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1974-02-21 第72回国会 参議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十一日(木曜日)    午前十一時九分開会     —————————————    委員異動  二月二十日     辞任         補欠選任      鍋島 直紹君     小枝 一雄君      藤田 正明君     木島 義夫君      佐藤  隆君     鈴木 省吾君      木村 睦男君     重宗 雄三君      鬼丸 勝之君     吉武 恵市君      山本敬三郎君     高橋 邦雄君      山本茂一郎君     嶋崎  均君      中村 波男君     吉田忠三郎君      内田 善利君     矢追 秀彦君  二月二十一日     辞任         補欠選任      重宗 雄三君     平井 卓志君      小枝 一雄君     濱田 幸雄君      —————————————    出席者は左のとおり。      委員長        原田  立君      理 事                 後藤 義隆君                 棚辺 四郎君                 佐々木静子君                 矢追 秀彦君      委 員                 木島 義夫君                 嶋崎  均君                 鈴木 省吾君                 高橋 邦雄君                 濱田 幸雄君                 平井 卓志君                 柳田桃太郎君                 吉武 恵市君                 中村 英男君                 藤田  進君                 春日 正一君    国務大臣        法 務 大 臣  中村 梅吉君    政府委員        法務政務次官   高橋文五郎君        法務大臣官房長  香川 保一君        法務省民事局長  川島 一郎君        法務省刑事局長  安原 美穂君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        大蔵大臣官房審        議官       田中啓二郎君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○商法の一部を改正する法律案(第七十一回国会  内閣提出衆議院送付)(継続案件) ○株式会社監査等に関する商法特例に関する  法律案(第七十一回国会内閣提出、 衆議院送  付)(継続案件) ○商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係  法律整理等に関する法律案(第七十一回国会  内閣提出衆議院送付)(継続案件)     —————————————
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告をいたします。  昨二十日、山本敬三郎君、山本茂一郎君、中村波男君、内田善利君が委員辞任され、その補欠として高橋邦雄君、嶋崎均君、吉田忠三郎君、矢追秀彦君が選任されました。  また、本日、小枝一雄君、重宗雄三君が委員辞任され、その補欠として濱田幸雄君、平井卓志君が選任されました。     —————————————
  3. 原田立

    委員長原田立君) 次に、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないものと認めます。  それでは、理事矢追秀彦君を指名いたします。     —————————————
  5. 原田立

    委員長原田立君) 商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案を便宜一括して議題といたします。  前回に引き続き、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、この商法が前国会から引き続きまして、今国会の当初より当委員会において審議を続けてまいったわけでございますが、最終的に、いままでの質問のうち答弁をいただいてない部分について補足的に若干質問をさしていただきます。  まず、大臣に伺いたいと思うんでございますが、これは商法と特別、直接関係がないようにも見えるわけでございますが、昨日の次席検事会同大臣訓話をされた旨、新聞で報道されておりますが、その訓話内容ですね、特に、いま問題になっているところの企業あり方悪徳商法をきびしく取り締まるという趣旨の、俗なことばで言えば、御発言があったように承っておるわけでございますが、要点を御説明いただきたいと思うわけです。
  7. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 要するに、検察当局としましては、すべてものごとは厳正、公平に、適切な処理をすることが望ましいのでありますが、特に、最近の社会情勢から見ますると、経済的な諸問題があるように考えます。そこで、それらの事案検察の手にかかるようになりました暁においては、検察当局としては、あらゆる角度から、あくまで厳正、公平に、適切な処理をしなければならないというような観点のことを申したわけでございます。   〔委員長退席理事矢追秀彦君着席〕 検察当局としては、あくまでそういうたてまえで臨むことが本来であり、特にこういうような社会情勢のもとにおいては、国民の納得を得るためにも、正しい捜査をすることが必要であるということを力説した次第でございます。
  8. 佐々木静子

    佐々木静子君 この検察当局に対する御訓話と、現在出されております商法改正という問題とは必ずしも一致しないとは思うわけです。商法という、国の非常に基本的な法律で、しかも恒久的な立法におきまして、必ずしも、いま、現実社会で起こっているということだけに焦点を合わすことは、若干ピントの合わない点も出てくるのではないかと思うわけでございますが、いま、これだけ企業行き過ぎ、そしてもうけ過ぎということが国民の犠牲の上においてなされておる、そういうことに対して国民がきびしく、いま企業社会的な責任あり方というようなことを追及している時期に、この法案審議を終えるわけでございますので、特にこの商法との関連において、いま大臣がお述べになった御所信ですね、この商法企業行き過ぎを是正するんじゃなしに、企業もうけをこの商法改正によって容易にする、利潤を隠すのにこの商法改正が非常に役立っておるというふうな意味から、猛烈な反対運動が起こっておるわけです。その事柄に対して、大臣はどのようにお考えになるか、大臣の御所信をお述べいただきたい、それとともに、法務当局がこの時期に、あえてこの法案を通そうということで、たいへん御努力をして御提案になったわけですし、また、与党も、この法案の通過のために御努力になっているわけでございますけれども国民世論をあげて企業もうけ過ぎを追及しようというこの時期に、法務当局としたら、どういう考えでこの商法改正を意図しておられるのか、大臣の御所信をはっきりとお述べいただきたいと思うわけです。
  9. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 今度の商法改正は、要するに目的とするところは、まず第一には会社経理を堅実にする、そして監査も堅実にする、そして損失があれば損失を、粉飾決算なんかをすることのないようにさせなければならないということと同時に、利益があがり過ぎて、利潤がたくさんあればそれははっきり表に出て、税の対象になるようにしなければならない。また、法人企業活動につきましても、違法、不適当な点があれば、監査役として、そうした会社運営内容にまでタッチして監査ができるように制度改正しまして、違法や不適当なことのないように、起こらないように、会社のいわゆる経営を健全化していこうというのが目的でございまして、たとえば、ほかの部分につきましては、買い占め売り惜しみのような法律その他、規制された諸法律に該当するような事案が起これば、これはまた別途の制度がありますから、それらの制度によって規制をしていく以外には方法はないと思います。それから積み立て金等につきましても、別段この制度は従来と何ら変わっておりませんので、これを改めて、甘くするとか、辛くするとか、特別の改正をいたしておるわけではございません。問題は、これらの運用については徴税当局が税の措置をどうするかという問題でありまして、会社として、そういうような経理をされましても、税務当局がそれは否認をするという問題もあれば、認める問題も起こりましょうし、従来とその点については、何ら変わっておりませんので、問題は、会社経理内容を、これだけ株式会社というものが大衆化されておる今日におきましては、やっぱり大衆の利益のために、常に、損をした実情利益のあった実情、そういうものができるだけ表に明らかになることが望ましいのでありまして、それを求めているのが今回の商法改正である、かように私考えております。
  10. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま大臣の御答弁になったこの会社経理の真実公正な明白化と、そういうことがこの商法改正の一番の焦点であるというお話でございましたが、やはり国民がなかなか納得しない、非常にこれがあぶない改正であると言っている点は、何といっても企業会計原則導入という点だと思うわけなんでございます。この点について、前回、私質問さしていただいたときに、この企業会計原則導入によって不当な引き当て金の問題などが、引き当て金についての緩和の問題によって、会社もうけ過ぎということが隠されるんじゃないかという事柄に対して、これは商法上の立場で、会計監査においてどんどんチェックすることができるという御答弁をいただいてはいるんですが、その点について、大臣は今後、この商法上の監査についてどのような御所信を持っておられるかどうか、お述べいただきたいと思います。
  11. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 企業会計原則というものは別段法律で定めておるわけでもありませんので、この法案審議に際しまして、当委員会で各委員方々から非常に適切な御意見を私ども承りました。おそらく大蔵当局とされましては、やはり企業会計原則大蔵当局一つ内部機構といいますか、内部的なことでございますから、大蔵当局も列席しておりまして、かなり反省をされ、今後企業会計原則というものをさらに改善をしていく上にたいへん参考になったんじゃないかと、かように思っております。私どもとしましては、企業会計原則というものが一般社会から指弾されるようなことのないように、適切なこの基本を打ち立てていく、こういうことにわれわれ政府部内としましても大いに努力をしてまいりたいと、かように思っております。
  12. 佐々木静子

