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1974-02-28 第72回国会 参議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十八日(木曜日)    午前十時十一分開会     —————————————    委員異動  二月二十七日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     加藤  進君  二月二十八日     辞任         補欠選任      高田 浩運君     片山 正英君      玉置 猛夫君     濱田 幸雄君      中西 一郎君     高橋文五郎君      西田 信一君     古賀雷四郎君      桧垣徳太郎君     中村 登美君      船田  譲君     西村 尚治君      山崎 五郎君     山本茂一郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 河本嘉久蔵君                 藤田 正明君                 成瀬 幡治君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 片山 正英君                 古賀雷四郎君                 柴田  栄君                 嶋崎  均君                 中村 登美君                 西村 尚治君                 濱田 幸雄君                 山本茂一郎君                 田中寿美子君                 辻  一彦君                 戸田 菊雄君                 野末 和彦君    政府委員        大蔵政務次官   柳田桃太郎君        大蔵大臣官房審        議官       大倉 眞隆君        大蔵大臣官房審        議官       岩瀬 義郎君        大蔵省理財局次        長        後藤 達太君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        労働省労働基準        局賃金福祉部長  大坪健一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        経済企画庁長官        官房参事官    佐々木孝男君        郵政省貯金局第        一業務課長    沢田 茂生君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○割増金付貯蓄に関する臨時措置法案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ただいまから九蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十七日、渡辺武君が委員辞任され、その補欠として加藤進君が選任されました。  また、本日、高田浩運君、玉置猛夫君、中西一郎君、桧垣徳太郎君、船田譲君、山崎五郎君、西田信一君が委員辞任され、その補欠として片山正英君、濱田幸雄君、高橋文五郎君、中村登美君、西村尚治君、山本茂一郎君、古賀雷四郎君が選任されました。     —————————————
  3. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 割増金付貯蓄に関する臨時措置法案を議題といたします。  前回に引き続き、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 田中寿美子

    田中寿美子君 私、割増金付貯蓄に関する臨時措置法案についてお尋ねしたいと思いますが、前回の二十六日の委員会のときに、私、自分が委員長をしております決算委員会を開いておりましたので、出ておりません。それで、そのときの質疑の要点は伺ったわけなんですが、この法案は、法律そのものとしては非常に単純な、簡単なもので、そうとやかく、ものすごく一生懸命になって議論するほどの法律でないような気がいたします。前回質疑の中にも出ておりました点などについて、繰り返してはお尋ねしないわけなんですけれども、ただ、大蔵省がこれを提案された理由として、経済の現状に即応する臨時措置として考えたのだと、前回質疑の中では、貯蓄多様化ということをねらっているんだというふうにお答えになっているようでございます。それからさらに、貯蓄増強に資するというのがこの理由になっているんですが、私は、この二つの点についての説明多様化すれば貯蓄増強することができるというふうに考えていらっしゃるのか、まず、それをちょっと伺いたいと思います。
  5. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 確かに、単に貯蓄手段多様化いたしますと、直ちにそれが資金吸収にどれだけ役立つかということは、直接的には結びつかない点もあろうかと思います。具体的に申し上げますと、ほかに向かうべき貯蓄がそこに振りかわるというような問題もかなりあろうかと思います。おそらく、今度のこの割増金付貯蓄をいたしました場合でも、全部が現在の新たな貯蓄として加わっていくとは考えておりません。半分程度は新たな資金増強になれば、非常にそれは成功ではなかろうかと私は考えております。  ただ、預金者の、何と申しますか、ニーズと申しますか、あるいは気持ちというようなものにこたえる新たな手段として、こういう形態のものが一つ加わることによって、本来であるならば、貯蓄には向けられないものが、ここに新たに入ってくるということであれば、それを、何がしかの人の期待を持ってるのではなかろうかと、かような考え方から、この法案を御審議をお願いしておるわけでございます。たとえば、ある都市銀行で、預金者方々にアンケートをいたしましたわけでございますが、その中で、非常に数が少ないわけでございますので、これをもって全体を推しはかるわけには、非常に不十分だとは思いますが、大体五〇%ちょっとの人たちが、こういうものができればひとつやってみようかという答えが出ておるようでございます。残りが半々ぐらいで、私はやりたくないという方が半分、それからわからないという方が半分、こういう状況でございます。  それから、どの程度やってみたいかという質問に対しましては、大体一万円一口というのが過半である。こういうところからいたしまして、まず、いわばこの機会に一口買ってみようかという方々が、そういう方々が、本来であれば、一万円をほかに預金する方が、それを買ってみようという方もおありかと思いますが、同時に、いままでのむだづかい等をこの際こちらにやってみようかという方もあり得るのではなかろうか、そういうことで、何がしか成果を期待したいというのが率直な気持ちでございます。
  6. 田中寿美子

    田中寿美子君 何がしか成果と、そこを正直におっしゃってるんですね。私は、これは大蔵省当局もそんなに夢中になって考え出したような案でないということを承知しているわけなんです。これは福田大蔵大臣が、前に大蔵大臣をしていられた当時考え出された案でございましたから、法律でございましたから、そういう思いつきの感じがするわけなんです。それでまあ一口一万円なら買ってみようかという、つまり大衆の金を集めるということをねらっていらっしゃるんですが、これは多少とも、それは前回質疑でされましたように、ギャンブル精神をあおって、大衆を収奪するんじゃないかと、こういう意見もありますけれども、私も全くそういうふうに思います。そのことが、今度のこの法案で総需要抑制に役立つと、こうお考えでございますか。
  7. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) このこと自身が、総需要抑制に直接結びつくと考えることは、私は少し行き過ぎではなかろうかと思います。むしろ問題は、やはりこれによって集められた資金運用自身について、非常に厳格な融資規制というものもされなくてはいけませんし、また、先ほど申しましたように、この貯蓄によって集める資金の量と申しましても、先日もお答えいたしましたように、大体一兆から一兆五千億程度の金額でございます。したがいまして、これをもって総需要抑制の非常に重要な政策手段であるということとは考えておりません。この際として、預金者気持ちに少しでもこたえ得るものとしての一つ手段が、いわばいまの貯蓄形態の片すみにでもできればと、こういう趣旨審議をお願いしておるということでございます。
  8. 田中寿美子

    田中寿美子君 あんまり意味のない法律なんですね。日本人はたいへん貯蓄する国民だと言われているんですけれども、一世帯当たりわずかな貯蓄をみんな持っているわけなんですが、それを少し移動さして、この際この割増金付で、万が一、一千万円当たればという気持ちで移動させるのが大部分であろうと思うわけなんです。それからさっきおっしゃった、一万円ちょっとかけてみようと、まあ六ヵ月して当たらなかったら、もうそれでやめてしまおうということになるかと思うんですが、前回質疑の中で、その貯蓄で集めた資金の使い方が問題だということを、戸田議員から出ていたと思います。それで、それに対して大蔵省のほうでは、窓口規制考えたいというふうに答えていらっしゃるんですね、その福祉対策なんかに使うのを——窓口規制というのは、どういうことをなさるんですか。
  9. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) これの資金のみならず、銀行吸収銀行やあるいはその他の金融機関に集められた資金運用あり方が、非常に需要喚起と申しますか、あるいは経済活動の拡大に非常に関連があるわけでございまして、むしろ、その辺を総体的な立場からの政策によって規制していくべきものであると、かように考えお答えいたしましたわけでございます。窓口規制も、それの一つのあらわれといたしましての具体的な手段としてやっておるわけでございます。単に窓口規制のみならず、いわゆる選別的な融資指導ということとともに、その運用についてできるだけ不可欠な方向に向けていこう、こういう趣旨でございます。で、主として国民生活に不可欠な部面あるいは重点的な資金運用という点につきましては、ひとり窓口規制における日本銀行指導のみならず、私どもが選別的な融資あり方についてということで現在銀行指導しておるわけでございまして、これをもって総需要対策一つのできるだけ大きなきめ手にしていきたいと、かように考えております。
  10. 田中寿美子

    田中寿美子君 銀行の金を貸し出すときに、国民生活に寄与するような貸し出し方、まあどれもみんなそうだろうと思うんですけれども、こうやって集めた資金といっても、別にお金にしるしがついているわけではありませんから、それが福祉のほうに向かうかどうか、それはほとんどわからないことだと思います。それで、やっぱりこれはまあ一種の宝くじ預金で、それの大多数の預金者の金利を削って、宝くじを当てる人に分けてやると、そういうものでございますから、私は、一体大蔵省は、預金者立場というのをどう考えていらっしゃるのかと思うわけなんです。で、この法律のほんとうのねらいは一体どこにあったんだろうということを考えてみますと、財源なしで何かやったというポーズを見せるというようなことなんじゃないかというような気がするわけですね。まあ、ギャンブルをあおるとか、そういうような問題ももちろんあるけれども、何かやらなければということで、財源は出さないけれども、こういうこともやりましたという一つポーズにすぎないというふうに私は思います。  で、そのことをお尋ねしても意味がありませんから、ただ、これが物価対策に役立つというふうに考えていらっしゃるのかどうか。それは、前回も議論されただろうと思いますけれども貯蓄多様化ということでお答えになっているように思うんですね。物価対策と直接関係がございますか。
  11. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) これが物価対策に直接関連するものということであると申し上げるのは、いささか私は強弁にすぎるように思います。決して、これが物価対策というよりは、こういうたとえば手段を通じて貯蓄増強を行ない、それとともに、その他のあらゆる総合的な経済政策をもって物価に対応すべきことでございまして、私は正直に申しましてただ一つ手段だけをもって、物価対策が成功するものとも思っておりません。ただ、こういうあらゆる考え得る——確かにいま先生お話しのように、あらゆるものを考えついた、その一つ考えつきにすぎないのではないかとおっしゃいましたが、そういうように考え得ることをできるだけやっていっていきたいということではなかろうか。このことが物価対策法案であるとは申しません。確かに戦後、たとえば、これに似た法案がございまして、その間昭和二十六年から二十九年ぐらいまでが一番これがよく利用されたわけでございます。その間は、非常に物価が上がっておった時期でございました。むしろそういう時期において、こういうものが国民の方方に選ばれたということでございまして、こういうことが物価を押えたということでは私はないと思います。
  12. 田中寿美子

