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1974-04-11 第72回国会 参議院 文教委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月十一日(木曜日)    午前十一時二分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月四日     辞任         補欠選任      中村 登美君     迫水 久常君                 平泉  渉君  四月五日     辞任         補欠選任      迫水 久常君     中村 登美君      平泉  渉君    久次米健太郎君  四月六日     辞任         補欠選任      久次米健太郎君    平泉  渉君  四月九日     辞任         補欠選任      萩原幽香子君     松下 正寿君  四月十日     辞任         補欠選任      星野 重次君     徳永 正利君      大松 博文君     高橋文五郎君      永野 鎮雄君     黒住 忠行君      二木 謙吾君     今泉 正二君  四月十一日     辞任         補欠選任      高橋文五郎君     梶木 又三君      徳永 正利君     中村 禎二君      鈴木美枝子君     小野  明君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         世耕 政隆君     理 事                 斎藤 十朗君                 内藤誉三郎君                 片岡 勝治君                 小林  武君     委 員                 今泉 正二君                 梶木 又三君                 金井 元彦君                 黒住 忠行君                 志村 愛子君                 中村 禎二君                 中村 登美君                 平泉  渉君                 小野  明君                 宮之原貞光君                 安永 英雄君                 矢追 秀彦君                 松下 正寿君                 加藤  進君    国務大臣        文 部 大 臣  奥野 誠亮君    政府委員        人事院任用局長  大塚 順七君        文部大臣官房長  井内慶次郎君        文部大臣官房審        議官       奥田 真丈君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        文部省社会教育        局長       今村 武俊君        文部省体育局長  澁谷 敬三君        文部省管理局長  安嶋  彌君        日本ユネスコ国        内委員会事務総        長        西田亀久夫君        文化庁長官    安達 健二君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君    説明員        法務省入国管理        局次長      竹村 照雄君        外務大臣官房領        事移住部長    穂崎  巧君        通商産業省生活        産業局紙業課長  村岡 茂生君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○教育文化及び学術に関する調査  (文教行政基本施策に関する件)     ―――――――――――――
  2. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、徳永正利君、高橋文五郎君及び鈴木美枝子君が委員辞任され、その補欠として中村禎二君、梶木又三君及び小野明君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  3. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 教育文化及び学術に関する調査中、文教行政基本施策に関する件を議題といたします。  本件について、質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 最初に、田中総理施政方針演説の中で述べられておりましたところの「国際人づくり」、あるいは文相所信表明の中にもある。「だれからも愛される、尊敬をされ、信頼をされる日本人づくり」、こういう問題についてお伺いをいたしたいと思いますが、文部大臣所信表明の中で、「だれからも尊敬され、信頼される」日本人づくりということばが出ておるわけでありますが、もう少し、その点について具体的にお考えをまずお聞かせ願いたいと思います。
  5. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) わが国が今後とも繁栄を続け、平和で豊かな社会を建設していきますためには、国際社会の一員として、国際協調精神に基づいて、世界の平和と人類の福祉のために貢献することが肝要でございます。しかしながら、国際的にはいろいろの批判を受けておるわけでございますし、また特に、総理東南アジアに参られましたときには、タイやインドネシアで極端な日本に反発するような言動も見られたわけでございます。そうしますと、やはりこれまでのあり方につきましても謙虚に反省をしながら、特に国際社会から信頼される日本人になっていく、そのためには、どうすべきかということにつきましても、積極的な努力が必要ではなかろうかと、こう考えておるわけでございます。
  6. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 この国際人づくりの問題について、総理の衆議院におきますところの答弁議事録を通じて拝見をいたしますと、国際人づくりは即日本人閉鎖性打破ということを非常に強調されておるわけでございますが、確かに私は閉鎖性打破するということも、国際人づくりでは重要な部分だということは否定はしませんけれども、それがしかし国際人づくり基本的な理念であるかどうか、私はその点疑問を持つのでございますけれども、文相はどうお考えになりますか。
  7. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) それも大事なことでございますが、あわせて人間として心情豊かな人間、特に利己心を排除して公共のために尽くそうというようなあり方、これがまず第一に、国際社会に生きる人間として非常に大切なことではなかろうかと思います。もう一つは、やはり他国文化なり伝統なりにつきましてよき理解を持つということでなければならない、かように考えるわけでございまして、それにはまず自国文化伝統につきまして深い理解を持つ、その上に立って、初めて他国伝統文化につきましても、これを理解し、これを尊重する態度が養われていくんじゃないだろうか、かように考えるわけでございます。
  8. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、いま文相の御答弁いただいた点も非常に重要な点だと思いますが、同時に、やはり国際人づくり基本的な理念の中で大切なのは、全人類あるいは全民族がやっぱり対等・平等の立場に立って、それぞれがやはり相互に学び合い、尊敬し合うというこのものの考え方ですね、これが一番基調にならなきゃならないと、こう考えておるのでございますが、いかがでしょう。
  9. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 重要なことだと思います。私が、自国伝統なり文化なりについて深い理解を持つ、そのことを解いて初めて他国文化伝統についても深い理解を持ち、これを尊重する態度が養われるんだと申し上げましたのも、大体同じような基本に立って申し上げているつもりでございます。
  10. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その点はわかりましたが、この例の閉鎖性打破という問題です。これは私は、そのために語学をマスターすることは大事だということを、いろんなところでも総理は強調されておるわけでありますが、私はこの閉鎖性というのは、何も最近の若い日本人だけが持っておるところの一つ通弊じゃなくて、日本人自体がやはりずっと前から持っておったところの私は通弊だと、こう思うんですが、何か総理の話聞くと、昔は非常に東南アジアに行っても日本人はよかったんだけれども、このごろの若いのは閉鎖性があり過ぎて困ると、こういう筋の話をテレビの対談あたりでも受け取れるような話していますけれども、私はその点はそうじゃないと思うんです。したがって、昔からたとえば東南アジアを含めていわゆるあの地域で言われているところには、こういう小ばなしまである。いわゆる日本人が外国へ行ってひとりだとすぐもう一人の日本人を見つけることに、一生懸命さがそうとする、二人になると共同事業を計画する、三人になると財閥をつくる、四人になると日本人クラブをつくるという傾向があるという小ばなしが、東南アジアから香港あたりにかけてずっとあるぐらいに、一つのやはりグループをつくって、一つ閉鎖社会に閉じこもるという、私はやっぱり通弊というものは、これは日本人の持つ、語学の面からくるところの面もあるとも思いますけれども、一つ通弊であって、これは若い人だけが持っておるところのものではないと思うんですが、その点は、文相はどういうふうに見ておられますか。
  11. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) やはり過去からそういう欠陥を持ってきていると、こう思います。鎖国を解きましてまだ百年余りしかたっていないわけでございまして、国際社会に処していく道が日本人についてはまだ十分身についていない点もあろうと思います。御指摘になりましたような語学の問題もあろうと思います。東南アジアに進出する企業のお話もございましたが、必ずしも現地におられる方々を積極的に活用するというような姿勢が少ないというような批判もあったりするわけでございまして、そういう点から閉鎖性をどう排除していくかということにつきまして、教育の面においても積極的な改革をはかっていかなければならない、こう考えているところでございます。
  12. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それで、大体本筋はわかりましたが、それで私は、国際人づくりには、さっきもちょっと触れましたように、非常に各国民がそれぞれやっぱり平等の立場に立って、あるいは相互尊敬し合うというものの考え方が大事だと思いますが、それだけに正しい国際交流を確立をしていくということは、きわめてこの点にとっては大事なことだと思うんです。それでこの課題は、国際化時代に対応して、国際社会に生き、積極的に活躍、貢献し得る日本人の育成ということにとってはきわめて大事なことであるわけでございます。そこで、お尋ねしたいのは、第十期の中教審大臣諮問をしておられるところの教育学術文化国際交流についてという課題ですね。この課題についての現在の段階におきますところの審議状況について御報告を願いたいと思います。
  13. 奥田真丈

    政府委員奥田真丈君) 第十期の中央教育審議会は、一昨年の六月に大臣から教育学術文化における国際交流についてという諮問がなされまして、それ以来総会を数回開きまして、四つ分科会を設けて審議することになりました。一つ日本語教育に関する分科会、それから教育交流に関するもの、学術交流に関するもの並びに文化交流に関するもの、この四つ特別委員会を設けまして、その特別委員会におきまして、それぞれの課題について審議が進められまして、昨年の七月にそれぞれの特別委員会審議結果が総会報告されました。それから、総会におきましては、その特別委員会審議内容をもとにいたしまして、さらに検討が続けられ、答申作成ということにつきましては、小委員会を設けて申答の案の起草をするということもきめられまして、現在は、その答申案作成を小委員会においてなされておる途中でございます。そして、本年の五月に審議会委員の任期が終了いたしますので、それまでに最終的な答申を出す予定でいま作業が進められております。
  14. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その中で、特に教育交流意義基本的課題というんですか、そういう筋の小委員会ですね、教育交流の。そこの小委員会での審議状況をもう少しお答えを願えたら詳しくお聞かせ願いたいと思います。
  15. 奥田真丈

    政府委員奥田真丈君) 教育交流特別委員会におきましては、まず、初めに教育交流意義基本的課題という点について審議がなされまして、それから、主として人物交流の面では留学生の交流、あるいは教育指導者交流、青少年の交流、それから物的面教育協力といたしましての事項並びに海外勤務者の子女の教育、そういう問題を中心審議がなされまして、特に最初教育交流意義段階におきまして、日本人全体の国際性啓培、こういうことば特別委員会では使っておられますが、日本人全体について国際性啓培する必要があるということが一つ。そして国際理解国際協調精神国内教育においてもっと充実しなければならない、こういうことが中心として審議されております。
  16. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 続いてもう一つお尋ねしますが、一九六八年の国際公教育会議ですね、これは文部省局長や次官がよく出るところの会議ですね、皆さんが代表して。ここで採択をされました教育課程及び学校生活に不可欠の一部としての国際理解教育に関する勧告、こういうのが採択されておるはずでございますが、その勧告の要点と、それをどのように文部省としては理解をされて、実際の教育交流、あるいは国際教育という教育の面に反映させるようにやっておられるか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  17. 西田亀久夫

    政府委員西田亀久夫君) ただいま御指摘の一九六八年の公教育会議における勧告の問題について御説明申し上げます。  この会議は、その当時におきましては、ユネスコ国際教育局の共催のもとに毎年ジュネーブで開かれておりまして、その年に御指摘のような国際理解に関する教育の問題について検討が行なわれました。そうして、この会議では、そこで得られました結論を勧告という形で各国文部省検討してもらいたいという形で送られてくるわけであります。その勧告文は、たいへんたくさんの文言を含んでおりますが、その基本的な考え方といたしましては、大きく分けまして三つの点があろうかと思います。  第一は、教育の中で、諸国民についての正確な知識を持ち、その文化に対する正しい態度を養うということが一つ目標であります。  第二番目は、国連その他で絶えずいわれております人権尊重人間平等の観念の徹底という問題であります。  第三番目が、国際的にすべての国がお互い相互依存関係にあり、お互い協力をしなければならないその必要性に対して正しい理解を深める、こういう問題であります。国内委員会では、この種の勧告が出てまいりました場合に、文部省と御相談いたしまして、文部省のほうでは、刊行物によって関係者にその内容の周知をはかりますとともに、国内委員会では特に文部省と緊密な連絡のもとに、昭和四十四年の学習指導要領改訂の際には、特に社会科並びに道徳教育目標の中で、このことを明確にしていただくようにしたわけであります。しかしながら、現在の状況におきまして、この国際理解のための教育というものは、世界各国がたいへんにやはり取り組みながらむずかしい問題をかかえております。そこで、一昨年のユネスコ総会におきまして、これまでの国際理解教育を根本的に再検討して、あらためて公式の国際勧告を、これはユネスコとして正式に決定するようなものを持っていきたいと、こういうことで現在作業が進められておるわけであります。なお、国内委員会では、文部省と御協力いたしまして、学校現場においてかような国際理解教育をする場合の手引き書作成をし、現場先生方の御利用に供しておりますし、また、ユネスコ本部の呼びかけに応じまして、国内小中高等学校の中で積極的にこれに熱意をお持ちになる学校ユネスコ協同学校という、いわば一種のモデルスクールとして国際理解教育のための仕事を進めるお世話をいたしております。これまでの経緯はさようなところでございます。
  18. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私はこの勧告は、いまお話聞くとまたあらためてさらによりよい方向のものをユネスコで出すように勧告検討中だということでございますけれども、やはりこれは国際理解相互に深めていくための教育の中ではきわめて重要な勧告だと見ておるのであります。したがって、いま事務総長のほうから御答弁いただいたわけでございますが、この七項目にわたる国際理解教育のこの原則、ここに示されておるようなもの、特に私はこの中の、相互の正しい認識尊敬という点。人権尊重、平等の観念正義精神の強調の点、人間尊厳の感覚の養成、それから民族独立と平等というこのものの考え方ですね、これらは少なくとも、この勧告に盛られたところの特色だと思うんですよ。したがって、私はいまユネスコ国内委員会事務総長のほうからお話があったわけでありますが、いわゆる教育学習指導要領の中にこれをできるだけ反映させるように文部省といろいろ相談をしたという話でございますが、私は、国際的な共通の課題になっているところのこの勧告が、先ほど御答弁をいただいたところのいわゆる中教審答申を求められておるところの教育、芸術、文化国際交流についての委員会にどういう形で提起をされておるのか。少なくとも、私は先ほど御答弁いただいたところのこの日本人国際性啓培という中には、この問題点が重点的にやはり織り込まれるべきだと思うんですが、それを審議をされる際にどのように反映させられておるか、その点についてまずお聞きしたいんです。
  19. 奥田真丈

    政府委員奥田真丈君) 教育交流特別委員会におきましては、その特別委員会の主査にユネスコ国内委員会の会長であられます平塚委員をお願いしております。特に教育交流の問題を考える際の基本的な問題、基本理念として話題が提供されましたときに、平塚委員のほうからユネスコが提唱しております国際理解教育の問題が話されまして、そしてさらに、もっとひるがえってユネスコの憲章にあるところの理念、これも大事にしていこうというような話し合いもなされました。  それから、ただいま総長が言われましたように、今期の総会でさらにユネスコのほうで問題になるから、国際理解教育についてはその秋に総会できめられるような問題、これをも参考にして今後の国際理解教育を実践するようにと、こういうことを答申案の中に書き込もうと、こういうところまで話が進められております。
  20. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、やはりいまも申し上げましたように、この勧告の中の原則である、特に各国相互の正しい認識尊敬をし合うという理念、あるいは人権尊重、平等の観念正義精神という理念、それから民族独立と平等というこの理念は、これは正しい国際協力を推し進める場合の基本的なやはり一番大事な基調となるべきところの点ではないかと思うのでありますが、その点は、どう大臣はお考えになりますか。
  21. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 全く同感でございます。相互理解を深め合っていくということはきわめて大事なことでございますので、そういう意味で、学習指導要領改訂の際にも、社会科道徳教育目標の中に、このような趣旨も織り込んでおるようでございます。今後もさらに一そう充実させるように努力していきたいと思っております。
  22. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 基本的な考え方はわかりました。  それで、これらの問題を踏まえて具体的にお聞きをしたいと思うのでありますが、おそらく政府が毎年多額の予算をつぎ込んで行なっておるところの教員海外派遣とか、あるいは所管が違いますけれども、総理府の「青年の船」ですか、こういうことなどは、その方向、そういう先ほど文相から答弁があったところの理念を踏まえて、それをお互いがやはり学び合うという大きな意味を持っておると、こう思うんですけれども、この教員海外派遣とか、あるいは「青年の船」、これは総理府の方をちょっと私連絡を忘れましたので落としましたので、「青年の船」は答えられなければしかたありませんけれども、この結果、教員海外派遣をどのように文部省としては評価をされておりますか。
  23. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 海外に出られました先生方から絶えず御報告をいただいておるわけでございますけれども、何か目を開いたといいますか、開眼したといいましょうか、そういう意味の感想を届けてくださる方が非常に多いようでございます。他国それぞれの文化伝統を持っている。そこから逆にまた日本文化伝統を見直すという気持ちもかなりいだかれるようでございます。やはりそれぞれの文化伝統尊重し合わなきゃならない、そういうような国際的な視野が生まれてきているという点は指摘できるのじゃないだろうか、かように考えるわけでございます。
  24. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いま、大臣からきわめて抽象的な答弁であったわけですが、目を開いたとか、あるいは日本を見直した。私が先ほど申し上げたところのいわゆるいま討議を進められておるところの基本的なものの考え、あるいは国際交流とは何かというこの基本理念という立場を踏まえてみた場合に、はたしてそのような成果があがっておるかどうか、やっぱり率直に申し上げて疑問を表明せざるを得ないんです。第一、海外派遣教員人選をこう見ておりましても、ほとんどが、これは文部省なり、教育委員会のおめがねにかなったような、いわゆる平場で言われておるのは論功行賞的な人選ばかりだと、こういう声もきわめて強いのでございますが、そのこともさることながら、派遣をされて行って帰られてからのその人々のものの見方というものがはたしてほんとうに正しい国際理解という方向へ近づいておるのかどうかという、このことについては、あるいは問題がありはしないかと思っておる。たとえば、文部広報などに出ておりますところの皆さん報告書を見てみますと、毎回のように訪問国歴史文化教育等について事前の研究が不十分であったというのが毎年のように述べられておるんですよ。同じことを毎年これは繰り返さなければならないということは、言うならば、訪問した先の国国のこういう問題についての事前お互い学習活動、そういうものが十分であったかどうかと、こういう点を私は用意されることなくして、ただ指名をされたから名誉だと思って行ったという形のものがこういう反省を私は生んでおるんじゃないだろうか、こう思うのです。さらにまた、それぞれの訪問国を行って来たところの報告書を見れば、もののとらえ方が、進んだ国とおくれた国、あるいは歴史伝統の国とか、新しい国、こういうものの表現で東南アジアを、あるいはヨーロッパ、あるいはアフリカ諸国を、新興国をとらえるという、こういうとらえ方の文言が相当たくさん出てくるんです。私はこれを見て、非常にこれは浅薄な、浅い民族観でそれぞれの国を見ておるのじゃないだろうか。しかも、日本は進んだ国だという立場から、開発途上国はおくれた国だと、あるいは新しく独立したところの国を新しい国ということでとらえて、その国の、いわゆる独立したところの――新しく最近独立した国のそれぞれの歴史的な文化というものに対して学んでいこうというところの態度が欠けておるんじゃないだろうか。したがって、せっかく多額の金を使ってやりながらも、これはねらってるところのほんとう国際交流というところからまだまだほど遠いところにあるのではないだろうか、こういう感がしてならないのです。この点は、単に教員海外派遣だけでもなくて、「青年の船」についてもこれは言えると思うのです。たとえば総理府発行の「時の動き」あたりに書かれておるところの報告書を見ますと、これはどっちかというと多くの者が日本経済進出の力強さに感動したという、そういうことばかりが報告書でずっと盛られておるという点は、私はこれは一つの側面ではあると思いますけれども、すべてそういうものだけでものをとらえるとするならば、いわゆる総理東南アジア回って帰られてきたところの、国際人づくりという一つ反省の上に立つところの、この閉鎖性打破とかあるいは国際人づくりというものの考え方からはやはりほど遠いんじゃないだろうか、こういう感がしてならないわけです。しかもこれは、こういう実際の教員海外派遣や「青年の船」だけじゃございません。私は、やはり今日の現行の教科書の書き方の中にも若干大同小異的な問題があるのではないかと思う。たとえば、海外への日本経済進出を、単に伸び行く日本ということだけで表現をしてとらえるというとらえ方ですね。これはやはり、日本はアジア第一の工業国として、東南アジア進出するのは、進んだ日本東南アジアの国々を開発してやるんだ、手を差し伸べておるんだという、おまえたちにしてやるんだというようなものの考え方がやはり私は教科書のこの文章づらににじみ出ておるような気がしますね。これまた、いわゆる東南アジアの中であれだけ田中総理に対して学生諸君が騒いだという問題の背景をなしているところの、相互理解をし合う、尊敬し合う、それぞれの国の立場に溶け込んでいろいろなものなりの手助けをするというものの考え方が、まだまだ実際の教育の部面、あるいは政府がいままで多額の金を出したところの教員海外派遣とかあるいは「青年の船」というものの実行の中でも、ほんとう国際人づくり方向に進んでおるのかどうかということについては、非常にまだまだ問題点があるのじゃないか、こういうことを強く感ずるわけなんですが、その点はどうなんですか。
  25. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 先生方海外に出しておりましたのが、四十七年度が九百人でございましたでしょうか、四十八年度は一挙に五千人にふやしたわけでございます。十六日間で回って来る方もあれば、三十日で回る方もございます。それだけの期間でございまするので、自然、広く浅く見て来るという結果になってるわけでございまして、事前の準備が十分でなかったというようないろいろな御指摘もあるわけでございますが、まだ始まったばかりでありますので、今後なお改善に努力しなければならない点が多々あることはこれはもう事実であると思います。いろいろな御意見を聞きながら、絶えず改善を重ねていきたい、こう思うわけでございます。  広く回る中にもそれぞれの国の特色、これはやっぱりよく理解してるようでございます。日本のおくれてるところ、進んでるところ、比較しながら、そういう考え方も出てくるようでございます。また、出かけていくにあたりましては、日本の作品なども向こうへ持参する、逆にまた向こうの作品がこちらへ送られてくるというような交流もだんだんしげくなってきてるようでございます。そういうように、いろいろな文化伝統につきましてそれぞれに一つ意義を持ってる、事の理解が深められていく、関心が強められ、尊重する態度が養われていくということも、国際化への一つの道程ではなかろうかと、こう考えてるわけでございます。  人選につきましては、やはりそれなりに教育に真剣に打ち込んでくれてる方を選ぶ、これは当然そうなると思うんでありますけれども、そういうところから、まあ、そういう点についての見方にも人によって違いがございますので、いろんな批判が出てる向きもないわけではないのかもしれません。できる限り公正な人選をするようには今後とも注意をしていきたい、こう思います。
  26. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私が先ほど指摘をしたことの具体的な事実というのは、これはまあお互いに外国に行ってその国の実際を見、あるいはまたあらためて日本の国を見直すと、こういうことにはなると思いますけどね、その中でやはり一番大事なのは日本の先進国だという意識、大国主義的な、日本は大国なんだと、こういうことばかりのもののやはり考え方が先立ってしまうと、ほんとうの私は正しい意味国際交流国際人づくりということは私はできないと思いますがね。この点は私は少なくとも報告書を通じての私の感じですからね、しかし、そういうやはり感じを皆に与えないような今後のやはりこの派遣の方法、あり方ということについては、十分私は検討していただきたいと思いますが、その点はいかがでしょう。
  27. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) もっともなことだと思います。私が受け取ってるいろんな報告ではそれほど、宮之原さんが心配されるほどの感じは受けないんです。むしろいろんな点について感心した、感激したことの報告を一般的に受けておるわけでございます。また、先ほど教科書のお話もございました。日本の発展が非常に早く、早いテンポで進んでおるものでございますので、どちらかといいますと、教科書が若干おくれてきてるというようなことになってるきらいもあるかもしれません。いずれも重要な点でございますので、今後とも積極的にそういう間違いが起こらないような配慮はしていきたいと思います。
  28. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 次に、私は国際人づくりの中で重要な一つは、海外におけるところの日本人子弟の教育あり方という問題と留学生の問題だと思うんです。  そこで、まず海外日本人子弟の教育の問題についてお伺いをいたしたいと思うのでありますが、これは外務省の所管なのか文部省の所管か、若干交錯するところもあるわけでございますので、どうぞこれは質問を聞いていただいて、自分の所管だという立場からひとつお答え願いたいと思うんです。  まあ急激に海外におけるところの日本人がふえて、したがって、その子供たちの教育をどう進めるかと、あるいはまた海外におるところの日本人としては自分たちの子供の教育という問題、一番頭痛の種なんですね、率直に申し上げて。これはもうお互いが行ってみればそのことをよく聞かされるわけなんですがね。そこで、海外子女教育振興財団ですか、こういう財団の調査を拝見いたしますと、家族を含む海外勤務者は約十二万で、そのうち小中学校の適齢者が一万三千にのぼると、こう調査団の報告書が出ております。それで、しかもその中で全日制の日本人学校が三十三校しかなくて、四千人弱しかこの恩恵を受けておらない。したがって、残りは週一回二時間から四時間程度の補習授業の学校、これも何かトータルの中では三十八校だそうでありますが、したがって、他は現地の学校か、あるいはアメリカンスクールの教育を受けておる。こういうまあ報告になっておるようでございますが、こういう問題に対して、どう政府は対処をしようとして対策を進めておられるのか、そこらあたりをまずお聞かせ願いたいと思うんです。これはどっちの所管ですかね。
  29. 安達健二

