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1974-05-16 第72回国会 参議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十六日(木曜日)    午後一時十九分開会     —————————————    委員異動  四月二十四日     辞任         補欠選任      木村 睦男君     高田 浩運君      河本嘉久蔵君     増田  盛君      嶋崎  均君     斎藤 寿夫君      加藤  進君     渡辺  武君  四月二十五日     辞任         補欠選任     茜ヶ久保重光君     加藤シヅエ君  四月二十六日     辞任         補欠選任      増田  盛君     河本嘉久蔵君      斎藤 寿夫君     嶋崎  均君      加藤シヅエ君    茜ヶ久保重光君      辻  一彦君     吉田忠三郎君  四月二十七日     辞任         補欠選任      吉田忠三郎君     辻  一彦君  五月七日     辞任         補欠選任      嶋崎  均君     塩見 俊二君      藤田 正明君     鹿島 俊雄君  五月八日     辞任         補欠選任      塩見 俊二君     嶋崎  均君      鹿島 俊雄君     藤田 正明君      田中寿美子君     小谷  守君      栗林 卓司君     萩原幽香子君  五月九日     辞任         補欠選任      桧垣徳太郎君     長谷川 仁君      藤田 正明君     増原 恵吉君      青木 一男君     大谷藤之助君      小谷  守君     田中寿美子君  五月十日     辞任         補欠選任      増原 恵吉君     藤田 正明君      長谷川 仁君     桧垣徳太郎君      大谷藤之助君     青木 一男君  五月十三日     辞任         補欠選任      嶋崎  均君     金井 元彦君      田中寿美子君     小谷  守君      辻  一彦君     鈴木  強君      萩原幽香子君     栗林 卓司君  五月十四日     辞任         補欠選任      桧垣徳太郎君     安田 隆明君      河本嘉久蔵君     橋本 繁蔵君      柴田  栄君     片山 正英君      藤田 正明君     大竹平八郎君  五月十五日     辞任         補欠選任      安田 隆明君     桧垣徳太郎君      片山 正英君     柴田  栄君      橋本 繁蔵君     河本嘉久蔵君      金井 元彦君     嶋崎  均君      大竹平八郎君     藤田 正明君  五月十六日     辞任         補欠選任      鈴木  強君     辻  一彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 河本嘉久蔵君                 藤田 正明君                 成瀬 幡治君                 多田 省吾君     委 員                 柴田  栄君                 嶋崎  均君                 桧垣徳太郎君                 小谷  守君                 辻  一彦君                 戸田 菊雄君                 野末 和彦君    政府委員        大蔵政務次官   柳田桃太郎君        大蔵大臣官房審        議官       岩瀬 義郎君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    参考人        中央大学教授   川口  弘君        横浜市立大学教        授        原  司郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○租税及び金融等に関する調査  (今後の金融機関あり方について)     —————————————
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  本日、鈴木強君が委員辞任され、その補欠として辻一彦君が選任されました。     —————————————
