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1974-05-14 第72回国会 参議院 内閣委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十四日(火曜日)    午後一時十分開会     —————————————    委員異動  五月九日     辞任         補欠選任      岡本  悟君     田中 茂穂君  五月十日     辞任         補欠選任      高橋 邦雄君     郡  祐一君      田中 茂穂君     岡本  悟君      村田 秀三君     戸叶  武君      森  勝治君     上田  哲君      横川 正市君     鈴木  強君  五月十一日     辞任         補欠選任      岡本  悟君     渡辺一太郎君  五月十三日     辞任         補欠選任      渡辺一太郎君     岡本  悟君      長屋  茂君     松平 勇雄君      鈴木  強君     辻  一彦君      中村 利次君     田渕 哲也君  五月十四日     辞任         補欠選任      松平 勇雄君     長屋  茂君      源田  実君     橘  直治君      今  春聴君     高橋雄之助君      辻  一彦君     竹田 現照君      浅井  亨君     藤原 房雄君      田渕 哲也君     中村 利次君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺本 広作君     理 事                 岩動 道行君                 岡本  悟君                 鈴木  力君     委 員                 楠  正俊君                 高橋雄之助君                 橘  直治君                 長屋  茂君                 星野 重次君                 辻  一彦君                 戸叶  武君                 中村 波男君                 藤原 房雄君                 中村 利次君    国務大臣        通商産業大臣   中曽根康弘君    政府委員        公正取引委員会        事務局長     吉田 文剛君        林野庁林政部長  平松甲子雄君        通商産業省産業        政策局長     小松勇五郎君        中小企業庁長官  外山  弘君        中小企業庁次長  小山  実君        中小企業庁計画        部長       吉川 佐吉君        中小企業庁指導        部長       河村 捷郎君        建設大臣官房会        計課長      森田 松仁君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員        大蔵省銀行局総        務課長      米山 武政君        通商産業省生活        産業局原料紡績        課長       堺   司君        建設大臣官房地        方厚生課長    重見 博一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○中小企業庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十日、高橋邦雄君、村田秀三君、森勝治君、横川正市君が委員辞任され、その補欠として郡祐一君、戸叶武君、上田哲君、鈴木強君が、昨十三日、鈴木強君が委員辞任され、その補欠として辻一彦君がそれぞれ選任されました。また、本日、浅井亨君が委員辞任され、その補欠として藤原房雄君が選任されました。     —————————————
  3. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) この際、去る九日の委員異動に伴いまして、理事に一名の欠員を生じましたので、その補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事岡本悟君を指名いたします。     —————————————
  5. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 次に、中小企業庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 辻一彦

    辻一彦君 まず私、通産大臣にお伺いいたしますが、昨年来、田中総理はいろんな機会中小企業庁を省に昇格をさすと、こういう見解を出されております。特に四月の三十日、田中総理は、横浜シルクホテルで開かれた会合におきまして、中小企業省住宅省設置田中内閣ができたときに検討を命じたと、このほか云々と、こういうことですね。国会に提案すれば必ず通る云々と言われておりますが、省設置、いわゆる中小企業庁を省に昇格さす、こういうことがしばしば検討されておると思いますが、これについて通産大臣としてどういうお考えを持っておられるか、まずお伺いしたい。
  7. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 田中総理から中小企業庁問題について検討を命ぜられておることは事実でございます。通産省あげていろいろこれを検討いたしましたが、今国会におきましては、とりあえず中小企業庁の一部改正ということで、小規模企業部を設けまして強化することにいたしました。  そこで、その趣旨とするところは、省の設置ということは、自民党あるいは田中総理においては大方針として積極的な考えをお持ちであります。ただ、具体的にこれを具体化するという場合に、たとえば農林省系統食品関係あるいは厚生省系統のいろいろな薬剤とか、薬品関係とか、そういうような中小企業関係関係をどうするかという各省との関係一つはあるわけです。それで、そういう調整かなり時間がかかるという見通しもこれあり、かつまた現実的には零細事業者に対する血の通った、きめのこまかい政策をするということが当面非常に重要であるという考えに立ちまして、一面において例の無担保、無保証の資金を三百億円を千二百億円に上げるとか、あるいは経営改善指導員を、これを一万人目標にして、とりあえず五千人にするとか、そういうようなきめのこまかい、足腰の強いやり方をまずやってみて、そしてその上に立って、省問題というものは各省庁との意見も十分徴して検討を加えていこうと、そういう考えでおるわけでございます。
  8. 辻一彦

    辻一彦君 二階堂官房長官も、長く検討されてきた問題だと、来年度の予算編成の大きな柱にこの問題はなるだろう、こういう見解を、これは五月一日の記者会見で話されている、こう報ぜられております。それから小規模企業部を設けるということはたいへん大事でありますが、零細小企業のほうになかなか不十分であった点、これを強化されることはたいへん大事であると思います。しかし、それでもって中小企業庁の省昇格問題は変えられるわけではないわけでありますから、将来大臣としては、これを省に昇格さす考えをお持ちなのかどうか、その点はいかがですか。
  9. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは党の関係もいろいろ考慮しなければなりませんが、十分検討して、そうして各省庁との調整がとれれば、これを実現していったらいいと私も考えております。
  10. 辻一彦

    辻一彦君 それでは官房長官の言うように、来年度は予算編成の大きな、大事な柱になるというのは、これは非常にウエートを置くという中身でありますが、そのくらいのウエート大臣自身も置いておられるのかどうか、この点いかがですか。
  11. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 問題はどういう省ができるかということにあるわけです。単に看板をかけただけでは意味がないのでありまして、十分力のある、そうして中小企業のめんどうを見られる力のある省をつくらなければならぬと思うのです。単に寄せ集めで、かっこうだけつけたというのでは、かえって弊害が多くして、いまのほうが情勢がいいということも考えられます。やはり中小企業関係で見ますと、親会社と下請との関係があったり、金融関係もございましたり、いわゆる工業ないし大企業商社との関係、いろんなそういう有機的な複雑な関係があるわけであります。そういうような関係をうまく調整し得て、そうして強力に推進し得るような十分力のあるものができれば私は賛成いたしますけれども、それが単に役所を集めただけで、看板だけかけるというようなものでお茶を濁すというものであるならば、かえって害があるから、私はそういうものならないほうがいいと、そういうように思っているわけで、仕上がり方を一番研究をしているわけなのであります。
  12. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、この問題は深く入りませんが、いつごろ結論を出される計画ですか。
  13. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、おそらく来年度予算編成でありますから、最終的には十二月ぐらいではないかと思います。
  14. 辻一彦

    辻一彦君 第二にお伺いしたいのは、さき大臣衆議院商工委員会におきまして、大手商社ラーメン屋洗たく屋にまで進出するのは好ましくない、具体的規制について現在の中小企業団体法をにらみ合わせながら検討中であると、こう答弁をされております。で、これは私もこの法案の審査にあたって若干いろんな地場産業を歩いてみました。  たとえば福井県に限って言いますと、めがねワク産地がございます。これは全国の大体八五%から九〇%を生産しているというので、ウエートかなりいま高いわけですね。一つ地域産業でありますが、三百億程度の売り上げで、かなりの私は量じゃないかと思うのです。この中に、めがねの場合に、当初はレンズめがねワクがあったわけですが、レンズはいままで数年の間にほとんど大企業に吸収された。中小零細企業レンズのいろんな仕事をやっておりましたが、ほとんど大企業に吸収されておる。そこで残っておるめがねワクにまた資本等のいろんな流れを通して大手の手が及んでいる、こういう実態があります。ごうすれば、大きな資本力をそのままにしておけば、結局零細な小企業というのは倒れてくる可能性が私は非常に多いと思いますが、さき衆議院における答弁とあわせて、こういう問題についてどういう見解を持っておられるか、これをお伺いいたしたい。
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中小企業といわゆる大企業との調整ということは非常にいま重要な問題になってきていると思います。それでいわゆる団体法中小企業組織に関する団体法におきまして、問題が起こった場合には申請に基づいて通産大臣裁定をすると。で、裁定をして、一部の変更を命じたり、停止を命じたりするということができるようになっておりますが、この申請のケースがあまり多くない。それから環境衛生関係に関する法律においてもそれと同じような条文がございます。最近一部の商社等が進出してきたり、大企業中小企業分野にまで進出してくるという情勢が若干ございますので、これらについてはやはり中小企業分野を守る必要があると私は感じておるわけでございます。具体的に、いかにどうするかと、中小企業分野を守るための法律をつくるのがいいのか、あるいは、いまの団体法が不十分ならば、これを別にもう少し手入れをする必要があるのか、あるいは、もう少し行政指導によって具体的にそれを善導するのがいいのか、そういうような点をもう少し具体的に深く検討する必要があると思いまして、ことしの予算で六百九十万円ほど取りまして、その中小企業分野調査を行ない、そういう立法に関する基礎的な勉強をすることになっております。そういうような予算を活用いたしまして方針を明定してまいりたいと、こう思うわけでございます。
  16. 辻一彦

    辻一彦君 この調査によって、その上に待つと、その上結論を出したいということでありますが、考え方としては、現在の中小企業団体法の一部改正等でこういう中小企業分野を守り、大企業の進出を押えることが可能であると、こうお考えになっておりますか、いかがですか、大筋としては。
  17. 外山弘

    政府委員外山弘君) 大筋としては、考え方基本が現在の団体法の中に示されていると思います。ただ問題は、やはりこまかく見ますと、たとえば大企業が自分の子会社をつくって出てくるとか、そういった場合にそれが十分規制できるかどうかというふうな問題あるいは行政官庁が介入する場合でも介入のしかたがちょっと弱過ぎないだろうかというふうな問題こういったこともあると思います。で、したがいまして、そういう点も含めていろいろ考えなければならないと思いますが、要は、基本線はそういうところにありましても、いま大臣もおっしゃいましたように、やはり実態をもう少し勉強いたしまして、先ほど大臣もおっしゃいましたように行政指導の貫徹ということ、あるいは現行制度でのもっと十分な活用、そういった点にもう少しどういう問題があるかということを見きわめたいというのが偽らざるところでございまして、そういう議論の過程の中で法律論の問題も勉強したい、こう考えている次第でございます。
  18. 辻一彦

    辻一彦君 少なくも現行法では、規制をする、大企業を押える、義務づけるといいますか、そういうのが非常に不十分である、だから最小限法改正を行なうか、あるいは進めば新法によって中小零細企業分野を確実に守ると、これだけは動かない線があるんですか。
  19. 外山弘

    政府委員外山弘君) 動かない線というよりも、そういう方向で問題を煮詰めてまいりたいと、こう考えておるわけでございます。
  20. 辻一彦

    辻一彦君 諸外国についてですね、新聞記事もありますが、まあいろいろな調査をしなくちゃならぬとありますが、ほかの国ではこの零細小企業分野を守るためにどの程度規制をやっているかおわかりになりますか。
  21. 外山弘

    政府委員外山弘君) 実はそのことも含めまして今度の調査によって調べたいということにしておるわけでございますが、私の記憶では西ドイツで伝統的な産業についてそういう確保をはかるような規制があったように覚えておりますが、実は正確でございません。で、今回の予算機会に内外の事例もよく調べたいというふうなこともひとつ願っておるところでございます。
  22. 辻一彦

    辻一彦君 ずいぶん零細小企業がやはり大企業に駆逐されておるような傾向といいますか事実がある中で、外国のほうで、あるようにも聞いているという程度では私はたいへん心もとないと思うのですが、そういうデータがあまりまあ十分でないようですから、これは調査をされるならしっかり調査をして、改正あるいは新法によって、弱い企業、小さな企業をぜひ守られるように努力を願いたい、こう思います。  そこで三つ目ですが、いままで政府中小企業対策というものはちょっと優等生対策のような感じがして、中以上のところには国のまあ低利長期融資もいろいろなふうに流れるけれども、零細小企業のほうにはそれが実質的にはどうも不十分になっておったんじゃないか。そういう点から、ともすると捨てられていくんじゃないか、こういうふうな傾向があったように私は感じますが、この点についてどうお考えになっておりますか。
  23. 外山弘

    政府委員外山弘君) 零細企業に対する対策というものも、たとえば国民金融公庫制度であるとか、信用補完制度における特別小口保険制度であるとか、あるいは小規模企業経営改善指導制度だとかいろいろございます。ございますけれども、何と申しましても中小企業の大きな部分を占める小規模企業に対する政策としては、もっと中小企業政策の中でその位置づけが大きくあってもいいのではないかという感じがするわけでございます。そういった意味で、私どもとしましては小規模企業対策に重点を置いた中小企業対策強化ということをここ最近やってまいりましたけれども、今後もそういった方向がきわめて大事であるというふうに考えておるわけでございます。
  24. 辻一彦

    辻一彦君 先日私は、中小企業庁から出してもらった資料に、大阪石川福井等の綿並びに絹、人繊等産地に対する、政府による構造改善事業に対する資金が四十二年度から四十八年度まで流されている、その一覧表がここに出ております。トータルでいえば大阪府三組合に七十四億八千七百九十一万六千円ですね。それから石川県には百八十三億九千六百六十四万七千円。福井産地には百八十五億八千九百二十三万九千円と、こういうように資金が流れております。この資金というのは、言うまでもなく古い機械を新しい機械に入れかえてまあ近代化をはかると、こういうことの中身ですか。階層的に、たとえば織機でいえば、機屋さんならば二百台以上に幾ら、百台以上に幾ら、百五十台、百台以上に幾ら、五十台以上に幾ら、以下、三十台、二十台以下に、階層的にこういう資金がどう流れて使われているか、そういうデータありますか。
  25. 外山弘

    政府委員外山弘君) 繊維産業に対するデータでございまして、実は私まだ手元に持っておりませんし、生活産業局にもこれをお尋ねしなければいけないと思いますが、いま御指摘のような零細に対する特別の配慮こそ今回の生活産業局考えておりまする繊維新法が特にその点の考慮を指摘しておるようでございます。したがいまして、そういった点に今後の施策の強化がはかられると思いますが、従来その辺についてどの程度ワク配分されているかということになりますと、少しデータを調べてみないと、ここでちょっとお答えするような内容を持ち合わせておりません。
  26. 辻一彦

    辻一彦君 生活産業局からだれか見えておるでしょう。——あればひとつ聞かしていただきたい。なければ調べてもらいたい。
  27. 外山弘

    政府委員外山弘君) 生活産業局長、きょう繊維法律関係で他の委員会に出ておるようでございまして、ここに来ておりませんが、後ほど必ず私のほうから連絡をさしていただきます。
  28. 辻一彦

    辻一彦君 じゃ、それはひとつ資料の提出をいただくということにして、私がちょっと調べた——去年の参議院の決算委員会産地の視察に参りました。そのときに私も同行を求められて、産地に参ってそのときに調べた資料があります。それは詳しいことは別として、当時、去年の十月ごろでございましたから百六十億ちょっとであったと思います。その内訳は、二百台の織機を持つ、以上の工場、二百台以上に五四%が出されている。それから、間は飛ばしまして、五十台以下について九・四%、これは三十台、二十台以下はどうであるかと聞きますと、そこらの資料はちょっとわからないということで、そのときにはそろわなかったんですが、私は三十台、二十台以下という層に考えてみればもっとこの数字は数%よりも小さくなると思うんです。で、言われるように、今度の特繊法改正案がそういう従来指摘された欠陥に対する一つの、不十分でも答えとして出されておる、こういうことはわかりますが、過去において、たとえば一つ産地に百六十億流れても、半分以上は大きな二百台以上の織機機屋さんに流れる、二十台、三十台という零細な、あるいは十台というところにほとんどそれは使われないという事実があったと私は思いますが、これについては確認されますか、いかがですか。
  29. 外山弘

    政府委員外山弘君) 繊維工業構造改善臨時措置法運用でございますし、かつ、それが繊維産業内部配分の問題でございますので実は私資料を全然持ち合わせていないわけでございますが、あるいはいま御指摘のような事態があるのではないかという感じが私もいたします。しかし、これは数字でなしに申し上げても何でございますし、生活産業局長のほうによく問いただしまして、その辺お答えするようにいたしたいと思います。
  30. 辻一彦

    辻一彦君 そこで、私大臣にひとつお伺いしたいんですが、この欠陥は、これはいままで業界からもいろいろ意見がありましたし、小さい零細小企業からも意見がありました。国会でも論議をされて、新法、今度のこの特繊法改正によって私は欠陥かなり改善されていくだろうと思います。しかし、融資の体系を見ても、政府機関による中小企業金融公庫、あるいは国民金融公庫商工中金等融資が、産地におそらくこれも百五十億とか二百億という自主規制以来ずっと流れておると思います。その中身を見るときに、これは国民金融公庫が小さいところについてという区分けはあります。それでも同種の傾向が争えないと私は思うんですね。そこで、せっかく総ワクがきまって融資が行なわれるとしても、実際に困っておるところにはなかなかいまの状況、条件では融資は行なわれないということが多々あると思いますが、今度のいわゆるかなり大型な緊急融資等四−六に考えておられますが、これのひとつ適用といいますか融資にあたって、過去構造改善産地にあったような欠陥の二の舞いを踏まないというだけの適切なる対策基本的に立てられる用意があるのかどうか、これはひとつ大臣からもお伺いいたしたい。
  31. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最近の繊維市況等を見ますと、大体末端のほうへかなりの圧力が加わってきておりまして、機織り代金の減少あるいは場所によっては休業しているというところもございます。そういう面からできるだけ下に厚く、おっしゃるような方向資金が循環いたしますように大いに努力してまいらなきゃならぬと思っております。
  32. 辻一彦

    辻一彦君 じゃ、基本的にそういうお考えを伺った上で、当面するこの四−六における融資問題について若干お伺いいたしたいと思います。  政府のほうでは、金融引き締めが浸透して繊維中小企業あるいは中小土建業界などを中心に企業倒産かなり出始めた、こういうことを重視をして、そういう混乱を最小限にとめよう、こういうことで四−六月にかけての中小企業向け政府系の三機関融資を増ワクする意向のようであるということが報ぜられて、私伺っておるんです。総理も、これ以上引き締めるとそのマイナスの面がかなり大きくなると、こういう発言がありますが、中小企業倒産かなり出てくるという中で、社会問題でありますから、中小企業に対する引き締めかなり緩和をされる考えがあるのかどうか、この点いかがですか。
  33. 外山弘

