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1974-02-12 第72回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十二日(火曜日)    午後一時十五分開会     —————————————    委員異動  二月七日     辞任         補欠選任      中村 波男君     杉原 一雄君      星野  力君     野坂 参三君  二月八日     辞任         補欠選任      杉原 一雄君     中村 波男君  二月十二日     辞任         補欠選任      野坂 参三君     春日 正一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 棚辺 四郎君                 佐々木静子君     委 員                 柳田桃太郎君                 山本茂一郎君                 吉武 恵市君                 中村 波男君                 春日 正一君    国務大臣        法 務 大 臣  中村 梅吉君    政府委員        法務政務次官   高橋文五郎君        法務大臣官房長  香川 保一君        法務大臣官房会        計課長      住吉 君彦君        法務省民事局長  川島 一郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局経理局長   大内 恒夫君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        経済企画庁物価        局物価調査課長  加藤 和夫君        大蔵大臣官房審        議官       田中啓二郎君        大蔵省証券局企        業財務課長    小幡 俊介君     —————————————   本日の会議に付した案件検察及び裁判運営等に関する調査  (法務行政基本方針に関する件)  (昭和四十九年度法務省及び裁判所関係予算に  関する件) ○商法の一部を改正する法律案(第七十一回国会  内閣提出衆議院送付)(継続案件) ○株式会社監査等に関する商法特例に関する  法律案(第七十一回国会内閣提出、衆議院送  付)(継続案件) ○商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係  法律整理等に関する法律案(第七十一回国会  内閣提出衆議院送付)(継続案件)     —————————————
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告をいたします。  去る七日、星野力君が委員辞任され、その補欠として野坂参三君が選任されました。  また、本日、野坂参三君が委員辞任され、その補欠として春日正一君が選任されました。     —————————————
  3. 原田立

    委員長原田立君) 検察及び裁判運営等に関する調査議題といたします。  まず、法務行政基本方針について中村法務大臣からその所信を聴取いたします。中村法務大臣
  4. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私は、内外諸情勢のきびしいこの時期に際しまして、法務大臣に就任し、法務行政を担当することになりました。その職責のきわめて重大であることに思いをいたし、微力ではありますが、全力をあげて職務の遂行に当たる所存でございます。  どうか委員各位の御理解と御協力を賜わりまして、法務行政の運用に遺憾なきを期したいと存じておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、第七十二回国会における当委員会の御審議に先立ちまして、法務行政に関する所信一端を申し述べたいと存じます。  現下わが国社会情勢は、いわゆる石油危機をはじめ、諸物価の高騰、公害その他種々の深刻かつ重要な問題をかかえ、きわめてきびしい情勢下にあります。  このような情勢もとにおいて、法秩序維持国民権利保全という法務行政に課せられた使命はまことに重大というべく、私は、昨年十一月法務大臣に就任以来、常にこのことを念頭に置き、所管する行政の各般にわたり、その適正な運営をはかってまいりましたが、今後とも、国民の期待に添うよう法務行政の適正迅速な処理に一そうの努力を傾注いたしたいと存じております。  以下、私の考えております重点施策について申し上げます。  まず第一は、治安維持についてであります。  申すまでもなく、民主主義維持し、平穏な国民生活確保するためには、その根底をなす法秩序がゆるぎなく確立維持されていることが何よりも肝要であります。  ところで、当面の治安情勢を見ますに、わが国における刑法犯発生状況、ことに大都市における犯罪情勢は、諸外国に比して、すぐれて安定しているといわれておるのでありますが、社会情勢の急激な進展等に伴い、各種経済関係事犯企業活動に伴う公害事犯等、新たな形態の事犯発生を見ておりますし、一般犯罪につきましても、犯罪内容が従来よりも一段と複雑多様化の様相を呈しており、今後の犯罪情勢は、必ずしも楽観を許さないものがあると考えられるのであります。また、いわゆる過激派集団は、派閥間で殺伐な抗争を繰り返し、勢力の伸長を競っており、機を見てはハイジャックやテロ行為、さらには集団的暴力行動に出るおそれも少なくなく、その動向には、引き続き警戒を要するものがあると考えられるのであります。  私は、このような諸情勢に対処するため、検察その他関係機関整備充実をはかる等、執務の効率的な運営につとめてまいる所存であります。また、不法事犯に対しましては、厳正な態度のもと、適正、迅速に刑罰法令を適用することにつとめ、これら犯罪の根絶をはかり、もって、治安維持確保に遺憾なきを期する所存であります。  第二は、民事行政事務充実強化についてであります。  登記その他民事行政事務は、最近における社会経済の著しい進展に伴い、その事務量は年々増加一途をたどり、また、その内容複雑多様化しているのが実情でありますが、これら民事行政事務は、国民生活に直接関係を持ち、その事務処理のあり方は、国民権利、利益の保全等に影響するところがはなはだ大でありますので、今後とも引き続き、職員増員をはじめとして、関係法規整備組織機構合理化事務機械化等をはかり、その需要に即応した事務処理体制充実につとめたいと考えております。  特に、登記所適正配置につきましては、一昨年の民事行政審議会の答申の趣旨を踏まえ、目下、小規模庁を中心として整理統合実施中でありますが、今後とも整理統合対象庁につきましては、地元住民理解協力を求めながら、円滑な実施を進め、登記行政の一そうのサービス向上につとめる所存であります。  さらに、人権擁護につきましては、昨年十の地方法務局を選び、それぞれの管内に、町程度生活圏を単位とする人権モデル地区を設定し、特に力を注いで人権思想啓発活動を展開してきたのでありますが、さらに、今後おおよそ四年間に、すべての法務局地方法務局管内に、この人権モデル地区を設け、人権思想の一そうの啓発活動を行なう所存であります。  第三は、少年非行者及び犯罪者に対する矯正及び更生保護充実についてであります。  少年非行者犯罪者改善更生につきましては、少年院刑務所等矯正施設における施設内処遇と、保護観察等実社会における社会内処遇充実強化するとともに、これら相互間の連携を密にすることが肝要であると考えます。  そのためには、個々の犯罪者等の特性に最も適合した処遇方法を講ずるための分類処遇及び矯正医療充実と、社会復帰に役立つ職業訓練刑務作業の再開発、教科教育拡充等をはかる必要があり、また、保護司など民間篤志家による更生保護活動充実を促進し、これら民間協力者保護観察官連携を一そう密にし、犯罪者等社会復帰を容易ならしめることが必要であると考えております。  第四は、出入国管理行政充実についてであります。  近時、わが国出入国状況につきましては、国際交流活発化輸送手段大量化に伴い、出入国者はますます増加一途をたどり、その結果、出入国及び在留管理に関する事務は、いよいよ複雑、困難の度を加えてきております。そこで、このような情勢に対応した出入国管理制度確立するため、過去数回にわたり、出入国法案を提出したのでありますが、遺憾ながら御賛同を得られず、いずれも未成立に終わった次第であります。  かかる事情を踏まえて、出入国法案内容につきましては、各方面の意見を承わり、御賛同を得て、すみやかに成立を見るよう法案の検討を重ねるとともに、現行制度もとで、でき得る限り業務合理化をはかり、機動力充実させるなどして、出入国手続の適正、迅速な処理に努め、出入国管理行政に遺憾なきを期してまいりたいと存じております。  また、いわゆる未承認国との人の交流につきましては、国際情勢の推移を踏まえて、国益を十分考慮しながら、適切、妥当な措置を講じてまいる考えであります。  最後に、法務省施設整備改善についてであります。  法務省施設につきましては、その組織複雑性及び機能特殊性から、他の省庁に比較してその庁数はきわめて多く、現在、二千九百余を数える実情にあります。しかも、このうちの約五〇%は、依然として未整備庁であります。このような実情から、法務省といたしましては、毎年度施設整備予算を計上して、その整備改善をはかっておるところでありますが、昭和四十九年度におきましても老朽、狭隘度が特にはなはだしい施設や、民間地方公共団体等から返還あるいは移転要請を受けている施設重点的に取り上げ、その整備改善実施してまいる所存であります。  なお、私は、現下社会情勢にかんがみ、経済秩序を乱す企業の悪質な違法行為に対しましては、現行各種法規を活用して、その効果的な取り締まりをはかり、秩序確立を期したいと考えているのでありますが、これに関連いたしまして、さき国会において継続審査に付され、本国会において引き続き御審議を願うことに相なっております商法の一部を改正する法律案ほか二法案審議につきまして、格別の御理解をいただきたいと存じます。同法案では、監査制度改善し、会社の不正な経理、違法な業務行為に対する監視を強化し、株式会社運営適正化をはかることを重点の一つといたしております。現下社会経済情勢にかんがみますとき、この改正法案は時宜を得たものであると考えております。何とぞ、立法の趣旨について十分な御理解を賜わり、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上、法務行政の当面の諸施策について所信一端を申し述べましたが、委員各位格別の御協力により、その実をあげることができまするよう、一そうの御支援、御鞭撻を切にお願い申し上げる次第でございます。
  5. 原田立

    委員長原田立君) この際、高橋法務政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。高橋法務政務次官
  6. 高橋文五郎

    政府委員高橋文五郎君) 一言ごあいさつを申し上げます。先般、法務政務次官を拝命いたしました高橋文五郎でございます。一身上の都合でごあいさつがおくれ、恐縮に存じております。  私は法務行政につきましては全く未経験でございますが、中村法務大臣もと全力を尽くして国民の期待する法務行政の推進に努力してまいりたいと存じます。どうかよろしく御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。     —————————————
  7. 原田立

