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1974-01-25 第72回国会 参議院 本会議 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年一月二十五日(金曜日)    午前十時十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第八号   昭和四十九年一月二十五日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  第二 参議院予備金支出の件     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、北海道開発審議会委員選挙  以下 議事日程のとおり      ——————————
  2. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  藤原道子君から、病気のため三十一日間請暇の申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。      ——————————
  4. 河野謙三

    議長河野謙三君) この際、欠員中の北海道開発審議会委員一名の選挙を行ないます。
  5. 森勝治

    森勝治君 北海道開発審議会委員選挙は、その手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
  6. 柴立芳文

    柴立芳文君 私は、ただいまの森君の動議に賛成をいたします。
  7. 河野謙三

    議長河野謙三君) 森君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。  よって、議長は、北海道開発審議会委員小林武君を指名いたします。      ——————————
  9. 河野謙三

    議長河野謙三君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  内閣総理大臣から発言を求められております。田中内閣総理大臣。    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  10. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昨日、藤田進君の質問に対して、労働組合の名において七十億も八十億も年に集めておるような、とにかく団体があるのだから、現実的に政治活動をしているじゃありませんかと答えた真意について、一言付言いたしたいと存じます。  労働組合でも年間七十億円にのぼる経費を支出しているような大きな団体があるということ、そしてそのよう団体が現実には政治的活動をしているということを述べたわけであります。特定の労働団体政治団体として七十億円にのぼる政治資金を拠出しているという意味ではなく、労働団体政治活動に使う金は広範囲にわたるので、政治資金の問題を論ずるにあたっては幅広く考えていく必要があるのではないかという趣旨を述べたまででございます。(拍手
  11. 河野謙三

    議長河野謙三君) 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。二宮文造君。    〔二宮文造登壇拍手
  12. 二宮文造

    二宮文造君 私は、公明党を代表して、政府演説に対し若干の質問をいたします。  ことし昭和四十九年は、わが国にとって戦後最大の試練の年であり、第二の敗戦とも、また、あらゆる意味での転換の年ともいわれております。とどまるところを知らない悪性インフレ、公害、石油危機は、国民経済の基盤を根底からゆるがしており、襲い来たった社会的、経済的パニック状態の中で、国民は、一体われわれの生活はどうなるのかという不安と危機感に包まれています。また、それはそのまま総理への不信につながっていることも事実であります。福田大蔵大臣は、この物価値上がり狂乱状態と言いました。物価を引き金に日本の各界各方面での混乱はだれの目にも狂っているとしか言いようがありません。したがって、どうして狂ったのか、いつから狂ったのか、だれが狂わせたのか、この点を解明することが政治最大課題であり、転換の年にふさわしい論議であろうかと思うのであります。  すなわちそれは、総理をはじめ政府演説が繰り返し繰り返し説明した石油危機国際的インフレ現象などの外部からの圧力という理由に逃げることを許されない、より根源的な自民党の失政によるものであります。総理は耳をふさぐかもしれませんが、第一に、生産第一主義と対外的エコノミックアニマルに明け暮れた二十年来の経済の進路、第二に、安易な対米従属から抜け切れないまま第三世界との外交を自主的に推し進めることを怠ったその外交、第三に、金の力や利権のあっせんでその足元を固めてきた保守政治あり方、第四に、大企業に癒着し、国民に公平、公正の原則を実行しなかった自民党政治、この四点に要約されることは、もはや常識となっております。政治は常に責任を明確にしなければなりません。この点、総理の認識とその所信をまず伺いたいのであります。  このように、過去四半世紀にも及ぶ自民党政治のもとで生活の不安に脅かされてきた者は、いつの場合でも、政府施策に忠実であった正直者か、あるいは経済的に弱い立場国民、具体的には農家中小零細企業者、低所得者であり、老人、子供、そして働く人たちだったわけです。総理の言う思い切った発想の転換と強力な施策推進は、まさにここから始まり、国民高度福祉社会の実現をいまの時代に約束するものでなければなりません。自民党に、あるいは総理に、その資格、その決意がありますかどうか。  以下、その点を中心に、当面の内政問題、特に国民生活の問題を中心にしまして質問を続けます。  総理は、正直者ばかをみることのないよう社会的公正を確保すると演説しました。私たちは全くあ然としました。おそらく国民各位も、何をいまさらという気持ちに襲われたことでしょう。この物価の急騰は何ですか。商社、大企業便乗値上げはどうですか。物不足は、一体だれがほくそ笑み、だれがばかをみましたか。事態はまさに明白ではありませんか。結局、業界物不足を演出し、主婦を走らせ、価格を暴騰させ、それでもあきたらず、年末からは石油不足理由値上げ追い打ちをかける実情です。その間、政府は何をしましたか。投機防止法倉庫立ち入り検査し、売り惜しみ摘発したケースは一件もないではありませんか。運輸大臣があるいは経済企画庁長官倉庫調査をするとは言っても、事前に業者に通報して行ったのでは全くナンセンスであります。内田経企庁長官は、洗剤倉庫がからっぽなのを見て、その責任国民買いだめに負わせました。しかし、事実はそうではなかったのであります。公明党は、新春早々、総計九百七十三人で一週間にわたり東京都内洗剤総点検をいたしました。対象は、小売り店スーパー、一次及び二次卸店についてであります。また、消費者洗剤所有調査も同時に実行いたしました。結果はどうだったでしょうか。まず、洗剤を持っている家庭でもせいぜい中箱一個、しかも五軒に一軒は、買いだめどころか、全く持っておりません。これで内田長官発言は完全に否定されたわけです。また、小売り店には十月、十一月、十二月と月を追って入荷が激減し、スーパー大手スーパーほど逆に月を追って入荷がふえています。さらに、二次卸店小売り店と同じ傾向、一次卸店は逆にそれは激増している実態が明らかになったのであります。洗剤は一次卸店に隠されている、このようにわが党が公表した後、随所でその事実が確認されているではありませんか。メーカーと一次卸店市場への供給を急激に減少させる、市場には物不足状態が起こり、価格は暴騰し、暴利をはかる、これが洗剤不足のからくりだったわけです。政府発表需給速報は全くあてにならず、日を追うて値上がりしていけば国民は一体どうなりますか。総理は、正確な情報の迅速な提供と言っておりますが、それは物の出回りとその価格国民に確約するものかどうか、総理の所見を伺いたい。  また、経済企画庁長官、あなたは経済企画庁の十一月二十二日の需給速報御存じでしょう。砂糖、食用油、みそ、しょうゆ、灯油家庭用洗剤、石けん、トイレットペーパー、塩の九品目につきまして、「基本的には、どの物資も不足していません。仮にいま不足していても、間もなくスーパーなどの店先に届きます」と太鼓判を押し、価格についても九月をピークに一部に値下がりを示唆するよう発表をしていますが、お伺いをしたい。第一に、事態がこの需給速報のとおりに推移してきたかどうか。第二に、商品が出回り、主婦が買い急がないでも人手できるようになるのは一体いつですか。第三に、その価格はどうですか。値上げ特に便乗値上げはなかったか。ありとすればどのよう行政指導をするのか。以上三点について、全国主婦に具体的に御報告を願いたいのであります。  物価対策はすでに議論の段階ではありません。さらにまた、物価行政の元締めである経済企画庁長官は、これらいま申し上げた九品目小売り価格が店によってたいへんなばらつきがあることを御存じかどうか。去る二十日、日曜日ですが、東京都足立区の竹の塚付近で私は調査をいたしました。三井製糖のスプーンじるしがあるストアでは二百三十円、日商岩井のママじるしがこれまた別のストアでは二百十円、日新製糖のカップじるしがこれまた別のストアで二百円、また、某酒店では同じものが二百五十円となっております。いずれも一キログラム包みとなっておりますが、銘柄にもよりましょう。また、その店の仕入れ能力にもよりましょう。しかし、たったあの付近で短い範囲内でこうしたばらつきがありますことは、結局、迷惑をし不安感を持つのはやっぱり主婦ではないでしょうか。行政はそのようなきめこまかな問題にも目を通していかなければなりません。国民の協力と良識ある行動を望む前に、政府は強力な施策と実際上の効果を国民に示す義務があります。まさにまず隗より始めよであります。  第一に、国鉄運賃消費者米価値上げを撤回し、その他の公共料金値上げを三年間凍結する。  第二に、買い占め売り惜しみ措置法改正して、売り惜しみなどの摘発のための立ち入り検査を積極的に行なう。  第三に、独占禁止法改正して、カルテル、やみ再販などの競争制限を規制する。すなわち、不当な価格つり上げに対しては値下げを命令できるよう、また、違反行為摘発も機動的に実施できるようにする。  さらに、これに関連して、公正取引委員会は、大手総合商社六社がすでに卸売り業界でシェア七〇%を占有し、また、都市銀行と協力して融資、株式所有を通じて経済集中力を強化している実態調査発表しております。現行独禁法では、銀行株式保有には一定制限がありますが、すでに商品担保金融など金融機関化した商社都市銀行の提携はまさに脱法行為ともいわなければなりません。これまでも商社買い占め株式への投機など、そのあり方に反省を求められてきたところであり、政府対策を急ぐべきであります。  第四に、標準価格については、一番重要なことは、その価格が守られることであります。政府は守らせる責任があります。したがって、標準価格流通段階ごとに設定し、メーカー卸商に対して弱い立場にある小売り業者のマージンを確保できるように配慮しなければなりません。灯油ように、配達料という消費者にとって納得できないざる法的性格改正をしなければなりません。また、消費者の通報を受けた地方自治体が機動的に監視、監督できるよう措置しなければなりません。総理並びに関係大臣の答弁を求めます。  さて政府は、昭和四十九年度一般会計十七兆九百九十四億三千万円、財政投融資計画七兆九千三百三十四億円と決定いたしました。福田大蔵大臣は、恒例のごろ合わせで、「イイナ、苦心苦心予算」と自画自賛しております。そして予算規模抑制公債などの縮減税制改正公共事業費抑制公共料金の凍結などをあげて、物価安定短期決戦型予算と銘打っております。はたして国民の暮らしは楽になりますか。物価安定の短期決戦はできますか。ごろ合わせも読みようによっては「ヒトナククルシミ」の予算とも読め、国民泣かせの予算になりかねないのであります。政府は、予算規模を前年当初予算に比べて、一般会計で一九・七%、財投で一四・四%の伸びに押えたといっていますが、公共事業費では、当然減とも見られる災害復旧費の九百三十一億円のすりかえがあり、また、四十八年度公共事業費年度途中で七千二十七億九千万円繰り延べになっている点についてはほおかむりをしています。また、地方自治体自主独自財源である地方交付税交付金を、これまでの経緯も無視して、一千六百八十億円削減しております。公債発行額も、四十八年度さきの補正で五千三百億円縮減していますから、決して前年度比縮減とは言えません。さらに財投については、四十八年度分は年度末には二兆五千億円から三兆円持ち越しになるとさえいわれております。伸びを押えたといっても、それは単なるテクニックにすぎませんし、膨大な防衛予算をそのままにしてこのよう見せかけの圧縮、そのための公債増発、四十八年度からの繰り延べ持ち越し等々、政府のいう財政面からの総需要抑制はできるのかどうか、総理並びに大蔵大臣の説明をいただきたい。  総需要抑制とは、言うまでもなく不況を呼び寄せることであります。大蔵大臣は、若干の摩擦が生ずるがあえてやると、このように述べておりますが、このことは、たとえひずみが出ようと、倒産が起きようと、断固やるとの宣言でもありすす。不況はまず働く人たちを襲います。中小零細業者国民にしわ寄せをすることは必至であります。大臣は、特段の意を用いると、こうは言っておりますが、予算面では失業保険中小企業対策費が若干伸びているだけで、具体的方向は示されていません。考えを明らかにしていただきたい。  もう一点、総理演説は春闘に触れております。表現は簡潔ですが、どうも胸先にひっかかります。といいますのは、最近、政府与党は、財界に対して、価格値上げの自粛、場合によっては経理、利潤の公開も辞さないというような強い姿勢を見せております。もちろん自由経済であり、自民党財界をスポンサーにしている限り、そんなことができるはずがありません。できないものを、見せかけの強い姿勢をとる、そのほんとうのねらいは、総需要に一番大きなウエートを占める個人消費支出を弱めたい、そのために賃上げ抑制するという、その点にあるのではないでしょうか。やがて政府自民党財界と官僚が結びついて実質的な所得政策導入に踏み切るのではないか、その布石ではないかということであります。総理大蔵大臣所信をお伺いしたいのであります。  次に、政府演説あるいは四十九年度予算案を見る限りにおいて、政府は、インフレによって起こった社会的不公平、そのアンバランスの是正に相変わらず努力を怠っております。これでは、幾ら国民生活の安定を説き、分配の公正を優先すると言っても、国民には理解できません。  その第一は、社会保障費についてであります。政府は、社会保障費予算構成比率に占める割合が一六%台に乗った、金額も四十八年当初予算に比べて七千七百億円増額したと言っていますが、そのほぼ三分の一の二千五百億円程度医療費値上げによる経費増として組まれたものであります。わが国社会保障が、とかく医療保障に重点がかかり過ぎ、所得保障生活保障がなおざりにされてきたことは、これまでも強く指摘してきたところであります。五〇%値上げをしたといっても、老齢福祉年金はわずかに月に七千五百円、母子年金にしても九千八百円にすぎません。身体障害者年金についてもそうであります。この年金生活ができますか。ともに大幅引き上げが必要であります。しかも、この給付引き上げは四十八年度においてすでにきまっていたことであり、この一年間の異常な物価高は見込まれていないのであります。老齢年金は、われわれが常に政府に要求しているとおり、現行積み立て方式賦課方式に切りかえて、夫婦月に六万円支給を実行すべきであります。生活保護費にしても、二〇%アップ、こうは言っておりますが、夫婦子供二人の四人家族で月にわずかに六万円少々です。食べられる給付引き上げが必要であります。また、生活保護費につきましては、三万円以下の収入収入認定をしない、保護対象夫婦義務教育以下の子供最小単位として考えて、未成年者収入を別扱いにする、こういうきめのこまかなやり方で、まず食べられ、やがて貧しさから立ち上がるつえを政府は用意すべきだと思いますが、どうでしょうか。  なお、この際、かねて検討を約束されております身体障害者に対する百キロ以下の国鉄運賃割引通院等のために利用するタクシー運賃割引制度について、その後の経過を御報告いただきたいのであります。  また、二月一日実施が予定されております医療費引き上げは、健康保険料のあの弾力条項千分の八の値上げを伴うといわれておりますが、給与所得者にとってはそれこそ生活破壊であります。再検討をすべきではないでしょうか。  分配の公正を怠っているというその第二の点は、所得税減税について見られるわけであります。  政府は、今回の二兆円減税に際し、給与所得控除の上限をはずし、さらに適用税率改正しました。試算によりますと、夫婦子供二人の標準家族の場合、四十八年の年収二百万円の給与所得者が、四十九年に二〇%給料が上がって二百四十万円になったとして、前年に比べて一万四千三百三十円の純減税になっております。ところが、五百万円の人が同じく二割値上げをして六百万円になった場合は七万七百七十円の純減税、一千万円が二〇%上がって一千二百万円になった場合は二十万五千七百七十円、しかも、二千五百万円の給与所得者が二〇%上がって三千万円になった場合は九十四万二千五百円の純減税となるのであります。所得が大きければ大きいほど減税の恩典に恵まれているのであります。ところで、総理府の家計費調査から見た国民世帯当たり年間の平均所得は四十八年で百九十万円程度であります。本来、今回の減税は、インフレによって被害を受け、それから生ずる所得格差を是正するたてまえでありまして、比較的抵抗力の強い高額所得者がこのよう優遇を受けることは、たてまえ論から見ても納得ができません。むしろ、年収五百万円程度を山と考えて、さらに減税を進め、一方、標準家族課税最低減年収二百二十万円まで引き上げ、いわゆるインフレ被害を救済すべきであります。  公正な分配を怠っているというその第三の点は、同じ税制の問題で貯蓄非課税限度についてであります。  政府は、貯蓄奨励するという立場から、いわゆるマル優扱い非課税限度を大幅に改正ようとしております。すなわち、一人につき、銀行預金で三百万円、国債で三百万円、郵便貯金で三百万円、財形貯蓄で五百万円、合計一千四百万円まで免税されることになっております。家族名を利用しますと、一世帯当たり数千万円の貯蓄についても利子税免税が可能になるわけであります。四十八年の国民世帯当たり平均貯蓄額は二百十五万円と発表されております。それから考えましても、この免税はいわゆる金持ち減税ということになるのではありませんか。  また、この際特に注意を喚起したいのは、個人貯蓄インフレによって目減りをすることであります。老後のために、不治の病のために、あるいは子供教育費に、住宅資金にと、国民は身を削る思いで貯金をします。その百万円は二〇%物価が上がれば八十万円に目減りをしてしまいます。一方、銀行貸し出しを受けた企業は、逆にそれだけ借り入れ金が減る勘定になるわけであります。伝えられる宝くじつき預金にしましても、高額な当せん金をつけて射幸心をあおるようになっていますが、それは預金者利子の食い合いにすぎません。くじにはずれたものは、利子はほとんどつかないような計算になるのです。ここ二十数年来、銀行利益はばく大です。インフレによってもうけたものは銀行、大企業であり、損をしたものは預金者たる国民です。その銀行のもうけ、企業債務者利益に全く手をつけようとしない政府姿勢は、これは不公平と言わざるを得ません。公定歩合が二%の上げで九%、しかも預金利子は一%上げで七・二五%にとどめるというのは、抜本的に検討すべきではありませんか。このよう金持ち優遇のそしりを受けるよう貯蓄奨励ではなく、個人貯蓄優遇策を抜本的に政府検討すべきでありましょう。  分配の公正を怠っている第四の問題は、大企業法人所得についてであります。  さきに国税庁が発表した大企業法人の四十八年九月期決算の内容は、インフレに悩む国民あ然とさせました。四十七年同期に比べて、繊維は七・三倍、石油は四・四倍、鉄鋼は三・五倍、紙パルプは三・四倍となっております。その間、卸売り物価は二〇%、消費者物価も一五%程度値上がりを見せたのであります。これは明らかに物不足値上げによる荒かせぎであり、放置することは許されません。したがって、大企業法人法人税率を四二%以上とし、さらに累進税率を適用する。また、投機あるいは物価つり上げによる企業法人に対しては、不当利得ないし超過利得税臨時措置として実施すべきであります。例年問題になっております交際費課税など租税特別措置法の特例は、社会正義、公平、公正の原則から見ても撤廃し、姿勢を正しくすべきであります。  公正な分配を怠っているというその第五の点は、後退した住宅政策であります。  四十九年度予算では、予算額はふえたといっても、戸数では前年に比べて公営住宅が二万九二戸、公団住宅が一五尺改良住宅が六千戸それぞれ減となっております。地方自治体では、土地資材の暴騰でその予算さえも消化できないのではないかといわれております。インフレ、さらに列島改造論による地価上昇追い打ちなど、総理責任はまことに重大であります。しかも政府は、公営公団住宅の後退を持ち家制度推進ということですりかえようとしていますが、今日では家賃の適当な公営住宅にその焦点を合わせるべきであります。政府が特に力を入れたいとする財形貯蓄も、現在、利用者百二十万人といわれる中で、将来家を持ちたい、土地の手当てができたというのは、わずかに一万人にすぎないではありませんか。また、政府住宅政策は、働く青年男女、特に結婚適齢期人たちに配慮がありません。公的住宅提供ないしは一定所得以下の新婚家庭に対し、税額からの家賃控除を設定してプレゼントとすべきではないでしょうか。  以上について総理並びに関係大臣にお尋ねをしたいのであります。  次に、総理は、食糧の確保のため自給度維持向上をはかるとしていますが、今日、主要農産物自給度は一体どうなっておりますか。伝えられるところによりますと、米は九二%、小麦は八%、大麦、裸麦が二九%、大豆が四%等々となっています。主要農産物自給率を伺いたいのであります。そしてそれをどう維持向上するというのですか、目標年次及びその自給率を説明願いたいのであります。  これまでの自民党政治のもと、農業に関する限り、ネコの目農政あるいは農業切り捨て政策と呼ばれ、農業は産業としての形態をなしくずし的にこわされてきました。土地を奪われ、資金農村から都市銀行へ、そして大企業へと吸い上げられ、人もまた農村を離れざるを得なくなりました。その実態は各種の統計に明らかなとおりであります。  その自民党農政の典型をミカン栽培に見ることができます。三十五年の全国ミカン作付面積は六万三千六百ヘクタール、その生産量は八十九万三千六百トンでありました。ところが、今日、作付面積は三倍になんなんとする十七万一千三百ヘクタールをこえ、生産量もまた三百三十三万トンをこえるといわれております。例の農業基本法制定以来、農業構造改善を旗じるしに、奨励金補助金でもって農家ミカン栽培にかり立てたのは自民党です。中には、桑の木をひっこ抜いてミカンにかえたほど、当時はバラ色に包まれた奨励だったわけです。本年一月二十二日現在、京浜市場では安値十五キロが六百円です。農家は、この中から荷づくり経費百四円、組合費三%二十円、運賃百円、市場手数料七%四十二円、計二百六十六円を差し引かれ、手取り三百三十四円、一キロ当たり二十二円三十銭となってしまうのであります。キロ当たり生産費の実に半額以下という状態であり、しかも荷づくり用資材は日を追うて値上がりを見せ、それだけ農家手取りに食い込む勘定になっているのであります。旗は振るけれどもめんどうは見ない、これでは農家は一たまりもありません。その結果について政治はあくまでも責任をとり、最低価格を保障するなどしてミカン農家を救済すべきでありましょう。それでなければ、幾ら自給度維持向上と言ってみたところで、農家生産意欲は出てきません。政府の認識、具体的救済策を御説明いただきたい。  さらに、今日、政府農業政策にどういう展望を持っているのか。先ほど財界農業団体からなる国際化に対応した農業問題懇談会がある種の提言をいたしております。それによりますと、十年後一九八二年を目標としてまず自給率を高める、その際の農業就業人口は今日の六百八十七万人から四百二十万人に減らせる、また、全国画一的な農政を改め、地域に即したものとする、登録農業経営者制度を設けて、年利一%、期間五十年の農業合理化資金を融資する等々の内容となっていますが、これは明らかに大規模農業推進であり、零細農家切り捨てであります。これらの点を踏まえながら、政府施策の目標、さらには農産物の価格支持政策についての施策を御説明いただきたいと思うのであります。  また、総理は、教育は民族悠久の生命をはぐくむ重要な国家的課題であるとし、青少年に夢を託すがごとき演説をしていますが、しかし総理、今日、わが国の学校教育が、大学生の七六%、短大生の九一%、高校生の三一%、幼稚園児の七七%が私立学校で教育を受けております。しかも、私学といえば、学費値上げ、法外な入学寄付金、水増し入学、金もうけ主義、貧弱な教育内容等々、ともすれば暗いイメージにおおわれるほど多くの問題をかかえていることを、政府はどう受けとめていますか。東京都内の場合、まず私立高校では、ことしは入学金が平均で七万円、授業料が平均月額八千円、高いところでは月一万三千五百円となっております。都立高校は月八百円です。また、中小学校でも、高いところは授業料が月一万一千七百円、ほかにも一万円台が多くなっています。また幼稚園では、保育料月額は平均六千円、入園料が昨年の二倍の三万円にはね上がっております。東京都では、父兄負担軽減のため、現在、五歳児月二千円、四歳児月千円の助成をしていますが、四十九年度は増額しない方針のようです。いうところの私学振興は実施されてきましたものの、国の財政援助は、国立大学特別会計四千六百億円の九分の一程度です。私学白書によりますと、私大生は国立大生に比べて十倍以上の学費を納めながら、しかも四分の一以下の教育しか受けられない現実であります。また、文部省の調査によりますと、私立大学の学費も、去年に比べて一〇%値上げをする、しかもその値上げの期間が、従来は四年おきぐらいの勘定になっていたのが、いまではほんとうにその値上げの期間の刻みがこまかくなった、こういうふうな調査の結果を発表しております。したがって、私立大学、高校、小中学校、幼稚園の助成についてお伺いをしたいのであります。  最後に、沖繩問題について。  総理は沖繩海洋博の成功を期すと述べていますが、開催日を延期したとしても、施設のおくれ、輸送事情、宿舎施設の不足等々のため、その規模、観客動員数の縮小が伝えられ、また、参加商社あるいは参加国の事情も、石油やあるいは国際情勢のため、必ずしも楽観は許されないようであります。この際、その概略を明らかにし、かつ、政府の見通しを御説明いただきたい。  また、米軍基地の整備縮小は、政府がたびたび言明し、新春早々にも、日米双方の合意を得て大規模な返還が予測されていましたが、その見通し、返還の内容はどうですか。  これに関連して、牧港兵たん基地の軍労務者千三百七十一名に対し、二月末日をもって解雇する旨、米軍は発表しくおります。これまでも、契約解除については、できる限り早期にその計画を明らかにし、生活不安など起こさせないようにつとめると言いながら、今回の大量解雇もきわめて抜き打ち的であります。政府はどのような救済策をもって対処するのか。  さらに、屋良知事は、沖繩三菱開発が原油基地として埋め立て工事を進めてきた金武湾一帯、約二百八十万平方メートルの埋め立て造成地に対し、環境保全と住民の反対を理由に、認可の白紙撤回を通告し、また、貯油タンクの設置申請を却下しております。今後、施工者側と県当局との間に複雑なトラブルが懸念されますが、政府はこの事態をどのような理解をもって対処するのか。  