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1974-04-26 第72回国会 参議院 農林水産委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十六日(金曜日)    午後一時八分開会     —————————————    委員異動  四月二十六日     選任          小川 半次君     辞任         補欠選任      若林 正武君     高橋雄之助君      吉田忠三郎君     辻  一彦君     —————————————   出席者は左のとおり     委員長         初村滝一郎君     理 事                 梶木 又三君                 高橋雄之助君                 鶴園 哲夫君     委 員                 田口長治郎君                 棚辺 四郎君                 温水 三郎君                 平泉  渉君                 堀本 宜実君                 神沢  浄君                 工藤 良平君                 杉原 一雄君                 辻  一彦君                 沢田  実君                 塚田 大願君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        農林政務次官   山本茂一郎君        水産庁長官    内村 良英君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        外務省大臣官房        審議官      杉原 真一君        外務省欧亜局外        務参事官     加賀美秀夫君        運輸省港湾局管        理課長      勝目久二郎君        海上保安庁警備        救難部長     山本 了三君    参考人        東京工業大学助        教授       黒沢 一清君        大日本水産会専        務理事      森沢 基吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○沿岸漁場整備開発法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、吉田忠三郎君が委員を辞任され、その補欠として辻一彦君が選任されました。  また、本日の本会議において、小川半次君が委員に指名されました。     —————————————
  3. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 理事補欠選任についておはかりいたましす。  委員異動によりまして、理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは理事高橋雄之助君を指名いたします。     —————————————
  5. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に、漁業災害補償法の一部を改正する法律案漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案沿岸漁場整備開発法案、以上三案を一括して議題とし、参考人意見を聴取いたします。  参考人として東京工業大学助教授黒沢一清君及び大日本水産会専務理事森沢基吉君の御出席をいただいております。  この際、参考人の方々に御一言申し上げます。本日は御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。参考人におかれましては忌憚のない御意見をお述べくだいますよう冒頭にお願いをいたします。  なお、議事の進め方といたしましては、最初に参考人からお一人約二十分間程度意見をお述べいただき、引き続いて委員の質問があれば質疑にお答えいただくことにいたします。  それでは、黒沢参考人からお願いをいたします。
  6. 黒沢一清

    参考人黒沢一清君) 私東京工業大学黒沢でございます。専攻が産業学という立場でございますので、法案の具体的な法律上の問題とか、あるいは制度上の、技術上の問題について専門的な意見を持っているわけではございませんが、職業柄、比較的原理的な立場沿岸漁業の問題をどう考えるのが正しいのかということを考えた場合に、今回の水産三法というものの存在する条件を考えてみたいと、こういうふうに思うのであります。  まず第一に申し上げたいことは、沿岸海域——もちろんわれわれは内水面をも対象に考えまするけれども、お話としては焦点沿岸海域にしぼってお話し申し上げますけれども、この沿岸海域というのは、まず第一に、日本国民全体の共有資源であるということ、そうして、この資源はいろいろな面で利用される、そういう意味では複合的な資源であるということ、この全く自明とも思えるような認識をしっかりと持った上で考えようということでございます。申し上げるまでもなく、沿岸水域は何よりもまず漁場の中の漁場でございますし、また、日本人たん白質食料の最大の供給源であります。もちろん交通の要路でもありますけれども、とりわけ日本民族にとりましては心身のいこいの場でもあります。  しかしながら、このあたかも生物のような一つシステムであります沿岸海域資源というものが、今日ではたいへん一面的に片寄って利用されておるのが現状でございます。その結果が例の漁場破壊あるいは漁族汚染という結果を生んでおる、このようにわれわれは見ております。沿岸地域人口稠密化ということは、沿岸海面生産力を高めるための実は資源であるはずであります。すなわち栄養塩類の増大を意味するはずなのであります。しかしながら、今日ではこれが、たとえば御案内のように瀬戸内海におきまして典型的にあらわれておりますように、しばしば汚物という、つまり資源ではなくて漁場破壊する要因としてもあらわれておるのであります。しかし、この望ましくない傾向は、たとえば水産資源保護法あるいは海洋水産資源開発促進法といったようなかなり積極的な資源保全開発関係法によってさえも有効に防止することができないのが現状であります。この点では、今回のたとえば沿岸漁場整備開発法案といえども例外ではございません。たとえば同法案第二条にうたってありますようなヘドロしゅんせつ作業をどんなに懸命にやりましても、あとからあとから汚染物質が流れ込んでくるということであってはどうにもならないのであります。この法案はこの点では完全に受け身でありまして、その他のいましがた申し上げました漁場資源関係諸法についてもそうでございます。  したがって、この法案の趣旨、精神が生かされる条件は、水産関係資源関係法律制度が総合的に運用されるということ、同時に、単に農林省水産庁だけでなく、すべてのわが国省庁が、沿岸海域国民資源として守り、そうして育てるのだという、そういう基本方針を堅持すること、また、国民の一人一人が海を大切にするという理念に徹し、そうした理念に従った行動をするということを前提にすることであると私は思うのであります。したがいまして、また、この法案内容は常に全国民的立場方向づけされなければならないという立場にあるはずであります。後に時間がありましたら触れたいと思いますけれども、地方自治体や漁業協同組合などの自主性を尊重するという正しい基本方針をこの法案は持っておりますが、このことが同時に、資源そのものの合理的な利用という見地と矛盾するということがあってはならないはずであります。  また、たとえば沿岸漁場のある地域ヘドロしゅんせつ作業といったような問題は、中央政府責任において行なうべき事業でありまして、そうした体制あるいは技術が徐々に整備されてくるならば、直ちにこれを国の責任において実施するという方向を持つことが展望されていなければならないはずだと思うのです。これらの点について、さらに具体的な意見も、私個人としてないわけではございませんが、この点については一応意見は差し控えておきます。  第二には、漁場の多面的な有用性ほんとうに生かしていく、つまり沿海総合的高度利用ということを、ことばでよく言いますが、これをほんとうに生かしていくということのためには、その問題のキーになる——かぎになるものをつかんでいるもの、すなわち生産的漁民というものをほんとうに維持し発展さしていくということであると私は思うのです。いましがた申し上げましたように、沿海海域というものは、全体として一つ生きものでございます。この生きた体系を、私どもの専門用語では生態系と申しております。エコロジー、そういうふうに考えております。この生きもの体系である沿海をそのようなものとして、まさに生きものとして、いわば本能的につかみ、日常の産業活動を通じて守り育てているというのはまさに生産的漁民でございまして、ところが、この生産的漁民が、いまや漁場破壊、所得の格差文化格差という圧力のもとで人口の流出を余儀なくされております。沿岸漁業の真の生産力のにない手が弱体化しつつあるのが現実でございます。沿岸漁場危機というのはまさに漁家層経済危機うらはらの現象でございます。生産的漁民工業へと流出していく、生産的漁民遊漁案内業者に転換していく。この遊漁問題については議論の余地がございますが、とにかくこういう傾向を、やむを得ない、当然だと。そういうふうな傍観的な態度で見る人がいるとすれば、そういう人々は国民資源である漁場破壊を肯定するものだとわれわれは見ざるを得ません。生産的漁民不在の海について沿岸海域保全漁場開発などといってもそれは、から文句であります。いまや沿岸漁場問題について、もしも日本人、そうしてわが国政府とがまじめに考えようというならば、万難を排して生産的漁民を維持する方策を打ち出すべきであります。この命題は、いわゆる経済合理性で計算して成立するものではないと思います。日本人生活条件としての沿海を保全開発するという経済外人間的価値基礎に据なければ、この緊急命題は成立し得ぬものだと私たちは考えております。  申し上げるまでもなく、このような緊急命題は、単に水産庁という限られた一官庁だけの力で十分背負い切れるようなものではございません。海洋時代のスタートを象徴するはずの例の海洋博の準備の進んでいる今日、水産庁というような小さな官庁沿岸資源の問題、海洋資源の問題の責任を負わせ、あるいは海洋の問題が各省庁の間でばらばらに扱われているというこの現状はノーマルだとは思われないのであります。  そこで、このようなわれわれの持っているビジョンの立場からいって、ほんとうにそれを懸命に実現していこうという、そういう努力水産庁の中に見ることができるとすれば、今回のたとえばいまさっき申しました沿岸漁場整備開発法案という画期的な法案の中にあると、こういうわれわれは見ることができるのでありまして、その限りにおいて、この法案水産業界における歴史的な意義というものをわれわれは認めるのにやぶさかでないのであります。  第三は、資源管理技術漁場利用行使制度との統一という観点からの意見を申し上げたいと思います。  従来、わが国水産技術漁獲技術養殖技術とに片寄っております。マネージメント、とりわけ資源管理技術の本格的な発達はおくれております。生態学——エコロジーです。経済学、そしてマネージメントの学問というものの統合の見地が著しく欠如しております。天然の力、天然仕組みを最適に利用する、ここに海産動植物資源利用技術焦点があるはずであります。工業のまねをすることが技術の進歩の唯一の方向ではないと私は思います。むしろ生態系の最適な利用、すなわち人間にとってただであるエネルギーをうまく多く使って、そして長期にわたって食糧を、りっぱな食糧汚染のない食糧をより多く獲得していくという、そういう方向がわれわれの技術の本命でなければならないと思います。そうして、こうした管理技術は、採苗、放流、そして採捕の方式、そしてそれらの生産を行なう規制、つまりレギュレーションでございますが、それらが首尾一貫したシステムの中に実現されるのでなければ実効をあげることがむずかしいと思うのであります。放流ということとそれから漁場の造成ということとが実際にはうまく結びついていないのが現実でございます。  そういう観点から申しますと、今回の法案は、たいへん前向きなものでございまして、いよいよわれわれの産業にも本格的な体制づくりの第一歩をしるす可能性が与えられるという希望が持てると私は見ております。  なお、今日の漁場開発技術は、正しい意味での生態学的基礎を踏まえたものでなければならぬと思うのでありまして、この点では、たとえばヘドロしゅんせつ一つをとってみましても、これを形式的にあるいは機械主義的に、とにかくそこにあるものを取ればいいといったような考え方ではだめでございます。海は生きものであります。ヘドロがそこに存在していること自身、すでにそこに生きた体系ができております。これをどのようにしゅんせつするのが妥当であるか、第二次公害をどう防止するか、このような方向での技術はまだほとんど開発されておりませんが、これは知見はあります。いろいろな部分的な知見はありますが、それを問題に即してシステム化するという、そういう方向へのチャンスがないだけであります。そういう点でのこれからの技術方向が問題になってくるということでございます。  第四番目に、この沿岸漁場整備開発法案について見ますと、特定水産物育成事業に関しましては、漁業協同組合自主規制というものをベースにする、そういう考え方でありますが、これはたいへんな卓見であるとわれわれは見ております。御承知のように、漁業協同組合は一般の経済組合に比べまして歴史的に漁場管理団体的性格を持っておりますが、この機会に漁業協同組合並びに同連合会漁場管理機能ということについての研究を根本的にやり直すということが必要ではないかと思います。これは、もしこの法案制度化するとすれば、この制度を実質的に生かす上での最も重要な事柄であると思います。つまり、この仕事がこの制度づくりと並行するのでなければ漁業協同組合の持っている輝かしい伝統の裏にある悪い保守的な側面が災いしないとも限らないという危惧をわれわれは持っているからであります。また、今日の新しい条件の中に漁民自主性を正しく発揮させるためにもこの仕事は必要なことであると思うからでございます。  以上、非常に原則的なことばかり申し上げましたけれども、私の意見の陳述を終わらしていただきます。御清聴ありがとうございました。
  7. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ありがとうございました。  それでは森沢参考人お願いいたします。
  8. 森沢基吉

    参考人森沢基吉君) ただいま黒沢先生は、三法の御審議関連をして、沿岸漁業の問題を対象にいろいろ意見をお述べになりましたので、私は、むしろ遠洋沖合い漁業あるいは国際漁業が置かれている環境なり、それに対する対応策なりというふうな点のお話を申し上げて、三法の御審議の御参考になれば幸いであると、そういうように思うわけでございます。  それで、もう私がとやかく申し上げるまでもございません。いま私、業界立場からはっきり申し上げますと、水産を取り巻く内外情勢まことに多端でございまして、第一点は国土開発とか、産業開発による公害等によって沿岸漁業が追い詰められてきつつあるという国内的な問題が第一点。  それから第二点は、きょうの私の主題でございますけれども、国際規制並びに海洋法によるいろんなきびしい締めつけが日本国際漁業の上に大きくのしかかりつつあるということ。  それから第三点は、先般来の漁業用燃油値上げあるいは漁業用資材値上げ、二倍にも三倍にもなっておりますが、この中で、ほかの製品のように、直接、魚の価格を生産費に反映できない仕組みになっている水産立場というものは経営上から見て非常に苦しくなるであろう。まあ、この三点に要約できると思います。  それで、日本の総漁獲高は約一千万トンでございますが、その中で遠洋あるいは沖合い沿岸、いろいろ農林省統計の中で出ておりますけれども、この十年間の傾向沿岸漁業浅海増養殖の伸び以外では非常に停滞的である。ほとんど沿岸漁船漁業というのは数量的には伸びておりません。これに比べまして、遠洋漁業でございますとか、国際漁業でございますとかいうのは特定魚種の増加もございまして、非常に日本の総水揚げ高比重は大きくなっておるということがいえると思います。こまかい数字は繁雑でございますので失礼をいたしますけれども、大体昭和四十七年の政府統計だと遠洋漁業海面漁獲高の三九%でございます。これが十年前は三一%でございました。それから沖合い漁業が三六%、これは十年前とあまり変わりません。  そういうわけで、遠洋沖合い漁業合わせまして実に七五%の比重を持っておるということをまず第一に申し上げておきたいと思うのでございます。というのは、いろいろな国際規制なり海洋法の影響を受けます階層は、この日本漁業の中の大きな柱になっております遠洋沖合い漁業がまともに国際情勢をかぶるという意味でたいへん大きな問題になるわけでございます。  で、私たち国際漁業ということばを使いますが、これは特に定義があるわけではございませんが、要するに遠洋漁業それから沖合い漁業を含めまして、いろいろ国際条約規制水域で操業する漁業並びに外国基地基地として操業する漁業などを総称して国際漁業と称しております。  で、国際漁業の総漁獲高は約四百七十万トンでございますから、日本の総漁獲高の半分近いものが国際漁業のウエートであると、こういうことできびしい国際情勢をまともに受けるこの漁業というものが日本水産業にとってはもちろんのこと、日本動物たん白食料政策に対しても非常に大きいインパクトを与えるおそれが出てきた、こういうことを率直に申し上げたいと思います。  もう先生方案内のことでございますが、昭和四十七年の、一昨年の暮れに出しました農林省動物たん白摂取量統計を見ますと一日三三・七グラムだと。そのうち、鯨を含めまして一七・四グラムが水産物ですから、五一・三%程度が実に水産物によってまかなわれておると。今後もおそらく畜産物水産物フィフティー・フィフティーぐらいで供給をしなきゃならぬと思いますが、畜産につきましては、えさの問題その他で必ずしも楽観できず、大きくゆれ動いております。したがって、水産がだめになっても、畜産動物たん白食料供給できるという安易な考え方はやはりとることができませんので、何としても、日本沖合い遠洋漁業ことばをかえますと、国際漁業というものは、食料政策という立場から維持振興する御政策をおとりいただく必要があるだろうし、また、業界自体もそれに対応する体質改善をする必要があるということを申し上げたいわけでございます。  もちろん輸入もふえていくと思いますが、現在約六十万トン程度水産物輸入で、日本アメリカ合衆国に次いでいまは世界第二の水産物輸入国でございますけれども、一千万トンの総漁獲高の中の六十万トン、これもしかも、エビとか、フィッシュミールとか、特定のものでございますので、いたずらに輸入だけに今後、依存するというわけにはもちろんまいらない。というのは、日本人のように、多種類に、水産物を摂取する国民のために、魚をとってくれる国は、世界のどこにもないわけでございますから、これはどうしても、われわれの手でとって、国民供給しなきゃならぬ。輸入がふえましても限度がある。ことばをかえますれば、自給率の問題が、農業でいま議論されておりますが、わが水産業は、自給率は非常に高いのでございます。何とかして、この線をダウンさせないようにもつていく必要が食料政策の面からあるであろう、こういうことでございます。それで、国際情勢のきびしさというのはいろいろございますが、私は三つあると思います。  その第一点は、この六月から十週間、カラカスで開かれます国連第三次海洋法会議動向、もう新聞紙上、あるいは政府からの御説明でいろいろ先生方案内のことでございますが、これが第一点。  第二点は、わが国が加盟いたしております、いろいろな漁業条約によってできております国際漁業委員会におけるきびしい規制の強化。  第三点は、日本列島周辺におきます外国漁船の操業の問題。日本列島周辺もいまや国際漁場になりつつございます。先般来、新聞紙上をにぎわしましたソ連船のサバの漁獲などこの一例でございます。  この三つが、私は、日本漁業を取り巻く国際情勢の最近の動きだと思いますが、一番問題になりますのは、この海洋法動向でございます。国際委員会の問題は、実は海洋法の問題とうらはらでございまして、非常に関連が深うございますが、いずれにいたしましても、世界の大勢は、開発途上国はもちろんのこと、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア等を含めまして、大体領海十二海里、さらに経済水域あるいは漁業水域として二百海里と、こういものが、どうやら世界動向になりつつあるようでございます。新聞情報でございますからわかりませんが、どうやらアメリカソ連も三百海里に傾きそうだというふうな、ぶっそうな情報もわれわれ聞いております。わが国立場といたしましては、政府は、世界的な合意が得られるならば、三海里を十二海里に踏み切ると、さらにいたずらに広範な経済水域的なものを設けることは水産物合理的利用という意味から言って適当でない。ただ、開発途上国、あるいは重く水産業に依存している特定の国については、ある程度沿岸国に優先を与える考慮はすべきだという意見、一昨年の夏のジュネーブの拡大海底平和利用委員会小木曽大使から提案をしておられますけどれも、いずれにしましても、二百海里という広い水域が何らかの意味合いによって沿岸国の強い主導のもとに入る可能性というのは濃くなってきたわけでございます。われわれはいままで狭い領海、広い公海ということで世界をまたにかけて水産物を採捕してきたわけでございますが、もうこういう時代は過ぎ去りましたが、この二百海里の中で行なわれている国際漁業比重というものが非常に大きいだけに、国連海洋法会議においてはひとつ日本の案を、最後までがんばり切れるとは、私は、率直に申し上げて思っておりませんけどれも、できるだけ強く押し出して、たとえある程度の広い海域が設定されても、その内容につきましては、十分水産物利用という面から見て、また、世界人類食糧供給という面から見て妥当な方向になるように政府の御努力をいただかなければならぬ、こういうふうに思うわけでございます。  二百海里の中で、現在わが国際漁業がとっております漁獲比重は八四・五%でございます。百海里の中では七八・二%、五十海里では四三・八%、まあ二百でも百でもたいして変わりございませんが、理論的にかりに二百海里から全部締め出されるとしますと、わが国際漁業の八五%がアウトになる、こういうことでございます。もちろん開発途上国は全面的に締め出すとは決して申しておりません。いろいろ入漁料を払えとか、経済協力技術協力をしろというようなことで条件を出して、リーダーシップをとろうとしておりますから、海洋法がさっき申し上げた方向に落ち着いて、日本遠洋漁業が一五%しか残らぬということでは決してございませんけどれも、それほど大きな比重を、国際漁業というものが、海洋法関連で持っておるということは非常に重大でございます。で、特に先生方に御了解を賜わりたいことは、いまモスクワで日ソ漁業交渉中でございますけれども、この四百七十万トンの二百海里——主として二百海里の中でございますが、国際漁業漁獲高のうち、南のほうでとられているもの、おもにマグロとかトロールでございますが、これは七十万トンでございます。したがいまして、わが国際漁業の四百七十万トンのうち四百万トンは、主として北洋漁業であり、一部いま政府交渉が始まろうとしております中国沿岸大陸における以西漁業である。したがいまして、われわれは、海洋法の問題というのは南北問題であるというふうに考えがちでございますが、水産業については南北問題もちろんでございますけどれも、むしろ私は、北洋漁業の問題であると。私は直ちに対ソ連−対カナダ、対アメリカの問題であると、それだけに非常に処理がしにくいということを心配をしておるわけでございます。で、日本海洋法会議において世界の孤児になってはなりませんけれども、この実態を食料問題という高い立場から十分踏まえて対処していただきませんと、えらいことになるのではないかという心配をしております。  それで、私なりに率直に要望なり意見を申し上げますと、第一点は、この国際漁業委員会規制の強化にも関連いたしますが、ひとつ腰を据えてしっかりした漁業の外交を政府はやってもらいたい。これは単に水産庁に要望することではございません。日本の外交の中で、漁業外交ということばはあまりなじまぬことばでございますけどれも、腰を据えて、ひとつ日本人はこれだけ魚を必要とする国民なんだということを十分腹に据えて、しっかりした漁業外交をやっていただきたい。ただ、話がつけばいいという簡単なものではございません。いまのモスクワの交渉においても毎年毎年じり貧でございますけれども、ここらにも私たち業界責任もございますけどれも、また日ソ漁業交渉のあり方等についても大いに申し上げたいこともたくさんわれわれもあるわけでございます。  いずれにしても、南北問題あるいは東西問題を問わず、漁業の強力な外交を展開をして、いろいろな国と漁業協定、漁業協力協定を結び、日本の漁船の操業が実質的に広い経済水域の中で確保されるという手を打っていただくことがまず第一でございます。それには水産庁の機能も非常に私はまだプアーだと思います。最近機構改革もありましたけれども、まだまだ多くの国を相手にして交渉を行なうのには非常にプアーである。現在日本は民間協定を含めて二十の漁業協定に入っておりますが、とてもこれだけをこなすスタッフが水産庁には十分でございません。これは一挙に整備できるものではございませんけれども、そこらもお考えいただきたい。日本よりも水揚げの少ない国で、漁業省を持っている国が世界に八カ国もございます。ソ連とかペルー、ノルウェー、中国、南ア連邦ですら漁業の省を持っている。こういう実態でございますので、何もいま漁業省をつくれというと意味で申し上げるんじゃなくて、国際漁業に対応する政府の、特に水産庁の強い機構、こういうものを今後も引き続いてお考えをいただく必要があるということでございます。  第二点は、技術経済協力と十分提携をする漁場の確保を進めていただきたい。これは先年、先生方の非常なお骨折によりまして、海外漁業協力財団というものができ上がりまして活動を開始いたしましたおかげで、予算も逐次ふえつつございますが、現在でもファンドは二十五億でございます。われわれは少なくとも百億ぐらいを最低限にしたファンドを持つ財団で、しかも、政府ができないもっと流動的な交渉がこの財団の融資を背景に開発途上国などとできることを期待をいたしておりますし、さらにこの財団の機能は、出発当時はおもに南北問題でございますが、私は、北洋漁業等の先進国に対しても機能する財団であるべきであると、こういうふうに思います。たとえば技術協力の問題は、アメリカ、カナダ、ソ連ともございますし、なかなか進みませんけれども、日ソ共同サケ・マスふ化増殖事業というふうなものが将来話ができます場合には、業界が負担しなければならぬ部分につきましては、この財団がソフトローンをやるというような考え方だってあり得るではないか。したがって、現在の財団は南北問題だけの財団ではなくて、北洋対策、つまり東西問題の財団にも将来成長さしていくべきであるという考え方を持っております。  それから第三は、新しい漁場の開発をさらに積極的に進めるべきであると。これは沿岸開発も当然入りますけれども、特に遠洋の開発はまだまだ努力をすれば私は開発の余地はあると、こういうふうに見ております。先年、海洋水産資源開発推進法で特殊法人のセンターができ上がりまして、非常にいま活動を続け、南氷洋のオキアミでございますとか、ニュージーランドのイカでございますとか、新しい資源の開発が進みつつあります。水産物の需給のアンバランスを解消するためにも、また世界の爆発的にふえる人口に対応していくためにも、私は、技術を持った日本が新しい漁場の開発というものに十分努力をして、これを国際機関なりほかの国にも提供をするということによって、日本漁業の、特に遠洋漁業の安定化の道を見つけるということも非常に重要であろうと思います。日本漁業だけの海洋水産資源開発であってはなりませんで、世界漁業のための海洋水産資源開発、漁場開発の使命というものをやはり世界第一の漁業国である日本は持っているんじゃなかろうか、そういうふうに思うわけでございます。  それからさらに第四番目は、もう現在大手がやっておりますが、もう水域の中でやる方法としては、合弁事業として向こうのフラッグのもとで操業するという方法をできる限り積極かつ多彩に進める方法も一案であろうと思います。ただ、中小漁業は、大手のように簡単には合弁事業というわけにまいりませんので、問題が残りますが、これも海洋法に対応する一つの方法でございます。  以上、いろいろ遠洋漁業比重海洋法等を中心とした問題を申し上げましたが、いま御審議中の沿岸漁場整備開発法案は、私は実は海洋法対策の重大な一つの柱であるというふうにいつも申し上げております。というのは、日本周辺漁場というのは、世界でもこれは有数の漁場でございます。この漁場をよごしっぱなしにして、また、十分開発投資の努力をしないで、われわれがほかの国の沖合いあるいは地先で操業をさしてほしいということを申しましても、これは、世界的には通用しない理論でございます。したがいまして、われわれは、今後、国際会議に臨みましても、日本政府は、日本周辺においてこういう法律を出して、大きな事業として再開発をやっておるんだ、これでもなおかつ、日本人の食べる魚は十分確保できないんだということで初めて、海洋法会議において日本立場を強く主張することができるという意味合いから、御審議中のこの法案というのは、遠洋漁業にも海洋法にも非常に重大な影響を持つと、こういうふうに思います。それだけに昭和五十年からの事業実施につきましては、ひとつ思い切った事業の肉づけを御検討を国会においていただき、政府のほうを御督励をいただきたいと、こう思うわけでございます。農業の土地改良等に比べますと、水産漁場開発という金額はあまりにも僅少でございます。これはわれわれ業界責任もございますが、ひとつこの法案の御審議にあたりまして、そういう点も十分御考慮をいただきたいということを申し上げまして、たいへんざっぱくでございましたが私の意見の陳述を終わります。
  9. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ありがとうございました。  それでは参考人に対し質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 杉原一雄

