運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-05-09 第72回国会 参議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月九日(木曜日)    午前十時十三分開会     —————————————    委員異動  五月八日     辞任         補欠選任      嶋崎  均君     塩見 俊二君      藤田 正明君     鹿島 俊雄君      小谷  守君     田中寿美子君  五月九日     辞任         補欠選任      田中寿美子君     小谷  守君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山崎  昇君     理 事                 玉置 和郎君                 須原 昭二君     委 員                 小川 半次君                 斎藤 十朗君                 小谷  守君                 藤原 道子君                 矢山 有作君                 柏原 ヤス君                 中沢伊登子君                 沓脱タケ子君    国務大臣        労 働 大 臣  長谷川 峻君    政府委員        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  住田 正二君        郵政省人事局長  北 雄一郎君        労働省労政局長  道正 邦彦君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        警察庁警備局警        備課長      山田 英雄君        国税庁調査査察        部調査課長    甲斐 秀雄君        運輸省鉄道監督        局民営鉄道部財        務課長      常川 隆司君        運輸省自動車局        業務部旅客課長  山下 文利君        労働省職業安定        局審議官     岩崎 隆造君        日本国有鉄道常        務理事      加賀谷徳治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (春闘に関する件)  (最低賃金制に関する件)  (外資系企業労使関係に関する件)  (組織内暴力に関する件)  (テレビ産業における下請問題に関する件)     —————————————
  2. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨八日、嶋崎均君及び藤田正明君が委員辞任され、その補欠として塩見俊二君及び鹿島俊雄君が選任されました。     —————————————
  3. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 次に、労働問題に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 小谷守

    小谷守君 ことしの春闘狂乱物価の中で労働者の暮しを守るためにかつてない激しい盛り上がりを見せたと思います。  そこで、まず労政局に、この一応山をこしたと思われる春闘状況についてお知らせを願いたいと思います。
  5. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) ことしの春闘におきます賃上げ妥結状況は、大企業中小企業とも、額、率のいずれにおいても前年のそれを大幅に上回っております。最終的には春闘始まって以来の高水準妥結結果となることが考えられるわけでございます。  なお、大手企業はほとんどが解決を見ておりますけれども中小企業の中には、きびしい経済情勢を背景にいたしまして、賃金交渉が難航しているところもございますけれども、たとえば私鉄関係で申し上げますと、私鉄総連傘下に二百三十二の組合がございますけれども、現在未解決のものは二十七でございまして、私ども当初危惧をいたしておりましたわりには、中小企業の場合におきましても比較的交渉は十分に行なわれているというふうに判断いたしております。しかしながら、中には非常にこじれている企業のあることも事実でございますので、そういう点につきましては関係地労委等あっせん等を通じて一日も早く解決されることを期待しているわけでございます。
  6. 小谷守

    小谷守君 春闘の結果、いま労政局長の御発表のありましたように、大幅な賃上げの獲得あるいは公務員のスト権問題の多少の前進、あるいはまた年金受給者等弱者救済について一定の成果があげられた、こういうふうに思いますが、ところが春闘後遺症と申しましょうか、こういうものが若干残っておると思われます。  その一つは、政府がタブー視されております所得政策導入をちらつかせておるという点が一つ。第二に、中小企業闘争がまだ未解決のところが多い。労政局長のただいまの御報告は事もなげな御報告でありましたが、かなり中小企業闘争は深刻である。そういうものが残っておる、こういうふうに私どもは思うんです。  きょうは、こういう問題を中心労働省の見解を伺ってみたいと思いますが、まず、大臣にお伺いしたいと思いますが、田中総理は本国会予算委員会におきまして、所得政策導入をやる意思のないことを明言されておるわけでありますけれども、その後いろんな機会に、特にテレビ対談等を通じて所得政策導入はやむなしというふうなことをちらほらと語っておられるわけであります。また、経済企画庁その他が震源地になって財界の一部の意見と呼応しながらこういう世論づくりが進められておる。このように思いますが、一体閣議等でこういうことが論議されたことがあるのかどうか、まず労働大臣にお伺いをしておきたいと思います。
  7. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 閣議の話が出ましたが、春闘が終わったあとで、いろんな話の中に三〇%というものが将来一体これだけ来年たとえばそういうことがあり得るだろうかと、経済情勢がなかなかきびしいじゃないかというふうな閣議の席上だったと思いますが、そういう話は出ました。いましかし先生のおっしゃるように、所得政策云々などという具体的な話は出ていないと私は記憶しております。
  8. 小谷守

    小谷守君 所得政策に対する論議をし始めたのは、大臣のおっしゃるようにかつてない大幅な賃上げが行なわれたのを機会に、政府資本側はいわゆるコストインフレを警戒するという名目で賃金抑制をねらうのではないか、こういう疑惑、こういう心配がいま労働者の中に高いわけであります。すなわち、所得政策はもちろん賃上げ抑制ばかりではない、資本家経営者所得も押える。そのため製品価格値上げ資本財としての土地価格騰貴も押えることを前提とすると説明されておるのでありますけれども、今日の政府ではこれらの資本経営者側の利潤、配当、土地価格製品価格を押えることはまず無理ではないか。とすれば、所得政策という総合的な政策に名をかりた賃上げ抑制にどうしてもウェートがかかる。そういう点にいま労働大衆の一番の心配があるように思われてなりません。  そこで、労働大臣のお立場でお伺いをしたいのでありますが、所得政策政府財政金融政策失敗によって起こったインフレの責任を、労働者賃上げ抑制という形でしわ寄せをするものというのが大方の意見である。政府はこういう所得政策考える前に、インフレの元凶である公共料金値上げや大企業独占価格、そして土地騰貴など、こういうものをきびしく監視して物価抑制手段を的確に行使して物価を鎮静させることが先決である。労働大臣に対して少しお門違いの質問になるかもしれませんが、昨年秋から物価上昇被害者である労働者に犠牲を求める所得政策に、よもや労働大臣が手をかしておられるというふうには考えませんけれども、この際、労働大臣として今日所得政策導入についてどうお考えになるかということをはっきりひとつお伺いしておきたいと思います。
  9. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 今回の春闘における賃上げが、コスト面及び需要面の双方から物価上昇の要因となることは避けられないと思いますが、その場合にも、生産性の向上などで企業内の努力でできるだけ吸収をはかるようにしまして、安易な価格転嫁などは絶対に行なわれないようにすることが大事だと思っております。そのために、いまお話にありましたように、最も重要なことは、これまで続けてきた総需要抑制を堅持することであります。その結果、物価が次第に鎮静化に向かうならば、所得政策などは新たな政策としてとる必要はないと私は考えております。所得政策は単に賃金抑制を目的として行なわれるものではありません。また、わが国現状では所得政策前提となる国民的合意というものが形成されておりませんので、私は所得政策はとるべきでない。しかも、最近ごらんのようにアメリカでも四月にやめております。イギリスでもやめたようなことを知りますというと、戦争中の戦時統制経済を身をもって味わって、それに私たちが抵抗して牢屋にたたき込まれた経験者からしますというと、なかなかもってこれはやるべき問題じゃない、こういうふうに感じております。
  10. 小谷守

    小谷守君 大臣のおっしゃるとおり、やはり所得政策イギリスでもアメリカでも失敗だったと言わざるを得ないと思います。また、経済という生きものを国民合意なしに統制という最低の拙劣な手段で人為的に押えつけようとする無理があります。イギリスの慢性的な政治ストは明らかに所得政策失敗であると思います。わが国社会導入した場合には社会不安を一そう助長すると思うのであります。大臣お答えで満足いたします。  そこで、政府がいま進めようとしておられる財形政策——財産形成政策所得政策関係でありますが、財形政策をだき合わせて所得政策導入を試みようとする動きがあるのではないか、こういう心配があります。財形拡充等は一応別なことであると労働省はお考えのことと思いますけれども財産形成は税制の優遇措置による貯蓄奨励でありますが、今日では、私ども何となしにエビでタイを釣るような下心が見えてなりません。労働者財産形成がほんとうに必要と考えるならですね、財形貯蓄目減り防止のための財政補助をすべきであり、その対策もない財形政策はまやかしであり、労働省の御苦労に対して水をかけるような議論で恐縮でありますけれども、そういうことを通じて所得政策への道が開かれるのではないか、こういう心配がありますがいかがでございますか。
  11. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) まあ、私たち所得政策をやらないという心がまえでありますが、その場合でもやっぱり一番大事なことは、今度の春闘のときも国会へ回ったものは国会でやろうじゃないか。そしてやはり全体がいまこういうむずかしいときであるから、国民的連帯感でやっていこうじゃないか。こういう姿勢というものが私は大事なことだと思っております。私の所管においてやることは一生懸命やりますが、またそういう意味での御協力なり御注意なりいただきますならば、非常にやりやすいということをこの際に申し上げておきたいと思います。  ただいま、財産形成の問題と所得政策関係お話がありましたが、これはおっしゃるとおりですね、これはもう労働省財産形成をそういうふうな面で全然考えておりませんで、しかもこれは労使が御承知のとおり話し合い財産形成をやっておるものであります。そういうやはり話し合いの中から進めていって、そしてこういうむずかしい時代であるけれども、やはり貯蓄なり住宅なりそういう夢を持つものに私たちがいささかでも御加勢申し上げてやっていきたいというところの財産形成でありまして、この国会においてもそういう法律案が出しておる次第でありまして、何分、ひとつその際にはよろしく、そういう意味財産形成所得政策と全然無関係、そして労使でお話し合いの中にこれが積み上げられるものであるということで、御協力なりひとつ御鞭撻のほどをお願いしたいと思います。
  12. 小谷守

    小谷守君 所得政策については大臣の明快な御答弁がありましたから、これ以上は申し上げません。  第二の春闘後遺症と申しますか、これは中小企業闘争の未解決な点でありますが、ことしの春闘平均賃上げ額が二万八千円をこえて三万円以上の回答を出したところもあった。アップ率は三〇%以上であるということがいわれておりますが、これはおもに大企業のほうのことでありまして、日経連が四月二十六日までに調査したところによりますと、従業員が五百人以下の中小企業七百二十社のうちで妥結したのはわずかに九十六社。それでも妥結したところはまだよいほうで、全体から見ると中小企業回答足踏み状態である。また、従業員九十九人以下の小企業百九十二社の中で妥結したのは二十五社だけである。妥結していないが回答を出したのは百五社で、平均二万一千円ということであります。  こうした中小企業従業員は、先般の大型連休もレジャーどころではなかった。連休中も春闘が続いておった。そして、まだいつ妥結するとのめどもつかない。こういうところが多い。大企業のほとんどが妥結して春闘の山を越したといわれておりますけれども中小企業のほうはまだこれからが本番だと、こういう状況のようであります。労政局長は、春闘状況について劈頭御報告をいただきましたが、中小企業状況についていま少し詳細に把握しておられる状況を御披露願いたいと思います。
  13. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 先ほど典型的な例といたしまして私鉄関係を御説明申し上げたわけでございますが、連休の前四月の二十六日現在では七十程度未解決であったわけでございますが、われわれといたしましては何とか連休の前に解決したいということでいろいろ情報もとり、関係のほうに御努力もお願いしたわけでございますが、その結果、先ほど御報告いたしましたように本日現在では二十七の組合が未解決という状況になっておるわけでございます。で、事もなげにというおことばがございましたけれども、私ども事もなげに考えておりません。お答えも申し上げたとおり、中には非常に難航しているのもございます。そういうものにつきましては関係都道府県を通じまして地労委の精力的なあっせんを期待しお願いもしているわけでございます。全体といたしまして、まだ大企業に比べまして中小企業の出足はおそいわけでございますけれども、いままでしかしながらかなりの解決を見ている企業中小企業の中にもあるわけでございまして、アップ率はいろいろの調査によって若干の違いございますけれども、いずれも三〇%を上回っております。大企業以上のアップ率というところも少なくございません。金額につきましても二万五千円から二万八千円の回答を出しているところもございまして、額はともかくといたしまして、アップ率につきましては一般にどうも大企業を上回っているというふうに見てもいいんではないかというふうに判断いたしております。ただ、最終的な集計は若干おくれて出てくるわけでございますけれども、いまの中間的な状況を見ますとアップ率は大企業を上回るようなことになるんではなかろうかというふうに判断いたしております。
  14. 小谷守

    小谷守君 まあ、賃金問題は労使間の交渉解決すべきことでありますが、中小企業の場合、春闘が長引きますと、労働者ストを繰り返しますと賃金カットということになる、経営者のほうは製品は減産になり労使とも疲れてしまう。国民経済の上から見てもロスが多いわけでありますから、労働省労働者の利益を守るという立場から、いま少しこの解決の障害となっておるものを取り除くような積極的な御努力を願いたいと思います。零細企業の場合、どういうめんどうを見ておられるか、未解決闘争に対する御努力状況を多少伺いたいと思いますが、いかがでございますか。
  15. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 御指摘がございましたように、賃金問題は本質的には労使が自主的に話し合いできめるべき性質のものでございますので、私どもが横からとやかく言うのは慎まなければならないわけでございますけれども、われわれといたしましては、賃金問題をめぐっての交渉が少しでも円滑に行なわれ、また一日も早く解決するということを願うわけでございまして、労使、特に組合の皆さんからいろいろ御要望も承っております。で、個々具体的なケースにつきましては、関係都道府県等を通じて及ばずながらお手伝いをするということもやっております。しかし賃金問題そのものにつきましては、地労委あっせんということで解決をするのが筋でございますので、関係都道府県地労委あっせんに期待し、一日も早く解決するように心から願っているわけでございます。
  16. 小谷守

    小谷守君 中小企業の未解決の中で労政局長もお触れになりましたが、中小私鉄ストの問題があると思います。大手私鉄平均二万八千五百円、三一・四%アップという賃上げが行なわれたのでありますが、こうした金額妥結したのはこれは経営者のほうに大幅な賃金アップを理由にストップされておりました私鉄運賃値上げの突破口にしようとする思惑があったのではないか、こういうふうに思われますが、大手私鉄の場合はある程度高額の回答をしても使用者側にメリットがあるものと考えられるが、しかし地方中小私鉄で乗客の少ないところは運賃値上げをしても、収益の増加は見込まれませんから、群馬県の上信電鉄群馬バスのように解決が長引いておるところが多い。  そこで、運輸省のほうにお伺いをしたいのでありますが、中小私鉄といえども地域社会において重要な国民の足としての役割りを果たしておるわけでありますから、そこの労働者が人並みの賃上げを確保すべきことは当然であります。私企業といえども公共輸送を受け持つものについては、地方私鉄補助を強化して賃上げが可能となるような条件に協力すべきものではないか、こういうふうに思いますが、昨年度あるいは四十九年度過疎路線等に対する運輸省としての補助はどの程度行なわれておるのか、また、こういう中小私鉄争議状況はどういう見通しなのか、そういう点についてお聞かせを願いたいと思います。
  17. 常川隆司

    説明員常川隆司君) 現在、中小私鉄関係の御質問でございますが、中小組合といたしましては私鉄総連に入っておりましても、御承知のとおり鉄道中心にする会社もございますれば、そのほかにバス等もございます。その中で鉄道について私のほうから申し上げますと、現在、春闘解決会社は二社でございます。その中には御承知の上信電鉄も入っております。これらの中小私鉄に対する助成というものもいろいろなものがございますが、特にいまお話のような経営状態の赤字をてん補するような補助といたしましては、欠損補助という制度がございます。これにつきましては、四十八年度におきましては二千六百万円の助成をやっております。四十九年度には大幅に増額をいたしまして五億四千五百万円ということになっております。ただ、この助成は当然のことでございますが、四十九年度補助につきましては四十八年度の決算額に対する助成でございます。したがいまして、今回の大幅な賃金改定に伴います中小私鉄に対するいろんな経営上の影響というものについては五十年度の欠損補助においてそういうような事態を踏まえて検討してまいるということになろうかと思います。
  18. 山下文利

    説明員山下文利君) バス事業関係につきまして御報告さしていただきます。  バス事業関係争議の未解決会社は現在十三社でございます。この十三社につきましては地労委のごあっせんでできるだけ早く解決していただくように期待してございますが、幸いにこの十三社のうち七社につきましては、あっせん額につきましてはおおむね労使で了解いたしまして、ただその細目の検討につきまして現在労使話し合いを進めておる段階でございますので、近く妥結できるのではないかと期待しておる次第でございます。  それから次に、地方過疎路線対策といたしまして、自動車局のほうで地方バス路線維持費国庫補助金というものを支弁しておりますが、これは昭和四十八年度につきましては国から十二億四千万円を支弁いたしております。さらにこれと同額の十二億四千万円を都道府県から支弁いたしておるわけでございます。さらにこれ以外に、都道府県あるいは市町村が独自の御判断でバスに対して助成をしていただいておるものもございます。その金額につきましては四十八年度はまだ集計は終わっておりませんが、ちなみに四十七年度につきましては合計六億一千四百万円の金額が支弁されておるわけでございます。さらに四十九年度につきましては、国からの補助が二十一億七千六百万円、それからこれに見合う都道府県補助が同じ額の二十一億七千六百万円、合計約四十四億円の補助が予定されております。さらに、これに市町村その他から若干の補助が加わるものと期待しておるわけでございます。この金額だけでは必ずしも十分でないということは十分承知しておりますので、今後さらに内容的にも、また金額の量的にも充実さしていきたいと、このように考えております。
  19. 小谷守

    小谷守君 運輸省のほうけっこうです。  春闘後遺症のもう一つは、全国一律最低賃金制の問題であると思います。特に中小企業労働者にとって賃金引き上げは大企業との賃金格差を埋めるということのためにも大切な問題でありますが、たとえば下請企業などは労働賃金を上げたらつぶれてしまうというような問題もある。十分上げることができない。使用者のほうですら最低賃金制があって、それで全国的にきまり、それが事業傘下下請傘下に反映させられれば賃金を上げたいと、こういうふうに言っておりますが、それがないために上げられないという問題があろうと、こう思われます。こうした点から見て最低賃金制の確立は急務であると思いますが、特に参議院の予算委員会公述人として出席しました大木総評事務局長は、大企業一〇〇に対して、賃金格差ですね。大企業一〇〇に対して中小企業は八五を当面維持したいと、こういうふうに発言しておる。数年前一〇〇に対して七八程度であった格差現状では六八と、こういうふうに格差が拡大しておる。でありますから、現行のいわゆる地域別、業種別的な最賃協定とか地域包括方式では、場合によっては生活保護世帯よりももっと低い労働者が出ることになる。最低賃金制の仕組みを変えることによって賃金格差を是正していくよりどころとすべきではないか、こういう態度が労働省に望ましいと思いますが、いかがでございますか。
  20. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 最低賃金につきましては、これは、私ども、低賃金労働者賃金の確保をはかるという趣旨から、その適用労働者の範囲の拡大、賃金額適正化につとめておるわけでございまして、現在までに、すでに最低賃金適用を受けた労働者は二千九百万と、労働者の大部分にすでに及んでおるわけでございます。で、最低賃金額につきましても、一般賃金水準生計費あるいは通常の企業支払い能力等を考慮して適正な額が決定されるようにつとめておるところでございまして、現在のいわゆる審議会方式による最低賃金制になりました四十三年から見ましても、最低賃金水準は、消費者物価等はもちろんのこと、一般賃金水準上昇よりももっと高い率で上がってきておるわけでございまして、そういう意味で、私どもこれまでの最低賃金によりまして低賃金労働者賃金の底上げ、こういう機能を果たしてまいってきておると考えております。現に、最低賃金が決定または改定されますときには、おおむね一〇%ないしそれ以上の率の労働者がそれによって賃金引き上げの恩恵を受けておる、こういう状況にも相なっておるわけでございまして、今後とも、賃金水準物価上昇その他の経済情勢に即応いたしまして適正な最低賃金が決定されるよう努力してまいりたいと考えております。
  21. 小谷守