    政府委員外山弘君) 総需要の抑制を価格政策のために続けていきたい、そのための金融引き締めが堅持されなければならないという前提に立ちまして、現在の引き締めかなり長く、かつ今後も続きそうな気配でございますが、そういった際に、やはりどうしても中小企業への影響が大きくなりがちでございます。現にことしに入りましても倒産の問題も非常に懸念されてまいるわけでございまして、もう少し業種も広範囲あるいはもっと大口の倒産といったようなものがだんだんにふえてこないだろうかということが私どもの四−六に対する懸念でございます。したがいまして、四−六につきましては政府系機関の通常のワクというのをやはりいつもよりも大目に配分をしているわけでございますが、しかし、やはりただならぬときでございますから、もう少しこれの増加のワクが必要であろうという判断に立ちまして現在大蔵省とその折衝をしているところでございます。目下のところ、どういう業種にどのくらいのワクということはまだ決定しておりませんが、できるだけ早くこれを決定いたしまして、四−六の追加として三機関配分したい、そしてそれの適切な運用によりまして、いま御指摘のような事態を防ぎたいというふうに考えている次第でございます。
  34. 辻一彦

    辻一彦君 業種別にまではまだわかっていないということはあっても、これだけ論議をされ、すでに先週末では、今適早々にはもう大体煮詰まって一応の線が出るということを私は伺っておったんですが、四−六のいわゆる予算上はこれは五千五百億と聞いておりますが、これに幾ら上のせをする大体考えを固めておるのか。私、時期的にいって、もうほぼ見当がつくと思うんですが、業種別は一応別としても、上のせをする総ワクはどの程度考えておるか、このことをお伺いいたしたいと思います。
  35. 外山弘

    政府委員外山弘君) 私どもといたしましては、中小企業の金融事情から見まして、なるべく大目のワクを予定いたしまして、そしてその運用に万全を期したいと考えているわけでございますが、一方、先ほど来申しましたように、やはり金融引き締め下の中で、しかも総需要抑制下の中で健全な中小企業に対する金融上の配慮をしようということでございまして、何と申しましても全体としての緩和ムードというふうなことにならない範囲で中小企業向けワクの増加をしたいというのがまた大蔵省の配慮でございます。したがいまして、現在いろいろな事態についての詰めをやっているところでございまして、まだ幾らワクを追加するというところまで煮詰まっておりません。しかし、先ほども申しましたように、早急にこれを決定するようにいま議論をしているところでございまして、なるべく早く四−六に間に合うように私どもとしては大蔵省と意思の統一をはかりたい、こう考えているわけでございます。
  36. 辻一彦

    辻一彦君 事務レベルにおいてはそういう段階かもわかりませんが、通産大臣に伺いますが、これはもうかなり大蔵省と通産省の間では大ワクはほぼ私は固まっておると思うんですが、通産大臣としては大体どの程度上のせをする考えなんですか、お伺いいたしたいと思います。
  37. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四−六のワクが三機関で五千五百億円でございましたが、まあ二千億円以上実はやりたいと、そう思って交渉しておるところでございます。二千億円を切らぬようにいま一生懸命努力さしているというのが実情でございます。
  38. 辻一彦

    辻一彦君 二千三百億という線があって、二千五百億という線が出ておりますが、それに近づく見通しはどうなんですか。
  39. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体おっしゃいましたようなあたりの線を実現しようと思って大蔵省と折衝しておるのでございますが、なかなか大蔵省渋くって、そのところまではいま近づきがたいというのが現状でございます。しかし、まあ二千億円を切らぬように一生懸命努力するということは、いまやらしておるところでございます。
  40. 辻一彦

    辻一彦君 この問題は、片や総需要抑制という一つ方針があり、その中でまた中小企業はどんどん倒産をしていくという事実もあり、むずかしい問題であると思いますが、まあ上のほうでは非常に利益が上がっている。私はこの間予算委員会でちょっと申し上げましたが、一昨日、福井産地でも千数百名の繊維業者の決起集会があって、いままで、はち巻きをしたことはあまりないんですが、全部はち巻きをして、会場が熱気にあふれるような集会だったんですね。その中でも言われておりましたが、下はもう自殺をしたり、それから赤字倒産で四苦八苦している、上のメーカーや商社になれば、出た黒字をどうひとつ圧縮して税務署に報告するかということで四苦八苦していると。ことばは同じ四苦八苦でも、上と下があまり大きいと、こういう声も出て、非常に参加の皆さんは共鳴されておりましたが、私はこの小さな零細小企業はまさにそういう状態であり、そういう感じを強く持っておると思う。だから大臣、二千億切らないと、こういう決意のようでありますが、いま言われておる線に最大限努力をして、この中小零細な皆さんの声にこたえていただきたいと思う。  そこで、金利だとか、その場合の期間、これは非常な種目が私はあると思うんですが、大きく言って、せっかくワクがきまっても金利が高ければ、市中に行って借りると同じような状況ならば、そうそのワクをきめてもらってもあまりありがたいとも言えないと、だから金利を安くしてほしいという声は当然でありますが、こういう中で一体二千億を切らない、以上を確保される、それをどういう条件で大体融資をお考えになっておりますか。
  41. 外山弘

    政府委員外山弘君) 現在三機関が通常に実行しておりまする条件なり金利なりで進めたいと思っております。これは御承知のように、市中銀行よりは若干有利になっていることは御承知のとおりと思います。
  42. 辻一彦

    辻一彦君 その問題はあとにもう少し私詳しく伺うことにして、市中銀行にも融資について協力を求めると、それは特利で、通利以下に押えてやりたいと、こういうことも伺っておりますが、市中銀行に対する融資の要請といいますか、融資をやるようにというこういう働きかけといいますか、これはどのくらい進んでおるか、またその線はどのぐらいの額を確保されるのか、金利についてはどう考えておるか、その点をお伺いしたい。
  43. 外山弘

    政府委員外山弘君) 従来も中小企業金融事情の逼迫化に伴いまして三機関へのいろいろな増配を行ないます際に、必ず市中銀行に対しても要請をいたしまして、私どもとしては、こういうふうな中小企業へのいろんなしわ寄せがいっているので、市中銀行においてもその辺をよく見て、健全なる中小企業への金融に遺憾のないように、これを円滑に実施するようにというお願いを必ずしておるわけでございます。  ただ、もう一ついま御指摘の三千二百億の市中銀行の融資というのが一月の初めごろに銀行協会を通じて出ましたが、これはさらに、そういうもののほかに救済融資として特別の金利も含めて考えたいというふうなことが当時表に出たことがございます。で、その後それにつきまして私どももいろいろお願いをいたしまして、従来の市中銀行へのお願いとはまた別に、特に救済融資といたしまして、たとえばネオン業者に対する私どもが三機関に対する配慮をいたしましたが、それと並行しまして市中銀行においてもやってほしいということをお願いいたしましたし、またそのほかの業種につきましても、特に重点を置かなければならない業種につきまして、そういうお願いを市中銀行のほうにするということをその後もいたしております。で、今回の繊維につきましても同じような、今回の増加、増配の中で特に動機として繊維業の問題が頭に強くあるわけでございますし、また最も重点を置いて実施されなければならないというふうな立場にございますので、この点につきましても、繊維につきましても、このいまの市中銀行の融資が相伴いますようにいろいろなまた御相談をしなければならない点が多々あると思いますけれども、そういった方向で要請をしてまいりたいと、こう考えておる次第でございます。
  44. 辻一彦

    辻一彦君 繊維の問題はまた商工委員会等で特繊法の審議がありますから、そこで詳しく触れたいと思いますが、全般的な中小零細企業について考えても、私は繊維産地に構改資金が流れたようなこういう階層的なゆがみといいますか、そういうようなものが起こる懸念があるわけですが、先ほど大臣見解ではそういうことがないように配慮すると、こういう御見解をいただきましたので、ぜひやってもらいたい。  そこで、いままで政府機関三公庫がこの零細小企業に対して行なった融資の場合、たとえば繊維関係の場合には階層的にどういう層に、どのぐらいの三公庫から融資がなされておるか。こういうことについてのデータというか、資料はつかめますか。
  45. 外山弘

    政府委員外山弘君) 零細企業に対する金融対策といたしまして、御承知のように国民金融公庫が特に扱っているわけでございまして、これは一件の平均の貸し付け額も少のうでございますし、また対象も従業員九人以下というような小さなところが件数でも金額でも圧倒的に高いわけでございますし、そういった金融機関があることによりまして、またそういったところに特に配慮することによりまして零細企業への金融対策ということについては従来からもやってまいりました。さらに今回小企業経営改善資金、先ほど大臣のおっしゃいました小企業経営改善資金が三百億から千二百億にふえるというふうなことで、やはり零細企業に対する金融上の配慮が伴うわけでございます。ただ、いま御指摘のように、それでは繊維業についての零細企業幾らいっているかという点は、これはよく調べればわかるかと思いますが、ただいまのところ、たとえば国民金融公庫がどのような状態になっているかという点については手元に資料を持ち合わせませんが、これは調べればわかると思います。
  46. 辻一彦

    辻一彦君 私は、政策立案にあたって、やはり階層的にどういうようにこの融資がなされているかということもたいへん重要な資料であると思う。出先で、福井石川あたりの三公庫の出先に聞きましても、なかなかちょっと簡単には出せない、まあ忙しいということもあるでしょうが、必ずしもそのデータがうかみ切れないというような点もあります。そこで、いまのお話のように、これは調査をして、私は提出をひとつお願いをいたしたい。それによって私たちもさらに検討したいも思います。できますか。
  47. 外山弘

    政府委員外山弘君) 金融機関別にいまのおもな業種についてのそういう階層別がどの程度詳しくできるかわかりませんが、できるだけ調査してみたいと思います。
  48. 辻一彦

    辻一彦君 そこで、この零細企業で、先日私は漆器関係の、これも小さな地場産業ですが、そういう状態がどうかということをいろいろ歩いて様子を聞いてみました。漆器でいえば輪島とか会津とか有名な漆器もありますし、私らのほうでは河和田という地区にもかなりな漆器産業があります。そこの問題になりますが、原料、いわゆるプラスチックを使っておりますが、七〇から八〇%ぐらい上がっている。こういう中で、すべてのものが上がる中で銀行の融資が押えられる、その中で資金繰りといいますか、融資が非常に困っている。ここに、時間の点から詳しいことは申し上げませんが、各月ごとに幾つかの漆器産業の方たちがどういう収入でやっているかということをメモ、コピーをもらったんですが、最近は軒並みにやっぱり赤字になっていますですね。まあ全体の売り上げから見てもそう大きくはありませんが、毎月、たとえばこれは一月の例で——先月あたりでは、昨年の百万円をこえる黒字になっておったそういう状況が、一月では二十万、それからこれは一つの例ですが、二月では百八十一万、三月では七十五万という赤字がずっとみな毎月やっている中で出ておる、こういう状況の中で、さっきのように融資を要請する声が非常に強いんですね。ところが、そういう事情を聞いてみると、零細な小企業の場合には大体借りられる範囲はもういままで借りてしまっている。だから、なかなか新しく融資をしてもらうといっても、受けるといっても、ワクがきまっても、これはいろんな条件がみなあるので容易に借りられないというこういう声が非常に強いわけですね。  そこで、たとえば国民金融公庫にしても八・九%、それから保証料が一・一%でまあ一〇%になりますよね。一割のやはり金利を取られるということは、これはなかなか零細な小企業の場合にはつらいと、なかなかたいへんだと、こういう声が非常に強いし、また私は事実であると思うんですね。そういう点で零細な小企業に対しては特別なワクにおける低利の融資考える必要があるんじゃないか。たとえばけさの新聞を見ましても、農林水産委員会等で論議をされておりました畜産農家に対して、えさ代が非常にいま高くなって困る、たいへん困っている、倒れていくと、その中でいま特別融資が行なわれて、金利は九分の金利が四分で、五分は金利補給をすると、こういう大体内容がなされたということが、けさの新聞にも報じられておる。私はやっぱり零細な小企業にはこういう畜産農家同様に金利補給等を行なって低利の融資をやらなければ、なかなか一割前後は払っていくということはたいへんであると思いますが、こういう特別な融資ワク考える必要があると思うが、その点についてどうか。また、利子補給について畜産農家同様の手当てをすべきだと思うが、その点どう思われるか。この二点をお伺いいたしたいと思います。
  49. 外山弘

    政府委員外山弘君) 国民金融公庫制度はやはり零細な人たちを対象にした金融機関でございまして、貸し付けの限度もまたそういう点の配慮をしておりますし、また対象としての中小企業者の層も非常に零細な人が圧倒的に高い割合を占めているわけでございます。こういった金融機関に対しまして、特に無担保で貸し出す限度を大きくしたり、あるいは実際問題として保証料を取らない。政府系機関でございますからやはり信用保証なしに貸している場合がたくさんございます。むしろ信用保証をつけている例はほんのわずかのケースしかないというふうなことでございまして、国民金融公庫制度がまさに先生が御指摘になるようなことにこたえる金融機関制度であろうと思いますし、また小企業経営改善資金制度が、金利は七分でございますけれども、無担保、無保証という全く異例の制度中小零細企業金融に対する配慮をしているわけでございまして、そういったことが、いま御指摘のような御要請に対しておこたえする制度的な内容ではないだろうかというふうに私ども考えるわけでございます。したがいまして、これ以外にさらに特別の制度を設けるということはいまのところ考えておりませんが、現在の国民金融公庫なり小企業経営改善資金運用を豊かにしていくということは今後も考えてまいりたいと思います。  それからもう一つ指摘の利子補給の制度でございますが、これもやはり確かに畜産農家に対して利子補給ということは、その畜産ということに注目した制度であろうと思います。で、中小企業というとらえ方の中で、どういうふうなものにそういった配慮をすべきであるかということ自体一つの大きないろいろな問題であろうと思います。私どもとしてはやはり零細企業であるというふうなとらえ方の中でできるだけ優遇した制度考えるということも大事だと思いますので、冒頭申しましたような国民金融公庫制度あるいは小企業経営改善資金、こういった制度をふくらましていく、国民に対する配慮もふやしていく、こういうふうなことでおこたえするのがいいのではないかと、こう考える次第でございます。
  50. 辻一彦

    辻一彦君 ということは、零細企業に対しては畜産農家同様な金利補給を、この中身検討した上で、これから考えていくということですか。
  51. 外山弘

    政府委員外山弘君) いえ、利子補給というふうなかっこうで考えるのではなくて、やはり国民金融公庫資金ワクをふやしていくとか、小企業、経営改善資金ワクをふやしていくとか、あるいはさらに言えば、その信用補完制度で、特別小口のような無担保、無保証の限度を広げるとか、現行制度の中で零細企業金融に対して配慮している制度をふくらましていくというかっこうで、その先生の御指摘におこたえするのが私はいいのではないか、私はそう考えております、こう申し上げております。
  52. 辻一彦

    辻一彦君 大臣、ちょっとお伺いしますが、長官のように確かに国民金融公庫零細なこれは対象ですから、これをひとつ十分活用しふくらましていくということはこれはたいへん大事だと思うんです。しかし、昨年たとえばPCBで問題が起こったときに、漁村に対しての対策ですね、あるいは今度の畜産農家のいわゆる飼料高騰に伴って畜産農家がどんどん倒れていくというような実態ですから、これに対する緊急対策融資ですね、こういうものが利子補給等によって金利をかなり軽減していますね。しかし、いま現実に中小企業零細企業で起こっている実態は、片や私はPCBにおける漁村の状況あるいは畜産農家の状況とやはり似たような同じような状況にあると思うんです。こういうものに対して、これはまあ大きなところには無理なことでありますが、零細小企業に対しては中身検討して利子補給等による低金利でもって融資救済を行なうということが必要じゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。
  53. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 農業の場合は中小企業関係零細企業より生計的な色彩が非常に強いと思います。そういう面から商工業の場合はやはり利潤というようなものが農業の場合よりも表に強く出てきておる。商いという思想であります。そういう面から農業の場合のほうが商工業の場合よりも一歩進んだ政策がいままで日本でもとられてきておって、それは肯定されたことであるだろうと私は思います。去年のPCBの公害の場合は、これは異常事態でございまして、突発的に突風のように起きたことでございますから、緊急的に措置する必要があって諸般の対策を行ない、低利の金をお貸しし、情勢によって無利子にするということも行ないました。あれは突風のように起きたから緊急対策としてやったわけでございます。今回の繊維の場合は、やはり景気変動、石油によって起きた点もございますけれども、過去何回か起きた繊維の不況とやや似た様相もまたあるわけでございます。そういう意味において不況対策としての措置をいまやっておるのでありまして、そういう意味で利子補給というようなことにすぐ持っていくことはむずかしいと思います。しかし、先生御存じのように経営改善資金で無担保、無保証というような制度もございますから、零細なほうはそういう方面を活用する等々の措置によってこの危機を切り抜けるようにいたしたいと思っております。
  54. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、その論議を、生計云々をする私は必要ないと思いますが、零細な小企業というのは農業と同じような生計的色彩がかなり強いということが私はこれは言えると思うんですね。中小企業といいましても、中企業というものと零細小企業とはかなり性格が違うと、その点で、生計的色彩は零細小企業についても農業と同じようにあるという点が私は言えると思うんですね。そういう点を考えますと、まあ利子補給等による低い金利の融資がなされないと、ワクがきまってもなかなか十分にそれを生かしきれない、これ、借りてどうなのかと、こういう心配があれば借り切れないという私は実態が非常に多いと思う。これは私はいま低利による融資がここで一つ結論といいますか線が出ないとすれば、少なくも先ほどの答弁のように、ワクがきまったらこれがほんとうに零細な小企業のほうに行き渡るような十分対策を立ててもらいたい。ワクがきまっても使えないというのでは、私は生かしていないと思うんですが、この点について十分な配慮を立てられ、やられるかどうか、この点大臣からもう一度伺っておきたい。
  55. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは実態に応じましてきめのこまかい政策をやって、恩恵が及ぶように努力してまいりたいと思います。
  56. 辻一彦

    辻一彦君 次に、もう一つですね、市町村の商工会に対して無担保、無利子融資制度が出ておりますが、これに対する需要が非常に大きいわけですね。先ほどもお話がありましたですね。その年度初めに需要が多いので、早い者が勝ちということでもう終わりと、こういうことに実際はなっておりますが、これをさらに拡大される考えはないか。  それからもう一つは、商工会が一つの窓口になっておりますが、いろいろな事業組合がありますですね、組合員の世話をしているそういう事業組合をも窓口にすることができないのか、この二点はいかがですか。
  57. 外山弘

