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参考人(
堀越克明君) ただいま
人見参考人から主として今日の
私学の
教育とは、一体どういうような
教育が行なわれているかということを通じましての御
意見を
発表されたわけでございますが、その話の中にもございましたように、
日本私立中学高等
学校連合会と申します会は、
全国に五百四十校の
中学と千二百十四校の
高等学校を主体として現在持っているわけでございます。これが都道府県ごとにいろいろな研究等を行ないますための都道府県別の協会をつくっておる。その四十七都道府県の協会の連合体が
日本私立中学高等
学校連合会、こういう会でございます。なお、百五十六校の
小学校につきましては、数は若干少のうございますが、同じく
全国的な
小学校の連合会がございます。大体、
私立の小・中・
高等学校は
独立の
学校というのはほとんどございませんで、小・中・
高等学校が大体併設されているという形の
学校法人でございまして、教職員等も、特に
中学校、
高等学校の間におきましては大体一校単位の考え方で専任が両方の
生徒を教えるというような形になっているわけでございます。
そこで、先般来私ども連合会におきましてこの
全国約二千の
学校から非常に詳細なる
意見等を含めまして
調査をいたしました。その結果、大体こういうことをわれわれ
私学の初等、
中等教育の
関係者は共通して持っているということをまとめましたので、まず、そのまとめました六項目についてちょっと申し上げてみたいと思います。
その第一は、まず、
教育、研究の充実をこの際どうしても徹底的にはかるべきであるということでございます。
私立学校が持っておりますいわゆる公共性ということにかんがみまして、われわれ
教育関係者がまず第一に専念すべきことは、
教育・研究の充実でございます。ところがこの
教育に関しましても、後ほど経費の問題で申し上げますけれども、いわゆる
教育条件の格差というものが外的な要件のために、今日次第に強まっているのが現状でございます。
また、研究の問題でございますが、これはある
意味で
高等教育機関の
大学等にも関係があることでございますけれども、私ども
中学、
高等学校の
全国組織は
日本私学教育研究所という研究所を財団法人で設立をいたしまして、年々若干の国の補助をちょうだいをして研究研修に当たっている機関でございますが、たとえば、特殊な
大学が原子力の研究所等を実は持っております。御案内のことと思いますが、立教
大学の原子力研究所等、あるいはその他いろいろな
大学のそういった研究所がございますけれども、これらの実態はすべて研究経費の不足のために、研究所はございますが、実は十分な研究活動が行なわれていない。もっと言い方をかえますと、このままで放置するならば、せっかく重要な研究までも経費不足のために行なわれなくなるというような、あるいは研究所がつぶれざるを得ないというような、閉鎖せざるを得ないというような現状でございます。したがいまして、今後、私どもは、この
教育・研究の充実をまず第一に考えるという
意味におきましてこのためのあるいは総合的機関、こらいったものにこれらを吸収統一をいたしまして、
私学におけるそういった
学術の研究というようなものをさらに振興さ迂る必要がぜひあるのではなかろうかということをまず第一に考えたわけでございます。
第二番目といたしましては、研修、福祉というものの拡充充実でございます。これは、教職員の研修、福祉の問題でございますが、これがどうも私ども鋭意このことに努力はいたしておりますが、崔だまだ
私学の教職員の研修のためのいろいろな条件が十分ではございません。さらに、福祉の問題を取り上げますと、どうしても
公立学校の教職員との格差が次第に増大するというような方向になっているのが現状でございます。
第二番目といたしましては、この研修、福祉の今後の充実をぜひはからなければいけないということでございます。
三番目に、共通して
全国の
私学が取り上げました問題は、学生、
生徒の育英奨学というものの拡充でございます。これも、最近のいろいろな経済的諸情勢によりましていよいよ就学が困難になるような要素がたくさんございますので、
大学における学生あるいは小・中・
高等学校における
生徒等の育英奨学の問題もやはりこの際抜本的にぜひはかっていただかなければならないんではないかというのが三番目の問題でございます。
四番目には、
私立学校に在学するところの
生徒、児童あるいは学生等の父母の負担軽減をぜひはからなければいけないんではないか。これは、たとえば税法上の措置あるいは直接の補助、
助成等いろいろやり方はあるわけでございますが、これらにつきまして、ぜひひとつ今後促進をする必要があるというのが四番目の問題でございます。
五番目は、ちょっと角度が違いますが、実は今後の
日本の文教政策の中における
私学の行政というものをいよいよ振興、拡充をしていただくためには、現在ございます文部省の機構をもう少し
私学行政が十分行なえるような機構にぜひ発展、改革をしていただきたいというのが私
ども私学関係者の念願でございます。もちろん、今日文部省の管理局あるいはその中にございます振興課において非常な努力を払っていただいていることは感謝しているところでございますが、ただ一局一課で
私学の問題が常に取り上げられているというのでは、今後の