    委員長原田立君) 次に、昭和四十九年度法務省及び裁判所関係予算について説明を聴取いたします。住吉法務省会計課長
  8. 住吉君彦

    政府委員住吉君彦君) 昭和四十九年度法務省所管予算内容について概要を御説明申し上げます。  昭和四十九年度の予定経費要求額は千七百六億八千三百四十六万四千円でございまして、これを前年度予算額千五百二十九億九千四百十七万七千円に比較いたしますと、百七十六億八千九百二十八万七千円の増額となっております。  増額分の内訳を大別いたしますと、人件費百三十九億四千五百四十一万九千円、一般事務費三十七億三千四百三十七万二千円、営繕施設費九百四十九万六千円、となっております。  まず、増員について申し上げますと、第一に、検察庁において百四十六人が増員となっております。まず、交通関係事件処理円滑適正化をはかるため、検察事務官七十人が増員となっております。また、公害犯罪に対処するため、副検事五人、検察事務官五十一人、公判審理迅速化のため検察事務官五人、公安労働検察強化のため検察事務官十人、暴力事犯検察充実のため検察事務官五人がそれぞれ増員となっております。  第二に、法務局において事務官三百三十七人が増員となっております。まず、登記事務の激増に対処するため、三百二十五人が増員となっております。そのほか、国の利害に関係のある争訟事件処理充実するため九人、人権侵犯事件等増加に対処するため三人が増員となっております。  第三に、刑務所における職員勤務条件改善するため、看守百六十六人、医療体制充実するため看護士(婦)十六人が増員となっております。  第四に、非行青少年対策充実するため、関係職員三十八人が増員となっております。  その内容は、少年鑑別所観護活動充実のため教官十六人、保護観察所面接処遇強化のため保護観察官二十二人でございます。  第五に、出入国審査業務適正迅速化をはかるため、地方入国管理官署において、入国審査官十九人、入国警備官三人が増員となっております。  第六に、破壊活動調査機能充実するため、公安調査官二十七人が増員となっております。  以上のほか、法務本省において、人権擁護事務処理体制充実するため事務官一人が増員となっております。  増員内容は以上のとおりでありますが、御承知のとおり、昭和四十六年八月の閣議決定に基づく定員削減計画による昭和四十九年度削減分として六百三十三人が減員されることとなりますので、所管全体としましては、差し引き百二十人の定員増加となるわけであります。  次に、一般事務費につき、それぞれ前年度当初予算と比較しながら御説明申し上げますが、まず、全体としては、前年度に比し、旅費類が一億五千六十三万四千円、庁費類が十五億五千四百九十四万七千円、その他の類が十四億五千三百七十五万三千円増額となっております。  以下、主要事項ごとに御説明申し上げます。  第一に、法秩序確保につきましては、さきに申し上げました副検事五人を含む合計三百九十三人の増員経費及び関係組織人件費を含めて千二十五億八千三百万円を計上し、前年度に比し百四十二億八千百万円の増額となっております。  その増額分について申し上げますと、まず、検察庁関係としては、四十五億四千百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員人件費のほか、検察費二千四百万円、公害犯罪事件等各種検察活動充実をはかるための経費七百万円、検察執務体制整備充実経費千六百万円が含まれております。  次に、矯正関係としては、八十六億千二百万円が増額されておりますが、この中には、関係職員人件費のほか、職員待遇改善経費七千万円が含まれております。  また、矯正施設収容者処遇改善につきましては、十一億五千五百万円の増額となっております。これは、作業賞与金支給計算高を一一%引き上げるための所要経費六千二百万円、生活用備品日用品医療器具等充実公害防止等に要する経費六億三千百万円が増額となったほか、被収容者食糧費につきましても米、麦の単価改訂のほか、菜代成人二一%、少年二一%の引き上げによる給食内容の大幅な改善がはかられ、これに要する経費として四億六千二百万円が増額となっております。  次に、保護関係としましては、五億八千万円が増額されておりますが、その中には、関係職員人件費のほか、保護司等との連絡通信費事務能率器具等保護観察体制整備をはかるための経費三百万円、保護司実費弁償金一億三百万円、更生保護委託費八千百万円が含まれております。  次に、公安調査庁関係としましては、五億四千八百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員人件費のほか、調査活動経費千五百万円が含まれております。  第二に、国民権利保全強化につきましては、まず、登記事務処理適正化に関する経費として、さきに申し上げました事務官三百二十五人の増員経費及び関係職員人件費を含め二百六十二億二千四百万円を計上し、三十九億千二百万円の増額となっております。その増額のおもなものは、登記諸費二億九千六百万円、全自動謄本作成機等事務能率機械整備に要する経費五千三百万円、謄抄本作成事務の一部を請負により処理するための経費三千八百万円、登記簿粗悪用紙改製に要する経費二千二百万円、公共事業関係登記事件処理に伴う経費八千百万円であります。  次に、人権擁護活動充実に関する経費として、千八百万円の増額となっております。そのおもなものは、啓発普及活動及び人権侵犯事件調査強化をはかるための旅費庁費七百万円、人権擁護委員実費弁償金一千万円であります。  第三に、非行青少年対策充実強化につきましては、一部法秩序確保関係と重複しておりますが、さきに申し上げました鑑別所教官等三十八人の増員経費及び関係職員人件費並び収容関係諸費を含めて百六十八億五千五百万円が計上され、前年度に比し二十二億七千百万円の増額となっております。  その増額分について申し上げますと、まず、検察庁関係としては、九百万円が増額されておりますが、これは検察取り締まり経費でございます。  次に、少年院関係としては、九億七千八百万円が増額されておりますが、その中には、生活備品充実に要する三千七百万円等が含まれております。  次に、少年鑑別所関係としては、四億五千万円が増額されておりますが、その中には、関係職員人件費のほか、生活備品充実に要する二千七百万円等が含まれております。  次に、保護観察所関係としては、関係職員人件費及び補導援護経費において五億三千二百万円が増額となっております。  第四に、出入国管理業務充実についてでありますが、さきに申し上げました入国審査官等増員経費及び関係職員人件費を含めて七億二千八百万円の増額となっております。その中には、出入国在留管理等経費二千二百万円、舟艇建造費等機動力充実経費六百万円が含まれております。また、港出張所を佐賀県伊万里港に新設することといたしております。  次に、施設整備につきましては、庁舎等施設整備費六十八億五千百万円及び沖繩施設整備費三億九千六百万円を含めて七十二億四千七百万円を計上し、前年度当初予算に比し百万円の減額となっております。  なお、このほか、大蔵省及び建設省所管特定国有財産整備特別会計において、高松法務合同庁舎等十二施設施設整備費として、四十三億六千三百万円が計上されていることを申し添えます。  以上が法務省所管歳出予算予定経費要求概要であります。  終わりに、当省主管歳入予算について御説明いたします。  昭和四十九年度法務省主管歳入予算額は六百四十四億三千百三十三万三千円でありまして、前年度予算額五百十億二千五百一万六千円に比較いたしますと、百三十四億六百三十一万七千円の増額となっております。  以上をもって、法務省関係昭和四十九年度予算案についての御説明を終わります。
  9. 原田立

  10. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者大内恒夫君) 昭和四十九年度裁判所所管予定経費要求額について、説明申し上げます。  昭和四十九年度裁判所所管予定経費要求額の総額は九百十四億四千四十一万円でありまして、これを前年度予算額八百九十二億二百五十九万六千円に比較いたしますと、差し引き二十二億三千七百八十一万四千円の増加となっております。  これは、人件費において七十九億三千二十六万三千円、司法行政事務を行なうために必要な旅費庁費等において五億二千八百五十万七千円が増加し、裁判費において三億三千六百三十四万六千円、裁判所施設費において五十八億八千四百六十一万円が減少した結果であります。  次に、昭和四十九年度予定経費要求額のうちおもな事項について説明申し上げます。  まず、人的機構充実のための経費であります。  特殊損害賠償事件等処理をはかるため、裁判所書記官二人、裁判所事務官十人の増員に要する経費として八百九十七万七千円、刑事長期未済事件処理をはかるため、判事補二人、裁判所書記官二人、裁判所事務官四人の増員に要する経費として九百二十六万三千円、簡易裁判所交通事件——道路交通法違反事件の適正迅速な処理をはかるため、簡裁判事三人、裁判所書記官二人、裁判所事務官十二人の増員に要する経費として一千七百七十九万七千円、家庭裁判所における資質検査強化をはかるため、家庭裁判所調査官五人の増員に要する経費として六百四十八万一千円、調停制度改正及び拡充強化をはかるため、裁判所事務官五十六人の増員に要する経費として三千八百四十六万円、合計八千九十七万八千円を計上しております。  以上、昭和四十九年度の増員は、合計九十八人でありますが、他方、定員削減計画に基づく昭和四十九年度削減分として、裁判所事務官六十八人の減員を計上しておりますので、これを差し引きますと、三十人の定員増加となるわけであります。  次は、裁判運営能率化及び近代化に必要な経費であります。  庁用図書図書館図書充実をはかる等のため、裁判資料整備に要する経費一億八千九百九十四万三千円、裁判事務能率化をはかるため、検証用自動車等整備に要する経費九千七百四十五万円を計上しております。  次は、裁判所施設整備充実に必要な経費であります。  下級裁判所庁舎の新営、増築等に要する経費として、裁判所庁舎の新営及び増築、新規十七庁、継続十五庁に必要な工事費及び事務費等六十二億三千七百八十五万一千円を計上しております。  次は、最高裁判所庁舎関係経費であります。  最高裁判所庁舎完成に伴い、新庁舎維持管理するための経費として二億四千八百五十八万三千円、最高裁判所庁舎への移転等に要する経費として五千七百八十六万八千円を計上しております。  次は、調停制度改正及び拡充強化に必要な経費であります。  調停制度改正に伴い調停委員の手当として十億二千四百四十四万六千円、調停室整備等に要する経費として二億九千六百十四万円を計上しております。  次は、裁判費であります。  国選弁護人の報酬の増加に必要な経費として一億四千六百二十一万五千円を計上しております。  以上が、昭和四十九年度裁判所所管予定経費要求額の大要であります。
  11. 原田立

    委員長原田立君) 以上をもって説明は終了いたしました。  ただいまの所信及び予算説明に対する質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  12. 原田立

