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1974-04-12 第72回国会 参議院 決算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月十二日(金曜日)    午前十一時十九分開会     —————————————    委員異動  四月三日     辞任         補欠選任      鈴木  力君     羽生 三七君      佐々木静子君     前川  旦君      岩間 正男君     春日 正一君      喜屋武眞榮君     野末 和彦君  四月四日     辞任         補欠選任      寺下 岩蔵君     大松 博文君      須原 昭二君     小柳  勇君      峯山 昭範君     藤原 房雄君      栗林 卓司君     中沢伊登子君      加藤  進君     小笠原貞子君  四月五日     辞任         補欠選任      中村 登美君     木村 睦男君      小柳  勇君     宮之原貞光君      羽生 三七君     神沢  浄君      中沢伊登子君     栗林 卓司君  四月六日     辞任         補欠選任      木村 睦男君     小山邦太郎君      神沢  浄君     田  英夫君      宮之原貞光君     須原 昭二君      工藤 良平君     佐々木静子君      藤原 房雄君     峯山 昭範君  四月八日     辞任         補欠選任      佐々木静子君     工藤 良平君      須原 昭二君     矢山 有作君      前川  旦君     羽生 三七君      栗林 卓司君     中村 利次君      小笠原貞子君     加藤  進君  四月九日     辞任         補欠選任      小山邦太郎君     寺下 岩蔵君      羽生 三七君     佐々木静子君      中村 利次君     栗林 卓司君  四月十日     辞任         補欠選任      寺下 岩蔵君     小枝 一雄君      工藤 良平君     小柳  勇君      野末 和彦君     山田  勇君  四月十一日     辞任         補欠選任      大松 博文君     中村 登美君      小枝 一雄君     寺下 岩蔵君      田  英雄君     須原 昭二君      小柳  勇君     工藤 良平君      矢山 有作君     鈴木  力君  四月十二日     辞任         補欠選任      栗林 卓司君     中村 利次君     —————————————  出席者は左のとおり。     委員長         田中寿美子君     理 事                 温水 三郎君                 松岡 克由君                 小谷  守君                 中尾 辰義君                 加藤  進君     委 員                 河口 陽一君                 河本嘉久蔵君                 世耕 政隆君                 寺下 岩蔵君                 中村 登美君                 工藤 良平君                 佐々木静子君                 鈴木  力君                 中村 利次君     —————————————    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        内閣総理大臣官        房会計課長    升本 達夫君        行政管理庁行政        監察局長     大田 宗利君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        環境庁企画調整        局長       城戸 謙次君        大蔵大臣官房会        計課長      片山  充君        大蔵大臣官房審        議官       岩瀬 義郎君        大蔵省主計局次        長        田中  敬君        大蔵省理財局長  竹内 道雄君        大蔵省理財局次        長        後藤 達太君        大蔵省国際金融        局次長      藤岡眞佐夫君        厚生省年金局長  横田 陽吉君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        資源エネルギー        庁石油部計画課        長        平林  勉君        会計検査院事務        総局第一局長   高橋 保司君        会計検査院事務        総局第五局長   中村 祐三君        日本専売公社総        