    政府委員(安達健二君) ただいま御指摘のとおり、海外におきますところの日本人子弟の教育につきましては、その振興が非常に急務であると考えておりまして、一つは、いまお述べになりました全日制の日本人学校をさらに増設するということでございまして、これは四十九年度におきまして、アテネ、パナマ、サンフォセ、ペナンの四校を増設するということが一つございます。それから、それらの学校におけるところの教材を整備するとか、あるいは教員の確保という面におきまして、四十九年度におきましては、予算の定員におきましても、四十四名でございますか、定員を増加するというような手続の措置をいたしておるところでございます。それからもう一つ、現地の学校に通いながら土日に補習授業を受けるいわゆる補習授業校につきましても、専任の先生を派遣するということで、今年度から四十九年度は六人ほど新しく派遣をするということと同時に、その補習授業校におけるところの授業を充実するために巡回指導班を派遣するというようなこと、あるいは教材等につきましては、従来は補習授業校に対しては行なっておりませんでしたけれども、これをさらに、と申しますか、補習授業校にも教材を補給するというようなこと、あるいはさらに、そういう学校に行ってない者等を含めました通信教育、これは、まあ財団に補助をいたしておるわけでございますが、そういう形で、三つの点にわたりまして充実強化をはかるという方策をとっていきたいと思っておるわけでございます。
  30. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 この問題は所管は文化庁ですか。
  31. 安達健二

    政府委員(安達健二君) いつもそういう御質問を受けるわけでございますけれども、実は文化庁に国際文化課というのがございまして、国際文化課は日本教育学術文化の、まあ教育文化国際交流を外務省と連絡してやると、こういうことになっておりまして、現在のところは文化庁でございますが、現在提出いたしておりますところの文部省設置法改正案によりますると、これは文部本省の学術国際局の所管になるということでございますが、現在のところは、文化庁で世話いたしておるところでございます。
  32. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 すると、たとえば、ことしの予算の中の文部省予算の総合実態調査七百万というものも、これはいまの段階ではこれは文化庁なんですか。
  33. 安達健二

    政府委員(安達健二君) この調査費の六百七十五万七千円は官房の調査統計課の所管になっておるわけでございます。
  34. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そういたしますと、片や文化庁にも仕事があり、これは外務省にもありますね、あるいは文部省もいまから何か総合調査をするとね、もうこの問題はずっと数年来の大きな問題なんですけれどもね。また、そこらあたりがそれぞれの官庁でたくさんその担当のところがあって、統一的にこれがされておらないというのじゃ、私、これはもう問題だと思うんですけれどもね。これは少なくとも、やはり大事な日本人子弟の教育のことですから、海外の。少なくとも、やはりこの問題については、まあ窓口を一本にして私はやってもらいたいと思うのです。  そこで次に、お尋ねをしたいことは、その日本人子弟の今度は教育あり方です。それを何かさっきの文化庁長官の話では、日本人学校を四校まあ増設をする予定だと、こういうお話があったわけですが、それぞれの海外において日本人学校という学校を設置をしてやるということの可否ですね。そのことについては、大臣としてはどうお考えになりますか。きわめてよろしいことだと、こうお考えになりますか、どうですか。
  35. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私は、個人的には現地で学校をつくりまして日本人の子弟も現地の子弟も一緒に教育が受けられる姿が一番望ましいことじゃないかと、こう思っております。しかし、現実問題として、各国の主権のもとにあるわけでございますので、各国がそういうことについてどういう考え方を持つか、なかなか受け入れられにくいようでございまして、また日本だけの、日本人の全日制の学校をつくるということにつきましても、各国態度によりましてできるところもあるしできないところもある。いろいろな事情がからんでおるようでございます。したがいまして、日本語だけを学ぶことを主体にしたような補修学校しかできないというようなところもあったりするようでございまして、各国の事情によりまして区区になっておるようでございます。しかし、基本的には私はいま申し上げましたように、現地の人たちの子弟も日本人も一緒に学べるというような姿が望ましいな、こういう考え方を持っております。
  36. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私も、その点はこれは文相と一致するのですがね。特にまあ冒頭にあげましたところの日本人のすぐ固まりやすい、習癖といったほうがいいですか、この閉鎖性というのを、これを打破するとすれば、なおやはり現地の学校にやはり原則的には学ばせていく、現地で。授業が終わったあと、たとえば日本語とかあるいは日本向きのいろいろなものを教えるところの補修学校を積極的にまあ設置をするとか、そういう私は方向が望ましいのじゃないだろうかと思う。たとえばまあ二十日ほど前にも新聞に出ておりました、ニューヨークで日本人学校をつくるどうだこうだというていろいろ騒いだという話も新聞に出ておりましたけれども、少なくとも、基本的にはそうあるべきだと思うのですよ。しかしながら、先ほどのお話では、そのことよりは日本人学校の設置ということに、文化庁長官お話ではウエートがあるみたいな話なんで、そこらあたり非常にちぐはぐにこう印象づけられるんですがね。私は日本人学校をそれぞれの地域につくって一つ社会に閉じこもるよりは、いま申し上げたように、現地学校あての補修学校とかいろいろなものをやっぱり積極的につくってですね、やはり日本人の子弟が日本に帰って来ても子弟の教育に困らないといういろいろな条件を整備していくことこそが先決じゃないだろうかと思うのですがね。そこらあたりどうお考えになりますかね。
  37. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) いま御指摘のありました点、われわれ平生からいろいろ感じている次第でございます。基本的に申しますと、海外に出ました場合の子女の教育は、大体親がどういうふうにするかということできめておるわけでございまして、もともと海外最初出ました場合に、当初まあ皆さん現地の学校に入れていろいろ教育されたという経験があるわけでございます。ただ、いろいろやってみますと、まず第一に、いろいろな国においていろいろなことばもございますし、教育の程度もございますし、子供のなれ不なれ、それからさらにだんだんやっておりますと、日本へ帰ってからの日本教育への適応の問題もございまして、そのようなことから自然発生的にそういう父兄のほうからぜひ日本へ帰っての教育に困らないように日本学校をつくりたいという要望が自然発生的にできてきたわけであります。政府といたしましては、こういうまあいろいろな困った問題と申しますか、そういう問題を何とかして解決したいということで、これに対してまあ側面的に援助するということでございます。したがいまして、現在学校は三十三ございます。しかし、主として開発途上国が多くございまして、ごく最近になりまして、いわばいわゆる先進国の国にもできておるということでありますのは、一つはこういう実情を反映しておるわけでございます。  それから、海外におられます親の方々にもいろいろ考えございまして、たとえば、いまお話しのありましたアメリカ等でございますけれども、実を申しますと、アメリカ等でまいりますと、まあ英語の学校でもございますし、普通の公立の学校へ入れるということにむしろ両親は非常な関心を持っておるということでございますが、先ほど御指摘のありましたような、新聞にもありますように、やはり子供としてすぐ学校になれない、英語がなかなかわからないというようなことで、学校自身の中でも問題がある。それから同時に、子供も非常に学校へ行くのをいやがるというような問題もありますので、そういう実情のあるところでは今度は逆に日本学校へどうしても入れたい。あるいは高学年になりますと、日本へ帰っていろんな進学の問題等もございますでしょう。そんな関係から日本学校をつくりたい、まあいろいろな要望があるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、そういう両親方の考えを踏まえまして、ある場所には日本人学校をつくりたいという希望がございますればそこにそれをつくりますし、現地の教育で十分である、ただ、日本へ帰っての教育考えるために補習教育をやりたいというところは補習学校をつくりますし、あるいはそういう補習学校もなくて人数も少ないというところでは通信教育ということでございます。先ほどおっしゃいましたような、確かにせっかく現地へ行ったからには現地を理解する、現地の学校へ入っていくべきだという考えはもともとあったわけでございますけれども、いま申し上げましたような事情からいまのような日本人学校あるいは補習学校、通信教育というふうないろいろな形ができておるわけでございます。
  38. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いま、御答弁を聞いていますと、なお非常に場当たり的で指導的な一貫性がないと思うんですよ。確かにこれは親の気持ち、親の願いからいえば、やっぱり日本人学校をつくってもらいたいという気持ちが優先するのはこれは当然ですよ。人情ですよ。同時にまた、親たちから見れば、帰国後の教育ということもありますからね。しかしながら、日本人の国際人としての日本人づくりというものの考え方田中総理自体国会では特にそれを強調されておるわけなんです。おそらく私は田中内閣の政治の基本方針だと思うんですがね。そういう指導理念に立てば、私は少なくとも、さっき言ったところの問題を踏まえて外務省も指導してもらわなけりゃ、ある場所においては日本人学校がいい、ある場所においては補習学校がいいという、私はやっぱりばらばらじゃほんとに困るんじゃないかと思うんです。こういう中からは、一番日本人通弊としてあるところの閉鎖性打破ということはなかなか、私は百年かかってもできないんじゃないだろうかと思います、率直に申し上げて。それでもって、あげくの果ては、いまの教育が悪いからだ、修身教育がないからだという飛躍したところの論理にまで思想を発展させていますけれども、これぐらい私は論理の飛躍もはなはだしいことはないと思いますけれども、一番肝心のそこの指導理念がばらばらであるというところに私は問題があると思うんですよ。したがって、この点がやはり、先ほど文部大臣は、基本的には現地学校に通わせることが望ましいと言った、だからそれをやっぱりあくまでも原則に踏まえて、それでそれにいくための過程としてどういうプロセスをやりながらやっていくかという方向で今後私は指導してもらわなけりゃならぬと思う。もちろん、いまこれの一つの隘路になっているのは、帰国後の日本人の子弟の教育をどうするかという問題があるわけでありますが、これは続いてお尋ねいたしたいと思いますけれども。少なくとも、やはり海外日本人の子弟の教育あり方というものはそういう立場に立つべきだ、こう思うんですが、その点は外務省はどうなんですか。
  39. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) これは私としましては、一がいにどちらにという結論を出しがたい問題だと思います。現実に日本だけではございません。アメリカもイギリスもドイツもフランスも、そういう国もみないろんな教育問題では困っているわけでございます。数が多くなりますとアメリカ等もアメリカの学校をつくっておりますし、フランスはフランスで学校をつくっております。ドイツもドイツで学校をつくっております。やはり各国各様の対応のしかたをしておるわけでございますが、基本的にはやはり自分の学校教育との継続というものを考えてそういうものをつくっているわけでございます。  ただ、さっきおっしゃいました現地との問題でございますけれども、この点はわれわれは非常に考えておるわけでございまして、国によりましては、その国のことばを勉強する、あるいはその国の社会を勉強する、あるいはその国の地理を勉強するというようなことから、できる限り現地の情勢、現地の理解を深めるというくふうは各国各様にしておるわけでございます。もちろん、毎日やる授業でございますから必ずしも十分ではないかもしれませんが、そういういわば二つの目的を持っているような形になるかもしれませんが、そのような形で現地の理解も深めているわけでございまして、もちろん、この点につきましても今後改善すべき点があれば改善し、そういう弊害のないようにつとめるべきだろうと考えます。
  40. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、あなたとここで長時間論争しようと思いませんけれども、大体、日本の外務省の伝統というのは、みんな西欧諸国のほうに右へならえしようというきらいがあるんですよ。しかし、先ほど来言っておるのは、やはり日本人の国際人としての一つの欠陥の閉鎖性打破ということを考えてみた場合に、アメリカやイギリスがみんなそれぞれのアメリカンスクールやいろんな学校を持っておるから、日本もそれに学ばなければならないというのはちょっと私はおかしいと思うんですよ。ほんとう日本人の持っている一つの欠陥というものを、こういう面で手直ししていくということになれば、それはやっぱり欠陥の除去という基本的な立場に立ったところの方策というものが生まれなければ、ケースバイケースですという特異の外務省用語では、私はこれは通じないと思いますよ。したがって私は、この問題については、少なくともやはり教育にかかるところの問題ですから、外務省と文部省とで十分この点について協議をしていただいて基本的の方向というものをはっきりしていただきたいと思いますが、文部大臣いかがでしょうか。
  41. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 外務省と文部省相談し合っているつもりでございますけれども、今後もなお万全を期するように努力をしていきたいと思います。  なお、私が、現地の人たちと日本人の子弟と一緒に勉強させたほうがいいと言うのは、そういう学校を、日本側で非常によい内容学校をつくって現地の住民の子弟も喜んでそこへ来られるというようなことができれば理想的だと、こういうふうに申し上げているわけでございます。その場合には、現地政府が容認するかどうか。豪州のシドニーが私が申し上げるようなかっこうになっているのでございますけれども、ごくわずかな現地の子弟が入ってきておられる。そういう意味での一体的な教育ができれば海外に行っておられる日本人も満足される、また、国際性を身につけるような教育も行なえるようになる、そういう希望を込めて申し上げているわけでございます。国によりましてはなかなか、現地の学校へすぐ出すのには短期の勤務の人などにつきましてはいろいろ問題も出てくるんじゃないだろうかと思います。私なりに理想的なことを申し上げたわけでございます。
  42. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、いずれにしても、この問題は重要な問題だと思いますから、窓口がどこだどこだ、どこの担当セクションだということでなくて、きわめて重要な問題ですから、先ほど来強調しておるところの国際教育国際交流あるいは国際人としての基本理念という立場をあくまで本基本に踏まえていただいて、十分やはりそれらの問題について検討を願いたいと思います。  続いてこれに関連して申し上げますが、いま一つの問題は、先ほどちょっと申し上げましたように、帰国後の子弟の進学問題です。この子弟を受け入れるところの教育機関が率直に申し上げて整っていないということは一つの欠陥だと思うんですよ。だからいまごろになって高校の帰国子女学級増設ですか、一千六百万か何かの予算があるみたいでございますけれども、これは高校もそうだし、大学も編入をするという中には非常に大きな壁があるんですね。それを日本国内で勉強しておるところの子供たちと同じような壁では非常に酷じゃないか。したがって、やはり海外の子弟が帰って来た場合に、これを受け入れるためにどうするかということは、やはりこの壁をどう除去するかという問題について早急に結論が出されるべきだと思いますし、おそらく文部省もいろいろ手だてを講じておられると思いますが、その現状なり、今後の方向についてお聞かせ願いたいと思います。これはどこですか。これまた文化庁ですか。
  43. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 帰国子女の対策は、また海外における日本人教育の重要な問題でございまして、それにつきましては、従来やっておりましたのは、国立の教育大学、すなわち東京学芸大学の附属の大泉の小学校、中学校、それから神戸大学の教育学部の附属住吉中学校におきまして帰国子女のための特別学級を実験的に昭和四十年度から順次開設をしてまいったわけでございますが、それを四十九年度は高等学校につきましてもこれをやるということで、東京学芸大学のほうの高等学校のほうにお願いをするということで二学級で各学級十五人、教職員定員八人をつけるというようなことにいたしておるわけでございます。一方、公・私立の小、中学校につきましては、これは実験研究協力指定校というような形で、そういうことに特に注意した指導をしていただくということでやっておるわけでございまして、それを四十九年度は若干これを増加する。それから、高等学校は従来三校でございましたが、四十九年度はこれを十校にするというようなことをいたしておるわけでございます。結局、問題点は、やはり帰国いたしました子女が日本教育に適応されていくということが非常に大事でございまして、その適応なしにただ平等にやるということだけがはたして教育的であるかどうかは非常に問題があると思うわけでございまして、その点について十分な指導を加えて日本の子供と同一になるようなふうに指導をしていくということに基本を置くべきだろうと思うわけでございます。なお、その資格等につきましては、現在そういう海外にある全日制の日本人学校の中学部を修了した者につきましては、本国の高等学校入学資格を認めるということで、十七校を指定をいたしておるわけでございます。そういうようなことで、できるだけこの日本に帰った場合に、この国内教育に適応できるように努力をする、こういうことでございまして、今後とも帰国子女の特別学級の整備、拡充、あるいは研究指定校の増設、あるいは特に専任に指導していただく教員を確保するというようなことに努力をいたしたいと思っておるわけでございます。
  44. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは、今度文部省の設置法の改正が成立すると、学術国際局に、あそこに移るんですか、そこの所管は。いずれにしても、この問題はやはり立ちおくれであることはこれは否定できないと思いますから、早急に私はやはりより海外日本人の父母が不安を持たないようなやはり処置というものをやっていただきたいという点を要望しておきたいと思います。  次に、留学生の問題です。これは四十七年度の外国人留学生、あるいは海外への日本人の留学生の人数、地域別あるいは国費、私費別の状況がおわかりだったらまず一応お聞かせ願いたいと思います。
  45. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 海外から日本に来ております留学生は概数で五千人でございまして、そのうち国費留学生として来ております者が約九百人でございます。私費留学生が四千百名ほどございます。また、五千人の留学生のうちその八三%ほどに当たりますが、四千百人ほどは東南アジア等の開発途上国からの学生でございます。地域別に申し上げますと、アジア地域が一番多いわけでございますが、あと、国費と私費によりまして、多少その日本に参ります学生の比率の違いがございまして、私費のほうはより多くアジア地域に片寄っており、国費のほうは若干中近東、アフリカ、中南米等へも配分の措置を講じておるという違いがございますが、大体国費、私費通じましてアジア地域を中心にした留学生を受け入れておるという状況でございます。
  46. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 今度は海外へ行っておるいわゆる日本人の留学生ですね、文部省は国費出してやっておるでしょう。
  47. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 海外に出ておりますのは、大体これも年間四十七年度で約八千人というふうに掌握をしておりまして、五十四カ国にわたっておりますが、うち欧米等の先進諸国への留学生が六千九百人、八七%ぐらいの概況でございます。この海外に出ております概数八千人でございますが、日本政府の奨学金を受けて出ております者が五十四名ほどでございますし、外国側からの政府奨学金等、公の奨学金を得て出ております者が三百七十七人、民間団体の一これは内外でございますが、民間団体の奨学金を受けております者が百五十五名ほどでございまして、他のほとんど大部分が私費でそれぞれ海外の大学へ勉強に行っておると、こういう状況でございます。
  48. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いまの説明をされた数の中に、いわゆる在日朝鮮人とか中国人の子弟は含まれておるのかおらないのか。そしてまた、これらの子弟は学費その他の補助対象になっておるのかなっていないのか、そこをお聞かせ願いたい。
  49. 木田宏

    政府委員(木田宏君) いま日本に留学に来ておる学生の数として申し上げました約五千人は、日本国内に在留しております韓国あるいは台湾の居住者は入ってございません。これを含めますと、数字は倍以上に大きくなろうかと思っております。
  50. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 台湾という話があったんですが、中国に籍を置く人も相当おるんでしょうが、その子弟はどうなっておるのですか。みんな一色、オール台湾ですか。
  51. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 現在、中国からの正規の学生というのは、一般の留学生と同じような形の学生としてはまだ日本に来てないのではないかというふうに考えています。少なくとも、国費につきましては今日までのところ中国からの入国者はまだ入ってございません。  それからちょっと先ほどの答弁申し落としましたが、在日のいま申し上げましたような学生につきましては留学生扱いということは現在のところいたしてございません。
  52. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 しておらないですね。それで、いまこの報告を聞いてこれでほんとうに一まあ総理は最近は国際人づいてきておるわけなんですけれどもね。いずれにいたしましても、こういう形でほんとうにこの東南アジアの国々とも、あるいはアジア諸国の国々を含めて全世界とのやはり学問的な交流、いろんな交流というものがいっておるのかどうかということにも非常に疑問に思わざるを得ないわけなんです。たとえば、留学生の出先も、出る場所はもう先ほどもお話があった八七%がみんなヨーロッパ行きだと、入ってくる者は八三%が東南アジアからだと、こういうようなことなんですが、これは、やっぱり国際人あるいは国際交流の中で一番大事なことは、相互にやはり学び合う、相互に知り合うというこのことが一番大事だと思いますけれども、これはそれぞれの学生の行く希望にまかせてやっておるのか、それとも一つの1外に出すんでしたら奨学資金あるいは留学資金というものは、何方面幾ら、何方面幾らという一つのワクでもあってやっているんですかね。この点に対するところの指導というのは、それぞれの希望の向くがままにさしておるという指導の方法なんですか、その辺どうですか。
  53. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 留学生、入ってまいりますほうもそれから出てまいりますほうも、その大半が私費の留学生でございまして、これらの動きは個々人の希望にまかせるということにならざるを得ないと思うのでございます。先ほども御答命の中で、多少ちょっと触れてはおきましたけれども、国費留学生につきましては地域別に、外務少と御相談をいたしまして、地域別、国別に一応の受け入れのワクをきめてございます。
  54. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ちょっとそれをお聞かせ願いたい、地域別の。
  55. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 四十八年度現在で、国費留学生の入っております実情を比率で申し上げます。アジア地域六四%、中近東四・四%、アフリカ一・一%、オセアニア二・九%、北米四・九%、中南米七・九%、ヨーロッパ一三・八%と、う割合になっております。これは日本に来ております私費の留学生に比べますと、地域的なバランスは私費よりもより多くできているというふう考えておる次第でございます。派遣のほうも、これはほとんどが私費でございますから、個々人好む大学を求めて外国へ行っておるわけでございますが、政府が予算を組んで派遣いたします者につきましては、地域別のバランスがとれるように指導するということはいたしておるところでございます。
  56. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それはどうなっておるんですか、その五十四名の内訳は。
  57. 木田宏

    政府委員(木田宏君) いま申し上げました五十四人は、四十七年度のワクどりでございまして、具体的に出ましたその数はアジアが九人、中近東一人、アフリカ二人、オセアニア二人、北米十七、中南米なし、ヨーロッパ九、合わせて四十でございます。これは文部省の、私どもが四十七年度から発足をさせました学生国際交流制度という制度にのっとった四十人分の割り振りでございまして、そのほかの者につきましては、ちょっといま行き先のデータが手元にございません。五十四人の中の大部分が学生国際交流制度として四十七年に発足したものでございますので、その内訳を申しますと以上のような状況でございます。
  58. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、海外に国費で奨学金をやって出すところの目的というのは、結局、先進国へ行っていろんな勉強をするという、学んでくるというんですかね。あるいは学問的に一つのものを探求していくということだけの目的でやられるんですか。いわゆる言われているところの国際人としてのいわゆる指導者を、あるいはまた一つの大学なり特定の大学に行って、特色のある東南アジアなら東南アジアの大学に行って、そこのものをうんと勉強させてくるという立場に立つんですか、どういう立場なんですか。
  59. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 四十七年度から発足をさせましたが、政府資金で学生を海外に出すということは、実は日本の大学自体がもう少し外国からの学生もみずから受けとめる、また自分の学生も大学の判断によって各国との交換を考える、こういうことを念頭に置きまして取り入れた制度でございます。私ども見ておりますところ、日本の大学は学生がかなりたくさん外国へ行きますけれども、大学とはかかわりなく個人が休学という措置で飛び出していってしまう。また、外国から来る学生に対しましては、これも大学によって一律には申せません、熱心に受け入れるところもございますけれども、必ずしも留学生を積極的に受け入れようという考え方にならない。そこで、大学のこうした考え方を改善させますために大学が諸外国の大学と提携協力をいたしまして、自分の学生も受けとめてもらうし、向こうの学生も受け入れるようにする。こういう形で大学自体が世界各国の大学とコンタクトをとるように、こういう考え方で始めた制度でございます。その際に、大学あるいは学生の希望が全部先進国だけに片寄るということのないようにというので、地域別にできるだけ配分がうまくいくような指導を加えまして、それぞれの派遣先の大学との提携を行なわせておる。こういう姿で、この学生国際交流制度というものを設けた次第でございます。四十八年度は、これを国公私あわせて八十五名のワクにし、四十九年度は百二十名のワクに広げております。このほかに教員養成大学の学部学生を海外派遣するということも四十八年度から実施を始めまして、四十八年度四十名、四十九年度は七十五名出すつもりでございまするけれども、これらの場合にも、それぞれの教育学部に対しまして地域別にできるだけ世界各国に行けるようなバランスを考え派遣をする、こういう思想で指導しておるものでございます。
  60. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 時間がありませんので先を急ぎたいと思いますけれども、いまの大学局長お話を聞いてもやはり結果としてあらわれているのは先進国優先ですね。ウエートがかかっていますよ。特にやはり最近いわれておるところのアジアの民族は、アジア人はみんな一つなんだという特に強調されているところのアジア人との友好提携ということを考えてみれば、私はやはりこういう国際交流の面でも相当ウエートをここに置かれたところの指導があってしかるべきだと思う。したがって、先ほど言われたところの四十九年度の百二十名がどういう分布状態になるかわかりませんけれども、その点を、まだ未決定であるならば、特に重視をしてやってもらいたいと思います。その点いかがですか。
  61. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 四十九年度、百二十人につきましては、アジア地域に三十五人、中近東に九人、アフリカに六人、オセアニアに十一人というふうにかなりワク取りを考えておるつもりでございます。北米には二十七人、中南米に十人、ヨーロッパに二十二人でございまして、開発途上国に約半数の六十人を割り振る、先進国に六十人という割合になるように持っていきたいもんだ、大体そのような結果を期待できるのではなかろうかというふうに思っております。もとより、これは強制的に派遣をするというわけにまいりませんから、どうしても大学の考え方、また、学生の考え方というものがあり、その中でこうしたいま御指摘のようなお考えに沿うものを優先的に取り上げるようにしたいという気持ちでかじをとっておる次第でございます。
  62. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 次に、移りますが、ちょっと先ほどお聞きいたしました在日朝鮮人ですね、南北を含めて。それから中国人の子弟の教育に対する態度の問題でございますが、昭和四十六年からは外国人の私費留学生にも医療費補助というのが出されておりますですね。さらにまた、四十八年からは国立学校在籍の私費留学生にも教育費の一部の補助が行なわれておるようです、予算で見る限りはですね。けれども在日朝鮮人とか中国人の子弟には全くこれは対象になっていないのですね。私は全く不平等だと思うんですよ、率直に申し上げて。どの国とも仲よくするんだと言いながら外国人であることは間違いないんですから、皆さんがね。それはやらない。そればかりか、大学への進学資格の問題についても差別があるんですね。海外の高等学校卒業者は通算十二年の学歴があれば資格があるということになっているんでしょう、大学への進学はね。けれども、在日朝鮮人とか中国人の子弟は全然その入学試験の資格にそれが認められておらない。認められておるのは四年制大学で四百校中わずかに三校。しかも、国立大学でいえば大阪の外語大ばかりなんですね。ほかはみんなシャットアウトされている。これは私は非常に片手落ちだと思うんです。たまたま日本に在留するところの外国人で、しかも、中国人や朝鮮の皆さんであるということだけで外国から私費で入って来た人でも、差別をされるというこのやり方というのはやっぱりあなた方正しいと思いますか、どうですか。  これは、文部大臣からお聞かせ願ったほうがいいでしょう。
  63. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 先に事務当局からお答えさせていただきます。
  64. 木田宏

