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1974-04-23 第72回国会 参議院 地方行政委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十三日(火曜日)    午後一時四十九分開会     —————————————    委員異動  三月二十九日     辞任         補欠選任      中村 登美君     安井  謙君      竹内 藤男君     斎藤 寿夫君      高橋 邦雄君     高田 浩運君      村尾 重雄君     田渕 哲也君  三月三十日     辞任         補欠選任      高田 浩運君     前田佳都男君  四月一日     辞任         補欠選任      前田佳都男君     高橋 邦雄君  四月二日     辞任         補欠選任      高橋 邦雄君     源田  実君  四月三日     辞任         補欠選任      源田  実君     高橋 邦雄君      田渕 哲也君     村尾 重雄君  四月四日     辞任         補欠選任      高橋 邦雄君     長田 裕二君  四月五日     辞任         補欠選任      長田 裕二君     高橋 邦雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         久保田藤麿君     理 事                 高橋 邦雄君                 原 文兵衛君                 占部 秀男君                 河田 賢治君     委 員                 片山 正英君                 小山邦太郎君                 柴立 芳文君                 秋山 長造君                 松永 忠二君                 藤原 房雄君                 村尾 重雄君    国務大臣        自 治 大 臣  町村 金五君    政府委員        自治省行政局公        務員部長     植弘 親民君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君    説明員        労働省労働基準        局労災管理課長  石井 甲二君        労働省労働基準        局安全衛生部計        画課長      石田  均君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出)     —————————————
  2. 久保田藤麿

    委員長久保田藤麿君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る三月二十九日、中村登美君及び竹内藤男君が委員辞任され、その補欠として、安井謙君及び斎藤寿夫君が選任されました。     —————————————
  3. 久保田藤麿

    委員長久保田藤麿君) 理事補欠選任についておはかりいたします。  去る四月二日、高橋邦雄君の委員異動に伴い、理事に欠員が生じましたので、この際、その補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 久保田藤麿

    委員長久保田藤麿君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事高橋邦雄君を指名いたします。     —————————————
  5. 久保田藤麿

    委員長久保田藤麿君) 地方交付税法の一部を改正する法律案議題とし、まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。町村自治大臣
  6. 町村金五

    国務大臣町村金五君) ただいま議題となりました地方交付税法の一部を改正する法律案提案理由とその要旨について御説明申し上げます。  昭和四十九年度分の地方交付税については、社会福祉水準向上教育充実等に要する財源充実をはかるため、普通交付税の額の算定に用いる単位費用を改定するとともに、地方財政状況にかんがみ、地方交付税総額について特例を設ける等の必要があります。  以上が、この法律案を提出いたしました理由であります。  次に、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  まず、昭和四十九年度の普通交付税算定方法については、児童福祉老人福祉対策等社会福祉施策充実その他社会福祉水準向上に要する経費財源措置するとともに、教職員定数の増加、教員給与改善等教育水準向上に要する経費を増額し、また、市町村道清掃施設等、住民の生活に直結する公共施設計画的な整備を進めることとするほか、過密対策過疎対策交通安全対策消防救急対策及び消費者行政に要する経費充実することとしております。さらに、公共用地先行取得を促進するため、土地開発基金費基準財政需要額に算入するとともに、社会経済情勢変動対処して弾力的な財政運営を行なうことができるよう、新たに財政調整資金費を算入することとしております。  次に、昭和四十九年度分の地方交付税総額については、現行の法定額から千六百七十九億六千万円を減額する措置を講ずるとともに、当該減額した額を昭和五十二年度から昭和五十五年度までの地方交付税総額に加算することといたしております。  なお、特別事業債償還交付金及び市町村民税臨時減税補てん債元利補給金につきましては、法人税における暫定税率適用に伴う地方交付税の増額に関連して、昭和四十五年度以降その交付が停止されておりましたが、今回、法人税税率引き上げることとされたのに伴い、これらの制度を廃止することといたしました。  以上が、地方交付税法の一部を改正する法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。     —————————————
  7. 久保田藤麿

    委員長久保田藤麿君) 次に、地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。町村自治大臣
  8. 町村金五

    国務大臣町村金五君) ただいま議題となりました地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案提案理由とその要旨について御説明申し上げます。  最近における社会経済情勢にかんがみ、公務上の災害または通勤による災害を受けた職員及びその遺族に対する保護充実をはかろうとするものであります。  このことに関しては、政府は、すでに一般労働者災害補償について、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を、また、国家公務員災害補償について、人事院の意見の申し出により、国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律案を、それぞれ今国会に提出し、御審議を願うことといたしておりますが、これらとの均衡をはかるため、地方公務員災害補償制度につきましても、同様の改善措置を講ずる必要があります。  以上が、この法律案を提出いたしました理由であります。  次に、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、障害補償年金及び障害補償一時金の額の引き上げであります。現在、障害補償年金及び障害補償一時金の額は、地方公務員災害補償法別表に定める身体障害の等級に応じ、年金にあっては平均給与額の百十七日分から二百八十日分、一時金にあっては平均給与額の五十日分から四百五十日分の額となっておりますが、これを、おおむね一二%程度引き上げ年金にあっては平均給与額の百三十一日分から三百十三日分、一時金にあっては平均給与額の五十六日分から五百三日分の額にすることといたしております。  第二は、遺族補償年金の額の引き上げであります。現在、遺族補償年金の額は、遺族の人数の区分に応じ、平均給与額年額の三〇%から六〇%に相当する額となっておりますが、これを、おおむね一三%程度引き上げ平均給与額年額の三五%から六七%に相当する額にすることといたしております。第三は、遺族補償年金受給権者に対しその請求により支給される前払い一時金制度改善であります。現在、平均給与額の四百日分の額を支給することといたしておりますが、これを、平均給与額の千日分をこえない範囲内で自治省令で定める区分に応ずる額を支給することとし、また、現在の前払い一時金制度昭和五十二年十一月三十日までの暫定措置とされておりますが、これを、さらに十年間延長するものとする等の改善措置を講ずることといたしております。  以上が、地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  9. 久保田藤麿

