○沓脱タケ子君 そこで、いま実態についての御見解を伺ったわけですけれ
ども、まあ
結核斜陽論というのが盛んに横行いたしまして、
結核対策の軽視の風潮というのはやはりたいへん強くなってきているわけですが、実態はいまお聞きしましたように、欧米諸国と比べましても、私の調査をいたしました統計によりますと、これはいまの一一・何人かの
死亡率、これはほぼ欧米諸国、オランダやデンマーク、アメリカ、そういったところと比べると約二十年前の水準なんですね。ですから、先進欧米諸国と比べたら二十年おくれていると。いまの日本の水準というのは、大体そのデータで見ますとポルトガルだとか中南米諸国
程度だという実態だという点がやはり明確にされなきゃならぬと思うんです。したがって、決して
結核対策を軽視しちゃならぬという点を、こういった
数字的なデータからも言えるのではないかというふうに思いますし、
結核はそしてまたそんなに簡単に片がついていないんだと、むしろ逆に
社会の底辺に深く潜行していっているというふうなのが実態ではないかと思うわけでございます。これは時間がありましたら少し申し上げていきたいと思ったんですけれ
ども、そういった点で、決して
結核対策を軽視してはならないという点のまあ集中的、典型的な実情を
一つ申し上げて、具体例を出してお尋ねをしていきたいというふうに思うわけです。
具体例と申しますのは、大阪市西成区、ここは大阪市内でも格別の罹病率、発生率の高い地域です。中でもその中で集中的に問題になっておりますのは西成区の愛隣地区というところの
結核対策でございます。これをちょっと簡単に実情を紹介申し上げてみたいと思うわけですけれ
ども、幸いに大阪市の西成
保健所の学会報告をたいへん簡単にまとめた資料がありますので、これを要点だけ紹介をしたいと思います。
愛隣地区というのは西成区の東北端に位置しまして、面積〇・六二平方キロ、
人口約四・六万人、四万六千人です。そのうち約二万人が単身労働者、
全国各地より集まった者が大半を占めている。
全国的に見て
結核患者は減少しつつあるが、愛隣地区におきましては横ばい状態が続いており、罹患率、
有病率は他都市と
比較して異常な高値を示している。どの
程度の異常さかという、これはグラフが出て、数値が出ておりますので、一、二申し上げてみたいと思いますけれ
ども、これは名古屋の例をとりますと、名古屋の罹患率が一八〇、これに対して西成の罹患率が八八三、その西成の中の問題になっておる地区の愛隣地区では罹患率は二一三三です。それから
有病率を見ますと、同じく名古屋は六二〇、西成の
有病率というのは二一五二、中でも愛隣地区は三七〇〇、これはけた違いに異常な値を示しております。ここで感染源
対策の一環として、住民の要求もあって、毎年一回であった住民健診を毎月一回定めてその
実施結果を出しております。これは
昭和四十八年度の分でございますけれ
ども、これによりますと
受診者千百八人の中で要精検者、精密検査を要する者ですね、要精検者が百五十七名、一四・二%という
状況なんです。しかもその百五十七名のうち四十五名は登録済みの人です。すでに以前に登録をした人、全く
治療中絶
患者であるという
状況になっております。これがまあ実態になっておるわけでございます。
そこで問題になってまいりますのは、愛隣地区の単身労働者の
結核相談、これはもう
保健所で一般的にやっていて間に合わないということで、その愛隣地区の集中的な
対策として、私立更生
——大阪市立ですね。大阪市立更生相談所及び
保健所の分室、これが協力してやっておる。ところが、病床数の減少によって「収容が非常な困難を来しており、事故退院等により再入院する場合は相当期間待機せざるをえない
状況のため、その在野期間中が感染源
対策上の問題点である。当所では、」これはまあ、まとめた内容を全部一応紹介しますね。「当所」というのは大阪市立更生相談所ですが、私立更生相談所は、大阪市の環境保健局、それから私立更生相談所と西成
保健所とが協力をして、「
昭和四十七年九月から四十八年五月まで三回に分けて近畿一円の国公立病院十一カ所、私立病院五カ所を訪問し、その実状を訴え収容を依頼したが、愛隣地区
患者は即日入院を要するため難色を示された。」それから大阪市消防局の資料によりますと、
昭和四十八年二月から十二月までの発生件数、
——消防局はこれは救急
患者の搬送ですね。これの「発生件数は百二十四件で、収容したもの六十件、一時収容したもの三十二件、診療後帰したもの二十四件、その他八件」、そのまあ件数もさることながら、「その所要時間は一件あたり」
——これは救急車ですよ。「五十分から十五時間を要している。」こういう
状況になっておるわけでございます。こういうふうにまとめられた内容をもう少しリアルに申し上げてみますと、たとえばこの地域では一人の
入院患者を発見しますと、要
入院患者を発見するとベッドさがしにどのくらいの苦労を要しているかと、これは
保健所——西成の
保健所と大阪市立更生相談所の職員の
意見です。一人の
患者を入院させるためにベッドさがしにまず
