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1974-04-25 第72回国会 参議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十五日(木曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員の異動  三月二十八日     辞任         補欠選任      吉武 恵市君     安田 隆明君  三月二十九日     辞任         補欠選任      長屋  茂君     重宗 雄三君      稲嶺 一郎君     小枝 一雄君      安田 隆明君     吉武 恵市君      小笠原貞子君     塚田 大願君  四月一日     辞任         補欠選任      塚田 大願君     野坂 参三君  四月四日     辞任         補欠選任      藤田  進君     中村 波男君  四月九日     辞任         補欠選任      中村 波男君     藤田  進君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 佐々木静子君     委 員                 木島 義夫君                 柳田桃太郎君                 山本茂一郎君                 吉武 恵市君                 中村 英男君                 藤田  進君                 村田 秀三君    衆議院議員        法務委員長代理        理事       羽田野忠文君    国務大臣        法 務 大 臣  中村 梅吉君    政府委員        法務大臣官房長  香川 保一君        法務大臣官房司        法法制調査部長  勝見 嘉美君        法務省民事局長  川島 一郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   田宮 重男君        最高裁判所事務        総局民事局長   西村 宏一君        最高裁判所事務        総局家庭局長   裾分 一立君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明聴取いたします。中村法務大臣
  3. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  この法律案は、最近において民事及び家事調停事件が複雑多様化しておる実情にかんがみ、調停制度充実強化をはかるため、調停委員制度及び調停手続について緊急に必要とする改正を行なおうとするものであります。その内容は、次のとおりであります。  第一は、民事調停委員及び家事調停委員制度を新設することであります。  従来、調停委員は、地方裁判所または家庭裁判所が毎年あらかじめ選任する調停委員となるべき者すなわちいわゆる調停委員候補者等の中から各事件ごとに指定されたものであり、この場合、その事件処理する限りで非常勤裁判所職員となると解されておりましたが、手当支給は受けておりませんでした。今回、このいわゆる調停委員候補者等制度を改め、新たに、当初から非常勤裁判所職員である民事調停委員及び家事調停委員制度を設け、その職務内容を定めるとともに、その地位及び職務内容にふさわしい手当支給することができることといたしております。  第二は、民事調停手続について、その規定を整備することであります。  まず、当事者間の合意前提とする紛争解決手続を整備するため、従来、商事調停事件及び鉱害調停事件についての特則であった当事者間の合意により調停委員会の定める調停条項をもって調停成立したものとみなす制度に関する規定民事調停事件全般にも適用される通則規定に改めることとしております。  さらに、被害者救済等をはかるため、交通調停事件及び公害等調停事件管轄特則を設け、従来の管轄裁判所のほか、交通調停事件については損害賠償を請求する者の住所または居所所在地管轄する簡易裁判所に、また、公害等調停事件については損害発生地または損害が発生するおそれのある地を管轄する簡易裁判所に、それぞれ土地管轄を認めることといたしております。  第三は、家事調停手続について、その規定を整備することであります。  当事者各地に散在することが通常予想される遺産分割調停事件について、調停成立を容易にするため、遠隔地に居住する等の理由により出頭することが困難であると認められる当事者が、あらかじめ調停委員会または家庭裁判所から提示された調停条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者期日に出頭して当該調停条項案を受諾したときは、当事者間に合意成立したものとみなすこととしております。  以上が民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいまするよう、お願いいたします。
  4. 原田立

