○沢田
政治君 私は、
日本社会党を代表しまして、ただいま
議題となりました
石油需給適正化法案及び
国民生活安定緊急措置法案について、
総理並びに
関係各閣僚に質問いたします。ところが、きょう
総理は急に健康を悪くされて、この本
会議場に見えられないわけでありますが、事健康でありますから、まことに遺憾であり、残念でありますが、やむを得ないと思いますから、以下、私の
総理に対する質問の点については、官房長官並びに
責任のある国務
大臣の
答弁をあらかじめ求めます。
まず私は、
石油需給適正化法案から、
日本社会党の基本的見解を述べつつ
政府の
姿勢をただしたいと存じます。
まず、私は、本法案にかかる基本問題について、
総理並びに通産
大臣の所見を求めたいのであります。
本法案は、言うまでもなく、
政府に大幅な強制権を付与するものであって、
やり方いかんによっては非常に危険な
事態が発生するのであります。緊急
事態という認識をもとに強制権を行使するということは、非常
事態法の
性格を持つものであります。したがって私は、
政府が今日の
石油問題についていかなる認識を持っているかがまことに重要なポイントであると思うのであります。私は、今日の
石油問題が偶発的なものでも、避けることのできなかった問題でも、また単に外圧として受けとめるべきものでもないことを特に強調しておかなければならぬと思うのであります。
すでに、私たちは、六〇年代の
石炭政策転換の戦いの中で、また六五年代の都市問題や、そしてコンビナート問題等の中で、さらには七〇年代における公害と環境破壊の危機に際して、繰り返し
政府の
石油エネルギー
政策を批判し、
転換を迫ってきたのであります。いま
政府は、
石油の
需給を適正化する必要に迫られているのでありますが、この問題は、国外から安い原油収奪に全く依存して
日本経済の
高度成長と重化学工業化を異常なテンポで開始したときから
考えておくべき問題であったのであります。
過去十年間の
日本経済は、年々二〇%近い
石油輸入を増大させることによって、重化学工業を中心とする
民間設備投資の
拡大と超
高度成長を遂げてきたのでありますが、こうした異常な
状態を長期間にわたって続けることが無理なことも、当然理解しておかなければならなかったことであります。しかるに
政府は、こうした異常なエネルギー資源の
供給を基盤に野方図な高度
経済成長政策をとり続け、公害の激発と著しい環境破壊の進行にもかかわらず、
経済政策の根本的な
転換を怠ってきたのであります。これは
政府の怠慢であり、
失政と言わなければならないのであります。
こうした経過から見て、私は、
政府・自民党の諸君の
石油エネルギー
政策に関する認識、ひいては高度
経済成長政策についての反省など、まことに心を寒からしめるものがあります。いまこの点をはっきりと確認しておきたいのであります。
石油問題に関する的確な認識を持たない
政府に、強い権限を持つ本法案の
実施をまかせることはできないのであります。企業の無限な利潤拡張に追従する
政府・自民党に、非常
事態法ともいうべき本法をゆだねるならば、
国民生活の利益にならないという疑念を禁じ得ないことはもちろん、むしろ大企業の利益につながることが今日までの
政府の
物価に対処してきた数々の実績を見ても明らかであります。今日までの
失政を認め、非を明らかにした上で、
国民の利益のために本法案を活用するというのであれば、
政府は、いま直ちに大企業の蓄積してきた高利潤を税金として国庫に納入させ、これを社会
福祉の向上に振り向けるべきであります。すなわち、
政府は、法人税を大幅に
引き上げ、企業の広告費や交際費などに対する課税を抜本的に強化すべきであります。こうした
政府の
政治姿勢の具体的な
転換がなければ、
国民にとって
石油需給安定化法案は無縁のものであり、また、再び大企業に奉仕する
経済政策の強権を無条件で与えることになり、本法の
成立は絶対に許すことのできないことと言わなければなりません。また、
政府は、今日の
石油問題を一時過ごしとして処理するのではなく、今後の長期にわたる
石油エネルギー
政策に関連する産業構造
転換の方向と方法についても明確にしていくべきであります。そのためにも、私は、
日本社会党の公式見解として、次の五つの条件を提示して、
