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1974-03-14 第72回国会 参議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十四日(木曜日)    午前十時三十七分開会     —————————————    委員の異動  二月二十日     辞任         補欠選任      今泉 正二君     大松 博文君      志村 愛子君     源田  実君      金井 元彦君     前田佳都男君      小谷  守君     安永 英雄君      矢追 秀彦君     内田 善利君  二月二十一日     辞任         補欠選任      濱田 幸雄君     小枝 一雄君      加藤  進君     岩間 正男君  二月二十二日     辞任         補欠選任      前田佳都男君     金井 元彦君      源田  実君     志村 愛子君      小枝 一雄君     濱田 幸雄君      岩間 正男君     加藤  進君  二月二十三日     辞任         補欠選任      内田 善利君     矢追 秀彦君  二月二十七日     辞任         補欠選任      加藤  進君     渡辺  武君  二月二十八日     辞任         補欠選任      中村 登美君     渡辺一太郎君      濱田 幸雄君     玉置 猛夫君  三月一日     辞任         補欠選任      玉置 猛夫君     濱田 幸雄君      渡辺一太郎君     中村 登美君      渡辺  武君     加藤  進君  三月四日     辞任         補欠選任      宮之原貞光君     和田 静夫君  三月五日     辞任         補欠選任      志村 愛子君     中西 一郎君      濱田 幸雄君     高田 浩運君      和田 静夫君     加瀬  完君  三月六日     辞任         補欠選任      高田 浩運君     濱田 幸雄君      中西 一郎君     志村 愛子君      中村 登美君     江藤  智君  三月八日     辞任         補欠選任      江藤  智君     中村 登美君  三月十四日     辞任         補欠選任      白木義一郎君     柏原 ヤス君      矢追 秀彦君     宮崎 正義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         世耕 政隆君     理 事                 斎藤 十朗君                 内藤誉三郎君                 片岡 勝治君                 小林  武君     委 員                 金井 元彦君                 志村 愛子君                 中村 登美君                 二木 謙吾君                 鈴木美枝子君                 柏原 ヤス君                 宮崎 正義君                 松下 正寿君                 加藤  進君    政府委員        文部大臣官房長  井内慶次郎君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君    参考人        日本私立中学高        等学校連合会副        理事長      堀越 克明君        昭和女子大学附        属小・中・高等        学校長      人見 楠郎君        日本私学振興財        団理事長    時子常三郎君        日本私立大学連        盟会長      佐藤  朔君        日本私立大学協        会専務理事    矢次  保君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○教育文化及び学術に関する調査  (私学助成に関する件)     —————————————
  2. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) それでは、ただいまから文教委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  教育文化及び学術に関する調査のため、本日の委員会に、参考人として、日本私立中学高学校連合会理事長堀越克明君、昭和女子大学附属小・中・高等学校長人見楠郎君、日本私学振興財団理事長時子常三郎君、日本私立大学連盟会長佐藤朔君及び日本私立大学協会専務理事矢次保君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 教育文化及び学術に関する調査中、私学助成に関する件を議題といたしたいと思います。  午前中ばお二人の、堀越参考人人見参考人の御出席を願っております。  この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙のところを本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。委員一同ありがたく存じ、かわって厚くお礼申し上げる次第でございます。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  きょうは、委員会という名目になっておりますが、実を言いますと、自由質疑討論、こういう形を尊重してまいりたいと思いますので、まず、参考人方々から私学助成に関しまして御意見をお述べ願い、一通り御意見を承ったあとで、速記を中止いたしまして、参考人意見陳述中心として各委員から自由に御討議願いたいと存じます。  それで、なお、時間の都合上、参考人各位からの御意見をお述べいただくのは、お一人当たり約十五分程度でお願いしたいと思うわけでございます。そのあといろいろ質問に入りたいと思いますから、あとはいろいろな形で御答弁をいただきたい。  それでは、これより参考人の方から御意見を承ります。まず、堀越参考人にお願いいたします。
  5. 堀越克明

    参考人堀越克明君) 参考人堀越でございます。  本日は、参議院の文教委員会に私ども私学関係者を特にお呼びいただきまして、日本教育界における今日の私学の現状、また今後の問題につきまして、いろいろ意見をお聞きいただく機会をお与えくださいましてまことにありがとうございます。午前中はただいま委員長のお示しのようなことで、主として私学の、私立初等中等教育関係につきまして意見を申し述べたいと思いますが、実は人見参考人とダブりませんように、多少意見発表内容打ち合わせをいたしましたので、もし、お許しをいただければ、人見参考人に先に意見発表をしてもらいまして、あとで私が申し上げるというようなことの打ち合わせをいたしましたが、よろしゅうございますか。
  6. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) それでは、まず人見参考人にお願いいたします。
  7. 人見楠郎

    参考人人見楠郎君) 人見でございます。  きょう、こちらで私学の問題をいろいろ取り扱って御討議いただけるということで私たちも喜んではぜ参じたわけでございますが、初めての経験でございますからどこまで申し上げるのがよろしいか、専門方々でいらっしゃるはずなので、あんまりくどいことを申し上げてもと思いますし、それからまた、順序を踏んでまいりませんと何か取りこぼしがあってはならないという感じもいたしますので、その点は過不足よろしく御寛恕願いたいと思いますので、その点を先にお断わり申し上げておきます。  私たち第一番に考えますことは、いまの三十五歳以上の人々に対する学校教育影響力の大きさに比べましてそれより若い人たちにはたして母校があるであろうか、学校の中に命のオアシスとしてのそういう生命力があるだろうかということをしきりに考えるのであります。終戦後確かに学校教育は非常に進んでまいったと思いますけれども、量的に拡大されたと思いますけれども、この学校教育のそもそもの開拓と申しますか、私学日本学校教育開拓者であり、そして新しい分野学校においてもあるいは学部、学科においてもあるいはその教育内容においても先端を切って教育を続けてまいったわけでありまして、東京の実例を見ましても、数的に私学が圧倒的に多いわけであります。で、歴史の中で見まして、小学校などにつきましても、明治の十年と申しますとだいぶ古い話でございますけれども、私立が六百八十四校、それに対して公立が百四十二校、それから中等学校明治十年には私立が二百九校、そして公立ができましたのは十一年に初めて一校できたわけであります。