○塚田大願君 この
農業者年金制度そのものは、もちろん
農業者の老後の保障ということであってしかるべきものだと思うんですが、このやり方といいますか、いま私がいろいろ申し上げましたようなやり方ではどうも矛盾が出る、
日本の実情からいって問題がある。なるほど
規模の
拡大ということは一つの前提でありましょうけれども、
日本の現状からいって、いまのようなやり方で、はたしてじゃ、
規模の
拡大ができるのか。その点ではいままでもずいぶんいろんな
施策も行なわれましたけれども、必ずしも
規模の
拡大というのがうまくいっているわけではない。
そういう点から見ましても、この
制度のあり方の問題で、私は意見を出しているわけですけれども、たとえば西独
あたりでも、こういう
年金がありますけれども、これは全額
国庫負担だというふうに聞いています、あるいは間違っているかもしれませんけれども。そういうやり方というものは相当充実した方向でやはり
改善していく必要があると思うので、そういう
意味でこの問題を取り上げたわけです。
次に、その
年金の、何といいますか、その基礎ともなるべき問題として
後継者の問題があると思うのですよ。で、
後継者への経譲、この問題も、いま大臣が、いつまでも年とって働いておられても困るのだと、こうおっしゃるのだが、それならそれで
後継者の
育成ということが一つ問題になるわけです。ところが、実際はどうかといいますと、
農業白書にも出ておりましたけれども、
農家人口の他産業への
移動というのは最近はだんだん高中年齢層へ変わっていっていると。また世帯上の地位も二、三男からあと継ぎへ、さらには世帯主へと進んできていると。こういう
農家人口の
移動の
状態が四十八年度の
農業白書にもはっきり出ているわけであります。で、こういう点を考えてみましても、これではたして
日本の
農業が健全に発達するかどうか、発展するかどうかという問題が出てくると思うのです。
そこで、実は私はこの間、秋田県の北秋田郡の比内町というところへ行ってまいりまして、ここで
後継者であります
農業青年といろいろ話を聞いたり、実情を調べてまいりました。この秋田県の比内町の
農業委員会で、「比内町における
農業者青年の意識はいかにあるか」という参考資料を発表しております。この資料を見ますと、この青年たちの意識がどうなのかと申しますと、今後の「
日本農業の見通しについて」というアンケートでは「暗い」と言っている青年が五六%ございます。約六〇%、六割に近い。見通しが「明るい」と言っている青年が一五%であります。こういう
数字がはっきり出ているのですね、その後継青年の中に。しかも、今後の見通しが「暗い」とする
理由の大きな
理由といたしまして、生産調整をあげている人が非常に多いです。生産調整に対する意見といたしまして、このアンケートでは、生産調整「反対」というのが六一・七%、生産調整も「必要」だという意見が五%です。たった五%。六一・七%が反対だと。で、米どころでもございますから、特に影響が大きいのだと思うのです、この生産調整に対する影響というものは。
しかし、それにしても、これだけの結果が、この
農業委員会の
調査ではっきり出ているのです。ですから、だとすると、経譲させる、経譲させると言いますけれども、
後継者がこういう
考え方、こういう意識ではたして経譲というものが進むのかどうか。そういう
意味では私は、政府の
後継者対策というものは非常に大きな弱点を持っている。つまり言いかえるならば、青年の心をつかんでない。こう申し上げても差しつかえないんではないかと思うわけです。こういうふうな意識
調査が一方にございます。
ところが、ここの町に行って驚きましたのは、こういう青年たちが「こがねサークル」という自分たちの自主的なサークルをつくっているのです。そして、この「こがね」というサークル誌を、ことしちょうど九年目でありますが、一月も欠かさずに出して、いま百五号ですか、これが一番新しいものですけれども、こういうふうに運動しておるわけですね。非常に自主的なものでたいへん私は、りっぱなことだと考えておるわけです。それで、こういうエネルギーが、どこから生まれたかといえば、このサークルのスローガンが「若い力で明日の明るい農村を築こう」と、こういう呼びかけなんですけれども、とにかく出かせぎに行く青年も、村に残っている青年も、みんな力を合わせて、何とか明るい農村を築いていこう、あすの農村を築いていこう、こういうことで結束をして奮闘している。それでとにかく九年間もこれが続いてきたというのは、私は、たいへんな力だと思うわけですよ。ここに、
日本の
農業を発展させる力がある、エネルギーがあるという信頼を私は持つわけですけれども、一方では、しかし非常に暗いと、見通しとしては暗いと、こうも言っておるのです。
そこで、私は、政府の
後継者対策としてやはり考えていただかなければならないのは、
農業白書にもございましたけれども、この「
中核的
農業者の
育成」、こういうことですね。そして何か、
農業者大学へ入れて
農業技術と
経営管理能力をつけさせるんだ、というふうな、うたい文句でこの「
中核的
農業者」の
育成ということをいわれておるのですが、こういう何か、選別的な、いわば
規模の大きい
農家と、そうでない
農家を選別して、一部のエリートだけにたよっていこうとする
考え方ですね。ここに私は、やはり
考え方のつまづきがあるのではないか。
ところが、「こがねサークル」なんてのは、そんなに
規模の大きな
農家の青年ではない、みんな出かせぎをしなければならないような零細な
農家の青年です。しかし、この人たちは、いまも申し上げましたように、残る者も、出る者も非常に力を合わせてやっておる。こういうことなんですが、この辺、政府としてどういうふうに評価し、この人たちの夢といいますか、何とか力を合わせれば何とかなるんだと、やっていけるのだ、というこの願いをむだにしないで、出かせぎしなくともやっていけるのだ、というような
農業を、大臣として約束してやれないものかと私は考えているわけです。やはり政治というものは、こういう
農民の、
農業者の、あるいは青年のエネルギー、これを
ほんとうに引き出すところに私は、政治というものがあるし、農政というものがなければならないのではないか。こう考えますので、この辺、大臣はどんなふうに考えていらっしゃるか、これもあわせてひとつお伺いしたいと思うのです。