政府の明確な
答弁を求めるものであります。
その第一の条件は、
石油供給の優先順位を明確にし、
生活に必要な
需要に対して
政府が
供給責任を明らかにすることであります。
第二の条件としては、
石油の割り当てや配給などの権限について、政令事項としてではなく、その大綱を
国会の承認事項とすべきであります。
第三の条件は、本法の施行に関して審議会制度を導入し、その統制について民主化をはかることであります。
第四の条件は、本法の施行によって独占禁止法の適用がいささかも制限されないことを明確にすることであり、当然、経企庁、通産省と公正取引
委員会の間で取りかわされた覚え書きを排除することであります。
そして、第五の条件として、本法は時限立法として、非常
事態法にもひとしい強制
措置を含んだ本法の見直しを議会が行なうことであります。
以上が
石油需給適正化法案に関する要点質問でありますが、引き続いて私は、
国民生活安定緊急措置法案につきまして、基本的諸問題を
関係閣僚にただしたいと存じます。
最近の
物価騰貴は、
総理が
予算委員会でも言われておりますような認識は、まことに貧弱な認識にもかかわらず、ついに
政府をして本法案をどろなわ式に提出せざるを得ないところにまで暴走し悪化してきておるのが今日の
状況であります。言うまでもなく、悪性
インフレを巻き起こした主犯は、
政府・自民党にあります。日本じゅうを重化学工業化して高能率、高利潤を維持し続けようという
田中総理の
列島改造政策は、
政府の
インフレ金融
財政政策を伴って
日本経済を破局に追い詰め、名実ともに世界一の悪名をとどろかせ、悪性
インフレによる
国民生活の困難を耐えがたいものにしてきたのであります。
政府は、
物価がこのように暴騰し、
国民に深刻な打撃を与えている中で、今日、
国民生活安定緊急措置法案を提案されましたが、この法案は一体このような
物価騰貴の基本的な
原因を除去し得るものになるかどうか、きわめて疑わしいのであります。
政府は、
物価値上げの
原因となっている
日本列島改造政策をやめようとしておりません。
公共料金の値上げをやめようとはしておりません。買い占め、売り惜しみについても、みずからがつくった投機防止法すらほとんど発動せず、企業の買い占め、売り惜しみを規制しようとしておりません。独占価格は野放しであります。自民党行政によってますます複雑化された流通機構は、
物資の円滑な流通と価格の安定を大きく阻害しております。
田中総理は、参議
院予算委員会における
答弁の中で、
物価を
抑制する武器がないから、この法案を
成立させ武器とするのだと言われておりますが、一体これまで
物価を
抑制する手段がなかったのでありますか。あったと思うのであります。実に多くの
物価抑制策があったのであります。
高度成長政策をやめ、
国民生活優先の
政策を
実施すること、
インフレ金融
財政政策をやめること、国鉄運賃あるいは電力、ガス料金等の
公共料金の
引き上げを認めないこと、大企業製品の独占価格をきびしく規制すること、投機防止法によって買い占め・売り惜しみ行為を取り締まることなど、
政府が真剣に
物価抑制を行なう気があるならば実行できたことであります。
総理の言う
物価を
抑制する武器は、現実に幾つもあったのであります。このように、あなたを代表とする自民党
政府がその手段を使わないというところに
物価値上げがとまらない
原因があったのであります。
物価を
抑制する武器がないのではなく、自民党
政府にやる気がないと言わざるを得ないのであります。
さて、
物価値上げを推進することによって大企業の企業利潤を少しでも多くしようとする
政府・自民党の体質が今日の
物価騰貴を招いていることは、多くの
国民の前にすでに明白になりつつあります。われわれは声を大にしてこのような自民党
政府の
政治姿勢に対して抗議せざるを得ません。
政府提案の本法案は、名前こそ
国民生活安定法案というものでありまして、いかにも
国民生活が安定するように聞こえますが、その中身は逆に
国民生活を一そう破壊する危険性を所有しおると言わざるを得ません。
政府は、きわめてあわただしい不十分な作業の中でこの法案を提出してまいりましたが、この法案は、