その数が終戦まで中等学校の場合は、ほとんど引き続き私立のほうが数が多うございます。途中で義務教育でございますから小学校はこれについて数の変転がございまして、終戦のときにはもちろんこの公立学校がふえていくわけでありますけれども、東京におきましては、やはりこの私立学校が本来のよい学校教育終戦まで続けてまいりました。そしてかてて加えて、この中等教育に関しましては、財政難のために私立学校に託するという一つ地方公共団体姿勢がありまして、私学の数が非常に多くて公立が少ないままでまいったわけでありますが、こうした私立学校公立学校の数の上での問題は、これは特に大都会を控えた大きな県がそうでありましょう、神奈川とか大阪とか兵庫とか、そういうものがあげられると思うんでありますけれども、地方のほうはどちらかと申しますというと、公立が優先しておって、そして私立あとから追いかけていくような傾向も見られたと思うんでありますが、現在の数を見ますというと、私立学校が大体二五%前後、平均して中等学校ですと各県に存在するわけであります。したがって、私が地方に出てみまして東京私立学校開拓者であると、そしてよい教育を開いてきたと同じように、地方にも多くのそういう県があるにもかかわらず、県によってはどちらかというと量的にも私立学校あとから追いかけていくようなことが見られますし、そしてかてて加えて、成績の上でも私立学校公立に受かった者のその残りを受け持つというようなことがありますために、ときどき私立学校先生と話をしておって、いかにもその私立学校は質の悪い学校であるというようなこと、あるいは生徒が集まらないで経営が非常に苦しいというようなことを聞かされて、私は、都会とそれから地方との差があるということは感じますけれども、しかし、ここでひとつ静かに振り返ってみて、一体このよい教育とは何だということについて考えざるを得ないのでありますが、この教育と申しますのは、これはもう申し上げるまでもなく、個人成長をはかっていく作業でありますが、個人個人としてりっぱにしていくことでありますが、学校教育という学校の二字がつきますというと、これは一定のワクの中でよい個人とよい社会人とを育成する集団作業だと思うんであります。したがって、このよき個人とよき社会人を育成するために、一つのグループの中で教育が行なわれていくのが学校教育だと思うのでありますが、そのときに、国立学校というのがこれは日本の新しい教育を見つけるための一つ実験学校である。新しい将来の姿を求めていくための使命を持った学校であると思います。それから公立学校というのは、その地域人々のための基礎教育を行なうのがこれが公立の小・中・高等学校の立場であろうと思います。これに対しまして、私立学校というのは、これはそれぞれの学校において次の時代のにない手としての人間を育成するための目的を持っておるものであり、その目的のゆえに学校が建てられてまいりました。したがって、その学校の一番の命と申しますのは、いかにしてよい教育を行なうかということ、いかにして次の時代のにない手をつくるかということでありまして、これがある意味建学の精神と言われ、そしてまた、そこにそれが続きますというと、その学校の伝統ということで、世間の方々がその私学目標を求めて入学を希望してくることになるわけであります。ところが、この私立学校社会要望にこたえて自分たちの築き上げた一つ学校目標に従って青少年をあずかっている、その青少年を確実に伸ばしているということは言えるのでありますけれども、入ってきた生徒が少なかったりあるいはまた入ってきた段階において生徒の質が落ちているというようなことから、私は、たまたま社会的な一つの錯覚が生じていると思うのでありますけれども、私は、よい教育というのは、その入ってきた人数が多かろうと少なかろうと一つ目標に対して自分たち希望をし、そしてそれに向かって伸びていくことが確実であるならば、その伸び率を見ることによって学校教育がよい悪いということを語るべきではないかと思うのであります。したがって、劣等生をあずかって普通の子供にする、普通の子供をあずかって優等生にするのがよい教育なのか、それからよい子供をあずかってよい状態で送り出すことがよい教育なのか、これを考えてみますときに、私は、よい個人をつくるということは、おとといの彼よりもきのうの彼が成長をし、きのうの彼よりもきょうの彼がより成長しているという、その成長していく実績をあげていくことができるならば、これがよい教育であろうと思いますので、地方先生の中で、ときおりやはり私立学校に行った生徒が質が悪いということで社会的に低い評価を受けていたり、あるいは生徒自身自信を持っていないために先生自身自信を失っているような状態をあちらこちらで見聞きするにつけまして、私は、よい教育を行なっていることがこれがほんとう社会国家のためによい仕事をしているのじゃないだろうか、この点について、もっと自信を持っていくべきだということをよく話すのであります。社会に出てから信頼される人物の育成ということについては、私は、在来の私立学校というのは十分にその社会的要望にこたえてきたと思うんでありますけれども、もともと最高のトップレベルのものでないために目立たないでいるかもしれないけれども、社会に出てから彼らの仕事というのは非常に大きな実績をあげているというふうに思うのであります。実は最近、私学振興方策懇談会というのが文部省でありまして、そこに私も出席しておったのでありますが、ある委員の方が、入社試験をした場合に、私立学校生徒というのは国立学校生徒より劣っている。だから助成をするとしても、国民の教育費国立私立とを一緒にするということ自体、何か賛成しかねるというようなことを申しておられたのでありますけれども、国家的要請にこたえる人物を育てることに対して私学助成が行なわれるとするならば、その国家的要請にこたえる人物人材というのは一体何だろうか。もし、学問研究のすぐれた者をさすのならば、現在の国立学校の中でも、大学にしても国立学校の学生が全部優秀な研究者とは言いがたいし、もし、人間的な信頼とその実践力というものを求めて、これを国家的な要請を満たす人材というならば、これは私立学校の中にもたくさんいるのであって、私は、この点でもってよき教育ということについての基本的な問題について、もう一回これは社会的に再検討していただきたいように思っておったのであります。  ところで、この学校教育の二十年間、幼稚園から始まりまして大学までの二十年間というのは、私は、その二十年間の間にどれだけの成果をあげるかということよりも、むしろ二十年間の基礎教育を経て、そして社会にいよいよ巣立ってから後この世を終わるまでの数十年間のために進むべき目標を確立することと、その方向へ対するところの姿勢を確立させることが、これが学校教育の大きな目的だと考えております。私は、実は元来が官公立の出身でありまして、私学に入りましたのは終戦後でございます。いろいろやむを得ない事情がございまして私学に入ってまいりましたというのが率直なことでございますけれども、当時、私、旧制の大学総長先生にいつも連れて歩かれまして、よくその先生が語られたことでありますが、よく気をつけなければならないのは、学校というのはただの学校ではなくて、これはむしろ学園と言うべきだ。その中で住まうのであって、息づくのであって、そこで人が育つんだよということを当時の国立大学総長先生がよく言って聞かせてくださいました。そして、そのときによく引き合いに出されたのが陶淵明の「帰去来の辞」でありまして、「園は日に渉って以って趣を成す」自分の庭を何回も何回も歩きながらその趣を増すようにいろいろ配慮していくし、その豊かな趣の中において自分は自由に楽しく生きていくというあの陶淵明の詩を持ち出されまして、そして長い時間かけて継続的に教育をしなければならない、これはちょうど庭をつくるのと同じだということをよく言われまして、その総長先生は新しい総合大学の計画をなさるときにほんとうに建物、それから人数、施設というよりも先に、その風尚といいますか、環境を整えることを一生懸命にやっておられました。私は若い日に教わったものですから、それがいまでも身についておるのでありますけれども、現在の学校教育の中で何が一番欠けているかといいますと、私は、多くの場合、これは公立学校を対象にして一応支持率を比較してまいりたいと思いますが、私は、公立私立と両方比べてみて、何か学校管理運営というものが、事務的に過ぎてはいないだろうか。命のぬくもりがない。たとえば、教育委員会制度というものがありますけれども、その教育委員会という遠くのコントロールタワーから遠くの学校をコントロールしておる。あるいは校長先生転任というものが意外に早い時間に行なわれておるということ。それから、先生方が同じ志で集まっている先生ばかりではないから同じ学校の中において違った意見が往々にしてまかり通っているということや、先生自身年限がくれば転任を余儀なくされるというようなことからその学校の命に対する愛情、したがってまた、その学校に入ってきている生徒に対する真の愛情というものについて、命のオアシスとして慕われた昔ほどにはどうも豊かになっていないように思われます。  それから学校が小さく区切られ過ぎている。