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1974-02-19 第72回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十九日(火曜日)    午前十時三十八分開会     ―――――――――――――    委員異動  二月十六日    辞任          補欠選任     中村 登美君      小枝 一雄君  二月十九日    辞任          補欠選任     小枝 一雄君      鍋島 直紹君     木島 義夫君      藤田 正明君     鈴木 省吾君      佐藤  隆君     吉武 恵市君      鬼丸 勝之君     重宗 雄三君      木村 睦男君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 棚辺 四郎君                 佐々木静子君     委 員                 鬼丸 勝之君                 木村 睦男君                 佐藤  隆君                 鍋島 直紹君                 藤田 正明君                 柳田桃太郎君                 山本茂一郎君                 吉武 恵市君                 中村 波男君                 中村 英男君                 藤田  進君                 春日 正一君    国務大臣        法 務 大 臣  中村 梅吉君    政府委員        法務大臣官房長  香川 保一君        法務省民事局長  川島 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        大蔵大臣官房審        議官       田中啓二郎君        大蔵省主税局税        制第一課長    伊豫田敏雄君        国税庁直税部長  田邊  曻君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件商法の一部を改正する法律案(第七十一回国会  内閣提出衆議院送付)(継続案件) ○株式会社監査等に関する商法特例に関する  法律案(第七十一回国会内閣提出、衆議院送  付)  (継続案件) ○商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係  法律整理等に関する法律案(第七十一回国会  内閣提出衆議院送付)(継続案件)     ―――――――――――――
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  去る十六日、中村登美君が委員辞任され、その補欠として小枝一雄君が選任されました。     ―――――――――――――   〔委員長退席理事佐々木静子君着席〕
  3. 佐々木静子

    理事佐々木静子君) それでは、商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案を便宜一括して議題といたします。  前回に引き続きこれより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 原田立

    原田立君 今回のこの商法改正について、わが党は初めて質問するのでありますが、前の質問者とだいぶダブる点があるだろうと思いますけれども、大事な問題でありますので、懇切に誠意ある御答弁をしていただきたい。まずもってお願いしておきます。  四十五年三月の法制審議会要綱では、「取締役職務遂行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、その取締役解任のため」の株主総会招集権、また「代表取締役職務遂行に関し法令又は定款に違反する事実があることを発見したときは、」取締役会招集権、これが監査役に認められておったわけですね。これが今回提案されておる改正案ではこの権利が削除されて、わずかに取締役会出席発言権違法行為差しめ請求権だけしか残されていない。いろいろな事情があったんだろうと思いますけれども、どういう事情があって削除に至ったのか、このしさいを御報告願いたい。
  5. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) お答えいたします。  四十五年三月に法制審議会で決定いたしました改正要綱には、御指摘のような株主総会招集権あるいは取締役会招集権というものを監査役権限として認めることになっておったわけでございます。それが今回の法案には落とされている。その理由でございますが、四十五年の要綱が決定いたしましてから今回の法案が提出されますまで三年間の空白があったわけでございます。で、その間に法務省といたしましては、各界から寄せられましたいろいろな意見というものを慎重に検討いたしまして、その各種の御要望のうちとるべきであると思われたものは採用し、とるべからざるものであると考えられたものは採用しないということで若干の修正を加えてまいったわけでございます。その結果、四十五年の要綱と今回の法案を比べますと、いろいろな点において相違しておるところがございます。御指摘株主総会招集権でございますが、これは要綱におきましては、取締役違法行為がありました場合に、その取締役解任を目的として監査役株主総会を招集する、こういう権限であったわけでございます。この点につきましては主として実際界から、こういう規定を設けました場合に、取締役監査役等会社内部における対立というものが、こういう権限監査役に与えることによって、かえりて勢力争いに利用されるというような心配がある、その結果、会社の円滑な業務運営が阻害されるのではないか、こういう指摘があったわけでございます。そこで、私どもといたしましては、はたして残すべきであるか削るべきであるか慎重に考慮いたしたわけでありますが、御承知のように今回の改正におきましては監査役職務権限を相当拡大いたしまして、特に業務監査を行なうという見地から、ただいまお述べになりましたような違法行為差しめ請求権であるとかあるいは取締役会出席する権利であるとか、いろいろ認めたわけでございますので、とりあえずこの程度の改正を行なって、そして株主総会招集権については、今回は一応保留しておくほうが実際的ではないかと、このような考えから法案では削除することにいたしたわけでございます。  取締役会招集権のほうでございますが、これも代表取締役に違法があったという場合にその処置を取締役会でとってもらうために監査役取締役会を招集するということでございますが、監査役取締役会でみずから議決をすることはできないわけでございまして、事実上ほかの取締役に相談をいたしまして、そしてほかの取締役から取締役会を招集してもらうと、こういうようなこともできるわけでございますので、株主総会招集権を削りましたと同じような趣旨におきまして取締役会招集権も一応落とすことにいたしたわけでございます。しかしながら、これらの点につきましてはほかの修正部分と合わせまして法制審議会に後ほど御報告いたしまして、その了承をいただいたような次第でございます。  それから、なお付言いたしますと、監査役業務監査権、これが今回の改正の眼目でございますが、監査役業務監査を行なうために必要な限度の権限というものは、これは今回の法案におきましても盛り込んでおると、そういう意味におきまして株主総会招集権あるいは取締役会招集権を落としましても監査役業務監査自体には支障がないであろうと、このように判断いたしたわけでございます。
  6. 原田立

    原田立君 要綱であったと、それを法案のときに削ったと、削るそのおもな理由は、これがもしあると会社内が混乱するんじゃないか、そういう心配で削ったんだと、こういうふうな説明のようですけれども大臣、やっぱり監査役というのは借りてきたネコみたいに、ちんちくりんでとまっているような人じゃなくて、やっぱり多少タカ派でも、にらみのきくような人というのがやっていくのが監査役役目じゃないかと思うんですけれどもね。それからまた実際問題こういう権限が認められた、あの監査役にぼやぼやしたんじゃやられるおそれがあると、また監査役のほうも抜くぞ抜くぞと言って抜かないでいて、それで会社がうまくいけばぼくはいいと思うんですけれどもね。借りてきたネコでいいのか、タカ派でいいのか、権限は与えておいて抜くぞと言って抜かない、抜かないけれども、その社会情勢よくする、そんな方向にしていったほうがいいのじゃないかと。これは私の意見だけれども、どうですか。
  7. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) これは当時、私おりませんが、法務当局としましては慎重に検討した結果であろうと思います。確かに取締役業務執行ということが責任でありますし、監査役はその会社経理及び業務を監督する立場でございますから、監督する立場のものが株主総会を招集してしまったり、あるいは取締役会を招集してしまうということよりはもっと円滑な行き方はあるんではないかというようなことから、この点は最初の答申にありましたのを削除することになったものと思います。  ただ、しかしながら、監査役権限が強化されまして、経理監査だけでなしに今度は業務監査もできる、これはたいへんな改革でありまして、監査役地位なりあるいは権能なりというものは強化されるわけでございますから、これからはこの制度でひとつ監査役としての地位も向上させなければなりませんし、また実際上向上するものと思います。そして監査役としての法定された権能を発揮して、十分ににらみをきかしてもらいたいものだと、私どもさように考えておるわけでございます。
  8. 原田立

    原田立君 どうも中途はんぱのようなお答えであれなんですが、じゃ監査役が真にその任務を全うするためには形成的な議決機関である取締役会出席するだけでは不十分である、不十分ですよ、大臣。大体取締役会なんてのは形式的ですからね。その始まる前に重役会あるいは役員会というのがあるんでしょう。そっちのほうできまってきたことによってすうっとこう一瀉千里に流れていってしまうんですからね。そのときに監査役の人がたとえば発言を求めてうまくいくかどうか。ところが役員会あるいは常務会だなんというところには監査役は出られないんですからね。取締役会だけの出席権発言権、それだけなんですから。むしろもっと権限を強化させるんだと、こういうんだったら、その監査役取締役よりも下に置いておいて、使って何かやるというんじゃなくて、もっと同等に引き上げていって、監査役取締役と同等に引き上げていって、そうしてやったほうが不正はなくすることができると思うんですけれども監査役目を十分に果たせるんじゃないかと、こう思うんですが、要するに常務会または役員会等出席して、経営方針その他業務執行に関する重要な意思決定のプロセス及びその執行状況を把握する、そうしてきちんと手を打っていく、そういう監査役でなければならないんじゃないか、こう思うんですが、どうですか。
  9. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 監査役地位を引き上げなければならないということは仰せのとおりであろうと思います。今回の改正におきましても、その点につきましては配慮をいたしておるつもりでございます。たとえば今回の改正によりますと、監査役任期は一年から二年に引き上げられることになります。御承知のように取締役任期は現在二年でございますから、監査役と同じ任期になるわけでございます。株式会社のいままでの歴史におきまして、取締役任期が三年であったことがございます。その当時は監査役任期は二年でございました。昭和二十五年の改正によりまして、取締役任期は二年、監査役任期は一年というふうに、それぞれ一年ずつ引き下げられたわけでございますが、今回の改正によりまして、初めて監査役取締役と同じ二年という任期を持つことになるわけでありまして、この意味は、要するに監査役というものを取締役対等地位に引き上げるということをねらいとしておるわけでございます。選任方法などにつきましても従来差がございましたのを、今回は取締役監査役も同じ定足数を必要とするというように選任要件を改めております。こういう趣旨から監査役取締役と同じ立場に立って監査を行なう、対等立場でものが言えるようにするというのが今回の改正の大きなねらいになっておるわけでございます。  それから常務会についてのお話でございますが、現在大きな会社常務会というのをつくっておりまして、取締役のうちで社長、副社長、専務、常務といったようなおもな役員だけが集まって会社内部の問題を相談するということをいたしております。その常務会監査役出席するということも必要であると思いますが、ただこの常務会と申しますのは、商法上の制度ではなくて、事実上の任意的な機関でございます。したがって、法律規定をしようといたしましても、常務会というものの組織商法にございませんので、監査役がそれに出席するというような規定を置くこともできないわけでございます。のみならず、常務会というのは商法上の機関でございませんので、法律的に特別の権限を持ったそういう会議体でもないわけでございます。たとえば新株を発行する、代表取締役選任するといったようなことはすべて取締役会できめるということになっておりまして、常務会できめるわけではございません。そういう意味取締役会という法律上の制度につきましては、監査役出席権意見陳述権といったようなものを認めたわけでございますが、常務会については特に規定ができなかったわけであります。ただ実際の運用といたしまして、常務会というものを開いておる、そしてそこに監査役出席を認めているという会社も若干ではございますが現在あるようでございます。今度、監査役会計監査から業務監査権限を広げました場合には、一そう、そういった常務会にも監査役出席することが望ましいと、こういうことになると思いますので、この点は大いにそういった慣行が今後において確立されるようになることが好ましいと、このように考えております。
  10. 原田立

    原田立君 局長はいまたいへん大事なことを発言しているわけだけど、監査役がそういう役員会重役会等に出ておる、ごく少数ではあるけれども出ていると、それを慣行化していきたいと、慣行化されていくであろうが、またそんな方向で指導したいというふうな意味のことを言っておるけれども、これは非常に重大な問題だと思う。で、それを本気になってやっぱりやるべきだと思うのですね。監査役権限を強化するというのだったら、そのぐらいのことはやらなければだめだと思うのです。序の口だろうとぼくは思ってはおりますけれどもね。監査役重役会あるいは役員会商法上にきめられたものじゃないけれども、事実上の問題ではあろうけれども、それに監査役が出ていって、そしてきちっと経理監査あるいは業務監査等も正常に運営していく、そういう方向に向いていくことを強く要望すると、そういう姿勢が望ましいと、こういうふうに局長は言われたというふうに理解してよろしいですね。
  11. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) そのとおりでございます。
  12. 原田立

    原田立君 ところでこの改正案では、監査役職務権限が強化されたと先ほどから言っているんだが、また前回質問で、どういう人を得るか、その人を得るのが問題だろうと思う。それでこの点で改正案ではまだ不十分に私は思うんであります。  まず、監査役資格要件定めがない、監査役たる者についての資格要件定めがない。改正案では重要な任務をになう監査役資格は野放しである。わずかにその会社及び子会社取締役、支配人その他の使用人であってはならないとの欠格事由があるのみであります。こうした条件もさることながら、会社業務内容専門化複雑化になるにつれて、ますます会計監査ないしは経営実務についての知識経験を必要とするなどの積極的な資格要件定める必要があるんじゃないか、監査役については。そうしないではたして適任者を得られるかどうか。監査制度自体をどれほどいじってみても、監査役選任自体を誤れば監査業務が効果を発揮することは全く期待できない、こんなふうに思うんですが、どういうふうにお考えになっているか。要するに監査役の今度は質的向上ですね。私はこんな――こんなと言ったんではあれですが、会社経営経験も何もありませんからよく知らないけれども、伝え聞くところによれば、会社役員のなり手がもう山のごとくいる、その中からえりすぐって、それで取締役等がきまっていく、それであぶれちゃった者が、しようがないから監査役に回るというあぶれ監査ですね、これが世の中にはたいへん多くいるんだということを聞いております。そんなのではほんとうにいま考えられているような監査を十分強力にしていこうということには全然通じないじゃないか、これを心配するわけです。いま私が言いたいのは、監査役になるべき資格要件資格条件ですね、これをもっときちんとしたものにすべきではないのか、その点どういうふうに考えているか。
  13. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 監査役に人を得なければならないという点はまことに仰せのとおりであると存じます。どんな制度をつくりましても、それを運用する人が適当な人でなければその制度が十分な効用を発揮できない。そういう意味におきまして、御指摘の点は十分企業としては考慮しなければならないと思います。ただ、これを法律上の手当てといたしまして、監査役資格要件をきめるということ、確かに一つの考え方であろうと存じますけれども、これはなかなか資格のきめ方がむずかしいという問題がございます。ただいま仰せになりましたあぶれ監査役というような事例も少なくないようでございます。しかしながら、実際に一番多いのは、たとえば親会社役員とか使用人子会社監査役にくるとか、あるいは大きな会社でありますと、取引先銀行とか、そういった取引先の有力な会社から監査役が派遣されてくると、こういう例も相当あるようでございます。弁護士とか公認会計士あるいは税理士、こういった方が監査役になっておられる例というのは若干ございますけれども、全体的には非常に少ないというふうに聞いております。こういった実情は、今後ある程度変えていかなければならないと思います。取引先銀行使用人監査役に入ってくるという場合には、経理の面は非常に詳しく見るということがあろうかと思いますけれども、しかし、今回業務監査というふうに範囲を広げました場合には、はたしてそれが適当であるかどうか、やはり一考を要する問題が出てくるのではないかと、このように思うわけであります。ただ、そういったいろいろな現在の実情から考えまして、監査役資格要件をきめるということはなかなかむずかしい問題である。したがって、今後の運用を見ませんと、はたして実際に妥当するような資格要件というものをきめられるかというような問題がございます。ことに、御承知のように監査役というのは数が少のうございます。大きな会社でも二人とか三人というのがせいぜいでございまして、小さな会社になりますと監査役が一人しかいない。こういった人数の制限もございますので、それに資格をきめますと、実際の運用が非常に困難になるというような問題もあろうかと思います。したがいまして、監査役には適当な人を得るように努力してもらいたいと思いますけれども、現状から見まして、この資格をきめるということは非常にきめ方がむずかしいし、まだ現段階ではちょっと実現しにくいのではないか、このように考えております。
  14. 原田立

    原田立君 そうしますと、いつまでたっても、いま政府法案をつくって監査役地位を向上せしめようなんていったって、これはかけ声だけでいつまでたってもよくならないんじゃないですかね。見通しはどうなんですか、見通しは。  それと、そこら辺がはっきりしないでおいて、ただ、いまの局長のような話でただはっきりわかりませんなんというんだったら、これはやみですよ、これは。もう少しはっきり伺わせてください。
  15. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 私の申し上げておりますのは、監査役に適切な人を迎えることは必要である、ただ、法律であまり厳密な資格要件というものをきめることは、少なくとも現在の段階においては問題があるということを申し上げておるわけでございます。  なお、ちなみに、しからばどういう人を持ってくることになるかという点でございますが、この商法改正国会提案されましてから経済界におきましては、商法改正に応じて会社としても人事の面その他を考えなければならない、こういう議論が起こってきております。たとえば経団連の経済法規委員会におきましては、この商法改正された場合の企業経営あるいは人事のあり方というものを検討しようということになっておりますし、現にその検討を行なっているのではないかというふうに思います。それから経済同友会というような団体もございます。これも新聞などの報道によりますと、かなり商法改正後の会社運営あるいは人事について今後各会社がお互いに意見を出し合って、そしてこの改正趣旨を生かしたような運用を申し合わせていきたい、こういう機運にあるということも聞いております。したがいまして、この商法改正が行なわれました後におきましては、実際界がこの趣旨を十分に理解して、それに即応した体制をとってくれるものと期待をいたしておる次第でございます。
  16. 原田立

    原田立君 局長、この監査役ですね、監査役は現在はいわゆる個人監査ですね、ところが取締役のほうはいわゆる取締役会という合議機関があってやっている。それからまた取締役のほうは数が多い、監査役は少ないというようなこと等も含めて、これからの監査というものはそういう個人監査ではもうだめなんじゃないですか。たとえば新日鉄であるとか大きな会社監査をするには個人監査なんていったって、個人でやろうったってなかなかできるものじゃありません。となると、そこに事務局を設けるとか、あるいは監査役もそういう大会社になれば一人じゃないはずですから、何人もいるんでしょうから、いわゆる監査役会というようなものをこれは当然つくって、それを確立していくのが必要なんじゃないでしょうか。商法取締役会というのが認められていると同じように、監査役会というようなものも特に大きな会社等なんかについては設ける必要があるんじゃないか、私見ですけれどもそんなふうに思うのですけれども、どうですか。
  17. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 監査役についてももっと人数をふやして、そして監査役会みたいな機関をつくるべきではないか、また必要な事務局補助者を設けるべきではないかという御意見、非常に重大な問題を提起しておられると思います。ことに監査役会という組織をつくるかどうかということは、商法株式会社機構全般をどうするかということとの関連において考えなければならない問題であろうと思います。まあ御提案に近い――御提案に近いと申しますか、むしろ御提案と同じような立場に立っておるのは西ドイツの株式会社法であろうと思いますが、今回の改正監査役業務監査権を与えたという意味においてそれに若干近づいたということでございますが、まだ会社によってその監査役人数を何人置けというような制度はつくっておりませんし、合議体というものを規定してその権限定めるというまでには至っておりません。はたしてそのドイツのような株式会社が今後日本の株式会社のとるべき道なのかどうかという点につきましては、私、個人的な意見でございますけれども、今後法制審議会などにおいて十分検討していただきたいというふうに思っておる次第でございます。  ただ、今回の改正におきましてはそこまでできなかった。というのは、その基本になりますところの監査役の員数であります。現在、十億、百億というような会社でありましても、監査役が二人か三人くらいしかいない。これでは監査役会というものをつくっても強力な権限を認めるのにふさわしくないという実情でございますので、今後監査役というものをもっと強力なものにしていく必要があるというのであれば、仰せのようにたとえば資本金によって監査役の員数を法定し、そして監査役会というような組織をつくるというところまでいかなければならないと思います。したがって、その点は今後の研究課題ということになるわけでございますが、現状におきましては、一応改正案といたしましては最初に仰せになりましたように監査役は個別の監査機関、二人おりましても三人おりましても一人一人が監査機関として独立してその仕事を行なうというたてまえをとっております。もちろんこの監査役が共同して監査を行なうこと、あるいは手分けをして分業して行なうということは差しつかえないわけでありますけれども、別々に行動することができるということになっているわけであります。監査役が共同して行動しなければならないということにいたしますと、ある面では個々の監査役の行動が束縛される、制約されるということが出てくるわけです。たとえば違法行為の差しとめの措置をとるとか、あるいは総会に対して会社運営の不当な点についての報告をするという場合に、現在のような制度でありますと一人だけで自分の思うことを自由に指摘できるわけでありますけれども合議体でまとまった意見でないと行動に移せないということになりますと、その面の制約が出てくるわけでありまして、そこを会の権限個人権限を振り分けなければならない、こういう問題が出てまいります。  そこで、監査役会というものを設けるといたしますと、会社の規模によって組織を変える、それから監査役会権限と個々の監査役権限をふるい分けるといったような非常に大きな問題に発展してくるわけでありまして、ひいては取締役会制度株主総会制度というものとの権限の調整の問題、こういったものにまで影響してくると思うわけでありまして、これは今後株式会社の根本的な、全面的な改革というものに取り組んでいかなければならないと思われますので、その際に十分検討さしていただきたい、このように思うわけです。  それから補助者の点でございますが、事務局とおっしゃいましたが、現在でも監査役監査を行なうために補助者というものを設けている場合がございます。しかし、これは人数にいたしますとごくわずかでございまして、一人とか二人とか、その程度のものが多いようでございます。今度業務監査を担当することになりました以上は、もっとこの補助機構を大きくしていく必要があると、これは仰せのとおりであります。
  18. 原田立

    原田立君 今回の特例法案では大規模の会社を資本額五億円以上の会社とし、小規模の会社を資本額一億円以下の会社としておるのでありますが、その結果、監査などについては五億円以上の会社すなわち大会社、一億円をこえ五億円に至らない会社すなわち中会社、一億円以下の会社すなわち小会社の三段階に分けられることになると思うのでありますが、従来から資本の大きさによって商法の適用対象を分けるべく商法の抜本改正をすべきだと、こんなふうにいわれており、今回監査のみに限定してではありますけれども、三段階に分けたのありますが、将来、商法上の問題として、監査のみならず、もう少し幅を広げてこういう大、中、小というようなことにしていく考えのもとに今回監査のことをやったのかどうか、その点はいかがですか。
  19. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 御承知のように、株式会社は現在百万以上あるわけでございまして、その中には資本金二、三十万円の小さな会社から百億、千億という大きな資本金を持っている大会社まで無数にあるわけでございます。しかも、こういう規模の非常に違う会社を一律に同一の制度でもって律しようとするのはどうしても無理がありますし、実情に合わない点を生じてまいります。したがいまして、今回の改正監査制度についてでございますけれども仰せのように三つに区分して監査制度規定しておる、こういうことになるわけでありまして、将来の方向として、はたして三つに区分するのがいいのか、二つに区分すれば足りるのかという問題はあろうと思いますが、会社の規模に応じて、それぞれその規模にふさわしい制度というものをつくっていく必要がある、このように考えております。  ごく大まかなことを申し上げますと、小規模の株式会社については、思い切って機構を簡素化する必要がある。たとえば株主総会というものがありまして、現在小規模の会社でも株主総会を開かなければならないということになっております。しかし、小規模の会社で株主が特定の範囲に限られておるというような場合には、株主の全員の同意を得れば株主総会を開かなくてもいいと、こういうようなことにすることも考えられるわけであります。それから、こまかい問題でございますが、貸借対照表を株式会社は新聞あるいは官報に公告しなければならないということになっております。小さな規模の株式会社はそういうことを実際にはいたしていない。まあ商法違反ということになりますが、貸借対照表の公告をしていない実情でございます。こういったこともその公告を要しないようにするとか、いろいろ簡素化をはかる必要があるというふうに思うわけです。  それから他方大規模の会社につきましては、いろいろ複雑にはなりますけれども業務の適正を確保するためにいろいろこまかい規定を設ける必要があるというふうに思います。たとえば先ほど問題に出ましたように、会社の資本金によって取締役あるいは監査役の員数の最低限を引き上げるというようなこともございますし、それに伴って取締役会あるいは監査役権限といったものをもう少しこまかく再検討してみるということも必要であろうかと、このように考えるわけでございます。
  20. 原田立