    委員長原田立君) 次に、補足説明聴取いたします。勝見調査部長
  5. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案について、補足して御説明いたします。  わが国の調停制度は、大正十一年の借地借家調停法の制定以来、逐次整備され、今日まで五十年余の間広く国民に利用されてきたところでありますが、最近における社会情勢の著しい変動、ことに、科学技術の進歩、経済規模の拡大、社会生活の変化、国民権利意識向上等に伴い、調停の場にあらわれる民事及び家事紛争は、ますます複雑化するとともに、交通事故公害等にかかる新しい類型紛争が加わって一層多様化しており、その処理はいよいよ困難なものとなっております。そこで、このような実情にかんがみ、民事及び家事調停制度国民の期待に沿い得るよう充実強化しようとするのが、今回の法改正の目的であります。  ところで、この法律案本則は、二カ条からなっておりまして、第一条は民事調停法の一部改正、第二条は家事審判法の一部改正であり、いずれも調停委員制度及び調停手続についての改正内容とするものであります。  第一条の民事調停法の一部改正から御説明いたします。  まず、調停委員制度に関する改正であります。  第一点は、現行法第六条についてでありまして、同条では、調停委員会は、調停主任一人及び調停委員二人以上で組織することとされておりますが、今回、新たに民事調停委員制度を設けるのに伴い、調停委員会は、調停主任一人及び民事調停委員二人以上で組織することとしております。  第二点は、現行法の第七条第二項及び第三項についてでありまして、同条第二項に規定されているいわゆる調停委員候補者及び当事者合意に基づく調停委員並びに同条第三項に規定されているいわゆる臨時調停委員の各制度を廃止するとともに、調停委員会を組織する民事調停委員は、裁判所すなわち受調停裁判所が各事件について指定することとしております。  第三点は、現行法第八条に規定されているいわゆる調停補助者制度を廃止して、新たに同条として民事調停委員職務内容及び身分に関する規定を設けることであります。すなわち、同条第一項において、民事調停委員は、調停委員会を組織して調停に関与するほか、裁判所すなわち受調停裁判所の命を受けて、調停委員会構成員として関与する以外の調停事件について専門的な知識経験に基づく意見を述べ、また、裁判所すなわち受託裁判所の命を受けて、嘱託にかかる紛争解決に関する事件関係人意見聴取を行ない、その他調停事件処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行なうものと規定し、同条第二項において、民事調停委員非常勤裁判所職員として身分を明確にするとともに、裁判所法第六十四条が裁判官以外の裁判所職員任免は、最高裁判所の定めるところによりこれを行なう旨定めている規定趣旨等にかんがみ、民事調停委員任命資格任免権者など任免に関して必要な事項は、最高裁判所が定めることとしております。  第四点は、現行法第九条を改め、民事調停委員には、別に法律で定めるところにより、すなわち、裁判所職員臨時措置法によって準用される非常勤職員給与に関する規定である一般職職員給与に関する法律第二十二条第一項の規定により手当支給することとし、あわせて最高裁判所の定めるところにより旅費日当及び宿泊料支給することとしております。  次に、民事調停手続に関する改正であります。  第一点は、現行法の第二章特則第三節の商事調停において規定され、同章第四節の鉱害調停において準用されている調停委員会の定める調停条項に関する第三十一条の規定民事調停事件全般についての通則規定に改めることであります。これは、先に御説明しましたとおり、交通事故公害等にかかる新しい類型調停事件が増加していること等にかんがみ、当事者間の合意前提とする紛争解決手続を整備する必要があるからであります。すなわち、すべての民事調停において、当事者間に合意成立する見込みがない場合または成立した合意が相当でないと認められる場合で、当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意があるときは、調停委員会は、申し立てにより、事件解決のために適当な調停条項を定めることができるものとし、これを調書に記載したときは、調停成立したものとみなすこととしております。その要件及び効果は、いずれも現行法第三十一条に規定されているものと全く同一であります。  第二点は、最近激増している交通調停について、新たに第二章第三節として交通調停の節を設け、第三十一条として交通調停事件土地管轄特則を設けることであります。すなわち、自動車の運行によって人の生命または身体が害された場合における損害賠償紛争に関する調停事件は、被害者の簡便な救済をはるため、現行法第三条に規定する相手方の住所等所在地管轄する簡易裁判所または当事者合意で定める地方裁判所もしくは簡易裁判所管轄のほか、損害賠償を請求する者すなわち被害者住所または居所所在地管轄する簡易裁判所管轄とすることとしております。  第三点は、新たに第二章第五節として公害等調停の節を設け、第三十三条の二として公害等調停事件土地管轄特則を設けることであります。すなわち、最近、問題となっている公害または日照通風等生活上の利益の侵害により生ずる被害にかかる紛争に関する調停事件は、紛争の適切な処理及び被害者の簡便な救済をはかるため、さきに御説明しました現行法第三条に規定する裁判所管轄のほか、損害発生地または損害が発生するおそれのある地を管轄する簡易裁判所管轄とすることとしております。  以上のほか、現行法中、調停にかわる決定に関する第十七条、第三章罰則中の第三十七条及び第三十八条その他について所要整理をしております。  次に、第二条の家事審判法の一部改正について御説明いたします。  まず、調停委員制度に関する改正でありますが、この点については、民事調停法の一部改正について御説明しましたところと全く趣旨を同じくしております。  すなわち、第一点は、現行法の第三条第二項及び第二十二条第一項についてでありまして、今回、新たに家事調停委員制度を設けるのに伴い、調停委員会は、家事審判官一人及び家事調停委員二人以上で組織することとしております。  第二点は、現行法の第二十二条第二項及び第三項についてでありまして、同条第二項に規定されているいわゆる調停委員候補者及び当事者合意に基づく調停委員並びに同条第三項に規定されているいわゆる臨時調停委員の各制度を廃止するとともに、調停委員会を組織する家事調停委員は、家庭裁判所すなわち受調停裁判所が各事件について指定することとしております。  第三点は、新たに第二十二条の二として家事調停委員職務内容及び身分に関する規定を設けることでありまして、同条第一項において、家事調停委員は、調停委員会を組織して調停に関与するほか、家庭裁判所すなわち受調停裁判所の命を受けて、調停委員会構成員として関与する以外の調停事件について専門的な知識経験に基づく意見を述べ、また、家庭裁判所すなわち受託裁判所の命を受けて、嘱託にかかる紛争解決に関する事件関係人意見聴取を行ない、その他調停事件処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行なうものと規定し、同条第二項において、家事調停委員非常勤裁判所職員として身分を明確にするとともに、その任命資格任免権者など任免に関して必要な事項は、最高裁判所が定めることとしております。  第四点は、新たに第二十二条の三の規定を設け、家事調停委員には、別に法律で定めるところにより手当支給することとし、あわせて最高裁判所の定めるところにより旅費日当及び宿泊料支給することとしております。なお、この関係で、参与員及び調停委員旅費日当及び止宿料に関する現行法第五条の規定を削除し、参与員については、止宿料宿泊料と改めた上、別に第十条の二として独立の条文を設けております。  次に、家事調停手続に関する改正であります。  これは、遺産分割調停事件当事者通常各地に散在しており、調停成立が困難な実情にあるのにかんがみ、その成立を容易にするため、新たに第二十一条の二として同事件についての特則を設けることであります。すなわち、遺産分割に関する調停事件において、遠隔の地に居住する等の理由により出頭することが困難であると認められる当事者が、あらかじめ調停委員会等から提示された調停条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者期日に出頭して当該調停条項案を受諾したときは、当事者間に合意成立したものとみなし、遺産分割調停事件に限り、いわゆる当事者出頭主義の例外を認めることとしております。  このほか、現行法中、合意に相当する審判に関する第二十三条第一項、調停にかわる審判に関する第二十四条第一項、第四章罰則中の第三十条第一項及び第三十一条その他について所要整理をしております。  以上が、この法律案本則についてでありますが、以下附則について簡単に御説明いたします。  第一項は、この法律施行期日に関する規定であります。  第二項は、今回の改正により調停委員制度が改められ、調停委員会の組織が変わりますので、従前の調停委員会においてした手続及び裁判所がした調停委員意見聴取について、その効力を引き継ぐこととする規定であります。  第三項は、この法律施行前に調停委員、いわゆる調停補助者または参与員がした執務にかかる旅費日当及び宿泊料または止宿料支給について、所要経過措置を定めた規定であります。  第四項及び第五項は、民事調停法第三十七条及び第三十八条並びに家事審判法第三十条第一項及び第三十一条に規定する罰則の適用について、所要経過措置を定めた規定であります。  民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案についての補足説明は、以上のとおりであります。
  6. 原田立

    委員長原田立君) 以上で趣旨説明及び補足説明聴取は終わりました。  次に、本案衆議院における修正部分について、衆議院法務委員長代理理事羽田野忠文君から説明聴取いたします。
  7. 羽田野忠文

    衆議院議員羽田野忠文君) 民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案衆議院修正にかかる部分趣旨について御説明申し上げます。  修正点は、商事及び鉱害調停事件に認められている現行調停委員会の定める調停条項制度を、民事調停事件全般に適用しようとする改正案規定に対するものであります。  政府原案は、第一条のうち、第十六条の二において、調停委員会は、当事者間に合意成立する見込みがない場合または、成立した合意が相当でないと認められる場合において、当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意があるときは、申し立てにより適当な調停条項を定めることができることとし、これを調書に記載したときは、調停成立したものとみなすこととしております。  この規定は、現行法第二章特則の第三節及び第四節において、商事及び鉱害調停事件に認められているものでありまして、政府原案は、この制度民事調停事件全般に適用する通則規定に改めようとするものでありますが、この制度を通則化することは、必ずしも適当でないと考えられますのでこの規定を削除し、現行どおりとする修正をしたものであります。  以上が衆議院における修正趣旨及び内容であります。
  8. 原田立