    委員長原田立君) 次に、商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案を便宜一括して議題といたします。  本三法案は、前国会において趣旨説明を聴取し、質疑を行ない、継続となったものでありますので、引き続きこれより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、商法の一部を改正する法律案及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案並びに商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案、この三法案につきまして質問をさしていただきたいと思います。  これはいま委員長からもお話がございましたように、前国会におきまして、七十一国会において社会党からの委員よりも質問が若干あったわけでございますので、なるたけ重複を避けまして、質問をさしていただきたいと思います。  これは、この商法改正の問題をめぐりまして、非常に賛否両論が激しく対立いたしており、現在に至っておるわけでございます。この商法改正というものにつきまして、いま、これは後日また法務大臣にこの御所信についての質問をさしていただく予定でございますが、ちょうどこの商法問題についての大臣の御所信の御表明もございましたので、これにちょっと関連さしていただいて、まず大臣にお伺いさしていただこうと思うのでございますが、さき国会において継続審査になったこの商法の一部を改正する法律案外二法案は、監査制度改善し、会社の不正な経理、違法な業務行為に対する監視を強化し、株式会社運営適正化をはかることを重点の一つとしており、現下社会経済情勢にかんがみるとき、この改正法案は時宜を得たものであるというふうにお述べになっておられるわけでございますが、一面、この商法改正に反対している方々の基本的なお立場といたしまして、この商法改正すれば企業の横暴に拍車をかけるのではないか、また企業のもうけ過ぎというようなものを合法化させる、いまの時宜に反した、時代に逆行する法案ではないかというのが一番の論拠となって反対運動が起こっているように思うわけでございます。実は私個人といたしましては、この商法改正というものにつきまして一応自分なりの考えは持っているわけでございますが、提案者であるところの法務大臣におきまして、この商法改正の最も基本的なお立場、どのようなお考えをお持ちになっておられるのかということをまずお述べいただきたいと思うわけです。
  14. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 企業は行き過ぎがあってもいけませんし、整然たるものでなければならないと思いますが、今度の制度は、従来の監査役が会計検査のみをやっておりましたのに対して、今度の改正では、監査役は経理の監査だけでなく、業務監査をも行なうことができるようになっておりますので、そのために監査役は取締役会に出席をして意見も述べることができますし、また、取締役の行為が違法な業務執行であるような場合には、それを差しとめることもできることになっております。したがいまして、監査役が監査役としての人を得れば、企業の行き過ぎに相当の抑制ができることが考えられます。また、五億以上の株式会社については、会計の専門家である会計監査人に経理書類の監査をさせることになっておりますので、この点も会社の経理をできるだけ適正に、一般社会が了解できるような体制が整えるのではないかというように考えますので、相当のこれは進歩であると私どもは考えておるわけでございます。
  15. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま大臣からは、これは企業の行き過ぎを是正する意味において相当な進歩でないかというようなことを各論にわたりまして御答弁いただいたわけでございますが、実はこれは私、けさいただいたパンフレットなんでございますが、「大企業横暴の改悪商法を葬れ」というようなことで、各論にわたりまして、「売り惜しみ、しょせん防げぬ監査役」、「財界の男めかけか、会計士」、「利益かくして便乗値上げ」とか、立ち入り調査で子会社葬るとか、帳簿の記載がくつみがき屋さんにも強制するのが誤っている、監査は一回で配当が二回という中間配当制度がおかしい、少数株主が消されるぞという累積投票の排除というのが誤っている、「生きているのに棺桶へ」ということで休眠会社の整理は誤っている、そんなことで各論にわたりまして商法改正反対国民会議のほうからいろいろな御要望が出されているわけなんでございますが、このようなことについて、これは逐一また質問を通じて政府側のお考えというようなものも聞かせていただきたいし、また、多少ともでもそういう懸念がなきにしもあらずということは私も非常に懸念しているわけでございますので、そういう事柄について提案者である法務省その他関係の各省におきまして、十分にそういうことが心配ないのであるというのであれば、どういうわけで心配ないのかというふうなことも聞かしていただきたい。また、心配があるのであれば、これは私どもとすると、これは国民的立場に立って、このまうな商法を是認するわけにはとうていできないわけでございますので、そこら辺をもう一つ納得いくようにですね、御説明いただきたいと思うわけです。  民事局長にお伺いいたしますが、いまちょっと私ざっと申し上げました事柄につきまして、逐一また質問の中に織り込んで伺わしていただきたいと思いますけれども、まあ大ざっぱに申しまして、政府とすると、この大企業横暴の商法改悪であるのか、そうでないのか、基本的な問題について先ほど大臣からお話がございましたが、もう少し詳しく民事局長から伺いたいと思います。
  16. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 今回の商法改正の一つの眼目というのは、先ほど大臣も仰せになりましたように、監査制度改正にあるわけでございます。この監査制度改正というのは、現在の監査役の権限を強化して、そして会社の行き過ぎをコントロールするような方向に持っていこうということで、法制審議会が昭和四十一年から数年間にわたってまとめたものでございまして、その内容につきまして一々御質問があればお答え申し上げますけれども、私どもといたしましては、この法制審議会で学識経験者が長年にわたって検討されたその成果に基づく今回の改正案というものは、現在の日本にとってきわめて必要なものである、このように考えておる次第でございます。
  17. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま民事局長から若干御説明がございましたが、この改正の経緯などにつきましては、そもそも昭和三十九年から四十年ぐらいに非常に頻発いたしました粉飾決算を防止するという意味からこの監査制度強化ということが考えられたのだと思いますが、その後、法制審議会で出された答申などと比べますと、今度この七十一国会に提案されているところの商法のこの法案というものが非常に後退しているんじゃないか、変わっているんじゃないか、そこら辺でまた非常にこの法案を懸念される声が多いと思いますが、この法制審議会が最終的に出された結論あるいはそれを法務省の民事局の参事官室でまとめられた結論などと比べますと、この七十一国会で出されている法案というものがだいぶ変わってきている、それが、どの点が変わってきているのかということもちょっと御説明いただきたいと思うわけです。
  18. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 仰せのとおり、今回の改正案の基本は、法制審議会が慎重審議を重ねまして、昭和四十四年に監査制度改正の要綱案というものをきめたわけでございます。その後、若干の追加がございますが、そういうものをあわせまして今回の商法改正案ができておるわけでございますが、若干の点におきまして改正要綱案と今回の法案が相違いたしております。  その変わった点をまず申し上げますと、法制審議会の要綱におきましては、監査役の制度に関する改正といたしまして相当広範ないろいろな点を取り上げております。まず会計監査を業務監査に広げるという点、これは今回の法案でもそのとおりでございます。それから、それに伴いまして子会社調査権あるいは取締役会に出席して意見を述べる権利、それから株主総会に対して監査役が報告する義務を負う、こういった点は変わっておりません。しかしながら要綱案におきましては、監査役が取締役解任のために株主総会を招集する権利、これを要綱では認めておったわけでありますが、今回の案では削除いたしております。それから同じく監査役が取締役会を招集する権利、これも今回の案では削除いたしております。それから、変わった点だけを申し上げますと、要綱案では取締役が定期的に業務の状況を監査役に報告する義務を負うことになっておりますが、この点も今回の法案では削除いたしております。  以上のように権限の点で若干の縮小が見られるわけでございますが、これは、この要綱を発表いたしまして、その後これに関する反応というものを調べたわけでございますが、現在の実際の状況から見て、ここまで一挙にいかなくてもいいのではないか、むしろあまり一挙に監査役の権限を強化するということは実際界に混乱を起こすおそれがある、かようなことでありました。さらに、こういう権利を認めなくても、今回の目的となっております監査役が取締役をコントロールするということは、たとえば取締役の違法行為の差しとめ請求権であるとか各種の訴えの提起権であるとかあるいは取締役会出席権、こういった権利が認められておれば要綱で企図しておるような取締役をコントロールするという点においては差しつかえがなかろうと、こういう判断のもとに以上の数点を削除いたしたわけであります。  それから法制審議会の要綱におきましては、監査役の身分を強化するために任期を現在の一年から三年にするということにいたしておりましたが、今回の法案ではこれを二年とするということにいたしております。で、この点も現在任期一年の監査役の在任期間を一挙に三年に引き上げるというのは少し飛躍し過ぎるという意見もございましたし、実際問題といたしましても実務の立場から人事問題その他を考えました場合に、あまり急激な変更を加えることはいかがであろうか、こういうような点で二年とすることにとどめたわけでございます。  そのほか、監査役に関しては特別の責任規定を設けるという改正があったわけでございますが、この点もしいて改正する必要がないのではないかという意見がかなりございまして、現在の規定のままとしたわけでございます。しかしながら監査役の権限が従来の会計監査から業務監査に広がりましたために、この責任規定の適用につきましてはかなり大きな変更が加えられているというふうに思います。  それから、大きな問題といたしまして、監査役の権限を会計監査から業務監査に広げるということにつきまして、中小企業につきましてはかなり反対があったわけでございます。これは中小企業の場合にはそれほど経理の問題をやかましく言う必要がないのではないか、また、中小企業について業務監査を行なわせるということはかえって負担になるというような反論がございまして、そういう点も考慮いたしまして、資本金一億円未満の会社につきましては、監査役は会計監査のみを行なうという従前の例に従ったわけでございます。  それから次に、会計監査人の監査を大会社について適用するという問題でございますが、要綱におきましては資本金一億円以上の会社にこれを適用するということにいたしておったのでありますが、法案におきましては、特例法で資本金五億円以上の会社にこれを適用するということに変更いたしております。この点もいろいろ意見がございまして、資本金一億円以上の会社にすべて会計監査人の監査を受けさせるということは現状から見ていささか問題があるのではないか、ことに会社の数でありますとか、あるいは御承知の税理士の問題などもございまして、そういったいろいろな事情を考えますときに要綱の一億円以上という線はやや広きに失するのではないかと、このように考えまして五億円以上に改めたと、こういう経過になっております。
  19. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまたいへん広範な範囲にわたって御答弁いただいたわけですけれども、まず問題を限定して質問さしていただきますと、まず、監査役の点にしぼりましていま法制審議会の要綱案の三項目につきまして、この法案として出す際に削除された点、ばく然と、いま急激な変化をすることはかえってプラスにならないのではないかというふうなばく然としたきわめて抽象的な削除の理由が述べられたわけでございますが、その一つ一つについてもう少し詳しい理由を示していただかないと、なぜこうなったのかという点につきまして国民は疑惑を持っているわけでございますので、その点についてまずもう少し詳しい削除の理由ということについてお述べいただきたいと思うわけです。
  20. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) まず、株主総会の招集請求権でございますが、これは取締役が違法な行為をした場合にその解任を請求するために、その解任をするための株主総会を招集する権利を監査役に認めようと、こういうものでございます。ところが、御承知のようにこの規定は昭和二十五年の改正前にもあったわけでございますが、実際上一度も使われたことがございません。また、これを実際に使うというようなことは取締役と監査役との間がいわば対立抗争するというような形になりますので、会社の円滑な業務運営を推進するという立場から考えますと、こういう規定はむしろ害のほうも考えなければならないんではないか。こういう趣旨で、置いてもあまり使われることのない規定を置いたためにかえって会社の運営がぎくしゃくすると、そういうようなことになってはいげないというので、今回の法案では設けなかった、こういう経緯でございます。  それから取締役会の招集権、これも代表取締役が何らかの違法行為をした場合に、その代表取締役をやめさせるために取締役会を招集する権利を監査役に与えると、こういう趣旨でございますが、これは監査役というものは今回は業務監査も行なうことになるわけでございますから実際にはいろいろの面で取締役と連携を保っていかなければならないし、まあ実際そういう問題が起こってきた場合にはほかの取締役にも相談をして、そうしてその合意のもとに取締役会を事実上招集するような方法があろう。これを規定に置きますと、先ほど申しましたような取締役と監査役の対立といったような感じを与えますので、この点につきましても特に規定を置くほどのことはなかろうと、こういうことで置かなかったわけであります。  それから取締役の定期報告義務でありますが、これは監査役が常時会社の業務の執行を把握しているためにこういう規定があったほうがよかろうということであったのでありますが、実際問題といたしましては、このほかに監査役は常時取締役の業務の執行について報告を求める権利があるわけでございますから、その上にさらに定期的な報告義務を置くということは少し複雑過ぎるのではないか、こういうことが削除の理由であります。  それから責任規定の問題でありますが、これは現行法の取締役の責任規定を監査役に準用しているのを改めまして、監査役には別個の責任規定を設けようとしたわけでありますが、今回の改正ののちに取締役についてもさらに検討を加える必要がある、その場合には取締役の責任規定も直さなければならなくなってくるであろう、そういうような観点から、むしろ監査役の責任規定だけをいじらないで、両方一度に改めることを考えたらどうか、こういう理由でこの改正を見送ったと、こういう経過でございます。
  21. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま削除の理由について、一応法務省の御意見を伺ったわけでございます。  実は、これは監査役の任期の点についてでございますが、最初三年という要綱案ができておったのが二年に変更された。この点につきまして、実は私も二、三日前に税理士会の政治連盟の方々と商法問題についての討論の機会を持ったわけでございますが、その中で非常に皆さん方から多く出されておったのが、監査役の任期が三年から二年に変更になったような状態でほんとうに監査制度充実強化するというようなことができるのか、これでは監査制度充実強化というようなことはとても期待できないのではないか、いっそ四年か五年に任期をすべきじゃないかというような強い御要望が出ておったわけでございまして、私もその点については個人的には考えは持っておりますけれども、なぜこの三年が二年に短縮されたのか、また一部、四年か五年にせよという強い御要望については法務省としたらどのようにお考えになっているのか、そうした点について伺いたいと思います。
  22. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 監査役の任期を伸長するということは、それだけ監査役の地位を保障するという意味において、監査役が業務を正しく遂行することができるような保障を与えることになろうと思います。そういう意味で、任期を延ばすことは必要であり、また、その任期は、その考えからいたしますと、長ければ長いほどいいわけでございまして、御指摘の点、私も非常に一理ある問題であろうというふうに思うわけです。ただ、御承知のように、現在の監査役というのは取締役に比べますと、一段と低い人が——こう申しては何でございますが、取締役に比べては若干落ちる人がなっているという例が相当多いようでございます。また、そういうような運用がなされております。しかしながら、今度の監査役というものは、取締役と少なくとも対等でなければいけないと、こういうことになりますと、商法改正後における監査役の選任というのには、相当、会社側も苦労するであろうと思うわけであります。先ほども大臣が申されましたように、監査役に適当な人を得ることが必要であると、しかし、その適当な人を持ってきて、まあ、それが業務監査を執行していくという場合に、現在の取締役との関係でどの程度の実際の運用がなされるであろうかという点が一つ問題になるわけでございます。現在、取締役の任期は二年でございます。社長といえども二年でございます。したがいまして、監査役の任期は長ければ長いほど、その職務が安定して行なえることになると思いますけれども、現在の段階におきましては、取締役と少なくとも対等にしておくと、それによって今後の運用を見ながら、さらに必要があれば、これを伸長するという漸進的な行き方のほうが実際的であろうと、こういうふうに考えたわけでございます。任期の問題は、これ将来とも考えなければならない問題であろうと思いますけれども、さらに取締役との関係で、取締役制度を考える場合に必要があれば監査役の任期をさらに伸長するということを考えていくべきではないかと、このように思うわけでございます。
  23. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、話がもとに戻りますが、最初、この監査制度強化するということにつきまして、二つの考え方があったように聞いておるわけでございます。この一つにつきましては、現行監査制度、監査役という制度を置いておく、そのもう一つの案とすると、プロフェッショナルな公認会計士による監査のみにしようという二つの動きがあったように聞いておるわけでございますが、この改正案で現行監査制度というものを残し、そしてその職務の権限を強化したという方向をとられた理由、及びこれは五億円以上の会社につきまして、会計監査がプロシェッショナルな公認会計士あるいは監査法人にゆだねられる結果、この監査役が業務監査をやるわけになるわけでございますが、その業務監査の範囲というものが、もう一つ私ども拝見したところ不明瞭な、不明確な感じもするわけなんでございますが、結局五億円以上の会社では監査役は何をするのかということがもう一つぴったりと私どもにこないわけなんですが、その二つの点について、お答えいただきたいと思うわけです。
  24. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) お尋ねのように、当初、法制審議会におきましては二つの案を考えたわけでございます。一つは、取締役会というものを強化して、会自体に代表取締役の監査機能ですか、あるいは監視義務と申しますか、そういったものを認めていこうという方向、もう一つは、監査役のほうを強めていこうという考えでございます。  現在の商法は、御承知のように取締役会というものがございまして、そして業務の執行は代表取締役がやると、で、ほかの平取締役というものは取締役会のメンバーとして代表取締役の行動を監視すると、いわば第一の方向にあるわけでございます。これをさらに強化していったらどうかという問題であったわけでありますが、御承知のように、日本の会社は、なかなか取締役会の運営というものが必ずしもうまくいっていないという面がございまして、そういう方向で監視をさせるということは、結局、監視を有名無実なものにさしてしまうおそれがあるのではないかと、こういう心配があったわけであります。ことにアメリカあたりでございますと、社外重役というような制度がございまして、かなり取締役会というものが権威を持っている。ところが、そういう運用になれておりません日本に、いきなりそういうような制度を持ってきてもうまく合うのかどうかといったような問題がございます。  そこで第二の方法である監査役の権限を強化する、こういう方針をとったわけでありますが、これは御承知のようにドイツあたりのとっている制度でございます。ドイツにおきましては、監査役というものの権限はもっと強大であると、まあいわば株主の利益代表というような形で監査役というものがあって、そしてそれが上から取締役を監視しておると、こういう形になっておるわけでありまして、方向としてはむしろそちらをめざしたということが言えようかと思います。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、日本の監査役というものが現在非常に微力でありますので、これをまず強化していくことから考えなければいけないということで、一挙にドイツ的なところまではまいりませんで、そのやや中間的な段階でとどまったというのが今回の改正案でございます。したがって、やや不徹底な点は御指摘のとおりあろうかと思いますけれども、今後、さらに取締役会の制度、株主総会の制度というものを考えていきます際に、あわせて全体のつり合いというものを実情に即しながら検討してまいりたいと、このように思っておるわけでございます。
  25. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま、既存の監査役を残して、それの強化という点に今度の立法が進められたということについての御説明わかりましたけれども、あとの質問に対する、五億円以上の会社について公認会計士あるいは監査法人によるところの会計監査人の監査が行なわれる結果、この五億円以上の会社についての監査役というのは結局何をやるのかということがもう一つぴんとこないわけなんでございます。これ、事実、私も弁護士をしておりますような関係で、よく会社などに参りますと、この商法審議をやっているというようなことはみんな知らぬわけですけれども、今度商法改正になるやもしれないというような話を聞いているが、そうなった場合に、監査役にどのような仕事をしてもらったらいいのか、あるいは監査役はその仕事をするについてどのぐらいの人員を配置し、どのぐらいの予算を、費用を計上しておけばいいのかなどというような相談といいますか、話もよく受けるわけなんですけれども、さてそれじゃ監査役は何をするのかということになってきますと、どうもはっきりしたことがよくわからないわけでございます、主として五億円以上の会社のことですけれども。結局、監査役は何をするようになるのか、もう少し具体的に御説明いただきたいと思うわけなんです。
  26. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) これは五億円以上の会社も五億円以下、一億円以上の会社も同じでございますが、監査役は会社の業務全般の監査をすると、こういうことになります。ただ違いますのは、会計監査人が五億円以上の会社については会計の監査をするという形でさらに加わってくるという点でございます。まず、この業務監査の内容でございますが、これは監査役でありますから主として取締役の業務執行が適当であるかどうか、特に違法であるか、適法であるかという点について重点を置いて監査をするわけであります。したがいまして、会社の常時行なっております行為、ことに取締役会で決定するような行為につきましては監査役が、その行為が適当であるかどうか、特に違法でないかどうかという点につきましては、常時側面におってこれをコントロールするということが仕事になるわけであります。  それからもう一つの仕事であります会計監査でありますが、これは非常に技術的な面のある仕事でありますので、大きな会社になりますと非常にそれだけでも多くの労力と、それから特別の知識が必要になってくるというようなこともございまして、監査役が一方において常時業務の監査をしながら、さらに決算にあたっては会計の監査をするということは容易でない、そういう意味におきまして、五億以上の会社については会計監査人に会計の監査をさせるということを加えたわけでありますが、いずれにいたしましても、監査役は常時会社の取締役の業務執行というものを監視していなければならない、こういうことになるわけであります。  具体的にどういうことをするかということになりますと、はなはだ私も会社の実情詳しくございませんので申し上げかねるのでございますが、たとえば監査役の研究団体といいますか、監査役センターというのがございます。そこで今回の商法ができた場合の監査役の行動基準というようなものをつくった案ができております。それによりますと、監査役は常時会社の運営について関係者の話を聞き、あるいは実際の現場もよく見学して、そして会社の経営というものを頭に入れておいて、そして取締役と同じように取締役会においては発言をしていかなければならない、そのためには、もちろん大きな会社になりますと、一人、二人というような監査役では足りないので、それを行なうのに必要な人数の者が要るであろう、また、その下部の組織といたしましても監査役に直属の機構というものができることが望ましい、そういうようなことを書いておるわけでございまして、私そのとおりであろうというふうに思っておるわけでございます。
  27. 佐々木静子