  3. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動に伴い、現在理事が三名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事河本嘉久蔵君、藤田正明君及び栗林卓司君を指名いたします。     —————————————
  5. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  租税及び金融等に関する調査のため、本日、中央大学教授川口弘君及び横浜市立大学教授原司郎君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中にもかかわらず、本委員会に御出席をいただきまして、厚く御礼を申し上げます。ひとつ忌憚のない御意見をお聞かせ願えればまことに幸甚に存じます。  次に、これからの会議の進め方につきまして申し上げます。  川口参考人及び原参考人に、今後の金融機関あり方につきまして、お一人十五分程度の御意見をお述べいただいた後、本委員会を休憩し、直ちに委員打ち合わせ会を開きまして、参考人意見陳述中心に、両参考人を交えまして、委員相互フリートーキングを行ないたいと存じます。つきましては、各委員におかれましては、忌憚のない御意見の交換をお願いいたします。  なお、政府側から柳田大蔵政務次官岩瀬官房審議官出席されております。  では、川口参考人から御意見をお述べ願います。
  8. 川口弘

    参考人川口弘君) それでは、金融機関あり方について私の意見を申し上げます。短時間でございますから、できるだけ私の特徴的な考え方を簡単に申し上げてみたいと思います。  私は、金融市場というものは、本質的に不完全競争市場だということを前提にいたしまして問題を考えていきたいと思います。なぜ不完全競争市場にならざるを得ないかということには、いろいろ理由はございますけれども、何よりも取引基礎が、取引者相互信用に依存しているということから、どうしても取引が、相対取引の性格を帯びざるを得ないわけであります。ところが、そうした取引者は、銀行のほうから評価をする場合に、その質が千差万別であります。しかも、大企業中小零細企業あるいは個人というように、その間に銀行から見て質の優劣の格差が非常に明瞭な階層別が存在しております。特にそういう質的な評価格差原因になりますものは、これも幾つかあげることができると思いますが、第一には、もちろん信用あるいは貸し出しの場合には特にそれに関する危険の格差がございます。その場合に、そのような銀行側から見た信用ないしは危険の評価に違いが出てまいりますのは、相手側にも確かにいろいろな客観的な事情があって格差があるわけでございますけれども、さらにそれを銀行がどのように評価するか、銀行相手側の実態をどの程度つかまえているかというようなことから主観的な評価が加わって、一そうその格差が大きくなるわけでございます。もちろん担保を持っているか持っていないかというようなことも、この信用ないしは危険に関する格差の中に含めて考えております。  しかし、それだけではございませんで、さらに銀行側から見れば、取引金額の大小ということが、資金コストに非常に大きな影響を与えるわけでございますから、たとえ信用ないしリスクの点で同格の取引者であっても、取引が必然的に小口になる場合には、それだけコスト高の要因になるということで、銀行側からは、大口取引者に比べて好ましくない相手と見なされがちであります。  そのほか、これは別に階層別ということとは関連がありませんが、貸し出し期限資金の使途あるいは取引安定性などというような事柄から、どうしても借り手について評価格差が生じてしまうわけです。また預金者の場合も、一口当たり金額と、それから預金安定性、こういう点からいって、大口預金保有者のほうにどうしても高い評価を与えがちになってしまう。こういうように、借り手預金者いずれも銀行側から見て、その借り手ごと預金者ごと評価格差が生じやすい。しかもそれは、客観的な基礎に立った格差だけではなくて、銀行側の主観的な評価によって左右される面が非常に多い、こういうことがあるわけであります。  そこで、そのようなことが前提になりまして、銀行取引者との間の関係ができ上がってくるわけでありますけれども、とりわけ戦後のわが国の場合のように、戦時を通じて蓄積した資本が破壊され、そして資本不足状況から出発して、しかも高度成長を続けてくる、こういうような過程では、企業の蓄積が、銀行からの借入金に大きく依存してまいりましたし、しかもその中で高度成長が進められる、こういうことが展開してまいったわけでありますから、そこで特に大銀行の場合には、戦前からの大企業との歴史的なつながり、そういうものがございまして、主として大企業に集中的に融資をするという行動が一般的になってまいります。  