以上で私の質問は終わりますけれども、しかし、総理総理演説の中でこう言っております。「いまこそ、政治が本来の意義と機能を取り戻し、その力を余すことなく発揮すべきときであります。政治は、一政府、一政党のみにかかわるものではありません。国民一人一人の多様な願望と英知が相寄り、国の命運を決定づける力となるのであります」と、このよう総理は述べております。しかし、私は、一昨日以来からの総理の答弁を聞いておりますうちに、この演説の内容に述べられていた総理の決意は、いつの間にかもとのもくあみに返ってしまっているのではないか。政治は、一政府、一政党のみにかかわるものではない、こういう総理発言をしながら、総理の答弁は日を追うて後退をするわけであります。たとえば超過利得税の問題にしましても、あれほど国民商社物価つり上げ、不当なもうけに対して怨嗟の声をあげております。まず、この超過利得税政府部内の中で声があがりました。総理は記者会見でそれを確認をいたしました。それを受けた大蔵省はだんだんと消極的になって、これは議員立法でもするよりほかにないというような言い方に変わりました。そして、肝心の自民党部内でも徴税方法に疑問があるというので今日きわめて消極的な方向に進んでまいりました。国民の声が日を追うて自民党の手によってむなしくさせられていくわけであります。あるいはまた、国民一人一人の願望と英知が相寄りと、こう言われておりますが、総理は一たんきめた予算はてこでも動かせない。たとえば、社会保障にしましても、課税最低限にしましても、総理の答弁は全くあっけないものであります。予算は動かさない。これでは政治は一政府、一政党のみにかかわるものではないとは言いながら、政治は単に自民党だけの政治ではありませんか。また、標準価格にしましても、トイレットペーパーの標準価格を二月一日から実施するような話になっておりますが、十一月二十二日に経済企画庁発表したトイレットペーパーの価格の表示は、緊急出荷品の小売り価格一パック四ロールは百八十五円から百九十五円、こういうふうに発表しておりながら、今日新聞に伝えられますその値段はそれよりもはるかに高い二百二十円から二百四十円ということになっているわけであります。物価がどんどん上がっているときはそのままほうっておいて、やがて高値に安定したところで標準価格をきめるというようなテクニックをこのまま使っていきますと、国民政治不信はますます強まってまいります。  ここに、ある主婦の投書があります。「見えすいた異変にだれかの私腹に奉仕するのは業腹と、必要最低限の日用品しか買わなかった。その結果は、一家の主婦として私の惨敗で、三カ月後、灯油、砂糖は二倍、洗剤は三倍という高騰ぶり。しかも容易に手に入らない。おかげで今ではスーパーのお一人様一品限りの赤紙を見れば、つい手が出たりひっこんだりの情けない有様。結局、世の中自衛あるのみ、買い占めのエゴイズムこそ、政府にいじめられ、だまされ続けた弱者の知恵だと主婦たちは居直り、戦時中までさかのぼって被害者意識を強調する。マスコミはかくまでの政治不信と、いっせいに主婦の擁護に回ってくれる。確かに、泣く主婦のかげに笑う業者が存在し、この悪性インフレインフレなんかでないと断言する別の次元で暮らしているらしい政治家の優雅な生活感覚に問題はある。だが、そういう政治家をわれわれは支持してこなかったろうか。選挙権という強力無比な切り札で政治を切る自由を持ちながら、それを怠ってきた点、私たち女にも責任があろう。私たちの一人ひとりが今、本気で考える時機だ。」と、こういう主婦の声になってくるのであります。したがって、総理のこの現実に対する勇気ある発想の転換を私は求めますし、そうでなければ国民は田中内閣の退陣を要求するでしょうし、われわれもまた国民とともに田中内閣打倒に向かって進まなければならない、こういうことを総理に申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 二宮文造君にお答えをいたします。  第一は政治責任についてでございますが、われわれは、戦後四半世紀以上にわたって政権を担当し、国民とともに幾多の困難を乗り切り、今日の繁栄を築き上げるため微力をいたしてまいったわけでございます。この困難を乗り切ってきた責任政党としての自信と伝統は、難局に直面しておる現在にありましても、必ずや国民の負託にこたえてこの試練を乗り切り得るものと確信をいたしておるのでございます。また、昨年の秋以来、一部の生活必需物資について地域的に不足する事態が生じたため、政府といたしましては、不足物資の増産の指示、不足地域への緊急放出等の対策を講じてまいりましたことは、御承知のとおりでございます。また、流通過程での在庫量を把握するため、緊急在庫調査を現在も実施しているところでございます。政府といたしましては、買い占め等防止法、石油緊急二法の機動的な運用等によりまして物資の需給調整、価格の適正化に全力をあげてまいりたいと考えます。  国鉄運賃及び米の政府売り渡し価格の実施時期を半年間延期をすることといたしましたのは、昨日も申し上げましたように、物価抑制を最優先の課題と考えたからにほかなりません。しかし、何ぶんにも大きな財政負担を要することでもございますし、値上げの撤回はできないわけでございます。公共料金につきましては、極力抑制する方針に変わりはございません。しかし、その公共性の程度、経営状況、財政上の助成の可否等につきまして差異のあることを考慮いたしますと、ただに一律全面ストップというわけにはまいらない事情がございますことも御理解をいただきたいと思うわけでございます。  また、独占禁止法に違反する行為につきましては、現在、公正取引委員会におきましてきびしい態度で臨んでおり、その迅速な処理につとめておるところでございます。  独禁法を改正しまして価格カルテル等による不当な価格引き上げに対して値下げ命令を出せるようにしてはどうかという御提案もございましたが、現在公取においてこういった問題を含めまして独禁法の研究を進めておりますので、その検討の結果を待って処置したいと考えておるのでございます。  また、利潤、賃金に対する何らかの規制措置は、欧米先進国においても物価対策としてすでに行なわれておることは、御承知のとおりでございます。しかし、実行上各種の問題を含めまして必ずしも成功をおさめていないと聞いておるのでございます。いずれにしましても、本格的な所得政策の導入に踏み切る場合には、その前提といたしまして国民的な合意が必要でございます。わが国におきましてはいまだその時期ではないという考え方を間々申し述べておるとおりでございます。しかし、現下の物価高騰を鎮静化するために、企業利潤の規制、賃金引き上げについての節度を労使双方に強く求めておりますことは事実でございます。すべては現状を認識し、国民生活の安定という立場に立って労使双方ともに心からなる協力を願っておる次第でございます。  また、身体障者者に対して百キロ以下の国鉄運賃の割引やタクシー運賃の割引などを考えてはどうかという御指摘でございますが、御指摘の運賃割引制度の拡充などは事実の問題として困難と思われますが、身体障害者対策としては、本年度におきましても障害福祉年金引き上げをはじめとする諸施策推進することといたしておるわけでございます。いま御指摘になったように、鉄道運賃の割引というような特別な制度を採用するほうがいいのか、また、身体障害者に対する給付その他諸施策上げることによってカバーするほうがいいのかという問題については、また勉強してまいりたいと考えておるわけでございます。  公的住宅の戸数減の問題にお触れになりましたが、政府は戦後一貫して公的住宅の建設に鋭意つとめてきたところでございます。しかし、最近、大都市地域におきまして、用地の取得難、関連公共施設の整備についての地元地方団体との協議が難航していることなどによりまして公的住宅の建設事業におくれが生じており、地方公共団体等事業主体の施行能力を勘案しまして供給戸数を計上したものでございます。一方、規模増及び建設単価の引き上げ等、質の改善をはかりますとともに、関連公共施設の整備等に重点を置いて予算を計上いたしたわけでございます。  持ち家制度との関連についての御発言でございますが、政府は、良質低廉な公的賃貸住宅を供給いたしますことにつきましては、従来からつとめてまいっておるわけでございます。しかし、勤労者の持ち家に対する希望が強いことも事実でございますので、勤労者財産形成の重要な柱といたしまして国と事業主の援助によりまして持ち家の促進をはかることにいたしておるわけでございます。  また、結婚適齢期の青年に住宅を提供せよという御所論に対してでございますが、結婚適齢期の青年は一般に所得は低く、住宅に困窮する場合が少なくないことは理解できますが、年齢とともに所得の上昇するといういわゆる成長階層に属する者が多いので、公営住宅のほか、公団・公社賃貸住宅及び公的援助による良質低廉な民間賃貸住宅の供給を増加するよう状態において対処してまいりたいと考えておるわけでございます。  また、国民の主要食糧のうち、国内生産が適当なものは極力国内でまかない、自給度維持向上をはかることが必要なことは言うまでもございません。農林省におきまして、昭和五十七年度目標年次とする主要農産物生産目標を作成いたしまして、米、野菜、果実、鶏卵、肉類、牛肉、乳製品等の主要農産物は、完全自給ないし八割以上の自給率を確保することにいたしておりますことを申し上げておきたいと存じます。  ミカン価格安定をはかるためには、長期的な需給見通しに即した計画的生産をすることが基本であると思うわけでございます。また、加工需要伸びに対処してジュース工場の設置など、加工対策の一そうの推進をはかり、今後とも価格の安定をはかってまいりたいと考えます。  国際化に対応した農業問題懇談会の提言は、十年後の日本農業のビジョン、北海道、南九州等の地域農業の確立、農業生産基盤の整備、農業経営者の育成、農業の対外政策など、広範な問題に及ぶものでございまして、今後その内容を十分検討してまいりたいと思うわけでございます。  また、私学の助成にお触れになりましたが、間々申し上げておりますとおり、私学経営の現状にかんがみ、昭和四十九年度予算におきましては、私立大学等経常費補助金を前年度より四七・五%増しの六百四十億円に増額し、私学経営の充実をはかるとともに、水増し入学や授業料等の抑制にも資することとしておるわけでございます。しかし、これをもって足れりと考えておるわけではございませんで、私学の経営の状態その他につきましては十分勉強しながら私学助成を拡大してまいりたいと考えておりますことは、申し上げておるとおりでございます。  高校以下の私学に対しては、国の私立大学等経常費補助に準じまして、各都道府県が補助ができますよう、必要な財源措置を地方交付税制度において講じておりまして、毎年度大幅に拡充いたしておるところでございます。  在沖繩米軍基地返還の見通しと、解雇される米軍労務者の救済策についての御発言がございましたが、米軍施設区域の整理統合につきましては、できるだけ早い時期に合意に達するよう、鋭意交渉中でございます。  牧港兵たん基地の米軍労務者につきましては、配置転換により実解雇者数を減少させるよう、米側と調整中でございます。離職を余儀なくされる者に対しましては、駐留軍関係離職者等臨時措置法を軸といたしまして、その援護救済に万全な措置を講じてまいりたいと考えておるわけでございます。  最後にお触れになりました政治責任等につきましては、戦後幾多の困難に直面をしながらも、国民の英知と努力によりまして今日の繁栄を築き上げてまいりましたことは、歴史の示すとおりでございます。石油事情等により、現在、困難な事態に当面しておりますが、国民の支持と理解を得ながら、政府はその責任を果たしてまいりたいと考えるわけでございますので、各位の変わらざる御協力を心から願って答弁といたします。  なお、税制その他につきましては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)    〔国務大臣内田常雄君登壇拍手
  14. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 二宮さんからお尋ねのございましたことにつきましては、おおむね総理大臣からお触れになりましたが、若干の補足を申し述べさしていただきます。  まず第一に、十一月二十二日に、その当時の物資の不足感等の状況に対応して、経済企画庁が各省と協力して需給速報というものを関係方面に公表をいたしました。これにつきましては、その後、第二次には十一月二十八日、第三次には十二月二十六日に追加公表をいたしております。その間、政府といたしましては、これらの物資につきましては、九品目でございましたが、それぞれ関係省庁と協力して、緊急放出でございますとか、あるいは増産の指示、あるいは指導価格調査等の緊急対策行政措置として講じてまいりましたが、さらに昨年の暮れには国民生活安定緊急措置法の御制定をいただきましたし、また、この法律によりまして売り惜しみ防止法による権限の強化等の改正もいたしましたので、それに引き続きまして、あるいは売り惜しみ防止法による立ち入り検査の執行、あるいは品目の追加、あるいは標準価格の設定など、法的の規制もこれらの品目に対して行なっておるところでございます。  また、私は、先般たまたま通産大臣の外遊中に通商産業大臣の臨時代理を仰せつけられましたので、私みずから——私が一人ですべての在庫調査ができるわけではございませんけれども、関係各省の担当者に私に続いてほしいというたてまえから、みずからある種の物品につきましてメーカーや在庫調査などをいたしました。また、あるいはその姿勢もとってまいりましたが、それに引き続きまして九品目に加えて十二品目にいたしまして、この十二品目につきましては、今月の十六日から関係各省の担当者をでき得る限り動員して、全国で一千カ所程度対象とする個所の在庫調査を進めておりますことは御承知のとおりでございます。これらの結果につきましては、いずれ国会にも御報告する機会を得たいと思っておるところでございます。  洗剤などにつきましては、私はみずから調査をいたしましたところ、結局これは物を増産させるにしかずという考えに立ちまして、昨年一年間で一般の需要増加よりも大きい生産がなされておったそうでございますが、しかし、それ以上、月平準の五万五千トンの生産量というものを三割増産をして七万トンぐらいにする、こういうたてまえをとりまして、現にその増産は軌道に乗っておるところでございます。他の予測せざる事情の生じない限り、たとえばいまお尋ねがございます洗剤などにつきましては、一、二ヵ月と申しますか、三月ぐらいまでには小売り店にこの洗剤が十分出回って、そして消費者に不便をかけないような、そういう事態が生ずるであろうことを私は期しておる次第でございます。  なお、これらの物資につきましては、引き続いて政府から常に正確な情報を国民の各層にも、関係機関にも通報するようなことに十分つとめてまいる所存でございます。  なお、一月十六日から実施に踏み切りました立ち入り検査品目は、先ほども申しましたとおり、十二品目でございますが、まず家庭用合成洗剤、塩化ビニール、印刷用紙、トイレットペーパー、灯油、LPG、砂糖、食用油、小麦粉、みそ、しょうゆ、合板、以上の十二品目でございます。  それから公共料金についてのお尋ねでございましたが、これは総理大臣からも御答弁がありましたとおり、私は、物価担当相といたしましても、公共料金物価に占める比重の大きさにかんがみまして、できるだけこれは抑制をいたしたい所存でございます。ただ、総理も仰せられましたように、公共料金には種々の種類のものがございまして、すべてが国鉄やあるいは消費者米価ようにまいらないものがございます。その性格とかあるいは社会的機能とか、国が財政をもって対応策を講じ得る可能性のないもの等、いろいろ種類がございますので、一律に全面ストップというわけにはまいりませんけれども、それらの性格、状況に応じまして、右申し述べましたような方針で極力抑制を続けてまいることに変わりはございません。  それから独禁法の改正の問題につきましても、総理からお触れになりました。  カルテルの規制の規定は独禁法の中にございますけれども、カルテルを規制いたしましても、カルテルによって形成された高価格というものを引き下げ命令ができない、これをいかに対処すべきかというような問題もございますが、これは独禁法研究会というものを公正取引委員会の周辺に設けまして、現在せっかく検討中でございます。大手商社等の活動規制の問題につきましても同様でございまして、私はその成果を期待するばかりでなしに、私といたしましてはこれらの御研究を大いに激励をしてまいりたい気持ちでありますことは、先般も申し述べたとおりでございます。最後に、標準価格の問題につきましては、標準価格は現在の状況におきましては小売り段階においてこれを設定いたしておりまして、卸あるいはメーカー段階には直接標準価格を設定いたしておりませんけれども、あの国民生活安定緊急措置法の中には、小売りに設けられた標準価格につきましては、販売といいますか、流通の段階につきましても妥当と認められる抑制ができるたてまえかございますので、そういう条項を活用いたしまして、小売り業者だけが標準価格の設定によって苦しむことがないように、また、小売り業者にもしかるべきマージンは得られますように、流通段階の卸価格につきましてもこれを規制する行政措置をとっておることは御承知のとおりでございます。しかし、これらは、事態に応じまして、先般国会修正もございましたので、国会修正の趣旨をも取り入れまして善処をいたしてまいりたいと考えております。以上でございます。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  15. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 沖繩の海洋博につき食しては、石油事情等から期間を若干延期いたしましたが、会場建設につきましては、土地造成はすでに七〇%程度進行しております。それから政府の出展につきましては、文化館及び水族館について一月二十五日に入札を完了いたしました。輸送施設——道路、港湾、空港等につきましては、昨年十月末に契約率は約七〇%程度終了いたしまして、工事は順調に進んでおります。さらに、規模並びに観客数については縮小せず、いままでの計画どおり実行いたしたいと思っております。参加国は、現在まで約五十カ国申し出がございまして、この種の規模の海洋博としては、最も数の多いものでございます。国内出展参加企業は、目下のところ七グループでございます。  それから金武湾の石油基地についてお尋ねがございましたが、石油基地につきましては、国際石油事情等を考えまして、できるだけ備蓄増強を推進してまいりたいと思っております。したがって、適当な場所において住民の御協力が得られれば、できるだけ推進していきたいという積極的な考えを持っております。屋良知事におかれては、昨年七月、五百万キロリッター程度の許容基準について賛成の支持の御発表がございましたが、最近は建設反対の意思表示をなされました。私らといたしましては、やはり石油の備蓄増強という観点からいたしまして、できるだけ環境保全をはかりつつ、住民の御協力を得て推進していきたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  16. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 二宮さんから、今度の四十九年度予算見せかけ物価抑制予算じゃないか、そういうようなおとがめの御質問でございますが、私はほんとうに良心をもって申し上げることができると思うんです。この予算は、私も全力を尽くしまして物価抑制を実現するという一点に焦点をしぼるというくらいなつもりで編成したつもりでございます。パーセンテージのこともありますが、中身を見てもらいたい。公共事業費につきましては、四十八年度その額以内にとどめる。なお、量におきましては四十七年度以下になるんです。これは、私は、総需要抑制という見地からいいまして非常に大きな影響を及ぼすだろう、必ず近いうちに金融抑制政策と相並んで相当の影響を実現するであろうと、こういうふうに見ております。  交付税の減額をいたしましたのは、地方団体に対しましてもその方針に準じてもらいたいという趣旨に基づくものであります。  それからこのしわ寄せが、そういう政策をとると、小さいもの、弱いものに行くんじゃないか、その備えが十分でないんじゃないかというお話でございますが、これは、中小企業対策につきましても、また、低所得者対策に対しましても、十分な配慮をしておるというつもりでございます。よく予算をごらん願いたい。  それから所得政策を導入する考えはあるかというお話でございますが、これは総理もお答えがありましたが、私は、国家権力が所得に介入するというよう事態は、これはあまり好ましくないと思うんです。なるべくそういう事態がないようにしたい。そのゆえに、総需要抑制政策、これを強力に進めたいと、かように考えております。  それから所得税減税問題でありますが、まず、課税最低限を二百二十万円まで引き上げろと、こういうお話でございます。これはしばしばお答え申し上げたのでありますが、今度は百七十万円平年度ということを考えております。これはまあ今日の財政から見ると精一ぱいだと私は思います。二百二十万円まで今日この時点で引き上げろというのは、これはいささか無理な御注文じゃないか。  それから中堅所得者以上の減税はやめたらどうだと、こういうような御趣旨でございますが、これは事業所得者との権衡、そういうことを考えますと、これはどうも採用せざるを得ないのじゃないか。税制調査会の大かたの意見もそうでございます。  それから貯蓄非課税限度引き上げ金持ち優遇にならないかというようなお話でございますが、まあ三万万円、それくらいの限度の貯蓄、これは私はどんな人でもやってもらいたいんです。その程度の限度の減税金持ち優遇だと、こういうことは、私はこれはいただけない。  それから預貯金の金利を引き上げろというお話でございますが、これは四月以来ずいぶん引き上げておるんです。この上とも銀行に対しましては指導をしてまいりたいと、かように考えております。  それから割り増し金づき定期預金の創設、これに対する御批判でございますが、これは貯蓄手段を多様化するということはこの際非常に重要なことじゃないか、そういうふうに考えておるのであります。そういう意味において御理解を願いたい。  それから法人税についていろいろの御提言でありますが、法人税率上げろ、私もそういうふうに考えております。しかし、二宮さんの四二%以上というのじゃなくて四〇%、と申しますのは、実効税率でいいますると、これで四九・五%になる。これが国際水準である。まあこの程度が妥当なところではあるまいか、さように考えております。  また、累進税率を導入せよと、こういうお話でありますが、これは法人は自然人と異なる。規模も組織も株主構成もいろいろあります。そこで、これを累進税率にすることは、これは不可能でございます。そういう意味で御理解を願いたいのであります。  それから臨時超過利得税につきましては、しばしばお答え申し上げておるんです。私も、感情論としては何とかこれはやってみたい。しかし、まだ具体的方法については結論に到達しないと、こういう状態でございます。これはまた皆さんからとくとお知恵を出していただきたい問題である、かように考えております。  それから租税特別措置の廃止でありますが、これは、現在あるものは、中小企業対策とか、公害対策とか、そういうものがおもでありまして、一定の政策目的を持っておるんです。そういうものをここで全廃するというのはなかなかむずかしい。しかし、政策目的を完了したというものにつきましては、これは逐次撤廃をすると、そういう考えでございます。あるいは改正するという考えでございます。  それから一定所得以下の新婚家庭家賃控除制度を取り入れたらどうだというお話でございます。これは二宮さんのお気持ちはよくわかります。そういうふうにしたいような気持ちもしますけれども、そういう個人的事情に基づきまして控除をやるということになりますると、他にもいろいろ問題がある。税法上の問題といたしますると、なかなかこれは困難な問題であると、かように考えます。  なお、私学に対する助成につきましては、総理からお答えを申し上げたとおりでございます。(拍手)    〔国務大臣齋藤邦吉君登壇拍手
  17. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) お答えを申し上げます。  最初は年金でございますが、年金の財政方式についてお答えを申し上げます。さきの国会におきまして五万円水準年金が皆さん方の御協力をいただきまして成立いたしたわけでございますが、その審議の際に種々論議のあったところでございますが、すでに御承知のように、老齢人口急増の潮勢に対処いたしまして世代間の負担の不均衡を来たすということのないようにしなければならない、かように考えておるわけでございますので、賦課方式を採用するということはいまの段階で適当ではない。したがって、現在の修正積み立て方式によりましてスライド制を背景に持って五万円水準年金を進めてまいるようにいたしたいと考えております。  また、福祉年金につきましていろいろお尋ねがございましたが、老齢福祉年金は五千円から七千五百円、障害福祉年金は七千五百円から一万一千三百円と、こういうふうに昭和四十九年度において引き上げるわけでございまして、この引き上げに要する金は、昭和四十九年度において四百四十六億、全部国民の税金でございますから、ひとつその点を十分御理解をいただきたいと思う次第でございます。  さらに、生活保護費に関連した収入認定の御質問でございますが、生活保護費につきましては、収入がありますればこれは全部、生活費に充てるということがたてまえでございますが、勤労意欲を高めるということも必要でございますので、適当な勤労控除を設けておるのでございます。しかしながら、その勤労控除を一律に三万円と、こういうことは困難であろうと思います。現在はおおむね一万円程度の勤労控除をいたしておりますが、四十九年度におきましては、この一万円という額につきましては十分改善をはかってまいりたいと考えておる次第でございます。  また、未成年者についてのお尋ねでございますが、未成年者につきましても勤労控除によりまして一定額を控除いたしております。さらに、未成年者につきましては、教育費、交際費等のそうした需要に対応するための控除もいたしておるわけでございますが、この内容につきましても、昭和四十九年度におきましては、最近の経済事情等にかんがみまして改善をはかってまいるようにいたしたいと考えております。  最後の問題は、今回の医療費改定に伴いまして保険料の弾力条項の発動の問題でございます。今回、医療費の改定を二月一日から行なうことにいたしたわけでございまして、昭和四十九年度の政管健保において生ずると見込まれる収支の不足につきましては、本年十月から弾力条項を発動いたしまして、保険料率千分の七十二を千分の七十六、すなわち千分の四引き上げることといたしまして予算の編成を行なった次第でございます。で、このとおり実施されるということになりますと、国の法律に基づきまして弾力条項を発動いたしますときには国の負担が伴うわけでございまして、千分の四引き上げるということになりますと、国費の負担が百五十五億、それから労使の負担はどのくらいになるかと申しますと、平均的な加入者で月に百八十円程度の負担増でございますから、社会保険方式を基本としておる健康保険としてはやむを得ないのではないかと思います。  なお、弾力条項の具体的な発動に際しましては、労使の代表で構成されておりまする社会保険審議会に諮問し、そして関係者の意見を十分くみ取りまして慎重な態度でまいる考えでございます。(拍手)     —————————————
  18. 河野謙三