    田中寿美子君 ことしは狂乱の物価ということで、これに対処するために、いろんな方法を考え出さなければならない、総需要抑制するんだということから、いろいろと考えた末に出された一つのこれは法案だと思うんです。ですから、物価対策のうちの一つということで考えてみたけれども、実際にはあまりたいした役には立たない。ただ、何かやらなければ困るということで、思いつきになったというふうに私は思います。  それで、時限立法になっているわけなんですが。だから、あまりこの法律そのものを問題に私はしませんけれども、もう一点、これをやることで、まあ前回シェアについての御質問があっておりますが、金融機関別に、これどうしても大きな銀行ほど募集しやすいわけですね。先ほど一兆円から一兆五千億ぐらいを見積もっているというふうに、目標額。そうしますと、大手銀行のほうに集中しやすいと思うわけですね。小さい銀行はこれを獲得するために争って連合しながらやっていくというようなことだろうと思うんですが、こういうことをやっていることは、金融機関シェア競争になって、金融機関再編成とよく言われるけれども、そういうことを促進することにはなりませんでしょうか。その辺をちょっとお伺いしたい。
  13. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 御承知のように、これは二年間の時限立法でございまして、そういうような意図は私どもは持っておりません。むしろ現在のままで、できるだけこういうことで過当競争というようなことにならないような配慮に重点を置くべきではなかろうかと思っております。そういう意味からいたしまして、事前に募集計画というものを徴しまして、ある程度指導していきたい、かように考えております。  先ほど一兆から一兆五千億ぐらいが集まるのではないかと申し上げましたのも、現在まで私どものほうへ申し出があります金融機関の意向を積み上げた結果、そういうことになっておるわけでございますが、現在までに言ってまいりましたのは、私どもが監督いたしております金融機関のうちで、都市銀行地方銀行相互銀行信用金庫、それから農協が言っておりまして、それが一兆二千億になっております。残り郵政省郵便貯金がこれをやるかやらないかということが未定でございます。ただその中で都市銀行とか地方銀行、相銀、信金、農協といったところにつきましては具体的な募集計画がございます。その構成というものはそれほどアンバランスにはなっておりません。むしろ現在の資金量に応じた形でのシェアと申しますか、そういう計画をつくっております。都市銀行は五千億、地方銀行は三千億、相互銀行が一千億、信用金庫が千四百億というのを計画でやっております。御承知のように、これは一単位三十億でやるわけでございまして、これを幾単位するかということを、大体具体的に計画しておるわけでございますので、金融機関相互間のそういう、これをもって非常にそういう意図する相互間の競争ということはないように指導するつもりでございますし、現実にもそういう傾向はいまのところはうかがわれていないように思います。
  14. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあその辺は、大蔵省の割り当てと言うとおかしいけれども指導なさるんだろうと思うんですけれども金融機関そのものは、次第に合併などが行なわれつつあるわけでございますね。ですから、小さな相互銀行などから引き揚げて大銀行のほうにいくという、もしこのまましておけば可能性もあるし、預金者立場からいいますと、万が一にも一千万円当たるなら、こっちから引き出して、大きいところへということも考えられますので、その辺を多少危惧するわけなんです。  そこで、私はきょうはおもに貯蓄の問題ですね、預金者立場に立って、貯蓄の問題少し考えてみたいと、この法律そのものはもうあまり議論の余地ないし、もうすでに私ども反対しても通ることになっているようですから、あまりこういうもの議論するほどのことないように思います。むしろ、大衆貯蓄を利用すること、これは企業がみんなやっているものなんですけれども大衆貯蓄に関して、政府の側での配慮があまりに少ないんではないかという点を伺いたいんです。  それで、いま卸売り物価三〇%以上も上がっている。それから、消費者物価は二〇%以上も上がっている。そういうときに、営々として少しずつ貯金をしていっている者、それは実際に必要だから少額の貯蓄を持っているわけで、同時にまた、借金もしているわけなんですね、一般の大衆。そういう個々の預金者を大切にするという考え方がどうも政府のほうには少ない。それで、いまの貯蓄動向といいますか、現在個人預貯金、それがどのくらいあるかということ、総額でまず初めに伺いたいと思いますが、それと、これ毎年日本人貯蓄性向というのはどんどん伸びて、伸び率はふえていっているわけですね。最近五、六年間の伸び率総額などをまず最初にお伺いしたいと思います。
  15. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 御質問趣旨からいたしますと、単に、銀行のみならず、郵便貯金あるいはその他のあらゆる貯蓄を総合した数字を申し上げたほうがよかろうかと思いますが、何ぶん、法人預金個人預金がございますが、個人預金について申し上げたほうがいいのではなかろうかと思います。そういうことからいたしますと、その統計というのは、どうしても年に二回しかできておりませんので、多少古い統計で恐縮でございますが、四十八年の三月末で、いわゆる私どもマネーフローベースといっておりますが、国民経済的な観点から見た貯蓄個人預金というものの総額は六十二兆一千億ということになっておりまして、伸び率としては二七・三%になっております。さかのぼりまして四十七年の同じ時期でございますと、四十八兆八千億で、伸び率は一九・六%、それから、その前年の四十六年が四十兆八千億で一七・六%。四十五年が三十四兆七千億で、伸び率が二〇・五%でございます。過去平均増加率、五年間の平均増加率をとってみますと二〇・八%と、かようになっております。ただ、民間金融機関、私どもの扱っております金融機関につきましては九月の数字がございますが、これの伸び率は、これは二四・五%、九月末でございますとそういうかっこうになっております。
  16. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまのは、何の統計からでございますか。それから、個人預貯金のうち、個人企業ありますね、それを抜いたものですか、いまのは。
  17. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) これは、日本銀行経済統計からでございますが、個人事業主、いわゆる事業資金もこれには入っておると思います。対象が個人名であるかどうかということでございまして、家計の貯蓄であるかどうかということは、必ずしも選ばれていないと思います。
  18. 田中寿美子

    田中寿美子君 日銀統計ですね。
  19. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) そうでございます。
  20. 田中寿美子

    田中寿美子君 私が持っておりますのも、日銀資金循環勘定からとったのです。これは法人企業も含めてあります。個人企業を抜かして、個人預貯金というのは取りにくいということなんですね、それで私、調べてもらったんだけれども、いまおっしゃったのと少しずつ数字が少な目にそちらのほうは出ているのですがね。四十七年度で六十一兆五千百六十億ですね、四十六年度で四十八兆五千六百億、だから、あなたのは四十七年度に四十八兆とおっしゃいましたがね、ずいぶんそこ違うと思います。特に——それはいいですけれども、四十八年度に伸び率が二七・三となったというふうにおっしゃったのは、これは非常なインフレで物価騰貴しておりますから、どうしたって伸びていくわけだと思うのですがね。それで、貯金は激増してきているわけですよね。私の数字と、あなたのおっしゃった数字と少し違うけれども、それでも激増してきていることは間違いないわけです。私は、いまおっしゃったのは、あるいは個人企業部分を引いたのかなと思いましたけれども、そういう数字は出すことできないというふうに聞いております。それはいいですけれども、少なくとも非常にたくさんの個人預貯金がある。それを一世帯当たりにすればどのくらいの貯金があるというふうにつかんでいらっしゃいますか。
  21. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) これとどれだけ符節するか、多少疑問でございますが、総理府統計局貯蓄動向調査で申し上げるしか資料がございませんが、これは四十七年の十二月末でございますが、平均で二百十五万円ということになっております。
  22. 田中寿美子

    田中寿美子君 それ、総理府の、私は、日銀貯蓄増強中央委員会というのを持っておりますね、これ、ずっともう長い間、貯蓄動向調査をしていらっしゃるわけですね。これは世論調査といっても、六千世帯くらい非常に厳格にとっていらっしゃるわけなんで、大体これで個人の一世帯当たり貯蓄額というのは見ることができると思うのです。的確な数字かどうかわかりませんけれども、見ることができると思うのですがね。それで見て二百十万円ですね、四十八年度。いまの、二百十五万円というのは、いまの貯蓄増強中央委員会数字とは違いますね、違うのですか。
  23. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 確かにこれは違います。貯蓄に関する世論調査で、いまお話貯蓄増強中央委員会数字は、お話のように四十八年六月で二百十万になっております。私の申し上げたのは、総理府統計局数字でございまして、二百十五万、いずれが的確であるかどうかということは、必ずしも私もわかりません。
  24. 田中寿美子

    田中寿美子君 いずれにしましても、日銀がやってきたずっと長い間の貯蓄動向で見てまいりましても、昭和四十年から現在までの間に毎年毎年伸び率は大体ふえている。四十五年にちょっと下がっておりますけれども、四十八年は二八%の伸びになっております、これでは。一世帯当たり二百十万円、その二百十万円の貯蓄総額のうち、これには生命保険や何かも入っておりますから、そういうのを引いた預貯金ですね、預貯金は百四十七万円ですね。一体この伸び率が高いというのは、どういうわけで日本人はこんなに貯金をするのだというふうにお思いになりますか。
  25. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 非常にむずかしい御質問だと思いますが、これは私は、少なくとも明治以来のやはり日本の税制あるいは日本経済発展の姿あるいはその秩序というものが基本的にあるように思います。一つには、外国と比べまして、有価証券に対する選好という程度が非常に少ない。一つには、銀行という制度が非常に早くから発達して非常に身近なものになっておる、特に、郵便局というような形になっておるというようなところから、非常に預貯金という形に対する選好が基本的にあるということが一つだろうと思いますが、一つは、やはり経済学者などの言っておるように、私が理解いたしますのは、やはり所得が非常に急激に上昇する、結局貯蓄ということは、その所得の函数であるというようなところから、その所得名目所得であれ、それの上昇というようなものが非常に寄与しておるのではないかと思います。もちろんそのほかに、わが国の給与制度というものが、年二回のボーナスといったような形態をとっておるということももちろん寄与しておると思いますが、基本的には、やはり所得との関連が非常に大きいのではなかろうか、かように考えます。
  26. 田中寿美子

    田中寿美子君 都合のいいことばかりおっしゃると思うのですよ。日銀のやっているので、毎回の貯蓄動向調査の中で、貯蓄理由というのを調べておりますね。昨年も預貯金額は一世帯当たり百四十七万円。そして、なぜ貯金するかという貯金の目的の中では、病気や不時の災害に備えるためにというのが八八・九%ですね。だれでもこれ言っていることですけれども日本における社会保障の不十分さから、非常に不安で心配だから、だから、貯金せざるを得ないという状況が一つあるわけです。もちろん日本人貯金好きという性向があるかもしれません。それから、給与のパターンがそういうふうだと、いまのようにおっしゃった確かに外国と比べまして、少額貯蓄者が非常に多いということですね。それはそうだけれども、同時に、学費のことも心配、結婚のときのことも心配、住宅も心配、それから病気や不時のことが起こったときに困るということで、そういうときに備えて預貯金をするというのが、もう一番大きな理由で、特に、昨年度の調査によりますと、八八・九%が病気や不時の災害に備えるというふうに答えているわけなんです。だから、これはあり余って貯金しているわけじゃなくて、苦しいけど貯蓄をしているのですよね。それじゃ、個人の借入金、借金のほうは幾らありますか、一世帯当たり
  27. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 総理府貯蓄動向調査に基づいて申し上げますと、五分位の全世帯平均いたしまして、貯蓄額が四十七年末では二百十五万になっておりますが、それに対応する負債は四十六万二千円ということになっております。
  28. 田中寿美子

    田中寿美子君 総理府と、それからこの貯蓄増強推進本部ですか、中央委員会数字は多少食い違っておりますけれども、両方とも世論調査ですからね。ですから、貯金のことに関しては、私たちも自分の婦人団体で調べてみたけど、答えるのがいやだという人がずいぶんいる。貯金を持っているということを言いたくない、借金もあまり言いたくないという人もありますから、必ずしもほんとうのことは出ないけれども、大体の動向は出ると思います。日銀貯蓄増強中央委員会の調べによりますと、毎年ずっと傾向は同じように推移してきているのですけれども、借入金というのは一世帯当たり百三十二万円ですね。ですから、預貯金のほうが百四十七万円で、一世帯当たり百三十二万円の借入金がある。その借入金は、前年度に比べると非常にふえています。前年度は八十四万円です。それが百三十二万円になっている。四十八年度は、だから、貯金もふえたけど、借金もたいへんふえたということになります。八十四万円、つまり五七・一%増ですね、借入金、借金のほうは。その借金の理由は、土地、家屋購入のための借り入れ、これが半分ぐらいですね、四九・九%。  それじゃ、どういうふうな生活のしかたをしているかといいますと、これは、私ども接触する勤労者の家庭の家計簿の調査などをよく見てみますけれども、先日、衆議院の予算委員会で、総評主婦の会の塚本スミ子さんが公述しておりますけれども、これも、私もあそこの何十万という家計簿をつけている中から、総括したものを前に見ていたんですけれども、みんな収入に対して同時に借入金——家庭によっては二五%くらいまで借入金がある。それから、夫の収入だけでなくて内職、パートなどで主婦がかせぐもの、こういうものを合わせて生活をしているわけですから、だから、余裕があって貯金をしているというよりは、これは生活費の一部分として、必要だから貯金をしているということになると思うんです。つまり、庶民の生活というのは、物価がこんなにひどく上がってきますと非常に苦しいということですね。貯金の目的の中には、子供の教育とか結婚資金、これも五三%ほど入っております。老後の生活のためというのも三五・七、土地、家屋のため三二・六、余暇を楽しむというのは八%しかありませんね。ですから、生活がたいへん苦しいわけです。で、この日銀の調べの中で、子供のお小づかいというのをとっているんですが、これなんか見ても、ほんとうにわずかですね。ですから、楽な生活をして貯金していると思えないです。子供の小づかい月平均、小学生七百八十九円から九百九十五円ですね。中学生は千四百七十八円、高校生は二千八百六円。だから、つましい生活をしているんだけれども貯蓄せざるを得ないという現状にあるわけだと思います。ところが、今回も割増金付貯蓄を奨励するわけで、ますます貯蓄を奨励していくわけなんだけれども貯金する側からしますと、このインフレ、ひどい狂乱の物価高というのは非常に損になっていく。減価というか目減りといいますか、減価していくということについては大蔵省ではどんなふうに考えていらっしゃいますか。
  29. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 確かに消費者物価の上昇に対して、それに金利の面がアンバランスになっておるということについては、私どもとしては非常に深刻に考えております。ただ、基本的には、この目減りに対応する金利を払っていくということではなくて、その方向ではなくて、これはいかにして物価を押えていくかということにまだ全面的な努力を傾注すべきものではなかろうかと考えます。一つのスライド的な考え方ということもあろうかと思いますが、それはむしろとるべきことではないと、かように考えております。何らかの形であらゆる、全力を傾注して物価上昇を最小限に押えることによって対応すべきではなかろうかと、かように考えております。
  30. 田中寿美子