    政府委員外山弘君) この制度は昨年の秋に発足いたしまして、ここ半年間の実績で見ますとたいへん歓迎されました。実績から見ましても毎月一万ぐらいの中小企業者がその恩典に浴するというふうなかっこうで順調に現在まで来ておるわけでございます。御承知のように今回の予算ではその三百億が千二百億に拡大されておるわけでございまして、半期三百億に比べますと二倍——一年で千二百億ということは二倍でございますが、二倍のワクになるわけでございますから、それだけよけい多くの中小企業者にとって、零細企業者にとって役立つ運用ができると思います。ただ、これはあくまでも零細企業者がたくさんいるわけでございますから、なるべく多くの方にまず使っていただくということがスタートとしては大事だろうと思います。そういう意味で今後も、この一年、当分千二百億をじょうずに使いまして、できるだけ多くの零細企業者に喜ばれるようにしたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、そういった意味でのワクの拡大というのは、三百億から千二百億というふうな意味で、かなり大まかの拡大であったというふうに考えているわけでございます。  それからもう一つ、御指摘の事業共同組合等にも窓口をさせられないだろうか、こういう御指摘でございますが、これはこの制度が御承知のように小企業経営改善制度ということをベースにしまして、その経営改善指導が有効に成り立ちますように、その経営改善指導の一環として金融上の措置を結びつけるというところに今回の資金金融措置のねらいがございます。したがいまして、この小企業経営改善指導をやっておりまする経営指導員、それの所属します商工会と商工会議所、これがやはり公の機関としてこの制度の中核として動くというのがたてまえでございまして、そういった意味でこの二つの組織を利用して経営指導員に十全の働きをしてもらって、この小企業経営改善資金を生かしていきたい、こう考えておるわけでございます。もちろん事業共同組合も各地にございまして、で、中小企業者のためのりっぱな組織でございます。その辺の幹部の方々がやはり商工会や商工会議所の中のメンバーとして活動しておられる方も多々ございます。そういった方方が、やはりそういった立場でこの小企業経営改善資金に対して関心を持ち、かつ運用についてのいろいろな御意見を述べておられるということも耳にしておるわけでございまして、私どもといたしましては、当面やはり商工会と商工会議所を窓口としたこの小企業経営改善指導一つの充実としてこの金融制度運用してまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  58. 辻一彦

    辻一彦君 たてまえは私もわかります。しかし、町村で専門的な経営改善の指導が、そう何人も充実して、どんどんできるというにはなかなか距離があると思うのですね。事業組合の中には金の専門の人をそろえてこれにかかって世話をしているわけですから、私はその経営改善の具体的な効果、功利といいますか、そういう点からいえば事業共同組合というのはかなりなことが——中身にもよりますが、できると思うのですね。たてまえはたてまえとしても、そういうことが可能な事業共同組合には窓口をできる可能性はあるのですか。
  59. 外山弘

    政府委員外山弘君) 当面、ただいま申しましたような商工会、商工会議所の仕事としてこの金融制度を結びつけていきたいと、そうしてこの制度の充実を期することがまず先であるというふうに考えております。
  60. 辻一彦

    辻一彦君 もうちょっと論議をしたいんですが、時間が迫ってまいりましたから、また次の機会論議をしたいと思います。  そこで私は最後に、四つ目に、地場産業の振興策について二、三点お伺いをしたいと思います。  先ほどちょっと申し上げたけれども地場産業というのは、場合によっては——場合によってといいますか、地域にもともと片寄っておるわけですね。だから、ある面においてはそれはまあ県内の問題というような言い方もされますですね。現にこのめがねワクの八〇か九〇%、福井産地が生産をしておりますが、ここで技能検査、こういうものは国でやってほしいという声がいままでかなりあったのですが、それはしかし地域的に片寄っておるから県内で処理をしてもらいたいと、こういうことで過ぎておりますが、これは一部でありますが、かなりな規模を持つ地場産業に対しては、しかも国内における生産のかなり大きいウエートを持つ場合には、国としての指導や助成と、こういうことをもっと強化すべきでないかと考えますが、この点はどうお考えになりますか。
  61. 小山実

    政府委員(小山実君) 従来、地場産業対策といたしましては、中小企業政策の一環といたしまして、たとえば特恵対策とかドル対策というような産地救済対策を実施いたしました。また、さらに中小企業構造改善策として、産地の実情に応じました構造改善、特に知識集約化を産地ぐるみで行なう構造改善政策を創設するというような、いわゆる地域的な政策だけでなしに、政府としても産地対策地場産業対策という点につきましていろいろ力を注いでまいっておるわけでございます。また、今国会で成立いたしました伝統的工芸品産業の振興に関する法律というのがございますが、これも産地地場産業に着目した振興策の一つであるというふうに考えるわけでございます。  で、政府といたしましては、以上申し上げましたような振興策の積極的な活用を望んでいるわけでございますが、これらの施策は、主として施策の対象となります中小企業の皆さんの意欲にかかっているという点が非常に多いわけでございますので、関係各方面とも十分相談いたしまして、業界の組織化等、その指導等、できるだけ施策を強力に進めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  62. 辻一彦

    辻一彦君 一時間だから、もう四、五分ありますから、それだけで終わりますから、二、三点伺って終わります。  その問題はもうちょっと伺いたいんですが、時間の点から次の問題をお伺いします。  これは漆器——地場産業で漆器産業ですか、さっきのように会津、輪島とか有名な産地もありますし、それぞれの地場にはかなりな漆器産業があります。そこで、原料でありますウルシが最近非常に値段が高くなって、手に入りにくいというので非常に困っておるわけですね。  そこで、林野庁見えておりますが、これは林産関係のお話だということでありますからお伺いしますが、ウルシのこの輸入の数量、価格、そういうものの実態がどうかと、こういう点ですね。ちょっと時間の点があまりありませんので、四、五分で終わらにゃいかぬので、ちょっと簡潔にお願いしたい。
  63. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) 先生いまお話しのとおり、ウルシの輸入数量なり輸入価格については、最近数量につきましては漸減傾向にございまして、四十五年に大体五百トン程度の数量であったものが、最近では四百二、三十トンというふうな数量になっております。その中で国産のウルシはわずか一%程度でございまして、ほとんど大半が輸入にまっておるというような状況でございます。で、ウルシの価格でございますが、四十五、六年というところで、まあキログラム当たり千三百円前後でございましたものが、ことしの一月−三月には五千五百円から五千九百円というようなところに上下しておるというところでございます。
  64. 辻一彦

    辻一彦君 価格の、この値段から見ても四倍以上ですね、四倍半ぐらいに急速に上がっております。非常にまあ値上げが激しいわけですが、この価格の急上昇、数量が減っている事情はどういうところにありますか。
  65. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) 主要輸入先が中国でございまして、中国との交易関係によってきまるというようなことでございますが、どういう事情かわかりませんが、昨年の夏場から漸次価格が上がってまいりまして、最近の価格が、先ほど申し上げました昨年の春以前の価格の四倍程度に上がっておるというような事情でございます。おそらくこれは需給関係からいたしまして、日本が非常に欲しておるし、供給先としてはほとんど中国が大半の供給国であるということから、売り手独占みたいな形でこういうような価格の引き上げが行なわれているんではないかというふうに私ども推測いたしております。
  66. 辻一彦

    辻一彦君 中国産ウルシの資源的な見通しと、これからの買い入れ等の見通しはどうですか。
  67. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) 御存じのような事情でございますので、私ども中国の国内事情についてはなかなか明確に知ることができないという事情でございます。中国以外の国につきましても、台湾であるとか、カンボジアであるとか、ビルマとかいうところがございますけれども、資源的になかなか大きな量を確保するということはむずかしいんではないかというふうに考えられる状態でございます。
  68. 辻一彦

    辻一彦君 中国産の、外国の、よその国のことですからむずかしいわけですが、いろんなルートを通して、この漆器産業界のために、中国におけるウルシの状況、こういうものをもう少し具体的に調べることができないのか、これが一つ。  それからもう一つは、長野県の一部でビルマ産のウルシを契約をして、政府間で話をして買い入れているということを聞いておりますが、ビルマにそういうウルシが生産される可能性があるならば、今日開発輸入というような問題がいろいろいわれておりますが、ビルマ政府と連絡をとって、これを調査をし、こういう方向に乗り出す考えはないのか。この点は林野庁とあわせて、これは零細企業にとってたいへん重要な問題でありますから、通産省の見解もお伺いいたしたいと思います。
  69. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) 幸い中国との関係につきましては国交も回復いたしましたので、在中大使館を通じまして中国の事情を調べてみたいと思います。  それからいまお尋ねのビルマの件でございますが、ビルマからは三十二、三年ごろには十トンないし二十トン程度入っておったんでございますけれども、三十五年以降中国産のウルシが入ってまいりますにつれて、ビルマからの輸入はとまったということでございまして、可能性としては存在すると思いますが、私どもの調べましたところでは、日本のウルシと成分が違いまして乾燥がおそいということがございまして、日本の国産のウルシとまぜ合わせるということでなければ使用が不可能であろうというふうな状態のようでございまして、現在のところでは、大体輸入するとしても十トンないし二十トン程度の輸入が可能な程度ではなかろうかというふうに考えております。
  70. 辻一彦

    辻一彦君 お聞きのとおりの状況ですけれど、ウルシがないと洋塗料に切りかえるという方法もありますが、伝統的な地場産業である漆器産業はウルシがないとなかなかやっていけないと思うんですね。その点でこの原料を安定的に確保する必要があると思うんですが、この点について通産省はどうお考えになっているか。
  71. 小山実

    政府委員(小山実君) 漆器産業の原材料でございますウルシをはじめといたしまして、雑貨産業の原材料は天然のものが非常に多いわけでございまして、御指摘のように、これらの安定確保というのが非常に重要な問題となっております。政府といたしましても、ウルシ等の天然原材料の需給状況等の実態調査いたしまして、これは四十九年度の予算に雑貨産業原材料確保対策費ということで約八十万円が計上してございます。これによりまして実態調査いたしまして、長期的観点から雑貨産業の振興に支障を来たさないように天然原材料の安定確保を十分に検討してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  72. 辻一彦

    辻一彦君 ちょっと幾らですか、調査費。
  73. 小山実

    政府委員(小山実君) 八十万三千円でございます。
  74. 辻一彦

    辻一彦君 ちょっと、あんまり少ないね。それをまともにやる気があるのかどうか、その程度では疑わしいんですが、もうちょっと本格的に調査をするならして、国内も、中国の事情もよく聞いて、ビルマも調べて、こういうことでこれだけ国内に漆器産業があるのに、八十万円の調査費を出して長期展望はとても私は立たぬと思うのですが、これについて長官、大臣、はっきりどのぐらいのことをこれからやるか答弁してください。それで終わります。
  75. 外山弘

    政府委員外山弘君) 実は、漆器も生活産業局の所管でございまして、この予算自体も生活産業局がいろいろ調査した上で要求をし、また大蔵省と実現を見たものだと思います。よく先生の御指摘の点は私も局長にお話をいたしまして、そして今後遺憾のないようにするような努力をするようにまたお願いをしたいと思います。
  76. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 漆器はわが国伝統的工芸の尤たるものでございまして、しかもみんな零細のものが多いと思っております。これらのものはこういう機会に苦難の結果倒れたり、あるいは廃業のうき目にならぬようにわれわれとしてはきめのこまかい手を打って、われわれとして御協力を申し上げるつもりでございます。
  77. 辻一彦

    辻一彦君 終わります。
  78. 戸叶武

    戸叶武君 中小企業庁設置法の一部改正案では、いままであった計画部、指導部の二部制に新しく小規模企業部を設けることになり、三部制となったのでありますが、この小規模企業部設置する趣旨並びにこれに至る経過について承りたいと思います。
  79. 外山弘

    政府委員外山弘君) 中小企業の大多数は小規模企業でございますが、これらの小規模企業は、概して資金面あるいは情報面等で多くの格差を持っておりまして、きめのこまかい施策を最も必要としている分野でございます。このような観点から、小規模企業対策につきましては、従来から各種の中小企業施策の中でも格段に配慮を払ってきたところでございますが、また四十九年度の予算におきましても大幅な施策の拡充強化をはかる二ともしているわけでございます。この今回の改正法案は、このような施策の拡充強化と相待ちまして行政機構の強化をはかっていきたい、そして小規模企業に対する行政を強力に進めたいということを目的とするものでございます。  で、今回の改正に踏み切りました経過を申し上げますと、以上のような趣旨ではございますが、もともと中小企業施策の中で特に強化をしなければならない、施策上の強化をしなければならないと同時に、行政機構上も配慮をしなければならないという意識は前からあったわけでございます。たまたま中小企業省問題を機会中小企業の行政機構についての改善を加えようというふうなことが昨年来議論になったわけでございまして、その際に最も大事なことをやるとすればどういうことであろうか、そして省の問題についての問題点はどういうことであろうかというふうなことをいろいろ考えた末、前者の問題につきましては、やはりともかくこの際小規模企業に対する行政機構上の強化をすることが非常に必要であろうというふうな結論に到達いたしまして、そしてこの際小規模企業部というのをあえて設けまして、従来の計画部、指導部の中から特に小規模企業施策を集中するということと、それからもう一つ小規模企業者にとってはきわめてその手を差し伸べにくいことが多いわけでございますから、窓口をつくりまして、そして親切にそのつながりをつけていく、そしてそれを施策に反映させるし、同時に親切な相談相手にもなろう、こういうふうなことが機構上実現されることが最も望ましいのではないかというふうに考えた次第でございます。
  80. 戸叶武

    戸叶武君 いま長官が言われたように、近代的な行政の面においては、いままでのような官僚主義的なミリタリーなシステムよりも、ファンクショナルなシステムに発展し、特に窓口行政を通じて庶民と結びつくということが一番望ましいことであり、そういう意味においては、この小規模企業部設置というのは、通産行政の中においては画期的なことで、むしろおそきに失していると思うのでありますが、私は、そこで、中小企業庁が発足してからすでに二十五年間を経験しているのでありますが、この間の経験を通じて、小規模企業というものの実態をどのように把握しているか。俗に中小企業といい、あるいは今回は小規模企業という部の独立があったんですが、この機会に、観念的な意味において論議を空転させようとするのではありませんが、第一に資本の内容、第二に従業員の構成数、あるいはそれが工業部門と商業部門、特にサービス部門とでは違うでありましょうが、工業生産高とか商品取引とか、あるいは収入高とか、そういう多種多様な面からこれは観察されなければならないと思いますが、それを大まかにいってどのように分類し、規定しておりますか。
  81. 外山弘

    政府委員外山弘君) 中小企業基本法に小規模企業の定義がございますが、おおむね常時使用する従業員の数が二十人以下の事業者、商業、サービス業の場合は五人以下の事業者ということで規定が行なわれております。  で、小規模企業の日本経済に占めるウエートというものは、私どもいろいろ従来の経験で見ましてもきわめて高いというふうに認識しているわけでございまして、これを数字的に申しましてもそのことが言えるわけでございます。そして大体民営の非一次産業事業所の約八割に当たりまする四百十四万が小規模事業者でございます。つまり中小企業者と一口に申しましても、全事業所約五百十一万の九九%以上が数の上では中小企業でございますが、またその中でも四百十四万は小規模企業であるということでございまして、また従業者の数で申しますと千百八十九万人、これは約三割に当たるわけでございます。小規模企業ウエートというのは、そういう意味で数の上でも従業員のシェアの上でもかなり高いわけでございます。  また、製造業におきましては、事業所数の八六%、あるいは従業者数で申しますと二六%、出荷額では一三%にとどまりますが、これを小規模企業が占めているわけでございます。それから商業について見ますと、卸売り業では事業所数の四八%が小規模企業でございますし、従業者数の一一%、販売額の四%が小規模企業でございます。また、小売り業では、事業所数の八四%、従業者数の四八%、販売額の三四%を小規模企業が占めているわけでございます。また、サービス業では、事業所数の七八%、従業者数の二九%を小規模企業が占めている。これが数字上のウエートでございます。
  82. 戸叶武

    戸叶武君 日本の産業構造の中でこの中小企業、特に小規模企業というものを無視しては論ずることができないのでありますが、後進資本主義国から一気にかけ足で飛び上がってきた日本では、小規模企業を踏み台にして、犠牲にして大規模企業がばく進したという傾向が強いので、しわ寄せが下請企業に、零細企業にとずっと押し詰められてまいって、その産業体質上の改善をいやでもしなけりゃならない段階にいまや追い詰められておると私は思うのでありまして、石油ショックとか高度経済成長政策の谷間とかいう表現だけじゃなくて、日本の資本主義成長過程におけるいろんな矛盾がいまここに集中化されているので、これはどうしても私たちはこの機会に、小規模企業の救済対策としてだけじゃなくて、日本の産業構造全体を見詰めながら、どういう形において小規模企業を救わなければならないかという施策が展開されなければならないと思います。この問題に対しては、中曽根通産大臣からひとつこの中小企業対策、特に小規模企業対策においていかなる面が重要であるか、その問題点を承りたいと思います。
  83. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 小規模企業は約四百万に及ぶきわめて多数の企業でございまして、その業種、業態もきわめて多種多様であります。また、その資金調達能力の格差、情報収集・活用の格差、取引上の格差等、いろいろの格差をしょっております。また、その声が的確に行政に反映されがたいという不満も強いものと思われます。したがって、今後の小規模施策を進めるにあたっては、これら各種の格差を補うための施策を適切に進めていく必要がある。また、上述の多様性の認識の上に立って各種の施策をきめこまかく組み合わせて的確に施行していくことが必要であると考えます。さらに各種施策の普及を積極的に進めるとともに、親身になって声をくみあげて行政に反映させる体制の確立が必要であります。こういうような考え方に立って、小規模企業施策を積極的に進めているところであり、四十九年度予算においても小規模企業経営改善資金の大幅拡充、融資規模を三百億円から千二百億円に上げました。条件を改善した。経営改善普及事業の大幅拡充、つまり経営指導員一千人の増員、待遇の大幅改善、顧問税理士の設置等、これらはいずれも小規模企業者に対する血の通った行政を進めるためにこういうことを行なったことであり、それらを総括する指導部として今回中小企業庁改正も行なっているところでございます。今後はこういうような政策をさらに幾つも積み重ねまして、中小企業者、特に零細企業者の御期待におこたえいたしたいと思っております。     —————————————
  84. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、源田実君、辻一彦君が委員辞任され、その補欠として橘直治君、竹田現照君が選任されました。     —————————————
  85. 戸叶武

    戸叶武君 私は、小規模企業全体がいまの日本の総需要抑制という圧力のもとに、六月から七月にかけて非常な危機にさらされるのではないかと思うのであります。この間は、私の郷里の足利から三百人ほどの機屋さんがはち巻きをして自民党会館に押しかけてきて、何とか援助してくれ——まあ自民党をゆすぶり、政府をゆすぶれば何とか金が出るのじゃないか、農協パワーだけに非常に親切であり、われわれ零細企業には冷淡だということを言おうとしているのだと思いますが、その中の代表者の一人が言うことに、トリコットの袋物の業者が五十軒ほどあるが、それに対する先ほどの融資が五百万円のワクしかないというので、一人当たり十万円ずついただいたが、いまのときに十万円ぐらいで、いかに零細企業といってもこれはどうにもならぬがというようなことの発言を聞いたときに、上からすれば非常に大きくみえるけれども、数の多い零細企業に対しては末端にいくとそういうような状況だと、これはほんとうの効果というものはあげにくい面がずいぶんあるので、やはり企業実態に応じてきめのこまかい対策がなされなきゃならないので、そういう意味からも、今度は行政機構の思い切った改革を通じて、小規模企業を通じて、きめのこまかい一つ対策を講じようとしているのでありましょうが、私は、政府の人が考えているよりも、その総需要の抑制はやむを得ないとしても、日本の中小企業、特に零細企業にとってはたいへんな深刻な場面が今後は出てくるのではないかと見ておりますが、政府の方はどのような見通しを持ち、これに対策を講じようとしているんでしょうか。
  86. 外山弘

