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1974-03-28 第72回国会 参議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十八日(木曜日)    午後一時十三分開会     —————————————    委員異動  二月十五日     選任          平井 卓志君  二月十九日     辞任         補欠選任      小谷  守君     安永 英雄君  二月二十日     辞任         補欠選任      安永 英雄君     小谷  守君  二月二十一日     辞任         補欠選任      平井 卓志君     重宗 雄三君      川野辺 静君     郡  祐一君  二月二十二日     辞任         補欠選任      重宗 雄三君     平井 卓志君      郡  祐一君     川野辺 静君  二月二十八日     辞任         補欠選任      高橋文五郎君     中西 一郎君      橋本 繁蔵君     岩本 政一君  三月一日     辞任         補欠選任      中西 一郎君     高橋文五郎君      岩本 政一君     橋本 繁蔵君  三月四日     辞任         補欠選任      柏原 ヤス君     藤原 房雄君  三月五日     辞任         補欠選任      沓脱タケ子君     岩間 正男君  三月六日     辞任         補欠選任      川野辺 静君     重宗 雄三君      岩間 正男君     沓脱タケ子君  三月八日     辞任         補欠選任      重宗 雄三君     川野辺 静君  三月十三日   委員大橋和孝君は、公職選挙法第九十条によ   り退職者となった。  三月十四日    辞任          補欠選任     川野辺 静君      重宗 雄三君  三月十五日    辞任          補欠選任     重宗 雄三君      川野辺 静君     藤原 房雄君      柏原 ヤス君  三月十八日    補欠選任         山崎  昇君  三月十九日    辞任          補欠選任     小平 芳平君      阿部 憲一君  三月二十二日    辞任          補欠選任     阿部 憲一君      三木 忠雄君  三月二十五日    辞任          補欠選任     川野辺 静君      小枝 一雄君     三木 忠雄君      小平 芳平君     柏原 ヤス君      上林繁次郎君  三月二十六日    辞任          補欠選任     小枝 一雄君      川野辺 静君     斎藤 十朗君      増田  盛君  三月二十七日   委員君健男君は、公職選挙法第九十条により   退職者となった。    辞任          補欠選任     増田  盛君      斎藤 十朗君     上林繁次郎君      柏原 ヤス君 三月二十八日    辞任          補欠選任     高橋文五郎君      橘  直治君     小谷  守君      西村 関一君     —————————————    委員長異動  三月二十二日議院において山崎昇君を委員長に  選任した。     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山崎  昇君     理 事                 玉置 和郎君                 須原 昭二君     委 員                 川野辺 静君                 橘  直治君                 平井 卓志君                 藤原 道子君                 柏原 ヤス君                 中沢伊登子君                 沓脱タケ子君    国務大臣        労 働 大 臣  長谷川 峻君    政府委員        人事院事務総局        任用局長     大塚 順七君        労働省労政局長  道正 邦彦君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君        労働省職業訓練        局長       久野木行美君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        自治省行政局公        務員部公務員第        一課長      宮尾  盤君        自治省行政局公        務員部公務員第        二課長      広田 常雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○労働問題に関する調査  (労働行政基本施策に関する件)     —————————————
  2. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  議事に入るに先立ちまして、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。  私、このたび皆さまの御推挙によりまして、本委員会委員長選任されました。たいへんふなれな者でございますが、委員皆さんの御鞭撻、御協力によりまして、この重責を果たしたいと存じます。また、国民の負託にこたえまして問題解決の場としての委員会運営をしてまいりたいと思います。皆さん方の特段の御支援を心からお願いを申し上げます。  簡単でございますが、ごあいさつにかえさせていただきます。(拍手)     —————————————
  3. 山崎昇

    委員長山崎昇君) まず、委員異動について御報告いたします。  去る二月十五日、平井卓志君が委員選任されました。また、本日小谷守君及び高橋文五郎君が委員辞任され、その補欠として、西村関一君及び橘直治君が選任されました。     —————————————
  4. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 次に、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動に伴い理事に一名の欠員を生じておりますので、その補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長指名に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事小平芳平君を指名をいたします。     —————————————
  6. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 労働問題に関する調査を議題といたします。  本日は、労働行政基本施策について質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 須原昭二

    須原昭二君 先般、当委員会長谷川労働大臣から当面する労働行政について所信表明がなされました。きょう私はこの労働大臣所信表明に関連をして若干質疑を展開をいたしたいと存じます。  まず、その所信表明の冒頭にこうおっしゃったわけであります。「昨年秋のアラブ産油国石油生産制限に始まる石油危機により、石油電力消費規制実施に移されるなど、当面、国民生活国民経済に少なからぬ制約が加えられるに至っております。このような情勢を背景として、今後、労働面においても、種々問題の出てくることが懸念されております。」こう断言をされておるわけでありますが、具体的に言って、この「種々問題の出てくる」この「種々」というのはどういう問題があるのか、どういう問題が懸念をされておるのか、具体的にひとつ御説明をいただきたいと存じます。
  8. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私が当委員会において申し上げた所信表明、常日ごろ私は自分が申し上げたことですから、よく見て、また持って見て回っているわけです。  御案内のように、何といたしましても昨年のアラブ産油国の油の生産制限あるいは高く油の値段が三倍以上上がったということは、日本経済のいままでたよっておった柱が大きくくずれたということは、これは国民全部が御認識してくださっているところでありまして、それから伴いますというと、直ちに私たちのほうで考えなければならぬのは、労働省として、事業停滞活動停滞によるところの失業発生ということを心配しなければなりません。あるいはまた労働条件低下ということも心配しなければなりません。さらにはまた労使の紛争ということも心配しなければならぬのじゃなかろうかと実は心の準備をしているわけであります。そのために、昨年の十一月に労働省の中に——準備でございますから——臨時労働対策本部を設けまして変化する労働行政のそれを逐一私たち役所の立場からフォローしていく。そしてその中に総合的な対策などを立てていきたいということにしているのでありますが、これは先生案内のように、ほんとうに幸いといい、ますか何といいますか、いまのところ雇用の関係に顕著な実は変化がなくして、供給を上回っているということに実はほっとしているような次第でありまして、役所のたてまえとしますれば、先ほど申し上げたようなことでいつでも対応するというかまえであるということを御理解いただきたいと思います。
  9. 須原昭二

    須原昭二君 一応そういう情勢に対するかまえをいたしておるとこういう御答弁ですが、端的に申し上げまして、石油単価が上がりまして、それによって関連的に起きてくる現象として資材が高騰いたしておる。さらにまた最近では、通産省に対していわゆる電気、ガスの値上げの申請がなされております。等々これを考えますと、将来たいへんな企業状態が生み出てくる。当然そこにつとめるところの労働者にも労働対策上の大きな影響が私は出てくるのではないか。特に私が考えますときに、御案内のとおり、景気の過熱とインフレーション、政府のこれは経済政策経済運営の失敗によるいわゆる金融引き締め、資金繰りの困難、こうした問題がいろいろ出てきておるわけであります。大きな企業はともかくといたしまして、零細な中小企業実態というものはたいへんな経営難におちいっておるわけでありまして、当然そこに生まれてくるところの中小企業倒産というものもわれわれは身近に感じておるわけであります。これら中小企業倒産危険性というのは非常に濃厚になっておるわけでありますが、はたして現在の状態労働省はどういうふうに掌握されているか。お尋ねをいたしたいことは、その三月決算期から、これから五月にかけて倒産見通し、とりわけ中小企業倒産見通しについてどのように掌握をされておりますか。
  10. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) ただいま大臣からお答え申し上げましたとおり、昨年の秋に始まりました石油ショックの直接的な影響は、現在のところ、さほど出てまいっておりません。雇用の面では、求人倍率等につきましても、昨年十一月まで、史上初めての求人倍率二倍というような状況でございました。十二月以降やや低下をいたしましたが、二月に入りましてさらにまた上向きになっておる、こういう状況でございまして、現在のところ、雇用情勢といたしましては依然として堅調を続けておる、こういうことでございますが、ただいま御指摘になりましたように、最近の経済情勢石油ショックは形が変わりまして、値段が上がる。それに伴って資材費、原材料が上がる、一般的な物価の高騰、あるいは総需要抑制に伴う金融引き締め、こういったことで、中小企業筋におきましては、ここ最近、倒産が増加の傾向にございます。で、特に今後三月以降、総需要抑制が浸透してまいりますと、中小企業面におきましてさらに倒産が増加するということも予想されるんではないか、こういうふうに私ども考えております。ただ、この倒産の面につきましても、これが雇用にどれくらいに響いてまいりますかということになりますと、私どもいままで企業倒産調査をいたしますのは、一千万円以上の手形不渡りによる倒産と、こういったことで実施をいたしておりまして、そのうちのある一定部分雇用を全くやっていない、そういった企業もございますので、これが具体的に失業者発生という形でどれだけあらわれてくるか、これはなかなかっかみにくいところでございます。そうは申しましても、倒産離職というのがこれは直接的に結びつくことは当然でございますので、私どもはこの企業倒産推移を的確に把握しながら、この離職者対策を積極的に進めてまいりたい。四十九年度の全体、年間といたしましては、失業者を一応七十万程度を予想いたしておるわけでございます。昨年の十二月からことしの一月の失業情勢を見ますと、この最近の倒産状況も含めまして、十二月におきましては、前年同月に比較いたしまして一八・二%減、完全失業者一八・二%減、本年の一月が四十八年の一月に比較いたしまして、やはり、九・七%減、こういう状況でございますので、いままでのところは、そういったことで比較的影響が少ないんではないかと思いますが、三月以降五月にかけまして、特に、中小繊維等につきましてもいろいろと操短等実態が出てまいっておりますので、今後私どもは、慎重にこの推移を的確に把握をしてまいりまして、その対策を講じてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  11. 須原昭二

    須原昭二君 実は、所信表明の中の第一項目に「今後の経済社会情勢に対応する総合的雇用対策の推進」をあげているわけです。第一の柱にそういう項目が出されていることは、こうした雇用面に対する至難な問題を政府みずからが、労働省みずからが認識をされておって初めてこれを第一の柱になされたと思うわけです。いまお話を聞きますと、求人は二倍伸びておる。あるいはまた、十二月の一八・二%と前年同月に比べて少なくなっている。あるいは、一月は前年に比べて九・七%減をしておる、こう実はおっしゃいますけれども雇用対策を推進する中で失業者発生見通しを的確に掌握をすることは最も重要な問題点でして、しかし、聞くところによりますと、日経新聞でしたか、四十九年一月から三月まで、大体失業者は八十二万人出る、四十八年十月から十二月を振り返ってまいりますと、五十四万人の失業者発生をしたといっているわけです。非常に、いま、労働省からのお話を聞きますと、掌握がむずかしいとおっしゃいますけれども、特にことしの一月十九日でしたか、ことし、四十九年度の経済見通しを発表されておりますが、その中で失業者発生見通しについては全然触れておらないわけです。こういう点を見ますると、非常に私は、何かいまお話を聞きましたけれども、それは即席の御答弁のようで、政策の中でこれが完全に掌握されておらないような感じが濃厚になってくるわけです。その点はどうでしょう。
  12. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 私、ただいま申し上げましたのは、これからの見通しを、いつ倒産がどのくらいになる。それに伴って失業者がどのくらい出るということを時系列を追って申し上げることはなかなか見通しとしてむずかしいということを申し上げたわけでございます。  四十九年度の経済見通しに基づきますこれからの雇用失業情勢につきましては、経済成長率雇用実態とが密接に結びついております問題でありますことは御承知のとおりでございますけれども、この経済不況のパターンとかあるいはそのときどきにおきます労働力需給動向、こういったことによって経済成長の度合いと、それによってあらわれる雇用、あるいは失業情勢というものは変わってくるわけでございますが、そのほかにわが国雇用動向といたしましては、雇用の慣行とかあるいは賃金制度、こういった面から雇用の面ではかなり硬直的な実態を持っております。したがいまして、四十六年のドルショックの際もそうでございましたが、一応、形の上で予想いたしましたよりは実態としては雇用への影響が比較的少なくあらわれる、あるいはいまあらわれましても半年以上のタイムラグがある、こういうことが実態でございます、過去の経験でございます。  そこで、そういった過去の経験なり、私ども従来から実態調査をいたしてまいりましたこの実績に基づきまして、四十九年度の経済見通し経済成長率は二・五%、これに対応する雇用の面におきましては、一応雇用伸びを〇・八%、完全失業者を前年に対比いたしまして五万人増の七十万という推定をいたしておるわけであります。それに対応する昨年十二月からことしの一月にかけての完全失業者の対前年比が先ほど申し上げたような推移をたどっておる、こういうことを申し上げたわけであります。
  13. 須原昭二

    須原昭二君 それじゃ、四十九年度の政府経済見通し、いまもおっしゃいましたけれども国民総生産は百三十一兆五千億円程度見込んでおります。その成長率に対する前年対比の実質がいまおっしゃいましたが二・五%、名目が一二・九%見込んでおります。このように急激に実は経済活動を落とす、あるいはまた落とさざるを得ないことによって、これは当然わが国雇用面に私は影響が出てくるのではないか、こういう疑問を持つわけです。したがって、一体全体、経済成長率が何%以下になったら雇用面影響が出てくるのですか、試算されておるんですか。
  14. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 経済成長率が何%以下になったら雇用三角、マイナスになるか、たいへんむずかしい御質問でございまして、いまここで的確な御答弁を申し上げるわけにまいりませんが、私ども経済見通しが昨年暮れ二・五%という一応の試算推計が行なわれております。それによりまして、四十九年度の雇用伸びを〇・八%という押え方をいたしておるわけでございますが、二・五%の成長ということ自体につきましても、今後の経済推移によってはなかなかむずかしい問題もあるかと考えております。かりに、——これはかりの話でございますが、二・五%を下回って横ばいというような形になりました場合に、おそらく雇用面でも横ばい三角までにはならないのではないか、これは先ほど申し上げましたような雇用硬直性といったようなこともございます。雇用面では横ばい程度は維持できるのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  15. 須原昭二

