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参考人(
春木秋広君) 私はただいま御紹介いただきました
灘神戸生活協同組合の専務をいたしております
春木でございます。
申し述べる前に、灘神戸生協について若干御説明を申し上げたいと思います。私たち
灘神戸生活協同組合は、大正十年に創立いたしまして、ことしでちょうど満五十三年になるわけでございます。われわれは
消費生活協同組合法によって運営いたしておりまして、われわれの活動いたします区域は兵庫県知事の認可によるわけでございます。現在、大阪と境を接しております尼崎市、伊丹市、川西市から、西は加古川市までの兵庫県の中央部の九市がわれわれの活動区域であります。この区域の中に現在三十六万世帯の組合員がございます。このエリアの中の総人口が大体二百七十万ぐらいでございますが、三十六万世帯と申しますと、その家族数は百三、四十万ではなかろうか、大体エリア内の半数の
消費者の
皆さん方が何らかの形で灘神戸生協と
関係があるということでございます。御
承知のように、生活協同組合でございまして、この三十六万の各家庭が零細な資金を持ち寄りまして運営をしておるわけでございますが、私たちの生活協同組合の運営につきましては、主として家庭の奥さま方がこれに参画していらっしゃるわけでございます。こちらにいらっしゃいます
中沢伊登子先生も実は四十年来のわれわれのほうの組合員さんでございまして、この灘神戸生協育成のためには非常にお世話になっているわけでございますが、阪神間と申しますと、家庭の奥さま方も、かなり良識を持って、しかも決してそう極端なものに惑わされずに真剣に生活に取り組んでいらっしゃる家庭の奥さま方が多いのじゃなかろうかと思いますが、そういう奥さま方がそれぞれの中から代表を出してわれわれの生活協同組合の運営にじかにはだで参画していただいているわけでございます。
私たちの生活協同組合は、不急品であるとか、奢侈品であるとか、ぜいたく品というものは一切扱っておりません。すべて
生活関連物資だけでございます。しかも、その中でも、特に毎日の生活に最も必要といわれる生鮮食料品、これについては、全体の事業分量の三分の一がこれに当たっているわけでございます。さらに、残りの三分の二の中の三分の一が保存食品でございます。さらに三分の一がいわゆる非食料品といわれます日用家庭用品、衣料品
関係でございますが、これすべて毎日の生活に必要な
商品だけを取り扱っている
現状でございます。さらに、われわれのほうで、パンであるとかおとうふであるとかコンニャクであるとかうどんであるとか、こういう地域的な産物につきましては、直営の工場を持ちまして、それをつくりながら組合員に供給しております。そういうふうなものを大体年間三十億ほど
生産をいたしております。本年度におきまして総供給高が大体八百億ぐらいになろうかと思いますが、これが全部各家庭に利用されているわけでございます。取り扱い件数といたしましては、時期によって若干違いますが、まあ一万二、三千点をわれわれのほうの
生活関連物資の中でも緊要度の高いものを主として扱っております。
最近のいろいろな
商品に対する不信感といいますか、昨年の魚のPCBの問題であるとか、またカドミウム、水銀の問題であるとか、有毒色素の問題、増量剤においても、とかく
消費者は非常に神経過敏になっております。われわれのほうにおきましては、
昭和四十二年に
商品検査室をつくりまして、これらの
商品の、特に食料品
関係におきましての理化学的な分析、また細菌検査、これをもっぱらこの
商品検査室で行ないまして、いわゆる厚生省が示していらっしゃる安全基準があるわけでございますが、最近はともすれば厚生省の安全基準ですら
消費者の奥さま方は信用しないというふうな風潮もございまして、そういう奥さま方と相談して、灘神戸生協における取り扱い基準というものをつくりまして、そしてわれわれその検査室で検査したものだけを
仕入れる、また、常備
商品として置いております
商品も絶えずこの品質検査をいたしまして、安心して召し上がっていただけるものだけを常時
店頭に並べるというふうな
手段をしながら毎日の業務運営をはかっているようなことでございます。
そういうふうな中で、昨年の非常な
物価高騰、また品切れ問題、これはわれわれ五十三年の組合運営の歴史の中でもこういう経験は初めてでございました。昨年の初めから若干
物価高騰のきざしがございまして次々と値は上がりましたが、その値上がり幅と申しますのはせいぜい五%ないし一〇%程度でありました。しかし、この値上げにつきましても、そのつど組合員を集めまして、また組合員の集まりに出かけてまいりまして、こういう実情で、こういうふうな結果の値上がりでございます、というふうなこともいろいろ逐一業界事情については説明したわけでございますが、
