○田中一君 私は、日本社会党を代表して、
総理の施政方針
演説及び
外交、財政、
経済演説に対し、
国民の疑問とするところをすなおにお伺いいたしたいと存じます。
まず、第一は、
インフレ問題と田中
総理の列島改造計画についてであります。
私は、
総理の施政方針
演説を伺いながら、端的に言って、はたして今日の
インフレ問題の収束に本気で取り組む決意があるのかどうか、強い疑問を持つのであります。
言うまでもなく、今日、最も憂慮すべきことは、
インフレのあらしが
国民生活を窮地に追い込み、
生産、消費を問わず、
インフレ心理が日本
経済に根をおろしたということであります。その上に、
石油危機が火に油を注いだ形となって、
事態が一そう悪化しているのであります。
総理の施政方針
演説あるいは、これまでの言動から推して、
総理は、今日の異常な
物価騰貴の原因を、海外からの輸入された
インフレと、
国民の消費増大に求められている
ようであります。この認識に立って、乏しきを分かち合いながら苦しい試練に耐えた戦後時代を取り
上げて、
国民に消費節約を説き、あたかも
インフレの
責任が、
政府の
責任の手を届かない外国と、勤労
国民の側にある
ような態度をとっているのでありますが、こんな無
責任な話はありません。
国民は
インフレの
被害者であり、異常な
物価高騰に泣いているのは正直な
国民なのであります。これに対し、最近の誇大宣伝とも思われる
物不足キャンペーンと、
政府の消費節約キャンペーンの陰で、
企業は、
インフレと
物不足を巧みに利用し、
便乗値上げと思われる手段で大きな
利益をあげているのであります。現に、四十八年九月
期決算では、資本一億円以上の法人の
利益は一年前に比べ四〇%以上のもうけになっているのであります。すさまじい
物価の上昇が
国民の家計をきびしく圧迫している一方で、大
企業は
物価値上げによる巨大な
利益を得ているのであります。まさに
正直者が
ばかをみ、社会的な不公正、不平等がまかり通っているのであります。どうしてこの
ようなおかしなことになるのか、
総理はまじめに考えてみたことがございますか。日本の悪質な
インフレの原因は、いわゆる
経済の
投機化にあることがすでに
経済専門家からも鋭く指摘されております。つまり、日本
経済がギャンブル化し、
企業の
土地や株の
買い占めに見られる
ように、
企業が製品を売ってもうけるのではなしに、
買い占め、
売り惜しみなど、
企業が
投機によって労せずしてもうけをふやすという態度になっていることであります。これは、輸出第一主義による急激なドルの流入と金融緩和策が
投機をあおり、加えて、いわゆる円切り
不況宣伝による
政府の大型
予算による景気刺激策が引き金となったことは明らかであります。この
ような
インフレと
投機の
経済を促進したのが、何より田中
総理の
列島改造論であります。今日の
インフレは、まさに田中
インフレ——これは田中一じゃございません。
田中角榮でございます。田中
インフレであります。この
政治インフレを収束する道は、列島改造計画をはっきり撤回し、それを裏づけ
ようとする国総法を取り下げることが先決であり、真に反省すべきは反省するという態度だと思うのであります。すでにたびたび指摘されているのでありますが、あらためてこの点に対する
総理のすなおな決意を伺いたいのであります。
また、
政府は、今日の異常
事態に
短期決戦で臨むとして、四十九
年度予算の圧縮、公定歩合の
引き上げ等、安易な総
需要抑制策あるいは
石油緊急
対策二法の運用などで
物価変動を短期的に鎮静化すると言っておりますが、
国民のだれも
消費者物価がこれで安定するとは信用していないのであります。現に、当面の総
需要抑制策のねらいは、産
業界の混乱を防ぐための
卸売り物価の鎮静化に置かれており、
石油カットの産
業界へのショックを暖和し、これを乗り切れば、またしても従来の高度成長路線に突き進もうとしていることは否定できないと思うのであります。確かに、表面的には四十九
年度の
予算編成の方針においても、公共事業の
抑制、新幹線、新規高速道路等の巨額の
経費を要する事業の
繰り延べ等が行なわれております。しかし、その
実態が
抑制という名に値しないものであることは、すでにわが党関係議員から指摘したところでありますが、加えて十九兆五千億円にのぼる高速道路を
中心とした第七次道路整備計画を手直しするかまえはなく、また、一月二十二日には、本四架橋の三本の同時着工をあらためて言明しているのであります。