    政府委員(木田宏君) いずれの場合でも、そうだと思いますけれども、外国人でありましても、その国の社会に住みついておる方々は、当然、内国民待遇としての教育上の立場があるわけでございます。でございますから、在日朝鮮人あるいは中国人の方等でありましても、日本に生活の根拠のある方、これは日本の学生と同じように考えてしかるべきだ。留学生として私どもがいま措置をとっておりますのは、日本の大学を目ざして外国に住んでいた人がやってくるということ、勉学のためにだけ日本に来ているという人を留学生として考える、そのような処遇をするということは、これは別に日本に在留しておられます外国人との差別をしておるということではなかろうかと思うのでございます。入学資格につきまして、日本に在留しておる外国人の方々は、やはり日本国内学校制度の上で同じように生活をしていただきたい、そういうことをたてまえにいたしませんと、学校の制度というものが成り立たないというような点も考えておりまして、いままで外国におって大学にだけ日本に来られるという方とはおのずからその扱いが違ってこようかと思う次第でございます。
  65. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 しかし、朝鮮の皆さんあるいは中国の皆さんというのは、これ歴史的な過程を考えてごらんなさいよ。三十六年間、あなた、植民地として少なくとも朝鮮半島はあった。それでだいぶ強制的に日本に移住させられたところの層というのが少なくない。そういう人々が日本に住んで相当の数を持っておる。数を持たれればいわゆるそれぞれの国の特色があるでしょうけれども、自分たちだけで学校をつくって勉強させたいというのもそれはそれぞれの一つのあれでしょうけれども、しかしながら、そこで学んだからといって日本一つ学校体系の中に入ってこないからおまえたちはシャットアウトだ、こういうふうな形ではたして正しい方向でしょうかね。どうでしょうかね。いわゆる歴史的な過程を考えてごらんなさい。それはたとえばアメリカの人がたまたま日本に来ておるからとか、あるいはイギリスの人がたまたま日本に来ておるからという同じ論理ではこれは片づかない問題じゃないですか。そこはあくまでもやっぱりしゃくし定木でやられるというのが文部省態度ですか。それはどうなんですか。
  66. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 日本教育制度、これは学校教育法の定めに従いまして正規の学校として日本国民全体の教育制度が成り立っております。そしてまた、同じこの日本社会に居住する外国人につきましても彼らが断わらない限り同じような内国民的な扱いを考えていってしかるべきだというふうに考えておるのでございます。しかし、この日本に生活の根拠を持って生活をしておられる外国人と、先ほど申しました外国から日本の大学で勉強するために来る留学生とは基本的に立場が違うという点はひとつ御理解を賜わりたいと思います。そして、これからの今後の社会の中で、いろいろな各国からの居住者が日本にふえるということは当然考えておかなければなりません。しかし、その外国の居住者が日本社会の中で日本学校教育を受けるということであれば、日本学校教育のシステムに従って勉強をしてもらう、その扱いは、内国民待遇であるということでよろしいのではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  67. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私も、それわざわざ勉強に外国から来た人と留学生との違いはわかりますよ。しかし、朝鮮の皆さん、あるいはまた戦前から住みついているところの中国の皆さんというのは、これは台湾も含まれるわけでございますけれども、歴史的なこの経緯ということを考えて見れば、当然、日本学校に来ぬからけしからぬといって、そう言えたところの私はやはり日本としては義理じゃないと思うんですよ。しかも、あなた、そう言いながら国立学校では大阪の外国語学校には入学を認めておるでしょう。それも間違いだというんですか、そんなら。それも間違いだから、さらに門を狭くしようというお考えなのか、それとも。今後は、そういう問題もあるからもう少し門戸を広げようというお考えに立つのか。そこはどうなんですか。
  68. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 基本的には繰り返すようになりますけれども、国内に居住しておられる外国人に対して同じような教育制度の機会を同じように考えるということでなければならない、外国人のために特別の教育制度をつくっていくということは、日本の国の教育制度として必ずしもとるべきことではない。これは、日本人海外に行きました場合にもそこでぶつかる一つの問題でございますけれども、やはりそれぞれの国の教育制度についての主権の考え方だと思うのでございます。ただ、現在、大学の入学資格につきまして十二年の学校教育を経たもの、また個々の大学がその入学に相当と、こう考えた場合に入学の道がないわけではございません。しかし、そのことのゆえをもって日本国内に生活をしておりながら日本の正規の学校制度に学ばなかった人が大学にだけ同じように入れるということは必ずしもとるべき措置ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  69. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、それらの人々に新しい教育制度をつくれと言っているんじゃないですよ。少なくとも、やはり大学の門戸をもう少し大きくしてそういう人々も入れたらどうかと、こう聞いておるんですよ。けれども、残念ながら国立大学で一校しかないでしょう。あるいは一般の四年制大学の四百校中三校というきわめて狭き門なんですよ。いやだったらおまえたちは日本人学校に中学から入ってこい、小学校から入ってこいという、そういうようなやっぱり尊大なやり方で、やあ国際人づくりだ、国際交流、どの国とも仲よくしますというようなかっこうができますかね。どうでしょうかね。
  70. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 国内教育制度といたしましては、日本の高等学校の卒業生が大学の入学資格を一般的に認められておる、これは学校教育法の定めておることでございます。したがいまして、この法の制度のもとで正規の学校でない各種学校等を卒業した者がだれでも同じように大学に入ってこれる、こういう扱いをすることは、現在の法律にお示しになっておることとは必ずしも即さない。でございますから、一般的には、そういう制度が開かれてないのはやむを得ないことかと考えるのでございます。
  71. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは大臣、現行法ではできないということはわかります。しかし、これは一つの私は問題点だと思うんですよ。現在こうだから今後ともこうだという形で済ますべきところの問題じゃないと思うんですがね。その点、私はやっぱり今後の検討課題として少し前向きに検討してもらいたいと思うんですが、いかがでしょうね。
  72. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 各大学が大学への入学資格を認めるかどうか、高等学校の卒業と同じ力があると認定するかどうか、そういう仕組みを設けることで解決できるのじゃないだろうかという気もいたします。なお、よくそういう方向考えさせていただきたいと思います。
  73. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 午前中が半までだそうですから、じゃはしょりましょう。  もう一つの問題は、出入国管理行政のあり方とこの留学生との関係の問題点ですが、ある国内の留学生は、いま直ちに改めなきゃならない問題点はあなた何と思いますかと言ったら、もう期せずして、入管職員の再教育が必要だとこう即答したというこういう事例があちこちにあるんですが、それぐらい、留学生の出入国に関するところのいろんな規定というものは、非常に日本はもう厳重過ぎるほど厳重である。だからいろんなやっぱり裁判上のトラブルも起きているわけですね。御承知のように、千葉大学の留学生事件さえも出て、裁判になって、むしろ千葉大学のほうが敗訴にたったという事例もあるぐらいなんです。あれだけ国際交流をやろうやろうと、こう言いながら、特に留学生の問題にまで画一的にこの出入国管理行政が当てはめられておるというこの問題のあり方について、一体、法務省としては、もうこれは全然検討するところの余地がないのかどうか。特に、世界人権宣言が発布されたその後の状況を見ますと、いわゆるユネスコ新聞によりますと、一十五もある人権に関する国際条約のうち日本は六つしかまだ批准をしていない。特に、七十四カ国もすでに批准をしているところのあらゆる形の人種差別撤廃に関する条約とか、六十一カ国が批准をしているところの教育上の差別待遇反対に関する条約さえも日本はいまだ批准をしておらない。言うならば、きわめて政府自体、留学生の問題についてさえも非常な閉鎖的な態度をとっているんです。それでいて片一方では、口では、国際人になれ国際人になれと、こういうような演説を政府の最高首脳者はぶたれると。非常にこれはもう矛盾した話だと言わざるを得ないんですよ。ここからも出ていって外国に学ぼうとするなら、入ってくる者もできるだけわりにやっぱりワクを現状よりも少しゆるめたところの形で、うんと入らせて勉強させるということがきわめて大事なことだと思うのですけれども、こういう問題について、これは法務省としてはどういう御見解ですか。それとも、今後どうしようとお考えになっておるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  74. 竹村照雄

    説明員(竹村照雄君) 一般に入管行政につきまして、外国人の出入り並びに在留管理につきまして入国管理局は責任を持っておりますけれども、何もかも入国管理局の判断でやっておるという前提でお考えいただくと困ります。というのは、われわれは国策というものを踏まえまして、国の姿勢というものをどうやって出入国管理に生かすかというたてまえに立っております。したがいまして、留学生の扱いにつきましても、留学生をどのように受け入れるかということを基本的に決定されるのは文部省でございます。われわれといたしましては、文部省と密接な関係をとりまして、文部省が留学生として受け入れるというふうな方針を出されたケースにつきましては、この受け入れを許可いたします。  具体的に申しますと、われわれといたしましては、文部大臣が留学生として資格があると認めた者、これは具体的な手続上では、資格認定証明書という形で文部省と協議して、これを留学生として入国する者に交付するようになっておりますけれども、これも文部省と協議しております。そして、これらと一体になりますけれども、各大学が入学の許可をすることが前提でございます。そうした上で、さらにこれを入管的に見ますと、本邦に確実な身元保証人があること、入管令上から言いますと、たとえば上陸拒否事由とか、退去強制事由というものがございます。その中には一定の刑罰を受けた経歴のある者は上陸を許可しないというものがあったり、あるいは日本の国で日本の公共の負担になるような財政上の問題を生ずるという者は、これは入管令上入国を許可しないというたてまえになっておりますから、先ほど申しました文部省と十分協議をした上で、留学生たるの資格を持っている人につきまして、さらに、本邦に確実な身元保証人があることというようなことを勘案の上、受け入れを許可しておると。そういう点で言いますと、昨年、昭和四十八年に留学生として入国申請があって、これの許可をした数は二千五十九名ございますが、不許可は十一名でございます。この不許可の大部分は、夜間部の学生ということで、入学を許可された者、または聴講生として入学を許可された者につきまして、この夜間部の学生につきましては、これはまた国の方針として単純労働を受け入れないという方針が労働省等のほうから明確に出されておりますから、そういう方面への移行を防止するという意味で、夜間部の学生は原則として受け入れない。たとえば、上智大学には国際学部というのがございます。ここは夜間部が非常に充実しておりますので、こういったところでは、夜間部の学生でも入国を許可した例がございますけれども、そういうふうにして入国の許可をやっておるという意味では、きわめて門戸は開かれておるというふうに考えます。  それから、今度は、入ってこられた学生の方々の在留管理の問題でございます。これらの人方の悩みは、このようにいろいろ生活上の問題がありますと、親から送ってもらえる学費だけではやっていけないという問題が出てきます。そういったところで、資格外活動の許可をどうするかという問題が出てまいります。この点につきましては、私どもは、勉学に支障を来たさない範囲においてはほとんど許可をしております。ただ、たとえば一日八時間も働かなければならないというふうな資格外活動の申請が参りますと、これは単純労働を受け入れないという国の方針に相反することになりますから、そういうような資格外活動は許可しないということになります。  それから、在留期間の更新につきましては、本人が通常の過程に従って勉学している限り、すべて期間の更新は許可しております。在留資格四一六といっておりますけれども、留学生の在留資格の在留期間は一年でございますが、それを卒業まで繰り返しておるのが原則でございます。ときどき留年する例がございますけれども、学業継続の意欲がある者についてはすべてたとえ留年しても在留期間の更新は許可しております。  それからもう一つ、在留資格の変更という問題がございます。というのは、大学を終わりましてさらに今度次の別の形で日本におりたいというような問題がございますが、これは、やはりまた、先ほど申しましたような、単純労働を受け入れないという国の施策との関連において判断しておるというような事情でございます。  ただ、先生が御指摘になりました入管職員のあり方の問題につきましては、私どもも検討すべきところは深く検討し、一昨年来そういった行政相談窓口というものを各事務所に設けまして、行政サービスの向上という点につきましても努力をしております。  以上でございます。
  75. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 午前の部の最後の質問になりますが、確かに、あなたが言ったように、それは国策の問題で政治姿勢の問題だと、こういう話がありましたが、その政治姿勢の問題にいたしましても、夜間部の学生とか、聴講生の者は十一人も不許可したという。こうやっておいて、きわめて門戸は開かれておりますと言うのは、ちょっと、教育という立場から見れば、あなたは胸張って言ったって、ああ確かに門戸は開かれておるとはこれは理解できませんよ。これは何もあなた、労働省の条件が、それを夜間部学生を入れないんだという方針自体も、これはもう変えてもらわなければおかしいと思う。働きながら学ぶという学生も、それはむやみやたらに何万人も来られたら困りますけれども、これはやっぱりある程度のものというものは私は必要でないかと思うんですがね、そういう問題点を含めて、これはやっぱり文部省としても、この外国人留学生の受け入れのあり方の問題として、私は一つ検討課題だと思いますしね、ぜひひとつこれは前向きに検討してもらわなきゃならぬと思うんですが、そのことを大臣からお聞きすると同時に、もう時間がありませんからはしょって申しますけれども、もう一つは、これは人事院に聞きたいんですがね。この外国人の雇用の問題なんですよ。これは国立大学の選任教員は外国人はわずか百名足らずですね、現在。これは、人事院規則の外国人の雇用というのは非常にきびしいんですよ。これはOECDの教育調査団もこのことを端的に指摘しておるんですよ。言うならば、人事院規則には、「日本の国籍を有する者の中から得ることがきわめて困難若しくは不可能な特殊且つ異例の性質のものと認められる場合に限り、」と、全く外国人教師の受け入れというのはもう鎖国ですよ。これが、私はまた一つ国際交流、学問的な交流というものを妨げるところの要因の一つだとも思うんですがね。もうこれはすでに時代の進展にそぐわない。やっぱり再検討を要するところの段階にきておると思うんですがね。こういう点についての人事院の考え方もあわせてお聞かせをいただいて、午前の私の質問を終わりたいと思います。
  76. 大塚順七

    政府委員(大塚順七君) お答えいたします。  外国の国籍をお持ちの方を公務員として迎え入れるという方法が端的に申しまして二通りございます。一つは、選考採用によります一般職の公務員として受け入れる方法でございますが、先生のいま御指摘の点につきましては、もう一つの方法でございまして、国あるいは国の機関が外国の方個人と勤務上の契約を結ぶという形におきまして、大学等の教官採用というケースでございます。ただいま数字をお述べになりましたが、最近の状況を申し上げますと、少し古いのでございますけれども、四月一日現在におきまして、その契約に入っておられる方々の数は文部省にお聞きいたしましたところ四百二十九人いらっしゃいます。最近におきましては、そういう方の数がふえておるということは事実でございます。それに対する考え方基本といたしましては、国家公務員法の法体系におきましては、国家公務員というのは一般職と特別職どちらであるかということに限定いたしますのが原則になっておりまして、現在のその契約によって入っておられます方は、一般職でもなく、特別職でもない、ただその仕事の上の契約でお入りになっているという特別な形になっておるのでございます。どちらかと申しますと、国によって雇用されます者は適正な基準によりましてこれを管理するということを意図した公務員法の精神から見ました場合に、こうした形の採用と申しますのは原則を先ほど申しましたものから見ました場合には、唯一の例外、かつ、異例な措置であるんじゃなかろうか、こういうふうに考えておりまして、そういう面から公務員法あるいは人事院規則の中に先ほど申し上げたような表現の規定を持っておるわけでございますが、これは一応たてまえとしまして異例の措置ということでああいう表現を使っておりますものの、趣旨といたしましては、これをついていただこうとします職、あるいはそういう該当の人、これにつきまして外国籍の方でなければ適当でないと判断される場合におきまして、国またはその機関がその方と契約を結びさえすれば教官として御採用ができるという道を開いたものという意味に解釈して運用されておる面もあるわけでございまして、表現が非常にきびしいのは、たてまえとして例外、異例の措置であるということで、そういう表現をとっておるのでございまして、現在この規則によります契約要件というものの中にいろいろ書いてございますものの趣旨は厳格に表現すべきであると、このように考えておる次第でございます。
  77. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時四十分再開することにいたしまして、しばらく休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十九分開会
  78. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、教育文化及び学術に関する調査中、文教行政基本施策に関する件を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は御発言を願います。
  79. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 次は、学校給食の問題でお伺いいたしたいと思いますが。
  80. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  81. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 速記を始めて。
  82. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、学校給食問題はきわめて重大な岐路に立たされておると思うんです。私が去る二月、予算委員会のメンバーとして都内の小学校の給食状況を見学に行ったんですが、いわゆるそのときの状況と、その前後また、都内の小中学校を二十五校ほど私どもの党でいろいろこの面の調査をしたわけです。その当時は学校給食は値上げをするか、さもなければ質の切り下げか、その選択がちょうど迫られておったわけです。もういまの段階ではそのどっちかの選択じゃなくて、値上げ、その上に質の切り下げ、両方とも一緒にきて、きわめて私は重大な岐路に学校給食という問題立っておると、こう私は認識しておるんです。これは、文部省はどういう見方をしておられますか。
  83. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 学校給食につきましては、給食費を年度当初にきめましてできる限り一年を通じて動かさない、こういうたてまえをとってきているわけでございます。したがいまして、御指摘になりましたように、昨年来の物価の変動等がございまして、たいへん学校関係者が苦労されたようでございます。思い切って値上げをされたところもございますけれども、大多数はあるいは回数を減らしましたりあるいはまた質の若干の低下をさせたりしたところもあるようでございます。年度が変わりましてからは新しい年度の給食費をきめるわけでございます。一般的にはかなり大きな値上げになっているんじゃないだろうかと、こう考えておるわけでございまして、従来は小学校で千五百円ぐらい、中学校では千八百円ぐらいだったわけでございますけれども、五百円内外の値上げになるんじゃないだろうかと、こう考えておるわけでございます。
  84. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 きのうもある新聞に報じられておったんですが、四月になってから大体平均して三〇%から四〇%上がっておる。ところによっては七〇%も給食費が上がっておる。さらにまた、パンや牛乳の再値上げということも予想されておるので、秋ごろにはもう一回これは給食費をまた上げたところも上げなきゃならぬのじゃないか、こういう新聞記事があるんです。私、それでお聞きしたいんですが、ここ数年の小学生一人の一食分の学校給食費の単価はどういう状況になっておるか、これは専門家がおらなきゃわからない。――じゃいいです。これは私が調べたところによると、四十六年が大体約五十六円、四十七年六十五円、四十八年が七十九円、ことしは推計で百十円になるだろうと、こう報ぜられておるんですよ。ですからこれがまた、父母の負担にはね返っていくということはきわめて大きいわけなんですけれども、その上に先ほども申し上げたように、食事の内容をやっぱりカロリーを落とす、落とさぬにしてもまた品質を落とすというようなことで非常な苦労をしておるというのが各学校状況なんですよ。一体そういう状況文部省の担当課としてはこれはきちっと踏まえておるんだろうかどうだろうかと、こういうことをお聞きしたがったんですけれども、まあいいでしょう。  そういう状況でありますだけに、私はもう少し具体的にその中身で聞きたいんですが。  その一つは、牛乳の問題です。これは昨年大阪とか京都など大体十八府県が昨年の暮れに値上げを認めたんです、給食用の。そしてこの金は都道府県がみんな負担をしたんです。あるいは都道府県というよりも、この自治体のほうがです。そうすると、御承知のように、四月一日から加工原料乳が四四・三%も上がっておるんですよ。こういう事態の中では、また、牛乳の再値上げ必至という状況なんですがね、これは文部省はこの学校給食の中の牛乳というきわめて重要なこの分野でございますだけに、これに対してただ手をこまねいて見ておるだけなのか。こういう情勢に対してどう手を打とうとされておるのか、その点お聞かせ願いたいと思うのです。
  85. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 学校給食に要する経費をどう分担していくかという問題が根本ではなかろうか、こう考えているわけでございます。もう御承知のように、学校給食法で学校給食に要する経費の負担区分をきめているわけでございます。施設設備に要する経費は全部公費でまかないます。人件費も全部公費でまかないます。材料費は父母負担、しかしながら要保護家庭、準要保護家庭、生活に苦労なすっている家庭については全額公費で分担します。なおまた物資、物価の国の政策に乗るものはそれなりに助成もしましょう、あとはひとつ材料費に関する限りは、全部保護者負担ということで進めてきているわけでございます。物価が上がりましたので残念なことでございますけれども、やっぱり材料費も上がっている、父母負担もふえるということでございます。先ほど数字をおっしゃったのは大体そうだろうと思うんであります。いままで小学校が千五百円だったのが私たちのところで五百円ぐらい上がるだろう、そうすると二千円、大体二十回分と考えていただいたらよろしいわけでございますから、一食百円ぐらいに上がるだろう、中学校の場合はもうちょっと上になろうかと思うわけでございます。牛乳の問題は、文部省としては年度の中途の府県はかんべんしてくださいよ、こう申し上げてまいりまして、酪農関係の人たちからはかなりの反発を受けておったわけであります。しかし、見るに見かねて値上げをされたところもある。年度途中だからその分だけは補助を出すというような地域もあったわけでございます。まあ牛乳の値上がりとか、いろんなものの全体を見越しまして五百円ぐらい上がるんじゃないだろうか、こういう推定をしているわけでございます。年度当初でございますので、まだ全体の集計はとっておりませんけれども、個々に見ていますと、先ほど私が申し上げたような傾向ではなかろうか、こう考えているわけでございます。いずれにしましても、上がった場合には、要保護家庭や準要保護家庭は全部公費でまかなうことは間違いはないわけでございます。同時にまた、できるだけ調整基金などを持ってもらってある程度まとめて買う。同時に、またコールドチェーンなどの施設も整備いたしまして必要に応じて貯蔵するというような仕組みもとらせるというようなことで公費の助成は行なっているわけでございます。しかし、基本的には材料費は父母負担でやむを得ない、こういうたてまえで対処してきているところでございます。
  86. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうするとたいへんだけれども、父母負担がたてまえだからしかたがないという話ですね、つづめて言えば。これパンにしてもまたそうなんですよ。この値上げというのはこれは避けられない状態だし、ことしの文部省予算の給食用の小麦補助費ですか、これは十億七千五百万円、たしかこれは昨年と同額だったと私は理解しておるんですが、もし同額であれば、いわゆる幾らその学校給食法十条の特別条項があっておるとは言いながら、いわゆる狂乱物価時代といわれているところの世の中で、この小麦の補助費が四十八年度と同じだということはどうも理解できないんですが、これ事実だとすれば、どういうわけですか。
  87. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 原麦につきましては、昨年政府からの売り渡し価格が三五%引き上げられたわけでございますけれども、給食用の原麦だけはさしあたり九月まで据え置き措置がとられているわけでございます。いまお示しになりました数字は、小麦粉を供給するその供給事業に対する助成でございまして、山村であろうと、どこであろうと同じ値段で小麦粉が入手されるようにしようという意味で供給事業を国費で助成してもらっているわけでございます。ちょっと正確に覚えておりませんが、四十八年度には若干ゆとりがあったんじゃないかと思うんです。同じ仕事をやるわけでございますけれども、四十九年度それだけの経費で目的どおり行えるというたてまえで計上しているわけでございます。別段その仕事の分量を落とすというようなわけじゃございません。なお、政府委員も参っておりますので、間違っておりましたら補足してもらいたいと思います。
  88. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いま来られたから聞きますが、いまちょっと大臣から答弁があったんだけれども、給食用の小麦の補助額が結局昨年と同じ額でしょう、四十九年度も、予算の面で。それで、世の中にこれだけ物価が上がっているという中で、なるほどいまも大臣の話を聞くと九月まで据え置きだと、学校給食法の十条の特別措置というものを適用して、こうなっておると思うんですけれども、しかし、ちょっと常識はずれの話なんで、ちょっとふしぎでたまらぬわけなんですからお聞きするんです。
  89. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) いま、御指摘のは学校給食用小麦粉の供給事業費補助金のお話と思いますが、昭和四十八年度は、供給事業費といいますのは流通経費の補助でございますが、一袋当たり百二十五円という積算でございます。それで一袋当たり百二十五円というのをどうしても四十八年度は守ってほしいというのが大蔵省の言い分でございまして、そういうわけで積算では所要量のトン数は余裕を持って見込んでおりましたので、一袋当たり百二十五円で実際に必要な所要量を掛けまして八億何がしと、こういうのが実際に補助された金額でありまして、来年は同額の十一億たしか五千万だと思いましたが、来年度はその十一億五千万を……
  90. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 来年度というのは。
  91. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 失礼しました四十九年度です、すでに本年度に入りました。先ほどのが前年度の話で、四十九年度は十一億五千万全部使わしてもらいたいという予算折衝のときの話し合いで、そういたしますと一袋当たり百二十五円でありましたのが約百五十一円ということになりまして、流通経費も輸送費その他人件費も上がりますので、一袋当たり百二十五円が約百五十一円ぐらいになるということで、そういう値上げに見合う実質的な予算になるという予算編成時にそういう約束をいたしましてそういう経過になっております。
  92. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、実際に子供たちにはね返ってくるところのいわゆる給食のパンの費用というのは、負担額というのは今度はふえないわけですね。
  93. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 児童生徒に供されますパンの価格でございますが、まず第一に、食管特別会計から政府が売り渡します原麦がございます。この原麦の価格は、本年九月まで据え置かれることになっております。それから次に、その原麦を粉にいたします、製粉会社で粉にしてもらいます製粉の手数料が要るわけでございます。これにつきましては製粉業界の協力も得まして、同じく九月までは大体据え置いていただけるという見通しでございます。  その次に流通経費でございますが、これは、大体、実際にかかります流通経費とほぼ見合う予算が使えますので十一億五千万、それはそれでいいわけでございますが、問題は、今度その粉をパンにいたしますパンの加工賃でございます。これが実は去年の秋ごろから、特にことしの一月ごろに入りまして燃料費あるいは人件費あるいは包装費の値上がりがございますので、パン業界からぜひ値上げをしてほしいという要請がございましたが、昨年度中は、三月までは据え置きに御協力をいただきました。したがいまして、新学年からはパンの加工賃はある程度の値上げはやむを得ない。その他の経費は、先ほど申し上げたようなわけで九月までは据え置かれますが、パンの加工賃は、新学年からある程度の値上げはやむを得ないという状況になっております。
  94. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いずれにしても、いままでの経過は私聞きませんよ、時間がありませんからね。今後上がるということは必至になりますね、これは、いまの説明を聞いても。さっきあなた来る前に、牛乳の話も聞いたんですけれども、牛乳もまた上がる。パンも上がる。調味料も上がっているんですね。ですから、きのう報ぜられておったよりも三〇%から四〇%、具体的な市町村名もあげて、特定のところにおいては七〇%も上がっている、こういう状況が報道されておりましただけに、確かにこれは現在の給食法の六条の規定では、大臣がおっしゃったように、いわゆる施設、設備とかあるいは運営費というのは補助はあるけれども、いわゆる給食費は父母負担だという仕組みなんですけれども、しかし、こういうふうにどんどん上がっておって、これはいまの法の仕組みでしかたありませんから、まあ――というような形は私は済まされないのじゃないかと思う。現実にまた地方でも、住民運動として、その学校の設置者であるところの市町村も何がしか補助をしてもらいたい、あるいは国も何らか見てもらいたいという要求が非常に高まりつつあるんですよ、この問題は。したがって、もう法をたてにとって、これは気の毒ですががまんしてくださいという段階じゃないと思うんです。したがって、私からも言わしめれば、予算委員会あたりでいわゆる狂乱物価は一応鎮静にあるなんて、こういう話ありましたけれども、事少なくとも、学校給食については狂乱時代はいまからなんです、この四月以降ですよ。したがって、これを私は手をこまねいておくというわけにはまいらないと思うんですけれども、一体大臣、これを先ほど申し上げたところの問題点も含めて何かやはり考えなければならない段階にきておると思うんですが、やっぱり大臣のこれに対するところのものの考え方をお聞きしたいんです。もし直接できないとすれば、せめて牛乳とか調味料とかの値段ぐらいは凍結させるような方途をやって、それでやっぱり差額だけは政府で何かそれぞれのものに手だてをしていくという方法は講じられないのかどうか、その問題についてどう思いますか。
  95. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 関係の資材、物資を所管しております通産省なり農林省なり、国民生活に特に影響の大きいものにつきましては、それなりに引き下げてもらう努力なども行なわれておるわけでございまして、ものによっては若干引き下げられたり落ちつきを見せたりもしているようでございます。材料費を父母負担によらざるを得ない、しかし、国の物価、物資政策に乗るものについては文部省としても積極的に負担軽減への努力をしていかなけりゃならないと思います。その点については、現在のところは先ほど申し上げた程度のことを行なっているわけでございます。今後とも事態の推移をながめながら、国の物資、物価政策に乗るものにつきましては、できる限り負担の軽減がはかれるような努力はしていきたいものだと思います。
  96. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 あとから触れます学用品のざら紙という問題については、いろんな放出とか、いろんな手立てを講じながら、積極的にやっぱりやっておるわけなんですけれども、事、学校給食のこういう問題については、率直に申し上げて、共同販売とか何とかという、言うならば、学校でくふうする、あるいは教育委員会でくふうする方式だけにたよっているというのがもう現状です、率直に申し上げて。しかし、私はこのままに置くわけにはまいらない。したがって、これは、文部大臣は閣内でもやっぱり影響力強いんですから、ひとつどうしても、閣内でこの問題について、子供たちの学校給食はあくまでも守るという立場に立つとするならば、ぜひともやはり手を打ってもらいたいと思うんですが、ひとつ決意のほどをお聞きしたいと思うんです。
  97. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) いまも申し上げましたように、国の物価、物資政策に乗るもの――現状では原麦の売り渡し価格などが九月まで据え置かれておるわけでございます。そういうものにつきましては、できる限り今後事態の推移も見守りながら、積極的な努力をするようにいたしたいと、こう思います。
  98. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ひとつぜひともこの問題は馬力をかけてやってください。いわゆる文部大臣がこういう面でやったというふうに大きく記事になるように、ほかの問題はだいぶ、物議をかもすようなことではだいぶ記事になりますけれども、ときにはこれは快哉をみな叫ばれるような記事にするように、ひとつがんばってくださいよ。  もう一つ、これも、私は、ここでは即答は出ないかと思いますけれども、学校給食はパンか米にするかという問題です。これは古くて新しい問題だと思うんです。現実の問題としては九九%がパン食で、米食の学校給食をとっているのは全国で六百校前後だ、こういわれていますけれども、いわゆる食糧の自給、あるいは国全体の食糧政策という面からいった場合に、あるいは栄養価値という問題、あるいは子供たちの嗜好傾向というところの問題等、いろいろ勘案してみた場合に、いままでのような、惰性でただパンだけがいいというような形でできるのかどうか。この問題は、与える影響は大きいと思いますけれども、ぜひこれは検討しなけりゃならない私は課題だと思うんですが、この問題について、文部省あたり検討されているところの経過があれば、それをお聞かせ願って、今後の方向があれば、ひとつはっきりさしていただきたい。
  99. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 戦後、ずっと米不足の時代がありましたことと、栄養上の問題から、学校給食はずっとパンということでございましたが、米が御承知のような生産状態になってまいりました。それから、栄養上の問題につきましてはおかずとのかみ合わせによって解決できる問題でもございます。そういうことで、昭和四十六年度に学校給食の食事内容につきましての通達、所要栄養量及び食品構成につきまして改正をいたしまして、パン・ミルク、おかずの場合、それから米飯の場合の食品構成、所要栄養量の改正をいたしまして、米飯給食ができるような措置をいたしたわけでございます。かねて、米飯給食の場合に、炊飯施設が必要でございます。それから、できましたら食堂があればなおよろしい。そういうわけで、パンの場合よりもさらに栄養上くふうを要しますので学校栄養士が必要であるということで、そういう方面の国庫補助を四十六年度から計上いたして、それから食糧庁の御協力を得まして、現在、米利用研究指定校ということで、無償で玄米を配給をしていただいておるわけでございます。  ただ、それから米利用実験校、研究指定校でいろいろ調査いたしましたところ、私どもとしては、毎日米というのもどうかと思うわけでございますが、一週間五日のうち、二日ないし三日は米飯、その他はパンというのがいいんではなかろうか、こう思うわけでございますが、そういうことで、実験学校を設けまして二年間やりましたところ、なかなか好評でございます。食事内容に変化が与えられるというようなことでなかなか好評でございまして、それから父兄の御意見も、毎日毎日パン、あるいは毎日毎日米飯ということでなく、両方取り入れるほうがいいんではないかという御意見が多いわけでございますが、残念ながら、米飯の場合には、その準備、お米をとぎましたり、そういう準備と、それからあと片づけ、それからいろいろな施設、設備がよけいに要る。それから栄養面でいろいろくふう、それで、少し金がよけいにかかるといったようなことがございまして、なかなか現場のほうが、そういう財政的な問題も、これは国でも補助をいたしておるわけでございますが、そういう手間ひまがかかる、それからめんどうであるといったようなことがございまして、正直なところ伸び悩んでおる状況でございますが、文部省といたしましては、パンに限らない、米飯も非常にけっこうではないかというふうに思っておるわけでございます。
  100. 安永英雄

