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1974-02-28 第72回国会 参議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十八日(木曜日)    午前十時三十四分開会     —————————————    委員異動  二月二十七日     辞任         補欠選任      高橋 邦雄君     源田  実君      黒住 忠行君     今  春聴君      今泉 正二君     田中 茂穂君      春日 正一君     岩間 正男君  二月二十八日     辞任         補欠選任      源田  実君     原 文兵衛君      田中 茂穂君     堀本 宜実君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺本 広作君     理 事                 岩動 道行君                 岡本  悟君     委 員                 楠  正俊君                 長屋  茂君                 原 文兵衛君                 堀本 宜実君                 上田  哲君                 鈴木  力君                 戸叶  武君                 村田 秀三君                 宮崎 正義君                 中村 利次君    国務大臣        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       小坂徳三郎君    政府委員        宮内庁次長    瓜生 順良君        行政管理庁行政        管理局長     平井 廸郎君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        文部大臣官房審        議官       奥田 真丈君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        文部省管理局長  安嶋  彌君        文化庁長官    安達 健二君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君     —————————————   本日の会議に付した案件文部省設置法の一部を改正する法律案(第七十  一回国会内閣提出衆議院送付)(継続案件) ○皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十七日、黒住忠行君、今泉正二君、高橋邦雄君、春日正一君が委員辞任され、その補欠として今春聴君田中茂穂君、源田実君、岩間正男君がそれぞれ選任されました。  また、本日、源田実君、田中茂穂君が委員辞任され、その補欠として原文兵衛君、堀本宜実君が選任されました。     —————————————
  3. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 次に、文部省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案は、前国会において趣旨説明を聴取し、継続審査となっておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 鈴木力

    鈴木力君 まず私は、提案理由説明でも伺いましたけれども、設置法改正して機構改革をする、それにはそれなり行政の責任の立場からすると強い理由があるということはよく私も理解できます。ただ問題は、この機構を変えるということが大事だというか、行政を進める上にきわめて重要な意味を持ちますけれども、問題はやっぱりその基本的な姿勢がどうなのかということで、変えられた行政が生かされるかどうかということが重要な意味を持つと、こう思いますものですから、そういう立場に立って若干の御質問を申し上げたいと、こう思うのです。  まず最初に、今度の改正とは直接関係がないんですけれども、大学局学術国際局二つに分かれるわけですが、その二つに分かれる学術国際局の中に今度入る情報図書館課というのがございます。これは情報図書館課というのはいまも大学学術局にあるわけで、そのままのものが学術国際局ですか、そちらへ移行するだけの話ですから、これ自体としては、機構上からいうと、そうたいした問題がないとも考えられるのですが、どうもよくわからないので、ちょっと率直にお伺いしたいのですけれども、ここでやられております学術に関する情報処理体制整備資料収集等というあれが出ております。具体的にどういうことをこの課が担当してやっておられたのか伺いたいと思います。
  5. 木田宏

    政府委員木田宏君) 情報図書館課におきましては、設置法にも規定してございますように、みずから必要な学術情報資料を若干収集をし、これの情報を提供する業務を行なっております。その具体的なものといたしましては、大学及び各種の研究機関、これは各省関係のものを含みますが、研究機関等で持っております学術雑誌総合目録、あるいは各専門領域におきます学術用語集の作成、配付、これは専門領域を三十四分野にわたりまして設けて、基本になります学術用語集をつくっておるのでございます。しかし、そうした直接業務のほか、学術情報学術振興をはかるための企画事務といたしまして、情報処理体制整備に関して企画し、援助し、助言を与えるということが、これまたきわめて重要な業務でございます。特に、精選された情報を迅速に研究者に提供するためのシステムの整備をはかることがきわめて大切でございまして、またむずかしい問題でもございますが、これらのことで学界の要望にこたえるという仕事をしていっておるのでございます。  具体的には、国文学領域につきまして、最近、国文学研究資料館という大学共同利用研究資料館設置をいたしております。これは国立学校設置法の中で、昨年お認めをいただいて発足をしたものでございますが、こうしたものを領域別につくってまいりますほか、大学主体にいたしまして、大学図書館あるいは各専門領域ごと情報を、大学レベル地域レベル国レベルにおいてまとめていく、それしたための必要な企画事務というなものを現在行なっておるところでございます。
  6. 鈴木力

    鈴木力君 同じようなあれが学術振興会にもありますね。学術振興会ではどういう領域をやるんですか。
  7. 木田宏

    政府委員木田宏君) 学術振興会におきましては、現在これまた幾つかの和文、欧文のものをつくっておるわけでございますが、日本研究者研究題目総覧というのが一番学術振興会でやっております重要な中身のものでございまして、自然科学人文科学の各専門領域ごとに、その研究者の氏名とその研究者の担当しております研究題目を収録いたしました膨大な資料をつくっております。また、研究機関一覧を、これは各研究部門の内容あるいはその研究課題研究テーマにつきまして詳細に収録した一覧をつくっておりまするし、大学案内というと通俗的に響きますけれども、英文で日本大学のやっております活動状況を海外に知らせるといった資料をまとめておるのでございます。
  8. 鈴木力

    鈴木力君 こういう学術に関する情報処理あるいは資料収集という、これ自体の問題をもう少し私はほんとうは追及していく必要があるといいますか、検討していくときに来ておると、こう思いますけれども、きょうはまあそれはおきまして、ちょっと私考えてみますと、いま木田局長さんからの御答弁にもありましたように、それぞれの説明はっくんですよね。説明はつきますけれども、私がちょっとこうあれしただけでも、似たようなものが、科学技術庁所管機関もございますね、あるいは学術会議にも似たような表現機関がある。それから今度、昨年発足しましたいわゆるシンクタンクといわれておる総合開発機構、これもそういう表現任務を持っておる。あるいは、これは科学技術庁ですけれども、日本科学技術情報センター、それから国会図書館でもというように、それぞれもうちょっと集めてみますと、公社、法人なども入れたらたいへんなことになると思う。そのそれぞれの御説明を承りますと、ちょうどことばで言えば、いまの木田局長さんのおっしゃったようなことばが八〇%ぐらい入っている説明になってくるわけです。それぞれの専門分野におけるとか、必要な情報をとか。まあ文部省大学レベルでのと、これは文部省業務として明瞭なわけてすけれども、その他のことは——。そうなってくると、科学技術というのは、どこからどこまでが科学技術なのか、だれがどこで何をするのかということが、それぞれ自分行政立場から必要だと思うところを自分でつくって自前でやるという気持ちはわからぬわけではないけれども、能率的にいうと、どうも私はこの辺で再検討する時期が来ているような気がする。いま木田局長さんの御答弁にもありましたように、たとえば国文学なら国文学資料センターなら資料センターをつくる、これは各大学がそれを利用できるような共同研究センターにする、大学側のほうも共同研究というその場をほしいということ、あるいは共同研究資料をほしいという要求がだいぶ前からあったわけでありますから、そういう形のものをもう一歩広げた国家的なものといいますか、国全体の機構の上にもう一歩これを広げていくということがどんなものだろうかというようなことを考え、私はそういう考え方を持つんですけれども、行政管理庁行政管理局長さんがお見えになっておられるので、これは行政管理庁立場から見たら、各省各庁にずっとある、それが横の連絡なり何なり、そういうものはどうも私は見当たらないような気もするし、こういう問題については、行管立場ではどういうふうなお考えなんですか。
  9. 平井廸郎

    政府委員平井廸郎君) いわゆる情報化時代に入りまして、学術ないし科学技術情報というのも多種多様かつ大量に供給される段階になっております。このような段階におきまして、ただいま先生の御指摘にもございましたように、各省各庁を通じ、あるいはその関係機関におきまして、いわゆる学術情報なり科学技術情報が提供される体制になっておりますことは、確かに御指摘のとおりでございまして、私ども御指摘を受けましてざっと見ましただけでも、かなりの分野におきまして、あるいは形式的には重複しないまでも、実質的にはその間の調整をはかる必要のあるような問題もあるのではないかというふうに反省をいたしております。その意味におきまして、たいへん貴重な御示唆でもございますので、新しい問題といたしまして、今後それぞれの専門領域を担当いたしております各省庁と連絡をとりながら、十分慎重に検討いたしてまいりたいというふうに考えております。
  10. 鈴木力

    鈴木力君 文部大臣にもひとつ御検討いただきたいと思うんですね。たとえば学術振興会事務局組織規程の中にもありますけれども、この学術振興会でやっておることの中にも、産業界との関係なんかも任務の中に一つ入っておりますね。これは私は要らないという意味で申し上げているわけじゃないですよ。それから、前もって言っておかないと、どうもぼくは勘ぐられるから言っておきますけれども、行政と資本の癒着なんということを言うつもりで言っているんじゃありませんよ。これは前もってはっきりしておきますがね。そうじゃなくて、学術振興会でもそういう角度からの資料収集なりということを一つ業務として取り上げている。今度は、科学技術庁のほうのそちらのものは、どちらかというと、もっともっとそういう任務のほうが強いわけですね。いままでのスタートから見てもそうです。だから、そういうものをずうっと並べて、実際にやっている業務をもう少しこまかく点検をしていただきますと、共通項にくくられるものがずいぶん出てくると思う。これは文部省だけでどうというわけに——私はそういうつもりできょう申し上げているわけじゃなくて、それで行政管理局長さんにもおいでいただいたわけなんですけれども、しかし、まあ一つ所管大臣である文部大臣も、この問題については、もう少しこの機会に、今度の設置法とは直接関係がないわけですけれども、これをもっと有効なものにするためにはということで、政府全体のものとしての検討をひとつお願いをしておきたい。きょうは最初問題提起みたいなことにしかなりませんけれども、将来の問題として、文部大臣文部省課題としてひとつおとめおきいただきたいと、こう思います。私もなおもう少し各省のそういう機関を勉強さしていただきまして、またある機会にこの問題について御所見を承ったり、私の考え方を申し上げたり、そういう機会をぜひつくりたいと、こう思いますので、これはお願いを申し上げておきたい、こう思います。  それからもう一つ組織上の問題ですけれども、これは率直に伺いたいんですけれども、今度のこの行政改革設置法改正が通りますと、いろいろと部課が動くわけですね、組織的に。部課が動くのはいいんですけれども、いい悪いという評価のしかたはまた別の角度でいろいろありますが、その中にどうも、私は率直に申し上げると、何か人事配置を先に構想なさって、そしてそこに当てはまるところにだいぶこう苦労なさったような感じ、これはもう私の勘ぐりかもしれませんよ。だが、それはそれなりに、それぞれの行政立場からすると、その配慮もしなきゃいけないことだと思うんですけれども、そのうちのユネスコですね、ユネスコが今度文部省行政機構の中にすっぽりとこう入り込んでしまうわけです。そして学術国際局一つの課になるはずでしたね。こうなってまいりますと、どうも私は一つ考え方は、ユネスコというのは、本来であれば行政から独立をした活動をするということが正しいのではないか。いままでは国内委員会があって、国内委員会事務局がある。事務総長を置いて、そしてこれも所管文部省でしたけれども、相当主体的なといいますか、活動分野があったと、こう思うんですけれども、これが事務局が今度の改正のようにずっとこうはまり込んでしまいますと、ユネスコ憲章からいってもどういうものだろうかというように私は考えられるんでありますけれども、そういう点についての御所見をまず伺っておきたいと、こう思いますが、事務総長さんがいらっしゃらないそうですから、どなたか、かわる方に御答弁いただきたいと思います。
  11. 木田宏

    政府委員木田宏君) ユネスコ憲章の中の第七条は、各加盟国が自国のそれぞれの事情を考慮に入れまして、国内教育科学文化活動に携わっております主要な団体ユネスコ活動に参加させるようにしますために、それぞれの国に政府及び関係団体代表者からなる国内委員会を設立することが望ましい、こう規定をしておるわけでございます。で、鈴木先生国内委員としてよく御存じのような構成の国内委員会がわが国にも設けられたわけでございます。今回、その国内委員会事務局仕事学術国際局において処理するようにいたしましたけれども、ユネスコが意図いたしました、この国内委員会を設けて国内教育科学文化の諸活動を国際的なユネスコ活動に結びつける、こういう仕事をするための国内委員会そのものは、そのままに存置さしていただいておるわけでございます。ただ、そうした国内委員会事務をより適切に処理し、また日本国内におきます教育科学文化活動として受けとめていきますためには、むしろ内局であります局でお世話をしていくほうが、より一そうその趣旨に合致する面もあるのではないか。こういうふうに考えまして、今回の改革にあたりましては、国内委員会事務内局であります学術国際局において担当するということにさしていただいたわけでございますが、これはむしろ国内委員会活動が、ユネスコ日本との間の中で、より緊密な連絡のもとに日本国内に普及していくということに力強くなっていくのではないかというふうに考えまして私ども構想した次第でございまして、決して国内委員会仕事そのものを弱めようという趣旨ではございません。
  12. 鈴木力

    鈴木力君 まあ、そういう原案を出したんだから、そうお考えだということはわかるんです。それはそのとおりだと思いますけれども、私はやっぱりユネスコ活動というものを、まあよくわかりませんけれども、私も国内委員を任命されたりして、中の雰囲気は少しは知っているつもりです。私のこれは感じだけですけれども、たとえば文化専門委員会、ああいうところ、私も文化専門委員に任命をされたのですけれども、言ってみますと、あの専門委員皆さんの、何といいますかな、非常に御熱心なと言えば一言に尽きるかもしれませんけれども、全くもう自分をなげうってこのユネスコ活動に献身をなさっていらっしゃるのですよね。その姿というのは、私はユネスコ国内委員会に出てみるたびに、日本のああいう一流の民間人なりそういう人たち活躍状況ということは頭が下がるような思いがしておりまして、ただその中でも、やっぱりいろいろそういう方々からの御不満も、どっちかというと、どうも役所が気がきかなんでということばも、率直にほんとうはあっちこっちから聞かれるのですよ。その気がきかない役所が、独立をして事務局を持っておったときよりも、文部省ワクの中の、しかも今度できる新しい学術国際局長ユネスコ事務総長と称することができるというようなことで、名称を称することができるというようなことで、それでほんとう事務局を強化してユネスコ活動文部省がやっていくんだというふうには、どうしても私には読み取れない。そうして専門部課というのは課になってしまうわけでしょう。ただ、上のほうは事務総長と称することができるというところに、実際は事務総長と言って歩くんだろうけれども、専門事務総長ではなくなってしまう。そういうことを考えると、これは私はいわゆる良心といいますか、良識というより良心といったほうが、学者的良心あるいは文化人的な良心、そういう人たちほんとうにみずからの活動としてこの活動を広げていっている、それに対する答えにはならないのじゃないかという感じをまず私は持つのですね。したがって私は、今度のこの改正につきましてもそういう点の配慮はもっともっとなすべきである。条文上変えることができないというような事態がもしあった場合にも、そういう角度からもっともっと内部機構の充実というようなものに文部省は力を入れるべきではないか。こういう気持ちを持つものですから、まあくどいようですけれども、もう一言別に申し上げますと、あの国内委員人たちがたいした手当も何もなしに、しかし使命感に燃えて活動なさっていらっしゃるのにこたえる、対応する事務局をつくる、あるいは事務局体制をもって対応しないと何かすまないんじゃないか。だんだんに役所ワクにはめ込んで、小さなすみに追いやってしまうような感じはどうしても私はぬぐい去るべきであろう、こういう気持ちを持つのです。これは大臣にひとつ率直な文部省側の御所見を承っておきたいと、こう思うのです。
  13. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 鈴木さんの懸念されるお気持ち、私にわからぬわけではないところがあるように思います。ただ、ユネスコ国内委員会メンバーを見ておりますと、国会からも委員になっていただいておりますし、社会的に大きな評価を受ける方々がたくさんいらっしゃるわけでございますので、むしろ国内委員会事務スタッフ、それが強化されたという考え方もとれないわけじゃないんじゃないだろうか、こんな気持ちもいたします。弱体な委員会でございますと、おっしゃるように埋没されてしまうということにもなりますけれども、国内委員会メンバーから見ていますと、国内委員会で決定されることは当然実施に移していかなければならないことになるわけでございまして、そうなりますと、従来のような弱体な事務機構よりも、文部省全体がそれに対して奉仕していくということにもなるわけでございますので、その任務を果たし得るのじゃないか、また文部省といたしましても、そのようなつもりで努力していかなければならない、かように考えるわけでございます。ユネスコ国内委員会皆さんたちには、そういう意味で御理解をいただくようにお願いをしていきたいし、また文部省もそういうつもりで国内委員会の自主的な活動、それをささえる役割り文部省全体がしていくという姿勢を持ち続けるように配慮していかなきゃならない、かように考えております。
  14. 鈴木力

    鈴木力君 まあ、あまりくどいことを申し上げるつもりはありませんけれども、そういう配慮と、それから諸外国を見ましても、内閣官房事務局を置いて、一つの省からもっと上に置いていくというような、そういう位置づけなんかをされているところも相当あるみたい。独立した事務局を持っている国もずいぶんある。だが、どうもこれは将来もう少しやってみないとということになるだろうけれども、私はまだいまの大臣の御答弁だけでは、それでりっぱだというふうな気持ちにはならないということは申し上げておきたいと、こう思うんです。  それから事務的なことなんですけれども、今度の部局の編成を見ますと、ユネスコ事務総長が今度なくなるわけですが、局が一つふえるわけですね。局が一つふえますから、この局長クラスのところは職場が狭くなるという心配はない、ことばはよくありませんけれども、卑近なことばで申し上げますと。だんだんにこうなってみますと、ユネスコの中の四課というのがいなくなってしまっている。ユネスコ事務局の四課長というのは、人はまあそれぞれどうこうということありませんけれども、どこへ行って、どうなるんですか。何となしに上のほうの局長のところはずっとこうふやしていくけれども、機能的にいうと、もっともっと実務的なところがだんだん縮小されていく。こういう機構の直し方というのも私は多分に疑問があるような気がするんですけれども、これは私ども行政管理の面から、この委員会でも何べんかもう議論をして、機構のもう少し簡素化といいますか、系列化ということを考えますと、頭をふやしていって下のほうを減していくというような、これはやっぱりオーソドックスな行政機構ではないんじゃないかということも考えられますけれども、これはどういうふうな処置をなさる計画になっていらっしゃるんですか。
  15. 木田宏

    政府委員木田宏君) 学術国際局は、現在、大学学術局学術部門と、それからユネスコ国内委員会事務局と、それから文化庁にあります国際関係担当国際文化課をもって構成するということにしてございまして、この学術国際局ユネスコ国際部という国際関係の部を構成することにいたしておるわけでございます。その中に四課いま予定をいたしておりまして、企画連絡課国際教育文化課国際学術課留学生課という四課がございますが、ユネスコ国内委員会事務局の現体制は総員今日五十八名でございますが、その総員あげてこのユネスコ国際部の中に入ってまいりまして、企画連絡課というのが一番中核的な、事務局のまあ何といいますか、移行した姿になるわけでございますけれども、しかし、ユネスコ事務局で今日持っておりますユネスコ事務局教育課国際教育文化課というふうに、今日文化庁にあります国際文化課と一緒になった形で大きくなります。それからユネスコが今日持っております科学課というのは、大学局が今日持っております国際学術課合体をいたしまして、スタッフはほぼそのまま合わさった倍に近い課の職員数を数えるようになるわけでございます。あとユネスコ主体企画連絡課という、ユネスコ国際部の第一課を構成するという形になりますから、実質的には現ユネスコ体制が関連しております内局関係合体をいたしまして、同じ姿でユネスコ国内委員会お世話をする、こういうことになっておる次第でございます。
  16. 鈴木力

    鈴木力君 そこで、その四人の課長はどうなるのですか。
  17. 木田宏

    政府委員木田宏君) 現在四つのポストがあるわけでございますが、その同じような課長という考え方をいたしますと、それが企画連絡課、一課になるという形になっております。しかし、この国際関係あるいは学術関係等を処理いたしますために必要な企画官等の職種を設けることなどいたしまして、現在のこの体制の何といいますか、大きさと申しますか、それは維持できるような配慮をいたしておるのでございます。
  18. 鈴木力

    鈴木力君 小さいことみたいですけれどもね、私はこの四人の課長が、とにかく課が減るんでしょう、今度。そうすると、課長であった人がやめなければならぬ人があるでしょう。局長になる人は一人ふえるけれども、課長の分は四人も減るんだから、まあ機構上将来はということになりますけれども、具体的に今度課長をやめる人が出てくるでしょう。そういう配慮はどういうふうになっているのですか。
  19. 木田宏

    政府委員木田宏君) 個々の人事の問題になりますと、私からお答え申し上げるのがいいかどうかちょっとわかりませんが、現在も国内委員会事務体制等、課長相当職としての企画官等を二名別途予定をいたしまして、そしてスタッフの現有の大きさというものが急激な変化の起こらないように配慮をいたしておる。個々の具体の人事はまた別のことでございますけれども、組織としてはそのような配慮をしておるということを御了解願いたいと思います。
  20. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、こういうことですか、要するに課長と同待遇のポストを、課ではないけれども、何ですかいま、企画官ですか、という、そういうポストを今度またつくるんだと。だから、課長のポストは名前は変わるけれども実質的に変わらないからいいんだと、こういう御答弁ですか。
  21. 木田宏