    委員長原田立君) 以上で、説明聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 後藤義隆

    後藤義隆君 お伺いいたしますが、実は本案に対しては日弁連から非常な反対があって、私のところにも何回となく決議録を、分厚いものを送ってまいりました。また、いまから数日前でありますが、日弁連の役員の人が三人まいりまして、そしていろいろ反対意見をお話しになって、約二時間にわたってですが、私も詰めて話をいろいろお聞きしたのでありまするが、その間において日弁連では非常にこの調停法改正に対しては大きな疑問を持っておると。その間にまた私も必ずしも釈然としないところがありますから、この際にやはり当局のほうからしっかりしたことを伺っておくことが必要ではないかと、こう思いますのでお聞きいたしますが、初めに、最近における調停事件概況とその問題点について御説明を願いたいと思います。
  10. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 最近における調停事件概況について御報告を申し上げます。  まず調停事件の数の点でございますが、最近、数年間におきます調停事件数民事家事を合わせまして年間ほぼ十二万件ということになっております。これに対しまして、第一審の民事訴訟事件の数は、この数年間ほぼ年間約十七万件でございますので、裁判所が受理いたします訴訟事件調停事件の割合は、ほぼ六対四になっているということがいえるかと存じます。  調停事件の中で民事調停事件家事調停事件があるわけでございますが、民事調停事件の数につきましては、昭和四十七年度におきましては約五万件でございます。この五万件という数字は、この数年間ほぼ横ばいではございますけれども昭和三十年当時におきましては約八万件ございましたので、それから比べますと、かなり減少してきたということがいえるのではないかと存じます。これに対しまして家事調停事件の数は昭和四十七年度におきましては約七万件でございますが、昭和三十年当時におきましては約四万件でございましたので、家事調停事件につきましては年々事件数は増加しているという傾向を示しております。  次に、事件内容について申し上げますと、民事調停事件につきましては、最近交通事故に基づく損害賠償とかあるいは医療事故に基づく損害賠償とか、あるいは日照通風等妨害といったいわゆる生活妨害に関する紛争事件、そういったような事件処理にあたりまして、技術的、専門的な知識を必要とするような事件がかなりふえてきております。また、家事調停事件におきましても遺産分割事件とかあるいは高年齢層婚姻関係に関する紛争事件といったように解決の困難な事件が増加してきております。こういった現象の背後にといいますか、背景といたしましては、一般国民法意識が非常に高くなってきていると、また価値観多様化といったような一般的な現象があるものと考えられますが、そういった現象前提にいたしまして、ただいま申しましたような事件のほかの一般調停事件関係におきましても、その処理は全体として困難さを増してきているように思われます。その関係か、調停事件のいわゆる審理期間が漸次長期化する、あるいは調停成立率が低下してくる、そういった傾向が示されております。  このような調停の現況につきましては臨時調停制度審議会におきまして種々の観点から論議がかわされたわけでございます。そこの審議会におきます議論の要点を要約いたしますと、現在国民調停制度というものに期待しているところは何かと申しますと、調停委員会紛争の実態を正確に把握、認識した上で公平な第三者機関として合理性のある解決案を積極的に当事者に提示することにより、真に条理にかなった合意に導くことにあるということが考えられるのでございますが、現実調停委員会活動はこの面において必ずしも十分に機能を発揮しているとはいえないのではないか、ひいては両当事者の要求を足して二で割る式の調停案当事者に強制する、無理じいするとか、あるいは双方の互譲を期待していたずらに期日を重ねる、いわゆるまあまあ調停というものに堕しているのではないかといった批判を招いていると、そういうようなところに尽きるのではないかというふうに考えられるわけでございます。このような批判にこたえるために、調停委員会の重要なメンバーである調停委員にすぐれた人を迎えるとともに、調停委員会活動を一そう充実するために手続面を整備するということが現下の急務であると、そういうことが指摘されたわけでございます。  以上でございます。
  11. 後藤義隆

    後藤義隆君 次に、本法案提出に至るまでの経緯についてお伺いいたしたいのでありまするが、今回の改正最高裁判所に設けられた臨時調停制度審議会答申に基づいたものでありますが、同審議会における調査審議概況について御説明をお願いします。  また、今回の法案を作成するにあたって、日弁連の人の話では、日弁連との協議が行なわれなかったという不満を非常に先日も申しておりましたが、もしそんなことがあれば非常に私もやはり遺憾だと思いますが、これは昭和四十五年五月十三日の当委員会附帯決議において法曹三者の協議を行なうということに附帯決議がなっておるのであるが、それが守られておるかどうか、その点についてお伺いいたします。
  12. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 今回の調停制度改正は、ただいま仰せのとおり、最高裁判所に設けられました臨時調停制度審議会臨調審と略称しておりますが、臨調審答申に基づきまして最高裁判所から私ども法務省立法依頼がございました。その立法依頼を受けまして法務省で立案したものでございます。  なお、臨調審審議経過等につきましては最高裁のほうからお聞きいただきたいと思いますが、臨調審答申は、御承知のとおり、非常な多岐にわたっております。なお、しかも、立法化を要する諸施策のうちにはいろいろ問題点がある事項もございまして、これらの問題点のある事項については立法を見送ることといたしまして、答申の中の緊急に必要と思われる最小限度施策に限って立法措置を講じようとするものでございます。  なおまた、次に三者協議の問題でございますが、今回の法案の中には、調停委員の待遇の改善の問題がございます。これは当然に予算を伴うものでございますので、昨年末の政府予算原案が確定するに至るまでは、実は具体的な立案作業に着手できない状態にあったわけでございます。また、御承知のとおり、予算関係法案としての国会提出の時期の制限という客観的な制約もございまして、きわめて倉皇の間に改正法案をまとめなければならない状況にあったわけでございます。他方、これも御承知だと存じますけれども、いわゆる法曹三者の協議会は、現在、現実の問題として開催することは事実上困難な事情にございます。そこで、やむを得ず、私ども立案作業の過程で、一月十九日でございますが、日本弁護士連合会の関係担当者に私どもの担当官が法案の要綱案を御説明申し上げてその御意見を承る機会を持った次第でございます。  なお、これも最高裁のほうからお聞きいただきたいと思いますけれども臨調審審議におきましては、日弁連推薦の委員及び幹事の方が参加しておられまして積極的に発言しておられます。また、日弁連では、臨調審審議中に二回意見書が公表されております。さらに、臨調審答申がありました後にも意見書が公表されております。私ども立案にあたりましては、日弁連の各意見書を十分検討させていただいたつもりでございます。  なお、司法制度改正に関するいろいろな問題につきましては、当委員会附帯決議にもありますように、十分法曹三者が協議すべきであることは私ども十分そのように考えておりますし、当委員会の決議も十分尊重すべきものと考えております。今後とも、可能な限りその趣旨に沿った措置をとっていきたいと考えておる次第でございます。
  13. 後藤義隆

