○
政府委員(濃
野滋君) たいへん大きな問題でございますので、私からお答え申し上げるのはいかがかと思いますが、
先生御
指摘のように、
昭和四十八年度には、
貿易収支も昨年の
昭和四十七年度の八十億ドルをこえます黒字から一転いたしまして十分の一、八億ドルちょっとの黒字ということで、非常に黒字幅が縮小をいたしました。一方、
長期資本収支も非常に大幅な
赤字で、年間では総合収支で百三十億ドルをこす
赤字になりました。昨年初めには、累積しました黒字をいかにして減らすかというのがむしろ
政策目標でございましたのが、昨年の特に秋以降は、むしろ
国際収支を別の面から考えなければならぬと、こういう事態になっていることは事実でございます。
一方、今後の
貿易にからみまして、やや
長期的な問題と短期の問題と二つあると思いますが、やや
長期の問題といたしましては、先ほ
ども申し上げましたように、
日本は何といたしましても物を出して、それで必要な金をかせいで、非常に
輸入依存度の高い原材料なり食糧等を
輸入をしなければならぬということで、
世界各国があるいは
輸入を制限する、あるいは
輸出を押えるというような非常に保護主義的な
方向、あるいはそれが別の意味でブロック化をするというようなことは、
日本の国益という観点から一番まずい事態でございますので、
日本としては、第一には国際的な協調のもとに、現在あります自由
貿易の
考え方というものをあくまでも守っていくということが
日本の国益を守る第一の方策ではないか、その意味での
国際協調ということに、従前以上に力を入れていく必要があるのではないかと私
どもは考えます。
それから第二は、
日本の
輸出の現状を見てみますと、総
輸出額の中で非常に大きく
お金をかせいでおりますのは、現在、鉄鋼と船と自動車と、この三
品目で約三五%の
輸出をかぜいでおりますが、将来の長い目で考えますと、
日本の
輸出構造もやはり変わっていかないと、必要な
外貨というのはなかなかかせげない。
輸出構造を変えますためには産業構造の変化と申しますか、改革が必要なので、将来どういうかっこうに
日本の産業を持っていくかということは、具体的に詰めていかなければならない事態ではないかと思います。
第三番目は、若干今度は短期的な問題になりますけれ
ども、このような
世界各国が
先進国も含めまして非常に
国際収支問題に悩んでくることになります、当面をいたしております。そういたしますと、従来から
日本の
輸出商品につきましては、いわゆる市場問題というのが
各国いろいろなところで起こっておりますので、そういう問題を引き起こすことはこれはたいへんでございます。したがいまして、
輸出のいわば秩序を保っていくということに、従来にも増しましてここしばらくの間非常にこまかい神経を使っていく必要があるのではないかと考えております。
それから次には、先ほ
ども御答弁申し上げましたように、
石油を持っていない
発展途上国というものは、今回の
石油問題を契機に非常に大きな
影響を受けたわけでございまして、
日本の
輸出の伸長ということにこれをからみ合わせまして、やはりいわゆる
経済協力というものを従来以上にも増して考えていく必要がある。そしてこの
経済協力と結びつけて、
日本の必要なものを出し、
輸出市場をそういう意味での
確保をしていくという
考え方をあらためて
検討してみる必要があるのではないか、こういうふうにも考えております。
本年度の
輸出は、御
案内のように、最近非常に好調でございまして、前年対比約五割ぐらいの伸びを示しております。したがいまして、
輸出自身の先行きは今年もかなり強いと思いますが、これはむしろ数量と申しますよりも国際的な価格の値上がりから、価格要素が非常に強いかっこうになっておりまして、現在のような高い水準が年間続くかどうかは別でございますが、当初
政府が持っておりました四十九年の通関ベースで四百八十億ドルという
輸出見通し、これを上回ることはほぼ確実であろうと思います。業界の
関係団体、調査機関の
見通し等によりますと、すべて五百億ドルはこえる。大きな
見通しでは五百三、四十億ドルという説もございますし、いずれにいたしましても、今年は価格要素を
中心に
輸出はかなり伸びると思います。
しかし、一方
輸入のほうは、
石油代金の値上がりを
中心に原材料等は現在数量的には非常に落ちついておりますけれ
ども、単価の値上がりはかなりございますし、ただいま御
指摘のように、食糧その他はこれは景気いかんにかかわらず着実に伸びるものでございますし、昨年ほどの値上がりはないにせよ、これはかなり伸びまして、これまた
政府見通しの約五百三十億ドル
程度の
輸入規模をこえることは確実でございまして、現在私
どもとしましては、来月、六月一ぱいぐらいにこの
輸出入の
見通しをはっきりさしたいと考えておりますが、数字は別といたしまして、今年は、やはり
国際収支という面から見ますと、
輸入があまり大きく伸びないように、モデレートな伸びをしていくことを
期待をしたいと思いますし、
輸出は、先ほど申し上げたような市場問題を起こさない範囲で、できるだけ
輸出でかせいでいくということが必要ではないかと私は考えております。
なお、
外貨保有高につきましては、現在百二十億ドルをこえる
外貨保有がございますし、
貿易収支の動向のみではなく、特に
長期資本収支に対する本年度の
政策運用が問題でございますが、私は、まだまだ
日本の
外貨事情は、いわゆる問題点の点までは来ておらぬと。じゃ幾らがいいかということは、これはいろいろ議論がございますけれ
ども、いろいろな見方がございまして、はたして何億ドルがその最低ラインか、あるいは必要なラインかということについては、ちょっとここで御答弁を申し上げるような具体的な数字を持ち合わせておりません。