私学行政の推進上はなはだ心もとない次第でございますので、文部省の機構等にも関することでございますが、ぜひひとつこの辺を御配慮願いたい。
そういうような五つの問題をまず順を追って私どもは
全国的に
一つの
意見としてまとめ上げたわけでございますが、先ほど
人見参考人からのお話がございましたように、あのような
私学の
教育を今日われわれは鋭意ささえようとして、
全国の七万有余の教職員とともに日夜非常な努力をいたしているわけでございますが、ただ、今日非常に物価の問題等が国会等でもいろいろ御議論をなされているわけでございますし、また、進行しているインフレ下において特に低所得者問題が一番の重要問題だということで取り上げられていることを伺っているわけでございますが、
個人の場合には、この物価問題の最大の犠牲者は今日低所得者であるということが言われますが、私どもは、法人といたしましては、
私立学校こそこの物価問題の最大の犠牲者ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
と申しますのは、御案内のとおり、他の企業におきましては、物価あるいはインフレに即応するいろいろな手段がとれるわけでございますが、事
教育に関する法人と申しますのは、もう収入の財源というものはすべて固定をいたしております。したがいまして、この物価あるいは人件費の上昇あるいはインフレの高進等に即応する態勢というものは、いかに経営者が努力をいたしましてもとれないというのが現状でございます。したがいまして、私は、この
日本の今日の経済問題の法人という立場における最大の犠牲者は
私立学校の法人であるというふうに、多少おこがましい言い方かもしれませんが考えているものでございまして、そういう
意味におきましても、特に今日私ども
私立学校に対する経常費の
助成をここで抜本的に大幅にひとつお考えいただくことが
私立学校の
社会的
使命を果たすため絶対に必要であるというふうに考えるわけでございます。
そこで、実は昭和四十五年から始まりました
私学の振興財団を通じての
私立大学に対する経常費の
助成が進行いたしておりまして、四十九年度が一応予定の五年目に到達をしたわけでございます。
これに相応じまして、御承知のところでございますが、
高等学校以下の
私学に対しては
地方交付税の積算の中にその財源を積算をしていただきまして、各都道府県を通じて所轄の
私立学校の法人に経常費の
助成を年々出していただいているというようなことが始まっておりまして、まあ、たいへんそういう
意味で
助成方策が積極的に行なわれ出してきたということは、私ども、
私学関係者の感謝にたえないところでございますが、ただ、一方、非常な勢いで
日本の経済情勢が変化をいたしておりますので、とてもとてもその程度の補助
助成では、私どもがそういった
意味の
私立学校の健全な経営を維持するということはまさに不可能な状況になってきたわけでございます。
そこで、先般、参議院のほうにも請願をお願いをしたような次第でございますが、その趣旨は、この際、私ども特に
大学と多少事情を異にしている
高等学校以下の
私立学校に対して、ぜひひとつ、やや恒久的な
私学の振興法とでもいうべき法律をひとつお考えいただいて、その法律の中で私どもが
先生方に毎年毎年お願いをして、まあ何とかというようなことをやっておりますような、
私学に対する
助成財源の確保というようなことを年々繰り返さなくても済むような、その法律のもとで
日本の国・公・
私立それぞれ合わせた
学校教育の必要な
教育費をこうやって
私立学校分は出すんだというふうなそういう法律をぜひひとつ、この際、お考えいただきたいというのが先般の
先生方にお願いをいたしました請願運動の趣旨でございます。
そこで、若干取りまとめました私ども連合会のその法制定に対する
意見をちょっと申し上げまして、私の
意見を終わらしていただきたいと思いますが、その
内容は、大体まとめますとこういうことでございます。
特に
私立の小・中・
高等学校振興法というような、これは仮称でございますが、法律がぜひ制定されることが必要な理由といたしまして、まず第一に小、
中学校は
全国民のための
義務教育である。また、
高等学校の進学率はすでに九〇%をこえ、小、
中学校と同様、準
義務教育化しているというのが現状でございます。その中で、
全国約二千余校の
私立の小・中・
高等学校には百五十余万人の児童
生徒が今日就学をいたしております。そして
公立学校とともに、国民のための初等
中等教育を担当しておるわけでございます。したがいまして、
教育水準の維持向上等のためには、その振興、
助成の方策の樹立がきわめて必要であるというふうに考えるわけでございます。
補足といたしまして、国の補助金を
日本私学振興財団を通じて交付をするということは、実は所轄庁等の問題もあり、いろいろむずかしい法律問題もあるように承っておりますので、これらの点をひとつどういうふうに措置するかということはぜひ慎重に御検討を願いたいというようなことでございます。
それから、特に私どもがきょう午前にお呼びいただきました、
高等学校以下の問題について、
大学と若干ニュアンスが違うというところを
先生方に御記憶いただければたいへんしあわせと存じますが、実ば
私立の小・中・
高等学校は、
学校の規模、入学の定員、それから各学級の定員、一学級当たりの専任の教員数、それから専任教員の担当授業時間数、
教育課程等については、全くすべて法律に準拠して行なわれているわけでございます。したがいまして、たとえば小・中・
