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1974-03-15 第72回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十五日(金曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員の異動  三月十五日     辞任         補欠選任      川野辺 静君     棚辺 四郎君      鬼丸 勝之君     橘  直治君      内藤誉三郎君     高橋雄之助君      中尾 辰義君     沢田  実君      鈴木 一弘君     黒柳  明君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鹿島 俊雄君     理 事                 片山 正英君                 嶋崎  均君                 西村 尚治君                 細川 護煕君                 吉武 恵市君                 小野  明君                 加瀬  完君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君     委 員                 今泉 正二君                 小笠 公韶君                 大竹平八郎君                 梶木 又三君                 木村 睦男君                 熊谷太三郎君                 黒住 忠行君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 高橋 邦雄君                 竹内 藤男君                 橘  直治君                 棚辺 四郎君                 玉置 和郎君                 内藤誉三郎君                 中村 禎二君                 濱田 幸雄君                 原 文兵衛君                 米田 正文君                 上田  哲君                 小柳  勇君                 鈴木  強君                 辻  一彦君                 戸叶  武君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 宮之原貞光君                 山崎  昇君                 柏原 ヤス君                 沢田  実君                 鈴木 一弘君                 高山 恒雄君                 加藤  進君                 須藤 五郎君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  中村 梅吉君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  徳永 正利君        郵 政 大 臣  原田  憲君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (近畿圏整備長        官)        (中部圏開発整        備長官)        (首都圏整備委        員会委員長)   亀岡 高夫君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      町村 金五君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 二階堂 進君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       小坂徳三郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       保利  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山中 貞則君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       内田 常雄君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       森山 欽司君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        人事院事務総局        任用局長     大塚 順七君        人事院事務総局        職員局長     中村  博君        内閣総理大臣官        房総務審議官   佐々木成美君        総理府恩給局長        事務代理     菅野 弘夫君        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        公正取引委員会        事務局長     吉田 文剛君        公正取引委員会        事務局経済部長  熊田淳一郎君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁長官官房        長        丸山  昂君        防衛施設庁総務        部長       安斉 正邦君        経済企画庁長官        官房長      吉瀬 維哉君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁物価        局長       小島 英敏君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  松永 信雄君        大蔵大臣官房審        議官       大倉 眞隆君        大蔵大臣官房審        議官       岩瀬 義郎君        大蔵省主計局長  橋口  收君        大蔵省関税局長  大蔵 公雄君        大蔵省理財局長  竹内 道雄君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       松川 道哉君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省社会局長  高木  玄君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林省農蚕園芸        局長       松元 威雄君        農林省畜産局長  澤邊  守君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        通商産業審議官  森口 八郎君        通商産業省通商        政策局長     和田 敏信君        通商産業省貿易        局長       濃野  滋君        通商産業省産業        政策局長     小松勇五郎君        通商産業省基礎        産業局長     飯塚 史郎君        通商産業省機械        情報産業局長   齋藤 太一君        通商産業省生活        産業局長     橋本 利一君        資源エネルギー        庁長官      山形 栄治君        資源エネルギー        庁石油部長    熊谷 善二君        資源エネルギー        庁石炭部長    高木 俊介君        資源エネルギー        庁公益事業部長  岸田 文武君        中小企業庁次長  小山  実君        中小企業庁計画        部長       吉川 佐吉君        運輸大臣官房審        議官       原田昇左右君        運輸省海運局長  薗村 泰彦君        運輸省船舶局長  内田  守君        運輸省港湾局長  竹内 良夫君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        運輸省自動車局        長        中村 大造君        労働省労政局長  道正 邦彦君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        建設大臣官房長  高橋 弘篤君        建設省計画局長  大塩洋一郎君        建設省住宅局長  沢田 光英君        自治大臣官房審        議官       近藤 隆之君        自治省財政局長  松浦  功君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        日本国有鉄道総        裁        藤井松太郎君        日本国有鉄道副        総裁       井上 邦之君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提  出、衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  三案審査のため、本日、日本銀行総裁佐々木直君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 通商産業大臣から発言を求められております。これを許します。中曽根通商産業大臣
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昨日、上田委員から御指摘のありました、通産省計画課長石油連盟へ行って話をしたという経緯について御報告申し上げます。  きのう三月十四日、十二時三十分から一時二十分まで約五十分間、石油連盟会議室元売り十二社の販売担当部長招集しまして、平林石油部計画課長出席して、次の二点を指示いたしました。  一つは、最近、石油製品価格凍結解除に関して、その時期、幅等について種々の憶測、情報が乱れ飛んでいるけれども、これに関連して、元売り段階流通段階での売り措しみ傾向が懸念され、このまま放置すると石油製品需給面での混乱が生ずるのではないかと憂慮している、したがって、元売り各社は、製品価格凍結解除を見越して売り措しみは厳に慎むとともに、流通段階でもこのような傾向が出ることがないように、各業者、系列を指導されたい、これが第一であります。これは各省からも強い要望がありまして、将来石油価格が上がった場合に、上がるのを見越して、過去十二月ごろにあったように、売り措しみが出てくる、そうすると非常に消費者に対して迷惑が出るし、混乱が起こる、それをあらかじめ警告をしておいてくれという強い要望もありまして、通産省として行政指導をしたわけでございます。  第二は、製品価格引き上げの幅、時期については全く未決定であり、もちろん公表の段階ではない。政府として正式に決定の上発表されるが、その場合、流通段階、特に末端の小売り段階で一時に相当の混乱が予想されるが、今回の価格凍結解除措置が発表されても、直ちに価格引き上げが正当化されるというものではない。特に流通段階では、在庫状況等も考慮して、できるだけ値上げの時期、幅をずらすよう特約店指導すべきである。このような適切な指導があってこそ、初めて流通段階での混乱最小限に防止し得る。これはいわゆる流通在庫というものがあると、旧価格のストックを持っているはずだと、だから一定時点で上げられても、その分については安く売りなさい、これを行政指導で強く要請したということです。この点についてはいろいろ問題がありまして、じゃ、新しい、高くなった石油を買うためには金が足りなくなるじゃないか、だから、いわゆる流通在庫については新価格で売らしてくれと、これは会社経理先入れ先出し法とかなんとかということでも、いろいろ関係があるところです。しかし、通産省としてはそういう方針で臨むから協力してくれと、そういうことで、この二点を要請したということでございます。  それから、きのう、きょうの閣議が終わりましたら結果を御報告申し上げますと申し上げましたが、いま委員長の御了解を得まして、きょうの閣議資料をあとで御配付申し上げようとしております、ここにある資料でございますが。石油価格問題が、どういう問題点があるか、そうして、どういうふうに各国が上げてき、また民族系及びメジャー系でどういうような経理状況になっておるか、それから、これを販売する流通経路についてどういう問題点があるか、たとえば全農の問題とか、全漁連の問題とか、特約店の問題とか、いろいろあるわけでございます。一番むずかしいのはA重油の場合でして、A重油の場合には、焼津の港の値段と函館の値段とでまた非常にいま違っておる。あるいはさらに、岸壁で売る値段と沖まで持っていくときの値段とでまた非常に違う。そういうような場合で、非常にA重油指導価格を全国一律できめるという場合にはかなり問題がありまして、その点はいろいろ農林省といま苦労しておるところなんでございます。そういうような流通経路問題等も説明申し上げ、そして終局的には、これは総理の御裁断に預けようと、で、まあ事務当局では大体三案ぐらいの案がゆうべおそく煮詰まって出まして、けさ閣議の前に、大蔵大臣経企庁長官官房長官、私で、その事務当局の煮詰まった三案ばかりの問題を、総理と一緒にいろいろ審議いたしまして、結論はもちろん出ません。それで、最終的には、これは非常にデリケートな問題でもあり、時期的にも微妙な問題でもあるから、総理にお預けしょうと、そういうことで閣議でも大体その線で御了承をいただいたというのが現状でございます。  なお、内田経企庁長官から、物価の目張りの問題について具体的にどういうことをやるべきであり、どういう準備を進めているかと、それに関して各大臣の強力な協力措置を要請されたと、そういうこともございました。
  7. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) これより前回に引き続き質疑を行ないます。上田君。
  8. 上田哲

    上田哲君 先に一言承っておきますが、伝えられるところでは、十六日、明日にきまるのか、あるいは来週持ち越し、十八日になるのかといわれておりますが、そこは総理、いかがでしょうか。
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ただいま通産大臣から申し述べましたように、四省会談結論三つばかり出ております。出ておりますが、これに対して生活必需物資、特に農林漁業の問題とか、いろいろな問題が五十品目ないし六十品目というものをあげておりますが、これがまだ各省では詰まっておりません。特に農林関係が詰まらぬわけであります。これはソ連から直接引いておるような重油もありますし、そういう意味で、なかなか詰まらないという問題がありますので、各案に対しての政府部内をまず十分詰めて、でき得れば最終的な価格も四省間で合意を見るべきであるということで、私に最終的な決定はということでございますが、これは閣議全体で決定するものでありますので、四省で引き続いてその三つの案というようなものを一本にまとめるような方向で努力をせられたいと、そうすれば、それによって関連物資流通経路の問題とか、それから最終的な物価抑制策の上での見通しも十分つけて、各省間に異論のないような状態まできめなさいということでございますので、今週中に必ずしもきめられるかということは、まださだかでありません。まあ今週から来週の初めにかけてということをいま予測しておるわけでございます。これは四省と、まあ党との問題もございますし、もう少し、特に農林漁業問題等、詰めなきゃならぬ問題がありますので、そういうものが詰まり次第ということで御理解をいただきたい。
  10. 上田哲

    上田哲君 そこで、ただいま通産大臣から御報告をいただいた昨日の会議の内容でありますけれども、反省のおことばが全くなかったんでありますが、最小限、李下に冠を正さずという部分での御反省ことばは聞かれないんでありましょうか。
  11. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 問題のある石連会議室を使用したということは誤解を受けやすいところでございまして、これは注意が足りないところでございました。以後そういうことはさせないようにいたしたいと思います。
  12. 上田哲

    上田哲君 向こうの会議だったんですか、こちらの会議だったんですか。
  13. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) こちらが招集して集まってもらった会議であります。これは各省からも強い要望がありましたそうで、それで至急に夜中に、あした集まってくれと、そういうことで営業担当部長を集めたと——営業ではありません。販売担当部長営業委員会ではございません。集めたのは販売担当部長であって、重役ではないと、そういうことだそうであります。
  14. 上田哲

    上田哲君 そこが非常に問題であります。あの場所を使ったのがいけなかったなんという反省のしかたは私は非常に不見識だと思うのです。明らかにこちらが招集したものじゃありませんか。そんなところへ行っているはずがないんだとおっしゃった。行っているはずがないんだとおっしゃったのが、実は招かれたのではなくて、こちらが招いたんです。これはとんでもないことではありませんか。招くならこちらへ呼ぶべきでありまして、石連本部通産省価格決定責任者が出かけていくというのは、この時期に一体何でありましょうか。私はこういう姿勢が問題だと思うんです。
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は当方の落ち度でございまして、われわれも大いに反省しなきゃならぬと思いますが、最初御質問がありましたときに、やみカルテル謀議行為の中に通産省の役人が入ってやっているということでございましたから、そういう事実はないと私は思いますと、そういうことをお答え申し上げたので、やみカルテルの問題と、いまのような大衆消費者のために考えた行政指導行為とは、やはりはっきり分けて区別して考えなきゃならぬと思います。
  16. 上田哲

    上田哲君 こちらから求めて開いたものだ。しかも、この時期に石連会議室へ出かけていって担当者がやっている。しかも、それを開くについては、石連理事、どういう経過——責任のある理事を通じてこの会の開催を要求しているわけですけれども、どういう筋を使ってそういうことになったか、経過を御説明いただきたい。
  17. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) お答え申し上げます。  実は非常にいま、近く行なわれる石油値上げに関連いたしまして関係各省と密接な連絡をとりながらやっておるわけでございます。担当課長計画課長各省の詰めをやっておる関係者でございまして、十三日の夜も明け方の三時ごろまで仕事を継続しておったわけでございますが、先ほど大臣からお話しのとおり、関係各省との調整等を通じまして非常に強い憂慮といいますか、心配が各省から表明されたわけでございます。特に農林省及び運輸省から暮れのような混乱が起こるということは非常にたいへんなことになると、したがって、通産省から元売りを通じ特約店等について強い事前の行政指導をやってもらいたいという要請がございましたのが十三日の夕方ごろでございまして、石連に対しましてわれわれのほうは、十二社でございますので、十三日の夜に、至急にあしたこれを集めてもらいたいということを石連事務当局に連絡したわけでございます。これは先ほど大臣お話ししましたように強い指示を与えようという趣旨でございまして、カルテルとかいうことではございません。何ぶんにも夜のことでございましたので、何時ごろにその元売り十二社が集まることができるのか、その辺はその夜は確認できませんで、あくる日になったわけでございます。その担当課長は、またそのあくる日は朝から党本部党関係及び各省関係をずっと回っておりまして、十二時半にようやっとみんな集めることができたということを朝になって確認いたしたわけでございますが、確かにそこがうかつでございまして、場所のことの指定をしませんでございましたので、実は十二時半から全員が集まることになったと、彼としましては、その後の日程の問題もございまして、先ほど大臣からお話しのような指示を与えることが目的でありましたので、これは不注意だったと思いますが、それでは、急遽通産省に切りかえるよりは、その集まったところへ行って自分の趣旨を徹底すりゃいいんだという判断のもとに、石連会議室に出向いたわけでございます。これは営業委員会ではございませんで、しかし、業務の性質から、販売担当部長を集めてくれということを指示したことは確かでございます。そういう経緯で、場所最初から指定しないで招集をかけたという点、及び場所について、時間の関係等もあって、その場所に出向いた。先生がおっしゃいますように、本来、このことは通産省に正式に招致してやるのが筋であったと私は反省いたしております。
  18. 上田哲

    上田哲君 子供だましのことを言ってもらっては困るんです。この御報告は、第一に反省がないのみか、はなはだ事実をゆがめて御報告になっておられる。その点は一々これから反駁をいたしますが、また問題をああいうふうにはぐらかしてお答えになっては困る。そういうことであれば、私はきのうの平林さんという名前も、個人名は出さずに計画課長という名前だけでお話をしていたんですが、名前を出さなきゃならぬ。計画課長開催を依頼したのは久米田理事です。通産省の天下りであります。久米田理事を通じてこの会合を委嘱したんです。間違いないかどうか。  それから、通産省がやったんですから、出席者リストをお出しなさい。
  19. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) お話のとおり、久米田常務がこういう関係担当常務でございますので、久米田理事を通じまして翌日の招集を依頼いたしましたことは確かでございます。  当日の出席者につきましては、調査の上、御提出申し上げたいと思います。
  20. 上田哲

    上田哲君 調査もくそもないじゃないですか。わかっているじゃないですか。営業委員会であるとかないとか、そんなこと言っちゃだめですよ。リストの上で判断して……。
  21. 山形栄治

  22. 上田哲

    上田哲君 明らかではありませんか。実に営業本部長を含めて九名−十名ちょっとの数の中で九名がみんな部長じゃありませんか。部長クラスだからなんておっしゃるが、これはみんな部長重役ですよ。何という無知なことをおっしゃる。完全に営業委員会じゃありませんか。こういう無知な、子供だましの御説明では困る。何が販売担当でありますか。こういうものですよ。私は、こういう形でもって御説明になるというのはたいへん国民に対して失礼だと思う。もう少し、具体的な資料を持っておるんですから、そんな子供だましなことでは質問はいたしません。国民の目がここに集まっておる。国会の権威をかけてしっかりこの問題は話そうじゃないかと言っているんです。だから一晩待ったんです。何たる態度でありましょう。具体的に幾らでも追及をいたします。反省がないのはしようがないにしても、具体的に、第一にこの問題点は、通産省側から開いたものだ。通産省側から、この時期に、石連で、秘密会で、通産省の天下りの重役を通じて深夜ひそかに頼んだものだ、こういう問題が一つ。  しかも、第二に、そこに石油製品の標準価格決定権者である計画課長出席をしている、これが第二です。  これはもうこれだけで重要な疑惑を持たれなければおかしいのです。公取委員長が指摘されたとおり、ずばりです、これはもう。出席者の顔ぶれを見れば、これが営業委員会であるとかないとかいう詭弁は許されない。まさにそうではありませんか。しかも、営業委員会と需給委員会が告発を受けて家宅捜索を受けているから、いろいろおもんぱかって、ある種の次長が一人出てきたり二人出ているということはありますよ。そういうことがあるのに、しかも、私どもは全部調査をしておりますけれども、全部これは本社にきちんとその日のうちに報告が行っております。完全なる要件は具備されておるんです。こういうでたらめなことで、そんな子供だましな御説明では国民は納得しません。不見識だと私は思う。  しかし、しぼって伺うけれども、もっと問題は、この報告で、会議の目的というものがたいへん不分明であります。聞いているだれにとっても不分明であります。冗談じゃありません。二つあって、元売り流通段階の売り惜しみをさせないためである、全然これは理解ができません。どういうことが——この際、あと一日か二日で値上げの額がきまろうということを総理大臣が国会で答弁をされているこのときに、あと一日か二日で新しい値段がきまろうというときに、一体、あと一日か半日の間にどういう流通過程の混乱が起きるんですか、御説明をいただきたい。
  23. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) わりあい近い時期に値が上がるというようなことになれば、上がったとき売ったほうが得ですから、低いときに売らないで売り惜しみということは、普通ならば当然起こることであります。そういうようなことが十二月にも起こったのでありますから、そういう経験にかんがみまして、そういうことを繰り返してはならぬというので、そういう指示をしたわけであります。
  24. 上田哲

    上田哲君 一日で起きることをそんなに心配するんですか。価格を最終的にきめなければいかぬので、徹夜でやらなければいかぬと総理大臣が言われておる。そのときに、わざわざその職場を離れて、石連まで出かけていって、たった一日のためにそんなに心配しなければならぬというのは、常識では理解できないではありませんか。
  25. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一日であるか二日であるか三日であるか、まだ未定であります。価格自体が、総理大臣にお預けして最終的にきめていただくということになっておるので、その一計画課長がきめられるもんじゃございません。けさもそういう意味で、四省でも相談をし、総理とも御相談したわけであります。こういう段階において、価格問題でやみカルテル通産省が介入したというようなことは絶対ないことでありますから、その点だけはやっぱりはっきり私は明言申し上げておかなければいかぬと思います。しかし、いずれにせよ、近く値が上がるというようなことになれば、安い値のものを売りよりも、しばらく置いといて、高い値で売ったほうが当然もうかるわけであります。そういうことは商慣習でよくあることでございます。そういうような面から、たとえば金曜日とか土曜日とか日曜日とか月曜日とか、そういうときにガソリンスタンドへ行っても売ってくれないという現象が起こるかもしれません。これこそ消費者大衆の非常な迷惑になります。アメリカでも最近よく起きている現象です。そういうようなことを起こしてはなりませんから、そういうことを強く指示しておいたのであります。
  26. 上田哲

    上田哲君 ここまできて、たった一日か二日、長くて三日という段階に、急速こういう処置をとられるということは、国民にはこれは説明は絶対通りません。否定されるんだから、議論になりませんが、具体的に伺いましょう。  第一に、小売り段階では、品物さえあれば何の混乱も起きないのは、これは常識であります。第二に、金銭面についていえば、値上げ幅なんというのは新聞、テレビでいまこれだけ報道されているわけであります。卸売り段階では支払いはあと払いなんですから、その問題の混乱も起きません。どうやって起きますか。
  27. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) われわれが一応心配いたしましたのは、特に末端のガソリンスタンド等で、このごろの二日制等を利用して休業するというようなことによりまして、非常に善良なる一般大衆等がガソリンスタンドの前に行列したり、いろんなトラブルがそこで起こることが考えられたわけでございます。したがいまして、いま先生のおっしゃいますように、新聞等で相当の知識といいますか、前知識はいろいろと得ていると思いますが、これは正式なる決定はやはり閣議の議を経てきまるわけでございまして、その瞬間にそういうトラブルが起こることを非常におそれまして、正式に各社及びその系列について、通産省側として正式なる要請、指導ということを行なう必要は強く感じたわけでございまして、何日後かわかりませんけれども、それを十四日に行なったということでございます。
  28. 上田哲

    上田哲君 全く説明になりませんな。新聞によりますと、きのう通産当局が報道陣に説明されたところでは、輸入が減って需給関係に変化が予想されるということもあったということでありますが、私が調べたんじゃなくて、これは報道を読んでいるところですから、そうだとすれば、これは計画課長、販売部長の担当事項ではないし、委員会としても、この委員会ではなくて、石連は原油委員会でなきゃならない。こんなばかげた説明を昨日は行なって、これではいかに何でもでたらめだということになって、けさの説明にはそれは削除されたように私は邪推をしたくなる。どうなんですか。
  29. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) きのうも私はここで御答弁申し上げましたように、かりにもし行ったとすれば、これこれのことで混乱を防止するためにやったんだろうと思うと、そういうことを申し上げておきました。そういうことであったわけであります。
  30. 上田哲

    上田哲君 いや、ですから、輸入が減って需給関係に変化が予想されるという説明はきのうなすったわけですよ。ここではないです。どこかそういう発表されたようですから、その関係を伺っているんです。
  31. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまちょっと秘書官が聞きに来て、質問を漏らしたんでございますが、もう一回お願いいたします。
  32. 上田哲

    上田哲君 きのうの説明では——ここではないですよ、私は記事で、伝聞ですから、正確ではないから確かめているだけですけれども、計画課長が向こうへ行ったのは、輸入が減って需給関係に変化が起きるんで、そのことについての混乱を防止するための説明にも行ってるんだという説明をされたというふうに聞いているわけです。これは明らかに、計画課長、販売部長の担当事項じゃなくて、また営業委員会ではなくて、石連でも、これは当然に原油委員会の管轄ですね。だから、こんな営業委員会に出かけていって計画課長が話をすることでは説明がつかない。というのはもう児戯に類する説明ですから、それが、けさになったら、大臣の先ほどの御説明の中からは削除されていたんではないかと私は邪推をするわけです。
  33. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは、私がゆうべここで申し上げましたように、販売関係混乱を防止するために行ったんでしょうと、私はそう思いますと申し上げたとおりでありまして、原油の輸入数量はどうだとかこうだとか、そういうこととは関係のないことであります。
  34. 上田哲

    上田哲君 いや、これを御発表になったんではないんですかという事実を聞いています、ゆうべは。
  35. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうことを発表したということは私聞いておりません。
  36. 上田哲

    上田哲君 ちょっと調べてくれませんか。
  37. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 昨日、計画課長が七時に参りまして、申し上げた内容は先ほど大臣からのお答えのとおりでございます。その間、いま先生のお話のとおり、最近の石油及び原油の事情をお話ししたことは確かでございます。実績等を見ましても、たとえば二月の統計によりますと、われわれが二千二百七十万キロリットル輸入されると思っておりました原油が、二千百十一万キロリットルと、若干減少しておることも確かでございます。で、申し上げた趣旨は、こういうこともあって、よけいに世間では非常に疑惑の目をもって見る可能性があるし、業界としては、こういうときこそ、新しい、新価格体系の移行に対しまして、いささかも国民に疑惑が生じたり、または売り惜しみをするような気配が出たりするようなことは厳に避けられたい、この際業界全体、元売りから特約、販売と、全体でそういう疑惑を絶対しないように、いささかも売り惜しみ等はしないようにということを申し上げる前提としてそういうことを申し上げたことは確かでございます。
  38. 上田哲

    上田哲君 明らかに委員会と課長の担務が違いますね。
  39. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) まことに恐縮でございますが、委員会と課長の判断というのはどういうことを……。
  40. 上田哲

    上田哲君 それをやるんでしたら原油委員会でやるんだろうと、また計画課長ではないだろう、だからそれでは説明が通らぬだろう……。
  41. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) その点は、原油そのものの需給、入着等を議論したわけでございませんで、まあくどいことでございますが、昨日の会合は、これから起こり得る値上げに即しての売り惜しみの防止と、いささかでも便乗値上げをしないようにということを強く指示したわけでございます。その過程におきまして、最近の石油事情及びそこから出る、よりきびしい業界における態度というものを要請する意味におきまして、それを御披露しただけでございまして、それは議論したわけではございません。
  42. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと関連。  長官が命令をして出張されたとするならば、命令書なり、あるいは長官によってきめられたものを伝達するということであるならば、その伝達の要項なりというものが文書になってきちんとあるはずですね。それをひとつ読んでください。
  43. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) いま先生のお話のとおり、伝達書とか、そういうものはございません。これは組織で役所は動いておるわけでございます。また、おのずから分担をいたしておるわけでございます。まあこれ、私のほうの手前みそでございましょうけれども、エネルギー庁はいま日夜、非常にまあ、いわゆる忙しくなっておりまして、当日の十三日の夜は、私はほかのことにかかずらっておりまして、この辺のことは次長に一任いたしておったわけでございます。次長、部長、それから平林課長、三者合議の上、次長の、まあ裁断といいますか、決定によりまして、国民のために当然にいまこういうことをやることが妥当であるという前提でこういう行動をとったわけでございます。
  44. 加瀬完

    ○加瀬完君 明確な命令書というのは長官は出しておられないわけですね。次長の権限でやったとするならば、しかもその目的は、国民のために正常な石油業界の運営ということをねらってのことであるというなら、その内容というものは次長からその課長にきちんと伝達をされて、文書によって関係者に配付されて説明が行なわれるということでなきゃならない。はなはだ不確かな話じゃありませんか。大体、どこの役所でも、問題のあるような業界に行って指導なり監督権を行使するというような場合は、きちんとした文書によって、その基準に従って行なうというのが通例でしょう。個人の口頭だけにまかせてこういう疑義を持たれるような問題を処理するということは、はなはだ不見識じゃありませんか。
  45. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 各社あてに文書でこれを交付しておらないことは確かでございます。ただ、非常に緊急、時間がなかったところもございますし、従来、役所の組織といたしまして、先ほど申し上げましたような内部の決定をはかり、これを正式に口頭で伝達するというのが非常に普通の場合でございまして、今回文書をとっておりません。これはしかし文書の形式をとる場合もあるわけでございますが、今回の場合は文書の形式をとっておりませんけれども、われわれといたしましては、それを早く的確に強く業界に指示することが大事だと、そこで目的を達成できるという判断のもとに行なったわけでございます。
  46. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういう方法ばかりとっておりますとね、通産省石油業界はなれ合いだという疑義が当然持たれたってしなたがない。こういう時期でもありますから、そしてさらに、業界に明確な指示をするというならば、それは文章として、口頭で伝えるにしても、出向く者は文章によってきちんと上司の命令というものを確認した上で行くというのが、これは常識でしょう。そういうことが怠られておるということは、国民側にあなた方が納得のいくようなといったって、納得できませんよ、そんないいかげんななれ合いみたいなことでは。
  47. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 場所——先ほどくどくど申し上げましたように、石連にこちらから出向いたということは、私反省いたしておりますが、招致いたしましたのは、招集いたしましたのはあくまで通産省が招致したわけでございます。ただ、先生のお話のとおり、今後非常に数の多い、広範囲のいわゆる行政指導、これ、強いのと弱いのとございますが、これを全部文書形式で、公文書として各社あてに発送または伝達をするということでございますと、時間の関係等もありまして……。
  48. 加瀬完

    ○加瀬完君 そんなこと言っていませんよ。
  49. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 非常に事実、効果を期しがたいという点もあるわけでございます。今回の措置につきましては、われわれはそこの置かれました客観情勢から見まして、先ほど来申し上げました二点を強く指示するということが非常に重要であったと、こういう判断に立っておるわけでございます。
  50. 加瀬完

    ○加瀬完君 役所のやることじゃないよ、どんぶり勘定みたいなやり方じゃないか。
  51. 上田哲

    上田哲君 はっきりしてきましたのはね、結局いまお話では、緊急事態であったんで時間がなかったのでと、こうおっしゃるわけですけれども、価格決定まで一日か二日しかないというところで、何に対して緊急であったのかと言ったら、はっきりしてきたのは、明らかに輸入減などによる需給関係の変化の問題ではない、これはテーマにならないということがはっきりした。それから、流通関係混乱が起きるなんということは、これは実務的にあり得ないわけです。あとは価格の問題でしかないわけです。しかし、この問題をじっくりお話しもしますけれども、その前に、さっきお話しになったリスト、このリストは明らかに営業委員会そのものです。それは第一に、出席をした石連側が営業委員会だと理解をしていますよ、全部当たってあるんだから。それから、出ている人たちは部長でありますなんて妙なこと言っていますけれども、これはもう明らかに部長重役です。
  52. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 先ほど読み上げました当日の出席者は、全員が営業委員会委員ではございませんで、われわれのほうは、ただ事の性質上、いわゆる売り惜しみとか便乗値上げとか、そういうものを戒めることの指示でございましたので、そういう販売担当部長に集まってもらいたいということを申し上げたわけでございます。出てまいりました顔ぶれを見ましても、営業委員会のメンバー全員ではございませんで、当然に代理があるわけでございます。われわれの趣旨は、あくまで営業委員会招集したんではなく、通産省側から自主的に、事の性質に応じで一番担当の責任者、これに集まってもらうというのが本会の趣旨であったわけでございます。
  53. 上田哲

    上田哲君 核心に入りますがね。そんなことが通るはずがありません。さっきから言っているように、営業委員会と需給委員会というのは、明らかに公取から指摘を受け、家宅捜索を受けている対象だから、代理を出すというのはあたりまえです。しかし、これは重役です。販売担当ではありません。あなたがおっしゃっているのは、販売担当に来てもらいたいとこっちは言ったと言っているんです。しかし、業者ですよ、この人たちは。業者ですよ。その業者がですね、いま頭の中にあるのは何ですか。流通段階、あと一日か二日で起きようのない混乱なんかを心配している業者がありますか。新価格が幾らになるのかというのを国民全体がこれだけ心配しているときに、それを売る業者がですね、だれよりもまず流通混乱を心配して、新価格のことは頭に入れないなんてばかなことがありますか。いわんや、その決定責任者の課長が、わざわざ、国会で総理大臣がああいう発言をしておられるときにも、わざわざ石連の本部まで行って秘密会を開いているときに——千載一遇だ、これこそ。その千載一遇の決定権者からじかに話が聞けるというチャンスに、何でほんとうにそういう人たちが来ないことがありましょうか。こんなばかげたことが通ると思いますか。国民を愚弄しちゃいけない。だから、そういう意味では、さっきからおっしゃっている、緊急に、時間がないので時間がないのでとおっしゃった。何のために時間がないのかと言ったら、新価格決定までに時間がないという以外はないじゃありませんか。そうしたら、その新価格決定までに時間がないのは、問題は流通上の混乱ではない。いわんや輸入減による需給関係の変化ではない。価格問題以外はない。ABC案を一番知っている課長が出ていって、一番関心を持っている重役が出てきて、十人以上も、そこでその問題が触れられない、こんなばかなことがありますか。触れられていると思います。
  54. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 価格の時期及び幅につきましては、先ほど総理からもお話しのとおり、政府内部はきまっておるわけでございません。もっとこまかく申し上げますと、先ほど三案というお話がございましたが、一昨日の三案と昨日の三案はまた違っておるような、非常に各省間の調整が済んでおらない段階であったわけでございます。  なお、平林計画課長は、エネルギー庁の内部のことを申し上げて恐縮でございますが、価格の今回の作業に直接タッチいたしておりません。先生の分掌規程でお読みになりました、標準価格の設定に関することと書いてございますのは、これは石油業法の規定に基づきまして、生産メーカー及び輸入業者について標準価格をきめることができると、これは今回の国民生活安定法のものでございませんで、昔からある規定でございます。実は、エネルギー庁は非常に多分野にわたりまして事務がふくそういたしましたので、本省内部人員の配置がえをいたしまして、現在価格担当をやっておりますのは別の審議官でございまして、これが、私と次長と部長とその審議官とが価格作業をやっておるわけでございまして、平林君は、現時点におきましては、そういう具体的なる価格の作業、これには直接タッチいたしておらないわけでございます。
  55. 上田哲

    上田哲君 そんなこと聞いてないですよ。価格問題が出ただろうと質問しているんですよ。
  56. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 価格問題につきましては、平林君のほうから、これは現在全然未定であると、またこれを公表する段階でもなく、いわゆる業界の販売担当部長等に言うべき段階でない、いずれ、これは正式に総理の裁断に基づいて政府として決定し、それを公表するということが筋であり、現段階では自分もよく知らぬし、かつ何も言えないと、そういう時期であるということは、十四日の、昨日の会合においてもはっきり明言いたしております。
  57. 上田哲