これは学校制度としては六・三・三でも、その他の制度でもやれると思いますけれども、六・三・三でそのとおり学校が区切られているというところにこれがやはり大きな問題でありまして、全国公立中学校でも、公立高等学校でも要望している大きなことは、やはり三年では足りないんじゃないか、いまの教育内容を精選したとして、人間教育のために三年では短いではないだろうかということを言われているのがその一つであります。  それからもう一つは、公立学校の場合は、その地域に住んでいる人たちのためにある学校ですから初等教育段階ではけっこうですが、中等教育段階になりますというと、だれにも差しつかえない教育、差しつかえない教育といっては語弊があるかもしれませんが、だれにも通用する教育のしかも最大公約数的なものとなりますというと、この中にはんとうに命の成長をはかるというような教育がなかなか盛り込みにくい。それに対して、私立学校というものは理事会というものが常に学校と一体になって考えていかなければならない一つの宿命であり運命であると同時に、その使命があるということから、理事会学校成長に対してほんとうに心を込めて努力をしているということ。それから校長教育年限が途中で区切られることがありませんので永続性があるということ。それから学校制度に関しましては一貫教育を、私立の場合には約六〇%、高等学校中心として考えますというと、その高等学校千二百校の約六〇%が一貫教育をしております。したがって、これは小学校と結びつくものもありますし、中・高もありますし、それから大学もありますけれども、何らかの形で一貫教育の形態をとっているのが六〇%ございまして、お手元にお届けしてあると思いますけれども、この「私学教育を考える」というところの八ページをごらんくださいますというと一目でわかりますが、黄色い部分を除いた他の部分一貫教育分野でございます。  それからもう一つは、その学校でたくさんの教育るをすことはけっこうなんですが、現在でもその学校教育というものが一定の時間の中で一定の効果をあげなければならないということのために、平べったく、間口が広くなっていますが、そのためにかえってほんとう教育ができにくいとするならば、ある一つ目標を求めてきた生徒のために特定の目標を持つということば必ずしも意味がないわけではありません。そこで、宗教教育というものを特に掲げて教育の問題を取り扱おうとしている学校が七ページにもございますが、大学も、それから中・高等学校も大体二五%、私立学校の四分の一が宗教教育を含めた教育を行なっておりますし、それから九ページをごらんいただきますというと、男女別学校が非常に多うございます。これはいろいろ意見もございましょうと思いますが、共学がいいんだということもありましょうが、しかしながら、実際多くの方々がやはり男子教育女子教育というものをある年齢のところでもってみっちり鍛えてほしいということを申しております。その希望のあらわれがこの数字になっております。  それから、それぞれの学校には校訓というのがあります。その学校校訓というのがあって、その校訓に生きるということがやはり私立学校生徒をして多方面的に豊かに生きていかなければならない、成長していかなければならないにしてもやはりある一つ目安、生きる目安を打ち立てていくのには結果がよいと思いますが、その私立学校校訓を大体見ますというと、想像性——オリジナリティー、それから自主性独立性実践奉仕といったようなものが大体校訓をあげてみますというとあるようでございます。したがって、この私立学校の中で想像自主独立、そして特に私立学校はしつけにやかましいということをよく言われます。やかましいのではないと思いますけれども、しつけに気を配っておるということは先ほどの宗教教育の面とそれから実践奉仕を要求しているということで、私は、社会に出てから役立つ人間ほんとうにつくっているのがやはり私立には相当あるというふうに思うのでありますが、その点は、都会では私立学校がわりあいと数が多いものですから仲間意識がございますけれども、地方に行って一つぽつんと山の中にある私立学校ですと、ときおり社会的な一つの世評と申しますか、そういうものに押しつぶされそうになるようでありますけれども、しかし、その中で、ほんとうに耐えて、りっぱな生徒をごくわずかな人数でも大切に育てていこうとする私立学校が、いま全国で大体小学校の場合が百五十六校、約五万人でございます。そして中学校が五百四十校、これには人数の非常に少ない学校もありますけれども、これが十五万人余り、それから高等学校が千二百十四校、百三十万人、合計全国私立の小・中・高等学校だけで約千九百校、百五十万人、教職員が七万六千人、この中でほんとう一つ目標に向かって進んでいるのでございます。そしてこの小中学校は、一時だんだん人数が少なくなる傾向にありましたけれども、最近では高等学校はもちろんのこと、小学校中学校も次第に人数がふえております。  時間が長くかかりますので、一応私はここまでのところに話を打ち切りまして、あとでその結果としてまたいろいろな付随の問題が出ますので、申し述べさしていただきたいと思いますが、小中学校が一時非常に人数が少なくなった理由などにつきましても、これはチャンスがありましたら申し述べさしていただきたいと思います。  もう一つ、お手元にお配りしてありますところの緑色の資料、ひとつページをあけていただきたいと思いますが、これは私立学校における中学高等学校一貫教育についての文部省からの依頼を受けまして、われわれの仲間で検討いたしたのでございますけれども、この二ページのところに、まあ義務教育であって、多くは公立学校でもって受けるべきだと考えられているが、なぜ私立小中学校に来ているのかということにつきましては、「教育方針や教育方法がすぐれているから」とか、それから「学区内に良い公立学校がないから」とか、あるいは「家庭と同じ宗教だから」というようなことをあわせますというと、大部分がやはり学校の中身に関して各家庭が私立学校を志向していることがよくわかると思います。  それからずっと中は飛びまして、学業成績のことについて一言申しますというと、高等学校の入学試験のときの成績を調べますというと、一六ページの下から五、六行目のところで、「入試成績(三〇〇点満点)」ということが書いてありますが、順位が一、二、三、四、五、六、七、八……とありまして、六と九と一〇にマルが打ってありますが、マルが打ってあるのは、附属の小学校から来た者、マルの打ってないものがよその公立学校から来た者というふうに大体の目安としてごらんいただきたいと思いますが、入学のときには上位はほとんど公立中学校から来た者が私立高等学校の上位を占めております。しかし、それが三年たって卒業のときにはどうだというのがその下の欄で、一、二、三、四、六、八、九、一一というふうに、ほとんどの学校どこを調べてみましても、三年たったときの実力は一体どちらが持っているかという、中高六年間受けた教育の成果を生徒が示してくれているのが多くの学校の実情でございますし、これはたくさんそこに例が出ておりますが、もう一つだけ申し上げますと、二四ページをおあけいただきまして、このまん中に表が出ておりますけれども、昭和四十七年度高等学校の一年末の生活行動の記録をA、B、Cで評定しまして、Bというのは普通ということでありますからこのBよりもいいもの、たいへんいいものをAという、そのAをとった数をパーセンテージであらわしてみますというと、併設中学校、付属の中学校から来た九十八名の中の三六・五%は、あたたかさがあるのだけれども、公立中学校を出た百五十三名の中ではあたたかさは二〇%、そしてそれ以下これをずっとごらんいただきますというと、自主性が附属の中学校から来た者は二一・九%、公立中学校から来た者は七・一%、以下そこに並べておきましたように、一年たった末において、同じ私立高等学校で学んでいてもいまだにこの数字に差があるということは、やはり私立学校のように一つの生活目標、学習目標があって、その目標に従って生活をしている者の成果の相違である。ただし、これは卒業時までには双方が接近するように学校が努力しておりますから、二年のとき、三年のときは公立中学校の者もそこまで上がってまいりますし、私立の附属の中学から来た者もこれより上がるわけでありますから、そうした成果をあげていくのが私立学校であるということです。  一応、ここで私の最初の御説明の部分を終わらしていたきだきます。
  8. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) ありがとうございました。  次に、堀越参考人にお願いいたします。
  9. 堀越克明