    杉原一雄君 最初の黒沢参考人の御意見も、非常に傾聴に値しておるわけなんです。で、先生の研究の領域を越えているかもしれませんが、先ほどヘドロの問題で、非常に貴重な警告を受けたわけですけれども、特にまた第二次公害の問題が出ているときにあたってね。たとえば具体的に富山の伏木の港があるわけですが、そこは化学工場、紙工場があって、相当のヘドロが沈積しておるわけです。それを今度あるところへ動かすと、港湾審議会でもそのことを決定したんです。が、しかし、住民には二次公害を起こさないように努力するということを県はつとめて説得しているわけですが、それはなかなか住民はわからないわけですね。その点、先生のほうで、それは技術的にもこうこうすれば可能だということを、先生の研究の領域の中で発言ができれば見解を聞きたいということが一つあります。  その次は、森沢さんに、ついでですが、いまぼくらは、食糧世界危機の問題を大きく農業白書も唱えているくらいですから、とらえているわけです。で、魚と気象との関係ですね、なかんずく最近発表された黒潮の流れの変化などをいろいろ聞きながら憂慮しているわけです。で、私は日本海に面しているもんですからね、日本海に限ってもし気象と海流との変化が、魚の動態に大きな影響を及ぼしているということなど、特に大きな視点からおつかみになっておったらお聞かせいただきたい。たとえば、私は、子供の時分から日本海に湯あみをしながら生きてきたわけですが、ほんとうに若い子供の時分は、イワシ、イワシでもうとてもじゃないけれども、こやしにしてしまわなければもう始末に困ったんです。それが、このごろイワシは貴重品になりつつある。また、私の県ではブリが十一月、十二月ごろ、これはまた天下一品のおいしい魚ですが、まあ来たり来ぬだりというようなことで、非常にでき、ふできが年によって違いますので、そうした動向等の中に、一つの一定の気象の変化の流れがあるならば、それはどういう方向で気象が流れつつあるかということなどお聞かせいただきたい。まあそれは対策といっても、そう簡単に対策が出る性質のものではないでしょうけれども、そうしたことを水産業界のまとめの役をしておいでになる森沢さんのほうで、もし資料なり考え方なり、洞察された問題点があるならばお聞かせいただきたいと思います。
  11. 黒沢一清

    参考人黒沢一清君) それでは、ヘドロしゅんせつの第二次公害問題ですけれども、うまい技術上の情報はないかとこう問われますと、ないというふうに答えるほかないんであります。われわれ科学者の中で非常に重要なトピックスとして、かなり前から提起されていますけれども、ほとんど手がついておりません。聞くところによりますと、水産庁当局では、ことしあたりから実際にその問題、第二次公害問題についての技術上の調査を始めたばかりだと、こういうことを最近聞いておりますが、とにかく非常に官庁としては、おくれてはおりますけれども始めているということで、知見はこれから出るということであります。これはそんなに困難な問題だとはわれわれは見ておらないのです。予測しておらないのです。やればできるということであります。ただ海は生きものでございますから、地上の土をこっちからこっちへ持っていくというようなぐあいにはいきませんで、生物学的に非常に複雑なメカニズムがありますが、そこらのことを考えていくスタッフはおります。われわれの頭の中にもすぐ勘定できるようなスタッフはおります。ただ、やるかどうかの決意が問題だと思います。  次に重要なことは、そういうことがわからなければ、技術上の問題がはっきりとアカデミックにわからなければやれないのかというと、そうではないということが大切なんで、産業はどんどん日日動きますから、そういう中でどうするか。これはまさに社会学的、政治学的、行政的な問題であって、そこの中心的な発想は住民とほんとうに一緒に考える、漁民と一緒に考えるということしかないということですね。これに徹底してやる。もう官庁はしかられっぱなし、学者はもうしかられっぱなし、そういう中でほんというの知恵が出るんだということだけは言えると思います。  以上でございます。
  12. 森沢基吉

    参考人森沢基吉君) 気象異変のお話でございますが、十分データも持っておりませんが、非常に俗っぽい話で恐縮でございますけどれも、大体におきまして、いろいろ気象異変で農作物等が不作であるというふうなときには、漁業につきましても、必ずしも漁獲状況はよくないというふうな過去の例が多いようでございます。まあ、必ずしも一致しない場合もありますけどれも、大体において農業で冷害等が起こる場合には、漁業等におきましても、沿岸の魚が浮き上がったり、いろいろいわゆる冷害的な現象を起こすということで、おかの気象状況がいいときには、海の漁業のコンディションもいいということは、私は、従来の経過から申し上げられるんじゃないかと、こというように思います。  まあ、最近北半球が冷えつつあるという学説があるようでございまして、これはここ五年や十年の話ではないんでしょうが、それとは関連ございませんでしょうが、ことしあたりは、寒流の影響が、太平洋岸等では非常に強く出まして、例のオットセイなどが福島県の沖あたりにもかなり回遊をいたしております。そういうこともございますが、御指摘の日本海がどうだということになりますと、私、特にデータも知識も持ちませんが、過去におきまして、おもに山陰地方を中心にいわゆる海の冷害が起こって漁業者が非常に困りまして、天災融資法のような法律を御発動いただいたこともございます。  ただ、海の生産力というのは非常におもしろいんで、昔は、マイワシが百万トン台を、この一つの魚種で突破する唯一の魚種でございましたが、何らかの原因でマイワシがだんだんなくなってくると、今度はカタクチイワシがふえ、サバがふえ、あるいはイカがふえるということで、海の総量というものは、内部の魚種的な構造には浮沈がございましても、全体的にはバランスがとれている。非常にこれはおもしろいことでございますけどれも、日本周辺においても、世界的にもそういうことが言えます。最近マイワシの量が復活してきたようでございますが、その理由なり、原因は、私、十分解明されていないと思いますけどれも、そうゆうふうにバランスはとれているようでございます。  それで、業界としては、水産庁の御援助でできました漁海況予報センターというものがございますが、ここを中心にそういうデータを集めまして、いろいろ漁業者の方にあとう限の情報を提供するというような仕事を現在やっております。もちろん私たちの組織のメンバーでございます。おもに漁海況予報センターを中心に、いま先生のおっしゃるようなことは、漁民にいろいろ情報を与える姿勢ができておるということをあわせて申し上げておきます。十分お答えになりませんけれども……。
  13. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 たいへんいい御意見を聞かしていただきまして感謝いたしております。  二つほどお尋ねをしたいんですが、一つはいまお話のありましたように、沿岸海域、これは国民の共有の資源だというお話ですね、全く同感であります。しかし、現実は、もう海の埋め立てというのが、海岸の埋め立てがむやみやたらとやられてきたわけですね。これは日本の重化学工業というのが、石油にしても、鉄材にしましても、全部輸入しているというところから臨海工場地帯というものが出てきている。そのために、日本沿岸という沿岸は、まず至るところ埋めちまう。その場合に、漁協が持っている海域、それを漁業権さえ売っぱらえば簡単に埋められるということになっているんですね。両隣りの漁協が反対しても、あるいはその前側にある漁協が反対してみましても、どうにもならないという実情のようですね。これは私は、いまの海の埋め立てについては根本的に考えなければならないと思う。   〔委員長退席、理事高橋雄之助君着席〕 で、漁民は賛成をしましても、そこの漁協が賛成しても、そうでない人が一ぱいいるわけなんですけれども、やられてしまうわけですね。ですから、沿岸海域というのは、それは国民共有の資源だということをはっきり踏まえた公有水面等埋め立てのことを考えていかないというとどうにもならぬ。両脇の漁協もどうにもならぬわけです。そこら辺を私は根本的に考えなければならぬのじゃないかと思うのですけれども、ただ、不幸にいたしまして、私、まだそこまで十分承知をしておらぬものですから、どういうもんだろうなあと考えておるわけです。それが一つです。  もう一つは、いまの二百海里の問題で、北のほうは一応おきまして、南のほうなんですけれども、南のほうについて大手のほうは、いまお話のありましたように、合弁資本をつくってやるという手もありますし、あるいはその国との間に何かの協定をつくってやるということも十分考えられます。しかし、中小の場合はもう手の出しようがないという現状じゃないかと思うのですね。そこで、中小の漁業資本について何かまとまって——まとまってといいますか、まあ協同組合みたいなものといいますか、何かまとまった形になって大手と同じようなやり方ができるようにやる必要があるのではないか。そういう点を心配をしたり、考えたりしているわけですけれども、その中小についてどういうふうなお考えを持っていらっしゃるかお尋ねしたいわけです。  その二つであります。
  14. 黒沢一清

    参考人黒沢一清君) それでは第一のほうの問題にお答えしますが、漁業協同組合漁業権の免許主体になっていて、その漁業権を売ってしまう、事実上売るというそういう関係で、海面工業資本にとってかなりかってに利用されてしまうという事実があるわけでありますが、これをどう考えるかというその考え方については別としまして、それを防止する方策をどうするかということは、私、法律のことはよく存じませんが、現在の漁業法の考え方では、日本漁場というものは国有ではございませんか。私は法律はよくわかりませんが、国有だというふうに理解しておりますが、それを漁業協同組合が自由にできるというのは、どうも法律解釈上どういうメカニズムになっておるか、私は先生の御質問自身が私もよくわからないんで、世の中が狂っているのじゃないかということをわれわれはよく申しておりますが、もしそれが現在の法律でまずいならば——ほんとう沿岸海域というものは国民共有資源でありますし、また、われわれは国有だというふうに思っておるのですが、そのような制度をきちっとつくってもらうよりほかないのではないかと思います。  それから漁業協同組合漁場管理という事実、これはたいへん歴史的に根拠のあるものですので、この事実を無視はできない。そこに資源国民的所有と、実質的にそれを産業として利用するものとの間の妥協形態として、漁業漁業というものが出ているのだろうというふうに私は解釈しておるのですけれども、現場でしばしばそういう事件にあって考えられますことは、海というのは、土地と違いまして非常に流動的であり、内容物は相互連関しているわけであります。そういうふうなものを、地先水面をその漁業協同組合が免許を受けているというようなことのあり方が、そもそも物理的なあり方と制度との間に大きな矛盾があるということなんであります。これが昔のように、漁業の行動半径がかなり限られているというようなことでありますと、それはそれなりに根拠があったでしょうけれども、今度のこの法案のように、沿岸漁場整備開発法というかなりのビジョンに富んだ法律を実施するということになりますと、漁業協同組合のそういう非常に狭隘なマネージメントの範囲というものはたいへん問題です。ですから私最後のところで申しましたように、漁業協同組合漁場管理ということは、これはたっといことだと、共同してとにかくマネージメントするんですから。しかしながら、現段階の要求には合わない、狭隘過ぎる、狭過ぎる。だから、ここで根本的に考え方を改めてもいいぐらいな前提で調査研究をやり直すということがなければ、この法案は生きませんと私は思うのであります。これは、沿岸埋め立てももちろん、そういうふうなことをひっくるめて私は、そのように思っておるわけであります。とりわけ範囲を広げるということがさしあたっては大切な知見になると思います。  以上でございます。
  15. 森沢基吉

    参考人森沢基吉君) 中小漁業の問題でございますが、私まず第一に、海洋法関連で中小漁業として非常に大事なことは、たとえばカツオ・マグロ漁業などがそのいい例だと思いますけれども、将来、設定されるであろういわゆる経済水域の中で操業をいたしております中小漁業も主体とするカツオ・マグロ漁船の操業実績というものを、合弁ではなくて、日本の国旗のもとに操業ができるように相手国と経済協力であるとか、あるいは技術協力であるとか、そういうものを背景にしながら、強力にまず交渉をしていただく。先ほど陳述のときに技術協力協定であるとか、漁業協定ということを申し上げましたが、いわゆるそういう中小漁業については一定隻数のものが入漁できるような協定の締結に努力をしていただくというのが、まず一番大事であろうと思います。これ国によって違いますが、非常にむずかしい要素を持っておりますが、それが何といっても根本でございます。  それから第二は、それでなおかつ解決しない場合には、もう合弁しか手がないわけでございますが、その場合には、やはりそういう中小漁業の組織がございます。カツオ・マグロならカツオ・マグロの連合会がございますし、サケ・マスならいろいろございますが、そういうものの全国団体もございます。そういうところが、直接なりあるいはまた別の会社をつくりまして、いろいろ大手の協力も得ながら相手国と資本提携をしていくという考え方もあり得るんではないかと、こう思います。けれども、率直に申し上げて、大手の会社ほどいわゆる機動力もございませんし、資金もございませんので、問題はございますが、そういう連合会等を中心として別の法人をつくって、そこに海外漁業協力財団のソフトローンを注入することによって、中小漁業といえども私は相手と提携する道は十分あると思います。というのは、開発途上国は、必ずしも全部大型の遠洋トロールをやろうとは言っていないので、連中が言っておりますのは、まず自分たちの国の沿岸漁業の開発が入り口だろうと思います。そういう意味におきましては、日本沿岸漁業者も中小漁業者も協力をする余地は十分あるわけでございます。で、何かそういうワンクッション組織を考えましてやる必要があると思います。  それから、これはよぶんなことでございますけれども、合弁ではございませんが、水産庁努力によりまして、現在、先般、北洋で減船整理、あるいは東海・黄海で減船等ありました中小漁業に対しては、南米の沿岸におきましてエビの小型のトロール事業を営む道が開かれまして、サケ・マスの協同組合の自営あるいはそういう関係の中小漁業がつくる会社が向こうへ進出をしまして、エビの事業を現在開始をしております。南米のブラジルの北部にございますがイアナとか、あるいはパラマリボとか、そういうところでは漁業転換対策の一環としてそういう仕事がすでにスタートをいたしております。こういう形をさらに発展させれば、私は中小といえども一合弁の道というのは、いろいろむずかしい隘路はございますけれども、十分あるんではないかと、こういうように考えております、もちろん大手ほど自由濶達にはいきませんけれども。そういうことでございます。
  16. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまのお話のありました、技術を持った漁業移民の問題ですね、これはどうも私の知っている限りじゃたいへん失敗した例もありますし、いまのお話では成功している例もあるということですが、   〔理事高橋雄之助君退席、委員長着席〕 これは東南アジア諸国に対して、そういう海外に対して、漁業移民という形のものもむろんあるというわけですね。
  17. 森沢基吉

    参考人森沢基吉君) ちょっと御説明が不十分だと思いますが、いまのエビのトロールのお話をいたしましたが、これは決して漁業移民ではございませんで、向こうの外国基地をベースにする基地操業でございます。それでいろいろ財団あたりからも融資をしましてここに冷蔵庫をつくったり、合弁会社をつくったりしてやっておる基地操業でございます。決して漁民の移民ではございません。むしろ私は先生と同じように、過去において漁業の移民というものを行なった例がございましたけれども、これは成功いたしておりません。むしろドミニカなどに漁業移民をやりまして非常に苦い失敗の経験をした歴史がございます。それと、相手国はもう漁業の移民などというものを受け入れる気持ちはございませんで、むしろ技術屋をひとつ出してくれということで、漁業の労働力というのは開発途上国にたくさんあるわけでございます。むしろそういう漁業労働力を使って、沿岸漁業なり沖合い漁業開発途上国がやるリーダーを先進国の日本に求めるということでございますので、いわゆる漁業移民的なものは私は今後も考えられないと思います。むしろ技術の輸出であり技術者の協力である、こういうふうに割り切ってよかろうかと思います。
  18. 辻一彦

    辻一彦君 ひとつ黒沢さんにお願いしたいのですが、いま瀬戸内で栽培漁業のかなり段階を経て、それから日本海のほうにもこれをつくっておりますね。五カ所かかったんです。しかし、当初はリスクがいろいろ考えられ、それから養殖じゃなしに放流をすれば公益性という点もある。こういう点になりますと、地方にそういう経費を負担さすというやり方は、ある程度見通しがつくまでは無理なような気がするんです。栽培漁業のセンター等のあり方として、瀬戸内等の経験から推して、日本海あるいはこれから北のほうに拡大されますが、そういうやり方はどうお考えになるか、これが一つ。  それからもう一つは、いま朝、「毎日新聞」を見ますと、日ソ交渉による規制をやっておりますが、B規制地域にいわゆる監視船が乗り入れるというのを認めるというような方向が出ておりますですね。これは本来自主規制でやらなきゃならぬところですが、向こうが心配するような業界の乱獲というようなことが事実あったのかどうか、そこらは業界としてどうお考えになっておられるか、二点お伺いいたします。
  19. 黒沢一清

    参考人黒沢一清君) 栽培漁業という概念は非常に広く解釈されて実施されておるわけでございまして、狭い意味での魚類養殖も含み、むしろ大々的に考えている栽培漁業内容といいますのは、従来増殖といわれる領域だと思うのです。つまり採苗する、それを生物学的に考えて安全だと思われるレベルまで保育してそれを放流する。そして放流されたものをうまくキャッチして、そこに漁場を造成するための漁礁の設置という、そういう一つシステムを栽培漁業基礎と考えておるわけでございますね。したがって、リスクと申しますのは一経営的なリスクということをお考えだろうと私は思います。もしそうしますと、増殖そのものについてのリスクというものは、そう一般の企業的な意味ではございませんと思うので、むしろ狭い意味の養殖というような点でリスクの問題が出てくると思いますが、狭い意味の養殖はかなり資本的な体制をもってやるのがたてまえでございますので、その点はいまの段階ではむしろ企業家精神に燃えていただいてやるということなのではないかと思うんです。  私、最初の陳述で申し上げました点で強調した点の一つでありますが、狭い意味での養殖というのは、私は、まだ戦略方向に乗っているのではないと見ておるのです。つまり現在のわが国漁業の課題を背負って実行すべく、また可能である戦略方向は増殖政策だと思うのです。その増殖の最も典型的に行なっているのが採苗、放流それから大型漁礁の造成、つまり漁場造成ということだと思います。これはそんなにお金のかかるものではないといったら語弊がありますが、かなり効率のいいものであるし、希望のうんと持てるものであるし、やっとこれで技術的にも目鼻がつき始めている段階でございますので、今度の沿岸漁場整備開発法というのは、そういう技術的な素地を持った法律としてわれわれは非常に期待を持っているというのが実情なのでございます。ちょっと私の受け取り方がまずかったかもしれませんけれどもこのくらいで。
  20. 森沢基吉

