○竹田四郎君 私は、
日本社会党を代表し、
総理の
所信表明に関連し、当面の諸問題につき
質問をいたします。
去る一日の
演説、その後の
答弁を見聞するにつけまして、
国民をパニックに追い込んだ
物価狂騰について、
総理の
態度には
反省もないし、
物価値下げの決意の一片さえ感じ得られません。
田中総理は、その経済政策において大きな
誤りをおかしてまいりました。決断と実行を看板にして
国民の支持を求めたにかかわらず、金融財政政策は優柔不断であり、
国民のためには自民党はつぶれてもよいと公言をいたしましたが、政策はすべて自民党の党利党略のものでありました。
ここに、ある主婦の調査を持ってきましたが、みそ、しょうゆ、プロパンガス、タオルなど、
日常生活物資の
小売り価格は、
昭和四十三年九月から
昭和四十七年の六月、田中総裁出現直前までの四年間の値上がり率より、昨年の六月からことしの九月までの一カ年の値上がり率が同じか、あるいは同率以上のものが実にたくさんあるのであります。昨年の秋ごろは金融引き締めをきびしくすべきでありましたのに、総選挙があるといってちゅうちょし、むしろ貸し出しをふやしました。景気は
上昇過程に入っているのに、トリレンマと称し、列島改造を含む
公共事業費の大幅拡大をいたし、大企業の過剰生産力のはけ口を与え、総需要の喚起をさえ行ないました。
政府は、通常国会を早目に召集して、かっこうだけは強力
措置を見せていますが、
国民からの信頼を失ってしまっている以上、所期の目的達成はきわめて困難でありましょう。
国民の不満はうっせきし、それはやがて爆発するかもしれません。
第三次
田中内閣の面々、タカ派で異名をとっている人が多数入閣し、有名な青嵐会のメンバー、旧職業軍人、警察出身者も顔を並べております。また一方では、騒乱予備罪という治安立法も
準備されております。
国民は、挙党一致内閣というよりも、がらがらの強権内閣の出現だと思っております。
田中内閣といろあばれ馬は一体どこへ行くのかという不安と心配のほうが気が気でなりません。一昨日、わが党の藤田高敏議員は、ファシズムの危険をすら感ずると言われましたが、私も全く同感であります。
田中首相は、この一年間のことについて徹底的に自己
反省をし、平和憲法をきびしく順守し、民主的な手続に徹し、福祉最優先の
政治を断行する決意をこの席から述べるべきであると思うわけでありますが、所見を求めます。
第二に、
物価危機を回避するためには、その
責任を他に転嫁することではなく、今日この段階で、私案であろうとメモであろうと、諸悪の根源である
列島改造論の旗をみずから直ちに引っ込めることにより、総
需要抑制への決意を示し、経済政策の
転換を明示することであります。
インフレに便乗して大もうけをするような大企業に対しては大幅な税金をかけ、防衛費の大幅
削減など、断固たる処置を示すことにより、
物価安定、
物価引き下げの決意を示すことであります。
現実に
政府は
石油の元売り価格の凍結を行なったにもかかわらず、おひざ元の
石油連盟は、十一月一日にまでさかのぼって
石油価格の三五%から五〇%の
値上げやあるいは数量ワクの決定を協議し、独占禁止法違反の行為を平然と行なっており、売り惜しみの実態は明らかであります。また、
石油小売り価格十八リッター店頭売り三百八十円を指示しましたが、これもついに実行に至らないという羽目であります。連盟も
業者も首相の腹を見透かしてしまっているのであります。
また、食用塩についても申し上げます。塩専売法という法律が現存しているにもかかわらず、二十円の塩が二十八円や四十円で現実に売られているのであります。当然違反について直ちに検査をし、摘発をし、処分をさるべきでありますが、
政府は、今回提出されようとしております二法以上に強い権限を持っていながら、それを公表もしなければ処分もしないのであります。最近の違反の実態の公表をこの席で求めます。この二、三の例を見ましても、
物価を最優先の課題にしていないことは明白であります。
また、田中首相は、みずからの
責任を他に転嫁することをやめるべきであります。今回の
石油危機についても、首相みずからがあおり立てた形跡すらあるわけであります。山下通産次官が述べているように、長期かつマクロにおいては
石油の