    佐々木静子君 この企業会計原則というものが法律できめられたものでないだけに、われわれ国民の目の前にじかに触れるような状態できめられるものでないだけに、非帯に心配するわけなんです。でございますので、企業会計原則自身がわれわれの納得するようなかっこうになってくれるということが非帯に望ましいわけでございますが、むしろ、かりにそれが必ずしもそういうふうにいかない場合でも、商法上の監査でこれは会計監査をびしびしとやっていただけるのかどうかですね、それをたいへんに心配しているわけなんです。その点についてはいかがでございますか。
  13. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) この点は、この企業会計原則というものは大蔵省がかってにきめるわけでもないようで、各界の人たちにお集まり願って、その人たち意見を聞いて基本を、大体の目安をきめておるようでございます。これに対して、一部の委員意見等、この間伺いましたが、私ども聞いておっても適当でないような感じもいたしました。ですから、そういうような人の人選についても、今後大蔵当局として反省をして、十分に注意をして、世間から非難をされるようなことにならないように、また、そういう結論が出ないように努力をする必要があると思うんです。  また同時に、これは将来、別の問題でございますが、本来からいえば、これだけ株式会社組織というものが国全体の支配力が大きくなってきておりまする以上は、あるいはそういうような企業会計原則というものを、内部的な機構としてやらないで、立法化して、そうして制度をきちんと確立した上でやるのがよろしいのかもしれません。こういう点につきましては、将来とも政府全体として検討をしてまいりたいと、かように考えております。
  14. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはこの商法改正案の三十二条で企業会計原則導入というものがうたわれます限り、これは法務当局の御責任においても、十分に国民の信頼にこたえられる会計原則の確立というものをぜひとも御努力いただきたい。そうでなければ、この商法改正ということは、これは千載に悔いを残すたいへんな問題になると私思うわけでございます。その点について、とくと大臣に、この企業会計についての取り組みということをお願い申し上げておきたいと思います。この点について、民事局長から何か補足的な御答弁ありませんか。
  15. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 今回の商法関係法案審議を通じまして、企業会計原則の問題がいろいろ論議されたわけでございまして、私ども商法立場におきましては、あくまで商法の理念に従いまして会計を律していかなければならないと、企業会計原則というものは、仰せのように、改正案の三十二条の公正な会計慣行ということを通じて、その中身が商法上の会計監査の基準として用いられる場合があるということでございますけれども、しかし、商法考えております公正な会計慣行というのは、あくまで文字どおり公正でなければならないわけでございまして、まあかりに企業会計原則というものが公正でない内容のものであれば、それは商法は採用できない原則であると言わざるを得ないわけであります。したがいまして、企業会計原則商法の公正な原則と一致するように、まあ私どもも御協力を申し上げておるわけでございまして、今後の運用につきまして、大臣も申されましたように、十分に留意をしてまいりたい、このように考えております。
  16. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、民事局長に伺いますが、前回十分な御答弁いただけなかった部分として、監査役の、取締役業務監査に対するところの差しとめ請求権、その行使について、裁判上の差しとめ請求をする場合に、仮処分を申請する場合のその費用、特に予納すべき保証金の出どころでございますね、あるいはそれを会社請求する手続等について十分な御答弁をいただいておらなかったんでございますが、その点についての御見解を伺いたいと思います。
  17. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 取締役違法行為差しとめの仮処分保証金の問題につきましては、前回佐々木先生から御指摘をいただきまして、私も、この点はさらに検討を加える必要があるということで研究をいたしてみたわけでございます。この問題につきましては、まず裁判所仮処分を命じます場合に、保証金条件とするかどうかということが、一つ最初の問題に出てくるわけでございます。この点につきまして、裁判現実に担当しておられる方、その他その方面の専門の方の御意見を伺ったわけでございますが、大体二つ考え方がございまして、第一は、裁判所保証金条件としないで仮処分をすることができるのではないか、こういう考え方でございます。もちろん、制度的には、保証金条件とするしないは裁判所の任意でございますが、実際には保証金を積ませるのが一般の例でございます。ところで、この違法行為差しとめの仮処分の場合にどうかという問題でございますが、そもそも保証金を積ませるということは、損害賠償を担保させると、こういう意味があるわけでございまして、この場合の損害賠償というのは、違法行為差しとめられた会社損害を担保すると、こういうことになりますので、その保証金会社に対して積ませるということは、自分損害賠償するために自分の金を保証金として積ませると、こういう結果になるので無意味ではないかと、こういう御意見でございます。それからもう一つは、監査役というのは会社の職務の執行のために仮処分を出すのであって、自分個人利益のために出すのではないと。そういうことになりますと、一般保証金趣旨から申しまして、こういう場合には、むしろ保証金なしで仮処分を命ずるということを本則とすべきではないか、こういう御意見があったわけでございます。これに対しまして、必ずしもそうではない、損害をこうむるのは会社だけではなく、取締役損害をこうむる場合がある、その取締役個人に対する損害賠償を担保するために保証金を積ませるべきであると、こういう意見もあったわけでございます。この場合には、一般仮処分保証金に比べますと、額は若干少なくなるということが言えようかと思います。  そこで、こういった考え方を前提にいたしまして対策を考えてみますと、二つ方法考えられるわけであります。その一つは、この仮処分にあたっては保証条件としないという裁判慣行を確立するということが一つでございます。これはこの法案趣旨というものを十分に御理解いただきまして、それを裁判所の実務の上に反映していただくということでございますが、まあ裁判所は独自の御意見によって決定をなさいますので、必ずしも保証はないわけでありますが、しかし、考え方といたしましては相当有力な御意見があるわけでございますので、期待できないわけではなかろうと、このように考えるわけであります。それから第二の方法といたしましては、その点を立法で明確にするということであります。まあ商法には、たとえば「決議取消の訴」というのがございまして、これを取締役が提起する場合には保証金は要らないと、こういった趣旨の規定もございます。それと同じように、この違法行為差しとめの仮処分につきましては、監査役請求する場合に限って保証金が要らないと、こういうことを明文をもって規定する、これが第二の方法でございます。このいずれかの方法によって仮処分保証金が要らないという処置がとれますならば、前回の御質問に対する一応お答えとして申し上げることができるのではないか、このように考えておる次第でございます。
  18. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、商法改正につきましては一般国民が非常に大きな関心を持たれたわけですけれども、特に税理士の方々あるいは公認会計士方々が、たいへんにその仕事の関係からも御関心をお持ちになったわけでございます。この点に関しまして、特に公認会計士のうちの、法人化された監査法人業務と、いわゆる税務代理税務書類の作成及び税務相談などの問題との関連ですね、そういう問題について、これは法務当局大蔵当局ですね、どのような行政指導を今後なさっていらっしゃるおつもりなのか、御見解を聞かしていただきたいと思います。
  19. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) この点に関しましては、商法が両院を通過いたしまして、その内容並びに附帯決議の精神にのっとりまして、行政当局としては誠心誠意その趣旨に沿うように努力したいと思います。
  20. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは前回も伺いましたが、政令をその趣旨に沿ってお出しになることは間違いございませんね。お約束、かたくしていただけますね。
  21. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 今回の整理法によりまして公認会計士法の一部改正がございまして、政令に委譲したものがございますから、これは当然私ども政令に盛り込んでいくということでございます。
  22. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間がございませんので、最後に、私も前回若干大臣質問に対して触れたんでございますが、この商法改正というものが、今回の監査役監査制度の強化ということよりも、むしろ一番の問題は、株主総会改正ではないか。これがもう一番の問題だと思うわけでございます。そして、その点について、昨年末の報道によりましても、すでに法制審議会審議が始められているということでございますが、株主総会の今後の改正あるいは取締役会改正、あるいは先ほどお話もございました、企業の小規模会社あるいは大規模会社についての制度を新たに設けよう、別の制度を設けようというような動き、そういうものがどういう構想で進められているのか、また大体どのような時期をめどにその構想を実現されるようにいま法務当局が進めておられるのか、具体的にお述べいただきたいと思うわけです。
  23. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 具体的な構想ということでございますので、私からお答えをさせていただきたいと思います。  商法改正は、法務省におきましては、法制審議会の中に設けられております商法部会検討し、これを総会で最終的に御承認いただく、こういう形で作業をいたしておるわけでございます。したがいまして、いま仰せになりました株主総会等改正につきましては、商法部会でどのようにお考えになるかということはこれからの問題でございますので、私から具体的には申し上げかねるわけでございますが、ただ、方向として申し上げますならば、現在、比較的小規模株式会社から非常に大きな規模株式会社まで、雑多のものがございます。これを同じ法制のもとで規律していくことは実情に合いませんし、とうてい無理でございますので、これを分けまして、小規模会社には小規模にふさわしい組織を、そして大規模会社には大規模にふさわしい組織考えていかなければならないと思います。その場合、小規模会社につきましては、なるべく事務簡素合理化を実行できるようなそういう組織に改めていくことが必要であろう。それから大規模会社につきましては、機関等の、非常に複雑になりましても十分に会社社会的な責任を果たしていけるような、そういう組織考えることが必要であろうと思います。先ほど仰せになりましたように、非常に、毎日、国会におきましてもまた新聞紙上におきましても、会社業務経営あり方が問題になっておりまして、私、商法立場で申しますと、株式会社の大きな危機であるというふうに思っております。したがいまして、今回の監査制度によって会社がその姿勢を正していくことを期待しているわけでありますが、さらにそれを徹底させる意味におきまして、今後株主総会あるいは取締役組織と権限、こういった問題につきましても徹底的に検討をしていきたい、このように考えております。
  24. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御答弁でも伺いましたように、いま問題になっているところの企業、特に大企業が、国民が求めているところの社会的要請にこたえ得るように、ぜひとも今後、商法の問題におきましても法務当局がお取り組みいただくことを特に要望したしまして、私の質問は終わりたいと思います。
  25. 原田立

