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政府委員(
勝見嘉美君) まず、現在の
制度は、先ほどからお話がございましたように、
調停委員候補者の中から
調停委員を指定する
制度が現在の
制度でございますが、そういたしますと、
調停委員は指定された
事件限りで
非常勤の
裁判所職員の
身分を取得するというふうに解されておるわけでございます。今回は、御指摘のとおり、これを改めまして、当初からの
非常勤裁判所職員としての
身分を有することとして、その
身分関係を明確にしているわけでございます。これは、先ほどからこれも私が申し上げましたように、最近の
事件の
内容が非常に複雑
多様化しているということでございますが、これを適切に
処理するためには、現在のように一部篤志家のいわば善意の奉仕に依存する
制度では不十分である、やはりすぐれた多数の民間有識者を
調停委員に迎えまして、その
知識、経験を有効に活用できる新しい
職務内容もきめまして、複雑な事案を十分に把握していただいた上で、積極的な説得を行なうということ等によりまして充実した職務
活動ができますような体制を整える必要があると思うのでございます。そのためには、その地位と
職務内容にふさわしい待遇を与えることももちろん必要でありますとともに、当初から
非常勤の
裁判所職員として任命しておく
制度を採用して、
身分関係を明らかにする必要性が非常に増大してきたというふうに考えるわけでございます。
現行の候補者
制度は、いわば無償奉仕の意思のある民間の篤志家を登録しておくという性質の
制度でございます。必ずしも、全員に職務の担当をしていただくということではございません。候補者
制度から必然的に出てきたというわけにはいえないかもしれませんけれ
ども、
現行の候補者
制度のもとでは、ややもしますと
調停委員の高齢化、固定化という
傾向が目立ってきているように思われるわけでございます。今回の
改正では、すぐれた方を厳選しまして全員に職務を担当していただくとういことになりますので、積極的にお願い申し上げて、当初から人材を確保しておく必要がありますので、候補者としていわば中間的な
身分といいますか、現在の候補者
制度のようなやや中途はんぱな
制度を廃止するのが相当であるというふうに考えたからでございます。
それから
現行制度のもとで待遇改善ができないかと、こういう御
趣旨のお尋ねでございます。——その前に、私ともの
改正の骨子とねらいといたしまして待遇改善をねらってこの
制度の
改正をお願いしている
趣旨ではございません。先ほど申し上げましたように、骨子は、
身分を明確にするとともに待遇の改善をはかるということでございますので、誤解のないように御理解いただきたいと存じます。
現行法のままで
調停委員に対する待遇改善がはかれないかという御
趣旨の問でございますが、御
承知のように、現在の
調停委員に対しましては、待遇といたしましては
日当というものしか
支給しておりまません。
日当は、あとでもお尋ねがあるかも存じませんけれ
ども、私
どもといたしましては実費弁償という性質を持つものと考えております。本来
調停委員は、
事件限りであるとは申しましても公務員でございますので、その職務の遂行に対する報酬として
給与を
支給できるのではないか、またすべきである、また現在でもできるんではないかという考え方がもちろんあるわけでございます。しかしながら、先ほどから申し上げておりますように、現在の
調停委員の
制度は、民間篤志家の善意無償の奉仕に依存するという
制度として発足しておりまして、同じ形で現在までに至っているわけでございます。
法律を見ますと、
調停委員には「
旅費、
日当及び
宿泊料を
支給する。」というふうに
現行法は
規定しておるのみでございます。この
反対解釈といたしまして、
調停委員には
給与を
支給しないというふうに考えておる次第でございます。また実質的には、
給与を
支給するためには、
一般職の
職員の
給与に関する
法律の第二十二条第一項に定める「
手当」ということになるわけでございますが、この
手当を
支給するためには二十二条一項の要件に合致するものでなければならないと思います。
一般職給与法の二十二条一項に定められております「
委員」は、「顧問」、「参与」と並んで
規定されておりまして、相当高い資格要件を要求されているというふうに解するものでございまして、現在の
調停委員にはそれほど高い資格要件を要求していないというふうに考えておりますので、
現行法下におきましては
給与を
支給することには相当大きな問題があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。先ほどから申し上げておりますように、資質のすぐれた方を多数お迎えする
制度としての
改正法のねらいでございますので、そういうことを整備いたしまして
給与法にいう
手当の
支給を受けられるようていたしたのが今度の
改正法の重要な骨子の一つでございます。