    須原昭二君 私がいろいろとお話を聞いておるところによりますと、いわゆる学説というやつですね、大体成長率七%台を割ると雇用影響が出てくるという説があるわけですが、その点はどうですか。
  16. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 過去の国際通貨調整の時点におきましても、あるいは日米繊維協定でいろいろ問題になりました、そういった過去の国際経済影響によっていろいろと雇用面影響が出てまいりました際の実績経験によりましても、必ずしもいま御指摘のような数字にはならないんじゃないかと、私どもかように考えておるわけでございます。
  17. 須原昭二

    須原昭二君 じゃ、それは今後の問題としてひとつ課題にいたしておきましょう。しかし、かつて一度も実は政府経済見通しというのは的中したことがないのですよ。——いまうなずいておられますけれども。一年間の経済運営によって雇用状態がどうなり、どの程度失業者が出てくるかという、そしてそれに対してどのように手を打っていくか、政府国民のためにその見通し対策を発表するのが私は当然の義務だと思います。こういう問題が実は経済見通しの中に明らかにされておらないわけです。いまお話を聞いても、どうも数字が、見通しがあまり確固たるものが御答弁にないわけでありますが、こういうものを明らかにされないのはどこか理由があるのか、この理由についてちょっとお尋ねしておきたいと思います。
  18. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) これは須原先生、私も思いますが、一応プログラムとして成長率というものまで書いておりました。一番いい例は、敗戦後の日本がこんなふうに伸びるという経済見通しを立てた経済学者一人もいなかったですね。いかに私はそのときさびしい思いをしたか。最近これだけ、一〇%以上の、これも高度経済成長率というのは、経済企画庁見通し以上に国民経済活動というものが伸びた原因だと思うんです。私たちとしますというと、——これはもうお互いこういう専門家の会合でございますから申し上げますと、やっぱり日本の場合には、こういう、よその国が石油危機でアメリカが五・二の失業率とか、西ドイツが三百万の外国人労働者の手当てのほかに二・二の失業率とか、イギリスが三・二などといわれているときに、一%台にいま失業率を持っているというこの特徴というものをまず私たちは把握して、その上に、まあ、三年ほど前に繊維の場合でも、これは必ず離職者が出てくるんじゃないかということでここでも御審議願ったと思いますが、あるところの法律、あるところの制度を全部活用して、もしそういう方々が出たらと思って準備したのに対して、思ったより出なかったというふうなことでございまして、計画見通しきちっと立てた国、そういう計画経済の国でもそのとおりいかぬのですね。ここに私は人間の政治政治の時にはよさといいますか、というものを感じましてね、労働省失業率を何%というふうに、経済企画庁と同じようなものをずっと出せないというところの御非難はわかりはしますけれども、それ以上のものがあるかもしらぬが、それを受けざらして待って、——待っているといっちゃ悪いけれども、そういうふうな、なけりゃなおいいんですから、とにかく離職者がないように持っていくというところに私たちの苦心のあるところをひとつ御理解いただきたい、こう思います。
  19. 須原昭二

    須原昭二君 そういうことがないようにということでということならばよくわかるんですよ。しかし、やはりものの計画を立てていくためにはその実態というものをつかんでいかなければならない、そういう点を私は指摘をいたしておるのであって、その点はひとつ御理解をいただいて、そういう方向にひとつものを見、判断をし、対策を立てていただきたい。これは要望しておきましょう。  そこで、新聞報道によりますと、労働力需給は四十七年以来逼迫の傾向であったといわれております。われわれもそう思っております。しかし石油ショックを契機にして、一転して緩和に向かったというふうな表現を使っているわけですね。まあ、ことしの一月の新規求人新聞報道によりますと、前年同月に比べて二一・五%の減、こういわれておりますが、この数字は確かですか。
  20. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) ただいま御指摘新規求人につきましては、昨年の十二月から下降傾向にございまして、一月は新規求人五十一万人、二一・五%減、そのとおりでございます。ただ二月になりまして若干持ち直しまして五十六万人、前年対比一七%減という形で求人倍率求人数その他も若干上向き傾向が出てまいっております。そういったことから考えましても、先ほど御指摘になりました私ども経済情勢によって失業面にどのくらいの影響が出るかということで、相当数対策を考えておりますが、過去の実績におきましてもその予定いたしました対策、人員に達しないというのがいままでの実績でございますので、今回につきましても私どもは相当な影響が出ることも十分覚悟をしながら対策を考えておりまして、そうならないことをこいねがっているわけでございます。
  21. 須原昭二

    須原昭二君 二一・五%の減、まあ、この傾向が定着をするといいますか、横ばいでいくかどうか、これが今後の問題として大きな私は問題点だと思うわけです。先ほど申しましたように石油単価の引き上げあるいは電力あるいはまたガス値上がりあるいは材料の値上がり等によって零細中小企業はたいへんな経営難におちいっていくわけでありまして、ことしの秋口にかけてたいへんな事態に至るのではないかという危惧を私は持っております。したがって、雇用問題が深刻化するおそれがあるんじゃないかと思うのですが、その点は今後の問題としてどういうふうに見通されておりますか。
  22. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 経済動向を最も敏感に反映いたしますのは、失業者発生よりもむしろ求人動向でございます。四十六年当時の国際通貨調整の時点におきましてはかなりそういった動きが敏感に出てまいりまして、新規学卒の求人の取り消し、手控え、こういった事態がかなり各方面で起こっておりました。今回は昨年の暮れ以来、若干先ほど御指摘になりましたように、求人等につきましても下降傾向を示しておりましたけれども、ただいま申し上げましたように、二月から上向きになってまいっております。一昨年に、 四十六年に比べますと、求人取り消しあるいは学卒の採用取りやめとかあるいは保留と、こういった動きがほとんど出てまいっておりません。今後、三月以降四十九年度に入りまして、この経済見通しにありますような情勢がそのまま続くかどうか、これは私どもといたしましても慎重に推移を見守ってまいりたいと思いますけれども、私ども希望的観測かもわかりませんけれども、年度後半に回復に向かいますということになりますと、大体一月、二月のこの傾向横ばいないしは漸次上向きになってまいるのではなかろうかというような期待とあれを持っておるわけでございます。
  23. 須原昭二

    須原昭二君 その求人が二月から上向きになってきておると、しかしこれはトータルの問題、全体の問題で上がってきておるということは御答弁が正しいと思いますけれども、中身ですね、大企業のほうは上向きになっていって、零細中小企業は下向きになっていくんじゃないか、ここら辺にまた問題点が今後の問題としてあるわけです。その点はきょうは時間の関係もございますから、これはひとつ上向きになったという実態から見て、その内容を分析したものを資料として御提出願いたいと思います。いかがですか。
  24. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 労働大臣、いいですか、いまの資料は。——それじゃ御提出願います。
  25. 須原昭二

    須原昭二君 それじゃ次にまいります。  大臣所信表明の中で、「きびしい経済情勢のもとで労働者の福祉の増進をはかることは決して容易なことではありません。」こう述べておられます。特に雇用面につきましては、ここに書いてありますが、「季節出かせぎ労働者や高年齢者、あるいは中小企業労働者など、経済変動の影響を受けやすい層の人々に十分配慮しつつ、適切かつ機動的に、雇用対策を強化推進してまいる所存であります。」、非常に名文でございまして、形容詞が非常に適切に書いてあるわけです。「十分配慮し」「適切かつ機動的に」「強化推進」と、こう書いてあるわけです。そこで私は具体的にひとつお尋ねをしたいんですが、このような抽象的な文句では私わからないわけですよ。具体的にどのような雇用対策を持っておられるのか、あるいはまた、弱い層というような表現がありますが、これら対象別にいって雇用格差をどのように是正をされていくのか、この点についてひとつお尋ねをしておきたいと思います。
  26. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私は、やっぱり労働省の覚悟としますと、先生が御指摘されたような、こういうふうなかまえというものが絶対に必要じゃなかろうかと思っております。そしてそれをまた実行していくことです。そういうことからしますと、何といたしましてもやはり経済の変動に対処して、一番先にかりに影響を受けやすいものとしますれば、いま先生がおっしゃった出かせぎ労働者であり、高年齢者、あるいは中小企業に働く人々だと、これはもうどなたも御異存はないと思います。その人々に対して、もしそういうことが起こった場合に、適切かつ機動的な推進をしていくことは当然の私たちの責任でございますから、そういう離職者がまず発生した場合には、それをまず早期再就職につとめるということ、幸いに先ほど局長も。パーセンテージで申し上げたとおり、求人倍率が多いものですから、私は再就職が時によって可能であるというふうな安心感を持つんですが、まず具体的に申し上げますと、週休二日制の推進もございます。あるいは時間短縮により、操業短縮による余剰労働力企業内で吸収するということもありましょう。あるいは季節出かせぎ労働者の契約期間中の解雇の防止、定年延長の一そうの推進と高年齢者の解雇の防止を中心に、企業の指導を強化して離職の生まれないように私たちが推進していくことが一つございましょう。また、かりに離職者が出た場合には、失業保険制度もございますし、さらにはまた職業転換給付金制度を活用して、これこそ機動的な職業紹介あるいは職業訓練を実施しまして、早期に再就職できるようにやっていきたい。  なお、四十九年度におきましては、新たに大量解雇の事前届出と、離職予定者に対する離職前訓練の実施、あるいは全国の主要都市におきまして、高年齢者の職業相談所を四十七カ所でありますが、その設置等の措置を講じて、これらを十分に活用してまいりたいと思っているのでございます。  なお、土地を、自分のところを離れて就労している季節出かせぎ労働者につきましては、季節移動労働者相談員、季節移動労働者援護相談所等の提携の強化、あるいは事業所の訪問等の実施によりまして、事態を正確に把握して、解雇のおそれのある場合には事前の職業相談、あるいは良質求人の確保などによりまして、その円滑な再就職につとめてまいる、こう思っております。御案内のように、労働省——各地方に職安がございまして、これには何か新聞などにどこどこでレイオフ、どこで解雇という話、あるいは先生方からもそういう話が出た場合に、私のほうはさっそく、先ほどの臨時対策本部もございますから、すぐにオンラインでそういうところを実態を調べて、うわさであるかほんとうであるか、それがどんなことになっておるかというふうな把握は懸命にやっているつもりでありまして、まさにいまから先というものは、ほんとうにお互い覚悟をしてこういう行政を真剣にやらなきやならぬ、こういう気持ちでございます。
  27. 須原昭二

    須原昭二君 私は、非常に表現の中で機動的ということばを使われたことに敬意を払うのですよ。しかし、実態はそこにそぐわないきらいがある。たとえば、いま一番最初に指摘をされました週休二日制、あるいは時間短縮の問題、あるいはまた定年延長の推進をする問題、これはやはり行政指導の中でやられることであって、そのきき目がすぐ出てこないわけですね。ですから、この機動的という表現を使われた以上、やはり法的な権限において行なわしめるような方途を考えなければ機動的にならないと実は思うわけです。その点はひとつ要望しておきます。  さらに出かせぎのこの季節労働者、この問題については、まあ機動的と言うならば、逆に私は、今度雇用保険法の改正案が出ておりますけれども、御案内のとおり、現在は六カ月労働で九十日分の失業保険金を三十日分の一時金に切りかえる。これこそ機動的であって、逆の面が出てきておる。この点は、私は雇用保険法の改正法案が当委員会に出てきたときに是非の論議をすることにして、きょうは避けますけれども、どうもその機動的というのがほかの方向にいくような気がしてならないわけであります。  ところで、その出かせぎの農民の雇用対策の問題に触れておきたいと思います。わが国では、大体六十万ともあるいはまた百万ともいわれております。季節の出かせぎ労働者がいるといわれております。これらの人たちは本来なら農業に専念すべき人でありますけれども、従来の日本の国の政府の行なってきた経済成長政策に追従した農政、その農政そのものがオール・オア・ナッシングといいますか、オール・オアとはいきませんけれども、まさに農政はナッシングであると、こういう状態で、その方向すら見失なっているというのが今日の現況ではないかと思うわけです。所信表明の中で言われた、「経済変動の影響を受けやすい層の人々に十分配慮しつつ、」と、こう表現がなされておりますが、この経済変動の影響をもろにかぶる一つが、いわゆる今日の季節出かせぎ農民であるといっても私は過言でないと思うわけです。この農政が全くなくなっているというような表現を、酷評を申し上げましたが、この出かせぎ農民の雇用改善の手だてというものについて、どのように労働省としてはお考えになっておるのか、まずその点だけをお尋ねしておきたい。
  28. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) いわゆる農村からの季節出かせぎ労働者につきましては、いろいろな問題がございます。  まず第一には、就労のスタート時点かち問題がございます。その就労経路が明確でないために、いろいろ蒸発とか事故が起こってなくなられた方が身元が不詳だというような問題もあります。あるいは安全衛生の観点からいろいろ問題がありまして、災害が起きやすい、あるいは賃金不払いだとか、こういった問題がございまして、まあ、そういった点から、私どもは出かせぎをされる方に対します対策をこの数年来逐年強化をいたしてまいっております。  来年度におきましては、この出かせぎのまず第一点は、就労経路の正常化ということで、出かせぎに出る人は必ず台帳を整備して、それぞれ各人に手帳を持たせる。それから雇い入れる側の事業所につきましても、事業所台帳を整備して、身元が不明確にならないようにしてやっていきたい。いま私どものほうの失業保険の短期季節受給者が約六十五万人ございますが、そのうちの大体三分の二ぐらいが農村からの出かせぎ労働者ではないかと、こういうふうに推計いたしております。そこで私どもは大体五十五万件ぐらいを対象にいたしまして、こういった就労の正常化をはかっていきたいと、かように考えておるわけであります。  それから第二は、出かせぎに出た人たちの援護対策でございます。これは都道府県がそれぞれの立場で各種の援護事業を行なっております。この都道府県あるいは地方公共団体が行ないます援護事業に対する助成措置と同時に、国のほうにおきましても出かせぎ労働者のいろいろな各種の福祉施設を増設するとか、あるいは出かせぎ援護相談員を増員いたしまして、出かせぎに出た人たちの各種の就労上の相談、あるいは身の上相談に当たらせる、こういったことをやることにいたしております。また、従来設置いたしておりました出稼ぎ相談所のほかに、来年度さらに新設をいたすことにいたしております。と同時に、この出かせぎで、一年のうちに夏は出かせぎに出る、あるいは農閑期、冬出かせぎに出る、こういう人たちが大部分でございますが、出かせぎでなくて通年雇用できるような体制を少しずつでも進めていくと。これはまあ季節的になかなか実現困難な面はもちろんございますけれども、そういう物理的、季節的な障害のないところにつきましては、通年化することが、常用化することがこれが労働政策としては基本でございます。そういった通年化雇用対策につきましても、従来の通年雇用奨励金を増額する、あるいは通年雇用特別奨励金の支給、こういったことで労使双方、出かせぎで就労する人にも、受け入れる事業所のほうの側にもそれぞれ援護措置を講じて、こういった人たちの通年常用雇用化を進めていく、こういう対策を来年度積極的に進めていくと、かように考えているわけでございます。
  29. 須原昭二

