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1974-03-26 第72回国会 参議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十六日(火曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員の異動  三月八日     辞任         補欠選任      山内 一郎君     温水 三郎君  三月十一日     辞任         補欠選任     久次米健太郎君     片山 正英君  三月二十二日     辞任         補欠選任      棚辺 四郎君     斎藤 寿夫君  三月二十三日     辞任         補欠選任      斎藤 寿夫君     棚辺 四郎君  三月二十五日     辞任         補欠選任      片山 正英君    久次米健太郎君  三月二十六日     辞任         補欠選任     久次米健太郎君     片山 正英君      高橋雄之助君     田中 茂穂君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         初村滝一郎君     理 事                 梶木 又三君                 高橋雄之助君                 鶴園 哲夫君     委 員                 片山 正英君                 亀井 善彰君                 河口 陽一君                 田口長治郎君                 温水 三郎君                 平泉  渉君                 堀本 宜実君                 神沢  浄君                 沢田  実君                 塚田 大願君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        農林政務次官   山本茂一郎君        林野庁長官    福田 省一君        林野庁林政部長  平松甲子雄君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        環境庁自然保護        局計画課長    宇野  佐君        通商産業省生活        産業局紙業課長  村岡 茂生君     —————————————    本日の会議に付した案件 ○森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正す  る法律案(第七十一回国会内閣提出、第七十二  回国会衆議院送付)     —————————————
  2. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明はすでに聴取いたしておりますので、これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 片山正英

    片山正英君 きょうはストの決行の日でございましたが、定刻から始められましてはなはだ幸いでございます。  さて、提案されております森林法改正に対しまして、私は林野庁の政策も含めまして若干の質問を行ないたいと思います。  このたびの森林法改正の骨子をあらためて私から申し上げる必要もないわけでございますけれども、最初の質問でもございますので、私なりに要約をいたしまして述べてみたいと思います。  第一番目は、これはもう当然先進国の例に見るまでもなく、森林の無計画乱開発防止するための全森林対象としました一ヘクタール以上の開発行為、それにつきまして知事許可制を導入したいということ。二番目は、森林、あるいは林業のにない手と言われまする森林組合制度、すなわちその組織、事業範囲管理運営面等につきまして改善強化をはかったこと。なおこの改善強化方向は、私は、さきに学識経験者による森林組合制度問題研究会答申、これは四十七年の九月に出ておるようでございますが、その答申に即して行なわれたと、こういうふうに理解をいたしております。第三番目は、森林計画単位流域中心に置いて、流域ごと計画事項を明確にいたしたこと。そして、従来は森林所有者単位施業計画中心であったのが団地中心の施業を重視すると、こういう制度にしたこと、これを第三番目と考えております。第四番目は、伐採に対しまして、その適正を期するために知事命令権を与えたこと。  大体以上が森林経営基本を示すものとして今回の森林法改正、このように私は理解をしておるわけでございますが、まずその点、それでよいかどうか。簡単にまずお答えいただきたいと思います。
  4. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいま先生から御指摘のありましたとおりでございます。
  5. 片山正英

    片山正英君 それでは、以上のような大体の分類を私、したわけでございますが、それに基づきまして、まず乱開発の問題から御質問を申し上げます。  第一番目は、今回の開発許可制、これをしたわけでございますが、もしその許可制の中で、開発は困るというような不許可——許可をしない、そうなった場合には、当然森林所有者私権を制約することに相なるわけだと思います。そういう場合に、その所有者に対して損失補償をするというのが一応の私はたてまえでなければならぬと思いますが、その場合の補償規定がない。今回の改正にはない。それからその補償をもしなくてもどのようにするのか、考え方をまずお伺いしたいと思います。
  6. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいま御指摘ございましたように、今回の開発許可制には補償規定はないのでございます。先生承知のように、保安林制度等におきましては、この補償制度はあるわけでございます。しかし、この二千五百万ヘクタールのうち、保安林あるいはその他の制限を受けています森林国有林を除きますというと、約一千万ヘクタール、この普通林につきましては何らの規制措置はございませんでしたが、この地域に対しまして、最近問題になっておりますところの、たとえばゴルフ場の非常な無制限な開発であるとか、その他の乱開発の行き過ぎを是正しようという趣旨規制でございます。そこでこの場合にどういう観点から規制するかと申しますと、一つ国土保全立場から、一つ水資源涵養立場から、もう一つ環境保全立場から、この三点から、非常にはなはだしい害を与えるような乱開発をまず規制していこうというのが趣旨のものでございます。したがいまして、従来こういった森林は公益的な機能、いま申し上げたようなことをある程度果たしてきておったのでございます。したがいまして、こういったような森林を、公共の福祉という観点から見ますというと、当然これは権利に内在するものであると、したがいまして、こういったような地域につきましては、開発する場合に当然これは開発者の、そういった保全をはかっての限度開発をするということは責任あるものであるというふうな観点に立つものでございます。したがいまして、この不許可処分につきましても、この処分を受けた者に対しましては補償等措置を講ずる必要はないというふうに判断したものでございます。  なお、御参考までに申し上げますけれども、このような例は、たとえば農地法にございます四条、五条に規定いたしておりますが、農地転用許可制それから都市計画法の二十九条にございますが、市街化区域または調整区域内の一定規模以上の開発許可制、それから宅地造成等規制法の第八条にございます宅地造成工事規制区域内における造成工事許可制、このいまあげました三つの例の場合におきましてもやはり補償制度はないのでございます。したがいまして、いま申し上げましたような趣旨の中で、指導行政におきましてこれを徹底さしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  7. 片山正英

    片山正英君 全面積、森林のほとんど大部分に対して補償するというのはなかなかそれは困難なことかもしれませんし、また、ただいまおっしゃったような理由もいろいろあると思います。ただ、私ちょっと考えますと、外国でもやはりこういう動きがございまして、そしてある程度の私権を制約するという場合にやはり補償問題がいろいろ議論になっているようでございます、同じように。だから、そういう意味でやはり今後の問題点にあるんじゃないかとこう思いますけれども、もしそういう場合に補償しなくちゃならないと、強制的にはなかなか無理だという場合には、保安林制度はこれ補償しますね。保安林制度との関連においてこれを見直すと、場合によっては保安林にして補償すると、場合によったらですな。そういうことは考えられるのかどうか。補償は全然しないということを言い切れるのかどうかというような気もするもんですから、その点、御検討のことだろうと思いますが、ちょっと触れて御回答いただきたいと思います。
  8. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいま御意見ございましたように、これはどうしても補償しなきゃならぬという場合も出てくると思います。また、その前提として相当きつい規制をしなきゃならぬという場合には、やはり保安林制度の中でこれを実施してまいりたいと思っております。なお、ただいま申し上げましたのは、未来永劫これはもう補償措置は絶対とらないんだというふうには考えておりませんで、やはり先生御心配になるような問題も今後においては出てくる可能性も十分あると考えますので、そういった面につきましての検討は今後も十分してまいりたいと思っております。
  9. 片山正英

    片山正英君 一つばかりやっているとだいぶ長くかかりますが、大体わかりました。了解いたしました。  今度は第二番目でございますが、開発許可基準というのがございます。しかし、その内容を見ますとたいへんばく然といたしておるわけでございます。そうしてその権限を都道府県知事にまかしておるわけでございますが、許可基準内容が非常にばく然としたものである。そうして、それを都道府県知事にまかしておるということになりますと、必然的に知事の恣意的な運用というものが出るんじゃないか。その知事に対してその恣意的な運用をまかしていいのかどうか。もしこれをやはりある程度の基準をつくって、その中でやはり知事さんに一つ判断を願うということであるならば、私はその運用具体的内容をお聞きしたい。したがって、知事恣意性がいいのかどうか。もしそれが不適当であろうというならば、その具体的な運用方法はどうするのか、この二点をお伺いします。
  10. 福田省一

    政府委員福田省一君) 先ほどもちょっと触れましたけれども、法律ではきわめてばく然三つ条件を示しておるわけでございます。一つ災実防止一つは水の確保の問題、一つ環境保全の問題この三点につきまして一定基準を設けて、それに合わないような、他に影響を与えるような開発行為はこれで規制するということにしてあるわけでございますが、さてこれを具体的にきめるということは全国非常に条件の違う森林を一律に法律規制するというのは困難でございますので、一応これは一つ指導通達の形で、その内容につきましては具体的に基準を定めるつもりでおるのでございます。  で、まあ具体的に申し上げますと、一つ災害防止につきましては、過去の災害の実績や地形、地質などの自然的条件から見た森林機能と、それからもう一点は、土砂の切り取りの方法や盛り土の方法等行為の態様についても具体的に見るということでございます。  次に、水の問題につきましては、水の水源涵養機能に依存する地域におきます住民生活、それから産業にとって社会通念上一般に必要とされる水量と水質とが確保されるということを旨としまして、まず一つは、開発行為が行なわれる森林が現に持っておる水源涵養機能、それからこれに依存する地域への供給関係実態と、次には、この森林機能に依存する地域実態、特に集落の状態、それから水需要の動向、それから水の、ほかの水源の有無と、その次には開発計画に伴って計画されておる水確保のための施設、それから工事。そういったものの措置内容について具体的に見るということにしておるのでございます。  その次に、環境保全の問題につきましては、今後環境をめぐるいろいろな研究成果等を踏まえまして具体的な基準を定める必要があるのでございますが、これまでの環境破壊は、開発をする者が他人の森林周辺に残存していることを、森林周辺に残存しているのだということを理由に、その持っている森林を全部開発したというふうなことが多かったのでございます。で、森林の持っております環境保全機能というのは、森林以外のもので代替することがむずかしいということを考えますというと、開発行為を行なうすべての者が一定の割合の森林を残すようにすることが必要だと考えております。このような森林残存率及びそういう配置につきましては、保全しようとする環境の種類であるとか、開発目的方法とか、地域土地利用状況等、こういった一定基準を定めることを考えておるのでございます。  なお、具体的には、たとえば栃木県、千葉県、三重県等におきましては、この中で三〇%ないしは四〇%の残存林地確保することをきめておるような実例もあるのでございますが、こういったような基準に基づきまして都道府県知事地域実情等十分考慮して運用していくというふうに指導してまいりたいと考えておるのでございます。で、この点につきましては、現在さらに細部を詰めておるのでございますけれども、できるだけまあ具体性を持った基準を与えまして都道府県知事がその判断に迷わないようにしてまいりたいというふうに考えておるのでございます。
  11. 片山正英

    片山正英君 具体的内容指導をやるという基本的態度のように伺ったわけですが、これは長官通達ですか、それとも何か政令みたいなことになるわけですか。
  12. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいまのところでは次官通達の形で出したいというふうに考えております。
  13. 片山正英

    片山正英君 それじゃ第三番目にお伺いします。開発許可知事である。しかし、開発行為に非常に影響を受けるのは市町村である。直接影響を受ける行政体市町村である、こう思います。そのときの開発許可運用のためには市町村長の位置づけというのはどのようにお考えですか、お伺いいたします。
  14. 福田省一

    政府委員福田省一君) 今回の開発許可制運用におきましては、地域住民意向を十分に反映して行なうことが最も重要なことでございます。このため、市町村長の果たすべき役割りも大きいと考えておるんでございますが、そういう観点から開発許可対象となります民有林範囲を明らかにしまして、また、実情に即した森林整備基本的な事項森林土地保全に関する事項、これを定める地域森林計画というものを都道府県知事が定める際に、新たに関係市町村長意見を聞かなければならないということを第五条第五項に設けておるのでございます。具体的な開発行為につきましては、原則としましては都道府県知事地域実情に応じて許可、不許可判断をすることになるのでございますが、特に大規模開発行為等周辺に及ぼす影響が大きいというものにつきましては関係市町村長意見を聞くように、その点は指導するようにしてまいりたい。そして、地域住民意向も十分にそこで反映させるようにつとめてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  15. 片山正英

    片山正英君 開発問題についてはそのくらいにいたしまして、たくさん質問したいものですから。  次に森林計画の問題に触れてみたいと思います。  まず、今回の改正流域を重視をした、流域的考えを取り入れた、こういうわけでございますから、その流域の重視した考え方はどういうものであるか。それから、その流域はどのような基準で分けるのか、しからば。その点をお伺いいたします。
  16. 福田省一

    政府委員福田省一君) 最近、森林に対します社会的要請はますます多様化しておることは御承知のとおりでございますが、そこで、この要請地域自然的社会的経済的条件によって大きな相違があるわけでございます。森林機能水源涵養国土保全等機能に見られますように、流域単位機能する面が大きいわけでございますから、森林に対します地域的な要請流域単位で受けとめまして、これに対応する森林計画のあり方を確定する必要があるわけでございます。こういったような考え方から、流域ごと国有林民有林を一体としましてつかまえる。流域の特性に応じた森林整備の目標を示すわけでございます。そして、民有林地域森林計画、それから国有林地域施業計画に共通します具体的な策定基準を、これを流域ごとに定めることとしたのでございます。  で、流域区分はどういうふうにして分けるか、その基準が必要なわけでございますが、これは三つの点で考えておるんでございます。  一つは、流域の延長が非常に長くて、農工業上重要な地帯流域内に含まれておる河川一つ流域にする。たとえば、木曽川の流域というようなことで一本にくくるわけでございます。  それから、次に重要工業地帯、たとえば京浜地区とか京葉地区と。これへの水の供給源というのは類似の性格を持っております河川を合わせて一つ流域とする。荒川とか多摩川流域というふうなのがそういったような管轄に入ってくると思われるわけでございます。  それから、第三点は、その他につきましては、行政区画を考慮しまして重要度のほぼ同じような河川を合わせて一うの流域のするというふうに考えております。たとえば、鳥取県の千代川、それから天神川とかそれから日野川というふうなものを一つにくくるというふうに考えており、これらを全部くくりますというと大体七十ないし八十ぐらいの流域区分になるだろうというふうに想定いたしております。
  17. 片山正英

    片山正英君 私は、林野庁が、当然のことなんですけれども、木麓需給だけを考えている官庁じゃないと。むしろ、いまおっしゃったように森林の多目的機能公益的機能、こういうものをはっきり維持し保存し、そしてまたそれを推進していく。そういう官庁であるということであれば、当然私は、単なる木材需給がブロック的にいいとかいうんじゃなければ、当然流域単位に決定されて、そしてその流域の中で公益性と言われる水の問題等いろいろな問題を解決していく単位にしたいということは、私は非常にけっこうな制度だと思うわけでございます。  そこで、私はあとでもお伺いするわけでございますけれども、この流域単位考えた場合に、単なる、木材がこれだけ出ますよと、その中で消費はこれだけありますよというんではなしに、その流域における水の涵養というものはどれだけあるんだと。したがって、その水に対してはどれだけの工業が、あるいはいろいろな用水が確保されるから、工場その他のあるいは人がそこに密集する限度はこのくらいじゃないだろうかというような、いわゆる日本の、ほんとうにマクロ的に大きな計画を立てる一つのよりどころを林野庁一つ示していくのだと、こういう態度が私は今後の林野庁として大いにあるべき姿でないかというふうに実は思うのでございます。そういう意味合いから、流域単位というものは単なる木材ではない。もっと水はどれだけ確保するんだ、どのようにその地帯にするんだ。京浜地区についてはもうこれは無理だと、水から見て。いかように山を整備しようと、それはもう限度があるというような、大きな経済方向に対して林野庁が寄与する、資料提出する、その判断を誤まったりしないようにそういう計画を明確にしていくと、こういうふうにやっていくべきだと思いますが、そういうのに対してのお考え、そういうふうにやっていくのかどうか、ひとつお答えを願いたい。
  18. 福田省一

    政府委員福田省一君) 確かに従来は森林木材の生産を主体というふうに見ておったし、見られておったと思うわけでございますが、水の問題、その他環境の問題なり国土保全の問題がございますが、特に水の問題につきましては、相当慎重に将来への計画をつくっていかなけりゃならぬと考えております。そういう意味で、建設省が最近発表しました水の収支の問題についての考え方もございます。特にそういった建設省考え方とも合わせまして、この森林経営はやはり水の確保にあるのであるということを特に関係官庁とも連絡をとりながら、将来の水の不足に対処した森林計画を樹立していかなけりゃならぬと考えているわけでございます。  そういう意味から、先般森林の公益的な機能というのは一体数字であらわせばどれぐらいあるのかということに関連しまして、十二兆八千億円というものを出しておるわけでございますが、それをもとにしまして、その水の利益を受ける人たちがその水源地帯の造林にどう寄与したらいいか。いわゆる経費の負担の問題等につきましても検討いたしておりますし、御指摘のように水の問題につきましては、十分そのデータを提供いたしまして、将来の水の利用計画に間違いのないように措置いたしてまいるために努力していきたいと思っております。
  19. 河口陽一

    河口陽一君 ちょっと関連。  森林に対していまいろいろ御説明があったんですが、水ばかりでなく、私は、空気も多く酸素を生産されると、こう考えるんですが、そういう資料をお持ちですか。なければ調査をしてお知らせを願いたいと思うんです。私は、農業も林業も、水あるいは空気の問題に大きく関係し貢献をしておるという、そういう見解を持っておるんですが、ただいま水だけのお話でございますので、空気酸素に対する森林の及ぼす影響等ありましたら御参考にお尋ねいたします。
  20. 福田省一

    政府委員福田省一君) 森林の持っておりますその役割り機能の中で、いま水の涵養のほかに、いま先生質問ございました酸素供給の問題がございます。御説明するまでもなく、樹木は、炭酸ガスを吸収して酸素を出すわけでございますので——実は、日本の全森林酸素供給量はどれくらいかということを調査したデータもございます。年間に大体五千二百万トン、炭酸ガス年間六千九百万トン吸収すると、こういう調査の結果もございます。酸素のほかにいろいろと機能調査をしたデータもございますので、後刻また、先生のほうにお届けしたいと思います。
  21. 片山正英

    片山正英君 私はやはり、いま先生おっしゃったように、酸素の問題とか、あるいは水の問題とか、あるいは最近国民が非常に山に親しむ、そして健康を保持するための保健休養林とか、レクリェーションの場とか、こういうものを非常に求めているわけでございます。  いま水の問題に触れましたから、ちょっと私の意見も交えて申し上げたいんですけれども、建設省発表あたりで見ますと、たしか七百億トンから八百億トン、いま日本で水を使われておる。ところが、あと十年か、十五年先には、二、三百億トン不足するんじゃないか、日本において。というようなことすら言われております。したがって、水の問題というのは、非常に重要な問題だと思います。その重要な問題に関与をしているのが、ほかならぬ林野庁であろうと思うわけでございますから、そういう面で、水の問題に対する林野庁態度というものは、もっともっと積極的でなければならない。  いまの流域別を、せっかく今回分けるわけですから、ある流域では非常に水がある、まだまだ使い切れない水があると。ある流域では、もう枯渇寸前、そういうところがある。これが私は明瞭になってくると思います。そういう場合に、その枯渇寸前にある山と、それからそうでない山と、こういうものを比較したときに、——ちょっと話が飛びますが、保安林制度というものが、それを維持する一つの機構であろうと思いますけれども、どうも保安林というのは、ただ山にしておけばいいんだと、こういう自然放任主義のきらいがなきにしもあらずで、そういう点があるわけでございますから、私はもっともっと投資していくべきだ。水を確保するための保安林に対しては、もっともっと山をよくするために、投資こそ水を確保する根源でございます。そういう投資をどんどんしていかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。  したがって、せっかく流域帯にこういうふうにつくられるわけでございますから、今後の水事情、そういうものに対して、林野庁がまっこうから取り組んで、その解決をはかる。こういうような意気込みで、この流域帯運用をはかっていただきたいと、こう希望する次第でございます。お答えはけっこうです。そのようにお願いをいたしたいと思います。  それから次に、施業計画改正の第二番目は、森林計画制度は、属地的な森林整備を目標にする、こういうふうにいわれております。いままでは所有者単位一つ計画制度をつくって、恩典を与えておったというのを、属地的にやると、こういうところに改正の骨子があるように思います。したがって、属地的の具体的な形はどのように示されようとするのか。その点の大綱だけをお伺いいたします。
  22. 福田省一