    委員長久保田藤麿君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 藤原房雄

    藤原房雄君 地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、若干の質問をしたいと思います。  ただいま提案理由説明がございまして、理由、そしてまたその御説明があったわけでございますが、その提案理由説明の中にもございましたように、最近の社会経済情勢の大きな変動の中にありまして、このたびの改正はこれは当然のことだろうと思うのでございますが、最初にお伺いしたいのは、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案と、国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律案、これが今国会に提出されておりまして、これらとの均衡をはかるためにこのたびの地方公務員災害補償法の一部改正提案されたのであるということでございますが、このたびの改正案の基本的な考え方、特に地方公務員という立場を踏んまえての問題について、概括的な御説明をいただきたいと思うのであります。
  11. 町村金五

    国務大臣町村金五君) このたびのこの改正趣旨でございますが、先ほど私が提案理由説明の中も大体申し上げたことで尽きるわけなのでございまして、この点、重ねて申し上げるというようなことに相なろうかと思うのでありますが、御承知のように、最近におきまする諸物価の高騰といったような問題もございまするし、また、たとえば自動車によりまする災害によりまして、一種の賠償責任が講ぜられる、そういったものにつきましても相当に金額が上がっておるというような事情等もございまして、ただいまの公務上の災害なりあるいは通勤によりまする災害を受けた職員あるいはその遺族保護充実をはかるという趣旨から、ただいまも藤原委員指摘がございましたように、労働者災害補償保険法改正に対応いたしまして、国家公務員災害補償法におきましても、たとえば障害補償年金あるいは障害補償一時金または遺族補償年金の額の引き上げが行なわれたということに相なりましたので、やはり地方公務員災害補償法におきましても、当然これらとの均衡をはからなきゃならぬということは申し上げるまでもございませんので、そういった趣旨から、これらの諸法律との、あるいはそれに伴って行なわれておりまするそういった補償金というものとの均衡をはかる必要があるというふうに考えまして、このたびのこの改正を必要と考えて御提案を申し上げたということでございます。
  12. 藤原房雄

    藤原房雄君 労働省にちょっとお伺いしたいんでありますが、最近のこの著しい社会変動の中にありまして、新しい職業病なんというのが最近は発生しておるわけでありますが、この地方公務員という限られた職業の中でありますと、私どもそう多くの問題があろうとは思いませんが、こういうことにつきまして、自治省関係ですか、こういう問題について、今日までお調べになって、何かそういう問題があって、それに対する実態、こういうものがございましたらお聞かせいただきたいと思うんでありますが、それからまた、それに対する予防措置とか安全対策とか、こういうことについて、労働省、何かお考え——今日までの実態調査でございましたら、私ども聞くところによればキーパンチャー等については若干考えられるのじゃないかと、こう思っておるんでありますが。
  13. 石田均

    説明員石田均君) ただいまの御質問にお答え申し上げます。  私ども労働省といたしましては、労働安全衛生法を所掌いたしておりまして、この関係で、先生指摘のような安全衛生対策についていろいろと手を打っておるわけでございますけれども、基本的には、労働災害防止計画というものを樹立をいたしまして、これは昭和四十八年度を初年度といたします五カ年間の計画でございますけれども、その中におきましていろいろと、たとえば科学的な防止対策検討でございますとか、機械設備安全性の確保でございますとか、あるいは健康管理対策の推進というふうなことをいろいろとうたってございまして、そういった計画に基づきまして、安全衛生法の施行ということを進めておるわけでございます。  ただいま御指摘の、いろいろ新しい職業病などがあるのではないかという御指摘でございますけれども、最近問題になっております職業病といたしましては、白ろう病とか頸肩腕症候群とかあるいは腰痛とかいった問題がいろいろございます。そういった問題につきましては、それぞれ専門家方々に御依頼を申し上げまして、たとえば頸肩腕でございますと、具体的にこういう作業についてこういう作業管理をしてほしいというふうなことで、予防対策の指針のようなものをつくりまして、これを関係方面に周知をいたすと、そういうことで予防を進めてまいっておる、こういった状況でございます。
  14. 藤原房雄

    藤原房雄君 めまぐるしいこの社会変動の中にありまして、そういう新しいものに対する対処のしかたということと、先ほど大臣の御答弁があったわけでありますが、今度のこの地方公務員災害補償法は、労働者災害補償法とそれから国家公務員災害補償法均衡をはかるためということでありますが、その奥底には、ILOの百二十一号条約勧告とか、それから、今日までいろいろ論議を呼んでおりました労災保険基本問題懇談会改善についての意見等、そういうものがあって、それぞれ労働者災害補償法または国家公務員災害補償法というものがあって、それにまた均衡をとるためと、こういうふうになっておるんじゃないかと思うんでありますけれども、これは両法ができましてそれに伴って地方公務員考えなければならないという、こういう受動的なことではなくて、やはり地方公務員方々がそれを公務遂行の上に、また、特に地方公務員に対しての問題というものを自治省としても相当やはり真剣に取り組まなければならない。これは二百五十万からいらっしゃるわけでありますから、また特殊な仕事でもございますので、この勧告とか、いままでの議論等をもとにして今回の改正があったと思うのでありますが、そういったことからいいまして、確かにいままでよりも一歩前進の、内容的にはそうなっておると思うんですけれども、この点について自治省として、ただ受動的に、労働者災害補償法国家公務員補償法ができたからうちのほうもこうするんだというんじゃなくて、積極的な姿勢があってしかるべきだと思いますし、その点についてのいままで御検討ということがあったらお聞かせ願いたいと思いますし、今後についても、いろいろな問題に対する対処しかた等について、自治省としての基本的な考え方といいますか、今日までのあり方について概略御説明いただきたいと思うんですが、どうですか。
  15. 植弘親民