    田中寿美子君 銀行局長さんですから、金利の面だけをお話しになりますけれども貯金する者の側から言いますと、金利よりは物価の上昇率が高いという問題だけではありませんで、貯蓄したものそのものが目減りしていくというふうに私は考えるわけなんです。それで、さっきから申しますように、零細な貯金をしているんだけれども、その貯蓄そのものが目減りしていくということについて大蔵省に認識があるのかないのかと思うわけなんですが、経済企画庁が経済白書の中で、その貯蓄の減価の計算をしていらっしゃいますね。——経済企画庁のどなたかいらっしゃいますか。
  31. 佐々木孝男

    説明員佐々木孝男君) 昨年の四十八年度年次経済白書におきまして各期末における個人預金と、それに、その時期、時期におきます消費者物価上昇率を掛けまして、キャピタルゲインの損失ロスを計算しております。
  32. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう少しちゃんと説明してください。幾らで幾ら損失になっているか。経済白書に発表なすったわけですわね。
  33. 佐々木孝男

    説明員佐々木孝男君) はい、経済白書でございます。大体、四十七年の上期におきまして二兆五千億損失になっております。
  34. 田中寿美子

    田中寿美子君 四十七年は……。
  35. 佐々木孝男

    説明員佐々木孝男君) 四十八年度はまだ計算しておりませんので……。
  36. 田中寿美子

    田中寿美子君 おたくの計算のしかたは、つまり個人預金の前期末残高に消費者物価指数の上昇率を掛けて出すわけでしょう。それで、いまおっしゃった四十七年の下期ですね、二兆五千六十億ですか。おたくのようなやり方で、四十八年度の物価上昇率、政府は一一・何%にしていらっしゃるわけでしょう、それで計算をしますと、四兆三千六百十億と出てくるんです。個人預貯金の前期の残高が非常に多いですからね、それに物価上昇率を掛けますと、消費者物価上昇率、私のほうで計算したら——上期八・三四で計算したら、そうしたら四兆三千六百十億、下期をやっぱり八・三四で、これ低いですよ、計算しても四兆七千二百二十億と出るわけですね。そうしますと、個人預金の目減りというのは、一年間に四兆七千億も出ると、出ているということなんですが、これは大蔵省はどうお考えになりますか。
  37. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 確かに、そういう算式になりますと、私どもも同様程度の四兆台の金額ということに考えております。ただ、私どもといたしましては、これは確かに個人預貯金についての一つのいわゆる目減り、キャピタルロスである、かように考えております。  で、これにいかに対応すべきかという問題については、ひとり預貯金のみならず、その他の資産のキャピタルロスの問題もございますし、これは固定資産についても同様の問題があろうかと。で、そういう全体の物価の上昇に対応するあり方といたしまして、そういう目減り対策として、一つ考え方として、いわゆる物価にスライドする形で、すべての契約なり、あるいは価値の修正を行なうという考え方もあろうかと思います。現にブラジルなんかでやっておる方式がそれであろうと思います。ただ、そのことがいいかどうかということにつきましては、私どもはやはりそれに対しては非常に疑問を持っておると考えております。
  38. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、そこまで聞いていないんですけど。つまり、個人預貯金の中で——個人でも企業をやっている人は、それで一方またもうけるということはあると思いますよ、ですけれども、零細な、さっき個人が二百十万と言ったけれども、その中の百四十七万円しか預貯金としてはない。しかも、借金は百三十二万円もやっているというような人から集めてくるその零細な貯金の目減りを問題にしているわけですね。企業で投資して、そっちのほうでもうける人への救済ということまでは、私は、一応この際考えないでもいいんじゃないかというふうに思います。もちろん、いまおっしゃったようなスライド制にするなら、片方だけというふうに簡単にはいかない、それはわかります。ですけれども貯金をしている大衆の側の立場に立ってものを考えてみると、非常に損をしているということになりますね。それで、物価のこういうひどい上昇で、起こってくる貯蓄の減価のことですね、これもう少し、経済企画庁の方ね、経済企画庁の出し方は、消費者物価指数全体を平均して計算したものですね。ところが、私は貯蓄の減価ということを考えるときには、たとえば、私なら私が、何か土地を買おうとか、家を買おうという特定の目的を持って貯金をすると、そうした目的を持っているところの土地なら土地の騰貴ですね、価格がひどく上がっていく、その上がっていく率によって損をした額を、私はきめるべきものだと思います。  ですから、そういうふうに考えてみますと、土地の場合はどういうことになりますか。私は、消費者物価指数全体をとって、たとえば、昭和四十年度を一〇〇にしてみますと、四十八年までには、指数としては一・六二倍になっている。こういう計算でやっていくと、昭和四十年に百万円で買えたもの、消費者物価指数全体が、あのウエートでそのまま買ったと仮定しなければ出てこないのですがね。ですから、そうした場合に、その当時のウエートで買ったと仮定したら、昭和四十年に百万円で買ったものを、昭和四十八年には百六十二万円なければ買えないということになりますでしょう。そうしますと、土地の場合はどうですか、非常に土地を買いたいと思って、無理して金をためるということもありますね。土地の価格の上昇率というのはたいへんひどいですよね。どういうことになりますか、消費者物価指数全体でやればそういうことになりますが、土地の価格でやれば。
  39. 佐々木孝男

    説明員佐々木孝男君) いま手元に資料がございませんですが、一昨年そういう問題について検討いたしました結果を申しますと、土地を買うという目的で貯金をした金の減価というものは、消費者物価による減少率の倍ぐらいになろうと思っております。
  40. 田中寿美子

    田中寿美子君 ラフに倍ぐらになるとおっしゃったのですけれども、住宅地価格上昇率というものを、日本不動産研究所の全国市街地価格指数というのでとってみますと、昭和三十年三月を一〇〇として、四十八年には二千八百五十八倍になっているわけですね。そうしますと、対前年上昇率は四十八年は三七・八%、四十年が九・八、四十一年が七・六、四十二年が一四・一、四十三年が一七・六、四十四年が二二・二、四十五年が二〇・三、四十六年が一五・八、四十七年が二八・二、四十八年はものすごくふえて三七・八と、地価はものすごく高く上がったわけですね。そこで、土地を買うということを想定して、昭和四十年に百万円という計算でやってみますと、さっき物価上昇率全体なら百六十二万円が必要になるということだったのですが、土地購入のためであるというふうに仮定しますと、昭和四十年の百万円は昭和四十八年には三百九十四万円なくては買えないということになります。ですから、それは反対にしますと、昭和四十年の二十五万円が、昭和四十八年の百万円に相当するということになりますね。これだけたいへん貯蓄というものは減価しているというふうに私は思うのですけれども、経企庁の方はどう思いますか。
  41. 佐々木孝男

    説明員佐々木孝男君) 先生のお話のとおりだと思います。
  42. 田中寿美子

    田中寿美子君 だから、たいへんこれは貯蓄減価の不当な状況にあるということを私は言いたいために計算をしてみたわけなんです。  そこで、郵政省の方来ていらっしゃると思いますが、これは栗林先生がお詳しいかと思いますけれども、全繊同盟が貯蓄の減価に関して訴訟を起こしております。そのことについてどういう理由で、どういう訴訟をしているかということを御説明いただきたい。
  43. 沢田茂生

    説明員(沢田茂生君) 御質問の目減り訴訟の関係でございますが、私どもまだ新聞等で知っている程度でございまして、いままだ具体的な訴訟というものは提起されていないように承知いたしております。したがいまして、目減り訴訟の問題につきましては、具体的な訴状を読んでみませんと、どういうような主張がなされているかわかりませんので、訴訟の提起された段階におきまして、慎重に検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  44. 田中寿美子

    田中寿美子君 私も新聞で読んだものですから。  そこで、全逓と、それから全繊同盟の両方の主張を取り寄せて見てみたのですけれども、インフレによる貯金の目減りの損害賠償請求ということをするということを宣言していらっしゃるわけです。これは憲法第二十五条、第二十九条、国家賠償法第一条、第四条、民法七百九条によって請求訴訟をすると言っていられるわけですね。その内容を知っていらっしゃいますか。どういうことを理由にして、根拠にして訴訟をしようとしているのか。
  45. 沢田茂生

    説明員(沢田茂生君) 大体先生のおっしゃられたような大筋のことについては、私ども新聞等によって承知いたしております。
  46. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあ訴訟を起こした場合に、それは国を相手どって訴訟するわけですから、郵政省の管轄ということにはならないかもしれません。ならないけれども郵便貯金、または銀行ですが、主として郵便貯金だと思います。三十万円以上昭和四十七年以前から貯金していた人が訴訟を起こすというので、幾つか例が新聞にはあがっております。もうすでにきっと訴訟の準備ができていると思いますが、その請求訴訟ですね。貯金が目減りしていくことについての請求訴訟の根拠としてあげていられる点は、第一番に、財政金融政策の過失ということをあげている。やたらに過剰流動性をつくって、景気調整に失敗したと、それはちょうど四十六年から七年に入ってのあのときの経済政策の間違いから過剰流動性を形成して、そして金融緩和策をとって、物価騰貴を刺激したということが第一点。第二点に、不況カルテルと市況対策の過失。それから第三点に、石油問題処理上の過失。第四点に、生活安定関連法運用上の過失。第五、土地政策、地価対策についての怠慢。これらをあげて、これは田中内閣総理大臣はじめ各閣僚の共同不法行為責任を問うという形で賠償闘争をするということを宣言して、もうおそらく書類はでき上がっていると思います。そして、これ大阪地方裁判所に出す予定のようですね。で、このことですけれどね。これなど、きょう大臣もいられませんから、大蔵政務次官、どうお考えになりますか。
  47. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) 大蔵大臣がお見えになっておりませんが、大蔵大臣もしばしば申し上げておりますとおりに、確かにいま田中先生のおっしゃるように、貯蓄の目減りということは認められるものでございますけれども、この金利を政府のほうで補償していくということになりますと、これはばく大な資金源が要るわけでございまして、これをまた国民の税の面で補うということになりますと、インフレに拍車をかけていく結果になるので、わが国のいまの現状といたしましては、財政政策、金融政策、あるいは税制、あらゆる面の方法を活用いたしまして、総需要抑制して、何とかしてインフレと物価の上昇を食いとめていこうというほうに重点を指向しております。したがいまして、諸外国でもそういう例がないことはないわけであります。金利補償の例がないことはないのでありますけれども、インフレに追随していくという政策は、いまだそこまで決意をいたしておりません。どうしても現状においてインフレと物価を押えていく政策に重点を置くということに、いまのところ重点を指向していっておりますので、財形貯蓄のような例外はございますけれども、全体的にこれを認めるという方向にはまいっておりません。したがいまして、ここ当分、いま田中先生が御質問になるように、目減り補償に対する政府の補償というようなことは、いまのところ行なう意思はございません。
  48. 田中寿美子

    田中寿美子君 私も、政府はそう簡単にやるとは思っていませんし、この訴訟だって、国相手ですから、勝つ見込みがあると思わないけれども、これは抵抗なんですね。預金する大衆があまりにばかにされているんじゃないか、個人ではどうしようもないんじゃないか、国は何とかしろという、私は抵抗のためになさったと思う。私どもも、きょうも私の関係しております婦人団体は、インフレ反対の婦人行動集会を持ちますけれども、そこでも、貯金に対して非常に激しい、その貯金の減価に対して怒りの声が上がるということだそうです。ですから、今後そういう抵抗が大衆の側から出てくるだろうと、そういつまでも黙っていないということなんです。  そこで、いま、ちょっとお触れになりましたですね、労働省がやっている勤労者財産形成貯蓄、財形貯蓄ですね。あれはもう始められて、四十六年からですから二年たったわけですね。で、いま実績はどういう状況にあって、幾らぐらいで、何人が貯蓄しているということをまず御報告いただきたいと思いますが。
  49. 大坪健一郎