    政府委員福田省一君) 全国森林計画につきましては、流域ごと国有林民有林を一体としまして、森林整備の目標を示すことにしておりますが、具体的には、森林機能と、それから社会的要請関連する自然的な経済的な条件調査しまして、それによって、さらに流域内を幾つかに地帯区分した上で、期待される森林機能を向上させるため、理想的な森林のあり方、つまり具体的に申し上げますと、樹種とかあるいは森林の構成とか伐期齢とか、あるいは期待するその径級とか、期待するその蓄積、こういったものを定めることとしたのでございます。  この全国森林計画に即しまして樹立される国有林地域施業計画、それから民有林地域森林計画におきましては、森林の個所ごとにその森林のもっています機能、つまり木材の生産、それから国土の保全、それから水資源涵養、この機能がどのように関連し合っているか、それを明らかにしました上で、その機能の維持向上に必要な樹種とかあるいは伐期齢、それから期待蓄積などによって理想とする林型、これを示しますとともに、これを達成するための伐採の方法、それから更新の方法などの森林施業の方法を明らかにするということにしたものでございます。そういうことで属地的にまとめまして、いま申し上げたような方法で、計画制度を改善してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  23. 片山正英

    片山正英君 属地的というのは面積はどのくらいですか、それから属地の面積及び保続ということは属地の中で考えるんですか、それとも考えないんですか、その点ちょっと……。
  24. 福田省一

    政府委員福田省一君) 属地と申します単位はおよそ三十ヘクタールと考えておるんでございます。これはたぶん先生も外国の事例等をごらんになったから、御承知かと思いますけれども、ドイツあたりでは五十ヘクタールということが一つ基準になっておりますが、あちらのほうと違って、日本の場合は、相当地形等あるいは気象条件等を考慮しなければなりませんので、まとまりの単位としてはその場所によって違いますけれども、およそ三十ヘクタールが一つ経営単位であるというふうに目標を設定しております。  なお三十ヘクタールは保続の単位とも考えているところでございます。
  25. 片山正英

    片山正英君 大体三十ヘクタールというようなお話でしたが、その場合の蓄積ということをちょっと触れておられましたね。伐期齢、樹種のほかに蓄積ということは、その三十ヘクタール単位にある程度の蓄積は維持しなければならない、こういう思想ですか、考え方ですか。
  26. 福田省一

    政府委員福田省一君) 一つの目標とする樹種ごとにあるいはその地帯によって違いますけれども、標準とする蓄積は一応目標を示したいと考えております。
  27. 片山正英

    片山正英君 それからもう一点お伺いしますのは、かつて属人的の施業計画をつくって知事の認可を得た場合には、所得税の二割天引き控除あるいはかさ上げと申しますか、そういう恩典があったわけでございますが、今回属地的の森林整備知事の認可を得た場合には同じ適用になりますか。
  28. 福田省一

    政府委員福田省一君) 属地的の適用いたしました場合も、属人的と——結論だけ申し上げますと同じようにいたしたいと考えておるところでございます。
  29. 片山正英

    片山正英君 それから次は、森林計画制度の中に、森林土地保全に関する事項というのが一項入りましたね、今度の改正で。森林土地保全に関する事項というのが入ったわけですが、私はもともと森林計画というのは、森林保全を無視して立てられるべきものじゃなくて、森林計画森林保全を前提として立てられるというふうに私はいままで理解をしておったわけでございますが、今回新たにこの森林土地保全に関する事項と、ことさらこれを入れたというのはどういう理由でございますか。そして具体的な内容は何をやろうとするんですかお伺いをいたします。
  30. 福田省一

    政府委員福田省一君) 土地保全に関する事項としては、土地をいじります場合には、保安林等におきましては、従来知事許可を受けなきゃならぬという規定があったのでございますが、一般の森林につきましては、そういったような事項はなかったわけでございます。この森林計画計画事項といたしまして、土地保全に関する事項を特に追加することにいたしましたのは、森林の持っております国土の保全、それから水質源の涵養、そういった機能確保するためには、森林計画におきまして、立木の伐採方法とか、更新方法、そういった森林施業の面に重点を置くのはもちろんではございますけれども、森林開発についても、森林の現に持っています機能に十分留意した開発方法を順守させることが、近年の森林開発実情から見て重要なことであるというふうに考えたからでございます。  この計画事項内容としましては、全国森林計画につきましては、一つは土砂の切り取り、それから盛り土、それから擁壁、そういったものの設置など、森林開発行為にあたって順守すべき一般的な事項などを明らかにすることにいたしました。  それから次に地形とか、それから地質、その他自然的な条件等から見て、特に国土保全、それから水資源涵養の上で重要な森林条件など、地域森林計画の樹根または表土の保全、その他森林土地保全に関する事項ということを定めまして、その基準を明らかにすることとしたのでございます。  その次に、地域森林計画では、これらの全国森林計画できめました事項を踏まえまして、国土の保全、それから水資源涵養上重要な森林を属地的にきめまして、これらの森林におきまして、土砂の切り取り、盛り土、擁壁の設置個所、それから開発行為が行なわれる場合に、それに配慮すべき事項を具体的に明らかにすることとしたのでございます。  以上、御質問に対して具体的にお答え申し上げました。
  31. 片山正英

    片山正英君 ちょっとわかりかねたんで、もう一度質問するんですが、これは土地保全——いわゆる森林から森林以外のものに、たとえば極端な話を言っちゃ申しわけありませんが、ゴルフ場にするとか、そういう森林以外のものにするときに、しかし、やはり土地保全考えなければならぬ。森林以外のものになったから土地保全考える必要はない、というわけじゃないですから、やはりその中においても考えなくちゃいかぬ。こういう意味のためにあらためてやったと、こういうんじゃないんですか、違うんですか、お伺いします。
  32. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) ただいま先生指摘の、従来森林計画において、ともすれば森林木材生産機能というものに重点を置いて定められておったということでございますけれども、先ほど来先生指摘のように、森林公益的機能、その中に国土保全機能が非常に大きいということもございますので、国土保全機能を発揮させるためにどうしたらいいか、ということについて森林計画の中にうたっていく、と同時に、地域森林計画において国土保全基準というものを示すということにいたしまして、具体的に開発規制をする場合の、知事判断基準というものが示されるというような形に、森林計画運用してまいりたいというように考えまして規定をいたしたわけでございます。
  33. 片山正英

    片山正英君 そうすると、さっき私が言ったことじゃなしに、当然森林計画として考えるべきことではあるけれども、それを法的にもっと明確にするためにこれをつくったと、こう解釈していいわけですか。
  34. 福田省一

    政府委員福田省一君) 御趣旨のとおりでございます。
  35. 片山正英

    片山正英君 わかりました。  それでは、次に、森林組合についてちょっとお伺いします。  今度森林組合に対して答申に即した、それに合致した改正が行なわれた。まことに、組合員の方々はもとよりたいへん期待する法律だと思います。しかし、そういう森林組合を改正し、森林組合を強化する、こういう方向であると思いますが、それを裏づけすると申しますか、ささえるものとして、やはり金融とか税制、こういうものが大きく私はあずかって力がある、やり方によって。そう思います。したがって、金融、税制を今度の改正との関連においてどのように配慮されておるのか、その点をお伺いいたします。
  36. 福田省一

    政府委員福田省一君) 最近におきますきびしい森林、それから林業事情の中で、森林組合に対する期待はますます大きくなっておるんでございますが、その役割りを十分に果たしますように、現在でも法人税率が軽減されておるわけでございます。たとえば一般の場合は二八ないし三六.七五%と、こうなっております。これに対しまして、この場合は二三%というふうになるわけでございます。税制の面でかなりの特例が認められておるのでございます。  今回森林組合につきまして、事業範囲の拡大、それから合併の促進等をはかるため、これをより効果的に推進することができますように、税制や金融の面でもいま申し上げるような措置を講じてまいりたいと考えております。  第一点は、森林組合の森林経営事業の新設等に伴いまして、森林組合などが、森林組合等の法人も、農林漁業金融公庫が融資する林地取得資金を借り入れることができるということでございます。  二点は、現在御審議願っています改正法案が成立を見ました場合には、森林組合の林地供給事業などの新設事業について、登録免許税その他税制上の優遇措置を講ずるよう検討いたしております。  第三点は、森林組合がその組合員の労働力を利用して行なう加工事業、たとえば山村工業でありますが、こういったものにつきましては、農村地域工業導入促進法によりまして、所要の税制、金融上の措置が講じられておりますので、その活用をはかるというふうに考えております。  第四点としまして、森林組合合併助成法の適用期間の延長に伴いまして、税制特別措置法、それから地方税法のきめるところによりまして、合併組合の清算所得につきましての課税の繰り延べ、そういった措置を適用することといたしております。  なお、さらに今回の改正法案には、国それから都道府県は、組合及び連合会の健全な運営と発達につきまして必要な配慮をすべき旨が定められておるわけでございます。で、その趣旨を踏まえまして、今後とも税制や金融の面から、森林組合の強化と事業の発展に一そう資するように施策の推進につとめてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  37. 片山正英

    片山正英君 少し事務的な御質問ばかりしておるのですが、あと一、二点やってみたいと思います。  森林組合というのは、御承知のとおり大体市町村単位に運営されておる。場合によっては、市町村の吏員が森林組合の仕事をだいぶ手伝っておる。これが実態だと思います。で、今回広域合併、これを推進することは時代の流れだとは思います。市町村単位じゃなしに、もっともっと広い単位森林組合を育成して、そして力強くやっていこうと、こういうことは思想的には非常に理解するところがございます。しかし、片や、いま言ったように市町村単位に現在運用されており、市町村を離れてはなかなかよたよたして、なっていかないという一面が森林組合には残念ながらあるように考えます。したがって、それらの市町村単位である現状と、さらに合併して大きくしていこうという、そういう方向との中で、どのように調整してそれを持っていくのか、この点を実態論としてお伺いします。
  38. 福田省一

    政府委員福田省一君) 森林組合が地域実態に即した適切なサービスを組合員に提供するためには、基礎的な行政主体でありますところの市町村と常に密接な連携を保つ必要があることは言うまでもございません。したがいまして、森林組合の広域合併を推進するにあたりましても、計画の樹立や、それを実行する各段階に関係市町村の積極的な参加を求めまして、この過程で関係市町村意向を十分取り入れた合併が行なわれるようにしますとともに、合併したあとにおきましても、組合の運営上も関係市町村との緊密な連携が保たれるように特に指導してまいりたいというふうに考えております。
  39. 片山正英

    片山正英君 一点、ちょっとその点気になるのですが、現在広域合併した、市町村単位じゃなしに、それ以上に合併した森林組合の運営状況はうまくいっていますか、ちょっと一点お伺いします。
  40. 福田省一

    政府委員福田省一君) 大体おおむねうまくいっておるというふうに考えております。——もう一ぺん申し上げますけれども、大体よくいっていると考えております。
  41. 片山正英

    片山正英君 それでは最後にひとつ、森林組合の締めくくりを、できれば政務次官おいででもございますから、その点お伺いしたいと思います。  今回の改正は、先ほど私申し上げましたように、学識経験者による一つ研究会の答申、その答申に即して改正が行なわれた、こういうことだと思います。ところが、その森林組合の学識経験者によるいろいろな討議の中では、信用問題あるいは森林災害共済の問題、あるいは、この前われわれ委員が静岡に出張をいたして、森林組合の実態をつぶさに見る機会をいただいたわけでございますが、その際には、森林組合というのは、単なる林業ということをやるよりも、その地域の、いわゆるほとんど山ですから、地域のにない手として、その地域の事業は大体森林組合にやらせる。たとえば砂利採取なんというのは、その地域において当然起こり得る問題である。そういう砂利採取とか、いろいろいわゆる地域ぐるみの事業体として森林組合を育成してもらう、こういうことこそほんとうに森林組合が今後力強くやっていける基盤じゃないだろうかという発言が、たしか、私は静岡に行ったときの森林組合の組合長はじめの要望であったような気がいたします。私もそのように思います。  それと、信用問題とか、災害共済問題これは今後重大な問題だと思いますが、答申においては、これは今後の研究課題にはっきり書いてあります。いまこれをやれと言ったって、それは無理だということで、答申にはっきり書いてありますから、現在の答申のまず解決を林野庁が速急にはかったということは、非常にいいと思います。ただ、この問題は、今後の問題ではございますが、林野庁はこれに対して今後どのように前向きに取り組んでいくのか、その点の考え方だけを長官、できれば政務次官にお答えをいただきたいと思います。
  42. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいま先生から御指摘でございました信用の問題とか、災害補償の問題であるとかいうことは、これは森林組合各地域から全国的に非常に強い要望があった点でございます。この点につきましては、農業の場合とか、あるいは漁業の場合と比べまして、林業の場合は非常にまだ経営の基盤が脆弱な点がございます。そこで、今回の森林法改正の中に織り込みましたいろいろな措置を講じまして、まず組合員のそういった基盤を強化するということを前提といたしまして、いま残されたこの信用の問題、補償の問題、その他そういったいろいろな事業を拡大していけるような基盤を造成することが大事であると考えております。したがいまして、まずこの森林法改正に盛られました事項を着実に実施しまして、いま御指摘のございました点を将来実現できるようにしてまいりたいというのが、私たちの基本的な考え方でございます。
  43. 片山正英

    片山正英君 法案についての、いささか事務的とも思われるいろいろな質問をしたわけでございますが、それはこのくらいにいたしまして、私は、今後林野庁が運営していく、あるいは行政的に対処していく、そういう方向をひとつ質問したいと思います。  もちろんこの森林法改正は、私は時代に即したものとして非常に賛意を表しておるわけでございますが、この森林法改正をほんとうに意義あらしめる、具体的に効果あらしめる、そういうためには、まず国民の理解を得なければならないはずでございます。その国民の理解を得る場合には、やはり林野行政が、あるいは森林経営がどのようなビジョンを持っておるのだ、どのようなビジョンの中でこれが進められていくのかということが明確にされなければ、なかなか理解しにくい性格のものであろうと、こう実は思います。  ところで、森林経営のビジョンとは何か、これはいろいろ抽象的にはいわれていますが、なかなかむずかしい問題を含んでおると思います。しかし、いま林野庁が発表しておりまする、あるいは閣議決定を経ておりまするいわゆるビジョンと称するものがあるわけでございます。「森林資源に関する基本計画」並びに「重要な林産物の需要及び供給に関する長期の見通し」これが昨年閣議決定を経た私は、林野庁一つのビジョンをあらわすものであろうというふうに一応解釈をいたしました。それに対して二、三の質問を行なってみたい、こう思います。  まず第一でございますが、その閣議決定をした森林蓄積の将来の見通し。これはまことに遠大な計画でございまして——五十年先というわけでございますから、非常に遠大な計画ではございますが、しかしその方向として私なりに要約してみますと、蓄積を現在の七割ふやしていく。これは水資源環境保全その他いろいろなものを含めての意味だと思いますが、七割増加する。木材生産量は現在の八割増しをする——八割ふやしていく。それでも山は荒れませんよ、もっともっとりっぱな山になりますよ。こういう意欲的な目標を示しておる、こういうふうに思います。しかしその意欲的な七、八割を増加するという、そういう方向に対して、私は、ちょっと憂うべき姿があらわれつつあるんじゃないか、こう思いますので、あえて質問をいたします。  したがってこの計画をつくって二年目なんですから、私はその計画を変更せいとか、こういうような意味で申し上げているのじゃありません。これは長期ですから、だれが何と言おうと、そう簡単に判断できるものでもありませんし、そう一年の情勢でこれを変更すべき情勢ではないと思います。したがってそういう計画を変更せいなんということじゃございませんけれども、ただ私が一番憂えているのは、最近の造林成績が非常に低下してきている。一番基本となる造林が、これほど公益性のある林業と言われ、これほど緑々と言われている日本の造林がだんだん急激に減少しておる、こういう実態をどうも感じます。したがって私はその点に関して、最近の造林の情勢、そしてそれに対する減った——もし減っているとすれば何がゆえに減っているかのその原因の究明、そしてそれに対する対策をどのように林野庁はとろうとしておるのか、その要点だけをまずお伺いをしたい。
  44. 福田省一

    政府委員福田省一君) 御指摘のように、近年の民有林の造林は、四十六年度以降停滞、減少の傾向にございますが、その原因としましては、木材価格の低迷、自然保護の要請等によりますところの伐採の停滞が生じてきたのでございますが、その中で、特に伐採の事業費の高騰、それから国産チップの需要の減退、こういったこと等によります造林に先立つ旧薪炭林等の伐採の停滞というものが一つございます。次に、造林事業費の高騰による造林資金の調達の困難性ということがございます。次に、また過疎化の進行等によりまして造林労働力の不足がある。こういったような問題があるのでございますが、最近は、特に林地の乱開発等によりますところの、林地の価格の異常な高騰によると見られますところの造林意欲の減退、これも非常に大きく影響しておるというふうに思われるのでございます。で、このためにまず一定の要件を満たした非常に低位な利用、広葉樹林の伐倒除去に要する経費を助成するという問題それから補助とか、融資等の助成制度の拡充、それから造林公社等によりますところの分収造林の推進、それから次に森林組合労務班等の林業労務組織の育成強化、特に今回の森林法改正によりまして、無秩序な乱開発規制を行なうということにいたしまして、これらの施策を総合的に実施することによりまして、民有林の造林の推進をはかってまいりたいということが基本的な対策というふうに考えておるところでございます。
  45. 片山正英

