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戸田菊雄君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
所得税法、
法人税法、
租税特別措置法の三
改正法案に対し、
反対の立場で
討論を行なうものであります。
初めに、
所得税法についてであります。
田中総理は、昨年、ことしの六月の
参議院選挙を意識して、その
目玉商品として二兆円
減税構想をはなばなしく打ち上げました。結果的には、二兆円
減税の名のもとで実際
減税になったのは、
初年度で一兆四千五百億円にダウンしてしまいました。
理由は、
石油危機等による
経済混乱により、
自然増収が当初の見込み四兆円が三兆六千八百五十億円に減少したからだと言われております。だが、このことは
理由にはなりません。過去
昭和四十一
年度では
自然増収の七割を
減税にふり向けた例もあるからであります。
政府も指摘されておりますように、今日の
狂乱物価の
経済パニック状況のもとで
国民の
負担軽減を真剣に考えるならば、
自然増収の何割と制限があるわけではなし、
初年度二兆円でも
減税実施は可能であったはずであります。
しかも、今
年度の
大幅減税と言われる中身を検討いたしますと、
標準世帯、
夫婦子供二人の
課税最低限は四十八
年度の百十二万円から百五十万円に、かりに今次春闘で二〇%の賃上げが実行され百八十万円になった場合の
減税額は、
住民税を含め七千八百二十円の
減税で、
月額六百五十円の
減税にすぎません。
独身者も、前述同様の計算でいきますと、
減税額は五千六百六十円で、
月額四百七十円にすぎません。片や、一千万円の方は、九十四万九千二百五十円で、
月額約八万円の
減税となります。しかも、
年間所得三千万円までの
税率の緩和、
給与所得の
拡大によります上限の撤廃、すなわち青天井への
優遇措置が行なわれております。
大蔵省当局は、現在の
租税構造上やむを得ないと言っておりますが、この
構造の
抜本的改善こそ急務なはずであります。
このように、今
年度の
大幅減税の
内容は、低
所得者にはきわめて
少額減税であり、
高額所得者優遇の
減税と言わなければなりません。
労働白書に、
所得と富がいかに不均衡であり、インフレでさらに
拡大されているかを数字で示されております。たとえば
昭和三十五年に日本最高
所得者の
所得は約三億円でありました。それが
昭和四十五年には三十八億円にふえております。十二倍強であります。その後さらにふえておる状況にございます。他方、勤労
所得は、
昭和三十五年には二十九万円、
昭和四十五年は百二万円でありますから、その伸びはわずかに三・五倍にしかなっておらないのであります。この高額
所得者と勤労
所得者とを比較いたしますと、
昭和三十五年では最高
所得者は勤労
所得者の約一千百倍、
昭和四十五年では何と三千八百倍にもなっておるのであります。現在の大企業によります売り惜しみや買い占め、土地の暴騰、株式の利殖等により
国民の
所得と富の分配比率はさらに
拡大されているのであります。自民党悪政による悪性インフレで
狂乱物価で多大なる損害をこうむり、片や税金で生活費までに重い税金をかけられ、かせいでもかせいでも生活に追いつかない現状に
国民が憤激することは当然のことであります。加えて、配当・利子
所得の分離
課税方式の
優遇措置もそのままで税の不公平是正も見送りという
政府の怠慢には強く抗議するものであります。
このように、一貫して上厚下薄の今次
改正案には絶対
反対をするものであります。
第二は、
法人税法についてであります。
法人税率を
現行三六・七五%の
基本税率を四〇%に
引き上げることになりました。実効
税率は
現行四五%が四九・五%になりますが、アメリカの五一・六四%、フランスの五〇%にはまだ差があります。配当軽
課税率は大蔵省の当初の三〇%案はたな上げされ二八%にとどまりました。
法人税法全体の
改正案はきわめて中途はんぱなものであります。
現在の
法人税負担率は、企業の収益状況から見ても、また過去の
税率比較の上でも、さらには国際比較でも、相当な
引き上げの余裕があるはずであります。たとえば資本金別
法人税負担率調査や粗利潤率調査——三菱総合研究所並びに大蔵省証券局の四十六
年度の調査資料でも明らかなように、
法人税負担率がきわめて低いのであります。
すなわち、資本金十億円から五十億円までの
会社一千五十二社が二五・九五%、百億円以上の
会社百五十九社は二〇・九%となっております。また、年次別
法人税負担率——大蔵省資料を見ましても、
昭和三十五年が一九・五%、四十六年には一〇・三%と下がっており、年次下降の方向をたどっております。
現下の
法人税は、大企業のみの過保護政策と言えるでありましょう。このような状況から、長期的な
法人税の負担水準といたしましては、現在の水準は決して高いものではなく、
法人税については今後も相応の負担を求めることが必要であります。
政府は、今後ともその検討を行ない、その
引き上げを実行すべきであります。
第三は、
租税特別措置についてであります。
現在の
租税構造の特徴は、
所得税では勤労
所得重
課税、資産
所得優遇のシステムを強め、
法人課税においては中小企業軽視、大企業優遇のシステムにあります。
この大企業優遇の最大のてこは
租税特別措置にあります。四十九
年度における
租税特別措置による減収額は総額で五千二百億円であります。ことに
課税特例の態様分類——大蔵省資料でも明らかなように、特別償却、準備金によります減収額は総額の約半分に近い二千三百三十億円となっております。まさに大企業に対する
優遇措置が歴然といたしております。また、貸し倒れ引き当て金の金融
関係への貸し倒れ率は、大蔵省資料の〇・二%ないし〇・三%の僅少にもかかわらず、貸し倒れ引き当て金期末残高一兆八千四百三十七億円のうち約四七%を占めております。今日の金融
関係に対する
政府の過保護政策をあわせ考えるとき、繰り入れ率の引き下げを計画的に推し進め
改善すべきであります。ほかにも、受け取り配当の益金不算入
措置は手をつけられずじまいであり、公害防止準備金制度の適用業種の
拡大と適用期限の延長など、
租税特別措置によります特権的
減免税については、
政府の言う
整理合理化の促進とは逆にむしろ
拡大され、ほとんど
改善されずに合法脱税装置は温存されているのであります。
わが党が多年主張してまいりましたとおりに、廃止に向けて十分検討すべきことを強く要望いたしまして、私の
反対討論を終わります。(
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