    ○安永英雄君 関連。いま各地域で給食費が非常に値上がりをするという問題にからんで、家庭で弁当をつくって持っていかせるべきなのだ、学校の給食はやめるべきだという意見と、やはり学校給食は続けるべきだという、こういう論議が非常に起こっておる。非常に、給食という問題については、ひとつの転機が来ているような感じを、私は受けたわけです。  そこで、一番問題なのは、私、田中総理にこの点について質問したことがある。要するに、学校で給食をやるという意義、なぜ学校で給食をやるのか、教育的な価値があるからこそ学校で給食をやっているんだろうと思う。したがって、一がいに二つにはっきり分けることはできませんけれども、文部省のほうで考えておる学校給食についてのその態度というのは、大きく教育的な価値というものを認めて学校給食をやらしておるのか、あるいは終戦後の学校給食に入ったときのように物がない、要するに、学校で世話をして、そしてみなに同じものを食べさせるという、いわゆる食べさせるということ自身に主力があるのか、ここらあたりが論が分かれるところで、文部省としても、今日まであまりはっきりしていない。これは、学校給食という問題が教育的に非常に価値のあるものだ、教育的な価値があるからこそ学校で給食をやるんだというたてまえをとるならば、いまみたいな国の補助、極端に言うならば、私に言わせるたらば、これは無償にしなければならぬと思う。無償までいかなければならぬと思う。ところがそうではない。やっぱり父兄の負担だと、受益者負担的な考え方を持っていらっしゃるんです。そこのところを田中総理は、ずばり、価値があるからこそ学校で給食をやるんだということを言明をされたのですよ、予算委員会で。それから先ずいぶん文部省態度も変わるんじゃないかと思ったけれども、いまの答弁あたりを見ましても、わずかばかりの運搬、流通費あたりを少し出すというくらいで、国の大幅な助成というふうな問題は全然考えようとしていない。そこで、はっきり文部大臣としてどうお考えにおるのか、この点がはっきりすれば、私は、少なくとも田中総理がおっしゃったような学校給食の意義であれば、まだまだ国として負担をしなきゃならぬという結論が私は出ると思うし、それは決着はついたと、私は見ているんです。この点をひとつはっきりしてください。
  101. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 学校給食法に明記しておりますように、学校給食の目標は、「教育の目的を実現するために、」このことを行なっておるわけでございます。そうであれば、必ず公費だという結論は、ちょっと早いんじゃないかと思うんであります。そうなりますと、学用品その他、すべて公費でまかなうべきだと、こういうことになろうかと思います。やはり、その辺の問題は、政策課題だと思うんです。政策課題として考えていきます場合には、私たちとしては、もっと先に、ひとつ公費でまかなえるようにしたいなと思うものがいろいろあるものでございますので、御負担に待ち得るものはそれによらしていただきたい。将来、なお、こういう問題につきましても、全部公費負担にできれば、それは望ましいことでございましょうけれども、まず、やっぱり順序としては、もっと充実をしたい、公費を使いたいというような問題もありますので、先ほど来申し上げておりますような負担区分にのっとりながら、できる限り材料費の負担も少なくて済むような努力をしていくという段階でございます。
  102. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 じゃ、続いて学用品の問題についてお尋ねいたします。  その一つは、例の通産省の二月一日付の小売り価格のいわゆる値下げの指導ですね。まあ、小康状態を一応得ておるわけですが、しかし、新学期になりましてから、地方で非常に苦情が多いのは、それぞれの品物、一つ一つはそれは単価がまあ落ちついてきておりますけれども、ただそれだけで買われない、抱き合わせで売るという業者関係が非常に多くなって困っておるんですよ。たとえばクレヨン、クレパスの十二色の細巻きはなかなか手に入らないんです。十六色の太巻きでなければありませんと、値段が高いものだから、それを買わされるとか、あるいはまたそれだけでは困るので、新学期でしょうからひとつ鉛筆と鉛筆削りを買われたらどうですかとか、机を買いに行けば、それと一緒に寒暖計まで抱き合わせで売られると、こういう抱き合わせ商法というか、そういうのが、新学年おめでとうという、父兄のあれをくすぐりながら売らせておるというのがだいぶ出てきておって困っておるんですが、苦情がだいぶ多いんですよ。その点、一体どういう指導をしていただくか、これは通産省にやつぱりさせたほうがいいでしょうけれども。文部省も、しかしこれはもう無関心たり得ないことなんですがね、その点、どうお考えになりますか。
  103. 村岡茂生

    説明員(村岡茂生君) 私は、紙のほうの担当ではございますが、色鉛筆等につきまして、抱き合わせ販売の事実があるとするなら、非常に私どもも残念に存ずる次第でございます。流通業界の団体等を通じまして、そういう値下げ指導したものを抱き合わせ販売するようなことがないように、十分、指導をする所存でございます。
  104. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そつのない答弁ですね、あるとすればと言うからね。あるから尋ねて、言っておるのです。だから、皆さんがやっぱり積極的にそういうところを調べてもらって、やつぱりそうさせないようなことをしてもらわなければ、それは、あったらやりましょうという話では、私はもう困ると思いますよ。これはまた、子を持つ親の一番泣きどころでもあるんですよ。お子さんがおめでとうございましたと、こうお世辞の一つ二つでも言われて、ついてはこれ一つ、ありませんですよ、品切れですから、これと二つどうですかと、こういうものを買わされたんじゃ、これは父母にとってはもうたまらぬ話ですから、これはもう積極的に、ちょっとあなた調査をして指導をしてくださいよ。あったらじゃなくて、積極的にやっぱり調査をして、そういうことのないようにすると、こういうふうにおっしゃっていただきたい。  もう一つは、用紙の問題ですがね、これはざら紙は一月末の緊急放出で、年度内は助かっておるわけですが、四月以降もこれをどうするか、いわゆる続けられるところのやつぱり意思があるのかどうか、方針があるのかどうかという問題。  それともう一つは、画用紙と半紙類ですがね、これは三月九日の小売り価格の抑制品目の中にはこれは入っておるんです。入っておるんですけれども、先般、先ほどもちょっと申し上げたように、都内の小学校調査をやってみましても、画用紙も、昨年の四月は百枚で二百二十円から二百八十円ぐらいだったのが、ことしの二月では、一括購入しておるところでも五百七十円から八百七十円という、非常なばらつきがあるんですよ。あるいは半紙も、これは二千枚一組で見ましても、昨年の四月の千五百円から二千円が、一括購入するところで二千五百円から二千六百円見当。一括購入せぬところは、三千五百円から四千五百円、こういうふうな形になっていまして、なかなか、これまた子供のことですから、声なき声になってしまって、なかなか届かないわけですけれども、学校現場では、一括購入とか、いろんなくふうはしていますけれども、これまた悩みの種なんです。したがって、新聞を使って習字を練習させるという、かつて、戦前のような形にあと返らなきゃならないという事態さえも、先生方もくふうしながらやっているわけですけれども、こういう問題に対して、文部省としては、その実態をどういうふうに認識をされておるのか、あるいはまた、通産省に対して、この問題についてどういう相談をされておるか、そこらあたりを、まず、お聞かせ願いたいんです。
  105. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 昨年秋以来、学用品の値上がりが非常に著しいわけでございますが、これに対処いたしまして、文部省におきましては、昨年暮れの十二月に、教育資材班という組織を臨時に設けまして、国立学校、都道府県の教育委員会を通じまして、各種の学用品の供給並びに価格の実態調査をいたしておるわけでございます。実態を把握いたしました上で、これを、通産省にお願いをいたしまして、十分な供給あるいは低廉な価格の供給をお願いをしておると、こういうことでございます。私どもがいままで調査をいたしましたものは、各種の品目にわたっておりますが、特に、重点を置いておりますものは、ノート、学習帳、鉛筆、クレヨン、クレパス、運動具等でございます。  ただいま御指摘の画用紙並びに半紙でございますが、半紙につきましては、これは学校で使用いたしますものは、御承知のようにざら紙が多いわけでございますが、ざら紙につきましては、二月来月千トンの放出をお願いをいたしまして、四月までこれを継続するということになっておるわけでございますが、半紙につきましては、私どもの調査でございますと、B4版で一枚五円、それから画用紙でございますと、B4版で一枚八円と、こういったような実態になっておるわけでございます。  価格の安定あるいは供給につきましては、先ほど申し上げましたように、通産省には、主としてこの主要な学用品、繰り返しになりますが、ノート、学習帳、それからざら紙、こういったところを中心にお願いをしておるということでございます。画用紙あるいは半紙等につきましても、さらにお願いをいたしたいというふうに考えております。
  106. 村岡茂生

    説明員(村岡茂生君) ざら紙の四月以降の取り扱いの問題でございますが、これはとりあえず、四月から六月まで三ヵ月間、やはり需要期でございますので、延長をするという方針をすでに固めまして、関係者に所要の措置を講じ終わったところでございます。したがいまして、当分の間、引き続き実施されるということでございます。  それから第二点の画用紙及び半紙の問題でございますが、先ほど文部省のほうから御答弁ありましたように、実は重点的に対策を講じたために、御指摘のように、これらの品目が対象から落ちていたというわけでございまして、その後、私どもといたしまして、まず、書道半紙につきまして、ほぼ検討を終わりまして、実施できる段階になったわけでございますが、一千枚単位、したがいまして、あるいは先生のおっしゃる一括購入ということかもしれませんが、これを一千枚当たり千七百円に値下げするということでほぼ固まりつつございますので、近いうちに実施できる運びになろうかと思います。  なお、画用紙につきましては、実はなかなか遅遅として進んでおりませんのは、非常にやはりメーカーが中小でございまして、なかなか値下げのめどが立ってないというのが偽りない状況でございますが、私どもといたしまして、ざら紙のような対策を早急に講じたいと考えておりまして、現在鋭意検討を進めているところでございますので、いましばらくお待ちいただきたいと存じます。
  107. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 まあ、特別な関心を持って一つの結論を出すようにやっておるということでございますがね、これまた四月という月が一番大事なんですよ、学年初めですからね。これあんまり需要が多くなくなってからやったんじゃ困りますからね。これひとつ急いでください。そうせにゃ、これは六日のアヤメになったんじゃ意味ありませんからね、ひとつその点を強く要望しておきます。  先ほど出ましたノートの問題ですが、これはきのう付の朝日にも報じられておったんですが、これ大阪での例なんです。この点、これは管理局長は御存じだと思いますが、見られましたか。
  108. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) はい。
  109. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これ、私は指導価格をああいう通達で違背なく実施することを誓約いたしますという一札をとって、その七百二十円ですか、これを下限があたかもないような形で置くということは非常に私は問題がある。いわゆるその指導価格をもう固定価格にしておるというこの指導のあり方は、これは確かにやみ再販の疑いもあると言われたってしようないと思うんですがね。これは早急にやはり私は指導すべき問題だと思うんですがね。新聞にもあれだけ報じられたんですから、すぐ手を打たれたと思いますがね、どういう処置されたのですか。
  110. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) B5判のノートでございますと、これはことしの一月の小売り物価が九十六円でございましたが、四月一日の文部省調査によりますと七十二円ということになっております。通産省の指導価格は七十五円ないし八十円ということでございますから、通産省の指導価格の七十五円ないし八十円よりもB5判のノートにつきましてはやや下回った実勢単価になっておるということが実態でございます。それから学習帳のA5判でございますと、一月の小売り物価が九十円でございますが、四月一日付の文部省調査は六十六円でございます。通産省の指導価格は六十五円ないし七十円ということでございますから、ほぼ指導価格の線に落ちついておるということでございます。  ただいま御指摘の報道につきましては、さっそく通産省に実態についての御説明を伺ったわけでございますが、それによりますと、業界自体もやり方に不十分な点があったということをお認めのようでございますし、また、通産省もそれに対して適切な指導をさっそくなさるということを伺いました次第でございますが、文部省といたしましては、通産当局におかれましてこの件についてさらに適切な措置が講ぜられるようお願いをしておる次第でございます。
  111. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 まあ、業界と言うか、やっぱり商売というところは抜け目がなく、少しでも安心できぬもんだと思ったんですがね。これ指導はもうされたでしょうね、通産省としてもあの記事に対応するところの対策だけはね。
  112. 村岡茂生