    後藤義隆君 いろいろな紛争解決する方法として、弁護士を必要とする訴訟と、それからまた弁護士を必要とせないところの調停というのが現在あるわけでありまして、考え方によってはこれは非常に利害の対立関係にもなると思いますが、それでもって、この関連関係について、政府並びに最高裁判所のほうではどういうようなふうに両者を考えておるのか、その点についてお伺いいたします。
  14. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 調停と訴訟の関係をどういうふうに制度として位置づけるかという問題は理論的にも非常にむずかしい問題であろうかと思いますが、いずれにいたしましても、民事及び家事紛争は、結局、紛争当事者間で円満な合意によって、任意に円満な解決が得られることが望ましいことは申し上げるまでもないところでございます。  で、わが国の調停制度は、先ほど御説明を申し上げましたとおり、大正十一年以来実情に即した紛争解決するという目的で発足したものでございます。この間のいろいろな立法の沿革から申して、いろいろな批判のあるところでございますけれども、五十年間の間十分国民の期待に沿ってきたものと思います。  なお、戦後、各種調停法が統一されまして現行民事調停法並びに家事審判法の二本立てになっておるわけでございますが、やはり、いわば装いを新たにして戦後調停制度が再出発したというふうに考えております。  先ほどからお話がございましたように、最近のいろいろな諸情勢から紛争内容は複雑化しておりまして、その解決はますます困難なものとなってきております。一方におきまして、訴訟によって一刀両断的に解決をはかるべき事案ももちろんふえておるわけでございますけれども、他方、その一刀両断に、いわば正邪黒白を分けるに適しない事案も多々あるわけでございます。また、訴訟にまつわる時間、それから経費という問題もあるわけでございまして、現に先ほど最高裁のほうから御説明がございましたように、訴訟制度を利用する国民調停制度を利用する国民の比率が、大体六対四ぐらいの割合で定着しているような状況でございます。これを見ますと、結局、訴訟によらないで、当事者間の合意前提とする調停手続によって紛争解決することを望んでいる国民が多数あるということも、これも否定できないところであると思います。そうであります以上、私ども政府といたしましては、その国民の期待に沿うように調停制度を時代に即応して充実強化して、先ほど最高裁のほうからお話がございましたような批判を受けないように、申し立てを受けた事件につきまして適正妥当に処理できる体制を整備する必要があることは、これまた申すまでもないところでございます。今回の改正は、まさにこのような観点から行なう趣旨でございます。いずれにいたしましても、やはり調停制度の存在意義というものは十分重視すべきであると思いますけれども、私どもといたしましては、訴訟に取ってかわるものとして考えておるわけではございません。あくまでも紛争解決は訴訟による解決が本来の筋であると思いますけれども調停はそれをいわば補完するといいますか、訴訟制度と相まってわが国における私人間の紛争解決に資するところが非常に大きいものがあろうかと考えておる次第でございます。
  15. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 調停制度に関しましては、裁判所といたしましても、ただいま調査部長の御説明になりましたところと基本的に同様に考えておるわけでございますが、一言つけ加えて述べさせていただきますと、裁判官と民間人とからなっております調停委員会があっせんに当調停制度は、紛争の自主的な解決制度としてはきわめてすぐれたものであるということがいえるのではないかと考えられます。調停制度そのものは、当事者双方の理性的、合理的判断に基づく合意というものの成立を導き出すための制度でございます。その意味では、欧米諸国で発達いたしております仲裁制度以上に、より自主的な解決制度として意義があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、この調停委員会の充実をはかるということによって、今後一そう国民生活に寄与できるものと確信いたしております。  なお、調査部長も申し述べましたけれども裁判所といたしましてもこの調停制度の機能を充実強化するということで、本来訴訟で解決されるに適する紛争調停でまかなっていこうということを考えているわけでは決してないわけでございます。あくまでも調停によって解決するのが相当である紛争が、調停によって適正妥当に、しかも迅速に解決されるということを期待しておるわけでございます。その実現のために、今回の法改正を基礎といたしまして、裁判所といたしましても調停制度の諸般の運用上の改善を実施してまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  16. 後藤義隆

    後藤義隆君 次にお伺いいたしますが、日弁連が非常に杞憂しております点は、今回の改正の第一点は調停委員身分改正でありますが、調停委員候補者制度を改めて、調停委員を最初から非常勤裁判所職員として任命する理由、それをお伺いいたしたいのと、それと同時に、また、現在の候補者制度ではなぜいけないのか、変えなければどうしていけないのか、それの理由もお伺いいたしたい。  また、待遇改善のためにこれをやはり非常勤職員にすることが必要であるというようなふうに言われておるのでありまするが、ところが、それでは非常勤裁判所職員にせなければ待遇改善ができないのかどうか、そういうようなふうな点についてもお伺いいたしたいのであります。
  17. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) まず、現在の制度は、先ほどからお話がございましたように、調停委員候補者の中から調停委員を指定する制度が現在の制度でございますが、そういたしますと、調停委員は指定された事件限りで非常勤裁判所職員身分を取得するというふうに解されておるわけでございます。今回は、御指摘のとおり、これを改めまして、当初からの非常勤裁判所職員としての身分を有することとして、その身分関係を明確にしているわけでございます。これは、先ほどからこれも私が申し上げましたように、最近の事件内容が非常に複雑多様化しているということでございますが、これを適切に処理するためには、現在のように一部篤志家のいわば善意の奉仕に依存する制度では不十分である、やはりすぐれた多数の民間有識者を調停委員に迎えまして、その知識、経験を有効に活用できる新しい職務内容もきめまして、複雑な事案を十分に把握していただいた上で、積極的な説得を行なうということ等によりまして充実した職務活動ができますような体制を整える必要があると思うのでございます。そのためには、その地位と職務内容にふさわしい待遇を与えることももちろん必要でありますとともに、当初から非常勤裁判所職員として任命しておく制度を採用して、身分関係を明らかにする必要性が非常に増大してきたというふうに考えるわけでございます。現行の候補者制度は、いわば無償奉仕の意思のある民間の篤志家を登録しておくという性質の制度でございます。必ずしも、全員に職務の担当をしていただくということではございません。候補者制度から必然的に出てきたというわけにはいえないかもしれませんけれども現行の候補者制度のもとでは、ややもしますと調停委員の高齢化、固定化という傾向が目立ってきているように思われるわけでございます。今回の改正では、すぐれた方を厳選しまして全員に職務を担当していただくとういことになりますので、積極的にお願い申し上げて、当初から人材を確保しておく必要がありますので、候補者としていわば中間的な身分といいますか、現在の候補者制度のようなやや中途はんぱな制度を廃止するのが相当であるというふうに考えたからでございます。  それから現行制度のもとで待遇改善ができないかと、こういう御趣旨のお尋ねでございます。——その前に、私ともの改正の骨子とねらいといたしまして待遇改善をねらってこの制度改正をお願いしている趣旨ではございません。先ほど申し上げましたように、骨子は、身分を明確にするとともに待遇の改善をはかるということでございますので、誤解のないように御理解いただきたいと存じます。  現行法のままで調停委員に対する待遇改善がはかれないかという御趣旨の問でございますが、御承知のように、現在の調停委員に対しましては、待遇といたしましては日当というものしか支給しておりまません。日当は、あとでもお尋ねがあるかも存じませんけれども、私どもといたしましては実費弁償という性質を持つものと考えております。本来調停委員は、事件限りであるとは申しましても公務員でございますので、その職務の遂行に対する報酬として給与支給できるのではないか、またすべきである、また現在でもできるんではないかという考え方がもちろんあるわけでございます。しかしながら、先ほどから申し上げておりますように、現在の調停委員制度は、民間篤志家の善意無償の奉仕に依存するという制度として発足しておりまして、同じ形で現在までに至っているわけでございます。法律を見ますと、調停委員には「旅費日当及び宿泊料支給する。」というふうに現行法規定しておるのみでございます。この反対解釈といたしまして、調停委員には給与支給しないというふうに考えておる次第でございます。また実質的には、給与支給するためには、一般職職員給与に関する法律の第二十二条第一項に定める「手当」ということになるわけでございますが、この手当支給するためには二十二条一項の要件に合致するものでなければならないと思います。一般職給与法の二十二条一項に定められております「委員」は、「顧問」、「参与」と並んで規定されておりまして、相当高い資格要件を要求されているというふうに解するものでございまして、現在の調停委員にはそれほど高い資格要件を要求していないというふうに考えておりますので、現行法下におきましては給与支給することには相当大きな問題があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。先ほどから申し上げておりますように、資質のすぐれた方を多数お迎えする制度としての改正法のねらいでございますので、そういうことを整備いたしまして給与法にいう手当支給を受けられるようていたしたのが今度の改正法の重要な骨子の一つでございます。
  18. 後藤義隆

