で前回御
説明申し上げた次第でございます。
-
○辻一彦君 長官、伺いますがね、これは行政的判断ですか、科学的、技術的判断ですか。いかがです。
-
○
国務大臣(森山欽司君) 美浜二号炉の事故と、燃料棒の——燃料棒の問題、事故というのは間違いです。美浜二号炉の燃料棒の問題は、定期検査の際に発見をいたしたものであります。それで、原子炉の安全性につきましては、システムとして故障ができるだけ早期にわかるようにいろんなシステムが
考えられておりますが、今回の燃料棒の問題もそういう定期検査の際にまあそのことがわかったわけであります。で、先ほど来お話しのように、この燃料棒の曲がり現象は米国でも二、三、例はあるが、燃料棒の取りかえば行なわず運転しておる例もあり、本件については燃料棒を取りかえずにそのまま運転しても安全であるという見解もあったのでありますが、これについてなお解明を要する点があると思われたから、米国における措置の例にならわず、慎重な取り扱いをすることが必要であると判断されて燃料棒の取りかえを指示したものであるというふうに聞いておる次第であります。まあ、一言にしていえば、念には念を入れて、このままでもアメリカの例によればやっていけるが、しかし、念には念を入れて取りかえたほうがよろしいと、こういう
考えでやったというふうに
考えております。
まあ、そのことが技術的判断か行政的判断かは、これは見解の分かれるところでございましょう。しかし、いずれにいたしましても、アメリカがこの軽水炉のまあパイオニアでありまして、
日本の研究が後進的な産業技術ということになっておりますから、どうもアメリカのまねばっかりしていていかぬじゃないかという御批判はしばしば受けるところでございますが、このたびは、そういうアメリカ側のやり方はあるがわが国はわが国の立場でひとつ
考えていこうと言うとまた御批判を受けるというわけで、いままでのやり方についても御批判を受ける、今回のやり方についても御批判を受けると、こういうことでありますが、一歩前進をいたしたというふうに御理解を願いたいと思っておる次第でございます。
それで、しかしながら、いままでのようなやり方で放置しておくわけにまいりませんから、
昭和四十九年度の原子力
予算におきまして、この今回のこの
予算委員会、昨年の十二月の
予算委員会で原子力発電の問題が議論になったことがございます。あの議論をきっかけにいたしまして、総
需要抑制で非常にやかましいおりでございますが、安全研究の促進という観点から
予算を追加いたしまして、特に新たに大型のホットラボラトリーの建設に着手するための経費を計上いたして目下御審議をお願いしております。従来でございますれば、こういうものになりますと、一応
日本ではこれについての措置ができませんから、外国のほうに送り返すということでございましたが、このホットラボができることになりますと、国内でもってこの問題についてどうするということを検討し、研究することができるというふうに、一歩体制は前進しておる。原寸大のままの研究炉ができるわけでございます。そういう
意味で、この
事態について、従来のやり方より数歩前進した体制をもって臨んでおるというふうに御理解をお願いをいたしたいと思います。
-
○辻一彦君 いや、私の聞いているのは、
通産省は、アメリカのコロンビア大学等々の判断ではまだ実験的に確定された実証的なものではないから、それではできないと、不安である、自信が持てないと、こう言って燃料棒の使用を認めずに取りかえさせたんですよ。ところが、実証できないという根拠をもって科学技術庁は安全であると言っておるからおかしいと私は言っておるんだ。その食い違いは一体どうなんです。
-
○
政府委員(伊原義徳君) 先ほど御
説明申し上げましたように、科学技術庁といたしましても、この見解は、
通産省と十分お打ち合わせの上出したものでございまして、接触したままで運転しても安全であると申しておるわけではございませんで、米国でそういう例があるということを申し上げた次第でございます。
-
○辻一彦君 いや、だから
通産省は、米国にある例を引いて、これでは自信が持てぬと言っておるんですよ。それをあなたは、いつも米国の例を引いて、米国ならば安全だと、こういうのは論理が一貫しないじゃないですか。
-
○
政府委員(伊原義徳君) 補足して御
説明申し上げますと、発表いたしました文章本文においてその問題は取り上げておるわけではございませんで、参考資料として、米国の例がこういう例であるということを参考資料として添付したということでございます。
-
○辻一彦君 じゃ、端的にもう一度聞きますが、通産は、この関電の安全性を実証する資料を検討して、この資料ではまだ科学的に全部実証されていない、だからアメリカの例をもってしても不十分であるからこの再使用はできない、こういう判断をしたわけですね。そうじゃないんですか、したんですよ。ところが、科学技術庁のほうは、行政判断によって万全を期すためだ、念のために念を入れるんだと、こう言っていますが、根拠は、明らかに通産がはっきりしているように、技術的検討にたえないということで、この再使用を認めずに入れかえをさしたと、こういうことじゃないですか。その点ひとつはっきりさしてください。
-
○
政府委員(伊原義徳君) 科学技術庁と
通産省との間において見解の相違はございません。したがいまして、先ほど累次御
説明申し上げましたように、米国にはこういう例はあるけれども、わが国としていろいろ検討した結果、さらに安全を期して燃料の取りかえをいたすのが適当である、こう両省で十分協議をいたした結果、そういう判断に達したわけでございます。
-
○辻一彦君 時間の点から、もう少し具体的に聞きたいんですが、残念ですが、私は、科学技術庁はこういう実証できないアメリカの例を引いて安全だ、こういう態度では、とても周辺における住民の原子力に対する理解を深めたり、不安に対してこの不安感を除く、こういうことはできないと思いますが、長官どう思いますか。
-
○
国務大臣(森山欽司君) 先ほどの行政判断か技術判断かというお話でございますが、技術のことを無視した行政判断ではございませんし、また、行政判断であっても技術的判断であっても、やっぱり行政的立場においてやっておるわけでございますから、私は、技術的な行政判断、行政的な技術判断、どちらでもよろしゅうございますが、ライスカレーかカレーライスかというような議論じゃないかということで、ひとつ御理解をお願いいたしたいと思っております。
〔
委員長退席、
理事吉武恵市君着席〕
念には念を入れてということは、やっぱり技術的な問題を
考えて念には念を入れているわけでございますから、念には念を入れてというのは、技術のことを無視してというわけではございません。商業炉で燃料棒に曲がりの生じた
状態での運転結果のデータが多くないと、また、燃料棒の曲がりによる炉内現象の解析方法についてもさらに検討の余地があると、そういうことだから、安全優先の観点から念には念を入れてこの際は取りかえるほうがよかろうという、まあ判断をいたしたわけでございますから、これは、技術的判断といえば技術的判断であり、また、アメリカのようにずっとやっているところもあるわけでございますから、それならそれのやり方もあり得るでございましょう。しかし、いつもおしかりを受けるのは、
日本はアメリカのまねばっかりしておるじゃないかといってしかられるわけでございます。その御議論は、わが国のやはり後発産業技術でございますればその御批判に当たるような面もあろうかと思います。ですから、今回みたいな場合は、やはりわが国の立場から、そういう問題については、アメリカでこうやっていると、
日本はこうやってみようということでやっているわけでございます。そうなると、一体それはどうなんだというんで、また御批判を受けるということで、まあ前に進んでも、うしろに退いてもいろいろ御批判を受けるということでございますが、しかし、新しい産業であり、新しい技術でございますから、やっぱりそういう
国民的ないろいろな御批判を受けた中にこれから進歩さしていかなきゃならないわけでございますから、御批判は御批判としてありがたくお受けいたしまして、今後万全の体制を期していきたい。先ほども申し上げましたように、ホットラボラトリー、本年度三十五億の
予算も出しまして原寸のまま燃料棒の試験研究もできるような施設にいよいよ手をつけるということで
予算の審議もお願いをいたしておるわけでございますから、どうかひとつ今後ともよろしく御指導のほどお願いをいたします。ありがとうございました。
-
○辻一彦君 まあ、技術的行政判断、行政的技術判断——聞いたことのないことばを私はきょう聞きましたが、科学技術庁の長官がこういうことを言われることは、私はどうしても理解できません。ほかの省庁なら別として、科学技術庁の長官が科学的判断に基づいて独自性を発揮してこそ
日本の進歩があるんであって、行政的判断で独自性を幾ら発揮したって科学の裏づけがきちっとなければ
意味がないことですよ。私は、長官がそういう行政や技術的行政判断、わからぬようなこと——そういう答弁じゃなしに、
科学技術庁長官として科学的な御
発言をお願いいたしたい。
-
○
国務大臣(森山欽司君) 科学技術庁が科学技術的な問題について所見を述べます際には、それが行政判断でございましても常に科学技術の裏づけがある
発言をしなければならないと
考えております。それは科学技術的な所見であると同時に、科学技術庁の立場でものを申せば行政的な判断にもなるわけでございますから、どうか、それは決して矛盾をいたさぬと思いますので、御理解を願いたいと思います。
-
○辻一彦君 まあ、この論議はこの時間では詰まりませんから、この詰めができません、十分に。だから分科会あるいは特別
委員会に移したいと思います。
ただ私は、ほんとうに科学技術庁の判断が技術的に裏づけられるものであるならば、
通産省の見解が技術的に、いわゆる曲がったままでは使用することができないと、こういうことをはっきり言っているんだから、これをちゃんと私は認めていくべきであって、アメリカの例なんかを、立証できないそういう例を引いて引用すべきではないと思います。いずれ後日、この問題についてはさらに論議をすることにして、一応この問題は打ち切りたいと思います。
最後に、この問題について。この美浜の原子炉がゼロという数字が、とにかく波形はついているが確認をされた、そして、その発生率やあるいは曲がりの度合いからいって、世界にまだ起こっていない大きな事故といいますか、異状が起こったということ、こういうことも私はいまの論議を通して確認をされたと思います。そこで、さらに、この燃料棒が穴があいて漏れる疑いと曲がっている疑いの二つがありますので、これについて科学的に十分解明する必要が安全上ある。そういう点で、燃料検査にかかわる一切の資料を国会に提出を求めたい。答弁願います。
-
○
政府委員(岸田文武君) 曲がりの問題あるいはピンホールの問題、いろいろの御
指摘をいただきまして、私どもとしても十分研究をし、今後不安を一切なくするような運営のしかたをしていきたいという念願では同じであろうかと思っております。その
意味におきまして、資料の内容等々につきまして、今後いろいろお打ち合わせをしながら極力御協力するようにいたしたいと思います。
-
○辻一彦君 いや、協力するのじゃない。出してもらいたい。出せるのか出せないのか、はっきりしてください。
-
○
政府委員(岸田文武君) まとまりました報告は、私どもの手元にあります限り御提出できると思いますが、先ほどお話にございました原表ということになりますと、いわば電算機から打ち出しました膨大な数量の集積でございますし、その他こまかい資料がたくさんございます。したがいまして、目的をお示しいただければ、それに従った資料を提出するようにいたしたいと思います。
-
○辻一彦君 燃料検査にかかわる資料は出せるんですね。
-
○
政府委員(岸田文武君) 検査の中には、外観検査、テレスコープ検査、水中テレビ検査あるいは漏れに関するシッピング検査等々のさまざまな検査内容が含まれております。膨大な資料でございますことは、先ほど申し上げましたとおりでございますので、できることでございますれば、先ほど申しましたように、目的をお示しいただきまして、必要な書類を私どもでアレンジして提出するようにしたほうがよろしいのではないかと
考えております。
-
○辻一彦君
通産大臣、ちょっとお伺いしますが、原子炉の安全審査は科学技術庁がやる、それから動きだすと、安全を含めて全部
通産省がかかえている、こういうやり方は、私は非常に問題があると思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君)
考えようによっては二重の審査でかえっていいんじゃないか、科学技術庁の場合はわりあいに基礎的な数理的な場合が基準になる、
通産省の場合は非常に技術的な実際的な工学的な面が主題になる、そういう
意味において二重のチェックを受けるということはより
意味があると、そう私は思います。
-