大企業との取引大口取引でございますから、そこで最近国会でも問題として取り上げられましたような、自己資本の一〇%をはるかにこえるような大口貸し出しがかなり広く行なわれるようになってまいります。そうなってまいりますと、貸し手と、それから借り手との間に、いわば運命共同体的な関係ができてまいるわけで、単に、かつての財閥出身銀行と、財閥出身企業というような、そういう歴史的条件だけではなくて、戦後に新たに加わったそういう大口貸し出しを通じての運命共同体的な関係——運命共同体的と申しましたのは、たとえば金融が非常に引き締まるときでも、こういう大口貸し出し先に対しては、できるだけ資金の供給の円滑を欠かないようにする。もしそうしないで、相手側経営的に困難な状態におちいりますと、それは銀行自身経営にも大きくはね返ってくる、そういうような、いわばその限りでは経済的な観点からの癒着関係も非常に強くなってまいるわけであります。このようにして、大銀行と大企業の間に強い癒着関係が発生しております場合には、その裏側として、金融の繁閑の過程で、しばしば中小企業零細企業等に対して金融引き締めのしわを寄せる、こういう行動が一般化してまいります。  このような条件背景になっておりますから、したがって、特にわが国の場合には、先進工業国の場合に比べてさらに金融市場の不完全性が強い、こう申しても言い過ぎではないというふうに私は考えているわけであります。そこから金融の二重構造といわれるような事態が発生してまいりまして、その中で、中小企業分野に必要な資金を確保するための、中小企業金融専門機関というような専門機関が育成されてくることになったわけであります。  また他方では、大銀行と大企業との癒着関係の中で高度成長が続けられてくる場合には、どうしても大企業に対して長期設備資金のようなものを貸し出し過ぎる、こういう心配が出てまいりますから、その点をある程度押えるためには、長期金融専門にする別の専門機関が必要になってくる、こういったようなことが、戦後最近までわが国専門機関制度が維持された大きな理由ではないだろうか、このように考えておるわけであります。  ところが、四十年代に入りまして、金融効率化論という考え方が、諸外国の実例などを背景にして、国内で非常に強くなってまいりまして、そのような方向に沿って、金融制度金融機関制度を再編成する、また金融政策あり方を変えようと、こういう傾向が強まってまいったわけであります。そのような議論を金融制度調査会で取り上げた段階で、私も委員の一人として参加しておりましたけれども、その際、都市銀行は、資金コストが非常に低くて、貸し出し利回りも低い、だから効率が高いんだ、中小企業金融機関はその逆に、資金コストが高くて、貸し出し利回りも高い、そのように効率が低いんだ。そしてこのような効率格差が発生するのは、都市銀行は大規模機関であって、それによって経営合理化を進めることができる、このような規模の制約が、中小企業金融機関の非効率を引き起こしているんだ、こういった観点がかなり強調されたわけであります。しかし、私の考えでは、中小企業金融機関と大銀行の間に、資金コスト格差があるということは、それをもって直ちに効率の違いと断定することはできないと思います。それは、都市銀行中小企業金融機関預金についても、貸し出しについても、その一口当たり金額、これにはきわめて大きな差があるわけであります。ところが、一口の預金取り扱い、一件の貸し出し取り扱いに必要な人件費物件費には、それほど差のある理由はありませんから、当然小口取引の、一円当たりのコストは、大口のそれに比べてずっと大きくならざるを得ないわけであります。そういう取引金額大口性小口性の差、このことが、大銀行中小企業金融機関との間のコスト格差の一番大きな原因であるというふうに私は考えております。統計的にこの点を、たとえば計量的な分析で明確にするということは、統計不足ということもありまして、なかなか困難でありましょうけれども、いろいろな状況証拠を援用して考えますと、そういうふうに判断できるわけであります。  もしその考え方が正しいとしますと、中小企業金融機関コスト高というのは、効率の低さに由来するのではなくて、専門性、その専門的な使命のために起こってきている問題である、こういうふうに考えざるを得ないと思います。  貸し出し金利についても同様でありまして、一口当たり平均貸し出し利回りは確かに大きな違いがあります。しかし、都市銀行の大企業向け中小企業向け貸し出し金利を分離して推計をいたしてみますと、これもわれわれのように外側から公表される統計をもとにして推計をする場合には、かなりラフな仮定をおいてしか推計できませんので、そう正確なものとは思いませんけれども、しかし、私の試みた推計結果では、大企業向け中小企業向けにかなり大きな貸し出し金利格差がある。