    原田立君 きのう、安原刑事局長は、荒船衆議院予算委員長に対して、検察庁のやみカルテル捜査に支障を来たすこととなるから、石油会社の社長を集中審議に呼ばないでくれと、こういう要請があったというふうに新聞報道されているんですが、それはほんとうにそうなのかどうか。それから、先ほど佐々木委員からも指摘があったように、大臣、きのうは次席検事会同ですか、そこでやみ悪徳商法は徹底的に取り締まるんだ、やれ、こうきびしく言われておったと、きのうの夕刊で拝見したわけですけれども、何かそれとこう比べてみると、片っぽうじゃいいかっこうをしていて、片っぽうじゃ、こそこそとやっているという感じを私は実は正直持ったんです。多くの国民人たちはそう思ったんじゃなかろうかと、たいへん心配するわけなんです。で、刑事局長、その那辺に真意があったのか。あるいは大臣、これはもう大臣も了解の上でやったのか、その点を御答弁いただきたい。
  26. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) お答え申し上げます。  まず結論から申しますと、私は、石油会社関係者を参考人として呼ばないでくれという申し入れをしたことは全然ございません。正確に申し上げますと、今回、告発のあった関係石油会社については現に検察庁において捜査中である、このような関係会社の役員について、告発をされた被告発事実について参考人から事情聴取されるなど調査をなされることは、捜査に支障を生ずるおそれがあるので、差し控えられるようお願いいたしますということでございます。つまり私どもは、国政調査権の大事であることは十分に承知の上で、他面、刑事司法の利益ということから申しますと、捜査中の事件について、国政調査権として調査をその被告発事実についてなさることは証拠隠滅等を招くおそれがある、そういう意味において検察の上に支障があるということをおそれるものですから、国政調査権の作用として、その御判断において差し控えていただくことをお願いしたというのが真相でございます。趣旨はそういうことでございまして、そういうことを法務省刑事局長の私が独断でやるものではございませんで、もちろん大臣の御了承を得まして、なしたものでございます。
  27. 原田立

    原田立君 刑事局長はそういう心配があるんで申し入れたということなんですけれども、現在、超過利得税とか超過利得の問題とかいうことで、非常に物価に対しては世間がきびしい世の中になっているのですね、いま。そのときに、その捜査関係でと言うのもわからないこともないけれども検察当局がそういう申し入れをすると、やっぱり強い誤解を受けるのじゃないでしょうか。また、現に新聞なんかでも、せっかくの集中審議捜査上の秘密を理由に参考人の公述が制限され、不徹底な結果になるおそれがないかと、また肝心な点は、最高検のほうからもそんなことは公述しないようにしろというふうに厳命が出ちゃって、結局捜査上の秘密を逃げ口上に使われて、集中審議が空中分解してしまうのじゃないか、こういう心配をしている向きもあるし、私もその点心配する。これは局長と大臣、そういう心配を含んでいるわけだ。いかがですか。
  28. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 実は、公取から告発を受けましたのは、やみカルテルの問題でございます。したがって、会社が不当の利得をあげたとか、あるいは超過利得があるとか、暴利をむさぼったとかいう点はいかように追及されても、これは一向差しつかえございませんが、やみカルテルの真相を、これから、告発を受けて検察当局捜査をしようというときに、根掘り葉掘りいろいろやられますというと、非常にその点が支障が起こるのではないかという意味で、刑事局長のほうから相談がありましたから、その点はなるべく避けてもらうようにお願いしておいたらどうだということで、そういう趣旨のお願いをしたわけでございまして、そういう告発を受けたやみカルテル問題以外のことでしたら、どんなことをやられても、それは一向差しつかえないわけです。ただ、その点についてだけ若干の懸念がありますので、そういうお願いを予算委員会のほうへいたしましたわけで、特別他意はないわけでございます。あくまで捜査の厳正を期して、これから告発を受けた以上はやろうと、きょう捜査会議をやっておるはずでございますが、そういうような次第でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  29. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 趣旨大臣の申されたとおりでございまして、捜査の徹底を期したいからこそお願いを申し上げたわけでございます。原田先生御心配のことも一面においては考え得ることかもしれませんけれども、私どもは、そういう真剣に捜査に取り組むという立場から、そう申し上げたことでございます、と同時に、これは今回だけのことではございませんで、従来から犯罪捜査中の事件につきまして国会で被疑者、参考人等をお呼びになって調査なさることにつきましては、国政調査権の関係からやってはならぬと言うわけにはいきませんが、刑事司法の立場からはひとつお差し控え願いたいということは、たびたび委員会理事会等で申し上げたことでございまして、何も今回だけこういうことをしたものでないことも念のためにつけ加えさしていただきたいと思います。  それからもう一つ、最高検から厳命があって証人が何も言えなくなるということは全くの誤解でございまして、そういう権限は全然最高検にはございません。
  30. 原田立

    原田立君 じゃ、この問題はそれだけにしておきます。  今回の商法改正の根本目的は、監査役の権限を強化して粉飾決算を防止する、あるいはまた、大企業公認会計士による会計監査を義務化する、あるいは業務監査を行ない、不公正な企業活動差しとめするというようなところで法案ができたわけでありますが、条文を私はたいへんしろうとなんですけれども、条文を少しずつやっていると、みんなあっちこっちに穴があいていて、はたしてそれだけのことが、この大きい大義名分がととのえられるのかどうか、たいへん心配するわけです。民事局長は提案者だから、いや、そんな心配はありませんとおそらく答えるだろう。だから、局長に聞いてもあれだから、大臣、ほんとうに今回の声を大にしている企業監査制度を強化するということですね、今回の法案で少し足りないぐらいな御認識は大臣もおありだろうと思う。それで、昭和四十五年三月三十日に法制審議会の第一次答申が、いわゆる要綱ですね、「商法の一部を改正する法律案要綱」、これは答申が出ているわけだけれども、あの中ではだいぶんはずしてあるわけです。それらはやっぱり法制審議会の先生方が一生懸命つくられたのだから法務省としても当然参考にすべきであろう、かりに経団連や大企業のほうで、いや、そんなことをやめてくれと言ったっても、それはやっぱり法制審議会の答申を尊重するならば、やっぱりそれをがっちりと採用していく、こういう姿勢があってしかるべきだと思うのですが。前置きが長くなったけれども、答申を尊重するにあたって、この要綱に盛られている内容を今後も採用していく、極力早目に採用していくというふうなお約束ができるかどうか。
  31. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 法制審議会の御審議をいただきまして、その出た答申はまことにとうといものでございますが、事務当局といたしましては、諸般の情勢を考慮して今日の成案を得たものであると私は思います。こまかい点は民事局長からお答えをさせますが、問題は、人間社会のことでございますから、今回の改正で万事万全でございますとは言い切れないと思いますけれども、しかし、監査役経理監査のほかに業務についても監査ができるということと、それから一番大事な点は、いままでは会社内部だけでやっておったことを、今度はいわば外部の人である公認会計士あるいは監査法人方々になお詳細目を通していただいて経理の適正化をはかるということは、私は相当の進歩、改善であろうと、こう思っております。まだこれで万全でなければ将来改正をさらに要するかもしれませんが、とにかく内部だけでやっていたものを、今度は内部以外から——内部の者も発言権を強くし、監査役発言権を強くし、また同時に、外部の方の適正な監査を受ける、これによって相当会社経理というものは、粉飾決算をしたり、あるいは過剰の利益を隠したりすることはできなくなってくる。また、そうして税の適正な課税もできるということになってくると思いますので、まあ人間社会のことでございますから、これで万全でございますとは神さまのように申し上げかねますけれども、かなりの進歩、改善であるというように私ども考えておる次第でございます。  なお、法制審議会との関係につきましては、長年手塩にかけて努力をしてまいりました民事局長からお答えさせることにいたします。
  32. 原田立

