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国務大臣(
田中角榮君) まあ、
平林君が
出席をした業者との会合というものが、
政府の意図に出たことは理解がいただけたと思います。また、この内容その他に対してはまだ御納得がいっておられないようでございますから、できる限り詳細に御
報告をするという、いま
政府側の意思を明らかにいたしましたから、本件に関しては御理解を得たものと考えます。
まあ、原則論でございますが、この問題は、行政権と私的独占禁止法との問題がからんで御議論が行なわれておるわけでございますが、間々申し上げておりますとおり、独占禁止法というのは、私が申し上げるまでもなく私的独占禁止法でございます。でございますので、この独占禁止法から除外をされておるものは、国家公務員法とか共済組合法とか、いろいろなものは当然除外をされております。でございますから、行政権がこれに含まれないということは、これは当然でございます。私的独占禁止に関する法律でございますから、行政権がこれに入るなどと考える余地は全くないわけでございます。でございますので、独占禁止法による
カルテル行為が行なわれる中で、行なわれたと想定される案件の中で、
政府関係者が参加しておったというような場合、
通産省も共同正犯でないかというような記事がございましたが、これはもう行政権行使の過程において私的独占法の中に対象として
政府が含まれるということは全くない、入る余地がないということは事実でございます。これは、入るとすれば、その個人が、私人が公務員法に問われるような行為をしてやった場合にのみこれは法律の適用を受けるわけでございます。公務員法によって先般も受けた外務省の問題がございますが、公務員法を適用されたと回しようなケースの場合以外に、行政権の行使によって
通産省や
政府が私的独占禁止法の対象になるということでないことは、適用除外の条文を示すまでもなく明らかなことでございます。でございますから、ここらが非常に明確にしておく必要がある問題でございまして、この行政権の行使というのは、国民生活を安定をし、正常な国民生活を守るための行政権の行使であるということでございます。でありますので、いま、かかる時期において、
政府当局が
行政指導の必要性ありとしても、業者に対して、時期を誤っておるんじゃないかという御指摘がございます。まあしかし、それなりの理由があって
招集をしたことは
通産大臣から述べたとおりでございます。まあ当否の問題、いろいろ御指摘をされるような角度からの見方も存在いたしますが、
政府はまた、
政府が行なわなきゃならない行政権行使によって当然起こり得る波動に対して目張りをしなければならないことも行政権の行使の範囲であることは当然でございます。そういう意味で、
政府は時宜にかなう行政権の行使を行なっておるつもりでございます。
で、今度の問題、まあすなおにひとつ御理解をいただきたいのは、これは私的独占禁止法の入る余地のない問題でございます、この
石油価格の
決定においてはですな。これは行政権において、
決定者は行政権である。その行政が、業者の意向を反映して、これの意を迎えて行政権が行使をされたというようなことになると、それは問題が起きますが、そうではなく、この
石油価格の
決定は、ずっと
経緯を申し述べておりますとおり、現在、正々堂々と積み重ねてきたものを
事務当局の手から離して
関係四省の
会議に上げておるわけであります。
閣議に
報告をしておって、
決定権は
閣議にあるわけでございます。そういう状態でございまして、まあ憶測をして、
政府がどのように
決定するのだろうと、われわれのその経理がどうなるだろうということは、これは自由の原則においていろいろな会社が自分でもって予測をし、計算をし、予想することは、これはもう認められることでございますし、これは当然の行為でございます。ですから、よしんば現
段階において、業者が会合したにしても、私は私的独占禁止法の対象になるようなものでもない。これは何も
政府が
決定をする
決定権に拘束力を持たない行為でございますから。——これはそうじゃなく、私的独占禁止法のほうは、明確に書いてございますように、不公正な取引、みずからの利益を守るために
カルテルを行なった結果、国民に不利益を与えておるという
価格を
決定した、こういう場合に法律が適用されるわけでございまして、全く
決定権のない——私たちが、判決がどうなるだろうと、こう思って見ておっても、判決に対していろいろな
会議をやってみても、裁判官の行なう判決に対しては影響を与えないでありますから、そういう意味で、本件に対しては
カルテル行為というようなものは存在しない、こういう私は考え方を持っておるわけです。ですから、
政府が
決定をする以前において、いかなることを行なっても、
政府に影響は与えられない。
政府は独自の見解において行政権の行使を行なう、こういうことでございますので、そういうところはひとつ区別をして御理解——もうもちろん御理解いただいておると思いますが、御理解いただきたいと思います。
それからまだ残っておる問題は、私と
高橋公取
委員長との問題が少し残っております。これはまあ調整は、私は私的独占禁止法を曲げてもらって行政権の行使をやろうなんて考えておりません。これはもう行政権でもって当然認められる行為として——という感じでございますが、国会において議論をされておる問題でございますので、公取
委員長の公的な見解も十分承知をしたいという考えでございますし、
政府の主管者としても、法制
局長官を入れて私の意見を述べたいということでございます。
それは、行政権で
価格が
決定できるのかという問題一つだけ指摘をされております。それは
価格問題に対しても法律による拘束力は持ちませんが、相手がこれを承諾してくれるかくれないかにかかわらず、
政府が独自の見解において
行政指導を
価格の面においても行なうことは当然できる。それは両院においても、日々のマスコミが、なぜ
政府は