予算編成方針においても、既定の長期計画については進展の調整をはかるが、長期計画の改定は行なわないとしております。これらは、
経済財政運営の基本において高度成長と列島改造を踏襲し続けている証左であり、あらしが頭の上を通り過ぎるのを首を縮めて待っている姿と言わなければならないのであります。いま
国民の求めているものは、短期的には燃え盛る
投機インフレをストップさせ、
国民生活の不安を取り除くとともに、資源不足という
事態を
転換の好機として、大
企業優先の
インフレ経済体質を
国民生活優先の方向に切りかえていくべきだということであります。いわゆる社会資本整備の主役である公共事業についても、その一時的な
繰り延べでなく、その内容を根本から見直し、新たな視点から公共投資の
あり方を考え直すべきだということであります。この
ような観点から、私は、長期
経済計画を全面的に改定すべきであると思うのでありますが、
政府の
対策をお伺いいたします。
物価抑制策、エネルギー不足に伴い、公共投資の
抑制ということは重要でありますが、従来の産業基盤整備重点の投資によって
生活関連の社会資本が立ちおくれていることも否定できません。
インフレ、
物不足という制約条件の中で、限られた公共投資を有効に行なうには、ナショナルミニマムを基礎とした各事業の優先順位をきめ、計画的、効率的な事業配分を行なうべきであると思いますが、来
年度の
予算は、硬直化した従来の投資パターンの域を出ていないと思います。この点の御見解を承りたいと存じます。
また、
政府の景気引き締め政策のもとで、四−六月期には中小
企業者にとってきびしい
不況のあらしに見舞われることも十分予想されるところであります。一方では、あらゆる建築資材をはじめ、
物不足による
価格急騰が一そう進行することも懸念されるのであります。
石油カットが表面化するや、鉄鋼をはじめとして大幅減産宣伝と、コ
ストアップ分の
価格引き上げへの繰り込みの
姿勢が一斉にとられております。事業の削減に加えて、建設資材の急騰で、必要な公共事業もさらにおくれる危険があります。
大蔵大臣は、きわめて近い将来、主要資材の
価格に大きな変化がこ
ようと楽観的な
ようでありますが、需給の見通しはどうなのか、また、
価格の推移をどの
ように予想されているのか、お答えをいただきたいと思うのであります。
また、資材の急騰と品不足、
資金難、人手不足とからまって、
企業倒産も大きくふえております。建設省は、昨年九月、請負契約約款の
インフレ条項を発動し、一月に再度若干の基準緩和を行なったのでありますが、今日の
ような資材乱騰ムードの中では請負契約自体が成立しない状況にあり、公共事業の円滑な執行のために
現行の総額・定額請負契約方式の再
検討が必要な時期を迎えていると思いますが、建設省の見解はいかがでありますか。
さらに、今日の
インフレ問題を解決するために最も留意しなければならないのは、今日の
インフレはつくられた
土地不足、
物不足が大きな原因だということであります。大都市及びその周辺の
土地需給のアンバランスは、
土地そのものの不足によってもたらされたものではありません。
土地の仮
需要をあおり、人為的に地価を
つり上げてきた
土地値上げ政策にその原因があるのであります。現に私は、首都圏、近畿圏での民間の
土地取得の現況を具体的に
調査したのでありますが、その結果、
東京、神奈川、埼玉、千葉の一都三県を
対象にして、今後十年間にこの地域で予定される住宅
需要の十倍に相当する供給可能地が現存するのであります。
土地が足りないから
値上がりするというのは神話にすぎないのであります。こまかいことは申し
上げる時間がありませんが、問題は、この
土地を大手デベロッパーが買いあさり、首都圏では大手二十社で九千六百五ヘクタール、近畿圏では二十九社で八千四百九十一ヘクタールの
土地を
買い占めており、別の
調査では、首都、近畿、中部の三大都市圏では民間デベロッパー五十八社の保有地が横浜市の面積に匹敵するのであります。これが
値上がりの元凶なのであります。
政府は、この
買い占め土地をどう放出させるのか、
対策を具体的に聞かしてほしいのであります。かけ声
ばかりで一向に進んでいないのは大きな問題であります。地元自治体と協力し、原価に金利と
経費に適正利潤を加えた
価格で放出させる用意があるか、これは埼玉県が行なっている方式でありますが、この
ような現状はどの
ようになっているか。また、四十四年以降の
