○春日正一君 だから、いまの御説明を聞いて、一つ一つ追っていきますと、監査役のいわゆる業務監査を行なう場合について、責任の範囲を明確に法定して、
原則として会社の業務執行が適法かいなかについて監査を行なうものとすること、これはそのとおりなんですね。それから、三カ月ごとの営業経過の
報告は、これは削れといって、そのとおり削っている。それから「取締役の解任を裁判所に請求できることになっているが、この項目を削除し」云々と書いてある。これもそのとおり削っておる。それから、そのとおりいれなかったというのは、「会社の整理開始の申立、特別清算開始の申立について」云々と、この点が受け入れてない。しかし、任期についても、三年というのを二年にしておる。あるいは選任についても、ほぼこの
意見がいれられておる。それから報酬の問題についてもそうです。特に監査費用の問題について、監査される取締役会に費用を出してくれと請求するというようなことになるわけですから、そこに矛盾があるわけですけれ
ども、それすら削ってしまったということになると、金持たんで何の監査ができるか。巨大な商社や新日鉄み
たいな大会社を、金持たんでもって、金の保証なしに何の監査ができるかという疑いが出てくるわけですね。
私の聞いておったところでは、経団連の
意見がまあ一〇〇%入ったということにはなっていないけれ
ども、しかし、まあ九〇%までは入っておる。そういう姿勢で、御承知のように、経団連といえば、大
企業の集まりでしょう。中小
企業の集まりじゃないんですよ。その大
企業の頭部である経団連の
意見が、この
商法改正の一番大事なところに九〇%までいれられてしまったというようなこういう状況のもとで、どうして監査役が独立して、複雑な
企業を監査し、そうして反社会的な行動をチェックするということができるのか。私はこれでは、
先ほど来
大臣も、監査役の機能を強化したし、こうすればまあないよりはましだと言われるけれ
ども、これでは結局実効はあがらないだろうと、非常にこれは疑問に思います。
そして、こういうことは、衆議院での
委員会の参考人の北野氏は、監査役の独立性の保障、身分の保障ということが、監査役がその与えられた任務を果たす上で絶対必要な条件だということを言われて、こういうふうに言っていますよ。「監査役の身分保障につきましては、
改正案はほとんど配慮をしていないのであります。わずかに、監査役というのは、株主総会において選任及び解任について
意見を述べることができるんだということであるとか、あるいは監査役の選任決議につきましては、株主総会に出席を要する株主の有すべき株式の数は、発行済み株式の総数の三分の一未満に下すことはできない、こういった
規定があるにとどまるのであります。十分な身分保障のない者にいかに権限を付与いたしましてもあまり
意味はないと
考えるのであります。
改正案は、はたして
粉飾決算等の防止をまじめに
考えておるのか、私には疑問に思われるのであります。」、こういうふうに言って、ずっといろいろ述べて、「いかに権限を与えましても、身分保障のない人に対して、そのような権限は絵にかいたもちになる危険性があるのであります。特に監査役の解任につきましては、私は少なくとも裁判所の関与するところにすべきであると
考えるのでありまして、すなわち、監査役の身分保障をはかるために、裁判所の承認がなければ監査役の解任はできないというところまで徹底すべきではないか、このように
考えるのであります。そして、取締役会に対抗し得るだけの監査役会を設けまして、そのもとに
会計専門家を含む監査の
事務機構を常設いたしまして、そのことを法においてコントロールする、こういうことが必要なのではないかと
考えるのであります。大
企業の監査というものは、そのような常設の監査
事務機構によって常時行なわれなければならないだけの社会的な、公的な
理由があると
考えるのでありまして、そういった観点に立って
考えますと、今回の
改正案に対しては多くの不満を感ずるのであります。」、こういうふうに言っております。
そこで、北野氏の、監査役の独立、身分保障に抜本的な改革を提案して、現在の大
企業の横暴はますますエスカレートの一途をたどっているのですから、これを統制するにはいろいろな措置があるけれ
ども、少なくとも大
企業内の監査機構の問題としては、北野氏が言われるふうな仕組みにするだけの社会的な公的な
理由があるということだと思います。私はこれは非常に傾聴すべき
意見だというふうに思いますけれ
ども、こういう
意見に対して、
法務省としては、どういうふうに受けとめておいでになるのか、その点を聞かしていただき
たい。