    後藤義隆君 ただいまの答弁に関連いたす事項でありますが、この調停委員を最初から非常勤裁判所職員とすることによって、調停委員そのものが非常に職業化し、また官僚化するんじゃないかということを非常に日弁連でも心配しておるようでありまするが、その点はどうお考えでしょうか。
  19. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) そういう御批判の強いことは私どもも十分承知しておりますが、私どもといたしましてはそのような御批判は当たらないというふうに考えておる次第でございます。今回の改正の骨子は先ほど申し上げたとおりでございまして、決してそのような頭から官僚化し、職業化させようという趣旨のものでもございませんし、また現実の問題といたしましても、実際の改正後における調停委員活動と現在における調停委員活動を比べていただきましても、職業化、官僚化ということは何らないというふうに私どもは考えております。もちろん制度といたしまして、民間の司法参与という調停制度の根幹の一つである趣旨は、今回の改正におきましても何ら変更を加えておるものではございません。また、新しい調停委員の任命につきましては、またあとで最高裁判所のほうからお聞きいただきたいと思いますが、適切な人選を行なっていただくというふうに聞いておりますし、調停委員が当初から非常勤裁判所職員身分を有するといいましても、たとえば各省庁に置かれます各種審議会、あるいは各種委員会委員の方々もやはり当初からの非常勤公務員という身分を取得しておられるのでございまして、だからといってその各種審議会委員あるいは各種委員会委員が官僚化しているというふうなことの批判はないわけでございまして、ましてや国民の国政参与の原則が後退しているというような批判も聞かないところでございます。このたびのいわゆる身分改正につきましても、そういうことは私どもといたしましては全然ないというふうに考えておる次第でございます。
  20. 後藤義隆

    後藤義隆君 合意調停委員臨時調停委員及び調停補助者を廃止するようなふうな今度の条文になっておりますが、どういう理由でもってそれを廃止しなければならないのか、その点をお伺いをいたします。
  21. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) まず、合意調停委員につきましては、これは現行法で設けられた趣旨は、おそらく当時者双方が合意で定めた方であれば、あらかじめ裁判所が候補者としてリストアップしている、いわゆる調停委員候補者の中に含まれておりませんでも、当時者に対する説得力に欠けるところはなかろうというような趣旨で設けられた制度だと思います。ところが現実には、この制度の活用はほとんどされていないようでございます。また、これからの調停のあり方といたしまして、単に当事者等の個人的な関係で説得するということでなくて、やはりすぐれた有識者の豊富な経験と専門的な知識経験に基づきまして、事案の的確な把握につとめていただいて、その上に立って、いわば客観的に妥当な解決をはかる制度として整備されるべきではないかというふうに考えまして、このたびの改正は、そういうことの上に立っておりますので、いわば当事者と個人的関係を重視する現行法合意調停委員制度は、今回の法改正の新しい理念になじまないということで廃止した次第でございます。なお、合意調停委員につきましては、今回新たに設けられる調停委員の資格要件あるいは身分等に関連いたしますと、やはり異質の調停委員を残すということになりますので、この点におきましても立法政策上好ましくないというふうに考えた次第でございます。  それから第二の臨時調停委員でございますが、この現行法で認められておりますのは、事件によりまして専門的知識経験を有する方を臨時に活用するという制度として設けられたものと考えられるわけでございますが、これも合意調停委員の場合と同様に、あまり活用されておらないようでございます。今回の改正によりまして、調停委員には資質のすぐれた、特に専門的知識経験を有する方を多数迎えようということでございますので、先ほど申し上げましたような現行法下における臨時調停委員が必要とされるようなケースにつきましては、これからの新しい調停委員で十分まかなえるというふうに考えているわけでございます。それから合意調停委員のところで申し上げましたとおり、臨時調停委員につきましても、資格ということでいわば異質の調停委員を残すということになりますので、先ほど合意調停委員について申し上げたとおり、この点も立法政策上好ましくないのではないかという趣旨で廃止したわけでございます。  次に、調停補助者の問題でございますが、これは当事者間の紛争実情をよく知っておったり、あるいは当事者双方を説得しやすいような立場にある方に補助者として来ていただいて、その助力を得るということが有効であるということとして設けられた制度だと思いますが、これも実はほとんど活用されていないようでございます。これからの調停のあり方として、先ほど申し上げましたような、いわば客観的な妥当な解決をはかる制度として整備することといたしておりますので、もっぱらいわば特定事件の特定の方と個人的な関係を重視して補助していただくという制度は、やはり今回の法改正の理念になじまないと考えまして廃止したものでございます。
  22. 後藤義隆

    後藤義隆君 今回のこの改正法案によりますと、民事調停委員及び家事調停委員の「その任免に関して必要な事項は、最高裁判所が定める。」と、こういうようなぐあいになっておりまして、一切をもう最高裁判所に委任した形になっておりますが、これを法律でもって定めるというような、法律でもってそこをきちっと規定すると何か非常に不都合があるのかどうか、その点についてお伺いいたします。
  23. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 御承知のとおり、裁判所職員につきましては、裁判所法の第六十四条におきまして「裁判官以外の裁判所職員任免は、最高裁判所の定めるところにより最高裁判所、各高等裁判所、各地方裁判所又は各家庭裁判所がこれを行う。」というふうに規定してございます。ただいま申し上げました条文のとおり、裁判官以外の裁判所職員任免につきましては、最高裁判所に一任されておるところでございます。これも申し上げるまでもないところでございますが、三権分立のたてまえ上、裁判所職員任免につきましては、やっぱり裁判所において責任を持って行なっていただくことが司法権の独立を確保するゆえんであるという趣旨規定だと存じます。このたびの調停委員任免につきましても、裁判所法趣旨とするところに従いまして、その任免に関しましては最高裁判所が定めることといたしたものでございます。
  24. 後藤義隆

