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1974-05-31 第72回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月三十一日(金曜日)    午後二時四十一分開会     —————————————    委員の異動  五月三十一日     辞任         補欠選任      森中 守義君     神沢  浄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鶴園 哲夫君     理 事                 田口長治郎君                 原 文兵衛君                 矢山 有作君     委 員                 金井 元彦君                 黒住 忠行君                 高橋 邦雄君                 中村 登美君                 林田悠紀夫君                 神沢  浄君                 小平 芳平君                 高山 恒雄君                 沓脱タケ子君    衆議院議員        修正案提出者   林  義郎君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       小坂徳三郎君    政府委員        公害等調整委員        会委員長     小澤 文雄君        公害等調整委員        会事務局長    宮崎 隆夫君        環境庁長官官房        長        信澤  清君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○富士地域環境保全整備特別措置法案(第七十一  回国会内閣提出、第七十二回国会衆議院送付) ○公害紛争処理法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○原油スラッジ等油による海洋汚染防止対策の確  立に関する請願(第八号) ○公害監視測定器材整備費に対する国庫補助率の  引上げ等に関する請願(第一八五号) ○公害による集団移転実施に関する請願(第一八  六号) ○水俣病認定申請者認定業務促進等に関する請  願(第五五六号) ○自然保護のため山梨県自然公園道路計画中止  に関する請願(第一四一四号)(第一四四五  号)(第一五九三号)(第二三三五号)(第二  五一九号)(第二六二二号)(第三〇三四号) ○ビーナスライン美ケ原線南アルフススーパー  林道建設中止に関する請願(第一六二四号)(  第一六二五号)(第三三二三号) ○公害物質使用禁止等に関する請願(第三六四七  号)(第四一七〇号) ○PCB・水銀等有害物質排出禁止等に関す  る請願(第四一九九号)(第四二六一号)(第  四二六二号) ○奄美群島枝手久島への石油企業進出反対等に  関する請願(第四七二〇号)(第四七二一号)  (第四七二二号)(第四七二三号)(第四七二  四号)(第四七二五号)(第四七二六号)(第  四七二七号)(第四七二八号)(第四七二九  号)(第四七三〇号)(第四七六九号)(第四  七八二号)(第四七八三号)(第四七八四号)  (第四七八五号)(第四七八六号)(第四七八  七号)(第四七八八号)(第四七八九号)(第  四九一二号)(第四九一三号)(第四九一四  号)(第四九一五号)(第四九一六号)(第四  九一七号)(第四九一八号)(第四九一九号)  (第四九二〇号)(第四九二一号)(第四九二  二号)(第五〇七〇号)(第五〇七一号)(第  五〇七二号)(第五〇七三号)(第五〇七四  号)(第五〇七五号)(第五〇七六号)(第五  〇七七号)(第五一三〇号)(第五一三一号)  (第五一三二号)(第五一三三号)(第五一三  四号)(第五一三五号)(第五一三六号)(第  五一五六号)(第五一五七号)(第五一五八  号)(第五一五九号)(第五一六〇号)(第五  一六一号)(第五一六二号)(第五一六三号)  (第五一六四号)(第五二四一号)(第五二四  二号)(第五二四三号)(第五二四四号)(第  五二四五号)(第五二四六号)(第五二四七  号)(第五二四八号)(第五二四九号)(第五  二五〇号)(第五四八三号) ○継続調査要求に関する件     —————————————
  2. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  富士地域環境保全整備特別措置法案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。三木環境庁長官
  3. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ただいま議題となりました富士地域環境保全整備特別措置法案について、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  富士山は、わが国の最高峰として、その雄大典雅な山容の美しさは古くから国民にとうとばれ、あるいは、詩歌、絵画等文芸上の題材となり、あるいは、登山、消遥等の適地として利用されるなど、広く親しまれてきた名山でありまして、わが国の自然の象徴であるとともに、国際的にも稀少なすぐれた景観をもつ山岳として高く評価されているものであります。  このようなことから、富士山地域は、早くから国立公園指定され、自然環境保護しつつ国民の健全な利用に供することとされてきたのであります。  しかしながら、この富士山及びその山麓地域は、首都から約百キロという近距離に位置し、近年、東名、中央の両高速道路をはじめとする各種の交通運輸機関整備されたため、この地域を訪れる者の数は急激に増加し、別荘、ゴルフ場等開発も進行し、自然環境保護、適正な利用環境確保、あるいはこれらに必要な施設整備あり方等について多くの問題が生じつつあるのであります。  このような現下の状況を考えますと、国民的資産としてのこの地域自然環境を十分に保護して、長く後代の国民に伝えるためには、国立公園外山麓一帯地域も含め、より広域にわたって乱開発を防止し、山麓一帯環境をこの地域にふさわしい形で計画的に整備することが、きわめて緊急の課題であると考えるのであります。  このような観点に立って、今回、自然公園法等と相まって、富士山及びその周辺地域自然環境保護し、それにふさわしい利用環境確保するための特別の措置を講ずる目的をもって、この法律案提案いたした次第であります。  以下、この法律案内容を御説明申し上げます。  まず第一に、この法律案において対象とする富士地域とは、富士山及びその周辺地域のうち、その自然環境保護及びその自然環境にふさわしい利用環境確保並びにこれらに必要な施設整備富士山を中心として一体的かつ計画的に推進する必要がある地域であり、具体的には、今後十分な調査を行なった上で決定いたしたいと考えておりますが、現在のところおおむね富士山頂から半径二十キロの圏内について政令で指定を行なう考えであります。  第二に、富士地域における自然環境保護及びその自然環境にふさわしい利用環境確保並びにこれらに必要な施設整備をはかるため、富士地域保護利用整備計画を策定し、その実施を推進することといたしております。  第三に、富士地域における自然環境保護または利用環境確保のための規制につきましては、国立公園区域における自然公園法に基づく規制の適正な運用と相まって、国立公園区域外についても、建築物等の設置に関し所要規制を行なう等、富士地域自然環境保護の徹底を期するとともに、利用規制地域として徒歩利用地域等の四種類の利用地域指定し、これら利用地域においては、その指定目的を達成するために支障を及ぼす行為については、これを規制し、良好な利用環境確保をはかることといたしております。  第四に、富士地域保護利用整備計画に基づく保護利用整備事業につきましては、毎年度定められる実施計画に従い国、地方公共団体その他の者が実施することといたしておりますが、これら事業に係る経費につきましては、国が財政上の特別措置を講ずることといたしております。  このほか、富士地域自然環境保護等に関する重要事項について調査審議するため、学識経験者等から成る富士地域保護利用整備審議会を設置する規定等を設けております。  以上が、この法律案理由及び内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) この際、本案衆議院における修正部分について、修正案提案者衆議院議員林義郎君から説明を聴取いたします。
  5. 林義郎

    衆議院議員林義郎君) ただいま議題となりました内閣提出富士地域環境保全整備特別措置法案に対する衆議院修正趣旨について御説明申し上げます。  本案は、第七十一回国会から継続審査となっている法案でありますので、本法案で引用している自然公園法及び自然環境保全法が第七十一回国会において一部改正されたことに伴う字句整理保護利用整備事業に要する経費についての国の負担金または補助金の割合の特例に関する規定昭和五十年度から適用するための字句整理等所要修正を行ないました。  以上であります。
  6. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 以上で趣旨説明及び衆議院における修正部分説明は終わりました。     —————————————
  7. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 次に、公害紛争処理法の一部を改正する法律案議題とし、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 矢山有作

    矢山有作君 公害紛争処理制度運用経験に照らしてみて、まず小澤公害等調整委員長の所感をお伺いいたしたいと思います。
  9. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 公害紛争処理法が施行されましてから、すでに三年余りを経過いたしました。その間に公害等調整委員会、これは前身は中央公害審査委員会でございますが、中央公害審査委員会、それからそれを含みました公害等調整委員会、それから都道府県公害審査会等係属いたしました事件が、すでに百数十件に及んでおります。そして、そのうちで約半ばが解決し、その解決期間も、全体としては一年に満たないものが大部分でございます。そういうわけでございまして、公害紛争処理法が制定されてからのわずかの期間でございますけれども、制定の趣旨目的は、ほぼ所期のとおりに達せられているのではないかと考えます。  しかしながら、最近におきましての公害紛争実態を見ますと、紛争の規模は一そう拡大するとともに、当事者間の対立がますます激化し、紛争が長期化する様相が顕著にうかがえるのでございまして、これを放置することは、緊急を要する被害者救済支障が起きるわけでございまして、社会的にも重大な影響が起きることが憂えられるわけでございます。  このような事態に対処するために、はたして従来の制度がそのまま即応できるかどうかと申しますと、従来の制度は、和解の仲介、調停仲裁、いずれも当事者からの申請によって手続が開始するのでございますが、そしてその手続が開始した上で、当事者申請に基づいていろいろな内容の検討をするということになりますけれども、これでは当事者申請がない事案につきましては、委員会としては、あるいは審査会としては手のつけようがないのでございまして、現に激しい紛争があり、当事者対立が険しい状態がそこにあるのにかかわらず、たまたま申請がないために、それを見送らなければならないというようなのが現在の制度でございます。  それで、この公害紛争処理制度といたしましては、この際、そのような場合には、当事者申請がなくとも進んでその紛争についてあっせんに乗り出して、もし当事者間に適当な解決方法が見出せるものなら、その解決方法を時期を逸せずに取り上げていく、そして解決に進むということにする必要があろうかと思います。現在私ども、すでに三年余り公害紛争につきまして事件処理をしてきた経験から、現在の事態としては、そういう点にまだ問題があろうかと、そういうふうに考えている次第でございます。
  10. 矢山有作

    矢山有作君 いまの委員長の話を聞いておりますと、運営についてどういう点が反省されたか、考えられたかという質問に対して、今度の改正の問題に重点を置いたお答えがあったわけですが、私は、この紛争処理委員会運営等で、いろいろそのほかにもっともっと考えなければならぬ問題点があったのではないかと思うわけです。  したがって、それを一、二点申し上げてみたいのでありますが、この法律案提出理由の中で、「本法が施行されましてから昨年末まで約三年の間において、公害等調整委員会及び都道府県公害審査会等係属した事件は百二十件であり、そのうちすでに解決されたものは六十三件、その解決に要した期間は平均十カ月となっておりまして、おおむね所期目的は達せられていると考えられる」とおっしゃっておるわけです。  そもそも、時間と費用の多くかかる裁判では公害紛争迅速簡易解決することができないので、この制度ができたのであり、そのためにこれまでの間、行政組織法の八条機関であった中央公害紛争処理機関三条機関に格上げし、裁定制度を導入するなどして、この制度法律上は強化されてきたわけであります。確かに、公調委調停の成立した事案の中には、水俣のチッソ問題とか、あるいは渡良瀬川の鉱毒補償問題など、複雑かつ困難な事案調停を成立させた、こういう点においては評価すべき面もあります。しかしながら、反面におきまして、水俣病損害賠償事案については、訴訟派によって提起された裁判判決あと調停が行なわれたし、また係属中の大阪空港使用差し止め請求事案については、大阪地裁判決がすでに出たのにもかかわらず末解決のままであります。迅速簡易目的としたこの制度が、十分にその機能を全うしていないのではないかという批判もたくさんあるわけであります。  こういった批判をどう受けとめておられるのかということが、私どもとしては率直に聞きたいわけであります。そういう反省がなければ、やはりこの公調委制度運用の上で十全の効果を発揮させることはできないのではないか。ただ職権あっせんさえ実現できればうまくいくのだという、そういうものではないだろうと思うのです。その点が聞きたいわけです。
  11. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) まことに御指摘のとおりに思います。いままで公害等調整委員会係属いたしました事案につきましても、本来なら簡易迅速という観点から申しますと、私どもとしましても、もっと早く簡単に、十分な妥当な結論が得られれば得られたいものだと思って、いろいろ努力してまいったわけでございますけれども、実際は、御指摘のありました事件にいたしましても、それから現に係属中のそのほかの事件にいたしましても、さて取り組んでみますというと、いろいろ難問がございまして、そう簡単にはまいりません。  それで、特に私ども仕事を通じて痛感いたしますのは、公害につきまして、被害者加害者との関係を両方見ますというと、たとえば訴訟などの場合ですと、これは全く中立な立場、公正な立場から、双方のいずれにも手をかさず、双方が互いに資料を出し合い、攻撃防御をするのを黙って見ていて、そして、そのうちどちらのほうに分があるのかということを判断するということでございます。ところが、実際私どものほうに出てくる調停事件についてみますというと、被害者のほうは救済を求めます。非常に、いわゆる公害によってどのような悲惨な状態になっているかということを訴えますけれども、さて、それについて企業側責任を問うためには、因果関係だとか、損害額の立証とか、そういうことが本来必要になるわけでございますが、それについて被害者側は多くの場合、非常にその点は力が弱うございまして、十分な資料があるはずでも、あるはずの資料もそれをそろえて出してくるということはできない。それから因果関係などについての理論についても、理論が立てられるはずなんだけれども、それの十分の理論づけができないで、ただ自分たちは困っているんだから、これを何とかと言って何億という金額をいきなり出してくるというようなことで、これを支持するためには、いろいろな裏づけが必要なんでございますが、これが非常に欠けております。  ところで、委員会といたしましては、これはやはり独立の第三者機関でございますから、双方に公平でなくてはいけない。中立公平の立場をとらなければならぬということは、これは基本の立場でございます。しかし、その公平というのは、実質的な公平がなくてはいけない。片方が十分の攻撃防御能力を持ち、あらゆる手段を駆使して十分に自分のほうの主張を支持している。ところが片方は、そういう手段を持たず、本来主張できるはずの権利までも、ただ結論だけを言うだけであって、それの裏づけに必要な資料あるいは理論づけというものを出す能力がないといったようなときに、そのままの状態双方の間に判定を下すということは、実質的には不公平になります。  ですから、実質的な公平を期するためには、やはりあるべきはずの資料というものは、これはもはや被害者に期待することはしばしば無理でございますから、そういうときには委員会自分の力でそれをさがし出します。そういうふうにして、そこにあらわれた公害問題についての妥当な解決のために、本来しんしゃくしなければならない資料に失なわれているものがありはしないか、見落としがありはしないかということについて心を配るのが、委員会の重要な仕事の一部でございまして、このために、いままでの事件が長引いたのもそこに大きな原因があるのではなかったかと、これは自分たちでも思っているわけでございます。  しかし、それにしても、簡易迅速に解決を要することは当然でございますから、そういうために資料の収集などに非常な時間がかかりますけれども、その点はもっともっと努力をして、少しでも早く妥当な結論に近づくようにしなければならないという責任は、痛感している次第でございます。
  12. 矢山有作

    矢山有作君 まさに、いままでの運営の中で衝に当たられたあなた方として、一番問題になったところをちゃんと御自覚になっておられるわけですね。簡易迅速といってみたところで、その出た結論によって実質的な公平が維持できないような結論を出してもらったのでは困るわけですから、そうすると、その実質的な公平を実現するためにはどこに欠陥があるのかというのをいまあなたがおっしゃったと思うのです。ですから、私はその欠陥を是正することに本気になってもらわなければいかぬ。その欠陥を是正することをお留守にしておいて、法の改正だなどといわれたら、それはちょっと矛盾するのじゃないかという感がするわけです。したがってその問題を取り出したわけで、そういう実質的な公平を確保するために、一体どうしたらいいのかという問題が残ってまいります。  この問題は後ほど御見解を伺うといたしまして、いま一つの問題は、紛争処理機関適正化の問題これはもちろん先ほど言いました今後の体制上の問題とも関連してくる問題ですから、この紛争処理機関適正化の問題についてお伺いしたいのですが、解決に要した期間が平均して十ヵ月ということです。水俣病損害賠償調停では、一年四ヵ月ないし一年六ヵ月かかっておりますね。それから大阪空港差し止め請求については、一年四カ月経過してなお係属中ですね。それから渡良瀬川鉱毒損害賠償にかかる請求については二年を費やしている。これが実態なんです。  処理に要する適正な期間が一体どのくらいかかるか、これは、なるほど先ほどもおっしゃったように、事案によっては一がいに言えない問題だと思うのです。しかしながら、いずれにしても、どんなに複雑困難な事案であろうとも、大体公調委にかかってくる事案というのは複雑困難な問題にきまっておるのですから、したがって、そういう問題であっても一年以内には処理できる、そういうような体制というものを根本的に築き上げていくべきじゃないか。したがって、いまの体制についての基本的なあり方というものを考えてみなければならないのじゃないか、こう思うのです。その点、いかがなんですか。
  13. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) まことに御指摘のとおりでございまして、相当むずかしい件でも、できるなら一年ぐらいが目標、あるいは一年か一年半ぐらいで何とかやりたいということを、そもそも手がけるときから考えているのでございますけれども、どうも力及ばず、あるものは二年、あるいはもうすでに一年以上経過しているものがあって、それがいつ調停ができるのかということをかりにお尋ねいただいたとしても、いまのところ、それはあと何ヵ月というようなことを具体的に申し上げられるような段階になっていないのはまことに残念でございますけれども、ただ、これは決して長くかかってもかまわないなんというので放置しているのじゃもちろんございませんので、現在係属している事件に全力をあげてやっているわけでございますから、どうぞ御了承いただきたいと思います。
  14. 矢山有作