    議長河野謙三君) 向井長年君。    〔向井長年君登壇拍手
  19. 向井長年

    ○向井長年君 私は、民社党を代表いたしまして、総理の施政方針及び外交、財政の諸演説に関連し、政府物価対策インフレ経済政策、国民福祉政策、エネルギー政策、当面する外交政策について具体的にたださんとするものであります。  国民は、いまほど政府に対し不信、失望、怒り、不安、いら立ちを感じているときはないと思います。田中総理、わかりますか。その国民の怒りの声を率直に私は代弁して、政府責任追及をしつつ、見解と対策を伺いたいと思います。  その第一は、昨年十月以来の狂乱的な物価つり上げ状態に対し、政府は何ゆえ敏速かつ有効な対策を講じなかったのかということであります。物不足と宣伝された最大理由石油危機に発し、石油の輸入減少にあったのでありますが、実態は、昨年の四月から九月までの石油輸入の実績は、前年の同期間に比べ約二五%の増加率を示しておるのであります。また、中東戦争の発生した段階石油備蓄量はかつてないほどの大量であったことも明確であります。しかも、石油危機が盛んに伝えられた十月、十一月、十二月に至る三ヵ月間の輸入実績が約七千二百四十万キロリットルであり、これも前年の同期に比して若干ではあるが伸びているのであります。昨年一年間は、当初の石油輸入計画を上回る一九・六五%の輸入の伸びを示したのでありますから、石油に籍口した物不足は、明らかに価格つり上げへの悪用手段であり、意図的につくり出されたからくりであると言っても過言ではございません。これは国民は知っておりますよ。それなのに、何ゆえこのような不当かつ反社会的な行為についてきびしく対処しなかったのか、売り惜しみ買い占め防止法が制定されており、しかも物統令があるのでありますから、それらを反社会的行為の規制という立場から適用するならば、完全ではないにいたしましても、ある程度物不足の虚構を打ち砕き、価格つり上げの防止はできたと思うのであります。  そして第二に、国民が抱いている不信と疑問に、政府は、前述のような事実を十分に承知していたにもかかわらず、その資料を公表して、物不足価格つり上げの策謀を打ち砕くよう、努力すべきであったと思うのであります。それなのに、策謀の元凶である石油連盟や流通関係団体と口を合わせ、輸入の大幅減少を事実であるかのような態度をとってきたのは、国民として納得できないばかりか、政府も共謀しているとさえ思われるのであります。  現に、洗剤やトイレットペーパーなどの買いだめ騒動が展開されていたとき、田中総理は、「物は十分あります」との発言、あるいは通産事務次官の「石油業界は諸悪の根源である。危機に便乗して荒かせぎをしている」といった発言も、石油輸入の実績や製品在庫の実態を承知していたからであると思います。それを実証すべき資料を何ゆえ公表しなかったのか。政府はその一方で関係業界と口うらを合わせた行為があるということは、業界の圧力に屈し、結果的にはそれと協力していると言われてもいたし方がないと言わざるを得ません。  第三に、国民が持つ政府不信の理由は、昨年十二月の通常国会当初から、総理をはじめ中曽根通産大臣内田経企庁長官らは、現在のような異常な物価急騰を押え、正常化するためには、政府に権限がないから、一日も早く石油二法を成立させてもらえば、断固たる処置を講じますと、政府の方針を説明してこられました。それゆえに、立法府としては、政府に相当の権限と責任を認めた石油二法を成立させたのにもかかわらず、物価狂乱状態は依然としておさまらないばかりか、ますますそれが激しくなるという現実であります。  特に私が一言つけ加えておきたいことは、政府の態度、方針に大きな変化があると指摘したいのであります。もしそのようなことがないと言われるならば、生活用物資で価格つり上げのはなはだしい灯油、プロパン、紙、パルプ類、学校用ノート類、綿布、一般の加工食品や病院用大口加工食品、建築用諸資材、その他枚挙にいとまのない主要物資に対して、特定標準価格を設定し、国民生活を安定させるための緊急の措置をすでに講じているべきであったと思うが、何ゆえ見送っているのでありましょうか。いかなる名刀を与えられても、それを使う意図もなく、使いこなす能力もないという政府であるならば、これこそ国民の不信を買うのは当然であり、一体、だれのための政府であるのか、大きな疑問を持たざるを得ないのであります。政府の今日までの怠慢は許されません。責任は重大であります。  以上述べました諸点について、総理及び通産、経企庁の各大臣から、国民が納得できる誠意ある答弁を私は求めるものであります。  次に、私は、インフレを終息させるための政府施策についてただしたいのであります。  福田大蔵大臣インフレ物価に対しては短期決戦で臨むとの方針で予算を編成したと言明せられ、確かに総需要抑制型の明年度予算案が提出されました。しかし、これは国内に向けてはある程度の有効性を発揮するかもしれませんけれども、輸入物資が昨年度に比べ本年度は三四%以上も価格上昇していることからすれば、単に国内の総需要抑制するといった政策では、短期決戦と言っても不可能なのではないかと考えられます。したがって、国際的な規模での資源の公平な配分と価格の公正な決定など、その取りきめが必要であると思われますが、日本政府として積極的な働きかけをしたとはいまだ聞いておらないのであります。はたしてそれでインフレ退治に責任が持てると言えますか、総理大蔵大臣に確信ある答弁を伺いたいのであります。  特に、総理に対しては、ニクソン米大統領のイニシアチブで開かれる石油消費国会議とフランスの提案する世界エネルギー会議という二つの国際会議にどう対処される方針なのか、この問題も含めて答弁をいただきたいのであります。  次は、物価狂乱状態がかりに落ちついたとしても、それ以後には基本的に二つの問題が残ると考えられます。その第一は、狂乱状態の中での不当な価格つり上げを完全に解消し得ないとすれば、それによる高物価状態であり、第二は、石油輸入価格の二倍以上そしてその他の三十数%に及ぶ輸入価格の上昇による高値安定状態でありまして、この二つの要因が折り重なって二重に作用した高物価体制への移行問題であります。もし、こうした状態がつくり出されるならば、国民生活はいよいよ破局に追いやられ、同時に営々辛苦の末せっかく貯蓄した国民の資産もこれまでにない大幅な減額に見舞われることは必至であります。したがって、こうした事態はいかなる理由があろうとも絶対に避けなければなりません。はたして政府はこのような問題にどう対処されようとするのか、総理はじめ経企、通産そして大蔵の各大臣から、それぞれの対策についてお伺いいたしたいと思います。  また、国民は、このような高物価体制への移行について、いみじくも現政府では阻止でき得ないであろうと看破し、みずからの生活を守るため、労働組合を先頭に立ててこのよう状態に対応でき得る賃金の大幅引き上げを目標としているのは、当然のことと言わなければなりません。これに対し、日経連に代表される経営側は、前述のような高物価体制の中でより大きな利潤の獲得に秘策を講じながら、一方では生産性向上での吸収は不可能という名目を掲げてそれを拒否する態度を打ち出しているのは、相も変わらない方針と言わざるを得ません。しかも、こうした状態の中で、総理は、労使が国民経済的視野に立って節度ある態度をとるよう強く望まれておられるが、総理としては、国民が看破しているような高物価体制への移行は絶対に阻止する確信があってのことか、それとも、財界、産業界の意向に沿って勤労大衆にがまんと忍従を求めようとするのか、あるいは他に意図されるものがあっての発言なのか、私は行政の最高責任者である総理大臣の真意を伺っておきたいのであります。そこで、政府は、一体いつになったら物価抑制インフレ克服ができるのか、総理大蔵大臣からこの壇上より国民に明確に言明していただきたいのであります。国民はこれが最も聞きたい問題であろうと私は思います。  次に、私は、急激な物価高そして悪性インフレの中にあって、みずからの手段を持たない各種年金生活者、恩給生活者、生活保護世帯、入院患者、そして社会福祉施設内生活者等の人々に対する特別の救済措置について伺いたいと思います。  確かに明年度社会保障関係費は、対前年比三六・七%という伸びは見られますが、実際に給付される額では生活をささえるにはほど遠いのであります。たとえば老齢福祉年金を見ましても、昨年来の物価狂乱で大幅な生活費増額があったにもかかわらず、昨年当初から政府が予定していた月額七千五百円をそのまま予算化したにすぎません。  拠出年金においては、月額一万二千円から一万八千円程度の低い受給者から、多い人では十万円をこえるものもありますが、実際に受給者が受け取るものは、平均で三万六千円弱という低い額にすぎません。しかも、せっかく取り入れた物価スライド制も、厚生年金では本来十一月、国民年金では明年の一月からでなければ実施されないのでありますから、これでは緊急な事態には間に合いません。少なくともこれは、本年四月に繰り上げるとともに、給付額も最低五万円程度引き上げるなど、生活できる年金にすることが緊要だと思われるのに、政府はこれら年金改正に全く意を配っていないのはきわめて遺憾であり、怠慢と言わざるを得ないのであります。  一方、恩給及び公務員共済組合の年金については賃金スライド制が採用せられ、明年度予算案では平均二三%引き上げ措置が講じられているのでありますから、これとの均衡をはかり、制度間の格差を解消するという社会保障本来の目的からいっても、厚生・国民年金の大幅改正は緊急の課題だと言っても過言ではありません。  また、一般の国民に比しても一段と生活苦を味わい、インフレも嵐を素はだで感じているのが特別・軽費の老人ホームの入所者と身体障害児など社会福祉施設内にある人たちであり、病のため入院を余儀なくされている患者の方々であることを指摘しなければなりません。これらの人たちに対する政府の措置として、入所者の処遇改善費を前年に比し二〇%増額したとはいいますが、これは政府予算ぺースのことであって、入所者の数が増加していることを考慮に入れるならば、配分ペースではきわめて微々たるものとなり、実際には何ら改善されない結果となるのは明らかであります。はたして政府は、以上申し上げました諸点に関し、いかなる見解を持っておられるのか、内閣を代表して総理大臣からそれぞれ具体的に答弁を承りたいと存じます。  次に、私は、エネルギー政策についてお伺いをいたします。  現在、電力使用制限が実施されている今日、総理石油依存のエネルギー体系から脱却し、原子力推進をはかろうとしている点については一応了解できるが、全般的には総花的かつ上すべりの感を免れないのであります。政府事態の認識についてまことに甘いのではないか、むしろ実態を知らないのではないかとさえ思うのであります。  まず、水力、石炭などの国内資源については新たな観点から開発の可能性を見直すといたしましても、量的にいかほどのものが期待できるのか、お伺いいたしたいのであります。  なお、太陽熱エネルギー利用は、超長期の技術開発を要することであり、とうてい今日の問題ではないのであります。したがって、当分、わが国のエネルギー開発の中核は、何と言っても原子力に依存せざるを得ないわけであるが、原子力の開発を軌道に乗せるためには周知のとおり幾多の難問が山積しているのであります。政府はもっともらしく言っておられますけれども、原子力開発の現状を知っておられますか。現在、運転に入った原子力発電所は五ユニット、約百八十万キロワットでまことに僅少であります。工事中のものが十七ユニット、約千四百万キロワットであります。その後、四十七年、四十八年の両年度に入って電調審の決定は、わずか一ユニット、百十万キロワットにすぎないということであります。この現実を政府はどのように見ておられるのか。今日までの政府の電力行政の怠慢を指摘せざるを得ません。経過を含めて通産大臣の答弁をお願いいたします。  私は、原子力の開発については、まず、安全性の確保と国民的合意、第二番目には、国民経済全体の観点と地域福祉との調整、第三番目には、核燃料の開発と確保、以上三点を基本としてたゆまざる研究と技術の開発、粘り強い地域福祉、膨大な資金調達等の問題があり、これらは当然のことながら電気事業者のみで解決できる問題ではないのであります。電気事業者にも努力の限界があると思います。政府はこれに対しもっと具体的な方策をとることが急務であると思うが、総理、通産、大蔵各大臣所信を伺いたいのであります。  そしてエネルギー全般の長期展望は、電力の消費規制を断行している現在、当面の対策を抜きにしては考えられないのであります。したがって、これら当面の危機についてどう対処されるのか、あえて通産大臣所信をただしておきたいのであります。  次の問題は、石油価格値上がりについてお伺いいたします。  代表的な原油の公示価格を見ると、四十八年九月、バーレル当たり三ドル一セントであったアラビアン・ライトが、十月には五ドル十一セント、四十九年一月には十一ドル六十五セントで、約四倍にも上昇しているのであります。新聞の報ずるところによれば、世界銀行調査報告は、最近の石油価格の上昇によって世界の石油輸入国の支払い額が一九七四年には実に前年度より八百億ドルの増加を示すものと見込んでおるのであります。わが国についても、四十九年度石油輸入増加額は約百億ドルに及ぶものと推定されております。電気事業の石油のシェアが全体の四分の一を占めることを考えれば、その影響はまことに大であります。四十九年度わが国石油輸入額は約五兆円、この中で電力の場合は一兆二千億円、電気事業の年間総収入二兆円に対し実に六〇%であります。電気事業の四十八年度の設備投資額は一兆三千億円と聞いておりますが、このよう状態で、今後必要な電源開発の推進ができると思っておりますか、どうしてやっていくのか、私は伺いたいのであります。特に、今後エネルギーの中核であるといわれる原子力発電を軌道に乗せるため、この状態でその責任を果たし得ると思いますか、総理並びに通産大臣に確固たる所信を伺いたいのであります。  次に、私は、当面する外交問題についてお伺いをいたします。  御承知のとおり、国内資源に乏しいわが国は、貿易に依存せざるを得ないのであります。わが国にとって、世界の平和と世界各国との友好は、いわば国家存立の大前提であります。しかるに、今回の石油危機の発生、そして田中総理の東南アジア訪問を通じてわが国外交の基本目標の一つである各国との友好がもろくもくずれようとしております。つまりわが国はいま国際的に見て戦後最大の不安に直面していると言わざるを得ません。この危機を通じて明らかになったことは、第一に、わが国がいま国際的に孤立し、アジアの孤児になっていることであります。田中総理の東南アジア歴訪の先々で激しい反日デモが起き、ついにインドネシアでは、暴動化した一万人のデモ隊に向けて警察隊が発砲し、死者、負傷者等を出す不祥事にまで発展したことは、周知のとおりであります。このことは、各国首脳の他国訪問の歴史に前例を見ないものであり、まさにわが国外交の破綻を物語っていると言えるのであります。しかも、それだけでなく、今回の石油危機に際して、わが国は、国際的にいわばつんぼさじきに置かれ、全く孤立化したと言えましょう。これでわが国は国際的な圧力にきわめて弱い国だという印象を諸外国に与えたことは事実であります。このことは、わが国の将来に重大な禍根を残すものとして、政府責任はまことに重大であります。この責任について、総理、外務両大臣はどう考えておられるか、お尋ねをいたします。  総理は、今回の東南アジア歴訪の帰国報告で、「災いを転じて福となす」と述べられておりますが、そのために必要なことは、今回の石油危機、東南アジア歴訪で明白となったわが国外交の失敗の原因は何であるかということを見きわめることであると思います。  政府は、いまの石油危機の原因について、それがいわば一方的な外圧、国際情勢の変化に帰せんとしておりますけれども、実は、それはみずからがまいた種と言わざるを得ません。すなわち、まず第一に、わが国外交が、昨年来の総理外遊に象徴されるように、いわば大国指向の外交路線であり、中東、東南アジア等を軽視してきたことにあります。  中東について言えば、たとえば一九七一年サウジアラビアのファイサル国王が来日し、サウジアラビアは当然日本に対し答礼訪問を期待いたしておりましたけれども、それを政府は行なわず、ファイサル国王の不興を買ったこと、また、一九七三年にはイラクの国営石油会社総裁が来日し、日本への石油供給を提案したにもかかわらず、わが国政府はこれをにべもなくあしらったこと、さらに、昨年秋の総理訪ソに際しては、ソ連側は、その共同声明の中に中東紛争解決の方向として国連二四二決議の尊重を挿入することを提案したが、日本側はこれを拒否したこと等は、枚挙にいとまがありません。これらの問題について、総理並びに外相はどう考えておられるのか、お伺いいたします。つまり、国際環境が変化しつつあるにもかかわらず、わが国はいたずらに対米依存、大国指向の惰性的外交に安住していたことを政府は卒直に反省すべきであります。いま最も必要なことは、こうした反省を踏まえてわが国外交のビジョンをはっきり確立することであると思います。これについて政府所信をお伺いいたします。  最後に、発展途上国の経済援助については抜本的に改善すると言っておりますが、それぞれの国の国民的希求を十分配慮して行なうべきであると思うが、本年度経済援助をどのように改善していくのか、外務大臣に具体的にお伺いいたします。  以上で私の質問を終わりますが、最後に政府に警告をいたしたいと思います。  総理は、先日、「反省すべきは反省し、改めるべきは改める」と謙虚に言われておりますが、口先だけではなく、この際、国民の怒りをやわらげ、少しでも信頼を取り戻そうとするならば、国民の要望を的確に把握して、思い切った施策を断行するか、さもなくば、田中内閣は退陣するか、二つの道しかないのであります。国民はこれを望んでおります。その決断を強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  20. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 向井長年君にお答えいたします。  まず物価対策についてでございますが、物価問題を解決し、国民生活を守ることが当面の最重要課題でありますことは、間々申し上げておるとおりでございます。このため、政府は、公定歩合の大幅引き上げ、四十九年度予算の総需要抑制政策を強化するほか、国鉄運賃及び消費者米価値上げ実施時期の延期等を行なったことは、御承知のとおりでございます。また、石油関係二法等の機動的運用によりまして、物資の需給調整、価格の適正化、投機的行為の抑制等をはかっておるわけでございます。政府は、さらに企業便乗値上げ投機的行為の自制を要請するとともに、これらの不当な行為等によって過大な利益を得た者に対しては法の厳正な運用をもって対処いたしてまいりたいと考えておるのでございます。  今日のごとき時代におきましては、物価問題にいたしましても、一国のみで鎮静化を果たし得るものではなく、世界各国が直面いたしております諸問題を国際協調、相互補完によってこそはじめて解決が可能なのでございます。したがいまして、今後とも首脳外交はじめ広範な外交活動を一そう強化しなければならないと考えておるのでございます。  どうも少し手がおそかったんじゃないかという御指摘でございますが、その感はなきにしもあらずでございます。これは率直に申し上げます。しかし、こういう事態は全く予測せられないということではなかったわけでございまして、ドル危機が生じましたときに、国際的な経済の波動に対応するように対外経済調整法のごとき法律を提案をし、これを早期に成立せしめていただくことによって、政府は可能な限り行政措置において調整権が発動できるようにしていただきたいと願ったわけでございますが、まあ当時の情勢としてはそういうことは実現しなかったわけでございます。アメリカやヨーロッパの国々を見ますと、言うなれば非常事態に対する総動員法、ちょうど戦前の総動員法と同じような法律が現に存在いたします。私も各国を回ってまいりまして、アメリカが賃金統制を行なったり、輸出の禁止を行なったり、あれだけの強力な政策ができるのはどういうことかということで、政府の権限は何によるものかとただしましたところ、これらの国々には、行政府が非常な場合に国民生活を守ることに対して行なえる措置は、すべて法律権限が与えられておるのでございますが、戦後の日本の民主化という過程においてあらゆる制度はすべて新しくなって、今日のように国際的に緊密な補完関係が生じてきた場合、当然経済的波動に対応できる国内的な行政措置というものは政府にもある程度委任がせらるべきであったにもかかわらず、まあそういうものに対して、もっと国会に対しても政府が真実を申し述べ、現状を訴え、御協力を得ることがどうも少しおそかったということについてはこれは遺憾な点もございますから、現状を十分認識いたしまして、御指摘を受けるよう事態がないように全力を傾けてまいりたいと考えます。  石油消費国会議と世界エネルギー会議についての御発言でございますが、エネルギー問題はすべての国が協調して解決をはかるべき重大な問題でございまして、米国提案の主要消費国間の会合が産油国と消費国との間に調和ある関係をつくり出すための第一歩となることを期待して、積極的に対処してまいりたいと考えておるのでございます。  また、御指摘のフランスの提案する世界エネルギー会議がいつ開催されるかは明らかではございませんが、国連において開催されることは有意義でございますので、フランスの提案も慎重に検討いたしておるわけでございます。  それから厚生年金国民年金等につきましては、昨年の改正年金額の大幅な引き上げとスライド制の導入をはかったところでございまして、国際的に見ても遜色のない年金水準が実現したところでございます。  年金のスライドにつきましては、年度平均の全国消費者物価指数を基準として、厚生年金につきましては四十九年十一月から、国民年金につきましては五十年一月から実施をすることとなしておることでございます。  また、福祉年金につきましては、四十九年度において老齢福祉年金を現在の五千円から七千五百円に引き上げるなど、大幅な年金額の引き上げを行なうことにしておりますが、引き続き年金額の引き上げの改善につとめてまいりたい。四十八年度は五千円、四十九年度は七千五百円、五十年度は一万円ということをすでに国会でも述べておるとおりに拡充してまいりたいと考えておるわけでございます。  なお、四十九年度において、施設の増、入所者の増加分の経費を見込んだ上で、その処遇費につき二〇%の大幅な引き上げを行なったわけでございますが、社会福祉施設入所者に対する処遇の改善ということはこれだけで足れりとするものではなく、これからもなおまた十分な施策を付加していかなければならないと考えておるわけでございます。  原子力発電の推進につきましては、全く御指摘のとおりでございます。現在設置許可申請が出されておりますのは一基百十万キロワットのみでございまして、しかも昭和四十八年度に入ってからは申請は一件もない状態でございます。このよう状態で一体どういうのかということを聞いてみると、出してもなかなかむずかしいというのと、出して工事に着工するまでの間なかなか反対でもってその日の仕事もできなくなると、こういうことでございまして、ほんとうに国民が理解できるよう政府から安全性に対してももっとPRをしてもらわなきゃならない問題でございますし、これはやっぱり電力会社だけではなく、電源開発促進法に基づいてつくられておる電源開発会社もあるわけでございますし、政府も一体となってこの原子力発電というものに対処しなければならないということで、御発言にはありませんでしたが、電源開発促進税というようなものもいま考えておりまして、あらゆる角度から原子力発電というものの促進をはからなければならない。私は通産大臣のときから申し上げておりますが、昭和六十年を展望しますと一初めは原子力発電のウエートは一〇%でございましたが、それはとても一〇%でやれるものではない、二五%必要であろうと、こう国会で述べておるわけでございますが、その後、一〇%を目標としておったヨーロッパやアメリカは二五%ないし三〇%になるであろう、こうしでおるのでございますから、御指摘のとおり、原子力発電所の建設促進に対しては政府も大きな責任を有するわけでございまして、これが推進に対して全精力を傾けてまいらなければならないと、こう考えておるわけでございます。その意味では、現下最大の重要課題の一つであるということも考えておるわけでございます。  ただ、安全性の問題につきましては、世界各国でもやっておる問題でございますし、これから急テンポに増設が行なわれなければならないという事情にあるわけでございますので、安全性については、政府がもっと国民の理解を得られるように努力をしてまいらなければならない、一電力会社にまかしておけるような問題ではない、こういう責任がある立場から、政府もこの問題に対しては積極的に取り組んでまいり、発電所の立地が行なわれる地域住民の理解が得られるようにしたいと思いますし、また、地域住民の福祉向上につながるような市町村の公共用施設の整備や助成等、周到かつ強力な施策を進めてまいりたいと思いますので、与野党を問わずこの政策にはひとつ心から御協力を願いたいと思います。まあろうそくから電気に変わってきたということと同じことでございますので、安全確保に対しては責任を持ちますが、少なくともこれだけ必要な原子力エネルギーでありますので、イデオロギー的な反対というようなことをなさらないように、これはもうぜひ国民に訴えてまいらなきゃならぬことである、こう私は考えておるのでございます。  賃金問題に対しての御発言がございましたから申し上げますが、春の賃金闘争の時期が迫っておることは事実でございます。欧米先進工業国におきましては、物価政策の大きな問題として所得政策を採用しておる国もあることは事実でございます。しかし、所得政策の採用というものは国民的合意というものが前提でなければならないわけでございまして、それがためには慎重でなければならないということを間々述べておるわけでございます。しかし、四十八年度国民総支出の数字を見ましてもおわかりになるとおり、百十六兆円余の総支出に占める国民消費支出は六十兆円をこしておるわけでございます。そういう事態でございますので、物価が上がるから賃金も上げなければならないという気持ちはよく理解できますし、そのとおりだと思うんです。しかし、賃金と物価とが悪循環を起こすよう状態は避けなければならぬわけであります。でありますから、そこらは国民全部の利益を守るという立場で労使ともに慎重な配慮が望ましいということは、政府がそう願うのは当然の責務でございます。しかし、それはあくまでも労使間の良識において決定される問題でございます。政府ができることは、政府が雇用者の立場にある問題に対してだけでございますので、まず民間の賃金の状態によって政府関係の給与もきまってくるという制度になっておりますので、特に慎重な御配慮をいただきたいということは私が常に申し上げておるとおりでございます。まあ、物価上昇に賃金上昇というものが影響しないということはないんです。必ず影響はします。しますが、その影響が最小限に食いとめられるようにひとつ慎重な御配慮を願いたい。というためには、労使双方の代表にも会って協力を求めたい、こう考えておるのでございます。  それから電気事業者のコスト上昇と電源開発等についての御発言がございましたが、原油価格石油危機以前に比べて大幅に上昇しており、電力会社の経理が著しく圧迫されておることは御指摘のとおりでございます。これにより電力会社が資金不足におちいれば電源開発に支障を生ずるおそれもございますので、これが資金確保対策については検討中でございます、と申し上げるよりも、この資金の確保はいたさなければならない、こういう立場で努力してまいりたいと考えておるのでございます。  それから外交政策、東南アジアにおける地域協力等に対しての御発言がございましたが、外務大臣から述べると思いますが、私からも一言申し述べておきます。  わが国を取り巻く国際協力にはきわめてきびしいものがございます。石油危機は世界のすべての国に多大の影響を与えておりますものの、資源を海外に依存するわが国が特に大きな影響をこうむっておるのでございます。また、同じアジアと申しましても、各国間では工業化の度合いに著しい差がございます。また社会体制を異にする国もあり、西欧諸国間に見られるような域内協力関係を成就することはなお多くの歳月と努力を必要とするのが現状でございます。したがいまして、わが国は他国に倍加する国際協力の実をあげてまいらなければならないのでございます。東南アジアにおいても、われわれに地域協力強化の機運が醸成されており、各国首脳は真剣に思いをめぐらしておるわけでございます。私も、インドシナに平和を定着させ、インドシナ半島の復興を促進するため、アジア太平洋諸国の国際会議の開催の可能性を検討しておることは御承知のとおりでございます。しかしながら、アジアの情勢は依然として流動的でございまして、他を顧みる余裕は必ずしも十分でないため、一そうの発展を約束する各種の地域協力の実現には、なお時間をかけて粘り強い努力を重ねていく必要があると思うのでございます。そのうちにありましてもASEANが目下のところ東南アジアにおいて最も進んだ協力体制であります。日本は域外国ではございますが、その一そうの発展を歓迎するものでございます。また、ASEAN五カ国訪問の過程においても、ASEAN五カ国の意思の疎通、協力体制に対して日本が心から物心両面において協力せられるようとの強い要請を受け、私もこの要請にこたえたい旨を述べておるわけでございます。私は、わが国の置かれた困難な立場を踏まえつつ、ASEAN諸国をはじめ各国首脳との幅広い外交推進してまいりましたが、今後とも多方面との国際協力のための努力を惜しみなく重ね、これまでの成果を一そう着実なものにすることは十分可能だと考えておるのでございます。  ここで一、二言申し上げたいと思いますが、一つは、石油の供給を受けておる国だけが影響を受けると考えておることは間違いでございます。全世界に影響を及ばしておるのでございます。ですから、ASEAN諸国訪問のときに、日本に対する石油の供給が抑制され、石油価格が上がることによって、発電量が制約を受け、そして日本から輸出される機械や原料や、そのうち一番大事な肥料の輸出が計画どおり行なわれなかった場合、東南アジア諸国は重大な局面を迎えるのでございます。それは、いまでも食糧不足に悩んでおるのでございますから、計画どおりの肥料の輸出ができなかった場合にはたいへんなことになるのだということを考えて、われわれは、国内的な民生の安定、物価抑制をはかるとともに、われわれの生活を幾ぶん切り詰めても、国際的に果たすべき役割りを果たさなければ、いま御指摘のような国際的協調関係を得ることはできないのでございます。協調関係を得るように努力せよという質問でございますから、そうしなければできませんと具体的に述べておるのでございます。  それからインドネシアにおけるデモ事件について一言申し上げますが、日本とインドネシア両国は、相互補完関係にございます。日本は原材料をインドネシアから入れなければなりませんし、また向こうは、機械や原材料や肥料を必要とするわけでございますから、全く相互補完関係でございます。特に、どうもあの学生のデモというのが、私のジャカルタ訪問を目標にしてそれによって起こったことであり、日本人の企業活動に対する反発がおもなる原因であるというふうに見られがちでございますが、私は必ずしもそうとは考えておらぬのでございます。それは、一つには、ジャカルタに集まっておる人たちが非常に多いということが一つの原因でございます。そして職業がないということも大きな問題でございます。その上に、日本の商社活動にも幾ぶんの問題はありますし、それだけではなく、日本の現地駐在員が非常に閉鎖的であって、現地との交流が少ない、これを機会にもう少しお互いに交流を続けたいということで、いままで純経済的であったものが、文化的、教育的、医療、社会等、広い面にわたって両国がお互いに緊密な協力体制がつくられることが望ましいというのが現地の要望でございます。特に、学生や青年の交流を密にされたい、こういう希望でございますので、そのためには新たに国務大臣の増員をはかったり、国際協力公団をつくることによってこれらの問題を根本的に解決をすべく考えておるのでございますから、御理解、御協力のほどを切にお願いをいたします。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  21. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 総理が大部分お答えになりましたから、要点だけをお答えいたします。  まず、石油二法の発動と建設資材その他に対する標準価格の問題でございますが、御存じように、中東戦争が勃発しまして九月に対して二五%の削減の通告を受け、それから日本に大部分油を供給しているメジャーズから二〇%ないし二八%程度の供給削減の通告を日本側の石油会社がみんな受けまして、それらを全部集計してみますと、かなりの量が削減されてくるという見通しを持ちまして、そのために、とりあえず行政指導により、次いで国会が開かれますのを見合いながら二法を用意して御協力を得まして法律をつくっていただいたわけでございます。それで、十二月の二十日ごろの情勢におきましては、一月一日から石油、電力ともに二〇%削減をやらないというと三月があぶない、そういう情勢でございましたので、その準備をいたしました。ところが、十二月二十五日に御存じように友好国の取り扱いを受けましてほっといたしましたが、十二月の二十五日ごろから石油の入着状況の中間報告を見てみますと、期待以上にふえつつある。それで、これはしばらく待てよという気がいたしまして、一月一日から二〇%削減というのを延期いたしまして、一月十六日から一五%削減というふうに実は軽くしたのでございます。その後、一月の情勢を見ますと、やはり入着状況は期待よりも良好でございます。そこで、しかし、この中東和平の情勢はどう展開するかわかりませんから、最悪の事態を予想しながらいまもその政策を進めて、二月は一五%カットで行く考え方でおります。しかし、石油が期待以上に入ってきていることは事実でございます。この分は、備蓄増強に、もし来たら使いたい、あるいは特に生産資材等で、不足して上がる危険性のある部面にこれを緊急放出する、そういう考え方に立っていま見ております。  それで、御指摘の建築資材等を見ますと、丸棒あるいは繊維あるいはセメント等は、この石油の量の増量に見合ってきまして値が少しゆるくなってきておるわけです。特に丸棒、繊維等はそうであります。したがって、これを過早に価格標準価格として固定いたしますと、高値安定という批判を受ける危険性がございます。そこで、いま行政指導をしておりまして、その需給関係も見合いながらできるだけ低値にするよう行政価格をきめようと思って、いま関係当局に指示してやらしておるところなのでございます。  それから灯油、LPG、トイレットペーパー、ちり紙につきましては標準価格を設定いたしましたが、御指摘のノートの——子供のノートでございます、これにつきましては、これも指導価格的に下げさせようと、そう思いまして、四月を迎えまして学習ノートの引き下げについていま積極的に取り組ましてやっております。ざら紙につきましては、一締め千四百円ぐらい時価がしておりましたのを七百円に下げさせましたのは、新聞で御了承のとおりでございます。  それから日本のエネルギー開発の問題でございますが、水力については二千九百万キロワットぐらいの可能性がまだございます。それから石炭についても、第五次答申がございますが、この間十二月に中間答申をいただきまして、第五次答申の二千万トンを下らざるというのを、二千二百五十万トンを下らざると、そういう方向に修正いたしまして石炭を確保しようと思っております。地熱については、これまた二千万キロワット以上の可能性がございます。これらのエネルギー開発を促進いたしましてこの時局に対応していきたいと計画しておるわけです。  原発につきましては、総理大臣から御説明がございましたが、やはり安全審査を徹底し、監視制度を徹底させて、安全感を与えるということが非常に重要であります。安全であることは確信しておりますが、さらに国民に理解していただくという努力が足りなかったように思います。今回、電源開発促進税のようなものをつくりまして、本年度において約百億、平年度において三百億程度の金でその協力してくださる地元に対していろいろな施設その他の便宜を得るようにこれを補助すると、そういう方向でいま政策を進めておりまして、国会に提案しておりまするいわゆる地帯整備法、これも多少修正いたしまして実は通過さしていただきたいと思っておるわけでございます。それから電源に関する固定設備に対する固定資産税、この固定資産税の特例を廃止いたしたいと思っております。  核燃料の問題については、まず、天然ウランを確保するということが基本でございますが、この間総理がフランス等へ参りまして、アメリカあるいはフランスと多面的に核燃料を確保するという対策をいま推進しております。それと同時に、廃棄物処理の体制を確立することが緊急の問題であると考えております。  電力会社の石油代金等にかかわる経理の問題につきましては、総理大臣から御答弁になりましたように、この上昇している石油価格に対応するように、われわれとしては、十分これを必要と認めてこれを検討しておる最中でございます。(拍手)    〔国務大臣内田常雄君登壇拍手
  22. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 端的にお答えを申し上げます。  輸入石油に関する価格規制は、向井さんからもお話がありましたように、昨年の秋から何回か大幅な上昇がございますので、物統令等によって、これをいきなり縛るということがなかなかむずかしい面がございます。そこで、私は、次の三点になるのではないかと思います。  原油というものは一つでありますが、その中からいろいろな得率によって石油製品ができるわけでありますから、たとえば灯油のごとく絶対に国民生活に欠くことのできないものは、一定の値段で標準価格等をつくるというような方向をとってまいること、もう一つは、いま中曽根さんから言われましたように、石油の入着状況が好転している事実がありますならば、傾斜的にそういう増加部分を生活必需物資の生産面に増配をする等の方法によって生活必需物資の価格を安定させること、それから最後の三番目は、石油会社にもし社会的に指弾されるような行為があります場合には、そういう行為を無意味にするようなこと、つまり、税の問題等も含めましてそういう施策検討するということになるであろうと思います。  その次には、向井さんから、いろいろな物資をおあげになりまして、これらについては、ばたばたと標準価格あるいは特定標準価格をつくるべしと、こういう御意見であったようでございますが、私はおおむね同感でございますが、ただ、物価の動きの中にも、向井さんが御指摘になりましたような最近の輸入物価の非常な高騰、たとえば十二月におきましても輸入物価高騰は三四・六%、これは向井さんの数字をあげられたとおりでございますが、そういう要因があり、いまの石油価格の上昇、電力の削減、公害問題に基づくコスト増等の要因もありますので、そういうことはそれを考慮しながら、われわれがどうしてもここで押えなければならないものは、便乗値上げ的な動きやあるいは買い急ぎの傾向等が見られて取引が混乱し、その結果、価格の上昇を来たしているような場合において、当該物資について標準価格を設定して、そしていま申し上げましたような部分を排除していくという方法、さらにその状況によって特定標準価格の問題に進んでいくということが一番現実的ではないかと考えます。中曽根通産大臣も言われましたように、最近、総需要抑制その他の関係で、たとえば建設資材、と申していいかどうかわかりませんが、値くずれなどを想定される物資もあるように思いますので、いまの状況において何でも標準価格を片っ端からつけていくということにつきましては、主務省とも協議をしながら、十分私は有効かつ慎重な措置をとってまいりたいと思う次第でございます。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  23. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 物価抑制はいつ実現するのかと、こういう御質問でございますが、物価抑制への戦いはもうすでに始まっているんです。もう土地につきましても、その価格が頭打ちだというふうな感じで私は見ております。あるいは鉄材のごとき、丸棒につきましてはかなりの下落が見られるよう状態になってきております。その他若干の影響が出始めておりますが、いま政府がとっております総需要抑制政策、財政金融、それに緊急二法の適切なる運用、これでいきますれば、まあ数カ月のうちには、日本経済は、様相一変、物価鎮静への動き、そういうふうに私はなってくるということを信じております。いま私が申し上げておる総需要抑制政策、これを自信を持って推進してまいりたいと、かように考えております。  それからそういう政策をとる場合に、国際価格の要因というものが阻害になるんじゃないか、争ういうお話でございます。私もそう思います。これはなかなか頭の痛い問題です。ただ、私は救いがあるというふうに見ておりますのは、いまの物価というのは、多くの物資につきまして適正な価格じゃない。つまり、生産費、利潤と、こういうよう価格形成になっておりません。何といいますか、価格というよりは相場である。投機的要素が非常に多いんです。いま申し上げました鉄材につきましても、メーカーから出るときにはトン四万五、六千円である。それが昨年は十一万円で売られておる。今日は八万五千円ぐらいで売られておる。そういうのですから、適正な生産コスト、そういうものに基づく価格体系がないんです。水ぶくれである。私は、経済の動向が、これが鎮静だという際には、それは水がずうっとそがれてしまうと、こういうふうに見ておるのであります。そういう要因もありますので、国際価格の上昇には、国際間におきまして国際的協力のもとに物価問題を処理するという努力を続けなきゃなりませんけれども、国内的にも短期決戦を進めるということにつきましては私は自信を持ってまいりたいと、かように考えております。(拍手)     〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  24. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) わが国経済は国際的な圧力に弱いが、わが国は国際的に孤立し、アジアの孤児になっておるではないかという憂慮の表明がございました。御指摘のように、わが国は主要資源の多くを海外に依存いたしておりますし、その資源需要は年とともに増大いたしておりますので、国際的な圧力に弱い経済を持っておりますことは隠れもない事実であります。しかし、かかる条件にもかかわりませず、今日まで必要とする資源の確保に成功しておるわけでございまして、これは決して国際的に孤立しておるというようなものではないと私は考えます。しかし、今日の資源的な危機というものは資源保有国側のナショナリズムの高まり等から起きてきておるものでございまして、その資源保有国の願望あるいは立場というものに対しては、私はそれなりの理解を持たにゃいかぬと思うのでありまして、そういう理解を持ちながらそれらの国々との交流と理解を深めて、その結果としてわが国の必要とする資源の確保に努力してまいれば、わが国の必要とする資源の確保にはこと欠かないのではないか、また、そうしなければならぬと考えております。  向井さんは、今日の石油危機は日本の外交が原因であったのじゃないかというような御指摘でございますが、私はそのようには考えておりません。その証拠に、今日の石油危機におきまして、日本は大きな消費国といたしまして、ほかの国々と比べて特に不利な処遇を受けていない事実からも御判断をいただきたいと思うのであります。  それから対米依存外交の是正を中心にして外交のビジョンを示せというお話でございました。日米関係というのは、現実の問題として、わが国の生存と安全にとりましてある意味においては致命的な濃密な関係であると私は心得ておるわけでございまして、また、これの関係がしっかりしておってはじめてわが国外交が多彩な外交の展開が可能であり、それが重みを増し、成果をあげ得るものであると考えておりますので、対米依存、対米外交というものについて細工をするというような考えは私は持っておりません。  それから発展途上国に対する援助の問題でございますが、ことしは、政府演説でも申し上げましたとおり、政府援助の増額、その条件の緩和、そして、とりわけ、その重点を相手国の福祉と民生、たとえば、医療、教育あるいは農業あるいは通信、そういったところに指向いたしまして、相手国の国づくりにこたえるというようなところに特に力点を置いて実施していきたいと考えております。(拍手
  25. 河野謙三