平均二十五ないし二十六ヵ所ぐらいに電話をしてやっとさがすことができる。多い場合には一人の
患者さんのために、五十ヵ所以上に電話をしなければならない。こういうふうな
状況になっておるということがいわれています。それから、大阪市の消防局
結核患者収容
状況の資料というのを見ますと、これはもう実にたいへんなんです。先ほど
平均五十分から十五時間を要しておる
——平均じゃなくてそのぐらい要しているというふうにいわれておりましたが、これはたまたま大阪市の消防局の資料によりますと、
昭和四十八年度中の
結核患者収容
状況というので、これは西成の愛隣地区管内のデータですが、搬送人員が二百七十七人、一件あたり五十分から十五時間だというふうに書かれておりますが、これによりますと、具体例
——非常にリアルに消防局ですから報告をしているわけですね。その報告をそのままちょっと参考のために申し上げてみますと、どのくらいかかっているかというと、「八月十一日西成区松田町二−二十七幸陽荘十七時四十四分に覚知し、大和中央病院に選択搬送したが満床のため同病院前で三時間十六分待機したのち、救急指令台の指示により岸和田市民病院へ搬送(到着二十一時十分)同日二十三時帰署、本件所要時間計五時間十六分。」
〔理事須原昭二君退席、
委員長着席〕
また、次の例は「九月四日二十時に覚知し、大和中央病院に選択搬送したが満床のため救急車内で同病院
医師の診断を受けたところ続流性
結核と判明し入院の必要があるので、救急指令台に連絡し、収容可能な病院選定を依頼
大和中央病院到着(二十時二十三分)後同院前にて、観察待機し、翌前二時から五時までの間港救急隊の応援観察を受けた。
同四時五十五分海道救急隊が再度出場し、港救急隊と交代し、引き続き観察し、同九時十五分いったん出張所に引き返し、二部から一部へと仕事を引き継ぎ、同十時四十五分、救急指令台の指示により暁明館病院に収容
本件所要時間十四時間四十五分」、こういうふうな
状況になっているわけでございます。こういう
状況でございますから、これはここでは何としても
入院患者をすぐに入院させられるベッドがほしい。
保健所のまとめのところではこういうふうにいわれております。「1。愛隣地区
結核患者の収容については、現在の労働者の
社会環境から即刻収容しうる施設が望まれるので、国公立をはじめ、民間
医療機関の
患者受入れの協力を要請する。
2。併発症に関しては、精神病の併用病床を、国公立病院に設けてほしい。」こういう二点が書かれているわけでございます。
ちなみにこれはどういう
状況になっているかといいますと、いまこの愛隣地区の扱っている
患者の入院取り扱い
状況というのは
昭和四十七年度で八百三十八人、
昭和四十八年度は八百六十一人です。ところがこの中で保留をされて即日入院できなかった者は四十八年度は八百六十一人中百三十人、それから
結核病床は大阪府
関係だけでもこの二年間、四十七年三月末から四十九年三月末までの間で千八百五十九床、約二割近く、二割
程度二〇%近く病床が減っております。
それから収容
状況の行き先きはどういうふうになっているかということですが、これを見ますと、これは西成
保健所管内でございますから、愛隣地区と一般地域とに分けてあるのですがね。
昭和四十八年度を見ますと愛隣地区が六百八十六人、一般地域が百八人、計七百九十四人になっております。それが収容
状況は国立が二十七人、公立が六十一人、私立が七百六人というふうな
状況になっているわけでございます。そういう
状況でございますから、これは一番問題になっているのは、ベッドがないという問題が一番大きな問題になっている。
最初にお伺いをしたいのは、こういう具体的な集中的な
状況というのが出ているわけなんで、そこで
保健所の
関係者が切に願っている国公立の病院にまず収容をしてもらえないものだろうか
——先ほど申し上げた国立、公立というのは一般
患者なんですね。一般
患者のうちの一部なんで、愛隣地区からは国公立病院は一切収容がされていない。これを何とかして受け入れてもらえないだろうか、というのは開放性の
患者がたいへん多いわけです。これもちょっと申し上げたほうがいいんですけれ
ども、そういう点で、国公立病院でのベッド数がこの十年の間に十万から減っておるわけですけれ
ども、十年じゃないですね、
昭和三十三年から見ますと、二十六万ベッドあったのが
結核病床十五万に減っているわけだから十一万ぐらい減っている。しかも充足率が六割余りということになっておるわけですから、これはたいへんなことで、感染性の
患者さんが十七万ですか、ですから十万ぐらい入っておったら七万ぐらいは排菌をしながら感染性の
患者さんが一般地域で野放しにされておるという
状況になっておるわけですね。で、集中的に出てきておるのは、たとえば愛隣地区だと、こういうかっこうになって出てきておるのですけれ
ども、国公立病院が収容するという立場をなぜおとりにならないのか、これは一ぺんどうしてもはっきりしていただきたいというふうに思うわけなんですが、いかがですか。