    政府委員大坪健一郎君) いま手元にございますのが、四十八年十二月末現在の数字でございまして、契約をされております勤労者の数が二百七十万八千人でございます。それから貯蓄の残高が千五百二十八億八千万円。それから、未確認でございますが、一月末現在で勤労者の数が約二百八十万でございまして、貯蓄残高が千七百億近くになっておるということでございます。
  50. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、一人当たり幾らぐらいになりますかね、いま。五、六十万でしょう。
  51. 大坪健一郎

    政府委員大坪健一郎君) そうでございますね、おっしゃるとおりでございます。
  52. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあ、財産形成貯蓄ということで、これは期限三年ですか、三年以上でしたね、の定期ですね。それで、大体これは住宅を取得する、持ち家を取得するということが一番目玉になっている、そのほか信託だとか、有価証券の購入ということがあるけれども、それで一人当たり五、六十万円の財産形成貯蓄をしているんだけれども、これは一体何年たったら土地が買えるというようになるとお思いになりますか、土地あるいは持ち家ができるようになると。
  53. 大坪健一郎

    政府委員大坪健一郎君) 貯蓄の目的には、もちろん土地を取得するということ、また家屋を取得するということがございますが、財産形成貯蓄政策の目的、それから法律の目的は、やはり勤労者が現在実は貯蓄をいたしましております度合いが、先ほど先生もおっしゃいましたように、非常に高い度合いでございまして、たとえて申しますと、所得五分位で分けましても、第一階級、所得が非常に少ない階層の方でも九七・八%の方が貯蓄をしておられます。それから、総理府貯蓄動向調査昭和四十七年の速報によりましても、総数で九九・二%の勤労者世帯貯蓄をしておられる。したがいまして、貯蓄自体を援助申し上げる、貯蓄自体に積極的な国が奨励策をとるということが、勤労者の資産形成の一番最初の道行きであるということで、財産形成制度が発足いたしておりますので、財産形成自体の主目的は貯蓄を奨励すること、そしてそれをある意味で長期的な貯蓄として国が援助をすることであるということをまず申し上げさせていただきたいと思います。  それで、いま先生がおっしゃいましたように、土地が非常に高価でございますので、実際上いまのような土地の値上がりを前提といたしまして、年に五十万程度貯蓄を積み上げていくということでございますと、東京のような非常に土地の高いところの都心部で、勤労者が土地を手に入れるということは非常にむずかしいということを申し上げざるを得ないと思います。
  54. 田中寿美子

    田中寿美子君 ですから、この財産形成貯蓄というのはたいへん鳴りもの入りだったわけで、昨年はこれにプレミアムをつけるというような案も労働省から出たように聞いておりますが、これは大蔵大臣、拒否されたわけで、これ、一つそういうことをやり始めたらみんなくずれるということだと思いますね。先ほど次官がおっしゃったように、もちろんインフレと物価高をとめてしまえば、これにこしたことはないんですけれども、とてもとまるとは思えない状況なんですね。  そこで、一人当たり五、六十万円の貯金を、労働者の場合つとめ先からこれはもう賃金から差っ引かれるわけですね。その差っ引いたものをためているけれども、ちょっといま最近の土地の状況では、年収三百万円でも借金の限度は一千万円、そうすると、土地の取得にも当たらないという状況で、とても持ち家の希望が持てないような状況だと思います。  そこで、その財形の貯蓄ですけれども、これは雇用促進事業団に三分の一いって、あとは金融機関にいくわけですね。そうですが。
  55. 大坪健一郎

    政府委員大坪健一郎君) 正確に申し上げますと、金融機関に財産形成貯蓄契約をいたしまして、勤労者が貯蓄をいたしました額の三分の一を限度として、雇用促進事業団が発行する雇用債券でございますね、雇用促進債。これをその金融機関が購入するということを前提として、雇用促進事業団の住宅分譲のシステムができておるということでございます。
  56. 田中寿美子

    田中寿美子君 その金融機関にいく部分ですね。これはそうするとどういうふうに使われるということは、その見通しがあるわけですか。それはもう、これもさっき言いましたように、お金はしるしがありませんからね。だから、働く人から、月給から差っ引いて、そして財産形成の貯金ですよといって取って、そしてそれが金融機関にいったら、また企業の盛んな投資のあれになる。つまり、郵便貯金もそうなんですけれども、みんな働く大衆預金を使って企業企業活動をするわけで、何だか貯金する側ばっかり収奪されている感じがするわけですがね。
  57. 大坪健一郎

    政府委員大坪健一郎君) これは経済の原則のお話でございましょうけれども、財産形成貯蓄が長期的な貯蓄で、しかも、給料から天引きで行なわれる、これはもちろん労使の同意が前提でございますけれども、そういう形で行なわれました財産形成貯蓄というものは、ほかのいわゆる貯蓄に比べて、まず、天引きということで、勤労者の方が非常に容易に自分の指定する金融機関貯蓄ができるという手続上のメリットと、それから、長期に据え置くということを前提として積み上げてまいります関係上、金利が比較的高いということが魅力になって、現在まで非常にふえておるということのようでございます。したがいまして、資金は当然長期的な資金として、産業界なりその他比較的高利潤を生むところに投資されるということが一応たてまえになっておりますので、先生のおっしゃいますような点があろうかとも存じますけれども、まず貯蓄に対する金利をある意味で保証して、財産形成を積極的に援助するという趣旨を重点に置くという意味で申しますれば、金融機関がこれをうまく運用するということが必要ではなかろうかと思います。ただそういうことで、全部の金が産業界なら産業界の特定の領域だけに向かうということになりますれば、当然問題がございますので、その一部を還元をいたしまして、国がその還元された資金に利子補給をいたしまして勤労者の住宅確保に資するようにするというのが財産形成政策の目的になっておりますので、現状では三分の一程度を還元融資するということになっております。で、実はただいま政府間の内部でいろいろ話を詰めておりますが、新しく御提案申し上げる予定でおります財産形成法の改正案におきましては、この三分の一の還元の限度を若干引き上げるように話を進めておるところでございます。
  58. 田中寿美子