    原田立君 会計監査人により外部監査の精度と信頼度を一〇〇%のものにするには、改正案による措置では不十分じゃないのかと心配するんですけれども、たとえば公認会計士の皆さん方が被監査会社と個別に契約するのではなくて、公的な機関公認会計士または監査人と契約した上、被監査会社へそれらの公認会計士を随時派遣して監査に当たらせる、こんなふうな仕組みにすることも、外部監査の精度あるいは信頼度を一〇〇%にするための一つの方法であろうと思うんですが、その点はどうか。社内にあっては取締役監査役、まあ悪いことばで言えば同じ穴の中にいる人たちですよね。これを今度外部の会計監査人がやると、その点理屈からいきゃ非常にぼくは精度がいいと思うんですよね。ところが、これの報酬がやっぱりその会社から出ると、こうなると、やっぱり人情で多少その会社に縛られて言うべきことも言えなくなるのじゃないかと、要するに公認会計士の人、会計監査人の地位というのが情に流される心配はないのか、そんなことがあっちゃならないようにするためには、直接その会社から報酬が出るんじゃなくて、他の何かしらの公的な機関を設けてそこからお金が出る、報酬が出ると、こんなふうにしたならば、会計監査人というのはもう不覇独立で、そしてもう何ものにも左右されないで仕事ができる、こう思うんですけれども、これは私の私見ですけれどもどうですか。これは大蔵省ですか。――大蔵省のほうも……、大臣どうですかね、大臣も含めて御答弁をお願いしたい。
  21. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) お答え申し上げます。  先生のおっしゃるようなお考えも一つのお考えだとは思いますが、私どもの一つの法律の体系といたしましては、やはり監査人の精神的な独立性ということと社会的な信任ということが一番大事と考えておりまして、企業会計監査人の監査によって、その財務内容がだいじょうぶだということで社会的な信頼を博するからには、当然報酬は企業から会計監査人に払ってしかるべきものではないかと。それならば国が厳正な試験をして資格定めている公認会計士に対して社会的責任の負託にこたえるような方法を講じているかいないかということに関係いたしますが、その点に関しましては公認会計士業務の適正な運営を担保するために、この特例法におきましても、あるいは公認会計士法におきましても、あるいは証取法におきましてもいろいろなことを講じているわけであります。たとえばこの商法特例法では、「会計監査人がその職務に関し不正の請託を受け、賄路を収受し、又はこれを要求し、若しくは約束した」というようなときは法二十八条で罰則がありますし、その他虚偽報告ないし虚偽記載をした場合の罰則等、それから会計監査人の損害賠償責任が規定してございます。また公認会計士法そのものでも、財務書類について虚偽または不当な監査証明を行なった公認会計士及び監査法人の関与社員は懲戒処分に付される、また信用失墜行為等に関しても、一般の懲戒処分に付されるということがございますし、また事件に必要な調査をするため、大蔵大臣公認会計士に対して出頭を命じたり、審問及び報告を徴する権限もございますし、かつ事務所の立ち入りとか物件検査、提出命令という権限も持っております。その他信用失墜行為に対する懲戒処分法云々がございまして、さらに証取法そのものにおきましても、公認会計士の民事責任というものも非常に強く規定しております。以上のようなことで、公認会計士が被監査会社から直接監査報酬を受け取っております反面、公認会計士業務の適正な運営担保の手段を法律的にきびしく規定しているという点がございますので、国とか特殊法人が企業から報酬を受領して、そして関与公認会計士に支払うということまでしないでいいのではないかというふうに考えております。
  22. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) いま大蔵当局からも御説明がございましたが、私どもとしましては、公認会計士制度というのが、大体いま原田先生のおっしゃるような精神を生かそうということでできておると思うのです。先生のおっしゃるお話は確かに一つの理想でございますが、まだどうもそこの理想の境地には到達しかねるので、公認会計士という厳重な制度をつくりまして、公認会計士監査をやらせることがこの段階では適当ではないかということであろうと思います。
  23. 原田立

    原田立君 いま大臣からも御答弁いただいたけれども、大蔵のほうでそういう罰則が規定されているから心配要らないのだと言ったって、それはあなた、あなただって人間だ、そうはいかないんじゃないですか。多分に心配をするのですよ。いろいろと粉飾決算だとか何か起きた、過去に幾つもありますよ。それなんかだってそんな事件、好きこのんで起こしたわけではないでしょう。だけれども、やはりこうきめるところがきめられないものだから、とうとうずるずるずるずるといってあんなふうな結果になったのだろうとぼくは思うのですよ。やはり人間だからね、罰則規定きめてあるから心配要らないのですよとあなたは言うけれども、それはぼくうそだと思うのですよ。やっぱりそういう精神論じゃなくて、実際のものを何らか手をつける、考えるべきじゃないでしょうかね。これでもあなたいまのように罰則規定がきちんとあるから、今後粉飾決算や逆粉飾決算などあんなようなことは絶対ありませんよと、心配要りませんよと断言できますか。
  24. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) その点は先生仰せのとおり、人間のやることでございますから、罰則があるから安心だというふうには思っておりませんが、しかし、やはり報酬という金銭の問題がございますので、やはり公認会計士の何といいますか、仕事をする上での抑止力といいますか、そういう意味で、まあ最後に罰則というものがあるということで、ないよりはあるほうがそういう抑止力に役立つのではないかと、要は公認会計士の精神的な独立及び自分の監査によって当該被監査会社の社会的な信用を世間に対してはっきりさせるという点の意識ではないかと思います。
  25. 原田立

    原田立君 証券取引法の規定による監査についての特別利害関係の範囲には、財務諸表の監査証明に関する大蔵省令第二条に詳細に規定されているわけでありますが、株式会社監査制度改正に関する民事局参事官室試案ですか、その中に大体これと同じようなものが定められておったのが、七項目ですかきめられておったのが、要綱案あるいは法律段階で三項目に削られていると、会計監査人の欠格事由が整理され簡単化されているが、それは一体どういうわけなのか。それから確かに会計監査人の欠格事由として商法規定される場合と、公認会計士法二十四条の業務制限に規定されている場合とではその法的効果が異なる、いまも大蔵省のほうで話があったとおりですが、片方のほうでは、商法の場合では、その計算書類、提出書類を出した場合でも総会決議は無効になる。商法の場合には無効になる。公認会計士法のほうは、ただその会計監査人の懲戒処分だけである。全然その効果が違うわけですよね。そんなような点から、会計監査の公正を確保するという観点からは非常に疑問を感ずるんでありますけれども、その点はどう考えておられるか。
  26. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) いま仰せになりましたのは四十三年の民事局参事官室試案のことでございますか。――これの「第十一 大会社特例」の中の項目の一つに御指摘のような条項があるわけでございますが、この四十三年の民事局参事官室試案と申しますのは、法制審議会の審議の過程でつくられた一つの案でございまして、その後、法制審議会でさらに審議を続けました結果、こういったこまかい規定につきましては商法規定しないで、そして公認会計士関係法令規定すると、ただいま仰せになりましたように、その結果、欠格事由ではなくして懲戒事由に変更されたと、こういうことになるわけでございます。欠格事由にするのがいいのか、懲戒事由にするのがいいのかという問題は、仰せのように一つの問題点であろうと思います。ただ、商法立場から申しますと、あまり業法めいた規定商法に置くことはいかがであろうかというふうに考えられますことが一つ。それからかりにこのようなものを欠格事由といたしました場合に、その欠格事由のある公認会計士監査をした結果、その決算が成立して配当が行なわれたという場合を仮定いたしますと、その欠格事由があったために決算が正しく行なわれなかったことになる、配当もやり直しだというようなことになりますとこれはゆゆしい問題になります。そういうことも考えまして――考えたかどうかわかりませんが、一応どちらの制度がいいのかということを考える場合にはそういった問題があろうかと思いますが、最終的な法制審議会要綱といたしましては、いまの点は商法には規定しないで公認会計士関係法令規定するということになったわけでございまして、私これはいずれがすぐれているかということはあまり深く研究したわけでもございませんのでお答えできないわけでありますが、懲戒事由にいたしましても、結果的にはそういう利害関係というものは排除されるということになりますので、このような案でもよろしいのではないか、そう考える次第でございます。
  27. 原田立

    原田立君 会計監査人の選任方法についてでありますが、その選任監査役の過半数の同意を得て取締役会決議によって行なわれると、特例法案第三条第一項できめられているわけでありますが、また会計監査人を選任したときは取締役がその旨を株主総会に報告しなければならない、こうなっているわけでありますが、この前も議論があったところでありますが、取締役会決議によって会計監査人がきまるのではなくて、やはり株主総会選任、そっちのほうにすべきではないか、かように考えるんですけれども、その点どうですか。
  28. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) この公認会計士による監査という制度は外国にもございまして、外国の立法例を見ますと、株主総会選任するというものもあるようでございます。そういった点から見まして、確かに一つの考え方であろうと思うわけであります。ただこの商法改正案考え方は、株主総会を開いて選任しなければならないということにいたしますと、一たん選任した会計監査人が途中で死亡したとかあるいは欠格事由が生じたとか、そういうことでその資格を失ってさらに後任の者を補充しなければならないといった場合に、またそこで株主総会を開くというのはたいへんではなかろうか、こういったような考え方も一部にあったのではないかというふうに思うわけでありまして、そういった場合の不都合を考えますと、取締役会選任できるとしておいたほうが実際的だということは言えようかと思います。御承知のように、この案におきましては取締役会選任するが、それには監査役の同意が必要であると、こういうことになっておりまして、その限度で会計監査人の地位というものもある程度保障されているというふうに考えるわけでございまして、御指摘の問題は外国の立法例などを参照いたしますと、確かに一つの問題でございますが、今回の案におきましては、ただいま申し上げたような理由によって取締役会選任するということにきめたのでございます。
  29. 原田立

    原田立君 それがその会計監査人の独立性というものをそこなうんじゃないかと、こう言っているんですよ。それは確かに変更するときにはまた株主総会を招集しなければいけない。それは、そのぐらいの手間はしようがないのじゃないんですか。それを簡単に取締役会だけで自分の都合のいいようにしてやっちゃおうというようなそんな姿勢は、やっぱり監査制度をもっと充実するというその精神の面からいっても、これはやっぱり問題になるんじゃないでしょうか。会計監査人の独立性を確保するという面からいけば、ただ単に監査役の同意ということでは簡便化するだけのものであり、むしろその監査人の地位を軽きにせしめるおそれがあると思うのであります。総会の選任とすることがそれを重きとすることになり、また株主の利益保護にも適する、こういうふうにぼくは思うのですが、その点の見解はいかがですか。
  30. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 仰せのように、独立性、地位の保障、どちらが強いかということになりますと、株主総会選任したほうがすぐれているということは問題のないところであろうと思います。ただ、今回の案におきましても、その点につきましては十分注意を払いまして、先ほど申し上げましたような監査役の同意、それから株主総会に対する事後の報告というようなものを規定しておりますし、また、会計監査人を解任するという場合には、これは理由なく行なえば、その解任の有効、無効という問題も起こってまいりますし、損害賠償の問題も起こってまいりますし、取締役理由なく解任をしたことによって責任の問題を生ずる場合もあるわけでございますし、そういったもろもろの保障がございますので、このような形にいたしましても、実際問題としては、それほど大きな不都合というものは起きないんではなかろうかと、このように考えております。
  31. 原田立

    原田立君 不都合が起きない、不都合が起きないって、さっきから何度も言っているように、ただ公認会計士の人たちにこういう罰則規定があるから、だから悪いことはしないのだと。――何も会計士の人が悪いことをすると、そういう意味で言うんじゃないですよ。情にほだされた場合に、厳正なことができないのじゃないのかという心配があるわけなんです。それをなくすためにも、その位置の確保と、その生活の基盤の確保というのは、これは当然やるべきではないか、そういう面でこの会計監査人を非常に重く見るならば、総会選出というように、そちらのほうにすべきではないのか、こう思うのですよ。もちろん監査役の同意、まあ全然そんなの必要ないという意味じゃありませんよ。その同意も必要だろうけれども、やっぱり総会できめるべきものだと、こうすべきではないでしょうか。そうしたほうがむしろ会計監査制度を導入する面において、りっぱな名目が立つとぼくは思うのです。監査役でさえも、監査役選任でさえも、総会の議決事項になっているのですから、ですから、会計監査人をきめるについてその面からの均衡上からいっても当然総会の議決にすべきじゃないですか。ぼくはそう思うのですがね。
  32. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) その辺はいろいろな考え方があろうと思いますが、原案の考え方は、独立性、地位の保障という点においてはこの法案のような制度であっても実際上不都合は生じない。また、会計監査人の業務の公正な執行という面におきましては、先ほど来大蔵当局から説明がありましたようないろいろな保障によってこの点も不安がなかろうということでございます。  監査役選任の方法が違うのは均衡を失するではないかという点でございますが、これは先ほど先生おっしゃいましたように、監査役はその会社の内部の役員である、それから会計監査人は外部の者であって会社との契約によって仕事をする者である、こういう差異があるわけでございますので、選任の方法が違いましても、これはやむを得ないというふうに考えております。
  33. 原田立

    原田立君 内部と外部だから選任の方法は違ってもかまわないのだという、簡単に言えばそういうことですね。だけれども、やる仕事は、いわゆる監査会計監査監査役のほうはそれにプラス業務監査というのが入るわけですけれども監査という仕事についてはぼくは同じだろうと思うんです。より厳正にするためにやるわけなんですから、やっぱり会計監査人の位置というものも重からしめることが必要なんじゃないですか。それを、ただ単に監査役の同意を得てと、ただ簡単に、どなたでもできますよ、AさんとやっていたけれどもAさんは気に食わないからBさんにしましょう、BさんもどうもだめだからCさんにしましょうなんというように簡単にきめられたのでは、大きな会社なんかの場合に社会的にも影響が非常に大きい。それでスムーズにきちっといっているなら別に問題はありませんよ。何か一たび事故が起きた場合には、そこら辺の手だての粗雑さというものを指摘されて、結局、ただ、すみませんでしただけでは済まないと思うんですよ。そういう心配をぼくは持つわけです。そんな心配ありませんか。そんな心配はないようにきちんとしたものにすべきではないかと、こう言っているわけです。
  34. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) この会計の監査というのは、見ようによりましては、何か会社の痛いところを探られるというふうにもとれるわけでありますが、ほんとうの意味におきましては、会社業務運営を正しくすると、決算を正しく行なうということのために必要であるわけでありますので、適正な監査の行なわれることが望ましいわけであります。したがいまして、企業といたしましては、最も適当と思われる監査人を選任して、そしてその監査人に十分腕を発揮してもらう、こういう姿勢に徹すべきであろうと思いますし、実際にそのような形で運営が行なわれれば、このような制度を設けた意義というものが十分発揮されると、このように考えるわけでございます。
  35. 原田立

    原田立君 改正案によると、中間配当は前期の決算で留保した利益のワク内で行なうよう制限を加えられているわけでありますが、これは会社の堅実性ということから取締役会が任意に配当金を支出することを防止しようとのねらいによるものであろうと思うのですが、反面、株主にとっては、中間配当は本来なら前期に受けるはずの配当金を保留してあと払いということになるわけであります。現在の経済社会に定着し切っているいわゆる年二回の決算制度を改めて年一回に減らそうという、そういうふうにしようとするのではないかと、たいへん心配しているわけです。なぜこの心配するのかといえば、まず第一に、監査制度改正の糸口となった粉飾決算を防ぐには、むしろ企業の決算回数をふやし、財務諸表を公表する機会を多くつくるということによって粉飾決算等を防ぐことになりゃしないのか、これを逆に減らすということは粉飾決算防遏の趣旨に反するものと、こう考えざるを得ない。この点どうですか。
  36. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 中間配当は利益のあと払いではないかという最初の御指摘でございますが、これはまさにそのとおりでございます。しかしながら、企業といたしましては、利益があがったというのですぐそれを分配してしまうというのは、必ずしも企業の健全な経営という点から考えますと、妥当でない場合が少なくないわけでありまして、一部は配当しながら、他の一部はもう少しそのまま持っておって、今後の経営の成績をにらみながら処分をきめていくと、こういうことが必要であろうかと思います。  中間配当によって決算回数を減らすという結果にならないかと、その点は御指摘のとおりでございます。しかしながら、今度中間配当の制度をとりますと、これは年一回決算の会社に限られるわけでございまして、少なくとも年一回の決算というのは保証されるわけでありまして、その年一回の決算には、先ほど来議論になっておりますように、監査役あるいは会計監査人の監査というものが行なわれるわけでありますので、相当しっかりした決算が行なわれることになります。そういうことを考えますと、年一回確実な決算というものが確保できるならば、必ずしも決算回数の多い少ないということには関係なく、その会社の健全性というのは維持されるんではないかというふうに思うわけです。  なお、今回の監査制度改正によりまして決算の手続を厳重にいたしました。その結果、決算期が参りましてから決算に関する株主総会が開かれるまでの期間に、相当な期間を要します。そのために株主名簿の閉鎖期間というものを従来の二カ月から三カ月に変更したわけでございます。その間に決算が行なわれると、こういうことになります。年二回決算を行なうということにいたしますと、この三カ月の株主名簿の閉鎖期間が二回必要になってまいりますので、一年のうち六カ月は株主の名義書きかえができないという結果になりまして、これは株式の流通に大きな障害を与えるということになります。したがいまして、そういう面から考えましても、決算を厳重にするかわりに、決算は年一回でよろしいと、こういう制度をとる必要があるわけでございまして、そういう意味で、今度の改正では中間配当というものを決算期外において認めたと、こういうことでございます。
  37. 原田立

    原田立君 かりに中間配当を行なおうとしたならば、中間の営業報告あるいは業務報告、こういうものを株主に対して行なう必要があると思うがどうか。これが一つ。  ところが、今回の改正案ではこの点について直接何もきめられていないようでありますけれども、どういうふうにするつもりでいるか。
  38. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) たとえば証券取引法におきましては、中間の業務報告書を提出するという制度がございます。これは投資家に対する関係でございますが、商法におきましてはこういうような制度は特に採用しておりません。したがいまして、株主に対する決算期の中間における業務報告と営業報告というものは必要ないことになっておるわけでございます。もちろんやって悪いというものではございません。今回の改正案考え方は、要するに年一回確実な報告をすると、それによってすべてをまかなうと、こういう考え方でございます。
  39. 佐々木静子

    理事佐々木静子君) それでは、午前の質疑はこの程度といたしまして、午後一時より再開いたします。  暫時休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      ―――――・―――――    午後一時十四分開会   〔理事佐々木静子委員長席に着く〕
  40. 佐々木静子

    理事佐々木静子君) それでは、これより法務委員会を再開いたします。  商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案を便宜一括して議題といたします。  休憩前に引き続き、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  41. 原田立

    原田立君 午前中に引き続き質疑をしたいと思うんでありますが、監査役の責任は非常に重大であると、会社運営及びその方針は取締役会においてきめられるものでありますが、それは厳正に行なわれるかどうかということは、社会的にも国家的にもその影響は大きいし、この重い監査役の位置をなお重からしめる必要があると思うんです。そういう面で、きょう午前中に、取締役会に対するに、監査役会というものも盛ったらばどうなのかと、こういうことを言ったわけです。ところが、そういうものはまだ考えてないというような意味の答弁だったけれども、これは片一方は取締役会という機関でやることだし、それに対して真の力を発揮して監査を充実していくというのには、これはやっぱり監査という機関を設けていく必要がたぶんあるんじゃないか。要するに、個人監査という位置に置いておくことは、もう政府がどんなに強弁したとしても、その位置は取締役会という機関に対して非常に弱い。口と実際とは全然違うということになる。まさかそんな気はないんだろうと思うんですけれども、国民の側に立って、企業の側に立つんじゃなくて国民の側に立って株主の擁護あるいは社会的影響性の甚大なるによって会社の公正なる運用を期するためにも、この監査役会なるものを当然考えてしかるべきではないかと、午前中にも一ぺん質問しましたけれども、なおあらためて御質問いたします。
  42. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) その点は午前中もお答えいたしましたように、非常に重大な問題であるというふうに考えております。確かに、監査役というのは個々的にその業務を行なうというのでは取締役会に対して力が弱いということは一面において否定できないところであります。まあ、今回の改正案は、むしろ取締役会監査役出席して、そうして取締役と一緒になって会社の適正な運営考えていくと、こういう立場に立っておるわけでございまして、こういった取締役会と対立する別の機関としての監査役会というものを設けることにいたしますと、かなり現在の制度に対して、組織的にも権限の上でも相当大きな変革を加えなければならないということになりますので、この点は、今後、商法株式会社制度の全面的な改革の問題、そこで取締役監査役との間の権限の調整をどういうふうに割り仕切っていくかということと関連させながら検討していくべき課題であろうかと思うわけでありまして、非常に重大な御指摘だと存じますが、今回の監査役だけを切り離しての改正ということになりますと、ちょっとその点まで踏み込んでいくことには問題がございますので、今回はその点に触れなかったわけでございますが、今後株式会社の全面的な改革というものを考えます際には、そういった点につきましても十分検討するようにいたしたいと、このように考える次第でございます。
  43. 原田立

    原田立君 大臣、途中で退席なさるそうだから、大臣に先に御質問するのですけれども、衆議院の予算委員会で、わが党の矢野書記長あるいは近江、正木の両代議士がいろいろと大企業が不当にその利益を隠したことについての質問をしたんでありますけれども、当時、新聞でもきびしく糾弾されているように、ああいうふうな不当なもうけですね、それなどを、合法的な手段を講じて隠すような行為、これはいけないことだと思うんです。これは大臣も御承知、まさにそのとおりだとお考えだろうと思うんです。  ところで、今回の改正案ですね、第三十二条ノ二項に、「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」と、こうある。「公正ナル会計慣行」というものが、一体どういうのが「公正ナル会計慣行」なのか。今度のように、物価狂乱の今日ですね、各大企業がもうけを隠すために狂奔している。そんなようなことは「公正ナル会計慣行」じゃないと思うんですけれども、その点はどうか。また、そういうようなことばもう断じて許すべきではない、摘発すべきだと、こういうふうに思うんですが、この「公正ナル会計慣行」というところの範囲ですね、また大臣の、大企業、不良商社ですね、それらに対する対処のしかた、考え方、いかがですか。
  44. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 会計監査、ことに会計監査人の監査でございますが、これは要するに、会社経理内容を、あらゆる、秘匿なしに、明確に、利益のあがったものはあがったもの、損失のあったものは損失を隠蔽することなしに、損失が出るように、要するに決算が明確であるということが前提でありまして、その上に立ちまして、税務当局なり、大蔵当局なり、そういう方面が、その結果に対しては適切な徴税なりその他の方法を講ずべきでありまして、経理そのものが、そのものずばりで明確になることが会計監査としては必要であろうと、こういうように思います。  それから、先ほど来この監査役の問題についていろいろのお話がございましたが、確かに、私ども考えましても、お説のように、日本の会社はほんとうに零細なものから、巨大な、膨大なものからあります。ですから、この膨大な一部のものに対しては、お話のような制度を将来検討をして、やはり監査役取締役に押されないような体制づくりというものを検討する必要があろうかと思いますが、まあ現段階では、とりあえず、とにかく監査役権限を強化し、それからまた会計監査監査制度をつくりまして、監査の適正を期するということで一応の改正をいたしたいというのが今回の改正趣旨でございますので、どうぞひとつそういう点も御理解いただきまして、御勘案をいただきたいと、かように思います。
  45. 原田立

    原田立君 局長、この「公正ナル会計慣行」ということですがね、具体的に中身は何なんですか。
  46. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 具体的な中身ということでございますが、私、会計の専門家でございませんので、あまり十分なお答えはいたしかねます。ただ、この法文で用いております「公正ナル会計慣行」という用語の意味は、会計の慣行、つまり、ならわしとして行なわれているものであって、しかも公正なもの――公正というのは、商法が、商業帳簿をつくってそうして会社の財産状態を、あるいは営業成績をはっきりさせる、そういう目的から見て公正妥当であると認められる、そういうならわしをしんしゃくして商業帳簿を作成せよとか、こういうことでございます。まあ商法では、会計の経理を行なう上の基準というものを若干規定の中に掲げておりますけれども、これだけではなお不十分でありますので、こまかい点になりますと規定では書き切れませんので、そういった点につきましては会計の公正な慣行というものをしんしゃくして経理を行なえと、こういう趣旨でございまして、まあ、具体的内容という御質問に対しましてはぴったりしたお答えになっていないかと思いますが、規定趣旨は一応そういうことでございます。
  47. 原田立