裁        木村 秀弘君    参考人        国民金融公庫総        裁        澤田  悌君        日本銀行総裁   佐々木 直君        日本開発銀行総        裁        石原 周夫君        日本輸出入銀行        総裁       澄田  智君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○昭和四十七年度一般会計国庫債務負担行為総調  書(内閣提出) ○昭和四十七年度一般会計予備費使用調書及び  各省庁所管使用調書(その2)(内閣提出、  衆議院送付) ○昭和四十七年度特別会計予備費使用調書及び  各省庁所管使用調書(その2)(内閣提出、  衆議院送付) ○昭和四十七年度特別会計予算総則第九条に基づ  く経費増額調書及び経費増額調書内閣提出、  衆議院送付) ○昭和四十七年度特別会計予算総則第十条に基づ  く経費増額調書及び各省庁所管経費増額調  書(その2)(内閣提出衆議院送付) ○昭和四十八年度一般会計予備費使用調書及び  各省庁所管使用調書(その一)(内閣提出、  衆議院送付) ○昭和四十八年度特別会計予備費使用調書及び  各省庁所管使用調書(その一)(内閣提出、  衆議院送付) ○昭和四十八年度特別会計予算総則第十条に基づ  く経費増額調書及び各省庁所管経費増額調  書(その一)(内閣提出衆議院送付) ○昭和四十六年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十六年度特別会計歳入歳出決算昭和四十六年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十六  年度政府関係機関決算書(第七十一回国会内閣  提出)(継続案件) ○昭和四十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十一回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和四十六年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十一回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月三日、岩間正男君及び喜屋武眞榮君が委員辞任され、その補欠として春日正一君及び野末和彦君が、また去る十日、野末和彦君が委員辞任され、その補欠として山田勇君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 次に加藤君の一時委員異動に伴い、理事が現在一名欠員となっておりますので、この際理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御異議ないと認めます。  それでは理事加藤進君を指名いたします。     —————————————
  5. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 次に昭和四十七年度一般会計国庫債務負担行為総調書、昭和四十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)ほか三件、昭和四十八年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その一)ほか二件、以上八件を便宜一括議題といたします。  それでは、まずこれらの概要説明を聴取いたします。
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま議題となりました昭和四十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書外三件の事後承諾を求める件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和四十七年度一般会計予備費につきましては、その予算額は、一千百億円であり、このうち、財政法第三十五条(予備費管理及び使用)の規定により、昭和四十七年四月十四日から同年十二月二十八日までの間において使用を決定いたしました金額は六百十七億五千四百七十八万円余であり、すでに第七十一回国会にその事後承諾を求める件として提出いたしまして、御承諾を得たところでありますが、その後、昭和四十八年一月二十七日から同年三月三十日までの間において使用を決定いたしました金額は四百八十二億六万円余であります。  その内訳は、災害対策費として、河川等災害復旧事業に必要な経費等の十二件、その他の経費として、国民健康保険事業に対する国庫負担金不足を補うために必要な経費等の二十一件であります。  次に、昭和四十七年度各特別会計予備費につきましては、その予算総額は七千五百八十八億四千八百三十三万円余であり、このうち、昭和四十七年五月四日から同年十二月十九日までの間において使用を決定いたしました金額は三百五十四億六百二十三万円余であり、すでに第七十一回国会において御承諾を得たところでありますが、その後、昭和四十八年二月七日から同年三月二十七日までの間において使用を決定いたしました金額は百八十一億一千十万円であります。  