    説明員(村岡茂生君) 若干経緯を申し上げますと、このノートの特別価格の対策は、御案内のように、原紙を特別価格で放出する、ノートメーカーに供給するということと、それに対応してノートメーカーがノートの価格を引き下げると、その二つのポイント、さらに流通業界を加えれば三つのポイントから成り立っているわけでございます。したがいまして、特別価格で供給された原紙というものは特別価格のノートにのみしか使えないんだというのが、実は私どもの強い指導でございました。新聞で報ぜられました紙製品の工業組合は、実はその指導を受けまして、引き下げ価格を順守するという旨の実は誓約書を傘下のメーカーから取ったというのが実態だったわけでございますが、御指摘のように、固定価格みたいな印象を与えたということが非常にまずい。実勢価格はそれを下回っているとは言え、文章上、非常に表現が拙劣であったということでございまして、実は昨日付をもちまして、さらに、この指導価格を可能な限り下回るように各メーカー努力ありたいというような文書を流さしてございます。
  113. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 まあ、さっそく手を打たれているようでけっこうですが、ひとつ新聞に出てからあわてて手を打つということのないように、積極的に、事やっぱり子供の実際の教育にかかわるところの具体的な問題ですから、ほかの問題以上にひとつ関心をもって積極的な手だてを進めていただきたいということだけをお願い申し上げたいと思います。  次に、社会教育の問題について、これから若干時間お尋ねをいたしたいと思います。  まず、社会教育あり方の問題です。私は、戦前と戦後では、この社会教育あり方というのはもう基本的にたいへんな違いがあると、こう見ておるわけでございますが、その点は、文部省としてはどういうものの理解に立っておられますか。その点をまずお伺いしたい。
  114. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 社会教育の戦前、戦後の歴史、先生の御指摘のように相当に変わってきております。明治から大正のころまでの通俗教育の時代、大正の末期から戦争までの時代、戦後の時代と、いろいろございますが、まあ典型的に戦前直前と戦後と比べてみますと、当時の国家体制を反映して国の優位性あるいは国の考え方によるある考え方の注入あるいは学校教育の補充といったようなことが戦前の社会教育の特色でございましたが、戦後は住民あるいは学習者の自発的な希望に即して、それを組織化していく、それを援助していくというのが社会教育であるということで、戦前、戦後比較しますと非常に対照的な変化を来たしておると、理解いたしております。
  115. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 まあ、いま今村局長のほうから答弁がありましたように、私も、いわゆる戦前の社会教育というのは教化事業だと、こういうものの考え方から、戦後は少なくとも社会教育あり方というものは住民本位で、任意の自発的な意思によって社会教育が行なわれると、したがって、社会教育の特色で言えば市町村本位だと、こう言われるぐらいの特色があると思うんです。そこで、教育基本法の七条にありますところの社会教育の条項は、少なくとも社会教育基本を規定をしておるところの条項だと、こう思うのですが、この趣旨をいわゆる局長としてはどういうふうに理解をされているのか。
  116. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 教育基本法第七条は、一項と二項に分かれております。第一項では、家庭教育社会教育に分けてございますが、「勤労の場所その他社会において行なわれる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。」、という意味は、社会教育の主体は民間の団体である、あるいは民間である。その民間において行なわれる社会教育を、国や地方公共団体が奨励する措置をとらなければならないという原則をうたったものと心得ております。  第二項は、国、地方公共団体が施設の設置、学校の施設の利用その他の方法によって社会教育の目的の実現につとめなければならないということで、社会教育における条件整備あるいは環境の醸成、その典型的なものをうたっておるものと理解いたしております。
  117. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その点、私も、第七条は、いわゆる社会教育あり方基本的な考え方を示すと同時に、いわゆる社会教育行政の責務とその限界を、ここには規定されておるのだと、こういうふうに理解しておるのですが、そのように理解してよろしゅうございましょうか。
  118. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 私も、そういう意味理解いたしております。
  119. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 社会教育法の第三条です。これは、国及び地方公共団体の任務を規定をしておるわけですが、この趣旨は、私はやはり国及び地方公共団体の任務は環境醸成云々というように、いわゆる社会教育をより進展をさせるための条件を整備をするその手助けをする、こういうのが一つの任務だという規定づけをしているという理解をしているのですが、いかがでしょう。
  120. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 社会教育法の第三条は教育基本法の第七条と照応いたしておりまして、環境を整備するように国及び地方公共団体が社会教育の環境醸成につとめなければならないということをうたっておるもので、趣旨としては、先生のおっしゃることと私、異存はございませんが、ただ、ややこまかく申しますと、教育基本法の第七条第二項にも明らかなように、図書館、博物館、公民館の運営そのものは社会教育の実施でもございます。ですから、国及び地方公共団体が社会教育に関与する場合もあり、あるいはまた、社会教育を実施している場合もある。ややこまかに説明すれば、そういうことになろうかと思います。
  121. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 しかし、基本的なものの考え方というのは、私が申し上げたような形で理解しておいてよろしゅうございますね。
  122. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) あとでこまかな議論になるかもしれませんので、私としては、原則的には、先生の御意見に同調しながらも、おことばのとおりお答えしておくとあとで困ると思いますので、ややこまかに御説明申し上げておきます。
  123. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そう用心せぬで、すなおに理解されたらいいのですよ、この条文は明確にそう書いてあるのだから。私がひが目で見るといけないのであなたにすなおに聞いておるのだから、あなたもひとつすなおに答えていただきたいと思う。  それで次に、もう一つお尋ねしたいのは、社会教育法の基本昭和二十四年にきまって以来、再三再四改定がございましたですね。特に昭和二十六年には社会教育主事とか、あるいは主事補が設定をされる。あるいは三十四年には大改定がなされた。私は、やはりこの改定なされたところの部分部分には、非常にやっぱり問題点があるのです。しかしながら、この法の精神というか大筋というのは、先ほど来私が質問し、またあなたが答えたような筋は、やはりこの基本的な考え方というものは曲げられておらない、こういうふうに理解しておるのですが、その点はよろしゅうございますね。
  124. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 戦後、昭和二十四年に考えられました社会教育法の制定の精神は、先ほどから御質問がありお答えしておるようなことでございまして、社会教育の条件整備をするのが社会教育行政のおもな任務である、そういうことでございまして、その精神は今日まで変わっていないと心得ております。
  125. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それで、私はやはりこの方針からすれば、いわゆる社会教育に携わるところの職員の拡充強化といいますか、職員の強化という面では、むしろ教育行政機関としては、これから論じます、またあなたもそれが問題じゃないだろうかと思っておられるところの社会教育主事という問題よりは、むしろ明確にされている図書館とか、あるいは公民館だとか、そういう教育施設ですね、社会教育施設の専門職員をより拡充をさせていくということが、私はやはり重点にとられなければならぬ。これが十分できておるならいざ知らず、今日の面では不十分な点があるだけにこれが私は大事だと思っておるのですが、四十九年度のことしの予算で、この面では具体的にどういう手だてが予算では裏づけられておるのでしょうか、そこをお聞かせ願いたいと思います。
  126. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) いま、御質問の意味を正確にとらなかったかとも思いますが、社会教育主事とそれから社会教育施設の職員とに分けて、社会教育施設の職員についてどういう措置をとったかということでございますか。
  127. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうです。予算の裏づけはということです。
  128. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 社会教育施設の職員については、予算上何ら措置してございません。
  129. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その点は、予算上何ら措置をされておらないという点はわかりました。  それでお尋ねをしたいと思うのですが、この社会教育法に関するここ三年の動きをこう見てみますと、四十六年の一月のころに、社会教育法に関する十五の問題という問題で問題が出てきて、いろいろ国会でも議論されたようでございますね。それから同じ五月には、参議院の内閣委員会局長答弁をされておるようですが、社会教育法自体の改正の是非の問題が論じられたところの記録があるわけです。さらに、それから一年過ぎたところの四十七年の十一月のころには、これは私も十一月の二日に今村さんが日本短波放送でこう解説をされておるのをお聞きしたことがあるのですがね。言うならば、その十一月の前後には、社会教育審議会の答申に基づいて社会教育主事の給与の半額国庫負担と申しますか、端的にいえば。その問題と、その裏づけになるところの法律の改正を用意をしておるのだと、こういう動きがあるし、報ぜられて、あなた自身さえもそのことを言っておられる。それが四十八年一月早々にはそれがさたやみになった。ことしは、今度は法律の改正なしに派遣教育主事を予算で裏づけられてきておる。こういうジグザグな経緯をたどっておるのですが、その経緯と、それから本法に盛られておるところの精神と、はたして一致しておるのだろうかどうだろうかと私は疑問に思うのです。したがって、今日に至っておるところのこの経緯と本法の精神との関連性において、その辺の事情というものをまず御説明願いたい。
  130. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 私が現職を拝命したのは、四十五年の七月でございます。局長拝命後、社会教育の関係団体の方々からいろいろ言われたことは、社会教育はなかなか振興しない、それは社会教育法が旧態依然としたものであるからである、社会教育法を改正してくれなければ予算の増額もなかなか望めない、ここ数年間の予算の動きを見てみると遅々として予算はふえていない、という声でございました。まあ、就任早々の私にとっては圧倒的なような声として聞こえました。  しかし、私自身は社会教育の仕事の本質から見て、法律があって法律を執行するという形のものではないんじゃないかという気がいたしましたので、私自身は深く触れませんでしたけれども、審議官に命じまして局内で、社会教育法について関係者がどういう要望を持っているのか、それは法律をもってしなければできないことであるのか、検討してほしいということで、事務的な検討を始めました。そのことについて、都道府県の社会教育課長も仲間に入れて研究会をやりましたので、ある一部が報道されて、ただいま言われました何か十五の問題とかなんとかいうようなこともございました。しかし、私はその経緯をながめておりますと、法改正よりももっとほかにやることが多いと思いまして、法律を国会に提案しなければならないとは思いませんでした。したがって、法律案の改正問題を省議に提案したこともございません。  しかし、社会教育審議会の答申が、最近の急激に変化する社会構造の中で新しい社会教育あり方を求めて、生涯教育の理論のもとに、社会教育は何をやるべきか、社会教育行政は何をやるべきかということを四十六年に答申を出されております。その中で、当面、積極的に推進すべき二つの事項をあげてございます。一つは、公民館の拡充であり、他の一つは、社会教育主事の充実の問題でございます。  社会教育局におきまして、社会教育の振興がはかばかしくないのは、人の問題がなかなか充実できないからであるという議論は、局内でもう二十年あまりあったそうでございますが、なかなか小さな局で現在持っている予算が小さな予算でございますので、人件費について新たな予算措置を講ずるということは不可能でございました。けれども、その二つの問題点指摘がございましたので、四十八年度の予算にかけて、市町村の社会教育主事の身分を県の職員とし、その給与の二分の一を国庫負担するという形にできないものかと考えたわけでございます。省議の決定を経ましてそういう予算要求は出しました。しかし、予算査定の結果、それはゼロになりました。したがって、その予算実現に伴う法改正は必要がなくなったわけでございます。したがって、その第二番目の法律改正については準備しなければいけないとは思っておりましたけれども、予算の話が先でございますので、具体的な形のものは十分できないままについえてしまったわけでございます。四十八年度の予算要求のときに、市町村の社会教育主事の身分、あるいは給与の取り扱いを小中学校の先生と同じようにしたいという気持ちで予算要求をいたしました、稻葉大臣のときに。しかし、その構想については、社会教育の実質が市町村に密着しているということを忘れておるという点で欠点があるんじゃないかということを奥野大臣指摘されましてから、まさに、そのとおりであると思い直しまして、四十九年度の予算要求におきましては、現在、市町村におる社会教育主事はそのままにいたしまして、それにプラスして、県が市町村の要望によって派遣する派遣社会教育主事制度を実現したいと思いまして、派遣社会教育主事の給与の県費負担にかかわる分の二分の一を国庫補助するという形で予算要求をいたしまして、政府としても、予算要求が認められたわけでございます。この制度につきましては、すでに自治法の中にも、その典型的なものが規定されておりますし、また、本質としては都道府県と市町村の契約でございますので、特別な立法措置を要しません。したがって、今回は立法措置については考慮しなくっても済むといった事態になったわけでございます。  以上、経緯について御説明いたしました。
  131. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、四十八年度の予算要求をされておるところの段階では、いわゆる半額国庫負担ですね、それは法律改正が必要だということで準備をされておったわけでしょう。現に問答集もだいぶおたくのほうから出ておるわけですからね。ところが、今度の場合には、法律改正はしないでやっておる。それができるという判断ですが、どうしてもそこらあたりの事情が、解釈がわからぬのですがね。いわゆる法律改正をしなくてもできるという根拠の法律ですね、それはどことどこに基づいておられるのですか。
  132. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 四十八年度の予算要求のときの考え方と、四十九年度の予算要求のときの考え方とは、本質的に違っているわけです。四十八年度の場合は、市町村の職員であるにもかかわらず、そして――つまり、市町村の職員でありますから市町村が給与を負担する。その原則が当然でございますのに、それを県費負担に切りかえる。県費負担に切りかえるということは、これは法律をもってしなければならないことでございます。そしてまた、その任命権につきまして、市町村教育委員会の内申を待って都道府県の教育委員会が任命をするという形になりますと、現在、小中学校教員について給与の負担法があり、地方教育行政の組織及び運営に関する法律があって、特別な法の仕組みがつくってあるのと同様の仕組みをつくる必要があった。したがって、四十八年度においては立法の必要があったわけでございます。  ところが、昭和四十九年度の予算要求については、それと違った仕組みを考えたわけであります。つまり、地方自治法に定めております派遣職員制度にのっとって措置をすれば足りる。つまり根拠は自治法の中にある。ただ、自治法の中に定めてありますのは、派遣職員制度の典型的な型、一つの型でありまして、その変形もまた可能でございます。したがって、派遣職員制度については立法的な根拠が要らないという判断をいたしまして予算措置でもって措置をしたということでございます。
  133. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その地方自治法の派遣制度そのものというよりも、変形とあなたはたまたまおっしゃったのですがね。これはやっぱり変形にもなり得ますし、地行法四十八条の二項八号とか、あるいは社教法九条の二、そういう点のところあたり考えられてこういう制度をあみ出したのですか。なかなかこれは今村さんらしい――これは今村さんと文相のやっぱり合作だなあと私は思うのですがね。なかなか巧妙なやり方をしておるのですが、そこらあたりはどうなんですか、その法律関係は。
  134. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 社会教育法の何条とおっしゃいましたか、すみません。
  135. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 九条の二ですね、あるいは地行法四十八条の二項八号ですか。
  136. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 社会教育法九条の二は、社会教育主事の設置の根拠でございます。それから地行法の規定は社会教育主事を派遣することができるという根拠規定でございます。  それから地方自治法の二百五十二条の十七というのは、市町村に対する府県の補完作用と申しますか、そういう意味で府県の職員を市町村に派遣することができる、派遣した場合に、典型的な措置としては、こういう措置をしなければならないという一つの典型的な型を示しておる法律的な根拠でございます。  また、地方自治法の解説するところによりますれば、二百五十二条の十七というのは、派遣制度に関する一つの典型であって、必ずしもかくかくでなければならないという意味ではない。これは要するに、都道府県と市町村の間の協定、契約であるから、契約の中身は契約当事者が内容をきめることができるんだというような趣旨の説明もございます。その趣旨に従って都道府県と市町村の契約による派遣職員制度の実施を期待したわけでございます。
  137. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そういたしますと、地方自治法二百五十二条の十七というのを踏まえて派遣をきめたと。そうすると、今度はその派遣をされるところの場所ですね、どこでなけりゃならないとか、そういうのはどこに根拠を置かれるわけですか。
  138. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 直接のお答えになりませんが、その前段の前提となる条件について一言述べさしていただきたいと思います。  現在の社会教育法及び施行令によれば、人口一万以上の市町村には社会教育主事を置かなければならないことになっております。法律上の義務が課せられておる。にもかかわらず、現実に財源難であったり、あるいは資格を持った社会教育主事が当該市町村に存在しなかったりして、過去三カ年間あの手この手で一生懸命設置されるように勧奨をし、指導もしてまいったのでございますが、なかなか現実には置かれないという事実もございまして、したがって、それらの実態を考慮いたしまして、都道府県と市町村とが協議されるところ、それは国としては何ら特定しないつもりでございますが、そういうケースがあります場合は、国が県に補助金を出そうということによってその仕事を促進していきたいと、こう考えておる次第でございます。
  139. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 補助金を出す云々、あるいは派遣制度というものの根拠はそこに置いたというのはわかりましたよ。私がお尋ねをしておるのは、さらに派遣をしていったなら、どこにその派遣の人を置くという問題の根拠の規定ですね、これは私は端的に言うならば社会教育法の九条の二を見れば、「教育委員会の事務局に置く」という、こういうかっこうになっていますね。したがって、当然それは行った者はそこに置かれるのが至当だと、こう思うんです。けれども、おたくのほうの去る一月二十一日開かれたところの全国社会教育部課長会議に出された問答集見れば、いやそれでなくてもいいんだ、言うならば、派遣制度の趣旨を解しさえすればその施設や公民館にでも直接置くことができるんだと、こういうような解釈をされているんですね。私は、非常に便宜主義的にこの法を拡大解釈をされておるような気がしてならぬのですが、その点はどうなんですか。そこらあたりもまた地方自治法のそこをとったと、こうおっしゃるんですか。
  140. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 御質問の意味を取り違えておりました。置かれる場所は、場所ということば悪うございますが、社会教育法第九条の二によりまして教育委員会の事務局に置くのがたてまえでございます。ただ、現実の問題申しますと、小さな町村などでは社会教育の関係の職員を置くことができないような現実が多うございます。小さな町村では教育長一人、補助職員一人などという教育委員会の事務局のスタッフさえも多多あることでございまして、社会教育主事が一人置かれて公民館主事を兼務して、図書室みたいな図書館の職員も兼務してというようなものがございます。したがって、そういう実態を踏まえまして、たてまえとしては教育委員会事務局に置くわけでございますけれども、公民館の職員を兼ねたり、あるいは「少年自然の家の」職員を兼ねたりすることも認めないわけではないという程度のお話し合いをしたわけでございます。
  141. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、少なくとも、この派遣されたところの主事が行くところの場所は委員会の事務局ですね。そこを足場に踏まえて指導のためにあっち、こっち行くということはわかりますよ。けれどもどうもこの問答集のこの十一などを見ますと、いや制度の趣旨にかなってさえおれば、派遣の趣旨にかなっていさえすれば、どっちに主体を置いたっていいんだというものの解釈では、私はどうも理解できないのです。したがってやはりその点、あなたがいま御答弁なされたとおりだとすれば、その点、やはり誤解のないように私はやっぱり指導をしてもらいたいと、こう思います。
  142. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) いま申し上げたような事情でございますので、その辺についてもし私が申し上げたことと全く違った意味の誤解があるならば、今後いろいろな機会にその誤解を解くように努力いたします。
  143. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これ、やはりあの問答集があたかも金科玉条みたいに理解されておるところの向きが多分にあるのですよ。ですからその点は、やっぱりいま御答弁になったように、きちんとやはり原則はこうなんだ、そこを踏まえた指導をしていただきたいと、こう思うのです。  それで続いて、その社会教育主事の性格と任務の問題なんです。それで私が第一に確めておきたいことは、先ほど来この社会教育あり方基本からを考えてみますれば、これはやっぱり社会教育主事あるいは主事補でもいいでしょう、これは専門的、技術的な助言と指導をこの自発的な社会教育地域に対して与えるというのが任務だと、こう理解をするのですが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  144. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 法律にその職務規定があるわけでございますから、法律上の規定としては、まさにそのとおりの職務規定だと思います。ただ、法律の文言だけを読んでいっても現実にはなかなか具体的にわかりにくい側面のあることも事実でございます。
  145. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いや、いまおっしゃったその「ただ」というそのことばの使い方が非常に具体的には気がかりになっていくわけですね。たとえば当初あなたが説明をされたところの社会教育法の一部を四十八年段階に一応草案みたいなものを社会教育局で考えられた、その中のたとえば問答集の問いの二とか四、これをこう見ますと、いやその社会教育主事というのは、社会教育の中核体だ、中核なんだと、だから社会教育主事というのは、地域におけるところの社会教育計画の立案者及び学習の推進者として重要な役割りを果たすんだ、こういう説明をされておるのです。こういう説明からいえば、これは社会教育主事というのは、その地域の社会教育活動の、言うならば計画、立案、学習のいろいろなものの指導からみんなまず本人が立案してやるので、助言者でなくして主体者だという、これは率直に申し上げて理解をせざるを得ないんですよ。そうすると、先ほどあなたが御答弁なされたところの解釈からもだいぶ違いますし、本法の趣旨からも私は違うと思うのですがね。それは、私は先ほどあなたが御答弁になったような形に理解をしたいのですけれども、そういう規定づけというのは、これはちょっと行き過ぎか、この文章の、あるいはまたつい、たてまえはそうだけれども、本音はそうなんだという本音が出たのか、そこはどうなんですか。
  146. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 少し説明をさせていただきます。  社会教育法第九条の三に、「社会教育主事は、社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を与える。但し、命令及び監督をしてはならない。」という規定がございます。ここで、この法律制定後、今日までだいぶ議論されておるのは、学校教育とその教育の形態が違いますので、「社会教育を行なう者」ということば意味が非常に不明確であるということでございます。それでも、まあ一応解釈はいたしておりますが、その辺が不明瞭であると申し上げたのであって、法律が現存します以上、法律と違うことをやったり、法律と違う本音があったりするわけではございません。  なお、先ほども触れましたが、今後の社会教育行政の推進にあたって、文部大臣諮問を受けて二年間の間審議していただいて、社会教育審議会から四十六年の四月三十日に答申が出ております。表題は「急激な社会構造の変化に対処する社会教育あり方について」、その答申の中で「社会教育主事のあり方については、次のような課題がある。」「市町村の社会教育主事は、」云々、「都道府県の社会教育主事は、」云々という文言がございます。その文言を問答集の場合に抜粋したわけでございます。簡単に申しますと、社会教育の関係の学者、四Pあるいは三Pなどと言っておりますが、プランナー、プログラマー、プロデューサー、プロモーター、この四Pの機能を果たすのが社会教育主事の仕事であるという話をしておりますが、ある種の組織者といいますか、陰の世話役といったような意味社会教育主事の機能を考えておるわけでございます。その陰の世話役というのが専門的な指導、助言を行なうということと平仄が合ってくるんじゃないかと考えております。
  147. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ですから、先ほど来申し上げているように、とにかく社会教育というのは、地域住民の自発的な、自主的な活動というものを主事とか主事補とか、あるいは他の職員がうんと手助けをしてうんと発展するようにすると、こういうのが法の趣旨だと思うんですけれどもね。ただ、先ほどもちょっと指摘しましたように、この問答集あたりから見れるところの感じでは、何か主事のほうが中心者というか、社会教育のすべてをやっていくところの中核者みたいな印象を与えるようなこの文章の書き方というのは、私は必要以上に、むしろいろんな誤解を与える面があると思うんですよ、その点では。  時間も相当たっておりますので次のお尋ねをいたしますが、社会教育審議会の昭和四十八年の中間報告がありますね、いわゆる「市町村における社会教育指導者を充実するための対策」とかなんとかという見出しのもとに、そこらあたりを見て、そこに優秀な人材の確保なりあるいは長期間の安定的な在職ということは専門職設置のために当然であるということは、私もわかるんですよ。しかしながら、そのことのためには、どうして市町村採用者ではなくして都道府県採用の主事でなければならないのか。ちょっとそうなると私はわからなくなるんですよ。いわゆる社会教育主事の専門的な立場としての、こういう人でなきゃならないというならわかるけれども、そのためには市町村の採用者ではなくして県で採用した者でなきゃならないというこの主張、あるいは専門性の高度化ということもこれは大事だと思うんですがね、これまた市町村採用の主事では望めないのか。あるいはまた、広域化ということを非常に強調していますね。この広域化というのは、いわゆる社教主事の専門性の内実としてほんとうに必要なのかどうか。私は若干この点については疑問に思わざるを得ないんですが、その点はどういう御見解なんですか。
