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政府委員(
佐々木喜久治君) 去る十一月十六日の
異動によりまして
消防庁長官を拝命いたしました
佐々木でございます。どうぞよろしくお願い申し上げる次第でございます。
これから、
熊本市におきまして去る十一月二十九日
発生いたしました
大洋デパートの
火災について御
報告を申し上げる次第でございますが、ちょうど
火災予防運動のさなかにこのような大災害が
発生いたしまして、多数の
死傷者を生じましたことにつきましては、まことに遺憾に存ずる次第でございます。その内容につきまして御
報告を申し上げるとともに、この
火災によって得られました教訓を、今後の
火災防止のために役立てていきたいというふうに考えている次第でございます。
まず、その概要について御
報告申し上げたいと思います。
出火場所は
熊本市の
下通一丁目でございまして、これはちょうど
熊本市における最も
繁華街の地域でございます。
出火の日時は十一月二十九日の午後一時十五分ごろと推定されておりますが、
消防署に知らされました時間が、そこにございますように、一一九番によりまして一時二十三分に通報が入っております。鎮火いたしました時間が夜の九時十九分、約八時間延焼したわけでございます。
建物の構造は、
鉄筋コンクリート造の地下一階、
地上九階
——といいましても、大
部分は
地上七階でございます。
地上九階の
建物で、
敷地面積が約三千百三十平方メートル、
建築面積が二千四百平方メートルでございまして、
延べ面積が約二万五百平方メートルでございます。
その各階の用途は、
資料のほうに書いてございますように、それぞれの階に
売り場が設けられておるわけでございますが、ちょうど
出火をいたしました
場所が三階の
呉服・
寝具売り場の
部分でございます。この
建物は
昭和二十七年に竣工いたしました、いわば戦後の
鉄筋コンクリート造の
建物であるということでございまして、それから、最近、本年になりまして
増築計画がございまして、現在その
増築の
工事中であったわけでございます。
それから
死傷者は、昨日の六時現在におきまして
死者百一人ということで
報告をされておりますが、先ほどまいりました
報告によりますと、この
死者が百人というふうに訂正をされておりますので、この
資料を御訂正願いたいと思います。ただ、その内訳が、百人になりました場合に、どの階で、また男女の性別の減がどちらになるか、これがまだ確定的でございません。それから
負傷者の数が九十五人でございます。そうして、
死者、
負傷者とも女性の
被害者が多いということになっておるわけでございます。
それから
出動いたしました
消防車両は、
熊本市の
消防局——これは
常設消防でございますが、
消防局と
消防団の
車両は、これは
全車出動でございます。さらに、隣接の
市町村の
応援協定によりまして、各
市町村から
救急車その他の
車両が
応援をいたしております。そのほかに、
熊本県の
警察本部並びに自衛隊からの
応援がございまして、主として
救急の作業をいたしております。それから日赤の
熊本支部、これもほとんどが
救急の業務でございます。さらに隣県の福岡県の久留米市の
消防、それから筑紫の大宰府町からの
応援がございます。その人員が、総計で二千六百九十五名、
出動の
車両が、
ポンプ車で四十六両、
はしご車が三両、
救急車が二十九両、その他
車両が百三十九両、ヘリコプターその他の航空機が十五機というふうになっております。
それから
救出の
状況は、そこに書いてございますように、
消防隊による
救出が百二十一人でございます。屋上に出た者あるいは窓を破って出た者は大体
救出ができておるわけでございます。そのほか、この
建物は
増築による
工事がございましたし、さらにまた現在、
消防関係のいろんな
設備の増強のため、他の
部分におきましても
工事が行なわれておりまして、その
工事のための
足場が組まれております。その
足場を利用いたしまして相当多数の
人たちが
脱出をいたしております。
火災の
状況でございますが、
出火の
場所は、二階から三階に上がります
階段の
踊り場付近というふうに推定をされております。この
踊り場付近からなぜ火事が出たかということでございますけれ
ども、ちょうどこの
デパートが
歳末の売り出しが始まりまして、
商品が
階段、
踊り場付近にも相当積まれておった。その積まれておったところから
火災が
発生をしたというふうに見られております。そうしてまた特にこの三階の
踊り場付近に積まれておりました
商品が、
呉服、
寝具でございましたために、急激に煙が
発生をし、また火も出たというようなことで、
避難が非常に困難になったのではないかというふうに考えられております。
それから、二階から三階の
踊り場付近から
火災が
発生いたしました
関係で、三階以上の階は全部焼損をいたしております。