    佐々木静子君 この監査役がその業務、取締役の業務全般について監査をするというお話でございますけれども、そしてその適法性はむろんのこと、法律に違反していないかというようなことについてはむろんのこと、そのあとの妥当性といいますか、そういう範囲が、どの程度監査が及ぶかというようなことがこれから先の監査役の仕事の分担といいますか、行動できる範囲を規制していく上に非常に大きな問題になると思います。と申しますのが、取締役会に出て発言できるといっても、取締役会における議決権はこれは監査役にないのじゃないかと思いますので、そうだとすると、結局いろいろ見学して会社の実情を知ったところでものを言っても、それに対する議決権もなければ、非常に形式的なことになって、言うだけでつまらない、そうなってくると、言っても取り上げられないとなれば、勢い気がつくことがあっても取締役会へ行ってものも思うように言えないというようなことにもならないとも限らないと思うわけでございますが、そういうようなところを懸念するわけですが、ともかく監査役の行動基準というものは、いま一応伺いましたけれども、具体的にどういうことが、業務全般といってもどういうことができるのかということがたいへんに問題になると思うわけなんです。  これは大臣に伺いたいと思うのでございますが、この間からの衆議院の予算委員会などにおきまして、総理あるいは関係大臣から物価の抑制というようなことに対して公権力の発動も辞さないというふうなかなり強い姿勢の御答弁がいろいろ出ているわけでございますけれども、たとえば、いま一番問題になっている買い占めとか売り惜しみ、そういう問題につきまして監査役がそれをキャッチした場合に、たとえば昨年成立いたしました生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律の第五条などに、この買い占めあるいは売り惜しみの事態に対する行政官庁の立ち入り調査権とかあるいはそれの違反に対する罰則などもきめられているわけでございますけれども、そういう事柄を監査役が探知した場合に、それを取締役会で発言することができると思いますが、それを見て差しとめる権限を持っているのかどうか、そこら辺の監査役の持っている権限というようなことを、少し大臣の御意見をお聞かせいただきたいと思うわけです。
  28. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) いまお尋ねの点でございますが、監査役に良識があれば、会社があまり不当の利益をあげたり、行き過ぎの行為があればそれに対してもちろん取締役会で発言をして意見を述べることは当然でございますが、さらに、その取締役の行なう行為が違法性があれば取り消しをする権限もあると、こういうように考えます。問題は、この粉飾決算や何かで会社の内容が非常に不健全になったり、あるいはそのために一般社会に対してたいへん弊害を及ぼすというようなことをまず押えたいということが本来のねらいであろうと思います。したがって、監査役が十分に会社の経理内容あるいは事業内容についで目を通し、監督の目を光らすのとあわせて、会計監査人が正規の監査をして、そして経理状態を明らかにする、悪いものは悪い、いいものはいいと、また利益をあげ過ぎれば、そのあげ過ぎた結果が出れば、それに対しては当然税金もよけいかかるわけでございますから、税を取るべきところは取れるようにするというのが大体目的であろうと、かように考えております。
  29. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま大臣の御答弁を伺いまして、監査役にかなり大きな権限を持たせてよいのであろうという御趣旨のように承ったわけでございますが、たとえばいま例にあげました買い占め、売り惜しみの場合ですが、これがその結果会社が損をするというのであれば非常にものごとはわかりやすいわけなんでございますが、結局買い占めとか、売り惜しみによって企業が非常にもうけるわけでございますので、そのあたりが監査役の、何て申しますか、から見た場合、取締役の会社に対する忠実義務というようなことに関して、もうけているのだからそれは忠実義務違反にならないのじゃないかという考え方も一面になきにしもあらずと思うわけなんです。そういう意味におきまして、現実に買い占めとか売り惜しみで、どういう段階であれば監査役がそれを問題としてチェックできるのかどうか、そこら辺非常に微妙な問題ではないかと思うのでございますが、そのあたりについて大臣並びに民事局長の御意見を伺いたいと思うわけです。
  30. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 大体問題は社会性の問題で、どうも社会的に認められないような不都合なことあるいはもうけ過ぎをしておるというようなことがあれば、これに対して監査役が適当なチェックをするのが当然であろうと思います。もしそれがしない場合があっても、たとえば子会社の会計経理に金を隠すとかあるいは経理伝票をごまかして、利益を利益がなかったように粉飾するとかいうようなことがもし取締役もしくは子会社の間にあれば、これは監査役が当然監査をして適正な利益は、おもてに出すべきものは出せと、あるいはまた監査役だけではなくて、いわば二重監査みたいになっておるのですね、この商法改正というのは。会計監査人がいて、監査人がまた目を光らせて見て、そして不都合な帳簿あるいは経理のやり方については改善をして、利益のあるものははっきり出せ、税金がかかってもしかたがないということになる仕組みになっておるのだと思います。そういう意味において、この商法改正は、私は相当に結果的には社会的に貢献することができるのではないかというように考えておるわけでございます。  なお、こまかい点は民事局長からお答えさせます。
  31. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) まず最初に問題となさいました監査役の業務監査の範囲から申し上げたいと思いますが、たとえば会社の営業方針をどういうふうなことにするかというような問題につきましては、別に適当であるとか不当であるとか違法であるとか、そういった問題は起こってこないのが普通であろうと思います。そういう問題につきましては監査の対象とはならないというふうに思います。やはり監査役でありますから、その監査の対象となるのは主として適法か違法かという問題を生ずる場合でありまして、もちろんその適法の問題か妥当の問題かという限界は非常にはっきりしない場合もあろうかと思いますが、限界をはっきりさせるということであれば、一応適法性がその限度であると、適法か違法かの問題が限度であるというふうに思います。ただ、著しく妥当でないというような場合には、単純な妥当性の問題ではなく、適法、違法の問題に入ってくる、こういう場合があり得ると思いますので、それほど狭い範囲ではないというふうに考えております。  それから、会社に損害を与えるかどうかという点でございますが、これは監査役の差しとめ請求権の規定によりますと、会社に著しき損失を生ずるおそれある場合に限って差しとめ請求ができるということになっております。会社が買い占めとか売り惜しみでもうけをするという場合に、差しとめ請求権の発動ができるかどうかというのが御質問の一つの論点であろうと思うわけでございますが、ここに著しき損害を生ずると申しますのは、何も金銭的に利益があがるかどうかというだけを問題にしているのではございませんで、たとえば買い占め、売り惜しみによってその会社が摘発される、あるいは公害を流すことによって社会一般の非難を招く、そういうことによって会社の信用が低下することもこれも著しい損害と言えると思います。したがって、なるほど一時的には利益があがるかもしれませんけれども、その行為によって会社の信用の下がるおそれがある、こういう場合には会社に著しき損害を生ずるおそれがある場合であると、これに該当するとして差しとめ請求権を発動することが可能である、このように考えます。で、この差しとめ請求権の発動する場合というものは、ただいま申し上げましたように買い占め、売り惜しみの場合、公害の場合、そのほかにも会社の経営が非常に放漫であって、たとえば名古屋のほうの会社で手形を乱発したというような問題がございますが、そういう場合も同じでありますし、それから取締役が株価を操縦するというような場合、すべてにわたって認められる、差しとめ請求権が認められることになる、このように考えております。
  32. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま民事局長から、あるいはさきに大臣からも、かなり監査役の業務監査の範囲というものについて幅広く解釈できるというような趣旨の御答弁だったと思うのでございますが、いま適法か違法か、違法性があるかどうかというようなことについては、もちろんこれは監査の対象になるというわけで、そのあとの点については非常に御答弁なさりにくいんだと思いますけれども、わかったようなわからないような感じがするわけですけれども、この適法性の問題について経済企画庁の方がお越しいただいておりますので、ちょっとお伺いしたいと思いますが、いま例にあげました生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律の中で、どのような買い占めが、あるいは売り惜しみが違法であって、この法律自体から見ますとどれが違法であってどこまでが自由経済の範囲で許されているのか、そういう点について経済企画庁とするとどのようにお考えになっていらっしゃるのか、いま買い占め、売り惜しみの問題にしぼってお尋ねするわけです。
  33. 加藤和夫