    議長河野謙三君) これにて午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時四十一分休憩      ——————————    午後一時二十四分開議
  26. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  国務大臣演説に対する質疑を続けます。小笠原貞子君。    〔小笠原貞子君登壇拍手
  27. 小笠原貞子

    ○小笠原貞子君 私は、日本共産党を代表して、総理並びに関係大臣質問いたします。  いま、誠実に働く国民は、悪性インフレの進行、狂乱状態といわれる物価高、物不足をはじめ倒産、失業、公害、住宅難など、深刻な生活苦と先行き不安におののいています。  総理、あなたは施政方針演説で、「反省すべきは率直に反省し、改めるべきは謙虚に改める」と、たいへん美しいことばを大声で叫ばれました。しかし、そこには何ら具体的なものは示されないまま、繰り返し言われたことは国民の協力を要請されたことでした。  総理はまた、選挙を意識してか、特に婦人をほめたたえられました。しかし、婦人こそ自民党政府の悪政の最大被害者なのであります。厳冬を前にして灯油確保のため街頭署名に走り、業界へ交渉するために内職さえ休んで出かけました。少しでも安い材料の品をさがし求めて夕方の市場を走り回りました。その婦人たちに一体何を協力せよと言われるのですか。品不足は、主婦買いだめ、買い急ぎがおもな原因とでも言われるのですか。高値になっても文句を言わずがまんして協力せよとおっしゃるのですか。  私は、今国会の総理の施政方針演説をはじめ政府所信と答弁を注意深く聞きました。その上に立って、当面の重要な内外政策についてただしたいと思います。  質問の第一は、物価インフレ物不足の問題であります。  国民は、激しい物価値上がりの元凶が、生産制限売り惜しみ、出荷操作をしながら価格をかってにつり上げている大企業であることをすでに見抜いています。大企業に対してきびしい規制を加え、その不当行為を押えない限り、物価問題は解決できません。  大蔵大臣は、昨日、衆議院でわが党の金子議員の質問に対し、不当な利得者に制裁はあってしかるべきだとの答弁をされました。それなら、超過利得税の制定や、不当に引き上げられた価格を引き下げさせるのは当然です。たとえば、三菱油化、三井石油化学などの石油化学大手企業十五社がやみカルテルを結び、容器材料に使われるポリエチレンなどの価格を原材料値上がり分の倍近く引き上げ、一昨日、公正取引委員会からその破棄を勧告されました。このようなやみカルテルは、この業界だけではありません。こうした大企業便乗値上げをやめさせるのは当然であります。政府は、少なくともその行政責任でそれらの石油化学大手に値下げを行なわせるべきではありませんか。総理の見解を求めます。  次に、原価の公開、国政調査権の問題についてお聞きします。  けさの閣議で政府は、トイレットペーパーを二百二十円ないし二百四十円という標準価格に決定されました。これは昨年七月に比して実に二倍以上という高値です。これでは、政府国民生活安定法で物価は押えられると言ってきたことが全くでたらめであり、まさに業界の言りなりの高値安定ではありませんか。政府は何を根拠にこの高値を決定されたのか、明確な答弁をお願いしたいと思います。こういうやり方では、次々と他の物資も引き上げられていくでしょう。政府は、こんな高値を追認して国民生活を守られると本気で考えておられるのか、その点をはっきりお答えいただきたいと思います。  国民は、物価つり上げの真相を明らかにすること、上がった値段をもとに戻すことをいま切実に求めているのです。そのためには、企業に対して製品原価の公開、生産量、在庫量など、生産と流通の正確な資料の提出命令などが出せるようにしなければならないことがいま一そうはっきりしてきたではありませんか。政府は、わが党のこの数年来の主張に対して、企業の機密とか、自由主義一経済であるとかいって反対し続けてきましたが、このような口実で大企業のかって気ままな反社会的行為を見過ごすことはもはや許せません。農民の生産者米価には生計費まで詳しく調べあげながら、大企業の製造原価はなぜ公表してはいけないのですか、国民に納得のいく答弁を求めます。  わが党が早くから主張してきた国会に必要な調査活動の権限を持った委員会の設置も、その必要性が一そう明白となっています。国会が憲法に基づく国政調査権を発動して、産業界の指導者、経営者を証人に喚問し、必要な資料の提出を求めるなど、国権の最高機関にふさわしい活動をすることは当然ではありませんか。昨年の国会では自民党は証人喚問を拒否しました。この国会では証人として喚問する必要があると思いますが、いかがですか。自民党総裁としての総理の見解をはっきり伺いたいと思います。  次に、物資の緊急放出の問題です。  物不足といわれる物資がメーカーや大手問屋の倉庫にあることは、総理自身も認めているところであります。ところが、倉庫を見て回った内田経済企画庁長官は、品物は隠されていなかった、洗剤はどこにありますかなどというありさまです。これでは、政府が在庫は十分と言っても、国民は安心できますか。わが党の議員の調査でも、札幌の花王石鹸、ライオン油脂の倉庫に十万ケース、百二十万箱の洗剤在庫を見つけるなど、全国各地で効果をあげているではありませんか。政府は、国民物不足で毎日毎日苦しんでいるときに、形だけの倉庫の点検でお茶を濁すのではなく、物資不足に対しては直ちに手を打ち、在庫の調査と点検を行ない、必要な地域への放出を直ちに指示し、機を逸せず実行する責任義務があります。これこそ昨年売り惜しみ買い占め措置法や石油二法を成立させたときに政府が公約したことではなかったでしょうか。総理並びに通産大臣の明確な答弁を求めるものであります。  さらに、大企業に対する累進制の臨時超過利潤税の問題であります。  物価抑制の一つのきめ手は、価格つり上げて不当な利益をあげている大企業に特別の課税をすることです。ところが、総理は、社会的公正の確保を云々しながら、この課題を技術的困難を口実に見送ろうとしています。政府は、物価抑制は最優先の課題と言うからには、直ちにこれの立法化に踏み切るのが当然だと思いますが、総理並びに大蔵大臣の見解を伺いたいと思います。  次は、公共料金抑制の問題であります。  総理公共料金は極力抑制するとの約束がたった一日でほごにされ、六大都市のタクシー料金が値上げされました。このタクシーの問題では、プロパンガスの値下げこそが問題なのです。プロパンガス業界は、プロパンガスの不足を意識的につくり出し、価格つり上げてきたではありませんか。これでは、電力、ガス、私鉄その他の公共料金も、結局、政府は適当な口実をつけて認可するのではないかという疑問を国民が持つのも当然なことであります。ほんとうに電力・ガス料金、私鉄運賃を凍結するのかどうか、総理のはっきりした見解を求めます。  また、消費者米価国鉄運賃についても、半年の繰り延べは全く選挙対策にすぎず、半年後の物価の高騰を約束するものにほかなりません。この際はっきり値上げを撤回する意思はないか、あらためてお答えをいただきたいと思います。  第二に、石炭、エネルギー問題についてお伺いいたします。  総理は、昨日衆議院で、国内炭の最大限の活用をはかる、可採炭量があれば閉山しないようにするなどと答弁されましたが、これは過去と現在における自民党政府のエネルギー政策の矛盾と失敗を全く反省しない無責任な態度であります。歴代自民党政府は、わが国に豊富な石炭資源があるにもかかわらず、エネルギー革命などと宣伝し、アメリカの大資本からの石油輸入に依存し、北海道から九州までの石炭山をつぶし、石炭産業を取り返しのつかない今日の荒廃に追い込んできました。しかもいま、可採炭量があれば閉山しないと言いながら、今月十五日には明治以来の歴史を持ち軍艦島の名で知られる長崎の端島炭礦がなお相当の埋蔵量を残しながら閉山するのを放置しているのであります。総理が可採炭量のある炭鉱をつぶさないと言うなら・昭和五十一年までに出炭量を二千万トンまでに減らす閉山促進計画である第五次石炭対策を直ちに中止し、来年度予算に計上している炭鉱整理促進費を撤回し、石炭対策を抜本的に改め、新しい石炭政策を示すべきであると思います。これについての答弁を求めます。  わが党は、一九六〇年代の初めから、石炭山をつぶし、石油依存の対米従属的エネルギー政策に反対し、国内石炭を放棄するなと強く主張してきましたが、自民党歴代政府は、これに耳をかそうともせず、エネルギー自給率を急速に低下させてきたのであります。今日、昭和六十年には七億トンの原油、世界の資源輸出の三〇%を占める資源輸入を行なうという資源浪費型の日本列島改造計画が石油危機のもとで完全にくずれ去ったことは、だれの目にも明らかになったのであります。このよう石油・エネルギー危機に際して、わが党は、不当な利益をほしいままにしている石油・エネルギー大資本を規制し、さらに資源の安定確保と新エネルギー資源の活用、公害対策などのため、わが国エネルギー産業の自主的、民主的発展を目ざし、石油、電力、石炭、ガス、原子力などエネルギー産業を統一的、民主的に管理、発展させるための総合エネルギー公社の設立を提起しております。政府は、過去及び現在の石油エネルギー政策の明白な失敗を根本的に反省し、国内炭の活用、石油の安定確保政策を含め、積極的な総合エネルギー政策を国民の前に提起する義務責任があります。政府は、今日、このような重大情勢の中でエネルギー総合政策を今国会に提起する意思があるかどうか、総理及び通産大臣の答弁を求めるものであります。  第三に、社会保障、医療問題についてお伺いいたします。  大企業優先の高度成長政策の中で、わが国社会保障はきわめて低い水準のままに置かれています。しかも、この物価高、物不足の中で、生活保護、福祉年金などで生活する人々や障害を持った方たち、病人の問題は一そう深刻になっています。政府は、福祉優先のため思い切った財政を投入したなどと来年度予算を誇らしげに言っていますが、一体こうした実態を知っての発言なのでしょうか。  私の会った生活保護を受けている一人暮らしのおばあさんは、一級地で一カ月一万九千三百八十円で暮らさなければならない人でした。これではまともに生活はできない。お魚のあらをやっと買ったものの、最近の高い野菜には手が出せず、くずをもらって帰るときのみじめさを涙ながらに話してくれました。寒い夜、お年寄りのことです。毎日でも銭湯であったまりたいのにそれすらかなわず、まして孫に会いに行く交通費にすらこと欠く状態だと言われました。今度政府が宣伝している福祉予算の増額が、この人たちに一体どれだけの助けとなるでしょうか。一人一食十二円七十銭アップしただけで一食わずか九十七円二十銭という無慈悲さに、私は涙が出るほど腹立たしいのです。総理、あなたにこの人たちの苦しみをわかってほしいというのは無理かもしれません。しかし、わかろうと努力されるお気持ちがあるのなら、すでに東京など地方自治体が実施し始めている生活保護世帯への生活物資援助の現物支給や福祉施設への緊急補助などを政府としてもいますぐ実行すべきだと思いますが、その点いかがでございますか。  さらに、各種年金についても、一年ごとのスライド制だけでなく、短期のスライド制を採用すべきだと思います。総需要抑制などという名のもとに社会福祉に対しても総がまんを強要するような政策は、絶対に許すことはできないのです。  また、重度障害者の施設に働く人々は、低賃金と人手不足による労働強化で健康を害し、心ならずも障害者のお世話を十分にすることができず、それらの障害者を家庭に引き取ってもらわなければならないというような深刻な状態全国各地で起こっているのを御存じでしょうか。こうした社会福祉施設に働く人たちの人員確保と労働条件の改善をはかることは、いま一刻を争う緊急な問題となっています。政府はこうした事態を知っておられるのか。知っていられるとすれば、これに対してどのような緊急対策と長期対策を持っているのか。これらの施設に働く人たちや、重障者とその家族立場に立って、この際具体的にお答えいただきたいと思います。  次に、保険、医療の問題について質問したいと思います。  いま、国民の健康を守るために、医療保険、公費負担の医療の充実とあわせて、保険医療制度の抜本的な改善が国民共通の切実な願いになっています。だれでも、いつでも、どこででも必要な医療を受けられるよう、十分な保険医療制度を確立することは、当面の急務であると思います。一部に見られる医療の営利偏向をなくし、国公立医療機関の独立採算制を廃止して、国庫補助を大幅に拡充し、救急医療や夜間休日診療などを充実させること、そして開業医には診療報酬を適正に引き上げ、新しい医療知識や技術を習得できるようにしていくことは、いま切実に求められていることであります。さらに、無医村の解消のための具体策を講ずることは、当然であります。医師、看護婦不足は、いまでは慢性的な状態であり、医療従事者の不足のために、あきベッドが出る状態も珍しくありません。政府は、こうした医療従事者の養成と労働条件の改善などについて、どのように具体策を講じようとしているのか、これもこの際、明確にお答えいただきたいと思います。  次に、政治資金の問題についてあらためて触れたいと思います。  政党がその政治資金をどこから仰いでいるかは、その政党の性格がどのようなものであり、だれの利益を代弁するものであるかを示す重大な指標の一つであります。昨年十二月の自治省の発表によれば、政府与党である自民党は、物価値上げの張本人であり、売り惜しみ、買し占め、公害などの元凶である石油や電力、鉄鋼、不動産などの大企業からばく大な政治献金を受けていることが引き続き明らかにされました。自民党総裁でもある総理は、今後も国民の恨みのこもったこのよう政治献金を政治参加の一形態などといって、もらい続けるお気持ちかどうか。田中内閣と自民党政治姿勢国民が判断する上でこのことはきわめて重要なことなので、ここではっきりお答えいただきたいと思います。  最後にお尋ねいたします。  さきの東南アジア諸国訪問についての総理の報告に関連して、わが党議員が、大東亜共栄圏の名のもとに日本軍国主義が強行したあの忌まわしい侵略戦争について質問したとき、総理は、歴史のかなたの問題であるといって見解の表明を回避されました。日本国民にも、アジア諸国民にも、多大の惨禍をもたらし、歴史の断罪がすでに下っているあの侵略戦争について、総理が定見を持っていないのだとしたら、これはきわめて重大なことであります。このよう政治家が平和や国際協調を幾ら口にしても、アジア諸国民のだれがこれを信用できるでしょうか。これは過去の歴史だとして不問に付すことのできない問題であります。私は、いま一度、総理に対して、大東亜共栄圏建設の名のもとに行なわれたあの戦争について、どのように考えておられるのか、明確な見解を求めるものであります。これは日本国民を含め平和を願う諸国国民が一致して注目していることであります。  いま国民が希望していることは、あふれるような豊かさではなく、安定した豊かさであり、大きな欲望ではなく、まことにささやかな生活の安定なのです。田中内閣は、国民のこの期待を裏切っているのです。物価値上げの田中内閣は一日も早くやめてほしい、これは赤字続きの家計のやりくり、身を削られるような思いで生活をささえている主婦国民共通の声であります。いつまでに物価は安定する、そう総理が何回言われても、だれも信ずる者はもういないのです。  私たち共産党は多くの国民とともに田中内閣の一日も早い退陣を強く要求し、自民党政治にかわり、国民生活の擁護と民主的改革を進めるために全力をあげて奮闘する決意をここに表明して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  28. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 小笠原貞子君にお答えいたします。  第一は、国会の国政調査権の問題でございますが、わが国自由経済体制をたてまえとしておりますので、国が一般的に企業価格形成等に直接介入することには基本的には慎重でなければならないと考えておるのでございます。政府は、企業便乗値上げ投機的行為に出ないよう強く自制を要請いたしますとともに、かりにこれらの不当な行為等によって過大な利益を得たものに対しましては、国民生活安定法などの厳正な運用をもって対処してまいりたいと考えます。  また、国政調査の問題と参考人及び証人等についての御発言がございましたが、これは国会の問題でございまして、国会で十分措置されるものだと考えておるわけでございます。(「自民党総裁としての答弁だ」と呼ぶ者あり)自由民主党は必要があれば証人及び参考人を呼ぶことには十分な配慮もいたしておりますし、こういう具体的な問題は、衆参両院で十分各党とお話し合いの上、適正な措置をとっていただきたい、こう考えるわけでございます。  公共料金につきましては、厳にこれを抑制してまいりたいということは、間々申し述べておるとおりでございます。そのためにこそ、せっかくきめた鉄道運賃や米の売り渡し価格を半年間延期しておるわけでございます。  タクシー料金につきましては、中小企業や個人等が多く、また、審議会の答申もございましたので、真にやむを得ない程度引き上げを認めたわけでございます。  石炭につきましては、二千万トン程度以上を確保すべしというのが答申でございまして、これを実行いたしておるわけでございますが、新たな問題も提起されておるわけでございます。貴重な国内資源という立場で、エネルギー調査会の検討を待って、安全にして可能な石炭生産について考慮を進めてまいりたいと存じます。詳細については通産大臣からお答えをいたさせます。  生活保護世帯対策について申し上げます。  生活扶助基準につきましては、その適正な水準を確保すべく明年度二〇%の引き上げを行ない、社会福祉施設の措置費についても同様の改善をはかることとなしておるのでございます。また、政府物価抑制及び物資確保対策に全力をあげて取り組んでおりますので、生活保護世帯及び施設入所者の生活は確保されるものと考えておるのでございます。しかし、これらの問題につきましては、物価問題等が大きく影響しないように、しさいな観察をしながら万全の措置をとってまいらなければならない問題だと思っておるわけでございます。  政治資金の問題について申し上げますが、金のかかる選挙制度をそのままにしておいて政治資金の規制をするということにいろいろ無理があることは、過去の政治資金規正法改正案の歴史がこれは物価抑制及び物資確保対策に全力をあげて取り組んでおりますので、生活保護世帯及び施設入所者の生活は確保されるものと考えておるのでございます。しかし、これらの問題につきましては、物価問題等が大きく影響しないように、しさいな観察をしながら万全の措置をとってまいらなければならない問題だと思っておるわけでございます。  政治資金の問題について申し上げますが、金のかかる選挙制度をそのままにしておいて政治資金の規制をするということにいろいろ無理があることは、過去の政治資金規正法改正案の歴史がこれを物語っておるのでございます。今後とも政党本位の金のかからない選挙制度の実現という理想を求めつつ、政治資金の問題を論ずるにあたっては、労働団体政治活動に使う金が広範囲にわたっている点にも着目して、広範な立場から考えていく必要があるのではないかと考えておるのでございます。  太平洋戦争に対する見解について申し上げます。  歴史のかなたの問題と述べましたのは、歴史的過去の問題との趣旨でございまして、過去のことだから不問に付してかまわないといろ意味でないことは、これまた当然のことでございます。第二次大戦からわが国が数多くの教訓を得て、戦後の平和日本の建設に邁進をしてきたことは歴史的事実であります。アジア諸国との外交におきましても、わが国は平和と繁栄を分かち合う隣人関係を打ち立てるために努力をしておりますし、軍国主義復活に関する懸念は全く私のASEAN諸国訪問中も聞かれなかったことを念のため申し上げておきたいと思います。  残余は関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  29. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) トイレットペーパーの製造原価につきましては、標準的な原単位の選定、それから標準的な材料費、それから製造諸費用、それから運送、流通過程における諸費用、適正利潤というものを算定いたしまして、過般発表しましたような原価をきめたわけでございます。この原価は、トイレットペーパー騒動が起こる前の昨年の十月の値段の最低値と大体匹敵する値段に下げてございます。現在の時価から見れば、いまの市場最低値の二十円ないし三十円ぐらい安くなっておるはずであります。  次に、大企業の製造原価を公開せよという御質問でございますが、私たち自由主義を奉ずる政党におきましては、労使関係とか、経営とか、そういう問題は経営者なり労使関係にまかしておくの一を理想としておるのでありまして、いたずらに介入することはできるだけ避けたいというのがわれわれの信条であります。しかしながら、公益公共に関する部面につきましては、たとえば鉄道運賃であるとか、それらの公共料金、あるいは銀行法による銀行の監査であるとか、それぞれ仕事仕事によって監査することができるようにしてございます。今回石油二法を制定していただきまして、それらの中身を発動してもできるものとわれわれは考えております。したがって、必要な部面につきましては政府の権限をもって必要に応じて公開してもけっこうであると思っておりますが、それはそのときの必要度に応じてわれわれは考えていきたいと思っております。  それから石油価格のカルテルの問題につきましては、先般独禁当局におきましていろいろ調査がなされました。もしそういうような事実がかりにあるとするならば、これはすみやかに値下げを指導するなど、適切な措置を講じたいと思っております。  生活関連物資の価格の引き下げ、あるいは公共料金抑制ということは、御答弁申し上げましたとおり一貫して推進してまいるつもりでおります。  なお、御質問のありました石炭の問題につきましては、最近の石油の事情にかんがみまして石炭政策を再検討しておりまして、第五次答申にきめられました最終年度の二千万トンを下らざるというのを二千二百五十万トンを下らざるというふうに修正されました中間答申を実行する考え方であります。  なお、石炭をはじめ石油、電力、ガス、原子力その他の総合エネルギー政策につきましては、政府の諮問機関である総合エネルギー調査会等の場におきまして審議をお願いすることにいたしてあります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  30. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 臨時超過利得税を徴収すべしと、こういう御意見でございます。これはもうしばしばお答えしたのですが、私は、いまの最大の問題は物価問題だと。国民がみんな心配しておる。そういう際に、買いだめだとか売り惜しみだとか便乗値上げ、そういうことで暴利を得るという行為は、これは憎むべき行為だ、制裁を加うべきだと、こういうふうに思うんです。ただ、その方法になりますと、これはいろいろあろうと思うんです。暴利と正常な利益、これは一体どういうふうにするかというような問題もあるんです。それからもう一つ、もっと私が心配しておりますのは、どうせ国に取られちゃうならば使っちゃえと、こういうことになりますと、物価対策との調整が一体どうなりますか、こういう問題もある。しかし、いろいろな考え方があろうと思うので、これは広く皆さんの御意見を聞いてそうして意見をまとむべきだと、こういうふうに考えております。決してこれを放棄しておるわけじゃないんです。私はこれは非常に強い感情を持っております。この感情を何とかして制度化してみたいと、こういうふうな気持ちでございます。(拍手)    〔国務大臣齋藤邦吉君登壇拍手
  31. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) お答えを申し上げます。  最初に年金のスライド制の問題でございますが、厚生年金国民年金につきましては、昨年の秋に成立いたしました法律に基づきまして四十七年度にこれを実施することといたしておるわけでございまして、三、四カ月ごとの短期スライド制は考えておりません。  次に、社会福祉施設の充実の問題でございますが、私どもは最も力を入れておるところでございまして、働く人々の保母、寮母等の職員の定数の増加は来年度におきましては約千人程度の増員を考えておりますし、さらに労働条件についても、これが改善をはかることを企図いたしております。特に、休日代替職員を設置する等の措置を講じておるわけでございます。さらに、こうした堅急な対策のほかに、長期的なマンパワー対策といたしましては、社会保障長期計画懇談会において目下検討中でございます。  次に、医療保険制度の抜本的改善の問題でございますが、抜本改善につきましては実現可能なものから実施する、こういう方針で臨んでおるわけでございまして、昨年は御承知の家族七割給付、高額医療償還制度、こういうものを内容とした健康保険制度の改善を行ない、今年度はさらに日雇労働者健康保険制度をこれに準じて改善をいたしてまいりたいと考えておるものでございます。  医療供給体制の整備は、わが国の医療政策上最も重要な問題でございまして、救急医療あるいは休日夜間医療、無医村の医療対策に重点を置いて努力をいたしておるわけでございます。  なお、人的な要素といたしましての医師の養成でございますが、これはすでに御承知のように、国公立の医科大学の新設、定員増、これを計画的に進めております。と同時に、看護婦の養成確保につきましても、現在非常に不足しておる事情にかんがみ、養成所の整備、さらにナースバンクの創設、あるいは病院内の保育事業の育成、こういうふうな措置を講じ、看護婦の養成確保に全力を尽くす考えでございますし、看護婦の労働条件の改善につきましても、特に夜勤体制の改善に力を入れたいと考えておるような次第でございます。  無医村対策につきましては、すでに御承知のように、診療所の整備、巡回診療、あるいは患者輸送車の整備等に力をいたしておりますが、来年度におきましては、無医地区に勤務するお医者さんを養成するために修学資金の貸し付け制度、これを新たに設けるようにいたしておるわけでございまして、今後とも社会福祉の整備のためには全力を尽くす考えでございます。(拍手)     —————————————
  32. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 田中一君。    〔田中一君登壇拍手
  33. 田中一