    原田立君 要するに、「公正ナル会計慣行」というのを明文化すると、この範囲内のことは監査の対象の範疇からはずれるようになりますよと、こういう意味になるでしょう。要するに、ぼくが言いたいのは、今日、いろいろな企業には、引き当て金、準備金、積み立て金、いろんなのがある。現に、この前のうちの矢野書記長が指摘したように、日本国内じゃなくて、外国にもうけをごっそり残して置くなんというようなことは、もうインチキもはなはだしいわけです。脱税行為でもあるわけですが、まあそういうようなことまでもいわゆる「公正ナル会計慣行」という中に入ってしまったんじゃ、これは重大問題なんですよ。だから、その中身は何だと、こういうことを聞いているわけなんです。で、これをまた明らかに明文化するということは、引き当て金等の制度を利用して、不当なもうけの隠し場所と、こういうふうなことにもなるおそれがある。局長、あんまりよくわからぬと言うんなら、大蔵省のほうはどうなんですか、そこのところは。
  48. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 証取法で、財務諸表を提出する際、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従ってということになっておりまして、その一般に公正妥当と認められる企業会計の基準の策定は、大蔵省に企業会計審議会という付属機関がございまして、そこで御審議いただき、諮問に対して答申をいただくなり、あるいは報告をいただくなりしております。そうして、それを大蔵大臣が御自分でそしゃくされて、これは公正妥当と認めるぞということをなさるわけで、たとえば従来、企業会計原則、監査基準、原価計算基準などが企業会計審議会の意見として出されております。そのほか個別意見についても出されており、必要に応じて公正妥当と認めるという通達を出しているわけであります。そうして今回の場合には、先生御指摘のように、商法におきまして「公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」という、しんしゃく規定が入りまして、したがって企業会計原則というものがしんしゃくの内容になる、そこで適法、違法という判断も加えられるということで、商法とのかかわり合いを考えながら一応修正案というものがつくられていると了解しております。  そこで、公正妥当な会計慣行というものは、法律なりあるいは一つの規範のように全く不変のものかと申しますと、やはりそれは一般の慣行の中から最大公約数的に定まっていくものでありますので、したがって、法律で、これはいい、これは悪いというふうに書けない性質のものではないか、そこで三十二条があるのではないかと思います。  最後の先生の御質問の、特定引き当て金等が隠れ場所になるのではないかという点に関しましては、今回は特定引き当て金を特に貸借対照表の負債の部に特掲いたしまして、そこではっきりさせる、そして特定引き当て金関係で損益計算書にかかわるものは未処分計算のほうできちんと明示するという明瞭性の原則にのっとった措置をしているわけでございます。
  49. 原田立

    原田立君 四十四年十二月大蔵省の企業会計審議会できめられた修正案。また、その前に、四十四年三月に経団連が解説を出しておる。ちょっと図書館へ行って調べてきたら、たまたま出てきたんでコピーしたんですけれども、この中にいろいろと重大な点が書かれている。それで実は心配して、この「公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」というところとの関連で聞いているわけです。  例示による拡大   現行    第三貸借対照表  修正案   製品保証引当金、売上割戻引当金、景品費引   当金、返品調整引当金、賞与引当金、退職給   与引当金等 これらに対して、渋谷健一という企業会計審議会委員の人の話では、「この負債性引当金については、冒頭に申し上げましたように、将来の費用のほかに損失を含めて引当ててもよろしいという新しい解釈が決定したのでございます。」、こういう言い方をしている。この「新しい解釈が決定した」と言っているこれは一体どういうことなんですか。  また、番場嘉一郎氏、この方は企業会計審議会第一部会長、一橋大学の教授の先生でありますが、「そのかわり、まともな引当金というその引当金の解釈を少し拡大解釈しましょう、そういう話をとりつけました。負債性引当金というものを厳密に解釈すると、これもだめ、あれもだめということになるが、修正案では、これもいい、あれもいいというふうに、まともな引当金の概念というものを拡大することによって、そこのところを吸収しましょうということで目をつぶっていただいたのです。」、こういう記載がある。だれが目をつぶったんですか、これは。
  50. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいまの御質問で、この企業会計原則修正案が、これが大蔵大臣として最終的に公正妥当な会計原則であるぞという通達は、まだ出ておりません。これは案でございまして、商法が成立いたしました暁には、いま一度レビューをしなければならないものと考えております。  そこで、経団連での番場先生と居林氏ですか、先生のおっしゃった点につきましては、あの当時の審議において、負債性引き当て金の概念を拡大して、あれもこれもいいというような了解は、少なくとも公の場でなされているものではございません。  さらに、御例示になりましたもろもろの負債性引き当て金、これは一般的な例示でございますが、「注解」には負債性引き当て金の定義をしっかりきめておりますので、これに該当しない限りは負債性引き当て金として認めることはできないわけでありまして、その意味でも、あれもこれもオーケーということにはならない性質のものでございます。
  51. 原田立

    原田立君 要するに、「公正ナル会計慣行ヲ斟酌」する云々というのは、それが、先ほど局長にも言ったけれども、これが結局隠れみのになって、現在のいろいろな引き当て金等が入り込んできて、もうけの隠れみのになったんではならない、その点だいじょうぶですね。
  52. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) そのような隠れみのになってはならないということは、先生のおっしゃるとおりでございます。
  53. 原田立

    原田立君 同じ三十二条ですけれども改正案では、「商人ハ営業上ノ財産及損益ノ状況ヲ明カニスル為会計帳簿、貸借対照表及損益計算書ヲ作ルコトヲ要ス」と、こうあるわけでありますが、私、しろうとで帳面づけというのはあまりよくわからないのですけれども、会計帳簿があると、そうすると――要するに、短期の会計帳簿でも、一番最初につくられるのは損益計算書じゃないですか。そうしてその次が貸借対照表という、こういう順序になるのじゃないでしょうか、ちょっとお聞きしておきたい。
  54. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 一番最初につくられますのは会計帳簿でありまして、それから、それを引き出した形で、それを元にいたしまして貸借対照表と損益計算書が同時につくられるということになります。
  55. 原田立

    原田立君 同時ですか。帳面が。これは専門家の人がたくさんいるのだけれども、会計帳簿を記入し、そうして伝票をばらして出るのは、まず最初損益計算書じゃないのですか。――まあ、いいでしょう。そこら辺の議論をしてもしようがない。この点ひとつ、問題があるので、後ほどに質問を保留しておきたい。それが一つ。  それから「商人ハ営業上ノ」云々とありますけれども、「商人」の定義ですけれども、これは一体どんなふうなことなんですか。
  56. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 商法の第四条に規定がございまして、「本法ニ於テ商人トハ自己ノ名ヲ以テ商行為ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ」、すなわち、商人とは自分の名前でもって商行為を業として行なう者でございます。
  57. 原田立

    原田立君 そうしますと、商人というのは会社じゃないんですね。それから資本額は幾らぐらいになるのですか、限度は。
  58. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 資本の金額は関係ございません。したがって、先ほど申し上げましたように、自分の名前で商行為を業としている者は、資本が非常に少ないものであっても、また大きな資本を使っておるものであっても商人でございます。それから、会社はすべて商人でございます。
  59. 原田立

    原田立君 商法第八条において、小商人には適用せず、こういうふうになっている一項があるけれども、この小商人と、この三十二条の商人の関係はどうなるのか。また、早い話が、商法改正法律施行法、この法律昭和十三年四月五日施行ではありますけれども、この第三条、資本金二千円に満たざる商人である者、会社にあらざる者、これは小商人になっているんですな。資本金二千円に満たざる商人であるというのが小商人の定義であるけれども、その小商人、また、いわゆる普通の商人、これはこの三種類のものをそろえなさい、こういう意味ですか。
  60. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 先ほど申し上げましたように、商人というのは相当広い概念でございます。そして、その商人について商法の適用があるわけでございますが、その商法規定のうち一部の規定は小商人には適用がない、こういうことになっておるわけであります。それが商法の八条でございます。そこで、その小商人というのはどういうものかというと、御指摘のように、商法改正法律施行法の第三条にあります資本金二千円に満たない個人である商人、これが小商人になるわけであります。現在、資本金二千円未満の商人と申しますと、ほとんど考えられないわけでございますが、この法律昭和十三年にできまして、その当時の価値というものを基準にしてつくりましたために、このような規定になっているわけでございまして、現在では非常に実情に合わない規定となっているわけでございます。
  61. 原田立

    原田立君 実情に合わないから改正する考えがあるんですか。昭和十三年ごろの二千円というのはたいへんな金額だろうと思うんですね。だけれども、それも小商人である、こういう規定をしているわけなんです。そうすると、今日貨幣の価値が変わっていますから、倍率にするとたいへんな金額になると思うけれども、資本金二千円だなんていうのはあまりにもばかげた話であって、改正すべきだと思う。その点どういうふうに今後取り扱いなさるんですか。
  62. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 仰せのとおり、改正すべきでございます。早急に検討さしていただきたい、このように考えます。
  63. 原田立

    原田立君 それで、いまいろいろ三十二条で問題になっているのは、ラーメン屋さん、八百屋さんに至るまで複式簿記にしなければいけないのかどうかという、こういう問題で賛否両論いろいろあるわけです。むしろ反対の声が非常に強い。そこで、何らかの手が打たれるような話も聞いているけれども、商人または小商人、ここいら辺のところの扱いはどうなるのかということで質問したわけなんです。そこいら辺が、この商人並びに小商人等の定義について、きめるべきものをはっきりきめないと、むしろこの法律三十二条そのものが、基本がくずれるのじゃないですか。だから逆な提案であって、まずもとのほうをきめてからこっちの三十二条のほうを手をつけるべきではなかったのかと、こう指摘したい。いかがですか。
  64. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 確かに御指摘のような面はあろうと思います。三十二条の改正、特に損益計算書を商人に作成することを義務づけるという点につきましては、非常に小規模の商人に困難をしいることになるのではないか、そういう御批判はごもっともであろうと思います。そういう意味におきまして、小商人の範囲を実際に合うように修正するということは私どもといたしましても早急に考えなければならない問題である、このように存じます。
  65. 原田立

    原田立君 大蔵省のほうにちょっとお聞きしたいのですけれどもね。一億円以上の会社監査役には、会計監査業務監査とやらせるようにしましたですね。ところが、一億円に満たない会社については従来どおり会計監査のみで、業務監査はないということですね。実際一億円未満の会社だなんというのは約百万社ぐらいあるというふうに聞いているのですけれども、また、これは非常に多いわけですが、一億円未満の会社でも業務監査というのがあったほうがいいと思うが、その点についての見解はどうですか。
  66. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 私どもの証取監査のほうで申しますと、有価証券報告書は、一度増資等で有価証券届出書を出しますと、それ以後続いて出すということになっておりまして、その意味では一億円未満の会社でも有価証券報告書を出している会社が若干ございます。その数は四十七年末で五十六という数になっております。今回の商法によりまして一億円未満は何も会計監査人の監査を必要としないという点は、これはむしろ法務省のほうでお答えいただくのがけっこうかと思います。
  67. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 一億円未満の会社について監査役会計監査を行なうにとどめたという点についてお答えをいたします。  法制審議会で四十五年に決定いたしました商法改正要綱には、すべての株式会社監査役業務監査を行なわせるということになっておったのでございます。しかしながら、その後昭和四十八年、法律が立案されるまでの間にいろいろ実際界からの御要望がございました。ことに中小企業の団体などから、比較的中小規模に属する会社について業務監査を行なわせるということになりますと、監査のためにいろいろよけいな費用もかかることであるし、中小企業経営という面からいってもあまり好ましいことではない、また、中小規模の会社の場合には、それほど大規模の会社におけるような特殊な問題というものは起こらないのではないか、こういうような御意見がございました。そういった点を参考にいたしまして、法制審議会商法部会にもおはかりいたしました結果、一億円以下の会社については監査役権限は従来どおり会計監査のみにとどめるということでよかろうという御了承をいただきましたので、そのようにいたした次第でございます。
  68. 原田立

    原田立君 法制審議会の了解がとられたから、よかろうと言われたからやったんだなんて、そんなんじゃなしに、いまいろいろと監査制度の充実ということが強く言われているんだから、それで、一億円未満の会社といっても百万からも数がたくさんあって――それは事故も小さいかもしれない。それは、そういう大小の面からいけばそんなものなくたっていいでしょう、大会社のほうだけしておけばと、こういう議論もあるかもしれないけれども、やっぱり、会計監査というのを厳正にする、ころばぬ先のつえで、きちっとしたものを、業務監査も与えてやらしたほうが、むしろ不正を除去することができるのじゃないでしょうか。ただ簡単に、法制審議会で御了解がとれたからけっこですよだなんて、そんな姿勢でなしに、もっとはっきりとした考えを聞きたい。
  69. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 私が申し上げましたのは、法制審議会はつけたりでございまして、むしろ実際界からの御要望なり御意見というものがございまして、それをしんしゃくしたということでございます。午前中も申し上げましたように、株式会社につきましては、その規模に応じて適当な制度というものを考えていくべきだろうと思います。そういう点で、中小規模の会社につきましてはなるべく簡略化するということも一つの大事な事柄でありまして、そういう意味におきまして、一億円以下の会社につきましては業務監査という複雑なものは持ち込まない、それでもことが足りるのではなかろうか、こういうふうに判断したわけでございます。
  70. 原田立

    原田立君 二百七十四条に、「監査役取締役ノ職務ノ執行ヲ監査ス」、「監査役ハ何時ニテモ取締役二対シ営業ノ報告ヲ求メ又ハ会社業務及財産ノ状況ヲ調査スルコトヲ得」と、こういうふうになっておりますけれども、おそらく、いわゆる業務監査ということばの根拠はこの二百七十四条であろうと思うのですが、この二百七十四条には、いわゆる業務監査ということばは一つもないですね、推測すれば業務監査ということになるわけですけれども。明文化されていない。そんなところで、はたして政府考えているようなきちっとした姿勢でやっているのかというのを私は疑いたくなるのであります。  それはさておいて、具体的に業務監査の執行をする場合、一体どういうことをするのか、また、できるのか、また、その内容は一体何なんだ、監査方法は一体どうするのだ。ひとつ、簡単でけっこうですから、事実論の上から、具体論の上でお答え願いたい。
  71. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 業務監査の根拠は、仰せになりましたように、二百七十四条、特にその第一項で、「監査役取締役ノ職務ノ執行ヲ監査ス」と、これが基本になるわけでございます。  その具体的な方法でございますが、これは取締役の職務執行の全般についてでございますから、監査の方法としてはいろいろあり得るわけでございます。取締役会出席していろいろな決定が行なわれる、その決定が適法かつ適式に行なわれたかどうかという点を監視するのもその役目でございますし、また、会社の帳簿とか株主名簿などを検査いたしまして、自己株をよけいに持っておるとか、そういった点について違法がないかどうかを調べるのも監査役の職務でございます。あるいはまた、その会社が工場を持っております場合、その工場に行きまして、公害の防止のための十分な措置が講じてあるかどうかということを検査するのも監査役の職務であります。このように、監査役が調査すべき事柄というのは非常にたくさんあるわけでございまして、それを監査役がどのような方法で調査するかということは、その監査役の手腕なり技量によるというふうに考えるわけでございます。
  72. 原田立

    原田立君 二百七十四条ノ二に、「取締役会社ニ著シキ損害ヲ及ボス虞アル事実ヲ発見シタルトキハ直ニ監査役ニ之ヲ報告スルコトヲ要ス」と、要するに取締役にきちんと報告しなさいよと、こういうわけですよね。お互いに部内で知り合うということについては意味はあろうと思うんですけれども法律として、簡単なたったそれだけのことを一項設けてやるだけのことがはたしてあるのかどうなのか、またその報告を受けた監査役が一体どういうふうなことができるのか、その点の解釈はいかがですか。
  73. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 御指摘のような報告義務というのは、監査役がその監査の職務を行なうために必要であるというふうに考えられますので規定されたものでございます。「会社ニ著シキ損害ヲ及ボス虞アル事実」と申しましても、その原因はいろいろあるわけでございまして、たとえばある取締役が違法な行為をして、そうして会社に損害を与えるという場合もございます。そのほか、使用人行為が適当でないとか、いろいろ原因はあるわけでございますが、こういうような事実がありましたときには、たとえばそれが取締役違法行為によるものであるという場合には、二百七十五条ノ二で差しとめ請求の問題が起こってまいります。それから、場合によっては、監査役監査報告書にそういった事項を記載するとか、株主総会に報告をするとか、そういった必要の生じてくる場合もあるわけでございまして、実際にそういう事実が生じておるのに監査役がこれを知らないでいるということは、監査役職務遂行の上に支障を生ずることになりますので、取締役がそういう事実を知った以上は、直ちにこれを監査役に報告せよと、そうして監査役のほうとして何らかの処置をとるべき場合には、その処置をとる機会を与えると、このように配慮してあるわけでございます。
  74. 原田立

    原田立君 二百七十五条ノ二、いま局長説明されたわけでありますが、「取締役会社ノ目的ノ範囲内ニ在ラザル行為其ノ他法令又ハ定款ニ違反スル行為ヲ為シ之ニ因リ会社ニ著シキ損害ヲ生ズル虞アル場合ニ於テハ監査役取締役ニ対シ其ノ行為ヲ止ムベキコトヲ請求スルコトヲ得」と、いわゆる差しとめ請求権でありますけれども定款に書かれていない事項をやった場合、すなわち定款違反行為を行なった場合のその責任は、監査は、一体どのようにするのかどうかと。ある一つの例でありますけれども、ある商社ですね、ある商社が、いわゆる海外貿易と国内通商取引をする会社でありますが、これが定款に書いていない株の売買等をやっちゃったと。それはもちろん定款に書いてないんでありますが、だけれども、株の売買をやればもうかるとして猛然と株の買い占めをやったと、金融機関から借金をしてやったと、こんなような場合には、法律違反に当然なるだろうと思うんですけれども、これは一体どういうふうに処置するのか。また監査役が、そんなことは定款違反行為だからおやめなさいとしきりに言ったと、取締役会にも建言した。だが、取締役会はこの監査役の声を聞こうともしないで断固として実行しちゃったと、要するに定款違反行為ですよ。このような場合、そういうような場合に、ここでは差しとめ――「行為ヲ止ムヘキコトヲ請求スルコトヲ得」なんですね。だけれども、それは明らかに定款違反行為なんだから、これは罰しなければいけない。だけど、罰するその法的根拠は一体どこにきめられてあるんですか。取締役会社に対する責任はどのように追及されるんですか。また、定款にきめられていない株の売買行為についての責任は一体どのようにとられるんですか。それらについてお答え願いたい。
  75. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 実は非常にむずかしい御質問でございます。株の売買というのは、定款に目的がなくてもできる場合がございます。
  76. 原田立

    原田立君 株の売買って、定款にきまってないものという意味ね、そういう一つの例だから、株は。やみ米の話もあるんですよ。
  77. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) もうすでになされてしまった場合には、その違法な行為を差しとめるということは困難でございます。それによって会社が損害をこうむったというような場合には、これは二百六十六条の規定によりまして、そういう行為を行なった取締役会社に対して損害賠償の責に任ずると、こういうことになりますけれども、損害が生じなかったというような場合におきましては、この規定は働かないことになります。しかも、その行為がすでになされておるということになりますと、差しとめの請求もできないということになりますので、事後においてそれに対する措置をとるということはまあできなくなるわけでございます。ただ、監査役といたしましては、取締役がそのような行為をしたということを監査報告書に記載するとか、株主総会に報告するという権限はあるわけでございまして、そういう方法によって取締役の姿勢を正す、あるいは株主総会における取締役選任の参考に供するということができることになろうと思います。
  78. 原田立

    原田立君 要するに、定款に載っていないんですよ。たとえば株の売買だとか、やみ米を買っただとか、定款に載っていないでしょう、そういうことは。そんなことやっちゃいけないこと――やっちゃいけないことじゃなくて、そんなものをやっていいということは書いてないのですよ。商社だから何をやってもいいというわけにいかぬでしょう。だから、結局それはもう明らかに反社会的行為であって、悪徳行為だ。それをやっちゃった、いや、それをやりつつあるのを監査役が発見した、これは業務監査できるのかどうか。それでも強く言うた、ところが取締役会はぱあっとして言うことを聞かないでとうとうやっちゃったと。まあこうやりつつあるということですかね。そういうときに、監査役のいわゆるここできめられている差しとめ請求権だけでは効果は全然ゼロにひとしいのじゃないかと、こう心配するのですよ。その点どうですか。
  79. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 第一には、取締役会においてそういうことをやってはいかぬということを言う、意見を述べることができるわけであります。それから第二に、そういう違法な計画、行為をやりつつある、たとえば契約ができてそれが履行されようとしておるという場合に、それがたとえば定款違反の無効な行為であるといたしますと、そういう契約の履行を仮処分によって差しとめるということも可能である場合があろうと思います。
  80. 原田立

    原田立君 いまあなた仮処分と言ったけれどもね、それは最終的には裁判所を利用して仮処分でということになるんだろうと思うけれどもね、そういうような仕組みの業務監査というのはおかしいんじゃないですか。もっと業務監査権をはっきり与えるということを言って、明らかに監査役の力を強固にするのだというんだったならば、やはりもっと、そんな裁判所まで一々お伺いして、いかがでしょうかなんてやるもっと手前で何とかならないのですか。またすべきじゃないでしょうか。また人情論からいって、同じ会社取締役監査役、これは同じ人間ですものね。同じ仲間ですものね。それがいつも角突き合わせていて、それで事と場合によっちゃあ裁判所で仮処分だぞなんというようなことでは、これもまたおかしな話だし、むしろそんなことよりか、裁判所に行く手前の段階監査役権限というものをもっと強化して、そしてそういう不正行為等、ぴしっととめるようにできるようにすべきじゃないでしょうか。
  81. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) まあ仰せのとおりだと思います。違法行為差しめ請求権を行使して裁判上の手段に訴えるということは、これは取締役監査役とのいわば対立状態を生ずることになるわけでありまして、会社業務運営を円滑に行なうという上から申しますと、はなはだ好ましくない事態でございます。この法律は、最後の手段としてそういった違法行為差しめ請求権というものを認めておりますけれども、実際の運用におきましては、そういうものをバックにいたしまして、監査役の言うことを十分取締役が尊重する。そうして、お互いに話し合いをした上で適正な業務が行なわれる、こういうことを期待しておるわけでございまして、法律はそのぎりぎりの線まで書きませんと、最後の保証がないと申しますか、まあ十分な手当てをしたことになりませんので、こういう規定が設けられておるわけでございますけれども、もちろん監査役取締役がお互いに話し合って、違法な行為をしないように平素からつとめていくと、そういう運用が最も望ましいと考えておるわけでございます。
  82. 原田立

    原田立君 二百五十九条ノ二に、「取締役会ヲ招集スルニハ会日ヨリ一週間前ニ各取締役及各監査役ニ対シテ其ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス但シ其ノ期間ハ定款ヲ以テ之ヲ短縮スルコトヲ妨ゲズ」とあるわけでありますが、二百五十九条ノ二は、取締役会の開会通知が監査役に出されておらず――いいですか――逆に、出すことになっているわけだけど、それが出されておらず、またその監査役もこれを受け取っていない。そんな段階取締役会が開会され、そうして諸取りきめがなされたと。で、通常の会社の営業そのものならばいざ知らず、先ほどから何度も例に出すように、定款に書いてない行為――違反行為ですね、株の売買であるとか、やみ米の売買等をやったと。で、こんなときのこの取締役会議決というのは効力が発揮されるのかどうか。要するに、監査役出席することになってるんですよね。また、当然通知も出さなければならないことになっているんですよ。ところが、現実には通知は出していない。また出ていない。出ていない段階で、そういう定款にない違反行為をばんばんときめたということは、その議決は無効とすべきじゃないでしょうか。と思いますが、その点いかがですか。
  83. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 監査役に対して適法な通知をしないで取締役会が開かれたという場合の、その取締役会の決議の効力でございますが、これは原則として無効であるというふうに考えております。原則としてと申しましたのは、たとえば監査役が通知を受けなかったにかかわらずその取締役会出席したというような場合には、招集通知を怠ったという瑕疵がその点で治癒されたと見る余地がございますので、そのような場合には、必ずしもその取締役会の決議を無効とする必要はないわけでございますが、そういった例外的な場合を除きまして、取締役会の決議は無効となる、このように考えるわけでございます。ただ、一般の取引でございますと、これは取締役会で決議しなくても代表取締役ができるという場合がございますので、まあそういう場合には、取締役会で決議をした、しないにかかわらず、その取引が対外的には有効になるという場合もございます。
  84. 原田立