    小谷守君 基準局長が言われましたように、昨年末までに最低賃金法に基づく最低賃金は四百七十件、適用労働者数は二千九百四十万人となっておる。ところが、きめられた最低賃金の額は、四十七年度以前にきめられた産業別賃金を含めると平均的には一日千円前後でしょう。四十八年度にきめた分だけ見ますと、産業別では一日千二百円から千六百円。地域別最賃では千二百円から千四百円台となっておる。こうした水準では賃金水準・の格差是正に役立たないという根本問題があると思います。いま、それを別にしてみても、昨年秋からの物価狂乱にどう対応するかという問題があります。ことしの一月、中央最低賃金審議会から労働大臣あてに最低賃金改定のための緊急措置の必要性について答申がなされておりますが、労働省もそれを受けて各地の労働基準局長あてに緊急対策を進めるよう指示をされたようでありますけれども、その後、それはどうした状況になっておるか、どういう成果を生みつつあるか、こういう点をひとつお聞かせ願いたい。
  22. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先生ただいま御指摘のように、最近におきます消費者物価の異常な高騰に対応いたしまして、最低賃金も決定されたものがそのままでは実効性を維持できなくなった、こういう問題がございましたので、中央最低賃金審議会では、昨年秋以来それに対するとるべき処置についていろいろ御検討の結果、一月には、四十八年三月末以前にきめられた最賃につきましては、通常の最低賃金決定方式によって改定できるものはできるだけすみやかにそれをやるように、そして、ことしの三月末までにそういう通常の方式による改定が困難と思われるものについては消費者物価の動向によって改定をするようにという御建議をいただいたわけでございます。そこで私どもはさっそくそれを地方に伝達をいたしまして、その中央最低賃金審議会の御建議の線に沿って、それまできまっておりました最賃の早急な改定を行なうように指導をいたしてまいりまして、それから三月末までの間にほとんどの最賃の改定を終わったわけでございます。若干改定が三月末までに済まなかったものもございますが、それは引き続きそのための審議をいたしておりまして、大部分は中央最低審議会の御建議の線に沿いました改定を三月末までに済ましたわけでございます。
  23. 小谷守

    小谷守君 消費者物価上昇は対前年度三〇%以上、四十七年度から見ると四〇%も上がっておる。最低賃金はこれまで二年に一度の見直しでやってきたわけですから、改定は少なくとも四〇%以上でなければならぬと思います。ところが、労働省の指導による緊急是正の中身はどうかといいますと、四十七年以前の最低賃金については約二〇%程度、四十八年三月以前のものについては約一三%だと、これは間違いありませんか。この程度のアップ率では消費者物価上昇率の半分以下にすぎない。消費者物価上昇率より低いということは当然実質賃金は低下するということであります。最低賃金適用を受けている底辺の労働者にとってはもうこれは生活が破壊されてしまいます。現在の最低賃金法は業者本位のものであって、国際的に見ても最低賃金法とは言えないしろものでありますが、それでもその法律の「(目的)」には「労働者の生活の安定、」ということが入っておる。その目的規定に反するような内容を指導しているとすれば、これは基準局長問題ではありませんか。アップ率の指導はこの二カ年間の賃金上昇率、少なくとも五〇%以上として、それが困難な場合にも少なくとも消費者物価上昇率を下回らないような指導をしていただかなくてはならぬと。労働省の御指導に私はたいへんな矛盾を感ずるわけですが、いかがですか。
  24. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 私どもがことしの一月以降の最低賃金の緊急是正につきまして指導をいたしましたのは、これは中央最低賃金審議会の御建議の線でございまして、それはそれぞれの最低賃金がきめられた時点から改定時期までの直近の時期までの消費者物価上昇に合わせたアップ率で改定をするようにと、こういうことで地方に指示をいたしまして、地方もほとんどその線で全部改定がなされたわけでございます。したがいまして、改定がなされました最低賃金につきまして、そのそれぞれの賃金が決定されました時期以降、その改定決定がされる直近の時期までの消費者物価上昇率に合っておるはずでございまして、それよりも下回っておるようなことはないと存じておるわけでございます。
  25. 小谷守

    小谷守君 局長、抽象的なことでなしに、具体的に地方の基準監督署に対してどういう指示一指導をされましたか。
  26. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) いま申し上げたのは抽象的なことでなくて、そのとおり指示をいたしました。たとえば四十七年の七月にきまった最低賃金であるとすれば、四十七年七月以降、ことしのたとえば二月に改定をしたとすれば、二月に改定を、それぞれの地方審議会できめるときにわかっておる最近の消費者物価の動向、大体昨年の十二月からことしの一月までの数字で改定をいたしておると思いますが、その間の消費者物価上昇率をそのまま援用した上昇率で最低賃金額の改定をするように、こういう指示をいたしたわけでございまして、これは中央最低賃金審議会で、労・使・公益三者がそういうやり方で改定をすることが適当だということで御建議をいただいております。したがいまして、それによってそういう指導をいたし、地方もその線で、ですから全部の、ほとんど全部といっていいと思いますが、労・使・公益三者意見一致して改定をしておるわけでございまして、そういう具体的な指示をし、そのとおりの改定が行なわれた、かように承知をいたしております。
  27. 小谷守

    小谷守君 最低賃金制度はいろいろな形態がありますが、少なくともその目的とするところは、組織されていないあるいは組織の弱い労働者を保護することにあると思います。ところが現行の最賃法は業者保護立法のにおいが強い、労働者を保護する要素が少ない、こうした欠陥を克服して福祉社会へ転換する一つの道筋として最低賃金制を立て直す必要があると思います。そのためには最低賃金制の仕組みを現行の地域包括とか業種別協定といった方式ではなく、日本全体をにらんで賃金格差を少しずつ是正していく、たとえば大企業一〇〇に対して八〇、八五と漸次上げていく、大都市と地方との賃金格差も是正していく、こういう積極的な最低賃金政策労働省としてはぜひ取り組んでいただきたい、こういうふうに思いますが、大臣、いかがですか。
  28. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私は先だっての春闘のときに、いろいろ皆さんにお目にかかって、また勉強もできました。たとえばいまの最賃の問題の場合ですね。局長が三者構成で話をきめる、こう言うておりますが、組合の諸君はその中から公益を抜けと、そうせぬと最賃の自分たちの問題が守られないと、資本家擁護である、こういうふうな話も出たわけです。私、ずっと調べてみますと、三者が満場一致できめた、ずっときめているのですよ。これは公益抜いて労使でけんかしたのではかえってきまらぬというふうなことがわかりもし、そういう説明などもしたことでありまして、最賃の問題につきましてはいま局長が話しましたように、消費者物価等々を見合いながら改定をすべしということで具体的に進めております。また先生がいまから先全国一律というお話どもありましたが、これはいままでも組合の諸君にも話しましたが、やはり宮崎県と東京を一緒にした場合、一体宮崎県のそれじゃ産業がどうなるかというふうなことなどもだんだんおわかりいただきまして、広域的なもの、たとえば東京と川崎ですね、いままでは地域別にみなやっていますが、そういう同質的な産業の興っておるようなところはやはりあらためてそういう広域的なもので考える必要があるのじゃなかろうかというふうなことで研究をすることにしておりまして、今後とも最低賃金審議会の御意見に従いながら金額引き上げて行なうことはもちろんでありますけれども物価賃金その他の経済社会のやはり実情に即応しながら、審議会の御審議により適切な——私たちも熱心にこのとおりやっておりますが、また国会のこういう質問等々から出るお話ども入れまして、適切な最低賃金がきめられるように努力してまいりたいと、こう思っております。
  29. 小谷守

    小谷守君 抜本的な改定をいますぐというふうな性急なことを申し上げておるわけではありませんが、前向きにひとつ大臣取り組んでいただきたいと思います。  そこで、この中でいますぐやっていただかなきゃならぬことがあると思います。それは、春闘の中で、年金について、物価スライドによる年金額の改定を年四回行なうべきだという要求が出されましたが、当面改定の繰り上げを行なうということで一応の決着を見た。そこで、最低賃金の場合、二年に一回という現在のやり方は是正されなきゃならぬ。これは急いで是正されなきゃならぬと思う。さきに申し上げましたように、若干の見直しの繰り上げがあったわけでありますけれども、これを機会に、少なくとも年一回とか、これは見直しをしなきゃいかぬ。最近の経済情勢から考えて、二年に一回なんということはこれは間違いである。これを制度的に改め、未組織労働者の給与格差をなくしていく、こういう方向にこれはすぐかかっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  30. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 最低賃金につきましては、従来も一度きめましたらそのままほっておくということでなしに、賃金物価事情等の状況に応じて随時改定を行なってきてまいったわけでございまして、その改定についてはそれぞれの審議会等の御意見を聞きながらやっておりまして、必ずしも二年といったような固定的な期間でやっておったわけではないわけでございます。現に、四十八年度につきましては、当初から当時の物価賃金上昇等を見合いまして従来からございました最賃の改定につとめておりまして、特に一月以降は、先ほども申しました緊急是正措置などもいたしまして、四十七年度前にきまったものは四十八年度中にほとんど全部が改定を済ましたわけでございます。今後におきましても、そういう賃金物価その他の経済情勢の推移に応じまして適切な改定を適時に行なっていく、こういうことで積極的に進めてまいりたいと、かように考えております。
  31. 須原昭二

    ○須原昭二君 きょうは、外資系の企業の労働問題、とりわけ労使関係などについて御質問を申し上げたいと思います。  わが国は、この四十年代に入って資本の自由化が大幅に導入されてまいりました一この資本の自由化によって、わが国においても一段と外資系企業が多く進出をいたしてきておるわけでありますが、現在わが国に存在する外資系企業の数というものは、国別にいって、あるいはまた産業別にいってどのぐらいあるのか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  32. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 詳細、後ほど申し上げますが、昨年八月時点で、十人以上の事業所の調査をいたしました。そのときの数で六百八十でございます。また産業も、工業、電気、ガス、水道等を除きまして、建設業、製造業、卸売り、小売り、金融、保険等かなり多岐にわたっております。国籍別に申し上げますと、先ほど申し上げましたのは、十人以上の企業でございますが、全体といたしまして、通産省の統計でございますが、米国系が六百二十、カナダが二十四、英国が五十、フランスが二十九、西ドイツが七十、スイスが六十七、その他ヨーロッパ系が七十二、全体で二百八十八、その他の外資系が七十四というふうになっております。
  33. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういう外資系の企業に働らく日本労働者の人数は、トータルとしてどのぐらいになりますか。概数でけっこうです。
  34. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 約二十万でございます。
  35. 須原昭二

    ○須原昭二君 まあ、二十万といいますと、だいぶんたくさんお見えになるということでありますが、この外資系企業における人事、労務の最終決定権限といいますか、そういうものは、日本側にあるもの、あるいはまた日本と外資元との合議によるもの、三つ目といたしましては、外資元に全権限のあるもの、この三つに私は大別されると思いますが、それぞれその割合はどのぐらいになりますか。
  36. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 昨年の八月、私ども調査いたしました結果によりますと、全面的に採用あるいは解雇について日本側が決定しているもの、これが七二・八%、逆に外資元が全権を握っているものが七・五%、両者相談してやっているものが一九・七%、約二割でございます。
  37. 須原昭二

    ○須原昭二君 こうした外資系企業の実態、とりわけ労使関係についてどのようになっているのか。聞くところによると、たいへんいろいろ問題があるように私は聞いておりますが、その概要をひとつ御説明を願いたいと思います。
  38. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) いわゆる外資系企業といえども、日本の国内法規に従って労働関係に限りませんけれども、行動すべきことは当然でございます。また法律だけでございませんで、日本的な慣習というのも当然尊重さるべきものだと思います。しかしながら何と申しましても、外資系の場合に、日本の企業の場合と違ったような、いろいろ労務管理についての特徴が見られるわけでございまして、その一つが、ただいまも御指摘がございました、人事管理についての決定権の問題でございます。  で、いろいろ問題を起こしている外資系企業がございますが、その主要なものを申し上げますと、中華航空の問題がございます。これは日台路線の停止に伴いまして、中華航空の在日支店の従業員の解雇問題が起きております。現在退職金の額をめぐって労使交渉が行なわれております。それから、エールフランスが、日本人のスチュワーデスについて、パリへ居住地を移転するようにという会社側から申し入れがございまして、これを従業員側が拒否をするということで紛争が起きております。そのほか、再三当委員会でも御指摘がございました外資系の四銀行について紛争がございます。主要なものは、現時点では以上のとおりでございます。
  39. 須原昭二

    ○須原昭二君 まあ、きわめて代表的なものだけ取り上げられて御説明をいただいたわけでございますが、特に、こういう中華航空だとか、エールフランスだとか、あるいは四外国銀行とかいうような、いわゆる外資系の企業であってもかなり大きく名前の売れた企業においてのお話でありますが、きょう私は、そういう大きな企業もさることながら、あまり目につかないところで多くのトラブルが私はあるように、私の調査では出てきたわけです。したがってその外資系企業経営者と日本人労働者の間で、そういうあまり表面に出てこない労働問題やトラブルが各地で私はいま起きておる、こういうふうに感じます。  そこで、労働省でつかんでおる、いま、大きな中華航空だとか、あるいはエールフランスだとか、外国銀行のお話をいただいたわけですが、その他の企業等において、総括的にいってトラブルの内容というのはどこに大きな問題点があるのか、あるいはまたその発生原因というものについてはどういうところに問題があるのか、こういう点についてお感じになっておりました点をひとつ御説明をいただきたいと思います。
  40. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 最初に、御指摘もあり、お答えいたしました例の人事管理の決定権ですね、これが本国に握られておって、日本にいる責任者の手元では解決ができない、一々本国にお伺いを立てると、その結果、時間的にもロスがございまするし、また、何といっても、日本で判断するのと本国で判断するのとでは、事情も必ずしもよくわからないということになりまして、適切な判断がなされないというようなことが一つのトラブルの基本的な問題としてあります。ただ、全体といたしましては、やはり日本で事業をする以上は、日本の法規、慣行に従うべきだということで、七割をこえる企業が決定権を日本の責任者に与えております。で、そういう方向で私ども機会あるごとに指導をしております。  さらに、労働条件につきまして、たとえば週休二日制なんかにつきましては、一般の日本企業よりもさすがにと申しますか、普及度は高いわけでございますが、たとえば、賃金につきまして、日本で一般的に行なわれております年功序列制をとっているのは多いわけでございますけれども、中には仕事中心の職務給的な給与体系をとっているところもございます。まあ、そういう点で、全体が職務給がいかぬということではございませんけれども、日本人の従業員の感覚からいきますと、世間並みということを希望する人も多いわけでございまして、そういう点の調整の問題がございます。しかし、いずれにいたしましても、日本で企業活動をする、人を使うという以上は日本の法律、慣行に従ってもらうというのが労使関係の安定からも望ましいことというふうに考えておりますので、そういう方向で指導をしてまいりたいというふうに思っております。
  41. 須原昭二

    ○須原昭二君 問題は、これらのトラブルをいかに解決をしていくかということは今日的な課題として一つの大きな問題点だと思いますが、それは組合がある場合には団体交渉等々でいろいろ話し合っていく、そういう方途もあろうと思うんですけれども、この報告書によりますと、最近三年間に労働争議のあった企業は、労働組合のある企業のうち四七%を示していると、こう報告書に書いてあります。しからば、労働組合のない企業労使関係はどうなっているか、ここに大きな一つ問題点があると思うんですが、その点はどのように把握されておりますか。
  42. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) すべての企業について詳細を必ずしも把握いたしておりません。しかしながら、御指摘のように、組合がある外資系企業の場合におきましても、労使紛争は一般的に日本の企業に比べまして多いようでございます。また、傾向といたしましても、やや増加の傾向にございます。そういうことから類推いたしまして、組合のない企業におきましても、あるいはそのトラブルが多いのではないかというふうに推測はされますけれども、詳細について日本の企業と比べてどうだという数字は、いまのところ手元にございません。
  43. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういう、その実態が掌握されておらないところに問題が看過されておるのではないかということが言えるわけで、この問題点は後ほど御指摘を申し上げたいと存じます。したがって、そうした労働争議がやや増加の傾向にあると私は聞いておりますが、その点はどのようにお感じになっておりますか。
  44. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 私ども調査結果から見まして、全体的にふえているというのは統計が示すとおりであろうかと思います。で、私どもの執務上の実感から申しまして、日本の労使紛争も非常にこじれているのもございますけれども、外資系の場合もこじれている。特に考え方の相違と申しますか、そういうナショナリティーの相違に基づく理由からの相互の理解の不足ということで紛争が長期化したり、こじれたりしているケースもあるようでございます。いずれにいたしましても、日本の私企業の場合と比べまして、千内外の企業でございますから、そのわりには紛争は私は多いんじゃないかというふうに思います。
  45. 須原昭二

    ○須原昭二君 そうして、その報告書によりますと、労働争議というものは、純外資企業の場合六七%、外国法人企業の場合は七五%と、外資比率の高い企業での労働争議の割合が高くなっていると、こう報告書に報告をされておるわけであります。すなわち、外資比率が二〇%以上の日本企業、さらに合弁会社、さらに純外資比率九五%以上と、この三つに区分をしていきますと、外資比率の高い企業にやはり労働争議の割合が非常に高くなっておる、こういうふうに指摘せざるを得ないわけでありますが、先ほどもお話がございましたように、やはりすべて本国の経営者伺いを立てなければならない。そういうときになりますと、日本の国内法というものが軽視をされたり、あるいはまた、日本の労働慣行を全く予知しておらない。したがって、無視をしていく。そういうところに私は、こうした外資率の高くなっているにつれて争議が多くなっていると私は思うんですが、その点は労働省のほうではどうお感じになりますか。
  46. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 完全に本国で人事管理の決定権を握っちゃうというのは、率としては七・五%程度でございます。それもわれわれといたしましては、極力日本の責任者に権限を預けるように、または、それができないならばできるようなちゃんとした責任者を派遣してもらうようにすべきが筋だと思いますし、そういう方向で努力をしたいと思いますが、決定権を日本にいる責任者が持つ場合におきましても、やはり考え方の相違、——アメリカではこういうことが当然なのに日本ではなぜ当然に行なわれないのかというような問題も、それは具体的にあろうかと思います。そういう点について日本の特殊事情をよく認識してもらいたいと思いまするし、また、場合によりましては、日本がアメリカに学ぶような点も私はあると思いますから、何が何でも日本でなきゃいかぬ、日本式でなきゃいかぬということも一がいに言えないと思いますけれども、要は労使が話し合ってきめるという大前提のもとに、労使が労働条件その他人事管理一般につきまして、円満な話し合いの上に立って気持ちよく従業員が働いてもらえるようにすべきが当然と思います。特に日本で仕事をしている外資系企業である以上、日本人同士であれば日本人同士の問題として処理されるものが、得てして国際的なトラブルになり、大きな問題になることも懸念されるわけでございますので、そういう意味からも労使が円満な話し合いをし、それを通じて問題を解決するということで進むべきだと思いまするし、私どももその方向で努力をしたいというふうに思います。
  47. 須原昭二