    上田哲君 平林さんは、会議場から外へ出た長い時間もありましたよ。いいですね。価格問題が出ていたらどうしますか。
  58. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 価格の時期、幅等について平林君が一言もこれをしゃべっておらないことをはっきり申し上げたいと思います。
  59. 上田哲

    上田哲君 それじゃ具体的に申し上げましょう。値上げ幅については、ほぼ伝えられるような額で目下最終的な詰めが行なわれているが、通産省案から大幅な変化はないと説明した上でですね、細目については次の幾つかが語られたと私は承知をいたしております。  その一つは、上限の仕切り価格をきめて、幾らかの幅を持たせる、小売り販売価格もそういうものになろう——出ていませんか。
  60. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 先生のお話の一番最初の、いわゆる通産省の原案がこれをあまり下らないであろうというようなことは、これは絶対言っておりません。ただ、先ほど説明がちょっと足りなかったわけでございますが、大きく二点を、売り惜しみの、これを絶対しないことということと、それから、末端小売り段階混乱が起こるので、これを流通段階できちっとすると、この二点を申し上げましたところ、質問がございまして……。
  61. 上田哲

    上田哲君 いま、私の言ったことだけ、はっきり答えてくれりゃいいですよ。
  62. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 質問がございまして、それにこたえて平林君が答えておりますのが二点ございます。家庭用灯油及びLPGの標準価格は当面現状のとおりとするからそのつもりでおってくれと。で、これは、石油業界として今回上がるにあたりまして、灯油とLPも理論的には非常に上がるべきなんで、当然上げさしてくれるのかなという疑問があったと思いまして、この質問があったそうです。これは当面現状のとおり据え置くと。それからもう一つは、ガソリン、軽油、A重油等につきまして、政策配慮から指導上限価格の設定を考慮しておると。この三油種は特に流通段階で問題が多いので、便乗的な値上げが絶対起こらないように、元売り社の強力なる指導をわれわれは期待及び要請するんだと、これは申しております。これは、そういう質問に応じて言っておりますが、先ほど来出ておりますように、今回の値上げの幅とか時期、そういうものについては一言も言っておりません。
  63. 上田哲

    上田哲君 価格問題を話をしておるじゃありませんか。大臣、どうですか。
  64. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 価格問題という定義によりますけれども、いまのLPG、家庭用の灯油とか、あるいはプロパンガスとか、そういう問題は凍結いたしておきますということは、私もたしか国会ですでにお答えしていることで、そういう政策は通産省としては堅持していきたいと、そう思っておるわけでございます。でありますから、それはまあ当然のことで、価格値上げの今回のこの問題の対象になっている線の問題ではないわけでありますから、幾らぐらい上げるかとかなんとかいう話ではないわけであります。
  65. 上田哲

    上田哲君 公取委員長、この問題が触れるところは数字そのもののみでありましょうか、価格問題についての全般を含むでありましょうか。
  66. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 前に私はあらかじめお話し申し上げたいことは、いま、きのうの答弁で、私は、これはカルテルに仮定ではなるであろうと申し上げましたが、結局実行行為に着手した段階でなければカルテルになりません。しかし、これはもう近いうちに行政指導に基づく業界の価格ということであること、公算が大でありましたので、そうなれば、価格について話し合いを行なえば、業界がですね、それはカルテルになるであろうと。ですから、価格について——いま私どもも、実はごくわずかの人間しかつかまりませんでしたけれども、接触できませんでしたけども、部下に調べさしております。それをいまここで申し上げることは、事件として扱うかどうか、まだわからない段階でございますので、ですから、私は一般原則論を申し上げます。  いまお話がありましたような、あるものは据え置く、こういうものについては仕切りと小売り価格について云々とかいうことになりますと、この中にはガソリンが含まれておってやったりすると、そうすると、この上げ幅が少なくなるとか、ほかのものにそれだけしわが寄るとかいうことになるんで、これは最も私どもとしてはまあ警戒しておった、好ましてない状態であると。したがって、私、まあここで、せっかく政府が、もう間に合わない段階に来ておるんで、やることについて妨害的な行為をしたくないという気持ちでありますけども、しかし、私どもの筋論から言えば、この値上げにあたって、価格問題について業界の会合を行なうと——実際問題として、これはまあ一部の人から聞いただけですから、常務のクラスの、これは営業委員なんです。営業委員、常務クラスですが、これらの方々は検察庁に呼ばれておって事実上出席できなかったというのが実態でございまして、その代理として出てきたものと思いますので、このような会合の席で横の連携をとられないということはたびたび実は私どもは承ってきたところですが、横の連携で横断的に話をするというそのこと自体がたいへんな問題であると、こう申し上げておるんであります。
  67. 上田哲

    上田哲君 非常に明快な御見解で、私は尊重いたします。ついでに示唆を受けまして、ほんと、私もちょっとことばを甘くしておりました。もう一つ上のレベルが検察庁に呼ばれていて、きのうは出られなかったということになっておりまして、事実上は全く営業委員会であるということは、そういう立場でもしっかりしているわけです。  そこで、そういう明快な御見解がある以上、さらに私は具体的にお尋ねをしなきゃならないが、先ほどの長官の御説明では、懇談、質問があったんで答えたんだと言われたが、質問があったのはそのあとです、まだ。質問になる前に、私は、第一に、上限の仕切り価格をきめて幾らかの幅を持たせる、小売り販売価格もそういうものになろうというのが第一点で申し上げたが、第二点は、メーカーごとに価格をきめるということにはならないと思う、こういうことを発言した後、質問に答えて答弁、話し合いがあったんです。いかがですか、そこまで。
  68. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) これは、昨日も申し上げましたように、今回の価格値上げのやり方でございますが、これは各社ごとにやるという形をとっておりませんで、全体としての妥当なる値上げの幅を提起する予定にいたしておるわけでございます。いま、質問に応じてということは、いま公取委員長お話もございましたが、このガソリン、軽油、A重油等につきましては、非常に農林漁業及びバス、トラック等に関係ございまして、各省との接触におきましても非常に関心の深いものでございますので、また、これはむしろ与野党を通じまして従来からの御感触から考えましても、非常にこの辺はきちっとすべきであるということでございます。で、業界というのはなかなかいろんな動きをいたすものでございますので、はっきりと、あらかじめこの辺の大体の考え方を述べて、問題は流通段階でございますので、元売りから便乗的な値上げ流通段階で起こらないようにということを指示したわけでございまして、先ほど通産大臣からのお話のとおり、今回の値上げの根幹でございます時期とか幅に触れたわけではございませんで、むしろこれからの基本的な考え方を述べて、その協力を要請及び指示したという趣旨でございます。
  69. 上田哲

    上田哲君 私の質問に答えてくださいよ。山形さん、全然答えてない。答えてください。全然違ったことを答えたってしょうがない。あなたの意見を聞いているのじゃない。当日、平林さんがどういうふうに言ったかということを事実に即して私は聞いているんです。そのことを答えてくれなきゃ質問に答えたことにならぬ。  もう一ぺん言いましょうか。いいですか。あなたが、さっき質問に答えてこれこれ言ったというんですよ。私は区別して言っている。第一に、上限の仕切り価格をきめて幾らかの幅を持たせる、小売り販売価格もそういうものになろうと言った、それは第一ですよ、価格問題として。そうしたらあなたは、そのあと、質問に答えていろいろ言ったというお話もなすったんだが、質問はまだこの段階では出ていないんです。出たのは質問ではなくて、このあと、メーカーごとに価格をきめるということにはならないと思う——いろんなことを言っていますけれどもね、言っていますけれども、中をピックアップするとこういうのが出てきたと、そしてこの発言があった後、質問に答えることになったという流れと、それからこのことを言ったと、この二点について平林さんが言ったということをはっきり確認をしてくださいと言っているんです。これ、イエスかノーかでいいんです。
  70. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 当日の事情でございますが、先生が御指摘のとおり、質問に応じてといいますのは、質問の前に全体の、先ほど出ました原油の動き等も通じ、最近の全体の国民の動き等につきまして、国民生活に非常に関係の深いものについては政策的な配慮及び厳正なる厳守等をはからなきゃいかぬということは申したそうでございます。それに応じて質問が出まして、具体的にどういうことなのかということなので、先ほど申し上げましたようなことを申し述べたと、こういうことでございます。
  71. 上田哲

    上田哲君 発言がだんだん変わってくるんです。  そこで、ここから質問に入って、非常に重要なことを言っているんです。メーカーがきめた価格をチェックする、今度示す上限仕切り価格とその幅は価格凍結解除であるが、解除必ずしもすぐに値上げしようというものではないなどという発言があったわけです。これはこのとおりですか。
  72. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) これは、先ほど大臣がお述べになりましたように、今回の価格凍結が、かりに最近時に解除になっても、それは直ちに小売り段階における価格引き上げが正当化されるというものではないと、特に流通段階では、在庫状況等も考慮して、できるだけ自己努力で値上げの時期、幅等をずらすように元売りとしても指導すべきであるということを申し上げました。といいますのは、先ほどこれも大臣からお述べになりましたように、末端というのはいろんな動き方をいたすわけでございます。発表になりますと、決定になりますと、すぐその場で値上げをするところもございますし、それから若干個々のお得意さんと相談に入るというところもございます。いずれにしましても、いろんな、全国で十三万軒の小売りがあるわけでございまして、いろんな動きが出るわけでございますが、われわれとしては、その精神といいますか、直ちにこれをその日、瞬間から上げるというのは当然であるというものではないということを申し上げまして、できる限り時期をずらす等のことを通じまして末端の混乱を防止すべきである、これは明確に申し上げた点でございます。むしろ、これが指示の第二点でございます。
  73. 上田哲

    上田哲君 メーカーがきめた価格をチェックするというのはどういうことですか。
  74. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) これはまだきちっとあれしておりませんが、われわれの感じは、いわゆる元売り仕切り価格値上げというものが、基準的にわれわれのほうで示すわけでございます。御存じだと思いますが、元売り仕切り価格というのは、いわゆる原油を処理しましたところへ出るガソリン、ナフサ、ジェット燃料、それから灯油、軽油、重油と、こういう非常に連産品で石油類は出てくるわけでございます。具体的な信格設定というのは、それぞれガソリン、軽油、灯油というところで設定されるわけでございます。それを、数量とその価格とを加重平均して出しましたものを元売り仕切り平均価格ということでございます。われわれといたしましては、今後、各社からこの実績といいますが、どういう品物をどのくらいで売ったかということを全部提出をしていただきまして、実際に検討して、翌月にその前月の実際の各社元売り仕切り価格はどういうふうになったのか、それは妥当であったのか、適切であったのか、こういうことをチェックする方針でおるわけでございます。ちょっとこまかいようでございますが、各社それぞれ入ってくる油——サルファの非常に低い軽質的なもの、非常に重質の油を入れている会社もございます。また、コンビナートとつながっている会社もございます。いろいろとつくる品物自身全部同じということでございませんので、この辺はそれぞれの会社の実態に即して厳正にこれをチェックして、おかしい点がございましたらこれをまたただしていくと、元売り仕切り価格段階にこれを適正に反映させるということをこれからもやっていきたい、こういうことでございます。
  75. 上田哲

    上田哲君 たいへんなことじゃありませんか。たいへんなことじゃありませんか。そんなことを業界の代表に計画課長が話すということになれば、すでに常識として九千百六十四円という実数も出ている。三案といううわさも流布されている。さらに、こういうさまざまなパターンが出る。この三つの要素をかけ合わせれば、もう具体的に価格操作の態様はきまるじゃないですか。こんなことは国会でも話が出ていないじゃないですか。とんでもないことじゃないですか、これは。
  76. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 便乗値上げを防ぐために各社別にチェックするという行為であって、これは行政指導として通産省もやはりそういうことをやる責任があると思っております。物価抑制という内閣の大方針をもってわれわれは受けてやっておるわけであります。  なお、先ほど標準価格についてちょっと御議論がございましたが、家庭用の灯油とかあるいはLPG、プロパンガスは、標準価格としていまきめられておる値段であって、標準価格というものはある時点継続して安定性を与えておる価格であります。だから、ほかの石油価格が上げられる場合でも標準価格はそのまま維持されるというのは、一応安定性という面から考えられるところであり、そういう政策を持っているということを言うことは、私は独禁法に触れることではないと確信しております。
  77. 上田哲

    上田哲君 これはもう独禁法に触れるにきまっているんですけれどもね、はっきり想定できるんですから、態様が。しかし、いずれにしても、純政治論としてこんなことが、国会を大事にする、国民を大事にするとおっしゃっているし、総理も、まあ私はきのう真剣に答弁されていたと思っていますよ。総理のところにそういうものはいっていないわけですよ。それが先に業界にいっている、これは一体どういうことですか。こういう話が一ぱいあるんですよ。平林さんがどういう話をしたか、ちゃんと言ってください。全然癒着じゃないか。
  78. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 私の、先ほど油種別の問題及びこれを通産省としてチェックしていくというのは、私のいま考えております通産省の方針でございまして、これを昨日のわれわれが招致しました会合で、いまのような言い方で詳しくしゃべってはおりません。きのう言いましたことは、これから行なわれるが、当然のことながらカルテルは絶対いけない、それから各社ごとに通産省がチェックしていくと、その価格の問題についてもチェックしていくと、それは当然の行政指導であるということを強調したことでございまして、ちょっと私しゃべりましたことがそのまま平林君がしゃべったというふうに誤解を受けましたら、これはおわび申しますが、私は一般的な、これからのわれわれの考えをここで申し述べたわけでございますので、御了承願います。
  79. 上田哲

    上田哲君 そんなことは了承できませんよ。そんなことは了承できません。平林さんが何をしゃべったかということは私のほうはわかっていますよ。もっとすっきり報告をしてくれるのが当然な、きのうのお約束じゃありませんか。それができなければ平林さんを呼んでください。審議ができません。
  80. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) くどいようでございますが、いまのように具体的な価格のチェックのしかた等につきまして、平林君がしゃべってはおりません。これはしかし、いま大臣からもお話しのとおり、非常に各社の思惑もございまして、これからどういうことをやっていったらいいのか、それぞれ非常に競争の強い過当競争の業界でもございます。われわれは、むしろ全員を招致しまして、役所の考えておる基本的な線をみんなの前ではっきりと申し述べるということが一番いいことであると考えて行動したわけでございます。決して、それを契機にカルテルが起こるというようなことはあっては当然たいへんなことでございますので、いま申し上げましたように、いささかもカルテル的な行動をしてはいかぬということも含めて、これを強く指示したわけでございます。
  81. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと議事進行で。  上田君は平林発言の事実関係を聞いているのですよ。ですから、そういうことを言ったか、言わなかったか。あるいは確認をしなければ答えられなければ、確認をして後刻報告をするというふうに答えればいい。長官なり他の政府委員の感想をここで幾ら述べられたって上田君の質問の答えにはならない。これを委員長、きちんと整理をしてください。
  82. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  83. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 速記を起こして。  発言者の要旨に、答弁側のお答えが御満足がいかない点があるという御指摘であります。内容を明確にして、その事実関係を、御発言の、質問の事実関係について、はっきりとした答弁がほしいということでありますから、その点、委員長から答弁者に要求いたします。五分間休憩いたします。    午前十一時十五分休憩      —————・—————    午前十一時二十六分開会
  84. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を再開いたします。山形長官
  85. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 昨日の会議におきまして、平林計画課長がまず会議招集趣旨を述べまして、現在、価格引き上げの幅及び時期についてはきまっていないと、この際、自分として申し上げたいのは、最大の問題は、これが実施になりましたときの混乱の防止である、これは関係省庁からも強い要望があるので、この際これを、周知徹底を下部にもはかられたいという、それをきょうみなに願うのが招集趣旨であると、趣旨を述べまして、その後、積極的に、いま申し上げました売り惜しみ傾向の懸念があるので、凍結解除を見越した売り惜しみは厳に慎しむこと。特に流通段階での指導を強化せられたい。それからもう一つは、これも先ほど申し上げましたように、末端の小売り段階で一時的に相当の混乱が予想されるので、解除措置が発表になっても、直ちにそれは価格引き上げを正当化するものではないと。流通段階はそれ相応に在庫状況等もにらんで、できるだけ値上げの時期、幅をずらすように特約店指導すべきである。これこそが大事なことであるということでございます。  それからあわせまして、現在非常に石油業界には強い世間の批判が集まっておる、こういう段階であり、かつ、先ほども言いましたように、原油が当初の想定よりも少なくなってきておる。こういうことが、近く原油の輸入が発表になると思うが、そういうことを契機に、よけいに批判が強まる可能性があるので、くれぐれもいま申し上げたようなことを厳重にやってもらいたい。なお、この際、世論等の重要なる国民生活上の要請も配慮して、家庭用灯油、LPGの標準価格は当面据え置く方針である。なお、ガソリン、軽油、A重油につきましても、政策的配慮から指導上限価格設定を考慮しておる。この辺が非常に数も多いので便乗値上げが起こる可能性があるので、それを起こらないように強く指導せられたいということを申し述べたわけでございます。  なお、さらに詳細につきましては、これを後刻、より詳細に事実関係につきましては調べまして、御報告申し上げたいと存ずる次第でございます。
  86. 上田哲

    上田哲君 具体的な事実関係について、私はもっといろいろ伺いたいわけですが、政府委員の手持ちの理解の中では十分でないようですから、時間の引き延ばしの意味はありません。後刻報告するとおっしゃいますから、私はその後刻を待ちたいと思います。  ただ、ここで、そういう意味では一区切りして申し上げておきたいわけでありますけれども、数字を明確にした協議があったという疑いはなお強い。かりに特定の数字について合意に至るという経過がないとしても、きのうの会議は、値上げ価格の取り扱いについて業界内の意思統一をはかろうとしたものであるということは、動かしがたいと私は信ぜざるを得ません。価格協定カルテルの疑いは十分だと考えるべき状況はあると思います。  そこで、少なくとも今度の会議が、公取委が、政府のようなやり方でやったら、値上げをやったら独禁法違反の疑いがあると指摘した中で行なわれていた。通産省は、一方で値上げ指導価格をきめると言いながら、きのうの会議では、たとえば指導価格は一本だけれども必ずしも一律というわけではないとか、あるいは今度の処置は凍結除であって、すぐ上げるというわけではないとか、各社価格を届け出制のような形でチェックするとかいう形で、いかにもその歩調をそろえた値上げではないかというていさいをとろうとしている。これは公取委の指摘を免れる擬装工作——こういうことばを使うのは、あまり使いたくないことばですけれども、そういう擬装工作と見るべき作為の中で行政指導による値上げ、つり上げを貫こうとしたやり方だいうふうに言えるんじゃないか。私は、きのうの会議というのは、いまのような状況の説明では、企業との癒着の中で独禁法の制約を免れようとした談合というのが、この会議のほんとうの目的であったんではないかというふうに断定せざるを得ません。  そこで、きのう以来総理お話をしているわけですけれども、国民の理解を前提にすると、国会の審議を十分に前提にして、そうでなければ——ということを言っておられた。そこで、これまでのこうした疑念、私どもの持つ疑念、十分に解かれていないことは言うまでもないわけであります。そういう意味では、これはもう国民大多数の納得をとうてい得られるはずはないと思います。  また、二番目には、値上げの内容に触れて、通産省行政指導の名のもとに価格協定の談合をする。しかもこれが、あたかも価格協定の談合でないような擬装工作と見られるような節々があるということは、非常に私は不明朗だと思うんです。率直に言って、私は、昨日総理が、あるいはけさもです、まだきまるところまで来てないとか、あるいはこういう考えでやっているんだというところは隠して発言をされているとは思いません。しかし、国会で総理がああいう話をされているということは、社会的にはたいへんな情報になるわけですけれども、それを国会の国民の場で懸命に議論をしているその裏側で、実務担当者が業界と、総理報告をしてない話を向こうでやっておるというやり方は、私は非常に不明朗であると思うんです。こういう成り行きについて、総理の御見解をまとめて伺っておきたいと思います。
  87. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、平林君が出席をした業者との会合というものが、政府の意図に出たことは理解がいただけたと思います。また、この内容その他に対してはまだ御納得がいっておられないようでございますから、できる限り詳細に御報告をするという、いま政府側の意思を明らかにいたしましたから、本件に関しては御理解を得たものと考えます。  まあ、原則論でございますが、この問題は、行政権と私的独占禁止法との問題がからんで御議論が行なわれておるわけでございますが、間々申し上げておりますとおり、独占禁止法というのは、私が申し上げるまでもなく私的独占禁止法でございます。でございますので、この独占禁止法から除外をされておるものは、国家公務員法とか共済組合法とか、いろいろなものは当然除外をされております。でございますから、行政権がこれに含まれないということは、これは当然でございます。私的独占禁止に関する法律でございますから、行政権がこれに入るなどと考える余地は全くないわけでございます。でございますので、独占禁止法によるカルテル行為が行なわれる中で、行なわれたと想定される案件の中で、政府関係者が参加しておったというような場合、通産省も共同正犯でないかというような記事がございましたが、これはもう行政権行使の過程において私的独占法の中に対象として政府が含まれるということは全くない、入る余地がないということは事実でございます。これは、入るとすれば、その個人が、私人が公務員法に問われるような行為をしてやった場合にのみこれは法律の適用を受けるわけでございます。公務員法によって先般も受けた外務省の問題がございますが、公務員法を適用されたと回しようなケースの場合以外に、行政権の行使によって通産省政府が私的独占禁止法の対象になるということでないことは、適用除外の条文を示すまでもなく明らかなことでございます。でございますから、ここらが非常に明確にしておく必要がある問題でございまして、この行政権の行使というのは、国民生活を安定をし、正常な国民生活を守るための行政権の行使であるということでございます。でありますので、いま、かかる時期において、政府当局が行政指導の必要性ありとしても、業者に対して、時期を誤っておるんじゃないかという御指摘がございます。まあしかし、それなりの理由があって招集をしたことは通産大臣から述べたとおりでございます。まあ当否の問題、いろいろ御指摘をされるような角度からの見方も存在いたしますが、政府はまた、政府が行なわなきゃならない行政権行使によって当然起こり得る波動に対して目張りをしなければならないことも行政権の行使の範囲であることは当然でございます。そういう意味で、政府は時宜にかなう行政権の行使を行なっておるつもりでございます。  で、今度の問題、まあすなおにひとつ御理解をいただきたいのは、これは私的独占禁止法の入る余地のない問題でございます、この石油価格決定においてはですな。これは行政権において、決定者は行政権である。その行政が、業者の意向を反映して、これの意を迎えて行政権が行使をされたというようなことになると、それは問題が起きますが、そうではなく、この石油価格決定は、ずっと経緯を申し述べておりますとおり、現在、正々堂々と積み重ねてきたものを事務当局の手から離して関係四省の会議に上げておるわけであります。閣議報告をしておって、決定権は閣議にあるわけでございます。そういう状態でございまして、まあ憶測をして、政府がどのように決定するのだろうと、われわれのその経理がどうなるだろうということは、これは自由の原則においていろいろな会社が自分でもって予測をし、計算をし、予想することは、これはもう認められることでございますし、これは当然の行為でございます。ですから、よしんば現段階において、業者が会合したにしても、私は私的独占禁止法の対象になるようなものでもない。これは何も政府決定をする決定権に拘束力を持たない行為でございますから。——これはそうじゃなく、私的独占禁止法のほうは、明確に書いてございますように、不公正な取引、みずからの利益を守るためにカルテルを行なった結果、国民に不利益を与えておるという価格決定した、こういう場合に法律が適用されるわけでございまして、全く決定権のない——私たちが、判決がどうなるだろうと、こう思って見ておっても、判決に対していろいろな会議をやってみても、裁判官の行なう判決に対しては影響を与えないでありますから、そういう意味で、本件に対してはカルテル行為というようなものは存在しない、こういう私は考え方を持っておるわけです。ですから、政府決定をする以前において、いかなることを行なっても、政府に影響は与えられない。政府は独自の見解において行政権の行使を行なう、こういうことでございますので、そういうところはひとつ区別をして御理解——もうもちろん御理解いただいておると思いますが、御理解いただきたいと思います。  それからまだ残っておる問題は、私と高橋公取委員長との問題が少し残っております。これはまあ調整は、私は私的独占禁止法を曲げてもらって行政権の行使をやろうなんて考えておりません。これはもう行政権でもって当然認められる行為として——という感じでございますが、国会において議論をされておる問題でございますので、公取委員長の公的な見解も十分承知をしたいという考えでございますし、政府の主管者としても、法制局長官を入れて私の意見を述べたいということでございます。  それは、行政権で価格決定できるのかという問題一つだけ指摘をされております。それは価格問題に対しても法律による拘束力は持ちませんが、相手がこれを承諾してくれるかくれないかにかかわらず、政府が独自の見解において行政指導価格の面においても行なうことは当然できる。それは両院においても、日々のマスコミが、なぜ政府価格を押えないんだと、毎日そういうのが国民の声であります。これはもう当然であります。そういう意味で、政府がもっと早く業界を押え実態を把握して適切な行政権の行使を行なえば、去年十二月こんなに物価は上がらなかったじゃないかということは毎日指摘をされておるのでございますから、これは、政府行政指導の中に、強制力は持たなくとも、価格に対する行政権の行使は当然入るということは言えるわけです。価格とは何ぞや。下げることだけが価格であって、上げることが価格でないということはないんです。価格に対しての行政権がある限り、上げることも下げることもこれは当然ある。それは学問的な問題だと思う。私もそう思っております。ただ、現実的、今度の石油価格は現在の価格よりも上がるけれども、実際は業者が考えておるものよりもはるかに引き下げる、低い価格に押える。言うなれば、政府行政指導をしなければ一万二千円も一万三千円も上がるであろう価格をそれ以下に押えよう。四分の三バルクラインについてもあなたがきのう指摘をされましたが、それでも四分の一は赤字になるということでございますし、平均値をとれば二分の一は赤字になる。これはもう経済原則、自由公正な濶達な経済からいうと、需給のバランスの上に構成される価格というものに行政権が介入することによって押える、それはある意味でどうも越権行為じゃないかという議論もございます。だから、法律によらなければいかぬ。高橋君が言っているのは、そういう国民の権利を制約することだから、行政権を拡大解釈すべきではなく、国民生活安定法によって法律で規制すべきである、こう言っておるんですが、まだ未確定要素が非常に多いので、行政指導で相手が引き受けてくれるという誠意をもって政府行政指導を行なう。行政指導によって、より低い価格で業界を指導して、のんでもらおう。一万二千円も三千円も上げられちゃかなわぬから、のんでもらおう。誠意を尽くしてのんでもらおう。そのかわり、のんでもらおうというには、それなりにあります。とにかく政府だっていろんな問題を世話もしておるんだし、政府の資金も貸したこともあるんだから、これはがまんしてもらいたい。こういうことは、それはそういう国民生活優先の立場で行政権が行使をされておるということでございまして、私は、今度の石油価格が協定によって守られない、政府指導価格が何千円できめられても守られないで、しかも、その過程においてカルテル行為があった場合にはこの業界は私的独占禁止法において処罰の対象になる。これは当然のことでございますが、そうではなく、政府が言った価格をそのまま業界が守ってくれた場合、これはもう私的独占禁止法の働く余地は全くない。政府自体が行政指導でやったということに対して、ありません。これはどこまで行っても。学説的にはありますよ、ある学者は、そう解釈すべきでないと。私にも、立法府の議員として二十何年間もやってきたんですから、学者と同じぐらいの学説を立てられるという自信はありますよ。だって、なぜ独占禁止法という法律があるのか。この法律の成立の経緯を見ても、明らかに行政権などとはおよそ縁のない話である。これは不公正な取引を押える。新憲法を土台にしても、社会的な、国民に不利益をもたらすような、業界を独占支配するようなことを禁ずる。いわゆる財閥解体、経済力集中排除法と同一の路線で私的独占禁止法がつくられたものであるということを考え、しかも、この法律ができるときに、三権思想ではなく四権思想だと、さんざん議論がされた中につくられた法律であるということを考えて、そのまま条文が残っておるという事態を前提にして考えても、憲法でいう三権の一つである行政権がこの範疇に入るなどとは考えておらない。  ですから、そういうことをひとつ十分御理解をいただいた上に、私たちも行政府はそれなりに何でもやっていいと思っていません。どういう場合においても、いわゆる解釈が異なっても、そういう解釈があると、有力な解釈があるとしたなら、特に公取委員長はそう言っておるんですから、ですから、同じ行政機関の中におる者でありながら、いわゆる私的独占禁止法の番人としての彼は良心に従ってみずからの考え方を述べているわけですから、私はそういう意味で、こういうものは可能な限りその発言の存在を十分理解をし、そしてお互いが意思の疎通をはかって、これだけの大事業を行なうわけでございますし、まだまだこれから起こり得る事態に対しては何でもやらなければいかぬと、そういう考えでございますので、意見は十分ひとつ徴してまいりたい、こういうことでございます。  ですから、最後に残るのは、政治的にどうかということでございますが、行政権の行使ということにおいては、私はあなたが指摘をされることわかりますよ、あなたのお立場でね。石油問題がいまきまるかきまらぬというときに、業界を集めて要請しなければならない行政指導の必要性があっても、一日や二日待てばよかったじゃないかという、あなたの立場における御指摘もよく理解します。理解しますが、通産省には通産省の、この混乱した中でも目張りをしなければならないんだと、末端価格を押えなければいかぬのだという行政指導の必要性ということを痛感したということも、ひとつ理解いただきたいと思うんです。  ですから、これからは、あなたは、李下に冠を正すな、瓜田の履、李下の冠と、こういうことでございますが、あなたのお立場でそういうふうな御理解でございますが、行政当局からいいますと、何もかにもみんなしなければならない立場にありますので、瓜田に履を納れ李下に冠を正したということではないと思っております。思ってはおりますが、政府にも、国民生活を守るために、物価抑制のために行政権を行なわなければならない重大な責任があるんだと、こういう立場もひとつ御理解をいただきたい。  あとに残るのは、あなたがいままでずっと御指摘になられた会議の内容——すなおに申し上げます。これはもうすなおに申し上げまして、これは業界との癒着とか業界に内報するとか、そういう意図に出るものでは全くないということだけはひとつ十分御理解いただきたい、こう思います。
  88. 上田哲

    上田哲君 一応区切りにしたいと思うんです。  石油問題というのは国民注視の問題でありますから、これはもう高い物価の波がまた襲ってくるんではないかという不安の問題ですから、これは全体として政治がこたえなければならないときなんですから、私はここでいわゆる暴露討論なんかで時間を費やそうとは思っておらぬのです。そういう立場で、先ほど来の御発言を今後の具体的な点検をしていくお約束として受け取って、一応のここで中締めしておきたいと思うんですが、総理の御発言なり政府の姿勢というものは、私は、まあたとえば低く押えるということで実質的な免責をお考えになっているような気がする。そしてまた公取に対しては非常に行政権ということで強く出ておられるようだが、やはり法的な免責ということも話し合いということの中で考えておられるように感じられるんです。だから、そこのところは見る気はありますよ。見る気はありますが、しかし、昨日行なわれた形は、これはやっぱりどうしても私はカルテルだと言わざるを得ない。談合があった、しかも、それに対する擬装工作だと言っておかしくないという気がするわけでありますから、これは徹底的に明らかにしなければならぬということを強く申し上げておかなければなりません。  それから……
  89. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 非常に重要な発言でございますから、一点明確にしておきますと、これは行政指導の必要性があってやったことであるということだけは御理解をいただきたい。  ただ、時と場所が早まっておったということが一点御指摘ございますが、時が悪かったじゃないかということでございますが、しかし、それはどうしてもやらなければならない、目張りをしなければならぬという行政の責任上から考えれば、それは判断の問題でございますが、場所は堂々と通産省会議室に招致をすべきだ。これは過去にこういう例が各省ともあると思います。これはもうこういうものは正します。行政権の行使を適当に——こっちがとにかく向こうに頼むんだから向こうへ行ったほうがいいだろう、そんなことありません。これは国民の名において必要なものは招致すべきであります。これは国会から出かけていくときもあっても、それは正式なときにはちゃんと国会へ招致するということであって、こういう姿勢にはやっぱり正さなければならぬことは御指摘でよく理解します。  ただ最後に一点、これは擬装工作であり、事実上カルテルだということはひとつこれはごかんべんいただきたい。なぜならば、カルテルの余地がないということをるる申し述べたわけです。決定するのは閣議であります。業者がいかなる運動があっても、これに左右されて幾ばくかでも調整するという気はごうまつもありません。これは裁判官と同じ立場であって、行政権の行使に、聞くか聞かぬかこれは別です。聞かなかったら、高橋君の言うように、国民生活安定法によって指定しようと、こうかけているんですから。これはもう異議があればやろうということであって、全く行政権行使は一方的である。私はだから、業界が聞くであろうと、こう述べておったわけですが、あなたにどうも擬装工作だと言われては、こういう余地を行政権の行使に残しておっちゃかなわぬので、これは業界のどんな圧力にも屈するつもりはありません。これは一方的に、判決と同じように、法律の処置と同じように、いままで聞くであろうと言ったら聞かせるつもりなんです。ですから、影響を受けない。カルテルをやる余地が全くない。これは法律的に政府が持っている固有の権限の行使において実効をあげよう、こういうことでありますので、これは通産省がそういう会議を開いたことは全く通産省の一つの目的を持った行政指導の一つである、こう理解を特にいただきたいのであります。
  90. 上田哲

