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1974-03-28 第72回国会 参議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十八日(木曜日)    午前十時二十分開会     —————————————    委員の異動  三月十八日     辞任         補欠選任      高田 浩運君     佐藤  隆君      玉置 猛夫君     増原 恵吉君      渡辺  武君     星野  力君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 河本嘉久蔵君                 藤田 正明君                 成瀬 幡治君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 佐藤  隆君                 柴田  栄君                 嶋崎  均君                 増原 恵吉君                茜ケ久保重光君                 竹田 四郎君                 田中寿美子君                 辻  一彦君                 戸田 菊雄君                 星野  力君                 野末 和彦君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君    政府委員        大蔵政務次官   柳田桃太郎君        大蔵大臣官房審        議官       大倉 眞隆君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        国税庁次長    吉田冨士雄君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        運輸省自動車局        整備部管理課長  南  正彦君        建設省道路局国        道第一課長    大島 哲男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得税法及び災害被害者に対する租税減免、  徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案。  以上、三法案を便宜一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 従量税関係揮発油税、その他、自動車関係諸税、これを先に質問してまいりたいと思いますが、その前に、運輸省から来ておられると思うので、いま、自動車の各車両とも、販売メーカーシェアは一番どこが高いでしょうか。それをちょっと教えていただきたい。
  4. 南正彦

    説明員南正彦君) お答えします。  正確な数字はただいま持ち合わせておりませんが、現在、おっしゃいました自動車メーカーとしては、トヨタ系が一番多いと思います。
  5. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それはどのぐらいシェアを持っていますか、全国の。トヨタ日産を教えてください。
  6. 南正彦

    説明員南正彦君) ただいま数字を持って参っておりませんが、トヨタ日産とほぼ同じぐらいかと思いますが、全体の約六〇%ぐらいになるかと思います。
  7. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大体、私の調査も、両社ともシェアはおおむね六〇%になっていますね。これは、あとで正確な資料は出してください。  それで、問題は、一番高い六〇%のシェアを占めるトヨタ日産、これが税金はどのぐらい納めていましょう、四十年以降ちょっとトータルで示していただきたい。
  8. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 暦年の数字手元にございませんので、いま、ちょっと申し上げかねますが、一番最近の四十八年の九月期決算日産が申告いたしました申告所得の額が、三百七十九億九千六百万円でございます。
  9. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 トヨタは……。
  10. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) トヨタは、四十八年十一月期が一番新しい期でございまして、三百九十一億三千百万円でございます。これはいずれも、税額ではなくて、申告所得の額でございます。大体これに、普通の税率でございますから、三〇%強に当たる税を納めているということになろうかと思いますが、個別企業申告税額は、恐縮でございますが公表いたさないたてまえになっております。申告所得のほうは公表するたてまえになっておりますが、税額としては公表いたさないたてまえになっておりますので、この申告所得額から大体税額を御推察いただきたいというふうに考えます。  なお、自動車関係の諸企業が納付している税といたしましては、ほかに物品税があるわけでございますけれども、これはちょっといま手元資料を持っておりません。これは移出額の一五%、ないし型の大きいものについては二〇%で納めているわけでございます。
  11. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そこで、ちょっと、これは建設省になるんでしょうかね、交通安全対策として、歩道橋とか、信号機建設、それから交通安全対策教育費、これらを含めまして、四十六年度、七年度、八年度はどのようになっておりましょうか。
  12. 大島哲男

    説明員大島哲男君) 交通安全整備事業のうちで、建設省担当の分は、ただいま御指摘横断歩道橋、それから歩道、交差点改良、あるいは防護さくというものが建設省所管でございます。信号機公安委員会所管でございまして、それから教育のほうも公安委員会だと思います。私どもの交通安全五カ年計画は四十六年に始まりまして、五十年に終了ということになっております。ただいま説明されました三カ年につきましては、データがございませんので、正確なお答えはちょっといまいたしかねます。
  13. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは急でしたから、明確な資料がいただけないので、ちょっと困るのですけれどもあとで、正確な資料をひとつ出していただけませんか。
  14. 大島哲男

    説明員大島哲男君) わかりました。
  15. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いまの種目別歩道橋幾ら、そういうことで、いわば道路安全施設関係費建設関係。それでけっこうですから出してください。  それでは、厚生省は——運輸省に再度お伺いしますけれども、いま日本乗用車普及率は何人に一台ぐらいになっておりますか。でき得れば、米国西ドイツ、それからイギリス、これら諸外国のやつをちょっと教えてください。
  16. 南正彦

    説明員南正彦君) 現在わが国乗用車の数は、約千百万台でございます。国民の数で割りますと、約十人に一人ということになっております。外国の諸例は、アップ・ツー・デートの数字はただいまございませんが、私どもがいままでの日常で聞いておりますところを概略申し上げますと、西ドイツが四人に一台ではないかと思います。米国につきましては、二・二人に一台、そういうことだと思います。
  17. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いまの年度はいつですか。
  18. 南正彦

    説明員南正彦君) わが国につきましては、四十八年の三月末現在の数字でございます。
  19. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 自動車保有状況につきましては、別途経済企画庁で調べております消費者動向調査というのがございまして、一番新しい資料では、四十八年十一月末現在で、どのぐらいの世帯が車を持っておるかというのを調べております。全世帯乗用車を持つ世帯の数が三八・七%、ライトハンが一一・二%、オートバイスクーター、これが二二・八%ということになっております。  それをさらに大分けにいたしまして、農家と非農家に分けておりますが、農家世帯のうちで、乗用車を持つ世帯の数が四六・〇%、ライトバンが一八・五%、それからオートバイスクーターは四五・五%。農家でないほうの非農家、これが乗用車が三七・三%、ライトハンが九・八%、オートバイが一八・五%という数字になっておりまして、非農家をまた二つに分けまして、勤労者世帯個人営業その他に分けておりますが、非農家中、勤労者世帯自動車保有割合は三五・九%、勤労者でないほうの個人営業その他のほうが四〇・三%、それを平均しましたものが、前に申しました非農家の三七・三に当たるわけでございます。ライトバンは非農家全体で九・八と申しましたが、それを内訳にして見ますと、勤労者世帯では四・三、個人営業その他では二一・五ということであり、オートバイスクーターは非農家が全体が一八・五でありますけれども勤労者個人営業その他に分けますと、勤労者が一七・一、個人営業その他が二一・七というかっこうになっております。
  20. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 運輸省課長ですか、正確でないものはあと資料出してもらってけっこうですから。無理して——私も資料持っているわけですからね、だいぶ違ってくると、こっちが迷いますから。で、いま言われましたように、主税局長もいろいろとこまかく言ってもらったわけですが、大体乗用車普及率は、四十六年ですから、これちょっと私の統計古いんですけれども日本の場合は八・八人に一台ですね。それから米国は二・二人です。西独は四人です。英国は四・五人になっている。ですから最近、四十七年度の統計ではもっとふえていると思います。こういう状況でありまするけれども、こういう状況で、たいへん自動車が加速度的に普及率増大をしている。今後おそらく私たちの見通しでは、二十年以内には、この倍数になるんではないだろうか、このままいくと。で、どうしても道路のやはり整備拡充、こういうものが私は必要になってくると思うんでありますが、そういうことで、いまの日本道路舗装率ですね、これは一体どのくらいいっているのか。諸外国の例もわかれば、せめてアメリカイギリス、ドイツぐらい教えてもらいたいと思うんですが、どの程度舗装率になっていますか。
  21. 大島哲男

    説明員大島哲男君) 道路舗装率でございますが、一般国道が九三%でございます。それから県道が七〇%、それから市町村道が一八%でございまして、全部平均いたしますと二七%でございます。道路の総延長が約百四万キロだと記憶しておりますが、ございます。舗装国道延長が二十八万キロでございます。で、市町村道延長が八十六万キロございまして、これの舗装率が一八%と低うございますが、この中には、必ずしも車用というだけの道路でなくて、それ以外の道路も含まれておりますので、多少車を対象といたしました舗装率については修正を要するかとも思います。  それから諸外国の例でございますが、ただいま資料がございませんので、はっきりしたことは申し上げられませんが、英国については一〇〇%になっております。その他につきましては、また調べましてお知らせいたしたいと思います。
  22. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 各国の舗装率をIRFという機関の一九七二年版による一九七一年十二月末現在の数字というのが手元にございますから、御参考までに申し上げておきます。これはどこまでの道路をとるかというようなとり方で、いろいろ数字が出てくるようでございますが、アメリカは四四・五%、イギリスはいまもお話がありましたように一〇〇%、西ドイツが七五・〇、フランスが七九・六、イタリアが九二・〇、日本は、建設省から言われましたのとは若干時点が違う関係でございましょう、少しこの表では低くなっておりますが二一・九、ただ国道都道府県道だけで見ました場合に、五九・一という率に、私どもの手持ちの資料ではなっております。   〔委員長退席理事河本嘉久蔵君着席〕
  23. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いま主税局長から詳しくあったとおりなんですが、私も資料はそれなんですが、これでいきますと、建設省意見を採用しても二七%、イギリスなんかは一〇〇%まさに舗装ですね。そういう状況になっておるわけですが、これに一体どのくらいいままで国の財政というものをつぎ込んでまいりましたか、それわかりますか。
  24. 大島哲男