    矢山有作君 おっしゃることはわかるのです。だけれども、そういうふうになるべく簡易迅速に、しかも実質的な公平が確保できるようにやろうと幾ら努力なさっても、なかなかできない。そのできないのには、一つ体制上の問題がありはしませんかということなんで、体制上の問題と言うときに、私は決して皆さんが真剣にやっておられないとか、サボっておられるとか、そういうことを申し上げておるのじゃない。いまの公調委それ自体の体制に問題があるのじゃないかということを言っているわけです。  そこで、その問題に入ってみたいのですが、これは言うまでもないことですけれども公調委は前回の法改正で、中央公害審査委員会土地調整委員会が合併されてできたものであります。その際、国家行政組織法第三条によって設置された機関となり、いま独自の事務局を持つに至る、ここで問題があると思うのです。  所掌事務範囲が一体どの程金の範囲になっておるか、これは私は申し上げるまでもないと思うのですが、一応指摘してみますと、公害紛争処理法規定による調停仲裁裁定をやるわけですね。今回の改正あっせんが加わってくるわけです。それから鉱業法採石法森林法農地法海岸法自然公園法地すべり等防止法河川法首都圏近郊緑地保全法近畿圏保全区域整備に関する法律砂利採取法都市計画法自然環境保全法規定による不服の裁定、それから核原料物質開発促進臨時措置法規定による土地使用または収用に関する裁決、鉱区禁止地域指定及び指定の解除、文化財保護法規定による協議、土地収用法規定による意見の申し出等、その他にもまだ一、二ありますね。これだけの事務を所掌することになっておるわけです。  ところが、委員会機構のほうを見てみますと、委員委員長を含めて七名でしょう。常勤がそのうち四名ですね。それから事務局体制を見ますと、局長、次長、それから審査官が八名おられる。ところが、そのうちの二名は、関係のある他の職におられる人が当たっておる。それから総務課がわずか一課あるだけ。そういう構成で、事務局職員は四十名でしょう。  総務課は、係が庶務、会計、企画法規調査研究指導連絡五つの係に分かれており、この五つの係のうちで実質的な審査業務に携わるのは、私は機構図を見て推測するのですが、おそらく企画法規調査研究の二つの係のように思うわけです。すると、公害審査業務に携わっておる職員は一体実質何人おるのか。また、企業などの立ち入り検査をやる場合がある一そしてまた公害審査に当たるということになれば、科学的なその他いろいろな専門的な知識を持っておらぬとなかなか実態が把握できないのじゃないか。そこで、そういうような専門的な知識を持った職員が一体何人その衝に当たっておるのか、そういう点を一応お聞かせ願いたいのです。
  15. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 公害等調整委員会の成立の由来は、御指摘のとおりでございます。  それで、その職員のうち公害紛争処理のほうの分野を受け持っているのが何人かというお尋ねだと思いますが、これは内部で、この職員公害紛争処理を専門に分担する、それからこの職員は旧土地調整委員会の固有事務であった仕事を分担させるというふうに、必ずしもそういうふうにはっきり分けておりません。同じ審査官公害紛争処理もやってもらい、それから鉱区禁止指定に関する仕事もやってもらうということにして、これは全部一体にしてやっております。それは、土地調整委員会から引き継いだ事件も、その処理については、結局は公益判断ということの点では公害紛争処理と共通の分野がありますし、そしてそれぞれの専門分野は両方に共通でございますから、だからこれはあまり区別しないでやっておりますが、ただ全体として、御指摘のように非常に手薄でございます。もちろん、中には技術方面の専門家も入ってはおりますけれども、それにしても手薄でございます。  それで、いま日本全国に起きているすべての公害紛争を全部ひっつかまえて、それが一時に公害等調整委員会申請があったときに、それを全部受けとめてやれるかということになると、これはいまのままでは、おそらく一時に殺戮すればなかなか容易ではないだろうと思います。これはこれからの問題としていろいろ御援助をいただかなければならないと思いますがしかし現在、非常に手薄ではございますけれども、その陣容をフルに活用してやっておる次第でございます。  それであるいは、いまそうやって手一ぱいだのに、その上に職権あっせんなどを持ち込んでだいじょうぶかという御趣旨かとも思いますけれども、この点は最初に申しましたように、現に申請のある事件だけでなくて、申請のない事件についても、公害紛事についての政府の唯一の処理機関としての公害等調整委員会としては、どうしてもほうっておけないような場合が考えられますので、これもあわせてお願いするという次第でございます。  なお、公害等調整委員会の内部の事務処理などについて、もし御必要があれば事務局長のほうから御説明申し上げます。
  16. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) ただいまの御質問に関連いたしまして、委員長からお答えいたしましたところを一部補足して御説明を申し上げたいと思います。  事務局職員は、御指摘のとおり四十名の定員になっておりますけれども、このうち審査官は八名、同じく審査官を補佐する者が十名、主査が五名、この二十三名が主として直接に事件に関与いたしまして、調停委員会なりのお助けをして事務に当たっているわけでございます。そのほか総務課職員が十八名ございますが、これは通常のいわゆる文書事務であるとか、あるいは法令関係事務であるとか、そういうものを通しまして、事件処理解決推進のために側面から審査官等を補佐するといいますか、審査官等の仕事を手伝う任務を持っておるわけでございまして、ただいま委員長が申し上げましたように、個々別々に職員を担当する分野に張りつけをするということはいたしませんで、適宜、弾力的に事件処理のために必要な人材を投入して、この解決に当たる、かような運営をいたしておる次第でございます。  なお、専門委員というものを必要に応じて随時任命することができるたてまえになっておりまして、現在のところは一名の専門委員しか任命いたしておりませんけれども、特殊専門の分野にわたりましてのきわめて高度な専門知識なりを必要といたします場合には、こういう専門委員の委嘱を通じまして、私ども事務を補強いたしてまいっておる次第でございます。
  17. 矢山有作

    矢山有作君 まあ委員長の、ほうっておけないから申請を待たぬでも紛争調停に乗り出す、職権あっせんをやる、その意図は壮とするのですがね、いまおっしゃるような陣容で、まさに実際の公害紛争の問題に専門的な立場でかかり切りにやれる職員はわずか二十三名、科学的な実際の専門知識を持っている専門委員は、わずか一名しかおらぬ。これで幾らやろうやろうと思っても、私はやれるわけはないと思うのですよ。それは、やろうとなさるお気持ちは私はわかるのです。しかし、やろうとなさるのなら、こういうような貧弱な機構で一体やれるのか、ここのところから考え直してもらわなければいかぬのじゃないかと思うのです。  こういう陣容で仕事をしておれば、簡易迅速を旨とする方向に重点が移っていけば、全くその調停の結果、あっせんの結果がお粗末なことしかできなくなるし、それに、正確を期して実質的な公平が維持できるように十分審査をしてやろうと思えば、これは簡易迅速どころの話じゃない、たいへんな年月を要する、こういうことになってくるだろうと思うのです。  そこで私は、この際あなたのところの事務局を強化していく、これがやはりどうしても必要とされるのじゃないか。しかも現在、先ほどもみずからおっしゃったように、公害はますますふえていっておる。そしてまた公害苦情件教というものもますますふえていっておるときですから、そういう点から私はお考えを願いたい、こう思うのですがね。委員長、あまり遠慮なさらずに、大体どの程度の人員が実際ほしいのだということを率直に言ってみませんか。これはしろうとだって、たった二十三名の職員じゃ仕事はできないということはわかりますよ。随時専門委員を委嘱することになっておられるようですけれども、しかし、それだってなかなかとても対応し切れないのじゃないかと思うのです。その点、率直な御見解をお聞かせ願いたいのです。
  18. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) あと何人の職員が要するかという御質問でございますけれども、いま別に何人必要だということをお答えするだけの準備もちょっとございませんが、ただ、確かに先ほども申しましたように、いまのままの体制で十分であるとは考えておりませんので、いままでの経験、それから今後の経験を踏まえて、よく研究した上でお願いすべきものはお願いしたい、そういうふうに考えます。
  19. 矢山有作

    矢山有作君 私は、こういう公害紛争というような住民の命や健康や暮らしに非常に大きな影響を及ぼすものの処理にあたっては、これは何といっても公正な妥当な解決の道が見つけられなければならぬと思うのです。その点、体制が非常に弱いままで、これでやれるのだという自信がないままでそれをおやりになるということは、私は職務の遂行の上にも非常な欠陥を生じてくるおそれがあるのではないか。そうなれば、職務の遂行の上で欠陥の生じたということになれば、これはやはりあなた方の責任ですから、そういうおそれのないように、機構等については、あるいは職員の数等については徹底的に整備をしていくのだという意欲を持っていただかなければ、私はかえって職務に不忠実だということになると思いますよ。  だから、私はここで一体何人要るのですかと、そういうようなやぼなことば聞きません。それはなかなか、何人要るのですかと言ったところで、すぐ何人ほしいのですというような答えが出るわけはないのですから。しかし、少なくともこれではだめだということは、だれが考えてみてもわかることなんですよ。そのだめなものをそのままにしておいて、本気で解決しようとしないで仕事をやるというのは、かえって私は、くどいようですが、その結果がよくないものになる。そのことは、かえってあなた方の職務に対する忠実性を疑わざるを得ないと思うのです。したがってこれは、ぜひとも私は妥当な線にまで強化をするということを真剣に考えていただきたい。  たとえば行政委員会でも、私はこれで十分だとは思っておりませんが、公正取引委員会のほうを見ますと、定員三百六十三名でしょう。そして審判官、官房、三部、それから七地方事務所、これだけの組織を持っているわけですね。それでもなおかつ公正取引委員会の活動が十全であるということにはならぬわけですから、この問題については、すでに昨年来の衆参の両院の国会等で物価問題にからんで追及をされ、明らかにされたところなんです。そうすれば、その陣容に比べてみてはるかに見劣りのする、しかも公害がこれだけふえ公害苦情件教がふえておる中で、この陣容でやれるとは考えられぬわけです。その姿勢が改まらぬということは、公害問題を軽視しておるという政府の姿勢を如実に示しておると思う。そういう点では、私は、そこ衝に当たる最高責任者としてのあなたとしては、実際に衝に当たるのですから、その問題の解決のためにやはり全力をあげるという強い姿勢をとっていただく。そしてこの際、これは管轄は総務長官のようですから、総務長官としては、いまお聞き及びのような状態に対してどういうふうなお考えを持っておるのか、承りたいのです。
  20. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 公害問題は、ただいま委員の御指摘のとおり、私は非常に重大な社会問題であるというふうに考えます。同時にまた、これを除去するためのいろいろな方策というものが、事件が起こって、被害が出てという前に解決する努力を十分今後はしなければならない、いままで以上にそれに注力しなければならぬというふうに考えますが、しかし、現在に起こっております公害の多数の案件がございまして、これを処理するために、今日まで公害等調整委員会におきましても活動をしていたわけでありますが、やはり今度職権あっせんというようなことの道を開かせていただくならば、まずそこで一つ公害問題に対する調停機関としての新しい機能がふえるわけでございます。  その機能を十分に果たすために、もっと人的な、あるいは組織的な、あるいは予算的な面においての強化をはかれという御指摘でございますが、私は別にそれに対して異論を申し上げるつもりは毛頭ございません。ただ問題は、やはり一つの順序として、このようなあっせんという形の中で、事件を早期に解決をしていこうというような意欲が公害等調整委員会の中に芽ばえて、それをひとつ認めていただいて、その上でさらに、このための措置としての人員の強化、あるいはその他の問題について具体的に検討を進めていくということは、たいへんけっこうなことだと私は考えております。
  21. 矢山有作

    矢山有作君 それは長官、いささか議論が私は逆立ちだと思うのです。現在の公調委仕事すら、もう手一ぱいなんですね。そして事案解決に対して非常な長年月を要しておる。これは公調委としてはたいへん困っておると思うのです。仕事はやらなければならぬし、やろうと思っても、この陣容ではとても処理し切れないという矛盾をかかえておると思うのですね。そこに今度は、申請を待っておるだけでなしに、みずからあっせんに乗り出そうという姿勢をとられるのはいいのですが、いまでも困っておるところに、新たな申請を待たないであっせんにまで乗り出していこうということになれば、まずいまの情勢に少なくとも対応できるぐらいな機構の強化を考え、さらにそれにプラスして、新たな仕事をたくさんかかえ込むことになるだろうと思いますから、それをもこなせるような機構、人員の問題をあわせて考えながらやっていかぬことには、私はちょっと議論が逆立ちじゃないかと思うのです。  しかし、きょうの状態の中で、あなたのほうで実際にこういうふうにしようと思うのだという成案がないなら、ないとして、やはり公調委の活動に対して十分それを保証することのできるような機構なり人員の問題を総務長官としては真剣に考えて、その方向で進めていただけるのかどうか、これだけは私としても最小限度承っておきたいと思う。
  22. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 御指摘のとおりでございます。私は、この問題についての調整委員会能力を拡大していくということは、今後、公取委の問題と同じような意味合いにおいて、きわめて重要な課題であるというふうに認識しております。
  23. 矢山有作

    矢山有作君 ぜひそういう方向で問題の解決に御努力を願いたいと思います。  それから次は、紛争処理法の第四十八条で、公調委は「内閣総理大臣又は関係行政機関の長に対し」「その所掌事務の遂行を通じて得られた公害の防止に関する施策の改善についての意見を述べることができる。」こういうふうに規定してあります。これについて、いままでどういう活動をやってこられたのか、積極的にそうした施策改善についての意見を述べられたことがあるのかどうか、それらの点、活動状況はどうですか。
  24. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 第四十八条の「意見」の申し出をしたことは、いままではまだ一件もございません。ただ、現在そういう問題が全然ないわけではございませんので、これは考えますけれども、現在までこの意見を述べた実績はございません。
  25. 矢山有作

    矢山有作君 率直に言って、いまの陣容ではそこまで手が回らぬのですよね。行政管理庁は、御案内のように行政監察の結果行政各般にわたって多くの問題を指摘して、その改善勧告等をたくさん出しておりますね。これは公害行政の面についても私はやっておると思うのです。少なくともこの委員会も、政府から独立した委員会でしょう。しかも公害処理のための準司法機関たる委員会ですからね、ここで積極的に公害防止行政のあり方という問題で政府にものを申すべきだと思うのです。独立委員会というのはそう政府権力に制約される必要はないのですから、そういう面で思い切った活動をなさるべきではないか。そうして、この四十八条がつくられた本来の趣旨というものを生かしていくべきではないかと思うのですがね。それが一ぺんもやられなかったというのは、率直に言ってどうなんですか、やる気がなかったのか、それともいまの体制でやれなかったのか。
  26. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 御趣旨はよくわかるのでございますが、中央委員会といたしましては、いままで調停の数もそれほど多くはございませんし、いままでのところは、手が足りないからそれができなかったというのじゃなくて、実際それをぜひしなければならぬということまで考えなかったわけでございます。
  27. 矢山有作

    矢山有作君 しかし、あまり事件が多くありませんしとおっしゃっておりますが、中央公調委にかかった事件というのが、新しく公害等調整委員会にかかったのが約四十件、それから前の中央公害審査委員会からの引き継ぎが十件ほどあった、五十件ほどかかっておったわけでしょう。そのうちで一体解決したのは何件なんですか。十一、二件のものでしょう。だから、それほど事件がなかったというような状態ではないのではないか。そうなるといまの機構、人員で十分でございますということになりますのでね、いままで何の議論をしたのかわからないのです。  私どもは、いまの公調委にかかっている紛争の件数なり、その処理の状況をながめ、さらにその問題が、いずれも非常に公正妥当な結論を得るのにはむずかしい複雑な問題だと認識しているわけです。したがって、私はこの問題を処理するには、いまの機構、人員では公調委はたいへんだろうとそう思って御心配を申し上げているので私はその議論をしているのです。だから、そういう状態だから四十八条については全然それに手を出すどころではない、こういう状態なのではないかと言っておるので、そこのところ、ちょっとかみ合わないのですがね。
  28. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) この四十八条の「意見」は、必ずしも調停が成立した場合だけとも限らないのだろうと思いますけれども、実際いままでのところ、たとえば、具体的な例を申し上げたほうがいいのかもしれませんが、瀬戸内海のある海面の公害問題について、これは一定の工場群から出た廃水による、海水汚濁による漁業被害の問題でございましたが、その調停事件などでは、これは調停が成立するときに同時に、そのような公害が今後再び繰り返されないように、それを期するために両方の県に、これは県が違いますが、一つの県のほうに工場群があり、他の県のほうに漁民たちがたくさんいるという状態だったのですが、調停が成立すると同時に両県との間に、公害等調整委員会とそれぞれの県との間に交渉いたしまして、そして公害防止について必要な措置をとるということについての覚え書きをもらったりした例はございます。これは四十八条による成規の意見陳述ではございませんけれども、実質的にはそれと同じような内容を持っておるのじゃないかと思います。  それかは、たとえば水俣事件についての調停が成立しておりますけれども、この分について四十八条の問題がどうかということにもなろうかと思いますが、これはもう御存じのとおり、すでに過去において流された有機水銀の問題でございまして、そして現在残っている問題としては、汚濁されている海底の堆積物をどうするかとか、それから患者の救済をどうするかというような問題がございますけれども、これはそれぞれ立法上、行政上の措置が講じられておりますので、その上に重ねて四十八条の意見申し出をするというところまでのことはなかろうと考えた次第でございます。
  29. 矢山有作