    政府委員外山弘君) 昨年の秋以来、金融引き締めの問題と原材料の不足ないしは高騰問題というふうなことから、物の面、金融の面、両方からしわが中小企業に漸次寄ってまいった。そんなことから、ことしに入りまして、だんだんと中小企業への影響が広範になりつつあるというふうな懸念を持っております。そしてこの三月には、そういったことを配慮いたしまして、政府系中小企業金融機関に対しましてワクの増加などによりまして対応したわけでございますが、さらにこの総需要抑制下の金融引き締めでございますから、これをゆるめるということがなかなかむずかしい情勢にございます。そうしますと、どうしてもしわの寄る寄り方がだんだんとその程度を深くして中小企業に来るのではないかという懸念が表明されるわけでございまして、現在繊維とか建設業等が中心でございますが、だんだんとその影響も機械工業等を中心に広範になりはしないだろうか、そして金融引き締めの影響からくる倒産、つまり単なる放漫経営とか平素からある問題以外の新しい事態の中での原因の倒産がふえてきやしないか、こういう心配があるわけでございます。で、私どもとしましては、健全な中小企業がこういう情勢の中でつぶれてしまうということのないように、やはり政府系金融機関の金融上の配慮がこれに適切に対応できるようにできるだけの努力をする必要がありはしないか、こういうことで現在も四−六の金融ワクについての増加のお願いをしているところでございます。今後もやはり状況の推移の中で適時適切な対応策をとっていかなければいけない。これは金融だけの問題ではないと思いますけれども、これをやはり中心に中小企業へのしわの寄り方を私どもとしては是正していかなければいけない、こう考えている次第でございます。
  87. 戸叶武

    戸叶武君 日本の産業構造の中に非常に問題点があるといわれているが、この中小企業の基盤の広さと深さというものは、反面においては日本のこの輸出産業なんかもささえている基盤だと思うのでありますが、いままでの長い間の慣習からして、大体大企業から系列化の傾向というものは急速に進んでおりまして、親会社なりなんなりがやはり金融のめんどうを見る、それから、見なければ生産物を引き取って倉庫へ買い取っておく、いろんなこともあるようですけれども、最近においてはそのぎりぎりのところまで私は来たんではないかと思うんです。いままでの美徳というふうに見られている見方よりも、このきびしいあらしの中において日本の中小企業というものがもっと合理化され、あるいは近代化されていかなけりゃならない非情な面が出てきざるを得ないんじゃないかと思うのです。  私は、ちょうど一九二九年の世界経済恐慌のときに、恐慌の幕が打って落とされる前における、マンチェスターにおける二百日ほどの長いあの繊維のコトン・インダストリーのストライキを現地に行って見ましたが、そのときに、やはりイギリスの経済学者の、私の恩師のトーネー教授も問題にしているのは、後進資本主義国といわれているけれども、日本のたとえば紙パルプの生産あるいはこの繊維、そういうようなものの企業を見ると、はるかに大規模企業になり、設備は近代化され、合理化されていて、イギリスがマンチェスターの百年前の夢をむさぼっている間に日本に追い越されてしまったんだと、もう競争にならないんだということを大学で講義しているだけじゃなく——実際上は、新聞はただ日本のこの進出に対して恐怖感だけあおっていった状態ですが、入ってみてわれわれが驚いたのは、全くわれわれの両毛地帯の機業地というものだってそれほど近代化されてあるとは思わなかったが、それ以上に程度の低いこの零細企業がうごめいている姿を見たときに、やはり一つの保守的な、時代の流れに沿うて転換のできないものはすべて滅びていくんじゃないか。  そのことは、これはアメリカだけでなく——ニクソンがかかえ込んだアメリカ南部の民主党の基盤を共和党へ傾けたのも、あの立ちおくれた繊維産業が、日本の輸出を規制することによって政治的な展開を変更しようという、そういうふうな取引からなされているのは事実でありますけれども、いかに政治的な力をたよってもどうしようもできないのは、やはり時代の流れに沿ってそれに対応するだけの姿勢というものがなけりゃだめなんじゃないか。にもかかわらず、この間、やはり大商社の言う叫びの中には、とにかく日本に来る繊維の製品の規制をやってくれと、アメリカの南部の繊維関係のボスが叫ぶようなことを平気で言っている。しかし、これはかつて日本がイギリスを脅かしアメリカを脅かしたが、今日においては労賃の低い香港、厦門なり、韓国なり、あるいは台湾なりからそういうものが入ってきても、これを防衛するということだけでは救えないのではないかと思いますが、そういう点はいまの通産省はどういうふうに考えていますか。
  88. 外山弘

    政府委員外山弘君) 繊維産業を例にしてのお話でございますので、あるいは生活産業局長からお答えすべきかと存じますが、私の感じを申し上げさしていただきますと、いま先生が御指摘になりましたとおりでございまして、要するに私ども関係から見ましても、日本の中小企業の多くがやはり後進発展途上国の産業との国際分業を考えていかなければいけない、そして新たな発展の道を選んでいかなければいけないという点が国際的な面でも強く言えるわけでございまして、たとえば繊維に例をとりますと、やはり発展途上国に道を与えなければいけない繊維製品がたくさんあるわけでございます。一方、高級化とかファッション化とかいうふうな時代の波に沿って新しい生命を持った製品をどんどん先進国にも出していくというふうなかっこうでの発展ということも大事でございましょうし、それであればこそ構造改善というかっこうで近代化をし生産性の向上をはかり賃金の向上をはかるというふうなことを繊維産業もやってまいったと思いますし、こういうことをしなければまた繊維産業の長期的なあり方はないと思います。  同時に、中小企業全体にそういうことがやはり言えるわけでございまして、私どもといたしましても、中小企業近代化ということを非常に大事な柱としまして従来からこれを鋭意進めてまいりました。同時に、この近代化をするにあたっての中小企業らしい共同化ということが大事であるということから高度化事業に対する推進をやってまいりました。両々相まちまして、日本の中小企業が日本の国民経済をささえる力として、単なる量の問題ではなくて、質的にも内容的にも日本の国民経済に貢献できる中小企業、内容的にもりっぱな中小企業になるような努力、これが大企業との格差の是正というかっこうで進んでいくことが大事であるという認識に立ちまして中小企業政策を進めてまいったわけでございます。  ただ、一口に中小企業と申しましても非常に多種多様でございます。いま申しましたようなことの当てはまり方も業種によりまして地域によりましていろいろあると思います。したがいまして、その辺をよく見きわめながら、地方自治体ともよく協調しながら具体的な施策を業種ごとに地域ごとに当てはめていくということ、これが大事であるというふうに私ども考えて、今後も中小企業施策をそういった観点から国民経済の要請にマッチして進めていくということを大事なポイントとして考えていきたい、こう考える次第でございます。
  89. 戸叶武

    戸叶武君 先ほど長官は繊維と建築業の倒産はふえていくんではないかという見方ですが、私もここ数日間郷里に帰っておって、その深刻さをまざまざと見せつけられてまいったのであります。たとえば住宅のようなものはいま不足しておって、また住宅を建ててもそれは担保の対象ともなるし、あとにも残るんだが、そういうものがどうして土地問題の制約だけでなく——いつか自民党の玉置君が予算委員会指摘しておりますが、住宅ローンの活用なんというものもスムーズには行なわれていないようでありますけれども、やはり建築のごときはこの機会に活力を与えてしないと、日本の経済というものが全く沈滞してしまうんじゃないか。材木が足りないというのでソ連から大量に輸入もしてきた、しかしながら建築はストップになっている、材木を買うやつはない、家を建てることをほしがっているけれども、それは手に入らない、こういう悪循環のところに——日本のいまの政府というのを、もっともらしくみんな政府と言うけれども、実際は官僚のガバメントです。これは非常に硬直された、官僚システムの凝結された形において——内閣というのは、ほんとうは政策の論争を通じて、主権者である人民の審判を経て政権の交代が簡単に行なわれるという政治がスムーズに流れていくものでなければならないのに、この二十数年間固定しています。権力を握れば金が集まる、金をうんと使えば政党は太っていく、この悪循環の中にいまのこの政治の姿勢、政府の姿勢というものが硬直化されている。  ここで政治論を展開するわけじゃないですが、こういう不況の深刻化されているときには、やはり繊維産業なら産業を——たとえばあの中近東一帯は油関係や何かで金は入った、ドルは入った、しかし一気に近代産業にあこがれは持つが、やはり貧しい層が底辺にはある。あの放牧民族的な性格から脱皮するためには、やはり一つ繊維産業においてそこに働き場も持たなきゃならないというような要求は非常に強いのです。そういう機械と人を——私はモデル的な産業地域をつくって土地の人と協力するなりなんなりして、そうしてやっていくような方法なりなんなりを講ずる。ただ、油がほしい、金は幾らでも投じてやるよというこの政策でなくて、そういうことも私は必要ではないかと思うのですが、通産省はそういうことに対しては考えておらないのでしょうか。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先生がおっしゃいましたような経済協力は非常に重要であると思います。それにはいままでのような民間の商社が先頭に立って利益を中心にして進むというやり方から、政府間ベースで、その国のニーズに合う、そしてよくお互いが自分の国の建設を話し合う、そういう一つのことに進まなければいかぬというので、近来いわゆるGGベース——政府間ベースの経済協力の方向へ徐々に転換しつつあるところでございます。これによってインフラストラクチュアとか福祉施設や教育施設に対する援助協力というところにも手を出しますし、特に中小企業と農業については指導員あるいは技術改善センター、そういう面についても積極的にいま心がけておるところでございまして、今後ともそういう線でさらに拡充していきたいと思っている次第でございます。
  91. 戸叶武

    戸叶武君 米の生産の問題でも、日本が明治以降において急速な増産がなされたのは品種改良が進んだからで、国が統一されなければこのガバメントの力によって品種改良というものが十分なされないのでありまして、安定した国においてこそ品種改良なんというものはなされるのであって、中国の農政学者と私は古い時代、いろいろな農業の流れも見たことがありますが、農政においてはきわめて具体的な事実をつくり上げること以外に農民をそれに結びつけることはできないのです。だから西ドイツなんかでも、あの前の大統領をやったリュプケ氏が食糧農林大臣のときに、ライン沿岸における小規模農業地帯、それから東ドイツに接近したハノーバー地帯における大規模農業地帯、そこにはこの大規模農業、機械化農業、多角農業をやる、ライン沿岸においては果樹栽培ができる、野菜もできる、そういうところにはそういうところに適した農業という形において、そういう政府が援助しながら幾つかのモデルをつくっていく。そうするとお百姓さんは、これはすばらしいということならば政府が奨励しなくともそれを見てそれに従ってどんどんこの近代化を行なっていくんですが、日本の農林省官僚は、これは通産省にも当てはまるかもしれませんけれども、いままで非常にとんちんかんな面があった。たとえばナイロンができたからもう養蚕をやってもだめだと、桑抜けと。農林省の役人が言うとおり桑抜くと、繭の値段が上がって、それ、今度は桑を植えなくちゃならない。大体農林省の逆をやってれば百姓は食っていけるというような時代もあったが、いまの私はこれは農林省だけの問題じゃないと思うんです。どうしてもその土地土地に合う条件のもとにおいて、そこにふさわしい、そこに発展性のあるものをつくり上げる。特に私は、今後中近東なりあるいは地中海沿岸諸国なりというものには日本の貢献する面が非常に大きいんじゃないかと思います。  インドのボンベイ州においても、あのミリタントな指導者であったチャンドラ、ボースの一党が二百人ほど定着して、日本の大体岐阜県における農村の農業形態をそのまま持っていってその農業経営をやったところが、五倍もの増産ができたということを誇りにし、それがボンベイ州からマドラス州にも転換していきましたが、いまのカルカッタ付近におけるお役所仕事的なものはさっぱり伸びていない。そこには何か感激がないんじゃないかとも思うんですけれども、私はそういう意味において、日本の農業技術者があり、あるいは繊維関係において技術者も相当いるんです。そういう人たちの活動する天地を与えるのは、業界だけで模索させるんじゃなくて、やはり中曽根さんが言ったように、政府みずからが行政指導の上に立ってやはり海外進出を試みさせるような形をしないと、いつまでもそこへへばりついていても、どうしてももう芽が出ないようなものまでへばりついていくというのは日本人にふさわしくない悲劇だと思うんですが、そういうことに対して、これは中南米に対しても東南アジアに対しても、あるいはアフリカに対しても無限に天地があると思うんですが、通産省はどういうふうに考えておりますか。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中小企業の進出並びに中小企業に対する現地政府に対する協力、こういうようなことを混在させていくのがいいと思います。大企業が行って高度の技術をやっても、実際は現地の民衆になじまないし、現地の技術力になじまないものが多いわけです。大体為政者の虚栄心に終わるというような場合が多々ございます。そういうやり方よりも、むしろ民衆に密着して、民衆の技術能力に応じて徐々に引き上げていくというやり方のほうが地に即したやり方であるだろうと思います。そういう意味において、通産省では一面において、いまのような中小企業の技術指導という面についても心がけておりますが、また一面において、中小企業自体を進出させて、現地の中小企業と手を組んでいくという両方の面で進めさせるようにいたしております。中小企業の進出については、昨年来私らかなり力を入れてまいりまして、そのために内地の中小企業者に対して呼びかけて、いろいろインドネシアやタイやそのほかにおける現地の事情の紹介、それから現地からのニーズ、そういうようないろいろなもののあっせん普及につとめて協力しておるところでございます。
  93. 戸叶武

    戸叶武君 建設の問題で、ソ連等におきましても、大きな国だが、ずうたいがでかくて、こまかい配慮がなされてないので、たとえば木材の輸入をするといったって港湾の修理が全部できていない、輸送も不完全。そういうことを相手の国にむき出しに言うと向こうもしゃくにさわるだろうけれども、日本で木材をこれだけ買うという段階になると、どうしてもやっぱりそういうことを必要とするようになるんで、私は十年ほど前に行ったときに、やはりナホトカあたりにおける港湾のいろんな建築が住友のようなところに依存していたのや何かを見て、ちょうど小松製作所のなくなった河合良成さんとは懇意だったから、やはりトラクターやあるいは伐採機や農機具なんかでも思い切ってとにかくソ連に出してみてはどうか、ソ連はやっぱり国家計画経済に沿うてやっているので、小規模企業ではなかなかやっていけないから幾つかの連合をもって、そうしてこれに対処していったらいいんじゃないかと。あるいはまた池貝の社長の緒方君に、とにかくミーリングなりそれから旋盤なりを分解してごらん、日本とソ連とにおいて、品物が決して日本の精密機械がおくれているところはないんだから、質的にやはりすぐれたものが求められるんだから、あとは価格の問題だがと言ったが、やはり日本とソ連との関係も急速に変わりつつあると思うんです。第二シベリア鉄道が敷かれるというようなことに、軍事的に中国のように恐怖感を持つ必要はない。  もう戦争や暴力革命を過大評価したり、それに幻想をまき散らすのは古いタイプの政治家であって、そんな形の冒険政策を行なえばその国自身が滅びていかざるを得ないんだと思うんですが、そういう点からも、この転換期においてもう少し日本は、原料はない、しかも島国である、しかしこのエネルギーの源泉として民族エネルギーがある。この労働力を高度化して、この技術を高めて、そうして製品を外国へ送り出す。場合によってはそういう技術指導のセンターも向こうの国のメンツをこわさないように協力の形で模範工場なり試験所なりを、これは工業でもやるが農業でもやるというぐらいな雄大な、中曽根さんあたりだとそれができないはずはないんだが、日本の政治家は夢がなさ過ぎるんです。何かとらわれて、うしろのほうばっかり気にして前進する姿勢が足りないんですが、私はやはり世界の中における日本ということを考え、しかもこの一九二九年から一九三二年、あの時代の恐慌現象よりも陰にこもった私は経済的な変革期にいまは入ってきていると思うんでありまして、この日本の民族を絶望的なニヒリズムの中へおとしいれることよりは、日本民族をもっと明るくやはり前進させるような姿勢をこのどん底と思われる時代につくり上げることが必要だと思うんですが、そういう意味においてもっと積極的な施策をやるお考えはないでしょうか。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点はまことに同感でございます。日本としては積極的にいまのように国民に、特に青年に希望を与えるような海外経済協力の方向を明示して軌道を敷くことが大事であると思います。それにはやはりこの海外経済協力の理念というものを明確にする必要があると思うのです。  田中総理が東南アジアへ行って災難にあわれましたけれども、これはわが国の経済協力に対する誤解、あるいは明確な方向が理解されていないという面もあると思います。いままで欧米がやったような利潤追求というやり方、あるいはそれをミショナリーでごまかして、あるいは多少着色していく、そういうような考え方に立った古いやり方でなくして、やはり現地の国民の生活を考え、福祉を考え、技術を考え、溶け込んで一体になって、ともに汗を流しながら現地のために一緒に手をとって働いていくという共存共栄の思想が非常に重要であると思います。私はそういう意味において日本の経済協力はいままでの資本主義的な考え方からむしろ共同経済的な考え方に明確に転換をすべきであるという考えを持っておりまして、通産省の政策の内部においてもそういう方向に日本の政策を持っていくようにいま努力しておるところでございます。
  95. 戸叶武