物価抑制をはかるどころか、逆に企業間カルテル価格を公然と認める高値安定法案であります。また、一度きめた価格でも、次々と値上げできる仕組みになっております。価格は大企業の利潤を
確保するために常に自民党
政府によって
引き上げられ、
国民生活はますます苦しめられることになります。
そこで、
総理にお尋ねいたしますが、一体この法案が法律化されればほんとうに
物価が下がるのかどうか、
国民生活が安定するのかどうか、さらに、この法案が施行されても
物価が下がらず、
国民生活が安定しなかった場合には、
田中内閣は
責任をとって退陣するのかどうかをこの際明らかにしておきたいと思います。
また、このような
物価の暴騰を押えるためには、国鉄運賃、
消費者米価その他の値上げの中止をして、
公共投資の大幅
削減、独占価格の規制、大企業の買い占め、売り惜しみの徹底した摘発等を行なうべきであります。
次に、大蔵
大臣にお尋ねいたします。
福田さん、いま
物価の異常な
高騰の中で約七十兆円の個人の貯蓄は見る見るうちに減価しております。富と所得の不公平は著しく
拡大しております。これを借りて設備投資や
大型買い占めをしてきた大企業はもうかっておるのであります。笑いがとまらぬのであります。零細な個人貯蓄は、一秒ごとに、こう話しておるうちに損を
拡大しておるのであります。このようなときに、大蔵
大臣、個人の預金金利を大幅に
引き上げ、
物価上昇を上回る金利にして、いま買いたいものを数カ月先に延ばすというような消費
需要の
抑制策をいまあなたはとる気がないのかどうか。何といっても
物価のきめ手は総
需要を
抑制することであります。これを私はまずやるべきだと思います。
さらにはまた、今日問題なのは、
政府・自民党の
財政金融
政策であります。だれがみすみす損をする貯蓄をするでしょうか。だれが損をしてまで物を買い控えているでありましょうか。こうした
インフレ心理の温床となってきた経済の基盤を根本的に変えていかなければなりません。私は、大蔵
大臣、あなたに、本法案を
成立させる以前に、いま直ちに
政府の
財政金融
政策を大
転換すべきことを要求するものです。
経済政策の
転換を先行させずに、効力もあいまいなもろ刃の危険性を持つ本法案の
成立を急ぐ
政府・自民党の諸君に警告を発するとともに、一つの問題を提起いたしておきたいと思います。
この際、私は、
政府が
昭和四十九
年度予算編成にあたって、
生活関連部門を除いた
公共投資の全面的なストップを断行するとともに、短期貯金の金利を先ほど申し上げましたように一五%に
引き上げ、同時に公定歩合をちびちびではなく大きく
引き上げるなど、思い切った
インフレ対策の
財政金融
政策を実行すべきであると思うであります。また、
予算の既定
経費の俗にいわれる当然増についても徹底的に検討し直すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
次に、経済企画庁長官にお尋ねいたしますが、最近の
物価騰貴は、企業が商品の原価に不当な利潤を付加して価格をつり上げている傾向がありますが、この際、
生活関連
物資については原価計算に関する資料の公開を義務づけるべきだと
考えますが、長官の所見をお聞きしたいと思います。
また、各企業は企業の秘密事項であるとして価格の算出根拠を公開しようとしておりませんが、企業の秘密とは一体何をいうのか、通産
大臣の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
さらに、提案されました本法案は、価格決定を主務
大臣が行なうことになっておりますが、これまで一貫して大企業優先の
政治を行なってきた自民党の
大臣が価格決定を行なうということは、結局大企業の多額の利潤を保証する価格となり、これは大企業が多額の利潤を
確保するために協定してつくられるカルテル価格と同じものになると思いますが、この点に関する公正取引
委員長の明快な所見をお聞かせ願いたいと思います。
私は、価格の決定については、一部独占資本を代弁する者によってのみ行なわれるべきものではないと
考えています。
国民一人一人の毎日の
生活に密接に
関係する
物価については、
消費者、
労働者、中小企業、農民、あるいは学識経験者等も参加した民主的な機関によってきめられるべきだと思いますが、
総理のお