    ○須原昭二君 労働大臣、この際お尋ねをしておきたいと思うんですが、政府考えておられるいわゆる外資系企業の基本姿勢についてでありますが、外国の企業とはいえ、いやしくもわが国に進出をし、わが国内で営利業務をやっている場合には、わが国の憲法は言うまでもございませんが、その他の国内法を順守するのが義務であって、また、政府は守らせる私は責務が法治国家として当然だと思うんですが、その点の所見をひとつ承っておきたいと思います。
  48. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) おっしゃるように外資系の企業といえども、私ども日本の国の国内企業と同じように、わが国の憲法はもちろんのこと、労使関係法、労働基準法等の関係法規が適用されておりますし、したがって、これらの法律が順守されるようにすべきは当然のことであり、また、私たちのほうもそういうことでずっと指導してまいりたい。  ただ、ここで私自分の感じを申し上げますと、あなたと同じような感じを持つんです。やっぱり国内の習慣とそういうものが違うものですから、私たちが予想のできないようなことを外国人はやるわけです。たとえばレイオフなんというものをちゃんと順番きめているんですね。せんだってカンタスというオーストラリアの飛行機がレイオフをやった。ちょうど日本に飛んで来ている女の子に引っかかったんです。景気がよくなれば、その女の子から順番にまた再雇用するわけです。その場合、東京へ飛んできている女の子にレイオフかけて、本国に帰る金は本人が持てと言うんです。これは日本人じゃちょっと考えられないことなんですね。そういうこと、あるいはまた、ボーナスなどは日本のようにないというふうなこと、あるいは終身雇用じゃないというふうな向こうの国の習慣、さらにまた、退職金もないというような習慣、こういうふうな国としての何というのか、それぞれの国情というものの中にあるところですね、そういう諸君が人事権やら持っていることでもありますし、そういうまたシビアなところにつとめている日本の従業員でありますから、なかなか、ときにはこうトラブルが起こってくるという問題が私は多々あるようにも聞いております。いずれにいたしましても、そういうものを克服しながら労働省としては外資系の企業に対しても日本国内法規をしっかり守って円満な中に労使の慣行ができて私たちの国の労働者が生活を守られるようにしていきたいと、こう考えております。
  49. 須原昭二

    ○須原昭二君 いま労働大臣からせっかくのお話でありますが、労働基準法の八十九条を見ますると、いわゆるその十人以上使用しておる場合は就業規則を作成し、行政官庁に届け出をしなければならない、しかもその中で絶対的な必要記載事項として、始業及び終業の時刻だとか、休憩時間、休日、休暇及び労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時の転換に関する事項。賃金の決定、計算、支払いの方法、賃金の締め切り、支払いの時期及び昇給に関する事項。退職に関する事項と、この三つがいわゆる絶対的必要事項としてきめられて作成をしなければならない、届け出をしなければならない。そういうことから言うならば、いわゆる国内法を守っていればそういう問題も出てこないと思うんですよ。したがって、抽象的な議論となりますけれども、かりに外資系企業が国内法を守らない、あるいは治外法権的な感覚で労働問題を含めて国内で行動した場合、政府は、労働省はこの行為に対してどのような手だてをして指導し、あるいは監督をし具体的に守らせるか、ここに一つ問題点があると思うんですね。したがって、そういう点についてはどのような手だてをされますか。
  50. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 労働基準法等は外資系企業も日本にその事業所がある限り適用になることは当然のことでございまして、私ども外資系企業も国内企業と同じように監督、指導をいたしておるわけでございます。で、その間に基準法に違反する事例を発見いたしますれば、これを是正させるよう監督、指導をいたしておるわけでございまして、八十九条の就業規則作成義務等につきましても、十人以上の企業であって就業規則を作成してないというようなものがございますれば、それに対しましては国内法に従いまして法の定める就業規則を作成し、届け出をするように監督、指導につとめておるわけでございます。
  51. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういう事例を発見をされる場合ですね、労働基準局、労働基準監督署が自主的に調査をされるのか、それでなくって申告があった場合のみその調査の対象にするのか、ここが一つ問題点だと思うんですが、その点はどうなっておるか。  それからもう一つ、つけ加えてお尋ねしておきますが、いままでにそういう、いずれ——自主的に調査したあるいは申告調査、いずれであろうと労基法違反で調べた実績、そしてどのくらいの違反件数があったのか、この三点について御説明を願いたいと思います。
  52. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 外資系企業も国内企業と同じように、別に申告がない場合でも一般監督によって監督をいたしております。ただ、先生も御承知のように人手不足というようなこともございまして、一般監督全部の企業に行なっておるわけではございませんので、外資系企業につきましても必ずしも全部に一般監督を行なっておるかということになりますと、そういうことで把握しております例は、率は必ずしも多くないと存じます。なお、申告がございました場合には、これは当然のことといたしまして監督を実施いたしております。で、監督結果につきましても、一般企業と同じように集計をしておりまして、特に外資系企業だけの調査といったようなことを全部でやっておりませんので、どのくらいの違反があるかということは全国の状況についてはわかりませんが、場合によりますと、非常に問題が多いと思うときには外資系企業を特に対象といたしました監督等も行なっております。全国的な数字ではございませんが、過去にそういうような事例を、やりました例を見ますと、四十一年に東京など主要五大局で外資系企業五十六企業の監督を行なった例がございました。そのときは六六%の違反率を把握いたしております。それから最近では、大阪で外資系、いろいろ問題が多いというので、十企業ほど監督をいたしまして、これはいずれの企業においても違反を発見いたしております。こういうような状況でございますが、これは部分的な状況でございまして、外資系企業だけの全国的な調査ということの数字は把握いたしておらないので、いまのそういう事例を申し上げたわけでございます。
  53. 須原昭二

    ○須原昭二君 どうも私は、いろいろ聞いた範囲内によりますと、一般監督というのはほとんどやられてない、やはり申告が主である、こういうふうに私は聞いております。たまたまいまお話のように、東京関係の四十一年の五十六企業に対して六六%の違反事件があった。そういう一時的に一斉に調査をされる場合もありますが、日常そういう一般監督というのはほとんどやられておらないように私は感じます。同時に、そういう違反事件ができましても、是正勧告、——文書による是正勧告がせいぜいであって、やはり強い行政指導といいますか、行政罰といいますか、そういうものはほとんどやられておらないと聞いておりますが、その点はどうですか。
  54. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 違反を発見いたしますれば、これはもう日本企業と同じように厳正にやっておるわけでございまして、是正勧告が大部分だと、大体ということでございますが、これは大体の場合は是正勧告をいたしますと向こうは勧告に従って是正をするわけでございまして、そういう場合には是正したことを確認して事件を終結させておる、こういう状況でございますが、なかなか勧告どおり直ちに実施しない場合にはきびしく一監督指導をいたしておることは、国内企業と何ら差別をしておらないわけでございます。
  55. 須原昭二

    ○須原昭二君 これはひとつ、日本企業に対してはきびしく、それから外資系は外人だから、なかなかことばも通用しないし、したがって、まあまあ大目に見るという意味じゃないけれども、敬遠をされるというきらいが現場では非常に多いわけで、その点のないようにひとつ努力をしていただきたいと、かように思います。  そこで、外資系の企業労働者の団結権の問題点でありますが、憲法第二十八条の「勤労者の團結する權利及び團體交渉その他の團體行動をする權利は、これを保障する。」、これは明確に規定をされておるわけですが、この外資系企業の日本人労働者組合をつくろう、労働組合をつくろう、そして労働条件の改善、労働者の地位の向上を要求した場合、そういう場合、これを企業が労働組合なんかつくらせないという傾向が強いわけです。当然私は、憲法の規定からいっても企業はそうした労働組合を認めていくことだって私は当然だと思うんですけれども、その点は労働省の御見解はいかがですか。
  56. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) おっしゃるとおりでございまして、先ほど大臣からも御答弁がございましたように、憲法はじめ国内法規を順守すべきは当然でございます。現に組合の組織率は四割をこえておりますので、日本の平均が三割、約三分の一でございますから、組織率として必ずしも低くないというふうに思います。ただ御指摘のようなことがあればこれは適当でない、不当であるわけでございますので、そういう事案を把握した場合には、都道府県労政当局なりを通じまして、使用者側に対する指導を行なってまいりたいというふうに思います。
  57. 須原昭二

    ○須原昭二君 これはおのおのの国の、母国の慣習によってさまざま違ってきておると思うのですが、先ほども国別の企業の数を明らかにしていただいたわけですが、この労働組合の結成状況も、いま日本では三割だ、それから見ればあまり低くはないのだ、こうおっしゃいますが、やはり国別に私はだいぶん差があるんじゃないか、こう思います。したがって、きょうはその問題点は時間の関係がございますから、ひとつあとからデータでけっこうですから、国別に労働組合の結成率ですね、これをひとつ資料として出していただきたいと思います。
  58. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 労政局長、いいですか、資料。
  59. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 御提出申し上げます。
  60. 須原昭二

    ○須原昭二君 次は、その労働条件の決定のあり方についてでありますが、この労働条件の決定のあり方いかんによっては、労働者にとって非常に重要なポイントだと私は思います。そこで、労働基準法第二条でもって「労働条件は、労働者使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」、さらに「労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。」と、こう明記をされているわけですが、まず、お尋ねをしたいと思うのは、この労使対等の立場を促進するということが、労働法の私は大原則でなくてはならぬと思います。その点はいかがですか。
  61. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 御指摘のとおりでございまして、労働組合法にも、「労働者使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させる」というのが基本的な目的であるということは、組合法の第一条に明記しておるわけでございまして、御指摘のとおりだと思います。
  62. 須原昭二

    ○須原昭二君 もう一つ私は確認をしておきたいと思うのですが、その労働条件が労使対等で決定されるためには、就業規則あるいは労働協約の存在が重要な私は要素となると思うのですが、その点はいかがですか。
  63. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 労働組合法の精神からいいまして、労働協約で労使話し合いで労働条件をきめる、また就業規則でそのこまかい労働条件についても明記するということが望ましいことは当然でございます。
  64. 須原昭二

    ○須原昭二君 もし、かりにですね、ある企業が労働組合もなく、しかも労働協約、就業規則、労働契約も締結されない、またわが国のその労使の慣行も理解しないで経営者が労務管理を行なっているとしたら、そこに働く日本の労働者というのは、そのような労働環境のもとでは、全く私は身分の保障もなく、毎日不安な状態で仕事を続けなければならないと実は思います。また他面考えますと、逆にその昇給あるいは昇進するために、管理者に日本人労働者がごまをすらなければならないというようなところに追い込まれてしまうのではないかという危惧を持つわけです。したがって、そういうことが労働組合の設立の妨害の要素になっておるのではないかと思うのですけれども、その点はどのようにお感じになりますか。
  65. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 日本の企業に働く労働者の場合にも、御指摘のようなことがあってはならないわけでございますが、外資系の場合には日本企業にない特殊事情から、日本企業には見られないようなトラブルが発生することも事実だろうと思います。そういう点について情報をキャッチすると、事例を承知した場合には、労政当局として指導をするということは当然だと思います。
  66. 須原昭二

    ○須原昭二君 さらに私はこの際お尋ねしておきたいと思うんですが、労働基準法八十九条、先ほど申しました就業規則の作成義務の問題点でありますが、もし、かりに労働者を十人以上使用する外資系の企業が就業規則もなく、またあっても労働者に周知徹底せず、管理者が引き出しの中へ奥深くしまって秘密にしておるというような、そういう事例があるとしたならば、労働省はこのようなケースに対してどのような措置をとられますか。
  67. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) もちろんそういう事態でございますれば、これは基準法に違反しておるわけでございますから、そういう事態を把握し次第、事業主に対しましては、基準法に従いまして就業規則を作成し、その内容を労働者に周知させる、そして、それを守るように監督、指導をいたすわけでございます。
  68. 須原昭二

    ○須原昭二君 後ほどそれの事例を具体的にお示しをいたしますから、適切な措置をとっていただきたいということを前もって予告、お願いをしておきます。  そこで、就業規則の未作成あるいは未届けは、いまも局長からお話がございましたように、労基法違反、すなわち労基法の百二十条第一号で、実は五千円以下の罰金ということになっているわけですね。いまも小谷委員から御質問がありましたように、物価が非常に上昇している、貨幣価値がだいぶん変わってきているわけですね。したがって、労働基準法そのものがつくられた段階から見ればたいへん時間がたっているわけです。五千円以下の罰金というのは非常に安いわけでありまして、まあ五千円ぐらいだったら何べんやってもいいというような意識も起こらぬとは限らないと思うわけです。したがって、いつ規定した額なのか、その五千円をきめた根拠というのを一ぺんこの際お尋ねしておきたいと思うわけですが、これが第一点。  第二点は、そうして労基法の罰則は非常に私は安いと思うわけです。したがって、もっときびしい罰則に改正すべきではないかと思うんですが、その点は労働大臣から御所見をひとつ承っておきたいと思います。
  69. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先生御指摘のように、一応基準法五千円となっておりますが、実は、これはその後の物価上昇等に応じまして、法務省から罰金等の臨時措置法というのが——ちょっと改正の時期は忘れましたが、すべての罰則について罰金額引き上げの改正がすでになされておりまして、基準法も最低は罰金は八千円に相なっております。こういう物価に伴う罰金額引き上げ等は各種の法律の罰金と相互の均衡の問題がございますので、そういう物価上昇等に伴う変更は、法務省のほうで随時必要に応じ、すべての法律を見ながら処置をされておるわけでございます。  それからなお、そういう物価上昇に伴う罰金額の改定のほかに、基準法の罰則全体が軽いではないかと、こういうお話でございますが、基準法によりましても、先生御承知のように、それぞれの条項によりまして罰則の寛厳がございまして、一番重いのは強制労働、基準法五条違反、これなどは一年以上十年以下の懲役というような最高の罰則もございますし、そのほかの条項にも懲役あるいは禁錮刑等も罰金のほかにも規定があるわけでございます。まあ、それにしても軽いではないかという御趣旨ではないかと存じますけれども、基準法の罰則の問題につきましてはこれは他の法令との、罰との均衡の問題もございますし、現在、労働基準法研究会で基準法の施行の実情と問題点について学識経験者の方に広い視野から御研究を願っておりますので、その結果等を承りまして十分全般的に将来検討してみたいと、かように考えております。
  70. 須原昭二

    ○須原昭二君 労働大臣から所見を承っておきたかったのですが、お立ちにならないものですから……  そこで、やはり労働省は、法務省にまかせておくのじゃなくて、やはり日本の労働者のやはり人権なり生活なりを守っていくという省から言うならば、当然私は労働省みずからがもう率先この罰則はもっと強くすべきである、こういうやはり見解が出てくるのが私は当然ではないかと思うわけです。したがってこれは、御答弁がございませんが、労働大臣、ひとつ法務省にまかせていくのじゃなくて、もう少し積極的に罰則を強くしてやはり日本の労働者立場を守るようなそういう基本的な姿勢に立たれることが至当ではないかと思いますが、どうですか。
  71. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) お説のとおりと思っております。私も長いこと国会議員をしておりますけれども、罰金を上げろという話を野党の皆さんから聞いたのは初めてで、それほどやはりいいものについてはぴしゃっとやっていただく姿勢というのは私はいいと思いますから、参考にしながら法務省にまかせることだけでなくて、私のほうでも研究してみたいと、こう思っております。
  72. 須原昭二

    ○須原昭二君 いままで一般的な外資企業について基本的な概括的な御質問を申し上げたのですが、今度は具体的にひとつ問題点を浮き彫りにしたいと思うわけです。  外資系企業のうちで国籍がスエーデンである企業は日本にどれだけありますか。
  73. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 昨年の八月調査をいたしました範囲で申し上げますと約二十と承知いたしております。ただ、個別の事業場の名前その他は、これは統計法上の制約がございますので申し上げることは差し控えさせていただきたいかと思います。
  74. 須原昭二

    ○須原昭二君 約二十ということでありますが、私がこの東京を中心として調べたのが実は十二あります。この十二の中で労働組合があるのは、実はガデリユウスという株式会社、これは千五百人ぐらいおるそうでありますが、ここに労働組合一つある。先ほど中華航空だとかその他外国銀行のお話、エールフランス等の話がありましたが、スカンジナビア航空、従業員二百六十名ぐらい、これが労働組合がある。あと十の企業は全然労働組合がないわけです。この二十のうちで労働組合があるところはどれだけですか。
  75. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 約二十と申し上げましたが、調査の結果は十六でございます。そのうち、組合の有無についてはっきりいたしておりますのが、あるというふうに報告を寄せているのが二つでございます。
  76. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういたしますと、先ほど国別にひとつ労働組合の率をあげてください、結成率をあげてくださいと言いますと、まあ日本の企業の労働組合の結成率が三割ぐらいだ、あまり遜色はないのだとおっしゃいましたけれども、スエーデンの企業においては十六のうちに二つということは全く労働組合の結成がおくれておる、こういう実態がいま明らかになったと言っても私は過言でないと思うのです。  そこで、こうしたスエーデンの企業が労働組合のない最大の理由はどこにあるのか、この点は調査をされたんですからおわかりになっていると思いますが、ひとつ御説明を願いたい。
  77. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 一つ従業員の数が少ないのがその組合の結成が少ない理由だと思います。特に商業、サービス関係がかなりございますので、そういうところで少数の従業員を使って仕事をしている場合に、これは日本の場合もそうでございますけれども組合の結成率が低いわけでございますが、まあ、そういうことが調査結果から判断する限り最大の理由ではないかというふうに思います。
  78. 須原昭二