    戸叶武君 私は去年外国を回ったときに、トルコのイスタンブールにおいて西ドイツと日本が協力して東と西をつなぐ橋の建設に従事している。それらを見て非常に感激にたえなかったのは、土台のコンクリートのほうはドイツがやり、上のほうの鉄の橋梁は日本がやり、石川島播磨がやり、現地の労働者がこれに協力する。その中においてトルコ人の批判を聞いても、ドイツ人は正確できちんきちんとよくやる、しかし、何となく人間的に溶け込めないものがあり何か窮屈な感じがする。しかし、日本人は労働協約を結んでそれを実施するし、われわれと一緒に、何か命令調でなくて一緒に溶け込んでこれをものにしようというような零囲気でもって仕事を進めていってくれる。このことは非常に感激で、われわれも中央アジアから流れてきた放牧民族の騎馬民族の流れだが、日本民族もたぶんそうなんだろうし、やはり源流においてそれほどの違いはないんだが、われわれの放牧民族的な、砂漠に緑をつくることを忘れて、土地を培養しあるいは河川を保護することを忘れている、これを取り戻すのにはやはり日本の力をかりなければならない点が多々あるんではないかということを感じさせられると言ってましたが、この間、バグダッドの大学に東大の水の権威の学者が招かれて、たしか二週間ぐらい講義をやっております。チグリス、ユーフラテスのやはり上流からこれを緑化しようという考え方がイラクのほうにもあるようでございますが、またイスタンブールの大学では、どうしても林業関係の指導者にいい学者、また経験者を入れてもらいたい、そしてどうしてもこの荒れ果てた砂漠地帯に植林の成果を結びたいと。  それはどういうところからきているかというと、やはりアメリカのニューディールの際における、砂漠へ河川を流し込んで、そして日本のジャパニーズクズをまき散らして緑化をはかったという、リーダーズダイジェストにも当時紹介されていましたが、ああいうことが、日本人というのは砂漠をも緑化することができるんだというようなことがやはりしみ込んでいるようなんでありまして、これはまあ通産省だけではありませんけれども、中曽根さんあたりがリーダーシップを発揮して——金は持っているんだと、しかし油を掘り尽くしたら次は不安だというようなところに、水を治め、そしてあの砂漠を緑化し、そしてさらに地下埋蔵資源を開発していき、地上には、バベルの塔ではないが、やはり新しい産業を興すというような方向づけが、夢が地上にいま描き出されることが可能なんじゃないでしょうか。中曽根さんはどうこれを思いますか。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 砂漠のお話が出ましたが、この間、連休に森下政務次官をアブダビへやりまして、アブダビのこの間オタイバ石油大臣が来ましたときに私と会談をして、GGベースでいろいろスキームをやろうということで、その調査のためにすぐ政務次官以下局長をつけてやったわけでありますが、そのときにザイド首長が森下政務次官に言いましたことはきわめて印象的でありまして、われわれは工場もほしい、自動車もほしいけれども、何よりも一番先は植林だと、緑がほしい、そういうことを言ったそうです。森下君は日本で有数な植林家でありまして、彼はその話を聞くや非常に喜んで、植林の話を一時間ばかりしてきたと、王さまはほかの話なんか忘れてその植林の話を聞いたということでありました。まあそれぐらいに国によってはその国の必要を先覚者は考えていろいろおやりになっておるものだろうと思います。われわれはやはりわれわれの基準でものを考えないで、またいままで西欧がやったような基準でものを考えないで、現地の先覚者がいろいろ考えていることにわれわれが協力する、そういう現実的なじみちな考えに立った経済協力をすることが正しいのではないかと、そういうことを痛感した次第でございます。これは中小企業についても、農業についても、教育についても同じでございまして、そういう意味において、いままでのようなはでな、はなやかなやり方から、そういうじみな着実な実りあるものへ転換していく必要があるように感じておるところでございます。
  97. 戸叶武

    戸叶武君 たれか故郷を忘るべきといううたがありますが、やはり自分たちのふるさとを美しいものにし、豊かにし、祖国というものを魅力あるものにしていくことが愛国心をつくるのにも一番だと思うんです。私は共産党の中で蔵原惟人君はずば抜けた教養人だと思っておりますが、彼がやはりレーニン百年祭においてレーニンを研究した中に、私も当初からそれを考えておりましたが、レーニンのおとうさんの先祖は、中国のほうの、西モンゴルのほうの新疆省のほうのカルムイク部族の出で、おかあさんのほうにはゲルマンの血が入っている。雑多な民族が流れ込んだボルガ川のほとりでもって少数民族に対する思いやりのある教育をレーニンのおとうさんや何かやった。こういういたわりの気持ち、そうして未来を築く子供たちに対する愛情というものは、あの激しい革命家をしてあれだけ人間的なふくらみを持ったものをつくったんじゃないかと見ておりますが、これはレーニンだけのことではないと思うのです。  私は、ギリシアにおきまして、この間ニクソンのブレーンである方がヨーロッパを批判して、いまヨーロッパはアメリカに抵抗しているが、ギリシア半島における諸国は、アテネ及びその他が小さなポリスにこだわって、小国家にこだわっている間に、もっとスケールの大きな共同体をつくって対処していかなければ生きていけないということを見失って、マケドニアのアレキサンダーに殺されてしまったじゃないかという皮肉を言って、キッシンジャーがだいぶ問題にされたことがありますが、これはウッドロー・ウィルソンが大学の総長の時分に、やはり政治学を研究した中において、一番基盤となるのはやはり共同社会だ、ふるさとだ、このコミュニティー。ギリシアにおいてはこれがポリスという形において小さな都市国家として固まって自分だけの繁栄を保持すればいい、奴隷的支配のもとに他国との戦争による略奪において繁栄を維持すればよいというエゴイズムがギリシアをして繁栄させたが、あのように音を立てて没落したということをよく指摘しておりますが、いまの国家はアテネやスパルタとは違うが、ややもすれば国家という概念の中にこういうポリス的なエゴイズムがある。  しかし、これをどうして脱皮していくかというのは山の高いところへでも登っていかなければわからないとみえて、ソクラテスも、アテネのアテネポリスでとどまっていたソフィストではわからなかったが、二十里ほど山奥のアポロポリスにたどりついたときに、その神殿に「ナウ・ゼ・セルフ」という額がかかっていた。なるほど自分自身を知るということはたいへんなことだ。相手をやっつけるということだけを、相手よりも優秀な演説なり言なりを吐くということだけを考えてきたが、やはり自分を知る、真実を知るということが一番大切だと考えついてから彼は本物の哲学者の道を歩んだということですが、権力はとらなかったが、彼が対話を通じて青年に与えた影響は大きかったと思うんです。私はギリシアの滅亡、ローマの滅亡にしても、ダンテが言っているように、七つにも分裂した国々がひしめき合って権謀術策を、マキアベリを生むようなそういう必然の姿の中に滅びていってしまったが、いま日本は、私は石油ショック以後において深く考えて、やはりわれわれの故郷は破壊されている。私はこの間ふるさとに行って驚いたのは、子供の時分ツツジを取りに行った山に一本のツツジもない。東京へ来ると国会の中ではツツジが花盛り。ああいつの間にかふるさとの山河からツツジはみんな抜かれて、ツツジの見物は東京へ行くよりほかになくなってしまったわいというほど故郷が荒廃していたのを見てうたた感慨にたえなかっあのですが、これもすべて田中さんのせいとは言いませんけれども、もう少し何かゆとりのある、潤いのあるひとつあれをしてもらいたいと思うのです。  公正取引委員会の吉田事務局長がおりますから、それを忘れてはいけませんから、それでは御質問いたしますが、少し脱線しました。  問題は、やはり小規模企業部の構成の問題でありますが、小規模企業部はほかの部と違った特別な陣容で整備していくという話ですが、その内容はどういうものですか。
  98. 外山弘

    政府委員外山弘君) 小規模企業部長のもとに小規模企業施策の立案とか経営改善普及事業、商工会、小規模企業共済、設備近代化資金、こういったような事業を行なう小規模企業政策課という課と、もう一つ小売り商業、サービス業行政を行なう小売商業課と、こういう二つの課を置くのは普通の部とあまり変わりありませんが、もう一つ小規模企業者からの苦情相談の処理、あっせんに当たる参事官及び小規模企業指導官、こういったものを置くことにしておるわけです。この辺がだいぶほかの部とは違う構成になっているかと存じます。
  99. 戸叶武

    戸叶武君 それは窓口行政をスムーズに、便利に、親切にするという意味を加えての機構の構成ですか。
  100. 外山弘

    政府委員外山弘君) そのとおりでございまして、一つには、そういった課制じゃなくて、指導官制によりまして、窓口業務というかっこうでそれぞれの分担に応じて小規模企業者の窓口になろうということでございます。つまり窓口になることによりまして、一つには小規模企業者の相談相手になるということと、もう一つには小規模企業政策というものを立案するに足るいろいろな問題点をそれを通じて把握しようということと、両方の意味を持っているわけでございます。
  101. 戸叶武

    戸叶武君 この前の予算委員会でも問題になったのは、石油ショックのときだから異常な状況でありますが、このカルテルに対する公取の介入がなまぬるいじゃないかという意見が非常に強かったようですけれども、この行政指導の問題、行政介入の問題あるいは独禁法との問題、そういうことをなかなか公取も多角的に配慮して動かなければならないんだと思いますが、あの経験を通じて、公取委員会では何を考えさせられたでしょうか。
  102. 吉田文剛

    政府委員(吉田文剛君) まず、カルテルに対する公取の態度、やり方が手ぬるいんじゃないかという点でございますが、現在の独禁法ではどうもカルテルに対して、値上げの価格協定がある場合に値下げをしろというような命令が、排除命令が出せないという解釈をとっております。しかし、最近におきましては、カルテルの破棄だけじゃなくて、取引先、たとえば排除命令におきまして、排除措置におきまして、取引先別に取引価格をきめ直して報告をしろと、あるいは一定の期間、公正取引委員会に取引先別の販売価格あるいは販売数量を報告しろというようなこと、さらにはカルテルの場に利用され、過去においても利用されてきました事業者団体に対して解散命令を出すというような、単にカルテルの破棄だけではなくて、こういった命令を同時に出しているケースがふえてきております。しかし、やっぱり根本は、カルテルに対して協定の破棄を命じましても価格の下がる例はほとんどないということでございまして、これに対しまして有効な方法として価格引き下げ命令等を出せないものかどうか、現在独占禁止法研究会において検討していただいているところでございますが、この問題も法技術的あるいは執行面におきましていろいろ困難な問題がございます。しかし、この独占禁止法研究会での検討の結果を待ちまして、これは大体この検討の結果が出るのは本年の十月ごろをめどにしておりますが、それから政府関係各省との調整、折衝等もございますが、そういう独占禁止法研究会での検討の結果を待ちまして、これに対処してまいりたいというふうに考えております。
  103. 戸叶武

    戸叶武君 独占に対する戦いにおいては、アプトン・シンクレアのブラックチェンバーなんかもその代表的なものでありますが、アメリカでもこの独禁法制定は歴史的な一つの経過を経て盛り上がったのですが、それよりもむしろ、やはりニューディール時代におけるガバメントを通じてのポリティカルなコントロールというものが長期的な見通しと計画性を持っていくならば、あるところまでこの行政の、産業の姿勢を変えていくという実験はすでに私はできていると思うんです。いま日本で一番問題なのは、やはり財界の人は、水上さんのような人も予算委員会へ呼ばれると、やっぱりもっと自由を与えなければいかぬというような形でするし、国会でつるし上げと思われるような行き方というものも、これも私もどうかと思いますが、自由という場合でも、企業の人たちが持つ自由の見方と、弱者を保護していかなければならない自由と、二つの面があるのであって、この拘束から自由を与えなければならない、レッセ・フェール、レッセ・アレ的なものと、それから貧しきもの、幼きもの、病めるものをやはり保護していかなければならない面と、国の機能には二つの面があると思うんです。  だから、独禁法の行き過ぎというものも、これはなかなか行き過ぎするとうらまれるし、そうかといって、にらみがきかないようになっちゃうと何にもならなくなるが、今後一番ここで問題になるのは、何といっても行政指導というものが私はやはり国の政治でもって必要になってくると思うんです。これは戦争中の統制というものに対して国民がいやな思い出と恐怖感を持っていますけれども、この乱雑な激動期においては政治責任を持った行政指導というものが、見通しをつけ、計画性を持ち、間違っていたらそれをどんどん修正するというような形において方向づけていくことが非常に必要だと思うんですが、これは今後いろいろな場合において国会においても論議の的となっていくと思いますが、この手かげんといいますか、これについて中曽根さんはどのような見解を持っておりますか。
  104. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自由が行なわれるということは理想的なことでありますけれども、その自由が、どん欲さとかあるいは私的な利益ということに目がくらまされて大衆の自由が拘束される、そういうような場合には一時暫定的に避難、緊急避難的措置として自由が拘束される、制限を受けるということはやむを得ない。まあ、ある意味における護民官的に役目を政府は緊急事態においてはとらざるを得ない、そういうふうに思います。先般、石油危機においては、そういう意味においてわれわれは石油二法をお願いしたわけでございますが、寡占価格の時代においてはそういう作用が行政指導の上からもある程度必要になるかもしれません。いまのように世界経済が非常に条件が不安定でどういう突風が起きるかわからぬという時代においては、何といっても力のない、資本力のない、情報の少ない、人材のいない中小企業や一般大衆の生活を守るということが政府の最大使命でありますから、そういう意味において、ある程度授権を得、あるいは行政指導という方法によりまして大衆の自由を守るということを緊急的に行なうのはやむを得ないし、それは正当である、そういう考えに立って私たちは行政をしていきたいと思います。  で、そういう面について一般の業界がそれに従ったという場合に、これが独占禁止法違反ではないかという議論が一部の筋から持ち出されたりしておりますけれども、私は公衆の福祉、公共福祉ということを目標にして、そして設置法なりあるいは特別の授権法に基づいて政府が行なう行為というものは、これは私的利益を追求する行為とは別であって、そういう場合については独占禁止法にいろいろうたわれているような違反行為には該当しない、そういうふうに私は考えております。
  105. 戸叶武

    戸叶武君 それでは時間も参りましたから、私は最後に結びの質問をいたしたいと思いますが、私は、この一、二年というものは日本にとって大きな試練であって、別に非観すべき、極端に非観すべき要素はありませんけれども、やはり日本の実態を把握した上で、みずからの主体性をつくり上げて世界の流れに挑戦していくだけのかじとりが一番必要じゃないか。特に日本においては、確かに農部門においては急激に農業人口が減りましたが、やはり中小企業におきましても、この系列化も進んでおりますが、もっとやはりあか抜けた組織を、たとえば地域会社におけるコンミューンがあるように、この同業組合なり、フランスにおける生産協同組合としてのサンジカ、イギリスにおけるギルド、そういうものの基盤があってこそ産業民主主義というものも成り立ったんだが、日本では昔の職人組合というものもだんだん微弱になり、何か一つの共同責任を持つ組織というものが労働組合以外にはあまり顕著なものがなくなって、あとは大財閥の、あるいは銀行のシンジケートなり、あるいは大産業のトラスト的な威力なりというものは目に余るものがありますが、そういうものをやっぱり通産省でも十分指導しながら組織化していかなきゃいけないんじゃないかということを、私はこの春闘のあらしの中をいろいろ引っぱり出されて見たときに、大企業では三万円だ、大企業でも中企業に近いところでは二万八千円だ、中企業程度じゃ二万五千円だ、中企業の下のほうでは二万二千円以上は出せない、もっと下のほうだと、とてもわれわれ下請として一万八、九千円しか出せない、それじゃそれなりの理由があるんだが、そこに、その背後には産業上における非常な格差が歴然と出ていると思うのであります。  いまの時代において親方日の丸のものはよいが、ほんとうにみずから自立経営していくところの中小企業の苦悩というものを見るときに、倒産しなくても済むようなものが、もがきながら倒産していかなければならない。やはり中小企業なら中小企業、こういうふうにしていけば健全経営で成り立っていくというような一つのあり場を規定つけるような方向づけがどっかからなされていかないと、いまの商工会議所なりあるいは同業団体なりが何か飲み会のようなふうもなきにしもあらずで、そうでなく、もっとじっくりとした、一つのやはり腰を据えて対策を練っていくような方向づけをやっていかなくちゃならない。それには今度の通産省の小規模企業部の持っている役割りは非常に大きいんじゃないかと思いますが、小規模企業部の責任担当者に、その意味において今後の運営していく決意を最後に承りたいと思います。
  106. 外山弘

    政府委員外山弘君) 一口に小規模企業と申しましても、その業種、業態、地域によりまして非常に多種多様ないろんな問題を持っていると思うのでございます。また、いま御指摘のように中小企業、特に小規模企業の地域性ということも非常に大事な要素でございます。そういった問題点を具体的につかまえて、それが通産局の、また小規模企業部を反映した指導官の仕事というかっこうでも生かされていくと思います。そういった意味で、いま御指摘の点は十分頭に置きまして、小規模企業部がユニークな小規模企業問題をとらえ、そしてこれを政策化するということに独自の活動ができるように私どもも十分努力をしたい、こう考える次第でございます。
  107. 中村波男

    中村波男君 公取から御出席いただいておりますか。——ついでと言って申しわけないんですが、お帰りいただく関係もあろうと思いますので、最初に公取に御質問いたしたいと思います。  ミシン用の綿紡カタン系が、会国縫糸卸協会が値上げのやみ協定をした疑いがあるというので、去る三月七日の岐阜の県議会で県当局に質問が行なわれまして、それに対して岐阜県の企画部長は、価格協定は独禁法違反であると公取委に通報して、公取を通じて実態調査をしてもらうという答弁をいたしていたわけであります。したがいまして、県は翌八日の日に、公取の名古屋の事務所へその内容等について報告をして、調査の依頼をいたしたというふうに承っておるわけでありますが、公取といたしましては、本件についてどのように今日まで措置をなさったか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  108. 吉田文剛

    政府委員(吉田文剛君) 先生おっしゃいましたように、岐阜の県議会から名古屋の事務所に申告と申しますか、それがございまして、名古屋事務所で受け付けたのが三月十一日という日付になっております。それからこちらのほうで、本局も入れまして、現在違反の疑いある事件として調査を引き続いて行なっております。その内容につきましては、これは独禁法三十八条に、事件に関する事実の有無あるいは法令の適用については、事件最中は意見を述べてはならないという規定もございますので、申し上げることはお許しいただきたいと思いますが、現在、違反の疑いのある関係団体等を調べまして、鋭意その内容を掘り下げているところでございます。これは三月のことでございますので、調査を開始しましたのがちょっとおくれておりますが、現在は本局、地方事務所ともいずれも事件が錯綜しておりまして非常に忙しいという事情もございまして、しかし、この件につきましては結論をできるだけ早く出したいということで、いつということは申し上げられませんけれども、できるだけ結論を早く出すようにいたしたいというふうに思っております。
  109. 中村波男

