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国務大臣(
田中角榮君) 二十六年間何もしておらなかったのじゃございません。これはもう十分やってきたんです。そして、ここでもって明らかにしておきますが、労働基本権を尊重しなければならぬことは当然のことであります。労働なくして
国民の生活がないわけでありますから、これはもうあらゆる面に対して労働の基本権が尊重さるべきことである、これはもう申すまでもないことであります。もちろん、団結権もスト権も、憲法、法律で認められておるものでありますから、当然の権利行使であると考えております。ただ、二十六年間もかかってできなかったのは、それなりの、二十六年間もかかってできないのだからそれだけの理由があるのです。
なぜかというと、一方の民間の
企業は、労働基本権を認めております。団結権もスト権も認めております。ただ、公労法による、昔は官であったもの、いわゆる戦後、メモランダムによって三公社五現業といういまの制度、これはまことに中途はんぱじゃないか、アメリカのモルモットになるのじゃないか、こんなことは日本じゃ適合しないという反対を私はしたのです。私も議員でしたから、二十二年から。こんなものはおかしい、どっちかにしなさいと、もうはっきり。日本人はどうも中途はんぱはだめなんだと、右か左で言うんじゃなく、もう官か民間かどっちかだと。中途はんぱになっていくと非常にむずかしい問題が起こってくるからというんで、私たちは反対して、当時ケーディス氏やウイリアムズ氏やホイットニー少将に呼びつけられて、おどかされたことがあるんです。そういう経緯をもってこの法律が通っておるわけであります。
ですから、御承知の、逓信省が電気通信省になり、電気通信省が電電公社になったわけです。鉄道省は日本国有鉄道法になったわけです。だからそういうときに——あれはまあ行政組織の改編命令が出まして、で、
国会の会期末であってたいへんなときにどうしても通せと、内務省の解体ということが
前提でございましたから。そういうときに、時間のないときにあの設置法も何も全部メモケースでもって、あの当時は付帯条件さえもオーケーがなければ許さぬというときでございました。そういう事態でございますから、いまでも郵政省設置法、日本電信電話公社法、日本国有鉄道法は日本語じゃないということは、これはもう直訳文章であるということは、だれでも認めておるところでございます。
そういう経緯をもって公労法というものが出ましたので、——その当時は、憲法草案に対しての芦田
委員会の
委員長報告と同じことで、憲法に優先する権限に対してこれしか言えないのかというような激越な気持ちがございましたから、理想を説いてみな賛成しなきゃならぬし、やむを得ないからやったけれども、腹の底から叫んだということは事実だ。それは川崎君の
発言もそのとおり、私は承知しております。
しかし、いまその三公社五現業というのが、まあ
国民の一部で言われているように、民間では純民間の機構であっても、電力会社やそれから石炭は、ストライキ禁止法が臨時立法だったものが、時限法がずうっといまでも延びておる。この問題を先に解決しないで、いわゆる三公社五現業にスト権を与えるなどということは、それは本末転倒もはなはだしいという議論があるわけです。親方日の丸だという、とにかく、最終的には
国民の税金を対象にしておるというものが、一番労働運動の先頭に立っておるという事実は、これはいかぬということは
国民の大きな声なんです。
ですから、私たちは、まず国有鉄道は、昔はどうにもならぬときでしたから——しかし、もう道路ができ、飛行機ができ、何でもできてるときに、国有鉄道といういわゆる法律による鉄道が国有でなけりゃならぬのかどうか、これは民営にしたらどうかという問題は、二十六年間議論されてきているわけです。そのときには、大蔵省が出しているものを全部出資をして、まあ、いまだったら十兆円か二十兆円、五十兆円の会社をつくってやりゃいいじゃないかと。ちゃんと電力会社はうまくいってるじゃないか、日本航空はちゃんとやってるじゃありませんかと。国有鉄道というのは、中途はんぱなことをずうっとやってるところに問題があるのだというのが一つあります。
それはもちろん、たばこなんかやってる専売も、これはいろいろありますよ、第二国税庁の用もなしているからと。しかし、外国は全部たばこ会社がやってるんですから。それならもっと自由になるし。しかし、たばこは、税金だけはちゃんと
政府が先取りできるように法律に明定しておけば、専売局でなくていいじゃないかという議論も二十六年間やられてきたわけです。いまもう、専売局を会社にしておって、その株を担保にしてメジャーの株でも買っておけば、こんなことにならなかったなあということが新聞に書いてあるんですから。そうでしょう、これは事実問題ですよ。こういうものでお互いにやっぱり本格的に話をしないと片づかない問題なんです。
林野庁の問題でも何でもそうなんです。これはとにかく地方にやるか——国の大半を地方にやるわけにいきませんわ、国土の八五%もが林野庁の所管ですからね。これはまあ何とかして国が持っておかなきゃいかぬ。せめて国と地方公共団体で持とうと。そういうような
考え方で、専売局にしても、電電公社にしても、——電電公社などはもう民間に移すということであったのです。それでぴちっとその比率は保持しておくと。ですから、電電公社はまだ借家にいるわけです、あれはとにかく民間がつくったところに入っているわけですから。そういう意味で、三公社五現業をいかにして民間に移すのか、特殊会社にするのかということもあわせて検討してまいりましたが、ざっくばらんに言うと国有鉄道でありたいと——これはまあそれはそうでしょう、鉄道省に入ったんですからね、民間に入ったんじゃないんですから。だから、それは鉄道省が国有鉄道になっただけでもそんなになるのだから、国有鉄道でおりたい。スト権は民間とともに持てと。そうすると、どうしても電力会社を飛び越しての話であるということで、これは
国民的な感情においてもなかなか首肯されないのですよ。そういう問題を、われわれも長いこと
政府の中でも与党の中でも検討しております。
ですから、ほんとうにこれでゼネラルストライキがどんどん行なわれるようになれば、私はほんとうに制度上の問題を
国民の前に訴えて、どっちかに、もう二十六年間も三十六年間もこんなことやっておられませんよ。ですから、民営にするなら民営にする、法律出しますと。そうしてそれを
国民に問うて、そうして根本的にやらないと、それを飛び越して消防庁の職員にやりなさい、そのうちに一般の——まあしかし行政職だったらいいだろうが、そのうちに警察官も検事も裁判官もと、いずれほんとうにそういうエスカ
レートするおそれがあるということを現に論断されておるわけでありますから、それはやっぱり労働基本権というものは何でもかんでも認められるものじゃない。やっぱり国家公益のものという、やっぱり三権の中で司法権とか立法権とか……