    参考人堀越克明君) ただいま人見参考人から主として今日の私学教育とは、一体どういうような教育が行なわれているかということを通じましての御意見発表されたわけでございますが、その話の中にもございましたように、日本私立中学高学校連合会と申します会は、全国に五百四十校の中学と千二百十四校の高等学校を主体として現在持っているわけでございます。これが都道府県ごとにいろいろな研究等を行ないますための都道府県別の協会をつくっておる。その四十七都道府県の協会の連合体が日本私立中学高学校連合会、こういう会でございます。なお、百五十六校の小学校につきましては、数は若干少のうございますが、同じく全国的な小学校の連合会がございます。大体、私立の小・中・高等学校独立学校というのはほとんどございませんで、小・中・高等学校が大体併設されているという形の学校法人でございまして、教職員等も、特に中学校高等学校の間におきましては大体一校単位の考え方で専任が両方の生徒を教えるというような形になっているわけでございます。  そこで、先般来私ども連合会におきましてこの全国約二千の学校から非常に詳細なる意見等を含めまして調査をいたしました。その結果、大体こういうことをわれわれ私学の初等、中等教育関係者は共通して持っているということをまとめましたので、まず、そのまとめました六項目についてちょっと申し上げてみたいと思います。  その第一は、まず、教育、研究の充実をこの際どうしても徹底的にはかるべきであるということでございます。私立学校が持っておりますいわゆる公共性ということにかんがみまして、われわれ教育関係者がまず第一に専念すべきことは、教育・研究の充実でございます。ところがこの教育に関しましても、後ほど経費の問題で申し上げますけれども、いわゆる教育条件の格差というものが外的な要件のために、今日次第に強まっているのが現状でございます。  また、研究の問題でございますが、これはある意味高等教育機関の大学等にも関係があることでございますけれども、私ども中学高等学校全国組織は日本私学教育研究所という研究所を財団法人で設立をいたしまして、年々若干の国の補助をちょうだいをして研究研修に当たっている機関でございますが、たとえば、特殊な大学が原子力の研究所等を実は持っております。御案内のことと思いますが、立教大学の原子力研究所等、あるいはその他いろいろな大学のそういった研究所がございますけれども、これらの実態はすべて研究経費の不足のために、研究所はございますが、実は十分な研究活動が行なわれていない。もっと言い方をかえますと、このままで放置するならば、せっかく重要な研究までも経費不足のために行なわれなくなるというような、あるいは研究所がつぶれざるを得ないというような、閉鎖せざるを得ないというような現状でございます。したがいまして、今後、私どもは、この教育・研究の充実をまず第一に考えるという意味におきましてこのためのあるいは総合的機関、こらいったものにこれらを吸収統一をいたしまして、私学におけるそういった学術の研究というようなものをさらに振興さ迂る必要がぜひあるのではなかろうかということをまず第一に考えたわけでございます。  第二番目といたしましては、研修、福祉というものの拡充充実でございます。これは、教職員の研修、福祉の問題でございますが、これがどうも私ども鋭意このことに努力はいたしておりますが、崔だまだ私学の教職員の研修のためのいろいろな条件が十分ではございません。さらに、福祉の問題を取り上げますと、どうしても公立学校の教職員との格差が次第に増大するというような方向になっているのが現状でございます。  第二番目といたしましては、この研修、福祉の今後の充実をぜひはからなければいけないということでございます。  三番目に、共通して全国私学が取り上げました問題は、学生、生徒の育英奨学というものの拡充でございます。これも、最近のいろいろな経済的諸情勢によりましていよいよ就学が困難になるような要素がたくさんございますので、大学における学生あるいは小・中・高等学校における生徒等の育英奨学の問題もやはりこの際抜本的にぜひはかっていただかなければならないんではないかというのが三番目の問題でございます。  四番目には、私立学校に在学するところの生徒、児童あるいは学生等の父母の負担軽減をぜひはからなければいけないんではないか。これは、たとえば税法上の措置あるいは直接の補助、助成等いろいろやり方はあるわけでございますが、これらにつきまして、ぜひひとつ今後促進をする必要があるというのが四番目の問題でございます。  五番目は、ちょっと角度が違いますが、実は今後の日本の文教政策の中における私学の行政というものをいよいよ振興、拡充をしていただくためには、現在ございます文部省の機構をもう少し私学行政が十分行なえるような機構にぜひ発展、改革をしていただきたいというのが私ども私学関係者の念願でございます。もちろん、今日文部省の管理局あるいはその中にございます振興課において非常な努力を払っていただいていることは感謝しているところでございますが、ただ一局一課で私学の問題が常に取り上げられているというのでは、今後の私学行政の推進上はなはだ心もとない次第でございますので、文部省の機構等にも関することでございますが、ぜひひとつこの辺を御配慮願いたい。  そういうような五つの問題をまず順を追って私どもは全国的に一つ意見としてまとめ上げたわけでございますが、先ほど人見参考人からのお話がございましたように、あのような私学教育を今日われわれは鋭意ささえようとして、全国の七万有余の教職員とともに日夜非常な努力をいたしているわけでございますが、ただ、今日非常に物価の問題等が国会等でもいろいろ御議論をなされているわけでございますし、また、進行しているインフレ下において特に低所得者問題が一番の重要問題だということで取り上げられていることを伺っているわけでございますが、個人の場合には、この物価問題の最大の犠牲者は今日低所得者であるということが言われますが、私どもは、法人といたしましては、私立学校こそこの物価問題の最大の犠牲者ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  と申しますのは、御案内のとおり、他の企業におきましては、物価あるいはインフレに即応するいろいろな手段がとれるわけでございますが、事教育に関する法人と申しますのは、もう収入の財源というものはすべて固定をいたしております。したがいまして、この物価あるいは人件費の上昇あるいはインフレの高進等に即応する態勢というものは、いかに経営者が努力をいたしましてもとれないというのが現状でございます。したがいまして、私は、この日本の今日の経済問題の法人という立場における最大の犠牲者は私立学校の法人であるというふうに、多少おこがましい言い方かもしれませんが考えているものでございまして、そういう意味におきましても、特に今日私ども私立学校に対する経常費の助成をここで抜本的に大幅にひとつお考えいただくことが私立学校社会使命を果たすため絶対に必要であるというふうに考えるわけでございます。  そこで、実は昭和四十五年から始まりました私学の振興財団を通じての私立大学に対する経常費の助成が進行いたしておりまして、四十九年度が一応予定の五年目に到達をしたわけでございます。  これに相応じまして、御承知のところでございますが、高等学校以下の私学に対しては地方交付税の積算の中にその財源を積算をしていただきまして、各都道府県を通じて所轄の私立学校の法人に経常費の助成を年々出していただいているというようなことが始まっておりまして、まあ、たいへんそういう意味助成方策が積極的に行なわれ出してきたということは、私ども、私学関係者の感謝にたえないところでございますが、ただ、一方、非常な勢いで日本の経済情勢が変化をいたしておりますので、とてもとてもその程度の補助助成では、私どもがそういった意味私立学校の健全な経営を維持するということはまさに不可能な状況になってきたわけでございます。  そこで、先般、参議院のほうにも請願をお願いをしたような次第でございますが、その趣旨は、この際、私ども特に大学と多少事情を異にしている高等学校以下の私立学校に対して、ぜひひとつ、やや恒久的な私学の振興法とでもいうべき法律をひとつお考えいただいて、その法律の中で私どもが先生方に毎年毎年お願いをして、まあ何とかというようなことをやっておりますような、私学に対する助成財源の確保というようなことを年々繰り返さなくても済むような、その法律のもとで日本の国・公・私立それぞれ合わせた学校教育の必要な教育費をこうやって私立学校分は出すんだというふうなそういう法律をぜひひとつ、この際、お考えいただきたいというのが先般の先生方にお願いをいたしました請願運動の趣旨でございます。  そこで、若干取りまとめました私ども連合会のその法制定に対する意見をちょっと申し上げまして、私の意見を終わらしていただきたいと思いますが、その内容は、大体まとめますとこういうことでございます。  特に私立の小・中・高等学校振興法というような、これは仮称でございますが、法律がぜひ制定されることが必要な理由といたしまして、まず第一に小、中学校全国民のための義務教育である。また、高等学校の進学率はすでに九〇%をこえ、小、中学校と同様、準義務教育化しているというのが現状でございます。その中で、全国約二千余校の私立の小・中・高等学校には百五十余万人の児童生徒が今日就学をいたしております。そして公立学校とともに、国民のための初等中等教育を担当しておるわけでございます。したがいまして、教育水準の維持向上等のためには、その振興、助成の方策の樹立がきわめて必要であるというふうに考えるわけでございます。  補足といたしまして、国の補助金を日本私学振興財団を通じて交付をするということは、実は所轄庁等の問題もあり、いろいろむずかしい法律問題もあるように承っておりますので、これらの点をひとつどういうふうに措置するかということはぜひ慎重に御検討を願いたいというようなことでございます。  