    中村波男君 三十八条によって、具体的な内容についてはこの席で御説明を求めようとは思いませんし、求めてもお話しいただくわけにはまいらぬと思うわけでありますが、もちろんたいへんな時期でありますから、公取の事務がふくそうをし、繁雑であるということは私たちも想像がつくのでありますが、三月の八日にとにかく岐阜県から進達をいたしたと申しまするか、依頼をいたしたと申しまするか、御連絡を申し上げまして、先週私が国会で質問をいたそうと考え資料等をとる過程で、ほっておけないぞということで公取が出動されたきらいが多分にあると思うわけであります。もちろんこういう問題は機敏に出動を願わなければ、かりにやみ協定等が行なわれた事実がありましても、それをいわゆる隠す、あるいは証拠を隠滅するというようなこともあろうと思いますから、したがいまして、そういう点についてははなはだ私は遺憾だと思いますが、これ以上その問題について追及いたそうとは思いません。したがって、できるだけ早く調査をいただきまして、結果を出していただきたいということをこの機会にお願いをいたすわけであります。  さらに、通産省に対してお尋ねをしておきたいと思うわけでありますが、岐阜県の県議会で、わが党の渡辺という県会議員が問題にいたしましたのを簡単に経過として申し上げますと、全国縫糸卸協会の事務局の名前で各会員あてに、おりおりに、四十八年度は三回か、ないし四回通達が出されておるわけでありますが、その表題は「紡績カタン糸、合繊縫糸改訂標準販売価格表送付について」簡単なものでありますから読んでみたいと思います。  拝啓 年内余日少なく益々ご多端のことと存じ  ます。   ご高承のとおり石油不足は物資不足と価格上  昇に拍車をかけ不安な年の瀬を迎へました。   さて、綿紡カタン糸メーカーおよび合繊縫糸  メーカーにおいては本月二〇日頃より逐次値上  げを発表いたしておりますのでご承知のことと  存じますが、別紙のとおり綿紡六社の販売価格  一覧表ならびに本会標準販売価格表をご送付い  たしました。   目下石油二法も成立し、二二日公布実施され  ることにもなりましたのでこの標準販売価格よ  り高く販売せぬようご留意下さるようお願い申  し上げます。   なお本書面ならびに標準販売価格表は他に公  開せぬようお願いいたします。   追伸 合繊縫糸は石油および電力等の事情に  より二月以降の原糸の入荷については不明につ  き価格もこれに伴うことと予想されます。   また綿紡カタン糸についても電力その他悪条  件が重なっておりますので価格も安定しており  ません。  こういう表題で、具体的に三枚にわたりまして価格対照表というのが出ておるわけであります。  そこで、時間もありませんから、二、三点だけお聞きをしておきたいと思うわけでありますが、私の調査したのによりますと、いまのような通達といいますか、示達といいますか、そういうのは四十七年五月二十一日、四十八年二月二十一日、四十八年四月一日、四十八年七月二十一日、さらにいま読み上げました四十八年十二月二十五日付と出ておるのでありますが、二、三の規格品を例にとって申し上げてみたいと思うのであります。紡績カタン糸「八〇×五〇〇〇M」、ユニチカ、色物でありますが、四十八年の二月は二百九十円だったのでありますが、四十九年の二月実施でありまして、いま私が読み上げました資料の価格でありますが、これが八百五十円になった。同じく紡績カタン糸八十の一万メーターというのは白でありますが、四十八年の二月は四百四十円であったのが、十二月末では千三百円になっている。倍率は最初に申し上げましたのが二・九倍、後段が二・九五倍であります。約三倍であります。こういう価格が高騰いたしておるわけでありますが、このような値上がりというのは、事情全くやむを得ない価格であったかどうか、一年間に二倍も三倍も上がるというような、原料高、労賃費その他から見て、妥当な値上げであったかどうかというのを客観的に見ましても、不当なこれはつり上げであるというふうに判断ができるわけでありますが、通産省としてはこういう事例をどうお考えになるか、この機会にお尋ねをしておきたい、こう思うわけであります。
  110. 堺司

    説明員(堺司君) お答え申し上げます。  実は原料になります綿糸、さらにそのもとになります綿花につきまして、昭和四十七年、一時三十セントぐらいに下がっておりましたものが、四十八年には六十セントというような大幅な値上げになっておるわけでございます。これに伴いまして、国内で生産いたします綿糸につきましても、商品取引所の相場が大体参考になるわけでございますが、二百円台であったものが昨年の十二月には、これも四十番の糸で四百九十数円と、五百円近くになっておったというような状況からいたしますと、いま先生が御指摘になりました縫糸の価格の上昇につきましても、ある程度やむを得なかったのではないだろうかというふうに判断されるわけでございます。
  111. 中村波男

    中村波男君 公取の御調査の結果を待ちましていろいろまた質問をする機会があろうかと思うんでありますが、問題は鐘紡、帝絲、東洋紡、ユニチカ、日清紡、敷紡、この六社ですね、六社の価格というのはほとんど同じである。多少違うのもありますが、まあ同じである。こういう点から見ましても、これは明らかに六大紡といいますか、メーカー六社で価格協定等が行なわれておる疑いは十分あるように私は思うわけであります。したがいまして、通産省として公取とは別な角度でこれらの問題について御調査いただいて、こういうあり方というのがいわゆる妥当であるのかないのか。いわゆる行政指導官庁として、通産省として、こういうやり方をお認めになれるのかどうか。これはあとからでけっこうでありますから、後日でけっこうでありますから、一応通産省の見解というのをお示しいただくようにお願いしておきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  112. 堺司

    説明員(堺司君) ただいま先生の御指摘になりました六社の販売価格は、私ども調査いたしましたところ、俗に申しております希望小売り価格ということで、それを卸店に強制的に守るようにという形にはなっておらないようでございます。かつ、たとえば先生お手持ちになっておられるかと思いますが、販売価格対照表というのがございまして、これを見ますと、たとえばカタンの一番需要の多い八十番手、Wというのは白でございますが、鐘紡が六百十五円、東洋紡が六百五円というような形で相当の開き、まあ格差がございます。原毛につきましては、先ほど申し上げましたように、国際的に相当高値で、同じ値段で、相当似たような値段で購入しておりますので販売価格もある程度似通ってくるのはやむを得ないかと思いますが、完全に一致はしてないという点もあります。したがって、私どものほうは、もう一度各社から十分事情を調査いたしまして、後刻先生のほうに私ども考え方を御説明申し上げたいと思っております。
  113. 中村波男

    中村波男君 まあ、公取で調査中でもありますから、この問題に対する質問は以上で終わりたいと思います。公取、御苦労さんでした。  次に、中曽根通産大臣にまずお聞きしたいと思うんでありますが、田中総理が、昨年の七月の東京都の都議選の応援演説の中で、通産省の外局として事務レベルの長官を置いている中小企業庁を、国務大臣を長として中小企業行政を一体的に遂行する責任を負う行政機関にしたい、こういうような発言をなさって、また当時の愛知大蔵大臣が、来年度予算で実施したい、こういうまあ大蔵大臣としての発言があったわけでありますが、そこで、去る五月二日の新聞によりますと、「田中首相は四月三十日、中小企業省住宅省設置したいとの機構改革構想を公にしたが、二階堂官房長官は、一日昼の記者会見で」云々ということでそれを発表いたしておられるわけであります。したがって、こういう具体的な構想が新聞記者会見等を通じて発表になるということを考えますと、所管大臣である中曽根通産大臣を抜きにしてこういう構想が発表されるとは考えられないわけでありますが、もちろん通産大臣としてもこの構想に対しては十分参画をしていらっしゃると思いますが、御協議になった結果、こういう方針政府として固まっておるのかどうか、その点まずお聞きしておきたいと思います。
  114. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 田中総理から中小企業省設置方について検討を命ぜられておることは事実であります。私も強力にして適切な中小企業省ができればけっこうであると思っております。ただ、現実の問題になりますと、非常に複雑な微妙なむずかしい問題があります。かつて貿易省というものをつくるというときに、ついに内閣が倒れたというようなこともございます。やっぱり各省との関係をうまく調整して、そしてほんとうに中小企業者が喜ぶような中小企業省をいかにつくるか、こういう点についていまいろいろ検討しておるところでございます。
  115. 中村波男

    中村波男君 この新聞で見る限りは、大体政府として方針が固まったと、したがって来年度からでも実施されるんじゃないかという、こういう印象を受けたわけであります。そこで商工団体等々は、田中総理は相当中小企業省設置に積極的であるけれども、中曽根通産大臣が反対しておられるのでなかなか前進しないと、こういう見方といいますか、そういう印象を持っておることも否定できないようであります。したがって、いろいろなことが言われるわけでありますが、この中小企業庁設置法の一部改正を今回提案をし、ただいま審議をしておるわけでありますが、中小企業庁の中に小規模企業部をつくるんだと、こういう案に対しましても、真の目的というのは参議院選目当てではないか、役人のポストをふやすのが目的ではないかというような批判もあるのであります。それはそれとして、ここで確かめておきたいのは、小規模企業行政というものが、従来の組織及び機能がどのように変わるのか、どのように機能が今後何といいますか前進するのか、どのように機能するのかというような点について、具体的に明らかにしていただきたいと思いますし、いま大臣の御答弁によりますと、まだまだ来年度から中小企業省が発足するようなふうには受け取れなかったわけでありますが、これはどうなんですか、実際来年度ごろから発足できるようなそういうめどでさらに今後御検討されるのか、まだまだそこまではいっていないというふうに了承したほうがよろしいのか、どうなんでしょうか。
  116. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中小企業政策は喫緊な政策でございますから、とりあえずこの小規模企業部ということで足腰の強い、中小企業者のほんとうに手元に届くような行政を、この体系をまずいまつくっていただきたいと思って法案を御審議願っているわけでございます。これを第一段階にして、そして来年度のことにつきましては中小企業省ということを前向きに検討して、具体的にどういう省をつくるか、いまじみちな検討を、スタディをやらしておる、そういうことであります。この点については前向きに検討していくつもりであります。
  117. 中村波男

    中村波男君 くどいようでありますが、二階堂官房長官は一日昼の記者会見で、中小企業庁の省への昇格、住宅省新設構想ともに政府部内で長く検討されてきた問題であり、とりあえず中小企業庁の昇格問題を中心に来年度予算編成の大きな柱になるであろう、こういうように記者会見で述べていらっしゃるわけですね。これが全く実現しないというようなことになりますならば、これは明らかに選挙目当ての発言であり、もう一つ突っ込んだ言い方を許してもらうならば、利益誘導につながると言っても言い過ぎではなくなるんじゃないか、結果を見なければとやかく言うことではありませんけれども。そういう点と、いま大臣がおっしゃったように、小規模企業者、零細企業者の置かれておる環境というのはたいへんなきびしさがありますだけに、やはり専任の省をつくって中小企業対策を積極的に進めるべきであり、進めてもらいたいというたくさんな中小企業者の願望というものをやはり受けとめていただく意味において、大臣としてさらに積極的におやりいただく決意があればこの機会に表明をしてもらいたい、こう思うわけです。
  118. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は中小企業省設置については前向きのほうでございますから。ただ、私はいま通産省をあずかっておって、そして国会にいまこういう法案を提出しておるものですから、考えようによっては、そういう省ができるならこれはこのまましばらく待ったらどうか、こういう考えも出ないとも限らぬことであります。やはり一歩一歩前進して、当面これをもって足固めをする、次は次の段階として前向きに前進をしていく、そういう行政の責任者としての段取りを考えておるわけであります。
  119. 中村波男

    中村波男君 そこで、いろいろな数字を並べるまでもなく、大企業中小企業との格差というものはたいへんな大きなものがあるわけでありますが、それはそれとして、私は体質的な格差があるというふうに見るわけであります。したがって、二重構造、三重構造というのはいろいろなところに、いろいろな面に大きく出ておるわけでありますが、そのことをきちっと整理をしないとほんとうの政策、ほんとうの対策というのは出てこないんじゃないか、こう私は思うのでありますが、体質的な格差についてどういう御見解をお持ちでありますか、お尋ねいたします。
  120. 外山弘

    政府委員外山弘君) 中小企業政策のねらいとするところが、伝統的に申しましても大企業中小企業の格差の是正というところにあるわけでございまして、いま御指摘のように、中小企業がいかなる意味において大企業との格差を持っておるか、それを是正することが国民経済の発展のためにも、中小企業の成長、向上、発展のためにも必要であるかという点の認識が基本的にあって私ども政策をいろいろ推進してきたわけでございますし、今後もその点は非常に大事な点だろうと思っております。  そういう意味で見ました場合の体質的な格差といいますと、それが表面にあらわれるのは一つは生産性の差でございますし、一つは賃金の差でございます。そういった点にあらわれているのが格差の一つの大きなポイントでございますが、それを是正するための金融上の配慮、あるいは税制上の配慮、あるいは組織化上の配慮、そういった点が中小企業政策として基本的な柱として必要になってくるわけでございます。体質的な格差と申しますと、結局はそういったところに具現されるいろいろな企業の規模の問題あるいは企業の経営態度の問題、あるいは企業の持っているいろいろな環境条件の問題、あるいは情報収集力の問題、いろんな点が集まってそういった格差が出ているわけでございまして、一言にして言うのはなかなかむずかしゅうございます。しかし、要はやはりいろいろな配慮をしながらその格差の是正に総合的に努力していくということが企業としても大事でございますし、政策当局者としても非常に大事である、こういうふうに考えるわけでございます。
  121. 中村波男

    中村波男君 最近、中小企業倒産が月を経るに従いまして増大をしておるということは、いまさら私が指摘するまでもないのであります。原因としてあげてみますならば、原材料高、人件費の高騰などコストアップ分を完全に製品価格に転嫁する力のない中小零細企業は、それに加えて金融引き締めによって販売不振、在庫増加等によっての経営困難。さらに私はこの機会にお聞きしておきたいと思いますのは、今次春闘で大企業は大体三〇%以上、三万円以上の賃上げが行なわれたわけでありますが、まだ中小企業の春闘は片づいておらないものが相当あるのであります。結果的に言いますならば賃上げ率というのは大企業に比べて低いんじゃないか。したがって、まだ全部春闘が終結しておらない、賃上げが終わっておりませんけれども中小企業庁として、この賃上げはどれくらいに平均的に落ちつくのか、きまるのか、そういう点の見通しがあればこの機会にお聞かせをいただきたいと思います。
  122. 外山弘

    政府委員外山弘君) 今回の春闘に伴いまする中小企業の賃上げ幅につきましては、労働省当局の調査がまだできていないわけでございますが、日経連等の民間の調査によりますと二万六千円ないし二万七千円、アップ率にして三〇%強という数字が出ているようでございまして、いずれにしましても大幅な賃上げを迫られるものと考えております。このような大幅なベースアップというのが不況にあえぎます中小企業にとってたいへんきびしいものである、労働力不足に悩む中小企業としてはまたしかし必要な待遇改善を行なうことができない、こういう両面の問題があることは事実だろうと思います。  いま、見通しがどうだろうか、こういうお話でございますが、なかなかこれはむずかしいわけでございますが、先ほどの日経連の見通しにもございますが、やはり労働力の確保も非常に大事でございますから、苦しいとは思いますけれどもやはりかなりのベースアップをやらざるを得ない。そうしてそれを何とか吸収する努力が大企業以上にその必要性があるのではないか。そういった意味で非常にきびしい状態が今後続くのではないだろうか、こういうふうな感じがいたします。
  123. 中村波男

    中村波男君 三月の企業倒産は一千件をこえ、負債金額は千二百億円にのぼるといわれておるわけでありますが、さらに金融引き締め等々から考えまして、また景気動向等から考えまして、中小企業倒産はさらにきびしくふえるんじゃないかと私は思うわけでありますが、それらの点について見通しはどのようにお持ちでありますか。
  124. 外山弘

    政府委員外山弘君) 倒産は四十九年に入ってからだんだんとふえてまいりまして、一月が八百二十一件、二月が八百五十七件、三月はついに千三十六件、千件をこえたわけでございますが、四月は九百七十五件というふうなことでございまして、四月としては高水準でございます。で、ことしに入りましてかなりの高水準が続いているというところでございます。最近の倒産情勢から見ますと、件数のふえ方もさることながら、内容的にもいろいろ金融引き締めの影響をずばり受けた倒産がだんだんふえてくるというふうな感じでございまして、業種の内容も繊維、建設等がわりあいに多目でございましたけれども、だんだんと業種も広範になってくるというふうな傾向もございます。で、今後引き締めがやはりそう簡単におさまるとも思いませんし、総需要抑制下の大事な措置でもございますから、なかなかそちらのほうからの要請は緩和されないということになりますと、中小企業へのしわというのは、いまよりもだんだんときびしくなりがちではないだろうかという懸念が表明されるわけでございまして、私どもといたしましては、やはりこの四月の数字をさらに五月、六月がどんな数字に展開するか懸念を持って見守りながら慎重な対処をしていかなけりゃならぬと、こう考えておる次第でございます。
  125. 中村波男

    中村波男君 倒産の原因は一つではなくていろいろありますし、いろいろ重なって倒産をする例が多いと思いますが、そこで特に金融の引き締めによる倒産というのがかなり出てきておると私は見ておるわけであります。今後も金融の引き締めが続けられる方針のようでありますが、続くといたしますと、いわゆるオーバーキルによってさらに中小企業倒産が増大する、こういうふうに懸念をいたすのでありますが、それらの点についてはどう見ていらっしゃるのでしょうか。
  126. 米山武政

    説明員(米山武政君) 確かに先生いま御指摘のように、四月の倒産の九百七十五件の内訳を見ますと、従来きわめて多かった放漫経営等によるものというものの以外に、売り上げ不振とか、あるいは売り掛け金回収難、あるいは連鎖倒産といったような引き締めの影響によるというふうなものが最近多くなっていることは事実でございます。先ほど長官がお答えになりましたように、今後なお引き締めというのは、いまちょうどいままでの長い間の引き締めの成果がここへきてようやくきびしい形で出てきているわけでございますので、そうしたことから、さらにこうした中小企業への影響が強くなるということは避けなきゃならないということは私どもとしても十分考えているわけでございまして、健全な中小企業が金融のために倒産するということはないように、民間の金融機関あるいは政府関係機関等を極力そうしたものの資金を充実することによりまして、中小企業向け資金を充実することによって、そうした影響をできるだけ回避していくという考えでおるわけでございます。     —————————————
  127. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、今春聴君委員辞任され、その補欠として高橋雄之助君が選任されました。     —————————————
  128. 中村波男

    中村波男君 たしか年度末の中小企業金融として五百億手当てをなさったと思うんでありますが、その貸し出し状況と、需要と供給の関係はどうなったかというふうな点を含めて、この機会に承っておきたいと思います。
  129. 外山弘

    政府委員外山弘君) 当時、御承知のように年度末融資といたしまして五百億の追加をいたしたわけでございます。そのときにも重点を繊維、建設、それから下請企業、雑貨等のもので、特に中小企業金融上、健全なものが阻害されるということのないような配慮をしながら重点的に使ってほしいということを指示したわけでございまして、おそらくその趣旨に沿って三機関がそれぞれの資金貸し出しの運用をいたしたと、こう思っておりますが、その業種別の内訳といったものをいま手元に持っておりません。ただ、大部分そういったいま申しましたような業種を中心にいったと。で、国民金融公庫の場合は零細企業が大部分でございますから、これはあまり業種別に画然としていなかったかもしれませんが、零細企業中心にこの五百億の配分が行なわれ、商工中金、中小公庫等は業種別にも先ほどの重点的に指向された配分になったというふうに承知しております。
  130. 中村波男