    政府委員植弘親民君) 地方公務員につきまして特殊な災害対策補償制度というものを研究してはどらかというありがたいおことばでございます。公務員公務災害補償等も含めました一般的な共済だとかいうふうな福利厚生、こういったものにつきましては、なるほど地方公務員という特殊な職務についての特殊性はあるわけでございますけれども、やはり一番身近な国家公務員との均衡といったようなものがまず最初でございまして、地方公務員法にも、そういった関係法令でも、国家公務員との均衡原則といったものがまずうたわれておるわけでございます。そしてまた国家公務員地方公務員あわせての公務員一般労働者となりますと、やはり同じ国民としての立場から、そういった福祉関係の利益すべきものは同じような立場均衡をとって考えるべきであるということでございます。したがって、地方公務員だけを何か国家公務員や他の一般労働者よりもよくするというわけにはまいりませんが、やはり先生の御指摘のように、それぞれの特殊な立場というものもございますから、そういう点に着目しての改善というものは関係省庁の間で十分協議して進められなければならないものだと思います。もう数年になりますが、当委員会でも御審議いただきまして、たとえば警察官だとか消防職員といったような特殊な——これは地方公務員には非常に多いわけでございますが、このためには特別補償制度をお認めいただいて現に適用させていただいておりますが、そういったような意味で、私ども立場から見まして、特殊なものがありましたときには、それを実現するためにも、当然関係省庁とも御相談しながら全体として均衡をはかりながら進めていく、こういうふうに考えておるものでございます。
  16. 藤原房雄

    藤原房雄君 今度の一部改正によりまして、ILO百二十一号条約勧告水準、これに見合った改善があろうと思うのであります。そういう点では確かに前進と言うことはできると思うのでありますが、この公務災害を受けた公務員の方、または遺家族方々に対する生活の安定なり福祉向上というものに対して、どこまでが十分な対策なのかということになりますと、いろんな議論のあるところと思うんでありますが、やはりいろんな立場方々もいらっしゃるわけでありますし、公務災害ということでもございますので、やはり使用主であります地方公共団体のいわば無過失損害賠償責任に基づいて、地方公務員なり、また遺家族に対する保護というものを十分に考えなければならないんじゃないか。  そういうことからいいまして、今回の改正、これは自治省でも十分だとは思ってはいないだろうと思うんでありますけれども公務災害により稼得能力を失った人に対して、どこまで——これは一〇〇%を補償するということが望ましいことでありますけれども、どこまでのことをお考えになっていらっしゃるのか。この補償問題について、これはいろんな角度から論議されなければならないことだと思うんでありますが、特にいま心配されることは、非常に異常な物価上昇の中にありまして、この算定基準やいろんな条項がありますけれども、こういう変動の激しい状況の中にありましては、十分な補償といえないといういろんな個々の例が出てくるわけでありますけれども、それだけに、基本的な考え方をどこに置くかということが非常に大事なことになってくるんじゃないかと思うんですが、その辺に対しての考え方というのはどうでしょうか。
  17. 植弘親民

    政府委員植弘親民君) 先ほどもお答え申し上げましたように、一般労働者との関係等も十分考慮しなければなりませんので、労働省からお答えいただいたほうが適切かとも存じますが、私どもといたしましても、やはりどこにめどを置くかというのはなかなかむずかしい問題ございますので、今国会にも外務省から御提案申し上げたと存じますが、ILOの百二十一号条約、これがやはり国際的な立場からの一つめどであろうと考えております。先般、私どもこの法案を政府社会保障制度審議会にかけました際にも、いろいろと委員先生方意見ございまして、ILOの百二十一号条約基準によるといっても、日本における所得水準と、ILO百二十一号条約を批准している国の所得水準との間には格差もあることであるから、単純には比較できないのではないかといったような御指摘もございました。そういうこともございましたが、いずれにいたしましても、少なくとも百二十一号条約で国際的な基準として示されておるものには、基準を守ってまいりたいというのが当面の目標でございます。逐次、関係省庁とも御相談をしながら充実をはかってまいりたいと、このように考えております。
  18. 藤原房雄

    藤原房雄君 いまお話しございましたように、これはなかなか大事な問題でもあり、また複雑な要素をからんでおると思うんでありますが、このILOの百二十一号条約勧告を一応達成するということが最低限ということでありまして、これに近づいたからといって、それで満足だということではないだろうと思うんでありますけれども、今後の補償額引き上げとか補償額の問題について、これは自治省にお聞きするより、労働省に聞いたほうがいいだろうと思うんですが、労働省としまして、こういう問題については、どのようにお考えになって御検討をなさっていらっしゃるのか、この点ちょっとお伺いしておきます。
  19. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 今般の改正案になった経緯につきましては、御存じだと思いますけれども労災保険審議会の中で、基本問題懇談会を開催いたしまして、そこで約二十回にわたりまして議論を重ねたわけでありますが、先生指摘の、どういう水準日本の現状において言ってみれば適正なのかという議論でありますが、一つは、ただいま自治省からお答えになりましたように、ILOという国際基準というものが一つめどでもあるだろうと思います。ILO条約、百二十一号条約につきましては、実は四十五年の労災法改正によりまして、その水準達成をいたしたわけであります。その後、昨年の国会におきまして、通勤途上災害につきまして、新たに労災法改正によりまして適用をはかったわけでございまして、言ってみれば、現段階におきまして百二十一号条約を批准する体制は完全に整えたわけであります。しかし、現在のようなまあ物価の問題もありましょうし、あるいは補償という問題について、非常に手厚い保護をすべきだという一般の世論の形成もございます。そういう中で、今回の改正は、いわゆる百二十一号条約という一般水準——最低水準をちょっと抜け出まして、いわば勧告水準、すなわちILOとして、それぞれの国の国力に応じてひとつ望ましい姿を設定をいたしまして、それが勧告水準でありますけれども、この勧告水準をこの際達成をいたしたいというのが、現在の状況でございます。  それからもう一つのメルクマールは、諸外国、特に先進諸国との水準の対比の問題があろうかと思いますが、今回の改正によりまして、特に西ドイツあるいはフランス、イタリアといったような先進的な欧米諸国に対応いたしまして、遜色のないところまでいっておるというふうに私ども考えております。特に法律ではございませんが、同じく保険施設の中で特別支給金というものを創設をいたします。その場合に、たとえば死亡の方々に一時金として百万円、あるいは障害の完全労働不能になった方々に同じく百万円、それから病気あるいはけがをされて入院されて療養されている方につきましては、給付基礎日額、その賃金の現在六割を支給しているわけでありますけれども、それに休業八日以上について、二割上積みをするというようなことを考えておりますので、以上総合いたしますと、ILO勧告はもちろんでありますし、諸外国水準遜色のないものになるというふうに私ども考えている次第でございます。
  20. 藤原房雄