    原田立君 二百五十四条で、取締役の任命は株主総会で行なわれるということになっており、今度は二百五十七条で免ずる場合の取りきめが規定できておる。で、今回の二百八十条で、監査役の任免の権限もこの二百五十四条、二百五十七条、取締役の任免と同じに準ずると、こういうふうに条文ではなっておりますが、では一体この原案はだれがつくり、そうしてこの取締役会にだれが提案するのか。要するに、任免について、監査役の任免についてだれがっくりだれが提案するのか、この点を明らかにしてもらいたい。
  85. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 原案は取締役がつくるわけでございます。ただ、監査役選任解任につきましては、二百七十五条ノ三に、「監査役株主総会ニ於テ監査役選任又ハ解任ニ付意見ヲ述ブルコトヲ得」ということになっております。
  86. 原田立

    原田立君 このことは、監査役のいわゆる生殺与奪の権限取締役会が持っているということになりますね。要するに原案づくりは取締役会でしょう。ですから取締役会のあまり気に食わないようなのは提案もされないということになる。また、たとえば提案になったとしても、この取締役会にあんまりよく思われないような人だったら、また首切られるかもしれないですね。要するに、私言いたいのは、この監査役の生殺与奪の権限というのは取締役会が持っているということになる。会社に対して手きびしく、きびきびと言ってくれる監査役の任命は、いまのような形ではとうてい望めないのじゃないのかとたいへん心配するんですけれども、こんなようなことでも、監査役に人を得て、きちっとした公正な業務監査会計監査ができるのかどうか、所信はいかがですか。
  87. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) いい監査役を得るということはその会社にとって利益なはずであります。したがいまして、取締役が誠実に職務を執行いたしますならば、監査役にはいい人材を選ぶのが当然であると、このように思います。なるほど、原案は取締役のほうでつくるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、二百七十五条ノ三という改正案規定によりますと、「監査役株主総会ニ於テ監査役選任又ハ解任ニ付意見を述ブルコトヲ得」ということになっておりまして、監査役は自分の立場につきましても、あるいはほかの監査役選任する場合に、その監査役の当否というような点につきましても、株主総会意見を言うことができるわけでありまして、そういった意見を参考にして株主総会選任が行なわれるということになるわけでございますので、これらの規定が正常に働きますれば、監査役にも人材を得られることになろうと、このように考えるわけでございます。
  88. 原田立

    原田立君 局長株主総会ですね、あっちこっちでやっているのが新聞報道される。この前はチッソの株主総会、総会屋が入ってどうのこうのというふうな話が新聞に出ておりましたけれども、たった五分ぐらいでぱっと終わっちゃったと。大体何か株主総会というのは、そういう短くやるのがその会社の総務部長の腕の見せどころなんだとかいうふうな話を漏れ聞いているんですけれども、そこら辺の株主総会の姿勢というのも、もっと改めなきゃいけないんじゃないでしょうか。五分か十分でぱっぱっと、賛成、賛成できまっちゃうような、そんなんじゃなくて、やっぱりじっくり時間かけてやるような、そのいう株主総会であってしかるべきなんじゃないだろうか。そういうようならば、いま局長が言っているように、この二百七十五条ノ三「監査役株主総会に於テ監査役選任又ハ解任ニ付意見ヲ述ブルコトヲ得」というのが生きてくると思うのですがね。五分か十分ぐらいで、賛成賛成、以上終わりなんていうような株主総会では、こんな――まあこんなって、これはたいへん大切な意見を述べる権利をあげてあるんですから、非常に重要な条項だろうとぼくは思うんだけれども、実際問題は空文にひとしいんじゃないか。そこら辺、どんなものでしょう。株主総会のあり方というのと、いまの空文化しやせぬかという二つの点。
  89. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) まず株主総会のあり方でございますが、先生御指摘のように、現在の実情株主総会必ずしも理想的に運営されておりません。時間の短いということもさることながら、総会屋というようなものが入り込みまして、株主総会の議事の運営を一定の筋書きどおりに運んでしまう。こういうことは、商法のたてまえから申しますと、株主総会を形骸化してしまうものでありまして、株式会社制度運用の中で最も悪い点であろうというふうに思うわけでございます。したがいまして、そういった点は今後企業も十分に反省をして改めてもらいたい。総会屋の排除につきましては、警察などでも力を入れているようでありますけれども企業自身が積極的なそういう姿勢を打ち出さない限り、これはとうてい根絶できるものではございません。そういう意味において、現状ははなはだ残念であるということを申し上げたいと思います。  それに関連して、いまの規定はどうかというお尋ねでございます。株主総会の現状をそのように考えますと、確かにこの規定の効用というものは影が薄くなってくるというふうに思われます。しかしながら、株主総会の現状がいつまでもいまのようなものであってはいけないのでありまして、それが直されるということを前提にしてこの規定が設けられておるわけでございますので、おいおいとその株主総会が改善されるに従いまして、この規定も十分意味を持つようになるであろうと、このように期待しておる次第でございます。
  90. 原田立

    原田立君 二百六十条ノ三に「監査役取締役会出席意見ヲ述ブルゴトヲ得」と、こういうふうにあるわけですが、先ほどもちょっと言ったように、ことばはろくありませんけれども、いわゆる生殺与奪の権を握っている取締役会の中にあって、かりにたてつくようなというか、定款にないような違反行為をやろうやろうやろうと大勢がこうなっているのに、いやとんでもない、そんなことをやっちゃいけませんよなんていうようなことがはたして言えるかどうか。ぼくはなかなか言えないんじゃなかろうかと。いやまた、たとえそういうことを言ったとしても、その監査役地位保全というものがはっきりしていればそれは何でも言えるだろうと思うんだけれども、へたすれば首切られちゃうというふうな立場に立っているならば、これまた言おうとしても言えない。結局、この二百六十条ノ三も、りっぱなきめ方ではあるけれども、これも中身のほとんどない、空文化したものじゃないのかと心配するわけです。もしそれがそうでないというならば、そうでないようなふうに監査役というものをきちっと守ってやらぬと、意見なんか言えないと思うんですよ。どうしますか、そこのところを。法律はできたけれども実際にはできない。まことにその地位が弱い。これでは、真に会計監査業務監査を行なって粉飾決算なんかを除去しようということにはもう全く逆行して、形ばっかりできて、結局悪徳行為がなお一そう広がるということになりはせぬかと、それを心配するのです。ここのところ、二百六十条ノ三、その点どうでしょう。
  91. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 監査役取締役会出席して、そうして自分の立場から見て必要な意見は述べるということが監査役の職務でございます。そういうことが述べられないような監査役はすでに監査役としての資格がないわけでありまして、そういう人間が監査役になったのでは、どんなりっぱな制度をつくっても役に立たない。監査役は堂々と出席して意見を述べてもらいたい、このように考えております。
  92. 原田立

    原田立君 これはほんとうは大臣がいるところで聞かなければいけないんですが、大臣趣旨説明の三ページのところに、「次に、株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案は、」云々とこう言って、まず「第一に、大規模の株式会社にあっては、」云々と、それから「第二に、中小規模の株式会社については、その実情から見て、ある程度監査に関する負担を軽減する必要があると思われます」――監査に関する負担を軽減する必要があるんですか。「資本金一億円以下の株式会社においては、監査役会計監査のみを行なうものとし、」とあるけれども、さっきの話ですよ、業務監査もやらせるべきじゃないでしょうか。これ、これはまあ大臣がいないから、局長に答弁してもらうしかないだろうと思うんだけれども、もうここの発想自身がもとから方向が少しピントが合わないんじゃないでしょうか。要するに、大規模の会社は当然必要ですよ。中小規模の株式会社についたっても、資本金一億円以下の株式会社においても、監査役会計監査並びに業務監査等も必要であるはずだと思うんです。いまここでは、そういう中小規模の会社に対しては省いたと、こういうふうに説明をされているわけですが、意味がよくわからないので、いま一度説明をしてもらいたい。
  93. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 会社業務を執行するにあたって違法な行為あるいは不当な行為をしてはならないということは、これは当然でございます。したがって、取締役といえども、単に利益が上がるということだけを目標にして行動すべきではなくして、それが適法で正しい行為であるという場合にのみそういう行為が許されるわけであります。で、問題は、その会社の機構が非常に大きくなりました場合に、そういった会社行為が不正にわたりますとそれだけ影響が大きくなります。したがって、特にその点の監査を厳重にする意味において、監査役業務監査まで行なわせよう、こういうことになるわけでありますが、中小会社につきましてももちろん業務監査の必要がないとは言えません。言えませんけれども、何と申しましても組織も規模も小さな会社でございますから、まあ取締役みずからが違法、不正な点にわたらないように注意をすることによって、その点の間違いを起こさないようにはかってもらいたい。監査役のほうは業務監査までやれればなおいいのでありますけれども、まあ中小規模の会社でございますと、一方においてはあまりよけいなことに負担をかけないほうが経営の面では望ましいというようなこともございますので、その辺のかね合いの問題でございますけれども、まあ一億円を限度といたしまして一方は会計監査、他方は業務監査こういう仕訳をしたわけでございます。
  94. 原田立

    原田立君 午後の冒頭に質問申し上げたわけでありますが、第三十二条「公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」というこの一項でありますけれども、いろいろと説明を聞いてみてもどうも私は不安であります。公正なる会計慣行をしんしゃくするということによって、監査役監査する範囲がずっと狭められるんではないか。また現在のいろいろ諸法律によってきめられている何々控除金であるとか、何々の引き当て金であるとかというようなことによって、いわゆる不当に利益が隠されるおそれがあるんじゃないのかと。もちろん字のとおりに公正な会計慣行が確立されれば一番それがいいわけですけれども、一体その中身の公正な会計慣行とは何なんだろうというのが、どうもさっきからいろいろ説明を聞いていても私は納得がいかない。局長も会計にはしろうとだからと言ってあまり説明しなかったし、大蔵省のほうからも説明あったけれどもどうもよくわからない。結局私が指摘したいのは、この公正なる会計慣行をしんしゃくしろと、これが大企業の不当な利益の隠し場所になりゃせぬかどうか、そうあっちゃならない、こう私は思う。その点いかがですか。
  95. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいまの、これによってかえって監査の領域が狭められるのではないかという点に関しましては、商法において適法か違法かという業務並びに会計上の監査監査役がなさると同時に、財務諸表に関しましては、たとえば企業会計原則その他先ほど申しましたような審議を経て、大蔵大臣が公正妥当と認められるそういったものを尺度にして監査を行なわなければならないよということは、むしろ恣意的にやるのではなく、あるいは狭められるのではなく、非常に厳正、的確に、かつ監査の領域も広げてやれるというふうなことではないかと思います。  それから、これが大企業の利益の隠し場所になってはならないということは全くおっしゃるとおりでございまして、それなるがために念には念を入れて何が公正な会計慣行であるか、そしてそれに沿ってはたして会社の財務諸表ができているかを公認会計士がしっかりと監査証明をするということになっておるのでございまして、そういう意味では私どもは今後商法的な面から見た適法、違法並びに会計監査人の、要するに会計的に見た妥当性、両面相まってそのような隠し場所を提供するということがないように、企業の財務並びに経営の成績を明瞭かつ真実をもって表示するという体制をますます強化していきたいというのが、今回の商法特例法におきまして、会計監査人も事前に監査して決算確定に参与するというたてまえにした真意でございますので、まさに先生のおっしゃるとおりと考えております。
  96. 春日正一

    ○春日正一君 この前、監査役地位権限というようなものについて質問したのですけれども、それに続いて会計監査人の問題ですけれども監査役株主総会選任されますけれども会計監査人の選任というのはどこでどうなっていますか。
  97. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 会計監査人の選任につきましては、株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案の第三条に規定してございます。   〔理事佐々木静子君退席、委員長着席〕 すなわち「会計監査人は、監査役の過半数の同意を得て、取締役会の決議をもつて選任する。」、こういうことになっております。なお二項におきまして、「会計監査人を選任したときは、取締役は、その旨を株主総会に報告しなければならない。」、こういうふうに規定されております。
  98. 春日正一

    ○春日正一君 そこで、監査役のほうは解任については直接に株主総会意見を述べることができると、こうなっているわけですけれども会計監査人の場合はどういうことになりますか。
  99. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 解任につきましては同じ法律案の第六条に規定がございまして、選任とほぼ同様でございます。「会計監査人は、監査役の過半数の同意を得て、取締役会の決議をもつて解任することができる。」、なお、「会計監査人を解任したときは、取締役は、その旨及び解任理由株主総会に報告しなければならない。」、こういうことになっております。それからこの六条の第三項に「解任された会計監査人が前項の」、すなわち解任理由を報告する「株主総会の会日の三日前までに会社に対して書面で解任についての意見を通知したときは、取締役は、その意見の要旨を株主総会に報告しなければならない。」、こういうことに規定されておるわけでございます。
  100. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、会計監査人は自分の解任に関する意見を文書をもって会社に通知し、取締役を通じて間接的に株主総会に訴えると、こういうことにとどまっておるわけですけれども、これでは取締役会計監査人に対する不当な解任というのをチェックして会計監査人の独立性を保つという上ではきわめて不十分じゃないかという気がするんですけれども、その点どうですか。
  101. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 会計監査人は株式会社の会計の監査を行なうものでございますから、その地位を保障する必要があるというふうに考えまして、以上申し上げましたような規定を設けたわけでございます。この規定によって、相当程度会計監査人の地位というものは保護されることになろうと、このように思います。
  102. 春日正一

    ○春日正一君 これは、この前の質問のときでもるる言われましたけれども監査役地位が弱いんじゃないかという話の中で、たとえば特例法で五億円以上の会社については会計監査人という制度を設けて、外部からも監査するんだからだいじょうぶなんだという説明があったんですけれども、そういう役割りをするものとしては非常に地位が十分保障されてないというか非力なんじゃないかということを私はお聞きしたわけです。そこで、次に伺いますが、監査役会計監査人の監査方法または結果を相当であると認めたときには、特例法十四条の二項の一で、その会計監査はすっとフリーパスになってしまうということですか。
  103. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) そのとおりでございます。  ただ、監査の方法または結果が相当であるかどうかという点につきましては、監査役みずからも監査を行なうわけでありまして、その結果に照らしてみて、会計監査人の監査の方法や結果が相当であるというのであればそれはフリーパスということになろうと思います。
  104. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、フリーパスにならない場合はどういうことになりますか。会計監査人が監査して出したものが、監査役のほうで見てこれはやり方が間違っているということになれば訂正させるということになるわけですか。
  105. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) その場合には、監査役はみずから適当と認める方法によって監査をいたしまして、その結果を監査報告書に記載すると、こういうことになります。
  106. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、その場合は監査人の出した報告書というのは没になるわけですか。
  107. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 没にはなりません。それはそのまま残されまして、そしてその後、株主総会の招集通知にも添付されますし、株主総会でもその点の問題があれば議論が行なわれる、こういうことになるわけでございます。
  108. 春日正一

    ○春日正一君 そこで、監査役のほうは会計監査人の監査報告書についていま言ったように説明を求めることができると、特例法十三条ではそうなっているんですね。ところが、会計監査人のほうから監査役監査報告書について説明を求めるということはできるように規定されてますか。
  109. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 会計監査人から監査役に報告を求める規定があるかということでございますか。
  110. 春日正一

    ○春日正一君 ええ。
  111. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) その点はございません。
  112. 春日正一

    ○春日正一君 そういう規定はないわけですね。  それから、会計監査人が定時の株主総会出席して意見を述べることができるというのはどういう場合ですか。
  113. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 特例法の十八条に規定がございまして、計算書類が法令または定款に適合するかどうかについて会計監査人の意見監査役意見とが違う場合には、「会計監査人は、定時総会に出席して意見を述べることができる。」ということになっております。  なお、そういう意見がない場合におきましても、総会のほうで会計監査人の出席を求めるという決議がありますと、その場合にも会計監査人は、定時総会に出席して意見を述べることになるわけでございます。
  114. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、いままで聞いてきたところによると、会計監査人の監査報告書というのは監査役のほうに提出されるから、結局、監査報告書というのは監査役のものも会計監査人の報告書も、すべて取締役会に一応出されるということになるわけですね。そうしますと、結局、監査役会計監査人との間では、監査役会計監査人に監査報告書について説明を求めることができるけれども会計監査人のほうから監査役のほうに説明を求めることはできない、それは保障されていないということで、一方通行になるわけですね。そうしてまた監査役を通じて取締役に提出される監査報告書について、取締役についても当然出しっ切りで一方通行になっていくという意味では、いわば会計監査人の立場というのは、監査役取締役に二重に従属しているようなそういう印象を受けるわけですけれども、これでは公正な会計監査ということが行なわれる十分な保障にはならないのじゃないかというふうに考えるのですけれども、その点どうですか。
  115. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 監査の順序といたしまして、最初に会計監査人が監査を行なうわけでございます。したがいまして、その段階では、会計監査人は自分がみずから最初の監査を行なうわけでありますから独自の判断でやるほかはない。ところが、そのあとで監査役監査を行なうわけでありますが、監査役がどうも自分の考え会計監査人の考え意見が違うという場合には、その慎重を期する意味でもう一度会計監査人に意見を聞いてみる、こういうことができるようにしておるわけでございまして、これは監査の順序がそうなっておりますので、監査役からは意見を聞くことができるけれども会計監査人のほうから監査役意見を聞くことは必要ない、こういうことになっておるわけであります。したがって、これはそういった関係からの規定でございまして、特に一方通行であるとか、会計監査人の監査が十分に行なえないというような性質のものではないというふうに考えております。取締役は最終的に監査報告書を受け取るわけでありますが、これは自分がその監査報告書に手を加えるわけでも何でもございませんで、ただ監査報告書を今度は株主に見せまして、そうして株主総会で決算の承認を求める、こういう手続をとらなければなりませんので、最終的には取締役のところに監査報告書がいくというだけのものでございまして、それが監査のやり方にどうこういう影響を与える性質のものではないと、このように考えております。
  116. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 若干補足さしていただきます。  商法における問題は、ただいま民事局長から御説明のあったとおりでございますが、今後は商法監査と同時に、私どもの証券取引法に基づく証取監査というのも依然あるわけでございます。そうして証取法の監査におきましては、公認会計士がたとえば不適正の意見を付しますると、これはたとえば虚偽記載があり、その影響が重大であると証券取引所が認めるようなときには、上場廃止になるという問題を含んでいるわけでございます。さらに、不適正の意見をつけなくても、かなり限定意見を多々つける場合には、ある場合には任意に訂正報告書の提出を求めますし、場合によっては訂正命令を出すということもあるわけでございますから、先生御心配の一方通行云々の点は、あとに証取監査が控えておりまして、上場廃止というようなおそろしさがあることを知っておれば、監査役あるいは取締役会計監査人の意見を軽々に排除して株主総会に対処するということはできないのではないかと考えております。
  117. 春日正一

    ○春日正一君 その問題またあとから聞きますから。それで会計監査人というもののいわゆる位置と権限といいますか、そういうものについてどういうものかという点でお聞きしてみたんですけれども、この問題では、やはり公認会計士企業との関係で、監査人が企業から報酬を受け取って、そうしてその企業との間で自由契約の形で取りきめられていると、だからこの点では衆議院の委員会などでも、参考人のほうから、言ってみれば税理士は弁護士のようなもので、納税者の利益を全面的に擁護すると、そういう立場に立つんだから、だから納税者から報酬もらって、そのために努力を尽くすということは、これは合理的だけれども、しかし公認会計士が、いまの、問題になっている場合のように、会社経理監査するということになれば、これは弁護士の役割りではなくて、裁判官あるいは検察官のようなそういう役割りを持つわけだから、間違いがあるかないかを見つけて、ただすという任務を持つわけですから、そうすると、そういう対象になる人からその報酬をもらうということでは、どうしてもそこに人情の、何といいますか、そういうもので、制度としてやはり適正に十分なことが行なわれるという保障がないじゃないかと、この意見を出されておると思うんです。そのことがいままでもずっと議論されてきたと思うんですよ。私も、考えてみまして、先ほど原田委員質問に対しても、良心の問題とか良識の問題とか言われた。私は、そういう職業やっておられる方々みんな良識を持っておいでになると思うし、それはそうなんだけれども、しかしこれは制度の問題として保障しなければ、人間の心というものは動くものですから、だからただ良心にたよるというようなことだったら、別に制度的な保障をする必要がなくなる。だから今度の監査の問題でも、取締役会で、とにかく企業の業績なり何なりまとめて株主総会へ報告すればいいんだけれども、それが間違っちゃいかぬから監査役を置くわけだし、それでもなお社会的影響の大きいものについては外部から監査人という者をして監査させるわけですから、そういうことになると、これはやはり取締役が全部悪者だという前提でそうするということではなくて、善人であるということを前提にした上で、なおかつ制度的に公正を保障するということで、いま言ったような制度考えられてきたと思うんですよ。そうだとすれば、いま言われたように、公認会計士監査人としてその企業から報酬をもらって企業監査するということでは、制度としてはこれは欠陥は免れないと思うんですわ。やはり制度とすれば、参考人がいろいろ言っているように、企業と独立したものをつくって、そうしてそういう影響受けないで十分な監査ができるというような保障というのですかね、そういうものをつくらなければ筋が通らぬ。良心でできるんなら一何で監査役を必要とするのかと、取締役は悪者だと、そうじゃないんです、取締役善人ということを前提にしても、監査役も必要だし、監査人も必要だと言っているとしたら、公認会計士全部が善人と前提としても、やはり制度としてはそういう制度にすべきじゃないか。そこらについては、ずいぶんいままで議論されてきたんだけれども、どういうふうにお考えですか。
  118. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 監査をする対象の会社から金をもらう、報酬をもらうということは、監査の公正をゆがめることになるんではないかと、こういう御意見は、御指摘のように、この国会の審議を通じまして何回もあったわけでございます。確かに人間でございますから、そういう面がないということは、絶対にないとは私言えないと思います。しかし、この監査というものは何のためにやるのかと申しますと、結局その会社経営、決算というものが適正に行なわれるためにやるわけでございまして、利益を受けるのはその会社であると、したがって会社が当然報酬を払ってしかるべきものであると。まあ病気になりました者が医者にかかって、そうしてどこが悪いか見てもらうと、病気にかからなくても、ドックに入って、どっか悪いところがないかということを見てもらうと同じような考えに立つわけでございまして、まあこの制度必ずしも完全なものとは言えないと思いますけれども、諸外国の例を見ましても、同じような構成がとられております。まあそういう点から見まして、これよりいい制度というものを考えられればそれにこしたことはないわけでございますが、現在の社会のもとで、これよりいい制度というものが、なかなかつくりにくいわけでございます。たとえば一つの機関というものがあって、そこから会計監査人を派遣するというようなことを考えてみますと、まあ報酬はその会社がその機関に払い込むといたしましても、今度は逆にその派遣するほうのもとの機関会計監査の一種の独占企業的な働きをすることになるわけでありまして、そうなってしまったんでは、別の意味の弊害が起こってくる可能性があるわけです。それから、たとえば裁判所に選任してもらったらどうかというような御意見もあったわけでありますが、裁判所はやはり会計監査の実務には詳しくありませんので、たとえば後見人を選任する場合と同じように、やはり選任してくれと頼んでくるところの意見を聞いて、そうしてその者がはたして適当かどうかということを見た上で選任すると、こういう形になります。そうなりますと、そういった制度がはたしてどれだけの効果を発揮できるであろうかと、こういう疑問も出てくるわけであります。いろいろ考えてみますとなかなかむずかしい問題でございまして、現在のこの案にあります制度は、御指摘のような心配が全くないとは言えませんけれども、きょう午前中に原田先生の御質問にもありましたように、制度的に公正を保障するという面と鎮それからこの特例法の選任解任についての特則、こういったようなものを設けまして、その地位の保障と、それから監査業務の公正、これを保障しようとしているわけでございまして、現状においては、私、この程度の案でいくほかないのではなかろうかと、このように考えておる次第でございます。
  119. 春日正一