    中村波男君 大蔵省のいまの御答弁によりますと、やはり金融引き締めによる中小企業倒産というのを見越して民間金融機関政府金融機関ともにその対策を立てなければならぬという御説明でありますが、ただ、そういう抽象的な御答弁ではどういう対策をお立てになるのかわからないわけでありますが、私が考えますのに、従来年度末融資とかあるいは年末融資とか季節的な融資というのを続けてきたわけでありますが、今回の中小企業の経営困難等々から、いわゆる石油危機を契機にする中小企業への圧迫等を考えますと、特別な融資制度というものを早急に制度化して、それで政府の金融を通じて手を打ってもらいませんとなかなか実効があがらないのではないかというふうに思うわけでありますが、そういう点について特別融資制度考えるような考えというのは全くないかどうか、これは大臣にお聞きしたほうがよろしいかとも思うのでありますが、いかがですか。
  131. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回特別に法律その他をもって行なうという考えはいまのところございません。いままでのようなドルショックの場合、あるいはこの前のPCBショックの場合、あるいはその前の繊維ショックの場合、いろいろなケースがございますけれども、今回の場合は昨年末の輸入の激増、滞貨の荷もたれ、それから総需要カットによる需要の急激な減退というようなところから起きておりまして、わりあいに病状もはっきりしております。それから出てきている現象を見ると、わりあいに緩慢に出てきている、あるいは五月、六月ぐらいにやや激しい状態で出てくるのではないかと予想されておる事態でありまして、いままでやってきているような措置の懇切な手当てをしておけば乗り切れると、そう確信しておりますから、それ以外の特別なものは考えておりません。
  132. 中村波男

    中村波男君 倒産率の高い建設業に対する防止策について、建設省、お越しいただいておりますか。——お尋ねいたします。  建設大臣が中小建設業者の倒産防止対策として、来年度の公共事業を繰り延べる場合にも、中小企業向け発注はなるべく上期に持っていきたい。二番目としては、大きな土木工事も数区に分割して中小業に回すようにする。三つ目として、不況になると大企業が中小工事にまで進出してきがちだから、こうしたことをできるだけ防ぐ対策検討する。こういうようなことを表明になっておるわけでありますが、まあ年度も越しました今日、建設省として、どのような中小建設業者の倒産防止対策を実施していらっしゃるか、どのような措置が今日とられておるかお伺いいたしたいと思います。
  133. 重見博一

    説明員(重見博一君) 大臣の命を受けまして、ことしの五月十日付の事務次官通達をもちまして、地方支分部局の長、あるいは建設関係の公団、下水道センターの理事長、あるいは都道府県知事等に対しまして、次のような措置をとるよう通達をしたところでございます。  その内容の第一点は、第一四半期における工事の発注にあたりましては、できる限り大規模工事の発注を押えるように、さらに中小規模工事の発注を優先して早期に行なうよう配慮されたい。  第二点といたしまして、工事の性質上、資材、労務の調達等におきまして、優良な地元の中小建設業者を活用することによりまして円滑な施工が期待できるような工事につきましては、大規模の工事をできるだけ分割して発注するようにすることということでございます。  それから第三点といたしましては、発注標準を順守するということで、契約予定金額に対応する等級より上位の建設業者を選定することは極力避けること。と申しますのは、大企業に小さな仕事を発注することは極力避けろという趣旨でございます。  それから次に、さらに工事成績が特に優秀な中小建設業者に対しましては、二等級上位に属します大きな規模の工事についても指名することを積極的に進めて、受注機会をはかるようにするということでございます。  それからさらに優良な中小建設業者につきましては、大企業と共同請負、ジョイントベンチャーを組みまして、お互いに技術、労務等を提供し合うことによりまして工事を円滑に施工するように、そのような大企業とのジョイントベンチャー制度を活用することによりまして、中小の業者が大きな工事にも参加できるというような措置を講ずるようにというようなことを通達したわけでございます。  それで、さらに都道府県知事に対しましては、そのような措置を管下の市町村長に対しても周知徹底していただきたいというようなことをこの五月の十日に通達して、その線で現在指導しているわけでございます。
  134. 中村波男

    中村波男君 まあ、ややもすると官庁行政というのは、通達したから事足れりと、それでやっているんですよと、こういうことで実行面ではなかなか通達どおりに行なわれておらない、これが従来からの実態でなかったかというふうに思うわけであります。したがって、県にも通達した、県はまた市町村にも同様の趣旨の徹底をはかっておるんだということでありますが、問題は、財政的な手当てをしてやらなければ、中小企業へ仕事を回せといいましても回るものではないわけですから、そこまで具体的な手配をされておるのかどうか。もちろんこれは建設省だけではどうにもならぬわけでありまするけれども、そういう点についてはどうでしょうか。
  135. 森田松仁

    政府委員(森田松仁君) ただいまの中小企業対策の問題でございますが、建設省関係におきましては、公共事業の執行につきましては総需要抑制ということで、第一四半期は四月の閣議決定の線に従いまして、大体四十八年度実績の二%下回る程度ということで見ております。ただ、閣議決定におきましても、そういう措置を実施する際には中小建設業者に対しまして受注の機会を与えるようにつとめなさい、こういう趣旨がきまってございます。したがいまして、先ほど御説明しましたようなことで、あらゆる機会を通じまして中小企業業者に機会を与えるようにつとめてまいっております。
  136. 中村波男

    中村波男君 次は、法案の具体的な内容について三、四点お尋ねをしてみたいと思うのであります。  問題は、中小企業の施策を実施してまいります過程で、業種によって所管省庁が違うのがたくさんあるわけです。これをどのように各省庁といわゆる中小企業庁との政策を一致させていくか、また全く違うものをどこで調整をするのか、こういう点について予算も違いますし、性格も違うということを考えますと、これはなかなか簡単なことではないというふうに、施策の推進上問題があるような感じがいたしますが、その点はだいじょうぶですか。
  137. 外山弘

    政府委員外山弘君) 中小企業庁もできましてから二十五年たつわけでございまして、その間通産省の外局として仕事をしながら、いま先生が御指摘になったような問題をそのつどいろいろな業種ごとに、業種中小企業問題ごとに経験してまいったわけでございます。で、結局は、業種別中小企業対策ということになりますと、その業種の所管庁がやはりイニシアチブをとるわけでございますし、その推進もはかるわけでございます。ただ、その中身について中小企業庁に御相談がある。逆に、中小企業の一般政策、たとえば高度化政策とか、金融政策とか、税制とか、こういったことになりますと逆に中小企業庁の土俵を使って、各所管業種の方々がこれを利用されるというかっこうになるわけでございます。どちらも相補い合いながら、相協力しながら、それぞれの中小企業の一般としての特性、業種としての特性、それを中小企業庁なりそれぞれの業種所管庁が生かしながら、両々相まって中小企業者というものが充実を期せられていく、こういうことと了解をしておるわけでございます。で、従来私どもの立場でいろいろな中小企業施策を生み出したものは、これは通産省の各業種に限らず、他省庁の行政でも十分これを利用していると思います。また逆に、各省の中小企業行政に対して私どもがいろいろ御注文申し上げる。たとえば建設業とか、個人タクシーとか、そういった問題についてもいろいろな関心を持っていろいろ申し上げるという機会もあったと思います。  今後、小規模企業部ができました際には、その辺をさらに私どもなりに強めていこうということが可能になると思います。つまり小規模企業指導官ということで、各省の所管業種にまたがるものを担当する指導官もできると思います。そういう方々は小規模企業者の窓口になって、そうして問題をとらえて政策化する必要がある、あるいは具体的に解決する必要がある、その問題ごとにその所管の行政庁に対していろいろ御提案申し上げる。こういう施策を強化したらどうでしょうか、あるいはこういう問題を持っているから、こういうふうに解決してみたらどうでしょうか、こういうことを御提案申し上げる。こういうかっこうで他省庁に対してもいろいろ御連絡し、かつ連絡を強化する、こういうことになると思います。したがいまして、そういうことが可能な窓口がふえるという意味で、私どもはいままでよりは強化されると、こういうふうに考えている次第でございます。
  138. 中村波男

    中村波男君 具体的に言いますと、八百屋や魚屋は農林省、理髪、ふろ屋は厚生省、大工や不動産業は建設省等々、許認可賃金ということになりますと全く中小企業庁を離れた存在だということにもなりますから、おのずから行政官庁としての結びつきというのは、中小企業になじまないといいますか、薄いと申しますか、そういう点がいろいろやはり今後の中小企業対策を進めていく上において留意していただかなければならない点ではないかというふうに考えますので、指摘を申し上げて方針をお尋ねしたわけであります。  次は、資金貸し付け、あるいは指導行政等々、具体的な中小企業対策というのはほとんど地方公共団体にまかせきりである、また機能をしようといたしましても、通産局というのは各県にあるわけではないわけでありますから、そういう点で、今度の小規模企業部を設ければ中小企業対策が格段と前進するような説明がありますけれども、実際に手足があるのかどうか、きめのこまかい行政をする体制があるのかということになりますと、これは全く貧弱な組織機構であると言わなければならぬのじゃないかというふうに思うわけであります。したがって、やむを得ない措置としては、県等の機関を活用すると申しますか、連絡を密にして機能するような方法を具体的に考えていかなければならぬのではないか、そういう面における対策あるいは施策として、どのようなことが考えられておりますか、お伺いをいたします。
  139. 外山弘

    政府委員外山弘君) 御指摘のように、中小企業行政は、地方におきましては地方自治体にお願いしている点が多々ございます。むしろ自治体が固有の行政と同じような角度で中小企業振興行政をやっているわけでございまして、そういう点で見ますと、確かに地方における中小企業行政の相当部分が自治体にあることは御指摘のとおりでございます。今回、小規模企業部を設けまして、さらに通産局にも二十八名の人を配置いたしまして、そして小規模企業行政に一般の前進をはかるという点を考えているわけでございますが、当然のことながら、この程度の人数で十分な行政ができるというふうには私ども考えられないわけでございますが、しかし、通産局が、もともと中小企業行政につきましては自治体と協力しながらいろいろいままでも進めているわけでございます。先般も物資のあっせん問題、これは自治体と通産局が非常に協力をいたしまして、中小企業者に対して非常な便宜がはかられたという点がございました。あるいは先生御承知の下請問題、これは通産局が、やはり地方自治体ではなかなかやり得ないことを、いろいろな角度からやれるというふうなメリットもございます。もちろんいろんな点で共同していかなければできない面が多々ございますし、これを機会にやはり通産局も若干の充実ができるわけでございますから、地方自治体とも十分協力をしながら、この本来の小規模企業部をつくった趣旨に照らして、そうして活動してもらわなければならない、そういうふうに私ども考えているわけでございまして、決して十分とは申せませんが、これを機会に前進をはかりたいというのが私どもの願いでございます。
  140. 中村波男

    中村波男君 三条の三の二にあります「中小企業の経営に関する相談、中小企業に関する行政に関する苦情等につき必要な処理をし、又はそのあっせんをすること。」という条文の具体的な処理でありますが、関係省庁に取り次いだあとの処理については触れていないわけであります。これはどうするのか。  二つ目は、取り次ぎ後、関係省庁でどう処理したか、中小企業庁中小企業者の立場に立って、関係省庁から中小企業庁または問題処理を依頼した者に報告をするように法文上明記すべきではないか、明記することができないのかどうか、この点はいかがですか。
  141. 外山弘

    政府委員外山弘君) 一つには、実際問題といたしまして、取り次ぎをしっぱなしということでは非常に誠意のない行政になってしまうわけでございます。その点は十分その結果もフォローするということが大事でございますから、実際問題として、そういうことについては十分努力もし、かつ、そういうことについての遺漏のないように、また、やりっぱなしではないかということが言われないような努力が必要だろうと思います。ただ、これを条文上の問題にいたしますと、もともと中小企業庁設置法には各省からいろいろな報告を求めるという規定がございます。したがいまして、法的根拠を必要とするという点になりますならば、そちらのもともとの条文がむしろ活用できるということは言えるかと存じます。
  142. 中村波男

    中村波男君 先刻の質問との関連で、労働力の不足の問題をこの機会にお尋ねしておきたいと思うのであります。  先刻も指摘しましたように、まあ大幅賃上げが行なわれましても、やはり大企業中小企業、特に零細企業との賃金格差というのはますます大きくなるということはこれは否定できない現実だと思います。それでなくとも中小企業に働く労働力というのは不足というのは深刻なものがあるわけでありますから、特に新規卒業者の就職率というのはまことに低いわけであります。こういうことを考えますとき、ますます大企業との格差が拡大をしていく中で、どのようにして中小企業者の労働力を充足していくか、これらの具体的な対策あるいは今後の方針等について、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  143. 外山弘

    政府委員外山弘君) 大企業中小企業の間に賃金格差があるということが、やはりいま御指摘のような問題を生ずる一つの背景でございますが、その賃金格差がなぜあるかといえば、生産性格差があるからということになりますし、そういった企業格差が結局は労働力の集め方という点に差を生じさせるわけでございます。要は、高賃金に耐え得るような中小企業、そういった中小企業企業基盤の強化ということが大事でございまして、それが賃金格差の解消につながるわけでございますし、中小企業の労働力の確保にもつながる、そういった基本的な対策を進めていかない限りやはり根本的な解決がなかなかむずかしいということになると思います。私どもとしましては、かつて、従来からも、中小企業は省力化をする、それからいま言われている前からも、知識集約化と申しますか、高加工度化と申しますか、加工度を高めることによって付加価値の高い製品をつくる、それによって一人当たりの生産性を上げる努力をしてほしい、いたずらに企業規模の大を求めるよりも加工度を高めることが大事であるというふうなことを絶えず言っておりました。それから同時に、共同化することによって、中小企業だけではできないことをやるようなくふうをしてほしい、いずれも先ほど申しましたような基本路線に沿った対策だろうと思います。こういう基本的な行き方をやはり完成していきませんと、これをまた推進していきませんと、労働力の確保という点についてはなかなか問題は解決しない、こう考えます。一方、賃金の問題もだいぶ近づいてきた。ただ問題は、初任給あたりはだいぶ近づいているけれども、あとの昇給のしかたが違ってくる。あるいは福祉政策と申しますか、福利厚生施設等が大企業との間に非常に差がある。こういった点にむしろ問題があるんだというふうな指摘も最近はふえてまいりました。こういったこともむしろ中小企業の労働力確保対策一つとして、私どもとしては中小企業の福利厚生施設に対する助成ということも最近は強化してまいっているわけでございますが、これも一つは大事な政策ではないだろうか、こう考えている次第でございます。
  144. 中村波男

    中村波男君 いかに中小企業を育成発展させるかということの基本に、私は、大企業中小企業への圧迫と申しますか、いわゆる大企業資金力、組織力、あるいは情報力等を駆使してどんどんと大企業中小企業分野に進出をしてまいりまして、そして大企業中小企業の事業分野を食い荒らしておる。このまま実態に目をおおて中小企業対策幾ら進めてみましても、結局はしり抜けに対策というのはなるんじゃないか、こういうふうに考えるのであります。  大臣、いいですか。大臣、質問しますよ。中曽根通産大臣は、昭和四十九年三月五日の衆議院商工委員会で、わが党の中村重光議員の質問に答えて、商社ラーメン屋洗たく屋まで進出するのは好ましくない、したがって、それら大企業中小企業への進出を食いとめるために、現行の中小企業団体法とにらみ合わせて検討するというような発言をなさっておるわけであります。これは三月五日の衆議院商工委員会で初めて発言をなさったのではなくて、その前にもそのような同趣旨の発言はされておるわけでありますが、発言はされておりまするけれども、具体的に御検討に今日入っておられるのかどうか、どのような行政措置あるいは立法を考えて準備をしていらっしゃるのかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  145. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほども答弁申し上げましたように、今度の予算に六百十九万円計上いたしまして、大企業商社等中小企業分野に進出している現状、また進出してくる場合にどういう影響があるかという実態の把握をまずやりまして、その次に、立法に入るか入るべからざるか、行政指導でどの程度までやれるか、そういう検討をさらに正確に精査をもって進めていきたい、そういう考えでおるわけでございます。
  146. 中村波男

    中村波男君 その調査費も、金額的に見ましてもまことに少ないと思うし、どうも対応のしかたが緩慢といいますか、ほんとうに熱意を持ってやろうという姿が出てきていないような感じがするわけであります。  社会党といたしましても、たしか昭和三十五年ごろから中小企業者の事業分野の確保に関する法律案等を国会に提案をいたしまして、もちろん廃案で今日まで来ておるわけでありますが、何としても中小企業者の事業分野を確保する法律をつくることがまず必要ではないかというふうに考えておるわけであります。したがって、いま調査中だと、その調査の結果結論を出すのだという、そういう答弁である以上、それ以上の答弁を聞き出すことはできないわけでありますが、何度も何度もそういう点について検討する、前向きで対処するという御答弁がいろいろな機会に出ておるわけでありますから、ぜひひとつ来年度の国会に法案が出るような目安で積極的に御検討に入っていただきたいし、そう私は強く要望するわけでありますが、いかがですか。
  147. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ミサイルからラーメンまでと、こういわれておるように、商社中小企業分野に不当に進出してくるということは適当でございません。元来商社の場合は貿易商社というのが正しいので、海外に対して貿易を行なって、輸出輸入あるいは第三国貿易等で商業活動あるいは経済活動を営むべきものが、国内を主にして、国内のほうに足場を伸ばしていろいろな混乱を起こすということは適当でないわけです。終戦後三井物産でも三菱商事でも大ぜいの海外要員が引き揚げてきたので、めしを食わせなければならぬというところから国内分野に進出して会社をつくって、引き揚げ者を食べさしたというような経験から、それがまだ惰性的に続いておるわけです。これをやっぱりある程度整理する必要がある。そういう考えに立ちまして商社の問題も検討もしたいと思いますし、それから大企業が自分の下請あるいはそれ以外のものに対していろいろ影響を与えているということについては、いままで国会でも議論がありましたが、自分で仕事をし出すということになると、また中小零細企業を圧迫するわけでございます。そういうような実態を的確に調べて、そして一面においてはいわゆる商社や大企業企業分野、そういうものの適正な分野というものをはかり、中小企業企業の適正な分野というものをはかり、その間の両者の協力関係を維持していくというためにどういう構想でいくかというにはかなり慎重に検討を要するものがあるわけです。  現在、中小企業の団体組織法があるわけですけれども、これが活用されていないというのには、何かぎくしゃくしたところがあるに違いないわけです。それはそういうことをやった場合に報復を受けるためにやらないのか、何か別に法の不備があるのか。現に法があってそれが適用されてないというのは何か欠陥があるからではないか。そういう実態をよく見比べて適切な対策を講じたいと考えているわけであります。
  148. 中村波男

    中村波男君 いま大臣から御指摘をいただいたのでありますが、私もその点質問いたしたいと考えていたところであります。中小企業団体の組織に関する法律の十七条五項、それを受けた三十条の二「特殊契約」というのは、この法律ができてからまだ全国で一回も発動したことがないのです。ないのですね、これは。長官、違いますか。
  149. 外山弘