    原田立君 局長から答弁なくていいんですよ。大臣法制審議会の答申、要綱ね、これをもっと尊重して、おっこっている部分を取り上げるように早くしたらどうですかと、めどはどうですかと、こういうことを聞いているわけです。また、大臣の御所信はいかがですかと言うのです。肝心なところが抜けているのです。
  33. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) お説のとおりでございまして、法制審議会もほんとうに熱心に審議をした結果取り上げた諸問題でございますから、今回の改正に取り入れることができなかった点につきましても、これは最も重要な資料として法務省としましては十分検討をし、お説のように、できるだけ早い機会に取り上げることのできるものにつきましては採用をしてまいるようにいたしたいと、かように考えております。
  34. 原田立

    原田立君 企業会計審議会の答申の企業会計原則修正案は、本法成立施行と同時に修正企業会計原則としてスタートすることになっているようでありますが、それによると、貸借対照表の負債及び資本の部の中で、負債、固定資産、特別引き当て金、資本となり、そのうちの特別引き当て金の内訳が価格変動準備金、特別償却準備金、それから創業まる周年記念資金あるいは事業引き当て金なんていうのがあるようでありますけれども、とりわけ事業引き当て金の一体中身は何なんですか、全くわからない。また、企業それ自身が自分の意思で任意につくることができるんであって、これなどは不当なもうけを隠す隠れみのの最たるもんではないか、こう思うんですが、その点はどうか。  また、修正企業会計原則では、不当な負債性引き当て金をなくし、毎期信頼される利益計算ができるように、継続性の原則をとってきたのを緩和して、利益操作をやりやすくなるようになっているが、改正案では、「公正ナル会計慣行」として企業会計原則を取り入れることを法制化しようとしている。それで、「公正ナル会計慣行」、いわゆる「公正」とは一体どういうふうなことを意味するのか。「公正」とは反対に、大企業利益操作のために自由に引き当て金や準備金を計上できることを法律で規定することになり、全くの不当利益の隠れみのになるのではないか、こんなふうに思うし、心配もするわけです。「公正」の判断をどのように考えているか。  以上、二つ質問したい。御答弁願いたい。
  35. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) あとでお尋ねになりました「公正」の意味でございますが、これは商法で言っておりますのは、商法が商業帳簿を整備しておくように規定しておりますが、そういう制度を設けた目的から見て、公正なと、こういうことでございまして、商法がそういった経理を明確にするということは、一つには債権者のため、それから会社などにありましては株主の関係、従業員の関係等があるわけでありまして、そういうものに対する関係で、会社経理が真実に、そうして利用されるに適するような形で整理されることが望ましい、こういう見地から公正ということばを使っているわけであります。  企業会計原則との関係でございますが、これは先ほども佐々木委員のほうから御質問ございまして、お答えいたしましたように、企業会計原則というのは公正な会計慣行というものを具体化したものであるというふうにいわれておりますが、しかし、現実につくられるのは、これは企業会計審議会という一つの機関によって決定されるものであります。したがって、それが商法立場から見て、公正であるかどうかということは、また別の判断が入ってくるわけでありまして、企業会計原則内容が、かりに商法立場から見て公正でないというものがあります場合には、それは商法の公正な会計慣行には当たらないと、こういうことになるわけでございます。
  36. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいま御指摘の、第一点の特定引き当て金の問題は、これは企業会計原則以前の商法の問題でございまして、二百八十七条ノ二というのにございますので、どういうものをこれで引き当て得るかということは、商法の問題。したがいまして、先般もこの点について公認会計士等は一つの指導原理というか、解釈というか、そういうものを法務省のほうからやっていただければしあわせではないかというようなことを私申し上げました。  次の負債性引き当て金及び継続性の原則でございますが、これは確かに企業会計原則内容をなしておりまして、この修正案、これはまだ確定したものではございませんが、その中でどういうも、のが負債性引き当て金に該当するかということをきちんと注解に書いてございます。それから継続性の原則につきましても、先般来申し上げておりますように、みだりに変更してはならないということになっておりまして、この点は私どもとしましては、従来のやり方をいささかも緩和するとか、甘くするものではないということは、この委員会でも何回も申し上げているところでございます。  なお最後に、このような企業会計原則が修正案として出てきました場合に、従来も企業会計審議会で公正妥当と認められるものとして、いろいろの会計準則というものが出ておりますが、それを場合によって大蔵大臣が通達として、これは公正妥当なるものと認めるとか、あるいは、その解釈をふえんするとかということもございますので、将来必要によりましては、この修正案の注をもう少しはっきり書くとか、あるいは必要に応じて通達をさらに出すというようなこともあり得ることでございまして、その点も今後の検討の対象にしていきたいと、かように考えております。
  37. 原田立

    原田立君 現在大企業の超過利得について、世間はきびしい批判の目を注いでいるのでありますが、決算のとき、著しく不当な事項があった場合、その監査役または会計監査人は、株主総会でそういう事実を報告することができるのかどうか、できないのか。また、そういう不当な事項をどの段階でチェックできるのか、今回の法でできるのかどうか。結局大企業の任意な利益操作が法律で公正な慣行として容認され、保障されることになってしまい、企業の不正を取り締まることができず、ひいては、あげくのはてはこれが悪の温床になっちゃって、結局、超不当利得というような、物価狂乱というんですか、そういうような時代になるおそれがありはしないかと、こう心配するのですが、所見をお伺いしたい。
  38. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 会社経理に著しい不当があったという場合には、まず通常は決算の際の監査報告書にそれが載るわけでございます。この監査報告書というのは、監査役監査をした上で作成するものもございますし、会計監査人が監査をした上で作成するものもございます。そのいずれにも記載されるということになります。そうしてその監査報告書は決算に関する株主総会の招集通知に添付されますので、全株主に周知されることになるわけであります。それから、その株主総会におきましては、監査役はそれについて報告をすることができます。また会計監査人は、特に規定はございませんけれども、たとえば監査役が不当でないと認めた事項について会計監査人のほうが不当であると認めたような場合、つまり監査役会計監査人とが監査について意見を異にする場合には、定時株主総会に出席いたしまして意見を述べることができる、このように相なっております。
  39. 春日正一