○辻一彦君 その論議は、原子力行政の一元化という問題をめぐっていろいろありますが、きょうはこれはとどめたいと思います。
私は、二つ目の問題として、問題を変えて、農業問題に入りたいと思います。
まず、農林大臣にお伺いいたしますが、最近芝浦屠場で屠殺される豚の一〇%は腹に子を持つ豚である、こういうふうにいわれておりますが、また、農林省の三月四日の統計でも、子牛が、ずいぶんつぶされている、こういう統計が出ておりますが、この実態をちょっと御報告いただきたい。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) お話のございましたように、最近、子持ちの豚、それから乳用牛、和牛もそうでありますが、屠殺が非常にふえたという話でございまして、調べてみましたが、それほど、いまお話しの芝浦屠場等における最近の数字を見ますと、そう大して減っておるわけではありませんが、確かにわれわれにとりましては、子持ちの豚等を多く屠殺されることは困ることであります。こういうようなことにつきまして、やはりその理由にはいろいろありましょうが、最近飼料が高くなって、そのために、自分の営んでおる仕事に対して若干の不安を持ったような形跡もありますので、そういうことがないように、資源を確保することが絶対に必要であると、こういうことでございまするので、私どもといたしましては、今月末にきまります保証
価格、そういうものについてやはり再生産の確保のできるような措置を講じてまいりたいと思っておりますが、いまお話しの実態というお話でありますので、数字的には事務当局からお答えいたさせます。
-
○
説明員(下浦静平君) ただいまの大臣の御答弁につきまして若干補足をして申し上げます。
まず、子持ちの豚でございますけれども、これにつきましては正確な資料はございません。繁殖用の雌豚、これにつきましての東京芝浦屠場での状況を見てみますと、従来とあまり変化は見られておりません。ただ、全国的には昨年末からやや増加をしておるようでございます。全国的な数字を若干申し上げますと、繁殖用雌豚の屠殺頭数の推移でございますが、
昭和四十八年の一月が二万頭程度でございました。それから、途中の中間の数値を申し上げますと、八月には二万五千頭ちょっとこえておるような数字でございますが、十二月の数字では、三万一千二百頭程度ということになっておりまして、十二月は前年対比で一二一%程度ということでございます。−なお、芝浦屠場の状況でございますけれども、これは冒頭に申し上げましたように、正確な資料がございませんのですけれども、生体で百五十キログラム程度の、まあいわばいわゆる大貫ものでございますけれども、この状況を見てみますと、これはさほどの変化は見られておりません。四十八年の一月に千頭ちょっと程度でございましたが、四十九年の一月にも同じ程度の数値になっております。ただこれは、その繁殖豚の、大貫ものの豚が子持ちであるかどうかにつきましては、ちょっとわかりかねるわけでございます。
それから、乳用の子牛でございますが、乳用の子牛も、ただいまの繁殖豚と同様の傾向でございまして、芝浦屠場では従来とあまり変化は見られませんが、全国的には昨年末からやや増加をいたしております。この子牛は、昨年の一月、四千頭程度でございましたが、これは雌のみの数字でございますが、これはだんだん減ってまいりまして、昨年の八月には千四百頭ちょっと割るというところでございましたが、本年の一月には二千八百五十六頭、こういうぐあいになっております。なお、和子牛——和牛の子牛でございますけれども、これは屠殺頭数が非常に最近減少いたしております。それから乳用牛につきましても、東京芝浦では本年に入ってやや増加をしておりますけれども、全国的には減少をしておる、こういう状況でございます。
-
○辻一彦君 その芝浦屠場の資料は横ばいの、ちょっとふえておる程度ですが、ここに東京都の中央卸売市場の五日の調べを見ますと、芝浦屠場で最近殺された豚の一〇%近くが種豚になっている、こういうように報告されている。いずれにしても、子持ちの豚やあるいは子牛が屠殺されるということは、これはいままでにいわゆる畜産の危機とは言いますが、そういうものと比較にならない深刻な畜産の危機を含んでいると思いますが、その点、大臣いかがでしょうか。
〔
理事吉武恵市君退席、
委員長着席〕
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 私どもも、そういうことを感じるわけでありますがそこで、いろいろな原因をお話を聞いておりますというと、やっぱり突き詰めて申せば、経営に対して不安を持つということで、そこで、こういう
状態を打開いたしてまいりますために、現在開かれております畜産振興審議会で四つの部会に分かれて鋭意検討中でありまして、近くその答申が出るはずでございますので、今月末にはやはりそういう不安のないように、再生産を確保できるような
経済状況その他を
価格に盛り込んだものが出てくるであろうと存じますので、適正な
価格でひとつきめて安心してやっていただけるようにいたしたいと、こう努力しておるわけでございます。
-
○辻一彦君 畜産のこの深刻な危機に対策は、当面の対策、中期、長期の対策、いろいろ分かれると思いますがね。当面の対策はいま出ましたが、豚肉はきょうの
政府方針で大体二六%、こういうふうに出ておりますが、加工用原料乳の保証
価格を三〇%程度引き上げる
政府試算が出されていると、こういうように出ておりますし、さらに、鶏卵
価格も調整する必要があると、こう
報道されておりますが、これは二十七日ですが、いまの段階で、どういうふうに
考えておられますか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) いまお話しのように、
新聞の記事も私も見ましたけれども、私ども事実そういうことの話を一向聞いておりませんが、いまお話しのございました乳価、これの保証
価格もさっき申しましたように再生産の確保のできるようなものにしてもらいたいと、それから豚価はもちろんのことでありますが、鶏卵、ブロイラー等につきましては、御承知のように若干の生産過剰的な傾向もありますので、そういう点を合理化して安定した
価格でやっていけるようにしたいと、同時にまた、液卵公社の買い上げ量等についても、これを拡大いたしたり安定した方法をやってまいると、そういうために、ただいま審議会で勉強しておられるものと連絡をとっているわけであります。
-
○辻一彦君 審議中であれば数字は言えないと思いますが、大臣の腹づもりとしては、豚肉同様に再生産が引き合う
価格で鶏卵なり牛乳の
値段を
考えなくてはならぬと、こういうふうにお
考えですか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) そういう心組みで努力をしたいと思っております。
-
○辻一彦君
価格の問題が出ましたのでちょっと先にお伺いしたいのですが、子牛がつぶされていくというようなことはたいへんなことで、なかなかつぶされた子牛をもとに返して畜産をやるには時間がかかっていくと、そういうことでたいへんですが、そのために、牛の肉は畜産
価格安定法の指定食肉になっていないのですが、これを指定をして、そして牛の肉の安定、値下がりをささえると、こういうことが大事じゃないかという
考えが非常に強くなってきておりますが、これに対して、どうお
考えになっていますか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 辻さんのような御意見、しばしば承ることでありますが、今後の
需給動向から見まして、国内生産を増大してもなお不足の分がございますが、これは牛は御存じのように、一ぺん生まれても三十カ月ぐらいたたないと話になりませんので、増産と申しましてもなかなかむずかしい。したがって、やはり
輸入に依存せざるを得ないと思っております。そこで、畜産振興事業団の
需給調整機能を十分に活用いたしまして、牛肉の
輸入の調整を適切に行なうことと、
輸入制度につきましても、国内
価格の動向を一そう反映し得るような一定の方式を設けるなどの
改善を加えたり、また国内自給、それから
価格の安定につとめて肉用牛経営の安定をはかることといたしておりますが、牛肉につきましても、やはり長期的な計画を立てて、この増産をはかっていかなければならないことは当然なことでございますので、私どもは、この国会に御審議を願っております農用地開発公団、ああいうようなものを活用すること、同時にまた、全国的に林野庁の森林の中に放牧いたしておるようなものもだいぶ成功してまいっておりますので、そういうことで、ひとつ増産をはかってまいりたいと思いますが、ただいまお話しのような制度に組み入れるというふうなこと、いまは
考えておりませんが、私は長期的に見て十分研究すべき事柄であると思っております。
-
○辻一彦君
輸入の肉を入れてすぐ凍結をしなくちゃならぬ、こういうふうな
状態も起こって、なかなか
輸入操作だけではむずかしい、この肉牛の再生産を可能にするような
価格のささえはむずかしいと思うんですね。だから、長期的に検討すべき事項であるならば、ぜひひとつ早く検討していただきたいと思います。
そこで、当面の緊急対策で六百億の緊急融資を畜産農家に行ない、それに利子補給を
考えると、こういうことが世上
報道されておりますが、具体的にどうお
考えになっておるか。これは農林大臣と、それから利子補給等の点もありますから
大蔵大臣にもお伺いいたしたい。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 審議会のほうでも、そういうことの緊急性を述べられておるお方もたくさんおりますし、私どもも、これは必要なことだと
考えまして、財政当局とも御相談しておるわけであります。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) ただいま農林大臣から申し上げましたように、融資と、それからそれに伴う利子補給、こういう御相談を私どものところで受けております。前向きで検討しておると、まだ最終的な詰めには至らぬと、こういう段階でございます。
-
○辻一彦君 農林大臣、大体どのぐらいを、もう緊急融資だから、やはりこれはいつまでも
考えておっちゃだめだと思うので、もう腹もひとつきめてもらわぬといかぬと思いますが、どのぐらいをお
考えになっておりますか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 昨年は二度にわたって、大体合計、はんぱの数が出ておりますので、ラウンドナンバーで六百億足らずではないかと思っておりますが、今年につきましては、いろいろ
計算をいたしておりますが、まだはっきりいたしませんけれども、大体その辺のところが
計算に出るんではないかと思って、いま事務当局が財政当局と詰めておるわけであります。
-
○辻一彦君 ちょっと言い回しがむずかしいんですが、その辺のところというのは幾らですか。六百億ですか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) いま事務当局に詰めの段階を聞いておるのでありますが、その辺のところでよかろうと、こういう話であります。
-
○辻一彦君 その辺のところというのは、六百億のその辺のところですか。
-
-
○辻一彦君 この利子補給を、
新聞で見ると、利得税から充てると、こういうことがいわれておりますが、そういう構想はあるんですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 財源につきましてはどうしますか、まだこれも詰めが終わっておらないんですが、言われておる臨時利得税ですか、そういうものの収入を充てるという話は私は全然聞いておりませんし、私も
考えておりませんです。
-
○辻一彦君 三月の十八日に畜産振興審議会が開かれて、米の飼料化を強力に進めろと、こういう答申が出ております。で、休耕田等を使って米の飼料化をはかるということは飼料対策として当然と
考えますが、これについて、具体的にどう
考えておられるか、お伺いしたい。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) これも飼料が非常に高騰しておるときでありますので、青刈りでやる場合、それから、実らせてから玄米でそれをやるといういろいろな研究を実は農林省でも前々から研究をいたしております。しかし、青刈りにいたしまして、はたして農家がどういうふうにしてそろばんに合わせるようにするかということもありますし、それから稲としてすでにでき上がりましてからは食管との
関係がなかなかむずかしくなります。それらのこと。それからもう一つは種によりまして、外国品種でありますが、それのほうが
日本の品種より歩どまりがいいようであります。そういうことについては私ども技術会議において鋭意検討中でございます。何でしたら技術会議のほうからちょっと御報告いたさせましょうか。
-
○
政府委員(