    田中寿美子君 金利が高いので有利な貯蓄になるんだということですけれども、さっきから申しておりますように、いま雇用促進事業団の貸し付け金利というのは大企業が八%、中小企業が七・五%、そして日本勤労者住宅協会が五・五%、そんなに高いということでもない。いまの物価上昇率から見れば、すでに貯蓄した元金そのものも目減りするし、利率も低いということだと私思うんです。  もう時間がありませんから、この問題について、私は、雇用促進事業団のあり方自体も問題にしたいと思いますけれども、今回はこれでやめておきますけれども大蔵省当局、こういう状況で零細な金をあちこちから、さっきもおっしゃったように五分位階層の一番低いところですら九〇%以上も貯蓄するということは、毎日どんどんどんどん物が値上がりするときに、金を持ってないと心配でたまらないということがずいぶんあるわけです。ですから、あり余って貯金しているんではないということ、それでそういう場合の貯蓄の利子ですね。前回もちょっと触れていられたようですけれども、もっと金利を高くするということぐらいはできるんではないかと、さっきの割増だとか、それから、政府補償ということはとてもやりそうもないいまの政府の状況ですけれども、これは日本経済新聞なんかで見ても、日銀ども日銀総裁なんかの意見も、もっと金利を上げてもいいんではないかと、貯蓄するほうですね。その点はお考えになっているんですか。
  59. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 日銀総裁に限らず、私のほうの大蔵大臣も、あるいは私どもも、できるだけそういう方向で何とかならないかということで、非常に強い願望と申しますか、希望を持って研究しておるわけでございます。ただ何と申しましても、いままでにそういう案があれば、すでに過去の十数年の間にも行ない得たはずでございますが、それがやはり全体の金利体系というようなものの中で、なかなかいろんなところに支障があるということで、現在までのところは、たとえば、いわゆるマル優の優遇といったところで、できるだけそういう点に配慮していくということになっておるわけです。ただ、そうは申しましても、先ほど来御指摘のような、物価の上昇の中で、従来の金融の常識ということにとらわれない形で、何らかの方法ができないかということで、現在もなお研究を続けておるわけでございます。その間やはりいろんな支障が具体的に出てまいりますので、今日までのところ成案を得てないというのがその実情でございます。
  60. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう私はやめます、時間がなくなりましたから。  で、何を何しましても、割増金付貯蓄法というのは私はほんとうに思いつきみたいであんまり効果のないものであるだけでなくて、大衆貯金が目減りしている問題についての認識というかがたいへん私たちと違うし、いまにそんなにみんながだまっていなくなるということを警告申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  61. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 若干質問が重複するかもしれませんけれども、順序ですからお伺いいたします。  御提案の割増金付貯蓄ですけれども、どんな人がこれを利用するかということを先ほどしか調べてみたら、半分ぐらいの人がやってみようかという声もありましたと聞いたんですが、これ間違いございませんか。
  62. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 限られたアンケートでございまして、その際もお断わりいたしましたように、非常に数が限られております。一千名ぐらいの預金者でございますので、これをもって全体のお答えにはならないと私は思いますが、具体的に申しますと、買いたいという方が五〇・二%、買いたくないというのが二二・九%、わからないというのが二六・九%で、男女別にいたしますと、男性が、買いたい方々の五五%、女性が四五%といったところでございまして、年齢別にいたしますと、やはり四十代の方がその買いたいといった方々の中で五八%を占めておりまして、三十代と五十代の方が五〇%台、二十歳代が四五%、こういった形になっております。  買いたくないとおっしゃった方々の多いのは二十代の二五%、五十代のやはり二五%といったところでございます。なおこれは非常に、私は、これをもって統計として申し上げるについては、いささか数が一千名でございますので、不十分ではなかろうかと、かように考えておりますが、現在のところ、こういうデータしかございませんので、これをもってお答えしたわけです。
  63. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いま年齢別に見た、年齢男女別伺ったんですけれども、それ以外にこまかく中をごらんになっておりますか。
  64. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 東京と大阪で調べまして、大体半々という形でございます。それで対象は、一般の消費者の方々で、支店の店頭でお客さまに直接書いていただいたと、こういう形になっております。  職業から申し上げますと、事務職の方が大体半分近くでございます。残り——それから一割ぐらいが自由業、それから商工・サービス業が五%、それから家庭の主婦が一三%ぐらいという割合になっております。  それから、買いたいという方々の地域別には、大阪の方が非常に多くて五五%、それから、東京が四五%という形になっております。  男女別でも、先ほど申し上げましたが、男が五五%、女性が四五%。  それから、未婚、既婚といった分類にいたしますと、既婚の方のほうが五五%で多いようでございます。  それからなお、どのぐらい買うつもりかという質問につきましては、四九%が一万円一口であるということでございます。この辺のところは、東京、大阪に分けますと、やはり東京のほうが五五%、大阪が四〇%といった状況になっておりますし、小口で買うという方は、圧倒的に二十代未満の方が七〇%、それから、年が多くなるに従って減少しておるということでございます。その次に多いのは、やはり金額が二万、三万、四万、五万と、こういうふうにふえておりまして、ただ非常にここで特徴的なのは、五万円以上を買いたいという方が、一万口に次いで多いわけでございまして、五万円以上買いたいという方が一九%でございます。二万円の一七%に比較しまして、五万円以上が多いということでございますが、これの男女別では、男が二四%、女性が一三%といった形になっておりますし、それから地域別には大阪が多いと、年齢別にはやはり五十代以上が非常に多い、こういうような状況になっております。それから、これまでも、そういう方が——余談でございますが、宝くじを買ったことがありますという質問に対しまして、この答えられた方々は、宝くじをしばしば買うという方は比較的少なくて、五%程度でございます。ときどき買うという方が二五%、めったに買わない、買ったことがないという方が残りで、過半を占めておるという状況になっております。
  65. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 こまかく伺ったんですけれども、全体を大づかみに見て、半分ぐらいの人が関心を燃やしたということをひとつ足がかりにしながら、いまのこまかい御説明考えながら、少し考えてみたい気がするんですけれども、若い人のほうがわりあい率が少なかったという話なんですけれども日本人全体として貯蓄性向が高いと言われながら、昨今の若者はと言われている十八歳から二十四歳ぐらいまで加えてみると、貯蓄をしようという性向は世界的に見てどんな順番になるんだろう。——時間の節約ですから申し上げます。総理府が調査した世界青年意識調査を見ますと、やはり日本の若い人、これは十八歳から二十四歳です。貯蓄性向はやはり高くて、一番高いのはアメリカなんです。相前後して日本が続きまして、貯蓄をすることが健全な暮らしだということをかりに仮定すれば、哀れをとどめるのがフランスなり、スエーデンであるという数字が出ているんだそうです。若くても健全な日本人ということだと思うんです。  そこで一つお伺いするのは、その若者の中で、学歴別に見ると差がどのように出ると思いますか。
  66. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 全く私はわかりませんが、あえて私個人として推測さしていただくと、学歴の高いほうが少ないんではないかという、これは全くの想像でございますが、むしろお教えいただきたいと思います。
  67. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 おっしゃるとおりなんです。学歴が低いほど貯蓄をしようという傾向が高くて、大学を出た人ですと、半分以下しか貯蓄をしようという傾向がない、これきわ立って違うんです。小学校しか出ていないよという人は、八割近くの人が、お金というのは、使うよりは貯金をするもんだという生活態度をおとりになっていますし、大学を出ますと、何と四五%ぐらいの入しか貯金をしてくれないというものの考え方を持っている。  では、今度これを職業別に見ると、いまと同じ質問ですけれども、どういう分かれ方になるとお考えになりますか。——これはじゃ私から申し上げます。貯金をしたほうがいいと、お金というのはぱっぱっと使うものじゃないということを一番強く考えておいでの人は、農林あるいは漁業に従事している人たちなんです。それからその次にくるものが、自分で商売をしている、お店を持っておられる方、一番宵越しのお金は持たないと言わんばかりが管理職、若い人で管理職に近い仕事をしている人たちは、七五%の人が、お金は貯金するよりも使ったほうがいいと、そこの中に、先ほどおっしゃった事務職も入っているわけです。という傾向を今度もう一つ別な面から見てみます。昭和三十八年から四十八年まで十年間比べてみますと、貯蓄保有額というのは三・八倍に伸びました。ここの中で同じように職業別に伸び率が違うとお感じになっておりますか。
  68. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 世帯主の職業別の貯蓄保有高で、私ども総理府貯蓄動向調査を見まする限りは、勤労者世帯よりは、むしろ一般世帯——商人、職人、個人経営者、法人経営者、自由業といったところのほうが、構成比が高い形になっております。伸び率も高いように考えております。
  69. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 一般の勤労者、それから農林漁業、これを見ますと五・四倍から六倍の伸びなんです。これは先ほど引用されました貯蓄増強中央委員会世論調査から数字は拾っております。ところが管理職、自由業の場合は二・六倍と、最低の伸びなんです。これは預金の絶対額とは関係のない伸び率の話、どちらのほうがより貯金をしてきたのかということで申し上げているわけです。いまの数字から言えることは、比較的地位が高い、あるいはゆとりがあると思われている人たちは、貯金はあまりしてこなかった。生活を切り詰めながらという人は、一生懸命にこれまでも貯金をしてきた、そういう分布というのが何となく出てくるんじゃないか、しかも、それが半々ぐらいの感じになる。なぜ半々ということを重ねて申し上げるかといいますと、同じ資料の中で、貯金というのは相当無理をしてもやるんだとお答えの人が、昭和三十九年で五一・五%、昭和四十七年で五一・九、四十八年が五一・四ですから、半分ぐらいの人が相当無理をしてもやる。どのぐらい無理をするのかといいますと、これは世帯別に調査をしたわけでしょうけれども、まあ、こんなに物価が上がってしまったら、前の年と同じような貯金ができなくなってしまう、それでもやっぱりやるんだとお答えの家庭の数が、四十七年ですと五二・八、四十八年ですと五四・一。何か貯蓄をしている一般消費者と、こう一言で言うのですけれども所得水準が低い、学歴とか社会的な地位という面で、どちらかといえば、そう高くはないと思われている人たちの生活態度というのは、切り詰めながら懸命に貯蓄をしてきた。そうではない残り半分というのは、所得も確かに高いんでしょうけれども、わりあいにゆとりのある生活設計をしてきた、そこで今回の割増金付貯蓄、平たく言えばギャンブル貯金ということだと思うんですけれども、どちらのほうがそちらに引かれてくるかといいますと、切り詰め切り詰めの貯金をしてきた人たちが、はたしてこれに飛びつくだろうか。むしろ所得水準の高い、学歴から見ても高い、先ほど調査の中で半分までが事務職という話もありましたけれども、そういう人たちが、いわばゆとりの一部としてそっちに使ってみようかというぐあいに預金をしてくるんじゃないだろうか。これはそう想像しても大きな間違いはないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  70. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 私どもも全くそういう感じでおります。一般の方で無理してこれに向けられる方に期待するというよりは、いま先生のお話しのように、十万貯蓄するところを、もう一万これを買ってみようかという方があるんではなかろうかという、そういういわば比較的、所得と支出の関係に余裕のある方にこれが売れるのではなかろうかというようには思います。  ただ、これは農協とかいろんな機関が売りますので、その辺のところは必ずしも一般論で申し上げられるかどうか知りませんが、私どもとしては、大体そういう感じでおります。
  71. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 今回の二兆円減税は、俗に重役減税とあだ名をされるわけですけれども、いま言われた、比較的ゆとりがある、これはゆとりがあるといったって、主観的な問題ですから、個々にお伺いすればとんでもございませんというお答えが返ってくるでしょうけれども、比較的ゆとりがある人たちまで含めて減税構想を立てた。それが景気との関係でどうするかということで、先ほどお答えの中で、これが直接総需要抑制につながるとは言えませんけれどもと言いながら、四苦八苦思いついた動機がそこにあったことは確かだ。本来、上のほうの減税をしなければ、こんなことをしなくても済んだのかもしれないという見合いのものであるかどうかお聞きしたくなるんですが、いかがですか。
  72. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 私どもは全くそういうふうには考えておりません。むしろ、全く現在の貯蓄の金利の姿から見て、何らかの形で多様化することによって、せめてもの預金者のニードにこたえるということでございますので、決してそういう大構想のもとにこれを考えたということでもございません。
  73. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 預金者のニーズとおっしゃるんですけれども、そもそも何のために預金をするか、これはもうここでいまさら申し上げなくてもいいと思う。預金のニーズというのは、そういう貯金をする目的に照らして、一番見合った制度ということなんです。  そこで、預金をする人たちが、何に一番期待するかというと、御案内のように、流動性と安定性——収益性というのはわりあいに少ないわけです。なぜそうなるかというと、理由を調べれば、  一番高いのが、先ほども出ました不時の災害、病に備える。それ以外は、長期貯蓄の三大目標といわれている老後の問題、教育の問題、土地住宅の問題。それと今回のギャンブル貯金というのは見合うとは強弁はできないと思います。何で強弁できないかといいますと、これは当せん者と非当せん者に分けて考えますと、これは元本保証つきだというんだけれども、元本保証つきというのは、  一応別な話ですからおきますけれども、非当せん者と当せん者に分けて考えてみると、なるほど金利差損を覚悟しながら、非当せん者のほうは、元本塩づけというかっこうになるんでしょうけれども、当せんをすれば、その分だけ一時の巨額な利得が入ってむしろ消費が拡大されてくる。何かここでまとまったお金がひとつ入らないか、入ったら何かに使ってみたい、こういうギャンブル性が、何といってもこのギャンブル貯金の中身だ。そういったものは決して預金者のニーズではなかったと思いますけれども、いかがですか。
  74. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 先生も先ほどおっしゃいましたように、貯蓄をなぜ選ぶかといいますと、もう御承知のように、世論調査でもやはり流動性というのが一番高くございます。その次が、元本が保証されておると。要するに安全性の問題が次いでおります。で利回りがよいというのは非常に少なくなっておるというところから、やはり流動性と安全性ということについては、私は、この割増金付貯蓄というのは、むしろ適格性があるのではなかろうか、かように考えております。  ただ、その当たった方が何に使うことになるかどうかというような、いわば何の目的でやるかということについては、これは非常にむずかしい問題でございます。私ども確たる証拠はございませんが、私のほうといたしましては、ただ宝くじの場合でも、当せん者の多くが貯蓄に回しておるというアンケート調査もございまして、宝くじ当せん者の使途別に見ますと、案外当たった方がそれを貯蓄と住宅、土地に回しておるという数字に、私どもの持っておる数字は出ておりまして、必ずしもこれがかえって消費拡大になるというようには考えておりません。
  75. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 当たった者は大体貯金にする場合が多いと。これは従来の経過を見る限りいまほどすさまじい物価上昇あるいは上昇見込みというのはなかったんですから、今後の問題としてどうかというと、必ずしも従来のそれは参考にならないと思います。ただ、元本保証つきとおっしゃるんですけれども、私はこれはすなおに御提案を拝見しますと、元本保証つきではなくて、通常よりも低利の預金に入ることを条件にした宝くじ、実体というのはやっぱり宝くじのほうにあって、低利の——低利になるわけですけれども、低利の預金に入って、預金通帳を見せれば買えるという新しい種類の宝くじを出しただけじゃないか。そういうギャンブル性のほうが強いんじゃないか。従来ですと、その宝くじを買う人というのは、わずかの負担で済んだわけですけれども、今回はなるほど元本保証つきという名目で何がしかのお金を一ぺん敷金として置いておかなければいかぬわけですから、従来のお客さまとは違うかもしれませんけれども、内容は、たまたまその資格があれば、参加できる新しいギャンブル政府が起こしたというだけのことではないかと思うんですけれども、重ねて伺いますけれども、いかがですか。
  76. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) これがくじによる偶然の結果というものを期待して買われるということについては私どもも否定いたしません。そういう意味におきましては、これがわが国の金融制度の中に定着すべきものとは考えていないわけでございまして、時限立法にしたゆえんのものも、やはりいま御指摘のような、はたしてわが国の制度にこういうものが定着するものとしてはいかがなものであろうかと、かように考えておるわけでございます。  ただ、かつてございました「割増金附貯蓄」が、いま先生も御指摘になりましたような背景もございましたんでございましょう、昭和三十年代になりまして、ほとんど振り向かれなくなってきたという形で、三十九年にこれが事実上やんだわけでございます。ただ、非常に不幸なことに、今日のような経済情勢というのは、昭和の二十六年から二十八年に非常に似通った状況でございまして、こういう経済的な不安定なときには、非常にこういうものもまた選ばれたという実績からいたしまして、他面物価抑制に全力をあげるかたわら、そういうような預金の形も臨時のものとしてあっていいのではないかという趣旨で、御提案さしていただいている次第でございます。
  77. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 貯金という制度になじむかどうかということを、ほんとうはもう少し掘り下げてお考えいただくべき筋合いだと思います。ギャンブルと呼ぶか、宝くじと呼ぶか、割増金と呼ぶかは別にして、その偶然性のまにまにゆだねるわけですね。まにまにゆだねていいものと、ゆだねていけないものとあるんだろうと思うんです。  で、たとえば何のための貯金かと聞けば、病気や不時の災害に備えてが七九・六%と高い。一番重要なものを一つ選んでくれと言われたって、これは三六・九と高い、そのほかはといいますと、子供の教育、結婚資金が五三・七、老後の生活のためが三五・七、土地、家屋購入のためが三二・六、お金があったら遊びに行こうというのはたったの八・二、こういったものが偶然性のまにまにゆだねられていいものなのかどうか。御提案になっていることですから、いまさらここについては引っ込められませんという御趣旨なんでしょうけれども、ほんとうにそういうあり方がいいんだろうかということは、真剣にお考えいただきたい気がするんです。  続けて伺うんですけれども、これまで貯蓄をしていただきたいと貯蓄増強運動やっておいでになりました。四十八年度の貯蓄増強運動方針を見ると、りっぱなことが書いてあるんです。健全かつ合理的な生活態度に徹し、貯蓄増強につとめることが、結局は国民生活の向上充実につながることであり、あらゆる手段を通じて広く啓蒙をはかると、こう書いてあります。あらゆる手段を通じて啓蒙をはかるの中には、子供も巻き込んでいるんです、御案内のように。どのぐらい巻き込んでいるかといいますと、全国の子供銀行、一万八千三百三十四校、全国の五二・四%の学校が子供銀行を扱っております。子供の預金者数というのは四百九十万人、預金残高四百九十五億三千八百二十六万一千円、この子供たちにこのギャンブル貯金をどうやって説明するのですか。一番最初にお伺いしましたけれども、なぜアメリカの若者、十八歳から二十四歳までが、日本の若者よりも、お金は使うよりも貯金したほうがいいんだと思えるのか。おそらくそれは、向こうの宗教的な伝統を含んだ社会的な秩序感覚というのがあるんだ、今日は、なおかつその二番目に日本の若者も位するわけですけれども、やがて若者になってくる子供たちに、これまで何と言って貯金のことを教えてきたか。しかも、それが今日では、学校に五二・四%は子供銀行をつくり、しかも四百九十万人の児童が参加し、四百九十五億の資金を集めている。まさかここまでギャンブル貯金をやらせるつもりはないでしょうけれども、そういったぐあいにゆがめていくというのは、たった一兆五千億の資金を集めるのと比べて、あまりに原価が高いと言わざるを得ないんじゃないんでしょうか。この点だけお伺いして質問を終わります。
  78. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 私どもこういう貯蓄を大々的に宣伝さすつもりもございません。あくまで一つの型といたしまして、むしろこれが過度に利用されないようにということでやっていきたいと思います。一兆五千という数字になりますかどうですか、六ヵ月の定期預金残高の二割程度という数字でございます。この程度のところでひとつやっていきたい。これをもって金融機関が過度に宣伝をするとか、あるいは押しつけるというようなことについては厳格に指導してまいりたいと思います。御指摘の趣旨につきましては、私どもも全く理解さしていただいて、よくその趣旨に沿ったことでやっていきたいと、かように考えております。
  79. 多田省吾