    ○春日正一君 私は、前回、大蔵省証券局から答弁がなくて質問を留保した問題について質問したいと思います。  それは昭和四十五年版の大蔵省証券局年報の「第五章 企業財務公開制度の展開」という章の「第二節 商法企業会計原則との調整」の中で、この本のページ数で言えば五二ページに当たりますけれども、負債性引き当て金について企業会計審議会の審議内容が要約されているようですけれども、この点について当局のほうから説明をしてほしいと思います。
  40. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 前回委員会で御質問いただき、答弁を留保しておりました、ただいまの四十五年証券局年報の負債性引き当て金に関する記述の趣旨についてお答え申し上げます。  まず、負債性引き当て金は、修正案注解十八にありますとおり、次の三つの要件に該当するものを考えております。すなわち、一つは、「将来において特定の費用(又は収益の控除)たる支出が確実に起ると予想され」、二つに「当該支出の原因となる事実が当期においてすでに存在しており」、三つに「当該支出の金額を合理的に見積もることができる」ものでございます。修正案注解十八に例示してございます製品保証引き当て金以下の引き当て金は、いずれも上述の三要件に該当するとともに、法律上の債務でもございまして、これらの引き当て金会計上も商法上も計上することを強制されるもの、計上しなければならないものであり、ここに例示することにつきまして何らの問題はなかったので例示されたものでございます。ところで、修繕引き当て金は前に申しました負債性引き当て金の三つの要件を充足するものでありまして、会計上は当期の費用として引き当てなければならない性格のものでありますが、一方、法律的な立場から見ますと、これは債務とは言えないので、引き当て金として計上を強制することについて法律的には要求できないということがありましたので、修正案では「等」ということばで表現したままとなっているのでございます。とは申しましても、修繕引き当て金は、会計立場からはこれを引き当てなければ妥当な会計処理とは認められないものでありますので、実際問題としてこれを計上させる必要があり、これの表示場所としては、これが負債性引き当て金の三つの要件を充足しているものでありますので、会計立場からはこれを負債性引き当て金として表示する以外には考えられないのであります。具体的には、今後、法務省令である計算書類規則と大蔵省令である財務諸表規則をそれぞれ改正することとしておりますので、その際にこの取り扱いも確定されることとなりますが、現段階ではただいま申し上げましたようなことで処理されることになるものと考えております。  以上、四十五年版証券局年報に記載された内容について、その趣旨を申し上げたわけでありまして、記載の内容にあやまちはございません。  なお、最後に、言うまでもないことでございますが、先生の御疑念のごとく、負債性引き当て金を拡大するためのよりどころとして「等」ということばを加えたというものではございませんことは、さきにも申し上げたとおりでございますので、御了承いただきたいと存じます。   〔理事矢追秀彦君退席、委員長着席〕
  41. 春日正一

    ○春日正一君 結局、この書いたのをそのまま読んでもいいのですがへ修繕引き当て金のようなものは、企業会計原則上は負債性引き当て金だけれども商法上では債務ではないので計上を強制できない、そこに矛盾があるわけですね。それを解決する方法として、商法上債務ではないけれども企業会計原則上は負債性引当て金である修繕引き当て金を、商法上、計上を強制するよう商法改正したらどうかという意見があった。けれども、この意見は実現を見られなかった。結局、この最終的な取り扱いは、商法上は計上が強制されない特定引き当て金として、計上の場合の表示のしかたは、負債性引き当て金として取り扱うということで予解されたと、ここにもそう書いてあるわけですね。そこで、ここに書かれている「債務に該当しない負債性引当金」というものは、修繕引き当て金のほかにどういうものが考えられておりますか。
  42. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 現在におきましては、それだけでございます。
  43. 春日正一

    ○春日正一君 それではお聞きしますが、ここに「このような引当金の取扱いについては、」「負債性引当金として取り扱うという解釈で了解され」たというふうに書かれているわけですね。けれども、これはだれとだれの間で了解されたんですか。
  44. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) これは先ほども申し上げましたとおり、会計上の問題と商法という法律上の問題がからんでいる話でございますので、予解には当然、会計上の立場を所掌している私ども法律上の立場を代表しておられる法務省と、それから企業会計審議会の委員の方の間でそういう話があり、了解があったというふうに聞いております。
  45. 春日正一

    ○春日正一君 もう一度お聞きしますが、企業会計審議会には経団連の代表、公認会計士の代表、それから商法学者、それから政府でも法務省、大蔵省証券局などが入っておるわけですね。そこで、この中でおもにだれとだれとの間で了解ができたのか、それから経団連は一体その際どういう態度をとったのか、その辺お聞かせ願いたいんですが。
  46. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) この点は、先ほど申し上げましたように、計算書類規則と私どもの財務諸表規則の調整が今後行なわれるわけでございますから、会計立場商法立場をそれぞれ所掌する、主として大蔵省と法務省委員の間で話が行なわれ、了解されたということで、委員の中の経団連から出ておられる方というのは、ほとんど法律問題でもございますので関係はなかったと申してよいのではないかと考えます。
  47. 春日正一

    ○春日正一君 そこですね、いつも持ち出すこの経団連パンフレットの一〇五号の四六ページから七ページのところに、「税法と企業会計原則上の引当金の調整問題」という点で、委員である経団連関係の居林という人が書いてますけれども、「今回の修正案では、負債性引当金を注解においていくつか例示した。製品保証引当金、売上割戻引当金、景品費引当金、工事補償引当金等々は、未だ税法上で損金算入が認められていないものである。これらの新しい負債性引当金は、会計原則上、当然の負債と考えられているものであるから、税法としても損金算入を拒むことがあってはならない。」というようなことを言い、「経団連としては、かねてより負債性引当金をすべて税法上で損金算入を認めるように主張してきたが、今春の税制改正では建設業の工事補償引当金についてのみ、新しく税法上でも損金算入を認めることにまとまった。」というふうにして、「主税当局では、税法が会計慣行よりも先走って負債性引当金を広く損金にするように改めることは、行き過ぎであるという態度をとっている。工事補償引当金のごとく、多くの会社で計上する慣行が完熟してきたものから、逐一、税法上も損金算入するようにしたいとの意向である」、さらに、「経団連では、会社が負債性引当金を計上しても、税法が否認するようでは、健全な会計慣行の育成を妨げるのみならず、納税意欲にも悪影響があるので、税法が負債性引当金を広く損金に算入するよう改める必要があると考えている。」と、そう言って、しかし、「税法が先か、会計慣行が先かという鶏と卵の循環論法をくり返していても」解決しないので、「会社としてはいろいろ言い分はあると思うが、この際、有税で以てでも会計原則が例示した負債性引当金を広く計上して、税法としてもこれを認めざるを得ないようにすることが必要であると思われる。したがって、この三月決算以降において、各社が有税ででも引当てるという決心をしていただきたい。この場合、負債性引当金の計上額は、各社、各業界における過去の実績値を参考として、今後の見通しを加えた額にすることになる。とくに長期延払いのものとか、長期の保証契約をしているようなものについては、手厚く引当金を計上することが必要であると思われる」、経団連を代表した居林という人は、こういう態度で臨んでおるし、きまったあと、こういう形で報告をしておるわけですね、企業に。  だから、そういうふうに考えてみると、法務当局大蔵当局がいま了解されたというふうに言われましたけれども、どういうふうに了解しようとしても、やっぱり実際損金でないものを負債性引き当て金というような形で書かせるというようなことになる、そこからくる矛盾というのはその了解では解決できない。結局、修繕引き当て金のような引き当て金商法上債務ではなく、商法第二百八十七条ノ二の特定引き当て金であるというなら、やはり貸借対照表の特定引き当て金の部、損益計算書の未処分損益の部に表示すべきであって、なぜ負債性引き当て金として表示するのかという疑問が出てくるわけです。そこへもって負債性引き当て金の中へ入れるということで、経団連の居林氏の言っているように、ますますそれを手厚く引き当て金をつくり、しかもその引き当て金の項目も拡大して、慣行というんですから、多くの会社が三年、五年とこれをやれば、これは正当な慣行ということで認められるという実績に持っていこうとしておる、あの強力な経団連が。それにこれは乗ぜられるような了解を大蔵省と法務省がしたということになると、これは国民に対する責任を果たしていないんじゃないか、そう思うんですけれども、その点どうですか。
  48. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) まず、居林氏は企業会計審議会の委員ではございませんで、一幹事にすぎません。そこで、そういう方がなるほど講演をしたかもしれませんが、先ほどのように負債性引き当て金に当てたものを税法の課税所得の損金算入上拒むことがあってはならないとか、そういうようなことばを使うこと自身がたいへん間違った、とんでもない行為ではないかと思います。そうして負債性引き当て金に引き当てたからといって、先日主税局から話がございましたように、主税局は主税局としての租税政策上の観点から何を損金算入を認め、何を認めないかということは法令によってきちんとやっているわけでございますから、一企業会計審議会の幹事の言うことによって、租税当局並びにわれわれが影響なり左右されるというようなことは絶対にございません。
  49. 春日正一