    片山正英君 いま原因というものを、事業費の不足、過疎化、労務の不足、それからチップの需要の減退、乱開発等、四つか五つの原因を述べられておったようでございます。  そこでそれらについてちょっとお伺いをします。まず予算と事業費関係——予算がだいぶ関係するわけでございますが、私はことしの予算はまあ物価抑制の大原則の予算でございますから、公共事業費、これはもろにかぶってほとんど横ばい、こういうことになったのもやむを得ないと実は思います。しかし私は、物価抑制といっても、インフレ以来のあるいは資材の高騰、そういうものの中において、非常に需要が多くて供給が少ない。その中においての物価高騰でございますから、福田大臣のことばをかりれば、水ぶくれで必要以上な値上がりをしておる。したがって、その供給に見合うだけの需要を抑制するというのが物価安定の水ぶくれ抜きの方針だと、こう総需要抑制を解釈をしておるわけでございます。ところが山村における公共事業、農山村も含めてもいいと思いますが、そういう私は公共事業は、たとえば造林、こういうものは鉄をつかうわけじゃない、あるいはセメントを使うわけじゃない。そういうことは物価とは何の関係もない。そして、いま物価抑制の中において出かせぎの人たちがむしろ山村にUターンしてくる。その場合の職場あたりも確保しなければならない。そういうさなかに、一律の公共事業費の抑制の中に、そういう山村の安定化をはかるべきむしろ私は福祉予算というくらいに思うんでございますが、そういうものが同列に判断されて、そして公共事業抑制の一環だというのはどうも私はふに落ちない。かつての衆議院の答弁では、そんなことはしないというような御答弁も承って、今年度の予算は少なくとも多少はそれとにおいの違った、林野庁には多少あたたかいとも見える予算をかいま見たような気がいたしますけれども、しかし、それだけではいまの造林の停滞を解消するにはとうていなりません。したがって、私は十二兆八千億と言われる公益の林野庁でございますから、もっともっとこれは大きく、公共事業のワクの中で処理するとか、あるいは私は農林省のそういう二五%のワク内で処理するとかというのでは、こういう問題にはどうも不つり合いの問題ではないだろうかとさえ思います。その点について私は、造林の停滞は予算面、事業面にあるということの一つの問題としてこれを提起したい。そしてさらに私は費用の分担として、これだけの公益性があるならば、私は群馬の山は、東京の電力に非常に影響がある、あるいは東京都民の水に非常に影響があるということであるならば、そういう需用者が、そういう水を確保している生産者に対して何らかの費用負担というものはあり得ないか、電力会社等が。これはわずかな金だと思いますが、あり得ないのかどうか。いろいろの公共投資が今後十五ヵ年ですか、その中で三百兆円ぐらいは要るであろうと、こういうふうに試算されるときに、何と造林に対する投資の要求はささやかなもんです。二兆円だと私は伺っております。十五年ぐらい、二十年ぐらいの間に、ただ二兆円さえ事業費に投資するならば、全山緑になるというくらいのささやかな私は要求だと思いますが、そういう費用負担の点にも触れまして、ひとつ林野庁の今後の考え方をちょっとお聞かせいただきたい。これはぜひ政務次官にもお答えいただきたい、このように思います。
  46. 福田省一

    政府委員福田省一君) 公共事業費の中に造林事業、林道事業、治山事業が入っているわけでございますが、四十九年度予算は先生指摘のように、非常に総需要抑制の意味から圧縮された予算であったわけでございますけれども、私たちは、いま申し上げた三つの事業というのは、同じ公共事業でありながら、山村地帯におきますところのまあ公共事業でございまして、特にいろいろな設備をするものではございませんで、大部分は労賃で構成されているようなものでございます。最近のUターン現象等を吸収するにも適当な事業でございますし、過疎地帯の振興には非常に意義のある事業でございます。  そういう意味で、これはやはり福祉予算につながる、むしろ福祉予算の範疇に入るべきものじゃなかろうかということも主張して、大蔵当局ともいろいろ折衝を重ねてまいったのでございまして、いま先生から御指摘ございましたように、ほかに比べますれば林道、造林、治山事業は比較的査定はよく見ていただいたというふうに思っております。しかしこれを全部合計しましても、やはり従来の伸び率から見ますというと決していいものではないと思われます。森林に対する公益的な要請が非常に高まってまいっておる現状でございます。森林木材の生産以外にその機能をはかっていくためには、相当やはりきめのこまかい施業をし、そのためには相当の投資を必要とするわけでございまして、そういう意味ではやはり予算の拡充につきましては、先ほど申し上げました十二兆八千億の年間の効果を出す森林でもございます、それをぜひ拡充していただくように今後も努力してまいりたいと思うわけでございます。  なお、いまこの費用負担の問題についてどう考えるかという御質問でございますが、先に一つの例を申し上げてみたいと思います。これは滋賀県の造林公社の例でございますが、昭和四十年にできましたもので、これは琵琶湖の流域でございます。費用の負担者は大阪市、兵庫県、神戸市、尼崎市、伊丹市、西宮市となりまして、その他に阪神水道企業団というのが入っておりまして、これらの人たち水源地帯の造林のために、滋賀県造林公社が行ないますこの造林事業に対して出資なり融資なりの援助をしている例がございます。それからもう一つ申し上げますと、木曽川の三川水源造林公社というのがございまして、これは岐阜県でございますが、この木曽川の下流にありますところの愛知県、三重県、名古屋市、その他中部電力、関西電力、これらの利益を受ける人たちがこの岐阜県に寄付をいたしまして、岐阜県がこの三川水源造林公社に出資なり融資をしているという事例もございます。これは昭和四十三年に設立されたものでございます。木曽三川と申しますのは、木曽川と長良川と揖斐川でございます。こういったような事例もございますが、ただこれらの考え方を法制化していくということにつきましては、相当データ整備する必要がございますので、ただいま利根川の流域におきまして、さらにその負担のあり方について私たち四十九年度予算で調査をいたす予定にいたしております。これによりまして、利根川のつまり源流は群馬県でございますが、下流の東京都なり千葉県なり等がいろいろ受益をしているわけでございますが、それらの人たちがどういう形でこの源流地帯にたとえば造林費のようなものを負担していただいたらいいかという、その方法を四十九年度の調査の中で詰めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  47. 片山正英

    片山正英君 そのことに関してもう一つだけお伺いしたいんですが、県を単位として公社ができておりますね。三十幾つできておると理解しておりますが、その県を単位とする公社が最近どうもやはり資金不足、非常に金がない。融資は八割までですから、あとの二割は県自身が金を出さなければなかなかやれない。ところがその県は御承知のとおり、自分で金を出してもその利益を受けるのはその県じゃなしに下流の県だという場合がどうも多いようでございます。したがって、どうも痛しかゆし、変な立場になって、県はなかなか金は潤沢じゃありませんから、公社の造林に対してはどうも資金的に不足をしておる、こういうのが現状だと思う。そういうさなかに、先ほど例を引かれました滋賀県なり岐阜県の場合はいわゆる受益者である電源開発も含むんだろうと思いますが、一つの協力の資金を出している、こういうふうに拝察をするわけでございますが、いまの公社の資金不足、県単位の公社の資金不足の現状と、いま申されましたようないろいろな受益との関連における資金調達の方法、これをもっと体系的に林野庁指導されていくのか、その辺の見通しどのようであるかちょっとお伺いしたいと思います。
  48. 福田省一

    政府委員福田省一君) 府県の造林公社は旧新炭の生産地域などの自営造林の困難な地域の拡大造林ということを計画的にまた、集団的に推進することによりまして、森林資源の充実をはかりますとともに、国土の保全地域山村の振興に資することを目的としまして、地方公共団体それから森林組合等を出資者としましてこれは設立したものでございまして、公益法人でございますが、現在三十三府県に三十六公社が設立されまして分収造林を推進しているわけでございます。  公社造林は森林組合の労務班等地域の労務組織によりまして実行することを主眼といたしております。地域の自主的な努力を尊重するように運営していることもございまして、その造林の実績は着実にいま伸長しております。四十七年度におきましては一万九千ヘクタールでございまして、民有林の拡大造林の総面積の約一割に達している状態になりました。  公社の造林資金は造林事業補助、それから制度融資それから地方公共団体の融資などによりまして調達されておるんでございますが、公社は設立しましてからまだ日も浅いのでございまして、まだ間伐収入を得るに至っていないのでございます。当分の間投資だけを継続しなければなりません。このために借り入れ金の残高は年々累増いたしまして、これに伴います支払い利息の増加に対応しまして地方公共団体等による融資所要額が増大してまいっております。その調達が次第に困難となっております。今後主伐収入を得るまでの間の資金調達が公社運営上の非常な問題点となると考えられるのでございます。このために補助制度内容を充実するとか、制度融資の貸し付けの条件を改善するというふうな助成拡充につとめまして、その円滑な推進をはかってまいりたいというふうに考えております。  御参考までに申し上げますというと、借り入れ金の残高は四十二年には二十二億六千四百万円でございましたけれども、四十六年度には百四十四億四千七百万円と、四十二年に比べますというと六倍以上にふえておるのでございます。この対策につきましてはいろいろといま申し上げたような方法考えておりますが、特に直接費以外の問題についても何らかの措置をとってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  49. 片山正英

    片山正英君 いろいろ議論すると切りがないんで、時間もありませんので、言いたいことだけちょっと言いたいものですから、少し先に飛ばさせていただきます。  第二点は、労務の不足というのが造林の停滞の一つだとおっしゃいます。そこで、私は労務不足の原因を少し考えてみたいと思います。いま出かせぎが相当ございます。出かせぎそのものを私は悪いとか、いいとか言っているわけじゃございません。しかし、地元で働くよりも出かせぎに行ったほうが社会保障その他が非常に有利であるということのために、地元では働きたい、地元ではやりたいと言いながらも、そのほうが有利でございますから、つい出かせぎに行く、こういう社会保障の現状が私は非常に情けないと思います。しかし、幸い今度の雇用保険法ですか、ということに変わって、少なくとも地元で農林業に携わっているものが一つの当然適用になったということは、私は一歩も二歩も前進だと思う。しかしその内容から見ますと、まだまだ非常に不遇な立場が散見されます。そういう点を今後やはり打開していかない限り、なかなか地元に仕事があっても仕事に落ちつきにくいという農林漁業の性格があると思う。その辺をやはり私は今後打開していかなければならないと思うのが一つございます。それからもう一つは、どうも労務というものはアンバラである。過剰なところもある、と言っては語弊がありますけれども、何か全国を見ますと、全体では不足しているのでしょうが、何となくぎくしゃくしたところがどうも感じられます。そこで私は、国有林の問題に触れてちょっとお伺いし、御指導考え方をお伺いしたいのでございます。  それは、私は、いま山村における労務が非常に過疎化も含めましてなくなってきている、減少傾向をたどる。というのは山村における仕事の場というものが非常に不安定だ。あるときはあり、あるときはない、あるときはやめてしまう。こういうような不安定化が非常にそうさしておる。そういうきらいがあると思います。  そこで、国有林の問題に触れるわけでございますが、国有林が非常に多い地帯、圧倒的に多い地帯においては国有林の仕事の発注のあり方が、山村の労務の安定につながるか、つながらないかという問題もあろうと私は思います。したがって、国有林自身が労務をかかえております。ですから、国有林の労務をかかえた人たちが安定するということも確かに私は必要だと思います。しかし、私は国有林だけが、——こういう表現を使ってはどうかと思いますが、安定するだけでは、山村全体が安定するというものには必ずしもつながっていかないというところに私は問題があるような気がいたします。したがって、私は国有林の労務が安定することもけっこうでございますが、それより以上に山村全体が、国有林もひっくるめて、いかに安定するかというのが、私は、今後考えていくべき大きな方向でなかろうかというふうに思います。  したがって、山村地帯におけるいろいろの雇用のあり方、あるいは受け入れる人もあるでしょう、あるいは地元の、あるときは百姓さん、農家をやられ、そのひまのときは国有林に出て、短期間においても、やはり仕事があれば通年してやっていける、こういう人も多々私は見受けます。したがって、そういう山村全体の安定のために国有林の事業というものをやはり考えてみるという態度が私は必要じゃないか。ひいては山村全体が、国有林全体が安定するということにつながっていくわけでございますから私は必要じゃないか。こういう意味の雇用の考え方、事業の考え方、こういうものについてどうお考えでございますか、その点をひとつ御回答をいただきたいと思います。
  50. 福田省一

    政府委員福田省一君) 確かに国有林は成立の歴史から申し上げますというと、先生承知のように、北海道、東北、南九州に偏在してるというふうな問題もございますけれども、国有林経営につきましては、基本的には、これは国有林に従事しておる職員の山ではもちろんないわけでございまして、国民全般の山でございますし、その国民全般の山を預かって管理経営いたしまして、この内容を充実し、子々孫々にそのいい状態の山をつくっていくということが国有林一つ目的でございます。そういうふうに考えております。したがいまして、その国民全般の山である国有林をそういう目的に沿うてどういう役割を持っているかということを考えますと、先ほど来申し上げておりますように、一つは従来の木材生産のそういった機能を十分に果たすような改善も一つございましょう。もう一つ木材生産以外の公益的な機能を充実するような森林をつくっていくということでございます。特に大事なのは、もう一点その役割りの第三点としましては、地元の人たちの協力を得て初めて国有林経営というのはできますし、従来もそういうことで国有林というのは成り立ってきたわけでございます。国有林経営と地元の住民人たちの関係というのは、その沿革から見ましても不可分のものでございます。そういう役割りを持っているという認識のもとに私たちは経営に従事しておるのでございますので、国有林の問題につきましては、いま私たちが従事している職員、これはもちろん事務をとっている者も現場で作業している者も含めてでございますが、それの雇用の安定改善をはかることはもちろん大事ではございますけれども、いま御指摘のございました国有林に依存し、そして国有林を育てた地元の住民人たち国有林の仕事に参画していただくということはやはり重要な問題でございます。  ところが、労働力の趨勢を見ますというと、薪炭林の減少に伴って林業労働力の減少が非常に大きいのでございます。最近四十七年、四十八年度の統計を見ますとやや緩和されて専業化、通年化の傾向がございますが、やはり基本的には老齢化あるいは減少の傾向はまだ地域によって違いはございますけれども、問題はあるわけでございます。そこで事業の形態といたしましては、御指摘のように、直営、直用の形態もございます。直営、請負いの形態もございます。販売形態としては立木で販売する形態もあれば素材として生産して販売する形態もあるわけでございます。いずれにしましても、この国有林の労務、それから民有林の労務を通じましてこの労働の条件を改善し、そして労働環境の改善をはかっていくということはやはり同じウエートで考えていかなきゃならぬというふうに思っております。  そういう意味で現在は特に民有林の労働につきましては通年雇用対策、あるいは先ほど先生指摘ございました流動化対策ということも考えておりますし、環境の改善の対策、そういったような予算も逐次増加してまいっておりますが、なお積極的に、特に民有林の労働力対策につきましてはいま申し上げた考え方に沿ってその予算的な拡充、あるいは制度化を促進してまいりたいというふうに考えております。少し抽象的になり過ぎてお答えになったかどうかわかりませんですけれども基本考え方だけ申し上げておきます。
  51. 片山正英

    片山正英君 いまたいへん抽象的な感じを受けました。しかし私は、そのことばを通じまして国有林民有林それを含めた総合的な雇用安定をはかるべき方向である、そういうふうに私は理解をいたします。どうか昔いわれたように、あなたは官人さんだと、官人官人はいいな、官人さんは、というようなことでないように、やはりほんとうに民有林あるいは民の労働関係の人方も基本的に安定しているんだと、こういう施策、片寄った安定じゃなしに、山村全体の安定するような御指導をお願いしたいと思います。そのように私、いま御答弁を理解をいたしました。  そこで最後に造林問題でございますが、今度の森林法改正で伐採をしてはいけない、こういうことの知事の権限が与えられております。ところが、私はちょっと諸外国の例を見ますと、伐採もさることながらむしろ造林、切ったあとの山をいかによくするかということに世界各国は真剣な努力をしております。切ることはこれはまあしかし乱伐をしちゃもちろんいけませんが、いわゆる山の経営上は、全然切らないということは山の経営上不可能でございますが、切ることはしかたないとしても、そのあとの育成、これをいかによくするかということを中心にして世界各国は動いておると、そういうさなかにおいて、今度の森林法改正が伐採はしちゃいかぬという命令権だけあって、造林をしなさいという命令権がない。これは育成面に力を入れる林野庁としてはちょっともの足りない感じもするのですが、その点お答えをいただきます。
  52. 福田省一

    政府委員福田省一君) 確かに御指摘ございましたように、そういう問題があるかと思います。近年国土の保全水資源涵養環境保全、そういった森林の持っております公益的な機能の維持増進に対します国民的な要請も高まっておりますが、それに即応しまして一つ地域森林計画においてきめられております施業特定林分の適正な施業を確保することがますます重要になってきているということでございます。それにかんがみまして、特に森林はその機能が回復するまでには非常に長期間を要することも考慮いたしまして、伐採を行なう場合には、現行の施業の勧告制度に加えまして伐採計画の変更命令、伐採計画の順守を内容とする規定整備したものでございます。造林につきましては、一応御指摘の問題は保安林等にはございますけれども、一般のいわゆる普通林につきましては、命令制をとることとしなかったのでございます。これを命令によって確保するということは、公共性が強い場合を除いてあまり強権的であると一般的に考えられるので、普通林につきましては省令、それから助長策、こういうものによりまして確保することとし、法律制度としては、造林についてもその対象となっております現在の第九条、改正しますというと十条の五になりますが、それの勧告制度によりましてこれの指導を強化することで対応してまいりたいというふうに考えたものでございます。
  53. 片山正英

    片山正英君 それでは私は、せっかく大臣おいでになりましたから、一問だけ大臣にお伺いをいたしまして、ひとまず私の質問を終わりたいと思います。  いま大臣、造林問題についてちょっと触れておったわけでございますが、それで造林の停滞の原因が労務の問題、それから事業費の問題等中心にあってどうも造林がうまくいかない。こういうようなお話をいま承っておったのですが、そこで予算問題にも触れるわけですが、事業費ですから。ことしの予算もたいへん大臣の御努力で林野庁の予算も私はまあまあというようなものを見るわけでございますけれども、ただ造林というのは——ことしの予算が物価抑制、そういう意味からたとえば鉄の値上がり、セメントの値上がり、そういうような需要を抑制する、供給にマッチさせるというような意味での総需要抑制だと私は判断をするのですが、造林等の山村の投資につきましては、私はそういうインフレ予算とはあまり関係ない。むしろ都会からUターンしてくるようなそういう人たちの雇用の場さえ与えなければならないそうして山村の過疎化、それも防がなければならない。こういう時代であるから、公共事業費と同じ範疇じゃない。むしろ福祉予算的な性格が私は造林等の投資にはあるんではないだろうか。  したがって、今後とも、私は日本経済の動きを見ますと、必ずしも大きな高度成長というのは資源の面、いろいろな面から私は期待できないときに、公共事業というのはいつでも問題のものに発展するであろう。その際に、私は、林野庁の造林等の投資は必ずしも需要抑制の範疇外じゃないだろうか。いわゆる労賃が大部分の事業で、山村の安定でございますから、そういうものはむしろ福祉予算として大幅に伸ばしていく方向こそ、私は必要じゃないだろうか。それから労務の問題は国有林だけが安定するという問題じゃなしに、もちろん必要でしょうが、国有林は。民有林国有林を含めた労務の安定を国有林自身が、そうして林野庁自身が指導していって、そうして労務を安定させるべきじゃないか。こういう方向の中で造林問題等山村問題は解決していく一つの足がかりになるんじゃないか、こういうことを実は申し上げておって、林野庁の御意見を聞いておったわけでございますが、造林の推進等についての大臣の御意見を伺ってひとまず私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  54. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ただいまのお話につきまして私どもは全く御同感でございまして、わが国の国土面積の大体七割余り、これ森林でございまして、しかも森林は、ただ木材というような立場で見るべきではございませんで、国土の保全それからまた、わが国全体の国民の健康のためにもいろいろな意味において非常に必要なものでございまして、こういうものにつきましては、私ども予算編成に当たりまして、毎年公共の中で特段の努力をいたしてまいりましたのが造林と林道でございます。  そこでただいまお話のございましたように、四十九年度予算は総需要抑制ということで一部公共投資は抑制されておりますけれども、その中でも予算額をごらんいただければわかりますように、造林につきましては、かなりのゆとりを持たせております。政府は、国民全体と協力いたしまして、この林政をしっかりしたものに立て直す必要があるんではないか、こういうことを常々考えておる次第でございます。幸いにこういう点に理解を持っていただいておられる国会の皆さま方の御協力を得まして、これからますますやはり林業の安定的な発展に最善の努力をしてまいりたいとこう思っております。同時にまた、あわせてお話のございました林業従事者の労働力確保でありますが、これも林野庁におきましては先年来たいへんいろいろ苦労をいたしまして、一つには、後継者の育成が絶対に大事なことであります。同時にまた、そこへの従事者の処遇の改善ということをすることが必要であります。私どもは、そういう意味でいろいろ御審議を願っております法案の中でも、やっぱり民有林に従事しております職場の方々のことにつきましても、できるだけの配意をいたしておることは御承知のとおりであります。しばしば当局でも御返事申し上げておりますように、これらの作業員の待遇等をできるだけ改善をいたすと同時に、もう少しやっぱり林政に対して心から安心して参加していただけるようにしむけていかなければ、私は将来の国土保全等についてむずかしいことになるんではないかと思っておるわけであります。  そういう意味で、ただいませっかくお話のございました御趣旨、もちろん私どもそういう趣旨で行政をやってまいるつもりでありますが、多くの国会の皆さん方の御協力を得て、ともすれば、ちょっとおくれがちでありました民有林国有林を含めての林政に対して政府はさらに一段の努力をしてまいりたいと、このように決意をいたしておる次第であります。
  55. 神沢浄