    政府委員木田宏君) これはその課長という特定のポジションのことを考えながら、そうした企画官というスタッフを構成いたしましたが、現在のユネスコ国内委員会事務局は、この内局にあります国際文化課国際学術課と似た形の科学課、あるいは教育課等を持っておるわけでございます。それを同じ性質のものでございますから内局の課と合わせて、現有勢力も一緒にして大きな内局の課にする、こういうことで考えておりますので、新しい課長相当の官を設けましたときに、そこがまた別のスタッフを持つというようなことは考えておりません。むしろ機構といたしましては、現在の内局にありまして、ユネスコ関係部分を内局としなければならないところに直接に合体をする、そして力強く仕事ができるように大きくしたい、現在の内局の課もユネスコ事務局関係部分を加えて大きくする。そのために課長というポストだけが御心配くださいますように若干問題になる。そこで、課長相当職の企画官といったポジションを設けまして、これはスタッフを強化するということによって、実際の大きさがよりまあ充実、効果的に機能できるようにくふうをしておるところでございます。
  22. 鈴木力

    鈴木力君 まあ、いつまでやりとりしても同じことだと思いますけれども、私が申し上げたいのは、いま申し上げているのは、活動がどうこうということもさることながら、機構の問題を、各省ともみんなそれぞれに詰まってくると相当職というものを、課長相当職を今度つくるからいいんだと、ある省は今度部長相当職をつくるからいいんだとこういう形になってきたら、これまた行政機構が全体の上からいうとそれぞれますます複雑になってきて、またいずれ行政管理庁あたりから何か、全体の何かというようなものの種をまいているような気がする。そういう意味では、行政の縦の系列というようなそういうものも、守備範囲を合わせたものとしてすっきりしたものがぜひ必要なのではないのかというふうに私はそう思うものですから、いまの点申し上げたわけであります。そういう点の混乱を生じないような配慮ということは、こういう機構をつくればつくるほど私は大事なことだと、こう思います。これを申し上げておくだけにとどめます。  それからさっきの、似たような業務をやっているから合わせて強化をしたんだと、こうおっしゃるんですね。おっしゃるけれども、私はまあそういう行政の経験ありませんけれども、いろいろ行政問題を取り扱った自分の、議員として取り扱った経験からしますと、ともすると、そういう形で統合いたしましても、やっぱり機能は前の仕事を持ち込んだ、こっちは前の仕事を持ち込んだという形にどうしてもなる。従来そういうことが、ともすれば、ありがちであったということでものを申し上げますと、やっぱりユネスコ事務局をこういう形に押し込んだということは、どうも私は疑問でならないんであります。これはもう私の気持ちを申し上げるだけであります。  それで、今度のこの学術国際局をつくったということでありますが、いままあユネスコだけのことを、あるいは情報収集なんかについてもさっき若干申し上げたんですけれども、大学学術局として国際のところまで手を広げておったところにいろいろむずかしいことが出てきた。それから所管上からいいますと、条約なりあるいはユネスコは国連との関係が密接である、国連の機関といってもいいんです、国連憲章で。そうすると、外務省とのかかわりが出てまいりましたり、そういう形のいろんなものが出ているわけなんですが、そういう中で、今度独立をして学術国際局としてこれから活動を開始をするのだという意気込みはよくわかるような気がする。ただ、その国際的な活動については、基本的な文部省姿勢が、ほんとうに国際活動として国際的に恥ずかしくないというそういう基本的な態度を持ってやらないと、どうも私はいろいろな疑問を持ってくる。あるいは、せっかく機構はつくったけれども、結果は逆だと、こういうことになりはしまいかという懸念を持つんです。  その一つに著作権法があると思うんです、今日の著作権法。それでこれからこの著作権について、そういう観点から若干の問題をお伺いをいたしたい、こう思うんですけれども、これは私はっきり記憶をしておりませんけれども、いまの著作権法をつくりますときに、まあ私もその審議に参加した一人であります。その審議に参加をいたしましたときに、私も若干の問題提起はしておったと記憶をしておる。だが、いまの著作権法を読んでみますと、それからまたこの文部省で発行されました——文化庁ですか、文部省だと思いますが、「著作権法ハンドブック」がありますね。あれを拝見をしてみましても、こっちの読書力が弱いせいもあるのだろうと思いますけれども、よくわからない面が非常に多いんです、私自身に言わせると。それで、まあそういう点から若干お伺いしてまいりたいのですけれども、条約との関係ですね、ハンドブックを読んでみても、それから国内法を読んでみても、どうもその表現が複雑だというのか、私が対応する頭脳を持っていないというのか、すっきりしたことがどうもよくわからぬ。  それで、まず文化庁長官においでいただいておりますから、長官に、このハンドブックを使っていただいてけっこうでありますけれども、国際法といいますか、条約との関係を基本的にどう考えられていらっしゃるのか、ひとつお伺いいたしたいと、こう思うのです。
  23. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 現在、わが国が当事国となっておりまする国際著作権条約は、文学的及美術的著作物保護ニ関スル「ベルヌ」条約と万国著作権条約でございまして、そしてベルヌ条約につきましては、現在ローマ改正条約の当事国になっておるわけでございます。  で、この国内法と条約との関係につきましては、著作権法の第五条に、「著作者の権利に関し条約に別段の定めがあるときは、その規定による。」と、こういう規定がございまして、一般的には、この著作権法は日本の入っておるところの条約等の要件を満たすと申しますか、その条約の規定の国内法との関係について十分な整備をした上で現在の国内法が制定されておるということでございますが、しかし、著作者の権利に関し、特に外国人の権利に関しましては、もしも相互に矛盾抵触がある場合におきましては、条約が優先して適用されると、こういうのが第五条の趣旨でございまして、これは憲法にもございますような条約が優先するという考え方に沿ってこの著作権法にも、著作権の分野におきましてもその原則が適用されるということを念のために規定したものであるのでございます。
  24. 鈴木力

    鈴木力君 外国人の権利に関して、条約と国内法と抵触する場合には条約が優先すると、まあいまの御答弁、私もそうだと思います。そこで、その御答弁のとおりだと思うのですけれども、文化庁が、法案が通りましたあとに出した「新しい著作権法の概要」というのがありますね。この「新しい著作権法の概要」の「条約の効力」の説明を見ると、こう書いてある。「本条は、わが国が条約上保護の義務を負う著作物については、条約の定めるところにより条約が優先して適用されることを念のため明らかにしたものである。」、これはまあいまの長官の御答弁の御趣旨、そのとおり。要するに、基本的に、言わなくても条約が優先するのだけれども念のために表現をしたものである、こういう意味にとれると思いますが、だけれども、だんだんに「留意事項」とかなんかがこう出てきて、そうして読んでみますというと、いかにもそのように読めるけれども、何となしに、わざわざ「念のために明らかにした」、あの第五条はなくてもいいんだとも読めるような説明にもなっておる。これは私どもが法案を審議するときにはこういう説明はおそらくなかったと、こう思うのですね。審議したあとに「念のために」が入ってきたなんていうようなことを考えると、これは勘ぐって言っているわけじゃないんですけれども、これはだんだんにあとからまた伺いますけれども、そういうふうに見えてならないのでありますが、ここではもうあまりやりとりしなくてもいいと思います。はっきり確認をしておきたいのは、いま長官に御答弁いただきましたように条約が優先をするのだ、これはどこまでも原則として貫く、こういう御答弁だと思いますから——という点でまあいいと思うのです。  で、そうなってまいりますと、これはもう外務省が条約の担当なんですが、外務省からもおいでいただいておりますけれども、この条約と国内法の関係で外務省の御見解もこの際はっきり伺っておきたいと、こう思うのです。
  25. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  一般論といたしまして、条約と国内法との関係はいずれが優先するかということでございますが、外務省といたしましては、ただいま文化庁長官からも御答弁ございましたように、憲法の規定に基づきまして条約が国内法に優先するものであるという見解をとっております。
  26. 鈴木力

    鈴木力君 いまの関係から申し上げますと、いろいろな場合があると思うけれども、これはむしろ外務省に伺ったほうがいいと思いますが、状況がだんだん変わってまいりまして、日本というのは御存じのように海の中の国ですけれども、それぞれの著作権では隣接権までずっと権利として認めてくるようになりますと、たとえばヨーロッパなんかはどうなっているんですか。ということは、小さな国がずうっと陸続きでしょう。そういたしますと、ドイツの音楽の放送がありますと、隣のスイスでは、むしろスイスの放送よりもドイツの放送のほうがよくとれたりする。そうすると、いい音楽はそこでテープをとってというようなことが行なわれるかもしれない。そうすると、私が聞いたところでは、あまり明確な知識じゃありませんけれども、ヨーロッパではそろそろ、条約が直ちにもう国内法というような考え方でこの著作権の問題が検討されているというふうにも聞いておりますけれども、外務省でそういう点御存じだと思いますが、御説明いただきたい。
  27. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 諸外国、特にヨーロッパでも、ただいまのお尋ねにつきまして私事実を実はよく承知をしていないわけでございますが、ヨーロッパで条約が直ちに国内法として適用されているような方向に進みつつあるかどうかにつきましては、一般論といたしまして、著作権関係のものにつきましては、著作権条約のたてまえからいいましても、日本の五条があってもなくても優先して国内で適用になる関係からいいましても、特にヨーロッパに限った現象ではなく、国内法でもちろん条約に沿った手当てをすればできますけれども、条約がそのまま働くことによって不都合がある性質の内容のあるものではございませんので、そのように考えても差しつかえないものじゃないかと思います。ヨーロッパの現状がそういう方向に向かいつつあるかどうかについては、私も実は詳しく存じておりません。
  28. 鈴木力

    鈴木力君 大体私もそういうことだろうと思っておりましたので、いまの御答弁を伺いましたのですが、それからもう一つお伺いいたしたいのは、これは文化庁に伺ったほうがいいと思うんですけれども、著作権で東南アジアゼミナールですか、あれをおやりになったですね。あの東南アジアのゼミナールをおやりになって、いろんな国から出席をされた。文化庁が主催でおやりになった。これも前もって申し上げておきますけれども、私が言うとけちをつけると思っちゃいけませんですよ。けちをつけるために言うのじゃありませんで——。おやりになったわけですね、相当な効果をあげられたと。いろいろレポートなんかを拝見をしてみても、参加者もたいへんいい会議であったとこう言っておられるから、この会そのことをどうこうということじゃなくて、これを私拝見をしてちょっとそう思いましたのは、いまの国際条約と国内法との関係といいますか、そういう国際的な見地に立って、一体著作権はどう扱われるべきかというこの扱いの中に、招請国の中に中国が入っておりますね。これはまあ当然だと思いますけれども、ところが欠席だった。これは中国というのはもちろん中華人民共和国なんでしょうな。
  29. 安達健二

    政府委員(安達健二君) そのとおりでございます。
  30. 鈴木力

    鈴木力君 それで、欠席の理由はどういうことですか。
  31. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 招請状を出しましたところ返答が参りまして、招待状に対しまする御返事といたしましては、招待はたいへん感謝するけれども、現在著作権関係国内法の整備等で忙しいので参加できないというようなお手紙をいただきました。
  32. 鈴木力

    鈴木力君 それで、私はそういうことだと思い、ます。中国にはまだ著作権法といいますか、条約にも加盟していないでしょう。ですから、そういうことでそういう回答になったと思いますけれども、そこでいま台湾の扱いは日本でどうなさっていらっしゃるんですか。
  33. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 特段の条約関係にないわけでございます。したがって、相互に保護する関係にはなっていないと、原則的にそう言うことができると思います。
  34. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると台湾は、前はあれはどの条約に入っておったのですか。
  35. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 特に国際的なベルヌ条約とか万国著作権条約には加入をいたしていないわけでございますが、日華平和条約によりまして内国民待遇の約束がございました。
  36. 鈴木力

    鈴木力君 もう一ぺん、いまの……。
  37. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 要するに、国際的な条約、すなわちベルヌ条約とかそれから万国著作権条約、そういうような関係での結びつきはない、こういうことでございましたが、無体財産の保護について相互に内国民待遇を与えるというような意味の日華平和条約によりましてそういう定めがございました、ということを申し上げました。
  38. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、現在はないということですね。
  39. 安達健二

    政府委員(安達健二君) そのとおりでございます。
  40. 鈴木力

    鈴木力君 それで、そういう問題は、これは文化庁がどうこうするという問題ではなくて、もうすでに中国との国交ができ上がっていますから、いま長官のおっしゃったとおりだと思います。  そこで、そういう形になってまいりますと、たとえばいま私が申し上げたいのは、文化庁長官にこれは聞いておいていただきたいのですが、しろうと的に非常に心配なのは、どうこう言っても台湾にいろいろなものが日本から輸出をされているでしょう。そうしますと、日本でつくったレコードとか著作物というのはどんどん台湾に行っていると思うんですね。そのレコードや何かも、たとえば二次使用権のようなそういうほうから追跡をしていくと全然問題ないわけですか。何か私はそういう関係がないというところに、あの国のああいう国でありますから——国といいますか、日本は国とは認めていないんだけれども、しかし、日本側のほうからレコードを持っていって、そのレコードをかりに台湾で複製をして、そうして台湾じゅうでこれを使う。あるいは複製をしなくても、いまの著作権法できめておりますような、たとえばいろいろなホテルなり何かに有線放送でこれを使うとか、そういう営業用にそれを使うというようなケースが私はあるだろうと思うのですけれども、これはあると想定されますか、ないと想定されますか。
  41. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 率直に申し上げれば、そういう状況があると思います。ただ、両国の両国といいますか、何らの条約関係等がございませんので、日本として何とも言いようはない、こういうことになるわけでございます。
  42. 鈴木力

    鈴木力君 そこで、これは外務省に伺いましようか。こういう事実は私はどうしてもなくならないと、こう思うんですね。そういたしますと、そういう関係日本の著作者の権利というのは侵されていると、こういう事態をいつまでもこういう状況に放任をしておくということは、著作者の権利を守るという立場からすれば問題があるわけです。外務省の御見解を承りたい。
  43. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) ただいま御指摘になりましたように、確かに日本人著作者の権利が保護されないという点につきましては非常に問題があると思います。私どももその点については忘れているわけではございませんが、何といたしましても、法律面から申し上げますと、著作者の権利というものがあちらでは認められておらないものですから、かつまた条約関係にもございませんし、法律的に権利を主張する根拠というものがない関係もあって、どうしても現在の状況では野放しという事態が現出しておると申し上げざるを得ないことだと思います。
  44. 鈴木力

    鈴木力君 この解決策は、いまのところは外務省もないと、こういうことなんですか。
  45. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) そういうことでございます。
  46. 鈴木力

    鈴木力君 私は、それはいまのところ現在の制度ではない、それはない。しかし、困ったことだということまでは見解が一致したと思うんです。私もそれ以上のそれならこうしろということはもちろんございません。私にすれば、早く中国が統一してもらって正規の手続の条約で加盟をする以外に手がない、それをこいねがうということ以外にはないと、こう思います。そういう立場で私は日本外交があるべきだと思うんですね。これは参事官にお伺いするのはちょっと当たらないかもしれませんけれども、そういう意味で私は、日本の外交の中にこの台湾の処理という問題が非常におくれている。これは話がちょっと横道にそれて恐縮ですけれども、これは大平外務大臣にも別のところで申し上げたことがあるのですけれども、たとえば日中航空協定さえまだできない。こういう状態で、日本側がそういうところを渋っていることがいまの著作権なら著作権というような問題にも波及しておって、そうして日本の著作者の権利というものが、こういう法律がないというところをくぐった侵害を受けているというような事態もあると思いますので、いずれ、これはここで申し上げるのは適当かどうかわかりませんけれども、ついででありますから、そういうこともひとつできるだけ早くそういう処理をしていっていただくということが著作権者の権利を守るということにも通ずる、こういうふうにひとつお聞きおきいただきたいということだけを申し上げておきたいと、こう思うんです。  ついでに、東南アジアゼミナールをおやりいただいたのですけれども、ここでちょっと私ふしぎなのは、これも全くしろうとだからそういう感じを持つかもしれませんけれども、文化庁が主催して外務省が協力をなさって、そして旅費まで持ってというきわめてこれはりっぱなことをおやりになったと思います、事業として。その協賛団体の中に、これも日本関係者を入れたということについては、私はそういう団体が協賛をなさったということはよくわかるのですが、音楽著作権協会及び日本レコード協会だけが協賛者になっている。私に言わせると、この著作権関係の自主的な主体的な団体というのはまだまだたくさんあるような気がするんです。これは鈴木力の勘ぐりだから注意しろとしかられてもいいんですけれどもね。さっき私が台湾のことを申し上げたのだけれども、何かこういうような形でいろいろやっておって、レコードや何かの輸出がだんだんにふえていくような方向に——ねらったというと少し言い過ぎですから、ねらってはいないんだろうけれども、こういう団体が協賛したというところを勘ぐられるような要素はないかどうかということですね。私はむしろ協賛をさせるなら、もっと広くこの著作権関係関係団体全体を協賛させるとかそういう形にすべきではなかったのかと、こう思いますけれども、いかがですか。
  47. 安達健二

    政府委員(安達健二君) このセミナーを催すにつきまして、いろんなこういう種の仕事をする場合には、著作権というものは民間のいわば人のものでございますから、民間の団体と一緒にやっていく必要があると、こういう考え方で東アジア著作権セミナー協力委員会というのを設けまして、その協力委員会にはいろいろな著作権関係の十二団体が加入していただきまして、いろいろと御相談をしましたし、またそれらの方々をセミナーにも御招待をいたしまして、ずっと傍聴して、オブザーバーとして御出席をいただいておったわけでございます。協賛団体というのは、その中でいろいろな面で特に御協力をいただくというような面で協賛団体を二団体にしたというだけでございます。  で、そもそもこのセミナーの目的は、東南アジアの各国に現在まだ国際条約に入ってない国が多いわけでございます。で、今後の世界情勢を考えますると、これらの国々におかれましても国際の著作権条約に入っていただきたいと、またそれによって著作権をそれぞれの国において尊重すると同時に、他国のものも尊重するような著作権尊重の思想をひとつみんなで持つようにしたいというようなことで開いたわけでございまして、そこで国際著作権の権威者に来ていただきまして、そのレクチュアをしていただき、またそれぞれの国におきます現在の著作権事情を報告していただいて、相互にひとつ著作権尊重思想を盛り上げようと、こういう趣旨でございまして、この会が終わりのときには、各国の代表から非常に、各国全部から感謝演説がございまして、この次はぜひ私のほうでやりたいという国が二カ国ほど申し出があったような状況でございますので、御懸念のようなことは、まずはなかったんじゃないかと思います。
  48. 鈴木力

    鈴木力君 参加者が感謝演説をしたということの記録等も私も読ませてもらいました。だから、さっきからこの会にけちをつけるつもりはないということを申し上げた。ただ、いまの他意はないとおっしゃるけれども、選ばれた協賛団体は音楽著作権協会とレコード協会、他意がなくて無差別に抽出をしたらたまたまこの二つが出てきたということとは、どうも私はそうは思えない。特にこのレコード協会、さっき私が台湾の関係で申し上げたのは、条約がないから、台湾にレコードがどんどん行って、そうして著作者の権利が侵害されてもどうも手がないと、こういうことなんです。ところが、東南アジアの諸国にはどの条約にも加盟していない国が多いものですから、そういう形では著作者の権利を侵害しながらもそういうチャンスが非常に多い相手が集まっておる、そこにレコード協会が協賛団体として来て、表で演説はしないけれども、非常に感謝をされる零囲気の中で協賛団体としてレコード協会というのを出したということは、やはりそれなりのそちら側にとっては意義があったんじゃないか、これは私の勘ぐりかもしれません。だから、自信を持って言うわけじゃないけれども、そういう点では勘ぐられないような配慮というものがやはり必要じゃないか。鈴木はへそ曲がりで、おまえだけだと言われればそれまでですけれども、あえて私だけではないと、こう思うから申し上げたんですが、どうですか。
  49. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 外国が条約加盟をすれば、それによりまして音楽の著作者あるいはレコードが保護されるということになれば、結局は音楽の著作権協会なりレコード協会としてはいいことでございますから、やはりその意味で協賛をしていただくということも決して悪いことではないというように私どもは考えております。
  50. 鈴木力

    鈴木力君 このレコード協会を選んだ理由は、一向御答弁がないんですけれども……。
  51. 安達健二

    政府委員(安達健二君) やはり著作権の問題で、特にいま東南アジア等で関係がございますのは音楽とレコードでございます。事実上、本ということはまあありますけれども、翻訳出版ございますけれども、やはり中心をなすものは音楽とレコードでございますから、それは向こう側のほうでもその問題に関心を持ってこられるわけでございまして、なお出席者には政府の代表の方々と、それから……。
  52. 鈴木力

    鈴木力君 いや、出席者や名簿は全部私どもにありますから、それはよろしい。
  53. 安達健二

    政府委員(安達健二君) それでございますから、出席者のほうもそういう関心を持ってこられるわけでございます。したがいまして、中心的な著作物の利用形態の権利者であるそういう団体が協賛をしていただくのは当然なことであるというように私は考えております。
  54. 鈴木力

    鈴木力君 これ以上はあまり言わぬことにしますけれども、どうもすっきりしません、やっぱり。さきの長官の御答弁にあったような各国の先進地の権威者のいろいろな教授や何かのゼミナール、講演等もあった。その講演も非常に有意義であったと。その講演の内容もちょうだいして私も拝見をしたんです。それとこのレコードとは関係があるような講演はあまりなかったと、著作権そのものという、そういう形でのいろいろなことを、非常に私はレベルの高い講演があったとこう思いますがね。これを議論するつもりはありませんけれども。  もう一つ、この東南アジアの著作権、このゼミナールというわけじゃありませんが、これを契機にちょっと伺いたいのは、まあ日本が主催してやったわけですから、そういう点では効果をあげようとおねらいになったことは、よくわかりますけれども、東南アジアの諸国で条約に入っているのは非常にまちまちなんですね。たとえば、私が調べるといっても、勉強もしませんから調べませんけれども、たとえばタイはローマ規定ですか、ベルヌ条約の。それからフィリピンはブラッセルと、そうじゃなかったかと思いますけれども、そういう形になっている。それから万国条約に入っている国はありませんか、その辺はどうですか。
  55. 安達健二