そして、中小企業向け貸し出し金利は、中小企業金融機関平均貸し出し金利とそれほど差がないというふうな結果が出てまいったわけであります。もちろん最近の金融の超緩慢というような時期には、都市銀行中小企業金融に積極的に進出されて、そしてその際には、大企業並みに近いような低い金利で、中小企業金融機関のかつての得意先をとっていくというようなことがかなり行なわれたようでありますけれども、私はどうも、そういう特別な場合には非常に低い金利をつけるけれども、都市銀行中小企業向け貸し出し金利を全体として平均した場合には、必ずしもそれほど低くないのではないだろうかというふうに考えておるわけであります。  いずれにしましても、そういうような面から考えまして、単に資金コストとか、貸し出し利回りの表面的な差でもって効率を判定するということは間違いだと。さらに借り手にとっては、資金量安定性ということが一つの大きな効果になるわけでありますが、その点から見ますと、御承知のように大銀行の場合には、金融引き締めの際に、中小企業向け貸し出し増加額が大きく引き締められるということで、中小企業にとっては、それらの大銀行からの借入金というのは、金融がゆるんだときにはたくさん貸してもらえるけれども、締まってくると押えられるという意味で、かなり安定性を欠いているというふうに見なければならないわけであります。そういう点も勘案いたしますと、必ずしも効率の上で大きな開きがあるとは言えない。それぞれの専門性に応じた活動をしているというふうに考えなければならないというふうに思っているわけであります。  そこで、もしそういう考え方が正しいといたしますと、たとえば今日アメリカなどで金融制度改革案方向として提案されているような一すべての金融機関を同じ土俵の上で競争させようという自由化方向、それを無差別に取り入れるということは、非常に大きな問題を引き起こすと考えております。実は預金金利自由化アメリカで実験され、あるいは西ドイツで実現し、フランス等でも実施されてきたわけでありますけれども、その結果を見てみますと、結局それは企業大口預金金利を高めることに終わっているわけであります。そしてアメリカの場合には、住宅金融を担当しております貯蓄貸付組合などの資金が、商業銀行に食われて枯渇してしまうというような問題が起こって、結局はその自由化は、大口預金だけにしか認められないで、その実験は失敗をしておるわけであります。ドイツなどにつきましては、商業銀行定期預金というのは、ほとんど企業預金でありまして、個人の預貯金というのはシュパールカッセその他の機関に主として預けられている。こういう関係があり、そしてシュパールカッセ行動性が非常に抑制的である。そういうことがあって、あまり大きな問題は起こっておらないようでありますけれども、しかし、金利が上がったのが大口定期預金であり、庶民の貯蓄金利は必ずしも上がっておらないという結果は同じだと思うわけであります。  そういったことを見ましても、無差別な自由化方向というのは問題がある。やはり専門性を重視しながら金融機関に対する政策を進めていって、そしてその中で、個々の専門機関の内部でできるだけの効率化をはかっていく。そういうような使い方が正当ではないだろうかと、このように考えているわけでございます。  時間がございませんから、私の意見はこのくらいでとどめます。
  9. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 続いて原参考人にお願いいたします。
  10. 原司郎

    参考人原司郎君) それでは私も、いま考えておりますことを、あまりまとまっていないかもしれませんけれども、お話しさせていただきます。  ただいまの川口参考人からもございましたように、昭和四十年代に入りまして、わが国金融行政が、金融効率化という理念で進められてきたということは御承知のとおりでございます。その主たる内容は、できるだけ金融機関経営効率化をはかる、そのためには、金融機関間の競争条件で規制されているものを撤廃ないしは緩和していって、金融機関間の競争を一そう激しくするということと、規模利益追求するということ、そのことを通じて金融機関経営効率化をはかって、そして預金者にはできるだけ高い預金金利を、そして借り入れ者に対してはできるだけ低い貸し出し金利というものを実現していくということが、金融機関公共性を達成するという道でもあるというようなものではなかったかと思います。  その後の金融効率化行政の足取りをたどってみますと、第一には、ずっと戦後硬直的に推移してきました低金利政策に基づく金利規制というものがかなり弾力化方向に向かってきたわけでございます。  