    説明員(加藤和夫君) お尋ねの生活関運物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律、これは具体的には第四条で「特定物資の生産、輸入又は販売の事業を行なう者」といたしておりまして、特に法人に限られておりませんが、これが「買い占め又は売惜しみにより当該特定物資を多量に保有していると認めるとき」に、内閣総理大臣及び主務大臣は売り渡し先を定めまして、当該特定物資の売り渡しをすべきことを指示することができることになっております。この指示に従わないというときには、その者に対して売り渡し命令というものが内閣総理大臣及び主務大臣から発せられることになっております。その場合にいかなる買い占めまたは売り惜しみが適法か不適法かという御質問でございますが、この場合に内閣総理大臣が指示を出し、その段階においてやっぱり法律上買い占めまたは売り惜しみとして不適切なものであるということが認定されたというふうに考えております。この売り渡し命令に従わないということは当然違法な行為でございまして罰則がございます。したがいまして、買い占めまたは売り惜しみについては認定、指示ということが一つのポイントになっております。
  34. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、いまの民事局長のお話で、ここまで行政権が発動されるというような事態にくること自体が問題だと思うわけですけれども、この主務大臣の命令に従わない場合にはむろん違法行為になるけれども、このような内閣総理大臣あるいは主務大臣から売り渡し命令を出されるということ自体が、すでに会社の信用ということを非常に棄損することであるから、そのことでもやはり会社に不利益を与えるという立場から、業務監査の対象になる、あるいは差しとめ請求ができるというふうに御判断になりますか、どうでしょうか。
  35. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 確かに認定の困難な場合がいろいろあろうと思います。いろいろあろうと思いますが、それが非常にはっきりしておると、この法律によってこういう内閣総理大臣の権限発動を加えられるであろうということがはっきりしておるような場合、あるいはすでにそうされておるのにかかわらず、なおかつ買い占めを続けるというようなことはもう当然違法でございますから、差しとめ請求が可能であろうというふうに思うわけです。それから多少それることになるかと思いますけれども、食糧管理法とか、そういう法律に違反するような場合ももちろん差しとめ請給の対象になると、このように考えます。
  36. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、いろいろと例があると思うんでございますが、たとえば今月の初めに、これも同じく石油業界で問題になりました不当な価格の値上げ協定などで公取委から破棄勧告を受けているというようなケースがございましたが、これも値上げをするということによって会社はかなりな利益をおさめるという意味におきましては、全く会社に損害を与えていないどころか会社のもうけることになるわけなんですが、公取委から破棄勧告を受けるというようなこともやはり会社の信用を棄損するというようなことで、値上げ協定などというようなこともやはり業務監査の対象になるとお考えになるかどうか、そこら辺のところもちょっと具体的に御説明いただきたいと思うわけなんです。
  37. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 非常にむずかしい問題だと思います。公取の勧告があれば、一応その値上げは不当であったということになろうと思いますが、その値上げをした当時の会社の事情から見て、その値上げがはたして正当であったかどうかという点については一これは問題になりましたときに別個に判断されるべきものであろうと思います。ただ、こういう情勢もとで値上げが不当であると、それを知りながらやったという場合に、その会社の信用がそれによって傷つけられるということになりますれば、そういう行為は違法性を持っておったというふうに見られる場合もあろうと思いますので、その辺の認定が非常に微妙だと思いますけれども、違法性を持つというふうに考えればこれは差しとめ請求の対象になると言えると思います。
  38. 佐々木静子

    佐々木静子君 いろんなことを伺ってたいへん恐縮ですが、これは大臣にお伺いしたいと思うんですが、きょうの朝日新聞を見ますと、これは国民協会に対するところの政治献金を四倍に引き上げるというような運動が行なわれているというようなことが載せられているわけでございますが、取締役の業務は定款に違反しているかどうかというようなことがかなり問題になるんじゃないか。むろん政治献金をすることは定款の中にはどこの会社も書いておらないと思うわけでございますが、これについて若干判決例もあるようでございますが、これは衆議院の議事録を調べてみますと、前の田中法務大臣の御答弁でございますが、政治献金すなわち定款違反とは思わないけれども、これが妥当であるかどうかということ、その額その他政治献金の趣旨などから総合して妥当であるかどうかというのがこれは非常に問題になるのではないか、場合によると会社に対して損害を与えるというようなことにも結びつくのではないかという趣旨の——ちょっといま議事録を読まずに申し上げましたので、多少表現に違いがあるかもわかりませんが、そういう事柄で、いま国民は非常に大企業の政治献金ということに関心を持っているようなわけなんでございますが、これは実は私がある関西財界の経営者の方に先日お目にかかったときに、この方が、いやもう次から次へとある政党への政治献金に追われているんだと、一つの派閥に政治献金をするとまた別の派閥から言ってこられるし、これはもうとてもたまらないので、今度商法改正になればこのような多額な政治献金はとても会計監査が通らないということでお断わりしようと思っておるんだなどというようなことを雑談で言っておられたこともあるんですが、この政治献金が業務監査の対象になるかどうか、そこら辺のあたり大臣のお考えというものを、多額な政治献金についてどういうふうにお考えになるかということをちょっとお聞かせいただきたいと思うわけです。
  39. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) もちろん、私は業務監査の対象になると思います。したがって、それが社会的に見て穏当の範囲か不穏当の範囲かというようなことによって分類されるんではないか、そういうふうに思います。きょう私も新聞見てびっくりしたんですが、たぶんあれは国民協会ですかね、どこかでそういう割り当てじみたことをやったらしいので、私もびっくりしておるわけなんですが、これはやっぱり社会性の問題だと思います。社会的に不当な範囲までそういうことをやれば、もちろん業務監査の内容に触れてくると、かように思っております。
  40. 佐々木静子

    佐々木静子君 どうもその点をお伺いいたしまして、私どももこれ以上大企業が利益を国民に還元せずに一部の政党にのみ還元されるという状態がこの商法改正によって幾ぶんともでもチェックされるとなれば、たいへんに国民的サイドにおいてけっこうだと思うわけでございますが、その点について民事局長は何か御意見ございませんですか。
  41. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 会社の政治献金につきましては、たしか数年前に最高裁判所の判例が出ておりまして、それが会社の目的の範囲内に入る行為かどうかということで問題になったと思います。で、ただいま大臣が仰せになりましたように、まあ一定の範囲内であれば会社の行為として違法ではないということを言っておるわけでございまして、その限度内かどうかという点はもちろん監査の対象になりますし、その限度を越えるということになれば、これは監査役において適当な措置を講ずることができると、このように考えております。
  42. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひそういう点についても今後この法案の解釈について活発な論議を国民の間に展開されることを期待するわけでございますが、これは実務的なことになりますが、この監査役の差しとめ請求ということにつきまして、これは裁判上もできるし裁判外でもできるわけでございますね。
  43. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) そのとおりでございます。
  44. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは監査役が数名おる場合には各自がそのような行動ができるのか、あるいはどういうことになるのか、あるいは代表監査役制度というようなものを設けることが可能なのがどうなのか、そのあたりを伺いたいと思います。
  45. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 監査役は各自がそれぞれの権限を持っておりますので、一人だけでもできるわけでございます。
  46. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは裁判上の差しとめ請求で、本案訴訟提起するということもございますし、現実には仮処分を申請する場合が非常に多いんじゃないかと思うわけでございますが、これが監査費用との問題に関連いたしまして、私ども弁護士の実務から考えますと、仮処分といえばすぐに保証金のことが頭にくるわけでございますが、また差しとめ請求となればこの保証金の額もかなり高いんじゃないかというふうにちょっと考えるわけなんでございますが、この仮処分といいますと、これ密行性ということが一番の重点でございまして、仮処分の被申請人のほうに仮処分をするぞということがわかったのでは、これは意味がない。全然ないわけでもございませんが、ほとんど意味がないんじゃないか。そういうことから考えますと、この仮処分をやるについて保証金をどこから持ってくるか。これ、やはり会社の中で取締役会の議を経て保証金を出すのであれば、これはもう仮処分というものは事実上、実際上有名無実ではないか。そういう点で、私、実務上はどういうふうなことをこれは考えておられるのか、これも局長に伺いたいと思います。
  47. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 御指摘の問題は、確かに実務にあたっては疑問が出てくるわけでございまして、監査役が監査に必要な費用というものは、これは監査役と会社の関係が一種の委任でございますから、民法の六百四十九条ですか、に従いまして前払いの請求ができることになっております。しかしながら、取締役の行為の差しとめをすると、そのための保証金ということになりますと、取締役のほうがなかなか前払いに応じてくれないという懸念もございます。その辺を解決するためにどうしたらいいかということはなかなかむずかしい問題でございます。実際問題としては私よく承知しておりませんけれども、今後の運用としては監査役にある程度の資金を動かす権能を与えておいて、そしてそれによって監査役が自由に引き出せるというような体制でもつくっておくことが必要ではなかろうかと、このように思うわけでございます。
  48. 佐々木静子

    佐々木静子君 これ、民事局長が、よく存じませんけれどもとおっしゃいますが、民事局長が御存じなければほかの人はなおのことわからないのでございまして、やっぱりこれをそういうふうになさろうというなら、やはり局長のほうでなさらなければ、これはただ規定だけで空文になってしまうのじゃないかと思いますが、そのように監査役がある程度自由に会社のお金を動かせる権限というものを、これを早急にそのような——これはどういうことになりますか、行政指導になりますか、特別法をつくるということになりますか、そこのところは私よくわかりませんが、そのような方法をいま早急に具体的に取り組まれるおつもりがありますか、どうですか。
  49. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) よく実情調査いたしまして研究してみたいと思います。
  50. 佐々木静子

    佐々木静子君 これ、ただ研究してみたいとおっしゃいますけれども、これ、ただずっと研究していただくばかりであれば、この規定は表向きは差しとめ請求権もあり、仮処分もできるというふうに教科書の上でなるだけでございまして、現実にはできないということにつながってしまうと思うわけでございますので、ほんとうに権限を実際に用いられるようにしようということになれば、やはりそれは研究もしていただかないといけませんが、早急にやはりそれを裏づけるだけの立法なり行政措置が要ると思うわけなんですが、その点、早急に取り組んで実現方をほんとうに期待していいのかどうか、大臣はどういうふうにお考えですか。
  51. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) そういった点につきまして、実際に監査役の差しとめ請求権の行使に不都合を生ずることがないように何らかの措置を考えて実行するようにその方向で考えてまいりたいと思います。単なる指導だけでできるものかどうかという点を含めまして十分に検討さしていただきたいと思います。
  52. 佐々木静子

    佐々木静子君 たいへんに御苦労なすっての御答弁でいささか歯切れが悪いような感じがするわけでございますが、早急に何らかの手を打っていただけるということでございますね。
  53. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) そのように努力いたします。
  54. 佐々木静子

    佐々木静子君 じゃ、その法案の実行を期するために、そのように努力をされる、早急に何らかめ具体案を、具体的な方法を講じていただけるものと承って次の質問に移るようにしたいと思います。  この改正法の二百七十四条ノ三、すなわち子会社の調査権というようなものが今度の改正案で認められておるわけでございますが、この子会社の調査権を、親会社の子会社に対する調査権というものを認めた理由とか、あるいはそれを認めるに至った経緯というようなものについて民事局長から御説明いただきたいと思います。
  55. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 改正案二百七十四条ノ三の子会社調査権を認めるに至った理由でございますが、御承知のように、親会社というのは子会社の過半数の株式あるいは出資口数を有しているわけでありますので経営の面におきましては子会社を自由にすることができると、そういう意味で、たとえば親会社が不良債権を持っております場合にこれを子会社に肩がわりさせる、あるいは親会社が余剰の物資を持っております場合にこれを押し込み販売と称して子会社に無理に売りつける、そういうようなことをいたしまして親会社の経理内容を健全に見せかけるというようなことがしばしば行なわれるということでございます。そういうような場合に親会社だけの業務を見ておりますといかにも健全であるように見えるわけでありますが、子会社を含めた内容というものを見ますと必ずしも健全でないと、こういう場合がございます。そこで親会社の監査役は、親会社が適正に業務を行なっているかどうかを調べるにあたっては親会社だけでなく子会社のほうも調べてみないとわからないということになります。そこで子会社に対して必要な調査をしようというのがこの規定でございます。ただ、子会社は親会社とは別の人格を有する会社でございますので、この規定にございますように、まず子会社に対して監査のために必要な事項について報告を求める、そうして子会社が報告をしてきた場合にはそれでよし、報告をしてこないとか、あるいは報告の真否を確かめる必要があるという場合に初めて子会社についてみずから調査をすることができると、このようにいたしたわけでございます。
  56. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいまきわめて抽象的にお話がございましたけれども、いままでの粉飾決算などにおきまして子会社に押し込み販売というようなことがかなり数多くあったからというふうに伺っているわけでございますが、もう少し具体的にどういう件が何件あったというようなことを、昭和三十九年以降の子会社が関与しているところの粉飾決算とかあるいは逆粉飾決算で法務省として問題にされたケースですね、そういうふうなのがわかりましたらお述べいただきたいと思うわけです。
  57. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 粉飾決算のいままでわかりました件数というものは把握いたしておりますけれども、そのこまかい内容まで実は立ち入った調査をいたしておりませんので、私どもといたしましては、子会社を利用した粉飾あるいは逆粉飾というような件数は現在のところちょっとお答えいたしかねます。
  58. 佐々木静子