  148. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 現実の事態を御説明すれば御了解いただけるんじゃないかと思います。市町村の社会教育主事は、現在は市町村役場の人事交流の一環として行なわれております。したがって、きのうまでは戸籍をやったり勧業をやったりした人がきょうは教育委員会社会教育課に回されてきて社会教育主事補になる。そして、夏の一月の講習を受けて社会教育主事になる。そして四・八年――これは調査の平均でございますが、四・八年勤務すればまた人事の一環で市町村長部局の職員として帰っていくというのが従来の実態でございます。現在、生涯教育という新しい教育システムの中で家庭教育学校教育社会教育が有機的な連携を保って行なわれなければならないという教育主張が強い中で、このような人事交流あり方は、私ども社会教育の関係から見ますと非常に残念でございます。学校の先生は、四年間の大学を出て、そして三十年、四十年つとめて学校教育の専門家になっていかれる。社会教育の関係では一月の講習を終えて四年でかわっていくというようなことでは、なかなか社会教育の専門家は望むべくもないわけでございます。いつまでたってもしろうと行政の域を出ないというところでございますので、もう少し教育的に専門的な識見、視野を持った人が長くつとめてくれることが必要なんではないかと考えておりまして、その際、従来のとおりではどうもいきませんので、ほかの方法を考えてみますと、県と市町村とが契約をして県が一方的に派遣するんではありません。市町村の希望もあって、県も同意して職員を派遣する、そして、その職員があるところで実績をあげてなお社会教育をやってみたい、今後新しい分野でございますから興味もあります、おもしろいということでやってみたいという場合は、一つの市ではかりに四・八年勤務いたしましても、次の町へ行ってまた五年なり六年なり勤務する、また次の町へ行って五年なり六年なり勤務するというようなことになってまいりますと勤続年数が長くなってまいりますし、その間、種々の研修を重ねて学校教育と有機的な連携を保つことのできるような社会教育の分野の仕事ができるのではないか、さように考えたわけでございまして、その後段のことを実現しようとするならば、一つの市に、一つの町村にくぎづけするという形を破る必要がある、そのためには、派遣制度を利用するのがよろしい、かように考えたわけでございます。
  149. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 実態論としてのいわゆる市町村におけるところの社会教育主事あるいは主事補とか、そういうのが非常に多いんだと、そのことは私も理解できる。それならば、そういう腰かけ的な主事とか、主事補を置かないような、まず積極的な皆さん社会教育局を中心にしたところの行政指導をうんと私はやるのがほんとうに先決なんです。しかもまた、そういう市町村にそういう人が得られないとするならば、その隘路はどこにあるのかと、そこの打開策をまず私はやるのが先決であって、そうだから上からこう持ってきたんだと、県から派遣をするんだと、こういうやり方はどうしても私は理解できないんですよ。私から言わしめれば、むしろ今日一番社会教育の中で大事なのは、いま論じておるところの社会教育主事という問題のこともさることながら、目下の急務というのは、地域で住民の学習教育活動の援助者として日常的に住民に接しておりますところの公民館主事とかあるいは図書館司書ですね、あるいは博物館の学芸員のたとえば増員とかあるいは資質の向上とか、待遇改善をまず全力を尽くして文部省が指導する、行政指導をする、こういうこととか、あるいはいま住民の多様な学習要求があるわけでありますから、したがって、多様な社会教育施設の設置も望んでおるし、それにこたえながら自治体でやっておるわけですから、したがって、やはりそれだとするならば、そういう施設の職員を増員をするとか、あるいはまた資質を向上させるとかということが私は先決じゃないだろうか、こう思うのですが。そういうことはまだまだたくさんの穴があるのにまずそれはやらずに、まず社会教育主事を金をやって県から派遣をするんだと、こういうやり方は、私はさか立ちのような気がしてならぬのです。いま私が指摘をしたところの問題については一体どういうふうに具体的に今後やることなのかどうか、そこをお聞かせを願いたい。
  150. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 社会教育局の局長として仕事を担当いたしてみますと、ほんとうになすこと多く持っている力少なしという感じをもう痛切に持つわけでございます。したがって、その優先順位のつけ方については、先生のおっしゃる御意見も一つの意見だろうと思います。全く努力してないわけではございませんで、公民館が毎年二百九十五ぐらいずつ新設されてまいりますが、公民館を新設する場合は、必ず職員を配置するということを条件にしていただいております。したがって、毎年公民館の主事もその関係で三百人ぐらいずつはふえておるわけで、努力してないわけではございません。それからまた、図書館の司書等については養成のための大学もございますし、博物館の学芸員の資格取得などについても、私どもも努力をしておるところでございます。ただ、私自身その優先順位につきましては個人の判断ではなくて、二年間審議していただきました社会教育審議会の答申の中に、公民館と社会教育主事の増員が当面の急務である二つの課題だという指摘がございますし、また、その社会教育主事に関する措置としても、派遣社会教育主事制度の具体化につとめてみろと、「派遣社会教育主事方式を勧奨すること」ということも具体的に示してございますので、学識経験者の二年間にわたる御判断でございますから、それに従って優先順位の選択をした次第でございます。
  151. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いまの局長お話を聞きますと、この審議会の答申とか中間報告尊重してこれを優先したんだと、こういう話ですが、しかし、この中間報告見ましても、先ほど申し上げた点も非常に重要だということは指摘しておるんですよ。私から見れば、文部省の都合のいいところだけつまみ食いをし、片っ方よりもこっち側のほうにつまみ食いして優先を持っていったと、こうしかこれは理解できないんですよね。それだけに何か――私がやはり社会教育という基本を踏まえた場合に大事なのは、そういう一番地域地域の基盤づくりが大切だと思っているだけに、非常にこの社会教育主事ということに力点を置いて、そうしてしかも派遣主事というやり方から見ると、何か戦前の社会教育主事というか社会教育あり方国民教化主義へあと戻りしていっちゃうのではないだろうか、こういうやはり疑念を率直に申し上げて持たざるを得ないんです。これはもうあなたが一番造詣が深いわけですけれども、戦前の社会教育主事だって大正九年に置かれている。しかも、これは当時の大正デモクラシーの対応策として、やはり一つの思想善導策としてこれがそもそも持たれたということは大体明らかなことなんですね。その後のいろいろな情勢をこう見てみても、府県一名の社会教育主事が大正の末期には郡市にどんどん上から任命されて持っていく、あるいはそれが昭和に入って待遇改善をやると同時に、いわゆる昭和四年の教化総動員とか昭和十四年の国民精神総動員、これと密着に結んだところの形で、たとえばその後の社会教育主事選任が百六十一名とか主事補が五百十名もふやされて、やがては社会教育教化委員とか、あるいは社会教育委員というのが相当ばらまかれて、非常に日本の戦争協力体制の中で大きな役割りを果たしていったというこの派遣制の方式をやっぱり振り返らざるを得ないのです、歴史のあとを。したがって、私から見れば、先ほど申し上げたところの問題点が相当努力されて、あるいはそれと並行しながらやっておられるというんならいざ知らず、何だか派遣教育主事というのがばかんとこう出てきているだけに、これはいわゆる時代も違うんですけれども、何かまた昔の教化主義、国民の教化をするための社会教育が使命だというような方向にいきはしないだろうかという危倶を持つんですよ。そういう心配がないとあなたがはっきりおっしゃっていただければけっこうですけれども、その任命というのですか、派遣社会教育主事ということだけがぐうっと正面に出ておるだけに、その疑念が一向払い切れないのですがね。その点はどうなんですか。
  152. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 一つだけお断わりしておきますが、先生が社会教育審議会の答申とおっしゃっているものと、私が言うものとが違っておるようでございますので……、私が申し上げているのは、四十六年のものでございます。四十六年までに二年間審議していただいて非常に長文の答申をいただいたわけです。その長文の答申の一番最後のほうに、当面の二つの課題として公民館の主事と社会教育主事の充実のことについて触れてある。そうして社会教育主事の充実の方策については方向だけ示してあって、まだこまかなことが示してございませんでしたので、四十八年に至りましてあらためてまたその細目について大臣から諮問をしていただいて、審議会で答申していただいたと、二段に分かれておるわけでございます。  それから次の御指摘でございますが、現在の時点で戦前の教化主義の時代の社会教育に返るんじゃないかという危倶を持つという先生のお話でございますが、全く私も危倶じゃないかと思います。先生少し御心配なさり過ぎているのじゃないかというような気持ちであります。というのは、たとえば小中学校の先生が八十五万人、社会教育の関係ではいまやっとすべての職員を集めて三万人でございます。その中に市町村に人が足りません。現在、三千数百の市町村がある中で社会教育主事が二千人しかいないわけです。その二千人の社会教育主事のところに七百五十人加えたからといって、それが直ちに戦前の教化主義時代に返ると推論をされるのは少し危倶され過ぎているのじゃないだろうか。私どもとしては、現在の生涯教育という時代に、従来よりも社会教育の比重が増してきた時代に何とかして少しでも人を増員して、そうして実際上の社会教育の世話役をふやしたいという気持ちで一ぱいでございまして、決して危倶なさるような事態には持っていかないつもりでございます。
  153. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 心配は要らないと、こういう話ですけれども、なるほどことしの予算はそれは七百五十人ですか、けれども、これはおたくの五カ年計画を見ると、三千名でしょう、五カ年後にはね。そういうふうにずっと広げていくところの五カ年計画のまず第一段階だと、こういう説明をされておる。しかも、これが私は社会教育主事を派遣することによって地域の市町村の社会教育主事をうんと増設をするところの大きな呼び水になって、いわゆる一時的、誘導的なこれが措置であるというならわかりますよ。しかしそうじゃないわけでしょう。これは先ほど申し上げたところのおたくの問答集を見ても、いや、そうじゃないと、今回の措置は市町村教育委員会主事の給与費の国庫負担制度のできるまでの経過措置か、また、社会教育主事未設置の市町村が解消すれば、この制度は廃止をするのかと、こういう設問をして、いや、そういうものじゃないと、この制度は未設置市町村の解消だけではなくて、社会教育自体の資質の向上を期待しておるから、未設置市町村が解消されたといってもこの方針だけは変えないんだと、こういういわゆる二本立て方式を一応しながらも、いわゆる派遣制にこれは市町村の今日のやはり実態から見れば非常にウエートが置かれているということは、これは趨勢としてはっきりしておるわけなんです。そういうような点から見れば、これは私どもの経過措置でございまして、とにかく市町村を充実するところの問題、また、市町村を主体にするのがほんとう社会教育なんですね。それならば私は理解できるのですよ。しかしながら、そうじゃないというお答えをこの問答方式からお考えになる。しかも、五カ年計画で三千名になる、当初のころは六千名という構想もあったみたいだったけれども、これは半々だというかっこうになっていますからね。そういうような点等を考えると、これは教化思想にまたあと返るんじゃないか、そんな心配は要らないと、こう言われたってこの運用いかんでは、これはやはり社会教育あり方一つの私は問題点になっていくと思う。だから私から見れば、一つの曲がり角にきているぐらいに非常に重要にこの派遣制度の問題は問題だとこう思っておるのですよ。それで、先ほど来からそのことを心配ないかと、非常に疑念を持つのだがと、こういう指摘をしておるわけで、したがって、あなたがそういう心配はないんだと言うならば、やはりあくまでも社会教育というのは、先ほど来この基本からそれぞれ確認をし合ってきたような立場に踏まえたところの市町村のやはり単位の社会教育主事なり主事補を充実をしていくところが基本なんだとこの点だけははっきりさしといていただかなきゃ困ると思うのですが。そこはどうなんですか。
  154. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 終局の目的は、まさに先生のおっしゃるとおりのことでございます。市町村の社会教育の世話役を充実していきたい。しかも、専門的な素養のある人、できるならば一生社会教育の仕事をやっていただけるような人、そういう人を充実したいということでございます。おそらく、この派遣社会教育主事制度というその「派遣」ということばが目新しいことばでございますので、制度自体の内容よりも、ことば自体が持っている印象といいますか、あるイメージを人人に与えてしまうんじゃないかと思います。これは県と市町村とが契約をいたしまして、市町村が求めた場合に県が市町村に派遣をする、派遣をされた職員は県の職員と市町村の職員との身分をあわせ持つわけでございます。そして市町村教育委員会の指揮監督に服するわけでございます。したがって、終局のねらいは、先生のおっしゃいましたようなことになるわけでございまして、かりに三千名にふやしたといたしましても、なお市町村の任命にかかわる、市町村が従来から持っているような職員三千名、合わせて六千名、三千有余の市町村に、一市町村あたり二人の世話役がいて、それはささやかな人の充実ではないかというのが私の感じでございます。
  155. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それで、私はいま答弁があったのですが、しかし、いまあなたのお話によっても、あるいはここで非常に強調された、「求めに応じて」やるんだから非常に押しつけじゃない民主的なんだと、だから求めなければいやだったらいいじゃないかと、こういう居直ったものの考え方が一貫されておりますけれども、しかし「求めに応じて」云々という条項があろうとなかろうと、現実にこのおたくの資料にも出ておるように、一万人以下の町村で四割、一万人以上の市町村で約一割が未設置だというような状態、しかも、この人件費もという考えがあれば、これはもう飛びついてくるということはこれははっきりしていますよ。だから先ほどいろいろな条件は確かに付してます。しかしながら、私がやはりここでふしぎに思うのは、それならばあなたが局で最初考えられたところの法律改正ですね、いわゆる半額国庫のこの県費のあれを考えた場合には、非常に用心深く市町村の内申をもって、待って派遣をするんだと、こういうやはり規定づけを明確にして、押しつけでないような形でね。言うならば、やはりだれを派遣してもらいたいという人選については、少なくとも市町村にイニシアがあったわけです。しかし今度のものは、おたくから出たところのモデル規則を見ましても、これは全然ないんです。これを見ますと、たとえばモデル規則の第二条は「申し出た場合において、必要と認めたときは、」派遣をする云々と、言うならば非常に尊大に、おおようにかまえておるのですよ。しかしほんとうに申し出、求めなければいいじゃないかということじゃなくて、ほんとうに地域住民に密着し、住民の意向に沿ってやるというならば、なんでこの際にもこのモデル規則にもいわゆる派遣の人事については市町村が内申をしてきた場合に、そういう趣旨をやるのだという、そのことを考えないのかどうか。したがって、これは何か前と違っておらぬようにして非常な違いを持っているだけに、この派遣のしかたというものは非常に問題があるのじゃないかと勘ぐりたくなるのですよ。その点は条文にないけれども、ほんとうに内申を待ってというものと実質変わらぬようにやるとでもされるのですか。それともこのモデル規則をそういう方向へでも改めて、危倶を残さぬようにされる意思はございませんですかどうですか。
  156. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) まあ、その辺まで至りますと、ずいぶん誤解されちゃったのじゃないかなという気が、心配が起きてくるわけでございますけれども、これは市町村の社会教育主事を充実するためにいろいろ考えていって、現在としては、その方法が一番いいであろう。社会教育審議会の答申にもあるしということで考えた制度であります。そして市町村の教育委員会から、ほしいと言って県へ希望が出た場合に、県のほうで選んで職員は派遣する。その場合は、もちろん両者の協議でございますから、県と市町村とが十分協議をして人選もきまるわけでございます。したがって、そういうことを考えておりますと、内申を待ってというのと、そう実質的に変わるはずはないのだがなという感じがいたします。モデルの規則案でございますが、これはそれぞれの府県でおきめになることで、これをいまさらその部分についてその部分だけを変えなければならないような必要性は感じません。
  157. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは前、おたくのほうが法律改正を考えたときに現実にあったから、それと今度変わっているだけにそう思われたってしかたないでしょう。前の市町村のあれは廃して県費で半額にするというときには、人事の問題についてはちょうど一般の現在の教職員と同じような処置をするのですよと、こういう解釈をしている。今度は姿を消しているのですよね。それだからいよいよ派遣社会教育主事とは何ぞやと、いよいよこれは一つの教化思想というあと返りのあれが魂胆にあるのじゃないかと勘ぐられたってしょうがないじゃないですか。前は何もなかったところに単に出ているというなら私は話はわかりますよ。それは協議だからそういう心配は要りませんと、しかしながら、少なくとも一年前にはそういうことを考えられたところの皆さんが、今度はそういうことをみなこれはきれいに消している、こういう点から見れば、これは考えるなというほうが無理じゃないですか、あんた。じゃその協議だということだけれども、実質そういうふうに行政指導されますか、どうですか。
  158. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 前年度は新しい制度をつくることでございますし、複雑な制度にするよりも小中学校の先生と同じ身分、取り扱いにするといったほうがわかりがいいであろうということで、小中学校の先生の身分取り扱いと同じにするような発想をしたわけでございますが、それでは社会教育の本質や実態から離れてしまう。県の小中学校の先生は、その学校教育という特別な人為的な教育環境の中で教育するわけでございますが、社会教育はもっともっと住民に密着したものでなければならぬというようなことで、いろいろ討議してみますと、前年度の発想が不十分であった。あるいは間違っていたということに気がついて、四十九年度の発想をしたわけでございます。したがって、四十八年度がベストであって、それを悪く変えたということではなくて、四十八年度が社会教育の本質から照らして間違いであるということを気づきましたので、派遣制度へ切りかえていったわけでございます。派遣制度の場合は、都道府県と市町村が協議して何もかもきめていくわけですから、協議してきめていくということは、両方の主体性を尊重することであって、それでよろしいのじゃないだろうか。何か悪いところがあるのかしらという感じでございます。
  159. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それは逆じゃないですかね。私は、いわゆる学校教育を受け持つところのことでさえも、地教委の自主性というものを尊重して、それでやはり内申を待っていろんなものをやるという趣旨――社会教育ということであれば先ほど来あんたと全く意見を同じにして、あるいは本法の趣旨から見て、これは地域住民が主体的に自主的にやるのを手助けをしていくのでしょう。そうすればするほどその人の問題についても、こういう人、あの人がほしいというやはり意見を内申をさせて、それに沿ってやるというのが社会教育の趣旨からいえばきわめて当然なことじゃないですか。あなたのいまの話は四十八年のものはベターじゃないので、いまからのがベターだという話ですけれども、あのときのこの精神が、私は一番社会教育法の精神に沿っていると思うのですよ、この問題では。それは、無理にあなたそうやろうたって、だれもそりゃ理解しませんよ。したがって、少なくとも私は、やはりこの協議というものの中身はそういうことにして、地域のやっぱり地元で歓迎されないところの主事というのは何も入り用ないんですから、これは。これは学校の先生でもなお大事なことなんですから。そういうことになればなるほど、その問題は、私は基本的な問題の一つだと思うんですが、そういう方向に指導する意思はありませんか。それはどうですか。
  160. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 両者が十分協議して人選をしていただきたいとお話をしてきたわけですから、いまからそういう趣旨で指導するというよりも、いままで話し合いの中で先生のおっしゃるような趣旨で話をしてきたと思います。
  161. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは、しかし、あなたそうおっしゃるけれども、このモデル規則を見てごらんなさい、第二条を。「社会教育主事の派遣を申し出た場合において、必要と認めたときは、社会教育主事を派遣するものとする。」と、おまえたちが言うてきたら派遣するぞと、こういうやっぱりものの発想ですよ、率直に申し上げて。金はわれわれが持っているのだからと。少なくとも私は、先ほど来何回も言うように、学校教育の中においてさえも、この内申権というのは重要なのに、事社会教育の問題で何であなた固執されるか私はほんとうにわからないのです、率直に申し上げれば。あなた、特に社会教育はもうベテランでもあるし、非常に理解のある方だと、私は尊敬しているだけに、何でこの問題を固執されるか率直に申し上げてわからぬです、これは。少なくとも、そういう心がまえというものがなければ社会教育はうまくいきませんよ。君らは金がないだろうから、うちにちゃんと置いてあるから、それを使えという、こういうことでは、私は、ほんとう意味社会教育は育たないと思うだけに、この問題をしつこく、これはあなたに、指導の心がまえとして、そういう指導をしてもらいたいと、こう申し上げているのですが、それはどうなんですか。
  162. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 指導の心がまえとしては、まさに先生のおっしゃるとおり考えております。
  163. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 時間もたちますのではしょりますが、次に派遣制度の期間の問題ですね。これ、モデル規則の第六条は「〇年」とありますね。しかし、この文章のニュアンスは常識的には二年から三年ぐらいだと、こういうふうに受け取れるのですよ、「〇年」とすると。しかも、おたくのこの資料の中にありますところの、現在県費の派遣制度をとっておるところの十八県の派遣期間というのがありますね。これはその十八県の半分が大体一年から二年なんですよ、報告にも出ておるように。そういうような短い期間で、一体、先ほど来あなたが、そういう心配はありません、こういうことでやるんですと言われたところの社会教育主事というものは地域に行って仕事できるだろうかどうだろうかと、こう私は非常に疑問を持ちますよ。したがって、一体、あなた方派遣の任期というものについて、大体おおよそどれぐらいが常識だという考え方で、こういう指導をされるのですか。
  164. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) この参考となる教育委員会規則案を示しましたときに、派遣の期間を「〇年」といたしましたのは、文部省としては特にこのことについて見解を示さないという意味で「〇年」としたわけでございます。というのは、地方自治体の県と市町村が協議をするわけですから、この年数は、両自治体の協議にまかせてよろしいんではないかと判断をしたからでございます。ですから、文部省の公式的な態度としては、ここのところは、それぞれ協議にまかすということであります。私としては、なるべく長くつとめていただいたほうがよろしいという願いを持っております。それは、社会教育がいまよりも一歩でも二歩でも専門化する必要があるからと思うからです。しかし、現実の問題は、派遣社会教育主事の人的なソースとして学校の先生に多くを期待しなければならない関係上、当分の間、すぐこの期間が従来の実験的に行なっておりました期間よりも長期的に変わるとは思いませんけれども、しかし、今後の教育体制のあり方あるいは社会教育の振興の機運とともに従前の期間よりももっと長くつとめていただいて、専門的な資質を持って仕事をやっていただきたいと願ってはおります。現実の動きは遅々たるものではなかろうかという感じもいたします。
  165. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、相当長期にその地域に残っていただくような社会教育主事を望んでおるんだと、こういうように考えていいですね。それが、ある一部には、いや、二、三年が限度だろう、ただ、その辺をくりくりくりくり回るから十年ぐらいなんだと、こういうような腹じゃないだろうかと、こういう言い方もあるんですけれども、少なくとも、文部省考え方としては、そこに、やっぱりその地域に腰を据えてやるのだと、五年、六年、十年と、それがこの「〇年」の趣旨なんだと、こういう理解のしかたでよろしいですね。そうなれば、やはり県に指導される場合も、この「〇年」の意味はそうなんですよという、私はやっぱし積極的な指導をしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  166. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) この参考となる規則案をつくりましたときは、それぞれの県と市町村の間には、それぞれの歴史考え方の相違や何かがございますので、そしてまた、私どもとしても、何年が適当であるというデータも持ち合わせございませんので「〇年」としたわけでございますが、今後、社会教育の振興をはかっていくためには、ほんとうにこの期間は相当長くあってほしいと願っておるわけでございます。したがって、いま先生のお話に出ましたように、一、二年あるいは二、三年でよろしいんだなどというような意見があった場合には、そうじゃなくて、もう少し腰を落ち着けて専門的に、地域の事情も知り、専門的な教育内容や方法についても視野を持った上で落ちついてやっていただけませんかということは、いろいろお話を申し上げたいつもりでございます。
  167. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それともう一つは、この派遣社会教育主事の選考の要件の問題ですが、この問答集を見ますと、「現に市町村教育委員会に勤務している社会教育主事を、その資質、長期勤続の希望等を勘案した上で、派遣社会教育主事として、当該市町村または他の市町村に派遣する場合もあろう。」と、こういう選考のあれですが、そうすると、どうも二本立ての考え方が、いわゆる派遣社会教育主事と市町村の社会教育主事というのにはランクがある、こう言わざるを得ないと思う、この選考の要件では。現在市町村につとめておる者でも、これは優秀な者は引き上げていわゆる派遣社会教育主事にするんだという、このものの考え方がどうしてもこの文章からは看取できるんですよ。そうすると、社会教育主事の派遣社会教育主事というのは、実質的には県から派遣された者が上位であって、市町村におるところの社会教育主事はその下に仕えるんだと、いわゆる平等の立場になって一緒に力を合わせてやるというのじゃなくて、上下の関係のように、これはたとえば、福井県あたりにはもうそういう事例も出ておるんですから、そういうような形を奨励をされるところになりはせぬかという危倶さえ私は持つ。危倶と申しますよりは、事実こういう文章表現ではそうなると思うんですが、私はこれは間違いだと思うんですよ。そんなに優秀な市町村の社会教育主事がおれば、さらにいろんな講習をいろいろ受けさして、さらに資質を向上させていく、その人々を主体にして、あわよくば市町村には派遣主事はおらないぐらいに、市町村に自主的に社会教育主事を二人も三人も置かすという、指導するという方向こそが社会教育あり方から言って私は本体でなければならぬと、こう思うんですが、そこはどうなんですか、この書き方は。
  168. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 私は、いずれが優秀でいずれが劣っておるという考え方はいたしておりません。それぞれ長所、短所があるのではないかと思います。ただ、先ほど引用されましたが、現在市町村の社会教育主事であって一生長く社会教育主事として仕事をしたい人は、派遣社会教育主事に切りかえてもよろしいという趣旨は、村から町へ、あるいは市へ転任することによって、長い間社会教育主事の仕事に従事できるからでございます。そうでなければ、市町村役場の人事の一環として他の部局へ移されてしまうことがあるからでございます。なお、先生が言われましたように、市町村に腰をおろして、五年でも十年でも、あるいは教員と同じように三十年でも同じ市町村役場の市町村教育委員会事務局につとめれば、なお地元に通暁して専門的になるんじゃないかというお考えでございますが、それはそれなりに理解はできますけれども、それによって本人もまわりもあきてしまう、あるいはあきられてしまうというようなこともございますので、ある所定の期間つとめた場合は、他へ転任をして、気分を刷新し、前任の地域での体験を生かしてまた新しく何か仕事をしてみるということもまたよろしいんじゃないかと、考えております。
  169. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 あなたのことばじりをとらえるわけじゃありませんけれども、それならば、長くつとめたところの市町村の社会教育主事が他の地域に行ってまたやりたいという意向のある場合には、その資質とか長期勤続の状況を見て県費のものに切りかえることもあり得ますよというならわかりますよ、それはすなおに。でもこれはそうじゃないでしょう。当該市町村または他の云々という御丁寧な解説なんだから、これは実際の現場におる者から見れば、ははあ、やっぱり上から来る人は得らいので、われわれは抜てきされるというかっこうになるのかなといったような、市町村の社会教育主事の位置づけというものには、そういう上下関係ができてしまうじゃないか。現実に県費派遣の例の中には、課長呼ばわりされておる人もおるんですからね。給与が高かったりなにかするものだから、県費のほうが給与がいいものだから。それをますます私は助長する形になるんじゃないだろうかと、こう思われてしょうがないんですよ、卒直に申し上げて。だから、そういうことはないんだということならば、そういう筋に私はやっぱり指導の方針をきちっとしておいてもらいたいと、こう思うんですよ。  時間もありませんから結論を急ぎますが、あと二つだけ。  一つは、学校教員からの社会教育主事への採用がきわめて多いんですね。これは、もらったところの資料を見ても、十八県のうち十三県が資格として公立学校教員であることと、こういうのがあげられておりますね。私は、これが正しいのかどうかと非常に疑問を持つのです。学校教育をつかさどるところの教員は、教員としてのやっぱり独特のこれは仕事の内容と任務がある。しかしまた、社会教育というのは、即学校教育と同じような条件ではないと思う、先ほどから論じられておるように。そうするなら、むしろ私はやはりこの社会教育主事というのは、いわゆる大学でこの単位を取った人とか、あるいは現につとめておるところの人で主事補とかなんとかいう人をやっぱりすくい上げて、それに受講させて資質を向上させていくと、こういうことをやっぱり主体にしなければならぬのに、非常に便宜的に、学校先生方を採用していくという傾向のあるこの社会教育主事の任用のしかたというのは、非常に問題があると思う。しかも、またこの十八県のうちの四県あたりは、その派遣社会教育主事の事後措置としては、管理職に採用しますと、こうちゃんとなっておるわけです。言うならば、校長や教頭になる一歩手前の人を社会教育主事として二、三年仕事をさせて、そして社会教育主事を、一応それは大過なく、でしょうね、つとめたから、次は管理職にしますというシステムのところもあるんですよ。私はこういうやり方は、むしろ社会教育あり方を侮辱をするものと思うんですよ。もちろん、人を現実にはなかなか得にくいという点もわかりますよ。わかりますけれども、この方針は私は間違いだと思うんですが、どうなんですか。