特に、一番特筆されますのは、昭和四十六年以降、四十七年の一時的な引き下げはありましたけれども、預金金利が今日まで一貫して引き上げの方向に進められてきたということ、それから第二番目に、店舗規制弾力化が行なわれて、店舗配置がかなり各金融機関の自主的な意思できめられるようになったということ、それから配当規制緩和されて、統一経理基準の実施のもとで、各金融機関の収益をめぐる競争が実現していったということ等ではなかったかと思います。  これに対して金融機関側対応状況を見ておりますと、まず第一に、規模利益追求の動きが非常に加速化されてきたということでございます。これは、御承知のように、中小金融機関、例の二法によりまして合併転換等が促進されたと、それが促進の材料になったということもございますし、その後出されました「一般民間金融機関あり方等について」という例の金融制度調査会答申等が刺激になりまして、都市銀行合併すら生まれてきたということは御承知のとおりでございまして、そうした対応関係が一つ出てきたということ。  それから第二番目に、店舗配置効率化というのは、やはり特に都市銀行中心に進められてきまして、過疎地域から都市化の一そうの進展のきびしいところに店舗配置転換が行なわれて、店舗配置効率的な運営というものがなされたということ。  それから第三番目に、金利機能活用による資金配分というものが、これは金融効率化の中で主張され、特に例の「一般民間金融機関あり方等について」の答申の中で主張されてきたことでありますけれども、こういった金利機能活用による資金配分あるいは金融機関自主性に基づく資金配分というものが行なわれてきたということ。もちろん、先ほど川口参考人の御意見の中にもありましたように、系列企業への融資というものの比重も高かったわけでありますけれども、そういった対応関係を示してきたというふうに考えることができるわけでございます。  こうした金融効率化論の中で、私が考えまして確かにメリットと考えられる面もなかったわけではないけれども、反面デメリットと考えられる面がやはりこの際十分に評価されなければならないのではないかということでございます。で、メリットとしては、先ほど来述べました中にありました、各金融機関経営効率化というものに対する真剣な対応というものがなされてきて、それができるだけ高い預金金利を可能にするというふうな条件をつくっていったということは争えないわけでありますけれども、やはり規模利益追求というものがあまりに急激に進みますと、零細あるいは中小顧客に対するサービスというものがおろそかになる。つまり金融機関経営というものが先に進んでしまって、その金融機関がいかなるサービスをすべきかという点が非常にあいまいに残されるということがいえるのではないかということでありますし、さらに、御承知のように、一昨年の金融緩和がきわめて大幅に進みましたときにおける金融機関行動を見てみますと、やはりそこにおける資金配分あり方に非常な疑問を感じさせられる点が多々あったことは御承知のとおりでございます。  先進国型の金融構造のもとでの銀行あり方でございますと、たとえば金融緩和時点、まあ先進国は比較的金融緩和状態構造的に定着しておるといわれておりますけれども、そのもとでは、やはり銀行資金の運用ということにつきましては、たとえば有価証券投資貸し出しを合計した分について、アメリカ商業銀行の例などを見ますと、三〇%は消費者金融ないしは住宅金融である、それから三〇%は公債の買い入れであるというふうなことになっておりますけれども、わが国の一昨年の金融の超緩慢時における銀行貸し出し行動は、確かに一面において住宅金融あるいは中小企業金融あるいはそういった零細企業への進出というのがありましたけれども、やはり基本的には、経済全体が沈滞しておって設備投資がそれほど盛り上がらなかった時点で、しかも、金融緩和貸し出し金利が傾向的に下がっていく中で、大企業への貸し出しが毎月記録を更新するような形で伸びていって、これが土地投機であるとか、あるいは商品買い占め等につながっていったということは周知のことでございまして、そういった形に出たということは、その金融緩和状態はいずれ解消して、金融が逼迫した時点には、やはりわが国金融の主たる機能というのは、家計の貯蓄を吸収して、そして大企業資金を流していく、こういうような使命にもう一度戻るのではないかというふうな見通しがあったからではないかと思われます。そういった形の中で、金融の転換、特に銀行行動の転換というのが必ずしも見られなかったということではないかと考えられるわけでございます。  ところで、最近におきましては、福祉金融というものが非常に強く叫ばれて、福祉金融論が花盛りでございますけれども、この福祉金融ということは、どうも私は金融効率化という従来進められてきた行政理念というものとかなり根本的に違うものではないか。そういった意味では、発想の根本的な転換が必要とされるのではないかというふうに考えております。  