それから、その当時の気象の
条件でございますが、天候は晴天でございまして、風がかすかに吹いておるというような
状況で、
湿度が三八%というふうに、
湿度が非常に低かったために、その日は
異常乾燥注意報が発令をされておったわけでございます。
それから、この
デパートの
消防設備の
状況でございますが、さきに御説明申し上げましたように、
昭和二十七年の古い
建物でございましただけに、
消防設備の
設置が非常に不備でございましたために、幾度か
消防署からの
改善命令が出されておったわけでありまして、ちょうどこの
増築を機会に、いろいろな
設備につきまして
工事中であったわけでございます。それで、この日までに
設備が終わりましたものは、そこに書いてございますように、
消火器、それから
屋内消火栓、それから
連結送水管、
放送設備、この
部分までは一応
工事は完了し、
設置済みでございます。ただし、この
火災の当日はこの
設備は動いておりません。それから五番目からの、
自動火災報知設備あるいは
煙感知器、
スプリンクラーの
設備、
避難器具、これが
設置工事の最中であった。大体来年の一月末
工事完了を目標にして
工事が進められておったということでございます。
それから、
防火管理の
状況でございますけれ
ども、
防火管理者は届け出をされておったのでありますけれ
ども、
消防局が指示いたしましたにもかかわらず、
消防計画というものは
作成をされておらなかったというのが現状だったわけであります。
こうした
火災の
状況からいたしまして、私
どもが
問題点として考えましたのは、まず、第一が
出火点の
階段部分に衣類、
寝具等の
商品、いわば
可燃物が多量に集積されておった。そのために
火災が急激に
延焼拡大をしていったと。それからまた、
縦穴区画がまだなされておらない。したがって、この三階が
呉服、
寝具であり、それから四階が
婦人服の
売り場でありますために、この
火災の
延焼拡大をする
条件が非常によく整っておったということが言えるだろうと思います。そのために、上の階にまで急速に
拡大をしていったということが言えるようであります。
それから二番目といたしましては、
従業員による
避難誘導というものが必ずしも適切ではなかったようであります。
従業員の中にも、
報告を聞きますと、
相当数の
従業員は、数人ないし十数人のお客をまとめて誘導しているという姿が下のほうから見受けられたそうでありますけれ
ども、やはり
従業員としましては、全体的にはその
避難誘導必ずしも適切ではなかったようでございます。
それから、この
デパートは窓が相当あったわけでありますけれ
ども、窓の
部分にはほとんどの窓に
商品だなが設けられてございまして、まず、窓のない
建物とほぼ同じような
状況であったわけです。そのために、窓からの
救出活動がほとんどできなかった。そしてまた、この
商品だなの
部分というものは相当がんじょうにできておりましたために、
被害者が外へ出るにしても、相当これは力のある者でないというと、窓を破って出ることができない
状況にあったというふうに考えられます。
それから、
スプリンクラーの
設備や、
自動火災報知機の
設備は、いま申しましたように、現在
工事中でございまして、
設置されておらなかった。そして初期の
消火に失敗をし、しかも
火災の
報知がなされておらないというようなことが確認をされるわけであります。
こういうような
状況、
問題点ということから、今後の
対策といたしまして、私
どもが早急に検討を要するものとして考えておりますものは、特にこれは
建設省等とも協議をしてその
対策を定めていかなけりゃならない問題でありますけれ
ども、まず、
百貨店等に対する
措置としては、第一点が、
可燃物の
制限ということが一つ考えられるのであります。この階の
面積に対して
可燃物の量をどの程度までに
制限をするかということは、技術的になかなかその限界を判定することがむずかしい問題でありますけれ
ども、ある程度この
可燃物の
制限ということはやる必要があるのではないだろうかということを考えております。
それから二番目が、
売り場部分の
通路というものをもう少しとっておく必要がある。そしてしかも、この
通路を整理をして、この
通路を利用した、たとえば
ワゴンセールといったような形で、
通路に物を置いてまた
売り場にしていくというような方式は、これは厳重に避けなけりゃならないというふうに考えておるわけでございます。
それから三番目といたしまして、特に
百貨店等について有効であるというふうに考えられております
スプリンクラーの
設備でございますが、これは実は新しい
建物につきましては、その
設置は義務づけられておるわけでありますが、
既存の
建物に対してこれは強制されておらないという点に問題があるような
感じがいたします。そういう意味で、
既存の
建物についてもこの
設備を義務づけるという点について、
法令の