小山義夫君) 技術的な点でございますので若干補足をさせていただきますが、稲を青刈りで使います場合には、草、茎同時に使うということでございますので、
日本種の種よりも、インディカと申しますか、外国産の種を使ったほうがいいと、それを穂が出そろったあと二週間ぐらいのところで刈ってサイレージにいたしますと非常に飼料価値がよくて、まず牧草並みの栄養価があるというふうな成果を得ております。これはさらに、いろんな機械化収穫その他の点について引き続き研究をいたしたいと思っております。米のままで使うことについてはなかなか、いろいろ、いま大臣からもお話がございましたように問題が多くて、なおすぐには実施に踏み切れないというふうな点等がございます。
-
○辻一彦君 この長粒の、長粒種を使うのか、将来の問題として新しい品種の導入をはかるのか、あるいは育成するのか。飼料用のやっぱり品種を育成するというか、導入するか、新しくつくる必要があると思いますが、この点どうですか。
-
○
政府委員(
小山義夫君) いま申し上げました青刈りにやります場合には、いままで百品種あまりのものを試験をいたしまして、これなら有望だというのが大体見当がついております。
それからジャポニカ系の、いま現在内地で食用に使っております稲の場合には、えさにするわけですから、味は悪くてもたくさんとれるものということが、新しい品種がないかということでございますが、従来うまい米を育成をする場合にも、実際に農家に使われるためのことを
考えますと、やはり収量を犠牲にしてはなかなか農家には入りませんので、やはり収量を高くするための遺伝子はつつ一ぱい使い尽くされているというのが現状でございます。でございますから、今後もなお、従来食味があまりよくないからということで、育種の技術者が若干もうたな上げにしておった系統の中でもう一度洗い直すということをいま各試験場に命じておりますけれども、あまり多くのことは期待できないのではないかというふうに
考えられます。
-
○辻一彦君 農林大臣、将来どのくらいの米の飼料化を
考えていらっしゃるのか、耕地面積、トン数等。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 実は、そういうことにつきまして、全国の農協の方々とも御相談し、それから地方の県で実験してもらうことをいまおすすめいたしたわけでありますけれども、現実になかなかそういうことを率先して研究されるというのはあまり出ておりません。したがって、技術会議等で試験場でやっているわけでありますが、そういういろんなデータを研究した上でやはり経営の成り立つようなことを
考えてあげませんと拡大されませんので、それの基礎になることをいま研究中であると、こういう段階でございます。
-
○辻一彦君 いま研究中のものをちょっと無理な気もしますが、
価格の点なんかを保障するとか、そういうことについての構想はおありですか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) まだそういうことを
考えておりません。
-
○辻一彦君 麦やえさの自給率を高めるという目標が示されておりますが、長期にわたってほんとうに飼料生産や麦の生産を上げようとすれば、品種を改良しないと無理のように思いますが、それが一体米と比べてどんな
状態か、これはいかがですか。
-
○
政府委員(
小山義夫君) 麦につきましては、何といっても問題は、水田の場合には麦作の稲と作期が競合するということがございますので、わせの品種を育成をする必要があるわけであります。現在、私どもの試験場で最近できておりますのはサキガケコムギで、従来の品種よりも約一週間早くというわせ化の品種をしておりますけれども、もうそれよりもさらに数日早い品種ということになりますと、どうしても外国から遺伝子を新しく探してこなければいけないということで、麦の原産地でありますネパール、パキスタンにいま探索隊を出したいということを
考えております。これはそのための費用を、いま御審議願っております四十九年度
予算案の中に計上しておるわけでございます。
なお、牧草につきましては、従来外国からの
輸入品種が御承知のように大半でございますが、
日本の風土に適した品種を育成をしたいということで、いままで約三十品種できておりますけれども、これからそれがだんだん農家に取り入れられるようになろうかと思います。
-
○辻一彦君 この品種改良というのは非常に長期にわたる。一つものになるのには十年、十数年を要すると思いますが、そうなりますと、いまは麦をつくろうというのにちょっと力を入れる、外国の麦の
値段がちょっと動くとすぐ力を抜く、こういう一貫性のない場合には、とても本格的な品種を改良して自給率を高めようと、こういうことはできないと思うんですが、一貫した食糧自給
政策をこれからともとる決意がほんとうにおありなのか。その中でじみちなこういう品種改良等に長期的に力を入れる
考え方があるのかどうか。大臣、この点いかがですか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君)
政府といたしましては、やはりただいまの国際
情勢の中における食糧の問題、これは慎重に検討しなければならない大きな問題であると思っております。したがって、われわれのほうでは、まあ全体の面積、国土の面積のうち、大体七割が山林であって一八%ほどが農耕可能地、そういうことを
考えましたときに、その中で自給度を維持してまいりますための大体の
考え方というものは出てくるはずであります。
そこで、米以外のものについては、しばしばこの席でも申し上げておりますように、できるだけの自給度を高めてまいりたい、そういうことでありますので、いままでやっておりました土地改良長期計画などでは水田を主としておりましたけれども、その後はこの基盤整備につきましては麦、大豆、そういう作物について全力をあげていくと、こういう
方針を定めましたので、四十九年度
予算からもああいう助成
予算を計上いたしておる次第でありますが、これは中途はんぱでやめる意思はございません。しっかりした増産対策をやってまいると、こういうつもりでやっております。
-
○辻一彦君 私の申し上げるのは、品種を一つつくろうとすれば、十年、十数年かかる。その間に食糧自給
政策が変化するようでは、とても麦の自給を目指すしっかりした品種をつくっていくような長期の研究はできないということなんですね。だから、目標をきめて、それに到達するためならば、途中でそうぐらぐらしないと、そしてじみちな研究をほんとうにささえる、そういう用意があるのかどうか、その点いかがですか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) これはおっしゃるとおりに、われわれも
考えて継続的に努力をするつもりでおります。
-
○辻一彦君 飼料の点を
考えれば草地造成が絶対に必要ですが、ここ数年、どの程度の草地造成ができていますか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 五十七年度までの十年間に約四十万ヘクタールの草地造成が行なわれることといたしておるわけでありますが、この目標を達成いたしますために、各種の草地開発事業の拡充に努力いたさなければなりませんが、
昭和四十九年度から農用地開発公団等をつくりまして、新たに未利用地、それから低位利用地の土地資源に恵まれた地域を対象に、草地造成から経営施設の、経営手段の整備導入等をいたしてまいるつもりでありますが、いままで、
昭和五十七年度までには、草地と、それから七十万ヘクタールの造成をいたしてまいるつもりでありますが……
-
○辻一彦君 いや、ここ二、三年でどのぐらい草地造成ができましたか。
-
○
説明員(下浦静平君) お答え申し上げます6
四十五年からの数字を申し上げます。四十五年度におきましては二万九千八百八十七ヘクタールの造成の実績でございます。四十六年度におきましては二万八千二百六十四ヘクタール、さらに四十七年度におきましては二万五千五百三十九ヘクタールとなっておりまして、四十八年度は三万ヘクタールを予定をいたしておると、こういう状況でございます。
-
○辻一彦君 この速度では、これはなかなか、私たいへんだと思うんですが、どうしてもピッチをひとつ上げてもらわなければいかぬと思います。
そこで、全国にどのぐらい、飼料や草地に可能な土地が国有林を含めてありますか。
-
○
説明員(下浦静平君) 草地としての開発可能面積といたしまして、全国で九十四万ヘクタールぐらいあるということになっております。
-
○辻一彦君 それは国有林等は含んでいないんでしょう。もっともっと私はあると思いますが、いかがですか。
-
○
政府委員(大山一生君) 先ほど
審議官から申し上げました草地造成適地面積九十四万ヘクタール、これは自然的条件、それから傾斜、こういった条件をすべて満たすようなところというかっこうで調査した結果でございまして、その中には国有林が約二十六万ヘクタール、公有林が十二万ヘクタール、私有林が五十六万ヘクタールということになっております。
-
○辻一彦君 府県別にどうかと。それからそのうち、五十ヘクタール、百ヘクタール以上の団地としてあるのはどのぐらいありますか。
-
○
政府委員(大山一生君) ただいま手持ちしておりませんので、後ほど資料として御提出いたします。
-
○辻一彦君 これは農林省に要求したんですが、なかなか資料はないということで出なかったわけです。そこで、私はえさや草地をやるには大規模な単位規模が要ると、五十ヘクタール、百ヘクタール以上の集団地をどうしても必要とすると、そういうことを的確に把握をして、きちっと調べておくということが農林省として大事だと思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) そういう調査はいつもやっておるはずでありますが、先ほどお話しの府県別というふうになると、ちょっと私も資料をまだ持っておりませんが、おっしゃるとおりに、やっぱり低位利用、未利用地等を開発してまいるには、規模の大きいものをやってまいらなければ採算に合いませんので、お説のとおりだと思います。
-
○辻一彦君 私が伺った、また、ここへ出されている資料では、これは農政局単位にはある程度調べてありますが、府県別にまた五十万、百万ヘクタールという規模ではなかなかきまってない、調べていられない。どうしても私はこれを詳細に調べて的確な判断をすることが大事だと思いますが、調査されますか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) あるはずだと思いますが、なお、もしそういうものに欠除があれば、それはやらなければいけないと思っておりますので、調査いたしたいと思います。
-
○辻一彦君 建設大臣にお伺いしますが、全国でゴルフ場が、一体、現在建設中、それから計画中含めて、面積等でもう一度お伺いいたしたい。
-
○
国務大臣(亀岡高夫君) 千四百二十一カ所、これは使っておるもの、造成中のもの、計画中のもの、含めてでございます。面積は約十五万ヘクタールということでございます。
-
○辻一彦君 この十五万町歩に、もし乳牛を飼ったとしたら、何万頭飼えますか。
-
○
説明員(下浦静平君) 乳牛の一ヘクタール当たりの頭数でございますが、これは先生御承知のとおり、北のほうと南のほうとではかなり違うわけでございまして、北のほうでは一頭程度、あるいは南のほうでは二頭程度が可能かと存じております。
-
○辻一彦君 ごく大まかに言って一ヘクタール当たり一頭なら十五万頭飼える。まあ、これは特別な
計算でありますが、私は、どんどん山林原野がまたたく間にゴルフ場になっていく。やる気になれば草地の造成等はわが国の力をもってすればどんどんできると思うんですね。だから、ほんとうに草地造成に取り組んで飼料の自給をはかる決意があれば、私はお金をかけて本格的にやるべきだと思いますが、その決意、農林大臣と、それからこれにうんと経費をかけてやるべきであると、こういうようなお
考えを、
大蔵大臣、お持ちですか、いかがですか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) いまのお話は、そのゴルフ場の該当面積を草地にすればどうなるかというお話のようでありましたが、これは私どもとしては、いろいろな
考え方があると思いますが、まあ、われわれの持っている土地ではありませんで、民間の所有だろうと思います。で、そういうものに対してどういうふうなことになっていくかということがまず問題だろうと思います。私どもといたしましては、できるだけ未利用地、低位利用地を開発して草地造成をいたしたいというのがただいまのところの
考え方であります。
-
○辻一彦君 いや、私はいまのゴルフ場をすぐ振り向けろというんではないんですが、たとえの