それから、特に私どもがきょう午前にお呼びいただきました、高等学校以下の問題について、大学と若干ニュアンスが違うというところを先生方に御記憶いただければたいへんしあわせと存じますが、実ば私立の小・中・高等学校は、学校の規模、入学の定員、それから各学級の定員、一学級当たりの専任の教員数、それから専任教員の担当授業時間数、教育課程等については、全くすべて法律に準拠して行なわれているわけでございます。したがいまして、たとえば小・中・高等学校等におきまして、定員を水増しして生徒児童を入学させるというようなことはほとんど不可能でございますし、あり得ないことでございます。また、教員も、専任と申しますのは週五日ないし六日を完全に勤務する専任教員でございまして、いわゆる大学の専任教授等とは若干勤務内容が違うということもすでに御承知の点だと思いますが、私どもが、小・中・高等学校の問題が大学の問題といささか違うという点をこの辺に置いているわけでございます。したがいまして、私どもがお願いをしたいと申しておりますのは、実は私立学校教育に必要とする経常的経費、これは教職員経費あるいは学用品費あるいは設備費、維持費、新規事業費等あるいは校地、校舎、施設等も公立学校とほぼ同様の設置基準等でやらざるを得ないという状況でございますので、そのほかにさらに公立学校には考えられていないところの学校法人の管理的な経費、減価償却費、あるいは借入金の利子及び返済金そういったものがいわゆる私学教育に必要とする経費というような形で必要なわけでございます。これら私立学校の運営に必要な財源は、ほとんど主として父母の負担ということで従来やってきた。大学の場合のように、たとえば寄付金収入というような問題を考えるといたしましても、一般企業からの寄付というようなものはほとんど高等学校以下の学校では期待ができません。若干これを努力するといたしましても、父母、卒業生のごく限られた少数の者からの寄付というものしか得られないし、たとえば私立学校が収益事業を行なえというようなことになりましても、高等学校以下の小規模の学校法人ではとても収益事業を行なうというようなことは不可能であるというのが現状でございます。  それから、父母の負担についてでございますが、これをぜひ軽減措置をとっていただかなければならないということは、今日、大体私どもが調査をいたしました結果は、今日における児童生徒の修学上の父母の経済的負担、これは私立公立の比率はこの「私学教育を考える」というパンフレットの中にもございますけれども、大体八倍から十倍という父母の過重負担になっているわけでございます。さらに、これは毎年増大をしていく。さらに入学時の負担というのもやはり公私の差がかなり多うございます。そういう意味で、施設設備等それからその他の条件におきましても、まあ公立学校にやむを得ず教育条件が次第に差がつくというようなことが現状でございまして、大都市以外の地域においては教育費に対する著しい父母の負担過重のために公立学校を増設をしてくれというような声がすでに今日まで盛んに上がっている。そうなりますと、伝統のある私立学校すらその存続が危ぶまれるというような現状になっておりますので、ぜひ、この際、法制定をお願いをいたしまして、これは単なる私どもが助成を受けるということだけでなくて、私立学校教育水準の向上、教育環境の整備、経営管理の健全化、教職員の資質向上と待遇の改善、児童生徒の修学上の経済的父母負担の軽減というようなことを内容といたしましたところの私学の振興法というような、そういう形の法律をぜひ制定をしていただきたいというようなことを全国私立学校の総意として考えている次第でございます。  いろいろ法律の内容等、どんなことを私立学校側では考えているのかというような具体的な——またあとで許された時間内で御質問があれば、さらに、具体的な私どものまとめましたいままでの考えをお答え申し上げたいと思いますが、特に最近、私どもが先生方にお考えをいただきたい、特にまた参議院では附帯決議までおつけいただいたということで、たいへん感謝をいたしているわけでございますが、例の人材確保法でございます。日本の教職員の待遇を改善をするという意味で、また、人材教育界に幅広く導入するという意味で、日本の教職員全体の待遇のレベルをアップするということはたいへん好ましいことでございますが、ただ、この法律はいままでのところ私立学校の教職員に対する措置というものが十分考えられていないというのが現状でございまして、あの附帯決議をおつけいただきましたあの趣旨をぜひ実行に移していただきたい。そういうように新たな法律が制定されまして、公立ないしは国立学校の教職員がいろいろな意味で待遇が改善され、その他の勤務条件がよくなるということは好ましいととでございますが、ただ、私立学校はその設置認可を受けて以後のそういった新たな法制定の中から常に取り残されてまいってきたというのが現状でございます。同じ国の公教育に従事し、国民の教育に専念をしている私立学校の教職員が、ただ、私学の教職員だということのみをもって公立ないしは国立先生方といろいろな意味で格差が新たな法制定のつどついていくということは、まことに寒心にたえないことでございますので、今後はぜひそういった意味をも含めました法制定をお願いできたらたいへん、われわれは今後日本学校教育の一端をになう私立学校関係者として、勇気と熱情をもって本来の任務に精進できるのではないかと、そう考えておりますので、今日私学が置かれておりますまあ経営的な非常な危機を何とかこの際公費の導入によってぜひ経営の健全化をお願いをできればたいへんありがたいしあわせであるというふうに、全国の総意を代表いたしまして、この際、参考人としてお願いをし、私の最初の意見発表を終わらしていただきます。どうもありがとうございました。
  10. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) どうもありがとうございました。     —————————————
  11. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、矢追秀彦君及び白木義一郎君が委員辞任され、その補欠として宮崎正義君及び柏原ヤス君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  12. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) それでは、速記を中止していただきます。   〔午前十一時二十六分速記中止〕   〔午後零時二十四分速記開始〕
  13. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 速記を起こしてください。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  たいへんお二人の参考人におかれましては長時間にわたりまして、有益な、しかも、今後にきわめて私立学校にとって影響を与える今後の文教政策のあり方について、たいへんな貴重な御意見をいただきました。ここにつつしんでお礼を申し上げる次第であります。  午前の会議はこの程度にとどめまして、午後一時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      —————・—————    午後一時三十二分開会
  14. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  教育文化及び学術に関する調査中、私学助成に関する件を議題といたします。  午後はお三方、時子参考人佐藤参考人矢次参考人の御出席を願っております。  この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、たいへんお忙しいところをおいでいただきましてありがとうございます。たいへん突然のお招きをしたわけでございますが、それにもかかわらずおいでくださいましたことを厚く委員一同にかわりましてお礼を申し上げます。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、参考人方々から私学助成に関しまして御意見をお述べ願い、一通り御意見を承ったあとで速記を中止いたしまして、参考人意見陳述中心として各委員から自由に御討議願いたいと思います。これはフリーディスカッション、フリートーキングの形で、言うなれば、ある面では政党政派を離れてしまう場合もありますが、それでもかまわない、こういうのが今回の趣旨でございます。  なお、時間の都合上、たいへん恐縮なんですが、参考人各位からの御意見をお述べいただくときはお一人当たり最初十五分程度でお願い申し上げたいと思います。  それでは、これより参考人の方から御意見を承ります。  まず、議事進行の順序からいきますと、時子参考人にお願いいたします。
  15. 時子山常三郎