    ○多田省吾君 前回質問したのですが、銀行局長にお伺いしたいんですけれども、この割増金付貯蓄でございますけれども、過去には、第二次大戦の末期の異常時に、戦費調達のために創設されたと、敗戦で中断したけれども、戦後のいわゆる大混乱期に、経済復興資金を集めるために、昭和二十三年から「割増金附貯蓄」が始まりましてそれがだいぶはやったのですけれども、結局これはお金よりも、大体、あれでしょう、賞金が、賞金というよりも賞品ですね。非常な物不足時代に、特賞はミシンとか、あるいはサッカリン、木綿糸、手ぬぐい、タオル、こういった賞品がついたので、それを目当てに消費者が殺到したという現状です。しかし、もう戦後二十八年、このようなときに、またこれを再開するということはちょっと能がない。ですから、ほんとうに預貯金の目減りをなくするような方向で、オーソドックスにやるのが本筋でございまして、こういった国民の射幸心をあおって、一兆五千億から二兆円ぐらい宣伝しないでも集まるだろうというような、そういう考えでやるというのは非常にけしからぬことだと思う。前回も大臣にお聞きすると、金利体系の変更というのはなかなかできない、あるいは予算も変更しなければならなくなるとかおっしゃっていますけれども、本来ならば、去年から論議されたように、西ドイツ式のいわゆる財形貯蓄国民に有利なように、今度の予算でやるべきだったのであり、また、金利体系も大幅に変更して、やはり国民をばかにしないような、そういう新たな金利体系に改めるべきであったのでございますけれども、窮余の一策でこういう事態になっているわけです。まことに遺憾千万なことだと思う。  しかし、まだいまの事態になっても、やっぱり銀行筋なんかは、たとえば、三ヵ月ぐらいの一〇%以上の定期預金をつくってもいいのかとか、あるいは一部の人は、いまのマル優のいわゆる零細貯蓄ですね、それにやっぱり一〇%以上の金利をつけてもいいんじゃないかとか、いろいろそういう金利体系を変えないでもやれるような方策というものも考えておられるようでございますけれども、肝心の大蔵当局が全然私は能なしだと思う。で、こういうものを最後に持ってきた。ですから、この法案をいよいよ提出して、衆議院、参議院の大蔵委員会審議されたわけでございますけれども、どの委員会でも非常に評判が悪いじゃないですか。また、消費者団体なんかも大反対しているじゃありませんか。割増金付貯蓄じゃなくて、これは割引貯蓄政策の失敗を大衆の射幸心に転嫁するものだと、あるいは本来預金者のものである金利を、預金者同士が食い争う形のもので国民を侮辱する悪法だと、こういうことが強く言われております。この法律案の第一条に規定する、経済の現状に即応する臨時措置として、貯蓄増強に資する目的、こんなことをうたっている以上は、もっとオーソドックスな貯蓄の目減りが減らないようなやり方、他にも方法手段が幾らもさっきあげたようにあると思うんですけれども、それをなぜ考えないんですか。
  80. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 金利の特別のものをつくって、おそらくそれを一〇%ぐらいにしたらどうか、こういうようなことが新聞紙上に出ております。確かに一つ考え方であろうかと思いますが、たとえば、現在のわが国の長期の貯蓄の最高限度は大体八・五%というかっこうになっておるわけです。たとえば、一年ぐらいの預金に八・五をこえるような金利がつきましたならば、その間は、おそらく国債の消化というものをはじめといたしまして、現在ございます長期の資金吸収形態は、おそらく全部ストップして、そこに傾斜してしまうであろうというようなことは当然考えられるわけでございます。  また、今日の預金の集まりぐあいを見てまいりますと、個人預金、その対象として考えるべき個人預金を一番多くかかえておるのは、何と申しましても中小企業を扱っておりますいわゆる相互銀行以下の信用金庫、信用組合といったところでございます。それについて、かりそめにも非常にアンバランスな金利がある一定の期間つきますならば、すべての預金はそこにシフトするというおそれがございまして、これは貸し出し金利というものを異常に上げない限りは、金融機関としてはやっていけない問題になるわけでございます。確かに一つ貸し出し金利を上げることを通じて、今日の事態に対処すべきではないかという考え方もあろうかと思います。しかし、やはりそういう金融機関の場合には、地域的にも限られております。対象の企業も非常にやはり限られておるというところから、そういうことについては非常に慎重に配慮すべきではなかろうか、かように考えておるわけでございます。特定の貯蓄について非常に有利なものをつけるということになりますれば、いま申し上げましたように、すべての面に影響が起こってくるということで、おのずから限度がある。それをどの程度考えるべきかということについては、やはり慎重に研究しなければならない、かように考えております。
  81. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、私も、本来はやはり金利体系を全部変えるとか、予算もこの際改変する、あるいは西ドイツ式のいわゆる財形貯蓄を強化する、こういうことが第一に必要だとは思いますけれども大蔵大臣は、金利体系は変えられないとか、予算もいじれないとか、そういうことをおっしゃって、なかなかその他の方法も考えようとしないから、私も窮余の一策を出しているわけでございまして、これがいいとは私も思っておりません。  その中で、いま銀行局長が、そういう有利なものを一つつくると、それに殺到して云々ということをおっしゃいましたけれども、じゃ、 たとえば、これは貯蓄増強中央委員会の会長の山田精一さんという人が言っているのですけれども、マル優ですね、少額貯蓄非課税制度を利用している方は、これは殺到できないわけです。その限度しかマル優は適用されないわけでございますから、そういうものですね。これは私は、ほんとうの少額貯蓄だと思います。前回大蔵大臣は、西ドイツやイギリスがこういう金利の高い一四・四とか一五%とかいうのは全部大口なんだと、日本の小口には当てはまらないというようなことを言っておりましたけれども、じゃ、こういった小口のものに一〇%ぐらい上乗せしてはどうかと、こういう提案もしているわけですね。今度のいわゆるくじつき貯金にしましても、銀行筋なんかでは、銀行が全然腹を痛めないで、そしてこのギャンブル貯金を呼びかけるのはちょっと心苦しいというようなことで、銀行で、じゃお金を少し割増をつけて、この貯蓄を少し優遇しようかなんという考えもちょっとあるようでございますけれども、それはそれとして、そういう考えが少しでもあるならば、やはり私はマル優ぐらいには一〇%ぐらい上乗せしてもいいのじゃないかと、こう思いますけれども、これはどうですか。
  82. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) マル優と申しますか、零細所得者ということを、マル優という形で置きかえて考えるべきではないかというのは、確かに一つ考え方であろうかと思います。ただ、これがこれから御提案し、御審議を願う今後の税制改正の中で、一応政府といたしましては、百五十万を三百万に上げることを予定しておるわけでございまして、三百万の貯蓄に一人当てるといたしますと、現在の個人貯蓄のほとんどというものがそれでカバーされることになるのではないか。ということは、結局ば金利総体を引き上げるというもとの問題に戻ってしまうのではないかということを私ども一つの問題だと考えております。  それでは、それについて限度を設けて、これについて特別に優遇すべきではないかという考え方もあろうかと思います。その場合に、いかにして高額所得者の分割を防いでいくか、あるいは実際面でその金額を守れるように、守れることを通じて、公平にそういう特定の金利が与えられることになるかどうかという問題がございます。また、かりに、その限度をつくりました場合に、それに対していかほどの金利が提供し得るかどうかということについては、よほど精細な研究をしないと、これは問題をむしろ大きくすることになりはしないか、かように考えておるわけであります。そういうことも含めまして検討しておるということでございます。
  83. 多田省吾

    ○多田省吾君 この内容について具体的なことをお聞きしますけれども、たとえば、四月一日からもしこの法案が通れば実施するということらしいのですけれども都市銀行なんかでは、いろいろな案をつくっておるわけですね、六ヵ月定期預金に、まあ三十億円単位ですか、三十万口単位にして云々とか、一千万円が一本であるとか、そういう具体策を考えているようでございますけれども、長期信用銀行なんかでは、こういったたぐいの債券は、発行を見合わせるというようなことも言っているようでございます。具体的に、取り扱い金融機関とか、対象となる預金、金融債とかいろいろ種類があるわけでございますけれども、どういう種類の機関が、どういう種類の案を用意しているのか、一応簡単でけっこうですから、ひとつおっしゃっていただきたい。
  84. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 現在までに、民間金融機関としては一応全部私どものほうに出そろっております。都市銀行地方銀行相互銀行信用金庫農協、信託銀行、信用組合、それに労働金庫、いずれも信託銀行を除きまして六ヵ月定期預金に限るということで予定しております。  それから、そのやり方については、いずれにつきましても、普通預金の金利は保証するというやり方で統一しております。  それから、募集の方法は、都市銀行を除きましては、全部が、それぞれの金融機関ごとに合同で募集する。たとえば、地方銀行でございますと、全国の七十ほどの地方銀行が一緒のものを売り出す。その売り出す単位につきましては、一組三十億ということでほぼ統一されております。これを、したがいまして、地方銀行の場合に全国的に三十億の単位を幾つ売り出すかということでございますが、私どもとしては、年にして三千億ぐらいということでございますから、大体百単位というように考えております。それから例外といたしまして、信用金庫、信用組合は、十億ないし二十億の募集単位を考えておるようでございます。農協、労働金庫それから相互銀行地方銀行は、三十億というのが一つの単位になっているようでございます。  具体的に当選率がどのぐらいかということについては、まだ確定はいたしておりませんが、大体、当選率が一〇%という程度の案が考えられておるようでございます。
  85. 多田省吾

    ○多田省吾君 一つは、漁業協同組合は入っているのか、やる意思があるのかないのか。  それから、たとえば生命保険会社とか金銭信託、割引金融債等もこれから対象になるのかどうか。
  86. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 漁業組合はやり得る道は開いてございますが、現在までのところ、やりたいという希望は私どものほうには参っておりません。まだその辺はよくわかりません。  それから、信託銀行につきましては、信託銀行が合同でやることにしておりますが、これも普通預金並みの金利をつけるということでやっております。それから、長期信用銀行のほうについてはこれはいたしません。それから生命保険についてはこれはきわめて例外的に数社がやるかどうかという問題がございますが、なお、研究中でございまして、はたしてやるかどうかは、まだきめかねておるという状況でございます。
  87. 多田省吾