    ○田中一君 私は、日本社会党を代表して、総理の施政方針演説及び外交、財政、経済演説に対し、国民の疑問とするところをすなおにお伺いいたしたいと存じます。  まず、第一は、インフレ問題と田中総理の列島改造計画についてであります。  私は、総理の施政方針演説を伺いながら、端的に言って、はたして今日のインフレ問題の収束に本気で取り組む決意があるのかどうか、強い疑問を持つのであります。  言うまでもなく、今日、最も憂慮すべきことは、インフレのあらしが国民生活を窮地に追い込み、生産、消費を問わず、インフレ心理が日本経済に根をおろしたということであります。その上に、石油危機が火に油を注いだ形となって、事態が一そう悪化しているのであります。  総理の施政方針演説あるいは、これまでの言動から推して、総理は、今日の異常な物価騰貴の原因を、海外からの輸入されたインフレと、国民の消費増大に求められているようであります。この認識に立って、乏しきを分かち合いながら苦しい試練に耐えた戦後時代を取り上げて、国民に消費節約を説き、あたかもインフレ責任が、政府責任の手を届かない外国と、勤労国民の側にあるような態度をとっているのでありますが、こんな無責任な話はありません。国民インフレ被害者であり、異常な物価高騰に泣いているのは正直な国民なのであります。これに対し、最近の誇大宣伝とも思われる物不足キャンペーンと、政府の消費節約キャンペーンの陰で、企業は、インフレ物不足を巧みに利用し、便乗値上げと思われる手段で大きな利益をあげているのであります。現に、四十八年九月期決算では、資本一億円以上の法人の利益は一年前に比べ四〇%以上のもうけになっているのであります。すさまじい物価の上昇が国民の家計をきびしく圧迫している一方で、大企業物価値上げによる巨大な利益を得ているのであります。まさに正直者ばかをみ、社会的な不公正、不平等がまかり通っているのであります。どうしてこのようなおかしなことになるのか、総理はまじめに考えてみたことがございますか。日本の悪質なインフレの原因は、いわゆる経済投機化にあることがすでに経済専門家からも鋭く指摘されております。つまり、日本経済がギャンブル化し、企業土地や株の買い占めに見られるように、企業が製品を売ってもうけるのではなしに、買い占め売り惜しみなど、企業投機によって労せずしてもうけをふやすという態度になっていることであります。これは、輸出第一主義による急激なドルの流入と金融緩和策が投機をあおり、加えて、いわゆる円切り不況宣伝による政府の大型予算による景気刺激策が引き金となったことは明らかであります。このようインフレ投機経済を促進したのが、何より田中総理列島改造論であります。今日のインフレは、まさに田中インフレ——これは田中一じゃございません。田中角榮でございます。田中インフレであります。この政治インフレを収束する道は、列島改造計画をはっきり撤回し、それを裏づけようとする国総法を取り下げることが先決であり、真に反省すべきは反省するという態度だと思うのであります。すでにたびたび指摘されているのでありますが、あらためてこの点に対する総理のすなおな決意を伺いたいのであります。  また、政府は、今日の異常事態短期決戦で臨むとして、四十九年度予算の圧縮、公定歩合の引き上げ等、安易な総需要抑制策あるいは石油緊急対策二法の運用などで物価変動を短期的に鎮静化すると言っておりますが、国民のだれも消費者物価がこれで安定するとは信用していないのであります。現に、当面の総需要抑制策のねらいは、産業界の混乱を防ぐための卸売り物価の鎮静化に置かれており、石油カットの産業界へのショックを暖和し、これを乗り切れば、またしても従来の高度成長路線に突き進もうとしていることは否定できないと思うのであります。確かに、表面的には四十九年度予算編成の方針においても、公共事業の抑制、新幹線、新規高速道路等の巨額の経費を要する事業の繰り延べ等が行なわれております。しかし、その実態抑制という名に値しないものであることは、すでにわが党関係議員から指摘したところでありますが、加えて十九兆五千億円にのぼる高速道路を中心とした第七次道路整備計画を手直しするかまえはなく、また、一月二十二日には、本四架橋の三本の同時着工をあらためて言明しているのであります。予算編成方針においても、既定の長期計画については進展の調整をはかるが、長期計画の改定は行なわないとしております。これらは、経済財政運営の基本において高度成長と列島改造を踏襲し続けている証左であり、あらしが頭の上を通り過ぎるのを首を縮めて待っている姿と言わなければならないのであります。いま国民の求めているものは、短期的には燃え盛る投機インフレをストップさせ、国民生活の不安を取り除くとともに、資源不足という事態転換の好機として、大企業優先のインフレ経済体質を国民生活優先の方向に切りかえていくべきだということであります。いわゆる社会資本整備の主役である公共事業についても、その一時的な繰り延べでなく、その内容を根本から見直し、新たな視点から公共投資のあり方を考え直すべきだということであります。このような観点から、私は、長期経済計画を全面的に改定すべきであると思うのでありますが、政府対策をお伺いいたします。  物価抑制策、エネルギー不足に伴い、公共投資の抑制ということは重要でありますが、従来の産業基盤整備重点の投資によって生活関連の社会資本が立ちおくれていることも否定できません。インフレ物不足という制約条件の中で、限られた公共投資を有効に行なうには、ナショナルミニマムを基礎とした各事業の優先順位をきめ、計画的、効率的な事業配分を行なうべきであると思いますが、来年度予算は、硬直化した従来の投資パターンの域を出ていないと思います。この点の御見解を承りたいと存じます。  また、政府の景気引き締め政策のもとで、四−六月期には中小企業者にとってきびしい不況のあらしに見舞われることも十分予想されるところであります。一方では、あらゆる建築資材をはじめ、物不足による価格急騰が一そう進行することも懸念されるのであります。石油カットが表面化するや、鉄鋼をはじめとして大幅減産宣伝と、コストアップ分の価格引き上げへの繰り込みの姿勢が一斉にとられております。事業の削減に加えて、建設資材の急騰で、必要な公共事業もさらにおくれる危険があります。大蔵大臣は、きわめて近い将来、主要資材の価格に大きな変化がこようと楽観的なようでありますが、需給の見通しはどうなのか、また、価格の推移をどのように予想されているのか、お答えをいただきたいと思うのであります。  また、資材の急騰と品不足、資金難、人手不足とからまって、企業倒産も大きくふえております。建設省は、昨年九月、請負契約約款のインフレ条項を発動し、一月に再度若干の基準緩和を行なったのでありますが、今日のような資材乱騰ムードの中では請負契約自体が成立しない状況にあり、公共事業の円滑な執行のために現行の総額・定額請負契約方式の再検討が必要な時期を迎えていると思いますが、建設省の見解はいかがでありますか。  さらに、今日のインフレ問題を解決するために最も留意しなければならないのは、今日のインフレはつくられた土地不足、物不足が大きな原因だということであります。大都市及びその周辺の土地需給のアンバランスは、土地そのものの不足によってもたらされたものではありません。土地の仮需要をあおり、人為的に地価をつり上げてきた土地値上げ政策にその原因があるのであります。現に私は、首都圏、近畿圏での民間の土地取得の現況を具体的に調査したのでありますが、その結果、東京、神奈川、埼玉、千葉の一都三県を対象にして、今後十年間にこの地域で予定される住宅需要の十倍に相当する供給可能地が現存するのであります。土地が足りないから値上がりするというのは神話にすぎないのであります。こまかいことは申し上げる時間がありませんが、問題は、この土地を大手デベロッパーが買いあさり、首都圏では大手二十社で九千六百五ヘクタール、近畿圏では二十九社で八千四百九十一ヘクタールの土地買い占めており、別の調査では、首都、近畿、中部の三大都市圏では民間デベロッパー五十八社の保有地が横浜市の面積に匹敵するのであります。これが値上がりの元凶なのであります。政府は、この買い占め土地をどう放出させるのか、対策を具体的に聞かしてほしいのであります。かけ声ばかりで一向に進んでいないのは大きな問題であります。地元自治体と協力し、原価に金利と経費に適正利潤を加えた価格で放出させる用意があるか、これは埼玉県が行なっている方式でありますが、このような現状はどのようになっているか。また、四十四年以降の土地の取得に対して、本年四月より二〇%の重課税を課していますが、土地を求める者は国民大衆であって、地価の高騰に政府が一役買っているのではないか。この土地に対する重課税については、土地購入者の負担に転嫁されないという保証がどこにありますか、その運用にあたっては慎重な配慮を求めなければなりません。大蔵大臣の明確な答弁を願います。  同時に、国民生活にとっては、消費者物価の安定対策生活必需品の安定供給が最大の関心事であります。勤労大衆は卸売り物価生活しているのではありません。また、物不足によって困るのは生活必需物資についてであります。政府石油二法と買い占め緊急措置法で需給と価格の安定をはかると言っているのでありますが、そのいずれもが全く見かけ倒しになっているのであります。政府は、総理の指示に基づき、この十六日から、灯油洗剤など生活必需物資の在庫調査を実施していると聞いております。私は官僚統制の強化による需給対策には賛成できないのでありますが、一体どの程度この調査に期待できるのか疑問であります。調査能力の問題、調査にあたって結局業者のことばを信用する以外になく、業者との癒着を強めるだけに終わるのではないかという心配があります。この点では改正された買い占め緊急措置法もきわめて規制が弱いものであり、売り渡し命令、立ち入り調査範囲の拡大、審議会の設置、国会への報告義務などの諸規定を設けるよう改正すべきではありませんか。特に、企業の行動をきびしく監視する民主的な機構を中央、地方につくらなければ、事実上法の適正な運用ができないのではないかと考えるのでありますが、この点に対する政府対策を聞かせていただきたいと思います。  第二に、住宅政策転換と宅地問題についてお伺いしたいのであります。  いま、日本の住宅政策は破綻に瀕しておると言わなければなりません。いや、また何ら住宅政策がないと言わなければならないのであります。政府は、来年度予算で住宅、生活関連施設の整備に重点を移したと宣伝しているのでありますが、公営公団住宅の建設予定戸数は、逆に四十八年度公営十三万八千戸公団八万戸建設計画が、四十九年度には公営十万三千戸公団七万戸と、合わせて四万五千戸も戸数が減っているのであります。この際伺っておきますが、四十七年度の計画のうち、完成戸数は何戸か、あるいは四十七年度から八年度繰り延べた戸数はどうなっているか、これは建設大臣に伺いたいと思います。  しかも、地価の異常な上昇が続き、建築資材の不足や値上がりによる建築費の高騰が激しき今日、個人の住宅建設を不可能にしております。それにもかかわらず、政府は相も変わらず持ち家政策を続行するどころか、さらにこれを強化しようとしているところに政府住宅政策の誤りがあるのであります。住宅問題の解決は、もはや持ち家政策では不可能になっており、安くて良質な公共賃貸住宅の大量建設以外にはありません。ところが、最近の建築費の値上がりを受けて、国民が待期する公共住宅の建設は計画どおりに進んでおりません。このまま推移すれば、第二期住宅建設五カ年計画の達成は不可能になりますが、建設大臣はこのよう事態に対処する所感はいかがなものでありましょうか、方針を明らかにしていただきたい。  さらに、地価や建築費の値上がりで住宅建設費が個人の借り入れ能力をはるかにこえた現在、住宅金融の拡大による持ち家政策では問題は解決されません。民間自力建設住宅にその六割以上を依存している現行の住宅建設計画をこの際全面的に改定し、公共賃貸住宅の大量建設を主力とする計画を作成し、住宅供給に対する国の責任を明確にすべきであります。  さらに、最近の建築費の急激な値上がりは、公営住宅公団住宅の原価主義による家賃の大幅な引き上げを招いております。この際、公営住宅の一種、二種の差別を廃止し、公営住宅その他を含め家賃補助制度を採用すべきだと考えます。居住者の所得の一割程度家賃一定規模の公共住宅を国が責任を持ち供給する政策家賃体系の導入を急ぐべきだと考えておりますが、建設大臣の所感を伺います。  次に、政府は、新年度で宅地開発公団を新設して、三都市圏でさらに宅地開発を推進し、国民の持ち家が促進されると宣伝しておりますが、これは全く悪質な幻想にすぎないのであります。日本列島改造論は田中内閣のビジョンとして打ち出したものでありますが、これに悪乗りした大企業土地買い占めにより地価の異常な高騰を招き、もはや勤労者が入手できる価格土地を取得することは不可能であります。政府は、一坪当たり十万円程度で開発された宅地を分譲するかのごとく宣伝しておりますが、地価上昇の激しい今日、はたしてそのとおり実現され得ますか、はなはだ疑問と言わなければならないのであります。何となれば、宅地開発公団は、市街化調整区域に膨大な土地を保有し、開発行為が抑制されて困窮している民間デベロッパーの救済機関になりかねず、さらに一そうの地価の高騰を招くからであります。総理の御所見を求めるものであります。  また、福田大蔵大臣は、四十八年度予算編成にあたって、行政管理庁長官として、日本住宅公団の宅地部門を強化すれば、屋上屋を重ねる宅地開発公団の創設は必要ないと主張し、見送らせた経緯があるにもかかわらず、四十九年度予算の編成においては、大蔵大臣みずから公団の新設を積極的に主張されたのはいかなる理由か、明確にしていただきたいと思います。  次に、水需給の逼迫は、ますます都市住民の生活不安を招いております。昨年の全国的な異常な渇水によって、東京、大阪はもちろん、高松、松江等で給水制限を余儀なくされ、生活不安を一そう増長するとともに、企業の操短という現象が発生しております。また、今冬においても名古屋市では一〇%の給水制限を実施するという状態でもあり、美濃部東京都知事がごみ戦争の次は水戦争だと言っているのもまさに現実な姿となってきており、千葉県では水不足を理由に入居を延期する事態を招いております。水は人間生活に欠かせないものであり、有限の資源であります。水の確保なくして土地の利用、なかんずく住宅の建設は不可能であります。水の確保に対する政府の根本的な見解をお示し願いたいと思います。  ここで勤労者住宅との関連で、特に勤労者財産形成政策につきましてお聞きしておきたいのであります。  従来、政府は、わずかな貯蓄優遇策のみをもって、このインフレに苦しむ勤労者に持ち家の幻想を抱かせてきたのでありますが、これはILOの労働者住宅勧告にも見るとおり、すべての勤労者とその家族に必要にして十分な住宅を供与すべき国の政策を貯蓄に肩がわりさせようというものにすぎないのであります。今回、この財形政策の拡充をはかるとして、住宅貯蓄非課税限度引き上げるということでありますが、七年先に五百万円では、どこにどのような住宅が取得されるか、何坪の土地が求められるか、全く住宅政策を放棄した姿であり、西ドイツの財形貯蓄等に比べてもきわめて悪い条件であります。せめて割り増し利息をつけるとか、積み立て後の土地、住宅の実体保証を行なわなければ、いたずらに幻想をかき立てるだけに終わると思うのであります。私は、少額貯蓄の保護策は、このインフレ下における貯蓄の減価を補うために必要であると考えますが、金融機関の利益を吐き出させても、預金金利の大幅な引き上げを行なうことが重要であると思うのであります。同時に、投機によるインフレ利得は税金で吸収すべきであり、これが所得再配分と負担の公平化の物価抑制の観点からも必要であると考えるのでありますが、この点に対する大蔵大臣の所見を伺います。  第三に、経済外交あり方についてお伺いいたしたいのであります。  総理は、先ごろから東南アジア諸国を歴訪し、帰ってこられたのでありますが、これまでの対米従属、アメリカの核のかさの下における安保外交が、いかに国を誤り、かつ、危険なものであるかを身にしみてお感じになったと思われます。今回のタイ及びインドネシアにおける激しい反日運動は、単なる突発事故ではないのであります。社会党は、これまで政府に対し、対米追従外交と、エコノミックアニマルといわれる日本企業経済進出について、その危険な側面を警告してまいったところであります。総理の東南アジア訪問におけるタイ、インドネシアの激しい反日運動は、それが爆発したものであります。まさに国内における高度成長路線の結果として。ハイは大きくなったが、国民福祉とはかかわりなく、海外進出に道を求めるというやり方が大きな反省点に立たされているということであります。すでに、昨年来、タイやインドネシアはもちろん、お隣の韓国からも、日本商品のボイコットや、援助の拒否、あるいは多国籍企業の名によってアジア諸国の労働者を搾取することに反対する運動が盛り上がっており、アジア諸民族の共通の認識になろうとしているのであります。田中総理は、東南アジア諸国訪問出発にあたって、急遽、東南アジア五原則なる作文を外務官僚につくらせ、平和と繁栄を分かち合うよき隣人関係の促進、経済自立を脅かさない等、五項目をきめましたが、こんなつけ焼き刃の原則をきめるだけでなく、日本があくまでも平和憲法を土台とした真の友好関係を樹立する努力を行ない、政府の海外経済協力のあり方企業進出の規制等に対する原則政治的視点を明らかにすべきであります。  さきに、現代総合研究集団が、日本企業の海外進出に関する提言を行ない、その中で、平和憲法の順守、民間投資のルール、国際公正労働基準を三本柱とする海外協力宣言をきめるよう提言をしているのでありますが、政府は海外協力宣言の策定についてはどのように考えていますか、その見解を承りたいのであります。  また、総理は、帰国後、わが国も反省すべき点があると言っておられますが、国民の反省ではなくして、田中総理自身の反省だと思いますが、その点もどういうお考えか、説明をしていただきたいと思います。現地国民を踏みつけにした経済進出、あるいは現地権力と癒着した今日までのやり方では、援助の拡大それ自体が相手国国民の対日不信をつのらせる危険があるというのが現実だと思うのであります。  次に、石油削減といった事態を背景として、田中総理、三木特使、中曽根通産相、小坂特使と、相次いで、あたかも水鳥におびえた軍馬のようにあわてふためいて東南アジア、中近東などを歴訪し、おおばんぶるまいの経済援助あるいは経済協力を約束してきているのであります。まことに場当たりな安易な口約束の感じが深いのであります。そのツケは、いずれも日本国民と現地の国民のふところに響いてくるのであります。もちろん、東南アジア諸国の日本に対する援助の要請がきわめて強いことも事実だろうと思うのであります。しかし、新聞に報ぜられている金額だけでも膨大な額にのぼっており、民間ベースの分も含めて考えれば、さらに巨額になると見られるのであります。これらの約束をどう処理されるお考えなのか、今後の援助計画をこの際国民に明らかにされたいのであります。さらに、これらの経済援助が今日までどのくらいの額にのぼっているか、その内容も明らかにしていただきたいのであります。  さらに、これらの経済援助が、援助国の民衆の利益のためでなく、反共政権や独裁政権のてこ入れや軍事援助の肩がわりに行なわれてきた、あるいは今後も行なわれることが懸念されるのであります。わが国の対外援助は、政府ベースの援助は少なく、正式の外交ルートによらないで、民間で直接取りきめられるものも多いと聞いております。そのため、被援助国と日本企業との間に援助ロビーと称される政界、財界の大物たちの暗躍も伝えられているのであります。ところが、膨大な海外協力資金実態については、ほとんど満足な報告は行なわれていないどころか、まさに秘密のベールに包まれていると言っても過言ではないのであります。経済援助をガラス張りにし、国民的監視のもとに置くために、資金の流れについて詳細な報告書を国会に提出し、国会の承認を受けるようにすべきであると思います。国民は、これまで、パイを大きくすれば福祉がよくなると説明されてきたのでありますパイは大きくなったいま、国民は、そのパイの分配については監視し、発言する権利があると思うのでありますが、政府の御所見を伺います。  最後に、政府は海外経済協力に今後大きなウエートをさくと言われているのでありますが、これが第二の臨時軍事費になる心配があることを指摘しておきたいのであります。援助に名をかりた武器輸出が行なわれる危険はないのでありましょうか。政府は第五十七国会において、昭和四十二年十二月十三日、当時の山下経済協力部長によって、輸出貿易管理令による武器輸出禁止三原則についての政府の統一見解を出しております。これは、共産圏、国連決議で禁止された地域、紛争当事国またはそのおそれのある国には輸出を認めないという内容でありますが、今後平和日本として一切の武器輸出はしないことを確約し、その原則を明確にすべきであると思います。総理の御所見を承りたいと存じます。  以上、要点的な問題について質問いたしましたが、国民はいま田中内閣に大きな不満と疑惑を持っております。関係大臣のすなおなお答えをお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 田中一君にお答えいたします。  まず第一は国総法についてでございますが、物価が高騰し、さらにエネルギー問題が経済全体に重大な影響を及ぼしている現状においては、総需要抑制の見地から、新幹線、高速道路等の大規模プロジェクトの実施のテンポをスローダウンさせることも必要であり、四十九年度予算案もそのような方針に沿って編成したことは、御承知のとおりでございます。しかし、一億一千万人の国民が長きにわたって豊かな生活を享受していくためには、たとえ現下のきびしい情勢のもとにございましても、長期展望に立って国土利用の再編成をはかり、国土の均衡ある発展を進めることをないがしろにすることはできないのであります。国総法案は、このような見地に立って土地問題を解決し、新たな観点から総合的かつ計画的な国土の利用、開発及び保全をはかるために立案したものでございまして、そのすみやかな成立を期待しておる次第でございます。  物価抑制、長期経済計画の改定等についての御発言でございますが、政府は、あらゆる政策手段をフルに活用して、異常な物価高を本年上半期中に鎮静化するべく全力を傾けておるのでございます。  経済社会基本計画は、これまでの生産輸出重点の路線から国民福祉重視の路線へと思い切った政策転換を進め、福祉社会の実現という国民共通の目標を達成するために作成せられたものでございます。したがって、その基本的な考え方は今後の政策運営の指針として現在なお有効であると考えておるのでございます。しかしながら、現下のごとき物価の異常な高騰については、計画で必ずしも十分に想定していなかったことも事実でございますので、計画の主要課題についてのフォローアップを進めつつ、計画改定の必要性及びその時期等についてもその成果を踏まえて適切に判断していく所存でございます。  また、政府としては、企業便乗値上げ等の不当な行為に対しましては、国民生活安定法その他関係法令の適正な運用によりましてその是正につとめますとともに、全国消費者モニターを配置して、地域的な物価事情等についての民間による監視体制の整備につとめております。したがいまして、当面御指摘のような機構を新たに設置することは考えておらないわけでございます。  また、土地問題に対しては建設大臣からお答えを申し上げますが、宅地開発公団等について三百申し上げておきたいと存じます。  宅地開発公団は、三大都市圏を中心とする現下の著しい宅地難を打開するために、大都市の周辺の地域において、健全な市街地の形成をはかりつつ、勤労者のために宅地の大量供給を行なおうとするものでございます。したがって、公団の造成する分譲地は、原価を基準とし、その支払いについても長期割賦の方法によって勤労者が支払い得る価格となるように措置してまいりたいと考えておるのでございます。また、大手デベロッパーが保有する土地で開発可能なものについては、みずからすみやかにこれを開発し供給させるように指導しておるところでございます。なお、公団は、大規模開発にふさわしい適地について事業を行なうものであって、民間デベロッパーの救済というようなことは全く考えておらないわけでございます。  水の問題についての御指摘がございましたが、水は御指摘のとおり、国際的に見ましても最も大切な資源であり、最も重要な課題であることは、御指摘のとおりでございます。今世紀末に人類が一番不足をするものは何かというテーマに対してコンピューターがはじき出した世界的結論は、それは主食と水であろうと、こう指摘を受けることを待つまでもないわけでございます。田中さん御承知のとおり、わが国では十数年前にダム特別会計法の制定を行ない、その後、水資源開発促進法の成立を見、水の特別会計の設置によって水の確保がはかられておるわけでございます。まあ日本には定期的に訪れる台風季がございますし、国土の四九・五%、約五〇%が降雪地帯でございますので、山岳地を利用してダムの築造を計画的に行なえば、水の確保は世界的には最もいい条件で確保できる状態にあることは御承知のとおりでございます。全国には千数百カ所のダムサイトの適地が存在することも御承知のとおりでございます。ダムを計画的に築造していくことによって水の確保をはかる必要はございます。現行治水十ヵ年計画を展望しますと、建設省は約六百五十カ所のダム計画を一応予定いたしておるようでございますが、石油の事情もございまして、水力発電所約三千万キロの潜在力もございますので、この意味で多目的に水の開発をはかるとすれば、まあおおむね千カ所ないし千百カ所程度のダムの築造を十年ないし十二年間で必要とするということは御承知のとおりでございますし、それは十分可能なことでございます。  なお、経済協力に対する原則を明定し、東南アジア、中東に対する援助に計画性を持たせるようにという御指摘でございますが、相手国の立場に立ち、その国づくりに真に役立つ節度ある経済協力を行なっていくべきであるとの基本方針につきましては、累次述べておるとおりでございます。具体的な進め方といたしましては、政府ベースの協力については、政府開発援助の量、質両面の拡充につとめるとともに、農業開発や社会基盤の協力に重点を置く考えでございます。民間ベースの協力につきましては、相手国との協調融和をはかりつつ、相手国の経済自立に寄与するよう民間企業を指導していく所存でございます。  わが国が東南アジア、中東において供与する援助は、いずれもこれから開発途上国の経済発展と国民福祉の向上に寄与するものでございまして、個々の案件について十分の検討が進められるべきであることは申すまでもありません。  また、いままでの海外経済援助、技術協力援助というものが民間ベースを中心にして行なわれてまいりましたことは御指摘のとおりでございます。その意味で、GNPの一%をこすような援助が行なわれておるにもかかわらず、先進工業国に比べて政府援助の量が少ないという指摘を常に受けておるわけでございます。チリで行なわれたUNCTADの総会において、故愛知大蔵大臣が、七〇年代の末にはGNPの〇・七%まで政府開発援助を進めたいという、アメリカでも賛成しがたいような勇気ある発言を行なったのはそのような事情に基づくものでございまして、その後アンタイドの促進等につとめておるわけでございます。ですから、今度のASEAN五カ国を訪問しましたときも、現地では日本の経済協力を絶対不可欠のものとし、そして高く評価をしておる。ただ、経済ベースのものにプラスされて、御指摘のあったように、医療とか、社会とか、それから文教とか、いろいろな問題に対してより広範な交流ができるならば、お互いの投資や経済的な協力というものはより大きなメリットを求めることができるだろうと、そういう意味で、今度の国会に、経済協力担当の国務大臣を一人ふやしていただこうということと、各般の高い立場から俯瞰的、鳥瞰的に見ながら、経済投資等バランスのとれるような望ましい経済協力が行なえるように国際協力公団なるものを設置しようともくろんでおるわけでございます。これらがはかられれば、いままでより以上に日本の海外における経済活動、また協力体制というものは国際的に評価をされ、いやしくも日本の経済進出とかエコノミックアニマルといわれるような問題が起こることはないと確信をいたしておるわけでございます。  残余の問題に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  35. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まず、抑制政策の中では特に資金、資源の配分上、生活関連を重視せいと、こういうお話でございますが、私もそのとおりに思います。四十九年度予算では、公共事業費は全体としては非常に引き締めたんです。しかし、その中でも住宅、下水道、福祉、教育、そういうものにつきましては特別の配慮をしたということは御承知のとおりであります。  物価問題は、総理がお答え申し上げたとおりであります。  それから土地税制、これが土地需要者へ価格転嫁をしておるのじゃないか、そういう御指摘でございます。私も、そういう傾向は多少あると、こういうふうに見ております。しかし、これは、税制の面でこれをどうこうしようと、こういうわけにはまいらない。これは金融政策——いまは引き締めをしております。これがきいてくると漸次是正されると、こういうふうに見ております。  それから宅地開発公団を昨年私が行政管理庁として反対した、それをなぜ今度は積極的に進めておるかと、こういうことでございますが、一昨年の暮れ、宅地公団をつくろうという議論が自民党から突如として出てきたんです。私は、突如としての提案でありますので、あまり検討もしておらぬ、これは屋上屋になったんじゃ困ると、こういうふうに考えまして、まあとにかくこれは四十八年度の問題としては取り上げませんと、こういう態度をとったわけであります。自来一年間、建設省でも十分この問題を検討する、私も行政管理庁長官という立場検討いたしました。そこで、ただいま総理からお話がありましたような、内容のすっきりした、屋上屋にならない新公団をつくるという構想が固まったわけであります。私は住宅政策に非常に熱心でございます。そういう立場から今回は積極的に賛成をしたと、かように御了承を願います。  それから財形貯蓄についていろいろ御意見がありましたが、今回は利子非課税限度を大幅に引き上げる。それから特に住宅公庫融資の貸し付け額をうんと拡大するわけであります。今度は、七年たちますと、熱心に貯蓄をした人、これは現実的に住宅を持ち得る、その夢が実現をすると、こういうことになるのです。私はこれは画期的なことだと思っております。  それから預金金利を引き上げよというお話でございますが、これは昨年の四月以降もう四回の引き上げをいたしております。しかし、それはその反射的影響といたしまして貸し出し金利のほうにも響いてきます。そういうようなことで、今後さらにこれを引き上げることができるかといいますると、なかなかそれはむずかしいかと思います。しかし、預金者優遇しなけりゃならぬということにつきましては、私も十分そういうことを考えておりますので、あれやこれやと考えてみたいと、かように考えます。(拍手)    〔国務大臣亀岡高夫君登壇拍手
  36. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 田中さんにお答えいたします。  まず、建設資材対策をどうするか。御承知のように、四十七年からたいへん高騰をしてまいりまして、公共事業関係においても事業の制約を受ける状態になったわけでございます。したがいまして、建設省といたしましては、需要増に対応する生産量をどうしても確保してほしい、それから輸出を内需に振りかえよ、これはセメントとか鉄鋼でございます、それから袋物のセメント、これの緊急輸入をする、それからあっせん相談所を開設いたしまして業界の困った方々のあっせん相談に応ずるというようなことをしてまいったわけでございます。さらにその後、石油危機に対処いたしまして、建設資材が異常な値上がりをしたことは御指摘のとおりでございます。したがいまして、政府といたしましては、四十八年度は強力なる公共工事の繰り延べを行なったことは御承知のとおりでございまするし、また、これに伴いまして、建設省の公共事業の需要時期、それから施行の地域ごとの資材の需給状況をにらみ合わせまして、そうして資材のアンバランスのないような手配を講じた次第でございます。いずれにいたしましても、今日まで公共工事の適正な施行の確保をはかるようにということで努力をしてまいってきておるわけでございます。  次に、公共工事標準約款にスライド条項を設けよという御意向でございますが、御承知のように、昭和四十七年十二月に中央建設業審議会から勧告を受けた公共工事標準請負契約約款は、その一第二十一条において、工期内に賃金または物価の変動があった場合、発注者と請負者との協議により請負代金額を変更する旨のスライド条項が定められたわけでございます。これに基づきまして公共工事にあっては請負代金の変更を行なってきておるところでございます。しかし、なお必要に応じまして、その方式等につきましても、今回の非常に急速なる値上がり等をも経験した体験を参考にいたしまして、さらに御指摘のよう検討を進めてまいる予定でございます。  次に、中小建設業界の方々がたいへん今回の異常な物価値上がりによりまして苦労いたしましたのに対しまして、政府といたしましては、昭和四十八年の五月に、昭和四十七年度からの繰り越し工事をしてきたものにつきまして昭和四十八年四月一日以降の単価に改定をするというふうにいたしましたほか、増加分の二分の一を政府が負担するということにいたしたわけでございます。さらに、昭和四十八年の九月に、七月一日から工期末までの間に使用する鋼材について実勢単価で計算をいたしました増加分を見てやろうということにいたしたわけでございます。さらに、四十八年の十二月に、主要建設資材について九月一日以降昭和四十九年の一月一日までの間に基準日を定め、その基準日以降の残工事について値上がり分を負担することといたしたことは御承知のとおりであります。さらに今年になりまして、昭和四十八年十一月以降昭和四十九年二月一日までの間に基準日を定めまして、その基準日以降の労務賃金について値上がりした分を負担することとして、十四日に官房長通達を発した次第でございます。  さらに、田中さんから住宅問題は何もないじゃないかというような御指摘を受けたわけでありますが、昭和四十六年度までは計画を上回った実施が行なわれてきておることは御承知のとおりでございます。四十七年、四十八年に至りまして御承知のような情勢で、先ほども総理からお答えがありましたが、自治体の受け入れ体制がなかなか協力をいたしてもらえないというような事情がございまして、計画どおり家が建っておらないことは、田中先生御指摘のとおりでございます。しかし、住宅金融公庫の面につきましては、実はもうすでに四十八年度分の貸し出し予定計画はこれを突破いたしましておるわけでございまして、そういう意味におきまして、住宅政策の中でなぜ四十七年から急速に、特に公営住宅が建たなくなったか、あるいは公団住宅が建ちにくくなったかと申しますと、やはり土地問題でございます。この土地を公団あるいは自治体が手に入れましても、そこに大きな住宅団地をつくろうといたしましても、そこには学校、病院等の公共施設を地方自治体が負担しなければならないというようなところから拒否反応が出てまいりまして、思うとおりの住宅建設計画が進まなかったわけでございます。これは、一にかかって宅地と、それから公共施設というものを思い切ってここでこの際政府が力を入れてつくってやることによって、これがいわゆる宅地公団の趣旨でもございまするが、この宅地公団によって積極的に宅地並びに優良市街地並びに公共施設も造成をいたしまして、そうしてこれをある条件で、地方自治体の負担をあまり強くせしめないで、軽い負担で公共自治体に譲渡するというような形で進めてまいることによりまして、四十七年度から非常に進捗のおくれております住宅建設、第二次住宅建設五カ年計画を計画どおりに進めていくことができると、こう確信をいたしておるわけでございます。  もう一つ御指摘いただいたわけでありますが、田中さんは賃貸住宅を重点にして、そうして持ち家政策は引っ込めろと、こういうような御意見のように承ったわけでありますけれども、元来、公共的住宅につきましては、政府は、第二次計画をつくります際に、持ち家四〇%、借家六〇%という借家に重点を置いた基本計画をつくりまして、この計画に基づいて住宅建設を進めてきておるわけでございまして、この点は、私どもとしても、この基本計画に従いまして今後も借家あるいは持ち家、両方に力を入れてまいりたいと、こう思っておるわけでございます。御承知のように、住宅は、国民の住宅取得の能力、それからライフサイクルに応じた需要の動向、これを十分に尊重していかなければならぬと考えるわけでありまするし、良好な住環境の形成にも配慮をして、持ち家、借家等、各種の住宅を適切に供給するということが基本であろうと思うわけでございますので、こういう観点から策定いたしました基本計画でございますので、この計画に沿って住宅政策を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。要は、先ほど申し上げましたように、住宅建設の阻害要件をできるだけこれを克服いたしまして、排除をいたしまして、五カ年計画の完遂を期してまいりたいと考えておる次第でございます。しかし、御指摘のとおり、現行の住宅供給制度そのものについてもいろいろやはり反省しなければならぬ点もございます。たとえば家賃が原価主義でございますために、これからの家賃が非常に高くなるという問題が確かに御指摘のとおりあるわけでございますので、そういう問題も含めて検討をしなければなりませんので、現在、住宅宅地審議会に対しまして今後の住宅政策の基本的体系について調査、審議をお願いしておる次第でございますので、その結論を得次第、施策を講じてまいる所存でございます。  以上で私のお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  37. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 経済協力につきましては、総理からあらましお話がございました。ただ一点補足さしていただきます。  わが国経済協力が、受益国側の民衆の利益にならずに、特定の政権のてこ入れや軍事援助の肩がわりになっていないかと、また、経済援助の実態をガラス張りにして詳細な報告書を国会に提出すべきじゃないかという御意見と承りました。わが国経済協力は、相手国の経済発展と国民全体の福祉の向上に寄与する見地からやっておるのでございまして、特定の政権のてこ入れや軍事援助の肩がわり等ではなく、相手国国民全体の福祉の向上を目的としてやっておりまして、相当の貢献をなしておるものと信じております。  また、経済協力の内容でございますが、これまで随時国会審議等を通じて明らかにいたしますとともに、また、政府の刊行物等によりましてその内容を明らかにしてまいりました。しかし、仰せのとおり、経済協力の実態国民に一そう御理解いただくために、国会に報告書を出すとか、あるいは広く国民に周知するということにつきましてくふうをせよということでございます。御指摘の国会報告も含めまして、その方法について検討さしていただきたいと思います。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  38. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 武器輸出をやってはならないという御趣旨の御発言でございました。わが国におきましては従来武器輸出三原則というのがございまして、共産圏及び国連決議で禁止されている地帯、それから国際紛争のおそれある地帯、あるいは現に行なわれている地帯、これには輸出しないことにしてあります。この武器輸出三原則を厳守してまいります。  それから海外協力宣言をやらないかという仰せでございましたが、確かに、経済協力のみならず、社会、文化全面にわたってバランスのとれた経済協力その他の協力が必要であるとは思います。そういう点について大いに検討を加えたいと思いますが、現在宣言をすることは考えておりません。(拍手)     —————————————
  39. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 和田静夫君。    〔和田静夫君登壇拍手
  40. 和田静夫