    ○神沢浄君 私は質問に入る前にちょっと御要望申し上げたいのでありますけれども、午前の部の質問時間がちょっと中途はんぱになりましたから、予算委員会の関係もございますので、一時間ほど質問をさしていただいて中断をして、ひとつ午後続けたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  56. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) はい。
  57. 神沢浄

    ○神沢浄君 私は山梨県の出身でして、山梨という名とは逆に山だらけの県でありますけれども、ただ、私が生まれて育ったのは盆地でありますから、どうも山のことはずぶのしろうとというようなことでございます。したがって、質問もひとつイロハから始めてみたいとこう思います。  そこで、私はまず大臣に御意見を承りたいと、こう思うんですけれども、今回のこの法改正の趣意というのは、ただ単にわが国の社会的な経済的な現況にかんがみて、「自然環境保全」といわゆる森林の「公益的機能の維持増進」に置くと、こういうだけのことであるのか。それとも、ちょうどいまこの農業政策などの面においてもそうでありますが、国民の食糧自給問題というような国家の基本的な政策を根本的に見直しを求められているというようなことと同様に、国政におけるところの森林問題の位置づけというものを、すなわち国土保全あるいは水資源涵養、大気浄化というような、いわば国の安全や国民の生命や健康についての基本政策としてとらえようとされているのか。この法改正の根本的な考え方というようなものをまずお伺いして始めたいと、こう思うのです。まあ言いかえますと、いままでの経済主義的なものから人間尊重というような大目標に向かって、いわば考え方、思想、論理のこの根本的な転換をはかっていく、こういうようなところに置かれているのかというような点について、まず大臣の御所見を承りたいと思うのです。
  58. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) このたびの森林法改正は、森林の持っております木材生産機能と国土の保全それから水資源涵養、それからいまお話のございましたように、「自然環境保全」、それからその形成等の「公益的機能」との調和の上で、これらの機能の最高度の発揮を実現するという、森林政策の新たな展開の一環として行なうものでございまして、開発許可制の導入のほか、森林政策の長期指標であります森林計画内容の充実をはかる、それからまた、地域森林計画に適合する適正な伐採活動が行なわれますよう、都道府県知事が伐採計画の変更命令等を行なうことができるようにいたしますこと、それから経営規模が小さい林家の共同施業の推進、それから土地の投機的取引やその他いわゆるゴルフ場とか別荘等の乱開発を抑制してまいりたい。こういうことでありますが、先ほど片山さんにも申し上げましたように、政府は、ただいま申し上げましたようなことの中にも含まれておりますが、やっぱり国家存立のために森林というものは非常に大切なものである。そういう意味でさらにこれを十分に保護育成することによりまして、国民全体の林野に対する希望に沿えるようなふうに行政をしむけてまいりたいと、こういう考えがあるわけでございます。
  59. 神沢浄

    ○神沢浄君 大体大臣のお考え理解できると思うのですけれども、実は私は、この森林問題というものについて、しろうとながら私なりの考え方というようなものを、以前からあるわけですけれども、そんな点をひとつ申し上げてみて、さらに大臣のお考えを承っておきたいと、こう思うのですが、私はこの日本においての森林問題というのは、ただ単に林業という産業の一分野として考えるというようなことではならないのであって、日本にとっては非常に重大な資源問題としてとらえなければいけないじゃないか、こういう考え方を以前から持っているわけであります。たとえば今回のように石油問題などを通じて私ども国民は非常に深刻な反省を要求されているわけですけれども、非常に資源的に貧弱なわが国の資源問題という点について考えてみますと、やっぱり日本がある程度豊かに持っておる資源というのは山と水だと、こういう私は考え方をしているわけであります。  確かに外国に比べましても、日本の山は、なかなか秀麗でございますし、水もこれは私なども外地に居住した経験もかなりありますが、日本の水くらいすぐれた水はございません。これはもう明らかに売りものになる水であります。そういうような点からいたしましても、これをとにかく大切に守っていくというのが、そういう点に国政の基本というものが置かれなきゃならぬのじゃないかというように考えているわけでありまして——ちょっと話が脱線いたしますけれども、私の友人の一人に、たいへん奇抜な考え方を持っておるのがいるのですが、彼は今度の石油問題などを通じておもしろい意見を出しているわけです。砂漠の国から日本はやっぱり石油を買わなきゃならぬ、これはもうどうにもならない関係にある。日本にあるものはじゃどうかというと、買うにはこれはやっぱり外貨が必要なんですけれども、これからその外貨獲得のために日本の資源というものをどう考えていくか、やっぱりもっと日本では水が生産されるような政策をとって、このみごとなきれいな水を砂漠の国あたりに売り出すくらいの着想を持つべきじゃないかというような、これは奇抜に過ぎるかもしれませんけれども、やっぱり資源問題として取り上げてみますときには、きょうは奇抜に見えましても、何か資源小国たるわが国の将来の一つの示唆を持っておるような意見のように私などは受け取っているわけですが、そういうようなことで、山と水というものを日本の貴重な資源として位置づけてこれからのいわゆる森林行政というものは取り上げていくべきではないか、こういうような点についてひとつさらに大臣の御意見をこの際承っておきたいと思います。
  60. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 私も神沢さんと全く同感でございまして、日本人は水というものをどの程度いまの若者たちがありがたく感じておるかというのは少し疑問じゃないかと思う次第であります。何かユダヤ人と称するイザヤ・ベンダサンという人の書いた書物には、日本人というのは、国家の安全と水と空気は幾らでも安く手に入るものだと思っている、というくだりがありますけれども、そう言われてみれば、私どもは、まことにそういうことを痛感いたします。で、いま外国のお話がございましたけれども、ヨーロッパへ旅行して、水道の水をそのまま飲める国はございませんで、みんな別に違うエヴィアンみたいなものを飲まざるを得ない。われわれはそういうことから見ますというと、その水源である森林の政策というものはいかに国民生活にとって大切であるか。先日もあの法律案説明で、衆議院の委員会で、建設省の担当者が来まして、将来の計画を見ますというと、関東において四十億トンの水の不足を生ずるんだと。これは大きな課題として国が検討しなければならぬと報告しておりましたが、私はやはり当面住宅などの必要なものもございます。けれども、やはり住宅政策を考えたって、水が来なければ住宅はできないのでありまして、水の必要なことを考えますと、その水源がいかに大切であるか、そういう意味で、林野庁におきましても一般民間の識者の御意見等も徴しまして、先年来この民有林も含めた林政全体についで検討いたしておりますし、そういう意味合いから特別会計であります林野庁ではありますけれども、やはり部分的には一般会計からも支出ができるようにいたしておりますし、そういう意味で私どもは林政というもの、非常に地味ではございますけれども、これは政府のもろもろの施策の中の重要な一つの課題である、ほんとうに率直にそういうふうに考えておる次第でございます。
  61. 神沢浄

    ○神沢浄君 私が冒頭からこんな意見を申し上げて出発をいたしましたのは、私なりの考え方では、今回のこの法改正というのは、乱伐や乱開発などについての規制を単に制度的に広げてみても、ただそれだけでは、きょうの経済主義的な暴力の前には容易に対抗し得ないじゃないかと。やっぱりいま大臣のお話のように、林政の基本というものを、ほんとうに発想を根本から変えたもの、いわゆる山と水は資源小国日本の中で、これはきわめて貴重な資源であると、こういうような思想論理というものをここでもってはっきり確立をして、そうしてこれからの政策というものを考えていかなければ、ただ単に法律技術的な面だけの改正に終わっていたんじゃ、実際には山も水も守り切れぬじゃないかというような、こういう懸念があるものですから実はこんなことを申し上げて質問に入っていくわけなんです。  そこで法案をちょっと目を通させていただきますと、五条の地域森林計画対象除外の規定がありますけれども、こう書いてあるんですね、「その自然的経済的社会的諸条件及びその周辺地域における土地の利用の動向からみて、森林として利用することが相当でないと認められる民有林を除く。」と除外の規定がありますが、私などが読んだってうまくわからないのでありまして、これは大体具体的にはどういう、それでは民有林であるか、それをだれが判断をしてきめるのか、それからその判断をしてきめる場合のいわゆる基準はどうなのか、その基準をだれがきめるのか、そこら辺がまことに不明確であります。これは長官からでけっこうですが、その点をちょっと御説明いただきたいと思います。
  62. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいま御指摘のございました問題は、地域森林計画は県知事がつくることになっております。その大もとの全国森林計画というのは農林大臣でございます。その対象とします地域森林計画というのをつくります場合に、これは未来永劫森林として経営するのだということがはっきりしたものを対象として森林計画をつくるわけでございまして、そうでないあやふやなものは除くというような観点から——そのあやふやというのはちょっとことばが悪いかもしれませんけれども、どういうものをじゃ除くかと申し上げますというと、従来非常に飛び地でございまして、少なくとも三反歩ぐらい、〇・三ヘクタールぐらいの飛び地というものは一応、たとえばこれは屋敷林のようなものであるとか、社寺有林とか、そういうのが一つの例でございますけれども、これは木材生産、その他の森林経営対象とは考えられません小さなものでございますので、それらを除くと。それからもう一つは、公の、いわゆる公的な計画に基づいてそれがすでにきまっているもの、たとえて申し上げますというと、都市計画に基づいてこの市街化区域というものがはっきりきまる、ここは開発ということは法的にきまっている。そういうふうなもの、こういったものを大体除くということにいたしております。  それは森林全部では二千五百万ヘクタールございまして、国土の約六八%森林でございます。いま対象としますものは二千五百万ヘクタールでございます。そして、いま除くものはどんなものがあるかというと、二例申し上げました。総面積約二万ヘクタールぐらい、それから計画に基づいて転用がもうすでにきまっているであろうというのは三万ヘクタールぐらい、合わせて五万ヘクタールぐらいあるであろうというふうに私たちは予想いたしております。そういったものを除きまして地域森林計画ということで、その計画知事がつ.くるということにいたしておるわけでございます。
  63. 神沢浄

    ○神沢浄君 大体内容的にはわかるんですが、法律の上にはそういう明文が出ておりませんから……。  そうすると、結局知事が除く対象をきめると。ですけれども、知事対象をきめるときに、いわば除外の基準というものが明らかでないと、各府県まちまちなんということになってもならぬわけですから、これらは、この法案と知事の決定の立場とどういうふうにかかわり合っていくのか、その辺もちょっとわかりかねるんですよ。
  64. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいまの御質問は、一体許可をする場合どういうふうな基準があるのかという御質問と思います。都道府県知事開発許可する場合の基準というのは、法律の中では、きわめて少しばく然と書いてあるじゃないかというような印象をお持ちかと思います。その中では、一つ国土保全、つまり土砂が崩壊するとか、あるいは雨が降ったときに土砂が流出する。そういう国土の保全に支障がある場合にはこれを押える。もう一つは、水の涵養の問題でございます。それを開発したら下流の人たちが水がなくなって困るというふうな、そういう水の涵養に支障がある場合、それからもう一つ環境の問題でございますが、例をあげて申し上げたほうがいいかと思いますが、地元の人たちがそこへ行ってレクリエーションの場として活用しておったんだというふうな例、そういった環境保全影響がある。こういう三つ考え方によりまして、それに支障があるときには許可しない、基本的にはそういう考え方でございます。  ただ、いま申し上げたことは、きわめてばく然としておりますので、それでは知事が非常に恣意的になるおそれもございますので、次官通達をもちまして、いま申し上げたような内容はこういうことなんだということを具体的にこまかにきめて、その判断の指針にするということにいたしておるわけでございます。
  65. 神沢浄

    ○神沢浄君 知事にほとんど白紙委任をしたような形になっておるこの内容の問題は、ここだけではなくて、他にもあるようですけれども、これはあとからそういう問題に触れていきたいと思うのですが、ちょっとした問題点が残るんじゃないかという感じを持っております。  そこで、七条に、「森林計画意見がある者は、」「文書をもつて、意見を申し立てることができる。」、こうありますね。除外地以外のものは全部計画対象になっていくわけでありますから、対象にされたものからしてみますと、これは、その意見のある場合もきっとかなり多いかもしれません。そういう場合には、「意見がある者は、」「文書をもつて、意見を申し立てることができる。」と、こういうふうにあるようですが、この「意見を申し立てる」というのは、だれが申し立てるのか、林地の所有者だけなのか、それともその他の者も、やっぱり一般も意見を申し立てることができるのか、この辺もどうも法文上は明らかでないようですし、それから、ただ「意見を申し立てることができる。」とは書いてありますけれども、申し立てた意見をどう扱うかというようなことはどうも見当たらないんですが、意見を申し立てさせっぱなしということでありますならば、いささかやっぱり制度的に非民主的なきらいが強いわけですし、この辺はどんな関係になっておるわけなんでしょうか。
  66. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) 森林法の七条に、先生いま御指摘のように、「地域森林計画意見がある者は、その公表があった日から起算して三十日以内に、当該都道府県知事に対し、理由を附した文書をもって、意見を申し立てることができる。」ということになっておりまして、この「意見を申し立てることができる。」者というのは、森林所有者に限らず、利害関係者は意見の申し立てができるというふうに理解をしております。第二項で、その申し立てをされた申し立てにつきまして、「都道府県知事は、前項の規定による意見の申立てがあったときは、これを誠実に処理し、その結果をその申立人に通知しなければならない。この場合において、地域森林計画を変更しなければならないと認められるときは、都道府県知事は、これを変更するものとする。」という規定がございまして、この規定を抽象的と読むかどうかということでございますけれども、具体的な内容といたしまして、計画事項——計画でございますから、そのことについては、やはり都道府県知事は、その申し立てについてこれを誠実に処理し、その結果を申し立て人に通知すると同時に、計画の変更の必要があるときは計画を変更する。それが誠実に処理する方法一つであると、かように私どもは理解いたしております。
  67. 神沢浄

    ○神沢浄君 やっぱり法律としては非常に、何というか、不備、不完全みたような感じを受けざるを得ないわけですよ。誠実に処理をするほうは当然そうあってもらわなきゃならぬわけですけれども、誠実に処理をするということについては。この法律は、それを不誠実に処理をされた場合のことは書いてないわけですね、まあ逆な言い方をいたしますと。そうすると、ほとんどこれは知事に白紙委任をした形でございまして、たとえば知事が不誠実に処理をした場合においては、その救済の方法というものはこの法文上は見当たりませんですね。その辺はどんなようにお考えですか。
  68. 平松甲子雄

    ○政府委(平松甲子雄君) 森林計画でございますから、計画でございまして、直接に権利を制限するというふうなかっこうのものではないということでございますので、こういうふうな形の規定のしかたをしたんであろうというふうに考えるわけでございます。が、計画でございますから、できるだけ地元の市町村長あたりの意見も聞くということになっておりますし、森林審議会の意見も聞くということになっておりますので、そういう意味においての公的な意見の聴取というものは十分済まして都道府県知事計画の作成をするという手順を踏んでおりますので、そういうふうな、先生御心配のような事態も起こり得るかもしれませんが、私どもはそういう事態がなくて、やはり都道府県知事都道府県知事としての職責を忠実に処理していただけるものというふうに確信をしておるわけでございます。
  69. 神沢浄

    ○神沢浄君 しかし、社会の実情というのは、そう誠意ばかりで成り立っているわけでもありませんので、私は、この辺は、こういう法文をいま目の前で修正云々ということも無理のことでしょうけれども、やっぱり運用上の基準みたいなものはこれはよほどしっかりきめておきませんと、問題の点だと思うわけです。山と水、森林を守ることも大切ですが、民主主義を守ることはさらに大切かもしれぬことでありまして、意見の申し立てだけはできるけれども、申し立てしただけのことであって、あとの処理は、まあ極端な言い方をすると、権限者である知事がほしいままに処理をしても、それは、この法文でもってそれを規制拘束するような明文規定というものは何もないわけですね。だからどんなケースが起こらぬとも限らぬ。そういう懸念も当然つきまとうわけでありまして、これはひとつ十分この運用上の問題として、今後法律によらなくても法律を十分その点についてカバーできるようなこれは御配慮が必要じゃないかと、こういうふうに思います。
  70. 福田省一

    政府委員福田省一君) 確かに先生指摘のとおりでございます。したがいまして、法律事項としては明らかではございませんが、その手続を明確にいたしますように検討してまいりたいと思います。
  71. 神沢浄

    ○神沢浄君 そこで、次に十条には、開発行為許可にかかわる規定がなされておるわけなんですけれども、私はここでもって非常に——私は先ほど申し上げたように、山梨県の出身であるし、いま私の県の中でもって起こっているような諸情勢から勘案をしてみまして、非常に重大だと考えますのは、この除外規定というか、許可の不要の規定の第一号に「国又は地方公共団体が行なう場合」は除くと、こうあるわけでして、こうなりますと、私、森林法を見ましたら、公有林というのは——いわゆる国有林でないものは全部民有林だという考え方のようでありますから、したがって公有林も当然民有林——法律上の字義の上からすると、民有林の範疇に入るわけなんでしょうがね。しかも加えて「国又は地方公共団体が行なう場合」は除くと、こういうことになりますと、これは公有林をたとえば県の場合を取り上げてみれば、県有林をその県がどうしようとも、この法律では、これは規制、拘束はできないと、こういうことになるんでしょうか。その辺をお伺いしたいと思います。   〔委員長退席、理事高橋雄之助君着席〕
  72. 福田省一