節約は行なわねばなりませんが、おおむね昨年並みの確保はできるということを言っているのであります。田中首相は、これからはオーバーを着て
会議をする、こういうことを新聞記者に述べております。こんなことは各人の知恵でやることです。一国の
総理がこんなことを口にすべきではありません。
物価高騰の
理由を
石油や
海外インフレや個人の消費支出に転嫁をして、自己の保身にやっきになっているこの姿を、ある主婦は、まるでゴキブリのようねと評していました。まあ、たとえるほうもたとえるほうだと思いますが、妙を得ていると思うのであります。一国の宰相がゴキブリに評されるようでは困ります。
田中内閣の経済政策の
転換を明確にするには、先ほど申しましたように、
列島改造論の旗を下げる以外にありませんし、不当利得者に対しては断固たる処分と勇断を示すべきでありまして、これができなければいさぎよく退陣すべきであると
考えますけれども、御決意のほどを伺いたいと思います。
第三は、福田大蔵大臣に伺います。
福田さんは、
田中総理と長い間話し合った後に、第三次
田中内閣の最も主要ポストに参加をしたわけであります。
蔵相就任前の福田さんの
発言を見ますと、田中首相との間に相当大きな開きを感じさせます。福田さんは、あなたが批判をした田中路線を変更し、政策の
転換を求めて受諾されたのかどうか、この点を伺いたいのであります。列島改造にしましても、新幹線、高速道路網にしても、あるいは二兆円
減税にしろ、
インフレ高
物価の原因にせよ、首相とは違っているのであります。福田さんは、安定路線あるいは公共事業の縮小を言っているのであります。田中路線を修正していくつもりがあるのかどうなのか、イエス、ノーでお答えをいただきたい。
第四に、財政、
予算、税制についてお尋ねをいたします。
今日の
物価情勢は、卸売りで対前年同月比二〇%以上、
消費者物価指数で公表数字では一四・八%、勤労者にとっては二〇%以上、一部では二五%説も出ている
状態であります。総需要を
抑制して
物価の安定をはかることは、いまや天の声であります。
政府はいまや
予算大綱をつくり、
大蔵省は査定中であり、大臣査定の直前を迎えております。四十九年度
予算は
一般会計、特別会計、財投計画とも大幅に縮小をすべきであると思いますが、まず、これらは対前年度比何%ぐらいを
考えているのか、また、四十八年度
予算については、
公共事業費について大幅な減額補正を行なうべきであろうと思いますが、この点を伺います。
また、
インフレ手当〇・三カ月分の繰り上げ支給を行なうということでありますが、これは
インフレ手当というよりも、私は税金手当といったほうがよかろうと思いますけれども、いずれにしても年度末の〇・五カ月分の補正はいつどういうふうにやるつもりなのか、お伺いをいたします。
総需要に対する波及効果の大きな新幹線、高速道路、データ通信、港湾、空港等の
公共事業費は大規模に圧縮すべきであろうと思います。
昭和四十八年
一般会計、特別会計、財政投融資
関係の
公共事業費は、
大蔵省の資料によりまして約七兆、このうち、新幹線、貨物線の増強を内容とする鉄道
関係一兆円、道路整備特別会計、各種道路公団、本四架橋公団等々一兆七千億円、電電公社が一兆二千五百億、合計約四兆円で約六割にも及んでいるのであります。これが地価をつり上げ、
物不足を引き起こしたことは、各種委員会で明らかにされたところであります。この際、産業基盤
関係の事業を切り捨て、
生活基盤
関係の義務教育学校
建設、上下水道の整備、
福祉施設関係を重点とすべきでありますが、どの
程度産業基盤整備の事業費を削り、後者をどの
程度伸ばすつもりなのか、御
答弁を願いたい。
次に、法人税率について一体どうするつもりか。
田中総理、故愛知大蔵大臣は四〇%に
引き上げると言っていたが、これは一体どうするつもりか。法人税の税率を三段階制にして、中小企業には軽課、大企業には四二%以上の税率を課すべきであろうと思いますが、どのように
考えておられるか。配当の軽課も
引き上げるべきであろうと思いますが、この点もお答えをいただきたいと思います。
トヨタ、日産、松下電産、新日鉄など、この半年の間に二百億から三百億の利益をあげており、また、
国民の貯金、他人資本を利用しての
インフレ利得もこれらの企業は得ておりますし、不況カルテルによる寡占価格、