    政府委員(安達健二君) いまお話しになりましたうちで、フィリピンはベルヌ条約のブラッセル改正条約でございます。それからタイはベルリン改正条約と申しますか、もう一つ前のものになっております。
  56. 鈴木力

    鈴木力君 ローマになっていないですか。
  57. 安達健二

    政府委員(安達健二君) ローマじゃございません。タイはベルヌでございます。一九〇八年のベルリン改正条約でございます。それから万国に入っておりますのはクメールとラオス、それからオーストラリア——これはちょっと違いますけれども、それらの国々でございます。
  58. 鈴木力

    鈴木力君 そこで、今度のゼミナールで指向をしたものは、そのうちのどれに入ろうというような方向でお互いが討議をされたのか、あるいは、何でもいいから、どの条約でもいいから、みんなとにかく入るようにしょうやというような討議になったのか。
  59. 安達健二

    政府委員(安達健二君) まあ、非常にこのセミナーにおきまして、各国ともこれは入らなくちゃいけないというような御意見が、相当積極的な意見が出てまいりましたが、これにつきましては、どちらに入らなきゃならぬとか、どちらにしようというようなことをきめるとか、討議するというんじゃなくて、それぞれの国情に合わせまして、いずれかの条約にひとつ入ろうじゃないかと、こういうことで、ある国のごときは、国内法をつくらないですぐ入れないかというような質問すら出たほどでございまして、非常に積極的な機運が盛り上がったものと考えております。
  60. 鈴木力

    鈴木力君 私は外務省の担当の方にもお伺いしたいんですけれども、日本自体がまだローマのところでとどまっておる。おそらくこの著作権法を改正するときには、文部大臣も、将来できるだけ早くブラッセル改正規定のほうに入りたいんだけれども、   〔委員長退席、理事岡本悟君着席〕 日本国内の情勢がまだ整わないのでという説明があったように記憶をしておる。いずれにしましても、日本自体はまだローマなんですけれども、相手の国の、少なくとも一番近い東南アジアなんかも非常にまちまちです。条約上。しかし、まあおまえの国は何条約に入るべきだなどということを言うことは、これは内政干渉でもありましょうから、そういうわけにはいかないにしても、ある程度のアジアの著作権関係一つの交流という問題は、外交的にもまだまだ詰める余地があるような気がするんですけれども、この辺の御見解はどうですか。
  61. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) ただいまのご指摘の点でございますが、条約の担当のほうから申し上げるのも何かと思いますが、しかし、私のほうからあえて申し上げますれば、確かに問題点はございます。国交のある国々に対しましては、機会あるごとに著作権、それから工業所有権関係も含めまして、財産権の保護について話は私の経験から申しましてもしているんでございますが、何分先生指摘のように、どこに入るとか言うこともできませんし、また強制することも向こう側の国内体制も整わないというような理由で進まないという現状があるかと思います。
  62. 鈴木力

    鈴木力君 それから国際法の扱いについて、もう一つだけ具体的に伺っておきたいのは、あの条約にありますように、その加盟国が条件が変わりますと、たとえば今度新しい著作権法——新しいといっても相当古くなりましたけれども、いまの著作権法によって権利が五十年になった。その場合にはスイス連邦政府に通告をしなければならないということが、たぶん条約にあったと思います。スイス連邦政府から通告を受けたら、これを加盟国全部に連絡をしなければならないということになっておる。そういう条項が、五十年になったということが一つあると思いますし、それから領土の変更があった場合ということがありますね。あれ、何条だったのですか。私も条項を暗記しておりませんけれども、領土の変更があった場合も同様の手続が必要だと、こういうことになっておると思います、もう一つ何かあったと思いますけれども……。  この二つでお伺いいたしますけれども、たとえば五十年になったと、それはもう明瞭ですね。それからこの著作権法をつくったあとに沖縄が返還をされておるわけです。国際的にいったら、やっぱり領土の変更に当たるだろうと思う。そうしますと、沖縄が返還された、著作権の適用地域としての通告、この手続は一切済まされておりますか。そして済まされているとすれば、いつの官報でこれは告示をされていらっしゃるのか伺いたい。
  63. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  第一の点に関しまして、五十年になった際には通告をすべきではないかという点でございますが、これはおそらく現在日本が入っておりますのはローマ規定でございますので、ローマ規定の三十条でございますね。三十条であるかと思いますが、これは私どもも検討いたしましたが、実は翻訳権の十年留保との関係もございまして、それとできるならば時期を一にしてやりたいというふうに考えておりまして、ただいまこれの三十条に基づく通告というものを正式にはいたしておりません。  なお、第二の点でございますが、ローマ条約の二十六条の点を御指摘になったんだと思うのでございますが、これは、そもそもこの規定は、いわゆる属領、植民地ないしは自治領でもって、その国には外交主権を与えておらず、条約加盟国が外交主権を持っているというようなところに適用する際に通知をするということでございまして、沖縄の場合には属領でも植民地でもなく、完全に日本の領土として復帰してきたということの関係もございまして、沖縄の復帰というものは、二十六条の宣言には該当しないものというふうに考えております。
  64. 鈴木力

    鈴木力君 沖縄のほうは、外務省の見解として、この二十六条には該当しないと、そういうことであれば、それでその理由はよくわかりました。  その五十年の、三十条のほうですね。これはたぶん——いま条文をさかしているんですけれども、すぐ見つからないんだけれども、私の記憶では、通告をして、そしてスイス連邦政府のほうからそれぞれの関係国に連絡をしたときから効力を発すると、こういうことになっておると思うんですけれども、これは間違いですか。
  65. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  ここに私条文を読み上げてもよろしゅうございますけれども、通告というのは単にインフォメーションの問題でございまして、その通告が終わったときに初めて効力を生ずるというようなことは書いてございませんで、その点は日本国内法におきましてすでに五十年の保護期間ということになりますれば、五十年の保護期間を国内法に基づいて外国著作物に与えておれば実際上の問題としては問題が生じないものではないかと、そのように考えております。
  66. 安達健二

    政府委員(安達健二君) ちょっと補わさしていただきますが、実は内容的な面から申しますと、私どもはこの新法ができまして、これを英訳をいたしまして、このベルヌ同盟の事務局が発行しておりますところのコピーライトという雑誌に全文を掲載いたしまして、それからまた、できましたあとの国際会議におきまして、日本はこういうのができたということを出席者全員にそれを配るというようなことをいたしまして、実体的な内容等につきましては十分なPRをいたしておったわけでございます。念のためでございます。
  67. 鈴木力

    鈴木力君 私はどうも条約論が弱いものですが、この条約にいっている通告という意味は、英訳したものを何かの雑誌に、機関誌に出せばということなんでしょうか。ぼくはもっと外交上の手続をいっているんじゃないのかと、こう思いますけれども、これはどう読むんですか、これは。
  68. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 外交上の手続ではないかとおっしゃる点につきましては、確かに手続を定めたものであると、そのように考えます。ただ、その効力というものにつきまして何の規定もございませんし、したがって、その手続を踏まなければ先ほどのベルヌのローマ規定上、条約上の効力が生じないんだということではないと、そのように考えております。
  69. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、これはあれですか、翻訳権の十年留保、あれと同時に通告をするという考え方で外務省はまだ通告の手続をとっていないと、そう伺っていいわけですね。
  70. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) そのように御了解いただいてけっこうだと思います。
  71. 鈴木力

    鈴木力君 そこで、翻訳権の十年留保のあれもちょっと伺いたいのですけれども、これは時間がありませんから簡単に伺いますが、十年留保の条項あるいは十年未満のもの、あの条項を、通告をなさるというのは、十年たったときに通告なさるということなんですか。
  72. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 十年たったときにということは、どの時点をお考えになっておられるのかちょっとわかりませんが、おそらく著作権法の団内法の施行のときからということでございますと、原則的にはただいま検討中でございますが、いずれブラッセルに加入することにつきましても、今国会に上程いたしまして国会の御承認を得る準備をいま取り進めておるところでございますけれども、それとの関連におきまして、その御承認を得てブラッセル条約に入るときに放棄できるか、あるいは十年たって、すなわち昭和五十五年の十二月三十一日をもってその十年留保を撤回をするか、その点についてはただいま検討中でございます。
  73. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、もう一つ、これは全くの法律のしろうとでどうもよくわからぬのですね。いまの通告という手続が要するわけですね。ところが今度のは、いまの現行法では段階的解消というものが入っておるわけですね。これは条約的に申し上げますと、段階的解消というのは有効になるんですか。どういう位置づけになっておるんですか。
  74. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 段階的解消というのは、おそらく付則の第八条の四十六年一月一日、法律の施行前に発行されました著作物についてのことだろうと考えますが、段階的に何と申しますか、解除していくといいますか、それにつきましてブラッセル規定に入る際にブラッセル規定でそれが許容されるかどうか、もし許容されるのであるならば、その時点において十年留保を撤回できるし、かつまた、もし許容できないものであるならば、これは十年たったあとに、先生のおっしゃいますように十年たったあとで撤回をすると、その二つの方法があるのじゃないかと、その点につきましてただいま検討中でございます。
  75. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、国内法で段階的に解消した部分は、国際的にはまだ効力は発生していないということなんですか。
  76. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 国内法で段階的に解消すると申しますと、何と申しますか、十年たっても外国著作者が翻訳物を日本国内で発行しなかった場合を考えておられるわけでございましょうか。
  77. 鈴木力

    鈴木力君 そうです。
  78. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) その場合には、昭和五十五年の十二月三十一日までに日本国内におきまして翻訳物を発行しないものにつきましては、いずれの場合にも権利が、翻訳権がなくなるというふうに考えております。またそのように確保する形で十年留保の撤回をしたいというふうに考えております。
  79. 鈴木力

    鈴木力君 わかりました。まあこの件につきましては、これは文化庁の長官にも御質問はもう申し上げませんが、どうも私の感じでは、この十年留保の問題はそれぞれの関係者にずいぶんまだ問題があるみたいな感じなんですね。出版業界はもちろんあげて反対をしている、この解消の問題ですよ。それから読者にも被害を与えるというような、そういう議論もずいぶんあるように私は感じておるんですが、しかし、一方からいいますと、この改正法といいますか、現行法をつくるときに、少なくともいまこの十年留保の事項を持っている国というのはきわめて数が少ないわけですから、国際的にいうともうほとんど全部これは放棄してあると、そういう立場と、日本側の著作者の今度は外国で翻訳をされるものというのはだんだんだんだんこうふえてきている。そういう情勢から留保のあれを放棄する方向にいまの新法がなったと私はこう理解しているんですけれども、それの二つのこう両論がまだ関係者にずいぶんあるように私は見受けられるので、これはひとつ、まだ国際的には条約的には手続はとっていらっしゃらないわけでありますから、これは長官としても前の附帯決議に、この法律改正の附帯決議にもありましたように、関係者と十分に話し合いの上に納得させるようにといいますか、お互いが理解させるようにというような趣旨のことを——これ、正確でないかもしれませんけれども、そういう趣旨のこともあったんですけれども、もっともっとやっぱり関係者に理解をさせる努力ということを私は文化庁にひとつ御要望申し上げておきたいと、こう思います。これはもう御要望だけにとどめておきます。  時間があまりありませんから、同じ著作権の問題で一つ。これは私はこの前現行法が改正になるときに反対をしてだいぶ長官とも議論をした記憶がありますけれども、例の教科書の問題ですね、教科書に採用する問題。それで、そのあとにオックスフォード大学の出版局ですか、から三省堂と開隆堂が提訴をされている。そういういろいろな経緯がありましたけれども、この経緯について、まず簡単に説明をしていただきたいと思います。
  80. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 実は四十六年でございますから、ちょっと三年ほど前になるわけでございますが、三省堂から文化庁長官あてに、三省堂が発行いたしておりますところの高等学校用の英語の教科書「ハイロード・トウ・イングリッシュ・リーディング・コース」というものにつきまして、オックスフォードの大学の出版会社との間で紛争が起こったので、その解決のために著作権法で定めるところの著作権の紛争解決あっせんに申請がございました。そこで、文化庁では、他の当事者であるところのオックスフォード側に対しまして、あっせんに付することについての同意を求めましたけれども、オックスフォードのほうでは辞退したいという旨があったわけでございますが、こういうのが文化庁との関係でわれわれが知った事実でございますが、なお新聞等で、それに先立ちましてオックスフォード側は四十六年の六月三日に、三省堂を相手方といたしまして著作権侵害の告訴を行なっていたのでございますが、その後は告訴を取り下げ、さらに四十七年の十二月十九日に、三省堂を相手方といたしまして、東京地方裁判所に対しまして著作権及び著作者人格権の侵害の差しとめ、損害賠償並びに謝罪広告の掲載を内容とするところの民事訴訟を提起したのでございまして、それはなお現在訴訟の係属中であるというのがおおよその内容でございます。
  81. 鈴木力

    鈴木力君 そこで、私、長官に率直に伺いたいのは、問題の焦点はどこだというふうに理解されておりますか。
  82. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 結局、この三省堂の教科書の中に、オックスフォード大学のほうの出版局が出版いたしました外国人のためのリーダーと申しますか、その中の相当の部分を教科書の中にそのまま掲載をしたという問題でございます。ただこれは、事件は新法というよりは旧法時代のものでございまして、旧法によりますところの規定が問題になるわけでございまして、それは旧著作権法の第三十条の第三の中に、「既ニ発行シタル著作物ヲ左ノ方法ニ依リ複製スルハ偽作ト看倣サス」——著作権侵害にならないという中に、第三といたしまして、「普通教育上ノ修身書及読本」−リーダーでございますね、「読本ノ目的ニ供スル為ニ正当ノ範囲内ニ於テ抜萃蒐輯スルコト」ということで、いまの相当部分をこちらの教科書に掲載したことが「正当ノ範囲内」における「抜萃蒐輯」であるかどうかという問題にかかっているわけでございます。
  83. 鈴木力

    鈴木力君 ちょっと私は文化庁の認識が——私はきょうこの著作権で質問を申し上げたいと思ったのは、一番先に私が申し上げましたように、せっかく大学学術局学術国際局とつくってやっても、基本的な、この国際的な、行政感覚がもう少し国際的にレベルアップをしない限り機構いじりをしてもむだだという意味で御質問を申し上げているわけなんですが、このオックスフォードの提訴問題をいまの長官のそういう御答弁のような御認識に立っている限り、私は日本文化行政なんというものは国際的にはあまり信用されることにはならぬだろう。あるいは尊敬されるような日本文化行政としてはきわめて遺憾な事実だと思うのです。私はずばり申し上げますと、そういう条項はある。だが、何と言っても——著作権法の新法では何条でしたか。
  84. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 三十三条「教科用図書等への掲載」でございます。
  85. 鈴木力

    鈴木力君 わかりました。この三十三条ですね。一々は、用語についてどうこういまやりとりはしませんけれども、一貫して流れておるのは、国定教科書時代の思想が流れておる、これに。そうでしょう。だから、少なくとも教科書に採用するものについては、「学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書に掲載することができる。」と、こうあって、しかもこの取り扱い規定は、事前に著作者の了解を求めるということが、求めなくともいいということになっているでしょう。要するに、著作権の基本である著作者の許諾権というものは、この項に限っては抹消されているわけでしょう。どうですか、これは。
  86. 安達健二

    政府委員(安達健二君) この三十三条で、一つは、いまの著作権の一つの制限といたしまして、著作権者としての著作権の許諾については制限をするけれども、著作人格権を尊重する趣旨からいたしまして著作者に事前に通知をする。こういうたてまえになって、教科書の場合におきましては、できるだけいい教材を教科書に載して国民に——国民といいますか、子供に提供したい、こういうことからいたしまして著作権は制限する。しかし、内容等につきましての著作者人格権を重んじなければならないから著作者には事前に通知をする。同時に、著作権の料といたしまして補償金という形で額を著作権者に支払う、こういうていさいになっておるわけでございます。
  87. 鈴木力

    鈴木力君 問題はそこにあると思うんですよ。人格権を尊重するからというので通知になる。これは実はこの法案改正のときにも、相当時間長官と私とが見解が違って議論をした部分ですよ。少なくとも学校教育に必要な図書であるからといって著作者の許諾権を奪うということは、私はやっぱり憲法違反の疑いさえあると思うんです。通知をすればいいのだ、おまえの作品のこれを使いますぞ、ということを言えばいいのだという思想でしょう、思想の上からいって。それが今度のオックスフォードの事件になっているんじゃないですか。だから、伺うところによると、これは私が仄聞したということに申し上げておいたほうがいいけれども、今度の事件の発端というのは、直接オックスフォード大学の出版局がやったのではなくて、何でもイギリスの外交筋の専門家の方がこれでいいのかという問題提起をなさったというふうにも私は仄聞をしておる。ただし、これは日本と外交上の諸問題ですから、これは責任あるそういう手続ということではないと思いますよ。そういう日本に対する配慮をしながら、そういうような問題提起をなさったというふうに仄聞をしておる。  それから裁判のやりとりとかそれは一応抜きにしまして、もう一つは、やはりオックスフォード側のほうでも、問題は金のことじゃないのだ、こういうことをやはり言っていられるように聞いておる。なぜ事前に許諾を求めてこなかったかというところが最も不満な点、提訴に踏み切らざるを得ないと言う。そうすると、長官に私は申し上げたいのは、あなたがいま言ったような解釈、これはそういう法律になっていますよ。そしてこの法律をつくるときに私が反対してずいぶん議論した問題ですから、したがって、いまのあなたの答弁はそのときの趣旨に立って答弁をなさっている。しかし、ここらでこれを見直すということをしないと、私は国際的にはいまの長官の御答弁考え方は通用しないと、こう思う。どうですか。
  88. 安達健二

    政府委員(安達健二君) これは条約との考え方……。
  89. 鈴木力

    鈴木力君 そこはわかっている。
  90. 安達健二

    政府委員(安達健二君) で、一応ベルヌ条約下において許されるという限度において考えているわけでございまして、イタリアの法制もほぼ同じでございます。ただ、イギリスはこれよりもう少し厳格な制限になっておるということは事実でございます。これはいわばそれぞれの各国の国内法の定むるところによるというのが条約の考え方でございまして、その評価についてはいろいろあろうと思いますけれども、現在のわが国の教科書の役割りその他から考えまして、一応この三十三条のような形が国会で御承認を受けたと、こういうことでございます。
  91. 鈴木力

    鈴木力君 だからね。あなたは、多数決で承認になった法律ですから、これはわれわれは反対したんです。そうでしょう。そういう答弁で、どうせ国会で承認したんだから正しいんだと、これでは私は文化行政にはならぬと思うんですよ。私は近い将来にここは訂正すべきだという考え方を持っておる。どうしても、教科用図書といえども、教科書の性格上ただ——ただというのは金のことじゃないですよ。本人の承諾を得ないで使っていいんだという思想をいま持っているということが間違いだというふうに思います。少なくとも諸外国には通用しない。イギリスには通用しなかった。著作権というのは個人の固有財産だということは認めるでしょう。その財産権を教科書に採用する場合には侵してもいいんだという考え方政府考え方は。  ところが、私はこれは大臣にもひとつ聞いていただきたいですね。多くの著作者の方々の御意見を——多くといっても私はそんなにつき合いが広いわけじゃありません。たくさんの人に全部アンケートをとったわけでもありませんけれども、私どもに言ってくる人の不満は、金の問題じゃない、文部省がその気で、教科書がいま全額国庫負担で値段等も押えなければいけないという義務教育立場があって、事情があれば、こういう事情だからこれで許してくれとくればそれでいいんだ、それが、教科書だからおれはかってに使ったのだ、通知をすればそれでいいという、全く著作者の権利——人格権を尊重したから通知すると言うけれども、尊重しなければ黙って使うということならますます悪い。そういう扱い方、文部省姿勢というものに対しては国内の作者からも非常に多くの問題がある。まして外国には通用しない。この辺を直そうとなさるお気持ちありませんか。善意であれば、私が言ったように、許諾権というものを与えておいても、相談をすればたいていの人は乗ってやると、こう言っている。少なくとも財産権を奪い返すようなことを教科書だからいいんだ、教育用図書だからいいんだというこの思想は転換すべきだと、私はこう思う。いかがですか。
  92. 安達健二

    政府委員(安達健二君) その点は非常な問題点と申しますか、いろいろとお考えのあるところだと思うわけでございます。ただ、先ほど来申し上げたことと重複いたしますけれども、条約の精神と申しますか、条約の範囲内においてそれぞれの国において適切な措置をとれということで現行法の——現行法といいますか、今度の新法の規定があるわけでございます。それについてはいまのような御意見も私どもも聞いているところでございますし、十分また考えなければならぬかと思いますけれども、現在の私どもといたしましては、特にこの補償金の額、これは御質問あるかもしれませんけれども、額につきましてこれを何とかひとつふやしまして、著作権者にも十分な報いができるようにしたいということで当面は努力をいたしたいというように考えております。
  93. 鈴木力