    参考人森沢基吉君) 私も、ここに「毎日新聞」のスクラップを持っておりますが、日本側が譲歩して、ソ連船の立ち入りをB区域に許すというふうなことが書いてございますが、公式な筋からはこういう情報は私ども得ておりません、まだ。交渉が難航しておりまして、B区域の取り締まり問題について、ソ連が非常に固執しているということは事実でございますけれども、公式の情報としては、私は、現時点におきましては、この「毎日新聞」の報道のようなことはまだ聞いておりません。が、実はこのB区域というのは歴史的にいろいろ経過がございまして、日ソ漁業条約ができまして交渉を回を重ねておりますが、ちょうど第六回の日ソ漁業委員会昭和三十七年モスクワで開かれましたときに、従来の規制水域をA水域とし、それより南に、北緯四十五度より南でございますが、これをB水域というふうに定めまして、新たにB区域が設定された経緯がございます。条約の規定に基づきまして、B区域の取り締りというのは、日ソ共同でやるんだと。そのやり方は、日本の監視船にソ連の監督官が乗るんだということで、いわゆる赤船の乗り入れはないわけで——いま主張しているのは、赤船を乗り入れさせる、こういう主張でございますが、まあ率直に申し上げて、B区域で操業いたしております比較的、型の小さいサケ・マスの流し網漁業者の意向は、それは絶対に困るという考え方でございます。という理由は、そういう小さい規模の漁船が操業をする所へ、ソ連の監視船が入ってきて、直接臨検を受けるというような場合には、外国語もわかりませんし、いろいろ不安を感じて混乱を起こすのだ。したがって、従来同様、日ソの共同取り締まりでやってもらわないと非常に不安だ。そういう気持ちから、ソ連船の乗り入れというものについては、関係業界としては強く反発をいたしておりますが、片や、いま先生御指摘になりましたけれども、これは日ソに限らず、漁業条約を厳粛に順守するという姿勢、これはわれわれ業界側としては十分考えなければならない。というのは、幾ら取り締まりを強化いたしましても、取り締まりというものが一〇〇%行なわれるものではございません。これはもう陸上の問題でもそうでございますし、いわんや広い海洋の上で、政府の監視船を何百隻ふやしましても、私は業界のそういう心がまえがございませんと、これはできないことだ。こういうふうに思いますので、まあB区域に、ソ連の監視船が乗り入れようと乗り入れまいと、漁業条約の順守、それから協定できまったことの厳格な実行ということにつきましては、関係業界としては、十分にこれは前向きに対応すべき姿勢が必要である、そういうふうに思います。
  21. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 他に御発言もないようですから、参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々には、御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、貴重な御意見を御開陳いただき、まことにありがとうございました。  速記とめて。   〔速記中止〕
  22. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) それでは速記を起こして。  それでは引き続き三法案に対し質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  23. 工藤良平

    ○工藤良平君 それではまず最初に、白書によりましてもそうなのですけれども、この水産漁獲高が非常に増加をいたしまして、すでに一千万トンをこえたと、このような実績が出ているわけでありまして、このことは、先ほど参考人からもお話がありました。けれども、日本の食料問題、とりわけたん白資源の問題、供給という面から考えてみますと、大豆なりあるいは畜産の問題が低迷をしておる現在の状態の中では、その動物性たん白の半分以上供給をしているというこの水産問題については、特に私どもとしても重大な関心を払わなきゃならぬということは、だれもが認めていることだと思います。とりわけ、ここ非常にこの水産問題が表に出てまいりましてそのことは、言いかえますと、今日までこの漁業問題に対する対策がおくれていたということに言いかえられるのではないかという実は私は気がするわけです。で、そういう面からいいまして、まずお伺いしたいと思いますことは、一千万トンをこえたその主たる要因はどういうことなのかということを私は見てみたいと思うのですけれども、その点についてひとつ御説明いただきたいと思います。
  24. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 四十七年の漁業生産は一千万トンをこえているわけでございますが、特に、白書で明らかなように、スケソウダラ、サバの漁獲が四割ぐらいになっているということが、非常に漁獲が伸びた大きな原因でございます。
  25. 工藤良平

    ○工藤良平君 国際的に見た場合に、一体水産資源傾向というものはどういうような傾向にあるのか。いまもお話がありましたけれども、六月に開かれる海洋法会議等の問題でも、専管水域の問題が非常に大きな問題になってきているということは、やはりこの資源の減少というものが、相当大きく表面に出てきているのではないかという私は推測ができるのでありますけれども、その点についてどのように把握をしていらっしゃるか。その点をお伺いしたいと思います。
  26. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 世界的な水産資源動向でございますが、これは魚種によっていろいろ違うわけでございます。  そこで、主たる魚類だけについて申し上げますと、まず最初にカツオ・マグロでございますが、カツオにつきましては、未利用資源がまだ相当ございます。そこで、開発可能の資源量は約百五十万トン程度あるのじゃないかというふうに見られております。マグロは、満限状態でございまして、今後開発の可能性はきわめて少ないということでございます。  次に、サケ・マスでございますが、サケにつきましては、ベニザケ、シロザケをはじめ五種類ぐらいの魚種がございますが、各魚種とも資源は低い水準にございます。特にアメリカ系のブリストル湾のベニザケは近年極端に悪いという状況になっております。  次に、カニでございますが、東べーリング海のタラバは、低位でございますが、回復の傾向が若干見られる。しかし、ズワイガニその他のカニは減っております。それから問題の、西カムチャッカのタラバガニは、きわめて低い水準にございまして、その他の西カムの資源も一般的に漸減の傾向にございます。  それからニシンでございますが、北海道、樺太周辺のニシンは低位ながら安定しております。北洋のニシンについて申しますと、オホーツクは安定、東べーリング海は衰退、コルフォ・カラギンのニシンは低水準にある、大西洋のニシンも衰退傾向、こういうことになっております。  鯨につきましては、ナガス、イワシ、ミンク、マッコウ等いろいろ種類があるわけでございますが、現在の漁獲程度を続けていくならば、鯨の資源は逐次回復するだろうということになっております。  次に、中国と非常に関係のある東海・黄海の底魚の資源でございますが、主要魚類の資源は、昭和三十五年から四十年ごろをピークといたしまして急激に減っております。近年における底魚資源全体の動向は、注意すべき状態にございまして、特に重要魚類であるキグチ資源は減少傾向が見られ、タチウオもまた減りつつあるということでございます。  次に、スケソウダラでございますが、東西カムチャッカのスケソウダラは、卓越年級群——いわゆる生き残りの多い年の群でございますが、に支えられまして、当面は安定状況である。しかし、後続年級群の出現については明らかでなく、ほぼ満限に近いのではないか。それからべーリング海のスケソウダラにつきましては、やや漁獲が限界を上回っておるのではないかというふうに思われております。  北洋の底魚の資源、スケソウ以外の資源でございますが、現在のところ、ほぼ満限に利用されておるという状況でございます。  それからアジ、サバでございますが、アジは、一九六〇年代を頂点といたしまして減りつつある。サバは現在満限状態でございまして、産卵量の減少、小型化等、資源が減りつつある徴候が出ておるということでございます。  次に、イカでございますが、イカは近年やや低い水準にございまして、日本海では満限状態、太平洋沿岸ではやや減っている。しかし、イカはこれは一年生でございますので、なお、イカの資源の将来について明確なことはなかなか申し上げにくいという状況でございます。  それからブリでございますが、ブリは資源的に安定している。  サンマは、日本近海の資源は、回復傾向にございます。中部太平洋、カリフォルニア沖の資源も大きいが非常に散らばっておりますので、漁獲にはなかなか適しない。南半球のサンマは資源は非常に豊富であるということになっております。  イワシ類でございますが、カタクチイワシは資源が安定しております。ウルメイワシも資源が安定しております。マイワシは最近非常に資源が回復しております。  それからエビ類は、日本近海ではこれ以上の漁獲は期待できない。  おもだった魚種について申し上げますと、国際的な資源の状況はこのようなかっこうになっております。
  27. 工藤良平

    ○工藤良平君 それを総合的に分析をしてみると、いわゆと総じて資源というものがどういう方向にあると判断をいたしますか。
  28. 内村良英

    政府委員(内村良英君) まず浮き魚の場合には、資源の判定が非常にむずかしいわけでございます。現にサンマがふえておるというようなこともございますので、浮き魚について今後資源がどうなるかということは、これはかなり解明すべき問題がございます。  それから底魚につきましては、これはやはり多少減ってきておるのではないかという感じがいたします。  それからサケ・マスでございますが、これはかなり減っているということは言っていいのではないかと思います。
  29. 工藤良平

    ○工藤良平君 そうしますと、四十七年の段階で、統計的に見ても、一千万トンをこえたということですね。これは一体どういうことでそういうことになってきたのか。よく一般的にいわれますように、いわゆる沿岸から沖合いへ、沖合いから沿岸へ、こういうことで、まず漁場が大きく変化をしていったということですね。それから減少した魚種から新しい魚種へ転換をしていく。さらに小型船から大型船へと非常に変わった。こういうような要素のほうがきわめて多くて、全体的に資源が豊富になったから漁獲高がふえた、というような判断は成り立たないのではないかと私は思うのですが、そういう判断でよろしいか。それをきちんと基本的に考えておかないと、私は、これからの日本漁業に対するかまえ方というものも、おのずから違ってくるのではないかと思いますから、その点をまずどのように判断をしたらいいのかからお伺いをしておきたいと思います。
  30. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 確かに先生がただいま御指摘になりましたような面もございます。しかしながら、スケソウダラの漁獲がふえ始めたころにおきましては、スケソウダラの資源というものは非常に豊富だったわけでございます。今日までいろいろ漁業の歴史を見てみますと、最初、相当な未利用資源がある、そこに漁獲努力を加えていくということになると、ある時期においてオーバーフィッシングと申しますか、漁獲努力のほうが資源を上回ったような状況になる。そこで、いろいろな管理が始まって資源が回復してくる、というような歴史を、大体、いろいろな漁業においてたどっているわけでございます。したがいまして、確かに一部の漁業につきましては、現在資源をオーバーする漁獲努力が加わっておるものもございます。スケソウダラ等が非常にふえてきた、サバ等もふえたということにつきましては、確かに過去数年、その面の漁獲努力が非常に増強されたということは事実でございます。しかし、だからといって、この資源がなくなってしまうとか、そういうふうに考えるのはまだ早いんではないか、ということで、私どもといたしましては、資源動向を十分見ながら漁業の管理をやっていかなきゃならぬというふうに思っておるわけでございます。
  31. 工藤良平

    ○工藤良平君 私は、その点の理解というものが——たとえば海洋法会議の中で出てきておる専管水域の拡大というような問題が、各国から非常に強く出てきているということは、特にやっぱり日本漁業に対する国際的な脅威というものが一つの大きな要素になっているのではないかと思うんですが、その点に対するお考え方はどうでしょうか。
  32. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 特に、開発途上国が、最近の海洋法会議等におきまして、二百海里に及ぶような経済水域とか、あるいは漁業専管水域ということを言っておりますことの背景には、いまのままほうっておくと、日本だけではなしに、先進国あるいは開発途上国の中でも最近、台湾とか韓国は非常にまあ遠洋漁業をやっておりますので、そういった外国漁業によって資源が、ものによっては枯渇するところまでなってしまうのではないか。それで、自分たちがいろいろ漁業を伸ばしていこうという場合に、今後かれらとしても伸ばしていかなきゃならぬわけでございますから、すでに資源がなくなっているというようなことが起こってはいかぬというような気運から、かなり広い経済水域を主張しているということがあるわけでございます。現に、日本漁業もそうでございますが、一番早く広い領海を言い出したのは中南米でございます。中南米の国がそれを言い出しましたのは、やはりアメリカのマグロ漁業がかなりあの辺で活発に行なわれたというようなこともございます。というようなこともございまして、やはり潜在的には、自分たちが資本投下をし、技術を習得して漁業を伸ばそうというときに、すでに資源がないというようなことになっては困るというような危惧がある、というふうに考えていいのではないかと思います。
  33. 工藤良平

    ○工藤良平君 いまの参考人お話を引用するわけではありませんけれども、まあ、この漁業問題については、南北問題というよりも、むしろ北洋漁業の問題だと——これはソビエト、カナダ、アメリカとの関係が非常に大きく出ておるんだという御指摘がありました。私は、なぜこのことを、これだけ御意見をいただきたいかといいますと、やはりいまの日本漁獲高が、どういう形で一体ふえてきたのかということをやっぱりきちんと把握をする必要があると思うわけですね。そういう意味で私は聞いているわけで、さらに今後日本漁業界が、企業ごとの合理化をはかり、さらに一段と大きな規模でその漁業の方式なりあるいは漁場の開拓というものをやるとするならば、そういう可能性というのはもっともっと大きなものがあるのか、あるいはそれは一つの限界に到達をしているのか、そういう点も私はあわせながら、現在の一千万トンというこの漁獲高というものを詳細に分析してみる必要がある。その上に立って今回出てきている沿岸漁業に対する対策はどうだ、あるいはその漁業補償の問題はどうだということが私は出てくるのではないか。こういうように考えておりますから、その点を実は詰めているわけで、そういう点から考えてみて、それじゃ、日本のこれからの漁業というのは、さらに大型化し、さらに大きく伸ばしていける余地というものが十分にあるのかどうか、一つの限界というものを見きわめながら次の対策を講ずるということが必要なのか、その点を、まあ判断はむずかしいと思いますけれども、ひとつお聞きしておきたいと思います。
  34. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 先生御指摘のように、非常に答弁申し上げることがむずかしい問題でございます。ただ、一般的に言えますのは、戦後、日本漁業の発展というものは、日本漁業を取り巻く環境というのは非常に順調だったと私は思います。したがいまして、どんどんどんどん漁業が伸びていったということで、漁業におきましては、日本はもう代表的な最先進国ということになっております。  そこで、今後さらにこの漁業がもっと、特に漁獲努力と申しますか、船とかあるいはいろんな漁業設備の面において大型化していくのかということでございますが、その辺は非常に判断のむずかしいところだと思います。さらに、漁場の開拓でございますが、大体まあ前は魚というものは大体大陸だなにいるんだと、あまり深いところには、太平洋のまん中なんかには魚はいないんだというような話でございましたけれども、資源の状態あるいは漁獲努力の大規模化というものに伴いまして、御案内のように、水産庁もかなり深いところを引いてみようかということで、千メートルぐらいのところを引いてみたり、試験をするというような段階になっております。したがいまして、そういったところに有望な資源があるということになれば、かなりまた、大型化した施設でやらなきゃできない。ただ、そこにはたして、魚がいることは事実のようでございますけれども、食用に利用できるような魚がたくさんいるかどうかというようなことについては、なお今後の検討に待たなきゃならぬ問題があるわけでございます。したがいまして、今後漁船なりあるいはその他の漁業施設というものが大型化するかどうかという点について明確な見通しを申し上げるのは非常にむずかしい段階にあるということでございます。
  35. 工藤良平

    ○工藤良平君 私は、昨年の七月、あの汚染魚の問題が出たときに、本会議で質問を申し上げたんですけれども、私ども、海というのはたいへん広いものだと、とてつもない広いものだと考えていたのです。ところが、その海が、ごくわずかの間によごれてしまって、魚が住めない、住んでいる魚が食べられないという状態が出てきて実は驚いたわけです。あとからまた、これは沿岸漁業の問題で私いろいろお聞きしたいと思いますけれども。そういう意味合いから、やはりとてつもない広いと考えていた海の、いわゆる生息物というものが、かなり有限なものとして私たちが判断をしていくということは、やはりこれからの漁業対策として大切なことではないのか。——海といえども無限大なものではないというようなことを考えていったらいいのか、しかもそうではなくて、いや、海というのはまだ無限なんだと、だからいま長官が言うように、千メートルも千五百メートルも下にいけばまだ魚も可能性があるぞ、という判断が成り立つかどうかということは、やっぱりこれからの漁業政策として非常に大きな問題だと。これは非常にマクロ的な問題ですけれどもね。そういう意味合いからすると、さっき鶴園先生がここで冗談で言っていましたけれども、やはり水産庁の機構なりそういうものについてこれは一考しなきゃならぬぞという点も実は出てくるわけだと思いますけれども、私は、やっぱりそういう点を大きな意味から水産庁は見ていく。国際的にやっぱり最高の水準を持っている日本でありますから、私はそういうものが必要ではないのか。そういう大きなかまえの中で、さてそれでは沿岸漁業、いまよごれている、非常に衰退の一途をたどっている沿岸漁業に対して、どこで歯どめをかけ、どこでどうするかという議論が出てくるのではないか。こういうような気がするわけで、この点を実は聞きたいと思ったわけなんですけれども、私は、これは非常にむずかしい問題ですから、これ以上深くは追いませんけれども、やはりそういう観点というものがひとつ出てくるような気がいたします。  それともう一つは、次の問題として、これからの水産問題を取り扱う場合に、日本の現在の高度成長と水産業との関係を一体どのように位置づけをしたらいいのかということですね。で、もちろんこれは、とるほうの問題と消費するほうの問題との関連が出てくるわけでありまして、かなり国際的に、貿易上の問題からあるいは通貨上の問題から漁業に及ぼす影響というものもかなり大きいのではないか、これだけ大きくなってまいりますとですね。そういう点の影響というものは、私どもとしてどのように考えたらいいのかですね。まあ非常にむずかしい問題、非常に幅は広いわけですけれども、そういう点は全く考慮しなくていいのか。私は、そこまでもう水産というのは出てきたんじゃないか。日本国内だけの問題ではなくて、いわゆる貿易上の問題通貨上の問題から、為替レートが一つ変わることによって、たいへん大きな影響が出てくる。そういう観点については一体どういうような理解をしたらいいのか。その点をひとつお伺いしておきたいと思います。
  36. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 高度成長と漁業との関係という点でございますけれども、先生からただいま御指摘のございましたように、まず考えてみなければならないのは、高度成長によって国民経済が拡大すると、確かに需要の面がまず大きな問題になってきます。そこで、私どもの見ているところでは、現在七百万トン程度の魚を食べているわけでございますけれども、いまのスピードで経済成長が続いていくということになりますと、五十七年には九百三十万トンぐらいになるのではないかという、まあこれはやや机上の計算でございますけれども、見込まれるわけでございます。そうなりますと、それに対応してそれだけの生産をふやしていかなければならないというところから、沿岸漁業の振興をはかり、沖合い遠洋も極力漁場を維持し、生産を伸ばしていかなければならないということになるわけでございます。  ただ、その場合、それじゃ全部これ、まあ魚のことでございますし、特に浮き魚等は資源が非常に動くわけでございますから、今後十年どうなるかということはなかなか予言しにくい話でございますけれども、そうなった場合に、かりにそれを全部日本でとれないということになれば、輸入しなければならないという問題になってくるわけでございます。現に先ほど参考人からもお話がございましたけれども、エビ等は相当現在すでに輸入しておるわけでございます。こういったものが将来輸入がさらにふえるかもしれないということは、ある程度見通し得るわけでございまして、そうなりますと、たとえば通貨価値が変動すれば、輸入価格が安くなったり、高くなったりしていろんな影響が出てくるという面はございます。けれども、これが、原料を外国に依存している産業、さらに農林水産の分野になってまいりますと、たとえば今日畜産物はえさを相当海外に依存しているので、国内において完全にえさの自給ということはとてもできないということになりますと、五十年ぐらいのことを考えてみれば、畜産業というのは、かなり国際的ないろんな経済動向の影響を受けるというあとはまた確かだと思います。それに比べれば、水産の受ける影響というのは、それほどのことはないのではないかという感じでございまして、まあ私の考えているところでは、畜産物あるいは原料を完全に輸入に依存している他産業というものが影響を受けるような影響は受けないのではないか、そういう意味でかなり国際的な動向からは安定した業種に水産業は入るのではないかという感じがいたします。
  37. 工藤良平

    ○工藤良平君 まあ確かにそのとおりだと思うんですが、ただ、私はこのことを心配しておりますのは、非常にやはりたん白資源供給源としてのいわゆる魚というものに対するウエートが非常に強まってきているわけですね。特に昨年からそのことが顕著になってきたというのは、まず大豆でいかれた。大豆が、アメリカの輸出規制にあって、たいへんな事態にあった。小麦だってそうですね。いまの自給率というのは五%とこう言われているわけですね。全部よそから来ているんです。飼料だってそうですね。濃厚飼料の約七〇%が外から来ている。こういうことになってくると、一体どういうことになるんだろうということを私は考えるわけです。魚だっていまおっしゃるように、だんだんだんだん沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へとこう移っていった。資源は、まあまあ広い海ですから、かなりあると思っていたんですけれども、いま言うたとえば専管水域の問題で狭められておるとか、あるいは無限大に近いものかもわからないけれども、必ずしもそうではない。千メートル、千五百メートルまで下がらなきゃいかぬという事態が起こってくる時代がくるとするならば、必ずしもこれもそう安易な考え方だけではいけない。現にもう石油の問題が一つ起こったとたんに、やはり漁業に対する非常に大きな問題が出てきているわけですから。  そういうことを考えてみると、この漁業の問題というのは、これはたいへんなやはり問題として、私たちがいまから取り組んでいかないと大きな問題が起こってくるんじゃないか、こういう気がしますね。したがって、比較的金のかからないやはりこの沿岸漁業というものに対して大量の資金を投下をし、漁礁をつくり、私たちができるだけ近いところで、そういうものがあげられるような形のものをつくっていかなきゃならぬという原則が成り立つのではないかと思うんですが、その点については、まあそのとおりだということになるだろうと思いますけれども、ひとつこの点は大臣のほうからも御意見を聞かしていただきたいと思います。非常に私はこの点が重要じゃないかと思っております。
  38. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど来お話承っておりまして、私どもも大体御同感に存じます。
  39. 工藤良平

