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1974-03-16 第72回国会 参議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十六日(土曜日)    午前十時十二分開会     —————————————    委員の異動  三月十六日     辞任         補欠選任      棚辺 四郎君     後藤 義隆君      黒住 忠行君     志村 愛子君      熊谷太三郎君     稲嶺 一郎君      小笠 公韶君     大森 久司君      今泉 正二君     平島 敏夫君      高橋雄之助君     内藤誉三郎君      鈴木  強君     神沢  浄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鹿島 俊雄君     理 事                 片山 正英君                 嶋崎  均君                 西村 尚治君                 細川 護煕君                 吉武 恵市君                 小野  明君                 加瀬  完君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君     委員                 稲嶺 一郎君                 大森 久司君                 大竹平八郎君                 梶木 又三君                 木村 睦男君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 後藤 義隆君                 志村 愛子君                 高橋 邦雄君                 高橋雄之助君                 竹内 藤男君                 内藤誉三郎君                 中村 禎二君                 濱田 幸雄君                 原 文兵衛君                 平島 敏夫君                 米田 正文君                 上田  哲君                 神沢  浄君                 小柳  勇君                 辻  一彦君                 戸叶  武君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 宮之原貞光君                 山崎  昇君                 柏原 ヤス君                 加藤  進君                 須藤 五郎君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  中村 梅吉君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  徳永 正利君        郵 政 大 臣  原田  憲君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (近畿圏整備長        官)        (中部圏開発整        備長官)        (首都圏整備委        員会委員長)   亀岡 高夫君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      町村 金五君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       二階堂 進君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       小坂徳三郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       保利  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山中 貞則君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       内田 常雄君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       森山 欽司君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        総理府賞勲局長  吉原 一眞君        総理府人事局長  皆川 迪夫君        総理府恩給局長        事務代理     菅野 弘夫君        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        公正取引委員会        事務局経済部長  熊田淳一郎君        防衛庁人事教育        局長       高瀬 忠雄君        防衛庁衛生局長  鈴木 一男君        経済企画庁物価        局長       小島 英敏君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        経済企画庁調査        局長       宮崎  勇君        法務省入国管理        局長       影井 梅夫君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局長       鈴木 文彦君        大蔵省主計局長  橋口  收君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        厚生大臣官房審        議官       三浦 英夫君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省社会局長  高木  玄君        厚生省児童家庭        局長       翁 久次郎君        厚生省年金局長  横田 陽吉君       農林大臣官房長  大河原太一郎君        農林大臣官房予        算課長      渡邉 文雄君        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        農林省農蚕園芸        局長       松元 威雄君        農林省畜産局長  澤邊  守君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        食糧庁長官    三善 信二君        林野庁長官    福田 省一君        水産庁長官    内村 良英君        通商産業審議官  森口 八郎君        通商産業大臣官        房審議官     兵藤 節郎君        通商産業省通商        政策局長     和田 敏信君        通商産業省易貿        局長       濃野  滋君        通商産業省産業        政策局長     小松勇五郎君        通商産業省基礎        産業局長     飯塚 史郎君        通商産業省機械        情報産業局長   齋藤 太一君        資源エネルギー        庁長官      山形 栄治君        資源エネルギー        庁次長      北村 昌敏君        資源エネルギー        庁石油部長    熊谷 善二君        資源エネルギー        庁石炭部長    高木 俊介君        資源エネルギー        庁公益事業部長  岸田 文武君        運輸大臣官房審        議官       原田昇左右君        運輸省海運局長  薗村 泰彦君        運輸省船員局長  住田 俊一君        運輸省港湾局長  竹内 良夫君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        運輸省自動車局        長        中村 大造君        労働大臣官房長  北川 俊夫君        労働省労政局長  道正 邦彦君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君        建設省計画局長  大塩洋一郎君        建設省住宅局長  沢田 光英君        自治大臣官房長  山本  悟君        自治省行政局公        務員部長     植弘 親民君        自治省財政局長  松浦  功君        消防庁長官   佐々木喜久治君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        日本国有鉄道総        裁        藤井松太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  まず、内閣総理大臣より発言を求められておりますので、これを許します。内閣総理大臣
  3. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国会で御論議がございました行政指導による石油製品価格決定等について申し上げたいと存じます。  国会で御審議をいただいておりました重要な問題でございますので、昨日及び本朝にわたり、高橋公正取引委員長及び吉國法制局長官を交えまして意思の疎通をはかりました結果、左記のとおり合意を見ましたので、まず申し上げておきたいと存じます。  「石油については、原油価格需要動向等価格決定要因が極めて流動的で、今直ちに標準価格を設けることは困難なので、とりあえず行政指導価格によることとするが、国民生活に密接な関係を有する品目については、今後の推移を見まもりつつ、適当な時期に標準価格に移行するよう努力することとする。」  以上であります。
  4. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 引き続き、石油製品価格決定について中曽根通商産業大臣並びに内田経済企画庁長官より発言を求められておりますので、順次これを許します。通産大臣
  5. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府は、物価高騰国民生活及び国民経済に及ぼす影響にかんがみ、輸入原油価格上昇に伴う石油製品価格引き上げにつきましては、きわめて慎重な態度を持しておりましたが、今般やむを得ず必要最小限石油製品価格値上げを認めざるを得ないことになりました。本日の党及び内閣生活安定本部会議並びに閣議を経まして決定いたしましたので、まず御報告を申し上げる次第でございます。  基本的な考え方といたしましては、石油適正供給を確保して公害対策等に遺漏なきを期するため、石油必要最小限値上げを認めることといたしました。値上げは、国際水準物価政策を考慮して最小限にとどめ、その際、石油企業の過去の便乗利益を全面的に吐き出させるとともに、内部留保処理等国民感情に合致した石油企業の自粛と協力をまず求めることといたしております。  また、本措置により、世界的石油価格上昇に伴う日本経済の新たな基礎的均衡条件を整えるとともに、国際的に公正競争を行ない、日本経済構造的対応と長期的安定をはかるよう、国民及び企業に対して一そうの節約と質的充実への努力を要請する次第であります。  物価の鎮静安定に対する対策につきましては、経企庁長官から御報告があると思います。  そこで、石油製品価格改定でございますが、前提条件といたしまして、公共料金につきましては引き続いて極力これを抑制する、それから石油及び電力の規制は引き続いてこれを継続する、そのほか、総需要抑制設備投資節減等物価安定対策はさらに強力に推進する、こういう前提のもとに、輸入原油価格上昇に伴う石油製品価格引き上げ幅を、元売り仕切り価格の全油種加重平均引き上げ額キロリッター当たり八千九百四十六円の水準にとどまるよう指導いたします。  なお、いまだ原油の需給、価格動向等、流動的な要因が多いので、今後の原油価格為替レート等の基調に変化が生じた場合には、必要に応じて再検討することとしております。  この八千九百四十六円という水準は、二分の一の平均法によりました。新聞では四分の三バルクラインという思想が出ておりまして、そういうことも一時期政府は検討したことはございますが、それよりもさらにきびしい態度をとりまして、二分の一の平均法ということで、これによりますと、企業の半分は原価が赤字になる、半分は黒字になる、こういうことになることであります。なお、為替レートは二百九十円、これは過去三カ月の平均値でございます。それにしてあります。  それから油種別価格につきましては、今需要期家庭用灯油価格を据え置くとともに、家庭用液化石油ガス価格については当面これを据え置くほか、軽油A重油についてはその引き上げ額を可能な限り低く押えるよう指導いたします。詳細につきましてはエネルギー庁長官から御説明を申し上げます。  なお、流通段階においては、各油種を通じ、元売り仕切り価格上昇分以上の値上げを厳に抑制するとともに、ガソリン軽油及びA重油小売り価格については特別の指導を行なうこととしております。  これらの措置は、本日決定いたしまして、三月十八日から実施することといたしました。  以上、とりあえず御報告申し上げます。
  6. 鹿島俊雄

  7. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) この際、このたびの石油価格改定に伴う物価安定対策強化について御報告を申し上げます。  政府は、物価高騰国民生活及び国民経済に及ぼす影響にかんがみまして、物価の安定を最重要施策として国民生活の安定を守るために最大の努力を払っておりますが、輸入原油価格上昇に伴う石油製品価格引き上げが他の物資に波及し、国民生活を不安におとしいれることはぜひとも回避しなければなりません。このため、引き上げ幅必要最小限度にとどめるとともに、石油関連製品を中心とした基礎物資及び生活関連物資等価格の安定をはかるために、次のような措置を講ずることといたしております。  第一は、基礎物資生活関連物資等価格抑制のための緊急の対策であります。すなわち、塩ビ樹脂塩ビパイプ等石油関連製品をはじめとして、小形棒鋼中形形鋼セメント等基礎資材や、小麦粉、しょうゆ、砂糖等、その価格の安定のため特段の措置を必要とすると認められる物資を選びまして、これにつきましては、当分の間、原則として価格引き上げを行なわないよう関係企業に要請して、その据え置きを求め、その価格引き上げようとする場合には、当該物資主務省事前了承を得ることとするよう指導を行なうことといたしております。また、流通段階における価格の安定をはかるために、総合商社、百貨店、スーパー等に対し、生活関連物資等価格抑制のための所要措置を講ずるよう要請することといたしております。  以上のほか、広く関係各方面に対して、値上げ抑制のための協力方を要請いたしますとともに、主務省において行なってきた特定物資についての値下げ指導をも引き続き行なうとともに、その他の物資についても、価格の監視その他所要措置を講ずることといたしております。  第二は、価格抑制のための実行体制整備国民生活安定緊急措置法等機動的運用をはかることであります。  政府といたしましては、前述の諸措置の実効を期するための体制整備するとともに、生活関連物資等に関する緊急措置に関する法律及びいわゆる投機防止法等機動的運用をはかり、必要に応じて物資追加指定をも行なうことといたしております。  公共料金につきましては、その実態に応じて極力これを抑制するとともに、各般の総需要抑制策については、引き続きこれを堅持することはもとより、必要に応じ、さらにその強化をはかることといたしております。  このような諸措置を講ずることによりまして、石油価格改定国民生活及び国民経済に及ぼす影響を可能な限り吸収、緩和してまいりたいと存じます。  以上御報告申し上げます。
  8. 鹿島俊雄

  9. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 簡単に補足的に御説明申し上げます。  今回の値上げ幅は、原油価格につきまして、通関統計によりまして実績各社別にはじいたわけでございまして、船積みごとにこれをはじいた実績平均値によったわけでございます。なお、原油代につきましては、現在暫定仮払いによって輸入が行なわれておりますが、今後産油国国際石油会社との折衝に伴い追徴金支払いが予定されるのが実情でありますけれども、一応現段階におきましては追徴予定分は算入せず、これをはじいております。  為替レートは、先ほど大臣の御説明にありましたように、一ドル二百九十円といたしたわけでございます。  また、諸経費の増につきましては極力圧縮いたしますとともに、利益は四十八年度上期の半額程度にとどめて、これからの四月−九月の計算をいたしたわけでございます。  この結果、原油輸入代金は、四十八年度上期五千百九十二円−キロリットルに対しまして、一万九千二百八円−キロリットルと、一万四千十六円の値上がりがしておるわけでございますが、これを古い油と新しい油を平均して評価することによりまして減額をいたします一方、原油輸入価格上昇に直結いたしました値上げ要因、その他の値上げ要因を加算いたしますと一万三千七百五十九円と相なるわけでございます。  以上が一応の計算でございますが、今回の値上げは、四十八年十二月の価格水準から幾ら上がるかということが問題でございますので、これを四十八年上期から十二月までの修正をいたしまして、上期における、何といいますか、超過、先取り値上げ分的なものを全部吐き出させるというかっこうにいたしまして、これらの要素を集計いたしまして値上げ幅を八千九百四十六円といたしたわけでございます。この辺の数字につきましては、後刻資料として御提出を申し上げたいと思います。  なお、四十八年の十−十二のいわゆるもうけ過ぎといわれているものでございますが、これも後刻直ちに資料で御提出申し上げたいと思いますが、十−十二の計で、われわれのほうといたしましては、総平均法考え方に即しましてマクロ的なモデル計算としてこれを計算いたしました結果、六百五億円という計算が出ております。この金額は当然に全部吐き出させるということが今回の一つの基本的な考え方でございます。  なお、これも資料で後ほど全部御配付申し上げますけれども、八千九百四十六円−キロリットル油種ごとに全部引き上げ限度額というかっこうガソリン、ナフサ、灯油軽油重油と開いたわけでございまして、この考え方といたしましては、灯油LPにつきましてはこれを据え置く、それから軽油A重油につきましては、政策的な配慮を加えて等価比率で開いたものよりもこれを低く押えるということにいたしたわけでございます。  なお、いまのは元売り段階油種の開きでございますが、末端の小売り価格指導につきましては、元売り仕切り価格上昇分以上の上昇を認めない、いわゆる経費の増というものは認めないで油代値上げ分だけでこの際はごかんべん願うというかっこうを基本的な考え方にいたしております。この場合、いま申し上げましたように、灯油LPにつきましてはこれを据え置くわけでございますが、ガソリン軽油A重油につきましては、特に流通マージン段階におきましてこれを節減をはかりまして、ほぼ七%から一二%程度節減をはかって、できる限り低くこれを押えるということにいたしたわけでございます。これも後ほど資料をお配りいたしますが、ガソリンのレギュラーにおきましては店頭現金売りでリットル当たり九十四円二十銭、それから軽油につきましては店頭・スタンド現金売りでリットル当たり五十五円、A重油におきましては八ないし十キロリットルタンクローリー工場等へ持ち届ける場合、この場合には、遠隔地等配達費のかさむ場合は別途実費の計算があるわけでございますが、原則としてタンクローリー工場等へ届ける場合にキロリットル当たり二万九千円ということを当面の指導価格にいたしたわけでございますが、これは今後の推移を慎重に見守りつつ標準価格等への移行も検討してまいるということが基本的な考え方でございます。  非常にはしょりましたけれども、簡単に御説明いたしました。     —————————————
  10. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 前回に引き続き、小柳君の質疑を行ないます。小柳君。
  11. 小柳勇

    小柳勇君 ただいま発表になりました石油値上げの問題で一、二質問いたします。あと細部の問題は同僚前川議員が質問いたしますから、私は二、三点にしぼって質問いたします。  その前に、以前から閣僚は三月中に値上げはしないということを言明しておられた。しかも、きのうも上田委員カルテル行為に類似した行為があったということで問題にした。きょう発表されたことは不満です。不満でありますが、発表されましたので、あと質問いたします。  先取り分を吐き出さしたと、詳細は資料を見ますが、六百五億円も累計の黒字があったのでありますから相当のものがあると思うが、その概要について一、二御報告願いたい。これが第一の問題です。  それから第二の問題は、これは経済企画庁長官でありますが、卸売り及び小売り物価上昇に対してどのくらい影響があると考えておられるか、この問題を御答弁願います。
  12. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 通産大臣がお話し中でございますので、私のほうから先にお答えを申し述べさしていただきます。  先ほども御報告を申し上げましたように、私どもといたしましては、石油製品価格値上げがございましても、それを他の関連物資のいわば先取り値上げ、あるいは企業努力の中に吸収原則としてさせまして、そのために卸売り物価消費者物価等値上げをしないような、そういう方途をとってまいりたい。しかし、それだけでやれるものではない。はみ出すものも考えなければなりませんけれども、それは、これも先ほども御報告申し上げましたように、総需要抑制等の効果を通じ、さらにまた、油が上がりましても、後に先取り利益を吐き出させて値下げをさせるというような、最近までの物資主務官庁努力をも続けていただくこと等々によりまして、いま申し上げるような成果を期待し、努力をいたす所存でございます。
  13. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四十八年末の製品値上げによる石油会社利益等について結果を御報告申し上げますと、六百五億円の先取り値上げによる利益が出たと見込まれるものは、十月においてマイナス五十八億円、十一月において二百十三億円の黒字、十二月において四百五十億円の黒字とわれわれは算定しております。それで、こまかい数字はあとで御報告申し上げますが、大体マクロ計算によりますと、石油会社全体の四十八年度下期赤字額を算定すると、下期中における元売り仕切り価格を据え置くときは、つまり十二月の水準で据え置いてみた場合に、昨年末の製品値上げによる利益を全額吐き出させ、かつかなりの企業努力前提しても、千八百四十億円程度の赤字となります。しかし、今次値上げを実施して、その結果、三月は途中で値上げになるわけでありますから、その結果、石油会社全体としての赤字は、九百二十億円程度になるものと推定しております。  それから、会社別の経理の内容でございますが、これは会社の名前を出すことは控えさしていただきたいと思いますが、代表的なものを申し上げますと、かりにA社といたしますと、三月十八日八千九百四十六円の値上げを実施した場合の会社の営業損益、四十八年度下期の予測といたしまして、大体会社の申し出赤字というものを参考にして申し上げると、値上げを実施したあとの会社の申し出赤字は二百四十六億、A社はそういうことになっております。しかし、赤字額の残額を査定いたしまして、それは精製、管理費、販売費の査定、それから為替レートの調整、それから輸入価格等の見積もり過大、その他経費増の査定等を行ない、さらに償却方法の変更、重役賞与の辞退による赤字解消額等々を入れまして、三月、百五十一億七千六百万円の赤字が残る。B社は同じようなことでやりまして、百四十八億九千五百万円残る。これは中堅以上のやや民族的な性格の強い会社の例でございます。
  14. 小柳勇

    小柳勇君 総理に質問いたしますが、今回の値上げは、相当固定的なものであると考えてよろしいかと。あとは、標準価格にまた決定をしたいと言われておるが、その場合には、物価を下げる方向に標準価格がきまるものと理解してよろしいか、この二点です。
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 不確定要素がたくさんございますので、まあ一応行政指導価格ということにいたしておるわけでございますが、非常に努力をしてきめたわけでございますので、これをできるだけ長く保持してまいりたい。私は、常識的には一年間ぐらいは何とかしていきたいという考え方を持っております。そういう前提に立っておりますが、何ぶんにも外的要因の問題でございますので、確たることは申し上げられませんが、一年ぐらいは押えるという姿勢で決意を示したわけでございます。しかし、引き上げなければならぬ場合は、これはもう押えたいということでございますし、ただ、為替相場が下がってまいりましたり、石油価格が下がってきたときには、引き下げは迅速に行ないたい、こういうことでございます。
  16. 小野明

    ○小野明君 関連。  総理と公取委員長との間に、この価格設定を中心にいたしまして意見の調整が行なわれたと聞きます。その点について、公取委員長の御見解をいただきたい。  さらに、総理にお尋ねをいたしますが、行政指導価格であると、これは標準価格に移行をするものであると、こういうふうに御説明がございました。そこで、この標準価格を設定をするめどはいつごろであるのか、その辺をお尋ねいたしたいと思います。  それからいま一つは、経済見通しでありますが、第二次の見通しを、たしか一月十九日に手直しをして発表をされたわけであります。その際は、たしかバーレル九ドル、またドルは三百円というふうに据えられておると記憶をいたしております。今回の改定によりまして、当然この経済見通しも変更をする必要があるのではないか、このように考えますが、その辺の御所見をいただきたいと思います。  以上です。   〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 標準価格は強制力を持ちますし、行政指導価格はあくまでも指導価格でございますので、標準価格に移行することが望ましいと、しかし不確定要素が非常に多いので、いま直ちにできないということに対しては了解に達したわけでございます。しかし、不確定要素というものが確定的にならなければ、現実問題として強制することはむずかしいわけでございますので、法律的な立場からも、行政指導価格をきめなければならなかった事態が解消すれば、要素が確定すれば、下がるような状態になっていくという見通しがつけば、量的に質的にそういう問題になれば、いつでも移行できるということでございますが、これらに対しては、前提条件が具備すればということで、当分の間ということで御理解をいただきたいと思います。  これだけの石油価格が上がったんだから、経済見通しの再改定を行なうべきではないかというような御所論でございますが、政策的努力を行なうということを前提にいたしておりますので、昨日来申し上げておりますように、いま経済見通しの変更を必要としないという考えに立っております。
  18. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 先ほど総理から発表されました調整意見でございます。行政指導によって独禁法の適用も受けないのだというふうなのが最初の基本的な御姿勢であったようでございますが、この非常に簡単になりましたものにおきまして、これはいま直ちに標準価格を設けるということにはちょっと無理があると、こういうことを前提にいたしまして、「とりあえず行政指導価格によることとするが、国民生活に密接な関係を有する品目については、今後の推移を見まもりつつ、適当な時期に標準価格に移行するよう努力する」と、この「適当な時期に」ということばは、公正取引委員会側といたしましては、可及的にすみやかにと解する。可及的にすみやかに、事情の許す限りなるべく早くということに解釈をして、それでよろしいかということを総理にもお尋ねしたところ、それでいいと。字句は「適当な時期に」となっておるが、公取側としては、あくまで可及的すみやかにこういうふうにしてもらいたいということを承諾されたと。その点は、御本人が前におられるのですから、間違いないと思うのですが、要するに、基本的に行政指導一本やりで貫くというところには無理があるということを前提に、やはりその標準価格により得る限りはそのほうがいいんじゃないかと、こういうふうにまあ弾力的に考えておられるというふうに私は解します。ですから、私のほうも、緊急避難的な考えで行政指導でおやりになることは、それまでいかぬと言ったら動かなくなる場合がありますから、いたしかたないと、こういうことはかねてから申し上げておったのです。  それから、すべての品目について標準価格を設けるということは、多分緊急の事態においては無理だろうと思うのです。石油製品をきめれば次に波及するわけですが、とりあえず凍結するというような措置に対しまして、とりあえずそういう措置をとることは、これは実は競争のない状態をつくるわけでございます。競争のない状態をつくるんですから、これもやかましく言えば独禁法にかかわりがあるんでございますけれども、そういうわけのわからぬことを私どもは申すつもりはありません。いま大事なことは、緊急に起こってくるであろう波及効果を最小限度にとどめるというとりあえずの措置に対しては、そこまでしゃくし定木に言っとったら、政治が、政治といいますか、経済政策が動かなくなりますから、私どもの目的は、競争状態をなくするというふうな行為をはばむ、これが独占禁止法の目的でございます。ですから、今後のあり方につきましては、なお十分そういう見地から注目してまいらなけりゃならぬと思いますが、とりあえずの現段階措置としては、ある程度の妥協はやむを得ない、私はそう考えます。(「骨を抜かれたのか」と呼ぶ者あり)いや、そうではございません。骨は抜かれておりませんから、その点は総理のほうも十分了解されたものと私は解釈いたします。
  19. 小柳勇

    小柳勇君 この石油値上げに関連して、全日本ネオン協会からきのうぜひ質問してくれということですから。中曽根通産大臣、ネオン協会が、中小企業として倒産しかかっておると、先般二十億の手当ての話があったけれども、今後これではやっていけないがどうするかという質問であります。どうでしょう。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ネオン協会が、石油規制のストレートな直撃を受けた一番お気の毒な業界でございまして、われわれも非常に心痛してずっと御相談してきておるところでございます。  それで、三月の規制におきまして、ネオンにつきましては、十キロワットを境にして若干規制を緩和したわけでございます。まあ十キロワット以上はいかぬけれども、以下はいいではないかと。まあこれによって大体銀座の大きなネオンの八、九割はまだ消灯を続ける、地方のそういうあまり目立たないようなところぐらいは多少認めてやらないと、ネオン業者も生きていけない、そういうことから、まあ銀座の八、九割を消すという目標で、十キロワットという限度をつけました。しかし、大体三月ぐらいまではいままでの手持ちの仕事があったわけでございますが、三月ぐらいから手持ちの仕事も切れてくる、こういう状況でございますから、いろいろ商工組合中央金庫その他を使いまして、業者の御相談に十分応じて、納得のいくような金融措置その他を講じたいと思います。
  21. 小柳勇

    小柳勇君 きのうの質問の続きです。  経済企画庁長官、どこを基礎にして物価安定をしようとされているか、御答弁願います。
  22. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 御反論がございまして、どうお答え申し上げたらいいかということを私も一晩考えました。しかし、考えました結果が、とどのつまりは、物価水準をどの辺まで持っていくか、上昇水準をどの辺まで持っていくか、あるいはこれは今度は物価ではなしに、個別の物資価格をどの辺まで持っていくかと、こういう二つのことになるのではないかというふうに考えました。  そこで、これもよく御承知のように、私どもは四十九年度におきましては、物価上昇の状況を四十八年度よりもはるかに低めようということで、経済運営に努力目標を掲げ、また経済見通しにおきましても、卸売り物価、消費者物価上昇率というものを想定をいたしております。しかし、それはいま私が申しますように、上昇率であって、マイナスということにはならない。そうなってみますると、率で申しますと、やはり卸売り物価で年間一四・六%とかあるいは消費者物価で九・六%というようなことにしてまいる。しかもそれは、四十八年度が異常な物価上昇率でございましたから、御承知のあのずれ込みと申しますか、げたということばもございますが、こう上がってきましたので、かりに四十九年度が水平にいきましても、前年に比べますとそこに上昇率が出てしまいますので、そういうげたの部分を引いてみますと、これも御承知のように、卸売り物価、消費者物価ともに一けたということを努力をいたしたいと思います。また現実には、卸売り物価は昨年の十二月には一カ月で何と七・一%上昇し、一月には一カ月で五・五%上昇いたしましたが、そういうことがない——いま申しましたような、年間を通じて実質の上昇率は一けた、げたを入れましても一四・六とか九・六と、こういうようなところに持っていきたいと、かように考えます。なお、ついでながら、総理からお話がございましたが、海外のこの十年間及び最近の物価上昇率等を調べましたが、もちろんこれは日本が一番上昇率が高い状況があらわれておりますが、これはまあ十年間の平均をとりますと、日本はわりあいに——昨年を入れましてもまだ優等生のほうの組に入りますけれども、その十年間を別といたしまして、最近の二月ないし一月をとりますと、二月が、日本は卸売り物価が三七%、アメリカが二〇%、イギリスが一二%、西ドイツが一〇%というような状況でございまして、同じ二けたでありましても、海外、外国の二けたのほうが日本よりもだいぶ少ないというわけでございますので、そういう外国の物価上昇率を上回るようなことはないような、そういうところを目標にしてまいりたいと思います。この外国の上昇率については、所得政策等がございましたり、ドイツのように無理に引き締めたり、無理に為替レートを上げましてやっている面もございますので、全部をまねいたしますと日本の実情に沿わない点がございますので、そこに問題はございますけれども、しかし、そういう無理なことをしないでも、外国も最近上がってきておりますから、外国の、やはり昨年のある時期の上がり方程度にとどめておくというような、そういう目標を達成したい、こういうお答えを申し述べさしていただきます。
  23. 小柳勇

    小柳勇君 時間の制約があるものですから、私も前後をはしょって質問するから、真意がわからぬと思うのですけれども、いまわれわれは四十九年度の予算審議をしておるわけです。それからまた、日本のこれからの将来の方向を見定めるために論議しているわけです。で、ベースがないと、ことしの予算はこれでいいのか、来年はどうするのかという論議にならぬでしょう。だから、これから先どうするかということをいま聞いているわけじゃないんですよ。私はあと三つの大きな問題を質問しなきゃならぬ。その質問する場合に、政府はどこにべースを置いて物価安定などを言っているかなということを聞いておかぬと、計算して話さなけりゃならぬわけですね。この基礎から、じゃどのくらい国の予算が要るとか金が要るとか、そのことを聞いているわけです。だから、将来の経済構想などということはまだこれからの話でありまして、私は前提となる政府の基本方針をいま質問しているわけです。第二点をね。  したがって、大蔵大臣に聞きますけれども、いまのこの予算を編成した、昨年の秋ですね、そのころを一応基礎として論議を進めていいですか。
  24. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この予算は昨年暮れにつくりました経済見通しを基本にいたしておるわけでございまして、その後物価がその当時より多少変わっておりますけれども、まあ努力目標ということがあります。四十九年度の見通しといたしましては差しつかえない、こういうふうに考えております。
  25. 小柳勇

    小柳勇君 その水ぶくれであるという現状と、健康体である現状の、大蔵大臣の頭の中に描かれた姿をおっしゃってください。
  26. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまは水ぶくれが非常にまだあるのです。その水ぶくれを抜くわけであります。水を取っちゃう。そうしますと四十九年度の物価水準というものが出てくる。ただ、企画庁長官が申しておりますように、水ぶくれを抜くと物価は下がります。しかし、今度はふえる要因があるのです。それは何かといえば、一つは油の値段が上がった問題。それに従いまして石油製品価格が上がる。それから、特に電力料金が上がってくる。それからもう一つは、為替変動という要因があるのです。それからもう一つ、これはこれから出てくる問題でありますが、春闘、この賃金水準が一体どうなってくるか、そういう問題がある。そういう問題がありますので、きのうから小柳さんが、安定後の物価水準がどうなるかというお話でございますが、そういうプラスマイナス要因がどういうふうに出てくるかということは非常に見通しがむずかしいのですが、一応、四月から来年の三月、この一年間では五・二%ぐらい上がるのじゃないか、そういう見通しをしている。そうして、その見通しの上に立って予算を編成しておると、こういうことでございます。
  27. 小柳勇

    小柳勇君 基礎は幾ら、ちょっと——五・二はいつからいつまでですか。
  28. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四月から来年の三月でございます。
  29. 小柳勇

    小柳勇君 総理大臣、きのう、四十七年の上期は大体正常であったとおっしゃったのが一つ。それから、八月ごろまでには物価を安定したいとおっしゃっている。そのときに、たとえば、前年同期に対してどのくらいの卸売り及び消費者物価の指数があったらよろしいと考えておられますか。
  30. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはもう、理想的な数字としては——四十七年までは、卸売り物価にしましても、十年間の平均値が主要工業国の九カ国の平均よりも低いわけでございます。しかし、その後の状態がいろいろございまして、物価が急速に上がったわけでございます。でございますので、四十七年から、四十七年の上期ぐらいを基礎にしながら、主要工業十カ国というものが平均上がった数字をずっと引き延ばしてくると、一つのラインが出るわけでございます。そうして、それと四十七年の下期から四十八年、いままでの日本の物価水準というものとの差額が水ぶくれだと思って、これを引き締めていく、脱水をしていくということが行なえれば、これはりっぱなものだと思うのです。いま経済企画庁長官が述べましたとおり、他の国では、所得政策をやっておるところもございますし、アメリカのように輸出禁止を行なったり、いろいろなことをやっておるわけでございますが、日本はそういうこともやっておらないで、そうして、石油価格が上がるのもみな同じ状態でございますし、それから、賃金が上がるのは、主要工業十カ国の中から日本を除いた九カ国の平均よりも賃金はうんと上げておるわけでありますから、そういうような、日本が他の九カ国よりも物価が引き上がるような要因をかかえながらも、九カ国の平均値におさまれば、これは、理想というよりも、まあまあやっているなということは言えると思いますと、こう答えているわけです。ですから、当面する問題は、いま申し上げたように、げたを除いて、四月から来年三月三十一日までの年度間五・二%ということを申し述べましたが、ここにはまだ、四十七年を土台にして引き延ばしてきますと、まだ開きが幾ぶんあると思います。
  31. 小柳勇

    小柳勇君 石油は十八日から上がりますし、タクシー運賃などはまだ暫定です。それは、今後の問題が含んでおるからそういう表現にしてありますが、それやこれや考えますと、八月に物価が安定するというならば、どの辺まで、日本人の頭の中に、国民がどの辺の暮らしだなという、納得するような話がないと、そんな話じゃ納得せぬのですよ。しかし、幾ら聞いても平行線ですから先に進みましょう。  第三点は、このインフレによって発生する低所得階層の過度の所得損失は、政府の責任において補償すべきであると思うが、どうでしょうか。総理から見解を聞きます。
  32. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、物価を引き下げることによって国民生活の安定に資するということ以外にはないわけでございます。
  33. 小柳勇

    小柳勇君 インフレによって国民生活、特に低所得層というものはたいへんな生活です。それは当然政府の責任があるならば、田中総理言われる前に、そういう人に最低限の責任ある補償をすることは当然じゃないですか。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 去年から低所得者層に対して種々な手当を出したり、いろいろなことをやっているということが、お示しになっていることを示しているわけです。
  35. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。それじゃその三つの前提に立って、これから大きな三つの問題を質問いたします。  第一は、物価と貨物輸送コストとの問題、特に、いままで物価の問題を、最終的な価格の高低で論じてきました。物価は、原価と、物を移動するコストと、それから利潤と、こういうものの総和であるということについては、経済企画庁長官、御異議ありませんか。
  36. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 貨物運賃のことであったと思いますが、これは、私はこの前厚生大臣をいたしておりましたときにも、どういう角度からでございましたか、先生から、これを読んでおけと、こういうことの書物を御提示をいただいたことが実はございました。そこで、貨物運賃というものは、もちろんコストの要因でございますが、しかし、貨物運賃の中には、自家用の貨物と、営業用の貨物がありまして……。
  37. 小柳勇

    小柳勇君 そんなことじゃない。
  38. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) そのことじゃなかったのですか。いまちょっと話をしておりましたから。
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物価の中で、御指摘のように、輸送コストや利益というものがあるわけでございまして、この輸送コストというものは、あまりいままで物価の——量を確保するということだけに焦点が合わされておりまして、輸送コストという問題は、あまり議論になっておりませんが、これは非常に大きな問題であると。私も先般申し上げましたとおり、急ぐからといって、新聞に報道されるように、宮崎から夜行の通しトラックで東京まで野菜を送ってきている。これでは高くなるにきまっているということがございまして、この一例を見ても、輸送コストというものが相当大きなウエートを持っているということは事実であります。
  40. 小柳勇

    小柳勇君 それから通産大臣に質問いたしますが、原価の問題は、おととい鈴木君が質問いたしましたが、適正利潤というものは一体どういうものを考えておられますか。
  41. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回の石油につきましては、大体二百五十円程度の利潤というものを計算に入れております。大体石油企業の過去三年でございましたか、それくらいの平均の利潤というものは三百四十何円になっておるのです。それで、昨年の上期——昨年は大体五百円ぐらいにそれが上がっている。それを査定しまして二百五十円前後、こういうような利潤を適正利潤と一応考えて、中においてやります。
  42. 小柳勇

    小柳勇君 私は石油に限っていま質問しておらぬものですから、通産大臣が適当かどうか——経済企画庁長官はどうですか。たとえば不当利得という場合には、適正利潤というものを考えないと、不当利得と言えないでしょう。いろいろ、不当利得については税金で取るとか、いろいろありますけれども、適正利潤というものは一体経済企画庁ではどういうふうに考えておりますか。
  43. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これは、私はお答えしにくい問題でありますが、要するに付加価値の配分として、資本に対する対価としてどれだけをそこに分かち、あるいはまた他の勤労の貢献に対してどれだけ分けるかという問題であろうと思うわけでありますが、それは一がいには私は言いがたい。取り扱い数量でありますとか、あるいはその場合の日本の経済全体の環境とかいうものでおのずからきまるものであると思います。石油の問題につきましては、中曽根さんからいまお話がございましたが、かなり無理であると思われる数字に私どもは適正利潤を詰めていただきましたが、これは適正利潤であるか、緊急適正利潤のような形のようなものに実はいたしました。
  44. 小柳勇

    小柳勇君 適正利潤の問題はそういうことじゃないと思いますが、これは本論ではありませんから、これはしかし、十分論議しておきませんと、不当利得とは何かと開き直られたら答弁できないでしょう。だから、きょうは本論は輸送コストですから、その問題は別途の機会にやりましょう。  そこで、これは運輸大臣に質問いたしますが、先般国鉄再建法、運賃法が上がりましたあと、内閣は国鉄運賃法を半年ストップされました。そのときにどういう話が内閣であったのか、その実態を聞いておきたいです。
  45. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) お答えいたします。  この国鉄運賃の半年凍結と、消費者米価の凍結でございますが、いま経済的な非常な混乱と申しますか、見通しのきかない重要な時点にきていると、国民も非常にそういう面では不安と焦燥を持っていると、物価の問題に挑戦するのがこの内閣の一つの一番大きな使命であると。そこで、内閣としての姿勢としては、いままでいろんな国鉄運賃等につきましては議論が、長い間国会をわずらわして出てきた結論でございますけれども、この問題を凍結することによって、内閣としての一つの物価に挑戦する基本的な姿勢を示そうということで、六カ月の凍結ということに相なったのでございます。
  46. 小柳勇

    小柳勇君 経済企画庁長官、この国鉄運賃と米価を半年ストップすることによって、消費者物価指数にどのくらい影響あると考えていますか。
  47. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 米価でございますが、ただいま詳細な数字を持ち合わせておりませんけれども、概数でごかんべんいただきたいと思いますけれども、大体CPIにおける米価の米のウエートが五%弱でございます。これが先日の御決定で九・八%ということで、約一〇%でございますから、かけ合わせますと〇・五%ぐらい消費者物価影響いたします。それから国鉄につきましては、旅客の分が〇・三四%、これに貨物の関係をIO表で計算いたしましたのを足しますと〇・四三%という計算になっております。
  48. 小柳勇

    小柳勇君 国鉄は……。
  49. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) ただいまの、あとの申しましたのが国鉄の数字でございます。
  50. 小柳勇

    小柳勇君 米は……。
  51. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 米が前に、申しました〇・五%弱でございます。それから——以上は平年度の数字でございますから、半年延ばします場合には、その半分が四十九年度に影響いたしますということでございます。
  52. 小柳勇

    小柳勇君 国会で論議するときに、運賃の値上げというのはあまり影響ないということで、あれ、きまったわけですね。ところが、すぐ今度は影響が大きいということで判断したと思うが、ストップされました。いまの数字をもって、われわれは運賃値上げすべきでないと主張した。ところが、たいした影響ないということで強行突破されたんだ。にもかかわらず、さっとまた半年。したがっていまの数字から——これはまあ大と見るか、小と見るか別といたしまして、国民生活にいわゆる消費生活指数として影響が少なくないとするならば、これから二カ年なり三カ年間なり、公共料金の主柱としてこれを延ばしてもいいと思うが、どうですか。
  53. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 当面する問題としては、延ばすほうが国民的に見て物価抑制のために好影響ありと判断して、あえて、国会の議決を得たものであっても、もう一ぺん法律を出して御審議をいただいて延ばしておるわけです。ですから、そういう気持ちから言うと、確かに延びるほどいいという御議論は理解できますが、しかし、国鉄も無制限に税金をもってまかなうというものではないわけでございます。また国鉄には増強しなけりゃならないという面もございます。いま申し上げたように、トラックで動いているものを鉄道で動かすということになれば、これはもう安くなるにきまっておるわけでございまして、鉄道の増強というものはどうしても必要でございますから、そういう問題、国鉄の職員といえども賃上げはしなきゃならないということでございます。そういう面から考えますと、政府が幾ら負担するか、また利用者が幾ら負担していただくかということは、もう当然バランスの上で考えなきゃならぬ問題であって、現時点において十月一日以降これをまた延ばすという考えは全く持っておりません。
  54. 小柳勇