消費者の
皆さま方はこの値上がりにつきましても非常な心配と抵抗をされたわけでございますが、しかし、そういうふうな中で、昨年の十月以降石油危機問題から起きましたあのパニック状態のときに、われわれ
消費者の
皆さま方はふだんから、こういうことについて非常な勉強をしていらっしゃる方々ばかりでございましたが、あの急速なパニックのときには日ごろのそういう勉強も訓練もほとんど役に立ちにくかったというのが
現状ではなかろうかと思います。先ほど来
岡田参考人さんからも申されましたが、ああいうふうな状態でございまして、われわれの
店頭の開店時には、毎朝二、三百人、多いところでは五百人の
お客さまが詰めかけられるわけです。電力の削減からわれわれのほうも開店時間を十時半にいたしておりますが、そのときにすでに黒山のような
消費者が
店頭にお待ちになる。そして、シャッターがあくと同時に洗剤の売り場へ走られる方、お
しょうゆの売り場に走られる方、また
砂糖の売り場にというふうな状態でございました。それで、われわれのほうも一応そういう
生活関連物資の中でも特に重要
商品につきましては
計画を立てましてメーカーと年間契約をして、一月には
幾ら、二月には
幾ら、五月には
幾らとびしっとした入荷
計画を立ててやっているわけでございます。われわれのほうは、そういう
商品のふだんの在庫は大体十日を基準にして在庫をしたわけでございますが、十日分の
商品が二、三時間でなくなるというふうな実情でございました。
われわれとしましては、
消費者のあの不安な顔、また焦燥感にかられたあの動作を見ておりますと、組合員の集会に行って、こういうものが突然こういう姿でなくなるということはないんだ、
皆さんどうか生協を信用して私たちの言うととおりにしていただけないでしょうか、きっとわれわれは努力をしてそういう
物資の入手については最大の努力を払いますから、そんなにお買い急ぎなさらなくとも御心配要りませんと、こういうふうなことを申しました。ところが、結果として、そういう私たちの呼びかけに対して生協を信用して買わなかった人たち、買い控えをなすった方々は、結果から見たら非常にあほうを見たと、こういうことから、ずいぶんあとになってわれわれはおしかりを受けたわけでございます。先ほ
ども申しますように、阪神間の家庭の
皆さま方は、そういう
意味ではある程度の余裕とまた一面教養も持っていらっしゃって、そう顔色を変えて走り歩くということが少ない
皆さん方でございますが、なぜこうなったかということをいろいろわれわれもあとで検討したわけでございますが、たまたま十二月というふうな賞与月でもありまして、お手持ちもかなりあったと思うのです。そういう中で、特にこれは
東京と関西との違いじゃなかろうかと思いますが、関西の主婦の
皆さん方は、
経済的に非常に敏感でございます。したがって、
値段が上がるということは、それに対する反応がきびしゅうございます。したがいまして、自分のそういうふうなはだで
感じた危機感というものから値が上がることに対して早く安く買っておこうというふうなこの気持ちは、私はその後メーカーなり
流通段階においての
買い占めとか売り惜しみがあったことが新聞に出ておりますが、
消費者が
買い占めをしたから値が上がったというのはこれは当たらないと思うのです。危機感を先取りしたのは
消費者だけではございません。おそらくいろいろな企業がこの危機感を先取りしての値上がりが今回は非常に大きかったのではなかろうかと思います。
参考までに申し上げますが、たとえばお
砂糖一つとりますと、昨年の九月は百二十九円でございました。これはわれわれの
仕入れ価格でございます。そして、ことしの二月は百八十五円になっております。また、お
しょうゆにいたしますと、去年の九月が二百七十一円六十六銭でございました。それが三百十六円六十六銭でございます。
砂糖は一四三・八%上がっております。
しょうゆは一一六・六%です。ただし、
しょうゆは昨年のうちに二度値上げをいたしております。そのほか、詳細な数字はここに持ち合わせておるわけでございますが、中には全然上がっていないものもございます。非常に大きく上がりましたのは一六〇%程度上がっておるものもありますし、われわれのほうで昨年の九月とことしの二月の食料品の平均値上げ率を出してみますと、大体二二六%ぐらいではなかろうかと思うわけでございます。実は、この品切れと値上がりの途中でございますが、あまりにも早い値上げ、しかも大幅な値上げ、これはわれわれとしてはどうしてもふに落ちませんでした。それで、これを突っ込みおるとなかなか