    ○工藤良平君 そこで、それでは、まあこれから見直されてくる沿岸漁業沿岸漁場の問題になってくるわけでありますけれども、この現在の統計を見ても、沿岸漁業における漁獲高というものは大きくは伸展はしていないと私は思うのです。で、伸び率からすると、やはり横ばいに近いような状態が起こっているわけですね。   〔委員長退席、理事高橋雄之助君着席〕 そうすると、この沿岸漁業における資源問題について、水産庁としては、一体どのように把握しているか、この点をお伺いしていきたいと思います。
  40. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 確かに先生御指摘のように、沿岸漁業生産量というものは横ばいないしは若干下がる傾向になっております。ただ、沿岸漁業の場合には、中高級の魚介類を採捕しております関係上、価格で見ますとかなりの価格をあげているということは漁業白書で指摘されているとおりでございます。  そこで、まあ沿岸資源の問題はどうかということでございますが、やはり今日沿岸漁業が停滞的であることの原因の中には、やはりその漁場汚染しているというようなことも非常に大きな原因になっておりますけれども、今後この資源をふやしていくことができるという点が——沖合い漁業あるいは遠洋漁業の場合におきましてももちろん、たとえばサケ・マスにつきまして人工ふ化をやって放流していって資源をふやすということはやっておりますし、現にふえているわけでございますが、沿岸漁業の場合には、さらにふやしやすい。現にマダイ、クルマエビ等につきましては人工養殖をやりまして、それを放流して資源がふえているという状況になっておるわけでございますから、資源がふやしやすいという面は沖合い遠洋に比べてすぐれているわけでございます。したがいまして、今後におきましては、そういった資源の増殖をやっていくということを特に重点を置いていきたい。そのためには、やはり漁礁の設置だとか、あるいは浅海増殖の漁場をつくっていくとか、いろいろ沿岸漁場を建設する問題が非常に重要な問題になってまいりますから、今般法案を提案いたしまして御審議を願っている、こういう状況になっているわけでございます。
  41. 工藤良平

    ○工藤良平君 そこで、沿岸漁業というものが、いまおっしゃったように資源的に見ると横ばいか、むしろ減少の傾向にある。いまおっしゃったように、いわゆる魚価——魚の値段が非常に上がったもんですから、かろうじて高いような感じを与えているということにすぎないわけで、資源的な面から見ると非常に重要な問題だろうと思うんです。  そこで、いまお話のありましたように、何といっても沿岸漁業を進めていく過程の中でも最大の問題は何かというと、やはり海の汚染の問題だろうと思いますね、汚染の問題。私どものたとえば別府湾の問題を一つとりましても、非常にこの優良な地帯でありましたけれども、非常に汚染が進みまして、昨今は、特にまあ赤潮の発生なんというのは、冬でも頻繁に発生をするという事態が起こっております。特に四月になりましてから極端で、たとえば大分の、西大分の港から別府の町の近くまで、あの間がまっかになってしまうというような極端な、赤潮の発生が頻繁に起こってまいりまして、赤潮だけではなくて、油の汚染という問題もたいへんな問題になっておるわけでございます。これは、海の場合は——陸の場合には、きのうもちょっとあの保安林の問題で話を出しましたけれども、きのうは山、きょうは海と、こうなるわけですけれども。海のほうの場合には、領土宣言をやりましても、線を引きましても、これはよそから入ってきますから、なかなか海流の関係でむずかしいわけです。そういう点について、さっきもお話が出ましたけれども、やはり汚染に対する水産庁考え方ですね。この点私は、きわめて消極的なような気がしてならないわけでありますけれども。何か海の汚染に対する問題は、もう環境庁へというようなことで、環境庁へ移ってしまったような感じで、どうもそういう印象を私は強く受けるのでありますけれども、この海の汚染に対する水産庁体制というのはどういう体制を持っているのか、その点をひとつ伺いたいと思います。
  42. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 海の汚染につきましては、もちろん水産庁としても、これに重大なる関心を持っているわけでございます。ただ、そういうことばを使っていいかどうかわかりませんけれども、この問題を考えます場合に、漁民立場、あるいは漁業者の立場というものは、まあ被害者の立場でございます。したがいまして、まず水産庁といたしましては、そういった被害を受けないようにならなきゃならないということで、最近、特に問題になっております埋め立ての問題、あるいは発電所の問題その他につきましては、そういうものをつくる場合に、事前にひとつ水産関係者に話してくれということを特に県庁等に申し上げておるわけでございます。と申しますのは、過去の動向を見ますと、どうもこういった開発の場合には、県の開発を担当している部局が先に走ると申しますか、どんどん進んでしまって、あとで問題が起こってから水産関係の人たちが知るというようなことが多いわけでございまして、それでは困りますので、事前に水産関係の部局には十分開発関係の人が連絡して、そこで漁業との調整を十分考えながら進めてほしいということを特に申し上げているわけでございます。  それから、基本的には、こういった漁業被害に対処するためには海洋汚染防止法、あるいは水質汚濁防止法とか瀬戸内海環境保全臨時措置法、公有水面埋立法等、いわゆるその公害関係の法律の運用によってまずやっていただかないと、水産庁だけではとても手に負える問題じゃないことは申し上げるまでもないわけでございますが、そういった法律の運用について、漁業立場というものを十分考えてやってくれということは、関係方面に密接に連携してやっているわけでございます。  水産庁自体としてそれじゃ何をやっているのかということでございますが、汚染状況の調査、あるいは公害防止の資器材の設置、公害防止調査、あるいは指導体制の整備と、それから海底汚泥物の除去等についてのやり方の検討というような、いわば被害者の立場から被害者をいかに守るかというような、そういう意味では消極的じゃないかという御批判を受けるかもしれませんけれども、まあこういった公害問題についての漁業者の立場からいって、まず被害が起こったときにどういうふうに事前にそれを防止し、それを救済するかということをやっておりまして、特にもとになる、たとえばヘドロの堆積をしないようにするとか、そういうことはやはり他の公害関係の法律の運用によってやらなきゃならないというふうに考えております。
  43. 工藤良平

    ○工藤良平君 魚というのは、やっぱり自然に生息をしておりますから、私は、非常に微妙な問題があると思うんですね。海流の関係、あるいはその微生物の関係ですね、いろいろな問題からやっぱり魚というものはとれたり、とれなかったり、いたりいなくなったりということになると思うんですね。ですから、やっぱり私ども、ほんとう漁業というものをどう考え、食料というものを確保していくための非常に重要な問題としてこれを位置づけてものを考えていくとするならば、いま長官おっしゃったように、まず海の原形を変える段階から私たちは真剣にものを考えていかないと、あとで起こってきて、さて水産庁に行ってみても、「ちょっと私どものほうでは」と、こうなるわけですわね。実際にいままでも、何回か私ども行きましたけどね、どうにも手がつかない。そのうちにやっぱり、地価が上がるのと同じように、海の埋め立てというものがどんどん進んでまいりますと、もう漁民のほうは、もういっそのこと金を積まれるならば、ということで簡単にこれを手放していく。手放すことによって、同じ漁民の中でお互いが相互に抗争を始めるというような、たいへん不幸な問題がここから発生をしてくるわけなんで、私は、そういう意味から、特にこの海の原形を変える段階からやっぱり真剣な問題として取り組んでいかなければならぬと思う。  これは余談になりますけれども、大分で空港ができた、大分空港ですね。これは大分川のほとりにありましたが、国東半島の向こう側に持っていった。二千三百メートル、横がですね。前を四百メートル出したんですね。ところが、埋め立ての当時、漁民や、あるいはその近郊の農村の人たちは、いわゆる自然の状態をこわすということがどれだけおそろしいものであるかということを、航空局なり県に対して相当強く要請をしているわけですね。しかし、そのことについては問題にしなかった、一顧だにしなかった。わずかに一千二百万か一千三百万のお金をやることによって、それを実は糊塗してきたんですね。ところが、実際に、漁民の人とか、そういういつも自然に接してきた人たちは、その自然をこわすということのおそろしさということをつぶさに検討して、わざわざ鎌倉まで出てきて、あの海岸線を調査をしているわけですね。  どういうことが起こったかといいますと——結局四百メートル前に出したということは、かなりの水深のあるものですが、それを埋め立てたわけで、ここにこのような岸壁をつくったわけですね。消波装置も何にもしていない、テトラポットも入れなかった。以前はここは砂浜でありましたから、遠浅でありましたから、それが自然のやはり波をくずすいわゆる消波堤の役割りを果たしておった。それがなくなって、どういうことが起こったかというと、あそこは豊後水道からもろに風が吹き込んでくるところなんですけれども、別府湾と違いましてですね、対岸ですから。それで結局、一昨年の八月に台風が来て、予測しなかった三十数メートルというような波が打ち上げて、空港を飛び越えて、その背後地のナシ、ミカンというものに対するたいへんな被害が起こったわけですね。もちろん漁業についてもたいへんな大きな変化が起こっているわけですね。それは自然にそこに育ってきた人たちは、その自然をこわすおそろしさというものを指摘をして、やっているけれども、いわゆる科学者といわれる人たちまでもが、そこまで予測できなかったということで、現実に飛行場ができて、そういう被害が起こってみて、なるほどそうかということで、あわててテトラポットを入れた。しかも、ナシのごときは、夏に全部葉っぱがやられたもんですから、そのあと新しい芽が出て花が咲いて、秋に実がなってしまうということから、いわゆる翌年のナシが全然できなかったということで、まあ最終的にはどうにか金を、見舞い金をまあ五百万ばかり出されましたけれども。これは私は、一つの例ですけれども、やっぱり自然をこわすということはどれだけの大きな影響があるのかということを考えていかなければ、私は、たいへんな問題が起こるような気がするわけで、そういう意味から、特にやはりその段階から水産庁として対策を講じておく必要があるんじゃないか。  で、一片の法律で海をよごしてはいけない、この排水量は幾らだとか、煙突から出る煙は幾らだと規制してみても、数がふえていけば、それが集まってきて海をよごし、たいへんな問題が起こるわけです。たとえば東京湾の汚濁の問題等につきましても、あれは工業技術院あたりでは、かなりこの詳細な模型調査等もいたしておりますが、こういう場合に水産庁意見なり、そういうものを強力にいれることができるのか。また、向こうにはそれだけの受け入れる態勢というものがあるのかどうか、水産庁にそういう技術を提供し得る技術はあるのかどうか、そういう点についてはどうなんでしょう。
  44. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 水産庁といたしまして、専門に公害の研究をやっているかということになりますと、一例を申し上げますと、たとえば、原子力発電の場合の温排水の問題でございますが、原子力発電をやりました場合に、日本のように国土が狭い場合には、どうしても温排水が出てくる。そこでその温排水が出てきた場合に、どの範囲に影響があるだろうか、その範囲の測定とか、あるいはそれがそこにいるある水産動物なり水産植物にどういう影響を与えるかというようなことはもちろんいろいろ研究しております。ただし、新しくたとえば何かの施設をした場合に、その施設自体について水産立場から、水産だけの立場から問題を考えるというようなことの研究はあまりやってないというふうな現状になっております。しかし、それによって起こってくるいろんな影響につきましてはやっておりますし、それから、水産庁の発言というものは、たとえば電力につきましては、審議会がございまして、新しい火力発電なり、原子力発電を認めるときには、その審議会にはかってやらなければならない。その審議会にはもちろん参加しておりまして、水産関係者は意見を述べることができるということになっているわけでございます。
  45. 工藤良平

    ○工藤良平君 いま、長官もおっしゃったように、たとえば一つの施設をつくる。ここに火力発電所ができるとか、製鉄所ができると、それから出てくる排水問題等についてはどうだと。これは私ども別府湾の例をとってみてもそうなんですけれども、たとえば住友化学が有毒な廃液を出すとか、あるいはパルプの廃液があるということは非常にみんな神経を使っているんです。たとえば新日鉄のごときはたいへんな実は水を使っているわけですね、たいへんな水を。これは海水もくみ上げて冷却しているわけですから。ところが、これは科学的に立証されているわけじゃありませんけれども、私の感じではなぜ別府湾にあのような赤潮がひんぱんに発生するのだろうか。もちろん、全体的にどうも近ごろここ数年は、気象条件が非常に冬はあたたかくなったということはいえるかもわかりませんけれども、しかしあの大量の冷却水、かなり温度の高い水が別府湾に吐き出されてくる。したがって、やはり別府湾の温度というものが、海水の温度というものが一・何度か高くなっているということがいわれているわけですね。そうすると、やっぱり海水の温度の上昇というものが赤潮の発生というものにもちろん影響があるのではないだろうか、というようなことも当然考えられるのではないか。ところが、これは当初としてはあまり考えられていなかったことなんですけれども、そういう非常に微妙な変化というものが起こってくる。それは一つのいままで魚が生息するために非常にいい条件であったものが、こわされていくという微妙な変化が起こってくるわけなんですね。私は、そういう意味から、相当小まめな、沿岸における調査というものを徹底していく必要があるんではなかろうか。養殖とか、そういうものについては非常に研究が進みますけれども、全体的な大きなそういうやはり調査というものも水産庁としては徹底的にやる。しかも、それが先制的に、こちら側の体制としての対策というものが打たれていかなければいけないんじゃないか。そうしなければ、だんだんだんだん漁場は狭められる上に、さらにそれがよごされた水によって汚染が拡大されていくということになりますから、私はそういう点については特に水産庁の取り組みというものを期待をいたしたいと思いますし、いま長官は、そういう点についてもやっているということですが、私は、それは決して十分ではないと思います。ですから、よごれる前の対策として、やはり徹底的にやってもらう必要がある。  いま私ども埋め立ての問題についても議論をして進めましても、むしろ抵抗になっているのはどこかというと、水産庁じゃなくて、海を守らなきゃならぬ水産庁じゃなくて、正直言いますと、環境庁がようやく——これは人の問題であって、前、大石さんがたいへんそういう点ではなかなか強力にやってくれましたよ。今度は三木さんが、あそこにでんと副総理でがんばっていますから、あそこへ行きますと、三木さんが、やあと、こう言ってもらえば、埋め立てがどうにかしばらくとまるということで、人がかわればまた、というようなことが往々にして起こってくるわけです。やっといま、抵抗になっているのは環境庁で、私どもは、せめてもの抵抗線にしているわけで、そうじゃなくて、それ以前に、農林省水産庁がこの埋め立て汚染については徹底的なやっぱり抗戦をやるということをやらないと、私はたいへんな事態が、沿岸漁業へ少々の金をつぎ込んでみても、漁礁をつくったりしてやってみたけれども、全部それはよごされてしまって、根こそぎ持っていってしまったということになりかねない状態が、やっぱり沿岸漁業の場合にはあるということなんですね。ですから、そういうようなことを私は、この際ひとつ徹底的に議論をし、体制を整えていく必要があるんじゃないか。  幸いにして私どもは、瀬戸内海の埋め立て等につきましては、昨年法律をつくりまして、埋め立ての規制をやるということになりました。しかし、なおかつそれでも何とかしてと、こういうあれが出てきますし、かなりの対立が出てくるわけで、その際に、せめてひとつ水産庁に行けば、それが非常に大きな歯どめになるという体制ぐらいはつくっておいてもらわないといけないんじゃないか。いまのところ、どうも逆にたよるところが環境庁だと、水産庁はだめだというような印象を与えていることが非常に多いので、やっぱりその点はひとつ長官、大臣ともに、これは人がかわったらいいけれども、人がまたかわったらだめだというようなことじゃなくて、きちんとしておいていただきたい。このように思うんですが、その点についてはどうでしょう。
  46. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 漁礁をつくったり、いろんなことをする場合には、それなりに非常に財政資金も要るわけであります。それを人間の注意力で公害が防止されるということならば、いろんな意味において非常に経済的でもあるし、また可能なことでございますので、これはぜひそういう点で、私どもは公害防止については一生懸命やらなければいかぬと思っております。が、いまお話のございましたような、公害による漁業被害に対しましては、水質汚濁防止法であるとか、海洋汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、それからまた瀬戸内海環境保全臨時措置法など、これらの厳正な運用によりまして、漁場汚染を防止いたしますことが基本であると存じますが、こういう点について、関係省庁と密接な連係をとりましてやっておる次第であります。  なお、埋め立てにつきましては、昨年の公有水面埋立法の改正によりまして、埋め立ての免許または承認は、環境保全に十分に配慮しているものでなければ行なわない旨定めておりますと同時に、特に水質悪化の著しい瀬戸内海につきましては、瀬戸内海環境保全臨時措置法に基づきまして、埋め立てについてさらに厳格な方針が定められることといたしておりますし、こういうことの適正な運用につきましては、農林省といたしましても特に関係省庁と密接な連係をとりまして、われわれの大事な漁業を守るためになお全力をあげてまいるつもりであります。
  47. 工藤良平

    ○工藤良平君 そこで、まずよごすような何かをつくる一つの、前段の問題について十分な配慮をしていただきたいということをいま私が申し上げたわけでありますけれども、それと同時に、現在のよごされていない沿岸水域の中で、われわれが最大限の努力をしていけば、かなりの漁獲を高めることができると、こういうような一つの目標を立てなければいかぬと思うのですね。だから、さっきお話があったように、現在、資源がだんだん少なくなった、したがって、優良魚種があるために、値段が上がったから、かろうじてささえているというようなことなんですね。ですから、これからは、やっぱりもちろん値段の問題も非常に重要ですけれども、やはりいまよごされていない沿岸水域の中で、私どもがどのような努力をすることによってさらに漁獲を上げることができるのかどうか。そういう見通しをきちんと持っていらっしゃるかどうか。そのためにこういう金を入れるんだということがやっぱり出てこなければいかぬ。そういうことによって私たちも意欲が出てくるし、働く漁村の人たちもやろうという意気が出て、そこで、やっぱりきちんとそれがドッキングすることによって、政策というものが生かされていき、より発展をしていくわけでありますから。そういう点、ひとつ全体的に見て、今度のこの計画を強化する、そのためにこういう目標があるんだぞ、ということを実は示していただきたいと思うのですけれども、もしあればですね。これは私の認識不足ですけれども教えていただきたいと思います。
  48. 内村良英

    政府委員(内村良英君) いままでいろいろな試みがあったわけでございますが、政府としてこういう目標でやると、沿岸漁業の振興についてこういうふうにやるというような計数化されたものがあったかといいますと、これは必ずしもはっきりしてなかったわけでございます。現に、先生御案内のように、第一次構造改善事業、現に第二次構造改善事業をやってるわけでございますが、ああいった構造改善事業を進めるにあたりましても、常に沿岸漁業の振興ということを考えてやってきたわけでございます。そこで、今度沿岸漁場整備開発法案を出しましたのは、そういうことについてもうちょっとはっきりした目標を持ちたいということでございます。そこで、御案内のように、四十九年度は県に調査費を配りまして、いろいろ調査してもらっております。それによりまして、計画をはっきりつくって、五十年から五年計画——当初は五年計画ぐらいで実施したい。そのときに、やはりある程度の目標というものを持ってこの事業を進めませんと、まあ具体的に申し上げますと、財政当局に対する説明もなかなかたいへんだということもあるわけでございます。したがいまして、従来よりももっとはっきりした形でそういったものを持って仕事を進めたいということで、この沿岸漁場整備開発法案を提案し、御審議を願ってるという次第でございます。
  49. 工藤良平

    ○工藤良平君 いや、私ども正直言って、これはたいへん手落ちだったと思うのですけども、農林省といいましても名のごとくですわ。農業と林業のほうは表に出てるのですけれども、漁業というのはどっちかというと、正直申し上げまして、あまり日の目を見ないような私は、組織的、体制的なそういうものがあったんじゃないかという実は気がするのですね。特にここに汚染魚という問題が非常に大きな問題になってきて、食料問題が云云される——もう石油の問題以来、食料問題が次は石油以上だというたいへんな議論が出てきている。ようやくいま、「水産庁」というのが、何だそんな役所もあったのかというような——まあこれは極端ですけどもね。いや、そういう感じを一般にやはり与えるんです。どこの県の予算を見ても、国の予算だってそうだと思いますね。ちょっと極端だと思うんですね。ですから、たとえば今度出てきているような融資の制度にしたって——これは農業と比較すると、水産に対するもう助成にしても、融資の制度にしても、ほんとにお粗末きわまりないと思ってるんです。もちろんその対象者も少ないかもわからないけども。  私はやはり、私自身もそうなんですけど、やっぱり近ごろ、これではいかぬと。これは漁業の問題もしっかり勉強しなきゃいかぬということで——いままではさほどなかったけども、これは大いに、この際を機会にやらなきゃいかぬと。したがって、いま私が言ったように、やっぱり沿岸漁業について、これこれの目標を立てて、これは絶対に達成するんだぞ、という意気込みをやっぱり持たなきゃいかぬと思うのですね。これはミカンのようになっちゃ困りますけれどもね、五ヵ年計画が三年間で達成をして、たいへんな過剰状態が起こってきたりするようなことじゃあ。おそらく水産の場合には、そうはならぬでしょう。よごれるほうが激しいですから私はそうはならぬと思いますけども。まず、いま、きれいな漁場の中で、こういう目標を立てて、これに対しては徹底的にやるぞ、というやっぱり意気込みというものが必要じゃないだろうか。それをやらないと、どんどん、どんどんこっちからよごされた海は侵入してきますからね。これは領土宣言してみても、これはへいをつくるわけにはいきませんから、侵入してだんだんよごされてくるということで、かなりきびしいやっぱりこの体制というものが私は、必要じゃないかと思うんですね。そういうものを出すことによって、もしそれを進めるために大蔵省のほうで抵抗があれば、われわれ束になってかかっていかなきゃならぬと思いますよ。そういうやっぱり私は体制というものをつくる必要がある。そのことのためにも私はきちんとやっぱり目標を定めていただきたい。そのことによってまっしぐらにやはり前進をしなければいけないと思うし、そうしないと、やっぱり漁業をやる人にとっても目標が出ないんじゃないか。こういうように思いますので、その点についてひとつ私は御意見として申し上げておきたいと思います。  それからさらに、次の問題は、このような沿岸漁業の振興対策を進めていくわけでありますが、その場合に、やはりこのいわゆる対象をどこに置くのかということですね。さっき、私の部屋に来ていただきました方ともちょっと議論をしたんですけど、これはまあ大臣と一ぺんゆっくり私は農業の問題でまた議論をしたいと思ってるんです。が、これはまあうちの党——ここに社会党の皆さんいらっしゃいますから、あとでおこられるかもわかりませんけれども、私はやっぱり食料を確保する、いわゆる農業をどうやっていくかということもいろいろ考えてるんですが、やっぱり核になるものが絶対必要なんだということですね。その核になるものをどの規模にしてどういう程度にするかというのは、これは議論がありましょうけれども、とにかく中心になるものをきちんとつくっていって、その回りにだれをどういう形で結合さしていくかということが、やはりこれから相当議論されなきゃならぬと思っているんです。そういう意味合いから、一体今度の沿岸漁業の振興をやる場合に、どこを、どういうものを対象にしてひとつやろうとするのか。これはやっぱりこれから進めていこうとする場合に、ただ、ばく然とやるということではなくて、一つの目標を定める必要があるんじゃないかと思うんですが、その点についてはどうでしょうか。
  50. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 今後、沿岸漁業の振興をやるために漁場の整備あるいは栽培漁業を大いに進めるといったような場合に、一体だれを中核にしていくのか、要するに、そういう制度を整えてみても人がいなきゃできないじゃないかと、これは先生の御指摘のとおりでございます。そこで、まあ私どもの見ておりますところでは、先生御案内のように、漁船漁業について申しますと、三トンから十トン階層というものは専業率もかなり高いし、かなりの所得もあげているわけでございます。したがいまして、そういった階層を育成していかなきゃならない。さらに問題なのは、今後の漁業について一番問題なのは労働問題でございます。先ほど先生から、どんどん漁船を近代化していくんじゃないかというお話がございましたけれども、やはり今日まで漁船の大型化、近代化が進められた一つの背景には労働問題があるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、やっぱり三トン−十トンの階層の漁業であって、極力省力化いたしまして、なるべく家族労力を中心にしてやっていけるような経営というようなものが中核として育っていくということが必要なんじゃないかというふうに漁船漁業については感じております。それから養殖漁業につきましては、それぞれの養殖の種類によりまして適正規模というのがございますので、その辺を考えながら経営としての適正規模というものを十分考えて経営する経営というものを育成していかなきゃならぬ。いずれにしましても、人の問題は、非常に重要であるということは先生の御指摘のとおりでございます。
  51. 工藤良平