    参考人時子常三郎君) 時子山でございます。  先生方には平素文教問題、特に私学問題につきましてたいへんな御尽力を賜わりましてありがとうございます。また本日は、わざわざこういう会を与えてくださいましてありがとうございます。  そこで、私の申し上げたいことでございますが、お手元にあらかじめ書類を差し上げておいたのでございますが、これは文部省の私立学校振興方策懇談会というのがございまして、五十年度に向けての私学助成をどうするかという意見を懇談する会でございますが、そこへ私出しました私の意見というものをお手元に差し上げておいたわけでございます。  その要旨といたしましては、第二次大戦後、新制大学大学が切りかわりまして、たいへんお金がかかるようになったということが一番大事な問題でございますが、そうなりました。そして現在私学が非常に財政困難しておりますのはなぜかということを申し上げたいわけでございます。もう先生方にはあるいは申し上げる必要はないことかと思いますけれども、一応、私の考え方をお聞きいただければありがたいと思います。  新制大学になりまして、御承知のように、新憲法がしかれて学校教育法、教育基本法というものができまして新制度の基礎ができました。それに私立大学には特に私立学校法といろものができたわけでございます。  ところでこの新制度によりまして、戦前と比較していただきますと新制度の事情がよくおわかりいただけるのじゃないかと思いまして、お手元に差し上げました六ページのところで明治十九年の帝国大学令について述べております。この帝国大学時代には、大学は研究機関でございました。しかも、この研究の目標は、ここに書いておきましたが、「帝国大学ハ国家ノ須要二応スル学術技芸ヲ教授シ其蘊奥ヲ攻究スルヲ目的トス」、こういうふうになっておるわけでございます。そして、こういうふうに国家に須要なる研究をするので国が資金を出すのだということは当時の文部大臣森有礼が言っておりますので、それを引用しております。すなわち、国立大学にお金を出す理由は、国家の須要なる研究をするからだということでございます。ところが、大正七年に新しい大学令ができました。そのときもやはり「国家ニ須要ナル」という字が入っております。その下の段にございますが、「大学ハ国家ニ須要ナル学術ノ理論及ヒ応用ヲ教授シ並ニ其蘊奥ヲ攻究スルヲ以テ目的トシ」、「兼ネテ」以下は、これは教育機関になっておるわけであります。「兼ネテ人格ノ陶冶及ヒ国家思想ノ涵養ニ留意スルモノトス」、そして大正七年の大学令に至りまして研究機関であると同時に教育機関ということになっております。この場合も、やはり国家に須要なることをやるのであるから国立大学には国庫資金をもって充てるということになっておるわけでございます。  御承知のように、この大正七年の大学令によりまして、それまで専門学校令による私立大学に当時の官立大学と同じ資格を認めると、それは第一次大戦後の日本社会の発展、日本資本主義の興隆に伴いまして社会に対する人材の要求が起こってまいりましたので、私立大学に対して補完的役割りを果たさせるということでできたと私承っておるのでございますが、そのために、この新大学令によりまして設置のときに政府が資金を出しております。この資金は、私どもの記録によりますと、早稲田大学の記録でございますが二十五万円を出す。それは十年間に出す。ただし私は、その資料を見たのは三万円最初にもらったのしか存じませんけれども、そういう記録が残っております。そして財団法人にさせまして、その基金といたしまして一学部の大学、単科大学は五十万円、一学部増すごとに十万円という基金をつくらせまして、そして最初の国庫金以外は財団法人でやれ、こういうことになっていたわけでございますが、ところが第二次大戦後、先ほど申し上げました新しい教育に関する法令ができまして新制大学ができたわけでございますが、ところが新制大学になりますというと、こういう国立私立との区別が完全になくなりました。設置条件たとえば教授が何人、学科配当あるいは土地、建物、施設につきまして、国・公・私立大学全く同じ条件でやるようにということになりまして、それに、目的につきましても完全に一致しておりまして、「民主社会の指導的人材を養成する」とこういうふうになりまして、「国家ニ須要ナル」というような限定された目的は持っておりません。そして新制大学は完全に教育機関になりました。研究機関は大学以上だということになっておりまして、この点は国立大学私立大学も全く同じでございます。設置の条件も、それから目的も同じでございまして、異なるところは全然ございません。  ところが、先ほど申し上げましたように、国立大学と同じ土地、建物その他の施設、教員の数、学科の配当が同じになりますと、戦前より非常にお金がかかるようになったわけでございます。ところが、財政につきましては設置者負担主義ということによりまして、学校法人がその経費をまかなえということになりまして、異なるところはそれだけになってしまったんであります。ところが、その上に憲法第八十九条によりまして、私立大学に金を出すことは憲法違反だという考え方がありまして、ただ低利貸し付けをするということだけでまいったのでございます。そういう意味で、私立大学の財政困難は、こういう法律の前提の上にありまして、最初から財政困難におちいるような出発をしております。  ところで、アメリカが日本にこの新制度を勧告したときに、いま申しましたような制度につきましては、勧告したけれども、私学の財政をどうまかなうかの勧告はしなかった。私、森戸先生にお伺いしましたが、森戸先生も、私学の財政をどうするかと言ったところが、われわれの権限外だということで反応を示さなかった。勧告の用意はしてこなかった。これは私の想像でございますが、アメリカの私立大学は当時非常に基金があり、また財政豊かでありました。そこで、日本私立大学もそうだろうということで私は用意してこなかったんじゃないかと思いますが、これは私の観測でございます。そういうことで勧告しなかった。ところが、日本の受け入れ側といたしましても、こういう困難はわかっておりました。ということは、インフレがどんどん進んでくる。これは大学もそうだろうということで私は用意してこなかったんじゃないかと思いますが、これは私の観測でございます。そういうことで勧告しなかった。ところが、日本の受け入れ側といたしましても、こういう困難はわかっておりました。ということは、インフレがどんどん進んでくる。これは大学基準協会の資料にはっきり出ておるのでございますが、こういうインフレ下において基金について規定しても大した意味はないと、こう書いておる。したがって、適当な資金ということで済まして出発しておるんでございますが、こういうことになれば国立大学と同じだけの金がかかる条件で設置して、その資金が幾らかかるかということについては試算さえやっていない。それで出発してきたということが大きな問題だと思います。そういうことで今日になってまいりました。そこが私学財政の非常に困難な根本的な理由である、私そういうふうに考えております。  この点につきまして、中教審のほうでもいろいろまあ議論をされまして、結局大幅な助成は必要だという結論をお出しになりました。御承知のように新しい提案がなされておるわけでございます。で、いままでなぜ私立大学がこういう状態であったのをこのままにきたのかということはむしろわれわれのほうから見て国に対して質問申し上げたいというような気がするわけでございます。ところが、戦前の帝国大学時代の考え方がともすれば人々の頭に残っておりまして、制度が根本的に変わっておるということをなかなかこれは認めていただけないわけでございますが、事情申し上げますといま御説明したようなことでございます。この点につきましては、お手元にさし上げました「カナダにおける私学助成に関連して日本の新規私学助成に対する所見」というところに書いております。ここでカナダを引用しておりますのは、昨年九月から十月にかけましてカナダ、アメリカの私学助成の実態を見てまいりました。カナダにおきましては一九六六年から、あそこは国立じゃございませんで、州立と私立とそれから宗派立、宗教の学校でございますが、そのいかんを問わず同じように金を出して、全くひとしい資金の支出をしております。それをマッギール大学に参りましていろいろ事情を聞きますというと、あそこもやはり州立も私立も宗派立の大学もやはり同じように研究をし、同じような教育をみな全部やっておるのだ、その差別があるのはおかしいじゃないかというので私学のほうでその説明をして訴え、で、国会でも認めていただいて、一九六六年からこういうふうに変わってきたんだというような説明をしておりましたが、教育は、わが日本におきましてもいま申し上げましたような——詳しくは時間の制限ございますのでこれ以上は長く申し上げませんが、先生方の御尽力によりまして五十年以後の私学助成につきまして国・公立と同じ資金で戦後の私立学校にはいいんだということ、それから設置者負担主義はもうすでにくずれておりまして、御承知のようにあの公立中学校高等学校、あれは御承知のように設置者は地方自治体でございますが、国からずいぶん金が出ておりまして、設置者負担主義はもう矛盾が起こってきておるということは現実に問題となっておりまして、もちろん、設置者負担のあることはこれはけっこうでございますけれども、いつまでも設置者負担主義によってこの私立大学の経営は成り立たないのだという一つの御理解をいただきたいと思います。  時間が参りましたのでこれだけ申し上げまして、あとで御質問いただいてお答え申し上げたいと思います。ありがとうございました。