    須原昭二君 いまお話を聞きますと、出かせぎ農民が出てきてからのことについて、まあ、大要御説明があったわけですが、問題は私は、これは労働大臣お話ししてもだめだと思うんですけど、結局は農業に専念すべき人が農業を捨てざるを得ないところに問題があるわけで、これは農林大臣にひとつ指摘をしておかなきゃならないことですが、まずその農業で食えるようにしてやるということが前提であると思うんです。そして、もう二段目の問題として、それでも出てくるというならば、現地で働き得るような素地をつくってやるということが私は第二の問題点でなくてはならぬと思うんです。そういう点から考えますと、これら出かせぎの農民たちが都市まで出かせぎをしなければならない要因というのは、地場賃金がやっぱり安いということじゃないかと思うんです。この地場賃金と都市におけるところの賃金との格差、これはどんどん激しく格差が出ているような感じがしてならないわけですが、時間の関係がございますから、これはどれほどの格差があるのか、地方別にでけっこうですからね、資料としてひとつ出して私たちも勉強さしていただきたい、かように存じますが、いいですか。
  30. 山崎昇

    委員長山崎昇君) それでは資料を提出願います。
  31. 須原昭二

    須原昭二君 それからもう一つですね、これら出かせぎの農民に対してどのような生活保障を与えようとしていくかということが問題点だと思います。特に福祉の問題については、今度は非常に強調されておりますから、その点を申し上げたいんですが、先ほども申しましたが、きょうは論議はいたしませんけれども雇用保険法の改正によって実質にこれは落ちていくわけですね。こういう点を考えますと、どうように生活保障を与えていくかという課題が、いま緊急的に、やはりこれら当事者の皆さんには大きな不安になっているわけです。そういう点についてどうお考えになりますか。
  32. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 前段の、私も農村地帯の国会議員ですから、おっしゃることがよくわかるんです。愛知県のように、農業で、安城農業みたいに食えるような地方と、東北地方を見ますというと、だいぶ違うですよ。ですから、いまの場合にはそういう地方からどうしても出てこざるを得ない。もう一つは御承知のとおり、農業が機械化されて時間が余るということもございましょう。さらにおっしゃるとおり、地方でそれぞれ今度働く場所をつくるというところなども将来の問題としてお互いこれは考えていかなきやならぬことでございます。  で、いまから先出かせぎの問題になりますというと、これは局長からまた答弁させますけれども、そういうことは農政の問題であるけれども、出てきた人々に私たち労働省としてどう指導し、どう手当てし、どう保健を守り、どう災害をなくしていくかというところの指導こそが大事なことだと、こう思って施策をしているわけであります。
  33. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 先ほど須原先生から御指摘になりましたように、出かせぎをしなくて済むような政策、あるいは地元で常用化、通年常用化ということが望ましい。これはもう当然のことでございますし、そういう意味におきまして、私どもも通年雇用化につきましては、まあ細々ながらもいままで施策を進めてきておるわけでございます。来年度以降積極的にこれを進めていきたいと思っておるわけであります。  なお、御指摘になりました雇用保険の中でも、地元の雇用を拡大していくという意味で、地域的な雇用改善というものを新しい事業の中に取り上げていくつもりでいたしておるわけでございますが、とは申しましても、なかなか東北、北海道のような積雪寒冷地帯、こういったところで常用雇用を現在の出かせぎの人たちに相当する分だけ確保するということは、これはなかなかむずかしいことでございます。こういった四十万といわれる出かせぎの人たちを完全になくするということは私は不可能だろう。いやでもおうでも、好ましくない形態ではございますけれども、出かせぎに出ざるを得ないという実態は私は率直に認めて、それに対する対策をとるべきではないか。と同時に、受け入れるほうの側の企業にとりましても、現在の出かせぎ労働者というものが、ある意味で必要欠くべからざる労働力になっていることもこれも否定できないと思います。そういう実態を踏まえると同時に、この出かせぎの人たちの出かせぎ収入、あるいはその出かせぎから帰ったあとの失業保険金収入というものが、出かせぎ農家にとって年間生計費の中のある一定部分としてすでにもう定着化してしまっている、こういう実態を私どもは十分踏まえた上で施策を講ずべきであろう、こういうふうに考えているわけでございます。  そういう考え方に基づきまして、今回、雇用保険法案の中で、いままで出かせぎの失業保険の短期受給という実態に対して、これにメスを入れようという従来の考え方から百八十度転換いたしまして、そういう従来の実績失業保険金受給の実績、その家計に及ぼす実態というものを踏まえて、これを制度の中に組み込もうという考え方で今回の改正案を考えた次第でございます。いずれ当委員会におきまして御審議をいただきます際に、先生方の御疑念に十分お答え申し上げたい、かように考えているわけでございます。
  34. 須原昭二

    須原昭二君 これはひとつ問題をあとに残しておきたいと思います。  そこでもう一つ、こうした経済変動の場合に影響を受けやすいその弱者といいますか、その中にやはり中高年齢労働者雇用の問題があると思うんですね。いまわが国では、五十五歳の定年制が支配的でありますが、時によっては五十八歳、あるいは六十歳、こういう定年制がしかれておるのが多いわけです。そこで定年制によって再就職の場合に賃金がやはりダウンされておるわけですね。総括して大体どのぐらいのパーセンテージにダウンされますか。
  35. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) これは調査のしかた、統計の取り方によっていろいろとあると思いますが、たとえば一つの例を申し上げますと、五十五歳定年というのが一般的に慣行として行なわれておりまして、労働省におきましては、これをさしあたり六十まで定年を延長するということでいろいろな施策をとってまいっております。で、五十五歳定年でやめて再就職をした人の賃金を一応見てまいりますと、その調査の結果によりますと、大体横ばいないしは上向き、賃金の上昇をした者が約半数、半数弱でございます。で、半数を若干こえる半数強が賃金がダウンしていると、これが定年退職者の再就職の実績調査の結果でございます。これは必ずしも全体に当てはまると思いませんが、今後の中高年齢者の全体の趨勢を見ますると、昭和四十五年度におきましては、大体中高年齢者、四十五歳から六十五歳までの中高年齢者が全労働力人口の中で約二六%でございます。これは今後人口の高齢化に伴いまして、昭和五十五年になりますと全体の三分の一をこの中高年齢者が占めることになると推定されております。この傾向は私は間違いないと思います。そういたしますと、先ほど御指摘になりましたように、今後雇用動向といたしましては、労働力需給は依然として堅調を続けると思いますけれども、そういう全体の労働力需給の逼迫の状況の中で、この中高年齢者の就職問題はいよいよ今後ともそう容易になるとは思われません。やはりその全体の逼迫の中で、この中高年齢者、特に高年齢者の就職問題というのが、今後の労働行政、職業行政の中で一番重点的課題ということで、私どもはこれに取り組んでいかなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。
  36. 須原昭二

    須原昭二君 もし資料がありましたら、再就職の場合の賃金ダウンの問題、非常にこれは中高年齢層にとっては大きな問題点だと思います。ですからひとつ掌握されておりましたら、資料ありましたら出していただきたい。さらにこれに加えて、今日五十五歳、五十八歳、六十歳というような三つぐらいの段階だと思いますが、どのような定年制がしかれているのか、この実態があればひとつ出してもらいたい。  それから、中高年齢層の最近の労働市場の実態、これは御質問いたしますと時間が長くなりますから、資料をひとつ御提出を願いたいと思います。いいですか。
  37. 山崎昇

    委員長山崎昇君) いいですね。
  38. 須原昭二

    須原昭二君 そこで、定年制の延長策の問題点でありますが、五十五歳定年制だとすれば六十歳で厚生年金の受給資格が出てくるわけです。その五十五歳と六十歳の間というのは、定年到着者はまだ働く以外に収入の道がないわけなんです。ここが一つの大きな問題点ですが、この年金の受給年齢を早めるか、あるいはまた定年年齢を延長するか、いずれか私は方策をとらなければならないのではないかと思うんです。政府の、特に労働省の定年延長政策といいますか、策といいますか、定年延長策をとってこの問題を処理をしようとされておりますが、その実績というのはどのぐらい出てきておりますか。あるいはまた、定年のもう一つですね、定年延長を促進される具体的な方策というのは何をとってやっておられるか、この二点について。
  39. 渡邊健二

    政府委員(渡邊健二君) 定年延長がどのくらい進んでおるかということでございますが、最近、その資料といたしましては一つ四十五年に私どもが定年について調べた資料がございます。それに よりますと、定年五十五歳の者が定年制の適用を 受けている労働者の約五八%、それから五十六歳、五十七歳の定年の適用を受けている者が一四%、両方合わせますと約七二%ほどに相なっております。で、これは全産業の調査でございまして、同様な調査はことし一月にいたしましたので、まだその結果が出ておりませんので、全く同じベースでは比較はできませんが、昨年の八月で製造業、卸小売りだけにつきましてやりました調査の結果が出ておりますが、それによりますと、定年五十五歳がやはり一番多いわけでございますが、その適用労働者は製造業で四四%、卸小売りで四八%でございます。さらに五十六歳、五十七歳の人が製造業では二五%、卸小売り業では一七%、かように相なっておるわけでございます。で、全く同じベースではございませんが、一応四十五年の調査と昨年の八月の調査とを比較いたしてみますると、五十五ないし五十七歳までの者は両方ともおおむね七〇ないし六八、九ぐらいの率でございますが、その中で五十五歳定年の人が減りまして、五十六、七歳の人がふえておる。それから五十八歳以上の人が、ごくわずかではございますが、一、二%ふえておると、こういう状況が全体として見られるわけでございまして、十分とは申せないながら、ある程度定年延長が進みつつあるのではないかと。個別の産業について申しますと、造船であるとかあるいは自動車であるとか、いろいろな産業におきまして具体的にここ一、二年の間に定年を五十八歳あるいは六十歳に延ばしたというような例が多いことは先生も御承知と思いますが、全体として見ました数字はいま申し上げたようなことでございます。
  40. 須原昭二

    須原昭二君 いや、私は数字を聞いたわけじゃないんですよ。要するに政府——労働省が定年延長を促進される具体的な対策を立てられるでしょうと、それを立てられることによってどれだけ定年延長の実績が出たかということを聞いているわけで、現実に定年延長がこういうふうな実績が出ているということじゃなくして、政府がやった政策によってどれだけ実績が出ているかということを聞いているわけです。どのような政策をやってどれだけ実績をあげているかと、こういうことです。
  41. 渡邊健二

    政府委員(渡邊健二君) 定年延長につきましては、昨年決定いたしました経済社会基本計画におきましても当面その計画期間中、すなわち五年以内に現在の五十五歳が一般的である定年制を六十歳までに延ばすことを目標に定年の延長を促進をはかるということを政府の方針としてきめておりますし、それから昨年の国会におきまして雇用対策法の一部改正をやっていただきまして、その中におきましても定年延長のための必要な施策を充実することを国の政策課題の一つとして明らかにいたしたところでございますが、現実にそれを促進いたしますために昨年来定年延長を実施する中小企業に対して定年延長奨励金を支給をいたしております。あるいは在職中の労働者に対する能力再開発訓練等の訓練体制の整備等もつとめておるところでございますし、あるいは高年齢者の適職の開発、定年退職者の再就職援助対策の拡充なども行なっております。  また、資料の提供の関係では、労働省にございます労働者生活ビジョン懇談会というところで定年延長に伴う賃金制度の改善あるいは退職金制度の改善あるいは人事管理の改善等々につきまして一つの考え方を明らかにいたしまして、労使の参考の資料に提供しておるといったようなことによりまして定年延長の促進のためのいろいろな施策を現実に展開しておるところでございます。
  42. 須原昭二

    須原昭二君 それで実績がどれだけ上がったかということですね。それは追跡はされておりませんか。
  43. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 定年延長につきましては、私どものほうで定年延長奨励金という制度を四十八年度から実施いたしております。これは事業所で定年を一年延長するについて一人当たり二万五千円を支給するという制度でございます。これは四十八年度から開始いたしましたのでまだ四十八年度の実績が全部集計になっておりませんので、それによってどれだけ定年が、何人対象人員として延べ延長されたか、これはまだ明らかになっておりませんので、実績が出次第またいずれかの機会で御報告さしていただきたいと思います。
  44. 須原昭二