品物がもらえない。ところが、
消費者のほうは顔色を変えて売り場を走り歩かれる。われわれとしては何としてでも安心してもらうためには
商品の獲得がまず第一であるということのために
価格検討がいつもより非常にずさんであったことも事実でございます。これにつきましては、後ほど相当
消費者からわれわれもおしかりを受けたわけでございますが、たまたまそういう中間にあるメーカーのセールスがお見えになりまして聞いたことばの中に、政府のほうで生活緊急安定措置法をおつくりになる、そしていわゆる標準
価格をおつくりになる、標準
価格をおつくりになるなれば、これはそれから以後の値上げということはとてもできないというふうなことから、会社の幹部が寄って
幾らにするかということを検討しておる中の材料として、三五%、四〇%という原油のカット、それから来る製品の
生産縮小、それから副資材の
高騰、それから円の相場の下落、それから当然来るであろう来年の春闘の賃上げ、こういうもろもろのものを計算をして、値上げしないと困るぞというふうな検討が実はなされておりましたと、これはちょっと聞いたわけですが、そういうことの結果、短
期間のうちにいろいろな危機感の先取りから、あの三割、四割、六割というふうな大幅な値上げがここに出てきたのではなかろうかと思うわけでございます。
私たちは、組合員の
皆さん方に、とにかく生協としては、もうこうなったら、五十三年の歴史からそれぞれの
仕入れ先につきましてはわれわれのほうは
仕入れ先は絶対変えないという方針でやっております。
幾らよそから安く言うてきても、そっちにすぐには変わらない。そのかわりにいつも取引いただいておる、また生協を理解して応援していただいておるところにはいろいろな条件から最低の条件をいつも要求する。そういうふうな長い取引のおかげで相当量あちらこちらの店が品切れになっておりましても、生協には
商品が続きました。その結果、大阪とか京都のほうから集団でわれわれの店に買いものに来られる人がふえてきたわけです。われわれの
商品の入手実績というものは、組合員がいままで組合を利用された実績のもとにその
商品が入っておるわけでございます。したがいまして、われわれは、
消費生活協同組合法でも員外
販売は禁止をされておるわけでございますので、組合員にこれを公平に渡すのにはどうするか、また、組合員の方々も、日ごろ見ない人がたくさん買いに来ておる、これではわれわれ困る、こういうふうな組合員からの要請もございまして、いままで小型の組合員証を出しておりましたが、大型の組合員証を印刷いたしまして、そうしてたとえば洗剤なれば一回の洗たく量が大体三十グラムで洗たくができるわけでございます。そうすると、毎日洗たくされても九百グラムあれば一応毎日一回の洗たくはできる。それで、普通洗剤の箱は二・六五キロでございます。したがって、二・六五キロの洗剤一箱をお渡ししたらまあ二カ月はひとつごしんぼういただこう。
砂糖は大体一カ月の
消費量がどれくらい、
しょうゆはどれくらい、メリケン粉はどれくらい、こういうものはわれわれのほうはこういった基準がきちっと研究でできておりますので、
皆さんが何回も何回も並んで買われるというふうなことは非常なむだでもありますし、また、緊急
物資の供給には片寄ってはならないというふうなことから、膨大な手数をかけて組合員証をつくりまして、そうして組合員の
皆さん方に、たとえ病人があろうとも、幼児をかかえた奥さんでも、必ず
品物が渡るというふうなことを実行いたしまして、組合員の
皆さん方に非常に喜んでいただいたわけでございます。そういうふうにして、一時は二日とか三日
砂糖も切らしたこともございますが、上白がなければグラニュー糖、またグラニュー糖がなければ上白糖というふうなことで、あのさなかでも
砂糖が切れたのは二、三日しか切らさなかったのが
現状でございますし、また、洗剤
関係にいたしましても、前年対比二七〇%ぐらいの入荷を得まして組合員に提供したようなことでございます。
一月に入りまして漸次
商品が出回ってまいりました。特にわれわれふしぎに思いますことは、
国民生活安定緊急措置法から標準
価格が出されました
トイレットペーパーあたりでは、
参考に申しますと、ある
一つの
トイレットペーパーを取り上げますと、八月の
価格が九十円、これは四ロールで九十円でございました。これが九月になりますと百十八円になりました。十一月には百五十七円になりました。十二月には二百十六円になったわけです。ところが、標準
価格が出ましたとたんに百九十二円五十銭に落ちました。それで、いま二百四十円が標準