土地の取得に対して、本年四月より二〇%の重課税を課していますが、
土地を求める者は
国民大衆であって、地価の高騰に
政府が一役買っているのではないか。この
土地に対する重課税については、
土地購入者の負担に転嫁されないという保証がどこにありますか、その運用にあたっては慎重な配慮を求めなければなりません。
大蔵大臣の明確な答弁を願います。
同時に、
国民生活にとっては、
消費者物価の安定
対策と
生活必需品の安定供給が
最大の関心事であります。勤労大衆は
卸売り物価で
生活しているのではありません。また、
物不足によって困るのは
生活必需物資についてであります。
政府は
石油二法と
買い占め緊急措置法で需給と
価格の安定をはかると言っているのでありますが、そのいずれもが全く見かけ倒しになっているのであります。
政府は、
総理の指示に基づき、この十六日から、
灯油、
洗剤など
生活必需物資の在庫
調査を実施していると聞いております。私は官僚統制の強化による需給
対策には賛成できないのでありますが、一体どの
程度この
調査に期待できるのか疑問であります。
調査能力の問題、
調査にあたって結局
業者のことばを信用する以外になく、
業者との癒着を強めるだけに終わるのではないかという心配があります。この点では
改正された
買い占め緊急措置法もきわめて規制が弱いものであり、売り渡し命令、立ち入り
調査範囲の拡大、審議会の設置、国会への報告
義務などの諸規定を設ける
よう再
改正すべきではありませんか。特に、
企業の行動をきびしく監視する民主的な機構を中央、地方につくらなければ、事実上法の適正な運用ができないのではないかと考えるのでありますが、この点に対する
政府の
対策を聞かせていただきたいと思います。
第二に、
住宅政策の
転換と宅地問題についてお伺いしたいのであります。
いま、日本の
住宅政策は破綻に瀕しておると言わなければなりません。いや、また何ら
住宅政策がないと言わなければならないのであります。
政府は、来
年度予算で住宅、
生活関連施設の整備に重点を移したと宣伝しているのでありますが、
公営・
公団住宅の建設予定戸数は、逆に四十八
年度公営十三万八千戸公団八万戸建設計画が、四十九
年度には
公営十万三千戸公団七万戸と、合わせて四万五千戸も戸数が減っているのであります。この際伺っておきますが、四十七
年度の計画のうち、完成戸数は何戸か、あるいは四十七
年度から八
年度に
繰り延べた戸数はどうなっているか、これは建設
大臣に伺いたいと思います。
しかも、地価の異常な上昇が続き、建築資材の不足や
値上がりによる建築費の高騰が激しき今日、個人の住宅建設を不可能にしております。それにもかかわらず、
政府は相も変わらず持ち家政策を続行するどころか、さらにこれを強化し
ようとしているところに
政府の
住宅政策の誤りがあるのであります。住宅問題の解決は、もはや持ち家政策では不可能になっており、安くて良質な公共賃貸住宅の大量建設以外にはありません。ところが、最近の建築費の
値上がりを受けて、
国民が待期する公共住宅の建設は計画どおりに進んでおりません。このまま推移すれば、第二期住宅建設五カ年計画の達成は不可能になりますが、建設
大臣はこの
ような
事態に対処する所感はいかがなものでありましょうか、方針を明らかにしていただきたい。
さらに、地価や建築費の
値上がりで住宅建設費が個人の借り入れ能力をはるかにこえた現在、住宅金融の拡大による持ち家政策では問題は解決されません。民間自力建設住宅にその六割以上を依存している
現行の住宅建設計画をこの際全面的に改定し、公共賃貸住宅の大量建設を主力とする計画を作成し、住宅供給に対する国の
責任を明確にすべきであります。
さらに、最近の建築費の急激な
値上がりは、
公営住宅や
公団住宅の原価主義による
家賃の大幅な
引き上げを招いております。この際、
公営住宅の一種、二種の差別を廃止し、
公営住宅その他を含め
家賃補助制度を採用すべきだと考えます。居住者の
所得の一割
程度の
家賃で
一定規模の公共住宅を国が
責任を持ち供給する政策
家賃体系の導入を急ぐべきだと考えておりますが、建設
大臣の所感を伺います。
次に、
政府は、新
年度で宅地開発公団を新設して、三都市圏でさらに宅地開発を
推進し、
国民の持ち家が促進されると宣伝しておりますが、これは全く悪質な幻想にすぎないのであります。日本
列島改造論は田中内閣のビジョンとして打ち出したものでありますが、これに悪乗りした大