    政府委員福田省一君) おっしゃいますように、国有林以外ば民有林となっておりまして、ことばにちょっと疑義があるいはあるかもしれませんが、民有林を分けまして、県有林のような公有林とそれから個人の持ちます私有林といたしております。今回の許可制におきまして、四十七年ごろから——まあその趣旨をちょっと御説明申し上げますけれども、過剰流動性を背景として開発規制のない普通林に見られました民間企業によりますところの土地の投機的な取引、それからゴルフ場、それから別荘地と、そういったような乱開発が非常に目立ったわけでございます。これらを規制していくということに重点を置いて考えているわけでありますが、こういった観点から見ましたときに、国とそれから地方公共団体の行ないます開発行為につきましては、その開発が無秩序に行なわれるとは考えられません。その指導とか監督に万全を期することとしまして、開発許可を要しないと、こうしたんであります。  その理由をちょっと申し上げますが、一つは、国と都道府県につきましては森林開発行為についての監督官庁であるわけでございます。で、みずから開発行為を行なう場合に、許可基準に適合して行なうことはこれはもう当然なことでございますし、また都道府県につきましては、今回の許可権限が国の機関委任事務ということでありまして、国としましてもその指導、監督に万全を期する考えでございます。  それから、次に都道府県以外の地方公共団体——市町村等でございますが、これにつきましても行政庁内部におきまして指導を十分に行なうことによりまして、森林の諸機能と調整をはかった開発行為を行なうことが確保できると考えたわけでございます。このうち市町村につきましては、すでに一部の市町村にはまあ地元住民意向を受けまして森林開発規制を行なっておりますし、今後はますますこの面での行政の推進が期待されますし、許可規準を順守することは一般に期待し得ると考えられます。地域に一番密着した行政を行なっておる市町村というのは、地元のそういった住民意向に反してまで住民に被害を与えるような行為をするとは考えられないというふうに思ったわけでございます。  で、以上のことから、国、それから地方公共団体は、地域の健全な発達をはかるという責務を持っておりますし、地域住民に被害を与えるような開発行為を行なうとは考えられませんで、たとえ行なおうとしましてもこれに対する十分指導是正をし得ると考えておりますので、これらのものはこれらの開発につきましては法令上許可を要することは必要ないと、許可を要することとする必要はないと、こういうふうにきめたわけでございます。事実、都道府県におきましてもすでに条例等によりまして、一、二の県を除いてはほとんど何らかの形でそういった開発行為規制をいたしております。それでもなお都道府県知事が何かしたらどうするかという問題につきましては、別な背景の法律もございまして、総理の権限でそれらをチェックすることもできておりますが、そこまでいかぬでも、地元の住民人たち皆さんが最近のそういった乱開発につきましては非常に注意を喚起しておりますので、十分——いま申し上げた条例等もございますし、それらを見て、国のこういった法律に基づいてやった場合には十分都道府県知事なり市町村長規制はできるというふうに期待しているところでございます。
  73. 神沢浄

    ○神沢浄君 長官、私は非常にこれは重大な点だと、こう思いますのは、まあ民有林にまで拡大して乱伐、乱開発などを防止はできると。しかしまあ、こういう言い方が適当かどうかしりませんけれども、ざこはとらえられるけれども呑舟の魚はつかまらないというような法律では、あまり、ほんとうに日本の山を守っていこうということにはならないのじゃないかと。  私はまあ二、三の事例をあげて申し上げたいと思うんですが、私の県に、河口湖から富士山五合目まで登山道があります。富士スバルラインと、こう称するものです。これは大体三十六年ごろ実はでき上がっているわけであります。まあお恥ずかしいですが、私もまあそのとき県会の議員でした。で、いろいろまあそのために山をこわし汚すようなことが起こりはしないかというような点でもって相当論議をいたしましたけれども、調査の結果そのおそれはないということでもってわれわれも了承をいたした経過があるわけであります。ところが何とぞの後問題に——これは環境庁の方おいでになってますか、その後問題になってきておりますのは、まあその後モータリゼーションなどの進行変化の関係というものももちろんこれはかかわり合うからでありますが、まあ排気ガスによるところの障害とか、それから大体この工事そのものの際に相当の土砂が落ち、それが堆積をしたために、あの富士山の五合目までの、まあ日本の山の全くこれは象徴みたいな所ですが、かなりの樹木を枯らしてしまっているわけです。その後もやっぱり自動車のその排気ガスなどの関係もありまして、いまその樹勢の回復のために相当苦労をしておりますけれども、なかなかこれは容易でない状況があるわけであります。  しかも、これは少し話が脱線するかもしれませんが、私はある外国人が富士山へ登った手記を読んだことがありますが、まあその霊峰富士の五合目といえば、ちょうどまあ中腹でありますけれども、ほとんど、モーテルまではないかもしれませんが、もう都市の一隅などに匹敵するような——まことにそれはさもありなんと思います。外国人からしたっても富士山というのはかなりこれは渇仰の的ですから。来てみましたら、その富士山の中腹あたりに、どうも都市の一隅さながらのような情景が展開しておって、大体日本人というのは富士山をどう考えておるんだろうというような私は手記を読んだことがあるのですけれども、あの辺は御承知のとおり、恩賜県有財産、山梨県特有の県有林があるわけです。で、県有林でもって県の有料道路事業ですから、おそらく森林関係の法規などにおいてはこれは手がつかなかったんでありましょうし、今度の改正案の中だっても手がつかないというわけですから、——あれらの許認可などについてはどうなっておったのか、おそらく環境関係の行政のほうからチェックができるようになっておったのかどうかわかりませんけれども、いずれにしても、そういう事態がいま生じておるわけであります。これはまさに呑舟の魚であります。ざこのほうはとらえられるけれども、そういう大きなものについては手がつかない。  さらにいま私の県におきましては、連峰スカイラインという構想がありまして、これは富士山ろくの河口湖を起点にして、そしてあの辺は御承知のとおり富士箱根伊豆国立公園の地域です。それから今度は柳沢峠等、いわゆる大菩薩峠等、あの付近はこれは秩父多摩国立公園の地域であります。それを通過をして、そして八ケ岳に至るわけであります。八ケ岳というのはたしか八ケ岳中信東部国定公園ですか、でありまして、このコースは国立公園が大体もう六割地域的には占めているわけであります。しかも、それどころではないわけでありまして、標高が大体千三百メートルから千七百メートルくらいの地帯を縫っていくわけであります。なお、このコースについて調べてみますと、対象面積の八五%を占めておるのは保安林です。それで、そのうちのさらに九〇%はこれは水源涵養保安林です。   〔理事高橋雄之助君退席、委員長着席〕 ただ幸いとでも申しますか、社会経済情勢がこういう総需要抑制というような時期に入ってまいりましたから、いま凍結状態にはなってきておるわけでありますが、コース全体としては凍結をしたけれども、そのうちの一部は先取り着工的に、今度は名称も変えまして自然公園道路計画、こういうことでもってもうすでに八ヶ岳付近の一部については本年着工するわけであります。  こういう状況に対してこれは私の県だけでなしに、山を愛し、知る人たちの間には、全国的にこれに対する反対の機運というものが高まってきて、本委員会にもたしか請願が出ておるのではないかと思うんですけれども、衆議院ではたしか請願の採決か何かが行なわれていたようにもちょっと聞いた覚えがあります。ところが、県のほうでは凍結はしたけれども、やめたとは言わないですよ。やがて経済情勢などがさらに好転、安定でもいたしました場合には、凍結ですから、凍結を解除をするということにもこれはなりかねないわけであります。現にもう先取り着工というものをやっているわけであります。  こうなりますと、私などの見るところでは、民有林対象拡大をいたしまして開発規制を行なう、乱伐、乱開発はこれによって抑止がされていくと、法の目的はその面においては達成し得るわけでしょうけれども、ほんとうに日本の、だからさっきあんなことを申し上げたんですが、山と水を守っていかなければならないというこの基本の姿勢やそれから目標からいたしますと、これは小さなものばかりは押えても、大きなものは、それこそ山梨県全体をくずすようなものを押えることができないというようなことでは、私はこの法律自体もさらに考えていく必要があるんじゃないかという気がしてならないのでありまして、そんな点について一つ環境庁のほうにお伺いしたいです。もし富士スバルラインが現状のような状況というものがあるについて、そのことを知っておって、なおかつ認可をしたのかどうなのか。認可し得ないような状況であるとするならば、いまにおいてさえもやはりいずれかの指導はこれは行なう必要があるんじゃないか、こういう点が一つ。  それから、いまの連峰スカイラインの問題については、この法案はこれはどう見たっても全くかかわり合いを持たないと思います。そういうわけで、山と水を守っていかなければならないという国としての基本考え方からいたしまして、こういうようなものが手がつかない、放置しておく以外にはないというようなことであってはならないと思いますので、これは大臣にもお伺いをいたしたいんですが、それはどうあるべきか。いまのままならどんどんそれはだれはばからず進行をするわけであります。これは私は森林行政上の重大な問題だと、こう思いますので、この法律内容とはちょっとはずれますけれども、この際お伺いをいたしたいと、こう思いますし、さらに私がそれらの状況を見ながら、先ほども申し上げましたように、これはよほどのいわゆる思想や論理的な姿勢というものをしっかりと打ち立てておかなければ、経済主義的なもののまるで暴力のごとき攻撃の前にもう抵抗しきれないんじゃないかということです。  さらにこれについてちょっと触れてみますと、私の県において、現在知事が掲げておる政策の中心的なものはグリーンプランと、こう言うんですよ。それはりっぱですよ。グリーンプランですよ。緑を守っていこうと、こういうことですよ。しかし、グリーンプランと称するからには、これは山をこわすようなことを考えたら逆のことですけれども、ところが、その知事のいうところのグリーンプランというものの内容、それから趣意は何かというと、山梨には山が豊かに恵まれておるんだから、大東京の都民の方たちのことを考えれば、ひとつ山梨の山を開放してあげようというようなところにその考え方が置かれておるようでありますが、しかし、これは開放してあげようといったところで、やはり一種の観光事業ですよ。ほんとうに山を守っていこうという考え方ではこういう発想は私は生まれてくること自体がおかしいと、こう思うんですけれども、ところが、グリーンプランを主たる政策に掲げて、実はそのグリーンプランに基づいてスカイライン構想をやるんだと、——くどくなるようですけれども、そのうちの八五%は保安林でもって、さらにその保安林の九〇%は水源涵養林だというふうなことであります。かなり反対運動なんかも激しくなってまいりましたし、いわゆる総需要抑制の情勢に差しかかったからいま凍結中でありますけれども、私は放置すべき問題ではない、こう考えているところでありまして、個人的には知事にもアドバイスなどをしたおりもありますけれども、しかし、二千万も調査費を使っちゃって、そうして計画を立ててどんどん進めようとしておるわけでありますから、これは個人的なアドバイスくらいでもってとまるものではありません。私はやっぱりここには国政の立場というようなものがこれは働かなければならぬのじゃないか、そうでない限りは、たいへんなことになっていくんじゃないか、こういうふうに実は心配にたえないわけでありますが、そういうような、申し上げましたような状況に対しての国としての立場からの御所見も伺っておきたいとこう思います。大臣並びに長官、もしありましたら長官の御意見も承りたいんです。環境庁からもさっきお尋ねしたような点をひとつお答えください。
  74. 福田省一

    政府委員福田省一君) 森林乱開発の問題の一番大きいことは先ほどちょっと触れましたゴルフ場が非常に多過ぎるとか、住宅その他いろいろございますけれども、もう一つは山岳地帯における道路が非常に問題になっております。御承知のとおり、いま富士スバルラインとか、あるいはもう一つの例をおあげになったわけでございますが、そのほか山岳地帯におきます林道につきましては、確かに日本のようなこういう気象条件のきびしいところ、特に雨量の多いところでは林道その他道路のつけ方ということが自然破壊にもろにつながるわけでございます。聞きますれば、いま御指摘の富士スバルラインにおきましてはその原因等も調査いたしまして現在相当経費を投じて林縁に植樹をしていると聞いております。  なお、もう一つの名前をかえた道路の問題連峰スカイラインを自然公園道路計画というふうにいま先生お話しになりましたが、ここもだいぶ計画を変えて、位置をずっと下げて、既設の国道、町村道、林道等使って、しかも、これは何か三つ地域に分散されるというふうに聞いております、その辺は慎重に配慮している模様でありますが、いずれにしましても、林道をつくります場合には、日本のような地形の急峻な、気象条件のきびしい、雨量の多いところでは相当配慮した路線の選び方、工事のしかたをしなきゃならぬと思います。特に高山植物はこういった公害に対して非常に弱いわけでございます。道路をつくったためにその林縁がきびしい気象条件にさらされて枯れる場合もあります。また車の排気ガスによって枯れる、そういったこともございますから、やはり路線の選び方それから道路の工法については相当慎重な配慮をし、相当やはり経費をかけてつくらなきゃならぬと思います。  なお、こういう特に高山の特別制限をされている地帯にはできる限り自動車道というものは原則的には入らぬようにして、下で駐車さして、あとは歩道でつなぐというふうな指導も最近はいたしております。まあいずれにしましても、貴重な資源でございますので、そういったところに対してはあまりあとの森林を破壊するような道路のつくり方は避ける。つくるとしても歩道を重点にするとか、あるいは車道にしましても相当経費を投じてやらなきゃならぬと、こういうように思っております。そういう趣旨でそれぞれの都道府県を指導してまいりたいと思っているところでございます。
  75. 宇野佐

    説明員(宇野佐君) スバルラインと連峰スカイラインの問題についてお答え申し上げます。  まずスバルラインでございますが、先生も御指摘ございましたように、これは富士箱根伊豆国立公園の中にございまして、昭和三十六年に承認をいたしたわけでございます。この当時やはり自然公園審議会等にもはかりまして十分に慎重にやったはずでございますけれども、やはり当時の予想をこえまして自然破壊の被害が出ておるということは先生の御指摘のとおりでございます。  私どもといたしましては、その後山梨県当局を指導いたしまして、緑化復元の措置をとらせてきたわけでございますが、非常に地域的にきびしいところでございますので確かに緑化復元もなかなかはかどっておりません。そこで四十七年度から私どものほうでも調査研究費を投入いたしまして、現在復元の方法それから工法といいますか、そういうものを研究をいたしております。その研究の成果も見ましてさらに的確な工法によって緑化復元されるように指導してまいりたいと考えておるわけでございます。  それから先生が御質問ございました、現在だったらこの道路が認可されるかどうかという問題につきましては、これはなかなかお答えむずかしいわけでございますが、私ども環境庁ができまして以来、こういう観光道路というような種類の道路を国立公園の中に新設をするということは抑制をするという方針で臨んできておるわけでございます。それが一点。もう一つは、こういう道路工事のような開発行為といいますか、大きな工事を行ないますときには、環境アセスメントといいますか、事前の科学的な調査を十分にやって、その影響を確かめた上で、自然保護という問題に配慮してやるかやらないかをきめるということを、これは閣議了解でもございますし、最近きびしくその点を指導いたしておるわけでございます。そういう点から考えまして、最近にこの道路が申請されました場合には、これはなかなか簡単には承認できないだろうと思います。  それから連峰スカイラインでございますが、これもやはり環境庁ができました当時からお話がございまして——お話がございましたといいましても、これは正式な問題ではございませんで、新聞等に出たわけでございまして、私どものほうから当局に説明を求めたというような経緯がございます。そのつど、先ほど申し上げましたように国立公園地帯に新しいこういう観光道路をつくるべきでないということを再々申し上げておりまして、山梨県の当局でも学者の調査等も慎重にやられまして、だんだんとこのルートを山麓のほうに下げてくる、あるいは国立公園を通らないようにするというような配慮をその後されてきたようでございます。  現在私どもが把握しておりますところでは、国立公園地帯を通るのは約三〇%ぐらい、しかも特別地域という制限のきびしい地域は非常に少なくなったというふうに聞いておるわけでございますが、さらに凍結をいたしまして、大体百六十キロほどの延長が最初ございましたが、現在はこれを百キロぐらいにとめるんだというふうな話も聞いております。  ただ、先生も御心配のように、凍結といいますとどうもまた解除するんじゃないかというような考え方もございまして、私どもとしてはこの凍結というのはまぎらわしい。そこで、それが将来解除されないようなはっきりとした歯どめをこの際やっておくべきじゃないかというような考え方を持っております。これは特に富士箱根伊豆国立公園、秩父多摩国立公園、この二つにつきましては、現在の公園の特別地域といいますか、こういう地域の見直しをやりまして、私ども公園計画の見直しと称しておりますがこの見直しをやりまして、きびしく制限をする地域をふやそう、そういうことによって、将来道路をつくる場合に環境庁のほうがチェックできるという態勢をとっておこう、そういうふうに考えておるわけでございます。一応そういうことで現在県を指導いたしまして、新設の観光道路はつくらないというような方針を貫いてまいりたいと考えております。  それから先取り着工の問題でございますが、国立公園あるいは国定公園を通らない部分、県道等の部分が、すでにできておる部分がその中に組み込まれておりまして、それを有料道路の方式によりまして舗装をするというような計画が一部あるようでございますが、私どものほうはまだ公園の区域の外でもございますし、正式にはその点は聞いていないわけでございますが、まあ先取り着工といいますか、そういうようなことが計画されているやに聞いておりますが、それが全体の着工につながってこないように、先ほど申し上げましたような、私どもとしての歯どめはしっかりしておきたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  76. 神沢浄

    ○神沢浄君 大臣にはあとから御意見を承ることにしまして、いまの環境庁からの御説明の中でもたまたま触れられたように、これだけの重大な計画というものが環境庁のほうから——国のほうから照会をしなければならないような、いまの国と地方公共団体との関係というものに私は、非常に大きな盲点があるんじゃないかと思われてならないですよ。このスカイライン問題など等にしてもそうですけれども、とにかく二千万も調査費を使っちまって走り出しちゃっているわけですから、なかなかこれは走り出したものをとめるということは容易ではございません。したがって、少なくともその準備の段階や期間において、そのようなものが走り出さないような国の指導というか、こういう点が、今日の法規上においては無理だと、法令制度の上からいきますと、そういうことは無理なんですね。私は、問題が森林法に返ってもそうだと思うんですが、知事の誠意にゆだねるというようなことになっておりましても、そこら辺が私は一つ盲点になっていくおそれというものが多分にあるじゃないか、というような点が憂慮されてならないものですから、こんな引例をして申し上げておるわけなんです。そういう点はどうなんですか。もうやっぱり自治体のやることはあまりかかわり得ないような関係になっているわけなんでしょうか。環境庁の行政上の立場からするとどうなんでしょう。
  77. 宇野佐

    説明員(宇野佐君) 私どもの直接の関連から申し上げますと、こういう道路が、たとえば自然公園の中に行なわれる場合、あるいは今後指定されてまいります自然環境保全法の地域で行なわれるような場合、これは直接的に環境庁の立場において事前にチェックができるわけでございます。都道府県でもこれは許可をとるなり、あるいは承認をとるなりという行為を要するわけでございます。その他のいろいろな地域につきましても、環境庁としてはできるだけそういうふうなチェックの体制を整えるということで、開庁以来それぞれの関係省庁とも調整をはかっておるわけでございまして、事前のチェックといいますか、そういうものについてはできるだけきびしくしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  78. 神沢浄