計算ですが、しかし、ゴルフ場ができる中でやろうとすれば草地造成というのはどんどんやれるじゃないかと、その決意があるかどうかと、これを伺っているんです。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) いま申し上げたように、これは他人の所有でございますので、面積からいえばそういうことも可能ではありましょうけれども、なかなかむずかしい問題ではないかと、こういうことでございます。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 辻さんのいまのお話は、ゴルフ場をすぐつぶせというお話じゃなくて、それくらいの熱意があれば草地造成はできるんじゃないかと、こういうお話です。まあ、自給率の非常に低いわが国としては、熱意を持ってそういう問題と取り組むべきであると、農林省で適正な案ができれば、財政当局といたしましてもできる限りの協力をしなけりゃならぬと、そういうふうに
考えます。
-
○辻一彦君 時間が少なくなったので、簡潔に伺いますが、北陸から東北で、いま米づくりの中心は男がかせぎに行って女の人に譲っている。
日本の主婦が農業をささえていると言っても言い過ぎでない場合があります。その主婦が過労で、献血をすると血液が薄くて、出しても役に立たないと、こういう苦労をしている。そういう主婦が、いま世帯主でないために農業者年金の対象から一応はずされておりますが、これは私は、法改正で道は若干開かれますが、もっと本格的に無条件で主婦を含めるようにすべきであると思いますが、この点いかがですか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 農村婦人のことでありますが、これはただいまこの国会に農業者年金法の改正案を提案してあると思いますが、いままでは御承知のように経営者が御主人でありました。そこで、実際に御婦人が経営をされるようになって、だんなさんが不在であるという家庭がかなりございます。そういうようなところは、やはり経営主をおくさんに移譲した形をおとりになれば被保険者になれるわけでありまして、そういうようなことのできる改正案を今国会に出しているわけであります。したがって、御婦人がやはりその経営の担当者であるということによってそれが行なわれるわけであります。
-
○辻一彦君 私はこの経営移譲というよりも、主婦を無条件にひとつ対象に含めてもらいたいと思いますが、これはまたいろんな審議の時間があるでしょうから、そのときに移したいと思います。
一つ運輸大臣にお伺いしたいんですが、過疎地においては住民の足を守るためにレール、地方中小私鉄の役割りが非常に大きいのですが、どうも赤字を理由にどんどん廃線が行なわれている。こういう中でこのレール見直しの動きもありますが、過疎地の住民の足を守るためにこの地方私鉄をどのようにしていくか。この点についてのお
考えを伺いたい。
-
○
国務大臣(徳永正利君) この過疎地の住民の足の確保ということは、これはもう重要な社会的な問題でございまして、この役割りを果たしておるのが先生御
指摘の中小の私鉄の皆さんだと思います。したがいまして、今年度は欠損補助の制度を拡充いたしまして、飛躍的と言ってももとが少ないのでございますから、たいしたことはございませんけれども、とにかく欠損補助の助成の増額をはかっていくと、こういうことでございます。私どもはその路線につきましては、経営の維持の困難な路線を欠損補助の対象路線としたものを地方公共団体あるいは国等で今後助成してまいりたいと、かように
考えております。
-
○辻一彦君 赤字欠損の制度ができたのは、私は一歩前進だと思います。これは大いに拡大をしていただきたい。
そこで、貧弱な過疎地ではやはり県、市町村も半額を負担をするわけですが、なかなかこの負担というものも容易でない。そこで、交付税の中に、この地方自治体の負担分を含めるべきでないかと思いますが、自治大臣の御見解を伺いたい。
-
○
国務大臣(町村金五君) このたび、いま御
指摘になりましたような地域の地方鉄道の欠損額の半額を国費をもって補助をされると.いう制度ができるようでありますが、その残りの半額につきましても、地方団体にぜひ補助をしてもらいたい、こういう要請のあることは承知をいたしておるのでありますが、自治省といたしましては、地方公共団体が補助をいたしました場合には、その分は特別交付税で措置をするというふうに
考えております。
-
○辻一彦君 それはぜひお願いしたい。
最後に、繊維問題について二、三点伺います。これは別の機会に詳細伺いますが、要点だけ……。
一つは、原糸高製品安と、こういわれておりますが、これに金融の引き締めが加わって産地では赤字の倒産一歩前にあるというのが実態だろうと思います。ところが、化合繊の大メーカー、大手商社は高決算をいかにして利益を圧縮するかに四苦八苦している。同じ四苦八苦しているが、下では働いて赤字で倒産で四苦八苦、上では黒字押えの四苦八苦と、あまりにも私は差が大きいと思う。その中で去年の十二月ごろに幾つかの大手の原糸メーカーが減産を理由に一方的に先物契約を破棄をして、二割の数量カットを行なったということを聞いておりますが、これらの事実があったかどうか、
通産大臣からお伺いしたい。
-
○
政府委員(
橋本利一君) 先生の御
指摘に該当するかどうかという、問題ございますが、昨年の秋に
石油問題が発生いたしました。
御承知のとおり、化合繊といたしましては、その原料面あるいは燃料面から非常な制約を受けますので、大幅な減産になるのではないか、少なくとも十数%程度の減産は必至ではなかろうかといったような一般の観測がございました。さようなところから、化合繊の原糸メーカーは糸商、あるいは機屋に対しまして、先行き供給が減少するであろうということも通知すると同時に、個別にどの程度まで削減できるかということを話し合ったと承知いたしております。
-
○辻一彦君 数量カットの実態は具体的にどうであったか、わかりますか。
-
○
政府委員(
橋本利一君) ただいま申し上げましたように、当初十数%の落ち込みになるのではなかろうかというふうに
考えておったわけでございますが、その後、当方で増産を要請するとか、あるいは原糸メーカーにおきましても、間接部門をできるだけカットいたしまして、生産部門に電力なり
石油を充当するといったような増産につとめましたので、結果としては一〇ないし一一%程度の落ち込みではなかったかと
考えております。
-
○辻一彦君 昨年の十二月及び一月にかけて合化繊のメーカーが相前後してかなり大幅な糸の
値上げをやっておりますが、その実態はわかりますか。
-
○
政府委員(
橋本利一君) 当方といたしましては
物価対策、あるいは中小の機屋に対する配慮から、極力
価格の
抑制につとめてまいったわけでございますが、昨年の十一月から十二月にかけまして化合繊原料が非常に上昇いたしました。たとえばカプロラクタムあるいはDMT、こういったものが大幅な
値上がりをいたしましたので、十二月から一月にかけて対前月比九%から一〇%程度の原糸の
値上がりを見たというふうにわれわれは記憶いたしております。
-
○辻一彦君
通産大臣、昨年の十二月に各産地からいろいろと陳情があったと思いますが、
価格の
値上げを抑えるとか、数量カットにどういう
行政指導をされたか、いかがですか。
-
○
政府委員(
橋本利一君) 原糸あっせん所、これは昨年の三月から開設いたしておったわけでございますが、これを拡充するとか、あるいはこれにも若干の限界はございますが、原糸の輸出をできるだけ繰り延べるとかいったような方法を用いまして、
価格引き下げの方向に努力し、かつ、われわれといたしましても今後とも
値上げをしないように、強く
行政指導をしておるわけでございます。
-
○辻一彦君 時間が来たから終わります。この問題はまた分科会等で詰めたいと思います。(拍手)
-
-
-
○
内田善利君 まず私は、高度
経済成長下で起こったひずみである
物価高騰の問題、それと公害問題について質問したいと思いますが、まず、公害問題について最初質問したいと思います。
その前に、東邦亜鉛の対州鉱業所で社会的正義を踏みにじった隠蔽工作が行なわれたわけですが、
通産大臣に、これに対する対策がどのようにされたか、まず、この点をお聞きしたいと思います。
-
○
政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。
東邦亜鉛の対州鉱山におきます公害の隠蔽の事実は、まことに悪質なものでございまして、許すべからざるものとして、まず第一番目に、
事態の徹底的な究明をやるべく、福岡の監督局、
局長以下動員いたしまして現地調査を県と共同してやっております。現在第二回の検査を実施中でございます。あわせまして、数年前におきます安中問題等々の関連もございまして、東邦亜鉛という会社の体質に問題があるというふうな
考え方をもちまして、同会社の他の事業所につきましても同様な一斉検査を実施いたしております。
事態の究明を待ちまして、法規に照らして厳正な処置をしてまいりたい。
なお、あわせましてこういった問題の
基本に、広範な金属鉱業特有の蓄積公害問題もございますので、この際、
予算措置も
政府原案では入っておりますような形で講じられる予定になっておりますので、そういうものをもちまして、金属鉱山におきます蓄積公害の一掃に関しまして抜本的な処置を講じてまいりたいというふうに
考えております。
-
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) この件につきましては、
事態が発覚いたしましてから、厳重に
事態の究明をさらに
通産省独自で行なうように指示いたしました。いろいろ調べてみますと、水のバケツを置きかえたというようなものは、犯罪としてなかなかとらえにくい要素もあるそうです。これを途中で妨害したとか、そういうような場合には、法規にひっかかるそうですけれども、夜中にすりかえたというようなものは、法の盲点を突いておるようでございまして、非常に性質から見たら悪質であります。そういう点で、とはいえ、これをほうっておくわけにいかぬと、何とかいろいろなことを
考えて、そういうものに対してはしかるべき処置をとらせなければならぬし、また、これからの水の分析やそういうようなやり方について、深甚の注意を払って、そういうことを起こさせないようにしなければならぬし、法の盲点があれば、法の改正も
考えなければならぬと、そういう点を指示しておるところであります。
-
○
内田善利君
通産大臣、私は、企業のモラルの問題もですけれども、やはり
政府に責任があると思うんです。というのは、水質汚濁防止法ですけれども、これと大気汚染防止法、これがPPMだけ、濃度規制だけをやったというところに、私はいま言われる法の盲点があったのじゃないか。やはり水で薄めれば、基準以下にすることができるという、そういう法の盲点をくぐった、また、くぐらした
政府に責任があるのじゃないかと、このように思うのですが、
通産大臣、どのようにお
考えですか。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 確かにそう言われますと、思い当たるところもあります。要するに
環境アセスメント、
環境全般を対象としてものごとを
考えるように、公害問題の角度も変えなければいけない、そういうように思います。
-
-
○
国務大臣(三木武夫君) いま
内田委員の御
指摘のように、全体としても総量調査という式になっておれば、薄めたからといって、それでごまかせるものでもないわけで、そういう点もあると思いますが、しかし、いままで調査した経過を顧みてみると、これは非常に悪質な事案である。一般の企業家が、こういうふうなモラルというのは、ほんとうに例外的なことだと私は思うのでございます。そういう
意味で、いま
通産省も立ち入り検査をして実情の把握につとめておるわけです。もう一ぺんこれは調査の結果というものがごまかしであるということになれば、これはやっぱり徹底的に見直しをしなければならぬと、また、健康調査についても、これは念入りな健康調査もやりたいと、こういうふうに
考えておる次第でございます。
-
○
内田善利君 農林大臣にお聞きしますが、対馬は非常に土壌汚染がひどいわけですが、これに対する対策は、どのようにとってこられたか、お聞きしたいのです。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 対馬の佐須川、椎根川流域は、四十七年の五月に農用地の土壌の汚染防止等に関する法律によりまして土壌汚染対策地域として指定されております。その後、対策計画の策定につきまして、長崎県と
環境庁、農林省との間で検討が行なわれておる段階でございます。長崎県としては、客土用の採土の困難性等を理由に、汚染農用地の全面買収によって対処したい意向で、現に一部の買収を進めております。しかし、このような
方針のみで対処することは問題がございますし、農林省としては、さらに一そうの調査を進めますとともに、
関係農家の意向をも取りまとめ、できるだけすみやかに対策計画を策定いたしまして、土地改良等の
改善対策事業が実施できるように長崎県を指導いたしておる次第であります。
-
○