で、福祉金融、まあ福祉社会実現のための金融ということになろうかと思いますが、これをなかなか具体的に示すということはむずかしいのですけれども、いまかりに福祉金融というものを消極的な側面と積極的な側面に分けまして、消極的な側面といたしましては、たとえば公害とか地域住民に不利益を与える、あるいは反社会的な企業貸し出しを行なわないというようなこと、あるいは公害防止の事業に対して積極的に金融をしていくというふうにとらえ、また積極的な側面を個人の住宅建築への金融であるとか、あるいは地域における生活環境の整備であるとかいうふうなものに対する積極的な貸し出し行動というふうにとらえてみますと、こういった形での資金の配分というものは、必ずしも従来とられてきた金融効率化行政の流れの中では実現していかないのではないかというふうに考えられるのではないかと思います。  で、確かに、先ほどから述べておりますように、金融効率化ということは、金融機関経営効率化というものを推し進めるという点で、メリットがあったわけですけれども、しかし、わが国の今日における金融の仕組みの、あるいは金融が果たさなければならない機能ということから考えると、金融効率化行政というものの転換がやはり必要ではないかというふうに考えられるわけでございます。たとえばいま出しました問題の中で、個人住宅金融への対応という問題一つとりましても、現在の状況ではどの金融機関も、産業金融も行なってもよいし、住宅金融を行なってもよい、つまり預金なら預金あるいはそのほかの資金調達手段で集めたお金を、このお金は産業金融貸し出してもよろしいし、住宅金融貸し出してもよろし、こういう形になっております。したがいまして、確かにたとえば都市銀行の総貸し出しに占める住宅金融あるいは消費者金融の比重を、比率をとってみますと、昭和四十五年以降趨勢的に上がってきておりますけれども、たとえば四十八年十二月末でとりましても、まだ四%程度でございまして、きわめてアメリカ商業銀行などに比べて低いわけでございまして、それがまあ四十九年に入りまして、一月以降金融引き締めの中ではますます圧迫、圧縮されておるという話も聞いておりますし、聞くところによりますと、住宅金融あるいは個人ローンというようなものは、すでに毎月の返済された分だけにしかワクが与えられないというような状況になっているというふうにも聞いておりまして、つまり住宅金融というものは、常に産業金融に対するいわばバッファー的な役割りを果たしておるということで、限界的な貸し出しといいますか、産業金融が伸びたときには押えられて、産業金融が落ちたときには伸びるというふうな傾向が依然として残っているというようなことが言える。といたしますれば、やはり住宅金融というものにもっと資金が流れていくような、何らかの制度的な検討というものが必要である。それはやはり専門的な金融機関の育成ということが一つ考えられるのではないだろうか。少なくとも当面、まだ日本の金融の機能というものが、先ほど述べましたような形である間は、やはりそうした制度的な配慮というものが、資金配分の上に必要ではないだろうか。同じようなことは、中小企業あるいは零細企業に対する貸し出しについても言えるわけでございまして、金融が超緩和というふうにいわれました四十七年などにつきましても、残高で見ますと、中小企業金融の比重というのはあまりふえていないわけでございます。確かに大規模銀行による中小企業ないしは零細企業への進出というのは、確かにまあ傾向として見られたわけであります。現在も見られるわけでありますけれども、それはかなり選別融資という形をとって、特に優良なものを拾い上げていこうというような形であって、はたしてこれが中小企業の育成についてすべての手段を包括しておるものであるかどうかということについては、全く疑問が生ずるところでございまして、そういった意味で、やはり中小企業金融に関する専門的な資金配分機関というものがなお必要ではないだろうかということは、いまの事例からも明らかになるわけでございます。  そのほか、先ほどの消極的な側面としてあげました公害等、地域住民に関する問題等につきましても、やはり金融効率化というような形での対応では十分な規制ができないわけでございまして、やはりある程度融資規制、まあ融資に関する何らかの行政的な措置というものが必要ではないか。片方でそういうふうな形での資金配分ということが行なわれるとすれば、他面においてやはり大口融資規制というものが必要になるわけでございまして、そういった形での規制というものが、やはり金融効率化というふうなことで、金融機関経営効率化というふうなことの流れの中で、そういった意味での規制というものが必要になるのではないだろうか、こういうようなことを考えております。  