    ○須原昭二君 どうも局長さん、それはちょっと認識が浅いんじゃないかと思うんですけど、どこの外資系の組合を見ましても、大きいのはもちろんですけれども、小さいのでもそんなに二名だとか三名だとか五名だとかいうわけではないわけです。先ほどのその就業規則を届け出なければならないのは十名以上でありますが、大体十名以上あるわけで、二十名、四十名、五十名という段階なんです。したがって、そういう理由だけでは私はないと思うわけですね。特に私はこのスウェーデンという国については、私もかねがね小さいときから、皆さんも一緒だと思うんですが、スウェーデンに対するイメージというのは非常に私は日本人の中で高いと思うんですね、全世界的にも。たとえばノーベル賞を出している文化的な国家である、あるいは高度な福祉国家である、第二次世界大戦の中においては敢然として中立を守ったきわめて平和国家である、あるいは民主主義の国家である、国民平等の原則の上に立った崇高な理念を持った国である、こう言って、現代においては一応評価の高い平和福祉文化国家だと私たちは敬意を払っておったわけです。しかしこの労働組合の結成率、労使関係を見まするとあながちそうのような気が起きてこないわけなんですよ。そこで私は多くの外資系企業労使問題を指摘をいたしたいんですが、代表的な選手としてスウェーデンの外資系企業をこの論題に実は出しているわけです。そこで、その私の調査した企業では労働組合があるのは、いまもお話がありましたように二社、この労働組合を認めない企業が圧倒的に多いということです。一つ具体的な事例を申し上げますと、ここに経歴書を持ってきておりますが、株式会社モンソン商会、これは日本の労使慣行がわからないという理由にはなりません。というのは、この企業というのは、実は大正九年ですね、スウェーデンの高級の鋼材を輸入しておる会社で、しかもずうっと継続をされている会社なんです。ですから、これほど長い日本における営利活動をいたしておる以上は、日本の状態、日本人の労働者の心理、あるいは日本の労使関係の慣行というのはもうすべて日本人より私は知っておるべきじゃないか、この営業の経験から言って。そういう点から考えましてもおかしいと思うわけですね。この企業は労働組合を結成をしてもこれを認めない。就業規則があるかないのかわからない。もちろん労働協約や労働契約などもありません。それは諸外国には退職金制度がないと大臣もおっしゃいましたけれども、日本では退職金制度は厳然としてあるわけです。大正九年から営利事業をやっておって、日本の慣習がわからないというようなことは私はわからない。しかも日本の労働者を一方的に追い出していく。一、二年でどんどん日本人の労働者がかわっていくというような特殊な状態にあるわけです。聞くところによりますと、この就業規則の作成の問題についても、まあ十名以上の採用をした企業は労基法八十九条で届け出をしなきゃならない、こういうことになっておるのでありますが、これら外資系企業、特に株式会社モンソン商会というような会社は届け出を出しているんですか、出していないんですか。私はなはだ疑問だと思っておるんですが、これはもちろん企業従業員の数はたしか十名どころではないわけで、東京の営業所だけでも一二十名おるわけです。これは神戸に本社を持っておるわけでありますが、はたして出しておるのか出しておらないのか、その実態を事前に御通告を申し上げておきましたから、掌握されているんですか。
  79. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 本日の当委員会開始直前にお話がございまして、至急調べておりますが、従来監督署のほうで監督をした監督歴がございませんので、すぐには確認がちょっとできかねております。至急調査させるように現在指示をいたしておるところでございます。
  80. 須原昭二

    ○須原昭二君 もしこの就業規則が作成されていない、作成されていなければ届け出もしてない、こういうふうに私は理解をしたいんですが、もしそうであったならばどのような措置をされますか。
  81. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 常時労働者十人以上もし雇っておりまして就業規則を作成しておりません場合には、直ちに八十九条に適合した就業規則を作成するように指示をし、その上で作成した暁には、過半数労働者意見を聞く等の手続を経て監督署に届け出をするように指導をいたします。
  82. 須原昭二

    ○須原昭二君 これひとつ厳格にやっていただきたいと思います。  さらに私が調査したところによりますと、あるいはまたいろいろ関係者にお話を聞きますと、このスウェーデン系の株式会社モンソン商会というのは、この労使関係、人間関係が全く凄惨だといわれる。さきに申し上げましたように、労働組合はもちろん結成しようと思って四年前にやったら、そのリーダーは首を切られてしまった。また労働組合をつくろうと思って通告をしたけれども認めない。就業規則も給与規程もない。幹部の気に入らない社員があれば、ストレートに首を切らずに、これまた外資系のヘルプメート・インターナショナルあるいはIMCAというような二つの外資系の人材銀行から新規社員を入れて、首切りの対象者をみずから出ていくようにいやがらせ的に干していくんですね。しかも退職金はゼロです。私はある従業員に聞いたわけですが、こういう手だてで追い出していくんだそうです。たとえば新入してきた人、このAさんと仮定いたしましょう。Aさんには、Aさん私は最もあなたを信頼しています、いずれ君に首切り対象になっておりまするB氏の地位を与えるであろう、そのB氏のビジネスマンは全く古くて困るんだ、Aさん、あなたはBさんやCさんの言うようなことを聞く必要はない、あなたの思いどおり腕をふるってくれたまえ、成功を祈ると、こんな調子ですね。そして追い出そうとする今度はこのBさんに対しては、今度入ってきたAさんというのはどの程度働いてくれるか全く未知数だと、それにかってにふるまわれては困ると、逆に。十分監督してくれたまえ、何か不審な点があったら連絡してくれ、彼はあくまでも営業の穴埋めのためにスカウトしたにすぎないのだ。また第三のCさんに対しては、私は最もあなたを信頼しています。どうもこの新入のA君と、いまおるB君とはうまくいかない。——うまくいかないのはあたりまえですよ、二つをけしかけているのだから。——非常に困っていると、何とか打開策を考えてくれ。ひとつよろしく頼むと、二人について何かあったらこれはぜひすぐ連絡してくれ。いずれ君には相当の地位を用意しておるからと。こんな調子で実は分裂支配をし、お互いに日本人日本人同士をこの疑心暗鬼の中に置いている。ですから、いたたまれずこれはやめざるを得ない。こういうのが実態なんです。そうすると、やめていけば今度は人材銀行から新たに新しい労働者をそこへよこしていく。いわゆる人事のたらい回しをやっている。だから定着率が非常に悪い。もちろん退職金を払う必要はございませんから、彼らは。したがって、どんどん新しい人間で一、二年のうちに交代さしてたらい回しで使っている、こういう現状なんですね。したがって、当然昨年八月でしたか、外資系の企業について実態調査をなされたんですから、そういう実態が私は出てくるのが当然だと思うわけであります。ただ、そこで私はお尋ねしておきますが、実態調査というものは、通信調査が行なわれているわけですね。当然私はこれは労働組合のないところは別といたしましても、たとえば企業のほうへ通信調査を願う、同時にまた組合があるなら組合のほうも調査をする、こういう方法でなければほんとうの調査書というのは出てこないと思う。しかもこういう労働組合のないところ、こういう悪い企業については労政局において回収された率が七六%ですから、二四%の中に入っているんじゃないか、回答を出してこない企業じゃないかと私は実は思うわけです。こういうところが出しておらないから実態がつかめないのじゃないかと思いますが、さてモンソン商会について実態報告が来ておるんですか。
  83. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 統計法上の制約がございますので、回答の有無を含めまして言ってはならないという統計法上の制約がございますので、調査の結果として申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、先ほど来具体的な名前をあげて御質疑がございましたので、私のほうとして別途調査をいたしたいと思います。
  84. 須原昭二

    ○須原昭二君 統計法の規定があるといわれても、七六%という数字、二四%は未報告になっているわけですね。ですからこういう問題の商社に対して、報告があったかないぐらい、内容のとやかくは私は言いません。あったかないぐらいのことは言ってもいいんじゃないですか。
  85. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 私も統計法の解釈、必ずしも明らかにするものではございませんけれども回答の有無も含めまして、公式の場でお答えするのは統計法上問題があるというふうに承知いたしておりますので、先ほどもお答えいたしましたように、独自に調査をさしていただきたいというふうに思います。
  86. 須原昭二

    ○須原昭二君 統計法とおっしゃるけれども、私も統計法はあんまり知らないので、どういう条項に基づいてそういう御発言が出てくるのかということ、それからもう一つは私が一番初めに申し上げましたように、企業に対して調査報告を願う、通信調査を願う。しかし労働組合のあるところは労働組合にもこれは依頼をしなければ、一方通行でほんとうのことが私は掌握できないんじゃないか、そういうことをやられたかどうかということを聞いているんです。二点お伺いしたい。
  87. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 統計法の条文を手元に持っておりませんので、具体的に第何条に基づいてということは後刻また調べまして御報告させていただきたいと思いますけれども、第二の御質問の、組合側からも聞かなければいかぬじゃないかということは、御質問の趣旨は理解されるわけでございまするけれども、この種の調査は個別の事業所だけをねらい撃ちにして調査をするわけではございませんので、これもまた事務的な制約から昨年行ないました調査におきましては使用者側と申しますか、企業に対してアンケート調査を実施したわけでございます。そういう事情を御了解いただきたいと思います。
  88. 須原昭二

    ○須原昭二君 それは統計法の問題は私もわかりませんし、いまお手元にないそうですから明確にされぬで非常に残念と思いますけれども、私はどうもおかしいと思うのですね。  それから、やはり労働省なのですからね。企業ベースでものを調べるのじゃなくて、やはり労働組合があるならば、労働組合からもアンケート調査をして、それがきちっと合えばいいのですよ。合わない場合はこれはどちらかがうそを言っているのですから、この点はそういう調査をしなければ確実のものは私は出てこないと思うのです。特に通信アンケート調査でありますから、二四%未報告、この未報告のところに私は大きな問題がたくさんあるのじゃないか。この点について私は指摘をしているわけであります。この点についての対応策を今後どうされますか。
  89. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 昨年八月行ないました調査は、いままでいろいろ国会の場その他で御指摘がございました日本におきまする外資系企業の実態を、全体の姿として把握したいという趣旨から行なったものでございます。そういう意味調査の内容、回収率その他について私どもも問題があるように思いますが、とりあえずその実態を明らかにするという意味で行なった調査でございますので、今後この種の調査を行ないます場合には、ただいま御指摘のございましたことも含めまして、十分検討をいたしたいというふうに考えます。
  90. 須原昭二

    ○須原昭二君 この問題はひとつ留保しましょう。  そこで、先ほどもお話しをいたしましたように、そうした新しい人材を確保するためにヘルプメート・インターナショナル、IMCAというような、これはヘルプメート・インターナショナルというのはアメリカ系だといわれておりますし、IMCAというのは何か日本系の外資導入人材銀行だといわれておりますが、この二つの人材銀行というのはどういう——これは労働大臣の認可、職業紹介の有料の認可機関だと思うのですけれども、そういう機関であるのか、あるいはまたどのような営業をしているのか、この概要について簡単に、実は時間がございませんので簡単にひとつ御説明願いたいと思います。
  91. 岩崎隆造

    説明員(岩崎隆造君) いま先生御指摘の点でございますが、実は私ども御通告をいただきまして、さっそく調べましたのはヘルプメート・インターナショナル社のほうは調べがつきましたのですが、これは四十五年の十二月に労働大臣の認可をいたしております有料職業紹介事業でございます。その許可の対象になります職種は経営コンサルタント、経営管理者という特殊の職種についてだけやることになっておりまして、業務の取り扱い状況からいいますと、四十七年の六月から一年間調べてみたのですが、その間はちょうど求人によります就職者が三十人程度ということになっております。  もう一つ、先生のいまおっしゃいましたIMCAでございますか、それはちょっとそのときに御指摘がなかったのか、ちょっと調べがついておりませんのでございます。恐縮でございます。
  92. 須原昭二

    ○須原昭二君 先ほどモンソン商会で干し上げられて、いても立ってもすわってもおれぬというような労働者に対して、実は事もあろうに何も知らないはずのこのヘルプメート・インターナショナルの人材銀行から連絡があって、あなたはモンソン商会でいやになっておられると思いますが、——いいですか、——新しい会社を紹介いたしますからどうでしょうか。こういう紹介連絡が来るそうです。そうすると、こういう点をうがった見方をするわけではございませんが、職業紹介の機関であるところの人材銀行と、こうした外資系悪徳企業との間に何らかの連絡があって、そこで人事のたらい回し、こういう補助的機関をやっているように私は感ぜざるを得ない。そういう実態をつかんでおられますか。調査されたことがございますか。
  93. 岩崎隆造

    説明員(岩崎隆造君) いまの御指摘の点でございますが、ちょっと実情調査、現在の時点でできておりません。御指摘の点、さっそく調査をして実情を精査したいと思っております。
  94. 須原昭二

    ○須原昭二君 これ私は具体的に干された人間、あるいはまた干された人間に対して人材銀行の何のたれ兵衛という人間、この名前も承知をしております。したがって、具体的な事例を持っておりますから、早急にひとつお調べをいただきたいと思います。  さらに、こうした企業による一方的な労務管理が自由に行なわれる最大の理由は、何といってもやはり労働組合の存立を認めない、就業規則すら存在しないところに私はあると思うんです。つまり、労働者の身分が少しも保障されていないところであって、労働法を論議する以前の私は問題ではないかと実は思います。こうした労働環境、労政の担当者として、特に労働大臣としてどのように考えられますか。忌憚のない御意見をひとつ承っておきたいと思います。
  95. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) ここの場での御発言でもあり、その中においての事情をお伺いしたことでございますが、日本も自主独立の国でございます。そしてまた先ほどお答えしたように、労働基本権というものをきっちり国内で守っておること、そういうものを適用して、また実行することによってわが国労働者を守るという立場においては変わりはございません。多くの国からたくさんの企業が来ているわけでありまして、入ってくるときには労働省に何も関係なく入ってくるわけです。許可するのはそれぞれの役所で許可するわけでしょう、企業ですから。そういう事件が起こって、初めてときには私のほうでフォーローするというふうな多少の手間のかかる問題等もございますが、事件がわかった限りにおいてはいままで調査してないものは調査もし、そして守る方向に努力してまいりたい、こう思っております。
  96. 須原昭二

    ○須原昭二君 特に私はこの際申し上げておきたいんですが、わが国に存在するスウェーデン企業、私はスウェーデンという国は非常に先ほど申し上げたように尊敬をいたしておりました。しかし、そのスウェーデンの企業の幹部というのは、聞くところによると、日本労働者の心理を研究するために、ときおり上智大学でゼミナーを開いて労務管理のやり方を勉強しているそうです、集団勉強。あるいは聞くところによりますと、ある企業が労働問題で問題が起きますと、港区六本木一の十、これにスウェーデンの大使館がございますが、治外法権になっているかどうか知りませんけれども、番地が一緒です。六本木の六の十一ですからすぐ隣りだと思うんですが、スウェーデン商務館というのがあるそうです。ここのスウェーデン商務館に集まって情報交換を行って、労働組合をつくれと言ってきたけれどもつくらせずにはおくまいとかいうような対策を共同的に協議をいたしておるというようなことを私は聞いております。先ほど申しましたように、スウェーデンというのは文化的、福祉的平和国家だと、こうかねがね私たちは敬意を払っておりましたが、どうもこの間、田中総理が東南アジアへ行って、日本の企業というのは積極的に貿易立国だからいいと思っておったけれども、貿易には非常に積極的に力を入れているけれども、現地住民に対しては悪徳企業として非常に非難をされている。あながち日本の企業を私は助けるわけではないけれども、スウェーデンの企業でもわれわれの足元でこういうことをやっているんじゃないかというような感じがして、ともにこれは糾弾をしなきゃならないと思うわけであります。特にこのようにスウェーデンの企業の間の経営者の結束が強ければ強いほど、私はこの際、特に日本の労働者立場というものを保護する立場にある労働省というものは、もっと団結権、労働条件などの改善を促進させる責務があるんじゃないか。企業側がそういう集団的に一生懸命対応するのだったら、ほんとうに未組織で困っておるところの日本の労働者はだれが助けるのか、これは日本の労働省以外に私はないと思う。そういう点から考えれば、今後どのような行政指導をやられるのか、監督をされるのか、ひとつその手だてを明確にしておいていただきたい。
  97. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 進出企業が商工会議所的なものを組織するということ自体をすべて不当であるというふうには断定しかねると思いますけれども、集まって議論する中身が、そういう法律に違反するようなことを相談するという御指摘が事実といたしますならば、これは適当でないというふうに言わざるを得ないわけでございます。いずれにいたしましても、るる具体的な名前をあげて御指摘がございましたので、労働基準局ともよく相談いたしまして、実態の調査をし、所要の指導、監督をいたしたいというふうに思っております。
  98. 須原昭二

    ○須原昭二君 そこで、スウェーデン企業経営者の結束力がこの日本の国内で非常に強いと、強いだけに未組織のスウェーデン企業に働くところの日本の労働者立場を守ってやるのは、私はそれ以上に日本の労働省が力を入れなきゃならないということを実は力説をしているわけであります。その点は御理解をいただいたと思います。  そこで、このモンソン商会の支配人スンドベルグという人から実は文書で労働組合をつくらせる考えはないと従業員に通告をしている。これは文書でありますから明確であります。これは労働者の団結権の侵害であり、明らかに不当労働行為ではないかと思うんですが、その点はどうでしょうか。
  99. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) ただいま御指摘の文書、まだ拝見しておらないわけでございますが、いずれにいたしましても、労働組合法で一定の行為を不当労働行為というふうにきめておるわけでございますので、そういう文書も調査の際にできましたら入手して検討をし、所要の措置をとりたいというふうに思います。
  100. 須原昭二

    ○須原昭二君 さらにその労働省の対応のしかたでありますが、こうした企業の労働実態にたまりかねたモンソン商会の従業員が、労働組合の結成をはじめ、労働条件の改善要求を訴えて、実はことしの四月十六日、まだ時間があまりたっておりませんが、神戸基準監督署に要求書を提出いたしました。しかし四月二十二日、全く一週間もたたないうちに、これは所管の違いだ、これは兵庫県の労政課に文書を回送しておいたと、こういう返事が来ているわけです。まさに対応のしかたが非常に冷淡だと思うわけですね。はたしてこの取り扱いはどうなっておりますか。
  101. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) モンソン商会の神戸本社の労働者から神戸の東監督署に申し出があったことは私ども報告を受けておりますが、その申し入れの内容は、団結権を認めよ、給与改定には事前交渉をせよ、給与の個人差が大きいので、不満のある者は労組委員長立ち合わせの上、個人交渉させよ等々の団体行動の問題でございましたので、そういう、監督署の所掌といたしましてはこういう事項を所掌いたしておりませんので、集団的労働関係を所掌いたしております兵庫県の労政課のほうにその旨を知らせて、そちらに御相談に行くように移送をしたと、こういう報告を受けておるわけでございます。
  102. 須原昭二

    ○須原昭二君 それで、私はいまおたくたちのほうの言い分もあながち否定はしません。というのは、出した文書がもう少し詳しく、たとえば支配人から組合をつくるな、こういって言われたということを明記すれば、ぼくは神戸東監督署の所管事項でやはりきちんとやれると思うんですが、したがって、文書そのものがしろうとがつくっているんですから、あまり経験のない従業員の皆さんがつくったようなきらいがあります。しかし、とは言うものの、十六日に出した、二十二日にまたあちらに回送するというような、そういう水くさいやり方でなくて、現地にあるのですから、事情を聞いて、どうなんだと。その上で所管が違っておったら労政課のほうへ、県の。そっちへ回すのが私は至当だったと思うんです。どうもそういう点から通覧をして私は憶測をするわけじゃないけれども、外人企業については何かやりにくいというような先入観があって敬遠をされているようなきらいがあるんじゃないかと思うんです。したがって、この取り扱いについてひとつ実態を調査される必要があると思いますが、その点は実態調査されますか。
  103. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 先ほどもお答えいたしましたとおり、基準局とも相談いたしまして、具体的な名前をあげての御指摘でございますので、調査をいたしたいと思います。
  104. 須原昭二

