運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-12-05 第72回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月五日(水曜日)    午前十時三分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   昭和四十八年十二月五日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      —————・—————
  2. 河野謙三

    ○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。阿部憲一君。    〔阿部憲一登壇拍手
  3. 阿部憲一

    阿部憲一君 私は、公明党を代表して、総理及び関係大臣質問を行なうものであります。  現在、国民は、田中内閣日本列島改造という高度経済成長政策の破綻の中で、戦後未曾有のインフレ物価高石油危機物不足による。パニック現象で、総理のことばをかりて言えば、いまだかつて経験したことのない試練に直面しているのであります。  そこで、質問の第一は、総理所信表明演説で言われた経済的にも社会的にもわが国にとって一つ歴史的転換期ともいえる、ということは、田中内閣がとってきた日本列島改造構想を白紙に戻すことなのか、あるいは、ただスローダウンすることを歴史的転換期というのか、それとも、国民政府の失政によって経験したことのない苦しみの試練を受けざるを得ないということなのか、総理の明確な御答弁をお伺いしたいのであります。  さらに同じ所信表明の中で、節約美徳という価値観を定着させねばならない、と言われておりますが、それには何よりも政府・自民党みずからこれまでの誤った政治姿勢を正し、国民の信頼をかちとる努力をすることが必要なことは、言うまでもありません。ところが、政府は、いまだに破産した列島改造論に執着し、国民石油危機物価暴騰の多大な負担を与えているにもかかわらず、一片の反省さえも見られないのであります。田中総理は、節約美徳という前に、率直にみずからの誤りを認め、反省の意を国民の前に示すことが、総理のとるべき政治姿勢のはずであります。総理の御所見を伺いたいと思います。  次に、十一月二十八日の記者会見で、経済路線問題に関して、福田蔵相に何でもかんでも一任するわけではない、と発言されておりますが、福田蔵相の言われている経済路線の見直しに対しては、一任するのかしないのか。一部で言われている総理蔵相の対立があっては、国民こそ迷惑であります。そこで、総理に、はっきりとした態度をお聞かせ願いたいのであります。  さらに、総理は、去る七月の記者会見で、秋口には物価を安定させたい、と言われましたが、一体、物価の安定はどうなったのか。ことし一月二十七日の施政方針演説では、総理は、私は、あえて困難に挑戦し、国民政治のために決断し、実行する、その結果について責任をとると、大みえを切られましたが、現在の物価高騰という結果に対して、総理は、いかなる責任をとるおつもりなのか、お伺いいたします。  さらに、十一月二十八日の記者会見で、総理は、物価安定の見通しを聞かれ、いつどうなるかという見通しはいま言えないと、国民最大関心事であるにもかかわらず、無責任きわまりない発言をしているのであります。このような無責任発言をなされる田中総理に残されたただ一つの道は、いさぎよく退陣することであります。(拍手)  次に、経済問題についてお伺いします。  まず、このインフレによって生ずる社会的不公正に対してもっと認識を改めるべきであるということであります。総理は、物価騰貴最大の弊害は、所得及び資産の不公平な分配をもたらすことである、と述べて、その対策として、政府は、生活保護基準や、福祉施設の老人、児童等生活費引き上げ措置した、と言われますが、保護基準引き上げはわずか五%であります。それに対して、消費者物価上昇率は、その三倍にも達しており、これから年末年始にかけてさらに暴騰する傾向にあるのであります。政府のとった貧弱な措置で、経済的に弱い立場にある人々に対して、はたして分配公平化が達成されていると考えておられるのかどうか、お尋ねします。  また、法人の八十兆円にも及ぶ膨大な借り入れ金返済負担インフレによって軽減される反面、零細な個人の貯金はインフレによって非常に減価されております。その元本損失の額は、四十七年度上期だけでも二兆五千億円にも達しており、四十八年度に至っては十兆円にも達するであろうと思われます。インフレによる社会的な不公正を是正するため、私は、物価上昇にある程度スライドさせて預貯金利子の大幅な引き上げを行なうべきであると思いますが、いかがですか。  さらに、年度内減税についてお伺いいたしますが、物価上昇により実質賃金が減少されている反面、名目賃金上昇しているために税金の負担もふえており、国民はダブルパンチを受けているのであります。国民生活実質的に維持させるためには、年度内減税以外に方法はないのではないかと思います。それを実施するに十分な自然増収財源がありながら、何ゆえ年度内減税実施しないのか。年度内減税実施しないとするならば、どういう手段国民生活を守ろうとしているのか、具体策をお伺いいたします。  さらに、二兆円減税について伺います。福田蔵相は、この二兆円減税について再検討するという方針のようでありますが、その検討するという消極的な内容は、減税するとインフレを促進するおそれがあるかどうかという観点からですか、それとも、自然増収財源見通しが立つかどうかという観点から行なうのでしょうか、いかなる点から検討するお考えなのか、お伺いいたします。  また、大蔵省などの検討の段階では、三千万円クラスの高所得者層税率引き下げなどが検討されているようでありますが、そのようないわゆる重役減税ではなしに、課税最低限の可能な限りの大幅引き上げ中心検討すべきであると思いますが、いかがですか。  次に、来年度の予算編成についてお伺いします。  福田蔵相は、物価抑制を最優先課題として来年度予算を編成する方針であると述べておりますが、来年度の物価上昇を何%に抑制することを目標としているのか、お聞かせ願いたい。  また、物価抑制方針とするならば、直接物価上昇につながる消費者米価国鉄運賃値上げの撤回、また、郵便料金を据え置くべきであると思いますが、その意思はありますか。  さらに、公共事業費抑制と言われておりますが、その規模を今年度の繰り延べ分も含めて一けた程度伸び率に圧縮する考えがありますか、お伺いいたします。  関連して、福田蔵相に確認したいのでありますが、ある報道によりますと、大蔵省は、一に、郵便料金値上げについて一年見送り、これに必要な予算をつける。二に、来年四月一日から値上げのきまっている消費者米価についても、できれば秋まで延期する方向で再検討する。三には、公共事業関係費伸び率は、思い切って圧縮し、一〇%を下回る一けたに押える。などについて検討することになったと、こう報じておりますが、これは実施方向検討すると受け取ってよいのですか、真意をお聞かせ願いたいと思います。  次に、わが国外貨政策についてお尋ねいたします。  わが国外貨準備高は、本年三月以降連続して減少の一途をたどり、短期債券残高が激減し、外貨準備流動性が著しく低下いたしております。そのため、日銀は、米国長期債大量売却を行なっており、聞くところによりますると、その長期債価格が下がっているためにかなりの売却損を生じているといわれておりますが、それは現在どの程度の額になっておりますか。これは、わが国外貨準備高が当分高水準を保つだろうという考えから、その相当部分長期債とした政府の判断に誤りがあったことになります。今後一五%という石油削減が続きますと、四十九年度の経常収支の赤字は実に七十二億ドルにものぼるものと予想されますが、外貨流動性にどういうふうにして対処されていくお考えか、明確に御答弁を願いたいと思います。  次に、いま国民が最も関心を抱いている石油問題についてお尋ねいたします。  今回の中東戦争がもたらした石油危機は、経済大国資源小国日本をいまや恐怖におとしいれているのであります。おそらく、中東戦争が終結しても、生産制限など、アラブ産油国石油を武器とした対イスラエル戦略が変わらない限り、わが国の原油はさらに深刻な供給削減を余儀なくされようとしておることは十分予想されるのであります。すでにEC諸国アメリカですら数カ月も前から種々の消費制限実施し、真剣に取り組んでいたのに比べ、わが国資源外交といい、国内エネルギー対策といい、全く無策にひとしく、後手後手になった今日の政府責任は重大であり、きわめて遺憾であります。  政府は、ようやくおそまきながらアラブ寄りの新中東政策を発表し、石油消費節約等緊急対策を打ち出しましたが、一方、総理は、七億五千万キロリットル、つまり昨年の消費量の三倍もの石油消費量を必要とする日本列島改造に依然として執着し、少しの反省もなしにこれを強行しようとしておりますが、これは一国の総理としては、はなはだ見識を欠いていると思います。むしろこの際、石油危機の教訓に照らして、国民納得と協力を得るためにも、その発想を根本的に変えるべきであり、したがって、国総法は撤回すべきものと思いますが、総理のお考えをお伺いいたします。  また、列島改造政策に付随している新幹線網建設計画、本四架橋の建設沖繩海洋博実施農地転用計画等についてどのように対処していくのか、その具体策もあわせてお伺いいたします。  また、石油危機に直面して、今後の消費量節約輸入見通し自主開発、代替を含めて中長期エネルギー対策をどうするのか、あわせてお伺いいたします。  なお、これは緊急な問題でありますが、ただいま、多数の船舶燃料補給ができず、停船に瀕していることであります。申すまでもなく、船舶は、わが国産業基幹物資としての鉄鉱石非鉄金属木材等を輸送するばかりでなく、国民生活に不可欠の小麦大豆等食料飼料等を運んでおります。したがって、これら船舶への燃料優先確保は絶対に必要でありますが、停船現状見通し及び政府対策についてお伺いいたします。  すでに石油危機は心理的な不安感国民に与えているばかりではなく、便乗値上げというまことにもって許しがたい悪徳商法を生み、国民生活を極度の不安におとしいれているのであります。通産省は、さきに、灯油小売り価格を全国一律に店頭渡しで十八リットル入り一かん三百八十円とする行政指導をしました。しかし、この政府価格抑制のための処置は、実際には値上げのきっかけを与えてしまったという皮肉な結果をもたらしているのであります。これでは、生活の安定ではなく、企業の安定としか言いようがないのであります。政府措置について国民は早くもその実効を懸念しているのであります。まして六兆円ボーナスが出回るこの年末には、ますます深刻な物価急騰物不足が予想されておりますが、総需要抑制緊急立法の制定をもって政府ははたしてこの事態を解消する自信があるのかどうか、お伺いいたします。  政府がきめた灯油凍結価格三百八十円は、今日すでに有名無実化していますが、不当に高額な配達料を加えて五百円にも六百円にも値上げしている悪徳業者の取り締まりはどのようにするおつもりか。  また、今回上程の準備をしている石油需給安定法に関して、公取の反対にもかかわらず、政府行政指導という名のもとに実質業者共同行為を認めさせようとしていますが、これはむしろ物価引き上げを助成するとしか考えられないと思いますが、どうですか、お伺いいたします。  次に、物価問題を具体的な例を引いてお伺いいたします。  いま、話題にのぼっているガソリンですが、一般では、レギュラーガソリンで一リットル当たり八十五円が普通であります。しかるに、官庁用ガソリン購入価格は、安い順に申し上げますと、まず防衛庁の四十五円、二番目は外務省の四十七円、三番目に郵政省、自治省の四十八円、四番目には農林省の四十九円という驚くべき安さで購入しているのであります。一番高く購入しているものをあげても、通産省の五十四円五十銭にすぎないのであります。官庁がこのような安いガソリンが買えるのに対して、何ゆえ一般国民は買えないのか、これが物価高騰に悩む国民の率直な疑問であります。国民納得できるような御説明を伺いたいと思います。  また、一部マスコミの報道するところによりますと、諸物価高騰品不足の風潮に便乗して、十二月に値上げされるだろうということで、パン、うどん、とうふ、牛乳、バター、食用油、コーヒー、カレー、ジャム、牛肉、乾物等日常生活に欠くことのできない商品が列挙されておりますが、これらの商品値段見通しはどうなるのか、上がるのか上がらないのか、また、在庫状況並びに需給見通しをお伺いいたします。  また、それらの商品値上げ理由として、原料や、運送費包装材人件費上昇をあげているようでありますが、これらの理由納得のいくものなのかどうか、政府の御見解を伺いたいと思います。  もし値上げ理由が正当なものでないならば、便乗値上げであると考えます。この便乗値上げをどう防止していくお考えか、お尋ねいたします。  また、メーカー流通業者が、入荷困難という常套手段品不足状態をつくり出すコツを覚えてしまったとも考えられますので、見せかけの品不足状態政府はどう解決する考えか。メーカー流通業者にもっとメスを入れて物をどんどん出荷させなければならないと考えますが、政府具体策をお伺いいたします。  また、品不足と言われながら、京浜港をはじめとし阪神、名古屋等主要倉庫には、工業原料や、輸入食品が山積みされ最近ははしけまで倉庫のかわりに使われているそうであります。これは大手業者の売り惜しみのあらわれであると思われます。政府は、これら港湾、倉庫関係在庫状況を調査し、国民に公表すべきであると思いますが、いかがですか。  また、その調査権放出命令権を国と地方公共団体に与えるべきであると考えますが、御見解をお伺いいたします。  現在のような物不足物価高の不安の中で、家計を預かる主婦としての切実な願いは、せめて生鮮食料品、中でも野菜や魚の値段を安定させてほしいということであります。この毎日食ぜんに欠かすことのできない野菜値段は、いまもって暴落高騰の繰り返しをしております。キャベツの場合を例にとれば、昨年十一月には、卸値でキロ当たり七円とか八円と、ただ同然になり、産地ではキャベツをトラクターで踏みつぶしたというようなときがあったかと思いますると、半年後の五月には、同じキャベツが何と一個四百円にもなり、スイカのように切り売りをしなければ消費者は買えないというときもありました。このようなバカ高値暴落という現象を天候のせいにして放任してきた政府姿勢は、物価抑制に対するやる気のなさをまことによくあらわしていると思うのであります。  そこで、わが公明党が提唱し、東京都で実現させた産地契約制度の例をあげながら、政府見解をお伺いいたします。  キャベツ対象に行なった産地契約制度ポイントは、一箱十五キロのせり値上限を千百円に押える一方、五百円を下回ったときは、百五十円を限度に都が生産者補償したことであります。その結果、生産者は安心して出荷し、消費者中型キャベツを常時一個百円以下で買えるようになったのであります。  そこで、伺いたいのは、第一に、高値を防止するために上限を設けるべきであります。政府の行なっている制度には、この野菜の品目はきわめてわずかしかありません。そのため消費者にとって価格安定にほとんど役に立っていない点を改める考えがあるかどうか、お伺いいたします。  したがって、第二に、歯どめをする以上、暴落したときの生産者に対する補償額を大幅に引き上げるべきであります。そのために、国の負担を増加し、さらに財源不足しているというのであれば、消費している自治体の応援を積極的に仰ぐべきではありませんか。  第三は、暴落したときの補償を、出荷する生産者立場に立って行なうべきであります。都は、暴落したときに、一日一日を補償対象にし、暴落した分を補償しております。政府補償は、ある一定期間平均価格暴落した場合となっていますので、ある短期間暴落しても補償されないということが起きてしまいます。このような点を改善すべきであると考えますが、御見解を伺います。  第四に、これは魚にも通ずる基本的なことですが、荷受け機関手数料あり方についてであります。いまこれが総売り上げに対する一定率となっておりますから、市場価格が暴騰すればするほど収益がふえることになりますし、安い大衆野菜大衆魚よりも、高い高級商品需給調整に力を入れることになってしまいます。このような、大衆商品の価格安定と矛盾する手数料あり方を改め、大衆商品を大量に扱うほうが収益もふえるという形になるように検討を続けるべきであると思いますが、いかがでしょうか。  さらに関連して、魚の価格安定等について、三点ほどお尋ねいたします。  