    説明員大島哲男君) ちょっといまのところ資料がございませんのでお答えできません。
  25. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それじゃ、それはあとでこういう二種類資料を出してください。一つは、四十一年以降四十五年までどのぐらい出しているか。以降五カ年計画では十九兆五千億ということははっきりしてますから、だから私の調査では、少なくとも十五兆円ぐらい出ておる。以後の五カ年計画では十九兆五千億ですから、ざっと三十五兆円程度の膨大な道路財政投資というものをやっておるわけですね。これは国でやっておるやつだけですよ。いわば、四十七年十二月以降、自動車重量税なんかも設定をしたわけでありますから、その大部分目的税として、当時三百億ですか、それが当初予算、今回も揮発油税とか、自動車重量税とか、地方道路税とか、こういうものが税金として引き揚げられるという状況なんです。それは全部目的税ですから、大多数はそういういわば固定した財源として全部投入される、こういう状況。このぐらい膨大にやっておって、なおかつ日産とか、トヨタとか、自動車販売の六〇%のシェアを持っておるわけです。多額の利益をあげておる。私の統計でいきますと、少なくても四十六年度で、法人税として日産が納めている税金は一千百九十三億、それに対してさっきお伺いしましたが、これはわかりませんということですが、四十六年度の交通安全対策費として諸経費を出している額が一千五十三億円、そうしてなおかつ道路のそういう舗装整備、あるいは新設、こういう面で三十兆以上の多額の金を出しているわけです。これに対して、何らかの、メーカーに、それは、自動車を持っている人からは目的税としてどんどん取っているわけですから、少なくとも自動車関係諸税というのは九種類あるわけですね。これは総額にしたら相当額にのぼるわけだ。だから、利用者とか、そういう人にばかり負担をさせずに、この際に抜本的に検討していただいて、メーカーからも何らかの方法でこの面に対する徴収があっていいんじゃないか。それは税金にするか別な方式にするかは別ですが、当面私は、何らかの関係でそういうものを考えてみてもいいんじゃないか、こういうふうに考えるんですけれども、これは主税局長どうでしょうか。
  26. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) まず基本的に、道路関係いたしますところのもろもろの所要投資額を、どの程度一般財源で調達をいたすべきか、それからどの程度道路関係者といいますか、自動車関係者から徴収いたすべきやということはなかなかむずかしい問題でございます。わが国の場合には、昭和三十年代の初めから急速に道路を延ばすということもございまして、現在の道路緊急整備に関する諸立法等が漸次整備されてまいりました。その中で、ガソリン税というものがいわゆる目的税として今日までその財源の主要な部分を占めるという形で、そのかわり他の公共事業費等よりも、道路関係予算に重点が置かれました。道路整備にかなりのウエートが置かれて今日まで至ったわけでございます。  今後の問題はいざ別の問題といたしまして、現在の私ども考え方といたしましては、第七次の道路整備五カ年計画によりますただいまお取り上げになりました十九兆五千億の事業をやるにつきましても、大体従来どおり八割前後のものをやはり特定財源あるいは厳密な意味では目的税になっておりませんけれども自動車重量税のような形の特殊の税に求めたらよろしいのではないかというのが、私どものいまばく然と考えているところでございます。  ただ、四十九年度の予算との関連で申しますと、経済社会基本計画なりが今後基本的に見直さるべき時期に来ておるということもございまして、また四十九年度の道路予算は、必ずしも道路に関する第七次計画によって予算を計上するのでなしに、四十八年度予算の横並びというようなことで予算が計上されました関係で、今後のここ数年の問題はもう一度いろいろな角度から見直しが行なわれるべきものというふうに考えております。  さてそこで、その場合に、いま戸田委員お話では、いまの税の体系道路利用者負担を求めておる形になっておるけれども自動車メーカーに直接負担をさらに求めてはどうかという御意見でございます。その点は、一つの御意見として承りますけれども、しかし、自動車メーカーにより負担を求めるということになりました場合には、何らかの意味においてやはり価格にはね返ってくるということにならざるを得ないわけでございまして、自動車価格を一般的に上げるということを辞さないということであれば、それも一つ考え方かと思いますけれども、現在のようにガソリンに非常にウエートを置いて負担を求めるというやり方は、一般的に利用者に求めるといっても、その利用状況に応じて負担をしていただくということが出てくるわけでございます。自動車そのものに対して負担を求める、税その他の方式負担を求めるということになりますと、どちらかというと、価格を通じてでございますけれども自動車保有のほうによりウエートを置いた配分になると思います。利用者間の間でどう負担を配分していただくのがよろしいかということを考えます場合に、燃料に主体を置いた課税の形をとりますれば、利用状況に応じた負担の求め方になりましょうし、戸田委員の言われますような形をとりますと、保有状況に応じた負担の求め方というようなことになろうかと思うわけでございまして、今回の御提案申し上げ、御審議をお願いいたしております自動車関係諸税の場合におきましても、自動車重量税のほうは、どちらかというと、保有に応じて負担を求めることになり、ガソリン税のほうは、利用に応じて求めるということになるわけでございまして、その辺のいずれによりウエートを置くべきやということはいろいろ論議のあるところであり、昨日、他の委員からの御指摘では、より利用に傾斜をすべきではないか、つまり燃料税によりウエートを置くべきではないかという御趣旨の御質問もあったわけでございまして、これは各方面にいろいろ御意見があるところかと思いますが、結論的には、そのしかるべき組み合わせをどこに、求めたらいいかということでございまして、戸田委員の御指摘のような意見をお持ちの方もたくさんおられるわけでございますから、われわれも今後の問題としては、研究はしてまいりますけれども、やはりいずれに偏してもいけない、両方にしかるべきウエートをもって負担を求めていくというのでよろしいのではないかというふうに考えております。
  27. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうしますと主税局長、今後やはり検討の余地ありということでございますか。
  28. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 前回自動車重量税制度ができました際に、非常に非難がありましたのは、自動車についていろいろ税の制度が複雑に過ぎる、一台の車にかかるというのではないが、九種類もの自動車関係する税の制度があるということは、複雑であるということでございまして、これをなるべく早い機会に簡素にしたらどうだということは、衆議院においても参議院においても御指摘を受けたところでございます。したがいまして、私どもは、それもなかなかむずかしいことは承知をいたしながら、方向としては簡素にする方向で何か考えなければならぬのではないかというふうに考えているわけでございますので、御指摘の点は検討はいたしてみますけれども、いま私が申し上げました税の体系を、自動車に関して簡素にすべしという議論もあることを考えますと、なかなかむずかしい問題であると言わざるを得ない現状ではないかと思います。
  29. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私は、やはり高福祉社会保障政策を一そう充実をさせると、こういう立場からすれば、やはりメーカーにはその旨の一端の責任を受け持ってもらってもいいんじゃないか、そういう考えを持つのですけれども、これは大体いまの社会世論としても、こういう面については一定の合意性を持っていると思うのですが、だから、それが税金にするか別の方式にするかはいろいろありましょう。しかし一面で、自動車関係諸税ということで膨大な税金を取って、主として利用者、こういうことになっているわけですから、メーカーが大量に生産をして、それを売りさばいてもうけている。そういう面に対する何らかの国が吸い上げる方式をとって還元をしていく、こういうことがあってもいいと思うのですが、そういう点については今後の問題ですけれども、十分検討していただきたいと思うのです。これは要望で終わっておきます。  それからもう一つは、揮発油税でありますけれども、これは最近相当数値上がりをしたわけでありますけれども、その面についてこの輸入一つの様式といいますか、これは日本の場合は九九・八%、まさに全部アジア、アラブの産油国から輸入をする。そういう場合に、大体私の理解では、産油国から直取引でもって輸入するのは四十数%、あとの六〇%はいわばメジャーからそれぞれ輸入をしておる、こういうことになると思います。それはいま、産油国なり、メジャーから、石油製品として輸入しているやつがあるんでしょうか、すべて原油でしょうか、その辺はどういうことになっておりますか。
  30. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) ちょっと数字は持っておりませんが、日本の場合には、非常に原油の形で輸入するものが多いわけでございますけれども製品として輸入するものが全くないというわけではないように承知をいたしております。
  31. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうしますと、そういう原油にせよ、製品にせよ、これから相当値上げをされる傾向にあるんじゃないかと思うんですが、そういうことによって、さらにこの負担増大をしていくという傾向になるわけでありますが、いま一バーレルどのくらいで輸入をしているでしょうか。
  32. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) これもちょっと正確な数字は記憶をいたしておりませんが、三月初旬に入ってきているものは、平均して九ドルを若干上回るという原油の値段であったと思います。
  33. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは主税局長に聞くのはあるいはお門違いかもしれませんけれども、一ドル、いま円換算はどのくらいになっておりますか。変動相場制ですから、これはどういうことになっていましょう。実勢相場は、どのくらいでしょうか。これはちょっと主税局長じゃ無理かもしれませんけれど……。
  34. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 正確にはすぐ調べますが、二百八十円から二百九十円との間くらいのところに、きょうあたりはきていたと思います。
  35. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いまの九ドルというのは、これは何円で見積もっているわけですか。
  36. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) それは実は円換算でなしに、通関で、私どもときどき見ておる数字でございますので、三月の初めに九ドル二十セントとか、二十五セントとかという水準であったと思いますが、その日現在の、今度は円・ドルレート幾らであったか、ちょっといま覚えていませんので、円換算幾らになるか、ちょっと、恐縮ですが、いまはっきり申し上げられません。
  37. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 きのうの説明では、三百円というレートらしいです。それで税金は約三ドル、こういうことになっておるということですね、三ドル、一バーレル当たり……。これはそういう理解でいいですか。
  38. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 予算の段階で、いろいろ検討いたしました数字で申しますと、いまおっしゃいましたことでけっこうでございます。
  39. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは割合にしてどれくらいになっていましょう。揮発油税は、全体として、前年度、四十七年が六千六百十二億円で、今年度の見積もりは大体六千九百四十億円になっていますね、おおむね五%ということですが、この輸入をするときの、いわゆる一バーレル当たり、これは割合としてどのくらいになっていましょうか。
  40. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) お尋ねは、バーレル当たり幾ら税金になるかということに結局帰着すると思いますが、ガソリンにつきましては、キロリットル当たりで、三千百四十二円というガソリン税がかかります。それから軽油についてはキロリットル当たり九百九十一円という軽油引取税がかかります。それから航空機燃料について、二百十九円という航空機燃料税がかかります。で、その原油について、六百四十円の原油関税がかかっております。それを寄せますと、合計で四千九百九十三円になりますが、このキロリットル当たりバーレル当たりに直しますと、バーレル当たり二ドル八三五という数字になります。  ところが、今回御審議願っておりますこのガソリン税の値上げによりまして、先ほど申しましたキロリットル当たり三千百四十二円という税負担が、三千七百七十七円に上がります。軽油の引取税は変更いたしませんから、従来どおり九百九十一円でございます。航空機燃料は、これは途中の経過規定によりまして、四十八年度はまだ若干低目になっておりますが、四十九年には、この二百十九円が二百七十四円に上がります。それを寄せますと、キロリットル当たりの税負担額は、先ほど申しました四千九百九十三円から五千六百八十三円に上がります。それを今度はキロリットルからバーレルに換算いたしますと、先ほど二ドルポイント八三五と申しましたが、改正後は三ドルポイント二二七になると。ちなみに、一、バーレルというのは、百五十八・九九リットルであるということで換算をいたしますが、それによりますと、いま申しました三ドル二二七になります、というふうに試算をいたしております。  なお、先ほど不正確に申し上げました為替相場は、昨日、インターバンクの仲値相場、一ドル二百七十五円二十でございます。
  41. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうしますと、この使用方ですけれども、前段の関税部分を除いては、いま説明のあった揮発油あるいは軽油、航空機等々の税金収入を、すべてこれをやはり自動車の、いわゆる道路ですか、道路のほうの使用に目的として持っていく、関税分は石炭対策、こういうことになるわけですか、それはどうですか。
  42. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) ガソリン税と軽油引取税はすべて道路財源でございます。しかし、ジェット燃料はもう現行で二百十九円、改正後二百七十四円というのは、空港整備特会に、結局一般会計を通じて入りまして、空港整備財源またあるいはその周辺整備財源ということになるわけでございます。これは四十七年度の税制改正の際に、御審議いただきました航空機燃料税ということでございまして、これはその際にも御説明いたしたと思いますが、空港及びその周辺の整備に充てられるということになっております。
  43. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 昨年だったと思いますが、空港整備については空港整備特別会計、これがつくられたわけですね。その特別会計に入っていくわけですね。
  44. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) はい。
  45. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 割合としてはどのくらい占めておりましょうか。
  46. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 割合と申しますと……。
  47. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 特会計の……。
  48. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 特会へ入る金額の大きさでございますか。
  49. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 はい。
  50. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 四十九年度で申しますと、国に入ります分が百三十億円でございます。十三分の二だけ地方に譲与いたします。その金額が二十四億でございます。したがいまして、航空機燃料税として徴収する金額の合計は百五十四億円でございまして、それを二つに分けて、一方は空港特会の財源になりますし、一方は地方公共団体に譲与される、二十四億は地方公共団体に譲与されるという形になっております。
  51. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 内容はわかりましたけれども、それでこの前も私は、この自動車関係諸税のいわば合理化ですね、この面について制度として検討してみてはどうでしょうかということを提案したんですが、いろいろと前段の説明で聞きましたけれども、終結点は一致しているからどうせこういう形態になるのだというふうな担当官の説明でしたけれども、どうも私、いま九つの自動車関係諸税として制度的に確立をされているわけですが、これは多額税金を取るいろんな便法としてはいいかもしれませんけれども、あまりにも当該者の負担が、さっきも言うとおり利用者負担が各分野にわたって全体の負担が背負い切れなくなっている。個人的にどのくらい総合監査をすればこれ負担になっていると思いますか。この内容、これは時間かかりますから、あと法人税の問題ありますし、あと資料でその内容をいただいてもけっこうですが、おおむね平均どのくらい一人一人が、一般的にお願いしたい。   〔理事河本嘉久蔵君退席、委員長着席〕
  52. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 乗用車を一台持っておられる方が、結局一年間にどのくらいの税負担をするかということを試算をしてみますと、これは一年間にどのくらい走るかということによって燃料税負担が変わってまいりますからして、必ずしも一人一人同額ではないわけでございますけれども、まず消費税、つまり日本で申しますと物品税でございますが、物品税と取得税、これは自動車取得税という道府県民税がございますが、それと自動車税、これは道府県税、それと自動車重量税、これを合わせまして、一五〇〇ccから一六〇〇ccぐらいの大きさの車で見まして、年間現在四万四千八百十八円の負担になる。それで燃料は、年間千二百リッターで計算をいたしまして年間で三万四千四百四十円になるというふうに試算をいたしてみております。したがいまして、四万四千八百十八円と三万四千四百四十円を足しますと七万九千二百五十八円になる、税額がそういうふうになるということでございます。今回の改正によりまして保有等に伴うところの税、先ほど四万四千八百十八円と申しました数字は五万二千二百六十八円にふえる。それから燃料税のほうは三万四千四百四十円から四万一千四百円にふえるといたしますと、合計いたしますと九万三千六百六十八円になる。なお前提は、この自動車は、物品税等の関係もございますので、その前提が一つ必要でございますが、一台の車を六年使うと、耐用年数六年とするという前提でございます。  御参考までにこれを諸外国と比べてみますと、これはまた為替レートの換算をどう見るかという問題がありますが、一応一ドル三百円ぐらいで換算をいたしましてやってみますと、アメリカの場合は、日本の七万九千二百五十八円なり、九万三千六百六十八円に対応する数字が、アメリカでは大体二万五千円程度でたいへん安いわけでございますが、イギリスでは七万五千円程度西ドイツでは日本より高くて十万五千円程度、フランスでは十一万七千円程度になるというふうに見ておりますが、実は諸外国とも今回の石油価格の変動に伴いまして、自動車関係諸税の引き上げを一斉に各国とも行なっておりますので、ただいまの計算は、昨年の暮れぐらいの状態の各国税制をベースにして、承知し得るニュースをもとにしておるものでございますから、諸外国のほうも若干上がっておるのじゃないかというふうに思います。いずれにしても日本の水準は、改正後におきまして、油の非常に少ない、産油国でない国である西ドイツやフランスの場合とほぼ匹敵するかそれよりは少し安いぐらいのところにあるということが言えると思います。
  53. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いま局長から説明があったとおりだと思うのですが、このように確かに表面だけ見れば西ドイツ等は日本より高い、こういう状況になっていますが、所得においてはやはり日本はまだ落ちていると思うのですね、アメリカあたりの三分の一ですから。そういう状況から見れば、この九万三千六百六十八円という改正後の負担というものは、相当やはり国民の生活を圧迫をしている、こういうことになりはしないか、ことにインフレその他も加わっておるわけですからね。だから、こういう意味合いにおいては、各国の比較を見ても、内容その他を検討してみましても、日本の場合一番高額であるということが言えるのではないだろうかと、こういうふうに考えるのですけれども、この辺は政策的な問題もあるのでしょうけれども、もう少し検討してもいいのじゃないだろうか。ですから、私は、さっき言いましたように、いま消費税とか、物品、取得税あるいは自動車税あるいは重量税、相対的なものですからね、だから、そういう点では非常にこの税額が高くいっている。そういう意味からいって、今回の改正というものはやはり、利用者負担でもって税金を上げていくというのは無理な相談じゃないだろうか。だから私は、さっきも言ったように、メーカーに対してもう少し何らかの方策をとっていくのが一番妥当じゃないか。それだけ自動車を売って、道路をこわして、これやっているんですからね。ことに東京都とか大都市においてはもうそればかりじゃなくて、経済計算でいくなら、交通渋滞その他によってえらい損害、迷惑、こういうものをこうむっているわけですから、だから総合的に検討しまして、当然、売って多額の利益をもうけているというならば、そのうちの何分の一かは、やはりこれに対して拠出をする、こういうことがあっていいんじゃないか。だから、そういう意味合いで、先ほどの要望出したわけですけれども、ぜひひとつこの点は検討していただきたいと思います。  時間がありませんから次にまた移りまするけれども法人税の問題について具体的な問題で聞いてまいりたいと思います。
  54. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 先生、建設省運輸省はよろしいですか。
  55. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 けっこうです。先ほど要請した資料だけはそれぞれ早期に出していただきたい。  一つは、配当軽課税率について、当初大蔵省は三〇%を考慮しておったという話を十分われわれは聞いていたんですけれども、これが二八%にとまったというのは、どういうところに原因がありましようか。
  56. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 配当軽課税率は、その制度がスタートいたしました十年ほど前に、基本税率を大体四分の三ぐらいの水準のところできめられた経緯もございますしいたしますので、私どもといたしましては、基本的には、その制度に戻ってはどうかと、基本税率を三五から四〇にいたし、暫定税率を含めて言えば、三六・七五から四〇にするということとにらみ合わせまして、配当軽課税率もその四分の三に当たる三〇にしたらどうかというのが、私どもの基本的な考え方でございました。それを前提にして事務方の原案といたしましては、その程度を水準にしてみてはどうかということで、税制調査会で御審議を願ったわけでございます。  ところが、そこで二つの議論が出まして、一つは、当委員会等でもしばしば御論議願っておりますように、方向としては配当軽課制度は自己資本充実のための奨励制度であるが、それがあまりメリットがなくて、いたずらに税制を複雑にしておるのだから、これをやめる方向で考えるべきだ。したがって、三〇よりも、もっと思い切って上げる方向で考えたらどうかという議論が一つと、もう一つは、配当軽課制度があったればこそ、自己資本の全体の資本に対する率が下がったとは言うものの、そういう制度があったればこそ、この落ち方が少なくて済んだんだから、それなりに配当軽課制度のメリットを認むべきであるし、将来の方向としては、現在の配当の二重課税排除を、受け取り段階で調整しているシャウプ以来のやり方をやめて、支払い段階で調整するようにしてはどうかと、言いかえれば、所得のうち配当に充てる部分は、ほとんど税金がかからないように、極端に言いますと、配当損金算入のほうに持っていったらどうかという議論とが対応いたしまして、それでその両者を議論をしても尽きることがないから、それでは、まあ事務方の提案するように、この制度ができた基本税率の四分の三あたりのところへ戻すということを基本的な考え方にすることにして、ただ一挙にそういうふうにいたしますと、現在配当金額の大きい企業、所得金額中配当に充てる部分の相対的に大きい企業の受けるショックが大きくなるので、一年間だけ激変緩和の意味において経過税率を置いてはどうかということで落着をいたしたわけでございます。  それで、実は具体的にはどういう企業が資本金が大きいか、したがって、配当軽課税率のメリットが大きいかと申しますと、代表的なのは電力でございます。その次に化学でございます。さらに私鉄というあたりが資本金の額が大きく、したがって、所得のうち配当に充てなければならないウェートが高いわけでございます。ところが、私鉄につきましても、電力につきましても、御承知のように、値上げ問題が起こってきておるわけでございまして、昨年の石油ショックが起こります前におきましても、なおかつ、なるべく私鉄なり電力なりの値上げを、やむを得ないかもしれないけれどもずらしたい、こういう考えがございましたので、税が上がりましたことによる料金へのはね返りというものは、きわめて微少でございますので、それはそう気にする必要はないじゃないかという意見もあったのでございますけれども、まあやはりその配当軽課税率の引き上げというものが、私鉄や電力の料金の値上げの引き金になるという非難を受けるのはどうも好ましくないというふうに判断をいたしました。まあ一年間だけのことであれば、税制としてもがまんができるのではないかというふうに考えまして、相当熱心な論議の上でそこに落ちついたわけでございます。  で、今回の法人税の税制改正につきましては、いろいろ御議論がございましたけれども、基本税率を四〇にするという点については、昨年の春以来だんだんそういうムードが盛り上がってまいりましたので、それほど大きな抵抗はなかったのでございますが、配当軽課税率の問題は、企業の経理状況のよくない企業にとっての影響が大きいものでございますから、そこのところが非常にまあいろいろ論議があったわけでございまして、私どもとしても、でき得べくんばそういう経過期間を置かないで、一挙にすっきりしたものにしたいという気持ちは持っておりましたが、まあいろいろな論議の末でそこに落ちついたということでございます。
  57. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それで、資本金別の法人税負担率調べ、ここにいまいただいた資料はちょっとこれはないようですけれどもあとから持ってきていただいたのは法人の総資本利潤率との国際比較でありますから、これは別にまた質問いたしますが、この資本金別法人税負担調査、私の持っている資料は四十五年度でありますが、これの資本区分五千万以上、一億円以上、十億円以上、五十億円以上、百億円以上、それの所得金額とそれから欠損金額、それから準備金、引当金、減価償却費、それから受取配当、寄付金、この内容はおわかりでしょうか。最近の年度でけっこうですが、おそらく四十六年度になるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。四十五年になりますか。
  58. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) その数字は、四十六年までは、国税庁で発表をしております「法人企業の実態」というのを、こう必要な部分を抜き出しまして表にすれば、すぐできると思います。ただ、その中で問題は、いまお触れになりましたか、なりませんでしたか、特別償却のあたりについては、資本階級別に取り戻し額の計算をすることが非常に困難でございますので、ただいまお示しのすべてについて申し上げることができるかどうか、ちょっとあれでございますが、御指摘の大部分のものは出せると思います。しかし、これはできましたならば、お許しを得て、資料にして後日出すということにさせていただいたほうが、時間の関係等からいってよろしいのではないかと存じます。
  59. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ただいまの局長の答弁で了解しますけれども、私のこれは資料ですけれども、三菱総合研究所分析、それからアメリカとドイツの場合は大蔵省の証券局資料、こういうことになっておりますが、これをずっと見ますると、資本金の十億円以上五十億円まで、この会社が大体千五十二社あるわけです。この税負担率は二五・九五%ですね。それから百億円以上の企業の場合百五十九社ですけれども、これは二〇・九%、非常に税負担率が低いですね。ことに日立とか東芝、あるいは新日鉄、トヨタ日産、それから三菱重工、東京電力、こういう巨大企業の引当金、これが特別措置でさらに税制上恩典を受けているという状況になっておりますからね。相対的にさらに税金が安くなっている。こういう状態ですから、どうしても租税特別措置というものは全体的に私は洗い直さなければいけないんじゃないだろうか。たとえば法人税法ですね、特別措置ですね、「次に法人税の所得計算上、積極的に損金に算入する旨を規定している項目」、これはばく大なものになっているわけですね。項目が相当ございます。準備金だけ拾い上げてみても十六くらいありますね。もちろんこの内容については、あってもいいとわれわれが思うものも、中には、二、三ありますけれども、しかし、大多数は、いま指摘したような大企業のそういうものに対する好都合な状況になっていることはこれは間違いないだろう。それから引当金の場合でも、これはそういうことが言えると思うんですね。それから減価償却あるいは特別償却、こういう形で至れり尽くせりの優遇措置を特別措置でやっているわけです。ですから、これは年来問題になっておりますように、これが税の不公平と、公正さを欠く最大のものだということは端的に指摘できると思うんです。だから、こういうものを私は、徹底的に洗い直す必要があるんじゃないか。だから、今回かりに四九・五%ですね、これに引き上げたとしても、実効税率で。これはもう全体、大企業にいっては、こういう状況になることはもう明らかだと。このくらい不当なことをやっているんですね。それでなおかつ一面どうかというと、自己資本の場合には、これは各会社ごとは調べていませんけれども、これは大蔵省の統計で四十六年度見ても、これは明らかに自己資本一五%くらいしかないんです。あとの八五%は全部借金でやっているでしょう。その代表的なものは石油化学ですよ。これは赤字赤字でやってきてますからね。そして早期に減価償却をやっちゃって、そしてかろうじて石油危機、最近のつくられた危機によって早期に赤字転換をやっていこうという、こういうぬけぬけと認めておって、税金は一銭も納めない、こういう状況にあると思うんですよ。なぜこういうところに対して適正課税というものをやっていけないのか、今回の四九・五%の引き上げの数字の中においても、大蔵省はたいへん苦労したということは内容はいろいろ聞いてますよ。聞いておりますけれども、それは要求するほうが私は無理だと思うんですよ。そういうものに、少なくとも国民の行政をあずかる大蔵省が負けておったのではたいへんだ。これは一体主税局長、どういうふうに考えますか。
  60. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 御存じのように日本の税制は、昭和三十年代の末ぐらいから、ごく最近までにかけまして、非常に産業奨励的なものであったことは事実でございます。これはやはり非常にスピードの速い経済の復興ということが、国の建て直しにとって必要であるという認識がとられたからであるというふうに考えております。それのある意味では、成果があがりまして、経済も復興いたしましたし、輸出力もついてきたということでございますので、あまりこの勢いでいきますというと、税の負担公平の問題もさることながら、諸外国からも、いわゆる経済力が跛行的に強過ぎる国ということで非難を受けるに至るであろうということは予測されるところでございます。さればこそ、四十六年の八月の長期答申におきましても、法人の税負担は、国際水準に合わして上げるべきであるというふうに主張されてきたわけでございまして、私どもは、基本的にはその方向でやってまいりたいというふうに思っております。  で、四十七年度の税制改正、四十八年度の税制改正におきましては、主としてタックスベース、所得計算の合理化に努力をいたしてまいったつもりでございます。いわば悪名高き輸出奨励のための特別償却制度を三年かかりまして廃止をいたしました。また、重要産業の合理化機械の特別償却の制度は、四十八年度改正の際に、これはもう二十年近く続いた制度でございますが廃止をいたしたわけでございます。  四十八年度は、昨年の国会におきます御論議もありましたし、それに二回にわたる為替の調整措置にもかかわりませず、日本の産業は、国際競争力を十分持つことが実証的にも証明されましたからして、まず、かねがねの懸案でございました税率の改定を強く主張をいたしました。これによりまして私どもは、税率に関する限りは、まずまず国際水準並みになったものと思っておるところでございますが、ただいま御指摘のように、所得計算の面においてはなお手直しすべき分がいろいろ残っておるというふうに考えるわけでございます。  ただ、いま御指摘のいろいろなものにつきまして、すべてこれを整理すべきかどうかということについては、必ずしも先生の御意見と、私ども考えておるところと、大きな方向は同じ意見でございますが、個別、個別の問題についてはいろいろ意見があるところでございまして、しばしば退職給与引当金の制度であるとか貸倒引当金の制度であるとか、その他もろもろの引当金の制度が非常に悪い制度であるというふうな御議論が展開されておりますけれども、その細目につきましては、なお十分検討すべきものがございます。たとえば金融機関に対する貸倒引当金の引き当て率が高過ぎるのではないかという問題はございますけれども、やはり企業会計の上でルール化しておりますところの引当金と、税法上の奨励措置でありますところのもろもろの準備金とは、やはり若干別の立場で考えるべきものではないかというふうに考えております。四十九年度は、まあこういうことでございますけれども、今後の私ども法人税に対する態度といたしましては、税率はまあまあ一段落というふうな感じでございますので、そういうもろもろの準備金、それから一部の引当金等につきまして今後とも整理、合理化をはかっていく必要があるというふうに考えております。
  61. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 あなたのほうでいただいた資料の11の、資本金一億円以上の法人の実効税率というのがございます。これがまあいま局長が指摘されたように、外国並みになりましたよという資料だと思うんです。ところが、もう一つ考えなくちゃならない実効税率というのでいえば、たとえば法人税法に基づく貸倒引当金なり、こういう引当金と、それから準備金との二つぐらいに分かれるかもしれませんけれども、こういう法人税法による引当金なり、租税特別措置法の準備金等を、あるいは特別償却等をやって、いろいろと損金算入等やってまいりまして、そして計算したものが、われわれはほんとうの税率じゃないかという考え方があるわけなんです。ですから、もしそういう、この法人税法による引当金が恩典かどうかということになると意見があるかもしれませんけれども、われわれは租税特別措置法によるものと、大体同じことじゃないかという感じがしてならないわけです。そこで、そういうものを取り去ったときの実効税率というものは、どうなりますよということが知りたいわけなんです。そういう計算もどうもされておらないように大体見受けますし、それから逆累進になるということは、もうあなたのほう自体の資料で出てまいりましたから、当局も認めておいでになる。なぜ逆累進になったかといえば、いま言う引当金なり準備金その他特別償却の問題にからんでまいりますから、それになお拍車をかけて、逆累進のほうでは拍車をかけることになり、実効税率でいえば、なおここに上がっておる数字よりももっと下回ったものになりはしないか、表面税率から見て、実効税率はうんと下回ったんじゃないかというふうに推測するんですが、あなたのほうは、それに対してどういう見解を持っておみえでしょうか、あるいは計算をされたことがあるのかないのか。
  62. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) まず問題を二つに分けて私どもは考えております。先ほど来申しておりますように、準備金、特別償却等の税制上の奨励措置は、これは実質的にそういう措置の適用を受けている企業の税負担を軽減しておることになっております、と考えてよろしいと思います。したがって、しかも、その準備金やもろもろの特別償却制度は、先ほど申しました日本法人税制に対する基本的態度との関係から、重要な基本的産業というようなものに比較的メリットの大きいような制度が今日まで多かったわけでございますから、その意味におきまして、特別償却なり準備金なりの制度によって、成瀬委員がおっしゃる意味での逆累進的な様相をもたらしてきておるということは間違いなく言えると思うのでございまして、そのことは、ただいまのおあげになりました資料の十三番にあります数字で見ていただけばおわかりいただけますように、資本階級別にその準備金、特別償却あるいは技術等海外所得の特別控除、試験研究費の税額控除等のメリットが、相当大きい企業のほうに大きく出ておるということは言えるわけでございまして、私どもはこれを今後まず第一次的に整理の対象にしていかなきゃならないというふうに考えます。  それから第二点は、引当金の問題でございますが、引当金の問題は、これは長い論議の末に、企業会計の原則の上で、経理上当然いわば債務性のあるものということで認められた制度でございますから、制度そのものは、私はあってよろしいのではないかと思うわけでございますが、まだわが国企業会計原則というものは未成熟でございますので、引当金制度そのものは企業会計上認めておりますけれども、その引き当ての程度をどのぐらいにすべきかというようなことについては、どちらかと申しますと、企業会計自体でルールをきめているのでなしに、税法のほうでルールをきめている。たとえば貸倒引当金でいいますならば、原則は千分の十五、貸し金の千分の十五というあたりを基準におきまして、卸、小売り業の場合には、千分の二十というようなことになっておりますけれども、このルールのきめ方は、これは企業会計のほうできめているわけじゃなくて、税法のほうできめているわけでございます。  そこで、問題が二つありまして、私は引当金制度自体はあってよろしい制度だと思いますけれども、その引当金の引き当てのうち、どのくらいの率のものまでは税法上も認めてよろしいかということになりますと、やはりもっと論議を尽くすべき分野が多い。しばしば御指摘を受けまして、金融機関の貸倒引当金につきまして千分の十五から十二に引き下げ、さらに千分の十に引き下げてまいりましたのは、そういう趣旨でございますけれども、しかし、しばしばこれまた強い御指摘がありますように、実際の貸し倒れ実績等と比べますれば、あまりにも乖離がはなはだしいという点から申しますならば、やはりこの貸倒引当金の制度などにつきましては、なお今後とも引き当て率について合理化をはかっていかなければならぬ、少しいまの制度は引当金という名のもとに奨励金的、補助金的要素を持ってきている部分があるということが言えるのではないかと思うのでございます。  それから同時に、最近非常に御批判の対象になっておりますものに退職給与引当金というものがございますけれども、退職給与引当金につきましても、企業会計のほうの考え方は、現在の従業員が、現在の給与規程に基づいて一斉に退職した場合に必要となるであろう退職給与額、この全額をほんとうならば引き当てるべきではないかというような思想が、企業会計原則の専門家の間では非常に強いわけでございますが、税法ではそれはあまりにもおかしいということで、その半分というところまでしか認めませんよというのが、税法のたてまえでございますが、このことにつきましては、半分でも少し甘いのではないかという御主張と、企業会計のように、全額それを認めてもいいではないかというような主張があるわけでございまして、このあたりにつきましては、今後少しやはり詰めた議論を展開していく必要はあると思います。  そういう意味で、二つの例を引用いたしましたが、今後引当金の引き当て率その他については、相当議論をしていく必要がある。そして方向としては、御指摘のように経理組織が整備されている企業ほど、こういう引当金制度を活用しておる現状からいいますならば、結果的にそれが、比較的資本金の大きい企業にメリットが及んでいるということは否定できない事実でございますので、そのことも頭に入れながら考えていく必要があると思います。しかし、引当金自体が奨励措置であるというふうに理解をすることについては、私どもはどうもにわかに賛成いたしがたい、こういう関係でございます。
  63. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これは私も、局長の意見に頭から反対するのではないわけです。ですから、あなたがおっしゃるように、制度上の引当金、いわゆる企業会計の原則からいって当然のことじゃないかとおっしゃるなら、これは私もそれを一歩下がって認めていいと思います。ただその額が、あなたがおっしゃる税法上にこれを戻ってみたときに、どのぐらいが妥当かということになると、社会通念上実態に即してどのぐらいが適正であろうかということがきめられてしかるべきだと思うのです。  そこであなたも指摘されたように、たとえばここに出てくる金融保険業として、貸倒引当金残高が八千六百億もあるということは、統計等を見ますと、われわれも、積み増し分はいつも出てくるわけですよ、年度別に。わかりますけれども、どれだけその年次で支払われて、そしてそれが積み重なってきたかということがわからぬわけです。ですから、実態を明らかにするそういう資料をと、こういうことを、くどいようですが、何べんもいままでも言ってまいりましたから、今後私は、いまの局長の言で、税制調査会等では、そういう資料というものが金融、たとえば銀行関係ではこれだけだ、もっとそれを分けて、信託関係はどうだ、あるいは保険業じゃどうだったということに区分されて、それが貸倒準備金としてどうだったということ、今度は租税特別措置法でいえば、価格変動準備金のほうでいえば、ちょっと実態に合わないのじゃないかということが業種別にこう分けられれば、おのずから出てくると思うのですよ。そういうものを実態に合わせる努力が必要だろうと思うのです。あなたも言われたように、高度成長の一つの誘導的なものとして、パイを大きくするための一つの方途として、こういう制度がとらざるを得なかったある時期というものはあったと思うのです。ところが、もう産業構造全体を見直さなくちゃならぬということ、それからもう一つは、そういう目的はもうすでに確立されて、ある企業で言えばもう寡占体制になっちゃって、むしろこの誘導措置が、寡占体制をつくり上げて、今日の異常物価高というものをつくり出しておる元凶にすらなってしまったというところにきておりますから、私は、いままでの措置を評価しながら、反省をしながら、早急にこれにメスを入れて、制度そのものの検討よりも、まず、税法上の率を先に検討をしてもらって、そしてこれに対する措置を講じていただく、そういうことによって逆累進も防げるだろうし、それから法人自体も、公平な私は税負担をしてもらうことになると思いますから、ぜひひとつ早急にそういう面について検討をされることをお願いするのですけれども、もう一度局長の決意を伺っておきたいと思います。
  64. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 基本的には、成瀬委員の御指摘方向でものごとの処理に当たりたいと思います。  ただ、一つお断わりしておかなければならぬのは、典型的な例として、金融機関の貸倒引当金の問題が出ておるわけでございまして、法律事項ではございませんが、今度の法人税法の改正の機会に、千分の十二という貸倒引当金の率を、千分の十に落とすということにいたしたいと思っております。そういたしますと、少なくとも四十九年度におきましては、金融機関は貸倒引当金の積み増しができない。四十九年度に関しては新しい積み増しができないという程度には、いままでの制度を、いわば押え込むということができるわけでございますが、将来これをいかにいたすべきやというのは、非常にめんどうな問題でございまして、金融機関はお客さんからやっぱり預金を預かっているという関係がありますので、一種の支払い備金的なものが、他の企業とは違った意味においてなければならぬということは言えるわけでございますが、現在の銀行制度の上におきまして、他の機関、他の会社とか企業と異なるその種の制度がございませんで、もっぱら貸倒引当金の引き当てということを通じて、支払い備金が金融機関内部に留保される形で今日まできておるわけでございます。  金融機関の貸し倒れというのは、現状においては、平静な状態ならば、めったに起こるはずがないということでございまして、実績率は非常に著しく低いということは、ここでもしばしば今日まで議論にあったところでございますが、金融機関のためのそういう支払い備金的な性格の留保分がどのぐらいあったらよろしいかということにつきましては、これはやはり何年かに一ぺんというよりは、何十年かに一ぺん起こるかもしれない事態にどのように備えるかという問題があるわけでございまして、私どもといたしましては、大蔵省内部の問題でございますが、銀行局に対しまして非常に強く、むしろ銀行特有のそういう制度を、法律上の制度として御審議を願って確立をしてほしい。そうでないと、一般的な貸倒引当金というふうなことで、しかも、実績貸し倒れ率と乖離したような率にしておく、離れた率のままにしておくということは、非常に税の立場からいうと困るのだということを主張しておるわけでございますが、銀行制度の上におきましても、どうも、いまどういう制度を、特別な他の株式会社とは違うどういう制度をつくったらよろしいかということを発見いたしますのにつきまして、やや暗中模索のような状態になっておりまして、銀行局サイドからはなかなかそういうルールを、銀行だけの特有のルールをつくることがむずかしいのだということをいわれておりまして、この問題については、相当、金融機関の基本的な問題でございますので、若干、今度やりましたように、少しずつ率を下げるというようなことはできるかもしれませんけれども、一挙に基本的に直すことについては、よほど金融制度調査会等を通じて、基本的に議論をしてもらわなければならぬ問題が残っておるわけでございまして、その処理をどうしたらいいかということは苦慮いたしておるところでございます。  他の点につきましては、御指摘のように、基本的にはかなり長い間固定された制度のまま今日まで残っておりますので、私どものほうといたしましても、税率の作業が大体これで一段落ついたようなかっこうになっておりますから、五十年度以降の法人税制の問題としては、御指摘のような点を中心に、じみちにそういうものの実態に合わした制度に直していく。いろいろの点でいわば甘くなっている点があると私も思いますから、それを直していくという方向に進みたいというふうに考えます。
  65. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、高木主税局長と、銀行そのものに対しての、法律でいろいろと保護され、そしてどういうふうにやってきたかという現状認識が違うと思う。あなたは何十年かに一ぺん銀行が取りつけにあって倒産をしたらたいへんなことになってしまう、そういうもののために、この制度がどうだなんという議論は、私は、全く実態にマッチせぬ議論だと思うのですよ。しかし、そういうことが必要だというなら、私は、こういうところを柱にして立てずに、これはもう不良貸し付けの問題になってまいります。ですから、そういう問題については、銀行局の中の、銀行内部の監査あるいは銀行局の監査なり、いろいろな意味で二重、三重にもそういうことが行なわれるとともに、あらゆる面でそういうことがないように実は行なわれておって、むしろ銀行はこれは罪悪論をやりたいぐらいです。罪悪論がやりたい。最大の一番いけないのは金融資本だという認識なんですね。そういう立場に立ってやっておるのに対して、あなたは何か、何十年かに一ぺん取りつけがあるから、これをどうだなんということを言うと、せっかくのいい話が、どこか主税局長の姿勢がおかしくなっちゃう。だから、そういうことじゃなくて、もっとこの貸倒引当金、金融機関の貸倒準備金にはきびしく、実態に合った形でやっていく。企業原則に基づいてどうだとか、いろんなことを言いますが、それは私は、当然なことで、日銀等の預貸率の問題もあり、貸し出しをどうするとか、担保をどう取らなければいかぬとか、保証をどうせにゃいかぬとか、いろんなことをやっているのですから、そこまで税の問題で勘案するというのは、少し主税局が銀行に対して親切過ぎる。もっと私は、冷淡であっていいと思う。冷淡ということはちょっとことばが悪いかもしれませんけれども、それまで税でめんどうを見てやる必要はないと思いますが。  それで、実際、高木さん。四十七年のこれ出ておりますが、四十七年にほんとうに貸倒準備金の中から銀行が取りくずした額はわかりますか。
  66. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 金融機関の貸し倒れ実績はわかっておりますが、申し上げます。  四十八年の三月期決算のときの貸し倒れの実績というのは、十万分の二という非常に低い率でございます。これは都市銀行でございます。それから、地方銀行が十万分の四、それから、相互銀行が十万分の十三、それから信用金庫は、四十八年三月でなくて、四十七年の、たぶんこれは一年決算であると思いますが、一番新しい数字が十万分の四十というような率になっております。この率からいいまして、現在の貸倒引当金の率が著しく実態を離れておるということは明らかなのでございます。  ただ、この問題は、日本だけではなくて、諸外国でもいろんな議論が行なわれておりまして、正確なニュースではございませんが、アメリカで、金融機関に対する貸倒引当金の率が、正確な記憶ではございませんが、現在、千分の十五でございましたか、千分の十八になっておるのでございますが、これを十年ぐらいの計画で千分の五ぐらいに落とそうではないかと——現在千分の十八でございます。これは、アメリカでは、一九六九年現在で千分の二十四でございました。それを一九七〇年から千分の十八に落としました。七六年から千分の十二に落としまして、八二年以降は千分の六にするということで、六九年以前に千分の二十四という高い率でありましたものを、四段階にいたしまして、十二、三年がかりで四分の一に削るということをアメリカでもやっておるのでございます。  現在の金融機関に対するいろいろな制度につきましては、やはり国際的な問題というのがないわけではないということがございまして、アメリカでは現在千分の十二で動いているところでございますので、日本アメリカよりも先に千分の十二から千分の十に削るということにつきましては、金融機関行政をやっているサイドからは、実は相当の議論があるということなんでございます。しかし、これはある意味からいいますと、率だけ見たのではだめなので、たとえばアメリカの貸し倒れ実績はどうなっているんだというようなことを、主税局と銀行局との間で議論をいたしました。そういう資料も十分銀行局サイドには手持ちがないわけでございますので、アメリカが現在千分の十二であるからといって、日本も千分の十二に固執することはないじゃないかというふうなことを議論いたしました。とりあえず四十九年度は、暫定的でございますが、千分の十まで落とすということにいたしたわけでございまして、この辺はもう少し私どもと銀行局との間で、諸外国制度、それから、その運用の実態等もにらみ合わせながら、議論してみなければならないというふうに考えております。
  67. 藤田正明