    矢山有作君 どうも話がすれ違うですからね、じゃ四十八条の規定はどういうふうに解釈されておるのですか。「四十八条中央委員会内閣総理大臣又は関係行政機関の長に対し、審査会は当該都道府県知事に対し、その所掌事務の遂行を通じて得られた公害の防止に関する施策の改善についての意見を述べることができる。」と、この規定はどういうふうに解釈されているのですか。  私は、なにも勧告した案件について意見とかどうとか、そういうような意味にはこの規定は解釈していないのです。というのは、「その所掌事務の遂行を通じて得られた公害の防止に関する施策の改善についての意見を述べる」と、こういっているのですから、私はあなたがいまお答えになったような狭い範囲のものとして限定して考えてないので、四十八条はどういうふうな規定として解釈しておられるのか、それを伺ったほうが話が進みやすいと思います。
  30. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 私がいま申し上げましたのは、かなり具体的な事件に即した狭い問題、おっしゃるとおりに狭い問題かもしれませんが、確かに四十八条は、そのように狭い問題に限定する趣旨じゃおそらくなかろうと思います。狭い問題に限定するわけじゃなかろうと思いますけれども、いままで成立した調停に関連しましては、先ほども申しましたとおり、瀬戸内海の汚染に関してはそういう申し入れをし、それによって目的を達したと考えましたし、それから水俣事件に関しましては、いま言ったようなことで一応問題は済んだと、そういうふうに考えております。
  31. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 事務局長、答弁ありませんか、解釈の問題で。
  32. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) 仰せのとおり、この規定は、所掌事務の遂行を通じて得られた公害防止施策の改善についてということでございますから、かなりその範囲は広いものであろうかと思っております。  ただいま委員長がお答え申し上げましたのは、その事件の数、解決いたしました事件の数は件数として非常に多うございますけれども、この事件の種類について考えてみますと、ただいま例として委員長からお話し申し上げましたように、燧灘における工場廃水による調停事件、これが一種類、ただし、そのほかに水俣病に関する調停事件は、解決いたしましたものは十件というふうに数えておりますけれども、これは同一の地域において生じておる同種の事案でございます。それから渡良瀬の事件につきましては、これもすでに今日のところでは片づいておるわけでございますが、事件件数といたしましては同一の種類の四件というふうに数えておる次第でございます。で、これを種類別に見ますと、件数の実体に比べましてわずか三件ということでございまして、この三件の事務処理を通じて得られた公害防止施策の改善につきましては、ただいま委員長から申しましたように、格別積極的に意見を申し出をする、こういう必要性を実際上感じられなかった、こういうことを委員長はお答えいたしておる次第でございます。
  33. 矢山有作

    矢山有作君 私は、そういう消極的な姿勢じゃ話にならぬと思うのです。たとえば水俣病の問題について、自分所掌事務だからというので紛争処理に当たった、その結果問題は解決した、それで別に意見もなかったからそれで済ました、こういうことじゃ困るのです。  たとえば水俣病の問題を一つ扱ったって、水俣病の問題が起こったのはなぜ起こったかというと、公害防止施策に欠けるところがあったから起こったわけでしょう。そうすれば、そういったような類似の事例というものは、なにも水俣病に限ったことじゃないので、日本全国至るところにそういう発生源を持っているのだから、そういう問題に対して、たとえば水俣病処理についてこういう実態をつかんだ、その上に立って、今後そういう問題を二度と起こさないためには具体的には公害防止施策というものはこういうものが要るんだ、そういうような積極的な意見を言えと、こういうのじゃないのですか。それが一つはあなた方の委員会の重要な仕事だと私は思う。  というのは、当面起こっておる紛争解決することもさることながら、その紛争を通じて得た結果に基づいて、一体どうしたらこういうような公害の発生を防ぐことが将来できるだろうか、公害防止施策というものは、将来この種公害を起こさないためにどうあるべきなんだろうか、それが積極的に打ち出されてくるというのも、あなた方が専門として公害紛争を取り扱っておるだけに、重要な仕事になるのじゃないですか。それを言っているのです。  これは個々の事件について、事案解決した、別に意見はなかったとか、そういったことを言っているのじゃ私はないと思うのです。あなた方の所掌事務を通じて、公害が起こるというのは公害防止施策に欠けるところがあるから起こるのだから、こうした公害を起こさないようにするためには公害防止施策はかくあるべし、こういう欠陥があるところを是正すべしと、こういった積極的な意見を言っているのじゃないですか。だから、たとえば水俣病をあなた方が処理されて、水俣病がなぜ過去起こってきたのか、それを考えたら、そういう事態を再び起こさないためには今後の公害防止施策はこうでなければならぬ、それを積極的にやっぱり言わなければいかぬのじゃないですか。
  34. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) お尋ねの趣旨をやや取り違えてお答えいたしておりましたが、仰せのとおり、この種の公害事件処理の遂行に当たりましては、個々の事案解決を通じまして、おそらくあともう少し時日をおかしいただければ、相当の積極的な発想なりあるいは事実に対する認識なりが出てまいろうかと思います。つとめてそういう御趣旨に即しまして、事案解決をはかりつつも、そういう観点でのものの見方を十分に留意いたしまして、今後努力をいたしたいと思っております。
  35. 矢山有作

    矢山有作君 事案解決だけに追われて、もうどこへも目が向かぬということでは困りますので、私はいまのあなたの御答弁に大きな期待を持ちます。したがって、ぜひとも今後のわが国公害防止施策の立案に、そしてそれをまた実施していく上に、大きな貢献ができるような活動を願いたいと思うのです。また、それにこたえられるような機構整備というものを積極的に取り組んでいただきたい。これは当面の衝に当たるのが委員長であり事務局長なんですから、あなた方のところでだまっておられたのじゃどうにもならぬわけですからね、それだけは十分御自覚願いたいと思います。  それでは次に質問を移しますが、改正法案の第二十七条の二におきまして「(あつせん又は調停の開始等の特例)」として、中央委員会または審査会はその議決に基づいてあっせんを行なうことができることになっております。その前提要件といたしまして、被害の程度が著しく、その範囲が広い紛争が生じておること、そして当事者間の交渉が円滑に進行していないこと、また当該紛争を放置すれば多数の被害者の生活の困窮等社会的に重大な影響があると認められること等が示されておるわけであります。またさらに、当該紛争についての実情を調査し、当事者の意見を聞いた上でこれを行なうこと、なお、審査会あっせんは知事の要請により行なうこととなっております。  ただしたいことが幾つかあるわけでありますが、まずその一つは、「多数の被害者の生活の困窮等社会的に重大な影響があると認められるとき」とありますが、「被害者の生活の困窮等」と、「等」という字がついております。これは例示の一つのようにも解釈できるのでありますが、その「等」という場合には一体どういう場合が考えられておるのか、これを伺いたい。
  36. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 多数の被害者の生活の困窮以外に、かりに生活の困窮というような問題がなくても、多数の被害者に健康の障害を来たすとかというような場合も入ろうかと思います。
  37. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、その趣旨はあくまでも、被害者の生活の破綻あるいは被害者の健康に大きな影響を及ぼす、こういったことの救済を主眼としておられるわけですね。そして、当事者のうちで加害者の都合ということを要件としてはお考えになっておらぬ、こういうふうに理解してよろしいか。
  38. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) そのとおりでございます。
  39. 矢山有作

    矢山有作君 加害者の都合というものが要件として入っておりますと、これはたいへん問題になるわけです。したがって私はその点をお聞きしたのですが、加害者の都合は、この「被害者の生活の困窮等」ということには入らぬ、こういうことでありますから、それで確認をいたしまして、次に進めてまいります。  その次は「社会的に重大な影響」ということについてでありますが、当事者間の交渉が決裂し、被害住民が加害者に対して、たとえば実力行使して地域的に混乱が起きるおそれがある場合、あるいはそういうような事態が生じた場合というものを想定したものであるのかどうか。「社会的に重大な影響」、この具体的な中身というのは一体どういう場合を考えておられるのか。
  40. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 御指摘のような多数被害者の実力行使による紛争、そういったものを特に意識して考えたわけではございません。
  41. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、これを私はなぜ問題にするかというと、被害者である住民が幾ら会社に加害行為をやめてくれと言っても聞かぬ。そこでやむにやまれず実力を背景にして自分たちで問題を解決しようとする、そういう動きというのは、これまでもたくさんあってきたわけです。いわゆる地域における住民の公害に対する戦いとして起こってきたわけですが、それを今度その申請を待たずにあっせんに乗り出すということによって、そういうものを押えつけようということにはなりませんね。
  42. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) あっせんによってそういう動きを押えつけようというような意図は、ございません。ただ、被害者が実力行使をやっているときには常にあっせんには乗り出さないというようなことにもならないかと思いますが、実際の公害紛争のときには、何がしかの実力行使が大なり小なり伴うのはもうあたりまえの状態でございますから、ですから、そういうことがあろうとなかろうと、やはりその紛争の迅速な解決処理のために適当であると思えば、これはあっせんに乗り出すことになります。
  43. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、それに関連してもう一つ非常に重要なのは、「当事者の意見を聴いた上」で議決をやってあっせんに乗り出す、こういうことになっておりますね。そこで当事者、特に被害者の方が公調委あっせんに乗り出すことに賛成しなかった場合、その場合でもなおかつ公調委は、この事態では自分たちあっせんに乗り出したほうがいいということで乗り出すのですか、どうなんですか、この点は。
  44. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) この当事者の意見を聞く場合には、意見は聞きますけれども、その意見に拘束されるというわけではございませんから、加害者あるいは被害者のどちらかがこれに反対した場合でも、どちらかが反対すればあっせんを行なうことが不可能であるという結論にもならぬかと思いますけれども、しかし、そもそもあっせん当事者の間に自主的な話し合いの場をつくるのが目的でございまして、当事者の一方がどうしてもあっせんには応じないということを主張し、そしていろいろ事情を聞いてみても、それが真意であって、ほんとうに当事者あっせんを希望しないということがはっきり確認できるような場合に、そういう場合にむりやりにあっせんに乗り出しても効果があがるはずはございませんから、まずそういうことはなかろうと思います。
  45. 矢山有作

    矢山有作君 これは当事者の意見を聞いた上で乗り出すといっておられる場合に、当事者の意見は参考までに聞くのだ、たとえば被害者が、いま乗り出してもらっては困る、われわれで自主的に解決しようと思ってやっておるのに、あなた方が乗り出してきて職権であっせんだなんていうと、われわれのいまの交渉がどうにもならなくなってしまう、やれなくなってしまうじゃないか、だからそんなところに手を出してくれるなと言ってもなおかつあっせんに乗り出すというのであれば、これは私は明らかにいまの住民みずからが公害問題を解決しようとして加害者と積極的な交渉をやるという、そういう動きに対して水をさすことになると思うのです。そうなると、これは非常に問題が起こってくるわけです。そこのところをはっきりしておいてもらわなければ困る。  少なくとも被害者が、公調委はいまの段階で出てくれては困るということになれば、私は公調委ははっきり引っ込むべきだと思うのです。それを、その意見は参考として聞くけれども、おれらでやろうと思ったらやるんだというのでは、これはまさに職権をかさに着ての、運動に水をかけるための職権あっせんだと言わざるを得なくなるんですよ。ここのところを私はぜひ明快にしておいてもらいたいと思うのです。特に、あなた方のいまの機構の中でそんなことをやれるわけがないのだから、これはやっぱり「当事者の意見を聴いた上」というのは、被害者の意見というものは最大限に尊重してもらって、被害者が不同意であるなら職権あっせんに乗り出すべきじゃないですよ。どうなんですか、その点。
  46. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 当事者の間に自主的に交渉が行なわれているときに、当事者の意図に反し希望に反して、公害等調整委が積極的にそこに介入して水をさそうというような趣旨ではございません。また、そういう意図も全くございません。
  47. 矢山有作

    矢山有作君 くどいようですが、それだけははっきりさせておいてくださいよ。これは特に被害者の場合、あなた自身も先ほど来おっしゃっておったように、被害者というのは非常に弱い立場なんですから、そこに、被害者が同意をしないのに職権あっせんなんというような権威主義的な、権力的なことは絶対やらない、と。私はいまの問題を確認をしながら次の質問に入りますが、これだけは間違いないようにしていただきたいと思います。  それからその四番目は、審査会あっせんは「知事の要請」によって行なう、こうなっているわけですね。審査会の場合は知事の要請によって行なう。ところが、とかくこれは企業寄りの知事も多いのですよ。こんなことを言うと知事さんの中にはおこる人があるかもしれませんが、企業寄りの知事が多いのです。そういう場合に、住民の公害反対の運動に理解を示さぬことも多々ある。また政治的な思惑から紛争をわざとこじらせるためにあっせん要請をやったり、逆に住民の運動に水をさすためにあっせんを要請するというような可能性も、私はなしとしないと思う。なぜ審査会の場合に「知事の要請」ということを要件としたのですか。
  48. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 審査会の場合は、中央委員会と違いまして、本来審査会は付属機関でございますし、それから審査会委員は非常勤でございますし、それから審査会には、中央委員会と違いまして固有の事務局がなくて、知事部局がそこの事務を行なっておるといったようなのが実態でございます。そういうわけでございますから、審査会が常時公害実態に目を光らせて動くというためには、いまの固有の事務局も持たないという点で、中央委員会と違ってかなり不便な点がございます。  一方、知事のほうは本来公害行政についての責任者でございますし、それから県内の公害紛争実態を把握すべき責任がございますし、そして固有の事務局も持っておりますので、そういう場合に動くことが、当然動くべき義務もあるし、それから動きやすいという状態にもなっております。  そんなような関係で、審査会あっせんは、職権でやるについては知事の働きかけがあってやるということになっておりますが、しかし、あるいはそういう場合に、本来必要があるのに知事がそれについての要請をしないというようなもしおそれがあるような場合には、そして、そういう場合には当然知事があっせんを要請すべきであるといったような事案がございましたら、それがわかりますれば、中央委員会から知事のほうに話し合いをして、要請をしてもらうといったような道もあろうかと思います。  この法案審査会あっせんは知事の要請によるというふうにしたのは、そういったような、特に一番大きな理由は、固有の事務局がないといったような点が主たる理由でございます。
  49. 矢山有作

    矢山有作君 それは、そうなると委員長、たいへん問題ですよ。知事部局のほうが一つの大きな組織を持って、ここが公害実態をよく把握しているんだ、ところが、審査会のほうは事務局もなくて、しかも常勤ばかりでもないし、ここのほうは、極端にいうなら何が何やらさっぱりわからぬ、そういう状態のところへ、知事の要請によって審査会職権あっせんをやらせるということになると、まさにこれは一方的なあっせんになるおそれがあるわけですよ。審査会が十分能力を備え、機構が充実しておるというものなら、これは知事部局に対して対等、それ以上の立場でこの紛争あっせんに当たれるでしょう。ところが、審査会のほうはこれはさっぱり役に立たぬような力しか持ってなくて、知事部局のほうが一方的な実態把握の大きな力を持っている。このあっせんは、まさに知事の意図する方向で動かされていきますよ。それだったら、もう「知事の要請」というのは削ってもらわぬと困る。これは「知事の要請」でなしに、やっぱり当事者の意思を聞く、これにしてもらわなければ困りますよ。
  50. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) この審査会に対する知事の要請でございますが、審査会自体は別に知事の要請に拘束されるわけでもございませんので、知事が要請したからといって、審査会が知事部局の手足になって動く、そういうわけでもございませんし、それからいま御指摘のありましたように、この知事の要請に基づいて審査会あっせんを行なう場合にも第一項は働きますので、やはり審査会は当該紛争について実情を調査し、当事者の意見も聞くということになりますし、それから、もともとこのあっせんをやるについては、第一項にありますような、被害の程度が著しいとか、その範囲が広い公害にかかるものであるとか、あるいは紛争を放置するときには社会的に重大な影響があるとか、そういう要件は全部働くわけでございますから、決して審査会が知都部局の機関になるようなおそれはなかろうと思います。
  51. 矢山有作

    矢山有作君 委員長、それは知事部局の機関になるようなおそれはないとおっしゃっても、おそらくその審査会の構成等をやっていくのは知事ですからね、幾ら拘束されぬ拘束されぬおっしゃっても、これは実際に拘束されますよ。しかも審査会は、公害の問題についてはほとんど実態を把握するような能力はない。それならこれは必然的に、知事部局の意向のままに動かされるのですよ。というのは、審査会は何にも知らぬのだから、能力がないのだから、能力がない、知らぬ者が知事部局のほうからいろいろなものを持ってこられて、こうだああだと言われれば、その方向に動いてしまいますよ。拘束される、されぬの問題じゃない。拘束される、されぬの問題の前に、全く公害の問題について無能力で何も知らぬということなんだから、そんな審査会が知事の要請だけによって動かれたのではたいへんですよ。そこのところははっきりしてもらわなければいけませんね。  ただその場合に、あなたのほうでいま言われました、「当事者の意見を聴いた上」というのがこの二項の問題にかぶってくるのだとおっしゃるけれども、かぶってくるのなら、「知事の要請」を抜いてしまえばいいわけですよ。「知事の要請」は必要ないです。そして逆に審査会というものを、公害紛争というような、住民の権利義務に重大な関係を及ぼすこういうような問題に、十分に任にたえ得るように強化をすることのほうが先じゃありませんか。それは話がどうもちょっと逆だね。
  52. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 審査会による職権あっせんの場合は、その要件なり手続なりは、全く中央委員会のやる場合と同じなんでございまして、そこの区別はないと思います。ただスタートが、中央委員会は常設の事務機構を持っておりまして、しょっちゅう見ているというのに対して、審査会は固有の事務局を持たない、そこの違いがありますので、それでスタートのところだけはこういうように分けておりますけれども、それ以外は全く両方同じでございますから、スタートのところが違うというだけで、当然従属的になるというふうにはならないというふうに考えております。
  53. 矢山有作