価格を押えないんだと、毎日そういうのが国民の声であります。これはもう当然であります。そういう意味で、
政府がもっと早く業界を押え実態を把握して適切な行政権の行使を行なえば、去年十二月こんなに
物価は上がらなかったじゃないかということは毎日指摘をされておるのでございますから、これは、
政府は
行政指導の中に、強制力は持たなくとも、
価格に対する行政権の行使は当然入るということは言えるわけです。
価格とは何ぞや。下げることだけが
価格であって、上げることが
価格でないということはないんです。
価格に対しての行政権がある限り、上げることも下げることもこれは当然ある。それは学問的な問題だと思う。私もそう思っております。ただ、現実的、今度の
石油の
価格は現在の
価格よりも上がるけれども、実際は業者が考えておるものよりもはるかに引き下げる、低い
価格に押える。言うなれば、
政府が
行政指導をしなければ一万二千円も一万三千円も上がるであろう
価格をそれ以下に押えよう。四分の三バルクラインについてもあなたがきのう指摘をされましたが、それでも四分の一は赤字になるということでございますし、平均値をとれば二分の一は赤字になる。これはもう経済原則、自由公正な濶達な経済からいうと、需給のバランスの上に構成される
価格というものに行政権が介入することによって押える、それはある意味でどうも越権行為じゃないかという議論もございます。だから、法律によらなければいかぬ。
高橋君が言っているのは、そういう国民の権利を制約することだから、行政権を拡大解釈すべきではなく、国民生活安定法によって法律で規制すべきである、こう言っておるんですが、まだ未確定要素が非常に多いので、
行政指導で相手が引き受けてくれるという誠意をもって
政府は
行政指導を行なう。
行政指導によって、より低い
価格で業界を
指導して、のんでもらおう。一万二千円も三千円も上げられちゃかなわぬから、のんでもらおう。誠意を尽くしてのんでもらおう。そのかわり、のんでもらおうというには、それなりにあります。とにかく
政府だっていろんな問題を世話もしておるんだし、
政府の資金も貸したこともあるんだから、これはがまんしてもらいたい。こういうことは、それはそういう国民生活優先の立場で行政権が行使をされておるということでございまして、私は、今度の
石油価格が協定によって守られない、
政府の
指導価格が何千円できめられても守られないで、しかも、その過程において
カルテル行為があった場合にはこの業界は私的独占禁止法において処罰の対象になる。これは当然のことでございますが、そうではなく、
政府が言った
価格をそのまま業界が守ってくれた場合、これはもう私的独占禁止法の働く余地は全くない。
政府自体が
行政指導でやったということに対して、ありません。これはどこまで行っても。学説的にはありますよ、ある学者は、そう解釈すべきでないと。私にも、立法府の議員として二十何年間もやってきたんですから、学者と同じぐらいの学説を立てられるという自信はありますよ。だって、なぜ独占禁止法という法律があるのか。この法律の成立の
経緯を見ても、明らかに行政権などとはおよそ縁のない話である。これは不公正な取引を押える。新憲法を土台にしても、社会的な、国民に不利益をもたらすような、業界を独占支配するようなことを禁ずる。いわゆる財閥解体、経済力集中排除法と同一の路線で私的独占禁止法がつくられたものであるということを考え、しかも、この法律ができるときに、三権思想ではなく四権思想だと、さんざん議論がされた中につくられた法律であるということを考えて、そのまま条文が残っておるという事態を前提にして考えても、憲法でいう三権の一つである行政権がこの範疇に入るなどとは考えておらない。
ですから、そういうことをひとつ十分御理解をいただいた上に、私たちも行
政府はそれなりに何でもやっていいと思っていません。どういう場合においても、いわゆる解釈が異なっても、そういう解釈があると、有力な解釈があるとしたなら、特に公取
委員長はそう言っておるんですから、ですから、同じ行政機関の中におる者でありながら、いわゆる私的独占禁止法の番人としての彼は良心に従ってみずからの考え方を述べているわけですから、私はそういう意味で、こういうものは可能な限りその発言の存在を十分理解をし、そしてお互いが意思の疎通をはかって、これだけの大事業を行なうわけでございますし、まだまだこれから起こり得る事態に対しては何でもやらなければいかぬと、そういう考えでございますので、意見は十分ひとつ徴してまいりたい、こういうことでございます。
ですから、最後に残るのは、政治的にどうかということでございますが、行政権の行使ということにおいては、私はあなたが指摘をされることわかりますよ、あなたのお立場でね。
石油問題がいまきまるかきまらぬというときに、業界を集めて要請しなければならない
行政指導の必要性があっても、一日や二日待てばよかったじゃないかという、あなたの立場における御指摘もよく理解します。理解しますが、
通産省には
通産省の、この
混乱した中でも目張りをしなければならないんだと、末端
価格を押えなければいかぬのだという
行政指導の必要性ということを痛感したということも、ひとつ理解いただきたいと思うんです。
ですから、これからは、あなたは、李下に冠を正すな、瓜田の履、李下の冠と、こういうことでございますが、あなたのお立場でそういうふうな御理解でございますが、行政当局からいいますと、何もかにもみんなしなければならない立場にありますので、瓜田に履を納れ李下に冠を正したということではないと思っております。思ってはおりますが、
政府にも、国民生活を守るために、
物価抑制のために行政権を行なわなければならない重大な責任があるんだと、こういう立場もひとつ御理解をいただきたい。
あとに残るのは、あなたがいままでずっと御指摘になられた
会議の内容——すなおに申し上げます。これはもうすなおに申し上げまして、これは業界との癒着とか業界に内報するとか、そういう意図に出るものでは全くないということだけはひとつ十分御理解いただきたい、こう思います。