    ○須原昭二君 ぜひ早急にひとつやっていただきたいと要望しておきます。  このように、やはり日本の各官庁なべて言えることですが、やはり外資系の企業についての対応というものが非常に私はなまぬるい感じがするわけです。したがって、参考までにきょうは大蔵省に来ていただいて、この点についてお尋ねいたしたいと思うんですが、時間が来ておるようでありますから、したがって、一つずつお話を聞きたいんですが、まとめて、ひとつ一括してお尋ねしておきましょう。  この外資系の企業の税金の収納状況はどうなっているか。それから外人の管理者あるいは経営者、この人たちには日本の習慣と違って現物給与が非常に多いわけです。たとえば車なんかは現物給与、ガソリンもそうです。こうした個人に貸与された現物給与に対しての課税はどうなっておるのか、聞くところによりますと、モンソン商会でも支配人が来ておると、骨とう品を社費で買っちゃって、どんどん国に送って私物化をしておると、こうしたものの税金はどうなのか。特に法人税の関係については、外人系の公認会計士がちゃんとタッチしているので、税務署というのは外人に対して非常に弱い、ことばが通じないという点もあるでありましょうけれども、非常に追及が手ぬるいというのがこの外資系企業に働く日本労働者意見である。その点はどうなんですか。時間の関係がございますから一括してお尋ねをいたしましたが、ひとつ簡明にお答えをいただきたいと思います。
  105. 甲斐秀雄

    説明員(甲斐秀雄君) お答え申し上げますが、最初にお断わり申し上げたいんですけれども、法人税法上、これはもう御承知と思いますけれども、日本国内に本店または主たる事務所を有する法人を内国法人と定めておりまして、それ以外の法人を外国法人と定めております。そこで私ども税務の扱いと申しますか、体制といたしましては、外国法人はこれは資本金の額にかかわらず国税局の調査調査課で所管しております。外資系の内国法人につきましては、これは一般の内国法人と同様に資本金額によってその所掌の区分がございまして、資本金五千万円以上の法人は国税局の調査課所管、五千万円未満の法人は税務署所管ということになっております。それだけお断わりしておきますが、こういう状況でございますので、外資系企業ということで特に取り上げて区分して管理しているわけでございませんので、外資系企業に対する課税状況、収納状況はどうかという御質問については特に把握しておりませんで、統計もございませんのでお答えいたしかねるわけでございますが、御参考までに外国法人ということでございますと、昨年の七月一日現在で法人の数で千二百法人ぐらいということになっております。そこでこれについて四十七事務年度というのは、これは税務のほうのことばで恐縮でございますけれども、四十七年の七月一日から四十八年六月三十日までの一年間、四十七事務年度の間に、大ざっぱな数字で恐縮でございますが、私の手元に持っております数字では約千件の処理件数ということになっております。この処理件数は法人の数とはちょっと違いまして、事業年度でとらえております。約千件の処理件数でありまして、これについて法人税の申告所得金額は約四百億円ということになっております。調査の結果、いわゆる増差所得として出ましたのが二十八億円ということになっております。  それから外国法人、外資系の企業ということでお話がありましたけれども、外人の役員に対する現物給与の問題でございますが、これは実は私、調査課長でありまして、私どもの所掌ではございませんけれども、一応お答え申し上げますと、車のガソリンというようなお話がございましたけれども、これは会社の業務に関係するものは別でございます。業務に関係ないプライベートな用に供しておるということでありますと、これは別に外人であるからどうこうという特別な扱いをしているわけではございません。その他住宅の提供を受けているというようなことが現物給与の問題として考えられるわけでございますけれども、これにつきましても外国法人だからあるいは外国人であるからといって特別の取り扱いをしているわけではございません。  なおもう一つこれはお断わりまたしたいのですけれども、特定の法人、個別の問題についてあれはどうかというお話でございますと、これはちょっと衆議院の関係もあってお答えいたしかねるわけでございますけれども、御質問の中にありました税務署は外人に弱いのではないか、扱いが手ぬるいのではないかというお話、御注意につきましては、なるほどことばの点でハンディとなる点はございますけれども、先ほど申し上げました国税局の調査部または調査課におきましては、たとえば東京国税局の例をとりますと、調査部の中に外国法人を所掌する特定の部門がございます。それから外資割合の七〇%以上の外資系内国法人、これはもちろん資本金五千万円以上でございますがを所掌する特定の部門がございます。いろいろな語学、会話をはじめ貿易実務であるとか、いろいろな部内の研修をつとめておりますし、税務大学校におきましても国際租税班というような班を設けましてかなり充実した講義、研修の実施につとめているわけでございます。今後も御指摘の線に沿いまして十分充実した調査に基づいて適正な課税の処理につとめてまいりたいと思っているわけでございます。
  106. 須原昭二

    ○須原昭二君 労働組合のある外資系の企業の中ではそういう点は追及されますけれども組合のないところは監視が中にないわけです。したがって、そういう外資系の企業の中に働く労働者から私たちが聞き及ぶところによりますと、そういう現物給与については全く等閑視されている。きょうは自治省お見えになりませんけれども、たとえば住民税の問題についても、前年度のを翌としに払うわけですから、そういう点は本国へ帰ってしまえばナシのつぶてであって、徴収未納で終わっちまう。こういう何か外人関係については非常に手ぬるいようなことが内部的に言われておるわけでありまして、その点はひとつ、ないように、いかに外人の外資企業であろうともやはりきびしく日本人と同じようにやるべきである。こういう点はひとつ要望申し上げておきます。  時間の関係がございまして、もっと多く指摘をいたしたいんですが、残念ですが次へ参ります。  そこで、きょうは特に私が聞き及んだ、目についたスウェーデン系の企業をあげたのでありますが、どうも外資系企業労使問題というのは、日本の企業に比べて、概して私は等閑視をされているんではないか、そういう疑念を持ってきょうは御質問をいたしたわけでございます。  そこで、昨年以来、ことしの三月「外資系企業労使関係等実態調査結果報告書」が実は出て来ておるわけでありまして、これを私も通読をさしていただきました。この「目的」を見ますると、「外資系企業における労使交渉労使協議等労使関係の実態を明らかにするとともに、日本の労働慣行等のこれら企業への浸透の状況を把握することを目的とする」と、こういうことになっているわけですね。先ほども御指摘を申しましたように、たとえばアンケート調査のような形で七六%、実に残っている二四%に問題が非常にたくさんあるというふうに私は推測をいたします。したがって、今後この調査の結果をどのように労働行政に生かしていくのか。私はこのデータを見ましても、あまりプラスになるものではないんじゃないか、形式的な調査をやられたんじゃないかというような酷評をせざるを得ないわけでありますが、今後この調査の結果を労働行政にどのように活用されていくのか、ひとつお尋ねをしておきたいと思います。
  107. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 初めて行ないました調査でございますので、私どももこれで十分だというふうには思っておりません。そういう意味で、今後調査を実施する場合には、本日いろいろ御指摘がございましたような点も十分参考にさせていただきまして、充実した調査を行なうようにつとめたいと思います。  なお、この調査結果は都道府県の労政当局その他関係方面に配付をいたし、また、個別の外資系の企業、まあ全体について網羅的に講習等が実施できればいいわけでございまするけれども、四十九年度の事業といたしまして、講習会の実施等も実は企画いたしております。  いずれにいたしましても、日本における外資系の企業の問題、また日本から外に出ていく多国籍企業、進出企業の問題、これ両方とも非常に重要な問題であり、今後ますます重要になってくるというふうに思っておりますので、両々相まちまして調査の実施はもちろん、所要の行政措置を充実してまいりたいというふうに考えます。
  108. 須原昭二

    ○須原昭二君 まあ、一応初めて画期的な調査をなされたと、ここに気づかれたことについては敬意を払います。努力されたことについても私は一応評価をしたいと思うんですが、きょう一時間半ぐらい、こう御質問いたした中で、モンソン商会を一つの代表的な事例として御指摘をいたしたわけですが、これはもう東京の営業所でも二十人以上おるんですから、当然その常用労働者十人以上の企業六百八十企業調査したと。調査した以上は何らかデータが出てきている。もし出てきていないとするならばそれはアンケート調査が出てきておらないところだと、こういうふうに断定せざるを得ない。しかしその実態についてはきょう統計法だということで明らかにされない。こういう点からいえば、当然私は実態を知っておらなければならない。それがここで明らかにされないということは、私がいま酷評を申し上げましたように、何かこの調査というのは形式的なものである、こう断ぜざるを得ないわけです。これでは調査目的が私は今後効果を果たすわけにはまいらないと思うわけです。  昨年も、同僚議員から、外資系のいわゆる外国銀行の問題を指摘になりました。そのときは、前向きで非常にやられるような意欲を示されました。あれからもう半年以上たっているわけですが、あらためて外資系の企業に対する調査、取り締まり、監督、そして行政指導を強化していく必要があると、さらに私は認識を改めていただかなければならないと思う。そういう点から、ひとつ最後でありますが、労働大臣の所見を、決意を伺っておきたいと思います。
  109. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 先生がスウェーデンに対して持っておるイメージ、私も持っておりますが、また私は逆のイメージも持っております。あすこはフリーセックスの国であったり社会保障の国であったり、それから原子力発電、それから鉄鋼、木材、これは世界で有数でございます。そしてまた、中立国でありながらも、あそこへ行ってみると全部地下壕でね、いつでも戦争隊形で中立を守る姿、そういう国であるだけに、いろんな面においてやっぱりきびしいものが私の国にも、そういう労使慣行の上にも行なわれているんじゃなかろうかという、私はいま考えついたわけであります。いずれにいたしましても、日本が資本の自由化というものが進み、これだけ経済が伸びたから外国企業がどんどん進出する傾向は多いわけでありまして、その大正九年から入ってこられたそういう企業は別といたしまして、今から先、こういう進出企業に対する労働問題の研究、監督、行政指導、一方には日本が考えなければならぬことは、やっぱり多国籍企業です、こういう問題に対してよそへ行ってエコノミックアニマルとうたわれないような指導、こういう問題等々も労働省のいまから先の重点事項として研究して御趣旨に沿いたいと、こう思っております。
  110. 須原昭二

    ○須原昭二君 いまモンソン商会をはじめスウェーデン企業のあり方について御指摘をいたしました。御答弁の多くが保留になったような形になっております。したがって、早急にこれはひとつ調査をしていただいて、後ほどでけっこうでございますから、御報告をいただきますよう要請しておきたいと思います。
  111. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分から再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      —————・—————    午後一時三十八分開会
  112. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、労働問題に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  113. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 けさほどから同僚の小谷委員が先ごろの春闘の問題を取り扱っておられましたけれども、私も実はきょうはこの春闘の問題についてお伺いをしたいと思います。  この間の春闘共闘委員会によるゼネスト政治ストである、違法ストである、こういうふうに政府は再三声明を発表しておりましたけれども、このストを違法ストと認めるならば、このスト参加者に対してどのような措置をとったか、また今後どのような措置をおとりになるおつもりか、伺いたいと思います。
  114. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 三公社五現業等の公務員関係労働者につきましては、法律上明文の規定がございまして、いわゆるストライキ行為は禁止されておることは御承知のとおりでございます。特にその点は憲法の解釈から申しましても、あるいは最高裁の判例から見ましても明からでございます。そういうことでございますので、四月十日の閣議の席におきましても、違法行為については法に照らして処置をするということをきめているわけでございます。で、具体的に処分を実施されるのは各当局でございますが、そういう閣議決定の線に従って処置をされるものというふうに考えております。
  115. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 運輸省はどうですか。
  116. 住田正二

    政府委員(住田正二君) 運輸省の所管いたしておりますのは国鉄でございまして、ただいま労働省から御答弁がありましたように、閣議決定の線に従って国鉄が措置をとるというふうに考えております。
  117. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 郵政省は。
  118. 北雄一郎

    政府委員(北雄一郎君) ストを指導しましたり、あるいはストに参加するということにつきましては、法に照らしまして処置をすべくいま指導の態様、あるいは参加の態様等を個々に調査をしておる次第でございます。
  119. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 春闘共闘委員会のゼネスト交渉の行なわれるずっと前からの計画的に決定された、いわゆるスケジュールストでありました。ILOがストの原則に反するとして禁じているものでありますが、政府はこのスケジュールストに対してどのように考えられますか。
  120. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) ストライキ自体が違法であるわけでございますが、先生御指摘のように昨年の十一月にILO結社の自由委員会におきましては、いままでになかったことでございまするけれども、政治的なストライキあるいはスケジュールによるストライキ、これは結社の自由の範囲を逸脱するものであるというかなりきびしい結論を出し、理事会で採択になっておるわけでございます。まあ、そういう趣旨から申しましても、今回の一定のスケジュールに従って行なわれたストライキはその意味でも非常に遺憾なことであったというふうに思います。
  121. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 春闘共闘委員会のゼネストはスケジュールストである。その決行が国民生活に多大な被害を及ぼすということは前もって知られていたことでありまして、労使スト回避に全力を尽くすべきものであったはずでございます。政府はゼネストの収拾のためどのような努力をしたか、また春闘共闘委員会は来年度もゼネストを計画しているようでございますが、政府はその際どのような対策を講ずるおつもりでございますか。
  122. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) いわゆるスケジュール闘争を実施するということになりましてから、労働大臣はじめ関係大臣、たしか労働大臣は三十回ぐらいお会いいただいております。繰り返し繰り返しストライキそのものが違法であるし、いわんや国会の場で審議すべき事項を団交の場で処理をするというのはまことに遺憾であると、またILOの指摘をまつまでもなくスケジュール闘争の最後のぎりぎりの線で行なうのがストライキで、あらかじめスケジュールを立ててやるということはその意味でも遺憾であるということを繰り返し警告をしてきたわけでございますけれども、聞き入れられるところとならず、スケジュールどおりにストライキが行なわれたことはまことに遺憾でございます。  まあ、来年のことで御指摘があったわけでございますが、こういうストライキをまた繰り返すということは国民生活、国民経済に非常に大きな影響を与えまするし、またいい労使慣行をつくり上げるという意味から申しましても避けなきゃならないことでございますので、まあ来年またやることをきめているという御指摘もございましたけれども、今後機会あるごとに関係組合と接触をいたしまして、かりにもそういうことを繰り返すことのないように警告をしてまいりたいというふうに思います。
  123. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いま御質問したように、今度のスケジュールストというのは前もってわかっていたことですが、労使スト回避に全力を尽くすべきものですね。これに対して、運輸省、郵政省はどのような努力をされたか、伺いたい。
  124. 住田正二

    政府委員(住田正二君) 運輸省といたしましては、運輸大臣労働大臣等と一緒にいろいろスト回避について努力をされましたとともに、国鉄総裁を呼びまして、違法ストを回避するように、全力を尽くすように総裁に話をいたしたわけでございます。
  125. 北雄一郎

