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国務大臣(
田中角榮君) 参議院選挙なんか意識しておる
物価対策じゃないことを、まず明らかにいたしておきます。
昨年異常な
物価高があったわけです。異常な
物価高。これは昨年というよりも、四十七年の下期ぐらいからずっとあったわけですが、これはいろいろな要因がずっとつかめてまいりました。その上になお
石油問題という異常な
物価高があったわけですから、これをノーマルなものにやらなければいかぬと。ノーマルなものとは何ぞやということでございますが、それはまあ国際的に一番わかりやすく言えば、主要工業十カ国の中で、
日本を除いた九カ国の
平均といえば、ここらプラス・マイナス、みんな各国に別があっても、一つの水準にはなるでしょう。そういうことから言うと、
昭和四十六年の下期ぐらいを安定的なものとして、それにずっと引き伸ばしたものと九ヵ国の
平均というものを合わせれば、大体その差が、異常
物価の
部分が出てくるわけです。そこまでには、統制経済ではありませんから、びっしりはいけませんよ。いけませんが、おおよそのめどというものはつくじゃありませんかと、その線を、幾ばくかのカーブがあっても、そのラインに沿っておるという、そこまで引き締まれば
物価は抑制されたということは間違いないわけです。
もう一つの見方は、そういう異常だったものが、
石油価格のように、おそまきながらでもみんな吐き出させをしたり、将来も相当――
通産大臣が鼻血を出すというところまでと言いましたが、そういう状態まで見通して
石油価格をきめた。この
石油価格と同じように、これはもう元値は上がっているわけですから、賃金が上がり、何が上がるということで、
数字で
計算されるものは、これは認めざるを得ないと思うのです。そこで、利益がいままでは二%でよかったものを、一二%見たら一〇%分はこれは異常利益であるということになるわけですから、だから、その超過利得を吸収しようということにもなっているわけです。そういうものが全部、いまの
石油価格をきめたような状態で安定的に推移をすれば、
物価は抑制されたということになると思うのです。ですから、そういうような見通しがつくまで
物価は押える。いまのやつは相当荒っぽい
やり方でございますが、しかし、これは荒っぽくやらなければ
物価の上がり方がもう荒っぽかったわけですから、これはやはり相当荒っぼくやらなければだめだというので、国民に理解を求めてこういう体制をとっているわけです。しかし、これは
小野さんも御指摘になったし、あなたも御指摘になったように、いつまでもいつまでもやっていけるわけじゃないのです、これはね。ですから、これが改定されるとしても、前、前でもって改定をするというのじゃなく、結局こういう
事情でということで国民がみな理解をする、
石油価格もこうなりました、賃金もこうなりました、電力もこういう、そういうような
原価計算がずっとできて、コストアップの
数字が全部積み重ねられていけば、その
部分、そうしてその
部分における利潤も据え置いて、そうして決定をすれば、それは認められる
価格だと思うのです。ですから、そういういろいろな目標を持ちながら長期的な安定ということをやろう、こう
考えているわけです。
ですから、さっき
小野さん、非常にポイントの発言でございますが、押えていると物が生産縮小になっちゃって、これは需給の
関係がくずれてくる。それはまあ途中、中でもって抱いているものは金融の水ぶくれをとって、正常なルートで流れなければいかぬということで、まず一つの締めはやろうと
考えているのです。そうすると、まあ先高にならないように消費者には必要な品物は必ず供給しますから、とにかく貯蓄をやってくださいということで、消費抑制を訴えているわけです。残るのは、まあやったってもうからないから、じゃあ生産を縮小するか、生産をしても海外に出すかということでございます。この海外に出せるような状態――国内を海外よりもうんと安い
価格で押えようとする、これは無理です。いままでは、国内はいろんな税金がかかっていますし、海外へ出るものは安いわけですから、だから国内で高く売って海外に安く売るのは何事だと、これがまあ実情だったわけです。今度は、海外に売ればもうかる、そうして国内に売れば損だという場合には、普通の商売的な感覚からいえば、もうかるほうにいくというのがあたりまえだと思うのです。思うのですが、それをあまりやっていけば、今度はアメリカのように輸出禁止と、こういうことになるわけですから、これは輸出を
調整するというのは相互に関連しておりますから、これは入るもいずるも制せられるということになりますが、そんなことまでしなくても、第二、第三の荒っぽいことをしなくても、十分いろんなめんどうを見ているわけですから、
政府も。ですから、そこらで商売をやめちまって土地を買ったほうがいいというような、そういう商売と同じように、国民が幾ら困ろうが輸出に出そう、こういう状態は、それこそ行政権が
調整をしなければならない分野である。これは十分
調整をしていきます。ですから、まあもうからないのだから生産を縮小しようというのではなく、もうけが少ないし、少し赤字だけれ
ども、
政府もまあどこかで見てくれるだろう、国民
生活のためにはやはり社会的な責任を果たしていこうというふうに誘導していかなければいかぬというところが
政府のむずかしさだと思います。将来もうかるのだし、また過去ももうけたのだから、ここ一年や二年、とにかく
政府になったと思って協力してくださいよと。ここらが行政の非常につらいところだ、こういうふうに理解していただきたい。