    佐々木静子君 私は、法務省が関知していない、あるいは十分に調べておらないということ自体非常におかしいんじゃないかと思うわけです。といいますのは、子会社に対する親会社の調査権というようなものは、これは適正な監査をするためにどうしても必要だということでこういう立法がはかられているわけでございますからね。それについては、もちろん過去におけるデータなどをこれはいろいろ御調査の上にこういう立法を出さねばならぬということになったんだと思うわけで、全然そういう調査もなさらずに、ただ頭の中で、親会社の子会社に対する調査権というものを置かなければ十分な監査はできないんだというふうな話だと、私どもはとても納得できないわけなんです。過去におけるデータなんかもちろん御検討の上でなさっているんじゃないんですか。これは法務省と、それから大蔵省もお越しでしたら、両方から伺いたいと思います。
  59. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 正確なデータというものをお示しできないのは非常に残念でございますが、法制審議会におきましては実業界の方も入っておられまして、まあそういった弊害があるということを指摘しておられますし、また最近の新聞などにおきましてもかなりそういう例が指摘されております。したがいまして、まあ相当あるのではないか。必ずしも粉飾経理関係したものだけではないかと思いますけれども、少なくとも子会社を利用したいろいろな不当行為がなされておるということは、これは事実であるということができると思います。
  60. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいまの御質問のうち、子会社に関連しての粉飾かどうかというこまかい統計はございませんが、少なくとも、私ども有価証券報告書を審査しております会社のうち、粉飾経理会社として統計に載っておりますのは、たとえば四十六年十二件、四十七年三件というようなことになっております。
  61. 佐々木静子

    佐々木静子君 実は、私はこういう親会社の子会社に対する調査というような非常に思い切った法律改正というものをなさるについては、相当いろんなデータをお集めになった後に、これはどうしてもやらねばならないということでお考えになっているんじゃないかと思っておったわけでございますけれども、そのあたり、まあもう少し具体的な御答弁がいただきたかったと思うわけなんですが、ついこの間の、先月の月末にも、これも同じく衆議院の予算委員会で問題として取り上げられた、大商社が海外の現地法人に利益を隠して、そして架空の取引や原油の水増しのようなことをして利益を隠匿しておったということが追及され、すでに大商社は国税庁からもそのことを摘発されておったということが国民の前に明らかにされたわけでございますけれども、これなどは子会社を——これは外地法人でございますが、事実上子会社だと思うわけでございますが、子会社を利用してのこれは逆粉飾のいい例ではないかと思うわけなんでございますが、親会社に子会社に対する調査権を持たすことによって相当程度こういうことは防ぐことができるのかどうか。その点について民事局長はどのようにお考えになるか、あるいは大蔵省としてどのようにお考えになるか、述べていただきたいと思います。
  62. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 子会社を利用した粉飾、逆粉飾のようなものは、そういうものをこの調査によって明らかにしようというのが趣旨でございますので、こういう規定が設けられれば相当程度そういう不正を防止する上に効果があるであろうと、このように考えます。ただ、海外の会社が外国会社ということになりますと、この形での適用というのがむずかしくなるのじゃないか。そういう場合でなく、いずれも国内の会社であるというような場合には、この規定によって相当な効果をあげられるというふうに考えます。
  63. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいまの点につきましては、現在、公認会計士ないし監査法人による監査は一応監査実施準則というものに基づいて行なわれておりますが、この関係で実質的支配従属関係を有する会社との取引に関しても重要と思われるものはこれが処理の妥当性を確かめるということになっておりまして、具体的な案件についてどうこうということはわかりませんが、原則としては、重要事項についてはそのようなことをやるというたてまえになっております。
  64. 佐々木静子

    佐々木静子君 大蔵省に伺いますが、この証券取引法の有価証券報告書に、いまお話にあった重要な子会社の貸借対照表及び損益計算書を添付しなければならないということがございますが、このときの有力な、重要な子会社の概念とこの商法でいうところの子会社の概念とは同じと考えていいんでしょうか、どうなるんでしょうか。
  65. 小幡俊介

    説明員(小幡俊介君) 商法の規定のほうは、二百七十四条の三を拝見いたしますと、過半数の株式を親会社が持っているということでまあ五〇%超というふうに書いてございますが、私どものほうの重要な子会社といいますのは、その五〇%超のうちでさらに親会社との関係が一定の基準以上の重要な関係があるものというふうなことでございますので、若干その範囲は相違しておるのではないかというふうに思います。
  66. 佐々木静子

    佐々木静子君 これも大蔵省に伺いますが、この子会社の調査権という問題について、連結財務諸表の制度を導入すればまあこうした調査というものが容易に行なわれるというふうなことも御意見として聞いているわけでございますけれども、連結財務諸表の制度を導入されるお考えが大蔵省としてあるのかないのか、そのあたりを伺いたいと思います。
  67. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 連結財務諸表の導入に関しましては、前向きの姿勢で目下企業会計審議会において検討をお願いしている段階でございます。
  68. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、いま子会社の問題が出ましたが、法務省に伺いますが、この子会社に対する調査権が認められる結果、   〔委員長退席、理事棚辺四郎君着席〕 子会社の独立性というものが侵害されるのではないかということがたいへんに懸念されておるわけでございますが、そのあたりについて法務省はどのようにお考えですか。
  69. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) お尋ねの点は、私ども立案にあたって十分注意をしなければならないと考えまして、相当配慮をいたしたつもりでございます。第一に、この子会社調査権を認めた趣旨というのが子会社を調査するという目的ではなくして、親会社の行為が正当であるかどうかということを調査するためのものでございますから、子会社に対して報告を求める事項というのは、監査役の職務の上で必要な事項に限るということが第一であります。  それから子会社に対して調査をする手続でありますが、   〔理事棚辺四郎君退席、委員長着席〕 これはまず、子会社に対してその必要な事項の報告を求めるということにいたしまして、直接の調査はこの段階ではしない。ただ、子会社が報告をしないとか、あるいは報告がどうもおかしいという場合には、やはりそのままにするわけにはまいりませんので、その場合に限って初めてみずから子会社について調査をすることができると、こういうように手続上も若干子会社の立場というものを考慮した形にいたしておるわけでございます。  それからまた、子会社が監査に必要のないような事項について調査を求められた場合には、これは調査権の外でありますから、そういうものについては当然報告、調査を拒むことができる、これは規定には書いてございませんけれども、そのように考えております。
  70. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは最初、報告を求めて、遅滞なく報告しなかった場合はというふうになっておったと思うのでございますけれども、調査に入れる、この遅滞なくというのは大体どのくらいのことをお考えでございますか。
  71. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) これは報告を求めた事柄によるわけでございまして、きわめて簡単な事柄でありますれば、これはもう数日でいいのではないか。これに反しまして、相当複雑な、すぐには答えられないような問題であります場合にはそれより長い期間、たとえば一週間とか二週間、そういう期間が必要になる場合もあろうと思います。
  72. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、親会社の権利の乱用になるというようなときには、もちろん子会社としたらこれを拒否できるというふうに解釈していいわけでございますね。これ事実上拒否できるとすれば、どういうふうなことで拒否するのか、事実上拒否するというだけであるのか、あるいはまた仮処分でもとって調査を拒むようにしなければならないというようなことになるのか、そこら辺のところをちょっと法務省としたらどのように考えられるか御説明いただきたい。
  73. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 事実上否拒できるというふうに考えます。
  74. 佐々木静子

    佐々木静子君 話が次に移りますが、監査役の権限として改正法の二百五十九条ノ二及び二百六十条におきまして、監査役が取締役会に出席する権限がございますが、この取締役会の招集通知が、監査役に対して招集通知がなされておらないときに、この取締役会の決議が無効になるのかならないのか、まずその点について伺いたいわけです。
  75. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 取締役会を正当に招集する手続としては監査役にも招集通知をしなければならないということになっておりますので、その招集通知を欠く場合には取締役会は適法に招集されたことになりませんので、したがって、取締役会の決議も無効となる、これが原則であると考えます。ただ、招集通知をしなかったけれども、その通知を受けなかった監査役が実際に取締役会に出てきたというような場合には、招集通知をしなかったという瑕疵は治癒されたというふうに見ることができますので、その場合には取締役会の決議は有効であるというふうに見る余地があると思います。
  76. 佐々木静子

    佐々木静子君 この無効となった取締役会できめられたこと等によって第三者との契約が成立したような場合、それはどういうふうな関係になるんでございましょうか。
  77. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) それは第三者との関係においては、代表取締役が会社の代表権を持つわけであります。したがって、内部手続においては違法でありますけれども、第三者との関係においては有効であるというふうに見られることになると思います。
  78. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは取締役会に出席した監査役が議事録に署名をすることを必要としておりますけれども、それはどういうわけでそのような規定を設けたのか、あるいは議事録に署名をすると取締役会の決定に何らかの責任を持つようになるのかどうかなのか、また監査役が議事録に異議をとどめない限り、この取締役会できめた事柄について責任を免れないということになるのかどうか、そのあたりを御説明いただきたいわけです。
  79. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 取締役会の議事録に監査役が署名をする必要があるということにいたしましたのは、議事録の内容の真正を担保するためである。ことに監査役は取締役会において意見を述べることもできるわけでありますから、そういった意見を述べたような場合にその点の証拠とする、こういう趣旨もございます。責任の関係には直接は影響ございませんけれども、この議事録がどうなっておったかというようなことがあとでその問題に多少の影響を与えるような場合はあり得るだろうと思います。
  80. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは先に進みますが、監査役の資格ということが改正商法二百七十六条にきめられておりまして、いわゆる監査役となる者の欠格事由などが述べられておりますが、たとえば複数の監査役があった場合に、何人かがいわゆる兼職禁止の規定に触れているような場合、これらの監査役がつくったところの監査報告書の効力はどのように考えればいいのか、お述べいただきたいと思います。
  81. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 兼職禁止の規定に触れますと監査役としての資格がないわけでありますから、その人は監査役でないわけであります。したがって、監査報告書をつくりましても、それは監査役の監査報告書としての効力を持ち得ないということになるわけでありまして、監査役の何人かのうち一部の者がそういう監査役であったといたしますと、これは状況にもよりますけれども、資格のある監査役につきましては、一応その人の監査報告書として有効なものと認めていいのではないか、このように考えます。
  82. 佐々木静子

    佐々木静子君 川島さん、ちょっと私いま結論のところよくわからなかったんですが、複数の監査役のうち一人でも合法的に認められた監査役がいる場合は、その監査報告書は有効と考えていると、そういう結論でございますね。
  83. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) そのとおりでございます。
  84. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、いろいろこまかいことになって恐縮ですが、監査役の選任が改正法の二百七十五条ノ三に規定してございますけれども、ここで監査役が総会で監査役の選任議案について意見を表明することができるというふうになっておると思うのでございますが、この意見を表明する機会が総会で与えられなかった場合、その場合の選任決議の効果などはどのように考えればいいのでしょうか。
  85. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 意見を述べる機会を与えられなかったといたしますと、その手続に瑕疵がある。したがって瑕疵のある決議、瑕疵のある選任ということになろうかと思います。
  86. 佐々木静子