    ○春日正一君 そのあなたの強がりは世間に通用しませんよ。経団連というものがどれほどの力を持っているかということは国民みんな知っているんですから。場合によれば総理大臣の首も飛ばすというふうにいわれておるくらいな力を持っているわけですから、あなたがそういう強がりを言われても世間には通用しない。  そこで、私いま質問した実質内容の問題として、修繕引き当て金のような引き当て金を、なぜ商法第二百八十七条ノ二の特定引き当て金ということで貸借対照表の特定引き当て金の部、損益計算書の未処分損益の部に表示しないで、負債性引き当て金として表示するようにしたのか、その理由を聞かしてほしい。
  50. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 先ほども申し上げましたように、会計原則上というか、会計立場からはこれは負債性引き当て金に該当するわけでございますから、したがって、その立場からはこれを負債性引き当て金に引き当てる以外、場所がないわけでございます。
  51. 春日正一

    ○春日正一君 結局、会計のほうの原則商法のほうの原則との食い違いというものを、そういう形で、了解というような形で処理することで、違法か適法かということがたな上げにされて、企業にとっては有利なようになるし、あなたはそれは承知しないと言われたけれども、居林氏のような、腹黒い意図を持った企業が、将来にわたって不正を働くための一つのよりどころを与えるというようなことになるんじゃないだろうかというふうに思うんですが、その点どうなんですか。だいじょうぶと言えるんですか。
  52. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 一昨日もお答え申し上げましたように、これは居林氏の講演の記録でございまして、ただ、この本が経団連事務局編ということになっているという点を先生は問題にしていらっしゃるわけでございますが、このような講演に対する答えは、先日も申し上げましたように、最終的にどういうふうに修正案がおさまるか、そしてさらに法務省令である計算書類規則とか、大蔵省令である財務諸表規則がどのようになるかということ、あるいは場合によっては、必要とあれば検討することあるべき通達の内容、これで明確に答えとしてわれわれの立場が表明されるということでございますから、あまりにまだ確定していないものを、経団連の場でスピーチしたという内容に重点をおかけ過ぎになるお必要もないのではないかと思います。
  53. 春日正一

    ○春日正一君 その問題は、どうしても最後にはっきりさしておきたいと思いますけれども、その前に、いまの了解というのは、企業会計原則のどっかできちっと明確にされるわけですか、そういう了解がなっているということは。
  54. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 計算書類規則と財務諸表規則の間で調整されて明確にされるものでございます。
  55. 春日正一

    ○春日正一君 そこで、いま出された問題ですけれども、この企業会計審議会の運営について、私、ずっとこういうものを読んでおって疑問を感じるんですけれども企業会計審議会は、昭和四十四年二月から商法企業会計原則との調整について審議を重ねて、四十四年十二月十六日商法に対する改正要望事項、企業会計原則の修正案をまとめて大蔵大臣に報告し、一般に公表したというように聞いております。この審議企業会計審議会の第一部会が行ない、この審議のため研究会が三十四回、小委員会が十四回、部会が七回開かれたということのようですけれども、この研究会には大蔵省、法務省も参加して行なわれているというふうに聞いているんですけれども、その点間違いないですか。
  56. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) この審議会の委員には、法務省、大蔵省主税局、国税庁、大蔵省証券局からそれぞれ委員が出ております。
  57. 春日正一

    ○春日正一君 これは、第一部会の審議では、重要な審議が部会長だけ知っておって、他の委員、幹事には知らされないというようなことはないんですか。
  58. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) それは審議会の運営の問題でございますが、当然これだけの重要な問題については知らされていたと存じます。
  59. 春日正一

    ○春日正一君 それで、前回私はこの経団連パンフレット、ナンバー一〇五の中の番場嘉一郎氏のことばを引用して、企業会計審議会の中で経団連代表と公認会計士協会代表との話し合いで妥協したといういわば取引の問題を取り上げて、結局公認会計士協会の主張を取り入れて、そのかわりに経団連のほうには損失引き当て金も負債性引き当て金の中に取り入れることになったというようなことを番場氏はこの中で言っているんですね。そのことについて、これは事実かどうかと質問したところが、これに対して、あなたでしたか、ほかの人でしたか、私覚えていないけれども、われわれは関知していないというような答弁があったと思うんですけれども、この点ほんとうに関知してなかったんですか。
  60. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 委員の中で経団連の委員とやりとり云々というようなことは、もちろん私どもは何ら関知しておりません。
  61. 原田立

    委員長原田立君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  62. 原田立

    委員長原田立君) 速記をつけて。
  63. 春日正一

    ○春日正一君 そういうことはおかしいと思うんですよ。番場氏は経団連の代表者ではなくて、また公認会計士協会の代表者でもない、第一部会の部会長ですわ。その人が、なぜ部会長だけがこういう重要な話し合いがあったということを知っておって、大蔵省や法務省委員や幹事が知らなかったのか。それほど運営が非民主的に関係者がこそこそ経団連と公認会計士協会の人たちが話をして、それで部会長だけがそのことを了解して、大蔵省や法務省その他からも委員が出ておるんだけれども、その方々はそういう内容にわたる問題を知らずに運営されるというような、そういう非民主的な運営が実際にここでやられておったのかどうか。知らぬということになればそういうことになる。もしそうだとしたら、ここに出されてきている法案のその基礎そのものが非常に不明朗な形でやられたということになるわけじゃないですか。
  64. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいまの運営の問題でございますが、公の場で発言されたことはこの委員会におきましても議事録なりそれの抜粋というものをとっておりますから、その限りにおいては、一昨日もお答え申し上げましたように、番場氏なり居林氏がその中で言っているような事実はない、公の場でそのような発言なり確認はないということははっきり申し上げることができます。ただ、公の場以外でちょろちょろどういう話が行なわれているかということは、審議会の民主的運営云々とは関係のない、私どもも関知しない問題ではないかと思います。
  65. 春日正一

    ○春日正一君 私、これ、まあ時間が短いようですから、もう一度読みませんけれども、これはこの法律内容ですね。それの中に含まれる内容を話し合って、それで、いま言ったように商法上は強制されないけれども、大蔵省のほうの側からいえば損金に計上するような、そういうことになるというような問題の矛盾を解決する話し合いがされた内容の問題でしょう。だから、これは委員会全体がそういう了解でこういう答申をするんだということが知られていなければ、委員会の意思が統一してないということになるんじゃないですか。つまり、ほかの委員方々はつんぼさじきに置かれたまんまで委員会答申というものが出された。しかもその一番重要な部分にそういう裏の了解事項というようなものがあって委員全体が知らされてないということになると、ほんとうにやみからやみへということになるから、ますますこれは権威のないものにならざるを得ない。だから、そこらの辺であなた方ほんとうに知らなかったのか。知っておっても役所の立場として言えないのか。ここは非常に大事な問題だと思います。将来つくっていく場合にも大事だし、これ、運用していく問題の場合でも大事だと思います。私はこの前から言うけれども、こういうものを一つの権威ある団体が、その団体の名前で編集して出すということは、そのことを肯定的に受けとめて、そうしてこれを天下に確認しているようなものですから、だから決して斉東野人の言ではない、そういう立場からお聞きをしているんです。だから、これで私質問を終わりますけれども、そこのところをはっきりしてほしい。
  66. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 公の場での発言と、しからざる場での事柄は、今後講演などするような場合にも十分気をつけるように私どものほうから申し伝えたいと思います。
  67. 原田立