    後藤義隆君 これは裁判所のほうに質問いたしますが、最高裁判所民事調停委員及び家事調停委員任命資格、それから選考の方法、任命などについてどのように定める予定かと。これいまから先のことでありまするが、そういう予定はどう考えておるのか。現在の調停委員の資格要件とされておるところの徳望、良識は今後必要がないと考えておるのかどうか。調停委員の任命について、各方面の意見聴取して広い範囲から適任者を確保するよう努力するべき必要があるという旨の衆議院のこれは附帯決議もあったのでありまするが、そういう点を一体どういうようなふうにこれから考えるのか、その点について伺います。
  25. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 調停委員の選任に関しましては、最高裁判所といたしましては、臨時調停制度審議会答申趣旨を十分生かして定めたいというふうに考えております。  まず任命資格の点でございますが、任命資格といたしましては、広く各界、各分野での社会生活の上で豊富な経験を有する識見の高い方々をまず中心といたしまして、さらに法律の専門家である弁護士、または弁護士としての資格を有する方、また法律以外の各分野での専門的な知識経験を有する方々、そういった方々であって、年齢としては原則として四十歳以上七十歳未満の者とするということを考えておるわけでございます。もっともこの年齢の点につきましては、特に調停委員としてかけがえのない方々につきましては、この四十歳以上七十歳以下という制限には服しないでもよいと、拘束されないで任命できるという道を開いておくことがよいのではないかというふうに考えております。選考の方法につきましては、地方裁判所または家庭裁判所におきまして自主的な選考を行なっていただき、その結果任命を相当とするとして地方裁判所家庭裁判所から上申された方について最高裁判所が任命するという形式をとるのがよいのではないかというふうに考えております。それから任期につきましては、臨時調停制度審議会答申にもあるように、二年が相当ではないかというふうに考えておるところでございます。現在調停委員候補者の資格要件でございます徳望、良識ということにつきましては、今後におきましてももちろん調停委員の備えるべき資質として、徳望、良識のある方ということは重要なことであると考えられますけれども、現在の複雑困難化した事件につきまして、条理にかなった適切な解決案を提示していくということから考えますと、徳望、良識ということだけでは必ずしも十分ではないという面もあるのではないかということで、先ほど申し上げましたような任命資格要件に改めたい、改めるのが適当ではないかというふうに考えておるわけでございます。それから衆議院法務委員会附帯決議におきましても、調停委員の選考にあたっては広い層から十分に意見聴取した上で選任すべきであるという御指摘があったわけでございます。その点につきましては、従前確かに調停委員候補者の推薦を依頼するにあたりましては、市町村長その他弁護士会等比較的狭い範囲の機関にたよっていた傾向があるわけでございますので、この傾向を改めまして、社会の広い範囲の公的な団体や機関に働きかけをいたしまして、その協力を得て適任者を推薦していただき、これを調停委員にお願いしていただくようにつとめたい、そういうことでこの附帯決議趣旨に沿ってまいりたいと考えております。今回の法改正が実施されることになりますならば、調停委員身分が明確となり、かつ相応の待遇の改善ができるわけでございますので、各界各層に適格者の推薦を依頼することも従前よりははるかに容易になるのではないかということを期待いたしておるわけでございます。
  26. 後藤義隆

    後藤義隆君 この民事調停委員及び家事調停委員職務内容について、改正されるおもな点とその理由についてお伺いいたします。
  27. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 新しい制度下におきます民事調停委員及び家事調停委員の職務の主たる職務は、当然のことでございますけれども調停主任裁判官、家事審判官とともに調停委員会を構成して調停を行なうということが主たる職務内容でございます。これ自体は従来の調停委員ともちろん変わらないところでございますが、今回の改正によりまして調停委員がいわば単独で行なう職務が定められたわけでございます。で、これは先ほどからも申し上げておりますとおり、豊富な社会経験と専門的な知識経験を有しておられるいわばすぐれた方が多数お迎えできるということになりますので、その知識経験及び能力を有効適切に活用いたしまして、複雑困難化している事件をより適正、かつ、より円滑に処理することが可能となったわけでございますし、またその必要があると考えまして、調停委員が単独で行なえる職務を定めたものでございます。その内容につきましては、条文をごらんいただきますと、まず第一種の職務といたしましては、「裁判所の命を受けて、」とございますが、これは受調停裁判所の命を受けてという趣旨でございますが、自分が担当していない他の事件につきまして専門的な知識経験に基づく意見を述べることでありまして、これも先ほど申し上げましたとおり、いわば専門家が数多く任命されることになりますので、その活用の一端でございます。それから第二種の職務といたしましては、いわゆる隔地者間の調停におきまして調停が行なわれている裁判所、あるいは調停委員会から、遠いところにおります事件関係人につきまして、その事件関係人意見聴取嘱託する場合がございますが、その嘱託した場合に、その嘱託を受けたいわゆる受託裁判所の命を受けまして、その事件関係人から意見聴取を行なうことでございます。それから第三種の職務といたしましては、以上のほか、「調停事件処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。」というふうに法律規定してございますが、これは具体的にはやはり隔地者間の事件で受託、要するに嘱託を受けた裁判所の命を受けて、その嘱託にかかります事実の調査を行なうことが規定されるというふうに承知している次第でございます。
  28. 後藤義隆

    後藤義隆君 この民事調停法改正案の第八条第一項及び家事審判法改正案の第二十二条の二の第一項に「その他調停事件処理するために必要な最高裁判所の定める事務」と、こういうようなふうになっておりますが、一体その「事務」というのはどういうものをさすのか。また、これを法律でもって規定すると何か非常に不都合なことがあるのかどうか、その点をお伺いいたします。
  29. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) ただいまお尋ねのどのような事務かという点につきましては、先ほどの御質問の最後のところで申し上げましたとおり、最高裁判所のほうでは、いわば隔地者間の調停につきまして事実の調査の嘱託、すなわち甲地方裁判所でやっております事件につきまして、乙裁判所管轄下に住んでいる方の関係で事実を調査しようとするような場合に、その事実の調査の嘱託を受けた乙の裁判所調停委員がこの事実の調査に当たるというふうに定めるというふうな予定だと聞いております。  それから法律でなぜその中身を定めなかったかという点のお尋ねでございますが、確かに公務員の職務内容は法令によって定められるべきであることは、これはもう御指摘のとおりであります。また、できるだけ法律規定することはこれも望ましいことと思われますけれども、必ずしも一から十まで法律規定しなければならないものではないと思います。職務内容のうちでも主要なものが法律規定されておりまして、その公務員の職務の範囲がほぼ明確でありますならば、その余のいわば付随的な、あるいは補助的な事務内容につきましては下位法令にその定めを委任することも許されるというふうに考えますし、また現にそのような立法例も多々あるところでございます。  それから先ほど申し上げました調停委員が単独で行なえるようになる職務内容につきましては、その職務の主要な職務はもちろん調停に関与することでございますが、その単独で行なう事務内容はいわば例外的に必要となる補助的な事務と考えておるわけでございます。  それから少し詳しく申し上げますと、このたびの八条で書いております事務の中で、専門的意見の陳述、それから第二種として申し上げました嘱託にかかる事件関係人意見聴取は、いずれも現行法下ではない新しい種類の事務でございます。それに対しまして、ただいま申し上げました最高裁判所が規則で定める予定の嘱託にかかる事実の調査につきましては、現行規則におきまして事実の調査自体がすでに規則で規定されておりますし、また嘱託ということについても規則で規定されておりますので、今回特にこれを法律に取り込んで規定することはその必要性に乏しいというふうに考えてこのような条文のていさいになった次第でございます。
  30. 後藤義隆