    佐々木静子君 なぜそのように申し上げるかといいますと、御承知のとおり、このごろの取締役会というものが有名無実化しているというようなことも多いのではないかと思いますので、そういうふうな場合もいろいろと今後出てくるのではないかと、現実に取締役会がほんとうに法律が考えているように運営されていないというケースがたいへんに多いのじゃないかと思いますので、そういうふうな事柄について今後問題が起るのではないかと思ったので重ねてお伺いしたわけですが、意見が述べられなかった場合は瑕疵がある、結局選任決議が無効だということになるわけでございますか。
  87. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 取り消し原因になろうと思います。
  88. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、先ほど来お話に出ておりますこの監査役の監査費用の問題でございますが、これについて前向きに早急に御研究いただくということになったわけでございますが、この監査役の報酬についても、これは法制審議会の要綱とはだいぶ変わってきているわけでございますが、監査役の報酬ということについていまの改正案で特に触れてはおりませんが、こういうことで監査役の身分がはたして保障できるのかどうか、そういう点たいへんに疑問に思っているわけでございます。その点について法務省はどのように考えておられるか。また、先ほど来お話のございました、これは制度を幾ら変えても監査役自身がいい方が来られなければどうにもならないわけでございまして、現在のように取締役よりも劣る方——劣るというと失礼ですが、取締役よりも後順位の方が監査役になっておられるケースがかなり多いというような現実から考えますと、やはりこれは報酬面ばかりからは申し上げられませんけれども、監査役の報酬というものを取締役のそれと匹敵するように、あるいはそれを場合によると上回るような報酬にしなければその地位というものもなかなか保障できないのではないか、いい人材は得られないのではないかというふうに思うわけでございますが、その点特別の規定がないが、こういうことでりっぱな監査役に来ていただけるかどうか、どのように考えておられるのか、ちょっと御意見を聞かせていただきたいと思います。
  89. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) まず報酬の規定でございますが、要綱では、取締役の報酬と監査役の報酬は株主総会で別々にきめなければいけないと、こういうふうになっておったのでありますが、今回の改正ではそのような規定は設けないことになっております。これはなぜこういうことになったのかと申しますと、現行法の規定がそもそも取締役の報酬を株主総会できめろと、そうして監査役にはその規定を準用するということになっておりまして、法律趣旨から申しますと、監査役の報酬と取締役の報酬を別にきめろということが、もう当然の前提として出てきているのだろうと思います。したがいまして、この点は法律の解釈論になるわけでございますが、あえてその別々にしろというみっともない規定は置かなくてもいいんじゃないかということで置かないことにしたわけでございます。ただ、会社の決算の場合に計算書類を作成いたしますし、その付属書類というのができるわけです。その付属書類にどういう事項を書くかということは、今度の改正では法務省令に譲っておりまして、法務省令でどういう事項を書くかということがきめられることになっております。その法務省令の中で、取締役の報酬と監査役の報酬というものを別々に明らかにするように記載させる、こういうことを考えておりまして、実際には法律趣旨をその省令においてある程度具体化していこうと、こういうことを考えておるわけでございます。  それから現在監査役のほうが取締役よりも報酬が少ない、今後は人を得るために監査役の報酬を引き上げるべきではないかという点まことにごもっともでございまして、私どももそうならなければいけないと思います。その点につきましては、今回は業務監査に権限の内容が変わってまいります。そういった点からも当然企業側が配慮するであろうというふうに考えておりますし、また、この商法改正案についての経済界の反応といたしまして、経済団体等におきましては、かなり大ものの監査役を配置したいという申し合わせをしたところもあるようでございます。そういう趣旨からいたしまして、今後の監査役の報酬というものはかなり引き上げられることになるのではないか、このように期待をしておる次第でございます。
  90. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは監査役が大ものになるということは、これは私も非常に狭い範囲でございますけれども、いろいろな企業の方に伺ってみますと、今度は商法が変われば、大ものの監査役を迎えなければならないということで一面戦々恐々としている企業家もいるということは、これは事実のように思うわけなんでございますけれども、そういう意味でほとんうにりっぱな監査役を得るために報酬の確立ということをぜひこの法案で、まあぶていさいと言われましたが、やはり別に規定を設けていただくべきではなかったか、監査役の独立ということから考えると、もう少し報酬について別個の規定を設けていただいたほうがよかったのではないかと、私はその点をちょっと懸念するわけなんでございます。  次の問題に移りたいと思いますが、この監査役の監査報告書、これがいまは、いままでの監査役の監査報告書というようなものは業務監査がございませんでしたから、主として会計監査だけでございましたから、適法かつ妥当であるということで監査役の報告書というものがなされておりたと思うわけなんでございますけれども、今度業務監査が行なわれるとなると、監査報告書というものは非常に中身が違ってくるのじゃないかというふうに思われるわけでございますが、これは商法でも改正法に若干規定があるようでございますが、この監査報告書の中身について、どういう監査報告書を期待しておられるのか、その点をちょっと御説明いただきたいと思います。
  91. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 監査報告書の内容は、改正案の商法二百八十一条ノ三の第二項に規定してございます。従来の監査報告書というのは、まあ御承知のように、大体が簡単でございまして、適正と認めるとか、異常を認めないという程度のものが多かったわけでございますが、そういうことでははたして十分な監査を行なったのかどうかということもはっきりいたしませんので、今回の改正案におきましては、報告書の記載事項というものを法定いたしまして、ここに第一号から第九号まであがっておりますが、その一々について監査の結果を記載すると、こういう形にいたしておるわけでございまして、この内容につきましてはこの各号に記載してあるとおりでございます。
  92. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、この監査役の監査報告書と並びまして、この会計監査人に対する監査調書ということについてもお伺いしたいと思うんでございますが、いままでは公認会計士の監査というものは証取法の監査に基づくものでございましたので、証券取引法から見ての監査というのと、今度の商法上の監査というのとで非常にまあ監査の角度が違ってくるんじゃないかと思うわけでございますが、その場合に監査調書というようなものはどのような形式になるのか、そういうことについて大蔵省から伺いたいと思います。
  93. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 御指摘のように、会計監査人が監査報告書を出しますときには、特例法案の十三条の二項にございますように、「商法第二百八十一条ノ三第二項第一号から第四号まで、第六号及び第九号に掲げる事項を記載しなければならない。」、こういうことになっておりまして、したがいまして、会計監査人が出さない監査報告には、第五号の、たとえば「営業報告書ノ内示ガ真実ナルヤ否ヤ」とか、あるいはたとえば七号、「準備金及利益又ハ利息ノ配当ニ関スル議案ガ会社ノ財産ノ状況其ノ他ノ事情ニ照シ著シク不当ナルトキハ其ノ旨」とか、八号の「取締役ノ職務遂行ニ関シ不正ノ行為又ハ法令若ハ定款ニ違反スル重大ナル事実アリタルトキハ其ノ事実」というようなことに関しては、当然会計監査人の監査報告書は出ないわけでございます。  そこで、どのような商法監査で要求された監査をするかという点につきましては、現在証券取引法に基づく監査では、監査に関する省令がございまして、それによって行なっているわけでございます。そうして、それは従来のたてまえからも非常に社会的な信頼にこたえ、かつ公正にして信頼される公認会計士の監査証明でなければならないので、きわめて厳格に種々のことを要求しているわけでございまして、今回商法による事前監査が行なわれるようになったからといって、大幅にこれを見直して改正するというほどの必要はないのではないかと考えております。
  94. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは証取監査の対象になり、かつ五億円以上で商法の監査の対象になるというところがかなり多いんじゃないかと思うわけですが、そうなると監査調書というものは二つつくるわけでございますね、商法上の監査と証取法上の監査。私、ちょっとそこのところがよくわからないんですが、また、かりにそうだとすると、角度が若干違うんじゃないかと思うんですが、その点はいかがなんでございますか。
  95. 小幡俊介

    説明員(小幡俊介君) 証券取引法上の監査報告書につきましては、財務諸表の監査証明省令という省令がございまして、そこで監査報告書にどういうふうな内容のものを書くのかというふうなことがきめられておるわけでございます。ところで、いまお話ございましたように、特例法に基づきます会計監査人の監査報告書というのが特例法の体系の中で詳細きめられておるわけでございますが、監査証明省令のほう、証取法上の監査報告書は監査証明省令に基づきましてその記載内容を定めるわけでございますが、この内容につきましては若干の手直しというものが必要になってこようかと思っておりますけれども、その具体的な内容につきましては、まだ十分な検討はしておりませんが、今後できるだけ早い時期に、この内容につきましてもどういうふうなものを証取法上の監査報告書として書かせるかというふうなことについて調整をしてまいりたいというふうに思っております。
  96. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、この会計監査人のことについてちょっとお伺いしたいのですが、この会計監査人の任免というものがこの取締役会で選任、解任されるというふうに改正法ではなっておりますが、このことで会計監査人の地位というもの、独立性が害されるのではないかという議論がかなり出ているわけでございます。少なくとも株主総会の承認を要するというふうな規定を設けるべきではないかという意見もあるようでございますが、その点について法務省としてはどのようにお考えでございますか。
  97. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 会計監査人の選任を取締役にやらせるか、あるいは株主総会にやらせるかという問題は、御指摘のように相当重要な問題であろうと思います。まあこの案では、実務上の便宜と申しますか、株主総会を開きますのは大体決算期に開くのが普通でございますので、その年に一回あるいは二回しかない株主総会で選任するよりも、取締役会で選任さしたほうが便宜であろうということを考えて取締役会に選任権を与えたわけでございます。ただ、選任した場合には、その次の株主総会において報告をすることを義務づけておりまして、そういう意味で、株主総会から見ても妥当な者を選任するということを保証しようとしているわけであります。で、御指摘のように、会計監査人となる者は、公認会計士あるいは監査法人に限られておりまして、これはその業務の性質から当然公正に職務を行なうということが保証されておりますので、その点も勘案いたしましてこういう制度にいたしたわけでございます。
  98. 佐々木静子

    佐々木静子君 この選任あるいは解任について監査役の同意を条件としておりますけれども、この点もまあ会計監査人の地位ということから考えると適当でないというような議論も出ておりますが、そのあたりはいかがお考えでございますか。
  99. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 私は、この監査役の同意を要件とするということは、むしろ公正な選任を保証するのに役立つのではないかと、このように考えておるわけであります。そもそも監査役というのは会社の業務執行が適正に行なわれるための監査を行なう機関であると、したがいまして、そういう機関が同意をしたということになれば、会計監査人の選任というのはさらに公正さを増すであろうと、こういうふうに考えるわけでございます。
  100. 佐々木静子

    佐々木静子君 この会計監査人の任免が、株主に周知させる必要があるというようなことから、株主総会で取締役が報告しなければならないというふうになっているんじゃないかと思いますが、この解任についての報告ですけれども、だれが解任されたというだけではなしに、この解任の理由についても報告義務を課せられておると思うわけですが、この報告義務というのはどの程度の報告なのか、この法律が要求しているところの報告義務の程度ということについて、これは会計監査人の身分と非常に関係があると思いますので、その点の御説明をいただきたいと思います。
  101. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) これは、解任の理由というのはいろいろあるわけでございまして、たとえば病気になって仕事ができなくなったとか、あるいは不正な行為をした、そのために信頼のある調査がしてもらえないのではないかと考えたとか、いろいろな理由があるわけでございまして、その理由がわかる程度のものであれば、どのような程度であっても差しつかえないというふうに思います。
  102. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、会計監査というものが独立している、き然とした態度で企業に対して正当な監査ができるのだというふうに、私ども聞かされてはおりますけれども、現実の問題として、やはり企業の気に入らない会計監査をした場合に、こうした解任の問題が起こるのではないか、これは口では聞かされておりましても、現実には、これは起こり得る可能性が非常に多いのではないか、その点を懸念するわけなんでございます。それで参議院の法務委員会においても、参考人の意見を聴取しましたときに、公認会計士協会側から、正当な理由がなくして本人の意思に反して解任をされた場合における監査人の交代は、監査人の独立性擁護のためから何かの措置を検討しているというような、したいというような御趣旨の御答弁があったわけでございますが、そういう点について大蔵省としては、何か特別の行政指導とかお考えはございますですか。
  103. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) その点に関しましては、商法改正法による条項でございますので、私どものほうの行政として、行政指導とか、あるいは云々と申しましても、所管している法律による差異という限界は、どうしてもあるかと考えます。
  104. 佐々木静子