    ○神沢浄君 中途から国の環境行政上の考え方などというようなものも漸次反映もあったようでありますから、標高を下げる。さっき御説明がありましたように、大体当初の計画は千三百から千七百くらいの間のコースになるのですけれども、これを千二百ないし三百くらいのところへ下げようとこういうのですが、まあ下げればスカイラインではなくなりますしね、それは。ただ単にその地域を無用に、ちょっとオーバーな言い方かもしれませんけれども、破壊していって道をつくるだけのことでありますし、しかし結果的にはやっぱりこれはもう乱開発ということになるかならぬかは別にいたしましても、相当の障害というものが山にとっては生ずることは避けられぬと思うのでありまして、そうなりますと、何か県また知事立場からすると、一度ばく大な調査費まで使って掲げた計画であるだけに、何とか、どういう形になろうとも、やらなければメンツが立たないようなおかしなこと、事情もからんだりしてきまして、その結果とすればまことに無意味なことに帰してしまう。こういうようなことが現実にいま私から申し上げたように起こりかけているわけであります。  そこで、私はまあ時間の関係もありますから、ちょっとここで大臣に御所見を承っておいて午後に続けたいと、こう思うのですが、いま目の前で審議をしておりますこの法律の中ではこれは無理であります。しかしこれはもうかなり喫緊を要する、ほんとうに日本の山や水を守っていかなければならぬという見地からすれば、これは何とか手を打たなければ、これは私山梨だけのことじゃないと思うのです。もう今日までだっても、それ何ラインというようなものが、まあ一番高いところは蔵王の何か観光ライン、道路あたりをはじめとして、各府県にきょうまででも相当数のものが出ております。今後だってもこういう情勢というものは決して中断されているわけじゃなかろうと思うのですが、ほんとうに大局的な森林行政の立場、言うなれば森林行政というよりか、冒頭申し上げましたように、まあ日本にとってきわめて貴重な資源である山と水とを守っていかなきゃならないというような、こういう国政の基本立場からこれは放置してはならない問題だと、こう思うのですけれども、そういうふうな点についてのひとつ大臣の御意見を承って午前を終わりたいと思います。
  79. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 私どもの立場からは、先ほど冒頭に御答弁申し上げましたような考え方に立つわけでありますが、しかも、われわれといたしましては、その中でも保安林その他水源涵養のために必要なものにつきましては、また、今回御審議を願っております法律目的一つには、極力乱開発防止するということ、それからさらに林業をやりやすくなるようにいろいろ考えておるわけでありますが、そういう立場でいまお話のようなことにつきましては極度に警戒もいたし、また指導もいたしておるわけでありますが、環境庁という役所ができましてから、なおさら私どもと非常に密接な関係のありますところでありますので、両省がいま私が申し上げておりますような趣旨と、さらに環境保全という意味を加えまして、国土保全のために環境破壊のないようにやってまいることに一そう緊密な連絡をとってやるべきであると、このように考えております。
  80. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  81. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 速記を起こして。  暫時休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      —————・—————    午後二時十一分開会
  82. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  83. 片山正英

    片山正英君 午前中は資源問題と造林について若干御質問を申し上げたわけでございますが、時間もありませんから、大臣の前向きの答弁もいただきましたから、次には価格問題と木材需給問題についてちょっとお伺いいたします。  林野庁が四十七年を起点として十年先の木材需給として昭和五十六年、したがって、いまから考えますと八年先になりますか、その五十六年におきまする木材需給の想定をしたのがこれまた閣議決定になっておるわけでございます。その内容をほんとうはまず長官からお伺いするのが順序だと思いますけれども、時間もありませんし——私、あと二、三十分ということですから、時間もありませんし、資料もいただいておりますから、私の資料で御質問を申し上げたいと思います。  それによりますと、大体需要の伸びに対処するためには、国内生産は大体横ばいないしちょっと、少し増加するような生産を見通されまして、輸入材に関する限りは五千三百六十万立方の輸入に対して——これは四十四年から四十六年の平均——それに対して五十六年は八千五百十万と、約六割増の輸入材の増加を満たさなければ木材需給はバランスはとれないと、こういう大体の見通しを持っておられるようでございますが、いま木材の輸入については、米材問題南洋材問題ソ連材問題、いろいろあるんでございますが、資源問題は世界各国の問題になりつつあります。日本だけがなかなかたくさん持ってこれないというような諸情勢が刻々近づいておるように思います。それから丸太で持ってくるよりはやっぱり製品で持ってこいというようなのが現地の声でもあるように思います。したがって、私は、これから八年後に六割もふえるというそのような輸入の数量というものはほんとうに期待されるかどうか。また、期待されるとすれば、どのような形、たとえば製材、パルプ、どのような形で一応見込まれるんだろうか。これはむずかしい問題だと思いますが、まず総体について長官から見通しをお聞かせいただきたいと思います。
  84. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいま将来の見通しはどうかという御質問でございますが、昨年の二月に基本法に基づきまして木材の長期の需給の見通しが閣議決定されたわけでございます。それに基づきまして、ただいまお話のございましたような国内生産と外材との見通しをもとにしてそれぞれの対策を立てているわけでございますが、わが国の木材の需要は非常に急速に最近増大してまいりまして四十五年には約一億立方メートルをこえたのでございます。供給の面では、国産材の供給が非常に停滞傾向にありますために、外材は四十七年には六千万立方メートルというふうになったわけでございます。今後木材の需要は引き続き増大することが予想されるのでございますが、昭和五十六年には一億三千四百八十万立方メートルとなる見込みでございます。国産材につきましては、大幅な増加は、ただいまお話のように期待できないのでございまして、外材は、したがいまして八千五百十万立方メートルという膨大な量になる見込みでございます。しかし、最近外国の産地国におきましては、木材需給の逼迫、森林資源の保護、それから自国産業の育成、そういったようなことから、日本と同じようにやはりそういった問題が出ているわけでございまして、丸太の輸出規制を強化しようとする動きが見られるのでございます。したがいまして、外材の安定的確保につきましては長期的には必ずしも楽観を許さないものがございます。このため、今後丸太の輸入の増加が期待できますのは、針葉樹につきましてはソ連邦、それから広葉樹につきましてはインドネシア、パプア、ニューギニア、こういったような国と考えられるのでございます。これらの国を重点として輸入先の多角化、開発輸入及び長期契約の促進をはかる必要があると考えております。  さらにお話のございました製品の輸入につきましては、従来のわが国の木材の輸入形態が丸太中心であったことが産地国に批判を受ける原因となっていることにかんがみまして、わが国の木材工業の近代化を進めながら漸次製品輸入を増大させる必要があると考えております。昭和五十六年には必要輸入量の八千五百十万立方メートルのうち、約三八%の三千二百六十万立方メートルを製材、合板、チップ、パルプなどの製品で輸入することを見込んでおるのでございます。参考までに申し上げますが、製品輸入の割合は昭和四十五年には二四%、四十七年は二五%という数字でございます。なお、この製品輸入のうち製材につきましては、丸太の輸出規制が強化される方向にありますところのアメリカ、カナダ、それからマレーシア、フィリピンなどから、それからチップにつきましては南方地域から、それからパルプにつきましては北米地域からの輸入増加を見込んでおるのでございます。  以上のような産地国におきます情勢の変化に対応しまして、四十九年度には新しく国際協力事業団を新設し、開発輸入が適正に行なわれるよう指導を強化しまして、外材輸入の確保につとめることといたしているところでございます。
  85. 片山正英

    片山正英君 これも議論すると長いのでございますが、趨勢として三八%、製品輸入のほうに転換していこうと、こういう見通しまた御指導のように承りました。  そこで通産省の方、来ておられましょうか——。ちょっとお伺いするんですが、五十六年度閣議決定を経たバルブ材の需要というものは、昭和四十四年から四十六年、これは二千三百五十万立方、これが五十六年には四千十万立方、大体七割増というのが、パルプがふえるであろう、こういうふうな見通しの閣議決定が出ておるわけでございます。したがって、七割もふえると、こういうことでありますと、これがはたして国内の工場の整備拡充としてふえるのか、あるいは海外においてある程度工場をつくって、あるいはパルプとして持ってきて、そしてパルプとしてはこれだけふえるというのか。その辺、非常に、先ほど長官もおっしゃったように、製品輸入というものが今後は非常に私は問題になる、あるいは考えなければならない趨勢であろうと、こう思います。したがって、このようにふえていくパルプ需要に対して、通産省としては、まず第一点、海外におけるパルプ工場、これの新設、あるいはパルプとして持ってきたいという計画、そういうものを一応五十六年をめどとしてどのように考えておるのか。  それから、時間がありませんから続いて御質問しますが、国内におけるパルプ工場、これはどのように整備体制をとろうとするのか。先ほど長官もちょっと言われましたが、国内におけるチップ材、これは国内にあるわけです。それがなかなか消化されないから造林も進まないと、こういうお話もあったわけでございますが、そういう関係で国内材を、やはり廃材に近い、ほんとうにパルプ工場はそれを使っていただくことは非常に日本経済として、あるいは森林として私は非常に有効なことだと、こう思いますが、そういう意味合いを含めて国内のパルプ工場の整備はどのように考えておられるか。  それからもう一点、最近資源愛護という面から、古紙の回収というものが叫ばれつつあると思います。新しくつぶすよりも、すでにある紙をもう一ぺん再生産する、古紙回収ということ、そういう利用形態、この三点について、大体五十六年をめどにしてどのようにお考えであるのか、その辺をお示しいただきたいと、こう思います。
  86. 村岡茂生

    説明員(村岡茂生君) 紙、板紙に対する需要でございますが、現在千六百万トン程度のものを生産しておるわけでございますが、文化の向上あるいは経済の成長に伴いまして、私ども昭和五十五年で一応計算させていただいておりますが、二千四百万トン程度に需要が増進すると、このように考えておるわけでございます。当然、これに見合いまして、原料も多量に消費するようなことになるわけでございますが、先ほど来お話がございましたように、一つの重要な資源であります国内原木、これにつきましては、いろいろ環境問題、国土保全問題等々がございまして、私どもは、可能な限り国内のチップ、廃材等によるチップの安定的な拡大を望んでおるわけでございますが、現状においては先行きそれほど大幅な伸長も期待できないという現状にございます。  そこで、いろいろ対策を講じなければならないわけでございますが、第一点は、海外のチップ及びパルプの確保の問題でございます。その中で、特にパルプの工場進出と申しますか、これが非常に重要な要素を占めてまいりつつございます。御案内のように、資源保有国におきましては、資源輸出を加工度、付加価値の高い形で輸出するということを指向しておりますし、また、そのようなことがわが国の経済協力にも資すると、こういう見地に立ちまして、可能な限り——いろいろ不利な面もございますが、これを乗り越えて海外へパルプ工場の進出をはかり、安定的なパルプの輸入をはかるということを指向しております。現在もアメリカ、カナダ、ニュージーランド等に五つの工場がすでに進出しておるわけでございますが、このほか、昨年来閣議了解をいただきましたブラジルの大規模なプロジェクト——約四十万ヘクタールの土地にユーカリの木を植えて、これをパルプ及びチップにして日本に輸入する、こういう計画でございますとか、その他、ただいま動き出そうとしておりますソ連のパルプ・プロジェクトの問題あとハワイとかブラジルとか多々ございますが、そのような海外に対するパルプ工場の新設ということに重点的に指向してまいりたいと、こう考えておる次第でございます。なお、それに伴いまして、工場の形態もどちらかといいますと臨海地域に立地するようなケースが多いのではないかと思います。  それから第二のポイントは、先生指摘のとおり、古紙の回収を促進しこれを積極的に利用してまいるということでございます。四十八年におきましては約六百万トンの古紙を回収し再生いたしたわけでございます。回収率は約四〇%、これは世界一の回収率かと存じますが、いろいろ紙パルプ産業の省資源化という方向に即しましてもっともっとこの回収を上げるべきだ、こういう見地に立ちまして、通産省といたしましても古紙の再生利用促進対策を促進いたしたい、このように考えております。このために具体的には、本年度から財団法人の形によります古紙再利用促進センターというものをつくりまして、これに国から約一億三千万円程度の補助を与えまして、回収促進のためのPR、地方公共団体に対する援助、あるいは古紙回収業の構造改善のための債務保証であるとか、古紙の需給価格の安定に資するための備蓄場の運営等の事業を行なおう、このようなもくろみで近々団体を設立し、その運動に入ろう、このようにしていく所存でございます。  なお、国内の廃材を利用したチップ等につきましては、可能な限りこれを増加していただくようにお願いしたい、かように考えております。  以上でございます。
  87. 片山正英

    片山正英君 時間がないので簡単にお答え願いたいんですが、いまの古紙回収の問題は、現在何%ぐらい回収されて、それが昭和五十五年ですか、何%までやろうとする目標なのか、その辺ちょっと御説明を願いたい。
  88. 村岡茂生

    説明員(村岡茂生君) 四十八年におきましては現在の——まだ一部推定でございますが、約四〇%でございます。これに対しまして五十五年の正確な見通し——私どもの単純な試算でございますが、四五%、そのように想定してございます。
  89. 片山正英

    片山正英君 なるべくそれは多いほうが努力目標としてはやっていただきたいと思いますが、もう一点だけ、通産省にお伺いをいたしますが、私、本で見ますと、産業計画懇談会というのがございます。財界の有能な方々が今後の資源問題についていろいろ検討しておられる。その中で一つ産業形態としての構造改善の問題を取り上げております。その中で端的にパルプ問題に触れております。読みますと、どういうふうに書いてあるか見ますと、国内のいろいろなパルプ適材あるいはそういう廃材関係、これは極力日本の国内において合理的に利用する、こういうことが正しいというふうにある半面、外国からのパルプは原木で輸入するとかチップで輸入するとか、それは公害問題も含んで、あまり適当な方法じゃないと、むしろパルプで輸入すべきじゃないだろうか、国外からは。国内のものはもっと合理的に利用する体制をとるべきではないだろうか。こういうように見える懇談会の資料を私拝見しているんですが、それに対して通産省はどうお考えですか。その点についてお伺いをいたしたい。
  90. 村岡茂生

    説明員(村岡茂生君) 先生指摘産業計画懇談会の答申は、主として環境面及び公害面からの産業のあり方をアプローチしたものかと存じております。私ども通産省といたしまして、基本的に、かつ長期的にものごとを考えますならば、このような方向に沿っていくべきであろうと、こう考えております。しかしながら、製品の供給の安定性と価格の安定性とを考えて、この内容を急速にいま直ちに行なうということにはいささか無理がある。若干時間をかげながらこういう方向へ誘導していくということがあり方なのではないか、かように考えておる次第でございます。
  91. 片山正英

    片山正英君 時間も非常にないんでかいつまんでまたお伺いしますが、木材価格の問題に触れたいと思います。  農林物資の価格の問題は、大体供給のほうが上がり下がりする。たとえばキャベツ一つとっても、需要がそう急激にふえるわけではない。しかし、供給は豊作、あるいはそうでない、気候の変化等があって非常に供給にアンバランスがある。そのために価格の変動が、非常に暴騰したり暴落したりする。これは農林物資の特色であります。ところが、木材についてはちょっと趣を異にしまして、むしろ需要の伸び縮みが非常に多い。景気のいいときはうんとつくる、住守ローンをはじめとして非常に多い。ところが、景気が悪いと一時にそれを縮小してしまう。したがって、供給についてはそれほどの変動はないにかかわらず、これは暴騰、暴落をしやすい傾向を示すというふうに言えるんじゃないかと思います。そこで私は、やはりこれは世界各国の 勢のようですが、木材価格の暴騰、暴落は、あに日本ばかりじゃなしに世界各国の大問題にいまなっておるようでございます。各国はそれに頭を悩ましている、これが実態だと思います。  そこでお伺いするんですが、やはり需要供給という、そういう総需要抑制がいま全体でやられておりますが、木材についても需要供給というものをもっと関連づけていくと、そういう体制を整えるということがぜひ必要ではないかと、こういうふうに思います。  時間がありませんから、やりとりは省略しまして、私の考えだけを述べますと、林政審議会というのが林業基本法に基づいて設置されております。民間の有識者がその委員になっております。その委員を補佐するような意味合いにおいて林政審議会に幹事会というのが設けられております。そして、何をするかというと、これは法律に書いてあるとおりでございますが、木材価格・需給という問題が林業基本法の一つの安定すべき命題でございますから、当然その問題は林政審議会においても対処しなければならない、こう解釈できるわけでございます。とするならば、私は林政審議会の委員の方々の、学識経験者の方々の御意見によって一応の推進はされておりますけれども、もう一つ、それをささえる意味において幹事会、これが私調べてみますと、関係各省の大体局長クラスが全部網羅されております。農林省は官房長、林野庁長官、通産省も官房長、それから労働省も官房長、建設省計画局長、環境庁は自然保護局長、大蔵省は官房長等々、十九の関係各省のいわゆる責任者がその幹事会を構成しております。したがって、私は、その幹事会においてこの木材の需要問題住宅ローンの問題であるとか、あるいはいまのパルプの大きな構想があると思いますが、そういう問題をこの幹事会において、法律に基づいた幹事会においてもう少し詰めて、そして委員会にもはかり閣議に持ち出すと、こういう体制こそまず需給問題を安定させる一つの手段ではないだろうか、このように実は思うのでございますが、これらの運用面についてどのようにお考えなのか、まず御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  92. 福田省一

    政府委員福田省一君) 木材価格につきましては、一昨年の夏以降、需給のアンバラから価格が暴騰しまして、秋には相当、十一月がピークでございました。その際に、木材の価格の安定対策という基本にやはり需給の安定がなければならぬということを考えまして、実は木材の価格の安定の研究会というものを設置しまして、それぞれ各分野からの専門の方々にお集まりを願いまして、それで答申をいただいたいきさつがございます。確かに先生指摘のように、林政審議会に、第四条にはこの幹事会を置く規定はあるわけでございまして、これは委員を補佐する機関ということになっております。で、ただ私考えますに、この幹事会は、やはりここにありますように、二十人の委員を補佐する一つの組織でございますので、大体は現在のところ各省の官房長を主体に構成しているわけでございます。でき得れば、確かに先生指摘のように、この幹事会でもって、特にこの需要の面についての調整ということについては役所間の相談も必要なわけでございますので、そういうふうにしたいわけでありますが、官房長を主とする幹事会の運用っていうのはなかなか実際問題としては非常に困難がございます。そこで、林野庁のほうから直接関係各省に折衝いたしまして、いまお話しの点につきましては十分協議してきたつもりではございます。ですが、まあ組織としてこれを活用しなきゃならぬじゃないかという御意見につきましては、今後十分研究させていただきたいと思いますが、従来の経過を申し上げると以上のとおりでございます。確かに需給問題をもとにしてこの価格の安定対策を練らなきゃならぬということに考えておりますので、近い将来におきましては、需給安定法のようなものもやはり考えなきゃならぬと思っておりますが、その際にひとつ先生の御意見を十分尊重いたしまして、その方向検討してまいりたいと考えております。
  93. 片山正英

    片山正英君 私は、いま言いました、林野庁がいろいろな調査の中で木材需給というものを打ち立てるわけでございますが、やはり一つの林産課では限界がございます。そのような意味で、こういう機構を活用して、これは資料を要求する、あるいは資料を提出願う、そういう権限も与えられ、そうして各省が協議できる組織体があるわけですから、ぜひそういうものを活用して初めて政府として一体とした私はいい案に持っていけるんじゃないかというふうにどうも考えられてしょうがございません。そうでないと、どうも三年に一ぺんぐらいはいつでも木材の暴騰暴落、相変わらず林野庁はけしからぬと、こういうようなお小言が出るんじゃないかというふうに思いますだけに、ぜひこういう点を、先ほど長官は、木材安定対策、法律でも考えようということで前向きな非常に積極的なお話でございますから、ぜひそのような考え方を、私の考え方を十分ひとつおくみ取りいただきまして対処していただければと、こう思っておる次第でございます。さらに進んで木材安定法、これをおつくりになるということですから、非常にけっこうなことだと思います。そういうような総合施策の中で初めて今回予算をされました備蓄対策というものが私は生きてくるもんだと、ただ備蓄対策一つ木材価格安定を全部やろうというところに無理がある。やはりその前に需給調整の問題を本格的に取り上げることこそ需給対策のまず方向ではないか。それでもなお漏れるところを今回の予算の備蓄対策でカバーすべきじゃないかと、こういう考え方を持っておりますので、ひとつ御推進、あるいはそういう方向でひとつぜひ御検討をいただきたいと思います。  それから、時間もありませんから、あとシイタケの原木の問題についてちょっとお伺いいたします。  いま、山村における木材の所得というのは相当のウェートでございますが、その一割を占める大体六、七百億というのが山村におけるシイタケから上がる所得でございます。非常に私は場所によっては重要な農林物資の一つだと、こう思います。そこで、いま現在、原木が非常に高くなって困る、国有林の売り払いは三倍ぐらいになっちゃう、これじゃもう安定ができないというようないろいろな問題点が私のところに文句が来ております。そこで、林野庁はやはり原木対策というものを本格的にやってもらわなければならない。いまや薪炭材はもう要らないわけでございます。ほとんど少なくなったわけですから、このシイタケ原木対策というのは農山村における私は安定を行なうべき一つ方向である、そのための原木対策というものが私ははっきり御指導を打ち出していただきたい。  それで、これも資料をいただいていますから、私から先に言いますが、何か方向としては、森林面積の三%だけをシイタケ原木に大体充てようと、こういうようなお話を承っておりますが、それでほんとうにいいんだろうか。それから、全国的に三%といっても、これは地域によって非常にアンバラがあります。宮崎とか大分とか群馬とか、こういったものは非常にシイタケの集中した産地です。全国一様にはいっておりません。したがって、三%といってもこれがそいつに重点的に配慮されない限り私はその原木確保というのは困難である、暴騰していく、こういうきらいもあると思います。したがって、そういう意味合いの長期見通しを踏まえて、かつ、国有林の販売を踏まえて——国有林の販売のほうが高いと言っていますから、その販売も踏まえて農山村安定のひとつの方向づけを林野庁は積極的にやっていただきたい、こういう意味合いから、ほんとに簡単でいいですから、長く必要ありませんから、簡単な要約した御答弁をお願いします。
  94. 福田省一