高等学校等におきまして、定員を水増しして
生徒児童を入学させるというようなことはほとんど不可能でございますし、あり得ないことでございます。また、教員も、専任と申しますのは週五日ないし六日を完全に勤務する専任教員でございまして、いわゆる
大学の専任教授等とは若干勤務
内容が違うということもすでに御承知の点だと思いますが、私どもが、小・中・
高等学校の問題が
大学の問題といささか違うという点をこの辺に置いているわけでございます。したがいまして、私どもがお願いをしたいと申しておりますのは、実は
私立学校の
教育に必要とする経常的経費、これは教職員経費あるいは学用品費あるいは設備費、維持費、新規事業費等あるいは校地、校舎、施設等も
公立学校とほぼ同様の設置基準等でやらざるを得ないという状況でございますので、そのほかにさらに
公立学校には考えられていないところの
学校法人の管理的な経費、減価償却費、あるいは借入金の利子及び返済金そういったものがいわゆる
私学の
教育に必要とする経費というような形で必要なわけでございます。これら
私立学校の運営に必要な財源は、ほとんど主として父母の負担ということで従来やってきた。
大学の場合のように、たとえば寄付金収入というような問題を考えるといたしましても、一般企業からの寄付というようなものはほとんど
高等学校以下の
学校では期待ができません。若干これを努力するといたしましても、父母、卒業生のごく限られた少数の者からの寄付というものしか得られないし、たとえば
私立学校が収益事業を行なえというようなことになりましても、
高等学校以下の小規模の
学校法人ではとても収益事業を行なうというようなことは不可能であるというのが現状でございます。
それから、父母の負担についてでございますが、これをぜひ軽減措置をとっていただかなければならないということは、今日、大体私どもが
調査をいたしました結果は、今日における児童
生徒の修学上の父母の経済的負担、これは
私立と
公立の比率はこの「
私学教育を考える」というパンフレットの中にもございますけれども、大体八倍から十倍という父母の過重負担になっているわけでございます。さらに、これは毎年増大をしていく。さらに入学時の負担というのもやはり公私の差がかなり多うございます。そういう
意味で、施設設備等それからその他の条件におきましても、まあ
公立学校にやむを得ず
教育条件が次第に差がつくというようなことが現状でございまして、大都市以外の
地域においては
教育費に対する著しい父母の負担過重のために
公立学校を増設をしてくれというような声がすでに今日まで盛んに上がっている。そうなりますと、伝統のある
私立学校すらその存続が危ぶまれるというような現状になっておりますので、ぜひ、この際、法制定をお願いをいたしまして、これは単なる私どもが
助成を受けるということだけでなくて、
私立学校の
教育水準の向上、
教育環境の整備、経営管理の健全化、教職員の資質向上と待遇の改善、児童
生徒の修学上の経済的父母負担の軽減というようなことを
内容といたしましたところの
私学の振興法というような、そういう形の法律をぜひ制定をしていただきたいというようなことを
全国私立学校の総意として考えている次第でございます。
いろいろ法律の
内容等、どんなことを
私立学校側では考えているのかというような具体的な——また
あとで許された時間内で御質問があれば、さらに、具体的な私どものまとめましたいままでの考えをお答え申し上げたいと思いますが、特に最近、私どもが
先生方にお考えをいただきたい、特にまた参議院では附帯決議までおつけいただいたということで、たいへん感謝をいたしているわけでございますが、例の
人材確保法でございます。
日本の教職員の待遇を改善をするという
意味で、また、
人材を
教育界に幅広く導入するという
意味で、
日本の教職員全体の待遇のレベルをアップするということはたいへん好ましいことでございますが、ただ、この法律はいままでのところ
私立学校の教職員に対する措置というものが十分考えられていないというのが現状でございまして、あの附帯決議をおつけいただきましたあの趣旨をぜひ実行に移していただきたい。そういうように新たな法律が制定されまして、
公立ないしは
国立の
学校の教職員がいろいろな
意味で待遇が改善され、その他の勤務条件がよくなるということは好ましいととでございますが、ただ、
私立学校はその設置認可を受けて以後のそういった新たな法制定の中から常に取り残されてまいってきたというのが現状でございます。同じ国の公
教育に従事し、国民の
教育に専念をしている
私立学校の教職員が、ただ、
私学の教職員だということのみをもって
公立ないしは
国立の
先生方といろいろな
意味で格差が新たな法制定のつどついていくということは、まことに寒心にたえないことでございますので、今後はぜひそういった
意味をも含めました法制定をお願いできたらたいへん、われわれは今後
日本の
学校教育の一端をになう
私立学校の
関係者として、勇気と熱情をもって本来の任務に精進できるのではないかと、そう考えておりますので、今日
私学が置かれておりますまあ経営的な非常な危機を何とかこの際公費の導入によってぜひ経営の健全化をお願いをできればたいへんありがたいしあわせであるというふうに、
全国の総意を代表いたしまして、この際、
参考人としてお願いをし、私の最初の
意見の
発表を終わらしていただきます。どうもありがとうございました。