    ○和田静夫君 私は、日本社会党を代表して、総理所信に対して幾つかの質問をいたします。  私は、総理所信表明を聞いて、どうもあなたの気持ちの底には、今日の事態になった責任は、すべて自分にあるのではない、客観的情勢が悪かったのだという意識がぬぐいがたく存在するように思われてなりません。しかし、田中総理、あなたは、昨年十一月二十八日の記者会見で、私は十五年間政府・自由民主党の中枢にあり、あらゆる数字を駆使して列島改造計画をつくったと述べました。そうです。あなたはまさに十五年間政府・自由民主党の中枢にあって、したいほうだいのことをしてきた、私はそう考えます。あなたがプロモートした強行採決は一体幾つあったでありましょう。あなたが十五年間プロモートした政治が、日本をこんなにまでしてしまったという非難は、ある意味ではあなたに対する最大の賛辞であるかもしれません。そういう田中総理に、もし今日の事態に立ち至ったことについての責任を少しでも回避したいという気持ちがあるとしたら、それはあまりにめめしいことであると言わねばなりません。田中総理、男らしく今日の事態に立ち至らせた責任をとっておやめになることが、今日あなたのとる最善の道です。私は、あなたの政治家としての再出発の道をつくるためにも、そのことを心から強くおすすめします。  さて、石油問題でありますが、昨年十月二十五日の国際石油資本による日本向け原油の一〇%削減通告に端を発した、言われるところの石油危機、これに対処したわが国政府の態度というのは、資源小国であるわが国の地位にいまさら気づいたというばかりの右往左往ぶりでありました。今度のことでクウェートの某有力財界人は、日本は経済大国ではあるが政治的にはベビーだと言ったそうでありますが、これは向こうの感触を言い得て余りあることばではないかと私は考えます。政府のあのはたから見てもみっともない右往左往ぶりは、いたずらに国民を不安がらせ、日本経済にもたいへん悪い影響を与えたと思います。今度のよう事態は、長期的視野に立って見るならば、当然予測されたことで、通産省の鉱山石炭局は、すでに一九七一年の時点で「資源問題の展望」というレポートを出し、その中で、「世界の資源供給は七〇年代には楽観が許されず、特に先進工業国の資源開発意欲の高まりや、発展途上国を中心とする資源ナショナリズムの進展は、七〇年代における資源供給状況をきわめて流動化するであろう。したがって、日本もそれに即応した対策をとる必要があり、積極的な開発参加方式に中心を置く資源確保問題の解決と、限られた資源をいかに効率に使うかという資源利用問題の解決に取り組まねばならない」といっております。このレポートは、田中総理が通産大臣の時代に通産省鉱山石炭局において書かれたものでありますから、あなたの責任です。私は、との壇上におられる全閣僚の一人一人に、あなた方はこのレポートをお読みになったのかとお聞きをしたい。もしお読みになった方がいたら、手をあげてみてもらいたい。そして当時のこのレポートの責任者田中通産大臣にこそ、その責任をまず問わなければならないと思う。少なくとも通産省が一九七一年の時点でこういう報告書を出していたのに、もし居並ぶ大臣たちに官僚の報告書に目を通す勤勉さがあったならば、ああいう事態があり得るというある程度の覚悟はできていたはずであります。にもかかわらず、原油供給制限の通告を受けたとき、冷静な判断に基づく的確な行動がとれなかった。なぜでありましょうか。私は、そのことを大臣連の怠慢さのみに帰そうなどとは思いません。あまりにも日本の外交姿勢がアメリカ追随的であるがために、日本は中東情勢に盲目だったということでありましょう。  クウェート大使はこう言っています。「今回の問題について、われわれがぜひとも日本の皆さんに申し上げたいことは、パレスチナ問題については、国連決議をはじめ、幾多のことが国際機関において決議されております。にもかかわらず、それを実行しようということが大国の中にありません。われわれはこの問題に対する注意喚起したいために石油の輸出制限を行なったのです。日本は国連決議というものを正しいと思うのですが、どうなのですか。決議したものを放置しておいてよろしいのでしょうか」こう言っているのであります。  私は、石油の供給制限通告があったときに直ちにこれに反応すべきであったと思うのであります。アラブ側もそれを期待していたのではありますまいか。アブダビの王さまが言っているように、心情的には日本は当然友好国だということはアラブの指導者に共通した気持ちなのでありましょう。ただ、彼らにとって処理しにくいのは、日本はアメリカとの関係が深過ぎるという点でしょう。そこで、一ぺん日本を中立国扱いにして日本の出方を見ようじゃないか、こういうことだった。そして彼らとしては日本の反応がすぐ出ると思った。彼らは打てば響くような反応が好きなはずであります。ところが、反応がなかった。反応がなかったどころか、日本政府はアラブ諸国が一番頭にくることをしてしまった。キッシンジャーに相談を持ちかけたことであります。昨年十一月十四日午後三時三十分、大平外務大臣は、来日したキッシンジャーにこのことについて相談を持ちかけております。なぜこんな幼稚なことをしたのでしょうか。一体、アメリカにとってイスラエルとは何でありましょうか。アメリカの外交はアメリカの内政であると、アメリカ外交史の研究家は言い続けています。イスラエルがアメリカの内政について持っている重みは、言わずともアメリカにおける少数民族の票の問題なのであります。ルーズベルト大連合も、ニクソン大連合も、これに成功した結果できたものであることは世の常識であります。だからこそ、アメリカ政府はイスラエルをささえ続けるのであります。だが、現実の経済的利害は、メジャーの利権がアラブ側に大きく入るという形になっていることは言うまでもありません。それにしても、事石油についてアメリカを見た場合、伝統的に最大の圧力団体は南部のインデペンデントだと思います。この南部のインデペンデントは、常に国防上の危機を訴えて、海外からの安い油を制限し、限界供給者による価格設定を行なってまいりました。事実、共和党はこの力を無視した政治はできないでありましょう。ところが、昨年四月十八日に出されたニクソン・エネルギー教書によりますと、輸入政策に転ずることが大きな柱になっているのであります。そしてその第一項目では、いまの油の問題は、絶対量としての資源の危機ではなく、価格を低く押えたがゆえの危機なのだということで、価格引き上げの問題をうたっています。輸入政策と価格引き上げは矛盾するのに、そうなっているのであります。今回の事態が終わってみると、原油の値段の大幅な値上がりによって、OPEC加盟のペルシャ湾岸六カ国が今回の事態の上にみごとに乗っかって、その結果、アメリカにおける輸入原油と国内原油の利害調整問題はここにみごとに解決されたと思うのであります。私は、ここにアメリカ政府の深い読みがあったと思います。ニクソン・エネルギー教書の執筆者はだれであったか。エネルギー教書執筆過程をあばきました文書によれば、それは三人の人間によって書かれております。一人は大統領補佐官エリックマン、もう一人は財務長官シュルツ、そしてもう一人はキッシンジャーであります。ほかならぬキッシンジャーがこのエネルギー教書の執筆にあたって指導的役割りを果たしていたのであります。エネルギー政策のかなめの権限を内務省から引き上げ、外務省に移し、いまの三人に集中し、そしてエネルギー教書を出すという形であります。あれを書くために膨大な調査が行なわれ、間もなくそれらのものが何と十六冊の本として出版される予定だと聞き及びます。中東情勢、それにからむアメリカの思惑についての何らのリサーチもなく、ただアメリカに追随し、原油の削減通告に右往左往した日本政府との何という違いでありましょうか。  私は、今回の石油問題が多大の犠牲の上に一応の収拾がされようとしているいま、総理並びに外務大臣に、この問題を通じての最大の反省点は何であったかということをお聞きしたい。私は、この問題を通じて日本政府がまずしなければならないことは、日米関係の見通しということだと思います。友好関係は友好関係として、その中にも相互に利害関係を考え合うという対等さが、いま日本政府に最も要請されている問題ではないでしょうか。  次に物価問題でありますが、私は、この中に客観的に見て非常に困難な問題が内包されていることを認めるものであります。それだけに私が政府に言いたいことは、政府がこの問題で発言する際には客観的に根拠のあることを言ってほしいということであります。福田大蔵大臣総理はこの二−三月に物価上昇を鎮静させてみせると一時期述べ、あなたは国際水準並みにしてみせるといって大蔵大臣になられました。この二−三月鎮静説の根拠は何であったのか。あなたは、変動相場制移行以降の本格的金融引き締めの効果が出て、この二−三月にいわゆる不況局面が来て、灯油とか化学製品とか一部卸売り物価が暴落するという一部エコノミストの予測をもってみずからのものとしたもののようであります。私は、日本経済はこの人々の予測をはるかに越えるバイタリティーを持っていて、二−三月に卸売り物価が下がるという根拠は一つもないと考えており、そういう地方遊説を責任をもって行なっておりました。何かまた政府は四−六月鎮静説に貌変したようでありますが、どういう根拠でそういうことを言われるのか、具体的にしかも順序立ててお示しいただきたいと思います。  つまり、私がさきに現下の物価問題には客観的に非常に困難な問題が内包されているという言い方をいたしましたのは、内外の客観的要因の存在を認めるということであります。とすれば、それがどういうふうに変わって、アメリカやヨーロッパの景気がどうなって、世界的な農産物不況がどうなって、それと福田金融財政政策がどう結びついて政策効果があらわれるのか、そこのところを何としてでもきょうはお聞かせいただきたいのであります。四−六月に物価を鎮静させてみせるという言い方と、外的要因があるので一国では解決が無理だという田中総理の言い方とは、明らかに矛盾をいたしています。そこのところの解明を大蔵大臣にお願いいたしたいと考えます。  いわゆる石油危機以後、物価問題は新しい局面を迎えました。かといって、私は、物価問題を石油問題にすりかえてはならないと思います。原油価格大幅引き上げが一般物価の上昇に及ぼす影響がそう大きなものでないことば、エコノミストによる産業連関表を使った試算があげて認めているところであります。したがって、政府便乗値上げ規制強化という言い方、この言い方はそれとして正しい。しかし、問題は、便乗値上げと言われることのその内容であります。石油危機以後の物価問題の新局面という場合、私は二つのことがあると思う。一つには、石油値上げ幅が確定していない時点でそれを見越して原価にはじき出していまから上げているという面と、もう一つには、不確定要因の多い時点で生産を控えたり販売を控えたりする面とであります。こうしたものをどういう形で規制するのか、総理でも大蔵大臣でもけっこうです、政府便乗値上げ規制の内容を具体的にお示しいただきたい。  田中総理、あなたは、現下の物価問題には外的要因があって一国では解決は無理という言い方をすることによって、いかにも責任を回避したげでありますが、なぜ今日の事態を迎えてしまったかという最大の問題は、昭和四十六年に至る十年間、世界一安定していた卸売り物価が四十七年秋ごろからウナギ登りに上昇し始めた、田中内閣発足とともに、その事態をあなたが軽く見過ぎたということであります。そして百五十億ドルをこす外貨、それに伴ういわゆる過剰流動性問題があったにもかかわらず、円切り上げをやれば不況が来るという判断から大幅な財政支出を行なった、これは私は、あなた、田中内閣の完全な失政であったと思います。私は、外因での値上がり云々を言う前に、この責任を感じていただきたい。そしてこの責任意識の上に、もし四−六月鎮静説に根拠があるというのなら、四−六月に鎮静しなかったら責任をとってやめるぐらいのことはこの際明確にすべきです。総理いかがですか。  私はいまの政府の力でインフレがおさまるとは考えていません。しかし、これだけはやっていただきたいと思うことがあります。それは、インフレに伴う社会的不公正の是正の問題であります。インフレに伴うひずみは、まず年金受給者など低所得者に対するそれとしてあらわれます。これをどうするのかお示しいただきたい。私は、年金に対し、先ほど厚生大臣の答弁があったが、この情勢に合わせてスライド制を直ちに実施すべきだ、そう考えますが、いかがですか。  次に、市町村財政の問題があります。私は、このままいけば遠からず市町村財政の疲弊が顕著になってきて、それが福祉の面でひずみを残す基礎になりかねないと考えます。そこで、総理に提案し、ぜひこれは御賛同いただきたいのですが、私は昨年の予算委員会一般質問で使途にひものつかない包括補助金を創設すべきだということを主張し、政府を代表する官房長官の賛同を得てきたところであります。この考え方をさらに推し進め、この際、零細補助金を思い切って整理して、包括補助金として市町村におろすべきではないかと考えますが、総理の御所見をはっきり伺います。  大蔵大臣にもう一点だけお尋ねをいたします。  千八百六十億円の地方交付税の貸し借りの問題でありますが、昨日の藤田議員の質問に答えて、あなたは、地方交付税が地方団体の固有の財源であることにかんがみて、国のレベルでかってに貸し借りするのは好ましくないということは認められながら、総需要抑制という国策に地方団体にも協力してもらったという趣旨のことを述べられ、ぜひ理解をしてもらいたいと述べられましたが、そういう議論をされ始めたら、あなたが佐藤内閣における大蔵大臣のときに、地方交付税は地方団体の固有の財源であるということをわざわざ答弁され、念のために念書まで入れられました、そのことの意味がなくなるのではないでしょうか。地方交付税が地方団体の固有の財源であるという意味は、地方交付税が間接課徴の地方税だということであります。とすれば、そこから国が借りようとする場合、かってにそれをやることはできない。ましてやインフレのあおりで地方財政も苦しいおりのことであります。こういうことをやる以上、それなりの手続が必要だったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。  厚生大臣に尋ねます。  私は、昨年来、あなたと自治体病院の充実という観点から幾つかの議論をいたしました。それは一つに、自治体病院というものが地域住民にとって最も日常的な健康管理を行ない、その日常性において住民自治の核になるべきだ、またなり得るというところからきた私の主張でありました。もう一つは、今日の医療問題を単に医療保険財政の問題としてとらえても解決しない。それは医療供給体制といいますか、体系といいますか、そういう問題であるということから、自治体病院なり公的病院なりの充実をバネにその整備をはかっていかなければならないという主張でありました。そうした観点から、私は、診療報酬が不適正であるところから来る自治体病院財政へのしわ寄せの問題を取り上げ、それは国の責任であると主張したのであります。私は、昨年四月六日の予算委員会第四分科会で、具体的な算式と計算例を示して、現行の診療報酬がいかに不適正かをお示しし、厚生大臣もそのことをはっきりと認められました。私がいま一番問題だと思うことは、診療報酬を適正に保つということば法律できめられた厚生大臣義務なんですね。その義務であるにもかかわらず、時の厚生大臣がそれを不適正にしたまま今日まで平然としてきたことであります。あなたが努力をされなかったとは言いません。しかし、何か医師会とのパワーの関係でそれがきまると考えている節が多分にそこに見受けられます。私は、医療行政における厚生大臣の権威の確立ということを強調しつつ、具体的に一つの問題についてこの機会にお聞きをいたしたいと思います。  厚生大臣、あなたは、昨年十二月三十一日、中医協答申を受けると直ちに記者会見をされて、その中で、「ようやく一定の期限をめどに医薬分業の推進をはかることが可能になったものと思われます。当職としてはたとえば五年ぐらいをめどとして薬局等受け入れ体制の整備を計画的に行なう」云々と述べられております。私は、あの談話を新聞で読んで、ああやっと懸案が解決されるのかという感慨を正直に抱きました。しかし、またこれも医師会との妥協の産物で、中医協答申をまとめるための単なることばにすぎないのではないかという不安も同時に伴いました。私のこの不安は単なる危惧ではなかったのであります。昨年十二月四日に開かれた日本医師会の第二十四回常任理事会で、武見会長は、「五年たって百点にできなかったら分業はだめなんだから」云々と述べているのであります。あなたはこのことを御存じですか。そしてこれはたいへんな暴言であります。医薬分業ということは、診療報酬の体系を技術と物とに分けるいわば体系改革の問題であって、点数が何点になるかということとは別次元のことであります。こんなことは私が申すまでもありません。厚生大臣がよく御存じのことでありますが、今日まで薬科大学を出た専門家の職能を生かしたことが一体あるのですか。私がここで確認したいことは、医師会がどういうつもりでいるかということは別に、政府が制度の問題として医薬分業を決意したのかどうかということであります。当然そうなければならないと思いますが、いかがでしょうか。ここの部分はあわせて総理からも明快な答弁を求めたいのであります。また、薬局等受け入れ体制の整備はほぼ三年あれば十分といわれるのでありますが、それなのになぜ五年ぐらいをめどにしたのか、お聞かせいただきたいのであります。  最後に、厚生大臣は、昨年の予算委員会で、自治体病院などの看護婦養成所運営費に直接補助をする問題等、幾つかの約束を私になさいました。この約束が破られたことについての解明を求めます。国民は、昨年十月来の医師会の無理じいの前で厚生大臣が挫折をした結果と見ています。    〔副議長退席、議長着席〕  最後に、地方事務官制の廃止問題でお尋ねをいたします。  昨年七月四日の参議院本会議で、総理は、私の質問に答えて、できるだけ早い機会に結論が得られるよう関係省庁間で十分協議していくと答弁され、この答弁を受けて七月十七日、官房長官は、日本社会党代表に対して、地方への身分移管を確認されましたが、その後の措置についてお聞かせいただきたい。総理は、その著書「日本列島改造論」の中で、中枢管理機能の純化という観点から、中央行政機関の機能の簡素化、地方自治体への権限移譲をうたっておるのでありますから、ぜひ総理はみずからの著に責任を負う、その部分についての責任を負う総理の手で懸案を解決すべきであります。決意のほどをあらためて問う次第です。  自治大臣に尋ねます。  地方事務官制の廃止について前自治大臣並びに福田前行管庁長官は非常に前向きな答弁をされており、特にさきの国会におきましては四十九年度中廃止を約束されました。この問題について自治大臣の所見をお聞かせください。  最後に、昨日の藤田議員に対する総理労働組合の名において云々という発言、今日の弁明に関連して、一言だけ申し上げておきます。あの藤田議員の質問は、大企業からばく大な政治資金をもらっているようではどうしても大企業優先の政治にならざるを得ないではないかという趣旨であったのであります。それに対する総理の答弁は、全くのすりかえであり、また、労働組合の活動についての慎重な検討を介さない感情的な発言で去り、一国の総理としてふさわしくない。そのことを一言注意を喚起する意味で申し述べ、私の一応の質問を終了いたします。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  41. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 和田静夫君にお答えを  いたします。   第一は、石油危機についての予測が不十分であり、対米外交の見直しをせよという趣旨の御発言  でございますが、資源を海外に大きく依存しておるわが国の実情にかんがみ、私は、かねてからそ  の安定的供給の確保と供給先の多元化の必要性を痛感し、これまでも資源保有諸国からの供給確保に努力を重ねてまいったのであります。欧米、ソ連、各国首脳との会談を通じまして、資源の共同開発、安定供給について積極的に話し合いを行なってまいりました。しかしながら、中東紛争を契機とする石油生産と供給の制限という事態に対応するには十分でなかったことは事実でございます。このことがわが国にのみ当てはまるものでないことは、昨秋来の石油危機が全世界に与えた衝撃と、その結果、欧米諸国において相次いで打ち出された非常事態の宣言、緊急立法の提案をはじめ、各種の石油消費規制を見ても明らかなことなのであります。  わが国は、中東紛争に対するわが国立場を一そう明確にいたしますとともに、三木副総理をはじめ特使を中東諸国に派遣し、紛争の公正かつ永続的な解決のための努力を重ねておるのであります。国際協力による石油危機解決のための国際会合にも積極的に参加してまいりたいと考えております。これら一連の努力は、すべてわが国利益を守り、世界の繁栄を指向する自主的な判断に基づくものであります。かかる努力の結果、アラブ産油国の生産削減率は緩和され、わが国を友好国として取り扱うことに決定を見ておるわけであります。わが国は、自主的判断に立つ外交努力を重ねて資源問題に取り組んでおるわけでございます。  日米関係が重要であることはいまさら申すまでもないことでございまして、日米の間の深い関係を変えたり、見直したり、変更したりする気持ちは毛頭ありません。  第二に、物価問題に対して、和田さん御指摘のとおり、世界一安定——長いこと安定をしておった卸売り物価が四十七年から急激に上がった、それはなぜか、それは田中内閣誕生のときころからだと、一点に集約をしておられます。私は、時を同じくしたことは事実でありますから、謙虚にあなたの発言をお聞きいたしておるわけでございます。しかし、物価高騰の原因は、第一は、ドル不安に端を発した国際物価値上がりに加え、ここ二、三年来の世界的な不作により農産物の価格が高騰したことが第一であります。それは、日本だけではなく、国際的に各国とも価格は上がっておる。全世界が指摘をしておる事実であります。第二は、外貨準備の急増による外為特別会計の大幅払い超に加え、国際収支の不均衡是正のため、輸出から内需への転換をはかる観点から金融緩和策がとられ、これらの結果として企業に過剰流動性が生じたことでございます。この企業の手元に過剰流動性が生じたほど金融緩和をしたことは政策的に誤りであったということを声を大にしておられるようでございますが、その当時は、国の中においては、中小企業、零細企業という特殊な状態をかかえる日本としては、輸出から内需へ転換をせしめることによって三〇%のドル切り下げに対応する体質を確立するためには、税制、金融、財政上の格段の措置をとるべしという国会の決議もあるとおりであります。ですから、あの当時の状態として日本が輸出を内需に転換をはかるために、適切なる財政、金融、税制政策をとらなければならなかったことは世論のおもむくところでございます。ただ、それに対して適切に吸い上げることができなかったという点を指摘せられるとすれば、それはそのとおりでございます。第三に、個人消費が拡大したことも一つの要因であります。これらが複合いたしまして物価高の問題が起こってまいりました。そこに第四の問題として、今次の原油の供給制限と輸入価格の上昇が物価問題の解決を一そう困難にしておる、これは事実でございます。  だから私は、四十七年、通産大臣在職中に、海外経済の波動に対応するために、対外経済調整法の提出を心から願い、国会にも訴えたわけでございますが、ときに理解を得ることができなくて提案にも至らなかったことでございます。第二は、石油問題が起きない以前に、売り惜しみ買いだめの法律を国会に提案をして、物価抑制のために一日も早い成立を願ったわけでございます。しかし、いま政府には生活安定法及び売り惜しみ買いだめ抑制に関する法律、石油二法等、政府がなさなければならない根拠法を与えられましたので、政府国民の支持と理解を得ながらこれが責任を果たすべく全力を傾けてまいらなければならぬことは、言うをまちません。そういう立場で、全力を傾けて物価に対処いたしたい、間々述べておるとおりであります。  最後に、地方事務官制度について申し上げますが、地方事務官制度につきましては、現在までのところ廃止のための成案を得ておりません。しかし、本制度は暫定的な制度でもありますので、昨年十月に関係大臣による閣僚会議を開催し、それに基づき各省間で廃止についての具体的問題点について鋭意協議を進めている段階でございます。したがいまして、この協議を通じ、できるだけ早い機会に結論を出してまいりたいと考えておるのでございます。  残余の問題については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)    〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  42. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 石油危機に伴う外交的反省についての御質疑でございました。  去年は、石油をはじめとする食糧その他重要資源が、買い手市場から売り手市場に移行した年であったと思いました。買い手市場でありました時代におきまして日本は世界で最も有利な立場にありましたけれども、売り手市場化した段階におきまして最も不利な立場に立ち至ったと思います。この傾向は、中東紛争が起こる以前からすでにその徴候は見えておったことでございまするし、中東紛争がかりに平和のうちに解決を見ましても、これはこの傾向が是正されると安易に想定することはたいへん困難であろうと思います。したがいまして、今日はまさに内政上も外交上も大きな転機であるということがまず第一の反省でございました。しかし、その転機に処する道は、外交的に申しまして、全神経を振りしぼって、そしてあらゆる機会とあらゆる手段をとらえてグローバルに対処すべきであるということでございまして、御指摘のひとりアメリカ政策だけではないと思います。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  43. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 物価問題についてでありますが、物価問題解決のかなめは、何としてもこれは総需要抑制政策、これにあると思います。そこで、政府では、財政の縮減をやる、特に公共投資を詰める、そういう政策をとったわけであります。同時に金融引き締め政策をとる。財政面では政府の物財需要というものが非常に減ってきます。それから金融引き締め政策の結果は設備投資が減る。そういう関連の物資が需要が減るわけであります。そこで、それだけ財政、金融から来る需要が減るということになりますれば、これは非常に大きな変化が出てくるだろうと、こういうふうに思うんです。そこで、こういう財政やあるいは設備投資、そういう関連資材の価格は急速に下がっていくと、私はこういうふうに見ております。現にそういう動きを示しているものも相当あります。  ただ、この動きを妨げるものがありますが、それは和田さん御指摘のように、海外要因であります。ところが、このいまの日本の物価というものは非常に異常である、物価と言ったらいいのか、あるいは相場とでも言ったらいいのか、投機的要因が非常に入っているわけであります。水ぶくれ物価である。でありまするから、海外要因は私は非常に心配はしておりまするけれども、多くの物資につきましてはその海外要因の圧迫を吸収する、そういう立場にあるというふうに思うのであります。私は、そういうふうに考えるがゆえに、数カ月後には、あるいは中には、経済物価、これは様相が変わってくる、そして鎮静化の動きというものが決定的になってくる、こういうふうに見ております。  それから第二は、地方交付税の減額問題でありますが、これはしばしば御説明申し上げましたとおり、中央、地方相携えて総需要抑制政策を進める、そういう理念に基づくものである、こういうふうに考えておりますが、私は、この地方交付税というものが地方の固有財源であると、こういうことにつきましては、前からもそう考えておりまするし、今日もそう考えております。でありまするがゆえに、今回こういう措置をとるにつきましては、自治大臣ともとくと相談をいたしまして、その快き御了承を得ましてこれを御提案する、こういうことにいたした次第でございます。(拍手)    〔国務大臣齋藤邦吉君登壇拍手
  44. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 最初の御質問は、年金スライド制を繰り上げる考えはないかというお尋ねでございます。この問題につきましては、昨年の秋、厚生年金法、国民年金法、皆さま方の御協力によって成立いたしました法律に基づきまして、四十九年度中にスライドをせしめる、こういう考えでございまして、これを繰り上げる考えは持っておりません。  二番目の問題は、自治体病院に対する助成でございます。公的病院に対しましては、日赤、済生会等に対する助成はございましたが、自治体病院に対する助成はございませんでしたので、四十九年度予算において新たに特殊診療部門の運営費の助成をはかる、こういうふうにいたした次第でございます。  なお、今回行ないました診療報酬改定にあたりましては、病診格差を適正に考慮いたし、自治体病院の運営に遺憾なきように努力をいたしたつもりでございます。  最後に、医薬分業の問題でございますが、この問題につきましては、国民医療の向上のため医薬分業を制度としてこれを実現する、こういう考え方につきましては私も同感でございます。問題は、いかにしてこれを円滑に実施していくかということにあると思うのでございます。で、この医薬分業を実際問題として円滑に実現に移してまいりますためには、国民が医薬分業の趣旨を十分理解していただく、これがまず第一でございましょうし、それから薬剤師を中心とした薬局側が計画的にその整備をはかる、これがやはり第二に大事なことであります。それから第三には、現在調剤等をいたしておりますところの医師側の立場においても協力するという態度が出てこないと、円滑に進めるということにはまいらぬと思うのであります。すなわち、医師側の診療報酬においてその技術料が適正に評価されるというふうな診療報酬、それが確立される、この三つの問題がやはり大事な問題であると思います。しかし、私といたしましては、制度的にこれを確立する、これが絶対に大事なことでございますので、今後は計画的に薬局の整備をはかりまして医薬分業に進んでまいりたいと思います。五年をめどと申しましたが、これを私どもは事務的に考えてみますと、一年二年でなかなか薬局の整備はできません、実際問題といたしまして。そこで一応のめどを五年と、こういうふうにいたしたわけでございまして、制度的に進めるということについては全く私も同感でございます。(拍手)    〔国務大臣町村金五君登壇拍手
  45. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 地方交付税の減額の問題につきましては、ただいま大蔵大臣から御答弁があったとおりに私どもも考えておる次第でございます。  次に、各省から地方団体に支出されておりまする零細補助金をまとめて包括補助金にしてはどうかという御所見でございます。これまで零細補助金につきましては整理を行なったところでございますが、なお相当に残っておるかと考えるのでございます。で、これをまとめて包括補助金にするということについては、確かに適切な御所見と考えますけれども、御承知のように、補助金というものはそれぞれ目的を異にしておりまするので、直ちにこれを包括するということにはかなりの難点がございますが、今後ひとつ検討をいたしてみたいと考えます。  次に、地方事務官制度につきましては、私はこのような暫定的な制度をいつまでも存続しておくということは決して好ましいことだというふうには考えておりませんので、前大臣の方針を引き継ぎまして、できるだけ早い時期に本制度を廃止するように努力をいたしたいと考えております。(拍手
  46. 河野謙三