    矢山有作君 しかし、そのスタートのところが違うのがたいへんなのじゃないですか。力を持たない審査会に対して、公害紛争職権あっせんをやるのに対して、スタートのときに住民の意思というものはそっちのけで知事の要請で審査会が動くということになると、知事部局のほうが力を持っておるだけに、知事部局が政治的に動かぬとは言えぬのですから、そういう保証はないわけですから、だからよけい危険なのじゃないですか。スタートのところで知事が、たとえば百歩譲って議論するとしても、知事の要請ということでやるとしても、知事の要請を出す前段で当事者の意見を聞いて、その合意を得て知事が要請を出すというのなら、ただ話がわかるのです。私は出発点の相違というのが重大な問題になる、こう言っているのですよ。
  54. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 知事の要請の場合には、職権あっせんの開始を要請するというだけで、その場合に審査会が、知事の要請のあった場合には必ず職権あっせんをしなければならないという拘束を受けることにはなっていないわけでございます。繰り返すようでございますけれども、知事の要請があった場合に、審査会としては自主的に、その事案職権あっせんの必要があるものかどうかということについて十分調査し、実情を確かめ、さらに当事者の意見を聞いて、その上でほんとうにこれは職権あっせんを行なうべきかどうかということについては、個々の委員の意見では困りますので、審査会の議決を経ましてその上でやるのでございますから、御指摘のような危険はないのじゃないかというふうに考えます。
  55. 矢山有作

    矢山有作君 それはあなたの言われるのもわかるのです。なるほど職権あっせんの開始が、知事が要請をするということで始まる。知事の要請を受けて、職権あっせんをやるかやらぬかは審査会がきめるのだ、審査会がきめるためには、いろいろな事情を調査してきめるのだ、これはそのとおりわかるのです。わかるけれども、知事と審査会との関係を考えた場合に、知事のほうから要請があれば、審査会はまず知事の要請を受けて動く、これが常識なんですよ、いまの行政機構の全体を考えれば。だから私は心配しておるのです。だからそこのところに、たとえばそれじゃもう一つ言うなら、知事が要請をしても、実際に職権あっせんに入るか入らぬかということは審査会がきめる。審査会がきめるについては当事者の意見を聞いて、特に被害者が反対するならば審査会あっせんに入らない、こうなるのなら話はまた別なんです。  ところが、この条文だけではそういうふうになかなかならぬでしょう。だから私は心配しているのです。  法律というのは、一たんつくってしまったら執行は皆さんがやるのですから、そちらで行政権限でおやりになるわけだから、ここでいろいろ議論しておっても、つくってしまうと一人歩きしますからそれがこわいのですよ。この条文の中から見たら、私が言ったようにはならぬ。知事の職権あっせんの要請がありました、審査会は知事の要請を受けて職権あっせんに入ります、これだってできるのです。その際いろいろな事情を調査してみました、事情を調査してみましたが、やっぱり知事の要請によって職権あっせんに入ったほうがよろしいから職権あっせんに入ります、こうなるのですよ。だからそこに歯どめとして、知事の要請があったが、審査会としては当事者の意見を聞く、その場合に被害者が同意しなければあっせんはやらぬのだ、こういうふうにちゃんと解釈できるような条文になっておれば、私はまたこうほどしつこい議論はいたしません。そこのところなんです。
  56. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 御趣旨はよくわかるのでございまして、審査会あっせんが知事の要請により開始するものではございますけれども、そのために、そのあっせん内容まで知事の影響を受けるというようなことでは困るのでございまして、この二項の規定が、「前項の規定による審査会あっせんは」これこれにより行なうものとすると書いてありますので、第一項の要件が全部働くということからして、この点は、この条文の上でほかの解釈の出るおそれはないものと思いますけれども、しかし、御指摘のような問題もございますので、これは近い将来、いまのところ近く全国の審査会の方にお集まりいただいていろいろ打ち合わせをする予定でございますから、そういう機会を利用して、いま御指摘のような、この法律趣旨と違った結果になるようなおそれのないように、特にその点ははっきりさせておきたい、そういうふうに考えます。
  57. 矢山有作

    矢山有作君 あっせん内容が知事の影響を受けないとおっしゃるけれども公害紛争実態をつかんでおるのは知事部局で、審査会のほうはそれを知らぬわけですからね、あなたがおっしゃるように。それだから私は、内容が影響を受けると言うのです。その心配があるから、特に手続の面をうるさく言っているわけです。  だから、いまおっしゃったような保証というのは、どういう形ではっきりしてくれますか。ただ審査会関係係者を集めて口頭で言ったというだけでは、私としてはやっぱりここまで議論した以上は、そうですかというぐあいにはいかなくなるわけです。したがって、先ほど来言っておりますように、知事のあっせん要請がある、それによってあっせんに入るか入らぬかは審査会がきめる、その審査会あっせんに入るか入らぬかをきめるときに、いろいろな事情を調査する、その際あわせて当事者の意見も聞く、そして当事者、特に被害者等にあっせんは受けない、あっせんに入ってもらっては困るという議論が出るなら、これはその段階で押し切ってあっせんには入らぬ、こういうような、この解釈をどういうふうにしてはっきりしてくれますか。ここのところをはっきりしてもらわぬと、ちょっと私も心配になってまいりましたね。
  58. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 具体的にどういう方法ということになりますと、結局、この法律の適用を厳正にやるようにということになってしまうのだろうと思うのですが、そしてそれは、先ほどから中央委員会の場合に、たとえば「当事者の意見を聴いた上」というのはどうやるのか、被害者がいやだと言ったときにはどうするのかということについてお答えしたのと全く同じことなんですが、それは中央委員会の場合も審査会の場合も同じなんでございます。ですから、この規定趣旨審査会に十分浸透させるような措置を講ずるということが、一番実質的なのじゃないかと思います。それですから、その意味におきまして、先ほど申しましたように近く開かれる全国の審査会との協議会だとか、あるいはそのほか中央から地方に事務連絡にまいりますような機会もございますので、そういうときにその趣旨を十分徹底させるように中央委員会としても考えていきたい。そういうことでいかがかと思います。
  59. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) お許しをいただきまして補足させていただきますが、委員の御指摘になっておられます点につきましては、要するに審査会が、スタートについての知事の要請を受けて、開くべきか開かざるべきか、事件処理に入るべきか入らざるべきか、そういうことを主体的に判断するということができるということ、それから、これはもちろん申し上げるまでもないことでございますが、常に周囲の監視を受けて事が運んでおるということ、それから審査会の人事は、申し上げるまでもなく議会の同意を得て選任されるものであるということ、また、後にお尋ねがあろうかと思いますけれども事件のやりとりにつきましては、中央と地方の間にかなり弾力的な運用ができるようになっておりますので、当事者において好ましくないと判断される場合には、国においてこれを処理することが場合によってはできるような仕組みにもなっておる。  こういうようなことから考えますと、事のスタートについては、知事の要請を受けてスタートさせたらどうかということを考えるということでございますが、先ほど来申し上げておりますように、その能力のあるなしということは、主としてあるいは調査的あるいは研究的、こういった事務能力において事務スタッフを持っておりません委員会でございますので、これを知事の関係部局に求めておる、こういうものでございまして、審査会が独自に構成いたします調停委員会とか、あるいはあっせんのための委員が、基本的にその事案処理解決のために能力があるとかないとかということでは、さらさらございません。つけ加えさせていただきます。
  60. 矢山有作

    矢山有作君 これは私くどいようですけれども、ちょっとお話を聞いておると心配になってきたのでくどく言うのですが、審査会が主体的に判断をするのだといわれましても、これはことばの上ではそうなんです。だけれども、実際にそうなるかならぬかというのは、これは一つの大きな問題がある。それをあなた方は担保する方法として、審査会委員は議会の同意だと言われるのです。議会の同意がどんなものかというのは、国会運営をごらんになっているあなた方が一番よく知っているでしょう。議会の同意があって審査会委員が任命されたから、じゃ知事の政治的な影響を受けない審査会委員が任命されるかといったら、そんな保証はどこにもないのですよ。議会の同意を得て任命というのは単なる形式手続にしかすぎぬので、その手続があったからといって、知事の政治的な影響下にないような委員が選任されるという保証はどこにもないのです。いまの国会運営を見てごらんなさい。だから、そういうふうなことは理屈にならぬのですよ。  ましていわんや、審査会というのは調査研究をみずからやす力がないんだというのだけれども、みずから調査研究をする力を持っておらぬ審査会は、公害紛争あっせんに当たるときに、そういった重大な資料というものはみな知事部局から出てくるわけでしょう、そうすると、それにたよってやらざるを得なくなるのですよ。そうしたら、まさに知事の政治的な影響をもろにかぶってしまう。だから、これはいまの審査会の構成それ自体が問題なんです。その問題を考えずに、知事の要請で職権あっせんに入るというのは、これはきわめて危険だ。  これはここまで来たら、あなた方、規定を抜いてしまうか、それでなかったら明確に解釈基準というものを文書で出す。その解釈基準の文書というのは、先ほど言いましたように、この「当事者の意見を聴いた上」というのが二項にかぶるといったって、どんなかぶり方をするかということが問題なんですから、したがって職権あっせんが、その都道府県の中で起こっておる住民の公害に反対する運動に対して、その芽をつんでしまって水をぶっかけるということのないようにするためには、最低限度の保証として、なるほど知事が要請はする、しかし、審査会が動くにあたっては、先ほど来しつこく言っておるように当事者の意見を聞く。その場合に、先ほどおっしゃったように被害者のほうから、それはいけぬ、職権あっせんをやってもらっては困るという意見があるなら、それを尊重する、こういうことが明確になるような法解釈を文書で示していただく。そうでなければ、私どもはこれはこのままよろしゅうございますというわけにいかなくなりました、これだけ議論してみると。これが一番気にかかっていたのです、私は。
  61. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 御指摘の点よくわかりますので、結局、審査会あっせんの開始につき知事の要請があった場合でも、審査会あっせんを開始するかどうかをきめるについては、「被害の程度が著しく」云々という第一項のその実質的な要件を満たすということ、それから当該紛争について実情を調査するということ、当事者の意見を聞くということ、そして審査会の議決を経るということ、それらのすべてを満たさなければあっせんの開始をしてはならない、そういう趣旨のことは、これはいまちょっとわかりませんけれども、たぶん通達なりが出せると思いますから、そういう通達なり何なりの方法で明らかにしたいと思います。
  62. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃ、この二十七条の二の第二項の解釈はいまおっしゃったとおりであるという法文の解釈を明示をして、それをそれぞれ関係方面へ出す。それでやってもらえますね。
  63. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) わかりました。いまの解釈は、ここでもいま申し上げたとおり明確にいたしましたし、そうしてその内容について、関係機関の間に誤解のないよう十分の措置を講じたいと思います。
  64. 矢山有作

    矢山有作君 その文書が作成された暁は、これは私どものほうへ、この委員会に出していただきたい。よろしいですね。
  65. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) わかりました。そのとおりにいたします。
  66. 矢山有作

    矢山有作君 それはいつごろまでにできますか。
  67. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) あるいは私どもの理解が不十分であるのかもしれませんが、その場合は改めさせていただきますが、この法律施行に際しまして手続を進めさせていただく、そのように理解してよろしゅうございましょうか。公布後六ヵ月以内に施行することになっておりますので、その時期においてやらせていただく、そういうことでよろしゅうございましょうか。
  68. 矢山有作

    矢山有作君 それでは施行のときに、いまのその二十七条の二の第二項に関係する解釈をきちっと文書にして、それを通達として、こういう解釈でやるんだということを流してもらう。それは法律施行のとき、こういうことで確認いたします。それでいいですね。
  69. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 小澤委員長、いいですね。
  70. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) それでよろしゅうございます。
  71. 矢山有作

    矢山有作君 その次は、二十七条の三の職権調停についてです。  職権あっせんによっては紛争解決が困難であり、かつ相当と認めるときは、「当事者の意見を聴いた上、その議決に基づき」「調停を行うことができる。」と、こうなっているわけですね。この場合にも当事者の意見を聞くことになっておるわけですが、被害者が反対した場合にはどうするのか。反対であっても調停に移行するのか。この辺はどうなんですか。
  72. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 調停をする以上、調停の成立を期待しますし、調停の成立のためには双方の合意が必要なのでございますから、初めから調停には応じない、調停を開いても合意はしないということがはっきりわかっている場合には、これは職権で調停を行なうということは考えられないのでございますけれども、ただ、こういう条文はこの場合だけではなしにいろいろな場合にございますけれども当事者の意見を聞いたときに、その当事者の意見のうち、被害者の意見には拘束されるように、それからもう一方の当事者の意見は聞き置くようにという、そういう使い分けもできませんし、このままにはなっておりますけれども、実質的にはいま言ったように、当事者の一方がどうしても応じないというときには、調停に入るということは意味をなしませんので、まずそういう運用はできないと思います。
  73. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、職権あっせんに入るときと同じように当事者の意見を聞くというのだが、当事者の同意が得られなければ実際問題としてやれない、こういうふうに考えたらいいわけですね。
  74. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) まず普通の場合、ほとんどの場合がそうなろうと思います。
  75. 矢山有作

    矢山有作君 ほとんどの場合もどうも、やはりそれがあたりまえだと思うのです。それを無理やりに押えつけて、職権あっせんだ、職権調停だといってみたところでしょうがない話ですから、それはいまおっしゃった解釈を正しく守っていただきたいと思います。  私、なぜこんなことをくどくど言ったかといいますと、職権あっせんをやる、不調になる、それから今度は職権調停に移行する、こういう紛争処理のパターンができますと、結果的には、被害者をして不満足な調停案をものまざるを得ないような立場に追い込むことになるおそれがある。要するに、二十七条の二と二十七条の三による紛争解決方法は、この法律の解釈、運用のいかんでは被害者住民の権利を守る有効な手段となりますが、その反面また、被害者住民が自己の力によって交渉する、そういう中で住民自身の力で公害補償を獲得したり、あるいは公害の差し止めをやらそう、そういうような運動を圧殺しかねない、つまり両刃の剣のような役割りがある。しかも、これを実際の運用を誤れば、一方的に被害者のほうの運動の芽をつむ、こういう結果になるおそれがあるから、私はいままでこの問題を非常にやかましく言ったわけです。公害紛争解決に当たられる公調委が、絶対にそういうことのないように、私は再三お尋ねしていま明確な御答弁をいただきましたので、不安を解消することが大いにできると思いますけれども、しかし、なお一そうこの法律運用については、そういう私が抱いておるような不安がいささかなりとも実現をしないように、最高のあなた方の配慮を強く要求をしておきます。  それから改正法案の第三十三条の二で、「調停委員会は、調停前に、当事者に対し、調停内容たる事項の実現を不能にし、又は著しく困難にする行為の制限その他調停のために必要と認める措置を採ることを勧告することができる。」となっております。仲裁裁定についても同様の措置ができることになっておるわけでありますが、その具体的な内容はどういうことなんですか。つまり必要な措置、その具体的な内容ですね。
  76. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) たとえて申し上げたほうがよろしいかと思いますが、「調停内容たる事項の実現を不能にし、又は著しく困難にする行為」というのは、たとえばその調停補助金額を支払うということが問題になっているときに、その代償義務者である加害者側のほうで、本来だったら補償金の支払いに充てられるはずの唯一の財産を、隠匿のためにほかに処分してしまうなんということがあると、これはせっかく調停をしても、その補償金の支払い、「調停内容たる事項の実現」が非常にむずかしくなりますので、そういうことはしないように、そういう唯一の財産の処分をしないようにするとか、それから「その他調停のために必要と認める措置」ということになりますと、「その他」の場合ですが、たとえば健康被害などについて補償金の支払いが問題になっておりますときに、被害者のほうとしては非常に多額の金額の請求をするということになるような場合に、これは最後にその金額を認めるかどうかということは、調査の結果に基づく調停の結果できまるのでございますけれども、しかし、その間にも被害者の健康がむしばまれていくというようなことがありますれば、結局調停目的を達しないことになりますので、調停成立までの間、ある程度相当と認められる生活費なり療養費なりをかりに支払うことを勧告する、そういったようなことが例になろうかと思います。
  77. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、勧告をしてもそれに従わなかった場合、これはどうするのですか。勧告をしても従わなかった場合、それに対する制裁措置に関する規定が全然ないわけですね。これは勧告をした以上その勧告に従わせる、それをどういう方法で担保しますか。
  78. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 調停委員会調査の結果、客観的な資料に基づいてそういう見解を出して当事者に勧告すれば、これで当事者がそれに従わないということは普通は考えられないのでございますが、ただ、いかにして強制するかということになりますと、その勧告に従わないということになれば、結局、制度として考えられるのは強制執行ということになるのだろうと思いますけれども、しかし、この措置をとるのは裁判所じゃありませんで、行政機関である公害等調整委員会あるいは審査会でございますし、そして判決をするわけでもございませんし、しかも手続調停ですから、どうも強制執行するというのは非常にむずかしいので、勧告という程度にとどめたわけでございます。
  79. 矢山有作