    鈴木力君 私の申し上げることを正確に理解していただきたいですよ。補償金の問題はあとだ。多くの著作者は——これはもちろんオックスフォードもそういう立場だと私は理解しているのですよ。金の問題はあとなんだ。著作者の権利、著作者の人格というものを日本政府はどう尊重してくれるかと、こういうことなんです。おまえの作品を使うからと通知したことで、おまえさんの人格を尊重しているというこの感覚に文句を言ってるわけです。使わしてくれとどうして言えないのですか。国定教科書時代の思想をいまも持ってるから——。そこなんです。あとで国内問題に触れても若干の事例を出しますけれども、まず私は、国際的にいったら、しかもオックスフォードの今度のあれは、あなた、出版社とこう言いましたけれども、機構を調べてみたら、オックスフォード大学はマクミラン氏が学長であることは、総長であることは皆さん御存じでしょう。あのオックスフォード大学の運営委員会が全額出資をして、いまのようなこの出版をなさるから株式会社に切りかえているだけで、運営は大学がやってるわけです。世界の最高の水準にある大学と言ってもいいわけでしょう。そういう権威ある大学からこういう問題が指摘をされるなどということは国の文化行政の恥じゃないですか。私は、そそまで深刻に受けとめるべきだと、こう思うのです。ところが、さっきの文化庁の長官でもそうです、よくぬけぬけと言ったものだと私は思いますよ。これはちょっと口が悪過ぎますかね。この提訴になったときにあなたは、あっせんをするという、自分のほうで、文部省があっせんしてやるからあっせんを申し出なさいということを言っておる。その文部省考え方に問題があって、こういう問題を提起したのに、その考え方、直接提訴された人は出版社だから自分があっせんしてやるなんて、こんな無神経なことをやってるからますます国の文化行政の恥になると、私はこう思うのです。どうしてそのときに、すみませんでしたということが言えないのですか。そういう姿勢がなければ何局をつくったって日本文化行政が国際水準に通用するようにならないし、また国際的に信頼されるようにもならない。そういう例はこの例だけではないと思うけれども、これを直接の例として私はきょう取り上げているわけです。これは大臣所見を伺いたい。
  94. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 著作権法第三十三条に関しまする問題は、国によってまちまちだということを政府委員側から申し上げてまいったわけであります。ただ、今後の日本のあり方としては、日本はエゴの立場に立って主張している、ものを考えているというように国際社会にとられることは特に避けていかなきゃならない、こう考えるわけでございます。著作権法三十三条の問題に関連をいたしまして、国際社会のあり方をしさいに検討して、そして将来著作権法を改正します場合には、この問題につきましては特に掘り下げた検討を行なわなきゃならない、かように考えるわけであります。
  95. 鈴木力

    鈴木力君 いまの大臣の御答弁でまあ私はわかりました。  これはしかし、今度、国際的ばかりじゃなしに国内的にも、国内の著作者というものもやっぱりそういう立場考え直してもらいたい。さっきも申し上げましたように、くどいようですけれども、私のつき合った範囲内では、金がなかったら、ないと言ってくれればいいんだと。特に作品の一部修正までも通知でやられるというのじゃがまんができないわけですから、通知じゃなしに許諾というところに、どうしてもそういう方向にいってくれという要望が強い、これは申し上げておきます。  それからその次に、長官、何べんも言われた補償金の問題ですよ。どれだけ長官の感覚が国際的にずれているかといいますと、たとえばオックスフォードですね、こちら側から、日本の出版社から送ったのは、一つの額は二万五千円送っているのですね。それからもう一つの口は二万四千百円というのがあります。これが事前に示談になっているでしょう、開隆堂のほうは和解が成立をした。そして開隆堂が幾らで和解が成立したかというと、三十万九千九百円で和解が成立しているんでしょう。文部省の標準でやると二万円台、それがそちらの仲裁委員会で和解が成立すると三十万九千円台、あるいは四十何万円というのもあったというふうに記憶しておりますが、三省堂のほうは三十六万円、しかもこれは内金とすると、こういうことになっておる。ただしこれは、手続上は、オックスフォードのほうはまだ受け取っていないんで、預託をされておる、預かりになっておる、こういうことでしょう。だから、補償金で補償金でと長官が言われるけれども、私は、文部省の補償金の考え方を見ますと、たとえば今度改正したからと、こう言うんでしょう。これは国内のあれですけれども、文芸著作者、文芸の補償金、文芸作品の補償金ですと、かりに十万部から十五万部発行されるものについては、中編で二千五百円ですか、俳句が三百五十円でしょう。教科書に採用するのを、俳句だから十七文字三百五十円ならいいじゃないかと思ったかもしらないけれども、三百五十円を払って、補償金を払ったから、通知したし補償金を払えばいいじゃないか、しかもこれは、四十七年度は二百八十円だった、それを三百五十円に七十円上げた。おそらく文化庁の長官がこれを言うには、七十円上げたと言わないで何%上げたと言うでしょう、大幅に上げましたと言うでしょう。これでは著作者が、とてもじゃないが、補償金でということには納得すると思いますか。私はしないと思う。しかし、教科書行政立場から、全額国庫負担という立場から、父母負担の軽減という立場から安くしなきゃいけないのだと、それならそれで、安くしなきゃいけませんけれども、これてまけてくださいと、事前に許諾——さきに言いましたように私は許諾権に戻る、許諾権を与えて、これで何とか許してくださいという姿勢、それが大事だということになる。しかし、そういう姿勢があったにしても、作家の俳句を三百五十円ということはあまりにもひどいですよ。非常識だ。あるいは中編の作品を、発行部数の少ないのは千円というのがある。千五百円。一番高いので幾らですか——一万一千円、中編になりますと。とてもじゃないが、これで文化行政でございますというような、著作家を保護しておりますというような口は、私は長官の口からは聞きたくない。別の人からならばまだがまんする。どうです。
  96. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 補償金の額の問題につきましては、ただいま先生がおっしゃいましたような御意見はまことにごもっともで、われわれとしてもそういう御批判は甘受せざるを得ないような状況であると思うわけでございまして、私はこの費用が非常に低いということはたいへん遺憾に思っております。ただ、こういう額につきましては、やはり権利者側と使用者側との了解のもとにやるというたてまえでございまして、そこで私は、四十八年度をきめるにあたりましては、もう少し長期的な展望に立って、将来はこうする、それがいまできなければそれを段階的にやるということで、ひとつ両者で教科書の補償金額として適切なる額を、理想像と申しますか、これならば満足できる額をきめてくれということで、両者を中心といたしまして検討委員会をつくっていただきまして、日本文芸著作権保護同盟の文芸家の方々と音楽の方々を中心にいたしまして、検討委員会を数次にわたってやっていただいておりまして、大体においてその計画を策定して、考え方としては印税システムにするというような方向で、その額をどういうふうにしようかというところまで大体話し合いが乗ってきたのでございますけれども、ちょうど昨今物の不足とかいろいろな状況が出まして、四十八年度にはちょっと間に合わないというようなことになりましたので、現在のところは、四十八年度は従来のものに若干の——私は率で何とも申し上げるつもりはございませんが、若干の改善を加えました上で、これはまあこれで満足すべきではないから、四十九年度以降の補償金額におきましては、検討委員会をも再開していただきまして、そこでひとつ補償金の理想像を設定して、それを、急にはいかないけれども、年度計画で実現するように持っていきたい。関係者もそういうように納得いたしておりますので、われわれといたしましてもできるだけひとつ努力をいたしまして、両関係者ともが満足できる程度までぜひひとつこれを上げるようにいたしたいと、かように考えておるところでございます。
  97. 鈴木力

    鈴木力君 私が申し上げるのはね、さっきから言っている私の申し上げる趣旨というのは、私が間違っておればそれであなたのほうで反発してもらってけっこうだけれども、正確にやはり理解をしてもらいたいのです。関係者の検討委員会を開いておる、その関係者というのもほんとうはいろいろあるのだろうと思いますので、どういう方が関係者であるのか、これをあとで資料として出してください、きょうは時間がありませんから。それで納得するような方向を見つけると、こう言いますけれども、どうも私どもには関係者にない著作者の人たちの意見があると思うのです。たとえば朝日新聞に出た早乙女さんなんかの例は極端な例かもしれませんけれども、御存じでしょう、一々これは申し上げません。こんなはした金など取らないという方もある。検討委員会で上げていくということはそれなりに私はわかりますけれども、それはぜひ早急にやっていただきたい。やっていただきたいのですが、何といってもこれは大臣にも御理解いただきたいのは、問題の所在は金の問題じゃないということです。関係者の皆さんは、たとえば義務教育なり、まあ高等学校もそうですけれども、教科書、教育というものに対しては非常に理解的ですよ。好意的だ、善意だ。だから、安けりゃ安くても協力をしようという気持ちはみんなあるのです、ほんとうのことを言えば。おこっているのは通知制なんです。通知をすればこっちがかってに使えるのだというそこにおこっている。それだけはお忘れにならないように聞いていただきたいと、こう思う。  私は、もう時間がありませんから、きょう、これでやめますけれども、この著作権法という問題は、だからいまも私が指摘をした若干の問題にもありますように、一つは、何といっても著作者の権利を守るというところに基本を置くということになっておるでしょう。ところが、一部国でやることについては侵していいのだという思想がここの教科書の条項にあるから、これはやっぱり私は問題がある。その考え方がオックスフォードから提起をされたような、そういう先進国には通用しないような考え方をいまもって持っておる。まあイタリアでこの法律ありますということは、私はある程度は聞いたことがあります。それから条約では国内法によるということが書いてあることも承知しております。しかし、その国内法が、個人の財産権を取り上げていいのだという思想の国内法は条約の思想にはない。そうすると条約の中でも、条約が上回るか下回るかという議論さえあるわけです。そういう点に提起をされているという問題は、会社が、開隆堂がどうこうしたというようにとる感覚は私は残念だ、そうじゃなくして、国の文化行政一つとして、イギリスのオックスフォード大学から問題を提起された、謙虚にこれを受けとめるべきだ、行政的に。まあさっき大臣が、そういう面で国際的に検討なさるという御答弁をちょうだいいたしましたから、私はあの大臣の御答弁でよくわかります。長官もひとつ、おれのなわ張りだからここでやり込められちゃ困るからという、意地にならないで、もう少しちゃんとした文化行政をやっていけるように、そしていろいろと具体的に事実に合わないところは勇敢に直していくような行政に切りかえていただきたい。そういうことがあって、今度の大学学術局というのを大学局にするところにも多少言いたいことがあるけれども、きょうは時間がありませんから言いませんが、学術国際局をつくったゆえんのものは、そういう感覚の転換からこれが生かされていく、いまの感覚を持ち続けているんならこんな機構いじりをしても意味がない、そう思って私はこういう質問を申し上げたのです。ぜひひとつ私の申し上げたこともおくみ取りいただいて、そういう行政でひとつ前進をされるように御要望申し上げまして、私はきょう質問を終わりたいと思います。
  98. 岡本悟

    ○理事(岡本悟君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      —————・—————    午後一時三十一分開会
  99. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。小坂総理府総務長官。
  100. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) ただいま議題となりました皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  改正点は、内廷費及び皇族費の定額を改定することであります。内廷費及び皇族費の定額は、皇室経済法施行法第七条及び第八条の規定により、現在、それぞれ一億千二百万円及び千万円となっております。これらは昭和四十七年四月に改定されたものでありますが、その後の経済情勢、なかんずく物価の趨勢及び二回にわたる国家公務員給与の引き上げ等にかんがみ、内廷費の定額を一億三千四百万円、皇族費算出の基礎となる定額を千二百十万円にいたしたいと存じます。  以上がこの法律案提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  101. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 以上で説明は終わりました。  本案の審査は後日に譲りたいと存じます。     —————————————
  102. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) それでは午前に引き続き、文部省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  103. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 今回の文部省設置法の一部を改正する法律案の中につきまして質問をしてまいりますが、学術国際関係の一環として、最初に私は留学生問題を取り上げてみたいと思います。  現在、わが国に在留しております在留学生の現況と、いままでの留学生、そしてまた帰国した留学生と、いま現在、先ほど申し上げましたように在留している留学生の国別、年度別の状態をひとつお示し願いたいと思います。私すわって質問をいたしますので、どうぞそのままで答えていただきたいと思います。
  104. 木田宏

    政府委員木田宏君) 現在受け入れております留学生の受け入れの概況から御説明申し上げます。  今日、わが国に入ってきております外国留学生の総数はざっと五千人でございます。そして、そのうち国費の留学生として入っておりますのが約九百人でございまして、四千百人ほどはいわゆる私費留学生という形で来ておるものでございます。
  105. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 すみませんけれども、声がちょっと小さくて聞こえないんですが、数字が聞き取れないんですが。
  106. 木田宏

    政府委員木田宏君) 留学生の総数は約五千人でございます。そのうち、いわゆる国費留学生と称しておりますものが九百名でございまして、いわゆる私費の留学生として在留しておりますものが四千百人ほどございます。これらのうち約八三%にあたります四千百名ほどは、東南アジア等開発途上国からの留学生でございます。  それをもう少し地域に分けて御説明を申しますと、アジア地域から国費、私費合わせまして三千八百六十三人ほど参ってきております。中近東からは五十人、アフリカからは二十八人、オセアニア地区から三十七名、北米から五百五十一名、中南米から百五十三名、ヨーロッパから二百六十二名、合わせて、正確に申しますと四千九百四十四人というのが昨年十一月の状態でございます。  これをまあ今後単年度の受け入れといたしまして、四十九年度どのような受け入れの状況になっているかということでございますが、四十九年度の予定は、国費について予算を立てて用意をしておるだけでございまして、国費の受け入れ数は、四十八年の四百四十名が今度四百八十名になるわけでございますが、アジア地区からは二百五十一名、中近東から二十六名、アフリカから九名、オセアニアから十九名、北米から三十五各、中南米から四十九名、欧州から九十一名、国費におきましてはそのような割合で四百八十名を受け入れる予定にしてございます。
  107. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いまの、資料としてあとで出していただきたいと思います。
  108. 木田宏

    政府委員木田宏君) はい。
  109. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 これは委員長、よろしくお願いします。  今日までの留学生の中で、学部に留学していきたいという留学生と、研究生の留学生との状態はどうでしょうか。
  110. 木田宏

    政府委員木田宏君) 比率で申し上げますと、今日、学部留学生としておりますものが五六%でございます。大学院の留学生としておりますものが三九%でございます。あと若干名が短大等に在籍をしておるものでございます。
  111. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 留学生の最大のガンというのは、非常に規制強化をされているということをいわれているわけなんですが、たとえば昭和四十年の四月から来日してきている留学学生に対して、政府文部大臣との間に誓約書のようなものを取りかわして、政治活動の禁止条項を加えているということなんですが、その内容は、政治団体の結成とか、政治的性格の会合への参加とか、論文の発表とか宣言、大衆示威運動などを例として示しているということなんですが、これなんかは過去四回の国会を通じて出入国管理法案が廃案になってきている点から考え合わしてみても、もしこの出入国管理法案等が法案として出ていけば、その全外国人にいま私が申し上げたようなことが適用されてくるんじゃないかというきらいもあるんだという報道もされているわけですけれども、こういう関係について文部大臣はどんなふうなお考えですか。
  112. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 外国人が政治活動を慎むべきだというのは一つの国際慣行みたいなものではないかというふうに思っているわけでございます。同時にまた、外国から日本へ参りました留学生が、その方の本国の政府に対して反対的な政治活動をおやりになって、両国の政府間が気まずくなるというようなこともあり得るわけでございます。そのようなこともございまして、ある事件からこういうような措置をとり出したわけでございますけれども、日本に留学してくる限りにおいては政治活動は慎んでもらいたいというような文書に署名してもらうというしきたりになってまいったわけでございます。
  113. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 それが非常に反発を感じているということが留学生の中にはあるわけでございます。総理がアジアの五ヵ国を訪問されたときでも、タイでもインドネシアでも、申し上げるまでもなく、もうすごい罵声を浴びせられながら、まあ早く言えば、どろまみれになって、そしてまた総理が行かれた意が達しられないで帰られたということも関連をしていくような留学生というものに対する日本政府のあり方というもの、いま大臣から御答弁がございましたけれども、この規制されていくというふうなことが、非常にこういう感情の中にもあらわれてくるようにも思えるわけなんですが、こういう点はどんなんでしょうか。大体平和運動に参加したり、自分の意見を述べたり、思想、表現の自由を留学生としては希望するわけでございますが、そういうふうな考え方を拘束していくというような形になってくれば、いま申し上げたような総理大臣のアジアに行かれたときの実態というものも、過去から積み上がってきた姿がそのようにとれるんじゃないかというふうに私は思うわけですが、どうなんでしょうか。
  114. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 日本政府がこういう態度をとっていることがタイその他において騒擾を起こす原因になったとは考えていないわけでございます。国費をもって外国から留学生を迎え入れます以上は、その留学生が本国政府の転覆をはかったりするというようなことで両国間の関係が気まずくなる、これはやっぱり事前に避けておいたほうがいいんじゃないだろうかと、こう考えるわけでございます。思想、信条の自由を拘束するというようなことは一切ございません。やはり政治活動の問題でございます。同時にまた、私費留学生等につきましては何ら拘束は加えておりません。したがいまして、先ほどおっしゃいました出入国管理法が一般的に外国人について政治活動を規制するということの場合と、現在とっております場合とでは相当な開きがあるんじゃないかと、かように考えるわけでございます。国費留学生について、政治活動をしないという約束をしてもらうというだけにとどめているわけでございます。
  115. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そうすると、この点はだいぶ論議を取りかわしていかなければならない問題点があると思うんです。大臣のお考え、思想、表現の自由は拘束しないと言われておりますけれども、論文の発表とか宣言とか、あるいは大衆示唆運動とか、そういうものを全部政治的なものとして結ばれていかれれば、そういうふうに拘束をされるということにとれるわけですがね。ですから、この点、私の考え方というものは、あくまでも留学生の立場になってあげて十分に勉強をさせ、日本を知らせ、そしてまた日本に来てよかったという、すべてを持って帰れるようじゃなければ真の目的は達しない。この面から考えていきましても、国費でやれば、金を払ってやっているから、めんどう見ているからいいんじゃないかと、文句を言うな式であってはならないんだと思うわけなんですがね。そういう点で私は心配をしているわけで、お伺いをしているわけです。とにかく留学生の立場に立っての運営をすべきであろうということが私の考え方なんです。いかがでしょうか。
  116. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 学生はおそらく研究をしたい、教育を受けたいというつもりで来ておられるんだろうと思います。同時にまた、外国人が他国に行って、その国で政治活動が自由にできるというような国は私はあまり承知いたしておりません。いわんや、国費を支出して外国人を迎え入れる、その場合、アジア諸国においては特に政権交代などかなり多いようでございますけれども、そういう場合に新旧いずれかの政権を支持して活動をやる、そうしますと、やっぱり両国間の政府にも亀裂が生じてくる場合があり得るわけでございます。そうしますと、どちらかの意味からいいましても、国費を支出して留学してもらっている学生につきましては、政治活動だけはやはり慎んでもらわなきゃならない、こう考えるわけでございます。思想、信条の自由まで侵すこと、これはもう当然避けていかなければならないと思います。ただ、おっしゃいましたように、宣言文をつくって、そして呼びかけていくということになりますと、思想、信条の自由の範疇に属するものと、政治活動の範疇に属するものとの境が出てくると思います。まあそういう場合にできるだけ寛大に見ていくという姿勢、これは大切なことじゃないかと、かように考えるわけでございますけれども、一般的な意味における政治活動はやはり自粛していただきませんといけないんじゃないだろうかと、かように考えているわけでございます。しかし、それもいま申しますように、国費留学生に限ってとっている措置でございます。
  117. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 留学生なんかの希望しておりますのは、大学の入学試験なんかもあっても、これは自由に大学を選択していきたいなんていうのも中にはいるわけですね。そういったようなものもゆるめられてないということなんですが、この点どうなんですか。
  118. 木田宏

    政府委員木田宏君) 留学生がどういう大学で学ぶかということにつきましては、国費の留学生の場合と私費の留学生の場合とおのずから流れが違うわけでございます。  国費の留学生で、それぞれの国から所定の人員何名か迎えたいと申します場合には、私どもが在外公館の御協力を得まして、それぞれの所在国で日本の留学生何名ほど、こういうことで受け入れたい。そして希望者の現地での選考が行なわれ、また日本文部省に設けられました選考委員会で、文部省関係あるいは外務省の関係者とも相談の上で、それぞれの選考を進めるわけでございますが、その際に、本人の希望のこともございまするけれども、やはり私どもが本人の留学希望その他を勘案いたしまして、どこの大学で受け入れ、教育機会を与えるのがいいという判断に立って、先方にこの大学でこのような受け入れをいたしましょうというような返事をすることになっていくわけでございまして、やはり申請者の側の学力あるいは希望条件、それと、こちらの受け入れる大学の実情を勘案いたしましてお世話をする、これは必要なことであろうかと思うのでございます。私どもが、日本の学生がアメリカの大学へ行きます場合にも、いろいろと中間でそういうお世話をしてくださる委員会その他もあるわけでございますし、円滑に行ないますためにそういう方法をとらしていただいております。  私費の場合には、もとよりそれぞれの留学者がどの大学へ行きたいという希望を持って来る場合がかなりございますから、それはそれぞれの大学へ留学希望を出して許可を得て入ってくるというケースがございますし、また私費の場合でございましても、一般的には、まず日本に来て、日本語の勉強をして、そしてその上でまた、国内にいながら大学の希望を出しながらその選考を受ける。こういうことになっております。私費のほうがおのずから本人の希望を生かす道が多かろうというふうにも思いますけれども、ほんとうにいい勉強をしてもらうためにお世話をするということは、いずれの場合にも必要なことであろう、こう考えております。
  119. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 何となく日本大学はまだ鎖国状態のような感じを受けてならないわけでありますが、これはある学者の説にもそういうふうなことを言われておりますが、言うならば、思い切って開港をして、そして学生の中に各国の学生が多く入っていることを誇りとするような大学考え方がいいんじゃないかという、そういうふうな発想のもとに、政府主導型というよりも開港していくという、大学みずからも解決をしていくような方向がいいんじゃないかとも思うわけですが、いまの御答弁でもう少し足りないような感じがするんですけれども、いかがでしょうか。
  120. 木田宏