    議長河野謙三君) 和田静夫君。    〔和田静夫君登壇拍手
  47. 和田静夫

    ○和田静夫君 答弁漏れがありますから、まず指摘をいたしますけれども、一つは、私は、便乗値上げに対する規制を強化するのはいい、問題は、その何をもって便乗値上げとするのか、その内容を示せと言ったんです。ところが、政府はそれを示すことができない。示すことができないんだろうと思う。したがって、意識的に答弁を総理大蔵大臣もされない。そこで私は、具体的に一つのことをお尋ねをいたします、それでは。  この一月二十一日に日本LPガス協会が発表した統計は、LPガスはあのパニック状態が起きた昨年暮れでもたいした不足状態ではなかったことを示しております。あのパニックのさなかに個人タクシー業者の中に自殺者さえ出している。にもかかわらず、事実はLPガスは何ら不足しておらずに、あれは日本LPガス協会と大手タクシー会社が結託してつくったつくられた危機だった。そして残ったのは、LPガスの値上がりとタクシー料金の値上がりであります。私は、いま国会にぜひ日本LPガス協会の深尾会長はじめタクシー業界関係者を喚問して真相を究明すべきだ、こう考えていますが、こういうことこそが具体的な便乗値上げだ、私はそう思うのですが、そういう便乗値上げの具体的な内容について答弁をしてもらいたい。  もう一つは、総理にお聞きをした一番中心問題は、いわゆる責任意識を感じてもらって、その責任意識の上に、もし四月から六月の鎮静説に根拠があると言われるのなら、四月から六月に鎮静しなかったら責任をとってやめるべきだと私は言ったんです。そのことについてこの際総理から明確にしてもらいたい。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  48. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 和田さんにお答えいたしますが、まず政治責任の問題ですが、やめなさいと、やめることによって責任が果たせるとあなたはお考えになっておるようですが、それもまた一つの責任のとり方でございますが、政府が間々申し上げておるように、正面から現実と取り組んで、これが抑制のために全力をあげ、国民の負託にこたえるということも責任を果たすゆえんでございます。私は、常に、議会制民主主義のもとで議院内閣制のもとで責任を果たすゆえんたるものは、その責めを負って職を投げ出すというような旧憲法時代の考え方よりも、とにかく正面からどんな困難な問題でも国民に事実を訴え、支持と理解を求めながら、全精力を傾ける、これが政治責任である、こう考えております。(拍手)  便乗値上げというものは、これは確かに私も常に申しておるのでございますが、実際石油抑制をされるというのが十二月から、一月から、実際あらわれるのは二月からでございます。ですから、去年の状態から見れば国際価格は上がっております。上がっておりますが、数量的には石油というものはおおむね十一月までは順調に入ってきたわけでございますし、その石油によって石油化学製品の原料もつくられ、輸出も行なわれ、電力もちゃんと発生してまいったわけでございます。ですから、流通経路にも品物はあるはずでございます。ただ、石油というものが削減される、国際価格が上がるということで、石油価格が上がっておらなかったときに生産をされ在庫をしたものまでみんな新しく値札がつけかえられておるようなものは、これは便乗値上げのたぐいであるということで、かかるものを正常なものにするためには、やはり国民買いだめ売り惜しみというような反社会的行動をとにかく取り締まるということは政府責任でございます。しかし、取り締まる前に、やはり国民の協力を得なければならないということで協力を訴えておるわけでございます。国民生活安定法も石油二法もあるわけでありますから、いまできて、いますぐというよりも、こういうものに対しては、現在、基準価格をどうする、品物をどう指定するかということをいまやっておるのでございます。だから、売り惜しみ買いだめの法律も二日か三日で通してくださいと私はこの席上からほんとうにお願いをしたわけでございます。ですから、国会にも審議期間があるように、政府も慎重な——法律的目的を達成するためには、いますぐという感情論には、それはちょっと押えていただかなければだめなんです。政府は全精力をあげて実態に即応するように法律効果を求めて責任を果たしますと、こう言っているんですから、ひとつ、御声援をお願いします。(拍手)     —————————————
  49. 河野謙三