    上田哲君 そこで、私は具体的に御提案をしておきたい。総理とは基本的なところで見解が違うわけですから、そこで、公取委員長に、この事態を明確にするために独禁法四十五条に基づいて調査をお願いをいたしたいと思うんであります。
  91. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) この問題、たいへんデリケートな段階におります。私、ただ、いま、その前に申し上げたいのは、総理のせっかくの御発言に対して私が申し上げるのははなはだ心苦しいんですけれども、これは同じ政府じゃないかと言われればそれまでですけれども、「不公正な取引方法」と「不当な取引制限」とは違うんです。これは目的のところにもございますが、定義がはっきりございまして、不公正な方法を用いてやればカルテルである、そうでなければカルテルでないとい定義はないんです。要するに、競争を自主的に一定の分野において制限すれば、それはカルテルである。これは一貫したことでございます。ですから、この価格がだれによって設定されるのかという問題、行政指導では設定されません。これは幾らあれでも、実質的には国民を——国民といいますか、そういう業界をしばる、しばりつける効果はあると思います。ですから、私は行政指導政府がやる権限がないなどとは言ってないんです。やっても、それは個別にやるのが常識であって、そうして相手がそれを受諾すればよし、しからざるときは守らなくてもよしと、こういうものです。絶対に守らせるということをやりますと、私は、私の見解をもってすれば、憲法を二十九条に触れるんじゃないか。法律になければその財産権の内容を公共の福祉に適合するように定めることはできないと書いてあるんですから、それは行政権の発動によって、法律でなくてもいいんだという見解をとられることにはだいぶ無理があるんじゃないかと思います。あえてこの点は、法律論でございますから、はっきり申し上げておかなきゃいかぬ、誤解のないように。  この問題につきまして、実は公開の場ですでに御指摘になっちゃったわけです。また、実は価格が設定されておりません。これは政府がおそらく指導した結果、業界がそれを受ける。おそらくそれは受けるでしょう。受けること自体がカルテルだと、こう言っておるわけです。要するに、個々別々に応じた場合、これはだから私は、前々から、そういうことは事実上ないのではないか、結局、業界に同じ価格を守らせるためには、押しつけるといいますか、そのためには、もうなべて団体にしてやるんじゃないかと、横断的なものがあって、で、業者間もしたがってそこで受諾しましょうと、こう目くばせをする、もう黙示で足りると。これが判例でございます。黙示で足りるのですから、お互いに発言を要しない。だれかがいかがですかと、こう言ったら、あとは何とも言わない。これで十分であると、こうなっているんです。それがカルテルというものでございますから、その辺は十分御注意願いたいということを申し上げている。そういうことでございますので、私はたいへんこれは、いませっかくやろうとしておる目的そのものについては、それはけっこうだと思います。ほっておけば高くなるものを押える。しかし、それはすべての場合にそうでございまして、標準価格といっても、私は標準価格というものを——これはかってに言わしてもらいますが、標準価格を定めたら半年、一年は絶対に置かにゃならぬというふうには思いません。また、皆さんにも私はそういうことは御理解いただいて、原油の価格が上がってくれば、それはもう業界の企業努力で吸収できない場合があるわけです。あるいは下がった場合は下げるべきであります。そういう変動、あるいは為替相場の変動というのはちょいちょいあるわけです。円が強くなったり弱くなったりすることは、当然それはもう予測しがたいことで、あるわけですから、これはもうやむを得なければ二月か三月で改定することもあり得ると、それでも私はいいのではないかと思うんです。そうすれば、いろいろ陰で問題がありましても、これはでき上がった結果は法律による価格でありますから、法律によって設定された価格カルテルにはなりません。中間の段階に多少おかしな点がございましても、これは目をつぶるほかないと、そういう、構成要件がそうなっておりますから、この点は十分お考えの上でやっていただきたい。間に合わないという場合に、私は緊急避難的に行政指導でおやりになること、これはまあやむを得ないと言っておるわけでございますから、できるだけ法律によるんだと、よらなければまた強制もできないし、法律として不適当ではないかというふうな感じがいたしますので。  四十六条による問題は、いま直ちに私は——強制立ち入りでございますが、立ち入りしても物的証拠はないと思います、これは話をしたというだけでございますから。で、まあ呼んで調査いたします。すでにゆうべからごく一部の人には来ていただいて、あるいは電話で聞いております。その内容として、具体的な数字には触れなかったと、こういうことを口をそろえて言っております。ただ、業界の供述というものは、われわれかつてもう徹底的な黙秘権に会っていますから、そういう点で必ず真実を語っているとは思いませんけれども、しかし、証拠がなければこれは何ともしょうがないことでございますが、そういう事情で四十六条とか、これは立件行為を要するのですが、それは事件として私のほうが決定しなきゃだめです。そうしないと四十六条は働かないわけでございます。まだ事前の行為でありまして、その点は……
  92. 上田哲

    上田哲君 四十五条。
  93. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 四十六条でございますね。四十条と四十六条でございます。四十条による調査はできます。これは四十条によってやっていきたいと思います。
  94. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一言だけ——これは国会における記録に残っておりますから、一言だけ政府側の見解を申し述べておきますが、いまの指導価格といえども、これ、強制力があれば、強制をすれば——私の発言の中にもまぎらわしいことばがあったようですから、その段をとって高橋委員長がいま述べたわけでございますが、強制力ありとすれば憲法二十九条の私有財産権を侵すことにもなりかねないと、こういうことでありますから、このくだりに対して政府の見解を述べておきますが、これは行政指導価格はあくまでも法律的に強制力は持たないということは、もう先ほどからるる述べておるとおりであります。それから、強制力を持たせるならば法律の規定に基づいて標準価格と指定する道があるわけでございますからそういう、いまの発言の中にあった行政指導で行なうものはあくまでも行政指導でございまして、法律的強制力を持たないということだけは明確にしておきますから、憲法背反論は出てこないということだけ明確にしておきたいと思います。  もう一言は、しかし、それは強制力を持たないと言っておりながら現実的には強制力を持つんだと、こういうことでございますが、それは、これはいろんな考え方やそういう議論の起こり得ることは承知をいたしておりますが、これはもう行政権行使に関する範囲の問題でございますから、これ、違法性があるかどうかという問題に局限してお答えをしますと、あくまでも相手の自由意思によるものである、自由意思によっておるものであるので、これは行政権行使の価格は法律に基づく標準価格とは異なるものであって、強制力は持たない、だから違法問題は起こらないということだけは明確にしておきたいと思います。
  95. 上田哲

    上田哲君 簡単に。ぼくは、二つの目の提案ですがね、先ほど来総理が言われているので、具体的な実態については御報告があると。そこで、私のほうは、その会議出席をしたメンバーの名前は後ほど申し上げたいと思うんですけれども、証人としてお呼びいただくように委員長にお願いをしたい。これが二点目です。
  96. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまの第二点、証人の問題等につきましては、これは理事会において御協議の上で御決定を願います。委員長においてにわかにこれを決定するわけにはいたしかねる、理事会において御協議を願う、かように取り扱いたいと思います。
  97. 上田哲

    上田哲君 もう一つ、第三の提案ですが、公取委員長は自主的に必要あれば調査をされるというふうに理解してよろしいんでしょうか、その場でけっこうですけれども。その場で、もう。
  98. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 四十条による調査を行ないます。
  99. 上田哲

    上田哲君 そうなりますと、総理、非常に重要な問題でありますから、公正取引委員会結論を出していただくまで、この政府の判断による値上げ決定というのを待つということは妥当な判断ではありませんか。
  100. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) せっかくの御提言でございますが、政府はより大きな行政任務を持っておるわけでございまして、諸般の事情を勘案の上、行政権の行使は適切に行なわなければならないということを御理解いただきたい。
  101. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      —————・—————    午後一時六分開会
  102. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、上田君の質疑を続行いたします。
  103. 小野明

    ○小野明君 上田君に関連をしてお尋ねをいたしたいと思います。  私は昨日、上田君の質問が終わります際に、経団連の四階でやられております会議、これに対する独禁法違反ではないかという疑いが投げかけられたわけであります。したがいまして、この会議の内容を、課長はどういう役割りを果たしておるのか、その発言内容等も正確に調査をした上で、そうして今朝の予算委員会報告をしてもらいたいと、こういう要望をいたしておったわけであります。それにつきまして、けさ来、長官あるいは通産大臣からるる述べられておりますが、さらに新しい疑惑というものが広がってまいりました。特にまた、私がたいへん不満に思いますのは、長官にせよ、通産大臣にせよ、きのうの会議の内容、その事実を把握していなかった。きわめてこれは私は不満に思うところであります。特に、こういう疑惑が持たれたという会議でありますから、責任者であります通産大臣、明確に当委員会に報告をする責務があると思うのであります。その辺に対して、何ら誠実に私の要求に対して大臣長官も答えていない。これが第一の不満であります。  次に総理からいろいろ行政指導の問題について述べられました。で、この点は、現在総理が一生懸命に、行政指導と、行政権の発動という面でおやりになっておるお気持ちは私も理解をいたすわけでございます。しかしながら、その内容について、行政指導という根拠、いわゆる設置法の三条二号でございますか、それによりましても、総理の御発言によりますと、実質的に価格をきめると、実質的に価格をきめるんだと、こういう御発言があったわけでありますが、この点については、若干補足がございましたが、大きな疑義があるわけであります。で、さらに、公正取引委員会というのは、総理が所轄をされておる委員会であります。それに対しまして、行政指導総理の言われる行政指導というものが、ワクを越えて公取がいろいろ文句を言う筋合いはない、いわば私的独占禁止法——独禁法の容喙するものは、私のやっておる行政指導には何ら入る筋はないんだと、全く総理がこの独禁法並びに公取を押えつけられてしまっておる感じを受けるわけであります。そこで私は、行政指導といえども、独占禁止法という法律がきめてある事項を逸脱するわけにはいかないと思う。そこで、高橋さんがささやかな抵抗を試みられておる。骨抜きになったといえども独禁法は生きておるんだという、それこそまあ一生懸命の、百点とは言いませんけれども、おやりになっておる。それをも総理が抑圧してしまう。こうなりますと、いわゆる自由経済の基本であるこの独禁法の存立をする立場をも否定してしまうのではないか、こういう重大な疑点を私は生じておると思うものでございます。総理権限で、あるいは行政権の発動で、こういう抑圧的なことはいかない。やっぱり行政指導であっても、独占禁止法にきめてある法律には従っていかなければならないんだと、これは設置法のその権限にも明記をしてございますが、こういった点で疑念を持ちますので、通産大臣並びに総理の御所見を承りたい。  以上であります。
  104. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昨日の会議の実情につきましては、担当課長を招致いたしまして、いろいろ詳細に取り調べて、きょうは御報告申し上げたつもりでございますけれども、なおまた、さらに正確に、詳細に取り調べを行ないまして、その結果をあらためて御報告申し上げたいと思います。
  105. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三権の一翼をになう行政権の行使にあたっては、憲法の定める条章を忠実に守っていかなければならないということは申すまでもありません。しかも、違法性のあることを行なうということは、ごうまつも許されるわけではありませんし、また妥当性のないこと、妥当性で問題のある行為も慎まなきゃならないということも当然のことでございます。私は、独禁法を骨抜きにしようなどという考えは全くありません。私自身は、独禁法も必要であると、大事にしなきゃならないというまじめな考えを持っております。また、政府の行政権行使にあたって、独禁法を含めた他の法律に背反をしたりしてはならないということを十分考えております。憲法の条章、また、その他内閣法、設置法等々、政府に課せられておる責務遂行のために行政権の発動が行なわれるわけでございますが、他の法令等と競合するような問題がある場合には、特に慎重な配慮をもって行政権の行使に当たらなければならないと、こう考えておりますことを明確にいたしておきます。
  106. 上田哲

    上田哲君 この問題は、公取の積極的な御活動を見守りながら先へ進むこととしまして、少しく問題を広げていきたいと思います。  この問題を取り上げたこと自体も、私は、基本的に今日の激しいインフレに悩む国民生活の不安から、今日の激しいカルテルマインド、あるいは許しがたい官財癒着、あるいは政財癒着、この姿をこの問題に見たからであります。今日、国民の感覚でいえば、このインフレの実感は、何かわれわれが一生懸命働くこととは別に、一番奥で、ガスの元せんをひねるように、ほんの少ない人たちがぐっと握っている、そこから流れてくるものがない、とまりもするし、値段も上がる、こういう感覚だろうと思うんであります。そのインフレマインドの根底のところに問題を攻め寄せなければならない時点だと私は思うんですけれども、そこで私は、業界団体というのが、ここに大きく取り上げられなければならないときに来ていると思います。私は、そういう意味で、業界団体が、今日新しい社会的勢力というような、あるいは社会決定権という形でクローズアップされてきたというふうに認識をするんでありますけれども、公取委員長、いかがでしょうか。
  107. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 確かに私は、おっしゃるような問題について多分に疑念を感じます。大部分が任意団体でございます。要するに業界団体でございまして、一見表面は親睦をはかるという名目でございますけれども、実際にはいろいろ情報交換等を常々行なっておりますし、それが結局カルテルをある程度やりやすくしておるというふうな問題がありますので、そういうものをどういうふうに規制したらいいのか、私、いまなかなか思い当たらないんです、実際は任意団体でございますから。しかし、独禁法上、非常に事業者団体として不都合なことを働いたというものに対しては、すでに解散を命じたこともございます。また、自発的な解散を申し出てそれを承知したと、こういうふうな事例もございますが、しかし、その数からいえば微々たるものでございまして、地方的な小さなものまで入れますと、おそらく万を数えるほどあるんじゃないかと。こういうものをどうするかということは、少なくとも、そういうカルテルの温床にならないような、何かきびしい、といって法律上どういうふうに規定していいのかわかりませんが、何かほっとけないという感じは持っております。それが、実はカルテルの話し合いの場になっているとか、あるいはそのメンバーが非常に寄り合いを容易にしているというふうな点は争えません。いま直ちに名案は浮かびません。が、何か対策が要るのではないかという感じがいたします。
  108. 上田哲

    上田哲君 問題の石連をつぶさに調べてみますと、これは繰り返す必要がないと思うんで省きますけれども、非常にさまざまな企業、単独企業でない連合体としての機能を発揮しているようであります。これは石連のみでなく、他の企業にも同じようにあるというふうに理解してよろしいですね。
  109. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 私は、石連の構成を大体見ましたが、あれほど整っているのはそれほどないんじゃないかと思います。何とか委員会というふうなのがたくさん石連の中にございます。ですから、非常に整備され過ぎていまして——あれに近いといいますか、あれに類似したものは他にもあります。だけど、あれほど非常に多岐にわたっていろいろな分担をはっきりきめてやっているというのは、そう多くはないのじゃないかと思いますが、しかし、化学業界などは業種別にいろいろ分かれておりますから、これはやっぱりあります。商品別にいろいろな委員会がつくられているという事実はあるようでございます。
  110. 上田哲

    上田哲君 そこで、いまおっしゃった石油化学工業の場合がどうかというあたりをお尋ねしたいんですが。
  111. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 私、いま手元に詳しい資料ございません。そこで、私の記憶で申しますが、やはり石油化学業界にも同じような問題があると。いろいろな大ワクでございますけれども、しかし、一つの会社が非常にたくさんの製品を、石油化学というものはわりかしそういうものですから、石油化学でなしに、普通の化学工業でもいろんな製品がございますので、全く異種の製品、違った、異なったサイドの製品をつくっておると、社長さんがおそらく全部把握してないんじゃないかというふうな意見もございまして、だから、同じ会社が何回かカルテルを、独禁法違反を犯しているという事例が幾つか見られるわけでございまして、これはやっぱり同様の何か弊害といいますか、少し親睦団体にしてはそれを逸脱しているんじゃないかというふうな感じがいたします。
  112. 上田哲

    上田哲君 通産省から伺いたいんですが、石油化学工業の場合、石油化学工業協会、この実態がどういうふうになっているのか、どういうふうに御把握でありますか。
  113. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) 石油化学関係につきましては、非常にたくさんの業種がございますけれども、おもな団体といたしましては、任意法人でございますけれども、石油化学協会、それから塩化ビニールにつきましては、塩化ビニール工業協会というのがございます。なお、プラスチック関係全体の業界、たとえば原材料から始まって加工段階までも含めましたプラスチック工業連盟という団体もございます。
  114. 上田哲

    上田哲君 協調懇談会なんというのはどういうものですか。
  115. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) 協調懇談会と申しますのは官民協調の懇談会でございますが、通産省並びに業界、それに第三者委員を加えまして協調懇談会をつくっておりますが、これは長期にわたります需給の見通し並びに設備投資の調整等につきましていろいろ議論をいたしておるところでございます。
  116. 上田哲

    上田哲君 官民協調というのはいやな感じですね。業界代表、通産省代表、学識経験者、こういう構成でしょう。
  117. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) 通産省、業界並びに外部の学識経験者でございます。
  118. 上田哲

    上田哲君 こういうところに通産省が入っているという感じはどうですか。
  119. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) やはり石油化学製品というのは新規な産業だったわけでございますが、将来の需要見通し等につきましては、非常に多角的な検討をする必要があるわけでございます。同時に、先般来問題になっております石油、特にナフサを原料といたしまして製品をつくるわけでございますので、その石油事情等も非常に大きな見通しの上で影響を与えるわけでございますので、通産省としても、これは非常に重大な関心を持ってその需給見通しを考えなければいけないわけでございます。業界につきましてもそうでございますけれども、さらに、その正確を期するために、第三者の委員の御意見もお聞きして、できるだけ完全に近いものをつくり上げたいということで、先ほど申し上げましたような構成で運営しておるわけでございます。
  120. 上田哲

    上田哲君 できるだけ基本的なものをつくりたいというのは、何をつくりたいのですか。客観的とおっしゃったか。できるだけ客観的なものとおっしゃったんですね、何の客観的なものですか。
  121. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) 需給見通しでございます。
  122. 上田哲

    上田哲君 そういう基本的な点の情報交換、調整に当たっているわけですよ。これは文章、そうなっている。そういうものが協調懇談会の下に、石連と同じように各種委員会、小委員会というのがありますね、その構成を言ってください。
  123. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) エチレンを中心にいたしまして、そのほかに高圧ポリエチレン、中低圧ポリエチレン、それからポリプロピレンその他こまかい製品ごとの部会をつくっておるわけでございます。
  124. 上田哲

    上田哲君 だから、非常にここがあぶないわけですよ、まさにカルテルマインドになるわけですけれども。  懇話会というのがあるでしょう。
  125. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) ポリオレフィン懇話会という、これは全くの任意団体でございますけれども、こういうものがあることは承知いたしております。
  126. 上田哲

    上田哲君 懇話会というのは製品別にありますね。
  127. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) 懇話会といたしましては一本でございますけれども、その下に部会があるように聞いております。
  128. 上田哲

    上田哲君 懇話会なんというと、たいへん何でもないようで、いつでもお茶でも飲んでいるようなんですが、そうじゃない。これがまさにカルテルの温床になっていくわけですよ。事務当局に聞いてもしょうがないんでしょうけれどもね。  塩化ビニール工業協会の場合、これはどうなっていますか。
  129. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) 塩化ビニールにつきましては、ただいまの懇話会とは別でございますが、塩化ビニール工業協会という団体がございます。
  130. 上田哲

    上田哲君 この例をあげますのは、御存じのように、四十九年一月の公取委が摘発した中低圧エチレンとポリプロピレンのカルテルの例があるわけです。懇話会などという、何となしのお茶飲み友だちみたいな感じとは違って、完全にがんじがらめの構造ができ上がっておる。まさに、こういう業者団体、業界団体というものが新しい社会の決定権として登場していると、この点にしっかりメスを入れないと困ると思うんですけれども、通産大臣、どうでしょうか。
  131. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま、御指摘になりました懇話会等の中には、やみカルテルをやったということで調査を受け、ことしの三月、もうすでに解散をしたのもございまして、いわくつきのものも確かにございます。こういう点はわれわれ将来、大いに戒めまして、公正競争が行なわれるような素地をつくるということが必要であり、もし、そういう疑惑を受けるようなものがあれば、解散を指導していきたいと思います。
  132. 上田哲

    上田哲君 目下、そういうものはありませんか。
  133. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) ポリオレフィン懇話会につきましては、ただいま大臣からお答え申し上げましたとおりでございますけれども、ほかの団体につきまして、ああいうカルテルを行なっておる場になっておるというのは、私ども、いまのところはないと思っております。
  134. 上田哲

    上田哲君 通産大臣、これだけの憂慮すべき、危倶すべき要素をたくさん持っている業者団体、これはいま黙過できない力を持っているわけですけれども、この業者団体の大きな力というものが何に由来するか。私はこれを非常に強力な決定機構ですね、石連と同じようなああいう各種委員会、こういう決定機構、それぞれの個別企業をはるかに越えた決定機構というものと、もう一つ、天下り人事と、この二つの柱からなっていると思うんですが、いかがですか。
  135. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 天下り人事ということばは必ずしも適当でございませんが、通産省におった者がそれらの企業に就職しているということは事実でございます。しかし、そういう点に就職しているがゆえに公正取引を阻害するというようなことが故意に行なわれることは、私はないと思います。みんな会社へ入ったら、その会社のために一生懸命やる。これは日本人のそういう職務の概念からやるのだろうと思います。しかし、身はかつて通産省に職を奉じたという人間が通産省の監督を受けて仕事をするという場合に、これは人一倍戒心しなければならぬところでありまして、そういうような疑惑を受けることがないように今後とも注意していきたいと思います。
  136. 上田哲

    上田哲君 私が申し上げた考え方には同調されませんか。天下りということばはきらいでもいいですがね。
  137. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 疑われれば疑われる要素がなくはないでしょう。人間のことでございますから、古巣が恋しいとか、あるいは親しいとか、そういう人間的な脈絡がほかの人よりは強いわけでございます。しかし、官庁はやはり厳正に仕事を行なうように訓練もされており、われわれもそういう点は監督しておるところでございますし、一たん部外へ出れば、部外者としての慎しみもまた持っておると私は思います。旧官庁になれるというようなことはわれわれも許しません。そういう点において、疑われるという可能性はほかの人よりは多いわけでございますから、さらに自粛させようと思います。
  138. 上田哲

    上田哲君 一つ例を聞きましょう。問題の石連ですけれども、石連の中に前の通産幹部がどういう形で入っているか、把握されていると思いますけれども、御報告いただきたい。
  139. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) ちょっと手元に資料ございませんが、専務に森崎というのが行っておりますが、これは通産の先輩でございます。それから常務に、ちょっと名前忘れましたが、一人おります。それから先ほど出ました久米田さんは、理事でございますけれども、別途、世界石油会議の専務理事を兼務しております。これは石連理事でございます。以上、役員としては三名だと、私は思います。
  140. 上田哲

    上田哲君 うろ覚えでもちゃんと覚えていらっしゃる。たいしたものだと思うんですね。専務理事理事、まさに事務局のかなめは、元重工業局長はじめ全部元通産官僚、幹部が握っていると、こういう形が望ましいとお考えでしょうか。
  141. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 必ずしも望ましいとは思いません。今後は、そういう構成につきましては、大いに慎重にやっていきたいと思います。
  142. 上田哲

    上田哲君 石油化学工業会も専務理事が元通産省局長、総務部長も天下り官僚であります。ポリオレフィン懇話会の事務局長も通産官僚出身であられる。つまり、さっきからいろいろ出ておりますものの中には、一番大事なところに、つまり、元せんのところに抜きがたくそういう人たちが入っているわけであります。石油化学工業の一つである塩化ビニール工業協会、これも同じであります。やみカルテルを結んで公取の摘発を受けておりますけれども、全部こういうところに入っている。私は、やっぱり非常にここのところにカルテルマインド、非常に大きな社会的力となってきた業界団体の柱があると思うんですよ。これは通産当局としては、先ほど大臣お話しのように、強い関心を払っておられるということですけれども、どれぐらい全体として把握しておられるか、御報告をいただきたい。
  143. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それらの協会なり団体の役員になっておりますのは、私は、何というか、事務職の者で、管理事務をやっているのだろうと思います。そういう人たちがやみカルテルというようなものの媒体になるということは私は可能性は少ないのじゃないか。もし、やみカルテルができるという場合には、やはり企業企業の実力者が集まって、企業の横断的意思の連携で行なわれるので、そういうような懇話会というような任意団体の者がそれを指導してやると、いわんやそこでサラリーをもらって生活している人間が指導してやるという力はないでしょう。むしろ、力ある企業の実力者がそういう行為に走る危険性のほうが多いのではないかと、そういうふうに私は思います。しかしいずれにせよ、その場所に使われているということはありましたから、その点は大いに今後とも注意したいと思います。
  144. 上田哲

    上田哲君 私は言い方を変えましょう。カルテルマインドの奥に、私は官財癒着ということがあるということを言いたいわけです。そういう意味で、官財癒着は政財癒着にならざるを得ないわけですけれども、あまりにも多い人たちが入っている形の中にこういう社会的な決定力が生まれているということをまず指摘しているわけです。これがカルテルに通じていく道だという論理を申し上げているわけで、ここは御納得にはならぬでしょう。だから共通の舞台を持つために、土俵を持つために私が申し上げたいのは、こういういま非常に大きな力を持ってきた業界団体の中枢部分に、通産省の元幹部がこれほどたくさんいるということは問題であろうということを御指摘申し上げている。
  145. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は今後大いに自粛させるようにいたしたいと、いま申し上げたとおりであります。
  146. 上田哲

    上田哲君 どれぐらい実態を把握していらっしゃるかということです。
  147. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま急に御質問をいただいたので、どの団体に何名いるか、まだよく存じませんが、もし御要望がございますれば、調査して後刻差し上げたいと思います。
  148. 上田哲

    上田哲君 私のほうで調べてみたんです。さっき公取委員長さん、万という数だと言われたけれども、とても私は万は調べきれなかった。万は調べきれなかったけれども、百四十三団体、二百十四人の通産省の出身者が——通産省だけですよ、入っているんです。これはたいへんな数だと私は思う。そしてここに十六ほど代表的な業界を出してみまして、全部役職をつけてみました。これはひとつ総理にも、通産大臣にも見ていただきたい。(資料を示す)ごらんになってひとつ感想をお聞きしたい。
  149. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは毎年毎年の国会審議の過程において衆参両院とも指摘をされることでございまして、一つには、こういうことが存在することによって違法行為が行なわれたりしてはならないということは、これはもう申すまでもないことでございます。ですから、そういう違法行為が行なわれた場合にどういうことになるかというと、とにかく純然たる民間人が同じ行為をやったことと、通産省の管理職にあったような諸君が同じ行為をやった場合は、その事情を知っておりながらやったということに対しては、科罰されるときにはきびしく取り締まられるわけでございます。そういう意味で、違法行為が行なわれないということに対しては十分な配慮もしなければならぬし、また、制度的にも、人事院の規則において、二年間関係の会社には入れないというような制限もあるわけでございますから、やはり十分な配慮をしなければならぬと思います。  もう一つ別な観点からでございますが、石油連盟とか、石油化学工業協会とか、こういうものはつくられるということは、これは世界的な趨勢でございまして、どこにでもできているわけです。それで業界の親睦団体というよりも、国際的な情報収集とか、一社ではできないということで、国際的な対外的な情報収集というような面で、みんなが会費を負担したり拠出をしながら協会をつくるというのは、これはもう全世界的な傾向でございます。どこにでもあることでございます。これは、石油は連盟としておりますし、ほかのものはみな協会となっておりますし、他には学会という名前をつくっているものもございます。このごろ、協会というのがどうもいろいろ問題視されるので、勉強することを主体にして、石油連盟というやつを石油工業学会と、こういうことにして、勉強することを主体にしてはどうかというような動きがあることも事実でございます。だから、そういうことで、これは世界的、各国において同業者の協同組合もございますように、協同組合をつくるほどの小さな企業ではないということで、とにかくこういう任意団体をつくってやっていると。これはそれなりのメリットもあるし、またこれを拒否すべきものでもない。ただ、それが指摘をされるような悪の温床になったり、違法行為が行なわれる場になったりということは、これはもう何らかの制限をするか、また運営に対しては何か考えなきゃいかぬという問題だと思うのです。  もう一つ、第三の問題は、これは結社の自由でございまして、これはもういかなるものでも結社の自由で何でもつくることができると、こういうことでございます。  第四の問題が一つあるわけです。これは、公務員制度との問題があるわけです。これは、私も大蔵省におるころとか、通産省におるころとか、また郵政省におりますときに指摘を受けました。郵政省というと、とにかく放送会社ができると、そこへみんな一人か二人ずつ行ったり、これは天下りじゃないかというので論争したこともございます。天下りとは思いませんと。これは新憲法からいうと天上りかもわかりませんと、こう言ったら、まあまあそういう議論もあるだろうと、主権は在君ではなく在民でございますから、言うなれば、国民のサーバントから国民の側に行くのですから、天上りだと、こういうことを申し述べて、これは苦しい答弁だったわけでございますが、ほんとうにそうなんです。通産大臣のときは、いまと同じ御議論を受けているわけです。大蔵省にいると、大蔵省の局長は、大体みんな金融団体とか、何らかのところへ行っておる。行かないということになると、政府関係機関を団り歩かなければいかぬ。みんなが著述業になるわけにもいかぬと。そうすると、結局どうするかというと、そこに、これはほんとうにまじめな問題として、公務員制度の根本的な制度上の問題もあると思うのです。これは終身的な、昔は四十代でもってもうすでに官営八幡製鉄所の所長にぽんと出て行ってしまったと、こういうような者もございます。大蔵省の次官から直ちに日銀の総裁へと。しかし、そういうものはだんだんと変わってきて、今日の段階においては、まあ民間に入るときには次官をやった経験者が企業の常務取締役から入っていく、局長は顧問から入っていって、何年かたってから取締役になり、常務になりやっておるということでは、相当是正をされておるわけです。ですから、四十歳ぐらい、四十二、三歳でもって次官、局長をやめた戦前から比べて、いまの次官、昭和十七年というと五十五歳になるわけです。ですから、それから二年か三年やってからというと、なかなか新しく就職する道がないと、こういうことで、結局どこかへ行くということになると、大蔵省は大蔵省の知っているところ、警察は警察の知っているところというような、そういうふうになってしまうわけで、これはほんとうにいうと、身分とか、それから給与の問題とか、制限をする場合にはやはりその裏でちゃんと公務員に対する保障がなければ、首は切ってしまった、どこへ行っちゃいかぬと、こういうことになると、これは憲法違反ということになるので、そこらはやはり制度上の問題として正面から取り組む必要がある。私は、ある意味においては、五十五歳ぐらいになってから出るよりも、六十歳、六十五歳まで官吏は置いたほうがよいというような、ほんとうにまじめにそういう議論もしながら考えておる。みんなが代議士に出るわけにもいきません。これはどうするわけにもいかないのです。ですから、そういう意味で、やっぱりまじめな問題として、ただ非難するだけではこの問題は解決しない問題である。ですから、やはり私はいま区分けをして申し上げたように、まあ、四段階、五段階の問題が具体的に存在しますから、そういう問題はやっぱり公務員制度の問題の中でも検討していかなければならぬ問題だろうと、こうほんとうに思うんです。この問題、私は長いこと、十五年間も追及を受けているわけです。十五、六年間受けているわけですから。ですから、そういう意味で、こういう三権の一翼をになっておる重要な仕事をしてきた公務員なるがゆえに、だいぶ非難——一つの事件が起こると非難の対象になるというようなことは、国民がやっぱり行政に対する一つの不信用を巻き起こすことでございますので、政府は制度上の問題も現実の問題も十分注意いたしてまいります。いたしてまいりますが、これらの問題はひとつ国民的課題としてやっぱり世論の盛り上がりということをひとつ十分期待しておるわけでございます。  いま御指摘になられたように、石連に行っているものの専務理事が、それは力ないものであっても、そこでもってやみカルテルが行なわれたというようなことは、これはもう一言もないところでございます。ですから、これは業界からといっても、私たちは業界に、どうぞひとつ、こういういい人がおるがとってくれないかと、私も総理大臣になってからそんなこと頼みませんが、幹事長などやっているときは、やっぱり頼まなければならぬわけです。そうすると一自分の会社にとらないで、官庁におった局長さんですから、これは協会か連盟かなんかのほうがいいですなと、そういう気持ちの中からも、こういうふうな陣がえ配置が行なわれるということでございますので、せっかくの御指摘でございますが、重要な問題でありますから、政治や行政に対する国民の信頼をつなぎ得るためにどうするかという問題でもありますので、これは政府もまじめに検討します。同時に、ひとつ国民の側としても、国民のために必要な機構の中で、人生を、とにかく一番いい人生を、ちゃんとつとめを果たしてきた官公吏の諸君が一体どうするのかということを制度上の問題としても十分考えていただきたい、これはお願いいたしておきます。
  150. 上田哲