第一点は、東京等の大消費地主要産地に、大衆魚専門ストックポイント建設し、価格安定をはかってはどうかということであります。いま、築地市場周辺民間冷凍施設収容能力は三十万トンをこすといわれております。この膨大な力により、魚の値段価格操作が行なわれ、高級な冷凍魚中心値上げされていくことは間違いありません。その防止策としても、公共的なストックポイントを早急につくるべきであると考えますが、いかがですか。  第二点は、石油危機との関係でありますが、これが漁船の燃料にどのような影響を及ぼすのか、また、遠洋漁業の船が海外での燃料補給に支障を来たしているとも聞いておりますので、その実情と対策についてあわせてお伺いいたします。  第三点は、水産資源見通しについてであります。来年開かれる国連海洋法会議で、もし領海二百海里となり、公海における漁獲が制限されますと、わが国水産資源確保に大きな打撃を受けると考えますが、今後の見通し対策をお伺いいたします。  次に、石油外交について若干お尋ねいたします。  政府は、去る十一月二十二日、六七年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退、パレスチナ人の正当な権利が承認され尊重されること、今後の推移いかんによってはイスラエル政策を再検討せざるを得ない、などを骨子とした新中東政策を発表しました。この新中東政策は、従来の政府中東政策を変更したものなのかどうか、まずお伺いしたいのであります。また、この新中東政策は、アラブ支持を意味するのかどうか、その点も明確にしていただきたいのであります。  これまでの政府姿勢は、国連の二四二号決議についての解釈をあいまいにし、イスラエルアラブ占領という国連憲章違反行為に対しても明確な姿勢を示さず、イスラエル支持に回ってきているのであります。こうした政府態度は対米追随中東政策によるものであり、この政府基本的姿勢の明確な転換がなされなければ、今回の政府政策転換は場当たり的な措置であると言わざるを得ないのであります。したがって、今後のアラブ諸国に対する長期的展望に立った友好政策を具体的に示していただきたいのであります。  しかも、政府の新中東政策は、海外で大きな反響を呼んでおります。政府がこれまで従属し追従してきたアメリカでさえ、わが国事情を理解せず、日本の新中東政策に対し遺憾の意を表明しているのであります。また、キッシンジャー国務長官は、アラブ諸国石油供給削減に対し、米国としても対抗措置を考慮しなければならなくなるとアラブ産油国に警告し、わが国に対しても、独自の行動がエネルギー危機最終解決に役立つのか、それとも、米国と緊密に動くほうがいいのかを考えねばならない、と注意しておりますが、これを政府はどう受けとめておりますか、御答弁願いたいのであります。  大平外相は、日米関係に致命的な影響はない、と言われておりますが、国際資本を牛耳るユダヤ系資本家日本商品のボイコットをも辞さない不穏な動きも出ております。しかも、去る三十日には、日本親アラブ政策に抗議するユダヤ人団体全米ユダヤ人会議が、ニューヨークのホテルで開かれている日本カメラショーに対して抗議デモを行なうなど、ユダヤ系資本の反発、いやがらせに対して政府はどう対処していくのか、お伺いいたします。  時あたかも、田中総理は、訪米、訪欧、訪ソなど一連の首脳外交の締めくくりとして、東南アジア訪問を来年一月早々に行なうといわれております。わが国は今度の石油危機資源供給源を分散する必要もありますので、東南アジア訪問の際、総理資源開発についても話し合われるやに伝えられておりますが、資源開発について具体的にどのような構想を持って歴訪されるのか、明らかにしていただきたいと思います。  さらに、事は何も石油だけに限ってはおりません。人間の生存基盤である食糧についても、わが国は大きく海外に依存しているのであります。たとえば、大豆においては九六%、小麦九二%も輸入にたよっている現状であります。しかも、日本輸入量は、全世界の輸入量の約二〇%も占めております。資源国との関係わが国食糧事情を大きく左右することを考えますときに、石油だけでなく、来たるべき食糧危機に備えて、政府食糧需給体制はどうなっているのか、また、食糧供給国に対してどう対処していくのか、政府基本的姿勢を示していただきたいと思うのであります。  次に、当面の外交問題についてお尋ねします。  まず、沖繩米軍基地についてであります。この沖繩米軍基地整理統合に伴う大幅な基地返還をきめるための第十五回日米安保協議委員会が延期されてしまいました。沖繩米軍基地は、去る六月、陸軍のボロー・ポイント射撃場の一部など八基地面積にして全基地面積の一%弱が返還されただけであります。この沖繩基地返還は一体どのようになっているのか、御説明願いたいのであります。  また、復帰後、本土の空軍施設横田基地への集約化を行なう関東計画は、いまどのようになっているでしょうか、あわせて御答弁願います。  次に、日韓関係についてでありますが、政府は、金大中事件で延期されていた日韓定期閣僚会議を今月中旬開催する予定と伝えられておりますが、金大中事件捜査結果の報告などを公表するよう韓国政府要請しているにもかかわらず、韓国政府解決条件となっていた捜査結果の報告や、金大中氏の来日などの具体的な措置をいまだにとっていないのであります。したがって、日韓両国政府なれ合い解決である金大中事件条件が実行されない以上、日韓会議は開くべきではないと思いますが、どうでしょうか。  その上、日韓会議で、韓国は総額三億五百万ドルにのぼる借款日本要請するといわれております。金大中事件における欺瞞に満ちた政治解決条件すらも実行されず、これまでの返済不可能な借款が十億ドルにものぼっており、さらに日本経済援助による対日従属体制に向けられています当面の韓国における反朴運動などを考えますと、よもや政府は、今回の三億ドルの借款要請に対して受け付けることはないと思いますが、もしそのような要請があった場合、政府はどのような態度で臨むのか、国民の前に明らかにしていただきたいのであります。  最後に、日中国交が正常化して二年を迎えた今日、両国間で大切な実務協定は何一つ締結していないのであります。中でも、最も基本的な航空協定について、大平外相は、きわめて近い機会に政府は決断する旨の発言を行なっておりまするが、具体的にはいつごろなのか、来週早々ぐらいと受け取ってよいのかどうかお尋ねして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  4. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 阿部憲一君にお答えをいたします。  まず第一は、列島改造問題等に対して、政策の転換に対しての御発言がございましたが、列島改造問題は、いつも申し上げておりますとおり、私の私的な論文でございます。現在国会で御審議をいただいております国土総合開発法の改正案は、昭和二十五年に制定をせられました現行法の改正案について御審議をいただいておるのでございまして、本案は政府施策であることは申すまでもないのでございます。全国土にわたりまして健康で文化的な生活環境を整備し、国民の福祉の向上をはかるための国土の総合開発の必要性は、今日の状態においても基本的には何ら変わっておらないと思うのでございます。このような長期の展望と現下の経済政策等を混同した議論が起こらないよう、政府もまた国民の理解を求めてまいりたいと考えるのでございます。  新幹線、本四架橋の問題等は、昭和六十年度展望の大型プロジェクトでございますが、当面は総需要抑制との関係から、大幅なスローダウンを考慮したいと考えておるわけでございます。  また、国総法案は、地価凍結を含む土地対策の基本的性格を有するものでございまして、ぜひとも必要であると、こう考えております。  現在の産業構造を前提とする限り、昭和六十年度において石油消費量が昨年度の三倍にもなる試算があることは事実でございますが、しかし、このように石油を入れることはできないので、クリーンエネルギーその他、他の代替エネルギーを検討しなければならない、こう考えておるわけでございます。したがいまして、産業構造の知識集約化、原子力の開発、水力発電の見直し、石炭その他の国内資源の活用、無公害新エネルギーの開発、資源外交の推進等に対して努力をしていかなければならないと、こう考えておるのでございます。これは私見であります私の日本列島改造論の方向にも合致をするものだと考えておるのでございます。  また、私と福田大蔵大臣の問題についての御言及がございましたが、昭和三十六年以来、過去十余年間の間、植木、愛知両大臣の一年半を除くと、その十年余は水田、福田、田中の大蔵大臣で財政運営を行なってきたわけでございまして、私と福田大蔵大臣との間の意見の相違は全くございません。また、内閣は連帯をして国会にその責めを負うことは言うまでもないことでございます。  物価上昇につきましては、はなはだ遺憾のことでございますが、その責任は、全力を傾けて国民の負託にこたえるという以外にはないと考えておるのでございます。  物価高騰の社会的影響等についての御発言でございましたが、所信表明にも述べましたとおり、物価上昇最大の弊害は、所得及び資産の不公平な分配をもたらすことにあると思うのでございます。政府は、すでに、厚生年金、国民年金に物価スライド制を導入するとともに、生活保護の基準及び社会福祉施設に入所している老人、児童等生活費引き上げなどの措置を講じてまいった次第でございます。今後とも社会保障給付の改善に配意してまいりたいと考えます。  年度内減税につきましては、総需要抑制の見地から、年度内の所得減税を行なうことは考えておりません。政府としては、物価上昇抑制し、いかなる事態が生じましても生活必需物資の供給を確保することが国民生活を守るゆえんであると考え、全力をあげてこの課題に取り組んでおるのであります。  次は、生活必需物資の値上がり抑制についてでございますが、生活必需物資の値上がりの動きにつきましては、引き続ききびしく監視し、厳に便乗値上げがないよう行政指導を強化してまいりたいと思います。また、関係業界に対する緊急増産.や出荷指導を行なってまいります。  野菜価格安定等に対する言及がございましたが、現在、十二品目の指定野菜につきまして価格補てん事業が実施されておることは御承知のとおりでございます。特に価格変動の大きい秋冬期の大衆野菜に重点を置きまして、一定の価格帯の中で安定するよう出荷奨励金の交付等を行ない、計画的な生産出荷を進めておりますが、当面、その対象品目を拡大する考えはありません。消費地の自治体が国に協力して価格安定対策を講ずることは望ましいことでございます。  荷受け機関手数料の改善等について申し上げます。魚の価格安定についても御言及がございましたから申し上げます。  卸売り業者の委託手数料の問題は、農林省の卸売市場審議会の懇談会で種々の角度から検討された結果、当面、現行の制度にかわる改善案について結論を得るに至らなかったと聞いておるのでございます。  魚の価格安定をはかるためには、本年度から主要産地に大規模なストックポイントを設置いたしまして、主として大衆魚を保管し、消費地の価格が高騰したときにこれを放出する事業を推進しておるところでございます。  漁船の海外での燃料補給の確保はどうなるのかという御発言でございますが、政府としましては、外交ルートを通じまして相手国に給油の確保を要請するほか、国内石油の洋上補給、操業漁場の変更の指導などによりまして、遠洋漁業の維持に最大限の努力を払ってまいる所存でございます。  領海二百海里の問題についての御発言にお答えをいたしますが、領海二百海里が制度化されると、わが国漁業に及ぼす影響はきわめて重大でありますので、わが国といたしましては、沿岸国に漁業の優先権は認めるが、排他的な管轄権は認められないとの立場関係国の理解を強く求めて対処しておる次第でございます。  中東政策に対して申し上げますが、政府は、中東紛争の公正、恒久的な解決を願う立場から、国連決議二四二を支持してまいりましたが、今回これを一そう明確にいたした次第でございます。アラブ諸国とは、友好親善の実をあげるべく、具体的な交流、協力を増大してまいりたいと考えます。  東南アジア訪問の際の資源問題等に御言及がございましたが、資源問題も話題となりましょうが、東南アジア諸国との間に平和と繁栄を分かち合うよき隣人関係を育成強化したいとのわが国の熱望を各国首脳に披瀝することが訪問の最大の目的であります。  食糧の需給体制についてでございますが、主要農産物については、できるだけ自給率を高めるよう必要な施策を講じてまいります。また、輸入に依存せざるを得ない飼料穀物等については、輸入先の多角化、長期輸入取りきめ、備蓄等に引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えます。  最後に、日韓問題について一言申し上げます。  日韓閣僚会議は、年内に開く予定で準備を進めております。韓国における民生の向上と経済の均衡ある発展に寄与する協力は進めてまいりたいと考えます。  残余の質問に対しては、関係閣僚から答弁いたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  5. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。  物価上昇による減価に対しまして、預貯金の金利を大幅に引き上ぐべきではないか、こういうお話でございますが、こういう際でありますので、預金者の立場考えなきゃならぬことは、これはもちろんでございます。そこで、ことしはもうすでに三回にわたって預金金利の引き上げをしてきております。年末は、また、優遇貯金、これを発売すると、こういうことも考えております。しかし、だからといいまして、大幅にそれを引き上げる、そうすると、金利体系の問題です。貸し出しも上がる、物価にどういうふうに響くか、こういう問題になるのでありまして、これはそう簡単には結論は出ない。この際は物価を安定させると、そういう姿勢のほうにこそ重点を置いてオーソドックスな姿勢をとってまいりたい、かように考えます。  それから次に二兆円減税の問題でございますが、これは、私は、この二兆円減税を白紙で見直したいと、こういうふうに申しておるのであります。その趣旨は、これは二兆円減税一つできめるべき問題ではないんだと、予算編成の骨組みの中できまるべき問題である。つまり二兆円減税をするならばその財源が要る。財源は、自然増収、また公債、さらに増税と、こういうふうになります。こういうものがいかなる姿をとるべきか、これは非常に重要な問題でありますので、そういうものを全部詰めました上できめたい。したがって、内容につきましては、まだ固まった考えは持っておりません。  それから年度内減税につきましては、これはただいま総理が申し上げたとおりでありまして、ただいま考えておらぬ。  それからさらに、物価抑制の目標はどうだというお話でございますが、いまこの目標が非常に立てにくい。石油の問題の帰趨を見定めまして目標を立て、それを着実に実現をしたい、こういう考えでございます。しかし、将来は、私は、わが国物価水準、どうしてもこれは国際水準以下にはなるべく早く持っていかなければならぬと、かように考えております。  それから公共料金、これは据え置くべきではないかと。これは私もそういうふうに思います。ただ、例外はこれはあるのでありまして、たとえば、米あるいは国鉄、これは従来のいきさつもあります。また、その必要もあります。それから郵便料金につきましては、これは審議会の審議の帰趨を見て対処したい、かように考えております。  それから新聞記事に何か出ておるというお話でございますが、ただいまの考え方で了承願いたい。  それから公共事業費、これをどの程度切り詰めるか、こういうお話でございますが、これはできる限り圧縮します。そういう考えです。ただし、その圧縮にあたりまして、一律にはしない。社会福祉に関するものはこれは配慮をする。  それから外貨準備が減少する、それに対して流動性に留意すべきじゃないかというお話でございまするが、これはそのとおりであります。そのためには、これは為替管理の方式を見直さなければならぬ、そういうふうに考えております。  それからアメリカ長期債を売却したその売却損があるのではないかというお話でございますが、そのとおりであります。しかし、それは外貨証券を手持ちをしておる。それを売ったり買ったりしております。ときに損もあります、得もあります。それから収益——益もあるんです。そういうことを考えますと、今回の売却は、総体的には損にはなっておらぬ、そういう勘定になります。まあ金利は低いけれども流動性の高い短期証券がいいのか、あるいは金利は高いが流動性の少ない中長期債がいいのか、その辺をにらみ合わせながら運用していきたい、さように考えております。(拍手)    〔国務大臣中曾根康弘君登壇拍手