  16. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  17. 佐藤朔

    参考人佐藤朔君) 佐藤でございます。  ただいま時子参考人から総論のようなことをお述べになりましたので、私は、まあ連盟の会長といたしまして申し上げたいと思います。しかし、やはり前提として申し上げたいことは、高等教育というのはやはりいろいろな問題、つまり内容の問題あるいはあり方の問題さらには経費の問題、これは国家のレベルで考えるべきである。したがいまして、われわれといたしましては、高等教育の場合に国・公・私立の区別なく考えるべきだということを考えております。で、教育内容あるいは研究の水準といったものはさらに国際比較をしまして、日本における高等教育というものはいかにあるべきかという観点でわれわれは考えておりますので、また皆さま方もその点御同感と思いますが、そういうような目標を立てましていろいろの問題に取り組んでおる次第でございます。で、その場合に、残念ながら国・公・私立の間においていろいろな格差がある。で、ことに教育条件と申しますか、それに格差があるということは事実でございます。そうしてまた、私立大学として理想を達成することが非常に困難だということがございまして、そうしてやむを得ず絶えずまあ国立大学私立大学を比較しながら検討しているわけでございます。大前提とは違うのでございますけれども、現実を踏まえますと常に国立大学私立大学を比較しなくちゃならないという状況でございまして、その比較におきまして私立大学のほうがいかに悪条件のもとに置かれているかということがわかるのでございます。  で、お手元に差し上げました資料でございますが、この横長の資料の第一ページをごらんになりますと、これは四年制の大学だけの資料でございますけれども、大学の数、学生数、定員数、いわゆる水増しといっております定員超過数、これの一覧表がございます。  で、本日問題になっております定員の水増しはけしからぬというような意向が世上伝えられておりますけれども、しかし、水増しをせざるを得ない事情にあるのでございまして、われわれといたしましては決していいことだとは思っておりません。しかし、水増しをせざるを得ない事情は、主としてこれは財政的な原因でございます。これが省かれません以上はそういう水増しをやめるということは事実できないのでございます。で、それが全私立大学におきましてはおよそ一・七倍の水増しということが数字で出ておりますが、しかし、これを是正するにはやはり財政的な私学助成といったことが十分でなければできないということでございます。  そういうことから考えますと、大学数は多いと、大学生は多い、しかも教育条件が悪い、さらには授業料の問題でございます。授業料の問題が国立に比べまして平均四倍も五倍もとってる。学部によっては十倍もとっておる。これはやむを得ざる事情でございまして、学生から見ますとなおなお国立私立の格差があるということがあるわけでございます。教育条件が悪いのに授業料が高いということが出てくるわけでございます。  それで、政府といたしましても、四十五年以来、人件費二分の一を含む経常費補助ということが行なわれたのでございますが、これは五年計画でこの四十九年度で達成するはずだったんでありますが、しかし、それも実に不十分な形で四十九年度を迎えたわけでございまして、われわれが希望した額にもとうてい満ちませんし、さらには、自民党側で考えてたプランに基づいて計算した額よりも非常に少ない、こういうのでございます。  お手元に差し上げました資料は、あまり時間がございませんでしたので十分でないと思いますけれども、これはわれわれの手元にございます確実な数字でこしらえたものでございまして、これは委員の皆さま方に何かの御参考になると思って提出した次第でございますが、なお、あとでフリートーキングの際に話題にしていただきたいと思いますが、特に三ページ、四ページをちょっとごらんになっていただきますとおわかりかと思います。つまり、この四十七年度の数字でございます。四十七年度の数字でございまして、四ページのところに収入というのがございますが、医歯系、理工系、文科系、いろいろございますけれども、平均してみますと学生の納付金というのは五七・九%でございます。それに対しましていわゆる国庫助成というのが一一・一%でございます。この四十七年度の場合は、政府の助成金は三百一億だったと思うのでございます。ようやくこの四十九年度でそれが六百四十億になりましたけれども、しかし、この数字をごらんになりましても非常に助成金が少ないということがおわかりになるのであります。ですから学生の納付金が五七・九%、その下の欄をごらんになりますと、人件費が何と六六・一%でございます。研究費に使っているのはその中の二二・〇%というふうになりまして、さらに、借入金が非常に多いということがわかるのでございます。おそらく私学全体の借り入れ金は三千億ぐらいになるかと思いますが、その利子の払いだけでもたいへんなことでございまして、これを連盟のほうの資料だけでやはり正確なグラフが出ておりますが、それは一九ページに書いてございますが、連盟だけの加盟校が六十七校でございますが、それだけでも千九十四億ございます。この内容私学振興財団に負うところが多いのでございますれけども、その他学校債あるいは市中金融機関などから借りまして、そうして人件費をはじめといたしましていろいろな施設費などに充てて非常にやりくり算段をしているわけでございます。  そういう次第でございまして、やはりわれわれは大学改革も考え、あるいは教育条件の向上、さしあたりは国立大学一つのモデルにしておりますけれども、国立大学以上に私学教育条件あるいは内容といったものを高めることが、最初申し上げましたわが国の高等教育といったものの水準を上げるということになると思いますし、これだけが、つまり人材確保ということがわが国の将来を考えますと一番の宝になるという信念のもとにわれわれは高等教育にかかわっているのでございまして、どうかそういう大きな立場、巨視的な立場から私立大学の現状を十分認識されて、それで今後五十年度以降に画期的な国庫助成のあり方を考えていただきたいというふうに思っている次第でございます。  最後に、別紙にプリント刷りで私立大学連盟としての国庫助成金の今後のあり方ということを考えました。これは先ほど申しましたように、国民は能力に応じて平等に教育を受ける権利が憲法で保障されている。したがって、国立大学の学生であろうと、私立大学の学生であろうと学費負担あるいは研究・教育の条件の格差をなくすということについては、国が十分めんどうを見るべきであるというたてまえでございまして、したがいまして、一つの具体的な方策といたしまして、国立大学の一人の学生にどれだけの教育費をかけているか、それを出しまして、そしてそれから授業料、学生納付金を引きまして、そうして補助金額を計算すべきである。ただ、その補助金をいかに配分するか、また、どういうふうに審査をするかということは、公正なる第三者機関によってきめるべきである。これはイギリスにございます例のU・G・Cの日本版というような考え方でございまして、学生本位に考えた基本的な構想でございます。これもまた具体的な方策でございます。こういうことも考えているということを御報告申し上げまして、私の最初の御説明にかえさしていただきます。
  18. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) ありがとうございました。  それでは次に、矢次参考人にお願いします。
  19. 矢次保

    参考人矢次保君) 委員長から私学助成について意見を述べるようにということでございますが、私学助成は、根本的には教育の問題でございます。国民の人格、識見を高め、また知識、技能を向上するということが国家の発展の上に、また国民の幸福の上で最も重要なことであり、また産業の発展、文化の発展ことごとくこの教育学術の振興に根源するものでありますが、ことに教育段階大学、この最高の教育機関であり、また学術の基礎研究機関としての大学問題を考えるにあたりまして、まず、第一に特別に一つ考えを新たにしていただきたいと存じますことは、今日わが国におきましては、大学問題は、すなわち私立大学の充実問題であるということでございます。申し上げるまでもなく、昨年度すでに大学に進学した者の八三%は私立大学に進学いたしておるのであります。十人高校卒業生が大学に行けば、そのうちの八人以上が私立大学へ進むのであります。国民の大多数の人格の向上、知識、技能の充実は実にこの私立大学の充実にかかって存する。特にわが日本は、すべての原料を外国から輸入し、そうして物をつくりまして、ことごとくこれを外国に輸出をすることの循環によって存続し、また発展をしておるのが現状でございます。そうなりますと、多くの人間、国民の大多数が人格と識見、知識、技能を高めることによってのみ日本の永遠の発展が保障されるのであります。そういう意味におきまして、大学問題の中心は、わが国では私立大学の充実問題である。