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国務大臣(
田中角榮君) 問題は、自由企業、自由
経済を原則としておるということが
一つでございます。自由
経済の中にあっても、企業の社会的公共性は守られるべきである。そしてその裏側から申し上げると、反社会的な行為は許されない、こういうことでございます。で、反社会的行為というものに対してどういう制裁があるのかというと、これは違法行為が行なわれれば、立件せられて科罰せられるわけでございます。また、税のように立件はせられなくても、第二の
段階として追徴金を課されるということもございます。重加算税までは、立件はしないが重加算税は課すぞということがございます。それから、そうではなく、また第三の
段階においては、厳重警告を発し、以後やってはならない。以後やったら出入り禁止にするぞと、公入札も参加権を停止をすると、こういう
行政的な手段がございます。これは米やモチ米の問題等に際して、農林省の取り扱いの免許を取り消すと、こういう手段、外米を入れる権利を剥奪すると、こういうようないろいろな
段階があるわけでございます。
段階があるから、ちゃんとそういうものに対しては適切なる処置が行なわれるようになっているわけです。そこまではいかないが、自由企業は利益というものを追求するものである。企業とは適切なる利益を追求するものであるということであっても、いろいろな手練手管を講ずることによって、社会的に見て適切ならざると思われるような方法で金をもうけておる者を一体どうするか。こういう問題が問題であるわけです。違法行為があれば自動的に、法律的に処罰をされるわけですから。処罰には至らないが、
国民がこれだけ物価問題でもってせつながっているときに、そこらを、ましていろいろなことをしながらもうけているような者は、少なくとも反社会的な行為じゃないかと、これが国会における御審議でございます。そうでなければ、国会だって告発でも何でもできるわけですから。そうじゃなく、こういうときに、
国民が困っているときに、自分はもうけ得る立場であるというようなことで、もうけている者は反社会的と認めないか。罰は受けなくても、政府がそういうようなもうける人に政府機関から金を貸したりしていることはおかしいじゃないかというのが国会における結論なんです。そうでしょう。ですから、それは必要であっても、とにかく輸銀でもって長い金を貸し、しかもそれに海外
経済協力基金を抱き合わせたり、そういうようなことをするときには、反社会的な行為をした企業はやっぱりある
程度の制約を受けるべきじゃないか。これは国会議員としては当然論戦として出てくる問題だと思います。
開発銀行でもそうじゃないかということでございます。ただ、開発銀行とか輸銀とかというものは、
一つには国益を守るためにつくられた機関であることは事実でございます。これは返済能力があるかどうか。それから他に比べて、そういう金を貸すことによって、
国民生活にプラスをもたらせるかどうかということだけでございます。相手が、多少前にいろんなことをやった人でも、安いものを入れてくれて、国益が守れるなら貸せると。これは純
経済的に
考えなければならぬのであって、これはかって罰を受けたから、前科があるからというようなことで、政府関係機関の貸し出しも対象にならぬということではないわけです。もしそうであるならば、他にそれにかわるべき保証人が出れば当然貸さなければならぬ。ところが、もうそれを貸さないということになったら、今度法律によらずして差別をすると憲法違反の問題が起こってまいります。これはもう当然なことです、これは。ですから、
国民がひとしく持っておるものを差別するということをやるわけですから、
行政権において差別をするということを
高橋君がさんざん言っているように、幾らでも
国民の生活を制約する場合には法律によらなければならぬと書いてあるじゃないかと。だから、
石油を安く押えるについても、
行政指導でやることにははなはだ遺憾であると、こう述べておるのが、そういうわけですから、これはやっぱり政府関係金融機関といえども、ルールがなくて、社会が公共性ということでこれは認めるという厳粛なルールがなくして、政府の恣意によって差別ができない、これはひとつ御理解をいただきたいと思うんですよ。ですから、何万種類も扱っているものが、一種類悪いことをしたからといって、これはすぐ反社会な企業だと、その会社が要請する輸銀資金は全部対象にしないということはできないので、そういう
意味で、ルールづくりは各省で専門家を入れて十分
考えましょうと。普通なら、これは野党の方々は、これは法律によらなければ、政府の恣意によったらまたどうも自民党系みたいなところばかりやるといかぬから、そういうものはいかぬ、法律によってきめるべきだと、こういう議論が普通なら起こってくるわけでございます、普通なら。しかし、どうもこの雰囲気の中じゃ、あの連中は罰さえ受けなければ何でもやるしろものだから、ここらでひとつ押えろという、こういう
国民的感情、わかります。だから、政府もそれに対して、
行政権行使の過程においてでき得るものに対しては採用いたして
努力を続けてまいりますと、こう述べておるわけですから、そこをそうあんまり拙速を旨としてばたばたとやってしまうと、手ぎわはよかったな、決断もしたなというかわりに、憲法違反と、こういう問題が出てくるわけでございますし、
行政訴訟を受けて立つという種のものである。これはもう確かにそうであります。ですから、そういう
意味で、政府は、御指摘になること十分わかるのです。それに対応して前向きの
姿勢をとろうということを言っているのですが、これは
行政権の行使に対してはより慎重でなけりゃならぬということはもう当然なことでありますから、そこらはひとつ御理解いただきたい。