  6. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 石油の需給政策と独禁法との関係をまず第一にお答え申し上げます。  昨日も申し上げましたように、石油供給削減というものは、下期におきまして、昨年度は大体一億四千五百万キロリッター程度の入荷がございました、それが十一月末の見通しでは、一億三千四百万キロリッター程度に減る見通しでございました。去年よりは少し減るという情勢であったのでございます。そこで、それだけ減りますと、ことしはかなり上半期において経済成長もあり、需要も増大しておりますから、ある程度総需要を切りませんと、石油から物価高騰を各般に招いてまいります。そういう意味におきまして、政府は、十六日の緊急対策で総需要削減という大方針をきめまして、きのうも御報告申し上げましたように、企画庁を中心にいたしまして、下期において、おそらく五千億円前後になるのではないかと思いますが、総需要を削減すると同時に、ボーナスなどについて預金金利の引き上げその他による措置を行なって流動性を回収する、そういうことをまず需要面において行なっておるわけであります。  他方、供給面におきまして、石油につきましては行政指導でいままで努力してまいりました。それで、十一月末の見通しでは、メジャーズからの報告等によりまして、十二月は一〇%石油、電力ともに大口についてカットする、一月以降は情勢による、そういうことで始めておるのでございますが、どうも入荷の情勢を見ると必ずしも予断を許しません。したがいまして、通産省としては、情勢に応じてわれわれが考えているよりさらにきびしい措置をとらざるを得ぬのではないかといま検討しておるところでございます。  それで、そのためには、いま、各業界相互で石油供給の交渉が行なわれております。通産省としましては、きのうも次官から警告を発しまして——売り手市場になってきておるわけです。石油業者立場が非常に強くなってきておる。あるいは、石油供給を受けて製品をつくっておる者が下請その他に対してまた非常に強くなってきております。その偏倚を是正するために一応警告を発しましたが、各業界ごとに需給の調整協議会をつくらせまして、通産省も介入をして、各業種別に需給のアンバランスや不公平を是正するようにとりあえず努力をしてまいります。それと同時に、御提案申し上げる法案の通過を待ちまして、権限をいただいて、公権力をもってそういうような需給調整のアンバランスをさらに正確に是正するように努力してまいるつもりでおります。  そこで、独禁法との関係でございますが、いろいろこういうような民主的調整を行なうについてどういう方法が適当であるかとずいぶん検討いたしましたが、やはり、あまり強権を発動して末端まで統制を行なうということは、これは必ず戦時中行なわれたような、いわゆる経済警察とか、やみとか、陰惨なものができて、いわゆる係長統制ということになる。下の者が実権を握って、必ずしも適正に行なわれないということが行なわれます。で、いまは戦時封鎖経済ではないのでございますから、ほかの物資は入っておるわけです。でありますから、これは官庁が大もとを握って、そうして業者間相互の需給を円滑にするように強力に指導しながら、末端は業者ぐるみで協力してもらいながら民主的にやってもらい、市場機能を生かしつつやるのが今回の場合は適正であろう。そういう考えに立ちまして、とりあえず独禁法の例外というわけではございません。政府が公権力をもって正式に介入いたしまして、業界に御協力を願おうと、そういう形でいまの灯油その他の安定措置を進めておるものでございます。いずれ法律が通過いたしましたら、情勢によっては重要物資ごとに標準価格が設定されまして、そしてそれによって、その便乗値上げは許さぬとか、上のせの価格は防止するとか、そういうことによって価格体系全体を安定させる方向に網をかぶせていくつもりであります。しかし、できるだけそういう法案が通っても強権的発動は避けまして、行政指導によってそのような価格安定措置を講じていきたいと考えておりまして、戦時中のような統制経済を避けるためには、そのような方法が適当であるとわれわれは考えておるところでございます。  なお、灯油につきまして御質問がございましたが、三百八十円店頭裸価格ということで先般行政指導いたしました。ところが、これは末端にまでは必ずしも徹底しておらなかったのであります。末端全体までが賛成してやると時間がかかって非常な混乱が起きますから、大手のメーカー、あるいはいわゆる販売の大手筋等々の集まっておりまする全石商連及び全国燃料関係の販売連合会について承知を求めまして、協力するという約束を得ましたので、そこで発表してこれを実行すると宣告したわけです。しかし、末端の県段階におきましては、まだそれらの中央団体から地方に必ずしも徹底しない向きもあり、あるいは文句を言う向きもあったわけであります。しかし、その後、懸命に努力をいたしまして、中央団体の御努力もあって、現在三十八都道府県において末端に至るまで協力するという約束ができました。この全都道府県についてすみずみまでこれが行なわれるように目下努力しておるところでございます。大体、こういうような方式によりまして、民主的調整によって価格安定をはかっていこうと、こういう考え方でおります。  なお、ガソリン値段につきまして、各官庁ごとの値段の御指示がございましたが、大体、官庁におきましては一括大量を購入するということ、それから購入が非常に安定しているということ、毎年経常的にこれだけの需要はある、そういうところから、入札価格というものはわりあい低目できめられておるわけであります。通産省の場合を見ますと、七月二十五日では四十九円五十銭、十一月十五日では五十四円五十銭、十二月一日では六十四円五十銭、こういうふうな価格になってまいっております。しかし、官庁だけが得をして一般民間が損をするということは、御指摘のとおりよくないことでございますから、適正価格を維持するように今後とも努力をいたすつもりでございます。  それからただいま、漁船の問題につきましては総理から御答弁がございましたが、漁船が使うのは大体A重油でございます。それで、大体、内地において年間六百三十万キロリッター、外地において約六十万キロリッターの重油を必要としておるのであります。ところが、外航の漁船等につきましては、西アフリカ海岸等にあるのが重油の補給がつかないというので港で遊んでいたりなんかしているのがあります。これらは、その供給がみんな各国際メジャーズの会社から供給を受けているわけでございますから、日本にあるそれらの支店等も通じましてできるだけ円滑に供給するようにわれわれからも強く要請して、この危機を突破しようとしておるところでございます。  なお、食糧関係について、パンやうどんや生鮮食料品や魚類について御質問がございましたが、われわれといたしましては、こういう国民食糧に関するものは民生上一番重要なポイントでございまして、この石油類の補給につきましては、最も大事な重点的な部分として、われわれ、行政指導をもって配当していきたいと心得ております。(拍手)    〔国務大臣徳永正利君登壇拍手
  7. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 阿部先生の御質問に二つございますが、まず第一は、外航貨物船の燃料油についての御質問でございます。  外航海運が、わが国に必要な資源エネルギーを供給し、輸出を担当する唯一の輸送手段でございます。したがいまして、そのための燃料油は、他の需要をおいても最優先的にこれを確保すべきことは、自明の理でございます。現在、内外航船とも、その燃料油の確保が次第に困難になるとともに、その価格も高騰してまいっております。船会社におきましても、十二月分の燃料油の確保につきまして石油業界と折衝中でございますけれども、いまだその目途は立っておりません。  このような実情にかんがみまして、運輸省といたしましては、海運業者に対し、技術的に可能な範囲での船舶のスピードダウンにつとめる等によってエネルギーを節減するよう協力を要請する一方、必要な海運輸送力を確保するための所要の燃料油の確保につきまして通産大臣に対し特段の配慮を要請するとともに、その具体的な確保策につきまして目下緊急協議を進めておる次第でございます。この場合、わが国の外航船のための燃料だけではございません。外国船に対する燃料油につきましても、これを差別しないよう措置する所存でございます。  第二点は、港湾倉庫の滞貨の問題でございますが、東京、大阪をはじめとする大都市の港湾地区の倉庫が満ぱいの状況となっている御指摘は、事実でございます。運輸省といたしましては、これまでも一カ月ごとに倉庫滞貨の動きを調査して公表してきたところでございますが、今後は、必要に応じまして敏速にその実態と原因を把握して、関係者に情報を提供してまいりたいと存じております。  営業倉庫貨物の保管状況等の調査につきましては倉庫業法で、また、生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律の指定物品の調査につきましては同法で必要に応じ行なえる態勢にありますが、放出命令権については、ただいま関係各省で検討中でございます。(拍手)    〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  8. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 中東政策に対するアメリカの反響についてのお尋ねでございます。  これは、きのう吉田議員にもお答え申し上げましたとおり、アメリカ政府は、今回わが国のとりました措置に遺憾の意を表しながら、わが国立場については理解と同情の意を表明いたしております。しかし、この問題につきまして、両国間のいたずらな摩擦が生じないように、十分配慮いたしておるわけでございます。  それからアメリカにおけるユダヤ人団体が、御指摘のように、散発的に小規模の抗議活動がわが国の出先公館等に行なわれたことは事実でございますけれども、それがまだ組織的な動きには至っておりませんで、目下幸いに平穏な状況でございます。今後のわが国中東政策の展開を注視しておるものと考えられます。  それから第二の沖繩における米軍基地の整理についてのお尋ねでございます。  本件につきましては、本年一月二十三日の安保協議委員会におきまして、那覇空港の完全返還及び那覇空港周辺地区の返還がきまりました。六月十四日には、在沖繩米軍施設・区域の一部または全部の返還——八カ所でございますが、の返還が日米間で合意を見たわけでございます。政府といたしましては、その後、沖繩県の開発計画の推進、民生安定の確保等との関連を踏まえまして、かつ日米安保条約の目的達成との調整をはかりながら、引き続きアメリカとの間に施設・区域の整理統合について話し合いを続けておるところでございます。  その次に、関東計画の進捗ぶりについてのお尋ねでございました。  御案内のように、返還予定施設・区域六カ所のうち、水戸の対地射爆撃場の全部、立川飛行場の一部、ジョンソン飛行場の大部分及びキャンプ朝霞南部地区の大部分がすでに返還されました。残りの施設・区域の返還につきましては、代替地区の建設が必要でございますので、最近、米側との間にわたって協議いたしておりましたが、それが終了いたしましたので、代替施設の着工に近くかかるつもりでございます。  最後に、日中実務協定についてのお尋ねでございます。  日中間におきまして各種の実務協定の交渉が行なわれておりまして、ものによりましては大体煮詰まりまして年内にもイニシアルを終えたい、終える予定のものもございますが、一部につきましては、まだ鋭意詰めておりますけれども、最終の段階にまで至っていないことはたいへん残念でございますけれども、極力促進いたしまして、御期待にこたえたいと存じております。(拍手)     —————————————
  9. 河野謙三

    ○議長(河野謙三君) 田渕哲也君。    〔田渕哲也君登壇拍手
  10. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、民社党を代表して、総理所信表明演説並びに大蔵大臣の補正予算に関する演説に対して質疑を行ないたいと思います。  まず第一に、田中総理政治責任についてただしたいと思います。  現在、深刻な物価高に加えて、中東戦争に端を発した石油危機は多方面にわたって物不足状態を招き、国民はかつてない生活不安に直面しております。また、わが国の経済も戦後最大ともいうべき危機を迎えております。総理は、演説の中で、物価上昇の原因として、国際諸物価の値上がりや過剰流動性、それに個人消費の拡大などをあげておられますが、政府の大型予算や経済政策をはじめ、総理の提唱する日本列島改造論などが物価に大きく影響したことには触れられておりません。まさに顧みて他を言う態度であって、総理としての責任感に欠けていると言わざるを得ません。田中総理は、在職一年半、その間に国民のために一体何をなし得たか、虚心に振り返ってみる必要があると思うのであります。一枚看板の日本列島改造論は、大ぶろしきを広げただけで、じみちな政策としては何らの進展も見ないまま破綻を来たし、国民には異常な地価の上昇と深刻なインフレが残されただけではありませんか。この点について総理はどう考えておられるのか、お伺いをしたい。  また、従来から田中内閣インフレ促進型経済政策に対し強い批判を加えてきた福田赳夫氏を大蔵大臣に任命されましたが、このこと自体、みずからの政策の行き詰まりを自認したことにほかならないと思いますが、いかがですか。  また、消費は美徳と言わんばかりの高度成長から、節約美徳への価値観転換を訴えておられますが、同一人物が言われると、あまりにも白々しく聞こえるし、また戸惑いも感じます。このような大転換は、バッターの交代すなわち首班の交代が政治の節度というものだと思いますが、この点総理はどのように考えられますか。  さらに、現在のような石油危機、悪性インフレという非常な事態を乗り切るには、政治の強力な指導力と国民政治への信頼感が不可欠と思います。各新聞社の世論調査によれば、田中内閣の支持率は二〇%台を低迷しておりますが、このような状態でこの難局が乗り切れると考えられますか、お答えいただきたいのであります。  以上あげた幾つかの点から考えても、この際、総理は辞任されるのが、総理みずから言われた政治責任を明らかにした決断と実行ではないかと思いますが、いかがですか。総理の所信をお尋ねいたします。  次に、現在の石油危機インフレに対する緊急対策についてお伺いをいたします。  現在、石油供給削減から、生産ダウン、物不足物価高騰、そしてその悪循環によって社会、経済の大混乱を生じ、国民生活を危機におとしいれるおそれがあります。最も緊急な課題は、インフレの加速度的促進に歯どめをかけ、また、経済活動と国民生活の混乱を最小限度に食いとめることであります。そしてそのための緊急かつ適切な政策の確立こそ急務であります。  私は、まず第一に、現在の石油危機見通しについてお伺いをしたいのであります。不安定で不明確な要素が多く、はっきりした見通しは立てられないことはわかりますが、最悪の場合、どの程度削減がどのくらいの期間続くと想定して対策を立てているのか、お答えをいただきたい。  第二に、総需要の抑制についてでありますが、石油不足による供給削減に対し、需給バランスをとるため総需要の抑制が必要と思うが、そのめどはどの辺に置くのか。四十八年度経済見通しによれば、総需要の中で、個人消費支出が五二%、民間設備投資並びに政府支出がそれぞれ一九%を占めておりますが、それぞれについて削減目標と具体策を示していただきたい。特に個人消費支出の抑制についてどのような手段をとるのか、お伺いをしたいと思います。  第三に、インフレマインドの抑制についてでありますが、とりあえず政府は、最低限度の措置として次のことを実施すべきだと思います。  その一は、日本列島改造論の撤回であります。日本列島改造論は、田中総理の就任の前から一貫して宣伝に使われ、国民の投機熱とインフレムードをあおってまいりました。そして何らの具体的政策の実現もないまま、地価の異常な高騰物価高を招いてしまったのであります。インフレマインドの元凶とも言うべき日本列島改造論を田中総理みずからの手で白紙撤回することがこの際当然の措置と思いますが、いかがですか。(拍手)  その二は、公共料金の三年間据え置きであります。諸物価人件費高騰の中で、公共料金のみ長期間にわたって据え置くことは困難であることはわかりますが、現在は非常事態だという認識に立つべきであります。