    ○春日正一君 きわめて消極的なようですけれども監査制度のあり方として、いままでいろいろ言われておりますけれども、たとえば会計と監査の専門家としての公認会計士の知識、経験が真に尊重されて、現在失われておる仕事に対する喜びと情熱というようなものが感じられるような制度にする必要があるとか、公認会計士の仕事を国民的基盤に立脚した、より公共的、社会的なものとするようにしていく、企業に対する経済的な依存、従属関係をなくすというようなふうにしていくというような意見が述べられておるし、私は道理としてはそれが妥当だと思うんですよ。いまあなたは実際問題としていろいろむずかしいと言われましたけれども、論理としてはやはりそれが筋だと思いますよ。そして具体的な構想として、公認会計士企業との契約に裁判所が関与するというような意見も出されていますし、監査人の保障として、労働者の代表とか、消費者の代表等、外部の者を入れて、監査の公開もやるというようなシステムをつくるというようなことも言われておるし、あるいは特殊法人である会計監査機関というものをつくって、公認会計士は自由職業としてではなくて準公務員的なものとしてこういう監査に当たってもらうとか、いろいろ言われておりますけれども、やはりそれぞれ一応積極的な意味は持っておると思うんです。だから、法務省として、やはり企業監査を、企業の中にあって、企業から制度的にも経済的にも独立して行なえるような監査機構をつくるということを、これを真剣に検討する必要があるんじゃないかと思うんです。この前の質問のときに私、監査役の問題として、会社の内部機構として、やはり自分をチェックしていくようなものとして監査役任務なり権限なりというものを確定していく必要があるということを言ったんですけれども、外からさらにそれを正確にするために監査人というような制度を設けるとすれば、やはりいま言ったような道理に従ってやっていける、そういうふうなものを真剣に検討してみる必要があるんじゃないかと思うんですけれども、その点どうですか。これ大臣どう考えますか、その点。
  120. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 御指摘の点は全くむずかしい問題であろうと思います。確かに考え方の理想としては、そういう点に御着眼なさるのはごもっともだと思いますが、ただ会計監査人に国が報酬を払うわけにもまいりませんし、企業の健全化のためにも、会計というものにあやまちがあったり、ごまかしがあったりしてはならないんで、そういうことのないように監査人が監査をするわけでございますから、どうもその報酬はやはり別段、取締役なり社長なりありましても、個人からもらうのではありませんので、法人から受け取るわけでございますから、どうもその程度のことは目下のところいたしかたないのではないか。今後しかし社会が発展していけば、あるいは全体として保障制度のような問題とか、いろいろ考え方があるかもしれませんが、目下の段階ではまだそこまでは到達いたしかねるというのが現状ではないかと、かように思っております。
  121. 春日正一

    ○春日正一君 私、中村法務大臣が弁護士としてずいぶん長いことやっておいでになったんで、その弁護士と公認会計士との違いという点、さっき私言いましたけれども、わかっていただけると思ったのですけれども、わかっていただけなくて非常に残念です。  それで、監査役会計監査人について、その権限の強化ということを監査制度の強化のように言われているけれども、いままでお聞きしたように、監査役権限の強化といっても、いまの経済情勢が必要としておる点から見れば、これはきわめて不十分だと思う。これは前のときにも私申しましたし、監査役会計監査人の独立性、身分保障が何ら考慮されていないというふうに私感じるので、今回の若干の監査権限の強化では、ほとんど役に立たないのじゃないかというふうに私は懸念します。結局、今回の監査制度改正によっても、大企業はいままでの状態と何ら変わることなしに、かえって、監査役権限が強化したこと、会計監査人という形で、公認会計士会計監査人としてそれが商法に導入されてきたということを強調することで、大企業に対する国民的ないろいろな批判、そういうもののほこ先をかわすためのこれは道具に使われる、そういうことになりかねないという懸念を私はここで表明しておきたいと思います。  そこで、次の問題ですけれども、これもおそらく今度の商法改正で一番のポイントになるところだと思うのですけれども、例の継続性の原則の問題ですね。企業会計原則でなぜ継続性の原則が一般原則に入るほど重要なものとして扱われておるのか、その意味から聞かせていただきたいと思います。
  122. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 継続性の原則は、とにかく会計的に正しい処理と思われるものがやり方として二つ以上ある場合に、あるときにはA、そして次の期にはB、またAに戻るというようなことになりますと、やはり企業の営業の状況並びに財政の状況を適正に表現できなくなる、特にそれがみだりに行なわれた場合にはやはり弊害が多く生ずるというような観点から、企業会計原則では大きな柱として継続性の原則というものを打ち出しているものと思います。
  123. 春日正一

    ○春日正一君 そこで、現行の企業会計原則では「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。正当な理由によって、会計処理の原則又は手続に重要な変更を加えたときは、これを財務諸表に注記しなければならない。」、こういうふうに書いてあるのですけれども、この場合の「正当な理由」というのはどういうことですか。
  124. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) これは現行の企業会計原則におきましては、公認会計士が適当ないし妥当と考えているもの、それを「正当な理由」ということばで表現しているものと思います。今回これを削除いたしましたのは、前回にもお答え申し上げましたとおり、商法におきまして、一般に「公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」という三十二条が入りまして、そのしんしゃくする事柄の内容に企業会計原則自身がなるわけでございまして、そこで、法律的に強行法規としての商法が、何が正当であり何が正当でないかとなりますと違法性の問題が起きてくるわけでございまして、したがいまして、法律――強行法規としての商法にかかわりのある限りにおいて、このことばは削りましたけれども公認会計士の会計処理上の心持ちと申しますか、妥当性と申しますか、適当性と申しますか、そういう観点からの判断は同じであると考えまして、そういう意味におきまして、従来の討議に、答弁におきましても、「みだりにこれを変更してはならない。」という従来の方針に変わりはないということを重ね重ね申し上げているような次第でございます。
  125. 春日正一

    ○春日正一君 私がお聞きしたのは、そこまでの事情をまああとで聞くつもりですけれども、つまり正当な――現在あるものですよ、現行の。これは「正当な理由によって、会計処理の原則」云々と、こうなっている。そこで、「正当な理由」とは一体何かと、こうお聞きしたわけです。いまあなたは、それは公認会計士が判断して正当な理由のものかどうかということはきめるのだと、こうおっしゃった。そこで、私はもう一歩突っ込んで、それでは公認会計士が、これは正当である、あるいはこれは正当でないという判断をする場合、何が基準になるのですか。
  126. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) みだりでない変更はおそらく正当ないし妥当な理由考えるのではないか、逆に、みだりな変更は正当でなく、妥当ではないということではないかと思います。
  127. 春日正一

    ○春日正一君 同じことを言っているみたいですね。それは、みだりに変更してはならぬと書いてあるから、みだりでなければ正当だと言うんだけれども、これがみだりでないというのはどういう場合にみだりでないのか、その基準を聞いているわけですよ、私は。
  128. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) これは法律規定のように一がいに何が正当な理由の構成要件であるかというような話ではございませんで、やはり各企業の状況、そのとき、そのときの状況及びそれを変えた場合にはその後は新しい会計原則上認められた処理法を続けるというようなことがおそらく正当な理由というふうに観念されるのだと思いますが。
  129. 春日正一

    ○春日正一君 そこらが非常にはっきりしないし、そこからいろいろ災いが私は出てくるということを心配するわけですよ。  そこで、具体的な問題で、これはこの前すでに問題になった問題ですから、あなた方は御存じかと思うのですけれども、去年の六月二十六日の衆議院で、この法律に対する法務、大蔵、商工の連合審査のときに、わが党の荒木議員が新日本製鉄の償却法の変更について質問しております。新日鉄の君津製鉄所では四十五年九月期以前は償却は定額法でやっていた、それが四十五年九月に定率法に変えられた、しかもわずか一カ年余りして四十七年の三月にはまた定額法に切りかえた、こういうふうに変わっているんですね。しかも、その間における新日鉄君津製鉄所の償却を見ますと、四十五年九月期には特別償却ということで百十三億円もこれ償却している。それから四十七年三月期には定率法から定額法にまた戻って、そのときには今度は三十億円というものを特別償却から取りくずして利益に計上して生かしてきているのですね。そこで荒木議員が、この変更の理由が正当かどうかということを質問したのに対して、白鳥証券局企業財務課長が次のように答えております。「君津製鉄所の償却方法を、前に一度定額法から定率法に改めていて、また定額法に変更した、こういう事情があるのではないかというお話でございますが、そういう事実はございます。これは四十五年三月に新日本製鉄として、八幡製鉄、富士製鉄が合併いたしましたが、それまで君津製鉄所については、八幡製鉄では定額法を採用しておりました。ところが合併いたしましたので経理方式を統一するためにここで定率法に変更したわけでございます。これは正当な理由による変更だと存じます。ところが四十七年三月期に君津の第三号高炉が完成いたしましたので、この完成に伴って君津製鉄所の高炉が非常に金がかかっているということで、企業の負担が非常に大きくなるということで定額法に変更したということでございますが、これにつきましては監査報告上限定されております。」、こういうふうに答弁されているのですね。それで、いま読み上げたように、昭和四十五年三月合併によって定額法から定率法へ変更したことについて白鳥課長は正当な理由による変更だと、こう認めておいでになる。そこで、それがなぜ正当なのか、その理由説明してほしいわけです。
  130. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいま先生お読みになりましたとおり、昭和四十五年九月期、これは合併直後の決算期でございますが、合併後の経理方式統一のため、すべての有形固定資産の償却方法を定率法に変更したわけでございます。そこで、この当時の有価証券報告書によりますと、変更した場合はどういう理由かということを書かせることになっておりますが、それには「当期より合併による経理方式の統一のため、有形固定資産のうち君津製鉄所分について減価償却方法を定率法に変更した」というふうに書いてございます。以上がその理由説明でございます。
  131. 春日正一

    ○春日正一君 そこでもう一つ、いま出ました四十七年三月期になって今度は定率法から再び定額法に変更したのに対して、監査報告書に限定意見がついた。その内容はどういうことになっていますか。そうしてまた、それはなぜ限定意見がつけられたのか、この点ひとつ説明してほしいと思います。
  132. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 四十七年三月の場合には、君津の第三号高炉ができまして、これが従来の能力の八割にも相当しまして、かつ、付帯資本投下額も巨額に達すると、したがいまして、その大勢を占めるものに他を合わせるほうが適正ではないかと、そしてまた新設工場における減価償却費の負担配分の適正化をはかるというのも一つの理由になっております。そして最後の、先生の御質問の限定意見ということでございますが、監査証明省令というのがございまして、ここに「次に掲げる事項を示して表明するものとする。」ということがございまして、限定と申しますと、何か悪いといいますか、バッドマークを言っているように聞こえますけれども、これは内容についていささか詳細に意見を表明するということばでございまして、そこに一号表明、二号表明事項、三号表明事項というのがありまして、それぞれの号において意見表明をしなければならないことになっておりまして、そしてこの減価償却と継続性に関係するものは二号において意見表明をするということになっております。さらに財務諸表規則というのがございまして、企業が財務諸表を作成する場合には、「当該会社が採用する会計処理の原則及び手続について、変更が行なわれた場合には、その旨、変更の理由及び当該変更が財務諸表に与えている影響の内容を当該財務諸表に注記しなければならない。」というふうに、二つの省令においてこのようなことが要求されているということでございます。
  133. 春日正一

    ○春日正一君 私は一般論を聞いているんじゃなくて、いま新日鉄の君津工場についての白鳥説明員、この方の答弁と関連して、この問題について、最初の定額から定率へ四十五年に変えたことについて正当な理由による変更だと言っておると、その理由と根拠を示せと、それをあなたに説明してもらいたい。そこで今度は、四十七年三月の定率から定額に変更したのに対しては限定意見がつけられた。そこでその内容はどういうものか、また、それはなぜ限定意見がつけられたのか、正当ではないのかという、そこのところの見解を聞きたいんです。
  134. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) その限定意見は、先ほど参照しましたところについております。そしてそれは、意見としては正当な理由によるものということでございます。
  135. 春日正一

    ○春日正一君 どこについていますか、いま先ほど言ったところについていますというのは。限定意見というのはどこに……。「これにつきましては監査報告上限定されております。」と、こうなっているのですね。
  136. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) それは四十七年三月期の監査報告書の中に、「君津製鉄所の有形固定資産の減価償却方法を変更したほかは前事業年度と同一の基準に従って継続して適用されており」というふうに書いてありまして、そこで、ここでは変更があったぞということは書いてございますが、先ほど申し上げました財務諸表規則による表示の注記には、さっき申し上げましたような理由が書いてあるわけで、したがいまして、限定意見があるということ即正当でないということではありませんで、したがって、限定ということは悪いということではなくて、変わったぞということをディスクローズする話でありまして、特に正当でないということが書いてない限りは、ここではやはり正当な処置というふうに公認会計士監査したという、それが事実でございます。
  137. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、結局、限定はつけられたのだけれども、四十五年の変更も正当、四十七年の変更も正当と、こういうことなんですね。そうすると、結局、具体的な事例でいえば、これは正当だというその理由について別に基準がなくて、公認会計士がそのときの判断でと言われたけれども、この例を見れば、この場合は正当、この場合も正当というその具体的な事実があるわけですから、当然それを正当とする基準というものがあるはずだし、基準がなければたくさんいる公認会計士がそれぞれの主観に従って正当であるか正当でないかというようなことをきめるようになったらそれこそ大きな混乱が起こってくるだろうと、だから基準があるはずだと私は思うのですが、どうなんですか。
  138. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 抽象的、一般的には何が公正な理由だぞというようなものはございません。先ほども申しましたように、やはりケース・バイ・ケースに判断されることでございますし、企業内容開示の基本から申しますと、やはりみだりに変更すると期間比較を困難ならしめるという事情がございますから、そこでみだりにはするなということがはっきりうたわれているわけでありまして、そのほかに、みだりであってもみだりでなくとも、変更したときにはきちんとディスクローズして、それを意見として書きなさいよということをしているわけでございます。
  139. 春日正一

    ○春日正一君 話がだいぶ違う。そうでしょう。あなたが、いままでの委員会でのあれを見ても、正当な理由が云々というのは、今度は削ったと、削ったけれどもみだりにというのが残っておるから、「正当な理由」があるなしという-取っても変わりはないのだというふうに言ってこられた。そうすると、みだりであるかないかということの基準がなければ、どれがみだりであったかないか、判断できょうがない。それはその人によって、これはみだりでないことにしましょうと、これはみだりにしましょうというようなことになったら、これはたくさんある会社のことですから混乱起こりますよ。基準がないっていうはずは私はないと思う。もしそういう基準なしで、いまあなたが言われたように、新日鉄の例で言っても、定額を定率に変えたと、そうして今度はまたぐあいが悪くなったら定率を定額に変えて、いままで積んでおいた積み立て金を取りくずして今度は利益の中に入れてというふうな操作がそれこそみだりですよ、一年か一年半の間にどんどんできるということになれば。そうすれば、いまの企業会計原則というものがあっても、結局大企業のそういう経理の操作といいますか、利益隠しといいますか、そういうことは防ぎ得ないと、そういうふうに感じるんですけれども、どうなんですか、そこは。
  140. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) その点につきましては、今度の修正案の注のところにも、やはり継続性を厳正に適用していかなければならないという趣旨のことがうたってございます。たとえば、「企業が選択した会計処理の原則及び手続を毎期継続して適用しないときは、同一の会計事実について異なる利益額が算出されることになり、財務諸表の期間比較を困難ならしめ、この結果、企業の財務内容に関する利害関係者の判断を誤らしめることになる。したがって、いったん採用した会計処理の原則又は手続について重要な変更が行なわれた場合には一変更が行なわれた旨及びその変更が財務諸表に与えている影響額を当該財務諸表に注記しなければならない。」というふうに書いてございますので、重要性の原則を加味いたしまして、変更があった場合には必ずまるごとディスクローズするということはしっかり守るわけでございます。
  141. 春日正一

    ○春日正一君 じゃ問題、次に進みますがね、企業会計原則修正案で、なぜ「正当な理由」というのをお削りになったのか、その点説明してほしいんですが。
  142. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) これはどちらかと申しますと、商法の問題だと思いますが、結局三十二条で「公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」という斟酌規定が入りまして、それを法務省において公正な会計慣行であるぞとおっしゃれば、この原則がそういった中身になるわけでございまして、そうしてそこで「正当」というようなことばがございますと、正当ならば違法性は阻却する、正当でなければ違法性に該当するというような法律論になりますし、これはむしろ法律論よりは会計原則の会計の妥当性という観点で処置すべき問題でありますので、従来の「正当な理由」云々というのが削られたというふうに聞いております。
  143. 春日正一

    ○春日正一君 いま私聞いていますと、こういうことですか。つまり企業会計やっていく上で、今度の三十二条との関係で、やはりこれから出てくる新しい慣行というようなものが、法務省が認めれば、これは正当なものにどんどんどんどん取り入れられていくようになる。だから「正当な」というようなことばを置いときますと、それがこうやっていく上で、これが正当であるかないかというような違法、適法のような議論が起こるから、それでこれを取り払ったというふうに、私いま聞いておってそう理解したんですが、その理解でいいんですか。
  144. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 法律論からいきますと、結局いま先生がおっしゃったような御理解になる問題だと思います。   〔委員長退席理事佐々木静子君着席〕
  145. 春日正一

    ○春日正一君 ここが一番大事な問題だと思うんですね、正当を取った、新しい慣行をどんどんどんどん幾らでも生かしていくために正当を取ったと、こういうことになるわけですからね。  そこでお聞きしますけれども、……
  146. 田中啓二郎

  147. 春日正一

    ○春日正一君 私、いま質問しているから……。  この商法改正案が成立したときには、三十二条のこの包括規定の導入によって、会計監査人たる公認会計士は、商法上の会計監査人として商法上適法であるかどうかを監査する、同時に証券取引法上の会計監査をやると、この二つのことを同時にやるようになるわけですか。
  148. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 当然、商法監査と証取監査というものを同時にやることになると思います。  それから、先ほど新しい慣行がどんどんできてくれば、それが何でもかんでもオーケーになってしまうというようなお話がございましたが、そういうことではございませんで、継続性の原則に関しましては、新しい慣行ということではなくて、やはりあくまで継続を原則としているわけで、みだりにこれを変更してはならないという、何といいますか制限というか限定はきちっとはまっているわけでございます。
  149. 春日正一

    ○春日正一君 そこで、そういうことになると、「正当な理由」ということばが削除されても、先ほどの白鳥課長が説明したように、「みだりにこれを変更してはならない。」という規定が本文に残っているから実質的には変わらないのだというふうな、いまもそういう御説明ですけれども、ということなら、公認会計士は証券取引法上の監査の場合、この新日鉄のようなときに、やはり限定意見をつけなければならないというふうに思うのですけれども、その点はどうなんですか。それから商法上の監査としてはそれで適法なのか違法なのか、その点はどうなんですか。
  150. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいまの御質問に関しましては、先ほどもお答え申し上げましたように、重要な事項についての変更があれば必ずこれを書けということになっておりますし、かつ、限定意見といいますか、会計監査人は意見表明として、先ほど申しました二号にのっとって意見表明をするということは続くわけでございまして、その点では、冒頭におっしゃった前白鳥課長の申し上げたことはそのまま今後も引き続くというふうに御了解いただいてけっこうかと思います。
  151. 春日正一

    ○春日正一君 もう一つ。そうすると、そういうやり方が商法上の監査として適法なのかどうかということですね。
  152. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) いまの御質問は、商法監査上適法かどうかという御質問でございますから、私は適当でないと思います。   〔理事佐々木静子君退席、委員長着席〕
  153. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 商法の上では特に継続性の原則というようなものはうたっておりません。商法上の監査につきましては今度の改正案商法二百八十一条ノ三という規定がありまして、そこに監査報告書にはこういった事項を記載せよというようなことが規定してあります。そうして、それが特例法に準用になっております。そういった法律定められた事項を記載するということが要件でございまして、継続性の原則というのは直接には出てまいりません。で、問題は先ほど最初にちょっとお話のありました三十二条でございますが、その二項の「公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」という規定、この規定との関係でどうかということになってくるわけでありますが、まあ「公正ナル会計慣行」という中にその継続性の原則がどの程度入ってくるのかということは、これはこの規定の解釈上いろいろな考え方があり得るわけでありまして、ことに、その「斟酌スベシ」というのは、それに従えということまでいっているわけでもございません。したがって、経理のやり方といたしまして継続性の原則を用いなかったことが直ちに商法違反の問題を生ずるかということになりますと、その点はこの規定の上から申しますとはっきりしないということになろうかと思います。ただ、その継続性の原則というものが現在の会計慣行の上で非常に尊重されるべきものであると、そしてこれをみだりに変更してはならないということが公正なる会計慣行になっているといたしますと、当然それをしんしゃくして決算書類を作成しなければならないと、こういうことになろうと思います。その辺、非常に間接的でございますので、商法上どういう場合に違法か適法かということは、これは会計の専門家に判断していただくほかないというふうに考えております。
  154. 春日正一

    ○春日正一君 そこのとこ私ひとつ、私も会計の専門家じゃない、私、労働者ですからね、電気のコイル巻きならうまいんですけれども――だから私も研究してみますから、ここはちょっと保留さしておいてもらいます。どうも政府の役人が専門家でありませんからって、この法律の審査で逃げられてしまったんでは、これちょっとぐあいが悪いんですよ。そこで、実際にどうなっているかということを、この点私あとでまた聞きますけども、こういうことなんですね。経団連のパンフレットのナンバー一〇五というのがあるんですね、これですけども。では、企業会計審議会の第一部会長の番場さん、この方が「企業会計原則修正案について」というこの文章を書いているんですけれども、この企業会計原則修正案の一般原則の五、継続性の原則の中で、「正当な理由によって、」以下を削除した理由についてこういうふうに言っています。「こういう条文は判断を異にする可能性が強い。それを商法もまた同じように正当か正当でないかということに引っかけていくというのでは、会社が困ることになりはしないかと心配しました。」と、「変更がいちいち適法か違法かというふうなことを常に問題とするのでは、実務上やり切れないわけです。」「商法としては、そういうことを問題にしないでいきたいという主張が、商法学者あるいは法務当局の間で強く主張されたわけであります。」中略「結局違法、適法という問題が起こらないようにいたしました。この考え方が、継続性の原則に関する企業会計原則の第二項の文章を削除するに至った原因、理由であります。」、こういうふうに言っているのですね。そして「注記があれば継続性の原則については、今後、限定意見の対象にしないということになったのです。」と、こういうふうに言っているのですけれども、これはこのとおりですか。
  155. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) その中で、企業が困るとかいうようなことではございませんで、先ほども申し上げましたように、商法との関係で適法、違法の問題で無用な混乱を――無用というか、非常な混乱を起こすのではないかという配慮があったという点はそのとおりだと考えますが、企業の都合とかということでは全然ございません。
  156. 春日正一

    ○春日正一君 結局この番場氏の書いたものの中には、企業が困るとかなんとかというようなことばがあるけれども、まあそういう意味ではないけれども、結局この「正当な理由」ということがあることによって正当か正当でないかというような議論になるし、一々この会計のやり方はさっきの新日鉄の場合みたいに変更する場合に適法か違法かというようなことを言っておったんでは、実際上の問題としてですよ、これはまあ企業が困るという、まあ企業の側から見ればそういうことでしょう。ということで、そのために「正当な理由によって、」というものを取ってしまって、そしてまあ今後はそういう変更も限定意見の対象にしないというふうになったんでありますと言っている。これは限定意見の対象にならぬわけですね。どうですか。
  157. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) これは重要な事項に関して継続性の変更がありますれば原則として意見表明が付されることは変わりないと思います。したがいまして、このような継続性の変更で公正な理由が抜けたから限定意見はそこで抜けてしまうということではございません。
  158. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、ここの番場氏の言っている最後のところ、「今後、限定意見の対象にしないということになったのです。」と、これはうそですか。
  159. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) それはその限定意見というのを、要するに悪さといいますか、みだりに変更した場合というふうにとられるのか、あるいは、たとえみだりであってもみだりでなくても、重要事項について変更をすれば意見表明をするということを限定を言ったのか、その点さだかでございませんけれども、先ほどから申し上げましておりますとおり、とにかく重要な事項について継続性の変更がありますれば意見は表明されるものと思います。
  160. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、結局いろいろ条件はつけたんですけれども、ここにこの人がはっきり言っているように、「注記があれば継続性の原則については、今後、限定意見の対象にしない」というようなことではないとあなたはおっしゃるんですね。
  161. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) そうでございます。そしてその御意見は、要するに経団連という場において番場先生ですか、おっしゃったことですから、個人の御意見で、私ども考えておりますのはただいまお答え申し上げたようなことでございます。
  162. 春日正一