    政府委員木田宏君) 御指摘のように、一般的に申しまして、日本大学が外国人の学生を受け入れるという点になれていない、そういう点はございまして、どうもうまくしっくりといい指導ができるところまでいっていないということは言えようかと思います。しかし、これもやはり個々の大学の長い努力の結果によって生まれてくることでございますから、日本大学にありましても、具体的の名前を申し上げるのはいかがかと思いますけれども、上智大学でありますとか、あるいは国際基督教大学でありますとか、比較的外国からの学生がたくさん出入りしておる大学は、かなり諸外国の大学に近い状態にまで学内のキャンパスのふぜいも、留学生に対する指導の体制も進んできておると思うのでございます。  しかし、国費の留学制度を設けましてからかれこれ二十年になりますけれども、当初から文部省が留学生を受け入れて、いろんな大学お願いをいたしますときに、まあ、ありていに申しまして、少し荷やっかいなものを文部省から言われるという気分が大学当事者にあったということも否定できません。そして、それがまた大学が悪いという意味ではなくて、日本の社会全体、生活環境全体もそうなんでございますけれども、ひとり留学生を迎え入れたときにどのように世話をしていけるかということが、私どもがヨーロッパやアメリカの社会へ入りましたときのように自然にはいかない。これはことばの問題も、生活環境の問題も、日常のつき合いの問題も、いろいろと習熟してないことがある。そのために、入ってきた留学生が、場合によりますと、非常に疎外感を感じる、閉ざされておる、こういう意識が出てくることも現にあると思うのでございます。  このことは、大学自体の、そうした留学生を日本の学生と同じようなかまえで自然に受け入れていくという大学自体体制をいろいろな意味で整えていかなければなりません。そうした意味での努力は私どもも気を配っていろいろと進めておるつもりでございます。特に、この二年ほど前から、大学が外国の学生を積極的に自分たちの仕事として受け入れるという姿勢を持ってもらうために、留学生の交流制度というものを予算でもって始めさせていただきました。これは日本大学が直接、諸外国のアメリカ、ヨーロッパ、あるいは東南アジアの国々の大学大学同士のアフィリエーションを組みまして、そうしてそれらの国の学生を迎えたり、こちらの学生をお願いしたりという、大学自体の責任でこちらの学生も向こうに頼み、向こうの学生も受け入れる、こういう制度も開かしていただいたのでございます。  こういうふうにいたしまして、大学自体自分仕事として留学生を迎えるという施策を進めていき、その過程の中で、生活問題あるいは教育指導上の問題で必要な措置を予算の面でもバックしていきたい。最近まで、私費留学生に対しましては、ほとんど指導上の経費も計上したことがございませんでしたが、国立大学に学びます私費の留学生に対しても、大学教育上の姿勢がとれるように教育経費も計上していくというようなことを四十八年から積極的に進めておるのでございますが、こうした姿勢を積み重ねまして、いま御指摘がありましたような、わが国の大学の体質をできるだけ国際化に持っていきたい、こういうつもりで努力をしておるところでございます。
  121. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 ある程度のことを認めておられるようですから、ことばとか習慣とかのために、日本人たちというのは、いま答弁がありましたように、一面では非常に受け入れられない体質というものがあるかもわかりませんけれども、その証拠としては、三年以上たっても一割の学生さんが日本人の友だちができていないとか、人間の触れ合いが非常に少ないとか、家庭人との対話といいますか、日本人の家庭の中に入っての生活状態を知っていくとか、そういったような留学生がいまだにまだ九〇%以上もいるというふうに聞いておりますし、お話にも出ました住まいの問題でもやはりそうだと思います。これは私費、国費にかかわらずそうだと思います。  いずれにしましても、このことにつきまして、荻田セキ子さんという方が、東京のYWCAの留学生の母親運動というのを、十二年の経験の中から、留学生とのインタビューにアンケートを思い立ったというのが七二年の春で、それから一年半にわたって調査をしたという費重な報告の出版物が近く出るそうでありますが、その方がおっしゃっている中に大事な要素が一ぱい含まれております。いま局長から御答弁ありました中の部分的なものが、それぞれの角度、それぞれの立場で学生の答えが出ております。  そういう面から、私はその方の問題とされている点を一、二申し上げて、お考えを聞いてみたいと思っておりますが、先ほどの説明の中になかったんですが、日本政府からの奨励金としての学部に対しては幾らであるのかというようなこと、これを御答弁をいただきたいと思いますが、四十九年度がどうであるのか、それでまた国費の方々日本語の勉強といいますか、そういったようなことが十分であるかどうかという、そういうようなことも問題点として出ておりますが、この点なんかどうなんでしょうか。
  122. 木田宏

    政府委員木田宏君) 国費で呼んでおります外国人留学生に対しましては、学部留学生につきまして、四十八年度でございますが月額五万二千円の奨学金を出してございます。これは四十九年度六万円に上げたいということで予算のお願いをいたしております。研究留学生につきましては、四十八年度七万九千五百円の月額を支給してございます。これは四十九年度八万九千円に上げていただきたいというお願いをいたしております。これらの奨学金の額は国際的に他の国々の奨学金の額と比べてみまして決して遜色のあるものではないと考えております。これらのほか、研究旅費を支給いたしますとか、日本に来ました場合の一時金としての手当を二万五千円ずつ支給するとか、あるいは下宿料の補助を出すとか、あるいは病気をいたしました場合の医療費の補助を、これは私費の学生に対してもそうでございますけれども、出すようになっておりまして、四十九年度はかかりました医療費の八割に対して補助する、これは国費、私費を通じて両方の全部の在日学生に医療費のめんどうを見ると、こういう施策をいたしておるところでございます。したがいまして、今日この金額等の面から見ました留学生に対する世話の体制はほぼ各国に近いところまで来ておると考えております。  ただ、お話がございましたように、アメリカが留学生を受け入れます場合と、日本が留学生を受け入れます場合と非常に違いますことは、日本語ということばに習熟してない学生をかなり予定して受け入れなければならぬ。その意味では、日本教育をどのようにするかということについて、教育上もアメリカの大学以上にこちらの関係者が努力をしなきゃならぬという問題点がございます。それらのために、国費で呼びます学生につきましては、東京外国話大学と大阪外国語大学に留学生のための日本教育体制を設けまして、一年間事前の勉強をしてもらって、それからそれぞれのところに進む、こういう受け入れ方をいたしておるわけでございます。  なお、これらのほか生活関係というのがかなり日本の場合にはむずかしゅうございます。国によりましては比較的われわれ日本人と同じような生活環境でうまく生活できるところの人たちもありますけれども、国によりましてはなかなか同じような学生の下宿というのにもぐり込むということがいきにくいために、生活関係で非常な経費の出費その他がある。これらの点もまた日本の留学生問題につきましては考えておなかければならぬところでございまして、これらの留学生のために特別の寮を整備していくというような点も心がけておるのでございますが、この点は必ずしもまだ十分に手が届いているというところにいきかねる。したがいまして、ことばの問題の次に、生活の問題におきましては、留学生諸君がいろいろと苦労が多いという点は指摘できるかと考えます。
  123. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いまお話がありましたように、生活環境というものが非常に違うということは初めからわかっているわけであります。住宅問題のお話が出ましたから、一番深刻に留学生が悩んでいるのは住宅問題であって、留学生のための学生寮の収容能力は、それじゃどれだけ全国に収容能力があるのか。私が調べたのと、それから先ほど申し上げました留学生の母親運動をやっておられる荻田さんの発表されておる中でも、見ますと、収容能力は全国合わせて千百人である、これでは先ほどの約五千名という、五千名をこえる人の率からいってみましても、これはもう五分の一、四分の一しか入寮できない形でありますし、この対策をいまやりつつありますというふうなこと自体が、もうすでに考え方が甘かったという証拠だと私は思うわけです。当然これは指摘されていいと思うのです。しかもいまお話がありましたように、四十九年度は六万円のお金を出すと言っておられますけれども、このいまの物価高でどのような生活をしているか、どのような生活ができるか、去年、四十八年度は五万二千円だ、それで研究生にしても七万九千五百円が四十九年度八万九千円にすると言われておりますけれども、これは学部のほうとはまるで違った立場でやっていかなきゃならないわけですから、民間のアパートの家賃なんかもたいへんなことだ。局長は自宅かどうかわかりませんけれども、私どもアパート住まいをやっておる者は家賃で相当泣かされてきまして、それに付属して家庭経費というものが非常に高まってきている。これはもう今日物価問題等、あるいはつくられた物価上昇だとかいうこと等で論議を続けておりますけれども、いずれにしろ高物価の中て外国並みにやっているという——外国並みをどこを対象にして外国並みにいっているのか、現時点の日本のわれわれの実生活と照らし合わせてみてこれでいいのかということなんですね。そういう点は私は非常にふんまんに思うわけです。それからさらにまた日本教育の問題点につきましても、先ほどの御答弁では私は満足できないんです。この点につきましても大臣から私は御答弁をひとつ願っておきたいと思う。
  124. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 留学生の皆さん方が好感を持って本国に帰っていかれるような留学生の処遇が一番大切だ、かように考えているわけでございます。したがいまして、留学生の処遇につきましては今後も改善を重ねていきたいと思います。その場合に一番ネックになりますのは、私の承知していますのは、やはり東南アジアから来ておられる方々は差別的な観念を持たれているということのようであります。われわれは差別観念を持っていないつもりでありますが、それじゃ胸に手を当てて考えてごらんなさいよと言われると、なるほど、言われてみると、欧米の方の下宿を頼んだ場合にはあっさり受けてくれるのだけれども、東南アジアからの方の下宿を頼んだ場合にはなかなか渋られるんですというふうなことをいわれる留学生の世話をしておられる方がございます。同じアジア人なのに、欧米人につき合う場合と東南アジア人につき合う場合とは違うんじゃないかというようなことが指摘されたりもしているようでございます。私はこの点が東南アジアで日本人が必ずしもよく思われていない根本の原因があるのじゃないかなということを感じている人間でございます。でありますだけに、こういう点に最善の努力を今後もっと払っていかなければいけないのじゃないだろうかな、こういう気持ちを持っているわけでございまして、御指摘の数々私もごもっともだと伺っておるわけでございまして、ぜひもっと、日本において勉強をしておられる間には勉強しやすいような処遇について一段の改善を加えるように努力をしたいと思います。
  125. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 この荻田さんのアンケートの中には、留学生のAさんという人が、「友人のベトナム人留学生の苦しみをこう語っていた。「彼は毎日夜十一時ごろまで駐車場で働いたり、工事人夫などしている。疲れきって下宿に帰っても勉強できず、いつも勉強する時間がほしいとこぼしている。」と。そしてAさんはこうつけ加えた。「欧米人とは違い、アジアの留学生であるゆえに差別され、割のいいアルバイトもない。奨学金を出してほしいとはいいません。せめていいアルバイト先だけでも紹介してほしい」」。いま大臣がおっしゃられた、アジア人の方々が、自分たちが差別的な観念を持っているといわれておりますけれども、それは中にはあるかもわかりませんけれども、それはあってはならないし、またわれわれもそうあってはならないということが何よりも大事だと思います。後段の大臣の御答弁で、こういう問題は向こうの人もそう思っているだろう、こっちの人もそう思っているのじゃないかというようなことが一つの間隙をつくっていっていることじゃないかと思う、そのこと自体が。だから、少なくともこの実態の様相というものを文部省みずからがアンケートをとって、そしてその民間でとったものと照らし合わしてみて、そしてどうであるかということを私はやるべきだと思うのです。どうなんですか。文部省としてのアンケートをとった実績等を伺いたいと思います。留学生の気持ちですね、生活環境、そういう一切のものをアンケートをとったことがあるかどうか。
  126. 木田宏

    政府委員木田宏君) 私どもは大学の留学生担当の関係者と年に定例でいろいろな会合を持ち、その留学生の考え方、または処遇のしかた等についての相談を重ねておるわけでございます。また、国費のみならず私費の学生もたくさんいることでございまして、そういう担当者の立場を通じまして実情の把握につとめております。五千名の学生全体について文部省が直接アンケートをとったということは最近にはまだないと思いますけれども、国費学生につきましては、かなりいろんな面からの実態の把握につとめておりまするし、私費学生につきましても、この両三年来、医療費の助成ということを全員に及ぼしたことによりまして、その学生の動向、実態をつかめていく、こういうよすがにもなっていることでございまするから、これらの点はなお今後も努力をしてまいりたいと考えます。
  127. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 私は、担当者と話し合っているから、担当者と通じ合っているからいいのだというような考えではなくして、より一歩、文部省としての実態調査というものは、これはやらなければいけないのじゃないかと思います。通産省がみずから物品に対して商社の実態調査、立ち入り調査、そういうようなことをやらなくて、つくられたパニックというような形も生じてきているというふうにもいわれている今日でございますし、当然文部省が、今日の長い間の二十年の間に、歴史の中に、こういうことをしていない、ただ聞くだけで、会合だけでそれを承知するということ、文章の上だけで承知をするというこの役人的な、官僚的な考えだけで留学生というものを見ようとすると、そこに冷遇に泣いている留学生の姿がわからない、こう私は言いたいわけなんです。少なくともこの荻田さんが今度発刊される本というものは私は非常に期待しております。相当な項目にわたりまして、この十二年間の経験をフリーに、関係者の方々が一年半もかかって、そしてこのアンケートを取りまとめたということは、これはみごとな私は成果だと思います。当然こういうことは政府自体がわかっていなければならない。総点検といいますと公明党は最も得意とするところでございますが、この留学生に対することは若干しかまだ手を伸ばしておりません、現在やっておりますけれども。一部調査したもので私はいま大臣関係方々に伺っているわけですが、実際問題として、この留学生の、意見はいいが、日本批判はいけないとか、あるいは規制を強化して口封じをしていくような印象を与えていくようなことでは私はならぬと思います。それから大学側のほうの受け入れ体制も、先ほどの局長の御答弁ではまだまだ満足のできない点が一ぱいございます。それを一つずつ例をあげてこれからもやりたいところなんですが、次の課題をまだ一ぱいかかえておりますので留学生問題をもう少し掘り下げていきたいと思いますけれども、割愛をしていきますが、いずれにしましても、この「留学生は何を望むか——あるアンケート調査から」というその一文をごらんになりましたかどうか、局長さん。
  128. 木田宏

    政府委員木田宏君) いま御指摘になっております新聞の記事も、まあおそらく御関係の新聞の記事、私も同じようなものを拝見したと思っております。そしてまた、そこに指摘されておりますようなことは、私ども留学生問題の担当者の間で、かなり関係者が強く意識している課題でございます。留学生のことはやはり留学生の日常の近回りで親身になって気持ちよく世話をしていくということがなければなかなか円滑に進んでいくものではございません。でございまするから、できるだけ、一文部省が直接にやれば事が済むということでは必ずしもございませんので、私どもも、世話団体であります日本国際教育協会、あるいはいろいろそれに御協力をいただく民間の方々、個々の大学には大学でまたその大学の中の体制と同時に、留学生のお世話を願うような有志の方々の集まり、そして財団でも、いま御指摘のございましたYWCAのほかに父母と学生の会、その他留学生の世話をいろいろとやってくださっております会合がございます。こういう方々のできるだけ総力をあげて、いい状態に持っていけるようにしたい。  しかし、そのことが、私はもう一つ蛇足のようで恐縮なんでございますが、日本の学生とことさら区別をするということにならないようにしたいと思います。処遇の問題もある程度の水準は考えなければいけませんけれども、日本の学生の生活の実態と考えて、あまりにもふぞろいなものであるということは、これまた考えてみなきゃならぬ点もあるわけでございます。できるだけ一緒に勉強できるというような状態をつくり出していくことがより望ましいことでございまするから、いろんな意味で努力を重ねなければなるまい、このように考えております。
  129. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 大臣、「日本に留学した東南アジアの学生は帰国後も反日感情をいだいている例が多い。タイの反日運動の中にもかつて日本で勉強した留学生が多数いるのではないでしょうか」、これはボランティア活動としての留学生の母親運動を進めている母親の調査の中で出ていることばなんです。いままでのやりとりで私は満足できませんけれども、こういうふうな点等を十二分に御考慮に入れて、いま局長答弁もありましたけれども、まだまだ真の意味日本に留学している留学生に接する日本政府のあり方というものは、もう一歩官僚というものを破っていくような形でなきゃならぬと思いますので、もう一度御意見を承って、この問題に終わりをつけたいと思います。
  130. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) いまおあげになりましたこと、私もたいへん心配をしているところでございます。いろんな方々からいろいろなことを聞いておりまして、たとえばアジアの留学生の世話をしている穂積五一さんという方がおられますが、この方がアジア地域を回りまして、留学生の帰国後の状況がどうだろうかということで各地で懇談会を持ったりもしておられるわけでございます。  この方が私にあげられました数点を申し上げますと、第一は、いまの差別の問題でございまして、第二番目には、日本人は口ではいいことを言うているけれども、どうも実行が伴わないということを言うという話も伺いました。第三には、経済協力と言うているけれども、どうも現地人を十分に働かせていない、経済侵略に類しているじゃないかというような式の批判もあるとか、あるいは、かつての戦争でたいへん迷惑をかけた、そういうことについての反省が足りないとか、悪い点を言いますと、そういう点が順次あがってくるようでございます。いずれも私たち深く反省をしていかなければならないところだというふうに思うわけでございまして、いい点もいろいろあるわけでございますけれども、悪い点をまず直さなければいけない。そういう意味において、広く実態を的確に客観的につかむ努力をなお一そう、いまお話もございますので、尽くしていきたい、かように考えます。
  131. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いま大臣の御答弁がありましたその三つのいろいろな、差別待遇とか、経済協力もしてないじゃないかとか、あるいは口はうまいことを言っても実際はやらないじゃないかというようなことも、私のお伺いする中にエコノミックアニマルの問題等もあったんですが、いずれにしましても、いまの御答弁で、今後の留学生の処遇というものに対して私は大きく期待をし、私たちも留学生というものをあたたかく、ともどもに学んでいくような立場で見詰めていきたいと思っております。大臣の御答弁にも期待をかけて、この問題についてはおしまいにします。  次は、午前中もちょっと触れられましたけれども、ユネスコの問題でございます。ユネスコのことにつきまして若干お伺いをしたいのでございますが、わが国の教育学術文化に関してはもう問題が山積をしていることは申し上げるまでもございません。いろいろな意味でこのユネスコ問題というものは重要な課題になることだけはいなめないと思うのでありますが、今回の日本ユネスコ国内委員会事務局を廃止して学術国際局ユネスコ国際部に移管するということにしておりますが、この事務局設置の経緯だとかいうようなことは、午前中の御答弁で大体了承をしておりますが、この点につきましては、国内委員会の中でもかなり反対をしていたということも私は聞いているんですが、この点についてはどうでしょうか。
  132. 木田宏

    政府委員木田宏君) 今回の機構改革につきましては、ユネスコ国内委員会委員の皆さまにも御相談をいたしまして、いろいろと御疑念のあった点は、これは当然のことではございまするけれども、しかし、今回の事柄につきましての趣旨は御了承をいただけた次第でございます。
  133. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 御了承いただいたのは、文部省に押し切られたからだという声もあるわけです。これは、私はその委員でございませんのでわかりませんから何とも申し上げられませんけれども、それはそれとして、この国際連合教育科学文化機関憲章の、いわゆるユネスコ憲章の第七条において国内協力団体についての規定をしていますが、これでユネスコ活動に関する機関が、独立性というものか、そういうものが何となく薄れていくんじゃないか、こんなように考えるんですがね。わが国のユネスコ国内委員会は、文部大臣所管のもとに置かれた一つ機関としては一応の独立性を保っているとも言えますが、大臣官房においてユネスコ活動に関する法令案だとか予算案等の準備、作成、その他配分等についての事務を所掌していることから、勢い文部省が中心に具体的な活動を行なうようになっていくんじゃないかというふうに思うわけですが、これが、ユネスコ国際部が内部部局に移管されるようになれば、先ほど申し上げましたように、独立性とか自主性、そういったものがそこなわれていくんじゃないか、ユネスコ憲章ほんとう趣旨に沿っていっているのかどうなのかということを、この一部意見を言われた方なんかは、この点を相当私は指摘したんじゃないかと思います。こういう点についてのお考えをひとつ承っておきたいと思います。
  134. 木田宏