その内訳は、労働保険特別会計失業勘定における失業保険給付金不足を補うために必要な経費厚生保険特別会計年金勘定における保険給付費不足を補うために必要な経費等特別会計の十一件であります。  次に、昭和四十七年度特別会計予算総則第九条(特別給与の支出)及び第十条(歳入歳出予算弾力条項)の規定により、昭和四十七年八月四日から同年十二月十九日までの間において経費増額を決定いたしました金額は二百八十三億七千五百六十六万円余であり、すでに第七十一回国会において御承諾を得たところでありますが、その後、昭和四十八年二月二十三日から同年三月三十日までの間において経費増額を決定いたしました金額は八百八十二億三千九百九十七万円余であります。  その内訳は、郵政事業特別会計における業績賞与に必要な経費増額及び同特別会計における収入印紙収入繰り入れ及び買い戻し金に必要な経費増額等特別会計の八件であります。  以上が、昭和四十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その二)外三件の事後承諾を求める件の概要であります。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御承諾くださいますようお願い申し上げます。  次に、昭和四十八年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その一)外二件の事後承諾を求める件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和四十八年度一般会計予備費につきましては、その当初予算額は二千三百億円でありましたが、補正予算(第一号)により、一千六百五十億円を修正減少いたしましたので、改予算額は六百五十億円となっております。  このうち、財政法第三十五条(予備費管理及び使用)の規定により、昭和四十八年六月十二日から同年十二月十四日までの間において使用を決定いたしました金額は百八十一億六千三百十二万円余であります。  その内訳は、災害対策費として、山林施設災害復旧事業に必要な経費の二件、その他の経費として、日本住宅公団に対する補給金に必要な経費等の二十一件であります。  次に、昭和四十八年度各特別会計予備費につきましては、その当初予算総額は一兆二百三十一億三千二百十九万円でありましたが、補正予算(特第一号)により、六百十二億二千八百八十一万円余を追加いたしましたので、改予算総額は一兆八百四十三億六千百万円余となっております。  このうち、昭和四十八年八月二十四日から同年十一月二日までの間において使用を決定いたしました金額は一千七百五十一億九千八百三十八万円余であります。  その内訳は、食糧管理特別会計国内米管理勘定における国内米買い入れに必要な経費等特別会計の五件であります。  次に、昭和四十八年度特別会計予算総則第十条(歳入歳出予算弾力条項)の規定により、昭和四十八年八月二十四日から同年十二月十四日までの間において経費増額を決定いたしました金額は二百七十三億八千百七十九万円余であります。  その内訳は、食糧管理特別会計輸入食糧管理勘定における輸入食糧買い入れ増加に伴い必要な経費増額造幣局特別会計における補助貨幣製造数量増加等に必要な経費増額等特別会計の七件であります。  以上が、昭和四十八年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その一)外二件の事後承諾を求める件の概要であります。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御承諾くださいますようお願い申し上げます。  次に、昭和四十七年度一般会計国庫債務負担行為総調書の報告に関する件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和四十七年度一般会計におきまして、財政法第十五条第二項の規定により、災害復旧その他緊急の必要がある場合に国が債務を負担する行為をすることができる限度額は三百億円であり、このうち、昭和四十七年発生河川等災害復旧事業費補助等八件につきまして、昭和四十八年二月二十日の閣議の決定を経て、総額二百九十九億七千九百万円の範囲内で債務を負担する行為をすることといたしました。  以上が、昭和四十七年度一般会計国庫債務負担行為総調書の報告に関する件の概要であります。
  7. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 以上をもちまして、国庫債務負担行為及び予備費関係八件に対する内容説明聴取を終わります。
  8. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) それでは、これより質疑に入るわけでございますが、これを一時中断することとし、次に昭和四十六年度決算ほか二件を議題といたします。  本日は大蔵省とそれに関係する日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算について審査を行ないます。  この際おはかりいたします。議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれも口頭報告を省略して、本日の会議録の末尾に記載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、これより質疑に入りますが、先ほど  一時中断いたしました予備費関係八件もあわせて、便宜一括質疑に入ります。質疑のある方は順次御質問を願います。  速記をとめて。   〔速記中止〕    〔委員長退席理事小谷守君着席〕