    ○工藤良平君 もう大体時間が来たようで、入り口ばっかりで中に入れないんですけども……。  私はいま申し上げましたように、たとえば私のところに——この前の荒勝長官のとき、いろいろ地元からの要請がありまして言ったんですが、たとえば突っきん棒ですね。三陸沖に出て、突っきん棒でやってるわけですけれども、近ごろ流し網でさっぱり漁場が荒らされてたいへんだと、補償してくれという話が出てきましてね、まあそれはちょっとなかなか無理じゃないかと。お互いに魚とってるわけで、やり方が違うだけなのを、それでやられたから国に補償してくれといっても——これは相対の関係であれば、それは話はできるかもわからぬけども、それを、流し網でやられたから、おれのほうが少なくなったから、国は金を補償出せいと言っても、ちょっとそれは無理じゃないかと私は頭から申し上げたんですが、それで、それじゃ相対でやれということだけで、ほっぽらかしていいかというと、そうはいかない。やっぱり新しいそういう漁業が入ってきた、それによってこちらが実際にできなくなったとするならば、この人たちをどういうふうにしてやるのかということを考えてやらなきゃいかぬ。そうすると、そのうちのある部分がいわゆるこの沿岸漁業に切りかえて、何かやろうということも当然考えてしかるべきではないかということを私、地元の人には言ってるわけですね。そういう場合に、一体どういう形態でどういうものをやらせるかという問題。これはこれからの地域地域における問題だと思いますけれども、要はやっぱりそういう人たちが、おれたちはやっぱり海に育ってきたんだ、漁業をやりたい、漁業の見通しがこういう問題であるぞと、こういうことになると私は、その水域というものをきちんと守ってやる。そして魚礁をつくり、港湾を整備をしてやる。さらに施設に対する助成なり援助の手を差し伸べてやって、そこできちんとそういう人たちが意欲を持って働けるような体制というものをつくってやる必要があるんではないか。そういうように思うわけでありまして、ぜひそういう点についてはこれから、さっき申し上げましたきちんとした計画目標を立てると同時に、万全の対策を講じていただきたいという気がするわけです。  そういうことを申し上げたくて、さっきからこの問題を取り上げてきたわけなんでありますけれども、大体、私の持ち時間の一時間がまいりましたから、法案の入口までで終わってしまうわけなんですが、これは時間があれば次の機会にあとは譲りまして、一応はこの入口段階で終わっておきたいと思うんですが、ただもう一つありますのは、今度の漁業共済組合法の関係で、赤潮の問題については、特別の措置として対象にしていただくようなかっこうができたようですが、油の汚濁の問題ですね。これについて、私どもの県では、企業とそれから地方自治体——県、市町村が出し合って一つの基金制度をつくっていこうということで、ことし県が約六千万の予算で独自の県担でこれをやるということにいたしました。そういう手だては講じているんですが、しかしそれでもなおかつ、やはりどうしてもおおい切れない部分が出るだろうと思うんですね。そういう場合に、やはりこの漁業共済制度の中で救えるような体制というものは、今後考えられていくのかどうか。赤潮の分は入ったようですが、これは全体的に魚が少なくなり、とった魚が食べられないということになってまいるものですから——これからはいずれ大分のような臨海工業地帯を控えたところでは、だんだんと船の出入りが激しくなってまいりますから、そういう問題が出てまいります。企業だけの問題じゃなくて、これは大きな問題で、たくさん航行していく船の問題が出てまいりますから、いわゆる複合的な公害ということになるだろう、単純なものではなくて。そうすると、県担でやってみてもなかなかおおい切れないものが出てくるんじゃないか。そうすると、赤潮と同じようなひとつ対策が講じられるのかどうか。その点ひとつお聞きしまして、あとはこれは後日に譲るということにいたしまして、こういう程度——きょうは時間がきましたから、あと皆さん日程もあるようですから、私はこの程度で終わりたいと思います。その点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  52. 内村良英

    政府委員(内村良英君) ただいま先生から御指摘のございました油濁による漁業被害の問題は、私どもとして非常に頭の痛い問題でございます。と申しますのは、わが国公害の補償制度というものはPPPの原則で、加害者が被害者に対して払う、こういうことになっております。そこで、赤潮をそれではなぜ漁済の中に入れたのかと申しますと、赤潮は自然現象でございまして、それに人為的な、たとえば汚水がそれを刺激するとか、あるいは海の富栄養化をもたらすというようなことで赤潮が起こる。何か話によりますと、バイブルにもすでに赤潮が出ておりますし、古事記には赤潮が出ているというようなことでございますので、赤潮は天然現象だ。天然現象に人為的な要因が加わりまして、赤潮が非常に最近ふえているということで、漁済の制度の中に入れたわけでございます。  ところが、油濁の問題は、これは明らかにだれか油を流した人がいるわけでございますね。必ずその加害者がいるわけでございまして、その結果被害が起こってくる。そこでたとえば船が沈没しまして油が流れたと、それによってノリの養殖が非常に被害を受けたというような場合には、もうこれの加害者と被害者の因果関係がきわめて明確だ。ところが、そうでない油濁の被害が非常に多いわけでございます。そこでいわゆる加害者なき公害になりまして、それによってまあ漁業者がたくさん泣かされている、これも現実でございます。それで、これを放置できないわけでございますが、私どもといたしましては、これ非常に国の公害対策の全般にわたる問題でございます、加害者なき公害というのをどうするということは。そこで油濁につきましては実は関係四省ございまして、水産庁と運輸省と通産省、それから環境庁ですが、この前局長連中が集まりまして、ひとつこれは何か制度考えようじゃないかということで、二年以内ぐらいにひとつ制度をつくって何とかしようということを考えております。しかしその漁済の中に入れるということは、やはり漁業災害補償制度というのは自然災害を対象にしておりますので、どうも赤潮のようにはいかないんじゃないか。で、別な点から何かの対策は必ずとらなきゃならない。しかし漁済でできるかどうかということには私はかなりむずかしいというふうに考えております。
  53. 工藤良平

    ○工藤良平君 いま長官から前向きの御意見をいただきまして、これは私ども、公害立場からもいろいろ議論いたしまして、公害救済の場合にも、そういう原因不明の場合の措置が非常にあいまいなんですね。ですから、そういう場合には、まず国なら国がかわってそういう補償をしておいて、あと原因がわかった段階でその原因者から徴収をしていくという方法をとるべきじゃないかという議論をずいぶん公害の場でも進めてきたんです。が、これは被害を受けるほうは漁民なんですから、これは水産庁がやっぱりねじはち巻きでやらないと——よそのほうはどっちかというと、あまりそれは触れたくない。特に通産なんというのはそんなものはと、こうなるわけですからね。やっぱり中心になるのは農林省水産庁が中心になってそれに環境庁を引っ張り込んできて、対策を講じさせるということが必要ではないか。私は、より緊急性を持つものではないかと思いますから、その点については、ぜひひとつ水産庁は積極的に取り組んでいただき、大臣、これは大いにハッスルしていただきましてやっていただきたい。たいへん大きな問題でありますから、ぜひその点は御留意いただきまして努力をしていただきたいということを申し上げ、まあ大臣からもひとつ決意のほどを伺ってきょうのところはこれでおしまいにしたいと思います。
  54. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 油濁は、まあいま水産長官が申し上げましたようにたいへんむずかしいと思いますが、こちらも相手が漁民のことでありますので、できるだけひとつ最大の努力をいたしてやってまいりたいと、こう思っております。
  55. 辻一彦

    辻一彦君 沿岸漁業の問題を中心にしながら四、五点水産問題で伺いたいと思います。  第一に、さっきちょっと参考人にも伺っておりましたが、きょうの新聞にも日ソの漁業交渉の経緯が報道されております。日ソの漁業交渉の経緯、それからこれからの見通し等について若干お伺いいたしたいと思います。
  56. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) これ条約によりますサケ・マスとカニを別に扱っているんでありますが、今回はモスクワで、両方を並行して行なわれるということであります。カニにつきましては大体合意が得られまして、昨晩水産庁からも発表をいたした次第でありますが、あとサケ・マス、ニシン等はいま折衝中でございますので、まだ御報告のできる段階ではございません。まあしかし出漁時期もあるものですから、ぼつぼつ最終段階までに合意を得られるように、ただいま代表がモスクワにおいて非常な努力をしておる、こういうことであります。   〔理事高橋雄之助君退席、委員長着席〕
  57. 辻一彦

    辻一彦君 まあ外交的な交渉中ですからあまり私、中に入るのもいかがと思いますけれども、二、三点お伺いしたいのは、ソ連側が漁獲を縮小しようという要求を出しておりますですね、規制をしようという。それは資源保護という観点からであると思いますが、いま言われたカニ、サケ・マス、ニシン等の資源保護の北洋における状況は一体どうなっておりますか。
  58. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 資源保護の方法は、日ソ漁業条約で、サケ・マスにつきましては日本沖合い漁業漁獲量をきめまして、さらに網目の規制だとか、網の長さの規制とか、いろいろな規制措置をとっております。カニにつきましては、従来は刺し網でやっていたわけでございますけれども、かご漁法にほとんど切りかえております。かごですと、非常に小さいのをとったときには、生きたまま海の中へまた戻せる。刺し網ですと、場合によってはもう死んでしまうということもございますので、かごの漁法でやるというようなことで、いろいろそういった資源保護措置はとっております。  そこで、資源の評価がどうかということでございますけれども、資源評価につきましては、サケ・マスについては、特に紅ザケと白ザケについてソ連側と日本側の科学者の意見が違っております。わが国は、多少減ってはきている、減ってはきているけれども、そのレベルで安定している、というような見解を日本側の科学者は持っておりますけれども、ソ連側の科学者は、いや条約開始以来最悪である、というような見解をとっておるのであります。そこで、どうしてそういう違いが出てくるのかということを、われわれ科学者ではございませんから、わがほうの科学者に聞きますと、資源評価の方法はほとんど同じやり方をしておると。ただ、その統計の読み方につきましても、昨日も、先般申し上げたんでございますけれども、誤差があるわけでございます。そこで、その誤差のマキシマムで読むか、あるいは平均で読むか、逆のほうの下限で読むかというようなことで非常に資源の評価が違ってくるわけでございます。そこで方法論は非常に似た方法論をとっておるわけでございますけれども、データの読み方がかなり違うというような問題もあるようでございます。ということで、資源評価については、特にベニザケとシロザケは両国の科学者の意見が分かれておりますけれども、実際に漁業に従事しておりますわが国の船団の船団長あるいは独航船の漁労長の人たちの話を聞いてみましても、過去に比べて資源が減っているということはこれはもうだれも否定できないというようなことのようでございます。
  59. 辻一彦

    辻一彦君 すでにこの委員会で、前にも論議があったかと思いますが、重複する点もあると思いますが、これは御了承いただきたいと思います。  漁獲規制することを要求をするには、科学的な根拠がおそらくあると思うのですね。それが統計の読み方によって、マキシマムで読むか、ミニマムで読むかいろいろ違いはあると思うのですが、たとえば漁獲が非常に低下をしておるとか、あるいは同じ魚であっても同じ時期に大体生体、大きさがいちぢるしく小さくなってくるとか、科学的に、そういう漁獲を少なくしようということを妥当づけるような、裏づけるようなそういう根拠というものがかなり明確にわかるのかどうか、それはいかがですか。
  60. 内村良英

    政府委員(内村良英君) これだけ資源が減ったから漁獲量はこれだけにしなきゃならぬ、ということは数学的に算式で出てくるというような話ではございませんけれども、一般的の傾向として、たとえば魚体が小さくなってくるということであれば、かなり資源にダメージが出てきた、ということはこれは漁業者の常識でございます。したがって、そういった場合には、漁獲努力を多少差し控えなきゃならぬ、こういうことに相なるわけでございます。
  61. 辻一彦

    辻一彦君 いま、ソビエトのほうから要求しているそういう規制や、あるいは漁獲を押えようというのは、そういう数字の上でかなり明確になっていることを根拠にしておりますか。やはり読み方でどちらにも読めるというようなところが根拠になるのですか、いかがですか。
  62. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 過去の日ソ漁業条約に基づくわが国のサケ・マスの公海漁業の数量を見ていただきますと、年々減っております。その減っている程度のやはり資源の減退があったということは、これは事実でございまして、全然資源評価を離れてやっておるわけでもございませんし、といって算式でやるようなほどまた厳密なものではないというふうに私は思います。
  63. 辻一彦

    辻一彦君 それからけさの「毎日」を見ますと、B区域に乗り入れといいますか、監視船が出るということを認めるというような記事が出ておりますですね。これは公のもので私は、ないとは思いますが、この漁場のB区域は広い太平洋のほうにも設けられている。その中の規制というのは当然これは自主規制ですね。こちら自体がやるべきものであると思うんですね。しかし、自主規制にまかしておったんではどうにもならないという、乱獲をするとかという心配が先方のほうにあって、もう自分で見に行かにゃならぬと、こういうような傾向なのか。あるいは自主規制というのは、こちらのほうではきちっとやっておるのか、そこらのほうはどうなんでしょう。
  64. 内村良英

    政府委員(内村良英君) きょうの「毎日新聞」の記事はどこから出たのかわかりませんけれども、非常な憶測だと思います。ただ、現在の日ソ交渉におきまして、B区域のソ連監視船の乗り入れ問題が大きな問題になっているのは事実でございます。そこで、わがほうは、過去のいきさつもございまして、それに対して反対している。ソ連は非常に強くそれを要望しているということがございます。それは事実でございます。それで、まだ話が全然ついてないというのが現状でございまして、わがほうが妥協を提案したなどということは全くございません。  そこで、本件の背景でございますが、先ほども参考人からお話も多少ございましたけれども、現在の日ソ漁業条約では条約区域における漁業の取り締まりというものは共同取り締まりということになっております。したがいまして、いわゆるA区域につきましては今日ソ連の監視船と日本の監視船と両方が入りまして取り締まりをやっております。ただ、ソ連は公海漁業がございませんから、全部沿岸でとっているわけでございます。したがいまして、取り締まりの対象になるのは日本の母船漁業だけだ、こういうことになっているわけでございます。が、条約のたてまえは平等でございますから、かりにソ連が沖どりを始めまして母船式漁業を始めれば、当然日本の監視船はソ連漁業活動を取り締まることができるわけでございます。  で、日ソ漁業条約ができましてから昭和三十六年まではサケ・マスについての条約区域はA区域だけだったわけでございます。B区域は条約区域ではございませんでした。ところが昭和三十七年からB区域ということで一つの条約区域になったわけでございます。そこで取り締まりの方式について、A区域は日本の大きな母船が出まして、それに一母船三十何隻の独航船がついているというようなやり方をしておるわけでございますけれども、いわゆるB区域につきましては、北海道、東北を基地とする独航船がとっているわけでございます。当時は独航船の船もあまり大きくないというようなこともございまして、沿岸漁民だということで今日も十トン未満の船が千隻から出ているわけでございますけれども。ということで沿岸漁民が公海においてソ連の監視船から臨検を受けるということは、これはちょっと国民感情的に非常に日本国民感情を刺激する。だから日本の監視船がそこは取り締まりましょう、しかし、条約でも共同取り締まりになっておるわけでございますからソ連の監督官を乗せましょうということで、初めから日本の監視船にソ連の監督官が乗船するというような取り締まり方式をとっているわけでございます。  ところが、過去四、五年ソ連は常に、日ソ漁業条約の話し合いのときに、いまのB区域の取り締まり方法というものは政府間協定でやっているのだ、だから、条約本文でいけば当然ソ連はB区域についてもソ連の監視船を入れることができる。したがって、条約本文に戻そうということで常に主張をしているわけでございますが、毎年毎年政府間協定を結びまして、B区域についての取り締まり方式ということで、日本の監視船にソ連の監督官が乗るということを今日まで続けてきたわけでございます。  それで、この問題には、ここ二、三年非常に要求が強くなりまして、特に去年の櫻内大臣が訪ソされましたときには、この問題が非常に重大な問題になったわけでございます。そこで、そのときには共同声明で著しい改善をはかるということをうたっているわけでございまして、その著しい改善とは何であるかというような点が必ずしも明確な解釈がされてないというようなこともあったわけでございます。と申しますのは、時間切れで十分その辺まで詰められなかったということもございます。  で、ソ連は今度の会議で非常にそれを強く主張しているということで、一歩も譲らぬというのが現状でございます。それに対して、わがほうは、現在の取り締まり方式でやるべきであるということでそれに反論しておりまして、何ら妥協等は全くなされていないということでございまして、その「毎日新聞」の書き方は私どもも非常に驚いたわけでございますけれども、そういうことは全くの憶測記事というふうにお答えいたしたいと思います。
  65. 辻一彦

    辻一彦君 長官のお考えはわかりました。  大臣、先ほど参考人で見えた業界代表も、これはいろいろな感情の点からいっても、乗り入れがB区域にあると非常に問題が大きい。そういう御意見でありましたが、いま長官の御発言は大体伺いましたが、大臣としても、この交渉に臨んで、B区域乗り入れは大体認められないというような方向で今後進められるのかどうか、この点いかがですか。
  66. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 国民感情的にもまずいことでありますので、ソ連に対してそういうことについての御主張に対して反省を求めておると、こういうことであります。
  67. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、これはいろんな交渉の問題でありますから深く入りませんが、先ほどの参考人の御意見も、これは、非常に強かったと思いますので、いまの御答弁の線でがんばっていただきたいと思います。  そこで、先ほど参考人の御意見もありましたが、こういう交渉は水産庁が中心になってやっておられる、まあ次長が行っておられるわけですね。しかし、この交渉団の中には、外務当局も私は参加されておると思いますが、もう少し外務当局の交渉体制といいますか、こういうものを強化する必要があるんじゃないか、こう思いますが、外務当局どうお考えになっていますか。
  68. 加賀美秀夫

    説明員加賀美秀夫君) この日ソ漁業交渉に当たりましては、従来から外務省それから水産庁は緊密に連絡をいたしておりまして、実際、代表団にも外務省がフルに参加してきております。これは在来もそうでございまして、今後とも水産庁と外務省両方の協力によりまして、万全の態勢でいくという所存でございます。
  69. 辻一彦

    辻一彦君 両省間でそれぞれ連係をとりながらやっておられるということでありますが、よりひとつこれは交渉態勢を強化をしてやっていただきたいと、こう思います。  そこで、外務当局にもうちょっとお伺いしますが、ナイロビ会議でいわゆる領海拡大専管水域二百海里説が圧倒的にといいますか、全会一致で採択をされるだろうと、こういう予測がされておったのが、先日の新聞記事によりますと、内陸国のいろんな意見によって必ずしもまとまらなかったと。こういうように報道されておりますが、その経緯については一体どういう実態であるか、これをお伺いいたしたい。
  70. 杉原真一

    説明員杉原真一君) この六月の末から約二カ月半南米のカラカスで海洋法会議が始まるわけなんでございますが、それに向けて開発途上国、七十七カ国グループと称しておりますが、この国々——全体はいま百カ国をこえるそうでございますが、これらの国々が海洋法会議に臨む基本的な原則について合意を遂げた上でカラカス会議に臨もうと、そういう趣旨で三月の末から約二週間ケニアのナイロビで会議をやったわけなんでございますが、当初、それに向けて作業部会がつくりました原案というものがございまして、これは約十数項目を網羅した基本的な原則を盛り込んだものでございますが、もちろんその中で一番基本的な問題は二百海里の経済ゾーンの規定でございます。当初の予想では、おそらく二百海里の経済ゾーンについては、ラ米、アジア、アフリカの諸国すべてが一丸となって基本原則に同意をして、原則宣言をやるだろうと予想されておったんでございますが、ふたをあけてみますと、現実に集まったのは約七十カ国でございますが——正確には七十二カ国。そのうち二十カ国ばかりが内陸国、海を全然持たない国及び回りに海はあるのですが、たとえばシンガポールとか、ザイール手前のコンゴでございますが、こういうようによその国の領海を通らなければ海に出て行けないような地理的に不利な関係にある国、こういう国、約二十カ国が、沿岸国だけが二百海里の経済水域に対して排他的な私権を持つことはわれわれの利益にならないということを非常に強く打ち出しまして、そのために、二百海里の経済水域の基本原則については、何らの基本的原則の宣言をすることができなかったというふうに伺っております。ただし、二百海里の経済水域という方向自身に彼らが反対したというのではなくって、それに内陸国等にも参加する権利を与えろというのが主たる主張であったようでございます。  さらに、そのほかの問題、たとえば新海底開発のどういう法秩序を設けるかという問題とか、あるいはインドネシア、フィリピン等が唱えております群島理論というような問題さらには、国際海洋環境の保護の問題、それから科学調査の自由の問題等については、大かたの合意が得られたようでございますが、宣言全体としては、何らの基本文書も採択されずに終わったというのが実情だと伺っております。
  71. 辻一彦