    小柳勇君 国鉄総裁に伺います。  運賃値上げ影響でどういうふうな措置をされておるのか、運賃値上げ半年ストップしたことによって。  それから、ここに国鉄労働者から出た、安全に対する危険個所などの報告があります。その政府の手当て、及び現在の資金繰りなどによって事故が発生してはたいへんであるが、現状について報告願います。
  55. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答えします。  第一の問題の、運賃値上げを延ばしたことに対する影響いかんということでございまして、これはすでに皆さま御承知のように、国鉄運賃は昭和四十八年の四月一日から上げていただくはずでございましたが、これが四十九年の三月三十一日まで延ばすことによって、国鉄の減収は千八百五十五億、さらに、これを物価政策その他によって十月一日まで延ばすことによってこうむる減収は九百七十六億と、こういうことになりまして、およそ三千億近くの減収に相なるということでございますが、これは政府にもごめんどうを見ていただくはずになっておりまして、借り入れ金から補てんして、しかも借り入れ金でございますから、その利子は再建期間中は政府がめんどう見てやろうということに相なっておりますので、一応その再建計画にはさしたる影響はないということを私は考えます。  それから、第二点の問題の全安の問題でございますが、国労その他の安全白書を私も拝見いたしたのでございますが、その安全の問題は、これは私が申し上げるまでもなく、運輸事業の至上命令でございまして、これはすべてのものに優先しなくちゃいかぬものである。また、いかなる事情があっても優先ささなくちゃいかぬと、私はかように考えておりますので、まあ見方の相違によって、その安全の状態がどうなっておるかというようなことは、その表現には差異はございましょうけれども、ひとしくわれわれ管理者も働く者も、この安全に関しましては、共同の責任、義務を持っておるんでございまして、よく話し合って、彼らの主張の正しいものは取り入れて安全を増進したいと、かように考えておるのでございまして、今年度もいろいろな事情はございましたが、安全に関する直接の投資が、これは狭義の安全、たとえば踏切であるとか保安装置と、こういうようなものも、昨年に比べまして大体百四十億ぐらいの投資がふえておる。それはなまの数字で申しますと、四百十八億ぐらいの投資を四十九年度でやりたい。しかし、これは直接のものでございまして、レールを太くするとか、まくら木を入れるとか、そういうような安全につながるものを全部合算いたしますと、七百五、六十億という数字になっておりますので、これで十分とは申しませんけれども、昨年よりも一段と安全に投資を進めて努力をしていくと、かように考えております。
  56. 小柳勇

    小柳勇君 国鉄運賃値上げをやめてもらうということはわれわれの年来の主張でありますし、あとでまた触れますが、運輸大臣に質問いたしますが、現在の各輸送機関別の貨物の輸送量を御報告願って、大体、陸上、鉄道とトラックと、海上輸送ぐらいにわけて御説明ください。
  57. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) お答えいたします。  国内輸送機関別の貨物輸送量は、国鉄におきましては輸送設備改善投資の立ちおくれ等がございまして、だんだんとシェアは下がっております。四十七年度末におきまして大体四・二%が国鉄でございます。  さらに自動車は、道路の整備等が進みましたために、中長距離輸送にも自動車がだんだんと食い込んでまいりまして、相当の、総輸送トン数から申しますと、自動車のシェアは九〇・二%でございます。しかしながら、この自動車の面は、主たるものがやはり近距離の面の輸送が重点でございます。  それから内航海運でございますが、これは御承知のように長、中距離でございます。景気の変動を非常に敏感に受けやすうございますけれども、今年度は五・六%、石油とか鉄鋼とかセメントなんというようなものが主体でございますが、そういう動きになっております。これだけ見ますと、自動車が非常に大きなウエートを占めているわけでございますけれども、輸送トンキロから申しますと、鉄道輸送が一七・三%、それから自動車が四四・八%、それから内航海運が三七・九%、こういう状況でございます。これによって、自動車が近距離の面の輸送に大きな力を持っているということが、この輸送トンキロから推定されるわけでございます。
  58. 小柳勇

    小柳勇君 もう一問、運輸大臣に質問いたしますが、現在の陸上運送の自動車の輸送状態について、これは去年の春の国会から私が一年間がかりで問題にしているわけでありますが、自動車の輸送というものがあまりがちっと規制されていないで野方図に走っていると考える。したがって、この現状について御報告願います。
  59. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 小柳先生から御指摘を受けておりました自動車の輸送面でございますが、これは昨年の春の予算委員会で、この席上でどういうふうな経済的な、いわゆる自家用自動車がどういうふうな経済性を持っておるかということについて調査いたしますということをお約束しているそうでございます。さっき答弁資料を持って見ましたら、諸般の事情によりこれができなかったことはその責任を痛感いたしますと書いてあるのを見まして、私も、どういう事情で、諸般の事情とは一体何だということを問いただしたわけでございますが、石油事情等いろんな予想せざる困難のためにいろんな問題ができたために手おくれになったそうでございますが、この点は責任を痛感しましておわびいたしまして、早急の間に調査することをここで私あらためてお約束いたします。  それから自動車の輸送の面でございますが、これは先ほど申し上げましたように、営業自動車が大体三十七万台ぐらいいまあるわけでございますが、それに比べまして、いわゆる自家用自動車が五百六十万台、あるいは五百七十万台かとも思いますけれども、その輸送の効率というものはほぼ同じ程度で、五百六十万台に対して三十七万台が大体五〇、五〇の比率に輸送効率がなっているということは、これは注目すべきことだと思います。これにはいろんな事情があると思いますけれども、自家用自動車が、生産から販売、あるいはまた、零細企業と申しますか、零細業者の、企業とも言われぬ業者のいろんな面に活用されているという点等もございますが、いまの実情からいたしますと、営業自動車三十六万台に対して自家用自動車五百六十万台が同じようないわゆる輸送効率をもって走っておるというのが現状でございます。
  60. 小柳勇

    小柳勇君 建設大臣見えますか。——いま、道路建設されるんですが、大型自動車がたいへん走っておりまして、道路の損傷も大きいと思いますが、これはあとで運輸省にも聞きますけれども、大型の自動車を特にまた補強いたしまして、オーバーロードで走っておる。定められた荷物よりももっと重量で走っておる。したがって、道路の損傷も重いと思うし、あるいはこれからの道路建設と自動車の貨物輸送との関係について、御検討されたことありますか。
  61. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 道路政策上、貨物自動車関係につきましての御指摘いただいた点については、建設省としても道路設計上十分検討をいたしておるわけであります。一例を申し上げますと、特に住宅近辺を通ります高速道路等におきましては、公害という新たな事態も起きておるわけであります。道路の損傷という立場からだけじゃなく、公害という立場からも、大型貨物自動車の対策については、道路建設上十分考慮しなきゃならぬという立場をとりまして、建設省におきましてもそういう立場から、道路幅を広くするとか、あるいは道路の両側に小高い土手を建設するとか、あるいは樹木を植えるというようなことをいたしますとともに、最近コンクリートというものをあまり高速道路には使わぬで、アスファルト——砂利を敷いて、その上に砂を置いて、そして舗装をするという工法を主としてやっておったわけでございますが、コンクリート道路というものも見直さなければならないということで、やはり大型自動車の対策として、路盤を厚くしたコンクリート道路にすべきであるというような見解もありまして、四十九年度からはそういう面においての対策も講ずるというふうにいたしておる次第でございます。
  62. 小柳勇

    小柳勇君 経済企画庁長官に質問いたしますが、もう前から何回も、経済計画と同時に総合交通体系を確立して、一元的な交通体系をつくってもらいたいと要請してまいりました。たとえば九州から東京まで荷物を運びます道路をつくる費用、あるいは鉄道をつくる費用、あるいはその輸送コストなど比較されたことございますか。
  63. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) いろいろ調査をやっておるようでございまして、私もつまびらかにいまお答え申し上げられませんけれども、私自身が、たとえば小柳さんも御承知であろうと思いますが、力石というような学者などの話を聞いてみまして、トラック輸送とあるいは列車輸送との利害得失——道路等の社会投資、つまり間接費用の状況等を考えてみての利害得失等のことにつきまして、もっともだと思ういろいろのことを私自身も承知をいたしております。  なお、これ、先ほど私が、その御質問かと思いまして先に申し上げましたが、前から課題を与えられておりましたので、経済企画庁では、これも御承知と思いますが、昭和四十八年に若干の、三百八十万円程度だったと思いますが、予算を組みまして、現にそういう状況の調査、これは列車との比較といいますよりも、トラックそのものについて、自家用トラック、営業用トラックとの能率、利害得失、効率関係等について調査を依頼を、これ、日通運送研究所というんでしょうか、依頼をいたしておりまして、その結果がやがて出てまいると思いますので、そういうものも参考といたしながら総合交通体系の方向づけをいたしたいと考えております。
  64. 小柳勇

    小柳勇君 国鉄総裁に聞きますが、この統計表見まして昭和四十年を一〇〇といたしまして貨物の流れを見ますと、自動車は二三七、内航は一七四、にもかかわらず国鉄は九一・二と下がっているわけです。なぜか、いまこれからますます貨物の流れは何%かずつふえなきゃならぬのに、これではたとえば自動車を輸送を規制するにしてもこれでは運べませんが、どうですか。
  65. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘のように、国鉄の輸送貨物は、かつて石炭が大宗を占めておりまして、四千万トン近く運んだことがございますが、これが産業構造の変化と申しますか、だんだん減ってまいりまして、現在は千万トンぐらいしか運んでいないというようなことに相なり、かたがた、これはおしかりを受けるんだろうと思いますけれども、国鉄は従来、旅客輸送の急激な伸びにかろうじて追いつこうという努力をいたしまして、貨物に投資をするというような努力を端的に言えば怠っておった。したがいまして、貨物施設が陳腐化と申しますか、古くて、いわゆる自動車輸送の戸口から戸口までというような便利さもなし、あるいはスピードの点でも落ち、なおかつ、いつ着くのかというような時間の問題、こういう点にはなはだ遺憾な点がございまして、現況のような状態に相なったことと、かたがた、その自動車のほうは、先ほどのお話のように、従来自動車の走る道路が整備されてきた。自動車の台数がふえてきたというようなことで、漸次そちらに移ったというのが現状でございますが、これからはエネルギーの問題もございまして、漸次鉄道に返さなくちゃいかぬという事態になったわけでございまして、現在しからばどうするかということになりますと、まあ鉄道は輸送力の余力というものが現在のところはそうたいしてないということでございますので、まず線区別、方向別に、あいているところは貨物を利用して貨物列車を増発する。それから線区別にあいてないところは生活必需物資であるとか何とか、こういう貨物を優先して輸送するということ、が当面の問題で、こういうことをやっておってエネルギー危機にこたえることには相ならぬので、将来どうするかということに相なるんでございますが、これは現在やっておる電化あるいは複線化というようなことを進めて輸送の道を与える。なおかつ、新幹線網というようなものが漸次整備されて、優等旅客がそちらに移るということになりますと、現在線は貨物専用とは申しませんけれども、これに主力を傾倒することができるということで補強される。しかし、まあ貨物は先ほど申しましたように、非常におくれておりますので、今後、まあ再建計画の中では一兆八千億か何かの金を投じて、われわれのほうから申しますと、貨物の拠点というような言い方をしておりまして、これもかなり議論のあるあれでございますが、拠点を整備する。貨物の情報網を整備する。あるいはフレートライナーその他のものを整備する。あるいは直行高速の列車を増備していくというようなことに一兆八千億か九千億の金を投じて、漸次鉄道に移ってくる貨物をお引き受けしたいというんで、これは相当の時間がかかる問題なんで、石油危機でおまえらはいま何やっているかと言われると、おそらくそうはっきりしたことは申し上げかねますけれども、今後の方向としてはそういう方向に進みたいと、かように考えております。
  66. 小柳勇

    小柳勇君 次は運輸大臣ですが、さきのように現在の貨物輸送はほとんど自動車です。で、鉄道の、営業トラックが約七倍、それから自家用トラックはそれの約十倍ぐらい貨物を運送しています。にもかかわらず、鉄道はがちっと法律で運賃きめています。ところが現在の貨物トラックの運賃はほとんどもう規制がないのではないか。また自家用トラックはもちろんこれは運賃は規制ありません。そういうような物価に直接関係のある、さっきも物価は原価と輸送コストと利潤だと言われました。その一番物価影響のある貨物輸送コストというものを野放しにしておいて物価論争を一体できるかと、もう去年の春から声を大にして言っているわけです。これ、私持っているのは貨物運賃表といって、トラック協会が別途きめている運賃表です。運輸省から運賃表出されています。上下にアローアンス若干ありますから、もちろんその範囲ならいいけれども、それ以上に、三割増しの運賃をくばってある。現在はこれよりもっと高い運賃に動いているでしょう。そういうものを野放ししておいて物価論争などというのはナンセンスじゃないかと思うが、運輸大臣いかがですか。
  67. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) トラックの営業運賃はもちろん公共料金でございます。認可料金でございます。御指摘のように、中をとりまして上下一割の幅があるわけでございますが、昨年これは、非常に運送業者というのは御承知のように弱い面がございまして、昨年の下期からだんだんと輸送問題が重要になってくると、逼迫すると同時に逆に売り手市場に回ってそういう混乱を起こしていることは事実で、認めざるを得ません。で、しかしながら、私どもは一応認可料金として決定しておるのでございますから、四十六年にこれを決定しております。昨年の十一月にさらに改定の申請が出ておりますけれども、いろんな油の動向等をにらみ合わせて検討を続けておりますが、決定した値段に、認可料金については、これは守らせる法律的の義務がございます。お説のように、そういう現状において混乱の事実はございますが、私どもは今後十分指導をいたしまして、そういうことのないように、輸送が非常に閑散になり物が動かぬことになりますと、トラック業者がダンピングをやる。いまの機構は、そのダンピングを監視するための機構はできておるけれども、お説のような、まるで自主運賃、やみ運賃を規定してやるというような民間の規制をやろうという話し合いの機構が逆に働いているわけでございまして、この点については、率直にその事実を認めて、今後早急にこの認可運賃範囲内にとどめるように指導することにいたしたいと思います。
  68. 小柳勇

    小柳勇君 運輸大臣、中小企業の運送事業者まことにかわいそうです。さっきおっしゃったとおりです。だからぴしゃっと運賃表きめて、それを守って、しかも利益を出して安心して輸送できるような体制でないと、品物が多くなるとやっぱり高く取るわけですから、そしていまのいわゆる自家用トラックというものも、認可の方法少し検討して、大部分は青ナンバーのトラックにする。そしてちゃんと監督下に入れるというような、根本的な体制変更しなければならぬと思うんですよ。特に、先般私は下請代金支払遅延防止法の適用を提案しておいた。検討しましょうと言いながらそれも検討しておらぬ。大手会社の下にあります下請運輸業が、それは手形は三ヵ月ぐらいですね、やっていけないんですよ。これはあとで、ほかの営業でもそうです、中小企業そうですけれども、そういうものも、少し、運送業者を保護しながら確実に貨物を輸送する、しかもそれはちゃんと物価の算定の中で、政府が、あるいは統計が出れるような体制とっとかぬと物価論争できないですよ。かつて、皆さん御存じですから言いませんが、ドイツでは憲法の中に、物価狂乱する、上昇のときには貨物運賃賃率を変えよと、参議院で変えよとまで憲法の中にあるですよ。貨物運賃というものはそのくらい重視してもらわなければ困ると思う。  もう一つは、いわゆる白トラといって、一台か二台持って運転している。これやっていかなきゃしようがないから農村の青年などが上京しています。そういうものは簡単なテストで運送業者にしてもらいたいと思うのですよ。でないと、そういう悪の温床、矛盾がわかりながらこれをほおかむりするところに政治の貧困があるのじゃないか。そういう矛盾が起こらぬように手当てしてやるのがほんとうじゃないかと思う。それはどうですか。
  69. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 確かに御指摘のような点はあると思います。したがいまして、ただ一台か二台か持っているという個人業者をいわゆる輸送業者として直ちに認めるかどうかということにつきましては、いろんな事故があった場合の補償とか、それから安全の問題とか、いろんな運営面において問題があろうかとも思いますけれども、しかし、そういうものは何か共同事業体をつくるとかいうような方法によって、これを営業用に認めていくと、こういう道は現在でもあると思います。現在でもあるけれども、事実一台もやってないというのが現状でございます。したがいまして、この点につきましては、御指摘の点を十分参考にいたしまして、今後そういうような指導をやってまいりたいと、かように考えております。
  70. 小柳勇

    小柳勇君 建設大臣に質問いたしますが、鉄道の貨物が着きますと、今度は日通の車なり、その他運送会社が家庭まで荷物を運搬するわけです。ところが、五階、十階のアパートにまいりますとね、駐車はなかなかできないし、一人が荷物かついで五階まで行く。おられぬとまた持って帰るというような、非常にいまの住宅事情で貨物運搬が困るわけです。したがって、大きな、たとえば五千戸なり一万戸の団地ができたら必ずそこには貨物集配センターつくって、そしてこれには郵便の手小荷物を一緒に扱うというような、この現代にマッチした対策を立ててもらいたいと思うが、いかがですか。
  71. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 御指摘のニュータウンあるいは大規模な住宅団地を建設する場合に、その事業主体である地方自治体あるいは公団等におきましては、御指摘のような、いわゆる公共施設というものの適切な配置をはかるようにいたしておるわけでございます。  また、御指摘の貨物集配センター等につきましては、一般的には、住宅団地は、現在のところ生活用品等末端小規模貨物に限られておるわけでございます。まあ貨物量が統計上からいっても少ない地域であるわけでございまして、いままで貨物集配センター設置というような住民側からの希望というものは上がってきておらない現況でございます。しかし、いま小柳先生から御指摘されたように、確かに今後大規模な住宅団地等、高層ビルということを考えました際に、住宅団地としてそういう要望がなくとも、いわゆる集配業者側から考えました際に、そういう点、確かに起こり得るわけでございます。したがいまして、私どもといたしましても、新たな観点から十分対策を検討してまいりたいと考えております。
  72. 小柳勇

    小柳勇君 建設大臣対策を考えるということは、早急にやるということですか。
  73. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) そのような方向に向かって事務当局にさっそくきょう指示をいたします。
  74. 小柳勇

    小柳勇君 次は、第二の大きな問題は、現在のインフレ下における国民の健康で文化的な生活を守るというのは一体どういうことかと、こういうことで質問いたしたいと思うんですが、厚生大臣に質問いたします。  これは、おたくで出ました厚生白書ですが、「生活保護制度は、」「何らかの原因で貧困に陥り、自分の力では生計を維持できない者に対して、国の責任において、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、」「その自立を助長することを目的とする制度である。」と書いてあります。このとおりですか。
  75. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) そのとおりでございます。
  76. 小柳勇

    小柳勇君 で、現在の国民の最低生活を保障するということについては、たとえば数字で、エンゲル係数などでどのくらい考えておられますか。
  77. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 現在の生活扶助は、御承知のように、終戦後はマーケットバスケット方式で計算をしようと、こういう時代がありました。その次は、ただいまお尋ねのようなエンゲル係数によってその額をきめようという時代がございましたが、最近はですね、そういうマーケットバスケット方式、エンゲル係数によって扶助額をきめるという方式をやめまして、一般の消費生活水準に近づけるような形で扶助額をきめていくようにしようではないか、こういうふうな形になっております。したがいまして、現在の扶助基準がエンゲル係数においてどの程度になっておるかという、最近の、私、統計ございませんが、大体五一、二%ではないかと、かように考えております。
  78. 小柳勇

    小柳勇君 勤労者のたとえばまあ最低のグループ、そのグループの皆さんと比べて、生活扶助というのは何%ぐらいの生活をしているものと思いますか。
  79. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 一般勤労者の消費生活と比較いたしますと、五二%程度になっておるはずでございます。
  80. 小柳勇

    小柳勇君 一般生活者とはいまおっしゃったように五二%、半分ですね。私が申し上げました第十分位、最下のグループの勤労者の世帯に比べましても七六%です。さっきあなたはなるべく一般国民生活水準に近づけるとおっしゃったが、しからば、現在の生活扶助基準というものについては相当まだ問題があると、そう理解していいですか。
  81. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) いろいろまあ扶助基準の額については、意見のあることは私も十分承知はいたしております。しかし、私どもは、たびたび申し上げてありますように、勤労者なり一般の人々の消費生活水準に近づけるという努力をしておりまして、年々、もちろん物価の動向も十分考えておりますが、一四%というふうなことで暦年こう上げてきておるわけでございます。昨年などは、御承知のように一四%引き上げ、さらにまた年度の途中においても五%引き上げる、合計一九%引き上げる。それから年末の問題、この三月の問題も考えると、それから来年度においてはさらに二〇%引き上げると、こういうふうな努力をしておるわけでございます。したがいまして、まあいろいろ御意見のあるところは私も十分承知いたしてはおりますが、政府政府なりに、一般消費生活水準に近づけるというために非常な努力をしておるということは、御理解をいただきたいと考えておる次第でございます。
  82. 小柳勇

    小柳勇君 それから年金ですね、年金については一体どういう目的があると御理解していろいろ仕事をしておられますか。
  83. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) まあ昨年の大改正前は、御承知のように、二万円水準年金ということでございまして、まだ年金としては、近代的な意味における年金という形はあまりなかったと思います。しかし、昨年幸いに成立いたしました五万円水準年金、これは御承知のように、一般勤労者の平均標準報酬の六割を保障すると、こういう形になりまして、諸外国の例から申しますと、その金額というものは遜色のない額になりました。すなわち、老後の生活をささえるに足ると、老後の生活をささえるに足るという額に私はなってきたものと、この点については、ほんとうに皆さん方のおかげでございますが、西欧先進諸国並みになっておるものだと、こういうふうに私は確信をいたしておる次第でございます。
  84. 小柳勇

    小柳勇君 いまの、あとのほうのことばですけども、西欧先進諸国に行って一番はずかしいのは、やっぱり年金問題ですね。だから、その問題はあとでまた論議いたします。いま私、生活保護の問題と年金の問題を取り上げましたのは、このインフレ下において、いわゆる低所得階層とだれでも考えるような人たち、そういう意を持っていまこの問題を取り上げておるわけです。したがって、もう一回最低ぎりぎりの生活としての問題を論議しておかなきゃなりません。生活保護基準というものが、なるべく国民生活に近づけるとおっしゃった。しかし、この統計によりますと、これは政府の統計ですからね。統計によりますと、最下低といわれる第十位のグループの生活に比べても七六%であると、したがって、このことをもって健康にして文化的な生活とは言えませんね。この点いかがですか。
  85. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) いろいろ扶助基準の額についてはそういうわけでございまして、いろいろな言い方は私はあると思います。しかし、まあ生活保護法によって定められておるように、生活に困窮しておる国民に対し、その困窮の度合いに応じ最低生活の保障をすると、こういう制度としては、いろいろ御意見はあるにしても、政府政府なりに非常な私は努力をしておるんだと、こういうふうにお考えいただければしあわせだと思うのでございます。
  86. 小柳勇

    小柳勇君 努力の点は、各出先の福祉事務所の職員など、たいへん苦労しています。その点は理解いたします。ただ、政府の基本的な政策については不満ですよ。出先機関のケースワーカーの皆さんなどたいへん苦労していることについては、もう感謝いたしております。私は、この論議する以上、具体的にと思って方々調べて歩きました。  これは国分寺市の一人の生保の家庭の記録です。あまりにも物価が上がるから、何としてでも記録しようといって、不自由なからだで去年の七月からずっと記録をしておられます。ほとんどもう食費だけです。あとは家賃とプロパンガスと灯油ですね。着物はこの半年の間に一、二、このズボンをかえただけです。この記録で私が抽出いたしまして計算いたしますと、エンゲル係数は約七二、三です。ほとんど食費です。だから私、厚生省がもう一回調査して、いまのこのインフレの中において生活保護はどんなに生活が苦しいかということを調べてごらんになったら、いまあなたがおっしゃったよりもっときびしいのではないかと思う。灯油が四百円に上がりましたと赤字で書いてある。プロパンがこれだけになりましたといって、ほんとうに大きな字で書いてあります。こういう実態を最近調査されたことがあるのかどうか、お聞きいたします。
  87. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほどもお答えいたしましたように、扶助基準は、まあエンゲル係数で申しますと、五一、五二だと思っておりますが、しかし、最近における物価高ということになりますれば、この扶助基準のお金というものは、まあそういうふうなほんとうのぎりぎりの生活費に充てられているというふうな認識は私も十分持っております。したがって、最近におきましては、エンゲル係数はもっと上がってんじゃないかというふうにも考えておりますので、できるだけその実態は十分把握するように、今後とも努力をいたしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  88. 小柳勇

    小柳勇君 このインフレに対するいまの生活安定に資するための緊急特別措置、この内容を御説明願います。
  89. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 今回、年度末において一時的な緊急措置を講じたのでございますが、これは御承知のように、この一月の東京の消費者物価指数が二四、全国平均二三ということになりまして、扶助基準よりも上回る消費者物価上昇と、こうなりましたので、一、二、三月の生活につきまして、四月までのつなぎといったふうな意味合いにおきまして、こうしたものでございます。  まず、最初の一つの内容は、生活保護世帯、七十万世帯、百十四万人に対しまして、一人当たり二千円、十五億四千万円。で、これは一カ月分の生活扶助で申しますと一八%分に当たるわけでございますが、一、二、三の三月に割りますと、六%分の生活扶助基準のアップと、こういうふうになるわけでございます。これは一人当たりでございますから、四人世帯の方は八千円、三人世帯の方は六千円と、こういうふうな特別な一時金を上のせいたしたわけでございます。  その二番目は、特別養護老人ホームあるいは重度心身障害児に、施設に入っておられる方々、そういう方々につきましては、一人当たり大体二千円、その他の施設に千五百円、それからいろんな、精薄の方々が作業所に通っておると、こういうふうな方々に対しましては千円、それから保育所に通っておる子供には日常の用具として五百円、これが七億九千万円、これはまあ一応扶助の体系の中で処理をいたしましたが、同時に老人、身障、母子、こういったふうな方々につきましては、いろんな福祉年金が出ておるわけでございます。そこで、そういう福祉年金をいただいておられる方々に対しまして、福祉年金の額が低いわけでございますので、一人当たり二千五百円ということにいたしまして、四百十四万人、百三億、合計百二十七億というものを一時金としてこの年度末に差し上げるということに措置いたしたものでございます。
  90. 小柳勇

    小柳勇君 この金の性格は、十二月から三月までの物価上昇に対する手当てと考えなきゃならぬのですか。
  91. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 生活扶助で申しますれば、御承知のように、昨年度当初一四%上げまして、それから十月に五%上げたわけです。ですから、十月以降は昭和四十七年度に比べて一九%アップと、こうなっております。そこで、十二月にさらにまた一人当たり二千円の上積みの扶助を増額いたしました。そこまでは消費者物価指数と扶助基準との関係が調整とれておったわけでございました。すなわち、物価指数のほうの上がりぐあいよりも、扶助基準のほうが一九%でございますから、上でございました。ところが、一月になりまして、それが変わりまして、扶助基準が一九%アップ、それに対して消費者物価指数が二三、二四と、こうなりましたので、一、二、三月の生活つなぎ——四月になりますと、生活扶助基準は前年度に比べて二〇%アップするわけでございますので、そこで一、二、三、この辺の物価動向をにらみ合わして一時的な措置として緊急措置を講じた、こういうふうに御理解いただきたいと思うのでございます。
  92. 小柳勇

    小柳勇君 厚生大臣、きのうからの論争によりまして、物価は簡単に下がりそうもない。三月までは一応わかりました。きのうも羽生さんは少ないとおっしゃったけども、一応わかった。そういたしますと、これからの物価上昇に見合って当然これは加算されていくものだと理解していいですね。
  93. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ただいま御審議いただいておりまする四十九年度予算におきましては、生活扶助は前年度、四十八年度に比しまして二〇%アップと、こういうふうなやり方をいたすわけでございます。経済見通し等とにらみ合わせまして二〇%アップと、こういうことにいたしたわけでございます。で、その後どうなるかということになるわけでございます。四月から二〇%上がるんです。まあ私どもは、御承知のように、物価はなるべく鎮静してもらいたいと、こういうわけで政府は全力をあげておるわけでございますから、四十八年度のように年間に二度も三度もいろいろ特別措置を講じなければならないような事態にならぬようにしたいとは考えておるわけでございますが、四十九年度になりまして四月から二〇%上がりますが、将来もまたこういうことになりますれば、その時点において物価動向をにらみ合わせて必要な措置は講じなければならぬと思います。しかし、そういうことのないことを私は期待をしておるわけでございます。で、それと同時に、そういう生活扶助が二〇%アップ、それからいろんな社会福祉施設に入っておられる方々の処遇費についても二〇%アップ、で、問題は、あとは年金受給者ということになるわけでございまして、年金受給者は法律に従って物価上昇にスライドをしてやっていくと、こういうことでその生活の安定をはかっていこうと、こういう考え方でございまして、そのスライド分についても、来年度の予算においては——まあ昭和四十八年度は前年度に比べて一四%程度という一応積算をして予算的措置を講じておるような次第でございます。
  94. 小柳勇

    小柳勇君 生活保護二〇%では、さっき申し上げましたように食えるだけの一応その底上げの問題があります。物価上昇については二割ということを一応見込んでありますね。ところが、基本的にもっと近づけなきゃならぬというこれは答申も出ているんですよ。その問題は、だからあなた、恩着せないでね、堂々とやっぱり閣議で発言しなきゃならぬ。卑近な話はあとでいたしますが、何もこうじめじめやってね、総理の前に行って頭下げてそう頼まぬで、堂々ともっと言わなきゃならぬでしょう。まずそのことが前提ですよ。  そこで、年金の話ですね、この間私は関連だったからあまり長く言えなかったけれども、この年金で生活保護よりも低い方が私の推算では約八万人いますが、これも当然臨時的な手当を同じに出しますね。この点いかがですか。
  95. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 厚生年金の額でございますが、昨年の改正前まではいわゆる二万円水準年金でございましたから月一万五、六千円、たくさんございました。ところが、昨年の十一月の大改正によりまして、従来年金を受けておられた方方も大体二・二倍、標準報酬の再改定をいたしました。そういうわけでございますから、二万円以下の方はないと思います。大体ないと思いますが、三万円以下の方は私はあると思うんです、三万円以下の方は。それはまあ必要がありますれば年金局長に数字を申し上げさせますが、二万円以下は大体ないんじゃないかと思います。  で、こういう方々に対してどうするかという問題でございますが、御承知のように、年金というのは過去労働者として働いておった方々が老後の生活をささえるために、定額部分、報酬比例部分ということで計算して一応年金額というものをはじいておるわけでございまして、これはやっぱり最低生活を保障するという生活扶助というものとは性質は違う、こういうふうに私は考えなければならぬのではないか。現実、なるほど年金額として受け取る額は三万円、二万五、六千円でありましても、これはやっぱり人によってみんな違うんでして、そのほかに収入がある方も私は相当多いんじゃないかと思います。もちろん、その方が二万五、六千円でそのほかに収入がない、これは生活扶助に該当するというならば、そちらで足し前することになりましょうが、一応年金というものと生活扶助というものはやっぱり分けて考える必要があるんではないか、こういうふうに考えておるわけでございまして、一時金を支給するという考えは持っていないわけでございます。
  96. 小柳勇

    小柳勇君 厚生大臣はさっきだって年金は老後を保障するんだとおっしゃったでしょう。それはそのとおりですよ。いまの公的年金というのはもっと、いわゆる保険料的に考えてもらっちゃ困るわけだ。少なくとも生活保護の家庭よりも——と、あるいは同等、あるいはそれ以上にちゃんと保障しなければならぬでしょうに。その点いかがですか。
  97. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) その額を比較いたしますると、なるほど私は小柳議員の御質問のお気持ちよくわかります。額についてはわかりますが、御承知のように、厚生年金、拠出制の厚生年金というものは、働いておられる方々が老後の生活、こういうわけでございます。そこでまあ少ないわけでございまして、こういう問題はやっぱり根本的に改革するというならば、現在は五万円水準年金でございますから、それを将来は六万円にするとか七万円にするとか、そういういろいろな改革の問題は起こりましょう。起こりましょうが、やっぱり年金というものと生活扶助というものは性質が違うというふうに私は割り切って考えるべきではないかと。そうしなければ、やっぱり厚生年金も扶助の一種かということになっては、今度は六万円、七万円という年金をつくるということは逆にできないと、こういう問題もありますので、やっぱり扶助、最低生活の保障ということと年金というものは性質は分けて考えるべきではないだろうか。なるほど、老後の生活をささえるという基本的な考えはありますが、やっぱりそういうふうに割り切っていくべきではないかと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  98. 小柳勇

    小柳勇君 総務長官おられますか。——普通恩給で、私の調査によりますと約三万四千名の方が生活保護家庭以下であると思うがいかがですか。
  99. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) お答えいたします。  現時点で最低保障額を二倍以上に今度上げたいと。これは大体六十五歳以上、以下、なべて二万円以上にまあならしたい。それから短期の在職者の方々の最低保障額も上げたいということを含めまして、同時に四十九年度におきましては二三・八%、公務員の給与アップにスライドしたような恩給年額全体のアップを考えておるというようなことで、大体いまお示しの方々は、次年度においては一応救済と申しますか、生活保護よりも三十二万人ぐらいの人たちがこれで救済を受けるというふうにわれわれは考えております。   〔理事吉武恵市君退席、委員長着席〕
  100. 小柳勇

    小柳勇君 いろいろ数字を言っても時間がありませんから、総理に内閣としての見解を聞きたいんですが、いま論議しているのは恒久的な制度の問題ではありません。去年の暮れからこのようなインフレでたいへん生活が苦しいと。したがって、生活保護基準というものはまだ問題がありますけれども、少なくともそれをいまの最低保障と考えるならば、年金や恩給やあるいは遺族扶助料というのがあります、遺族年金ですね、御主人がなくなりまして奥さんが——そういうものについてはこの緊急措置をやるべきであると思うが、いかがですか。
  101. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう考え方が起こってくることは理解できますが、これはまあやっぱり制度の問題として、全く違うものに国民の税金を全部分けてやるというような、政策としては考えられない問題と思うのです。これは恩給は恩給、それから遺族年金は遺族年金、また保険は保険と、年金は年金ということになっているわけです。そうしてそれらの制度があるにもかかわらず、それらの制度で救済できない人たち、また積み立て等が行なわれておらなかった人たち、まあ自由職業の人たちで、そして今日の状態においてほんとうに生活困窮者として国が公の面で援助をしなければならないという者に対して、援助の方法として生活扶助が行なわれておるわけでございます。ですから、その意味では老人や高齢者というような者の医療の無料化というのをやるにも、その前にまず難病奇病とかそれをやるにしても、所得が一定限以下の人とかということで、国がすべての水準以下の者を全部まかなうということに対しても制度がみんな別にあるわけであります。ですから、生活扶助基準に適合しないようないわゆる年金額が低い者、それから遺族扶助料の低い者、それを全部上げろというと、制度がまるでこれは一律、画一的になってしまうということで、それはなかなか難いわけであります。ですから、これは目的とするところは違うわけです。ですから、年金をもらっておる人たちで、ほんとうに生活困窮者は、年金をもらっておっても生活扶助世帯としてその差額は補給されるわけです。そうではなく、その他の人たちは他に収入がある、他に預金がある。ただ、国から受ける年金の額が生活扶助基準というものよりも低い、それから扶助料も少ないということをもって全部生活困窮者に、与えておる人たち——あなたの言うことわかりますよ、何にも積み立てをしない人たちでも国民の名において公の資金が交付されるんだから、自分でもって積み立てておってもらっている人に対しては、せめてそのぐらいの水準まではそれは全部国が払ってはどうですかという考え方です。わかりますよ。わかりますけれども、そうなると、これはもうある一定水準以下の人には全部ということになるので、そこまではなかなか制度の上で踏み切ってまいれません。それよりもやっぱり、より手厚くめんどうを見なければならない盲目の人とか、つえを持って働いておられる人もあるんですから、そういう人たちをやっぱりだんだんだんだんと国民全体の、社会連帯の思想の中に組み込んでいって、両足のない方とか両手のない方とか、そういう方がとにかく非常に努力をしながら生きておられる、収入を得ておられる。そういう方でも、収入がある一定水準になると生活扶助は打ち切られるということですから、うんと年老いた老人とか生活扶助というものは、そういうものは一定額以上までは——それはやっぱり生活の向上ということが全然ないじゃないかと、いまのちょっと収入があれば全部引いてしまうということになっちゃどうにもならぬから、ある一定限度、定額までは認めるべきだと自民党でも言っています。政府でも考えているわけです。その思想を拡大していって、国が、何にも積み立てもしなくて、ただ現象として生活困窮者であるという者に何万円出しているんだから、あと全部その線までは支払わなければならぬということ、これはなかなかむずかしい問題なんです。おっしゃることはわかりますよ。わかりますが、それはやっぱり実態を十分見て、あんまり、そうすると惰民政策ということもからんでくるのです。これはなかなかむずかしい問題でして、働ける人はやっぱり働く、そして働けない人たちというものをお互いの共同の責任でめんどう見る、こういうやっぱり思想を貫いていかなければならない。ある一定の年齢になればこれは別です。七十五になったり、八十になったり、九十以上は全部国がめんどうを見るというのは、これはまた別ですが、どうもいろいろ御指摘がございますが、行政府としてそこまで踏み切るということは難いというのが現状であります。
  102. 小柳勇