    ○春日正一君 そういうことですとこれは大問題だと思うのですよ。経団連というのが名もない団体ならそれはどうということはないけれども、そこで何を言おうと大局的な影響はないけれども、御承知のように大企業の総元締めで、日本の経済を全体として支配しているような、そういう会社が集まっておる、その経団連がこういうパンフレットを出して、「経団連事務局編」という、そうしていま言ったような意見を公表し、当然経団連傘下、あるいは直接入ってなくても下のほうの企業まで、これは商法改正がなったらこうなるんだというものの一つの指導的な意見として、下へずうっと通っていっているわけですね。そうすると、あなたがここで、いや経団連は私的な団体なんだと、役所の意見としてはこうなんだと言われても、あなたの声のほうが私は弱いと思う。やはり経団連がこのパンフレットを出して、こういうもので講習会やり何やり、改正になればこうなるんだと、だから違法も適法もそういうことはもう商法上はなくなったんだというようなことでこれをやっていけば、そういうものが続出してくる、そういうおそれは非常に大きいと思うのですね。だから明らかに、さっきから読んだ中でもありますけれども、「正当な理由」というのを削ったほんとうのねらいというのは、私がさっきから言っているように、適法、違法というような議論が起こらぬようにしてしまって、それで新たにできてくる慣行を次から次に入れていって、いわゆる経理の継続性というのを変更していく正当性をつくり出すための改正だろうというふうに思うんですけれども、もしそうでないというなら、やはり新日鉄の例のように会計処理の変更なんかがやられたんじゃまずいということで、商法上も証券取引法上も、そういうことでかってにやっていいというようなふうな、こういう指導をさっきり打ち消すだけの役所としての手だてを講じてもらわなければならないんじゃないか、その点どうですか。
  163. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいま先生の御指摘のパンフレットでございますが、これは経団連で番場氏が講演なさったという講演記録でございまして、経団連の名において傘下に経団連はこういう解釈であるぞということを伝えているものではないと思います。しかし、衆議院並びに参議院におきましてこの点いろいろ御意見を承りましたし、企業会計原則修正案も商法が通りますれば一応レビューをしなければなりませんので、そこに書いてあるようなこと、またその中には、負債性引き当て金なども従来だめだだめだといっているものが何でもいいよいいよになるんですというようなとんでもないことも書いてございますので、修正案をレビューする暁には、委員の先生方にいま一度、みだりに意見をあやまって伝えることのないようにということを含めましてお話をし合いたいと、かように考えております。
  164. 春日正一

    ○春日正一君 これは経団連が編集したというふうに言いますけれどもね、こういうパンフレットでもって「経団連事務局編」と、「一九七〇・三社団法人経済団体連合会」と、こういうことで出しているんですね。だから、これは経団連が当然、加盟企業というか、それから下の企業に対してこの問題について解明し広めていく、そういう立場からできたもんですわ。広めて困ることなら、経団連自分で金出してこんなものつくりゃせぬわけですから。そうすると、この中に出ておる意見は、たとえば委員の番場氏だとかあるいはその他の人たちが講演をした記録にしろ、経団連はそれを肯定的に受け取ってこれをつくって流したというふうに見るのが至当でしょう。だから、これはね、単なる委員個人が適当に講義をしたというだけのもんじゃないと思うんですよ。経団連の名前で編集されて外へ売り出されて下へ流されているということになれば、経団連がやはりこれを肯定的に受け取ってやっておるということなんですから、これを単に、法律が通ってから洗い直すときに委員に先生に注意するなんということじゃ済まぬと思う。公然と、経団連パンフレットにこう書いてあるということは間違いだということを天下に発表もしてもらわなきゃならぬし、同時に、役所として通達みたいな形で、あれは間違いだということを全部の関係方面に知らせてもらうというくらいのことはしてもらわなければこれは済まぬ問題じゃないかと思うんですがね。
  165. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいまの点でございますが、修正案は確定したものではございませんし、いずれレビューをするわけでございますが、ただここで申し上げたいことは、商法改正の暁には私ども監査証明省令等において今後の監査報告の記載内容をどう定めていくかということをきめていかなければなりませんが、私どもとしては、従来の運用をゆるめるつもりはないということははっきり申し上げられると思います。したがいまして、その講演の速記録に対するお答えは、われわれがどのような省令を出すかということではっきりすると思います。
  166. 春日正一

    ○春日正一君 いやね、どうもはっきりしないんですけれども、いまの話聞いておっても、たとえば企業会計原則修正案というようなものはまだ確定したもんじゃないというふうに言われるんですね。ところが、衆議院での六月五日の正森議員の質問に対して、「公正ナル会計慣行ヲ斟酌」するというこの三十二条の二項ですか、これが、この改正案が通れば企業会計原則修正案が企業会計原則として確定すると、白鳥説明員はそういう答弁をしておいでになるのですね。そうすると、いまあなたは、まだ企業会計原則修正案というものはきまったもんじゃないから洗い直すんだというようなことを言われるけれども、そんないいかげんなものを出してこられて、法律を審議してくれ通してくれというようなことができるのか。ここではっきり、この法律が通って三十二条の二項がきまれば自動的にこの修正案が企業会計原則として確定しますという答弁をしているんです。
  167. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 前白鳥説明員が、修正案は四十四年に出ておりますが、これは所要の手続を経て企業会計原則として確定するという予定になっているというような答弁をしたと思いますが、そこで商法との関係におきましては、三十二条が確定すれば、その法律論という観点からはさっきのように「正直な理由」というのはなかなか起きがたいとは思いますけれども、その他の点で大修正というのはまた行なわれるということはないと思いますが、しかし衆参両院での御審議の過程もありますから、ゼネラルなレビューというものはやはりすべきものと考えております。それが前説明員の「所要の手続」ということにも該当するのではないかと考えます。
  168. 春日正一

    ○春日正一君 そうするとあれですかね、私らがここで一生懸命議論していることを取り入れて修正するというような意味で言われておるのですか。私らは大体政府というものは、出してきたものを幾ら言っても聞かずに押し通すものだとつい思いがちなものですから、だからこういうふうな答弁を受けておりますと、当然議論する場合、いま出されておるこの企業会計原則修正案ですか、これが生きてきた場合にどうなるのかということで質問もするし、意見も述べるということになっておるわけですね。ところが、これは洗い直すものでありますからという形で逃げられたのでは、議論の根拠がぐらついちゃってどうにもならない。それ以上審議進められません。そのところ委員長どうですか。
  169. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 申し上げましたとおり、洗い直すということではございませんで、商法が通れば一応目を通し直すということで一応レビューをするということかと思いますが、少なくとも公認会計士商法監査をする場合の商法と従来の企業会計原則とのドッキングは、この修正案においてはほぼ確定しているものと、やはりそのようにお考えいただいてけっこうかと思いますが、ただ先ほどの番場先生の意見その他誤解を生ずるところがあれば、そういう点は明瞭にし直さなきゃいかぬという点の見直しということでございます。
  170. 春日正一

    ○春日正一君 じゃ次へ続けて入りますけれども、先ほどもちょっと話出ました引き当て金の問題ですね。いま企業会計では期間損益計算のかなめとも言うべき継続性の原則の緩和、企業の恣意的な会計操作を許す継続性原則の後退について、私いまいろいろ質問したんですけれども、もう一つ重要なのは引き当て金の問題だと思います。これと深いかかわりあるんですけれども、特に利益留保性引き当て金がいかに利益操作に使われているかということは、昭和四十七年の証券局年報で利益剰余金性引き当て金に関する限定意見、これが昭和四十六年三月現在で百二十三件で全体の限定意見の八〇・四%を占めているというふうにいわれことを見ても、これは明らかだと思います。  特に、つい最近の問題として見ると、新聞にいろいろな記事がたくさん出ております。たとえば読売新聞の二月十三日、これを見ますと、見出しに「「増収減益」決算ふえる」と書いている。「内部留保を厚く」「三月期、大和証券見通し――社会的批判に配慮」というようなふうで、三月期の決算では、収入はうんとふえたけれども、決算の面では減益という形の決算がふえるだろうという見通しをずっと書いております。そうして特に具体的なケースとして「特別損失金を大幅積み増し」といって、東亜燃料の場合です。「東亜燃料工業は十二日の決算取締役会で、前十二月期(昨年七-十二月)決算案を決めたが、これによると、売上高(対前期比二七・八%増)、経常利益(同三四・八%増)とも大幅に伸びている反面、税引き後の当期利益は対前期比二八・六%減の増収減益となっている。」というようにして、この内容を――売り上げ高は千百四十七億二千五百万円、同社として初めて一千億円を記録、経常利益も七十三億七百万円となって、前期より大幅に伸びている。しかし、税引き後の当期利益は三十一億六千四百万円にとどまり、対前期比二八・六%減、つまり前期よりも税引き後の利益は減っておるということで、配当は二〇%据え置きというふうにいわれているんですね。そうしてその中身を見ますと、このような増収減益となったのは、前期六百万円しか計上していなかった価格変動準備金を三億六千九百万円にふやしたのをはじめ、前期ゼロ計上の貸し倒れ引き当て金を二億四千万円、同じくゼロの特別償却準備金を千二百万円それぞれ積み増し、また海外投資損失準備金三億円、前期は三千万円、公害防止準備金三億二千九百万円、同じく二億五千四百万円を大幅に計上するなど内部留保につとめ、その一方十二月期に発生した二十一億四千七百万円の為替差損は営業外損益に含めるなど、見かけ上、利益を低く押えることにしたためである、こういうふうに書いてあります。  だから、こういう形で利益を隠すことが、この大和証券の見通しによると、各業界についてこうなるだろうというようなものが出ておりますけれども、やられておるし、それからさらに松下電器の九月期の決算を見ると、価格変動準備金六十六億九千七百万円、これが会計監査において利益剰余金であるとみなされて、除外事項になっている。これは三月期においては税法限度額の二四一%、六月期に至っては二五一%というように手厚く引き当てておる。退職給与引き当て金は、三月期は期末要支給額の一〇〇%、さらに翌期の昇給による増額の五〇%を加算して、九月期では要支給額の一〇〇%を引き当てている。そうして、それは九月期では引き当て額五十億六千百万円増、こういうようなふうにですね、まあ一つ二つ拾っただけでも引き当て金を利用して百億円にのぼる大幅な利益隠しを行なっているということなんですね。で、松下の九月期の純利益は二百三十七億一千万円、引き当て金合計では一千億五千九百万円、こういうようなことになっている。現状でもこういう状態になるわけですけれども企業会計原則の修正案ではこれがさらに拡大されていく、そういうことになるんではないかというふうに思われる節があるわけですね。  そこで、まず企業会計原則修正案の負債性引き当て金について質問しますけれども、現行の企業会計原則と比較すると、負債性引き当て金の例示の中で修繕引き当て金と特別修繕引き当て金が削除されています。この例示から削除されているのは一体どういうわけですか。それから、これは続けて聞きますけれども、今後修繕引き当て金、特別修繕引き当て金は負債性引き当て金として認めるのか認めないのか。企業会計審議会第一部会長の番場氏は、「この特別修繕引当金は、われわれ会計学の観念では、負債性引当金の中に当然入れてしかるべきものであり、また経理の実行面においては、その修繕引当金をぜひともたてて決算をすべきものであるというふうに考えています。例示から引っ込めましたのは、修繕引当金は負債性引当金の方に入らない、という商法筋の主張に歩み寄ったためであります。」「けれども、実際面においては修繕引当金は、負債性引当金として計上するのだということです。」というふうに言っているんですが、先ほどのこのパンフレットで。そういう了解があるのかどうか。以上三点についてお答え願いたいんですが。
  171. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいま御指摘の東亜燃料の件は十二月決算でございまして、おそらく新聞等に出ましたのは一月末一応取締役会に報告したものを取引所の兜倶楽部等で発表したものかと思いますが、営業報告書が株主総会で確定いたしますのは二月末、それから私どものほうに有価証券報告書として公認会計士監査意見を添えて提出されてまいりますのが三月末でございますので、その内容につきましてはただいま確認するすべもございませんので差し控えさしていただきますが、当然のことながら、公認会計士がこれに監査いたします場合に、意見をつけるものがあれば意見をつけるし、適正に処理されていれば意見をつけないということになると思いますが、このような時代の動きでございますから公認会計士としては特に現在以上に厳正な態度をもってこれが監査に臨むということを私どもは期待している次第でございます。  次に修繕引き当て金でございますが、負債性引き当て金が法律的に期限づきの債務ではないという意味におきましては確定した負債ではないわけでありますが、しかし必ずしも確定した負債を負債性引き当て金の要件としておりませんので、例示からは除きましたが、しかし私どもとしてはそれが負債性引き当て金の中に入り得るものではないかと考えております。
  172. 春日正一

    ○春日正一君 それからもう一つの点ですね、番場氏が「この特別修繕引当金は、われわれ会計学の観念では、負債性引当金の中に当然入れてしかるべきものであり、また経理の実行面においては、その修繕引当金をぜひともたてて決算をすべきものであるというふうに考えています。例示から引っ込めましたのは、修繕引当金は負債性引当金の方に入らない、という商法筋の主張に歩み寄ったためであります。」「けれども、実際面においては修繕引当金は、負債性引当金として計上するのだということです。」というふうに言っているわけですけれども、確かにいまあなたの答弁では必ずその年度に出さなきゃならぬというきまったもんじゃないという意味でこの負債性引き当て金という例示を削ったんだけれども、しかし負債性引き当て金としてこれは計上されるんだという意味と、この番場氏の言っていることと同じ意味なんですというふうに受け取れるんですけれども、大体そういう了解でこれはできているということですか。
  173. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) この点は会計学者、商法学者かなり意見の相違がございまして、会計学者の中には負債性引き当て金に入ってしかるべきではないかという番場先生のような意見が多いようでございます。ただ、会計的にはそうでございましょうが、この間修正案の例示として出しましたときにこれを除いておりますのは、やはり完全にその点意見の一致を見ないで未調整として残っているということでございまして、先ほど私あるいはこれは負債性引き当て金に入るべきものだともし申したといたしますれば、その点は訂正させていただきます。
  174. 春日正一

    ○春日正一君 はっきりしないんですがね。まあとにかく負債性引き当て金として計上はされるんですね、例示は取ったけれども。例示は、現行の企業会計原則第三貸借対照表原則四の(二)のA、この中で納税引き当て金とか修繕引き当て金等、こうなっている。同じくB、退職給与引き当て金、特別修繕引き当て金等となっている。これが修正案では、この修繕引き当て金と特別修繕引き当て金は削除されて、製品保証引き当て金とか売り上げ割り戻し引き当て金云々というのがずっと出ていますね。だから、なぜ削除したのかということに対するあなたの御答弁、そういうものの中で必ずその年度内に修繕があって払わなければならぬというようなものじゃないから、厳密には負債性引き当て金ということにはならぬけれども、しかし削ったけれども、実際には計上されるだろうというふうに私聞いたんですが、これ聞き違いかどうか。
  175. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 例示しておりますものは負債そのものという性格でございますが、御指摘の修繕引き当て金につきましては、先ほども申し上げましたように、これは会計的には負債性引き当て金であるという意見が多いのに対しまして、やはり今回は商法と会計のいわばドッキングになりますもので、商法の観点からまだ疑義があったようなことで確定しなかった、したがって未調整に終わっているというのが実情でございます。
  176. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、そういう点ではまだ問題を残しているということですね。  それから次に、損失性引き当て金、これはどのように処理されるのか、つまり特定引き当て金であるのか、それとも負債性引き当て金になるのか、それはどういうことです。
  177. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 負債性引き当て金につきましては、修正案の注におきまして、どのようなものかということがはっきり書いてあるわけでございますが、特定引き当て金の系統は商法の二百八十七条ノ二の問題でございまして、これはまさに商法の観点からどこまでをこれでお読みになるのかという点、これは私どもというよりむしろ商法をなにしていらっしゃる法務省のほうのお考えだと存じます。
  178. 春日正一

    ○春日正一君 じゃひとつ法務省のほうから……。つまり損失性引き当て金というものがどういうように処理されるものか、特定引き当て金に当たるのか、負債性引き当て金になるのか、そこらの辺を説明していただきたい。
  179. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 商法は引き当て金につきまして二百八十七条ノ二に規定しておりまして、そこにいう引き当て金というのは、特定の支出または損出に備えるために、いわば見越しの費用または損失として貸借対照表の負債の部に計上されるものであります。ところで、お尋ねの損失性引き当て金ということばを、私どういうふうに理解していいのかよくわからないのでありますが、この商法二百八十七条ノ二の損失に備えるための費用として計上するという性質のものであれば、まさにこの商法の引き当て金、特定引き当て金に当たるわけでございます。すでに損失が生じておる、それに対してというものであれば、あるいは別の考え方があるのかどうか、まあその辺よくわかりませんが、要するに、損失に備えるためにその引き当てとして計上するという性質のものであれば、まさにこの特定引き当て金に該当するというふうに考えます。
  180. 春日正一

    ○春日正一君 どうも私のほうも聞いておってよくわからぬですがね。  それで、四十五年度版の証券局の年報では、「商法企業会計原則との調整」、これの項で、次のように書かれてます。負債性引き当て金の項の中で、損失性引き当て金について、「商法第二百八十七条ノ二の引当金の規定の整備と関連して、債務に該当しない負債性引当金の計上を強制するよう商法改正を要望することも検計されたが、」と、「債務に該当しない負債性引当金の計上を強制するよう商法改正を要望することも検討されたが、そのような引当金の数も少ないことから商法改正の実現可能性は見込まれなかった。このような引当金の取扱いについては、商法上は計上が強制されない商法第二百八十七条ノ二の引当金であるが、これが計上された場合の表示上の取扱いは、負債性引当金として取り扱うという解釈で了解されている。」というようになっているんですね。ここで書かれておる「債務に該当しない負債性引当金」というのは一体どういうものなのか。このような引き当て金の取り扱いについては、負債性引き当て金として取り扱うという解釈で了解されたと書かれているけれども、だれが了解したのか、この点聞かしてほしいと思います。
  181. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいまのは証券局年報の何の記載の個所でございましょうか。
  182. 春日正一

    ○春日正一君 だから四十五年度版の証券局年報「商法企業会計原則との調整」という項の中の負債性引き当て金という項の、またその中の損失性引き当て金についてというところですね。
  183. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) その本をただいま手元に持っておりませんので、後日調べて御返事さしていただきます。
  184. 春日正一

    ○春日正一君 じゃ、この点はあとに残しますか。これ一番大事なところで、ここ抜けると先へどうも質問が進めにくいんですがね。企業会計審議会のメンバーである渋谷健一という人は、「この負債性引当金については、」「将来の費用のほかに損失を含めて引当ててもよろしいという新しい解釈が決定したのでございます。」、こう言っているんですね。さっきの経団連のパンフレットの六ページですわ。また同じく企業会計審議会のメンバーの居林さん、この方は、「今回の修正案では、負債性引当金に損失性引当金を含む旨の諒解がなされた。損失性引当金としては、出血受注引当金、特許損害賠償引当金、」これは「(一審敗訴後の)」と注が入っていますね。それから「資産除却損引当金、原木単価調整引当金、価格変動準備金(現実に価格下落が生じている分の)、鉱業賠償引当金等々が考えられる。」というふうに言っております。だから一体この企業会計審議会というところでの了解というのは、どういう意見とどういう意見が対立しておって、結局、負債性引き当て金の中に損失性引き当て金も含むということになったのか、その経過と内容を聞かしてほしいんですわ。どうも大事な企業会計原則をきめるこの審議会の人たちが、経団連、先ほどあなたが否定されたようなことをいろいろ言われているんですね。だから、どういういきさつでこういうことになったのか、これ国民の前にはっきりさせる必要あると思うんですよ。
  185. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 当時のこと、私聞いた限りにおきましては、いま渋谷氏がおっしゃったような負債性引き当て金の概念を拡大するというような了解は、少なくとも公の場においてなされていないようでございます。やはり公害引き当て金とか出血受注引き当て金などのように負債性引き当て金に該当しないと考えられるもので、しかし商法二百八十七条ノ二に該当するいわゆる特定引き当て金でありますれば、これは特定引き当て金として貸借対照表の負債の部に特掲するという処理になると思います。
  186. 春日正一

    ○春日正一君 どうして了解された、そういうことはないというふうに言われるんですがね、この先ほどのパンフレットの中の、番場氏の「企業会計原則修正案の解説」というところの中では、この点非常に詳しく書いているんですよ。これ全部読むとたいへんですから、私、要約したのを読んでみますと、経団連は負債性引き当て金と特定引き当て金とを明確に区別すること、また損益計算書、第四区分未処分損益の部を設けることに反対し、いままでどおり特別損益の部で処理することを主張した。公認会計士協会はいままでと同じで、両方を明確に区別しない場合はどうしても限定意見の問題が出てくるし、これを押しつけてしまった場合、監査のよりどころとしてこれでよいかと問題になる。だから貸借対照表でも区別すると同時に、損益計算書においても第四区分を設けて区分を異にしてくれなければ修正案に全面的に反対すると迫られた。そこで渋谷、居林氏という方にお願いして、何とかがまんしてもらい、公認会計士協会の主張をいれた。そのかわり経団連のほうに対しては負債性引き当て金を拡大解釈しましょうという話を取りつけた。こう言って、これはまあ私、要約ですから、そうしてこういうふうに、これはそのままコピーしたものですけれども、「まともな費用というよりも、損失的なものの引当金計上ということもなるべく認めるようにしようという了解があったわけです。具体的にどんなものをすくいあげるか、この点は各会社公認会計士がタッチするわけです。公認会計士の方で具体的な問題をとり上げまして、公認会計士協会において会社の方にご都合のよいような線で結論が出るように検討をしてもらう。だから、具体的な引当金について、これはまともな引当金に入るか、あるいは負債性以外の引当金か、この点の具体的な決定というものは今後に残されているというふうにご了解いただいて結構です。」と、そうして経団連はいままでどおりを主張、公認会計士が何としても明確に分けてくれと主張して、結局、公認会計士の主張を取り入れたかわりに、公認会計士協会も合意の上で損失性引き当て金も負債性引き当て金に取り入れようと審議会の中で取引が行なわれ、その結果として出てきた問題だというふうなことをこのパンフレットの中で詳しく述べておるわけですわ。  そうすると、こういうことになると企業会計原則修正案の権威というものは、先ほど来お聞きしてもかなり動揺するんですけれども、全く信用ができない、裏に何があるかわからぬと言われてもしようがないようなものになってくると思うんですね。企業会計原則というものは、一般に公正妥当と認められる会計処理を要約したものというふうにいわれているけれども、財界の意向に沿う恣意的な会計基準と言われてもこれじゃしようがないと思うんですわ。そういう妥協だの了解だのというものは、国民のわからぬところにあって、法律の文句とは違ったものが含みとして盛り込まれておるというようなことになったら、これはもう全く信用できないと言われてもしようがないと思うんですね。こういう問題について大臣は一体どう考えて、どう処理されようと思いますか。
  187. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 現在そういうこまかいことよく私どもはわかりませんが、いずれにいたしましてもこの商法改正が成立いたしました暁には、企業会計原則について大蔵当局とも十分に相談をしてなおよく検討して遺憾なきように期してまいりたい、かように思っております。
  188. 春日正一