    須原昭二君 そこの事業主に支給する定年延長奨励金の制度ですね、昨年から始まったわけですが、労働保険特別会計失業保険勘定を見ますると、去年は二億六千三百五十五万円ですか、ことしは予算案は四億三千三十五万円、こういうふうに計上されておりますが、いまお話しのように、一人一年延長するごとに二万五千円の奨励金を事業主に渡すことになっておりますね。しかもそれは中小企業が対象である。条件として私は聞いておるところによると、労働条件を下げないという一つの基準があるわけですが、ほんとうに労働条件を下げないでいるかどうか、ここに一つ問題点がある。  それからいま一つは、労働条件を下げないことと同時に、はたしてわずか二万五千円の奨励金で中小企業者の事業主が飛びつくかどうかということが私は一つ問題点だと思うのですが、その点は実態はどうなっておりますか。
  45. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) ただいま御指摘の点につきましては、お答え申し上げましたとおり、確かに二万五千円という額ではきわめて些少であって、はたしてこれが定年延長を促進するためのプッシュのあれになるかどうかたいへん問題でございますけれども、私どもは極力この点は今後拡充してまいりたいと思います。と同時に、この二万五千円を支給することによって定年を延長し、あるいは再採用といいますか、そういったことによってその後の労働条件、賃金がそれによってカバーされて、低下されないということが一つの私どものこの種制度を推進する目安でございます。それが結果的にどうなっているか、これは実績がまだ分明いたしておりませんと同様に、その結果、労働条件がどうなっているかという点もあわせて今後の四十八年度の実績を見てまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  46. 須原昭二

    須原昭二君 これはまあ、中小零細企業対象でありますが、現実に私が聞いたところによりますと、やはり労働条件を下げないとは言われておりますが実質に下がっているわけです。しかしまた事業主に言わせると二万五千円ぐらいもらっても何もならないと、こう言っておるきらいもあるわけです。この点に対処すべくやはりこの奨励金制度というのはもう少し前進をさせなきゃならないんじゃないかという感じがします。この点はひとつ要望しておきましょう。  次は、中高年齢の労働者の賃金問題です。中高年齢労働者については労働市場が非常に狭いわけです。そういう実態に合わせて労働条件が全く劣悪な状態に置き去りにされている、ここに一つ問題点がありますが、私もここに東京都の労働局が最近調査をした中途採用者の初任給の賃金調査表を持っておりますが、これによりますと、五十歳過ぎた転職者の賃金は二十歳代の前半並み、こういうことになっているわけです。二十歳の前半並み、こういう低い条件になっているわけです。もう言うまでもなく中高年齢層の生活というのは若年層に比べて逆に社会的支出が非常に多いのが自明の理です。中高年齢層の労働市場の開拓も必要でありますが、賃金など労働条件の改善指導が私は急務でなくてはならない。どういう指導を行なっておられるのか。ただ通達を出されてやりなさいと言うだけのことなのか、具体的にどういう御指導をなされておるのかお尋ねをしておきたいと思います。
  47. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 中高年齢者の再就職賃金につきましては、四十七年の賃金構造基本調査によりますと確かに御指摘のように必ずしも高いと申し上げるわけにまいらないかと思います。具体的な数字を申し上げますと、四十歳から六十歳以下の賃金につきましては、男子で四十歳から五十歳未満で七万一千円、五十歳から六十歳で六万六千円、六十歳以上で五万四千円。事業所の規模別に見ますると、千人以上の事業所につきましては、これは五十歳から六十歳未満でございますが六万九千円、それから千人未満百人以上の規模では同じく五十歳以上六十歳未満で六万九千円、こういう状況でございまして一般的に見ますると低くなっていると、こういうことは言えるかと思います。ただ、こういう五十歳から六十歳、あるいは六十歳をこえた人たちが再就職いたします場合に、その職種、作業内容によって必ずしもそれだけで、ただ賃金の額だけで高いか安いかということは一がいに断定できないんではないか。私どもといたしましてはただ単に中高年齢なるがゆえに同じ職種で賃金が安いということにつきましては、これは安定所の求人受付の際に窓口でそういうことにならないように指導はいたしておるつもりでございます。で、結局は中途採用者であるという、こういう中高年齢者の作業職種についていろいろと限定が事実上行なわれている、こういうことについて問題があろうかと思いますので、私どもといたしましては中高年齢者に対する中高年齢者向けの職種を選定いたしましてすでにもう雇用率も六十三職種について決定いたしております。こういう雇用率設定職種につきましては十分な賃金面についての指導も安定所の求人受付の際にいたしておるわけでございます。そういう面から今後さらに御指摘のようなそういう一般的な賃金低下というようなことを惹起させないように指導いたしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  48. 須原昭二

    須原昭二君 まあ、職安の窓口でなされておるんですけれどもね、もう少し強力にやっていただかぬとやはりこれは売りと買いの関係があるけれども、やはり適切にやっていただかないと、労働者そのものが安きに甘んじているというのが今日の現況です。この点はひとつさらに強力に進めていただきたい。  その点でいま職種の問題が出ましたが、やはり中高年齢層の職業訓練と賃金の問題、これについて若干お尋ねしておきたいのですが、この職業訓練というのは、やはり容易に再就職させる手段であると同時に、もう一つは、労働者の労働の質を向上させるという面から安い賃金であってならぬと私は思うわけですね。安い劣悪な賃金が今日の私は先ほど申し上げたような実態であって、したがって、中高年齢者の職業訓練後における労働賃金の実態はどうなっているのか、あるいはこういう賃金で、先ほど申し上げたような非常に劣悪な、条件の悪い賃金がやはり人たるに値する賃金だと労働省はお認めになっているのかどうか、ここにひとつ問題点があると思いますが、労働省がお考えになっておるところの一体全体、人に値する賃金とは、一がいに言うわけにはまいらないと言うかもわかりませんが、一体どの程度だということですね。労働省がこれは人に値する、人が生活するために必要な賃金だ、中高年齢者、職種別によっていろいろ違うけれども、一応このくらいの賃金だというのは、ものの考え方でいいんですが、どのくらいだと思っておられますか。
  49. 渡邊健二

    政府委員(渡邊健二君) まあ、賃金がどのくらいが適切であるかということは労働条件の基本でございますから、基本的には労使が話し合いできめられるべき問題ではございますが、一応これ以下で人を雇ってはならない、そういう意味における最低の基準といたしましては、最低賃金法に基づきましてそれぞれの最低賃金額を決定をいたしておるわけでございます。この額につきましては、これはやはりどのくらいが現在の情勢のもとでいわゆる法律によって強制すべき最低の額であるかということは、これはそのときどきの賃金水準、賃金情勢あるいは経済全般の情勢、そういう中できまっていくべきものであろうと考えております。で、現在そういう意味におきまして約二千九百万の労働者に対しまして主として地域別あるいは業種別に最低賃金がきまっておるわけでございまして、まあ、地域別の場合には、業種のいかんを問わず、すべてということになりますので、産業別の場合よりは額が低くなっています。一番高い東京がいま一日千四百五十円、一番低いところで千円強、千円よりちょっと上、こういうことになっていまして、大体千二、三百円ぐらいのところが中心に相なっておりますが、業種別の場合にはこれよりもかなり高うございまして、最近いろいろ改定をいたしておりますので、現在の時点必ずしも明確に把握いたしておりませんが、昨年、四十八年四月以降、昨年末までにきめましたものは大体業種別の場合には平均して千六百七、八十円になっておりますが、その後の改定がございますので、今日では平均はそれよりも高くなっておるだろう、かように考えておるわけでございます。
  50. 須原昭二

    須原昭二君 一日千四百五十円、高いところで。低いところで千円だと、これでは一家を形成する中高年齢者の生活費というものはたいへんなことだと思うのですね。  そこで、特に私は要望しておきたいのは、この職業訓練期間中の生活保障の問題ですね。四十九年度の職業訓練の関係予算案を見ますると、中高年齢者の職業訓練の対象者には四十八年は六万三千四十人、四十九年が六万四千百四十人、千百人ふえております。ただ婦人のほうは四十八年は三千三百六十人、四十九年度は同じですね、プラスマイナスゼロ。それから炭鉱のほうは四十八年は四千百六千人、四十九年度は、これまた同じ、プラスマイナスゼロ。合計で見ますると、四十八年、七万五百六十人が今年度は七万一千六百六十人、まあたった千百人ぐらいふえただけです。問題は、この訓練対象者の実質的な生活費であるところの訓練手当は、月額三万八千三百三十四円ですか、昨年に比べて六千百四十六円、これが増加になっておりますが、いずれにしても三万八千三百三十四円というような低額な職業訓練手当で中高年齢層の家庭、親子が安心して生活しながら職業訓練を受けるというような、そういう実態ではないと思うわけです。  そこで、この三万八千三百三十四円の積算根拠というのはどこにあるのか。どういう計算に基づいてこういう低額な平均月額三万八千三百三十四円になったのか、その積算根拠をひとつ御説明を願いたい。
  51. 久野木行美

    政府委員久野木行美君) 確かに先生の御指摘のように、訓練期間中の生活保障関係につきましては、三万八千三百三十四円というようなことになっております。で、これの積算は、基本手当というものが日額にしまして八百八十円、もちろんこれは一級地から四級地までございまして、東京のような場合には九百八十円というようにするというようなふうに、級で分かれておりますけれども、その基本の手当として日額約八百八十円ということにいたしました。それから、扶養手当というものにつきましては、妻の場合、一日にしまして百二十円、それから第一子につきましては三十円、第二子三十円、その他の子につきましては十円というような扶養手当、それから技能習得手当と申しまして、これで一日受講した場合には日額二百八十五円、それから訓練校への通校、通所のための手当としまして七十円というようなふうにしまして、それから、もしも家族から離れて泊っておる場合、それには寄宿手当を月額として六千八百円というような、各いま申し上げました四つの手当というものを全体としてならしまして、月額平均にいたしますと、先生のおっしゃいました三万八千三百三十四円と、こういうことでございます。  で、私どもといたしましても、この金額で十分だということではございません。それで、実情を申し上げますと、このいま申しました三万八千三百三十四円という訓練手当を受け取る人たちは三%ぐらいでありまして、その他の大部分は失業保険適用者でございます。特に中高年齢層の場合には失業保険の適用者でございますので、その方々は失業保険、もちろんその就業時におきます賃金いかんによりまして等級があるわけでございますが、失業保険の受給を受ける人たち、受給資格者につきましては、最高の場合、月額としては八万五千八百円支給するという方々もございますが、これがほとんど大部分で、訓練手当というのは現在三%の者が受けておる、在校生で三%が受けておる、こういう状況でございます。もちろん、この状態で私どもよろしいとは思いませんので、毎年この金額の増額につきましては努力いたしておりまして、四十九年度といたしましては一九・一%の増額、それから四十八年度につきましては一四・一%、四十七年度につきましては一一・九%というように、われわれとしてはできるだけこの金額を引き上げるために毎予算年度引き上げに努力中、こういうことでございまして、今後ともこれを続けてまいりたい、こう思っております。
  52. 須原昭二

    須原昭二君 政府は訓練手当額というのは何か生活保護の四級地かに合わせて積算をせられているというふうなことを聞いたのですが、そうじゃないんですか。
  53. 久野木行美

    政府委員久野木行美君) 必ずしも生活保護の関係だけではございませんで、各種のこういう種類の手当というようなものを総合勘案しつつやっているというのが現状でございます。
  54. 須原昭二

    須原昭二君 テレビを見ておりましたら、きのうの予算委員会でも生活保護費は物価にスライドさせたいと、こういって大蔵大臣答弁しているわけですね。私もこれは訓練手当というものは期間中における生活保障だというたてまえでものを解釈すべきだと思う。そういう点から考えると、この大蔵大臣の言った答弁にならうわけではございませんが、訓練手当も物価上昇にスライドすべきだ、私はそう思うんですが、その点、労働大臣どうでしょうか。
  55. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) これはなかなかむずかしい問題でして、だんだんといま考えているところであります。
  56. 須原昭二

    須原昭二君 だんだん考えているんですか。検討中ですか。考えておるのですか。——これはぜひとも、考えているだけではなくして実現をするように要望しておきましょう。ぜひともお願いをいたしたいと思います。  それから、時間の関係がございますから要領よくひとつ御答弁をいただきたいと思うんですが、次は雇用基本計画の問題です。政府は四十八年一月閣議決定で雇用対策基本計画、私もここに持ってきておりますが、四十七年から五十一年ということで計画をつくられました。そこに、また先ほどの所信表明の文章をとやかく言うわけではございませんが、下に「ゆとりのある充実した職業生活をめざして」と、まさに飛びつきそうな副題がついておるわけであります。これに関連をして、現在経済変動によって影響を受けやすい弱者というなら、もう一つ私は身体障害者の雇用の問題が出てくると思うわけです。この副題とどのような結びつきがあるのか、これが一つ大きな私は問題点として提起をせざるを得ないのです。政府の、とりわけ労働省の基本的な身体障害者対策、これは基本計画の一三ページに書いてありますが、「現在約一七〇万人と推定されている心身障害者の就業状況についてみると、最近漸次改善されつつある」、こう実は出ておるわけです。この「漸次改善されつつある」と述べておられますが、その中身について私はお尋ねをしたいわけですが、どのように漸次改善をされておりますか。
  57. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) そのあとがあるんです、あなたのおっしゃったあとが。(笑声)「とはいえ、まだその雇用機会は十分とはいえない。」、ここに私は実は注目しているわけでありまして、おっしゃるとおり、十八歳以上の心身障害者は約百七十万。そこで、その中で未就業者のうち就職を希望しているのは約十万だといわれております。ことに、どの委員会でもそうですけれども、この問題はほんとうにどの先生からも取り上げられて御質問いただいているわけでありまして、この表明の中にありますように、これこそが労働省の中の重点施策の一つと私は考えております。  大体法定雇用率が丁三%に対しまして今日の達成率が一・二九%までのぼっております。しかし、残念なことに大企業ほど実はその率が悪いんです。でありますから、各官庁、さらにこういう事業所、そういうところに対して、もっともっと労働省として働きかけする必要があるんじゃなかろうかと考えておりまして、先日以来、各組合の方々が賃金問題、制度問題で私のところにお見えになりました機会に、事業所のほうにもお願いしているけれども、労働組合のほうからもひとつ御協力をお願いいたしますというて私のほうからお願いをしている一方、労働政務次官が中心になりまして、内閣の政務次官会議にこれをはかりまして、各官庁ともどもに足並みそろえてぜひ達成率の悪いところは各役所、達成するようにと、こういう申し入れなどもしているわけであります。  なお、それぞれの具体的な問題については政府委員から答弁さしていきたいと思います。
  58. 遠藤政夫