価格ということでございますが、われわれのほうはそれを二百十八円で現在も供給しております。こういうふうにして、政府のほうからの御指導がありましたもの、こういったものが一月に入りまして若干値が下がってはきておりますが、われわれはこの値下がりも一時的な現象ではなかろうかと思っております。いよいよ原油
価格が数倍に上がったものが、製品化されて出てくる季節になりまして、いまも毎日の新聞にそれが出ているわけでございますが、実はこの値上げについてはよほど慎重にやっていただかないと、十二月のパニックはわれわれ非常におそろしいものだということをはだで
感じました。あの奥さま方があんなに殺気立たれたことはわれわれも長い歴史の中で初めてでございますが、今度の石油
価格の
高騰からの石油製品をどういう形で政府が指導されるか、われわれは毎日それを見守っているわけでございますが、いま深刻な不安が再び
消費者の頭の上におおいかぶさっております。これはへたをすれば十二月以上の大きな
混乱がまた起きるのではないかということを非常に心配しているわけでございますが、われわれといたしましては、先ほど
岡田参考人も申されたごとく、ほんとうにここで政府の適切な処置、指導が一番必要な時期になっておるのではないかと思います。
われわれ末端におきましては、
消費者の悩みはわれわれの悩みであり、
消費者の喜びはわれわれの喜びでございます。そういう中で、最後になりますが、一言お願いを申し上げたいと思うわけです。と申しますのは、われわれは、
消費者が集まってつくって
消費者がみずから手を下して運営いたしておるのが生活協同組合でございます。いろいろ
消費者運動もあるわけでございますが、われわれは毎日大根を扱い、コンニャクを扱い、また衣料品を扱って、生活の鼓動とわれわれ生協の事業は同じ心臓で同じ波長で動いているわけでございます。いろいろ物の
流通には
百貨店さんもございます。また、スーパーマーケットも
チェーンストアもいらっしゃる。それぞれの分野において非常な貢献をしていらっしゃるわけではございますが、
消費者自体がそういうふうな運動に取り組んでいるのもぜひひとつ政府としては取り上げていただきたいと思うのです。実は、神戸市が、今回、われわれのところに一億円の金を提供しようと。そうして、緊急
物資をぜひ灘神戸生協の手で獲得してくれ、そして灘神戸生協の組合員だけでなしに一般の小売り屋にも灘神戸生協で入手した
物資を流して神戸全市民に回してくれと、こういう要請を受けております。そういった点からいたしましても、われわれの生活協同組合の仕事がまだまだ全国的には小そうございます。しかし、ここでは
消費者が納得した方法で分配をしているわけでございます。ヨーロッパの例を見ていただきますと、西ドイツなり、デンマークなり、スウェーデンなり、また、フランスにおきましても、イギリスにおいても、その国の小売り総額の多いところでは一七、八%から一〇%程度まであるわけでございますが、特にスウェーデン
あたりの食料品については四〇%近くを生活協同組合がやっております。そのために、そういう国際的なインフレ下におきましても生活が非常に安定しておるというふうに聞くわけでございまして、現在の
日本の生協にそれはとても求めるわけではございませんが、われわれ非常に矛盾と思いますことは、産業組合から分かれました農業協同組合、またわれわれ生活協同組合、片や
生産者の協同組合、われわれは
消費者の協同組合でございます。農産物の
生産にはずいぶんばく大な助成が年々なされているわけです。その助成をなされるときに立案されたとおりにいっているものもいっていないものもあろうかと思いますが、
消費者に対するそういう配慮はいまだあまりございません。われわれのほうには中央金融機関もございません。みな各家庭の奥さま方の持ち寄られた資金でこれを運営しているわけです。いま、食料品にいたしましても、最近の衛生基準が非常に高うございます。その適合する店舗をつくるためには、
一つの店舗に数億の金が要るわけです。また、冷凍食品のケースにいたしましても、五百万、六百万というのが一台で要るわけです。家庭の主婦が千円ずつ一万の所帯が持ち寄ってもわずか一千万しか金がないわけです。われわれは、そういう零細な金で何とか国の御方針のような
消費者を安定さすために一生懸命にやっているわけです。もちろん商業界の
皆さん方の御
使命もありますが、新しい
生活関連物資のバイパスとしてぜひひとつ生協に目を向けていただきまして、これの育成——われわれは農林
関係のようなばく大な助成金をくれとは申しませんが、何らかの方法でわれわれのほうもぜひひとつ育成強化をしていただくようにお骨折りをいただきたいものだと思うわけでございます。ことば足らずでございますが、これで終わらしていただきます。