    藤原房雄君 まあ労災保険基本問題懇談会の別紙の中に、確かにいまお話のございましたように、ILO百二十一号条約水準に達したという——これは四十五年大体そこに達したんだということでございますが、しかし、なお先進諸国水準には及ばない面が存するということでありまして、いま何か全部達したみたいなお話でございますが、ものによってはまだそこまでいかないものも多々あるだろうと思います。また、現在こういう非常にむずかしい社会情勢の中にありまして、自動車損害賠償保険法なんか、去年の十一月ですか、一千万になった。人の命、これはお金であがなえるものじゃないだろうと思いますけれども、生命の尊厳が力説され、こういうこともどんどん進んできて検討されておる。こういう実態の中にありまして、現在先進諸国水準に及ばない面というのは、一体日本の国情にあわせてどういう点があるか、この点ちょっとお伺いします。
  21. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 先進諸国というのをどう規定するかという問題がございますが、非常に大ざっぱな言い方をいたしますと、労災補償については一つは休業補償、それから障害補償、それから遺族補償、あとはいわゆる療養補償の四つになるかと思いますが、まず第一の休業補償につきましては、現行いわゆる賃金の六割を休業されている方々補償をいたしておるわけでありますが、諸外国の場合におきましては、いろんな形ありますが、大体六割ないし六割六分ということだろうと思います。今回の改正におきまして、実質上、省令段階でありますけれども、いわゆる特別支給金といたしまして、休業八日以上につきまして二割支給をすることになっておりますので、実質八割の水準を確保しておる、その面におきましては、諸外国水準遜色がない、場合によっては上回る可能性を持っております。  それから障害につきましては、完全労働不能の三級でありますけれども、これが六割七分、六七%の水準に今回は置かれるわけであります。これについては、諸外国の場合におきましては、高いところは八割をこえているところもございますが、先ほど申し上げましたように、特別支給金として百万円を一時金として支給する制度がございますので、それを総合いたしますと、まあそう遜色はなかろうという感じがいたします。  それから、死亡労働者につきましても、最高五人世帯につきまして六七%の、いわゆる賃金の年額の六七%を支給いたしますが、これも各国においてばらばらでありますけれども、大体西ドイツ、フランス、イタリア等の平均のところまでいくのじゃなかろうか。これに、さらに先ほど申し上げました百万円の一時金を追加的に付加的に給付をいたしますので、国によって若干低いところ、日本のほうが低いという面もございますが、全体的な平均としては、それに遜色のない状態になるであろうというふうに私ども考えております。
  22. 藤原房雄

    藤原房雄君 次の段になりますが、きょう悲しい航空機事故がございましたが、列車とか航空機事故、自動車事故が非常に多いわけでございますが、これの賠償等が非常に高額になっておる、そういう社会情勢の中で、現行の労災保険の給付が不十分とする労働者遺族の要求を反映して、企業内において上積み給付を新設拡充する例が急激に増加しつつあるということがございますが、これは現状を、労働省として企業内での上積み給付、実態おつかみになっていらっしゃったら、現況どのように思っていらっしゃるか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  23. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 全体の普及率でありますが、いわゆる企業単位にいたしまして三一%の企業が何らかの形での上積み給付を行なっております。その給付のそれぞれの内容につきましては——三一%の企業が何らかの付加的な給付を行なっておりますが、その内容で、すなわち三一%の企業を一〇〇にいたしますと、遺族補償について六〇・五%、障害補償について五五・八%休業補償について七一・六%、その他八・〇%というような内容を持ったものが現在行なわれておるということでございます。
  24. 藤原房雄