    辻一彦君 そうしますと、六月二十日から始まりますカラカスの会議ですね、これで二百海里専管水域説が採択されるというのは困難であると、こう見ていいわけですか。
  72. 杉原真一

    説明員杉原真一君) これは、カラカス会議の全体としての見通しにかかってくるかと思うんでございますが、今度の海洋法会議では、大きな項目でも二十数項目、小項目にいたしますと、九十項目にのぼる問題が議論されるわけでございまして、開発途上国——一番大きなグループである開発途上国の中でも一意見が割れているということと、それから今度が海洋法会議の初めての実質会議で、従来の準備会議に出ておりました九十カ国に対して約六十カ国の新たに参加する国があるわけでございます。そういう国々が、それぞれの立場の表明等をいたします時間がかなりかかるわけで、その上で各グループの利害の調整を行なって、それから案文の作成という段階に入るわけで、とてもカラカス会議のうちには、条約の採択にまではいかないだろう。ただし、特定の問題について、二つないし三つの代案を作成する作業はかなり進むだろうと見られておるわけでございます。したがいまして、御質問のございました二百海里の経済水域の点についての案も、それを非常に明確に、かつ、強い権利を利害国に与えるようなかっこうでつくった案と、それに対抗いたします幾つかの案が並んだ形で、カラカス会議の終わりのころには浮かび上がってくるだろうという予想でおるわけでございます。
  73. 辻一彦

    辻一彦君 もう一ぺん——そういう状況について、わが国としてはこのカラカス会議にどういう態度で臨むのか、これ外務当局と水産庁から簡潔にお伺いしたい。
  74. 杉原真一

    説明員杉原真一君) いま申し上げましたようなカラカス会議の見通しでございますので、第一段階と第二段階に分けて考えればいいかと存じますが、第一段階では、日本が従来行なっております各種の主張、あるいは提案についてこれを説明し、特に新しく参加する国々に理解をしてもらうという段階があると思います。それからその次の段階になりますと、今度は条約採択がたとえば三分の二の多数ということになりますと、三分の二をとる案がどれであろうか、あるいはその三分の二をつぶす、少なくとも三分の一以上をとる案がどれであろうかというふうな案文の選択の段階に入ってまいりまして、そうなりますと、わが国といたしましても少なくも、できればもちろん百カ国以上の票を集め得るような案をみずからがイニシアチブをとってつくるというのが最も望ましいわけでございますが、そうでならないにしても、他のグループが百カ国以上の賛成を得ないように、日本が入る案が五十カ国以上の票を集め得るように、仲間づくりに励んで、その仲間づくりができるような案を、日本も利害を同じくする国々とともに努力してつくっていくというふうな段階に入ってくると思います。
  75. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 海洋法会議の問題は、単に漁業以外に通航権の問題、あるいは軍事上の問題、その他あるいは地下資源の開発の問題等もあるわけでございますが、漁業を担当いたします水産庁といたしましては、やはり沿岸国のある程度の優先権と申しますか、これはまあ世界の大勢から見てやむを得ないのじゃないか。これに反抗してみて公海自由の原則だけでやってみても、これは全く孤立してしまうのじゃないか、それである程度沿岸国の優先権は認めざるを得ないだろう。しかしながら、完全にシャットアウトするというのは、非常に公平でないということから、特にわが国のように漁業実績を持っている、そういった実績は十分尊重されるべきじゃないか。その場合におきましても、わが国といたしましても、資源保護には十分協力して、実績があるから乱獲していいという議論をする気は全くないわけでございます。資源保護に協力しながら、できれば委員会等をつくって、その中で資源の保全をはかりながら、日本漁獲を続けていく。特に開発途上国の場合には、さらにそれに資本援助なり技術援助をいたしまして、向こうの漁業の振興というものに力をかしながら漁場の確保をはかると。  先ほども参考人が言われましたけれども、この二百海里の問題は、日本にとっては北洋の問題が一番大きいわけでございます。そうなりますと、相手国はソ連アメリカ、カナダ、それから東海・黄海につきましては中国というようなことでございまして、そういったいわゆる先進国、あるいは中国に対しましては、資源保護を強調して二国間あるいは三国間で条約をつくって、日本漁業を継続していくようにしたいというふうに考えておるわけでございます。  そこで、一番問題なのはやはり遡河性の魚類でございまして、特にサケ・マスについてアメリカ、カナダ、ソ連は、これは沿岸国に優先的な管轄権があるんだという主張をかなり強くしておりますので、これはわが国漁業にとってなかなか容易ならぬ問題になってくるのではないかと。しかし、その場合におきましても、わが国の過去の実績というものは十分尊重されるべきであるということを強硬に主張すべきであるというふうに水産庁としては考えておるわけでございます。
  76. 辻一彦

    辻一彦君 そこで、これに関連してわが国開発途上国との漁業経済協力といいますか、これの協力の問題について一、二点お伺いしたい。  まあ開発途上国との経済協力を一元化をする、こういう目的で、国際協力事業団が新設されるわけですが一この海外漁業協力財団はすでに発足しておりますが、これだけを特に残して分離独立をする、その考え方というものを一度確認をいたしたいと思いますが、いかがですか。
  77. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 新しい事業団の問題が出ているわけでございますが、漁業につきましては、従来どおり海外協力財団で海外協力をやっていきたいと思っておるわけでございます。それで、新しい事業団の中に、漁業を入れるべきではないかという議論がございましたし、また、現に国会でもそういった議論があることを私どもは承知しております。  そこで、どういう考え方水産庁としてしているかと申しますと、ただいまお話がございましたように、開発途上国を中心とする領海あるいは漁業水域の拡大の動き等に対しまして、わが国の海外漁場を確保するためには、やはり開発途上国に対しては漁業協力と結びつけて漁場の確保というものをはからなければならないということで、現にわが国の民間企業がそういった話し合いを若干の国とやっておるわけでございます。その場合、必ず話が出てまいりますのは、まあ、それでは日本漁業活動を許しましょうと、しかし必ず協力をしてくれという話が出てくるわけです。それで、そういうふうに、漁業の場合には、民間の行ないますそういった漁業交渉と密接な関連を持っておるわけでございまして、一般の援助をねらう新しい海外協力の事業団の機能とは若干違う面があるわけでございます。したがいまして、水産庁といたしましては、この漁業部門における経済協力というものは、そういった民間の漁業交渉と関係があるのでございますから、今後におきましても、海外漁業協力財団で引き続きやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  78. 辻一彦

    辻一彦君 まあ分離をしているという事情はある程度わかりますが、そこで海外漁業協力の場合、現地の漁民等の活動をささえる基盤をつくっていくというほうに重点を置くのか、あるいはわが国の漁船が行って漁獲をできるような場所をつくるのに重点を置くのか。これによって私はかなり違ってくると思うんですね。農業の場合には、かなり現地の生産基盤を強化をして、そこで生産された農産物を向こうの農民から買い入れる、そしてまあ輸入をしていくと、こういう形がとられておるんですが、漁業協力の場合には、そのいずれにウエートが置かれるのか。もし、日本の漁船が行って漁獲をするというほうにウエートが置かれるとすると、どうしても資源を略奪するというか、資源を収奪していくというような受け取り方を私、されやすいと思うんですね。そういうものに対してどういう配慮と対策を考えているか、この点について若干お聞きしたい。
  79. 内村良英

    政府委員(内村良英君) いずれにいたしましても、お金を貸しまして、それによって現地の漁業活動の能力を引き上げていくわけでございます。そこで、たとえばエビの、先ほど日本の零細の、零細というほどでもございませんけれども、中小企業の人たちが集まりまして中南米のガイアナですか、あそこでエビをやっておるという話がございましたけれども、そういった、ガイアナに対しましてエビの冷凍工場をつくろうじゃないかということを持ちかけました場合に、これは現地に冷凍工場ができるということは向こうの一つの資産になる。さらに、それによってある程度の雇用の問題ももちろん出てきますでしょうし、現地の経済の向上に役立つことは事実でございます。ただ、やりようによっては、全く日本のエビ漁業のためにつくったんだというふうになってもこれはまずいわけでございますから、たとえばそういった冷凍工場をつくった場合におきましても、その半分は現地で消費するために充当すると、その半分は日本に持ってくる——冷凍工場をつくりまして、その冷凍魚を全部日本に持ってくるということがあればこれは露骨に日本のためにやっているということになりますので、そういうことは避けなければならない。そこで、半分は現地に落とすというようなことをやらなければならぬだろうと。それから漁船は向こうがつくるのにそれにお金を貸すという場合には、これは完全に向こうのものになるわけでございます。  それから試験場をつくってくれという場合に、試験場をつくる。それに対して機材を出しましてその機材を購入する資金を貸す。人間のほうは、日本の科学者を、これは一般の経済援助で、技術協力で出すというようなことをすれば、完全に現地のものになるわけでございます。  そこで私どもといたしましては、やはりこういつた性質の事業でございますから、現地の役に立つものに重点を入れていきたい。ただ日本漁業、これには財団にも日本漁業会社は出資しているわけでございまして、日本漁業立場というものを全然無視したということでも、ただ相手だけがいいということでもなかなかいかないんじゃないか。その辺は十分財団側とも相談しながら、そういった露骨にわが国だけでやっているというようなことは極力避けなければならぬ。相手の国の向上になることを重点に置きながらやりたいと、こういうふうに思っておるわけでございます。
  80. 辻一彦

    辻一彦君 外務当局に一言お伺いしますが、いまのような努力が払われておると私は思うんだけれども、しかし、ともすると、船が来て資源を持っていく、こういう受けとめを開発途上国の場合には、されやすいのではないかとも思います。で、そういうような懸念というものが具体的に起こっているというようなことは、いまのところあまりありませんか。
  81. 杉原真一

    説明員杉原真一君) 先ほど来申し上げておりますように、二百海里の経済ゾーンが、そういう考え方が起こってきた非常に大きな要素の一つに、自分たち沖合いの特に水産資源が先進諸国、資本と技術を持っております先進遠洋漁業国に持っていかれるのを見るにしのびないと申しますか、最近のごとく食糧危機とか、あるいは資源が全体として人口との間にアンバランスが生ずる傾向がある、というふうな認識が深まってまいるに従いまして、それならば、自分たち沖合いにある資源、特に漁業資源もこの際取り込んでおこう、というふうな発想がまず起こってまいりまして、そういうのが直接の動機になって、経済水域二百海里説というものが出てきたわけでございます。したがいまして、日本といたしましても、そのような資源の略奪とか、あるいは資源の独占とか、あるいは乱獲するとかいうふうな批判をこうむらないような態度と、また、操業方法とをもって今後対処していかない限りは、後進国の持っております危惧というものをなだめるということはかなり困難な情勢だろうと思います。現に、二百海里ゾーンが準備会議の段階で議論されておりますときに、日本ソ連、これが遠洋漁業国としては第一位、第二位の実績を持っている国でございますが、これの名前がしばしばメンションされたということから見ましても、開発途上国の心情というものは御理解いただけるんじゃないかと存ずる次第でございます。
  82. 辻一彦

    辻一彦君 時間の点からも、この問題は深くは触れることはできないと思います。ただ、先ほど申し上げましたが、北洋の場合には、資源を科学的にどう調査をして、それについての話し合いをどうするかということが一番のポイントであろうと思うし、開発途上国の場合は、相手国の立場になっての配慮や対策がどうしても大事だと思いますから、この点、せっかく海外漁業協力財団が分離独立をして別にあるわけでありますから、水産庁、外務当局も十分連携をとって努力をいただきたい、こう思います。外務当局はもうけっこうです、お忙しいようですから。  そこで、時間的にかなり追われておりますので、私、沿岸漁業のもとである漁港問題について二、三点お伺いいたしたい。  一つは、漁港整備の第五次五ヵ年計画が策定をされておりますが、これは四十七年度の大体物価水準、基準で策定をした。そこで、たとえば個々の漁港を例にとっても——たくさんの漁港を、私見ることもできなかったので、限られた県内の漁港をちょっと見たわけでありますが、たとえば越前海岸にある四ヵ浦という漁港は、当初、四十七年の物価水準で五十七億の要求をして、これが最終的には五十三億に決定をしている。初年度に、四十八年度に三億三千万、ことしは三億八千万の予算化が行なわれておりますが、総需要抑制という、こういう状況の中でありますから、公共事業費が全般的に押さえられるということはやむを得ない点があろうと思います。しかし、非常に物価が上がっている、資材が上がっている、人件費が上がっている。こういうふうな中で、たとえばことし三億八千万程度予算化されても、五年間に、ほんとうに計画した漁港が完成をするのかどうか。こういったことについて、いま漁民の間にたいへん不安が多いわけなんですね。特にいろんな、私は港にはそれぞれの地域における特殊な条件があろうと思うのです。この四ヵ浦の港を見ても、たとえば八つや九つの漁業協同組合があるが、合併しなくちゃいけない。しかし、なかなかむずかしくて合併できない。そういう中で、五年間たてば、こういった港ができてみんなやれるんだから、いろんな面があっても合併をしてひとつやろうじゃないかと、こういうふうになって、非常に漁港の建設に大きな期待をかけておる。それが、どうもこの勢いで資材、物価が上がってくるこの中で、五年後に二十億かりに急につぎ込んでも、その二十億が十億ぐらいの事業しかできないんじゃないかと、そういうふうに非常に懸念されております。で、いま漁港の五ヵ年計画の進行について、このような不安と懸念が広範に起きておりますが、この点についてどうお考えになっておるか、お伺いいたしたい。
  83. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 先生御案内のように、第五次漁港整備計画は、昭和四十八年度以降、五年間に総事業費七千五百億、これは閣議決定をいたしまして、もって漁港整備を行なおうとしているわけでございます。そこで初年度でございます昭和四十八年度におきましては、事業費約七百二億をもって事業を実施いたしまして、全体計画に対する進度は一〇・三%となったわけでございます。四十九年度は、総需要抑制の中で、公共事業の中で漁港関係は九%アップになっておりまして、土地改良等に比べればかなりよく見てもらっているほうでございますが、事業費といたしましては七百六十二億をもって事業を実施することになっております。これで計画に対する進度は二一・五%となる予定でございますが、ただいま先生が御指摘のございましたような、物価高の問題がここに起こってきているわけでございます。この問題は、単に漁港だけじゃなくて、公共事業全体の問題ではございますけれども、水産庁といたしましては、経済的な断面、効率的な施行をはかる等の計画内容の検討をはかると同時に、今後の予算確保について十分につとめたいと思っておりますけれども、これは、今後、財政当局とも折衝しなきゃならぬ問題でございますし、公共事業全体の問題に関連してやはり解決されなきゃならぬ問題ではないかと思います。
  84. 辻一彦

    辻一彦君 確かに、公共事業全体の問題にかかわることだと思います。しかし、零細な漁民にとっては、小さな漁業協同組合にとっては、港ができるということに大きな意味をかけて、むずかしい条件の中でも何とかがんばっていこうと、こうやっているわけですね。だから、これが五年たって、まことに中途はんぱな港しかできないとなれば、もちろん、その期待をこわしますし、それから漁村、漁業自体も私は、非常にあぶない状況になるのではないか、こう思います。  そこで、こういう勢いで物価が上がり、生産資材が高騰する、こういう中で、五ヵ年間でこの計画の中身を実現さすという確信といいますか、見通しを、まあむずかしい問題ですが、どうつけておられるか、持っておられるか、この点いかがでしょう。
  85. 内村良英

    政府委員(内村良英君) ただいま申し上げましたように、四十九年度におきましては進度が二一・五%ぐらいになるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、やはり閣議決定をした計画でもございますし、これは五年間でやらにゃいかぬというふうに強く決意をしている次第でございます。
  86. 辻一彦

    辻一彦君 この五ヵ年計画は、第五次が策定されるときにも、私もここで論議をしましたが、いままで五ヵ年計画といって全部できたことがないと。しかし、それは論議としては、いやもっといい計画が早くできたので繰り上げてやっていくのだと。こういうことでもあろうと思いますが、しかし、実際問題として、あの物価の動きの中でなかなか、五ヵ年計画といってそれが計画どおり進展していない。特に今度のような異常なといえるような物価高、生産資材の高さの中では、これは非常に私はあぶない、むずかしいと、こういうように思うんです。で、そういう場合には、この期間内で、非常に困難な場合には事業費を増額するとかして、この計画を達成すると。そういう水産当局は決意をちゃんと持っておられるのかどうか、この点いかがです。
  87. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 五年計画は、これはぜひ達成するようにしたいと思っております。
  88. 辻一彦

    辻一彦君 農林大臣がおられればお伺いしたいんですが、政務次官、いらっしゃるようですから、一言、ひとつ決意のほどをお伺いいたしたい。
  89. 山本茂一郎

    政府委員山本茂一郎君) ただいま、長官からもお答えしましたように、計画のとおり、これを実行するごとくわれわれは腹をきめている次第でございます。
  90. 辻一彦

    辻一彦君 港ができないと、沿岸漁場開発整備法ができましても、なかなか私は、中身がそろわないと思うのですよ。そういう意味で、いまの決意どおり、どうでもして、がんばってもらわなきやならない、いただきたいと思います。  それから同じ漁港に関して、漁港を歩いてみると、小さな漁港がありますね。何十億とか、百億とかいう大きな単位に乗っておる漁港は、まあことしは公共事業費抑制で予算が押えられるといっても、かなりな金額が出ますが、この三千万や五千万の小さな漁港の修築計画で局部改良とか——ここにありますが、これに八百万や九百万程度小さく分けて出してみても、これという仕事ができないんじゃないかという心配があるんです。で、こういう小規模漁港で、短期間にちょっと重点を置いてやる場合には、なるべく早い短い期間でやってしまうと、こういうことはできないのかどうか。これらの点どうお考えですか。
  91. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 漁港の整備につきましては、先生御案内のように、その必要性、緊急性等を考慮しまして、重点的に整備を要する漁港は漁港修築事業により実施し、また、漁業情勢の推移に即応しまして、機能の充実をはかる必要があるというような漁港につきましては、改修事業または局部改良事業として実施しているわけでございます。そこで、主として小規模漁港の整備を目的といたします局部改良事業につきましては、一港当たりの総事業費が三千万円以下のものを対象といたしまして、毎年予算措置によって実施しております。そこで、私どもといたしましても、執行能力、それから施工体制等を考えまして、こういったものはおおむね単年ないしは二ヵ年でやりたいと、こういうふうに思っております。
  92. 辻一彦

    辻一彦君 単年、二ヵ年じゃなしに、このままだと三年にわたりそうに思いますが、これはひとつこういう小規模なところも調査をしてもらって、少なくも二年ぐらいでやってもらうようにしたいと思いますが、いかがですか。
  93. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 私どもといたしましても、その方向努力したいと思います。
  94. 辻一彦

    辻一彦君 先ほど工藤委員から漁業の金融問題、経営の問題が出まして、時間の点から多く触れられませんが、私一、二点ちょっと例をあげて申し上げたい。  昨年、PCB、水銀の汚染問題、それから去年からことしにかけて、先ほどお話のように資材が非常に上がる、燃料からもういろんなものが上がっておりますですね。こういう中で、ほかのいろんな産業——農民、林業などみなたいへんですが、やはり零細な漁民というものが非常に大きな影響を私受けておると思う。  たとえばこれは越前海岸へこの間行きましたら、漁協の組合長や、漁民の人がたくさん集まって、いま税務署へ持っていくものをいろいろ書いているので、これを見てくれということで、私にもいろいろ見せてくれたんですが、これを見ても、たとえば「北陽丸」というこれは一隻の船ですが、これをやっている船主の決算書といいますか、これが出ておりますが、これでも、収入は二千二十九万一千九百六十九円と、こういうふうな中で、支出が二千四百十二万一千三百六円で、三百八十五万六千三百三十七円約四百万円の赤字が出ている。それからこれは二台持っている、「兄弟丸」あるいは「十八斗丸」という名前の船ですが、この二台の場合に——二隻ですが、これは支出が四千七百四十五万、——端数は略しますが、それから収入が三千二百九十二万七千円。で、千四百五十二万七千円が赤字、大体一隻にすれば七百万の赤字と、こうなっておりますね。こんな例がいま零細な漁民というか、漁村に非常に私、現在のところ多いと思うのです。  そうしますと、このままでいきますと、大きなところは別としても、この漁港ができる前に、漁民のほうがもう手をあげてしまう心配が非常にあると思うのです、大まかに言って、そこで、たとえば、畜産農家に対しては、えさの高騰等による緊急対策をやらにゃいかぬということで、いろいろやりますね。私は、漁村も畜産農家と並ぶような、この昨年の公害以来、危機状況にあると思いますが、そういう実態をどう認識されておるのか。この点ひとつ伺いたい。
  95. 内村良英

    政府委員(内村良英君) ただいま先生から御指摘がございましたように、昨今の物価高によりまして、漁業用に使いますA重油の価格は昨年のいまごろに比べますと三倍近くなっておる。漁網綱等も約二倍、その他の資材も上がっております。したがいまして、漁業の経費というものが非常に上がる傾向にございます。漁業の場合には——最近、春闘で賃金が上がりまして、企業では賃金の問題相当問題になっておりますけれども、これはいいか悪いかは別にいたしまして、漁業の場合は歩合い制度になっている面が多いものでございますから、この資材の値上がりの影響というほうが労賃の上がりより影響が大きいのじゃないかと私ども見ております。そこで魚価がそれに合わせて上がってまいりますればこれは問題ないわけでございます。それで十分経費を償える。ところが、先ほども森沢参考人からお話がございましたけれども、水産業の場合には、価格が需給できまってくる面が多いわけでございますから、なかなかコストの上昇というものを価格に織り込めないという問題がございます。そこで、私どもといたしましては、こういった日本漁業計画が直面している段階におきまして何らかの対策を講じなければならない。特に運転資金を融資をいたしまして、その間一方、魚価対策をとっていかなければならぬということでいろいろ現在内部において検討している段階でございます。
  96. 辻一彦