    政府委員木田宏君) いわゆるユネスコ憲章の第七条に、国内協力機関として、いま御指摘がございました、それぞれの国に広く政府及び教育科学文化関係団体を代表する委員をもって構成する国内委員会ができることが望ましいというふうになっております。この国内委員会のでき方は、国によっていろいろでございまして、全く民間団体のような形で構成しておるものもございますれば、わが国のように政府のある一つ機関として位置づけられておるところもあるわけでございます。また、この国内委員会の世話をいたしますための事務局のあり方も、国によって午前中申し上げたようにいろいろでございます。わが国が戦後最初の国際機関への加盟としてユネスコに加盟いたしました際に、その世話のあり方、あるいは国内のこの協力機関をどういう位置づけでつくるかということにつきましては、当時文部省、外務省を中心にいたしまして、双方の協議があり、文部省の所轄のいわば内局とは違った一種の外の組織として国内委員会というものを構成して、その世話をする事務機構をそれ自体としてつくったということになっておるわけでございます。  で、文部省としては、いわば国立大学と同じような文部省の外の一つ組織という形でこれがつくられたものでございまするから、予算の扱いその他は今日のところまで官房を中心にして世話をする、こういうたてまえになっておるのでございます。しかし、午前中も申し上げましたように、これがユネスコとの関係で非常に大事な仕事をし、また国内関係団体教育科学文化のそれぞれの団体との間で鋭意連絡をとりながら、それを日本国内の施策に及ぼしていくという段になりますと、国内委員会事務局自体政府内局からははずれた別格にあります関係上、文部省としては、いままで同じ建物の中で、同じように気持ちの上では扱ってまいったわけでございますが、どうも日常の一般行政とのかみ合いがうまくいかない。そこで、国内委員会組織は従来どおりにして、日本国内教育科学文化の代表の方々に集まっていただいて、それらの意見をくみ上げる、そうして国際機関としてのユネスコとの間には国内委員会を中心に十分なパイプを通ずる。こういうふうにしながら、これを日本国内で施策として進めていきます場合には、内局課題として、これがユネスコ国内委員会のお考えのとおりに仕事が伸びていく、こういう体制をとりたいということになったわけでございます。いままでは文部省の外の機関ということでありました関係上、官房で世話をするということになっておりましたが、世話をするための独立体制もあったわけではございません。今回は、学術国際局ができます際に、そのユネスコ国内委員会考えております方向を日本教育文化政策として推進していけるだけの体制内局に整えたいということでございまするから、そういう点では、御心配のありました点は今後の実績でもって十分におこたえをすることができるものというふうに考えておる次第でございます。
  135. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いまお話がございましたが、当初、文部省にするか外務省にするかということでだいぶん論争もあった、論議もされたわけです、文部省所管ということになってきたのですけれども。そういう歴史的な考え方から見ていきましても、その当時からもう、外務省ということも、相当外務省の仕事の一環としていくべきじゃないかという面から、やはり国際ということになってくれば、その色が濃いようにも思えるわけです。いずれにしましても、実績を見てくれと、こういま局長も言われますので、見てもけっこうなんですが、何というのですか、日本ユネスコ国内委員会事務局が廃止されて、同事務学術国際局に移管されて、同局長が責任者となっていくと、従来の事務総長のこれは名称を用いていくようになってくるわけですね。そういうわけでございますね。何となく二局面があるような感じがしてならないのですが。もう一つは、先ほども申し上げましたように、対外的にいうと、日本機関というものは独立性、自主性が、まずいま局長のお話だと、内部を整えて、その整えたものの各機関ごとに出ていくというからいいんじゃないかというふうに私は受けとめたのですが、何となくその点が心配なんですがね。憲章自体の、本来の行き方というものが、文部省自体の権限の中に入れて動かしていこうというみたいな感じも受けるわけなんですが、その点、もう一度御説明願いたいと思うのでございますがね。
  136. 木田宏

    政府委員木田宏君) 憲章によりまして、国内委員会を設けろという趣旨は、ユネスコ教育科学文化のいろいろな諸活動を国際的に協力しながらやろうということでございますから、これはただ政府機関だけが国際的に手を結べばいいということではないのでございまして、芸術団体学術団体、それぞれが国際的に手をつないでいく、そういうことをユネスコは国際機関としてもまたバックアップをしていこう、だから、各加盟国国内におきますそういう文化団体、芸術団体学術団体等の組織を結集しながら、その意向が国内体制としても反映をするようにしてほしい、これが国内委員会をつくれということの趣旨でございます。そういう方向で文化学術教育に関する諸分野等々から適任の委員の方にお入りをいただいた国内委員会というものを、ユネスコ法をもってつくらしていただいているわけでございまして、この体制はひとつも変わらないわけでございます。で、その集まってきた意見をユネスコとの間で国際的に十分通じ合い、また日本国内において今度はどういうふうに行政課題として受けとめるかということを考えますと、これはどうしても教育学術文化を担当いたします文部省が、内局課題として、それらを実現していく努力を払わなければなりません。その意味では、むしろ内局事務機構が、その独立国内委員会のそうした発想、アイデア、お考え、そうしてまた関係団体との連絡の実態を生かして、行政事務に乗せるという意味におきまして、私どもは内局化したほうがよりその趣旨に沿うものだというふうに考えたのでございます。アメリカは国務省が国内委員会お世話をしております。韓国は民間団体がもう全部始めからしまいまで民間団体としての世話をしております。インドは文部事務次官が中心となりまして、文部省で扱っておりますし、タイは文部省の国際部が中心になりまして、その国内委員は民間団体方々のお集まりでありますが、そのお世話はやはり国際部の部長が責任者になって仕事をしておるというのが実情でございます。国々によってそれぞれその体制は異なっておりますが、国内委員会というものが自主的に民間団体の意見を結集しながらユネスコにつながっていくという体制はごうも変わっておりませんので、私は御心配ない、また、私どももその実績でお答えしなければならぬ、こう申し上げておる次第でございます。
  137. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 フランスだとかカナダの話は出ませんでしたけれども、フランスとかカナダなんかははっきり民間ベースなんですね。そうでございますね。それがほんとうの行き方に、このカナダやフランスの行き方にだんだんだんだんと方向はいっているのではないでしょうか、その点どうでしょうか。
  138. 木田宏

    政府委員木田宏君) 御指摘のように、フランスは非営利団体役所機構とは別に事務を処理しております。カナダは一応国の機関でございますけれども、かなり自主性の強い機関が世話をしているわけでございます。それぞれの国の事情があると思うのでございますが、私自身も個人的なことを申して恐縮でございますが、ユネスコ国内委員会仕事をさしていただいた経験がございまして、せっかくのユネスコの本部と、それから日本ユネスコ国内委員会との連絡、あるいはそのアイデアを国内教育学術文化の施策に反映させながら国際的な協力を進めていくという場合に、どうしても中間的な事務体制だけでは、何といいますか、国内団体の要請にもこたえられないし、国際機関ユネスコの要請にも的確にこたえられない、何か少し隔靴掻痒の感を感じておったのでございます。むしろわが国の国内仕事の進め方という点から考えますと、国際機関としてのユネスコ考えておりますことを日本側として受けとめていきますためには、国内委員会の指導を受けながら、具体的な行政課題として内局お世話をしていくほうが、私はその実効が期しやすいというふうにみずからの体験を通じて考えておるところなんでございます。国によりまして御指摘のようにいろいろなものがございまするから、どちらが抽象的に言っていいというふうにこれは言いがたいものがあろうかと思いますけれども、私どももこれまでの実態から見まして、今日まで大きくなってまいりましたユネスコ仕事を今後適切にさばいていく、このためにはOECDも同じようなことを考え、あるいはそのほかの二国間の国際協力の事業も同じようなことを考えたりしておりますので、そうした事務の処理の体制から考えてみまして、このほうがより改善される、こういうふうに考えておるところでございます。
  139. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 国内委員会に入った場合に、いろんな賛成とか反対とかいうようなことになってきて、いまのお話のようになってきて、私は心配されるのは、大臣が統制化していくようなことになってくると、これが心配されるんですけども、そういうことがいまの御答弁の中からあるようではたいへんだと思うんですが、その点どうなんですか。
  140. 木田宏

    政府委員木田宏君) ユネスコ国内委員会仕事につきましては、国内委員会の指示を受けまして学術国際局長ユネスコ事務総長としての仕事をするわけでございまして、その限りにつきましては、文部大臣からの個別の指示ということがあるわけではございません。文部大臣は一般的に自分所管一つ組織として国内委員会お世話をするというたてまえになっておりますが、国内委員会仕事そのものユネスコ法に書かれておるところでございますから、そのユネスコ法の規定によって国内委員会仕事をし、それを局長が一人二役のような形でございますけれども補佐していくということでございます。大臣が個別に国内委員会仕事をするということにはならないというふうに考えます。
  141. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 まあ、それはひとつ御答弁にありましたように、実績を見守っていくということになると思いますが、いずれにしろ、立場を変えまして、ユネスコ関係団体に補助金が出されておりますですね。で、今日まである面においては相当の成果をあげてきていることは、これはいなめない事実だと思います。そこで、その資料をいただきましたんですが、ユネスコのアジア文化センター、これ、四十六年から出発をして今日に至っております。それから東アジア文化研究センター、これ、四十五年からのデータでございますが、その前の分はありませんけれども、四十五年度から補助金がどのように出ておるかという資料もらったわけです。それから日本ユネスコ協会連盟、これも四十五年からの分をいただいておりますが、そこでお伺いしたいのは、最初に申し上げたユネスコ・アジア文化センター、四十六年当初でございますので、ある程度やむを得ないとしますけれども、四十九年度の予算が出ております。この予算から見ていきますと二三〇%の増になっているわけですね。それから四十八年から四十九年に関しては二〇%強の増でございますね。それから東アジア文化研究センターのほうは、四十五年度と四十九年度を比較しますと一一八%で、四十八年度から四十九年の比較しますと二九%の増、日本ユネスコ協会連盟のほうは四十六年度比が一四〇%の増ということ、四十八年から四十九年の増を見ますと三三%でございますが、これから感じることはアジア文化センターがものすごい勢いで増額をしてきているわけですね。従来からある日本ユネスコ協会連盟は長い歴史を持ちながら、伸び率だけで見ていって、予算の面だけでとやかくは言、えませんけれども、補助の姿から見てもちょっと私は納得できないものがあるのです。アジア文化センターの理事長は何という方ですか。私、資料もらっておりますけれども、いまちょっと見ませんけれども、どういう方ですか。それをあわせてひとついまの予算の状態の御説明を願います。
  142. 木田宏

    政府委員木田宏君) いま三つの団体をおあげになりました。日本ユネスコ協会連盟は、これは非常に古い団体でございまして、日本ユネスコに加盟をいたしますころから民間の自主的な団体として、国内におきますユネスコ運動を盛り立てるために構成された団体であります。昭和二十七年の四月九日に社団法人としての設立を見ておりまして、民間の立場に立ったユネスコ活動を推進するということで、ユネスコ運動、ユネスコ趣旨の普及啓蒙、こうしたことを長くやってきていただいております。で、この団体に対しましては、当初からその事務費の、事業費の一部につきまして補助を差し上げるということで進んできております。したがいまして、ユネスコ協会連盟そのものは自主的な予算をお持ちでございますが、その事務費の一部についてこうした予算を計上して、二分の一だったかと思いますけれども、補助をしておるということでございます。  ユネスコ東アジア文化研究センターは、昭和三十六年にパリのユネスコとの協議の上で、関連の機関として東アジア文化の研究を促進するためのセンターとして設けられたものでございまして、ユネスコからも当時かなりの資金が出、私どもも日本政府側の立場でこれに予算を計上してきたものでございます。で、これは学者等の研究成果をユネスコのチャネルに乗せて流通し合うという趣旨のものでございまして、財団法人東洋文庫に付置されたものでございます。そういう関係で必要な経費をこれに対して計上をいたしてまいりました。で、東南アジア文化に対します研究書、概説書等の刊行を、かなり貴重なものをこれまで出してきたわけでございまして、これは現在のところ東洋文庫の責任者であります辻直四郎先生が所長として差配を振っておられるわけでございます。  ユネスコ・アジア文化センターは昭和四十六年に、これもユネスコと協力をいたしましてアジア地域諸国の文化交流を促進するために、また伝統文化の保存、活用に協力するということのために設けられたものでありまして、設立の当初から、まあこの時期、日本がもっと積極的にアジア諸国のためにサービスをするべきだ、ひとつ大きなセンターとして育てようということで発足を見たものでございます。会長が高垣寅次郎氏でございまして、理事長は伊藤良二でございます。このユネスコ・アジア文化センターは、まあ積極的に日本側の姿勢を示そうということで、予算でこの経費のかなりの部分をカバーするというような補助をさしていただいております。そして今日までアジア十四ヵ国のために子供の本を、共通の読みものとして、絵を同じように使いながら、それぞれの国の子供に読ませるために、それぞれの国のことばで印刷をする、そうした便宜をはかりながら、文化の普及、交流をやっていこうといったような仕事もいたしておりまするし、インドネシアのボロブドールの仏跡の保存のための調査及び啓蒙、募金等の事業を国内で興していこうと、こういうような仕事もいたしております。それぞれまあ目的を持ってつくったものでございまするので、その経費の入れ方そのものが団体によりましてそれぞれ違っております。そんな関係で予算をお比べいただきました場合に、伸びが違うというようなこと等があろうかと思います。  以上で御説明に足りているかどうかわかりませんが、一応お答えにさしていただきます。
  143. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 それぞれの創設目的が違うから予算の配分も違うというふうにいま私は受けとめましたけれども、従来からある日ユ協ですか、日ユ協のほうの事業内容あるいはその事業形態、そういったものも私は存じております。私なりに存じておるつもりです。それからアジア文化センター、東アジア文化研究センター、これもヨーロッパの人たちが書いたものを中心にしていままでアジアというものの、何というんですか、アジアを知らせようとしたのを、今度はアジアの、日本を含めた東アジアの人たちによって、現地人の専門家で編成されて共同研究をしていくとか、出版を含めた、特に若い人たちの人的交流をしていきたいということを、東アジア文化研究センター方々は強力に進めていきたいということも承っております。そのアジア文化センターの点につきましては、先ほど答弁の中にありましたけれども、予算のかなりの部分が費やされているという点なんかも、悪いとは私は申し上げるのじゃございません。また、それをとやかく言うものじゃございませんけれども、もう少し私は実情を知らなきゃいけないんじゃないかということをこれから具体的な例をもって示してみたい。またその前に、先ほど御答弁がありました伊藤良二さんという方は元文部省の、ユネスコ事務総長をおやりになっておられたんじゃないでしょうか。非常にそんなようなところも勘ぐれば勘ぐれるようなものがあるみたいな、ないみたいな、あると思えるようなものがあるんですがね。  いずれにしましても、それはさておいて、そういうふうなおのおのの目的がありましょうけれども、実際、私は札幌でございますから、札幌方面でやっておりますのを一つの参考に申し上げてみたいと思うんですが、こういうことを御存じなはずだと思うんですが、ユネスコの婦人部の方々が中国語の勉強会なんかをおやりになって研究会等持っておられますが、全部これは自費でございますね。どこからも何も出ません。そういう形態でやっております。北海道では大体十地域ぐらいに分けてユネスコ関係連絡協議会が持たれているわけですがね。この北海道の場合なんか運営会員だとか維持会員という人たちがおいでになりまして、いろいろその人たちが、六十八名なんですが、これを維持するわけです。ですから、これをまた運営していくということで、その人たちが、寄付の行為によって大体まかなわれているということと、それから会員の人たちが一人一年間に約千五百円ですか、その会費を納めていることが、北海道のユネスコ連絡協議会のまあ全部じゃございませんけれども、一部ございましてね。この方々活動というのはほとんどが、このいま申し上げた寄付行為によるもの、自分たちの納めた会費によるもの、これによって運営をされているわけです。それに対しての助成なんというものは、申告をしまして——東京日ユ協のほうに、大会なんかやる場合には申請をして、費用の一部を見てもらっているような形だと思うんですが、いずれにしましても、すばらしい活躍をやっているんですが、行き詰まってくるのはどうしてもお金の問題になってくるわけです。こういう点からこう考えてみまして、先ほどの予算措置のほうをずっと見てみましても、これはほんとうに全国各地域の、あれはたしか百幾つでしたか、百七十ぐらいありましたかね、そういう団体が。ちょっと私数字を忘れましたけれども。それらの方々のやっておられる苦労の内容というものを御存じでございますか。
  144. 木田宏

    政府委員木田宏君) ちょっと私いま直接の担当政府委員でございませんので、いま最後のお尋ねのように、現在の実情をおまえ知っておるかというふうに言われますと、ちょっと私からお答え申し上げるのはいかがかと思うのでございますが、いま御指摘がございましたように、ユネスコ協会連盟は百五十六団体、各地にあります百五十六のユネスコ、まあいろいろな、協会と言っておりましたり名称いろいろでございますが、その協会をもって構成した連合体ユネスコ協会連盟でございます。ユネスコ国内委員会はこの連合体の協会連盟に対しまして、その事業に当初から若干の御援助を申し上げるということでまいりましたけれども、先ほどもお答え申し上げましたように、このユネスコ運動というものをちょうどライオンズクラブやロータリークラブと同じように、民間有識者の自主的な団体の高まりとして構成していく、こういうことで発足もし、進め、普及もはかってまいりました関係上、その中央にあります連盟の事業に対して何がしかの援助は事業費として申し上げたわけでございますが、個々の構成団体のいろいろな自主的な活動に対しまして政府からの金が出るというような立場、たてまえには今日まだなってございません。で、地域によりましては、その所在の府県あるいは都市等から、社会教育団体一つとしてユネスコ協会その他に補助が出ておるという話は聞いてございます。しかし、御指摘のように、これらがなかなか自主的な日本団体として活発な活動をするには資金の問題があることは十分に想像できることでございまするし、私自身もかつての経験から見まして、いろいろな御苦心があるということは、その当時も感じたことでございました。
  145. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 四十九年度の予算を見ましてもまことにお粗末なんですね。いまあらゆるものが高騰している中、そういう点からも考えてみて、何一つやるにしても高物価の中に動いていかなければなりませんし、それだけの団体をかかえているとすれば相当身銭を切っているんじゃないかと私は思うんです。これは一日本ユネスコ協会連盟ばかりじゃないと思うんです。東アジア文化研究センターもそうじゃないかと思います。これはまた、その実態をまだ私は調べておりませんから何とも言えませんけれども、相当のものが出ていると思うんです。お話にもありましたように維持運営はそれぞれの団体がやって、各地域のところから寄付もあるだろうということでありますが、その程度じゃなくて、国際的な働きをやり、また日本的な文化活動教育関係や一切の国民生活の中に入ってやっている、ほんとうに頭の下がるどころじゃなくて実によくやっておる。少しでも手助けしてあげようかというわれわれは気持ちにもなっておりますけれども、もっと下部の姿というものを、実際運動をやっておられる下部の人たちというものをよく研究なさって、実態を把握なさることが——私は今度のユネスコ国内委員会等の問題につきましても、この実態をわかってからこの運営というものがはかられていかなきゃいけないと思うんです。ただ、局を分けてつくりましたじゃなくて、つくったんなら、今度はその下の底辺からどういうふうな組織形態で各民間団体ができているんだろうかということ、天下りのものじゃなくて、下からできているその姿、下で一番苦しんでいる人たちの——実際働いているのは下の人たちが働いているんです。特に婦人団体など、中の婦人部の方々なんかは実によくやっている。こういう実情というものを見ながら予算の振り当てにしても何にしましても、活動の面におきましても十分に考えていかなきゃならないと思うわけなんです。この点について大臣にひとつ御答弁を、予算上の問題で、ユネスコという民間団体のやっている人たちの理解を私はこう持っているから、こう予算をつけていきたい、こんなふうな御答弁をひとつ期待をします。
  146. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 午前中、鈴木さんからも御懸念を持ったお尋ねがございました。その際にもお答え申し上げたんですけれども、国内委員会メンバー、社会的に高く評価されている方々ばかりでございますだけに、それだけに国内委員会で御決定になったことを実施に移すについて文部省が従来よりももっと大きな力で動く、努力できるんじゃないでしょうかと、こう申し上げたところでございまして、また、そういう姿勢で私としては努力をしていきたい、かようにお答えしたところでございまして、国内委員会独立の手足を持っておったほうが自由濶達に動けるという見方もございますけれども、やはり反面それだけに微力であることも見のがせないと思うわけでございます。国内委員会が自主的に積極的な活動をしていただくということ、これは非常に重要なことでございますので、それに妨げにならないような配慮のもとに、手足になる点につきましては従来以上の力をもって当たりたいという決意でまいりたいと、かように考えております。
  147. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 文部省当局のほうから「昭和四十八年度国と地方の文教予算」という、こういう書類が出ておりますね。この中にも「ユネスコ技術援助専門家の派遣」とかいうふうなことがうたってあります。ずっとこの報告書を見てみましても、おくれていることはずいぶんなんです。いま大臣の御答弁にもありましたように、非常にこれはおくれているんです。日本が国際レベルに立ち向かうのはまだだいぶおくれているのじゃなかろうかと思うんです。ある面においては進んでいる点もあるとは思いますけれども、いずれにしろ、ここを見ましても、「日本人職員の数は、諸外国に比べてきわめて少数である。」ということですけれども、特に「きわめて」ということをいってあるわけなんです。私は字句で取り上げて云々するのじゃございませんけれども、いままでの実績から、実情から、民間団体のやっていることは、末端の人は自費で全部やっておるわけです。会議や会合で何かやるとすぐ全部自分のふところで払ってやっておる。そして少しでも日本国家のためあるいは世界の平和を築く人類のためにといってやっている活動ですね、そういうふうな実態を私はもう一度この新しい局ができたときに見きわめるべきだと思うわけです。この点もう一本申し上げて——まだ一ぱいあります。これを中心にしてまだまだ一ぱいユネスコ問題が私の調査した中にもございますけれども、このくらいにユネスコ問題はやめて、この次には、大学問題に今度は入っていきますけれども、いまのお考えをひとつ伺っておきたいと思います。
  148. 木田宏

