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多田省吾君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました
租税三法について、次のような理由をあげ反対の討論を行なうものであります。
まず、
所得税法等の一部を改正する
法律案について反対理由を申し上げます。
第一の理由は、四十九年度の所得税
減税については、
給与所得控除を中心として、
給与所得者の税負担感を緩和することに最重点を置いた史上最大の
減税であると
政府は自画自賛しておりますが、その中身たるや、従来からの上厚下薄の
減税に上のせして、年間所得三千万前後の高額所得者までに累進税率を手厚く緩和し、さらに現行の
給与所得控除の天井をぶち抜いて青天井とするいわゆる重役
減税であり、高額所得優遇の金持ち
減税となっていることであります。しかも、このような事業所得や資産所得のアンバランス是正のための理由とするならば、まきに本末転倒もはなはだしく、不均衡是正のためならば、むしろ、
租税特別措置による利子・配当の特例や、土地譲渡の特例、交際費の特例などをまず一番先に手直しすべきであって、
給与所得控除や、税率緩和でこのような措置を行なうことは、所得
減税の本意に対しはなはだ汚点を残すことであります。
第二の理由は、生計費に重点を置く人的控除についてであります。
総理府統計局の四十八年度の全国勤労世帯の家計
調査結果によれば、一世帯の消費支出は月に十一万七千円であり、年間では百四十万円となっております。この数字自体も低目でありますが、いま四十九年度の物価上昇に伴う支出増を三〇%と単純試算しても百八十二万円となり、月
平均の消費支出は約十五万となります。今回の改正では基礎、配偶者、扶養の三控除を二十四万まで引き上げておりますが、これを四人家族に当てればわずかに九十六万円であり、この額が生計費に見合う額とすれば、月
平均八万円の生計費であります。狂乱物価の中で、石油関連製品値上げの追い打ち、さらに今後の電力料金、私鉄運賃、米価、国鉄運賃と、夏から秋に向かって公共料金値上げのメジロ押しであり、この程度の人的控除が、高額所得者は別として、はたして生活実態として妥当かどうかはなはだ疑問であります。
第三の理由は、利子・配当所得の特例や、土地のキャピタルゲインに対する分離
課税の特例が依然として温存され、改廃されず、勤労性所得と資産性所得の格差をますます拡大させ、所得配分の不公正を逆累進構造という、税制の基本
原則が著しく減殺されて、
納税者の不満感と納税意欲を著しく減退させていることであります。
その他、株式のキャピタルゲイン
非課税等の不合理も手を触れておりませんが、史上最大の画期的
減税の中身とは、
政府の宣伝とはうらはらに、依然として上厚下薄となっており、税制の根幹に触れる総合累進
課税や所得再配分の著しい弊害は全く是正されず放置されているのは、全く納得がいかないのであります。
次に、
法人税法及び
租税特別措置法の一部を改正する
法律案について反対の理由を申し上げます。
まず第一の理由は、いまさら
指摘をするまでもなく、わが国の法人税及び
租税特別措置法には、大企業優遇のための数々の
恩典が
規定され、なかんずく
租税特別措置は、世界の主要国にその類例を見ない数多くの
恩典、特例を
規定して、わが国税制上に多大な弊害と汚点を残しているのであります。
第二の理由は、法人税についてでありますが、わが国の法人税率は従来から諸外国と比べてきわめて低く、今回の改正では、基本税率を四〇%まで引き上げて、その実効税率は四九・五%と、
国際水準に達したと
政府は主張しております。しかし、これは単なる数字の上のマジックにすぎず、現実には、数々の特別措置によって、大企業になるほど、この数字とはかけ離れた逆累進のはなはだ軽いものとなっているという事実であります。また、大企業、大法人は、数々の引当金、準備金、特別償却等の措置によって、大幅な
課税の軽減がなされており、さらに支払い配当の軽課、受け取り配当の益金不算入制度等、中小零細法人企業には全く縁遠い数々の優遇措置がなされており、今回の基本税率の引き上げもはなはだ不十分であります。
第三の理由は、
租税特別措置についてでありますが、数多くの特別措置の中で、税の総合累進
課税を形骸化させ、税の不公平を助長拡大するその元凶は、利子・配当所得の特別措置と土地譲渡所得にかかる分離
課税の特例であります。特に利子・配当所得にかかる特例は、勤労所得と資産性所得の格差を拡大し、負担公平の
原則を著しく歪曲し、一方の土地譲渡所得は土地成金を続出させて、持てる者と持たざる者との格差をますます拡大し、放出された土地は、究極には庶民大衆の手には届かず、不動産業者や土地ブローカーの手によって転売されるか、法人大企業に買い占められ、結果は税制の不公平と地価の値上がりが残っただけで、著しい弊害だけが残ったのであります。しかるに今回の改正においても、期限の未到来を理由に廃止せず見送ったのであります。
このほか、総需要抑制に逆行する社用消費を助長する交際費、公害対策を名目とする特定設備の特別償却の拡大、大企業の利益隠しを助長する価格変動準備金の大幅増額、さらに物価対策に逆行する揮発油税の引き上げ等、改悪が多く、一向に改廃整理は進まず、慢性化、既得権化する傾向が強く、
租税構造を複雑にして、政策目的の効果は不明確で、逆に弊害のみ多く残るものであります。
以上のような理由をあげ、
政府に対するきびしい反省と、すみやかな改善を強く求めて、
租税三法に対する反対の討論を終わります。