    後藤義隆君 この改正案を見ますと、「裁判所の命を受け」と、こういうようなふうにありますが、これは調停委員に対する裁判所の指揮監督を非常に強化し、裁判所の思うままに調停委員事務を行なわせるというふうな批判が非常にあるのでありますが、この点についてどう考えておりますか。
  31. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) この調停委員が単独で行なえる職務内容につきましては、ただいま申し上げたとおりでございます。これらの仕事を行なう前提といたしまして、その事務処理に当たる調停委員を特定する行為がなければならないことになります。で、この指定行為が事務分配の一種というふうに考えられますけれども、この事務分配を行ないますのはいわば調停委員の執務状況を把握している裁判所——ここで申します裁判所は、先ほども申し上げましたとおり手続法上の裁判所と考えておりますが、この裁判所が最も適当であるわけでございます。調停委員はその専門的意見の陳述の場合にはいわゆる受調停裁判所の命、いわゆる先ほども申し上げました指定ということでございますが、この指定を受けることになりますし、また嘱託事務処理にあたりましては受託裁判所の命、すなわち指定を受けてこの事務を行なうことと定めたものでございまして、この規定によりまして、裁判所の命によりという規定を置いたことによりまして、特に調停委員に対する裁判所の指揮監督を従来に比べて強化するものでは決してございません。むしろその「裁判所の命を受けて、」という規定は、この改正規定に基づいて最高裁判所が定めることのできる事務の範囲もむしろ限定する意味を持っていると考えております。と申しますのは、事件が受理されましてその調停調停委員会で行なうというふうにきまりますと、それ以後の当該事件処理はすべて調停実施機関であるところの調停委員会によって行なわれるのでございまして、その事件処理に関して裁判所が命ずることのできる事項は理論的にもきわめて限定されてくるというふうに考えておる次第でございます。
  32. 後藤義隆

    後藤義隆君 調停については裁判官不在の調停だという批判が非常にあるのでありまするが、最高裁判所はそれをどう考えておるか、また今回の改正によって裁判官不在の調停をさらに助長するのではないかというようなふうなことを危惧する向きもあるが、それはどう考えておるのですか。
  33. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 従来調停活動がもっぱら調停委員だけで行なわれ、裁判官は調停成立する場合にしか立ち会わないという事例がかなり多かったということ、また、これが当事者の不満を招いており、いわゆる御指摘のような裁判官不在の調停であるという批判として生じておりますことは、臨時調停制度審議会の議論の際にも強く指摘されたところでございまして、私どもといたしましても遺憾ながらこれを認めざるを得ないわけでございます。しかし、いま調停というのは民間人である調停委員があっせんに当たるという点に大きな特色があるわけでございまして、そこできわめてすぐれた調停委員の方々の自主的な活動に期待するという趣旨もございまして、従来調停委員におまかせするという傾向が強くなり、そのような運用が行なわれてくるようになったということにあるわけでございますけれども、最近は複雑困難な事件が増加してまいりまして、当事者のほうも法律的な判断を背景にした解決案調停委員会から出してもらうように強く望むようになってきているということもありますので、今後はできる限り裁判官が調停手続に自主的に関与して適正妥当な解決案を迅速に提示できるような方向に調停事務の運営を推進していかなければならないというふうに私どもも考えておるわけでございます。臨時調停制度審議会におきましても裁判官の調停関与のあり方ということについて種々の御提案があったわけでございます。今後一そう私どもとしては運用の改善をはかってまいりたいと思います。  なお、今回の改正が裁判官不在の調停を助長するのではないかという御批判でございますが、その点においては私どもとしては全くその心配はないというふうに申し上げたいのでございます。調停委員会を充実するためには、まずその重要なメンバーである調停委員の質を高め、その知識経験調停活動に十分に反映していただくということが重要であるわけでございます。それを今回の改正は達成するために法案にその趣旨が盛られておるわけでございますが、調停手続を主宰する裁判官もまた調停委員会活動の中においてその役割りを十分に果たすことも調停委員会活動充実強化する上において重要な条件でございますので、その意味で裁判官の立ち合いの実質的な充実強化ということについては今後も十全な施策をとってまいりたいと、そういうふうに考えております。なお今回の改善策を行ないました成果を見た上で必要があるということでございましたならば、調停を担当する裁判官その他裁判所職員の増員等の措置も十分検討してまいりたいと、そのように考えております。
  34. 後藤義隆

    後藤義隆君 今度の法案改正によって調停委員の待遇が改善されるというようなふうなことも一つの理由であると思いますが、どんなぐあいに改正されるのか、この具体的の内容ですね、ちょっとお伺いいたします。
  35. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 現在調停委員の候補者の方が調停事件を担当いたしまして調停委員としての職務を行なったときには一日千三百円以内の日当旅費及び宿泊料を受けるということになっておるわけでございます。で、日当は実費弁償の性質を有するものと考えられておりますが、これは調停委員が善意で奉仕するということを前提といたしまして、その職は給与を伴わないものということで今日に至っておるわけでございます。今回の改正によりまして調停委員は公務員の給与法上の非常勤委員ということの地位が明確になるわけでございまして、それに伴いまして公務員給与としての手当支給されることになるわけでございます。その手当の額は昭和四十九年度におきましては一日六千五百円ということに予算上認められたわけでございます。旅費については従前とほぼ同様でございますけれども宿泊料は、従前は調停委員につきましては六等級相当の額であったのでございますが、今度は三等級相当に改善されるということになります。具体的に申しますと、甲地の場合の宿泊料は従前は三千七百円であったものが今度は四千六百円ということになるわけでございます。なお、調停委員の方が本来執務する裁判所で執務をする場合には手当及び旅費だけでございますが、執務裁判所以外の場所でもって職務を行なう場合には、手当とは別に、国家公務員の旅費等に関する法律の定めによる日当支給されることになるわけでございます。  以上でございます。
  36. 後藤義隆

