○春日正一君 私は、日本共産党を代表して、
商法の一部を
改正する
法律案、
株式会社の
監査等に関する
商法の
特例に関する
法律案、
商法の一部を
改正する
法律等の
施行に伴う
関係法律の
整理等に関する
法律案及び自由民主党提出の修正案に対し反対するものであります。
反対理由の第一は、この
商法改正案は、私がこの
質疑の冒頭でも述べましたように、今日ごく少数の大
企業が産業あるいは零細
企業、そういうものを大きく独占的に支配して、そうして不当な暴利をむさぼっておる、そういうものを
国民の
立場から規制するために
企業の
基本をきめる
商法を
改正するのか、それとも大
企業のそのような横暴というもの、そういうものに合わせてそれを正当化し、合法化する
立場からこの
商法を変えるのか、
二つの
立場のどちらかという問題を私は投げかけたわけでありますけれ
ども、この
改正が、この
委員会での
質疑を通じて明らかなように、明らかに大
企業の専横、それを助長し、荒かせぎや
利益かせぎというような反
社会的な行為を正当化するような、そういう
内容を含んだものである、この点が一番
基本的な反対理由であります。
具体的に申しますと、
商法改正案三十二条に「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル
会計慣行ヲ斟酌スベシ」という規定を
導入することによって
企業会計原則修正案を
基本的に
導入し、継続性の
原則を正当な理由なく
企業が
自分の都合によって変更できるようにしようとしているからであります。また、
企業会計原則修正案は
利益性
引き当て金をも特定
引き当て金として公認し、
企業会計理論上とうてい容認できない
処理を公的に承認するものであり、これは大
企業の逆粉飾を合法化し、
会計監査基準そのものを後退させることになるからであります。
第二に、
企業の
社会的
責任を
要請する世論に押されて
監査制度を若干強化しておりますけれ
ども、
改正法案のような
監査役、
会計監査人の身分保障では、多少権限を強化しても絵にかいたもちになる危険性が強く、むしろ
企業に対する
社会の批判をそらせるためのいわばイチジクの葉に使われてもしかたがないような、そういう程度のものであるからであります。かかる
改正は、世論がいま要求しておる大
企業の実態を明確にし、その反
社会的な行為を規制せよという
改正への要望からはるかに隔たっており、実効性の薄いものと言わなければならないからであります。
第三、
商法改正案に親
会社、子
会社の概念を
導入し、三井、三菱グループその他のような大
企業集団による系列支配の現状を合法化し、さらにそれを促進させるものであるからであります。この
企業集団による系列支配こそが親
会社、子
会社を含めた逆粉飾の根源であり、これを一方で強化しておいて、他方で支配
会社の
監査役等の子
会社に対する立ち入り調査権を規定しても、それは実効性の薄いものとならざるを得ないことは明らかであります。この項に対する
政府の説明では、親
会社が子
会社に対して不良な債務を転嫁したり、あるいは売れない品物を無理に売りつけたりというようなことで
自分の
会社の弱点を隠すような、そういうことのないようにするものだというように説明をされておりますけれ
ども、しかし、そういう理論は、言ってみれば、どろぼうに被害者を保護せよと義務づけるようなものであって、とうてい世間に通用するものではないのであります。
第四に、
商法改正案三十二条、三十三条で零細小売り商に対してまで記帳義務を強制し複式簿記をしいるのは、事実上零細小売り商に無理をしいるものであります。
そのほか、
粉飾決算を助長させる中間配当の規定、税理
業務と
監査業務の
関係の明確化、職域の配分など、まだ十分な配慮がなされていないなど、たくさん未解決の問題を残しております。
企業の
社会的
責任が大きな世論となり、売り惜しみ買い占めなどの反
社会的行為の規制が大きく叫ばれているとき、このような
商法改正ではなく
商法の抜本的
改正、大
企業を
国民の
立場から規制していくように抜本的な
改正が必要であることは疑う余地のないところであります。この
法案は、この
国民の要望に背を向け、むしろ逆行するものであって、とうてい容認することのできないものであります。
なお、修正案について言えば、この
委員会で論議された零細商人の記帳の問題とか、その他について若干の修正はされておりますけれ
ども、これらはきわめて枝葉の問題であって、いま私が
指摘しましたような
商法改正の一番根本の悪い点については
一つも手を触れていない、そういう程度の修正でありますから、私
どもとうてい賛成するわけにはいかないわけであります。以上、わが党の反対の理由を明らかにして、討論を終わります。