    政府委員木田宏君) 国際機関活動日本専門家が必ずしも十分に参加してないということは御指摘のとおりでございまして、今日パリのユネスコ本部に千人ほどおりますその専門職の中で、日本人は二十名でございますから、二%にすぎません。しかし、これでもう他の国際機関に比べるとわりに入っているほうだという状況でございます。それほど多くの国際機関を通じまして日本関係者が国際舞台に活躍をしておるということは少なうございます。予算で御指摘がございましたユネスコ技術専門家の派遣等につきましても、もっともっと積極的な参加ができるようにしなければなりません。それはただ予算だけの問題でございませんで、留学生と同じような専門家を取り巻く日本のいろんな制度上の制約等もございまして、一気に思うにまかせませんけれども、私ども今回新たな学術国際局をつくりまして、文部省国際関係というものをユネスコのみならずOECDにつきましても、あるいは他の二国間の国際協力その他につきましても積極的に仕事をまとめて進めていくという姿勢でございますので、御指摘のありました点は十分肝に銘じて今後に当たりたいというふうに考えます。
  149. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 時間も大体約束の時間が来ておりますが、まだどうしてもやらなければならない問題があるんです。で、まだ二時間ぐらいかかりますが、いかがしたらよろしゅうございましょうか、委員長
  150. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  151. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記を起こしてください。
  152. 中村利次

    ○中村利次君 本法案は、本部省の中に大学学術局があったのを、大学等の増設と教育水準の向上、大学入学者選抜制度の改善等々たくさんの課題があるし、また学術研究の振興、あるいは国際化時代に対応した教育学術及び文化の国際交流等々、これにもまた喫緊のたくさんの課題がある、したがって、大学局及び学術国際局に分離をして前向きの当を得た対処のしかたをしようと、こういうことで本法案が提出されたと受け取ってよろしゅうございますか。
  153. 木田宏

    政府委員木田宏君) そのように考えております。
  154. 中村利次

    ○中村利次君 そのように受け取って、それなりの私は評価の上に立って質問をしたいと思います。  これは教育制度そのものには中・高校・大学、いろんな課題があることは、もうこれ、いままで指摘され続けてきたところですね。だからこそ誤りのない対応をしようというのでこういう設置法の一部を改正しようとなさるということでありますから、大いに私は期待をいたしますけれども、これは本院の決算委員会でも、たとえば医学部の寄付、まあ過大なんてものじゃないんです。三千万をこえるような寄付によって入学を許可するというまことにどうも好ましくない事態が指摘をされ、それからこの入学試験制度等についても、大臣から、試験の正解を公表するような手だてをいろいろ検討したいと、こういうような御答弁もあったようです。これは何も医学部の関係のみでなく、私学の大部分は各学部ともにやはり寄付によって入学をするという状態がありますね。大体こういう状態は、その原因は何かと、やはり誤りのない対処をするためには、この原因を正しく追及をして正しい把握をするという、その上に立ってはじめて正当な対応ができると思うんですが、これはどういうところに原因があるのか、どういうぐあいにお考えでしょう。
  155. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 医学、歯学教育につきましては、ばく大な経費がかかるということが根本だろうと思います。戦前にも私学があったわけでございますけれども、当時は相当な寄付も比較的求めやすかった。いま個人でばく大な寄付をすることはかなり困難になっているのじゃないかと思います。同時にまた、戦前は病院経営が医学、歯学の経費に対して援助できたと思うんでございますけれども、いまは逆になっていると思います。いずれにいたしましても、認可申請にあたりましては、そんな寄付金をもらわなければやっていけないような姿はどこにもないわけであります。ところが、認可いたしますと、いま御指摘のありますような事態が現実に発生を見ているわけでございます。いろいろ調べてまいりますと、認可を受けた直後にさらに施設の整備をお考えになる、その金はやはり寄付金に財源を求められるという姿も多いようでございます。同時にまた、大学としては今後六年間にどれだけ経費を必要とするか、それを入学金や援業料でまかなっていくというとばく大な金額にのぼってくるものですから、いろいろな批判が起こってくる。そうなると、それを頭に置いてひとつ寄付をいただけませんかというような話になってくるようでございます。で、こういうようなことを考えますと、やはり根本的には医学、歯学のような教育は国みずからが担当していくということでなければならないのじゃないだろうかと、かように考えるわけでございまして、私は昨年来、私学で医学、歯学を設けたいといわれる向きに対しては、慎重な扱いをしなさいと、認可しないと言うとちょっとことばは悪いわけでございますので、慎重にしなさいと、反面、国公立を積極的につくっていこうじゃないかということで従来の方向を変更させていただいたということでございます。
  156. 中村利次

    ○中村利次君 医学、歯学のみにかかわらず、私立大学の中では、寄付金によってはこれはもう入学の許可はしないというところもありますね。寄付金では入学させないというところもあるんです。ありますけれども、相当の私立大学はやはり寄付金を仰いで入学をさせるというところがあることもこれはまた否定できません。相当あります。ですから、いま大臣の御答弁では、まあ相当な費用がかかる、これは私は否定しない、そのとおりだと思うのですね。やはりその概念というか、私学とは何だというのは、私は戦前あるいは戦後の一時期、現代、時代の推移とともにたいへんに変わってきていると思うのですね。確かに自分たちが学校をつくって、自分たちの子弟を中心として金も出そうと、まあわれわれの子弟にいい教育をやってくれと、それが私学であるという、そういう見方の時代もあったと思いますよ。しかし、いまはですね、これはまあたいへんに様相が変わってまいりまして、たとえば高校進学率なんかも、ことしあたりはおそらく九〇%をこえるのじゃないですか、全国平均で。大学に対する進学率もおそらく三分の一あるいは三分の一をこえるというようなたいへんなピッチでここ数年間進学率がふえてきておって、憲法、教育法、教育機会均等等々の問題が、狭き門からいろいろなその課題が消化しきれないぐらい出てきておると思うのですね。そういうときに、やはりこの寄付による入学というのが、歯学、医学のみでなくて、全体的な問題としてどう取り上げられるか、その原因がどこにあり、これに対する対処はどうあるべきか、こういうものは文部省にあるのかないのか、お伺いをしたいと思います。
  157. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 入学を条件とするような寄付金はやめてくださいと、これは強く文部省として各大学に申し上げてまいってきておるわけでございます。とは言いながらも、医学、歯学を見ていきますと、私は実質的にはそのきらいが多分にあるじゃないかと、こういうまあ判断をしてお答えを申し上げてきたつもりでございます。全く自発的な寄付金、これはもうたいへんありがたいことでございまして、多々ますます弁ずると、こう申し上げていいと思うのでございます。問題は入学試験、合格、それにからんで寄付金を出してもらう、ここにまあ問題がございますので、これについては厳にやめてもらうように、どうしても必要なものなら、そういう方法をとらないで、入学金、授業料の額を引き上げていただけぬものだろうかと、こうまで思っておるところでございます。そういうこともございますので、医学、歯学につきましては、従来は設置後七年目から経常費助成をしておったわけであります。要するに完成を待ってから初めて経常費助成をする。それを、金のかかることでございますので、医学、歯学に限っては初年度から経常費助成をするというふうに四十九年度からはさせていただくわけでございます。財政援助を初年度からやりますから入学にあたってばく大な寄付金をもらうようなことは避けてくださいよ、こういう気持ちでございます。同時に、できる限り表に出してくださいよ、必要な場合には。それについては、そのかわり大学自身が奨学制度をつくって、家庭の事情によっては毎月十万円ずつ奨学金を貸与していくんだという方法をおとりになってもいいじゃありませんか、その資金は国のほうから提供しますよ、また奨学制度を運用していく場合の事務費も国のほうから差し上げますよ、その資金は、在学中は無利子、卒業後は三分以内、そういう条件の資金を提供しますよと、大学がさらにそれ以上に金をくめんしまして、よりよい条件を私は与えてもいいんじゃないかと思うんでございますが、国から差し上げる資金はいま申し上げましたような条件で運用できる資金を貸していきたい、こういうことを四十九年度から始めるわけでございます。そういうことを通じて、歯学、医学につきまして、できる限り負担の荷を軽くしてあげたい。同時にまた、表に出そうと思えば表に出せる、家庭の状況によっては奨学金を貸与できるじゃないか、そういう奨学金制度が運用できるように、国が資金をお貸しするんだし、また事務費もめんどうを見ていくんです、こういう態度をとらしていただきたい、かように考えているわけであります。しかし、根本的には国が積極的に医学、歯学をつくっていくことだということで、たいへん数多くの国立医科大学あるいは歯学部をつくらしていただくという計画をすでに立ててまいっておるところでございます。
  158. 中村利次

    ○中村利次君 大臣の御答弁と私の質問が残念ながらなかなかかみ合わないようですけれども、私は、医学、歯学の問題は、確かに四十九年度から相当のやっぱり補助金等をおやりになる、これは前進であって評価をしますよ。しかし、それでもなおかつ私はこういう寄付金を求めなければならないというものが解消できるとは思いませんけれども、これはまた四十九年度のみでなく、もうこの国会のあらゆる場で、これは大臣はずいぶん耳にたこができるほどお聞きになっていると思いますけれども、医師だけではなくて、医療担当者の養成はこれはいまたいへんなんだから、人が足りなくて、国費によってやるべきではないかとかなんとかという議論がたくさんあります。しかし、それに加えて私がやっぱり問題としておりますのは、一般のやはり文科系統——理工系統だけではなくて、文科系統の私立大学ですら相当のやはり寄付行為というものはあるんです。ですから、進学希望者が非常に多くなって大学が狭き門になっておるから、いろいろ金がかかり過ぎて、基本的には、教育とは一体何なんだというところまで、その原点に返ることになりますけれども、優秀な子弟が多額の入学金あるいは親に寄付の余裕がないということで入学できない。しかし、そんなのは試験でもって堂堂と入学すればいいじゃないかという御議論もありましょうけれども、しかし、比較をして、多額の寄付をすると入学できる、あるいは寄付をしなければ入学しにくいというそういう問題について、これは国が助成金をうんと出せば一発で解決する問題ですけれども、やっぱり対応策、こういう大学局というものをつくってきわめて多様化する多くの課題に対処をしようというのがこの法案の御提出の目的であるはずでありますから、したがって、そういうことをお伺いをしているわけなんです。  それからもう一つ、続いて第二点目は、これは特に理工学部の関係では、卒業したあと国家試験なんというものがありますね。医師だってこれは国家試験が要る。あるいは建築でも、これは一級建築士——建築士の国家試験がある、あるいは電気では電気の主任技術者の国家試験がある、あるいは、海事職では航海士あるいは船長あるいは機関士、機関長、こういう国家試験がありますね。国家試験に合格をしなければ学校を卒業しても職業人になれないものもありますし、職業人になるのに国家試験に合格しなくてもいいものもありますけれども、いろいろありますけれどもね。寄付行為によって入学をしたと、どういう教育をするのか知りませんけれども、たとえば医師の国家試験なんか、これは国家試験に合格しなければ医師になれないわけですけれども、私は寡聞にして、国家試験に不合格で医師になりそこなったということを聞いたことがないんですがね。そういう寄付行為と国家試験、こういう関連は何も医師、歯科医師のみでなく海事職にもある、一般の工学部関係にもある。こういうことの関連も含めて、どんなものでしょう、これは。はたしてこれでいいのかという疑問が私は相当にあるんです。
  159. 木田宏

    政府委員木田宏君) いま御指摘になりました最初の第一点は、これからの日本の高等教育全体をどういうふうに考え、どういうふうに対処していくかという基本問題を御指摘になっている点かと思うのでございます。ちょうど一年半前から、日本の高等教育全体の姿とそのあり方を高等教育懇談会という場を通じまして、大学関係者はもとよりいろんな関係者に御論議をいただいていま進めております。お話がございましたように、わが国の大学進学率も年とともに高まっていくこの現実は否定できませんので、そのことを受けながら、しかし、ただふえればいいというものでございませんから、将来の大学をどういうふうにつくっていったらいいか、その際の国公私立のあり方をどういうふうに考えていったらいいか、経費の負担関係をどう考えていったらいいか、それらについてはいま鋭意懇談会で論議を進めていただいておりまするし、また一方、特に御指摘がありました私立大学のいろんな多額の納付金の問題その他の改善策についてどういう姿勢をとるべきかということにつきましても、別に私立大学の懇談会を設けまして検討を急いでいただいておるところでございます。まあそうした全般の方策、それから日本大学の地域的な配置のこともございましょう、そうしたもの、あるいは専門分野別のいろんな整備のしかた、こういうようなことも考えながら、御指摘がありました点についてはおこたえをしていかなければならぬ、こう考えておるところでございます。  第二点の、それにしても多額の寄付を求められて入って、また卒業してから国家試験を受けなきゃならぬと、国家試験との関係はどういうことだという御指摘かと思うのでございますが、今日このように高等教育がかなり一般的に普及してまいりますと、特定の専門職種に必要とする資格は、それぞれの立場から国家試験があるということはこれまたやむを得ないところだと、で、試験の職種によりましては、たとえば船員その他のことをおあげになりましたが、海技免許状等につきましては、大学あるいは学校——高等学校におきます学習内容と結び合わせて一定の資格にすぐつながるという中身のものもございます。と同時に、医師の国家試験のように、医学部を出ることが受験の基礎資格になるというようなつながりのものもございます。これはやはりそれぞれの資格制度との関連でいままできめられてきておることでございますし、大かたの方向は、高等教育が普及すればするほど、各部面におきます国家的な資格試験は、それぞれのお立場で実施をしていくというようなからみのほうがふえるという面も考えておかなきゃなるまいかというふうに思うのでございます。大学へ入って、大学を卒業すればそのまま資格が取れるということも、必要な面もございますけれども、必ずしもそれだけで足りると考えられません。これはやはり飛行機の免許であるとか、いろんな資格によって別途考えなきゃならぬことだと思いますから、二番目のお尋ねに対しましては、いろんな態様があり得るということでお答えを申し上げたいと思う次第でございます。
  160. 中村利次

    ○中村利次君 これは、一番目のお答えも私は納得のできる答えでありますし、二番目は同じなんですよ。私は、国家試験を、国家試験そのものに対して批判的ではなくて、質問の焦点は、多額の寄付でとにかく入学をする。入学をして、これは単位もありますけれども、とにかく多額な寄付をしなければ入学できない人が、大学の数年間の課題で、国家試験を、寄付なしで実力で合格できるような人と、そろって全員まさに漏れなく国家試験に合格できるという、そういう教育そのものがはたして、これはメスを入れると言ったらどぎつくなりますけれども、いいのかどうか。そうなると、とにかく教育とは何であり、国家試験とは何であるかというところまでやっぱり言及するようなことになるんですよ。ですから、そういう意味ですから、いまの局長の基本的なお考えと私は違うんじゃなくて、国家試験なんかは要らないんじゃないかという意見ではなくて、むしろ逆に、たいへん憂えるものがある、そういう点についての何らかのやっぱり御意見があるのか、ないのかという質問でした。  それから第一点で、たいへん納得のできる御答弁でありましたから、続けてお伺いしますけれども、そういう作業、これはそうぴたりのあれはできないでしょうけれども、大体いつごろまでに結論をお出しになるのか、お伺いしたい。
  161. 木田宏

    政府委員木田宏君) 第一点につきましては、最終的な結論ということよりも、あるまとまった部分だけ逐次皆さんの御意見を聞くように固めていただきたいというふうにお願いをしておりまして、この三月末を目途に一応の成案をまとめつつあります。しかし、それが全部というわけではございませんから、引き続きまた来年もさらに検討を深めるというような心づもりでおります。また、私学関係につきましては——失礼、ことしの三月でございますね。私学関係につきましては、ことしの夏前までに一応の見解がまとまるということで、関係者がつとめておるところでございます。  第二点は、私、お尋ねを取り違えておりまして恐縮いたしましたが、医師でございますと、従来受験者の九七、八%まで合格をしておった時期があった。最近、まあこれはいろいろな事情があろうかと思いますが、九〇%近くにその合格率が少し落ちてきております。獣医師の関係その他はまた別の合格率がございまして、これはそれぞれの試験問題を御担当の省庁を中心に進めておられることであろうかと思うのでございますが、たいへんこれは不謹慎な言い方になるのかもしれませんけれども、やっぱり医学部その他は、入ってきた学生が全員合格できるようにそれぞれの関係者、教官は努力をしておるようでございます。ですから、少し入学のときに勉強の足りなかった者に対しては、それだけ在学期間中手をかけて指導するんだというような話もございまして、まあ入るときに少しなまけておったから、先になってもやっぱりなまけているとだけは言えない面もあろうかと思ったりもいたします。そういう点で、受けとめました大学の教官たちは、やっぱり自分たちの育てた子供たちがそれぞれ目前の資格試験に対しては全員合格するようにめんどう見ていきたいという気持ちを持っているということは、ちょっとお答えさしていただけるのではないかと思います。
  162. 中村利次

    ○中村利次君 わかりました。  なお、重ねて私は要望しておきますけれども、これはぜひとも、第一の問題についても、第二の問題についても、この法案提出の精神にのっとって、積極的なひとつ御努力を期待をしたいと思います。  やはり歯科、医科というのは、これは医科なんかは大事なやっぱりかけがえのない人間の健康、人命をあずかるものですから、したがって適応性のある——これはまあいまの医療報酬制度にも、これも大いに議論のあるところで、問題ありましょう。どんな名医でも、あるいはこう言っちゃ失礼ですけれども、やぶ医者でも、点数制によって同じであるという、こういういろいろなまだ解決しなければならない課題もありましょうけれども、しかし、やはりかけがえのない人間の健康と生命に関係する天職でありますから、したがって、やはり適性豊かな人材をどう求めるのか。ですから、私は非常にこれは暴論みたいかもしれませんけれども、寄付のできることを、そういうやはり社会的に貢献する意味での寄付行為なんというのは、これは私は否定する必要はないと思うんだけれども、入学の条件としての寄付行為というのは、やっぱり適性者が選べないとは言わないまでも、選びにくいという、こういうものにつながっていくと、これは国家、社会にとってもえらい重大な問題であろうと思いますので、そういう点も含めて今後の御努力を要望しておきたいと思います。  同じやはりこれは教育機会均等の問題ですけれども、第二部といいますか、夜間学部、これが国公立の場合には非常に少なくて、そしてそれが大都市に偏在をしておるという事態にあるようでございますけれども、もしそこでおわかりでしたら——そこへ資料をお持ちにならない、あるいは御記憶がなければけっこうです。大体の概略などでもけっこうですが、どういうことになっておるか。
  163. 木田宏

    政府委員木田宏君) 御指摘のように、国公立の大学で夜間を開設しているところは必ずしも多いわけではございません。大学で申し上げますと、国立九校、公立五校でございまして、それに対して私学は四十八校、夜間のコースを持っておるわけでございます。在学者数で比べましても、私学が十二万三千人近いのに対しまして、国立が五千六百、公立が三千という状態でございます。国立は、短期大学につきましてはほとんどが夜間でございまして、二十一校ほど持っております。在学者が八千七百ございますし、公立は十校ほどございまして、短期大学では十校、二千名、私立は八十一校ほどございまして一万四千名ということでございますから、短期大学について見ますならば、国立もかなりたくさんの夜間を持っておるわけでございます。ただ、総じて見まして、この夜間の大学というものがほんとうにその目的に即した教育形態になっておるかという点につきましては、私どももいろいろと考えてみなきゃならぬということを感じておるのでございます。いい大学の夜間ほど昼の学部の予備的なものになってしまいまして、決して勤労者という趣旨に合致したような学生の入学状況にならない。こういう点をどういうふうに考えていったらいいかというのは、今日数は少のうございますが、国立におきましても夜間をかかえている大学のたいへん大きな検討課題でございます。これらは、いまお尋ねがございました趣旨に私ども何とか合うようなものにしなければならぬというふうに思ったりいたしておるんでございますが、今日必ずしも的確な方向づけをどうも持ち合わしておりませんものですから、積極的に夜間を拡大するというような方途もいまのところあまり進めてはございません。  ただ、いま私どもが努力をいたしておりますのは、いわゆる放送大学といわれているものでございまするけれども、時間、場所、年齢を問わずに勉強できる、そうした意味での大学を、ひとつ放送なども使いながら新たな観点から設けることによって、御指摘のような課題にこたえるということをやってみたいというふうに思っておりまして、これは予算も計上して鋭意努力をいたしておるところでございます。
  164. 中村利次

    ○中村利次君 これも多くの課題があるわけでありますけれども、やはり検討課題として、先ほど質問したものも含めて、これは大きな目で見りゃその中に含まれるわけですけれども、相当積極的な検討課題とされているようでありますから、私はそれに期待をして次に進みます。  大学の前に、やはりたいへんに進学希望、高校進学なんかでも九割をこすというようなあれになりまして、親御さんたちはたいへんなようでして、塾に通わせて、何だかんだとえらい——。そして進学の何といいますか、進学校選び、こういうこともこれはやっぱりいまのたいへんな問題になっている。そこで、学校教育法の施行規則によりますと、中高校に進路指導主事というものですね、  「教諭をもつて、これにあてる」と、こういうことになっておるようでありますけれども、これは現状ではなかなかどうも質量ともに十分ではないといわれておりますが、この養成について、どういうぐあいな御計画がおありか。
  165. 奥田真丈

    政府委員(奥田真丈君) 御指摘のように、学校教育法には、進路指導主事でございますが、進路指導主事を置くことになっております。しかし、現状におきましては、まだ全部の学校に置かれている現状ではございません。文部省のほうでは、職業教育課というところがございまして、そこで特に進路指導をどのように振興するかと、こういうことにつきまして、研究会並びに進路指導を行なう上の手引き書あるいは講習会、こういうものを開催いたしまして、進路指導担当の教師の現職教育あるいはそれの振興のための方策をいま鋭意進めておる段階でございます。
  166. 中村利次