    政府委員遠藤政夫君) 雇用基本計画の中に提示されておりますように、身体障害者の雇用状況が逐次改善されてきております。と申しますのは、ただいま大臣からお答えいたしました法定雇用率一・三%が現在一・二九%、ほぼ法定雇用率にまで近づいておりますが、四十三年に一・一四でございましたものが四十四年、四十五年一・二五、四十六年一・二六、四十七年に一・二九とここまで上がってきておりまして、漸次改善されてきております。これはこの数字が示しておるわけでございます。ただ、いま大臣からお話ございましたように、大企業が依然として一・一七、こういうことで未達成事業所が全体の半数近くになっております。四五%が未達成だと、こういうことでございますので、今後はこういった五百人以上の大企業を中心にいたしまして、法律に定められております採用計画をつくらせると、こういう行政措置につきましても、百人以上の事業所につきましてこういう措置がとれるわけでございますが、来年度は、五百人以上の事業所に重点を置きまして雇い入れ計画作成命令を発しまして、この一・三の雇用率を達成させるように集中的に措置をいたしてまいりたい。こういった民間企業で未達成の事業所につきましては、安定所の求人受理の際に、どうしても達成しない、あるいは言うことを聞かない、こういう悪質の事業所につきましては求人事業を保留するとか、あるいは審議会でも御答申ございました、こういった理由なく達成に協力をしない事業所についてはその事業所名を公表するといったような制度につきましても、前向きに積極的に実施について検討いたしてまいりたい。と同時に、身体障害者の雇用につきましては、こういった人たちが健常者にまじっていろいろな作業場で十分能力を発揮できるような体制をとることがまず前提でございますので、こういった身体障害者にいろいろな職業訓練をいたしまして作業能力をつけていただく、と同時に、受け入れ側の受け入れ態勢を整備いたしてまいります。そのためにはいろいろな作業環境の整備、あるいは作業用具の研究開発、こういったための補助あるいは援護措置等も今後十分行なってまいりたいと思いますし、同時にまた、身体障害者を受け入れるために工場をつくったり、作業環境を整備するための特別な長期低利融資といったような措置も現在拡充してまいっておりますし、あるいは税制面の優遇措置も来年度さらに一段と強化されることになっております。同時に、身体障害者の雇用につきましては、ただ単に当事者だけの問題ではなかなか解決できません。やはり国民運動として身体障害者の雇用の促進を進めてまいる必要があります。それとあわせて企業の受け入れ態勢をより一そう強化するという意味におきまして、身体障害者の雇用促進協会を関係団体でつくっていただきまして、これに対する助成措置も、数年来御要望ございましたのを来年度初めて実現いたすことになりました。現在十六都道府県でこの雇用促進のための団体が設立されつつありますが、来年度中に全国の約半分程度の都道府県にこの団体の設置を助成いたしたいと思っております。ここ両三年中に全国各都道府県に推進のための団体をつくり上げていきたい、かように考えておりまして、こういうことと両々相まって身体障害者の雇用率の達成、今後の雇用の促進につとめてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  59. 須原昭二

    須原昭二君 大体いまお話を聞いてわかるわけですが、身体障害者の雇用対策、とりわけ雇用率の未達成に対する措置、これに対する強力な私は措置をしなきやならないのではないかと実は痛感している一人です。  そこで、現在の民間の雇用率の達成状況についてはいま大企業だけ実は一・一七、五百人以上ですか、こういう数字が出てきたわけですが、身体障害者の法定雇用率は民間は一・三%、特殊法人一・六%、官庁の事務系統が一・七%、官庁の現業が一・六%、こういう法定雇用率があるわけであります。したがって、民間一・三といってもいま大企業のほうが未達成率が高いということは私は非常に異様な感じを受けるわけであります。これだけ商社や大企業がぬくぬく大きくなっているにもかかわらず、そういう社会的責任というものを果たさないという、こういう問題は当然国会の中で参考人等招致されて指摘をされるのは当然だと私は思うわけであります。これに対してただ求人の紹介をストップするぐらいのことであっては私はそれは対応でき得ないと思うのです。  そこで私は、実はこの基本計画の作文の中の三四ページを見ますると、心身障害者についての「雇用機会の創出をはかる」とか、あるいはまた「就業後の職場適応や労働条件についても十分に配慮をはらう必要があり、このための指導、監督を強化する」と、まあことば上では非常にきれいごとが書いてあるわけです。三四ページに書いてあります、まん中ごろに。現在、大企業や大商社というのは利潤追求をモットーとして、金もうけのためなら何をしてもいいといったような社会的道徳というか、社会的責任の責任感というのは全く欠除しておると言っても私は過言でないと思うわけです。その対抗手段として、ただ指導だとか監督だけでは、あるいはまた求人を紹介するのをやめるというぐらいななまやさしい手段では対応できないと私は思うのです。そこで私は、身体障害者雇用促進法を改正するとか、これに対する行政罰、それを守らなければ行政罰を加えるぐらいの罰則をつけなければ大企業というものは対応しないのではないか、こういうふうに危惧を持つわけです。したがって、それに対するひとつ御見解をこの際明確にしていただきたいということ、これが一つと。  われわれは、今後この問題を精査し、さらに政府にも迫っていかなければなりませんから、したがって民間企業の一・三%、大企業中小企業、この区別をしてどのぐらいの達成率に至っているのかあるいは特殊法人の一・六%がどういう実態にあるのか、官庁現業あるいは事務系統おのおの一・六、一・七ということになっておりますが、この達成率を具体的にひとつ資料として提出をしていただきたい。これは資料提出であります。  私は、この法定雇用率をもっとふやしてもいいのではないか。今日交通事故もあります。労働災害もあります。心身障害者だって激増いたしておるわけであります。この雇用率というのは非常に私は低いと見ている、諸外国に比べて。ですからこれを高くすると同時に、行政罰を加えるような、そういう対応するような身体障害者雇用促進法の改正というものを積極的にやはり考えるべき段階に来ているのではないかと思うが、労働大臣はどうお考えになりますか。
  60. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 心身障害者の雇用問題について御熱心な御意見、ありがとうございます。  先ほど申し上げましたように、労働省としては重要施策の一つにしておりまして、気のついたところは先ほど申し上げたとおり、動いてもおります。いま御意見のあったように、行政罰等々の話も審議会などでは出ておりますけれども、やはり行政罰というところまではどうだろうかというふうな話も実は審議会でもあるわけであります。いずれにいたしましても、私はこういういまの日本の苦しいときに考えることはやはりお互いの連帯感だと思っております。そうしたことからしまして、いまあるこういう立場、さらにまた国民運動、そしてまたこういう国会の審議、そういうものを通じましていまあるところの雇用率というものを達成し、それがまた上向きするような方策に懸命のひとつ努力をしてみたいと、こう思っております。
  61. 須原昭二

    須原昭二君 そこで、さらにつけ加えておきたいんですが、民間企業というような、総括的で一・三%という表現ではなくして、何名までの企業はどれだけと、大きくなれば大きくなるほど包容力があるんですから、この点はやはり雇用率を改正するようにやはり考えていただきたい。それからまあ、検討するということですから、きょうは申し上げてもいい答弁は出てこないと思うんですが、ぜひともこれはもっと指導監督というワク内から、さらに強制権を持つようにひとつ善処を願いたい、こう思います。  まあ、時間があと五、六分でありますから、もう一つ、もう二、三点だけ申し上げたいんですが、次は、ことしの一月の八日でしたか、中央最低賃金審議会で、「最近の物価の異常な高騰に伴う最低賃金改定のための緊急特別措置に関する建議」、そうしたものが全員一致で労働大臣に提出されております。わが国においては雇用労働者は現在三千五百七十万人といわれ、そのうち、全体の六五%に当たる二千三百十五万六千人という、まあ、四十八年の九月現在でありますが、六五%に当たる労働者が最低賃金、すなわち最賃法の適用労働者である。これを見ると、世界でGNP第二番目だといって大きく胸を張っておるんですが、実は一皮むけば低賃金国であるということがこの数字から明らかになるのではないでしょうか。その点はどうお考えになりますか。
  62. 渡邊健二

    政府委員(渡邊健二君) 最低賃金がどのくらいが適当であるかということにつきましては、いろいろの御意見があると存じます。で、日本の場合には、御承知のように、産業構造からいたしましても、二重構造以上に、あるいは三重構造、四重構造といわれる大企業中小企業等の経営上の格差もございまして、法律をもって強制する最低賃金であります以上、それらの実情をも十分考えて設定する必要があるわけでございます。そこで、現在の最低賃金法によりまして、各地方の最低賃金審議会の中で、三者構成の中で、地域あるいは業種の実情に応じました最低賃金の設定をいたしておるところでございます。で、金額につきましては、現在の賃金額は先ほどお答え申し上げましたので、重複を省略いたしたいと存じます。
  63. 須原昭二

    須原昭二君 これはね、何といいましても、表現を変えようとも、まさにわが国は低賃金国であるということはこの数字で明らかになるわけです。特に、しかもこれら最賃法適用労働者が年々多くなってきておる、この現実はお認めでしょう。このように、この最賃法適用労働者がだんだん多くなっているが、まだ、この数字の中にあらわれてこない賃金労働者が多くの全国各地にたくさんいると私は思うわけなんです。そうすると、政府は一口目には雇用の安定、雇用の安定と、こうおっしゃいますが、雇用の安定の場合、労働条件の劣悪なところでも、ただ雇用されればいいんだというようなものの考え方ではなくて、実際生きている人間として、人たるに値する生活を保障する賃金が伴わなければ私は実を得ないと実は思うわけです。労働省雇用の安定という理念、さらにこのことしの一月の八日ですか、中央最低賃金審議会、この建議を今後どのように取り扱って最賃を改善していく方針なのか、この際、大臣から御所見を承っておきたいと思います。
  64. 渡邊健二

    政府委員(渡邊健二君) 最低賃金の適用労働者が、先ほど先生二千三百万とおっしゃいました。これは昨年九月の現在の数字でございまして、現在では二千九百万に相なっております。最低賃金の適用労働者というのは、決してその人たちが全部最低賃金額で払われているということではございませんで、最低賃金で底ささえをされておる適用労働者ということでございまして、これは四十六年以来、私どもは最低賃金の適用労働者を全労働者に及ぼそうと、こういうことでこれは官公、——国家公務員や地方公務員はこれは別でございますけれども、民間の全労働者に及ぼそうということで適用の拡大をはかっております。そこで、年々ふえておるわけでございまして、まあ、現在では二千九百万ということで、民間労働者の大部分まで適用労働者がふえてまいってきておるわけでございます。もちろんその適用労働者の大部分は、最低賃金額よりもはるかに高い賃金を得ておるわけでございますが、最低賃金額につきましても、一ぺん設定をいたしましたらそのまま放置するということではなしに、賃金水準の上昇やあるいは物価の上昇等に対応いたしまして、逐次額の改定をしております。したがいまして、現行の制度になりました四十三年以降を見ますると、最低賃金額の引き上げ率は、物価よりもあるいは一般賃金水準の上昇率よりもはるかに高くなっておるわけでございまして、最低賃金を改定する際にはおおむね一〇%前後の労働者がそれによって賃金が引き上げられると、こういう結果に相なっておるわけでございます。しかしながら、最近は特に異常な物価の高騰が続いておるわけでございまして、そういう観点から一月八日には、先生がただいまおっしゃいましたように、最低賃金の効力が、実効が失われることがないように、設定後相当期間を経過した最低賃金については改定の一そうの促進をはかる。特に四十八年三月以前に決定された最低賃金で通常の手続によって早急な改正をはかることが困難なものについては、緊急特別の措置として、その最賃決定後の消費者物価の動向によってその上昇率に応じて早急に改善をはかれという、労・使・公益三者一致の御建議をいただいたわけでございます。そこで、一月以来各地方最低賃金審議会におきまして、その建議に基づきまして、四十八年以前に決定されました最低賃金の改定をいま進めておりまして、すでに大部分の府県でその改定が終わっております。  数字を申し上げますと、昨年四十八年三月末にございました最低賃金件数が約四百五件ございますが、現在までにそのうちの三百六十五件の改定を一月以降実施をいたしましたわけでございまして、三十二件についていまなお審議中、未審議のものが八件ということで、大部分のものは改定が済んだわけでございますが、残りのものにつきましても早急にこの建議に従いまして改定を完了するよういま努力をいたしておるところでございます。
  65. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) ただいま局長が御説明申し上げたとおりでございまして、いまから先もいろいろなところで努力いたしますが、この際に私はやっぱり日本が、労働者諸君が非常にだんだん向上している一つの例としますと、ここ十年間の賃金を見ますと、一九六〇年に日本労働者の賃金のアメリカは約九倍、八七二、日本を一〇〇としますと。ところが一九七三年にアメリカは日本の一九四・八ですから約二倍になりました。二倍のところまでようやく押し詰めたと。イギリスが一九六〇年には二八六・三、日本の約三倍でした。それが一九七三年には九二・一、西ドイツが一九六〇年に二四〇・七でしたが、一九七三年に一四六・〇、一倍半、こういうふうな実は数字が出ておりまして、最低賃金というものを一番基礎にしてここまでお互いの労働者の賃金が上がってきているということもひとつ御理解いただきたいと思います。
  66. 須原昭二

