運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-02-14 第72回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十四日(木曜日)    午前十時二十五分開会     —————————————    委員異動  二月十四日     辞任         補欠選任      小枝 一雄君     中村 登美君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 棚辺 四郎君                 佐々木静子君     委 員                 中村 登美君                 山本茂一郎君                 吉武 恵市君                 中村 英男君                 藤田  進君                 春日 正一君    国務大臣        法 務 大 臣  中村 梅吉君    政府委員        法務大臣官房長  香川 保一君        法務省民事局長  川島 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        大蔵大臣官房審        議官       田中啓二郎君        大蔵省主税局総        務課長      渡辺 喜一君        大蔵省主税局税        制第一課長    伊豫田敏雄君        大蔵省証券局企        業財務課長    小幡 俊介君        大蔵省銀行局銀        行課長      清水  汪君     —————————————   本日の会議に付した案件商法の一部を改正する法律案(第七十一回国会  内閣提出衆議院送付)(継続案件) ○株式会社監査等に関する商法特例に関する  法律案(第七十一回国会内閣提出、衆議院送  付)(継続案件) ○商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係  法律整理等に関する法律案(第七十一回国会  内閣提出衆議院送付)(継続案件)     —————————————
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず委員異動について報告をいたします。  本日、小枝一雄君が委員を辞任され、その補欠として中村登美君が選任されました。
  3. 原田立

    委員長原田立君) 商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案を便宜一括して議題といたします。  前回に引き続きこれより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 佐々木静子

    佐々木静子君 前回監査制度の問題についてお尋ねさしていただきましたので、そのあと引き続きまして、きょうは企業会計原則商法との調整の問題から、あと若干質問さしていただきたいと思います。  この今回の改正によって株式会社会計監査会計監査人が行なうことによって商法監査証券取引法監査の一元化が行なわれるということになっておるわけでございますが、この計算書類規則と、それから財務諸表規則調整ということが必要となって、この企業会計原則の問題の修正ということが生まれてきているわけでございますが、実は先日も、これはこの商法というものが非常に反動的な改悪の法案であるという反対運動方々から、この企業会計原則修正ということが利益を隠して便乗値上げをするものであるということで、たいへんに見のがすことのできない問題をたくさん含んでいるという御指摘を受けているわけでございます。そういうわけで、この企業会計原則修正ということに関連して若干お尋ねいたしたいと思うわけでございます。  まず、この企業会計原則修正案というものが、この商法改正ができた場合に、これは案ではなくて企業会計原則修正されるのか、案がそのまま修正されたことになるのかどうか、それをまずお伺いしたいと思います。
  5. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 商法が成立しました暁には、現在企業会計原則修正案として企業会計審議会の四十四年の十二月報告のあるものについて所要の見直しをした上に修正案として確定してまいるということになります。
  6. 佐々木静子

    佐々木静子君 この企業会計原則修正という問題に関しまして、この継続性原則というものが、今度の商法改正でそのまま企業会計原則というものが導入されるとすれば継続性原則というものは否定されるのではないかという考え方がかなりございまして、それが結局大資本の逆粉飾、まあ場合によると粉飾に合法的に利用されるおそれがあるということが非常に国民の間で警戒されているわけございますが、この継続性原則というものが肯定されるのか否定されるのか、それについて法務省ではどのようにお考えでございますか。
  7. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 継続性原則についてのお尋ねでございますが、商法におきましては計算に関する規定を若干置いておりますが、特に継続性原則についての規定というものは設けておりません。ただ、会計処理基準といたしまして継続性原則というものが一般に認められておるということから考えますと、商法に直接規定はございませんけれども、それによって会計処理を行なうということは適当なことである、このように考えております。
  8. 佐々木静子

    佐々木静子君 これ、継続性原則は肯定されたという考え方と否定されたという考え方があるわけなのでございますが、そうすると、民事局長の御答弁では、継続性原則というものはなお肯定されているんだというふうに承っていいわけでございますか。
  9. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 私は、いま商法立場でお答えを申し上げておるわけでございますが、商法自体には継続性原則というものを規定した条文はないわけでございます。ただ、会計処理につきましては、一般会計実務によるわけでございまして、特に今回の商法改正におきましては、第三十二条に「商業帳簿作成二関スル規定解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行勘酌スベシ」と、こういう規定を設けることにいたしております。で、この「公正ナル会計慣行」という中に継続性原則というものがあると思われますので、それに従って会計処理が行なわれるということは商法上も望ましいことであると、このように考えておるわけでございます。
  10. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは大蔵省に伺いたいんでございますけれども企業会計原則修正案において継続性原則というものは保証されているのかどうか、その点について伺いたいんですが。
  11. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 私どもといたしましては、継続性原則に対する態度は変わっておりません。ここで、従来の企業会計原則におきましても「企業会計は、その処理原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。」ということが書いてございまして、修正案においても同じことが書いてございます。ただ、従来「正当な理由によつて、会計処理原則又は手続に重要な変更を加えたときは、これを財務諸表に注記しなければならない。」という字句がございますのが、今度はそれがないことに伴って種々の御疑問を抱かれている向きが多いようでございますが、これは、商法強行法規でございまして、しかも、今回商法三十二条二項でしんしゃく規定が入りまして、したがって、この企業会計原則しんしゃく規定の具体的な内容となるわけでございます。そういたしますと、場合によっては企業会計原則違反について違法性の問題が生じてくるわけでございます。その場合に、企業会計で正当であるとか正当でないとかいうことは、いたずらに論争を招くおそれがございますので、そのような商法強行法規であるという面からこの字句を削ったのでありまして、私どもといたしましては、継続性原則は依然、当然のことながら堅持すると、みだりにこれを変更してはならないというたてまえは続けていく所存でございます。
  12. 佐々木静子

    佐々木静子君 これ、いまの御説明伺いまして、若干わかったようなわからないような感じですけれども、おっしゃるとおり企業会計原則修正案の五で、この「企業会計は、その処理原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。」という本則だけが規定されて、いまおっしゃったような「正当な理由によって、会計処理原則又は手続に重要な変更を加えたときは、これを財務諸表に注記しなければならない。」という規定がなくなっているというのが、これが非常な問題を呼ぶ原因になっていると思うわけなんですけれども、これは実は法務省のほうの方に伺うと、これは大蔵省のほうの御要望のように聞いておったんですが、大蔵省の方に伺うと、法務省の御要望のように伺って、何だか私のほうでは「正当な理由」というものを削除した意味というものがもう一つはっきりしないわけなんですけれども、これほど、この「正当な理由」というものがなくなったということで、一般国民に非常にこの企業会計原則継続性が後退するんじゃないかということで心配を抱かせている、そのあたりですね、この正当な理由についての規定を、これ挿入される、もとどおりされるようなお考えは、大蔵省並び法務省でございませんですか。
  13. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 従来会計士の側からは、「正当」云々ということは、会計士として種々原則上妥当ないし適正と考えられていたものをさように表現してきたわけで、しかし商法ができますと、「正当」ということばは、非常に、違法であるか違法でないかというような内容を持ちますので、それは会計士の従来的適正ないし妥当の判断とは違いますので、そういう意味で、その字句は削られておりますが、しかし会計士としましては、従来的な適正ないし妥当の判断に立ちまして事務処理していくわけでございます。そうして修正案の注釈のところにも、「いったん採用した会計処理原則又は手続について重要な変更が行なわれた場合には、変更が行なわれた旨及びその変更財務諸表に与えている影響額当該財務諸表に注記しなければならない。」ということが書いてございます。したがいまして、主要な変更でありますれば、それが従来的に妥当と思われるものでも、妥当でないと思われるものでも、当然意見としてその事項を示して表明するのが適当ではないかと、かように考えております。
  14. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまは、その「正当な理由」というのを加えるようなお考えがあるかないかということを伺っているわけですが、何か御答弁がずれているように思います。
  15. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) その点は、先ほども申し上げましたように、この企業会計原則しんしゃく規定の具体的な内容になりますし、違法性の問題が起こりますので、その面でこの字句はやはり削除したままにせざるを得ないと考えます。
  16. 佐々木静子

    佐々木静子君 法務省のほうはいかがでございましょうか。これ、実は法務省民事局上田参事官がお書きになっている本に、「この継続性原則に関し、なお、敷衍すると、経理操作を行なう目的で評価方法変更しても、好ましいことではないが、商法上は、違法とはならないと思う。その動機が違法であったとしても、評価方法変更等自体を違法ならしめるものではない」というふうな御表現で、否定説の立場をとっておられるような御見解が出ているわけでございますけれども、ここあたりをちょっと拝見していますと、継続性原則というものが非常にあやふやな、これじゃやっぱり困るのではないか。この企業会計原則修正を導入することによって、企業会計原則修正されることによって、これが商法に取り入れられるとすれば、やはりこれはいろいろあぶない問題が起こってくるのではないかと懸念されるのが根拠のないことでないというふうなおそれも感ずるわけでございますが、民事局長としての御見解をお聞かせいただきたいわけです。
  17. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) ただいま御指摘になりましたような見解、まあ私はあまり会計の面詳しくなかったのでございますが、今回商法改正につきまして、いろいろ勉強いたしましたところによりますと、継続性原則というのは非常に重要な原則であるということを承知いたしたわけでございます。そして、先ほど申し上げましたように、従来の商法には継続性原則というものは書いてございません。したがって、商法の分野から見ますと、継続性云云というものは問題にならなかったという見方もできようかと思いますけれども、しかしながら、今回の改正案におきましては、先ほども申し上げましたように、三十二条に「公正ナル会計慣行勘酌」せよと、こういう趣旨規定が設けられたわけでございます。  ところで、先ほど来御議論になっておられます企業会計原則でございますが、これはもともと昭和二十四年に、まあ当時は経済安定本部の中に設けられております企業会計基準審議会というものが作成いたしたもので、その前文には、「企業会計実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したもの」であるということがうたってございます。で、このように企業会計原則というものが、公正妥当と認められる会計慣行、これを具体化したものであるということになりますと、この商法でいっております「公正ナル会計慣行」というものと一致するものがその内容になっておるということが言えようかと思います。もちろん会計慣行というものは変化するものでございますし、企業会計原則自体も逐次修正されておるというふうに伺っておりますが、現在の企業会計原則、これは大蔵省で御所管になっておられます企業会計審議会がきめられるものでございまして、そのきめられ方につきましては所管外のことでございますので、私から申し上げられませんけれども、しかし、その内容がやはり「公正ナル会計慣行」というものを反映しているというふうにいたしますと、その企業会計原則継続性原則を守らなければならないということがはっきりいたしております以上、商法解釈といたしましても、この三十二条のしんしゃく規定を通じまして、継続性原則を守らなければならないと、こういうことが出てまいると思います。ことに、継続性原則を守らないために不当な経理が行なわれるというようなことになりますと、これは商法上も非常に問題がございますので、そういう意味におきまして、継続性原則というものは守らなければならないということが今回の商法改正によってさらにはっきりするのではないかと、このように考えておるわけでございます。
  18. 佐々木静子

    佐々木静子君 実はね、これは証取監査についての分だと思いますけれども、この監査意見内容、四十七年三月期決算大蔵省所管会社六百四十七社についての、この限定意見のついたものについて、限定意見がついたのが二百九十一件という資料をいただいておるのでございますけれども、二百九十一件のうち継続性変更の問題で限定意見がついたのが実に百二十七件というふうに大蔵省のほうの統計で拝見しているわけでございまして、私この統計から見ましても、この継続性原則というものがたいへんに問題の多いことになるのじゃないかということをたいへんに懸念するわけです。  それから民事局長は、この企業会計原則についてはこれは大蔵省所管だとおっしゃいますけれども、この証取監査の段階においてはこれは大蔵省所管かもしれませんけれども、今度はこの財務諸表規則とそれから商法上の規則とをこれは調整して一致させようというのが大きなねらいでございますから、そうしますと、これは大蔵省所管だとばかりはとても言い得ないのじゃないか、むしろこれは半分以上は法務省所管になるのじゃないかと思うわけなんです。そうしますと、この商法の三十二条の二項で「公正ナル会計慣行」という規定があって、これが企業会計原則というものと非常に密接な関係にあるということはよくわかるわけでございますが、企業会計原則というものもこれまた流動的で、しかも法律ではない、企業会計審議会でそれがつくられていくということになれば、商法の中に——外ワク商法という法律でできても、中身の結局一番大事な部分が企業会計審議会できめられた事柄がそのまま入ってくるのじゃないか。そうなってくると、国民の目の届かないところで企業会計原則というものが用いられ、しかもそれが商法上の公正なる会計慣行というまあ非常にあいまいなことばで伸縮自在に使われる。そうなってくると、やはりここら辺はたいへんに問題が多いんじゃないか。いま民事局長は、継続性原則というものは肯定しているんだと、これははっきりおっしゃいましたが、肯定していらっしゃるとすれば、これはやはり商法上の規定のどこかでその点を明らかにするとかあるいは特別法でやはり継続性原則というものをはっきりとうたうと、そういうふうなことがなければ、商法というものはこういう国会審議を経て国民の監視の後に、まあかりに改正したとしてもですね、肝心の中身が私どもから全然目の届かない、しかも大蔵省所管であるところの企業会計審議会でいろいろと——かりにですよ、まあそういう変なことはなさらないとは思いますけれども、しかし国民の目の届かないところでつくり変えられていくということはやはりたいへんに危険なことではないかというふうに私は思わざるを得ないわけなんです。そこら辺、何かいま民事局長のおっしゃった御答弁商法の中に確立するか、あるいは特別法なり何なりで継続性原則というものはあくまで保持しなければならない、保持するんだということをおうたいになるか、そこら辺のお考えはいかがでございましょうか。
  19. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 私、先ほど企業会計原則と「公正ナル会計慣行」との関連について申し上げましたけれども、これはあくまで企業会計原則が公正な会計慣行と一致しておるということを前提としての議論でございまして、かりに企業会計原則継続性原則が必要であるにもかかわらずこれを認めないということにいたしました場合に、企業会計原則内容が変わったから直ちに公正な会計慣行が変わったということにはならないわけでございまして、やはり公正な会計慣行として継続性原則が必要である以上、企業会計原則内容にかかわらずやはり継続性原則はこの商法規定を通じて守らなければならないと、こういうことになっていると、そういう意味になると思うわけでございます。継続性原則について商法規定を置いたほうがいいではないかとおっしゃいます。あるいはそういう考え方もあろうと思います。あろうと思いますが、今回の改正におきましては、実は法制審議会でそこまでのこまかいこの点についての御審議をいただいたわけでございませんので、今回の改正案には特にそこまで言ってないわけでございますけれども趣旨は、公正な会計慣行というものが現実にある、それをしんしゃくする、つまりそれを取り入れて判断しなければならない、こういう趣旨規定したつもりでございまして、まあ法文上明確にするかどうかは別といたしまして、継続性原則が必要であるという点におきましては、この商法考えははっきりしておる、このように考えておるわけでございます。
  20. 佐々木静子

    佐々木静子君 民事局長の御答弁のように明快ではっきりしているのならば、何かこれを法文上に明らかにすることをお考えになっていただいたらどうか。というのは、次に質問しようと思う引き当て金の問題その他につきましては、これ商法上に規定があるわけでございます。私どもこの引き当て金というものについては、これは国民サイドから見ると非常に不満を持っているわけなんです。結局肝心のこの継続性原則を否定したらいいと考えている者は、これは否定することによってぼろもうけをしようと、あるいは粉飾決算をしようと思っている人はともかくとして、まともな人間はみんな継続性原則というものは確立してほしいというふうにだれもが思っているわけでございますからね。そのようにみんなが思っていること、しかも提案者としても、それはぜひとも継続性原則というものは確立するんだとおっしゃっている以上、この国民疑惑をなくするためにも、何らかの形でそれをおうたいになるおつもりはありませんか。そうしていただくと、商法問題について非常に心配してらっしゃる多くの方々が、やはり継続性原則というものはここではっきりしているんだということで安心なさるんじゃないか。これ、形だけ見ると、皆さんの御心配というものは全く杞憂にすぎないというふうに片づけてしまえる問題じゃないと思うんです。いままであったところの「正当な理由」というものも排除されておりますし、非常にこの継続性原則というものが形の上では後退しているということは明らかでございますので、それがそうでないというのであれば、法案提出者とするとそういう考えは全然ないというのであれば、そのことをやはり何かのかっこうで残していただかないとなかなか安心できないという気持ち、国民疑惑を持つのは無理がないと思うわけなんです。そこら辺についてもう一度御所信を伺いたいんですけれども
  21. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 御説まことにごもっともだと思います。従来の商法考え方と申しますのは、会計というのは特殊専門的な技術である、したがって、これを商法の中に規定することは適当でないと、こういう考え方で当初の商法というのはできておると思うわけであります。そういう意味会計規定というのもきわめてわずかでございまして、三十七年に一部改正が行なわれましたけれども、これとても必要最小限度修正というのにとどまっておるわけでございます。したがいまして、今後仰せのように商法の中に会計の重要な事項を織り込んでいくということは、やはりこれからの推移を見ながら十分検討しなければならない問題であるというふうに存じます。そういうことで、ただいまの御趣旨は今後十分法制審議会等にも報告をいたしまして、そういった点についてさらに商法改正を加えることの可否と申しますか、そういった点につきまして法制審議会のほうでも審議をしていただきたい、このように考えております。
  22. 佐々木静子

    佐々木静子君 いますぐにといいましても局長としてもどうしようという御答弁はなさりにくいと思いますので、また別の機会にこのことについて重ねてお伺いしたいと思います。  大臣がいまお越しになったばかりでたいへんに恐縮でございますけれども、いまお話ししておりますのは、この商法に反対しているというよりも、商法改正の持っている反動的な性格というものについて非常に心配しておられる一部の国民方々から、商法三十二条二項の「公正ナル会計慣行斟酌スベシ」という規定にのっとって今度企業会計原則修正されて、これが商法規定の中に導入されるというと、その結果大企業利益を隠す、これが合法的に利益を隠しやすくなるんじゃないか、その結果便乗値上げその他が行なわれて国民生活が破壊される。まあここに先日ごらんいただいた文書に載っているわけでございますが、いま法務省並び大蔵省に伺いますと、企業会計原則のうち一番国民心配しておるところの継続性原則をこれは否定するつもりは毛頭ないので、これは継続性原則というものはあくまで確立していきたいというお話でございまして、継続性原則は確立されているとなると、これは大企業利益を隠す、あるいは利益が少ないときに利益が多かったように会計操作をするというような問題がかなり避けられるんじゃないかということで、もしそれが継続性原則というものが確立されているとすれば国民も安心できると思うわけなんですが、これが商法規定の中にうたわれておらないわけでございますから、むしろ形の上で継続性原則は後退したということでたいへん心配されているわけです。そういうふうな事柄についていま大蔵省法務省から御答弁伺っておりますと、後退しているどころじゃなくて、きっちり確立しているんだとおっしゃっているわけですが、ただ法文上の根拠がないわけなんです。そこらあたりについて非常にこれは国民が関心を持っている事柄でございますので、大蔵省あるいは法務省が痛くもない腹を探られないようにしようと思えば、これは法文上の根拠というものをやはりつくる必要があるんじゃないかと思うわけで、先ほど局長に御所見を伺っているわけでございますが、そういうことについて大臣とすると前向きに今後取り組んでいただけるかどうか、そのことを、お越しになって間なしでたいへんに恐縮ですけれども、御所信を伺いたいと思うわけです。
  23. 中村梅吉

    ○国務大臣中村梅吉君) いま両方の事務当局が御質疑に対してお答えをしておりますとおり、われわれといたしましてもこれから前向きに、いまお話しのとおり経理の隠しとかあるいは繰り延べとかというような操作ができるだけできないようにすることが経理会計関係を明朗にする基本だと思いますから、そういう点について十分留意してまいりたいと思います。
  24. 佐々木静子

    佐々木静子君 大臣からいい御答弁いただきましたので安心いたしましたが、立法上の措置ですね、そういう事柄についても今後大臣は前向きの姿勢でお取り組みいただけるでしょうか。いかがでしょうか。
  25. 中村梅吉

    ○国務大臣中村梅吉君) 御承知のとおり法務省では法制審議会という制度がありまして、いろいろな立法をする場合にはいつもそこに諮問をいたしまして専門家の人たちに十分議を練っていただいてそれから成案を得るというたてまえになっておるものですから、当局だけでかってにするというわけにまいりませんが、法制審議会とも十分今後協議をいたしまして万全を期してまいりたいと、かように思っております。
  26. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひそのように実現していただきたいと思うわけでございます。  それでは次に、やはり企業会計原則修正に関連いたしまして、これまた国民が一番関心を持っておるところの引き当て金の問題について伺いたいと思います。  その前に、銀行局の方お越しでございますか。——実は、これはこの問題そのものではないかもわからないんでございますけれども、銀行というものがいわゆる大企業でありながら証取監査の適用も受けておらない、特別の扱いを受けておるわけでございますが、今度商法改正されるとすれば、これは当然会計監査の適用を受ける対象になると思うわけなんでございますが、この銀行の引き当て金というようなものが私も非常に納得のいかないところがたくさんあるわけで、これはちょっと資料としてお持ちいただいておりますか。できましたら四十七年度上期でも下期でもけっこうでございますが、全国の都市銀行からの貸し出し額の総額というものがおわかりでございますか。
  27. 清水汪

    説明員(清水汪君) お尋ねの都市銀行の貸し出し額といたしましては、昨年の九月決算期の、九月末の貸し出しというものは三十九兆八千五百四十五億円という数字でございます。
  28. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは写し一部ありましたら、一部ちょっといただけませんでしょうか。——都市銀行の貸し出しがこれはどういう単位になるのですか、三十九兆八千五百四十五億円で、そしてこれは現実にですね、現実にというよりも、銀行の貸し倒れ引き当て金というものがですね、いまの税法ではどのようになっているか、ちょっと御説明いただきたいわけです。
  29. 清水汪

    説明員(清水汪君) 現在、法人税の規定におきましては、銀行の、金融機関の貸し倒れ引き当て金の繰り入れ限度率は、期末貸し出し金残高の千分の十二ということに規定されております。しかしながら、金融機関につきましては統一経理基準というものを銀行局長通達によりまして定めてございます。で、金融機関の場合には、実際にはその統一経理基準によりまして、現在で申しますれば千分の十五を積み立て限度額ということに定めてございます。
  30. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、この三十九兆八千五百四十五億円のうちの千分の十五という金額、幾らになりますか、銀行の方計算が早いでしょうからおっしゃっていただきたいと思います。
  31. 清水汪

    説明員(清水汪君) ちょっと補足的に御説明を申し上げたいと思いますが、ただいま申し上げました法人税の規定の千分の十二という積み立て限度率は、一昨年の三月期までは千分の十五でございました。で、約二年前にそれが千分の十二に引き下げられたわけでございますが、当時の経理基準によりまするところの積み立て限度率は千分の十八ということでございました。したがいまして、私どものほうといたしましては、銀行局長通達を改正いたしまして、一昨年の三月期から以降三年六期——銀行の事業年度は半年でございますので、三年六期の間に千分の十五に向かって段階的に調整をしていくようにという措置を講じておりまして、現在約二年たったところでございまして、あと、ことしの三月期及び九月期というふうにまだ二期その過渡期間があるわけでございまして、したがいまして、現在のところはおおむね千分の十六ぐらいの段階まで積み立て限度率が下がってきておる、こういうふうに申し上げられると思います。で、現在、四十八年の、昨年の九月期で貸し倒れ引き当て金として積み立てておりますものは、お手元にあげました数字にもございますように、都市銀行の場合には七千八十七億円という数字でございます。
  32. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの話ですと、七千八十七億円というものが引き当て金として積み立てられているということは、結局利益の中からそれが除かれて、経理上は利益には出てこないで損金として勘定されているわけなんでございますね。
  33. 清水汪

    説明員(清水汪君) 結論として申しますれば、この貸し倒れ引き当て金は洗いがえ方式でございますが、経理の上では毎期洗いがえいたしました上で、繰り入れる場合には経理上の損金科目で損益計算をいたしておるわけでございますが、その基本は法人税法のほうの貸し倒れ引き当て金考え方に基づいているということは申し上げられるかと思います。
  34. 佐々木静子

    佐々木静子君 法人税法の根拠があるとかないとかの問題じゃなくって、現実に私、銀行業務のこと詳しくございませんけれども、銀行でお金を貸す場合には必ず担保を取っておる、そういうことから、千分の十五とか十六とかいう貸し倒れ引き当て金というもの自体がすでに現実離れしているんじゃないか。現実に銀行も担保を取っておっても、貸し倒れになることも多少あるとは思いますけれども、たくさんの中には。現実に起こっておる貸し倒れというものはどのぐらいになるんですか、都市銀行の総額は。
  35. 清水汪

    説明員(清水汪君) ただいまお手もとにお届けいたしました資料に数字が書いてございますけれども、この貸し倒れの償却と申しますか、要するに貸し金の償却額の推移を見てみますと、金融情勢とかあるいはさらにその基礎になります経済一般の情勢の推移に応じまして、かなりのフレが出ているというのが実態であろうかと思いますが、最近の数字はそこにございますように、やや多い年で七十九億円というような償却額がございます。四十七年度はわずか二十億円程度の数字で、いままでにない非常に低い数字でございますが、ごく最近のところでその原因を考えてみますと、一つは非常な金融緩和の情勢が過去御承知のように二年ほど続いております。そういう中ではやはり貸し倒れの償却というような事態がきわめて少なくないというようなことが言えるかと思いますが、ただ、ただいまお話しのきわめて現実離れではないかという点でございますが、一つの御指摘といたしましてはそういうふうに見ることもできようかと思います。しかしながら、最初に申しましたように、やはりかなりの経済変動というものが短期ではなくて長期的にもあり得るという事態に備えて、やはり一般国民から広く預金を集めて営業しているという、そういう金融機関の特殊な性格に照らしてみまして、これはいかなる事態に対しても万全の備えをしておくことが望ましいというふうに従来考えられてきたわけでございまして、そういう観点からこの貸し倒れ引き当て金の問題につきましても、処理をしていくということは申し上げられるかと思います。
  36. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはね、いまはからずもおっしゃったように、昭和四十七年のこの都市銀行の現実に起こっているところの貸し出し金の償却額というものがわずか二十億円である。これ、少ないからといって文句を言うわけではないですけれども、ところが、その四十八年度の貸し倒れ引き当て金というものがこれの何倍になりますか、三百倍ですね。三百倍というものが引き当て金として実際はもうかっているものの中から損金として経理上は利益が隠されている。結局それだけ銀行がもうかっているのに、その実際に要るところの貸し倒れ金の何と三百倍というお金を、これは合法的に税法という隠れみのの中に入って利益を隠している。まあいろいろと理屈はおつけになりますけれども、私ども、だれが見ても三百倍もの利益を隠すというようなことは、これはけしからぬじゃないかというのが、これはやはりおそらく国民はだれもそう思うと思いますよ。まあいろいろと理由をつけて、経済変動のときに預金者の保護とかなんとかおっしゃるけれども、これは全く銀行がもうけを隠しているの一語に尽きるんじゃないかと思いますけれども、そういう点について、しかも証取監査すら受けておられない。そこら辺のところは、これは監査を受けたところで、税法上の規定があるんであればこれは合法化されて、監査上もこれは全部オーケーで通るんだとおっしゃるだろうと思いますけれども、このような、これは企業会計原則の問題というよりも、いまの法人税法、あるいはこの銀行を含めての税法の問題だと、法人税の問題だと思いますけれども、これはあまりにも大企業擁護、企業のもうけを隠すことにいまの税法がいかに加担しているかということをはっきりと物語っていると思うんですが、大臣はその点どうお思いになりますか。二十億の貸し倒れ金が四十七年度に都市銀行の全部の合計で出ておる。それに対して、その翌年の四十八年度のこの貸し倒れ引き当て金が、三百倍の七千八十七億円というものが引き当て金としてこれだけの利益が損金のほうに回されて利益が隠されている。そういうふうないま不当な法人税法というものがございまして、つまりその隠れみのの中に大企業はそのもうけ過ぎを一生懸命に隠しておる。これたいへんな問題だと思うんですけれども、そのあたりこれは大蔵省所管かもしれませんけれども、今度は商法上の会計監査の問題なども起こってくるようなわけでございますので、大臣はこれは直接御担当じゃないかしりませんが、その問題について率直な御意見を、これでいいとお思いになるか、これはやっぱり問題だとお思いになるか、そこら辺をちょっと端的におっしゃっていただきたいと思います。
  37. 中村梅吉

    ○国務大臣中村梅吉君) 私も銀行のことがよくわかりませんけれども、銀行というのは預金者保護ということがまず第一に考えられなければならない。どんな世の中に経済変動が来ても、預金者だけは完全に保護されているということでなければ大衆の擁護はできないと思うんですが、そういう意味からおそらくそういう制度ができておると思います。まあ、従来も一七%であったのが一五%になり、あるいは基準が一五%が一二%になりしておるようでございますが、これは将来長い目で見ていって経済変動が常にありますから、まあいろいろ経済変更に基づいて銀行がしょわなきやならないものも出てくると思うんですが、そういうものを長い目で見ていって、これはもっと下げてもよろしいというめどがつけば、おそらく大蔵当局としてはまた考え直して率を引き下げていくというようなことが可能だと思いますが、現段階ではそれが適当か適当でないか、どうも私には明言いたしかねるようなわけでございます。
  38. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから重ねて銀行のほうに伺いますけれども、いま貸し倒れ引き当て金のことを申し上げましたが、やはり同じく引き当て金の中に退職給与引き当て金というのがございますね。この銀行の引き当て金では、銀行では退職給与引き当て金というものをどのような範囲で認めていらっしゃるか、まずお答えいただきたいわけです。
  39. 清水汪

    説明員(清水汪君) ちょっとお答え申し上げます前に、一点だけ先ほどのことにつきまして補足させていただきたいのでございますが、都市銀行の貸し倒れ引き当て金の積み立て金額が七千億円と数字を先ほど御説明いたしましたけれども、税法との関係におきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、税法で損金で認められておりますものは千分の十二というのが現在の限度でございます。私どもはそれに加えまして、銀行経理のあり方の問題という観点から、ただいま申しましたように、現在で言えば千分の十五ということを基本にして、いまはしかし経過期間中でありますからそれよりやや高いところに積み立て金が行なわれている。その上回っている分は、もちろんこれは有税と申しますか、税の計算の上では損金には認められていない部分でございます。したがいまして、全体の約十六分の十二は損金である、四分の三は損金である、四分の一は損金ではない、こういうのが実態でございます。  それから、ただいま大臣からもお話がございました点に関連いたしますけれども、この千分の十二という法人税の扱いにつきましては、四十九年度の改正の中ではこれをさらに引き下げるということもすでに予定されているということを御報告申し上げておきたいと思います。  それから、ただいまの御質問でございますが、退職給与引き当て金につきましては、やはり統一経理基準の中におきまして、これは事業年度末におきまする退職給与を支給しなければならない人員につきまして支給をしなければならない金額をその時点で計算しましたいわば総額と申しますか、そういう金額を積むように、引き当てるようにということを経理基準規定しておるわけでございます。
  40. 佐々木静子

    佐々木静子君 その経理基準内容ですね、結局、この退職する人が受け取るべき退職金というのは、これは現在銀行につとめている全員が退職した場合に受け取るべき退職金を引き当て金として積み立てているわけですね。それに相違ないですね。
  41. 清水汪

    説明員(清水汪君) 退職給与規程というのが各銀行にあるわけでございます。……
  42. 佐々木静子

    佐々木静子君 結論でけっこうです。
  43. 清水汪

    説明員(清水汪君) 結論といたしましては、規程に基づいて計算しておるわけであります。
  44. 佐々木静子

    佐々木静子君 私は、銀行の税法というのはこれはどういう過程でどうできたということについては私詳しく調べておりませんけれども、これはべらぼうな引き当て金じゃないかと思いますね。現に、全国の都市銀行の人が一つの期末——六カ月ですね、その間に全員が退職するなんというようなことは普通考えられないんじゃないですか、常識で考えたって。これは銀行につとめている人の退職金を保証する意味だとかなんとか取りつくろったこともおっしゃるだろうとは思いますけれども、そういう常識で考えられないようなことですね。全員が退職した場合に、退職金が幾ら要るか、そういうことを引き当て金として全部利益からはずして、利益の中からはずして隠してしまうというような——私は税法はあまり専門じゃないので詳しくはわかりませんけれども、率直な国民感情として、銀行のこれは法律のワクの中ではあろうと思いますけれども、非常に一般国民の常識から考えるとかけ離れた経理処理じゃないか、私はそう思うんですけれども。あなたに伺っても、あなたは、いやそうじゃないときっとおっしゃると思いますが、これは国民のだれが見ても銀行が利益をいかに合法的に隠しているか、これは何だかんだ理屈をつけたって、すなおに国民感情としてこれは納得できないんじゃないかというふうに思うわけです。  これは銀行のことだけいま申し上げたので、あるいはさっきの大臣の御答弁にもあったように、銀行は多くの国民のお金を預かっているという公共的な性格が強いからこのように保証しているんだというふうにあるいは解釈もできるかもわからないと思うのですけれども、たとえば、これは銀行だけじゃない。きのうの朝日新聞を見ましても、これはいま問題の、つくられた石油危機によって石油業界が非常にもうけた。この決算の第一号、東亜燃料工業がこの十二日に四十八年の十二月期の決算を発表しておりますけれども、この中で三五%——石油危機といわれながら東燃か三五%の大幅な利益を得た。そして、その中で特別損益の項目で、前期わずかに二千九百万円だった特別損失を今度は十二億五千万も計上した。そして、その内訳は、価格変動準備金の繰り入れ三億六千九百万円、これ、前期は六百万円だけしか計上していないものを三億六千九百万円計上し、貸し倒れ金の繰り入れは、前期はゼロであったのに今度は二億四千百万円を計上している。海外投資等損失準備金の繰り入れば、前期はわずか三千万円であったのを今度は一躍三億円に増額している。まあこういうふうなことで、いま、この新聞にも書いてございますが、国際石油資本の系列の中にがっちりと組み込まれているために貸し倒れなどというものが現実には起こりっこないにもかかわらず、このいま申し上げましたような二億四千百万円というものを計上し、しかもこれ前期は貸し倒れ引き当て金はゼロであったのに、今度はそれだけのものを計上した。この一つを見ても、いかにもうけている企業が、このいろいろな準備金とか引き当て金というような名目でいかに利益を隠しているかということがはっきりしていると思うわけなんです。  それから、これは異常危険準備金というようなものが、これは四十八年度国税で百九十六億円、地方税で二百二十五億円というものが、これが実際のもうけをこの異常危険準備金という名目で隠している。これは大蔵省の御三家といわれるところの損害保険会社十三社にそのような扱いをしておられる。  また、これは関西電力の四十六年九月の決算を見ますと、純利益は百十億円であるのに対して、引き当て金あるいは準備金名目の積み立て金というものが百億円にのぼっている、そういうふうなことですね。ですから、そういうことで、非常な税金の——法人はもうけたものを隠して、事実上税法という隠れみのの中で大きな、われわれ国民から見ると気が遠くなるような大きなお金の脱税を行なっており、しかもその隠れみのになっているのが、失礼ながら大蔵省である。私ども先ほどからの御答弁を伺っていてそう思わざるを得ないわけなんです。これ、主税局の方もお越しのようでございますが、その点についてこういうふうな、まあ、いま大企業がもうけ過ぎている、この利益金を国民に還元しようじゃないかというような立法を社会党などがいま中心になっていろいろ考えているような時代に、こういうふうな大企業のもうけを隠すことの法律が、いま税法が存在し、またその税法があるから法律の範囲内ならばこれは合法なんだというような考え方をもし主税局がいつまでも堅持されるならば、これは国民としては黙っておれないと思うんです。その点について主税局のお意見を伺いたいわけです。
  45. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) お答え申し上げます。  税制で各種の引き当て金または準備金の規定がそれぞれ法人税法あるいは租税特別措置法上規定されておりますけれども、基本的に商法ないしは企業会計原則関係におきましては、われわれのほうはその税法特有の目的から、ある一定の限度を画しておるというのが税のたてまえでございまして、その範囲内において企業会計原則あるいは商法にのっとって経理していただきたい。で、経理される場合に、税法がその経理の自由を束縛するようなことのないよう、各種の規定を設けておる。たとえば租税特別措置法上の準備金につきましては、これを利益または剰余金の処分で行なうことすら認めている状況でございます。本法上の引き当て金につきましては、これは本来損金とみなすべきもの、あるいは評価引き当て金あるいは負債性引き当て金趣旨を持っている見地から そういうふうに考えられるものを認めるという趣旨から、法人税法上はやはり損費として計上していただく、その場合にこれを税は損費として税を計算するというたてまえになっております。したがいまして、ただいま先生のおっしゃいましたように、税が、事実上は税法がそこにあるがために、そこに入りやすいという問題は確かにございますと思いますけれども、税がそこにあるから自動的にそこに商法違反をして、あるいは企業会計原則に反してもぐり込んでくることということは税といたしまして考えておらないわけでございます。したがいまして、先生から、もしおしかりを受けるとすれば、租税特別措置法の規定が甘きに失するのではないか、あるいは法人税法上の貸し倒れ引き当て金等の限度額が甘きに失して規定されているのではないかという御叱責かと考えておりますが、この点につきましては毎年、常時見直しを心がけておりまして、今回につきましても、ただいま銀行課長が申し上げましたように、一二%から一〇%に貸し倒れ引き当て金の率をカットすることを実は考えておる、こういうふうな状況でございまして、異常危険準備金についてもカットをいたしました。売買損失準備金につきましてもカットいたしておりまして、常時見直しをしておりますということを申し上げさしていただきたいと思います。
  46. 佐々木静子

    佐々木静子君 主税局のほうから、租税特別措置法あるいは法人に関する税法の甘きに失する点がないように常時監督しているというお話があったわけですが、私は商法改正問題に関しまして、なぜこのことをお伺いするかといいますと、今度の改正の中には入っておりませんけれども商法規定の中に引き当て金ということがはっきりとうたわれておりますので、この引き当て金の問題は今度の改正条項の中に入っていないにしても、やはり商法審議する上に大いに検討しなければならないんじゃないか。そして、これがいまおっしゃいました会計監査との関係というものが大いにあると思うんです。いま甘きに失するかもしれないと、そのようになってはならないということで、いろいろと行政上配慮をしていらっしゃるというお話でございましたが、たとえばこれは銀行の例は普通の民間会社とちょっと特殊な会社なので必ずしも適切でないかもしれませんが、いまの例でいきますと、二十億の貸し倒れ金の償却額しかないのに、それの三百倍の引き当て金というものが計上されている。そういう場合に、これは銀行に対するいまの銀行局長の通達からいうと、その範囲内であるから合法かもわからないんですが、これに対して今後商法上の会計監査が行なわれた場合に、これは不当な引き当て金ではないかということを会計監査指摘することができるのかどうか、まずそのことを伺いたいわけです。これは大蔵省になるわけですか……。
  47. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) お答え申し上げます。  銀行等、監督官庁が——ある業種に属します会社の財務諸表の作成方法等につきましては、現在財務諸表規則によりまして当該官庁が定める法令等によることとされておりまして、公認会計士監査もこれに準拠して実施されております。御指摘の金融機関に対する監査につきましては、その具体的な取り扱いは今後所要の検討の上、定めていくことになりますが、ある業種、たとえば銀行につきまして、その主務所管官庁がその業種の状況に即応した経理基準を定めている場合におきまして、その内容が合理的であると考えられます場合には、会計監査におきましてもそれが基準となっていることは合理性があるというふうにやはり解釈するのではないかと考えます。
  48. 佐々木静子

    佐々木静子君 もしそのようにその税法なりその他の規定会計監査というものが拘束されるとすれば、これは私全く、まあ全然意味がないとは言わないですけれども、やはりこのいまの税法なり租税特別措置法というようなものが大企業利益を隠すことの隠れみのになっていることは、いまの私がちょっと例をあげただけでも、これ、だれが聞いてもはっきりしていると思うんですが、そのワクに縛られての会計監査しかできないんだということであるとすれば、これは企業会計原則を導入して会計監査を行なうということになったところで、これは全く大資本擁護の税法なりそれに関連する法律の範囲内でのことしかできないとなれば、これは正直に言って公認会計士なり監査法人が良識に従って監査をすることができないんじゃないか、私はそう思うわけなんです。この法律の範囲内であっても、これはいかにも不当だと思う場合はこれがチェックできなければ、これは何にも意味ないんじゃないか、そのように思うんですけれどもね、これは法務省はどうお考えですか。
  49. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 純粋に理論的に申し上げますと、商法のたてまえは商法のたてまえ、税法のたてまえは税法のたてまえとそれぞれ別個のたてまえがあるわけでございます。したがいまして、商法上妥当であるかいなかという点は、税法にかかわりなく商法の目的に照らして判断すべきものである、こういうことになろうと思います。したがいまして、まあ税法上の先ほどの例に出されました限度というものが参考になる場合はあろうかと思いますけれども、しかし判断においてはあくまで独立したものがあるというふうに思うわけです。  なお、御参考までに申し上げますと、商法引き当て金というのは、目的に沿う範囲内、合目的の範囲内で認められると。しかも、それは個々の企業が決算を行なうときに、その具体的な状況に応じて判断をするということが一つあるわけでございますし、それからさらに商法の場合には、その引き当て金というものは、これを設けてもよし、設けなくてもよい任意なものでございます。したがって、監査の関係におきましては合理的かどうかということが問題になるわけでございますが、これをさらに株主総会に提出いたしまして、その決算の承認を求める場合におきましては、株主総会は、これを、引き当て金を計上しないで利益のほうにあげろということもできるわけでありまして、その辺は商法のたてまえといたしましては、あくまで会社のまあ最終的には株主総会で決定をするというたてまえになっておるわけでございます。
  50. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの局長のお話伺っておりまして、会計監査というものがかなりここで意義を持ってきているものだということが私は確認されまして、まあ安心したわけなんでございますけれども、そうしますと、重ねて伺いますと、その引き当て金に限らず準備金など、これが不当だと思うときには、これは公認会計士あるいは監査法人がこれに対して限定意見をつけることもできる、これは商法上は当然に株主の保護ということが一番の基本になるんじゃないかと思いますので、その観点から見ると、利益が一〇〇あるのに、これを税法のぎりぎりの範囲内まで全部落としてしまって利益がないようにするということ自身が商法の精神と非常に反していると思うわけなんですけれども、そういう点は商法の精神にのっとって専門的なプロフェッショナルな会計監査をする人が監査意見を出すということが可能なわけでございますね。そうだとすると非常にこの会計監査というものが社会的な意義を持ってくると思うわけなんです。いかがでございますか。
  51. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 監査があくまで商法立場においてなされなければならないという点は仰せのとおりでございます。  それから株主の利益を第一に考えるという点でございますが、まあ商法は株主の利益と、それからもう一つ債権者の立場というものを考えなければならないわけでございまして、まあ特に極端なタコ配等を禁止しておるというのも債権者を考えているわけでございます。そういう意味におきまして、適切な運用ということは、まあ引き当て金についても考えられるわけでございまして、会社の経営者が妥当と認める引き当て金を計上するということは、これは商法立場から申しまして、株主の利益配当が若干それによって少なくなる場合がありましても経営としてはやむを得ない、こういう場合もあり得ると思います。
  52. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあそういう御意見を伺いますと、たいへんにこれからの会計監査というものが意義あるということについて思うわけですけれども、このいま問題になっておりますところの特別引き当て金のうちで、この準備金制度がたいへんに問題になっておると思うんですが、この企業経理の健全化とか明瞭化が現在たいへん問題になっておるわけですが、この準備金の経理方式として利益処分方式によるように、措置するようにこれは配慮されるお考えがあるのかないのか。私どもはこのような準備金がいま損金経理方式と利益処分方式とについて両方が認められている、これが実に企業の側において、損金に回したほうが便利なときには損金になり、また利益に回したほうがぐあいのいいときには利益に回す、これが粉飾決算あるいは逆粉飾決算に悪用されているわけでございますが、これは大蔵省に伺いたいんですが、これらは利益処分方式によるようにすべきではないか、そこら辺の措置についてどのようにお考えでございますか。
  53. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいまの御質問は、商法改正の暁において、企業会計原則修正案が特定引き当て金に関してどのように取り扱われるかということかと考えますが、商法二百八十七条ノ二の要件に適合する限りにおきましては、会計計算上特定引き当て金を計上しても違法でないことは当然でございます。しかし特定引き当て金は、評価引き当て金でも負債性引き当て金でもないものと観念されるわけでありまして、修正案考え方におきましては、それを損益計算書の上で営業損益計算なり、経常損益計算なり、純損益計算の区分で表示せずに、当期の営業成績とは区分して、未処分損益計算という区分を立てまして、損益計算書で表示すると、そして一方貸借対照表の表示につきましては、商法二百八十七条ノ二で「特定ノ支出又ハ損失二備フル為ニ引当金ヲ貸借対照表ノ負債ノ部ニ計上スルトキハ其ノ目的ヲ貸借対照表ニ於テ明カニスルコトヲ要ス」と規定されておりますので、特定引き当て金は負債の部に記載せざるを得ませんが、本来の負債との区分を明らかにするために、負債の部に特に特定引き当て金の部を設けて記載するというふうに統一したわけでございます。したがいまして、私ども商法上認められておりますものは、あっちこっちに分散して表示するよりは、企業開示においては一まとめにまとめて表示すると、そうして損益計算書においては純益とは別に未処分損益計算の部に計上し、そして貸借対照表の部では、流動負債、固定負債と、またもう一つ負債の部に特定引き当て金の部を設けるということで明瞭性をはっきりさせようということで対処しているわけでございます。
  54. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまいろいろ御説明いただいて、私、会計法弱いものですのですぐにぴったりとわからないのでございますが、結局そうすると、利益処分方式によるように措置をするという方向には進んでおるわけですか、おらないわけですか、結論だけおっしゃっていただきたいんです。あまり長々とお話しいただいておってちょっとのみ込み悪かったんですが。
  55. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 会計……
  56. 佐々木静子

    佐々木静子君 あまり長い説明けっこうです、結論おっしゃっていただいたら。
  57. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) はい、わかりましたでございます。この特定引き当て金は任意引き当て金でございますから、それで、企業がそちらの任意引き当て金として特定引き当て金をなにする場合にはさっき御説明したとおりで、しかし、企業利益処分方式によるという場合には、それは当然貸借対照表の資本の部に任意積み立て金として記載されるということになるわけでございます。
  58. 佐々木静子

    佐々木静子君 その点については、私ももう少し検討さしていただいて、次の機会にお伺いしたいと思います。  時間がなくなってきておりますので、次の中間配当の件について伺いたいと思います。監査制度を改めて、監査期間を延ばすようになった関係から、株主名簿の閉鎖期間や基準日と株主総会の間の期限がいまの二カ月から三カ月に延びたこともあって、今後、会社によっては一年決算へ移行する会社がかなり多いのではないかというふうに考えられておりますけれども、その場合、どういう特典、どういう長所があるか、また、どういう短所が出てくるか、これを簡単に法務省から述べていただきたいと思います。
  59. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 半年決算を一年決算に改めた場合にどういう短所、長所が生ずるかという問題でございますが、まず長所といたしましては、決算が年一回で済むわけでありますから、したがって会計の締めくくりの決算書類の作成でありますとか、あるいはそれに伴う株主総会の開催でありますとか、こういったいろいろな事務が一回減るわけであります。それに伴いまして、会社のそういった事務に関する労力とかあるいは費用が少なくて済む、こういうことがあろうと思います。それからもう一つ大事なことは、年二回の決算でございますと、季節によって売り上げが違うという業種がございます、このような業種では、上期には利益が少ないけれども下期には多いということになりまして、その決算が期ごとに非常に違ってくると、これは企業の安定を害しますので、企業としてはなるべくその利益の平準化をはかりたいという考えのもとに、多少粉飾めいた決算を行なう可能性が出てくるわけであります。そういった弊害を防止することにも役立つのではないかというふうに思うわけでございます。  それから弊害といたしましては、これは弊害と言えるかどうかわかりませんが、株主といたしましては現在年二回配当を期待しておる、しかしながら決算が一回になりますと、年に一回しか配当をもらえないという点が一つ問題になろうかと思います。
  60. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは大ざっぱに言いまして、現在の上場会社——一部、二部を含めまして、年二回決算の会社と年一回決算の会社はどのぐらいの数になっているのか、ちょっと御指摘いただきたいわけです。
  61. 小幡俊介

    説明員(小幡俊介君) 年一回決算と年二回決算の会社でございますが、私どものほうで承知しております四十七年の十二月末現在におきます有価証券報告書提出会社二千六百二十九社についての内訳でございますが、年一回決算の会社が千二百六十、全体の四七・九%、年二回決算の会社が千三百六十九、全体の五二・一%、こういう数字になっております。
  62. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま民事局長のほうから年二回配当との関係が一年決算の場合の長所、短所に関連してお話ございましたが、今度の中間配当の改正によりますと、年二回の配当というものが考慮されるわけでございますけれども、この制度はいまの監査制度改正という精神から考えますと、やはり逆行するような不健全な要因も含んでいるのではないかということが懸念されるんですが、その点をどのようにお考えでございますか。
  63. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 中間配当は今回の改正案の二百九十三条ノ五によって認めようとしておるものでございまして、営業年度を一年とする会社が、その一営業年度の中間におきまして一回に限って取締役会の決議によって金銭の分配をするという制度でございます。したがいまして、この中間の配当につきましては株主総会の決議もないし、そのための特別の監査というものもないわけでございまして、そういう意味で御懸念はもっともであろうと思います。しかしながら、この法律案におきましては、かなり中間配当を行なう場合に厳格な制限を加えておりまして、この制限の範囲内で行なうのであればそういった心配はないのではなかろうかというふうに思うわけでございます。どういう制限かと申しますと、中間の配当において分配すべき金銭というものは、その前期において会社があげました利益金、それの残額を限度として行なうという金額上の制限がございます。それからまた、その当期の営業成績があまり好ましくなくて、その当期の営業年度の終わりにおいて、たとえば赤字が出るというような場合には、この中間配当を行なってはならないと、こういった制限もございます。まあ、そういう制限のもとにこの中間配当というものが行なわれるわけでございますので、この条件のもとに行われている限りは、会社の経理がこれによって不当になるということはあり得ないというふうに考えておるわけでございます。
  64. 佐々木静子

    佐々木静子君 結局、現行の規定と比べて、株主にとってディスクロージャーの機会が減って、不利益を与えることがないということについて、十分御配慮されていると思うのでございますが、その点、十分に御配慮いただきたいと思うわけなのでございます。  それから、いまの御答弁の中にございました、この中間配当というものについて、金銭の分配ということばをお使いになりましたけれども、この金銭の分配というものの性格でございますね、これは利益の配当じゃなくて金銭の分配と法務省はお考えになっていらっしゃるとすれば、これは前期までの内部留保をあと払いするものなのか、あるいは当期の利益を前払いするものなのか、まあそこら辺、金銭の分配の解釈をちょっと伺いたいと思うわけです。
  65. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 前期の利益で留保しておいた分を分配するものであると、このように考えております。
  66. 佐々木静子

    佐々木静子君 この規定の中に「営業年度中ノ一定ノ日」という表示がされてございます。一定の日の到来によって、その日における株主が具体的請求権を持つようになるというふうに解釈されると思うのでございますけれども、この一定の日の株主というものを特定する方法ですね、それはどういう方法をおとりになることが予想されているわけでございますか。
  67. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) これは、その日現在における株主名簿によって特定するわけでございます。無記名の株式でございますと、株主名簿に記載がございませんので、これは別の規定があるわけでございますが、会社が公告をして届けさせるという措置をとることにいたしております。
  68. 佐々木静子

    佐々木静子君 この公告と株主名簿の記載と両方でございますか。そうしますと、株主名簿を閉鎖するということも普通考えられると思うのでございますけれども、そこまで法務省とすると考えておられるのか。また、株主名簿を閉鎖するとすれば、期間が、中間配当のことでございますから、たいへん問題になると思うので、長期間閉鎖するということになると、やはり株主保護というような点から問題じゃないかと思うのでございますが、その点について、どういうお考えでございますか。
  69. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) これは、私、実務のことは詳しくわかりませんので、はたして株主名簿を閉鎖する必要が事務上生ずるかどうかという点は、あまり自信を持ってお答えするわけではございませんが、この中間配当の場合には、必ずしも株主名簿を閉鎖しなくてもできるんではないかというふうに思っております。ただ、あるいは実務関係で何か必要が生じて閉鎖を行なうということもあろうかと思いますが、これはそれほど長い期間である必要はないというふうに考えております。
  70. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは一年決算に移行する会社が非常に多いというふうに私は聞いているわけでございますが、これは法務省のほうでは、どのように探知しておられるか。これは公布されるとすぐに施行される法律になっておったと思うのでございますけれども、そうなりますと、この六カ月決算から一年決算に移行する会社が、たちどころにたいへんに多くなるんじゃないか。そういうことについて、これは法務省、あるいは大蔵省になるのでございますか、大体どのような見当をおつけになっていらっしゃるのか、おわかりでございますか。
  71. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) その点ははっきり調査してございませんので、いま正確な数字でお答えすることができません。
  72. 佐々木静子

    佐々木静子君 私の聞いているところでは、かなり一年決算に移行する会社が多いということでございますが、銀行法などの規定で、銀行は三月、九月決算にきめられておりますが、銀行法の改正などによって銀行なども一年決算に持っていこうというようなお考えも、若干、そういうお考えがあるのかないのか、それ、ちょっと伺いたいと思います。
  73. 清水汪

    説明員(清水汪君) 御指摘のとおり、銀行法の規定によりまして、現在は三月、九月が決算であるということになってございますが、御審議改正が実施に移されました段階におきまして、銀行のほうが一年決算を選ぶ可能性が多くなれば、そういうことは可能であるような手当てはこれは必要であろうかと思っております。
  74. 佐々木静子

    佐々木静子君 せっかく銀行の方、出ていただきましたので、私ちょっと質問をさっき忘れておりました、いま証取監査の対象に銀行がなっておらないわけでございますけれども、これ将来、商法上の監査は、もちろん今度改正できるとなるわけでございますが、銀行も証取監査の対象に含めようという動きがあるのかないのか、ちょっとそのこともついでに伺いたいわけでございます。
  75. 清水汪

    説明員(清水汪君) その点につきましては、私どもがきめるというよりも、むしろこの問題のほうを主管しております部局でおきめいただくべき問題かと思いますが、私どもはその決定にはもちろん従うというふうに考えておるわけでございます。
  76. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは田中審議官でお答えできますか。
  77. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 少なくとも今回金融機関について商法会計監査人の監査が実施されることに伴いまして、その会計監査が行なわれる銀行につきましては、証取法監査についても監査を行なうという予定にしております。
  78. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではもとの話に戻りますが、この一年決算の問題に関連いたしまして、決算期というものが、私のちょっと調べましたところで、ほとんどの会社が三月三十一日を決算期にしているようなのでございますが、これは今度の商法改正によりまして、公認会計士あるいは監査法人などの会計監査というものがきめられるとしますと、三月決算の五月総会というのが大多数になってくると、その時期に監査の仕事が集中するんじゃないか、事前監査でございますから。そういうことに対しまして、どういうふうな措置を考えておられるのか、ちょっとお述べいただきたいと思うわけです。
  79. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 一年決算に移行する会社の数がもしふえたといたしました場合には、確かに先生がおっしゃいますように、ある時期に集中すると思われますが、今回の商法監査は決算確定の事前監査の導入でございますから、そういう面では従来よりも会計監査人が前広に参与して監査を行なっていくという面はあると思います。
  80. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、それは何とか同じ時期に集中しても処理できるというお考えなわけでございますね。
  81. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) どのぐらい一年決算に移行するかわかりませんが、ただいま考えられているところでは、それで対処できると考えております。
  82. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは先ほどちょっと、この中間配当というのは金銭の分配だという民事局長の御説明いただきましたので、ちょっと若干疑問点伺いたいんでございますが、これは主税局の方に伺いたいんですが、この場合に中間配当によって受け取る金額に対して配当控除の適用があるのかないのか、まず伺いたいと思います。
  83. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) 税の立場といたしまして、中間配当をかつてのいわば利益積み立て金的なものの金銭の分配と見るか、あるいは配当と見るか、これは商法立場とはまた別に租税政策上の問題としてどのようにみなしていくかという問題がございます。したがいまして、他とのバランスを失しないようにかつ租税政策上の目的に合致するように、今後十分検討してその方針を決定したい考えております。
  84. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、まだ主税局としたら態度をおきめになっていらっしゃらないわけですか。たとえばこれが配当控除の適用を受けるかどうか、あるいは金銭の分配を支払う法人に対して源泉徴収の義務を課すのかどうかとか、そういうふうないろいろ税法上の問題が起こってくると思うんですが、そこら辺について、まだ全然御検討になってないわけでございますか。
  85. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) もちろん検討は続けておりますけれども、結論を得るに至っておりませんが、いずれにせよ法律改正を要する問題と考えておりますので、慎重に検討さして御審議をまた得たい考えております。
  86. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは次に、中間配当はこのぐらいにさしていただいて、累積投票の問題に移りたいと思います。  今回の改正で取締役の選任についての累積投票制度を採用したわけでございますけれども、このことによって少数株主の既得権というものが排除されるような結果になって、この少数株主の保護に欠けるのではないかという意見もございまして、現に先ほどお示しいたしました商法改正反対国民会議のほうの御意見にも少数株主の権利が消されるということが心配されるということが強調されておるわけでございますが、この制度を採用しようとされた理由について民事局長から伺いたいと思います。
  87. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 今回の累積投票に関する改正は、累積投票の制度を定款でもって排除した場合にはこれを完全に排除することができるようにしようというのがねらいでございます。むしろ累積投票の制度を制限することを認めようとするものであります。この累積投票の制度は、御承知のように昭和二十五年の改正で、まあアメリカのある州の立法例にならって規定されたものでございますが、わが国におきましては、ほとんどその後利用されてはいないというのが実情でございます。したがいまして、今回の改正はやや観念的な面があるわけでございますが、この累積投票の制度を認めますと、少数株主が自分たちの利益代表としての役員を選任するのに都合がいいということがいわれております。まあ実際にどの程度効果があるかということはなかなかむずかしい問題のようでございますが、そういうのが立法趣旨になっております。そういう点から申しますと、この制度を存置しておくということはそれなりの理由があるわけでございますが、会社としてこの制度を株主に認めるかどうかということをむしろ自主的に決定してその運用にまかせるという考え方も、また別の立場から是認されるものであろうと思います。アメリカにおきましても、実際に累積投票を認めている州と、それから認めていない州と、それぞれ立法例がございまして、わが国におきましてはこれを認めておりますけれども、今回の改正によって、制限するならばこれを完全に排除できるという中間の態度をとることにいたしたわけでございまして、先ほど、最初に申し上げましたように、現在の実情から申しまして実際への影響は非常に少ないと思われるわけであります。ただ、なぜこういう改正が行なわれたかと申しますと、現在わが国の株主がこういう累積投票の請求をするということはまれでございますけれども、今後外資の導入が行なわれまして、外国の資本が入ってきた場合にこの累積投票が利用され、それによって企業の経営が多少影響を受けるのではないかということを懸念するところも一部にあるわけでございます。で、まあそういうところからは、この制度についてはもう少し制限を強化してもらいたいという要望がございます。一方におきまして、外資を導入するということは現在の経済情勢から見まして必要なことでございますので、そういう点に不安があって外資導入がおくれると、あるいはちゅうちょされるというようなことになりましては、これまた別の面で好ましくない結果を生ずるというふうに考えまして、その辺は企業の自由にまかせるという趣旨改正をすることにしたわけでございます。
  88. 佐々木静子

    佐々木静子君 外資によって会社が乗っ取られるというようなことを防止するということが一つの立法的な理由であるというふうにも承れたと思うんですけれども、これは累積投票以外で、外資の侵入と申しますか、これを阻止する方法というのはこれはあるわけでございますか。どうなっているわけでございますか。
  89. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 商法は株式の譲渡が自由でございますから、特に商法上の問題といたしましてはこれを制限するということはないわけでございますが、ただ、その株式の譲渡を制限するという制度がございまして、その利用によって外資の乗っ取り防止をはかるということも考えられないわけではありません。しかし、株式の譲渡制限をするような会社というのは、大企業は予想しておりませんので、普通はこの制度によって外資導入を防止するということは、実際問題としては考えられないというふうに思っております。
  90. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは累積投票の排除ということを望んでいる向きもかなりあるように聞いておるわけでございますが、すると、むしろ国内的に、会社にゆさぶりをかけるために、自己あるいは自己の心のかかった人の名義で株を持って、そしてまあ業務執行を妨害するというふうな問題を阻止しようというか、まあそういうふうな事柄の配慮からこういう問題が起こっている、こういう改正考えられているとした場合に、このときのこの少数株主の経営参加のための権利というものとのバランスですね、それをどのようにお考えでございましょうか。
  91. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 少数株主の権利というのは、二十五年の改正によりまして、かなりいろいろな面で認められているわけでございます。たとえば違法行為の差しとめ請求というようなものもございますし、いろいろあるわけでございます。そういうものを通じて行なうということが一つ。それからこの累積投票は定款で禁止しない限りは認められるわけでございまして、その限度では少数株主の立場というものが考慮されることになるというふうに思います。ちょっとお答えとして不十分かと思いますが、さらに御疑問があれば……。
  92. 佐々木静子

    佐々木静子君 非常にお答えにくい問題だと思うんでございます。それで、いまおっしゃったように定款に——今度改正になったならば、もう一度定款を変更して、いままで定款にきめられて累積投票を排除している会社においても、さらにこれまあ定款でそのようにしておっても、二五%以上の株式を持っている者が累積投票の請求をした場合にはこれに応じなければならないというのが現行法でございますから、さらに定款をもう一度変更しなければならないことになるのかどうか、その点をちょっと伺いたいと思います。
  93. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) その点につきましては、さらに定款を変更しなければ完全な排除はできない、このように考えております。
  94. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、現在の定款変更につきましては、商法の三百四十三条で「発行済株式ノ総数ノ過半数ニ当ル株式ヲ有スル株主出席シ其ノ議決権ノ三分ノ二以上」の賛成を得なければできないというふうになっておるわけでございますけれども、そうすると、三分の一をこえる株式を持っている場合ですね、三分の一をこえる株主がいる場合ですね、その人が欲したならば定款の変更というものが実際上むずかしいと思うわけでございますが、これはいまの改正法によっては、やはり三分の一以上の株を持っている株主がこの累積投票に反対したならば、定款の変更というものができないのかどうか、あるいはそれに対する配慮というものが考えられているのかどうか、その点を伺いたいと思うんです。
  95. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) いまの定款変更はもちろん一般の定款変更手続によらなければなりませんから、三分の一の株主が反対しておって、現実に株主総会でもって反対をするということになりますと、累積投票を全面排除するという、その定款変更はできないことになるわけでございます。
  96. 佐々木静子

    佐々木静子君 この累積投票についてももう少し伺いたいと思いますが、時間があまりございませんので、次の、準備金の資本組み入れによる抱き合わせ増資について伺いたいと思いますが、まずこの改正趣旨ですね、趣旨を承りたいと思います。
  97. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 準備金の資本組み入れによる有償、無償の抱き合わせ増資を認める趣旨でございますが、御承知のように、現在の商法におきましては、準備金を資本に組み入れまして、そして新株を発行して株主に無償でこれを交付するという制度があるわけでございます。しかしながら、その有償、無償の抱き合わせという制度を認めておりません。ところが、戦後に制定されました株主会社の再評価積立金の資本組入に関する法律、この法律によりますと、再評価積み立て金を資本に組み入れて、そして新株を発行する場合に、この有償、無償の抱き合わせ増資というのを認めておったわけでございます。ところが、この組み入れ法が昭和四十八年、昨年の三月三十一日をもって効力を失いましたので、その後このような抱き合わせ増資というものができなくなった。それに伴いまして、まあこういった制度を商法に認めてもらいたいという実際界の要望もございまして、今回の改正案にこれを取り入れるということにいたしたわけでございます。
  98. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいま承ったように、抱き合わせ増資に関する一連の規定が公布の日から施行されるわけでございますし、この時価発行増資によるところの資本準備金が最近たいへん増加の傾向でございますので、早急にこれの利用をはかろうとするところの会社もたくさん出るんじゃないかと思うのでございますけれども、この端株の売却について、いわゆる有償、無償の抱き合わせ増資の新株発行の場合に、端株について例外として再募集しないで「取締役会の決議ヲ以テ株主ガ新株ノ引受権ヲ有スルモノト看做シテ之ヲ売却」できるという規定がございますが、「株主ガ新株ノ引受権ヲ有スルモノト看做シテ之ヲ売却スル」というのは、実際にはどういう方法で売却するのか、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  99. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) まあ普通上場されておる会社の株式でございますと、市場で取引が行なわれておりますので、そこで売るということになるわけでございます。
  100. 佐々木静子

    佐々木静子君 これ新株ですから——株券というものが普通の株の取引のようにいくわけでございますか。私もちょっとそこがわからないものですから伺ったわけなんですけれども、普通の上場株の売買と同じように考えていいわけでございますか。むしろこの株主が新株引き受け権の証書を持っておって、それによって行なうことになるわけでございますか。そこのところちょっと現実にどういうことになるのかということを疑問に持つものですから伺っているわけですが。
  101. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) これは新株発行後に売るわけでございますから、新株を発行いたしますと、その上場会社の新株というものは当然取引市場に出てまいりまして、その当時の時価によって取引が行なわれるということになるわけです。その段階で新株を売るということに考えておるわけでございます。
  102. 佐々木静子

    佐々木静子君 それは了解いたしましたが、次は、それじゃ転換社債について伺いますが、わが国における転換社債の発行の総額がどのぐらいであって、事業債発行総額の占める比率というものが年々ふえておりますけれども、大体いまどのくらいのパーセンテージを占めているか、お教えいただきたいと思います。
  103. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 時価転換社債の公募による発行でございますが、これは昭和四十一年ころに始まりまして、現在に及んでおるわけでございますが、昭和四十四年度は発行会社が四社、百二十五億円、それから四十五年度は二十二社、一千百四十五億円、それから四十六年度は十八社、八百五十億円、四十七年度は六十五社、二千八百八十億円、それから四十八年は百五社、五千二百六十億円と、相当増加の傾向にございます。
  104. 佐々木静子

    佐々木静子君 この転換社債の発行手続を新株の発行並みに今度は緩和されるわけでございますが、そのような改正を行なわれる御趣旨を承りたいと思います。
  105. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 一つは均衡論でございます。一般の普通社債につきましても、それから新株につきましても、取締役会の決定で発行できるようになっておる。ところが、転換社債については転換の条件などを定めなければならない関係上、株主総会の決議が要る。こういう差がございますので、転換社債についても、新株あるいは普通の社債と同じように、取締役会の決議だけで発行できるようにしようということがあるわけでございます。それから転換社債は、この制度ができましてからしばらくの間はあまり利用がなかったわけでありますが、昭和四十年代になりましてから非常に多く利用されるようになってきた。したがって、その発行手続を簡易化する必要が生じてきた。ことに転換社債を発行するのは資金を調達する場合でございますが、資金調達に機動性を与えるためには、株主総会を開く時期まで待っておったんでは時期を失するというような場合もございますので、このように改正をいたしまして、資金調達の便宜をはかろう、こういうことでございます。
  106. 佐々木静子

    佐々木静子君 それで、この中に、第三者に対して特に有利な転換条件による転換社債の発行というようなことがいわれておりますが、特に有利な転換の条件というのはどのように解釈すればよろしいですか。
  107. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) これは新株発行の場合にやはり特に有利なということばがございますが、まあそれと同じように、一般の時価と比較いたしまして、それを下回るということが有利な条件ということになるわけでありまして、その「特二」というのは、有利性がきわめて軽微であるという場合にはこれに該当しない、しかしまあ、ある程度の開きがあるという場合には、これは特に有利だというふうに認定されることになろうと思います。
  108. 佐々木静子

    佐々木静子君 この商法の三百四十一条ノ二ノ二に、転換社債を発行するときは一定の時期を公告しなければならないという規定がございますが、その時期、内容、及びこの転換価格というのは確定額をもって明示しなければならないのかどうか、その点について承りたいと思います。
  109. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) この三百四十一条ノ二ノ二に規定されております事項につきましては、具体的にその内容を公告し、あるいは通知しなければならないと、そのように考えております。
  110. 佐々木静子

    佐々木静子君 では、確定額をもって明示するということでございますか、転換価格。
  111. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 転換価格とおっしゃるのは、転換の条件のことでございますね。
  112. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういうことです。
  113. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) それは確定できるような条件を明示しなければならないということでございます。
  114. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは商業帳簿のことについて伺いたいと思いますが、この改正商法の三十二条の第二項の「公正ナル会計慣行」、これ、先ほど来、企業会計原則商法との調整というところでも問題になったわけでございますが、これは企業会計審議会商法と証券取引法における会計基準が一致して同一の会計基準に従って監査が行なわれることを明確にするための規定商法に置くというところからこの三十二条の二項というものが生まれたと思うわけでございますが、「公正ナル会計慣行」ということと企業会計原則というものは同じものであると考えていいのかどうか、ちょっとその概念について伺っておきたいと思います。
  115. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 「公正ナル会計慣行」と申しますのは、会計上ならわしとして行なわれているものであってしかも公正なもの、この「公正」というのは、商業帳簿を作成をさせる商法の目的から見て公正妥当と認められるものをいうわけでありまして、まあそういった一種の抽象的な基準を設定したつもりでございます。したがって「公正ナル会計慣行」即企業会計原則というふうには考えておりません。ただ、企業会計原則は公正な会計慣行を具体化したものであるといわれておりますので、はたしてそのとおりであるといたしますならば、内容的に、企業会計原則内容はここにいわゆる「公正ナル会計慣行」と一致するであろうと、こういうふうに考えるわけでございます。
  116. 佐々木静子

    佐々木静子君 この三十二条の第一項に、「商人ハ営業上ノ財産及損益ノ状況ヲ明カニスル為会計帳簿、貸借対照表及損益計算書ヲ作ルコトヲ要ス」というのが今度の規定できめられているわけでございますが、まず、改正前の三十三条の財産目録というのを削除した理由はいかがでございましょうか。
  117. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 現行法では、仰せのとおり財産目録を作成しなければならないということになっております。しかしながら、現在の会計実務におきましては、むしろ会計帳簿が整備しておれば、それによって貸借対照表をつくるということでこと足りるというふうに考えられておるそうでございまして、特に財産目録というものの作成を義務づける形で存置する必要がないというふうに考えたわけでございます。私、会計のことあまり詳しくございませんけれども、要するに、財産目録というものを特につくるだけの必要性が現在の会計実務から見ては乏しくなっておるということがあるようでございます。  それからもう一つの理由は、会計帳簿のほうを整備しておきますれば、それによって必要がある場合には財産状態がどうであるかということはわかるわけであるから、特にそれと別なものをつくってまで整備する必要はない、こういう考えに基づくもののようでございます。
  118. 佐々木静子

    佐々木静子君 この総則規定の三十二条、これは小商人にまで適用すると思うのでございますが、「会計帳簿、貸借対照表及損益計算書ヲ作ルコトヲ要ス」とされている点が零細企業に対して無理じいをするものであるということで、たいへんに商法のこの改正が零細企業を圧迫するものであるということの論拠の一つにされているわけでございます。きょうあまり時間がございませんので、これは前回、上田議員などがこの点について詳しい御質問をしておられますので、私は簡単にしておきたいと思いますけれども、これはそれじゃ会計帳簿だけでいいんじゃないんでございましょうか。いかがでございますか。
  119. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 最近における会計考え方といたしましては、いわゆる損益法の考え方がかなり広がってきておりまして、実際にどれだけの費用を使ってどれだけの利益をあげたかということをきちっとしておくことが大切であると、このようにいわれております。そういう考え方に基づきまして損益計算書の作成を義務づけることにしたわけでございまして、特別な意味はそれ以外にはないわけであります。  いま小商人とおっしゃいましたが、小商人は作成義務がないわけでございまして、それ以外の零細な個人商人あるいは小さな会社もございますけれども、そういうものがこの損益計算書の作成を義務づけられることによって会計的にかなり苦労をしいられるのではないか、こういう御意見がありますことは私も十分承知いたしております。しかしながら、商法が要求しております損益計算書というのは、企業により、その規模により、種類によりそれぞれ異なるものがあって差しつかえないわけでございまして、どういう様式のものでなければならないということは株式会社以外は特に法定しないつもりでございます。したがって、ごく零細な商人の場合を例にとりますと、どれだけの費用があってどれだけの売り上げがあって、その結果収入がどれだけであるという程度の簡単なものでも損益計算書として認めて差しつかえない、このように考えておるわけでございまして、それほどごめんどうをおかけするということにはならないんではないかと考えたわけでございます。
  120. 佐々木静子

    佐々木静子君 商人といっても、屋台をかついでいるラーメン屋さんも商人であれば、くつみがきをしていられる方も商人であるし、規模からいうと非常に小さい、ごく小さい規模でやっていらっしゃるわけでございますが、現実の問題として、私も帳簿をつけるというのは非常に苦手でございますけれども、そういうことが実際考えただけでもできないんじゃないか。これ見て、自分は商人だけれども、これぐらいのことはやってのけられるという零細企業の方はおそらくだれもおらないんじゃないかと思うんでございますけれども、このあたり大臣はどのようにお考えでございますか。こういうふうな、「会計帳簿、貸借対照表及損益計算書ヲ作ルコトヲ要ス」としてある点ですね。帳簿の簡略化というようなことを考えなければ、実際問題として零細商人は、帳簿を、こういうようなものを商法できめてもほんとうに実行できるとお思いになりますか。どのようにお考えになりますか。
  121. 中村梅吉

    ○国務大臣中村梅吉君) やはり経理関係の帳簿というのは、いろいろそういうふうに何種類かの帳簿を整備することによって正確を期することができるんで、大福帳のように一本の帳簿だけですと記帳の誤りもあったり、あるいは不整備の点があったり、ごまかしがあったりということが起こりやすいので、やはり会計帳簿というものは、ここに定めてあるような帳簿を整備することが正確を期する上で適当であろうと、かように考えております。
  122. 佐々木静子

    佐々木静子君 正確を期する上に適当だという理論と、実際にやれるかどうかということですね。こんなのをつけたって、おそらく百人のうち九十九人まではできないと思うわけなんですよ。それが今度の商法が悪法案である、零細企業を苦しめるものであるというふうに声を大にして反対されている理由の大きな一つの要点になっているわけなんでございますが、この点について局長はどういうふうにお考えか。零細企業をほんとうに苦しめるものであるとすれば、何らかの措置をお考えになっておられるのかどうか、その点についてお聞かせいただきたいわけです。
  123. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 商法は、ごく小規模な商人につきましてはこういった商業帳簿の作成義務を免除しておるわけでございます。そのごく小規模な商人というのが現在では非常に時代おくれをした規定になっておりまして、要するに資本の額が二千円以下といったような非常に時代離れした規定になっております。この点は今後の問題といたしまして早急に検討しなければならないというふうに思います。  それから、一般の商人に対して商業帳簿の作成義務を課すということ、これは日本だけでなく世界各国の商法が同じような立場をとっておるわけでございまして、基本といたしましては、これは商人としての当然なすべき義務であり、かつ、債権者との間で問題が起こった場合にそのあと始末をきちんとできるようにしておく、こういう意味でやはり必要であろうと思うわけでございます。ただ、各国ともそうでございますが、これを記載しなかった場合にどうなるかという問題は別個にございまして、商法ではいわゆる不完全規定というふうに呼ばれておりますように、記載しなかったから特に過料を課せられるとか、罰則がかかるとか、そういうことにはなっておりません。ただ、商売のことに関しまして訴訟が起こったとか、あるいは破産が宣告された、こういうような場合に商業帳簿がつくってないと不利益が生ずるとか、あるいは破産の場合には罰則の規定まであるわけでございまして、そういう異常の事態のために平素から明確にしておくということはある限度では必要なことであろうというふうに思うわけでございます。
  124. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま民事局長、不完全規定だから特に商法上強制する方法はないんだというお話しですけれども、これ現実の問題として、きょうは主税局もいらっしゃいますから申し上げておきたいと思うんでございますけれども、おそらくこれ税金面で帳簿を出せと、いろんなことを私は税金の関係でおっしゃるだろうと思うし、もし帳面をつけてないと言えば商法の三十二条にこういう規定があるじゃないかと、これはおそらく主税局は税金を徴税の上でおっしゃると思うんでございますが、この規定を税金を徴税なさる上で何か悪用と言うとおかしいですが、悪用されるようなことがやはり起こり得るのかどうか。万一そういうことになると、やはりこれは零細商人に対する圧迫ということになりますから、主税局からそういうふうな三十二条を悪用しないとおっしゃるのであれば、この場でそういうことは全く考えておらぬということをはっきりしていただきたいと思うわけなんです。
  125. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) ただいまの御質問の点は、実は国税庁の執行の問題でございまして、主税局といたしましては法令上必要な範囲において帳簿を法定しておりますので、税法面ではそういうものは直接には関係ございませんけれども、やはり質問調査権の関係で、もし質問あるいは調査の際に必要な場合にはそれをお見せいただくということも場合によっては当然生ずることかと考えます。これは当然のことかと考えます。もちろん悪用するようなことは断じて考えておりません。
  126. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは悪用と言うとことばが悪いけれども、実はこれはこちらはとても書く能力がないから書いてないんだと言ったときに、ないことによる不利益を徴税上受けるんじゃないか。これを非常に懸念して、この規定は零細商人を苦しめるものだというのが、商法上の罰則等がかりにあったところで、そういうことはあまり皆さん問題にしてないわけで、税金上いじめられるんじゃないかということをたいへん心配しているわけです。
  127. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) 失礼いたしました。その趣旨ならば、私のほうは、それがないからいかぬじゃないかということは税の立場からは申し上げません。
  128. 佐々木静子

    佐々木静子君 これがないからいかぬのではないかという不利益を受けないということさえはっきりしておれば、それでけっこうでございます。それから、この帳簿の記載義務が強化されるということは、もう一度主税局に伺いたいんですが、これは付加価値税の問題につながっていくんだというふうなことから、付加価値税が課せられるという警戒から、この商人の帳簿記載義務に対して非常に警戒の声が強いわけですが、そういうことが全くの杞憂にすぎないというのであれば、この際これもはっきりと明言していただきたいと思うんです。
  129. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) 付加価値税の問題は将来の問題としてなおいろいろ検討参れている段階でございまして、これが直ちに、あるいはごく近々のうちに実現するというふうなものではないと考えております。したがいまして、ただいまのようなお話と、これに直接つながるものとは毛頭考えておりません。
  130. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、この商人の帳簿記載義務が付加価値税の問題とは全くつながりないと考えていいということでございますね。
  131. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) 私は、ただいまの段階では全くつながりがないと考えております。
  132. 佐々木静子

    佐々木静子君 この、ただいまの段階が私気に入らないんですけれども、ただいま以後においてもつながりないということをお約束できますか。
  133. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) 私がただいま判断した限りにおいては直接つながることはないと考えております。
  134. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、まずとりあえず安心ということで、次の休眠会社のほうに移りたいと思いますが、時間もございませんから簡単に質問いたします。  これも商法改正に反対の意見の一つとして、「生きているのに棺桶へ」というふうなことで、この規定がけしからぬという御意見も出ておるわけでございますが、現実に、この改正商法考えておられるところの休眠会社というのがいま日本にどのくらいあるのかまずお答えいただきたい
  135. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 推定でございますが、二十万社ぐらいあるのではないかというふうに思われます。
  136. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、全体の会社の何%に当たるものであるかということと、それからこの改正が「生きているのに棺桶へ」ということになるのかならないのか、この趣旨を御説明いただきたいと思うわけです。
  137. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 全体の会社が——株式会社でございますが、百万でございますから、二十万と申しますと二〇%になるわけでございます。  それから休眠会社の整理の趣旨でございますが、これはわが国には約百万の株式会社があるわけでございますが、その中にはもうすでに営業を廃止しているという、したがって実体のない会社というのがかなりあるわけでございます。しかしながら、登記の面におきましては解放したという登記もしてありませんので、登記簿上は現在も存在して営業をやっているようにそういう外観を持っておるわけでございます。そこで、そういう会社があります場合に、今度ほかの会社が同じような商号をもって設立登記をしようとする、あるいは移転登記をしようとする。そうしますと、実体のない会社でありましても登記簿上は存在しているようになっておりますので、その商号権を侵害するという問題が起きまして、その名前を使っての会社の新設あるいは移転ができないというような不都合が生じております。事務的にも実際に実体のない会社がたくさん登記所の倉庫に納められているという点で事務処理に複雑さを加えておる、こういう面もあるわけでございまして、それを整理しようという趣旨でございます。  そこで、実際に生きている会社まで解散に追い込むようなことがないかという点でございますが、この今度の改正案商法四百六条の三でございますが、これによりますと、登記を五カ年間していない、何の登記もしないで五年経過しておるということが一つ。そして法務大臣が官報で、そういう会社は届け出てもらいたいという公告をすることが第二であります。それからさらに登記所といたしましては、その個々の会社に対しまして、こういう法務大臣の公告があった、したがって営業を廃止していないのであれば届け出てもらいたい、こういう通知をするわけでございます。それだけの手続を経まして、なおかつ届け出がないという場合に初めて解散とみなすわけでございますので、実際に活動している会社でありますれば、少なくとも登記をしないにしても届け出はなされることになると思いますので、そういう会社まで解散に巻き込むというおそれはないというふうに考えておるわけでございます。
  138. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、この休眠会社についての規定の御趣旨はよくわかりましたので、大体これで一昨日から続きまして商法改正規定に関する部分をざっと一わたり質問さしていただいたつもりでございます。が、若干この条文以外で補足的に伺っておきたいと思いますことは、この会計監査というものが今度設けられることによって、公認会計士の発言というものが非常にこれは企業に大きくなってくるのではないかと思うわけでございますが、公認会計士に対する、非常に専門的なむずかしい試験を通った方々でございますけれども、また案外調べてみますと、この公認会計士の方の、何といいますか、事故というようなものが統計上わりあいに多いわけでございまして、そこら辺のところが、今後どのようにして公認会計士の方が全くその地位を独立して十分に会計監査が行なうことができるような保障を確立していくかというようなことがたいへんに問題じゃないか。そういう意味におきまして、この公認会計士に関する監督というようなことについて、これは大蔵省に伺いたいんですが、今後どのように考えておられますか、行政指導の面について伺いたいわけです。
  139. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 御指摘の点でございますが、現在におきましても公認会計士業務の適正な運営を担保するために公認会計士法でいろいろございますし、懲戒処分をするとか、業務停止とか、あるいは証取法による問題あるいは民事責任を課している問題とか、あるいは商法特例法でいろいろな罰則が規定してあるというぐあいに、法令上公認会計士の適正な業務運営を担保する規定がございますので、私どもとしましては行政当局としてそのような法令を厳正に執行すると同時に、公認会計士に対しましてはより厳正なビヘービアをとっていただくという指導を繰り返し繰り返しやっていきたいと、かように考えております。
  140. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから外国の公認会計士がいま日本でもかなり会計業務に従事しているようでございますけれども、この日本の公認会計士の権益を守るために、外国の公認会計士の活動について何か大蔵省としてどのよりにお考えでございますか。
  141. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 外国公認会計士制度は、公認会計士制度を新たに導入した際、やはり欧米のすぐれた公認会計士を活動させることが新しいわが国の公認会計士にとっても刺激にもなるし、そういう趣旨から考えて設けられたものでございますが、これはあくまでもわが国の公認会計士法に基づくものでございまして、当然証取法上その他、公認会計士、わが国の日本人の公認会計士と外国の公認会計士とは当然同等の扱いをするということになるわけでございます。
  142. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから公認会計士方々よりなる監査法人というものをおつくりになった理由というもの、それからもう一つ、この監査法人が合名会社法の適用を受けているのかということも伺いたいわけなんです。
  143. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 前段の、監査法人制度を設けました趣旨は、組織的な監査の推進及び監査人の独立性保持に資するためのものでございます。企業の経営規模の拡大に伴って監査証明業務の当然事務が増大かつ複雑化しておりますので、一人でやるよりは監査法人によって行なわしめたほうがより適正な監査を期し得るのではないかという観点から監査法人制度を設けたわけでございます。  後段の御質問は、これはそうは申し上げましても、やはり特定の少数精鋭による監査法人が相互信頼の確立にも資するというような観点から合名会社のたてまえということにしたと理解しております。
  144. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、この監査法人に関連してお伺いしたいんですが、大臣に伺いたいんですが、大臣法律家でいらっしゃるので、私もアメリカその他でローファームをおたずねいたしまして いろいろと弁護士業務が法人組織で能率的に行なわれているという実情を見たわけでございますが、日本においてはこの弁護士事務所の法人化というものがまだはかられておらないわけでございますが、そういうことについて法務省はどのようにお考えか、大臣民事局長から伺いたいわけです。
  145. 中村梅吉

    ○国務大臣中村梅吉君) 確かに法制化はできておりませんが、実際には弁護士でも法人にしてやっているところがあるように私も承知しておりますが、ただ制度化して監査法人のように合名会社でこうしろとかというような制度化はないようでございます。これは日本の将来の問題として検討を続け、また先生のようないろいろ関係方々の御意見も伺って慎重に検討してまいりたいと、かように思っております。
  146. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 民事局長にということでございますが、法務省所管から申しますと、ちょっと民事局所管ではございませんので、お答えしにくいわけでございますが、まあよく担当の部局にも連絡いたしまして研究してまいりたいと思います。
  147. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま担当とおっしゃいましたが、担当はだれになるわけでございますか。
  148. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 司法法制調査部でございます。
  149. 佐々木静子

    佐々木静子君 はい、わかりました。  これは、私、法人化まだしている事務所ないんじゃないかと思っているのでございますが、ちょっと大臣のほうがずっと御経験がお深いから、あるいは私が寡聞にして知らないんじゃないかと思いますが、やはりこれは活動の範囲が広くなってくることと、それから税金の処理の面ですね、大ぜいの合同事務所というものがいろいろあるわけでございますが、それは各自の個人所得になるために、何人もの人が一つの事務所を使い、一人の事務員を使い、いろいろな経費を共同で使っている場合に、その税金処理の面でたいへんにむずかしいので、共同事務所にはいろいろな難点が起こるわけでございますので、そうした点につきましてもまた法務省のほうでもいろいろ御検討をいただいてしかるべきじゃないかと、私、この監査法人の規定を見まして感じましたので、ちょっと申し上げさしていただいたわけでございます。  それから、いま公認会計士方々のことを申し上げましたが、税理士の方々、この商法にも非常に御関心をお持ちいただいたわけでございますけれども、この税理士の方々のいま一番の御関心は税理士法の改正にあると思うわけなんでございます。この税理士法の改正におきまして特に一番重点的に考えなければならないのは、税理士の方の自主権というものをもっと確立しなければいけないんじゃないか。そういう意味におきまして、これは監督官庁は大蔵省の主税局になるわけですか。——そういう点について税理士法の改正問題及び税理士さんの自主権の確立の問題ということについて、どの程度前向きで取り組んでいただけるのか、その点について伺いたい
  150. 渡辺喜一

    説明員(渡辺喜一君) 税理士法の改正につきましては、先生もかねて御承知のとおり、かなり古くからいろいろ議論がございますところでございます。いずれにいたしましても、税理士法の改正というのはかなり税制、特に執行面その他につきまして微妙な影響を持っており、基本的な改正になるという問題でもございますので、当面、来年度とかなんとかということでございませんが、やや長期的な観点で慎重に検討を続けるべき問題であるというふうに考えておるわけでございます。
  151. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひとも、税理士法の改正によって税理士の方々の自主権の確立ということを、大蔵省も前向きになって積極的にお取り組みいただきたいということを特にお願い申し上げるわけでございます。  それで、最後に、この商法改正の三つの柱とされておりますところの、株主総会についての改正及び取締役に関する規定改正、それから監査制度改正ということが三つの柱になっておって、今次出されました改正案監査制度についての改正ということに重点がしぼられておるわけでございますが、現実の問題とすると、株主総会というものが全く名前だけになって、非常に問題の多い企業でも、五分とか十分以内の株主総会が何もわからない間に、わっという間に行なわれておる。そういうふうな実情でもあり、また取締役、いま企業の横暴ということが非常に叫ばれておりますけれども、取締役のたいへんにかってな業務、行き過ぎというようなこと、今後取締役の行き過ぎを規制するというふうな方向の立法というものがこれはどうしても、むしろそちらのほうが大事ではないかというふうに私思っておるわけでございますが、これについて法務省のほうも積極的に改正作業を進めていらっしゃるというふうに承っておりますけれども、その点について法務大臣の御所信を最後に承っておきたいと思います。
  152. 中村梅吉

    ○国務大臣中村梅吉君) 御指摘のとおり、株主総会の問題については、確かに問題点がいろいろありまして、今回は会計制度の問題にのみ商法改正を取り上げましたが、御指摘の点につきましては、法制審議会等にもはかりまして十分慎重に検討してまいりたい、かように思っております。
  153. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、次は株主総会についての改正なのか取締役についての改正なのか、どちらの作業を先にお進めでございますか。
  154. 中村梅吉

    ○国務大臣中村梅吉君) 大体、株主総会の問題と取締役会の問題というのは取り上げれば同時に取り上げていくのが適当であろうと、さように目下のところ考えております。
  155. 佐々木静子

    佐々木静子君 大体それの改正はいつがめどになっておる、日時的な問題ですが、何年ぐらいをめどにいま作業を進めていられますか。
  156. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 株主総会あるいは取締役会を改正するということになりますと、これはかなり抜本的な改正を加えることになるわけでございます。まあ従来、法制審議会商法部会はかなり能率のいい部会でございまして、相当大きな問題でございましても三年か四年くらいの間には要綱をまとめ上げておるという実情でございますが、今回の、問題になっております株主総会あるいは取締役の問題こういう問題を取り上げますと、場合によりましては大会社と小会社、それによって規制を異にしなくてはならないのではないか、こういう問題が出てまいりまして、いろいろ波及するところの大きい問題でありますだけに、相当取り扱う範囲が広くなりまして、どれくらいでその審議が終わるかということはちょっと私はっきり予測がつかないわけでございますが、しかしいずれにいたしましても、こういう社会の情勢の変化の激しい時期でございますので、なるべく早急にやらなければならないということは十分承知しておりますので、商法部会においてもその点については十分御留意をいただきながら審議していただけるものと、このように考えております。
  157. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは各企業の自粛によらなければ解決できない問題がたくさんあると思うんでございますけれども、いまの株主総会のあり方あるいは取締役会のあり方というものが全く国民の期待から反しているということは、これはもう申すまでもない明らかなことでございますので、やはり国民的サイドにおいて一日も早くよりよい株主総会あるいは取締役会というようなものが実現できるように、ひとつ鋭意進めていただきたいと特に要望する次第でございます。  そういうことで、私の質問はざっとでこれで終わりますけれども、若干十二分に御説明いただけなかった点だけは質問を保留さしていただきまして、本日の質問を終わりたいと思います。
  158. 原田立

    委員長原田立君) 午前の質疑はこの程度とし、午後二時十分より再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後一時七分休憩      —————・—————    午後二時二十一分開会
  159. 原田立

    委員長原田立君) これより法務委員会を再開いたします。  商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案を便宜一括して議題といたします。  休憩前に引き続き、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  160. 春日正一

    ○春日正一君 私は、ただいま上程されております法案について日本共産党を代表して幾つか質問をしたいと思います。  そこで、その前に法務大臣にお伺いしたいんですけれども前回、十二日の委員会での大臣の所信表明、大臣は、「現下の社会情勢にかんがみ、経済秩序を乱す企業の悪質な違法行為に対しましては、現行の各種法規を活用して、その効果的な取締りを図り、秩序の確立を期したい」というように述べております。私はこれは非常に時宜に適した発言だと思いますけれども、しかし、まあ歴代の法務大臣の中で、経済秩序を乱す企業の悪質な違法行為を取り締まると所信表明をされたのは中村大臣が初めてだと思うんですけれども、どうですか、ほかに前例がありますか。
  161. 中村梅吉

    ○国務大臣中村梅吉君) さあ、よくわかりませんが……。前例はよくわかりませんけれど……。
  162. 春日正一

    ○春日正一君 まあ、法務省のほうに聞いてみると、初めてだと、大臣の部下の方は言っております。そこで、なぜ歴代法務大臣の中で初めて中村法務大臣がこういう所信をお述べにならざるを得なかったのか、そこの所信をお述べになった理由というか、心境というか、そこをお聞かせ願いたいんですが。
  163. 中村梅吉

    ○国務大臣中村梅吉君) 御承知のとおり、近来、企業のモラルといいますか、そういう点が社会的にも大きく問題になっております。具体的には、法務省としましては、警察当局からの送致を受けるとか、あるいは税務当局の告発を受けるとか、公取の告発を受けるとかいう、若干受け身の立場ではありますけれども、最終的には各種の法律を運用して社会秩序を守るべき責任を持っておりますから、そういう意味において、今日のような社会情勢下においてはこういう心がまえで臨むことが適当であろうという趣旨で、かような文言を差し込んだような次第でございます。
  164. 春日正一

    ○春日正一君 いまの経済情勢の中で、だれが見ても目に余るような事柄があって、国民世論としてそういう反社会的な企業活動というようなものを取り締まれというような声が高まっておる、そういう情勢の中で、人格円満な中村法務大臣があえてそれをおっしゃらなきゃならなかったという背景があったと思います。その点は私非常にけっこうなことだと思うんですけれども、その次がちょっとひっかかるんです。大臣はこのあとで、これと関連して、継続審議となっている商法改正法案に格別の御理解をいただきたいというふうに言われて、現下の社会経済情勢にかんがみますとき、この改正法案は時宜を得たものと考えるというふうに言って、この商法改正案を早く上げてくれというように言われております。  それで、まあ私ども、早く上げてくれと言われておるわけですけれども、この商法改正案を見ますと、経済秩序を乱し違法行為まで行なって売り惜しみや買い占めをやり、便乗値上げをやるという、あらゆる悪徳商法を行なって利益をあげている大企業の荒かせぎといいますか、そういうものを合法的に隠蔽させるような、そういうところにむしろ改正の重点があるし、これに対する批判というものは、まさにそこに集中されているということだと思います。だから、もし大臣が言われるように、いまのこの経済情勢の中で経済秩序を乱す企業の悪質な違法行為に対してこれを効果的に取り締まるということをお考えになる、あるいはまあ、大臣考えをバックするものとしてそういう客観的な情勢があるということをお認めならば、この法案というものは初めからもう一度練り直しておいでになったらどうか。事情が、これができたときからうんと変わっているわけでしょう、特にこの最近。そういう状況の中で、事情の変化も顧みずに無理やりにこれを通そうということになれば、かえって大臣の所信に反するんじゃないかというように思うんですけれども、その点、大臣はどうお考えですか。
  165. 中村梅吉

    ○国務大臣中村梅吉君) どうも誤解があるように思うのでありますが、大体いま御審議を願っております商法改正は、企業を守るというよりは、企業の社会性というものを考えて、公正な監督、監査が行き届くようにいたしたいということがねらいでございまして、法務省としましては、大蔵省をはじめ関係各省と十分協議をし、それから専門家や学者等に入ってもらった法制審議会に十分御審議をいただきまして、これからの企業というものに対してはこのような監査の制度あるいは会計の制度が必要であるという結論を得まして、この成案を得たような次第でございますので、結論的に申しますと、企業の不法行為をできるだけなくすと、それからまた、粉飾決算のようなごまかしということが今後できるだけなくなるような社会をつくりたいということが一つのねらいでございます。ですから、そういう点にもひとつ目を向けていただいて、この改正法案をよく御研究をいただきますれば、やはり現在の社会情勢に照らして、このような立法が、ないよりはあったほうがはるかに進歩である、また、欧米の諸制度とも勘案をいたしまして、やはり欧米が必ずしもいいというわけにはまいりませんけれども、まあしかし、ヨーロッパやアメリカの先進国が長年にわたってとっておる制度というものをわれわれはやはり研究をして、いいところは取り入れなければならないというような観点からも、この制度はぜひすみやかに御承認を願いたいものであると、かように私は考えておるような次第でございます。
  166. 春日正一

    ○春日正一君 そこの点で、不法な行為をやらせないということですけれども、しかし、それが企業に合わせて、法を曲げて、改めて、そして企業がいまやっておる不法を適法にしてしまうということになったら、これは大臣の所信に反するでしょう。そういう点はこれから順次質問をしていきたいと思いますけれども、いまの大臣の御答弁に対して一言言っておきたいことは、いま流行しておることばに「便乗値上げ」というものがありますけれども大臣答弁では法務省の不手ぎわから継続審査になったこの法律を、現下の社会経済情勢を理由にして便乗成立させるものじゃないかというようなことがいわれておるわけです。そうして、参考人の意見あるいは野党の意見その他を読んでも、また国会での審議の中でも、与党の中でも、もう一度出直したらどうだと、これでは不十分だという意見があるくらいで、賛成している人でも、これで満足だとはだれも言っていない。そういうような弱点を持ったものですから、やはり私は、こういう意見を謙虚に政府がお聞きになって、そして反省してほしいと、それを、時宜を得ているというような言い方で成立を促すというような大臣の所信には、私はどうも納得できないわけですが、この点を申し上げておいて、次に入りたいと思います。  そこで、商法改正というものに対する政府の基本的な姿勢についてお聞きしたいんですけれども、法務大臣企業の悪質な行為云々というふうに言っていますけれども、現在の物不足、インフレ問題、それと大企業関係、責任について大臣はどのようにお考えになっていますか。
  167. 中村梅吉

    ○国務大臣中村梅吉君) 企業のあり方に対しては、私ども最近の諸情勢から見て、たいへん遺憾な点が多いわけでございます。たとえば、原油の値上げが行なわれるということになって通告がまいりますと、まだ実際値上べされるのは三カ月も四カ月も先であるのにかかわらず、上がらないうちから、安い原油を処理している段階において、値上げになったと同様の売りさばき方法を講ずるというような現象がいろいろあるようでございます。いろいろ聞きますというと、外国の商社あたりでは、メジャーあたりで値上げがきまればそのときから値上げをするのがあたりまえだというような感触のところもあるようでございますが、われわれ日本人の立場から考えますと、安いものを買った以上は、安いものがある間はその基本に立って商売をすべきで、値上げが三カ月後になるという通告が、かりに電報なら電報が来たと、そうすると、そのときからもう引き上げをするということは、われわれの常識には全然合致しないと思うんです。こういうような点から見ましても、私が、今度の商法改正が、万全ではないでしょうけれども、相当に効果的だと思うのは、そうした会社がかなりの黒字が出た、その黒字をまたいろいろ粉飾をして隠されたんでは、これは何にもならないので、やっぱり黒字があればあるように、監査役の立場からの監査からいっても、あるいは会計監査人の監査からいいましても、その黒字が一〇〇%全面的に表に出てはじめて企業の社会性というものの批判対象になりますし、また、税務当局も税金を徴税する上において、ごまかしのない、きちんとした徴税をして利益を吸い上げることもできますし、あるいはまた、消費者からいえば、それだけ利益をあげているならもっと下げるべきだということも言える基本にもなりますしいたしますから、私は、今度の商法改正は主として会計制度を中心としたものでございますが、このような改正が行なわれないよりは行なわれたほうが社会的によほど効果があり、有益であると、かように考えておるわけでございます。
  168. 春日正一

    ○春日正一君 まあその点は、あと、もう少し進んでから問題にするとしまして、そこで事務当局のほうにお聞きしますけれども商法改正の動機といいますか、商法というものは私企業の行為を全体として規制する一つの基本的な規範になる、そういうものだと思いますが、そういうものを改正するということはどういう場合におやりになるのか、今度の場合は何を動機にしておやりになっているのか、そこらを聞かしてほしいんですが。
  169. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) お答えいたします。  商法改正につきましては、法務省法制審議会という法務大臣の諮問機関がございまして、商法改正を必要とする事項があれば要綱を示すようにという大臣からの諮問がなされております。今回の商法改正案は、この法制審議会で示されました要綱に基づいてつくったものでございます。さらに、この商法部会で今回の改正案考えましたその動機と申しますか、経過を申し上げますと、御承知のように、昭和三十九年、四十年ころ、山陽特殊製鋼の粉飾決算、その他有力な会社の粉飾決算というのがかなり明るみに出てまいったわけでございます。そこで、商法につきましてはいろいろ改正すべき点がございますが、特に監査制度について取り上げることが急務であろうということで、この監査制度の問題をまっ先に審議することにしたというのが、その動機といえば動機でございます。今回の改正案監査制度の改善強化ということを一つの大きな主眼にしておりますのも、そのような経過に基づくものでございます。
  170. 春日正一

    ○春日正一君 監査制度の改善強化ということで、その直接のきっかけになったのが山陽特殊製鋼の粉飾決算だというようなお話ですけれども、しかし、提案理由説明では、「現下の社会経済情勢にかんがみ、株式会社の運営の適正及び安定をはかり、」とこうなっているんですね。だから、それは決して粉飾決算をどうする、そのための監査を強めるということではなくて、現状の社会情勢というか、企業、会社その他の到達点ですね、日本資本主義百年の到達点に基づいて株式会社の運営の適正及び安定をはかると、こういうことが目的だというふうに、はっきりうたわれておるわけです。そこで、現下の社会情勢というものがどういうものか、資本主義の発展の現段階というものがどういうものかということが一つ大事な問題になる こういうことになるんじゃないか。  これは、とば口の議論として、はっきりしておきたいんですけれども、御承知のように、明治のころとか、大正の初期というころは、零細な企業、中くらいな企業がたくさんあって、自由に競争して、いわゆる薄利多売とかなんとかというような形でやってきた。この自由競争というものは国民にとっても必要なものだし、企業の発展にとっても必要な刺激だったと思う。ところが、現在ではそうなってないわけでしょう。いろいろな産業をとってみても、たとえば、商社だったら六大商社という、鉄鋼でも六社という、ビールだったら四社というような形で、ごく少数の大企業が一つの産業を支配する、そういうような状況が一般的になってしまった。そうしてまた、そういう企業が横に今度は結びついて、三井グループとか三菱グループとかというような形で、産業全体にずっとわたって、日本の国の経済の中に幾つかのブロックが大きな経済的な支配力というものを張りめぐらして、そうして、それがしかも、しばしば相談をしては価格の操作をやるというようなことをやっておる。最近出ておる物不足、いわゆる買い占め、売り措しみ、物価のつり上げというようなことも、こういう大企業の日本の経済に対する圧倒的な支配という条件がなければできないことですわ。そこまで来ておる。それだけでなくて、この企業がまさに行政としっかり癒着してしまって、第三セクターというような形で、一つの会社に北海道庁とか苫小牧市とか、そういうものも株式投資する。それから何々不動産とかなんとかというものも投資するというような形で、いわゆる官民一体、財界と行政と一体での株式会社をつくって、それがいま苫小牧東地区のあの大開発をやっているわけでしょう。しかも、これは法に基づいて土地収用権まで持つわけですね。半ば公権的なものを持ちながら営利の追求をやる、というところまで来ておるわけでしょう。そういうものが、まさにもう国民の、一般の統御の及ばないような、政府としてもちょっと手のつけられないような巨大なものができてしまって、それがあばれ回っておる。それが今日の物不足、物価つり上げというようなことを起こした根源にあるわけでしょう。  そこまで資本主義が発展してきたんだから、だから、過去のいままでの商法で間に合わぬから直せというなら、まさに私ども国民立場からいえば、そういう大企業経理というものを国民的に監査もし、内容を明らかにして、不正や横暴のできないようにしていく——現在国会でも、そういう意味で、下のほうの値段は明らかになるけれども、もとの出し値のところでの原価が明らかにならぬから、メーカー出し値が適正なものであるか不当なものであるかということは捕捉できない状態になっているわけでしょう、だから、原価を明らかにせいと、在庫を明らかにせいということで、国会で証人も呼ぼうということでいま問題になっておる。そういう事態のもとでの商法改正でしょう。だとしたら、そういうものを国民立場に立って押えていく、規制していくという立場でこそ、商法改正というものはやられるべきじゃないのか。そうして、この大企業の犠牲になっておる一般国民や中小の企業、零細な企業というようなものを保護していくというような立場でこそやるのが現時点における商法改正立場じゃないのか。それとも、いま企業がそこまで来たんだから、そう大きくなった企業が自由にやっていくためには、古い商法規定ではいろいろぶち当たるところがあるから、これを大企業がもっと自由にふるまえるように法を改めると——私さきに言いましたけれども企業の不法をさせないためにといって企業に法を合わせるようなことをしたら、これは国民利益に反するだろう。だから、この二つの立場があるわけですわ、商法改正というものについて。どういう立場改正するか、二つの立場があるわけですから、その場合、法務省としては一体どの立場でこの改正をやろうとしておいでになるのか、その立場をはっきりしてほしい。
  171. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 非常にまあ大所からの御意見だと思うわけでございますが、私考えますのに、現在の企業のあり方、その他いろいろ問題が起こっております。それに対しまして、二つの立場と言われましたが、それとは別な意味において私は二つの考え方を分けてみる必要があろうかと思うわけです。と申しますのは、企業に対して外部的に規制を加えていく——現在企業が大きくなりましていろいろな問題を起こしておる、それに対しまして、集中とか寡占とか、そのほかいろんな企業間の協定とか、そういったものに対して規制を加えるとか、企業のいろいろな個々的な外部に対する問題を解決するためにいわば行政的な立場から規制を考えていくという方向と、それから、それと異なりまして、商法のような、比較的行政的な配慮というよりも、むしろ純粋に法人制度というものがどういうふうにあるべきかという点から考えていく、つまり企業内部の機構を整備していく、足らない点があればそこを補なっていく、それによって企業の行動が適切に行なわれるようにすると、そういう二つの分け方があろうかと思います。そういう意味で、商法はこれは私法でございますので、むしろ政治的な観点を抜きにいたしまして、企業がみずからその行動をコントロールすることができるような、そういう組織を考えていくという意味で、今度の監査制度改正というものが考えられておるわけでございます。したがいまして、いろいろ行政的に企業のあり方に対する配慮がされておりますけれども、それと今回の改正とは矛盾するものではなくて、むしろ結びつくことによって全体が適正に運営されるようになることを期待しておると、こういう考え方でございます。
  172. 春日正一

    ○春日正一君 私の聞いたのは、つまり、どうにももう手のつけ切れないほど大きくなった大企業の横暴を規制するという、国民あるいは中小企業、そういう立場に立つのか、それとも、この大きくなった大企業がさらに自由にふるまえるように法を変えていくという立場に立つのかと、どっちで考えられるのかと、改正するとすればそれ以外に道はないだろうと、だからどっちの立場なのかということをお聞きしたわけですよ。あなたはそれに対してお答えにならないで、外部から規制するという問題があると——もちろん、独禁法なりその他いろいろな法によって規制するということはあるでしょう。あると。しかし、これは商法というものだから、内部での、何というのですか、企業のあり方の問題としてそれをやっていくんだというようなことを言われたんですけれども、その立場がはっきりしなければ内部のあり方もはっきりしないわけですわ。つまり、経団連の意見とわれわれの意見とということになれば、はっきり違うんだから、経団連の意見をとるのか、あるいは中小企業やそうした団体、消費者団体の意見をとるのか。違うんですからね。だから、その立場をはっきりしなければならぬ。しかし、ここでもうあなたをそう言って詰めてみても、なかなか答えにくい問題だろうと思うんで、これは法案そのものの中身の質問の中で、どの立場なんだということをずうっと私は詰めていきたいと思います。  ただ、大臣に、そこのところをひとつ政治的な判断としてお聞きしたいんですけれども大臣は一体どうあるべきか、どっちの立場に立つべきか、その点をお聞きしたいと思います、政治判断として。
  173. 中村梅吉

    ○国務大臣中村梅吉君) 春日先生の御指摘のとおり、ほんとうに企業というものがだんだん大型化してきておることは現実の実情でございます。そこで問題は、いままでのような監査役、まるで雇い人のような監査役が、通り一ぺんの監査をして、株主総会で監査の結果異常ありませんでしたと言うだけで素通りさせていいのかという問題があろうと思うのです。  そこで、今回の改正では、監査役は会計の監査のほか、業務も監査をして、違法や不適当な業務に対しては業務の訂正も命ぜられるし、それからまた、株主総会を招集する場合には監査役の監査結果というものをまず先に出して、その書類を株主総会招集の書類に添付して、監査役の意見というものを一般株主——株主もずいぶんいまでは大衆化してきておりますから、その大衆化された株主に報告をする。さらに会計監査人の監査、これは大体、会計士の人あるいは会計士の法人、ここらに監査をしておらう以外には専門家もありませんし、ほかに手はないと思うのです。まあこれが最上であるとは言い切れないかもしれませんが、いまの社会で考えれば会計監査人の専門家の監査というものは一番信頼のできるものだと思うのです。この監査結果も、株主総会招集のときには監査書類というものを同封して一般株主に前もって送らなければいかぬというような制度をつけておりますので、できるだけ監査役の監査及び会計監査人の監査を通して企業モラルというものをもっと徹底したいというのがわれわれの腹の底にある考え方でございます。この制度ができますれば、現状よりは必ず私はよくなると思うのです。企業というものが公開化されて、したがって、そういう適正な公開化されたものが出てくれば、消費者の人たちもそれを見て批判をしたり、是正を求めたり、いろいろの根拠ができますから、いままでのように、ただ監査役が株主総会で、監査の結果異常ありませんでしたと言うだけで素通りされたんでは、これは困るんで、そういうことのないようにしようというのが今度の商法改正の基本でございます。  また、これは立案段階で——私はあとからなったんでございますが、聞いておるところによりますと、一応の案をつくって、その案は商工会議所あるいは経団連、学者、各方面に配付しまして御意見を求めておるわけでございまして、経団連のそれに対する回答の書類では、できれば何とかこの制度を適用する法人というのは上場会社だけにしてくれろと、こういう注文であったようです。私もその書類を見ましたが、大体そういう書き方でございます。しかし、上場会社でなくても大規模のものがあるわけですから、ですから、上場会社はもちろん、上場会社でなくても規模の大きいものは適用するというようなことにし、それからまた、さりとてこのめんどうな会計監査人の制度やなにかをすべての会社に適用したら、また中小会社というものは非常に繁雑で困るだろうということから、結局は、衆議院で審議の結果、資本金五億以上の上場会社というようなことになりましたわけで、まあ大規模、中規模の会社に対してはこの適用をされるわけでございますから、いろいろ見方はあるかもしれませんけれども、私どもとしましては、この改正によって、かなり企業モラルも向上し、また社会的にも貢献ができる、いままでの弊害も相当程度除去できるというように考えておりまする次第でございますので、どうぞ御理解を願いたいと思います。
  174. 春日正一

    ○春日正一君 私は端的に、どっちの立場に立つかという結論をお聞きしたがったんですけれども、そういうことでなくていろいろ述べられたんで、それはいまからまた具体的な問題について質問に入っていきたいと思います。  そこで最初に、いま話のあった監査制度の問題なんですけれども、政府は、監査役に業務監査権が復活してくる、また取締役の違法行為差しとめ請求権が与えられたということで監査が強化されたと、これでよくなるだろうというふうに言われているんですけれども、この点に関しては衆参両院の法務委員会での審議でかなり質問が集中されておりますので、私はできるだけ重複しないようにして、ただ監査報告に関する規定についてお聞きしたいと思います。  まず、監査役は監査報告書をどこに提出することになっていますか。
  175. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 監査役は、取締役の作成いたしました計算書類を監査いたしまして監査報告書を作成し、これを取締役に提出することになっております。
  176. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、取締役会に提出する。そこで、監査役が株主総会に報告しなければならないというのはどういう場合ですか。
  177. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) ただいまの、監査報告書の関係でございますか。——監査役か作成いたしました監査報告書は取締役に提出いたしますが、その決算の結果は株主総会に報告されることになるわけでございます。そこで、株主総会の招集通知を株主にいたします際に、計算書類とともに監査役の監査報告書を株主に送付することになるわけでございます。そうして、株主総会が開かれますと、その席で監査役はそれについての意見を述べるということになっております。
  178. 春日正一

    ○春日正一君 私の聞いたのは、それを聞いているのじゃないんですよ。つまり、監査役は監査報告を取締役会に出すということで、それを得て株主総会にそれが出されるわけですけれども、そのほかに、監査役が直接株主総会に意見報告するという場合はどういう場合かということを聞いているんですわ。
  179. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 監査役は株主総会において、会計に関する書類を調査してその意見報告することを要することに従来からなっておるわけでございますが、今回の改正におきましてはその規定をやや詳しくいたしまして、改正案の二百七十五条の規定でございますが、「監査役ハ取締役が株主総会ニ提出セントスル議案及書類ヲ調査シ法令若ハ定款ニ違反シ又ハ著シク不当ナル事項アリト認ムルトキハ株主総会ニ其ノ意見報告スルコトヲ要ス」、こういうことになっております。
  180. 春日正一

    ○春日正一君 だから、ここのところですね、問題は。つまり、まるでこう本末転倒といいますか、こういうことのように私感じるんですよ。大体、一つの団体というか、機関の民主主義的な運営の原則ということからいえばですよ、監査役は株主総会で選ばれるわけですから、監査役の報告は直接株主総会にしなけりゃならぬ。自分を選んだ母体に対して報告するということが、これは当然の義務になっているはずです。これは一般民主団体の場合でも、大会で選ばれた役員、その機関というものは選ばれた大会に対して報告をする、そういう義務があることになっておる。だから、そういう意味でいえば、ほんとうに民主的に会社の運営をやらせようとするなら、監査役は株主総会で選ばれたわけですから、監査役の業務である監査報告書というものは株主総会にそのまま報告すべきだ。そうして、取締役会に対しては、特に必要な場合、必要な事項ないし要望事項報告するのが本来考えられる姿だと思うんです。取締役会が出してきたものを監査役は監査して異常ありとかなしとかいう報告書をつくるわけですから、それをまた取締役会に戻していく、そしてそこでチェックされて報告されることになったら何の意味があるか。だから、そういう意味でいえば、監査役というものは独立性が欠けて、取締役に不当に従属させられる、つまり、せっかくそういう監査の機能を今度の改正でふやしたというふうに言っていますけれども、それがまともに遂行のできないような形、そういう形になっているんじゃないかということですね。本来の姿でいけば、監査報告書が取締役会でチェックされずに、株主総会で公開され、しかもこれを通じて監査内容が広く国民に公開されるということになってこそ、大企業の反社会的な行為というものもある程度チェックされるということになるんじゃないのか。ということになれば、なぜそうされなくて、こういう取締役会から出されたものを調べた結果をまたそこへ戻してやるというような、結局効果を帳消しにするようなことになさったのかその理由を説明していただきたい
  181. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) いま先生の御質問を伺っておりますと、監査役が取締役に監査報告書を提出する、そこで取締役がさらにチェックするというようなことをおっしゃったように伺ったわけでございますが、商法考えておりますのは、監査役の監査報告書はそのままの形でもって株主総会に報告され、株主総会の招集通知にも添付されるということでございまして、監査役の作成した監査報告書に取締役が手を加えて、そして株主に見せるというならば、これはおっしゃるとおりの非難が当たるかと思いますけれども、そうではございませんで、監査報告書を監査役がつくったそのままのものを株主に示すということになりますので、別に、取締役に提出したからといって、その内容が変わることにはならないわけでございます。取締役に提出いたしますのは、監査役が監査結果をまず取締役に知らせまして、取締役に反省の機会を与えるということが一つ。それからもう一つは、これを株主総会の招集通知書に添付いたします。この株主総会を招集するという手続は、これは事務手続でございますので、取締役のほうでとり行なうという職務の分担になっております。そういう関係もございまして、監査役の監査報告書を取締役に渡す、提出すると、こういうことにしておるわけでございます。
  182. 春日正一

    ○春日正一君 その点はだいぶややっこしいので、私はこの次にまた、もっとそこのところは深めるということにして、次に移ります。  私らが見れば、いま言ったように、取締役から出したものを取締役に返して反省の機会を与えるというような、そんなものは、反省の機会は総会にじかに報告したっていいわけなんで、だから、そういう意味では、法律の上で、取締役会にそれを提出して、それを取締役会が総会に出すというような手続というものの中には問題があるというふうに思います。だから、取締役の不正とか、いろいろそういう問題が、あるいは業務監査とかいうような問題が出されて、そうしてそういうものが、チェックしちゃならぬとあなた言われておるけれども、内部機構の問題としていろいろ問題になる、されるということは、これは当然予想もされるので、その問題についてやはりそういうことを防いでいくような仕組みにしていく必要があるだろう、だから、あとでもう少しこの問題については触れたいと思います。  そこで、その次の問題ですけれども、十二日に佐々木委員が、参事官室の試案に比べてこの改正法案は大きく変わっているという点を質問して、民事局長から、参事官室試案が削減された理由についていろいろ答弁がありました。私も前のほう半分くらいお聞きしたのですけれども、この問題について私は別の角度からお聞きしたいのです。いまここに私、参事官室試案に対する経団連から出された意見書というものを持っておりますけれども、この意見書によると、まさにこの監査役の独立性を保障するためのいろいろな措置というものが、すべて削除あるいは限定されるというような状態になっておるわけですね。これを読み上げてみますと、  第1 商法改正に関する法務省民事局参事官室   試案について   1 監査役の業務監査   (1)監査役が取締役の職務執行の監査(いわゆる業務監査)を行なう場合につき、業務監査の責任範囲を明確に法定し、原則として会社の業務執行が適法か否かにつき監査を行うものとすること。   (2)監査役に対して、三か月ごとに営業の経過の概要報告をするよう取締役に義務づけているが、この項目を削除すること。   (3)監査役は取締役の解任を裁判所に請求できることになっているが、この項目を削除し、解任については株主総会の判断に委ねるものとすること。   (4)会社の整理開始の申立、特別清算開始の申立については、監査役はまず取締役又は清算人に申立を促すものとし、取締役又は清算人が申立をしない場合に限って、監査役も申立できるものとすること。   2 監査役の任期     監査役の任期は取締役と同一の任期にすること。   3 監査役の選任     監査役候補者の選定に当たり、取締役は監査役の意見を聴取しなければならない旨を規定するにとどめるものとし、監査役に次期の監査役候補者の指定権を与える旨の項目は、これを削除すること。   4 監査役の解任     監査役は自己の解任の議案について、株主総会で意見を述べることができる旨を規定するにとどめること。   5 監査役の報酬     監査役の報酬は、現行法通り、取締役と同一枠を以って定款の規定又は総会の承認事項とすること。     なお、監査役の報酬につき、取締役と別枠にして定款に定め、又は株主総会で承認するものとした場合には、報酬枠については、これを限度額にするものとすること。   6 監査費用     監査費用については、監査役は必要な額を請求できる旨を規定することにとどめること。  大体こういうように監査役の機能というものを、まあ手も足も縛ってしまうような、そういう意見書というものが経団連から出されておるわけですけれども法務省のほうでもこういうものが出たということは十分承知だと思うんですけれども、大体、こういうものは出たんでしょう。
  183. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) ただいまお読み上げになりましたのは、昭和四十三年に経団連が商法改正について要望した書面の一部であると考えます。お読み上げになりました点は、そのようなものでございます。
  184. 春日正一

    ○春日正一君 そこで、今度の商法改正案の中では、この経団連の意見がほぼ全面的に受け入れられているのか、それとも、受け入れられない部分があるというなら、どこが受け入れられなかったか、そこのところを説明してほしんですが。
  185. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) まず最初に、この意見書がどういう段階で出たかということを申し上げたいと存じますが、民事局参事官室の試案というのは、先ほどお話に出ました法制審議会商法部会におきまして商法改正案を検討中ごく初期の段階におきましてまとまった意見民事局参事官室の試案という形で公表して、各界の意見を求めたものでございます。それに対して経団連から提出のありました意見の一部がただいまお読み上げになりましたような次第でございまして、こういった各界からの意見書というものを参考にいたしましてその後の審議が続けられた、こういうことになっております。したがいまして、これは経団連の意見書に限りませんが、各界からの意見というものはかなり慎重に考慮に入れながら要綱案がつくられた、こういう経過になっております。  今回の改正案との関係で申しますと、どこが違うかというと、非常にこまかい問題になってまいりますが、まず第一の、監査役が業務執行を行なう場合に原則として適法かいなかの監査を行なうものとすること——これは、いわば監査の性質上当然であろということで、大体その趣旨で今回の法案もつくられていることと思います。それから、三カ月ごとに営業の経過報告をするという点は、この要望どおり今日の法案には削られております。それから、監査役が取締役の解任を裁判所に請求できるという点も、今日の案には載っておりません。こういった点につきましては、実情というものを考えながら、しかも、今回の監査制度の改善、強化の目的を達成するために、削除をしても障害にならないという限度ではなるべく要望をいれることを考えたわけでございます。それから、整理の申し立て、特別清算開始の申し立てについて、事前に取締役または清算人に申し立てを促するという点についての意見は、これはこの要望を採用しておりません。それから、任期の点は、この要望意見と同一でございます。それから、選任につきましては、若干法案のほうが広く規定されております。それから、解任につきましても、自己の解任だけではなくて、監査役の選任、解任一般について意見が述べられるように法案ではなっております。それから、報酬は、この要望は現行どおり据え置くということでございますが、規定の上ではそのとおりにいたしております。ただし、この点につきましては、別途、計算書類に関する法務省令を出すことにいたしておりまして、そこで監査役の報酬と取締役の報酬を区別して記載させる、このような取り扱いにいたしたい考えております。監査費用につきましては、この要望では「必要な額を請求できる旨を規定することにとどめる」と書いてございますが、今回の改正案では特に何も触れておりません。  以上でございます。
  186. 春日正一

    ○春日正一君 だから、いまの御説明を聞いて、一つ一つ追っていきますと、監査役のいわゆる業務監査を行なう場合について、責任の範囲を明確に法定して、原則として会社の業務執行が適法かいなかについて監査を行なうものとすること、これはそのとおりなんですね。それから、三カ月ごとの営業経過の報告は、これは削れといって、そのとおり削っている。それから「取締役の解任を裁判所に請求できることになっているが、この項目を削除し」云々と書いてある。これもそのとおり削っておる。それから、そのとおりいれなかったというのは、「会社の整理開始の申立、特別清算開始の申立について」云々と、この点が受け入れてない。しかし、任期についても、三年というのを二年にしておる。あるいは選任についても、ほぼこの意見がいれられておる。それから報酬の問題についてもそうです。特に監査費用の問題について、監査される取締役会に費用を出してくれと請求するというようなことになるわけですから、そこに矛盾があるわけですけれども、それすら削ってしまったということになると、金持たんで何の監査ができるか。巨大な商社や新日鉄みたいな大会社を、金持たんでもって、金の保証なしに何の監査ができるかという疑いが出てくるわけですね。  私の聞いておったところでは、経団連の意見がまあ一〇〇%入ったということにはなっていないけれども、しかし、まあ九〇%までは入っておる。そういう姿勢で、御承知のように、経団連といえば、大企業の集まりでしょう。中小企業の集まりじゃないんですよ。その大企業の頭部である経団連の意見が、この商法改正の一番大事なところに九〇%までいれられてしまったというようなこういう状況のもとで、どうして監査役が独立して、複雑な企業を監査し、そうして反社会的な行動をチェックするということができるのか。私はこれでは、先ほど大臣も、監査役の機能を強化したし、こうすればまあないよりはましだと言われるけれども、これでは結局実効はあがらないだろうと、非常にこれは疑問に思います。  そして、こういうことは、衆議院での委員会の参考人の北野氏は、監査役の独立性の保障、身分の保障ということが、監査役がその与えられた任務を果たす上で絶対必要な条件だということを言われて、こういうふうに言っていますよ。「監査役の身分保障につきましては、改正案はほとんど配慮をしていないのであります。わずかに、監査役というのは、株主総会において選任及び解任について意見を述べることができるんだということであるとか、あるいは監査役の選任決議につきましては、株主総会に出席を要する株主の有すべき株式の数は、発行済み株式の総数の三分の一未満に下すことはできない、こういった規定があるにとどまるのであります。十分な身分保障のない者にいかに権限を付与いたしましてもあまり意味はないと考えるのであります。改正案は、はたして粉飾決算等の防止をまじめに考えておるのか、私には疑問に思われるのであります。」、こういうふうに言って、ずっといろいろ述べて、「いかに権限を与えましても、身分保障のない人に対して、そのような権限は絵にかいたもちになる危険性があるのであります。特に監査役の解任につきましては、私は少なくとも裁判所の関与するところにすべきであると考えるのでありまして、すなわち、監査役の身分保障をはかるために、裁判所の承認がなければ監査役の解任はできないというところまで徹底すべきではないか、このように考えるのであります。そして、取締役会に対抗し得るだけの監査役会を設けまして、そのもとに会計専門家を含む監査の事務機構を常設いたしまして、そのことを法においてコントロールする、こういうことが必要なのではないかと考えるのであります。大企業の監査というものは、そのような常設の監査事務機構によって常時行なわれなければならないだけの社会的な、公的な理由があると考えるのでありまして、そういった観点に立って考えますと、今回の改正案に対しては多くの不満を感ずるのであります。」、こういうふうに言っております。  そこで、北野氏の、監査役の独立、身分保障に抜本的な改革を提案して、現在の大企業の横暴はますますエスカレートの一途をたどっているのですから、これを統制するにはいろいろな措置があるけれども、少なくとも大企業内の監査機構の問題としては、北野氏が言われるふうな仕組みにするだけの社会的な公的な理由があるということだと思います。私はこれは非常に傾聴すべき意見だというふうに思いますけれども、こういう意見に対して、法務省としては、どういうふうに受けとめておいでになるのか、その点を聞かしていただきたい
  187. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) ただいま、北野参考人の言われたことをお読み上げになったわけでございまして、そういう考え方も十分傾聴に値するものがあろうと思います。ただ、今回の改正は、やはり現実にある株式会社、こういうものを踏まえて一歩一歩改善をはかっていく。急激に改善をはかりますと、やはり混乱を生ずるというようなおそれもございますので、そういった点も配慮しながら、新しくつくるのではなくして、現在あるものを改善していくということになりますと、いきなり一つの理想案をもって臨むというわけにはなかなかまいらないわけでございまして、そういう意味で、今回の改正は漸進的と、まだ十分でないという点があることはこれは認めざるを得ないかもしれませんけれども、しかしながら、これは監査制度だけを改正するという場合にはどうしても限度のあることでございまして、現在株式会社というのは非常にたくさんございまして、その株式会社のいろいろな態様に応じて、運営のしかたも違ってきております。そういった実情を考えながら、しかも、ほかにあります取締役会とか株主総会とか、そういう機関との関係考えながら改正していかないと、運用がうまくいかなくなるという面もございますので、そういったいろいろの角度から考えますと、今回の改正案は現状としてはかなり進歩的なものを持っておる、相当な充実強化になるということが言えようかと思います。  先ほど経団連の意見を九〇%聞いているではないかというお話がございましたが、この経団連の意見の中には、当然そうあるべきものだというような点もございます。たとえば、適法かいなかについて監査を行なうということは、これは監査の性質から申しまして当然のことでございまして、いわば言わずもがなのことであろうというふうに思うわけであります。  それから三カ月ごとに営業の経過の概要報告をすることを取締役に義務づけると、この規定を削除したのはどうかという御意見でございますが、もともと監査役は何どきでも取締役に対して業務報告を求めることができるわけでございますので、こういう三カ月ごとの定期報告義務というものを規定しなくても、実際の運用には全然差しつかえないということが言えるわけでございます。法的に申し上げますとそういうような理由もあるわけでございまして、われわれといたしましては、今回の改正案は、現在の実情を踏まえての改正という意味ではかなり大きな改善効果を期待できるというふうに判断をいたしておる次第でございます。
  188. 春日正一

    ○春日正一君 まあいまあなたはいろいろ弁解をされましたけれども、一番最初に私聞いたときに、大臣も、あなたのほうからも、今度の商法改正の一番の根本というか、一番の目玉は、監査制度を強化して、そして会社の不正とかそういうことがないようにするんだということを強調されたわけでしょう。私一番先の質問で、国民立場に立つのか、大企業立場に立って法を合わせるのか、国民を保護するために法を改正するのか、どっちの立場に立つかということを出したけれども、これがここでもはっきり出ているわけでしょう。いまあなたは、そういう問題についてはいまあるがままの会社の状態というものを前提にしてやらなきやならぬから、急激なことはできぬというふうに言われた。しかし問題は、いままさに国民が腹を立て、そして疑惑を持って見ておるのは、ほんとうに一握りの大企業の悪徳行為ですわ。どうされたってしょうがないんだから——たとえば私はある中ぐらいな、一億二千万ぐらいな資本金の建設会社の社長に聞いてみましたけれども、とにかく仕事を請け負っても丸棒がこない、それで何とかと言っていけば、もう一週間ごとに値が上げられるというんですね。そういうことをやられる。そういうふうかことが至るところでやられているわけなんですわ。大企業はそれでうんともうけているんだから、こういうものを押えてくれというのが国民の願いだし、ここまでもういわゆる資本主義の自由競争の原則を踏みはずすところまできた大企業の横暴というものを押えるということでなければ、いま国民の生活も栄養も守れないというところにきておる。それがいま国会議論になっているわけでしょう。この問題が起こったのは昭和三十九年ですから、だからもう十年の経過がありますわ。その十年の経過の中で、最初に提起された粉飾決算というような問題をさらに越えて、もっと大きな社会的な問題ということに大企業のマナーがなっているわけですわ。それをどうするかということで、しかもその当時の意見としていわゆる参事官室でおつくりになったものさえずたずたに切りさかれてしまって、経団連の言いなりになったとすれば、これは大企業が出してきた意見がそのまま入ったわけですから、大企業のための改正だと言われても、これは一言の弁解もないと思いますよ。そうでしょう。経団連というのは大企業の団体なんだから、その団体の出してきた意見が、肝心なところ九〇%まで入ってしまったということになれば、この一番目玉である監査制度そのものが大企業意見によってきめられたんだと。大企業は自分をしばるようなことはしませんからね。だから、こういうものでほんとうに効果があるのかということは疑わしい。   〔委員長退席、理事佐々木静子君着席〕 しかも、始まってからすでに十年の経過がたっておる。そして、いまはもうもっと高い段階で大企業の横暴を規制しろということが国民の世論になっておるわけですから、だから、私は、その世論に聞いて練り直したらどうなんだと、メンツにこだわらずに国民の世論に聞いて練り直す、それが国民の負託にこたえる政府の立場じゃないだろうかと、そう思うんですけれども、あなたはあくまでこれでいいんだ、やりますと言うのかどうか。
  189. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 今回の改正の主眼が監査制度の改善強化にある、これは先ほど申し上げたとおりでございます。その骨子となりますのは二つあるわけでございます。  一つは、現在、監査役が会計監査しか行なっていない、これを業務監査を行なえるようにしようというのが一つです。それからもう一つは、資本金五億以上の大会社については、専門の会計監査人に会社の決算の検査をさせると、こういう制度を導入するということでございます。  そこで、そのまず第一の、監査役の監査範囲を広げるという点でございますが、これは、会社の業務全般に及ぶわけでございまして、その意味で、会社がその行動を正す上において非常に効果があることだというふうに考えております。その改正あたりまして、監査役の地位を強化するという問題が当然起こってまいります。御指摘のとおりです。ところが、御承知のように、現在の実情から申しますと、監査役と取締役と比べてみますと、監査役のほうが一般に地位が低い、取締役よりは一段下だというふうに世間でも見られておりますし、実際の人事の運用におきましても、そのようにされておる場合が多いと思います。そこで、制度の面におきまして、少なくともその監査役は取締役と同等の地位に立たなければならないということを考えたわけでございまして、その点は、今回の法案におきましても貫いているつもりでございます。監査役の地位がそれだけ向上していると。で、取締役と同等の立場に立って業務監査を行なうと、これによって所期の目的を達成しようとしているわけでございます。  それから、大企業の言い分を聞いて案がだんだん変わってきたのではないかというお話でございますが、これは、審議過程におきまして案がいろいろと変わってくるということは、やむを得ないことでございます。その場合に、大企業の言い分だけを聞いたんではないかという御疑問があろうかと思いますが、そうではございませんで、今回提出いたしました法案におきましては、当初とかなり考え方修正した点がございます。その大きな点は、一つは、中小企業に関する問題でありまして、中小企業の場合には、監査役の権限を拡大いたしますと中小企業の運営に支障を生ずるというようなところから、監査役の監査権限はそのままにしておいてほしいという要望がありました。これは立案の段階においてそのとおりにいたしたわけでございます。  それからもう一つの、専門家の監査を受けさせるという点でございますが、会計監査人の問題であります。この点につきましては、これは大企業といたしましてはかなり負担になる問題でありまして、経団連といたしましてもかなり困惑したというのが実情であろうと思います。当然そうあるべきだという御意見もありましたけれども、自分の会社はそういうことをされてしまっては困るという意見もかなりあったわけでございまして、経団連が法務省に提出いたしました要望書の中にも、会計監査人の監査を受ける会社の範囲をもっと限定してくれという意見がかなり強く出されておったわけでございますが、この点は、今回の改正趣旨から絶対に譲ることができないということで取り上げなかったわけでございます。そのように、立案の過程におきましていろいろな意見を参考といたしまして、そして所期の目的が十分達成できるように、しかもあまり現状との摩擦が起きないようにと、全般的な問題として検討した上で今回の法律案になったと、こういう事情でございますので、御了解をいただきたいと思います。
  190. 春日正一

    ○春日正一君 その説明は、あなたのほうの説明だけれども、もちろん日本には零細企業株式会社という名前になっているけれども、実際は家族会社みたような、非常に零細な会社もあるし、中規模な会社もあるし、超大型の会社もあるという状態ですから、   〔理事佐々木静子君退席、委員長着席〕 同じ会計監査のやり方なり何なりにしても、あるいはそこに置くべき役員なり監査人なりの問題にしても、一律にこれを全部やれというわけにはいかぬのはこれはあたりまえだし、それを区別する、そのことは必要なことだと思いますよ。しかし、特に大企業に対して、特別法では、五億円以上のものには監査人を置けと、こういうふうになっている。それと同じように、そういう特別な大企業に対して監査役というものをもっと地位を強化する。これ、さっきのあれ読んでみましても、監査役が業務監査できるというけれども、適法か違法かだけを監査するということでは、これ、買い占めやったって、これは当然商人として、値上がりがありそうだといったら、品物を買い込んで、仕入れておいて、高くなったら売ってもうけるのが、これは商人の道じゃないかと言われればそれまでですからね。違法じゃないんですから、これは。だから、そういう意味では、適法かどうかを見るだけというようなことだけでは事足りないし、業務全体について監査もし、反社会的なものがあるなら、これを株主総会に出し、世間にも出して、矯正していくというような任務が果たされなければ監査役にならない。ところが、その監査役が、任命にしても、株主総会で同意を得て選ぶとなっているし、やめさせるにしても過半数の監査役の同意を得て取締役がやめさせるというようなことになっているし、身分は非常に不安定、しかも監査に要する資金というものの保証というものは法的には何にもないわけですね。ただ、会社というか、取締役会というか、そういうものとの話し合いの中で、それじゃ幾らくらい出そうかというようなことになってしまう。だから、あれほど、一つの国家と言われるくらい大きな組織ですからね、いまの財閥組織というものは。あとでまたこの問題、子会社の監査の問題で、私、触れようと思いますけれども、一つの国家といわれるくらい大きな組織体ですから、こういうものを五人や八人の監査役がちょっと調べようなんて言ったって、とても群盲が象をなでるというような域しか出ないのにきまっている。ほんとうに監査させようとすれば、先ほどの北野氏の意見のように、取締役会と対等に監査役会を設けて、それに必要なスタッフを置いて監査をさせるというような仕組みにしなければ、ほんとうにこのマンモスみたいなものは、十分な監査もし、取り締まるということもできないんじゃないかと言っておる。そのことを私はどうなんだと言っておるんですが、ところがあなたのほうは、急に変えちゃまずいと言っているけれども、いまある企業がもうそこまできてしまって、これだけ弊害が出ておるんだから、だからせめてそこぐらいは内部機構として装置しておきませんと、この反社会的行為が暴走するということをとどめ得ないんじゃないかと、そこまできておる現状であなたはどう考えるのかと。あなたは役人としていろいろ努力してこられてこれだけまとめたと。それは全然いじらぬよりはましだろうということなんだろうと思うけれども、いまそんな、いじらぬよりはましだろうというくらいなら、これだけ議論される法律だったら、いじらぬで置いといたほうがいいくらいなもので、むしろ、いじるなら、特に監査が必要だ、反社会的行為を押えるために必要だと言うなら、まさにここのところをほんとうに強化して、こういう内部装置を置いたから暴走はチェックできるんだということにならなきゃならぬのじゃないかと、ぼくはそこを言ってるんですわ。ぼくの言う気持ちわかりますかどうか。わかりますかでいいですわ、どうする、こうすると言わなくても。どうですか。
  191. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 御質問、お話の御趣旨はよくわかります。  そこでちょっと、いまお話しになりました点に関連して申し上げたいと思いますが、企業が反社会的な行為をしたと、これ、監査できるかという問題でございますが……
  192. 春日正一

    ○春日正一君 チェックできるかということ、そこへ走るのを。
  193. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) チェックできるかという問題でございます。ある会社が、反社会的な行為をすることによって利益を得る場合もございましょう。形式的には、それは商人の行為としてまあ当然だとおっしゃいましたけれども、実質的には、社会的な非難を生ずるというような場合には、そういう行為をはたして取締役がやっていいものかどうかという問題が出てまいります。取締役は会社から委任を受けて会社の事務処理するわけでございますから、会社に対して、商法規定がございますように、忠実義務を負っておるわけでございまして、会社の名声を落とすような反社会的な行為をするということは、すなわち取締役がその会社に対する忠実義務を完全に履行していないということになるわけでございまして、これは監査役として当然監査しなければならない事柄である、したがって、それを事前に察知いたしました場合には、不法行為の差しとめ請求権というようなものもございますし、あるいは取締役会においてそれを事前にやめさせると、こういうようなこともできるわけであります。まあそういうことも今回の改正案においては予定しておるのでありまして、そういう点について無力であろうということには必ずしもならないと考えております。  それから監査役が監査を行なうについて費用が要るだろうと、それは仰せのとおりでございます。現在でも、監査役にある程度の費用を与える、あるいは下部の機構をつけるというようなことをいたしております。しかしながら、今度監査役の権限が拡大いたしまして仕事がふえると、こうなりますと、当然いままで以上の事務の費用も必要でございますし、それから下部の機構も必要となってくると、このように考えております。それは法律で幾らの金をやれというようなことは書いてございませんけれども、監査役がその事務処理するために必要な費用というものは、これは民法の規定によって会社に前払いを請求して、その支払いを受けることができることになっておりまするので、そういうことによって一応道は開いてあるわけでございます。  問題は、その監査役がその職務を十分に果たし得るような、そういうりっぱな人材が得られるかどうかということにもかかってくるわけでございまして、こういった点につきましては、今後経済界におきましてこの法律趣旨を体した運用をしていただきたいと、このように考えておるわけでございます。
  194. 春日正一

    ○春日正一君 あのね、あなたは、企業が反社会的な行為をすれば指弾を受けるから一時の利益は受けても損害になるし、また、そういうことについては監査役が告発するか、そういうこともできるようになっているんだというふうに言われますけれども、しかし、実際に去年の十月からことしの一月へかけてのあの買い占め売り惜しみ、石油便乗のつり上げというようなものは、あれは至るところでみんなやっている。それじゃあれ、取締役会で重役が監査役から指弾されてどうしたという話、私ちっとも聞かぬ。新聞で見たこともない。そうでしょう。ああいうことがやられる。ああいうものをチェックできるような内部機構を企業体の中にきちっと置いておかなければ、ああいうことになって——それは頭をぶつければ、この間のゼネラル石油みたいに、国会で摘発されて社会的な指弾を受けて、そうして社長は辞任しなきゃならぬような事態もたまさか起こりますけれども、そんなことはよんどの例外だということなんですね。だから、内部的な仕組みとしてのこの監査役というようなものをなにする必要があるだろうと。  それから、人の問題だと言われますけれども、これは金子参考人も言っていましたね。いや、そういうことで人が得られるかどうかということが問題なんですということを言っていましたけれども、監査役というのはいままで大体冷やめし扱いになっておった。それを、ほんとうに取締役会を相手にして会社の運命をになうような立場に高めようとすれば、やはり待遇においても、権限においても、あるいはその権限を執行するための資金においても、制度的にちゃんと保障してあげなければ、これは、あなた監査役になってくれと、へえ、なりましょうと言ってみたって何にもできないから、結局腕のある人はそこへいかないで、どうでもいいのがそこへ置かれるということになっているわけですから、その現状を人の問題ですと言って自然に人が出てくるわけじゃないし、日本の資本主義の今日までの発展の中で人が育たなかったわけじゃない。その監査役というポストに人が育たぬということは、育つ土壌になっていないから育たないんだから、その育てる条件はどうなんだということで、先ほどの北野氏の意見なんかも私引用しながら、こういうような点についてどうなんだと。まあそれも一理あるけれどもと言っていまのこの法案にあんたは固執されている。そうすると、あんたの立場というのは、それはそれとして、これがいまは一番いいんだということになっちまうわけですね。だから、それではぐあい悪いんじゃないかと。法律として出してはきても、これだけ議論されて矛盾というものが出てくるということになれば、そこら考え直してもう少し練り直してみるということでなきゃ、国会、何のために議論しているか意味ないもの。私ら一生懸命になって汗かいて質問しているのに、あなたのほうは、もうできたものだから変えませんと、これじゃ、速記録をつくるために議論しているようなことになっちゃう。そこら考えてもらわなきゃ困ると思うんです。どうですか。
  195. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 監査役が取締役の行動を制約しようとした事例を聞かないと仰せられましたが、私も聞いておりません。しかしながら、現在の監査役は会計監査しか行なっていないわけでございまして、業務監査を行なう権限がない以上、会社のいろいろな取引内容その他の行動につきまして口を差しはさむ余地が現在はないわけでございます。ですから、そういうことができるようにしようというのが今回の改正の一つの眼目でございますから、この改正がなされまして適正な運用がなされれば、そういう事例が必ず出てくるものというふうに考えております。
  196. 春日正一

    ○春日正一君 どうですか、四時になって、あとまだ私こんなに質問があるんですが、このくらいできょうはあれしますか。
  197. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 ちょっと関連して、ただ一問だけですがお聞きしますが、実は経団連の意見書が出たということで、先ほどあなたから内容についていろいろなあれがあった。私は、実はそれを見ておらないから詳細なことはわからないけれども、その意見をそのまま今度の改正法案の中に取り入れてあるというわけではないのじゃないか、こういうようなふうに考えるわけです。そこで、今度の経団連の意見の中には、多少違うと思いますことは、こういうふうな条文があると思うんですが、今度の改正案の二百七十五条については——二百七十五条ちょっと見てください。これは経団連の意見と必ずしも一致しておらないのじゃないか、それよりこの改正案のほうが強化しておるのではないか、こういうようなふうに考える。  それから二百七十五条ノ二ですね。これもやはり経団連の先ほどのその意見とはまた非常に違って、それよりももっともっとこれは強化しているのではないか、このようなふうに考えるが、その点は経団連の意見そのままか、あるいはそうでなしに、もっとこういうような点が強化しているのだというようなふうにあるのか、その点を伺いたい。  それからもう一つは、取締役にもし不適当な行為があったときに、株主総会に報告せずに、直ちに裁判所のほうにその解任の請求をすべきではないかというふうな意見を持っておる人もあると思うんです。しかしながら、私はやはり裁判所というような官僚に直ちに取締役を解任しようというふうな意見を監査役から出すことは適当ではなくて、やはりそれは株主総会にそれを報告して、株主総会のほうで、それは取締役がそのままやはり存続すべきものだとかあるいは解任すべきものだとかいうのは株主総会で決定すべきものであって、裁判所がそういうものを決定すべきものではない、官僚の裁判所がすべきものでないという意見を持っておるが、それに対して法務省のほうではどういうような考えを持っておりますか。
  198. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 最初の御質問の点でございますが、二百七十五条あるいは二百七十五条ノ二、この辺についての経団連の意見というものは、ちょっとこれは長文でございまして、ざっと見ましたところ見当たらないわけでございますので、あるいはよくあとで調べてみたいと思いますが、ちょっと正確にお答えをいたしかねます。  それから解任の件でございますが、これは株式会社という一つの団体でございますので、当然株主総会の意向を尊重するというのが第一でなければいけないと存じます。裁判所に解任を求めるというのは、非常に特殊な場合、たとえば解散になった後の清算人に適当でない行為があるとか、そういうような場合には考えられると思いますけれども、正常に運営がなされている限りは、やはり株主総会で決定するというのが妥当であろう、このように考えます。
  199. 原田立

    委員長原田立君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十九分散会