    ○藤田正明君 いま高木主税局長が、アメリカとの比較で、貸倒引当金の率を言われたのですが、日本の銀行は、あれくらい行政指導という美名のもとに、がんじがらめの綿密な保護を受けているわけですね。ですから、銀行の決算を見ても、あの決算の利益なんていうものは、もう隠し切れぬ利益が、あそこに出さざるを得ないから出ているのであって、銀行の内容たるや超健全ですよ。アメリカの銀行以上のものがあると私は思う。景気になろうと、不景気になろうと、金融資本というものは、いつも床の上にあぐらをかいて、これまで行政指導という、健全性の維持という美名のもとに、公然たる巨大なカルテル行為がここに行なわれていると思っていいと思う。現在の日本の金融資本のあり方、銀行。こういうふうなことは、銀行局を相手に討論をすべき問題であると思いますが、いまのお話を聞いておって、決してアメリカの銀行とか、よその銀行とは比較にならぬと思いますね。私は、銀行とか保険会社には特別の税制を、制度をつくってしかるべきではないかと思う、日本の場合は。ということは、特に保護されておるんだから、絶対に日本の銀行はつぶれないようにできております。あの十九億事件なんていうものは、あるいは滋賀銀行の九億円なんというものは、どこに吹っ飛んじゃったかわからない。あれはかすり傷さえ負わしていないんですよ、銀行に。それくらい超健全ですよ、日本の銀行は。健全はいいですよ。しかし、あまりにもああいう巨大なカルテル行為を組んでいるとしか思えないような業界においては、私は、特別税制を考えてもいいと思う。この辺の御意見をお伺いいたします。
  68. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) まあ率直に申し上げまして、大蔵省の中におきましても、銀行局と主税局との間には、いつもそのような論争をいたしておるわけでございまして、もう少し基本的な点にこの際立ち入りまして、いろいろ論議をしてみたいと思います。個人的にはまあ、各委員から御指摘を受けたような点について、私もそういう感じを持たないではない点が多々あるのでございますが、これはちょっと表現が悪いのでございますが、やはり預金者保護ということばの陰において、かなり金融機関保護的な要素が出ているというふうに私どもも個人的には思っているわけでございます。そこは、御激励を受けまして、ひとつ大いに取り組んでみたいと思います。
  69. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これで最後ですがね、あなた預金者保護と言うけれども、これは全く銀行保護なんですよ。違うんですよ、預金者保護ということと、銀行保護ということと。ですから、預金者保護なら、預金した者が損をするような、そういうことはやらぬと思う。実際に預金しておったらばかみておるのですからね。物価上昇とかその他なんかでね。もっと金利を上げるとかいろいろな優遇措置がある。そういうことを全然考えずに、銀行さえもうかればいいという、預金した者はばかをみておる。預金者保護じゃない。ですから、そういう立場に立てば、とにかく逆累進になってはいかぬですから、そのもとは何だといったら、法人税法による引当金と準備金、特別償却、そういう租税特別措置法によるものなんですから、もう使命を果たしたという認識に立って、あるいはもっとやれば、新しいこれからの産業構造を誘導するという立場で、もし残しておくなら、そちらのほうへ目を向けたものでひとつ検討してもらう、そういうふうにもう根本姿勢を変えて、ぜひひとつやっていただきたいと思います。
  70. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 先ほど来お答え申し上げておりますように、私どもも基本的にはそういう方向であると思いますから、大いにやってみたいと思います。
  71. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 貸倒引当金についてだいぶ局長も前進した答弁があったからもういいだろうと思うのですが、私もいろいろとその内容について質問しようとしたんですが、まあこれは私の調査でも明らかなんですが、たとえば卸、小売り業の場合はいま千分の二十ですね、それから割賦販売業の場合は千分の二十五、それから製造業の場合は千分の十五、それから金融保険業の場合は千分の十五、これが四十七年度の改正で千分の十二に、こうなって、今回また政令措置でもって千分の十になるわけでしょう、今度の改正で。そういうことで、ことに問題になる金融保険業については、それなりにやっぱり局長のほうも努力をされたあとは、これははっきりしているわけですけれども、しかしそれにしても、この四十六年度の貸倒引当金の期末残高、これは一兆八千四百三十七、これくらいあるのですね。これは年々またふえてくる増勢傾向にあると思うのです。そういうことで、今回千分の十二に引き下げまするけれども、さっきもいろいろ論議があったように、貸し倒れ率というやつは、いろいろと銀行別に局長が言われたように、〇・二ないし〇・三というきわめて微々たるものなんですね。だから、そういう状況からいけば、この繰り入れ率の引き上げは当然あってしかるべきじゃないか。だから、さっきアメリカの問題も引用されたようですけれども、まず長期展望に立って十年間なら十年間、五年間なら五年間の中で、漸次そういうものを引き上げていくような方式——これはいいことですから、アメリカにならってもいいと思うのですが、そういう方向での御努力をやっぱり局長のほうで十分やっていただきたいと思うのです。これはもうすでに答弁が成瀬委員や藤田委員の答弁でなされておりますから、答弁はけっこうでございます。私もそういう面について再度要望して、貸倒引当金については終わりたいと思います。  それから、先ほど全体の資本金別法人税負担率を私が読み上げてやったわけですが、あと資料はいただきます。いただきますが、たとえば所得金額が全体で七兆五千八億八千五百万、この程度あるにもかかわらず、この法人税率の額は、わずかに三千六百七億六千八百万ですよ。で、税率負担は平均で二四・六%しかなってないですね。  そして、なおかつ不当なことは、この寄付金ですよ。これはおそらく私は大部分政治献金にいっているんだろうと思うのですが、この内容を見ますと、総計これ五百七十九億七千九百万、こういう金額がいっているわけですね。で、片や税金が安くて、寄付金がまたどっさりいっているというようなことはね。これは確かに一応税法のたてまえは、寄付金については普通法人の場合は所得の二・五%、資本の〇・二五%の合計額の二分の一、これをこえないものは損金算入されるわけですからね、こえた場合は損金算入にしませんということになっていますが、こういうことは私はやっぱり不当じゃないかと。だから、こういう面のやっぱり総点検も必要ではないだろうかというふうに考えるんですけれども、この寄付金行為については局長、どうお考えでしょうか。
  72. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 寄付金についてはいろいろむずかしい論議があると思います。やはり法人といえども、そのいわば社会的おつき合いといいますか、そういう面からいって、それなりに個人と同様に寄付金を支出することは当然である、したがって、現在のような程度——法人が寄付金を出すこと自体については、これはやはり税法上何らかの配慮が、あってしかるべきものであるという基本的な考え方に立ってよろしいのではないかと思っております。まあ、いまの御批判は、ある意味から申しますと、その損金算入が認められる限度についての量的評価の問題であろうかと思うわけでございます。この問題もいろいろまあ政治献金等の問題もからみまして、いろいろと御批判があるわけでございますが、まあ一方におきましては、実は最近いろいろと国際的な事業であるとか、あるいは文化交流事業であるとか、あるいは社会保障的な事業であるとか、そういうことを政府に依存しないで、民間の自由意思によって進めることをもっと進めるべきであるという意見も一方においてあります。政治献金の問題というのは、純粋の税制の問題とちょっと離れてきますので、なかなかむずかしいわけでございますが、それを別にして考えますと、むしろ寄付金についてもう少しそういう民間の自由意思によっていろいろと、何といいますか、善意による事業の推進ということが進んでいいではないかという議論も一方ではあるわけでございまして、いま今日の段階で、にわかにこれをどちらの方向で変更すべきやということについては、私十分お答えできる用意を持たないという現状でございます。
  73. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それからもう一つは、これも時間かかりますからあとで……。  これは、いただいております、法人の総資本の利潤率の国際比較があるんですけれども、これは内容を見ますと、非常に支払い利子が多いんですね。日本の場合は昭和三十五年で二四・八%、四十二年に三〇・一%、それから四十六年が三六・三%、こういうふうに非常に多いんです。イギリスあたりは二・七%、六・一%、七・四%ですからね。ドイツの場合も七・八%、一三・六%、一五・三%、こうなる。税金負担率も、アメリカの場合は三二・二%、二二%、二七・二%。イギリスの場合は三四%、二九・四%、三三・二%、ドイツでも三三・三%、二一%、二二・五%、こういうことになっているのに、日本の場合は三十五年に一九・五%、それから四十二年に一四・四%、それから四十六年は一〇・三%、漸次下がってきているんですね。こういういわば税金負担割合になっているんです。少なくともアメリカ等は三〇%近い、平均。イギリスもそうです。ドイツもそうです。こういうのはやっぱり企業の体質にもよりましょうね、先ほど言ったように、自己資本と他人資本の区別等含めましてもそれはだいぶ違いますから。しかし、アメリカあたりは、すべてやっぱり自己資本でまかなってやっている、自力体制をとっているわけですね。日本もいま相当、さっき成瀬委員指摘じゃないけれども、寡占体制に入っているわけですからね。それからあらゆる政府の、国家権力のいわば過保護体制の中でそういう状況になっているわけです。で、この税金もやはりその一つだと思うんです。ですから、こういう意味合いからいけば、私は、法人税率の引き上げが当然なんで、まだまだ余裕あると言っていいと思うんです。だから、そういう意味合いにおいて、今回四九・五%引き上げは当然なことで、これは五〇%こえたって、私は、そんなに企業に心配はない、こういうふうに思うんですけれどもね。それからこの配当についてもそうです。あるいはこの減価償却費の、これは大体諸外国と比べてもそう高いということではないですけれども、そういうぐあいに、いずれにしても税金と支払い利子、これが特徴的に日本は優遇されていると思うんですね。だから、こういう問題についても、私は、法人税全般の問題について、ことに特別措置法の過保護体制について抜本的に洗い直す時期にきているんではないだろうか、こういうふうに実は考えるわけでありまして、その点も総利潤の構成等含めて考えた場合にそういうことが言えるので、前段同様ひとつこれは局長十分検討していただきたい、こういうふうに思います。この点はいかがでしょう。
  74. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) こういう角度からの検討は、私ども実はあまり十分まだいたしておりません。何と申しましても、産業構造があまりにも違い過ぎる。日本は、自己資本比率が御存じのようにいま非常に下がっておりまして、資本金一億円以上の法人の四十六年度における自己資本比率は一六・六%というふうな非常に低い率になっております。それに対応するアメリカ企業の自己資本比率は五三・八%であるというふうに私どもの証券局の調べではそういうふうになっております。イギリスは、新しい数字がございませんが、四十四年に四八・七である。西ドイツは四十五年に三八・七であるということで、自己資本比率がものすごく日本だけが飛び離れて違っております。このことは、別に申しますれば、借り入れ資本率が高いということを意味するわけでございまして、その関係で、借り入れ資本のウエートが高く、それが税法上は損金になるわけでございますから、こういう全体の粗利益と申しますか、粗利潤と申しますか、こういうものの中におきます税のウエートという形で分析をいたしてみますと、確かに税負担が低いという結果になって出てくるわけでございます。こうした問題は、なお今後とも検討していかなければならないわけでございますが、直ちにこういう角度からの税の負担割合が低いということだけではちょっと簡単に法人税負担をもっと上げてもよろしいのではないかという議論につながるとは、なかなか断定いたしがたいのではないかと思うわけでございまして、しかし、冒頭に申しましたように、率直に申しまして私どもこういう角度からの比較検討は十分でございませんので、なお、勉強をいたしてみたいというふうに思います。
  75. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ぜひ局長の答弁の内容で御検討願いたいと思うんですが、私は、単に諸外国法人税率の比較、それだけでは中身の料理が違うんですから、いま産業構造と局長もおっしゃられましたけれども、そのとおりだと思うのです。どうしてもやはりこういう総利潤構成からいろいろと検討して、はたして妥当かどうかということで判断をするのが一つの方法であろうと思うのですね。そういう意味合いにおいてぜひお願いをしたいのですが、さっきも指摘したように、銀行の利子支払いが非常に高いんですね。たとえば二五%から三六%と漸次上がっている。それから税率負担が三十五年から四十六年まで一九・五%が漸次下がって一〇・三%までなっている。こういうやっぱり極端な例というものは、やはりこの巨大プラント建設に対してばく大な借金を銀行からやって、銀行も湯水のごとくそれを出すわけですから、そういう中で、高度経済成長というものをずっと保ってきたわけでしょう。だから、成瀬委員指摘したように、すでにそういう産業自体の寡占体制というものが成就をされて、一人歩きできるというような状況まできているのに、これ以上また税制上特別措置でもって過保護政策をとらなくてもいいじゃないか。これは社会の世論に訴えたら、だれだってそういう意見が飛び出してくると思うのですね。だから、そういう点についてぜひ検討してもらいたいし、ことにこの石油化学ですね、さっきも指摘しましたように。これは全く借金だらけでやっているんでしょう。たとえばこのエチレンセンターの十一社のうち七社まで赤字続きですよ。税金一銭も納めていない。こういうことで、借金借金でやって、そうして大至急減価償却でやって、そうして会社を盛り立てていっているというのがいまの状況なんです。こういうものを、やっぱり過保護体制としてとられている。  それから鉄鋼でもそうですね。世界十六位まで見てみても、その中にオランダが四位、ソ連が九位。これを除きますと、すべて日本が占めているわけでしょう。たとえば新日鉄は一位ですよ。USスチールを抜いていま第一位。日本鋼管はどうかというと五位でしょう。川崎製鉄が五位。住友金属が八位になっている。これは四十七年度調査です。そのくらい全体世界的に見ても、見劣りのしない生産体制までいっているんですよ。あるいはまた自動車にしたってそうですね。世界第二位ですよ、四十二年以降。乗用車は四十六年以降。こういうことになって、産業成長のパターンの中で、税負担アメリカなんかと比較して全く安い。これも過保護体制をとられている。  そういう状況の中で営々として大企業はどんどんどんどん大もうけをしてやっているんですから、だから、こういうものに対しては、やっぱり適正課税というものは私は必要だろうと思う。それは一挙に、いま局長が、前段の貸倒引当金のように一ぺんにはできないでしょう、できないでしょうけれども、ほんとうに特別措置総体を洗い直して、こういう一方に偏した、そういういわば税制上の優遇体制というものをもう少し本格的に検討する時期にいまきているんじゃないだろうか。このままいったら世論上、勤労所得税とか何というのは、全く過重な体制でやられているんですね。そうして総体の税金の八割も納めなければいけないなんていうような、こんなばかな話ないのですね。二重、三重、四重の苦しみを受けて、そうして一方ではぬくぬくとこういうことで金融上も保障され、税制上もやられ、あらゆる面でも特権的に過保護されるというようなことはもう許されないんだ。だからそういう意味合いで、私は、全般的な特別措置の総点検を開始をしていただきたいと思うんですが、局長の明確なひとつ答弁をお願いをしたい。  それからついでですから、時間もあれですから、あまり長くしてもあれですが、もう一つは、各種準備金の中で、海外市場開拓準備金、これも現行制度上は、商社については〇・五%、資本金十億円以下は一%、中小商社に対して一・七%、メーカーについては一・五%、中小メーカー二・三%、こういうことで積み立てが認められておるわけですけれども、これなんかも、私は主として、いま指摘をしたような寡占大企業が海外に行っていろいろな問題をやっている。田中総理が行ったときにそういうものが爆発をする。こういう状況までいっているわけですね。だから、そういうものについても、いままで輸出ドライブをかけて、それに対して輸出入銀行等を通じてこれも徹底した保護政策をとってきているわけでしょう。そういうものに対して、さらにこういう財産留保についてまでわれわれがやっていかなければいけないということはないだろう。もう一つは、海外投資損失準備金にしてもそうであります。同様の性格持っているんですからね。こういうものについても、全体洗い直して、なおかつ開発途上国に対する支援とか何かというものについては、これはできるだけ、総理も言っているように政府ベースに切りかえていこう。民間にほうらつなそういうものを漸次規制していこうという考えを持っているようですから、そういうものも含めて、私は、租税特別措置の全体の洗い直しを早期に開始をしていただきたいというのが私の熱望ですから、そういう点についてひとつ局長の答弁をお願いしたいと思います。
  76. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 海外市場開拓準備金は、御存じのように、輸出を促進するという立場から考えられたものでございますから、御指摘のように整理の方向で考えていくものと思います。さればこそ四十七年秋の税制改正におきまして、資本金十億円超の法人については、この制度をやめるということになっておるわけでございます。現在は資本金十億円以下のものについてだけあるわけでございまして、資本金十億円以下と申しますと、大体貿易商社等でありましても、専業のものが多いわけでございます。単品を扱っておるものが多いというような事情にあるわけでございます。これにつきましては、将来にはやはり整理の方向にいくべきものというふうに考えますけれども、なお、総合商社ではなしに、単品を扱っている商社については、もうしばらくちょっと余裕を見たほうがいいかなあということで、今回の改正には見送りにしております。  それから投資の関係でございますが、これは実は私どもは若干輸出に直につながります海外市場開拓準備金の場合とは少し基本的に考え方を変えてもいいのではないかというふうに考えるのでございますが、それは、ここ数年来貿易の自由化と同様に、資本の自由化を進めてまいりました。わが国のように資源のない国の場合、またいろいろな意味で公害その他を通じまして、国内における産業開発に限界がきている場合におきましては、資源の確保、その他の見地からいって、やはり海外においていろいろな仕事をし、資源を確保するという必要性というものはむしろ高まりつつあるということも言えるわけでございますので、海外投資をスムーズにするということはやはり必要なのではなかろうか。わが国の対外直接投資の残高は、諸外国に比べましてきわめて少ないわけでございまして、日本のように資源の少ない国が、外国において投資を持っておらないということについては、日本経済の構造的な問題としてどう考えたらよろしいのかという基本問題がございます。でありますから、この問題との関連において考えていかなければならないのではないかと思ったりいたしておるところでございます。  で、全体の問題といたしましては、御指摘のように、また、私が先ほどから御説明いたしておりますように、四十九年度の税制改正としては、税率の問題にエネルギーを投入いたしたわけでございますが、五十年度以降の問題といたしましては、先ほど来のお尋ねにお答えいたしておりますとおり、租税特別措置なり、あるいはまた各種引当金なりの制度について、実態に即したものにし七いかなければならないという努力を続けてまいりたいと思います。そのことをお約束をいたしたいと思います。
  77. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もう一つですけれども、これは交際費の問題ですけれども、現行の交際費は、これはやはり四十六年度ですが、一応私のほうで持っている資料でやりたいと思いますが、あと資料をいただきますけれども。  で、資本金の階級別で、五百万円未満、これが支出額で金額が四千三十六億です。構成比が三二・二%、損金不算入額が金額で百五十億、構成比で四・七%、損金不算入割合が三・七%、五百万円以上、一千万円以上、五千万円以上、一億円以上、十億円以上、五十億円以上、百億円以上、で、合計これは損金不算入額が三千百八十六億円、損金不算入割合が二五・四%、こうなっておるわけですね。この現在の制度上の問題としては、交際費については四十六年度で一兆二千五百五十八億円、このくらい金額で損金不算入されているわけですね。ですから、おそらく四十七、八、あるいは今年、この額はさらに伸びてくるだろうと、こういうように思うのですが、いまの計算方式でいくと、非常に微々たるものになるのですね。ですから、こういう問題について、私は、この交際費は、有価証券等で報告される内容については、きわめて表面的なものであって、実際はこの裏まで含みますと、この三倍は優にあると思うのです。ことに不動産も、最近地場不動産と言われる県段階にある大手に付随した系列会社です。これはたとえば何ヘクタール買えばマージンとして頭から三割なら三割やりますよ、こういうやり方ですからね。めっぽう金を使って、その次の単価がおおむね大手で考えているそういう額よりも相当浮動がある。たとえば八千円で大手が買い占めて、売るときには一万五千円なら一万五千円になってしまう。造成すればさらにそれの何倍、こういうことになっていきます。そうすると、地場不動産の系列に入った人たちは、めっぽうそれは使っている事実があるわけですから、そういうことで、どんどんどんどん湯水のごとくやられているのがいまの実情です。しかし、そういうものは実際上がってきません。だから、実質的なものと、報告内容というものは、絶えず統計上私は違うと思うのですけれども、そのくらい大量にやられておるわけなんですね。もう何回か、これも過去論議をされておるわけですから、もう少し当面率を上げていって、そうしてやはり引き上げの方式を考えて、歳入面のいろいろな苦労があるわけですから、増税対策をとって歳入を補てんするということがあってもいいじゃないか、こういうふうに考えるのですけれども、その点が一つであります。  それから、もうこれで終わりたいと思いますが、所得税の場合の、一千万円以上の場合の資料はいただきました。これはわかりました。これ計算してみましたら、減税額は九十四万九千二百五十円です。一千万で夫婦と子供二人、給与所得者の場合ですね、平均世帯で。そうすると、月約八万円見当減税をされています、一千万円の人は。ところが、普通の標準世帯ですね、百五十万円、これは課税最低限に該当する人ですけれども、この人たちの減税額を計算をしてみますと、大体百五十万円の人、春闘で二〇%今度——これは低い見積もりですがね、実際は三〇%以上出さなければこれはおさまらぬでしょうけれども、かりに二〇%と置きかえて百八十万、その減税額が、所得税二万五千百円、これから一万五千円、こういうことになって、一万四百円の減税です、実際。住民税は一万四千九百円、これが一万二千三百二十一円、こういうことになって——前年度ですよ。そうしますと二千五百七十九円。ですから、差し引き計算でいって七千八百二十一円減税です。月額当たりどれぐらいになるかというと、六百五十円の減税です、六百五十円。これはあとで計算ひとつ出してもらって、私が間違っておればひとつ正してもらいたい。  それから独身の場合ですね、課税最低限は、これは四十三万九千九百円、今回七十万六千円、こういうことで引き上げられた。ですから、二十六万六千百円、これだけ引き上がったわけですから、これも同じようにかりに二〇%アップをしたということで計算しますと、減税額は五千六百六十円ですから、月額にして四百七十円ですよ。前の二〇%であって百八十万円、四人世帯でもって月六百五十円、独身の場合は四百七十円、そして、いま一千万の人は約八万ですよ。このくらい違うんですよ。だから全部、総体一人一人洗ってみたら、いかに局長が名答弁をしようが、今回の大幅減税といわれる一兆四千五百億、平年度で一兆七千億、この減税態様というものは一貫してやっぱり重役、部長減税だということが言えるんです。これは個々的に計算してみたら絶対そうなっている。だから、国民の大衆は、重税感が払拭できないのは当然のことなんです。だから局長は、いろいろと人的控除を上げましたとか、税率もそういう緩和方式をとりました、十九段階でもってそれは解決することはしましたよと、こう言っているけれども、現実はこうなんですから、わずかに五百円見当しかこれ減税にならぬということですから、いまのように物価狂騰の中で、二〇%もこえる物価が上がっておったら、実質増税であることは間違いないんですよ、これは。だから、こういう面についてもう少しやっぱり大蔵省としては、親心のある、当面の国民の苦労というものに対して租税上、大ラッパを吹いたような大幅減税なら、減税らしいような中身がなければ、私は、国民はやっぱり政府にうそをつかれたと、逆を行こうと、こういうことにならざるを得なくなる。あるいは力でもってベースアップ戦っていこうということになりますよ。こういう点は局長どう一体判断をされておりますか。その点をひとつ回答願いたい。
  78. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ちょっと関連。  いま戸田君があとから指摘したのは、世に言う重役減税じゃないかと、それを過般私も——ある人が検討してもらった資料なんですから、私もよくわからないというんですか、正確なのかということで、そろばんを実際入れてみなかったんですが、いわゆる弾性値から見ると、やっぱり逆累進になっておるという、そういう結論が出てくるわけです。ですから、そういうような、いま戸田君は数字を出しましてやってきておるわけですが、私は、額からそういうふうにはじいても逆累進じゃないかという、その額のことですから、大きいものがたくさん減税になるのは、減税の恩典にあずかるのはあたりまえじゃないかといえばそれまでかもしれませんけれども、弾性値がもし逆累進ということになるならば、その間におけるところの税率区分の税率がおかしいことになると思います。ですから、そういうことを検討されておるかどうかと、こういうことなんですが、それはどうでしょう。
  79. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) まず最初に、交際費の点で、ございますが、交際費については、御存じのように漸次否認の割合を高めてまいりまして、御存じのように、四十八年度改正で七五%まで否認ということになっておるわけでございます。それで、にもかかわらず、交際費支出額は年々ふえているわけでございます。不算入割合を見ますと、昭和四十一年度当時には一七・九%でございましたものが、先ほど御指摘のように、昭和四十六年度では二五・四というふうにかなり上がっておりますし、最近の新しい数字を見ますと、四十七年度では二七・五に上がっておりますが、四十八年度はこの不算入割合を七〇から七五に上げました関係で、さらに上がったはずであるというふうに思います。  これをさらに上げてはどうか、交際費というのはまことに困ったものであるから上げてはどうかという御意見については、一般論としては、私ども理解できるのでございますが、実は先ほど不動産の取引に関連してお触れになりましたように、交際費支出というものは、どうもなかなかうまいぐあいに申告されてこないということがありまして、それが否認割合が高くなればなるほど、企業負担がふえる関係で、自主申告の状態がだんだん好ましくない状態になっておるのでございます。そのために、税務調査にあたりまして、交際費に関する申告が正しいかどうかということに相当手をとられる状況になってきております。税務調査といたしましては、やはり何といいましても、基本的な売り上げの脱漏であるとか、架空経費の計上であるとかいうような、基本的な申告の好ましくないものの調査に本来の重点が合わせられるべきだと思うのでございますが、どうも現状では、相当の精力を交際費関係に充てなきゃならぬということになっておるという税務の執行の実態を見ますならば、一般的に交際費についてもう少し何か手を加えたらどうだ、制度上手を加えたらどうだという御意見は、それなりに十分理解できますけれども、またそういう執行の実態を考えますならば、またこの損金不算入の率を高めますれば、それに応じて税の負担が高くなるから、これは困ったということで、企業が交際費支出を自粛するということになれば、非常によろしいわけでございますが、なかなかそうならないということがございますので、私どもはよく一般に御批判がありますにもかかわりませず、実はあまり現在のところでは積極的な気持ちではなかなか取り組めないということになっておるのでございます。  今回は、この割合のほうでなくて、控除額のほうを千分の二・五から千分の一・一に落としましたので、またそういう意味では、不算入割合が上がるわけでございますが、将来の問題といたしまして、これをどのようにいたしますかにつきましては、必ずしもただ率を上げて強化をしていくことで問題が解決するというふうには私は考えておらないのでございます。しかし一般的に、世論的にはもっと強化すべしということでございますから、来年度以降の問題といたしましては、やはり幅広い各方面の御意見を承っていかねばならぬとは思っております。  次に、所得税の問題でございますが、所得税の問題は、御指摘のように、所得収入階層別に見まして、絶対額から言いますと、どうしても収入の多い方、したがって、現在、税をよけい納めていただいている方に対する減税が大きくなるわけでございます。今回は、給与所得控除の抜本的な改正とか、税率の手直しも行ないましたから、いつものような物価調整減税の場合とは違いまして、構造的に所得税の組み直しをいたしましたので、その面が特に顕著に出てきているわけでございます。しかし、今回のような改正をいたしません場合でも、いわゆる物価調整的なものに重点を置きました改正をいたしました場合でも、現在の所得税の構造からいいますと、やはりどうしても、現在、税を納めていただいている額の小さい方には、税だけではなかなかやりようがないということもひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。全体の減税額は一兆四千五百億でございますが、そのうち、給与所得者についての源泉所得税についての減税額は一兆三千億強でございます。その一兆三千億強の減税額がどういう収入階層になっておるかという点は、昨日配付いたしましたこの資料の七ページ、七番というところに、給与所得者の四十九年度の所得税減税額の給与収入階級別の表がございますが、大体給与収入で三百万円以下の方のところでもって、全体の額の六割を充てられておるわけでございます。構造その他を直しました関係で、その上の階層にも及んでおりますけれども、やはり三百万円以下の方について八千億強の減税が行なわれているということは、何ぶん人数が多うございますから、一人一人にすれば少ないではないかということにはなりましょうけれども、かなりの減税だというふうに確信をいたしているわけでございます。  それから関連して御質問がございました成瀬委員の御指摘の点は、実は非常にむずかしい、理論的といいますか、仕組み的にむずかしい関係になっておりますので、なかなか口頭で御説明をいたしにくいのでございますが、概略だけ大倉審議官から説明をしてもらいます。
  80. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 実は、成瀬委員から、この資料について検討し、結果を教えてほしいという御依頼がございまして、計数をいただいております。ちょっと局長が終始委員会のほうに出ておりますので、実は局長にいままだ計数を見ていただいておりませんので、便宜私からお答えいたしたいと思いますが、お示しになりました計数は、昨年、四十八年に比べて、四十九年に二割なり三割収入がふえたというときに、収入のふえ率と、昨年の収入に対する昨年の税法の税金と、それから四十九年の収入に対する四十九年の税法の税金と比べまして、その差、その伸び率、それを収入の伸び率で割るという形の計数でございます。これを弾性値とお呼びになっているようでございますが、実は弾性値の計算は、むしろ同一の税法を適用いたしましたときの収入の増加に対する税収の増加として通常は理解されております。御指摘資料につきましては、そういう意味での、通常の弾性値をまず出してみまして、それに対してお示しになった計数がどう変わっておるか、それがいわば減税効果を示すわけでございますから、そういう作業をいたしました上で、適当な機会に御説明をいたしたいと、かように考えております。  ただ、一点だけ申し添えておきたいと思いますのは、いま私が御説明いたしましたような、通常一般に言われております租税弾性値と申しますのは、結果的に一よりも高く出てくる、所得税の場合。実績的にはおそらく二に近い数値をマクロ的には示すわけでございますが、その理由は、税率が累進になっているという理由よりも、むしろ所得の中で相当大きい部分が、人的控除その他で非課税になっておるということに起因する部分のほうが多いわけでございまして、極端に申しますと、収入が伸びたために、課税最低限の下から上に浮かび上がった方は、弾性値は無限大であるわけであります。税収ゼロが、税額が出てまいりますから、たとえ千円の税金でございましても、それは弾性値は無限大に出てまいります。したがって、課税最低限すれすれの方は、収入が若干ふえますと、弾性値としては非常に大きい数値を示すわけでございます。したがいまして、税率構造が累進的であるということよりも、むしろ課税最低限の水準が、平均所得に対してどの辺にあるかということが、所得税の弾性値を構造的にきめるわけでございまして、日本の場合のように、平均所得に対する課税最低限の水準がかなり高い場合には、どうしても弾性値は高く出るわけでございます。逆に申しますと、大減税をいたしまして、課税最低限を非常に引き上げますと、そのあとの、改正後の税制の弾性値というものは、改正前よりも高くなります。課税最低限を引き上げたために。そもそもそういう性格を持っておると、したがって、収入が低くて、課税最低限に近い方々の層のほうが、弾性値は大きく出る。そもそもそういうものであると、性質上。ということだけはちょっと申し添えておきたいと思います。
  81. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これで終わりますが、二点の質問と、一点の要請をして終わりたいと思います。  その第一点は、配当軽課税についてですけれども、これはどっちか一方に整理できないかということですね。まあ片や低率で減税をやられて、法人税でまた軽減措置をはかられる、どっちか一方当面整理ができないかどうか、これが一つ。  それからもう一つは、社会発展計画を、近く、新々社会発展計画をつくらなければいけないということは、大蔵大臣も言っておるわけです。やはり、今後の長期構想といいますか、租税政策に対する、そういうものをやはり社会発展計画の中に十分織り込んでいってはどうかという気がするのですけれども、その問題についてどういう局長のお考えを持っておるか、この二つ質問です。  それから、いままでいろいろ要請した資料を、できるだけ早目にひとつ御提示を願いたい、以上です。  これで私の質問は終わります。
  82. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 法人税のあり方につきましては、税制調査会の答申にもございますように、特別の部会を設けて検討されることになっております。そこで一応基本的なことも論議されることになろうかと思いますが、基本的なものといいますのは、配当についての課税を現在のように、基本的には受け取り段階で調整をする。法人では受け取りました配当を益金に算入しない、個人では配当控除の制度があるという形で、受け取り段階で調整をするという制度がそのままでよろしいかどうかということが、まず第一に基本的に検討さるべき問題でございましょうし、第二には、いまお触れになりましたように、配当軽課という奨励的な措置というものが、今後も続けられるべきかどうかということが検討されることになろうかと思います。それはあまりにも基本的な問題でございますので、私といたしまして、あるいは主税局といたしまして、どっちの方向検討するのだというお尋ねでございますけれども、なかなかお答えしにくいわけでございまして、それこそ大ぜいの方の御意見を承りまして、また、税制調査会だけではなくて、広くまあ世論的なものを求めまして、結論を求めていかなければならぬと思います。いまにわかに、たとえば二重課税の調整を現在のような、受け取り段階でやるのはやめて、支払い段階ですることにいたしましょうとか、また配当軽課制度をやめたほうがよろしいということには、なかなか申し上げにくいのでございますので、これは私どもが税の立場だけで考えるわけにもまいりません。産業構造の問題と関連してまいります。特に、先ほどからお触れになっておりますように、日本の産業はあまりにも借り入れ資本依存率が高過ぎると、この問題をどうやって今後産業構造として解決していくんだという問題が伴ってまいりませんと、幾ら配当軽課をやりましても、やはりどんどん自己資本比率が下がっていくという現状、これをどういうふうにして他の諸政策との整合性を持たせながら、あまりにも下がってまいりました自己資本比率を戻すようにするかという問題に取り組んでまいらねばならぬというふうに考えるわけでございます。  第二の御質問の経済社会基本計画と税制のあり方の問題でございますが、これは御指摘のとおりでございまして、全体といたしまして非常に高い成長率を前提といたしました経済社会発展計画とは違って、低い成長率を前提として考えるということになりますと、いわゆる税収の弾性値というものが低くなってまいります。一方今後の主要な歳出要因でありますところの、社会保障制度の充実のスピードをどのようにしていくのかと。それから社会保障のための費用負担をどの程度自己負担、会社負担財政負担に求めていくのかというあたりの、社会福祉のあり方の構造の問題を相当深く突っ込んで議論をしてもらいませんというと、財政の姿というものが出てまいりませんものですから、なかなか先々の、先々といってもそううんと長い期間でなくても、たとえば五年計画ぐらいのものでありましても、なかなか税の構造が、どんなふうに持っていったらいいかということを見つけ出しにくいわけでございます。私どもといたしましては、経済社会基本計画を担当するセクションなり、あるいは福祉計画を担当するセクションなりに対しまして、それらの将来構想というものを早く出してもらいたいという気持ちでありまして、そっちが相当進行してからあと、われわれのほうとして財政構造なり、税の構造の問題を詰めていきたいと思うわけでございまして、なかなかこれは時間がかかる問題ではないかというふうに思っております。しかし、それをきめませんと、今後の税全体の水準のあり方というようなものがきまりませんもんですから、それがきまらないうちは、法人税なり所得税なり間接税なりのあり方というものを見つけるのはなかなかむずかしいわけでございまして、少し時間をかしていただいて、基本的な勉強をいたさねばならぬというふうに思っております。  第三の、資料を整えまして御提出申し上げますことについては、なるべくすみやかにいたすことをお約束いたしたいと思います。
  83. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 午前の質疑はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      —————・—————    午後二時十五分開会
  84. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) これより大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案。  以上、三法案を便宜一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  85. 多田省吾