    ○多田省吾君 この法案によれば、普通預金並みの金利を置かないでも、金利を全部賞金に回してもいいようになっているわけでございますが、戦後のあれは七分の三以下とかきめられているわけですが、その点はどうしてこう変更になったのですか。
  88. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 当初、これが戦後発足いたしました際は、金利を上げて割増金の賞金に回すという仕組みで発足したようでございます。ただ、三十年に入りましてから、世の中も落ちついてまいりましたこともあり、政府のほうで、そのころからいわば規制をいたしまして、いまお話のように、七分の三というような割合をきめたわけでございます。今回は、初めからむしろ普通預金金利程度の金利は残すという形で指導したいと考えております。法律上金利を上げて賞金に回すやり方の道を開いておるわけでございますが、現在郵便貯金法につきましては、そういう法律になっておりますので、それから、郵便貯金法については、もともと法律を廃止しておりませんので、そういうことも含めましてこういう規定にしたわけでございますが、この委員会、あるいは衆議院の委員会における質疑等を通じましても、あまり射幸心を刺激するのはいかがかというようなこともあり、私どもといたしましては、今後省令を出す場合には、むしろこの普通預金金利程度は必ずつけるようにというような指導をしていきたい、かように考えております。
  89. 多田省吾

    ○多田省吾君 この政府案では、預金者の利息を奪い合うような形でありますけれども、一部の金融界筋に、銀行が賞金の一部を負担して、全体につける利息をかさ上げしようかというようなことを言っているところもあるらしいんですけれども、そういうことがこの法律で可能かどうか。
  90. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) これは法律では可能ではございませんし、また、私どもは、それは適当ではないと思います。むしろそういう形で、この割増金貯金というものを優遇すること自身については、先ほど来の先生方の御指摘にもございましたですし、私どもも同感でございまして、むしろこういうものがほかの預金よりは優遇された形といいますか、有利な形になっているということについては非常に疑問を持っております。したがいまして、これをむしろ金融機関が持ち出して、さらに金利をこれにオンをするということについては適当ではない、かように考えております。
  91. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、金融筋がそのような考えを漏らすということは、やっぱりギャンブルを、射幸心をあおってこういう一兆五千億ものお金を集めるということに非常に良心に不安を感じているから、こういうことを言い出すのであって、その問題とは私はまた別だと思う。だから、そういう局長のお話なら、こういうものはやめたほうがいいわけです。  それで、金額の見通しを、約一兆五千億から二兆円集まるような見通しを立てておられますけれども、その三分の一の五千億円が都市銀行吸収されるという予想でございますけれども、問題は、そういう預金が、どの方向に貸し出しされるかということです。零細な大衆のふところから集められた、射幸心をあおって集められた金が、どう動くかということは非常に問題だと思います。それがまた、大企業とか大商社に貸し出されて、再びインフレの起爆剤にならないかどうか、非常に国民は懸念しているわけでございますけれども、この銀行貸し出しについて基本的な考え方をここではっきり述べていただきたい。
  92. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) まさに御指摘のとおりでございまして、この集められた金の運用いかんによりましては、むしろ非常に経済を刺激し、あるいは好ましからない影響を与えることは御指摘のとおりだと思います。それは、ひとりこの預金だけではなくて、あらゆる預金というものの運用について同様に当てはまるわけでございます。そういうことからいたしまして、今日総需要抑制策の一環といたしまして、公定歩合政策をはじめといたしまして、窓口規制、あるいは私どもから、選別融資というような形でその運用の総体について指導をしておるということでございます。
  93. 多田省吾