    矢山有作君 そればね、勧告して実行せぬからといって強制執行はできませんよ、この状態ではね。この三十三条の二の規定する状態で、勧告してそれをやらぬから強制執行しようといっても、それはできない。だけれども、少なくとも勧告したら聞いてくれるだろうといっても、それはなかなか勧告したって聞かぬのじゃないですか。だいぶいままで国会等でも問題になりましたが、企業というのはなかなかしぶといですからね。これは何だかんだ言って逃げる手はもう彼らのほうがよっぽどよく知っているので、勧告をなかなか聞かぬと思うのですよ。  だから、私は勧告を聞かせるためには、勧告を聞かせるだけのやっぱり措置を法文上しておかなければいかぬ。「勧告する」なんて書いてあるなら、それを担保するだけのちゃんと規定を盛っておかぬと、そんなことをしておるから法律をつくってみたってしり抜けになってしまって、何も効果が出ないのですよ。だから勧告をしたら、その勧告を順守する義務規定を設ける。それに違反したならば、その違反した者に対する罰則規定を設ける、こういうふうにして勧告が効果をあげる担保というのをちゃんと考えておかないといかぬと思うのです。それなしでいろいろな勧告なんてやったって、しょうがないでしょう。
  80. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) よくわかりました。御意見として伺いまして、なお今後の研究問題に供したいと思います。
  81. 矢山有作

    矢山有作君 時間をそろそろせかれ出したのですが、今後の研究問題で逃げられてしまうと、そのまま逃がすというわけにもいかぬのでね。今後の研究問題ということですが、これは実際問題として勧告だけではだめですよ、いままでの例から見て。早い機会に、勧告が実効をあげるような措置というものをまた法律でも改正してやる意思があるのかどうか。それはまた考えますと言ったって、また考えるのはいつ考えるのか、どういう考え方をするのか、さっぱり見当つかぬ。だから、少なくとも勧告が尊重されるような、尊重されることを担保するようなそういう改正を近い将来考えるのか、考えないのか。そこまでやっぱり話をきちっとしておかなければいかぬです。
  82. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) これはケース・バイ・ケースの問題かとも思いますが、この「調停前の措置」の問題ではございませんけれども、たとえば調停そのものについても、調停をしたときには当事者間に合意の効力を生じますが、それの強制執行ができるかということになると、強制執行の道はございません。それから、それに応じないときに罰則規定があるかというと、罰則もございません。しかし現在までのところ、調停委員会が関与して調停したもので、それが履行されなかったという例は一件もございません。やはりこれだけの法律に基づく権威のある解決をした場合には、当事者は必ずそれを履行するものと、そういうふうに考えます。勧告の場合も同様ではないかと思います。もしそれでそういうことにならないというような事実が生じますれば、そのときにはまた考えなければなりませんけれども、現在はこの程度で足りるのじゃないか、そういうふうに考えます。
  83. 矢山有作

    矢山有作君 時間を取ってもなにですから、これぐらいにしておきますが、しかし、勧告が尊重されるかされぬかというのは、これはいずれにしたところで事実で示されるわけですからね、そのときに、何というか、またくだらない言いわけなんかしないように、勧告を出した以上は勧告がきちっと守られるような十分な措置をしていただきたい。  現行の三十七条では、調停委員会調停手続は非公開になっていますね。ところで本法制定のときに、国会審議の場におきまして、調停手続について公開をすべきであるという論議が行なわれたことは御存じのとおりであります。ところが、調停の本質からいって、これを非公開とするのが調停を円滑に進めるためにはよいということで、この三十七条の非公開の原則というものがそのままあなた方のほうで貫かれたわけでありますが、今回の改正案では、第三十四条により調停案の受諾を勧告した場合、第三十四条の二により、その調停案を理由を付して公表することができることになった。これは一歩前進だと思います。この際、「相当と認めるとき」とはどういうことを意味しておるのか、これをお伺いしたい。
  84. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 本来調停は非公開でございますけれども調停案ができて、それの受諾を勧告したような場合には、もはやその調停手続の過程での調停双方のいろいろなかけ引きなどを公表しては困るというような、そういう段階を一度過ぎたことになりますし、すでに調停案というものができた以上、公害問題の社会性なり公共性なりを考慮いたしますと、この受諾を勧告する調停案についての調停委員会の判断を公表して社会一般に正確に周知させると同時に、世論の批判にもさらす、そして、あるいはこれによって当事者の適切な判断の助けにもさせるということが必要な場合があろうかと思います。それでそういうことが必要だと思われる場合には、それを公表するということにしたいと思います。
  85. 矢山有作

    矢山有作君 その「相当として認めるとき」というのに、実際の法の運用として、被害者が公表を希望したときとか、少なくとも当事者双方が公表に同意したときのような場合は、むしろ積極的に公表していくというような法の運用を考えたほうがいいのではないかと思うのですが、この点どうですか。
  86. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 御指摘のような場合には、これはそのほうがよろしいと思います。むしろ双方がそれを希望するというときには、当然これは公表するのが相当と考えます。
  87. 矢山有作

    矢山有作君 これで最後にいたしますが、第四十三条の二で「中央委員会又は審査会等は、権利者の申出がある場合において、相当と認めるときは、義務者に対し」「調停仲裁又は責任裁定で定められた義務の履行に関する勧告をすることができる。」と規定されております。この「相当と認めるとき」とは、具体的にこれまた何をさしておるのか。
  88. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) いろいろな場合があろうかと思いますが、たとえば調停で定められた義務を履行するに際して、調停当時に予測されなかったようないろんな障害が起きるとか、たとえば金を払うとしても、一ヵ月後に金を払うということになっていたところが、その一ヵ月の間に急に資産状態が悪くなって払えないなんというような問題が起きたときには、その履行のために、たとえば当事者以外の関係者、第三者の保一証のもとに払わせるとか、あるいは立てかえ払いをさせるとか、何かそういったような調停のときには予想しなかったいろいろな手当てがあろうかと思います。そういうことをさせるとか、あるいは資力がないというときに分割払いの方法をきめるとか、何かそんなような履行についてのお手伝いをする、そういうことでございます。
  89. 矢山有作

    矢山有作君 これまた前の勧告の場合と同じで、この義務の履行の勧告に従わなかった場合の担保方法というのが何にもないわけですね。そうすると、これは権利者のほうが救済されるためには訴訟提起の手段による以外にはない、こういうことになるわけですか。義務履行が担保されるためには訴訟提起しかないんだということになると、これはまたたいへんなんですよね、訴訟に持ち込むということになると。だから、ここでもやはり義務履行の勧告をやるのなら、その勧告が効果をあげるような手段方法というものを同時に規定しておくべきだと思うのです。  特に、公害紛争というのはなかなかむずかしいものでしょう。あなたも最初おっしゃったように、被害者のほうは常に弱い立場にあるのだから。それだけにこの義務履行だって、よほど強力な担保措置がないとやれない。訴訟でやればいいとこう言うけれども訴訟に持っていったら、これはまたたいへんなんですよね、御案内のとおりなんですから。したがって、これらの点についても将来、義務履行の勧告に対してこれが守られるような措置というものを、実際の面でも、また実際の面でそれが実効をあげなかった場合には法規を手直しをするということによってでも、将来考えていくのか、いかぬのか、この点どうですか。
  90. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 先ほどの例でございますが、期限が到来したときに、予測しない資産状況の悪化によって支払い能力がなくなったといったような場合には、これは訴訟してもだめでございます。訴訟してもだめですし、それから義務履行についても罰則をきめてみたところで、あるいは過料なり罰則きめてみたって、資力がないのですからどうにもならないので、やっぱり被害者救済されないのでございます。
  91. 矢山有作

    矢山有作君 極端な場合だけを言うのじゃなしに。
  92. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) そういうときに、先ほど申しましたように、それでも被害者救済されるようにたとえば関係者のほうに代払いをする道をあっせんしていくとか、何かいろいろな方法を考えて、それで救済されるようにしようというわけでございます。そしてその勧告をした場合に、勧告をするときには不可能なものを勧告するわけにはいきませんから、可能な道をさがし出して勧告することになりますから、それが履行されないということは考えませんけれども、しかし、これも実績を見まして、もしそういうものがやはり履行されないで終わるということが出てくるということになれば、またそのときに立法的にも考えなければならぬと思いますが、いまのところは、先ほどの措置についての勧告と同じように、これで当面は推移を見ていきたいと考えております。
  93. 矢山有作

    矢山有作君 ことばじりをとらえるわけじゃありませんが、支払い能力が全くないというような極端な例だけを引いてものを考えたら、これはいかぬと思うのですよ。支払い能力はあっても、いろいろな手段によって義務履行をさぼるという状態というのはたくさん想像されるわけですから、そういう場合を特に重視していまのお尋ねをしておるので、支払い能力が全くない場合は、何も私があなたに質問しなくたって、そんなものに義務履行を幾ら勧告したってどうしようもないのだから、それはわかり切った話なんです。それよりも、支払い能力があるのに義務履行をしないという場合がたくさん想定されるから、それを前提にものを言っているわけですから、あなたがいまお答えになったように、その義務履行が確実に行なわれるような最大限の努力をあなた方に実行の面で期待をし、さらにそれが実効があがらない場合において、また法の改正をやるとかなんとか、そういった点はあなた方に積極的に考えていただくということにいたしまして、私の質問はこれで終わります。いいですね。
  94. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) よくわかりました。そういうふうにしたいと思います。
  95. 小平芳平

    ○小平芳平君 ただいまの質問をお聞きしておりまして、都道府県の場合は審査会が知事の要請によりあっせんを行なうわけですが、それは知事部局の事務局が手足となって働くからそういうことになるんだということです。ところが、その審査会すらない県があるわけですね。これはまさしく知事そのものがあっせんに動くわけでしょう。そうすると、この審査会の性格というものが、現在はそうした行政機関から独立して働くという、そういうことになってないわけですね。したがって、そういう点どうお考えになるか。審査会のある地方においては、知事からそういう要請を受けてあっせんに動く。その審査会すらないところは、知事みずからがあっせんに乗り出そう、しかも職権で動き出すということでありますので、まことに独立した機関となっておらない。そういう現状についてどう思いますか。
  96. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 審査会のない、いわゆる名簿方式の県がまだだいぶございますが、これは私どもとしても望ましい状態ではございませんので、それぞれの府県についてそれぞれの特殊の事情がございましょうから、一律にはいかないとは思いますけれども、できるだけ審査会を置くような方向に動いていただきたい、そういうふうに考えております。
  97. 小平芳平

    ○小平芳平君 できるだけ審査会を置くとともに、その審査会は、やはり行政機関と独立して働くということが目標であるはずでしょう。いかがですか。
  98. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) おそれ入りますが、いまちょっと聞き漏らしました。もう一度おそれ入りますが……。
  99. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほど、審査会のない県に対しては審査会を置くように、いろいろそれぞれ県によって事情もあろうと思いますが、できるだけ審査会を置くように働きかけたいという御趣旨だったでしょう。したがって、その審査会は行政機関とは独立して、知事の一々要請を受けて動くとか知事部局にたよってあっせん調停に動くとかいうのでなくて、独立して公害あっせんに当たるべきだというふうに考えますかというのです。
  100. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 本来のたてまえとしては、御指摘のように審査会は独立機関として、そして独自の事務局を持ち、常時その管内の公害問題について目を離さずに処理するのが一番望ましい形だと思います。ただ、現在のところは、それぞれの府県の特殊の事情があるのでございましょうが、そこまでいっていないのはまことに残念には思いますけれども、本来のあり方としてはそのほうが望ましいというふうに考えております。
  101. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから公害等調整委員会では、いままでここに出された資料によりますと調停に対する件数だけ述べられておりますが、そのほかはどうなっておりますか。
  102. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 公害等調整委員会の所管事項といたしましては、調停仲裁裁定と三つございますが、このうち、いままで申請のあったのは調停だけでございまして、仲裁裁定はまだ一件もございません。今度新たにあっせん制度の導入をお願いしているわけでございますが、このあっせん制度は、いままでは公害等調整委員会にはございませんでした。
  103. 小平芳平

    ○小平芳平君 公害等調整委員会は、あっせん制度をつくろう、あるいは職権によるあっせん調停をつくろうというこういう改正よりも、現在ある機能、つまり調停仲裁裁定ですね、その現在ある機能の充実こそ先決じゃないですか。いまだかつて仲裁裁定もないというのに、あっせん、しかも職権あっせん、職権調停というようなものを取り込もうという、そういう拡大よりも、もっと現在ある機能の充実が先じゃないですか。
  104. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 裁定制度につきましてはまだ申請が一件もございませんですけれども、これは裁定制度申請によって開始するのでございますから、そのために裁定制度について委員会が職務を行なったことがないというわけでございまして、この裁定制度が発足してからまだ一件も申請がないということについては、私どももいろいろ反省はしておりますけれども、その原因を考えてみますと、おそらくこれが全く新しい制度でございまして、国民の間になじみが少なく、そしてPRも足りなかった、国民全般に対して十分に浸透してないといったようなことが一つの大きな原因かと思いますが、いずれにいたしましても、いずれはこれも申請があり、そちらのほうの仕事も出てくるとは思いますけれども、当面はまだ申請がございません。  それで、現在あるのは調停でございますが、調停については、これも殺倒してきてどうにも受け答えができないという状態ではございませんので、申請のある事件は、これはもてあましているわけではございませんで、逐次処理しているわけでございます。  しかし、最初に申し上げましたように、現在の公害紛争の実情から考えまして、単に申請を待っていて見送っていくというのではやはり責任が果たせないと思いますので、職権によるあっせん制度をお願いしているわけでございます。
  105. 小平芳平

    ○小平芳平君 裁定申請を待ってということは承知しております。ただ、後ほど渡良瀬川調停につきましてもっと詳しくお尋ねするつもりでおりますが、実際問題裁定申請してだいじょうぶなのかどうか。どういう機能があるのか。  先ほど矢山委員の質問に対しまして、客観的な調査資料に基づいてとおっしゃっておりますが、それは水俣病だって御存じのように、企業被害者が両方とも客観的な調査資料に基づいて、あの長い年月訴訟で争ったじゃないですか。イタイイタイ病も同様です。あれだけの長い間、両方とも客観的調査資料に基づいてという主張をして訴訟で争ったというようなことから考えましても、私は現在の調整委員会が、一体仲裁裁定申請して何がやってもらえるのだろうか、ほんとうに加害者被害者がまっこうから対決するようなむずかしい問題そういう原因究明にどれだけ働いてくれるのか、これが一番の問題じゃないかと思うのです。  したがって、総務長官にお尋ねしたいのですが、先ほど来申しますように、こうした職権あっせん、職権調停、そのこと自体の問題はまた後ほど質問いたしますが、そういうところへ手をつける以前に、もっと現在の調整委員会の働きの充実、これこそ即刻取りかからなくてはならないのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  106. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 御指摘の点は私もよく理解できます。特に公害問題に対しましてのいままでの取り組み方等が、多くの面で御批判をいただいていることもよく承知しておるわけでございますが、やはり公害問題というものが、現代社会においては非常に重要な社会的な問題であると同時に、生活している者にとっても大きな重圧になってかかっておるという事実をわれわれも決して認識しないわけではございませんが、こうした問題を一つの現代に対する政治の中で取り組むというような姿勢が、環境庁をつくったりなんかして以来の私は政治姿勢にだんだんなってきていると思います。  そうしたような、だんだんと政治が公害問題に対して前向きに取り組むということが明確になってきておるわけでございまして、ただいま御指摘のように、公害等調整委員会そのものの活動が見方によれば不十分であるという御指摘は、われわれもわかります。しかし、実際委員会におきましての、今回の渡良瀬川あるいは古河鉱業の問題等につきましては、初めて私は面目を発揮したのではないかと実はたいへん喜んでいるわけでございます。これの調停そのものの御批判は別といたしましても、初めてこの公害等調整委員会が置かれた意義が国民の間にも認識をされてきたというふうに思いまして、今後はぜひ、ただいま御指摘のような点について、もっともっと大きな活動をこの委員会にわれわれは期待したいというふうに考えておりますし、本年度の予算等につきましても二億四百万程度でございますが、来年度におきまして、さらにこの公害問題の処理ということに対して政府は前向きに取り組んでまいりたい、そのように考えております。
  107. 小平芳平