    ○多田省吾君 初めに、所得税法についてお尋ねいたします。  今回の、いわゆる所得税大幅減税は、再開国会冒頭の財政演説でも、物価の安定こそが、わが国の当面する最大かつ最優先の課題であると、こういうことで、財政金融諸施策の運営の基本を、総需要抑制の一点にしぼって臨むことを明示しておりましたけれども、このような総需要抑制の要請に対して、一部から大幅減税は、納税者の可処分所得を増大させる、また、消費支出を刺激する要因ともなって、総需要抑制に逆行するもので、相反する政策ではないか、こういう意見も確かにございました。そして減税の縮小、あるいは繰り延べ論も一部の学者にあったわけでございますけれども、この点について政府はどういうお考えでいるのか。
  86. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) ただいまのお尋ねにお答えいたします前に、昨日お約束いたしました法人の実質の税負担に関します東京都の調査では、納付税額で計算しておる、私どもの出しております資料では、算出税額で出しておる、その差額はどういうふうになっておるかと、数字で、源泉所得税額外国税額等のことを示せという御指摘がございまして、お答えを留保させていただきましたのでそれを最初にお答えいたします。  昭和四十六年度の法人の所得金額は、七兆四千七百二十一億円でございまして、私ども提出いたしました資料によります法人税額、すなわち所得に対する算出税額は、二兆五千四百八十三億円でございます。これに対して、東京都調査によります法人税額、すなわち納付税額は、二兆三千四百十六億円でございまして、両者の差額は、二千六十七億円となるわけでございます。で、この差額は、所得税額等の控除がございます結果生ずるものであります。  そこで、算出税額から控除し得る対象額となりますものは三種類ございます。一つは、所得税額控除額でございますが、これが千八百七十二億円になります。二番目は、外国税額控除でございますが、これが六百二十二億円になります。三番目が試験研究費控除額でございますが、これが百六十五億円になります。それを合計いたしました額二千六百五十九億円から、還付になります分等五百九十二億円を差し引きますと、先ほど申しました差額の二千六十七億円ということになるわけでございます。これが算出税額から控除されまして、そして控除後の金額が納付税額となるという関係になっております。  次に、ただいまお尋ねの点についてお答えをいたします。  四十九年度の税制改正にあたりまして、所得税の大幅減税を行なうことの可否ということに関連をいたしまして、御指摘のように、所得税の大幅減税を行なうということになりますと、納税者の可処分所得を増大させ、消費支出を刺激することになるから、総需要抑制という見地から言えば、と申しますか、あるいは経済政策的に言えばということになりましょうか、適当でないのではないかという意見が税制調査会においても、学者系統の委員さんの間から強く主張されたことは事実でございますし、新聞報道等によりましても、一部学者を中心として、そういう意見が展開されたことは事実でございます。私どもの判断並びに税制調査会の最終的な見解といたしましては、確かにそういう点はあるけれども、税制を論じます場合に、単に経済政策だけでものごとを判断することもできないのである。物価が上がりました場合には、やはり一面において、それが納税者の生活に対するいろいろな意味での圧迫になることも事実でございますから、そういうふうな観点からするならば、物価の上がるときこそ減税の必要性が大きいという意見もあるわけでございます。  そこで、両者の二つの相反する意見をどういうふうに具体化するかということにつきまして、政府の考え方といたしましては、当時もっぱらどんどんと物価が上がっております時点において減税をするのは適当でないということで、年度内もしくは年内という減税はどうも適当でないが、しばし納税者に御無理を願って、がまんをしていただいて、その分をまとめて四十九年度に減税をすると、こういった物価情勢はそういつまでも続くこともあるまいから、政府として何とか物価対策を緊急にとりまして、やや落ちつくことが予定される四十九年度に至って減税をするということであれば、両者の二つの見方を調整して適切なる政策となり得るのではなかろうかということになったわけでございまして、その意味におきまして、四十八年度の年度内あるいは年内の減税は、かなり御要請が強いけれども行なわない、四十九年度にまとめて行なうと、こういう見解をとることにいたしたわけでございます。
  87. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほどの昭和四十六年度の法人税額における算出税額と納付税額の差額についての明細をただいま承りましたけれども、その中で、還付税額五百九十二億円というのはどういう種類のものかお尋ねしておきます。  それから続いて所得税に関しまして、今回の所得税減税は、諸控除の引き上げと税率の緩和が両方なされておりますけれども、各種控除の引き上げのうち、人的控除についてはどういう基準で定められたのか、またこの中には、教育費の控除に見合う分も含まれていると解釈しているのかどうか。
  88. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 還付になる分等五百九十二億と申しますのは、具体的な法人が受けますところの利子なり配当なりについて源泉徴収を、利子・配当の支払いを受ける際に、源泉徴収をされておるわけでございます。で、それとは別に、源泉徴収なかりしものとして所得計算をいたしまして、法人税の算出税額を算出いたしますが、総体としてその利子・配当のみならず、その企業全体として納めるべき額が、たとえば百なら百という数字になる、ところが、源泉徴収をされた額が百二十なら百二十になるという場合には、その二十は法人税の還付ということになるわけでございます。それは、実態としては、先に所得税名義で納付をいたしました利子・配当についての税の一部を返すわけでございます。そういった性質のものが還付になる金額でございます。  次に、人的控除の基準でございますが、これは他の委員に対してもお答えを申しましたが、基礎控除、配偶者控除について二十一万円から二十四万円に引き上げる、扶養控除について十六万円から二十四万円に引き上げるという、各引き上げ幅に、三万円なり八万円なりという引き上げ幅に、特別な意味を持つものではございませんので、たとえば夫婦子二人であれば、二十四万円掛ける四の九十六万円が人的控除になる。夫婦であれば二十四万円掛ける二の四十八万円が人的控除になるわけでございまして、それによって収入金額ないし所得金額から、そのような人的控除を引きました残余について税率が掛けられまして、税額が算定されるわけでございまして、その人的控除の額が大きくなれば、いわば課税最低限が上がっていくという関係になります。  そこで、人的控除の水準がどの程度がよろしいかということにつきましては、家族構成に応じてどのような控除をすることが必要であるかということになるわけでございます。そういう意味で、今回の給与所得者で言いますならば、夫婦と子二人の場合に百五十万円、事業所得者の場合については、九十七、八万円のところが課税最低限になっておりますが、それが適当かどうかというその水準の高さをきめるものが人的控除でございます。その意味で、人的控除の水準がよろしいかどうかを御判断いただきたいと思うわけでございます。  その際、本人と配偶者については三万円の引き上げ幅でございますが、扶養控除については八万円という非常に大きな上げ幅にいたしましたのは、ただいまお尋ねがありました教育負担を考慮に入れたものでございます。教育負担のほかに、保育料負担というようなものについても考慮に入れたと申し上げたほうがよろしいかと思います。教育費や保育料について特別な控除制度を設けたらどうかという御指摘は、当委員会等においてもしばしば行なわれておるわけでございますが、そしてそれを検討いたしましたけれども、個別事情によりましていろいろと控除制度をつくることは、制度をますます複雑にするにとどまるんではないかということから、教育費控除であるとか保育費控除であるとかいうものを新たに設けますよりは、この際、思い切って扶養控除の額を大幅に引き上げるということによって、実質的にそのような、特に費用がよけいかかる、かかり増し経費について配慮をするということで解決するのがよろしかろうという判断に立っているものでございます。
  89. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ今回の改正案では、基礎控除と配偶者控除がそれぞれ二十一万円から二十四万円に、扶養控除も十六万円から二十四万円に引き上げられた。また給与所得控除は、これは従来からサラリーマンの必要経費をということで、大幅に控除されたということはけっこうでございますけれども、ただし、その内容が、十六万円の定額控除にかえて定率控除を拡大いたしまして、百五十万円までは二〇%から四〇%に、それから三百万までは一〇%から三〇%に、六百万までは五%を二〇%に引き上げるほかに、現行の七十六万円の最高限度額を撤廃いたしまして、六百万円をこえる分につきましては一〇%と、その上限を取り払って、いわゆる青天井にしたわけでございます。  それから他方、税率のほうも、課税所得三千万円まで税率が適用される所得部分を拡大いたしまして、実質上の税率の緩和をはかっておりますけれども、まあ結局、こういった給与所得控除の青天井というものと、それから三千万円までの高額所得者まで税率緩和をはかったということ、この二つは、いわゆる金持ち減税、重役減税、こういうきびしい批判があるわけです。現在どうしてこういう必要があるのかという声も強いわけです。特に、給与所得控除につきましては、今回の減税規模の一兆四千五百億円初年度のうちで、六割弱の八千四百二十億円がこれに充てられるんじゃないかと、そのように言われておるわけでございますが、これはまあいろいろ理論的根拠といたしまして、給与所得控除の青天井についての論議が行なわれたわけでございます。まあ一つには、一定の収入以上の給与所得控除が頭打ちになることは、本来必要経費の概算控除的性格を持ちながら、事業所得者等の経費の取り扱いと比較してバランスがとれないとか、あるいはアメリカでも勤労性所得に対する最高税率を五〇%に押えているとか、西ドイツでも所得税の最高税率を五三%にとどめ、別途恒常的な財産税を課税するとかという方法で、勤労性所得と資産性所得の間に差が設けられているとか、こういったことを勘案したんだと、こういう理由が述べられているわけです。   〔委員長退席理事河本嘉久蔵君着席〕  また、それから給与所得者の間からは、従来から所得の捕捉面についてクロヨン論など不満がありまして、他の事業所得、資産所得との間に不均衡があり、是正する必要があったが、今回それを取り除いたんだと、こういういろいろな、理由はもっともらしくこれはつけられると思います。しかしながら、やはりいま現在、こういう狂乱物価のさなか、特に、低所得者の間に非常に生活困窮が拡大されているときに、どうしてこういう高額所得者減税を徹底的にやる必要があったのかという声は、ぬぐえないと思うのです。私たちは、やはりそういう大幅な減税をするならば、課税最低限を大幅に引き上げる、こういう方向に徹すべきではなかったか、このように思うわけです。特に、そういう事業所得、資産所得との間の不均衡につきましては、まあそういう面の課税を重くすればいいのであって、幾らでもこの均衡ははかれるわけです。ですから、それに対する政府のお考えと、それから今回の給与所得控除撤廃の青天井により恩恵を受ける人々は一体どの程度であり、給与所得者に占める割合はどのくらいなのか、また、青天井による減税額分はどのくらいで、また、給与所得控除による減税総額に占める割合はどの程度と計算しておられるのか、ひとつはっきりした数字をお示しいただきたい。
  90. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 昭和四十九年度の所得税の減税は、たいへん規模の大きなものでございますけれども、規模の大きなものでありますだけではなくて、いろいろと所得税の組み立てと申しますか、仕組みをいろんな意味で改めたという点が非常に特色でございます。毎年毎年所得税の減税は行なわれておりますけれども、各年行なわれております所得税の減税は、人的控除の引き上げを中心といたしまして、年々の物価の上昇に対応いたしまして、累進構造をとっております所得税の制度との関連で、物価が上がったことに伴いまして、実質的に負担増になることがないように配慮をするということが中心となって行なわれておるわけでございますが、このように人的控除の引き上げを中心とする所得税の仕組みの組み直しを毎年行なっておりますというと、本来控除と税率の組み合わせによって仕組まれておりますところの所得税といたしましては、かなりゆがみを出してまいります。たとえば所得再分配のカーブが非常に途中から折れ曲がったものになってくる、途中から非常にきついカーブになってくるというようなことがございまして、何年かに一ぺんは、大規模な所得税の手直しをする必要が起こるわけでございます。今回は、そろそろそういう時期にきたという判断のもとに、かなりの多くの財源を充当いたしまして、そして所得税の手直しをするということになったわけでございまして、これは昭和三十一年の税制改正なり、昭和四十四年のいわゆる長期答申を受けましたあとの四十五年、四十六年の所得税改正なりに対応する、ないしはそれを上回る大規模な改正になったわけでございます。  で、大規模な改正の場合には、所得税全体といたしまして持っておりますところの基本的なゆがみと申しますか、ひずみと申しますか、そういうものを直す必要があるわけでございますので、単に人的控除の引き上げだけをもってしては、うまくいかないということになるわけでございます。そこでその点をいろいろと詰めましたが、なかんずくやはり、現行所得税の持っております問題点は、一つは、給与所得者の負担の問題でございますし、一つは、ただいま多田委員のお触れになりました資産性所得と勤労性所得のアンバランスの問題でございます。そういった問題をどのようにして解決すべきかということをいろいろな角度から議論してみましたが、その結果といたしまして、先ほどお触れになりましたような、ドイツやアメリカとのバランスを考えてみましても、日本の場合には、日本所得税法独得の制度である給与所得控除の仕組みを思い切って直すということを通じて、バランスをとるのがよいのではないかという結論に到達したわけでございまして、確かにこのような物価情勢にありますときに、何か所得税の減税のウエートが、いわゆる低所得階層だけでなく、全階層にその所得税減税のメリットが及ぶように仕組まれたということは、目的意識が拡散をしたような印象をお持ちになるのはごもっともであると思いますし、そのゆえにこそいわゆる金持ち減税とか、重役減税とかという批判を受けるに至っておるのでございますけれども、しかし、それはそれなりに、やはり今回の場合には、もうだいぶ長年基本改正を行なっておりませんがゆえに、ぜひとも基本改正を行なわざるを得ないほどの切迫した事情になっているように、われわれは判断をしておる次第でございます。  なかなか、なぜこういう機会にそういう改正をするのかということについて、心底から御理解をいただきますにつきましては、よほどいろいろな数字をもちまして、いろいろな角度から御説明いたしませんと、なかなか御理解いただけないことはよくわかるので、ございますが、時間の都合もございますので、以上のような大筋のお答えにとどめておきたいと思います。  なお、数字について、今回の給与所得控除の、いわゆる上限制度の撤廃によって、どのぐらいの人数なり金額なりの問題があるのかというお尋ねでございますが、大体六百十六万円から上が、いままで制限がありましたのが、天井がはずれることになるわけで、ございますが、四十七年度の統計で見ますと、給与収入五百万円超の納税者の人数が十六万人ぐらいになっておりますから、これから四十八年度ないし四十九年度にわたります給与の伸びを考えますと、六百万をこえるところというのは、まず二十万人をこえることになろうかというぐらいに考えて推定をいたしております。  それからもし六百十六万円で頭打ちということのままにおいておいて、青天井にしない場合に、給与所得控除による減税総額がどのぐらい小さくなるか。先ほどおっしゃいましたように、全体の一兆四千五百億のうちの、八千五百億ほどが給与所得控除のほうに充てられているわけでございますが、これは頭打ちにしました場合に、その減税額がどのくらい減るかと申しますと、概算百億弱であろうかと思います。御指摘のように、ここの部分は、全体の、二千七、八百万人の納税者の数からいいますと、二十万ぐらいでございますから、数が少ないという関係もありまして、減税に及ぼす影響額としてはさほど大きくはないということになるわけでございます。
  91. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、特別措置法の中で、少額非課税限度というものが二倍に、また別ワク国債は三倍、それから財形貯蓄も五倍、それぞれ引き上げられまして、また郵便貯金のほうの利子非課税も二倍に引き上げられるということで、一世帯四人家族で元本四千百万円の利子収入が非課税とされることになったわけでございますが、現在の一世帯当たりの貯蓄額は、保険料支払いを含めて二百十万円でございます。少額貯蓄非課税を利用したいわゆるマル優の利用度も一口座当たり二十七万円という実情を考えますと、その拡大をこのようにはかられましても、いわゆる高額の資産家のみに対する優遇拡大政策のように受け取られまして、それよりもむしろいま言われておりますように、こういう消費者物価の値上がりがわずか一年間で二三・一%というような現状でございますので、これよりも、百万なり百五十万なりの預貯金に対してやはり一〇%以上の利子をつけると、そういうようなやり方のほうがずっと適切なのではないかと、こういう意見も多いわけです。これは銀行局等の問題もありましょうけれども、これに対してどのように考えておるんですか。   〔理事河本嘉久蔵君退席、委員長着席〕
  92. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 非課税貯蓄ワク等の拡大の問題は、御指摘のように税制の面から申しますと相当いろいろ問題があるわけでございます。しかしながら、実際問題といたしまして、一人の方が金融機関に預金を持っておると、また郵便貯金もしておると、また勤務先でも預けておるというふうに、いろいろなこの優遇制度をうまく組み合わして活用しておるということは、理論的には考えられますけれども、現実にはなかなかそううまく金融資産を分散活用するというわけにもいかないわけでございます。それで、現実に郵便貯金の勧誘に当たっておる人方、それから預金の獲得に専念している人方、また保険等の勧誘に当たっている人々のお話では、やはり御指摘のように、統計上にあらわれました平均金額では、そんなに大きな貯蓄額には一世帯当たりなっておりませんけれども、現実には、限度額一ぱいまでも預金をしておる、あるいは郵便貯金を預けておる、また保険に入っておるという方はかなり多いわけでございまして、もし貯蓄奨励がどうしても必要な政策であるというのであれば、この際やはりそれぞれの限度額を上げてもらわないと、なかなか思うように貯蓄の推進ができないということでございまして、私どもは、それらの預金を預かっております機関の、いわば、言ってみれば、企業側の方の意見に従ったということではなくて、現実に預貯金の勧誘をやっておられる方々等の意見もまあある程度聞いてみました。やはりこの際、貯蓄奨励がどうしても必要であるならば、税制上はある意味で問題がございますけれども、この際限度額を引き上げるのもまたやむを得ないかという判断に達したわけでございます。おっしゃるように、四人世帯にすればかなりの多くの額になるではないかというようなことは、私どももこの検討の段階で議論はいたしたわけでございますが、しかし、現実問題として、働き手の御主人が、自分だけの、いわゆる限度額が一ぱいになったから、今度は配偶者の名義を利用するとか、それから子供さんの名義を利用するとかいうとこまでして、いろいろとワクを広げていくということは、現実にないとは言えないわけでございますけれども、またそうだからといって、限度が一ぱいのために、あたかも奥さんや子供さんの名前を利用してでなければなかなか広げられないというようなことのまま放置しておくのもまた一つの問題でございますので、こういう貯蓄奨励が物価対策、総需要政策との関連上、必要な時期でありまするがゆえに、税制上やむを得ないということにいたしたわけでございます。  なお、むしろそういうことをするよりは、銀行の預金制度のほうで何か考えたらどうかという御指摘でございますが、これは私からお答え申しますのは必ずしも適当でないと思いますけれども、新しい法律を出してまで、あのような割増金の預金というようなものを考えましたり、いろいろとそちらの方面でも苦労はいたしておるわけでございまして、金利を上げますということは、これは非常に影響するところが大きいわけでございます。それは私の専門でございませんのでお答えを省略させていただきますけれども、やはり大臣もいろいろ御検討の上で、なかなか踏み切れないということでありまして、比較的いままである制度である預金の非課税貯蓄額の拡大ということに主眼を置いて、貯蓄奨励をやっていこうということにウエートを置かれたわけでございますので、その辺は御了解をいただきたいと思うわけでございます。
  93. 多田省吾

    ○多田省吾君 昨日も、論議されたのでございますけれども、前から何回もこの委員会で論ぜられておりましたいわゆる分離課税の問題ですね、土地もそうですし、利子・配当もそうでございますし、これがなぜこの四十九年度改正でこの撤廃が実現されなかったのか。  それから同じく個人の株式のキャピタルゲイン非課税が、徴税技術論を理由に今回も放置されておりますけれども、その理由ですね。  それからもう一つは、所得税法第七十八条一項の二号に規定する寄付金控除額を今回の改正で、いわゆる足切り限度額を一万円としましたけれども、この改正の理由はどういうわけか、また、どれほど改正効果があるのか。この三点をあわせてお伺いします。
  94. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 第一の土地の譲渡所得の比例分離につきましては、昨日、大臣からもお答え申し上げましたように、メリットとデメリットのある制度でございます。で、四十五年から分離制度になりまして、税法の統計の上で見ますと、譲渡所得が三兆をこえるような程度にまで相当大規模に土地が動いておりますが、この制度ができます前には、その譲渡所得の額は一兆弱でございました。そのことを考えますならば、やっぱりこの分離課税制度によって、土地が非常によく動くようになったことは事実でございまして、住宅の対策をはじめといたしまして、土地を、いわば先祖伝来の土地を手放しやすいようにすることによりまして、土地の流動化をはかるという意味での目的は、それなりに達したわけだと言えると思います。反面これが租税の公平を害するということは御指摘のとおりでございますので、今回の税制改正にあたりましても、税制調査会等におきましても、その点をずいぶん議論されたわけでございますが、これにかわるべき名案がないということでありまして、やはり当初の予定でございました五十年末まではこの制度でやらしていただきたい。それにいたしましても、ことしの夏から秋にかけましてこの制度を今後どういうふうにいたすべきかということを十分検討いたしまして、五十年度税制改正では、何らかの形で手直しを必要とするというふうに考えておる次第でございまして、この問題は、五十年度税制改正の非常に大きな中心項目の一つになるものというふうに考えております。  それから利子・配当の源泉選択制度でございますけれども、この源泉選択制度というのは非常にわかりにくい制度ではございますが、たてまえ論といたしましては、総合課税を前提といたしたものでございまして、総合課税を前提としての源泉選択制度でございますから、この制度ができました四十五年以前の分離制度とは意味が違うわけでございまして、かなり十歩も二十歩もその以前よりは制度として前進してきたわけでございます。  それでは今度は源泉選択制度をやめるかどうかということでございますが、現行のように預金について名寄せができない、無記名預金制度がございましたり、架空名義預金というものがございましたりいたします現状におきましては、源泉選択制度をやめまして、一挙に総合課税に持っていくことは、これはちょっと現実問題としては不可能ではないかと思います。それがためには何かうまい名寄せ制度ができなければならないわけでございますが、名寄せ制度については世上いろいろと御批判もありますので、現実問題としてなかなか簡単ではないということになるわけでございます。ただ、源泉選択税率の二五%というものが適当であるかどうかというあたりにつきましては、検討を要する問題があるわけでございまして、これまた期限切れを待ちまして五十年度税制改正の際に議論しなければならないと思っております。  有価証券のキャピタルゲインについての非課税の問題は、これは御指摘のように税制としてたいへん問題がございます。しかしながら、毎日、証券市場におきまして大量の株が売買されておりまして、その株の値段も、随時変動するという状況にありますもとにおきましては、株の売買がございましても、なかなか値段を明確につかみ得ない。なかんずく、その当該株を何カ月前か、何年前かに幾らでお買いになったものかという取得価格の確認が困難でありまして、そういたしますと、譲渡益や譲渡損の計算が非常にむずかしいということになるわけでございます。  で、私どもといたしましては、株のキャピタルゲインが税制上相当問題があることは十分承知をしておりますけれども、現在のような株式取引の実態からいたしますならば、性急にこれを原則課税というふうに持っていくことは非常にむずかしいと思うわけでございまして、ただいまございます例の五十回、二十万株以上の取引があった場合には、やはり課税原則に戻るという規定がございますが、あの種の規定を漸次整備をしていく等の方法を通じて、一歩一歩じみちに課税のほうに向かって進んでいってはどうかというふうに考えておるわけでございまして、ぜひともこの春からでも専門家の集まりを持ちまして、研究グループをつくって検討を進めてまいりたい。大蔵省の中におきましても、証券局等も含めまして、こういうことに取り組んでまいりたいという心がまえでおりますので、じんぜん日を待つということではございませんから、ひとつしばらく御猶予をいただきたいと思います。  最後のお尋ねの寄付金の問題でございますが、本来寄付金についての非課税措置は、通常期待される程度をこえて行なわれる場合を対象として考えればよろしいのではないかということで、足切り制度があるわけでございます。また、きわめて零細な寄付金まで一々控除の対象にするということは、税務執行上も繁雑でございますし、きわめて少額なものは、いわゆる一般的な課税最低限で配慮されてしかるべきものということで、少額についての足切り制度があるわけでございます。しかしながら、他方、わが国の社会福祉施設の現状あるいは学校教育施設の現状からいたしましたならば、こういう施設を奨励助長していくということについて、民間の自発的な発意というものが非常に重要でございますし、これを税制の上におきましてお手伝いをするということも、社会福祉の向上なり、教育の振興といった観点から見てきわめて意義があることではないかというふうに考えられますので、まあ従来の考え方を若干緩和をいたしまして、この際足切り限度額を一万円ということに引き下げることによりまして、寄付金控除の制度を簡素なものにいたしまして、わかりやすくいたしました。そして、多くの方にひとつどんどん善意に基づく寄付を進めていただけるように用意をしたということでございます。
  95. 多田省吾