  170. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 教育の原理として、学校教育社会教育が水と油ほどに違うはずはないと思います。ですから、人間をつくっていくといったような意味では、社会教育学校教育がさい然と分かれているというのではなくて、もう少し、有機的な連携を保ち、あるいはもう少し相互に入り組んでいるような関係の教育の体系ができることが今後の教育の体系のあり方としてよろしいんじゃないかと思います。そういう意味で、現在のところ学校の先生に、現実問題としてほかにソースがございませんので、社会教育主事の人的なソースをあおいでおりますが、確かに先生のおっしゃるように、これがベストではないと思います。社会教育について、専門家を養成する大学のコースもあるわけでございますから、そういう人人がもっとすなおに入ってきて、そしてその道で育っていくような体系があるとよろしいのですけれども、なかなか従来微弱に過ぎて、しかも土曜日、日曜日に働かなければならない社会教育世界では、なかなか人に来てもらえませんでしたけれども、漸次おっしゃるような方向へもっていくべく努力しなければならないと思っております。
  171. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 あなたのおっしゃっていることを聞きますと、前は一緒でなければならないと、こうおっしゃったかと思うと、あとは、いやそうじゃないのだと、一応本質的には、その専門の人をつくっていくが、過渡的な措置としてやむを得ない措置なんだというふうにも理解されるんですが、一体どっちが本音ですか。何も私は先ほどから、学校教育社会教育は油と水だと、こう言っておるわけではないんですからね。それぞれ特色があるんだからね。そこでどっちなんですか。
  172. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) それぞれの特色を生かしながら、しかも、学校教育社会教育相互にもっとうまく連携できるような関係であってほしいと申し上げておるわけでございまして、ただ前段のほうのことばがあるいは誤解を受けたかもしれませんが、学校の先生というのは、教育一般について四年制の大学で勉強してきて、そして教育一般についての深い素養を持って、しかも、数年の間あるいは十数年の間、教育の実践を経てこられた方々でございますから、社会教育の道へのオリエンテーションをうまくすれば、うまくつとめていただけるんじゃないかということを期待をしておるということを申し上げたかったわけですが、やや表現が悪くて誤解をされたことはおわびをいたします。
  173. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 転用には非常に便利だし、平たなことばで言えば、大体こなせると、それはわかるんです。しかしながら、やはりあり方の問題として、もしそのほうが好ましいなどとなると、非常に安易に学校教育の管理職の登用門としてこれはますます活用されていくという役割りしか私は率直に申し上げて果たさなくなると思う。現に昭和三十七年に、この九条の二の問題に関連をして、下松市からの質問に対しては、文部省は、好ましくないと、こういう答えを出しておるわけですね。私はやっぱり文部省自体も、ダブるということはなくて、ほんとう社会教育というものを振興させ、主事を育てていこうとするならば、別途の任務を持たせたほうがいいと思うのですよ。したがって、そういうことだと思ったから、これは去年の九月五日でしたか、毎日新聞の記事に、「文部省は校長、教頭一歩前の人を教員から大量に採る意向である」と、こういうように記事が載っておったんですが、これは間違いですね、どうですか。
  174. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 社会教育審議会の中間報告にもございますように、現実の問題としては、教職員にソースを多く得なければならないと思っておりますが、それでもなお、中間報告に書いてございますように、社会教育団体のリーダーとして長い実績を持つような人、あるいは市町村の社会教育主事として実績を持ち、長く社会教育主事として勤務したいという希望を持っているような人々、そういう人々を多元的に派遣社会教育主事の人的なソースとして得たい、なるべくいい人にたくさん来ていただきたいというのが念願でございます。したがって、何新聞とおっしゃいましたか、その新聞に掲載されたようなことを言ったり、発表したりした覚えはございません。
  175. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ですから、私も教職員から一人も採るなと言っているのじゃなくて、教職員でほんとう社会教育に今後はうんと全力を尽くしたいというなら、私はそれは歓迎なんですよ。けれども、校長や教頭になるための一つの手だてとして、ちょっと二、三年ぐらい社会教育主事をやって箔をつけてなるというシステムですよ。現に十八県の中にたくさんあるでしょうが。そういうようなことでは、これはもう社会教育の本旨から見てもおかしいから、これは少なくとも、社会教育主事というものは、こういうのが本体なんだという線をあくまでやっぱり文部省はきちっと示してもらいたいと思うのです。  なお、関連して最後にお尋ねをしたいのは、社会教育指導員の問題なんです。これは九割近くが現実の問題としては退職校長、教員ですね。率直に申し上げて、地域であまり評判よくないのですよ、私の知っているところ。それはなぜかというと、やっぱり校長さんが長年学校の先生やっているものだから、先生ぐせが出て、常に教えるという立場に立ってすぐ説教が先に出てくるというのですよ。やっぱり学校の先生を長年やっているからそういうくせつきますね。そういうので、これはちょっとやっぱり評判は大かたの場合悪いですよ、関係者から聞くと。しかし、私は、だからそういう意味では他に人材を求めるところの方法はないかどうか。もちろん、これは任期は一年だとか、三年間まではよろしいというあれだとか、あるいは、手当てが少ないわけですね。今年ようやく一万四千円になったわけですか。三分の一、三分の一、三分の一だからこれは合わせても四万二千円ぐらいしか出てこぬわけですからね。ですから、ほんとうにこの社会教育指導員というものを、人を育てていこうというなら、過渡的な措置としてはわからぬでもないですけれども、これは私は、やっぱり重要な役割りをするだけに、この問題を、ただ便宜的な方法をとらないで、もう少しやはりどういう人を入れたほうがいいか、これに対するところの財政的な裏づけはどうすればいいかと、こういう問題を検討するところの私は時期に来ておるのじゃないだろうかと、こう思うのですが、局長はどう考えますか。
  176. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 昭和四十九年度で社会教育指導員が発足してから三年目になります。一年目の成果、二年目の成果等についていろいろ実態をまとめてみておりますが、私の記憶が正確でないかもしれませんけれども、先ほど九割が校長とおっしゃいましたけれども、最近では七割ぐらいになっていると思います。主婦とか青年団長をやった方とか、いろいろな方々がだんだん三割近く入ってきていただいて、だんだん多彩になりつつあるような感じがいたします。  それから先ほど言われました、元校長という方がどうも説教癖が多くて困るということもしばしば聞きます。何か学校の先生を長くやると、どっか一つのタイプができて、そして住民の希望をくんで学習を組織化していくという社会教育の手法になかなかおなれになれない。そこで、相当脱皮していただかなきゃならないのに、脱皮のできる人とできない人がいて、好評の方、悪評の方がある、そういうようなところを今後改善をしていかなければならないわけですが、先ほどから申し上げておりますけれども、いかんせん乳幼児教育から青少年教育、成人教育、高齢者教育と、非常に幅の広い世界に、非常に人が少ないわけでございますので、非常勤ででも、何とかして人に来ていただいて充実していきたいと努力しております、そのことはおくみいただきたいと思います。
  177. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 大臣に最後に、いろいろやりとりをお聞き及びだと思いますけれども、私は、やっぱり派遣社会教育主事の問題については、それは文部省としては最善だと思ってやられたかもしれぬけれども、私の指摘したような問題について、やっぱり現に、社会教育関係の仕事をやっておられるところの人々からも相当意見があるのです。したがって、やっぱり社会教育基本であるところの、社会教育というのは、地方の地域の住民本位で、その人々の自主性、自発性というものを、国なり地方自治体というものは助長していくというたてまえに立つところの原則だけは今後も貫いていただきたいし、そのための、まだ不十分な点の分野にも、また、今後積極的に文部省としてはやっていただきたいと、こう思うのですが、そこらあたりについての文部大臣のお考え方を聞いて、私、終わりにしたいと思います。
  178. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) たいへんごもっともな意見だと拝聴しておりました。地域地域の実態に応じた総合的な活動ができるように、派遣社会教育主事も活用していかなければならない、そういう配慮が特に大事なことだと、こう思っております。
  179. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 終わります。
  180. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 委員会を約十分ほど休憩させていただきます。    午後四時七分休憩      ―――――・―――――    午後五時十分開会
  181. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、教育文化及び学術に関する調査中、文教行政基本施策に関する件を議題とし質疑を行ないます。  質疑のある方は御発言を願います。
  182. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 最初に、学校給食の問題について、先ほども宮之原委員のほうからも質問が出ておりましたが、一部ダブる点があるかもございませんが質問いたします。  値上げが各地で実施されておりますが、その実態は文部省で掌握をされておりますか。
  183. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) まだ新学年になったばかりでございますので、多くのところではパンの値段、牛乳の値段等の交渉をいたしている最中でございます。一部にすでにきめたところもあるようでございますが、新学年になりましていろいろ給食用の物資が上がっておりますので、多くのところで相当程度の値上げという問題が起きると思います。
  184. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大体、これはいつごろまでにまとめられるおつもりですか、この値上げは。
  185. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) そういうわけで、大体今月中にはほとんどの市町村できめると思いますが、中にはもう少したってからきめるところもあるようでございます。例年五月一日現在で給食のあらゆる面につきまして実態調査をいたしております。それはやろうと思っております。その前にできましたら抽出でもこの値上げ問題につきましては調査をいたしたいと思っております。
  186. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 また、結果が出ましたら御報告を願いたいと思います。  で、値上げのおもな原因は原材料の高騰であることはもう論をまたないわけでありますけれども、これに対して文部省としても対策費は一応計上されております。この四十九年度に計上されました予算が合計で三億円に満たない予算になっておりますが、これは非常にこういった時代で私は少ないと思うんですが、まず対策費は何と何と何に幾らですか。
  187. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 学校給食関係の予算は約百三十億円程度になっておりますが、物資に直接関係いたします予算でございますが、一つは、給食用パンのための小麦粉の流通経費の、供給事業費補助といっておりますが、流通経費の補助が十一億五千万円ございます。それからできるだけ各都道府県の学校給食会が物資を一括購入いたしまして安定した価格で供給できるようにという趣旨で、一つにはコールドチェーンの整備、それから学校給食総合センターの整備、保管物資を持ちました総合センター、それからもう一つには、野菜あるいはくだもの等の生鮮食料品、その他につきまして産地直接取引あるいは契約栽培等によりましてできるだけ安く買い入れる、そのための調整基金といいますか、そういう調整基金を設けていただくための補助、そういったものがございます。それが、コールドチェーンの整備は本年度予算は約五千万弱であります。それから総合センターの整備が本年度予算は七千万強でございます。価格安定のための調整基金の設置の補助が一億六千万、それから要保護、準要保護児童生徒につきまして、市町村と国で公費で全額を援助する、その予算が約四十三億だと思います。大体大ざっぱに申しますと、そういうようなものになっております。  なお、これは農林省の予算になっておりますが、学校給食用の牛乳につきまして二百cc当たり五円八十銭の補助をいたしておりますが、その予算が約百七十二億円でございます。それからなお給食用のパンのための一番もとになります食管特別会計から売り渡していただきます原麦の値段を九月まで据え置いていただくことになりましたので、そのために政府から食管特別会計に十八億円の穴埋めをいたしております。
  188. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまいろいろ言われましたが、今年度の学校給食費としては昨年より減っておるわけですけれども、これはどういう理由ですか。
  189. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 学校給食関係の文部省関係の予算は、昭和四十八年度が百十一億七千三百万で、昭和四十九年度が体育局所管の分が百十三億七千万でございまして、ちょっと減ったかっこうになっておりますが、これは学校栄養職員の市町村に対する補助金を本年度から切りかえまして県費負担の教職員にし、義務教育費国庫負担の対象にするということで、初中局のほうの予算に移管がえをいたしましたために表面はそうなっておりますが、それを入れて考えますと、百十一億七千万、この中には栄養士の補助が入っておりますので、今度、国庫負担の対象にいたしました額を入れますと百十一億七千万が百三十五億四千五百万ということで、約二十四億の増額になっておる次第でございます。
  190. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、ちょっと確認しておきたいんですが、四十八年度に出た予算要求額事項別表とそれから四十九年度の予算要求額事項別表は、学校給食の項目を見ますと、かなり違うわけですね、中身が。項目の立て方が。四十九年度では学校給食の整備充実ということで四十六億九千百万、前年度当初が三十八億七千九百万で、八億千二百万の増加と、これだけ見ますと、えらいふえているように思うわけですね。今度予算書全体は学校給食費が、この予算書の中では、いま言われた数字ともちょっと違うわけですよ。七十一億ということになっております。七十一億六千四百四十四万。前年度が七十七億と、こういうことで五億八千五百万のマイナスと、いま言われたのは百三十五億とおっしゃいましたね。こういうようなことで非常に立て方が違いますし、この予算要求額事項別表というのはそもそもどういうことなんですか。たとえば四十九年度に重点的にやるものだけを並べてあるのか、非常にちょっとずさんな感じを受けるのですね。
  191. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) たいへんおわかりにくくて恐縮でございましたが、学校給食関係の予算は、先生がたしかごらんになっているのでは、初中局の要保護、準要保護児童生徒の補助金、これは学校給食以外にも、修学旅行、学用品、そういったものがございまして、そちらのほうにこの要保護、準要保護の給食関係の四十数億がそちらに入っております。そういうことで、そこで学校給食と銘を打っているところにはそういうのが入っておりませんので、先ほど私が申し上げました学校給食関係の文部省の予算は学校栄養士の負担金を含めまして百三十五億になるわけでございまして、それがそういう初等中等教育の助成費とか学校給食の普及とかということで、学校給食関係も初等中等教育助成費のほうに準要保護などは入っておるという関係でそういうことになってきまして、おわかりにくくて恐縮でございましたが、まとめますと先ほど申し上げたような数字になるわけでございます。
  192. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 予算書を見てもややこしくてしようがないですよね。初等中等教育の充実の中に出てきて、しかも四十八年度は非常に項目がたくさん並んでいるわけですね、四十八年度は。四十九年度はもう学校給食施設設備の整備、それと学校給食用の小麦粉の供給事業費補助と、それしか入ってない。四十八年度はかなりたくさん入っておるわけです。学校給食運営体制の整備というのから始まりまして、かなり――準要保護児童生徒等援助、これも入っておりますし、大体かなりの項目があがっているわけです。それから、いま言われたその百十一億、百三十五億ですか、それはいわゆる総予算、一般会計と特別会計の文部省の出してきた予算書ではいま言った七十一億六千万ですよね、ここに出ておるのが。そうしますと、一々全部計算してやらないと出てこないと、非常に見づらいわけですね。だからこちらの総予算書の場合は、これは項目が大体年度できまっておりますから、これはある程度しようがないかと思いますけれども、少なくも実際は私たちがよく見るのはこれですから、この辺はひとつもう少し合理的に整理をしていただきたい。まあ、本年度これ、もうできちゃったものしようがないですから、来年度からきちんとしていただきたい。
  193. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) まことに御説ごもっともだと思います。実はそういう初等中等教育助成費の予算項目でございましても、そこにあげておきまして、さらにそのあとのほうに学校給食の普及充実というところに再掲――再び掲げるということであげまして、そういうふうに学校給食関係を、前に出ておりましても、さらに再掲をしてつくるというのが親切でわかりいいと思うわけでございますが、ことしは会計のほうで少し重点的に整理をしてしまったようでございますが、来年つくるときは、文部省として、そういう点に留意してわかりやすいようなものにすべきではないかと考えております。
  194. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それで、次に、この学校給食費の全国の大体合計は年間約三千億円といわれておりますが、実際私は、先ほど局長さんはだいぶいろいろなことを入れられましたが、具体的には私は学校給食用物資低温流通化促進、いわゆるコールドチェーンと、それから総合センター、それから物資の流通改善対策費、この三つが柱だと思います。そうしますと、先ほど申し上げたように三億円に満たないと、全体の〇・一%の額しかないと、こういうことになっておりますので、その点でまだまだ非常に少ないのではないかと。しかも、これがどれだけの効果が実際にいままであがったかということは、いわゆるその効果測定というのは非常にむずかしいと思いますけれども、されたことがあるのかどうか。また〇・一%ではなくてもっとこれをふやすという点をお考えになっておるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  195. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 先ほど三つ申し上げました中の価格安定調整基金でございますが、これはいままでに二十県がすでに調整基金を設けて実施いたしております。その実施いたしました県で具体的にその効果等を調べておりますが、大体同じ物資につきまして市販の価格よりも二割から三割安く供給ができておる、そういう資料を持っています。なお、日本学校給食会におきましても安定基金を設けて一部の物資を扱っておりますが、これも大体同程度の安い価格で供給できるということをつかんでおります。
  196. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 学校給食は、全国民が消費する食糧の大体どれぐらいと計算されてますか、何%を占めるか、これは大ざっぱでいいです。
  197. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 給食は御承知のようにパン、ミルク、おかずと、まあ米飯でもよろしいわけでございますが、パンにつきましては大体二割、それから牛乳につきましても二割が給食で使われているという推定をいたしております。おかずに関しましては、ちょっとこれは非常にそういうあれがむずかしゅうございまして、的確な推定はいたしておりません。
  198. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあ、かなりいま言われたのでは多いわけでして、そういう意味ではかはり大量と考えていいと思います。したがいまして、これに対して流通機構の整備というものがもっと改善されたならば、かなりこういった諸物価高騰に対する値上げを押える、こういうふうなことがかなり努力においてできると思うんですけれども、その点についてはどうですか。
  199. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) まことに御指摘のとおりだと思うわけでございまして、コールドチェーンは昭和四十二年度から、総合センターは四十六年度、安定基金は四十六年度から始めたわけでございますが、その効果は非常に著しいものがあると思います。ただ、残念ながらこの給食につきましては、そういう面につきまして県によりまして非常に御熱心なところと必ずしも従来はそうでないところの格差が非常にございます。私、文部省といたしましては将来やはり、国の段階で一括購入をするのに適した物資は日本学校給食会、県の段階の物は県の学校給食会、それから市町村の段階でございますが、現在約三百の市町村で市町村の学校給食会がございますが、現実にはほとんど多くの学校では学校が業者から物を購入いたしておるわけでございます。それから給食費なども学校が徴収いたしておるわけでございますが、やはり将来のあり方といたしましては、市町村なり郡市単位に給食会みたいな公的な機関ができまして、そこで必要な物資を一括購入する、それから給食費などもそこで扱うということが適当ではないかと。現に市町村でもそういう空気が生まれておりますが、そういうようなことで日本学校給食会、都道府県の学校給食会、市町村なり郡市単位の学校給食会、こういったものを――日本学校給食会は現在法律の根拠がございますが、そういったものを将来でさましたら制度的に整備いたしまして、できる限り物資を市町村段階、県段階、国段階でそれぞれ適した物資を一括購入する、あるいは産地直結取引をする、そういう流通機構を整備する必要があるのではないかというようなことで、かねがね検討を加えておりまして、できましたら、そういう点も制度的な根拠をもちましてそういう整備ができないかということで、現在、具体的な検討をいたしておるところでございます。
  200. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま学校給食会の話が出ましたので、問題がちょっとはずれて恐縮ですけれども、私、資料いただきますと、非常に各都道府県でアンバランスですよね。特にこれは市町村の学校給食会設置状況でありますけれども、一番多いのが島根県の四十一、それから福岡県の三十五、それから大阪の二十六と。で、まだゼロのところもかなりあります、福島、栃木、千葉、新潟、和歌山それから高知、沖縄と。また一というところも何カ所かありまして、非常に一けたのところが圧倒的に多いわけでして、これいま言われましたが、そういう制度をきちんと整備をしてやると言われいますが、今後の重要な課題として具体的に検討をいたしておる次第でございます。
  201. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ちょっと戻りますけれども、先ほどコールドチェーンの話ですけれども、これも資料によりますと、大体四十二年度から四十四年までは予算も一、それから整備個所も一と、四十五年度では予算を三つ、三カ所つきながら二カ所しかでき上がらなかった、四十六年では四カ所の予算がついて整備が二カ所、四十七年度も四カ所の予算がついて整備は二つ、四十八年度は予算が三カ所、整備されたのが三カ所、四十九年度は予算が三カ所、予定として三カ所はやろうと、こういうことで現在十二県にあるわけですが、非常にこういうスピードでは、ちょっと先ほど言われたコールドチェーンの整備に力を入れて効果が非常にあったと言われるにしては、非常にのろい行き方ではないかと思うのですね。しかも、四十六年、四十七年はまあ少ないですけれども半分しかできていないと、こういうことで、これではどうしようもないんじゃないかと思うのですが、今年度はもう三つということにきまっちゃっておりますが、やはり来年度あたりからはもっとピッチを上げて予算化をされていくのか、その点はどうですか。
  202. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) まことに御指摘のような状況でございますが、その一つには国の補助金が実情に即しておらなかった面があったということがございます。たとえば冷凍倉庫でございますが、この補助金が始まったときは十五トンでございます。それを昭和四十八年度五十トンにしてもらいました。それから本年度は、これを百トンにしてもらったわけでございますが、そういうことで国の補助金が従来実情に即さない面がございましたので、その面をまず改善をかなりいたしたと思うわけでございますが、さらにその改善をする必要があると、それからこういう状況になってまいりましたので、各県におきましても、こういう方面にかなり相当熱意を持ってきていただいておりますので、来年はさらにこういう方面の予算を相当増額すべきものと、そういう努力をすべきものと考えております。
  203. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 やはり方針としては全県に整備をするという考えでよろしいのですか。
  204. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) ぜひそういうふうな方向に行きたいものと、そう考えております。
  205. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、総合センターの整備ですけれども、これも非常に少なくて、現在、たしか総合センターが整備されているのは十三県ですね。四十六年度が予算が五、整備個所五、四十七年が予算が五、整備個所五、四十八年は予算が三、整備個所が三と、四十九年は予定として三と、これも四十七年と四十八年減っておるわけです。ちょうどコールドチェーンと同じように四十六、四十七年はわりあい多くやろうとしながら、今度は減ってきていると、こういう状況です。整備されているのも大体十二県と十三県と、全く同じような意味できておるわけです。これはもちろんコールドチェーンとの関係性もわからないではありませんけれども、必ずしもこの県は一致をしておりませんし、非常にアンバランスもあります。これについてはどうですか。
  206. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) この点もやはり整備が少しおくれているといいますか、ただ、このほうは昭和四十六年度から補助金が始まったわけでございますが、やはり県によりましてこういう方面への熱意といいますか、それにかなり格差があると、それから、やはり国の補助金が先ほどと同じように、実情に即しておらない面がございまして、ことしかなり面積、単価等、大幅な改善をしていただいたわけでございますが、そういうようなことで最近は県も非常に熱意を示してまいりましたし、国庫補助金につきましても逐次実情に沿うような補助金に努力いたしておりますので、これも同じようなことで今後充実、促進に努力いたしたいと考えております。
  207. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、学校給食用の物資流通改善対策事業費の補助金、これは具体的にはどういうことなんですか、この事業は。
  208. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) これも昭和四十六年度から始まったわけでございますが、当初の趣旨は、特になま野菜、くだもの、日本学校給食会の場合はそれのかん詰めというこでございまして、これらの物資は非常に価格の変動がかなり激しい面がございますので、安いときに買い込んでおきまして、そのための冷蔵倉庫の補助金もあわせ考えておるわけでございますが、それを高くなったときに放出するといいますか、そういうための調整基金でございます。これは昨年度からは野菜、果実等に限らず、その他の一般物資につきましても同様な趣旨で使える基金にいたしておるわけでございます。
  209. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これと先ほど言いましたコールドチェーンとの関係性はどうなんですか。全然別のものにしてあるわけですか。
  210. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) コルドチェーンは冷凍食品を製造元から直接購入いたしまして、それを共同調理場や単独校に供給をするためのものでございまして、県の学校給食会に冷凍倉庫を設けまして、それから学校や共同調理場に配送するための冷凍車を整備する。  それから学校や単独共同調理場に冷凍庫を整備する。冷凍保管庫を整備する、そういうものでございまして、これは冷凍食品でございます。  それから、給食センターのほうは一般の物資等のこの保管倉庫といいますか、さらには、この食品検査室、さらには学校栄養士の方々、調理従事員の方々の研修室、そういったこの研修室、食品検査室それから一般物資の保管庫、それから物資の流通情報室と、そういうものを持った総合センター、こういう趣旨でございます。