    ○小平芳平君 長官がお答えになったように、渡良瀬川調停については、大いに面目を施したと私も評価をいたしております。その場合、これは後ほどもっと詳しく内容をお尋ねしたいのですが、古河がそれを受諾し、ともにまた被害者も、十五億円余ですか、受諾したから調停が妥結したのであって、そこで、じゃ減収なり、あるいはそれに対する銅の作用なり、それについて争いが起きてきたらどうしますか。
  108. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 渡良瀬川流域の銅被害の問題についての御指摘でございますが、調停事件は、内容は本来法律の上で不公開になっておりますので、これは明らかにすることはできませんけれども、しかし、その法律の不公開となっている趣旨にできるだけ抵触しない程度で申し上げたいと思いますけれども、この渡良瀬川事件は、実は銅被害があるかないかということが、最初から双方の間に百八十度見解が違っていたのでございます。片方は銅被害によってこれだけの減収があったということを言い、それから他のほうは、銅被害はない、それから減収の事実もない、これがスタートでございます。  これはそのままの状態では、幾らいったって解決つきません。それで、こういう場合のとるべき措置としては、双方に、それじゃ被害がないというならどういう根拠で言えるのか、被害があるというならどういう根拠で言えるかということを聞くわけなんですが、ところが、両方聞いても、それぞれの資料は出しますけれども、まあ私ども見ているところで、被害者側の出す資料というのはきわめて貧弱なものにしかならないわけなんです。  ですからそういうところは、先ほども申しましたように、本来ほんとうに銅の被害があるのならばそれは救済しなければならない、それからほんとうに銅の被害がないのにただ口で言っているというのだったら、これなら保護の必要がないということになります。単に被害者だから、真実に反する主張でもそれを通さなければならぬということは、そういうことは許されませんので、これは実際銅による被害があるかないかということの問題になりますので、私どもはその結果、新聞にも報道されておりますように、実際現地に行きまして、ちょうど麦の実る時期に現地に行きましてつぶさに圃場を回りまして、はたしてその被害というものが目で見えるのかどうかということを調べました。  目で見ますというと、たとえば水口のところが非常に貧弱なのは、これはすぐわかります。しかし、水口から若干離れるというと、一枚のたんぼの中ほど、あるいは中ほどまで行かないうちに、もうるいるいと麦が実っておりまして、そこに銅被害があるのかないのか、肉眼ではわかりません。それで一方、発表されている農林統計によりますというと、問題の森田地区の平均反収というのは、年々群馬県下の他の町村の米の平均反収——麦はいまちょっと記憶ありませんが、米の平均反収を森田地区とそれ以外の群馬県下の平均反収とを比較してみますというと、森田地区のほうが収量が多いのでございます。これは発表された農林統計。  そうしますというと、これは非常に迷わざるを得ないのでございます。しかし、そうかといって迷っていたのでは話になりませんので、実際幾つかの圃場を選び、そこで一つの圃場の水口から水尻までの間を十点ぐらい選びまして、それぞれの地点についての土壌中の銅の含有量、それからその部分の麦の収量、そういったものを実測しまして、実測した結果をさらに計算しまして、そういうことで結局、銅の被害がある程度あるということを科学的に突きとめたわけでございます。  科学的に突きとめて、その数値の上に立って、本来農民の主張する被害の額のうちどこまでが正当であるかということを考え、さらに、その事件についてはいろいろまた法律的な問題もございます。そういう法律的な問題も検討し、あらゆる角度から検討して、この事件は補償額としてはこの辺が妥当であるという結論を出しまして、それを双方に勧告したわけでございます。双方に勧告したのは、決して架空なものじゃありません。その結果ああいうふうにできたわけでございまして、同じことは、裁定事件そのほかの問題についても同じように進め得るものではないか、そういうふうに考えております。
  109. 小平芳平

    ○小平芳平君 その問題はあとでもうちょっとお尋ねしたい点があるのですが、総務長官がもう出かけるということで、当委員会はたったきょうだけがこの法律改正審議の日なんですが、非常に困るのですけれども。  そこでもう一点だけ、総務長官にお尋ねする前に、職権によってあっせんするということは、労働委員会がそういう例があります。もう何十年と労働委員会がそれを積み重ねてきておりますが、公害等調整委員会では、そういう労働委員会職権あっせんの例などを参考にされましたか。
  110. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 御指摘のとおり労働委員会だとか、あるいは建設業法などにもそういう制度がございますので、そういう幾つかの先例を参考にしております。
  111. 小平芳平

    ○小平芳平君 労働委員会は、ばく然と職権あっせんに入るのではないですね。どういう場合に入りますか。労働委員会の職権によるあっせんは、一番新聞に報道されるのは私鉄ですね。あるいは炭労についても職権によるあっせんの例がありますが、そうした全国的な、あるいは産業全体の重要事件の場合に職権によるあっせんを開始することがありますが、実際には当事者の同意を得ているのです。まるで当事者が同意していないものは、あっせんにも何にもなりません。この点については、先ほど矢山委員の質問に対する答弁で、もちろん同意を得てやるというふうにおっしゃっておられますので、それでいいのですが、さて、実際紛争が起きているような場合には、調整委員会なら調整委員会あっせんに入ると言っただけで、いかにも紛争を起こしているほうがおかしいじゃないかというふうな目で見られがちなんです。あっせんに入るぞと言われただけでも、一つの社会的な圧力みたいなものになる場合があるわけですね。したがって総務長官に、こうした職権によるあっせん調停——調停の場合は労働委員会はもっと労調法できまっていますが、そういう職権あっせん、職権調停に対する注意ですね、その点が一つ。  それから、渡良瀬川の問題はちょっとまだ中途はんぱですけれども渡良瀬川の場合はうまくいったからいいようなものの、両当事者が受諾したからいいようなものの、これからもっと困難な事態にぶつかるのじゃないか。そういう場合の公害等調整委員会あり方について積極的な検討をお願いしたい。この二点についてお伺いしたい。
  112. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) ただいま御指摘のように、やはり職権あっせんということはきわめて重要なことだと思います。同時にまた、労働委員会等におけるあっせんというものはそれぞれの規定の中でやられておりますが、この公害等調整委員会におけるあっせんも同じように、法の二十七条の二に規定してありますように、被害が甚大であるとか、あるいはこれを放置しておくことが非常に社会的に問題化するおそれが十分あるとか、さらに当事者間の話し合いが十分円滑に行なわれていないというような、この三つの要件をきわめて重視して、その上に立って両当事者の意見を聞いて、それからあっせんに入るというような方式は厳として守っていくつもりでございます。  もちろん、この点につきましても、調整委員会委員長はじめ委員の方々や事務局長は、特にこのあっせんということは——私は公害の問題について、もうこじれてしまってどうにもならなくなってからのこのこ出ていくということは、これはほんとうにお互いにたいへんな迷惑なことなんで、積極的にこの問題と前向きに取り組むというのは非常に私はいいことだと思っているのです。しかし、一方から言うと、そういう委員会が前に出るということが、片一方においては強制を伴なったり、あるいは他面においては一種の圧力となってはいけないから、この点につきまして十分打ち合わせをして法律案改正をお願い申し上げているわけでございまして、その点につきましては、委員からの御指摘を十分踏まえて、しかし同時に、公害をこじらかすとろくなことはないということで、何とか解決するというような方向に進めさせていただきたいと思っております。  それから渡良瀬川のケースでございますが、私も委員会の報告を受けている程度でございますから詳しくはあれでございますが、やはりあのようだ長い歴史的な問題に対して、ともかく委員会がずいぶんよくやってくれたと思うのです。先ほど説明にもございましたように、片一方は何もないんだと言うし、片一方はあるんだと言うような、ゼロとゼロの対決というようなことでございますが、その間に立って、ともかくあそこまでの歩み寄りをしてもらって、そして幸いなことに両当事者が合意をしてくれた、了解してくれたということは非常にしあわせなことだと思って喜んでおりますが、しかし御指摘のように、なかなかそうはいがない他のケースもあるだろうと思います。しかし私は、そういう場合にも、委員会としましては誠心誠意解決に当たる、何が何といっても誠心誠意当たっていくのだ、それがつまり公害問題処理の基本精神じゃないかと思うので、あらゆる限りの努力をして、それで両当事者にいれられない場合にはしかたがない、しかし徹底的にひとつ善意をもって被害者救済、片一方における加害者に対する反省を求めるというラインの中で、徹頭徹尾正直に行動してもらうということを基本にして進めてもらえばいいのではないかというふうに考えております。
  113. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう善意だけでいけばいいですけれども、その善意が通らないこじれた紛争もあるわけです。   一つお伺いしますが、調停の件数ですね、調停の件数は、調停申請を合計して五十件、このうち水俣病事件が三十六件、渡良瀬川沿岸の鉱毒が四件、大阪国際空港周辺が六件、徳山湾が一件、燧灘及び鹿児島湾における水質汚濁が二件、こういうことでございますか。それで、その中で解決したものが何件で、現在係属しているものが何件ありますか、いまの分類に従って計算いたしますと。
  114. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) ただいまお示しいただきました数字は、その後若干変わってきておりますので、まことに恐縮でございますが、私どもの手元の資料で、ことしの三月三十一日現在の数字で御説明をさせていただきたいと思います。  国の公害等調整委員会申請を受け付けました件数は五十七件でございまして、そのうち事件が完全に処理されておりますものが十二件ございます。この内訳は、ただいまお話しの鹿児島湾における水質汚濁による真珠養殖不能にかかる損害賠償調停事件が一件、さらに燧灘における工場廃水による漁業被害にかかる損害賠償調停事件が一件、それから水俣病関係事件が十件、合計いたしまして十二件が処理されておるわけでございます。それから三月三十一日現在でございますが、渡良瀬川事件はすでに解決を見ておりますので、これを加えさせていただきますと、処理済みの案件が十六件に相なります。  それから、その他水俣病関係事件が三十件、徳山湾における赤潮による被害の関係事件が一件、大阪空港が十件、合計いたしまして四十一件が未処理状態に相なっておるわけでございます。
  115. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうすると、先ほども指摘があったように、水俣病のほうはもう判決が出ておるし、個人個人の問題になるでしょうか。要するに個人個人の補償ですね、この人が補償に該当するかしないかということでしょうか。それから大阪空港もすでに判決が出ておりますして、控訴されておりますが、これはどういうふうに扱われますか。要するに、現在公調委がやっていること、やるべきこと、そういう仕事はどういうふうになっているかということをお伺いしたいのです。
  116. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) お答えいたします。  まず水俣病関係でございますが、これは水俣病調停要綱について、もちろん申請委員会としてはいろいろ準備を進めておりまして、判決のなされる前にも準備を進めていたのでございますが、不幸にしていろいろな障害がございまして、判決前に調停案を出すということができませんでした。しかし、その障害の除かれると同時にさらに手続を進めまして、結局判決の後になりましたけれども、最初の調停をしたわけでございます。  これはすでに判決が出されておりましたから、ですから同じ水俣病患者について判決内容とあまりに食い違いがあっては、かえって地域社会のために適当な解決にならないだろうということも考慮しまして、判決の線は十分尊重しましたが、しかし判決のとおりではございません。そのほかに、特にその症状に応じて、たとえば家族が患者の世話のために非常に手をとられて一家が困窮するというような実情を、実際現地に行って各患者の家をたずねた結果、まのあたりそれを見まして、そのために、そういうことに対する手当として、これは判決にはなかったのでございますけれども調停では特別調整手当といったようなものを重症患者、それから中症患者、軽症患者それぞれに、額は違いますが、それを認めるといったようなことで調停を第一回したわけでございます。これは各患者別に、それぞれ別々に金額を出したわけでございます。  その後、これは新聞に報道されましたが、調停申請をしないで直接に自主交渉、チッソの本社の前にすわり込んで自主的に交渉を続けていた一群の人たちがありますが、この人たちは、環境庁長官のお骨折りで直接にチッソとの間に協定が成立しましたけれども、その協定の内容は、私どもがすでになした調停と実質的には同じ内容になっております。
  117. 小平芳平

    ○小平芳平君 これからのことをお願いします。
  118. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) これからの分も、もうそれで線は引かれたわけでございますが、重症患者は幾ら幾ら、中症、軽症は幾ら幾らということでございますが、しかし、実際具体的な患者がそれのどれに当たるかということは、患者にとっては非常に関心の高い問題でございますし、その判定というのは公平を失してはたいへんでございますし、非常にむずかしい問題でございます。それで患者のほうからは、新たに水俣病に認定されるごとにそのうちに相当数の患者から調停申請がございます。その調停申請のあった患者について、事件ごとに各患者について現地に行き、現地で患者の実情を十分調べ、それから専門医の御意見を伺い、その上で別々にその患者がどのランクに属するかということを判定して、これを調停の形で処理しております。これは現に次々と進行中でございます。水俣病はその程度でございます。  それから大阪空港関係でございますが、これは早いものはもうだいぶ月がたちましたけれども、おそいのはいまでも、つい最近もほかの地区からやはり調停申請が出ております。そうして現在進行している形は、まず双方の言い分を聞かなければなりませんが、申請人の言い分を聞き、それに対して飛行場設置側のほうの、国側のほうの説明も聞く。それに対して申請人側のほうは納得しませんから、またいろいろのことを主張をします。それを聞くということで、現在のところはどの事件双方の主張を十分聞いているという段階で、まだ聞き尽くしているわけではございません。それで、判決はございましたけれども双方ともあの判決の線で解決をしようという趣旨ではございませんで、判決は控訴になり、まだ未解決でございますが、調停のほうも、双方の主張を聞き、またその事件ごとに現地に行って実際の調査もするというようなことで手続が進行しております。
  119. 小平芳平

    ○小平芳平君 結局、先ほどの渡良瀬川もそうですが、被害者から聞く、それから加害者からまた聞く、そうしてどちらの言い分が妥当性があるかということを判断なさるということだと思います。そこで渡良瀬川の場合は、先ほど御説明があったように、加害者は断じて公害はゼロだ、被害があるはずはないと言うし、それから被害者は、いやそうじゃない、三十何億の被害を受けたと言って、そこで結果として両方の言い分を聞いた上で判断をなさったわけですね。  そこで、かりに大阪空港のような場合、騒音によって健康被害があるかどうかということも、おそらく争いの一つの項目になろうかと思います。そういうことは現在の医学ではたして結論が出るのか、出ないのか。被害者ははっきりこれこれしかじかで被害を受けている、健康被害が発生しているということを訴えていると思いますが、そういうような場合、公害等調整委員会としては独自で何か実験するとか、そういうことはおそらく無理なんでしょう、これはルールとして。そういう場合は、要するに現在の医学の、あらゆる権威ある研究成果を総合判断するというようなことになるのじゃないでしょうか。
  120. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 仰せのとおり、こういう問題についての双方に争いがありますから、その点を明らかにするためには、現在すでに公にされているあらゆる資料を検討しまして、判断の材料に使うことになります。それだけではなくて、やはり公害等調整委員会独自に必要ならば調査をいたします。  さいぜん渡瀬川の、再々渡良瀬川の問題に入って恐縮でございますけれども、先ほどのように双方の間に非常に見解が違い、しかも、そこを明らかにしないと妥当な結論を出すめどがつかないというような場合には、やはり実際、先ほど申しましたように独自で坪刈り調査のようなことをいたしまして、そうして出てきた資料を専門の機関に委託して正確に分析し、秤量し、さらにその結果を専門の機関、渡良瀬の場合には東京大学と、それから農業技術研究所にお願いしましたが、そういうところで専門的な見地からいろいろ解析をしていただく。そうしてさらにその結果を踏まえて公害等調整委員会独自の見解を出すようなことをいたしまして、この場合には、審査官の中には農学博士の学位を持つ専門家もおりますから、そういう人の助けをかりて独自の調査もいたす、そういうことになります。  それで、いまの空港調停の場合などにつきましても、具体的にどうするということはこれは申し上げられないわけでございますけれども、一般的なことを言いますと、そういうときに必要があれば独自の調査をする。そのためにはその方面の専門家を専門委員に任命していただいて、その方のお知恵をかりるというような道もあるということでございます。
  121. 小平芳平

    ○小平芳平君 独自で調査研究をする、その辺の充実がどの程度必要かということを伺いたかったことが一つと、それから私が先ほど来申し上げたいことは、職権あっせん、職権調停という新しいことが打ち出されておりますが、実際は仲裁裁定はまだ件数がないし、現在あるのは調停である。調停もごく限られた案件しかまだ扱っていないわけです。大まかに言って先ほど分類されたような案件のわけですから。したがって、これから本格的に公調委が、はたして日本の公害対策の上にどういう機能を果たしてくれるのか、公害問題解決にどういう働きをしてくれるのかということは、まさしくこれからだという感じをするわけです。ですから、新しい活動は活動としまして、そういう充実を特にお願いしたいという趣旨で申し上げたわけです。それはそれでもうけっこうです。  それから最後に、公害の種類別苦情件数の年度別推移という資料をいただいておりますが、四十七年度で合計が八万七千七百六十四件というのがございますね。その中で、実に八千三十七件という一割の件数というものは、典型七公害以外の苦情となっているわけです。ですから、十人に一人は典型七公害以外の苦情を訴えているのですが、こういう点についてはどう対処されますか。
  122. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 法律のたてまえといたしましては、公害紛争処理法で取り上げているのは典型七公害に限られるわけでございます。しかし、御指摘のとおり、日照権とか、電波障害とか、そのほかのいわゆる苦情もあるわけでございます。それで苦情処理の段階では、実際はそういうのもみな聞いているわけでございます。  それから調停ということになりますというと、これは公害紛争処理法による調停でございますから、いまの日照権、それから電波障害などというものを独立でこれについて調停をという申し立てがあったときには、これは現行法ではいかんともいたしかたございませんが、しかし実際は、たとえばほかの問題、日照権とその工場からの騒音、振動といったような問題とあわせてやっていかれる実情が非常に多うございますが、そういうときには、その騒音振動といったような問題はまさに公害紛争処理法で取り上げるべき問題でございますし、そこが取り上げられるときには、それと日照権の問題であれ、電波障害の問題であれ、あわせて申請があった場合に、これは別であるといって区別する、その部分は取り上げないということは、これはそういうことを分けることもできませんし、適当でもありませんので、そういうものは区別なしに取り上げて、一緒に最終的な解決をするようにつとめております。これは地方の審査会などで調停事件あるいは和解の仲介などを処理するときに、そういう方法処理していただくようにということを中央からも連絡をしている次第でございます。
  123. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、いつまでも典型七公害ということにこだわっていること自体おかしいですね。何かそこをもう一歩進んで、そういうふうにあわせてきた事件は扱えるとしましても、とにかくこの一割、八千件というものがそれ以外の件数ですから、実際市民の感情として、十人のうち一人の人は、あなたは公害じゃありません、扱えませんと言われたのじゃ非常にがっかりするわけですから、何かうまい解決方法はないのでしょうか。
  124. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) ちょっと、ただいまの件につきまして補足させていただきたいと思いますが、いまお示しの数字は、いわゆる都道府県市町村等において実際の行政の窓口が受けとめた件数の総数でございまして、中にはもちろん紛争状態になっておるものも、ある程度はあろうかと思いますけれども、どちらかといいますと、実態といたしましては紛争前の、まさに苦情の申し出、何とかならぬだろうかという相談といいますか、そういう形で府県・市町村等の窓口で受理され、受け付けた件数の総数がそういう数字になっておるわけでございます。  したがいまして、多くはまさに争いの状態にまではまだなっていないということでございますので、通常の場合ですと、県なり市町村なりの行政当局が実際の中へ入りまして、まさに行政上の処理といいますか、行政的な解決を実際的にやっておるわけでございますので、それが十分な解決に至らずしてさらにその規模を大きくして、あるいは市町村長のあっせんとか、あるいは府県知事のあっせんとか、さらには公害審査会あるいは国の公害等調整委員会、そういうふうに逐次、何と申しますか、上へ上がってまいりまして、そして形を大きくあらわしてくるというのが実際の姿であるわけでございます。もちろん、そういう一割に達する一万件に近いような件数のものが、まさに七公害以外の分野の問題として出ておるわけでございますが、その多くは率直に申しまして実際の市町村行政当局によってかなりこなされている。私ども十分つぶさにそれを見ておるわけじゃございませんが、解決に至っておる事件も少なからずあるということを申し上げさせていただきたいと思います。
  125. 小平芳平