  10. 小谷守

    理事小谷守君) 速記を起こして。
  11. 田中寿美子

    田中寿美子君 きょうは私、各党の理事さんの御了解をいただきまして、委員としての発言をさしていただきます。  主として財政投融資資金の諸問題を中心にお尋ねしたいと思っているんですけれども、最初に大蔵大臣に、景気見通しについて、たいへんいろいろまちまちなことが言われていますけれども、そして大蔵大臣はずっとやっぱり引き締め政策を続けていこうという方針でいらっしゃるのか、あるいは、金融界の主脳との話し合いでは、多少冷え込み、冷え過ぎがありゃしないのかと、そういうことについてもいろいろ話し合いをされたようなんですが、大体この総需要抑制政策引き締め政策は、いつごろまでお続けになる予定でいらっしゃいますか、景気をどんなふうに考えていらっしゃるか、中小企業の倒産、あるいは失業状況なんかを含めて、ちょっといまの見通しをお話しいただきたいと思います。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今日の時点におきましての景気見方、これにつきましては、けさ閣議でも私から私の見方報告し、それに基づきまして成立いたしました昭和四十九年の執行方針というものをきめていただいたわけでございますが、その閣議に引き続きまして経済関係閣僚協議会が開かれました。そこでは企画庁のほうから今日の景気段階についての見通しが発表になったわけであります。それは違いは全くないんですが、この両者を総合して申し上げますと、昨年の暮れ以来とりました厳重な総需要抑制政策が二月中旬ごろから顕著にその影響を発揮しつつある。これから再び狂乱状態を現出した元凶である仮需要というような問題が起こってくることはもう予想できない、そこまでいっておるわけです。ところが、そういう仮需要といいますか、需給要因中心とした物価対策はこれで大かた軌道に乗った、ところが、これからの先を展望してみますると、今度は物価のもう一つの側面であるコスト問題が重大な段階に入るわけであります。つまり、いま春闘が行なわれている、これは非常に大きな物価への波及があるわけでありますが、続いて電気料金の値上げをしなきゃならぬ、あるいは国鉄、私鉄の料金問題というものも予見されておるわけであります。そういうコスト要因をどういうふうに物価に響かさないでいくかということがこれから数カ月間の課題になってくるであろうと思う。で、そういう総需要抑制政策は、一応、需給要因、この問題は大かた解決した。しかしながら、新しいそういうコスト要因をどういうふうに物価に波及させないかという問題につきましても、また対策は総需要抑制だと、こういうことになってくるわけです。そこで、そういう体制下においては物価はどういうふうに動くかというと、総需要政策をとっていく、そうすると、ほかの要因というものがなけりゃ、これは物価はずうっと下がっていきます。現にいま非常に下がってきた主要関連資材、かなり下がってきておるわけですが、その勢いというものはなお進んでいく。ところがコスト要因というものはこれは引き上げ要因になっている。その調和点というものがいわゆるこれからの物価水準、新価格体系と言う人もありますが、物価水準、新物価水準、こういうところになっていくのだろうと思います。そういうことを展望しながら、これから経済運営を進めるわけであります。私はそのほかにさらに長期的な問題とすると、物価の問題よりはさらにさらに深刻な重大な問題がある。それは国際収支の問題であります。そのことは、いまこの問題は物価の問題の陰に隠れてあまり論議されていませんけれども、これは非常に重大な問題である。そういうことを考えまするときに、とにかく物価国際収支、この二つの問題について、見通しが立つまでは総需要抑制政策というもの、その姿勢は堅持していかなければならぬ、こういうふうに思うわけであります。そうしますと、景気は沈滞する、その沈滞する景気のしわ寄せを弱い階層の方、小さい立場方々、そういうものがまっ正面から受けるということであってはならぬというので、いわゆる弱者対策、これにつきましては力を入れなければならぬ、これは主として財政の任務であります。それから一方金融等の面におきましては、中小企業、こういう方方の立場、そういうものに十分配意しなければならぬ、そういうふうにいま考えます。そこで、そういう出てきた現象現象に対する手当て、配意はいたしまするけれども、総需要抑制というこの基本姿勢につきましてはいま卸——この物価状態が大体安定したというような際、そういう状態が確認されるというその際まではこれはとり続けていかなければならぬ、かように考えております。金融界との懇談において何かゆるめるような話が出たという話ですが、さような話は金融界からも一つも出ておりません。ただ中小企業の問題につきましては心してまいりましょう、こういうことであります。
  13. 田中寿美子