    小柳勇君 けさの新聞でも、ある労働組合が貯金の目減りに対して裁判にかけたようです。いわゆるインフレによる損失、国民の損失です。冒頭に、きのうからも言っていますように、基本的にはきょう私が論議いたしておりますのは、物価の暴騰をどうやって押えるかというのと、昨年からのインフレの狂乱に対する国民の犠牲をどういうふうにして政府は補償し、償っていくかと、この問題が大きなテーマですから、たとえば貯金をやっている者はもう貯金の価値が下落いたします。で、ただ、低所得層に対してということよりも、このインフレが大きな一つの政治的責任というならば、その責任の一端を果たすという意味で、そういう人たちにも何らかの方法によって緊急措置をやるべきじゃないかと、こういう理論ですよ。この点について、どうですか。
  103. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 世の中がだんだんと社会連帯的な思想が普及してまいりますと、理論としてそういう議論が起こってきます。それはあなたの言われること、わかります。私も昭和二十二年、修正資本主義、社会連帯主義思想を旗にして当選してきた議員でございますから、それはよくわかるんですよ。よくわかるけれども、これ、現実問題としてどう採用していくかという問題、非常にむずかしい問題であります。これは税において、負の税制とか、税金を納めない人に対して、納めた人の問題を頭割りにして、ある一定限度まで税で払い戻そうと、私は反対なんです、こういうことは。そんな政策をとられたら、日本人のように、こういう物資が全然ないものを、とにかく国民の勤勉性ということと英知ということ、一つでもって人間の生活を過去も現在も将来も向上させていかなければならないというような日本において、そういう政策を導入したら、それはやっぱり働かなくとも——ということになって、それは結局税率が上がっていって、きのうも申し上げましたように、スウェーデンのように国民所得の五七・何%も税金を納めなければならないというようになるのであって、そういう道を、轍を踏むべきではない、私は明確に申し上げておるのです。  ですから、物価が上がったから政府は責任を感じています、これは。行政の責任を果たさなければならない立場にありますから感じておりますが、それだから、まあ賃金のスライドという問題が出ています。それから保険、いわゆる年金のスライドという問題も出ています。それから積み立てた預貯金の利子のスライドが出ているわけですが、その中には軽重があるわけです。段階があるから、年金は自分が積み立てたものです。国家が幾らか補償したり援助をしたりしておっても、根っこの金はみずからが生活を切り詰めて納めた問題であります。それは国家社会の責任だけに帰せられない。自分たちも応分の拠出をしようと、みずからの老後は、みずからがその主体になって、ささえようという感じで拠出が行なわれておる。その金が国家社会のために運用されておる。低利で運用されておる。そういう意味で、これにスライドを認めるということはできます。それでできたわけです、今度は。ことしの十月からやるわけです。その次は、今度賃金スライドということになるわけですが、賃金スライドというのも、月給を春闘とかいろいろな方法で上げていくということはわかりますけれども、これも全部が全部スライドするといったら、これはもう社会主義国家であって、すべて国が運営したなら別ですが、大企業ができても中小企業や零細企業はどうしてできますかという問題があって、これはやはり問題がある。  第三の問題は、今度はあなた方が言われているとおり、まず所得に対する減税はいいが、とにかく私どもそう思っていないですよ、ほんとうは。これは所得に対するものと同じように、貯金というのは食うものも食わず貯金をしておるわけですから、税金を一ぺん納めた者に、消費しないで貯金をしているのだから、私は応分のメリットを与えるべきだという考え方でございますが、しかし、このスライドをして、全部物価が上がった分だけやるということになると、これはむずかしいのです。これは御承知の日本との間に賠償問題が起こったときに、かって日本人として積み立てた郵便貯金と、それから簡易生命保険の料金を全部戦後の日本の物価にやるとそれは十五億ドルにもなる。そういうものを全部計算すると三十五億ドルという要求があったわけですが、そんなことはできるものじゃない、こういうので、まあ幾らか見なければいかぬだろうといったら、大蔵省は七千億円しかとにかくないといったのだから、これは絶対だめだ。それは別な時点であると、それはまあ別なものになると、よくお互いが理解できるわけでして、全部スライドするといったら、借金に対しても、貸した金に対して全部スライドするという問題、必ず起こってきます、これ。それはそうですよ。そういう問題があるので、そんなに、御提示になる気持ちはわかりますが、行政をあずかる問題として、そこまで全部スライドすると、裁判でも判例を待つと、私は裁判でも難い裁判になると思います。実際むずかしい裁判になると思います。やはりそれは社会保障制度の中で解決をすべき問題だろうと、こういう結論になるんじゃないかと思うんです。これは国会の問題であろうというふうにきっとなると思うんです。だから、そういう意味で、この問題は政府も勉強はしておりますが、にわかによろしゅうございますと、こうとても言えない問題であることを理解いただきたいと思います。
  104. 小柳勇

    小柳勇君 厚生大臣、厚生年金のスライド制をやはり自慢しておられるから、それを、政策スライドもこれは法律改正のときにちゃんと論争の中に入っているわけですよ。したがって、政策スライドでスライドを繰り上げませんか。
  105. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 御承知のように、昨年成立いたしました法律によって物価スライド、消費者物価スライドというのが成立いたしまして、この十一月実行するわけでございます。  そこで、これはすでに御承知のように、昭和四十八年度の年度間の平均物価指数が四十七年度に比較いたしましてどの程度上がるか。その上がるのがはっきりわかりますのが、私はどうもあまり事務的なことを申し上げて恐縮なんですが、これは統計的に出てきますのが、これが出てくるのが五月なんです。そこで何%上がるかということがはっきりきまります。予算的には一四%と組んでありますが、これは私などは一切値切るつもりありませんから、二〇%程度と出れば二〇%必ずスライドさせる、こういう方針でおるわけでございます。その統計が出るのが五月。そこで、これは私も何とか繰り上げて早くやる方法ないだろうかということで事務的に研究させてみたんです。これはタイムラグを短縮するということは私は望ましいことだと思いまして、ところが、どうしてもできないというのですね。これは御承知のように、三百五十万という人数につきまして、これは電子計算機でプログラムを与えて一人一人の金額、定額じゃないものですから人によってみんな違うんです。そこでやるのもたいへんな日にちがかかるというので、十一月実施というのが繰り上げるのは非常にむずかしいと、こういわれております。しかし、私は気持ちはわかるんです、ほんとうに。気持ちはわかるんです。そこで、もう少し私も勉強したいと考えております。  そこで、ただ、一面においてはこういう意見もあるんです。年金というものはやはり一年一回きめるのが本筋じゃないかと。狂乱のこんな物価といったってそういつまでも続くわけじゃないだろうと。そうすれば、夏ごろまで上がっても、このような状態でいっても九月から下がるかもしれぬ、下がったらスライドをまた下げるのかなんて、こんなことはへ理屈だと思いますが、そういう議論もあるわけなんでございまして、この年金スライドというのは、やはり恩給などは法律によって一年一回改定をする、扶助料も一年一回物価が上がれば改定をすると。ですから、やはり年金というものは一年一回というのが筋ではないかという理論もあるんです。しかし、皆さん方が仰せになるお気持ちはわかります。厚生年金のようなものは、御承知のようにその給付の八割が労働者、被保険者が出しておるわけです。国が二割出しておるわけです。ですから、十分私は今後とも勉強は続けてまいりたいと思いますが、いまの段階では非常に困難ではないか、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  106. 小柳勇

    小柳勇君 このような狂乱するインフレを招いておって、政府には低所得者に対する緊急措置の一片の誠意もないということはわかりましたよ。そのことを国民報告します。  次には、公的年金の総合調整について質問いたしますが、総務長官、先般審議室からの報告がありますが、昭和四十二年から公的年金の総合調整について検討してきたが、スライドだけで、あとはもうほとんど結論が出ないと、別途の機関で論議せよという答申が出ております。今後どういたしますか。
  107. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 四十六年に一応のスライド制の答申を出して、自来六つのグループに分けていろいろと検討したわけでありますが、どうにも年金の成立の歴史及びその他のいろいろな条件がうまくかみ合わないので、修正と、あるいはスライドというような問題については、やはり学者の意見を十分聞いてやったほうがいいということで、昨年末に再び社会保障制度審議会のほうに御検討をお願いするという段取りになっております。
  108. 小柳勇

    小柳勇君 これは総理の見解も聞いておきたいんですが、いま十の省庁に分かれておりましてばらばらでありまして、最低保障があってみたり、あるいは勤続年数の通算にいたしましても非常にちぐはぐでございます。したがって、被用者年金と家庭の主婦の年金など統一して、諸外国に見られるように、たとえば六十五歳ぐらいまで働いたら年金で食えるような体制に早急にもっていかなければならぬ。いま国民所得に占める年金給付費は日本はわずかに〇二二%ですね。西ドイツの三十分の一です。そういうような情勢である。いままでの努力はわかりますが、早急にこれは結論を出して、公的年金の総合調整をしなければならぬと思いますが、いかがですか。
  109. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 年金、保険の問題に対しては御指摘のとおりでございます。ばら、ばらになっておると。保険の例などをとるまでもなく、保険はとにかく赤字の出るものは全部政府管掌になっておるし、黒字の出るものは企業別健康保険になっておるしと、こんなもの自体も整理をして、もう少し、国と国民というのは一つなんですから、国は全然別に存在するわけはないんですから、何人かが負担しているわけですから、そういう意味でもう少し合理化をしたい。年金に対してももっと、これはみんな発足は違いますから、いろんな制度の紛淆があります。だから、そういうことはとにかくわかりやすくしたい。わかりやすくして、だれでもとにかく、わしはこれだけ納めていればこういうスライドがあってとにかく食えるんだと、生きていけるんだということだけは、私はどうしてもそういう制度をつくりたいというのが年来の念願であります。  そして、そればかりではなく、私が言っておるのは、これから給与所得者が非常に多くなりますから、年金だけで食うということはあじけのない話であります。大体これだけの高度の成長を基盤にしておって年金だけで食わなきゃならぬというわけはない。ちゃんと働けば少なくとも退職料も何千万円かになるはずであります。これから二〇%も月給が上がっていくというのですから、ならないはずはないんです。ですから、その中で、苦しい中でももっと苦しい人も世の中には一ぱいおるんですから、そういう意味でいくばくかずつ貯金をしていく。そのために少額貯蓄非課税をだんだんだんだん大きくしていきたい。それだけでなくて、土地も持ちたいということによって例の労働者の財形貯蓄というものも合わせる。そうすれば、二千万円ずつになれば、二千万円、二千万円、二千万円、二千万円と、これ、夢じゃないでしょう。昭和六十年か昭和七十年ぐらい展望すると、いまのアメリカと同じような水準になるわけですから、これは逆算すれば必ずできるんです。そういうことを考えておりますから、ですから、そういう意味で、制度の問題としてはやはり困難な問題があっても、どこかでそいつをふるってやっぱり合理的なものにするということに私はいかなければいかぬかと思います。いま国民所得に対しての年金支出が少ない。これは年をとっていきますと非常に保険も年金もこれからは拡大していくわけでございまして、その場合でもヨーロッパのように税金とまた他の負担を合わせて五〇%も払うようにはしたくないと、給付水準を同じくしても負担というものはその半分ぐらいで済まぬかというのが、政府がいま努力をしている一つの目標値でございます。
  110. 小柳勇

    小柳勇君 次は、これは運輸大臣と大蔵大臣と郵政大臣関係があることですが、社会保障制度審議会から答申が出ております。公共企業体職員の共済組合法が他の長期給付に比べて不合理であると、したがって早急に是正すべきであるというような答申が出ておりますが、この点については運輸大臣、いかが取り計らっておりますか。
  111. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 今年度におきましては、まず最低保障額を新たに導入いたしまして、これをいま御審議をわずらわしておるところでございます。それから増額に対しましては、公務員の給与を大体見合いにとりまして、二三・八%でございましたか、それの増額を予算措置いたしまして、いま国会に御審議をわずらわしておるところでございます。実施期日につきましては、先ほど厚生大臣からいろんな他の問題で御発言がございましたが、十月一日を予定にいたしております。
  112. 小柳勇

    小柳勇君 大蔵大臣、国庫負担の問題がここに出ておりまして、本制度に対する国庫負担がいまだ実現を見ないのは遺憾であると書いてあります。国家公務員や地方公務員に比べまして違うと書いてあるのですが、いかがですか。
  113. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 公企体の共済組合に対する国庫負担の問題でございますが、ただいま御指摘がございましたような御意見もございますが、従来から公企体はいわば公経済の主体としての任務を持っておりますので、社会保障の推進主体としての国庫が負担するかわりにいわば公企体が国庫負担をしておる、こういう形になっております。この問題につきまして、従来から議論がございますが、やはり公企体には公経済の遂行の責任者としての任務がございますから公企体の責任において処理をする、こういうことで従来から進んでおるわけでございます。
  114. 小柳勇

    小柳勇君 従来のことは前から聞いています。特にこの答申が出ましたから、大蔵大臣、特別に考慮してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  115. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま主計局長が述べましたように、公企体の問題ですから公企体がその責任において負担をすると、そういうたてまえは妥当なところじゃないかと思うんです。しかし、この種の問題につきましては、まあ関係各省で寄っては相談をしております。まあ公企体が負担をしない、そのかわり公企体に対する政府の補助は——補助というか援助はそれだけ差し引くと、こういうようなことにする仕組みもあるいは考えられるかもしれませんけれども、公企体とまた政府との間にはいろいろ関係があるわけです。財政上の関係があるわけであります。そういうような関係に立つ公企体がその負担に応ずるというのは私はこれは一つの行き方ではあるまいか、そういうふうに考えております。
  116. 小柳勇

    小柳勇君 それから財政方式の問題です。これは羽生委員も質問したかったようでありますが、質問時間がありませんでした。質問いたしておきたいのですが、現在のような積み立て金方式を賦課方式に改正すべきであるという意見を持っております、われわれは。それで、たとえば国民年金の将来の財政見通しを考えましても、ほんとうを言うならば二千七百五十円取らなきゃならぬのに現在九百円でいっています。これは言うならばごまかしですね。こういうものをやっていきましたら、必ずどっかで取りこわししなければならぬのですから。ちょうど諸外国の例を見ましても、こういうインフレ経済の中で財政方式を変更している例が多い。したがって、この際積み立て方式から賦課方式に変更すべきであると私どもは考えておるのだけども、検討されたことはあるのかどうか。
  117. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 年金の財政方式の問題は昨年も非常に論議されたところでございまして、私どもは御承知のように修正積み立て方式というものを採用しておるわけでございまして、いま直ちに賦課方式に切りかえるということは困難であるということを申し述べてまいりました。その理由として、御承知のように、現在の老人、六十五歳以上の老人は総人口のうちの七%程度でございますが、もう十年もたちますと一〇%以上になる、それから被保険者と老齢年金を受けておられる方々の比率もいまは非常に少ないのですが、将来どんどんふえていく、こういうことになりますので、いまの者がいまの老人だけをささえるということになりますれば、老齢人口が少ないいまの世代の人は負担量が安くて済む、多くなれば負担がふえると、こういうわけで、まあ世代間の負担の不均衡を来たすと、こういう考え方から賦課方式に切りかえるということは非常に困難であると、いまでも私はさように考えております。しかし、この問題は将来、計算的にいきますと二二十年先になりますと老齢人口と人口との比率が定常化していく、その段階になれば賦課方式に切りかえることはやむを得ない、こういう考えになっておりますが、やはりこの問題は私は大きな今後の財政方式の問題として考えていかなけりゃならぬ幾多の問題をかかえていると思います。したがって、いまにわかにというわけにはまいりませんが、現在でもいろいろどういうやり方があるだろうか考えておるわけでございますが、今後とも検討は続けてまいりたいと思っておりますが、いますぐ賦課方式に切りかえるということは非常にむずかしい、世代間の負担の不均衡を来たすと、やっぱり非常にこれは大きな理由だと思いますので、いまにわかに切りかえるということは困難ではないかと、こういうふうに考えております。
  118. 小柳勇

    小柳勇君 これは総理に聞いておいたほうがいいと思うんですがね。この年金というのはいわゆる生命保険と違いまして、掛け金をもって年金給付という観念は根本的に変えて、たとえば五年であろうと十年であろうと、六十五歳ぐらいになりましたらね、現在働いてる者がその老齢者の生活を保障するという、いま言う賦課方式の考えですね、そういう考えに近く切りかえてまいりませんと、この年金、いま総合調整の問題ともからみましてなかなか問題であろうと思うんです。いままでの掛け金は全部この各年金体制が固執しますと、結局総合調整できないわけです。だから、こういう時代に積み立て方式から賦課方式に切りかえておいて、そしてかつて働いた御老人を現在働いてる者が保障するんだという体系、生命保険と全然変わった体系、観念で根本的に検討し直さなきゃならぬ、そう思うんです。いかがでしょうか。
  119. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど厚生大臣が述べましたとおり、長い問題として検討はしておるんです。おるんですが、いままあ数の少ない受給者に対して数の多い若年労働者というような人たちがやる場合はいいんですが、この賦課方式に切りかえていくというようなことになりますと、日本がいま国民所得に対する租税負担率が一九・三%、社会保険の負担が四・八%で、合計二四・一%でございますが、これが西ドイツへいきますと一五・五%、フランスは一九・七%、イタリアは一四・三%、スウェーデンが一三%。スウェーデンの例でここで申し上げますと、租税が四四・六%に一三%の社会保険料を入れますと五七・六%であります。そのために一体どういう現象が起こってるかというと、自分の親は給付を受けてるわけですが、自分がとても五七・六%の負担はできないというので、南欧にどんどんどんどんと若年労働力が移っていってもう困っておるわけです。これはイギリスからとにかく何万人も年々年々若い人たち、労働者が大洋州へいま移動してるわけでございますが一それは御承知のとおりイギリスが四六・三%という負担で、この負担に労働意欲を失ってとにかくどんどんと離職をするという現象がいま先進工業国で非常に困っておるんです。私もまあヨーロッパを回ってきましたときに、やっぱり日本は先進工業国を見習ってというけれども、道路は有料制度になっておるし、トン税を採用して鉄道に移すような誘導政策をとっておるし、まあこういうことをいまやろうとしてもなかなかできない、特に保険や年金の問題に対しては、まあわれわれもかつて世界からいろんな財源が自動的に入ってくるという前提でこういう制度を発足したので、いまになってみると十年後一体やっていけるのかという問題もある、というような衷情を聞いてまいったわけでございまして、いまあなたが御指摘になったように、とにかくいまの若い人が自分の親を扶養するということはいいじゃないかということはよくわかるんですが、この保険の十年後、二十年後、三十年後の予想計算をしてみると、驚くべき負担が増大するということを考えてみると、これは全く他人じゃなく自分の子供や孫が負担をするわけですから、まあそこらの問題ですな、学問的にも実際的な問題にしても勉強は十分いたしてまいりますが、いますぐ賛成でございます、賦課方式に切りかえますというわけにまいらないと思うんです。
  120. 小柳勇

    小柳勇君 じゃ、もう一問して、休憩のようでありますから。  いま厚生年金、国民年金の積み立てが約九兆円くらいあると理解いたしますが、これを十年ぐらい前に、この還元を住宅なりいわゆる福祉還元を二五%ぐらいにやっと五%ぐらいふやした記憶があります。いまのような時代ですからね、この賦課方式の問題についてはいままだ問題ありますが、とにかく還元融資をもっとふやしまして、そういう面の社会投資ね、社会資本の増加のほうにうんとふやすべきだと思う。この点についてどうですか。
  121. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 還元融資のワクは昭和四十八年度から二五%から三〇%に引き上げたわけでございます。しかし、まあ今後とも厚生大臣としてはふやしていただくように努力をいたしたいと、かように考えております。
  122. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      —————・—————    午後一時十分開会
  123. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、小柳君の質疑を続行いたします。小柳君。
  124. 小柳勇

    小柳勇君 さっき示さなかったんですが、年金生活者から、低所得者からこんなに陳情が来ていますから、厚生省よくこれを見ておりて、最低生活をどうするかということをひとつ根本的に検討してもらいたいと思います。これに恩給生活者も入っていますから、総務長官もひとつ見ておってくださいよ。  それから社会福祉施設の問題をあと質問いたしますが、社会福祉施設の整備計画で、社会保障長期計画懇談会が緊急整備五カ年計画の改定を求めた意見書を出しておりますが、これに対する厚生大臣の見解をお聞きいたします。
  125. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 社会福祉施設整備五カ年計画、昭和四十六年度から五年間に一応の計画をつくってあるわけでございますが、昨年発足いたしました社会保障長期計画懇談会におきまして、これが改定をしたらどうだと、こういう勧告をいただいたわけでございます。  その勧告の内容は、昭和四十六年のときの社会情勢と最近の社会情勢もだいぶ変わってまいりました。社会福祉施設に対する国民各層の要望の変化、そういうことを十分頭に描き、さらに在宅対策をも加味して新しい計画を立てるようにということでございますので、具体的にその計画を目下立案中でございます。この趣旨に沿うて計画を具体的にきめるようにいたしたいと、かように考えておる次第でございます。
  126. 小柳勇

    小柳勇君 その新五カ年計画叶いつごろわれわれにわかることになりますか。
  127. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) その計画は、本年度の予算等も十分加味して考えなければなりませんので、昭和四十九年度の予算が皆さん方の御審議をいただきまして成立いたしましたあとには、なるべく早く具体化するようにいたしたい。でございますから、四月の末には具体的な数字をつくりたいと、かように考えておる次第でございます。
  128. 小柳勇

    小柳勇君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、社会福祉施設の補助単価が低い問題なり、このインフレに対して若干の伸びは見てありますが追っつかない。したがって、せっかくやろうと思ってもできないという情勢であります。特に現状は、公のものよりも私立のほうにおんぶされているようなかっこうでありますが、将来について、厚生省からもいろいろ意見を聞いておられると思うが、大蔵省の見解を聞いておきたいのです。
  129. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十九年度の予算単価につきましては、これはもう経済見通しに従いまして、それにマッチするような仕組みで単価をつくっております。ただ、これはまあ実際問題といたしまして、あるいは異同があるかもしれない、物価についての異同があるかもしれない。そういう際におきましては、それなりに適当な措置を講じなけりゃならぬ、そういうふうに考えております。
  130. 小柳勇

    小柳勇君 厚生大臣、先般私、施設を調査して歩きましたが、古い施設、あるいはインフレのために食費に追われまして、たとえば中学校、小学校の収容施設などでは、小づかいが一カ月に百五十円というようなところもありました。一日五円。非常に食費に追い詰められておるという実態であります。したがって、老朽施設の改善なり、あるいはインフレ対策なり、もう一度聞いておきたいのです。厚相の見解を聞いておきたいんです。
  131. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 社会福祉施設につきましては、こういうふうな物価の状況でございますので、すでに御承知のように、昭和四十八年度におきましては、前年度に比較いたしまして一四%引き上げて、十月さらに一〇%近く引き上げ、さらに今度は、ことしの一月になりまして、一月の契約から一〇%引き上げると、こういうわけでございますから、昭和四十八年度につきましては、四十七年度に比較いたしまして三五%以上引き上げておるわけでございます。しかし、現地におきましてはなかなか苦労しておるということはよく承知をいたしておるわけでございまして、昭和四十九年度におきましても一応の単価アップの計画をきめておりますが、予算執行の段階でできるだけ落札が行なわれ、必要とする施設が整備されるように努力をいたしたいと考えております。  なお、施設に入っておる入所者の処遇の問題につきましても、生活扶助基準と同じように、昭和四十九年度におきましては二〇%アップということでございます。二〇%アップでございます。したがって、飲食費とか日用諸雑費等もそれぞれ上がるわけでございますが、これはもう施設の経営者の諸君、ほんとうになかなか御苦労だと思いますが、できるだけ総合的にこの予算をじょうずに使っていただいて、入所者の方々が困らぬようにしていただくようにしたいと考えておる次第でございます。一応待遇としては予算的には二〇%アップと、こういうふうに御了承願いたいと思います。  なお、この機会にちょっと。先ほど、午前中の御質問にお答えいたしまして、還元融資二五%が四十八年度から三〇%とこう申し上げましたが、三〇%よりもうちょっと多く、実は三分の一でございまして、ちょっと多くなっておりましたので、その点はふえたわけでございますから、ひとつこの点訂正さしていただきたいと思います。
  132. 小柳勇

    小柳勇君 労働大臣に。社会福祉施設で労働基準法違反の事件を相当見ていますが、報告を願います。
  133. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 社会福祉施設における労働条件の確保については従来からも監督してきたことでありますが、本年度は特に看護婦さん、保母さん、その労働条件、それから休憩休日、そういう法定労働条件について実態を調べました。なかなか違反が多いので、いまから先もこうしたた条件の確保のために関係各省と連絡をとりながらしっかりやってまいりたい、こう思っております。  なお、数字のかれこれについては、お話がありますれば政府委員からお答えさせます。
  134. 小柳勇

    小柳勇君 数字はもう私も承知しております。  厚生大臣に。いまの問題、社会福祉施設に労働条件で基準法違反のものがたくさんある。約七割から八割は違反しているという報告が出ています。これに対する厚生大臣の見解をお聞きします。
  135. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 県なり市町村が経営しておりまする社会福祉施設の職員について、基準法違反のものがあるということで、だいぶ労働省の労働基準局からおしかりをちょうだいしておりますことは十分承知をいたしております。そこで私は、施設の効率的な経営というものを考えますれば、こういう労働条件をできるだけやっぱり改善してあげるということが非常に大事なことでございます。そういうふうなことで、来年度の予算におきましても、社会福祉施設の職員につきましては千人以上の増員をしておるわけでございます。しかし、これだけでもう十分かと言われればあるいはそうでない向きもあろうかと思いますが、そこは施設の経営者の諸君に非常に御苦労を願って、まあできるだけ基準法の違反などはないような形においてやれるようにしていただきたいものだと、かように考えております。なお、私は十分関心を払いながら努力をいたす考えでございます。
  136. 小柳勇

    小柳勇君 建設大臣、この計画懇からの答申で、こう書いてあります。「特に、住宅団地等大規模集合住宅の建設に当たっては、児童福祉施設、身体障害者施設、老人福祉施設等の併設について検討すること。」、これは五千戸、一万戸のニュータウンなどはこういうものをそばに置けというのが大体意見のようですが、いかがですか。
  137. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) お答えいたします。  大規模なニュータウンの建設を行なうような場合には、団地づくりに関連して保育所等の公的施設の設置が必要であることは御指摘のとおりでございます。ことしの二月に社会保障長期計画懇談会の結論も私報告を受けておるわけでございます。従来この公的施設というものは五省協議で、五省間でその範囲をきめておるわけでございます。従来は保育所まで入っておりまして、御指摘のように老人ホーム、身体障害者施設、これを公的施設として設置をするということはいままでは実はいたしておらなかったわけであります。御承知のように、団地は住宅公団または市町村等が中心になって建設をいたしておるわけでございますが、その地方のニード並びに入居者のニード等の調査の結果、そういう声が今日まであまりなかった。ことしの二月になって初めて社会保障長期計画懇談会の御指摘をいただいたような次第でありまして、これは当然やはり積極的にやっていかなければならないと考えておるわけでございます。しかし、義務づけるということは一応建設省としては考えておりませんけれども、と申しますのは、御承知のように、この公的機関と申しますのは、住宅団地を計画する際、これを建設してまいります際、事業主体は公団でありまた自治体でございますために、その自治体の意向というものをこれは強く尊重をしていかなければならないという性質のものでございますので、今後住宅団地を計画する際には十分この懇談会の趣旨を生かしまして、これらの施設が必要なところに十分設置されるようにしてまいりたい。具体的に申し上げますと、住宅公団でこれは建てかえ施設という形になるわけでございます。そういう際には、第一歩として、五省間の協定の中にこの老人ホームと身体障害者施設が実は加えられておりませんので、今後積極的に各省に相談をいたしまして、その建設された住宅団地が、ほんとうにそこで生活をし、子供たちを教育をし、老後まで安心して生活できる地域社会の町づくり、村づくりという形になっていくようにしてまいりたいと考えております。
  138. 小柳勇

    小柳勇君 自治大臣いらっしゃいますか。——自治大臣、いまの問題ですね、各地方自治体がつくる住宅団地に社会福祉施設を義務的につくらせるという点、いかがですか。
  139. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) いま御指摘になりましたようなそういう新興団地は、確かにそういった施設がいままだ不足しておるというのが実情ではなかろうかと存ずるのであります。関係地方団体においてつくられるという場合には、当然厚生省等におきましても十分配慮をされることでありまするし、自治省としましてもできるだけそれに協力を申し上げるということでいきたいと考えております。
  140. 小柳勇

    小柳勇君 この問題の最後に、総理に質問いたしますが、経済五ヵ年計画などをつくりますときは、社会保障制度長期計画も同時に発表してこの併設を進めるというのが至当ではないかと思うが、いかがでしょうか。
  141. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 経済社会基本計画の中には五カ年間にわたる社会保障費というものの比率は出ておるわけであります。ただ、それを年次計画にしてどういうものにするということになれば、社会保障長期計画というものをつくらなきゃならぬということで、いま各省間でその作業を進めておるわけでございます。
  142. 小柳勇

    小柳勇君 次の第三の大きな問題は、砂糖価格安定と大手商社の糖業支配の問題であります。糖価安定に対する農林省のとられた措置、お伺いいたします。
  143. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 昨年たいへん異常事態を呈しましたので、十一月二十二日以降、まず第一に砂糖取引所の規制を強化いたしまして、それから精製糖メーカー、砂糖販売業者への立ち入り検査をこれは糖安法によって行なえるわけでありまして、いたしまして、それから首都圏を中心として砂糖の緊急直販を行ないまして、とりあえず異常事態の鎮静化をはかりましたが、その後、精製糖メーカー、それから砂糖卸売り業者に対しまして、その販売価格の引き下げについて行政指導を行ないますとともに、年末は特に地域的に需給が逼迫いたします地域につきましてはビート糖の緊急輸送、それから砂糖の緊急直販を行なってまいりました。さらにまた本年二月一日からは、上昇いたしましたメーカーの出し値の一そうの引き下げを通じまして、マージンの圧縮等によりまして国内糖価の安定をはかることといたしました結果、ただいま砂糖適正価格販売協力店というものを全国に大体四千七百軒ほど指定をいたしまして、適正価格による砂糖の販売について行政指導を行なっておりますが、なお国際糖価の異常な高騰によりまして、いままで糖価安定事業団で持っておりました基金がほとんど枯渇いたしましたので、糖安法それから関税定率法に基づきまして二月十六日から関税の減免措置を行ないました。御承知のように、砂糖は現在のところきわめて平静に相なっております。
  144. 小柳勇

    小柳勇君 国際糖価の今後の見通しについて、いかがですか。
  145. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、先般二回にわたって行なわれました国連砂糖会議が、いろいろ論議はされましたけれども、結局、価格協定が爆発してしまいまして無協定になりました。これはたいへんなことでありまして、キューバのようなやはり輸出国等とそれから輸入国その他の話し合いが折り合いがつきませんで、現在におきましては無協定状態であります。で、御存じのように、ロンドン相場が建て値でありますが、大体先般来まで落ちついておりましたが、ここへまいりまして、きのう、一昨日あたりは一トン——一ロングトントンでありますが、二百二十七ポンドというふうな状態でございます。そこで、私どもといたしましては、国際的にそういう状況でありますので、わが国で消費いたします砂糖の量は大体三百万トン、そのうち二百四十万トンほどが輸入でありまして、したがって、沖繩、奄美大島等の甘庶糖、それから北海道を中心とするビートの増産をいたしまして、大体六十万トンは国内で生産ができると。これを、国内の自給率をさらに高めるということいたしておりますが、大体の傾向を見ておりますというと、あまり大きな変動はないんではないかと思いますが、何しろ御承知のように、ロンドン相場で国際糖価が左右されるという浮動的状態にあるのが現状の姿でございます。
  146. 小柳勇

    小柳勇君 糖価安定のために百八十六円の小売り価格をおきめになりましたが、出荷価格へ卸の指導がないから小売り価格のほうに全部しわ寄せになっていますが、この点、承知されておりますか。
  147. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いま申し上げましたような状況で、しばらくの間、去年の暮れ前、秋ごろまではきわめて安定いたしておりましたけれども、いまお話しのございましたような異常な状態が砂糖にまで及んでまいりまして、そこで十二月からは急激に騰貴をいたしたと。そこで私どもといたしましては、いま申し上げましたように、指導価格というものをどういうところでつくったらいいかということを考えまして、ずっと安定しておりまして十二月から上がりましたから、その上がる前の十一月の相場をとることが一番いいではないかと、多少メーカー等に無理があるかもしれませんけれども、それでひとつがまんしてもらいたいということで百八十六円にいたしたわけでありますが、そこで当時の小売り価格につきまして東京では百八十六円、名古屋百九十四円、大阪二百円、福岡百九十二円といったような状態でありますけれども、これ、いま申し上げましたように百八十六円ときめたわけであります。小売り価格の調査は毎月十二日を含む前後、つまり水・木・金で行なっておるわけでありますので、東京ではパニックが始まる前の価格になっておるわけであります。大体においていま申し上げましたような協力店を全国に四千余り指定いたしましたが、だんだんこの指定店がふえてまいります。そこで現在の百八十六円でございますが、この百八十六円の砂糖の指導価格をきめましたことが小売り業者にしわ寄せされているんではないかというお話でございますが、そういうことのないようにということで私ども地方を種々調べさせましたが、仕入れ価格であるいはいまお話しのようなこともある場所もあるかもしれませんが、私どものほうで出先で調査いたしました結果によりますというと、大体いいところにいっておると、大体三円ないし四円ぐらいな運賃を含めて十円程度のマージンは出ておると。特殊なところあるかも存じませんけれども、大体においてはいま私が申し上げたとおり。そこで、この際、御存じのような地域もあるかもしれませんが、大体協力店に参加していただけますならば、メーカーも二次卸もそのつもりでちゃんと百八十六円で協力して安売りをしていただくことになりますので、なるべくそういうものがいまふえる傾向でありますけれども、そういうふうなものを全国的にだんだんふやしてまいりたいと、こう思っておるわけであります。
  148. 小柳勇

    小柳勇君 二つの大きな矛盾があるんですが、一つは仕入れ価格が高くて、たとえばある生協も、たくさん調べましたが、ある生協は百八十六円で仕入れて百八十六円で売っている。あるいは百九十円で仕入れて百八十六円で売っているところもある。そういう矛盾があります。  もう一つは、系列に入らぬと砂糖が来ないもんですからずうっと砂糖が系列化されてしまっている、ある業者のね。そういうのはおわかりですか。
  149. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 御指摘のように、現在の小売り店舗はそれぞれお得意先の二次卸、あるいは一次卸を持っているわけでございます。それぞれの系列から取るという意味で系列化というふうに御指摘があったとすればそういう傾向はあると思います。ただ一般的に見ますというと、複数の小売り店舗から取っている場合もございますし、現在の百八十六円を守らすための協力店というのは、あくまでもこれは小売り店自身が百八十六円を守るという意思表示をすることによってその系列の二次店、あるいは一次店からも取れる。いま御指摘のスーパーの場合ですというと、おそらく二次卸を使わずに、いきなり一次卸の特約店といったような段階から取っている場合もございますので、一がいに卸価格は一定はしていないと思います。
  150. 小柳勇

    小柳勇君 卸価格が一定していないから問題なんですよ。もうかるところともうからぬところがあるわけですよ。標準価格にしないで指導価格にしたのはなぜですか、大臣標準価格にしないでね。
  151. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いま申し上げましたように、農林省の取り扱っております物資はいろいろありまして、たとえば米や小麦は食管でちゃんときちんとしております。砂糖は、ただいま申し上げましたように、国際糖価の相場で毎日変動があるものでございますので、しかしながら、先ほどお話のありましたようなパニック状態などを防ぐためには必要であると存じまして、買い占め売り惜しみ法の物資に入れました。したがって、私どもといたしましては、毎日の流れを見ておりまして、そしてそういうような、いまお話のありましたようなことの起こらないように全力をあげておるわけでありますが、これは標準価格というふうなことにいたしましても、なかなかこれをそのまま維持していくというのはむずかしい状態でございますことは御存じのとおりであります。したがって、やはりメーカーとそれから中卸、小売り店との間に一定のルールがありますので、したがって、そういうようなことでなくて、買い占め売り惜しみの指定銘柄にしておくほうが効果が上がるではないかと。しかも御承知のように、その法律でもできますし、本来持っております糖価安定法でも立ち入り検査その他が強制的にできることになっておりますので、そのほうが効果をあげやすいということでいたしておるわけであります。
  152. 小柳勇

    小柳勇君 農林大臣指導価格で百八十六円に売るためにはメーカーの出値を百五十六円以下に押えなきゃならぬ。でないと三十円、中のマージンが出ないんですけれども、その出荷価格、調査されたことございますか。
  153. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 御指摘のような三十円の場合もございますし、二十五、六円の場合もございまして、先ほどから申し上げておりますように、ルートによってかなりの違いのあるのが実態でございます。現にメーカー等で出しておりますのは、大体平均いたしますと、高い低いをならしまして百六十五、六円ぐらいのところがプールの結果になっておるようでございますが、それは一つは、やはり安いところは先ほど先生御指摘の百五十五、六円、それから高いのはやっぱり百七十円台になっておるものもございまして、それらはそれぞれ最終的には二次卸なり一次卸なりのそれぞれの取り分のマージンの差によって出てくるわけでございますが、たとえば一つの例を申し上げますというと、東京の小売り店の実例でございますけれども、これは新宿のある西大久保の小売り店舗でございますが、これなどは仕入れ値も卸値も全く同じ目玉商品で売っている例がございます。これなんかはちょっとあっても、それが例であるというだけで問題にはなりません。だけれども、一般的に、たとえば巣鴨のある食料品店でございますが、これは仕入れ値が大体百七十六、七円、売り値は百八十六円ということで十円ぐらいしか差は取っていない。それから、これは荒川の小売り店でございますが、これは小さいスーパーでございますが、これも大体百七十七、八円で仕入れて百八十五、六円で売っておるというふうに、大体十円ぐらいの差が出ておりますが、これは大体小売り店に卸が持ち込んで配送費を卸が持つ場合と、小売り店のほうから取りに行ってそのかわり卸価格を安く受け取ってくるという場合と両方ございまして、それらがどっちに込んでいるかということによって、価格だけを見てもなかなかわからない面もございますけれども、大体において、いま御指摘のように、たとえば九州——北九州なんかも私どもの職員を派遣いたしまして実際に調べてまいりました。あるいは先生の御指摘の店が私のほうで見つからなかったのかもしれませんが、私どもで見た限りにおいては大体百八十円前後で店先渡しで受け取っている、そして百八十六円前後で売っているというのが、これは私のほうの職員の調査だけでなくて、地元の福岡市のアトランダムな三十店を取り上げての調査の中でも出てまいっております。
  154. 小柳勇

    小柳勇君 適正利潤というのはどういうことかということでまたこれは論議しなければなりませんが、小売り値を百八十六円で一応やっているもんですから、これやらなきゃならぬということで、もう思い詰めてほとんど利潤を得ないまま売っているわけです。したがって、メーカーから出値は幾らですかと、出荷の値段は幾らですかと聞いているわけです。そういうところを一つ一つやっぱり指導しませんと、小売り値だけやりますともうもうけないでもしようがないわいとやっているわけですよ。その現象をどうしますかと言っているんです。
  155. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど申し上げましたような協力店以外の小売り屋さんでは、お話しのようなことがたまにあるかもしれません。全部は百八十六円で売れないようなお店もあるかと思いますが、だんだん申し上げましたような協力店をふやしてまいるつもりでありますし、それからまた、そういうものに参加していただければ、正常なルートでものが出てまいるはずになっておりますし、それからまた、何しろ二十万軒あまり小売り店があるわけでありますから、中にはいろいろなケースがあるかもしれませんが、私どものほうといたしましては、ただいまのようなお話を念頭に置きまして、なお、流通の立場で十分に注意をして小売り屋さんがやっていけるように努力をいたします。
  156. 小柳勇

    小柳勇君 当分、この指導価格は続けるんでしょうね。
  157. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 当分続くものと思っております。
  158. 小柳勇

    小柳勇君 次は公正取引委員長にお伺いいたしますが、製糖産業を大手商社が支配いたしまして、輸入から今度は出荷するまでマージンを取っている、そういうような現象は御存じでございますか。
  159. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 昨年大商社の調査をいたしました際に、まあこれは範囲が非常に広うございますから、ある特定の分について詳しくは調べておりませんが、砂糖について、やはりこれは一つの産業界に対する大商社の支配というか、そういう色彩がかなり強く認められました。現在も、さらに今後続けてその詳細をきわめていきたいと思いますが、株式をほとんどの、大小いろいろありますが、たいていの製糖会社には商社が株主としてかなり大口なものもございます。そして、原糖を輸入し、かつまた、それを売った製品ですね、今度でき上がった製品を商社が買い上げてやっておると、そういうところに、まあ砂糖業界についてはかなり商社の深い支配関係があるように私は存じております。
  160. 小柳勇