公共料金の値上げが諸物価高騰に対し心理的波及効果の大きいことを配慮し、同時に、政府物価抑制に取り組む決意を国民に示すためにも、この際、必要な財政措置は別途講ずるとともに、公共料金の引き上げは一切認めるべきではないと思います。  その三は、地価の凍結の断行であります。最近の地価上昇率は年率三〇%をこえ、インフレの根源をなすと同時に、所得不均衡の拡大、住宅難などの重大な社会的ひずみをつくり出しております。石油をはじめとする生活必需物資の統制が必要になっておる今日、土地を野放しにしておくのは不合理であります。全面的に地価の凍結を断行すべきであると思いますが、いかがですか。  その四は、貯金金利の割り増し制度の創設であります。政府は、六カ月定期預金の金利一%引き上げでボーナスの吸収をもくろんでいるようでありますが、物価上昇の中でこの程度措置で効果があるとは思えません。勤労者の汗の結晶である貯金のインフレによる目減りを防ぐと同時に、換物を急ぐ傾向を押えるためにも、物価上昇率に見合って貯金金利を上げることを検討すべきではありませんか。当面の措置として、一世帯三百万円までの貯金に対し現行金利の五割の割り増し制度実施すべきであります。  以上四点をインフレマインド抑制のための当面の措置として実施することを要望いたします。総理並びに関係大臣見解をお伺いいたします。  第四に、重要物資の統制の実施とともに、買い占め・売り惜しみ防止、便乗値上げの禁止について強力な措置をとるべきであります。現在すでに流通過程や末端需要においてかなりの混乱が生じております。最近のトイレットペーパー・パニックは一応おさまったとはいえ、ワンパック百十円程度のものが二百円ないし二百五十円と倍近くの値上がりが残されたままになっております。トイレットペーパー騒動の原因は、メーカーの卸値三〇%値上げを小売り店が拒否したのが発端といわれておりますが、これから考えても、短期間に倍になるというのは、消費者国民の理解に苦しむところであります。この原因は一体どこにあるのか、明らかにしていただきたいのであります。  また、石油の一〇%削減という消費規制が行政指導で行なわれているにもかかわらず、実際にはそれ以上の供給カットが行なわれている例が多いのでありますが、その原因と対策を明らかにしていただきたい。  さらに、政府は公共交通機関の燃料確保を閣議できめているにもかかわらず、現実にはタクシー用LPガスが不足しているし、また値段も倍にはね上がっております。これによってタクシー料金値上げの動きも続出し、自主料金騒ぎまで起こっておりますが、LPガス業者の売り惜しみ、他への横流し、便乗値上げなどがあるものと思われます。政府はこれらについてどういう対策考えているのか、明確にお答えをいただきたいのであります。  第五に、インフレ抵抗力が弱いものに対する救済措置についてであります。政府は、インフレから国民生活を守る意味で、二兆円減税実施考えているといわれるが、その恩恵に浴さない課税最低限以下の低所得者層や年金生活者を放置しているのは問題だと思います。英国では、物価対策として年金生活者に年末ボーナスを支給しているが、インフレのショックが強く響く低所得者層や年金生活者に対する救済措置として、逆所得税の考え方を導入して、生活安定給付金を支給すべきだと思うが、政府見解をお伺いしたいと思います。  次に、経済政策の転換について質問いたします。  自民党政権は、池田内閣から佐藤内閣と引き続いて経済の高度成長路線を突っ走り、また、佐藤内閣のあとを引き継いだ田中総理は、日本列島改造論を掲げ、依然として高度成長路線を指向されたのであります。経済の高度成長がわが国にもたらした利益を全部否定するものではありませんが、わが党は、公害、住宅難、物価高など、成長によるひずみの増大と世界におけるわが国の資源消費のシェアの拡大を指摘し、成長路線の転換を要求してまいりました。しかし、高度成長路線の転換を求める国内世論には耳を傾けなかった総理も、石油危機という外圧によってその転換を余儀なくされつつあるのであります。  今回の石油危機は、中東情勢の複雑さから考えて短期間に解決するとは思えないし、また、かりに解決したとしても、産油国の立場の強化や世界における石油の需給の状況等により、いままでのように安いエネルギーをふんだんに使える時代は去ったと見るべきでありましょう。安価な石油エネルギーの上に立って高度成長を続けてきたわが国の経済も、その基盤がくずれ去ったといっても過言ではありません。このような状態に至っても、総理はなお日本列島改造論はスローダウンさせるだけだ、撤回はしないとがんばっておられるようでありますが、日本列島改造論は、成長こそ福祉を実現するとの考え方に立って、公害や過密・過疎、住宅難などの経済成長によるひずみを工場の分散化や交通網の整備によって克服し、年率一〇%の高成長を続けていこうとするものであって、言いかえれば、狭い日本列島において高度成長の継続を可能ならしめるための手法なのであります。石油危機によってわが国経済路線の根本的再検討が迫られている今日、日本列島改造論に固執することはナンセンスと思われますが、この点について総理見解をお伺いしたいと思います。  また、ことしの二月に閣議決定された経済社会基本計画も、すでに物価、国際収支などの見通しのズレなどから見直しが必要とされておりますが、今回の石油危機により根本的な変更を加える必要があると思うが、いかがですか。  総理演説では、経済政策の転換姿勢が明確でないと思います。福田大蔵大臣は、従来のような高い成長の持続を困難にする新局面を迎えた、と述べておられますが、この認識は総理と全くズレがないものか、総理の明確な答弁をお願いいたします。  次に、外交並びに安全保障について質問いたします。  今回の石油危機を迎えて感ずることは、わが国の外交の国際関係に対する認識の甘さであります。いたずらに他国の善意を当てにし、国難打開はあくまで自力でなし遂げねばならないという自立の精神に欠けていたと言っても過言ではありません。  また、田中内閣の外交姿勢は、場当たり主義もはなはだしいと言わざるを得ません。総理がヨーロッパを訪れた際には、いわゆるキッシンジャー構想のセールスマンとしてアメリカのお先棒をかつぎ、今度は油ほしさのために親アラブに転換するという一貫性に欠けた印象を与えております。国際外交においては、依然として力による均衡、また、自国の利益を第一義として考えるナショナリズムが厳存することは否定できず、机上の空論やきれいごとは通用しないことは明らかであります。しかし、その中にあって、わが国が武力を背景とせず、資源も持たず、自主外交を進めることは、決してなまやさしいことではありません。それだけに、わが国の外交には、しっかりした基本理念の確立と、手がたい現実主義の双方が不可欠だと思います。  今回の石油危機を通じて、われわれは次の教訓を得たと思います。  その一つは、石油という強力な武器を持つアラブ諸国に対し、バーゲニングポイントといいますか、交渉の武器を持たぬ日本立場がいかに弱いものかということであります。わが国の生命線とも言うべきエネルギー資源の供給国等に対しては、ギブ・アンド・テークの原則に基づいてその関係をより緊密化しておかねばならぬということであります。  その二は、わが国の外交姿勢として、米国のみに依存し過ぎることは危険であると言わねばなりません。今回の石油危機を見ても、米国がみずからの立場を放てきして日本のめんどうを見てくれるなどということはあり得ないのであります。すでに日本米国の庇護者ではなく、パートナーであり、ライバルであることを忘れてはなりません。日米の友好関係の重要性は否定するものではありませんが、政府の対米一辺倒、あるいは大国指向の傾向を改め、中東諸国やアジア諸国に対する政策を強化すべきであります。  その三は、資源が強力な武器であるということは、一面においては大きな緊張をつくり出す要因となることであります。過去の歴史においても、資源が戦争の誘因となった例が多い事実を見ても、このことは明らかであります。  このような事態を極力避けるため、国連に世界資源会議を設け、資源需給についてのルールを確立するとともに、産油国と消費国の調整をはかることが重要と思いますが、いかがですか、政府見解を求めたいと思います。  次に、国家の安全保障の立場に立った経済戦略の確立についてであります。  国の安全を保障し、国民生活を守ることは、単に軍事力のみによって実現されるものではありません。外交、経済など多方面にわたるバランスのとれた施策が必要であることは、かねてわが党が主張してきたところであります。いままでのわが国経済は、経済性の追求に急で、国家の安全保障の立場を軽視してきたきらいがあります。金さえ出せば世界のどこからでもいつでも自由に物が買えるという経済秩序が確立しているうちはよいが、国際関係が不安定になればたちまち危機を招くことになります。エネルギー、食糧その他国民生活にとって重要な資源については、戦略物資として経済的見地のみで判断せず、自給率の向上、代替物資の開発、資源供給国との関係の緊密化、供給先の多角化、分散化、備蓄の増強などをはかる必要があると思うが、この点について政府見解を求めるものであります。  特に、食糧については、単に補助金政策にたよるのではなく、積極的に農業の近代化、生産性の向上を推進すべきであります。また、金属資源についても、公害防止費用の増大、海外鉱との競争力の低下などにより、わが国非鉄金属鉱山は続々閉山に追い込まれておりますが、以上の立場に立ってその政策を再検討すべきだと思いますが、政府見解をお伺いいたします。  最後に、石油危機、悪性インフレなどわが国にとって戦後最大の危機を迎えているが、この難局を乗り越えて国民生活の安定をはかることは政治全体にとっての責任であります。党利党略を離れ、協力すべきは協力し、政治の総力を結集することが必要だと思います。総理は、この際、独断専行を排し、各野党にも協力を呼びかけると同時に、その意見を取り入れるといった姿勢を持つべきだと思いますが、いかがですか。  来年度予算編成にあたっても、各党の意見を虚心に聞き、取り入れるべきは取り入れるという心がまえを持つと同時に、いやしくも参議院選挙目当ての予算を組むごときは厳に慎むべきだと思うが、この点に関し総理の所信をただし、私の質問を終わるものであります。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 田渕哲也君にお答えをいたします。  政治責任等についてまずお答えをいたしますが、石油供給削減は世界各国に大きな影響を与えておることは御承知のとおりでございます。特にわが国の産業、経済に与える影響は、深刻に受けとめなければならないと存じます。政府は、国民生活の安定を確保するために、全力をあげて政治責任を果たしてまいりたいと考えるものでございます。  いつも申し上げておりますとおり、列島改造論は私の著書でございますが、過密・過疎を解消し、全国土の有効利用と均衡ある発展をはかるということが国民福祉の向上のため必要であることは明らかでございます。  「節約美徳」の価値観を強調いたしましたのは、わが国を含め世界各国が当面しておる試練に対処し、国民の理解と協力を求めたものでございます。戦後の荒廃から出発し、今日を築き上げた国民の英知と努力をもってすれば、必ずやこの転換期を乗り切れると確信いたしておるのでございます。私は、国民の理解を得ながら難局に立ち向かってまいりたいと、こう考えておるのでございます。  物価、地価の抑制策等について御言及がございましたが、まず、公共料金は極力抑制的に取り扱ってまいりましたし、今後もこの方針に変わりはございません。現下の地価上昇の基本的原因は、宅地需給の不均衡にございます。供給の増大なしに地価の抑制は不可能であると考えておるのであります。そのため、政府は、全国的な土地利用計画を確立し、特別規制地域制度による地価凍結を実施するため国総法案を提出いたしておるのでございます。  また、重ねて日本列島論について言及がございましたが、日本列島論は私の著書であり、六十年展望に立った一つの試案として国民の前に提供したものでございます。長期的視野から見て必要なものと考えております。  それから前国会から継続審議を願っております国総法案なるものは、昭和二十五年に制定をされましたものである現行国総法の改正案でございます。そして、皆さんが御要求になっておる土地対策、地価凍結、乱開発の防止、公共用地の取得等、当面必要とする緊急案件を解決するために本法案の改正を御審議いただいておるのでございますから、これは早急に成立を期待したいのでございます。  次に、社会保障につきましては、老人、母子家庭等、経済的に弱い立場にある人々のために、社会保障給付の改善など、引き続き施策を強化してまいりたいと考えます。  農業の近代化をどのように進めるかという趣旨の御発言でございますが、生産性の高い農業を確立するための施策としましては、土地改良長期計画に基づく農業生産基盤の整備、農業団地の形成、集団的生産組織の育成、農地保育合理化などを推進してまいりたいと存じます。  また、国民の協力その他に対しての御言及がございましたが、政治は、長期的展望を見失うことなく、きびしい現実に対処して冷静な判断と敏速果断な行動でもって対処していかねばならぬことは申すまでもございません。このため政府は、当面、国民経済の混乱を未然に防ぎ、国民生活の安定を確保するため、国民の理解と協力を得ながらその総力を結集してまいりたいと考えておるのでございます。  このような事態を前提としながら来年度予算案を編成しなければならぬわけでございますから、予算編成に対しましては、院内外の英知の結集を求めておるわけでございまして、建設的な御意見に対しては、皆さんの御意見も十分拝承しながらこれを政策に反映してまいりたいと考えるわけでございます。  また、政府が企図しております緊急なものもすなおにお認めをいただきまして、成立させるものは迅速に成立に御協力のほどを切にお願いをいたします。  残余の問題については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  12. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まず、総需要抑制策の一環として政府の支出の削減目標はどうか、こういうお話でございますが、いま四十九年度予算の編成作業中でございます。これはずいぶん私も抑制方針をとっておるのでございまするけれども、当然増という要素が非常に歳出に多いのでございます。そういう当然増があるいは四十八年に比べまして一七%、一八%、そのくらいの増加と見積もられる、新規も幾らかはつけなければならぬ、こういうことになりますと、新聞等で流布されておりますように二三%増というような形も考えられるわけでございます。しかし、いま総需要抑制というような問題もあり、また、財政の規模が非常にふくらんだというこれ自体にも非常に問題がある。そういうことを考えまして、できるだけ抑制型に努力をしてみたい、こういうふうに考えます。  それからその次に、預金者の預金の物価上昇による損害、これを緩和するための補給、さようなことで金利の大幅な引き上げをしたらどうだ、こういうお話でございますが、大幅に引き上げますと、これは金利関係全体の問題になるんです。貸し出しのほうも上げなければならぬ、こういうことになる。そういうことになりますれば、これはまた物価に逆に影響してくる、こういうことにもなりまして、どうも大幅な引き上げということは考えられないんです。できる限りの物価体系の中での配慮、そういうことを考えてみたい、かように考えます。  次に、逆所得税、生活安定給付金、このようなものは考えられないか、こういうお話でございますが、そういう考え方は私はどうも妥当でない。税を納めない人に何らかの考え方をせい、こういうことでございますが、税とのバランスの上ではこれは妥当ではないと思うんです。しかし、実際、税とのバランスを離れまして、こういう物価のための被害を非常にこうむる、ために生活の脅威があるというものにつきましては、これは特別の配意をしなければならぬ。しかし、一律の補給金という考え方はこれは妥当じゃない、かように考えております。  それから最後に、高度成長政策は転換すべきじゃないか、この点について総理と私の間に何か意見の違いがある、こういうふうなお話でございますが、私は前々から言っておるのです。もうしばしば本席でも申し上げておりますが、これからの経済運営は、物価、公害、国際収支、資源、この四つをにらんでやっていかなければならぬ。そうしますと、これからの経済成長、これは、いままでのような高い成長はできないと思います。これらとの均衡を保つ、そうすると自然に低くなっていかざるを得ない。高い成長が可能でもなし、また、その成長を続けることが妥当でもない、適正でもない、そういうふうに考えます。この点につきましては、総理との間にいささかの見解の相違もございませんから御安心を願いたい。お願い申し上げます。(拍手)    〔国務大臣内田常雄君登壇拍手