    上田哲君 総理、いい話が出そうなんですよ。少し制度上も考えてみたいとおっしゃる。これは個別企業ですと、おっしゃるように、何といいますか、二年間というのがありますね。ところが、業者団体というのはそういかないわけです、その外にあるのです。これは考えなければいけない。十五年前からそうだとおっしゃるのだけれども、十五年前は高度成長じゃなかった。これはやっぱり高度成長の一つの落とし子ですよ、ここまで業者団体が大きい力になってきたというのは。これはやっぱり総理の責任の一つとして、二年という規制をここにもひとつ考えてみるということはどうですか。
  151. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いろいろな問題が起こってくると、そういうあなたのいま指摘されたような問題、当然考えなければならぬ問題なんです。これはただ制度上からみますと任意団体である。それで、カルテルをやる場を提供するというようなことは何も書いてないわけですから。現実問題が起こってくると、そういう問題が、なるほどここがもとだわいというような、まあ感じも受けるわけです。それで、業者というのは、大ものであってもなかなかそういう知恵がない。これはここにおる専務理事や常務理事が知恵を出して誘導したんだろうというような極論も出るわけです。ですから、二年間会社へ行けない場合に、まあ銀行局長をやった人は銀行の役員には二年間つけない、これは当然でございます。そうなっております。ただ、この制度そのものも非常に問題があるんじゃないかと思うのです。五十五歳になって二年間ゴルフばっかりやっているというような、そういう例の人いますよ、実際これ困るなあ、ほんとうに三十や二十だったらいいけれども、五十五歳から二年間も何もしないでゴルフだけやっているというわけにいかないんで、それは私は、二年間やるなら、やっぱり——いやそれはほんとうなんです。次官や局長をやった連中は全部二年ゴルフ場ばっかり行って——まあまあそうでもないでしょうけどね、私目につくんです、実際。「何だ君は」と言うと、「いや行けないんです、どこへも」と、こういう話です。そういうのはやっぱり不明朗である。どこかからきっと顧問料か何かもらうんだと思うんですよ。そういうものにもっと制度上メスを入れる必要がある。  だから、あなたのように、会社はいかぬのだからといって、それよりも現実的にはもっと力を持っておると思われる協会やそういう中間団体はもう行かぬようにしたほうがいいと、これは人事院規則や公務員法の改正問題ということになります。そういう、ますます押し込めるという面からも考えなきゃなりませんし、もう一つは、優秀な頭脳を持っている人ですし、経験も豊かな人たちなんです。これをどういうふうにして救済するのかという、そういう面もひとつ十分あわせて考えていかなきゃいかぬと、ここらがやっぱり行政府だけの問題ではなく、立法府にも御協力いただかなきゃならぬ問題だと、私はあなたの言うことをよく理解をしながらですな、痛くもない腹を探られるだけでも悪いじゃないかと、ほんとうに私はそう思いますよ、実際において。ですから、そういう意味で、この問題は非常にむずかしい問題でございますので、これはもう貴重な御意見として拝聴いたしておきまして、これは公務員制度全体の問題としてもまじめに検討してまいりたいと、こう思います。
  152. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。  いま立法府にも問題があるというようなおことばでしたが、これはこの国会ではたびたび天下りなり横すべりなりという問題は提言をされて、そのたびに政府は今後こういうことのないということを確約されておるわけです。確約されておりましても、いま御指摘のありましたとおりであります。問題は、総理がおっしゃるように、公務員の定年制なり、あるいは退職後の生活保障なり、こういう制度的な検討をしていただかなきゃならないのは当然でございますが、問題は、なぜ一体旧監督官庁にあった官僚を業界が受け入れるかと、好んで受け入れるかという問題です。二年間の猶予期間とかなんとかいいますけど、表向きはほとんどすぐ入る。相談役とか顧問とか、あるいは嘱託というようなことで入って、人事院規則のチェックしている時期が済めば、そのまま重役に入る。こういう形で、何回も問題が提起され、繰り返されておるわけです。しかし私は、今度のような、先ほど上田君の指摘のような問題がありまして、事実関係は明らかにはなっておりませんが、業界と通産省が談合したではないかという疑いを持たれるような事件があって、その中に介在するものが旧通産省のお役人であったとするならば、これは非常な問題だと思う。これが事実関係はあとで明らかになりますけど、こういうケースになりがちな条件には、至るところで会社側が要求して条件を成立さしておるわけです。直接な監督関係にあったものを喜んで、かつて監督された会社が受け入れをするということは、何が目的でこういう人事をするんでしょうか。あっせんとか、そこまでは疑いたくありませんけれども、何らかその官僚によって会社が大きな利益を得られるという前提があるから受け入れられるということを警戒しなくては、ほんとうの意味の通産行政というのは完全にはなりませんよ。総理が先ほど御指摘になりましたように、銀行関係あるいは金融関係、これには大蔵省がほとんど。それから、こういった業界には通産省がほとんど。こういうことが当然のごとくまかり通って、それは国民世論で解決すればいいんだろうということでは、私は行政府の責任は果たせないと思う。この点は何回もお約束をしてくれた代々の自民党の責任でもありますから、実行力のある総理で、行政権の発動をあえてするという総理ならば、ここらから当然できることですから、はっきりさしていただかなければ困ると思う。よろしくどうぞお願いします。
  153. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お気持ちよくわかるんです、私も。わかるんですが、行政府の管理職をやっておったからといって、これは全く差別待遇をすることは憲法上できません。しかも、これは自由なものに、全部やれといっても——これは私はそういうことをやったことがあるんです、大蔵省におりましたときにね。少なくとも十五年以上徴税の職務についた者は税理士はとにかく全部資格を与えなさいと、二十年以上の者は公認会計士を全部やりなさいと。公認会計士の非違事項をちゃんと指摘するだけの能力はあるんですから。そういうことでもしなけりゃとても公務員になり手もなくなっちゃうと。現実問題として。ですから、高級公務員の立候補の禁止という問題も長いことまあ出ているわけです。三選禁止の問題も出ていますが、憲法問題に抵触をして、一体公務員というのは管理職と一般の公務員と分けられるのかという問題もあります。そういうような問題がずっと戦後議論をされながら来て、なかなか問題が解決しないというのは、身分とか制度とかの問題がやっぱりあると思うんです。公務員というのは、これだけ大きなたくさんのものがおりまして、この管理職を全部、ここも行っちゃいかぬ、ここも行っちゃいかぬ、ここもと言ったら、それはもう優秀な人材を集めることはできなくなると思います。ですから、やはり私が先ほど申し上げたように、とにかく公務員というものの再就職という問題に対して国民の疑惑を招いたりすることは行政の上からも望ましいことではないと、そういう意味で、まあ差別的な取り扱いにならないかという議論があったんですが、最小限二年間は人事院の承認がなければ就職、再就職することはできない、こういうことにしたわけですから、これ以上五年にしょうものなら、五十五歳から六十まで休まんけりゃいかぬ、六十から六十五まで休まんけりゃいかぬ、そんな制限ができるわけありません。ですから、問題は、事件が起これば裁判所がちゃんと裁量しますよ。しろうとなら、これはまあ恕すべきところはある、しかし、その専門の官吏の職にあった者がかかる行為をやることは、これは許すことはできない、これはもう刑の最高刑を科すと、こういうことをやっているわけです。ですから、そういうところでちゃんと調整が行なわれておるわけでございまして、どうもいまの状態で、私は、いやもう何とかいたしますと、これは簡単に言うことはできますけれども、この官公吏という、これだけ多い人たち、これだけ優秀な人材であり、しかもこれを全部どこかへ当てはめる——私は、ある意味において、ほんとうから言うと、これまたおしかりを受けるかもしれませんけどね、いまのように実際は任意な団体であっても、それが一番力を持っていそうだと、そういうところを制限しまして、かえって企業の中に入るなら、これは労働組合もあるし、簡単には天下りのように力を発揮することはできませんよ。これは企業に入ることの制限はやめて、どうも協会とか、そういう政府との中間あっせん機関のような、そう見られそうなところ、そういうものを禁止するほうが、かえって合理的なのかなあと、これはほんとうに考えているんです、私もですな。そういうことに対しては、行政府だけの問題じゃなく、立法府で御議論いただくお立場においても、十分考えていただかなきゃいかぬと、官吏の中でもってこうして代議士になっておられる方もありますけれども、ごく少数なんです、これ。このもうほとんどすべてはどこかに就職しなきゃいかぬというのが現実である。現実を無視して行政や政治を行なうことはかたい、こういう問題もありまして、私もまあ歯切れの悪いようなことで恐縮ですが、これは国民的課題である。再就職しないでいいような制度をやっぱりつくってこないと、どうしても、これは根本的に解決はしない。遺憾ながら、私はほんとうに信ずるところを申し上げます。
  154. 加瀬完

    ○加瀬完君 一応わかるんですが、事実関係の御認識が少し薄いと思うんですよ。あなたがおっしゃるとおりなら、各官庁のお役人は退職して全部どこかへ就職できるはずなんです。警察庁とか自治省とかいったものは、ほとんど就職しておりませんよ。通産省なり——公団関係大蔵省ですが、業界に通産省だけがよけい就職するということに問題はないかと上田君は指摘をしているわけです。ですから、根本的には私どもも公務員の給与制度なり、退職後の生活に対する保障なりというものを考えなきゃならないということは当然です。だけれども、通産省だけが業界に受け入れられがちだというのは、一体これはどうだということは問題にして考えていただかなければ、こういう物価問題なんかが大きな国民世論になっているときには、これは特別に注意をすべきことではないかと、こういう点を申し上げているわけです。
  155. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そこらは言わずもがなのことでございますが、やっぱりあなたはあなたとしての、議員に出られて、過去の経験というものが非常に、私たちも謹聴するぐらいな御意見が出るわけです。経験者だからです。貴重な経験者であり、技能者であるということです。これはやっぱり通産官僚であった者は、これは技能者として直ちに社業にプラスをもたらす。プラスというのが、癒着というプラスじゃなく、専門家であり、技能者である、経験者である。これはまあそうです。ですから、前にも警察官が定年をやりますと、警察をあがったときにはどこかというと、交通会社へよく入ったのです、交通会社へ。取り締まりをしておった警察官が交通会社に入って取り締まりができるかと、こういう議論が過去にさんざんございました。ございましたが、やはり専門的な経験と技能を買われると。それはやっぱり人生もう終わりのようになって、残り三分の一というようなときになって、やっぱり採用をするというのには、きょうからすぐ使える者でなければ採用しないと、そうすれば経験者であると、これは当然そろばんの上でも出てくる問題でして、全然別な人を入れても、なかなか給与に見合うだけのメリットがあるかないかわからぬと、そういうものもございますので、そこらは人生のむずかしさだと思うんです。人間社会の複雑さであり、むずかしさだと思うんです。やっぱりこれ、無視して、一つの現象だけでもって官公吏を全部縛っちまう、それはとても、私はそんなことになると、ある水準の者は全部貴族院に送らなきゃいかぬというような昔の制度が思い出されるわけでございまして、なかなかそう簡単にいかないのです。ですから、公団や特殊会社もこんなのをつくっちゃいかぬと、民営に移すべきだという議論があるのですが、いまのような問題があって、なかなか戦後の機構改革が、制度改革ができないということもございますので、これは貴重な御意見として政府は頂門の一針として承ります。まじめに検討しますが、これは国民的世論の中で解決さるべき問題であって、何か行政官吏というのは、みんな悪いことをしているんだというような先入感を国民が持つようなことは避くべきであると、こう思います。
  156. 山崎昇

    ○山崎昇君 関連。
  157. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 一問、じゃ。
  158. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま総理から天下りの問題が出まして、私もまた公務員制度関係専門ですから、別な機会にこれはやりたいと思うから、きょうは一点だけ申し上げておきたいと思う。  この天下りというのは、私、ことばがあまり好きじゃありませんが、民間へ行く場合もある、国から自治体へ行く場合もある、その他の団体へ行く場合もある。それぞれニュアンスが多少違うと。ただ私は、やっぱりひとつ考えなきゃならぬと思うのは、日本のいまの政治でも、行政でも、経済でもそうですが、人事を通じて支配するという考え方が濃厚だということです。これがなければ何も意味がないわけです。それから、その次には、利害関係があまりにも明白だということ、その人を派遣をすれば、もらったほうは利益があるということ。第三は、顔で問題が処理をされるという体制にあるということ。たとえば、自治体でなぜ中央から人をもらうんだろうか、優秀な人もいますよ、優秀な人もいる。だが、一つの都道府県に部長が十人おって、半分以上も中央から来なきゃならぬという姿は何なんだろうか。それは言うならば、顔で問題が処理をされるということ、最後はメンツで問題が処理をされる。制度論もありますが、こういう側面を改めなければ、制度論だけでは片づく問題でないと私は思っています。そういう意味で、総理がせっかくいま重要な問題だから検討すると言われますから、きょうは関連ですからやりませんが、いずれにしても、そういう側面も十分ひとつ政府部内で検討されまして、この問題についてはきちんとしてもらいたいと思うんです。その意味で、あなた、いま十五年間もやってきて、やるやると言うけれども、さっぱり効果がないんで、ひとつもう一ぺん、あなたほんとうにやるのかどうか、いつごろまで政府部内で、どこでどうされるのか、そこらも含めてひとつ御答弁願いたい。
  159. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはもう国民の理解と支持を得ながら、十分なる検討を続けてまいりたいと、こう考えます。原則的にはどうかといったら、中央集権をできるだけやめることです。中央集権をやめること。それから行政府のかかわらないような自由経済が行なわれることでございます。——いや、これもそうなんです。原則的にはそうでないとこれはだめなんです、これは。一つでもまた社会秩序を守るために行政権の介入が必要であるというと行政の経験者が幅をきかすわけです。そうでなく、いい品物を安くつくって自由に公正な競争が行なわれるそういう社会制度が確立をすれば、大学を出て局長になろうが、次官になろうが、物を売れないような無能力者がどうにも高給をはめるわけはありません。これはもう原則的にはそうです。ですから、だいぶもう行政が民間の生活や社会生活の中にこうだんだん介入していかなきゃならないような過程においては、いまのような現象は起こるわけですから、ですから、私たちは、そういう意味でも自由経済がいいということを前提にしておるわけでございますので、まこと志とたごうて、こういう短い時間でも政府が行政介入しなきゃならない、公団をつくらなきゃならない、公社、特殊会社をつくらなきゃいかぬと、これは普通なら公団も公社も何にもなくて、もうほんとうに民間が自由濶達な経済体制がつくれるなら、私はもう民間にどんどんと行って何にもマイナスなんかないと思うんです。  ですから、まあしかし、それは言いやすくしてなかなかがたい現状でございますので、いま公社、公団をやめろといってもやめられません。特殊会社をやめろといってもやめられません。ですから、やっぱり制度の中で、二年休むなら、退職するときには最終に受けた給与をあと二年間だけやるとか、やっぱり五年にするなら、少なくともそういうところに行ってはならないとするなら、その間、受けた最終給与の七割を保障するから、月給は安くとも別の会社へ行ってくれとか、そうでなくて、とにかく何年——資格者でもまた同じ職務、主税にとにかく何年おった人は税理士になれるとか、そういうやっぱり資格上の問題も考えてやって、とにかく裁判官はたった一つ、弁護士は直ちに開業できると、こういっていますから裁判官は就職しないでいいわけです。ですから、そういうような意味で政府も検討いたします。まじめに検討いたしますが、これは国民的課題として、これはひとつどうですか、立法府と相対立する行政府だから、これはみんな敵なような感じでなく、これはもう善良な国民のサーバントでございますから、どうぞひとつそういう意味で御協力のほどをお願いいたします。
  160. 上田哲

    上田哲君 検討をするということなんですが、人事院、これは国家公務員法か何かをどうかしなければならぬですか、総理のような考え方はこのままで、運用でできますか。
  161. 中村博

    政府委員中村博君) お答えいたします。  ただいまの法の規制は、退職後二年間、営利企業でございます。したがいまして、任意団体であります。営利を目的としない任意団体の場合には規制外でございます。
  162. 上田哲

    上田哲君 質問は、趣旨が全然違うんですよ、違うんですよ。だから、総理が前向きに検討すると言われるなら、それは法を変えなきゃいけないのか、そうではなくて運用でできるかと聞いているんです。
  163. 中村博

    政府委員中村博君) その点は法改正を必要とすると考えます。
  164. 上田哲

    上田哲君 法改正をね。
  165. 中村博

    政府委員中村博君) はい。
  166. 上田哲

    上田哲君 ああ、そうですか。  通産大臣、さっきの表をお認めになりましょうが、御感想はどうですか。
  167. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 上田さんの御議論を拝聴しまして、私も同感の部分がございます。それはやはり六〇年代の日本の高度経済成長の過程に新しい産業がかなり出ていいりました。特に石油化学の部面はそうでございます。また新しくなくても、非常に膨張した部分がまた出てまいりました。そういうところにいろいろ協会ができてまいりまして、そして通産官僚がそこへ入っていったというケースが非常に出てきたので、やはり御指摘のように、高度経済成長の一つの副産物という要素は確かにあると思います。これはやはり経済成長を目的にして、主としてそういう目的があってできているのであって、そういう時代の所産である。いまや時代はまた変わりまして、質的な充実とか、あるいは社会に奉仕する企業であるとか、あるいは社会福祉優先という時代に変わりつつあるのでありますから、そういうような任意団体なり、あるいは社団法人なり、財団法人というものも、そういう方向に次第に性格が切りかわっていくべき時代であろう。それから大衆社会になりまして、消費者の監視も鋭くなり、それらの人々の立場も十分考えなきゃならぬという時代でありますから、企業自体が倫理性を持ち、社会性を持って変化していかなければならぬ。これは企業の社会対応性だろうと思うんです。そういう意味で、いままでありましたことは、ここでもう一回われわれ再検討してみまして、いままでの行き方でいいかどうか。これは通産官僚の身分の処遇にも関係することでありますから、みんなの問題、課題としてわれわれは受けとめていきたいと思います。ただ、ここで私が申し上げたいのは、やはり会社なり、あるいはそういう協会なんかに入って伸びていくという人は実力があるからですね。それで、会社へ入ったからといって、みんな取締役から専務になり、副社長になるというものじゃなくて、やはり激しい競争の中で、能力もあり、手腕もあり、人間もしっかりしているというのがやっぱり伸びていくんだろうと思うんです。だから、天下ったからすぐ取締役になって社長になれるというものじゃない。世の中はそんな甘いものじゃなくて、まあ役人の場合は、そういう軌動に乗るとすうっといくという形がありますが、しゃばはそうじゃないですね、これは。だから、そういう意味においては、それなりの苦労はしているんだというふうにあたたかい目で見ていただく必要がある。  それからああいう団体に入るというのは、第一はやっぱり調査とか、つまり高度経済成長によって新全総とか、あるいは新社会経済発展計画とか、そういう国家的な計画性を持った経済に即応するように一つの企業分野が伸びていかなければならぬ。そういう意味で、非常な学問性とか計画性が問われてくる。そういう意味で、ああいう任意団体に入ってくるという可能性も非常に多くなったのだろうと私は思います。それからもう一つは、国際性が出てきた。それで、通産官僚のようなものは優秀な人間が多いから手っとり早く使える。それからもう一つは、中立性を持っておる。一つの企業から出るとどうしてもはんぱになる。しかし役人ならば中立だろう。だから、だれも文句は言わないだろうというような安易なものもあって、そういうふうに次第次第に続出してきたんじゃないかと私は思います。しかし、冒頭申し上げましたように、これはやはりある意味においては高度経済成長時代の副産物であって、これは通産省全体としても、また行政制度全般としても、一つの方向を考えていかなきゃならぬ。そういうように反省して、検討してまいりたいと思います。
  168. 上田哲

    上田哲君 ちょっと近づいてきたんです。公取委員長、業界団体と通産天下りとの関係論について、この表ごらんになって、御意見ひとつ。
  169. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) この問題につきましては、公取委員長として、とやかく申すべき立場にないんじゃないかと思います。これはもう天下りがあろうとなかろうと、実はやみカルテル等を行なっているその舞台になっているものは、そういうところに通産官僚がおるおらぬとは関係なくて、あるいは農林官僚がおるおらぬとは関係なくて発生している。しかし、たまたま目ぼしいところにおられるということは私も認めます、それは事務局長等で。しかし、まあそれらだけがじゃあカルテルをやっているかというと、そうじゃないんで、ほかの団体でも行なわれておりますから、やっぱりそういった業界、団体全体が、何かこう、カルテルの舞台にならないようなことが考えられないかと、私は思います。
  170. 上田哲

    上田哲君 通産が目立ちますな。
  171. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) その点について私がとやかく批判を申し上げると、なかなか役人——私も実は役人上がりでございまして、公取委員長はおそらくどこにでもこれは天下りできませんわ。私のようなことをやっておりましたら、再就職はきわめて困難でございます。その辺はあきらめておりますが、(笑声)まあひとつそういう私どもの立場からとやかく申し上げることは適当でないと思います。ごかんべん願います。
  172. 上田哲

    上田哲君 まあ、御苦労さまと一言だけ申し上げておきますけれども、天下りでなくて、天上がりというのがあるんですね。去年の六月に、経企庁長官は、これを全部前向きに消すんだという話だったんですが、逆になっている。後任経企庁長官、どうなっていますか。
  173. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) その件につきましては、前長官から私も伺っておりまするし、また参議院のみならず衆議院の決算委員会等からも決議がございましたので、その趣旨を服膺いたしまして、たとえば経済企画庁について申し上げますならば、昨年からかなり人員を減らしておるということ、またその所属する地位などにつきましても弊害を起こさないような、たとえば調査とか研究とかというような方面に人員をシフトをいたしたり、またこれは私のほうだけじゃございませんけれども、人事院一行政管理庁、総理府の人事局等、政府関係機関と協議の上という前長官の発言の趣旨を体しまして、政府部内で協議をいただきました結果、これを根拠不明な部員として置くことなしに、非常勤の国家公務員としてしかるべき給与を払って、そのかわりに公務員としての規律を守らせる、こういうような方向をとりつつあります。いずれにいたしましても、それはせっかく国会の御意思もありますので、全部一ぺんになくなすという方向にいまはございませんけれども、漸次そういう方向で合理的な処置をいたそうというつもりで私もやっております。
  174. 上田哲

    上田哲君 これはとんでもないのでね、準公務員になっているなんてのはけしからぬのですが、それはそれとして、またこれも通産省に多い。三年前の二月一日付のデータを出していただいておるので、今日と比較してちょっと読み上げていただきたい。
  175. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま手元にございませんので、追ってあらためて調査して……。
  176. 上田哲

    上田哲君 いや、もうもらっているんですよ。
  177. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私、まだいまいただいておりません。
  178. 上田哲

    上田哲君 そちらからのものですよ。私、いただいているんですよ。——事務当局でいいですよ、こんなのは。
  179. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 民間企業職員の受け入れ状況は、四十六年の二月一日が二十五名、ことしの三月十三日が三十一名になっております。
  180. 上田哲

    上田哲君 こういうふうに多くなっていましてね。特に問題は、いわゆる物価Gメンの総括責任者のいる産業政策局にも銀行から入っている。こういう形はやっぱり癒着ということを言われてもしかたがないだろうと思うんです。私は、やっぱり通産全体に問題がこれだけ集まっているということを、公務員全体の問題だけではなくて、特に取り出してこの際大いに議論しなければならぬと思うんです。総理、前向きというおことばがありましたので、そこは了といたしますけれども、もう一つ前向きに、これは何とかするという御決意をお聞きしておきたいと思います。
  181. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この問題も、戦後ずっと長い間問題であることは御存じのとおりでございます。それで絶えず問題になります。これは社会のテンポが非常に速いということで、特にある意味からいうと、行政機構の中における知識や組織体よりも民間のほうがはるかに高いということで、テンポの速いときにはやっぱり人事は交流すべきであると、交流することによって行政の能率化をはかるべきであると、しかし、それによって起こる弊害は別なもので規制すべきであるということで、民間からの出向ということは、経済安定本部ができたときにこれは占領軍の思想によって大幅に入ったわけです。経済安定本部のもう半分は民間人であったというようなことでございましたが、それからだんだんだんだんと制度上もございまして、少なくなってき、それで去年御決議をいただいたということで、今度は予算上の措置を行なったわけです。身分を明確にしようと、こういうことにもなっているわけです。これは地方事務官の問題とか、地方庁との出向のし合いとか、また、民間と地方庁との問題、それから省から公団や公社へ出るときに一応退職をして出しているところもありますし、そのまま出向のところもあります。そういう制度全般の中でこの問題を解決しようということでございます。今度ただ、こういう石油問題やいろんな問題が起こってまいりましたから、民間から来ている人が情報収集をやるじゃないか、漏れるのはここから漏れるのじゃないかと、まあそれまで極論されると、この諸君は相当迷惑もするわけだと思います。そういう意味で、制度的にまず予算は計上しよう、身分も明確に非常勤の国家公務員として遇しよう、そのかわりに国家公務員法を適用しようと、こういうふうに相当明確になったわけです。ただ、これを全部廃止をするのか、廃止するならばどういうふうな状態でもってやるのか。そうすると、結局分析化学みたいなことも起こるわけです。ある事態においては民間の団体に調査依頼をしてやるということにもなります。そういうところの調和が非常にむずかしかったので、それなりのメリットもあったわけです。しかし、いまのような段階からいうと、指摘をせられる面もあるということで、いま経済企画庁長官が述べましたとおり、前小坂長官の発言、これは一大臣の発言でございまして、閣議でもってきめるには重大な問題だったのですが、小坂長官が決算委員会で述べたということを受けて、政府側も閣僚が公式に述べたものに対しては、その線に沿ってひとつ検討してまいりますということで、いまの経済企画庁長官の発言になっておるということで御理解をいただきたい。そういう、ここで私がやめますなんということを言える問題じゃない。そうすると、それは少し早とちりだということになりますし、これは非常に重要な問題でございますので、あなたの御意見は十分またいただきましたので、引き続いて勉強してまいります。
  182. 上田哲

    上田哲君 歯切れはよくないけれども、とにかくさっきのムードとは変わって、だいぶいろいろと前進が見られますので、この問題、全部くるっと変えて、一つ全然別な問題で最後に総理の決断を求めます。  子供の問題です。どうしても総理のところでないと話がきまりませんので、ぜひひとつ御決断をいただきたいのは、子供病院の全国センターというのが——ヘリコプターのついたこんな病院、見たことないと思うのですよ。ヘリコプターもついて、全部子供の病気を可及的すみやかに救っていこう、予防していこうという全国の子供病院のセンターというのが四十九年度の政府予算に顔を出しているんですよ。たいへんけっこうなんです。五十一年度に向けて進んでいるんです。厚生大臣も非常に前向きにその方向を示された。私は大賛成なんです。ところが、大蔵省が難色を示しておる。金額は全部で二十八億円、ことしは九億三千万円。これは総理がぜひひとつうんと言って、子供病院の全国センター、これをひとつつくろうということをここでぐんと御決断をいただきたい。母と子のためです。
  183. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) お答え申し上げます。  子供の医療の完ぺきを期するために総合的な小児医療センターを国立でつくるということは私どもも考えておるわけでございまして、現在あります、すでに御承知の国立の小児病院を将来改組しまして、子供の難治性疾患の臨床治療、そのほかに治療方法の研究開発、さらに小児医療に従事する職員の養成、こういうふうな総合的な医療センターをつくりたいと、こういう構想を厚生省が持っておるわけでございまして、大蔵省もこれには反対ではございません。二十七億とかいうことになるわけでございますが、本年度は昨年の繰り越し、さらに昭和四十九年度における債務負担行為等合わせまして、四十九年度から着工いたしまして大体三年計画、四十九年、五十年、五十一年度中には完成したいという計画で進めておるわけでございまして、大蔵省も反対などはいたしておりませんから、その点はひとつ御了承を願っておきたいと思う次第でございます。
  184. 上田哲

    上田哲君 大蔵省がいま言っていないのですよ。いま厚生大臣がああ言った。総理大臣、だいじょうぶですね、二十八億円。
  185. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) その話は昭和四十二年度までの話なんです。
  186. 上田哲

    上田哲君 五十二年度……。
  187. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 五十二年度までの話なんです。そこで、四十九年度にはその一部を計上する、こういうことになっておりますので、これは五十二年度を目ざして、また五十年度、五十一年度、五十二年度、この金をつぎ込んでいく、こういうことに相なります。
  188. 上田哲

    上田哲君 二十八億円、いいということですね、二十八億円。
  189. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まだ全体の計画を認証しておるわけじゃございませんけれども、大体そういう方向を目ざして初年度たる四十九年度ではその一部を実行する、こういうことになっておるのです。
  190. 上田哲

    上田哲君 そこなんですよ。そこを総理から聞きたい。そこを総理から聞きたい。いま厚生大臣大蔵大臣のズレがあるのですよ。二十八億円どうしても、まだ全部認めたわけではないと言っている。五十二年度までに二十八億円は認めてください、総理、母と子のために。総理に聞きたい。
  191. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) まず、私からお答え申し上げますが、厚生省としては、そういう構想をもって——予算というのは、しかし御承知のように、単年度単年度できめていくわけですから、全体の予算というものはこうですということはいま言えないということも、私も言えないんです。しかし、そういう構想で進みつつあり、四十九年度において初年度として予算が計上されておる、こういうわけでございますから、それでひとつ御了承を願っておきたいと思います。大蔵省だって、しいて反対、反対のための反対などを考えておりませんと思いますから、御了承いただきたいと思います。
  192. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まだ、四十九年度予算の御審議をいただいておるわけでございまして、五十二年度までの問題をここでもって申し上げるということにはならないと思います。思いますが、二十七億程度のもので全国の小児の難病奇病センターができるというのでありますから、これはもう厚生大臣大蔵大臣が述べましたとおり、もう初年度は計上しております、最終年度は五十二年でございます、これはほんとうに財政が許すならば五十一年度に繰り上げたいというような前向きの姿勢を述べておるわけでございますから、これはできるのだなというふうに御理解をいただきたいと思います。
  193. 上田哲

    上田哲君 この計画を聞いて大蔵省から文句が厚生省にいっているというのです。いっているのです。そういうこともあるのです。これは十七人に一人ですよ。生まれる子供の十七人に一人先天奇形がいるわけです。それが、ヘリコプターのついた、二十四時間以内に運んでくれば十七人に一人が半分助かるのですよ。十一階建てというのがあったのが、これがとにかく七階建てに圧縮されて二十八億なんです。こういう状態なんです。これを何とかして、おっしゃるように、ガンと循環器と脳卒中と小児難病、これを一緒にやっていきたい、ぜひともことしスタートさせなければいけないのだが、去年四億円出したら、現場の先生に、こんないいかげんなことじゃだめだという声もあって、ようやく繰り越しで九億円になっているわけですね。これは非常にスタートとして大事なんです。ぜひここのところを御理解をいただかなければならない。  それから二十八億円というのですが、たいへんなインフレの前ですよ。インフレの前につくられた計画が三十八年、これは十年かかっているのですよ、この計画は。小児病院は七年半前にできて、もう手術ができないような状態になっておる。隣が太子堂中学ですから、光化学スモッグで、元気な子供にはエァコンディショニングができた。これもいいことです。しかし、病気の子供に血液検査ができないくらい、エァコンディショニングもないわけです。これはやはり日本の小児予防医療のために努力をすべき当然なことでございまして、ぜひこれは、どんなことをおいても、将来、五十二年と五十一年——また違っているのです。五十二年度計画であるということは、大蔵大臣、それでいいんですよ。しかし、私どもが言っているのは、それまで子供が病気でいいということにはならないから、五十一年度中に繰り上げてやろうじゃないか、こういうことにもなっているので、総理、最後に、五十二年度ではなくて、五十一年度に子供病院の全国センターの総裁を任命するのだ、それはもう厚生大臣もこの間そうしたいものだぐらいの気持ちは出したわけですけれども、それと、二十八億円を、インフレ前の数値ですから、これを何とかして見直しをしよう、こういう前向きな御発言もいただき、どうしてもこれ、初めての子供病院、母と子の病院というものをつくるんだという強い決意を、ぜひ、こういうインフレの中ですから、これはもう野党がどう言ったって、行政政府がその決意を持っていただくということは何よりも大事でありますから、ひとつその御決意を承って終わりたいと思います。
  194. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま厚生大臣大蔵大臣から述べましたとおり、もうすでに発足をしておるわけでございますし、私もまだ内容をつまびらかにしておりませんが、あなたの御指摘のように、二十七億円のうち十億円、去年とことしで十億円ということになれば、あと残りは十七億円ということになりますから、そんな支出できないようなものでもないと思います。ただ、制度上の問題としまして、四十九年度予算の御審議をいただいておりますときに、これを何年までやりますということを述べがたい立場にあることは御理解いただきたい。しかし、母と子のために、とにかく子供も、難病奇病ですから、だからそういう意味でこのセンターをつくるということの必要性は十分認めます。そして、もちろん二十七億が三十億かかろうが、これは物が上がっておるわけでございますし、病院に対してはまたきょうも単価の追加補正を行なっておるというようなことでございますので、実情を十分勘案をしながら、これの一日も早い完成ということを考えてまいりたいと思います。
  195. 上田哲