内田善利君 土壌汚染防止法には、客土とか、その他のことはありますけれども、買収というのはないはずですが、その点はどうお
考えですか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 法律はともかくといたしまして、地方では、たとえば同じ東邦亜鉛で群馬県の地域等、長年の間堆積しておりますようなところをちょっと買収をいたしてしまっておる地域もあります。私は、この対馬の実情をよく自分では見ておりませんけれども、そういうようなことで私どもといたしましては、一番心配しておりますのは、一PPMを上回るカドミウム米が生産されることが一番こわいのでありまして、そういうものはいままで私どもといたしましては廃棄するようにいたしておるわけでありますから、したがって、客土等をいたしまして、そこが完全に土壌が回復いたすようなことができるならば、それはそれでけっこうだと、したがって、長崎県にいま申し上げましたようなことについて申しておると、こういう段階でございます。
-
○
内田善利君 買収後の計画も目標もなしに、ただ単に買収が行なわれているのですが、この点はいかがですか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 県ではどういうふうな態度でこれを処理しようとしておるかということで、その中の一つに土地を買収して処理するという方向もあるではないかということでございまして、これ、県当局のほうで
考えられるほかの手段があれば、それはまたそれによって相談をいたさなければいけないと思っておりますが、要は、私どもの農作物にそういう汚染されたものが出てくることのないような措置を講じなければならないと、こういう立場に立っておるわけであります。
-
○
内田善利君 あまりこの問題は長くやりたくはないんですが、とにかくあすこは要観察地域になってから農業土壌汚染防止対策といいますか、土壌対策というのは何も行なわれていないんですが、非常に私は農林省の怠慢だと思うんですけれども、この点いかがでしょう。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 現在同地域の農用地土壌汚染対策地域は約三十二ヘクタールございまして、そのうち長崎県が買収契約をいたしました面積は約八ヘクタールで、その後買収は行き詰まっていると聞いております。農林省では四十五年度から長崎県に補助をいたしまして五カ所の栽培試験園を設置いたしまして、客土の厚さ、転作物の選定等の対策のための試験を実施させておりますが、別途この客土用の採土地——ほかから土地を持ってくる——その調査も一そう進めるように長崎県を指導いたしておる次第であります。
-
○
内田善利君 この土壌対策は、あすこは穀倉ともいわれるいい土壌なんですね、それが簡単に買収されて、そしてその後の対策が何も
考えられていない。どういうふうにするとかということすら町でも
考えられていない。そういうことではただ単に買収すればいいと、そういう
考え方のように思うんです。この点はいかがですか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) カドミウム含有米の出た地域では大体農林省と県が相談をいたしまして、県で——いま長崎の例を申し上げましたが、買収して客土等をやる土地もありますし、それぞれ富山県でもいたしております。したがって、県のほうで私どものほうの慫慂に従って——これいま私がお答えいたしました中にすでに長崎県が買収している地域があるんでありますが、そういうことについて長崎県が積極的に対策を講じてくれることを待望いたしておるわけでありますし、今回はその地域から一PPM以上の米のとれましたのが大体六トンございました。この六トンの米につきましては佐賀県のバンボード株式会社にすでに売却をいたしておりまして、この会社ではこのカドミウム米を接着剤、これはまあいつでもやることでありますが、のりであります、その接着剤に使うために全部この六トンの米はバンボード株式会社に売却済みであると、こういう報告を受けております。
-
○
内田善利君 私は、この汚染土壌についてはどうしても土壌汚染防止法に従った客土をするとか、やはり土壌そのものを農地として使えるようにすべきであると思うんですけれども、この点はどのようにお
考えですか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 最初のお答えに申し上げましたように、県と
環境庁と農林省とがこの土壌の再生のためにどういうふうにやるかということを鋭意検討中でございます。
-
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 県が買収いたしまして、県がそれぞれにどういうふうに用途をきめるか、そのことは県も買収する以上は
考えておることでございましょうが、私どもといたしましては、地域の実情を私自身はつまびらかにいたしておりませんけれども、従来やりましたやり方は、ただ客土等をいたしまして土壌改良をいたして農地に復旧しておるところがかなりございます。
-
○
内田善利君 次に、
環境庁にお聞きしますが、厚生省にもお聞きしますが、健康被害状況ですね、対馬は非常に健康被害については心配だと、このように見られておりますが、いままでどのような健康調査をなさって、どういう状況になっておるか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いま先生の御質問のございました対馬における健康被害の問題でございますが、対馬につきましては四十三年の調査のときに、米も土も、あるいは古い井戸も非常によごれておるということで私どもは非常に疑いを持ったわけでございますが、現在までのやりました状況を申し上げますと、四十年から私ども検診を開始いたしまして、四十八年までに延べ六千四百九十九人の方を検診をしてまいりました。そしてその結果鑑別診断を要すると見られる方が四十五名、実数で四十五名ございまして、全体で延べ七十二名の方を国の鑑別診断班で検討をしてまいりました。四十七年度末におきまして一名の要観察者がおり、そのほか四名につきまして検査をもう一度してみる必要があるということでございますので、計五名につきましては私ども非常に注目をしておるという段階でございます。四十八年度におきましても精密検診等をいたしておりますが、四十八年度の精密検診結果についてはまだ現在取りまとめ中で、国における鑑別診断も行なわれておりません。
-
○
内田善利君 今度の事件がありまして、あそこに行かれなかった小林教授とか、あるいは萩野医師等は三十八年ごろ行かれて、そのあと全然シャットアウトされたために行っておられないわけですが、新しく健康診断班を組織して住民の要望に従った調査をすべきであると思いますが、この点は長官どのようにお
考えですか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いま先生の御
指摘の健康診断を新たに強化をして行なうべきであるという問題でございますが、この対馬のイタイイタイ病問題の健康調査につきましては、地元の長崎県におきまして長崎大学の協力を得て今日まで実施してまいっておりますが、今回の事件を契機といたしまして、やはり地元の大学だけではなしに、ほかのイタイイタイ病の専門家をぜひともここに招くべきであるというようなお声も国会の中でございますし、また、地元の長崎県におきましても、ぜひとも検診班として中央からも派遣をしてほしいという御要望でございまして、従来イタイイタイ病に非常に努力をされました萩野博士等をも含めまして現在地元と相談をしておる状況にあります。いま地元の意見が少し分かれておるようでございますが、県としては何とかこれを国に世話をしてほしいという話でございますので、私どもも研究班とも相談をいたして、その促進方につとめたいとやっておる次第でございます。
-
○
内田善利君 次に、兵庫県の生野鉱山の市川周辺のカドミ汚染問題について質問をしたいと思いますが、
通産大臣は退席される予定でございますので、最初にこの生野鉱山の現在までの経過についてお聞きしたいと思います。
-
○
国務大臣(
中曽根康弘君) 生野鉱山は非常に古い歴史を持っておりまして、歴史によりますと、大同二年、つまり千二百年ぐらい前に露頭を発見して、自来天正年間に銀山奉行が設置されたり、あるいは代官所が設置されたり、一時は皇室財産となり、その後三菱に明治二十九年に払い下げられ、それからすずの精錬をはじめ、その後銅の精錬を廃止し、現在は、
昭和二十七年に三菱金属鉱業が経営しておるところでございますが、四十八年三月三十一日に鉱量枯渇のためにすずの精錬場のみを残して閉山をしたと、こういうことでございます。
そこで、その排水の水質の問題、公害の問題が出ております。この問題につきましては、
通産省といたしましても非常に
事態を重視いたしましていろいろ水質汚濁防止法に基づく基準によって監査をしておりまして、普通の水質汚濁防止法に基づく基準、すなわち〇・一PPMよりきびしい排出基準を設定して、すなわち上のせ基準〇・〇五PPMを付加いたしまして、これをもって監督しておるところでございますが、現在のところは、この基準に適合しているようでございます。
-
○
内田善利君 農林大臣にお聞きしますが、生野鉱山による市川流域の土壌汚染、この実態はどのように把握しておられますか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 私よく承知しておりませんので、事務当局に一ぺん調べてみます。
-
○
説明員(二瓶博君) 生野鉱山周辺地域の土壌汚染対策
関係について御
説明申し上げます。
指定面積が四十二・七六ヘクタールでございますが、この中には農用地の面積が三十二・一〇五ヘクタールございます。特別地区といたしましては二十六・〇四二ヘクタールこれにございます。ここにつきましては、すでに対策計画を四十八年の一月三十日に承認をいたしておりまして、汚染防除の事業が現在実施をされております。具体的内容といたしましては、二十五センチの客土をやっておりますし、それからベントナイト及び石灰施用で床締めをやっております。それから溶燐、珪カル、こういうような土壌改良資材等も投入をいたすことにしております。なお、こういうことのほかに、さらに自動調整ゲートあるいは汚泥沈降施設の新設というような土木工事的なそういうことも実施をいたしておりまして、事業費総額が三億一千七百万円ということに相なっております。
以上でございます。
-
○
内田善利君 三菱金属鉱業に対しての公害防止事業費事業者負担法、この適用はどのようになっておりますか、農林大臣。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いま先生御
指摘の土壌汚染防止のための、改良のための事業につきましては、公害防止事業費事業者負担法によりまして企業の負担を四分の三に定めて徴収をいたすということにきまっております。なお、本件につきましては、兵庫県の公害対策審議会において費用負担の割合をきめるという事業者負担法の定めに従って処理されたものでございます。
-
○
内田善利君 この兵庫県の公害対策審議会の答申はどういうものですか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いまここに中央公害対策審議会の答申の詳細を持っておりませんので、私は割合のみを覚えておりましたので、あとでまたお答えをいたしたいと、資料をお持ちいたしたいと思います。
-
○
内田善利君 結局、この土壌汚染による公害防止事業費の事業者負担法を適用することになったわけですね。適用しているわけですね。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) 法律を適用いたしまして、事業者に負担をさせるという形になっております。
-
○
内田善利君 あとで公害対策審議会の答申は発表してもらえますね。
-
-
○
内田善利君 ここは、こうして三菱金属に負担法を適用しているわけですけれども、これに対して農林大臣はどのようにお
考えですか。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど私どもの事務当局が御報告いたしました、ああいうことで法律に基づいてやっておるのはけっこうなことだと思っております。
-
○
内田善利君 いまの答弁ではよくわからないんですが、とにかく土壌汚染しておると、カドミウムで土壌汚染はしておると、だから企業負担法に基づいて負担がなされたと、土壌そのものは汚染されたんだということをお認めですね。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) そのことを私先ほど申し上げましたように、よく事情を存じませんので、事務当局が調査の結果を御報告いたしました。あれでひとつお認めを願いたいと思います。
-
○