  13. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 簡単にお答えを申し上げます。  二点ございますが、第一点は、総需要抑制をする際に、国民総支出を構成する各種の支出項目のうちでどの支出項目から具体的にどのように削るかというお尋ねでございますが、私は、まず第一は、政府支出の抑制ということが第一順位にくるだろうと考えます。国民総支出のうちで政府支出の占めますパーセンテージは、御承知のように二 〇%ぐらいございますので、これは大きな課題でございますが、大蔵大臣からお話がございましたように、明年度予算の編成につきまして十分留意をいたしますことはもちろん、これまでにおきましても、政府支出の繰り延べとか公共事業の契約ベースの調整というようなことをやってまいりましたことも御承知のとおりでございます。  二番目には、私はやはり民間の企業設備の投資抑制ということになるであろうと思います。これにつきましては、金融の引き締めなどを中心にやってまいりましたこともちろんでございますが、先ほども中曾根通産大臣からお話がございましたように、民間の設備投資につきましては、最近の事情にかんがみまして、新規未着手のものはもちろん、継続されているものにつきましても、でき得る限りそれをたな上げないし繰り延べをしていくということで総需要の抑制の項目にいたすべきであると考えます。これまでも民間の大規模建築などについて抑制の行政措置をとってまいりましたことも、田渕さん御承知のとおりでございます。  それから第三番目が、何と申しましても個人の直接消費につきましての抑制ということになるであろうと思います。国民総支出百兆をこえます中で約五二%ぐらいのものが個人消費になりますので、これらのものにつきましては、従来も消費者金融の引き締めでありますとか、あるいは全般的な金融についての窓口指導というようなことも行なわれてまいりましたが、今回、政府におきましては、貯蓄政策について一そうの特別の措置をとることにいたしておりますこともすでに御承知のとおりでございます。その他、国民の消費態度につきましても、消費は美徳ということばを繰り返すわけではございませんけれども、大いにこれらにつきましても、先ほど申した順序で政府が率先して国民の協力を得てまいる、こういうことになるだろうと思います。  第二番目の、本年春に政府で決定をいたしました経済社会基本計画についての問題でございますが、これについては、昨日もいろいろ申し上げたとおりでございますが、私の気持ちとしては、名前は経済社会基本計画でございますけれども、これを経済社会安定計画と、こう読みかえたような気持ちで、生産第一主義よりも、物価の安定、あるいは国民福祉の充実とか、資源のエネルギー多消費経済構造から省資源・省エネルギー経済構造への転換というような面を一そう強く出しまして、この基本計画のフォローアップを十分行なってまいる、こういう考えでございます。(拍手)    〔国務大臣中曾根康弘君登壇拍手
  14. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 現下の石油危機がどの程度続くか、またどの程度の深さになるかという御質問でございますが、これは国際情勢とのからみでなかなか予断しにくいところがございます。アラブとイスラエル戦争ないし確執というものは歴史的な長期間を経てきておるものであって、それが今回火山のように大爆発を起こしたようなものではないかと思います。したがいまして、これは一中東の問題というような観点ではなくして、全人類の課題としてやっぱり解決に積極的にみんなが努力し合わなければならぬ問題で、根本的に解決しなければ、いつでもこういうような噴火現象が起きてくるということをわれわれはおそれなければならぬと思っております。しかし、これが世界経済に対する影響は非常に微妙でありまして、たとえば今度の問題でかなり打撃を受けておるのはヨーロッパや日本であります。特に日本は、ひよわな花であるということが露呈されてきております。しかし、国際通貨を見ましても、円やマルクは落ちておりますけれども、ドルは今度は強くなってきております。経済的に見ても、日本やヨーロッパの経済は落下を行なっておりますが、アメリカは案外強い立場を回復しつつあるのではないか。なぜならば、アラブの石油に依存するところが少ないですから、経済的にもかなりの地位を回復しつつあるのではないかという情勢も考えられるところであります。  しかし、また、国際世論等を見ますというと、日本からいままで国家建設の資材供給を受けていた東南アジアやアフリカの国々から、相当な心配やら注文が日本にいま殺到してきておりまして、鉄とか、あるいは鋼材であるとか、セメントであるとか、肥料であるとか、発展途上国国家建設に最も緊要な物資の輸入が断たれるのではないか、確実に供給してくれるかというような心配が殺到してきております。これは間接的にそういう世界的な波及を持ってきておるのでありますけれども、それらの国の不安や心配というものが、国際世論を形成する上にどういうような影響をまたイスラエルやアラブにもたらしてくるか。そういうようないろいろな問題もありまして、いつまで続くかということは、これは神さまでなければわからぬ問題でありますが、しかし一応、われわれは、この問題は本質的にかなり根の深い問題でありますから、ある程度長期的に続くという考えに立って政策を進めております。  それで、石油削減量は、大体先ほど数字を申し上げましたが、一六%程度一応三月までは切られる、あるいはもっといくかもしれぬというので、一六%程度ということを頭に置いて諸般の政策を進めております。  それから第二に、需要削減の問題については、内田さんからお話がございましたが、産業構造の転換の問題は、これは非常な大きな教訓を今回得たわけでございまして、省資源、知識集約型に日本が急速に進まなければならぬ、特に省資源産業というものをわれわれが強く育成しなければならぬということを非常に痛切に教訓を受けたわけでございまして、われわれもこの点については大いに推進してまいるつもりであります。  さらに、非鉄金属あるいは資源的安全保障の問題はまことに同感でございまして、この石油の教訓というものは、弱い国が政治的主張を遂げようとする場合に、武器がないという場合には資源を使う、合理的な主張を通そうとする場合には資源を使い得るということが如実にわかったわけであります。これは石油だけではなくして、アルミでも、ニッケルでも、銅でも、その他の問題でも起こり得る可能性はあると思うのでございます。そういうような教訓をわれわれは秘めまして、資源的な世界的な日本供給体系を再検討しながら、いま申し上げたような諸般の非鉄金属あるいは食糧等について周到な外交と備蓄政策その他を進めていかなければならぬ、このように考える次第でございます。(拍手)    〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  15. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 資源問題に対する国際的な取り組み方についての御意見をまじえての御質問でございました。  御案内のように、国連におきましては、一九七一年以来、天然資源委員会が発足いたしまして、わが国を含めて五十四カ国が討議に参加して、これまで水資源の開発を主として取り上げてまいったのでありまして、今後、鉱物資源、エネルギー資源を逐次検討する予定に相なっております。OECDにおきましても、石油のスキーム等が討議の中心になっておりますことは、御案内のとおりでございます。御指摘のように、このような国連の場その他の場におけるあらゆる機会をとらえまして、資源保有国を含む開発途上国の立場を十分尊重しながら、資源問題の公正な解決のためにわが国としても努力を惜しまない決意でございます。御指摘にありました世界資源会議考え方もそういうラインで検討させていただきたいと思います。  対米一辺倒あるいは大国指向型を改めろという御注意でございます。私ども、日本並びにアジアの平和と安定の立場から日米協力が大事だということを外交の基本といたしておるわけでございまして、対米一辺倒あるいは大国指向型の外交をとっておるつもりは毛頭ございません。(拍手)     —————————————
  16. 河野謙三

    ○議長(河野謙三君) 岩間正男君。    〔岩間正男君登壇拍手
  17. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、総理並びに関係各大臣に質問いたします。    〔議長退席、副議長着席〕  現在、年の瀬を控えて、国民に大きな不安を与えている物価の暴騰、物不足石油危機などの重大な事態が、歴代自民党政府、特に田中内閣の大企業奉仕、アメリカ従属の政治から生まれたものであることは、国民のひとしく認めているところであります。  ところが、総理は、所信表明演説の中でも、また衆参両院の答弁においても、全く無反省、無責任態度に終始しております。ある新聞は、国政責任者としての適格性を疑うとさえ述べているではありませんか。総理、あなたには国民の苦しみも不安も目に入らないのですか。ちまたにあふれている国民のごうごうたる非難の声が耳に入らないのですか。私は、総理が厳粛に国民の声に耳を傾け、率直にあやまちを正すべきことを最初に要求して質問に入ります。  まず第一は、物価の暴騰といわゆる物不足の問題であります。  政府は、事あるごとに、物価安定対策を最重点にすることを言明してきました。しかし、現実は、総理が否定するといなとにかかわらず、悪性インフレは大企業にばく大な利益を生み出す反面、物価は暴騰し、国民生活はますます耐えがたいものにしているのであります。大会社の九月期決算によれば、合成繊維の四倍以上をはじめとして、化学、鉄鋼など、価格引き上げの著しかった業界ほど、三月期に比べ大幅な利益の増加を発表しております。このことは、大企業の横暴と荒かせぎこそが今日の物価暴騰最大の原因であることを明白に物語るものであります。しかも、歴代の自民党政府は、大企業のこの横暴を野放しにし、さらには政府関係金融機関、日本銀行、大銀行などを通じて成長資金、投機資金をまかなうなどインフレ政策を続けて今日の事態を引き起こしたのであり、その責任は免れません。特に、田中総理、あなたは、大企業本位の日本列島改造計画によって、高速自動車道路網の建設その他大規模な公共事業を強引に推し進めて、地価や建設資材をはじめ諸物価高騰させてきたではありませんか。しかも、そのために国の財政資金を湯水のように注ぎ込む一方、公共料金を大幅に引き上げるという最も乱暴な政策をとった最大責任者ではありませんか。今日の物価高騰を押えるためには、何よりもこれらの根源を改めなければなりません。  そこで、総理に伺います。公共料金の引き上げをストップし、国鉄運賃消費者米価値上げ撤回はもちろんのこと、計画されている郵便料金値上げを取りやめる考えがあるかどうか、明確な答弁を求めます。  また、大企業の製品価格引き上げと売り惜しみ、買い占め、投機などをきびしく押えることが急務であります。政府は、買い占め売り惜しみ臨時措置法を改正すると述べていますが、灯油、ちり紙、洗剤、石けん、砂糖など、大企業の投機がこれほど横行しているときに、この法律をさえ一回も発動しなかったのはなぜですか。政府がこのような大企業奉仕の姿勢を変えない以上、法改正も絵にかいたもちになることは明らかであります。私は、大企業の投機に対し放出命令を行ない、違反者を処罰することなどを内容とする法改正を主張するとともに、政府が大企業奉仕の姿勢を改めることを強く要求するものであります。  また、この立場に立って、いま準備されている生活安定法案も、値上がりの激しい製品に対し、民主的に構成された審議会などで原価を公開し、出荷・卸・小売りの各段階の標準価格を設定し、これをこえるものに対して引き下げ命令を出させるようにするなど、大企業の反社会的行為を押えるきびしい内容のものとすべきであります。また、超高度成長、インフレ促進の日本列島改造構想総理はきっぱり放棄すべきであります。総理並びに関係大臣答弁を求めます。  次に、総理は、国総法案が土地対策の基本法であるかのように述べております。しかし、今日の地価暴騰の最大の原因が大企業の土地買い占めにあることは、経済企画庁でさえ、法人の土地保有がすでに四十万ヘクタールにも及んでいると発表していることでも明らかであります。土地対策としては、大企業の買い占めた土地に収用措置を講じ、これを国民に再分配することを柱とした、わが党の第二次土地改革の構想を断行することこそが急務であります。  わが党は、昭和二十五年、第七回国会で、現在の国土総合開発法が制定された際、五月二日の衆議院本会議では、わが党の米原昶議員が反対討論に立ち、この法案が、国土開発ではなくて、明らかに国土破壊の計画になっていくことを指摘しました。参議院でも、私を含めてわが党だけがこの法案に反対しました。この正しさは、今日の事態が明確に何よりもこれを証明しているではありませんか。ところが、この二十三年間、自民党政府は、この国総法を土台として各種の開発法を次々に提案し、大企業本位の政策を推し進めてきました。その結果が、日本全国におびただしい公害と物価上昇、地価のつり上げを引き起こしたのであります。それにもかかわらず、政府は、土地対策と称して、いままた新国総法を押し通そうとするのではありませんか。現行法以上に大企業奉仕の新国総法案の撤回を、あらためて政府に強く要求するものであります。  また、総理は、昨日の衆議院本会議答弁の中で、昭和二十五年度制定の国土総合開発法が、与野党一致で成立したと発言されましたが、これはわが党の一貫した立場と事実に反するものでありますから、この際、率直に発言を取り消すことを要求するものであります。  質問の第二は、現在すでに物価暴騰によって深刻な打撃を受けている国民の暮らしをどう守るかという問題であります。  インフレ物不足は、何よりも年金生活者、生活保護世帯などにとりわけ深刻な影響を与えています。全国の生活保護者は一カ月の物価手当を要求しています。政府は、この要求を直ちに取り入れるとともに、老齢福祉年金を二万円に、国民年金を三万円に、厚生年金を夫婦で六万円に引き上げるなど、社会保障制度の緊急な改善を直ちに断行すべきであります。  また、窮迫する国民生活と経営を守るために、大衆減税が不可欠となっております。政府は、補正予算においても大幅な所得減税を行なうとともに、来年度は所得税の免税点を四人家族百八十万円に引き上げ、同時に、独占価格のつり上げで大きな利益をあげている大企業に対する租税特別措置その他による特権的減免税を廃止するとともに、大企業に対する法人税率を引き上げて、不当な利益を吸い上げるべきであります。総理並びに関係大臣責任ある答弁を求めます。  次に、国民生活に欠くことのできない社会施設、生活環境施設の問題であります。  今日、すべての地方自治体で、特に保育所、学校、上下水道、公営住宅、公園などの建設が、インフレ物不足のあおりを受けて大幅におくれておりまして、事実上実施ができなくなっているのであります。ところが政府は、今回、当然増額すべき地方交付税さえ事実上凍結しようとし、さらには地方債の許可権をたてに、上下水道その他ほとんどの事業の執行繰り延べさえ通達しているではありませんか。これでは、物価高騰に苦しむ国民生活と超過負担や単独事業の増加に苦しむ地方自治体の財政に政府自身が追い打ちをかけることではありませんか。  政府は、大企業本位の列島改造関係事業などを規制し、国民に必要な社会文教施設、生活環境施設の整備の経費を大幅にこの際増額すべきであります。総理並びに自治大臣の答弁を求めます。  質問の第三は、石油危機についてであります。  今日、深刻化した石油危機は、国民生活の各分野に深刻な影響を及ぼし、日本経済に重大な打撃を与えております。ところが政府は、どろなわ式の緊急対策や需給規制の立法などを行ないながら、総需要抑制の名のもとに国民全体に節約運動、耐乏生活を強要しようとしております。政府は、三百八十円灯油を確保すると言っていますが、実際には確保されていないではありませんか。これすらできないで、どうして物価を安定することができますか。灯油は現在五百八十万キロリットル、約六十日分確保されているといわれており、大企業の売り惜しみ、買い占めさえなければ、何とかこの冬は越せるはずであります。