    上田哲君 終わります。
  196. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもちまして上田君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  197. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 鈴木君。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  198. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 速記を起こして。
  199. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、公明党を代表いたしまして、予算三案並びに財政投融資計画に対し質疑を行ないます。  最初に、田中総理が内閣をつくって約二年になろうとしておりますが、最近の物価高騰、外交問題のたび重なる失敗、特に石油危機に始まる経済状態の急激な変動、それに対して後手後手に回っている。言わば失政ということを繰り返してきている。まさに、国民大衆の生活は風に吹かれるちりのように、もう実に寄るすべもないというのが実情じゃないかと思います。マイホームの夢は破れる、日常必需品の価格の急上昇は、預金までも減ってくるというような、また生活苦をさらに倍増するということになってきている。中小企業は一方でつぶれるのに、大企業のほうは政府が守っているという感じがあります。まさに戦後最大の国民の怒りがあるのが現在だと思います。こういうふうに、何にもしなかったという内閣は少なかったんではないか。戦後最低の内閣支持率。いろいろの新聞等を調べてみましても、岸内閣は一六・八%ということでした。これは、例の安保反対の激しいデモの中の内閣の支持率。それに対して、田中内閣の支持率が一六・七%。これは「時事」であります。また「産経」等では二〇%、また、そのほか見てみましても、二〇%とか二八%というふうになっております。岸内閣のときより以上に〇・一も下回るというような支持率。まさに最低と言わざるを得ない。しかも、最近の地方選挙を見ると、革新統一が保守を破ってきている。町田の市長選挙、それから、御承知のように、総理の地元の新潟県新津市の選挙、こういう所でもそのとおりであります。投票率が、新津市の場合、男が八八・六、女が八九・八と、女性の投票率のほうが五%も前回より上回っております。しかも、革新が勝ったという点で、この最近の選挙戦の特徴の一つは、投票率が高いということと、第二に婦人の投票が伸びて、いままでのように、政治はだれでもというところから、自民党内閣、田中内閣に対しての不信任が出てきたということ、第三に革新が勝っているということ、こういう点からも、政治の流れを変えてほしいという内閣不信任の国民の声が増大しているということがよくわかるだろうと思います。総理は、いままでの、総理になられてからの総締めくくりを考えてみれば、物価高騰、先ほど申し上げたような、またこの委員会でもずっと追及がありましたように、山積している問題が多過ぎるぐらい、そういうことの責任を明確にするためにも、総辞職をなさるということが必要だと思うのでありますが、いかがでございますか。
  200. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 当面する問題に対して責任は果たさなければならないという意欲に燃えておるわけでございまして、総辞職は毛頭考えておりません。
  201. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは環境庁長官に副総理として伺いたいのですが、こういう内閣は、何といっても私はすみやかに総辞職すべきだ、こう思います。どうして閣内からそういう声が出てこないのか。自民党内の青嵐会からも声が出ている。内閣の副総理である三木さんは、ニューライトとして自民党内の革新を標榜しておられます。政治の責任はこれは重大な問題でありますから、当然、内閣の行くべき進路については考えておられると思いますけれども、どう考えておられるか、伺いたいと思います。
  202. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いまは、御承知のように、日本は非常に重大な状態にあるわけです。経済的にも、いろいろ国際関係からいっても。こういうときでありますから、私は内閣の一員として全力をあげて国民の負託にこたえなければならぬということ以外には考えていないわけでございます。
  203. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次は大蔵大臣に、同じく政治姿勢ですけれども、福田大蔵大臣について、とかくちょっと耳にいたします。たとえば、予算が成立したらそのあとで退陣するというようなことを、ちょっと私も小耳にはさみました。国債を創設し今回のインフレの原因になった調整インフレの第一歩も福田さんが大蔵大臣のときに、もう芽が出ております。内閣を信任しないということで退陣ということを言われたのか、あるいは、これはただのうわさなのか。これは、私どもは、そういう点ではあまりにも無責任ではないかということを思わざるを得ない。たとえうわさであったにしても、その点いかがでございますか。
  204. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 人のうわさに責任を持つわけにはまいりません。私はそういうことを言った覚えはございませんで、目下全力をあげて短期決戦、物価抑制に取り組んでおる次第でございます。
  205. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 まあ私は、こういうような、いまの最大の局面というのは、政治の流れを変えることが一番大事な問題だと思うのです。そういう意味で、ただ申し上げたのでありますけれども、何とか早く決意を固められるようにお願いをしたいと思います。  ここで、公取委員長が時間がなくてお出かけのようでございますので、御用がおありのようでございますから、先に伺いたいと思いますが、先日、農機具業界の手入れを行ないました。やみ価格協定の疑いということで、十四日、昨日のこと、調査官八十人を動員してやられたようでありますけれども、これについてのやみカルテルの点について御報告をしていただきたいと思うのですが。
  206. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) これは新聞発表をいたしましたので、その点、そのとおりのことを申し上げます。調査中の経過につきましては、申し上げることは許されておりませんので、御容赦願いたいと思います。  これは先日、農業機械工業会外三十四カ所、これは会社としては二十一社、それから工業会として一団体を立ち入り検査いたしましたが、その被疑事実といいますのは、農業機械製造業者あるいはこの団体かもしれませんが、それは耕うん機、バインダー、コンバイン等の農業機械の販売価格を昨年十二月から平均一四%を引き上げた。さらに、本年の二月から、また平均して一四%引き上げることを申し合わせまして、それを実施しているという疑いでございます。  ただ、この点、一言ちょっとお断わりしますが、これは昨日やったわけでございますが、事前にその事実が、つまり事実と申しますか、そういう事実が指摘されまして、それで国会においてすでに質問が行なわれております。それから、ある新聞と申し上げますか、その新聞にその事実を公取に申告したということがございまして、このために、証拠の点について、たいへん私どもの係官が苦労するであろうと思います。事実は確かにあったというふうな感じは持っておるのですけれども、やはり証拠づけるためには、まあ、不意打ちをやらないとできないんですが、もうすでに相手側は公取に申告されている、問題にされているということを承知しておりましたので、そういう点で私どももたいへんこれは難渋しております。
  207. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大手五社の久保田、ヤンマー、井関、三菱、佐藤この五社で、国内農機メーカーの販売実績が四十八年度で二千四百四十七億円、約九〇%のシェアである。そういう点で、いまの公取委員長のように、一四%、一五%という値上げについて話し合いをしたんではないかと言われているわけですけれども、この大手五社が五月会という秘密の会を設けて、参加者は会社の社長をもって構成して、必要に応じて会合を開いていると、これが価格値上げの話し合いをしたんではないかというような話があるんでありますけれども、その点は、いかがおつかみでございましょうか。
  208. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) それらの点は、つまり秘密に特殊の大手だけで会合を開いて、これらが結局プライスリーダーになるわけでございますから、その事実は、これから詳細に審査部で審査をしないと申し上げる段階にはならないと。それからまた、審査の事件として取り上げました以上は、新聞に公表しておること以外に申し上げてはならないという法律上の制約がございますので、よろしく御了承願いたいと思います。
  209. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは農林大臣に伺いたいんですが、全農が、この大手五社による価格の協定ということが行なわれていることのために、各社別に交渉をしても、その交渉ができない。結局、小売り価格の推移といいますか、きまったものをそのまま押しつけられるという、五社の出した値上げをそのまま強制されているというようなことがあるんでありますけれども、その点はいかがでございますか。
  210. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 農機具につきましては、いまお話のございましたように、大手のメーカーもございますし、また小さなものもありますが、いままで大体、御存じのように、価格は安定的に推移してまいりましたけれども、最近、その資材であります鉄鋼、鋳物その他の部品等値上がりをいたしております。それからまた、その他の労働賃金等も逐次上昇してまいっておるということで、値上がりが響いておることは事実でございます。そこで、私どもの立場といたしましては、なるべくそういうことについて値上がりをしないようにということであっせんをいたしておるわけでありますけれども、全農との間には、お話のように、いろいろ生産者と需要者でありますので、話し合いのあることは聞いておりますけれども、ただいまのようなお話をまだ正式に全農の当事者から承っておりません。
  211. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いずれにしても、いまのようなカルテル行為が行なわれておるようなおそれがある。この点は一そうきびしくしていただきたいと思います。  ここで、石油外交のことで伺いたいのですが、石油危機に際して、三木特使、小坂特使、両特使がアラブ諸国を歴訪されました。そうして借款供与の約束をしてきておりますけれども、その内容はいかがでございますか。
  212. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私が中東に特使として派遣されたときに、一つはエジプトに対して、スエズ運河の改修に、ドルに換算して約一億四千万ドル、それを提供するということを約束をしたわけでございます。それからまた、政府借款については検討を約して帰ってまいりまして、先般エジプトのハテム副首相が参ったときに、二カ年間にドル換算約一億ドル、半分は商品援助、半分はプロジェクト援助と、先般参りましてそういう意思表示をいたしたわけでございます。さらに、シリアに対しては製油所の円借款、これは政府間で交渉を現在継続中であります。また、イラクに対しては、経済技術協力協定のような、そういう協定を結ぶために両政府間で交渉をすると、そういう約束をいたしたわけでございますが、もちろん、そのいずれもの約束は、正式には交換公文等において後日きめられるもので、私が行ったときには、そういう約束だけをいたしたわけでございます。
  213. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 小坂特使にかかわる分について御説明申し上げます。  モロッコに対しましてプロジェクト援助三十億円、アルジェリアにつきましてはテレコミュニケーション関係のプロジェクト百二十億円、ヨルダンに対しましてテレコミュニケーション・プロジェクトなど三十億円、スーダンに対しましてプロジェクト援助三十億円、このいずれも両政府関係政府と日本政府との間で現在内容について検討中でございます。
  214. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 通産大臣が一月にイラクを訪問されたときの合意された内容はいかがでございますか。
  215. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) イラクとは、過去一年ぐらいにわたりまして、LPGあるいは石油のリファイナリー、セメント、それから肥料等のプロジェクトが進んでおりました。それで、私が参りまして、十億ドル、五・二五%、官民の融資、これは基金と輸銀、これの合成によりまして、それだけの借款を行なう、また融資を行なう、そのかわり一億六千万トン以上の石油または石油製品を日本に輸入する、概括してそのような話し合いをきめてまいりました。  それで、原油の輸入等につきましても、日本の積極的な熱意やプロジェクトの進み方によっては、それよりさらにワク外に出してもよろしい、そういう話がありまして、現在すでに日本からも、イラク原油輸入懇談会をつくって、その代表がバクダッドに行って、値段その他の交渉を継続しておるところでございます。
  216. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 若干いまそれ以後の完成させる作業という方向へ動いているようでありますけれども、これは実際に全部実現する可能性があるのですか、これ。非常な膨大な金額になってくるわけでありますが、実現の可能性、全体について。この点は、これは外務大臣からまとめていただけますか。
  217. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国際信用の根本は、約束を実行するということでございます。したがいまして、政府が約束したことは何としても実行されなければならぬとわれわれは考えておりまして、各特使によりまして原則的に合意された事項につきましては、内容を精査いたしまして、そのフォローアップに遺憾のないようにいたしたいと考えております。しかし、これらのプロジェクトは複数年度にわたるものでございまして、これを単年度の負担にいたしますと、わが国の援助供与能力の範囲内で消化できるものとわれわれは確信をいたしておりまするし、各特使御出発前に、事前に関係大臣の間で協議を遂げて、それを踏まえた上でおいでいただいております事情もあわせて御勘案をいただきたいと思います。
  218. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは民間と政府と両方、政府借款だけのものもあるし、民間の信用というものを含んでおるものもございます。その辺の話し合い等は、まだこれからですか、それとも、何かしらのめどはつけておられるでしょうか。
  219. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 政府関係におきましては、政府予算で実行できまする技術援助というものがございます。それから政府機関でございまする経済協力基金あるいは輸銀等で処理いたしますものがございます。政府まだは政府関係機関だけで充足するものもありまするけれども、民間の延べ払い信用とあわせて実行されるものもございまして、プロジェクトごとに態様が違っておるわけでございますが、一つ一つのプロジェクトにつきまして、御質問がございますならば、お答えをいたしたいと思います。
  220. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 一つ一つのプロジェクトのほうでは、一体、これは先ほど交換公文の話もありましたけれども、いままでは約束だけですからね、正式にこれが乗り出すのは、ことしじゅうなのか、あるいはいつごろまでなのかということはお答えできませんか。
  221. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いわゆる特使等によって原則的な合意が行なわれることを、われわれはコミットメントと普通申しておるわけでございます。それはいわば原則的な合意でございまして、政府の責任が直ちには発生いたさないわけでございまして、その原則的な合意のラインに沿いまして相手国政府との間で協議を遂げまして、どういうプロジェクトを取り上げるか、それにつきまして、何年でやるか、どれだけの金額がかかるかというようなことを精査いたしまして、いわゆる両政府の間で交換公文というものをつくるわけでございまして、その交換公文の交換によりまして初めて政府の責任が生ずるわけでございます。したがって、コミットメントから交換公文の交換に至るまでの期間、どれだけの時間帯を要するかということでございますが、これもまたプロジェクトによりまして非常に違ってまいるわけでございまして、ことしじゅうでできるものもございますならば、また、明年度以降にわたるものもあろうかと思うのであります。
  222. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理石油問題の外交で向こうへ行ったわけであります。これだけのいろいろないわゆる原則的な約束をしてこられた。当然、いままでが口約束ないしは調子を合わせるだけということで評判も悪くしてきている面もございます。そういう点から見ると、この席で無理かもしれませんけれども、年内とか——いま年度は無理という話がありました。ものによっては年度内、ものによっては年度を越えるという話があったんですけれども、ことしのいつごろまでをこれは全部めどにしておやりになられるか、それを伺いたいのです、決意のほどを。
  223. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まず、原則論から申し上げますと、日本は、UNCTADの会議で声明しておりますとおり、先進工業国の一員として、DACの平均数字のうち援助分はGNPの一%を目標にしてやってまいりますと。これは〇・九三%ぐらいになっておると思いますが、もう一%に近い状態でございますから、これは遜色はありません。もう一つは、その間の政府間援助というものが〇・七%にならなければいかぬわけであります。ところが、DACの平均数字よりも非常に少ない、少なくて〇・三二%ということでございましたが、ですから、〇・七%の半分にもいっておらぬということだったわけです。ところが、去年、おととしは、また、それが減りまして、同じような数字に見えますけれども、〇・二三%まで減ったわけです。これは国民総生産が伸びたということもございます。そういうような意味で、七〇年代の後半までで〇・七%まで上げるといったら、これは相当なものでございます。GNPに対して〇・七といったら、自衛隊の費用一つずつかかるわけです。そういう状態にあります日本の現状に徴しまして、国際経済協力、アンタイドの推進等、相当な馬力をあげなければならないということは事実でございます。そこへ石油問題が起こってまいったわけであります。そういう意味で、いろいろな特使が参られたりしていろいろな約束をいたしてまいりました。これはプロジェクト別に——民間の経済ベースのものもございますし、輸銀ベースもございますし、政府の無償援助の分もあります。これはプロジェクト別に一つずつ詰めなければならない。こういうことでございますが、約束したものをどうしてもやる、これは当然のことであります。で、まあ、これは非常に大きいような金額にも見えますが、これだけ全部やったって、とてもそれはGNPに対する〇・七%なんかになるわけはありません。これは、まだまだこんなもので済むわけはありません。しかも、日本が一年間に海外から輸入している農産物だけでも百十数億ドルということでございますし、石油価格引き上げだけでもって百億ドル以上オーバーするわけです。増加する分が百億ドルをこすということでございますから、これはもう、そういう意味で、海外援助、経済援助というようなものを完ぺきな姿勢で実行していかなければならないということが大原則でございます。まあ、日本が大きいようでございますけれども、いままで少なかったというのが問題なんです。これはもう、いままでもっとやっておけばよかったじゃないか、それを民間ベースにまかしておったために不信用を買ったり、そして、石油問題が起こってからばたばたやること自体があと追いだと、こう言われていることは事実なんです。  ですから、日本がいままで発表したような数字は大きいものじゃありません。これは、イラン一国に対してフランスが五十億ドルの借款供与をやっておるわけでありますから、これはもう問題にならないものでございます。ですから、きめたものに対して実行する、これは当然のことである。ですから先方側と——ただ、なかなかプロジェクトでもって詰まらぬものがいままであったわけです。ありましたが、きめたものに対しては、こちらから積極的にとにかく現地へ出向いてもやろうということで、相当程度実効があがっておるということでございます。ですから、いままでのインドネシアに対する二億ドルの石油借款というものは、三年かかってやっとやれるようになったのですが、しかし、第二の問題は、LNGに対する同じ二億ドルの問題は、わずか二、三カ月、半年の間でもってきょう閣議で支出を決定したわけであります。ですから、そういう意味でテンポが非常に速くなっておる。また、そうでなければ、これだけの大問題を起こしておるときに、これは日本が公約を実行しないということがあり得るはずはないのでございます。そういう意味で、まあ、全部が全部ことしじゅうにやるのかといっても、相手のある話でございますから、また、いまの契約したものが大きくなっても小さくなりません、これは。とても大きくなっても小さくはならないということでございまして、この約束は必ず果たしてまいる、こういう考えであります。
  224. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 必ず約束は果たしてまいるとおっしゃいましたが、いつになるか、ちょっと時間がかかりそうなんで、その点は急いでほしいと思います。  それから、これは通産大臣に。この間のときに、イラクで十億ドルの借款の約束と、それから同時に、先ほどの答弁にありましたように、原油の供給保証の取りつけ、このDD原油の単価、売り値、また、これからの売れ行きの見通しぐあい、こういったものはいかがでございますか。
  225. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど、基金と輸銀と民間と申しましたが、いま聞きますと、その後、大きなプロジェクト二つのメインコントラクターがきまりまして、LNGは三菱、それから石油リファイナリーはトーメン、伊藤忠がメインコントラクターになって、いま話のフィージビリティスタディー契約に入ろうという努力に入ったようです。それで、基金を使わないで輸銀で五・二五%を出す、そういう話し合いがまとまったということをいま報告を受けました。先ほどのことを訂正いたします。  それから、石油の輸入につきましては、大体民族系を中心にした輸入懇話会をつくって、その代表者がバグダッドへ行きまして、いま交渉中でございます。しかし、先方は少し高い値を言っておるので、まだまとまらぬと。できるだけ早期にまとまることを期待しております。
  226. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 このDD原油全体では、ことしの見込みはどうなんでしょう。どのくらいの見込みになってきますか。
  227. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体、非常に努力をしておっても、たしか私の記憶では、昨年が一%ぐらいであったと思います。それで、DD原油は値が高いものですから、それに大体民族系がこれを購入してきているわけでございますが、こういうふうにある程度値が高いというと、勢い渋りがちになりまして、その輸入数量もいまのような値でいけば減っていくのではないか、そういうように思います。
  228. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次は、石油消費国会議が二月十三日に共同コミュニケを発表して終了したわけでありますけれども、この中で、十四項目かどこかにDD原油をある程度認めさした。もう一つは、国際的な秩序確立という必要性がうたわれたわけでありますが、この第十六項目目のところですね。これはフランスは受諾をしておりませんけれども、第十六項目にあるフォローアップ機構、これからの調整グループの設置、こういった問題については日本としてどう対処していくのかということ、これはぜひ伺いたいと思います。特に、この十六項目の第二番目に、産油国及び消費国の会議はできるだけ早い機会に開催するということがうたわれているわけですね。その点については、これはいつごろをめどにしておられるのか、これに臨むわが国の基本的態度ということについて伺いたいと思います。
  229. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) わが国といたしましては、ワシントンのエネルギー国際会議、せっかく開かれたものは成功させなければならない。で、石油問題解決の国際的な協力の第一歩にし、そして、産油国と消費国との間の協調を取り結ぶ第一歩にしなければならないという基本の方針に基づきまして、そういうラインに沿って提案もし、取りまとめもいたしたわけでございますので、それが住み落としました調整グループというものの活動には積極的に参加いたしまして、推進に当たるつもりでございます。  この調整グループは、第一回の会合はワシントンで開かれ、第二回の会合は本月十三、十四日、ブラッセルで開かれまして、第三回は四月の四日、五日、同じくブラッセルで開かれることになっております。で、この第三回の調整グループの会合で、産油国と消費国を交えた会合をできるだけ早く開くための準備を精力的に行なうということが申し合わせ、合意されておるわけでございます。一部の新聞では、まあ九十日以内という報道が行なわれましたけれども、正確にはそういう期日を限定した合意にはまだ達していないと承知いたしておるわけでございますけれども、できるだけ早くこの産油国を含めた会議招集ということに、わが国といたしましても積極的に協力して推進に当たりたいと考えております。
  230. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 消費国並びに産油国の会議を早急にという話でありますけれども、ぜひそのようにお願いをいたしたいと思います。  それから通産大臣に。DD原油の問題は、どうしても入札でありますから過当競争にもなってくるということが一つ。それからもう一つは、それを防止するということが必要でもありますので、わが国が石油を輸入したり、あるいは買いつけをするときの問題として、入札をする場合、応札をする場合も、石油輸入公団とか石油備蓄公団というような窓口の一本化をはかるべきということが必要じゃないか、その点のことが一つ。  それから、それについての関連でありますけれども、わが国の場合、将来DD原油等に依存をすることがだんだん——いまのようにわずかに一%ないし二%というならいいですけれども、価格も不正常なつり上げが、どうしてもDD原油にたよった場合にはできてくる場合があります。そういう点を考えると、鉄だとか肥料だとかということとのバーター制、これが長期取引契約として結べないものなのかどうか、この二つの点をぜひ伺いたいのですが。
  231. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石油の輸入公団のような一元的な輸入体制というものは、なかなかむずかしいと思います。やはり、自由競争でやらしてきたところに安い石油がいままで入ってきた理由もございます。しかし、世界的な石油の変動というものは、われわれが思いもよらなかったぐらいの大きな変化でございますから、国内、国外両方の状況をにらみ合わせながら、石油の機構についても検討してまいりたいと思っております。  それから第二に、バーター取引というようなものは、国際社会経済上あまり歓迎すべきものではございません。バーター取引が進むようになると、どうしてもブロックイズム、封鎖経済や保護経済の傾向に流れていきます。これは日本としては得策でもありませんし、世界経済を発展させるゆえんでもございません。でありますから、できるだけ自由無差別の方向に世界貿易を日本は持っていくように努力したいと思います。しかし、この間田中総理やわれわれが言いまして、産油国から非常に日本の鉄鋼や塩ビやそのほかの資材をほしいという話がございまして、緊急物資としてわれわれとしてはできるだけ要望に沿うように努力してきたところでございますが、これはバーターという意味ではなくして、いまの緊急事態に対応して経済協力をしよう、そういう考えのものであります。しかし、二国間の原油の引き取りという問題は、ワシントンの会議でも問題になった問題点であります。これはいまの趨勢からすると、全然否定するということはむずかしい。いまのイラクのような場合もございますし、日本のように、後発で出ていった国の立場というものもございますし、産油国側の要望もございます。したがって、国際的な摩擦を起こさない範囲内においてよく注意しながら二国間取引もまたこれを進めていく、そういう考えに立っていきたいと思います。
  232. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次は、財政運用について質問したいと思います。  先日、この席で社会党の羽生委員が質問をしておりますけれども、総需要抑制と言いながら、一方で財政と、いま一つは財投、このしり抜けが指摘されたわけです。そのことから調べてみまして、大企業と中小企業との両面、一体どちらのほうにウエートを入れているかということで調べてみたんです。  政府関係金融機関で、開発銀行が総ワクで五千五百八十二億円のうち、融資の残額が千九十七億円、一六%、一月末です。それから、輸出入銀行が六千七百七十億円の総ワクに対して、残額が千百三十七億円、二一%。国民金融公庫が九千六百八十三億円のワクに対して千五百九十二億円で、一八%まだ残ってます。中小公庫は八千百七十一億円のワクに対して千二百十五億円で、一五%残っておる。商工中金は、これは純増で調べる以外でございませんので、ことしふえたワクが四千六百八十八億円。そうして昨年十二月末までで使われたのが四千二百億円ふえております、貸し出し残高で。あとは四百億円、約一〇%残っておる。こういうことで見てまいりますと、また、大蔵省からいただいた資料では、開発銀行等は日本郵船に千四百四十一億円の融資残高がある。また、大阪商船三井船舶に千百億円、東京電力に一千億円とか。また、輸出入銀行の場合は石川島播磨に千九百四十億円。三井物産に千六百四十九億円、三菱商事に千四百五十四億円、三菱重工に千二百八十六億円と、まあ、こういうように膨大な融資残高が残っております。  そういう両面から見ますと、金融引き締めの際に、開銀、輸銀というほうはもっともっと締めてよかったんじゃないか。中小公庫とか商工中金、国民金融公庫に残っている融資の残りが同じ大体一八%、一五%、一〇%で、開銀、輸銀の場合も一六%、二一%ということでは、同じような引き締めしかしてないということですね。これではやはり中小企業向けに力を入れているとは言えないし、いま一つは、たとえあとからの追加額があったから、同じ比率がこれだけあるので、実際はもっと減っていますと言われるかもしれませんけれども、この中小企業への力を注いだということにならないんじゃないか。それだけ資金需要があったから、お金をつぎ込まなければならなかったわけですから。そういう点を見ると、やはり政府みずからが開銀、輸銀を通じて資金の偏在をはかった。いま資金の偏在を何とかしようという話が出ているわけですけれども、そういうことを許したということになるんではないか。この点はいかがでございますか。
  233. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 鈴木さんのお話ですが、まあ、実際はその逆のほうでありまして、たとえば、国内の景気動向と非常に関係の深い開発銀行の融資、これは昨年、政府の公共事業執行を抑制するというときに八%減速、そういうことにいたしたわけです。そのときそれに準じまして、開発銀行の融資につきましても八%減らす、こういうふうにいたしておるわけでありまして、なお、それを実行したあとにおきましても、まあ景気の今日の動向等から見まして、開発銀行の融資は抑制をすると、こういうふうに考えておりまして、それで、結果がどういうふうに年度として出てきますか。八%減というどころじゃなくて、かなりの節減率になると、こういうふうに考えております。  それから、昭和四十九年度につきましても、まあ五、六%ぐらいですか、そのくらいの増加には相なるわけでございまするけれども、この一般の予算の規模、そういうものに比べますと、かなりの抑制方針をとっておる、そういう状況でございます。これに反しまして、中小機関はどうかと、こういいますると、年度の途中におきましては累次の貸し出しワクの増額を行なう、こういうふうにいたしたことは御承知のとおりでございますが、なお、昭和四十九年度予算につきましても、開発銀行のほうは五、六%のワクの増加だというのに対しまして、中小機関のほうは実に二〇%の増加を見込む。なおその上に無担保、無保証融資千二百億円を用意をする。さらに、市中の金融機関を慫慂いたしまして、三千二百億円の中小金融資金を用意をする。そういうようなことで、これは大企業に比べると中小企業に格段の配慮をしておる、そういう状況でございます。決して軽視しておるという状態ではないと、はっきり申し上げることができます。
  234. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大蔵大臣は、確かに開銀、輸銀のほうについても、言われるようなことがありますよ。そのとおりですけれども、私が見ていると、商社、それから石油関連企業、そういうところにも資金の偏在がある。これを吸収しなければならないということがいま叫ばれている。ところが、その商社に力こぶを入れているのが、いま申し上げたように開銀、輸銀ということになってくるわけですから。特に輸銀ですね、そこで政府が、自分の力で本来ならできる、財政投融資のほうの原資から出ていくわけですから、それを放置しておいて、まあ資金の偏在を貸し込んでつくっていったということになるんじゃないかと思う。私は、開銀、輸銀のこれは、いずれにしてもことしだって繰り延べがされております。いま押えておられるようであっても、これはもう来年度はまた繰り延べをしていくでしょう、巨額な繰り延べになってくるわけですね。もしたくさんあったとしても。そのパーセンテージでいって、たくさん残っているからといっても、一方のほうと——私の言っているのは、中小企業やなんかのほうへ出ていく三機関と、開銀やなんかと、融資の残っている金額のパーセンテージが同じような状態ということは、中小企業に格段の力を入れたということはうそじゃないかということです。そういうふうにしか思えないわけです。ですから、この辺で、財投運用の立場からも金融政策の上からも、政府資金といったって、これは置いておくわけにはいきませんから、開銀、輸銀について繰り上げの償還とか、あるいは貸し出し規制の強化をするとかという、これを本格的にやるべきじゃないかと思うのですね、いまからでも。いかがでございますか。
  235. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 金融政策上は、総需要の抑制という見地からも、これはもう私は完ぺきなかまえをとっていると思うんです。まあ、きびし過ぎるというくらいな御批判を今日受け始めておる、こういうような状態でございますが、金融機関というのは、ひとり市中金融機関だけじゃない。これは政府関係金融機関のほうも含めての話でございますが、とにかく政府関係金融機関は財投がその原資として使われる、そういうようなこともありますので、特に私どもは配意いたしまして、これが総需要抑制政策と矛盾するというようなことのないように考えておるわけです。実際そういう指導をいたしておりますので、輸銀にいたしましても開銀にいたしましても、かなり繰り越しというようなことになってくるんじゃないかと、さように考えます。
  236. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 日本銀行の経済統計月報の一月号、一番新しいのを見ますと、政府金融機関の業種別貸し付け残高が出ています。この業種別の貸し付け残高の表を見ると、輸出入銀行の場合には、一昨年の十二月に比べて昨年の十二月、一年間で一千二十四億円の増加となっている。資金の偏在があるならば、どうしてそういうふうに膨大なといいますか、一千二十四億円というような——これが「卸・小売業」というところだけですが、そういうふうになっている。卸、小売りといえば十大商社だということになってまいります。そういうめんどうを積極的に見るというのは、どうしても財投に対しての批判が出てくるのは当然だと思うんですね。その点いかがでございますか。
  237. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まず、日本開発銀行につきましては、これはもう設備投資だけでございます。そういう性格のものであり、その設備投資も、重要と認められる産業にして、具体的な計画を持ってやってくる、そういうものに対しまして種々選択をいたしまして融資をすると、こういうことでございまして、これが開発銀行の対象に商社が入っておる——これは入っております。そういう際におきましても、商社が設備投資を行なう、そういうものに関連いたしまして貸すのでありまして、これが買い占め資金になるとか、そういうような性格ではないんです。  それから輸出入銀行も同様に、これはもう市中の金融機関ではとうていその資金をまかなうことができない、つまり低利、長期の金でありますから、それをまかなうことはできない、そういう際に政府機関たる輸出入銀行が発動すると、こういうことになる。そういう際に必ず特定のプロジェクトがあるわけなんです。そのプロジェクトに対して長期延べ払い金融を行なうと、こういうことに相なりますので、そのプログラムを実行しなけりゃ、これは政府金融機関を詐取したような形になりますので、これは許されないことです。  したがって輸出入銀行がある企業に対して金を貸した、その金が買いだめ、そういうようなものに使われるというおそれは絶対にないのです。しかし、それにしても総需要抑制政策をとっておりまするから、これはそういう政府関係機関が景気刺激的な融資をしてはならぬというふうに考えまして、ただいま申し上げましたような厳重な規制をいたしておる、こういうことでございます。
  238. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 一方は延べ払いですから、債権としてはこれから入ってくるわけですね、持ってますよ。一方は輸出入銀行からその場へ入るということになると、これは債務としては大きい、その金が出ていくことは目に見えています。これは景気を刺激するのは当然のことですから、それは大蔵大臣、どう言ったってしり抜けとしか考えられない。  もう一つは、ここのところでインパクトローンの許可をされております。十三日にインパクトローンとして、いわゆる使途制限のない外貨借り入れを三億九千万ドル認可ということを、四−六月期ということでやった。いままでの、四十八年度の電気事業のインパクトローンの導入、これの状況はいかがでございますか。
  239. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府委員から。
  240. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 今年度の電力事業関係のインパクトローン導入状況につきましては、北陸電力五百万ドル、中国電力六百万ドル、九州電力一千五百万ドルが認可をされております。
  241. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは流入流出の状況としてはいかがでございますか。インパクトローンとして入っていくのと出ていくのとありますからね、その差し引きといいますかね、ネットの流入状況です。
  242. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 過去三カ年ぐらいをとりますと大体とんとんでございます。昨年がやや受け入れ超過というような傾向になりますか、ことしはさらに受け入れ超過の傾向を、これは私どもの考えといたしましてもう少し助長してみたいと、かように考えております。
  243. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 政府からいただいた資料ですと、四十八年度の予定としては流入が五億三千万ドル、流出が四億一千万ドルで、差し引き一億二千万ドルは余分に入ってくるだろう、先ほどの大蔵省の許可ですかを見ると、三億九千万ドルの電力会社等が取り入れるインパクトローンの許可が出たと、そういうことで、たいしたことはない、一億ドルじゃたいしたことはないと言われるかもしれないのですけれども、一方は金融引き締めをこの間から行なっているわけですね。他方で外国銀行からあるいはユーロダラー等をこうやって入れてくる。結局金融のしり抜けであり、片っ方を許すならば中小企業向けのほうだってこれは相当許していかなければならないじゃないか。国内の銀行からは確かに電力会社は金を借りないかもしれません。だけれども、そうじゃなくて、外国銀行からお金を入れるというのでは、その金は回り回ってくるわけでありますから、   〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕 ドルで入ってきて、ドルのままでもって石油代金の決済に使われるのならまだわかりますよ。やはりどこへ使ってもいいという金でありますから、そうなれば必ず運転資金に回ってくるでしょうし、そういう点で国内景気を刺激してくる、完全なしり抜けになるじゃないですか。そういうやり方では何だか首尾一貫しない。一方では引き締めると言っておいて、一方ではおまえのところだけたいへんだからめんどう見てやろうというふうな、大きいところでありながらめんどう見なければならない、しかも条件がそんなにいい条件じゃないと思うのですね。利子がうんと安いというのじゃないだろうと思うのです。そうなりますと、どうしてもしり抜けになると言わざるを得ないわけです。片手落ちと言わざるを得ない。この点はいかがお考えですか。
  244. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いまわが国は腹背双方に強敵というか、強賊があらわれておるわけであります。一方には物価問題、また他方には国際収支の問題、この国際収支の問題が、本質的には物価問題よりはさらにさらに深刻な問題になってきておる。昨年は実に百億ドルの赤字を出しておると、こういうような状態であります。ことしになっての動きはどうかというと、一月には総合収支が二十億ドルの赤字である、一カ月であります。  それから二月の動きはどうだというと、これも一カ月で、しかも二十八日で十六億ドルの赤字である。これを年率に換算したら一体どういうふうになるだろうと、このことを考えますと、わが国の国際収支問題、これはなかなか容易ならざるところに来ているのです。  その原因は一体何だと、こういうことを考えますと、基本的には長期資本の流出超過、こういうことが打ち続いておる。昨年百億ドルの赤字、その赤字の中の九十七億ドルは長期資本流出の赤が原因になっておると、こういう状態ですが、これがことしになりますると、さらにその問題が複雑になってきておりますのは、この油の輸入価格が上がってきた、その上がり方が急激であるというので、貿易収支にかなりの赤字を出すようになってきておる。そうしますと、貿易の面の改善というのはこれはなかなかむずかしい。どうしても長期資本収支の調整にもう全力を傾けなければならぬわけです。そういう事態でありますので、いままではいずるを進め入るを制しておったのを、昨年の十一月からこの方針を変えまして、そしてそれをひっくり返しにすると、入るを進めいずるを制すると、こういうような形に政策運営を根本的に切り変えたんです。その効果があらわれてきまして、一月に二十億ドルの赤字である、二月が十六億ドルの赤字であるといいまするけれども、長期資本収支のこの面におきましては、かなりの改善が見られておるわけであります。  そういうようなことで、この長期資本収支、これを改善すると、これは非常に重大な問題になってきておるのです。しかし御指摘のように、資本を取り入れると、外資を取り入れるということは、すなわちそれがまた円に換金されるのですから、これが国内の物価政策とどういうふうに調整されるかということを十分考えておかなければなりませんけれども、この問題は慎重に考えておるんです。つまり、いままあ大体このインパクトローンの取り入れの可能なものといえば、電力会社がおもでございます。電力会社はいまたいへんな資金難です。それでもしインパクトローンの取り入れがなければ、それだけの金を何とか政府も口をきいてこれは調達をしなければならぬ、そういう立場にあるわけです。ですから国内資金全体といたしまして、この電力会社のインパクトローンが、これが取り入れが総資金の供給をふやすという結果にはならない。そのように厳重に指導していくと、こういう考えでございます。
  245. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ですが大蔵大臣、長期資本収支のこの政府の経済見通しから見ると、これは四十九年度が四十四億ドルの赤ということになってますよね。それに対してこのインパクトローンは一億ドルぐらいでしょう、今回のは。まあ三百億円ということになるかもしれませんけれども、そういうことで、それをやるから、長期資本収支を改善したいからといってもわずかな力しかないわけです。それをゆるめておいて抑制政策のしり抜けをするというのでは、これはいまのように電力会社は金はないかもしれませんけれども、これは何か別の方法を考えるべきがほんとうじゃなかったんですかね。
  246. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 国際収支の状態はただいま申し上げましたように非常にこれはもう深刻なんです。これは本質的には物価問題どころの話じゃない、えらい深刻な問題になってきておるわけです。  ですからきめのこまない施策をとりまして何とかしてこれを改善しなきゃならぬ、その一つの方法として着目しているのがインパクトローンの取り入れであると。しかもインパクトローンを取り入れてしり抜けだとおっしゃいまするけれども、決してしり抜けにはいたしません。国内金融政策は金融政策といたしまして、その取り入れによりまして国内金融がふえる分は、国内において注入するこの融資、その面で帳消しにするということを考えておるので、これはもうほんとうに御心配はございませんです。  なお、先ほど私が、一月、二月の総合収支が赤字だと、こういうふうに申し上げましたが、総合収支じゃなくて基礎収支でありましたから訂正します。
  247. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 このインパクトローンの導入されたのについて、これは条件はどういう条件なんですか。利子とかそういった条件であります。
  248. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 条件は、いろいろのケースによって若干バリエーションがございます。しかし標準的なものを申し上げますと、期間は三年ないし五年、金利はある一つのユーロダラーのレート、たとえば三カ月ものであるとか六カ月ものであるとか、そういったものを選択いたしまして、これに対しまして〇・七五%程度を上のせした金利となっております。ただし、借り手が優良な企業である場合には、その上のせする部分が〇・五%程度になることがございます。
  249. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ユーローダラー自体が九%ぐらいついておりますから、そうすると約一割近い金ということになりますね。
  250. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ユーロダラーの金利は変動がわりあい多うございまして、最近の例で申し上げますと、三月七日は三カ月もので八・八七五%、それが徐々に上がりまして十三日には九・〇%。しかし、十四日にはまた下がりまして八・九三七五%と、これはいずれもロンドン市場の数字でございますが、このようにフラクチュエートいたしております。
  251. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ここで日銀総裁に伺いたいんですけれども、金融引き締めの問題でずっとここで論議がされております。まだまだ必要であるという意向が強いわけでありますけれども、現在のわが国で貸し出されているといいますか、産業資金として供給されているのが百五十兆ですか。その中で政府関係いろいろありますけれども、銀行だけの関係で押えていって、民間金融機関だけということが現在は日銀のほうのコントロールになっておりますけれども、財政金融という両方の面を見るというと、やはり政府関係の金融機関、こういったものについても、本来ならば金融は金融全体としての何というのですか、コントロールするといいますかね、そういうほうに置くべきじゃないかと。いわゆる財政支出のほうの、公共事業を出していくとか、そういったことについては、これは政府自身が財政の支出をするのでありますから、コントロールできるわけです。繰り延べでも何でもできますけれども、一方の金融の問題については、どうしても民間の場合と、いま言ったような開銀のような場合とか、こういう場合と、あるいはそのほかのいろいろな農林漁業金庫であるとか、いろんな公庫等がございます。そういったような金融機関全体が、これは民間の金融機関も同じでありますけれども、歩調を合わせたというか、そういうやり方をしなけりゃいけないんじゃないか。そういう意味では、金融は金融、財政は財政としてのコントロールが必要じゃないかと思うんですけれども、その点の考え、基本的な考え方を伺いたいんです。
  252. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま御指摘がありましたように、金融政策というものは全体の調整を目標にして行なわれるべきものでありまして、現在の日本の金融政策の場合、とかくその重点が一般の普通銀行にどうしても置かれている傾向があるということは確かに事実であります。たとえば農業系統機関などにつきましては、いろいろな特殊な事情から、一般の銀行と同じような調整がなかなかききにくいという点がございます。  御指摘の政府金融機関につきましても、やはりこれは政府の統制のもとにありますので、政府が金融政策の上で引き締めが必要であると考えられましたときには、当然、政府関係金融機関の資金供給にもコントロールが及ぶべき筋合いでございまして、これは政府との話し合いで調整は可能でありまして、いま私があげましたような市中の銀行以外のものとは様相が違うと思います。先ほども大蔵大臣から御説明がありましたように、政府関係の金融機関につきましては、昨年の八月以来相当調整が行なわれております。ただ、こういうものは特に開発銀行、輸出入銀行などはプロジェクトごとにいろいろ検討を加えられておりまして、そのプロジェクトが政府として必要であるという考えのもとに行なわれます場合には、その量についてのもちろん検討、たとえば今年度にどれぐらい出すかというような、そういう調整は非常に必要でありますけれども、プロジェクト自身については国家的見地からきめられてしかるべきものだ、こういうふうに考えます。  そういう意味で、私どもは、こういう全体の資金の流れについて包括的に政策を運用すべきであるという考え方には全く賛成でございます。それにつきましては、政府関係の金融機関のほうがまだコントロールがききやすいほうだというふうに考えておるのでございます。
  253. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いま御答弁の中にありました農協あるいは農中金、そういうものがございますけれども、そういったところの系統金融のお金、こういうものについては今回はどういう網をかぶせられているんですか。
  254. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 昨年以来とられてきた金融引き締め政策におきましては、率直に申しまして農林系統金融はしり抜けであった、こういうふうに申して差しつかえないと思うんです。ですから農林系統資金の融資でも昨年一年間で前年度に対して実に倍になる、こういうような激増ぶりであったわけです。  しかし昨年の秋以来、これはしり抜けばいかぬ、こういうので、非常に小さい規模のものはありますが、それは差しおきまして、少し規模の大きな、また多額の固まった貸し出しをする能力のあるような団体からは、その融資状況の報告を求めるというようなことをやってきたんです。しかし、これとてもなかなか適実な効果をおさめ得ない。そこで農林省とも相談をいたしまして、あるいは都道府県知事にお願いいたしますとか、また私どもの財務局を使いますとか、そういうようなことで実地検査をいたす、そうして一般金融機関に対すると同様の規制を進めていきたい、こういうふうに考えましてその用意をいたしておる。いろいろそういう施策が響きまして、ことしになりましてからの農業関係団体の融資状態、これはかなり改善されてきておる傾向を示しております。  なお農業関係の金融機関の貸し出しを見ておりますと、いままで銀行に保証させるわけです。そうして自分のところでは信用調査なんかしないで気軽に融資をする、そういう方法がとられておった。これがかなり影響して多額の融資が行なわれるということになったんだと思いますが、その銀行の保証につきまして、これをみだりに出すことはできない、こういう一般金融機関に対する指導もいたしておるという最中でございます。
  255. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの金融全体の問題と財政全体の問題で、やはり金融財政という両面の締まりがなければ、どうしても効果というのは薄れていく。一方で先ほどのようにインパクトローンでしりが抜けたり、あるいは政府関係の金融機関で中小企業関係の金融機関と同じ程度のものが大企業に向けられているというのでは、これは納得ができないわけであります。そういう点のコントロール、これはどうしても一体となってやっていかなければならないのに、私が見ているんでは、日銀としては民間しかできない、一方は政府だから政府関係だけだ、そういうのじゃなく、金融関係は金融関係で一本にまとめるというやり方が一番いいんじゃないかという感じがしてしょうがないんですけれども、これは総理いかがお考えですか。
  256. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 財政は政府がやるというのは、これはもう当然のことでございます。金融は日銀さんにまかすということで、そういう考え方を貫いておるわけでございますが、政府も、金融に対しては、財政が主体であり金融は補完的だということではなく、財政金融両面から政策に対して責任を負っているわけでございますから、政府が金融行政に対して一切日銀さんまかせというわけにはまいらぬわけでございます。  なぜかというと、戦後、日銀法の改正案が議題になったことがございます。しかし私が十二、三年前大蔵大臣当時提案をして成立を得なかったわけでございます。そのときの新日銀法というのは相当新憲法に即応した、いまあなたが述べられたような面にウエートを置いた改正案であったわけでありますが、ついに成案とならなかったわけであります。いまの日銀法は、食管法と同じように、昭和十七年でございますか、総動員法時代のものでございますから、いまの日銀に対しては確かに大蔵大臣指示できるようになっております。相当部分に対して大蔵大臣が金融を調整できるようなものになっております。  ところが、戦後、急速に金融状態は変わってきたわけです。系統金融機関、雑金融機関というものが出てまいりました。系統金融機関というのは十兆から十二、三兆円の農協資金を支出しているわけでございますし、それからもう一つは政府関係機関の金融がございます。そのほかに雑金融機関といわれておったもの、これが戦後の経済をささえたといわれるぐらいにもう雑金融機関などというものでなくなってまいったわけでございます。これは相互銀行、信用金庫、それから信用組合その他でございまして、非常に大きなものになっています。これがいままで日銀からほとんど金を借りておらなかったということで、日銀の支配力からはずれておったわけです。それで余剰資金の運用に対しては国債を買うとか政府保証債を運用するとか、いろいろワクをはめてきて、同時に、この二、三年来だと思いますが、日銀からも借り入れられるようにということで制度上道を開いたわけでございます。  しかし現実問題からいうと、二兆一千億程度いま日銀の貸し出しがあるわけでございますが、この中で実際は雑金融機関、系統金融機関は全く借りておらない。借りておらないということになると、人も行かないし、支配力がないということでございます。これはやっぱり政府が調整せざるを得ないわけであります。政府が調整しないと——いまの日銀のほんとうのシェアというのはどういうことかというと、三〇%を割っておるんじゃないかと思います。ですから、日銀というものがほんとうに中央銀行としての使命を果たすためにはもっとシェアを大きくしなければならぬということは事実でございますが、非常に産業界も大きくなり、国民の資金も大きくなってまいりまして、昔のように日銀がすべてを統制する、管理下に置くということは制度的になかなかむずかしい状態にございます。政府がやるといっても、政府の中でも大蔵省だけではなく、共管になっている系統金融機関は農林大臣がやるつもりにならなければなかなかできないわけでございます。  そういう意味で、これは長いこといろいろ御議論のある問題ですが、いまのところ、金融は全部日銀まかせ、それから財政は政府主体というわけにもまいらぬわけでございます。日銀法だけではなく銀行法が存在する、そのほかにもまだいろんな法律が存在しているわけでございますので、いまの制度の中で日銀さんと政府が十分に意思の疎通をはかりながら効率的な財政金融の運営をはかってまいるということ以外にはないだろう、こう思います。
  257. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今度は財政のことで、これもすでに指摘があったことでありますが、公共事業費の問題で、大蔵省が四月に予算を決定して以来のことでありますけれども、財政の弾力的執行といいながら、実際は硬直的な政策じゃなかったか。七月のときでありますけれども、一般会計、特別会計、政府関係機関さらに公団、それを加えた当時の公共事業費の総額が六兆九千八百一億円、それの五五・八%を七月のときに契約の目標に掲げている。実際に第二四半期までは抑制をしてきておりますけれども、第三四半期に入ると、四十八年度のこれは対象の経費七兆六百四十一億円のうちの二三・五%を契約した、これは前年度比について一八・二%もふえているということで、これは公共事業というものを抑制してきたけれども、実際は第三四半期に入ってぐっと伸ばしてきてしまったんではないか、そういう点が一点であります。  それから次は、自治大臣にですけれども、国以上に地方のほうが公共事業を拡大してきているのではないか。教育、病院、こういったものだけならわかるのでありますけれども、庁舎そのほかなどについても事業を拡大しているとなれば、これは問題だと思うので、庁舎などの着工については慎むべきだというふうに思うのでありますけれども、その点はどういうふうに指導しているのかを伺いたいと思います。
  258. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 公共事業費の執行につきましては、本年度夏、実行上の抑制方針をきめまして、それでそれを実践してきたんですが、年末に調べてみますと、金額は、お話のように、昨年同期に比べましてかなりよけいの支出をしております。しかし、それを調べてみますと、これは一一%増でございます。昨年の同期の支出額に対して一一%の支出増、そういうことになる。予算は一体どうなんだといえば、御承知のように、実に三二%の増加であった。ですから予算どおり執行せば第三四半期までに三二%増と相なったところを一一%増にとどめておる。これはかなり抑制をしたのでありまして、そういう状態でいま第四四半期を終わらんとしておるわけですが、第四四半期につきましても、暮れにさらに上積みといたしまして繰り延べをやっていくという方針をきめまして、そうしてそれを実践をいたしておる。こういう状態で、年度の執行につきましては、かなりきびしい方針が貫かれてきておる、かように御理解願いたいと思います。
  259. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 昨年の秋に至りまするまでの間に、かなりいま御指摘のような公共事業が地方においても進んでまいったわけでありますが、御承知のような情勢に相なりまして、十一月の二十日にきびしい通達を出しまして、庁舎その他のものにつきましては起債を認めないという措置を講じておりまするので、自来、その点は相当に引き締めの効果があがってきておる、かように見ておるところでございます。
  260. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは自治大臣に伺いたいんですけれども、地方の都市へ行くと、官公需を扱っている業者がかなりおります。その建設業者等に聞いてみると、契約のときに確かにインフレ条項がある。インフレ条項があるけれども、これが厳格に守られていないので、二〇%資材が上がっているのにインフレ条項の適用は三%ないし四%である。こういうことで九千五百万円の小学校の校舎を建てたらば、でき上がったときまでのかかった費用が一億三千万で三千五百万円の持ち出しということになる。そういうことで、実際問題として、じゃインフレ条項を厳格に適用してくれるかといえば、そのうちのわずか三%か四%の三百万ぐらいしか見てもらえない。だから官公需をたくさん持っているところはつぶれざるを得ないということになります。  こういう点で、どうしても必要な教育だとか病院施設、そういうものをやっているわけでありますけれども、このインフレ条項を、東京都のほうはかなりのスライドをとったようでありますけれども、がっちりやらせる必要があるのじゃないか。その点をどういうように指導しているのかということを伺いたいのと、それから建設大臣に、このインフレ条項問題についてどういうふうに考えているかを伺いたいのですが。
  261. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) お答えいたします。  公共工事の発注にあたりましては、資材及び労務の単価は発注時の適正な実勢単価を採用することといたしておるわけであります。特に、価格変動の著しい資材等につきましては、施行地域の実態、これは東北とか北海道とか関東とかそれぞれの地域に即した適切な実勢単価の把握につとめて契約をしておるところであります。また、契約締結後の資材価格及び労務賃金の上昇に対処するため増加した工事費につきましては、発注者、請負者双方の公平な負担を考慮して、これまでに昨年の九月には鋼材の値上がり分を発注者が負担する措置を講じたことは、御承知のとおりでございます。また、本年一月になりまして、ただいま仰せのような声も昨年の暮れに業界から出てきたものでありますから、その他の主要資材——鋼材以外の主要資材及び労務費の値上がり分を発注者が負担する措置を講じた次第でございます。これらの措置によります所要額は、現在それぞれ確定作業中でありますのではっきりした数字はつかんでおりませんけれども、値上がりによって増加した工事費の相当部分は発注者が負担して、業者が全部まるまるかぶっておるというようなことはございません。先ほど御指摘にあったよりも大体五〇%前後のめんどうは見ておれると、こういうふうに考えておる次第でございます。また、今後につきましては、資材価格の動向を十分見きわめながら対処していきたいと考えておるわけでございます。
  262. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 自治省といたしましては、地方のいろいろなそういった状況について十分正確に把握をいたしておるわけではございませんけれども、地域によってかなりの違いもあるようでございます。しかし、最近における建築資材等の高騰によりましてかなり難渋をいたしておることも私どもも承知をいたしておるわけでありまして、その点につきましてはどうしても実施をいたしていかなければなりません公立文教施設その他等につきましては起債その他の方法をもちまして地方団体に事業の実施が事なく行なわれるように協力をいたしておるところでございます。
  263. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 実際にはそんなじゃないですよ、私もつい最近聞いたばかりなんですから。もう、一つの官公需を九〇%以上持っているところは大きな工事を一つやったらば青息吐息になってしまって会社は左前になるというのがほとんどですから、これは重大な問題だと思うのですね。幾ら行政のほうだからゆっくりしているのでございますといっても、指名業者をもらったからといったってやっていけなくてみなが失業するようじゃ話になりません。そういう点では実際の効果というのは、まあ大臣のほうで指導しているかもしれませんが、何にもありませんです、これは。実際はそうですよ。そういう点はよくわかっておいていただきたいと思うのです。  ここで私はぜひ伺いたいのは、いわゆる超過負担問題等もあるからこれはよけいまずいのじゃないかという感じがするんです。今回の予算を見ても、補助率は二分の一とか三分の一とかわかりますけれども、それについての補助単価というのは一体どこに入っているか、全然わかりません。当委員会で要求した資料の中には若干ございますけれども、予算の中には補助単価が幾らだということだけは出てこない。総ワクとして社会保障費が何%伸びたとか、そんなことはわかりますけれども、そういう大きいワクも大事ですけれども、その積算の基礎になっているような補助単価、こういうものがわからなくてはこれは補助率が適正なのかどうかということも全然見当がつかないわけです。  具体的な例をあげると、厚生省の社会福祉施設の整備費補助金、これが四十八年度で北海道が七万四百円、東京、大阪が六万七千円、その他が六万三千七百円、こういうふうになっておりますけれども、この金額は四十八年度のときには全然予算の上には出てこない。執行の上で運用されたということです。ですから、建築資材が高く上がってきた、こういうときに、はたして十分な施設が建つか建たないかということは予算の上からだけではわからないわけです。ただ補助率だけ、二分の一とか三分の一というような、こういうことであったらばこれは実際にできるかどうかということはわからないわけです。いまの一つの例でも、二分の一ならば三万五千二百円であるというようなそういうことも出てこない。建築単価もわからない。また、文部省の校舎の建設の単価でも同様です。四十八年度が鉄筋で一平米当たり四万二千五百円、この二分の一、三分の一を国が補助をする。これが四十九年に六万一千七百円というふうに上がってくる。まあそういうように改定されたとかされないとかと聞いておりますけれども、予算の中に一つも書かれていない。こちらが要求しなければ検討資料が出てこない。こういうことで予算の審議がよくできるものだということになるわけです、はっきり言って、奇妙なことでありますけれども。こういう点で、積算の内容がはっきりしない予算というものをどうして国は出されるのかということ、これがふしぎでならないこと、これが一つ。  それからはたしてその状況できちっと建設できるかどうか。実際問題としていまのような金額で建設ができるわけはないと思うのですね。  その点について、前段の問題はこれは総理にぜひお伺いしたいと思います。後段の問題は、担当の省からお願いをしたいと思います。
  264. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 積算根拠を示せということは間々言われるのでございますが、積算根拠はなかなか示すわけにはまいらないわけです。これは行政府をまあとにかく信用していただくということ、そういうたてまえになっているわけです。まあ行政府は長い間の積み重ねによりまして実積と経済見通しもつけておりますし、それによって労賃や物価がどう上がるかということを見通して予算を計上しておるわけでございまして、その四分の三、三分の二、二分の一ということでもって補助率も計算をしておるわけでありますから、普通ならこういう問題は起きないんです、普通なら。今度は異常な事態であるので、一回も二回も、ものの重要度によって単価補正を行なっておると、こういうことでございます。重要度でないとかというわけじゃありませんが、ものの緊急度によってどうしてもやらなければならぬものに対しては、学校とか病院とかというものは単価補正を行なっていく。その他のものはどうかといったら、これは全部が全部やってしまうということも一つの手でございますが、しかし、物価が上がっているのですから、これは物価抑制のために次年度に繰り越すということも弾力的に運用をしてしかるべきでございますし、また、そうなっているわけでございます。  これは、そうでないと、普通のときですとどういうことかというと、国損を来たさないというために、公入札制度をとるべきである、指名入札制度もいかぬ、もちろん特命制度はいかぬと、こういうのが国費支弁に基づく事業を執行するための原則としていままでずっと論じられてきたわけでございます。ですから、ほとんど公入札にしなさいと、こういうことであります。安いことがいいんだと、こういうことでございましたが、しかし、安いといっても、なかなかその指名に入るためには、一つや二つたたいて、ただでもいいんだという、一万円入札があったわけです、御承知のとおり。東宮御所は一万円です——十万円ですか、一万円ですな、一万円入札。これは昔からあるんです、こういう制度は。指名業者となるためには一つや二つ家を売ってもとにかく権利を取ろうと、こういうことになります。そうすると、国損というよりもそれはもう社会的秩序を乱すことであるし、そういうものはいけないというので、ローアーリミット制度というものをとって線を引こうということになったことも何年も前の話じゃないわけであります。  ですから、まあ去年ことしはこれは異常なものであって、これはやはり物価を抑制するということと、そして公共事業は適正に執行しなきゃならないということ、それから違法行為というような、とにかく三分の二を補助すると言っておりながら実勢からいえば二分の一補助にもなっていないじゃないかという不信感を起こさないような幾つかの問題を調整してやっぱり予算執行の適正をはかっていかなきゃならぬと、こういう観点において予算が組まれておるわけでございまして、これ全部予算の積算根拠を公開すると、これはもう秘密会なら当然お出しをしなきゃならぬ問題でございますが、これもそうしたら一体だれに工事をやらせるか。入札も何もなくなるわけです。みんなあからさまになってしまうんでして、予算はこう組んでございますからといったら、これは抽せんでもやらなければ工事の業者をきめられないと、こういういろいろな問題がございまして、予算の積算根拠は予算書には明らかにしないと、こういうことになっているわけですから、これは言わずもがなのことでございますが、そこらは大蔵省もものわかりよくこのごろ二回も三回も単価補正をやっている、明治から例を見ないほどのものわかりのよさをやっているわけですから、そういうところはひとつ御理解をいただきたい。
  265. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 予算書に公共事業にかかわるいろいろな規格の計算の単価を掲記せよと、こういうお話でございますが、これは、たとえば、道路でありますとか、治山治水でありますとか、あるいは災害だとか、そういう種類のいわゆる一般公共というものにつきましては、とうてい単価計算ができないんです。これはその公共事業を執行する環境というものがそれぞれみんな違います。それからその目的によりまして工法が違う。そういうようなことで、まあ腹づもりとしてはこれはこのくらいの単価かなというようなこともありましょうけれども、これを明確にするというのは非常にむずかしゅうございます。そこで、金額で示しておいて、まあ予算が成立してから個所づけでありますとかまた具体的な計画を検討して、そうしてこれを実行すると、こういうことになる。ただ、文教でありますとか、あるいは社会福祉であるとか、そういうものになりますと、特に学校なんかになりますと、一つの規格がありまするから、これは統一的な単価、そういうものがわりあいに考えられやすいのであります。現に、ことしの昭和四十九年度の単価につきましては、四十八年度の四五%増しと、こういうふうにしているんです。これは超過負担解消ということも含めての四五%でございますが、そういう全国的同一規格のものについて単価を予算に掲記することができるかできないかですね、この辺はなお検討はしてみまするけれども、ただ、今日の激動の経済情勢のもとにおきましては、単価計算というのはほんとうに自信をもってできないと、こういう事情もあろうかと思うのです。しかし、まあそういうでき得る範囲内においてのことというような意味合いにおいて何かできることかどうか、その辺のことについてはなお検討してみると、こういうふうに御理解願います。
  266. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理はなかなか公開の困難な話があったんですが、憲法の規定の七十三条、八十三条、予算の提出の義務と財政の民主化ということがはっきりいわれているわけですから、国民のだれにもわかるようなそういうような予算というものになってこなきゃならないわけですから、その点はよろしくお願いをしたいと思います。  次に、今度は昭和四十九年度予算のつくられたときの基本になった経済見通しについて若干伺いたいと思うのですけれども、これは、総理、正確にこれが執行できるというように、こういうふうになっていくというように、そうお思いでございましょうか、それとも、ただの努力目標というように思っていらっしゃるのでしょうか。
  267. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 詳細に対しては経済企画庁長官から答弁をいたしますが、経済見通しを明らかにしておいて一体これに対して自信を持つかと。これはもう、経済見通しをもとにして予算は積算をされたものでございますから、この予算執行の過程において、この経済見通しというものが招来できるように努力を続けてまいらなければならないということは当然のことでございます。しかし、経済見通しでございますから、予想したものでございまして、去年のような国際物価高要因というようなもので予想し得なかった事態も起こって、二回も三回も単価補正を行なわなければならなかったという事態も起こっておるわけでございます。しかし、それでもなお相当なものでございますから、これからの政策運営にあたって慎重を期して、経済見通しに近い事態、平穏な事態というものをこれから築いてまいらなきゃならないというふうに努力をいたすべく考えておるわけでございます。
  268. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 努力目標としての性格だということが大体わかってきたんですけれども、この中で特に国際収支、まあその中で特に貿易収支について伺いたいんですけれども、四十九年度の輸出総額が四百七十一億ドル、輸入が四百三十七億ドル、そして貿易収支の黒字が三十四億ドルという金額、こういうものがこれには示されておりますけれども、その根拠を伺いたいんです。
  269. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 申すまでもなく、わが国の貿易輸出入は毎年非常な伸び方をいたしておるわけでございます。昭和四十七年度ごろは輸出の伸びが異常でありましたために、非常に大きかったためにばく大な輸出超過、外貨資金の流入がありましたこと、申すまでもありません。ところが、四十八年度になりますと、その様子が変わってまいりまして、むしろ輸入のほうが多くなったというようなことでございまして、貿易収支の黒字は小さくなりました。お話の明年度になりますと、これは申すまでもなく石油原油の価格上昇等もございますので、そういう面だけを取り入れましても、輸入の額は御指摘のようにこれは四百億ドルをこえる金額になります。しかし、またわが国は原料を輸入して製品を輸出する国柄でございますので、石油化学製品をはじめとして、その他鉱工業製品等の輸出価格も上がってまいりますので、   〔理事吉武恵市君退席、委員長着席〕 輸出ももちろん伸びる、こういうことに相なるという考え方のもとに輸出と輸入も伸びる。したがいまして、若干のやはり貿易上においてはことし、四十八年程度の黒字は残すと、こういう考え方、しかし、長期資本収支などにつきましては、一昨年も昨年も非常に大きな外貨の流出がございましたので、来年度はそれを筋の通るものは外貨の持ち出しも認めるが、筋の通らないものは押えますし、また筋の通るものは、先ほどもお話に出ておりましたけれども、外貨の起債を認めるというような方向もとりまして、長期資本収支は大いに改善をさせると、こういうことにいたしまして、この見通しにおきましては、まあ基礎収支につきましてはかなりの赤字は残ると思いますけれども、その赤字の残り方というものは、四十八年度の見通しに比べますとかなり改善をされる、こういう前提でつくっておるわけでございます。
  270. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大蔵省からとった通関統計ですけれども、この通関統計によりますと、昨年の一月から十二月までその輸入総額が三百八十三億一千万ドルということになっております。それに対して三カ月間ずれてきますけれども、四十九年の四月からということになりますと、片一方が一月から十二月までですから三カ月ずれてきますが、四十九年の四月から三月まで、つまり四十九年度の通関輸入の総額が経済見通しでは五百二十六億ドルという見通しができている。そのおもな要素である石油については、いま石油の問題もちょっと長官から話がありましたけれども、昨年は通関統計で五十九億九千万、約六十億ドルになっております。ことしは一体どうなるというお考えでございましょうか、石油の輸入のぐあいから見ると。
  271. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 数量的には原油の輸入が昭和四十八年度とほとんどあまり違わないと、こういう前提に立ちますが、価格の面におきましては申すまでもなく高くなってくるということで、私どもはまず四十九年度には原油の輸入支払い代金百五十億ドル程度と、こう見ております。
  272. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その長官の答弁のとおりに、これは大蔵省で出している「ファイナンス」という雑誌の中に、今永さんという方が四十九年度には百五十億ドル程度に増大すると言っておりますが、それが基礎だと思ったのですけれども、昨年の輸入の総額が先ほど申し上げた三百八十三億ドルです。それから六十億ドルという石油の輸入分を引くとだいぶ少なくなってくるわけです。これに対して四十九年度の輸入の総額の見込みがいま五百二十六億ドルというのが経済指標にある。それから百五十億ドル、しかし、実際にはまだ上がりそうですから百六十億ドルぐらいになるのじゃないかと見られますから、その石油輸入分を引くと三百六十六億ドルです。輸入総額三百八十三億ドルから六十億で、三百二十三億ドルですね。四十八年が、昨年の一月から十二月までの輸入総額が、石油を除くと三百二十三億ドル。四十九年度の予想が五百二十六億ドルですから、そこから百六十億ドル引くと、三百六十六億ドルです。そうすると、ほんとうにわずかしか輸入は伸びないということになります。石油を除いた部分になると少ししか伸びないということになってくるのですが、これでいいのかどうか伺いたいのです。
  273. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) もちろん、いろいろな見方はございましょうが、国際収支全体という立場に立ってみますると、明年度の過程においてわが国の外貨準備がゼロになるとか、輸入がはなはだ多くなって非常な、数十億ドルあるいは百億ドルに近い輸入超過を起こすというようなことは私どもの政策目標として考えないということが一つと、もう一つは、石油は上がりますけれども、その他の物資につきましては、何しろ総需要を抑制するというたてまえを堅持をいたしますから、数量的にも輸入数量というものは減る、また価格の上昇というものも石油と同じような状況で伸びるものとは考えておりませんので、鈴木さん御指摘のように、石油を除いたものについては、輸入の数量あるいはそれに対する支払いドル額というものは、四十八年度の増加割合のような割合にはふえないと、こういう差し引き計算、こういうことでございます。  なお、最後に一言申し上げておきますが、総理大臣ことばとこれはまた違った表現ですが、同じことなんですが、経済見通しというものはほったらかした見通しではございませんで、経済見通しと明年度経済運営の基本的態度と、こういうのは対になっておりまして、私どもはそういう経済運営のもとにおいてこういう経済見通しを立てるのだと、こういうことにも御理解をいただきたいと思います。
  274. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 四十八年度と四十九年度を比べて、石油を除いた輸入額の増加というものは四十三億ドルか三十三億ドルかというくらいしかないだろう。それしか増加してこないわけです。それだけが増加ですから、そうすると、それは一三%か一〇%ぐらいの伸びで、石油を除いた物資の輸入というのはその程度の伸びでとまるかどうかということは非常にふしぎなんです。通関統計で見ても、四十七年と四十八年の一月から十二月までの一年間の比較で、輸入の総額では六三%伸びておるわけです。そういうことで、それが今度は一三%程度になるということは、これはどう考えても、昨年の伸び率の六分の一しか来年は輸入はしないと、金額的に。それしか伸びは見せない、六分の一の伸びしか認めないということになるんですが、これでまかなえると思っていらっしゃるんですか。いまはこれは努力をしてちゃんとする、経済運営の基本的態度だからちゃんとそれでやるんだと言うんですけれども、はたしてできるかと。これは空理空論じゃないですか。
  275. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 鈴木さん御承知のように、輸入の総額におきましては二十数%伸びると見ております。そのうちで、先ほど来お話を交換いたしておりますとおり、伸び率のうちかなりのものを原油の輸入の伸び率に食われますので、残りの分は、お話のとおり伸び率がそんなに多くならないと。しかし、その理由は、数量が減ったり、また輸入価格石油ほどには上がらないということ、申し述べたとおりでございますが、もう一つ通関統計と違いますところは、この計算におきましては、IMFの計算がそうでありますけれども、輸入はFOBということで乗せておりまして、その間の運送費、保険料というようなものにつきましては、それは貿易外の支払いということで計上をいたしておるたてまえになっておりますので、そこでも若干の数字の食い違いがあることも、まあこれはこまかいことではございましょうけれども、一応御承知おきをいただきたい、かように思います。
  276. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それはそうかもしれません。FOBとCIFの違いがあるかもしれませんけれども、それはいわばほんのわずかなことですよ。ですから、四十八年の輸入の増加の特徴は食糧品ですよ。これが輸入増加したり、数量がふえたということで値段が上がったと、もちろん木材、鉄などのいろいろ原材料の問題がございます。そういう点から見ると、どうしてもこれは一三%なり一四%しか前年に比べて輸入がふえないなんということは、どう考えても考えられないわけですよ。  じゃ、一体一バーレル当たり幾らぐらいと見込んで今回は立てられているんですか。
  277. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) FOBではアラビアンライトという標準もので九ドル余りと、こういうことに一応考えております。
  278. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 平均一バーレル当たり九ドルと、こういうふうにアラビアンライトで見たと言うんですけれども、十二月がバーレル当たり約五ドルであった原油が一月に六ドル、二月上旬が十ドル七セント、一月に比べて六六%も高くなっているということがあるんですけれども、そうすると百五十億ドルという見込みでは済まないんじゃないですかね。いかがでございますか。
  279. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 四十八年度のFOBにおける原油の輸入支払い代金というものは、これはもうすぐ実績も出るわけでありますが、私どもは七十億ドルぐらいに見ております。
  280. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 どちらにしても、百五十億ドルでも済まないだろうとなれば、早晩、四十九年度の経済指標は、見通しは完全にくずれてくるだろうというふうに思います。  次は、輸出について、四十八年の通関統計から見ると、三百六十九億ドルで伸び率が二九・一%、その伸びたのは金額で八十三億ドル、四十九年度の見通しですと、通関ベースで四百八十億ドル、昨年に比べて百十一億ドルの増加、伸び率で三割伸びるというふうに見ておりますけれども、原油価格が上がった場合、上がって、輸出の競争力も落っこってくるわけですけれども、それについて、この輸出の見込みは達成されますか。
  281. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) 御説明いたします。  輸出に関しましては、これだけ伸びることを見込んでおります。数量では五%ぐらいを見込みまして、残余は価格が上がるということを見込んでおるわけでございます。数量が五%伸びるということをはじきました根拠は、来年度の世界の貿易の数量の伸びと大体同一であろうということでございます。それから価格につきましては、現在非常に強含みでございますので、ほぼ、この程度の輸出は十分達成できるというふうに考えております。
  282. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 輸出製品の価格が非常に高騰しているわけですね。上がっているから輸出が増加されていくと。三〇%上がれば、それだけ品物が減っても、五%や六%品物の輸出量が減っても価格では伸びてくるわけですから、そういう価格高騰による輸出増加という傾向、これがこれからだと思うんです。これは軽視できない。で、日銀が二月十二日に発表したのによりますと、主要国の卸売り物価の動向でも日本が最高で、一月の時点で三四%、イタリアが二二・二、米国が一八・二、フランスが五・八、英国が一〇・二、西独が八・五というようになっております。そういうことから見ると、西独の約四倍ということで日本が断然トップという高い上昇率になっているわけですけれども、こういうようになりますと、輸出はふえても量は伸びない。喜んでおられないですね、これでは。だから、そういう輸出構造がこういうように変わってきたということと卸売り物価が非常に高騰したという問題、こういう両方の面から見ても、これは日本の輸出の内容というものは完全に変わってきたというように思わざるを得ないわけですけれども、その点、総理はどうおつかみになっておられますか。  それから早晩この経済見通しの改定をしなきゃならないときがくると思うんです。当初からくずれることがわかっているような感じなんですから。その点、いかがお考えですか。
  283. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 経済見通しにつきましては、先ほど経済企画庁長官が述べましたとおり、経済の運営とあわせての問題でございますので、その見通しに近い実績をつくってまいりますように政策努力を続けてまいりたいと考えております。  いまの輸入の問題は、これは四十六、七年度が輸入は非常に少なかったという問題で、対前年度比の伸び率は輸入は非常に多くなっているということが一つございます。これは数量的にも多くなっているということがございます。もう一つは、農産物価格引き上げ引き上げと言うよりも、世界的な食糧不足という問題があったわけです。これは中ソというような大口の需要があったという特殊要因がございます。そういうものでもって上がったということで、異常な値上がりをしたわけです。第三は石油の値上がり、ということが三つも重なったということが輸入の増高ということになったわけでございますが、ことしは、そういう意味で、引き締め政策ということとあわせて——輸入は一−三月はまだ相当伸びております。伸びておりますが、相当な減少を来たすであろうということは考え得るわけでございます。輸出は、御承知のとおり、国際的な市況の状況から見まして、確かに輸出をすれば出るということでございます。ですから、数量は五%増しぐらいであっても、実質的には輸出はその目標達成は十分できるという考えです。石油の量の問題が問題だったわけですが、石油の量さえ確保できれば、いずれにしても、いま日本に対する輸出の要請は非常に強いわけです。これは肥料などですが、六十万トンないし七十万トンの要請に対して、現在きめておるのは三十万トン、上期の分しかきめておらぬわけであります。六、七月以降のものは石油の入荷を待たなければ契約できない。そんなことになったら、一体東南アジア、ASEAN諸国の食糧問題はどうなるんだという問題でたいへんでございます。同時に、日本から塩ビや原材料が送られなかった場合の——日本の原材料を三五%ないし九〇%使っておるものがたくさんあるわけです。これらの工場は全面ストップするおそれがあるということで、価格の高騰もさることながら、とにかく原料を供給しなければならないという問題があります。また、シンガポールに対する原材料の供給もございます。ですから、向こうはナフサは日本には供給します。そのかわりに日本に要請しておるものはお互いに供給を確保しようというようなことで、輸出に対する見通しに対しては、そんな大きな狂いはないということを考えております。  いまあなたが最後に指摘された、しかし日本の卸物価は非常に列国よりも高いので、そのように輸出ができるのかどうかということでありますが、いまの状態からいうと、国内価格が異常に上がっておるということであって、輸出価格は非常に好調であります。一例を申し上げると、鋼材丸棒等においてはトン当たり二万円から三万円違うわけです。しかし、それで輸出ドライブになって国内のとにかく建築資材や公共事業の資材が高値安定になっては困ると、こういうことでいま通産省に調整をさせているわけですから、そういう意味で、四十九年度の輸出というものはもっと大きくなるだろうという感じはいたします。ですから、大体合わせて九百億ドルぐらいになるんじゃないかなあという立場で計算ができると思うわけでございます。
  284. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ここで物価問題でちょっと聞きたいんですが、これは総理に伺いたいんですが、労働省の調査だと、一月の実質賃金が前年同月比で四%減少している、こういう結果が先日発表されております。これは、現在のインフレが国民生活を極度に圧迫したという一つの証拠であるということは間違いないと思うんですが、この点の四%の減少ということを総理はどう受けとめているか。相当深刻にこれは受けとめなければならない問題だと思いますが、いかがでございますか。
  285. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 深刻に受けとめております。受けとめておりますが、これはまあ主要国の賃金上昇の問題と、賃金と物価とめ上昇の比較とか、経済成長と賃金の比較とか、名目と実質との賃金成長の比較とかというものは、これは過去十年間見ますと、これはもう最高でございます。アメリカの一・七に比べて日本が三・八、イギリスの二・八、西ドイツの二・三——ずうっと比べてみても、日本が十年間はるかに高いわけでございます。これは、物価の上昇比率から見ても、消費者物価が一・八に対して賃金は三・八というふうに、これはもう他の国の二%程度というものから比べて約倍近く上がっているわけでございます。それから、実質的なGNPの伸びに対する賃金につきましても、一%ないし三%である九カ国に比べて、日本が三・八倍ということでありますから、これは、そういう意味では、物価問題に対してもいろいろな問題に対しても、十年間を比較をすると非常によくなってきていることは事実です。それに対して、国民所得に対する租税負担率を見ますと、スウェーデンの五七・六に対して二四・一%ということでありますから、その意味において、十年間で異常な状態ほどまあとにかく日本経済は上昇をしてまいりまして、賃金も国民所得も上昇してきておるということは事実でありますが、過去のことはさておき、いまはどうかというと、いまは御指摘のとおりですが、憂慮すべき状態であると。これはしかし恒常的なものにしてはならない。異常なものであるので、あらゆる施策を行なうことによって水ぶくれを取れば相当なところまで物価を鎮静せしめ得る。またこれを、いままでの状態が一年間も続くなどということを考えておったら、この十年間の働いたものも水のあわということになるおそれもありますし、スタグフレーションという問題も起こってまいります。そういう意味で、懸命なる努力を続けておるということをひとつ御理解いただきたい。
  286. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 企画庁長官、この四%減少という結果について、一月は休日が多く、所定外の使働時間の縮少で手取りが減少したと。減少したが、賃金の水準が落ち込んだのではないという、こういう意味の発言をされたということなんですけれども、それでは二月、三月の実質賃金についてはどういうふうにお考えになっておりますか、見通しは、いま。
  287. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 鈴木さんおっしゃられましたとおり、一月は勤労日数が休日の関係が六日までございましたので少なかったというようなこと、それから何しろ石油関係等で鉱工業生産等の伸びがほとんどなかったというようなことで、総賃金収入というものは少なかった。そこへ持ってきて、十二月、一月というようなものは物価が上がりましたので、ああいう四%の賃金実質収入の下落というような数字が出たと思います。しかし、私が調べてみまして、十一月十二月等、最も物価が上がっておるときにおきましても、賃金の実質収入は落ち込んでおりません。これは私の希望でもありますけれども、願いでもありますけれども、物価の上昇率が停滞をしたり鎮静をいたしてまいってきておりまするし、また私どもは、一方においては、もちろん総需要の抑制はいたしますけれども、物価を下げるためには必要なる物資はやはり生産をふやして需給を緩和すると、こういうことも必要だと考えておりますので、二月以降におきましては、一月のような減少がなしに、勤労者の総賃金収入と物価の割合が改善されることを私は期待をいたしておるわけであります。  もっとも、これは私も述べたんですが、所定外賃金というものは、物価の値上がりにもかかわらずふえておりますし、また一時間当たりの賃金収入というものも、物価の上昇にもかかわらず、ふえておりますので、賃金収入と物価関係が逆になって実質賃金が落ちるばかりの傾向にこれからなると、こうは私は思いたくないし、そういうことにならないように、何しろ経済企画庁でありますから、賃金が落ち込んでもいいというようなことは全く考えておりませんので、そういう動きにも十分注意をいたしてまいりたいと思います。
  288. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 所定外の労働、そういうものがあるからという話なんですけれども、これは労働大臣、聞くところによると、三月の実質賃金は前年同月比で八%から一〇%も減少するんではないか、そういう可能性が非常に大きいという意見がたいへんにあるそうでありますけれども、そうなったら非常にたいへんなんですけれども、その点の見通しはいかがお持ちでございますか。
  289. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) まだその推定は聞いてもおりません。そこで、先ほど総理もお答えいたしましたけれども、こういう時期でありますから、特別に勤労者用の生活関連物資、こういうものの価格政策というものを強力に推し進めるようにお願いもし、また内閣全体が取り組んで、勤労者の生活安定に懸命に努力しておるところであります。
  290. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この辺で、総理がいままでたびたび物価安定のことを言われて、その時期のことも言われてきましたけれども、一度もそうなってこないわけですね。先日も、ここで物価安定について長期になるような話がございました。で、総理の言われる物価安定というのは、このままでいけば中小企業、零細企業はつぶれ、実質賃金が引き下がってくるというようになって、国民の描いている物価安定とどうも違ってくるんじゃないかという感じを持ってならないわけでありますけれども、その点はいかがでございますか。
  291. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども申し述べましたが、主要国の実質賃金の上昇率というものは、これは十カ国の中で日本が一番高い、十年間は。これは事実でございます。それから消費者物価と実質賃金の上昇率を十年間とってみましても、カナダは消費者物価一・五に対して実質賃金の引き上げは一・三であり、デンマークが一・八に対して一・七であり、スウェーデンが一・七に対して一・四であり、オランダが一・八に対して一・六であると。フランスが一・六に対して一・六、西ドイツだけがかろうじて、一・四の消費者物価の値上がりに対して一・六の実質賃金が上がっておると。イギリスは一・七の消費者物価引き上げに対して実質賃金は一・一である。アメリカは一・五に対して一・一であると。こういう数字に比べてみると、消費者物価一・八倍に対して実質賃金は二・二になっておるので、これはもう統計上明らかな数字であります。しかし、にもかかわらず、三月一カ月だけとってみますと、御指摘のとおりである、これは事実であります。こんなことが続いておったらたいへんであると。これは先ほど申し上げたとおり、十年間のとにかく積み重ねてきたものが水泡に帰すると、それではなりませんので、こういう予算を御審議願っており、しかもこれから、十年間続いたようなノーマルな状態をつくりたいと、こう考えています。  この点、もう一言申し上げますと、私は、今度、やっぱりいまの状態で、春闘もありますし、これはいろんな見方ありますが、賃金というものはある程度労使の間で引き上げられると思います、これは。賃金を引き上げるには一番いい状況にあるわけです。これからはたいへんな状態になって、経営自体がどうなるかわからぬというような状態でありながら、いままでは便乗値上げでもうけたじゃないか、金はあるじゃないかと、大入り袋を配れるような状態じゃないかと、特殊な企業を除いてはおおむねそういうところがありますから、それで物価が上がってますから、私は賃金を上げるには非常にいいときだと思うんですよ。ほんとうにそう思いますよ。それだから総評でも賃金のことなんて言わないんです。もう上がると思っている。必らず思っているでしょう。だから、ほかの政治的目標を掲げてストライキをやると、こういうことですから、これはもう、大体賃金は上がると思うんですよ。だから、ある程度上がると、その上に物価が押えられれば、これは自民党政府の政策もいいなということに私はなると思うんです。これは自民党の政府のことなんかいいんです。これはもう、いままで十年間苦労してもらって、こういう経済状態を築いたんですから、この異常な事態の水ぶくれをとって、困難であっても、とって、正常化をすることによって、物価は下がった、上がった賃金を下げるわけにはいかぬと、そういう望ましい姿をつくろうと、私はそう思っているんです。ですから、ほんとうにまじめに——いま、もういろんなことを言われておりますが、田中内閣もいいとこあるなと、考えてみたら物価はおさまって、おさまらぬと思っていて上げてもらった、上げた賃金はそのまま据え置きになるということになれば、これはやっぱり相当なもんだというところまで持っていきたいというのが、政府のいまの政策目標ですから、ひとつ御協力のほどをお願いします。
  292. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは、総理の言うように、物価は下がる、賃金が上がるんならいいんですけれども、これはちょっと大蔵大臣にここのところで聞きたいんですけれども、石油の、原油の価格の上昇、こういうことで石油製品価格の値上がり、もうこういうことが始まってくるわけです。通産省が、百五十九品目でしたか、それだけの品目を選定して、小売り価格の凍結というような行政指導ということがあると思うんです。こういうような政府のやり方で、大蔵大臣が、どうもたびたび、新価格体系とか、物価の新体系ということを言われているんですけれども、この新価格体系というのは、どうも原油の価格値上げ、そのほかのことから考えていくと、低いエネルギーの値段でなくて、高いエネルギーの、高い物価による、高限で、高値で安定させるという意味になるんですか。そうなってきますと、これは、いま総理の言っている、物価は下がって賃金が上がるんじゃなくて、賃金も上がるが物価は高値安定するということのねらいになるわけですけれども、これは閣内不統一の観があるのですが、いかがですか。
  293. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私どもが短期決戦と言っておる、これはいまの物価というものが非常に異常であります。これはまあ暮れ——それの前からも続いておりますが、特に暮れをクライマックスとした仮需要の状態ですね、これが異常な物価状態の混乱を引き起こしたと、こういうふうに見ておるんです。つまり、私はしばしば言うんですが、今日の物価というのは物価じゃなくて投機相場である。そういう物価状態が今日ずっと続いておる。これは、私はなぜそういうふうになってきたかというと、皆さんが物価先高であると、そこで仮需要が起こってくる、そうして投機行為が行なわれる、そういう状態が続いて起こってきておると思うんですが、経済の流れをここで変えて、鎮静化ということになれば、先、物価は上がらぬ、持っている、いままで買いだめた人なんかは吐き出す、また、これから先は買いだめというようなことを企業家はする余地がなくなる。つまり、今日の物価というのは相当の水ぶくれ物価です。投機物価である。そこで、この水を抜く手法というものは、これは総需要抑制政策だと、この総需要抑制政策で、経済界を鎮静させれば、水は自然に抜けていくと、こういうふうに思うんですが、ただ、ちょうどそのコースが進んでおるところへ、まあ石油の問題があるわけです。これはもう早晩これは解決しなけりゃならぬというところまで来ております。それからまた、しばらくたちますと、春闘という問題がある。そういう阻害要因、これを乗り越えて、この総需要抑制政策というものが進まなけりゃ、この物価問題は解決されないんですが、とにかく水を抜く。また、一方におきまして、コスト要因、特に賃金問題、こういう問題、春闘問題というものがある。その辺がどういうふうになっているかということで、しばらく推移するでありましょうが、とにかくもう先高だと、そういうようなことで仮需要が起こるような状態は、これはもう二、三カ月中に解消すると、こういうふうに見ておるんですが、その後、私はまあいまの石油問題のしりというものが、電力あるいは私鉄運賃問題というのが控えておる。秋には国鉄運賃改定問題というものが控えておる。そういうようなものを総合してみますと、やはり水抜きをしたという要因と、そういう引き上げ要因との調和というものがどの辺になるか、そういう問題が起こってくると思うんです。その調整をとりました新しい状態の上に立った価格体系というものが、下半期には——下半期というか、上半期、下半期の候には、これは形成されていかなけりゃならぬ。それが形成されたあとは、これはもうきちんとまた総需要抑制政策というものを堅持してまいりますれば、もう物価というものは——海外要因はこれは格別です。ですから、まあ大体安定すると、そういうふうに見ておるんでありまして、決して私の意見が閣内で一人違った意見というんじゃないんです。大方の方がそういうふうに見ておるというふうに考えております。
  294. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それから、先日税制調査会の東畑会長が、いまの物価高騰の前には、田中内閣の目玉商品であった二兆円減税の影も薄れたと、物価のいかんではこれではすまないということを言われて、追加減税の必要があるというようにほのめかしているんですけれども、もし物価がさらに高騰をするというようなことがあれば、これは当初の二兆円減税を——まあ高騰しなくたってもっとやらなけりゃいけないと思うんですけれども、変更することもあり得るかどうかを伺っておきたいんです。
  295. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま、私どもは経済の見通しに従いまして予算を編成し、先ほど総理からお話ありましたが、この見通しを何とかして実現をする、そういう考え方の上に立っておりますので、今日、とにかく史上最大、あの大規模な二兆円減税、これをやったその年に、さらにその上乗せをして減税をするということは考えておりませんです。
  296. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ここで、物価の問題で、薬価の問題で伺いたいんですけれども、住友化学工業で製造されているフェナセチンという名前の薬がありますけれども、この薬の用途と、薬価基準は幾らでございますか。
  297. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) フェナセチンは、日本薬局方に収載されておりまする解熱、鎮痛剤でありまして、アスピリン、カフェインなどと配合して繁用されております。で、この薬は、住友化学など、二十社で生産されておりまして、この二月一日改定いたしました薬価基準は一グラム一円三十銭、従前は一グラム九十銭だと承知しておりますが、新しい薬価基準においては一グラム一円三十銭、こういうふうに承知いたしております。
  298. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この薬価基準を大幅に上回った売り値が出てきたときには、これはどういうふうに行政指導を厚生省としてはなさるんですか。
  299. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 二月一日に薬価基準の改定をいたしました。で、薬価基準に登載いたしておりまする規格と申しますか、薬品の規格は、大体七千——八千近い品目にわたっておるわけでございまして、この薬価基準は、昨年の十一月末における自由なる取引における実勢価格、それを基準としてきめておるものでございますが、そこで、その後薬品の中には、御承知のように石油化学製品を原料としておるものもありますので、あるいは一部上がっておるもののあることを私は承知をいたしております。そこで、先般来、実はこの七千の品目全部を洗うというわけにもまいりませんので、医療機関その他の方々の御意見等も、注文等も聞いておりますが、大体大ざっぱに申しまして、七千七、八百の薬品のうちで、薬価基準、すなわち実勢価格が薬価基準よりも高まっておるものは大体百品目くらいあると承知しております、百品目。しかし、その百品目のうちで、あまり使われない稀用の薬は別として、しょっちゅうふだん利用されておりまするアスピリンとか、その他そういったふうな繁用されておる品目は、大体十品目から二十品目と判断をいたしております、繁用されておりますのが。そこで、これに対しましては、私どもはこういう際でございますので、しかも今回二月一日に改定したばかりの薬価基準でございますので、この薬価基準の範囲内にとどめてくれというので、生産会社に対して個別に薬価基準の中におさまるように下げてくれという協力方をいま目下いたしておる最中でございます。
  300. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いま百品目という話があったんですが、局方、局方外で、内用、外用、注射薬ということで分けて数量を言っていただけませんか。
  301. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) お答えいたします。  ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、この全部を把握いたしますためには、七千余りの医薬品の全数調査を必要といたしますので、断片的な調査でございまして、現在私ども一応繁用品として把握いたしておりますものが、局方といたしまして九品目ぐらい、それから局方外といたしまして六品目ぐらいのものを一応繁用品として、とりあえず薬価基準内に価格を下げるような指導の対象といたしたい。これは、もちろんそれだけにとどめる意味ではございませんが、医薬品の性格から申しまして、こういったものから順次指導をいたしてまいりたい。そういう考え方で作業をいたしております。
  302. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 行政指導を続けるということであります、また強化するということなんですけれども、私が入手した資料によりますと、四十八年の十月までは、フェナセチンは問屋から病院渡しの価格で一グラム七十八銭です、薬価が九十銭のときに。それが十月以降が一円五十銭、まあ、九〇・二%という大幅な単価の引き上げをしている。ここで一円三十銭になりましても、まだ薬価基準よりも病院に渡される価格のほうが高い。こういう価格操作は一体何が原因なんでしょうか。  それからいま一つは、二〇%のブドウ糖も、同じように十四円のものであったのが十五円に上がってきております。これなども薬価基準を突破しているわけなんですけれども、その点についてはいかがでございますか。
  303. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) フェナセチンが最近上がってまいりましたのは、御承知のように、原料が石油化学製品であるということでございます。それからブドウ糖のほうは、ガラス製品ですね、このアンプルが昨年の七月、八月、非常に上がってきたわけでございます。そういうふうなこともございましたので、二月一日に薬価の改定をいたしたわけでございます。で、薬価の改定をいたしましたときは、もちろんそういうふうに上げたものもありますが、総体的には三・四%、薬全体は三・四%の引き下げを行なったわけでございます。もちろん上がるものもあり下がるものもあり。こういうことで、大体十一月末の市場における実勢価格、こういうものを基準としてきめておるわけでございます。
  304. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その下げたものもあるということでちょっと伺いたいのですけれども、これはペニシリンです、ペニシリンの注射液ですが、工場から出ている値段が三百八十八円、これが今回薬価基準が六百円から四百九十三円というふうに引き下がったわけですね、二月一日で。ところが工場から出ているところの仕切りの値段というものは、三百八十八円が全然変わらないわけです。ということは、いまは四百九十三円に下げられるのに、いままでは六百円でそのままにしていたということは、これは旧価格が非常に高過ぎたということが言えるわけなんです。この辺はいかがお考えですか。
  305. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) 薬価基準は、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、四十七年の八月分を九月に全数調査をいたしまして、ただその後かなり価格の変動がございましたために、特に繁用されます六百ほどの品目につきまして、経時変動調査を行ないまして、大体昨年の十一月ぐらいまでの価格をできるだけ正確に把握して、手直しをしてことしの二月一日から実施いたしたわけでございます。で、これも大臣から申し上げましたように、九百品目余りにつきましては、実勢が薬価基準を上回っておったということで引き上げをいたしておるところでございます。で、薬価基準の作定の方法は、これは先生御案内のことと存じますが、いわゆる九〇%バルクラインと通称言われておる方法によりましていたしますので、薬価基準の範囲内におきましての価格の高下は従来もあるわけでございますし、そういった状況のもとにおきましては、薬価基準の中でいろいろな資材の高騰等に伴いまして、価格がやや上がっておる、従来よりも上がっておるというような例は見られる、これは通常いわゆる医療経済の範囲内におきまして吸収されておるという形のものであろうと存じます。
  306. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この資料で私が見たのでは、請求書に書く金額も、薬価基準改定前も改定後も同じ四百六十八円ですよね。全然変わっていないです。それでいて、工場から出す金額も変わらないのになぜ下がったかということは、いままでもうけ過ぎていたということの一つの例じゃないかというふうにしか考えられないわけなんですけれどね。一つは、ここで私もふしぎに思うんですけれども、たてまえとしては、工場から出てきたとき三百八十八円、それから今度は、それを経過して卸へ本社からいったときに四百九十三円、小売りも四百九十三円、消費者へも四百九十三円と、ここのところは全然もうかっていないような感じにできているわけです。ところが伝票の上では、たてまえは四百九十三円でありながら、卸へいったときには四百六十八円になって、そうしてそこから——請求書の上ですね、四百六十八円になっているのが四百九十三円で、いわゆる薬価基準になっていくわけですから、ここのところがどうも変なんですね。一方では四百九十三円の薬価基準そのままに本社から出たときはもらっているわけです。片方はそのときには伝票は四百六十八円になっている。実際はどうかといえば、一番最低の値引きは四百二十円までできる。小売り段階で四百六十八円にして、消費者へ四百九十三円にするというふうに、いろんな薬ですね、水虫の薬から何からかにからいろいろありますけれども、ことごとくが、そういうようなたてまえの表向きと伝票と実際と三つあるような薬の値段、奇々怪々なものがあるんでありますけれども、この点についてはどうお考えなんですか、どう掌握されておりますか。
  307. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 一般的に申しますと、実勢価格に近いところで薬価基準をきめるというのがたてまえでございます。実勢価格と薬価基準との間に差がないようにできるだけしていくと、これがたてまえでございます。  そこで、下がりましたのは抗生物質等に相当多いんでありますが、実勢価格が低くなっているのに薬価基準が高くきめられているというのが相当あったわけでございます。で、結局、それは言うなれば医者の潜在報酬だなんということを言われておるわけでございますので、そういうふうに薬価基準と合わせるようにという基本で定めたものでございます。したがって、全体的に見ますと、上がったものもありますが、三・四全般的には引き下げたと、こういう形になっております。
  308. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの、そのたてまえと実際と請求書と、三つの違いがあるというようなことはどう掌握しているかということを聞いているんですが、その点の答えがなかった。
  309. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) いま御指摘の合成ペニシリンを例に引いてお話がございましたが、医薬品のメーカーから、卸を通じまして医療機関に入るまでの取引の状況は、やや複雑な過程がございまして、その過程におきましては値のつけ方は御指摘のような点もあろうかと存じます。で、通常、いま四百九十三円とおっしゃいましたのは新しい薬価基準でございますので、おそらく建て値をそれに合わせておるという御指摘であろうと存じます。で、メーカーがつけております建て値は、通常はそれがたてまえ上の販売価格ということで卸に対する指示をするわけでございますけれども、これはもちろん再販でも何でもございませんので、強制力を持つものではございませんで、実際の取引といたしましては、メーカーと卸、あるいは卸と医療機関との間で決済の条件あるいは取引の数量あるいは納入の時期等によりまして、相当千差万別の価格が実際の取引においては形成されておるわけでございます。したがいまして、御指摘のような値の開きというのは相当あるわけでございまして、そのために、薬価調査で全数調査をいたしまして、低いものから順番に数量的にバルクを引きまして、九〇%のところで薬価基準を定めるという方法によりまして現在の薬価基準を作定しておると、そういう状況でございます。
  310. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 時間がなくなってきましたから薬はそのぐらいにして、最後に、えさの問題で伺いたいんですが、これは、酪農の根幹は飼料できまるわけですけれども、その飼料の値段がこの一年間で非常に上がってきております。二倍もの値上がりをしている。ところが、一方で売るほうの豚一つを見ましても、枝肉価格がキログラム当り五百四十円ぐらいであったものが四百四十円という大幅な値下がりをしている。政府の保証価格が、下限できめられているのは三百八十円と、価格安定法ではきめられておりますが、それではやっていけないということで自殺者が出たり、あるいは牛乳を捨てて抗議をしたりと、いろんなことが起きてきているわけです。この畜産危機という最大の問題は、えさの高騰ですよ。一トン当たり平均で四十八年九月に一万三百二十円、四十九年の二月に一万一千三百円、あるいは全農では今度一万一千六百円というふうになってきております。半年間に二回も大幅な値上げをするということ、また三月に全農は六百円上げるということですから、そういうふうに値上げをしたというこの積算根拠がどうもぼくらにようわからないわけです。この点はいかがでございますか。
  311. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 飼料の高騰はお話のとおりでありまして、昨年三回にわたって値上げがございました。一年の間に一万八千円、トン当たり上昇しております。そこで、この原因はもう御存じのように輸入をいたしておりますものが八割以上でありますから、それの高騰、まあ著しいものであります。それからまた円為替レートの変動、それに伴うレートの引き上げ、こういうようないろいろな悪い条件が重なりまして飼料の値上げになったわけでありますが、そこで昨年は、私どもは、えさの基金に対して二百十一億円の繰り入れをいたしたり、それから四分の低利資金で融資をいたしたりなどして、または食管でかかえております古々米の大量放出、しかもこれ、大体約一万円程度で出しております。そういうようなことをいたしまして、去年の高騰についてはできるだけ防いでまいったわけでありますが、またやむを得ずして、ことしは一月に一万一千円値上げをいたしたと、こういうことでありますが、こういう状況に対して、昨年いたしましたようなことを全部やるということはなかなか不可能であります。そこで、もう法律に定められております制度によりまして、三月中には新しく乳価と豚価をきめなければなりません。そこで、これは今月の十一日から畜産振興審議会を開催いたしまして、御存じのように、ここには大体四つの部会がありまして、今日鋭意その飼料部会、鶏卵部会といったような部会で、それぞれの専門家あるいは消費者等もまじりまして、生産者はもちろんでありますが、鋭意検討しておってくれるわけであります。その検討は月末までに出てまいりますので、それを見た上で適正な価格決定いたしたいと思っておりますが、私どもの見るところ、昨日も全国の畜産家の大会がありまして、その決定を農協の会長が持っておいでになりました。それらを見まして、私どもまことにごもっともであるという感じを特つ点が多々あるわけでありますが、そういう審議会の答申を待ちまして、私どもとしては、やっぱり現在のこういう経済情勢を勘案いたしまして、それが価格に織り込まれて、そして酪農家、畜産家の明日への生産意欲を阻害することのないようにぜひ処理をいたしたいと、こういうことでいまやっておる最中であります。
  312. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そこで、いまありましたんですが、私はえさの値段値上げと為替相場との関連で伺いたいんです。今回のは原料費値上げが——これは全農ですね、全国農業協同組合連合会が取り扱っている配合飼料のあれですが、これ、まあ全農が配合飼料の販売シェアが四〇%ですから、まあプライスリーダーということになります。そこで伺いたいのは、二月五日から一トン当たり一万一千円、三月一日からさらに六百円と、こう上がってくるわけです。それが一つには、原料費値上げの製品値上がり額が九千二百五十五円である。それ以外の包装費などの原料以外の値上がり額が二千三百四十五円で、一万一千六百円であると、こうなっていますね。ところが、この九千二百五十五円の原料費の値上げの中で、外国為替の変動による為替の変動で上がったのが四千三十六円見込まれているわけですよ。この四千三十六円という積算の根拠を調べてみると、つまりレートが二百六十五円で前は計算していた、一ドル。今度これを三百八円で計算する。つまり、そうすると四十三円ぐらい上がってくるわけです。そこで、四千三十六円というのはその変動分だというんですから、四千三十六を四十幾つで割れば、大体一円為替相場を動かせばトン当たり百円上がるという計算が出るわけです、大体大ざっぱな計算でいくと。ところが、この全農の計算は一ドル三百八円ということで計算をしている。ところが、現在は為替相場はどうかといえば、十四日、昨日に一ドルが二百八十二円です、銀行間のもので。それから先物相場でも、五月、六月あたりにいって二百九十九円から三百一円というように、五月渡し、六月渡しでそうなってきています。三カ月先の先物相場でようやく三百円程度だということであります。現在は二百九十円ぐらい。そういうことから見ると、いま輸入されたものを三カ月先の先物相場で決済したとしても、三百八円で計算をして売っておいて、そうして三百円でということで決済をすれば、もうそれだけでも先物のままできたとしても八円違ってきます。つまりトン当たり八百円の黒字。一カ月の扱い量が六十万トンと想定されていますから、総額で月に四億八千万円というものが黒字になってくるわけです、全農で。逆に、これがもっと実際に支払うときに二百何ぼということになってくれば、今度は二百九十円台になってくれば、それの倍以上ということになりますから、一カ月に十二、三億円は黒字が出てくるということになる。だから、そうなりますと、これは四千三十六円も外国為替変動値上がり分なんて見込むこと自体が少しでか過ぎるんじゃないですか、この見込み方が。この半分以下で済むんじゃないかということが もうちょっと計算しても出てくるわけです。二百六十五円から三百八円なんというように大幅に為替レートを変えて計算をしたから四千円も上がるということになったんだろうという計算しか出ない。だから、この辺だけでもトン二千円ぐらいは下がるわけだと思うんですよ。この点はいかがお考えでございますか。
  313. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 確かに、四十八年の十一月から十二月のときには二百六十五円で計算をいたしております。四十九年の一月から二月は、つまり今回の値上げ時の見込みは三百八円。そこで、この一ドル三百八円と見たのは、円安のドル高という先行きの見通しをこういうふうに当時はほかのものでも立てておったようでありますが、そこで、この為替相場は、直物について、現在は御指摘のように円高となって、先行きについての確実な予想は困難でありますが、また本年二、三月に使用いたします輸入飼料原料の円決済は三月から五月にかけていたすわけであります。そこで、その決済時に為替がどうなっているかということによって、現在の段階ではいまおっしゃっるとおりで、私どももそう思います。しかし、受け渡しの三−五月になりまして対ドル円がどういうふうになっているかということによって、やはりたいへん左右されると思います。  いま御指摘のように、全農という農業団体の中央会が四割以上を占めておるいわゆるプライスメーカーであり、リーダーでありますので、もちろんこれが、もし円レートがもっと高くなったということで利益が多過ぎるというふうなことになりますれば、当然そういうときにはそれなりの処置をいたすべきであると思いますし、私どももそういうことを考慮して指導してまいりたいと思っております。
  314. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 最後に一つだけ。  いずれにしても、私どもは三百円以上、三百八円なんてなることはあり得ないと思うんですね。もっと安くなると思うんです。実際に畜産農家がもうどうにもならないところに来ているわけであります。さっきのように安定基金、いろいろの問題がありましたけれども、これについても早々に、今度は年度がかわればさっそくにでも出して、もっと援助を与えていくということを考えてほしいと思うんです。  じゃ、以上で終わります。
  315. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもちまして鈴木君の質疑を終了いたしました。(拍手)     —————————————
  316. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 小柳君。(拍手)
  317. 小柳勇