店舗配置につきましても、先ほど来の店舗効率的な配置が、過疎地域における住民の非常な不便を伴うという可能性を持っているということも言えるわけでございまして、また配当規制につきましても、時間がありませんから、ここでは省きますけれども、やはり銀行というところの公共性に基づく適正収益ということから考えますと、やはり効率化ということだけでは、必ずしも納得できるような形にならないのではないか。その場合の規制というものが、どういう形で行なわれるのかということ、上からの規制ということと、地域住民あるいは国民のある程度の合意といいますか、コンセンサスというふうなものに基づく規制というものと、いろいろ考えられますけれども、できるだけ国民のコンセンサスを得たような、そういう規制というものが望ましいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  なお最後に、こういうふうな形で資金配分という点で、専門的な金融機関ないしは制度的な形での対応が必要であるということになりますれば、当然資金の調達面におきましても、そうした金融機関の、あるいはそうした制度の存在というものを保障するような措置が必要であるということでございます。現在預金金利の引き上げが、先ほど述べましたように随時に行なわれてまいりまして、昨今は個人、法人預金の分離問題であるとかということで、預金金利がさらに引き上げられるべきだというふうな意見も出ておるわけでございますけれども、この預金金利弾力化して、預金者が、自分の好む預金を選択することができるということは望ましいし、預金金利が引き上げられるということは、預金者にとっては非常に利益の大きいことでありますけれども、この点において、先ほど川口参考人の御意見もありましたように、大規模銀行とその預金者との利害が一致する、そうしてこれと中小金融機関の利害が反する、こういうふうなことになりかねないわけでございます。つまり、それだけ小口預金を扱っている中小金融機関経営効率というものが低いのは当然でございまして、その中小金融機関経営を、預金金利の引き上げが圧迫するということになるわけでございまして、こういった問題をやはり何らかの形で解決していかないと、つまり、資金の調達面では、大規模銀行も中小規模金融機関も同じ場で競争しなさい、しかし、その資金の運用面では特色を発揮しなさい、これではやはり徳川時代の農民のように、生かさぬように殺さぬようにというふうなことにもなりかねないわけでございまして、そこに何らかのやはり保障というものを与えていかないといけないわけでございます。先ほどの川口参考人の最後のところにもございましたように、こうした傾向は、西ドイツとかイギリスとかアメリカなどで見られる最近の金利自由化の流れというものに、何か反するような意見かもしれませんけれども、わが国金融機関あるいは金融機構というものの実情から考えますと、そうした専門性というものの保障というものは、やはり制度的に確立していくべきではないかというふうに考えるわけでございます。  なお、せっかくこの席でございますので、最後にもう一つ。これは直接金融機関の問題とは関係ないんですけれども、私が日ごろ地元で感じております一つのことを意見として申し述べさせていただきたいと思うんです。それは、各都道府県が行なっております間接融資制度というのがございます。各都道府県が金融機関に預託をしまして、その預託金の何倍かの中小企業への融資を行なうという制度でございます。これが現在日本銀行の窓口規制の対象の中に入れられておるということでございますけれども、もし中小企業金融というものを進めるという、あるいはこういった時期に中小企業金融に一つの救済的な意味を与えるということであれば、これは日本銀行の窓口規制のワク外にすべきではないかというふうに私は考えております。  以上でございます。
  11. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) どうもありがとうございました。  これから委員打ち合わせ会を開催しますので、暫時休憩いたします。    午後二時休憩      —————・—————    午後三時五十八分開会
  12. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  川口、原両参考人には、委員会委員打ち合わせ会に御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本日拝聴いたしました御意見につきましては、今後の本委員会の財政金融問題の調査に十分役立たせていただきたいと思います。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十九分散会      —————・—————