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国務大臣(
森山欽司君)
原子力につきましては、先ほど中曽根
大臣からお話がありましたように、軍事利用から発足をいたしまして平和利用に戦後転じ、これが実用化の段階に入って二十年足らずということでございます。したがって最も新しいし、歴史も短いということでございますが、それだけにまた新しい技術の手法も用いておるわけであります。同じ発電でございましても、石油発電、火力発電の場合につきましては、御案内のとおり、石油の中には硫黄等が含まれておりますから、したがって、表にこれが亜硫酸ガス等になり、いわゆる大気汚染の公害問題となって取り上げられるわけでございます。したがって、火力発電の場合につきましては、大気汚染という硫黄の総量規制というような観点から、油の中から硫黄を抜くとか、煙になってから硫黄を抜くとか、あるいは
わが国独得かもしれませんが、重油でやらないで原油のなまだきをやるというような形でやっておるわけでございます。いわば公害に対して、前はとにかく電気が出ればいいという観点でやっておった産業でございます。
ところが
原子力につきましては、これは御承知のとおりでありますが、長い間、戦前からエックス光線等で放射線という知識が非常に積み重なっておりまして、国際的にもICRPというような団体もできており、これらの知識の集積を踏まえまして、この新しい
原子力平和利用という問題について、いわば、放射能という一種の公害を先取りするような形で多重防護の組織ができておるわけでございます。したがって、そういう放射能の問題を
考えまして、人間のつくる機械でありますから故障もありますし、人間のやることでございますからミス操作もあるわけでございますから、もしそういう事態が起きました際にはかわりの
装置が動くとか、あるいはとまるとかいうような仕組みになっておりまして、その意味においてテクノロジーアセスメントという
一つの
考え方がほんとうに地について、
一つの技術論としてその中に採用されている方式になっておる点は、同じ発電で火力発電、
原子力発電と並べますけれ
ども、全くそういう意味では違うわけでございます。
ですから、一般の自動車をもし火力発電といたしますと、
原子力発電みたいな
装置になりますと、どんなに運転のうまい人でも、百メーター続けてとまらないでいるのは困難なくらいな状況になっておるわけでございます。その意味で、私が申し上げましたことは、
原子炉がとまるという結果から非常に問題があるというよりは、とまったということが安全のしるしではないかということを申し上げたわけでございます。また一年十二カ月のうち一カ月半から二カ月半、定期点検が行なわれまして、その定期点検が行なわれました結果、普通ではわからないような
燃料棒のはな曲がりの問題とか、あるいは
蒸気発生器の穴の問題とがわかるわけでございまして、これ自身はほっとくわけにはいきません。これはこの間も問題に、辻
委員も
指摘されたとおりでございますが、それ自身
一つ一つ手当てをやっていくと、
アメリカはこういう手当てあり、日本は必ずしも今日の技術段階では
アメリカの言うとおりやるわけではございませんし、そういう
措置を要することはもとよりでございますが、そういうシステムになっておりますので、安全につきましては、火力発電なんかの場合に比べまして技術の種類が違うという点を私は申し上げたわけでございます。その意味において、そういうことがわかるのはある意味においては安全のしるしではないかと。
しかし、私が申し上げたいのは、同時にそのことによって
指摘されました
燃料棒の曲がりとか、あるいはまた
蒸気発生器の問題をそのままほっといていいというわけでは決してございません。これらについてもちろん対処していかなければならないことは今朝来、この
委員会におきましても辻
委員をはじめ、関係
委員の方々からお話がございまして、私の所見も申し述べた次第でございまして、私のことばが足りませんで、先般、野党の理事各位にたいへん御迷惑をおかけいたしましたが、趣旨はそういう点で申し上げたわけでございます。しかしなお、新しい科学技術産業の分野でございますから、日進月歩でございます。その意味において
国内ばかりじゃなく、国際的規模においてこれらの日進月歩の知識の累積をはかっていく必要がある。その意味で特に
安全性の問題については念には念を入れていかなければならないというふうに
考えておりますから、昨年、私が
科学技術庁長官に十一月の終わりに就任いたしましたが、すぐこの通常
国会が開かれました。そこで、この安全問題をあらためて
検討いたしまして、
安全性の確保のために
予算の追加要求を行ないました結果、
昭和四十八年度の
安全性に関する
予算は債務負担行為をまぜて約七十億でございますが、この
昭和四十九年度の
安全性に関する
予算は実に百五十億に、約倍以上にふえたわけでございます。
御案内のとおり、公共事業費、総需要抑制ということでなかなかやかましいので、公共事業費は四十九年度は四十八年の額、中身は四十七年ということでございますが、そういう点に比べますれば、私
どもといたしましては、この昨年来の事態に対しまして、決意を新たにして
安全性の確保のために取り組み、特に
予算編成上、非常に例の少ない
予算の追加要求を行なって、他にあまり例のないような
予算の大幅増額を、御案内のとおり、ことし非常にむずかしい時期でございましたが、やっておるわけでございます。こういう問題につきましては、特に留意をいたしておるつもりでございます。ただ、先ほど来申しましたような点で、私の言い方につきまして遺憾の点がありましたことは、この機会にどうか御了解願いたいと思う次第でございます。