    ○小柳勇君 私も物価問題で質問いたしますが、その私が質問いたします問題を究明するために、その前提として、政府の基本的な考えを三点だけ聞いておきたいと思うのであります。  第一の点は、石油がこのような状態で値上がりをしたものが日本に輸入されてまいります。現在の情勢では、すぐこの石油価格が下がるものとは予想されない。しかも量的にも、現在としては需要が、必要量が上昇の段階にあります。したがって、このような現状で、いまの総需要抑制だけで部分的に物価が安定して、ずっと一応安定して、これでまたそのまま現在の産業構造を維持していこうとされておるのかどうか、この基本的な問題を質問いたします。それは産業構造を変えて、あるいはエネルギーの種類を変えて、近い将来に日本としてはこういう方向に方向転換しなければならぬという基本的な考えがあっていまわれわれ予算審議をしているのかどうか、こういうことを聞きたいので、その基本的な問題について、まず経済企画庁長官からお聞きいたします。
  318. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 原油が上がれば石油の製品価格を上げなければならない、それが上がればもろもろの物価に影響するというようなことをそのまま放任するといたしますと、物価全体の底上げになりますので、私ども政府といたしまして物価の鎮静に苦労しておりますことが全く無益になるわけであります。しかし、また無理をいたしまして、これは正直のところが、原油というようなわが国の経済に支配的な影響を持つものは、外国の事情で上がってまいりましたものを、これを押え込むと同時に、他の物資も全部押え込むということになると、はたして日本経済というものは動くかというと、そこにも私は無理があると思いますので、私のほんとうの腹の中を言いますと、ある一定の、やや長い期間を要するかもしれませんが、やはり物価体系というものがそれ相応に変わってくることを前提に置いての産業構造の改変というものをせざるを得ないと思います。ただ、それをすぐにやりますことは、また一般大衆なり消費者に与える影響が非常に大きいわけでありますので、いま申しましたようなことを頭に置きながら、原油の値上がり、石油製品の値上がりが直ちにその他の物価や公共料金に一度に影響を及ぼさないような、そういう配慮をいたしながら、経済構造というものを石油の需要に応じたり、あるいはまたそればかりではありません、食糧などの海外からの飼料輸入等による影響等にも即するように、長い——そう長い間でもございませんでしょうが、やや長い構想のもとに経済構造の指導というものをやることが私はほんとうの政府のつとめであろうと思います。
  319. 小柳勇