便乗値上げなど、不当利得を得ており、かつまた、租税特別
措置法などによって優遇
措置をも得ておるのでありまして、利益に対する租税
負担率では、十億円以上の資本金を有する法人と以下の中法人とでは、約五%軽くなっているのであります。経済政策の
転換をはかるとすれば、法人税に対し徹底的に再
検討をし、この
財源をもって低
所得層、老人、身障者などの
生活保障をはかるべきであると
考えますが、いかがでしょうか。貸し倒れ引き当て金、
海外市場開拓
準備金、キャピタルゲインに対する分離課税
制度も縮小あるいは全廃をすべきでありますし、資源の浪費をもたらしておる広告費、交際費に対する課税を強化すべきであります。
次に、揮発油税などの道路
財源に充てられるべき税について、さらに多くの割合を市町村に譲与し、整備のおくれている市町村の
生活道路の整備改善に充てるべきであると
考えます。
ガソリン税キロリットル
当たり二万四千三百円、そのうち四千四百円が市町村に、また、重量税では四分の一が市町村に渡ることになっておりますが、
ガソリン税の大部分は道路整備特会の歳入となり、自動車道路の
建設に充てられておりますが、総
需要抑制を柱としていながら、この
財源面から道路
関係の
公共事業費の縮小をはかるべきであると
考えます。また、現
ガソリン税の
考え方自体が高度成長時代の遺物とも言うべきであり、訂正すべきであろうと思いますが、どうお
考えでございますか。
第五に、公共料金の据え置きと低
所得層への援助についてであります。
大法人に対する課税を強化し、それを
財源として米麦価の据え置き、
国鉄運賃据え置きの
措置を講じ、
便乗値上げなどの行為をやめさせるようにすべきであろうと思います。
政府の米麦の売り渡し価格の
引き上げによって、すでに自主流通米の価格が
引き上げられているだけではありません。十二月一日から、今回の
政府の
措置と全然無
関係な干しうどんが一パック二十二、三円から四十三円に
値上げをされておりますし、また、店頭からは
小麦粉が姿を消している原因になっているのであります。
誤りを正し、断固米麦価、
国鉄運賃等の
値上げを撤回し、据え置きをはかる勇断を行なうべきであります。かつまた、物品税の
引き上げもこの際中止すべきであります。また、市町村の住民福祉
関係施設
建設資材は
政府の
責任をもって確保すべきであろうと思いますが、この点について伺いたいと思います。
この高
物価の中で、低
所得層、特に老人、身体障害者、寡婦等の年金、
生活保護費の大幅な増額をはかるべきであります。ここに船橋市在住の重度身体障害者の宮尾修さんの電話料金の資料がありますけれども、広域時分制を採用した結果、一−三月の月平均電話料金三千四百五十五円が、時分制の採用をされた四−十一月の月平均は六千百九十四円、約三千円の支出増になっております。一方、年金のほうは、九月まで月五千円、十月から七千五百円、二千五百円増にすぎないわけであります。年金の
大幅引き上げを行なうべきであろうと思いますが、厚生大臣の所見を伺いたい。
第六に、勤労者財形貯蓄
制度を抜本的に改正し、
日本がモデルにした西独並みのものにすることを要求いたします。
インフレは、勤労者の
生活を圧迫するだけでなく、唯一の貯蓄形態となっております預貯金の著しい減価を招いております。社会保障が低劣なために、勤労者は自己防衛のため強制的に貯蓄をさせられ、それが
インフレで減価し、これら勤労者の金を利用する大企業は借り得という
所得の不当な配分になっております。一方、
政府は、公的住宅を
供給することを怠り、地価
対策も無策であり、勤労者にとって持ち家はいまやまぼろしになってしまいました。
政府は、今回、利子非課税限度を一千万円に
引き上げるとか、あるいは財形非課税を五百万円に
引き上げるとか、ボーナス貯蓄には利子を一%
引き上げるというような計画をしているようでありますが、これは高い
所得者の利益をはかるものであり、全くまやかしのものと言わなければなりません。
政府発表によりますと、
昭和四十七年末のサラリーマン一世帯の貯蓄高は百七十三万円ということであります。
消費者物価が二割上がったとすれば三十四万円、月三万円の減価となるのであります。大企業に奉仕する貯蓄と言わなければなりません。しかし、勤労者は貯蓄せざるを得ないのであります。
西独の財形