    小柳勇君 ほとんどの製糖メーカーが商社の支配下にあります。そして、販売手数料を取っているだけではなくて、製糖メーカーの株を全額取得したり、多数の役員を派遣、また、かなりのシェアを占める長期融資を行なって製糖メーカーを支配をいたしております。こういう実態については調査されたことはございませんか。
  161. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) おおむね調査しております。いまのおっしゃったようなことがつまり商社、総合商社の問題点の一つでございます。役員を派遣する、株は持つと、こうなれば、まあ半分以上自分の思うようになる。そういうことで砂糖業界全体が何となく総合商社、特に私のほうで調べたのは六社でございますが、六社だけでも相当部分かかわり合いがある。ほとんど六社が支配的な地位を持っておると、こういうことでございますから、それがつまり商社問題の中の一つの問題点だと、こういうふうに……。これをいかに是正するかということをただいま検討中でございます。
  162. 小柳勇

    小柳勇君 別の機会に、具体的な例は持っていますから示しますけれども、抽象論ですが、こういうことはどうでしょうかということをお伺いするんですが、製糖業界が、昭和三十八年の輸入自由化以降、過当競争で苦しんでまいりましたが、このとき、ある商社が甘言をもって製糖会社の経営に参加し、その後、製糖会社を骨抜きにして利益を吸い上げ、一方的に負債を負わせ、ちょうどよいころになって融資した金を引き揚げて会社をつぶす、そうして肩がわり会社を用意して、営業権と技術者のみを引き継いで新会社で利益を計上してやる例がございます。こんなあくどいことができるのも、現行の独占禁止法の規定が不備で、金融機関の持ち株と競争会社の持ち株と役員派遣のみ禁止しておる。商社の持ち株や役員派遣などについて何の規制もされておらないと、したがって、公正かつ自由な競争を積極的に確保するため、総合商社の株式保有などの制限をする独禁法の改正を行なうべきではないかと思うが、いかがでございましょうか。
  163. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 総合商社が意識的にそういう、いまおっしゃられたようなたちの悪い方法で会社をつぶして、しかもそれを自分が一〇〇パーセント……、いま一〇〇パーセントといいますと、私は最近では名古屋精糖——これはすでに知られたことで、名古屋精糖がつぶれました。早くいえば会社がつぶれたと言っていいんです。会社更生法の適用を受けた。そのあとに工場が二つございまして、その二つの工場をそれぞれ別の商社が自分のものにして一〇〇パーセント株式保有でやっております。これをおさしになったのかどうかわかりませんが、はたしてその裏にそういう陰謀があったのかどうか、その事実は、私、わかりません。わかりませんが、結論として申しまして、そういうことであるから、商社が産業界に対してあんまり深く介入すれば、商社の力というのは総合商社の場合には圧倒的にその資金力において強い。これは全部借金でございますが、早くいえば借金であるけれども、支配力としては金がものをいうんですから、それですっかりあれすると。ことに砂糖は、不況に長い間あえいできたと。このところになって国際糖価の暴騰といいますか、まるで違った姿になりまして、砂糖は高いものになってしまいました。そういうぐあいにおいて、まあ何となく値段が上がるときというのはむしろ利益が上がるわけでございますから、うまみがまた出てきたのかというふうにも思われますが、いずれにしても、そういうことから、長い間商社のほうからいえばめんどう見たかいがあったということかもしれませんけれども、それはそれとして、そういう産業支配そのものに商社として深く介入し過ぎるのは好ましくないから、商社の株式保有そのものについて検討したいと思っておりますし、それから役員の問題も、やはりこれは他の場合に、競争会社の場合には確かに制限されておりますけれども、競争的な関係にないと認めると、そういうことは放任されておると、こういう点についてやはり検討をしなきゃならぬ。商社の規制の問題として考えていきたいと思います。
  164. 小柳勇

    小柳勇君 いまの独禁法の改正の問題などは、これは私どもの問題ですから、また、検討しなけりゃなりませんが、いまの問題、一つの例は新日本製糖がつぶれています。したがって、新日本製糖のつぶれましたいきさつなどを御調査されたことがあるのかどうか、お聞きしておきたいんです。
  165. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 事務当局があるいは調査したかもしれませんが、私は、そこまでは聞いておりませんのではっきり申し上げかねます。
  166. 小柳勇

    小柳勇君 この問題は、またあとで集中審議もあるようでありますから、大手商社の砂糖業界に対する支配の問題は、具体的に私どもの持っている資料も出して論議いたしたいと思います。したがって、これはあとの問題は後日に譲らせてもらいます。  そこで農林大臣、今後の外国の国際糖価の、これだけどんどん上がります、あるいはこのままいくかわかりませんけれども、現在の関税の問題だけでは問題処理できないでありましょうが、今後の措置についてどうお考えですか。
  167. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) まず第一に、やはり国際砂糖協定、価格協定をするということが何よりも一番先に大事なことであります。で、これにつきましては、私どもは世界じゅうでも消費量において大手のほうでありますし、国際間の協定、これができますようにあらゆる努力を続けておるところでございます。これが一つ。もう一つは、三、四年前でありますが、私が農林省におりますときに砂糖業界の方々に集まっていただきまして、われわれの常識から見れば、おたくのような不経済なやり方ではうまくいくはずがないではないかと。大体、先ほどもちょっとあなたのお口にも出ましたが、過当競争、しかも、終戦後台湾から引き揚げてこられた者たちが中心でございまして、大手であります。この方々は大ぜいの社員を引き揚げて連れてきて、そしてかつては砂糖キビを台湾に持って畑と一緒にやっておった。それを全部取られてしまって、今度は精製糖しか商売がないのでありますから、そこでいま申し上げましたように、沖繩とか、そういうところに、それから北海道のビート等も手をつけ始めておりますけれども、そういうところで従来あります六社ほどの大手が精製糖だけ始めた。それもしかし、非常な過当競争でありましたので、御存じのようにここ十年間ぐらいは全部無配であります。こういうことをやっていないで、企業の合理化と合併をやるべきではないかと、こういうことを熱心に慫慂いたしたのでありますが、何か古い家柄を誇っております業界の方々は、おれが中心になってほかを合併するなら賛成だといったようなことを各自言っておりまして、一向成果があがりませんでした。私どもは、まず、そういうことを促進することが必要ではないかと思っております。  もう一つは、国内産糖の自給度をできるだけ高めていかなければならぬと、こういうことを考えておりますが、輸入いたしましたものと国産との砂糖を混合して価格がきまっていくわけでありますので、そういう面においては、私どもの行政指導というのが非常に大切なことだと思っております。国民食糧の中の甘味資源というのは大事なものでありますので、なお力を入れてうまく流通がまいりますように、より一段の努力をいたしてまいるつもりであります。
  168. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣に質問いたします。  いま大手商社の問題を話しておりますが、われわれも外国に参りましても、外務省の出先機関よりももっと先に商社の諸君が活動しています。いいことだと思うのです。ただ、いまの砂糖の問題のように、輸入についても、あるいは販売につきましても、出も入りも全部大手商社に支配されるというようなことについてはどうかと。けさ私は、防衛庁長官がFXの購入について大手商社に無理に頼まぬでもいいではないかというようなことを記者会見しておられるけれども、それを見て、そういうものを感じましたが、いまは貿易振興局がなくなりました。貿易振興局などあるときにそういうことを感じておったんですが、大手商社でなければ一切この外国貿易はもう自由にならぬというようないままでの考え方があるんですけれども、通産大臣どう考えますか。
  169. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、商社につきましては、国内の中小企業分野に進出することは自粛せよ、これをまずやっております。洗たく屋とかラーメン屋まで入り込む必要はない。第二に、国外へ出ていく場合におきましても、日本の企業としての自粛措置をもって現地の社会と融合するようにと、そういう指示をし、かつ彼らがきめた行動規範をいま監視しておるところでございます。  それから物資輸入につきまして、昨年来いろいろ問題が提起されました。これらにつきましても、一面においては価格を引き下げたりする要素もございますが、また一面においては、阻害要因にもなっている面がかなりございます。木材の問題なんかそういうことが出てきた問題でございます。そういう点で一律に一がいにこれを規制するということはいけないですけれども、そのケース・バイ・ケースによって適当でないと思うような場合には、われわれとしても行政指導によってこれを自粛させるなりあるいは方向変換やらせるなり、そういうような措置をやりたいと思っております。
  170. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣にもう一問ですが、これは石炭対策です。この前の予算の続きですが、豪州の原料炭四〇%供給削減のようでありますが、それともからんで石炭対策をどうお考えですか。
  171. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この間も社会党から申し入れの書類をいただいてこの間御返事を申し上げたところでございますが、石油危機になりましてから燃料事情は非常に大きく変化いたしました。それで、いままで経済採算点でないところも採算がとれるようになるという可能性も出てきたと思われますし、また各エネルギーの中における石油の加重性、重要性というものが認識されてき出したときでもあります。そういう面からもっと広い視野に立って、長期的展望に立って国内資源を大切にするということも踏まえて、この日本の各エネルギーの中における石炭の再評価ということをいま総合エネルギー調査会でやってもらっています。六月までに答申を出してもらいまして、その答申によりまして石炭審議会にまた諮問をかけて、来年度の仕事に間に合うように作業をやってもらいたいと思っておるわけであります。
  172. 小柳勇

    小柳勇君 最後は外務大臣。  最後は日中航空協定の問題、これもこの前の質問の続きでありますが、日中航空協定につきましては、先般大臣不在のときに私は運輸委員会で質問したことがございます。おそらく報告がいっておると思いますが、現状と見通しについて御報告を求めます。
  173. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日中航空協定、本協定は近く北京で開催することになっておりまして、来週前半には当方から係官を派遣する予定でございます。  日台間の民間航空取りきめにつきましては、当方から構想を先方に提示いたしまして、詳しく説明をいたしました。検討を約しましたけれども、御返事を申し上げるまでには時日をしばらくかしてくれという状態で、いまなっているのが現状でございます。
  174. 小柳勇

    小柳勇君 外務省だけでなくて、自民党の内部にもたいへんまだ問題が残っておるように方々で情報があります。うまくまとまりそうなんですか、中国と日本の関係よりむしろ国内の自民党内部の意見がまとまるかどうか心配しているのだが、それと日台関係の、このあとを受け持つ日本の航空会社などについて現状御報告願います。
  175. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 政府と与党との間のことは私どもにおまかせをいただきたいと思います。それから、われわれといたしましては早急にまとめ上げなければならぬと存じまして、精一ぱい努力をいたしておるということだけを御報告申し上げます。  後段のほうの問題につきましては、運輸大臣からお願いいたします。
  176. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 台北にこの民間協定が成立した場合に行く飛行機はどういうことかということでございますが、これはただいままだ最終的な決定を見ておりません。いろいろ航空界の御意見も聞かなきゃなりませんし、また、ことによれば、運輸政策審議会の御意見も聞くことになるかと思いますが、ただいま検討中でございます。
  177. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもちまして小柳君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  178. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 山崎君。
  179. 山崎昇

    ○山崎昇君 私は、主としてILO、公務員制度審議会の答申、春闘、地方公務員関係、そして綱紀粛正等々の問題について政府の見解を聞きたいと思っております。  それに入ります前に、けさほど報告ございました石油価格決定について一、二点聞いておきたい。これは、私が聞きますのは、この二、三日来、行政権と独禁法との関係についてずいぶん議論がございました。私自身これを正確に理解をするために聞きたいと思っているのですが、そこで、中曽根通産大臣に、あの行政価格はどういう形で業者に指導するのか、まず、その点からお聞きをしていきたいと思います。
  180. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行政指導価格は個別的に、石油企業者ごとに指導いたしまして、通産省の方針に従って協力してくれるように要請をいたします。それから、末端小売りの場合も同様にこれは通産省から文書も出しまして、個別企業ごとに社長あてに文書も出して協力を要請する予定であります。
  181. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、通産省に元売り業者十二社ですか、これを集めて説明をする、そういうことはなくて、個別に指導するということになりますか。その際、従来の論戦でまいりますというと、そういう場合でも、すべての業者がその指導価格によって販売をするとすれば、独禁法違反の疑いがあるというのが公取委員会の私は見解だったと思う。したがって、その点に関しては通産大臣の見解を聞くと同時に、公取委員長の見解を聞いておきたい。
  182. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もし、そういうすべての業者が意思の連携をもって共同に取引制限するということを通じて行なえば、これは行政指導があったあとそういうことをやっても、これは独禁法にひっかかるだろうと公取は主張されておられます。その辺は法の解釈でよくわかりませんが、私もそういう危険性はあると思います。しかし、通産省が個別企業ごとにある価格協力してくれるように要請して、その個別企業ごとに通産省に対して協力するという意思を表明した、そして相互の意思の連携がないと、そういう場合にはもちろん独禁法にはかからぬと、そういうようにわれわれは解釈していまして、そういう方法で実行する予定であります。
  183. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 私どもの見解も、いま言われたのとそれは同じことでございますが、要するに、行政指導では価格の設定はできないのであると。したがって、業者がこれを受け入れて自分できめるという形になる。その場合に、業者が受け入れることについて、さあどうしましょうかというふうな横の連絡があれば、それはそれだけでもカルテルになる危険があるので、そういうことから先般来私どもは行政指導による価格決定ということは非常にカルテルにまぎらわしい結果を招く。しかし、はっきりとそういうことを区別されて全く一方的にと言ってはなんですが、政府のほうできめた価格より違った価格をおそらくおもなる、たとえばガソリン価格について違った価格をつくられるわけないと思うのですが、同じ価格でありましても、それを各個撃破で個別に説得されてやられる、横の連携は全くない、こういうことでありますればカルテルにはなりませんから、その点は区別しておると。けさ総理大臣がついでに読みました私との統一見解におきましても、本則はやはり標準価格によるということは暗に出ているわけでございまして、しかし、とりあえず行政指導によるということは、私どもは、そういうカルテルにまぎらわしい、カルテルという疑惑を生むような方法でなしにおやりになるならば、それはもう指導のあり方でございます。私どもは特にそれを問題にするつもりはございません。しかし、その点ははっきり区別しておやりになればよろしいし、なるべく早く行政指導ではなくて標準価格になるべくすみやかに移行されるということをちゃんとうたっていただいているわけでございます。
  184. 山崎昇

    ○山崎昇君 いまの問題ですね。たとえばこれは仮定の話ですが、通産省が電話でも文書でもけっこうだと思うのですが、各業者別に指導したとする。その業者から、それじゃ、これこれの業者はどうですかという質問があって、しかしあくまでも話し合いは個人同士になっている。しかし、Aの商社もこれは受け入れていただきましたというような形で全部十二がなった場合に一体どうなってくるか。私は、そういうことはあり得ると思っているわけです。  それから公正取引委員長いま答弁がございましたけれども、この行政価格が、指導価格がいつまでもつか私はわかりません。わかりませんが、早い機会に何かの要因が起きて別な価格改定をされる。しかし、改定をされたどきには依然として指導価格でやられているという場合には、前の行なった指導価格は一体これは何なのか、これはカルテルにならぬのか。標準価格に短い期間でなればいいですよ。ならないでずっといった場合、別な価格に変わった場合に、このきめた指導価格というのは一体これは何なのか。その辺について明確にしてもらいたい。
  185. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) ただいまの御質問の場合は同じことになると思うのです。つまりあらためて指導価格を、たとえば引き上げたり引き下げたりした場合、これは同じように業者間に横の連絡があれば——連絡でございますが、この連絡が非常に軽い程度のものでも私は十分だと思うのです、意思の疎通がはかられればいいのですから。それはやはりカルテルになる。行政指導の有無とは関係ないと、こういうことでございますから、その点だけが私どもが問題にしておるわけでございます。個々別々に指導して、ただ、業者側としては非常にそういう場合、私どもは疑わしいのはやはり疑いが残るわけです。残るのですけれども、しかしそれを証拠立てるとなりますと、たとえば電話でやったのをどうやって証拠立てるかという、つまりカルテルについてはあくまで私ども証拠が要る。これはまるで脱法行為を教えるようなものですけれども、しかし、証拠が要るという事実はこれは争えないのでございまして、それをわれわれのほうがはたしてつかみ得るかどうかという問題にかかってくる、非常にむずかしい問題を提起されるのでございますから。したがって、なるべく早く、すみやかに安定的な見通しというか、できたならば、国民生活に密着したような物資については、ことに大幅な値上げを含んでいるものでございますから、やはり法律によっておきめになるのが適当ではないかと、こういう見解は依然として変わりません。
  186. 山崎昇

    ○山崎昇君 あとでまた、前川委員がやることになっておりますから、私はこれで打ち切りたいと思うのですが、それじゃ、新たにもう一ぺん聞きますが、いま緊急でやむを得ないと、こう言う。それじゃ、標準価格に変わるまでの期間というものは、あなた方の考え方として大体どれくらいのことは行政指導価格でもやむを得ぬが、しかし、その期間があまり長くなれば当然問題が生じてくる。なぜかといえば、行政指導価格そのものをあなたは独禁法の違反の疑いがあるというような説もこの間から述べておりますから、そういう意味で、この行政指導価格というものはきわめて私は重要な内容を含んでいるのではないか、こう思うので、重ねてこの点だけは聞いておきます。
  187. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) きょう午前中の総理大臣が言われたことばでは、原油価格需要動向等価格決定要因がきわめて流動的であるということが理由に掲げてあります。そうしますと、原油価格についてはいま仮払いである、追加要求もある、いろいろございますが、一方で、もしその価格を一ぺんきめたら半年なり一年なり維持するんだ、こういうふうなことをおっしゃると、それならば、それならほとんどきまっておるわけですね。ほとんど内容的には動かさないというふうな決意でなされるんでしたら、流動的であるということはあまり理由になりませんから、なるべくすみやかにという私どものは、つまり緊急避難的な意味でかねて私が申し上げてたことと同じことでございますから、これはもうなるべく早く準備ができ次第標準価格でやっていただきたいと、これはただしその末端の価格標準価格も含む場合があるでしょうから、たとえばガソリンのスタンドで売る価格についても標準価格を設ける必要があるかもしれません。そういうこともありますから、私どもはそうその一週間でやれとかいうふうなことは申しませんが、しかし常識的に、可及的すみやかにということは、まあ、これらについて当分これは守らせるというふうなこと、私は標準価格そのものについても実は固定的に考える必要はないと思うんです。ほんとうに変動すれば、たとえば原油は下がったと、アメリカ向けの禁輸が解けて物が豊富になった場合は、それは下がることだって考えられないわけではない。そういう場合にはほっておくべきものじゃありませんから、ですから標準価格といえども絶対のものじゃございませんよ。一つのまあ暫定的なものであっても私はしかたがないと思うんです。そういうことから、適当な時期とかありますが、私どものほうでは可及的すみやかにと解していますが、可及的すみやかに——いま時期の点について何週間まではいいということは申しませんけども、何カ月も……。
  188. 山崎昇

    ○山崎昇君 官庁用語みたいなことを言わぬで、あなたの頭の中にあるのは大体どれぐらい——緊急避難だとか、標準価格というのは大体どれぐらいあなた期間あれば法律上の標準価格としてやり得るのですか。
  189. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) まあ、私いまここであまり断定的なことは申したくありませんが、常識に言えば、まあ何週間というか、それは四週でもいいですけどもね、しかし二ヵ月でも三ヵ月でも暫定であると、暫定というのは、可及的なすみやかにはそれはちょっと入らないんじゃないかという感じがいたしますんで、その辺のところは私がいまはっきり言うと、またあとで引っ込みがつかなくなりますから、その辺はひとつある程度弾力的に考えるということです。ある程度は私は行政の立場も尊重します。しかし、相当——私のほうでは——おそければこれは約束と違いますから、もっと早くやってくださいということは申します。その点は変わりません。
  190. 山崎昇

    ○山崎昇君 まあ、察するところ私は一カ月程度だろうと、こう思うんですが、それは私も断定的には申し上げておきません。しかし、官庁用語みたいに可及的すみやかと言ったってだれもわかりません、そんなものは。役人の人はわかるかもしれないけれども、一般国民に可及的すみやかなんと言ったって何のことだかわからないですよ。だからやっぱりこういうものは後々また疑義が生じないように、ある程度公取委員長の見解というのはきちんとこういう公の場ですべきものだと私は思うんです。それによってあなたの責任どうこうという意味ではありませんで、少なくとも私は行政権と独禁法との競合の問題について理解をするために聞いているわけですから、この程度でこれはやめておきたいと思います。  次に、これに関連して通産大臣経企庁長官に一言だけ聞いておきますが、けさ一部の新聞に報道されておりますが、石油需給化法に基づく審議会がほとんどたなざらしにされておる、こういう報道もございました。したがって、これは価格の問題だからそれは用事ないんだといえば、ないのかもしれませんが、一体そういう法律に基づく審議会というようなものについてどういうお考えを持つのか。あるいはまた経企庁長官には、生活安定審議会もありますが、先ほど述べられたああいう内容のものについてどういう説明をされて理解を求めるのか、この審議会との関係をお二人から聞いておきたいと思う。
  191. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 審議会は毎月毎月の供給計画をきめる前に開きまして、そして過去の経過、実績を御報告申し上げ、また見通しを申し上げて御審議願って、いままでの二月、三月の需給計画もきめてきたところでございます。今回の価格の問題につきましては、非常にデリケートな重要な問題もありましたので、事後報告ということで事後報告さしていただきたいと思っております。
  192. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 石油需給安定化法に基づく石油審議会のほうは、これは通産大臣の諮問機関になっておりまして、私のほうは出られないたてまえでございます。しかし、国民生活安定審議会のほうは、これは総理大臣の諮問機関でございますので、私どもはもちろんのこと、関係各省の担当官の出席もいただいておりますが、このほうは総会のほか第一小委員会、第二小委員会というようなものも設けまして、三月に入りましてからもまたその会合を開きました。いろいろの意見がございましたが、究極的なその一致した意見といいますよりも、今度のこの石油価格引き上げ等に関する私どものいろいろの段取りを御説明を申し上げたと、こういう状況にいまございます。
  193. 山崎昇

    ○山崎昇君 次に、大蔵大臣に、この機会ですから、私はこの予算編成技術について一、二点聞いておきたいと思うんです。  この予算書を見してもらいました。しかし、予算書の甲号では詳細に金額等が載っておりますが、この中で一切金額が載っておらないところがあります。これはもう御存じのとおり、丙号の繰り越し明許費については金額一切載っておりません。そういう意味で、一体どういうわけで繰り越し明許費だけは金額が明示できないのかということと、それからあわせまして、公共事業費を繰り延べと、こういうんですが、一体この繰り延べるという根拠はどこにあるのか、これもあわせてひとつお伺いをしておきたい。
  194. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 予算は単年度できまっておるわけです。そこでそれに対する例外費があるわけです。単年度では窮屈だと、そこでまあ十五ヵ月予算にしたらどうだとか二年制にしたらどうだとか、いろいろ意見があります。そこで、例外として三つの制度があるんですが、まあ見通しというか、穴をあけると、その一つがいまお話しの繰り越し明許であります。それからもう一つが継続費、それからもう一つが債務負担行為ですね。それで繰り越し明許は、これは当該年度、昭和四十九年度について言いますと、昭和四十九年度中に消化しきれない、そこで翌年度でそれを支出すると、そういうことが実際的じゃないか。工事を途中でやめるというわけにいかぬ。しかし、それを無制限にやりますとそこで弊害がありますので、四十九年度、つまり当該年度において、こういうものは繰り越ししてよろしいという、その費目についての御承認を得ると、これが繰り越し明許でございます。で、これは公共事業費なんかにつきましては、繰り越し明許ということでその御承認を当該年度の予算の総則においてお願いをすると、こういうことになるわけです。  それからもう一つの債務負担行為、これは当該年度においては予算として支出はしない。しかし、これも一年じゃできないんだと、数年度にわたるというようなものがある。それは一括して契約をなし得るために——支出はいたしません。しかし、契約の権限を当該年度において取得する必要があるというので、これはまた、当該年度の予算におきまして、その権限を国会にお願いをすると、こういう制度でございます。  それからさらに一歩進みまして、当該年度において着手する工事がもうその次の年度、あるいはその次の年度、そういうことで一体的なものである、あるいは継続性が非常に緊密であるというものにつきましては、これは将来にわたっての契約をなすことができる。のみならず、その将来の年度において支出するという権限も、これを国会に御承認を願うと、こういうことでありまして、そういうことでありますので、繰り越し明許につきましては、これはもう予算には数字は載ってこないんです。それから債務負担行為、これにつきましては、その限度額が予算の総則に載ってくると、それから継続費につきましては将来にわたっての各年度ごとの契約金額、これが載ってくると、かような関係に相なるわけであります。
  195. 山崎昇

    ○山崎昇君 大蔵大臣説明の法的根拠は私も承知をしているんです。ところが、ふしぎなのは、この財政法に繰り越し明許費の規定がございますが、それを受けて、政令で予算決算及び会計令を見ますというと、あなたの手元までは予算編成と同時に、すでに来年度はこれこれの額は繰り越し明許しなければなりませんかもしれませんというのが全部行っている。国会は一体この科目においてどれだけのことが繰り越し明許なのか全くわかりません。ただ、これは予算の調査室でつくった資料を見れば、ああなるほどそういうもんかいなと私どもはわかりますが、この繰り越し明許について国会議員は何も知らぬのです。全く行政権で、片や金額を明示して議決をして、片一方ではフリーハンドみたいに全部——極端に言うならば全額翌年に繰り越してもいいというかっこうになっちゃう。そして、私は今日までの経過を見ますというと、おおむね二七%から三〇%というものは繰り越し明許予定額としてあなたの手元へ行っている。実際に繰り越されるのはわずか四%か五%です。膨大な額があなたのほうに繰り越すかもしれませんとこういって、実際はそうなって、議決は何も金額が入っておらない。一体国会議員はどういう形でこの繰り越し明許というものを議論をしたらいいのか何もわかりません、これは、正直言いまして。それから私は、やっぱりこういうものは何々以内ということになるかもしれません。いずれにしましても、明示をして国会がもっと審議しやすいように私はすべきものではないか、こう思うんです。それから、繰り越し明許については内容が二つあって、その性質上または予算編成後の事由によってだめなものと、こうなる。もう予算が提出されると同時にもう性質上だめなもんですよというような形のものを私ども提示されて議論せいと言われても、それはおかしいのではないか、こう思うんですよ。だから、少なくともどういう形か知らぬにしても、ここに私は金額を明示して、そしてその理由を明記をして国会審議をやらせるべきものだと思うんですが、どうですか。
  196. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 予算はたてまえといたしまして、当該年度で全部支出すると、これが望ましいんです。ただどういう事情でそれが使い切れないかという問題が起こるかもしれない。そこで、そういう問題のありそうなものにつきまして、こういうものは翌年度に繰り越して使用することがあるかもしれませんよというので、これはそういう科目の指定を国会にお願いをすると、私ども大蔵省の手元でも来年に幾ら繰り越されるのか、こんなことは全然わかっておりません。それは年度の途中におきましていろんな事情がありまして繰り越しになる、そういうことでありまして、いま何か、私どもの手元で繰り越しがもう予見されておるようなお話ですが、これはこういうことがあるんじゃないでしょうかね。これは繰り越し明許に、ひとつ予算総則に書いてもらいたいと、こういう各省の希望がある。その希望を大蔵省に説明するときにこういうような事情があるかもしらぬ、こういうような事情があるかもしらぬと、そういう説明をする、その段階でいろんな事情を述べると、そういうことである程度の繰り越し必要なる事由の説明資料というものはあるいはあるかもしらぬ。しかし、私どもの手元でもその予算の審議をお願いすると、その段階において幾ら繰り越されるのかと、こういうようなことは全然承知しておりませんです。
  197. 山崎昇

    ○山崎昇君 私は予算編成で全くふしぎだと思う。そうすると、ここへ出てくる数字はこれは一体何なのか、これは調査室でつくった資料でございますが、全部三十五年から四十九年までのやつ載っております。そうすると、この資料でいいますと、四十九年度でいうと四兆四千五百六十三億円という数字がこれには載ってくる。四十七年度までしか数字がありませんから、言えば三兆七千百七十三億というものは繰り越し明許予定額になっている。そして、実際に繰り越したのは千八百三十一億だ。そして、この中身は二つある、さっき申し上げたように。予算議決後事故が起きて何かの形で繰り越すものは事故繰り越し額として別に明記されているんじゃないですか。この辺のことはもう少しきちんとしてもらいたい。
  198. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはもう非常にきちんとしております。つまりいまの数字は、繰り越し明許に該当する費用は一億円だとか、あるいはもう一つのやつは二億円だとか、そういうふうにあるんです。その予算額の全体が合計して三億円であると、そういう数字なんですよ。つまり予算額の全体の数字がそこに載っておると、こういう性質のものでありまして、その中の何がしかが、あるいは一〇%とか二〇%、そういう相当額が翌年度に繰り越される、そういうことでございます。
  199. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、先ほど私が申し上げたように、甲号で予算を私ども審査をしている、丙号ではそういうことが一切わからぬから行政権だけでやられて国会議員は審議してもわからないんです、これね、——いや、わからないですよ、これ、そうでしょう、何も載ってないんですから。たとえば、例を言いますか、官庁営繕費百九十一億幾らとありますね、これは甲号でもって予算要求やっています。こっちの丙号に来ますと官庁営繕費だけしか載ってきませんから金額載ってまいりませんね。そうすると、われわれは一体この官庁営繕費とここにあるんだが、どうなるんだということであって、説明も何もありませんよ、皆さん、見てください、これ。こういう私は予算のやり方というのはおかしいじゃないかという……。
  200. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それがすなわち繰り越し明許なんです。百九十一億円と予算にはあると、ところが台風の関係だ、いろんな関係であるいは予算が執行できないかもしれない。その部分をその年度でもう打ち切りにしちゃうということでなくて、その一部分を翌年度に繰り越して使用し得るという権限を丙号において取得すると、こういうことなんです。ですから、これはもう私どもも全然これはわからないんです。数字も全然持っておりません。また、持っておらないのが当然で、初めから繰り越しだなんということでありますれば、これは継続費にいたします、あるいは債務負担行為をとりますとか、そういう性質のものになるんです。そのかわり金額は繰り越すそれに相当するだけ小さくなって甲号の予算総額としてお願いをすると、こういうことなんです。これは私どもも全然予見しておりませんです。
  201. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 大臣からお答えがございましたが、補足して御説明申し上げたいと思いますが、山崎先生御専門でございますから十分御承知と思いますが、財政法十四条の三に繰り越し明許費の規定がございます。この規定は、経費の性格に着目をいたしまして、どういう性格の経費が当該年度に支出を終わらないで翌年度に繰り越される性格のものであるかということを予算できめろということを示しておるわけでございます。したがいまして、先ほど先生おっしゃいました予決令で大蔵省に対しまして予定経費要求書を出すことになっております。それも金額について明示はいたしておりませんで、どういう経費の事項を繰り越し明許費として指定をしてもらいたいかということを各省が要求するわけでございまして、最初から当該経費のうちどの程度の金額が、あるいはどの程度のパーセントが繰り越されるかということは当初から全くわかっていないわけでございます。したがいまして、そういうものにつきまして金額を明示するということはたいへんにむずかしいことであろうかと思います。
  202. 山崎昇

    ○山崎昇君 私はまだ釈然としませんけれども、私のきょうの本質問のほうがだんだん時間がなくなりますからこれでやめますが、ただ、私はどう考えてみても、たとえばさっき例に出しました官庁営繕費の場合なんかは、なぜこれあとで繰り延べになるなんということになるのか、その辺私は、天災地変その他が起こるような事業ならいざ知らず、そういう点が私はやっぱり項目を見ると納得できないものがたくさんあります。しかし、きょうは時間がありませんから……。いずれにいたしましても、われわれは何がどうなるのか、この項目だけではわからぬわけです。説明も何にもないんです、これは。そういう意味で不親切な私は予算書だと思いますから、将来、これはやっぱりある程度会議員にわかるようにしてもらいたい、こう思います。  それから、次に一言だけ質問をしておきたいと思うのは、福田さんは、たいへんことしは公共事業費は圧縮した、そして環境保全なりあるいは住宅にたいへん回したと、こうあなたは言う。ところが、どうも私はこの公共事業については一つのパターンみたいなものがあるような気がしてなりません。それは、その年の災害復旧費が減ったりふえたりした分だけ住宅にいったりあるいは環境保全に回っているだけでありまして、そのほかのことではないんですね。ずうっと私は調べてみた。いずれもそういう形になっている。私のほうの例で、皆さんにこれ数字で言えば、たとえば四十八年はどうだかというと、災害復旧費は九・三%見ておる。ことしは六・三%です。減った三%がどこへいったか。それは住宅と生活環境にいっただけであります。金額で言えば、災害復旧費の減った額だけそっちがふえているだけの話で、何もあなたが思い切って住宅や生活環境に回したなんてことにならぬじゃないですか。どうですか。
  203. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは、まあ景気調整というものに公共事業費が関係する。そういうようなことで、公共事業費全体としてのにらみというような意味合いにおいて、まあこれはかすかにそういうような配慮をする、そういう一面があることは、これは否定しません。しかしながら、これはもう各年度の数字でも明らかなように、これは、たとえば四十九年度の予算について見るということになれば、災害復旧費のほうは三五・一%減る、こういうことになります。したがって、その額だけ住宅費に回したかというと、さにあらず、住宅費のほうは二〇・七%もふやしておる。こういうような関係になるので、これは従来ずうっとそういうようなことで、基本的には政府のほうでは長期計画を持っておるんです。道路にいたしましても、治山治水にいたしましても、住宅にいたしましても、下水道にいたしましても、みんな長期計画がある。その長期計画をにらんで、各年度の、長期計画の当該年度分を計上するというふうにいたしておりますが、これはまあそれが主軸になって予算がきまる、こういう御理解を願いたいのです。ただ、災害復旧費といえども公共事業費でありますから、ことしのような異常な事態におきましては、その全体——災害復旧費全体を合わせたのを含めての全体をにらんでというような配意もありまするけれども、基本的にはそうじゃない、かように御理解願います。
  204. 山崎昇

    ○山崎昇君 そこで労働大臣にお聞きをします。  今日までにILOで採択された条約の数、それから勧告の数、それに対してわが国で批准をした条約の数、並びに採択したであろう勧告の数をまずお聞きをしたい。
  205. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。  ILOではわが国は三十一条約を批准しております。一国当たりの平均批准数は大体三十二ですから、日本も国際的になってきておりまして、まだいまからの問題については、関係政府委員からお答えさせてよろしゅうございますか。
  206. 山崎昇

    ○山崎昇君 いままでILOで出された条約の数。
  207. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) ちょっと政府委員からお願いします。
  208. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) いままでILOで採択をされました条約は百三十八でございます。勧告は百四十六ございます。条約につきましては、大臣がお答え申しましたように、わが国は三十一批准いたしております。
  209. 山崎昇

    ○山崎昇君 いまさらこのILOの目的なり、重要さということは私は繰り返して申し上げませんが、いま説明のあったとおり、百三十八もすでにILOでは条約が採択されておって、わずかわが国は三十一しか批准をしておりません。  そこで、日本は国連中心だと、こう言う。国連においては、安全保障会議の常任理事国にさえなりたいという希望をかなり持っておられる。そういうわが国の立場からいけば、私は低いと思うのだが、一体、外務大臣、国際的に見て、この条約の批准のしかたというのはどう思われますか。
  210. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) あなたも御承知のように、わが国は、国内体制が熟しまして、条約が忠実に履行できるという状態になってはじめて条約の批准をお願いするという手順を踏んできておる次第でございまして、したがって、この三十一批准しているのは、労働大臣がおっしゃるように、国際並みな状況でございますけれども、内容的に申しますと、非常に着実なステップを踏んでおるように私は思うのでございます。  問題は、批准の多寡ではなくて、これにふさわしい国内条件が熟してまいっておるかということに問題がむしろあるのじゃないかと思うのでございまして、鋭意そういう条件の熟成をはかりながら、条約批准の歩武を進めてまいるということが正しい行き方じゃないかと考えております。
  211. 山崎昇

    ○山崎昇君 昭和二十六年にわが国がILOに復帰してからすでに二十三年たっております。そして、これだけあなた方が言うように経済が進んで、日本は国際的にもたいへん力を得た。だが、条約の面でいえば、世界的な平均よりまだ下回っている。これは私はきわめて遺憾だと思う。特にILOの重要さというのは、第一次世界大戦の結果、こういうものをやらなければ、世界の平和も、社会的な正義も得られないんだという意味で三者構成になっているわけで、そういう意味で言うと、私は全く遺憾だと思う。特に二十六年に復帰する際には、厚生大臣、あなた当時日本政府代表で、当時所管局長だった。たいへんりっぱな演説をして、批准をいたします、あるいは国際的な義務は守りますとか、こうあなたは胸を張って帰ってきたんだけれども、いまお聞きのとおりの条約しか批准されていない。これに対して、当時のあなた日本代表だったんですが、どう思いますか。
  212. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 昭和二十六年、ILOに再復帰いたしましたときの、私は政府代表として参りまして、いま申し述べましたように、ILOに入った以上は憲章に基づき、定められた義務は履行するということを確かに申し述べてきたつもりでございます。したがいまして、私は、やはり日本も世界の平和の上からいっても、できるだけILOが採択した条約は批准するということは望ましいと思います。しかしながら、このILO条約批准に対する態度は国によってさまざまでございまして、国内法が整備されないのに批准をするという国もあるわけでございます。これに対してわが国は、国内法の整備を着実に行なって、そしてその段階において条約の批准をする、こういうふうなことがありますので、数は少なくても、先ほど外務大臣がお述べになりましたように、着実にそうした方向に進んでいるものだと私は理解をいたしておるわけでございます。
  213. 山崎昇

    ○山崎昇君 着実になんか何も進んでいませんよ、あなた。国際水準以下で何が着実ですか。  そこで、重ねて労働大臣にお聞きしますが、昭和四十二年に、ILOが発足をして五十年になりまして、そのときにILOから人権に関する重要条約として十七条約が指定されたと、こう私ども聞いています。何々ですか。
  214. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 先生御指摘のように、五十周年を記念いたしまして、基本的な十七条約の批准促進のために、ILOが各国に批准状況について現況の報告を求めております。  申し上げますと、最低賃金決定制度に関する条約、強制労働の条約、最低年齢に関する条約、労働監督に関する条約、結社の自由、団結権の保護に関する条約、職業安定組織に関する条約、賃金保護に関する条約、団結権及び団交権に関する条約、最低賃金決定に関する条約、同一報酬に関する条約、社会保障に関する条約、母性保護に関する条約、強制労働廃止に関する条約、差別待遇に関する条約、社会政策の基本に関する条約、均等待遇に関する条約、雇用政策に関する条約、以上の十七条約でございます。
  215. 山崎昇

    ○山崎昇君 そのうちわが国で批准している条約は幾つですか。
  216. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 十七条約の中で七条約を批准いたしております。
  217. 山崎昇

