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政府委員(
中村博君) まず
最初の、一時金を十年の暫定とすることに対する考え方でございます。これは、先生御承知のように、四十一年の
改正で、一時金制度を大部分やめまして年金制度にいたしたわけでございます。これは必要な期間、必要な方々に必要な額を補償しようということで御賛同いただきまして、一つの進歩としてそのような
措置をとったわけでございます。しかし、とりました段階におきましては、在来が一時金でございましたし、また、その意味で年金というものにおなれにならないという面もある。それからまた、たとえば
遺族補償について申しますと、おなくなりになりました直後はいろいろ不時の支出もあろうということを考えて四百日分という前払い一時金の制度が創設されて、ある程度の、ある限度の暫定的な
措置として置かれた、かように考えております。したがいまして、そのようなことでこの制度が発足したわけでございますけれども、やはり御
遺族の方々から、これに対しまして御要望もございます。たとえば、四十七年の実績について申し上げまするならば、十一件ございまして、千五百万程度のものを差し上げておる、こういうかっこうに相なっておるわけでございます。したがいまして、今回のこの十年ということで
改正をお願いいたしておりますのは、理論的にはいろいろ問題があるところでございましても、やはりそういったふうに利用なさっておられると、この実情は尊重しなければならぬ、こういうことから、いましばらく続けて、その辺の事後の動きを見まして、そしてその次の考えをしようと、こういうことで現状肯定という考え方でございます。
それから、前払い一時金をもらいますと、取りますと、これはいま申し上げました基本線に従いまして、当然のことながら年金の支給が停止されるわけでございます。たとえば四百日分では二年三ヵ月でございます。先生御指摘の千日分になりますと、大体五年ちょっとと、こういうことに相なります。しかし、この制度は年金の先払いでございまして、御
遺族のお
申し出によってやるわけでございます。したがいまして、確かに御指摘の点は一つの問題ではございますけれども、今般この
法律が
改正されますと同時に、労災のほうでもやっております特別資金というものを考えてございます。したがいまして、その金を、御
遺族にはその種類の別なく百万円差し上げるということを現在考えておるわけでございまして(それこれあわせて考えますると、この支給停止期間の
措置は、今回の百万円の支給によって相当程度緩和されるのではないかと、かように考えてございます。
それから葬祭補償につきましては、今年の四月から、在来七万円プラス
平均給与額の三十日分でございましたのを、七万円を九万円に上げまして、九万円プラス三十日分、かように相なっておるのでございます。そこで、このように
改正をいたしましたのは、四十八年の労働省の
調査で、葬祭料の
調査をいたしておるわけでございますが、これによりますと、たとえば九万円プラス
平均給与額の三十日分でございますので、
平均給与額が三千円としますと、九万円プラス九万円、したがって十八万円になる。このときの結果は、公営の
最低の経費が十一万五千円と相なってございますので、それをはるかに上回るというかっこうで、
民間の情勢との対応をはかった、さような所存でございます。
それから第四問の、今回の
改正におきます
ILO条約・
勧告との
関係でございますが、補償
水準をどの限度に高めるかという問題につきましては、これは絶対的なきめ手はないわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、
ILO条約なりあるいは
勧告なりというものを今回は一つの手がかりとして、そうして補償の
内容の
改善をはかろう、それを主として考えたわけでございます。したがいまして、その条約と
勧告と、それから今度の
人事院におきましては
意見の
申し出との
関係でございますが、たとえば
遺族補償につきましては、これはその標準
受給者というものを百二十一号条約で想定いたしてございまして、それには五〇%だと、こういうことになっておりますし、また構成人員も三人でございます。ところが、わが国の
調査によりますと、
遺族は大体平均の家族構成が三・一人でございます。一人おなくなりになれば御
遺族は二人でございます。したがって、その
ILO百二十一号条約におきます標準世帯、その三人はわが国では二人ではないかというところで、在来三人で五〇%のところを、二人で五〇%にいたした。これが百二十一号条約との関連でございます。
それから百二十一号
勧告との関連は、これは先生御承知のように、
給与補償については被災時の所得の三分の二にせいと、それから障害等級三級に該当するような重度障害につきましても、これもまあやはり三分の二にしなさい、それから
遺族補償につきましては
遺族の全部に支払われる給付の額の最大限を
規定すること、たとえば現在五人で何%ときめてございますが、そういうような場合には障害等級三級の場合の
障害補償の額を下らない額、したがって所得の三分の二を下らない額、こういうことになってございます。したがいまして、
遺族補償の額をきめますときには、標準世帯をずらしますことと同時に、その
最高額につきましてはこの
勧告の線を入れまして、
最高を
遺族五人で六七%、こういうようにいたしておるわけでございます。
大体そのような関連で、両方まあ国際的にいいところ――いいところといいますか、われわれが一つの
基準として示されましたもの、その中でまあ
改善のための手だてとなるものに準拠したと、こういうかっこうだと理解いたしてございます。