    ○小柳勇君 通産大臣に質問いたします。  今日までのような石油中心の、重化学工業中心の日本の産業のあり方をこれからも当分続けて、とにかく物価安定だというようなことであるのか、あるいは基本的に近い将来日本の産業構造というものは変えなきゃならぬと考えておられるのか、いかがですか。
  320. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 長期的に見ますと、先生がおっしゃるように、日本の産業構造は徐々に転換していくべきであると思います。特に今回の石油危機というものは、日本が石油に偏食して肥大化したその脆弱面が非常に遺憾なく出てきていると言えると思います。そういう意味において、日本のエネルギー供給、利用のバランスを回復していく。それから国民経済上のセキュリティーという問題も取り上げていく。それは結局、省資源、省エネルギー型の、そして知識集約性を伴った付加価値の高い産業にさらに上昇していく、そういう方向がわれわれの方向であるだろうと思います。そのことは公害問題等の解決にも役立つはずであります。しかし、当面そういうような方向は意図しておっても、直ちに出てきておる問題ではなくして、世界事に付加価値の高い知識集約型の産業構造体系というものがどういうものであるかということは模索している段階であります。コンピューターとか航空機とか、ファッション産業であるとか、よく言われますけれども、当分の間は、やはりこの一億の人口を養っていくためには重化学工業を基礎にしつつ、それによってまた国民も食べていくという面も無視できないのであって、それは順次切りかえていくべきであると考えます。
  321. 小柳勇