    ○山崎昇君 それじゃ、批准されてない条約がなぜ批准がおくれているのか、その一つ一つの条約について、関係する大臣から私はお聞きをしたい。特に国内法との問題があるというなら、どういうところが問題になって批准ができないのか、御説明を願いたい。
  218. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 昨年、二つ、ILOで条約批准してなったわけです。今国会ではまた業務災害の場合における給付に関する百二十一号条約を批准いたすべく、この国会提出しているようなわけでありまして、いまから先の問題になりますというと、先ほど外務大臣からお話がありましたように、やっぱり国内においておおむね実施されているものがありますけれども、細部についてまだ若干の問題等々あるということで、それらについて今後検討を進めて、そういう国際外交、労働外交と言いますか、そういうものは前進さしていきたい、こういうふうに感じております。
  219. 山崎昇

    ○山崎昇君 未批准の条約一つ一つについて説明してください。
  220. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) まず、最低年齢に関する条約、五十九号でございますけれども、これは満十五歳未満の年少労働者を原則として使用を禁止しておる条約でございます。これにつきましては、基準法でおおむね趣旨を満たしておりますけれども、条約では同居の親族のみを使っております企業においても、危険、有害業務には使ってはならないと、こういうことになっておりますが、わが国の場合には、基準法が同居の親族のみを使用します企業には適用がございません。したがいまして、この点が不十分でございますので批准をいたしておりません。  ただ、これから申します基準法に関係するものはすべて同じでございますが、現在基準法につきましては、基準法研究会でその改正点について検討中でございます。ILOのかかる条約につきましての趣旨も含めて御検討いただいておりますので、その草案が出ました段階で、私たち、方針をきめたいと考えております。  それから賃金保護に関する九十五号条約でございますけれども、これにつきましては、基準法の二十四条でおおむね趣旨は満たしておりますけれども、この条約では、特定物質、たとえば酒などで賃金にかわる現物給与をしてはならないという、特定物質の現物支給を禁止いたしております。そういう点につきましては、基準法ではまだ不十分でございます。そこまできめておりませんので、これはまだ批准ができておりません。  それから最低賃金の決定に関する条約、これは農業関係でございますけれども、最低賃金の一部についてのみ現物給付も認める。たとえ協定があっても一部しか認められない。この点は、現在の基準法では協約があれば全部でも現物給与ができる、この点が満たしておりません。  それから社会保障の百二号条約につきましては、九部門、疾病とか、失業とか、労災とか、老齢とか、そういう部門のうちの三部門について満たされれば批准ができるわけでございまして、わが国の場合は疾病、失業、労災、老齢、この四部門について満たしておりますけれども、社会保障全体にかかわる問題でもございますし、かつ条約の内容が非常に多岐にわたって解釈等にまだ不特定の部分がございますので、その点を現在詰めておる段階でございます。  それから母性保護の百三号につきましては、産前産後の休暇につきまして、基準法で六週間ということを満たしておりますけれども、わが国の場合に、医師が適当と認めかつ本人が申し出れば、産後五週間で就業につける、ここのところが条約と若干はずれておる点でございます。  それから強制労働廃止に関しましては、先生御承知のように、たとえば郵便関係の争議あるいは一般の公務員関係の争議、そういうものにつきまして、わが国の場合には罰則をもって禁止をいたしておりますけれども、これが強制労働の中に入るかどうか。われわれは裁判所で判決をもって行なう懲役というものは入らないのではないかということを考えておりますけれども、この点についてまだ十分詰めておりません。  それから差別待遇、百十一号条約につきましては、わが国の場合、基準法で大体満たしておりますけれども、皮膚の色あるいは性、そういうものの差別の禁止をいたしておりますが、基準法では皮膚の色あるいは賃金についてのみ男女の性差の差別を禁止しておるだけでございますので、この点がまだ足りない点でございます。  あと社会政策の基本的目的、基準の条約に関しましては、これは非本土地域に関する条約でございまして、わが国には適用のないもの、こう考えております。  あと雇用政策に関する条約につきましては、百十一号条約を引用いたしておりますので、百十一号条約についての批准をまだ態度を決定しておりませんので、それの関連で批准の態度をきめておらない。  以上でございます。
  221. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま基準法研究会で論議をされているという話であります。  そこでいま説明のありましたこれらの一連の人権、特に労働者の保護に関するもの、あるいは社会政策に関する等々のものはたいへん私は重要だと思う。いま労働省としてはこれら一連のものはこれから研究会の討議もありますが、いつごろをめどにしてこれらの条約を批准をされるというのか、もう少し明確にしてもらいたい。
  222. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 基準法研究会には、一昨年から基準法の検討のことをお願いいたしておりますけれども、基準法は、御承知のように、終戦直後できまして、非常に長い間たちまして、改正点があるということは明確でございますけれども、その影響するところが非常に広くかつたいへん大きな問題でございます。したがいまして、研究会でも非常にスピードを上げて検討をいただいておりますけれども、いつまでに結論を得るということは、まだわれわれとしてはめどを持っておりません。したがいまして、条約につきましても私たちはその結論を待つということしかないと思っております。ただ、基準法とは別に、条約の中には、現行法をいじればできるというものでなくて、われわれの政策としてなかなか改正——条約そのままに沿って、もしいままで私ら考えております条約の趣旨がそのとおりであるならば、その点に全く沿って改正することについてはまだどうかと思われる点がございますので、その辺の検討もしなければなりません。したがいまして、いつまでにというような態度は、ここでは表明ができないわけでございます。
  223. 山崎昇

    ○山崎昇君 そのほかに、昭和四十六年にジェンクス事務総長が日本へ参りまして、そして当時の労働大臣と会いまして、その際に、港湾労働に関する百三十七号条約、児童の最低年齢に関する百三十八号条約、これらについても、日本は、これは賛成をした条約なんですが、批准をしてもらいたい、こういう促進の話がありまして、当時の労働大臣は、よろしゅうございますという返事をしている。しかし、一向にその後これらについての批准の何ものもない。したがって、港湾労働等については、これは運輸大臣からも答弁願いたい。
  224. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 港湾労働につきましては、昨年の六月に条約の勧告を受けております。したがいまして、港湾荷役の近代化等につきまして、港湾労働者に不安のないように、雇用の問題とか、あるいは所得の問題、あるいは安全衛生の問題等についての勧告でございますが、国内の関係省令のいろいろな詰め等もございまして、ただいま関係各省で連絡をとってこの受け入れに努力しているところでございますが、運輸省といたしましては、この勧告の線に従いまして、おおむねこの線で行政的には、条約のいかんにかかわらず、その線で行政を進めてまいりたいと、かように考えております。
  225. 山崎昇

    ○山崎昇君 行政的にはもうかなり進んでいるのに、どうして条約の批准ができないのですか。その趣旨に従って行政的にやっておりますと言うのに、なぜ国際条約の批准はできないのですかね、もう一ぺん運輸大臣から聞きたい。
  226. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 昨年の六月二十五日の勧告でございまして、国内法の整備につきまして、いま関係各省で詰めをやっている、労働省を中心にしましてやっている最中でございまして、そう長い期間ではないであろうというふうに考えております。
  227. 山崎昇

    ○山崎昇君 国内法でどんな点が問題ですかね。
  228. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 先ほど御指摘の、まずジェンクスが参りまして労働大臣に批准を要請したという点は、先生誤解でございまして、これはいま運輸大臣お答えのように、昨年の総会で採択をされたものでございます。したがいまして、ジェンクスが来ましたときには、総会で採択する際に日本は賛成をしてほしいと、こういうことでございまして、なお、したがいまして百三十七号、百三十八号は去年批准されたばかりでございまして、まだ外務省と関係省庁の間で翻訳会議をやっておって、まだ翻訳も固まらないと、こういう段階でございますので、そういう意味でまだ批准の態度を決定しておらないと、こういうことでございます。
  229. 山崎昇

    ○山崎昇君 まとめて総理に見解を聞いておきたいのですが、いま説明ありましたように、労働者に関する、あるいは社会保障に関する条約がたくさんあるわけですが、かなりおくれているわけです、それはいろいろな事情があるといたしましても。そこで、総理としては、これらの国際条約の批准というものについて、基本的にどういうふうにお考えになるのか、ひとつ聞いておきたい。
  230. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国連に加盟しておるわけでございますから、そういう立場から考えても、勧告は尊重しなければならないという基本的な立場でございます。それからチープレーバーなどといって、日本の労働条件というようなもの、いずれも国際的な話題になっておったわけでございますが、もうすでに戦後から脱却してこのような主要工業国の地位を築いたと、また、一部海外進出等に対してや、輸出問題等に対してもいろいろな問題がございます。それは戦後の日本の現状を理解しないために、先入観を持っての評価もあるわけでございますが、ILO条約に関しては、可能な限り最大の努力をして批准を行なうということが基本姿勢であろうと思います。ただ、日本の国情、いまずっと申し述べましたように、日本の法律的な問題とか、法律解釈の問題とか、いろいろな問題もございます。また基本的な公務員制度との制度上の問題もございますが、そういう問題を詰めていけばだんだんと解決できる問題だと思います。しかし、国情に合わない問題というものは、これはすなおに、ただ批准をすればいいということじゃありません。そういうものに対しては、これはやはり国際的に日本の特殊事情、実態というものが、ILOが考えておるような労働者の地位向上とか、そういうもののラインに沿ってはおるが、制度の上でこう違うだけですというようなことを説明をして理解を深めなければならない。イギリスからILOの代表者が出ておっても、イギリス政府は、勧告は受けますと、しかし、イギリスに全く合わないものに対して批准をするわけにはいかないと、非常に明確にそう言いますから、これはやっぱり国際機関だから、全部が全部まるのみにするということではなく、真に理解をして、また、日本の実情を説明して理解を求むべきものは求めるということで、批准をしてまいるという基本的な姿勢の上に個別な政策を進めてまいるのが正しいという考えでございます。ある意味においては、紛争が絶えないような問題に対しては、場合によっては、制度を思い切って変えることによってILOの勧告を自動的に受けられるという問題もございます。そういうような問題に対しても、いや、それじゃ困るのだと、制度はいまのままにしておってILO批准せよということになると、これは日本の国情に合わないという問題も出てまいりますから、そういう問題は、国内において相談すべきものは相談する、そうして、こういうふうに相談していますから、いまの段階においてはまだ批准できませんと、しかし、こういう状態になれば批准ができますというくらいに積極的な姿勢をとっておるというのが日本政府の基本的な姿勢でございます。
  231. 山崎昇

    ○山崎昇君 私は、これを重要視するのは、日本は、これから開発途上国をはじめとして、国際的な進出が多くなっていくと。国際機関で一応開発途上国の方々が参加をして議論する場というのは一番私はILOの機関が多いのではないかと見ているわけです。その際に、やはり日本が経済進出を批判されておりますように、国内で、こういう国際条約がほとんど日本がまだやっておらぬというようなことからくる批判は、私は、かなり強くなってくるのじゃないだろうか、そういう心配も一応します。したがって、国内法の整備が必要ならば、もっと急いで国内法を整備をする、あるいは多少のことであるなら国際条約を批准をして、それにわが国の法律をある程度合わせる、そういう方向があっていいのではないか。そうしませんと、私は、やはりこの間あなたが東南アジアへ行ったように、かなりなことが国際的にやられてくるのじゃないか、こう心配するものですから、重ねて聞いているわけです。この点は外務大臣どうですか。
  232. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおり、日本の国際信用にかかわる重要な問題だと思いますので、批准を活発に進めてまいる必要を痛感いたしております。問題は、あなたのおっしゃるように、まず条約を批准して、国内体制整備を引っ張るという行き方をとるか、いままでのように、国内体制整備を待って条約批准に踏み切るかということでございますが、いませっかく国内官庁で労働省を中心に鋭意努力いたしておりますので、この努力に御期待をいただいて、私どもも、条約を先に批准してというところまでまだ決意するに至っていないのでございまして、国内体制整備をとりあえず急がしていただきたいと思います。
  233. 山崎昇

    ○山崎昇君 続いて、私は、公務員制度審議会等の問題に移りたいと思うのですが、まず、総理と関係大臣からお聞きしたいんですが、公務員制度審議会の答申と春闘とからんで労働四団体と会談をされているようであります。新聞で私ども承っておりますが、まだ公式の場で折衝された大臣からその経過を聞いたことありませんので、まず労働四団体と会われた総理からその際の問題についてお聞きをしておきたいと思います。
  234. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、まず労働四団体の代表に会いまして、とにかく国は容易なら、ざる状態にあると、この事態をまずお互いに認識をしてもらわなきゃならぬと思うと、これは労働団体、政府、また企業、マスコミというようなお互い個個の立場においては、いろんな問題もあるし、主張もあるが、まず国民全体の利益を守るということに対して大前提を置いてほしいということに対しては、これはもう理解しておりますと。ですから、われわれも、四つの団体の中でも必ずしも一致をしないところもたくさん持っていますと、同盟はストには参加しないと、こう言っておりますし、中小企業の代表は、これは一挙に引き上げられると、われわれも上げてもらうということがないと、われわれ自身は困るんですと、このように意見は違う団体でございますが、労働者の団体として、われわれ四団体の代表は一緒に政府との会合の場を持ったんだから、国民全体の利益を守るという前提に立って話をすることに異議はないと。こういうスムーズな出方で、お互いが国民利益を守るということでありますから、そういう意味で協力をしてまいろうと、これには異議はないわけです。しかし、具体的にですな、こちらは、さなきだに混乱を呈しておる社会情勢の中でゼネラルストライキなどを行なわれて物価が引き下がるはずはない、上がっても下がらぬ、だからまずストライキはやめてもらいたいと。こういうことに対して、ストライキはやめろと言っても簡単にやめられるわけはないと、労働者の権限をそう簡単にやめられませんと、それには条件がありますと、いろんなものがあると、その一つはスト権の問題であり、その一つは低所得者層に対してもっと手厚い社会保障をやりなさいと。こういうことですから、まあ、スト権の問題は、これは制度上の問題であって国会の問題であると。それで、その他政治団体として、国会でもって議論し立法しなきゃならない問題に対して労働組合が国民の一人として要求をすると。まあ、陳情をする、請願をするという権利は憲法で認められているからそれは当然だが、しかし、できるだけ、スト権の行使によって国民影響があるということで、まず労働団体は最小限労働条件というような問題にしぼって検討してもらいたいと、とにかくストライキは困ると、こういう話もしたわけですが、困るといったって、あなたがとにかく要求全部のんでくれればストライキはやめますよという、まあ、全くざっくばらんな話をしましょうという話でございましたが、それはしごく簡単にのめる問題じゃないから、所管大臣がおりますので所管大臣を出しましょうと、ひざつき合わせて腹を割ってお話くださいよと。こういうことになって、そうして所管大臣とは随時会談を続けておるというのが現状でございまして、まだその労働四団体との正式な結論に達しておりませんので、私には公式にまだ会談の結果の報告はなしと、いまだしと、こういうことです。中間報告は受けております。
  235. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えします。  ただいま総理からもお話がありましたが、ことしの春の賃金問題は非常に大事なことでして、まさに、ときには第二の国難じゃないかと。こういうときにあたりまして、総理がいち早く、衆議院の本会議において、労働四団体にお会いいただくと、こういうお話がありまして、それがその後マスコミあるいは経済団体との会合などが先になりましたけれども、ようやく十年ぶりに実現されたというふうなことでございます。そして、その間の話はどちらもざっくばらんに、これだけの大事な日本の問題でございますから、お話され、しかも、その間、せっかく三十年間積み上げたお互いの議会政治というものを大事にするというふうな前提のもとにお話いただいた印象を私は持っております。その後、私は、どんなことがあっても労働団体のパイプになりたいという気がありますから、四つの団体にはそれぞれ性格がございます。でありますけれども、ここはひとつしっかりパイプの役をつとめようと思って、どういう方々がおいでになってもお会いをし、ある場合には、それぞれそういう御意見を私の手元で御申達申し上げて、こういう大事なときには、平和なうちにひとつ国民的連帯感の中に、日本に大きな摩擦のないように、こういう石油危機、いろんなときでございますから、そういうことでお願いをしておる次第でございます。
  236. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 一月以来、私は、総理と御一緒にお目にかかったほかに、十一回ばかり各団体のリーダーと会っておりますが、同盟系統の諸君は、別にこのスト権問題だけを特に取り立てて申しておりません。春闘共闘及び公務員共闘が、特に労働基本権につきましては、すべての公務員労働者に対して争議権を保障すること、それから、スト禁止法法制が撤廃されるまで、その間においても争議行為を理由とする刑事罰、懲戒処分は一切行なわないこと等を含んだ労働基本権についての要求を強く打ち出されております。これにつきましては、私なりにいろいろとお話をして、できれば公制審の先般の答申を私は尊重していきたいと、そうした筋道の中で話し合いを進めたいということを申しております。
  237. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私は窓口ではございません。ただ、労働四団体が私にも会いたいというので会いました。そこで、私は、スト気がまえの中で私の所管の問題について話しすることはお断わりいたしました。ただ、皆さま方がいろいろ弱者の救済の問題あるいは年金問題等について御意見があるならば十分承りますという態度でお話をいたしまして、弱者につきましては、三月末の年度末措置を講じたその趣旨などを、十分納得いったかどうか知りませんが、詳細に御説明を申し上げ、ただ、年金につきましても、繰り上げという御意見がございましたが、それはいまのところそういうものはできませんし、しかし、そういうことは国の予算、法律にかかわる問題でありますので、皆さん方と話し合いをすべき事項ではないと思いますということをはっきり申し上げてございます。
  238. 山崎昇

    ○山崎昇君 総務長官に聞きますが、公制審の答申が出てから、あなたが中心になられて、政府部内に連絡会議ができたそうでありますが、その構成と、それからどういうことを検討されておるのか聞きたい。あわせて、あなたは、労働四団体と会ったときに、公制審の答申の中身を分析をして四つに分けられたと私ども聞いています。それはどういう内容であって、それぞれの問題点についてどういう考え方でおられるのか、この機会に聞いておきたい。
  239. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 公制審の答申が出てから、政府は直ちに連絡会議をつくって、すでに昨年の九月に発足をしておるわけです。それで、今日まで約十三回に及ぶ会合を下部——連絡会議は総務長官が座長をいたしまして、各省次官がメンバーでありますが、その下部に局長及び課長のそれぞれの組織を持っておりまして、そこを通じて協議をいたしております。私は、先般の総理と労働四団体が会われたあとに、この問題はやはりもう少し早く煮詰めていかなきゃいけない。また、春闘の一つの大きな柱にスト権だけを掲げてきておること自体も、私としましては、公制審を尊重するということからいうと、その一部だけが強調されているんであって、全般の問題についてやはり十分組合の諸君とも話をしたいという考えで、二月の二十五日に第二回の正式の連絡会を開きまして、そこで伝達いたしましたことは、すでに御承知のような、公制審において問題点を指摘されている諸点を可能なものからやっていくという考えの中で、すでに局長、課長クラスである程度まとまりつつあるもの、それからなかなかそれもむずかしいもの、それと、さらに大きなスト権の問題、この三つに分けて指示をいたしまして、それぞれ現業で十分検討して、議論にたえ得る体制をひとつつくってほしいということで連絡会議を終わったわけであります。
  240. 山崎昇

    ○山崎昇君 だから、その内容でいま現在どういう点が問題になって、どういう点が検討されているのか、中間でけっこうでありますが、説明願いたい。
  241. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) やや専門的になりますので、多少担当局長をして御報告さしたほうがいいと思いますが、一番大きな問題はスト権の問題でありますが、私は、これは公制審の答申の中では全体の一部をなしていると考えております。しかし、現時点においては、春闘を控えてこれが公制審のすべてであるかのごとく議論されておる。この点については非常に困るということを申しておることと、もう一つは、このスト権のない人たちがストライキをやって、そしてスト権をよこせという、ストを現実にやっているということが非常に現在の法治国としては、議会制度も、民主主義も空洞化しつつあるという点が非常に困るのだということを、組合の諸君に申し上げております。こうしたことは、別に公制審の審議の中でではありませんけれども、組合の諸君にはその点を申し上げて、ひとつその辺のことはよく考えてほしいということを申しております。  以下、連絡会議におきまして議論しております問題について御報告し得るものは、人事局長から御答弁いたします。
  242. 皆川迪夫

    政府委員(皆川迪夫君) お答え申し上げます。  連絡会議では、答申のうち、まず、法律の改正を待たないで制度の運用によって措置できる項目が若干ございます。たとえば、なるべく労使の話し合いを促進をして、お互いの意思の疎通をはかれという問題でありますとか、あるいは非登録団体との交渉、これも合理的な理由がなくして拒否をしないようにしろとか、あるいは、管理運営事項に随伴をして起こります勤務条件の問題についても交渉の対象にしたほうがいいとか、あるいは組合との対応機構、当局の対応機構をなるべく充実強化をしたほうがいい、こういった四項目につきましては、おおむね運用によってある程度できるということで、これはその方向で処置をすることに各省一致をいたしておるわけでございます。  それから、制度改正を要する問題のうち、若干のものにつきましては、比較的めどが容易であろうということで、これを集中的に取り上げております。その一つは、たとえば法人格の問題、あるいは管理職の範囲を労働組合法と均衡をとらせるとか、あるいは官民比較——人事院が給与を調査する際に、これの調査等にあたりまして、労使の意見を聞いたらどうか、こういいました項目につきましては、なるべく早急に具体案をつくりたいということで検討いたしているわけであります。  そのほかの項目につきましては、スト権を含めまして相当長期的に検討する必要があるだろうということで、三項目に整理をしまして、分類をしまして検討を進めておる状況でございます。
  243. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま説明ありましたが、やっぱり説明でも長期間を要すると、こう言う。しかし、組合側からこれをながめたり、私どももまた運動をやってきた者の一人でものを言えば、昭和二十三年の公労法設定のときから問題が始まっているわけです。そのときに、二十三年十二月二十二日の衆議院本会議でも、当時の記録を読めば、これは憲法を越えたマッカーサーの命令だからやむを得ずやるんだ、しかし、早くこれはなくさなければならぬのだという報告になっている。賛成討論もまたそうなっている。ところが、今日までこの公労法ができて、昭和二十三年にできましてからすでに二十六年、その間、依然としてあなた方は何にもしないできているじゃないですか。  また、昭和三十九年に出されたこの臨時行政調査会の答申を見ても、原則として労働基本権を認めるべきであるという答申が行なわれておるのです。それ以来十年かかっているけれども何にもされない。そうして、公制審は八年かかって討論している。その間、政府は一体何をやったかというと、何にもしてないじゃないですか。それで労働組合だけに何か非があるようなおっつけ方というのは私はおかしいと思う。一体この二十六年間、政府はどんなことを検討し、何をやってきたのか。これは労働大臣からでもいいです。最後には総理からも私は聞いておきたい。ただ労働組合はストライキやるからけしからぬ、何やるからけしからぬと、あなた方一方的に言うだけだ。自分たちの尽くすべきことは一つもやってないじゃないですか、どうですか。
  244. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。  非常に大きな問題でありますだけに、先ほど先生がおっしゃった臨時行政調査会の答申——昭和三十九年です。このときは、公社職員については、「審議会を設けて、労働基本権の拡大を争議権を与える方向で検討し、特に、公社側の当事者能力の確立をはかること。」として、また、五現業職員については、「三公社と同様、具体案を検討すべきである」としておりました。そして、これはそのまま審議会が設けられておりませんで、御承知のとおり、公務員制度審議会が昭和四十年の十月に発足して、一次、二次、三次、そうして昨年の九月に答申を出されたわけでありまして、それだけに大きな問題で八年間も御研究願った。それを受けて立ちまして、先ほど総理府長官もお話があったように、連絡会議を開き、いま鋭意検討していると、こういうことでございますが、その間において、あなたの専門ですけれども、ドライヤーが四十年の十一月に報告書として、「その活動の中断が社会に対し現実の困難をもたらす企業と、このような中断が公共の利益により少ない程度において影響する企業、(例、煙草専売事業)との間で区別がなされていない。」、こういうふうな勧告なども一つの具体的な問題が提起されたと、こういうふうに理解しながら公務員制度審議会では研究されている。そして、御承知のとおり、結社の自由委員会の第百三十九次報告——四十八年十一月、これには、「造幣局、印刷局、アルコール、塩及びたばこの専売事業の職員の争議権に関する状況を再検討することが望ましいことに注意を喚起する。」、こういうことも、一つの話を勉強する具体的な問題が出たと、こういうふうに理解し、さらにはまたこの二月に、結社の自由委員会の第百四十二次報告におきまして、「委員会は、地方公営交通事業は、日本の主要大都市における交通事業のすべてを担当するものではないにしても、政府が提供した数字によれば、都市交通網においてキイ・セクターとなっていることに留意する。従って、これらの地方公営交通事業においては、重大な公共の困難を引き起すことなく、実質的なストライキを行えるものとは思えない。」というふうなことなどを受けながら、いま公務員制度審議会のほうでは御研究いただき、いま何もしてないということでなくして、鋭意研究して、しかも、ILOは国内的に自主的にやれというふうなことを、こうした日本国内の実情をもって研究しているということを御理解いただきたいと思います。
  245. 山崎昇

    ○山崎昇君 それはあなた、自分の都合のいいときだけつまみ読みして、それはいけませんよ。私がさっき指摘したのは、一番根本は、昭和二十三年、公労法をつくるときに、川崎秀二さんが代表して討論されていますよ。何と言っているか。「日本経済の再建まで過渡的にこの争議権を禁止することも、やむを得ない非常措置と考えるのであります。私はかような観点からも、善良なる労働者諸君が将来再び争議権を獲得さるる状況に立つことの日のあることを確信しつつ、本法案に賛成する」と、こうなっている。それから二十六年たっている。  あなた方は一回も——経済はこれだけ復興したとあなた方は胸を張る。だが、労働者のこういう基本権について政府がみずから積極的に何かやったかというと、何もやらない。しかたがないから労働組合はILOに提訴をする。国内問題であることは承知しておりますよ。そして、ILOからあなた方はものをいわれるから、初めて重たい腰を一つ二つ上げて、そして自分の都合のいいところだけつまみ読みして、あたかもあなた方が努力しているようなことを言う。そうではないじゃないですか。いまあなたが読まれたこの臨時行政調査会だって、二年八カ月もかけて、当時の金で相当な金をかけて調査をして、原則として労働基本権を認めるべきであるというのが基本ですよ。そういうことをあなたは一つもやらぬではないですか。それから、公制審はなるほど八年かかりました。それは昨年の九月ですから、時間的なこともあるでしょう。こういうことも私ども考えてみますと、その経過を考えてみますというと、政府はもう少し、労働組合、一番いま政治課題で問題になっているわけですから、こういうものについて積極的な姿勢を示すというのがあなた方の態度でなければならぬじゃないですか。  それから、あなたはさっき、私は労働四団体とのパイプ役をつとめたいと言う。そういうあなたが、これはきのうですか、おとついですか、講演と称して不用意な発言をする。これは見出しでありますけれども、確認をしたら、大体そういうことを言ったという。いつまでも車いすを引っ張り回すということばを使って、何万人質でも取っていま労働組合運動をしていると受け取られるような発言をあなたはしているじゃないですか。政治家というのなら、相手がどういうふうな出方をしようとも、ほんとうに国民のことを考えるならば、もう少しあなたは慎重でなければならぬと私は思う。そうでなくて、ただ労働組合だけが一方的に悪い、処分すればいいというような考え方で対処しているところに、この問題が解決しない根本が私はあると思う。その点について総理の見解を聞きたいと思う。  それからさらに、私は、ドライヤー報告でも一番問題にしたのは何かといったら、スト権を一律に禁止することはおかしい、こう指摘をされている。これは憲法の二十八条を持ち出すまでもなく、団体行動権や団体協約権、あるいはスト権は保障することになっている。二十八条をすなおに読んだら、保障しなければなりません。ただ、公務員だからある程度の制約をするとすれば、何が基本で制約するかといえば、これは金森さんの説ではありませんけれども、十二条の乱用をしてはいけませんということがかかってくると、こういう——乱用というのは、権利があって行使する際に態様を述べることであって、基本に権利を制限をする、禁止をするということは、私は二十八条違反だと思う。だから、最高裁の判決でも疑問を投げかけているじゃないですか。そういうことを考えると、総理ね、この労働者のスト権というのは、もっともっと政府は積極的に考え、そして、この二十三年の公労法制定当時からの経過というものをもう少しあなた方は踏まえて、早急に私は解決すべきものだと思うんです。どうですか。
  246. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 二十六年間何もしておらなかったのじゃございません。これはもう十分やってきたんです。そして、ここでもって明らかにしておきますが、労働基本権を尊重しなければならぬことは当然のことであります。労働なくして国民の生活がないわけでありますから、これはもうあらゆる面に対して労働の基本権が尊重さるべきことである、これはもう申すまでもないことであります。もちろん、団結権もスト権も、憲法、法律で認められておるものでありますから、当然の権利行使であると考えております。ただ、二十六年間もかかってできなかったのは、それなりの、二十六年間もかかってできないのだからそれだけの理由があるのです。  なぜかというと、一方の民間の企業は、労働基本権を認めております。団結権もスト権も認めております。ただ、公労法による、昔は官であったもの、いわゆる戦後、メモランダムによって三公社五現業といういまの制度、これはまことに中途はんぱじゃないか、アメリカのモルモットになるのじゃないか、こんなことは日本じゃ適合しないという反対を私はしたのです。私も議員でしたから、二十二年から。こんなものはおかしい、どっちかにしなさいと、もうはっきり。日本人はどうも中途はんぱはだめなんだと、右か左で言うんじゃなく、もう官か民間かどっちかだと。中途はんぱになっていくと非常にむずかしい問題が起こってくるからというんで、私たちは反対して、当時ケーディス氏やウイリアムズ氏やホイットニー少将に呼びつけられて、おどかされたことがあるんです。そういう経緯をもってこの法律が通っておるわけであります。  ですから、御承知の、逓信省が電気通信省になり、電気通信省が電電公社になったわけです。鉄道省は日本国有鉄道法になったわけです。だからそういうときに——あれはまあ行政組織の改編命令が出まして、で、国会の会期末であってたいへんなときにどうしても通せと、内務省の解体ということが前提でございましたから。そういうときに、時間のないときにあの設置法も何も全部メモケースでもって、あの当時は付帯条件さえもオーケーがなければ許さぬというときでございました。そういう事態でございますから、いまでも郵政省設置法、日本電信電話公社法、日本国有鉄道法は日本語じゃないということは、これはもう直訳文章であるということは、だれでも認めておるところでございます。  そういう経緯をもって公労法というものが出ましたので、——その当時は、憲法草案に対しての芦田委員会の委員長報告と同じことで、憲法に優先する権限に対してこれしか言えないのかというような激越な気持ちがございましたから、理想を説いてみな賛成しなきゃならぬし、やむを得ないからやったけれども、腹の底から叫んだということは事実だ。それは川崎君の発言もそのとおり、私は承知しております。  しかし、いまその三公社五現業というのが、まあ国民の一部で言われているように、民間では純民間の機構であっても、電力会社やそれから石炭は、ストライキ禁止法が臨時立法だったものが、時限法がずうっといまでも延びておる。この問題を先に解決しないで、いわゆる三公社五現業にスト権を与えるなどということは、それは本末転倒もはなはだしいという議論があるわけです。親方日の丸だという、とにかく、最終的には国民の税金を対象にしておるというものが、一番労働運動の先頭に立っておるという事実は、これはいかぬということは国民の大きな声なんです。  ですから、私たちは、まず国有鉄道は、昔はどうにもならぬときでしたから——しかし、もう道路ができ、飛行機ができ、何でもできてるときに、国有鉄道といういわゆる法律による鉄道が国有でなけりゃならぬのかどうか、これは民営にしたらどうかという問題は、二十六年間議論されてきているわけです。そのときには、大蔵省が出しているものを全部出資をして、まあ、いまだったら十兆円か二十兆円、五十兆円の会社をつくってやりゃいいじゃないかと。ちゃんと電力会社はうまくいってるじゃないか、日本航空はちゃんとやってるじゃありませんかと。国有鉄道というのは、中途はんぱなことをずうっとやってるところに問題があるのだというのが一つあります。  それはもちろん、たばこなんかやってる専売も、これはいろいろありますよ、第二国税庁の用もなしているからと。しかし、外国は全部たばこ会社がやってるんですから。それならもっと自由になるし。しかし、たばこは、税金だけはちゃんと政府が先取りできるように法律に明定しておけば、専売局でなくていいじゃないかという議論も二十六年間やられてきたわけです。いまもう、専売局を会社にしておって、その株を担保にしてメジャーの株でも買っておけば、こんなことにならなかったなあということが新聞に書いてあるんですから。そうでしょう、これは事実問題ですよ。こういうものでお互いにやっぱり本格的に話をしないと片づかない問題なんです。  林野庁の問題でも何でもそうなんです。これはとにかく地方にやるか——国の大半を地方にやるわけにいきませんわ、国土の八五%もが林野庁の所管ですからね。これはまあ何とかして国が持っておかなきゃいかぬ。せめて国と地方公共団体で持とうと。そういうような考え方で、専売局にしても、電電公社にしても、——電電公社などはもう民間に移すということであったのです。それでぴちっとその比率は保持しておくと。ですから、電電公社はまだ借家にいるわけです、あれはとにかく民間がつくったところに入っているわけですから。そういう意味で、三公社五現業をいかにして民間に移すのか、特殊会社にするのかということもあわせて検討してまいりましたが、ざっくばらんに言うと国有鉄道でありたいと——これはまあそれはそうでしょう、鉄道省に入ったんですからね、民間に入ったんじゃないんですから。だから、それは鉄道省が国有鉄道になっただけでもそんなになるのだから、国有鉄道でおりたい。スト権は民間とともに持てと。そうすると、どうしても電力会社を飛び越しての話であるということで、これは国民的な感情においてもなかなか首肯されないのですよ。そういう問題を、われわれも長いこと政府の中でも与党の中でも検討しております。  ですから、ほんとうにこれでゼネラルストライキがどんどん行なわれるようになれば、私はほんとうに制度上の問題を国民の前に訴えて、どっちかに、もう二十六年間も三十六年間もこんなことやっておられませんよ。ですから、民営にするなら民営にする、法律出しますと。そうしてそれを国民に問うて、そうして根本的にやらないと、それを飛び越して消防庁の職員にやりなさい、そのうちに一般の——まあしかし行政職だったらいいだろうが、そのうちに警察官も検事も裁判官もと、いずれほんとうにそういうエスカレートするおそれがあるということを現に論断されておるわけでありますから、それはやっぱり労働基本権というものは何でもかんでも認められるものじゃない。やっぱり国家公益のものという、やっぱり三権の中で司法権とか立法権とか……
  247. 山崎昇

    ○山崎昇君 そんなこと言っとらぬよ。
  248. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、それはそういうことです。ですから、そういう問題を広範に検討してきたのであって、労働基本権という一つの狭い視野でだけ検討してこの問題に結論が出せない。だから二十六年間かかって今日に至っていると。どうですかひとつ、企業体を変えようという、ここは満場一致でひとつ十年ばかり変えてみると、私はそのくらいのひとつ決意をしないと、この問題は国民のためにほんとうに解決しない。  私は政治の責任者だけに、行政の責任者だけにほんとうにそう思っているのです。何かこんなことで労使の間というか、労働者といえばほとんどみんな労働者ですよ。給与所得者が六〇%、七〇%いる中で絶えず対立をしておることはどうもいかぬと思う。私は、やっぱりあしたの日本のためにも、やるなら十年間国鉄を民営にしてみる、全国民がとにかく株主になる、そのくらいなことであればこの問題は私は解決する。私はやっぱり、もう三十年の声を聞くまでには、そのぐらいの決意が必要だとほんとうに考えてますから、またひとつ御意見を拝聴いたします。
  249. 山崎昇

    ○山崎昇君 たいへん博学多識で一ぱい並べられたので、どこが焦点か私もよくつかみかねているのです。  ただ私は、やっぱり人間というのは、その人の権利を与えて、しかしその権利を行使するにあたって問題があるからこの部分は制限をしますよというのと、おまえには権利はあるんだけれど、頭からだめですと袋小路を締め直すのとは私は違うと思う。だから、憲法の二十八条は、これは憲法についてはたくさんの批判があります。ありますが、一つの説としては、この憲法には十八世紀的な個人思想を根底とする典型的な権利が列挙されている。あわせて二十世紀的な社会共同生活を前提として近代的発展を見た諸種の権利が並べられて、ある程度交錯しているから、この憲法については、こういう意味で、多少の、同じ権利でも批判があることは私も承知をしている。しかし、あの憲法の条文を読めば、その条文で、法律で規制をするとか、あるいはそうでないとか、たくさんのことが書かれてますが、この団結権と団体行動権と協約権は何の制約もないんですよ。二十八条読んでごらんなさい。憲法はこれを保障しますと書いてある。だから公務員も公労協の諸君も勤労者だというならば、当然スト権を与えなさい。与えてその行使について、憲法十二条にいうように濫用してはいけませんとか、あるいは公共の福祉ではどうだとか、そういう意味の制限は、それは話し合いでいろいろ検討されてしかるべきだと思う。  いま民間の電力の話も出ました。電力の話も出ましたが、これはスト権を持っているんです。ただ、当時の状況からいって、電力がストライキをやればたいへんだというので、制限の暫定法律が出たんですよ。そのことは区別して私はやってもらわないと困る。そうしませんと、袋小路に追い詰めていって、一切がっさい禁止をするから、ドライヤー報告でもそれはおかしいと、こう言っているのです。そして、そういう諸君であっても、ストライキのつどに処分をするということはおかしいと、またあらためて国際的には批判をされている。  そういうことを顧みずして、単なる自分の意見だけでやってこようとするところに、私は問題があると思うのです。そして昨年のストライキを解除するにあたっては七項目の合意事項があった。一向にこれまた守られない。だから私は、政府というのは、多少労働者に行き過ぎがかりにあったとしても、政府というのは、政治ですから、当然そういうことの自後起きないように、みずから進んでその問題点を除去しなければいかぬと思う。一緒になってあんたけんかしているんじゃ何の意味もないですよ。労働大臣がつまらぬことを言って相手を刺激したり、そういうことを言って何の解決になりますか。だから私は、いまの一律禁止というのは憲法二十八条の違反だと思うのだ。そういうことをなくして……。制限をするなり何なりするなりということは、私はあり得るかもしれない。  それから、いま総理から民間にいったらどうだという。民間にいったらスト権なんか何もここで論議する必要がありませんよ。民間になったらスト権を持つんですから、そんなものは関係ないです。いま公社だとか公務員だからスト権の問題が議論になっているのだ、そうでしょう。
  250. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そこに問題がある。
  251. 山崎昇

    ○山崎昇君 だから総理、それだけあなたが言うならば、それならば政府はスト権やりますと。そのかわり行使については憲法十二条の制限もある。十五条の全体の奉仕者だという倫理規定もある。そういう意味で、ここからここまではある程度制限せざるを得ませんというなら、得ませんと言いなさい。それならそういう具体案を出すべきなんだ、総務長官でも労働大臣でも。そういうことを一切出さずして、ただ頭から、ないんだないんだと、おまえはけしからぬのだと言って何が解決できますか。それが今日二十六年たった経過じゃないですか、どうですか。
  252. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 非常に重要な問題ですから、これはひとつ私からも申し上げておきます。  これは、憲法で保障しておる労働基本権というものは確かにございます。団結権もあるし、スト権も認められるものであるということは、私は何ら異議を差しはさんでおりません。あなたと同じ考えなんです。ただ、公務員は憲法十五条によって国民の奉仕者であると……。
  253. 山崎昇