    後藤義隆君 いま答弁の中に、日当のほかに今度はまた手当というようなふうな答弁もあったのでありまするが、法律でいわれる日当とそれから手当というのはどんなぐあいに相違するのか、その点をはっきりしてもらいたいと思います。
  37. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 実は実定法上の日当の概念は必ずしも一義的ではないようでございます。それで私どもの考えますところを申し上げますと、日当には、まあ私どもの近いところの例を申し上げますと、証人あるいは参考人、鑑定人等の公務員でない者に対して支給される場合の日当と公務員に対して支給される日当というふうに分けられるように思います。まず公務員でない者に対する日当はそれぞれの根拠法規があるわけでございますが、たとえば民事事件の証人につきましていいますと、民事訴訟費用等に関する法律あるいは民事訴訟費用等に関する規則、これに基づいて支給されるものでございます。その内容は結局、その所要の場所に出頭して公の事務に協力する場合の出頭雑費の弁償のほかに、出頭による収益の喪失についての補償の要素が加味されているというふうに考えるのでございます。他方、公務員に対する日当といたしましては、旅費法に基づいて支給される日当でございます。これは旅費法の定める広い意味の旅費のうちの狭い意味の旅費、すなわち鉄道、船舶、車馬の運賃、その他、他の種類のものには含まれない旅行中のいわば弁当代、湯茶代、その他の雑費の弁償の性質を有するものというふうに考えられるわけでございます。いずれにいたしましても日当は、公務員でない者に対して支給される場合と公務員に対して支給される場合もいずれも実費弁償の性質を有していることについては共通の性質があろうかと思います。ところで、調停に対する日当は先ほどからお話がございましたように、現行法でも事件限りでは公務員でございますので、公務員に対する日当の範疇に入るものと思われますが、現在の調停に対する日当支給根拠は民事調停法九条と家事審判法五条にございます。これらの法条は旅費日当及び宿泊料というふうに規定してございますが、日当旅費と並べて規定しでいるところから見ますと、先ほど申し上げました旅費法上の日当に準ずるものである、いわば実費弁償の性質を有するものと解されるわけでございます。  次に手当でございますが、実は実定法上手当という文言を使用している条文はいろいろな場合がございまして、いわば手当の概念も多義的であるように思われます。ただいま申し上げました実費弁償の性質を有するところの日当と同じ意味に用いられているような立法例もあるようでございますが、一般にはやはり給与の性質を有する給付について用いられているようでございます。私どもが給付を受けております扶養手当、暫定手当、通勤手当、期末手当などという手当がございます。これはいわば常勤職員の基本給に付加して支給される従たる給付という意味を持つ場合がございますが、そのほかに、先ほどすでに御説明申し上げました非常勤職員に対する関係といたしまして、委員、顧問、参与その他格の高い非常勤公務員に対する給与を特に手当というふうに呼んでいるようでございます。日当手当の区別につきまして、私どもの考えているところを申し上げた次第でございます。
  38. 後藤義隆

    後藤義隆君 この今度の改正案を見ますと、交通調停事件並びに公害等調停事件について管轄特則を設けてありますが、その理由を簡単に御説明願います。
  39. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 御指摘のように、今回の改正案におきましては、交通調停につきまして第三十一条、それから公害等調停につきまして第三十三条の二という規定を新設いたしまして、管轄特則を設けることにいたしております。御承知のように、交通事故に基づく損害賠償請求事件というのは非常に最近ふえておりまして、特に調停によって処理される場合が多いわけでございます。昭和四十七年の統計によりますと、交通調停事件が一万五千件、これは訴訟で解決する事件が一万二千件でございますから、むしろ調停のほうが多いというような情勢でございます。ところで、この交通調停事件におきましては、自動車の運行によって人身事故が発生するわけでありますが、加害者と被害者の両当事者遠隔の地におるという場合が少なくないわけであります。たとえば東京の人が神奈川県で事故を起こすというような場合もございます。この場合に、調停法の原則でまいりますと、三条の規定によって相手方の所在地裁判所管轄裁判所になると。したがって、東京の裁判所調停をしなければならないと、こういうことになるわけでありますが、被害者といたしましては、わざわざ東京まで出ていって調停をするということは、これは非常にたいへんなことでございますし、他方加害者のほうとしては、事故を起こした責任もあるわけでございますから、むしろ被害者所在地裁判所調停を行なったほうがわれわれの常識にも合致するし妥当であろうと、こういうことで損害賠償の請求をする者、すなわち被害者所在地裁判所にも管轄権を認めようと、こういう趣旨でございます。  それから公害調停につきましては、「損害発生地又は損害が発生するおそれのある地を管轄する簡易裁判所」に管轄権を認めるということにいたしておりますが、これも原則でまいりますと相手方の所在地、たとえば建築工事の騒音が問題になるというような場合には、その建築工事を施工しているその会社の本店の所在地が原則的な管轄裁判所になるわけでありますが、むしろその工事現場、その工事現場の所在地裁判所調停を行なわせるということのほうが実際に適当でありますし、特にこの種の調停事件におきましては、実際に実地を調べるという必要もかなり多いわけでございまして、また被害者の立場から申しますと、大体被害者はその現場の近所に住んでいる方方でございますので、そういったいろいろな便宜も考えまして、管轄につきましては特に「損害発生地又は損害が発生するおそれのある地」というふうに、「おそれのある地」の管轄裁判所管轄を認めると、こういうことにいたしたわけでございます。
  40. 後藤義隆

    後藤義隆君 家事審判法改正案の第二十一条の二は、遺産分割調停事件特則として、出頭困難なる当事者のある事件処理に関して規定を設けておるが、その理由をお伺いいたします。
  41. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) この遺産分割に関する調停事件でございますが、当事者は共同相続人ということになります。共同相続人が非常に多い場合が普通でございまして、平均いたしますと大体六人、一つの事件について当事者が六人というのが平均でございます。で、このように当事者が多くなりますと、その当事者の中には遠隔の地に住んでおる者もいる。あるいはぐあいが悪くて出てこられない者がいる、こういうような場合が少なくないわけであります。ところで、この遺産分割というのは全員がそろわないと調停ができませんので、一人でも遠くにいるために出てこないとか、あるいはからだのぐあいが悪いために出てこないというようなことになりますと、調停ができないわけであります。ところが、実際には遺産分割内容については異存はないけれども、しかしわざわざ調停裁判所まで出ていくのはいろいろな都合でむずかしいというような場合が少なくないので、そういう場合にも調停をなるべく成立させるように、当事者の意思が合致しておるならば調停成立させたほうがむしろ当事者の希望するところにも合致すると認められますので、そういう場合のために、特に調停条項案を受諾するという旨の書面を出していただいて、それによって出頭しなくても調停成立することを認めることにしよう、こういうふうにしようというのがこの家事審判法の二十一条の二の規定を新設しようとする趣旨でございます。
  42. 後藤義隆

    後藤義隆君 最後に、調停委員の待遇改善の必要があるということで、本年度の予算では何でも十億円程度ぐらいな予算が組まれて、それが通過したんじゃないかと思うんですが、その点についてどんなふうになっておるか、その点をお伺いいたします。
  43. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 昭和四十九年度の調停関係予算といたしましては、本改正法案が十月一日施行ということを前提といたしまして委員手当予算といたしましては半年分として約十億二千万円が計上されておりますが、そのほかに、調停関係の施設の改善経費、調停用執務資料の整備、その他調停委員の研修、研究会の開催経費等を含めまして総額約三億円が計上されております。
  44. 後藤義隆

    後藤義隆君 よろしゅうございます。終わります。
  45. 原田立

    委員長原田立君) 本案に対する本日の審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時三十七分散会      —————・—————