○
政府委員(
林忠雄君) 先ほどの
占部先生の御
質問に対するお答えにほぼ尽きるわけでございますけれ
ども、この前の国会で、その直接請求の規定を挿入いたしまして御提案申し上げたのは、いま
先生も御
指摘になりましたような、一部
事務組合に
事務がいく場合には
住民の手が届く範囲から遠のくではないかと、それを何らか
住民の手近なものに引き戻すために、この直接請求という規定をやはり動かすべきではないかという
考え方に基づいて一応御提案したことは、確かにそのとおりでございます。
ところが、今回これを落としましたという理由につきましては、先ほ
ども申し上げたところでございますが、まあ大きく言って二つの理由がある。
まずその第一としては、この
複合組合をつくるにつきまして、過去何回かの国会の御審議で最も御懸念が表明されましたのが、この一部
事務組合というのが強力な第三団体に発展をするんではないかと。
自治省が発展をするように
指導するかどうかは別として、
現実の問題として発展をしてしまって、個々の
市町村の自主性を奪い、個々の
市町村から
事務をどんどん吸収していってしまうではないかと、そういう懸念があるということが何度も
質疑の
関係で表明をされました。そこで、その団体に、通常の普通
地方公共団体と同じように、
住民の直接参加の規定をそのままなまに持っていく、各種のイニシアチブ、リコールを適用いたしますと、それが契機となりまして、なおさらその第三団体的な色彩を強める懸念があるということで、むしろ、そちらのほうの御
心配というものが
一つ出てきました。そこで、あくまでも一部
事務組合というのは、
関係団体のもう合意の上に立つ
共同処理機構であるということにひとつ徹すべきである。そこで
事務を
処理する場合は、それぞれの団体の
住民は、自分の団体を通じて、自分の団体から出ております議員とかあるいは自分の団体の
市町村長を通じまして、その
組合の
事務の不合理の是正をはかるという、各それぞれの構成団体の共同責任の上に立って
処理をすべきであるという
考え方に徹しまして、直接その一部
事務組合に対して
住民がものをいうということは、かえってその一部
事務組合を別の団体、個々の構成
市町村とは違う人格の別の団体に仕上げ、それを強めるという懸念をはずす
意味で今回は落としたということが
一つ。
それからもう
一つは、これは率直なところ、この一部
事務組合に対して直接請求規定を適用する場合の技術的な自信というものがございません。
——ございませんと言うと、前に出したのにということでおしかりを受けるわけでございますが、たとえば
住民の五十分の一という条例
制定の請求の場合も、構成団体が違う場合は、全体を通じて五十分の一でいいのか、全体を通じて五十分の一であるが、それぞれの団体のまた五十分の一以上なきゃいけないのかという、いろいろな技術的な問題が起こってまいります。そこで、これらの問題を合理的に解決するためにどうしたらいいかという問題に行き当たりましたときに、もう一歩
考え方を進めまして、すでに
自治法が
制定されましてから、各種の直接請求
制度が取り入れられましてから、二十年近くもう経過いたしました。最近の社会経済情勢の進歩その他によりまして、
住民の直接参加というのが、これは一部
事務組合のみならず、一般の
地方団体についても非常に新しい面をもっていろいろな現象を呈してまいりましたので、ここでひとつ、全体を通じて
自治法の
体系の中にある
住民の直接参加
制度をどういうふうにこの際積極的に改めることが合理的であるかという、全体を通じての検討をぜひいたしたいと。そこで、その検討が十分できませんうちに、いま申しましたような、技術的にも多少まだ
問題点の残っているこの直接請求
制度を、一部
事務組合だけについて設けるということはいかがかと、全体の検討を通じてこれらも含めて
考えたいということで、若干その時間をいただきたいという
意味で今回落としたわけでございます。
したがって、
先生の後段の御
質問の
事務監査その他につきまして、前に宮澤
行政局長の申しました答弁はまさにそのとおりでございまして、一部
事務組合に
事務がいってしまうということで
住民の手が届かなくなるということの不合理を是正するために何か積極的に
考えたいということでございますが、この積極的に
考える
考え方を、いま言った全体を通じての検討の中に含めて、できるだけ近い将来に、
地方制度調査会の御
意見等も伺って、
一つの
体系を編み出したいということでございますので、今回はそういう
意味で落としました。したがって、また近い将来、全体の
住民の直接参加
制度についての検討をし、
一つの結論を出す決意を持っておりますので、御了承をいただきたいと思います。