    ○春日正一君 どうも私その答弁にはさっきから不満なんです。つまり企業会計原則修正案というものがあって、この商法改正案が成立すればこれが認知されるということになって出てきておるのに、問題突っ込んでいくと、いや成立してしまってからあとで検討いたしますというようなことになると、これ審議の土台がぐらついて、私はこんなになっちゃうんですわ。だから審議の進めようもないとさっきから言っているのです。やはりお出しになって通そうというのなら、確固たる確信を持って、こういうものだと、それはこうだと、はっきりお言いになったらよろしいし、特に先ほどのような審議会の中での了解みたいな変なものは、これは基本の法律ですから、そういうぐあいにはっきり疑いがあるなら国民の前に明らかにしていささかの疑義も残さぬようにしなければならない。ところが、そういうものが、先ほど言った経団連という権威のある団体が出しているパンフレットの中で、しかも企業会計原則の審議会の委員がこもごもそれを言っておる。これを処理しなければ審議進まないじゃないですか。そういうことなんですね。でも私はその点は、だからさっきも言いましたようにもっとあとに保留しておきますけれども企業会計原則修正案の注十四、経団連パンフの一一五ページ、これでは、「負債性引当金以外の引当金を計上することが法令によって認められているときは、当該引当金の繰入額又は取崩額は未処分損益計算の区分に記載する。なお、これらの引当金の残高については、貸借対照表の負債の部に特定引当金の部を設けて記載する。」というふうに書かれております。そうしますと、商法二百八十七条ノ二の特定引き当て金というものは、負債性引き当て金以外の引き当て金になったわけですから、従来よりも広義に解釈できるようになったというふうに考えていいのか、また従来より引き当て金を手厚く計上できるようになったというふうに考えていいのか。その辺はどうなんですか。
  189. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 商法の引き当て金というのは普通、特定引き当て金という名前で呼ばれておりますが、この規定は今回も改正いたしておりません。したがって、その内容は特に変更されるということはないわけでございます。  なお、この引き当て金というのは商法が特に二百八十七条ノ二でもって負債の部に計上することができることを規定しておるわけでありまして、まあおっしゃるように負債そのものである場合にはこれは引き当て金にならないわけであります。負債以外のものであって、しかも「特定ノ支出又ハ損失ニ備フル」と、こういう要件が整った場合に初めて負債の部に計上できる、こういうことになるわけでございまして、この範囲につきましてはいろいろ商法学者、会計学者の間で議論があるところでございますけれども、私どもはこの引き当て金というものを商法が認めた趣旨から申しまして、これは相当厳密に解釈すべきものであるというふうに考えております。
  190. 春日正一

    ○春日正一君 その点、従来は公認会計士が現行の企業会計原則に基づいて、先ほど限定意見の内容について質問したように、利益性の引き当て金であるといって限定意見をつけてきたのですけれども改正後は、これらの引き当て金を損益計算書では夫処分損益の部というところに、そうして貸借対照表では引き当て金の部に計上されておれば、公認会計士の限定意見はつけられることはなくなるのかどうか、つまり、それで適法かどうかということですね。
  191. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 申し上げるまでもないことでございますが、商法要件に合致しておるものであればこれはよろしいけれども、合致していないものを引き当て金として計上した場合には、限定意見と申しますか商法監査においてはその点が正しくないものとして指摘されることになる、このように考えます。
  192. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、私のお聞きした損益計算書では未処分損益の部に、それから貸借対照表では引き当て金の部に計上されておれば公認会計士の限定意見は付されることにならない、あるいはそれで適法なんだというふうに一がいに言ってしまえないということですか。それとも適法なんだと、限定意見はつかないというんですか。そこのところ、どうなんですか、どうもはっきりしないんだ。
  193. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) この商法は、貸借対照表と、それから目的外使用の場合の理由を損益計算書に記載せよということだけを規定しておるわけでございまして、その点だけが商法に適合するかどうかの判断の対象になるわけでございます。  なお、株式会社の貸借対照表あるいは損益計算書の記載の様式等につきましては、別に法務省令で定めるという規定がございまして、その規定で様式などはきめることになります。損益計算書のどこの部に記載するかというような点につきましては、これはその省令の中で掲げることになるわけでございます。
  194. 春日正一

    ○春日正一君 どうもわからぬな、はっきり。そうすると、これからそういうもののワクというんですか、つまり利益性の引き当て金であるということで、先ほどあなたもお聞きのように新日鉄の場合、定率法に変えて非常に多くのあれを積み上げて、今度はまた定額法に変えて、積み立てたのを取りくずしてきたというのについて限定意見がついたというような、そういうことをやってきたんだけれども、しかし、改正されてからそういうものは同じようにこの限定意見をつけられ、あるいはそういうことをやってはいけないんだというような形のものになるかならぬかということは、この商法改正ができてから省令でもって、どういうもの、どういうものってきめて、それから判断の基準ができてくると、こういうことになるわけですか。
  195. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 引き当て金になるかならないかというような問題は、これは商法自体の解釈できまってくる問題でありますから、省令の関知するところではございません。
  196. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、先ほど私が聞いたものに対して、いま言ったような、現状では、先ほどの新日鉄の場合みたいに限定意見をつけられるけれども改正されたあとでは、この利益性の引き当て金というものでも損益計算書では未処分損益の部、貸借対照表では引き当て金の部というところにきちっと書いてあればそれで適法だということになるというのかどうか、つまり中身の問題ですね、中身と形式の問題ですね、ここへこう書けといっていると。それに膨大な利益を書き込んでおいても、形式が整っておればそれでいいのかということを聞いているわけですわ。
  197. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 膨大な利益を書き込むことがいいか悪いかというのは、これは商法の特定引き当て金の範囲を逸脱していないかどうかと、そういう問題でございますが、その点では実質判断が行なわれるわけです。それから場所の問題、これは省令に指定してありますので、その場所に記載すればそれでよろしいと、こういうことです。
  198. 春日正一

    ○春日正一君 だから、私それを心配するのは、こういうようなことが場所にきちんと書かれておればそれでいいということになれば、先ほど読み上げたような粉飾決算の――逆粉飾決算ですか、こういうものの合法化になっていく。引き当て金を手厚く計上できるというのは、結局余裕のある企業、大企業、こういう荒かせぎやっているところですから、実質的にはこれは監査制度の後退になっていく。だから、そこのところをはっきりさしてほしいということで聞いているわけです。もし、そうでないというなら、昭和四十五年度版の、さっきから言っている証券局年版、「商法企業会計原則との調整」の項の中で、こういうふうになっているんですね。「すなわち、損益計算書上では、これらの引当金の繰入額および取崩額を当期純利益の次に記載して当期未処分損益の増減項目として取り扱うこととし、期間損益に影響することのないようにした。貸借対照表上では、負債の部の中に特に特定引当金の部を設けてこれを記載し、本来の引当金と明瞭に区別せしめることとした。表示の問題として解決を図ったわけであるが、公認会計士監査意見においても、「特定ノ支出又ハ損失ニ備フル為二」という商法要件を満たしている限り、限定意見は付せられない趣旨である。」と、こうはっきり書いてあるんですね。そうすると、私が心配したようなことにこれはなるんじゃないかと、こう思うんですけれども、ここのところはどうなんですか。この考え方、間違っているんですか。
  199. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) それは間違っておりません。そこで特定引き当て金、要するに評価性でも負債性でもない引き当て金を計上することが法令によって認められているときは、いまお読みになったようなその繰り入れなり取りくずしは未処分損益計算の区分に記載するし、その残高については貸借対照表の負債の部に特定引き当て金の部を設けて記載するということになりまして、特定引き当て金として法令によって認められているかどうかということが確かに公認会計士監査意見を付する場合に大きな問題になると思います。それで、おそらく公認会計士といたしましては商法の二百八十七条ノ二の指導原理のようなものをやはり監督官庁から示していただければたいへんありがたいというふうに考えているんじゃないかと憶測いたしますが、それは法務省の御関係のことになるわけでございます。
  200. 春日正一

    ○春日正一君 企業会計審議会委員の、経団連経理懇談会の委員長渋谷健一さんという人は「特定引当金につきましては、これまで逆粉飾に利用されるということで、引当金の中で利益性の引当金の疑いのあるものについては、この限定の対象になることが多く、常に公認会計士との間における紛議のもとになっていたわけでございます。今回の改正におきましては、これを負債性引当金と区別することによりまして、将来の特定の目的のために引当てられる特定引当金については、幅広く計上ができることになりました。」と、幅広く計上ができることになったというふうに、「そこで、この点につきましては、すべて公認会計士は限定をしないということになったわけでございます。」と、こういうふうに言っていますけれども、これは間違いないですか。
  201. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 幅広くということは私はないと思います。と申しますのは、二百八十七条ノ二は今度できた規定じゃございませんし、しかし、要するにこの二百八十七条ノ二というものをどこまで認めるかということが私は重要なポイントではないかと考えております。
  202. 春日正一

    ○春日正一君 いままでの説明でもかなりはっきりしたと思うんですけれども、今回の商法改正というのが、監査の強化というのが実は見せかけで、内容は、企業会計原則を修正して、商法三十二条によって、この修正企業会計原則を商法の中にすべり込ませてくることで企業の利益隠しを商法上拡大する、それを制度化するものだというようなふうに思います。そして、こういう改正のない現在においても、売り惜しみや買い占めや、あるいは便乗値上げによってぼろもうけをした大企業が、その利益隠しにやっきになっておると、先ほどもあれしましたけれども、あなたが役人の立場として、はっきりと会社の決算、それに伴う文書が出なけりゃ意見が言えないと言われましたけれども、しかし実際にはこういう傾向が出ておるし、毎日新聞なんかでも、「危機ぶとり、まざまざと……」という見出しで、「利益、なんと約三倍」「三菱油化配当自粛し据置き」というような形で、三倍ももうけたのを隠しているというようなことが出ておる。だから、そういうことを現在まだ改正されないときでもやっておる、そういう状態。そうして国民が、これに対しては超過利得に対して課税をかけろということが問題になって、いま衆議院でその法律をどうするかということで各党話し合っているというような状況にあるわけですわ。こういうときに、そうされてはたいへんだということで利益隠しを大急ぎでやって、先ほどの東燃とか三菱油化とか、または大和証券の調査の結果として私が紹介したように、結局、大企業がこの利益隠しのために引き当て金を過大に計上したり、減価償却方法の変更などを利用しておるという、この点は大蔵省自身も認めておるところであります。  そこで私どもは、この大企業の超過利得の吸収等に関する臨時措置法案要綱というものを提起していますけれども、その中で、租税回避行為の防止のために、新たな特別償却の損金算入を中止させる、引き当て金、準備金の過大な計上を抑制する、減価償却方法等を規制するというこの三点をあげて、そうして税金のがれのための逆紛飾みたような決算、これをやらせないようにするということをこの要綱案の中で述べておるんですけれども、やはりこの点は世間でも非常に大きな反響を呼んで、やはりそういう税金のがれの利益隠しの穴をふさがなければ、ほんとうに超過利潤を吸収することができないだろうという、この声は非常に高くなっております。国民世論がこういう方向に向かっているときに、これと全く逆行するような、しかも先ほど来、私、しばしば引用したように、経団連のこのパンフレットで言っているように、大企業の意向を受けてそのまま立法化したような法案を提出するということは、もう時期に合わなくなっておると、準備されたその動機はずっと前の話ですけれども、いまの時期になってくれば、こういう商法改正というものは、いまの時期に逆行するものになっているんじゃないかという感じが強いわけですけれども法務省としてはその点どういうふうに考えておいでなのか、その点を聞かしてほしいと思います。
  203. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 何かお話を承っておりますと、引き当て金の範囲が拡大するということになるようでありますし、何かそれを前提として御議論が進んでいるように思うわけでございますが、先ほどから申し上げておりますように、商法二百八十七条ノ二の規定改正しておりません。この「特定ノ支出ハ損失」ということばが変更が加えられない限り、引き当て金の範囲が拡大するというはずはないわけであります。したがいまして、従来より楽になるとか、引き当て金の過大計上が許されるようになるというようなことは、どこの議論か知りませんけれども、それは全くナンセンスな議論と言うほかないわけであります。したがいまして私どもは、先生のお話しになっている前提が、そもそもどこから出てきておるのか、どういう根拠があるのか、全然理解できないわけでありまして、御心配のようなことは全くないと、私はここで断言しても差しつかえないと存じます。
  204. 春日正一

    ○春日正一君 えらい、先生はどこから、何を根拠にと言うけれども、私はさっきから根拠を示して、「企業会計原則修正案の解説」――経団連のパンフレットだとか、しかもこれ、述べている人たちは、企業会計原則の審議会に入っている、当のこれをつくった人たちでしょう。それを認めますか、あなたは。企業会計審議会委員……
  205. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 企業会計審議会というのは商法の解釈をきめるところではございません。引き当て金がどの範囲まで商法に認められるかということは、これは終局的にはこの条文に基づいて裁判所が判断を下すべき問題でございます。したがいまして私は、その判例も示されていないのに、どうしてその変更が行なわれるのか、理解に苦しむわけでございまして、御心配のような点はないものと考えております。
  206. 春日正一

    ○春日正一君 とんでもない。あのね、この本のたとえば、これ全部読むと、これだけですから幾日もかかりますから、私はほんの一部だけ読みますけれども、この三十九ページですね、この経団連の「企業会計原則修正案の解説」という、これの中で、番場嘉一郎さんという人が書いているところですがね、こう言っていますよ、「今度は公認会計士の方からはっぱがかけられたわけです。もう右すれば何とか、左すれば何とかということで進退ここにきわまるというような場面もありまして、この点だけは何とか渋谷さん、居林さんにお願いし、がまんしてくださいといった結果がこんなふうになってきたわけです。そのかわり、まともな引当金というその引当金の解釈を少し拡大解釈をしましょうという、そういう話をとりつけました。」と、こう言ってるんです。「負債性引当金というものを厳密に解釈すると、これもだめ、あれもだめということになるが、修正案では、これもいい、あれもいいというふうに、まともな引当金の概念というものを拡大することによって、そこのところを吸収しましょうということで目をつぶっていただいたのです。そこで、まともな費用というよりも、損失的なものの引当金計上ということもなるべく認めるようにしようという了解があったわけです。」、了解があったわけですと言っているんです。「具体的にどんなものをすくいあげるか、この点は各会社公認会計士がタッチするわけです。公認会計士の方で具体的な問題をとり上げまして、公認会計士協会において会社の方にご都合のよいような線で結論が出るように検討をしてもらう。だから、具体的な引当金について、これはまともな引当金に入るか、あるいは負債性以外の引当金か、この点の具体的な決定というものは今後に残されているというふうに御了解いただいて結構です。」と、はっきりこう言ってるんですね。しかも、これは経団連が出している。当の商法改正の一番の推進者の経団連が関係者の話として編集して、これを天下に流しているわけでしょう。これを商法改正のときに問題にするのを根拠がないとは私は言わせまいと思う。経団連がまさに商法改正の推進者だったんだから、それを根拠がない、何を根拠に言ってるんだと言ったら、これを根拠だと言って私は一から十まで読みましょう、そうおっしゃるなら。
  207. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 私は、引き当て金に関する商法規定は、現在もそれからこの改正案によっても変更されないわけでございまして、その引き当て金がどういうものが認められるかということはこの規定で判断されるべきであると、したがって、この規定改正されない以上は今後においても変わるものではない、まあ判例が変われば別でございますけれども、そういうことを申し上げておるわけでございます。
  208. 春日正一

    ○春日正一君 ちょっと、ここはどうしてもはっきりさしとかぬと、私はあとあと困ると思ってくどく言うんですけれども、この政府の答弁と、さっきの番場氏とか、渋谷氏のような企業会計審議会の委員でしょう、こういう人の言っていることとまるっきり違って、政府のほうはそういうことは知りませんと言っている。ところが、この審議会に入って、この修正原則その他を審議した人たちが、こういう点で話はついている、了解ついていると言って、公然と天下に言って文書にして出してるんですね。それを、いやそれは関係ありません、斉東野人の言ですというふうに言ったんでは、それは世間通りませんよ。あなたはそれで済むかもしれないけれども、食い違ってますよ。そうして先ほども言ったように、いろいろ不明朗なんですね。何といいますか、了解というか、何というか、取引みたいなことがやられておるということになっておると、これは政府が幾ら説明してくれてもどうもはっきりしないし、天下の経団連ともあろうものが、全くでたらめをこうやって公表するとは私は思いませんよ。私ども書いて印刷して出したものについてはその個人なり、個体というものは責任を負わなきゃならぬ、いつもそういう立場で書いたものには対処しておりますよ。だから経団連ともあろうものがこういうものをつくって出しているのに、それを不問に付して、経団連がやったことだから審議からはずして、ここでは政府の言うことだけ聞いてくれと言われても、それでは十分な審議と言えないし、こういうものを見た国民も多数おいでなんだから、やはり不信を持っておる。その意味では政府考え方なり立場をはっきりする意味で、もっと突っ込んでこの問題議論してほしい。だから経団連がでたらめ言っているんなら、経団連に対して厳重に政府として抗議を申し入れて、経団連パンフレット一〇五号に書かれているようなことのこれこれの項は政府の見解と違うというようなふうにして、はっきり訂正させるなり撤回させるなり、そういう措置をとるべきだと思いますよ。その点どうなんですか。それおやりになりますか。
  209. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私どものほうといたしましては、ただいま民事局長申し上げておりますとおりに、いままでの企業会計に関する基本的な法規はいささかも改正しておらないわけでございます。ただ問題は、この企業会計審議会というのは大蔵省の所管でつくっておる審議会のようでございますが、これはまだ法律もできないうちに審議しておっても、それはまだ最終的な結論ではありませんので、私どもといたしましては、この法律改正ができまして大ぜいの公認会計士さんに企業会計監査を担当してもらうことになりますれば、もちろんさらに一そう、従来の方針ややり方と違って、公認会計士の方々が皆さんが一致してその会計監査業務ができるように企業会計原則を確立しなければならないと、かように思っております。したがって、その段階企業会計審議会というものがどういう結論を出すかの問題はありますが、もし御指摘のように御満足がいかない、またわれわれとしても納得がいかないということであれば、政府全体としても企業会計審議会のメンバーをかえるなり、新しいメンバーで、ほんとうに国民全体が納得のできるような企業会計原則というものを打ち立てなければならない、かように考えております。
  210. 春日正一

    ○春日正一君 じゃ、その点は私まだ非常にこう了解できないものがあるのですけれども、次に進みますわ。  商法改正案の三十二条二項「公正ナル会計慣行」、それから法人税法第二十二条四項の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」というものは同じものか、それとも違うものかですね、そこを聞かしてほしいのですが。
  211. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 商法の公正な会計慣行をしんしゃくすべしというのは、おそらく私ども、証券取引法の体系においていままで公正な慣行として確立されてきたものとほぼ一致するのではないかと考えておりますが、法人税法二十二条のそれにつきましては国税庁のほうから御返事があると思います。
  212. 田邊昴

    説明員(田邊昴君) ただいまお話のございました法人税法二十二条の規定は、基本的には企業経理は、やはり一般的な公正妥当と認められる会計処理の基準ということが、具体的にはお話のいま対象になっております企業会計原則その他の基準に従っているかどうかということで判断されると思います。
  213. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、大体ほぼ同じようなものだというふうに理解していいんですか。
  214. 田邊昴

    説明員(田邊昴君) 基本的には同じでございますが、税法は課税所得の計算を導くためにいろいろこまかい規定を設けてございます。したがいまして、税法独自の立場からこれを損金に算入し、これを益金に算入するというようなもろもろの規定が存在いたします。
  215. 春日正一

    ○春日正一君 それではもう少し具体的にお聞きしますけれども、この商法改正案が成立すれば、現在の企業会計原則修正案注十八に例示してあるような負債性引き当て金のうち税法で別段の定めのない引き当て金、これはこの法人税法二十二条四項によって損金と認めるということになるわけですか。
  216. 田邊昴

    説明員(田邊昴君) ただいまのお話は、私、税制担当ではございませんので、その点、この席でつまびらかにできないことをたいへん残念に思います。
  217. 春日正一

    ○春日正一君 じゃ、その点は留保しておきます。税務担当でないから――これは困った。この項目は、それじゃ残しますよ。
  218. 田邊昴

    説明員(田邊昴君) 私、所掌が税法の解釈と執行を担当いたしておりますので、その範囲内に関しますことならばお答えできると思います。
  219. 春日正一

    ○春日正一君 どうしましょうか。時間の関係で先のほうをやっていますか。――それじゃ、先のほうをやらしてもらいますわ。  あと、少しこまかくなりますけれども、商業帳簿の問題です。これもずいぶんいままで問題になりましたけれども、現行商法では三十二条で「商人ハ帳簿ヲ備ヘ之ニ日日ノ取引其ノ他財産ニ影響ヲ及ボスベキ一切ノ事項ヲ整然且明瞭ニ記載スルコトヲ要ス」というふうに規定しているんですけれども、ここで書かれておる帳簿というのは、どういうふうに受け取ったらいいんですか。
  220. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) これは普通、日記帳と言っておりますが、ここに記載しておりますように、日々の取引等についてその財産関係を明らかにする事柄を記載する帳簿であります。
  221. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、改正案の三十二条一項では「商人ハ営業上ノ財産及損益ノ状況ヲ明カニスル為会計帳簿、貸借対照表及損益計算書ヲ作ルコトヲ要ス」というふうに規定しているんですけれども、この会計帳簿というのはどういう帳簿ですか。
  222. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 改正案の三十三条に記載してございますが、この一号及び二号に掲げてある事項を記載する帳簿でございます。
  223. 春日正一

    ○春日正一君 現行法の帳簿と改正案でいう会計帳簿との違いはありますか。
  224. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 実質的には同じものをいっているつもりでございます。ただ、現行法の三十二条は多少書き方がばく然としておりまして、「其ノ他財産ニ影響ヲ及ボスベキ一切ノ事項」というような表現になっておりますのを、ここで詳細に規定したということでございます。
  225. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、第三十三条二項、三項に「会計帳簿ニ基キ」というふうに書いてありますけれども、これは複式簿記のことですか。
  226. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 通常、複式簿記と考えていいと思います。会計帳簿は、最近は複式簿記を用いておるのが普通でございますので、この場合も複式簿記を大体念頭に置いて書いているということが言えようかと思います。
  227. 春日正一

    ○春日正一君 そうするとあれですか、小さな商店でも、商人といったら先ほど資本金二千円というお話が出ましたけれども、そういう小さな商店でも全部複式簿記をつけろということになるんですか。
  228. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 私、大体において複式簿記と申し上げましたが、商法規定では複式帳簿ということを強制しているわけではございませんので、単式の帳簿でありましても、これに必要な事項を全部書いておけばそれでも商法要件は満たすわけでございます。
  229. 春日正一

    ○春日正一君 そうしますと、こういう矛盾は出てきませんかね。貸借対照表、損益計算書をつくれということが書いてありますね。そうすると、複式簿記によらないで大福帳みたいなものから貸借対照表とかそういうものをつくり出そうということはたいへん骨の折れることだというふうに私聞いているんですが、私、簿記あまり強くないからあれですけれども、そうすると、帳簿に基づいてということになると、どうしてもそういうものをつくるには複式簿記をやらざるを得なくなる。そこらの辺ですね、しかも実際上はできない状態の商店とか零細な企業というものはたくさんある。そこら辺の扱いというのはどうなるんですか。   〔委員長退席理事佐々木静子君着席〕
  230. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 営業の種類にもよるわけでございますが、ある程度複雑な出入りの多い職業になりますと複式簿記を用いたほうがよいし、また複式簿記を用いないとなかなか計算がしにぐいということになろうかと思いますが、きわめて単純な、金銭の出し入れが比較的複雑でないというような業種にありましては単式簿記あるいは大福帳式の、家計簿に毛のはえたような形のもの、そういうものであってもできないことはないということでございます。  それから複式簿記、私も非常にむずかしいものかと思っておりましたが、聞くところによりますと、最近は商人の方は非常に勉強しておられまして、かなり複式簿記の知識が普及しておるというふうにも伺っております。そういうことでございますので、そういういろいろな業種による違いというものはあろうかと思いますが、それぞれその業種に応じて適当にやっていただければというつもりでこの規定ができておるわけでございます。   〔理事佐々木静子君退席、委員長着席〕
  231. 春日正一