    ○小平芳平君 委員長、何か結論を。
  126. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) いまも申しましたように、確かに日照権等、典型七公害に属しない問題についても解決する必要はあるのでございますから、現行法の運用の許す限り、これは取り上げていくようにしたいと思います。ただ、根本的な問題となりますというと、そもそも公害紛争処理法が典型七公害を取り上げているのは、公害基本法のたてまえからくるわけでございますから、ですから公害紛争処理法で正面から日照権などを取り上げるためには、やはり公害基本法の問題にさかのぼって考えなければならないと思いますので、なお慎重に検討しなければならない問題ではないか、こういうように考えております。
  127. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 質問でほとんど出尽くしたようでありますから、私はダブる質問は控えたいと考えておりますが、先ほどからの質問の中で、裁定につきましては一件も活用の現状はない、こういう御答弁をされておるわけです。それについては、法案ができてから日も浅いし、また各都道府県の趣旨徹底も十分でなかった、こういうふうに言っておられるわけですが、この裁定権限というものを強化されることについては私は反対じゃありません。けれども、基本的にもっと考え直す必要があるのじゃないかという考え方を持つわけです。  先ほどのように労働紛争において調停あっせん裁定というふうにできておりますが、労働問題の紛争というものと、この種の紛争というものは非常に意味が違うわけですね。かりに指摘をさせていただきますならば、二県にまたがる紛争があった場合は、これは当然中央で取り扱うとかいうことにすべきではないか。もっと地方の審議会というものを強化すべきじゃないか。したがって、簡単に申し上げますならば調査権を強化する。どの程度まで立ち入ってできるのか、真の公害かどうかということを判定するまでの過程、たとえば一夜のうちに数万の魚が死んでしまった、それは翌朝じゃないと発見できなかった、その支流には公害のたれ流しをしておる工場というのは一ヵ所しかないんだ、的確にあの工場の廃液だと、こういううことはだれが見てもわかるような問題がありますね。ところが、そういうものはやってない、立ち入り検査も十分にしてなかった、こういうことになれば、これは水かけ論で仲裁調停も何もできないわけです。  むしろこの種のものは、労使関係の問題とは違って、中央のこうした強化よりも地方の強化を充実すべきじゃないかということを私も考えるわけです。小平先生が先ほど言われましたが、当然そうあるべきじゃないか。それがまた地域住民の公害に対する苦情の処理の第一歩だ、こういうふうに考えますが、そういう点に力を入れないで、起こっておる大きな問題の賠償責任の存否についてこうした裁定制度の権限を与えるというようなことは、あって悪いことはございませんが、地方をもっと強化する必要があったのじゃないかということを痛感するのですが、その点はお考えになっていないのかどうか、お聞きしておきたい。
  128. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 地方の審査会を強化充実するようにということは、今国会のみならず、前の裁定制度の設けられるときにもそういう御指摘が多々ございまして、これは非常に大きな問題だと思います。方向としては地方の審査会をより充実し、より強化し、地方地方の地方的な公害紛争についてより充実した解決の道が設けられるということが、これは望ましいことはもう疑いの余地はございません。私どももそのように考えます。その方向で考えていきますけれども、ただ現状は、それぞれの都道府県のそれぞれの実情があるのでございましょう。本来審査会は地方の機関になっておりますので、それぞれに差があるのは、これはそれぞれの実情によるのでやむを得ないものとは思いますけれども、しかし、方向としては御指摘のとおり地方を充実すべきである、そういうふうに考えております。
  129. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それでないと、もう一つ問題が起こりますことは、強制調停をやるかやらないかというような問題の場合、かりに一県のみの公害でおさまる場合はいいですね。しかし、河川の上流、下流とにおける二県にまたがる被害等の紛争の場合は、Aの県においては満足をしておる、Bの県においては満足ができないというような問題があろうと思います。そういう場合の調停の示しようがないじゃないですか。私はそういう問題こそ、二県にまたがる調停というものの権限を与える、それを中央に置くべきだ。そうして一方においては、都道府県に権限を与えるべきだ。どうしてもいかない場合に中央委員会調停をすることができる、あるいは裁定をすることができる、こういうふうに持っていくのがこの苦情処理機関であり、かつまたそれが適切な方法ではないか、こう考えるのです。  先ほどから御答弁を聞いておりますと、各県の実情があると思いますがと、こうおっしゃっていますけれども、これは産業地帯においては、まだ日本の公害というものは十分な検討していないのですよ。まだ至るものろにありますよ。そういう現状から見ると、各都道府県の実情に応じてということじゃなくて、むしろそれを中央が掌握して強化する、こういうことにしなければ、大きな問題だけをこの処理機関処理をしていくということでは、これは実際の地域住民の苦情を吸い上げることはできない。先ほどおっしゃるように、何千件かあるのをみな中央が立ち入りをしておられるわけじゃない。県でみなやっています。これをもっと、私はこの法案はこの法案で悪いとは申しませんけれども、賛成ではありますが、やっぱりそういう点が手抜かりがある。この点を次にはどうしても強化していただく必要がある、こういうふうに考えますが、その点どうですか。
  130. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) あるいはお答えになるかどうか存じませんけれども、現在調停で、御指摘のように二つの県にまたがる紛争というのが一番手をやく事件になっております。現行法のたてまえでは、そういう場合には、二つの県にまたがる公害紛争調停中央委員会がそれを取り扱う。しかし、いきなり中央にすぐ持ってくるということではなくて、そういう事件については、申し立てるほうはそこの県のほうに調停の申し立てをする。そうすると、一つの県に調停の申し立てがありますと、その関係の二つ以上の県の間で合同して連合審査会というものをつくります。二つの審査会が合同して連合審査会をつくって、そこで処理をする。しかし、その連合審査会処理できればそれでいいわけなんですが、何ぶん二つ以上の県は互いに利害が相反しますから、連合審査会のできない場合もございます。そういうときには、連合審査会ができないときには事件中央に送って、中央でそれを処理する、そういうたてまえになっています。  いままでの例で見ましても、すでに調停の成立した燧灘の事件などは、これは瀬戸内海のうちの燧灘でございますが、加害企業は七十社ばかりありまして、それが全部愛媛県側に位置している。それから被害漁民が一千人ばかりありまして、これが全部香川県側に属している。県が違うものですから、従来話が円滑に進行していなかった、こういうのがこじれる事件一つの類型だと思いますが、これはそういう関係中央でそれを扱いまして、そして調停が成立いたしました。それから最近調停の成立した足尾銅山の関係も、やはりそれに属するかと思います。加害企業は栃木県に位置し、それから被害農民、被害農地というのは群馬県に属している。こういうときにはなかなか簡単にはいかないのでございまして、結局中央でそれを扱って、そして調停を成立させるというようなことになっております。
  131. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それはおっしゃるように、そう書いてありますからむろん当然そうされると思うのですが、私が申し上げたいのは、結局、先ほどから御答弁されるように、現在の法律が三年近くになるにもかかわらず、事実上一回もないという現実から見ますと、この種のものはやはり裁判で明らかにしたい、こういうことを私は被害者地域住民というのは考えておるのじゃないかという気さえしております。特にこれは組合関係調停とかあっせんとかいうのと違いまして、組合関係は専従がおるわけです。そして、中央調停とかあっせんとかというようなことをやっておりますと、全部上京しなくちゃいけない。これは専門家でもないのですよ。だから中央に持ち込むことをいやがっているのじゃないか。むしろ地方で早く裁定なりあるいは調停をやってもらいたい、こういうことを地域の住民は望むのではないか。そういう意味からも、わざわざ東京まで出向して、そしていろんな質問に対して答えていかなくちゃいかぬ、被害の程度も陳情しなきゃならぬというようなことよりも、地方を強化する、これのほうが前提じゃないか、こういうことを申し上げておるのであって、現在起こっております二府県にまたがっておる問題は、当然その県同士の話し合いの中で調停に持ち込むというようなことは運営上なされると思います。思いますが、だからそういう問題だけを中央に吸い上げて調停なりあっせんなりをやる。それで地方を強化する、できるだけ県下で解決をつける方法をやる、これのほうが先ではないかということを申し上げておるのであります。  私は、なおそういう点については今後十分なる検討をしていただいてやってもらいたいと思うのですが、それでないと、この種の問題はいかにりっぱな法律をつくってみても、なかなかこれを適用してやるということは不可能じゃないか。むろん強化するつもりでおやりになったと思いますけれども、その点を心配するものですから、今後ひとつそういう面まで入って、もっと地方の強化を考えてもらいたい。これを希望意見として申し上げて、私の質問を終わります。
  132. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 御趣旨、よくわかりました。その方向でこれからも努力を重ねていきたいと思います。
  133. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、だいぶん時間もおそくなっておりますから、できるだけ重複を避けまして端的にお伺いをしていきたいと思っております。  すでに多くの公害裁判等で明らかにされておりますように、公害被害者を苦しめているのは、加害者の無責任被害者無視の態度であります。政治あるいは行政で行なうべきというものは、このような加害者、特にその中心である大企業に対して、損害を誠実に賠償をさせる責任と義務を法的に明確に課するという点がきわめて重要だと思うわけです。このような原則を明らかにしない紛争処理制度、こういうものになりますと、被害者の利益は守り切れないというだけではなくて、つまるところは紛争解決の促進の名のもとに、加害者を擁護する役割りを果たす危険性がきわめて大きいということを心配いたします。特に、職権あっせん制度や職権調停制度の導入を今回主たる内容とする本改正案は、そういった立場で見ますと、その危険性を一そう大きくするものではないかという点をきわめて危惧するものであります。  したがって、そういった立場に立ちまして、できるだけ重複を避けまして、特に本改正案の第三の理由にあげられております「公害苦情相談員の職務を一段と明確にする等の措置を講じて苦情処理体制整備をはかる必要がある」という、この第三点の改正理由をあげておられますけれども、その点についてお伺いをしていきたいと思っております。私は、公害苦情相談員というのは、そのよって立つ立場被害者の側に立っているかどうかという、職務の明確化ということが重要であると同時に、単に職務の明確化だけではなしに、被害者立場に立っているかどうか、そういう基本的な観点がきわめて重要だというふうに思っているわけです。  そこで最初にお伺いをしておきたいと思いますのは、現在全国の地方公共団体にどの程度配置されておるのかという点が一つ。まとめてお伺いをしますが、その人たちはどういう行政上の立場にある人なのか。もっと具体的に言いますと、これは独立した相談員なのか、あるいは地方行政機構の中に組み込まれて相談員として肩書きを持っておるのか。専任なのか、兼任なのか。それから、そういう相談員というのは大体全国的に統一した基準によって仕事をしているのか。その基準はどういうものなのか。そういった点を最初にまとめてお伺いをしたい。
  134. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) お答え申し上げます。  公害苦情相談員につきましてのお尋ねでございますが、まず公害紛争処理法に基づきます公害苦情相談員と公調委との関係について、あらかじめちょっと申し上げておきたいと思いますが、現行の制度におきましては、地方公共団体が行なう公害に関する苦情の処理について、公害等調整委員会はこの法律に定めるところにより指導を行なう、こういうたてまえが一つございます。そしてさらに第四十九条におきまして、「地方公共団体は、関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるものとする。」とございまして、都道府県及び政令で定める市は公害苦情相談員を置かなければならないというたてまえをとっておるわけでございます。この二つの制度から、私ども公害等調整委員会は、都道府県に置かれております公害苦情相談員との連絡を密にいたしまして、できる限り公害苦情相談員の方々が第一線の窓口におかれまして十分なお仕事ができますように、私どもとして及ぶ限りのお手伝い、主として情報の交換と申しますか、資料の交換と申しますか、そういう点に力を置いて従来進めてまいった次第でございます。  そこで、第一点の人数についてのお尋ねでございますが、私どもただいま承知いたしておりますところでは、全国を通じまして三千二百名置かれているというふうに聞いております。また、公害苦情相談員という名称を持っておる者が三千二百名ということでございまして、あるいは非公式なと申しますか、実際上置かれております、たとえば公害に関するモニターであるとか、あるいはその他の一般行政に関する苦情の相談に応ずる方であるとか、こういう方々を含めますとさらにその人数は多いものになろうかと思いますが、公害苦情相談員というそういう肩書きのもとでお仕事を進めていただいております方は、ただいま申し上げました三千二百名というふうに心得ております。  また、これらの公害苦情相談員が、行政上と申しますか、あるいは組織上どういう立場にあるのか、こういう御趣旨のお尋ねでございますが、そのほとんどはいわゆる地方行政機構の中に組み込まれた状態でその地位を持っておる者でございまして、たとえば都道府県の場合について申し上げますと、保健所の職員である方が、通常の業務に加えまして公害苦情相談員としての任務を命じられておる、こういう場合がございます。また市町村等におきましても、公害に関する窓口の事務を行なう課がございましょう、あるいは部がございましょうが、そこの中の相当人数の職員公害苦情相談員としての辞令を受けまして、その任務を命じられておる、かように考えておりまして、仰せの意味におきましては、地方行政機構の中にまさに組み込まれた形で仕事をしている者であって、格別独立した地位を持っておる者ではない、かように考えておるわけでございます。  また第三番目に、基準と申しますか、どういう行動基準、あるいはその仕事のやり方で統一された考え方というものが示されているのであろうか、こういうお尋ねでございますが、これは申し上げるまでもなく都道府県・市町村に置かれておりますものでして、もちろん一般的には法令等の規制を受けまして、その法律に定めるところによって任務に従事するわけでございますが、その府県市町村についてみますと、まことにその仕事の中身は多種多様にわたっておりまして、その処理のために必要な事務内容も、事案によっては必ずしも一定いたしておりません。が、総括的に申しますと、主民の相談に応じて、関係法令、行政組織、施策の現状等について必要な知識及び情報を提供し、苦情を解決するために必要な手段手続等について指導し、または助言を行なう、こういうことが重要な一つの任務にされておるのでございます。また苦情の原因となった公害につきまして、被害の程度、範囲、原因等について調査を行ない、事実を明らかにする。  あるいはまた公害の原因者に対して、公害防止の必要性について啓発をし、自発的な改善を促し、防除措置について具体的に指導し、または助言をする。こういうようなことが大体において共通した任務として事実上あるいは明文上、指導、指示されておるところであると思っております。  以上でございます。
  135. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、めんどうくさいから直接聞きますが、公害等調整委員会事務局発行の「公害苦情相談の手引」というのが四十九年三月二十五日付で出ておりますが、これは相談員の指導基準か何かに使っておられるのですか。
  136. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) お答え申し上げます。  実は、ただいまお示しの資料でございますが、これは大気とかあるいは水質問題、騒音振動、その各分野にわたりまして、いずれ総括的な苦情相談処理要領と申しますか、手引きのようなものをつくりたいということで、私どもも相当前から準備を進めてきておるところでございますが、ただいまお示しになりました資料は、おそらくそのうちのごく一部の範囲につきまして、まとめてみるとどういう形になるであろうか、さらにこれを大気汚染とかあるいは振動騒音とか水質汚濁とか、そういう分野ごとにまとめてみるとどうなるものであろうかということをある程度見当をつけるために、ごくその範囲の一部について未定稿として取りまとめたものでございます。でございますので、それを実際上の苦情相談員の業務指導とか、あるいは実際上必要な手引き書として、こういうものを参考になさいという趣旨関係の方面に差し上げておるということは、事実としてございません。そういう趣旨のものでございます。
  137. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、これは何に使うのですか。別に公害等調整委員会事務局としては、相談員の業務についての一定の指導基準というようなものは持っていないし、何も指導はしていないということですね。そうすると、これはそれとは全く無関係で、どういう目的でつくっておられるのですか。
  138. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) まさに試みの資料といたしまして、あるいはその地方の公害苦情の直接参与しておられる方々にごらんに入れておるかもしれませんが、いずれにしましても、それについての今後のきちっとしたものにするために、どういうやり方をしたらいいか、私ども自身もまだ経験が浅うございますものでございますから、関係各方面のいろいろなお知恵をいただこうということで、試みの資料としてつくってみたものでございます。そういう意味でございますから、具体的な指導をこれに従っておやりにください、そういう趣旨のものではございません。
  139. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 試みで、今後の研究課題だということでお考えになっておるのなら、特に重要だと思いますので、二、三点ちょっと御意見を伺いたいと思います。  この手引き書の九ページにこういうふうに書いてある。「公害苦情処理事務の中心的課題は」と、「中心的課題」というふうに書かれておりまして、こういうふうに書いてあるのです。「いかにして規制対象でないものについて防止対策をとらせるか、いかにして規制基準を上まわる改善をさせるか、そして他方で、いかにして受忍限度内であることを申立人に納得させるかということである。」というふうに書かれておるのですね。  前段の問題は問題ないと思うのですが、「他方で、いかにして受忍限度内であることを申立人に納得させるかということである」、これはどういうことをさして記載をされているのか、ちょっと理解に苦しみますので、簡単に御説明を伺いたいと思います。
  140. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) どうも、私どものおそらくこれは若い職員がいろいろと苦心をしてつくったものだろうと思います。お目に触れてまことに恐縮でございますが、いかにして受忍限度内で納得させるかというようなことを端的にそう書いておりますのは、はなはだ表現として適切さを欠いておるものと思います。が、言ってみれば、かりにこれが訴訟事件になった場合、裁判所はどのような判断を示されるであろうかというようなことをもし聞かれた場合には、考えておる必要があるのではなかろうか、場合によってはそういう判例等についても御理解を願っておくことがあるいは御参考になるかもしれない、そういうようなことで、片一方で規制基準を上回るような基準をつくるとかつくらないとかというようなことについて、そのお話をし説明をするというような必要性もあると同時に、そういう面につきましての必要性もあるいはあるのかもしれない、そういう観点からおそらく触れたものだろうと思っております。
  141. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは私は、規制基準以下の場合は受忍限度内だから文句はありませんな、御心配はありませんよということで納得をさせるというふうなことになるとしますと、規制基準以下の場合でも住民の側には苦情がある場合はもうしばしばありますよね。規制基準以下だから公害がないというふうな、あるいは万全のものだというふうな認識になるなら、これはたいへんだというふうに思うわけです。  時間がありましたら具体的にたくさん申し上げたいと思いますけれども、ごく一例を申し上げても、たとえば大気汚染の硫黄酸化物の一例をとりましても、その時点では硫黄酸化物の環境基準が〇・〇五PPMだということが決定をされた、それで、〇・〇五PPM以内ですから御心配ありませんということで、受忍限度内だということで苦情の申し立て人に相談員が御説明になり、説得をされたとします。おたくのほうは〇・〇四PPMだから御心配ありませんというふうに言っておったとしても、苦情は依然としてある。しかし、その後これは具体的に〇・〇一七PPMということに環境基準が変わっているわけですね。そうしますと、その時点で、受忍限度内だからごしんぼうしていただきたい、だいじょうぶなんですというふうなことの指導というのは、時間がたてば間違いになってくるというふうなことになるわけです。  そういう点で私は、相談員がよって立つ立場というのはきわめて大事だという点で冒頭に申し上げましたけれども、相談員というのは、受忍限度内だから納得させるという立場が中心ではなくて、むしろいかに被害者立場に立って公害問題を解決をしていくかということがきわめて大事であって、そして解決をするために加害責任者に対しては必要な措置をとらせていくという立場が中心課題でなければならないのではないか。そういう点で、どうもこの文章は納得しにくいわけです。
  142. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) 仰せの御趣旨は、まことによく私どもも理解できるところでございまして、各種の法令とかあるいは行政基準とかだけに従って事を進めていく場合は、これは別に問題はあるいはないのかもしれませんが、私ども、苦情相談員とか、あるいはこの改正でお願い申し上げておりますあっせんを行なうとか、あるいは調停を行なうとか、こういうものは、いわゆる基準とか法令で定められておるものは最小限度の要求、基準であるということで理解をいたしておりますので、当事者の皆さんがそれぞれ御納得をいただけるような内容で話し合いをお進めしていく、こういうところに主眼を置いておるわけでございますので、仰せの御趣旨は全く理解できるわけであります。
  143. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いま事務局長がおっしゃったように、規制基準を守らせるという行政であれば、これはその時点で出されている規制基準以下ですという話はやさしいですけれども立場上これは困ると思うのです。  それからもう一つ、これの四三ページにはこういう点が書かれているのです。加害行為が異法であるかどうかの判断基準で、「公共性、社会的有用性」、それから「私企業であっても電力会社のようにしんしゃく」するなどと言われております。そういう書き方をしておるのですね。いろいろなところに書かれているのですけれども、「加害行為の公共性、社会的有用性がある。汚染源がごみ処理場のような公共施設であるとか、私企業であっても電力会社のようにしんしゃくされる。例えば」云々というふうに書かれている。これはどういうふうな具体例を想定してお書きになっておられるのか、こういう見解が出てきているというのはどういう点から出てきているのか、ちょっと伺っておきたいと思うのです。
  144. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 「加害行為の公共性、社会的有用性」といったようなことばが見えておりますのは、一般的に申しますというと、加害行為の中にも、ものによっては公共性のあるものもあり、社会的有用性のあるものもあり、それから被害の程度というものも、これも非常に重要なものもあるので、結局はこういう問題については、加害行為についても被害行為についても、それぞれの両方をよく見てきめなければならぬ問題だと思います。  実は、こういうものをお持ちであるということを全く存じませんでしたので、よく準備してありませんので、お答えになるかどうかわかりませんけれども、要するにいまの問題としては、たとえは被害の態様にもいろいろ軽重がございましょうし、それから加害行為の加害の態様にもいろいろございましょうから、たとえば公害によって被害者の健康がむしばまれるなんということは、これはもうたいへんなことでございますし、しかしまた、そこまでいかない、あるいは実例として出てきましても騒音振動などで実は比較的軽微な補償、あるいは補償までも入らない、公害源を適当なときに移転させるということだけで話がつくというような場合もございますので、これは一律にこうも言えないので、「加害行為の公共性、社会的有用性」ということばが出ているから、だからこれはもう誤りということになるのかどうか、よく読んでみないとわかりませんけれども、とにかく相村的なものではないかというふうに考えております。
  145. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 あまりよく御存じないとおっしゃるのだけれども、あなたのところの事務局で出しておられるのですよ。「第一回公害苦情相談指導者研修会資料」と、ちゃんと書いてある。それを御存じないと言ったら困るのですがね。  これは非常に苦労をして書いているんだと思うのですけれども、その項にこういうように書いてある。「勿論公共性といっても、前述した被害の種類、性質と比較したうえでの話であって、重大な健康被害が発生しているような場合には、いかに公共性があるといったところで、違法でないとはいえないことはもちろんである。」というふうに鮮明にしている。ところが、先ほど私が申し上げたように、「公共性、社会的有用性」あるいは「私企業であっても、電力会社のようにしんしゃくされる。」というふうなこともあわせてお書きになっておられますと、これはせっかくの公害紛争処理法に基づくいわゆる公害等調整委員会の機能から見まして、かつて悪名高かったいわゆる産業との調和理論におちいる危険さえあるという心配をするのですけれども、こういった点はやはり明確にされるほうがよろしかろうと思いますが、御見解はどうですか。
  146. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 御指摘のとおり、かつての産業との調和論といったような考え方を現在れわれがとっているわけではございませんので、この加害行為の公共性、社会的有用性といったような問題についても、御指摘のとおり問題があるということ、そして公共事業なら常に優先するなんという、そういう考え方はとれないということははっきり申し上げておきたいと思います。
  147. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 同じようなところが幾つもあるのですよ。時間もあまりありませんから、幾つかあとごく簡単に指摘をしておきたいのですが、四九ページには「未知の有害物質によって予想外の損害が発生した場合などには、やはり過失が問題とされよう。」というふうな記述があります。  この「未知の有害物質」の問題というのは、御承知のように熊本の水俣病判決ではこういうふうに言われているのです。予想できない危険な物質が混入する可能性が大であり、かりに廃水中に危険物が混入すると人体に危害を及ぼすのだから、廃水を放流するにあたっては常に最高の知識と技術を用いて廃水中に危険物混入の有無などを調査研究して安全を確認し、またその安全性に疑念を生じた場合には、直ちに操業を中止などして必要最大限の防止措置を講じ、特に地域住民の生命・健康に対する危害を未然に防止すべき高度の注意義務がある。これは判決文そのままです。こういうふうに述べられています。これであれば非常にはっきりしている。私は、「未知の有害物質によって予想外の損害」ということでその責任をあいまいにしてはならない、そういう態度を少なくともおたくがとってはならないというふうに思いますが、その点はどうですか。
  148. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 未知なるがゆえに当然には過失は伴わないなどという、そういう言句はございませんので、公害等調整委員会としてもそういう考えをとってはおりませんので、そこをはっきり申し上げておきます。
  149. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 もう一点、具体問題で指摘を申し上げておきたいと思うのですが、これはあまり使ってないと言うのだけれども、ここに明記されているように「第一回公害苦情相談指導者研修会資料」とはっきり書いてあるので、やっぱり指摘しておかなければならぬと思うのですが、六一ページに「いおう酸化物に係る環境基準について」というところがある。これには前の環境基準がそのまま記載されている。私はこの「手引」を見せていただくと、四十九年三月二十五日付で調製をされているので、当然新しく決定をされております四十八年五月に示された環境基準、これをお用いになるのが当然だと思うのですけれども、これはどういうことになるのでしょうか。
  150. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) 御指摘の点につきまして、釈明と申しますか、おわびを含めまして弁解をさせていただきますが、まさにお示しのように、ことしの三月の日付で表紙は印刷をされておりますが、正直なところ申しまして、この内容を原稿で取りまとめましたのは、昨年の確か十月ごろのことであったかと思います。その時点はともかくといたしまして、閣議の決定内容等につきまして若干の食い違いがすでにその資料の上ではあらわれておりますことも、御指摘によりましてよくわかります。その資料は「研修会資料」として書かれてございますけれども、その表紙にもございますように「未定稿」の一部分の抜き書きということでございまして、おそらくこれを関係者にお渡しする際には、内容等について若干の経緯等の説明も行なってお渡しをしておったかと思います。  いぜれにいたしましても、御指摘ございますように内容について現状に相反する点がございますから、内容を特段の注意をいたしまして、最新のものに訂正をしたいと思っております。
  151. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 訂正をされるべき点は訂正をされるということでございますから了解をいたしますけれども、やはり冒頭に申し上げましたように、たとえばその苦情相談員等のよって立つ立場というのが、特におたくの公害調整委員会の組織においては態度が明確にされるということがきわめてきびしく要求されると思うので、そういった点をはっきりしておいていただきたいというふうに思います。  公害事件裁判判決を見ますと、これはもう非常に明確に、ほとんど同じ内容のことばで、そういった点は厳格に判決文には表現をされています。  熊本判決では、「まず第一に、公害は、交通事故などの通常の生命身体に対する侵害の場合と異なり、常に企業によって一方的に惹起されるものであって、被害者加害者立場になり得ず、また被害者が容易に加害者の地位にとってかわることがない」、そういうものだ。二つ目には、「公害自然環境の破壊を伴うもので、当該企業の付近住民らにとってその被害を回避することはほとんど不可能であり、しかも多くの場合被害者側には過失と目される行為はない」。三つ目は、「公害による被害は不特定多数の住民に相当広範囲に及ぶので、社会的に深刻な影響をもたらすとともに、また企業側において負担すべき損害賠償額が莫大になると予想される」。それから第四には、「公害はいわゆる環境汚染をもたらすものであるから、同一の生活環境のもとで生活をしている付近住民は、程度の差こそあれ共通の被害を蒙り、家庭にあっては、家族全員またはその大半が被害を受けて、いわば一家の破滅をもたらすことも稀ではない」。最後に、「公害においては、原因となる加害行為は当該企業の生産活動の過程において生ずるもので、企業はこの生産活動によって利潤をあげることを予定しているが、被害者である付近の住民にとっては、右の生産活動によって直接得られる利益は何ら存しない」というふうに、きわめて明確に述べられています。  私はここで長々と引用いたしましたが、相談員というのはこういった認識の上に立って、きわめてきびしい立場被害者の逸失利益の回復、その立場を明確にして事に当たるということでなければ、これは公害紛争処理法の一部改正をされても、私はたまたま相談員の指導の手引きの一、二の例を用いて、基本的姿勢がきわめて大事だという点を御指摘申し上げたわけでございますけれども、それでなければ、先ほどから各委員から御指摘がありますように、今回の改正の中心課題でありますいわゆる職権あっせん、職権調停制度の導入、こういうものがやられますと、たいへん心配のほうが大きくなる。  それはなぜかといいますと、公害をなくしていくという基本的な力というのは、いま歴史的に見ましても被害を受けて損害を受けている住民が、住民の戦いの力によって解決を迫っていくということが歴史的な事実になっておるわけです。したがって、こういった点で、よって立つ立場を明確にしていただきませんと、このような住民の運動を阻害し、あるいは職権あっせん等によって住民運動を阻害し、抑止的な役割りを果たすような結果にもなりかねない。そういった点をきわめて危惧するものであります。したがって、こういった基本的立場を明確にして対処されるかどうかという点を最後にお伺いをしておきたいと思います。
  152. 小澤文雄