企業の
土地買い占めにより地価の異常な高騰を招き、もはや勤労者が入手できる
価格で
土地を取得することは不可能であります。
政府は、一坪
当たり十万円
程度で開発された宅地を分譲するかのごとく宣伝しておりますが、
地価上昇の激しい今日、はたしてそのとおり実現され得ますか、はなはだ疑問と言わなければならないのであります。何となれば、宅地開発公団は、市街化調整区域に膨大な
土地を保有し、開発行為が
抑制されて困窮している民間デベロッパーの救済機関になりかねず、さらに一そうの地価の高騰を招くからであります。
総理の御所見を求めるものであります。
また、
福田大蔵大臣は、四十八
年度予算編成にあたって、
行政管理庁長官として、日本住宅公団の宅地部門を強化すれば、屋上屋を重ねる宅地開発公団の創設は必要ないと主張し、見送らせた経緯があるにもかかわらず、四十九
年度予算の編成においては、
大蔵大臣みずから公団の新設を積極的に主張されたのはいかなる
理由か、明確にしていただきたいと思います。
次に、水需給の逼迫は、ますます都市住民の
生活不安を招いております。昨年の
全国的な異常な渇水によって、
東京、大阪はもちろん、高松、松江等で給水
制限を余儀なくされ、
生活不安を一そう増長するとともに、
企業の操短という現象が発生しております。また、今冬においても名古屋市では一〇%の給水
制限を実施するという
状態でもあり、美濃部
東京都知事がごみ戦争の次は水戦争だと言っているのもまさに現実な姿となってきており、千葉県では水不足を
理由に入居を延期する
事態を招いております。水は人間
生活に欠かせないものであり、有限の資源であります。水の確保なくして
土地の利用、なかんずく住宅の建設は不可能であります。水の確保に対する
政府の根本的な見解をお示し願いたいと思います。
ここで勤労者住宅との関連で、特に勤労者財産形成政策につきましてお聞きしておきたいのであります。
従来、
政府は、わずかな
貯蓄の
優遇策のみをもって、この
インフレに苦しむ勤労者に持ち家の幻想を抱かせてきたのでありますが、これはILOの労働者住宅勧告にも見るとおり、すべての勤労者とその
家族に必要にして十分な住宅を供与すべき国の政策を
貯蓄に肩がわりさせ
ようというものにすぎないのであります。今回、この財形政策の拡充をはかるとして、住宅
貯蓄の
非課税限度を
引き上げるということでありますが、七年先に五百万円では、どこにどの
ような住宅が取得されるか、何坪の
土地が求められるか、全く
住宅政策を放棄した姿であり、西ドイツの
財形貯蓄等に比べてもきわめて悪い条件であります。せめて割り増し利息をつけるとか、積み立て後の
土地、住宅の実体保証を行なわなければ、いたずらに幻想をかき立てるだけに終わると思うのであります。私は、少額
貯蓄の保護策は、この
インフレ下における
貯蓄の減価を補うために必要であると考えますが、金融機関の
利益を吐き出させても、預金金利の大幅な
引き上げを行なうことが重要であると思うのであります。同時に、
投機による
インフレ利得は税金で吸収すべきであり、これが
所得再配分と負担の公平化の
物価抑制の観点からも必要であると考えるのでありますが、この点に対する
大蔵大臣の所見を伺います。
第三に、
経済外交の
あり方についてお伺いいたしたいのであります。
総理は、先ごろから東南アジア諸国を歴訪し、帰ってこられたのでありますが、これまでの対
米従属、アメリカの核のかさの下における安保
外交が、いかに国を誤り、かつ、危険なものであるかを身にしみてお感じになったと思われます。今回のタイ及びインドネシアにおける激しい反日運動は、単なる突発事故ではないのであります。社会党は、これまで
政府に対し、対米追従
外交と、エコノミックアニマルといわれる日本
企業の
経済進出について、その危険な側面を警告してまいったところであります。
総理の東南アジア訪問におけるタイ、インドネシアの激しい反日運動は、それが爆発したものであります。まさに国内における高度成長路線の結果として。ハイは大きくなったが、
国民福祉とはかかわりなく、海外進出に道を求めるというやり方が大きな反省点に立たされているということであります。すでに、昨年来、タイやインドネシアはもちろん、お隣の韓国からも、日本
商品のボイコットや、援助の拒否、あるいは多国籍
企業の名によってアジア諸国の労働者を搾取することに反対する運動が盛り上がっており、アジア諸民族の共通の認識になろうとしているのであります。田中
