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最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 制度ということでございますので、あるいは総務
局長からお答えすべきことであろうかと思いますが、速記官の将来というようなことも関連いたしますので、私のほうから一応先にお答えを申し上げたいと思います。
御承知のように
昭和二十五年ごろでございますが、
裁判所のいわゆる記録と申しますか、
裁判の記録というものはこれはやはり逐語訳でなければいけないというふうに考えられました。ことに交互尋問制度というようなものが戦後大幅に採用されてまいりますと、一言一言がきわめて重要性を持ってまいりますので、これはできるだけ正確な録取というものが行なわれなければいけないということで速記制度というものが発足いたしたわけでございます。その点につきましては私
どもは今日におきましても、
裁判について正確な記録が必要であるということについては全く当時と同様に考えております。もっとも、いかなる
事件もすべて速記制度でやっていいかどうか、そこまでやらなきゃいけないかどうかということについては、いろいろ問題はございます。しかし一定数の割合の
事件というものについては正確な記録が必要であるということで、それは今日もその
方針に全く変わりはないわけでございます。ただ速記官という制度を発足いたしまして、これを
裁判所法の改正によりまして正確に速記官という職種を設けておるわけでございますが、ただ問題は、法廷の記録ということについての全責任を持っておりますのは御承知のように書記官でございます。そこで供述の録取という
関係において、正確な録取の役割りを果たします速記官と書記官との
関係をどのように考えていっていいかということは、速記制度が始まりまして以来私
ども常に検討を続けておるところでございまして、書記官の側からするいろいろの見方、また速記官の側からするいろいろの見方、いろいろございます。目下引き続き検討をいたしております。現在のところ録取ということに関しては速記官が、実際上でございますけれ
ども、全責任を持って速記のついた
事件においてはやっておるという状況でまいっておるわけでございます。
で、私
ども速記官の養成ということの必要性というものも十分考えておりまして、できるだけ多数の速記官というものを養成して各庁に配置いたしていきたいということを考えるわけでございますが、しかし一方、事実上の障害もないわけではございません。たとえば実際問題といたしまして、非常に優秀な職員、ことに女子職員ということになるわけでございますが、高校を卒業しまして書記官研修所の課程を受けるわけでございますが、女性が非常に多い職業でございます。仕事の性質上そういうことに相なろうかと思いますが、そういたしますと、全国配置ということになりましても転勤等の問題がございまして、比較的若い女性を全国に、まあいわゆる土地になじみのないようなところに行っていただくというようなことにしようといたしますと、かなりの障害がございます。国会などでも速記をおやりになっておりますが、これは国会は東京に一つでございまして、ここで御勤務になる以外に転勤というような問題ございませんが、
裁判所の場合には御承知のように、全国津々浦々に
裁判所があるわけでございます。そういった点の隘路というものもあるわけでございます。それからまた、何ぶんにもまだ始めましてそう時間がたっておりませんので、速記官に関する職制と申しましても、これはたとえばの話でございますが、主任速記官とかあるいは首席速記官というふうにするといたしましても、それにふさわしい方が出てまいりませんと、そういう制度というものを発足させるわけにはいかないわけでございます。で、現在速記官の平均年齢というのは三十歳を少し過ぎたところ等でございまして、ようやく
一般的に速記官の人員の充実ということが行なわれてまいりましたけれ
ども、そういった制度を確立していくのが実は今後の問題であるわけでございまして、私
ども速記制度というものの重要性と、それからそれを現に埋めております速記官としての充実ぶりと申しますか、これは技術的にも年齢的にもいろいろな観点から見なければなりません。そういったものをにらみ合わせまして今後の速記制度の確立ということを考えていきたい。一方、技術革新というようなことも当時から見ると非常に目ざましいものがあるわけでございます。録音といったようなことによる制度、
裁判事件記録の作成というようなこともやはり同時に検討いたさなければいけない面もございます。目下そういったいろいろの面をひっくるめまして鋭意検討いたしておるという
段階でございます。