制度では、勤労者が毎年七十二マルク約七千八百円を七年間合計六万七千円の自己拠出をすれば、使用者は年間四百五十二マルクを賃金のほかに給付金を与え、貯蓄割り増し金あるいは住宅
建設割り増し金の両方の
措置を加えれば、六年間に計三千七百四十四マルクが得られ、この原資に連邦等の財政資金から追加割り増し金、利息を含めて七千四百六十一マルク約八十万円が勤労者のものになるわけで、自己拠出金の十七倍をこえるものになるのであります。
日本の勤労者にもこのくらいの夢を与えてやるべきであると思いますが、
総理及び労働、大蔵両大臣の御回答を承りたいと存ずるわけであります。
第七に、
石油需給適正化法案、
国民生活安定確保法案について
質問します。
この二法は、
石油危機に伴うものであるとされていますが、これが
実施に移されれば、長く
日本経済の
方向を決定し、生産、流通、
物価、消費の各分野にわたって
影響するところ、きわめて大と言わなければなりません。経済構造さえ規定するものになると思われます。また、その運営を誤まれば、取り返しのつかないものになります。それはやがて
田中内閣、自民党、資本主義の墓掘り人になっていく可能性のあることを
政府は自覚をすべきであります。また、この二法案は、資源の有限性と国家独占資本主義
体制の中で、継続的な
物価上昇の中で、暫定的なものから長期的、永続的なものにならざるを得ないでありましょう。この二法案について、法文上は、業界に安定カルテルあるいは逆再販を結成させるという明文は除かれましたけれども、通産、公取の覚え書きで裏づけされておりますように、
政府の監督指示下であるならば
共同行為をやっても独禁法に違反しないということは、まことに重大であります。このことは、重要物資についての標準価格を高い価格に安定させることになるし、価格は限界企業のコスト・プラス一定利潤を加えたものになり、超過利潤を発生させ、効率化やあるいは費用逓減を阻害し、企業努力を怠らせるものになります。業界と
政府の癒着の中で
便乗値上げへの圧力は一そう強めるものとなり、価格引き下げのために何らのメリットにもなりませんし、
値上げ防止の監視にもならないのであります。塩専売法があっても塩の
小売り価格が取り締まれなかったり、
灯油の
小売り価格をきめても
通産省の
行政指導すら通らないという実態がこのことを証明をしております。業界においては一そうカルテルマインドがびまんし、独禁政策上も大きな後遺症を残し、欠点のみ多く、
物価抑制にも
国民生活の安定にもならないものであります。こうした
消費者不在行政は、田中首相とミスターカルテルこと新日鉄稲山会長との会談で登場してきているようでありまして、大企業に超過利潤を約束する大企業優先の
措置というべきであります。こうした
国民の目をごまかす独禁法骨抜きをやめよ、通産、公取の覚え書きを破棄せよと、私は要求するものであります。法律によって裏づけられた
政府の手によるところの標準価格の設定順守、需給の円滑適正化、違反者に対する体罰を含む罰則を適用して行なうべきであると思いますが、
見解を承りたいと思います。
また、標準価格の設定その順守については、
消費者代表、勤労者代表を含めた委員会を設置し、企業から原価構成の資料を求め、公正な標準価格決定を行なう機構を設置すべきであると思います。同時にまた、従来の価格協定等について、公取が協定破棄を命令をいたしましても価格は従来の線に復帰をせず、結局は
国民は高いものを買わされることになってしまうのでありますので、この際、独禁法を改正し、価格をもとに戻させる命令権、企業の分割命令権をもあわせ公取委員会に付与すべきであると思いますけれども、
総理の御
見解を承りたいと思います。
また、監視
体制強化のためには、人員を大幅に増員するとともに、
国民生活安定確保法案、
石油需給適正化法案の中にカルテル行為の規制を明確にすべきであると思います。
総理、経企庁長官の
見解を求めるものであります。
最後に、横須賀の母港化と、ミッドウェー艦載機の厚木
基地への着陸、海上自衛隊航空総隊司令部その他の厚木
基地の移転をやめるべきであると
考えますが、
総理の
見解をお伺いし、以上をもって私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣田中角榮君
登壇、
拍手〕