    須原昭二君 それはまあ、データを御丁寧に御発表になりましたが、あまりにも過去における日本労働者労働条件、賃金というものが低かったということを政府みずから認めたことであって、だから、したがってこれでいいんだというわけではないわけです。諸外国もまだこれから上がっていくわけですから、やはりそれに対応するように国際的な比較から見て遜色のないようにしていくというのが私は労働省の指導でなくてはならぬと思うわけです。ですから、それはわざわざ御明示をいただいたことは感謝しますが、それだけでいいというわけではございません。その点は念を押しておきたいと思います。  そこで、最後でありますが、この所信表明を、私は一応この間お話を聞いて盛ってあることは非常に美辞麗句が並べてあるわけですが、いわゆる労働大臣は短期間でまたおかわりになるわけです。これは非常に日本制度としておかしいわけなんで、やはり短期間すわっておればいいんだということではなくして、大臣は自分の任期中に何か残していくぐらいの英断といいますか、積極性というものを持っていただきたい。ただすわって無難に進めていけばいいということではなくして、長谷川労働大臣の時代に、こういう問題とこういう問題と、こういう問題だけは解決をした、実現をした、こういう積極的な態度を私はこの際要望しておきたいと思うんですが、その点の決意のほどを最後に伺っておきたいと思います。
  67. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) たいへんな御激励をいただきましてありがとうございます。  そういう覚悟でやるつもりですから、せっかくのひとつ御支援のほどお願いいたします。
  68. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、労働大臣所信表明に関連をいたしまして質疑を行ないたいと思っております。  この所信表明を伺いまして、詳細に拝見をしたわけでございますけれども、勤労婦人の対策というのがきわめて乏しいわけです。五つの柱の中の重点施策の中の第二の項にわずかに、最後のところに「勤労婦人や勤労青少年の福祉対策としては、」というところでわずかに触れられておるというふうなことになっておるわけでございますので、私はきょうは婦人労働者労働条件の向上に関して若干お尋ねをしていきたいと思っております。  で、御承知のように、婦人労働者は、昭和三十五年には六百九十三万人、それが昭和四十六年度になりますと千百九万人と急速に増加をいたしております。婦人の生産活動への参加というのが、それが一方では婦人の地位の向上ということにつながって喜ばしい現象ではありますけれども、反面では資本家、事業主から安易に使える低賃金の労働者といたしまして位置づけられ、あるいは利用されるというふうな側面、こういうものが出てまいっておるわけでございます。したがって、労働行政を進めていくにあたりましては、婦人労働者労働条件の向上をさせると、そして婦人の地位の向上のために力を特に注ぐべきではないかというふうに考えておる次第でございます。  そこで、昨年の八月六日に公表されております「勤労婦人福祉対策基本方針」、これを具体的にどのように進めておられるか、まず最初に御見解を承りたいと思います。
  69. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 勤労婦人の問題は、私は千二百万と承知しているぐらいに非常に大事なことだと思っております。ことに私などは子供のころに女工哀史、さらにまた身売り、白色奴隷の産地、そういわれた東北地方の出身でございます。それだけに婦人の地位の向上ということに対しては、こういう近代社会において非常な力を持たしてもらわなければならぬという感じ方を持っておることをまず一番先に申し上げておきます。  そこで、四十八年七月の「勤労婦人福祉対策基本方針」を策定して以来どういうことをやっているかというお話でございますが、一つは啓発活動の積極的展開あるいは職場における母性の健康管理に関する行政指導の実施、さらにはまた育児休業の普及促進、さらに勤労婦人のための福祉施設の整備等々やっております。そうしたことについての、なかんずく私たちは勤労婦人の能力の有効発揮を阻害している若年定年制の不合理な雇用慣行の是正、就業における男女差別解消のための苦情処理方策の検討、こういうどころに努力しているわけでありまして、具体的なことについては局長からまたお答えをいたさせます。
  70. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は福祉対策基本方針、これを一般的に進めていくというだけではなしに、労働省としては必要な法改正、これが積極的に進められなければならない段階にきているのではないかというふうに考えるわけでございます。勤労婦人福祉法に対する附帯決議へこれは四十七年の国会での法案の通過するときの衆参における附帯決議によりますと、当時の塚原労働大臣は、あの法律が施行されるにあたっての附帯決議、これの趣旨を十分尊重して善処をするという旨のお約束をされておられますけれども、そういった点を踏まえて、これは四十九年度具体的には行政上どのように取り入れられていっておるか、その点についてお伺いをしておきたいと思います。
  71. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) お尋ねの勤労婦人福祉法の御審議の際の附帯決議でございますが、その中の一番大きな点は、育児休業の普及に関しまして、その休業期間中の生活安定の方策、これを早急に策定せよと、このような点が一番おもな点であったと理解いたしております。この点につきましては、法律が施行になりました後、間もなく育児休業制度研究のために特別の専門家による研究会議というものを設置いたしまして、まず育児休業というものの望ましいあり方ということについての御検討を願い、特に重点といたしまして、休業期間中の生活安定の方策ということを課題としての御研究を願ってまいったところでございます。この研究会議におきましては、育児休業の一つのモデル的なあり方ということについては一応中間的な報告をお出しいただきましたので、それに基づいてただいま普及活動をいたしておりますが、休業期間中の生活安定方策、これにつきましてはかなりむずかしい制度的な問題でございまするが、しかし、これを何とか実現いたさなくては育児休業制度が絵にかいたモチになるということで、鋭意御検討をお進めいただいておると、このような段階でございます。
  72. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 次に、いま婦人の労働者から私、先ほどちょっと申し上げましたけれども、労働基準法を改正して婦人の権利を拡大するようにという要望というのはこれは非常に強うございますけれども、そのおもなものは大体労働省にはどういうふうに反映され、結集されているか。婦人労働者から労働基準法を改正してほしいという点についての要求項目というのは幾つか出ていると思うんですけれども、どういうものが出ているか、ちょっと御報告をいただきたいと思います。
  73. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) これは主として労働組合婦人部からの要請、要望という形で私どものところに届けられるもの、あるいは個々の婦人労働者からの投書であるとか、あるいは問い合わせであるとか等によって私ども把握するわけでございますが、いろいろな御要望はあるわけでございますが、基準法の中で具体的な御要望として幾つかのおもな点を拾いますと、一つには、母性保護関係で産前産後の休業期間、これが現在の法律で前後それぞれ六週間となっておりますのをさらに延長してほしいという点が一つ大きな点であろうかと思います。さらにそれに加えてつわりの際の休暇といいますか、休業を認めてほしいというような母性に関するところの保護をより厚くしてほしいという点が一点であろうかと思います。あるいはまた、女子であるということのために労働時間の制限等が現在もございますが、それをさらに保護を厚くするようにという労働時間に関するもの、あるいは深夜業等の例外規定を狭めるように、そのような点から要するに女子に対する保護をより厚くするようにという趣旨の御要望が非常に強く出ているわけでございます。しかし反面、また女子の機会というものをもっと広げられるように、女子がもっと広い職場に進出できるようにしてほしいと、そのような要望もこれも基準法関係の要望として出ていると、こういう点も指摘できるわけでございます。
  74. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いまお述べになられたような諸要求ですね、こういった要求については、これはどのように労働省としては論議をし、改善をする方向で進めておられるのか、その点について。
  75. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 労働基準法につきましては、これはその改正ということはきわめて慎重に検討すべき問題でございますので、かねてから基準法研究会という研究機関におきまして慎重な御検討を願っているところでございますが、この基準法研究会自体は、これは基準法をどのように改正するかというよりも、その一歩手前の段階で、現在の基準法の運用上、どこに問題があるかと、そのような点を実態の上で究明すると、こういうことのために有識者、学者の方々による専門的な御検討を願っております。で、この研究会の結論が出まして、その上で改正の必要があるということになりました場合には、また三者構成による労働基準法の審議会といった機関、正式の機関におはかりすると、そのような手続になってまいるわけでございますが、そのような際には各界から出ておりますいろいろな御要望、これらを当然勘案して、御検討をお進めいただけると、そのように考えておるところでございます。
  76. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはいまお答えのとおり、研究会あるいは審議会等で御相談をいただいているということなんですけれども、これは労働大臣、改善の方向でそういう研究をしていただいているのか、審議に付しておるのかという点が一つは問題なんです。その点について大臣の御見解どうですか。
  77. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私は、ふびんにして昨年十一月なったばかりでしてね、どういう問題が、ことにあなたのおっしゃる婦人の立場からどういう問題が問題点になっているかというところを実は承知してないところでして、こういう審議を通じまして、皆さん方お話の中にどういう問題があるかということを理解をしながら、一方またこういう制度の中にそれがどういうふうな形で合わせていかれるものかということも研究してみたいと、こう思っております。
  78. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いま、大臣、率直にお答えをいただいたんですけれども、問題は、研究会、審議会等で御検討いただく場合に、改善の必要があるという立場での御検討をいただくという場合と、あるいはむしろそうでないと、逆の立場で扱われるという場合だってこれはないとは言えないわけです。で、少なくとも労働省の立場としては、そういった勤労婦人からたくさんの要求が出てきている中で、これを改善の必要がありとする立場でこれが検討されているのかどうかと、基本的な姿勢の点についてお伺いをしたかったわけで、そういう点でもう一度、簡単でけっこうですから、ひとつお願いをしておきたい。
  79. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私は、何といっても働く諸君が日本の宝だと思っております。ことに最近の御婦人が一生懸命いろいろな職場に進出されていますが、そういう方々がいまから先も向上されるような姿でやっていかなければならぬという気持ちを持っておりますから、問題が起こったものはそういう形において理解しながら、時に推進していきたい、こう思っております。
  80. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 少し具体的に申し上げますと、たとえば産前産後の休暇の問題、先ほど局長がお述べになったように、そういった母性保護に関する要求というのはたいへん強いと、改善の要求というのがね。ですから、産前産後の休暇でございますけれども、現在の基準法では産前産後おのおの六週間ということになっているわけです。で、要求されているのは、産前産後それぞれ八週間というのがおおむねの要求だと承知しているわけでございます。で、四十五年度の統計を私拝見したんですけれども、産前は平均三十六・一日、産後は四十六・一日というふうな数字が出ております。で、産前の分を産後に回す人、こういう人も含めて、大体産後は現行の法規では四十二日なんですね、六週間ですから。この四十二日を上回る日数を休んでいるというのが実情だと思うわけです。また、諸外国の例を見ましても、先ほどから諸外国の例も出ておりますけれども、イタリアやフランスではすでに前後おのおの八週間以上というのが実施をされているわけです。で、日本もいま、先ほどからのいろいろな質疑の過程で出ておりますように、いわゆる国民総生産の成長、これが誇れる時代というのが過ぎて、たいへん深刻な批判がなされているという状況になってきているわけですが、そういう中で、母性保護の立場からいいましても、また家庭生活の必要からいいましても、こういった要求ですね、産前産後おのおの八週間という立場での法改正というのは必要な時期にきているのではないかという点なんです、具体的に申し上げますとね。そういった点での労働大臣の先ほどの一般的な御見解は伺いましたけれども労働大臣の基本的なかまえですね、そういう点をお伺いしておきたいと思うんです。
  81. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) ちょっと手続的なこともからんでおりますので申し上げます。  ただいまお尋ねの産前産後の休業期間を延長すべきかどうかと、このような点につきましては、これは先ほど来申し上げております労働基準法研究会の中で、特に専門委員会を設けまして、科学的、医学的な御検討を願っております。と申しますのも、この産前産後休業の規定というのは、とりもなおさず、まあ、婦人の婦人たる特質、妊娠、出産というその特質、まあ、母性といわれる特質を考慮したところの規定でございまして、これは、ただ単に法律の理論で何週間にすべきときめることではございませず、やはり医学的なあるいは心理学的なと申しますか、そのような科学的な検討が、まず必要なのではないかと、このような考え方で、お医者さまを中心とした専門的なグループで御検討を願う。このグループの研究の結果を、基準法研究会のほうへ持ち上げまして、そこで基準法研究会がさらに一つの結論をお出しになると、こういう手続を現在とっている最中でございますので、何週間がいいかとかというふうなただいまのお尋ねにつきましては、まだその結論をお出しするというような段階にはなっていないというのを、経過的な問題として、まず御説明させていただきます。
  82. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 先生もお医者さんでございますし、女性は私たちのやらない苦労であるところの産前産後、こういうことがございますので、これはどの部会においても、ことに文教部会とか、それぞれの部会においても、だんだん論ぜられているときでございますので、いま局長が申されたようなことなどもございますので、よくひとつ注目しながら、将来の研究、私もしてみたいと、こう思っております。
  83. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは私は、要求が八週間出ておると、諸外国でもすでに実施されているというふうなことを申し上げたのでございまして、やはりいまそういった産前産後の休暇の延長の要求というのが切実に出てきているというのは、先ほど局長が言われた医学的、科学的な検討ということが一つの条件であると同時に、社会的条件が、あの基準法を制定された昭和二十二年ですか、そのころの社会的条件と現在と比べますと、たいへん変わってきている。そういった状況も踏まえて、前向きに検討されるかどうかという点が、非常に必要な段階にきているんではないかという点を、特に強調したいわけですが、そういう点を御理解をいただいて、前向きにぜひ検討を進めていただきたい。私一つずつ要求を申し上げるつもりじゃないんですけれども大臣、ちょっと具体的なほうがわかっていただきやすいと思って、一、二具体例を出してお伺いをしているわけです。  もう一つは、たとえば、先ほど局長もお述べになった育児休暇あるいは育児時間の問題、こういう問題についてですけれども、特に育児時間の延長という点の要求もかなり強いわけです。これも、いまは六十分ですね。これをせめて九十分に延ばしてほしいというのが、労働婦人のたいへん強い要求になっているわけです。ところが四十五年度の、ちょうどお乳を飲ますための時間ですね、子供を育てるための時間、ちょっとこまかい話になりますけれども、切実な要求になっておりますから。昭和四十五年度の労働省調査では、育児時間請求者というのは、わずかに一八%だという統計が出ている。育児時間の延長というふうな要求が出てきているというのは、これは一つは、やはり社会的条件の非常に最近の違いですね。たとえば、通勤事情の問題、あるいは住宅が職場からたいへん遠距離になってきているというふうな問題これは社会的情勢がたいへん労働者にとって条件が変わってきているというふうな中で起こってきている問題だと思うんですけれども、こういった点でも、ほんとうに勤労婦人福祉法の精神を生かす立場からいいましても、検討しなければならない課題になってきているんではないかというふうに考えるわけです。そういった点も、ひとつ前向きにぜひ検討いただきたいというふうに思うのですけれども、簡単に御見解をお伺いしておきたいと思います。
  84. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私自身が女性じゃないもんだから、そういうデリケートなことはなかなか理解できませんけれども、私は、気分といたしますと、やはり女性あるいは母性保護ということが非常に大事じゃなかろうかと、こういうふうに感じているものでありまして、いまから先も一つ一つの問題については、よくひとつ勉強させてもらいたい、こう思います。
  85. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私の時間の都合がありますから、一つずつ申し上げるつもりはありませんので、一、二例を出しましたけれども、婦人労働者の権利あるいは母性を保護するという立場を、がっちりと労働省が守るという立場をおとりになるということは、単に婦人労働者を守るというだけではなしに、民族の将来をになっている婦人を守るわけですから、そういった点では、いま働いている婦人だけを守るというふうな簡単な課題ではない、非常に大きな民族的課題をになっておる課題だという点で、ぜひ労働大臣が婦人労働者の権利を守るという立場で、積極的な姿勢を確立をされることを強く要望しておきたいんです。その点だけ一言お伺いをいたしまして、あと具体的な問題でお尋ねをしていきたいと思います。
  86. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) まさにいま働く勤労婦人だけの問題じゃなくして、民族の母であるおかあさん方の問題でございます。そうした意味からして、私はほんとうに女性、母性という方々が、お子さんを育てながら、働きながら、コインロッカーに子供を捨てたり何かしないような、そしてまた、子供に母乳を飲ませながら、自分の血と肉を与えていくような、そういうことに環境なり福祉が充実するというところをいまから先も注目しながら、そちらのほうを推進していきたい、こういう気持ちだけをお伝えしておきます。
  87. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 たくさん言うてくださると、ひっかかりが出てくるんですけれども、これはまたの機会にいたしまして、具体的な問題をお尋ねしていきます。  その一つは、大阪市交通局における女子の若年定年制の問題についてお尋ねをしていきたいのです。  大阪市の交通局では、労働協約で昭和三十三年の九月に、自動車の車掌及び観光案内員は三十三歳、それから出札員は四十五歳、女子業務員は四十八歳、それ以外の職員は五十五歳というふうな若年定年制が実施されております。労働協約で定められているという点で、これは問題があるとは思いますけれども、昭和四十七年までは、一人の人を除いて全部が大体強制的あるいは半強制的という形でやめさせられてきている。若年定年制というのは、三十三年度からやられていますから、四十七年までは一人を除いてみなやめています。こういう実情があるわけですけれども、まずどういうふうに思われます。労働省の御見解を先にお伺いしたい。
  88. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 原則論でございまして、私は大阪交通局そのもののそういう実態というものを詳しく掌握しておりませんが、原則論から申し上げますと、合理的な理由もなく、定年年齢に男女の差を設ける、いわゆる若年定年制というものは、憲法なり労働基準法の精神にも勤労婦人福祉法の基本的理念にも反するものじゃなかろうか、こう考えます。
  89. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 自治省、直接御関係のある自治省の御見解はどうでしょう。
  90. 宮尾盤