    田中寿美子君 大体四−六月は引き締めというような線が出ているような気がするのですが、そのあとのこと、どういうふうになりますか、いまおっしゃたようないろいろな要因があると思います。そういう状況の中でいろいろ考えなければならないわけなんですが、財政投融資資金の問題について、この前の国会で私予算委員会のときにいろいろな問題を投げかけ、そのあと社労委員会でも議論もしてきたわけなんですけれども、その当時、きょう詳しくやっている時間がございませんけれども、私が問題にいたしました点というのは、財投に関して十分の報告国会に対してはされていない、で、国民にはよくわからない状況にある、しかも財投の原資を供給するのは主として庶民であって、庶民郵便貯金だの、それから年金の掛け金だの、その回収金だの、そういうものが主になっていて、いまや膨大な第二の予算ともいわれるほどの大きな資金を供給している、だからその運用に関しては十分に知らせるべきだということを要求申し上げたわけなんです。ことしは、昨年以来多少変わって、例の特別措置法が通りましたから、一部分、四十九年度予算説明の中にも財投に関する説明が入っております。  で、私が主張してまいりましたことは、これまでのGNP第一主義から福祉型の経済へ転換する必要がある、これは政府もそう言っているわけです。それで、財投というのは過去には日本経済成長政策に非常に大きな役割りを果たしてきたと、企業もそのたくさんの資金の供給を受けて、そして非常に大きくなってきた。いまやそれが転換されなければならない時期になってきた。特に資金運用部資金というのは郵便貯金厚生年金国民年金かけ金がおもなる財源であって、そしてそれの回収金も含めて毎年毎年大きくなっていくと、いまやもう残高では三十兆をこえている。それから年金資金はもういまや十兆余になっている。こういうような資金についての運用姿勢を改めてほしいということを強く要求したわけなんです。そこで資金運用部資金計画、実績、回収状況、その他詳しくいろいろ資料を提供してほしいということを申し上げました。それから毎年その財投資金繰り越し不用額が出てくると、そういうことについても、これまでは資料として提供されておりませんでした。そこでそれを要求しましたので、ことしは「財政金融統計月報」の財政投融資の特集にちゃんと繰り越し不用額も出るようになった。これは一歩前進だと思うんですけれども。ところが財投についての取り組みははたして福祉型に転換したかどうか、どうも明らかじゃないわけです。実は大蔵省のほうでというよりは、大蔵省理財局方々三人が、専門家が「財政投融資」という解説書をお出しになりました。これは実は私どもが要求した財投白書とは違うものでございましたけれども、あの中でたいへん、これは政府側もまた大蔵大臣もよく引用なさって答弁なさるのですけれども、使途別分類というのがある。そして(1)〜(6)分類というところに国民福祉のための項目があると、そこに大部分が入っていると、(1)〜(6)分類が今回は四兆八千五百三十六億計上されていると、だから福祉型に転換させてきているんだと。かつてのように産業基盤のための使い方はしていないというようなことをいっていらっしゃる。いまこまかく指摘する時間がありませんけど、私は大蔵省のほうから使途別分類のさらに中身の資料をいただきまして、知りたかったから要求したわけなんです。それで見てまいりますと、(1)〜(6)分類という中にも開発銀行のための融資も入っております。それから(7)から(10)のところには非常にたくさん基幹産業に関連したようなものも入ってきているわけですね。それから地域開発などというのは、いつも政府側地域開発などによって国民の生活を守っていくための投資をしているというふうにおっしゃるけれども、たとえばその地域開発もむつ小川原のような公害の問題を含むような開発、あるいは苫小牧のああいう公害を含むような開発に融資されていったんでは、(1)〜(6)分類になろうとも、これは福祉に向かわないということがある。あるいは(7)〜(10)分類というのも大いにまだ基幹産業に関連する、あるいは開発産業のほうに融資されているというふうに思われるわけなんです。  私、その中をこまかくいま指摘する時間を持ちませんので、初めに大蔵大臣、この、こういうふうに私たちが非常にやかましく言ったので分類上は福祉型あるいは国民生活を守る方向に運用しておりますよというような解説は出していらっしゃるけれども、はたして財投というものが福祉型に転換しつつあるのかどうか、ほんとうにそれをさせる気があるのか、この辺を最初に大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。