    佐々木静子君 なぜそういう点を質問さしていただくかといいますと、これは私どもというよりも一般の国民がたいへんに心配しているわけでございますが、会計監査人が被監査会社から報酬をもらって監査をするわけでございますので、その点諸外国の例なども承ってはおりますけれども、ほとんうに公正な監査ができるかどうかということがたいへんに心配されるわけなんです。そして、それにつきましては、その公正な監査をしたばかりにその身分を失うというようなことが起こるとすれば、これは神ならぬ身の会計監査人に対して神わざをしいるようなことにもなりかねないわけでございますので、これは公正な監査を期待する以上は、やはり制度的にも会計監査人の身分というものを、これはしっかりと保障しなければならない。そういう点でこの商法改正についても、もう少しこの会計監査人の地位の保障といいますか、独立ということについての御配慮をいただきたいというふうに私思いますのと、また大蔵省行政指導として、やはりそうした点についての御配慮というものを、もっと考えていただかなくちゃいけないのじゃないかと思うんですけれども、この点に対して法務省大蔵省の御意見を伺いたいと思います。
  105. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 現在証券取引法のほうで会計監査人が上場会社の決算書類の監査をやっておるわけでございますが、その場合に限定意見と申しますか、多少会社の気に入らないような結論を出したものも少なくないというふうに聞いております。そういった場合に会社として解任してほかの人を入れかえるというようなことをやっているとすれば問題でございますけれども、おそらくそういう例はあまりないのではなかろうか。その辺は会社といえども良識を持ってもらわなければなりませんし、そういうふうにいくことを希望しておるわけでございまして、たとえば、大蔵省のほうでは最近監査法人というものを強化して、そして会計監査人の地位の強化をはかるというようなこともお考えになっておられるように聞いておりますし、そうしたいろいろな配慮が加えられておるといたしますれば、この規定は、この会計監査人の地位というものはある程度保障されることになるんではなかろうかというふうにも思うわけでございます。しかし、仰せのような心配が実際に出てくるということになりますれば、これは何らかの手配をしなければならないというふうに考えます。現在のところ、こういう規定がありますれば、この程度で会計監査人の地位は保障されているということになるというのが私どもの考え方でございます。
  106. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) ただいまの点に関しまして私ども大蔵省のほうといたしましては、たとえば、解任されたような場合には当然不服等があれば公認会計士協会のほうに話がございましょうし、また私どものほうにも個別的に話がありますれば当然事情を聴取したいと、そしてその理由をつまびらかにして、そのような間接的な意味での指導をしたいということはもちろんでございますが、また他方におきまして、今回の事前監査ということで会計監査人が決算の確定に直接参与するようになりましたので、当然独立性を発揮して公正な社会的責任を公認会計士は果たさなければなりませんから、そのようにして社会的な信頼なり信用というものがついてくれば、自然に会社のほうでもみだりに不当な理由ないしは好ましくない理由によって公認会計士を解任するというようなこともなくなるのではないかと、このような意味におきまして、私どもとしては厳正な監査の確保、公認会計士の社会的責任の十全な実現というほうに行政指導をもって一生懸命やっていきたい、かように思います。
  107. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの法務省の民事局長の御答弁で、証取監査の中で公認会計士が必ずしも企業に対して追随しておらない、企業に対して批判的な監査報告書も出ておるという御答弁ございましたが、大体これは何%ぐらいなのか、数字の上でおわかりでございましょうか。
  108. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 数字の上では存じておりません。
  109. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは大蔵省のほうでも何かそういうふうな資料ございますか。ありましたらひとつ参考までに御提出いただきたいのでございますが。
  110. 小幡俊介

    説明員(小幡俊介君) 四十七年の本省、財務局を通じまして監査をしました結果でございますが、件数といたしまして三千五百七十件の監査のうち、いわゆる無限定適正というふうなことで出ておりますのが七〇・七%、それから残りが限定がそれぞれついておるということでございまして、約七割が無限定適正、それからあとがいろいろな限定事項がついている、こういうふうな結果になっております。
  111. 佐々木静子

    佐々木静子君 この限定の理由などについての統計などのようなもの、ございますか。
  112. 小幡俊介

    説明員(小幡俊介君) 統計的に掌握しておりますのはただいま申し上げました数字でございますが、この中身につきましての統計的な掌握はいたしておりません。
  113. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは次の質問に移りたいと思いますが、監査役の第三者に対する責任ということについて改正商法の二百六十六条ノ三、一項、あるいは会計監査人についても同じような問題が特例法の十条あたりに出ているんじゃないかと思うのでございますが、これが、会計監査に伴う責任というようなことで、取締役の違法行為の禁止を怠った場合に監査役がかなりな範囲に責任を負わなければならないというようなケースがこれから先出てくるのではないかと思うのでございますが、具体的にどのような程度の責任ということになるか、取締役の責任とのバランスなどを考えますと、どの程度の責任になるのかということが考えられますので、主として民事上の責任について法務省がどのように考えていられるか、また会計監査人の責任と監査役の責任とのバランス、そういうふうな点について御答弁いただきたいと思います。
  114. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 監査役の第三者に対する責任といたしましては、商法の二百八十条が準用しております二百六十六条ノ三の規定によって監査役が第三者に対して責任を負う、こういう場合が出てくるわけであります。ただ、現在では、監査役は会計監査しか行なっておりませんので、比較的その責任を問われる機会が少なかったわけでございます。たとえば判例にあらわれた上で申し上げますと、取締役が会社の、財産を横領したとかあるいは不渡り手形を発行したという場合に、取締役と並んで監査役が個人責任を追及されたという場合におきまして、取締役のほうはその責任があるけれども、監査役は会計責任しかないのだから、業務監査を行なえないのだから監査役のほうには責任がないということで否定された例がございます。こういった場合におきましても、今度は監査役の職務が業務監査まで広がりましたので、そういう場合の責任を負わされることになるだろうというふうに思うわけであります。  それから監査役の責任と会計監査人の責任の違いでございますが、これは、会計監査人につきましては特例法の十条に規定がございまして、重要な事項について監査報告書に虚偽の記載をしたということが要件になっております。それだけ会計監査人の責任を生ずる原因が狭くなっておるわけでありますが、他面、過失の点につきましては、立証責任が転換されております。こういう意味では会計監査人の責任のほうが重くなっているというふうにも見られるわけでございます。しかしながら、この商法二百六十六条ノ三の規定の実際の適用例から見ますと、必ずしも挙証責任の点があまり大きな問題とはなっておりませんので、適用上に大きな差が生じてくるとは思いません。まあ結論といたしましては、監査役は業務監査を一半行ないますために今後は相当責任を負わされる場合が多いであろう、それから会計監査人については監査報告書に限るわけでありますけれども、これに虚偽の記載をしたという場合には相当の責任を覚悟しなければならないと、こういうことになるわけでございます。
  115. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま御説明ございましたこの特例法の第十条のただし書きで、「ただし、その職務を行なうについて注意を怠らなかつたことを証明したときは、この限りでない。」として挙証責任の転換が行なわれておりますけれども、これが証券取引法の二十一条あるいは二十四条の四でやはり同じく挙証責任の転換がはかられているので、会計監査人の責任がこの商法の規定によって加重されたものではないというふうに伺っているわけですけれども、この証券取引法の二十一条の規定によって無過失の証明ができた場合、すなわち挙証責任が転換されて責任がかからなくなった場合、これはいままでの例でどのくらいあるわけなんでございますか。
  116. 小幡俊介

    説明員(小幡俊介君) ただいまの第二十一条一項ないし二十二条一項あるいは二十四条の四、これらの規定は四十六年の証取法の改正で入った規定でございますが、今日までのところ、まだこれらの規定の適用された事案はございません。
  117. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、ほとんどそういう問題は現実に挙証責任の転換が行なわれた例がないということは、大ざっぱに見ると、あまりそういうケースが具体的に起こっておらぬということでございますか。
  118. 小幡俊介

    説明員(小幡俊介君) そのとおりでございます。
  119. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、いまの監査役あるいは会計監査人の責任問題について一応質問さしていただきましたが、次に、監査役の業務監査というものと、各企業で内部の監査部門というものを設けておるところが非常に多いのじゃないかと思いますが、この企業内の監査部門の業務監査というものに対する差異というものについて御説明いただきたいと思います。法務省からお願いいたします。
  120. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 企業の中の監査の部門でありますが、これは業務を執行するにあたって間違いなくやろうという立場から行なうものでございまして、結局、業務の執行と結びついたものでございます。したがって、それは取締役を頂点とする業務執行機関の内部の問題であって、これに対しまして監査役は、その取締役の下に立つのではなくして、横にあって別の立場から監査を行なうわけでありまして、まあ監査という意味では同じような重複した調査というものが行なわれることになると思いますけれども、その行なう立場といいますか、意味といいますか、それが違ってくるわけでございます。
  121. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは先ほどから、監査役の陣容といいますか、スタッフをどのようにすればいいかというようなことが若干出ておったわけでございますけれども、これは商法趣旨から考えますと、どのように考えたらいいのかということをちょっと伺いたいのは、この企業の内部部門の監査、企業内部の監査部門に監査役は協力関係を持つようにすべきなのか、あるいは監査役の地位の独立ということから考えて、これは全く別のスタッフをそろえるべきだというふうにお考えなのか、そこら辺の法務省のお考え、あるいは大蔵省がどのように行政指導——これは大蔵省とはあまり関係ないですか、法務省がどのようにお考えになっていらっしゃるかということをちょっと伺いたいと思います。
  122. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 純粋に考えますと、取締役と監査役は別個の機関でございますから、監査役が監査を行なうためにはその独自の下部機構というものがあるのが一番いいわけでございます。しかしながら、監査役が監査を行なう方法として、取締役をはじめ会社の従業員に対して業務説明を求める、報告を求めるということはあるわけでございまして、したがって業務部門の中に監査を行なう職務を持っておる者がおれば、そういう者に対しておまえの監査した結果はどうなんだ、それからこういう点についてはどういう監査をしたかというようなことを調べることも、これは監査役としてできるわけでございまして、そういうものを利用して監査を行なうということも監査役の職務の一つであるというふうに考えております。
  123. 佐々木静子

    佐々木静子君 この場合、監査の対象ですね、監査役の監査は、業務監査ではあるけれども主として適法性とかあるいは著しく不当であるとかというようなことにしぼられるし、あるいはそれに対して企業内部の監査ですね、これは業務監査といっても、そういうふうなものもむろん含みますけれども、能率監査というようなことにも相当多く広がるんじゃないか。そういう意味で監査の姿勢というものが非常に違ってくると思うんですけれども、そういうあたり、この協力関係を持ってやるということが監査役の独立ということと矛盾しないかどうか、そのあたりをちょっともう少し伺いたいわけなんです。
  124. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 先ほども申し上げましたように、監査役といたしましては、業務部門の者であれば監査を行なっている者でも、それから直接業務を担当している者でも、だれでも、おまえはどういうことをやっておるかということを質問し報告を求める、そうして調査をする権限があるわけでございまして、監査役が自分の立場をき然として維持する限り、そういう形での監査というものを行なうことも一向差しつかえないし、監査役の立場と相いれないものではないというふうに考えます。
  125. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから会計監査に関連いたしまして、これが公認会計士協会と税理士会との間で相当職域的な問題として論ぜられているところでございますけれども、衆議院の附帯決議の第五項にある監査法人の監査業務の規制について、いろいろと日本税理士連合会のほうからも強い御要望が出されておるわけでございまして、そのあたりの点について法務省としてはどのようなお考えをお持ちなのか、あるいは大蔵省とするとどのようなお考えをお持ちなのか、お述べいただきたいと思うわけなんです。
  126. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) この点に関しましては、従来の法体系に比べまして、このたび特例法案におきまして四条二項というところで会計監査人の資格がはっきりしたこと、それから、もう一つは、この整理法の中で公認会計士法の二十四条及び三十四条の十一についての改正が行なわれましたこと、衆議院段階のことでございますが。それから、もう一つは、衆議院においてただいまおっしゃいました四党共同提案による附帯決議というものの結果、この点では五号というものが加わったわけでございます。したがいまして、ただいままでの体系といたしましては、監査証明省令に特別の利害関係ということを非常にうたい込んでおりましたが、今回は以上のような点を勘案いたしまして、公認会計士政令の一部改正案というのを準備しなければならないと考えております。
  127. 佐々木静子

    佐々木静子君 法務省として別にございませんですか。
  128. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) ええ。
  129. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうした大蔵省にお伺いいたしますが、いまの特に政令をお考えになっていらっしゃるということでございますけれども、それはいつごろお出しになるようになっているのか、もう少し具体的に御説明いただけませんでしょうか。
  130. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) 行政府といたしましては、当然、衆参両院を通過した法律に基づいて、政令に任されている事項を政令規定するわけでございますから、当然、両院を通過したあと正式な政令が出るということでございます。
  131. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、これはまだ審議中で何とも申せませんですけれども、これは両院を通過することがあれば、そのときは政令を間違いなく直ちにお出しになるということは、これは間違いのないことなんでございますね。いかがでございますか。
  132. 田中啓二郎

    説明員田中啓二郎君) この点は先ほども申し上げましたように、ただいままで監査証明省令で多くを規定しておりました点は、今回の公認会計士法の改正で政令に委任されておりますから、当然そちらに移らなければなりませんので、これは政令の改正をいたします。
  133. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、きょう監査制度のことについておもに質問させていただきましたが、あと時間の都合もございますので、商法企業会計原則との調整とか、あるいは中間配当以下のことについては次回の委員会で質問させていただきたいと思います。きょうはこの辺で終わりたいと思います。
  134. 原田立

    委員長原田立君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時九分散会