    藤原房雄君 これも大きな問題の一つだろうと思います。企業内で、やはり時代の大きな変化に対応し得ない現在の制度のために、やっぱり企業の中で考えなければならないという、特に遺族関係には六〇・五%というお話でございますが、こういうことから、諸外国との比較、これだけがすべてではございませんけれども、特に日本の国はこれは異常な物価上昇、諸外国に比べても高いわけでありますし、こういう現時点に即応した改正であるかどうかということになりますと、いろいろな問題があろうかと思うのでありますが、こういう点についての積極的な御検討をいただきたい。  次に、「社会的な損害てん補に関する諸制度の動向」云々と、こうあるのでありますが、先ほどの労災保険基本問題懇談会の別紙の中の、この「社会的な損害てん補に関する諸制度の動向」、これは具体的に労働省でつかんでいらっしゃることについてお聞きいたしたいと思うのでありますが、それと、わが国の関係者の一般的な考え方ないしは実際の企業内の取り扱いの実情という——まああるわけでありますけれども、これはどのような考え方であるのか、この点についてちょっと御説明いただきたいと思うのですが。
  25. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 「社会的な損害てん補に関する諸制度」ということで私どもが背景として考えましたのは、いわゆる自動車賠償、いわゆる自賠責が一つ。それから、この前の国会におきまして、公害に関する補償法律が成立をいたしました。そういうものの実態というようなものの動きを考慮するということが第一点でございます。  それからもう一つは、企業内の取り扱いの事情は、先ほど申し上げましたような実態を持っておるわけでありますが、その中で、労災といういわば業務上災害にかかった方に対するに対応の意識というものが、やはり特殊なものがあるのじゃなかろうか。すなわち、昔はいわゆる公傷といいまして、言ってみれば、業務を遂行している中でけがをされ病気をされた方々に対しては、やはり一般の私傷病と違った、一つの何といいますか、気持ちの上での対応があるわけでありまして、それが同時に企業内の上積み給付を可能にする一つの背景になりておると思います。それが、わが国の関係者の一般的な考え方ということで表現をしたわけでありまして、そういうものから、今般、いわゆる特別支給金という形で一時金を出す理由づけの一つにした、こういう考え方がこの審議会、基本問題懇談会における第二の考え方でございます。  すなわち、端的に言いますと、第一の考え方は、先進諸外国あるいは現在の社会的情勢に対応して給付の水準引き上げるという面が第一。それから第二が、いま言いましたように、損害てん補に関する諸制度あるいは企業内の取り扱いといったようなものを考慮しながら特別支給金という新しい付加制度を設けた、これが基本問題懇談会考え方の骨子でございます。
  26. 藤原房雄

    藤原房雄君 いまもお話しございましたが、この特別給付金制度ですね、これはどういう性格のものかということでありますが、いま二点にわたっていろいろお話しございましたが、社会保障制度審議会におきましても、特別給付、「特別支給金制度は、その性格が必ずしも明確ではなく研究の余地があろう。」と、こう言われておるわけでありますけれども、この点について、どのような性格を持つものかということをお考えをただしたいということと、それからどういう基準でこのような額をきめるのかということ。もう一つは、民間の法定外給付の実態を踏まえたものかどうかという、その三点についてお伺いしたいと思います。
  27. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 特別支給金制度の性格でございますが、労災補償制度というものは、先生御存じのように、無過失賠償責任を根っこにいたしまして、いわば企業の責任という形でこれを支出をしているわけでございますが、その場合の基本は、あくまでも労働者の逸失利益あるいは被扶養利益、そういうものをてん補しあるいは回復をするというたてまえを、諸外国でもそうでありますが、わが国の場合でも従来から貫いておるわけでございます。それが現在の補償理論の基本になっておりまして、労災補償もその基本線の上に立って成立をしておるわけでございますが、ただ問題は、特別支給金をなぜこの機会に出したかという問題がございます。それは、あくまでもやはり、現在の労災補償は、特に重篤な障害、あるいは死亡におきましては、年金を中心として、必要な期間、必要な給付をするという形に相なっておるわけでありますが、一方におきまして、やはり一時金が、どうしても社会的な状態の中にありまして、その一家の支柱がなくなられるというような状態がございますので、どうしてもその一時金が必要だという御要望が非常に強いことも確かであります。そこで、本来の労災補償の無過失責任の法理を体系とした年金体系を、これを一時金に切りかえることは、これは不可能でありますが、この際、実際の企業内の実態等から見まして、やはり企業の付加給付で一時金を相当広範囲に出しておるという実態を、やはりこの際認識をいたしまして、特別支給金という形で、言ってみれば弔慰見舞い的な性格のものをこの際導入をいたしたということでございまして、性格的には、保険施設によりまして、そういうなくなった方々に対する弔慰見舞い的な性格のもとでこの特別支給金を出すという構成をとったわけでございます。したがいまして、ここの基本問題懇談会の答申にありますように、「業務のため被災した労働者遺族に対する逸失利益以外の面にわたる措置の意味をもった特別の支給金制度を設ける」、こういう表現をとっておりますが、それは私がいままで申し上げたような考え方にのっとったものでございます。
  28. 藤原房雄

    藤原房雄君 これは四十八年、去年の八月ですか、地方行政委員会の附帯決議で、「民間企業における業務上の死亡等に対する法定外給付の実情にかんがみ、公務員の場合においてもその均衡を考慮して適切な措置を講ずること。」という附帯決議がございましたですね。これは、労災と同じものを、地方公務員の場合についても特別給付金制度というものを設けるお考えなのかどらか、その点をひとつ。
  29. 植弘親民

    政府委員植弘親民君) 先ほども民間の実態について労働省から数字の御説明がございましたが、公務員サイドにおきましても、人事院が、昨年やはり同じような趣旨で民間の実態調査を行なっております。まだいま集計中でございますので、詳細の内容はわかりませんが、それがわかった場合において、人事院がどのように政府に対して勧告するか、国会に対して勧告をするかという問題もございますが、そういう実態が明らかになった場合におきましては、国家公務員に合わして所要の措置をとらしていただくつもりでありますが、先ほど御説明のございました特別支給金制度関係でございますが、これは、先ほどの御説明にございましたように、本来の補償制度とはちょっと違うところがございますので、私どもでは、いわゆる補償制度の中に入ってまいりませんが、現在でも福祉施設というのがございまして、この福祉施設におきましては、これに似たような、いわば付加的な給付も行なっておりますので、労災におきまして創設されました特別支給金制度と同じようなものを、国家公務員についてもとるように承っておりますし、私どもも同じような立場措置さしていただきたいと、このように考えております。
  30. 藤原房雄