    ○多田省吾君 国税庁に二、三お尋ねしてみたいのでありますが、石油危機に便乗した大企業、商社の不当利益が大きな政治問題になっている反面、中小企業や小売り商等零細企業の中では、金融引き締めのあおりをまともに受けまして、法人税や法人事業税の滞納が前年度と比較いたしまして大幅に増大しております。これが中小企業、零細企業系の苦しさを物語っているわけでございますが、国税庁としてこの実態をどのように把握しておられるか。また滞納の理由といたしまして、決算では黒字でありながら、実際には手形割引ができないでかかえているとか、あるいは納税分を一時融資する従来の銀行が、金融引き締めで貸し出しを断わるとか、こういう理由で滞納されている分もあると思いますが、実情はどうなっておりますか、お伺いしたい。
  96. 吉田冨士雄

    政府委員吉田冨士雄君) 銀行関係のいろいろ事情は、国税庁のサイドではあまりつまびらかではございませんが、滞納の実態を申し上げますと、昨年十二月末の法人税の滞納税額は七百二十七億円でございまして、四十八年度九月期——前期の六百二十九億円に比べまして一六%の増でございます。確かにある程度増加していると思います。件数で申しましても十二月末は十万五千件でございまして、前期の九万四千件に対しまして約一二%の増になっております。ただ、法人税額全体も税収としてもふえてきておりますので、ただいま七百二十七億円という滞納税額は、同期の法人税徴収決定税額全体——分母と申しますか、それが三兆七千億でございますので、それとの割合で見ますと、全体の一・九五%の滞納でございます。これは法人税でございますが、国税全体のこの率を見ますと、徴収決定済み額に対しまして二・〇一%になっております。したがいまして、かつて法人税は全体の税に比べまして非常に滞納が少なかったのが、だんだん全体の税の伸び率に近づいてきた、十二月末で。そういうように考えております。  それから大法人と中小法人と、それでは法人税の滞納はどうかというのは、実は全体の数字のように、全国的な数字はございませんのですが、大阪国税局と東京国税局のADP、電算機処理をやっておりますところで計算いたしますと、これが全体のカバー率の大体六五%を占めておるわけでございますが、その際、十二月末で税額で比較してみますと、資本金が一億円未満のいわゆる中小企業と、一億円以上の法人とを比べますと、対前期の伸びは、一億円未満の滞納税額の伸びが二五・三%プラス、それから一億円以上が二五・四%プラスということになっておりまして、この段階では、大体いまのところ同じような伸びでそれぞれ滞納額がふえているというのが実情だと把握しております。
  97. 多田省吾

    ○多田省吾君 最近土地譲渡に関する不正がずいぶんいわれておりますけれども、その手段といたしまして、一つには、裏契約の契約書を作成して売買価格を仮装して脱税する。二番目には、悪質な不動産仲介業者が介在して過少申告を入れ知恵する。あるいは第三番目には、譲渡代金を対価以外の名目、たとえば移転費補償金などの名目で支払いを受けていたもの、こういうやり方がいろいろとあると思いますが、これらの不正申告や脱漏などをどの程度調査統計を出されているか、あるいは今回の特別措置による土地譲渡等にかかわる事業所得等の課税の特例、あるいは特定事業用資産の買いかえの特例、こういったものに関してこのような不正手段が利用されるおそれはないものかどうか。
  98. 吉田冨士雄

    政府委員吉田冨士雄君) 確かに土地譲渡にからみます税金の逋脱というのは非常に目立ってふえてきておりまして、また私どもといたしましても、法人税調査の場合も、所得税の調査の場合も、こういう不動産売買業あるいは不動産仲介業という業種は、調査の重点業種といたしまして集中的な調査をやっているわけでございます。そのうち法人のいわゆる土地重課につきましては、この四月一日から実施が本格的に動き出しまして、これまでは非常に部分的な、その年の間に売ってすぐ買ったとか、あるいは仲介手数料が所定の手数料をオーバーした場合にだけ適用になりますので、今後の問題でございますが、個人の譲渡所得につきましては毎年だんだん調査がふえてきておりますので、その数字を申し上げたいと思います。  これは四十七年の一月から十二月までの調査事績でございますが、ただいまお話しの租税特別措置法による特例適用という事実に対する確認の調査も含めまして、全体で十六万件の調査をいたしております。その中で、申告漏れのあった件数は七万八千件でございまして、調査対象の四八%が何らかの脱漏があった。脱漏金額は——申告所得金額が全体で八千五百七十三億円でございますが、それに対しまして申告漏れのあった所得金額は——これは税額ではございません、所得金額ですが、それは二千億円でございます。それから、ただいま申しました十六万件の中で、特に実地調査と称しまして精密に調査をやります、どちらかというと、ただいまおっしゃいましたようないろいろな不正の手段を用いていると考えられますものに対しまして、特に詳しい調査をやるわけでございますが、その調査を三万四千件に対してやりました結果、申告漏れのあった件数が二万一千件、全体の約六割が不正があった。もともとそういうものを特に調査対象に選ぶわけでございますが、それにしましても、十人のうち六人が、平均で大体四百九十万円の譲渡所得を漏らしていたという数字はございます。  なお、ただいまお話の、租税特別措置法を不正に利用するというものに対してのチェックといたしまして確認調査というのを実地調査としてやっておりますが、これは、この期間、約一万四千件についていたしまして、そのうち約五千件、全体の三八%が、やはり租税特別措置法をある意味で不正に利用していたり、あるいは単純な申告漏れもございますが、そういうものでとにかく非違があったという数字が三八%ということになっております。
  99. 多田省吾

    ○多田省吾君 それからもう一点は、今度の三月決算期を控えまして、減価償却のやり方の変更とか、あるいは不均衡な機械設備を設けるとか、あるいはたなおろし資産の再評価がえとか、まあいろいろないわゆる合法的なやり方で、ばく大な利益隠匿をはかるのではないか、こういうおそれが多分にありますけれども、国税庁として、その点はどう考え、どう対処されていかれるおつもりなのか。
  100. 吉田冨士雄

    政府委員吉田冨士雄君) その点につきましては、再々この国会でも御指摘がございまして、大蔵大臣のほうからも、特にその点は重点的に調査するようにという御指示もございまして、私どもといたしましては特に大きな法人、資本金五千万円以上の法人は、御案内のように、国税局の調査課所管の法人になっておりますが、そういう国税局の調査課所管法人である大きな法人につきましては、特に集中的に、しかも、業種をできるだけしぼりまして、重点的な調査をやるような体制を組んでおります。  で、いま御指摘の、各種準備金、引当金等を利用していろいろなことをやっている場合にも、それが、適法に、税法の定める損金算入の限度内であれば、法人の計算を認めますが、しかし、限度を超過した場合には、超過分については、当然所得に加算する、特に、事実関係を仮装隠蔽いたしましてそういうものを悪用する場合には、重加算税の対象になることも私どもとしては考えております。  それから減価償却の方法等につきましては、これも現下の情勢でいろいろ問題が多くなりましたので、去る三月九日に長官から各国税局長に対しまして通達を出しまして、従来にも増して厳格な処理をするようにということにいたしております。  で、これまでは、これらの減価償却の方法の変更等につきましては、税務署所管の法人については税務署長、調査課所管法人につきましては国税局長にまかしてあったわけでございますが、こういうときでございますので、問題のある場合には、それぞれ一段階上げまして、税務署長の所管法人につきましては国税局長、国税局長の所管法人につきましては国税庁長官に上申させるようにいたしております。で、その結果、国税庁長官のほうにまいりました件数は、約五十件弱でございますが、まあこれにつきまして、それぞれバランスをとって、法令に沿って処理をするように、現在検討中でございます。
  101. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、法人税関係でお尋ねしたいと思いますが、まず最初に、あしたお聞きできるかどうかわかりませんのでお尋ねしておきたいのですが、例の会社臨時特別税の問題ですが、今回のいわゆる自民党案と、それから社会、公明、民社が賛成した案ですね。この二通りあるわけですが、それぞれ——大蔵省当局のお話として、新聞には二千二百億円と千八百億円で四百億円違うんだとか、あるいは新聞によっては、二千億円とそれから七百億円で、三分の一ぐらいになるんだとか、いろいろいわれておりますけれども、大蔵省当局の試算はどうなっておるのですか。
  102. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 私ども、いわば最終的な案が、私どものほうにわかりましてから、急いでごく大ざっぱな計算をいたしてみております。これによりますと、社会党が昨日、衆議院提出されました、御承知の年所得五億円以上を対象にするという案によりますと、概算でございますが、二千百五十億円から二千二百億円ぐらいになるんではなかろうかと思います。これに対しまして、さらに払い込み資本の二割以上の部分と、年五億円と、いずれか大きいほうを基準にするという自民党が提案されました案によりますと、概算で千七百億ないし千七百五十億ぐらいになるんではなかろうか。いわばその差は約四百五十億円程度ではなかろうか。きわめて大ざっぱでございますが、そのような試算をいたしております。
  103. 多田省吾

    ○多田省吾君 主税局長に、土地資産の評価についてお尋ねしたいんですが、一つには、建設省の地価公示価格。二つには、固定資産税の自治省のいわゆる評価額。三つ目には、大蔵省の相続税の評価額。四つ目には一般の時価。土地の評価額が四つあるわけでございますけれども、まあ公的評価の三種類と、それから時価を合わせて四面の評価額を持っているわけでございます。行政機構の相違があるといえばそれまででございますが、政府が法的に規定する評価が三種類もあるということは非常にふしぎな姿でございます。地価の正当な価格を一そう混乱させております。建設省はこれらを総合して、土地評価を一本化して課税評価は時価に近づけるといっておりますけれども、大蔵当局の見解はいかがでございましょう。
  104. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) これなかなか複雑な問題だと思います。一般的には土地評価を一本化いたしまして地域地域によりまして、一定の額を出しておきまして、そして相続税なり固定資産税なりの課税標準としてものを考える場合には、その評価額を基準にしてその何割かをとるとか、あるいは税率のほうで調整するという方法がわかりやすいといいますか、明解な方法であろうかと思うわけでございますが、この地価の評価というのはたいへん事務量として多くのものを要するわけでございまして、たとえば相続税で申しますと、年間に何万件かという相続が発生をいたします。その何万件かというそれほど数が多くない発生を見ます相続税のために、日ごろから評価のためにどの程度の精力を投入しておくべきかということになりますと、いささか疑問があるわけでございまして、簡明という点ではよろしいわけでございますけれども、全体を統一をすることによる行政上の能率ということを考えてみますと、必ずしもそうしなくてもよろしいのではないかということもまた考えられるわけでございます。従来から、しかし、そうは申しましても、少なくとも相続税と固定資産税の評価については統一をしたらいいんではないかということでございまして、ちょうど昭和三十年代の終わりごろに、この評価を将来統一をいたしましょうということで、相続税評価と固定資産税評価の統一について努力をいたしておりますし、これをさらに引き続きそのような努力は続けてまいりたいと思っておりますが、これをさらに公示価格制度とまでくっつけるかどうかということにつきましては、現在公示価格制度が市街化区域等を中心にして行なわれておるということがございまして、これを全般に及ぼすということについては、相当な人手と時間を要することでございますので、はたしてそれがよろしいかどうかということは、相当問題があると思います。建設省におきましては、地価対策、土地の値段の対策という見地から進められるわけでございまして、それぞれ目的が違うこともありまして、思想的には統一をはかるべしということで、基本的には賛成でございますけれども、現実行政問題といたしましてはなおいろいろむずかしい問題があるわけでございます。昨年の九月でしたか、十月でしたかに出されました行政監理委員会からの勧告によりましても、この問題について触れておられるところでもございます。われわれは、内部ではなお検討をいたしてはおりますけれども、それではいつどういう時点から統一に向かって具体的に歩み出すかというところまではとてもきてないわけでございます。恐縮でございますが、なお、今後の検討にまかしていただきたいという感じでございます。なかなか多くの問題を内部にはらんでいるものと思っております。
  105. 多田省吾

    ○多田省吾君 昨日も質問いたしましたが、いわゆる法人税の本法の中の貸倒引当金期末残高一兆八千四百三十七億円、退職給与引当金が一兆九千七百十二億円、また受取配当益金不算入額も、昭和四十六年だけで二千六百二十六億円に及んでおります。  特に、先ほども論議がございましたけれども、こういった貸倒引当金を、先ほど局長は、積み増しを一年とか、これをできないようにすることはできると、このようにおっしゃっておりましたけれども、こういったものを、やはり少し多過ぎるということで、ある程度取りくずすとか、そういうことができるのかどうかですね。これがやはり資本金別法人の税負担において逆累進を招いている大きな原因にも私はなっておると思う。この点をお伺いしたいと思います。
  106. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 午前中の御討議の際に、他の委員のお尋ねにお答えいたしましたように、引当金制度は、準備金制度と違いまして、本来何らかの意味においてやはり一種の債務性のあるものに限定されておるわけでございますから、制度としてはこれは存続すべきものであると思っております。ただその場合に、どのような率で積み増しをすることを認むべきか、特に、税法上それを認むべきかという点については、なお批判のあるところでございまして、私どもといたしましても、今後ともその検討をいたすことを午前中お約束したとおりでございます。  ところで、貸倒引当金について申しますと、ただいまお触れになりましたように、四十九年度にに積み増しが起こらない程度にということで、金融機関につきましての引き当て率を、千分の十二から千分の十に落としているわけでございまして、それから先の問題については今後検討を続けてまいりたいと思います。  その場合におきましても、しかし、いまのところは、過去の積み立て実績までは触れない、過去の実績積み立て率までは企業ごとにそれは積むことを認めるという前提をとっておるわけでございまして、ただいま多田委員指摘のように、過去の積み立て実績まで課税に取り込んでくるということについては、いろいろと問題があると思っております。その問題があるという意味は、言ってみれば、過去の積み立て分の取りくずしを求めるということになりますと、これはある意味で、過去の利益を課税対象にするということを意味するわけでございます。何か国家非常のときであるとか、それからまたいろいろな意味で、臨時的に急激に財源を必要とするというような、言ってみれば、一種の非常事態というようなことでありますれば、また話は別でございますけれども、通常事態のときに、過去の所得からなりますところの部分について課税をするということについては、私どもとしてにわかに賛成をいたしかねるという感じでございます。
  107. 多田省吾