    辻一彦君 畜産農家の場合は、たとえばこの間の予算委員会における農林大臣の答弁で、六百億そのあたりという、そのあたりということばが何度か繰り返されましたが、緊急の融資をいま事務当局で詰めていると、こういう答弁があったんですね。水産当局はいまどの程度のものを詰めておられるのか、およその見当をひとつお伺いいたしたい。
  97. 内村良英

    政府委員(内村良英君) えさについてそのような対策がとられたというわけでございますから——重油の値上がり、資材の値上がりは、水産業にとっては、畜産におけるえさの値上がりと同じ影響がある。ただ、畜産の場合には、私どもの承知しておるところでは、えさのウエートが経費の五割以上になっております。ただ、水産の場合には上がったということを考えましても三割ぐらいになりますので、経費の中の占める割合いが。その辺のところを考えまして、資金量につきましても検討しております。
  98. 辻一彦

    辻一彦君 どのぐらい検討しているのですか。検討しているというのは、ちょっと具体的にわかりませんか。
  99. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 各いろいろ漁業の種類がございます。たとえばマグロのはえなわ漁業、トロール漁業、その他の漁業がございますので、漁業の種類ごとに必要な資金量を現在算定しております。
  100. 辻一彦

    辻一彦君 その種目ごとはけっこうですが、およそそれをまとめてどのぐらいの見当をつけておられるのか。
  101. 内村良英

    政府委員(内村良英君) これは、財政当局に話し合いを持ち込まなきゃならぬ問題でございまして、いま作業中でございますので、決して漁業者が困るようなことがないような数字にいたしたいと思っておりますが、ここで具体的数字を申し上げるところまでまだ詰まっておりません。
  102. 辻一彦

    辻一彦君 そうすれば、畜産農家に対処したと少なくとも同じ程度の緊急対策を、水産当局としては、漁民にこの対策として考えていると、そう考えていいですか。
  103. 内村良英

    政府委員(内村良英君) そういう措置をとりたいと思って一生懸命努力しているところでございます。
  104. 辻一彦

    辻一彦君 政務次官、努力ではなかなかだめなんで、どうでもしてやってもらわにゃいかぬのですが、決意のほどを一言伺っておきたい。
  105. 山本茂一郎

    政府委員山本茂一郎君) ただいまの問題につきましては、長官からお話しましたように、これを関係方面と十分検討をいたしまして、いまの御質問の趣旨に合うごとく努力をいたしたいと、こう考えております。
  106. 辻一彦

    辻一彦君 先ほど工藤委員からも一お話がありましたが、たとえば農業でいえば土地を買う、水田を。そうすれば三十年とか長い、そして三分とか長期の融資が出る。山を造林をやればこれも長期低利の融資が出る。あるいは最近の繊維に対する対策が中小企業に打たれておる。これを見ても、商工政策では、明治時代にないような高度化に対して、長期低利の融資が行なわれている。こういうふうにして打たれておりますが、漁業は私は、それに比べるとまだ十分でないように思うのです。で、この点ひとつ検討してもらって、少なくも平場の農民、山における林業者あるいは中小企業の機屋さん、繊維対策、これらと並ぶような長期そして低利の融資対策、金融対策、こういうことを私は一ぺん洗い直して検討してやっていただきたいと、こう思いますが、いかがですか。
  107. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 融資条件につきましては、水産業は他産業に劣らないようにやらなければならぬということで、私どもは一生懸命努力しているわけでございます。そこで、ただいま先生からお話がございました中小企業につきましては、いわゆる特定繊維工業構造改善事業の二分六厘あるいは一般高度化事業貸し付けの二分七厘というような金利があるじゃないか、それに対して漁業の場合には沿岸漁業区の構造改善の事業推進資金の場合にあっても三分五厘でしかない。もうちょっと安い金利のものをつくるべきではないかという御質問だと思います。私どもも一生懸命努力しているわけでございますけれども、水産業で特に制度資金の対象となる制度資金はいわゆる公庫資金でございます。そこで公庫資金につきましては、農業の農地等取得資金あるいは林野の造林資金等もございますけれども、農林漁業金融公庫の行なっておりますそれらの資金につきましては、決して水産が不利になっているとは私は思っておりません。ただ、中小企業の場合には、確かに先生がおっしゃるような資金がございます。これはしかし、中小企業振興事業団がやっておりまして、その事業団には相当額の出資が政府から出ているわけでございます。そういった無利子の金を財源にして安い金利をつくっているわけでございまして、そういった仕組みが現在農林金融の場合にはないと、農林漁業金融の場合にはないという点には問題がございますけれども、公庫資金の中の資金バランスということにつきましては、私は、決して水産業が農業、林業に劣ることはないのではないかというふうに確信をしておりますけれども、なお先生の御質問がございますので、慎重に検討して、五十年度予算の場合に、金融制度についてはもっと拡充するように一生懸命つとめなければならぬ、こういうふうに思っております。
  108. 辻一彦

    辻一彦君 これで終わりますが……。  私は、栽培漁業センター、それから遊漁対策、この二点についてもう少しお伺いをしたかったのですが、時間的にもう無理なようでありますから、別の機会に譲りますが、一つだけ。瀬戸内のほうではかなり長い間かかってようやく栽培漁業センターがある程度種苗生産が可能になってきた。しかし、かなり長い間のリスク等があって、これは国のほうで運営をずっとやってきたわけですね。いま日本海側に五カ所、北のほうにもこれからふやしていこうと、こういうわけですが、これは地域の特殊性がかなりあるということで、地方にそういう運営をまかすことになっておりますね。しかし、この栽培漁業センターのリスクとそれから放流という公益性、こういう点を考えると、ある採算が合うようになるまでは、やはり瀬戸内のように、国が責任を持ってこれが十分種苗生産が有効になって役立つ、採算にのると、こうなったときに地方にゆだねていく。私はそういうことを考えなければならないのではないか。この問題はまだ建設中でありますから、だから、運営については前櫻内農林大臣も、今後運営までに若干の時間があるから検討いたしたいと、こういうことでありましたが、これはひとつ十分検討していただいて、このリスクと公益性の点から、国が責任をもってもう少し、ある期間はやってもらう。こういう検討を、まだ若干時間がありますから、してもらいたいと思いますが、これいかがでしょうか。
  109. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 確かに今後の採培漁業センターの運営の問題を考えました場合に、その事業の重要性にかんがみまして、先生の御指摘のような問題があると思います。この問題が現実化いたしますのは、現在建設中でございまして、五十一年度以降の問題でございますから、その場合に慎重に検討して対処したいとこう思っております。
  110. 塚田大願

    ○塚田大願君 今回提案されました沿岸漁場整備開発法案でございますが、この法案を拝見いたしますと、その第一条におきましては、「沿岸漁場整備開発事業を総合的かつ計画的に推進するための措置を講ずる」、あるいは「水産動物の育成を図り沿岸漁場としての生産力を増進するための事業を推進することにより、沿岸漁業の基盤たる沿岸漁場の整備及び開発を図り、もつて沿岸漁業の安定的な発展と水産物供給の増大」をはかりたいと、こういう趣旨のことがございます。私は趣旨としては、たいへんこれはけっこうなことだと思うわけであります。当然そうでなければなりません。しかし、だからといって、現実の姿が、はたしてどうなのかという問題であります。  今日、日本列島のあらゆるところで埋め立てが行なわれておる。そのことによって、漁場が制限をされ、沿岸漁業危機に追い込まれようとしておる。これが今日の実態でございましょう。各所管省庁から出されました統計を見ましても、建設省あるいは運輸省関係の資料を拝見いたしましても一、とにかく今日埋め立ての面積というものは、昭和二十年から四十八年一月までに約十一万二千ヘクタール、こういう数字になっております。これは、たいへんな数字であります。これだけ日本沿岸がつぶされておるということでありますから、それだけまた、沿岸漁場が追い込まれているということでございましょう。こういうところが、じゃあ、どういうふうに利用されておるのかといえば、いわば大半が工業団地でありまして、ほんとう国民の生活や環境保全というふうなことに役立っているわけではない。  そこで、まずお聞きしたいわけでありますけれども、こういう実態で、ほんとう漁業というものがどうして守っていけるのか。いろいろ今度の法案でもいろんなことがいわれております。漁場の整備開発であるとか、特定水産動物の育成方針であるとか、たいへんりっぱなことが書いてあるんですが、しかし、こういう大企業のための工業団地が、これだけ沿岸を埋め立てることによって進められておるという、こういう中で、ほんとう漁業というものをどういうふうに保護されているのかということ。特に私がお聞きしたいのは、こういう地域にみんな漁業権というものがそれぞれあるわけでありますけれども、この漁業権というものが、どんなふうに保護され、また、いかなる施策をとっておられるのか。まずその基本的な面でお聞きしたいと思うわけであります。
  111. 内村良英

    政府委員(内村良英君) ただいま先生から御指摘がございましたように、最近の沿岸地帯の埋め立て、都市化の進展、あるいは海上交通のふくそう等によりまして、漁業に大きな影響を受けております。これに対しましては、現在海洋汚染防止法、あるいは水質汚濁防止法、瀬戸内海環境保全臨時措置法、公有水面埋立法等、公害関係の法律が最近においていろいろ整備されてまいりましたので、水産庁といたしましては、こういった法律を所管している各省に対して、その厳正な運用を要請しておると同時に、密接な連絡をとって対処しているわけでございます。一例をあげますと、環境基準は水産庁を含めました関係各省の協議できめているということで、従来よりもこの点について最近いろいろな前進的な措置がとられているということは事実でございます。さらに水産庁といたしましても、汚染状況調査、あるいは公害防止資器材の設置、公害防止調査指導体制の整備、海底堆積物の除去等を進めまして、被害者である漁業立場から公害防止にいろいろつとめているわけでございます。  そこで漁業権との関係でございますが、漁業権があるところにつきましては、漁業者が漁業権を放棄しない限り、そこの漁業権というものは保護されなければならないということになっておりますので、埋め立ての場合あるいは発電所をつくるというような場合につきましては、漁業者と関係の企業と、あるいは場合によりましては地方公共団体との話し合いが行なわれまして、漁業権補償が行なわれてからいろいろな仕事が始まるということで、一応漁業権によってそれらの漁業は保護されているわけでございます。ただ問題は、先ほども御答弁で申し上げましたけれども、過去の私どもの経験によりますと、こういったいろいろな公害をもたらすような企業の誘致につきましては、県がかなり積極的に従来参画しているわけでございます。その場合、県の開発関係の部署がどんどん仕事を進めまして、まあ水産を担当しているものには必ずしも密接な連絡がとれてなかったということが過去においてございます。その結果、水産関係者といたしましては、事が起こってからそれを知らされるというような傾向になっていた面もございますので、私どもといたしましては、水産関係者あるいは知事さんに対しまして、そういった開発事業を進めるときには、十分水産関係者にも連絡をしてもらい、水産関係意見というものが反映するようにしてほしいということを要請しております。したがいまして、そういった運用をしていきまして、こういった開発と漁業との調整というものをとっていかなければならないと。もちろん水産業だけの立場からいいますと、埋め立ては一切やってほしくない、発電所はもう一切お断わりということが一番望ましいわけでございますけれども、現実問題として、なかなかそういかぬ面もございますので、その場合には漁業者の利益が十分保護されるような措置をとるように一生懸命努力している段階でございます。
  112. 塚田大願

    ○塚田大願君 まあ確かに最近公害規制法律もずいぶんできましたし、社会的な世論もそういう方向でこれを推進しておると思うわけでありますが、しかし、この漁業という側面あるいは水産という面から見ますと、あまりにも後手に過ぎたんじゃないかと私は思うんです。もちろん、水産庁としては、あるいは農林省としてはそれなりにいろいろ苦慮されておったと思うんですけれども、現実には押しまくられたと、まあ早く言えば、そういうことだと思うんですね。通産省や建設省その他に押しまくられたと言っても私は過言ではないんじゃないかと。まあその点はいま水産庁長官もいみじくもおっしゃったけれども、とにかく県の段階でもそうだと、開発部門がとかく水産関係を押してしまうと、押し切ってしまうという趣旨のお話がございました。国の場合でも私は、多分にそういう側面があるんじゃないかという感じがするわけです。  そこで、ひとつ具体的に質問をいたしますが、私、この間大分港に行ってまいりました。で、この大分の地区では、いま新産都市事業計画というものが大々的に進められておるわけであります。御承知のとおり、ここは別府湾の景勝の地で、水産関係でも、たいへんな重要な地域であると思うんですが、この別府湾の沿岸が大分市から佐賀関にわたりまして約二十二キロの地域で、埋め立て計画が進んで、一部完成しているわけであります。半分ぐらいもうでき上がっておりまして、ここで大貿易港をつくると、こういうことになっておるわけです。現在すでに一号地から五号地まで埋め立ては完了いたしまして、コンビナートがすでに完了しております。たとえば新日鐵であるとか、昭和電工であるとか、九州石油であるとか、九州電力であるとか、その他等々、大企業、大工場が林立しているわけでありまするけれども、したがって、それだけに公害もずいぶん出まして、昨年あたりはいろいろ問題があったようであります。ところが、さらに、この大分港を広げて六号地から八号地に至る大きな水面を埋め立てようとしている、こういう計画であります。これはまあ水産庁もおそらく知っておられると思うんですが、こういう事態が今日でも白昼堂々と進められておるということなんです。いままでのことはとにかくといたしまして、いろいろ欠陥があっても、まあとにかくいままではいろいろ事情もあったでしょう。しかし、今日、こういうこの水産三法のような法律が提起されまして審議しているこの段階におきまして、こういう事態がはたしてまかり通っていいのかどうかという問題を私は提起したいわけであります。  で、具体的に申しますと、この大分港というのは昭和二年に、第二種重要港湾に指定されました。第二種というのは戦後なくなったわけでありますけれども、まあとにかく、そういうことから出発いたしまして、三十六年−四十六年にわたってその港湾区域の拡張が行なわれました。そして今日ではたいへん広い地域が港湾に指定されておると、こういうことであります。ところが、この重要港湾の中に共同漁業権が今日でも厳として存在しているわけであります。大分漁協あるいは西部漁協あるいは白木漁協、三佐漁協、まあ約この四つの漁協がございまして、ここにこの共同漁業権があるわけであります。——こういう姿が、いま水産庁長官おっしゃったんだが、そういうところにもずいぶんあると、こういうお話なんですが、ところが、こういうこの事態の中で実際問題といたしまして今日漁業が、漁労が非常に障害を受けておる。漁業権はあるけれども、いろいろ被害が起きる。いままでのように漁獲量はあがらない、若い者はどこかへ出稼ぎに行ってしまうと。こういう事態で、きわめて深刻な状態であることを私確かめてまいりました。いろいろまた陳情も受けましたが、こういう状態というものははたしてそのまま放置しておいていいのかどうかということです。私は、やはりもっとその辺ははっきりさせなければいけないんじゃないか。まあいろいろ関係者に聞いてみますと、従来はそういう重要港湾と、それから漁業権というものは併存する、併立、両立してかまわないという考え方であった。こういうことでありますけれども、現実問題を見ますと、そんな単純なものではない。頭の中で、ものを考えるようなことではございません。  そこで、一体こういう重要港湾で漁業権があって、そしてその漁業権で漁民がなりわいを立てておる、そういう状態にある港湾というのは、一体全国でどのくらいあるのか。まずその基礎的なデータを知りたいと思うんですが、おわかりでしたら、これは港湾局でも、農林省でもけっこうでありますけれども、聞かしていただきたいと思うんです。
  113. 勝目久二郎

    説明員勝目久二郎君) 港湾区域の設定の問題と漁業権との関係につきまして、まず一般論で申し上げます。港湾区域は、目的といたしましては、港湾の管理運営のための区域といたしまして、港湾法に基づきまして設定をするわけでございます。本来そういうことで設定をされましても公有の水面でございますので、一般人の自由な使用に供されるということになっておるわけでございまして、港湾区域ということで受けます行為規制も、港湾法の三十七条にございますが、港湾区域内の水域の占用でありますとか、港湾区域内の土砂の採取というようなものを規制するということに限っているわけでございます。したがいまして、これらの規制対象とされております行為以外の行為、もちろん漁労活動もこれに入るわけでございます。これは港湾区域においても自由に行なうことができるということになっているわけでございます。これは重要港湾、地方港湾の別を問いませんで、港湾区域内におきます漁労活動、港湾活動とは当然には抵触するものではないと、もともと競合して行なわれるものであるということになっているわけでございますが、先生の御指摘のように、いろいろ実態といたしましては、漁労活動との調整が必要となるという場合も生ずるわけでございます。そのような場合には、漁業権の買い上げをするというようなこと、これは当該の事案にそれぞれ即して考えなければならないと思います。そのような措置が必要になり、また現実にそういう措置がとられてきておるということでございます。  全国の港湾におきまして、それぞれが、どのような実情になっておるかという点につきましては、ただいま資料の持ち合わせがございませんので、答弁は控えたいと思います。
  114. 塚田大願

    ○塚田大願君 いまの私の質問ですけれども、港湾局はどうも資料がないというが、だったら水産庁何かそういう資料お持ちですか。
  115. 内村良英

    政府委員(内村良英君) こういった問題につきましては、そのつどそのつど県等から相談があった場合に、いろいろ対策について協議しているわけでございまして、ただいまのところ、それじゃ幾つあるかということになりますと、ちょっと資料を持っておりません。
  116. 塚田大願

    ○塚田大願君 私もしろうとでありますから、そんな詳しいことを知っておりませんけれども、そんなに私は、数がないんじゃないかと思うんです、重要港湾の場合。いまもちろん特定重要港湾、それから重要港湾、地方港湾というふうに区別がありますが、特定重要港湾は今日全国で十七、それから重要港湾が百と、それから地方港湾が約九百、——千近い。こういう状態でございます。  とにかくそういう意味ではそんなに重要港湾というのはたくさんあるわけではない。したがって、その港湾の中に漁業権というものが存在しておる、そしていろいろトラブルが起きるという、重要港湾でありますから船の出入りは当然多いわけであります。外国船がどんどん入ってくるわけであります。御承知のとおり、重要港湾というのは港湾法によって指定されておる、いわば国の利益に重大な関係を持つものを重要港湾として指定するわけでありますから、外国船はもちろんどんどん入ってくるわけであります。したがって、いろいろ漁労の上で問題が起きてくる。そういう重要港湾の中に私は、漁業権が存在をするということ自体がそもそもおかしいと思うんですが、しかしそれにしてもデータがなくては話になりません。私の知っている限りにおいては幾つもないと、十本の指に足りないぐらいだというふうにも聞いておるわけでありますけれども、これはやはりこういう法案を、沿岸漁場整備開発法案というふうな重要な法案をお出しになるからには、私はそのぐらいのデータを出していただかなければいけないんじゃないかと思うわけであります。その点ひとつ調べていただいて資料を出していただきたいと思うんですが、よろしゅうございますか。
  117. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 調べて提出したいと思います。
  118. 塚田大願

    ○塚田大願君 その点をお願いいたします。  そこで、私の見ました大分のこの重要港湾では、漁業権に対する侵害が非常に何といいますか、露骨だという感じを受けました。ところが漁民の皆さんというのはたいへんこういう問題で公に抗議をするとか、陳情をするとかなんかということについてなれていらっしゃらない。だから泣き寝入りという姿が現実の姿でございまして、これはおそらく何も大分の場合だけではないと思うのであります。ずいぶん全国にもそういう事例が多いんじゃないかと思うんです。そういう方々のお話を聞いてみますと、とにかく一体漁業権というのは漁業法で保障されておるんじゃないかと。ところが、こういう実態になれば、漁業権とは一体何だと、どういうものですかという質問を私受けましてまことに答弁に困りました。こんなことは常識——漁業権がどういうものであるかぐらいはこれはだれでも知っていることでありますが、現実にはその漁業権が、権利というものが侵害をされておる、平然としてそれが踏みにじられておる、これが実態だったと思うんです。したがって、それだけに私は、いまの状態のもとでは法のあり方についても私は検討していただく必要がある。これは明らかに矛盾であります。理屈の上では重要港湾に指定してもその水面は自由に利用していいんだということかもしれませんが、漁業権ということになりますと、実際に網を張り、網を立て漁労するわけです。それが船の航行によって切られていくと、これでは自由も何も保障されないわけであります。もし両立するというんだったらその操業の自由というものが確かに保障されなければ私は意味をなさないのではないかと思うんです。  そこで、さらに具体的に御質問いたしますが、この大分港の場合は船舶の入港、入船状況というものが、これは県の調べでありますけれども、大体最近一年間に三万八千九百隻と、一年間ですよ。大体一日百隻入るということであります。貨物量が大体二千百八十万トンでありますから一日約六万トン、このうち外国船が五百九十隻、約六百隻ですね。この船は大体一万トン以上七、八万トンと、こういう大型の外国船であります。この純トン数が約一千万トンと、こういうことでありますから、まさに重要港としての面目躍如たるものがあると思うのです。重要港として指定されて、そしてこれだけの埋め立てをやり、これだけのコンビナートができておるのですから、これは当然のことでございましょうが、しかし一方、漁民立場から見ますと、この被害がこういう実態であります。四漁協だけで、これはこれも県の調査でありまして、どうも私どもの調べた数字といろいろ食い違っておりますが、一応いまのところ信憑性のあるデータは県のものだと私考えますので、県からいただいた資料ですけれども、四十八年に建て網漁具が三十二件、約四百万円の損害である。四十九年にはまだ四件で、六十万円である。こういうことなんですね。ところが、この被害がどういうふうに処理されたかということについてはさっぱりわからないんです。ただ、私どもが調べました数字によりますと、この四漁協のうち西部漁協というのが一つございますけれども、四十八年で十三件事故があったと。そのうちその被害が約二百万円だと。これはたいへん、まあ漁具そのものの被害だけを計算したようでありますけれども、十三件あると。ところが解決したのはたったの一件だと、一つだと、こういうことなんですね。ですから、被害は起きるわ、しかしあと始末が全くされてない。じゃあどうしてあなた方は黙っているんだといって私、逆に質問いたしました。そんな被害があるのに堂々と交渉したらいいじゃないかと。そうしましたら、いや、それはもう何回も県にも行き、交渉もした。あるいは海上保安部にも行った。だけれども、県としてはそういうものは直接扱わない。いわば道路の交通事故みたいなもんだから、被害者と加害者で話し合いなさい。こういうことだというのですね。あるいは海上保安部へ行きますと、漁業権より港則法が優先されるんだと、こういうことをある幹部は言っておるんです。これは名前もわかっています。そういう状態で、何とも取りつく島がない。ところが、漁民にすれば、何しろ夜夜中網を切られることもある。あるいは昼間であっても、たとえば外国船だったら、外国船に乗って、ことばも通じないのに交渉しろといっても交渉できるわけがない。しかしさすがに漁民魂といいますか、中には外国船に乗り込んで、ことばは通じないけれども、手ぶり、身ぶりで、話をして、そうしてやったという話もあるんですね。まあこんなのは全く常識外の話なんですが、とにかくそういう状態で放置されている。これは何とかしてもらわなければいけない。こういうことなんですけれども、こういう姿を、港湾局にいたしましても、あるいは海上保安庁にいたしましても、あるいは水産庁としても、ほんとうに実態をつかんでいらっしゃるのかどうか。そして、これに対してはどういうふうにしたらいいというふうにお考えなのか。その辺率直にひとつ聞かしていただきたいと思うわけであります。
  119. 内村良英