内田善利君 いや、大臣は農林大臣でしょう。土壌汚染防止法に基づいて企業負担法によって企業が負担したんですから、そのことについて生野鉱
山下流の市川流域はカドミウムで汚染されておるんだということをお認めですかと聞いておるわけです。当然認められたから……。
-
○
国務大臣(倉石忠雄君) それは先ほど御報告申し上げましたとおりに、そういうふうに汚染されておったことだろうと思います。
-
-
○
国務大臣(三木武夫君) 汚染の疑いがあるから汚染防止法を適用して指定をしまして、そして公害防止の事業を遂行しておるわけですから、汚染の懸念がなければやるわけはないんですから、そのとおりに
考えております。
-
○
内田善利君 ここは法で定められた最高の七五%企業が負担するようになっているわけですね。ということは、やはり土壌が汚染されているからこそ私はこの法律が適用になったんだと、このように思うんです。また、いまも長官がそのようにおっしゃっておりますから、そのように確認していいですね。——農林大臣、いいですね。
-
○
説明員(二瓶博君) この事業費の負担の
関係につきましては、企業が四分の三、それから国と県と地元ということで、農民負担はないという姿でございます。このようなことで事業費を投入して事業をやっておるということは、やはりそういう汚染があるということの証拠であろうと、かように思います。
-
○
内田善利君 次に、健康被害について明らかにしていきたいと思いますが、これは富山のイタイイタイ病判決でその原因は明確になっているわけですが、三木長官は、このイタイイタイ病の原因物質は何であるとお
考えになっているか、お聞きしたいと思います。
-
○
国務大臣(三木武夫君) われわれは、カドミウムがイタイイタイ病の汚染物質の中心をなすものだと
考えておる次第でございます。
-
○
内田善利君 私、なぜこういう質問をするかというと、カドミウムでないという説がありますもんで質問したわけですが、カドミウムが中心物質であるという答弁でございました。イタイイタイ病の症状、これはどのように把握しておられるのか、また、そういうイタイイタイ病患者にお会いになったことはおありになりますか。
-
○
国務大臣(三木武夫君) 一番端的な症状は骨が痛むことでありますが、まあこのごろは、しかし骨ばかりでなしに、肝臓障害を伴う場合もあるということで、骨の痛むところまでいかないで、肝臓障害もやっぱりカドミウムによる障害ではないかという一つの専門家の学説もあるわけです。われわれとしても、できるだけ患者の健康診断の場合はそういうことも頭に入れて、さらに疑いのある患者に対しては精密な健康調査をしてみたいと
考えております。
-
○
内田善利君 患者にお会いになったことはありますか。
-
○
国務大臣(三木武夫君) 患者には直接会ったことはございません。
-
○
内田善利君 イタイイタイ病とカドミウム中毒症というのがあるようですけれども、このイタイイタイ病とカドミウム中毒症とはどう違うのか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) 先生の御質問は、イタイイタイ病というのとカドミウム中毒症とどう違うかという御質問でございますが、厚生省見解にございましたように、イタイイタイ病はカドミウムが主因となっておるということでございます。それに対して、内分泌の問題であるとか、あるいは栄養の問題であるとか、あるいは代謝の問題というような、あるいは老齢化というほかの要因もからんでおるということを厚生省見解では述べております。そういうことで、カドミウム中毒が中核をなすということは当然
考えておりますが、カドミウム中毒だけですべてのイタイイタイ病の問題を完全に
説明し切ることはできないという立場に立っております。
昭和四十四年度におきまして、イタイイタイ病及びカドミウム中毒症についての鑑別診断研究班というのを設けました理由は、骨にまでいくような重い段階になるまで置いておくというのは、これは非常に問題であると、やはりカドミウム中毒としてのじん臓障害という段階において、何とかこれを鑑別診断をして、そしてそれを対象として救済することはできないものだろうかというような、予防的な、積極的な意図のもとに立ちまして、カドミウム中毒症ということばを使いまして、じん臓の障害にその焦点を当てて現在まで研究を進めておるところでございます。
-
○
内田善利君 じゃ、イタイイタイ病の患者数とカドミウム中毒症の患者数は何名になっておりますか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) 現在の段階におきましては、公害健康被害救済特別措置法によりまして、イタイイタイ病のみを指定疾病といたしております。で、いまちょっとここにございます資料が古くて恐縮でございますが、富山県のイタイイタイ病ということで、四十七年二月末——新しい数字はまたすぐお持ちいたしますが、九十一名のイタイイタイ病患者がおります。その後人数はあまり富山県においてはふえておりません。
第二の御質問の、カドミウム中毒症の人数ということでございますが、現在までの段階で、カドミウム中毒症として鑑別して診断ができるかどうかということの研究を進めておりました段階でございまして、現在のところ、まだカドミウム中毒症として断定されたものはございません。
-
○
内田善利君 同じカドミウムで汚染された土壌で、そこにいろんな患者が出ておる。そういった方々の中で、イタイイタイ病患者とカドミウム中毒症患者に分けて
考える
考え方には私は異論があるんですが、
環境庁長官はどう思われますか。カドミウムによって体が汚染された、しかし骨がぼきぼき折れなければイタイイタイ病と言わない。しかし、じん臓、先ほど長官がおっしゃった肝臓、そういう……
-
-
○
内田善利君 じん臓ですね。そういうものがおかされた
状態をほうっておくということは一体どうなんだろう、こう思いますが。
-
○
国務大臣(三木武夫君) 私も専門家ではございませんが、そのカドミウム中毒が、骨まで痛まなければ障害がないんだということは、それはじん臓の障害なども、それはやはりカドミウム患者として——患者と決定的ではありませんが、その疑いを持って再診断をする必要があると私は
考えておるわけでございます。
-
○
内田善利君 疑いを持って再診断してたら間に合わないんです、あとで申し上げますが。いま、老齢の人たちがどんどんどんどん死んでいっているわけです、救済されないままですね。ですから、どうですか、この点。カドミウムのそういう汚染土壌、さっきおっしゃったでしょう。汚染土壌に住んでいる人たちが、カドミウムを摂取することによってじん臓がおかされている。そういう人たちをイタイイタイ病と言わないで、カドミウム中毒症ということで全然人数も把握していない、こういう行政がありますか。人間の体をどう
考えているんですか。
-
○
国務大臣(三木武夫君) いままでのカドミウムの中毒は、骨が痛むということがやはり診断する場合の中心的な症状であったわけであります。しかし、その骨が痛むまでの間にじん臓の障害なども起こるという場合がカドミウム中毒の中に言えるということについては、これはもう少しやっぱり研究を要するのではないかと、そういう点で、そういう医学者もおりますから、この問題は何年もほうっておくというのではなくして、至急にこの問題については再診断をして結論を出したいと
考えておる次第でございます。
-
○
内田善利君 それでは納得できないんですがね。イタイイタイ病は骨の病気だということで、カドミウムで汚染されて健康が阻害されておる、そこなわれておる。そういう人たちを、ワクをきめて、そしてここまでがイタイイタイ病で救済できる、ここまではイタイイタイ病でないから救済できない、そういう行政は私は人間尊重の立場から許せないと思うんです。長官はいつも言っておられますけれども、疑わしきは救済すると、そういう立場に立って、こういった中症、あるいは軽症の方々を救っていかないと救われないと、そういう気持ちなんですが、この点いかがですか。
-
○
国務大臣(三木武夫君) 私も、やはりそういう気の毒な人を、まあできる限り救済をする必要がありますので、したがって再調査をしたいということを申し上げておるわけでございます。
-
-
○
政府委員(
橋本道夫君) 先ほど、すぐさま数字をお答えすることができませんでしたが、カドミウム中毒症ではないかということで鑑別診断の検討を国が正式に進めていたものはいままで何人あるかという御質問でございますが、これは国の要観察地域の七地区の中で、四十九年三月現在で、七人の人がそうではないかという監視のもとに研究を進めてまいっております。なお、この中には生野の人数は含まれておりません。
-
○
内田善利君 念のために聞きますが、イタイイタイ病の診断基準はどうなっておりますか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) イタイイタイ病の診断基準につきましての国の見解といたしましては、四十七年六月に
環境庁から通知を出しておりますが、認定条件といたしまして、第一に、カドミウム濃厚汚染地域に居住し、カドミウムに対する暴露歴があったこと、それから第二に、あとの三、四で申しますいろんな症状が先天性のものでなく後天性のものであること、特に成年期以降において発現したものであること、それから第三番目に、尿細管の障害が認められること、第四番目に、エックス線検査または生体検査によって骨粗しょう症を伴う骨軟化症の所見が認められること、ということでございます。また、必要な検査といたしまして、一般的な検査あるいは血液
関係の検査、レントゲン所見、尿所見等につきまして詳細なことを定めております。
-
○
内田善利君 富山県の公害認定
委員会の基準はどうなっていますか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) 申しわけございませんが、初めのほう私ちょっと聞こえませんでしたが……。
-
-
○
政府委員(
橋本道夫君) 御質問のありました富山県の診断基準につきましては同様でございます。富山県の診断基準を基調としてこの診断基準が組まれております。
-
○
内田善利君 私たち公明党では、
昭和四十七年の二月、萩野博士を同行して調査したわけですが、そのとき四人の擬似イタイイタイ病患者が発見されたわけですけれども、その後二年経過しているんですけれども、
環境庁は何にもされてないわけですね。ですから、
日本政府が発表しないならば、認定しないならばスエーデンで発表すると、こういう学者もおられるわけですけれども、そういうことはほんとうにたいへんなことだと思うんです、
日本で起こったことなんですから。そういったことで、私は
日本で発表していただきたいと、このように思うんですけれども、この点についてはどのようにお
考えでしょうか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いま御
指摘のあった問題は生野のケースについての問題かと思われますが、生野におきましては、現在まで兵庫県が県独自の健康調査をいたしております。
環境庁とは連絡をとっております。で、その結果、十三名疑わしい患者が出てまいりまして、それにつきましてイタイイタイ病及びカドミウム中毒症に関する鑑別診断研究班において検討してほしいという委託を受けまして、そのうちの五名は今後の経過を追跡する必要がなく、七名については尿、血液等の所見について兵庫県においてさらに追跡し、異状があれば報告すること、こういうぐあいにいたしました。残りの一名につきましては老人性の骨粗鬆症と変形性脊髄症とを合併したもので、骨軟化症とは
考えがたいという結論が得られております。
なお、この問題につきましては、四十八年の八月に県がやりました調査を発表いたしますときに
環境庁に公文で連絡をいたしております。つい最近の研究会におきまして、いま先生の御
指摘のあった三例のケースについての報告がございましたが、私どもは研究会資料を入手いたしたところで、まだ公文ではこの資料について報告に接しておりません。
-
○
内田善利君 私はまだ研究会の三例の話などは全然してないわけですが、この萩野先生、それから石崎先生、能川先生、これは
環境庁の鑑別診断班の一員ですね。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いま御
指摘の先生のうち萩野先生と石崎先生は鑑別診断研究班の一員でございます。
-
○
内田善利君 この二人の先生方が第二イタイイタイ病だと言って三例を——特に七人患者が発見されておるわけですが、この点は
環境庁長官は御存じですか。
-
○
国務大臣(三木武夫君) 石崎先生の報告は私も受けております。
-
-
○
国務大臣(三木武夫君) 本年二月の研究集会において石崎教授等が、すでに昨年発表されたイタイイタイ病と区別のできないものを四例、疑いの濃厚なもの二例、ほかにイタイイタイ病と同様の病状を持っている一例が報告をされています。このうち昨年の研究集会において報告された六例については、二例は鑑別診断研究班において検討された症状であり、二例は