  14. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 財投はこれは戦後の復興から立ち上がるその過程において、非常に重大な投割りを演じたわけです。そのときにおける国家的要請は、何といっても基幹産業をはじめ産業を育成すると、こういうこと。それが回り回ってまた国民の生活にはね返ってくる問題である、そういうとらえ方をしてきたわけです。これはかなりの実績を示し、そしていまやわが国は工業生産力においてはアメリカ、ソビエト、日本と、こういうふうにいわれる立場まできたわけです。しかし、それだけ経済が高度化し発展しますと、財投の任務はこれは変えていかなければならないというので、方向転換を始めておるわけであります。つまり、その投資対象を福祉諸政策を重視するということになっている。それでありますから、たとえば昭和四十八年度でいいますると、住宅、生活環境、それから厚生福祉、文教、中小企業、農林漁業という、こういう福祉型の需要に応ずる面がこれは五八・八%にもなったわけであります。しかし昭和四十九年度になりますると、さらにそれを一段と強化いたしまして六一・三%ということになるわけであります。四十九年度におきましては御承知のように公共投資、これは極力抑制をするという考え方をとりまして、道路費のごときは財投におきまして五%ぐらいしかふえておらない。そういう際でありまするが、厚生福祉というような方面では二一・三%、住宅は二四・五%ふえる。また、文教施設につきましてはさらに大幅でありまして四二・三%もふえると、こういうようなことになっておるわけでして、今後ともこの傾向は強化してまいりたいと、かように考えております。
  15. 小谷守

    理事小谷守君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま栗林卓司君が委員辞任され、その補欠として中村利次君が選任されました。
  16. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまのようにパーセンテージでおっしゃいますけどね、大臣、私きょうはそういう中身に入りたくなかったのですけれども、一言申し上げておきますが、(1)〜(6)分類という中に、その生活環境整備という中に、都市開発というのに相当な額をとっていて、これは日本開発銀行が受け持っているんです。それから船舶整備公団、あるいは国土総合開発公団、その他、これどこからどこまで国民みんな生活に関係あるということに違いはありませんけれども、まだまだそういうものがみんな入り込んでいるということなんであって、その数字だけで言わないで、私は全体としてこれまでの財投のあり方というものが、確かに日本経済を今日まで高度に発展させるのに非常に大きな役を引き受けてきたけれども、いまや日本経済全体が福祉型に変わらなければならないときに、思い切って一般会計予算もそうですけれども、財投なんというのは、その原資を出す人の立場をよく考えてもっと姿勢を変えていっていただきたいということを最初に申し上げたかったわけなんです。それでまたしさいにごらんいただいてほしいと思います。  それからもう一点申し上げたいことは、私どもが求めたものは白書だったわけですが、大蔵省の官僚の方の書かれた「財政投融資」というこの厚い本、私もたいへん参考になりますから、とらの巻のようにしょっちゅうのぞきますけれども、そこを、つまり政府の考えておることは正しいんだと、私たち野党のものが提起した問題なんかそれはみんな当たっていないと、まあ繰り越し不用額の問題も、私は繰り越しがあることはある程度よくわかりますけれども、そういうものは、もうそもそも財投というものは国会審議になじまないんだというような立場で書いておられる。  それから行政の立場と私は政治の立場と違うと思うのですね。ですから資金運用部資金の場合も、資金運用部資金法によって統合運用の原則があるから、あくまでも大蔵省がにぎってやらなけりゃいけないんだという立場説明である。私たちは資金運用部資金をつくった、国会でつくったものであっても、法律はそのときに必要なように改正していくわけですから、ですから政治的な立場に立ちますと、国民の側からすれば資金運用部資金の使い方も変える私たちもその主張をする権利がある。だから一方的にまあお上が正しいというような考え方で対していただかないように、これはもうお答えを要求いたしません。私はそういうふうに考えているということを最初に申し上げて次の問題に入りたいと思います。  一月二十五日ですね、例の一兆円余のかけ込み融資というふうなことばで呼ばれましたところの大量の融資をなさいましたですわね。これは参議院の予算委員会で三月十三日に私どものほうの羽生委員からこの点を指摘いたしました。その要旨はもう繰り返さないでもいいですけれども、政府は総需要抑制という立場に立って財投の伸び率も押えたと、それから繰り延べも四千九百六十四億円、八%をきめていると、ところが資金運用部資金の金利が六・七五から二月一日に〇・七引き上げて七・五になると、そこでその直前に一兆九百七十二億円を貸し出したと、しかもそれはおもな政府機関に集中して貸し出している。でこれは羽生さんの議論は、資金運用部資金にもしそのまま二月一日以降貸し出すことをすれば約七十五億円は利息がよけい入ったはずだと、利子がよけい入ったはずだと、その利子収入を失わせたということが一点。それからそういうばく大な金を一月二十五日一日で動かすということはそれは金融市場あるいは証券市場にも混乱を引き起こしたではないかと、それからそれに関連した鈴木強さんの発言で、そういう資金運用部資金が輸銀や開銀を通じて反社会的な企業に融資されてきたことに対してどうするつもりかというようなこと、規制をせよというような意味の発言がありました。これに対して大蔵大臣は、あれは金利操作なんだと、安いうちに貸してやらないと政府機関が困るから前もって貸してやったんだというようなことをおっしゃって、だけれどもその使い道に関しては厳重に管理をするんだというふうにおっしゃった。  