    委員長原田立君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないと認めます。  後藤君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。  この際、本修正案を議題といたします。  後藤君から修正案の趣旨説明を願います。後藤君。
  69. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 私は、自由民主党を代表して、商法の一部を改正する法律案外二法案に対する修正案の内容等について御説明をいたします。  第一、商法の一部を改正する法律案に対する修正の内容等は、次のとおりであります。  第一点は、小規模の商人の負担軽減等のため、商人は、損益計算書を作成することを要しないものとすることであります。これは第三十二条、第三十三条、第百五十三条関係であります。  第二点は、子会社に対する調査権の乱用防止のため、子会社は、正当な理由があるときは、親会社監査役の調査等を拒むことができるものとすることであります。これは第二百七十四条ノ三関係であります。  第三点は、取締役違法行為差しとめ請求権を実効あらしめんがため、取締役違法行為差しとめの仮処分には、保証を立てることを要しないものとすることであります。これは第二百七十五条ノ二関係であります。  第四点は、施行期日並びに休眠会社特例に関し所要の改正を行なうことであります。これは附則第一条、第十三条関係であります。  第二、株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案に対する修正の内容等は、次のとおりであります。  第一点は、監査役の子会社調査権に関する規定の修正と同様の理由で、子会社は、正当の理由があるときは、親会社会計監査人の調査等を拒むことができるものとすることであります。これは第七条関係であります。  第二点は、資本金一億円以下の株式会社について商法の適用除外を定めた第二十五条の表現をわかりやすくするため修正しようとするものであります。  第三点は、施行期日等に関し所要の改正を行なうことであります。これは附則第一項、第四項関係であります。  第三、商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案に対する修正の内容は、施行期日等に関し所要の改正を行なうことであります。  以上が修正案の趣旨及びその内容であります。
  70. 原田立

    委員長原田立君) それでは、ただいまの修正案に対し質疑のある方は順次御発言願います。——別に御発言もないようですから、これより三法律案並びに修正案について便宜一括して討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  71. 佐々木静子

    佐々木静子君 私は、日本社会党を代表いたしまして、商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案、並びにただいま提案されました修正案に対しまして、一括して、いずれも反対する立場から討論をいたしたいと思います。  まず、この改正案の骨子となっているところの監査制度の強化が、はたしてその意図する点にこたえ得るものであるかという点であります。取締役業務行き過ぎを是正し、企業の横暴をチェックするということ自体は、現在国民が最も強く求めているところの事柄でございますが、はたして本改正によって名実ともに国民要請にこたえ得るところの監査制度の強化が実現されるかという点を考えてみますと、きわめて心もとない改正にすぎないと断ぜざるを得ないのでございます。昭和四十五年、法制審議会決定の改正要綱では、監査役業務監査権限を確保するため、監査役取締役会招集権、株主総会招集請求権及び三カ月ごとの営業経過概要報告を受ける等の権利などが本法案によって削られてしまっている。また、監査役の任期が三年から二年に短縮されたこと、監査役の報酬及び監査費用に関する規定が設けられておらないことなどを考えてみましても、真実、監査制度の強化を実現し得るものとはとうてい言い得ないというふうに考えるのでございます。  また、公認会計士あるいは監査法人会計監査についても、その責任の重さに比し、会計監査人が完全に企業に対する独立性を堅持して監査を行ない得るだけの制度的な身分の保障がなされておらないことを、遺憾ながらこの点においても、これまたきわめて片手落ちな実効を期しがたいものと言わざるを得ないと思うのでございます。  特に、最も本改正案で問題と考えられるのは、商法改正案第三十二条の「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」の規定であり、これにより企業会計原則の修正案を導入しようとしている点であります。私どもはこの三十二条全文の削除を強く主張したわけでございますが、この企業会計原則の修正について最も懸念されていた継続性の原則についても、本委員会審議における政府答弁によって一応継続性の原則が肯定されてはおりますものの、企業会計原則修正案の五における「正当な理由によって、会計処理原則又は手続に重要な変更を加えたときは、これを財務諸表に注記しなければならない。」との条項が削除されたことについての納得のいく理由がいまだ説明されておらないわけであります。また、継続性の原則について何ら明文を設けられておらぬことより見ても、大企業がその利益を隠匿するために、企業がこれを正当な理由なく変更するおそれというものがはなはだ多いという危険を感ぜざるを得ない。すなわち、逆粉飾あるいは粉飾決算につながるおそれを私どもはとうてい無視することができないのでございます。  特に、大企業もうけ過ぎを隠蔽するための絶好の隠れみのになっている引き当て金の問題であります。本委員会において論議された真実必要とされる額の何十倍あるいは何百倍という多額の引き当て金を、租税特別措置法等によって合法的なものと是認し、負債性引き当て金を広く計上することによって大企業、大会社利益隠匿に加担するおそれのあるこの企業会計原則が修正された上、導入されるということは、私どもはこれを安閑と手をこまねいて是認することはとうていできないのであります。もちろん、商法上の監査趣旨から考えても、商法上適当でない度を越した引き当て金は、たとえ税法で是認されているパーセンテージ以内であっても会計監査によってチェックできる旨の政府答弁はございましたが、会計監査人の身分保障にきわめて乏しい本法案において、現実には絵にかいたもちにすぎないおそれが十分にあることは、あまりにも明白であります。  監査制度の強化に逆行する危険の多い中間配当制度をはじめ、零細商人に無理をしいる商業帳簿の作成義務についても、いずれも反対する次第でございます。  商法改正案の第三十二条の商人の作成すべき帳簿から損益計算書を削除して、その簡略を幾ぶんでもはかっている点、あるいはその他これに関連する一連の修正及び改正商法案の第二百七十四条ノ三、子会社に対する親会社の調査権中、子会社の側からこれを拒否することのできる一項目を追加した修正案が出されたこと、あるいは監査役差しとめ請求権の行使を容易にするため、仮処分申請事件については保証を立てずになし得る点などの修正案も提出されておることなど、その部分においてはやや監査制度の強化に幾ぶんともプラスする修正案であろうとは思いますけれども、これのみでは、とうていわが党が期待しているところの監査制度の強化実現にはほど遠いと断ぜざるを得ないと考えるのでございます。  したがって、本三法案及び修正案については、いずれも反対の意思を表明いたしまして、私の討論を終わりたいと思います。
  72. 棚辺四郎

    ○棚辺四郎君 私は、自由民主党を代表して、商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案に対する修正案、並びに修正部分を除く原案について賛成の意見を申し述べたいと存じます。  わが国の株式会社監査実情を見ます場合、監査役の地位、権限が弱体なため、本来の監査機能を十分果たしていないのが実情でありまして、近時における企業粉飾決算続出の例を見ても十分うかがえるところであります。  今回の改正案は、このような実情に対処するため、監査役の権限を強化し、会計監査のほか業務監査をも行なうものとし、このために必要な取締役会出席権、取締役違法行為差しとめ請求権等の権限を監査役に与えるとともに、その地位の安定、その他監査機能の強化のための措置を講じ、会社の内部から不正を事前に防止しようとするものであります。  また、新たに五億円以上の大規模会社について公認会計士監査法人による事前監査を義務づけ、外部からの監査もきびしくしており、内部、外部双方からの監査により企業の不正を防止しようとするものであり、資本金一億円以下の小会社については、その監査役会計監査のみを行なうなど実情に即した措置を講じておるものであります。  さらに、今回の改正には、定款による累積投票の排除、中間配当制度の新設、取締役会の決議による転換社債の発行、準備金の資本組み入れによる無償抱き合わせ新株の発行、休眠会社整理等会社運営の安定、株主の利益企業活動の円滑化をねらった改正点が多いのでありまして、今回の改正は、株式会社実情に照らし時宜に即した措置であると考えるものであります。  また、修正案は、小規模商人の負担軽減等のため商人は損益計算書の作成を要しないものとし、監査役会計監査人の子会社に対する調査権の乱用を防止する措置及び取締役違法行為差しとめ請求権の実効性の確保の道を講ずるものでありまして、いずれも妥当な措置であると思われます。  これらの改正は、企業の運営の適正と安定に寄与し、今日の社会経済情勢に適合するものであると考えます。  よって、私は、以上三法律案及び修正案に対し、賛成の意を表するものであります。
  73. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私は、公明党を代表して、商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案及び修正案に対して、一括して反対の討論を行ないたいと思います。  本法案は、昭和四十年三月の山陽特殊鋼の粉飾決算に端を発しているのであります。しかるに、今回の法案施行、実施されたからといって決して粉飾決算防止にはならないのであります。このことは長時間にわたる委員会での審議を見ても、何一つ問題の解決を見ていないことでも明らかなとおりであります。  また、本法原案作成の段階と現在とでは、その社会的、経済的情勢等の変化は著しく異なっております。特に、買い占め、売り惜しみ、さらには値上げの先取り、便乗値上げなどに見る大企業の横暴、独善的行為は目に余り、その上不当なる利益の隠蔽、脱税行為に至っては国民を愚弄する行為以外の何ものでもありません。  このような情勢下では、本法案は当初の目的である粉飾決算の防止はおろか逆粉飾決算の増加すら招きかねないのであります。このような諸点にかんがみ、私は次の三点について特に強く指摘し、反対を主張するものであります。  まず第一点として、第三十二条二項の「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」と定めておる点であります。これは昭和四十四年十二月企業会計審議会が発表した企業会計原則及び同注解の修正案の導入につながり、継続性の原則を大企業の都合のよいようにかってに変更して解釈できることになるものであります。  また、継続性の原則と並行して引き当て金制度を悪用し、利益を不当に操作することができ、逆粉飾を招くおそれが多分にあるばかりでなく、大企業利益を擁護することになりかねないのであります。  第二点は、本法案の主目的である監査制度の強化についてであります。  これは法制審議会が昭和四十一年十一月以来、約五年の歳月を費やし、昭和四十五年三月三十日に決定し、法務大臣に答申された改正案要綱から大きく後退し、監査役株主総会招集請求権取締役会招集権、取締役の定期報告の義務等を削除しているものであります。このような重要な事項を削除したことは、本法案目的に反した骨抜き法案と言う以外の何ものでもありません。  また、監査役業務監査を実効あるものとするのには、個人監査に固執することよりも取締役会に対応でき得る監査役会なるものを設けるべきではなかったのか。  第三点は、中間配当についてであります。  本法案では中間配当、すなわち金銭の分配を株主総会を通さず直接取締役会の決議だけで実施することができることとしております。これは人為操作によって見込み配当につながり、その失敗によって赤字配当、すなわちタコ配当の危険性が十分にあるのであります。その結果、取締役はつじつまを合わせるために粉飾決算をせざるを得ない立場になり、また株主の権利すら奪うことになります。  その他、親会社の子会社に対する不当な立ち入り調査権、零細商人に対する複式簿記の記帳義務等多々ありますが、本法案粉飾決算防止、監査制度の強化等に対して期待でき得ないことはもちろんのこと、国民世論のきびしい批判の的になっている大企業の飽くなき利潤追求の実態、社会とともにあるべき企業社会責任の欠除、企業のモラルの低下から見ても、本法案には賛成できないことを重ねて強く主張し、私の反対討論を終わります。
  74. 春日正一