    ○山崎昇君 ノー。倫理規定だ。
  254. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いやいや、倫理規定であろうが何であろうが、そういうことを、憲法の条章を適当に読んじゃいけませんよ。これは憲法は精神が大切であって、罰則さえ受けなければ妥当性のない解釈してもいい——そんなこと許されるはずありません。  そういう意味で、公務員法というのは、公務員であるということになると、公務員の中には事実労働に従事をしておる公務員もあるし、それから司法官のような公務員もありますし、国会議員のような公務員もあります。しかし、公務員法でもってしばられておる限りにおいては、一般の民間企業におる労働者と違う制約を受けることは、これは当然なんです。
  255. 山崎昇

    ○山崎昇君 制約じゃないんだ。禁止しているんじゃないか、あなた方は。制約じゃないか。
  256. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、制約を受けるにきまっているんですよ。ですから、公共の福祉に奉仕をしなければならない立場にある公務員にはスト権を与えない。こういうことでわれわれはいままでずうっと公務員法を準用しているんです。そういうことで、法律はちゃんと違法ストライキはやっちゃいかぬと書いてある。やれば罰則がちゃんと法律にあるわけですから。それを民間と同じようにするか、もしくは罰則を取って、認めて——いままでは禁止しているでしょう、法律で。その禁止条文を取って、これは認めると、認めるが政府がやめろと言ったらやめますと。総理大臣の中止権があればちゃんとやめますと。こういうふうなものにするかしないかということですから、制度全体の問題の中でこれを片づけないとなかなかいかないんですよ。  ですから、二十六年も何もしてなかったと言われるなら、政府はじゃあ民営にするような法律案を出しますと。ところが民営は絶対困るのだと。そしてこれは実際からいって、これは法律でいうのは、御承知のとおり当事者能力を与えよう——今度も与えることにしました。私も努力したんです。郵政大臣時代からもう苦労しましたから。努力をして、大蔵大臣のときも、まあまあがまんしろというのでやりましたが、あんまり行政権が当事者能力をいいかげんに与えると、これは立法府の権限侵犯になりますよという議論もあるわけです。予算でもって政府関係機関——予算三案をいま審議されているわけです。すべてを国会の議決にまたなければ釐毫の変更もできないようになっているにもかかわらず、当事者が幾らやると言ったって、これどうにもならぬ。それは一般の社長が重役会にかけて、委任状をもらって団体交渉して、はい臨時給与幾ら出します、大入り袋一カ月分出しますということじゃないんだと。いわゆる国民に奉仕をするという一つの制約のある状態における公務員なので、そこらのその調和ができないので二十六年間苦吟しているわけです。ほんとうにそうですよ。ぼくらもこんなことで毎度ストライキをやられてはたまらぬと、こう思っているのですよ。いまもう物価問題がありますから真剣なんですよ。  ですから、そういう意味で、ここまでやっと来た日本人が、この基本的な問題でまた国がまつ二つになるようなことは避けなきゃならぬと真剣に思っているから私は申し上げているのですよ。ですから、だめなら超党派でひとつ見本に国有鉄道を民営にやっちまおうと、そして(発言する者あり)ほんとうですよ、そんなまじめな考え方を正面から取り上げないで——私はほんとうだったら、実際そういう気持ちはあるのですよ、それは。そうなれば国民がちゃんと判断しますよ、どっちがいいかを。それくらいなことをまじめに考えないで、兄弟牆に相せめぐようなことを、不信感を起こすことは全くまずいと思うのです、私は。  だから、そういう感じでいくと、教員も全部、行政罰であろうが何であろうが、政治的中立を保たなきゃいかぬと言っているにもかかわらず堂々と政治的中立をおかしておる。(発言する者あり)同じことですよ。そういう問題が派生的に起きますから、だめなものは厳刑峻法、ぱーんとやれるようにしまして、あとは法律でほんとうに認めてやってもらうというぐらいに、どうも中途はんぱになっていることがよろしくない。ほんとうにそう思っていますから、ひとつあなたの御発言も十分拝聴いたしますから、私の言うことも国民の一人として聞いてくださいよ、実際。
  257. 山崎昇

    ○山崎昇君 私は総理が真剣に言うから、私も真剣にやっておるのですよ、これは。なま半尺であなたに質問しているんじゃないですよ。憲法はあなたも読んだ。しかし、二十九条の財産権はその二十九条の二項で、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」というふうに、みずからの条文で制限をしているのです。だが、労働者の基本権だけは何の制限もないから、したがって私もいろいろ学説を読んでみたけれども、憲法論では何がそれなら基本的人権を制約するかといえば、一つは十二条の権利の濫用だという。濫用ということは権利を与えて、行使するときにそれを誤っちゃいけませんよということなんです。いまあなた方のやっているのは全部禁止じゃないですか。だから私は、憲法の条文を正確にあなた方が実施するというならば、それならば公務員も二十八条の勤労者なんだから当然権利を与えなさい、行使にあたっては、あなたのいま言うように、これこれのことは制限をしたいというなら、そういうものをあなた方は具体的に出すべきだというのだ。私はそういう論をさっきから申し上げているわけだ。  それから、あなたはいま民営にすべきだと言うから、民営にすべきだと言うなら、民営になったら何もこんな議論は出ない、そうでしょう。だから民営にするならするであなた方討議をして出すなら出せばいい。二十六年間もあいまいにして、さっきから私はそのことをあなた方に申し上げているのだ。その点は、私はあなたの答弁は納得できませんから重ねて申し上げておく、私も真剣にやっているのですよ。三・二六のストライキを目の前にして私は真剣なんですよ。
  258. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは、私もあなたが真剣であることはわかりますし、私も真剣であるということは認めてくださいよ。それはゼネラルストライキが行なわれて、物価を夏までに何とかしたいと言っているのに、マイナスの要因になってもプラスの要因になるとは思いませんから、そういう意味では命がけなんですよ。ですから、ほんとうのことを述べているのです。いままでは民営なんというとタブーのような状態でおったのは誤りなんです。最終判断は国民がするのですよ。だから、それは私は、ある意味においては出すつもりなんです。国会の議題にするつもりなんですよ。それでほんとうに国民が考えればいいじゃないですか。そうでなかったら、こんなことをがたがたがたがたやっておって、これはもうほんとうに兄弟げんかをやっているようなものですからね。これは貧乏のときは日本はこんなことは何にもやらなかったんだ。こんなによくなってきてから、がたがたがたがたがたとやっているのはおかしいと思うんですよ。ですから私は、ここらはひとつ、ほんとうに国民に問わなければいかぬと思っているんです。  もう一つ、あなたと憲法論争をしようとは思いませんけれども、十五条に選挙権というものを明確にしているでしょう。これ、特に十五条を起こして選挙権に関しては公務員といえども選挙権を与えなければいかぬといっているのは、これは選挙権の重要性が、公務員制度の中にあるといっても、一般人と私人とを区別をされる制約を受けてはならぬので、あえて特記をしたものであって、そうじゃなければ、特記してないものは、これはやはり公務員という、憲法によって一般、私人との区別があるという、区別を平等に適用されるというふうに私は解しておるんです。私は学者じゃありませんから、まあ何も憲法論争しようとも思いませんですが、やっぱりそういうような問題が二十六年間もつながっておるというところに、ほんとうにこの問題があるのであって、私はやはりこういう問題に対しては、右か左かはっきりすべきだと思うんです。
  259. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 先ほど山崎委員が御指摘になりました憲法第二十九条第二項には「公共の福祉」という文字がある、同じように第二十二条第一項、これは居住、移転の自由、職業選択の自由でございますが、そこにも「公共の福祉に反しない限り、」という規定がございます。その二十二条一項と二十九条二項、この二つについては「公共の福祉」という文字があるからこれは制限できると。それ以外のものは制限できないという学説が一部にあることはございます。  しかしながら、先ほど御指摘になった憲法第十二条のほかに、憲法第十三条という規定がございます。十三条では基本的人権は公共の福祉に反しない限り、国政の上で最大の尊重をすることを必要とするという趣旨でございます。それで、その十二条と十三条の規定によって、基本的人権が憲法で保障されておりますけれども、公共の福祉の見地から最小限度の制約に服するということは、もうほとんど大かたの学者の認めるところでございます。また、最高裁判決も、十三条から公共の福祉によって基本的人権が一定の制約を受けることがあるということは、最高裁の大法廷の判決も認めておることを申し上げておきます。
  260. 山崎昇

    ○山崎昇君 全くあなたは法制局長官として恥ずかしいよ。十三条その他は個人の権利を述べているんですよ。二十八条は団体の権利ですよ、あなた。混同するなよ。二十八条の団体の権利は何の制約もありませんよ。だから、学説では、この個人の権利と団体行動の権利と入りまじっているという点についての批判はある。批判はあるが、個人的な、国民の権利というものは包括的で何の制限があるかといえば、十二条の濫用権しかないというのが定説じゃないですか、あなた。そういうことを忘れて、だから私は先ほど来から団体行動権等については、一律禁止についてはいろいろ批判もあるし、国際的にもこれは疑問を持たれているわけですから、だから与えるものは与えなさい、与えるものは与えて、そして制限するというなら制限しなさいと。それが本筋でなけりゃならぬですよ、憲法を施行するにあたっては。混同して、いきなり首絞めちゃって、あなた生きなさいと言ったって生きれるわけないじゃないか。そういうやり方はすべきでないというのが私どもの見解だから、総理もたいへん熱心に検討すると言うんだから、ひとつこの団体行動権については、二十六年間かかって何もできなかったと私は指摘をしたけれども、あなたは何かやったと言う、現実には何も起きてない。そういう意味で、これはひとつ真剣に私は考えてもらいたい。こう、あらためてあなたに申し上げておく。
  261. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと関連。  憲法は、公務員は労働基本権も認めなくてもいいという規定は、どう読んだって読み取れないわけですよ。そこで、こういう論争のときには、同じ土俵でなければいけませんから、憲法の見方というものをどう見るかということをきちんときめて、山崎君が提起したように、労働基本権は認めると。しかし、公務員に民間と同じような認め方をするわけにいかないから、これだけの制約をすると。そういう御意思ならそのような意思表示をして交渉すべきですよ。公務員には労働基本権もないような解釈を法制局がしているようなことでは通りませんよ、そんな議論は。だれに聞かせたって。三木副総理はずっと前ですけれども、与野党とも議論をするのはけっこうだけれども、憲法という土俵の中で議論をしようじゃありませんかという御提言があった、けっこうですよ。そういう議論の進め方をしていただきたいと思います。総理、それでいいでしょう、憲法の解釈を同一にして、その憲法の土俵の上でお互いに話し合いましょうということは、お認めいただけるでしょう。
  262. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) すべては憲法のワク内においての話であるということは、もうそのとおり理解します。
  263. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 先ほどちょっと申し上げました昭和四十八年四月二十五日の最高裁の大法廷の判決を部分的に引用しながら申し上げますが、「憲法二八条の労働基本権の保障は公務員に対しても及ぶものと解すべきである。」、これはもちろんそうでございます。「ただ、この労働基本権は、…勤労者の経済的地位の向上のための手段として認められたものであって、それ自体が目的とされる絶対的なものではないから、おのずから勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からする制約を免れないものであり、このことは、憲法一三条の規定の趣旨に徴しても疑いのないところである。」、こう申しております。その点を先ほど私が引用いたしまして、公務員の労働基本権についても、公共の利益の見地からする制約を免れないと申したものでございます。
  264. 山崎昇

    ○山崎昇君 だから、制約というのは、与えるものは与えて、行使についての制約は私ども認めると言うんですよ、ある程度の。そういうことが全然出されないで、最初から禁止だと言うから二十八条違反じゃありませんかと、こう言っているんで、その点は私は重ねて法制局長官から聞く必要はない、そんなものは、あんた。先ほど来の答弁を聞いたってなっておらぬ、そんなものは。これはあらためてやっていかなきゃならない。  それから、こまかい点について二、三総務長官に聞かなきゃいかぬが……。
  265. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) いまの憲法論議はあれでございますが、私は、連絡協議会では、経営形態まで含めて争議権を認めるほうがいいか悪いかという議論を実態に却して十分検討しようということを申しております。それはいま御議論になったいろいろなもろもろの問題がその中に入るわけでございまして、そのように御理解をいただきたいと思います。
  266. 山崎昇

    ○山崎昇君 それではこの問題はまだまだ平行線をたどって、私も残された問題がたくさんありますから、次に移っていきたい。  そこで少し具体的に総務長官に聞きますが、公制審の答申の中で、人事院の勧告というものを当分の間残すことになっていますね。これは一体あなた方の見解としてはどれぐらいを当分の間と考えておるのか聞いておきたい。
  267. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 具体的にお答えがまだできない段階で残念ですけれども、当分の間ということが二年後か三年後かということはまだ結論が出ておりません。
  268. 山崎昇

    ○山崎昇君 それでは、この人事院勧告に関連をして自治大臣にちょっと聞いておきたいと思います。  御承知のように国家公務員については人事院勧告があります。それから都道府県と六大都市並びに十五万以上の人口のところは人事委員会があるということになっているんですが、実際は、仙台市しかありません。そうすると全国の自治体のうち約三千近いものは何にも給与について基準を出すところがございませんから、当然、当該組合とその首長との間の交渉で私はきまっていくと思うんです。したがって、こういうところの賃金をきめた際に中央がいろいろ強制をするわけなんですが、そういうことは私はいけないことじゃないだろうか。なぜならば法制的にも何もないんですから、当然自主的に給与はきめなきゃならぬ問題ではないか、こう思うんですが、あなたの見解を聞いておきたい。
  269. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 地方公務員の給与は、御承知のように、現在の法制の上でも国家公務員の給与にほぼ均衡をとるようにしなければならない、こういうことに相なっておるわけであります。ただいま御指摘になりましたように、いわゆる多くの市町村におきましては府県のような人事委員会というものが設けられておりません。したがってただいまのようなことが現実には私も行なわれておると思うのでありますけれども、政府といたしましては、いま申し上げたような趣旨に基づいて、大体国家公務員の給与に準じた給与が行なわれるように、しかもその決定は、言うまでもなく市町村の議会において条例をもって決定をしてもらうというたてまえをとっておるのでございます。  したがって、将来のことを考えてみますれば、あるいは地方自治体それぞれに人事委員会を設けるということのほうがほんとうはよろしいのかもしれませんけれども、現実の問題として、小さな市町村に一々人事委員会をつくるということはきわめて至難である。そこでただいまのような形で大体準拠して行なわれるようにしてもらう。したがって、政府としてもそういった指導もし、また財政的にはそういった裏づけもしておるというのが実情でございます。
  270. 山崎昇

    ○山崎昇君 そこで重ねて自治大臣にお聞きしますが、地方公共団体の場合には国家公務員とかなり違った職種がたくさんあります。だから国家公務員の基準をそのまま当てはめることは不可能な状況にあるのですね、現実的に。それからいまあなたが言われたように、人事委員会等の給与についての勧告機関が全然ありませんから、国とか県とか隣の町村とかということをある程度参考にしてはやりますけれども、それをどの程度にするかはその自治体の私は自主性だと思う。それを自治省でとやかく統制すべきものでは私はないと思う。  しかし、実際には、あなた方は特別交付税だとか、あるいは指導権だとか、調査権だとか、あるいはその他の形で統制をしてしまう。だが、その諸君たちの意見はじゃ自治省に反映するような仕組みにあるかというと、そうでもない。ただ、自治労という組合が現実に存在をするから多少中央段階の交渉はあり得るけれども、これも交渉権そのものは、今度の公制審で多少触れられてまいりましたけれども、確立されていない。こういうことを考えますと、自治体の給与について私はまだ混乱をしているんじゃないかと思う。そういう意味で、あなたの統制だけはずっとやる、下の意見はほとんど上がってこない、こういうやり方は私はいけないのじゃないかと思いますが、どうですか。
  271. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 自治省としては、先ほど来のお話のように、大体、一当該地方公共団体におきまして、あるいは職員との間の話し合いをし、そしてそれを市町村の議会の議決を経て給与をするというたてまえをとっていることは当然でございます。  これに関連をいたしまして、何か自治省が非常な統制を加えておるというような御指摘でございますが、なるほど先ほど御指摘のございました特別交付税等の配付につきましては、若干、実はそういう措置はいたしておることは事実でございます。しかし、これは国家公務員の給与等に比べて格段に高い給与をいたしておるというような部分について、そういった措置をしておる場合があるということははっきり申し上げることができると思います。
  272. 山崎昇

    ○山崎昇君 それから重ねて自治大臣にお伺いしますが、消防職員の団結権についてはどうされますか。
  273. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 消防職員の団結権は、私が申し上げるまでもなく、その職務が国民の生命財産の安全を守るというたいへん重要な任務でございまして、一瞬の停廃をも許さないというのが私は消防職員の職責であると思うのであります。そういったことから、従来、法制上消防職員の団結権は禁止をされておるというたてまえになっておるわけであります。昨年の公制審の答申におきましても、やはり現行のそういった禁止のたてまえが適当であろう、こういう趣旨の私は答申があったように承知をいたしております。  政府といたしましても、この点は現行どおり禁止ということで進めていくべきものだ、かように考えておる次第であります。
  274. 山崎昇

    ○山崎昇君 総務長官ね、公制審はあなたが扱っているんだけれども、消防職員の団結権についてはどうしますか。もうすでにILOでは結論出ておりますよ。
  275. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) ILOでも、まだそうした結論は出ていないと私は記憶しております。また団結権と争議権とは別個のものであるというような意見も出されておることは知っておりますが、現状におきましては、ただいま自治大臣の述べられたような方向で私は考えております。
  276. 山崎昇

    ○山崎昇君 それは総務長官、おかしくありませんか。第百三十九次報告でも、日本政府からきた資料も全部見て、そして八十七号条約の第九条だったと思いますが、あれには入りませんと、だから消防職員の団結権は国内法で制限すべきものでないという結論になっておる。さらにその前に開かれた専門家会議に横田喜三郎さんが出席されておって、この報告書を見ても、当然与えるべきものだ。ただILOでいっているのは、団結権を与えてもスト権をそのまま与えるというものではないから、それは区別をしなさいということになっている。だから公制審の答申でもILOの動向を見てやるということになったんだが、ILOはそういう形になったわけです。  したがって、私は、十分団結権は与えるということで検討されてしかるべきものだと思うんですが、どうですか。
  277. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) そこのところがまだわれわれといろいろ意見の違う点でして、団結権と争議権とは違うという非常に明確なことはよくわかるんですよ。しかし、それが実践されるかどうかということには何の保証もないというところが問題なんでありまして、ただいまの委員の御意見は私もよく了承しながら、今後問題を考えてまいりたいと思います。
  278. 山崎昇

    ○山崎昇君 だんだん時間がなくなりましたから、春闘問題はこの辺で終えて、最後に、私は公務員の綱紀粛正について一言だけ聞いておきたいと思います。  時間ありませんから私のほうから申し上げますが、四十八年版の犯罪白書を見ますと、公務員の犯罪がきわめて多くなってきている。こういう実情からいきまして、ゆゆしき事態ではないかと私は思います。さらに最近は行政権の介入を伴うような法律がたくさん出てまいりますから、勢い行政国家化という道をだんだん進んでいくと思うんです。これは世界の傾向でもある。そうすると公務員のあり方いかんということは、国政の上で私は重要な課題ではないだろうか、こう思います。  最近の公務員の汚職事件を見ると、一番私は寒心にたえないのは、中間管理職が一番犯罪を犯しておる、汚職をやっておる。たとえば課長補佐だとか何々参事官だとか、こういう中間管理職がほとんど汚職をやっておる。それもほとんど遊興飲食です。こういう事態を考えるときに、この綱紀粛正について、一体、総務長官なりあるいは総理大臣はどういう見解をお持ちなのか、聞いておきたい。
  279. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) これはどうも御指摘に一言もないわけでありまして、私も非常にこの点は残念なことだと思います。  先般来、こうしたことを考えまして、単に説教をして、君たちは国民のために働くんだという、その使命感だけを幾ら強調しましても、なかなかそれは徹底もしない。そこに一番問題なのは、現在の官庁機構の中に流れておる上級者と第一線の方々との間のコミュニケーションギャップと申しますか、ほんとうの理解、そうしたものが私はやっぱり非常に欠けておって、そこから中級者のところに一つのひずみができている。こうした諸君がまたそこで遊興飲食をやるというような残念なことが起こってくるのではないか。これは全部ではないと思いますが、しかしこの際、いま御指摘のように、非常に政府が経済に介入する度合いがあらゆる面で強くなってきておりますから、こうした面からいいますと、特に汚職というものについてはわれわれは神経質たらざるを得ないし、また、いいことをやっておっても、そういう事例が何千何万の中に一つあっても政治の姿勢そのものが疑われることをよく理解しておりますので、今後は、あらゆる面を使って、特に上級者と第一線の方々との間のコミュニケーションを十分つけていくという、そうしたくふうを前進させながら問題の処理に当たってまいりたいと思っております。  なおまた、蛇足でございますが、こうした問題はぜひ国会の方々にも目を光らしていただいて、事態があればひとつ私らのほうにお教えいただきたい。十分心がけて進みたいと考えております。
  280. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国民の奉仕者としての公務員の綱紀の弛緩という問題は非常に大きな問題でございまして、特に注意をしてまいらなければならぬと思います。特に自由民主党という内閣がずっと長く続いておりますために、そういう安易感、イージーな空気というものが流れておるとしたならば、それは政府も与党も非常に重大な関心を持ち、その責めを痛感しなきゃならないと特に考えておるわけでございます。  また、私、ひとつここで御提案らしき考え方を申し上げておきますが、行政の能率化、効率化ということで、同じ人が同じポストにおるということがいいと——まあそれは確かに職人的な、技能的にも経験的にも同じところにおるということはいいことであります。しかし、それがいろいろ綱紀問題を生むということにもなります。で資格者は一年か二年でもってぼんぼんと回るということでございまして、俗にいう——あまりいい話じゃありませんが、民間じゃ窓口天皇というようなことをよくいうわけです。実際の行政は専門職がやっておるので、管理職は全然、威令行なわれないのが実情じゃないかとやゆされておることは、国民の奉仕者としての官庁機構としてはやっぱり心しなきゃならぬことであります。だから効率化、能率化ということも大切でありますし、生き字引きということも大切ですが、それで行政が偏狭になって、かえってもうそこを通らなければ何にもならないというようなことでは困るわけです。  それで、いままでは上から指示をするということよりも、下から上がってきたものにめくら判をつくことがまだ正しいと、上からいくことは政治的だと、こういうものの見方や尺度というものもそういうものを助長しているということも事実でございますので、私は、内閣編成以来、とにかく二年か三年たったら何人かずつ庁内で動かしなさい、本省内で。昔のようにぼんぼんと地方に飛ばされれば、これは勉強もしてくるし幅も広くなってきますが、いまは住宅事情だとか学校の問題だとか——一番困るのは、とにかく官吏が異動しても子供の学校が入校を受け入れない、こういう状態でございまして、これもあに自衛隊のみならんやということであって、席がないから入れないということではどうしようもない。  そういう問題で異動がますます困難になるという事情はわかりますが、しかし、これが綱紀の弛緩問題を起こしておったり利権問題を起こしたり、いろんなことありとせば、これはやはり現状に目をおおうことなく、私は風通しをよくしなきゃならぬ。官吏というものは、大体、どこに配置しても相当な能力を持っておるのです、これはもう。何でもやれるという、これも官吏の習性でございまして。だからそういう意味では、やはり風通しをよくする、水がよどまないようにするということは、言いにくいことですが、やっぱりこれはやらないと綱紀の粛正ということはできない。私は、そういう意味で、各大臣にもそのように十分な綱紀粛正ということを示達しておりますので、この際、政府考え方を申し上げておきます。
  281. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま総理から決意がありましたからいいんですが、今日まで、私の承知する限りでは、閣議決定あるいは官房長官あるいは総務長官その他の通達は五、六通出ておりますが、何の役にも立っていませんね。そうしてだんだんふえてきて、この犯罪白書によれば大蔵省、農林省、労働省、運輸省、公団、これが十指の中の五つです。こういうことを考えるときに、私は背筋に寒いものを感ずる。  そうして先ほど申し上げたように、大体四十五、六から五十歳前後で最も分別盛りの者、最も事務にたんのうした者がほとんど事故を起こしておる。これは、きのう来、ずいぶん日教組等の議論がありましたが、日教組の諸君が教えたわけじゃないんですね。日の丸の旗と君が代そうして修身教育で道徳教育を受けた連中がいまやっている。こういうことを考えるときに、私は、この中間管理職に対して、あなた方はもっときびしい態度をとるべきだということを申し上げて、この問題を終えておきたいと思います。(拍手)
  282. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもちまして山崎君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  283. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 前川君。(拍手)
  284. 前川旦

    前川旦君 私は、石油の危機と同時に非常に国民の心配の種になっておりますのは食糧の問題であります。総理にまずお尋ねいたしますが、食糧の自給率を高めるという基本方針をお持ちになってこれから推進される決意であるかどうかをお尋ねいたします。
  285. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 基本的には自給率を高めていかなければならないということでございます。
  286. 前川旦

    前川旦君 去年の総理の国会の施政方針では、輸入を促進するという一項があります。農業についてはわずかに二、三行しかありませんでした。農家にとっていま一番不安なのは、農政がネコの目のように変わるということが不安なんです。ですから、長期にわたって基本的な国の方針として自給率を高めていくということをこの際はっきりお約束いただきたいと思います。
  287. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 農業に対しては、農業というものをこれは親子代々やっておるものでございますから、しかも恵まれない産業である、しかも右から左へ転換できない産業である。これは地形、地勢、気候上の制約があるわけでございますので、ことしは麦をまいて来年は果樹にするというわけにはまいりません。そういう意味で、農業に対しては長期的な基本方針と年次計画を農民に示すということでなければならぬということは当然でございます。   〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕 でございますから、とにかく農業の部門別に、国内においてはこういたします、自給率はここまで高めたいと思いますと。しかし、日本の国土の情勢によってできないものもありますから、そういうものは開発輸入をこういうふうにいたしますということで——ただ安いからというようなことで金さえ出せばどこからでも入ってくるということでいままでは経済合理性論で押されてきたわけです。私もこの間ここで幾らか髀肉の嘆をかこったような発言をしました。しかし、米はちょっと上げても国際価格は半分じゃないか、何で米価を上げるんだと、こう言われて私も非常に理解に苦しんだこともございますが、今度は麦でも何でもみな国際価格は上がった、なぜ麦をやめさせたんだと。あのころは麦をやめさせるというのがほうはいとした世論のごとき状態を呈しておったわけです。米など何でやるのか、人手が足らぬときに米をつくらしておって一年に二%も九%も上げて何だと、そういう考え方じゃなく、やっぱり日本が長期的に見なければならない、せめて十五年とか二十年間はこれでいくんですという計画というものを明らかにしないと、真の農政というわけにはまいらぬと思いますので、私は、農をもって立国の大本となすということで教えられてきた私でございますし、まあこんなときに米がほんとうに石油のような状態になっておったらこれはたいへんなことだと、こういうふうにも考えております。ですから、農業問題に対してはほんとうに正面から取り組んでまいるという基本姿勢を明らかにしておきます。
  288. 前川旦

    前川旦君 それでは、農林大臣にお伺いしますが、日本の自給率についてはいろいろなとり方によっていろいろ変わりますね、数字が。事実の自給率というのは大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか、ほんとうの自給率というのは。
  289. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 自給率のとり方は、御承知のようにいろいろございますが、国際的に各国がやっておりますのは、その輸出価格を基礎にして金額の上で計算をしておる。それで、私ども、やはり大事なことは、それも普通の自給率の計算のしかたでもありましょうが、やっぱり物を重点的に物量でも確信を持てるようにすべきではないかと、そう考えてそういう面でも検討しておるわけであります。それからオリジナルカロリーということを一部の学者が言っておるところでありますけれども、オリジナルカロリーという計算をいたしますと、たとえば、人間の栄養にはなりますが、くだもの、野菜みたいなものは、これはかなり低くなってしまう。カロリーだけでいえばサツマイモみたいなものは非常にカロリーが高く、なると、こういうことで、これはあんまり国際的にはそう重要視されておりませんことは、御存じのとおりであります。先ほど申し上げましたように、従来のやり方も一つ、もう一つ、私どもは、食べるその量が大事でありますので、やっぱり人口に比例した物量の計算もやるべきではないかと、こう思っております。
  290. 前川旦

    前川旦君 いまかりに輸入がとまったとすれば、これはたいへんなことになると思います。ですから、私は、まず政府が——いろいろな自給率のとり方がありますけれども、国民が不安を持っているのは、いまこれが石油でなくて食糧がとまったらどんなふうになるんだろうという不安が非常に底にあります。ですから、真実の日本の自給率はここまで落ちているんだというほんとうの姿を国民の前に明らかにして、その中でナショナルコンセンサスを得て農業の再建をやるという、そういうかまえが私は政府の姿勢としてはほしいのでありますが、その点、いかがでしょう。
  291. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私ども農政に携わっておる者から見ますというと、自給率につきましてどこに不安があるのかということについてやはりいろいろの角度から検討いたしております。この国会は、やはり石油の次に食糧問題について多くの議員さんから関心を持たれておりまして、自給率についてお話しのございましたのは前川さんできよう十九人目でございまして、なかなか重要なことであることはもう痛感いたします。そこで、私ども、これはまあ農林省が発表いたしました五十七年までの長期見通しでありますが、その前に現実のことを考えてみますと、四十七年においては、米が一〇〇%、野菜が九九、果実が八二、鶏卵が九八、肉類が鯨肉を除いて八一、それから牛乳、乳製品が八七、こういう状態であります。まあ主要なものはそういうことでありますが、さらにぐっと今度は下りまして、砂糖が二〇、小麦が五、大裸が一八、それから大豆が四、濃厚飼料で全体として三七。これで、私ども携わっておりまして、砂糖以上のものにつきましては、もうすでに前川さんも御存じのように、私どもは、いまたとえばブロイラーなどにいたしましても生産調整が養鶏家の間でも問題になるような状態にまで進んできておる次第でありますから、このことはこれから上のことにつきましては何ら心配いたしておりませんが、その下の今度は肉にいたしましても、まあ肉はわりあいに外来の飼料をそれほど要しませんけれども、鶏卵等になりますというと、これはもう配合飼料一点ばりでありますからして、そういうものの原料が先ほどお話しのように外国に依存しておる率がばく大なものでございまして、そういう状態でありますので、こういうものについてはまず輸入について確保するということが必要であることは当然なことでありますが、まあ一昨年から昨年にかけてソビエトロシアとか中国——中華人民共和国のような大手が突然あらわれてきて、アメリカ合衆国からたとえばソ連は千九百万トンも麦を買ったといったようなそういうことが出てまいりましたために、われわれのほうでも非常に計画が狂った。で、私どもといたしましては、そういうようなことも加味しながら、十分輸入飼料についての手配はいたしておるわけでありますが、しかし、一方において、御存じのように、四十九年度予算では、いま申しました自給度の低い四麦を含めた麦それから飼料作物等について特段の奨励措置を講じてその自給度を高めてまいると、こういう考えでございますが、私どもはこのことを一般の国民にもっと周知徹底させるということが必要であるということは痛感いたしております。
  292. 前川旦

    前川旦君 いま総理は数量をきめて具体的に自給率の向上をやるという決意を述べられました。で、農林大臣、あなたの言われた長期見通しの試案ですね、五十七年度の。これを見ると、麦は一五%から二二%に落ちる、飼料は濃厚飼料は三三%から二〇%に落ちる、輸入は二・一八倍に伸ばすと、こういう内容になっていますね。ですから、これは改定しなければいけないでしょう、おそらく。あなたのところでこれの見直しをやっていらっしゃるはずなんです。ですから、具体的に五十七年なら五十七年に、これは需要が伸びていますから、自給率を高めるといったってたいへんな努力が要りますよ。これは需要が伸びているんですから、それに応じてさらに上回って生産を上げなければいけない。たいへんな努力と決意とお金の投下とが要ります。そのことを覚悟した上で、やはり総理が言われたように、実質自給力を高めていくと、これはたいへんな努力が要るんですが、私は重ねて確かめておきたいんです、それを。
  293. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私どもも全く同じ考えでありまして、お説のように、米の消費量は年々低減しております、御存じのとおり。しかし、くだものだとか、肉類、野菜というものは、順次、毎年一人当たりの消費量が増加しております。人口増加に伴って、いままでのような作付だけでは自然に供給が減少するという反比例な現象を起こすわけでありますから、それに伴ってやっぱり供給を高めなくちゃならぬと、こういうところに大きな問題が伏在しているわけであります。したがって、今日まででもかなり財政面で農政については努力いたしておりますけれども、いまお話しのありましたような点を基礎にして自給率を維持していくために私どもは長期の見通しを立てると、こういうことであります。
  294. 前川旦

    前川旦君 それでは、具体的に麦と大豆と飼料作物の生産を伸ばすために、ことしの予算から補助金がつけられました。この補助金はことし一ぱいなのか。麦については作付面積が伸びました、三万ヘクタール伸びましたね。非常にすばやく農家は反応しましたね。来年は一体どうなるのか、再来年はどうなるのか。ですから、これは自給率が何%に上がるまでは麦と大豆には続ける、あるいは何万トンの生産まではこれを続ける、こういった長期的な見通しをお立てにならないと不安なんですよ。その点についていかがですか。いまのところは当面ということばで、はっきりしておりません。
  295. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 農業は腰を落ちつけて長い目で計画を立てて進めていかなければならない業でございますから、私どもといたしましては、ただいまの食糧に関する国際的な状況に顧みまして、できるだけ自給度を高めてまいりたい、さっき申しました自給度の低いような作物についてはこれを伸ばしていきたいということで、四十九年度予算にそれらの助成費を御審議願っているわけでありますが、これをどのようにして継続していくか、私どもといたしましては、先ほど総理からもお話しがございましたように、できるだけ自給度を高めるという方針は立案をいたしてそれが決定しているわけでありますから、この方針を完遂してまいるためにはやはり当分の間この施策を継続していきたいと、こう思っておりますが、当分とはいつまでだというお話がございますと、これはなかなかむずかしいのでありまして、生産調整だって五年はいたしました。まあやっぱりわりあいに長期に見通しを立ててやっていかなければなるまいと、こう思っておりますから、(「それをはっきりおっしゃっていただいたほうがいいんだよ、農民も安心するから」と呼ぶ者あり)それはもう安心してやっていただきたいと、こう思っています。
  296. 前川旦

    前川旦君 総理、安心してやってもらいたいと言われますけれども、これは予算は単年度であることはわかり切っているんですよ。しかし、農業は長期の展望で見るんですから、これは農林大臣が安心してやってくれと、ある程度長期だと言われるけれども、私は総理からそれをやっぱり約束をしてもらいたいと思いますね。ほんとうは、具体的に自給率が何%上がるまでとか、何万トンまで生産が伸びるまでとか、これぐらい続けると、これがほんとうの筋だと私は思うんですよ。
  297. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 政府は一体でございますから、担当者である私からお答え申し上げますが、率直に申し上げまして、いま麦の作付がふえたというお話でございますが、そのとおりでありまして、私どもはああいう計画を立てます前には、農業団体、地方公共団体の方々とも十分お打ち合わせの上に作戦を立てたわけでありまして、したがって、地方は大体は皆さん農協に参加しておられるのでありますから、そういうことでこの方々は政府の施策に協力するということでたいへん張り切っておられますので、これはいま申し上げましたように当分安心してひとつ御協力を願いたいと、こう申し上げておるわけであります。
  298. 前川旦

    前川旦君 どうもあいまいな話ですが、それ以上何年と言いそうもないですね。これは総理にも聞いていただきたいのですが、農家の人の気持ちは、ほんとうに政府が麦の振興をやる、もう一ぺん麦作を振興する、自給率を高めると、政府が本気であるかどうかはことしの麦価のきめ方で占えると、こう言っているんです。したがって、これは麦価のきめ方にも政治的な決断が要るわけですが、いまの現在のそういう自給率を高めるという観点で、しかも現在のいろいろな物価騰貴、あるいは労賃の上昇、あるいは農業資材の騰貴、こういったことを全部含めた実勢を踏まえた上での政策をおとりになる決意であるかどうか、お尋ねいたします。
  299. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 麦価は、御承知のように、パリティ方式でやるわけでありますが、もちろんパリティでございますからして、今日の経済事情その他生産状況等を考えましてきめるわけでありますが、これは御存じのようにやはり米審できめていただくことになるわけでありますが、先ほど来申し上げておりますように、これらの品物の自給度を維持し拡大していくというたてまえでありますので、生産意欲を減退させるようなことになっては意味ないのでありますからして、そういうようなことを考慮して米審と御相談をいたしてきめてまいりたいと、こう思っております。
  300. 前川旦