    政府委員小澤文雄君) 御指摘の諸点、まことにごもっともで、ございまして、私ども公害等調整委員会仕事をいたすものとしましては、いやしくもこの制度運用被害者の正しい利益を阻害されるようなことのないように、十分に戒心してこれからも努力していきたいと思います。
  153. 矢山有作

    矢山有作君 いまの問題でちょっと関連してきちっとしておきたいのですが、公害苦情相談員の研修会にいま沓脱委員から指摘された「公害苦情相談の手引」というものが出されて、そこでそれをもとにして研修会やられたのだろうと思う。そうすると、それぞれの都道府県の公害苦情相談員のところにその文書が行っているわけだ。そしてしかも、それについて沓脱委員が数点にわたって指摘したことに対しては、小澤委員長のほうから、そういう趣旨は間違いだから、今後はそういう考え方では処理しない、こうおっしゃったわけですから、そうすると、やっぱりこの文書の取り扱い処理というものをきちっとしておかなきゃいかぬと思うのです。したがって、この文書をあなた方のほうで、もうそれはいまおっしゃったように間違っているのだから全部回収をして、没にして、新しいまさに現在の時代にふさわしいようなもし手引きが要るとするなら、そういう基本的な立場を改めたものをつくる必要があるのならつくる、いずれにしてもこれは没にするなら没にする、それを明確にしてもらわぬとぐあいが悪いと思うのですがね。
  154. 宮崎隆夫

    政府委員(宮崎隆夫君) お答え申し上げます。  ただいまの御指示でございますが、よく理解できます。そこで、この資料は、重ねて申し上げますと、編集方針あるいは編集の内容、要領等について、各府県の公害苦情関係の担当者にお集まりをいただきまして、それぞれの御意見を聞くために試みの試案として、叩き台としていわば用意いたしたものでございますので、内容にかりにも誤りがあればもちろんこれは直さなければなりませんし、一般的な記述の要領あるいは編集のしかた等につきましても、遠からずまた各府県の関係者をお集めいたしましてこの種の会議を催す機会がございますので、その機会に明確にいたしたいと存じます。  なお、回収云々というお話でございますが、これにつきましても、実際上可能な限りそのような処理をさせていただきたいと思います。     —————————————
  155. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、森中守義君が委員を辞任され、その補欠として神沢浄君が選任されました。     —————————————
  156. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  157. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  公害紛争処理法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  158. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  矢山君から発言を求められておりますので、これを許します。
  159. 矢山有作

    矢山有作君 私は、ただいま可決されました公害紛争処理法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    公害紛争処理法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案   政府は、公害紛争処理において被害者保護趣旨を十分に生かすよう、本法施行にあたつて、次の諸点について、適切な措置を講ずべきである。  一、典型七公害以外の日照等に係る紛争をも紛争処理制度の対象範囲とするよう速やかに検討すること。  二、職権によるあつせん及び調停の開始にあたつては、当事者、とくに被害者の意思を尊重して、紛争の自主的解決の努力を妨げることのないよう配慮すること。  三、裁定制度が、十分に活用されるようその趣旨の普及に努めること。  四、被害者の多くが生活に困窮している実情を考慮し、紛争に係る費用負担の軽減等について配慮すること。  五、公害紛争の動向にかんがみ、公害審査会を未だ設置していない府県に対し、その設置について再検討するよう指導するとともに、地方公共団体が支出する紛争処理経費について十分配慮すること。  六、紛争の迅速かつ適切な処理に資するため、紛争処理に係る調査体制の充実、運営の改善に努めること。   右決議する。  以上でございます。  委員各位の御賛同のほど、よろしくお願いいたします。
  160. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ただいま矢山君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  161. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 多数と認めます。よって、矢山提出の附帯法議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、小坂総理府総務長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。
  162. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 政府は、ただいま決議されました附帯決議につきましては、十分にその趣旨を尊重し、検討いたします。
  163. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  165. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) これより請願の審査を行ないます。  第八号原油スラッジ等油による海岸汚染防止対策の確立に関する請願外八十四件の請願を便宜一括して議題といたします。  速記を中止して審査をいたします。速記をとめて。   〔速記中止
  166. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記を起こして。  それでは、ただいま御審議願いました第八号原油スラッジ等油による海洋汚染防止対策の確立に関する請願外八十四件の請願は、いずれも議院の会議に付することを要するものにして、内閣に送付することを要するものと決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  167. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  169. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 継続調査要求に関する件についておはかりいたします。  公害及び環境保全対策樹立に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  170. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十六分散会      —————・—————