問題のかぎは、どう大企業の売り惜しみをなくし、灯油の民主的配分を行なうかということです。そのためにも、この五百八十万キロリットルの灯油をだれがどこに一体持っているかということを国民の前に公開していく必要があります。政府はこれをやるつもりがあるかどうか、はっきりと御答弁を願いたいと思います。  また、すでに減ページに追い込まれるなど重大な事態を迎えている新聞の用紙の問題であります。総理は、できるだけ配慮していきたいと昨日答弁しておりますが、具体的にどんな措置をとるのか、その見通しは一体どうなのか、これは国民生活と民主主義の基本にかかわる問題でありますから、具体的な答弁をお願いしたいと思います。  ところで、今日、わが国が直面している石油危機は、そのもとをただせば、歴代自民党政府の対米従属エネルギー政策と大企業本位の高度成長政策の結果であることは、もはや明白であります。すなわち、自民党政府は、一九六〇年の安保改定以来、アメリカ石油独占の利益のため、わが国の重要なエネルギー資源である石炭を一兆円余りの国費まで投じて乱暴に押しつぶし、アメリカ石油資本への依存を強め、重化学工業中心の高度成長を進めてきたことは、いまやまぎれもない事実であります。その結果、今日では、全エネルギーの七四%を石油に依存し、石油輸入の七九%をアメリカ系を中心とした国際石油資本にたより、わが国のエネルギー自給率は世界の主要工業国の中で最低になっているのであります。  今日のこの事態を自主的に解決するために、国内資源の開発、特に、なお二百億トンの埋蔵量を持つ石炭の大増産と、水力その他のエネルギー資源の全面的、合理的利用を積極的に進めることであります。そしてわが党が従来から主張してまいりましたように、石炭、石油、ガス、電力、原子力を含めたエネルギー問題を総合的に解決する総合エネルギー公社創設の問題は、いまこそ真剣に検討されるべきときであると考えます。総理並びに関係大臣見解をお伺いしたいのであります。  石油危機の直接の原因は、政府が、対米追随外交によってイスラエルへのてこ入れに同調し、アラブ諸国の強い不信を買ったことであります。最近、政府は、背に腹はかえられず、油ほしさの新アラブ政策を発表しましたが、この深刻なエネルギー危機をもたらした対米追随外交にせよ、対米従属的なエネルギー政策にせよ、その根本がまさに日米安保条約にあることは、議論の余地のないところであります。日米安保条約が軍事的にわが国の安全をそこなっているだけでなく、経済的にもわが国国民生活に重大な打撃を与えていることを政府は率直に認めるべきであります。すでに国民の七割以上が中立を求めていることは、世論調査の結果でも明らかであります。私は、現在の深刻な事態を踏まえて、あらためて日米安保条約を廃棄して、中立政策をとり、非同盟諸国会議への参加と、石油産出国はもちろん、すべての国との自主的で平等互恵の経済関係を結ぶこと、これこそが今後ますます重要となるエネルギー資源問題を安定的に解決する国際的な保障であることをここに強調いたしたいと思います。(拍手)  さらに、私は、エネルギーとともに国民食糧もまた深くアメリカに依存していることを指摘しないわけにはいきません。今日、歴代自民党政府の政策の結果、国民の消費する農産物は、カロリー計算ですでにその五割を、大豆小麦は九割以上をアメリカその他の国に依存するに至っております。このようなことでエネルギー危機と同様の事態が食糧の上にも起こらないとだれが保障できますか。しかるに、田中総理は、この時点に立って、なお農地三十万ヘクタールの工業用地その他への転用を強調するありさまであります。私は、国民生活日本経済の直面している根本問題として、農業を基幹的な産業としてその多面的な振興をはかり、日本経済の自主的、平和的なつり合いのとれた発展をはかること、外国農産物の過度の輸入を制限し、おもな農産物に対する価格保障制度の確立と農用地の積極的拡大を進むるべきであると思いますが、いかがですか。  総理、今日の事態の最大の教訓は、総理自身も強引に推し進めてきた歴代自民党政府の内外政策を根本的に転換する以外には、事態の正しい解決はあり得ないということであります。この点を含め、総理並びに関係大臣答弁を求めて私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  18. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 岩間正男君にお答えをいたします。  第一は、物価問題等についてでございますが、公共料金の抑制につきましては、従来特に慎重に対処してまいりましたことは、御承知のとおりでございます。  なお、すでに決定をせられました国鉄運賃、米の政府売り渡し価格につきましては、国会の十分な議論を経、あるいは関係審議会、政府の慎重な検討の上で決定をせられたものでございまして、これを撤回することはできないわけでございます。  郵便料金につきましては、目下郵政審議会において検討中でございまして、値上げが決定されたわけではございません。  それから政府は、買い占め売り惜しみ法に基づきまして、灯油ガソリン、紙等、国民生活関係の深い物資を特定物資として指定をいたしまして、投機的取引の防止につとめておるのでございますが、この際、同法を改正いたしまして、特定物資の範囲の拡大、売り渡し命令の創設等、規制の強化をはかる考えでございます。  なお、現在までに、灯油につきましては、供給量の確保、元売り価格の凍結、合成洗剤等につきましては、緊急出荷等の行政措置を強力に行なってまいったのでございます。また、元売り等につきましては、出荷制限を行なわないよう行政指導を強めてまいりたいと考えます。  なお、国総法の問題でございますが、国総法につきましては、もう先ほどから何回も申し上げましたとおり、国土の有効利用と土地規制を含む土地対策の基本法的な性格をになうものであり、これを撤回する考えはございません。岩間君が御指摘になりましたように、すべての民間の持っておる土地を国有にし、また、これを地方公共団体が買い上げるということをほんとうに考えたならば、膨大もない資金を要することでございまして、それこそ予算抑制などというものではなく、一挙にインフレになるおそれがあるということでございまして、現在ある土地をいかに高度に利用するか、合理的に効率的にこれを公共のために利用するかということを考えるほうが当然でございまして、国総法はそこをねらっておることをよく御理解いただきたいと思います。  また、現在の国総法は、昭和二十五年五月一日衆議院を通過し、五月二日に参議院を通過し成立したものでございますが、私がきのう衆議院の本会議で与野党一致と申しましたのは、厳密には一党を除く全党の賛成という意味であったことをこの際申し上げておきたい、こう思うわけでございます。  老人、母子家庭、生活保護者等経済的に弱い立場にある人々のため、社会保障給付の改善をはじめ社会保障の充実には今後とも努力をしてまいりたいと考えます。  また、減税につきましては、国民の要望に沿う形でぜひ実施したいと考えております。なお、その一環として、法人税の引き上げ実施したい考えであります。最終的には、四十九年度予算編成の過程で決定をいたしたいと考えておるのでございます。  また、地方公共団体の事業の繰り延べは、緊急に整備を要する施設や、住民生活に直接影響を与えるような事業まで対象としておるわけではないのでございまして、誤解をなさらないようにしていただきたいと思います。  なお、追加地方交付税の一部を既往借り入れ金の返済に充てましたのは、総需要抑制の見地から適切な措置であったと考えておるのでございますし、また、自治体とも十分話し合いの上、実行いたしたことでございます。  資源問題に対してでございますが、国民生活に関連の深い一般家庭用、農林漁業用、公共輸送機関、病院、学校等の公共性の高い施設の使用する石油、電力等は、その適正な必要量確保につとめてまいりたいと考えるわけでございます。  それから資源の節約の中で、新しい資源を見直さなければならないということでございますが、そのとおりでございまして、原子力の開発、水力発電の見直し、石炭その他国内資源の活用、無公害の新エネルギーの開発等、十分検討し、これを推進してまいりたいと存じますが、これらの事業推進のためにも、御理解と御協力のほどを切にお願いを申し上げたいと存じます。  食糧につきましては、国内生産が可能なものにつきましては、当然安定的に国内で生産することを考えなければなりませんが、大豆のごとく国内で安定的に供給することの不可能なものにつきましては、長期安定輸入、開発輸入等について万全の施策を講じてまいりたいと考えます。  また、新聞用紙についての御発言でございますが、現下の情勢にかんがみ、適切な情報を提供するために必要な用紙の確保について遺憾なきを期してまいりたいと考えます。  最後に、日本経済の転換期についての基本的な考え方について御発言がございましたが、産業の発展や国民生活の向上を豊富で低廉な石油エネルギーに依存することには、多くの制約を伴うことが明らかになった現在、国民生活の内容や産業構造を新しい視点から見直す必要が出てまいったわけでございます。そして生活優先、福祉充実の政策運営を推し広めて、潤いのある生活空間と多彩な余暇空間を積極的に創造し、すべての人が安らぎの中で生き生きと働き、住み、楽しむことができるようにしていかねばなりません。これが政府・自民党の政治目標でございます。  残余に関しては、関係閣僚からお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  19. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 物価上昇の中で社会保障費などには特別に配慮せよと、こういう御意見でございます。これは、原則論としてはそのとおりに考えます。すなわち、四十八年度におきましても、生活保護費の引き上げを行なう、その上に、さらに最近の情勢を考慮いたしまして、五%の積み上げを行ないまして一九%とすると、そういうことをいたすわけであります。また、社会・公共事業の経費の繰り延べにあたりましても、社会保障施設につきましては例外的に特別の配慮を行なう、かような配慮をいたしております。  それから四十九年度における税制改正、これに対する御意見でございますが、まず二兆円減税、この中におきまして、免税点を百八十万にせよと、こういうようなお話でございます。これは、二兆円減税の中でバランスをとりましてその内容を検討しますと、百八十万円はとうていむずかしゅうございます。二兆円のワク内でありますると、どうしても百五十万円が精一ぱいであると、こういうような状況でありますので、御理解のほどをお願い申し上げます。  なお、その財源といたしまして、法人税率の引き上げを行なうべし、こういうお話でございます。この点につきましては、さように考えておりまして、どの程度の税率の引き上げがよろしいか、そういう点、それからなお租税特別措置の洗い直しをこれと関連を持ちながらやってみたいと、かように考えております。  次に、昭和四十九年度予算の編成にあたりまして、列島改造予算、防衛費を削減せよ、こういうようなおことばでございますが、おそらく列島改造予算というのは、岩間さんのおっしゃるのは国土総合開発的なもの、こういうようなことであろうと、こういうふうに理解をいたします。明年度の予算編成にあたりましては、すでにしばしば申し上げておりまするとおり、これは厳粛に抑制的な方針をとっていきたい、かように考えておるのであります。国土総合開発的なものにつきましても、あるいは防衛関係につきましても、この基本方針に基づきまして適正妥当な結論を得るようにきめてみたい、かように考えておる次第でございます。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣中曾根康弘君登壇拍手
  20. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 先ほど田渕さんの御質問の中で答弁漏れのところを御答弁申し上げます。失礼いたしました。  LPガスの値段の問題でタクシーその他に三〇%−五〇%の要求が出ているではないか、こういうお話でございます。確かに、一部にそういう現象がございまして、これはおそらく元売りあるいは小売り等におきまして手持ちの少ない部分がそういう高い値をあるいは出したのではないかと思っております。しかし、総体的に見ますと、そのような値段をつけるべきものではない状況にございますので、そういう場合には業者間で融通させまして、安定的な値段供給するように努力してまいりたいと思っております。大体、LPガスの需要を見ますと、家庭用、業務用等で四六%、自動車用で一六%程度で、大部分これはタクシー関係の自動車で消費しているわけでございます。  それから第二に、トイレットペーパーの価格の急騰の問題でございます。トイレットペーパーは、昨年に比べまして一六%増の増産をやっておるのであります。数量にいたしまして大体十三万八千トン、一六%増をやっておるのでございます。ところが、関西方面におきまして、一部で主婦が焦燥感にかられまして買い急ぎを行ないました。それが東京にも波及いたしまして、先般あのような事態が起こったのでございますが、さっそく、当局としましては、三万五千ないし二万ケースの急送をその地区に行ないまして、それによりまして大体鎮静いたしたのであります。現在、スーパー等で売っている値段は、二百円から二百五十円、小売り店で部分的に高いもので三百円程度でございます。これにつきましては、売り惜しみ買いだめ規制法の中の特定物資に指定いたしまして、価格を低水準に据え置くように今後も努力してまいるつもりでございます。     —————————————  岩間議員の御質問は、大部分総理がお答えになりましたが、エネルギー公社の問題でございます。通産省といたしましては、資源エネルギー庁をつくりまして、かなり強い行政指導をもちましていま強力に進めております。  そこで、石油につきましては石油公団、石炭につきましては石炭に関する事業団等を使いましていま諸般の政策をやっておるところでございまして、もし要すれば、これらの公団、事業団の法改正をいたしましてそれに当てたい、こう考えておりまして、エネルギー公社をつくる考えについては、目下消極的でございます。  それから石油の重点配当につきまして、これも総理から御答弁がございましたが、とりあえずは中小企業や農業等のことも考えましてあっせん所をいまつくるように準備しておりまして、これによりまして需給調整を行ないたいと思っております。  新聞用紙の問題につきましては、総理から御答弁がございましたが、先般も協会から御陳情がございまして、言論機関を尊重するというわれわれの考え方もございまして、業界に対しましてその趣旨を伝えて、できるだけ希望に沿うようにいま行政指導しておるところでございます。(拍手)    〔国務大臣町村金五君登壇拍手
  21. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) さきに政府は、地方公共団体に対しまして、総需要抑制に協力していただくために、公共事業の繰り延べについて要請をいたしたのでありますが、社会福祉施設生活環境施設など、国民福祉の観点からその整備を進める必要のある事業につきましては、繰り延べを最小限度にとどめたのであります。今後ともその整備に支障が起こらぬように配慮してまいりたいと考えております。  次に、今回御提案申し上げております地方交付税の補正増額は、交付税を凍結するものであるという御指摘でございますが、これは公務員の給与改定に要する経費や、さらに物価上昇に伴う所要経費など、現時点において必要とされる支出の財源に充てることにいたしておるのでありまして、その残余は、これを交付税特別会計における借り入れ金の減額に充てまして、地方財源の安定確保をはかるということにいたした次第でございます。(拍手
  22. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 答弁の補足があります。田中内閣総理大臣。    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  23. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 岩間君の御質問中、大企業の買い占めておる土地を国で買い取るべしとの発言があったようでございますが、現在、公社、公団、地方公共団体等が必要なものについては業者の協力を求めて拠出をさしておるわけでございます。相当部分の実績があがっておるということは御承知のとおりでございます。ただし、全部これを買い上げるということになれば法的措置も必要でございますし、膨大な予算を要しまして、現在のような予算抑制状態に適合しないということを私はその面から申し述べたわけでございます。国総法の改正案を見ていただくとよくわかりますが、必要なところは国や地方公共団体が特定地域と指定をすれば乱開発も押えることができますし、三年間は地価の凍結も行なうことができるようになっておりまして、公共の用に供し得るわけでございます。  以下、補足追加して答弁を申し上げます。     —————————————