    政府委員(内村良英君) まず最初に、港湾法と漁業法との関係でございますが、区画漁業権の免許にあたりまして、漁業法の第三十四条をもって制限条件を付するということは、この大分湾だけではなしに、他府県にも一例がございます。それは、たとえばノリの養殖の場合に、養殖の必要を全面的に立てますと、養殖業者の専用漁場として行使される自組合の漁船や他の小型船舶の航行に影響もあるというようなことから、適正な航路をとる必要があり、そのため制限措置を設けるという意味で、制限条件を付することはございます。  それから大分県の問題につきましては、私どもが聞いておりますところでは、県が——漁具被害につきましてはただいま先生から御指摘のございましたような被害があったということは私ども聞いております。そこで、これを防止するため、今後船舶の泊地の移動、あるいは被害補償等について地元関係の漁業者と県が協議をしておるというふうに聞いておりますし、さらに、昭和四十八年度におきましては、関係の各種企業が漁業関係に迷惑をかけたということで、別府湾の四組合を含めました六組合に対して六千万円の見舞い金が払われているというふうに聞いております。
  120. 塚田大願

    ○塚田大願君 それは何年ですか。
  121. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 四十八年でございます。
  122. 塚田大願

    ○塚田大願君 海上保安庁及び港湾局はどうですか、いまの問題について。
  123. 山本了三

    説明員山本了三君) 先生が御指摘になったとおり、大分の港内において漁網の被害が発生しておるということでございます。で、御承知のように、大分の港には港長がおります。港長の職務は、これまた御承知のように、港内におきます交通の安全と、それから港内におきます整とんをつかさどると、そういう職責がございます。したがいまして、四十三年、大分の港内におきまして漁網の被害が起きたということで、大分の港長は、関係の漁業組合、それから関係の船舶、それに港湾管理者、こういった関係者を集めまして、この被害防止について協議をいたしております。で、その結果、船舶の錨地を関係者協議の結果、三カ所四十三年においては決定いたしております。そして、その錨地に船が入ります場合には、二十四時間以前に船舶関係者から関係の漁業組合に通報すると、そういう取りきめになっております。で、通報を受けました漁業組合は網を揚げる。で、その網を揚げる際の補償金として、一回につき五千円を支払うと、そういう話し合いになって、現在それが実施されておるということであります。したがいまして、海上保安部といたしましては、港は船舶の交通の場であり、かつまた漁業権が設定されております区域におきましては、漁業の場でもあるという両面から、両方の安全の調整をはかっておる、関係者を集めて調整をはかっておる、そういうやり方をいたしております。
  124. 塚田大願

    ○塚田大願君 最初に水産庁長官が言われました補償というのは、これは公害がありましてね、去年、かなりの会社と漁協の間でいろいろ問題がありまして、これは補償がかなり出たことは事実です。この公害は、私は、きょうは公害対策委員会じゃありませんから特に言わなかったのですけれども、まあシアンであるとか、PCBであるとか、ずいぶん幾つかの、十近くの会社が大分川でありますか、大野川でありますか、こういう川から流しましてね、ずいぶん被害があったんですよ。そのときの補償でありまして、これは直接漁網の被害やなんかではないんです。私がきょうお聞きしているのは、そういう直接的な問題をお聞きしておるわけであります。それから制限条項があることはこれは当然でございましょう。交通道路だっていろいろ制限があるわけであります。それはあってもいいんですが、しかし何か、ちょうど道路では人と自動車が事故を起こしたときに自動車が優位に立つというふうな、いっときそういう傾向がございました。いまは人命のほうが尊重されるようになりましたが、港の場合にはやはり大企業、大船会社というものが、どちらかというと優先して、小さな零細漁業、漁家などというものが無視をされる、そういう傾向が私はいまでもあるんだと思うんです。そのために、こういった零細企業が泣き寝入りをさせられると、こういう結果になっているんじゃないか。ですから、県の水産、保安部——海上保安部などは港則法が優先するんだなどといって漁民の陳情をはねのけてしまう、こういうことがなきにしもあらずだと思うわけで、そこで私が問題を出すわけであります。いま水産、保安庁で調査をする、調整ならけっこうですけれども、この陳情やなんかをむげに拒否をする、無視すると、こういうことではこれは調整ではございませんから、やはりそういう点は私は一つ一つ改めてもらわなければいけないと思うわけであります。  そこで、次の問題ですが、こういう被害ですね、たとえば先ほど数をあげましたけれども、西部漁協だけで十三件のうちたった一件だと、こういう解決のしかたですね。そうすると、たとえばここの漁協だけでも十二件は未解決で泣き寝入りをさせられておると、こういうことになるわけであります。全部を含めればもっと三倍近い数字になるわけでありますけれども、こういう場合、一体そういう零細漁民に対する補償というのはどうして解決をするのか、なるほど当て逃げといいますか、引き逃げといいますか、とにかくどっかヘヘ、加害者は船でありますから、どっかへ行つちまった。もちろんその船がわかっていれば、その代理店なり何なりに交渉できるでしょうけども、そういうこともわからない。で、ただ、その被害で泣き寝入りをせざるを得ないと、こういうケースに対してはどこが責任を持ってそういう交渉なり、補償なりをやっていくのか、国がやってくれるのか、県がやってくれるのか。その場合には一体どうしたらいいというふうにお考えなのか、それをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  125. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 先ほどもいわゆる加害者があるんだけれども、それがはっきりしない。公害の話がこの委員会審議でも出たわけでございますが、私ども水産関係者といたしまして一番頭を痛めている問題は、この問題が大きな一つでございます。と申しますのは、付設してある漁具が夜どっかの船に引っかけられる、そこで被害を受ける。ところが、夜なもんで、どの船がやったか全くわからないというようなケースがあるわけでございます。その場合に、法律的にいいますと、加害者に請求すべきではないかということになりまして、これは民事上の問題だ、こういうことになるわけでございます。ところが、と申しましても加害者がわからないということでございますので、これどうするかという大きな問題がございます。そこで、私どもといたしましては、いろいろ、先ほどもちょっとお話が出たわけでございますが、油濁の問題につきましては、関係の四省で根本対策を考えようと。また、こういった問題につきましても、どうするか、水産庁がある程度イニシアチブをとって考えなきゃららぬ問題だというふうに考えておりますが、いまのところ法律的に申しますと、これは民事の問題じゃないかということになってしまうわけでございます。
  126. 塚田大願

    ○塚田大願君 民事の問題だから、だれか国なり県なりが仲に立って、話し合いができる条件をつくってやらなきゃ、これは漁民の皆さんがどう手弁当でさがしてみたってどうにもならないわけですね。ですから、私は、そういう面でひとつ積極的な姿勢がなければ、どんなりっぱなことを言っても、絵にかいたもちのような法案になってしまうので、やはり実のある心のこもった対策というものが必要だろうと思うんです。この問題は、これからの一つの課題としてひとつ研究していただくといたしまして、まだあるわけです。  たとえば、ここに海上保安部が出しました航路の航路図があるわけですね。この重要港湾の区域が指定される、この重要港湾に対しては、船はこれこれの方向で、この地点から、この港に入ってこなければならないという、赤線で引いている航路の指定があるわけでございます。ところが、聞いてみましたら、こんなものは実際守られていないというのですね。これは方々から来ますね。別府のほうからも、関西からも、宇和島のほうからも来ます。この重要港湾の入り口で一点に集中して、この線を入ってこい、こういうふうに指定をされているわけですな、航路を。ところがそんなことは全然守られておらない。あらゆるところから入ってくる、右からも左からも。ですから、漁業権があって、そこで網を立てても、この辺は主として建て網で、建て網漁法ですが、もうしょっちゅう被害を受ける。こういうことなんですが、これはもう明らかに私は海上保安部の責任じゃないかと思うんですが、これはどうでしょう。
  127. 山本了三

    説明員山本了三君) 申しわけありませんが、先生のその資料をちょっと見せていただきたいのでありますが……。
  128. 塚田大願

    ○塚田大願君 どうぞ、どうぞ。   〔資料提示〕
  129. 山本了三

    説明員山本了三君) 先生の御指摘の図面は「定期旅客船航路及び港域図」というふうなものになっております。これは海上保安庁がこの航路を指定したというものではございません。こういうところを通ってくるであろうというふうに推定して引いた線でございます。御承知のように、港には航路というのが指定されるということになっておりますけれども、その航路ともこれはまた違っております。  それからもう一つ申し上げたいのは、さっき私が先生に御答弁申し上げたとおり、港域内に建て網が設置されております。したがいまして、船舶が港域内に入りまして投錨いたします場合には、港長が投錨位置を指定するということになります。その指定するのはさっき申し上げたとおり、関係者の皆さんで協議した三カ所——このあたりは三カ所であるということでございます。これもさっき申し上げましたが、そこへ投錨いたします場合には、二十四時間以内に——二十四時間よりも早くといいますか、その前に漁業者のほうへ通知をすると、通知を受けた漁業者は網を揚げるという約束になっております。したがいまして、これが厳密に行なわれますならば、漁網の被害ということは起こらないであろうと、そういうふうに私は考えます。先生が現に指摘されました最近の漁網の損害発生につきまして、私どもが一応調べましたところでは、新産都市建設局のほうから、こういう被害が最近起こったという連絡を保安部が受けております。海上保安部はさっそく関係者に調査をいたしております。私どもが聞いております範囲におきましては、通知はあったと、しかし、しけておったので漁網を揚げることができなかったと、そういうことのようでございます。
  130. 塚田大願

    ○塚田大願君 そのいまの航路図は、これは海上保安部の名前がちゃんと入っておりますが、私、専門じゃありませんから、これがどういう規定に基づいてこういう航路図ができておるのかよくわかりませんが、しかし地元の皆さんはそういうふうに理解をしておるわけです。ですから、これは地元で私はもらってきたのです、漁民の方から。ところが、実際にはそうじゃない。ここにも一つ問題があります。  それから、いまおっしゃった錨地の問題です。これは、確かに第一錨地から第三錨地は、この旧大分港のすぐそばにあるわけです。旧大分港というのは、生石泊地というのですか、そういう名前のところですけれども、その近くに第一から第三まで錨地がございますが、確かにおっしゃるように四十三年にこれが設定をされた。もちろんそのときには話し合いができて設定をされたわけでありますが、そして連絡費としてまあ五千円、一回について渡すと。こういうことになっておるわけです。ところが、中身を聞いてみましたら漁協が四つありますが、この辺の漁協は三つです。この三つのうち大分漁協が三をとり、西部漁協が一をとり、白木漁協が一をとると、こういう分配のしかたになっておる。五千円を五つに割ってそして三、一、一とこうとると、こういうことになっておるわけです。  ですから、まあこれはほんとうに、さあ船が入ってきた、網を揚げろといってかけつけると、錨地まで、その一回の油代にもなるかならないかという程度のものでしょう、いまどき。ですから、こんなものはもう問題にならないと思うのです。私、じゃあ、あなた方承認したのじゃないかと聞きました。そしたら、そうだ、承認はしたけれども、四十三年の時点で今日のことを予想できなかったと、あんなに大きな外国船が入ってくるのを。ところが、その錨地の中身知っていますか。中身というのは半径百メートルですよ。この錨地、第一、第二、第三の錨地、半径百メートル、直径で二百メートル。いまの外国船、でっかい十万トンクラスの船だったら三百メートル近くあるでしょう。一回転するといったって百メートルや二百メートルでは片はつきませんよ。そうでしょう。半径とにかく百メートル、直径二百メートル、そういう錨地ですよ。だんだん船が大型化してくると、実際には、一回五千円もらっても、ほんとうにこれはもうどうにもならぬというのが実情だと思うのです。これがいまのおっしゃった錨地の実態なんですよ。ですから地元の方々は、この錨地を遠くへ移してくれと、こういう要請をしておるわけです。ところが、今度県のほうは移してもいいけれども、税関がすぐそばにあるので、この税関の建物を遠くへ、そっちへ持っていかなければ、錨地を移すこともできない。こういうことを言って、この錨地の撤去をなかなか認めないと、こういうことなんです。みんな自分の都合でやっておるのですよ。二号地でしたかな、二号地のほうへずっと遠いところへ持っていくという計画があったのですけれども、それもそのまま。それで被害だけは依然として起きてくると、こういう実態なんですがね、これについては、海上保安部はどういうふうに考えていますか。
  131. 山本了三

    説明員山本了三君) 先生の御質問の件でございますが、初めに五千円は安過ぎるではないかというお話ですが、これは私どもの所掌を若干離れているのじゃないかと思いますので……。
  132. 塚田大願

    ○塚田大願君 それはいいですよ。
  133. 山本了三

    説明員山本了三君) よろしゅうございますか……。それから錨地を遠くへ持っていけという問題でございますか。
  134. 塚田大願

    ○塚田大願君 いや、範囲、そんなものでいいですか。
  135. 山本了三

    説明員山本了三君) 錨地の半径が二百メートル。
  136. 塚田大願

    ○塚田大願君 半径百メートル。
  137. 山本了三

    説明員山本了三君) 半径百メートルというお話ですが、錨地、いかりをおろすところが半径百メートル、直径二百メートルと、そういう範囲でございます。おろすところでございますね。いかりが入っているところが、その範囲内に入る、こういうことでございます。したがいまして、船体そのものが大きければ、その範囲外に出ているということは当然あろうかと思います。これはまあ当然の話じゃないかと思うのでございますが……。   〔委員長退席、理事梶木又三君着席〕
  138. 塚田大願

    ○塚田大願君 当然だというのは、何が当然なんですか。だからそういう、矛盾しているでしょう。もしその近くに網があったら、みんなひっかけられるということになるじゃないですか。錨地として認めたとしても、それはその周辺の網もやられるという理屈になるので、もし錨地をほんとうに設定をするのだったら、いまの実情に合ったように、もっと広範囲にするとか、そのための補償を何とかするとか、何か考えないと、いまの現状ではこれはどうにもならないということなんです。これでは大きい被害が起きるということなんです。この錨地の設定そのもの、あるいは錨地の条件、こういうものをどこへ移すということを含めまして、私は検討する必要があるのじゃないか。地元では錨地を遠くへ移していってくれと、もう予定地があるのですから。ところが、県のほうは、おれの都合が悪いといってなかなかやってくれない。こういうことなんですよ、実情は。だから、これはひとつそういう点を積極的に指導して解決していくのは当然だと思うのです。  それから第四錨地というのがあるのですよ、あなたおっしゃっていないけれども。第四錨地というのが、やっぱり二号地の先にもう一つあるのですよ。で、これも非常におかしいのですけれども、共同漁業権者である四つの漁協には何にも話がない。全然無断で錨地ができておる。ただ、その地先の、地元の三佐漁協というのだけは話をしている、こういうことなんですけれども。しかし漁業権は共同企業権なんです、四つの漁協でできている。ところが、ほかの組合には全く無断でやっておる。まあこういう実態もあるわけなんです。ですから、何か錨地というものをまことに簡単に考えて、まあ港湾サイドで考えて、船舶本位で考えればそれはそれでいいのかもしれませんけれども、そこには厳として漁業権があって、漁民の皆さんが暮らしを立てているわけですから、そういう錨地の設定であるとか、条件であるとかいうのは、もっと厳密でなくちゃならぬと私は考えるのです。  それから、もう時間がありませんからついでに言っておきます。これも一御答弁願いたい。  先ほど話しました旧大分港ですね、生石泊地。この小さい、昔の漁港ですから小さいものです。このすみっこにあるんですね。ここにも実は漁業権があるんですよ。ところが、これは行ってみて驚きました。ここに関西汽船ですか、いわば観光用の関西汽船の船が、一隻二、三千トンの船がとまっておりましたけれども、とにかくそのでかい船が一隻入るともう満ぱいに近いようなそういう港なんです。で、古い港なんですから、これは無理もないんです。ところが、その中にも漁業権があるんです。しかし、実際問題としては、そんなところで漁業ができるはずはないでしょう、もうほんの船が一隻入ったら一ぱいになるような港ですからね。こういうものに対しては、地元から漁業権の買い上げが要求されておったんですよ。ところが、それは無視されている、こういうことです。これでは全く力ある者が、大きな者が、何をやってもかまわないということになりかねないんですね。スズメの子そこのけそこのけお馬が通るという、あの一茶の有名な川柳はまさにここではまかり通っておるんです。お馬だけがいばって通っていると、こういう実態だと私は感じたわけですけれども。こういう点でやはり私は、こういう側面を解決していただかなければ、沿岸漁業の発展というふうなことは、幾ら看板をかけても私は、それが実ってこないではないかと。じゃ、その責任をどうするのだということを私は申し上げたいわけですけれども、いま言った幾つかの問題について、ひとつ最後に海上保安庁及び水産庁から所見をお聞きいたしまして私の質問を終わります。
  139. 山本了三

    説明員山本了三君) 最初に指摘されました錨地の大きさ、半径百メートルという問題でございますが、私ども網に被害を与えるのはいかりをおろすとき、上げるときと、いかりによって被害が起こると一応考えております。したがいまして、いかりを入れる範囲が二百メートルぐらいあればいいんだろうと、そういう考え方にまず立脚いたしております、ということを申し上げます。  それから錨地の移動、それから錨地の設定の条件、こういった点につきましては、先生の御指摘のとおりでございます。海上保安といたしましても、港内の船舶交通の安全と、それから漁業の安全といいますか、漁業の安全操業といいますか、この問題は当然両立するように努力しなければならないものと、そういうふうに了解いたしております。したがいまして、大分の場合におきましても、錨地を設定いたします場合には、関係者の協議を行なって設定いたした次第でございます。  なお、問題が現地にあるという御指摘でございますので、私ども、現地であらためて関係者の協議を持ちたいと考えております。
  140. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 水産庁といたしましても、その点につきましては、関係省庁、県と十分協議いたしまして、関係漁業者が円滑に操業できるようにつとめたいというふうに考えます。
  141. 塚田大願

    ○塚田大願君 最後に一つだけ、大臣にひとつ締めくくりでお聞きしたいと思うのです。  中身についてはもうお聞きのとおりですが、せっかく沿岸漁業の発展ということを言われておりますが、ただ、先ほどからも論議が出ましたように、あの六月の海洋法会議を見ましても、まあ二百海里説が出るということ、まあこれもいますぐそう簡単にいかないというふうな先ほど答弁もいろいろございました。あるいはそうかもしれません。それからまた、この間の質問に対して水産庁長官は、まあ二百海里説がかりに通っても、その二百海里の水域での漁獲量というのは大したことはないと。二国間協定もあるし、話し合いをすればそれほど大きなあれはないだろうというふうなお話がございましたけれども、しかし、いずれにしましても、やはり資源ナショナリズムというのは今日、国際的な一つ傾向でございます。まあ今度石油問題では痛いほどわれわれ経験させられているわけです。まあそういう面から言いますと、沿岸漁業をどうやって発展させるかというのは、私はやはり一つの柱ではないかと思うのですよ。  なるほど沖合い遠洋漁業もけっこうでございますが、こういうものが大きくなっても、それは漁獲量はある程度上がるかもしれませんが、これは主として大船会社あるいは大水産会社が利益を得るということですけれども、しかし、沿岸漁業の場合は、これはもう明らかに一般漁民の生活がかかっておる問題でもあります。そういう意味で、民生の安定、国民生活の向上という観点から見ましても、私は単に漁獲量が云々というふうな数字をあげての話ではなくて、ほんとうに質的に日本漁業を発展させるという意味で、私はこの沿岸漁業対策をもっともっとひとつ真剣に考えていただきたい、このことを大臣にお伺いしまして私、終わりたいと思います。
  142. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) この三つの法律を御審議願いますとき、私どものほうから提案の理由を申し上げました精神も、それからまた、漁業白書等で私どもが強調いたしております点をごらんいただきましても、特に沿岸に非常な力を入れておることは御了解いただけることだと思っております。ところが、先ほど来多くの方々との間に質疑応答がありましたように、昨今新しいいろいろの事業等が起こりまして、それに伴う公害、そういうもののために大事な漁場が失われてまいるというふうなことは私どもにとってなかなかたえがたいことでございます。したがって、そういう方面、やはりこれも一方において大事な事業ではございますから、調整をとりまして、私どもの所期の目的を達成されるように最大の努力をいたしてまいりたいと、こういうふうに思っておる次第でございます。
  143. 梶木又三

    理事(梶木又三君) 三案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十九分散会      —————・—————