○上林繁次郎君 私は、
公明党を代表して、ただいま
議題となりました
政府提出の
国民生活安定緊急措置法案に対して、
反対の
討論を行ないます。
いまや、
石油危機の直撃を受けて、
国民生活は、戦後の混乱期でさえ経験しなかった最悪の
事態を迎えております。私は、いま、おそらく来春には
わが国経済がかつて見なかったような重大な局面を迎えるであろうという不気味な前兆を感ぜざるを得ません。田中
内閣誕生以来、すべての
物価は一斉に急
上昇を続けており、すでに十一月の
卸売り物価は、対前月比三・二%、対前
年度比で二二・三%も値上がりし、さらに、十二月上旬の十日間で三・五%という異常な暴騰を示しており、今後も大幅
値上げが予想されております。
政府がこの危機的状況を放置するならば、数カ月後には
消費者物価はさらに急
上昇することは必定であります。
この
異常事態に対して
政府の
対策は、総
需要の
抑制並びに
石油二法による
石油規制と
生活関連物資の
価格規制の二つであります。総
需要の
抑制政策といっても、金融
対策のみに偏重しており、各方面から、これではたして
物価抑制の効力を発揮することができるかどうか、疑問視されているのであります。また、たとえ本
法案が成立したとしても、本
法案の
実施に当たる
政府の基本姿勢について
国民は疑惑の眼を向けており、本来あるべき方向とはかけ離れたものとなる危険が十分に予想されるのであります。なぜならば、買占め防止法が成立してすでに半年、
政府はこの
法律に基づいて二十一品目を
指定したきりで、その後何ら手を打っているようには思えないことからも明らかであります。
国民は買占め防止法によって生活必需
物資を安い値段で取得できるものと期待しておりましたが、現状は全く逆であって、
物価はますます
高騰の一途をたどっております。この点私は、
政府に深く反省を求めるものであります。
政府提出の
国民生活安定
法案の
内容は、
国民各層から批判があるように、
国民が期待するものにはほど遠く、高値安定、カルテルの合法化、
国民経済統制という弊害を生ずる懸念がまことに強いのであります。これでは、
国民は、高くつり上がった
物資をやむを得ず求めなければならないという苦しい日々を送らざるを得ないのであります。
これに対して、わが党は、あくまでも
国民生活の安定と
消費者擁護の立場から大幅な
修正を強く主張してきたのでありますが、
政府自民党は、これらを全く顧みようとせず、頑迷に
政府案に固執するのみでありました。
法律をつくることによってかえって現状の
物価高を是認しようとする
政府の姿勢こそ、まさに
国民を欺くものであり、このままでは断じて認めることができないのであります。
われわれが
政府原案並びにその
修正案に応ずることができないとする第一の理由は、この
法案によるならば、安定した
物価を望めないどころか、むしろ
物価高騰に拍車がかかると思われることであります。すなわち、
国民がおそれていることは、
政府原案及びその
修正案には
標準価格の
算定基準が明記されていないのであります。たとえば鉄鋼においては、新日鉄とその他の大手鉄鋼会社の
生産コストでは一五%の差があります。まして、これらの大手
企業と
中小企業とでは、
生産コストの差は数十%に達しているのであります。こうした現状のもとで、かりに
標準価格をきめたとしても、低
生産性の
生産コストに照準を合わせるならば、大
企業製品
価格をこれに準じてつり上げることになり、高値安定になることは明らかであります。しかも、
標準価格をどのようにして守らせるのか、この点についても何ら保障がなく、無
責任もはなはだしいと言わざるを得ないのであります。この問題に対しては、
価格決定の根拠を公開するとか、あるいは
価格決定に伴う何らかの検査をしなければ、大
企業主導型の高
価格になることは明らかであり、
政府と大
企業の癒着を一そう進行させることになるのであります。このことは、通産省が最近行なった灯油、プロパンガス等の指導
価格に見るごとく、従来安く販売されていたものが、施行当日から
標準価格にまで引き上げられたことによっても明らかなのであります。この点、アメリカなどでは、たとえば薬品などについて、その
価格が不当に高いと思われるときには、
政府は製薬
業界の代表を呼んで詰問し、値下げさせるよう強力に指導しているのでありますが、わが国では、
政府が
企業にその
原価の
公表義務を課すことすらできないというまことに弱腰なものであります。
反対の第二の理由は、
課徴金についてでありますが、
政府案においては、その性格は刑事罰でなく、行政罰の一種であるとされ、差益のみの徴収となっていることであります。すなわち、これでは、業者は不正が発見されるまでの膨大な利潤はそのまま保障されることになり、この点を
修正しない限り、この
法案は
国民生活の安定にはいささかも寄与できないことは明らかであり、
価格高騰の歯どめの効果は何ら期待できないものとなるのであります。
いまや、
物価は操作されていることは明白な事実であり、すべての
物資についてあらわれた物の
不足——
価格上昇——緊急放出——高値安定の悪質なパターンが定着し、残念ながら
企業の良心などはみじんも見ることができず、合理的に
価格をつり上げているとしか言いようがありません。かりに、
政府の言うように
価格を
決定することができたとしても、
供給が円滑に行なわれなければ、結局、
価格を安定させることができないことになるのであります。
反対の第三の理由は、
政府原案及びその
修正案は、
生産、
輸入、
保管、売り渡し、輸送等についても、
指示に反した場合には
公表程度にとどめていることであります。このような軽微な処置で、安定した
供給が
確保されるとはとうてい考えられないのであります。私は、利潤
確保のため恣意的に
指定された
物資の
供給を滞らせようとする者に対し、
公表は当然のこと、
供給を命じ、違反者には厳罰をもって臨むべきであると強く主張するものであります。
反対の第四の理由は、
政府は、
修正案において、
国民の望む民主的な
措置を意識的に排除し、独善的な
措置を盛り込もうとしていることであります。すなわち、より民主的な方法によって
法律を
運用するために、中央には
国民生活審議会を
設置し、それぞれの地域にはその実情に応じて対処し得る住民生活
審議会を
設置するよう要求したにもかかわらず、
政府・自民党は、従来と同じような御用
審議会の
設置しか認めようとしなかったのであります。われわれの主張したこれら中央と各地域の二つの
審議会制によってこそ、
価格の
設定、
生産、
保管、
輸入、売り渡し、輸送等が民主的かつ合理的に
運営されて、
国民の意思を十分に反映させることができるのであります。
以上、幾つかの問題点を取り上げ
反対理由を明らかにしましたが、当面している
異常事態は、単に
法律を制定すればこと足れりというものでは決してないと強く主張するとともに、
政府は必ず
物価を安定させるという決意に立って
責任あるきめこまかい
政策を着実に実行することを強く要望して、私の
反対討論を終わります。(
拍手)
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