    政府委員(北雄一郎君) 私どもといたしましては、平素からストのような違法な行為を行なってはならないということにつきまして職員に対して訓練、教育をいたしております。また、具体的にストに突入するというような指令が出ました場合には、就労するようにという説得をしております。むろん、個々のストの前には、大臣段階あるいはまあ私の段階、状況に応じてでありますが、組合に対する警告あるいは職員に対する反省の喚起ということにつとめておる次第であります。
  126. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 たいへん申しわけないんですが、何だかそれぞれみんなおざなりの答弁のような感じがしてなりません。しかし、努力をされたことはまあ評価すべきだと思いますけれども、今後、こういうことが繰り返されているんですから、ほんとにもつともっと真剣になって労使の間の話を詰めるべきだと思います。春闘共闘委員会のゼネストは、国民春闘を旗印としておりましたけれども、結局は国民を人質として国民生活を麻痺させた、労組のエゴに基づくストであったと言われます。  それは、「サンケイ新聞」のつい数日前の「主張」というところ、つまり社説のところにもそのことが書いてあります。「とにかく、中小零細企業を置きざりにした空前の大幅賃上げといい、スト権奪還を叫ぶ国民犠牲の交通ゼネストといい、国民的基盤に立った春闘であったとはいわれない。そうした意味で、多くの問題を今後に残した春闘であったということができよう。」、「「大企業労組は、みずからの大幅賃上げだけに熱を入れ、結果において下請け企業中小零細企業いじめをしたことになる」という痛烈な批判が一部に出ている」、あるいはまた、弱者救済などというスローガンを掲げながらおこがましくも「低所得者問題をダシに使って、ストをやる免罪符を得、みずからの大幅賃上げをはかったものだという批判が起こるのもムリはないといえよう。」、まあ、こういうような手きびしいここに批判が書いてあるわけです。  それから、最後のほうには、「もちろん、賃上げ幅をここまで引き上げた原動力は、狂乱ともいうべき消費者物価の異常な上昇にあるといえよう。つまり、いまの激しいインフレから勤労者の生活を防衛するためには、このような大幅な賃上げが必要であったともいえるであろう。」、まあ、こういうふうに、これは大まかに私拾い読みをしたわけですけれども、このように書かれているわけですね。  それで、先ほど小谷委員のほうからもいろいろこの問題について御質問がありましたから、重複を避けるわけですけれども、この間、私は自分の近くのパーマ屋さんに実は行ったわけでございます。そして、パーマをかけてもらう間じゅう、すみませんがパーマ屋の代金が三千五百円になりました、三千五百円になりましたということを盛んに言われるわけです。そのことはもうよくわかっているからいいよと、こう申しておったんですけれども、実はあれだけの大幅の賃上げをやってゼネストまでやってそういうものを獲得しながら、われわれのところへ来るお客さんは、なぜパーマ代がこんなに高くなったんだ、こういうふうなことで、われわれの代金に対しては非常に低く押えようと、こういうふうなことを言ってお客さんがやってきますと。だから国会議員である私がまた国会でパーマ代がうんと上がったというようなことを言われると困るもんですから、まあ、かんべんしてくださいと、こういうふうに言われて、しかも労働組合が三〇%前後の大幅賃上げをやりますと、パーマ屋さんで働いている女の子、こういう子に対しては二万円も三万円も急には賃上げをやってやることができませんと、こんな不合理なことがあるでしょうかと言われるわけです。で、しかもあれだけの賃上げをやったら、今度用事があってどっかに出るときにはさっそく私鉄運賃が上がっている、鉄道運賃が上がっている、私らはどっちから見てもこれはもうやっつけられほうだいやっつけられた感じですよと、まあ、こういうふうなことをパーマ屋さんが言っておりました。ですから、確かに国民春闘だの、弱者救済だのということスローガンに掲げたけれども、実際はこういうふうな踏みつけにされた人たちが相当いると思いますね。  それからまたもう一つの例を申し上げますと、この間私はどうしても十四日の日に地元で用事がありましたから、四月の十一、十二がストで十三日はまだその余波で新幹線も動いておりませんけれども、やむを得ないから私は東名高速バスを利用して名古屋まで出て、それから今度は近鉄を利用して大阪へ着いて、地下鉄を利用して今度は阪急電車に乗りかえて、で、やっとわが家にたどり着いて、十二時間五分かかりました。私はどうしても帰らなくちゃいけないので、十二日の夕方から実は東名急行バスの切符を手に入れておきました。私は八時に乗ろうと思ってもう七時十五分ぐらいに渋谷の駅に行ったんですけれども、もうそのころは延々長蛇の列、渋谷の駅がね。そうして放送を聞いておりますと、もうただいまきょうは二時半以後のバスの切符しかありませんと、こう言って放送しているわけです。だからもう朝七時過ぎに並んでいる人がですね、もう二時半か三時まで並ばなければ切符が手に入らない。しかもそれもやっと切符を手に入れて乗って行く、まあ、それは座席がきまっておりますからいいんですけれども、で、私が八時に出発のバスに乗って行きますと、停留所にはもうみんなたくさんのお客さんがもうわんさと待っているわけです。ところがもう渋谷の駅で一ぱいですから一人も乗せることができません。しかしバスですからやっぱり停留所には、一ぺんそこに寄るわけですね。高速というところは、こう一ぺん何か入っていきますね。それで行くんですが、だれも一人も乗せることができない。ところがそこへ着けばもうアリがたかるようにお客さんが飛んできて、私はけさもう七時から並んでおる、まあ、どうしても用事があって帰らなくちゃいけないから立ってもいいですから乗せてください、こういうわけですけれども、またそれはきまりがあって立って乗せるわけにいかないですね。これくらい皆さんにいろいろ迷惑をかけているわけです。で、私も名古屋へ着いたらすぐに近鉄の切符を買おうと思ったら、もう二時間半待ってください、それでなければ切符ありませんと、まあ、こういうようなことで、たいへん私も苦労をしながら実は帰ったわけです。  もう一つ問題がありますね。それは生鮮食料品の値上がりの問題。しかしこれは今度はトラックを活用していただいて、相当この生鮮食料品の品切れという事故が起こりませんでしたから、まあまあ何とか助かったわけですけれども、こういったようないろいろなケースがあって、結局ツケは国民に回ってきたんです。政府はこれらのストによって被害をこうむった国民に対してどのような救済策を講じてこられたか、伺いたいと思います。
  127. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 適法なストライキでも影響を受けるわけでございますけれども、いわんや違法なストライキによりまして、国民生活、国民経済に甚大な影響を与えたことはまことに遺憾に存じます。ただ御指摘がございましたように、政府といたしましては、生鮮食料品の確保等につきましては、完全とは申せませんけれども、できる限りの努力をいたしまして、ただいま御指摘がございましたように、異常な高騰であるとか品不足であるというふうな最悪の事態は避け得たのではないかというふうに思っております。  損害に対してどういう補償をするのかということでございますが、これは、まあ、いままでも例がございましたように、損害賠償の請求をして裁判所で争うというようなケースも考えられますが、政府として国民に具体的な補償をするというにはあまりに広範でありまするので、政府といたしまして一人一人の国民に対して補償するということはほとんど不可能ではないか。ただ、こういうことで国民生活、国民経済に甚大な影響を与えるような、特に違法なストライキによってそういうことが起こることは今回限りにして、今後は絶対に避けるように政府として努力をし、国民の負託にこたえてまいりたいというふうに思うわけでございます。
  128. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 先日のゼネストに対するいろいろなお話、私は拝聴しながら自分の身が責められる思いでございました。違法ストというものが毎年毎年こう伸びていって、法律というものがないのが何か当然のような姿が続いた場合に、一体法治国家であり、議会制度の日本はどうなるか。どこかでそういうものに反省してもらいたいというのが私の役目であると信じ、そしてまた、この参議院においても機会あるたびに私は、こういう経済的な大変動のときであるから国民の連帯感でひとつ相見互いでいこうじゃないかということを申し上げ、また一方、組合の諸君には、いま局長から三十回とありましたが、三十一回お目にかかっております。なかなか異常な雰囲気の中に三十一回も会うということは、私は労働者の方々とのパイプ役をすることが、何かそういう鎮静させる材料になりゃせぬかと、こういう気持ちでございました。さて、それならば、何か具体的な手当てをしたかという御疑問も当然出てまいりますが、当時からも一つ二つ御説明申し上げましたが、公労協に対する有額回答を早くきめる、そして、しかも物価高であるということを加味いたしまして、前年度よりも一・二%上げた額で回答を、各責任者がそれぞれ組合員に御回答申し上げる、これはかつてないことであります。それから昨年の〇・三、これもちゃんと人事院をして回答させていく。あるいは弱者救済の問題にいたしましても、国会でも論ぜられ、ああいう方々の言うことも参考にしながら、御審議いただきながら百三十億、あるいは先日は与野党共同で二百億のスライド制というものもできたわけでありまして、あとあとから見ますというと、いまから先すぐ出てくるのは公労協諸君の仲裁裁定でございます。こういうことなどもたちはしっかりと実施しながら、政府としてやるものはやる、そしてまた組合の諸君も違法ストというものをやらないで、こういうときにしっかり——日本の労働組合は組織率も強いんだし、影響力があるんだから、責任を持つ体制になってもらいたい、こういうふうなかまえをとっているわけであります。  いずれにいたしましても、スケジュール闘争ほどうらめしいものはありません。私は組合の諸君に申し上げました。前の年から組んでいるストライキであるから、三月一日は——日本は大学入学率は三四%、これは三月一日は入学試験であることをあなたがたは知っていますか、あなた方のお子さんも入学試験を受けるんですよ、しかも悩みに悩んで勉強し続けた者が。こういうことをひとつお考え願いたい。その日がわかっておってスケジュールを組んだら戦術はへた、わからないで組んだらもっとへた、しかも四月の十日は大学の入学式です。私のところにも大学の総長から二、三電話かかってきまして、十日の日にやるのかやらぬのか、労働大臣なら知っているだろうから知らしてくれ。そうすると、自分のほうは大学の入学式には父兄が全部来るから、これを組みかえなきゃいかぬと、私は思わず国鉄の常務理事に電話をかけ、さらにはまた国労の幹部にも電話かけて、ほんとうにやるのかやらぬのか。入学試験に始まり、入学式で終わる、こういうふうな違法ストはおかしいじゃないかと、みんなのことを考えてもらいたいということをあらためて実は話したようなことでありまして、これを機会に、わずかに、私は今度のストライキでわずかに救いがあるとするならば、皆さんも御心配でありました昨年のような上尾事件、国電騒擾事件のような、ああいうことがなかったことがわずかに救いであったと私は思って、しかも国民全体もそうだろうと思っておりますが、そういう中からこういう事件を一つの契機にして、国民全体でひとつ反省もし、前進もするようなきっかけになるならばいいんじゃなかろうかと実は心を砕いている次第でありまして、こういう大事な問題についての御意見などを伺わせてもらいまして、私は恐縮に存ずると同時に、いまから先日本のこれだけの労使慣行というものを正しくするために、一そう御協力を得ながらやっていかなきゃならぬ問題であると、こう思っております。
  129. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 たいへんけっこうな御答弁をいただいたわけですけれども、私はちょっと労働大臣と見解を異にする点がございます。それは、上尾事件のようなことが起こったから、今度その戦術がじょうずになって、国民春闘という名前をつけて、全部の人が一緒にこのストライキをやるんだということで、むしろ上尾事件のようなものを避けるために、こういうことを、こういう名前を頭にくっつけたんじゃないかと、こういうふうな私どもは見方をしているわけです。それでいま労働大臣からああいう御答弁が出たわけですが、国鉄は何としてでも、そういうようなときに打たれたストですから、電車を動かそうという努力をされましたかどうですか。
  130. 加賀谷徳治

    説明員加賀谷徳治君) ただいまの御質問でございますが、まあ国鉄は例年そういう闘争のときにはできるだけの努力をして汽車を動かします。まあ、これは非常に違法ストなんで何ですが、残念ながら実際問題としては行なわれたということに対して、もうできるだけ迷惑をかけないという体制で動かす、こういうたてまえとってやってきておるわけでございます。先ほど労働大臣からもお話がありました、入学試験にかかわる三月一日時点なんかにおきましても、結果としては二十四時間のストということに相なりましたが、地方から出てくるそういった人たちにできるだけ迷惑かけないという意味におきまして、組合を説得いたしまして、夜行列車、長距離夜行列車なんかは、これは一〇〇%動かしたというようなことなんかも、いままでのあれからいたしますと、非常に異例なことであったというふうに思います。だた、御了解いただきたいのは、残念ながら最近のこの違法ストが非常に広範囲なものになっていると、それから時間的にも長くなっていると、しかも職場も非常に広範囲になっておりますし、全国的になっておりますというようなことでございまして、国鉄の列車を動かすためには御承知のように運転士がおれば動くというようなものではございません。まあ車掌もいなければいけない。それから車の検査もやらなきゃいかぬ。車の回転をやる人間もおらなきゃいかぬ。あるいは線路の保守をする人間もいなければならないというようなことでございます。これ全体がそろわぬと一本の列車もやはり動かせないというような立場にあるわけでございます。そういった点で非常にこういう広範囲な大きなスケジュールストになってまいりますと非常に困難を伴うといったような実情でございますが、四月のゼネストのああいう時期におきましても、地方によって、全体とは申しませんが、まあ、それがなかなか、管理者とかあるいはまあ良識ある職員といった者の協力によりまして地方交通程度の確保とかなんとかといったようなこともある程度はできたということでございまして、努力しているという点につきましては御了承を願いたいと思います。
  131. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 大手企業はいいんですけどもね。中小企業なんかはそれこそストライキがあるからといって一日も休むわけにいかない。そういうところで相当無理をしてですね、バスをチャーターしたりいろいろなことをして従業員を工場に運んだわけですね。そうすると、そういうところはですね、この損害を一ぺん国鉄に払ってもらおうじゃないか、こういうふうな声すら上がっているわけです。こういうことはできますか。
  132. 加賀谷徳治

    説明員加賀谷徳治君) 国鉄の運送につきましては、原則的にまあ債務——運送契約を結ぶことになるわけですが、それによって債務を生ずるということですが、債務不履行という概念からいきまして、旅客、貨物とも国鉄としましては、まあ営業法、それから運輸規程そういったものの趣旨からいきまして、業務を開始した、列車に荷物が載って動いたという時点でまあ、その運送事業が発生するというような形になっております。したがって、あらかじめ、たいへん変な話でございますが、あらかじめそういった事態を予想して、別の手配によってやられたというような場合には、私どもとしてはまあ債務不履行は生じないということでございますので、まあ、そういったケースについては賠償を支払うということにはならない。ただ、まあ運送途中においてその目的を達成しなかったというような場合は、あるいはまた急行とか特急とかそういったものが所定の時間のおくれ以内に到着しないというようなことがありますと、これはまあ、いわゆる債務不履行というのは全部払い戻すといったような形でやっておる。それから貨物なんかで運送途中、腐敗、変質したというような場合には、その態様に応じて損害賠償の請求に応じておるということでございます。
  133. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いま国鉄のお話ですから、ついでに国鉄の問題をもう一つ取りますと、ストによって一日に四、五十億の損害があるといわれておりますね。国鉄はすでに膨大な赤字をかかえている現状からして、ストに伴う赤字の増大分をどのようにして埋め合わせるおつもりなのですか。それは結局運賃値上げかあるいは政府の財政援助の拡大という形でストのしりぬぐいを国民に負わせられると言って過言ではないと思います。この辺はいかがですか。
  134. 加賀谷徳治

    説明員加賀谷徳治君) まあ、ストによりまして国鉄自体もこの春闘一連の損害額、これはまあ推定になるわけですが、百三十一億ぐらいあるだろうというふうにこれを計算いたしております。現実において汽車がとまりますので、これはまあ得べかりし利益ということにはなりますけれども、これはネットどのくらいになりますかわかりませんが、その範囲内においての損害があるということは言えると思います。まあ、しかしこれは私どものいろいろな意味で、旅行を一時差しとめた人がまたあとで何か開始するとかいろいろなあれがあると思います。それから、まあ貨物なんかでも先送り、まあ、これは国民生活に影響を及ぼしてはいかぬという観点からではございますが、先送りとか、あとでまた計画的に輸送等が増勢するとかというようなことも具体的には起こっておるというようなことでございまして、それがこの損害を全部カバーするとは申しませんが、われわれのまあ、これは仕事でございますので、できるだけその収入は維持するという努力はしておるというふうに考えております。
  135. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 先ほどおっしゃったように、保安要員も要るわけですね。鉄道の線路がさびないようにとかいろいろな手を打たなければ列車は動かないわけですけれども、どこにつとめている民間会社の人でも、自分の職場はみんな大事なんでしょう。それに自分の職場で、しかも線路までに赤さびをつけさせるようなこんな従業員というのはちょっとないことですね。いわゆる親方日の丸といわれればこそこれをやり得るわけでしょうけれども、しかし、春闘共闘委員会によるストライキがこのように毎年繰り返されて国民に多大な被害を与えることになるのは、官公労における正しい労働関係が確立をしていないことにあるのではないか。このためには官公労働者の労働基本権問題の解決のほかに、官公労における労働組合の民主化がぜひ必要であると思います。すでに官公労の中には少数とはいえ、この自覚の上に立って自分たちの要求を現行法を尊重しつつ民主的手段によって実現をはかっていこうとしている者の勢力も拡大してきておるわけです。ところが、このような官公労働運動の民主化運動を同じ労働者でありながらこれを暴力をもって抹殺しようとすることがまかり通っております。  たとえば、この間の浜松における暴力問題、あるいは大阪の郵便局、あるいはまた隠岐の西郷で起きた責任感によって自殺をされた局長の問題、あるいはまた大分県のほうで郵便配達ができないということに非常な責任を感じて、ある特定局の局長がある特定局へ応援に行った、それで、そこで心臓麻痺でなくなったと、こういうような問題があとを切らなかったわけですね。あるいは最近ではまた国鉄の組合の中にも鳥栖の機関区の問題もございました。これはもう私が申し上げなくても御存じであろうかと思います。あるいはまた津田沼の事件もございますね。これは集団威圧事件といいますけれども、こういったような問題御存じありませんか。——ございますね。
  136. 加賀谷徳治

    説明員加賀谷徳治君) はい。
  137. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 もう私が説明をしなくてもよかろうかと思いますけれども、こういった問題や、あるいはストライキ中に新潟のほうでは「とき」という列車があるんですね、汽車が。そういう「とき」というような係留をしてある列車がホテルがわりになったり、あるいは新幹線の車両もまたホテルがわりになったり、あるいはその中で相当豪華な生活が行なわれたり、こういったような事件が次々あったことはもう多くを申し上げなくても御承知であろうかと思います。こういったような問題に対してそれぞれ御当局はどのように手を打たれたんですか。それに対してお答えをいただきたいと思います。
  138. 北雄一郎

    政府委員(北雄一郎君) 郵政省でございますが、ただいま御指摘のような職場における組合同士の暴力行為、これにつきましてたいへん残念ながら御指摘のような局あるいはそれ以外につきましても今次春闘におきましてある意味では全国的にそういう事象がございました。こういったことにつきましては従来から当局といたしましては、事前におきましても、またそういった事件の最中におきましても、また事後処理におきましても厳正に対処してきたつもりでございます。  具体的に申し上げますれば、この春闘におきましてもそういった措置といたしまして、そういった事件が起こりました場合には、郵政局員による対策班を派遣するとか、あるいはその事件を起こします側の労働組合への警告を各段階で行ないますとか、あるいは状況によりましては警察当局と連絡をとる、あるいは具体的に出動も要請するというようなことをいたすようにしておりますし、現にそういう措置を今回の場合でもとっております。また事後におきましても当然状況に応じまして懲戒処分の執行をしておるわけであります。この春闘にあたりましても遺憾ながら今日までにすでに三十一名の者をこういった関係で処分済みでございまして、なお三十数名につきましてそういう所為があったということで内容を調査中でございます。
  139. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 国鉄のほうはどうですか。
  140. 加賀谷徳治

    説明員加賀谷徳治君) 一般的にはただいま郵政のほうからお話あったとおりでございまして、私ども職場の規律ということにつきましては、常日ごろ最大の関心事、特に国鉄の場合は非常に乱れた職場、それから持ち腸持ち場における人間の責任感といったようなことが非常に大きな問題になるわけでございまして、人命それから財産を預かって輸送するということでございまして、非常に大きな問題になるわけでございまして、そういったことにも特に関心を持っておるというふうに申し上げる次第でございます。  ひところかなり例のマル生問題、当局の不当労働行為問題とかいったようなことがありまして、職場における組合員対管理者との関係あるいは組合間の問題、そういったようなものが頻発した時期がございましたのですが、最近においては、この一年半ぐらいはほとんどもう平静の状態に帰ってきているということでございます。  ただ、いま先生御指摘のような具体的な問題が二、三あったようでございますが、これは春闘というようなああいう闘争の行なわれておりますその中において、末端の職員間、これはほとんど組合組織間の争いということになりますが、感情的なものとして起こった事件、ただいま先生が御指摘のとおりでございます。これにつきましてはもちろん実態をよく確認した上で処分すべきは処分するというようなことで、きちんとした職場秩序のために役立つようなけりはつけてまいりたいというふうに考えております。  それから、車を私有物的に利用したというようなことなどにつきましても目下いろいろ調査しておりまして、これは、まあ、はっきりそういった事態は、そういった使い方というものはふだんから戒めておるわけでございまして、はっきりした業務命令違反なり何なりあるということになれば、それはそれに応じて処置をいたしたい、こういうふうに考えております。
  141. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いま大きな問題は、国鉄のほうでは津田沼の事件や何か大きな問題をちょっと取り上げたんですけれども、このごろ労働組合同士の争いと、こう言われますけれども、たいへん陰湿になって、たとえば鎖錠をした中でいじめ抜く、つるし上げをする、こういうような事件もあのこちに実はあるわけです。それを当局者があんまり御存じないということはこれはやっぱり問題だと思うんですね。十分監督をしていただければ、——こういう問題は実は枚挙にいとまがないんです。ずいぶんあちこちであるわけです。そういうのがしょっちゅう私どものほうにも連絡があったり、それから何とかしてくれないかという依頼があったりするわけですが、もう少し詳しく監督をして指示をしていただきたいと思いますね。  それ、きょうは一時間ですから、一つ一つ私ここにいろいろ書いてはありますけれども、これを申し上げる時間がございません。いずれまた当局ちほうにはそれぞれ私は陳情が行っていると思いますので、それをぜひともごらんいただいて、せっかくいろんなことで陳情しても当局者がそれを知らない、それで何だかもう国鉄のほうではそれほどの暴力事件がないんだというふうなことを考えていらっしゃるとしたら、私はこれは監督者はずいぶん怠慢だと思いますよ。  そこで、いまお二方からお話を伺ったわけですけれども、いまおっしゃられたように労働組合員に対する暴力行為がまかり通っているんです。このような暴力行為に対して刑訴法の二百三十九条の第二項、これによって管理者は告訴する義務がある。読んでみましょうか。御存じですね。その第一項は「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。」、第二項「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」、こういうきまりがあるわけですね。  こういうことがあるのに、先ほども少し問題になりましたような事件が次々あったのに、それをいままで放置してきたのは管理者の怠慢であります。責任を負うべきものであるのに負ってきていない。大臣はこれらの管理者に対してどのような措置をおとりになったか、また今後どのような措置をするおつもりでございますか、伺いたいと思います。
  142. 北雄一郎

    政府委員(北雄一郎君) 先ほど申し上げました個別の事案につきましてあるいは管理者が告発した例もございます。しかし事案がそれほどでない場合でも警察当局に事情を十分全部話しております。  それから、今回の場合は、職場で勤務時間中に行なわれたものにつきましてはそういう措置をしておりますが、半数ぐらいが職場外、要するに帰宅の途上あるいは自宅においてそういったことが行なわれておりますので、こういった関係につきましては、本人が告訴をしておるというケースが多いように把握をいたしております。
  143. 加賀谷徳治