    ○中村利次君 これは私はやっぱりある意味では——というのが当たらないくらい、たいへん重要な役割りを持っておると思いますね。同時にまた、これはたいへん、何といいますか、専門的な知識とやはり経験がないと、なかなか適切な進路指導というものはできにくいんじゃないかと思うんですが、この進路指導主事について、これを養成するための専門的な教育機関等、そういう対策を講じられるお考えがあるかどうか承りたいと思います。
  167. 木田宏

    政府委員木田宏君) 進路指導主事は、先ほど奥田審議官からもお答え申し上げましたように、一応教諭をもって充てるということになっております。そこで、教員の養成の課程の中で、進路指導その他につきましても必要な勉強をしておかなければならぬ、これは免許法の規定によりまして、そういう履修内容として課しておるわけでございます。しかし、それだけで足りておるかということになりますと、御指摘のように、まだ残念ながら、わが国で本格的なガイダンスができるような専門家の養成ということには、ちょっといってないというふうに申し上げたほうが実情ではないかというふうに考えております。今後の課題だとは思いますけれども、私どもはしかし、現在のたてまえが教諭をもって充てるということでございますから、その教員養成の課程の中でそういうことをやりながら、さらにまた在職者に対しましていろいろな講習を及ぼしていく、そしてその問題についての力量を高めていくということをやっておる次第でございます。
  168. 中村利次

    ○中村利次君 そうしますと、あれですか、教師の養成機関で、科目としてそういうものを必ず必須にさせるということはこれはいいことだと思うんです。ただ、これはあくまでも、申し上げましたように、経験と知識、これは専門的な知識それから適応性というのが私は求められると思うんですね。ですから、実際に教諭になって、その中から私はおそらくそれに適した人を進路指導主事としてあれされておると思うんですよ。ですから、研修等万全の措置を講じられておるのかどうか。研修等をやっておるということですけれども、何かそれについて、いま一段とこういう対策をもっていくんだというものがあるかどうか伺いたい。
  169. 奥田真丈

    政府委員(奥田真丈君) 進路指導の重要性につきましては、御指示のとおり、私どもも非常に強く感じておりまして、昨年度進路指導の実態調査を全国的規模で実施いたしまして、その実情等も押え、どこに問題があるかということ等も明瞭にいたしまして、それを解決するべくいまいろいろな策を考えておる段階でございますが、特に現職の教諭に進路指導の機能を十分果たさせるために、進路指導研修会あるいは講習会という名前ですか、これを全国的にブロックに分けまして、これは例年実施しておるものでございます。それからその際に問題になった事項等を解明する手引き書あるいは指導書あるいは指導資料、こういうものも文部省のほうで刊行いたしまして先生方に入手しやすいようにいたしております。なお、いろいろな問題の解明につきましては、今後一そう検討を加え、改善、実施していく、こういう考えでございます。
  170. 中村利次

    ○中村利次君 これはやっぱり大事な役割りだと思いますし、ひとつそういう専門研修というんですか、専門教育というんですか、そういうものに万全を期していただきたいと思うんです。  それから教師養成課程で憲法を必須科目から選択科目にしたということで、これがまあ論議を呼んで、何か次官通達か局長通達で処理をされたと、こういうことを承っておるんですが、これはどういうことになっておるんですか。
  171. 木田宏

    政府委員木田宏君) 実は、昨年の国会教育職員免許法の一部改正お願いを申し上げまして、免許法の一部改正が行なわれたのでございます。それはどういうことであったかと申しますと、その一部改正の中に、従来教育職員としての免許を取りますためには、大学で一般教育科目として三十六単位履修しなければならない、それから教職の専門科目としてはそれぞれ何単位ずつ取らなければならないというふうに、教職の専門科目以外に、一般の大学の、一般教育の必要単位数を書いておったのでございます。ところが、そのときにも御説明申し上げたんでございますが、一般教育というのは、すべての専門の学生を一緒に扱って行なっておるものでございまして、しかもこの一般教育のあり方は、いろんな専門領域に即して弾力的に考えていかなければならない、こういうことが昭和三十年代の後半から大学関係者の間で高まってまいりました。そこで、教育職員免許法では、教員としての専門職種の履修内容を規定することにいたしまして、一般教育大学のあらゆる専門領域を通じた共通の一般教育の規定でそれにゆだねていただこう、こういうことで、免許法の本文から、一般教育の単位の取り方を全部大学に一任するという形で落としていただいたのでございます。これは個々の大学がいろんな専門の学生を指導していきます場合に、そのほうがやりやすいであろうという大学立場考えてやったことでございました。  そこで、実はこの免許法の施行規則で、従来の免許法を受けまして、一般教育三十六単位取るときに憲法二単位は忘れるなということが書いてあったわけでございますが、これがそっくりその大学の判断にゆだねるということになりました関係上、今度は憲法を取らなくてもいいんではないかという御心配が出たのでございます。一般教育におきまして、当時、国立大学でも二、三調べたんでございますが、ほぼ九〇%前後の学生がやはり憲法の勉強をいたしております。ですから、大学の指導にゆだねましても、そのことによって憲法を勉強しなくなってしまう、こういうことでは必ずしもございませんし、私どもが国会改正をしていただきましたときの私どものねらいも、憲法をやめるために一般教育改正したというふうにお願いしたわけじゃございません。そこで、趣旨に混乱が起きないように、施行通達におきましても、また、その後の御指摘も受けまして、私の名前で重ねて、一般教育の憲法を履修しなくてもいいという趣旨ではないんだということを周知さしていただいた次第でございます。
  172. 中村利次

    ○中村利次君 そうしますと、やはり履修すべきであるという、そういうことなんですね。私はやはりそうであるべきであって、憲法というのは、何といってもこれはわが国の基本法ですからね。ですから、まあいろいろとうわさされるところでは、どうも偏向教育をするのがいるから、だから憲法なんかは必須科目にする必要はないんだという意見も、これは文部省にはないかもしれないけれども、そういう意見もあるというようなうわさがある。私は、これははっきり言って、教師というものは、今日以降のやはり大事な青少年を育てる天職ですから、これはどういうイデオロギーを持とうと、個人の思想、信条は自由です。憲法によって保障されている。しかし、教育者として偏向教育をやるがごときはもってのほかだと思います。が、しかし、だからといって、そのことにはそのことでもって対処すべきであって、それに便乗をして、わが国の基本法の憲法をいかにも文部省がないがしろにするような印象を与えるのは、これはまことにもって偏向教育をやる教師に劣るまじき、やっぱりどうも行政の責任者として責められるべきことだと思うんですよ。しかし、まあそういうことでありましたら、憲法はやはり必須科目にするような行政指導が行なわれたと解釈いたしますので、私のその点での質問はそれでおしまいにしますけれども。  次に、教育課程審議会ですね、これに過密教育あるいは学校五日制等の問題が検討されているというぐあいに伺っておるんですが、大体この審議会の人選あるいは運営、あるいはこういう過密教育の問題は、これはそうそう一朝一夕に解決のできるような——これはえらい重大問題ですけれども、ある程度の時はこれは必要だと思いますが、この学校五日制の問題等、これは目先の問題だと思いますけれども、審議会の人選、運営あるいはその後の構想ですね、こういう点について、もしお答えいただければお答えいただきたい。
  173. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 昨年の十一月に、小学校、中学校、高等学校を一貫する教育課程審議会を発足させていただきました。これまでは小学校教育課程審議会で小学校教育課程を御検討いただき、中学校教育課程審議会で中学校の教育課程を、高等学校教育課程審議会で高等学校の教育課程を御審議いただいたわけでございまして、その結果、かなり過重な内容になっておるようでございます。同時にまた、中学校で義務教育を終えるんだから一とおりのことは教えておきたい。かなり高度なものになっている。したがって、高等学校に進みますと、中学校で習ったことをもう一ぺん繰り返し習うということにもなっておる面があるようでございます。そこで、一貫の教育課程審議会を発足させていただいたわけでございます。  お願いしておりますことは、高等学校の教育内容をまずきめてください、すでに高等学校へ進学する方々が九〇%になっているわけでございますので、これを基礎に考えていただいてもいいじゃないんでしょうかと、それから次に、中学校教育の課程を見直す、さらに小学校の教育課程を見直すことを通じて、従来の重複を避ける、同時に思い切って精選をしていただく、ただ覚え込ませるところじゃなしに、社会の変化に対応できる力をつちかうところじゃないだろうか、そういう意味での御検討をいただきたい。その結果では、あるいは五日でそれだけのものをこなせるということにもなるのじゃなかろうか、かように考えているわけでございます。  同時に、学校教育だけで人間を育て上げられるものではない、学校教育と社会教育との結びつき、これもぜひくふうしていただきたい、こういうお願いもしているわけでございまして、学校教育では同一年齢層の者を集めて育てていくわけでございますけれども、社会教育ということになってまいりますと、低学年の者、高学年の者、一緒に訓練をしていくということになりますと、それぞれ責任の分野が違ってくる。低学年の者の責任に属するもの、高学年の者の責任に属するもの、それぞれ違ってくるわけでございますが、責任を分かち合いながらお互いに協力をし合っていく訓練ができる、社会人としての資質が養われていくんじゃないかと、こうも考えているわけでございまして、学校教育、社会教育、相補い合いながらりっぱな社会人を育て上げる。そういうことも一つのねらいとして教育課程の検討をしていただけないでしょうか、これをおおむね二年くらいでひとつ完了させてほしい、こう言っているわけでございます。現在はたしか二十人ぐらいだと思うのでございますけれども、問題が進むにしたがいまして、それぞれの専門家をそれに追加させていただいて、場合によっては分科会をつくり上げていってもいいのではないだろうか、かように考えているところでございます。
  174. 中村利次

    ○中村利次君 これももう少しこまかく質問をしたいと思いますけれども、もう時間がだいぶ過ぎましたので、次に学術国際局に関連のあることで質問をします。  これは私は、大ざっぱに言って、いままでユネスコ関係国内委員会事務を処理するために事務局を置いて、そこに事務総長を置くと、こういう制度を、いわゆる外局を今度は内局にして、そしていろんな、冒頭申し上げましたようなたくさんの課題に対して対応していこうと、こういうことだと解釈をしたわけでありますから、現在までの外局の事務局としては、いろいろこれはやはり問題あったと思いますよ。先ほど宮崎委員からもいろいろ質問があったようでありますけれども、まだまだこれは積極的に取り組み、あるいは積極的に解決をしていかなければならない問題はたくさんあると思いますけれども、事務総長の任免について、これは非常にいままでの実績は円満にうまくいっていると私は聞いておるのです。これは第十八条の第六項に、「事務局職員の任免は、文部大臣が行う。但し、事務総長の任免については、あらかじめ会長の意見を聞かなければならない」、事務総長文部大臣が任免をするのだが、国内委員会の会長の意見を聞くのだと、こういうことに法制化されていたわけですね。それが今度はなくなったと。これはどういう理由によるものでしょうか。
  175. 木田宏

    政府委員木田宏君) 現在までのところ、ユネスコ国内委員会という一つの所轄機関、そのことだけのお世話をする事務局がついておりまして、その責任者が事務総長ということでございました関係上、文部大臣が任命するにつきまして、国内委員会の会長の意見を聞くという筋道ができておったかと思います。今回、内局にいたしまして、学術国際局という、ユネスコのみならず、広く学術一般あるいはまた他の国際問題も担当するような内局ということになったわけでございます。そこで、その局長の任命にユネスコ国内委員会の会長の意見を聞くということを法文上書くことが、この責任との関係で必ずしもそぐわないということから、規定の上では割愛をするということになった次第でございます。私ども、これは大臣のお気持ちもそのように考えておるわけでございますけれども、現実の任命の際に、従来から経緯のありましたことを無視すると、こういうことにはならないというふうに考えております。
  176. 中村利次

    ○中村利次君 運用上はとにかくとして、私ちょっとやはりひっかかるのは、旧法のやはり十八条に、「国内委員会事務を処理させるため、国内委員会事務局を置く。」、事務局事務総長を置く、その他ありますが、「事務総長は、会長の一般的監督の下に、事務局事務を総理する。」と、第三項にそうなっていますね。今度の改正法案でも、「文部省学術国際局長は、会長の一般的監督の下に、前項の事務を処理するものとする。」とありまして、現法、現在の法律の十八条の三項、それから新しく提案をされたこの法案の十八条の二項、全くこれは同じことが書いてありますね。とすれば、法文上国内委員会の会長の意見を聞くということはどうもなじまないというのが、私はちょっとやっぱり納得できない。現行法でなじんでいる、そして現行法の十八条の三項と、それから新しい法案の十八条の二項というのは、全く同じことになっているわけですから、なじまないはずはない、ほかに何か理由があるのではないかという、こういう解釈に走らざるを得ないんですよ。いかがでしょうか。
  177. 木田宏

    政府委員木田宏君) 御指摘学術国際局長内局局長としてユネスコ事務だけを処理するのであれば、全く同じことでございまするから、御意見のようなことも制度上あり得るかと思うのでございます。しかし、学術国際局は、この条文でもごらんいただきますように、文部省学術全般についての所掌を担当するわけでございまして、必ずしもユネスコのことだけを担当するわけでございませんものですから、そこで、任命にあたって従来と同じような規定を法文で入れることに問題があったと、こういうことなんでございます。運用上のこととして御了解を願えれば幸いでございます。
  178. 中村利次

    ○中村利次君 ユネスコオンリーではないから、したがって、法文上会長の意見を聞くということを入れるのは適当でない、こういうことですか。
  179. 木田宏

    政府委員木田宏君) はい。
  180. 中村利次

    ○中村利次君 それでは法文上入れることが適当でないということになると、私はそれでもなお、いや、そのあれはないじゃないか、ユネスコも相当の部分を、これはやっぱり国際化時代を迎えてたいへん重要な役割りですから、これはその事務を処理するのがこの学術国際局長であって、ユネスコの部分についてはやはり国内委員会の会長の一般的監督のもとに云々というのが法文化されておるわけですから、したがって、これはなぜ法文上入れるのが問題があるのか、なじまないのか、納得できませんが、しかし百歩譲って、しからば運用上とおっしゃいますけれども、運用上といっても、それは文部大臣が永久に文部大臣おやりになれば、ここで大臣答弁、あるいは局長がずっとおやりになれば、局長答弁というのはそのままずっと存続されていくのでしょうが、運用上やりますという答弁は非常に私は弱いような気がするんですが、何か手法はありませんか。
  181. 木田宏

    政府委員木田宏君) 最後のお尋ねの、何か手法というお尋ねの趣旨がどうもちょっとよく理解できないのでございますが、現実に、国内委員会仕事を、会長あるいは国内委員会の意向を受けながら適切に処理できる人物を人選するということに、大臣のお立場で、この学術国際局長を選任する場合にお考えになると思うのでございます。でございますから、これはそれぞれの、特に学術国際局が、法文にも明記してありますように、会長の一般的監督のもとに事務を処理するということになっております関係上、任命にあたって十分そうした点の配慮が行なわれるであろう。これは現在文部省にいろいろな所轄機関その他もございまするけれども、そうしたところの適任者を選ぶにつきまして、評議員の事実上の意見その他をやはり私どももよく聞かしていただくということは、専門のポストであればあるだけ行なわれておるわけでございまして、こうした法文の上でも職責のはっきりしておりますものにつきまして、この運用上の扱いとして配慮がなされるということは、私はいままでの文部省のいろんな慣例から見まして期待できることだというふうに考えております。あくまでもこれが内局の同じ他の局長であるということから、規定の上で従来と同じ規定を置くということをはばかるということから、法文上会長の意見を聞くという規定を落としたということは、これはまあ職責の広がりの関係において御理解をぜひ賜わりたいと思いますが、運用上のことにつきましては御心配ないというふうに私は考えるわけでございます。
  182. 中村利次

    ○中村利次君 これ、私は局長答弁を疑うわけじゃないのです。運用上はそうなさると思うんです。これはいままでやはり会長の意見を聞いて、法文上はそうなっていて、それに対して抵抗も感じられなかっただろうし、なお、結果して非常に円満にうまくいったということを聞いていますから。したがって、それを法文上から消えてなくなったから変えられるとは私も思っていないのです。こういう私が質問をしなくても、おそらく運用上は、それはもう十分国内委員会の会長とも相談をされて、そしておきめになると思いますよ、そのほうが円満にいくにきまっているのですから。そういうのをいいとか悪いとか、あるいは疑っているという意味ではなくて、これは先ほども申し上げましたように、確かに外局が内局になった、これは前進ですよ、と私は解釈する。そして外局のときに法文上明言をされていたのが、内局になったから、ユネスコ関係だけではなくて、一般的な学術関係も入ったから、内局になったから、したがって、それはどうも法文上うたい上げるのは適当でないというのはどうも私はなじまない。その必要はないんだというあれがありますから、法文上どうしても文部省あるいは政府がなじまないとおっしゃるなら、何かほかに手だてがありそうなもんじゃないですか。ぼくはやっぱりそういうものは何らかの方法できちっとしておくのが妥当だと思うんですよ。そうしなさい、こうしなさい、そうすべきであるという理屈じゃなくて、いままで法文上明確にされていた、それが今度はそれを取った。取った理由が、私は、なるほどごもっともでございますと納得できるような、どうも説得力のある理由ではないと思いますよ。これはそのことだけで議論をすると、これはもう大いに議論がある。だから、それは議論をしなくてもいいですと、何か手法を考えて、手だてを講じて、運用上やりますということだけじゃなくて、ちゃんとこうしますよと、こういうことがあれば、私はそれで納得できないものでもないと思うんですがね。たとえば先ほどの……。
  183. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記をちょっととめてください。   〔速記中止〕
  184. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) それでは速記を起こして。
  185. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 現在は、国内委員会独立の手足でございます。文部省の所轄の機関とはいえ独立の手足でございます。しかし、任免は文部大臣が行なうことに法文上なっているわけでございます。独立の手足を文部大臣が任免するんでございますので、事務総長ぐらいはまず国内委員会の会長さんの意見を求めておくというのは筋道じゃなかろうかと、こう思うわけでございます。今度はそうじゃなくて、国内委員会仕事文部省が引き受けましょうと、こういうことになったわけでございます。国際学術局長国内委員会事務総長の役をいたしましょうと、そうして国際学術局長は同時にその下にユネスコ国際部を置きまして、ユネスコ国内委員会事務的な部門をそこで引き受けるわけでございまして、他にユネスコ国際部以外の国際学術局の仕事がたくさんあるわけでございます。したがいまして、これはやっぱり文部大臣が全責任を負って任免に当たるべきだという法文の形式、これはそうしないと適切でないような感じがいたします。他のものに足を縛られて任命をするのか、それで責任を果たせるのかと、こういうことにもなり得ると思うんでございます。反面、しかし従来から、事務総長につきましては国内委員会の会長の意見を聞いて任命をしておるわけでございますので、そういう慣習を続けることによって国内委員会と国際学術局長との関係が円滑に進んでいくことも疑いないことだと思うわけでございます。したがいまして、現実の運用としましては、国際学術局長の任免にあたりまして、あらかじめ国内委員会の会長に連絡をとって、そして意見を求めるというようにはしていきたいもんだと、かように考えるわけでございます。それを形式的にはっきりさせるということでございますと、国内委員会からそういう申し入れを文部省として受けて、文部省として国内委員会の会長に対しまして、そのとおり将来もいたしてまいりますと、こういうような形を残すことになるんだろうと思います。しかし、こういうことはそういう形式ばったことをしませんでも、慣例の積み重ねによって確立されていくと、かように考えるわけでございます。もちろん、国内委員会の会長さんからそういう手順を踏んでおきたいとおっしゃるんなら、何ら異存はございません。しかし、実際問題として、そういうこともおっしゃらないだろうと思います。また文部省も、おっしゃらなくても、従来と同じような方式をとることによって両者の関係を一そう円滑に進めていきたい、また、そうすることによって従来以上に事務スタッフとしての役割りを果たさせていきたいもんだと、かようにも考えるものでございます。
  186. 中村利次

    ○中村利次君 これは、私は先ほども申し上げましたように、これは議論の対象になるような問題じゃないんですよ。大臣文部省も、やっぱり運用上は相談をしていくんだというお気持ちがあるんだし、ただ、法文上どうのこうのという議論になると、私には私の主張があり、あるいは文部省には文部省の、大臣はじめ主張がある。しかし、そういう議論をやるとこれはおかしくなっちゃうんですね。何か、一致しているものまでこう何かそぐわなくなったりなんかしますから。私はこれは与野党であろうと、政府であろうと、こういう問題については対立はないと思うんです。それから大臣一つの手法をお示しになりました。しかし、大臣のお示しになった手法の会議録を見て、国内委員会委員長が、私はそれをやります、これは絶対言わないと思う。それは言わないと思うんです、それこそ、しゃくし定木になりますから。私は委員長、これはね、こういうあれですね、気持ちの上ではみんな一致するようなことは、何か、もし文部省がそんなのは負担を感じていやだとおっしゃるならともかく、みんな一致するんだったら、たとえば委員会の附帯決議にですね、みんなそういう気持ちでいるんだよということをつけるとか、そういう取り扱いでこの問題は解決をしてもらえれば、これで私の質問を終わります。
  187. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  188. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) それじゃ速記を起こしてください。  先ほど宮崎委員から要求されました在日留学生の統計に関する資料は、当委員会として要請いたしますので、次回の委員会までに提出してください。  速記をとめてください。   〔速記中止〕
  189. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記を起こしてください。  本案に対する本日の審査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十一分散会      —————・—————