    ○多田省吾君 じゃ最後にお尋ねしますが、ひとつ簡単に御答弁いただきたいと思いますが、財形貯蓄の利子非課税措置は理解できますけれども、この財形貯蓄の奨励で、はたして勤労者の持ち家が将来保証されるのかどうか。こういうインフレによる預金利の目減り減価を、政府が補完しないとするならば、単なる財産形成貯蓄に名をかりた勤労者からの金集めにすぎない制度となるおそれがございます。最近の財形貯蓄の金融機関別契約状況を見ますと、加入者数におきましては証券会社がトップで百三十二万八千人、次が信託銀行の五十四万六千人、都市銀行の二十万七千人、地方銀行の十一万八千人、貯蓄残高においては、証券会社五百十三億、次いで信託銀行は三百七十四億、都市銀行百十六億、地方銀行五十五億の順になっておりますけれども、このような理由を主税局としてどう見られておるのか、簡単に御説明願いたい。
  108. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 御指摘のように、財形貯蓄につきましては、これは非常に将来の発展という点について興味ある制度でございますが、いささかといえども、これが単純なる勤労者からの金集めにおちいるようなことがあってはならないというふうに考えるわけでございまして、まさに御指摘のような点が非常に心配の点の一つでございます。私どもといたしましては、勤労者と雇用主との間で十分の協議が行なわれて、そして十分なる監視のもとに、それがいわゆる財産形成に間違いなく役立つものにならなければならないというふうに考えるわけでございます。その意味で、お尋ねのような、証券会社なり信託銀行なりが中心になって運動といいますか、この種の貯蓄が進んでおるという実態をどう評価したらよろしいかということはむずかしいわけでございますし、特に、税の立場からは、何らかの批判を加えるべきものではないと思いますが、まあ私個人として考えまするならば、やはり証券会社にいたしましても、信託銀行にいたしましても、やや長期性貯蓄というものについて従来からなれておるという関係があるわけでございますので、いままでのこういう種類企業が持っております体質から、おのずから都市銀行や地方銀行よりも、この種の会社のほうが、このような長期の預金の収集ということについて熱心である、またこの集められましたお金を、住宅貯蓄その他運用を考えていくという必要があります関係もありまして、その意味で、証券会社や信託銀行がいままでのところ熱心であり、かっかなりの実績をあげているという結果になっていると思います。私どもといたしましては、税の立場では、必ずしもどこの金融機関がどうであるかということについて個別の見解は持っていないということを公式には申し上げざるを得ないわけでございます。
  109. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 総理大臣が間もなく出席の予定でございますから、それまでなんですが、またあすにでもいろいろな問題について質問をしたいと思いますが、みんなもくたびれちゃって言わなかった問題が、医師の優遇の問題だと思います。税制調査会の答申は、特別部会を設けて検討を進めており、別途答申するということで、これが合理的か不合理かということは、もう結論の出ておる問題で、ただやるかやらないかの決断の問題にかかってきておる。で、非常にむずかしいからというので、東畑会長が、これは去年、おととしぐらいの話ですが、とにかくやると、こうなっておって、あの人の相当きつい決意表明というものがされ、われわれも期待しておったけれども、これが全く期待はずれ。そこで、不当なもの——不当というのもちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、とにかく不公平だということだけはだれも認めておるわけです。それがやれないところに非常に問題があると思うのです。ですから、これをどういうふうに思うのかというのが一点。  それから次に二つ目は、医療控除が現在十万なら十万で足切りになっておりますけれども、これも物価騰貴で相当医療費というものが底上げになってきておるわけですね。ですから、医療控除というようなことについても、何らか検討をされようとしておるのかどうか、これも来年度の課題として基礎控除等をいろいろとなぶっておみえになったわけですが、この医療控除の問題についてはどうしようとされておるのか、二つお伺いしたいと思います。
  110. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 社会保険診療報酬制度につきましては、東畑税制調査会長が、かつて中医協の会長をしておられた事情もあり、社会保険診療報酬制度にたいへんお詳しいわけでございます。また関係者の方々、お医者さんのほうにつきましても、支払い側につきましても、いろいろお知り合いがおありになるということで、何とか自分がいい案をつくってまとめるというつもりでおられます。さればこそ、この特別部会の部会長も、東畑会長自身が御担当になってやっておられるわけでございます。今日までそのような心組みでお進めになっておりながら、まだ実現に至りませんのは、言ってみれば、そのこと自体が事のむずかしさを証明しているようなものでございまして、どのように改正するかという問題もございますけれども、いつどのように進めるかという、いわば段取りのような問題もなかなか微妙でございますために、今日までおくれているわけでございまして、税制調査会の事務局の立場にもございます私どもといたしましても、非常に申しわけなく思っておる次第でございます。  しかしながら、昨年の暮れに行なわれました医療費改定の中におきましても、同じ医療費の改定にあたりましても、技術料がかなり重視されるような内容の改定でございましたし、また物価その他へのスライド制というようなことも、現在社会保険診療報酬制度の問題として議論されている制度でもございますので、と申しますことは、社会保険診療報酬制度の適正化が、着々と進んでいるという事態でもございますので、もういよいよこの制度について手直しをすべき時期がまいったのではなかろうかというふうに私ども考えている次第でございまして、おくれおくれになっておりますことは、重ね重ね申しわけないと思いますけれども、私どもも会長をお手伝いをいたしまして何とかいたしたい。具体案をお示しできるような段階までことしじゅうにはこぎつけたいと思っております。  それから医療費控除の問題は、たとえばちょっとかぜを引いたとか、おなかをこわしたとかいう程度のことで、医療費負担がかかるというようなものは、一般の控除の中で処理をすべきものという趣旨で、足切り制度があるわけでございますけれども、だんだん課税最低限が上がってきたこと等の関係もありまして、所得の何%ということの持ちます意味も変わってまいりましたし、それからいろいろと医療費負担の実態も、一般的に拡大をいたしてまいった現状でございますので、御指摘のように、一ぺん洗いがえをやってみようかと、制度としての洗い直しをいたしてみようかと思っております。そうして、これらの控除額の拡大をするということも含めて、ぜひとも五十年度税制改正の問題として取り上げてみたい、積極的態度で臨んでみたいというふうなのが現在の私ども考え方でございます。
  111. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いただきました資料の5の、「昭和四十七年分所得税の所得階層別税負担率」というのがございます。そのうちの、申告所得税の問題でございますが、これをずっと見てわかることは、二千万のからまた逆転をしていくわけです。ですが、この表を見て思うことは、給与所得が累進をしてまいりますと、税負担が当然ふえてくるわけですが、ところが、そういうものが、ここに出ましたように、配当所得というのと、それから譲渡所得というのと、この二本立てになっておりますが、結局、所得の多い人は、株の配当も多ければ、利子・配当も多いということが言えると思います。そこで、これが分離課税になっておりますから、しかも税率は、一体、三千万なり、あるいは二千万ぐらいから以上になれば、それはもう、三〇%や四〇%の税率じゃないわけですね。そうしますと、所得の多い人が、預金をして利子を得て、その利子がまた分離課税で所得増になってくる。株を買う余裕がございますから、株を買って、配当を得て、利子をもらってくると、その利子がまた分離課税ですから、余力があるからまた株を買うと、こうなって、お金のある人たちがこの恩典をフルに受けていて、一体、富の再配分から見ておかしくないか。  それから今度は、土地のほうだと、譲渡所得のほうを見てまいりましても、五千万になると、五千万のうちのほとんどが今度は土地の譲渡所得になる、土地だと思うのですね、この長期譲渡所得になっていますから。そうすると、これが、所得の多い人だから、土地を買ったとは言えないかもしれないけれども、それじゃ逆に今度は、短期のほうについても、この人がやっぱり多いわけです。ですから、所得の多い人が土地を買って金もうけをして、分離課税の税率の低いもので得をしていると、こういうふうに格差を広げていく役割りがこの分離課税、いわゆる所得税と分離課税、あるいは配当所得の分離課税であってみたり、あるいは土地の譲渡所得の分離課税だということが、この表から大体推定をされてくるわけです。ですから、何か、こういうところに、私たちは、矛盾と申しましょうか、抵抗というものを感ぜざるを得ないわけです。持っておる者が、あるいは長期になれば、父親から、もっと言えば、祖父からもらった、持っておった土地を売ったのだから、これは、税金というものは安くあってしかるべきだという持論もございましょう。しかし、それはそれとして、何かこう、われわれと申しましょうか、一般庶民としては、土地等を持っておらない大半の一般庶民としては、納得のいかないものだろうと思いますが、これについてはいかがですか。  総理大臣がお見えになったから、答弁はあとにしてもらおうか。それとも、簡単にやってもらうなら簡単に。
  112. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 簡単にお答えいたしますが、やはり何と申しましても、分離長期の譲渡所得の課税が、この右側のA分のB欄の数字に影響をしているわけでございます。五千万円以下のところで見ていただきますと、平均の所得が三千七百七十五万五千円である、納税者が一万五千人である、その方の平均所得が、この欄にあがっております所得は三千七百七十五万五千円である。そのうちで二千九百万までが土地の譲渡所得でございますから、これは四十七年の数字でございますから、土地の譲渡所得は、この年は一五%でございますので、その一五%に引っぱられていくわけでございます。そういう意味で、一番右の二三・二という数字が、非常に低く出るわけでございます。御指摘のように、配当所得等の影響もなくはないのでございますが、この各所得分類の金額の大きさを横並びにながめていただきますと、いかに土地の分離長期譲渡所得の金額が大きいかということがおわかりになりましょうし、そのことから御推察がつくと思いますが、やはり圧倒的にこれが全体の所得水準に影響しておるということでございまして、この点につきましては、午前中にもお答えいたしましたが、やはり課税公平論からいきますと、何とか別の角度からの検討をいたさなければならぬ問題だということを考えております。
  113. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 田中総理にお尋ねをしたいと思いますけれどもね、個人の預貯金の物価上昇によるところのキャピタルロス、普通、目減りと、こういうふうに言っておりますが、私は目減りではないと思っているわけです。むしろ収奪だと思っております。その目減り額が、いろいろの調査があるわけでありますけれども、日銀の調査によると、四十八年三月末で個人の預貯金総額六十二兆円、これが今年二月の消費者物価指数の対前年度同月比で見ますと、二四%上がっているということになりますと、目減り額が実に十二兆円になるわけです。それから経済企画庁の経済白書からの推計によりますと、個人預貯金の総額が五十二兆円で、目減りの額が十兆円。それから貯蓄増強中央委員会調べの、今度は逆に、下から積み上げた一世帯当たりの預貯金額百五十三万、世帯数約二千八百万世帯、これを掛け合わせて、預貯金総額四十二兆六千万円ということになり、この目減りが約八兆円余、これを一世帯当たりに直しますと、年間三十六万余円という形の目減りになっているわけであります。また、こうした預貯金にさらに保険、あるいは年金というものを含めていきますと、それはもっと大きい、十三兆円というような目減り額になるわけです。しかし、これらの、たいへん、日本の預貯金率といいますか、こういうものはおそらく世界で一番高いと思います。しかし、この大部分というのは、法人——特に、大法人の借入金となって使われているわけであります。御承知のように、日本企業の自己資本、他人資本の割合を見ますと、他人資本が約九割、自己資本が一割というわけでありまして、そういう形で、他人資本をたくさんに使っているということでありますから、こうした事情の中では、国民が失った十兆円内外の損失というものは、大法人がこれに相当するインフレ利得、あるいは債務者利益といいますか、こういう利益をかせぐ、こういうものは、おそらく土地になり、建物になり、付帯設備に化けているわけであります。まさにこの大きな悪性インフレといいますか、この物価高といいますか、これはまさに個人のキャピタルを減らして、大法人のキャピタルを大幅に上積みさせているというふうに言わなければならないと思います。このインフレ利得、こうしたものが国民に還元をしていく、大企業のインフレ利得を国民に還元しなければ、国民の損失は埋まっていかないということであろうと思いますけれども、こうした貯金を日本人がせざるを得ないということは、国の社会保障制度なり、あるいは住宅保障なり、あるいは教育保障なり、そういうものの水準がきわめて低劣であると、したがって、わずかに自分の生活を守っていくということは、もうこれは個人の預金以外に当てにならない。こういうことが、このような預貯金の増額、また日本のインフレ体質というものが、こうした形で貯金を減らし、それが大企業のインフレ利得というふうになっていると思うんですが、政府は、こういうようなインフレによる不公正な所得配分、これを私は当然是正をすべき、是正措置を講ずべきであると思うわけでありますが、当然法人税、今度四〇%に引き上げるそうでありますけれども、おそらく四〇%といわずに、まあこれを五〇%、六〇%という形で引き上げて、その収入を当然社会保障なり、あるいは生活保障に回すべきではないかと、このように思うわけでありますけれども、あわせて、普通のサラリーマン世帯、こうした世帯の預貯金の金利というものも引き上げていかなければならないと思いますが、こういう形で、このインフレ利得というものを是正をしていかなければ、やはりいままで歩いてきた日本の道というものを、再び歩いていくと、経済の高度成長、そしてその中で所得の格差が大きくなると、こういうような、好ましくない社会情勢というものが、今後続いていくんではないかというふうに思うんですけれども、どうしてもこのインフレ利得を国民に還元して、そしてそれを社会保障に充てていくという是正措置、こういうものをいまにおいてやっていかなければならないんではないかと思いますけれども、首相の考え方を聞きたいと思います。
  114. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) まあ日本人は非常に勤勉でありますし、また貯蓄熱心であるということで、貯蓄性向が二〇をこしておるということでございます。これはまあ戦後ずっと非常に不安定な時代においても、二〇以上の数字をずっと続けておるわけでございます。そういう状態から考えてみて、いまの物価高騰というような状態において、貯蓄目減りがしておるということは、数字的にはいま御指摘のとおりでございます。まあ、しかし、衆議院の審議の段階でも御発言ございましたが、この貯蓄の目減りというものに対して、国家が金銭的に補償するような方法をとってはどうかという角度からの発言もございました。しかし、預金の問題に対しては、過去にも例があったわけでございます。過去一万円の定期預金があれば、子供を大学に出してちゃんとやっていけるという、戦前はあったわけです。ありましたが、戦後はほとんど郵便貯金や簡易生命保険の積立金というものは、全くそのような目的を達成できないような状態になりました。これは貯蓄だけではなく、戦時の公債を持った場合も、みな公債もだめになりましたし、また国に対する請求権も無価値なものとして、請求権放棄ということになったわけでございます。また、ある意味で日韓の賠償問題のとき等もございましたが、当時のインフレ的な状態で数字を計算すれば、三十五億ドルもおよそ要求できるというような議論も国会においてあったことも事実でございます。  そういうような歴史的経緯はございましたが、やはりまあ異常な状態というものが起こっても、貯蓄というものを、金銭的、数字的にこれを補償するという道はなかなか制度上むずかしいということは、これは各国の例を見るまでもなく明らかでございまして、これは結論的にどうなるかというと、物価を抑制をして、安定的物価の状態をつくり出して、預貯金の目減りというようなものがなくなるようにしなきゃならない、こういうことに帰一するわけでございます。まあ毎年毎年目減りをするんだから、早く使っちまえということになれば、ますますインフレが高進してしまって、どうにもならないという悪循環が続くわけでございますから、そこらはまあとにかく政府はあらゆる角度から物価の安定をはかりますから、国民もふるって貯蓄をお続けくださいと、こういうことでございます。まあ貯蓄をしてもらっておって、物価がおさまらない場合には、内心じくじたる思いがあるし、責任を感ずるということで、いよいよもって物価の抑制に全力を傾けると、こういうことになるわけでございます。  ですから、あなたは、目減りがした分を、何らかの方途で、数字的に金銭的に賠償することはできないと、だからこれは、企業の収益等から、特別な税を付加して、まあ社会保障等を拡充すべきじゃないかと、これはすなおな御議論だと思います。まあそういう意味で、私たちも法人税率を四〇%に引き上げたわけであります。四〇%が低いということでありますが、これは実効税率四九・五ないし五〇といえば、主要工業国で一番高いのが五一でございますから、まあ五〇も五一もということになれば、蓄積のない日本の状態を考えれば、五〇というものはいい数字だろうと、こういうことでございます。これに四十四年四月一日以降取得をした土地に対して二〇%の重課が行なわれておるわけでございますし、もう一つは、きょう衆議院を通った臨時の利得税のような法律も付加されておりますから、まあことしに関しては、先進工業国では最高の税金企業に課すということですから、最高以上ということには、やっぱりものには限界がある、際限があると、こういうことは言えると思うんです。  まあ三六・七五が四〇になったばかりだというけれども、そうじゃなく、これは暫定税率一・七五があるので、これはもう基本税率は三五であります。三五を四〇に上げたという例は、これは過去にもないわけです。ですから、非常に思い切って上げておると、こういうことで、政府が非常にこの問題に対して全力投球を行なったと。まあ野党の皆さんでも、去年半年ばかり前はですな、とにかく四〇%にすべしと、こういう御主張だったわけです。その後石油問題が起こってきたから、今度は四二だ四五だと、こういう議論が出てきますけれども、まあ四〇というのは妥当な線だろうと、そういう意味で、諸般の情勢を考えながら四〇に踏み切ったということでございます。  で、また社会保障の拡充ということは、長期社会保障計画を立てて着実にこれを推進してまいろうということでございます。ですから、これは百も承知をしておって御発言になっておられる専門家の竹田さんですから、そんなこと言うこともないんですがね、このごろ企業、大企業ということがよく言われておりますが、この大企業というけれども、まあこれの財閥解体とか、経済力集中排除法が適用されない前の日本企業形態であるなら、これはいろんな指摘はあると思いますがね、現在大会社の会長、社長でも、一割も二割も三割も株式持っているなんてことはもうないわけです。これは国民が全部総資本家になっているような状態で、言うなれば、社員社長ということで、時がくればところてん式にかわっていくということであってね、これは一人で累積投票権も持ってないし、ましてや特別議決権も持ってないし、過半数も持ってないというような状態から考えてみて、大企業というようなやはり観念的な意味からいう収奪の企業というような表現で見るべきではないと思うんです。  そして、まあこれは国民生活と国民経済という多方面から、非常に影響の大きい存在であると、しかも、まあ一つの会社を見て、私もこの間一つの例で計算をしましたけれども、二百万人、最低二百万人ぐらいの関連企業とか従業員があると、まあ日本の六〇%、五〇%というものがこの企業とは全部関係があると、こういうことを考えてまいりますと、その観念的に大企業からすべて六〇%七〇%も税金を取っていくというような考えではなく、国際的競争力もちゃんと確保しながら、しかも、日本人の生活に対するその企業としての影響力や、功績というものがちゃんと確保できるような状態で、やはり考えていくということが一番正しいのだと思います。私はそういう意味で、預金の目減りという問題に対しては、物価を安定せしむるために全力投球を行なう。企業というものに対しては、これはまず国際的なレベルから見て、不当に優遇をしてはならないということが一つ。もう一つは、蓄積のない日本企業は、将来とも国民生活のために貢献し寄与できるような企業に育て上げていかなきゃならぬと、こういうことをやっぱり考えながら、私はいま、いろいろな人が大企業企業——ほんとうに大企業にその言っていられるそのままの政策をとったら、いよいよになったら反対と……。
  115. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 簡単に。
  116. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) こういう議論が出てくるのじゃないかなと、こういう気もしますのでね……。
  117. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 簡単に、時間がありませんから、答弁してください。
  118. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) そこら十分にひとつ政府も考えてやっておるということで、大体はだかになって考えれば、あなたの言っておることと、大体政府が言っておることと、大体同じと、こういうようにひとつ御理解賜わりたいと思います。
  119. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あのね、私は、戦後の工場がいままでの蓄積を、焼夷弾や爆弾で失ってしまった、あるいは戦時賠償を取られるという形で、実体の資本というものがつぶれてしまったという中でね、たとえばわれわれの預金がそういう形で減らされると、こういうのは理解できるわけですよ。しかし、現実にはそうじゃなくて、工場はどんどんどんどん大きくなっていることは事実ですよね。会社が、また土地の買い占めをやったということも事実ですよ。こういう中でね、具体的に十兆円も国民の個人預金が減っているということですよ。それは結局、それを使った大企業に、そのインフレ利得のあることも、これは経済的な常識ですよね。そうなってみると、この平和な、しかも、世界で第二番目の経済力を誇っている日本が、個人が、月に三万円ずつですよ、一世帯で。考えてみると今度のその春闘の要求だって三万ぐらいのものですよ。その自分の貯蓄の目減りすら補えないような要求に対してだって、政府はあんまりいい顔してない。こういう実態の中で、大企業のほうに、まあ十兆円が全部いったとは私も思いませんけれどもね、しかし、大部分が、大企業にいっておるわけですよ。そうすれば、政府として当然その所得、インフレによるところの富の移動というもの、これをバランスをとることは、私はあたりまえだと思うのですよ。あなたはいま、株は個人のところにずっといってしまって云々と、こういうことを言っておるのですがね。最近この株だって、反対現象を示しているのじゃないですか。個人の収入というのはだんだんだんだん少なくなってきているというのが現状でしょう。法人の株式の所有率のほうが大きくなってきているという現状ですよ。まあそういう中で、いまあなたの言っている最終的なことは、物価の安定しますと、こういうのです。まあ物価の安定をしてもらわなくちゃならぬことは、これは全国民の要望ですからね。しかし、いまこれまでに上がった物価が、それでは去年の一月水準なら一月水準、二月水準まで落とせますか。いままでそういう例というのは、戦後ずっとないわけですよね。前に戻って落としたという例はないわけですよね。いつも、ただその上昇率が高まるか、あるいは上昇率が低くなるかという問題はあっても、そのカーブが下向きになっていったという例はないわけですよね。じゃあなたは、いまの物価水準を、昨年の一月の物価水準まで戻すと、こういうことを確約されるのですか、どうですか。
  120. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) まあ昨年の一月、二月水準まで戻るかどうかということ、なかなかにわかに申し上げられないわけであります。それは、石油がその後十一月、十二月から、高いところ四倍になっているわけですから。ですから、そういう意味で、原材料は四倍になっておる、給与は、また名目所得であってもうんと上がっていますから、ですから、名目的な支出でいう消費者物価というようなものが、全然その後上がった要因というものを全部除去して、昨年の一、二月水準まで全部戻せるかどうかということ、これは常識的な議論として申し上げられないわけですが、まあいずれにしても、物価を安定的な状態、国民が理解できる状態というものにしたいという政府のこの考え方理解いただけると思うのです。まあこれは、物価論争からいうと、これからの安定率という、物価上昇率というものが、まあ国際水準になるということであれば、それは安定といえるという議論もあります。それから、物価の波動が非常に少なくて、それで一割だったら一割、ないし二割下がったところでずっとここに上下をしていくような横ばい状態なら、物価は安定と言い得るという考え方もあります。それからもう一つ、もっと数字的にいえば、いわゆるそのノーマルな状態と考えられる昨年の、まあ土地とか、株とか別にしましてね、生活必需品とか生鮮野菜とかいうものを全部含めたものが、昨年の十一月現在。プラス石油の値上がり、賃金の値上がりという、だれでもが否定できないような要素を加えたところでもって横ばいになれば、それは賃金が、物価は安定したと言えるということはあります。私はまあ第四の問題をまだ勉強さしておるわけです。  これは、昭和四十六年の四月一日、まあこれは御承知の外貨準備高四十五億ドル、預託高二十六億ドルというときでございましたから、その後ドルショック、ニクソン政策、いろいろな問題が起こってきたんです。
  121. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 簡単にしてください。私、時間ないですから。
  122. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) それで、そういうところからね、十カ国平均のうち、日本を除く九カ国の物価の上昇の平均率を足したものでね、そういう状態まで物価が押えられれば、これはもう文句なく学問的にも理論的にも物価はうんと下がったと、こうは言えるだろうと、こういういろいろな段階を考えながら、まあ理想的にいえば第四の状態まで持っていけりゃ、これはもう文句のないところであります。これはどなたでもすばらしい物価政策だなということになるわけですが、まあその第三、第二、第一という段階からだんだんと詰めていくのが、物価政策だと、こういうことをやっておるわけですから、物価は、まあいまちょうど持ってきましたがね、東京都の物価は前年同月比〇・七になりました。ですから、まあ相当横ばいになってきたということは事実でございます。
  123. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 前年同月で〇・七なんていうことはあり得ないよ。
  124. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) いや、前年同月じゃないんです。前月比です。
  125. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、いまあなたと物価論争やっておるわけじゃないんですよね。国民のこの預貯金の目減りが、まあいろいろな数字合わせても、十兆前後あるということはいえるわけですよ。これが、もし消費者物価の値上がりが五%ぐらいであったら、この目減りの問題というのは、国民はそう問題にしないと思うのですよ。二十何%も上がってきたという事実のもとにですね、いま片っ方では、私は、これは大阪のほうだろうと思いますが、国を相手どって訴訟も起きているわけですね。そういう事態の中で、何とかね、その国民の期待の、まあ十兆というのは無理でしよう、私もね。十兆全部返すと、こういうことではありませんけれども、少なくとも、半分ぐらいは、国民に返すべきだと思うのですよ。そうした目減りのものが、株になったり、あるいは土地になったりしていると思うのですよ。国民の目減りの分がですね、大きな企業の土地になったり、株になったり、工場になったりしているわけですからね。しかし、何らかの形で、そういうところが、この十兆円というものは、まあこれから物価が安定するかもしれない、あなたの言うように安定するかもしれない。しかし、この一年の上がった分、この一年間の減った分はですね、これは返ってこないわけです。これは何とかしてもらわなければね、まるでどろぼうにあっているみたいなものですよ。これはあなたも含めてね。どろぼうにあっているようなものなんです。だから、このことだけは何とか処置してもらわなければ、これは私は、国民は承知しないと思いますよね。あなたのほうが、何かきょう強引に法律を通したそうですが、まあ先ほどの大蔵省の説明でもね、たいしたことはないですわね。何ですか、臨時会社利得税というのを通したということだと思うのですけれども、それ通したところで、千七百億ぐらいですよね。へたすれば一五%ぐらいにしか当たってないわけですよね。こんなことであっては、これはどうにも国民は承知しないと思うのです。だから、自民党としてですね、もっとこの臨時利得税というものは、当然、少なくとも四、五兆円ぐらいのものは取れるようにしなければ、これはやっぱり国民承知しないですよ。千七、八百億で、それで国民は満足しているとは私は思えませんね。どうですか。
  126. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) あなたの言われることは、あなたの立場とあなたの角度から言われておるわけですから、私はよく理解できるんですよ。理解できますが、貯蓄というものは、そういうものじゃないという制度上の問題を申さなくともおわかりになるとおりなんです。これは、貯蓄手段というものは、いろいろな状態において貯蓄制度が拡充されていくと、もちろん政府は、民間の貯蓄というよりも、政府が預かっておる郵便貯金とか、簡易生命保険とか、またいろいろな問題あります。ですから、保険はその意味においてどうするかというと、スライド制度を採用したということでございます。ただ郵便貯金に対してスライド制度を利子に採用しろといっても、これは制度上むずかしいということは、もうだれでも知っているわけです。ですから、常識的に制度の中でもって消化できるように、金利を上げてきた。金利を上げれば、ある程度限度があるということは、これはもう産業政策から、金利政策全部に今度からむわけでありますから、そんなに単純に保証するというところまでいくわけはない。それでもあなたが言うように、とにかく国民が感情的にも納得できるように、いま自己資本比率が非常に低くて、国民が貯蓄をしたものを間接資本の導入として使って企業活動をやっているその企業、言うなれば、国民の貯蓄によってささえられておる企業にもう少し財源を拠出させて、国民が納得するように社会保障の拡充などを行ない、そしてそれをやるということで、三五%の法人税率を四〇%にした。それだけではなく、土地に対しては二〇%の付加税、重課をやっております。で、なお千七、八百億の臨時利得税式なものを付加しましたと、それは合わしても、全部で二兆円——それに一兆七千四百億の減税もしている、こういうことだが、全部合わしたって十兆の二割ちょっとぐらいじゃないかと、それでは国民納得しないぞと、こういう御議論でございまして、しごくあなたの話わかりいいんです。わかりいいんですが、やはりそれは右から左へスライドできるものじゃないということで、まず物価の安定ということによって、国民の実質的貯蓄の目減りが行なわれないように最善の努力をすると、そういうことで、やはりしぼっていかなきゃならぬと思うんです。まあ今度の会社に対する利得税というようなものを、会社からといっても、会社がつぶれてしまうようなわけにはいかないんです。  それで、もう一つここで申し上げておきたいのは、これから石油も上がっただけ上げないわけです。石油が上がっても、まだ電力料金押さえているわけです。ですから、石油の原価が上がっても、石油製品も押えているわけです。五十三品目押え、中には、とにかく灯油のように幾ら上がっても、灯油は据え置きだ、こう言っているわけです。これから相当期間物価の安定というものに対しては、原材料が上がっても、また春闘で賃金、給与が上がっても、そのまま値上げは認めませんよと、こういう行政府としては相当な決意があるわけです。そうしたら、計算して取るもの全部取っちまったら、今度は賃金上がりましたから、上がった分だけは全部物価に転嫁しますよということになるわけです。そこらが行政府のむずかしいところですよ。これから、いま押えているのは無理があるんです。計算すりや、ここまで上がりますよと言ったって、それはそんなに認めるわけがないんです。七〇%も八〇%も上げますというガス料金でも電気料金でもそれを全部認めるわけがないんです、これは。もし認めるときがきても、相当圧縮します。そこで過去の蓄積をくずしなさい、それで役員の報酬もとにかく少しがまんしなさい、配当もとにかく低位に押えなさい、それで物価が安定して、国民生活が確保されるまでの間がまんしてくださいという立場にある政府が、あなたが、とにかく間接資本によって得ておる銀行からの借り入れとか、そういうものの分のせめて半分五兆円取っちまえというには、どうもとても諸般の情勢を考えるときになかなかしかく簡単にいかないんです。ですから、物価抑制を最善の政策として見通しを立てながら、まず法人税は五%引き上げる、それから土地に対する二〇%重課をやる。その上になお、とにかく一〇%というきょう衆議院を通過したものを——これはなかなか制度上めんどうなところがあるんです。学問的に言ったら、ほんとうに答えられないようなところもありますが、こんなことを言ったって、国民の状態を考えれば負担してもらわなければなりません、こう言っておるんですから、これからは結局はこの自己資本比率一五・三%というようなものは、とにかく自己資本比率を上げていく、そうして戦前の六一%までいけるかどうかわかりませんが、やはり五〇%、五〇%ぐらいまで上げていくということでないと、いままでのような議論が当然将来も続くと思いますので、これからも自己資本比率の向上、拡大のために全力を傾けていく。  で、一つだけ、ちょっと久しぶりの竹田さんとの論争ですから聞いてください。
  127. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ちょっと時間を短くしてください。
  128. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) それはわかりますけれども、大切なことですから。  これ、どっちもみないいということはないんですよ。これ自己資本比率が上がりますと、政府のコントロールがきかなくなるんです。現実問題として。だから、アメリカは、あれだけのとにかく利子平衡税をやり、輸出禁止をやり、あらゆることをもってやっても、所得政策をやっても、絶対にきかない、こういうことになります。もっときかせようとすれば、全部資本は海外に逃げちまう。日本はその意味において確かに八五%まで間接資本を使っているのはおかしいじゃないかということはわかりますが、それだけに今度政府がぎゅっと締めようと思ったら、一〇%成長を二・五%まで下げられる。物価を引き下げなければ、とにかく押えますよと、こういうどこかに功罪があるんです。ですから、その功の部分だけをうんとうまく使おうと、こういういまやっておるわけですから、そこらひとつ十分御理解の上、御判断を賜わりたい、こう思います。
  129. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あなたの議論を聞いていると、とてもおつき合いできませんわ。
  130. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) そんなこと言わぬで。
  131. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、田中さんの、あなたの貯蓄に対する考え方がまず間違いだと思う。為政者として貯蓄貯蓄ということを言うのは、私は政治家として下の下だと思うんですよ。ほんとうに使って余った金を国民が貯蓄することはいいと思う。ところが、なぜ貯蓄貯蓄ということを言うかというのは、結局、社会保障が低劣だから貯蓄ということを言うんでしょう。社会保障の進んでいるところで、こんなに日本ほど貯蓄率の高いところはないわけです。それで社会保障のほうはほったらかしておいて、そうして今度もギャンブル定期というようなああいうくだらないものをつくって貯金を集めようと、私は、そういうのは低劣な考え方でしかない、こういうふうに思いますけれども。  その次にお聞きしますが、これは田中さんがお答えになれるかどうかわかりませんけれども、簡易生命保険の保険料率をきめる平均寿命というのは何歳でこれは計算しているんですか。五十五歳というふうに私は聞いているんですが、これは何歳ですか。——来ていませんか。来ていなければいいです。これはひとつ総理大臣、検討してくださいよ。平均寿命は延びているんですからね。五十五歳というのは、私もあなたも大体年同じなんですが、大体そのぐらいなんですから、もっと延びているわけですから、その辺はひとつここで直していただきたい。それは結局保険料率に関連してくるわけです。それを直していただけますか、もし、調査の上。
  132. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) これは非常によく理解できることです。これは世界的に平均寿命を考えても、基礎的なワク組みの中で制度を形どっているわけですし、ですから、これは傾聴すべき御発言としてひとつ郵政省の簡易生命保険局に調査を命じます。
  133. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その次は、先ほど成瀬委員もその質問をしていたわけでありますが、大蔵省の出した先ほどの資料を見まして、まあ五百万円以下の所得者というのは、所得層というのは、利子所得とか配当所得とか、あるいは譲渡所得の割合が少ないわけでありますけれども、二千万円以上の所得階層になると、これらの所得の割合は、半分以上を占めているわけです。たとえば、二千万円以下のところを見ましても、一人当たりの合計所得金額、千三百五十万二千円ですか、そのうちに、いま言われた分離課税制度、そうしたものが適用される所得が七百五十八万四千円ですか、それから五百万円をこえるところでは、一人当たりの所得九千八百五十四万九千円に対して、利子所得、配当所得、譲渡所得による所得が、実に九千二十一万七千円と、大体九割を、そうした分離課税制度が使える所得で占められている。こういうことになりますと、結局五百万円以下、あるいは一千万円以下、この付近は非常に累進税率の適用が大きいわけですよ。ところが、二千万円以上、三千万円あるいは五千万円という所得が高くなればなるほど、分離課税でございますから、大体分離課税を選択するということになろうと思いますから、そういたしますと、これはもう比例課税という形になるわけですね。九割が比例課税、あとの一割が累進税率によるところの累進課税、こういうことになりまして、税金の上でも、当然、総合所得でやっていけば、五千万円をこえるところあたりは、おそらく税率が、幾ら安く見ても六〇%くらいの税率はかかっていくわけですよね。ところが現実には、非常に租税負担率を見ても、一九・五%という形で非常に低いわけですよ。そうすると、所得が高くなるに従って、累進税率じゃなくて比例課税という形になってしまう。たいへん私はこういう点で、税金負担というものが、所得の低い者ほど累進税率で多く取られる。金持ちになるほど、比例課税的になっていく。たいへん個人の所得税が不公正になっていく。こういうふうに思うわけであります。そういう意味で、分離課税制度というもの、そのもの自体が、こうした事態を引き起こしていると思うんですよ。まあ今度も、高いほうにはだいぶ税率も安くなるということで、二千万円、三千万円のところあたりは、たいへん安くなるということで、一部には金持ち減税だと、こういう批判もあるわけですけれども、実際的には、比例課税のほうがウエートが高くなってきていると、こういうことですね。非常に不公正だと思うんですけれども、こういうのはぜひ改める。改めて、分離課税を選択するという制度をやはりなくしていかなくちゃ私はいけないんじゃないかと、こういうふうに思うわけです。それと同時に、今度の税率改正についても、二千万円以上の高所得層の税率緩和というのはやめるべきだと、こういうふうに思うんですよね。いままでの現行どおりと、こういうふうに私はすべきであろうと、こういうふうに思うんです。  それからもう一点、あなたの答弁長いから、今度は私のほうが質問を長くします。こうした分離課税制度と関連して、この分離課税で徴収されたものは、今度は住民税の課税の計算の対象外になっちゃいますね。そうしますと、地方の自主財源といいますか、こういうものを盛んに食っていくということになってしまうわけですね。いまでさえ、地方では、たいへんな問題起きておりますね。まあ私の住んでいる地域の人口急増市町村あたりでは、ことし建てなくちゃならぬ学校の用地が買えないということですよね。しかも、政府の金融引き締めで、金も貸してもらえない、こういう事態で、実に手がつけられないというようなことになっているわけですけれども、そうした意味で、この分離課税をやめればいいですけれども、やめない場合には、当然その分を、地方税の課税対象に加えていくと、こうしていかなければ、地方はどんどんどんどん貧乏になってくる。おそらくこれからの配当所得にしても、こういう譲渡所得にしても、まだ上がるでしょう。そうなってくれば、まさに地方の財源というのは非常に窮屈になって、地域の住民の福祉にこたえられない、こういうような事態に私はなっていくだろうと思うんです。そういう観点からも、この分離課税の問題というものを、もう少し考え直してもらわなくちゃいかぬし、所得の高い者と所得の低い者との不均衡ですね、不公正な税金というものを直していかない限りは、少しぐらい減税やっても、やっぱり国民は、いまの税金は公正だという感じはしないし、重税感というのはますます高まる、こういうふうに私は思うんですよ、この点どうですか。
  134. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) あなたのいま御指摘になられたことは、税問題に対してはいつも議論になる一つのポイントでございますが、ほんとうは税は一律でもって、一律の税率を掛けて税を納めてもらって、そうしてその税金の中から、政策的に必要な支出は一般会計から補てんをすると、これが一番ものわかりいいことでございます。そうすれば、不公平感が全くないわけです。これは憲法のいうとおりに、もう一律画一的に税はかけて、これはもう全部やる。これは社会主義運動の中でもって、新潟県とか北海道とか、東北でやった方々は、耐用年数は、表日本は五十年もつものを、雪の降るところは二十五年しかもたないんだ、これ同じ税金でもって同じ税率掛けられるのはおかしいじゃないかと、三十年も闘争目的の第一だったわけですが、なかなかそれはできないというので、税率は一応の税率掛けますと、そうでなければ、一人一人の税率やれば、一億一千万人おれば一億一千万とおりの税率をつくらなきゃならぬという議論にもなりますから、これは一律にかけます。そのかわりに特別交付税も出しますし、寒冷地に対しては特別な手当も出しますしということでなければ、国民が納得するような政治は行なわれないんじゃないかということで、まあいろいろな制度がその後積み重ねられて今日に至っておる。ですから、現行税の中で、いろいろなことをすることはよくないんで、不公平感というのをあおるから、これはわかりやすく、分離課税なんてやめなさいと、これは一つの見識であり議論ですよ。議論ですが、それなりに理由があるからやっているわけですよ、それはね。  一つには、第一次所得ではないと、これは税を取ったものの運用であるということが一つあるんです。第二は、使われちゃ困る、これはとにかく自己資本比率を増大させるために、株式投資をしてもらいたい。また国が財源を得んとする場合には、公社債を買ってもらいたい。それはもうとにかくちゃんとそういうあれがあるわけですから、そうして死んだときにはどうするかというと、相続税でちゃんと国庫に収納しますよということで、その間画一一律的な税制をやることによって、不公平感はなくなるけれども、惰民政策になっちゃいかぬと、やっぱり能力一ぱい働かして、そうして死んだときには、ちゃんと相続税の税金でとりますよと、こういうものを考えながら、税法が組み立てられておるというところに問題があるのであって、これを全部やってしまうと、これはほんとうに、そうでなくとも自己資本比率は下がっているということになりますので、そこらはなかなか税の中で、そう簡単に割り切れる問題でない。ただ、あなたが指摘したように、確かに分離課税をやっているために、地方税の一体、収納すべき税金がどのくらい少なくなっているのか、まあ七百億ぐらいだと推算されます。そうすると七百億はとにかく総合課税なら全部入ってくるんじゃないか、そこらはちゃんと三〇%だったものを、三二・五%に三税の交付率を私は四十年にちゃんと上げていますし、それは政策全体の中で調整をすべき問題であって、そうでなく、全部画一一律的に実施してしまうと、確かに分離課税を廃止するというような面では、国民の納得を得られると同時に、だれもそんなところへ投資しなくなっちまう。これは土地でも買っていかなければいかぬと、こういうことになっちゃいかぬので、そこらが税の調整のむずかしさということであります。他の政策目的、まあ政策目的なるべく税率の中に入れたり、税法の中に入れることは望ましくないと言うけど、まあ皆さんの議論を聞いても、やはり社会保障対象人口には、少ない税率でやれ、中小企業に対しては二八%で据え置けと、こう言っているわけですからね。全然加味しないで、画一一律的に税の不公平感をなくする税制をここで踏み切っていけるというような状態にはないわけです。一つの理想境に至る過程における政策論争であるわけですから、ですから、そういう意味で、これはやっぱり必要な制度として分離課税がとられておると、それも不労所得になって、全部子供や孫に引き継がれるといかぬので、そこらは財産税率の調整ということで、政策目的がずっと達成されていく、国民はそれによって利益を得ると、最終的にはやはり不公平感をなくするように制度上調整をすると、こういうことでないと、いま、分離課税をやめますと——これは私も毎回言われておるんですから、やめますと言う——やめたほうが国益ならもう言うんですが、そうじゃなく、幾ら言っても、国のために必要ですからごかんべんと——ごかんべんじゃない、まあとにかく、いまの制度じゃ、もう少しやらしてくださいよと言わざるを得ないのは、それだけの国民生活を守るためのメリットがあると、こういうことですから、そうでなけりゃ、これだけまああなたに言われておって、いやぁこっちが、やっぱりもう転換ですと言うことよりも、すんなり来年からやめますと、こう言ったほうが私どもも気楽なんです。ところが、やっぱりそうじゃなく、それはそれでもって、いろんな政策を新しく発足するにはたいへんである、長い歴史がある現行制度という——必ずしもこれが完ぺきなものだとは思いませんが、そういう意味で、にわかにこれを全部やめますということは申し上げられない理由があるということだけ御理解いただきたい。
  135. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうもあなたとの議論かみ合わなくて弱るんですが、この土地の譲渡取得なんというのは、これはまさに不労所得ですよ。個人が働いてかせいだ金じゃないんですよ。おそらく昔は二束三文の土地が、インフレと、あなたの列島改造論でうわっとこう上がったわけですからね、もうまさに不労所得だと思うんですよ。そういうのがゆうゆうとして安い税金を払っていると。あなたは国全体と、こう言うんですが、国民の立場から見れば、あいつはあんなに得しやがって、おれのほうはどうしてこんなに税金高いんだと、もっと公平な税金をやってくれということは、それは国民の当然の要求ですよ。それにこたえるような政策をやっぱりやるのが政府であるし、執行部であると、こう思うんですけれども、どうもその点はかみ合いませんね、……。
  136. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) ちょっと一言、言わせてください。