    政府委員外山弘君) 確かに具体的に適用したケースはございません。
  150. 中村波男

    中村波男君 なぜそういうケースが出てこないのかということは、いま大臣もいみじくもおっしゃったように、この法律そのものに、全く実態にそぐわないいわゆる机上で考えた特殊契約というような方法が出てきておるために実効として発動できないのだということであるならば、これはぜひひとつ検討をして、いわゆるやれもしない条項では絵にかいたもちでありますから御検討をされる必要があるのじゃないかと思いますが、この点長官はどのように認識していらっしゃいますか。
  151. 外山弘

    政府委員外山弘君) 現行法が完全であるというふうには思いませんが、しかし、同時に、適用がないということで、すべてこの法文が悪いというふうなことにも必ずしもなっていないのではないだろうかと思います。と申しますのは、多年、毎年いろんな例がございまして、その際に、やはりいざとなれば、こういう法律で介入し、また指導することができるんだということが背景にあるために行政指導の余地が広かったということは言えると思います。具体的なケースごとにこの法律の背景を説明するわけではなくて、具体的なケースごとに実態を明らかにしながらいろいろ介入して指導したケースがたくさんございます。そしてまた解決した例が幾つかございます。その際に、この法律は必ずしもそのまま適用がなくても、それなりの機能は果たしたのではないだろうか、こういう点があるかと存じます。大臣が先ほどおっしゃいましたように、行政指導でどの程度までいけるだろうかというふうな判断も、その辺を含めて今後の検討課題というふうに考え、また法律が必ずしも十分とは思えませんので、法律自体の改正もどういうふうな点が技術的に不備であるかという点も含めて検討しなければならない、こう考えている次第でございます。
  152. 中村波男

    中村波男君 まあ、私しろうと考え考えてみますというと、大企業に対する商工組合との交渉を義務づけているものの、契約締結までは義務づけてはおらないわけですね。法的強制力がないのが弱点といいますか盲点ではないかというふうに思うわけであります。また、特殊契約は地元の中小企業保護という側面が強いわけでありますが、それも大切なことでありまするけれども、消費者中心の審議会を設けて運用をはかっていくというようなことも今後の問題として、法律改正の問題点として指摘をいたしておきたい、こういうふうに考えておるわけであります。したがって、中小企業団体法がどれだけ今日まで働いているのかということになりますと、法律はつくったけれどもほとんど働いておらない。この法律が働くような必要がないというような、中小企業の環境がよくなったとか、その他中小企業の条件というのが法律をつくった当時よりたいへん緩和したという事実があるならば別でありますが、そういうことは全くないのでありますから、そういう意味からいいましても、もう一度この法律についても洗い直しして検討をされる必要があるんじゃないかという感じを私は強く持っておりますので、意見を申し上げて、御所信をお尋ねして、質問は終わりたいと思います。
  153. 外山弘

    政府委員外山弘君) いま先生の御指摘のありました強制力のない点あるいは調停審議会の構成等、それぞれ検討すべき余地がある問題点だと、私もそう思います。ただ問題は、やはり強制力がなくても、先ほど大臣がおっしゃいましたように、こういうふうな場で争うと中小企業者も損をするという要素もあるかもしれません。しかし、大企業にとりましても、こういうところで争うことになると名誉なことではない、法的強制力の問題とは別に、どうもあまり騒がれるということは名誉なことではないと、こういう判断もあったようでございます。そういった点も考えますと、強制力の問題も慎重に考えなければいけない要素があるかと存じます。いずれにしましても、御指摘の問題点は十分頭に置きまして今後の検討課題にさしていただきたい、こう考える次第でございます。
  154. 藤原房雄

    藤原房雄君 このたびの中小企業庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、審議時間もだいぶ過ぎたようでございますので、一、二点だけちょっとお伺いしたいと思うのであります。  最初に、このたびの法案自体につきましては、小規模企業部設置するということでありますから、これは時にかなったといいますか、きめのこまかい施策はできるであろう、具体的な問題になりますといろんなことがあろうかと思いますが。この法案のことについてはそれなりに評価するのでありますが、しかし、今日の中小企業を取り巻く環境というものは非常に悪化し、日を追うごとにその状況が拡大しつつあるというこういう現況の中にありまして、まず最初に、大臣に、今後の中小企業政策、総体的な見解を概括的にお伺いしたいと思うのであります。
  155. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 総需要抑制政策が浸透している中で中小企業経営の先行きは必ずしも楽観を許されない状況にあります。中小企業は省資源・省エネルギーの要請、知識集約化、国際化、福祉充実の要請、企業の社会的責任遂行に対する要請、質的充実を重視する企業経営の移行への要請及び従業員の福祉のための要請、こういう諸般の課題の対応に迫られております。今後中小企業は特に知的経営活動を中心とする積極的な経営努力と、その特性とする高い環境適応力を発揮することなどによってその前途を切り開いていくことが期待されています。政府としましては、こうした中小企業の動向に対処して、中小企業施策を国の最重点施策の一つとして各般の施策の総合的推進をはかってきたところでありますが、四十九年度においては一そうこれを充実、拡充、強化するとともに、小規模企業対策強化、中小商業対策の充実、構造改善事業の推進、指導事業の強化中小企業金融対策、税制措置の拡充等強力に推進するとともに、現在御審議願っておる法案によりまして、中小企業庁について新たなる行政力をさらに積極的に付与しようとしておるものでございます。
  156. 藤原房雄

    藤原房雄君 いま大臣いろいろお述べになったわけでありますが、政府が何もしてないと私は言いませんけれども、こういう非常に狂乱状態といいますか、異常な社会情勢の中にありまして、大きくやはり波をかぶるのは中小企業業者であります。そしてまた、その中小企業業者が日本の産業を大きくささえていることも事実だと思います。いろんな業種があり、いろんな規模の相違もあり、これにきめこまかい施策、指導、融資、税制、いろんなことをするにいたしましましても、これは多難な問題だろうと思うのであります。  いずれにしましても、現在こういう非常なたいへんな事態に直面しておるということは事実でありまして、特に倒産の問題につきましては、先ほどいろいろ論議があったと思うんでありますが、四十八年の三月ごろから倒産は増加の一途をたどりまして、四十八年度倒産件数、中小企業白書でも八千二百二件ですか、総需要抑制というか、また金融引き締めの施策によって今年の三月の倒産件数は千八十一件、負債総額が千二百十二億二千七百万とか——これは帝国興信所調べで、このように非常に最悪の事態におちいっているということが報道されているわけであります。さらに緊急事態に追い打ちをかけるように六月の危機説なんということもいわれているわけでありますが、これら中小企業倒産に対する見通しなり、また防止対策といいますか、この倒産に対してだけというわけにはいかないかもしれませんけれども、これに対するいまの概括的なお話があったんでありますけれども、非常にいまだかつてない事態であるだけに相当強力な施策が要求されると思うんでありますが、政府の防止対策、これについての大臣のお考えをお伺いしたいと思うんであります。
  157. 外山弘

    政府委員外山弘君) ただいまの御指摘のように、倒産件数も三月になりまして、ついに一千件をこえるということでたいへん過去の、四十三年ごろの高い水準になってしまいました。近来になくきびしい状況になってきていると思います。しかも今後の状況を考えますと、御指摘のように四−六の状態はいまの金融引き締めの問題の継続性から見ましてもなかなか一そうきびしいものがあるのではないだろうか。業種についてももっと広範に、それから問題についてももっと深刻になっていくのではないだろうかというふうな懸念が私ども中小企業サイドの面から見ると非常に心配になるわけでございまして、そういう点から見まして、先般も実は一−三月のためにも三月末に年度末金融ということで、これはあまり例のないことでございますけれども、年末金融に加えて年度末金融をさらにやったわけでございます。  そして金融上の配慮をしたわけでございますが、四−六につきましても、先ほど申しましたような経緯にかんがみまして本来の通常ワクをいつもよりもふやしたわけでございます。政府系機関についてのワクを五千五百億と、いつもよりもだいぶふえた金額で配分いたしましたけれども、これでも必ずしも十分ではないのではないだろうかというふうな懸念から、いまその追加ワク大蔵省にお願いをしているところでございます。できるだけ早くそのワクの設定を見まして、これが四−六の中小企業金融に緩和剤になるように、そして最も問題の多い業種ごとに重点配分しながら適切な対応策に配慮していきたい、こういうふうに考えているところでございます。さらに先般の中小企業信用保険法の改正で保険限度の拡大の実現を見たわけでございまして、国会の通過がいち早くできましたので、私どももこれをもう一つ信用補完制度の拡大ということで、現在の中小企業者にとってはやはりたいへん役立つ制度上の応援ではないだろうか、こう考えている次第でございます。
  158. 藤原房雄

    藤原房雄君 融資ワク政府では拡大して対処しておると、その事実はわれわれもわかるわけでありますが、現実的に政府機関にはそういうワクの拡大によって措置されておっても、実際それが具体的に業者には、なかなか選別融資等いろいろな制限がきびしくて、必要欠くべからざるところに手が届いていないというようなのが現状であろうと思います。また、いままでの様子を見ましても、いままでの金融関係のことを通観いたしましても、一昨年の自主規制以来、ドルショック、石油危機、それに伴う総需要抑制政策、こういうことで金融引き締めがずっと続いておるわけでございますので、追い打ちをかけるように次々と経営難にというものが加速的に進んできておるということ、こういうことからいたしまして借り入れ金がふえる一方である、また滞貨製品の増加、こういう中でさらに資金繰りがきわめて困難であるという二重三重に問題が重なっている。政府でも緊急融資方針を決定したということでございますが、緊急融資といいましても、緊急融資方針が決定したということも報じられておるわけでありますが、この緊急融資の具体的な問題についてお伺いしたいと思います。  いずれにしましても、今日ただ融資を受けるということですと、いままでの悪条件にさらに借り入れ金が雪だるま式にふえていくということでありますから、今日ではやはりどうしてもこれからの融資、また緊急融資ということになりますと、無利子、低利、そしてまた非常に長期にわたるというきめこまかな施策がなければ、現状としては、従来踏襲したような融資政策だけではならぬじゃないかということを痛感するわけでございますけれども、いま政府考えておる緊急融資、これはどういう方針でお考えになっていらっしゃるか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  159. 外山弘

    政府委員外山弘君) 中小企業金融の大部分は市中銀行がやっておりますし、さらに中小企業向け専門金融機関、相互、信金といったようなものがその次のシェアを占めておりますし、政府系機関は確かに補完機関としての役割りを持っておるわけでございます。しかし、こういう金融引き締めの時期でございますから、やはりその最後の政府系機関ワクの増加ということが一番的確に機能いたしますし、また市中銀行、専門金融機関等に対しては、健全な中小企業金融に十分配慮するようにということを絶えず言い続けておりますが、これが十分に実行されるということになりますと、量的な問題がなかなかむずかしいという点がいつも指摘されるわけでございます。そういった点から、私どもとしましては、やはり政府系機関融資ワクをふやすということにまず努力をしたいと思います。で、条件よりも量が大事だというのが現状ではないかと思いますし、中小企業と申しましても、困っている業種のばらつきがわりあいにいろいろございます。したがいまして、特にやはり困っている面を重視しながら配分をしていく、貸し出しをしていくということが大事だと思いますので、その辺の指示をしていきたい、こう考えるわけでございます。  一方、市中銀行に対しましても、政府系機関にも追加するけれども、市中銀行としても健全な中小企業金融を円滑に実施するように努力してほしいということをまた言わなければならないと思いますし、また実際の救済融資ということを市中銀行も考えているわけでございますから、それらについての活用もいま大蔵省にもお話をしているところでございます。いずれにしましても、製品需要の停滞、先ほどの御指摘のように、そういった面からくる中小企業のつらさ、きびしさというものが来ているわけでございますから、何としてもそれを金融上緩和するということが、つなぐということが非常に大事な役割りをするんではないか、こういう判断に立ちまして現在四−六のワクの追加ということに努力をしていきたい、そう考えておる次第でございます。
  160. 藤原房雄

    藤原房雄君 いずれにしましても、金それから物、人的な不足、この三つの悪条件、この中で悪戦苦闘し、最近特に、先ほど質問もあったと思いますが、繊維業界——業種によってはたいへんな危機を招いているところも多いわけでございまして、そういう現状というものをひとつよく見定めて適切な処置をしていただきたい、しなければならないのは当然なことだろうと思います。先ほど質疑もございましたが、時間もございませんので、次に移らしていただきます。  今度の国会でも大きな問題になりました、やはり大臣のお話にもありましたように、インスタントラーメンからミサイルまでというふうな大手商社がどんどん中小企業分野にまで進出してくる。これはもうヨーロッパ等における現状を見ましても、日本の現状というのはどうしてもこれは是正しなきゃならぬ大きな問題だろうと思います。今度のこの法案も中小業者に対して小規模業者に対して指導とか資金面とか情報提供とか、こういうことであたたかい手を差し伸べようということでありますが、まあこういう当面する問題をそれぞれに処置するということもこれは必要なことであることは当然だと思いますが、やはり抜本的にもっと大きな見地の上から中小企業のあり方という、中小企業の位置づけというものを考えていくこともまた大事なことだと思います。そのような考えの上に立ちますと、どうしても大企業中小企業との分野調整するということはこれは非常に重要なことになると思います。本来、こんなことをせずして、それぞれ企業がモラルを守り合っておればそれはよろしいわけでありますが、先ほど大臣のお話がありましたように、戦後の姿、戦後の状態が今日続いておるというお話がございましたけれども、そういうことについて何の歯どめもなく今日までずっと来、そしてまた社会の変動による波に乗って今日のこの大きな問題を惹起したということでありますから、どうしても今日こういう問題を明確にしなきゃならぬじゃないかと、このように思うわけであります。  今度の国会で、五月の八日ですか、公明党といたしましてもこの問題を非常に重視いたしまして、中小企業者の事業分野に参入する大企業者の事業活動の調整に関する法律案、これ、提出いたしまして、長官もこれは目を通されていらっしゃることだと思うんでありますけれども、この中には少しきびしいぐらいにこれらの問題を規制して提出をいたしました。時間もありませんので個々の問題は一々申し述べることもできないのでありますが、その法案の目的といいますか、おもな趣旨といたしましては、消費者の利益の保護に配慮しつつ、わが国の経済に大きな役割りを果たしています中小企業者の事業活動を守り、国民経済の健全な発展に主眼を置いたという、まあこれを基本といたしまして種々の問題をきちっと整理したわけであります。私ども現在この中小企業者を守る立場の上から、どうしてもこれだけははっきりさせたいというこういう気持ちでこれを提出したわけであります。まあ国会も、時間もございませんし、わが党の提出したこの法案の審議なんというのは十分に行なわれる時間も余裕もないだろうと思いますけれども大臣がお読みになって率直に感じられた面、そうしてまた今後について資すべき点、その点ひとつ見解をお伺いしたいと思うんです。
  161. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中小企業分野確保のため特別の法案を御提出になりまして、中小企業のために御努力くだすっていることについて非常に敬意を表する次第でございます。  私らも中小企業分野を守って秩序整然たる行政を行ないたいと、そう念願しておりますので、この問題についてはかねがね深い関心を持ち、今回も六百十九万円の予算をもってその実態調査及び立法のためのいろいろな資料の収集等をやろうとしておるところでございます。私も、行政指導でやるか、やむを得なければ法律をもってするかという判断をどうしようかと思っていまやっているところでございまして、法案はわれわれが立法を行なう場合の重要な参考の資料として、いいところは、もし立法の際にはぜひそのアイデアをおかし願えればありがたいと思う次第でございます。
  162. 藤原房雄

    藤原房雄君 まあ、調査費をつけて六百十九万ですか、これからなさるということでありますけれども、これは実態を調べてみるということ、私必要ないとは言いませんけれども、昨年からことしにかけてのこの異常な混乱状態の中にありまして、これは行政指導でなし得られるものではないということは、これはだれしも感じていることだと思います。やはりこういう機会に——私はこういう法律で何でも縛ることを提唱しているわけでは決してございませんけれども、去年からことしにかけての、この数年の間の様子を見ますと、やはりこういうものできちっとある程度規制というものをしなければならない時期に来ておりますし、またこの倒産件数の増加しております中小業者の実態等も考え合わせましても、やはり明確にすべき点は明確にしなければならぬ、こういうことを痛感するわけであります。実態調査した上で行政指導にするか、法律で縛るかということでありますが、これは調査の結果を見るということですけれども、まあ調査せずして、すでに大臣の頭の中には、今日のこの異常な状況からして何らかの規制措置をとらなければならぬ、行政指導等のことで事の済む問題じゃないのじゃないかという強いお考えがおありかどうか。まあ、あるかどうかということよりも、そうすべきだとまたわれわれは思うわけでありますけれども、先ほどもいろいろ論議もあったようでございますので、この点についてどうかひとつきびしいといいますか、現実を直視し、日本の産業をささえる中小企業、これの確立のために配慮すべきだと、こう思うわけであります。  最後に御所見をひとつお伺いして、終わりたいと思います。
  163. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、中小企業分野というものをどういうふうにするかということが問題だと思います。それから進出する企業、それから子会社をつくってくる場合もありますし、あるいはこの間うち騒がれましたように、直接直営で大きな洗たく会社をつくって、非常に優秀な大型の機械を持ってきてどんどん洗たく物を吸収してしまう、そこで町の洗たく屋さんが非常に困ると、そういうようなケースの場合もありますし、あるいは資本融通をやってそれで実力的に支配していくというような場合もあります。そういうふうな場合に、しかしある場合には地方の業者がたよって金融を得るために事前に結びつくというような場合もあります。今回の繊維のような場合を考えてみましても、いままでは商社繊維会社、中小、下請等のめんどうを金融的に見てやったもんですから、不況の場合にもそれが緩衝剤になって、直接不況を受けるということがなかったわけですが、今度は商社がこの間うち非常にたたかれたためにそういうめんどうを見なくなったので、直撃を受けていま末端の繊維業者が困っているという現象もございます。そういうように経済が非常に有機的に動いておるものですから、行政とか法律で一片の措置をもってなかなかこれを的確に把握するということがむずかしい状態であるわけです。いかにこれを生きたものとして活用できるかというところにわれわれの苦心の存するところがあるのでございまして、おそらく先生の法案も、それをおつくりになるのに一番御苦心になったんではないかと思われます。われわれもそういう点を行政指導という形で生かし得るということがありますから、法と行政指導とどういうふうにうまくコンビネーションをつくっていくかというようなことが最終的には考えられるところでございます。いずれにせよ、実態をよく見きわめまして、どちらの構想でいくかよく検討してみたいと思うわけでございます。
  164. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。——別に御発言もないようですから、討論は終局したものと認めます。これより採決に入ります。  中小企業庁設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  165. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼び者あり〕
  166. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会      —————・—————