    藤原房雄君 同じこの別紙の中でありますが、個々の問題にちょっと入るのでありますが、給付基礎日額算定方法、これは懇談会でのいろいろな検討事項の中に入っているわけでありますが、給付基礎日額算定方法について——それはいままでもいろいろな論議のあったところだと思うのでありますが、期末手当等を入れるかどうかという問題ですね。期末手当というのは、これはもう給与と同じように、生活のかてになっているものでありますから、当然計算の基礎に入れるのは入れるべきである、入れないのがむしろ不合理だという、そうしてまた、今日までの経過を見ましても、基準法等のできた時代からずっと見ましても、これは当然、ボーナスもこの給付基礎日額の中に入れるのが妥当であろうかと思います。これについては、四十五年五月十三日の参議院の地方行政委員会におきましていろいろな論議がありましたときに、基準法そのものの問題に根源があるので、基準法の全体の検討とともに、労災保険の給付の基礎が平均賃金でいいかどうか、ボーナスを入れないでいいのかどうか、検討に値する問題であろうという答弁もあったわけでありますけれども、これを検討するというようなお話でしたけれども、これらについてどのように検討なさったのか、現在どういうお考えでいらっしゃるのか、これらのことについてお伺いしたいと思うのです。それから……。まずそれを先に聞きます。
  31. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 給付基礎日額算定方法につきましては、御指摘のように、非常に前から問題になっているところであります。今回の制度改善に伴う基本問題懇談会におきましても、当然この問題が議題の重要な問題になってきたことは確かでございます。しかしながら、先ほどお話がありましたように、現在、給付基礎日額算定方法としてボーナスが含まれておりません。それは、労働基準法の平均賃金をもとにいたしまして算定するというとになっておるわけでありまして、それはいわゆる過去三カ月間の給与の平均がすなわち給付基礎日額という規定をしておるわけでございまして、問題は、労働基準法の考え方との問題がそこで発生をいたしてくるという、非常に重要な問題が内在をしているわけでございまして、したがいまして、現在基本問題懇談会は、当然その問題も含んだ審議を継続的に行なっておりますが、この基本問題懇談会の答申の中にございますように、給付基礎日額算定方法については「いろいろの問題があって、直ちに結論を出すことは困難であるので、今後引続き検討を続けるべきであると考える」、こういうことで、今回の改正の場合には、率直な話、ちょっと間に合わなかったというのが偽らざるところだろうと思います。この問題につきましては、現在もさらに基本問題懇談会を継続中でございます。当然、より中心的な議題の中にそれが入ることは確かでございます。さらに引き続き検討を続けてまいりたいというふうに考えております。
  32. 藤原房雄

    藤原房雄君 まあ現在検討中と言いますから、非常に積極的な検討をなさっているということのようでございますが、これはぜひひとつ一刻も早くそうすべきが当然だろうと思います。また、所得あるいは賃金の何%補償という、こういうときですね、ILOなどの水準をとらえていうと、わが国の賃金のとらえ方との間に相違があります。賃金体系が違いますから、年功序列型と職務給、こういうことからいいまして、必ずしもILOで示す補償水準になっていないという問題、これもいつも——いつもといいますか、議論になるところでありますけれども、わが国の実質的な補償というのは、やっぱりILO水準よりも下回っているということがいつもいわれ、特に若年または低所得者ですね、この人たちに対して非常に低い水準といいますか、これもいつも論議になるところでありますけれども、これに対して、こういう問題についてもいままで御検討なさっていらっしゃったと思うんですけれども、この点についてはどうでしょう。
  33. 石井甲二

    説明員石井甲二君) ILOとの関係につきましては、先ほど申し上げましたように、いわゆる賃金の算定方法につきましては国内法にゆだねられているわけでございます。  それから、いわゆるボーナスを含むか含まないかという問題についての諸外国との関係につきましては、日本と諸外国とは非常に違った態様を持っておりますので、必ずしも一がいに比較はできないと思いますが、そういう意味で、いわゆる日本の現状における水準なりというものをどう評価するかという非常にむずかしい問題だと思います。しかし、御指摘のように、給付基礎日額算定方法について、ボーナスを含めるか含めないかという問題は、日本のボーナスというものの一種の評価を含めまして重要な問題であることは確かでございますので、しかも、長年の議論になっているところでございますので、さらに検討を続けさしていただきたいというふうに考えております。  それから、非常に低所得層について、実際の災害が起こった方々に対する手当てが問題であるという御指摘でございますが、現在、給付基礎日額の最低限を定めておるわけでございます、すなわち、現在は最低千三百八十円でございますが、これはたとえばアルバイトとか、あるいは非常に所得が低い方々がございますので、少なくとも千三百八十円以下の者は千三百八十円を最低限として補償する——一日でございますが、そういうことでございます。ただ、その千三百八十円が妥当かどうかという問題は議論の残るところだろうと思いますが、私どもとしては、できるだけ実態に応じてこの引き上げをはかってまいりたいというふうに考えております。
  34. 藤原房雄