  24. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 竹田四郎君。    〔竹田四郎君登壇拍手
  25. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、日本社会党を代表し、総理所信表明に関連し、当面の諸問題につき質問をいたします。  去る一日の演説、その後の答弁を見聞するにつけまして、国民をパニックに追い込んだ物価狂騰について、総理態度には反省もないし、物価値下げの決意の一片さえ感じ得られません。  田中総理は、その経済政策において大きな誤りをおかしてまいりました。決断と実行を看板にして国民の支持を求めたにかかわらず、金融財政政策は優柔不断であり、国民のためには自民党はつぶれてもよいと公言をいたしましたが、政策はすべて自民党の党利党略のものでありました。  ここに、ある主婦の調査を持ってきましたが、みそ、しょうゆ、プロパンガス、タオルなど、日常生活物資の小売り価格は、昭和四十三年九月から昭和四十七年の六月、田中総裁出現直前までの四年間の値上がり率より、昨年の六月からことしの九月までの一カ年の値上がり率が同じか、あるいは同率以上のものが実にたくさんあるのであります。昨年の秋ごろは金融引き締めをきびしくすべきでありましたのに、総選挙があるといってちゅうちょし、むしろ貸し出しをふやしました。景気は上昇過程に入っているのに、トリレンマと称し、列島改造を含む公共事業費の大幅拡大をいたし、大企業の過剰生産力のはけ口を与え、総需要の喚起をさえ行ないました。政府は、通常国会を早目に召集して、かっこうだけは強力措置を見せていますが、国民からの信頼を失ってしまっている以上、所期の目的達成はきわめて困難でありましょう。国民の不満はうっせきし、それはやがて爆発するかもしれません。  第三次田中内閣の面々、タカ派で異名をとっている人が多数入閣し、有名な青嵐会のメンバー、旧職業軍人、警察出身者も顔を並べております。また一方では、騒乱予備罪という治安立法も準備されております。国民は、挙党一致内閣というよりも、がらがらの強権内閣の出現だと思っております。田中内閣といろあばれ馬は一体どこへ行くのかという不安と心配のほうが気が気でなりません。一昨日、わが党の藤田高敏議員は、ファシズムの危険をすら感ずると言われましたが、私も全く同感であります。  田中首相は、この一年間のことについて徹底的に自己反省をし、平和憲法をきびしく順守し、民主的な手続に徹し、福祉最優先の政治を断行する決意をこの席から述べるべきであると思うわけでありますが、所見を求めます。  第二に、物価危機を回避するためには、その責任を他に転嫁することではなく、今日この段階で、私案であろうとメモであろうと、諸悪の根源である列島改造論の旗をみずから直ちに引っ込めることにより、総需要抑制への決意を示し、経済政策の転換を明示することであります。インフレに便乗して大もうけをするような大企業に対しては大幅な税金をかけ、防衛費の大幅削減など、断固たる処置を示すことにより、物価安定、物価引き下げの決意を示すことであります。  現実に政府石油の元売り価格の凍結を行なったにもかかわらず、おひざ元の石油連盟は、十一月一日にまでさかのぼって石油価格の三五%から五〇%の値上げやあるいは数量ワクの決定を協議し、独占禁止法違反の行為を平然と行なっており、売り惜しみの実態は明らかであります。また、石油小売り価格十八リッター店頭売り三百八十円を指示しましたが、これもついに実行に至らないという羽目であります。連盟も業者も首相の腹を見透かしてしまっているのであります。  また、食用塩についても申し上げます。塩専売法という法律が現存しているにもかかわらず、二十円の塩が二十八円や四十円で現実に売られているのであります。当然違反について直ちに検査をし、摘発をし、処分をさるべきでありますが、政府は、今回提出されようとしております二法以上に強い権限を持っていながら、それを公表もしなければ処分もしないのであります。最近の違反の実態の公表をこの席で求めます。この二、三の例を見ましても、物価を最優先の課題にしていないことは明白であります。  また、田中首相は、みずからの責任を他に転嫁することをやめるべきであります。今回の石油危機についても、首相みずからがあおり立てた形跡すらあるわけであります。山下通産次官が述べているように、長期かつマクロにおいては石油節約は行なわねばなりませんが、おおむね昨年並みの確保はできるということを言っているのであります。田中首相は、これからはオーバーを着て会議をする、こういうことを新聞記者に述べております。こんなことは各人の知恵でやることです。一国の総理がこんなことを口にすべきではありません。物価高騰理由石油海外インフレや個人の消費支出に転嫁をして、自己の保身にやっきになっているこの姿を、ある主婦は、まるでゴキブリのようねと評していました。まあ、たとえるほうもたとえるほうだと思いますが、妙を得ていると思うのであります。一国の宰相がゴキブリに評されるようでは困ります。田中内閣の経済政策の転換を明確にするには、先ほど申しましたように、列島改造論の旗を下げる以外にありませんし、不当利得者に対しては断固たる処分と勇断を示すべきでありまして、これができなければいさぎよく退陣すべきであると考えますけれども、御決意のほどを伺いたいと思います。  第三は、福田大蔵大臣に伺います。  福田さんは、田中総理と長い間話し合った後に、第三次田中内閣の最も主要ポストに参加をしたわけであります。蔵相就任前の福田さんの発言を見ますと、田中首相との間に相当大きな開きを感じさせます。福田さんは、あなたが批判をした田中路線を変更し、政策の転換を求めて受諾されたのかどうか、この点を伺いたいのであります。列島改造にしましても、新幹線、高速道路網にしても、あるいは二兆円減税にしろ、インフレ物価の原因にせよ、首相とは違っているのであります。福田さんは、安定路線あるいは公共事業の縮小を言っているのであります。田中路線を修正していくつもりがあるのかどうなのか、イエス、ノーでお答えをいただきたい。  第四に、財政、予算、税制についてお尋ねをいたします。  今日の物価情勢は、卸売りで対前年同月比二〇%以上、消費者物価指数で公表数字では一四・八%、勤労者にとっては二〇%以上、一部では二五%説も出ている状態であります。総需要を抑制して物価の安定をはかることは、いまや天の声であります。政府はいまや予算大綱をつくり、大蔵省は査定中であり、大臣査定の直前を迎えております。四十九年度予算一般会計、特別会計、財投計画とも大幅に縮小をすべきであると思いますが、まず、これらは対前年度比何%ぐらいを考えているのか、また、四十八年度予算については、公共事業費について大幅な減額補正を行なうべきであろうと思いますが、この点を伺います。  また、インフレ手当〇・三カ月分の繰り上げ支給を行なうということでありますが、これはインフレ手当というよりも、私は税金手当といったほうがよかろうと思いますけれども、いずれにしても年度末の〇・五カ月分の補正はいつどういうふうにやるつもりなのか、お伺いをいたします。  総需要に対する波及効果の大きな新幹線、高速道路、データ通信、港湾、空港等の公共事業費は大規模に圧縮すべきであろうと思います。昭和四十八年一般会計、特別会計、財政投融資関係公共事業費は、大蔵省の資料によりまして約七兆、このうち、新幹線、貨物線の増強を内容とする鉄道関係一兆円、道路整備特別会計、各種道路公団、本四架橋公団等々一兆七千億円、電電公社が一兆二千五百億、合計約四兆円で約六割にも及んでいるのであります。これが地価をつり上げ、物不足を引き起こしたことは、各種委員会で明らかにされたところであります。この際、産業基盤関係の事業を切り捨て、生活基盤関係の義務教育学校建設、上下水道の整備、福祉施設関係を重点とすべきでありますが、どの程度産業基盤整備の事業費を削り、後者をどの程度伸ばすつもりなのか、御答弁を願いたい。  次に、法人税率について一体どうするつもりか。田中総理、故愛知大蔵大臣は四〇%に引き上げると言っていたが、これは一体どうするつもりか。法人税の税率を三段階制にして、中小企業には軽課、大企業には四二%以上の税率を課すべきであろうと思いますが、どのように考えておられるか。配当の軽課も引き上げるべきであろうと思いますが、この点もお答えをいただきたいと思います。  トヨタ、日産、松下電産、新日鉄など、この半年の間に二百億から三百億の利益をあげており、また、国民の貯金、他人資本を利用してのインフレ利得もこれらの企業は得ておりますし、不況カルテルによる寡占価格、便乗値上げなど、不当利得を得ており、かつまた、租税特別措置法などによって優遇措置をも得ておるのでありまして、利益に対する租税負担率では、十億円以上の資本金を有する法人と以下の中法人とでは、約五%軽くなっているのであります。経済政策の転換をはかるとすれば、法人税に対し徹底的に再検討をし、この財源をもって低所得層、老人、身障者などの生活保障をはかるべきであると考えますが、いかがでしょうか。貸し倒れ引き当て金、海外市場開拓準備金、キャピタルゲインに対する分離課税制度も縮小あるいは全廃をすべきでありますし、資源の浪費をもたらしておる広告費、交際費に対する課税を強化すべきであります。  次に、揮発油税などの道路財源に充てられるべき税について、さらに多くの割合を市町村に譲与し、整備のおくれている市町村の生活道路の整備改善に充てるべきであると考えます。ガソリン税キロリットル当たり二万四千三百円、そのうち四千四百円が市町村に、また、重量税では四分の一が市町村に渡ることになっておりますが、ガソリン税の大部分は道路整備特会の歳入となり、自動車道路の建設に充てられておりますが、総需要抑制を柱としていながら、この財源面から道路関係公共事業費の縮小をはかるべきであると考えます。また、現ガソリン税の考え方自体が高度成長時代の遺物とも言うべきであり、訂正すべきであろうと思いますが、どうお考えでございますか。  第五に、公共料金の据え置きと低所得層への援助についてであります。  大法人に対する課税を強化し、それを財源として米麦価の据え置き、国鉄運賃据え置きの措置を講じ、便乗値上げなどの行為をやめさせるようにすべきであろうと思います。政府の米麦の売り渡し価格の引き上げによって、すでに自主流通米の価格が引き上げられているだけではありません。十二月一日から、今回の政府措置と全然無関係な干しうどんが一パック二十二、三円から四十三円に値上げをされておりますし、また、店頭からは小麦粉が姿を消している原因になっているのであります。誤りを正し、断固米麦価、国鉄運賃等の値上げを撤回し、据え置きをはかる勇断を行なうべきであります。かつまた、物品税の引き上げもこの際中止すべきであります。また、市町村の住民福祉関係施設建設資材は政府責任をもって確保すべきであろうと思いますが、この点について伺いたいと思います。  この高物価の中で、低所得層、特に老人、身体障害者、寡婦等の年金、生活保護費の大幅な増額をはかるべきであります。ここに船橋市在住の重度身体障害者の宮尾修さんの電話料金の資料がありますけれども、広域時分制を採用した結果、一−三月の月平均電話料金三千四百五十五円が、時分制の採用をされた四−十一月の月平均は六千百九十四円、約三千円の支出増になっております。一方、年金のほうは、九月まで月五千円、十月から七千五百円、二千五百円増にすぎないわけであります。年金の大幅引き上げを行なうべきであろうと思いますが、厚生大臣の所見を伺いたい。  第六に、勤労者財形貯蓄制度を抜本的に改正し、日本がモデルにした西独並みのものにすることを要求いたします。  インフレは、勤労者の生活を圧迫するだけでなく、唯一の貯蓄形態となっております預貯金の著しい減価を招いております。社会保障が低劣なために、勤労者は自己防衛のため強制的に貯蓄をさせられ、それがインフレで減価し、これら勤労者の金を利用する大企業は借り得という所得の不当な配分になっております。一方、政府は、公的住宅を供給することを怠り、地価対策も無策であり、勤労者にとって持ち家はいまやまぼろしになってしまいました。政府は、今回、利子非課税限度を一千万円に引き上げるとか、あるいは財形非課税を五百万円に引き上げるとか、ボーナス貯蓄には利子を一%引き上げるというような計画をしているようでありますが、これは高い所得者の利益をはかるものであり、全くまやかしのものと言わなければなりません。政府発表によりますと、昭和四十七年末のサラリーマン一世帯の貯蓄高は百七十三万円ということであります。消費者物価が二割上がったとすれば三十四万円、月三万円の減価となるのであります。大企業に奉仕する貯蓄と言わなければなりません。しかし、勤労者は貯蓄せざるを得ないのであります。  西独の財形制度では、勤労者が毎年七十二マルク約七千八百円を七年間合計六万七千円の自己拠出をすれば、使用者は年間四百五十二マルクを賃金のほかに給付金を与え、貯蓄割り増し金あるいは住宅建設割り増し金の両方の措置を加えれば、六年間に計三千七百四十四マルクが得られ、この原資に連邦等の財政資金から追加割り増し金、利息を含めて七千四百六十一マルク約八十万円が勤労者のものになるわけで、自己拠出金の十七倍をこえるものになるのであります。日本の勤労者にもこのくらいの夢を与えてやるべきであると思いますが、総理及び労働、大蔵両大臣の御回答を承りたいと存ずるわけであります。  第七に、石油需給適正化法案、国民生活安定確保法案について質問します。  この二法は、石油危機に伴うものであるとされていますが、これが実施に移されれば、長く日本経済の方向を決定し、生産、流通、物価、消費の各分野にわたって影響するところ、きわめて大と言わなければなりません。経済構造さえ規定するものになると思われます。また、その運営を誤まれば、取り返しのつかないものになります。それはやがて田中内閣、自民党、資本主義の墓掘り人になっていく可能性のあることを政府は自覚をすべきであります。また、この二法案は、資源の有限性と国家独占資本主義体制の中で、継続的な物価上昇の中で、暫定的なものから長期的、永続的なものにならざるを得ないでありましょう。この二法案について、法文上は、業界に安定カルテルあるいは逆再販を結成させるという明文は除かれましたけれども、通産、公取の覚え書きで裏づけされておりますように、政府の監督指示下であるならば共同行為をやっても独禁法に違反しないということは、まことに重大であります。このことは、重要物資についての標準価格を高い価格に安定させることになるし、価格は限界企業のコスト・プラス一定利潤を加えたものになり、超過利潤を発生させ、効率化やあるいは費用逓減を阻害し、企業努力を怠らせるものになります。業界と政府の癒着の中で便乗値上げへの圧力は一そう強めるものとなり、価格引き下げのために何らのメリットにもなりませんし、値上げ防止の監視にもならないのであります。塩専売法があっても塩の小売り価格が取り締まれなかったり、灯油小売り価格をきめても通産省行政指導すら通らないという実態がこのことを証明をしております。業界においては一そうカルテルマインドがびまんし、独禁政策上も大きな後遺症を残し、欠点のみ多く、物価抑制にも国民生活の安定にもならないものであります。こうした消費者不在行政は、田中首相とミスターカルテルこと新日鉄稲山会長との会談で登場してきているようでありまして、大企業に超過利潤を約束する大企業優先の措置というべきであります。こうした国民の目をごまかす独禁法骨抜きをやめよ、通産、公取の覚え書きを破棄せよと、私は要求するものであります。法律によって裏づけられた政府の手によるところの標準価格の設定順守、需給の円滑適正化、違反者に対する体罰を含む罰則を適用して行なうべきであると思いますが、見解を承りたいと思います。  また、標準価格の設定その順守については、消費者代表、勤労者代表を含めた委員会を設置し、企業から原価構成の資料を求め、公正な標準価格決定を行なう機構を設置すべきであると思います。