    説明員加賀谷徳治君) ただいま郵政のほうからの御説明と同じような処置を私どもとっておるわけでございますが、特に春闘の先ほどの例をあげて先生御指摘になりましたことにつきましても、これは職場外の者も入ります。職場で行なわれたと、かぎをかけて軟禁状態にしたということも私どもよく承知しております。そういった事態につきましては公安で排除するとか、いろんな措置はとっております。同じようなことでございまして、はっきりしたものにつきましては、過去においても私ども、こちらから告訴するというようなあれをとったこともございますし、まあ組合間の争いといったような話になりますと、被害を受けた組合側から告訴されるというようなことなどもあるわけでございまして、そういったようなケースにつきましては、私どもも十分にこまかく見て、はっきりした処置をとるように指導しておるというつもりでございます。
  144. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 国鉄にもう一つ申し上げたいのは、スト中は組合員が仕事がないわけですね、ストしているんですから。そうするとスト中の組合員が出勤しても、判を押していれば、それで何かしてたいしたことをしなくても賃金カットや処分を免れることができるんでしょう。そういうところまで監督は及んでいないんでしょう。このために国鉄はストライキをやっている組合員に給料まで払っているんじゃないですか。もしもそうだとすれば職場であばれて、集団暴力をやっていても、これはむしろ国鉄がそういったことを助けているという見方にもなるわけです。この辺はどうなんでしょう。
  145. 加賀谷徳治

    説明員加賀谷徳治君) 職場へ出て、——今度の春闘なんかでも確かに御指摘のとおりあったんですが、大体列車が動かない状態になったという状況を確認した上で、職場へ出てくるというケースがあちこちに少しあったわけでございます。そういったような問題につきましては、まあ仕事のある者、何かやり得るような仕事があれば、たとえば職場のいろんな清掃とか、いろんなことがあるわけでございますが、雑務的な仕事になると思いますが、それはさせたというケースもございます。しかし、これをただ仕事がないんだから帰れというのは多少法的に、大体まあストそのものが違法でございますから、ストに対抗するたとえばロックアウトといったような、民間の企業で行なわれているような問題はできないわけでございまして、そういった点で多少、非常に問題があるということでございまして、しかし私どもとしましてはケースによりましていわゆるスト組合の指示に従わないというその者に判が押せるのかと、確認ができるのかというようなことを確めた上で処置しておるということでございまして、それを拒否した者につきましては賃金カット、それから処分なんかもやらなきゃならぬというふうに考えておる次第でございます。
  146. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 日本は法治国家ですからね、暴力行為を行なった者は法でさばかれるというのが民主主義の法則だと思いますよ。厳重に私はこれはやっぱりやった者は処分されてしかるべきだと思うんですね。そこでこれらの暴力行為は明らかに労働組合の活動を逸脱している行為といえると思います。これは治安の問題であります。警察当局は労働組合内における暴力行為は、組合活動の一環としてこれを取り締まるべきではないと考えるのかどうなのか、お伺いします。
  147. 山田英雄

    説明員(山田英雄君) 労働運動に対します警察の立場でございますが、正当な労働運動に対しましては、警察はこれに関与すべきでないことはもちろんでございまして、関与いたさないという方針をとっております。しかし、いま御指摘ありましたような暴力の行使、その他正当性の限界を逸脱して違法な事態にわたる、こういうことにつきましては法の定めるところに従いまして、犯罪の捜査を行なっておるのが、警察の責務に照らして犯罪の捜査を行なう、これはまた当然のことだと思います。今次春闘につきましても、全く同様に、暴力行為につきましては厳正、公平な取り締まりを行なっておるわけでございます。
  148. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いまのように労働運動を逸脱した、こういったような暴力問題は治安問題と見てしかるべきだと思いますね。そうしたら、当然それを取り締まらなければならないと思いますが、まじめな労働者が暴力行為を行なう者からいま守られていないケースが、いま申し上げたようにいろいろなケースがあるわけですね。したがって、これら労働者の安全を守る態勢を当然確立すべきであると思いますが、どのような保護対策を講じられますか。
  149. 山田英雄

    説明員(山田英雄君) 今次春闘に例をとってみますと、一月から四月の間に労働事案をめぐりまして警察が把握しておる違法事案、これは公務執行妨害、威力業務妨害、傷害等の事案でございますが、百二十七件ございます。これは先ほどの御質問にありましたように、当局から告訴、告発のありました分もございますし、警察独自に認知しました分もあるわけでございます。これにつきまして鋭意捜査をいたしまして、現在までに四十一件、七十八人の検挙をいたしておるところでございます。残りました事案につきましても、各都道府県警察におきまして、捜査本部を設けて鋭意捜査を進めておるところでございます。
  150. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 先ほど来例を出しましたように、郵便局内や国鉄内において自分たちの主義主張に従わなかった者の存在を否定したり、これを抹殺するような、言うならば粛清的な暴力が実はまかり通っているんです。政府はこれらの暴力行為に対してどのような措置を講じてまいられましたか。
  151. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 国鉄、郵政等における職員間の暴力事件が、なおあとを断たないというのはまことに遺憾に存じます。いやしくも労働問題の解決に暴力を伴うようなことは、正常な労使関係においては絶対にあってはならないというふうに確信するものでございます。特に国鉄や郵政等、公企体等にあっては労使双方がその職務の公共性、重要性というものを自覚されまして、良識ある行動をとるように強く要請すべきものと思います。労働省といたしましては関係労使社会的責任を十分に自覚されまして、労使が真剣に話し合い、円満な労使関係を樹立するように心から念願するものでございます。
  152. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 官公労働関係の民主化をつぶそうとするいま申し上げたような暴力行為はやっぱりあとを断っていないんですね。ですから政府は一体、官公労における正しい労働関係はどのようにあるべきかとお考えになっていらっしゃるか、そのことを一つ伺いしたいのと、正直者がばかにされないような管理体制を強力に進めていくことが絶対に必要なんです。それでないと、せっかく民主的な労働運動をやろうという者が、だんだんまた脱落をしていかざるを得ないわけです。いじめられたり、家族までもいじめられたり、こういう点についてあいまいさが、まじめに国民に奉仕しようとしている公務員や公共企業体の職員に失望を与えております。その民主化を妨げていることを、ほんとうに認識されているのかどうか、この点についてもう一ぺんお伺いします。
  153. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 公企体の場合に限らず、労使関係の安定のためには、やはり労使双方がお互いに信頼し合うということがもう基本であろうと思います。そのためには、各当局におかれても、非常な努力をされておるわけでございますが、労働省といたしましても、関係組合機会あるたびに、信頼関係を回復し、特に国鉄、郵政等の場合は、一般の民間の場合と違いまして、国民生活、国民経済に非常に関連があるわけでございますので、なおさらそのことが要請されるわけでございます。いずれにいたしましても、われわれといたしましては、公企体関係労使関係が、ほんとうに双方の信頼の上に立った安定したものになるように、側面からではございまするけれども労働省としても努力をしてまいりたいというふうに思うわけでございます。
  154. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 労働問題に私は暴力が入っちゃいかぬ、これは信念でございます。  そして、ここまで伸びてきた日本の労働運動が、治安的なものにすりかえられるようなことがあったら、これはほんとうに大後退だと思うんです。でありますから、直接私のほうが所管ではございませんが、そういう経営者の方々に、やはり当事者能力をしっかり持ってもらうように、ときに激励もいたします。あるいはまた、組合関係の諸君が大ぜい見えますから、それぞれの諸君に、私は、ここまで伸びている諸君は、日本の経済、政治、文化一切に影響力がある。そういう諸君のやっぱり暴力事件のあるような労働運動なんというのは、前時代的なものであるから、——昔私たち子供のときには、炭鉱労働者のタコ部屋とかいろんなことを見てもおりますし、聞いてもおります。そういう時代じゃなくなったんだ。そして、ここまで伸びてきて、賃金もこのとおり取れる、一家をささえられる、自分の子供が大学にも行かれる、おやじはいかぬでも。こういうことを、実はときには力説しながら、いまから先もそれをずっと強調しながら御協力をいただきたいと、こう思っております。
  155. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いま大臣がおっしゃったように、それはたとえば、郵政の問題にしても、管理者能力がないといってもいいというくらいのぐうたらな管理者がいるわけです。いま目の前で追いかけられたり、たたかれたり、けがをしているのに、向こうは大ぜいで、たたかれている者は一人だと、こういうときには、もう管理者はそれをながめているんです。で、いよいよ動けなくなって、けがをしてから病院に運ぶようなケースすらあるわけです。だからこの点では、いま労働大臣がおっしゃったように、それから郵政関係のほうも、ぜひとも管理者にもう少しがんばってもらうようにしなければならないと思います。しかし、その管理者が手が出せないような状態にいまあるわけですから、その辺は大いに考えていただいて、管理者能力を高めてもらうようにしなければならないと思います。  こういうことを十分きょうは、労働大臣もそれぞれの関係官庁の方も、ようく認識をしておいていただきたいと切に私は要望をするわけですけれども、警察庁においても、そういったような暴力事件がもしも起きても、それが外で起こっていて、もうそれが暴力事件になっていれば手を出されるかもしれないけども、それがまだ予見をされる時点では、実際にまだ暴力事件起こらないけども、これはほっておいたら暴力になるなというようなときには取り締まれないものなんですか。その辺をお伺いさしてください。
  156. 山田英雄

    説明員(山田英雄君) もちろん暴力行為が行なわれるようなおそれがあるような状態、あるいはそういう事前に情報がありますような場合には、その犯罪の未然防止、予防のために、警察といたしましても、所要の警戒措置をとる、あるいは出動準備の態勢をとるということは、各都道府県警察においても行なっておるところであります。しかしながら、警察の目の届かないところにおいて行なわれる、こういう場合におきましては、やはり当局からの通報ないしは被害者の方の申告、こういうものによって警察が初めて事態を把握するということも多い場合もあるわけでございます。
  157. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 その場合に、警察庁のほうから、さあ、いまこうしなさいという指令がなければ、遠隔の地にある警察はなかなか動けないものですか。
  158. 山田英雄