    ○春日正一君 私は、日本共産党を代表して、商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案及び自由民主党提出の修正案に対し反対するものであります。  反対理由の第一は、この商法改正案は、私がこの質疑の冒頭でも述べましたように、今日ごく少数の大企業が産業あるいは零細企業、そういうものを大きく独占的に支配して、そうして不当な暴利をむさぼっておる、そういうものを国民立場から規制するために企業基本をきめる商法改正するのか、それとも大企業のそのような横暴というもの、そういうものに合わせてそれを正当化し、合法化する立場からこの商法を変えるのか、二つ立場のどちらかという問題を私は投げかけたわけでありますけれども、この改正が、この委員会での質疑を通じて明らかなように、明らかに大企業の専横、それを助長し、荒かせぎや利益かせぎというような反社会的な行為を正当化するような、そういう内容を含んだものである、この点が一番基本的な反対理由であります。  具体的に申しますと、商法改正案三十二条に「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」という規定を導入することによって企業会計原則修正案を基本的に導入し、継続性の原則を正当な理由なく企業自分の都合によって変更できるようにしようとしているからであります。また、企業会計原則修正案は利益引き当て金をも特定引き当て金として公認し、企業会計理論上とうてい容認できない処理を公的に承認するものであり、これは大企業の逆粉飾を合法化し、会計監査基準そのものを後退させることになるからであります。  第二に、企業社会責任要請する世論に押されて監査制度を若干強化しておりますけれども改正法案のような監査役会計監査人の身分保障では、多少権限を強化しても絵にかいたもちになる危険性が強く、むしろ企業に対する社会の批判をそらせるためのいわばイチジクの葉に使われてもしかたがないような、そういう程度のものであるからであります。かかる改正は、世論がいま要求しておる大企業の実態を明確にし、その反社会的な行為を規制せよという改正への要望からはるかに隔たっており、実効性の薄いものと言わなければならないからであります。  第三、商法改正案に親会社、子会社の概念を導入し、三井、三菱グループその他のような大企業集団による系列支配の現状を合法化し、さらにそれを促進させるものであるからであります。この企業集団による系列支配こそが親会社、子会社を含めた逆粉飾の根源であり、これを一方で強化しておいて、他方で支配会社監査役等の子会社に対する立ち入り調査権を規定しても、それは実効性の薄いものとならざるを得ないことは明らかであります。この項に対する政府の説明では、親会社が子会社に対して不良な債務を転嫁したり、あるいは売れない品物を無理に売りつけたりというようなことで自分会社の弱点を隠すような、そういうことのないようにするものだというように説明をされておりますけれども、しかし、そういう理論は、言ってみれば、どろぼうに被害者を保護せよと義務づけるようなものであって、とうてい世間に通用するものではないのであります。  第四に、商法改正案三十二条、三十三条で零細小売り商に対してまで記帳義務を強制し複式簿記をしいるのは、事実上零細小売り商に無理をしいるものであります。  そのほか、粉飾決算を助長させる中間配当の規定、税理業務監査業務関係の明確化、職域の配分など、まだ十分な配慮がなされていないなど、たくさん未解決の問題を残しております。  企業社会責任が大きな世論となり、売り惜しみ買い占めなどの反社会的行為の規制が大きく叫ばれているとき、このような商法改正ではなく商法の抜本的改正、大企業国民立場から規制していくように抜本的な改正が必要であることは疑う余地のないところであります。この法案は、この国民の要望に背を向け、むしろ逆行するものであって、とうてい容認することのできないものであります。  なお、修正案について言えば、この委員会で論議された零細商人の記帳の問題とか、その他について若干の修正はされておりますけれども、これらはきわめて枝葉の問題であって、いま私が指摘しましたような商法改正の一番根本の悪い点については一つも手を触れていない、そういう程度の修正でありますから、私どもとうてい賛成するわけにはいかないわけであります。以上、わが党の反対の理由を明らかにして、討論を終わります。
  75. 原田立

    委員長原田立君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  商法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案について採決いたします。  まず、後藤君提出の修正案を問題に供します。後藤君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  77. 原田立

    委員長原田立君) 多数と認めます。よって、後藤君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  78. 原田立

    委員長原田立君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。  以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。  次に、株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び同案に対する修正案について採決いたします。  まず、後藤君提出の修正案を問題に供します。後藤君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  79. 原田立

    委員長原田立君) 多数と認めます。よって、後藤君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  80. 原田立

    委員長原田立君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。  以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。  次に、商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案及び同案に対する修正案について採決いたします。  まず、後藤君提出の修正案を問題に供します。後藤君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  81. 原田立

    委員長原田立君) 多数と認めます。よって、後藤君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  82. 原田立

    委員長原田立君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。  以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。  佐々木君から発言を求められておりますので、これを許します。佐々木君。
  83. 佐々木静子

    佐々木静子君 私は、ただいま修正議決されました商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党共同提案にかかる附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    附帯決議(案)  一 現下の株式会社の実態にかんがみ、小規模株式会社については、別個の制度を新設してその業務運営の簡素合理化を図り、大規模株式会社については、その業務運営を厳正公正ならしめ、株主、従業員及び債権者の一層の保護を図り、併せて企業社会責任を全うすることができるよう、株主総会及び取締役会制度等の改革を行なうため、政府は、すみやかに所要の法律案を準備して国会に提出すること。  二 監査法人は、その社員が税務代理税務書類の作成及び税務相談を行なっている会社について、本法の監査業務を行なわないよう規制すること。  三 企業会計原則は、企業の財政状態及び経営成績について真実公正な財務諸表を作成公示するための基準であるから、修正については、その目的に反することのないよう配慮すること。   右決議する。  以上でございます。
  84. 原田立

    委員長原田立君) ただいま佐々木君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  85. 原田立

    委員長原田立君) 全会一致と認めます。よって、佐々木君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、中村法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。中村法務大臣
  86. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) ただいま附帯決議を拝聴いたしておりまして、附帯決議の御趣意に沿いまするように最善を尽くしたいと思います。
  87. 原田立

    委員長原田立君) なお、三法案についての審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三分散会      —————・—————