    藤原房雄君 次に、前払い一時金制度の問題でありますが、これは暫定措置として、これは従来の遺族補償の一時金制度にかわって、これにかんがみて、年金制度一般になじまない間、遺族生活の激変を緩和するためにと、こういうことであったはずでありますが、最初五年間の措置がとられて、それからまた五年ですか、今回十年ということになったわけでありますが、暫定ということからいいまして、五年、五年で十年ですし、単にいま年数だけというわけではありませんけれども考えなければならぬ時に来ておるんじゃないかと思うんでありますが、今回特に十年延長してという、しかも、いままでのように暫定的な措置として十年を延ばすというわけでありますから、この措置について、基本的にどうお考えになっていらっしゃるのか。今後また、何らか新しい方向へ持っていくようなお考えなのか、いままでの踏襲でただ十年延長ということになさったのか、その点どうでしょうか。
  35. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 前払い一時金制度につきましては、昭和四十年の改正法によりまして、遺族補償年金化に伴う暫定措置として行なったわけでございます。それは四十年に労災保険の大改正をやりまして、少なくとも遺族に対する補償年金で、その受給権者が失権するまで、場合によってはその奥さんがなくなるまで年金で給付をするというふうに改めたのでございます。しかし、現実は、やはり日本の風土からして、年金だけで固定的にしてしまうことにやはり問題があるのではないかという御議論がございます。で、最初一時金をやる場合の困難性あるいはいろいろ問題点としては、一時金を一回に奥さんがもらって、それが親類、家族、あるいはその他の方々にまあ言ってみれば、すぐに消費してしまう。あとは金がなくなってしまうという問題がございまして、これを年金化したわけでありますが、しかし、日本の風土ではどうしてもやはり身分的な、あるいは社会的な、家族的な変動がそこにありますので、どうしてもある部分、一時金がほしいという方が残っております。そういうことから、年金がなじむまで、暫定措置として前払い一時金を四百日分だけ出す制度をつくったわけでありますが、実態を見ますと、現在ですら二六%の方が前払い一時金を御要望になっておるわけでございまして、やはり相当の事情が実際問題としてあることを否定するわけにはいきません。したがって、この際、もう少しこの問題について、暫定という線はくずしませんけれども、世の中の実態に即したような前払い一時金制度をこの際考えていこう、こういう形になったわけでございまして、今度の改正におきまして十年間さらに延長するとともに、いままでの四百日分という非常に硬直的な、一本しかない一つ制度を、バラエティーのある制度に改めたわけでございます。すなわち、最高を千日分にいたしまして、二百日、四百日、八百日、千日というような、言ってみればバラエティーのある一つの状態を設定いたしまして、遺族方々の必要に応じた弾力的な対応をいたしたいということでございまして、まあ、いわば社会的な需要にやはり当分の間対応せざるを得ない。しかもその対応において、硬直的でなく、やはり遺族方々の必要に応じた、きめのこまかい対応をこの際考えていきたい、こういうことでございます。
  36. 藤原房雄

    藤原房雄君 遺族関係者の方の声を入れて、そういうバラエティーに富んだ五段階ですか、きめこまかくなさったということでありますから、それはひとつ大きな前進であろうかと思います。前進といいますか、それはそれとして私も理解できないわけではないわけでありますが、四十五年ですか、この問題のいろんな論議がございましたときに、質疑応答の中で、関係者の関係局長さんや大臣の方の答弁の中に、こういう前払い一時金制度を設けるということについて、一つ前払い一時金を希望する人が多いのだと、四十三年では八二人のうち三十九人で、四七%でたいへん多いのだという御答弁がございました。また遺族が生業資金とか借金の返済に充てるのだということで必要なんだという、また、現段階では年金制度に完全になじまないから、こういう制度が必要ではないかと、四つ目には、前払い一時金制度にかわるべき制度として何かよい方法はないかと検討中だという、ここにも私は着目したいと思うのでありますが、こういう課長の答弁がございましたが、労働省の課長がおっしゃった。また、年金担保融資制度というものも検討しているが、最終的にはまだまとまっていないという。また、労災の前払い一時金制度の有効期限がその年に切れてしまうので一緒に改正したんだという、いろいろな角度からの論議があったわけでありますが、結局問題は、今後、地方公務員の場合、五十二年の十一月三十日までの期限があるわけでありまして、これが十年間延長されて六十二年十一月ということであります。こういうことで、ほとんど暫定的といいながら制度が固定化されてしまうという懸念といいますか、そういう考えも当然出てくるかと思います。現在国民皆年金という、こういうことで年金制度の定着というものが叫ばれているとき、安易に十年も延ばすということはどうかという、こういう考え方の上に立ちまして、希望者が多いといういまお話もございましたが、年金制度というものはやはり基盤としてがっちり育てていくという上からいきましても、また、この年金というものの法制の精神の上からいいましても、こういう方々の希望といいますか、一時金を希望する方が多いというのは、やはりこの社会情勢、年齢とか職種とか、いろんな立場の方がいらっしゃいますので、個々の場合非常に問題があろうかと思いますけれども、こういう年金を支給するということと同時に、それ以外に別な制度なり何なり考えるべきじゃないかという気がしてならないわけでありますが、たとえばこの特別支給金制度、この金額をふやしてこういうことに充てて、なるべくこの年金というものについての基本線というものをはっきりその方向に育てていくような考え方というものが大事じゃないかと思うんでありますが、まあかつてもそういう点については検討するというようなお話でもあったわけでありますが、この間について、労働省としてはどうお考えになっていらっしゃるのか、検討の経過とか、その間のことについてちょっとお伺いしたいと思います。
  37. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 前払い一時金につきましては、御指摘のように、本来年金の体系をとっているわけでございますから、あくまで基本は年金を主体にした一つの状態を、まあ言ってみれば社会的につくり上げていくということが前向きの姿勢であろうと思います。ただ問題は、年金の体系の中に前払い一時金をつくるということにはあくまでも本人の選択の問題がございます。したがって、どうしても一時金がほしいという方もおることは事実でございますので、私どもとしては、少なくとも一時金を前払いで取得をする場合に、その実態を御説明をしながら行政的な指導をしてまいりたいというふうに考えておりますが、ただ、一挙にその前払い一時金制度をこの際やめるかといいますと、なかなかそういう実態はないんではなかろうかというように考えます。  で、いままでどういう議論検討してきたかというととでございますが、一つはやはり前払い一時金制度の推移を見てまいりますと、昔から比べますと、ややその前払い一時金を取得をされた方々の比率は下がっておりますけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、二六%の遺族方々前払い一時金を御要望になっているという事実もやはりこれを否定できないわけでございまして、現段階におきましては、この前払い一時金制度を廃止するというわけにはいかぬだろうという結論に達したわけでございます。ただその場合に、先ほど申し上げましたように、四百日分という一本の硬直性を廃しまして、二百日から千日にわたるバラエティーを持った、まあ言ってみればニードに応じた選択を可能にするようなくふうをいたしまして、できるだけ遺族実態に即した前払い一時金制度の運用をはかってまいりたい、こういうことでございます。  以上でございます。
  38. 藤原房雄