    ○多田省吾君 これは提案なんですが、こういうものをもしやるとすれば——まあ反対ですけれども吸収した資金運用については、いま最も引き締めの影響を受けている中小零細企業にだけ向けるとか、あるいは都市銀行においては、日銀貸し出しの返済にまず充当するとか、こういうふうにしぼって考えたほうがよろしいと思うんですが、どうですか。
  94. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) こういう特定のものについて、その運用を特定するということについては、私どもは非常にそれについては問題があるように思います。むしろ全体の統制の中で同様に考えていくべきではなかろうか。と申しますのも、一つには、これの預金が、ほかの預金からの振りかわりということもございますし、やはりこのものだけが優先的に考えられるべきではなくて、現在の金融機関貯蓄手段によって吸収しているもの全体に対して同様に考えていくべきであるということでございます。  ただ、こういう形で資金吸収され、その結果が、たとえば、いま御指摘の日本銀行の貸し出しの返済に充てるということは、当然そういう筋道は通るべき性質のものではございますが、ここで集められた資金に見合うものを、一定のものに運用するという、いわば資金割り当て的なやり方ということは、現実にも非常にむずかしゅうございますし、適当ではないように考えております。もともと、中小企業金融というものに対して優先すべきことであるという指導は、運用面全体を通じて私どもはさらにやっていきたい、かように考えております。
  95. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ、局長のせっかくのお話でありますけれども、結局、そういう大企業、大商社の買い占めや、投機資金に流れるような事態がないかどうか。これはもう絶対許されないことであります。そういうことで、衆議院でも附帯決議がついているわけでございますけれども、それに対する歯どめが提案理由の中にも一切言ってないし、法案の中にもうたってないわけでございます。ですから、単にこの附帯決議を尊重しますとか、答弁の中で、そういうことのないようにしますとか、そういう通り一ぺんのお話では、私たちは納得できない。やはりこれは絶対にもうそういうことのないようにということで、この附帯決議や、そういうおそれのないような態度表明を絶対に厳守する心要があると思いますけれども、局長はこれはどのように決意しておられるか。
  96. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 御指摘の御趣旨は非常に私どもよくわかります。それに対して異論を申し上げるつもりは毛頭ございません。ただ、すべの問題を通じて、今後の金融機関資金運用の問題についての問題を御指摘になっておると、かように考えるわけでございまして、特に、この法案にそういうことを入れることが適当であるかどうかとなると、むしろ私どもは、それは現実的にもはなはだむずかしい問題でございます。それからそういう問題ではなくて、やはり金融機関融資態度あるいは金融機関融資あり方の問題として、今後さらに一そうその御趣旨に沿うように努力していくべきものである、かように考えております。
  97. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 同僚の田中委員質問されましたし、各委員質問されておりますが、前段聞いておりませんから、あるいは複合して再質問になるかもしれませんが、あらかじめ御了承をいただきたいと思います。  それで第一点は、資料を実はいただいたわけですけれども、それで全国銀行の貸し出し金利の状況について区分、構成比ということで御提示を願ったんですが、その中で、六%未満、六%から七%、七%から八%、八%から九%、九%から一〇%、一〇%以上、こういうふうに区分があるわけですけれども、この中で、六%未満というものが、構成比において非常に少ないのですけれども、これは主として、どういう企業に貸し出しをされておるのか、この辺がもしわかったら御答弁願いたいと思います。  もう一つは、おそらく私の推定では八%ないし九%未満が中小企業、零細等々に向けられておるのじゃないかと思うんですが、構成比としては一番大きい、この内容わかりましょうか。
  98. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 的確にそういうことを示す統計はございませんが、七%未満という部分につきましては——これがまあ、十一月末の数字でございますが、一つは、預金担保貸し出しの場合が、これに当たるんではなかろうかと思います。私どもといたしましては、預金を担保にとっておるものについては、高い金利を取ってはいけない、むしろそれに対して〇・二五%の差のみを適用するようにという指導をいたしておりますので、特に、預金者方々が、期限前に払い戻しをすると損になりますので、むしろ預金を担保にして借りるというやり方もございます。これがそうでありますかどうですかは別といたしまして、おそらく預金担保貸し出しが大部分ではなかろうか、かように考えております。  なお、大企業と申しますか、標準金利適用先という、いわゆる一流の企業というものについては、これは公定歩合の〇・二五%高ということで、現在の段階ではむしろ一番高いと申しますか、九%、九・二五という形で適用されることになっております。これが、大体今日のようなときにどのぐらいございますか、おそらく貸し出しの中の一割ぐらいのものではなかろうか、かように考えております。
  99. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 この別の資料で、都市銀行の大口貸し出し状況、やはり圧倒的に大手商社、これが大多数を占めておるわけですね、総体的にいって五%と言いますけれどもしかし、これは衆議院予算委員会等でもいろいろと問題になったように、非常に大手商社にやっぱり重点的に資金配分が行なわれている、こういうことだけは言えると思うんですが、こういう状況について、今後何かチェックするとか、政策運用をはかっていく、国の政策指導は、これは入っていくような状況になりますかどうですか、その辺の考えは。
  100. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 結論から申し上げますと、この際ひとつ何らかの形で一歩を踏み出したい、かように考えております。と申しますのは、この問題は二つの側面があるように思います。  一つは、戦後常に言い続けられてきたわけでございますが、銀行の大口信用の集中排除という考え方でございまして、これは金融機関としてのサイドから、本来預金大衆からお預かりしておる金融機関として、その融資を特定のものに集中することは、金融機関の健全性から見ていかがなものであろうかという考え方でございまして、これが私どもも今後考えていく場合の、やはり基本であるべきではなかろうか、かように考えております。そういう意味では、戦後今日に至りますまで、常にそういう問題意識もありながら、いままでやってこれなかったという形は、同時に、それは高度成長という経済の回転の中で、非常にそういう民間の成長部門を中心として経済が拡大してきたという仕組みの中で、なかなか現実にはむずかしかったということだろうと思います。しかし、今後は、今後の経済あり方考えてみまして、むしろ安定的な経済の成長をどうしても確保していくということからいたしますと、そういうような問題について取り組める条件がそろってきたんではなかろうか、かように考えております。  ところが、もう一つの側面としては、そういう本来金融機関あり方という角度からの問題とは別に、今日国会などで御指摘いただいておるのは、むしろ商社といったところに対する銀行と商社の癒着関係という、いわば今日的な問題と申しますか、今日の異常事態に対処するあり方として、早急に是正すべきではなかろうかという要請がございます。  この二つの問題が、一つの、何と申しますか、目標のもとにやっていかなければいけないわけでございまして、この辺のところに、私どもとしてこれからやっていくやり方について十分配慮していかないといけないと思います。基本的には、最初のいわば金融機関としての融資あり方ということからいたしますと、自己資本に対する貸し出しの割合が非常に大き過ぎるんではないか。これをやはり、外国でもやっておりますように、またわが国でもやっておりますように、自己資本の二〇%といった目標に向かって、いかにして圧縮していくかという問題が基本的な問題でございます。これはしかし、いままで二十数年間かかってでき上がってきた秩序であるだけに、むしろ腰を据えて計画的にやっていくようなことを、今後考えたいと考えております。  それから、なお、今日の異常事態に対応するために早急に何かやるべきではないかという面もございます。こういうところにつきましては、さらに特別の指導を早急にやりたいと、かように考えております。選別融資というような形でやっておるのもその一つでございます。  また、今度特別調査という形で、指導を兼ねた形で、私どもが検査官と、それから日本銀行と一緒になりましてやってまいりますのも、そういう発想から、できるだけそういう大口のものに対する融資あり方を早急に見直し、是正をしていきたい、かように考えて鋭意いま研究しておるわけでございます。
  101. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いま局長がおっしゃられましたように、基本的には集中排除体制といいますか、当面の現下のこのパニック状況に対する大手買い占め、その他これらに対する緊急政策といいますか、確かにそういう点があるだろうと思うのですが、それと含めて、私は、金利政策について、これはおとといの審議の際にもいろいろと出ておったんですけれども、やはり個人法人等々の何か区別政策を、たとえば、ドイツがいま実施しておるようでありますが、そういうものも導入されてはいかがと、こういうように考えるのですけれども、その辺はどうお考えになっていましょうか。
  102. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 個人法人の分離ということは、実は昨年も、私どもから問題提起として、金融界に提起した問題でございます。諸外国では、経済法則にのっとった方法でやっておる形で、どうしても法人と申しますか、大口預金が優遇される形で高い金利がついておるわけでございますが、私どもが、法人個人とを分離したそもそもの趣旨は、今後の経済の運営によっては、金利というものがもっと弾力的に上下すべきではなかろうか。したがって、上げるときも上げるかわりに、下げるときも下げやすい、そのためには、やはり事業資金というものと、家計の貯蓄というものを分離する形で、一方にはある程度の安定性を与え、一方にはやはり金融情勢に応じて弾力的に上下さすべきではらいかという考え方から、法人個人の問題を提起したわけでございます。その問題は、今後ともやはり緊急課題として、私は、残すべきではなかろうか、かように考えておりやす。しかし、現在の問題は、むしろ零細な、いわば一般の大衆貯蓄に対して、何らかの利益の還元をさらにはかるべきではないかという問題がより焦点でございますので、単に今後の金利の弾力性確保というような観点からの法人個人の分離というよりは、もう少し煮詰めた形で研究すべきものと考えておりまして、先ほども多田先生にお答えいたしましたように、かりに零細所得者の貯蓄ということを、マル優という制度に置きかえた場合に、どういう問題があるかというようなことで、先ほどお答えしたわけでございますが、今日の問題は、むしろいかにして、せめてもの社会の底辺にある方々の何がしか貯蓄に対して優遇できないかという考え方でやっていくといたしますと、法人個人という分け方ではむしろ答えが出ない。あまりにも大まかな考え方である、かように現在の段階では考えております。しかし、将来の預金金利を含めまして、金利を弾力的に運営していくという角度からいたしますと、法人個人と、あるいは家計貯蓄と事業貯蓄というものを分離するようなことも研究に価するように考えております。
  103. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 将来の問題としては、そういう基本政策を残しつつ検討を加えると、こういうことですが、当面勤労世帯ということで構成比はないんでありますが、一応経済構成別世帯数、あるいは世帯人員別世帯数等々見ますると、三十年から四十五年ですから、だいぶ古いのですけども、おそらく私の理解では、現行三千万世帯数くらいあるんじゃないかと思うんですが、四十五年でいきますと、二千六百七十四万七千世帯、こういうことになっておるわけですけれども、この一人当たりの、ことにその中で、勤労者世帯、この四十七年度の貯蓄平均は百七十三万円、これは貯蓄動向調査報告の四十七年版でありますが、こういうことになっておるようであります。さらに、調査結果の概要ということで、貯蓄に関する世論調査がございまするけれども、これでは、要約をして、一世帯当たり平均貯蓄保有高が二百十万円、伸び率二八%、こういうことになっておるようですね。年次別の貯蓄関係を見ますると、年々非常に不況にもかかわらず、伸び率は一定の上昇傾向を示している状況にあります。おそらく私の理解では、四十六年度の可処分所得の勤労者一世帯貯蓄割合は、二〇%見当と理解しておるのですけれども、いずれにしても、上昇傾向にございますから、今後やはり貯蓄が全体として伸びていく、こういうことだけは言い得ると思うんです。ですから、前回質問でも、大臣に対して、これらの当面するインフレ状況の中で、たいへんな目減り状況がありますから、四十六年度の総体の郵便貯金、それから定期積金、年金、生命保険の契約、全体を含めまして百四十九兆円ぐらいをこえておるわけですから、このやっぱり緊急措置を、いま法人個人との金利体系は、後、将来のことだとこう言うならば、当面この問題について、やはり何とか手を打つべきじゃないかと思うんですが、いまだかつて、これまだ明快な回答が大蔵省からいただいておらないわけですけれども、これは何とかその方法を講じて、今回の、割増の積立金立法を暫定措置でやったんですから、これはできないはずはないと思うんですが、その辺はどうですか、もう一度ひとつ聞かしていただきたい。
  104. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 一つのやり方といたしましては、金利体系全体をもう一度上げていくという考え方一つあり得ようと思います。昨年二回、二%預金金利を上げたわけでございます。その結果、貸し出し金利がどれだけ上がっておるかとなりますと、公定歩合がその間、昨年末まででございますと二・七五%上がったわけでございますが、それの上げ幅の大体半分ぐらいは、公定歩合の上げ幅の大体五割が、実際の市中金利で上がっておるというのが、都市銀行の場合でございます。  それから、相互銀行になりますと、二〇%ぐらいしか上がっておりません。二・七五%のうちの二〇%となりますと、大体一%ぐらいしか上がってないというのが、約定平均金利の姿でございます。その後二%公定歩合を上げたわけでございますが、これに対する追随していく貸し出し金利の幅というのは、非常に少ないのではないか、というのは、ある意味では、なかなか上げにくい状況があるということのようでございます。  で、これを預金金利を二%昨年内に上げたことによって、どれだけ吸収といいますか、経理にどれだけ影響を与えるかということは、この次の決算あるいはその次の決算ぐらいに利息の支払い期がくるわけでございますので、非常にその辺のところが問題になるわけでございますが、私どもといたしましては、二%程度預金金利というものには、十分金融機関はすべて耐え得ると確信しておりますし、今日の金融機関の資力をもってすれば、決して心配な事態はないと考えております。ただ、さらにこれをもう一段上げていくということについては、非常に慎重に考えるべき問題が多いように思うもんでございますので、この辺については、できるだけあらゆる研究を続けていくべきではないかと考えております。  それから、同時に、それとは別に、いま御指摘のように、何らかのやり方が考えられていいじゃないかということも、私もそうだと思います。ただ、申し上げましたように、今日個人預金を一番多くかかえております金融機関は、どちらかというと、地方にある比較的小さな金融機関でございまして、その辺はおそらく金融機関の資力の七割以上が、個人方々預金となっておるのが実態でございます。それに比べまして、都市銀行は、比較的それが少ないという形で、その影響の度合いが違ってくるわけでございますが、その経理に及ぼす影響と、同時に、いかにして零細な預金に限れるかという技術的な問題がございます。国民背番号的なやり方というのは問題があるにいたしましても、何らか特に、やはり所得の小さな方という方に限れれば、できるだけその分だけは、金利体系とは別に高い金利がお支払いできるわけでございますが、それを確保するやり方というものが、非常にむずかしいというのが、一つのぶち当たっておる側面でございます。  それから、それでは今度は金利をどのぐらい高さにやれるかという問題につきましては、先ほども申し上げましたように、八・五%という長期金利の壁がございます。これをもしもこしますならば、あらゆる、たとえば、いま国債の個人消化を含めまして、それ以外の今日の貯蓄というものはストップして、全部そちらに回ってしまう。それをできるだけ金額を少なく、あるいは対象の適格者を少なくすることによって歯どめをするということは、実際問題としては非常にむずかしい。預金というものがどうしても分割されやすいものであるということからいたしますと、この辺の問題について、よほどしっかりした計算と、めどをつけない限りは、財政負担にも影響を及ぼします。あるいは郵便貯金の経理を通じまして、政府金融機関の貸し出し金利にも影響が及ぶという問題もございます。また、申すまでもございませんが、民間金融機関の経営というものを不安定にするという問題もございます。したがいまして、御趣旨のほどはもう十分理解しておるつもりでございますが、なお、具体的にいろいろ研究さしていただきたい、かように考えております。
  105. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まあ、銀行局長も十分その点は理解をされておるわけですけれども、ことに、この商社、銀行の癒着体制、こういうものから、今日的この課題について、やはりこれ異常事態ですから、異常状態に対応できるいまの救済方式、それが一つ金利政策考えられるとするならば、これは暫定的に臨時的に早期に策定していくのが、私は、妥当な今日的課題の解決の一側面じゃないかというふうに考えるわけなんです。これはひとつぜひ、局長も言われておるように、検討するというのですから、早期にひとつ検討していただいて、なるほどというひとつ解決案ですね。善処の中身をひとつ早急に出していただきたいと思うんです。それはひとつ要望として申し上げておきます。  それからもう一つは、やはりいま多田委員もいろいろと質問をされたようでありますが、どうも局長のこの割増金の問題について、その預金をした金の使途について、どうもやはりはっきりした結論、歯切れのいいところが出てこないわけですね。ですから結局、結果的には政府が、政策運用でもってこれをチェックして指導を強めて、そのウエートが六割程度占めてやっていくのか、あくまでもやはり原則は、各金融機関の自由裁量にまかせて、その中で若干のコントロールを政府がやっていくのか、その辺のやはり原則的な態度が非常にまだ明快に、私は、お答えになってないと思うのです。ですから、その辺の原則的な態度ですね。もう大蔵省が六割、政策運用として集めた資金についてはもう活用方をやっているのだ、いやそうじゃない、これはやはり原則的にあくまでも銀行の各種自由裁量にまかせて、その上に立ってチェック程度でやっていくのだと、この辺は一体どっちにウエートがかけられて、この運用措置をはかっていこうとするのか。そうでなければ、衆議院で特別附帯決議として、第一項でもって、みんなが申し合わせ決定した内容も、結局は竜頭蛇尾に終わっちゃうんじゃないか、こういう気がするものですから、ここで再度、局長の明確なひとつ答弁をお願いをしておきたいと思います。
  106. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 今日の窓口規制というものを具体的に申しますと、たとえば、一月から三月までの都市銀行なら都市銀行が貸し出す場合に、幾ら以上は貸し出しちゃいけないという規制で、まず、ワクが行なわれておるわけです。今日、それは八千七百億ということでやっております。同様のものをそれぞれ地方銀行、それから相互銀行まで適用してやっておるわけでございます。当然のことながら、相互銀行なり地方銀行は、中小企業金融が主体でございますので、それについては、比較的弾力的な考え方をして臨んでおるわけでございますが、まず、貸し出しの総ワクという形でやっております。  それから、その中で、特定のものについては、またワクの中でワクを設けまして、商社十大商社に対するワクというものを今日三月ごとにきめております。これをさらにきびしくしていくかどうかという問題が、今日の問題としてございまして、早急にこれの結論を出したいと、かように考えております。  それから、すでに石油業に対してはもう純増、これ以上貸してはならないというような指導もやっておるわけでございます。  で、それから非常に技術的なことでございますが、買い入れ手形を、日本銀行が手形を買い入れる場合の限度を、企業別につくっているというようなこともございます。そういうことが、今日のいわゆる窓口指導といわれておるものでございますが、それと同時に、大蔵省といたしましては、たとえば、土地融資の規制をやっておるとか、あるいは選別融資という形で、中小企業を除く卸売り業、小売り業、いわゆる商社あるいはスーパーマーケットといったものの運転資金抑制ということもやっておりますし、その他のいわゆる選別融資の基準というものをもってこれに臨んでおる。これは、したがいまして、いかなる形で預金を集めたかということを問わず、銀行がほかから借りてきたものも含めまして、その運用を総体的に規制していくというやり方が、やはり一番合理的なことだと、かように考えておるわけでございまして、こういうことをさらに——いまのままでいいかどうかという問題は確かにあろうかと思います。さらにこれを一段と徹底していくべきではないかという問題についても、早急に私どもとしては結論を出したいと思っております。さらにそれを改善すべきことがあるかどうかということについても、研究の余地はあろうかと思います。  そういう意味から、今回大蔵省から、日本銀行の協力を得まして、大体千二十三の企業資金繰りなどを調査するために、都市銀行を中心として十一行に検査に入ることにしたわけでございます。さらにこれを広げまして相互銀行地方銀行あるいは信託銀行にも第二次のそういう調査を予定しておりまして、全国的にすべての金融機関について、そういう具体的な調査をやっていく、同時に指導していきたい、かように考えておるわけでございます。
  107. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大銀行に対する調査はいつごろから実行しますか、係官はどういう方が行きますか。
  108. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 今週の初めに、一昨日、各銀行融資担当の重役を集めまして、趣旨説明し、その具体的な報告を資料で求めました。非常に膨大な、ここ数年にわたる在庫の状況等について報告してもらうということになっておりますが、金融機関がどこまでその企業の在庫を把握しておるかどうかということについては、非常に限界があるようでございます。かなりの日時と手数が要るかもしれません、あるいはそれについても期待がどこまでできるか、私も必ずしも確信は持っておりません。まず、そういう資料を徴取いたしまして、三月に入りまして、上旬には調査に入りたい、銀行に臨みまして調査したい、かように考えております。  大体、私ども検査官——全国財務局も含めまして三百人足らずの検査官でございますが、本省には大体百人ぐらい。その中で、やはりそういうことにほんとうにできる検査官というのは、かなり限られておりますので、非常にその辺のところにむずかしい問題がございますが、総体といたしまして三十名でもってやる予定でございます。日本銀行の協力を得てやっていくということで、大体、四月ぐらいにはワンラウンドが終わるのではなかろうか。続いてほかの銀行に入ると、こういうふうに考えております。
  109. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それでは、その調査内容についてば後刻、この委員会等に資料、御提示はできますか。
  110. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) もちろんできるだけ御審議の参考になるようなものに取りそろえたいと思います。ただ、これは非常に全業種、要するに、公益事業と金融保険業を除く全業種の、それぞれ銀行のメインを選んでやるわけでございますので、これをやはり総括した形でどうしてもやらなくちゃいけませんので、時日としてはかなりちょうだいしたいと思いますが、できるだけ御参考になるようなかっこうで、取りまとめて御報告したいと思います。
  111. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 本案に対する本日の質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十九分散会