    前川旦君 私は総理に聞いていただきたいと思いますが、いまたいへんな畜産の危機ですね。実際、一日飼えば一日飼うほど損をしている。豚を育てまして農協へ持っていくと、子豚代とかそれからえさ代をこっちが豚一頭と一緒に四千円ぐらい持っていかなきゃいけない。昔ぼくらサラリーマンのときに、月給日に持っていかにゃいかぬというやつがおると笑われましたけれども、農民が一生懸命働いて働いて、それで牛にしても鶏にしても豚にしても持ち出しになっているわけです。ですから、どんどんいまつぶしていますね。現に、これは東京の芝浦の屠殺場なんかの例でも、ほんとうにもう臨月の豚までが次々屠殺場へ送られてくる。殺さなければもたないわけです、一日一日損をしているわけですから。こういう実情を私は総理に十分に把握していただいて、畜産の再建というか、畜産を日本から一このままほうっておいたら滅びますよ、ほんとうに、一日一日。たいへんな危機的な状態なんです。この危機的な状態を認識された上で、畜産を滅ぼさないために畜産農家が希望を持って取り組めるというようなそういう畜産に対する施策をとるという決意を私はいま表明していただきたいと思う。不安なんです、非常に。まあ三月から上がるといいますけれども、そういう希望の持てるような畜産にするということをやはり約束をしてもらわないと非常に不安だ、一日一日不安なんですよ、その点いかがですか。
  301. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 飼料価格先ほども申し上げましたように、一昨年、昨年はたいへん国際関係の状況から高値になりましたことは御存じのとおりでありますが、そこで昨年は飼料基金に二百十一億繰り込みをいたしました。それから四分の低利資金の融資をいたしました。それからまた食管のかかえております古々米を大量に——大体七十万トンと記憶しておりますが、トン当たり一万円という安値で放出をいたしたというふうなことで、全力をあげていたしましたが、飼料価格は三回上がっております。ところがまた、今回は、さらに外国からとります飼料作物の値上げ等もございますので、全農はやむを得ないということで一万一千円引き上げたと、こういう状態でございますので、これは畜産をやっていらっしゃる方々が悲鳴をあげられるのは私は無理もないことだと思っております。したがって、農林省といたしましては、これにできるだけの対処をいたさなければなりませんけれども、昨年いたしましたような事柄をもう一ぺんそのままことしやれるかと申しますというと、これはたいへん困難なことであります。そこで私どもといたしましては、一昨日も畜産家の大会が東京で開かれまして、宮脇会長ほか十数名の方がお見えになりまして、御決定の御決意と、それからまた御希望も申し出になりました、よく事情を私どもは承知いたしておるわけでありますので、先般畜産振興審議会の懇談会を開きましてその意見も聞いておりますけれども、さらに十一日から正規の審議会を開催していただきまして、いま四つの部会がそれぞれ鋭意いろいろ勉強しておっていただく最中であります。したがって、その答申を待ちまして、法律に定めてありますように、三月末日までには加工原料乳及び豚価の決定をいたさなければなりませんので、それにはやはり再生産を確保し得るだけの状況にしてあげなければならないのでありますから、諸般のそういうデータを考えまして、振興事業団とも相談をいたしまして、いま申し上げましたような措置のできますように最大の努力をいたしたいと思っておるわけであります。
  302. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 畜産が非常に窮境に立ち至っている事実は承知をいたしております。政府もいま農林大臣が述べましたとおり、米の七十万トンも飼料に回したりいろんなことをやっておるわけでございますが、テレビを見ておってもわかるとおり、いままで上がらないのは……まあ上がったのは牛肉だと、これは食生活が違ってきておりますから、だんだんだんだん牛肉は上がる。まあ上がらないというと、戦後一番上がらなかったのは鶏と卵だ。その鶏と卵が大幅に上がってきたんですから、これはもうたいへんな事態にあるということはよくわかります。これはまあ全部えさであるということです。食生活はこれからだんだんとそういうものを食べるような傾向になっても、減る傾向にはありません。人間もふえてまいります。そして日本の農業の経営自体を見ましても、外国のように肉食重点ではありません。魚というものがたん白源でありますから、肉食が重点ではありませんが、これからの人たちはパン食、肉食というものにどんどんと進んでいくということになると需要は増大してまいりますし、農家経営が、経営規模の拡大ということになりましても、まあいままで七、八反から一町歩というものをそれを十倍にするといったってなかなかならないのです。現実問題でもってもう一五%台を一次産業人口は割っておるのですが、営農規模は大きくならない。なかなか大きくならない。そういうことからいうと、多角経営ということが、やはりその場所その場所の気候上の制約とか地形上の制約などでどうしても牛を何頭か飼うとか、豚を飼う、鶏を飼うという非常にむずかしい経営形態の中で農業が拡大していかなきゃいかぬということで、これは避けがたい事実であります。そういう意味で北海道とか、新しい草地の改良ができたり、大規模な畜産ができるところはまた別にしましても、全国的に見るとなかなかむずかしい状態でございます。そういって、すべて開発輸入で入れられるのかといったって、なかなか買い入れられません。そういう意味で、米のように全量を自給するということはこれはできません。日本のなかなかこれは地形地勢上の問題でできませんが、まだ草地に改良できるものというものが九十万ヘクタール以上もあるのです。それから農地に転用できるものは六十万ヘクタール以上、まあ大ざっぱに言ってもう一ぺんきちっと全国の国土を見ますと、百九十万ヘクタールから二百万ヘクタール、草地または農地に活用できるところもある。それを裏作——なかなかむずかしいのですが、裏作というものもあるわけです。そういうことを考えてみると、飼料というものをもっと、濃厚飼料だけじゃなく、やはり牧草とか草地改良とか、いろいろな角度から長期的には日本の畜産安定というものに対して飼料はやはり日本でも相当つくれるということでなきゃなりませんし、しかしまあすべての、ふすまでも何でも全部入れられるわけありませんから、それは私もこの間もASEAN諸国に参りましたときには、そういう雑穀その他飼料等の開発輸入を行なうように話し合いもして、おおむね合意に達しておるところもございます。やはり今度の国際協力事業団というものは、そういう意味でいままで民間投資では合わないという一次産業というものを、まあインドネシアなどを例にとると、一万ヘクタールずつ三十万ヘクタールぐらいの場所が提供できるというような状態もありますので、そういうところとやはり十分連絡をとりながら、日本人がみずから開発をしたものを、現地にも供給すると同時に日本に持ってくる場合には相当安定的な供給が政府の意思によってできるわけでございますから、国内それから国外両々あわせまって、いわゆる畜産の安定的な経営ができるようにという広範な施策を総合的に進めていかなきゃならぬと考えております。
  303. 前川旦

    前川旦君 いや、総理、私は何を言おうとしているかというと、この前の林田委員の質問に対しても、農林大臣努力したいと答えておられる。私はよくわかるのです、あなたのお気持ちは。いまもこのあれに対して畜産農家つぶれないように、希望を持って生産性を高めていけると、こういうようなところできめていきたいと、願望を言っておられるわけですね。私が聞きたいのは、総理に聞きたいのは——非常に努力されているのはわかるのです。総理に聞きたいのは、希望の持てるような価格にきめますというその一音。それでうんと安心するのですよ、畜産農家は。そこのところを聞きたかったのです。それはいかがなんですか。私はその値段が幾らになるかとか、パーセントがどうなるかは言いませんよ。
  304. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 前川さん御存じのように、いま審議会をやっていただいて、勉強している最中ですから、で、こちらのほうは御審議を願って答申をいただくための資料を全部提供いたしまして、そこで鋭意御審議を願っている最中でありますので、この際こういう価格にするのだというようなわけにはいきませんことはもう十分御理解いただけることでありますが、しかし、さっき申し上げておりますように、「再生産を確保することを旨」とすると法律にも書いてあるのでありますから、そういうこと、ことに私どもはいまの客観的情勢で畜産がだめになるということはこれはたいへんなことでございます。まあ豚とか鶏とかというものについてはもう御存じの状況で安心がいきますけれども、肉類等につきましては国際的に減少してきておる傾向でありますので、これらの畜産家が事業を放棄するようなことになりましたら、わが国においてはたいへんなことでございますので、この方々が励んでやっていただくようにするには、価格だけでもいけませんでしょうけれども、諸般の施策を講じまして、安心してやっていかれるようにいたしたい。でありますから、もう農協の方々にもはっきり申し上げておるわけで、以心伝心で安心していただきたいと、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  305. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと関連。  その以心伝心とおっしゃいますけれども、なかなか伝心しないんですよ、そのようなお話では。といいますのは、十年くらい前、構造改善事業で協業をずいぶん奨励をしましたね。特に畜産を主にして協業をやらせました。私どもの近所でも二十人ぐらいで協業を始めまして、残ったのは一人です。人間が一人、借金は千六百万。今度その残った一人は千六百万を一人で払っていかなければならないわけです。大学へ行っている子供も途中でやめさして、高等学校へ入る娘も入学をやめさして、家族で大体一年に二百万ぐらいの借金をどうして払うかというのを一人で背負わされたというかっこうになってしまったわけです。こういう朝令暮改みたいな農業政策ではどうにもならない、論より証拠、畜産農家はうんと減っているでしょう、牛の数も減っていますね、乳量も減っていますね。これを何とかやりますから、以心伝心で承ってくださいということではだめで、もう農家の伝心力といいますか、非常に低くなっているんですよ。ですから大きな方法でがんとたたいてもらいませんと、政策をあげてもらいませんと、農家は今度は政府本腰だだいじょうぶだという安心感を得られないですよ。こういう心配はなくやっていただけるというように了解してよいでしょうな。小さい声で言ってはこっちまでも伝心しませんから、もっと大きな声ではっきり言ってください。
  306. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私どもがいろんなことを考えますのに、やっぱり財政当局とも十分お打ち合わせをしなけりゃならぬことはよくおわかりのとおりであります。しかし、去年はたいへんよくめんどうを見てもらいましたけれども、遺憾ながら、本年また一万一千円の値上げになったと、そういうことでございますので、価格につきましてはいまいろんな資料審議会に出して、その審議会からの答申を待っておりますけれども、その前提としては、生産意欲をかき立てていただくような価格、つまり現在の経済事情その他を織り込んだ価格を答申には決定できるものと思っております。ところが、そのほかに、昨年もやりましたように、やはりとりあえず二、三月値上げの分もお困りであります。これらのことについて、農協の方々とも十分お打ち合わせをいたしまして、融資を決意しております。これはたいへん喜んでいただいておりますが、そういうことでございますので、ただ私の立場で、いま審議会の答申が出ないうちに、価格について申し上げるわけにはいきませんけれども、いま申し上げたように、再生産を確保し得る価格決定が現在の状況では行なわれるべきであると、またそういう状況であるということを申し上げて差しつかえないと思います。
  307. 辻一彦

    ○辻一彦君 関連。  農林大臣にお伺いしますが、畜産の危機ということをほんとうにどう受けとめておられるか。いま、東京の芝浦屠殺場の様子を見ると乳牛は毎日五十八頭ずつ屠殺をされている。それから腹に子供を持った豚がどんどん屠殺されている。さらに、肉牛でも小さな子牛が屠殺されている。これらのことは、一気に乳牛やあるいは子持ちの豚、あるいは小さな牛を屠殺すれば、一気にこれは回復することができない。そういう意味では、まさに畜産は崩壊する危機にあると思いますが、こういう深刻な状況をどう受けとめておられるのか。いまのような答弁ではとても私は全国の畜産農家のこの危機を救うことはできないと思いますが、その点、ひとつしっかり大臣からお伺いをいたしたい。
  308. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いわゆる危機と叫ばれております一番大きな原因は飼料価格高騰と。こういう状態では畜産酪農を継続することができないと、こういう訴えであります。このことについては、先ほど来私が申し上げておりますように、私どもといたしましては、審議会に十分検討してもらっておりますので、その答申は、再生産の確保ができるようにという法律の明文にあるような、そういう価格決定が行なわれるであろうということを考えておるわけでありまして、いわゆる危機と称せられます大きな問題はそれで解決いたすわけでありますが、ただいま豚の話がございました。豚価についてもやっぱり今月中に法律によってきめなければなりません。もう一つは加工原料乳であります。これは、二つは、いま申し上げましたようなことでありますが、豚は、御存じのように大家畜と違いまして配合飼料をかなりいま使っております。したがって、そういう点では、飼料価格高騰というのはある程度響いてきております。そういうことは、もちろん私は価格に織り込まれるであろうと思っておりますが、豚それ自身の生産量については、私どもが把握いたしております状態ではコンスタントに横ばいでございます。鶏は、さっき申し上げましたように若干生産調整をするようなことであります。減りぎみであります大家畜につきましては、これは国際的に減ってきておるわけでありますが、わが国でも、やはり生産意欲を一これなかなか、私どもは、板ばさみと申しますか、消費者から言えば安いほどいいんであります、生産者のほうで言えば高いほうがいいんでありますけれども、その間の調整をどうしてとるかということでありますが、毎日、私はそれらの農産物の価格を詳細に情報をとっておりますけれども、先般来、肉がたいへん安かった。そこで、困るということでありましたので、九万トン下期に入れることにいたしておりましたやつを四万トン押えまして国内では使わないということにいたして価格安定をはかっておるような次第でございます。問題は、やっぱりこの飼料の高騰したことについてどうなるかということが、一番いわゆる危機と叫ばれる原動力でございますので、この点は、四月の十三日から五日ほど、アメリカ合衆国の農務長官が日本に来られて、それらのことについて話し合おうというお話でありますが、私どもは、そういうことは別問題といたしましても、飼料の入手につきましては絶対に安心をして長期の見通しを立てておりますので、その点は不安はないのでありますが、ただ、国際情勢で一また、さっき申しました北半球のほうで天候異変などが起きて、去年はソ連が千九百万トンもアメリカから買ったというふうな、そういう現象が起きるようなことになればたいへんだと思って、実は、気象状況も政府は調べておるのでありますが、幸いなことにそういうおそれはないようでありますし、アメリカも、新聞によれば史上、最高の豊作だということでありまして、長期の見通しを立てておりますので、畜産家、酪農家に、まず安心して、ひとつ政府を信頼してまかせておいていただきたいと、こう思っておるのであります。
  309. 前川旦

    前川旦君 政府に安心してまかせておいてもらいたいということでありますが、問題は、価格に転嫁をしてあんまり高くなると、今度は消費者が困るというたいへんな矛盾を、いま苦衷を言われました。私もよくそれは理解できます。それと、あんまり高くなると今度は消費が伸びなくなるということで、逆に農家にはね返ってくることもあります。そういう点では、そこの調和をとるには、自然の価格形成にまかせるのではなくて、やはり四十八年度で非常にいろいろなことをやりましたね、ああいう財政措置をどうしてもやらないと、その調和はとれないのじゃないだろうか。私はそう思いますけれども、大蔵大臣のお考えを聞きたいと思います。それしかないと思うんです。
  310. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 話の筋は前川さんのおっしゃるとおりだと思います。原価が上がるのですから、したがって消費者が負担をするという、これはまあ自然現象でございますが、そうすると消費者が不満を抱く、また、それがはね返ってまた生産者にも回り回って影響する、こういうような問題もあろうと思って、これはどこかで調整をしなけりゃならぬ。調整は、結局これは財政金融、そういうところに来るのだろうと思います。  私は、いまだんだんとお話がありましたが、いま畜産農家にいたしましても、酪農業にいたしましても、ブロイラーにいたしましても、非常な困窮をしておる。結局は飼料の一点に問題がしぼられておると、こういうふうに思うんです。いま農林大臣からお話がありましたが、農林省でいま相談をしておる段階なんです。まだ大蔵省へは回ってこない、こういう段階でありますが、農林大臣のほうから話がありますれば、私どももよく実情はわかっておりますから、それに対して適切な財政金融の御協力はする、そういう考えでございます。
  311. 前川旦

    前川旦君 私は、両方調和させるにはどうしても財政措置しかないというふうに思います、自分で考えまして。いま大臣から、相談があれば十分配慮をする、慎重に配慮をするという答弁がありましたから、それ以上具体的に言ってもここでは無理な話ですから。  それでは、農林大臣にお伺いしますけれども、大蔵大臣が言われるように、いま狂乱物価じゃなくて相場だと言われますが、たいへん適切な表現で、どんどんどんどん資材も上がっていきますね。そういう中で、乳価なり豚価なり、あるいは液卵公社の買い上げ価格なり、一年に一回きめて、それで一年間動かさないというやり方は、これは現状に合わないと思いますよ。いまの法律のままで変えなくもできるんですから、物価の値上がりその他の情勢に応じて、年間二回でも三回でも価格改定していく、審議会を随時開いて機動的に改定していく、そういうやり方を取り入れなければたまったものじゃないと思うんです。その点についての御決意はいかがですか。お考えはいかがですか。
  312. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これは去年は二度上がりました。ああいうことは私どもはなるべく異例であるというふうにしたいと思うのでありまして、経済事情が著しく変化いたしましたときにはまたやっても一向差しつかえない、法律でなっておりますけれども、一方において国民全体の経済を考えますときに、やはりそういうような農産物等価格を上げずに済むような物価の安定した状況をつくり出したいというのが、政府全体の国民に対する考え方でもございますので、われわれといたしましては、二度も上げなければならないような状態を現出しないで済むような措置を、全力をあげて講すべきではないかということでやっておるわけであります。  たとえば稲作転換が済みまして——まあ済んだわけではありませんが、休耕奨励金というものがなくなって、さらに今度は一方においては基盤整備等、やはり畜産とか酪農その他の農作物をつくるために基盤整備事業を継続してまいるわけでありますから、そういうようなことで生産性をあげてまいりますこと、それからまた、ただいま予算の中でも御審議願っております農用地開発公団というような構想で、全国に大きな規模の畜産団地等をつくりまして、未利用地等を開発したりして生産性をあげてまいるというようにいたしまして、まず価格を安定していくということが一番大事なことではないかと、こういうことでそういう方面に力を入れておるわけでありますが、もちろん経済事情が非常に変化を生じたような場合には、それはそのときに対応して対処していくことは当然なことでございます。
  313. 前川旦

    前川旦君 当然なことであるということは、年度内においても実情に応じて弾力的に価格をきめていく、経済事情の変動に応じて。こういうことを弾力的にやるというふうに理解してよろしいですか。
  314. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) その前提には、やっぱりそういうことをやらずに済むような経済状態をつくり出したいと。しかしながら、急激な変化があったときには去年もやっておるわけでありまして、そういう非常な変化のありましたときにはそれに対処していくことを考えなければならないのは当然でございますと、こう申し上げておるわけであります。
  315. 前川旦

    前川旦君 農業用の資材ですね、これは去年の暮れからたいへんな不安に農家はおちいりました。たとえば化学肥料は一体どうなるんだろうか、不足せずに十分末端まで物がおりてくるんだろうか、それから農業用機械も、これはいまもう在庫もない、買いたいけれども物がない、こういうこともありました。それから油も、施設園芸用の油もたいへん困って、やみで買った人もたくさんあります。それから農薬も、なかなか十分な量が確保できるのかどうか、不安でした。それからビニールあるいはビニールフィルム、包装紙、段ボール、こういったようなものもたいへんな不安におちいったわけなんです。農林省もいろいろ努力をされているのは私わかりますけれども、どうなんですか、農家が必要とする肥料にしても、あるいはビニール等の資材にしても、あるいは農業用機械にしても、農薬にしても、農家が必要とするものは優先的に確保して、絶対に不足ということは来たさないという約束をしてもらえるかどうかということなんです。  これについては、私は農林大臣にお伺いしても、そういうふうに努力しますというお答えだけしか出てこないだろうと思うんです、実をいうと。なぜかというと、管轄が通産省ですね。農薬は別ですけれども、肥料にしても通産省か管轄、それから農業機械にしても通産省が管轄、それからビニール等にしても通産省ですね。両省にまたがるということになりますが、私はそこで農林大臣通産大臣とに、農家の生産資材は困らさないと、こういう約束をやはりしていただきたいと思う。そのことが一つの安心になるんですね。安心になるんです。その点いかがでしょうか。
  316. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 農家の生産資材については、困らさせないようにお約束をいたします。われわれとしては全力をふるって、農林省とも連絡をとって供給の万全を期する次第であります。
  317. 前川旦

    前川旦君 これは通産大臣、そうおっしゃったけれども、なかなか末端へいくといろいろなことがあるのですよ。たとえば耕うん機なんか、あるいはトラクターなんかですね、生産を困らせないとあなた考えていらっしゃっても、たとえば耕うん機のつめがない、つめが。部分品がない。ですから、私は農機具のメーカーに聞きましたら、ことし農家が必要とする耕うん機のつめですね、六割ぐらいしか充足できないだろうと。バインダーはビニールのひもが要りますね、このひももないんです。六割ぐらいしか手当てできないだろうと。そういうこまかいところまで配慮した、きめのこまかい点での配慮を私は末端までぜひお願いをしたいというふうに思います。その点いかがでしょうか。
  318. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ビニールのフィルムにしても、あるいはバインダーの糸にいたしましても、去年は物資不足でたいへん御迷惑をおかけいたしましたが、ことしはそういうことがないようにいろいろ手当てをさせて、農林省とも連絡をしております。
  319. 前川旦

    前川旦君 そこで、農業用の資材、いろんな諸資材の値上がりは、米価なり麦価なり政府価格に干渉する農作物については、かなり価格の中に吸収することができます。しかし農林大臣、ビニールとかポリエチレンフィルムなんかを、あるいはA重油なんかを一番使うのは施設園芸の野菜農家なんです。この野菜農家に対しては、しかも自分が価格に転嫁できないわけですね、要った費用を。これに対する手当てというのは何があるんでしょうか、何を考えていらっしゃるんでしょう、値上がりに対して。
  320. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 資材の供給についてはいま通産大臣から御説明がありまして、私どものほうも通産省と十分打ち合わせまして、その供給につきましては大体間に合うのではないかと思いますが、問題は値上がりであります。これはもう直接に使うもの、たとえばビニールハウスで灯油等を使います。そういう場合の値上がり、これがコストに響いてまいります。その他石油製品がそれぞれ若干高騰いたしております。そういうことでありますので、いまは、御承知のように農林省が関与いたしております行政価格というものは、大体農作物の七割がそうであります。そういう場合に、やはり先ほども申し上げましたように、決定いたしますときの経済事情その他を勘案して考慮しなければならぬことは当然でありますが、野菜などにおきましても、指定産地、これは全国に八百何カ所を指定いたしまして、それぞれ消費者の便宜のために、指定した地域に輸送しておっていただいて間に合わしていろわけであります。そういうものを営まれるための資材の高騰につきましては、やっぱり高騰せないように全力をあげて努力をいたしますわけでありますけれども、ある程度上昇はやむを得ないのではないか。そういうものはやっぱり価格に反映してくることはやむを得ないことではないかと思っております。
  321. 前川旦

    前川旦君 自分で価格をきめられないんです。
  322. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) でありますから、行政介入をいたして指導いたしておるものが大体七〇%あります。御存じのとおりであります。そういうものにつきましては、やはりそういうものはコストにはね返るということは当然なことではないかと思っておりますが、ただそれだけのことでなくて、やはり私どもは、生産性をあげることによってコストダウンをしてもらえるように最大の努力をしなければならぬ。これは一方において非常に大事な仕事だと思っております。
  323. 前川旦

    前川旦君 農林大臣、うまいことお答えになりますけれども、結局、野菜づくり農家、特に施設園芸ですね、これは資材がどんどん上がりますね、しかし、自分のつくったものに価格を転嫁できない。ですから、ことしは減りますよ、おそらく施設園芸なんかは。そうとしたら、もろに今度は野菜価格がぽんと上がって、今度は少なくなりますから、消費者が泣くということに私はなると思う。ですから、私もいろいろ考えてみたけれども、おたくのお役人さんにいろいろ聞いてみたけれども、やっぱりいい知恵は、適切な知恵はないんです。ないと言っても、私のような頭じゃなくて、あなた方はスタッフを持っていらっしゃるんですから、その点はしっかり何か適切な手を考えてもらいたいということなんです。  それから農業の危機、これはいまの畜産の危機ですね。その次に非常にわれわれが憂えておりますのは、漁業の危機なんです。この点について、総理はどういう認識を持っていらっしゃるか。  たとえば、ことしの六月には海洋法会議があります。そこで領海十二海里、排他的経済水域ですか、二百海里が論議されますが、世界の大勢としてはもうそういうふうになっていく。すると、日本の遠洋漁業というものは非常に大きな影響を受けます。日本の漁業は、沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へというふうに発展してきましたね。しかし、たとえばその遠洋漁業で二百海里が設定されると、これはたいへんな痛手を受けます。捕鯨も見通しは暗い。北洋も暗い。遠洋漁業も暗い。その上、資源が枯渇してきている。これは間違いないことなんです。そうなると、日本人の食生活の五〇%以上は魚でたん白質をとっていますがね、これがもし、がしゃんとくると、これは石油のショックのような大きなショックを受ける。それに対してどういう手を打とうとしておられるのか。その危機状態を総理は認識しておられますか、おられて、どういう手を打とうとお考えになりますか、その点いかがでしょうか。
  324. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 日本全体の水産業について、なかなかむずかしい状況にあることは、もう御指摘のとおりであります。  まず第一に、遠洋について一番影響がありますのは、専管水域二百海里説、これはいま、ときどき世界的な風潮のようにも伝えられておりますけれども、現実を調べてみますというと、かなりいろいろな、まちまちな意見がございますので、私どもといたしましては、この専管水域二百海里ということについては、まず第一に、やはり漁業を大きくやっておる国々との協調が必要であろうと思っております。それからまた沿岸国の、何と申しますか、説得が必要であろうと思っております。ただ、専管水域二百海里がきめられたからといって、それで手をこまねいているというわけにはいきませんし、また、ことしの六月にはカラカスで世界海洋法会議が行なわれるわけでありますが、そこではたしてそういう、いま伝えられておりますような専管水域二行海里説がきまるとも限っておりません。諸般の情報を私どもはキャッチいたしまして、それに対処する方策を講じておるというのが現状の状況であります。  それからいまお話しのございました北洋につきましては、ただいま日ソの条約に基づく交渉が、モスクワで現に行なわれている最中であります。沿岸につきまして、これはもう私どもといたしましては非常に大事なものでありまして、ことに民生安定のためにも大事なものでありますので、これに対しては、ただいま国会提出いたしております法律案、これらはやはり沿岸に対する助成の措置等を講ずる法律が三つ出ております。そういうようなことで、沿岸にも特段の力を入れてまいりたいと思いますが、御存じのように日本人のとります動物たん白のうちの四割以上が魚介類でありますので、わが国にとりましては、これはそういう面でも、それから貿易の面から見ましても大きな問題でございますので、部門別にそれぞれ手配をいたしまして対処いたしておるというのが現状の姿でございます。
  325. 前川旦

    前川旦君 私は漁業の危機の認識が全体的に足らないのじゃないかというふうに思うんですよ。さっきちょっと言いましたように、私は特に総理・に聞いてもらいたいのですが、捕鯨、だってこれからふえるはずはないんです、先細りなんですね、残念ですけれども。それから北洋もこれきびしいですね、たいへんきびしいです。これから漁獲量のふえることはありませんね、おそらくもう先細りです、これも。ふえることはないと思いますよ。それから専管水域二百海里ということになれば、これはへたなことをしたら、入ったら拿捕されるという面も出てきますね。ですから、これだって入漁料を払うとかいろんな手段を講じなけりゃいけない。まして資源ナショナリズムがずうっと出てきているところなんぞ、自分のところは魚を食わなくても、よそがとりに来るのはいやだと言うんですからね。そういう国もあるし、非常にナショナリズムがこう高揚してくる。だんだんだんだん締め出されてくる可能性はあるんです。その上、もっと基本的なことは資源の枯渇ですね。たとえば北洋のスケトウダラにしても枯渇しかけているでしょう。クジラだって枯渇しかけていると言われている。これはいろいろ異論もあります。マグロにしても、これは昭和三十七年には五十万トンとれたのが、一九七〇年に二十九万トンやっとでしょう。以西底びきもどんどん落ちているでしょう。資源枯渇しているでしょう。ですから、そういう国際的なナショナリズムの高まりと、それからもう一つ資源の枯渇で、非常に日本の遠洋漁業というのは見通しが暗い、そのことを私ども認識しなきゃいけないと思うんですよ。となると、どこへもっていくかというと沿岸漁業を再建するしかないじゃありませんか。沿岸漁業にうんと力を入れる以外には魚を確保することはできないじゃありませんか。そういうふうに大きな転換をやるかまえがあるのかどうか、このことを私は特に聞きたい。
  326. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) あなたほど簡単にあきらめてはいないんであります、遠洋もそれから専管水域二百海里も。これはやっぱり小野田さんのように粘らなくちゃいかぬと思っているんです。しかしながら、傾向は心配すべき状況にあることは間違いありませんので、決して私は楽観しておりません。そこで、さっきもつけ加えて申し上げましたように、われわれは沿岸が非常に大事であると、こういうことで、先ほど申し上げましたように法律を三つ出しているわけでありますが、大体この高級魚というのは沿岸にもかなりおったわけであります。現在もそうでありますけれども、最近需要が非常に多くなってきておることが一つ。それからもう一つは、いわゆる公害といったような問題で海域がよごされておるというふうなもの、これもひとつそういうことのないようにしむけていかなければならない。そういう対策を講ずることはもちろんでありますが、沿岸漁業構造改善事業とか、栽培漁業振興対策、そういうようなものの施策を引き続いて拡充実施してまいる。さらにまた、沿岸漁業の基盤であります沿岸漁場の積極的な整備開発、こういうことが大事なことではないか。そのようにいたしまして、水産物の安定的な供給が増大されるようにいたしたいと、こういうわけで、整備開発事業を総合的かつ計画的に推進するために、沿岸漁場整備開発法案というのを今国会提出いたしておるわけでありますが、栽培漁業と同時に、また沿岸の整備をすることによりまして、沿岸における漁獲高をふやしていくと、そうして、そういうことのために、私は、いままで若干そういう沿岸漁業についてのめんどう見が比較的まだ十分であったとは言えませんので、これからさらにその点にうんと力を入れてまいりたいということで、三つの法律案を提出いたしておるような次第でありますので、農林省の水産に対するお考えをひとつ御理解いただきたいと思います。
  327. 前川旦

    前川旦君 答弁のためのじょうずな答弁というのは、ぼくはどうも——なるほどみごとな答弁だと思いますよ。すきのない御答弁です。しかし、沿岸を重要視するように変えるとおっしゃっても——私は瀬戸内海の沿岸ですから、瀬戸内海しか例があげられませんが、大平外務大臣や三木さんと同じです。たとえばどんどん埋め立てられていますね。で、統計を見てみると、この水産庁の統計でも昭和三十年から四十四年までの間に一万七千五百七十五ヘクタール埋め立てられる。そしてこれはほかの統計ですけれども、これからまだ五万八千ヘクタールも埋め立ての計画がある。十メートル以内で浅いところはどんどん埋め立てていくわけでしょう。すると、浅いところというのはモがあって魚が繁殖するところなんですよ。それをどんどん、どんどん埋め立てられていくでしょう。ですから、アマモ——モ場ですね、この消失を見てみても、備讃瀬戸で五一%も消失している。それからこのモ場の消失と衰退率を見ても、岡山県じゃ八一%も消失または衰退、広島で一〇〇%、山口で一〇〇%、香川で八七・二%、どんどん魚の繁殖するところを減らしているわけですね。  ですから、私はこれは環境庁長官にもお答えをいただきたいと思いますけれどもね。本気で漁業の維持——これも自給率ですね、これも自給率だ。自給率を維持していこうと思うなら、思い切った——今度の予算でなるほど少しはふえましたね。しかし、何十年かかりますか、あれだけの予算のふえ方で。国全体の予算の千分の五くらいですか、水産予算は。〇・五%くらいじゃないでしょうか。思い切って、やっぱり日本列島の周辺の漁場の大改造——こういう日本列島改造だったら大賛成。栽培漁業の全国化、海の正常化全国的展開、汚染漁場の復旧、再開発事業の実行、思い切ってこれをやる。埋め立てを思い切って一時凍結する、ここまでの英断がないと、私は沿岸漁業が守れないと思う。そして沖合い漁業があぶなくなったら沿岸に頼らなければいけない。いまのうちから手を打っておかなければたいへんなことになると思うのですよ。私は思い切って埋め立てを一時凍結するというくらいの英断がほしいと思う。そうして思い切って漁場を再建する、うんと金を投入する、それがほしいと思うのです。そういう姿勢がほしいと思う。この点いかがでしょうか。
  328. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私ども沿岸についてたいへん重要視しておりますので、御存じのように、去年は六十四億六千二百万円でありましたやつを、ことしは七十五億円余り沿岸の振興対策に出しております。それからもう一つの整備開発法関係のものを、これは前年度はゼロであったわけでありますが、ことしはとりあえず計画として八千五百万出す——これは調査であります。私ともただいまお話しのようなことを念頭におきまして、さっき沿岸漁業に対する公害の問題等ということで申し上げたわけでありますが、私どもといたしましては、できるだけ漁礁というようなものの整備拡充をいたしまして、沿岸の魚についての、養殖できますところ、栽培のできます地域を拡大してまいりたいと、こういう計画を着々進めておりますので、前川さんの言っていらっしゃることと同じ考え方で進めておるのでありますが、もちろんこの瀬戸内ばかりではありませんで、いま埋め立てその他のことのために若干の被害を受けるようなことがありますけれども、そういうことについては、なるべくわれわれのほうと調整してやっていってもらいたいと、このように考えておるわけであります。
  329. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 全国的に海域の環境調査を行なっておるわけです。そうしてヘドロとか、あるいは汚染物質、一定の基準をこえるもの、これを除去して海域の浄化をはかりたい、これは全国的に。御指摘の瀬戸内海については、瀬戸内海環境保全臨時措置法が国会を通りまして、そうして審議会もできるわけでありますから、埋め立てに対しては極力埋め立てを抑制すると、こういう方針のもとに今後対処していきたいと考えております。そのことが漁業の確保にも役立つわけでありますから、そういう方向で、瀬戸内海などに対する埋め立てはもう極力これを抑制するということにいたしておるわけでございます。
  330. 前川旦

    前川旦君 私はね、初めに危機感を言いましたけれども、私自身は非常に危機感を持っております。で、農林大臣ね、たいへん答弁としてはりっぱな答弁なんですよ。ですけれどもね、漁礁をつくるのが重点だとおっしゃる。なるほどそのとおりでしょう。しかしね、昭和三十七年から四十五年まで、九年間に一体漁礁をどれだけつくりました。大型、並み型で九十億円投入したはずです、これはね、漁礁をつくるのに。いいですか。これね、面積で計算したら、沿岸の漁場の面積は二十六万平方キロくらいあると思う。八百五十万分の一ですよ、この九年間漁礁埋めたところがね。こんな遅々としたことで、予算が去年よりか何%伸びました、もともと少ない予算のところへ何%伸びました、こういうふうにやっております。そうじゃなくて、発想の転換を私はしてもらいたい。発想の転換をして、これは今度あぶないと思ったら重点的にどんと入れて、そうして、ショックがないように備えていくというのが、私は、政治だろうというふうに思うんです。そういう意味で、私は、いまの極力規制するとおっしゃいましたけれども、ほんとに埋め立てはとにかく一時凍結して、そしてどんどんもう一ぺんモ場をつくっていくというような、本気でどんどん——九年間に九十億だなんてかけて、八百五十万分の一の面積だけやったのを誇らしげに言ってもらっちゃ困るんです。そういうような、本気の対策を、私は、立ててもらいたいということを強く訴えたいと思うんです。その点についてどうですか。
  331. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほどお答えいたしました中に、特に近海に、沿岸に重点を置くようにいたしますと申し上げましたのは、先ほど来お話しのございましたような国際状況の中におけるわが国の漁業について水産庁においてもいろいろ検討いたしました結果、決して悲観はいたしません。遠洋においてもそうではありませんけれども、しかし、突き詰めて申せば、いままでとかく立ちおくれの気味のありました沿岸について全力をあげたい、そのために今回三つの法律案を提案いたしたということで、私どもの考えておることをひとつ御推察いただけると思います。ぜひそうやってまいりたいと思っておるわけでございます。
  332. 前川旦

    前川旦君 けさほど発表されました石油製品値上げについてお尋ねをしたいと思いますが、一キロリッター当たり八千九百四十六円の値上げを総理の裁断で認められた。通産省の案としては、九千百二十一円、八千九百四十六円、八千七百四十六円、三つの案を提示されたんですか。そうして裁断を仰いだんですか。
  333. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四省の事務レベルにおきましてABCの三案を大体検討しまして、そうしてそれを四省の閣僚で検討し、そうして総理のところへ上げたと。いまおっしゃるような数字が正確であるかどうかわかりませんが、大体そんな見当の、九千百円程度のものと、八千九百円台のものと、八千七百円台のものを上げたと思っております。
  334. 前川旦

    前川旦君 きのう、総理の御答弁では、九千百六十四円という数字が出ましたね。で、これより低くするとおっしゃった。九千百六十四円というのも、ですから、実際に出ていたわけです。きのう九千百六十四円で、きょう八千九百四十六円、しかも、ABC三つの案があった。その中で総理は一つの値段を選ばれた。どういう根拠で八千九百四十六円を選ばれたんでしょうか。
  335. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは私が選んだというんじゃなく、合議の結果、党ともみな相談をして合意に達したということでございますが、九千百六十四円というのは、四分の三バルクラインですか、そういう、赤字が四分の一出るということでございましたし、それからもう一つの中間案、今度きめたものは、平均値をとって二分の一赤字が出る、それからもう一つの案は、それよりもなお赤字会社がふえる。それと、第三案というのはどういうことかというと、メジャー系の、外国系の会社だけが息ができて、国内の会社は全部赤字になる、こういうことでございまして、このままにしておいたら、統合するか、または吸収されるか、相当シェアを外国系に荒らされるか、どっちかがやっぱり避けがたいような案であります。だから、第一案はとれない。四分の一赤字というようなものではいまの状態で採用すべきでない。それから第三案は、これは申すまでもなく、日本の会社はみんな参ってしまう。参らぬようにするには財政的にも相当な補てんをしなきゃいかぬ。そんなことはなかなかできないということで、二分の一赤字という案をとったわけでございます。しかし、二分の一赤字をとっても、まだ、油の不確定要素がたくさんございますから、量的な問題、質的な問題また産油国会議、アメリカに対する解除の問題、その他いろんな問題があるわけです。また、日本とこれらの国々との間に直接いま経済協力も進めておりますし、それによっては供給量もふえるという問題もございます。そういう問題で、二分の一赤字という中間案を採用したということでございまして、まだ不確定要素を見なきゃならぬ問題もありますし、また国内の民族系の会社に対してはいろんな措置が必要である。苦労してここまでやってきたわけでありますから、やはり民族系は育てなきゃいかぬと、こういう考え方も加味をしまして第二案の採用に踏み切ったわけであります。   〔理事吉武恵市君退席、委員長着席〕
  336. 前川旦

    前川旦君 通産大臣、お伺いしますけれども、四分の三バルクラインで九千百六十四円と九千百二十一円の二つの金額が出ている。二分の一平均値で八千九百四十六円と八千七百四十六円と、同じ四分の三バルクラインでも数字が二種類ある、平均値でも二種類あるというふうに聞いているんですけれども、どうしてこういうふうに数字が違うんですか、どういう根拠なんでしょうか。
  337. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) お答え申し上げます。  バルクラインというのは、先生御存じのとおり、値段の低いほうからその数量をとりまして、その数量の合計額が、いろんなバルクラインがございますが、今回一番最初にわれわれが作業をいたしましたのは、四分の三の数量までになるということで、値段の低いほうからとりましたところで、四分の三に達したところの価格バルクライン価格としたわけでございます。ところが、このバルクラインを作業いたしますもとといたしまして、一番新しいデータをもとにしなきゃいかぬわけでございまして、われわれとしましては何回もこれをやり直したわけでございます。最近時におきまして一番新しい資料通関統計等も、判明いたした一番新しい数字を使いましてやりました結果、バルクラインの数字が移動があったわけでございます。それやこれや、そういう関係から、いま先生の御質問のような差異が出てきたわけでございまして、これはもともとは原油価格の具体的な各社別の数字のとり方の問題でございまして、もっと具体的に申し上げますと、一月二十五日から二月の六日までを一回とった作業があったわけでございますが、これでは少し短いというんで、その後、大蔵省とも御協力を願いまして、二月の二十日現在までの数字をはじいて、それでバルクラインをもう一回計算したと、こういう経緯があることは確かでございます。
  338. 前川旦