同時にまた、従来の価格協定等について、公取が協定破棄を命令をいたしましても価格は従来の線に復帰をせず、結局は国民は高いものを買わされることになってしまうのでありますので、この際、独禁法を改正し、価格をもとに戻させる命令権、企業の分割命令権をもあわせ公取委員会に付与すべきであると思いますけれども、総理の御見解を承りたいと思います。  また、監視体制強化のためには、人員を大幅に増員するとともに、国民生活安定確保法案、石油需給適正化法案の中にカルテル行為の規制を明確にすべきであると思います。総理、経企庁長官の見解を求めるものであります。  最後に、横須賀の母港化と、ミッドウェー艦載機の厚木基地への着陸、海上自衛隊航空総隊司令部その他の厚木基地の移転をやめるべきであると考えますが、総理見解をお伺いし、以上をもって私の質問を終わります。(拍手)     〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  26. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 竹田四郎君にお答えをいたします。  まず第一は、今回の内閣改造等に対してでございますが、今回の内閣改造は、わが国にとりまして戦後四半世紀余にわたり経験をしたことのない経済的困難に対応して、挙党体制を確立し、衆知を集めて必要な政策を大胆かつ円滑に行なうために実施したものでございます。現下の政治体制は政党政治であり、議院内閣制でありますので、党と政府は一体となり、また、内外の衆知を結集してまいります。そして国民各層の理解と協力を得てこの難局に適切かつ果敢に対処してまいりたいと考えておるのであります。  次は、物価抑制生活必需物資の安定確保についての御言及がございましたが、前にも詳しく申し上げておりますように、現に諸般の行政措置をとっておりますし、なお、緊急二法の早期成立をお願いしておるわけでございまして、本法成立後、適切に対処してまいりたいと考えますので、格段の御協力をお願いいたしたいと存じます。  列島改造論につきましては、私がこの席からも間々申し上げておりますとおり、私の論文であることは申し述べておるとおりでございます。しかし、長期的な見通しの上に立って、列島改造というものが、わが国が必要としておるものと合致をするものであるということは事実だと考えておるのでございます。  前国会から御審議をいただいております国総法の改正案につきましては、ぜひとも成立が必要でございますので、早期な成立をお願いいたしたいと考えておる次第でございます。  また、商品の不当値上がり等による過大な利得を得た者に対しましては、国民生活安定緊急措置法案によりまして課徴金を徴収する等の措置をとりたいと考えておるわけでございます。  財形貯蓄制度を西独並みに拡充せよとの御所論でございますが、勤労者財産形成制度は、勤労者福祉対策の重要な柱として今後とも積極的に推進をする方針であります。財形貯蓄につきましては、西ドイツの先例を研究するとともに、わが国の実情も十分考慮いたしまして、制度の改善をはかってまいりたいと考えておるのでございます。  また、通産、公取の覚え書きについての御発言がございましたが、両者の覚え書きは、石油需給適正化法案及び国民生活安定緊急措置法案の実施等に関し、独禁法に抵触しない協力措置の内容を確認したものでございます。物価抑制のために、たとえば国が標準的な末端価格を定めた場合に、所管大臣の行政的な指示監督に基づいて事業者または事業者団体が行なうその価格を順守するための協力措置は、必要かつ有効であり、このような協力措置は独禁法に抵触するものではございません。  最後に、ミッドウェー乗り組み員家族居住計画等についての御発言でございますが、条約上も地元との関係でも問題がございませんので、この計画の中止を求める考えは持っておりません。  残余の問題については、関係閣僚から答弁をいたさせます。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  27. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。  まず、私が大蔵大臣に就任いたしまして、田中首相との間の政策調整というものがうまくいくのかいかないのか、このようなお話でございます。私は、今回大蔵大臣に就任を総理から求められました。それに対しましてすぐ、さようにいたしましょうというお答えはしなかったんです。と申しますのは、まず私は総理とお目にかかりまして時局の問題についてその認識を話し合った。非常に重大な戦後未曾有の難局であるという点につきまして、これはもう完全に総理と一致でございます。そういう時局の中で何が一番大事なことになるかといいますると、これは物価に対処するその問題である。これも意見が一致したわけであります。したがって、そういう認識のもとに諸施策を思いを新たにして推進すると、こういうことについて完全に意見の一致がしたわけであります。ところが、私といたしましては、そういうような意見の一致がありましても、なかなか、さようですか、大蔵大臣に就任いたしますと、こう言えないような気持ちなんです。なぜかと申しますると、私と田中首相との間は非常に緊密である。それにもかかわらず、世間におきましては、田中首相と私の間にあるいきさつ、つまり昨年の自由民主党総裁選挙、あのことを頭に置いてでございましょう、ちょっと田中首相と私の間に意見の違いがあるというようなことがありますると、さあ角福戦争再開かだとか、あるいは閣内不統一かと、こういうようなことをおっしゃられるんです。私は田中首相に率直に申し上げた。このことは重要なことですから、皆さんに少し時間をお借りしますが、申し上げます。世間から、さあ福田が大蔵大臣に就任した。ただいまかっこよく世間から見られる。しかし、あとになりまして、さて閣内不統一というようなことになったら、せっかくの首相の御意図も傷つけられる。さようにならざることを期待しまするけれども、世間がどうも二人の関係を色めがねで見るということに問題があるんです。ですから、私は、まあ閣内におきまして行政管理庁長官というような立場で全面的に御協力をする、従来と変わるところはございませんけれども、しかし大蔵大臣に就任することはいかがでしょうかといってだいぶ渋ったんです。しかし、総理はお聞き入れにならない。総理の御所見は、世間がどう見ようと、時局は非常に重大である、世間のそういう見方を乗り越えてひとついこうじゃないか、こういうようなお話でございます。私もそこまでいろいろ話をかわしたわけでございまするけれども、もうそれは田中・福田というようなそういう時局じゃない、これは日本国のためだと、そういうふうに考えまして、あえて大蔵大臣に就任いたした次第でございます。とくと御了承のほどをお願い申し上げます。  しかし、さようないきさつでありますので、総理と私の間に意見の違いが出てくるというようなことはあり得ない、私はこういうふうに思いますが、しかし、問題がきまる過程におきましては、それは同じ人間じゃありませんから、田中首相がこう考える、私がああ考える、これはあると思うんです。しかし、そういう意見がありましても、終局的には閣議等で政府の施策が決定されます。その上は、ほんとうにかたいスクラムの上にこれを推進してまいるという考えでありますので、この辺も御理解を願いたいのであります。  四十九年度の予算の編成の姿勢でございますが、これはしばしば申し上げておるとおり、物価対策優先、こういう考え方で抑制型に編成します。しからば、その規模はどうかというようなお話でございますが、まだ規模はきめておりませんです。新聞等で二三%増というふうに流布されておりまするけれども、まだきまった考えは持っておりません。できる限り抑制いたしたいと、かような考えでございます。  四十八年度の補正につきましても、同様の考えでございます。  それから法人税につきまして、三段階税率体制を法人税においてとったらどうだ、こういうお話でございますが、法人は、個人と異なりまして、規模だとか、組織、株主構成、これは千差万別でございます。したがいまして、これに資本金だけをとりまして階級を設けるということは妥当でない、さように考えます。しかし、御指摘の法人税率の引き上げにつきましては、これはその必要を認めております。近く結論を出したい。  また、配当軽課につきましても、その引き上げ方を考えております。  それからキャピタルゲイン分離課税を廃止せよ、広告宣伝課税をやれ、こういうようなお話でございます。これは四十四年の長期保有税制に関連しての御意見と思いますが、すでにこの春この問題は解決済みである。すなわち、法人の土地譲渡差益に対しまして重課をする、それから特別土地保有税を創設する、こういう措置をとっておるのであります。大体解決済みの問題じゃないか、さように考えます。  それから広告税を創設すべしというお話でございますが、これは広告費が一体どういうものをもって広告費とするか、あるいは広告費の必要性の厚薄、これはもう千差万別でありまして、これに対して一律の課税をする、あるいは階級を設けての課税をする、これは非常にむずかしい問題だと思うんです。これについては慎重に考えさしていただきたい。  また、ガソリン税あるいは自動車重量税、この問題につきまして慎重にいま取り扱えというお話でございますが、慎重に扱います。特にこれが物価政策との調整がどうなるかということにつきましては、慎重に考えなけりゃならぬというふうに考えておりますが、まだ結論を得ておりませんです。  また、都市銀行等の貸し倒れ準備金の積み立て、これに対する課税軽減措置、これを撤廃せよというお話でございます。私は、撤廃まではいかないのでありまするけれども、貸し倒れ準備金積み立て金に対する課税軽減、この措置につきましては、これを軽減を軽減するという方向で、——軽減を取りやめまではいきませんけれども、一部修正するという方向考えたい、かように考えております。  それから年末調整の穴埋めのための減税をやるべきではないかと、こういうお話でございます。これは、私はしばしば申し上げておるのでありまするけれども、最近の経済情勢から見まして年度内減税は妥当でないと、こういうふうに考えるのであります。年末調整のための穴埋めを含めまして年度内減税はいたしません、かように御理解を願います。  それから公共企業体につきまして〇・五カ月分の年度末手当、これのうち〇・三カ月分の繰り上げ支給の問題につきましてのお尋ねでございます。これは年度末に至ってこれを補正をするかというお話でございますが、補正をする考えは持っておりませんです。この点はしかとお含みおき願いたいと存じます。  それから塩の小売り価格が専売価格以上の価格で売られておるという御指摘でございまするが、残念ながらこれは御指摘のとおりであります。そういう事例があります。ありますので、至急にいま調査を進めておるんですが、どうもそういう事実を確認したものがあるんです。そういうものにつきましては、事実を固めた上で厳重な処分をするというようなことをいたします。なお、そういうことが今後ともないように、そういうふうに存じまして、行政指導を強化していきたい、かように考える次第でございます。  それから財形貯蓄につきましての御所見でございますが、西独式を採用したらどうだという御所見でございます。財形貯蓄につきましては、私も、これは、勤労者の資産形成対策、そういうような上からたいへん関心を持っておるんです。さしあたり三百万円までの財形貯蓄の免税ということをいたしたい、こういうふうに考えておりまするけれども、根本的に西独方式、そういうものとのかみ合わせ、あるいはそれの採用、そういうものをどうするかという問題につきましては、これは財政負担が非常にかかる問題であります。そういうような事情もありますので、なお私は慎重に対処してみたいと、かように考えております。  なお、最後に、物価高に関しまして被害を受ける世の小さい者、弱い者、そういうような立場について配慮をせいというお話でございますが、これは四十八年度の予算の執行におきましても、あるいは四十九年度の予算の編成にあたりましても、できる限りの配意をしてまいりたい、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣内田常雄君登壇拍手
  28. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 要点を申し上げますと、お尋ねの、国民生活安定確保に関する法律案が成立をいたしました場合に標準価格をきめることになる。その標準価格のきめ方につきましては、私ども関係官庁ともせっかく協議中でございますが、これはまあなかなかむずかしい問題を含んでおります。第一に、指定商品を指定をいたしましても、いろいろの品種がございますので、その中の標準的な品目を選びまして、それについて価格を設定するということにならざるを得ないと思います。また、この価格は、まあ一種の指導的価格として国民から納得されるような妥当な価格にすることはもちろんでございますが、そのためには、関係業者等からも今度の法律によって与えられますところの調査権限等を活用をいたしまして資料をとりますことはもちろんでありまするけれども、一般消費者の側の考え方というようなもの、つまり言いかえますと、国民納得されるような価格でなければなりませんので、そういう両面からの判断で、私どものほうの経済企画庁が中心となって価格形成の方針をつくってまいるつもりでございます。幸い経済企画庁は企業に密着している機関ではございませんので、この標準価格が企業の利益のために押し上げ価格などになることがないよう、私は十分配慮をいたしてまいる所存でございます。  それからカルテルとの問題につきましては、総理大臣からお答えがあったとおりでございます。ただ、竹田さんがお尋ねのございました、せっかく公正取引委員会でカルテル行為を排除しても、あとにカルテルによって形成された高い価格が残った場合に、その価格を引き下げさせるような法律的な根拠を与えるべきではないかと、こういう御意見があったようでございますが、このことは、公正取引委員会においても検討中のようでございますので、その検討の課題を待ちまして私どもも十分打ち合わせてまいりたいと思います。ただ、いずれにいたしましても、そういうカルテルに関する法律の規定は、法体系といたしましては私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、あの中できめることでございまして、今度の国民生活安定確保法の中でカルテル禁止規定とか、あるいはそれに関連する規定をきめることは法体系として適当ではない、こういうように考えるものでございます。(拍手)    〔国務大臣齋藤邦吉君登壇拍手
  29. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 経済的に弱い人々の生活を守るということの緊要なことは、お述べになりましたとおりでございます。でありますからこそ、生活保護基準は本年度は前年に比しまして一四%アップでございましたが、最近の物価の動向等を勘案いたしまして、この十月から五%アップいたしまして一九%アップということにいたしたわけでございます。私は今後とも物価の動向には十分留意いたしてまいりたいと思います。  また、年金につきましては、さきの国会におきまして大幅な改正が行なわれまして、給付水準の引き上げ、スライド制の導入等の措置を講じまして、厚生年金におきましてはこの十一月一日に施行になったばかりでございます。  また、福祉年金につきましては、御承知のように、老齢福祉年金は三千三百円から五千円、障害福祉年金はそれに見合って引き上げられたわけでございます。しかし、この問題は低所得者の方々の大きな問題でございますので、今後とも改善に努力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣長谷川峻君登壇拍手
  30. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 財形貯蓄につきましては、総理大臣、大蔵大臣からも御答弁がありましたが、何さまこの制度ができてまだ三年、不十分なところがたくさんありますので、ただいま、労働省におきましては、関係機関と、勤労者のそうした問題について、この制度を大幅に拡充して実効あらしめたいということで研究中でございます。  西ドイツの場合は、何さま十数年の歴史を持っておりますので、従来もわが国は参考にしてまいりましたが、いまから先、改正その他にあたりましても参考にしながら、わが国の実情に合うようにしてやってみたい、こう考えておりますので、よろしくお願いいたします。(拍手
  31. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十三分散会