考えをお聞きしたいと思います。
また、現在の複雑な流通機構の中で価格の安定を保証できるだけ
関係当局の業務体制があるのかどうか、
関係大臣の御
答弁をお願いいたします。
さらに、買い占め、売り惜しみ等の調査にあたっては、一般
消費者の中から
生活物資調査員のような人を募集し、調査事務を委嘱できるようにすべきだと思いますが、経済企画庁長官の
答弁を求めます。
「この法律は、
物価の
高騰その他の我が国経済の異常な
事態に対処するため、」とありますが、一体どういう
事態を異常な
事態というのか、全く不明であります。どの
物価が何%以上上がった場合を異常な
事態というのか全くわからない。また、「その他の我が国経済の異常な
事態」の「その他」とは一体どういう現象をさすのか、わからないのであります。このように、本法を適用する経済現象が抽象的で全く不明瞭なため、この法案は法律化されても使用できないか、もしくは大企業寄りの行政当局の一方的な判断により大企業にとって有利な価格をきめるときのみに使用される危険性があり、結局は
物価の
高騰を押えることはできないと思います。
また、この第一条でいう「
国民経済上重要な
物資」とはどういう
物資をさすのか、また、「
国民生活との関連性が高い
物資」とどう違うのか、答えていただきたいと思います。
課徴金は標準価格をこえた額だけ徴収することになっておるわけでありますが、これでは、業者が違反して高く売った場合、もしも事実が判明した場合は、不当に多く取った分のみ返せばよいという意識を持たせるようにならないか。また、徴収した課徴金は、業者が不当に
国民から搾取したものでありますから、当然
国民に返すべきものでありますが、どうやって返却するのか。
政府は、
物価が
高騰しているときは標準価格をきめて価格を押えようとしておるわけでありますが、その価格のきめ方は、標準的な生産、
輸入、販売等の費用、利潤、指定
物資の
需給の
見通し並びに
国民生活または
国民経済に及ぼす
影響を総合的に勘案して定めることになっておりますが、標準的な生産とは一体どのような内容をいうのか、全くわからないのであります。一つ一つ具体的な説明の必要があると思います。また、
国民生活を利潤や諸費用と同列に並べているが、
国民生活が極度に悪化している今日、
国民生活の安定と向上を最優先して保証する価格決定を行なうことを条件とすべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
この法律において、価格の決定は主務
大臣によって行なわれることになっているが、主務
大臣は、大企業によって支持されていると思います。また、間接直接を問わず多額の
政治献金をもらっている
自由民主党の
大臣である。このような立場にある
大臣が価格をきめるということは、大企業の利益を
拡大する価格、すなわち
国民生活をさらに苦しめる高い価格で決定されることになると
国民が思うのでありますが、どうでありましょうか。
物価値下げ法案ではなく、逆に
物価値上げ法案であると思わざるを得ないのであります。また、標準価格を定めるということは、企業間に共通な価格を設定することになり、これは実質的には独禁法第二条にいう「不当な取引制限」に該当し、独禁法違反の価格カルテルであると思います。このような独禁法違反の規定をなぜ盛り込んだのか、当然取りはずすべきであります。公的な機関によってきめられた価格はカルテル価格にはならないという
政府、公取の見解であるが、これまで大企業優先の
政治を一貫して行なってきた自民党の
大臣が価格をきめるのだから、結局大企業の多額な利潤を保証する価格になり、これは大企業で大幅な利潤を
確保して協定してつくられた価格と実質的に変わりない高い
物価になることは、当然の結果として
国民がひとしく憂えておるのであります。この法案できめられた標準価格はすぐ変更できるということは先ほど指摘しました。最近のように経済
状態が変動しているときはすぐ変更せざるを得なくなり、せっかく価格をきめても長く維持できなくなるのではないかと思いますが、この点についてもあわせて御
答弁を求めまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔国務
大臣二階堂進君
登壇、
拍手〕