    政府委員福田省一君) シイタケは、いま御指摘ございましたように、農村における副業として重要な収入源にもなっておりますが、非常に国有林の、特に国有林について原木が高いではないかという御指摘を受けております。ほかの委員会でも再三御質問を受けたのでございます。  国有林の例をとりましてちょっと簡単に具体的にその対策を申し上げたいと思いますが、まず、同じ木がパルプになったり、それからシイタケ、ナメコの原木になったり、木炭の原料になったり、いろいろ用途がございます。ところが、パルプが上がったために引きずられて価格が上がっているという傾向がございますので、まずこれを振り分けて——手はかかりますけれども、振り分けて販売するということをひとつ指導しております。  それから、共同買い受け制度ということも考えまして、製材業者等と一緒に買う場合に、その内容区分して、共同買い受けにして内容区分してそれぞれの手に渡るようにするということもいたしております。  それから、特に私は部分林制度というものを推進する必要があろうというように考えますので、シイタケだけについての特別の部分林制度でこの原木を確保するということを積極的に奨励してまいっております。  以上、簡単でございますが、特に国有林についての対策でございます。
  95. 片山正英

    片山正英君 私の与えられた時間ももう一、二分でございますが、最後に一点だけお伺いして質問をやめます。  この前、三月八日の朝日新聞の夕刊に、「乱伐黒字」という論説が出ておりました。読みますと、非常に国民を惑わす私は表現であるし内容であるような気がいたします。大体「乱伐」の定義もない、「黒字」という定義もないわけですから、何か林野庁が非常に乱伐してそうして黒字にしたんだと、端的に言えばこういう印象しか受けない表現を私見ておるわけです。  そこで、私は、林野庁としてもこれは、こんなものでは満足——満足というか、国民を惑わすような結果になるんじゃないかと、私もそう思います。また、事実とすればこれはたいへんなことでございます。しかし、定義も何にもないんで、「乱伐」は何か、「黒字」は何かなしに書いてあるわけですからおかしなことでございます。しかし、こういう文章も出た以上、私は、林野庁としてこれに対する確固たる御説明、簡単でいいですから、していただきたい、こう思います。
  96. 福田省一

    政府委員福田省一君) 簡単に、という特にお話でございますので、かいつまんで申し上げますが、国有林経営の方針につきましては、四十八年の二月閣議決定を見ました資源の基本計画に基づきまして、五十年の先の方針に基づいて国有林計画をつくっているわけでございます。したがいまして、その内容を簡単に申し上げますと、国有林経営は、けさほど冒頭に申し上げましたように、優秀な森林を永久に残すということでございますので、従来の木材生産ということを重視し過ぎた経営を変えまして、特に伐採の方法は、皆伐の場合は小面積にする。あるいはそれを分散させる。あるいは天然林として経営する場合にはその内容をさらに改良を加えていく。いろいろとにかく公益的な機能を重視した施業方針をとっているわけでございます。従来の伐採量に比べますというと、その内容は最盛期に比べますと約三割ぐらい伐採量を減少いたしております。しかし、内容がよくなってまいりますと、次第にまたその生産量がふえてまいりますけれども、要するに公益性を重視した経営をするということでございますので、赤字を消すことが一つ目的であるというふうには考えていないわけでございます。そういう方針に基づきましてこの国有林経営内容を組織の面から、あるいは仕事に応じた人員の配置から、近代化計画を先般の林政審議会の答申を得ましていま具体的に作成しておるところでございます。  そこで、新聞にもこういったような字が出ておりますけれども、「乱伐」ということはどういう意味で出ているのか私たちはその理解に苦しむのでございますが、一定の方針に基づいた、いま申し上げたような伐採をいたしておりますし、特に、その内容につきましては、治山事業その他につきましては、公益的な面につきましては一般会計からの財政負担もお願いしておるところでございます。でございますので、結果としては特別会計制度ではございますけれども、一般会計からの公益的な面についての導入を相当にしておりますから、赤字、黒字という問題は簡単には判断しかねるものであるというふうに考えておるのでございます。いずれにしましても、経営の姿勢としましては、公益性を重視して、そうして必要な、いい森林をつくるための伐採をし、あと地の造林をしていくという考え方に立っておりまして、決して黒字を出すために乱伐をしていくというふうな考え方ではないということだけを申し上げておきたいと思います。
  97. 片山正英

    片山正英君 世界の各国の趨勢は、林野庁というのは非常に山をよくする官庁である。これはヨーロッパその他でもそのような通説が通っております。そして国民はそれを期待しております。ところが日本においては、どうも林野庁というのは乱伐したり乱開発するところだろうというような世論の新聞がたまたま散見します。残念だと私は思います。そういう意味で、林野庁はもっと積極的にこういう問題を国民に解明していただきたい。これこそ私はその誤解を解くものだ。また悪いところがあれば謙虚に反省する、こういう態度こそ必要だと。世界の大勢はまさしく森林の愛護に向かっており、それは林野庁がやるべきだというほんとうに熱意を持った支持があるのに、どうも日本はそれがない。情けないことでありますから、積極的な対処こそお願いを申し上げたいと思います。そして、たとえば、いやしくもべースアップによって、そのべースアップによって山の保護がそちらのほうに、金が使われて、そうしてほんとうに山を育成するほうに使われていかないというのであれば、これは本末転倒になりますから、これも限界があると思います。いろいろな問題もあるし合理化の問題もあると思いますから、一がいには言えるわけでございませんけれども、やはり山の育成の費用については、これは大蔵省ともどもよくお打ち合わせをいただいて、国民に誤解を招かないような方向こそ確立をしていただきたい。これは御要望でございます。  それだけを申し上げまして私の質問を終了さしていただきます。たいへんありがとうございました。
  98. 神沢浄

    ○神沢浄君 それでは午前に引き続いて若干の質問を続けたいと思いますが、午前中に申しました地方公共団体並びに公有林の関係に関してもう一例あげてお尋ねをしてみたいと思うんですが、山梨と長野県の県境に近いところに小淵沢町という町があります。この小淵沢町の地域内に今度肉牛のセンターを建設をするという計画がきまりまして、これは四十九年度から着工すると、こういうのでありますが、私がこの問題をあえて取り上げるのは、いわば午前中から繰り返し言ってきております、山を守っていくということにかかわるのではないかと思うからであります。約三百十四町歩です。これは県有林のほとんどが部分林ですね。部分林でございまして、大体十五年生から二十五年生くらいのカラマツの美林地帯。聞くところによりますと、この部分林の関係ですから結局補償が行なわれるようでありますが、補償の額の精算が約四億円近くになるというのですから、これは相当の美林地帯であるということを御推察いただけると思うわけなんですが、これをもとより伐採をして肉牛センターの計画を進める、こういうことであります。すでに県議会の中においても反対意見などもありましたけれども、決定をされて新年度もう着手と、こういうことになっているわけなんですが、こういうような私は肉牛センターというのはまたこれは農政の面から確かに必要大切のことだと思います。しかし、申し上げましたようなカラマツ美林の地帯をわざわざこわさなくても、もっとやっぱり検討する余地もあるんではないかと思いますし、同時に、このような計画検討されることについては、やはり森林行政というふうな見地から、いまのところでは国は全然かかわり合いを持たない、いわば県が独自に計画し遂行するというような、言うなれば、全く国の影響というものは受けないような形になってしまっているようでありますけれども、これだと、何か午前中から同じようなことを申し上げておるんですが、せっかく今回の森林法改正の中でもって開発規制などを新たに取り上げて、そして言うなれば、森林日本をつくり上げていこうという、こういう法の精神からいたしましても、とんでもないところに大きな抜け穴があって、いわば地方公共団体の事業あるいは公有林の扱い、こういうふうなところでもって、これが大きな抜け穴になって、法律そのものはもとよりかかわり合いは持たぬにいたしましても、国の森林行政という立場からいたしますと、全く、何といいますか、大きく失っていかなきゃならないような、こういう関係というものが、私には何としても心配の種になるわけでありまして、こういうようなことについて今後どうあるべきかというような点でもって少し長官の御意見から承りたいと、こう思うんですがね。
  99. 福田省一

    政府委員福田省一君) 林野庁としましては、現在あります森林、これは国有林民有林、含めてでございますけれども、けさほど申し上げました二千五百万ヘクタール、約六八%が森林でございます。これはそれで十分かというと、世界各国に比較しまして一人当たりの森林面積にしますというと、百四十六カ国のうちに百十番目ぐらいでございまして、非常に少ないというふうに私たちは判断しておるのでございます。でございますので、林野庁だけの立場から申し上げますと、できるだけこの森林は減らさぬようにする。むしろ逆にふやしてその内容を充実してまいりたいと。それでさえもなお、将来自給率はいまよりよくなりますけれども、だいぶ外材に依存しなきゃならぬ度合いというのはやはり四割ぐらいでございます。そういうふうに思っておりますが、しかし、最近、私から申し上げるまでもなく、畜産振興の問題もきわめて重要でございます。そこで、数年前にできました国有林の活用法案というものがございます。あの精神に基づきまして、できるだけ私たちも御協力するようにいたしております。畜産局と林野庁の間におきまして、はたして畜産振興に役立つ土地がどれくらいあるかということも基本的には最近調査することにいたしております。で、ここの場合は県有林ではございますけれども、やはり同じような精神でできるだけ森林というものは保存していきたいと思うわけでございますが、そこに畜産振興と森林系統の調和点をどこに見出すかというなかなかむずかしい問題もございますが、よく私たちも、国有林のみならず、そういった面につきましても、林野庁と畜産局との間でよく連絡をとりまして、同じ農林省の中でございますので、具体的に現地を検討し、調整をはかってまいりたいと思っております。  いま御指摘の三百十四ヘクタールの問題でございますが、採草地、放牧地、混牧地、森林、いろいろ内容はございますけれども、できるだけ森林をそこへ残す。たとえば放牧地とか混牧地はこれはできるだけ森林を残すわけでございますけれども、建物をつくる場所はどうしても切らなければならぬということもありましょうけれども、そういう意味で、これは具体的な問題でございますので、必要なものであるならば、農林省としてもよく連絡をとりながら、県を指導してまいりたいと、こう考えております。
  100. 神沢浄

    ○神沢浄君 私は繰り返し心配の点だと、こういうふうに申し上げておるし、今後こういうような事態にどう対応していかなきゃならぬかということなんですが、まあ、私が三つばかりの例をあげたわけですけれども、結局は、その目下のところ、国とすればですね、県が定める計画、しかも、それが県有林ということにおいては、全然これは手のつけようがないという、こういうことにしかならないですよね、そういう点はどうなんでしょうか。
  101. 福田省一

    政府委員福田省一君) 森林二千五百万ヘクタールのうち、国有林は約八百万ヘクタール、残りの森林のうち約七百万ヘクタールというのは、保安林とか、あるいはある程度規制をされておる森林でございます。全然いまのところ何の規制方法もないという普通林が約一千万ヘクタールあるわけでございまして、今度の森林法改正趣旨は、この一千万ヘクタールの普通林について何とかひとつ規制をしてまいりたいと、行き過ぎた乱開発を押えるという趣旨で発足したものでございます。でございますので、国有林なりあるいは公有林というものにつきましては、それぞれ農林大臣あるいは県知事というものがこれを規制してまいるわけでございますが、私有林につきましても、先ほど申し上げましたように、大体一町歩以上の許可制をするということを考えておりますし、それから、午前中に道路のことを先生しばしばおっしゃっていただきました。で、面積一町歩以上ということもありますが、道路につきましても、やはりこれは延長で考えますけれども、規制についての基準を設ける考え方でおります。そういう形で私有については規制いたしますが、公有林につきましてもやはりそういった指導をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  102. 神沢浄

    ○神沢浄君 その指導をしていく方途というか手続なんですけれども、午前中からの論議の上でもって私が判断するのは、せっかく森林法改正を行なって、いまお話にありました普通林に対して、乱伐から、乱開発から規制をしていくと。これはその点におきましてはこの法の改正によって十分の目的の達成というものが期待できるだろうと思うのですが、そういう国としては苦労をされていながらも、一面においては地方の公共団体がしかも公有林について私は道路の問題をあげたり、いまこの肉牛センターの問題をあげたりしておるわけなんですが、こういうような事業計画を立てて、そして遂行していく。これに対して国が、国家的な立場から、いわゆる森林の行政という立場から、何らチェックの方法がない。指導といいましても、それはいわゆる、おかしな言い方になりますか知りませんけれども、法制の上においてやれる指導じゃなくて、言うなれば、ほんとうに行政的な任意な指導というようなこと以外には方法がないわけなんですね。これは決して有力な手段ではないでしょうから、指導を受けないという場面だって十分——受けないといいますか、聞きいれないという場面だってもそれは当然あり得るでしょうし、そうなりますと、森林法という限られた部面においてはそれだけのことかもしれませんが、それらを離れて、ほんとうに日本森林問題という見地に立って考えれば、やっぱりこれは、公共団体の事業と公有林問題というやつは大きな抜け穴になっていってしまうじゃないかという、それが非常に心配になりますもんですから、幾つかの引例をして意見を申し述べたのでありますけれども、現在においては、端的な言い方をしますけれども、国としては、法制度上の手だてというものはこれはもうないと。したがって、やはり積極的に任意な指導というようなものを心がける以外にはないと、こういうようなことになってしまうんだと、こう思うんですが、この点でもってやはり今回民有林対象の法の改正というものをなされるとともに、さらにいま取り上げております公有林の問題、それから地方公共団体の事業に対してのいわゆる法制上の指導の行なえるようなことをやっぱり考えていく必要があるんじゃないか。それをしなければ、そこが大きな抜け穴になってしまうと、こういうように思うもんですから、その点を問題として取り上げているわけなんですけれども、そういう点についてはどうなんでしょう。長官のお考えなどを聞かしてください。
  103. 福田省一

    政府委員福田省一君) 国有林でございましょうが、あるいは公有林でございましょうが、あるいはまた私有林の場合につきましても、所有形態のいかんにかかわらず、森林開発については、ある程度の基準を設けて、これ以上のことをやってはいかぬぞと、基準をつくる話につきましては先ほど申し上げたわけでございます。たとえば水の問題それから土砂流出の問題、それから環境の問題と三つに分けてやるんだと、それは次官通達でこまかい基準をきめますと、こうしたわけでございます。なぜそれを法律に入れなかったかと申しますというと、北は北海道から南は沖繩まで、いろいろと山の地形、はえております木、気候、風土、それぞれ違うわけでございますから、一律の基準ということはなかなか定めがたいので、できるだけこまかい一つ基準をきめて次官通達の形でそれを運用してまいる。それを使うのは農林大臣であり、都道府県知事であり、市町村長であり、また一般の私有林につきましては、それに基づいて知事許可制にするということにいたすわけでございます。  で、先生、御出身が山梨県ですから、特にその地帯について御心配かと思います。北海道に次いで県有林が一番多い県でもございますし、また、あそこは御承知のように恩賜林ではございますが、相当切ったあとでございまして、これから育成しなければならぬという森林を多くかかえております。かつていろいろと台風の場合、被害を受けた例もございました。なればこそ、やはり特に山梨県の場合にはそういった御心配があるかと思います。いま申し上げたような基準によって、こまやかに通達を出しまして、それに基づいてその地域実態に応じて判断していただくわけでございますけれども、どうしても知事が何か恣意的なことをする危険性があるということがもしありますれば、あまり発動したことはないんでございますけれども、一つは地方自治法、それから国家行政組織法に規定がございまして、一般的に主務大臣の指揮監督下に入っておりまして、これに違反する場合には、主務大臣が知事に対して行なうべき事項を命令し、さらに次に裁判所の裁判を請求し、それから確認の裁判に基づいて、当該知事にかわって当該事項を行なう——代執行でございます。それから内閣総理大臣が当該知事を罷免することができる。また、内閣総理大臣に請求して、知事が是正改善に必要な措置を講ずるように求めることができるというふうなことをうたっておるわけでございます。ですが、先ほど申し上げましたように、ほとんどの県におきまして、それぞれの条例に基づいて、むしろ西のある県におきましては、私たち森林法考えている以上のきびしい条例をつくっているところもございます。つくっていないのはたしか二県ぐらいしかございません。ですから、国のこの法律に基づきましてその各県のアンバラを是正しながら指導していくことが大事かと思っております。最後のきめ手としては、いま申し上げたような法律もございますので、ひとつ御了承を願いたいと思います。
  104. 神沢浄

    ○神沢浄君 保安林の関係というのは、これはありますか。
  105. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保安林国有林民有林通じまして、大体全森林の三割ぐらいは保安林になっております。そのうちの大部分が水源涵養保安林、約七五%を占めております。これは非常にきびしい規制をまたいたしておりますわけでございます。
  106. 神沢浄