改正が必要であろうというふうに考えております。
それから四番目としましては、
従業員の
避難誘導というものについて、これをもっと
強化をしていかなければならないだろうというふうに考えております。
それから五番目としましては、
排煙設備の
基準というものを
強化する必要がある。特に
デパートの場合には
可燃物が相当多いわけでございますので、
避難上あるいは
消防上、
開口部というものについて、ある程度これは、最近の
建物の傾向はこの逆の方向でございますけれ
ども、やはり有効な
開口部というものを確保する必要があるのではないかというふうに考えております。
それから二番目には、
建設省、特に
建築基準法の
改正の問題として、私
どもの立場から要望しておきたいというふうに考えておりますのは、現在の
建物を見ますというと、エスカレーターの
部分なりあるいは
階段部分というものが、
火災のためのいわば
誘導路になったり、あるいはまた煙が拡散するための
通路になったりしている。こういうことで、この
縦穴区画というものを、もう少し
既存建物につきましても遡及適用させる必要があるのではないか。
それからまた、いわば
建物の空間を確保するというようなことで、ベランダあるいはバルコニーというものを、こういう多数人が集合する
建物の場合には、これの
設置を義務づける必要があるのではないかということでございます。
それから三番目には、今回の
火災でも問題だったと思いますけれ
ども、
非常階段というものを
建物の内部に
設置するのではなしに、外部に
非常階段を
設置をする、これをやはり
既存の
建物についても強制をするということを考える必要があるのではないかというふうに思っております。
それから、
消防体制の問題といたしまして、
はしご車、
排煙車、
救助工作車等を増加をする必要がある、いわば装備の
近代化をはかる必要があるというふうに考えております。今回の
火災の場合には、
建物の修理のための
足場が組まれておりましたために、この
足場を利用して大
部分の人が
脱出をすることができたということで、ちょうど
はしご車が二台ありましたために、これによって老人あるいは子供を
救助するということができたわけでありますが、それによって、まず外へ出た人はすべて
救助したということで、
救助能力には余裕があったわけでありますが、
足場が、
工事用の
足場がなければ、おそらく現有の
はしご車等の
能力ではなかなか全員の
救助は困難だったのではないだろうかというような
感じがいたします。
それから、
救助技術につきましても、さらに一段の向上をはかる必要があるというふうに考えております。
それから次の問題は、こうした
法令等の
改正を行ないますまでに当面とります指導といたしましては、ちょうど
歳末の大売り出しを控えておりますために、いま
百貨店の
売り場におきましては相当な
商品が出されておるわけでありまして、廊下なり
階段なりの
避難通路というものについては
商品を置かないように指導していく。ざらに、
防火管理体制の
徹底をはかるというための
予防査察というものを、年末を控えて
強化をしていく必要があるというふうに考えております。
さらに、
百貨店以外の、たとえばスーパーでありますとかあるいは地下街というものにつきましても、同様に、
防火管理体制の
徹底をはかりますための
予防査察というものを行なってまいりたいというふうに思っております。そうしたまた
予防査察の結果改善すべき事項については、すみやかに
是正措置を講ずるという必要があるだろうというふうに考えておるわけでございます。こうした
是正措置に対する
措置命令というものにつきましても、強く
措置をとる必要があるだろうというふうに考えておるわけであります。この
措置につきましては、今明日中にでも、各
地方団体あてに通達を出すつもりでございます。
以上のとおりでございますが、最後に、
参考の表でございますが、この
建物の
平面図を次に掲げてございます。図面の右側の
部分が
増築部分でございます。そして、
出火をいたしました
場所は、この
増築部分の
反対側でございます。
反対側のほうから
出火をいたしております。そして、この
増築部分の
工事が、ちょうど五階のところまでコンクリートが打たれておりましたために、五階におった
人たちは、この
増築部分に
脱出をした人と、それから
旧館と書いてありますのが
——上のほらに
旧館とありますのがこれは
事務棟でございますが、この
事務棟に渡り廊下があったために、この二つを利用して五階の人は
避難することができた、そのために五階には
死傷者がほとんどなかったというような
状況でございますので、これらも、ひとつ今後の
防火対策上の
参考にする必要があるだろうというふうに考えております。
なお、
デパートの
断面図をまた次のほうに掲げてございます。これは一応
参考でございます。
以上、簡単でございますが、御
報告申し上げる次第でございます。