昭和四十八年十二月と四十九年二月に死亡し、他の一例と今回新たに報告された一例、計二件については四十八年度兵庫県が健康調査の結果カドミウムによるじん臓障害に起因するとは
考えられないという見解を発表しております。なお、残りの一例については、現在県において健康調査の結果を検討しているところであり、そのように
関係専門家の間で意見が分かれておりますが、
環境庁としては、あらためて鑑別診断班に検討を依頼して念を入れてこの問題を取り扱っていきたいと
考えております。
-
○
内田善利君 これは
昭和四十八年三月の報告ですけれども、これを読みますと、そんなに簡単には言えないと思うんですね。なくなった青田さんの例ですけれども、この写真を見ましても非常に悲惨なんですね。「三年前、便器の上にすわろうとしたとき、左大腿骨が折れたように曲ってしまった。現在では全身の骨に痛みを感じており、せき、くしゃみなどで胸部に激痛がある。」、「左前腕は屈側に彎曲し、左尺骨二カ所、橈骨一カ所に同様なこぶ状の隆起が見られ、これらの隆起部に圧痛がある。」、こういうことで非常に悲惨な
状態で、この人はなくなっておられるわけです。「右上腕骨には骨改変層があり、右鎖骨には軽い変形が見られる。」、あるいは右橈骨、尺骨におのおの一カ所の骨改変層が見られる、その他あちこちに脱灰顕著である、こういう
状態でございますが、先ほど
環境庁長官は、骨に異変があったらイタイイタイ病だと、このように言っておられました。ところが、この人たちはまだイタイイタイ病として認定されていないんです。これに結論みたいなことを書いてありますが、「今回われわれの報告した患者の骨変化は、全身的な著しい脱灰と、七カ所の骨改変層、中川の記載している”ぬれたボール紙筒を折り曲げたような所見“に一致する大腿骨の屈曲など、重症のイタイイタイ病のレントゲン線像とまったく同じ所見を示していた。」、こういうことなんですが、どのようにお
考えですか、この青田さんにつきましては。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いま先生の御
指摘になりましたケースにつきましては、四十八年の十二月の五日になくなられたケースでございまして、私どもも三月十六日から十七日に行なわれました研究報告書を初めて見まして、すぐさまこれは非常に重要な問題であるということで、この問題についての調査を進めるということで現在それを開始いたしておるというところでございます。本ケースにつきましては、病理解剖所見もいずれ最終的にまとまるところでございますし、県においても現在検討中、調査中ということでございますので、それをできるだけ早く進めて、国としてもこの問題について徹底的に究明をいたしたいと、そういうように
考えております。
-
○
内田善利君 非常に冷淡な答弁で困るのですが、その臓器中のカドミウムの量は出ているわけですから、だからこういった点をもう少し踏まえた上で答弁をお願いしたいのですが……。そういった病理の面も出ておりますし、こういう骨が七カ所も折れて、なくなっていった。いまあがっている七名の方も、年齢は七十以上ばかりです。いつなくなるかわからないような
状態で、いま痛い痛いと言って苦しんでいらっしゃる。そういう方方、いまも死亡例ですけれども、そう言って行政があたたかい手を差し伸べないうちにどんどんなくなっている現象、こういうことについて、どうしてカドミウム中毒症とイタイイタイ病と差別しなければならないのか。明らかに土壌が汚染されている、企業負担法も実施されておる、それにもかかわらず健康被害のほうはこのように全く何をやっているのかわからない、こういう
状態はどうなんですか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いま先生の御
指摘のありました点につきましては、私どもも非常に苦慮いたしておるところでございますが、イタイイタイ病の見解が発表され、鑑別診断研究班が四十四年以降編成されまして検討をしてまいりましたが、その間、イタイイタイ病につきましての学問的な
考え方にいろいろの異論があったわけでございます。厚生省見解におきましては、イタイイタイ病は、まずじん臓をやられて、それから骨にくるという議論をいたしておったわけでございますが、そこの場所に対して学問的に非常に異論が、実験やいろいろの角度から出されたということでございまして、これは今回の三月の研究班の行なわれた発表まではきわめてむずかしいいろいろな問題があったわけでございますが、今回の三月の研究班の報告におきまして、新しい局面もまた開けてきているということを私どもも感じておりますので、この問題につきまして早急に調査を進めて結論を出したいというぐあいに
考えているわけでございます。
-
○
内田善利君 いまの答弁ですけれども、学問的にはイタイイタイ病には解明されていないいろいろな点があると、そういう点はあるかもしれません、学者の間で。しかし、患者を放置しておくということは、これは人道上許されないのじゃないかと思うのです。明らかにカドミウム汚染地域で、そのために私は土壌汚染を聞いたのです。そういう汚染された地区で、しかも苦しんでいらっしゃる、そういう方々を放置しながら学問論争を幾らやっても、これは人道的立場から言えば、あたたかい行政とは言えないと思うのです。まして、イタイイタイ病に対する有力な治療方法もあるのですから、イタイイタイ病だということで新しい治療法で治療していったらどうなんだろうと、このように思うのですが、長官、どのようにお
考えですか。
-
○
国務大臣(三木武夫君) 先ほどから申しておりますように、この問題は徹底的に再調査をして、そしてそういう人たちにできる限り救済の手を差し伸べたいと、こう申し上げておるわけでございます。
-
○
内田善利君 それでは納得できないわけですが、ここは五人とか六人とか七人とか、そういうことは散発じゃないと思うのです。生野鉱山の下流の市川周辺にずっとその近くに出ているわけですから、私は、多発だと思うのです。そういった立場から救済の手を早急に差し伸べなきゃならないと、このように思うのです。多発ですか、どうですか。神通川流域と全く同じだと、こう思うのです。富山県と違ったところありますか。富山県と全く同じじゃないですか、状況は。それでも認定しない、学者間のいろいろな問題があるからと。私は、そういうことではかわいそうな人たちは救えないと、こう思うのです。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いま先生の御
指摘になりました、五名が出ているのは多発であるという御意見につきましては、三月十七日の研究班の報告の中で、萩野先生方の研究班の方が
指摘しておられるところであります。それらの方々がすべてイタイイタイ病として疑うべきであるか、あるいはカドミウム中毒症として見るべきかということは、学問的にはいろいろ議論があるところかと思いますが、非常に疑わしい人がこれはある程度以上の数が出ているということは、私どもも十分これは注意をして対処しなければならないと、こう
考えておりますので、ぜひとも、この点は、長官が先ほど答弁なさいました
方針に従いまして、徹底的に再調査をいたしまして究明をいたしたい、それによって所要の措置をとりたいというように
考えております。
-
○
小平芳平君 関連。
先ほど来、再調査、再調査と言っておられるのですが、何を調査するのですか。
橋本審議官が再三
発言しているように、三月十六日、十七日のこの研究班の総会ですか、三月十六日、十七日の会合においては、先ほど
指摘されているように、石崎教授あるいは萩野博士から、はっきりと五人のイタイイタイ病患者が発生していると、こういう報告でしょう。それ、何を調査するのですか。しかも、この石崎、萩野報告によりますと、この市川流域で五人がイタイイタイ病と全く同じ症状で発病しているということは、この事実だけで市川流域の症例はカドミウムによるイ病であると疫学的に証明されたと
考えられるとなっているでしょう。もうすでに市川流域ではイタイイタイ病が発生していると、それはもう疫学的にそういうふうに決定できると、こう報告しているでしょう。しかも、今後早急に市川流域のイ病患者に対する公的救済が行なわれることを切望すると言っているじゃないですか、公的救済が。ということは、この公害健康被害者救済法による早急な救済が切望される、そういう報告が出ているでしょうが。それをいまさら再調査、再調査と言って、何を再調査するのですか。萩野先生が初めて生野の患者を診察されたのは、先ほどもお話がありました四十七年二月、二年前ですよ、二年前。その間行政は何をやったのですか、その間。二年間ただ放置しておいて、すでに一名の方はなくなってしまった。けれども五人の患者は確実に発生している。一日も早い救済が望まれると、こういう報告を手にしながら、私たちが
指摘するまで、公式な
発言もしなければ、ただ伏せて再調査、再調査なんて言っていたのじゃ、一体、救済はいつになるのですか。こういう点について、
環境庁長官のはっきりした御返事を承りたい。
-
○
国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、兵庫県には、健康調査特別診査
委員会というものが設置をされておるわけですね。設置をされ、喜田村教授、神戸大学の教授が中心になって、そうして千三百三十四名を対象として研究調査を行なった。ところが、その調査特別診査
委員会の報告は、生野鉱山周辺地域においてはイタイイタイ病は認められないという報告であったわけでございます。しかし、その中においてもさらに精密な検診を必要とする十三名というものについては、その後、尿とか血液、いろいろな点で追跡調査をして、そうしてその中でイタイイタイ病の患者がおれば、これは当然に認定をするということで追跡調査もやったわけでございますが、学者の意見に多少イタイイタイ病というものに対しての見解の分かれもあるわけでございますから、いま言ったような問題が取り残されておるようなことになっておりますが、これは事実お気の毒でもあるわけですから、われわれは、そういう県の特別診査
委員会の報告はあるにしても、さらに研究調査班において十分に再調査をして、できる限り救済の方法を講じたいと、こういう
考えでございます。
〔
委員長退席、
理事細川護煕君着席〕
-
○
矢追秀彦君
委員長、関連。
いま長官が兵庫県でのことをおっしゃいましたが、いま
指摘されておる症例については、たしか県の調査の中には入ってないはずです。したがいまして、いま県のほうがないからというのが、それが正しいということは絶対に言えません。しかも、県の健康診断をやっておるこの
委員会というもののメンバーの中には、いわゆる萩野博士とか石崎教授のような、いわゆるイタイイタイ病をずっとやっておった学者の名前は入っておりません。したがって、私は、この兵庫県の健康調査特別診査
委員会というのは、あまり権威のあるものとは
考えがたい。しかも、いま申し上げたように、この三月十六、十七日の二日間にわたるこの会において出されました問題については、この中に入っておらないわけです。したがって、先ほど
小平委員が
指摘し、前にはまた
内田委員が
指摘しておりますように、もうこれは証拠は全部固められておるわけです。しかも、石崎教授あるいは萩野博士が地元の柴田医師と三人で論文を出しておりますが、そこにも問題となる症例は出てきております。ここにもはっきりと、これはもうイタイイタイ病であると、こういう認定もされておりますので、この際、もう長官はこれをイタイイタイ病と断定すべきだと私は思うんです。かつて
昭和四十二年の五月に私が初めて参議院の公害特別
委員会でこのイタイイタイ病を国会に持ち込みまして、当時は坊厚生大臣でございましたが、イタイイタイ病認定は、園田厚生大臣の大英断で公害病の認定が行なわれたわけでありますから、この際、三木長官も英断をもって、ここでイタイイタイ病であるとはっきり認定をされるべきであると、もう学術的な証拠は全部そろっておるわけですから。その点、くどいようですが重ねてお伺いしたい。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) 長官のお答えになります前に、事実問題につきましてちょっと御
説明申し上げておきます。
御
指摘のございましたこの三例でございますが、この三例はカドミウム研究集会——四十九年三月のカドミウム研究集会で発表されましたもので、そのうちの症例の第一の問題、これはなくなられた方でございますが、これにつきましては、現在までいまだ県の調査
委員会では検討いたしておりませんケースでございます。それから、症例二につきましては県がすでに見解を出しており、症例三につきましても県がすでに見解を出しておったものでございます。