    説明員(宮尾盤君) いま御質問がございました大阪市の交通局の問題でございますけれども、私どももこの労働協約の中身を検討をさせていただいたわけでございますが、ここで定めております問題につきましては、労使間で先ほどお話がございましたように団体協約を締結をして、それに基づいて従業員がその年齢に達すればやめると、こういう仕組みになっておるわけでございます。で、ここできめておりますのは、いま申し上げましたように、いわゆる首切りのための定年ということではございませんで、ある一定の年限に達しまして退職した場合には、ここで定めております三十三歳とか四十五歳とか、そういう年齢に達した場合には一定の処遇を行なってあげると、こういう趣旨と理解をいたしますので、これはそういう意味でいわゆる首切り定年ではないと、したがいまして法令または条例には違反をしていないんだと、こういうふうに考えております。
  91. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは協約だけをごらんになるとそういうふうに思われるかもわかりません。ちょっと具体的な実情を申し上げてみたいと思うんですけれども、現在、大阪市の交通局の中では、四十七年までは一人であったのが、いま十三人、その定年制をこした、いわゆる労働協約で結ばれた定年制をこした女子従業員がおるわけです。で、労働協約で若年定年制をとってはいるんですけれども、実際にそれじゃあ四十七年までに一人しか残らなかったというのは、なぜそういう状態が起こっているかという実態が一つ問題がある。で、私はその当時大阪におりましたから、かなり具体的に知っているわけですけれども、これはやはり職制を通じて半強制的勧告その他いろいろな形でやはりやめざるを得ないというふうな状況になってやめていっているわけです。で、具体例の一例を申し上げますと、川田和子さんという、この方は四十六年一月からいわゆるきめられた三十三歳の定年制をこした人ですが、自宅まで押しかけて退職するように家族も含めて強要された人、こういう人がおる。もっと具体的に言いますと、これも川田さんの場合ですけれども、家まで、やめるようにと言って家族も含めて説得に来た。そして職場ではどういう状況かというと、いよいよ三十三歳、あしたで定年になるという前日です。その勤務をしている営業所の所長が、出勤係やその他関係者に電話をして、あすから川田にはどんな仕事も一切やらせるなという指示をしております。そのことは、職場におるわけですから、本人にすぐわかった。そこで抗議に行ったわけですね。そんなむちゃなことをやるんならこれは断固としてがんばると、こう言ったわけです。これは本人の供述ですがね。で、そういうことをやるんならマスコミに訴える、というふうなことを言ったそうです。そうしたら所長が、今晩一晩ゆっくり考えてあした返事をしてくれと、こういうことであったと。それで定年の延長になってからの初めての日に出勤をしたら、所長は、考え方は変わったかと、こういうふうに聞いたと。そこで本人が、変わりませんと答えたら、所長は、ここでしばらく待っていてくれ、ということで仕事を与えなかった。そして待っている間にその事業所の所長は本局へ飛んでいった。で、本局から帰るのを待っていたら、今度は、いままでどおり仕事をしてくれ、というふうな形で働き続けているという状態なんです。毎日の呼び出しの中で、まあ、その後も毎日呼び出されている、事務所の人やまわりの上席の職制からいろいろと口添えがされるというふうな中で、とにかく退職願いを書けの一点ばりだ。で、ある日私がと言って、——これは本人の供述で、私がと言っているんですけれども、川田さんが紙を持っていって、きょうは書かしていただきます、と言ったら、当局はたいへん喜んだ。私はあなたたちの言っていることを書かしてもらいます、と言ったんだそうです。そうしますと、ばかやろう、と言ってどなった。現場の助役だそうですけれども、ばかやろう、と言ってどなったんで、私は紙に、どなったと書いたと。そうしたら、そのことだけは消してほしい、と言われたというふうな形なんですね。がんばって、引き続き働くというためには、こういう圧迫を受けながらでなければ働けないという実情になっておるというのが実情なわけなんです。こういう実情を見ますと、これはもう単に労働協約を結んでおるんだと、団体協約で結んでおるんだからというふうにはなかなか言えないような、実態的には自治体の当局の若年定年制を強要する制度になってしまっておる。この点が問題ではないかというふうに思うわけですが、この点についての大臣の御見解、先ほどの御見解から言いますとたいへんなことだということになると思うんですけれども、いかがですか。
  92. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私は地方の実情がわかりませんでしたけれども、先ほど原則論は申し上げたわけでありますが、問題はやっぱり労使全体で定めておる、そしてまた、労使双方の自主的な線で解決するしかないんじゃないかというふうな感じ方を持つわけであります。
  93. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そこでちょっとお伺いしたいんですけれども、これはまあ、局長にお伺いすると詳しく伺えると思うんですけれども、女子の若年定年制というのは、これはいろいろ幾つかの裁判もあったりして、判例も出ておると思うんですが、その点での過去の判例等の代表的なのがどうなっているかというふうな点、これは御報告をまずいただきたいと思います。
  94. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 過去の判例のすべてをただいま手元に持っているわけではございませんが、私の理解する限りにおきましては、一般的に申しまして、女子の若年定年制について争いが起きまして、まあ、主として婦人労働者側から訴えを起こしましたとき、おおむね婦人労働者側の勝訴という形になっている。すなわち女子の、合理的な理由なく女子に若い定年制を設けることはこれはよろしくないという趣旨の判決になっていると、そのように理解いたしております。
  95. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはまあ、おっしゃったように労働協約を結んでいても、三井——どこでしたかね、四十四年の三井造船での女子従業員の判決の勝訴の場合にも、すでに労働協約で結ばれておって、その時点で首になっておるわけですけれども、これも勝訴になっているわけですね。先ほど大臣がおっしゃったように、性によって差別待遇、あるいは結婚の自由を制約するとか、あるいは憲法の精神あるいは基準法の精神に反するようなこと、あるいは民法の九十条に規定する公序良俗に違反するというようなやり方というのは、これは判決は無効だというふうに明確にされておるわけですけれども、その立場で言いますと、先ほど申し上げたような事例が具体的にありとすれば、これは労働省としてはどういう御見解をおとりになりますか。
  96. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 先生指摘のように、ある事例では、労働協約でそのような定めがあった、すなわち若年定年制の定めがあった場合でございますが、その場合に、該当した女子労働者のほうから訴えを起こしまして、これは、そのような協約があっても、やはり女子労働者側が勝訴と申しますか、やはりこれは民法第九十条に違反するという旨の判決で、またそれに対して会社が控訴いたしたようでございますが、結果的には和解成立というふうにおさまったというふうに、この案件については理解いたしているところでございます。それで、ただいまの大阪の件につきましても、大臣から申し上げましたように、合理的な理由があるのかどうかというふうなことであろうかと思いますが、一般的に申しまして、私どもといたしましては、労使を含めて啓発活動というものを行なっておりまして、そのような労働協約を設けること自体、このことが望ましくない、あるいは就業規則で女子に若年定年制を一方的に定めるということもよろしくないと、このような趣旨の啓発活動並びに行政指導を労働省としては常時行なっていると、こういうことでございます。
  97. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはさらに、そういう労働協約に基づいてやっておると、労働協約は成立しているんだから、いわゆる労使双方とも了解済みだというふうに形の上ではなっているけれども、しかし使用者側がその労働協約を利用して、家へも押しかける、一人一人ああだこうだ、退職願い書けと、こういうふうにやっていくというふうなやり方、これはやはり当局の明らかに若年定年制を強行しているという、強制しているという姿と見なければいけないんじゃないか、好ましくない事態じゃないかというふうに思うんです。これは最後にまとめてお伺いしますけれども、それだけではなくて、現在残っている人の十三人、これは労働協約で書かれているように、定期昇給がストップをされている、だから当然経済的な被害も受けているわけです。で、具体例を申しますと、十三人のうちの松本宏子さんという、これはやはりバスの車掌さんですが、四十六年二月から昇給がストップしている。で、現在まで、−現在というのは、ことしの一月までですが、合計十六万四千二百円の損失になっています。で、先ほど例を出しました川田和子さん、この人もバスの車掌さんですが、四十六年二月から昇給がストップをして、合計でこの方の場合は十万千九百九十六円の損失になっている。こういうことは、これは合計金額ですけれども、勢い、退職金あるいは年金の損失にも影響を与える、そういうことになってくるので、たいへん重要だと思うんです。  そこで、労働大臣に要望したいんですけれども、私は、労働組合が同意をした労働協約が基礎になってやられているというふうにはいっても、先ほども触れましたように、労働協約で労使が調印をしてやっているんだということが形の上では前提になっておるんだけれども、実際は当局側が家庭まで退職を強要に行ったり、あるいは実質的な経済的損失を与えたりしておるというふうなことは全く好ましくないんじゃないか。そこで、一ぺん実情を調査して、よく当局の意向も聞いていただきたいというふうに思うのですけれども、そのことは具体的なことなんですけれども、さらに言いますと、これはもう労働協約が結ばれたのは、冒頭に申し上げたように昭和三十三年の九月なんです。ですから、冒頭にお話も出ましたように、婦人労働者実態というのがたいへん社会的条件が変わってきているというふうな状況、それからもう一つは、いわゆる公序良俗の点なんですが、常識的な水準、一般的に社会の認識になっておる常識的な水準というのが、これは昭和三十三年と現在とではたいへん変わってきているという点ですね。その点は先ほど大臣もお述べになったように、憲法十四条あるいは基準法、これの精神にのっとって、しかも公序良俗の水準というものの立場から言いますと、すでにたいへんおくれた形になってきているというのは事実です。それからもう一つは、先ほど須原議員の質疑の中でも出ましたように、すでに定年制の延長の問題で、労働省自身が指導を強めておられるというふうに社会的条件が変わってきているわけです。そういうふうな条件の中で、なおかつこれが行なわれているということでありますと、これはほっておけない問題ではないかというふうに思いますので、どうしてもこれは実情を調査して当局の意向を聞くと同時に、もう一つは、私はぜひ労働省にお願いをしたいと思いますことは、いわゆるせっかくできた勤労婦人福祉法の精神ですね、これをほんとに生かすかどうかというのは、こういった問題で地方公共団体に少なくとも指導を強めていただくということがなければならないんではないかというふうに考えるわけです。そこで、そういう立場で労働大臣並びに自治省の御見解をお伺いしておきたいというふうに思うわけです。
  98. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) ただいまの事案そのものにつきましては、これは労働協約の効力という問題であろうかと思いまして、婦人少年局でお答えすべき問題であるかどうか問題であろうかと思います。しかし、いずれにいたしましても、先ほど大臣から申し上げましたように、この事案自体につきましては、一応労働協約の定めとなっておりますので、その解決につきましては、労使双方の自主的な話し合いで打開していただくというのが筋であろうかと思います。  しかし、繰り返して申し上げますが、私ども労働行政といたしましては、そのような、いわば差別的な内容を持つ労働協約を結ぶこと、このことは望ましくないということで、これは指導をしてまいると、啓発してまいると、こういう基本的な態度をとってまいりたいと思っております。
  99. 宮尾盤