    ○春日正一君 もし、そういう零細な商人とかそういう人たちが会計帳簿をつくらなかったら法律上どういう不利益を受けますか。
  232. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) この商業帳簿の規定は不完全規定というふうにいわれておりまして、会社等につきましては商業帳簿を備えつけないとか作成しないということに対するあやまち料の規定が、罰則がございますが、一般の商人につきましては特につけなかったことによる不利益あるいは罰則というものはございません。ただ、この商人が商売のことで訴訟を起こされるということになりますと、裁判所から提出命令というものが出ることになっておりまして、商法規定がございますが、その提出ができない場合には一定の範囲で不利益をこうむることがある。それからまた、その商人が破産をいたしました場合に帳簿がつけてありませんと、この場合には刑罰が課せられるということになっております。
  233. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、今度の商法改正案が成立したら、国税庁のほうでは記帳を指導するというような考えがありますか。
  234. 田邊昴

    説明員(田邊昴君) 今度の商法改正によりまして、具体的には三十二条の商人の記帳義務が、その内容が充実することは、われわれ税務当局にとりましてもたいへん歓迎すべき事柄であると考えております。ただ税務の執行は税法に従って行ないますものでございまして、特に今回の商法改正によってさらに税務執行のやり方が変わるというようには考えておりません。
  235. 春日正一

    ○春日正一君 記帳義務と関係ないけれども、いま言った商法とそれから税法との関係ですね、この点でお聞きしたいんですが、国税徴収法の第一条に「この法律は、国税の滞納処分その他の徴収に関する手続の執行について必要な事項を定め、私法秩序との調整を図りつつ、国民の納税義務の適正な実現を通じて国税収入を確保することを目的とする。」というふうに書いてあるわけですね。そこで、私まあひっかかるのは、「私法秩序との調整を図りつつ、」というところで、何か今度の商法改正との関係で新しいものが出てくりゃせぬだろうかということで、ちょっと気になるんですがね。
  236. 田邊昴

    説明員(田邊昴君) 先ほどお答え申し上げましたとおり、現在の税法は具体的に所得税法なり法人税法の規定に従いまして執行されております。ただいま御審議いただいております商法改正案とかりに関係ありといたしまするならば、現行税法に規定のございます青色申告制度ではないかと思います。ただ、この青色申告制度は納税者の御自身の選択が前提になっておりまして、商法の記帳義務の内容が充実されたからといって、その納税者の選択の基準は変わらないわけでございます。  なお、ただいまお触れになりました国税徴収法の第一条の規定は、これは主として租税の徴収面のことを規定した内容でございまして、具体的に、国の租税債権と私債権の調整の原則とか、差し押え財産の選択にあたりまして第三者の権利を尊重するというような、いわば一般民法、商法との調整とはかった規定でございまして、特に商人の記帳義務とは関係がないのではないかと理解しております。
  237. 春日正一

    ○春日正一君 その点、私も非常に安心したんですが、ただ、もう一つ念のためですが、いま話に出ました青色申告との関係ですね、商法の会計帳簿の規定が新しく加わったということで、税務署がいままでの白色申告をやっている人たちに商法改正法案のこの三十二条を理由として記帳義務を勧奨したり、あるいは青色申告者と同じような記帳を勧奨するというようなことはないでしょうね、どうですか、そこのところ。
  238. 田邊昴

    説明員(田邊昴君) 商法の記帳義務の内容の充実の改正は、先ほど申し述べましたように、基本的には、税務といたしましてもたいへんけっこうな事柄ではないかというふうに理解しているわけでございます。現在の税法がたてまえといたしております自主的な申告納税制度を背景としてささえるもの、それはやはり納税者自身の具体的な申告内容を裏づける記帳ではないかと思います。したがいまして、従来から一般的には、われわれは、できるだけ納税者の方が青色申告を申請されまして、その税法上の特典を享受されることをおすすめいたしてきたわけでございますが、今度の改正によりまして、具体的に、従来のそういう事柄を特に変更することはただいま考えておりません。
  239. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、この改正理由にしていままでの白色申告をやっている人に青色申告をやれとか、記帳をもっとどうせよとかというようなやり方、これは少なくとも商法のこれとの関係ではなさらないということですね。
  240. 田邊昴

    説明員(田邊昴君) そのようなことでございます。
  241. 春日正一

    ○春日正一君 ここのところ、間々、あなた方の意に反して、下のほうの税務署あたりで、いろいろ、いままででも指導の行き過ぎというか何というか、そういうものがあったということを私たくさん聞いていますけれども、だから、そういうことのないためには、やはりいまのような趣旨で、この改正そのことによってこの記帳義務を強めるとかなんとか、そういうことはしないんだという趣旨を、そういう点を下のほうに徹底させるということは、もし、これが通ったというような場合にはやりますか。やってもらえますか。それとも、これは誤解してもらえればけっこうという形で静観なさるか、どっちになさるか。
  242. 田邊昴

    説明員(田邊昴君) 先ほど来申し上げますとおり、われわれとしましては、具体的な税法の執行なり、特に青色申告制度をささえる環境が望ましい方向にいくものとして歓迎いたしているわけでございまして、この改正がございましたから特に従来の方針に変更を加えるということはございませんので、格別、アクションをとるということは現在考えておりません。
  243. 春日正一

    ○春日正一君 これはかなりデリケートな問題ですが、私くどく言いますけれども商法三十二条の記帳義務というのは私法上の問題であって、国と納税者の関係規定するものではないんだから、商法三十二条の改正があったとしても、昭和三十七年の国税通則法改正で原案から削除された記帳義務というのを復活するとか、現在、所得税・法人税法に規定している青色、白色の区別をなくして、一般に記帳義務を課すような税法改正はすべきではないというふうに思うんですけれども、その点は、そう受け取っておいていいですか。
  244. 田邊昴

    説明員(田邊昴君) お話しのとおり、この改正によって税法上特に記帳義務が課せられたものになるわけではございません。したがいまして、ただいまのお話の筋はそのとおりではないかと私は理解しております。
  245. 原田立

    委員長原田立君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  246. 原田立

    委員長原田立君) 速記を起こして。
  247. 春日正一

    ○春日正一君 それでは、さっきの保留した問題に入りますけれども、初めから聞きますわ、新しい人が来られたようですから。  だから商法改正法案三十二条二項の「公正ナル会計慣行」という この規定と、法人税法第二十二条四項の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」というのは同じ意味なのか、それとも違うのかということですね。これ、さっきお聞きしたんですけれども、人がかわったから初めからお聞きします。
  248. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) お答え申し上げます。  商法規定と法人税法第二十二条の四項の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算される」という内容につきましては、基本的には方向として同じことを考えているものと考えております。ただ、税法には税法として、租税として特有の政策目的を持っておりますので、その段階において必要な別段の定めは税法でさせていただいておりますので、その点については、なお基本的には同じであっても、実際の適用上の問題として、特別規定を書くこと等はあり得べしと考えております。
  249. 春日正一

    ○春日正一君 それで具体的にお聞きしますが、この商法改正法案が成立すれば、現在の企業会計原則修正案注十八に例示してあるような負債性引き当て金のうち、税法で別段の定めのない引き当て金、これはこの法人税法第二十二条四項によって損金と認めるということになりますか。   〔委員長退席理事後藤義隆君着席〕
  250. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) 現在二十二条につきましては、引き当て金につきましては別段の定めを必要とすることになっております、現在の書き方で。したがいまして、商法が通り、企業会計原則の修正案が実際に動き出すといたしましても、そこにはなお別段の定めをしない限り、それが自動的に税法の規定として認められるという性格のものではないと考えております。
  251. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、そういうあれはどこに書いてあるんですか、法人税法の。
  252. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) 第二十二条三項に「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、」「次に掲げる額とする。」ということで、二号に損金に算入すべきものの種類が書いてございますが、その他の費用の中でカッコで、償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除くと書いてございますので、債務の確定していないと考えられる引き当て金につきましては、特別の規定がない限り第二十二条の三項の規定では損金の額に算入されないという法制になっておりますと考えております。
  253. 春日正一

    ○春日正一君 いま大蔵省のほうの見解を伺ったんですけれども、経団連では別なことを言っているんですね。経団連事務局編の経団連パンフレット、先ほどから私しばしばこれ引用するんですけれども、これの「企業会計原則修正案の解説」によると、企業会計審議会幹事で経団連理財部の居林次雄氏という人、この人の「税法と企業会計原則の引当金の調整問題」というテーマのところで、「主税局では、税法が会計慣行よりも先走って負債性引当金を広く損金にするように改めることは、行き過ぎであるという態度をとっている。」というふうに言っています。   〔理事後藤義隆君退席、委員長着席〕 そうして「工事補償引当金のごとく、多くの会社で計上する慣行が完熟してきたものから、逐一、税法上の損金算入するようにしたいとの意向である。」というふうに述べておるんですけれども、これが大蔵省主税局の方針なんですか。
  254. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) 引き当て金をどこまで認めていくかという問題は、昔からなかなかむずかしい問題でございまして、そこにはおのずから租税政策上の目的の一つといたしまして、ある程度恣意的な判断を除外して、ある程度は画一的に取り扱っていかないと、特に内部引き当てのような問題には問題が多いわけでございまして、そういう点を考慮いたしまして、従来引き当て金につきましては法定という考え方をとっておりまして、完全に未払い金として考えられるもの以外につきましては法定というたてまえをとっております。したがって、どの程度まで社会で完熟していくか、その場合においてそれをどこまで認めるとして税法に取り込むべきかという政策判断の問題だと考えますが、現段階におきましては、御承知のとおり、現在法律規定されている引き当て金に限って認めるというたてまえをとっておりまして、今後もそういうことになるかと考えております。
  255. 春日正一

    ○春日正一君 そこで問題なんですね。これに出ておる「公正ナル会計慣行」ということばがありますけれども、慣行ということばは、概念というものは、この法律の中ではどういうふうに定義というか、規定されているのですか。たとえば先ほど私読み上げたように、ある会社が有税引き当て金みたいな形で引き当てをやるというようなことをやって、一回やったのではこれは慣行にならぬけれども、世間の多くの会社がそれをやりだして何回もこれが続くということになると、結局これは慣行だからということで今度は法定する条件ができてくるというようなおそれですね。つまり慣行ということが書いてあるけれども、慣行というのは繰り返しやっていれば慣行になるわけですから、悪いことでも繰り返しやって慣行だということで認めさしていくというようなことになりはせぬかと、慣行という規定が。そこで慣行という規定をどういうふうに規定しておるのか、二回以上繰り返されたら慣行だという説も私聞いているのですけれども
  256. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 慣行というのはやはり相当の時間繰り返されて行なわれておるということが必要であろうと思います。二回ではとうてい慣行にならないと思いますし、もっと一般的に広く行なわれるということも必要であろうと思います。それから、そういう慣行でありましても、公正なる慣行でなければこの三十二条には該当しないわけでございまして、悪い慣行が幾ら行なわれましても、これはここにいう商業帳簿作成のしんしゃく規定には関係がないわけでございます。  それから引き当て金の問題でございますが、これは先ほどの規定がございますので、それに入るもの以外は引き当て金としては商法は認めないと、こういう立場でございます。
  257. 春日正一

    ○春日正一君 そこで私さっきの質問にちょっと返るのですけれども、その居林という人はこう言っているのですね。まあ税務当局としてはこう言っておるけれども、「工事補償引当金のごとく、多くの会社で計上する慣行が完熟してきたものから、逐一、税法上も損金算入するようにしたいとの意向である。」と。私はここにひっかかるのですわ。そういう一例をあげて、そういうふうに逐次慣行成熟したものからしでいこうということになると、まだ次もあるしその次もあるということが予定されておるように考えられる。だから私はそれを聞くわけですけれども、さらにこの人は、「そこで、会社としては、……この際、有税で以てでも会計原則が例示した負債性引当金を広く計上して、税法としてもこれを認めざるを得ないようにすることが必要である」と、こういうふうに述べているわけですね。そうすると、この人の見解について主税局はどういうふうにお考えになっているか、その点聞かしてほしいです。
  258. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) お答え申し上げます。  慣行が熟した、あるいは有税で企業はどんどん積んでいる、その事実だけでわれわれは決して判断をするつもりはございませんので、その点たつきましてはまさに所得計算上必要なものに限り引き当て金を認めていくという本旨にのっとりまして、なお会計慣行の習熟を待って処理していくという考え方を持っております。
  259. 春日正一

    ○春日正一君 どうも最後がひっかかるのですがね。会計慣行の習熟を持ってという、そこが私はひっかかるのですがね、その答弁が。現に大会社の最近の決算書、さっき私、あなたがおらぬとき読み上げたけれども、東亜燃料なんかは、大きな増益をしながらいろいろな名目で引き当て金、そういったようなものを積み立てていっているし、そういうような税金を払ってでもやっている、計上しているんですね。こういうものについて大蔵省としては一体どういうふうに見て、どういうふうにこれを扱われるのか。
  260. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) 私の申し上げ方が悪かったのかもしれませんけれども、私が申し上げる趣旨は、そういうふうに有税で大きな企業がたくさん積んでいると、そういう事実だけをもって決して判断はいたしませんということでございます。
  261. 春日正一

    ○春日正一君 大蔵省がそういう立場なら、法人税法の第二十二条四項は削ったらどうかと思うのですがね。この条文は御承知のように、「第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。」というところですがね。昭和四十二年にこれが追加されたときにも租税法定主義の大原則をそこなうおそれがあるという議論もあったし、その後の運用についても、たとえば昭和四十六年、円切り上げに伴う為替差損金の会計処理について、衆議院、参議院の大蔵委員会、予算委員会でも問題になった条文なんですね、御存じのように。したがって、法人税法第二十二条四項を削除して、そうしてこの経団連のパンフにある居林氏のようなねらいを村絶する、そういうものが入ってくる余地をなくするというようにしたほうがすっきりすると思うんですけれども、その点はどうですか。
  262. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) 先ほどの居林さんの御意見につきましては、それは別段の定めのある部分でございまして、ある意味では、引き当て金については法定のもの以外損金に算入しないという規定がございます。したがって、この四項に書いてございます「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算される」というのは、税法でずいぶんこまかくいろいろのことを規定しておりますが、なおその他の点について規定し切れない部分について一般的な解釈基準を示したものと考えておりますので、ただいまこれを削除するというふうなことは考えておりません。
  263. 春日正一

    ○春日正一君 この問題は非常に不十分で、たとえば私が一番ひっかかるのは、何回言ってもひっかかるのは、慣行が完熟したらということをあなたも言われる。そうしてこの居林氏も、どんどん、どんどん実績つくって完熟さしていけということを言っておる。それと一致するんですね、本心において、だから、私は気にかかって先に進みかねるんだけれども、しかし、これからあと最後に子会社の調査についてお伺いしたいと思います。  商法改正法案の中の二百七十四条ノ三で、新しく新会社子会社という概念を設けている。親会社監査役子会社に報告を求め、さらに立ち入り調査権を認めるというようになっておるんですけれども、これは子会社の独立性を侵して一〇〇%の支配を法制上認めたことになるんじゃないかと思うんですけれども、その点どうですか。
  264. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) この子会社調査権というのは、親会社監査役が、親会社業務監査するにあたりまして、子会社と関連する事項について子会社を調査しようというものでございます。よく例に引かれますように、親会社が不良債権を子会社に譲渡してしまうとか、あるいは余っている商品を子会社に買い取らせる、親会社としての立場を利用いたしまして子会社に不利益を押しつけて、自分のほうの経理を健全に見せようとする、そういうようなことがしばしば行なわれることがあると聞いております。そういう場合に、その事情を調べるためには親会社だけを調べたのでは出てこない、こういう場合がございますので、子会社についても調査をするということでございまして、子会社の人格、法人格を侵害するとか、そういう趣旨のものではございません。
  265. 春日正一

    ○春日正一君 子会社というのは、法律上からいうと独立した法人格ですか、半分の法人格ですか。
  266. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 法律上は独立した完全な人格でございます。ただ、親会社が資本金を過半以上占めておりますので、実際にはその支配力というものがかなり業務の面で出てまいりまして、それだけに親会社子会社を利用するというおそれがあるわけでございます。
  267. 春日正一

    ○春日正一君 そういう悪い面もありますわね。親会社子会社利用してもうけるという面もある。だから、いま言われたような、そういうことがあるから、だから親会社経理あるいは営業内容を見ただけでは全貌がわからぬと、これは私事実だと思うんです。というのは、いまのあれは、私ここに公取の報告書を持ってるんですけれども、これで見ますと、まあこれ全部読むとまた長くなりますから、新聞で要約したもののほうをむしろ使ったほうが簡潔であろうと思うので、新聞の切り抜き使いますけれども、これ現物、私持っています。それによると、こうなっているんですね。大手六大商社について公取が調査報告をまとめた、それによると、三菱、三井、丸紅、伊藤忠、住友、日商岩井の大手六商社は「四十七年度の売上額が四十三年度の二倍、合計二十一兆円」、「上場卸売業八十八社の中で約七〇%のシェアを占める」、「六社の売掛金や前渡し金など、実質的な融資額が七兆四千億円にのぼるほか、国内上場会社の半数以上にあたる九百二十四社の株式を所有している」、「このため、商社としての活動と資金力を利用して、経済界で自由な競争を損う恐れがあり、特に独占禁止法で金融機関の持ち株規制をしているにもかかわらず、商社が実質的に金融機関化している現状では何らかの規制が必要である」というようは趣旨の報告書を出しているんですね。私、まあここ一々詳しく読みませんけれども、しかし、子会社という関係でいえば、株式の所有状況からいって国内の上場会社約千七百社のうち六大商社は九百二十四社の株を持っておる。それから、この六社が筆頭株主になっておる企業は非上場分も含めて千五十七社、その資本金総額四千四百億円、六社の資本金総額の約三倍に当たり、売り上げ額は六社の三〇%を占めるというふうになってるんですね。こういう形で非常に広く、いわゆる子会社あるいは株式支配というような形でたくさんの系列会社というんですか、系列化をやって、非常に広い範囲を支配しておるというふうな状況になってますし、特に商社の場合は外国に支店を設けたり、外国の商社の株を取得したりして、そことの関係で大きな脱税をやったというようなことも今度の国会で問題になってます。だからそういう意味でいえば、ある大きな会社なり大きなメーカーなりの全貌を知ろうとするなら、その会社経理だけでなくて、当然持ち株関係子会社からそういうものまでずっと全部調べて、その内容まで見なければ、一つの会社の実態というものはわからぬということは、これ事実ですわ。それが現状です。  そこで、私まあ一番最初に提起した問題ですね、こういう現状に対して法律は一体どうしようとしておるのか。そういうふうになっておるから、だからまあ特にこの場合は五〇%以上の株式を持っておるものというふうに限定していますから、この数ずっと減りますけれども、それでも一つの法人格としてできている個々の会社を別な会社業務内容まで監査できるというようなことになれば、これはやはり子会社とかそういう系列会社とかというようなものに対する大企業の支配というものを商法の上で公然と確認して、そうしてこういうピラミッドの支配というものを認めてしまうことになるでしょう。商法の上で子会社と親会社という関係をつくって、親会社子会社を支配する。しかし理屈っぽく言えば、じゃ子会社にしたって親会社と取引していく上で親会社の資産を調査する必要があるというような理屈もついてきますわ。しかし子会社は親会社を調べるあるいは経理についての報告を求める権利も何もなくて、親会社子会社に対して報告を求める、報告がなければ立ち入り調査もできるというような、そういう形で大企業の他の企業に対する支配を公然と商法という基体法の中で認めてしまうということはどういうものだろうか。しかも子会社といえども、先ほど私がお聞きしたように独立した法人格でしょう、一個の。親会社といえども独立した法人格だ。そういう意味でいえば対等、平等でなければならぬはずだ。そのものが子会社だから従属しているのだという形の体系を商法の中に持ち込んだということになれば、いまの大企業の産業に対する支配というものを商法がそのまま認めて大企業の専横というものを一そう強める方向に向けさしていくということになるんじゃないのか。いま必要なことは、公取も言っているように、独禁法というようなものを便って、そうして商社のいろいろな会社に対する金融とかあるいはこの支配というようなものを押える必要があるということを言っているのですね。そしてまた、それが、いまのように企業が大規模化して支配が強まっておる時期に、そういうものに専横な行ないをさせないようにするためにむしろ必要な方向なんじゃないか。だから国民的な立場からいえば、むしろ子会社は親会社を認めるのじゃなくて、こういうものとの関係を、支配、被支配の関係を薄めるような方向で、持ち株の制限をするというような方向商法の基本、企業のあり方というものをきめていくべきじゃないだろうか、私はそう思う。  だから矛盾があるんですよ。同じ独立平等の法人格が他の、子会社だからといって、業務監査するというような、そういうことはそれ自体一つ矛盾しておるし、経済の実態からいっても、いまの弊害をさらに大きくするものになる。これは非常に大事な政治論議ですけれども、しかし、今後の経済にとって、国民生活にとってきわめて私は重要な問題だろうと思うんですよ。だから私一番最初のときに、企業のいままで発展してきた実態に合わせて商法を変えるのか、それともこの現状でのいろいろな矛盾を少なくしていくような、国民的な立場から見て少なくしていくような方向商法を変えるのか、どっちにするんだという問題を出しましたけれども、ここでもその問題が、どっちにするかということが出てきておる。いまのこの改正案では、明らかに大企業の産業支配というものを法として確定しようというようにしておいでになる。これは非常に大きな間違いだ。日本の現状及び将来にとってよくないと思う。この点については私こまかい技術的なとこを聞きたくありませんけれども、法務大臣のほうから、一体、日本のそういう企業の状態をどうしようとしておいでになるのか、そこをはっきり聞かしてほしいと思うんです。独禁法でとめなければいかぬといわれるようなものを基本法で確定するというようなことがいいのかどうか。
  268. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) これは今回の改正におきましても、子会社というのは、もうすでに支配力を十分親会社が持っておる、要するに過半数の株式を親会社が持っておる場合だけをきめておりまして、したがって、今度の制度がなくても、もう実質上とにかく子会社の支配権を持っちゃっておるんですから、そこで、その子会社を利用して余っておる商品を子会社に抱かせるとか、あるいは借金をしょわせるとか、あるいはまた、それと反対に、親会社に余っておる、要するに利潤を隠蔽するために子会社のほうに自分のところの手持ちの原材料を隠すとか、渡すとか、いろいろ手があるわけでございますから、そこで、親会社経理というものを健全に、完全にやっていこうとするのには、やっぱり子会社まで調査をしないとわからない面が出てまいりますので、先ほどお話しのとおり、これは親会社会計監査をする段階子会社のほうにまで調査の手を伸ばそうというのが今度の改正でございます。したがって、別段、親会社の系列支配というものを一そう合理化そうというんではなくて、現に事実上そうなってしまっておるんですから、そういう弊害の起こらないようにしようという趣旨でございますので、ちょっと、やはり、ものは見方によって変わってまいりますけれども、そういう次第でございますから……。しかし、これも、さりとて無益に、その必要もないのにむやみに子会社の調査をする必要もありませんし、しないことだと思うんです。やはり関連上、経理監査をしておる間に及ばざるを得ないものが出てきたときに及び得るようにしておくことが親会社経理というものを健全なものにする、あるいは不健全なものがあればそれを摘発するとか、あるいは剰余金が多過ぎれば税で吸い上げるとか、いろいろな処置を講ずることができますので、そういうような趣旨で、今回の改正は、十分の支配力を持っていないところにまで支配させようというんではなくて、現に支配してしまっているところだからいたしかたないと、こういうような観点に立っておりますので、どうぞ御理解いただきたいと思います。
  269. 春日正一

    ○春日正一君 私、これできょうの質問を終わりますけれども委員長もお聞きのように、経団連パンフレットのこの問題ですね、ここに出ておる、いろいろきょう私も引用しましたし、その企業会計原則修正案についての、番場嘉一郎さんとか、それから居林さんとかいうような方に参考人としてでもここへ来ていただいて、そうしてこれの中身について、私、この委員会ではっきりさせる必要あると思うんですよ。何かそうでないと、法律はこうなっております、しかし、きめた経過の中ではこういうことがありましたというような形の中で商法というような大事なものが変えられていったんでは、それはやっぱり国民納得しない。だから、そういう意味で、こういうことを自分でお書きになったんだから責任をお持ちになると思うんです。やはりこの公の場に出てきて、ここで私ども質問に答えて、その真偽をはっきりさせてもらうように理事会で取り計らっていただきたいと思うんです。これをお願いします。
  270. 原田立

    委員長原田立君) 理事会で相談することにいたします。  ここで委員会を暫時休憩いたします。    午後六時二分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕      ―――――・―――――