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政府委員(川島一郎君) 仰せのとおり、今回の
改正案の基本は、法制
審議会が慎重
審議を重ねまして、
昭和四十四年に
監査制度の
改正の要綱案というものをきめたわけでございます。その後、若干の追加がございますが、そういうものをあわせまして今回の
商法改正案ができておるわけでございますが、若干の点におきまして
改正要綱案と今回の
法案が相違いたしております。
その変わった点をまず申し上げますと、法制
審議会の要綱におきましては、監査役の制度に関する
改正といたしまして相当広範ないろいろな点を取り上げております。まず会計監査を
業務監査に広げるという点、これは今回の
法案でもそのとおりでございます。それから、それに伴いまして子会社
調査権あるいは取締役会に出席して意見を述べる
権利、それから株主総会に対して監査役が報告する義務を負う、こういった点は変わっておりません。しかしながら要綱案におきましては、監査役が取締役解任のために株主総会を招集する
権利、これを要綱では認めておったわけでありますが、今回の案では削除いたしております。それから同じく監査役が取締役会を招集する
権利、これも今回の案では削除いたしております。それから、変わった点だけを申し上げますと、要綱案では取締役が定期的に
業務の状況を監査役に報告する義務を負うことになっておりますが、この点も今回の
法案では削除いたしております。
以上のように権限の点で若干の縮小が見られるわけでございますが、これは、この要綱を発表いたしまして、その後これに関する反応というものを調べたわけでございますが、現在の実際の状況から見て、ここまで一挙にいかなくてもいいのではないか、むしろあまり一挙に監査役の権限を
強化するということは実際界に混乱を起こすおそれがある、かようなことでありました。さらに、こういう
権利を認めなくても、今回の目的となっております監査役が取締役をコントロールするということは、たとえば取締役の
違法行為の差しとめ請求権であるとか
各種の訴えの提起権であるとかあるいは取締役会出席権、こういった
権利が認められておれば要綱で企図しておるような取締役をコントロールするという点においては差しつかえがなかろうと、こういう判断の
もとに以上の数点を削除いたしたわけであります。
それから法制
審議会の要綱におきましては、監査役の身分を
強化するために任期を現在の一年から三年にするということにいたしておりましたが、今回の
法案ではこれを二年とするということにいたしております。で、この点も現在任期一年の監査役の在任期間を一挙に三年に引き上げるというのは少し飛躍し過ぎるという意見もございましたし、実際問題といたしましても実務の立場から人事問題その他を考えました場合に、あまり急激な変更を加えることはいかがであろうか、こういうような点で二年とすることにとどめたわけでございます。
そのほか、監査役に関しては特別の責任規定を設けるという
改正があったわけでございますが、この点もしいて
改正する必要がないのではないかという意見がかなりございまして、現在の規定のままとしたわけでございます。しかしながら監査役の権限が従来の会計監査から
業務監査に広がりましたために、この責任規定の適用につきましてはかなり大きな変更が加えられているというふうに思います。
それから、大きな問題といたしまして、監査役の権限を会計監査から
業務監査に広げるということにつきまして、中小
企業につきましてはかなり反対があったわけでございます。これは中小
企業の場合にはそれほど
経理の問題をやかましく言う必要がないのではないか、また、中小
企業について
業務監査を行なわせるということはかえって負担になるというような反論がございまして、そういう点も考慮いたしまして、資本金一億円未満の会社につきましては、監査役は会計監査のみを行なうという従前の例に従ったわけでございます。
それから次に、会計監査人の監査を大会社について適用するという問題でございますが、要綱におきましては資本金一億円以上の会社にこれを適用するということにいたしておったのでありますが、
法案におきましては、
特例法で資本金五億円以上の会社にこれを適用するということに変更いたしております。この点もいろいろ意見がございまして、資本金一億円以上の会社にすべて会計監査人の監査を受けさせるということは現状から見ていささか問題があるのではないか、ことに会社の数でありますとか、あるいは御承知の税理士の問題などもございまして、そういったいろいろな事情を考えますときに要綱の一億円以上という線はやや広きに失するのではないかと、このように考えまして五億円以上に改めたと、こういう経過になっております。