    説明員(宮尾盤君) お話にございました定年年齢の問題につきましては、いまお話の中にありましたようないろいろな社会的な状況の変化の問題等もあろうと思います。ただ、基本的な問題といたしましては、これは労使間の問題でございまして、自治省といたしましては、いろいろ法令等の問題につきましての指導等は一般的にいたすわけでございますが、そういう労使の問題については中立的な立場をとり、介入をしないという基本的な考え方を持っております。したがいまして、そのお尋ねがあった具体的な問題につきましては、私のほうでいろいろ実情等はまた聴取をしてみたいと思いますけれども、個別的な介入にわたるような指導というものはちょっと問題かと思いますので、差し控えさしていただきたいと思います。
  100. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 確かに、労働協約が結ばれているということがあるというのが一つの問題点なんです。しかし、これは基準法の精神でもいわれていますように、たまたま女子の若年定年制という問題は、基準法に明文はありませんよ。しかし、一般的ないまの社会通念の共通の認識になっておる状態というのは、その労働協約を結んだ時点と変わってきている、むしろ乗り越えてきているという状況になってきているわけですからね。基準法の規定というのは最低の基準であって、労働協約というのはこれを下回っちゃいかぬというような規定があるわけですからね。その精神を十分に活用していただいて、——これは労働組合に介入をしてくれということを私は特に申し上げておるんではなくて、地方公共団体に積極的な指導をなさるべきではないかということを申し上げておりますので、その点はお間違いの、お取り違えのないようにひとつ見解を、自治省としてもこれは実情をよく調べて、労働省の御見解のように、特に勤労婦人福祉法の精神を生かしていくという立場での指導はしていただけるんではないか、当局に対しての指導はしていただけるんではないかというふうに思うんですが、その点はいかがでしょう。
  101. 宮尾盤

    説明員(宮尾盤君) 労働省の立場からの、先ほど御答弁がありましたような指導というものは、地方団体に対しても一般的に当然なさるわけでございますので、そういう中で十分当局としてもいろいろこういった問題についての考えはあってしかるべきであるというふうに私どもは考えております。
  102. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 最後にこの点についてお伺いしておきたいのは、大臣、労働協約があるからといって、いま申し上げたような事態があるということは、これはおかしいと思いませんか、いまの社会で、現実の社会で。これは昭和三十年あるいは三十三年ごろの状況とは違うわけですよ。そういう点はどうです。
  103. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 時代の推移という中にお互い生きていくわけですから、それはそのとおりでございますが、具体的なこういう問題になりますと、その関連というのはどういうふうになるかと、地方での問題でもあり、またそれぞれの団体協約という問題でもあり、若年定年制という問題と、いままでの団体協約で話がついている問題と、女性の何というんですかね、能力の差という問題等々いろいろ込み合っている問題等もございますから、私にひとつここでどうこうという結論を出せと言われても、ちょっとこれはむずかしいから私にもひとつ勉強をさしてください。
  104. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、そういった情勢の違いというのは認識されておられるんだから、少なくとも一昨年新たに勤労婦人福祉法が制定をされて、これは国にも地方自治体にも民間の事業主にも協力を要請するというたてまえにはなっておるわけでございますから、そういう点で、少なくともこれは国やあるいは地方自治体は、民間企業に率先してそういった点は改善をするような指導というのはできないことはないと思う。その点について労働組合に特別に指導してくれというようなことを私は申し上げているんじゃない。少なくとも指導をしていくための、特に「勤労婦人福祉法の施行に関する基本通達」で明確にその点はなされているわけですから、もう読まなくてもわかっておられると思いますけれども、施行に関する基本通達の四の「啓発活動」のところに明確にお述べになっておられるんですね。「とくに勤労婦人の能力の有効発揮を妨げている諸要因、たとえば、合理的理由なしに行なわれるいわゆる若年定年制等の不当な雇用慣行等の解消のための気運の醸成が極めて重要であることにかんがみ、国および地方公共団体は、そのために必要な啓発活動を行なうものとしたものであること。」と、むしろ地方公共団体にも啓発活動をやってもらうんだといっているんだから、啓発活動を頼まにゃならぬ公共団体が率先して、やはり前向きな解決をしていくというふうな指導というのは、これはやっていただけるんではないかというふうに思うので特にお伺いをしているわけです。
  105. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) ここで具体的事例が出ましたので、すぐこの場で私の結論はこうだという準備がないことを非常に残念に思いますが、こういう議論などの中からいろいろな問題を勉強さしてもらうと、こういうことにしていきたいと思います。
  106. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がありませんから、もう一点だけ申し上げておきたいと思いますのは、これは大阪市の高校卒の事務職員採用の問題点——これは資料をそちらへ差し上げてなかったですかね。  まず最初に、自治省にお聞きしたいんですけれども、自治省は、高校卒の一般事務職員を採用する場合に、男女の差別によって仕事の範囲を限定し、実質的な男女差別を制度化するような指導というのはやっておられますか。
  107. 広田常雄

    説明員(広田常雄君) そのようなことはいたしておりません
  108. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そちらへも資料としてお渡ししてあると思いますけれども、大阪市の高校卒業一般事務職員の採用条件、これは、大阪市人事委員会の「大阪市職員<高校卒・事務>採用試験要綱」の6の「備考」という欄にこういう項があります。ちょっと読みますけれども、「1一般事務Aは、書記的な事務ですが、その内容が行政指導、調査、監督、監視、渉外、徴収等のように特に男子をあてるにふさわしいものまたは宿直を行なうこともある勤務に従事するもの。一般事務Bは、書記的事務、受付事務、穿孔事務(キーパンチャー)等のように特に女子をあてるにふさわしいもの。」というふうに、一般事務職を、「一般事務A」、「一般事務B」というふうに二つに分けて、しかも仕事の内容も、男子にふさわしいもの、女子にふさわしいものというふうに分けて募集要綱が印刷をされています。これは男女差別ではないでしょうか。
  109. 広田常雄

    説明員(広田常雄君) 私どもは、憲法なり労働基準法なり地方公務員法で、法のもとに平等であるべきであるという考え方で指導をいたしておりますが、そういう採用試験に際しまして合理的な区分をいたすことにつきましては、別に差別であるとは考えておりません。
  110. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 労働省どうですか、これ。
  111. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 個別のこの事案につきましては、私ども実態がよくわかりませんのでございますが、一般的に申しますれば、合理的な理由がなくて男女の職種を分ける、あるいはそのために受験の機会というものを分けるということは、これは不合理なことではないかと思います。
  112. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ、いま自治省は、こういう分け方は男女差別だとは理解しないとおっしゃったんですけれども、ちょっとそれじゃ、いまお手元にあるでしょう、この中から、「一般事務A」のうちで女子にはできないものは一体どういう仕事でしょうか。女子職員ではできない業務の内容というのはどういうことでしょうか。
  113. 広田常雄

    説明員(広田常雄君) 一般的に申しまして、女子にどれができないかということは、それぞれの個人差がありますから、何とも申し上げかねますけれども、客観的に分類して、女子にふさわしいもの、または男子にふさわしいものというものは存在するかと思いますし、たとえば警察官の場合には男子を主体といたしておりますし……。
  114. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そんなのは聞いてない。
  115. 広田常雄

    説明員(広田常雄君) もちろん女子を採用しているところもございます。さらに看護婦につきましては、女子のみというようなのが一般的でございますので、そういう意味で区分をすることは別に非合理的なものではないと考えておる次第でございます。
  116. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、私はその一般論を聞いているのじゃなくて、いま申し上げた「一般事務A」、「一般事務B」というので仕事の中身が書いてありますね。「一般事務A」の、もう一ぺん言いますよ。「行政指導、調査、監督、監視、渉外、徴収等のように特に男子をあてるにふさわしいものまたは宿直を行なうこともある勤務に従事するもの。」ということなんですね。この中で女子職員でできないものは一体何ですか。
  117. 広田常雄

    説明員(広田常雄君) 先ほど申し上げましたように、個人差がございますから、いかなる職種ができるか、できないかということは明快にお答えいたしかねますけれども、一般的に言って、女子にふさわしい仕事と男子にふさわしい仕事があることは事実であろうかと思います。
  118. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そんな常識論で聞いているんじゃないんです。これは労働省の御見解を伺いたいと思いますけれども、大阪市の人事委員会の募集要綱にわざわざ、しかもこれは能力、学歴の違ったランクじゃないんです。高校卒事務なんですよ。男女とも高校卒事務なんですよ。その範疇でお伺いをしているんですから、そういう一般論じゃ、これは話にならぬですよ。労働省の御見解はどうですか。
  119. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) ただいまのお尋ねの大阪市の場合の問題につきましては、これは何か特殊な事情がおありなのか、そのあたりのことは私どもわかりませんが、ただいまの先生が御指摘の、たとえば「行政指導、調査、監督、監視」云々というような業務が女子にできないというようには私どもは考えません。
  120. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 はっきりしているんですよ。この中で書かれている点で女子にできないという、——法律的に禁止されていて、深夜勤務という点で宿直だけは抵触するかもしれない。それ以外は女子にできないという職種じゃないんです。にもかかわらず、「一般事務A」、これは男子を充てると、「一般事務B」は女子に充てるにふさわしいものというふうに書いているわけですよね。こういうことが男女差別ではないかということを申し上げているわけです。そういう点では、これを見たら女子の職員というのは、これに書いてあるように「書記的事務、受付事務、キーパンチャー」と書いてありますけれども、実際には受付やらお茶くみしか能がないんだというふうにしか見えないわけですよ、実際に。婦人にはそれしか能力がないかどうかということなんです。これは高橋局長のように局長になっておられる婦人もおられるわけですからね、その点はこれはたいへんな問題だと思うんです。自治省も、もう少し正確に事態を把握していただいて、御見解を伺いたいと思います。
  121. 広田常雄

    説明員(広田常雄君) 先ほど申し上げたとおりでございますけれども先生もお述べになりましたように、法律によって宿日直ができない職種もございますし、一般事務の中にも男子に適するもの、女子に適するものを区分することが非合理的なものであるとは考えておりません。
  122. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっとはっきりしないんだけれども、先ほど労働省局長がおっしゃったように、ここへ書いてあるのは女子にできない仕事だとは考えられないというふうに言われているわけです。どういう特殊事情があるかないかは知りませんよ。それは別です、これは内部問題であって。しかしこれは公然と一般に公募する採用試験要綱なんです。それに明らかに、「一般事務A」、「一般事務B」というふうに明らかに男女差別と思えるような採用のしかたということは、これは先ほども申し上げたように、少なくとも国や地方公共団体が、勤労婦人の福祉あるいは社会的地位の向上のために仕事を推進しなければならない立場の地方公共団体自身がこういうやり方というのは正しいかどうか、適切かどうかということをお伺いしているわけです。その点だいぶ労働省のお考えと違うようですけれども、はっきりしておいていただきたいと思います。
  123. 広田常雄

    説明員(広田常雄君) 地方公共団体が職員を採用するにつきまして、最適の職員を採用しようと、そのために一定の要綱をつくりまして公募いたしますことは御案内のとおりかと思いますけれども、それにつきまして、こういう区分をいたしますことは別に支障はないものだと考えております。
  124. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 労働省はどうですか、女子にもできるという仕事をわざわざ男子にふさわしい仕事というふうにして、「一般事務A」と、それから「一般事務B」は女子にふさわしい仕事というふうに書かれているのですけれども、これはあまりむずかしく言おうと思っていませんけれども、せっかくある勤労婦人福祉法の精神からいいましても、こんなふうに書いてあるのですよ。この「勤労婦人福祉法の施行に関する基本通達」に非常に詳しく書かれていますけれども、その(2)の「職業訓練の受講促進の措置」というところにはこういうふうに書かれてある。「国、都道府県等は、勤労婦人が職業に必要な技能を習得し、その能力の向上を図ることを促進し、かつ、勤労婦人に対し職業訓練の機会が均等に確保されるようにするため、勤労婦人および事業主、事業主団体等に対して、勤労婦人の職業訓練の受講促進についての啓もう宣伝を行なうとともに、訓練施設の整備その他勤労婦人の職業訓練の受講を容易にするために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」というふうな項目と、それから法律の五条にはこういうふうに書かれておるんですね。「国及び地方公共団体は、勤労婦人の福祉について国民の関心と理解を深め、かつ、勤労婦人の勤労に従事する者としての意識を高めるとともに、とくに、勤労婦人の能力の有効な発揮を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行なうものとする。」と、これはもう明らかに初めから勤労婦人の能力の有効な発揮を妨げているわけです。お茶くみと受付とキーパンチャーしかやらさぬということになっているわけです。こういうやり方というのは男女差別にならないかということなんです。その点労働省はどうですか。
  125. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) いまの問題は公務員の問題で、特にいまの御提示は地方公務員の問題でございますが、いずれにいたしましても公務員法におきましても平等取り扱いの原則というのがあるわけでございまして、人事院のお立場で、それに基づいた御指導をされておられるというように考えているところでございます。この平等取り扱いというのは絶対的平等ということではもちろんございませんで、合理的な範囲の差別といいますか、違った取り扱いというのは許されるということだと思うのでございます。勤労婦人福祉法の精神もそのような意味でいわれているわけでございまして、何でも同じということではもちろんございません。ただ合理的な範囲の、何といいますか、区別であるかどうかという、この判定がむずかしいわけでございますが、公務員につきましては、その合理性の判断につきましては、人事院のほうで御検討いただく、こういうたてまえになるわけでございまして、労働省としては、一般論としまして、先ほど申したように女子ができない仕事ではないというように申しているわけでございます。
  126. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 最初に、一番初めに自治省にお伺いしたのは、そういう男女差別を制度にするような指導をしておりますかということを冒頭にお聞きしたわけですよ。そんなことはしておりませんというておられるんだけれども、これは合理的な差別になるのかどうか。中身はこれはもっと時間をかけて論議しなきゃならぬと思いますけれども、明らかに労働省では、女子に特にふさわしい仕事でないというふうには判断しておられないという点があるわけですから、少なくともその当該地方公共団体には事情を聞いて自治省としてはひとつ御指導をしていただくことはできないか、その点です。
  127. 広田常雄

    説明員(広田常雄君) 御指摘のとおり、大阪市の問題につきましては、大阪市から事情を十分聴取いたしたいと思います。その後、御指摘の判断の合理的でないという点がありましたら訂正いたしますように指導いたす所存でございます。
  128. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 以上で、本件に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれで散会いたします。    午後四時二分散会      —————・—————