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国務大臣(
田中角榮君)
物価抑制が
最大の課題であるということで正面から取り組んでおるわけでございますが、
物価の
上昇の原因というものを全部把握をしまして、これに適切なる目張りを行なうということが
物価抑制の処方せんでございます。この中でいろいろございますが、なかなか押え切れないものというものがあります。これは
石油が値が上がるというような問題、これは押え切れないわけであります。また鉱物資源やその他が上がるということも押え切れない問題であります。それからもう
一つは、給与が相当上がってくるということもこれ押えがたい問題でございます。しかし、そういう押えがたい問題と、それからなお、そうではなく、他の
要因によって上がっておるというものとの比較を十分してみて、そして
石油の価格は上がる、それから原材料が上がる、給与が上がる、それはコストアップ
要因になるわけですが、しかし、それよりも他の
要因によって
物価が押し上げられた面が大きければ、それは相殺をしてなお余りがあるわけですから、
物価は長期安定路線に乗せ得るということになります。それから、そうではなく、コストアップ
要因というものが、これはもう不動なものであってどうにもならないということになれば、どんな合理化
政策をやっても、ある
意味においてはコストインフレ式なもの、言うなればスタグフレーション的な、先進工業国がとっておるような
状態をたどらざるを得ないということになります。これはもう生産は不況感というようなものよりも縮小均衡まで持っていくとしても、これはものには限界がございますから、そういう
物価状況というものは国際的に見ては、いまの
状態で人間もふえる、生産も上がるけれども、人間のふえる率が多い。しかも、人間の一人当たりの消費というものも多様化してくるので消費水準も高くなる。だから、緩慢ながら幾ばくかの
物価の
上昇というものはこれはもうやむを得なかろう。そういう
意味で、ノーマルな生産
状態を続けながら、年率一%とか、そういう低い、ゆるやかな
物価の
上昇過程は世界的な傾向であると、こういう議論がなされておりますから、こういう国際的な議論や現状というものに
日本の
状態が合うようになれば、これはノーマルな
状態と、こう言わざるを得ないわけでございます。これは、そういうことはいまこまかくやっておりますが、まあ、率直に申し上げると、
羽生さんもそうでございますが、
一つには、全部財政が大きかったと、ですから、この財政を引き締めなきゃならないと、こういうことが言われております。これはわれわれももう財政が先行的
要因であると、先駆的な役割りをなして、これが行なわれることによって大きくなるということで、第二次的には設備投資が付随して起こってくる、そうすると景気が過熱をする、それは悪循環として
物価上昇につながると、こういう御所論に対しては、これはもう反論はいたしません。いろいろ理由はあるんです、これは。もう、あなた方も言っているように、どんな場合でも社会保障というのは拡大しなきゃいかぬ。生産性を上げて需要と供給のバランスがとれれば
物価は落ち着くにきまっていますが、生産性を押えておって、消費というものは上げなきゃいかぬ、社会保障も上げなきゃいかぬということになれば、これはなかなか、原則的な議論としてはなかなかそこはむずかしいところであります。しかし、賃金の問題や社会保障の拡大の問題とかいうものはこれはもう別にして、
物価問題はひとつ考えなきゃいかぬということで、総需要抑制
政策ということに踏み切っておるわけですから、その
意味においては、まず
物価抑制のために、これだけ、
物価の真犯人は、
物価のきっかけをなすものは、大宗をなすものは財政の拡大だと、こういわれてきておりますから、まず総需要の抑制に踏み切っておることは事実なんです。ですから、これは、まだ予算がいまでもなお大きいというなら、これは年度間の執行を思い切って押えていけばいいわけでございますし、二〇%でも三〇%でも場合によっては五十年度に繰り越すというところまでいけば、これはもう予算が、財政が刺激をするということはあり得ないわけであります。これはもう、土地を買いたいといっても、大蔵省は押えておって起債を認めないということですから、いまはもう、土地は買ってくださいと言っているにもかかわらず起債を認めなければ地方財政としては均衡財政を維持する以外にない。それで買わなければ土地は下がるにきまっておると、こういう
状態を続けていますから、財政が景気を刺激をしないということにはなります。もう
一つの問題は、私が申しておるんですが、なかなか
理解を得られないわけでございますが、まあ、このごろはどうも
理解が得られるような徴候があると思うのは、金融と財政というものが、これはどっちが主体でありどっちが補完的なものであるかは別にしまして、あなたが
先ほどいみじくも述べられたように、
政府部内であっても、しり抜けになるおそれがあるということで、御
指摘になった財投の問題があります。これよりももっと大きいのは、とにかくピーク時においては十五兆円に近い金融の緩和があったんじゃないかと言われておる議論もあります。最低でも十二、三兆円はあった。そのうち外為の払い超は
昭和四十六、七年で六兆一千億もあるということは、これはもう世間周知の事実であります。そういう
意味で、これを全部合わせると約倍の十五兆円がよけいになるんだと。だから、それが
物価の押し上げ
要因になっていることは事実なんです。これは大体常識的に半分ぐらい吸い上げた
——これはずうっと財政対民間収支は揚げ超基調が続いておりますし、外為会計もあのような
状態ですから、一時のようなことはありません。半分ぐらいは揚げたと。しかし、残っている半分がありとせば、それを吸い上げなきゃどうにもならぬ。それはどこにある。
——それが土地になり株になり、まだ株は上がっているじゃないかということを
——一週間ばかり前まで、どうして株は上がるんだろうということだったんです。これは持ち合いをするから、原資が続けられてというような面もありますが、払い込みができるというところです。払い込み資金というのは貸し増しをしないのにもかかわらず、時価発行の払い込みや転換社債の引き受けが現に企業において行なわれておる。それで企業が持っておるものを売ろうとはしておるけれども、まだ売ってないということは事実です。ですから、正常な
経済上必要な手形金融は行なう。行なわなければ黒字倒産になり、もしかしたら計画倒産になって三年間は寝ておられようものなら、これは土地は下がらないでスタグフレーションにつながるということになりますから、正常な金融をさせながらある時期を限って、土地になっておるようなものを、要すれば、その企業が本質的な営業上必要でない資産を買ってそれを担保に金融したものが、いまつなぎ資金は出してやるが、これ三カ月、六カ月の間に売り払って換金をして、そしていまつなぎ融資をしているものに振りかえていくということが行なわれない限り、企業の
過剰流動性というものはこれはもう吸収できないわけで、個人は月給が上がるからとにかく手元の資金や預貯金の率が多くなるということもございます。けれども、それは
所得政策につながるからそういうものには触れないということでございます。それでまた一年間に約六百億であったものが、何分の一かに税金が下がっておっても三千五百億、四千億の税収があるわけですから、一〇%にすれば三兆円、四兆円という金が個人の土地の売り払い代金として個人に渡ったことは事実なんです。そういうものがどういう
状態において吸収されるかというのが、いまわれわれが金融面において吸収しているわけですから、それが財政と金融が両建てになって締めていけば、正常な
状態が保てることは言うまでもありません。これを早く締めろといえば、これはもう黒字倒産になるということでありまして、そういう限界を承知しながら金融を締めておる。で、金融がうんと締まるときには財政は柔軟に、財政が緩慢になっているときには金融を締めていくというようなことで財政、金融を一体になっていま運営をしているわけでございますから、私はいま御
指摘のような
状態というものを起こさないように、これからやはり毎月、毎月の資金回収というものと
経済実態というものを把握しながら、非常にむずかしい仕事でありますが、そういう最終段階に入ったと、私はそのような考えを持っていま
政策を進めておるわけであります。