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宮之原貞光君 ただいまの
質問に答えます前に、前段として言われた
障害児教育の原点といいますかね、これは確かに
教育そのものが一人一人の子供の持つ個性、才能を伸ばしていくという立場に立つわけですから、これは
障害児の子供も、そのものずばりにやはり
教育の、
障害児の持つ
ところの、
子供たちの個性を考えながらやるということを考えれば、私もこれは一般の
教育の原点と全く同じなんだという立場に立ってこの
障害児教育というものを見なきゃならないと、こう思っておるんです。
そこで、それと関連をした
ところの就学猶予の問題ですがね、私は非常にこれは問題があると思うんです。いま初中
局長のほうからは、
法律のたてまえを言われて
答弁があったわけでありますけれ
ども、確かに
法律上から見ますれば、
学校教育法施行規則の四十二条に基づくわけですね。これの規則の四十二条は、猶予をする場合には保護者から願い出るという方式になっておるわけなんです。
ほんとうに保護者が、自分の子供はどうしても
養護学校なり、その他に入れないぐらいに非常に重度だとか、いろんな、入れたくないから猶予願いを出すんかというと、そういう例もありましょうけれ
ども、多くの場合には、やはりこの指導の中で行なわれている
ところのきらいが大部分であるんですよ。たとえば
養護学校は県できわめて少ない、行きたくても
経済的な
理由もあって行けないから、そうすれば、おたくのほうから願い出たら猶予できるんですよという指導をやっている
ところの例というのは、これ非常に多いんですよ。私はここに、なるほど
法律のたてまえでは、保護者が願い出て猶予をしてもらうと言いながら
障害児を入れる
ところの
養護学校なりその他の
施設の面で非常に不十分なために行けない。言うならば、子供の
教育を受けるという
権利が、その
施設、設備が不十分のために、あるいは
経済的な
理由のために行けなくて、みずからの
権利をそういう形の中で束縛をされるという例が少なくないという
ところに私は問題があると思うんですよ。たとえば、先ほど初中
局長のほうからは、いわゆる
養護学校は全国で二百六十校あって、今後百九十校ぐらい必要なんだと、こういう話なんですけれ
ども、
文部省の四十八年度の文部統計要覧を見ましても、県によって非常なばらつきがあるんです、この
養護学校の
施設は。それは東京、神奈川あたり十六校も十三校もある。けれ
ども一校しかない
ところもある。たとえば同じ規模の問題でこう見ますれば、東北の青森は十一校ある。
ところが隣の岩手には一校しかない。これだったらいかに
障害児の子供が
学校に行きたくても行けないわけなんですよ。条件がないわけなんだから。それを就学猶予という
法律のたてまえをとらされて、願い出たという形をとって
学校に行けないという
ところの例というものがあるんです。これはまあ若干古い資料でございますけれ
ども、
昭和四十七年の五月二十四日の読売新聞の
教育欄に出ておった
ところのことでございますけれ
ども、たとえば、その
障害児の子供が岩手に四百九名おる、就学猶予になった子供が出ておる。
ところが肝心の岩手は、そのときにはなくて、その後一校できただけなんです。行かそうにも行けようがないんですね。ここに私はやはり
子供たちの
教育を受ける
ところの
権利というものが非常な阻害をされておる
ところの要素がある。したがって、このばらつきをなくして、できるだけ
養護学校を積極的につくらせていくということに対しては、やっぱり
文部省としては、相当強力な
行政指導をせなきゃならぬと思うんです。そういうことをしないでもって、あと五年後には、
養護学校をいわゆる義務制化するんですということではだめなんです。隣の青森には十一校もあるのに、片一方に一校しかないなんて、これは常識で考えたってわかるでしょう。大体人口の規模から見たってわかる。したがって、そういう面と相待ちながら、私はやはりこの問題については積極的な指導をしていかなければ、勢い行きたくても行けない
ところの子供がずうっと出てきておる。そこに、たとえば統計にも出ておりますように、
昭和二十七年から四十六年までの二十年間にわたって心身
障害を原因とする
ところの心中、自殺、殺人、小児虐待死、事故死などが実に八百八十四件あるという統計が出ておる。これは言うならば、八日に一件の割合で
障害児の子供が何らかの形で命を失う。これな
ども、これは私はすべてがそこに原因があるとは言いませんけれ
ども、行きたくても行けないような条件で、やむなくこの就学猶予届けを出させる家庭にあるという、この子供のやはり
教育権の奪われておるという
ところに、
障害児教育の大きな
問題点の
一つがあるという点を私はやっぱり
指摘せざるを得ないと思うんです。したがって、そういう点で申し上げますならば、たとえば、今度
文部省が昨年よりも予算を増して二億円で訪問教師というものを、
障害児に対するものをつくりました。それは昨年よりは前進をしております。しかし、この予算の計上を見ても、実は就学猶予の免除を受けた
ところの
子供たちにだけしかこの
先生は訪問教師としては行かないわけなんです。そうすると、私は先ほど申し上げたように、府県で非常なばらつきのある
ところの
養護学校の
施設、そういう
ところに行きたくても行けないような子供は、当然この訪問教師が行って訪問
教育もできない、その恩典からも浴することのできないという形になっておるんです。ここに私は今日のやはり
障害児教育の欠陥の
一つがあるという例も
指摘をせざるを得ない。それだけに、
基本的にやはりすべての
障害児が
教育権を保障されて、どっかにかやはり就学をしておる。けれ
ども、いろんな都合で就学できなくておるからして、そういう子供に対しても言うならば
一つの学籍をどっかにかつくらせて、そこの
ところの子供にも行けるように、みなが就学猶予を受けておらないで、実際家庭におる
ところの
障害児に対しても、この訪問教師というものがやはり行けるような
ところにまで広げていくという点を、私は今後の
教育行政の中ではきわめて大事な問題の
一つであるんじゃないだろうかと、こう思っておるわけでございますので、その点もあわせていまの御
質問に答えておきたいと、こう思います。