  211. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 冷蔵倉庫につきましても、まだ県学校給食会で四十八年度までにできたのはわずか六県、こういうような状態ですから、これについてもひとつきちんとふやすような方向でぜひお願いをしたいと思います。  次に、時間があれですから、具体的な問題になりますが、まあ、私たち公明党といたしましても、学校給食に対して非常に熱意をもって総点検活動も全国各地で行ないました。私、大阪なものですから、大阪でいろいろとやりました結果がまとまりまして、もうすでに発表はしてありますが、これ皆さんのほうにもお配りしてごらんいただいていると思いますけれども、これのデータをもとにちょっといろいろとお伺いしたいと思います。もちろん、これが完ぺきなデータとは申し上げません。いろいろ不備な点もあると思いますし、あわててやったところもありますから、統計学的な処理という面ではいろいろ御不満のある面もあるかと思いますが、しかし、やりました結果、かなりいろんな面が浮き彫りにされたと、私たちはかなり自信を持っておるわけです。大臣はまだ見ていただいておりませんですか。
  212. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) まだ見ておりませんが、いま手元に参りました。
  213. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 だいぶ前に渡してあったんですけれども、ぜひ研究していただきたいと思います。ちょっと資料が膨大ですけれども。  この総点検では、多く問題提起をしておりますが、一つは、これは先ほど来も議論になっておりました学校給食の費用の問題、それから給食の質及び内容について、それから従業員の問題について、教員の問題について、それから給食の効果について、大体大きく五つの問題が含まれております。  学校給食の費用負担の問題です。これは無償化ということが先ほどは宮之原先生のほうからもお話がございましたので、あまり深くは入りませんが、やはりこれは調査によりますと、これはもしお手元に資料がございましたら二三ページでございますが、ここに出ておりますように、大体教職員の方の四一・六%が無償にすべきであると、これに対して父兄負担を軽減すべきである、それまでを入れますと六六%の教員の方がやはり給食費を安くせよ、あるいは無償化にするように、こういう意見であります。また、父兄のアンケート、これは一二ページでありますが、これは補助金をふやしてもおいしいものを食べさせたい、これが四八%もあります。そういった点で、非常にこの今回の値上げという問題が起こってよけいにまあ、これに対して公費負担の希望も強いし、あるいは補助金をもっとふやしてもらって内容をよくしてもらいたい、こういう声が非常にあるわけですけれども、これについてはどうお考えになりますか。
  214. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 材料費も公費負担でできれば望ましいことには違いございませんけれども、公費を使う順序からいきますと、やはりまだ先のものがあるのじゃないだろうか。したがって、現在とっております負担区分の線に従って給食関係の充実をはかっていくべきじゃないだろうか、こんな感じておるわけでございます。
  215. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、栄養士に対するアンケートをいたしましたところが、現行の給食費で十分であるというのはたった一人しかありませんでした。これは三〇ページでございますが、残り九八%は足らないと、それから諸物価の上昇で学校給食は非常にきびしくなっていると、たとえば一年間を振りかえりますと、これは二九ページで、これが非常にちょっと私も興味あると思うんですが、最初牛肉が豚肉になり、それから鯨の肉になり、それから冷凍加工品になり、それからかまぼこになり、それからとうふ、あげもの、そういうふうに同じたん白質もだんだん中身が低下してきていると、そういう訴えもございました。またバナナも一本が半分になったりあるいはバナナをミカンとかえたり、また子供があまり好まない煮込みのようなそういうごった煮を多くせざるを得ない、そういうような深刻な状況が出てきております。こういった点についても、ひとつよく現状を認識していただきまして改善をお願いしたいんです。  それから子供たちのアンケートを見ましても、「いつもおいしい」というのは一二・五%、これは一ページにございます。残り九〇%の子供が何らかの形で給食はうまくないと、こういうふうに言っているわけです。これはやはり非常に大きな問題だと思います。教育の一環として、この給食が行なわれておるとなると、やはり子供たちがおいしいというふうなものにしていかなければならない。ただ食べさせればよいというふうなものではないと思いますので、その点はひとつよく認識をしていただきたいと思うんです。  そのまずい内訳は何かといいますと、どうも小学生はやはりトップがパンなんですね、これは二ページです。小学生ではパン、おかず、それから中学生ではパン、牛乳と。このパンがなぜまずいのか。町にいいのが出回っておりますので、それに対して学校給食に来ておるパンというのはあまりよくないというふうなことであるんですが、この辺のパンの質ですね、これは一般に市販されているパンと、それから学校給食会を通して来るパンとの質についてはお比べになったことでございますか。
  216. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 学校給食用パンのための小麦紛は、原麦、それから小麦粉の質、それに強化いたします、エンリッチいたします栄養剤、その他きびしい基準がつくられておりまして、これを専門家にいろいろ聞きますと、給食用の小麦粉の質そのものは相当いい質のものである、こう言われておるわけでございますが、パンに加工する段階で、パン屋さんも人手不足の折から、非常な御協力をいただいておるわけでございますが、パンの加工技術といいますか、それから焼く時間、その他も文部省で一応の基準を設けておるところでございますが、その基準どおり焼く時間につきましてもときに手抜きがあるんではないかとか、いろんなことも言われておるわけでございます。そういう点でときどき検査もいたしておるわけでございますが、小麦粉そのものはかなりいい小麦粉である。ただパン屋さんに言わせますと、小麦粉につきましてももう少し基準を改定してもらいたいと、こういう御意見もありまして、それらも引っくるめましてさらにおいしいパンということで検討をすべきとは思っておりますが、大体そういうような状況でございます。
  217. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ぜひ、これひとつパンの内容をよくしていただきたいと思います。  先ほど米食との問題も出ておりましたが、やはりいろんな点を考えますと、私はパンのほうでいったほうがいいのではないかと、米食にしますと施設の問題とか、いろんな点が出てきますので、なかなかむずかしい問題もあると思いますので、ひとついまいろいろ問題点指摘されておりましたが、ぜひ強力な指導をしていただいて、これはお願いをしたいと思います。  それから次に、給食を残す子供がだいぶ多いわけです。六〇%近くもいるというのが、これは三ページです、資料では。これに出ております。ということは、給食では文部省が指定しておる栄養基準がきめられておるわけですから、全部食べて初めてそれだけの栄養基準ということになるわけですから、残すということはそれ以下だと、こういうことになるわけです。だから家に帰ってその分は補っているからいいじゃないかという議論が出てくるかもわかりませんが、やはりこれはちょっと問題ではないか、こう思います。  で、いろんな原因があると思いますけれども、いま言った、パンがまずいというのも一つだと思います。量が多いということは決してないと思うんですね、おかわりも食べるわけですから。おかわりする、しないのデータもございますけれども、これは省きます。  で、一つは食器の問題ですね。中学生の大体五〇%近くが食器をかえてほしいと。確かにアルミの器なんぞを使っておるところでは味気がないという面もあります。そういった点で、この間予算委員会として中央区の小学校に視察に行かしていただいたときに、これは中央区でいただいた資料の中に、文部省学校給食課長の高石さんが書いていらっしゃいますけれども、この中に、「食事の場にふさわしい環境にすることが大切である。現在の学校は、子供の食事の場を余り重視していない。食堂もなく、食卓もない。もっと子供に夢を与える食事の場がほしい」と。場所の問題はまたあとで触れますけれども、やはり夢を与える食事の場、これは大事な問題だと思いますので、やっぱり食器の面もひとつこれは夢を与えるような食器をぜひこれは検討していただきたい。お金のかかることばかりでなかなかたいへんでしょうけれども、これはひとつぜひお願いしたいと思うんですが、この食器についてはどうお考えになりますか。
  218. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) まことに御指摘のとおりだと思います。現在、学校給食設備を新しく設ける場合、それを改善する場合に国庫補助をいたしていますが、その国庫補助の基準の中に食器も入っておるわけでございますが、現在遺憾ながらまだアルミになっております。やはり食事という場は、一つのそういう食器面の情操教育といいますか、そういう食事にふさわしい環境ということが必要でございますので、これは現在、昨年度から学校給食の研究指定校を初めて設けまして、いろいろ運営の改善について研究いたしておるわけでございます。  そこで、いま具体的に食器の問題につきましても指定校で研究してもらっております。いろいろな食器が考えられるわけでございますが、それの実験の結果も待ちまして将来ぜひ補助の対象の場合の基準なども改善をいたしたい、そう考えております。  なお、先ほどのパンでございますが、これは学校によりましてはかなりくふういたしておりまして、きょうは食パン、きょうはコッペパン、きょうはロールパンといったようなことでいろいろくふうをいたしておるところはほとんどパンを残さないということもございまして、先ほど申し上げたことのほかにそういったくふうも必要ではないかということもあわせてさらに検討を進めたい、こう考えております。
  219. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これは三一ページのデータでございますけれども、実は先ほどちょっと触れましたセンターの問題なんですけれども、センターと単独校の残菜率を比較いたしますと、センターの残菜のほうが非常に多いわけです。これは一つの原因は、調理員と児童との接触が少なくて子供の気持ちがわからないのではないか。もう一つは、センターの場合は料理ができ上がってから一時間半から二時間もかかる。その間に味が落ちたり野菜が変色をする。こういうふうなことでどうも単独にやっているところのほうが残さないで食べておるという結果。したがいまして、先ほどのセンター方式の推進ということは私も必要だしやらなくちゃいけないと思いますが、この推進のあり方はやっぱりいろいろ検討しなければいかぬのじゃないか、こう思うわけですけれども、その点はいかがですか。
  220. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 先ほど申し上げました学校給食総合センターといいますのは、いま先生が御指摘のとちょっと違いまして、いろいろ給食用物資の保管倉庫を設けましたり、栄養士、調理従事員の研修室を設けましたり、そういう意味のセンターでございます。いま先生がたまたまセンターとおっしゃいましたのは、共同調理場のことだと思います。学校給食の実施は、単独校で炊飯施設を設けてやっておりますところと、共同調理場でやっておりますところとございまして、文部省としてはそれは市町村におまかせいたしておるわけでございますが、いずれも長所、短所があると思います。確かにやはり毎日の食事でございますので、毎日、児童生徒と同じ場所におりまして、児童生徒の顔を見まして、それできょうの給食はおいしかったという、生徒からいろいろ言われるというところのほうが、どうしても単独校の実施のほうがいわゆる愛情がこもるといいますか、そういう面は確かにすぐれておる面があると思うわけでございますが、ただ、その物資の一括合理的な購入その他の面で共同調理場のほうが合理的であるという問題もございますが、一つ、冷えるという問題がありますが、これは最近はかなり共同調理場でも保温につきましては留意いたしておりますが、いずれも一長一短ございますが、やはり子供と一緒のところのほうがどうしても愛情がこもるという点はすぐれていることは事実だと思います。
  221. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ちょっといま私も勘違いをしておりましたので、先ほどのはちょっと訂正をいたします。  次に、アンケートの中で、これはごく一部の問題だと思いますけれども、父兄のアンケートの中に、子供が、ときどき給食のおかずにウジ虫が入っておったと、こういうことがあるというのが出ておりまして、これは非常に問題だと思いますが、これは全体的に何カ所か出てきたならば大きな問題ですが、まあ一部だとは思います。しかし施設が老朽化していて不潔になっておるようなところも少しありますので、こういった点はひとつよく調査をしていただいて、改善をしていただきたいと思います。  次に、教員の給食に関する問題点です。で、一九ページ、二〇ページをごらんいただけばおわかりになりますが、先生方はこの給食を成功させるべく非常に努力をしておられます。大体、激励のことば、それから作法、衛生、食事への感謝、家庭との違い、栄養体、そういうふうな点で分類をしていろいろ書いてありますが、非常にいろいろな子供たちに話をしたり、いろんな苦労をされてこの成功に努力をされておられるわけです。ところが、実際、教員の方にとっては非常なこれが負担になってきてるという面が、これは二四ページ、二五ページあるいは二七ページの点で指摘をされてきてるんです。一つは、十二時から十二時三十分まで休みなしでやらなくちゃならぬのでからだが疲れる、あるいは給食担当者の事務負担が非常に多い、それから、次の授業に差しつかえる場合もあると、こういった問題が意見として出てきております。それに対していろんな提案もございますけれども、一つは食堂方式がよい、いままで勉強した机で食卓に早変わりするのはすべての面でよくないのではないか。それから低学年あるいは高学年ですね、それから教師の体格、そういった点でいろいろな違いがありますので、カロリー、栄養等の摂取量の区分が何らかの形で行なわれてもいいのではないかと。それから配ぜん時に着用する白衣、マスク、三角巾または帽子、そういった児童個人用にこれは無償で支給すべきではないかと。それから先ほども指摘しました次の問題としては、食器の改良、こういうことが言われておるわけでありますが、特に教員の方の労働が負担になる点ですね、この点をどういうふうに改善としてはお考えなのか。まあそういった点で私は食堂があれば、広い所があれば先生方も交代で毎日やらなくてもいいという面も出てきますが、いまの大体の状態では、この間私も見学に行ったときにはそのままやってらっしゃるわけですから、これはほんとうにたいへんだなあと、われわれだったら昼休み中なら食事しながら休めるわけですから、そういった点は、昼の食事も教育でやっていらっしゃるということで非常に負担があるのは、声で出てくるのは当然だと思うわけですが、その点についてはいかがですか。
  222. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 現在学校給食は現実問題といたしまして、学校のお昼のお休みの時間といいますか、大体全国的に五十分ぐらいが普通でございます。給食は、その準備、あと片づけを含めまして、それからまた、給食は生徒同士、先生と一緒に一つの楽しく食事をしながらコミュニケーションの場であるといいますか、そこに教壇と机にいる先生と生徒がそういう食事の時間はそれぞれの生徒のふだんあらわれない個性、持ち味、その他も出てくるわけでございまして、そういうたくまざる教育の場でもあるといったようなことで、どうしてもそういうことにふさわしい給食の時間、それから準備、あと片づけを考えますと、最低四十分は必要でございます。そういたしますと、現実に五十分の中で四十分を食うということはなかなか言うべくして行なわれがたいという問題があるわけであります。現在学校教育の中で給食は特別活動の学級指導に位置づけられておるわけでございますが、体育局といたしましては、将来、教育課程改訂がいま諮問されておりますが、給食の時間というものを、できればきちんとひとつ位置づけてもらいたいという強い希望を一つ持っております。  それから食堂につきましては、いま申し上げましたような意味合いからも、いままで授業をやっておったところを急に模様がえをして食事の場にするというのでなく、全校生徒を、一ぺんでなくてもよろしいと思いますが、きょうは一、二年生、あしたは二、三年生が一緒に先生と卓を囲んで楽しい食事をするということが非常に望ましいということが言われておるわけでございますが、本年度の予算でまだわずか十二校分でございますが、学校食堂を新設する場合の建築補助金を初めて計上いたしまして、そういう実験的な意味合いで計上いたしたわけでございますが、そういうようなことで、やはり将来は逐次学校食堂というものを重視すべきではないかと、ただ一ぺんにはなかなか――本来の学校建築もなかなかたいへんなわけでございますので、いかないと思いますが、あり方としてはそうあるべきではないかというふうに思っておる次第でございます。
  223. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間がだいぶたちましたが、給食の問題だけひとつけりつけさしていただきたいと思います。  次に、栄養士の方々のアンケート、これは三六ページでございますけれども、これに――この方方の意見もやっぱり聞くべき意見があると思います。一つはいまありましたランチルームの増設、それから給食が特別活動に組み入れられておりながら実際は形式に終わってしまっておると、こういった点は改善するんだというふうなお話もありましたが、食器の面もやはり先ほど指摘したように、ガラス器あるいは陶器を使ってもらいたい。それから献立ですね、これはやっぱり理想の献立を何とかしたいと、これは非常に強く言われておるわけです。理想の献立があると言っている人が八三%、現在の献立で十分だという人は五・七しかいない、無回答が一一・三%ですが、非常にいまの献立はやはり理想にほど遠いと、やはり制約があるからなかなかできないと、しかし理想の献立は必ずあるんだと、その点で具体的に――そのかわりお金の面がちょっとかかってきますけれども、百五十円ぐらい出せば非常にいい理想的なのができるんじゃないかと、大体金額としては九十円から百二十円が十三名、百三十円から百六十円が十名と、これが一番多いわけでして、大体これぐらい出せば理想なものができると、したがって、先ほどの問題に戻りますが、もう少し公費負担あるいはそういった援助をしていただければもっと理想的な献立ができると、これはぜひやってみたいと。やはり栄養士の方々も学校にいる子供たちのために一生懸命やっているわけですから、やっぱり自分としていわゆるつらい思いをしてやるよりも、理想的な食事をつくりたいという気持ちだと思います。  それからもう一つは、肥満児用の献立というのがあれにもなってきているという点ですね。そういった点の現在の献立の改善、こういった点が非常に訴えておられますが、この点についてはどうお考えになりますか。
  224. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 現在の学校給食費は、学校栄養士の方々がこういう献立をつくりたい、ついてはこれだけの食材料費が要るということできまっているわけではございませんで、過去の積み上げと言いますか、そういうことできまっておりますので、そういう中で栄養士さんが限られた給食費で非常な苦労をしておられるわけでございますが、この問題につきましては、いま御指摘のようにいろいろな御意見もございまして、父兄の中には、もう少し給食費を高く出してもいいからおいしいもっと喜ぶものをつくってもらいたい、それからやはりあまり高いのは困ると、公費の援助がしてもらいたいと、いろいろ御意見があるわけでございますが、大体そういうふうに理解いたしております。
  225. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次の三七ページに栄養士の方から見た教員の関心度ですね、給食の。これは非常にちょっと私このデータがどの程度の信憑性があるのか、こんなことないんじゃないかと疑いたいんですけれども、四五・三%の栄養士の方が先生方に給食にあまり関心がないと、こういうふうに見られておるというデータが出ているわけです。それからずっと前のデータですけれども、教員の中で子供たちの給食の実態について全然もう調査も何もしたこともないという先生が六・五%も実はあったんです。これは少ないですよ。数字としては少ないですが、ちょっと問題である。そういった点で、先ほど教員の方が非常に負担になっているという点もありますので、やっぱり栄養士の方との間のコミュケーションというものがあまりないんじゃないか。だから栄養士の方は、私ら一生懸命つくったのに先生は子供とめしを食ってそれで終わりだというように思っているのかもしれません。ちょっとこの中身の実態をもっと分析しなければいけないと私は思いますが、その辺やはり栄養士の方と先生の、先生は先生で一生懸命やっているというデータが出ているわけですから、その点で非常に食い違っている点は非常に私は心配なんですけれども、この点についてやはりもっと栄養士の方と教員の方との話し合いの場とか、あるいはまた栄養士さんに対してもっともっとやりがいのあるような場にしてあげるという面が非常に必要じゃないかと思うのですが、この点はひとつどういうふうに見ておられますか。
  226. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 御指摘のような面が一部にあることは事実だと思いますが、そういう意味もございまして、いま国会にお願いいたしております教職員の定数標準法におきまして、学校栄養士の方々を一般の教職員と同じように県費負担の教職員にいたしまして国庫負担の対象にする。それからその定数につきましても法律で標準定数をきめまして、逐次適正な配置をはかっていきたいという法案をお願いいたしておるわけでございます。  なお、給食の時間その他学校給食法に教育目標が書いてございますが、やはりそういう目標を頭に置きながら食事の時間というものを私ども日本人はもう少し大切にする必要があるのではないか。食事を楽しむといいますか、それをまたコミュニケーション――先生と生徒、生徒同士の場にするといいますか、そういう面でまだまだ配慮すべき面がいろいろ多いんではないかと思っておりますが、学校栄養士の方々と先生方の間の話し合いといいますか、そういう点も逐次今後改善されていくんではないかと思います。
  227. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 法案の問題については、いろいろ問題もあるようですので、これは場所を改めて、またやりたいと思います。  次に、調理員のアンケートを見ますと、これは四〇ページになりますが、実際に給食の現場で働いておる方たちであるだけに非常に深刻な問題が出ております。  まず、設備については、現在のままでいいという人は二三%しかありません。七七%の方は設備の改善を要求をしておられますし、全く悪いというのが一割以上ある、一三%。これは非常にちょっと問題だと思います。その設備の点が一つ。これはまとめてお答えいただきたいと思います。  次に、労働条件の問題ですが、これは非常に悪いようであります。これは四三ページにございますが、腰痛ですね、腰の痛み。それからしびれなどを訴えている方は実に八四・四%、これは年配の方が多いせいもあるかと思いますけれども、非常に腰痛、しびれに対する訴えが八四・四%。これ、非常に大きな数字であると思います。  次に、婦人の職場でありますので当然生理休暇が問題になりますが、これは四四ページに出ておりますが、全くとれないというのが三五・四%。とったりとらなかったりというのが二八・一%。要するに、何らかの形でとれないという方が六〇%以上ということになっておるわけでして、完全にとられておるという人が四割、こういうふうな状況であります。この点も一つの大きな問題点です。腰痛のほかにも、どっちかというと調理員の方の職業病と考えられるような症状ではないかと思う訴えがアンケートの中でかなり出ているわけです。  一つは洗剤やけで手が黒くなる、皮膚がかさかさになり指先が荒れる、あるいはつめが荒れる、手がかゆくなり給食のない土曜、日曜はそれが戻る、また、皮がかさかさになってめくれる、あるいは石油バーナーなどのためにのどが痛い、あるいはアワ粒のようなものが手にできる、おそらくこれは大体洗剤を中心としたものだと思いますが、この点が非常に問題であります。  それから次に、この調理員の方が、四五ページでございますが、やはり仕事がきびしいせいだと思いますが、この仕事を他の人にすすめることができるのかというと、六五%の人はこれはすすめられませんと、こういうふうに言っているわけです。だから、そういった点で、厚生施設にしても五〇%以上の人が不十分であると。それから調理員になり手というのがやっぱりだんだんこのままいきますと非常に減ってくるんじゃないか。いま非常に献身的な努力をされて何とかやっていただいているんですが、人にはようすすめないと、こう言っておられる方が六割以上おられるということはやはり問題であると思いますので、この調理員のこの訴えについてどのようにこれは受けとめ、どう改善をされようとしているのか、ひとつお答えいただきたい。
  228. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 設備の改善につきましては、実は国庫補助金も新設する場合だけの補助金であったわけでございますが、昭和四十七年度から設備を改善する場合にも国庫補助が出せるようになりました。四十八年、四十九年と、その予算も相当ふやしていただいております。調理従事員の方々の労働条件、あるいは勤務場所等からくる特殊性によりますいろいろな問題につきましては、労働省におきましても非常にいろいろ御検討いただきましてかなり詳しい順守基準といいますか、そういうのをつくっていただいております。そういうものの労働基準監督署等と文部省教育委員会の系列と、そういうものの一そうの徹底をはかっていきたいと、そう思っております。それはかなり具体的なことをいろいろ示しておるわけでございまして、そういう決定をさらにはかっていきたいと思います。
  229. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 最後に、大臣にまとめてお伺いしたいんですが、学校給食は戦後始まりましてかなりの歴史を持っているわけです。私などは全然給食受けたことないわけです。ちょうど昭和二十年、終戦時に小学校六年生だったものですから、二十一年に中学へ行きましたので学校給食はやったことないんですけれども、最初はいろんな食糧事情とかそういうようなことから始まったにせよ、いろんな変遷を経て、今日このように学校教育の中の一環としても位置づけられました。先ほど局長のほうから、指導要領の内容についても検討してつくり直したい、こういうふうなことのお話もございました。また、今回いろんな値上げを契機として、給食のあり方に対していろんな議論も出ておることはもう御承知と思いますが、やはり一つは公費負担の問題、これは先ほど来答弁がありまして、なかなかできないということでありますが、ぜひこれは、一挙にやるのではなくてもよろしいですから、たとえば今度は物価値上がり分については何とか公費負担をするとか、まあ段階的にでもけっこうですから、ひとつ……。やはり原則的には、教育ということになると公費負担ということが正しいのではないかと、こう思いますので、この点が一つ。  もう一つは、学校教育ではありますが、やはり家庭との関係というものが出てくると思います。まあ給食できちんとカロリーもちゃんとされ、非常に正常な発育のできるような状態にしておっても、家庭でまた帰ってからたくさん食べておったら肥満児になるわけですし、また、家で非常にぜいたくなものを食べている家の子供はやっぱりまずいでしょうし、いろんな問題これは家庭生活との関係が出てきますので、父兄との関係、対話、話し合いといいますか、そういう面も非常に考えなくちゃいかぬと思います。そういった点で、学校教育それから家庭生活の延長という点、これはやはり非常に関係のあることだと思います。この辺もやっぱりひとつ、もう少しはっきりしなきゃいけないのじゃないかと思います。私、この間、予算の分科会文部省所管のときにも言いましたように、非常に児童の体位というものが問題になってきておることは御承知のとおりです。まあ大きくはなっていますけれども、実際病気もふえておりますし、特に虫歯などが相当ふええております。砂糖の消費量との関係、もうこれは給食のほうは私、栄養士の方に伺いましたら、その点はもう十分考えてやっておると。ところが家へ帰って甘いものを食わしていたら何にもならぬのでしてね、そういった点で、その辺をどう位置づけていくのか。  それからもう一つは、やはり小麦、パンが私はいいと思いますけれども、先ほどもお話がありましたように、米の問題、今後の資源との関係でやはり大きな問題が出てくると。そういった点で、この際学校給食を徹底的に洗い直して、そうしてきちんとした位置づけをやり、法改正すべき点はすると、相当思い切った私は英断をもってやっていただきたいと思うんです。そのために党としても一生懸命調査もやりましたし、また、いま各地方議会でもこの問題は一生懸命取り上げて何とか前進させようと努力しておるところでありますので、その点についてのひとつ大臣の所信を伺って、きょうの質問は、この程度で終わりたいと思います。
  230. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 学校給食の学校教育の上に占める役割り、これはかなり重要なものがあると、こう考えているわけであります。したがいまして、学校給食の充実に対しまして公費を積極的に使っていくということも大事なことだと思います。今回、特に栄養士を国庫負担対象の県費負担職員にさせていただいたのも、そのような考え方に基づいているわけであります。  体育局長からお答えしましたように、学校教育の中における学校給食の位置づけ、なお積極的な役割りを持ってもらうような方向で改善をはかっていきたいと思います。同時にまた、家庭との連絡その他につきまして御注意もあったわけでございますが、できる限り御意見を生かすようにしていきたいと思います。
  231. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 本件に関する質疑は本日はこの程度にとどめ、これで散会いたします。    午後六時十九分散会      ―――――・―――――