    説明員(山田英雄君) 各都道府県警察において、それぞれの警察署ごとに、署長の責任で管内の治安を維持しておりますので、いま御質問にございますような個々の暴力行為につきましては、警察署長の責任において必要な対策、措置は講ぜられると考えております。
  159. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 さて、それでは最後の質問に移りますけれども春闘共闘委員会の掲げた要求のうち、スト権問題や社会弱者救済の問題などは、本来国民の代表の場である国会がきめるべき問題であったはずでございます。しかるに、これらの問題の解決をおくらせ、春闘共闘委員会のストという威圧手段によって解決の方向に動き出した、こういうことは私は政治の怠慢であるといっても過言ではなかろうかと思います。国会の権威をこれは著しく私は落とした、こういうふうに考えるわけでございますけれども、結局法を踏みにじってでも、力によって問題の解決をはかったほうが勝ちである、こういうように民主主義に対する不信感を抱かせたのも、また事実であろうかと思います。これはまさに民主主義そのものを否定するやり方であり、力の原理に基づく全体主義に導くものだと思います。これらの問題に対して、政府は一体今後どのように考えていくのか、そうして、どのようにいま現在考えているのか。どんな形での要求に対してはどのような姿勢で臨んでいくのか、これをお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  160. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) このたびの春の賃金改定における労働団体の動きに対しましては、御承知のとおり、総理大臣と労働四団体に会見してもらいました。これなどもある意味では何でも先に手を打つ一つだと思っております。しかも、そのことは九年ぶりに総理大臣と労働団体が会ったと評価されたことであります。そうして、そのときに話したことは、当時御報告も申し上げましたけれども、直接民主主義では日本はありません。団交の場所ではありません、おみやげをやる場所ではありません。国会というところがあります。それをはっきり貫いたつもりでございまして、一つ一つのケースについては、国会で御審議もいただいたわけでございます。一方そういう大ぜいの人の声が、また参考になったことも事実でございます。しかし、その評価はベースアップが終わった今日、それぞれの新聞、それぞれのマスコミがやはり評価していることでございましょう。私は太陽は大企業組合だけ照らすものにあらず、三人四人自立、自営やっているそういう方々も照らすし、お百姓さんも照らしておりますよということなどを申し上げながら、連帯感を呼び起こそうとしたことであります。  スト権の問題に対しましても、ことしこのゼネストスト権を解決しない限りは、ゼネストやめないというスローガンがあり、またそういう勢いでもありました。私はやはり大きな手を振り上げて、ストライキをやったから、ものをむしり取るという形はやっぱりおかしい、こう思ったことでありまして、御承知のとおり、十日の日に参議院の皆さん方の御審議の間に、総理大臣から臨時閣議を開くということで開き、そうして十日の日でございますが、この参議院を通じてスト権については、内閣官房長官を中心とする関係閣僚会議を開いて、そうしてスト権の問題を研究する、専門家二十名ぐらいを寄せて、労使の主張を随時聞くと、そうして、この問題は二年以内にスト権の問題についてのいろいろな問題をひとつ対処するということにいたしまして、次の日直ちに私は官房長官のところに参りまして、ストライキというものはうまく片づいてもだれも評価はしない。私たちはまさにそういう担当者なんだ。そこでまたストライキが終われば、その問題を全部忘れるきらいがある。だから官房長官、あなたが長であるから今度は。あなたがほんとうにやる気を起こさなければいかぬ。私もまた関係閣僚としてやる気を起こしていると、こういうことでずっと話をした結果でございましょう、十日の日に、——あすですか閣議で、その発足をいたしまして、そうして近いうちに二十名の諸君の専門委員等と寄り、事務局も開き、たしか、あすですか、組合の諸君と私と官房長官で、お目にかかって意見を聞くというふうに、——私はこういうときに、近代工業国家というものは、働く諸君も大事にしなきゃなりません。そして働く諸君も、また、そういう意味で、やはりこういう社会の進展に自分たちもやっぱり相協力していくという姿勢をとってもらわなきゃならぬと、その一つの道筋として、いまから先もやっていこうと、こう思っております。
  161. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 終わります。
  162. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、しばらく時間をちょうだいいたしまして、テレビ産業における下請の問題について、お聞かせをいただきたいと思っております。  当面、さしあたって問題になっております、大阪の朝日放送における電話交換手の問題についてお伺いをしたいわけです。  労働省は、御承知だと思いますけれども、大阪の天満の公共職業安定所長名で、昭和四十九年三月二十五日、職安法四十四条違反、すなわち、労務提供だといって、朝日放送と、それから提供者である阪神通信工業に、改善勧告が出されております。で、その勧告を出された以後の経過がどうなっているか、これをまず最初にお伺いをしたい。
  163. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 御指摘の朝日放送の労基法の事件につきましては、二月末に大阪の天満安定所におきまして、朝日放送と阪神通信工業との間にあります、請負契約に基づく電話交換手の実態について調査いたし、その結果、ただいま先生御指摘のような、職安法違反の事実が明らかになりましたので、三月二十五日に改善命令を出したわけでございます。その後、これに基づきまして、朝日放送のほうから、三月末に、朝日ビル全体の保全、警備、あるいは清掃、受付業務、電話交換業務、こういった一切の業務を実施するための別会社をつくりまして、そこにこういった諸業務を請け負わせると、こういう案をもとにした改善案が提出されたわけでございます。しかしながら、私どものほうでは、天満の安定所におきましては、その別会社をつくって、こういった業務を請け負わせるという際の、その別会社の業務内容と、それからその別会社をして行なわせる場合の請負契約の内容、それが明らかでございませんので、ただそれだけで、はたしてその以前において行なわれておりました朝日放送と阪神通信工業との間の請負契約に基づく労基法違反の実態が解消されるのかどうかという点について、疑問がございますので、そういった具体的な内容を明らかにするように指示をいたしまして、その後、会社側でもいろいろ検討いたしておりますようで、最終的にまだ解決を見ておるわけではございません。
  164. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、その職安法四十四条違反ですね、これは罰則はどうなっていますか。で、本件は、これはどうしたんですか。
  165. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 私、まことに失礼いたしましたが、罰則はつけられております。で、職安法違反のこういった条項につきましては、労務提供、労務供給業によって、労働者が不当に賃金の搾取を受けたり、不当な労働条件を押しつけられるというようなことのないように、この条項が定められておるわけでございますが、私どもは、もっぱら労働者を保護するごとに目的があるわけでございますから、すみやかにそういった改善措置が講ぜられるのであれば、必ずしもその罰則を適用するということだけが能ではないというふうに考えておりますが、もちろん、悪質なこういう実態がそのまま継続され、改善のあかしが明らかにされないということであれば、これは厳罰をもって臨むということでございます。
  166. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは罰則は適用する気がないから、御存じないわけだけど、ちゃんと罰則は設けられている。それで、本件はそういうふうに罰則を適用しようとは考えていないと、こうおっしゃるわけでしょう、もう一ぺん……。
  167. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 決してそういうふうに申し上げているわけではございませんので、二月末に実態調査をいたしました結果、会社側もその非を認めて、さっそく改善案を提示してきております。で、私どもは、まず、改善をされて、労働者にそういった不当な待遇を今後続けさせないということが、私どもはまず先決であると、かように考えておるわけでございます。
  168. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 罰則を適用したところで、痛くもかゆくもないような罰則ですからね、実際は改善することのほうが大事ですよ。これは一年の懲役というのがあるんだけどな、懲役ということになると、ちょっと痛いかもわからぬですよね。だから、その辺は、やる気がないから知らぬというのは困りまっせ、そやけど……。
  169. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 私は決してやる気がないから知らないということじゃございませんで、職業安定法違反に対する罰則の中で、一番重い罰則が課せられております。ただ、正確に、懲役と罰金の内容、さだかに記憶しておりませんでしたので、いま明らかにしたわけでございます。
  170. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まあ、ぜひ罰則を適用しなさいということを私も申し上げようと思っているわけじゃないんです。  そこで、お伺いをしたいのは、この改善勧告に対して、いま、あなたがおっしゃったように、五月一日からABCサービスという会社を、朝日放送と阪神通信工業が協議してつくったんですね。で、この会社は、この改善勧告に対して、改善勧告を受けて、それでさっそくつくったわけですね、内容を入れて。それで、このやり方については、これは契約等の内容についてはさだかでないのでという御意見でありましたが、これは全然問題ありませんか。これは私、よほど労働省で注意をしていただきませんと、これまた、職安法の施行規則四条の四項2号によりますと、この法四十四条違反を免れるための偽装されたもの、これもいかぬといって、わざわざ明記してあるんですな。そういうことになる疑いがあってはならぬと思います。その辺で、慎重に検討なさって、調査をなさっておるということですか。
  171. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ただいま先生御指摘の、職業安定法並びにこれに基づきます施行規則におきまして、労基法に抵触するかどうかという点につきましては、こまかに四項目の条項が掲げられております。で、通常、いわゆる何とかサービスというようなことで、建物の保安、警備、管理、こういった業務を行なっておる会社は最近たくさんできております。問題は、その当該企業と、そういったビルのメンテナンス、その他の業務を請け負っている会社との間の請負契約の内容いかんによるわけでございます。たとえば、職安法施行規則の四条にありますように、「作業の完成について事業主としての財政上及び法律上のすべての責任を負うものであること。」、あるいは「作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること。」、その他二項目ございます。こういった四つの項目に抵触するかいなかということが、労基法違反になるかならないかのきめ手になるわけでございまして、問題は、そのビルサービスあるいはビルメンテナンスといったような会社が、朝日放送との間に取りかわす請負契約の内容が、この四項目に適合するかどうかということにあるわけでございます。そういった意味で、その新しくできましたABCサービス会社の業務内容が、それからそれに基づく朝日放送との間の請負契約内容がどういうものであるか、そういう点が明確にされておりませんので、その点を調査いたしておるわけでございます。
  172. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ところがね、——これは労働省は、その調査をしてもらうのは当然なんです。ところが、現場ではどういうことが起こっているかということを言いますと、いま申し上げたこの職安法四十四条違反だといって勧告をされた内容というのは、朝日放送の八人の交換手なんですよね、で、その交換手というのはどういうふうになっているかというと、これは発見されたのはことしの二月の何日かだけれども、いつからやっているかといったら、昭和四十二年一月から始まっているのですよ。だから、もう七年以上たっている。しかも最初に三人入れて、現在八人になっているわけですけれども、朝日放送の交換業務というのはどういう形でやっておるかというと、朝日放送の本社員が二名と、朝日放送が直接雇っておる嘱託が一名、そのほか阪神通信工業から提供されている八人と、計十一人で作業がやられているわけですね。そういうことなんです。ところが、労働省から勧告を受けた、そしてABCサービスという会社を五月一日付で発足をするということになった。そして、阪神通信工業と朝日放送との労務提供契約というのは五月一日から切れたのです。そうしたら、八人の交換業務に携わっておる労働者に対してどういうふうに言っておるかといったら、ちょうどあしたになるのですが、五月の十日にもう阪神通信工業へ帰りなさい、こう言っておる。ところが、阪神通信工業という会社は、そういう労務提供の会社と本来違うのです。文字どおり通信工業の会社で、帰っても交換手の仕事の職場などというのはないことはだれが見ても明らか。そういうことじゃ困るということで、働いている労働者はこういう要求をしている。長年にわたって朝日放送で働いておって、しかも長年給与も労働条件も相当な低賃金で差別をされて働いてきたのだ。したがって、当然、法違反だということで指摘を受けておるという際には、これは当然朝日放送の社員として採用されるのが当然だという要求を持っているわけです。だって、帰ったって仕事はないのですから。それがいやならABCサービスへ移りなさい、こういう話です。移りなさいって、よその職員つかまえて、新しくつくった会社へ移りなさいというのは、そんないいかげんなことが言えた義理じゃない。そこで、私はここで問題にしなければならぬと思う点は、たまたま発見をされた職安法四十四条違反、これで罰則はあるけれども、改善をさせるのが本旨だということで御指導になっておる、企業に対しては。労働者はどうします。全部労働者にしわ寄せをされるという、押しつけられるというふうなことになった解決では、これは労働省の名が泣くと思う。その点で、少なくともあしたが期限だといわれておるのですが、たまたまそういうふうに聞いた。だから、少なくとも、労働省でさえもABCサービスという会社の今後の契約業務内容等については調査を必要とすると言っておられるのだから、円満に解決のできるように、あしたというのは、タイムリミットはあした五月十日というふうなことを言うのではなくて、やはり適切に労使間で話し合いができるように、これはそういった労働者立場を守るという観点では援助をするべきではないか。そうでなければ、八人の労働者は阪神通信工業へ帰ったらあれがないのですから、交換業務というのはないのだから、首と一緒だということを労働者は言っているのですから。その点はどうですか。
  173. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 私どもは、こういった安定法に定められております労務供給業違反の事実が明らかになって、これを解消させ、こういった業務授受の労働関係を明確にさせるということがまず第一でございます。会社側は、それに応じまして改善の具体的な案を提示してきております。その内容を明確にすることがまず先決でございますが、それによってただいま御指摘のような当該関係労働者が解雇されるというようなことになると、これは私どもはたいへんゆゆしいことだと思います。当然、従来から阪神通信工業の労働者であり、そこから賃金を支払われておった、それを、請負契約解除されたことによって即解雇につながるというものでは私はないと思います。かりに、阪神通信工業にそういった電話交換業務がないにいたしましても、配置転換をやるなり何なり、しかるべき具体的な措置が取られるべきであろうと思います。あるいはまた、そういったことで新会社ができれば新会社に身を引き継ぐとか、何らかの措置が講ぜられるよう私どもは極力指導してまいりたい、かように考えております。
  174. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは労働省はそんな答え方しかできぬかもわからぬけれども、それは配転もするかもわからぬですよ。しかし、交換手というものは有資格者でしょう。交換手の職場がないということになったら、せっかく持っている能力の使える職場への配転というのはもう望めない、少なくとも阪神通信工業に引っ返したら。そのことはもう明らかなんです。そうすると、本人が職業の選択の自由があるにもかかわらず、がまんのならぬような職場へ配転されたら、直接的にあなたは首ですという解雇にならぬかもわからぬけれども、やめざるを得ないということになることはもう明らかなんです。そのことが具体的に問題になっているわけです。しかも、こう言っているのですよ。阪神通信工業の常務さん、こない言っている。この職安から立ち入り調査をしたあとで、朝日放送の交換手の阪神通信工業社員全員を朝日放送が雇う責任は当然あると言うている。これはそうですよ。この雇い方の順番を見ても、全くこの代替労務提供業務をやっていない阪神通信工業へ電話機械を買い入れて、そのときに交換手も世話せいということで入れているわけですよね。それで減ってくるに従って、減ったのか配転したのか知りませんよ、本社員は。そこまで具体的に知らぬけれども、四十二年の一月に三人入れて、四月に一人入れて、それで四十五年の一月には四人入れているわけですね。四十七年の八月からまた一人入れてというふうに、ぼつぼつ入れて現在八人、こういうことになっているわけです。おそらく、お得意さんから頼まれたからやったと思うのですね。ところが、労働省からそれ職安法違反やと、こう行かれたから、これはいいかげん迷惑しているに違いないと思う。私、阪神通信工業の会社の方だれも知りませんけれども、いきさつから見たらたいへん迷惑をしていると思う。だから、せっかくあっせんをして、しかも朝日放送の指揮命令系統に組み込まれて働いてきた長年の労働者なんだから、朝日放送が雇うのが当然だと、下請の会社の常務さんでも言うているわけです。これは、どうか確かめるんやったら確かめてもらったらいいけれども、これは労働組合の機関紙に発表されているのだから、そううそは書いていないと思う。言うた日も書いていますから。そういう状況の中で、すぐに首を切らぬだろうから、あと問題が起こったらその時点でということでは、やっぱりよろしくないのじゃないかというふうに思うのです。なぜこの問題を特別に抜き出したかといいますと、あとで述べたいのですけれどもテレビ産業における下請の問題というのは相当重大問題になってきておるという実情を、御存じだろうと思いますけれども申し上げて、先ほどからも問題になっていたような、法治国家であるのですから、法律を正しく順守さして、労働省労働者の権利を守り地位を向上させていくという立場を貫いてもらいたいというふうに思うので、特にこの問題を取り上げてみたのですが、特にあしたがタイムリミットだといわれておるので、これは労働者に対して特別な、両方の企業が法違反をしでかしたからといって、そのしわ寄せが労働者に全部くるというふうな解決にならないように、これは行政指導や援助を通じてできないことはないと思うのですが、それはどうですか。
  175. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 私ども、こういった交換手八人の方がどういう経緯で、どういう経過をたどって朝日放送に転勤をされておったのか、その点までは実はつまびらかにしておりません。と同時に、この法違反の実態が改善をされる、その改善をされるにつきましては、ABCサービスという新しい会社ができて、そこが電話交換業務を含めてビルの維持管理、警備、受付業その他一切を請け負うという形が一応提案されているようでございます。そういうことによっていわゆる法違反の実態が改善されたその結果、その関係労働者が即座に解雇につながるということでは、私どもせっかくの改善措置が生きてこない、そういうことにならないように私どもは当然行政指導を強力に進めるべきであると思いますが、ただ、だからといってそれを朝日放送に雇用しろとか、あるいは阪神通信工業で電話交換手としてそのまま使えとか、こういう強制的な措置は私は非常にむずかしいと思いますけれども、もし、かりにいままで八人の方がやっておられた電話交換業務が新会社に引き継がれるのであれば、そして、その引き継がれる請負契約内容が法違反というようなことに抵触しないような正当なものであるならば、新会社にあるいは引き継いでもらうというような指導も私は十分可能だと思います。いずれにいたしましても、そういったことによって直接的に労働者が被害をこうむらないように最善の努力をいたしたいと思います。
  176. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 労働者が被害をこうむらないように指導するということを理解をしておきます。  ただ、ちょっとひっかかるのは、新しくつくった会社が法律的に適法な会社であればというふうに簡単におっしゃるけれども労働者はいまそこの会社の社員と違うわけですよ。阪神通信工業に籍を持つ労働者なんですね。それを労働省が何んぼ労働省やいうても、ABCサービスという新しい会社ができたからそっちへ行きなさい、そんな簡単にいきませんですよ。そこは労働者意見を十分尊重して不利益処分にならないように指導をしてもらうということですね。  で、まあ時間があまりありませんから、引き続きテレビ産業についての先ほどから申し上げておりますこの下請関係の問題が相当大きく問題になっておると思いますので、これについて若干問題提起をしてお願いをしたいと思いますが、フジテレビというのは大体全部下請ないし混成チームで放送業務をやっている。それからTBSの場合は東通という下請の元締めがありますね、この東通が中心になって下請をやっておるんですが、これは調べてみたところではTBSという会社はどのくらい下請をやっているかという実態をちょっと参考に申し上げてみたいと思う。昭和四十九年四月一日現在の数字を申し上げますと、TBSの正規の社員というのは千五百四十四人です。そのうち管理職が四百九十三名、うち出向が百二十人、ですから千五百四十四人から四百九十三人の管理職を引きますと大体千人程度なんですね。下請はどのくらい入っているかというと、東通が元締めになりまして五十二社で千三十二名、これは四月一日現在の調査で入っているわけです。この東通という会社ですね、これはどんな会社ですか。わからぬのです。調べてはりますか、きのうちょっと言うておいたんやけど。
  177. 岩崎隆造

    説明員(岩崎隆造君) 実は先生御指摘のところですが、きのうお話がありまして、それから調べましたけれども、非常に複雑なことがあるようでございまして、私ども今後十分調査いたしてまいりたいと、本日のところまだ十分な認識を得ておりません。
  178. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 御調査が行き届いていないそうですので、私のほうでどういう状態になっているかという実態を少しそれじゃ申し上げておきたい。これは私は特にテレビ産業というような特殊な企業では、下請が全部いかぬとか、あるいは嘱託とか、そんなのが全部いかぬと言うてないんですよ。これはタレントは別として、一般労働者の場合でも美術関係だとか、特殊部門というのはやはりあると思いますから、これを全部かかえておくほうが一番いいにはきまっておるけれども、それまで全部下請はよくないというふうに極端な意見を持っているのじゃないのです。そのことを前提にいたしましてね。しかし調べてみますと、TBSの場合にはどないなっているかというと、これはTBSが典型的なのでTBSを出すのですけれども、いま申し上げたように五十二の会社で千三十二名が下請に入っているのですね。それでこの場合にどういう仕事のしかたをしているかということです。たまたま実例が出ておりますが、「水曜劇場」という番組を構成する場合にどのくらいの人がかかってやっているかというと、合計で六十六人なんですね。六十六人がかかってその番組をつくっている。そのうちTBSの本社員が二十三名、下請がいろいろまじって四十三名、こういう状況で混成チームでやっている。それからもう一つテレビ小説ですがね、これはTBSの本社員が十三名、下請は四十五名、この混成チームでやっている、こういう仕事のやり方になっているわけですね。それからもう一つ問題になりますのは、先ほど局長もおっしゃった職安法の四十四条に違反するかどうかという問題で施行規則に明確に示されている要件ですね、その要件からいたしまして、これは問題になるのではないかというふうに思える企業が幾つかあります。たとえばこれは一番大きい東通ですね、元締めの東通はこれは若干の機材を持ち込んでおります。しかし日放サービス、——株式会社日放というところでは、これは機材は全然持っていない、東通が一部の機材を持ち込む以外は。その他おもなところで八峰テレビとか、松崎照明研究所とかいうふうなところも含めまして若干調査をしてみましたけれども、これは機材は全然保有しておりません。それじゃ、法律の要件になっている指揮命令系統についてどうかという点ですが、管理職は形の上では一応つくっておる。しかし仕事は、先ほど申し上げたように、一つの番組をつくるのに混成チームでやっているというわけですから、これは分けて指揮命令をやってとても一つの番組をつくれないので、当然TBSならTBSの会社の指揮命令に従って組み込まれて仕事をしているという形になっていると思うのです。それからその他先ほど申し上げた五十二の企業の中には指揮命令系統の形ですね、管理職の形も整えていない企業もある。そういうふうに見てまいりますと、これはやはり職安法の規定に抵触する内容というのが幾つか疑いが出てくるというふうに思うのです。  そこで、これについては、きょうは私も時間がありませんから、個々にわたって申し上げる時間もないことですから、労働省でこういう実態について御承知なのかどうかという点が一つ。もしわからなければ、早急に御調査をなさる必要があると思うのですが、それについての御見解を伺いたい。
  179. 岩崎隆造

    説明員(岩崎隆造君) 先ほど申し上げましたとおり、放送関係業界の、先生御指摘のような点につきまして十分つまびらかにしていない点が私どもございますので、御指摘に従いまして十分な調査を早急にいたしたいと思います。
  180. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはぜひ調査をしてもらいたいと思うのです。といいますのは、これはなかなかいろんな問題を含んでいるなあというふうに思って、私もこれは引き続き追及をしていかねばならない問題点だというふうに考えているんですが、たとえば、こういうふうな、一例ですがね。この下請企業の中の日放サービスという会社は、会社の案内にこう書いてある。   日放サービスを御利用になれば……   経営の合理化が出来ます  最近はどのような企業でも従業員賃金アップ、退職金等の一連の問題が経営に大きく影響してまいりました。業務の一部を請負わせた方が遥かに経済的です。二つ目は、   労務管理が楽になります  近来は労務管理上可成ご苦労が多いのではないでしょうか。業務の一部を請負わせた分だけ労務管理の苦労が全然いらなくなります。こういうふうに言われているんですが、これを見ますと、先ほど申し上げたように、たとえば一つの番組をつくるのに五十八人でつくっているうちで十三人しか本社の社員がおらぬということになりまして、労働者の基本権であるストライキをやったときに職場はどうなるかといったら、完全に痛くもかゆくもないのです。おそらく痛くもかゆくもないでしょうね、十三人がストライキをやっても、あとの四十五人が下請の労働者でやっておるわけですから、常態でも。そういう形で労働者の団結権の問題にも影響が起こるような状態まできておるというのが一つの実態なんです。これは番組全体を請け負っているという部分もあるのですよ。それなどになりますと、これはもう本社員が労働争議をやろうがどうしようが痛くもかゆくもない。完全に下請の労働者が、客観的には、組合の労働争議の局面で見れば、スト破りの形をいやおうなしにやらされる結果になってくるというふうに、客観的事実がこう出てきているわけです。これは意識的にスト破りをやっているといって申し上げておるのじゃないのですよ。その辺は区別をして御理解をいただきたい。客観的な事態がそういうふうになってきている。ですから、そういった点も含めて、——これは下請企業には、職安法の四十六条でしたか、労働争議不介入の条項がきめられていますね。四十六条でしたね。労働争議に対する不介入というのが明記されているでしょう。そういう点で、これは意識的に介入をしているというふうには私は申し上げませんけれども、客観的にこういった事態が起こってまいりますと、——客観的にはそういった役割りを果たしておるような結果になってきておる。これは労政局としても重要な課題ではないのでしょうか。労働者の団結権、基本的なストライキ権というものは、これはもう無用の長物になるかもわからぬのですよ、このままでいけば。下請の労働者というのは、残念なことに労働組合があまりつくられておりません。そういう状況の中では、客観的にはそういうことにならざるを得ないところまで来ておるというふうに思うのですが、これはどうでしょうか。私は、少なくとも労働者の労働環境というのは、労働者の権利を守ると同時に、労働者の地位の向上のために、労働省としては大いに働いてもらわなきゃならないと思うのですけれども、こういう状態というのが拡大されてくると、労働者の権利も守れなくなってまいりますし、地位の向上も、これはきわめておぼつかなくなるのではないかというふうに思います。これは客観的には、給料が非常に大きな開きがありますからね、下請の方は非常に安い。それがやはり足かせになって、本社の職員の給与問題にも足かせになっていくことは明らかです、経済的な労働条件の問題でも。そういった点についてはどうでしょう。
  181. 道正邦彦

    政府委員道正邦彦君) 先ほど来御質問の趣旨を拝聴いたしておりますと、問題は、私は、多くなったとおっしゃいます下請が、法律に照らして適法なものであるかどうかということがポイントであって、それが適法であるならば、親企業と申しますか、下請へ出しているほうの企業の業務の正常な運営を阻害することに結果的にならなくてもこれは私はやむを得ないのではないかというふうに思います。
  182. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それはやむを得ないですか。現在の合法的な下請企業がそういうふうになっていく場合にはやむを得ない……。これはそこで論争しようと思っていないのですけれども、そこで先ほど申し上げたように、一つの番組をつくる場合に、すでにもう三分の一——四分の三が下請の労働者でやられているというふうな状況になっておって、しかもそれが一つ企業の下請ではなくて、TBSのように、五十二も企業が入っておるというふうな状況の中で、私どもの調べた範囲でも、これはまさに法違反になるか、あるいはすれすれかというふうな状況というのが幾つか散見されます。そこで、これはぜひひとつ御調査をいただいて、いわゆる花形産業の中で労働法規違反が行なわれるというふうなことを、少なくとも規制していかなきゃならぬというふうに思いますので、これは早急に御調査をいただきたい。  きょうは、そういった点で問題を提起することにとどめておきたいと思っているのですけれども、これは労働大臣の御所見を最後に伺って終わりたいと思います。
  183. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私もマスコミの話はたまに聞くのですけれども、たとえば私のところに来る学生などは、音響で勝負したい、だからテレビ会社を紹介しろというふうに、——先生のお話があったように、美術とか非常に専門的なものがあるものですから、私はそういうものが最近の傾向として、産業の専門化とか分割化からして、いろいろな形のものが行なわれて入っていっておるのじゃなかろうかと思っております。まあ、いずれにいたしましても、その場合に、私たちとすれば、やっぱり労働者の福祉にどのようなかかわり合いを持つかということを考えなけりゃなりませんが、なかなかマスコミのいまのテレビ関係のやつは複雑でしてね。友だちなどもおりますけれども、そういう企業経営になりますというと、ライターやら演出者をしておっても、企業の内容になりますとなかなかよくわかりませんので、こういう複雑な時代ですから、ひとつ新しい問題として私たちの角度からも研究してみたい、こう思っております。
  184. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 本調査に対する本日の質疑は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十九分散会