    議長河野謙三君) 山田勇君。    〔山田勇君登壇拍手
  50. 山田勇

    ○山田勇君 第二院クラブを代表して、総理大蔵大臣並びに厚生大臣に若干の質問をいたします。与えられました時間がわずかでありますので、質問の意が尽くされない点があるかもわかりませんが、十分に御賢察の上、明快な御答弁を期待するものであります。  最近の新聞報道などを見るまでもなく、私たちの周辺では、異常な物価高、物不足でいらいらが高じ、暴動でも起こしかねない不穏な心情を抱く者がふえております。下町の小売り店洗剤売り惜しみをしたと近所の主婦たちが集まり、店主と口論となり、騒ぎが大きくなってパトカーが出動したという話を聞きましたが、人情味の豊かな下町で、長年の近所まわりのお客と店の主人が、たかだか洗剤一つの問題でののしり合っているのです。物不足物価高は石油危機が火つけ役となって燃えさかっておりますが、それにつれて人心の荒廃、相互不信も相当に進んでいるのではないでしょうか。  池田内閣以来の高度成長経済は、佐藤内閣時代を経て、田中総理列島改造論をひっさげてはなばなしく登場したころからさらに成長度を高め、改造計画を先取りする大手商社、大企業の日本列島買い占めを思わせるよう土地の買いあさりは、諸悪の根源とも言える地価の暴騰を見るに至り、四十八年度大型予算と相まった過剰流動性は商品投機買い占めをあおり立て、昨年末の石油危機国民生活不安は頂点に達しました。過去の成長政策は海外ではエコノミックアニマルとして嫌悪され、特に東南アジアでは総理も実際に見聞されたように、日本企業の相手国民立場を無視したあくどい商行為が激しい反発を買っております。あまりにも金もうけ第一主義の経済政策が、何でも金で片をつけようとする、また、じょうずに金をもうける人間が偉い人物だといった風潮を日本人の心に植えつけてしまったのではないでしょうか。  教育問題にしても、幼稚園のころから競争意識を持たせ、一流高校、一流大学に進学する、その目的が大企業のエリート社員ということでは、ますます人間性も隣人愛も失われ、ヒューマニズムもばかげたものと考えるような人間がふえてまいります。そこには弱い者を助けるとか、お互いに助け合うといった気持ちも薄れてくるのも必然であります。  高度成長経済は物質本位の見せかけだけの繁栄をもたらしましたが、公害、環境破壊とともに、人間として最も大切な心を失わせたのではないでしょうか。もともと資源のほとんどないと言ってよい日本が、たまたま海外から安い資源をふんだんに輸入することによって一時的に繁栄を享受することができたとしても、それはいつかは破綻を招くことは、一部の識者がつとに指摘するところでありました。四十九年度予算が緊縮、総需要抑制型となり、また、省資源、省エネルギーの経済政策の方向に転換したことは当然のこととしても、ここで高度成長に十分なメスを入れ、再び石油事情がよくなったからといってあと戻りをすることのないよう、安定成長を推進し、物心ともに豊かな日本の国づくりを指向しなければならないと考えるのであります。総理は、国総法は子々孫々に至るまでの日本のことを考えた上でのことと答弁をなされておりましたが、日本列島改造論が超物価高、インフレの引き金になったことは周知の事実であり、その基本とも言える国総法の撤回は当然のことと思うのでありますが、総理の率直な御所見をお伺いいたします。  続いて、質問の第二点は、すでに各党代表が糾問している問題でありますが、政治資金規制強化と、議員定数の不均衡是正についてであります。  自治省から昨年末にも発表されましたが、政治資金の量は、年々、インフレと並行してぼく大な額に達しています。また、政府与党自民党に集まる金は、規正法の立法の精神に反して、出所不明の金が多く、なお、財界との癒着度も一向に減少することなく、国民の疑惑をますます深め、政治不信をつのらせる大きな要因になったのであります。  また、議員定数の不均衡は、去る四十八年十月二十日の有権者一覧表に見られるがごとく、ますます拡大しており、国民の意思を公平に国会に反映させる意味からもすみやかに是正しなければならない問題でありますが、全国的な不均衡是正が困難な場合は、第六次選挙制度審議会の答申を尊重する線ですみやかに決断と実行を要求するものであります。  もう一度総理にお尋ねをいたしますが、総理、ここに私が読んでおります原稿用紙、これが一枚幾らするとお思いですか。ちょっとまあおわかりにならないとは思いますが、これは一枚八円いたします。つい昨年の末まで二円十五銭であった原稿用紙一枚が、八円にも値が上がっているわけです。まあ、原稿用紙が高いということは、私の質問時間の短いのにはまあ感謝しなければなりませんが、そういうことはさておきまして、学童たちの学用品の異常な値上がりなども、実感としてよくわかるのであります。  通産省は、一月の十七日、約百五十業種について、原油価格の上昇が製品、サービスのコストにどの程度影響しているか、試算して明らかにしておりますが、一月から原油価格が二倍になったことを理由にして、目に余る便乗値上げ実態が数多く目につくのであります。紙については、そのはね返りはわずか五・六%だけとなっております。他の業種にしましても、まあ電力の一七・八%は別格といたしましても、ほとんどのものが一〇%から五%以下の試算結果になっております。このことからも、不当な値上げで過大な利益上げ企業からびしびしと不当利得を吸い上げる方法を積極的に講ずべきであります。まあ租税上の難点もいろいろとありましょうが、まさに正直者ばかをみないためにも、また、経済統制というようなことにならないようにするためにも、総理の英断を望むものであります。  続いて、大蔵大臣にお尋ねをいたします。  物価の安定には、総需要抑制が肝要であり、財政金融政策の運営もこの一点にしぼるということでありますが、さて、ここで預金の金利について少し御意見を伺いたいのであります。政府は、ことしの消費者物価の上昇率を九・六%と見込んでおりますが、この数字は、昨年の実績と見比べてもあまりにも低く、ことしの物価の動向を考えるとき何人もこの数字でおさまるとは考えていないと思うのでありますが、それはさておきましても、勤労者が営々と働いて得た金の中から、不慮の出費、老後の安定などを考え、銀行等に定期で預けようとした際、いまの金利はあまりにも安過ぎて預金意欲を失わせます。宝くじ形式の定期預金の構想もあるようですが、やはり勤労者の預金などに対しては、せめて一〇%以上の金利をつけるという思い切った優遇措置で、預金が目減りをすることを極力避けられるようにすべきではないかと考えますが、前向きの御答弁をお願いいたします。さらにもう一点は、これもすでに問い尽くされた問題で、大臣からは再考の余地のないような答弁を聞かされておりますが、地方交付税交付金の問題であります。自治体住民の要求は年々多様化し、生活に関連をした切実な問題が多く、その要求にこたえる財源に各自治体とも苦しんでいるのが現状であります。民主主義の根幹とも言える地方自治の確立、また、その本旨を考えるとき、むしろ緊縮財政であるからこそ、福祉行政と同様、削減どころかふやすことのほうが理に合っていると考えるのですが、この私の発想は間違っておるのでしょうか、大臣の御所見を求めるものであります。  これはある新聞の投書欄で見かけた記事でありますが、その投書をした家庭主婦スーパー洗剤を買いに行ったとき、一人の白いつえを持った主婦が陳列だなを手さぐりをしていましたが、それを見かけた店員から、洗剤ならもう売り切れですよとつめたく言われ、それじゃまたあす来ますと、その盲目の主婦はしょんぼりとして立ち去りました。しかし、そこに張り出されていたビラには「当分入荷の見込みなし」と書いてありました。投書した主婦は、盲目の主婦家庭で山と積まれた洗たくものを前にしてとほうにくれている姿が目に浮んだが、家にある一個の洗剤を分けてあげる勇気がなかったと結んでいましたが、悲しいやり切れない一つの情景ではありませんか。  また、先日、一人の老人がガリ版刷りの読みにくい陳情書を持って私の部屋に参りました。
  51. 河野謙三

    議長河野謙三君) 山田君、時間が経過をいたしました。
  52. 山田勇

    ○山田勇君(続) はい。老齢福祉年金の三倍アップの要求でございました。三倍でも食べていけないという政治の谷間に苦しむ人間の悲しみが満ち満ちております。年金受給者、生活保護家庭、母子家庭、身障者、難病者、恵まれない生活困窮者はたくさんおります。  昨年末に発表になった厚生白書では、社会保障、社会福祉の形はできたが、実質が伴っていない、内容の充実には人手と金をさらにつぎ込み、行政国民の要望の変化に柔軟に対応できる体制をとる必要があると述べております。いたずらに福祉費の上げ幅のパーセントを自画自賛することなく、高物価の情勢などを十分に把握し、血の通った福祉行政推進しなければならないと考えますが、大臣の御所見を賜わりたいと思います。  終わりに、一言つけ加えさしていただきますが、田中総理が佐藤内閣のあとを受けて登場したとき、庶民宰相とか今太閤とか、少なくとも親しみのある声がちまたで聞かれ、国民の期待も寄せられたことは事実であろうと思います。しかしながら、最近では、変わりばえのしない保守政権にあいそをつかしたちまたの国民の声は、ああ佐藤が角砂糖に変わっただけかと失望に変わり、物価高に怒りの声も大きくなっております。総理は、過去の行きがかりにこだわることなく、反省すべきは率直に反省し、改めるべきは謙虚に改め、思い切った発想の転換、すなわち頭の切りかえをすると明言しておられますが、現状の物価高を鎮静させることができなければ、頭の切りかえだけではなく、頭のすげかえも真剣に考え、責任を明らかにしていただきたいと思います。企業卸商が行なっている便乗値上げ買い占めは、自由経済体制以前の問題であります。企業などがその社会的責任を忘れ、エゴまる出しのいやらしい態度に国民ははらわたの煮えくり返る怒りを持っておりますが、いつまでもじっとがまんの子でおられるでしょうか。自衛のささやかな買いだめを取り上げてとやかく問題視するよりも、つくられた物不足、高物価の根源にメスを入れ、社会正義を確立しなければ、日本人同士の相互不信が思わぬ不穏な情勢を現出しないとだれが断言できるでしょうか。
  53. 河野謙三

    議長河野謙三君) 山田君、山田君、時間がだいぶ経過しました。
  54. 山田勇

    ○山田勇君(続) いまこそ政府国民のサイドに立った政治に真剣に取り組み、政治不信を一挙に回復する絶好のチャンスであることを訴えて、代表質問を終わります。  時間の延びたこと、たいへん深くおわびをいたします。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  55. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 山田勇君にお答えをいたします。  現在、物価問題が最大の急務であるということは事実でございます。時期的に見て列島改造論も影響しておるものだから、これを引っ込めたほうがいいんじゃないかと、国総法もそのとおりだと、どうもそういうお考えのようでございますが、私は、やはり政治の衝に立つ者は、現時点はすなおにこれを把握し、これに対応する施策を進めなければならない。しかし、長期的な展望に立って、その中に現時点をどう位置せしむるかということでなければならぬと思うんです。ですから、ずっときのうからきょうここで質問を受けているのは、長期的ビジョンがなかった、いままでのことの予測が足らなかった、事前の配慮が足らなかった、こういうような御指摘が十分あるわけでございますから、そういう意味で、現実は現実として、これに対する処方せんをちゃんと着実に実行しなければなりませんが、政治はきょうだけで終わるのではないわけでございます。われわれの肉体はわずかのまばたくがごとき短い間かもしれませんが、子供や孫にわが生命は悠久に伝承されるのであります。ですから、やはり、十年後にどうあるべきだ、二十年後にどうあるべきだ。いま、田中一さんは、これからの水はどうするんだという質問をここで堂々とおやりになったじゃありませんか。現実的に世界で一番恵まれておるという日本においても、すでに五年後、十年後の水と言わず、東京、大阪、中部圏においては、これ以上、上水道を確保したり水洗を拡大すれば、水が供給できないという事態が存在しておるではありませんか。ですから、私は、率直に申し上げまして、一億一千万人の日本人、水とか電力、土地とか住宅、公害とか交通難の解消、緑と美しい空、きれいな空気、これをもとにした生活環境の整備と、別々にいうと、みんな何か政策をすればできるような感じを受けますが、そうではなく、日本の人口は年率一・三%ずつ自然増加をしておるのであります。ですから、いますでに一億一千万人ございます。昭和六十年には一億二千五百万人をこすわけであります。しかも、体制のいかんを問わず、社会主義国でも民主主義国でもとにかく大都会に人が寄ってくるので、これを強制疎開するためにはどうしなければならぬか。これはモスコーにおいては一切モスコー入りを禁止しておりますし、上海においては年間四十五万人ずつ強制疎開を行なっておるのであります。ジャカルタで問題が起こったのも、五百万人という人がジャカルタというあそこに集まっておるところに問題があるのだということは、全世界的な傾向じゃありませんか。そういうときに、わずか十年後の日本の状態を考えるときに、国土の総合開発、総合利用ということをしないで済むんだ、それを取り下げるべきだという御説には、遺憾ながら賛成できないのでございます。  それから物価の問題でございますが、政府は、社会的公正を確保し、経済社会の混乱を未然に防止するため、国民生活安定法などあらゆる政策、手段を活用して物価の安定のために全力を傾注しておる次第でございます。  また、企業に対しましては便乗値上げ投機的行為に出ないよう強く自制を要請いたしますとともに、かりにこれらの不当な行為等によって過大な利益を得たものに対しましては、法の厳正な運用をもって対処してまいりたいと考えておるのでございます。  政治資金規制と定数改正についての御発言があったようでございますが、政府は、過去二十余年の長きにわたる在野有識者の調査研究、検討の結果として第七次答申をいただいており、かねてから選挙制度全般、定数改定、政治資金の規制などについて国会の議題とすべき希望を有しているわけでございます。参議院地方区の定数改正もこの一環の問題でございますが、これは、参議院の構成に関する問題であると同時に、二院制度のもとでは、両院議員の選挙制度は相互に関連して考えられなければならないということで今日に至っておるわけでございます。  私は、いろいろ述べておりますことも、二十余年間にわたって七回答申された答申をずっと読みながら、その年度その年度に国会に提出した政治資金規正法の内容も承知しております。私自身が先ほど述べました労働組合の問題も、第五次答申にはちゃんとここに出ているわけです。しかも、これは、国会の議題といたします、答申を尊重いたします——尊重するのかということに対して、尊重いたしますという立場にあるわけでございますが、それはもう四半世紀も積み重ねられて今日に来ておるわけでありますので、やっぱりこの定数だけを参議院であるからといって切り離して今次やりなさいといっても、これをすぐ取り上げるわけにはなかなかむずかしい問題があるということに対しては御理解を賜わりたいと思います。  残余の問題に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  56. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まず、預金金利を引き上げたらどうかという御所見でございますが、このことにつきましては、私も常々考えておるところでございます。すでにかなり引き上げが続きまして、高い水準に来ておるわけであります。ただ、これを今日の水準よりさらに進めますと、貸し出しの金利を上げなければならぬと、こういう問題になってくるわけであります。そう相なりますと、企業活動、特に中小企業なんかに対しまして影響いかんというようなこともありまして、今日の金利水準全体が上がるというようなことがありませんと、これ以上一部預貯金金利を引き上げるということは困難かと、かように考えております。まあしかし、私は、こういう物価情勢の中で、その物価情勢から見ると、低率な金利で貯蓄をしてくださる、そういう国民の階層に対しましては深く感謝をいたします。そういう気持ちでございまするが、その気持ちをあらわす意味はどういうふうにしなければならぬかということを考えてみますと、これはやっぱり物価を早く安定させることだと、これが一番今日の貯蓄をする国民に対するお報いする道である、かように考えて、その道をとにかくばく進してみたいと、かように考えております。  次に、地方自治体の問題でございますが、地方交付税、今回その交付額を差し引いた、それに対しての御所見でございますが、これは中央と地方とは何といっても車の両輪のようなものなんです。特に地方財政は、これは国の財政の規模とほぼ同じでございます。非常に物量を使うわけであります。そういうことで、国が総需要抑制をやるという際に、地方財政のほうが抜けてしまうということになりますと、これは十分な効果を発しないわけでありまして、国が財政面において、また、金融面において総需要抑制をするという際には、地方団体におきましても御協力を願わなければならぬ、そういうようなたてまえで、地方財政の状況も考えながら、千六百八十億円法定額よりも差し引いた額を交付するということにいたしたわけでありまして、これは異例なことだと思います。私はかつて大蔵大臣をした際に同様の措置をとりまして、国会からもいろいろの御意見があった。その節、私は、これは臨時的な措置である、将来はこういうことは慎しみたいということを申し上げた。そういう経緯もあるわけでありますから、いまこそ私は、非常な事態である。どうしても総需要抑制し、物価をおさめなきゃならぬ。これが政治最大の課題である。そういう際でありますので、まあ異例なことではありまするけれども、地方自治団体においてもぜひとも御協力願いたいと、かように考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣齋藤邦吉君登壇拍手
  57. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 来年度の福祉充実は、経済的に弱い人々の生活、すなわち老人とか身体障害者、あるいは母子、生活扶助世帯、こういう人々の生活を守るということに主眼を置いたものでございます。  たとえば、年金につきましてはスライド制の実施、あるいは年金等につきましては福祉年金の五〇%引き上げ、あるいは生活扶助基準の二〇%の引き上げ、あるいは老人につきましては寝たきり老人のためにホームヘルパーを増員するとか、こういうふうな措置を講じたのでございまして、いずれもこれらの措置は最近の物価の動向に対処して血の通ったきめのこまかい施策を講じたものであるということを御理解いただきたいと思うのであります。(拍手)     —————————————
  58. 河野謙三

    議長河野謙三君) 先ほどの和田静夫君の質疑に対して、通商産業大臣から答弁があります。中曽根通商産業大臣。    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  59. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) LPGに関する質問の御答弁漏れに対しましてお答え申し上げます。  わが国のLPGは、半分は輸入であり、半分は石油精製の過程で出てくるものでございますが、十二月の実績を通産省で調べてみますと、需要が九十七万トン、これは昨年の同期に比べて〇・五%アップ、に対して、供給は七十七万二千トン、これは前年同月に比べて〇、五二%減でございます。そこで、タクシー等の問題が起きましたが、いろいろ調整を加えまして、個人タクシーは二十五リッター、法人タクシーは五十リッターというような調整を加えまして、そして需給を調整した結果、ややおさまりまして、一月になりましたら輸入のスポットものが多少ふえ、それから石油が入ってくる量がふえまして、精製過程においても多少増産できたようでございまして、鎮静してきたのであります。過日の新聞で、LPGガス協会長が、余っておるとか、需給は大体よさそうだとかという表現がございましたが、これは調べてみましたら、節減が現在のまま継続するならば、五十万トン程度の在庫をかかえて適正需給ができると、バランスがとれると、そういう意味発言であったようでございまして、ジャブジャブ余っているという意味ではございません。しかし、実際どの程度入ってきたかということはあくまで何回も精査すべきものでございまして、この輸入及び使用量につきましては、さらに厳格に精査、トレースをいたしまして、かりにも便乗値上げの様相がございましたら、適切な処置をする考え方でおります。(拍手
  60. 河野謙三

    議長河野謙三君) これにて質疑は終了いたしました。      ——————————
  61. 河野謙三

    議長河野謙三君) 日程第二 参議院予備金支出の件を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。議院運営委員長植木光教君。     —————————————    〔植木光教君登壇拍手
  62. 植木光教

    ○植木光教君 ただいま議題となりました参議院予備金支出の件について御報告申し上げます。  今回御報告いたしますのは、昭和四十七年十二月二十二日から昭和四十八年十一月三十日までの間に支出されたものでありまして、支出額は昭和四十七年度分二百二十七万九千円であります。  これは、在職中に死亡されました議員の御遣族に対しまして弔慰金として支給されたものであります。  この支出につきましては一あらかじめ議院運営委員会の承認を経ておりますが、ここに国会予備金に関する法律第三条の規定により本院の承諾をお願いする次第であります。(拍手
  63. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより採決をいたします。  本件は、委員長報告のとおり承諾することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、本件は承諾することに決しました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十六分散会      ——————————   出席者は左のとおり。        議     長  河野 謙三君        副  議  長  森 八三一君     議 員       塩出 啓典君    喜屋武眞榮君       野末 和彦君    山田  勇君       内田 善利君    栗林 卓司君       藤井 恒男君    青島 幸男君       峯山 昭範君    沢田  実君       木島 則夫君    上林繁次郎君       矢追 秀彦君    阿部 憲一君       萩原幽香子君    黒柳  明君       田代富士男君    柏原 ヤス君       原田  立君    田渕 哲也君       中沢伊登子君    中尾 辰義君       渋谷 邦彦君    鈴木 一弘君       宮崎 正義君    中村 利次君       高山 恒雄君    山田 徹一君       二宮 文造君    多田 省吾君       白木義一郎君    小平 芳平君       向井 長年君    村尾 重雄君       小山邦太郎君    斎藤 十朗君       寺下 岩蔵君    中村 登美君       松岡 克由君    細川 護煕君       橋本 繁蔵君    中村 禎二君       棚辺 四郎君    柴立 芳文君       高橋 邦雄君    嶋崎  均君       桧垣徳太郎君    橘  直治君       岡本  悟君    玉置 和郎君       高橋雄之助君    山内 一郎君       温水 三郎君    濱田 幸雄君       植木 光教君    植竹 春彦君       木内 四郎君    古池 信三君       杉原 荒太君    松平 勇雄君       塚田十一郎君    高橋文五郎君       楠  正俊君    柳田桃太郎君       山本茂一郎君    石本  茂君       志村 愛子君    古賀雷四郎君       黒住 忠行君    河本嘉久蔵君       金井 元彦君    川野辺 静君       今泉 正二君    山崎 竜男君       世耕 政隆君    佐藤  隆君       竹内 藤男君    原 文兵衛君       長田 裕二君    菅野 儀作君       佐田 一郎君    藤田 正明君       木村 睦男君    西村 尚治君       岩動 道行君    土屋 義彦君       内藤誉三郎君    平泉  渉君       鍋島 直紹君    増原 恵吉君       米田 正文君    小笠 公韶君       大竹平八郎君    郡  祐一君       安井  謙君    堀本 宜実君       塩見 俊二君    剱木 亨弘君       吉武 恵市君    前田佳都男君       長屋  茂君    若林 正武君       田  英夫君    梶木 又三君       上田  哲君    工藤 良平君       稲嶺 一郎君    佐藤 一郎君      茜ヶ久保重光君    杉山善太郎君       野々山一三君    田中寿美子君       宮崎 正雄君    久保田藤麿君       寺本 広作君    戸叶  武君       森中 守義君    鶴園 哲夫君       伊藤 五郎君    平島 敏夫君       中村 英男君    森  勝治君       徳永 正利君    田口長治郎君       八木 一郎君    羽生 三七君       中村 波男君    松永 忠二君       片岡 勝治君    辻  一彦君       須原 昭二君    沓脱タケ子君       小谷  守君    神沢  浄君       鈴木美枝子君    宮之原貞光君       加藤  進君    和田 静夫君       小笠原貞子君    大橋 和孝君       川村 清一君    鈴木  力君       小野  明君    山崎  昇君       塚田 大願君    星野  力君       林  虎雄君    松本 賢一君       小林  武君    瀬谷 英行君       渡辺  武君    須藤 五郎君       竹田 現照君    占部 秀男君       鈴木  強君    横川 正市君       大矢  正君    小柳  勇君       河田 賢治君    岩間 正男君       藤田  進君    沢田 政治君       村田 秀三君    田中  一君       足鹿  覺君    加瀬  完君       野坂 参三君    春日 正一君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  中村 梅吉君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  徳永 正利君        郵 政 大 臣  原田  憲君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (近畿圏整備長        官)        (中部圏開発整        備長官)        (首都圏整備委        員会委員長)   亀岡 高夫君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      町村 金五君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       二階堂 進君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       小坂徳三郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       保利  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山中 貞則君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       内田 常雄君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       森山 欽司君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君