    ○小柳勇君 外務大臣に質問いたしますが、いまわれわれの心の中には、石油生産国から日本全体が振り回されておるような気がしてならぬのであります。どっかにこの歯どめはないのか。たとえば消費国会議などがありまするが、日本としてこのような実態では、もうやりきれないですね。したがって、外務大臣としてどういうところに歯どめをしようと考えておるのか、あるいは今日までやっておるのか、お聞きしておきたい。
  322. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、世界の消費国の中でもわが国が一番足腰が弱い立場におりますことは御案内のとおりであります。したがいまして、生産国の圧力を一番敏感に受けやすい立場にあるわけでございます。そのために、それを減殺さしてまいりますためには、まず第一に、全体として世界の石油に対する需給が緩和してこなければならぬと思うのでありまして、消費国家が集まりましての会議の一つの目的は、全体として消費を節約するという点に焦点が置かれておるわけでございまして、早い話が、一番世界で最大の輸入国であり、消費国であるアメリカが節約をし、自給するということになりますと、世界の石油のフローの中からアメリカの輸入がなくなるわけでございまするから、非常な石油の需給の緊張緩和になるわけで、値段におきましても、数量におきましてもゆとりが出てくるはずでございまして、そういう点に消費国と力を合わせまして努力しながら、とりわけ日本は一番資源に弱い国でございまするから、消費の節約という点につきましては一番努力をしなければならぬ国であると考えるのであります。  それから第二は、産油国との間の理解を深めてまいらなければならぬわけでございまして、産油国といたしましても、石油値段を上げれば上げるほど、また供給を制約すればするほど得というわけでは決してないわけでございまして、回り回って自分たちの購入する工業開発財につきましてもだんだん上がってくるわけでございまするので、ようやく石油価格につきましても天井が見えた感じがいたしておるわけでございまして、われわれといたしましては、産油国との間の対話を持ちまして、どういう値段が合理的な相互互恵の結果を招来するいわゆる値段であるかという話し合いは進めてまいらなければならぬわけでございまして、そういう方向に機運が向いてきておりまするし、日本といたしましても率先してそういう方向に努力してまいらなければならぬと考えます。  第三は、科学技術庁長官も強調されましたように、通常の資源開発あるいは代替資源開発という面におきまして特段の配慮が、努力が必要であると思います。しかし、いずれにいたしましても、そういうことには時間の要素が必要でございまして、いま即座に成果をあげるということはむずかしい仕事でございますので、そういうことをあわせて長期的な視野から政策を進めながら、現実の石油政策といたしましてはできるだけ安く必要量を確保する手段を、外交的にも内政的にも最大限の努力を傾注していくべきものと心得ます。
  323. 小柳勇

    ○小柳勇君 あとで質問いたします砂糖価格の安定にいたしましても、石油価格にいたしましても、相手国、生産国がやるままであるというあせりがあるわけです、私どもに。外務省も、あるいはこれは内閣全体の責任でありましょうけれども、何とかこの相手のなすままのような姿のことではならぬど、私どもとしてそう思うわけですから質問をいたしておるわけですが、砂糖の問題につきましてはあとでまた農林大臣の意見を聞いてから聞きます。どうも私は外務省にほんとうにあせりを感ずる。ですからあとでまた質問いたします。  大蔵大臣に質問いたしますが、さっきから言っているように、今日までのような、このような産業構造のあり方をそのまま続けておって、部分的に手当てをして、総需要の抑制と国鉄、米価の押えだけで、とにかく短期に物価を安定するのだ、ことしの予算は大蔵省としてはそれだけですか。たとえば日本の産業構造の転換についてはこういう芽を出しましたというようなものがあったらお教えください。
  324. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ、産業構造の転換を含め、この混乱のあとの地ならしをどうするかという問題が四十九年度下半期以降の問題になってくると思うんです。つまり、この混乱で日本社会というものが荒れ果てたとまでは言いませんけれども、相当荒廃した、それをとにかくまず鎮静をする、そして新価格体系というものをつくる、その辺でやっぱり私はこれからの日本の国がまえをどういうふうに持っていくのだということを、これはほんとうに白紙というくらいな気持ちで考え直さなければならぬだろう、こういうふうに思うのです。そういう際には、先ほどから小柳さんお話しの産業構造を一体どうするかという問題、それから、まあとにかく異常な物価高で、でこぼこができた、ひとつそういう問題の調整を一体どうするのだというような問題とか、いろいろな問題を考えなけりゃならぬと思います。ですから、そういうことを考えながら、ことしの予算は当面の物価を抑制する、しかし物価問題が片づいたあとにおきましては、そういう新しい日本の行き方の方向を模索する、こういう趣旨でつくってあるわけでございますが、具体的にそれじゃどういうふうな方向をどういうふうな施策でやるんだということは、このがたがたというか、荒廃した国土が混乱収拾後どうなんだということを踏まえて考えなけりゃならぬ問題だと、そういう立場で予算は編成しております。
  325. 小柳勇

    ○小柳勇君 総理に質問いたしますが、いま三人の大臣から意見を聞きました。まあ大蔵大臣が一番予算担当ですから、日本のこれからの方向はまだ模索しているんだと、そういうことでしょうかね。いま通産大臣経済企画庁長官は少し前向きの意見がありました。総理としては、一体、内閣としていまの日本をどっちの方向に向けようとされておるのか、意見を聞いておきたい。
  326. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 当面の目標は、石油問題から来た異常な物価高を押える、それで国民への影響というものを最小限にしなきゃならないということが、まず当面する目標でございます。しかし、この物価問題がある程度押えられたとしても、あなたが御指摘されるように、長期的な問題に対しては、もうじんぜん日を送ってはいけないということだと思います。  これは私はこういう見方しているんです。いままでは、近世の歴史をずっと見てまいりますと、二十年に一ぺんぐらいずつ戦争があったわけです。その戦争がなくなりました。今度はベトナム問題でおしまいだなと、こう思っておったら、石油問題が起こった。これは私は戦争だと思うんです。ベトナム問題などでは、アメリカとわずかな人たちが影響を受けただけであります。今度は全部が影響を受けているわけです。これはもう主要工業国だけじゃありません。ASEANの諸国などは、もう日本から行く品物が一体量的に確保できるのかどうか、肥料がとにかく確保できなければ食糧問題は全然片づかないんです。これはある国から日本の輸出攻勢なんと言っておったものは吹っ飛んでしまいまして、価格はやむを得ないにしても、とにかくこれだけのものを全部やってくれなければ——タイなどでは九〇%原料を供給しておるのであります。そういう工場は操業が停止されるのであります。それですから、インドネシアでもそういう話をしてきたんです。ですから、五十万トン以上六十万トンに近い肥料はどうしても、とにかくなければどうにもならぬのだと。バングラデシュにとにかく供給する米は幾らかでも出そうとか、食糧を出すというなら、それはもっとやらなければたいへんなことになるんですということで、これはアラブの諸国、いわゆる回教諸国として連絡はありますから、それならひもつきでもって石油はどうにかならぬかと。インドネシアはローサルファの石油を持っているんです。ハイサルファの石油との間の調整はできるはずだというような、それはいろんな話が進んでおるわけです。これはもう世界のあらゆる国に全部影響しているわけでありますから、これはいままでやった第二次大戦に匹敵するような一つの現象である。ですから日本はそれに対して一番大きな影響を受けておる。しかし食うに困るわけじゃありませんから、とにかく常態を取り戻すために最善の努力をすれば、まだまだ影響は少ないとも言い得るわけであります。ですから、こういう事態はやっぱり一つの転機を求める私は歴史的な流れの中の一こまだと思うんです。  そういう意味で、いろんなことを言ってきましたけれども、重工業中心から知識集約的産業に移ります、移らなければなりません、と言いながら、なかなか移らない。まだいまでももうかる、いまの事態のまま、都市に集中したままで、これだけの過密の中でまだまだ公害投資をやっても輸出はできる、物は売れる、こういう考えが全体にありますから、倒産でもすれば、もう必ず転換するか再建をするか、やるんですが、そういきません。しかし私は、いずれにしても、公害問題一つ考えてみましても、付加価値の高いものにしなければならない、転換しなければならない。重化学的な工業は一体どうするかというと、これは好むと好まざるとにかかわらず、石油を持っておるところは、いま石油精製工場を十五億ドル、二十億ドル出して日本の援助でもってやろう、やれば石油は出します、こう言って、いまみんなぶつかってきているわけです。それだけではなく、石油化学の工場をつくらなければオーケーはしないという国もあります。それだけではなく、肥料工場をつくろうというプロジェクトも全部いま来ております。セメント工場もあります。パルプ工場もあります。ベニヤ工場もあります。これはもう全部いま各国から来ておるわけですから、日本でいままでやってきたような工業形態のうちの三分の一ぐらいは、私は海外に出ざるを得ないんじゃないかと思います。これはもう今度は現地から要請するんですから。これはもう公害の輸出とかいろんな議論ではなく、それをしなかったら石油を出さぬと、こう言っているんです。カナダが、銅の三分の一カナダで製錬しない以上、日本に対する銅鉱石の供給を削減すると、こう言っているんですから。ですから、日本はある意味においては、そういうふうに海外に出ていくと思います。出ていくときのネックが一つあるわけです。これは今度長期資本収支が大幅に赤字になると、こういう問題があって、たいへんな問題がございますが、しかし、一つの考え方にはなると思うんです。  しかし、それを続けていくとどうなるかというと、アメリカの歴史と同じくなります。これはもうアメリカと同じになるわけです。これはもうみんな海外投資で持っていってしまって、国内というのは困る。いまは労働力との需給バランスがとれておってちゃんとうまくいっていますが、今度六十年までに千五百万人以上ふえるわけですから、人間が。間違いなく一億一千万人は一億二千五百万人以上になるわけです。ですから、これからいろんなことを考えておっても、十二年ぐらい私はあっという間に来ると思うんです。そうすれば、その中である程度の成長というものは必要であるとは思うんです。人間がふえないならいまの相当低い成長でも私はできると思います。社会保障もある程度拡大していけると思いますが、蓄積のあるアメリカやイギリスやフランスや西ドイツと違うのであります。蓄積がないんですから、これからやっと制度だけつくって、保険制度も社会保障制度も、これから長期計画を立ててやらなければいかぬというときに金が要るんですから、いまのわれわれの生活を切り下げて社会保障に回すわけにはいかぬから、ある程度のやはり成長というのは必要だ。そうすれば、やっぱり質の改善というものもはかりながら、ノーマルな国民総生産というもの、これ、何%——これは九%なんて言わぬで、七%か五%か、四%か三%になるかもしれません。いずれにしても、ローマクラブが言っているようなことで、先進工業国と同じ状態を日本が築けるわけはないわけであります。  ですから、そういう意味で、私は、一つの産業政策とか長期の社会保障政策を立てるわけですから、そこでは何を原資として立てるんだということを明確にやっぱり示さなきゃならないときだと思っております。そういうきっかけをつくったのは——石油問題はマイナス面ばかりてありますがね、そうじゃなく、このままでいったらマイナスを起こしながら、大きなロスをつくりながらも、大きな目でマクロ的に見ればとにかく十年間では黒字が続いてきたというようなことをまだ続けるおそれが十分にある日本に対しては、あなたがいま指摘したような構造的な転換とか、むやみやたらに海外に行ったら、それこそアメリカの投資に対して反発が起こっているように、いまのような日本人に対する反発だけではなく、日本自体が国際収支のとにかく非常に苦しい状態も来るだろう。すべてのものをテーブルにあげて、ここでもうとにかく一案をものして、国民の前にやっぱりちゃんと提示をすべき好機だと、私は待ったなしにそういうことを要求されておると、こう思うんです。  ですからある意味においては、どんなに低い成長に押えても、いまよりも石油は少なくなるとは思いません。私はこの間から、とにかくいまのままでいけば七億五千万キロリットルになると思いますと言ったら、この間いろんな計算を学者の皆さんがやってみたら、やっぱり昭和六十年には七億キロリットルをこすかもしらぬ。七億の石油が入るか入らぬか。三億が入るか入らぬかでこれだけのことをやっているんですから、七億になってもう一ぺんやられたら、それこそもうどうにもならなくなると思います。だから、その意味において、代替エネルギーをどうするか、精油力をどうするか、何をどうするか、産業構造をどうするかというような問題を私はほんとうにここでつくって国民の協力を得るようなときが来たと思っております。  ですから、目先の問題は目先の問題としまして、物価抑制に全力をあげます。私はこれはできると思うんです。これはもう自信を持ってというよりも、これは絶対できるという感じを持っているんです。これはまあ、ここらが非常にむずかしいところでありまして、一言だけ小柳さんに申し上げておきますが、これは池田さんがちょっと間違ったことを言ったわけですな、池田総理が。ちょうど同じようなときがあったわけです。この大目的を達成するためには中小企業の一人や二人と言って通産大臣を辞職したわけですが、あれは表現が悪いんで、そうじゃないでしょう。どうせ国内の問題ですから、一つの目的を達成するためには摩擦があっても、やっぱり全日本の物価問題をやるためにはやりますと、(「あまり言い過ぎるとあれだぞ」と呼ぶ者あり)いやいや、そういうことを池田さんも言ったと思いますが、いま、きのうも私は述べておるとおり、あとはもう財政的にはいまの予算でもなお大きいと言われますから、こう福田大蔵大臣が言うように、第一四半期四−六月を全部押えるということになれば、現実的にはうんときびしい予算になるわけであります。(「中小企業総倒れになる」と呼ぶ者あり)ですから、中小企業倒産ものでありますから、そこで、おそれおののきながら金をよけい出したわけです。それが企業の手元流動性になって物価を押し上げる二つ三つの要因となって複合した物価が来たわけですから、財政のほうは、これはもうこれで問題はないと思います。  あと残るのは、やっぱり、きのう言ったように、これは金融なんです、いずれにしたって。いまでも私は五兆円やろうと思ってるんだ、五兆円。これを引き締めれば物価は下がりますよ、確実に。(「下がったことはないよ」と呼ぶ者あり)いや、だから、それはね、そんなことは、それは下がりますよ。下がるけれども倒産が起こるおそれがあるんです。そこらを考えないで、とにかくめしを食わさないでおいても、一カ月たっても人間は死にませんよ、ほんとうに。一カ月はとにかく人間水だけでも耐えられる。そうすれば一ぺんに糖尿病は治りますよ。しかし、治る過程において死んでは困るんですよ。そこらがむずかしいのであって、中小企業の体制をとにかく維持しながらしぼっていこうというところに問題があるのであって、私はこれから夏までにということで、三月の末に、四月に、五月に、六月に、どれだけ余剰資金というものが吸い上げられるかというところに一つの目標を置いておるわけであります。  ですから、当面する問題は、そういうことで犠牲者を出さずして物価を下げていこう。長期的には、いま申し上げたように、これは産業の構造改善を含めて、ここでやはり日本の将来はどうあるべきかという問題をすなおに考えて組み立てていかなきゃいかぬだろう、そう思います。
  327. 小柳勇

    ○小柳勇君 自民党の内閣が経済発展計画を持ちながら十数年そのレールの上を歩いてきているわけです。あなた、いまことばで言うように、みずから戦争状態に頭が混乱してしまっていまして、私の質問に対する答弁、いまの速記録を総理自身お読みになったら、こんなことまで言わなくてもよかったろうと思うんじゃないかと思う。したがって、それはいいです、大体のいまのあなたの方向はわかりましたから、そういうものを前提に質問していきます。  第二はインフレ抑制、物価安定といま言われた。いつの時点を基準として、水ぶくれとか、あるいは物価安定とか言っておられるのか、ひとつ聞いておきたいのです。
  328. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物価問題は、ほんとの水ぶくれというものは、石油問題が起こってから、ですから去年の十二月以降——十二月、一月、二月の物価は、これは水ぶくれだと思います。その前は、これは理由があってのものであります。だから、それは国際的な物価高の要因とか、それから国内的にドルショックや、いろいろな問題に対して金融緩和策をとったというような問題がございますし、ドルの切り下げという問題もありますので、異常な水ぶくれ物価というのは、私は総体的には去年の十二月の初めからということを一つ考えております。  もう一つは、いろいろな政策——御指摘もありますが、政策の結果、病気がなおったが、うんと肥満児になってしまったと、薬をやり過ぎたという面は確かにございます。こういうものも、特に土地などは、これはやはりある意味の第二の段階における別の面からの異常物価だと思います。投資の先がないときに金をどんどん貸したわけですから、これはもう土地か株にいく以外になかったと、こういう問題があります。これも十二月からの物価とは違います。これも異常だと思います。そしてその起点はどうかというと、昭和四十六年の下期から四十七年、四十七年の下期は、確実にある意味において異常性が加味されておると。それは、いわゆるニクソンショックというものからは第一段階における異常物価、それから石油問題が起きた第二次の段階におけるプラスされた異常物価と、こういうふうに考えております。
  329. 小柳勇

    ○小柳勇君 そこで、私もそう思う。私どもは、去年の春の予算委員会でも、去年の暮れの予算委員会でもインフレを論じておった。たまたまそれに石油問題が上のせしてきたんです。したがって、いま言われたように、それではいまの田中内閣のいわゆる物価の平準というのは、四十七年の上期を基準として考えていいですか。
  330. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは理想とする姿であると……。
  331. 小柳勇

    ○小柳勇君 いや、そんなことじゃない。
  332. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはそうです。
  333. 小柳勇

    ○小柳勇君 そういうことはない。
  334. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) その後、物価は上がっているじゃありませんか。その後とにかく国際価格は上がっておるということですから。四十七年の国際物価が何も上がらない、ソ連も中国もアメリカからどかっと三千万トンも小麦を買い付けるというようなことのなかった時代、それから起こった他動的要因というものをプラスしたものが大体——ですから主要工業国十カ国のうち日本を除けば九カ国でありますから、九カ国の平均値というものはおおむね妥当な水準であろう、こう述べているわけです。
  335. 小柳勇

    ○小柳勇君 総理にはあとで聞きますが、経済企画庁長官に聞きますが、あなたもずっといままで物価安定ということを言ってこられた。衆議院でも参議院でも言ってこられた。平準の物価というもの、どこに物価を落ちつけようとされているのか、お聞きしておきたい。
  336. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私は、正直に申しまして、究極的には卸売り物価の年上昇率というものはやはり二%台ぐらいに持っていきたい、消費者物価の上昇率というものもせいぜい五%ぐらいに持っていきたいと思います。しかしいまは、いま御議論がされましたように、外国からの事情やら、あるいはまた一昨年あたり多量な外貨が流入した、その見返りの円の流動性というものが非常にふえた、そのずれ込みやら、また先般からの石油問題等がありますから、いまこの際、この春とか夏とかに、私が申しますように卸売り物価二%台とかあるいは消費者物価五%とかということはなかなかむずかしい。現に私は、明年度の経済見通しにおきましても、やはり卸売り物価は、これはいわゆるげた、ずれ込み等もございますので、一〇数%の上昇、消費者物価におきましても九・六%の上昇というところでとめる、しかしその上がり方というものは、最近の卸売り物価のように、十二月が七・一%、一月が——月です、月。一月が五・五%というようなことではなしに、この二月にはおさまって三・九%、それも分析をいたしてみますると、ずれ込みの関係があるので、かなりおさまってまいると思いますから、私がいま申しましたような目標に向かってこの夏ぐらいまでには物価が少なくとも去年の途中のような状況の上がり方の程度にはおさまって、狂乱状態はなくなる、こういうことにはぜひしたいということで努力をいたします。
  337. 小柳勇

    ○小柳勇君 そんなこと聞いていないですよ。質問するときよく聞いておらぬと、質問せぬことばかり答弁している。そんなことはまだ、あした聞くんですよ。(笑声)  いま聞いているのは、物価を安定したいと言っている、いつの物価まで安定したいと考えているのかということです。平準時とか基準物価とか言うけれども、あなた、経済企画庁長官として、どこからを基準にして何%上げようとしているのか、その基準のところはどこですかと聞いているんですよ。
  338. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私のつもりでは、それをお答えしたつもりでございました。つまり、物価の高さが昨年のいつというようなことを言うのじゃなしに、物価の動き方というものが、卸売り物価ではこのぐらい、小売り物価ではこのぐらいというようなことをお答えいたすつもりでございまして、物価が昨年の程度に、あるいはおととしの程度に、一単位の物価値段がそこまでになるということは、これはなかなか考えられないことだろうと私は考えます。
  339. 小柳勇

    ○小柳勇君 これじゃ論議にならぬのです。さっき鈴木君の質問でも、大蔵大臣は、いま水ぶくれだとおっしゃった。どこを基準にして水ぶくれしているか。基準がなきゃ水ぶくれなんて判断ができないだろう。だからさっき総理は、四十七年の下期はもう異常でしたとおっしゃる。それじゃ四十七年の上期は正常でしたかと、そう聞いているわけだ。それでわれわれがものを判断するときは、どこか基礎がないと物が上がったとか下がったとか判断できないでしょう。私はずっとこれからその物価問題をいろいろ具体的に論議していかなきゃならぬのだから、その基礎を聞いておかぬと話にならぬから、問題は、あなた方は物価は上がったと言っている、高騰したと言っているが、どこを基礎に高騰したと言っているかと聞いているんですよ。
  340. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 同じようなことを繰り返すようで恐縮でございますが、いま大蔵大臣が言う水ぶくれという意味も、水ぶくれを含んで毎月なりあるいは前年に対する物価の上がり方というものが異常であると、それを異常でない状態に戻そうということを私は大蔵大臣も言っているものと思いますので、私と大蔵大臣の考え方が違うと、こういうことでもないわけでありまして——まあそういうことでございます。
  341. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。  小柳委員の質問しているのは、水ぶくれだとかいろいろ言うけれども、それでは正常態というのはどんなものなんだと、正常態というものをはっきり出さなければ、水ぶくれもやせたのもわからないんじゃないかと、それを出しなさいと、こう申し上げているんですよ。だから、これね、どうも総理大臣大蔵大臣、経済企画庁の長官、それぞれ皆さん方のおっしゃることはニュアンスが必ずしも同一ではない。ですから、一晩寝て、あしたはっきり答えてくださいよ、きょうはこれで終わりにして。
  342. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) よろしゅうございますか。  小柳君の残余の質疑は明日これを行なうことといたします。  明日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十分散会