このうちの症例の一というケース、なくなられたケースにつきまして、この骨軟化症とじん臓の尿細管の変化があるということにつきましての議論がございまして、この点につきましては現在まで研究班で発表されたということ以上の検討がされておりませんでしたので、その問題につきまして、もう一歩検討するということを申し上げたわけでございます。
-
○
国務大臣(三木武夫君) 先ほどからお答えしておりますように、石崎教授なんかの
指摘したそういう患者に対しては、これは徹底的に追跡調査をするということを申し上げておるわけでございます。
-
○
内田善利君 追跡調査ということですがね、もうこれで、
環境庁長官が最初におっしゃったように、骨の異変は出ているわけです。症例一も症例二も症例三も。骨がぼきぼき折れてるんです。それでもまだ調査をするとか何とかをするとか、こんなことを言っていて、なくなったらどうしますか。責任持ちますか。
-
○
国務大臣(三木武夫君) これは医学的なことでありますから、やはりそういう医学的な見地から——この問題は、将来においても、そういうふうな重金属の中毒患者に対して、その診断などにも大きな
影響を与えるわけでありますから、そういう
意味で専門的な見地からこれをさらに詳細な調査をしてみたいと、われわれとしてはできるだけ広く救済の手を差しのべたいと。しかし、問題は専門的なことであるから、専門的なそういうものを抜きにして
考えることは適当でないので、専門家による詳細な調査をやろうということを申し上げておるわけでございます。
〔
理事細川護煕君退席、
委員長着席〕
-
○
内田善利君 それではちょっと申し上げますよ。このなくなった青田さんについて、兵庫県と喜田村教授がですね、これにどう言ったか、尿中のカドミウム量が低いとか、あるいは骨軟化症は認めるが、じん障害で起こったものではないとか、そういうふうに言ってこられたわけですけれども、青田さんがなくなって解剖した結果、金沢大学で分析したら、やっぱり臓器が汚染しているわけです。それが判明したわけです。このように判明したわけですが、これは被害者の立場に立ったら、こういうことは言えないのじゃないかと思います。もしカドミウムがなかったら、こういう病気になりますか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いま先生の御
指摘になられましたような問題が学者の中での一番大きな論争点でございまして、私どもは、この問題につきまして、いろいろの学問の議論というのはできるだけはっきり聞いておいて、その上で行政としての決断をすべきことをしなければならないというぐあいに
考えております。
-
○
内田善利君 学問論争と言われるから少し申し上げますが、この青田さんの解剖所見が出たわけですが——金沢大学ではもう分析結果が出たわけですね。そうすると、県はどう言ったか、喜田村さんのほうが出ていないから、それが出るまでは言えないと、こういうふうに言っているわけですね。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いま御
指摘の問題は、このなくなられた方の病理検査所見につきまして、金沢大学と神戸大学と両方で材料を分けて検査をしたということでございまして、その検査の結果が両方が同時に出てくるというのが通常でございますが、それがまだやられていないということで、石崎先生がそのようにおっしゃったものというぐあいに
考えております。
-
○
内田善利君 もう少し言いますとね、先日、金沢大学の梶川教授のところに神戸大学の喜田村教授が来られて、そのデータを持ってきて、数値が高いので困った、そう言って相談に来ておられます。それを同じ教室におった学生その他の方々が見ておるわけです。こういうことが許されていいかということですね。もう発表になっている、困ったと言って相談に来ている。私は、これは先ほどの分析化学の問題とか、あるいは対州鉱業所のインチキとか、そういうことに五十歩百歩変わらないと思うのです。当然発表すべきだと思うんです。それがこのようにして困ったと、そういう相談に来ている、こういう事実をどのようにお
考えですか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いま先生の御
指摘で、国が隠蔽しているというようにおとりではないかと思いますので、一点だけ申し上げておきますが、カドミウム研究集会は完全な公開でございます。そういうことで、カドミウム研究集会につきましては、聞きたい人は来るということでございまして、また、その資料はほしい人は持って帰ったという形になっておりまして、私どもが特に隠蔽をしているという事実はございません。
-
○
内田善利君 行政当局が隠蔽しておると言っておるわけじゃないんですが、こういったことが行なわれている間に、こういう何といいますか、学者論争が行なわれておる間にだんだんだんだんなくなっていっていると。
環境庁であるならば、三木
環境庁長官はいつも疑わしきは救済すると、こうおっしゃっているわけですが、そういう立場に立てば、学者論争の前に何らかの方法で救済すべきである。カドミウム中毒症のこういう七人の新しく出てこられた方々、そういう方々は骨が痛くてどうにもならない
状態になっているわけですから、私は、これは人道問題だと思うんですね。だから、長官、何らかの方法で救済する方法をとってもらいたい、早急にとってもらいたい、こう思うんですが、いかがですか。
-
○
国務大臣(三木武夫君) カドミウム患者として認定するという以上は、やはり医学的にそういう診断が下されなければならぬと思います。われわれのほうとしては、できる限りそういう人たちを救済できるような手を差し伸べたいという
環境庁の
考えであることは、これはもう先ほど申しておるとおりでありますが、しかし、いやしくもこのカドミウムの中毒患者であるという認定を行なうときには、それだけのやはり医学的な一つの解明がなされなければならぬわけであります。しかし、いろんなこの症状があらわれておるわけでありますから、これに対してできるだけそういう人たちを救済するという見地から、この問題をもう一ぺん再検討をいたしたいというのが私が申し上げておる趣旨でございます。
-
○
内田善利君 まだ三木長官はイタイイタイ病患者に会っておられませんが、私は、ぜひ会っていただいて、早急にこういった方々を救済していただきたいと、こう思うんですが、いかがですか。
-
○
国務大臣(三木武夫君) いま国会にも健康被害補償法を提案をして御審議を願っておるわけでありますから、広く公害病患者に救済の手を差し伸べたいと、そういう気持ちから法案も提出しておるわけでございますから、できる限りそういう気の毒な中毒患者に対しては救済の手を差し伸べたいと、そういうことの見地から
考えてまいりたいと思います。
-
○
内田善利君 もう一回繰り返しますが、この三人の中の平井こたけさんですけれども、名前をあえて言いますけれども、
昭和四十七年十一月ごろから右股関節あたりに疼痛があり、両側胸部にも激痛を訴える、四十八年三月十五日のレントゲン線所見では右大腿骨の頸部に近く内側に骨改変層が見られ、左右の第七肋骨にも認められ、同日ビタミンD三十万IUの注射などを投与した、それだけで自覚症状は著しく
改善された。——
改善されたということはイタイイタイ病だったからなんです。なお、この症例と同じ部落の六十七才の女性で両大腿の疼痛を主訴とする患者が
昭和四十七年五月にあった、こういうふうに書いてあるわけですね。それから青田こたけさんは、先ほど読んだとおりでございますが、トイレに行ってすわったら、しゃがんだら、骨が折れたということなんですから、これはもう明らかにイタイイタイ病だと思うのです。それから木村わきさんですが、初診時激痛のため身動きできなかったが、V・D投与により次第に痛みは軽減し、約三十日で介助されて歩行が可能となった、これもイタイイタイ病であった証拠なんです。そうして現在日常
生活は不自由はないということなんですね。これは明らかにビタミンD投与によってカルシウム、無機燐の
改善が見られたということなんですね。そうして骨所見は初診時に右大腿骨左右の第七肋骨骨改変層が見られた、しかし大腿骨ではまだ改変層が認められた。こういうことになりますと、カドミウムの汚染地区で骨が症例三人とも侵されているわけですから、明らかにこれはイタイイタイ病だと、だれが見ても私は
考えられると思うのです。それがいままで学者論争によってこのように救済されていないということに対して、私は、行政当局がこの問題については積極的な姿勢で、しかもこういうことが出ているわけですから、ことしの三月にですね。こういう所見が出た以上は、しかも鑑別班の先生が二人もいらっしゃるということであるならば、検討とか言わないで、早急にこういった人たちを救済すべきである、こう思うんですが、いかがですか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いま先生の御
指摘でございますが、先ほど長官からお答えいたしました、できるだけ救済するという見地より、もう一度検討するということを早急に進めたいというぐあいに
考えております。
-
○
内田善利君
環境庁長官、私は、どうしても納得できないんですがね、あの病人たちの姿を見て、こういう論争をしていたんでは全くかわいそうだと思うんです。自分のしわざで病気になったんならいざ知らず、生野鉱業所から流れてきたカドミウムによって知らず知らずの間に汚染されてきた、そして足腰が立たなくなってきた、そういう人たちを公害病救済法がありながら認定もしない、そして救済もしない、そういう行政は人間的あたたか味のある行政とはいえないと思うんですが、何らかの方法で、長官、早急に救済していただきたい。個人的見解でもいいから救済するという約束をしていただきたい、こう思うんですけれども、いかがでしょう。
-
○
国務大臣(三木武夫君) こういう疾病の判定は、まず県のレベルで行なわれることになっており、兵庫県の場合は健康調査特別診査
委員会が設けられており、そこでまず判定されることになるわけです。やはりわれわれとしては、
環境庁が行って一々診断をするわけではないわけですから、県が診査するためのそれだけの機関ができておれば、その結論というものを尊重するということ、われわれとしてはそういう上に立ってやらざるを得ないわけでありますが、ほかの石崎教授や専門の萩野博士等から、これはイタイイタイ病の患者であるというような発表が、ほかの学者等からも出ておるわけでありますから、そういう問題については、これは県のその調査のための
委員会ばかりにまかすというのでなく、そういう学者の意見もあるから、それも踏まえてもう一ぺん十分再調査をしたいと申し上げておるわけでございまして、それは御理解が願えると思うのでございます。
-
○
内田善利君 県に勧告をされたらどうでしょう、県に勧告を。これは
環境庁で行なわれたものですね……。
-
○
国務大臣(三木武夫君) 県としても十分打ち合わして——県だって、カドミウムの患者を、患者であるものを隠しておろうという、そういうふうな
考えはあるはずはないわけです。地方の行政をやっておるものとして、ことに患者であるものを隠して患者でないという、そんな必要は県としてあるわけはないわけですから、そういうことで県とも十分連絡をとって、ほかの教授からこれはカドミウムの患者であるという
指摘を受けたような人については、もう一ぺん十分な調査をして、できる限り救済の方法はないかという角度からもう一ぺん再調査をしようということを申し上げておるわけでございます。
-
○
内田善利君 この富山県の神通川流域の場合と差異がありますか、どうですか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) 神通川の場合と差異があるかという御
指摘でございますが、先ほどの剖見所見のある方につきましての御意見につきましては、差異はなかなか見出しがたいものがあるというように私どもは
考えております。
-
○
内田善利君 神通川と同じであってどうして認定ができないんですか。
環境庁長官、どう思いますか。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) この認定につきましての問題で、いま私どもが一番苦慮しておりますのは、学説としての論争があまりにも激しいというところに行政としてのどちらに踏み切るかというところで悩んでおるというところでございます。
-
○
内田善利君 学問的にはイタイイタイ病について解明されてない点があります。ありますが、患者を放置するということはどういうことでしょう、長官。これで終わります。
-
○
政府委員(
橋本道夫君) いま御
指摘の問題は、認定患者を放置しておるわけではございませんで、認定するというところまでの段階でいま私どもが苦慮いたしておるということでございます。非常に残念でございますが、そのような
状態でございます。
-
○
委員長(
鹿島俊雄君)
内田君の残余の質疑は明日これを行なうことといたします。
明日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後五時五十分散会