    藤原房雄君 次、いろんな調整規定のことについて伺いますけれども公務災害補償給付とそれからほかの社会保障給付とが併給される場合の調整規定についてでありますけれども労災法でも、国家公務員法の補償法の中でも、これまでこの附則の中で、今後引き続き検討を加え、その結果に基づいてすみやかに別の法律をもって処理されるべきものとするという、こういうことがうたわれておるわけであります。この点についても今日までいろんな検討がなされてきただろうと思うんでありますが、これもいろんな問題がございまして、きょうは時間もだいぶたったようでございますから、あまり細部のことについてはお聞きいたしませんけれども、この調整についての考え方はやっぱりある程度整理いたしまして、制度的に筋の通ったものにすべきじゃないかと、このように考えるわけでありますけれども、今日までの検討の結果なりまた現在のお考えなり、お聞きしたいと思います。
  39. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 公的年金制度の全体の調整問題については、現在厚生年金との調整あるいはその他の調整を行なっておりますけれども、御指摘のように、非常に全体をあげますと必ずしも統一的な形になっていない部面もございます。そういうことで、従来から問題にしながら各省検討を続けてまいったわけでございますけれども、非常にむずかしい問題が最終的には相当ございまして、なかなか結論が得られないというのが率直な事実でございます。しかし、法律にもございますように、今後やはりより合理的な、より論理性を明確にした、そういった調整の仕組みを考えることは必要なことでございますので、さらに引き続き検討を続けたいというふうに考えます。
  40. 藤原房雄

    藤原房雄君 これも、いままでいろいろな論議もされてきたところでもありますし、いろいろな大きな問題かかえておることはわれわれも十分知っているわけでありますが、ひとつ積極的な御検討をいただいて、こういう非常に多様化した時代でもございますし、早急な結論を、結論といいますか、検討の結果というものを期待したいと思うんであります。  まあ今度のこの改正では、障害補償年金遺族補償年金ですか、この間のことについて改正があったわけでありますが、葬祭補償額の問題については今回の引き上げはないわけですか。これは労災関係でも今回は引き上げがないということ……。
  41. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 葬祭料でございますか。
  42. 藤原房雄

    藤原房雄君 ええ、葬祭補償
  43. 植弘親民

    政府委員植弘親民君) 葬祭補償につきましては、すでに政令で改正させていただいておりますが、今回の法律には入っておりません。
  44. 石井甲二

    説明員石井甲二君) 労災補償につきましても、同じように法律には書いてございませんが、いままで七万円プラス三十日の分を本年四月一日から九万円に引き上げました。すなわち九万円プラス三十日、こういうことになります。
  45. 植弘親民

    政府委員植弘親民君) 地方公務員の場合も、大体労災と同じようでございますが、九万円プラス平均給与分三十日分といたしますが、この額が平均給与分六十日分に満たないときには六十日分を補償するという規定に、四月一日からならせていただいております。
  46. 藤原房雄

    藤原房雄君 時間がきてしまったようですから、最後に、ほんとうはこれは大臣にお聞きしたいところですが、局長に、地方公務員災害の問題ですね、統計的にある程度資料をちょっと見ておるわけでありますが、急激にふえておるとは思いませんけれども、決して減ってはいないわけであります。現在までの地方公務員災害の推移——金額的にはたいへんにふえておるようでございます。それだけに、こういう時代でありますから当然のことかと思うのでありますが、各障害補償の種類によりまして推移があろうかと思いますけれども、概括的に、自治省として地方公務員災害についてどのように掌握なさっていらっしゃるのか、また、今後に対する決意なりお考えがあったらお伺いしたいと思うんですが。
  47. 植弘親民

    政府委員植弘親民君) いま先生から御指摘のございましたように、まあ私どもがいま補償いたしております件数等からまいりますと、大体横ばいみたいなものでございますが、これだけだんだんといろいろと手だてを加えてきておるのでありますから、減っていくのがあたりまえと思います。それが横ばいと、いうことについては、基本的に、何と言いますか、通常の災害防止といったような措置、これを徹底しなきゃならぬのだと思います。幸いと言いますか、一昨年におきましても、労働基準法におきまして安全衛生関係法律も独立できまして、私どもといたしましても、地方公務員は労働基準法はそのまま適用されますので、そういった労働基準法の趣旨にものっとりまして、十分地方団体にも、災害防止、健康管理といった問題を注意いたしているところであります。他の共済その他に比べまして、若干そういった災害防止等については手ぬるかった面があるだろうと率直に思います。今後は十分地方団体に対しまして、そういった事前の災害防止策、こういったものを徹底いたしたい。それからまた、先生も先ほど御心配いただきましたが、いろいろと職業病みたいなものが出てまいりますから、そういうことにつきましては、勤務環境と言いますか、そういったものの改善といったこともはかってまいりたい、こういうふうに考えております。
  48. 藤原房雄

    藤原房雄君 いまいろいろお話しございましたが、確かに件数は停滞状態という状況のようであります。どうかひとつ災害防止に徹底され、そしてまた環境の改善ということについてもひとつ積極的に取り組んでいただきまして——この補償のほうに熱を入れるのも大事なことでありますけれども災害を起こさぬことが第一でありますから、ひとつ積極的な御指導をいただきたいと思います。  きょうはこれで終わります。
  49. 久保田藤麿

    委員長久保田藤麿君) 本案に対する本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後三時四分散会      —————・—————