総理は、東南アジア諸国訪問出発にあたって、急遽、東南アジア五
原則なる作文を外務官僚につくらせ、平和と繁栄を分かち合うよき隣人関係の促進、
経済自立を脅かさない等、五項目をきめましたが、こんなつけ焼き刃の
原則をきめるだけでなく、日本があくまでも平和憲法を土台とした真の友好関係を樹立する努力を行ない、
政府の海外
経済協力の
あり方、
企業進出の規制等に対する
原則、
政治的視点を明らかにすべきであります。
さきに、現代総合研究集団が、日本
企業の海外進出に関する提言を行ない、その中で、平和憲法の順守、民間投資のルール、国際公正労働基準を三本柱とする海外協力宣言をきめる
よう提言をしているのでありますが、
政府は海外協力宣言の策定についてはどの
ように考えていますか、その見解を承りたいのであります。
また、
総理は、帰国後、
わが国も反省すべき点があると言っておられますが、
国民の反省ではなくして、田中
総理自身の反省だと思いますが、その点もどういうお考えか、説明をしていただきたいと思います。現地
国民を踏みつけにした
経済進出、あるいは現地権力と癒着した今日までのやり方では、援助の拡大それ自体が相手国
国民の対日不信をつのらせる危険があるというのが現実だと思うのであります。
次に、
石油削減といった
事態を背景として、田中
総理、三木特使、中曽根通産相、小坂特使と、相次いで、あたかも水鳥におびえた軍馬の
ようにあわてふためいて東南アジア、中近東などを歴訪し、おおばんぶるまいの
経済援助あるいは
経済協力を約束してきているのであります。まことに場
当たりな安易な口約束の感じが深いのであります。そのツケは、いずれも日本
国民と現地の
国民のふところに響いてくるのであります。もちろん、東南アジア諸国の日本に対する援助の要請がきわめて強いことも事実だろうと思うのであります。しかし、新聞に報ぜられている金額だけでも膨大な額にのぼっており、民間ベースの分も含めて考えれば、さらに巨額になると見られるのであります。これらの約束をどう処理されるお考えなのか、今後の援助計画をこの際
国民に明らかにされたいのであります。さらに、これらの
経済援助が今日までどのくらいの額にのぼっているか、その内容も明らかにしていただきたいのであります。
さらに、これらの
経済援助が、援助国の民衆の
利益のためでなく、反共政権や独裁政権のてこ入れや軍事援助の肩がわりに行なわれてきた、あるいは今後も行なわれることが懸念されるのであります。
わが国の対外援助は、
政府ベースの援助は少なく、正式の
外交ルートによらないで、民間で直接取りきめられるものも多いと聞いております。そのため、被援助国と日本
企業との間に援助ロビーと称される政界、
財界の大物
たちの暗躍も伝えられているのであります。ところが、膨大な海外協力
資金の
実態については、ほとんど満足な報告は行なわれていないどころか、まさに秘密のベールに包まれていると言っても過言ではないのであります。
経済援助をガラス張りにし、
国民的監視のもとに置くために、
資金の流れについて詳細な報告書を国会に提出し、国会の承認を受ける
ようにすべきであると思います。
国民は、これまで、パイを大きくすれば福祉がよくなると説明されてきたのでありますパイは大きくなったいま、
国民は、そのパイの
分配については監視し、
発言する権利があると思うのでありますが、
政府の御所見を伺います。
最後に、
政府は海外
経済協力に今後大きなウエートをさくと言われているのでありますが、これが第二の臨時軍事費になる心配があることを指摘しておきたいのであります。援助に名をかりた武器輸出が行なわれる危険はないのでありましょうか。
政府は第五十七国会において、
昭和四十二年十二月十三日、当時の山下
経済協力部長によって、輸出貿易管理令による武器輸出禁止三
原則についての
政府の統一見解を出しております。これは、共産圏、国連決議で禁止された地域、紛争当事国またはそのおそれのある国には輸出を認めないという内容でありますが、今後平和日本として一切の武器輸出はしないことを確約し、その
原則を明確にすべきであると思います。
総理の御所見を承りたいと存じます。
以上、要点的な問題について
質問いたしましたが、
国民はいま田中内閣に大きな不満と疑惑を持っております。
関係大臣のすなおなお答えをお願いいたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣田中角榮君
登壇、
拍手〕