  137. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ちょっと待ってください。私の、いま発言もらっているわけですから。  それから私は、もう時間がありませんから、その次へ進みたいと思うわけですけれども、これは私、去年も、都市銀行の貸倒引当金の資料を要求をしたわけですけれども、もうずっと私のところへ持ってきてくれませんでした。おそらく、何か私のいないときに発表になった数字があるそうですけれども、それにしても、貸倒引当金を、金融保険業、あるいは卸売り業というのが一番積み立てば高いようでございますけれども、実際、それではそういう貸倒引当金というのを積み立てて、それが税金の対象からはずされていくということになりますと、一体、その貸倒引当金というのは、おそらく穴があいた分の取りくずしを埋めるという意味でつくられた法律であろうと私は思うんですよ。ところが、現実に、おそらくこの貸倒引当金を取りくずして穴埋めをしたという例は私は非常にわずかだろうと思うんです。まあ小さな金融機関は、若干そういうものがあるかもしれません。しかし、都市銀行とか、地方銀行というようなものは、ほとんど貸し倒れのないような保証をちゃんとさしているということで、ほとんどないと思うんですよね、これは。ないにひとしいと思うんですよ。これに対して、今度は何か千分の二%ばかり切り下げをしたようでありますけれども、まあ私が去年そういうことを言って、どうにもならないから少し検討して下げたんだろうと思っておりますけれども、それにしても、まだ私は千分の十というようなものは、これは高過ぎると思うんですよ。だから、その辺をひとつ整理をしていかなければ、やっぱり企業優先の税制だと、こういうふうに言われても、これはしかたがないと思うんですよね。だから、この辺のひとつ貸倒引当金、もう少し私は、少なくとも——ゼロにするのがいいかどうかは、ちょっと私もゼロとは思いませんけれども、もう少しこれは、たとえば都市銀行あるいは地方銀行、相互銀行、信金とか、段階別にそれをきめていくとか、何かそういうような、もう少しきめのこまかいことをやっていかないと、この貸倒引当金は、何だ、利益を隠すための一つの手段に使っているじゃないか、こういうことになるわけでありますね。それから価格変動積立金あたりにしても、そういうことはやっぱり言えると思うんですよね。ですから、この辺はもう少し整理をして、企業の、その損益どいうものが、やっぱり正当に出るように、隠さなくてもちゃんと出るように、そういう形の企業経営をやっていかないと、ほんとうの意味企業の合理化ということも行なわれないだろうと思うんですよ。そういう意味で、こういう、この租税特別措置というものは、もう少し縮減をすべきである、こういうふうに思うんですけれども、まあ若干ずつ毎年整理はされておりますけれども、一番大きい、先ほどもお話しの中にありましたこの貸倒引当金なんというのは、最も大きいものでありますから、当然もっとこれは縮減をして、実態に合うような形にしていかなければ、やはり国民は承知しないだろうと、こういうふうに思うわけであります。  それから第二問目でありますから、もう時間が  ほぼきてしまったからあれでございますけれども、きのうの新聞見ますと、アメリカの国務省が、インガソル前駐日大使を中心として、「一九八〇年代の世界経済に対する日本経済成長の影響」という報告書をつくって、その報告書を中心として、ブルッキングス研究所等と共同研究をやった、その結論というのが新聞に出ておりますね。これはもうお読みになったんだろうと思いますけれども、その結論というのは、「日本の実質経済成長率は今後、約二十年の長期にわたって年六−六・五%の低成長率にとどまる2今後、日本は、これまでの貿易超大国といった性格はなくなり、先進工業国における特異性はなくなる。従って、他の国にとっても日本の行動がそれほど大きな問題にはならない3特に一次産品などの入手難や価格上昇傾向日本に強く出て、この面でも日本の競争力は落ちる」であろう云々と、こういうような、まあきわめてわれわれにとって見れば、さびしい報告書が出ているわけでありますけれども、こういう予告がアメリカから出ているということについては、これは総理もかなり考えていらっしゃるだろうと思うんですけれども、しかし、高度成長政策というものを早めていけばいくほど、私はその成長率の鈍化というものは、一そう早くなるだろう、こういうふうに思います。そうした意味で、この税制に対する考え方、あるいは日本の経済のあり方の考え方、こうした問題について、抜本的な改正をしていかにやいかぬだろうと、ところが、いまの税制の体系というのは、おそらく新社会経済基本計画ですか、これに関連した長期税制のあり方というようなものに基づいての税の体系であろうと、こういうふうに思うわけでありますけれども、そうした意味で、このアメリカの警告ですか、これはやはり私どもとしても、一応検討しなけりゃならぬ警告だろうと、こういうふうに思うわけでありますが、そういうためにも、いままでの税制のあり方、こうしたものを、やはり再検討していかなくちゃいかぬじゃないか、もっと、先ほどの総理の話を聞いていますと、まあ会社だ、経済だということばが非常に多いわけでありますけれども、いままで、そういう面に優先し過ぎていた法人税、あるいは金持ちに優先し過ぎていた所得税、こうした税制というものが、今日の日本の経済の高度成長を私はなし遂げたものだと、こういうふうに思うんですけれども、そういうあり方から、早く転換をしていかなくちゃならない時期へ、私はきていると思うんです。そういう意味で、先ほどからの、預貯金の目減り、まあこうした問題、あるいは分離課税の問題、あるいはいまの貸倒引当金の問題、こうした問題を取り上げたわけでありますけれども、そうした観点から、やはり早く税制も、いままでのような高度成長路線に基づいた、そうした路線から、やはり安定成長、あるいは社会保障を充実したという、そういう形の経済路線に早く戻らなくちゃいかぬじゃないか、こういうふうに思うのですが、この点についての総理の所見を伺いたいと思います。  それから第三番目の問題でありますけれども、先ほど物価動向のことについて若干お話がありましたけれども、一体物価動向が安定する時期というのは、総理は、だんだんだんだん、三月ごろから、六月ごろから、八月ごろというような形になって延びてきているように思いますけれども、総理の考え方で、物価安定する時期というものは一体どの辺を考えているのか。いろんな問題に関連してまいりますので、その三つの点をお尋ねをいたします。
  138. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 貸倒準備金については、確かにいろいろな議論がございます。議論がございますから、今度は二%引き下げて一〇%、こういうことでございます。これは理由があってということは、経営が私企業形態をとっておりますから、銀行といえども銀行法のもとにありますが、しかし、私企業形態をとっております。ですから、戦後雑金融機関といわれたような機関が今日までに成長するには、このような制度が必要であったということは申すまでもありません。特に、目減りがするのを補てんしなければならない、それどころじゃない、元も子もなくなるように、金融機関が倒産したらどうするのかというような問題がございますから、私企業形態をとっておる場合には、税法上の貸倒引当金というものの制度をつくっておいて、金融機関の安定性ということを確保してやらなければ、国民が預貯金の意欲を減殺されるということになりますから当然のことでありますが、これは当然であるが、さてそのぐらい一体危険なのか。危険でないものにこれだけの手厚い安全率を見てやることは、これは行き過ぎじゃないかという議論が第二に起こってまいります。それは、四十年に山一証券の問題で日銀法二十五条を私は発動いたしました。あのときから考えると、貸倒準備金半分だっていいじゃないかという議論が、あそこから起こってきたわけです。ちょうど十年になりますが、これは証券恐慌、金融恐慌に直ちにつながるという判断のもとに、二十五条の発動を行なったわけでありまして、これで一体返らないで国損をきたしたら君はどうするのだということを国会で難詰をされましたが、まあ所定の三分の一ないし二分の一で完済ができたということで、私も責任の追及を免れたわけでございますが、これは当時必要として二十五条の発動を行なったわけであります。証券業界においてさえ二十五条の発動が行なわれるなら、金融機関に対して行なわれることは当然である。事実上私企業であっても、国家企業と何ら変わりはない。そういう意味では、もっと貸倒準備金の率を引き下げるべきだ、こういう議論が在野に存在することは事実であります。そういう意味で、今度引き下げてまいりました。まいりましたが、これからの政策的なことも考えているわけです。これで、いまの政府金融機関というものはございますが、そうじゃなく、銀行はその貸し出しの二〇%を中小企業に貸し出さなければならない、こういう銀行法の改正をやれという声が国会にあるわけです。そういう制度を入れるなら、必ずこの準備金率を今度上げるというふうにならないと、なるかもしれません。これは、この貸し出しの一〇%か二〇%かによって、この準備率は自動的に調整されなければならない。  それともう一つは、その金利がそうべらぼうに上がってどうにもならないから、その意味で、ある場合には、預金者の金利を確保しながら、貸し出し金利は柔軟に押えなさいという、これは日銀法も銀行法もいま政府の相当指導権がきくようになっておりますから、これは新憲法の精神からいうとおかしい、総動員法だと、こういいますけれども、現にそういう条項が残っているわけですから、国民の利益を守るためには、これは行政権の発動をやります。いまでもやっているわけです、物価に対して。石油が上がっても押える、こうやっているわけですから。そういうときに、補正予算を組まなければならないような状態にするほうがいいのか、準備率というものを事態の推移を見てから、もっと本質的に結論を出すべきかという問題があるわけですから、あなたの言うことはわかりますよ。わかりますが、やっぱり政府の立場でいますぐこれを半減して、一〇%を五%にしてもいいのだと言うには、もっと勉強しなければならぬと思うのですよ。それは銀行の再編成をどうするかとか、雑金融機関の制度をどうするのか、系統金融機関をどうするのか、政府関係機関をどうするのかということを全部考えたり、しかも、細分化している保険だとか、そういうものを全部考えてからでないと、必ずしもいまの準備率を一律に切り下げるというわけにいかないので、ただこれは、もう全くあなたの意見は違いますと、こう言っているのじゃないのです。これはやっぱり納得するようなものでなければいかぬだろうと、こういう考えでおります。  ただ、銀行に一兆四千億積み立てられておるということはみんな知っておるのです。知っているのですから、いよいよになれば、これは政府、与野党が、ちゃっと合意に達すれば、直ちに一兆四千億のうち一兆円くらい——一兆円というか、そういうラフの数字を申し述べるのは不見識かもしれませんが、いずれにしても、これは浪費されるものじゃないので、積み立てられておるものであって、銀行に対しては、政府は法律を一本出して、このものに対して、銀行は倒産するおそれがある場合には、ちゃんと補てんをします、一割配当ができない場合は補てんしますという法律を出せば、一兆円は国庫に納めることができるわけですから、常に財源になり得る、そういうことです。ただ、あなたの言われるのは、こういうような高額な引当金、倒産引当金や、そういうものを認めておるために、銀行だけはデラックスな社宅を建てたり、みんな車に乗ったりしておることはけしからぬ、こういう議論のあることは私も承知していますよ。ここらの調整をやっぱり大蔵省も考えなければいかぬし、政府としても銀行に手厚過ぎるというような考え方にメスを入れなければならない問題とは思いますけれども、観念的にこれをはずしてしまうという議論には、にわかに賛成できがたい状態にあるということを、ひとつ、私もあなたの議論よくわかるのですから、私の考え方もちょっと理解していただきたい。  第二点の、これからの日本の成長率、これは私もちょっと読みました。これは二十九年から三十九年まで一〇・四%、三十五年から四十五年まで一一・一%、これは逐年で申し上げますと、六一年から六五年までは実質成長率が一〇・一%、六五年から七〇年までが一二・一%、これが落ちて、七〇年から七三年までは九%になっているわけです。なっていますが、アメリカ西ドイツ——日本が十年——六十年展望でもって大体その水準までというのは、西ドイツの三分の二の賃金が、西ドイツアメリカの中間にいかないかと、いま倍であるところのアメリカまでいけないかと、日本の賃金が、世界で最高になれば、これ以上ということはないと思うのですよ。ですから、そういう意味で、六十年展望に立ったものをやっておるのですが、西ドイツの実質成長率五%、四・八、五・九に対して、アメリカが四・九、三・二、四・七ですから、日本の安定成長率というものをどのように目標値を置くべきかという問題は、これから国民的な課題だと思います。蓄積のある先進工業国と蓄積のない日本ですから、もう完全に社会保障制度は完備してしまったという国と、これから長期社会保障計画でもって六十年までにはこの水準まで上げよう、しかも、それは、租税負担率を上げてスウェーデンのように五七・六%まで税金を払うというなら別です。イギリスのように四六・三%まで払うというなら別なんです。フランスのように四七・一%まで払うというなら別なんです。そうじゃないでしょう。日本はいま、二四・一%という低い負担率ですから、これも応益負担でもって高負担高福祉というので、幾ばくかふえるけれども、これを三〇台、四〇台に上げようということを、経済社会発展計画ではいっていないのです。二四・一%は二七・五になるのか二六になるのか、それをなるべく低く押えたい。先進工業国残り九カ国の半分ぐらいの負担で押えて、そうして社会保障制度は先進工業国と同じくしたいというのが目標でございますから、そこらで蓄積というもののない日本が、ほんとうに先進工業国の蓄積のある国と同じ成長率でもって、一体国民の求める社会保障制度が年次計画どおり推進するのかどうかという問題はあります。だから、社会保障が幾らよくても、物価が上がれば同じことじゃないかというから、物価は押えて、そうして負担はなるべく押えながら、先進工業国と同じところまで、百年かかったものを、これから三十年でもって追いつこう、実質的には十年で追いつこうという悲願に燃えて政策を進めているというのでありますから、まあアメリカがコンピューターを使ってやってくれることはありがたいですが、やはり日本日本としてやはり検討すべき問題だと思います。ただ、日本が世界の脅威でないという結論を出してくれたことは、日本のためにありがたいことだと、こう思っておりますし、それらの指数はやはり十分参考の資にしながら、日本は国際的摩擦を起こさないで、しかも、自分の理想が達成できるような成長率というものを研究していかなければいかぬことだと思います。  物価の安定はいつまでかというのは、早いほどいいです、早いほどいい。こういうことで夏ごろまでにはと、こう言っているわけですから、これはまあそういう意味で、たいへんだと思いますよ、たいへんですが、これは不退転の決意でやる、やらなければいかぬことです。ですから……。
  139. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いつごろですか。
  140. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) まあきょうは〇・七という数字が入ったわけですから、これは、げたがないと、ほとんど横ばいになるわけです、横ばいに。ですから、これからまだ相当しぼっていきますから、これは金融問題でもって、とにかく滞貨金融とか、中間で先高でもってもっと入れないようにとか、あなた言いましたけれども、土地などはき出さなければ、売らなければ、正常な手形金融はつかないという、いま銀行調査やっているわけですから、四十六年から貸して、土地や株になっているものは、いますぐ売れと言ったって売れない。売れないから時期を見てあげます、そのかわり、その間に黒字倒産しては困るから、つなぎ融資はいたします、正常金融は貸し出します、そのかわりに四月三十日までどれを売ります、五月三十一日まで何を売りますと言っているんだから、物は下がるにきまっているんです。ですから私は、国会で申し上げておりますように、列島改造、列島改造と言われておりますが、列島改造論が国会——衆参両院を通過するころに、土地はうんと下がるだろう、こういみじくも述べておるのはこういう理由によるものであると、そう御理解願いたい。
  141. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 もう大体私の時間がきましたのですが、どうも田中総理の考え方というのは、国民の側に立ってない、さっきの貸倒引当金の問題にしろ、実に国民の側に立ってないという感じがしたわけです。もうこれ以上議論してもあまり効果がないようでありますから私やめますけれども、いま物価については〇・七の数字が入ったからということで、たいへんお喜びのようでありますけれども、もう少しその点は時期をやっぱり明記してもらいたいと思うんですね。これは国民が一番待っていることなんです。もしそれが明記されるということであれば、私は、ある程度国民が田中総理の手腕を買うと思うんですがね、その辺で明記してほしいと思います。
  142. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 政府の気持ちというものはわかっていただいていると思うんですよ。石油が上がっても、とにかく消費者物価横ばいになっているということですから、ですから、そういう意味で効果は出てきたと。これからもっとしぼられていきますと、これは両面からしぼるわけですから、四十六年から貸したものをずっといま調べているんです。これはちょっとだけ申し上げますと、二十九年から三十九年までの間に、対前年度日銀券は一四%ぐらい伸びているんです。そのときには一〇・四%の成長率。あと三十五年から四十五年までの間には、どういうことかというと、一五%対前年度比日銀券の増発が行なわれております。そのときには一一・一%だった。それが去年の七月には二八・二%まで伸びたのですから、これはまあ日銀券の発行残高が、すなおに右左にいく議論でないことは、これはもう専門家であるあなたはよく御存じのとおり。私たちはいままでそういう答弁をしたんですから、あなた方言うとおり右左にいきませんよと。一つの指数であることは事実なんです。ですから、これが二四になり二三になり二〇になって、今月は一九・八だということになれば、卸売り物価もみんな下がっておることは事実なんです。ですから、四十六年の四月一日を起点にして、一五%でずっと伸ばしたものと、その後伸びている対前年度はだめなんです、貸し出しが過ぎているのですから。だから、いま出ている残高と、まっすぐ伸ばしたものの、その間が仮需要ということです、これは土地になり、何かになっている。土地はどのくらい出ていますかといったら、ここでひと?えらい数字ですけれども申し上げますが、土地十兆円出ているのですよ、確かに。四十四年に一兆三百五十一億、四十五年に一兆七千億、四十六年に三兆三千五百億、四十七年に三兆二千三百億、土地だけでも約十兆円です。ですから、これがしぼればいくわけなんですよ、これは。ですから、しぼれば、これはしぼった分だけ買ってくれ買ってくれというけど、今度起債は一千億しか認めないから買えないと、あなたもさっき言ったようにね、それはいまどんどん地方にやればしり抜けになりますから、そこらは物価抑制と学校建つこととの、バランスとってくるのですよ。それがなければ、物価下がりませんよ。ですから、そういう意味で、十兆円出ていることは事実なんです。国民の投機が動くだけによって一兆円税金が入ったんです、大蔵省には。外人に売ったわけじゃないですから、これ。だから、この税のプラス面とマイナス面があるという事実は確かにございます。ございますが、そういう意味で、この面はひとつしぼっていくと。いまのとにかく財政が大きいというから、四−六月は全部新規発注停止するといったら、これはいまでも、早く出してくれなければ、中小企業の公共事業をやっておる請負会社は全部倒産に追い込まれるということと、バランスをとって、いま公共事業の発注を考えているわけですから、そういう意味で、十分ひとつ物価安定というものに対して相当苦労しておると、全力投球しておるのだということは国民の理解が得られると思うのです。ただ、いま石油が上がったら電力どうするのだ、私鉄どうするのだ、それで賃金は三万円と、こういっているでしょう。出さなければゼネストだと。ゼネストやったらこれ相当物価がまた上がるのです。そういう前提で、これすぐ何月何日までに安定させますと、これは無理なことですよ。ですから、私もうそれはほんとうにあなたと同じ気持ちで、物価押えようと、こう思っておるのです。私もまた国民の一人である、議会に席を置くものである。こういうことで、その責任を痛感しておるということで、ひとつ御理解いただきたい。ほんとうの話言えないんです。せっかくの御質問ですけれども。どうも相すみません。一日も早く、いっときも早くということで御理解願いたい。
  143. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理大臣に三点にまとめてお伺いしたいと思います。  第一点は、ただいまも議論がありましたけれども、経済成長率の問題です。田中総理は、昨日のテレビ対談でも、欧米先進国は、過去に植民地からだいぶ取ったので、集めたので蓄積があると、日本にはないのだということをおっしゃられて、欧米よりも上の成長率、すなわち一〇%程度の成長率が望ましいというようなお話をされていたのを承ったわけでございます。
  144. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 一〇%じゃないです。
  145. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣は昨日も、前から経済社会基本計画昭和四十八年から五十二年まで成長率九・四%ですか、長期税制は六%から六・五%くらい、これも手直しの必要があるのじゃないかと、やはり欧米先進国の平均くらい、私は六%くらいだと思いますけれども、それが望ましいといっているわけで、たいへん考え方に違いがあるように見られるわけでございますが、総理大臣はいま一〇%じゃないとおっしゃいましたけれども、この実質経済成長率をどの程度考えておられるのか、やはりいまは省資源型産業へ向かっている日本として、石油問題、資源問題、あるいは環境汚染問題、さまざまの問題をかかえてやっておるわけですから、私は、そういう高度成長は絶対望んではならない、このように思いますので、もう一回お伺いしておきます。  それから第二点は、ただいまもお話ありましたように、昭和五十年度の税制改正の問題でございますが、いま昭和四十九年度を審議しているのに、先走るなとおっしゃられるかもしれませんけれども、三月二十日に東畑税調会長、またきのうは、福田大蔵大臣にいろいろ質疑をしたときに、昭和四十九年は無理だけれども昭和五十年度には検討したい問題として、いわゆる分離課税の問題ですね、利子・配当分離課税、これはたしか田中総理が大蔵大臣当時つくられたものだと私は理解しております。それからもう一つは、個人の土地譲渡所得に対する分離課税ですね、これも、いま現在利子・配当分離課税も、それから個人の土地譲渡所得の分離課税、四十九年と五十年は二五%になっているわけです。五十年で終わりなわけです。しかし、総合課税が望ましいということで、大蔵大臣もそれから税調会長も、五十年度税制改正には検討したいという、こういう答弁をしているわけです。それで、五十年まで待たない、五十年の末まで待たないで、五十年度の初めからこの税制改正で検討したいと、確かに先ほど竹田委員もおっしゃったように、利子・配当分離課税、本来ならば七五%も高額であれば取られるところを、二五%で済んでいるわけです。まあいろいろ技術上の問題もありましようけれども、これが非常に税制の不公正ということで、また逆累進ということで問題を呼んでいるわけです。標準世帯でも、昭和四十九年度においても、普通の所得ならば、百五十万七千円で非課税になるところを、三百五十七万円まで非課税だという問題もあるし、また最近のいわゆる土地成金、一千万円以上の所得のある人のほとんどが、九十何%がいわゆる個人の土地譲渡所得から得ているという、こういう問題がありますので、これはぜひとも五十年度改正において検討していただきたいと、このように思うわけでございます。  それから、五十年度改正においては、やはり税調会長等が議論したいと言っているのは、やはりいま非常に消費者物価が高騰しておりますので、数年間は所得税減税は要らないと思ったけれども、やっぱり五十年も、基礎控除等をもう少し広げて所得税減税をやったほうがいいんじゃないかと、こういう意見も言っておりましたし、あるいは妻の座を守る二分二乗方式の問題とか、あるいは教育費控除の問題とか、こういったものも考えていきたいというような話があったわけです。この点をどう思われているか。  それから第三点は、きょう衆議院を通ったいわゆる会社臨時特別税、自民党案では千七百億円から千七百五十億円ほど今年度は取れると、このように主税局できょうおっしゃっておりましたが、社会党案ですと二千百五十億円から二千二百億円ですから、四百五十億円減ったわけで、非常に残念でありますけれども、とにかくこの千七百億から千七百五十億の会社臨時特別税の使い方でございますけれども、大蔵当局は、景気調整資金として使いたいと言っているそうでございますが、私はやはりこれは、この前の物価狂乱、物価高騰、あるいは商社、会社のいわゆる便乗値上げ等によって生じた部分もかなりございますので、社会保障とか、あるいは福祉財源にぜひとも使っていただきたい、このように野党は希望しておるわけでございますが、その点をどう思われるか。  それから、最後に、あわせて、先ほど貯金の目減りの問題がございました。昨年のボーナス時において、半年七・二五%の利息のいわゆるボーナス預金を二兆円集めました。また、今度の、あんまり評判よくありませんけれども、いわゆるくじ付預金も一兆五千億ほど集めよう、こういうお考えのようでございますけれども、くじ付預金のほうは、利息が全然同じでございますから、全然国民にとって得はありません。ですから、目減りは同じです。ですから私は、衆議院でも論議されておりましたが、せめて個人について百万円から百五十万円ぐらいの預貯金については一〇%以上の利子をつけるとか、そういう臨時措置はどうしてもとる必要があるんじゃないか、このように思いますが、総理はいかがお考えでございますか。  この三点をあわせてお願いします。
  146. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 成長率は、先ほど申し上げましたとおり、二十九年から三十九年までは一〇・四、三十五年から四十五年までは一一・一と、これは非常に高い成長率であった。これは高い成長率でございましたが、その間において卸売り物価は、先進工業国九カ国平均よりも少なくてあって、半分ぐらいであって、それで給与も上がってまいりましたし、完全雇用を達成した。国際競争力は全世界から指弾を受けるほどになった。アメリカに対して単年度で四十二億ドルの黒字ができて、これが正常にならなければ、日本商品のボイコットだというところまでいったメリットはあったわけです。ですから、四十七年の下期からずうっと、去年の石油問題が起きないで済めば、これは口では何とか言っても、とにかく数字が示すとおり戦後の日本の経済運営はうまくいってきたと、こう言えるわけです。ところが、まさに九仭の功を一簣に欠くように、去年の十一月、十二月から、ばばっばばっということで、ほんとうにあやまりにばかり回っておる、こういうことでございまして、ある人は、商社が三十年近く国民のためにやってきて、わずかなところでもって、社会悪だと、こう言われて、自民党またえらいなという同情の声もございますが、ほんとうにそういうことを私も考えておるわけでございます。  ですから、成長率というものが何%でいいのかということは端的に申し上げられないのです。これは経済社会基本計画の中で、年率九%——それは前半はもっと高いのですが、後半は七・五か八に落ちるということですから、それを五十二年度以降に後段の数値そのままで伸びていくのか、平均値九%で伸びていくのかは、これから四十八年から五十二年を見なければわかりませんと、こういうことを前提にしております。それはそうでしょう。それは先ほど申し上げたとおり、国民の要求である社会保障の拡充という問題が大きくありますし、日本のような状態の中では、公害問題は世界の基準よりももっときびしくしなければいかぬ、狭いところですから。そういうことで、企業負担というものや、企業のコストがどうなるのか。賃金は世界並みではいかぬので、西ドイツ並みにするには、少しずつよけい上げていかなければならない。そういう賃金水準を何年間で達成するか。もう一つ、社会保障の長期計画というものを何年間で達成するかということから逆算しまして、そして成長率をほぼ算定できるだろうということで、いま作業をやっているところです。ですから、いま作業が終わらないうちに、経済社会基本計画を変更しますと言ったって、それは全く架空なことであって、何のために一体変えるのかということになりますから、これは五十二年までの間でも、年次計画よりも、ことしはうんと落としているわけですから、それは社会情勢の変化に対応して、五年間でこれだけのものができるのか、石油事情が起こりましたので七年半かかるのかという問題は、これから国民的にやっていかなきゃなりませんし、それから企業全体が、重化学工業から知識集約化へ——知識集約といっても、一体何を知識集約ができるのかという問題もあります。石油の情勢や、原子力とか、クリーンエネルギーが、年次的にどう間に合うかという問題もございます。そういうような意味で、にわかにきめられるものではないということは理解いただけると思います。ただ、九%、一〇%というものがノーマルに六十年まで伸びていくということはむずかしい。しかしこれは、完全に日本人の英知で、五十年−五十二年ごろにいまのスイスの工業のように、ざあっと転換できれば、それは一〇%成長できるかもしれません。しかし、そういうことを考えることは無理だ。これだけの大部隊が、これだけの厚みと、幅の広いものが、一ぺんに二年や三年で、知識集約的な、いわゆるイギリス型の工業からスイス式の工業に切りかえられるかどうかということは非常にむずかしい問題でありますので、やはりこの成長率というのは、これからの社会保障の長期計画の年次割りをきめて、それには、国民負担がどのくらいになるか。さっき言ったように、二四・一%、社会保険料が四・八%というものが、一体どの程度上がっても、国民の重税感はなくて——その中で自動的に税制もちゃんと出てくるわけです。そういうことから逆算しなければ、ただ、成長率を何%ときめて、社会主義経済のようにして押し込んでいくというわけにはまいらぬ。ただし、九%というような高いことを、維持するということ自体は、やっぱり改めて、安定成長と——これは観念的な議論ですが、安定成長というのは、国民にいろいろなプラスもあったじゃないか、マイナスもあったじゃないか。マイナスを与えないで、納得できるものが安定成長ということですから、そういうものは、これから皆さんの御意見も聞きながらやってまいりたい。ただ、十年かかってやれる社会保障を、三年でやれなんて言われますと、それは高度成長をやらなければできませんよということにもなりますので、そこらは皆さんの御意見を十分承りながら、ひとつ結論を出してまいりたいと思います。  税制改正を来年度やれということは、これはまあ東畑さんの議論も私も拝見しております。おりますが、来年度二兆円減税平年度化するわけです。ことしこんな物価が上がって、月給三万円上げろと、春闘でもってやっているときに、二兆円減税はやめなさいという議論もあったわけですが、この間も衆議院の集中審議では、よくもまあこのときに、夏まで物価を押えますといいながら、二兆円減税に踏み切ったことは多とすると、こういう、まあそれに近い御発言の評価をされたわけでございまして、それはいま腹背に敵を受けているわけですよ。物価も押えなきゃいかぬ、春闘はある、石油問題起こっている、ここへとにかく私鉄の問題、電力問題がきておる。そこへもってきて、二兆円減税をやるというんですから、四月一日から。ですから、これはもう来年度考えてみても、これはたいへんですよ。たいへんですがね、国民の求める方向に沿いながら、政策は進められなければならない、こういうことで、まああえて苦難の道を選んだわけであります。その上になお、なおというとなかなかまたたいへんです。たいへんですが、しかし、たいへんですけれども、これはやはり税制というものは国民が常に検討して、納税者が理解ができるような税制、理想的な税制をつくるということが望ましいことであって、いま五十年度に付加して二兆円減税の平年度と同時にまたやりますということを申し上げられません。しかし、やらないということも申し上げません、これは。いま指摘されるようないろんなものがあるわけですから。そういう問題に対しましても、いろいろひとつ検討してまいりたい。ただ先ほど申し上げましたように、土地の税制をここで考えろと、こういうことでございますが、これはひとつ国総法の中などで十分検討していただきたいんです。確かに誤りありましたよ。これだけ、五カ年間にわたって五%、一〇%、一五%、二〇%でやるなら、個人に分譲した場合にだけこの税は適用すべきであった。これを何もそこまでやらないで、ただ持っている人が、土地を放して需要者に提供すればいいと、これはまあ少し拙速だったと思うんですよ。そうしたら、企業がみんな買っちまった。企業が買ったから、企業が買う過程においては、一兆円税金が納まったことは事実なんです、これ。一兆円税金が納まって、それでもって減税もできたことは事実ですが、ただ今度それを吐き出させなきゃいかぬ、そのために今度二〇%重課をやった、あの税金も私は完ぺきな税制と思っていないんですよ。税まければ安くやりますがね、税をかければ税金分が付加されるのはあたりまえの話です。ここらはもう一つ考えて、四月一日から実施をされることですが、個人に、個人の住宅用にこれを分離した場合は、この税は除外をするという程度のことをしないと、これは売りませんよ。売らないから今度貸した金でしぼっていこうというわけです。金融でも今度しぼっている。土地を売らなければ営業用の手形金融はしませんよと、こう言って銀行は金融押えるのをやっているわけですから、そこらを十分考えて、土地税制というものをどこでもって切りかえるのかということを考えなきゃならぬと思います。  もう一つ、分離課税をやめますと、今度土地は売りません。売らなければどうするかと、死ねば税金取ってくださいと、財産税で取れますから。だから、いまの制度は売ったときに、売買利得税を所得税として総合課税せよという議論ですから、それは売りません。せめて売っても、親子代々持っていたものを売らぬ、めし食わぬでも売らぬ、こうなりますよ。そのときに問題があるんです。それを国総法の中で指摘しているわけですよ。売らなかったら、それは憲法の有する権限だから、私権だから制限できない。ただしその利用権はこの法律でもって制限しますよと、こういっているわけです。ですから、土地のレンタル制度とか、地上権を明治、大正、昭和の初年のように、地上権が大衆の利便に供されるような制度を誘導政策としてとらない限り、分離したら土地は高くなるし、売りません。これは事志と違う。これはいまの市街化区域の線引きと同じことであって、絶対売らない。どんなあめをもっても、むちをもっても売らない。そこらをやはり制度上考えなきゃいかぬ。そこらで国総法をひとつ御議論いただきたいと、こう言っているわけですから、ここらはひとつ十分お考えいただきたいと思います。それらとあわせればいろんな問題が、まあ結論が出ると思います。  利子・配当の問題は、私がやったと言うのですが、これは五万円を十万円にしてやったり、これは将来、昭和二十年代、三十年代のような気持ちではなく、結局少額非課税制度を拡大してきて、三十年たった、退職、自分で貯蓄をしたものは非課税二千万円程度、それからもう一つは、労働者財産形成が二千万円程度までやりたいと、保険も二千万円ぐらいやりたいと、その上になお、自分の退職料は自分の会社の資金でやりたい。いま千万円まで無税なものはこれ六十年には大体二千万円まで持っていきたい。それはいまの月給だけでやっていますからそうですがね、これから二〇%ずつ上がることを考えたら、四年たったら月給倍になっちゃうんですから、世界最高なんですから、六十年たたなくたって。名目所得だけでなります。そのときにアメリカがやっている政策と同じ財産の運用が日本人ができないということはない、これは算術計算ですから。そういう場合を前提としながら、誘導政策としてあの政策をとったわけですから、税の公平論という立場からだけ、分離課税とか、こういう特別な非課税制度、少額非課税制度をやめてしまうということは、惰民政策につながるおそれがあって、これは非常にむずかしい問題で、そうなると、今度若い人たちは五〇%まで税金とあれを負担して、五十五歳になればとにかくみんな年金でもって食わせなきゃならぬという、現にそういう先進工業国がいっぱいあるのですから、そういうような道を選ばないようにしなきゃいかぬという、多方面からやっぱり考えるべきであります。  それからもう一つは、一番最後は、税制の中では妻の座とか、それからいまのいろんな問題があるが、妻の座ぐらいは、これはこの間申し上げたように、これは私は、夫婦別産制をとっている以上ね、おかしいと思うんですよ。実際非常におかしいと思います。これは少なくても、均分相続制でもって三分の一妻だと、しかし、死んだ場合には、夫婦両方が死ぬ場合でなかったら、税はかけないような方法を考えればいいんじゃないかと思います。私は、まあこれはしろうと論というよりも、税をうんと、二十年も研究してきた結果ですから。これは自分の子供が車で事故を起こすと、親は黙って罰金を払ってやるわけです。罰金でも、それから補償金も払ってやる。さすがに国税庁も、それには税金かけませんよ。親に贈与税をかけてない。しかし、財産を分けるとかけるんですから。しかし、それじゃおかしいのであって、それはやっぱり妻の手取り額というものが二〇%あろうが、三〇%あろうが、別産制度をとっている限り、これは法定をする必要がある。これはほんとうに中小企業の妻と、そのいまの税法上の事業主との間には不公平がある。こういう問題に対しては十分勉強してまいります。  あとの千七百ないし千八百億の今度の特別会社税、これは議員立法でございますし、まだ両院を通らないうちに政府がその使途などを申し上げられるわけはありません。
  147. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 テレビでいっているじゃないか、きのう、ゆうべいってた。
  148. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) いやいや、これは、だからね、社会保障に使えということもあるし、これを特別財源としてやれという、国民の中にはいろいろ議論がございますが、法律として政府に権限がゆだねられたときに、政府は最も国民の気持ちをそんたくをしてやります。そうでないと、いろんな組み直しをやれ、こうなりますから、それはとてもそんなことは、これは国権の最高機関としておきめになることがきまったら、ひとつ立法の精神を体してやる、だからまあこれは、いまのように物価を下げろといえば、全部減殺資金として充てることも考えられるでしょうし、それはいろんな災害の場合使うということもあるだろうし、いろんな道があると思いますが、これは皆さんの国会における御発言等十分そんたくをして、政府は国会の御指導、御指摘に沿うように行政運用してまいりたいというふうに思います。ひとつどうぞ御理解のほどを。
  149. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、貯金の目減りを防ぐために、百万円ないし百五十万円の貯金に、一〇%以上の利子をつけたらどうかという最後の質問について。
  150. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) これなかなかむずかしい問題でございまして、これ百万円とか百五十万円という金額だけに対して一〇%付加しろということがいわれておるわけですが、これはたいへんむずかしい。これはやっぱりそういう方々に対しては、社会保障で別な立場から一般会計として出していくということで、税の何かで、これは利息というものを保証するということはむずかしい。これはただ一つ言い得ることは、労働者財産形成に対して、現に西ドイツがとっておる、それを日本がまねしたらどうかという問題は具体的な例としてあります。労働者財産形成という場合には、そうではなく、それを制度の中に入れることはむずかしいから、だから土地、将来土地を三十万ヘクタール論というのはそこに出ているわけです。土地を国が農協資金とか何かで買わしておって、そこを造成しておって、そして四十八年度なら四十八年度の原価を基礎にして、土地が幾ら上がろうと、そういう投資をした人に対しては、現物給付をするときに、その原価プラス、資金運用部の資金コストをプラスしたものであって、土地が十万円になろうが、二万円であるなら二万円で交付をするということのほうが、制度的には合理的だというところまで詰めたわけですが、今年度はそうしないで、制度上の問題でもってスタートしたわけです。しかし、土地とか、自社株とかいうことが目標である場合には、政策的にもっと加味する余地は十分あるということは考えます。ただ、標準世帯以下の者が、また一定の年収の人以下の者が、行なう預貯金に対して、ある一定限度額に対して公称の法定利息プラス一〇%付加するということは制度上非常にむずかしい。これはひとつ御理解いただきたい。
  151. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 これから申し上げる問題について御見解を承りたいと思うんですけれども、今回の二兆円減税で、やっぱり一番ひっかかるのは、先ほど来ありますように、一兆何千億の減税の相当部分が、所得の高いところに持っていかれちゃうという素朴な実感、これも理由を聞いてみますと、いろいろございます。そこで、もし税以前の問題として、所得の配分というものが適正だとしますと、たとえば累進課税にしても直す必要がある。あるいはほかの所得と見合いもある云々ということで、今回の修正も私は理解できる気がする。ただ問題は、税以前の問題として、所得の配分というものが適正にされたのかどうか、この意味で、税の問題と税以前の問題、私は二つあるんじゃないかという気がするんです。同じことは、実は従来からよく議論になります逆所得税についてもいえると思うんです。この逆所得税ということを申し上げますと、総理は、先ほど来触れておられるように、惰民政策は絶対とらぬと、力一ぱい働いてもらうんだという御感触なんですけれども、私は、確かに、逆所得税というのは問題が多い一つの案だと思う。ただ、しかし、四十九年度の予算を見ても、給与所得者のうちの三割は税金を納めなくて済む。納めなくて済むというのは、逆に言うと、減税という面でのてこ入れがきかない。片方では物価が上がってくる、片方ではたとえば間接税の増徴も企図されるということになりますと、逆進的に生活への圧迫がきいてくる。さてどうするかというと、いわゆるマイナス所得税、逆所得税というわけにもいかぬ。では個々具体的に社会保障制度をといっても、なかなかそこまでできる問題ではありません。ここでもやっぱり、税制と税以前の所得分配の問題が実はあるんじゃないか。  そこで、税以前の問題について総理の御見解を伺いたい。累年、こう見ますと、上と下の差というのはたいへん開いてまいります。どれが適正かということをきめるのは困難ですけれども、だんだん差が開いてきた。これでいいんだろうかという、これはむしろ人生観、世代観からくる一つの価値基準があるんじゃないか、その点向いたい。
  152. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 税はその国、その国にとって一番大きな問題であるし、その国の特性を生かして、納税者の理解が得られるということでなければいけません。同時に、税というものは、不公平感というものをなくさなければいかぬ。ですから、税の根本論の中の一つのこととしては、税は画一一律的な税率で徴収をして、そうして税法の中に付加されておるそういう社会保障面とか、そういうものは他に、一般会計でもって行なうべきだと、そんなことを言っても、それはなかなかできないので、どこの国でもやっておるように、やはり累進税率をとらざるを得ないのだと、それを飛躍的に法人にも累進課税をとれと、こういう議論にまで飛躍しているわけですが、それはその国その国でもって特別な事情はあります。ありますが、やはり税は、政治の中の一番大きなものだと私は思うのです。税は学者がやるべきものじゃないと思う。昔の政治学を読んでみれば、昔の政治は何だ、税と賞と罰だけであります。三本が政治の焦点であります。税だけは全然政府や国会がタッチしないで、だれかにまかしてつくってもらえばいいんだ、そんな軽いものじゃありません。国民の中で一番大きなもの、だから明治憲法下では、税は国民の三大義務である、これはあたりまえのことだと思うのです。そういう意味で、国民の実態に合わせなければいかぬが、しかし、いまのようにいろいろ議論がある場合には、過去の税制と、世界の国でどういう税制をとっているかということとやっぱり合わして、日本の税制が妥当かどうかということは、やっぱり一つのめどとして判断する以外に私はないと思う。その中で日本の特性というものが加味さるべきである、これが私は、日本のあり得べき理想的な税制だろうと思うのです。そうすると、いままで日本は、いろいろなことをいわれながらも、課税最低限を引き上げるということで、税制の改正に終始しておることは、これは誤りではないと思う。それで、まず社会保障やいろいろな問題がありとしても、少なくともアメリカの百三十何万よりも、課税最低限を一挙に百七十万円までもってきたということは、私は、りっぱな税制改正である、こう思いますよ、私自身は。これは後世に、やっぱり日本税制史から見て、これはちゃんと言えるわけですよ。アメリカよりも、とにかく税を納めない課税最低限が引き上げられているわけですから、ですから、いままで一万円ずつ上げてきたものを、十四万円から二十四万円にぽんと上げなさい、二万円ずつだと、これは上げるときには二万五千円か三万円になりますよ、三万円だと三十六万円になるわけですが、そういう意味で、私は、今度の税の改正というものに対しては、よその国と比べて踏み切ったということは大きな問題だと思います。しかし、それを踏み切ったことも評価するが、そのときに税率調整を行なっているじゃないかと、そうすると、税額からと言うのですが、しかしこれは、一兆四千五百億の中でもって人的控除は四千六十億、それから給与所得控除が八千四百二十億、税率が二千二十億、税率の二千二十億は大体法人税の二千百十億に見合うものであります。そういう内容に立ち入りますと、感情的にはいろいろな議論ができると思いますが、この税がやはり過去の税制改正の大本であったように、課税最低限を引き上げるという、弱者に対してウエートを置いているということは、もう数字の示すとおりである、こう思います。  それで税率調整は、ちょうど安い時期に入って、八千円の初任給を国会で議決しようという前に入って、人生においては三十五から五十五の間で、生んだ子供が全部大学から小学校までおると、人生において一番投資効率のいい、一番の負担が重いという感じの、そこに税率調整を合わせようと、こう考えたわけです。ですから私は、そういう意味で、多年の懸案であったシャウプ税制に手が入ったということ、しかも、間接税のウエートを三〇%据え置きのままで税率に手をつけたということですから、私はいまの状態における税制改正の中では、思い切って踏み切った案だと、ほんとうにそう思っているのです。ですから、そういう意味でいろいろなことがあるでしょうけれども、それなりの理由があって、しかも、課税最低限を上げるということで、多数の人が恩恵を受けるということも事実ですが、それよりも、それもあるが、金額はわずかでも、税率調整によって、人生において、いまの日本の経済活動や社会制度の中で最も中核をなしている人の税負担感を幾ばくかでも減殺をしたい。同時にそれが、将来の日本の効率投資の原資になるようにという理想に燃えた改正案であったというところを少し理解していただきたい。ですから来年度は、またいまの御意見も拝聴しながら、また勉強するということでございます。
  153. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 一言だけ。  課税最低限の引き上げ、異論がありますけれども理解いたします。税率調整も異論がありますけれども理解をいたします。伺うのは、上を切る必要はないのか。上はどこまでも青天井です。そうはいったって、これは民間がきめる賃金問題なのだからしかたがないという話がよくあるんですけれども、それでいいのですか。  ここで、先ほど来のように、ここから先は累進カーブが曲がったってかまわぬじゃないかということは、それなりの説得力は持つのじゃないか。
  154. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 感情論としてはわかります。感情論としてはわかりますが、その影響するところも非常に大きいです。これはまあその税のほんとうのポイントになると思いますが、ある一定限度以上は一〇〇%取るといったら働きませんよ、人間は。能力のある者はうんと能力を出してもらわなけりゃ、これは国民の生活よくならないのですから。ですから、それで働いているときでも、相当な高い税率で取られていることは事実なんですよ、取られているのじゃない、納付しているわけです。  それともう一つ対抗策があるのです。これはなかなか、うまくやっているんですよ。君が死んだときにいただきますよと、こう言っているわけですからね。生きているときはね、能力一ぱい働かして、そうして国家社会のために貢献をさして、死んだらちゃんといただきますよと、だからね、頭打ちにするというのは私は反対なんです。生きているときにはうんと働いてもらう。これはエジソンでも何でもできなけりゃ、日本の知識集約産業に転換できないじゃありませんか。ほんとうですよ。ほんとうにそうですよ。そういう議論が公にされてないことは私は誤りだと思うのです。能力があったらどんどんと能力を出してもらってね、日本の知識集約化に何でもやってもらう。それでなくなったときにいただくように、相続税率でもって調整をするというのはいいですがね、年間何億でもって頭打ちにするというものは、これはもう人間の個性や、人間のほんとうにその能力を一〇〇%発揮させるには、やっぱり青天井が望ましい。だから、そこらが非常にやっぱり自民党だなと言われるかもしれませんけれどもね。(笑声)そうじゃないんです。私も国民の立場に立って考えているんだということをひとつ十分御理解願いたい。
  155. 野末和彦