    ○神沢浄君 ですから、午前中私が取り上げました例のスカイラインや自然公園道路計画というようなものについては、これは当初のスカイライン構想などは、申し上げましたように八五%が、その工事計画の路線の八五%が保安林というわけで−すね。その大部分は水源涵養保安林、こういうことなんですけれども、その後計画がどんどん進行していったわけなんですよ。ですから、保安林についてのかなり強力な指導のかかわり合いというものがあるとするならば、そのような計画のほしいままな進行というようなものは、これはもっとずっと早い時期でもって問題にし得たじゃないかというふうに思うのですけれども、どうもその辺の関係が、私などにはもう理解がしがたいのでありまして、したがって、まあ国の側といたしますと、公共団体の事業というのは、これは憲法が自治の本旨をもう認めておりますから、したがって、ある程度お互いに独立、それぞれ対等の立場に立つというような関係が基調になっておるように思いますので、この指導面なんかにおいても、平たい言い方をすると、相手が県であるとつい遠慮をしてしまうというか、非常に消極的な姿勢でありがちである。  ところがそういうような状況の中でもって、午前も申し上げたように、とにかく連峰スカイライン構想などというのは、山梨の主要な山を、ほとんど骨格のようなところを全部対象にしてしまうわけですから、繰り返すようになりますけれども、富士箱根伊豆国立公園から秩父多摩国立公園から、八ケ岳中信東部の国定公園から、そういう地帯をこれはほとんど網羅してしまうですからね、こんな重大な計画というものが、しかも八五%にも及ぶような保安林の地勢上にどんどん進行してしまっているというふうな点が、私は、何としても大きな盲点になっていくんじゃないかということが憂慮されるわけなんでして、ですから、繰り返しになりますが、私はやっぱりこれが大きな日本の国全体の森林行政というものの上での抜け穴なんかになっていってはいけない、こういうことでもって、この森林法の中でいま目の前にということを言うではありませんけれども、森林法改正をして、そうしていわゆる民有林規制指導の傘下に置くようにした以上は、やはり公有林問題というやつをこれは次に取り上げる必要があるんじゃないか。そうしないことには、この国全体の森林行政というものは成り立っていかない、そこに大きい落とし穴を残してしまう、こういうことを実は申し上げているわけです。  この問題にばかりかかってもおれませんから、以上でもってこの問題は終わりますけれども、もう一度ひとつ、長官とそれからできたら次官からも、今後への対応の考え方といいますか、さらに承っておきたいと、こう思います。
  107. 福田省一

    政府委員福田省一君) 県有林、市町村有林、そういった公有林も相当の割合を占めているわけでございます。先生の御指摘の点、十分承知いたしました。特に、過去におきましては公有林が非常に荒れておった歴史もあるわけでございます。入り会い関係のありました山につきましては特にそういった点がありましたので、これにつきましても、入り会い林野の近代化に関する法律をつくって逐次整備しておるところでございますけれども、御趣旨の点を十分私たち考えまして、次に基準を出します場合に十分配慮してまいりたいと、こう思っております。
  108. 神沢浄

    ○神沢浄君 次官からの御意見は次の機会があるときに一緒に承ることにいたしまして、法案へ戻りますが、十条の三項に、ときによれば条件をつけて許可をすると、こういう条文がございますですね。まあ、これもしかし、やっぱり知事権限にゆだねられているわけだと思いますけれども、ただ、条件をつけてといっても、これ、どういう条件をつけるか、基準は示してないようですから、これは知事の自由裁量でもって条件をつける。そうすると、その続いて四項では、しかし、条件をつける場合に、不当の義務を課すようなことがあってはならぬと、こうその条文ではなっておりますが、不当であるかないかはだれがきめるのか。常識でというようなことじゃ、これは法律にはならぬと思うんですよ。その点はどうでしょう。条件範囲内容というようなものはどういうふうにきめていくのか。それから、これはまるっきり委任をした知事の自由裁量にゆだねてしまうのか。それから、その条件が不当であってはならぬと、しかし、不当であるかないかというような判断もどこできめるのか。これらの点をちょっとやっぱり明らかにしなきゃ、この法律運用というやつはやっかいじゃないかと、こう思いますがね。
  109. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) ただいま先生から御指摘ございましたように、この開発許可制度の運用につきましては都道府県知事の恣意にわたらないようにという点についての配慮をいたしたいということにつきましては、先ほど来長官からるる申し上げておるところでございます。で、いまお話のございました開発許可に付する条件としてどういうふうなものを考えておるかというようなことでございますが、たとえば工事の機関をどういうような形の機関に渡してやるかとか、それから、工事の結果、いろいろ支障を来たすというようなことに対しまして保安工事等をするというような形が必要になってまいるわけでございますから、そういう点についてはこうこういう保安工事をするようにとかというようなことを条件として、私どもがおそれておりますところの、国土の保全上害があるとか、あるいは環境保全に害があるとか、資源の確保に害があるとかいうふうな形のものを、そういうかっこうにならないようにやりたいというふうに考えておるわけでございます。
  110. 神沢浄

    ○神沢浄君 それはやはり午前中片山委員質問がありました許可の除外の条項を次官通達でもって示すというような運用をすると、こういうお話だったですが、やはりこの問題についても何かそうしたような方途がとられない限りは、これは全然知事の自由裁量ということにならざるを得ないと思うんですが、そういう点はいかがでしょう。
  111. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) 先ほどもお答え申し上げましたように、この開発許可制度の運用にあたっては基準を私どものほうでお示しをすることによりまして知事さんの恣意的な運用におちいらないようにというふうなことを考えておりまして、私どもといたしましては、この法律の施行の際にそういうふうなことに関する相当基幹的な、基本的な事項については施行通達ということで、次官通達で対処してまいりたいというふうに考えております。
  112. 神沢浄

    ○神沢浄君 それから、ついでにお聞きしておきたいと思うんですが、さっき長官の御答弁の中にも触れられておったと思いますけれども、もうすでにこの法改正の以前において、むしろ都道府県のほうが、ほとんど全国的に、条例をもって同様目的に対する条例制定をして規制をやっておる情勢というものを私どもも聞き及んでおるわけなんですが、そこで今回の、この法改正内容というものを策定をされる際に、それぞれそういう都道府県の条例の内容などを参考にされて検討をされているかどうか。というのは、法律をつくることによって、都道府県の条例と比べてみると、ある都道府県については条例のほうがきびしくて、法律がきまることによって何か逆行するような規制内容を府県によってはゆるめてしまうような、そういうことがあってはならないじゃないかと思いますのでちょっと伺っておきたいと思います。
  113. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) 先ほど長官からお答え申し上げました、都道府県が現在森林開発を含めたあと地利用に関する条例等をきめておるという府県の数につきましては相当数にわたっておるわけでございまして、条例とか要綱とかいうものを全然有しない県はわずかに四県というふうな状況でございます。府県が現在規定しております条例なり要綱なりというものにつきましては、府県できめます規制範囲、県民に対する制約というものにつきましては、憲法二十九条の規定の関係がございまして、条例の中で、あるいは要綱の中で規定する中身というのはごく軽度のものにとどめるというようなことが制約としてあるものでございますから、届け出等に主眼を置くというような形になっておりまして、われわれが現在考えておりますような内容のものにつきましては、ほとんど一つぐらいの府県ではないかというふうに考えるわけでございまして、大体、私どもが法律の上で規制をしていくということのほうがきびしいというふうにお考えいただいてけっこうだと思います。
  114. 神沢浄

    ○神沢浄君 そうすると、それでは次の問題に移りますけれども、けさほどから例の、何というんでしょうか、森林公益的機能計量化調査という、十二兆八千億という、こういう数字がときどき出ていたですけれども、この際に、手元に資料がおありでしたらちょっと私、お聞きしておきたいと思うんですが、大別でよろしいですから、たとえば大気浄化についてとか、あるいは災害防止についてとか、あるいは水源涵養についてとか、土砂の流出を防止するものについてとか、こういうふうなものをお聞きしておきたいと思いますが、いまここへ資料届けていただきましたけれども、一応しかし御説明をください。
  115. 福田省一

    政府委員福田省一君) いまお手元に差し上げましたパンフレットの一〇ページをごらんになっていただきます。ここに、森林機能のおもなるものでございますけれども、六つあげてございます。一つ水源涵養機能、次は土砂流出を防止する機能、その次は土砂が崩壊するのを防ぐ機能、それから保健休養の機能、それから野生鳥獣の保護の機能、先ほど出ました酸素を供給する機能、こう六つございます。その水源涵養機能と申しますのは、もしかりに日本森林がなかったとしたならば、森林がためる水、それにかわって堰堤をつくればいいわけです。その堰堤をつくるとするとどれぐらいかかるかというと一兆六千一百億円かかると、端的に申し上げますと、そういうことでございます。同じようにして、土砂流出防止、土砂崩壊防止、保健休養、そういったようなことをずっとあげますというと十二兆八千二百億円と、こうなるという計算でございます。これは約二年かかって現地でいろいろ調査した結果でございまして、これをもとにしてまた経費の負担等についてもいろいろその根拠をつくり出してお願いしたいと、こう思っておるものでございます。これは日本森林全部が一年間に出す一つ機能をお金に換算したものでございます。
  116. 神沢浄

    ○神沢浄君 そこで、時間もだんだん窮屈になってきたから端的に伺ってまいりますが、午前中の片山委員からの御質問の中でもって、私権を抑制をする以上は、つまり、当然補償の反対給付が考えられなければならない。これは私は民主主義というものの原則だろうと、こう思いますが、それに対して長官のお答えは、農地の関係などを引例をされまして、そしてお答えになっていたようでありますが、私はいまこうやって御説明を受けると、とにかくきょうこういう計量化の調査をすれば十二兆八千億円というような評価が成り立つわけでありまして、これから開発規制等を行なうことによって、言うなれば、この評価の額はさらにこれは増進することになっていくことだと思います。言うなれば、国家的な立場から見れば、この法を施行することによって国家側は収益を増大をしていく立場に立つわけですね。そうすると、私経済を制限をされるほうはやっぱりいずれかの形でもってそれだけの損失をするわけですから、ですから、これは収益を上げた国家の側から損失をした民家に対しては補償するという考え方は、私は原則的にはこれはちゃんと認められていいんじゃないかと、こう思いますが、いかがでしょうか。
  117. 福田省一

    政府委員福田省一君) この十二兆八千億といいますのは、国有林民有林全部を通じての効果でございまして、これによってどういう人たちが利益を受けるかと申しますれば、その下流に住んでいる人は水の関係では収益を受けましょうし、また、都会から山に遊びに行く人たちにとってはレクリエーションとしてのそういう機能の利益を受けるわけでございまして、国民全般がそういった受益者になるわけでございます。国とおっしゃる意味は、もし国有林という意味にとりますれば別に国有林だけの利益ということじゃなくて、受益の対象者は全部一億の国民であるというふうに考えたほうがいいんじゃないかと私は思うわけでございます。そういうことでございますから、これだけの十二兆八千億、一年間利益をあげているわけでございますから、恩恵を与えているわけでございますから、これはみんなで分担すべきじゃなかろうかということなんですが、さて、じゃ具体的にどう分担させたらいいかということを法律に盛り込むには、まだいささかこれだけでは、条件というかデータが不十分でございますので、実は四十九年度利根川の例を引きまして、こまかにいまその分担のしかたということを研究しているところでございます。それを待ってどういう形でこれを分担したらいいかということをさらに確立してまいりたいというふうに思っておりますが、午前中に片山先生の御質問に対して木曽川と琵琶湖の例をあげて実はお答えしたんでありますけれども、あれは一つの例でございまして、外国でどういうことをやっているか等もいろいろ検討しながら、利根川の例でひとつその方法を確立したてと考えているところでございます。
  118. 神沢浄

    ○神沢浄君 まあ、長官の御説明わかるんですよ。わかるんですが、十二兆八千億にこだわるわけじゃありませんが、この改正された法の施行によってさらにこの額が大きくなることは当然でしょう。それはやっぱり国家的立場から国が収益をあげているという法律上の考え方にはなるだろうと思いますがね。ところが、私権を抑制されたほうは土地を売りたくても売れないというようなことにもなるでしょうし、そこには当然法律上の損失を生ずることもこれは間違いないわけです。そうすると、収益をあげた側が、それは国民一人だけその収益を享受するなと、それは当然のことですけれども、それはやっぱり国が代表するわけですから、そうすると、収益をあげた側の国が損失を受けた民家に対して反対給付的な、いわゆる補償的な措置を講ずるというこの原則的な考え方は私は当然成り立つと思いますし、それは具体的にはどういうような方途を講じ得るかということになるとこれはむずかしい問題だろうと思います。午前中のお答えにもありましたように、たとえば農地の移動制限がなされたような場合に、それはどういう形で返すかということにつきましてはこれはたいへんなむずかしいことなんですが、しかし、農地などの場合においてはたとえば他の法律でもって公有地の拡大の推進の方法とかですね、その他というようなものがあって、希望すれば国が買い取るというような方途も開けているわけであります。ですから、私は林地についても、これはもし林家が希望する場合にはこれはやっぱり国が買い取ってやる——保安林はそうなっているんでしょうが——国が買い取ってやるというような扱いというものはやはり拡大して考える必要があるんじゃないか、こう思います。それで、それは常識じゃないかと、こう思うんですが、いかがでしょうか、ちょっと御見解を。
  119. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) 今回、開発行為規制を加えようということにしたゆえんのものは、最近山林に限らず乱開発が行なわれておるというようなことでございまして、そういうものを防止して、森林の持つ公益的機能確保していこう、こういうことを考えたわけでございます。で、今回の開発規制につきましては森林森林のままで残しておくということについては何ら規制をしていないわけでございまして、森林森林でなくするということによって、あるいは国土保全上害が出てくるとか、あるいは環境条件を悪化するとか、災害が起こるとか、そういうようなことにならないようにということで開発行為規制をするということでございますから、これは森林所有者として当然所有権に内在する義務ではないか。これは森林森林であるがままにさらに制約をする、公益的機能が非常に強い分については保安林として指定いたしまして、そういうふうに森林森林のままに置いておいて、なおかつ制約を加えておる。これは財産権に対する相当な制約になるわけでございます。これについては補償をするということが森林法の中でも規定されておるわけでございまして、森林森林のままの姿に置いておいてということでなしに、森林森林でなくすることについて制約を加えるということでございますから、これは私どもといたしましては所有権に対する、所有権の内在的な義務であるというふうに解釈いたしまして、補償の必要はないんではないかというふうに考えておるわけでございます。
  120. 神沢浄

    ○神沢浄君 しかし、これはあとから少し検討してください。おそらくこのままでは済まぬだろうと思いますね。まだ法律がこういう審議している最中だから、現実の問題化しませんからですがね。これはやっぱり規制を受ける林家の側からすれば、少なくとも自由が制限されることは、もう間違いありませんしね。たとえば、開発によるところのその林地を利用して一つ計画などを持っておったとしてもそれは不可能になるわけですから、これは有形、無形の損失が生じていくことは間違いないですね。ところが、一方においては、国家的見地から、国家側がやっぱり収益をそれによって受けることは間違いないですから、その関係というものは私はやっぱり当然成り立つし、これは国の政策として今後考えていくことが常識だろうと思います。ただ、その方途をいかにすべきかというようなことは、これは確かにむずかしい問題ですので、ここでもってどうも論議などしている事柄とは違うと思いますが、その原則については、これはやはり言い捨てなくて、今後検討をしていただきたいことを要望しておきたいと思います。  それから、もう時間がありませんから、最後に森林組合という問題について私がわからない点を一、二お伺いをして終わりたいと思うんですが、まあ、私などは山のことはわからないし、まあ百姓生まれですから、組合というとすぐ農業協同組合みたいなものが頭に浮かんでくるわけですが、この条文を読んでみますと、森林組合というのは、ちょうど農業協同組合が農家、農民、耕作者というものの利益、言うなれば、社会的経済的な地位の向上というものを目的にして、そして民主的に組織をする団体、というようなものとは若干違って、何かこの森林法というものの遂行のための、その中の一体系というふうな、まあ適宜な言い方がなくて残念ですが、ですから、協同組合なんかとは違った、いわば森林法を通じての森林施策の中でもって一つ役割りを果たしていく団体、こういう性格に理解をするわけなんですがね。ところが、書いてあるところを見ますと、森林の施業の合理化と生産力の増進というようなことを目的一つとし、さらには森林所有者の社会的経済的な地位の向上というようなこともうたっているわけなんですね。そうなりますと、私は、やはり組合理論の上から考えても、森林組合——まあ森林組合だとか施設森林組合だとか、何か出資施設森林組合とかいろいろありまして私には実際のところわかりかねる点が多いんですけれども、これらの問題はまたいずれかの機会に勉強さしていただくことにして、森林組合というものの性格の問題を、やはりまあ林家——林民ということばはないかもしれませんが、事業の遂行のための一体系ではなくて、やはり人を中心にした、いわば農業協同組合に類似をしたような、そういう組合に育成をしていくということのほうが私は妥当みたいな気がするんですけれども、そういう点はどうなんでしょうか。
  121. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) 森林機能につきましては、けさほど来、森林機能といたしまして、木材生産という経済機能のほかに、水源涵養であるとか、国土保全であるとか、生活環境保全であるとか、そういう公共的な公益的な機能を有するんだというふうなことがあるわけでございまして、森林が林木を成立さしておるということで、そのことによって非常に公益的な機能を持っておると、そういうことから、その公益的な機能のより一そうの発揮ということが森林法の大きなねらいであるということでございまして、森林法の中に規定されております森林組合につきましても、七十四条で、森林施業の合理化と森林生産力の増進というものを組合の目的としてうたっておると。同時に、普通の農業であるとか漁業であるとかというようなことで、農業、漁業に従事する者ということでなしに、森林所有者というものを構成の要件としておる。これは、森林が、いま申し上げましたような公益的機能を有するという、その公益的機能を有する森林所有者という属性においてこの団体の構成員になるというようなことを考えておるわけでございまして、通常の経済団体とは多少性格を異にするというふうに御理解いただいていいんではないかというように考えるわけでございます。  ただ、そうは申しながら、山村における森林所有者というものが、国民経済の中においてほかの業種の方々と肩を並べて均等な生活をするということは当然のことでございますので、そういう方々の社会的地位、経済的地位の向上をはかるということを並列的な目的にするということにいたしたわけでございまして、先生指摘のような意味におきまして、最初におっしゃったように、森林組合というものは森林公益的機能というものがかぶっておるがために、ほかの農協であるとか漁協であるとかいうものとは多少性格が異なるんではないかというふうに私どもは観念いたしておるわけでございます。
  122. 神沢浄

    ○神沢浄君 ただ、私がその点を取り上げましたのは、午前中の論議の中でも、たしか山づくりのにない手というふうなことが言われておりました。まあ、法律を直していく、制度を改善をして  いく、もとより必要なことでありますけれども、私は結局は日本の山を守っていく、日本の山をつくっていくというのは、だれがやるんではなく人がやるんですから、その人をどう養成をしていくか。さっきも林家、林民なんていうことを言ったんですけれども、かりにこういうことばがあるとすれば、ほんとうにこれからの山づくり——山を守るに足るような意欲を持った人を養成していかないことには、幾らりっぱな法律をつくってみたところでもって、全くこれは画餅と同様だというふうに考えられます。この人をつくるという点については、やっぱりこれは組合などの役割りというものがかなり大きいのではないか。したがって、山事業の組合ではなくて、人をつくりあげていくところの組合、ほんとうの意味の山づくりのにない手をつくりあげていくところのその組合というようなものをやっぱり考えていく必要があるんじゃないか。私の党なんかでは、そういう意味でもって、いわゆる組合というものの性格をはっきり独立をさして、そしてそのためには単独立法を考えるべきじゃないかというような主張を持っているわけなんですが、まあその主張を私はここでもって特に取り上げようとしておるわけではありません。ただ、いまのその法律の中でのただ単なる一つの実行体としての組合というようなことでなしに、ほんとうに人が集まって、人が中心になった組合というような、こういう考え方というものを今後やっぱり採用していく必要があるんじゃないかという考え方から申し上げているわけでありまして、その点の御見解など聞いて、時間ももうなくなったもんですから、終わりたいと思います。
  123. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) ただいま先生指摘の点はまさしくそのようでございまして、七十四条にも「森林所有者の協同組織」であるということでございまして、森林所有者が共同の力を結集して森林法で与えられておりますところの自分たちの責務を尽くしていくというような形の団体として規定をいたしておるわけでございまして、まさしく先生のおっしゃるとおりの性格のものとして育成をしていくべきであろうというふうに考えております。
  124. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十一分散会      —————・—————