従来百年以上にわたりまして、日本の文教政策が国立大学中心主義で今日も依然としてきておるような気がいたすのでありまして、この百八十度の転換を国民はもとより、ことにこの国会議員の方々にお願いをいたさなければならないというふうに思うのでございます。と申しますのは、この八割以上を占める私立大学というものが、わが国においては、その教育・研究条件がはなはだしく不十分な状態に置かれておるからであります。これではとても先ほど申しましたような期待、日本の将来の発展に対する期待を実現することはできないのであります。あすではおそ過ぎる、私立大学の充実強化は速刻やっていただかなければ取り返しのつかないことになると私は思うのでございます。どのように条件が不十分であるか、これは先ほど来のお話でも、国際水準いろいろな観点から見なければなりませんが、端的に日本のはなはだ不十分な国立大学の現状と比較いたしましても、まず、教員の数においておおむね四、五分の一という段階でございます。国立大学は七十五、それから学生数は三十数万人である。これで専任教員の数が大体四万ぐらいだと思われるのであります。私立大学は三百に近い、二百九十ぐらいでありますが、学生数また百二十万をこえるのであります。実数は百五十万に近いかもしれない。それでいて、専任教員の数はやはり国立と同じ四万ぐらいなんであります。まさに国立大学の学生数、学校数と対比いたしまするというと四分の一ぐらいしか専任教員の数がいないのであります。専任教員の数が少なくてはどうしてもあらゆる学科目にわたって十分な教育が行なわれない、また、教員は研究活動ができない、こういうことになるのでありまして、国立私立とのいわゆる格差の一番大きな点は教員のまず数が不足する、それから質にも問題がありはしないかというこの二点の改善、二点の充実強化、それがポイントであるというふうに私は考えるのであります。  施設もとより十分ではありませんけれども、大体国立大学の学生一人当たり教室等の坪数と比べまして、まあ半分ぐらいのところにあると考える。  次に、設備であります。と申しますのは、機械器具、図書、資料、標本、こういうものでありまするが、これらの点につきましては、昭和三十年ごろから私立大学研究設備助成補助金あるいは私立大学理科等教育設備補助金、こういう補助金を毎年増額をしていただき、また最近、四年ばかり前からこれらの予算をまとめまして教員経費、学生経費という名目で国家予算に補助金を計上いたしていただいておりまして、ここ相当期間、私立大学も自己調達分と合わせまして機械器具の充実を行なってまいる。大体、国立大学の平均値に比べまして、これも半分半ばをもうすでに越えんとしておるというふうに一般的に言えると思うのであります。  この施設や設備につきましては、今後継続的に充実努力を行なっていくならば、私立大学教育条件の中における施設、設備の面につきましては、もう非常に充実は軌道に乗りつつあると思うのでありまするが、残念なことに、一番教育中心であります教育内容を高めるも高めないも実に教員の充実にすべてはかかっておるのでありまするが、その教員がはなはだしい不足状態に置かれておりながら、それに対する対策が何ら立てられていないということに私立大学振興充実問題の最大の課題があるというふうに申し上げたいと思うのであります。  この私立大学の充実、すなわち、裏を返せば国立私立との格差の解消——格差解消なんということは表の問題ではないのであります。本来の問題は私立大学教育・研究条件の充実強化という課題、これが私学助成の根本問題である、私学助成の問題はすなわちわが国大学問題の中心であるという、こういう考え方で、ひとつ今後国の行政策をお進めいただきたいと思うのであります。いままで戦後、私立学校振興会をつくって、そうして私学の施設の充実について長期低利の融資あるいは出資をいただいたのでありましたし、あるいはまた研究設備助成補助金、理科等教育設備補助金の整備、そうしてその他新たに私学振興財団が昭和四十五年度予算から実施されまして、そうして人件費の二分の一助成という目標を五ヵ年年次計画で完成するということで今日に至っておるのでありまするが、これらの施策だけでは先ほど申しましたように、ただ、いまいる教員の人件費を二分の一国が持つようになって、その限りにおいて毎年の人件費の上昇分を授業料の増額に転嫁することなく、国の人件費助成によって現状を維持することができるということになっただけでございまして、新たに先ほど申しまするような最大の課題であるところの私立大学の教員の数を倍に、三倍に、四倍に充実するということにはほとんど全くつながらないのであります。現状においてそれを私学が行なおうとすれば、授業料の大幅増額以外に道はないことになるのであります。そのことは、ほとんど不可能に近いことであります。さればといって、それをそのまま放置するわけにはいかないと先ほど来申し上げるとおりでございまして、ということになれば解決の道は国の政策として今後私立大学の教員の数を計画的に充実させる、また私学も、自主的に充実計画を立てるということにいたしまして、それがために要するところの人件費は、教員はふえるたびにその分は五年なり十年なりここ当分の間は全額国費をもって新たに充実される、教員の人件費については、これを負担するというぐらいの新政策、これをやるかやらぬかということが私は今後における私立大学充実問題の根源であり、ポイントであるというふうに考えておるのでございます。一応とりあえずそれだけのことを申し述べまして意見といたします。
  20. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) ありがとうございました。  どうぞ御自由にひとつ御発言をお願いします。  それでは速記を中止してください。   〔午後二時十四分速記中止〕   〔午後三時三十分速記開始〕
  21. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 速記を起こしてください。  大体いままでのお話、いろいろだいへん変わったおもしろい参考になる意見が出たのでございますが、要約いたしますと、人的資源からいって、昨年度を対象にしますと、私立大学のほうが全体の入学者の八二%である。数の上から言っても大切にしよう、もっと大切にしろ、そういうことでございました。  それからいきますと、今度は学問的なあるいは研究、その学術研究、こういう環境、質、そういうものを国際レベルまでもっていくために、私学に対してもっと大幅に補助をしろ、援助をしろ、それからもう一つは人的に、教員の人間の数と質を確保できるようにこれもまた財政的な援助をしなければならない、こういう御意見が出てまいりました。それには、国庫補助というものが大幅になされなければならないが、それには一つの方法として私学に対する財政面からいきますと、学問とか業績とか、こういうものは、教育というのは国公立私立を問わず、民族あるいは国民共通のものだから、ひとつ、そういう国公立私立の区別なく、財政的な面だけは一つにしろと、一列に並べさせろ、私立も一緒に国立と同じようにさせろと、それには何かしらの財団のようなものが将来は必要ではないか、ただし、その場合に、いままでせっかく苦労して明治以来築き上げてきた日本教育のはしりであるところの私学精神、各校の私学精神というのを十二分に尊重しながら、財政的な面では国公立私立を問わずやれと、それから私立という名前は、ともすれば、帝国大学時代からの名称と比較して何か私利私欲に走るようなという御意見もあった。これは私も同感なんですが、そういう面で、何かひとつ抜本的な名称から根本的に変えなければいけない時期にきているんじゃないか、こういう御意見が大多数の御意見だったようですが、まだ足りない点がありますか。時子参考人
  22. 時子山常三郎

    参考人時子常三郎君) 私どもは私立とは言わず、学校法人立大学を俗称私立と考えているんです。戦争前はこれは財団法人で、民法の特別の法をもって学校法人に規定されていたわけですね。だから、民法法人以上の特別な法人なんです、学校法人というのは。だから、むしろ、正確には学校法人立大学と、そういうふうに考えております。
  23. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 イギリスで、オックスホードとケンブリッジはパブリックスクールですね。だから、パブリックというのはプライベートとはちょっと違うんですよ。みんなのところはパブリックですね。
  24. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) それではこれで終わらしていただきますが、この際、参考人方々に三百ごあいさつを申し上げます。  長時間、御多忙のところ、急な催しにもかかわらず御出席くださいまして貴重な御意見をいただきました。これは、たいへん貴重な参考になる御意見でございまして、今後、国会の文教委員あるいは文教政策のあり方に非常な影響を与えるものと確信いたしております。  どうもありがとうございました。  本件に関する調査は、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時三十四分散会      —————・—————