    ○野末和彦君 乱暴な意見かもしれませんがね、私思うのですけれども、低金利政策というのは、もう変えなければいけないのじゃないかと、貸し出し金利を上げるべきじゃないかと思うのですがね、先ほどから成長率の数字はどのくらいだという話も出てましたけれども、ちょっと考えるのですけれども、抽象的に言えば高度成長の時代はもう過ぎたんで、これから安定成長だとかいろいろ言ってますね。でもどうも日本人の体質からいって、結局は、高度成長志向型じゃないかと、また総理もそういうのがお好きなようなんですけれども、しかし、やはりこの経済構造を変えなければならないというときにきまして、やはりいままで高度成長をささえてきたのは低金利政策じゃないかと、まあぼくはそう思っておるわけですよ。何しろ安い金利の金借りて設備投資をやってったりいろいろするんでしょうけれども、金は借り得だったわけですね、企業にとっては。ですから、借金経営でやっているわけですね。この借金経営というのも非常におかしな企業の体質ですね。そんなこといろいろ考えまして、やっぱりこの際貸し出し金利をもう上げちゃうんだと、そうして上げることによって、預金金利も当然上がるわけですね。何かいままでこの委員会でもいろいろあったんですけれども、目減りするとか、あるいは金利が安いと、これじゃ貯金する意欲もないからというようなことになると、必ず預金金利上げたらどうかという話になる。で、預金金利上げるともう全体の金利体系変えなきゃならないのでそれはむずかしくてという話にいつも落ちついちゃうのですね。ですからぼくは、貸し出し金利をまず上げる方向で今後検討していくのが先であって、それが経済構造変える上で非常に必要なことじゃないかと、そういうふうに考えているんですが、総理はどうですか。
  156. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) そういう議論はまじめにひとつ検討すべき問題ですが、金利には限界があるということが一つございます。これはまあ日本の金利というのは、明治、大正からずっと見てきまして高かったんです。これ国際金利よりも低くなったのは、日本はこの二年間であります。これは、世銀の金利が五・七五%のときに、日本が何で世銀並みに融資ができないかと、西ドイツが海外経済協力を金利ゼロでもっていま中近東にやっておるとか、それから〇・七五%というほとんどもうどうにもならないような、とにかく第二世銀と同じような——第二世銀は無利息五十年ですから、第二世銀と同じように、五十年を目標にしておって〇・七五ですから、これはもう全く無利息と同じことなんです。これはもう手数料はついているが、人件費とか、調査料だけを加味して〇・七五で押えておると、日本だけが何で一体四%、四・五%、五%だということで、日本の金利が高かったということは国際的にはもう事実であります。アメリカが利子平衡税制度をとってから、このところ日本よりも〇・二五%ないし一%高くなったということでありまして、これはまあ日本としては、もうどうしてこんなに高い金利かと、これはまあ全世界的に見て、原材料持たない日本が、原材料持つ国々と自由な世界で競争をしなきゃならない宿命、これは戦前、戦中、戦後もみなこれは日本人の宿命でございますが、そのときに、金利だけでも安くしなきゃいかぬというのが、明治、大正、昭和を通じての企業家の問題だった。ですから、海外経済活動たった一つだけ、日銀が横浜正金銀行に対して無利息の金を貸したという事態が不況時にあります。それ以外は日本の金利は全部高かったんです。ここ一年間か一年半だけ、アメリカ金利や国際金利よりも多少低くなったということだけでございまして、金利問題は国際競争力という面があるので、ただ日本の国内だけの状態で金利問題を右左はできないという問題があります。  ですから、まあ金利を上げるということよりも、同じような効果を出すもの、いまあなたが指摘されたように、安い金だからというのは、金利は全部損金勘定になります、会社経理の中では。で、資本金にすると一割の配当をするには、二割の利益を出さなきゃ、きょう通った会社法によってわかるとおり、二割の利益を出さなきゃ一割配当できないわけです。そうすると、銀行から借りたほうが安いというのは、会社経理の会計上のその処置で損金算入になるか益金算入になるかということだけであります。ですから、まあ戦前六一%も持っておった自己資本比率が一五・三%になった。これを六十年までに五〇、五〇ぐらいにしたい、まあできないかなと、こういうことですから、これは一つには、自己資本比率を上げさせるということになれば、金利負担企業は大きくなります。もう一つは、急にやったら会社つぶれちまいますから、だから、アメリカのように——今度まあ大蔵省も研究しているようです。まだ結論は出してないようですがね。アメリカは一行が一つ企業に貸し出すものは、自己資本比率の二〇%をこしてはならない、こういっておるわけですから、そうすれば、金融というものは特定な企業にはいかないということになります。  もう一つ、まあやれば、これはまあ荒っぽい議論だといわれますが、これはまあ銀行局が飛び上がるような議論でありますが、しかし、ね、はっきり言えば、あなたが言うことをそのまま、国民の目減りしている金をね、企業だけでもって使っているじゃないかと、こういうことになればね、企業責任を明確にするためには、その社の払い込み資本金または自己資本に対して十倍をこして貸し出してはならない。これ、銀行法の改正しなさいというのはそこにあるわけです。それはそういうことですよ。これは外国でやっておるんですから。ですから、そこらが、いま十倍でもって押えられたらたいへんですよ。これは商社一つ見てもわかりますしね。小さい会社は資本金三億円で千億の借り入れがあるのですから。これはまあ社会的経済混乱を起こさない程度に、何年間で、払い込み資本金の何倍という、間接資本の、というもの、いわゆるその金融資本でまかなえるというものを調整するか。これは急激にやるとアメリカと同じになって、政府のいわゆる企業に対する調整権が全くなくなる。これはもう株主の言うとおりになりましてね。これはもうどうにもならないで、物価抑制などに対しては相当な支障が起こってくる。だから、いまのような、この物価を押えるときに急激なことはできません。ただ、明治時代に払い込んだ千万円の会社が、何百億も何千億も借りておって、本来の仕事だけならいいけどね、宿屋もやる、パーマネントもやる、何でもやるというのはね、これは実際論だから、国民の感情に合うはずありませんよ。それはありません。ですから、その意味で、やはり金利を上げるということのマイナス面がありますから、そういうものよりも、自己資本比率と間接資本との調和をどうするか、税制上どういうふうにそれを加味させるかということによって、いわゆる金利問題を解決をする。金利だけ上げると、これはもう物価問題というものと不労所得のようなものに対して、金利を上げるが、税率をうんと上げなきゃいかぬということで、国民はさっぱり貯蓄意欲をなくしてしまうという問題も起きますので、そこらはひとつ与野党のかきねを取り払って、十分ひとつ検討していただきたい。こちらも勉強いたします。     —————————————
  157. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) この際、委員の異動について報告いたします。  本日、玉置猛夫君、高田浩運君、渡辺武君が委員を辞任され、その補欠として増原恵吉君、佐藤隆君、星野力君が選任されました。     —————————————
  158. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 三法案に対する本日の質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十分散会      —————・—————