    前川旦君 通産大臣、伺いますが、業界は、この三月の末ですか、このまま値上げが延びると九百億円をこえる赤字が出ると言っておったんじゃないでしょうか。
  339. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまのエネルギー庁長官の答弁をもう一つ補足いたしますと、二分の一平均法で二つあったのはどういうことかと、その御答弁が抜けておりましたが、それはB案の場合にはキロリッターの利益を二百五十円見込むと、C案の場合にはそれを五十円見込むと、五十円というとほとんどもう利益がないと、そういうような利益を削減したという二つの案が出てきたわけであります。ちなみに、昨年上半期における利益は大体五百円ぐらい出ておりまして、そして過去六期における石油企業利益率が三百四十七円であったと思います。それを二百五十円に切ったわけですから、かなり利益率を削減したわけであります。そういう案が出たことでございます。  それから石油企業利益については、大体三月一ぱいまでに値上げを全然行なわない場合に幾らかという数字は、会社側から出たのが四千百億円であったと思います。それをその後いろいろ精査をし、変動の条件をいろいろ入れたりいたしまして、そうして最終的にわれわれが計算しましたのは約三千三百億円程度であろうと、これはまだ、ほんとうの試算で申し上げたはずであります。それを十八日に上げるということになりましたから、それ以降は値が上がって損失が少なくなるわけであります。それを引いた結果、私の記憶では、たぶん二千億円前後になるんではないかと、きのうの夜、私は物特の委員会で、千八百億円程度ではないかと思うと、予想して申し上げましたが、いろいろその後計算して正確に得た現在の試算では、二千三百億円程度の赤字になるんではないかというのが最も新しい私の資料でございます。
  340. 前川旦

    前川旦君 そうすると、値上げしてこれだけ赤字……。
  341. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 値上げして赤字が、三月末に。
  342. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) ちょっと補足して数字だけ訂正申し上げますと、値上げした後の三月末の赤字は千三百三十億程度ではないかと。より精査いたしておりますけれども、ちょっと訂正申し上げておきます。
  343. 前川旦

    前川旦君 総理がけさきめられました八千九百四十六円という価格は、これはキロリッター当たり二百五十円の利益計算していますか。
  344. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そうです。二百五十円です。
  345. 前川旦

    前川旦君 で、八千九百四十六円と、この数字をはじいて、しかも、これでもいまの千三百三十億円、三月末に赤字が出るだろうと。その根拠ですね、算定の根拠、その詳細な根拠、これをやはり明らかにしていただかないと、国民は納得できないと思うんですね。これは詳細に明らかにするお気持ちはありますか。
  346. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) これは明確にいたしたいと思います。
  347. 前川旦

    前川旦君 あとで配るんですか。
  348. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 資料を後ほど配付するそうです。
  349. 前川旦

    前川旦君 これだけの、上げるだけの理由を国民の前に明らかにできるだけの詳細な資料を出していただきたいと思いますが、それはいつ出していただけますか。
  350. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 来週早々に出したいと思います。
  351. 前川旦

    前川旦君 それでは、早く出していただきたいんですが、これは技術上の問題ですが、出せないんでしょうか、いま。
  352. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) こまかい端数的な整理をいま行なっておる段階でございますので、月曜日には私は出せると思います。
  353. 前川旦

    前川旦君 それは各社別に、原油輸入価格あるいは人件費とか、あるいは船賃とか、利潤とか、各社別資料でしょうか。
  354. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) これは各社別でございませんで、われわれの作業の手法が、全部の業界からの資料をとりまして、これを総平均法で平均いたしまして、それで日本の平均的なる価格を出したわけでございます。したがいまして、価格各社別に出すということをいたしておりません。ただ、その全体の数字をもとにいたしまして、モデル計算もいたしております。それに基づいて一、二社につきましては個別にそれを検証いたしておることもいたしております。先生のお話のように、全体のものにつきまして全部そういうことで出すということは、私はできないわけでございます。
  355. 前川旦

    前川旦君 一、二社はやっているでしょう。
  356. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 一、二社につきましては、できる限り検証しまして出すような方向で検討したいと思います。
  357. 前川旦

    前川旦君 それでは、国民がこれなら無理はないと、納得できる価格的な数字と資料を提供されるように希望をいたしておきます。  それから、きのうでしたか、けさでしたか、総理はスライドをさせるというふうにおっしゃいましたね、原油輸入価格なり、それから為替のあれに従って。どういう条件のときにこのスライドをさすのか。たとえば一〇%の差額が出たらスライドさせるとか、その辺のめどというのはどういうふうに置いていらっしゃいますか。
  358. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体、石油のようなものは産業の基準になるものでございますから、これを行政指導価格でやり、あるいは標準価格に移行させ、ともかくできるだけ安定させるということが必要であるわけです。したがいまして、われわれとしては、いまの行政指導価格ないし将来標準価格に移行した場合でも、できるだけそれで長続きさしていくようにしたいと思っておりますが、原油価格が大幅に下がる、あるいは為替の変動によって日本のほうの利益が出てくると、そういうような場合には、これはできるだけ下げさせる、ある限度まで達した場合には。しかし、上がってきて損をするというような場合には、つまり価格を上げなくちゃならぬというような場合には、これはできるだけ延ばそうというのが、いまわれわれが考えておるところでございます。ともかくもうける機会が出てきた場合にはできるだけ早く下げさせよう、しかし国民に迷惑がかかるというような、上げるというような場合にはできるだけ延ばそう、そういう方針であります。
  359. 前川旦

    前川旦君 その下げるという事態が出てきた場合に、石油関連の凍結するのがありますね、そっちもスライドさせますか。
  360. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もちろんそうであります。
  361. 前川旦

    前川旦君 末端価格もきまりますが、流通段階で残っている油は、だれが、どういうふうにもうかるんです。
  362. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは非常にむずかしいところでして、たとえば、きょうガソリンスタンドに石油が残っておる、それが月曜日に売るときにはもう高く売れると、一応商人的計算ではいままでそうなんです。なぜなれば、次に仕入れする場合にはもう高くなっているのだから、いまも高く売っておかなければ次の仕入れの原資がない、そういうことでありますから、いままでの常識では大体それが常識として通用し、かつまた国際的にそういう情勢にあるようです。しかし、この暮れに安い原油があったじゃないか、それを高く売ったじゃないかとずいぶん非難されまして、それでそういう経験にもかんがみて、この際はできるだけ上げないようにしてほしい、それで平林君が石連集めてやったことなんです。それは非常に大事なポイントだったのです。便乗値上げするなというのはそういう意味もあったわけです。(「正確な報告書を出してください」と呼ぶ者あり)報告書は出します。  そこで、これはしかし強制力はないわけなんです、そういう商慣習や何かもありまして。ですから、できるだけそういうことをやるほうが適当であるという強い要請をやりまして、これはもう業者の良心、社会的責任感に訴えてやりたいと、そうやらざるを得ぬのでございます。
  363. 前川旦

    前川旦君 軽油あるいはA重油等、政策的にわりあい低く押えたといわれておりますが、そのとおりなんでしょうか。そのとおりであれば、そのしわ寄せはどこにいっていますか。
  364. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 石油は御存じのとおり連産品でございまして、トッピングから一定の大体得率で出てくるわけでございます。いま御指摘のとおり、軽油A重油につきましては、若干政策的な配慮を加えまして、これを引き下げるようなかっこうでの価格の指示を行なうつもりでございますけれども、そのはね返りはほかの油種に当然に均等に響くわけでございます。  なお、ちなみに灯油LPGにつきましては、現在標準価格設定中でございますので、これはやはり据え置くわけでございまして、この場合におきましても、その部分で当然ほんとうなら上がるべきものはほかのほうへ、いわゆる、ことばは悪いですが、しわ寄せされることは当然でございます。
  365. 前川旦

    前川旦君 できるだけ早い機会に末端価格標準価格に移行するというのがけさのお話でありましたけれども、これは移行する時期と、それから移行する対象となるものはどういうことを考えていらっしゃいますか。
  366. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、時期につきましては、まず第一にこれを実施してみて、石油の得率及び需給関係及び国際的ないろいろな今後の影響等も考えて、どういうふうな水準にこれが落ちつくか。一番のポイントは、得率の問題からくる、店頭から品物がなくなるという危険性をいかに防止するかということであります。かなり無理をして、軽油A重油をやや少し低目にしてありますと、どうしてもガソリンのほうへみんな逃げちまって、ガソリンを多く売るようになる。そうすると、軽油A重油が少なくなって、漁連がまた大騒ぎする、あるいは農村の皆さんが騒いでくる。そういうことが起こるものですから、これはしばらく行政指導価格でやってみて、そうしてどういう水準にこれが落ちつくか、ぎしぎしぎしぎししながら、やっぱりある程度やって見ておろうと。そしておのおのの取引形態が、気仙沼ではどうなったか、銚子の港ではどうなったか、大体どの辺の水準ならば全国的に落ちつきそうだという、やっぱり一カ月ぐらいはかかるだろうと思います。それを見たいというのが一つ。  それからもう一つは、原油の値段が下がるか上がるかという問題で、これはまだ全く予測がつきません。下がるという情報もあれば、いや上がるという情報もございますし、またさらに追徴金みたいに付加的な請求が出てくるという問題もございます。それから、為替相場の問題でも問題がございます。十円動きますと一キロリッターについて六百円動きます。そういうわけですから、これはかなり大きい要素でございます。  したがって、為替相場の変動、それから原油価格の動き、それから今後のやってみたときのぎしぎしがどうおさまるか、そういう様子を見て考えていきたいと思っているところです。
  367. 前川旦

    前川旦君 そこで国民が一番聞きたいのは、まず先にその根拠でありましたけれどもね。もう一つ聞きたいのは、こういう新価格ですね、新価格物価を一体どう押し上げるのか、これは経企庁長官に答えていただきたい。卸売り物価、消費者物価にどうはね返るのか、そのはね返りの根拠ですね、これはどういうふうに計算していらっしゃるのか、そこを聞きたい。
  368. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) それがはね返るとまた再び物価狂乱になりますので、そこでけさほどから申し上げておりますように、生活関連物資とか、あるいは基礎資材のようなものは、支配力の大きいものを選びまして、石油製品が値上がりしてもそのはね返りがないように押え込む。それは客観的には、これらの物資につきましても、ある程度先取り利益があったということを見込まれる分がございますし、さらにまた石油事業そのものにも、また公益事業なんかさらにそうでございますけれども、その企業の内部における企業努力というようなものにも訴えまして、そして石油のはね返りがないようにいたします。ただ、ほんとうのこまかい数字を申し述べますと、石油はそのまま飲んだり食ったりしませんけれども、いまお尋ねのように、次の物資の原材料になります。なりますけれども、統計上は、この卸売り物価統計上は、石油製品が上がりますと、それは当然卸売り物価指数というものに出てまいりますが、その押し上げ比率は一%ぐらいになるはずであります。しかし、にもかかわらず総需要抑制等で、一般的に卸売り物価の指数が天井を突いて低落ぎみにありますので、その分の一%というものは、総需要抑制によるその指数の低落の中に吸収をしてしまうと、こういう努力をぜひ進めてまいると、こういうつもりでおります。
  369. 前川旦

    前川旦君 上がらない、本来一%しか上がらないと、しかし努力してこれは生活関連物資にははね返らせないようにすると、はっきりこうおっしゃった。ここであなたの言われた生活関連物資とは何ですか。五十三品目のことですか。
  370. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 製造の元売りで押えるものは、おっしゃるとおり、五十三品目、現在のところ。これはさらに私どもは各省に要望いたしまして、将来可能なものはふやしていただくという可能性もございますが、しかし、その五十三品目にとどまらず、末端までの間におきましては、それ以外の物資につきましても、スーパーとか百貨店とか、あるいは総合商社というようなものを通じまして、現在通産省が、これだけは消費者物価にははね返らないように要請をいたしておりますというものが百数十品目ございます。
  371. 前川旦

    前川旦君 具体的に私鉄あるいはトラック輸送運賃、電力、こういったものにどういうふうにはね返りますか。
  372. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) それはすなわち公共料金でございますが、けさほども申し述べましたように、公共料金につきましては、従来の政策どおり極力これを据え置くと、これは事業の事態に即しながら極力これを据え置くと、こういうことを申し述べてございますので、事業の実態に即して、いまこれが直ちに公共料金値上げにならないような措置を講じてまいるつもりでございます。
  373. 前川旦

    前川旦君 通産大臣にお伺いしますが、総理はけさ一年程度は据え置きたいと言われた。で、その場合、この民族系の会社の企業の採算というのはどういうふうになるとお考えですか。
  374. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど総理が御答弁になりました二分の一平均法で半分という、その半分という意味は、総原価をやってみた場合に、たとえば全体で百円でいけると、その百円でいけるというものが会社別に半分あるという意味ではないんです。コストの話を言っているわけです、おのおののコストの話を。で、総原価の中において半分の値段というのはこれであると、その半分の値段を基準にしてという意味ですから、そうすると、会社別になりますと、おのおのの経理状況はみんな違いますから、そういうことで計算して一応の試算を見てみますと、二十七社の中で、いまの二分の一平均法でやるとはみ出す分が十二社という一応の計算です。これをバルクラインでやった場合には八社はみ出すと、つまり四社分だけきびしくなると、会社別になりますと。そういうことになります。それでこのはみ出す、赤字になるという会社の大部分は、これは民族系のものが多いようです。メジャー系はほとんどないですね。そういうような情勢から見まして、民族系はやっぱりかなり金融的にも、あるいは経理的にも苦しくなる立場になるんではないかと。いまはユーザンスで外国のメジャーに払うのはまだ少しおくれておる。しかし、もう四月になると払わなきゃならぬ時期が来ます。それまでは現金でどんどんガソリンスタンドから金が入っていますから、金融的にはまだつないでおれるわけです。しかし、決算上はもう赤が出てきておって決算ができない。それがしかも四月になればもう支払いをしなければならぬ。そういう意味でかなりきびしくなるんではないかと、それは今度の、実際をやってみまして、石油会社について三月決算のところは五月ぐらいに決算が出るわけですけれども、仮決算をできるだけ早くやってみて、良心的な決算を国民の前にできるだけ早く公表されたらいいでしょうと、これはまあ強制はできませんが、通産省としてはそういうふうに行政指導しておりまして、来週の半ばごろまでには二、三、そのころから仮決算を出してもらったら国民も理解できると、そう思いまして、その勧説と申しますか、要請をやっております。たぶんやってくれるんではないかと思っております。
  375. 前川旦

    前川旦君 採算がとれないとなると、石油輸入して精製するよりか、もう店じまいして給料払っているほうが損失は少ないと思うんであります。ですから、これはサボタージュが、赤字の会社は実質サボタージュが始まるんではないか。現に二月にはそういう芽があったということを通産省が言っていますね、二月の段階でそういう傾向があったという。これはどういうふうにあなた防がれます。
  376. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 二月にあったとは申し上げませんが、懸念しているという意味のことは申し上げました。約百七十万キロリッター入荷が少ない。しかし、これは一月と二月と両方合算してみますと、一月はわりあいに入っておると、しかし、二月が通産統計では減っておると、しかし税関統計はまた逆になっておると。これを見ると、一月の末に入ってきたタンカーをどちらの月の分に入れるかということによって非常に違うわけです。いまタンカーは五十万トンタンカーで大きくなっていますから、二隻こっちへ入れても百万トン違っちゃうと、そういうことでありますから、その辺はもう少し時間がたってみないとわかりませんが、一月、二月両方足した数字で比べてみるとやや減ってきておると、そういうことが言えると思います。それで、民族系の会社の中で苦しいものは、操業したり輸入すればするだけ赤字が出てくるわけですから、妙な言い方ですが、そういう会社の重役は、一生懸命やればそれだけ背任的な行為をやるという、株主に対して。そういうことになるとも言われる。そういうことですから、それによって買い入れや日本の供給が減るということは、これはわれわれも非常に心配しなきゃならぬところであると思っております。これもしかし、実際やってみてこの価格でいけるかどうか、一つの勝負ですから、私らは、これでいけば、ともかく二百五十円の利益は、ある一定水準のものについてはあり得るんだから、協力してくれるだろう、そういう希望を持っておりますが、また会社にしてみても、会社をつぶすということはなかなか容易ならぬことで、何とか生き延びるということをやるんではないかと思います。これは不動産売っても、内部留保を吐き出しても、自分の会社は維持していきたいというのが社長以下社員の全部の気持ちであると思うし、そういう事態に対しては通産省も、いろいろ財政的にも、金融的にも、そういう事態が出てきた場合には考慮しなきゃならぬ。特にいままで営々として育成してきた民族系がこれで崩壊するということになると、いままでの通産政策何のためにやってきたとも問われるわけでございますから、そういう点につきましては、われわれも深甚の注意をもって見詰めながら、そういう事態に対してはわれわれも措置しなければならぬ、そう考えております。
  377. 前川旦

    前川旦君 通産省は、これ六月ごろに赤字がどうなるか大体めどつくだろう、その際が民族系企業の総合再編成のチャンスであるというふうに見ているんじゃないですか。つまり、これを機会に——私は論評は加えません、社会党もばらばらになってはいけないという考え方ですから。総合エネルギー調査会も四十六年十二月の中間答申でやっぱり言っていることでありますから、民族系企業の再編成、統合ということは近々行なわれる御予定なんでしょうか、どうでしょうか。そういうところに追い込まれるんではないでしょうか。
  378. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうことをやろうと思って今回の石油価格をきめたわけではありません。それとはまるっきり別のことであります。  それから今後のそういう石油会社の処理につきましては、その実態に応じてわれわれは考えていかなければならぬので、いまから統合するとか何とかするというようなことは考えておりません。そのときの情勢に応じて、国際関係、国内関係をにらみつつ政策を考えていきたいと思います。
  379. 前川旦

    前川旦君 これは総理、話はまた変わりますが、五十三品目を凍結をされましたね。ところがその五十三品目、凍結された企業なり、物を見てみると、悪いところばっかりですね。公取からずいぶんやみカルテルを摘発されたところがずらっと並んでいますね。これは一体どういうことなんでしょうか。すでに便乗値上げがもう終わって、春闘の賃金まで先取りしてしまっているようなところばっかしがこの凍結の対象になっていますが、これは一体どういうふうに考えたらいいんでしょうか。
  380. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国民生活に密着しておる物品であると、こういうことです。
  381. 前川旦

    前川旦君 ビールが入っていましたね。ビールが入って酒やウイスキーは除外されていますね。これはどういうことなんでしょうか。ビールはこの間上げたから、もうこれはここで凍結してもいいんだ。酒やウイスキーはまだこれから、四月なら四月に上げる計画があるからこれははずすということのように、私はそんな感じがしますが、そうじゃないんでしょうか。
  382. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ビールは大衆酒であると、こういうことです。
  383. 前川旦

    前川旦君 お酒はどうですか。
  384. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お酒も大衆酒ですけれども、酒はまあとにかく、いまたいへんな状態を一年ばかり続けてきておって、酒は一年前から上げなきゃならぬというような状態があったけれども、非常に強く押えてきておるという状態は、これは御承知のとおりです。
  385. 前川旦

    前川旦君 私はふしぎに思うのは、この五十三品目はほんとうに便乗値上げしたところばっかりなんですよね、ほんとうの話が。そうすると、これは押えてもあまりこたえませんわ、はっきり言って。便乗値上げして、もう春闘の賃金まで先取りしているような企業がたくさんあるでしょう、産業界には。公取がずいぶんやっつけたところがずらっと並んでいますね。ですから、これはあんまりかゆくない。むしろ価格を凍結されることで利潤が上がるという傾向が出てくるんじゃないでしょうか。それからもう一つの心配は、五十三品目以外は、凍結されなかったからもう値上げは公認だということで、どんどんと値上げするというような傾向が出てきた場合に、それはどういうふうに押えるんでしょう。
  386. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) そこにあげてあります五十三品目は、おっしゃるとおり便乗値上げをしたものも幾つもございます。でありますから、これは今度の石油製品価格値上げがございませんでも、先般来各物資の主管庁に対しまして私どものほうから強い要望もし、また主管庁自身も値下げの勧告をし、値下げをしたものもありますが、そういうものに対しては、石油が上がってもさらに値上げを押え込むと、こういうものでありますこと、もちろんでありますけれども、その他のものについては値上げかってだということではございません。けさも自民党並びに閣議の了解もいたしましたが、それらの物資につきましても、あらゆる機関——これは百貨店やスーパー、大手商社ばかりでなしに、あらゆる機関、あらゆる政府機構を通じまして値上げを押え込んでまいるのみならず、値下げもやってまいるという、こういうことはけさほど来から申しておるところでございます。
  387. 前川旦

    前川旦君 それはあなたの希望的なことをおっしゃるけれども、この五十三品目については、事前承認制のようなかっこうをとって一応行政指導を実施するわけでしょう。五十三品目以外のものはできるだけいたしますと言ったって、具体的にどういうふうにするんですか。
  388. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これはおことばを返すわけではございませんが、あなたのおっしゃるようにするためには、物価統制令を発動して全部停止価格にする。そういうことになると、物統令や停止価格に違反したものは全部体刑まで含む罰金ということになりますので……。
  389. 前川旦

    前川旦君 そんなことは言ってない。
  390. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これは全く統制をしかざるを得ないことになりますので、五十三品目というものは一つのはっきりした対象の例でございますが、私どもは先ほども申しましたように、末端まで通じて押えます生活関連品目百数十品目というものも用意しながら、かつまた、それ以外のものにつきましても極力押えていくという、まあ全般的物統令的統制に入らない措置をもって対処をしていくのがよろしいと、こういうことで、またこれ一ぺんにむやみに広げましても、これまたほんとうにできるものでないことも御想定もいただけると思いますので、その手の届くところから急速にこういうことをきめた次第でございます。
  391. 前川旦

    前川旦君 私が言っているのは、五十三品目というのはあんまり痛くもかゆくもない、と言ったらちょっと言い過ぎかもしれないけれども、ずいぶん便乗値上げをしているから、凍結されたってあまりこたえない。むしろこたえるのは、五十三品目以外のところでコストがプッシュして、どうしても上げなければいけないところも出てくるだろうと思う。それをどうやってつかまえるんですか。そこのところをできるだけ押えろというような精神的な、いまあなたおっしゃったような精神的なようなことではなかなかいかぬでしょう。そこのところが心配なんです。そこは具体的にどういうふうに考えていらっしゃるんですか。
  392. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 五十三品目が便乗値上げをしたものばかりということはちょっと言い過ぎだろうと思うのです。中にやったのもありますけれども、やらないのもかなりあります。それはなぜかといいますと、国民生活上重要なもの、あるいは産業を維持していくために結節点になるような重要なもの、そういう幹ですね。幹から枝が出てくる、そういう結節点にあるもので、これを押えればほかに波及する度が非常に少ない、そういうものを選んだわけです。ですから、丸棒にしても形鋼にしても、そして上がる危険性がいままであったものを選んでいるわけですね。そういう意味で石油化学の製品、エチレンとか、そういうようなものは便乗値上げ、これはやりました。アルミもやりました。しかしそれ以外でも、たとえばセメントなんかは上げぐあいから見ると、われわれのほうがいろいろ計算してみるとむしろ自粛して、上げ足りないというと悪いですけれども、それぐらい自粛している要素のものもあります。これは非常に業界に対して、業界が社会責任を持ってやってくれているんじゃないかと思いますけれども、そういうようなものもあります。板ガラス、あるいはそのほかのものでもございます。これらは大体において国民生活や経済の運営を見て、これを押えればほかに対する波及がわりあい少なくなる、根元を押えようと、そういう意味で選んだのがこういうのでございまして、必ずしも便乗値上げという意味ではございません。
  393. 前川旦

    前川旦君 その五十三品目以外に、かける網というのはやっぱり何かなけりゃいけないと思うのですよ。それでないと野放しになってはやっぱりぐあいが悪いと思う。たとえば総理が財界を集めて三月までは値上げ自粛しろと言われましたね、一月の段階ですか。いろいろな方法があると思いますけれども、五十三品目だけやれば大体間違いないんだというのは私ちょっと甘いんじゃないかというふうに思う。その点の網のかけ方をどうするのかということを聞いているのですから。
  394. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまの産業関係のものにつきましては、通産省があげたものをぴしっと押えればかなり波及は食いとめられるだろう、そう思います。問題は生活物資でありますけれども、生活物資についてはデパート、それからスーパー、これが大体プライスリーダーになっております。それからさらに商社がこれに対してかなり影響力を流通関係に持っております。これらに対して個別的に、これこれの生活物資についてはあなたがいままで持っておった価格以上に上げないようにしてほしい、そういうのを個別的に頼もう。現在すでにその文書をきょうは発送している最中か、発送済みの情勢ではないかと思います。その中には、大体物資の名前もあげてあります。だからフライパンとか家庭の品物までずいぶんあるわけです。そうして会社の数にして、スーパーとかデパートで約四百近くであったと思います。それからそれ以外の一般の会社等でこれも八百ぐらいじゃないかと思います。そういう会社で、それは大体業界においてカバレージの多い、そうして影響力の非常に強い会社について個別的に文書を出しまして、そうしてやっておる。それで、ついでながら、あなたのうちでいままで売っていた値段、何月何日時点における値段を報告してください、それもあわせて頼んである。
  395. 前川旦

    前川旦君 私は、公取委員長にわざわざ来ていただきましたのは、きのうもいろいろ法律論がありましたが、スーパー業界、それから百貨店協会ですか、こういうところを通じて、自主的にあなたのところで品目をあげてください、百五十九品目、そいつを店頭でとにかく価格を上げないで凍結しなさい。これと独禁法との関係というのはどうなるでしょうか、こういうやり方。個別的に品物の会社じゃなくて、スーパーの協会、百貨店協会ですかを通じて、全体としてそういうふうに締めるというのは公取のほうからいってどうなるんでしょう。
  396. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 正直に申し上げましてこれは問題あります。業界を通じてやらないということですね、個別指導を。凍結ですから、まあその趣旨からいえば、いままで私ども摘発した物件の中につきまして、値下げ指導しておられるということについて一律に指導しておられる。これはまあしかし、そこまで独禁法云々ということは言わなくてもいいだろうと思う。とりあえず私どもの権限がないんですから、それを代弁しておる。凍結という問題になりますと、これはまあ要するに上にも下にもない。上げる段階になりますともちろん問題あります。しかし、私どもとしては個別指導でやっていただきたかったと、もしそういうことが事実でございますれば。協会を通じてやるということは、業界にいわば話し合いをさせる機会を与えているわけですね。あるいは、まあいろいろな準備といいますか、受け入れの準備を。そういうことをするということが、ですからカルテルの、今度は百貨店協会までカルテルをやり出したのではかなわない。いままで百貨店はみな競争で、スーパーも競争でやっていますから、その点はおそらく普通のカルテルにはなるようなケースはないのですが、とにかくやり方としてはあくまで個別指導でおやりになるということが望ましいと思います。ですから、いまのところ私どもは、凍結するという趣旨自体は、それを厳重に守らせるという趣旨には反対できません、その趣旨には。おそらくそれは国民の皆さまもそうだろうと思うのです。ですから、ほっとけば上がってしまうということがはっきりわかっているようなときに凍結させるということは、まあまあ目をつぶらざるを得ないと私は思いますが、値上げのときには問題があります。
  397. 前川旦

    前川旦君 公取委員長、けっこうです。どうもありがとうございました。
  398. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 百貨店協会じゃなくて、個別の百貨店にさっき申し上げましたようにやっているというわけです。
  399. 前川旦

    前川旦君 個別のスーパーにはやってないんでしょう。  これはいろいろ法律論もありますけれども、われわれも血が通っている人間ですから、われわれがもし担当した場合にはどういうことをやるだろうか、しょっちゅう考えますよ。ですから、法匪と言われるようになりたくないとかつて言われたけれども、しゃくし定木なことは言いません。  電力料金は五月に値上げという説が流れていますが、これはいつお上げになる御予定ですか。これは管轄は……。
  400. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 電力料金でありましても何でありましても、公共料金は一般論としては極力これを抑制するという方針に変わりはありませんが、けさほどから私がことばの中に、その業種、業態に応じてというようなことを申し述べております。それは電力料金を早く上げるということではございませんけれども、けさの外国航空料金のようなものもございましょうし、また先般のタクシーのようなものもございましょうし、財政でめんどう見られるもの、見られないもの、いろいろございますので、ある時期を限って、その時期まで上げないとかいうことではございませんけれども、私どもは何しろ物価をできるだけ押え込もうと、こういうことでございますから、その趣旨によりまして、電力料金をも含めまして、今度の石油値上げと同時にやるということはいたさないと、こういう考え方でございます。
  401. 前川旦

    前川旦君 そういうことじゃなくて、きのう総理は、ちゃんとそういうことがきまらないと、四月からの企業の計画も立たないということで、電力料金の早い値上げを示唆されたといってこれは新聞に出ていますね。示唆されたということで新聞記事になっている。ですから、これはどうなんでしょう、実際にこれはもう率直な話、いつから上げる御予定なのか、五月説が流れているのですよ。ですから、これは秋まで上げないのか、それとも近いうちに上げるのか、これはやっぱり関心の深いところなんですから、率直におっしゃっていただきたいと思う。
  402. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 電力料金の値上げを示唆したということは、それは受け取り方でございまして、私どもは明確にしておけばよかったのですが、石油価格をそのままにしておくと全く何も計算ができないし、予定が立たないのでというので、石油価格に対しての、きょうきめるのかあしたきめるのか、一体いつきめるのだかという質問に対して答えたのでございまして、まあ石油価格をきめないと、電力やガスもすべてのものも計画も立たないと、こういうことを明確に申し上げればよかったと思います。
  403. 前川旦

    前川旦君 いつということですか、率直に。
  404. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、やりません。まだ極力抑制ということです。
  405. 前川旦

    前川旦君 いずれは上げなきゃいけないわけですね。
  406. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 三月期が電力会社の決算期でございますが、この決算期の中に織り込むような上げ方はこれはしないというところまでは申し上げ得ると思います。
  407. 前川旦

    前川旦君 三月までは押えると、こういうことですか。
  408. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) そういう意味ではございません。少なくとも十月−三月期に間に合うような上げ方はしないわけであります。ほんとうの本心は、私どもは物価を上げたくありません。でありますから、今度の石油に対する、いま五十三品目では足りないではないかといったようなおことばもございましたが、そういう過程におきまして、また大蔵大臣にも一そう強力になっていただいて総需要抑制していただいて、そしてその物価上昇状況というものが鎮静する状況と相見比べまして、当分現状でいくと、まあその辺の考え方でおるわけでございます。次の期は四月から九月と、こういうことでございますので、これまた四月に上げるということではございませんが、四月−九月期というようなものは電力会社の状況も非常に私は——これはまあ私が上げるわけではございませんが、通産大臣との相談問題にもなりますけれども、いろいろ考えなければならない事態をも想定をいたしております。
  409. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連。
  410. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 一問に願います。
  411. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連諸物価を一時押えるということ、一時凍結ですね、それは一時押えることに意義を認めておるのか、あとの物価政策、長期の展望に立って、一時押えればそれが非常に役立つという意味でそういうことをお考えになっておるのか、いっとき押えることに意義があるとお考えになっておるのか。その辺を、これはちょっとひとつ問題があると思いますので、詳しく御説明いただきたいと思います。
  412. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物価の長期安定の中の有力な手段として考えておるわけでございますし、特に第二の問題としては、十二月に行なわれたように、思惑で異常な、この上になお異常な値上がりというようなことは厳に押えたいと、こういうことであります。これは厳に押えられれば長期物価安定に資するわけでございます。
  413. 前川旦

    前川旦君 時間が経過しますので、それじゃ四十九年の石油輸入の見通しは、量としてどうなんですか。これは経済見通しでは二億七千万キロリッターになっていますけれども、実際の見通しはどうなんです。
  414. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど私が御答弁申し上げました対象の業者の数は、正確に申し上げますとメーカーについては三百八十三社、これは対象物資から見た数字です。一社で幾つもやっているのがございますから、純粋に数えますと二百八十九社、メーカーについて。それから百貨店、スーパーについて四百十五、それからそのほかの店舗数では約二千八百六十、この二千を私が忘れまして八百六十と申し上げたわけです。  それから石油は、大体経済予測におきましては二億七千万キロリッターという数字でございます。もっとふえるんじゃないかという予測もありますが、大体総需要カットがかなりきびしくいま響いてきております。それで建設業やあるいはそのほかにおきましても需要がかなり減ってきておる。また、われわれといたしましても、できるだけ産業を資源の節約型に変えていく、そういうような政策をいろんな面で推進していきたいと思いますので、まずその前後でおさめられるのではないかと思います。
  415. 前川旦

    前川旦君 量的には心配はなくなったということは言われているんですけれども、これから先ですね、これは私は福田大蔵大臣に伺いたい。福田蔵相は、八日の衆議院の予算委員会の第二分科会で、買えるからといって買うわけにいかないという答弁をしておられるということは新聞に出ております。量としては買えるといっても、これはある程度輸入の量を——これはいろいろな手段があるでしょう、これはIMFの八条国ですからあまり大っぴらには言えないが、ほかにいろいろな組み合わせ、手段があるでしょうけれども、これから輸入量を規制をしていくというお考えがあるのかどうか、これはいかがですか。これは総理からも伺いたい。
  416. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は国際収支のことを非常に心配しておるんです。そういう立場から言いますと、とにかく計画を立てた二億七千万キロリッターですね、これはそういうことをもとにして日本経済が動いておりますから、これは何とか買わなきゃいかぬ、充足しなきゃいかぬ、こういうふうに考えておりますが、かりにこれが二億八千万キロリッター買えます、九千万キロリッター買えますと、こういうことになりましても、これはそう買い応じ得べきものではないと、こういうふうに考えております。国内のガソリン使用をできる限り節約する、そういう体制をかたがた進めていかなければならないと、かように考えております。
  417. 前川旦

    前川旦君 国際収支の面での心配は私もわかります。すると大蔵大臣は、これは輸出の伸びの困難性というものを見通しておられるんでしょうか。
  418. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 輸出は、私はこれからもかなり伸びていくと思うんです。とにかく原油がこれだけ価格が上がる、それはわが日本ばかりではありません。これは各国にその影響があるわけでありまして、国際物価水準が上がる、したがいまして、わが国の輸出商品、この価格上昇するというふうに見ております。また数量的にもそう多くを見ることはできませんけれども、いま総需要抑制政策、それをとっておりますから、したがって、商社は海外へ売ろうと、こういう意欲が盛んになる、そういうことから輸出は伸びますけれども、輸入のほうがそれよりもはるかにふえてくると、こういう形勢でありますので、私は国際収支、そういうことを考えると、これはまず輸入可能な状態になりましても、なかなかそうかと言って買い得る状態ではない、そういう見解です。
  419. 前川旦

    前川旦君 国際収支の面が一つあります。もう一つは日本の消費の伸びは年間九・六%も伸びていたでしょう。しかし、生産の伸びですね、これは世界の生産の伸びは六%ですね。ですから生産の伸びからの制約も私あると思いますが、これは通産大臣いかがですか。
  420. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あると思います。
  421. 前川旦

    前川旦君 私は総理に伺いたいのは、これから先ですね、日本の石油輸入量を幾らでも入れるんだとか、あるいは需要を落としたら自然にあれするのだというのじゃなくて、ある程度の計画的なめどとして年率何%ぐらいの伸びまでは入れてもいいと、年率何%ぐらいの伸びに押えるとか、そういう計画があってしかるべきだと思うのですよ。こういう大きなショックを受けた、災いを福となすとおっしゃった。私はその点についてどういうふうに考えておられるか、お伺いをしたいのです。
  422. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはいま、石油の量が、それから価格がどうなるかということを考えているのでございまして、そうすべてが計画どおりにすぐやれる問題じゃありません。これはもう入れなくていいんだなんて言えば、じゃあもうこれからの仕向け地をみんな日本じゃなくて別のところに回そうというのもあるのですし、ですからそういうことよりも、これはことしは二・五%しか成長はしませんと、こういうことを明らかにしておるわけでございますから、いまは安い石油をいかにして大量に入れよう、入れられるかということに腐心をしておるのでございまして、いま二億七千万キロリットルに押えなければいかぬとか、二億八千万にしなければいかぬとかということを考えることが先でありません。それならもっと産業の構造を変えなさいとか、そういう長期的な問題とみんな一緒に考える問題でして、いまの問題は、とにかく石油を安く、それから必要な量だけは確保すると、そして物価を押えるということに専心しているわけです。
  423. 前川旦

    前川旦君 二億七千万キロリッターは経済計画としてこれは確保するということですね。しかし、それより多く入ってくる場合がありますね、場合によったら。それをどんどん使うのか、二億七千万キロリッターで消費を押えてあと備蓄に回すとか、いろんな手が出てくると思うんです。ですから私は長期的に——それは長期のことではなくいま当面のことだとおっしゃるけれども、私は当面のことを考えると同時に長期のことも考えていなければいけないと思うんです。そういう意味で大蔵大臣は国際収支の面から制約があると言われた。通産大臣は資源の面から、国際情勢と生産量の面からおのずから限界があると言われた。ですから私は、これだけの大国のかじを田中内閣がとっていらっしゃるのですからね、これからどれぐらいの伸び率でいくのか、その点の検討があってしかるべきだと思うんです。その検討があったら、たとえば一%石油を伸ばすのだったら一%の成長率ということ——大体弾性値が一緒ですね、になってくる。そうすると日本のこれからの経済成長率は大体どれぐらいのパーセントでいくのだということもはじけるんじゃないかと思う。そういう点で原油輸入の伸びについてどういうお考えを持っていらっしゃるのか、そのほんとうの見通した考え方——これは長期のあれとも関係があります、産業構造の変化とも関係がありますが、その点の真意を私は聞きたいのです。いかがでしょうか。
  424. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 簡単には申し上げられません。これはもう日本の産業構造の問題もあります。あなたがさっき言った、農業をどうするか、自給率をどうするかの問題もあるのです。裏作をやった場合どうするか、サイロをどうするか、電力をどう使うかという問題、みな出てくるので——そういうお話はわかりますよ。わかりますが、いま考えるのは、安い石油を必要量だけどうつかむか、それでいま高い状態においてどういうふうにして物価を押えるか、それでもう国際的に外交的にどうして的確なものを入れるかということで、経済協力もやり何もやり、精製工場もつくります、高い石油は覚悟しましょうということであって、いま来年のこと、再来年のことというよりも、現状をまず考えるということが重大であって、そこらは原子力の問題も全然解決もせず——それは石油は、安いものがあれば買います。それは借金しても買います。それは安くなって、そうすれば備蓄をすればいいにきまっている。それを全部使ってしまって高度成長をやろうなんていう考えはありません。そうでなく、とにかく七十日か五十日しかなかったということでえらい目にあっているわけですから、ヨーロッパはとにかく百五十日分持っているとか半年分持っているとかいうところに、日本というのは何もなかったわけですから、ですから、何もいま当面する石油は、安定して安ければ買います、それは。借金しても買います。それはもう安くならないわけですから、将来は。ですからそういうことは、いろんな問題がありまして、いま来年、再来年、五カ年計画を立てて幾らぐらいと、そんなゆうちょうな話、いまちょっとね……。それよりも当面する問題が先だということです。
  425. 前川旦

    前川旦君 私はたいへん残念だと思います、実をいいますと。私はそういう二年、三年、五年を見通した計画、これは一つの哲学になるかもしれませんけれども、そういうのをやっぱりちゃんと持っていただきたいということなんです。それと経済成長率の問題、省資源の問題、産業構造の問題、転換の問題、それを考えていただきたいと思います。  そこで、私は時間が四分ありますが、四分残します。あの資料をいただきましてから、来週に残さしていただきたいと思います。(拍手)
  426. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 前川君の残余の質疑は、明後日これを行なうことといたします。  明後日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十三分散会