で、午後になっていわゆる統一見解みたいなものをお出しになって、その一月二十五日に集中貸し出ししたことは認めますと、で二月一日からは金利引き上げ幅が大きいから政府関係機関に、財投対象の機関の経理に大きな影響を及ぼすから前もって貸し出したんだと、しかしこの貸し出し金はすぐ支出するものじゃない、内部に置いとくんだと、で、小出しに金利を上げていくのに使うというふうに大蔵大臣はおっしゃっています。それから各機関の貸し付けの繰り延べですね、八%といわれた、これは従来どおり行ないますと、だから総需要抑制とは反しないと、それから資金運用部資金の原資は郵便貯金国民年金であるから今後とも慎重に運営をはかると、「今後とも」というふうに書いてあります。それから反社会的な行為のあった企業への輸銀、開銀からの貸し出しに対する規制は現在各省と交渉調整中ですというふうにお答えになっておりますね。  これらの点で私はお尋ねしたいんですが、どうもその財投対象機関が困る困るという立場ばっかりが強調されておりましてね、私なんかは、いつもその原資を拠出する庶民立場のほうが忘れられているんじゃないかということが一点です。それから厳重に管理するというのはどういうことをなさるのか、これは具体的に伺いたいわけなんです。つまり、その安く貸し出した分を各対象機関に置いておいてそれを厳重に大蔵省管理できるのかどうか。それからどういうふうにして安く、つまり六分七厘五毛で貸した分、二月一日から七分五厘になる分を、安く貸した分、一兆円余という金をそれが庶民に還元されるようなどういう監督ができるのか、どういう保証があるのかということなんです、具体的に伺いたいんですね。全く財投運用というのは普通だれにもわからないんですよ。ですからわかるように言っていただきたい。  それから一月二十五日一日で一兆円を動かすというのは並みたいていのことじゃなかったと思うのですが、それの貸し付けを受けた機関というのは大部分が大蔵省と非常に関係の深い機関ばっかりなんですね。それで私がふしぎに思いますのは、非常に大きく借りておりますのは国鉄ですね、千七百八十八億。それから住宅公庫が二千五百六十億ですね。中小企業金融公庫なんかは二百五十二億。農林公庫が九百六十億ですね。日本開発銀行千百五十億。日本輸出入銀行千四百五十億ですね。道路公団百七十九億。地方公共団体は三百九十一億、非常に少ない。そうして私がふしぎに思ったのは国民金融公庫がゼロなんですね。それで私はどうもおかしい、輸銀や開銀にたくさん出しているのに何で庶民の小口の金融をする国民金融公庫には安いうちに貸してあげるということをしなかったのか。もし安いうちに貸してあげることが必要だと考えられたのなら、当然そうすべきだったと思ったわけなんです。それで国民金融公庫のほうに私は連絡して、なぜあなた方はあのとき借りなかったのかというふうに尋ねまして、初めて内容がわかった。だから財投のことというのはほんとうに突っ込んでいかなければ一つもわからないようにできているわけです。よく聞いてみますと、国民金融公庫は四十八年度の資金運用部資金の借り入れをもうすでに第三四半期の終わりまでで四千二百五億円やっている。小口だから何回も何回も分けて借りるので、それで毎年年度末に全部まとめて長期の借り入れに書きかえるというわけなんですね。ですから、四千二百五億円というものをほんとうなら三月末に書きかえるべきところを二月一日から利息が上がるというのでたいへんびっくりしてあわてて一月末にそれだけの借りかえをしたというわけですね。ですから国民金融公庫はその借りかえをしたので、新たな借り入れはしなかった、ゼロにした。そこで私はたいへん疑問に思うのは、輸銀や開銀は大蔵省から経理担当者がみな天下っていらっしゃる。いまここにいらっしゃる総裁なんかもみんなかつての大蔵省の高官なわけですね。そういうところは非常に手回しよく早く貸して、国民金融公庫の場合はもうすでに第三・四半期までに貸し付けたことになっているものを単に借りかえしただけのことなんです。新たな分をあとまた千二百十八億、三月に借りているんですよね。それはみすみす高い金利で借りているわけです、国民金融公庫は。だからどうしてそういう扱いをなすったかということ。私は大蔵省国民金融公庫に対しては、おまえはもう借りかえをしたから貸し付けることはできないというふうに言われたのか、あるいはどうしたのかということがまず一点。時間の関係でもう一つついでに申し上げます。  地方公共団体ですがね、地方公共団体はもうほんの少し三百九十一億しか借りていないわけです。これも私自治省のほうに電話をして聞いてみたら、自分たちは関係しないで、大蔵省の財務局とそれから各地方公共団体が直接交渉してきめるそうですね、財投借りるときに。それでまあ一体これはどういうことなんだろう。公社、公団はたいへん情報が早くて手続も早い。地方公共団体はいまたいへん財政的にも困っている、交付金も制限されたりしている。それで毎年地方公共団体が五月ごろに借りることは私も承知しております。年度内に借りないで次の年度の初めに借りるということは承知しているんですけれども、まあみすみす金利が高くなる。で、非常な一兆円近いですね、地方公共団体の借りる分は。そうすると、たいへんな利子負担をさせる。こういうようなことは地方公共団体をあずかる自治省が全然知らぬ顔をしているのか、あるいは地方公共団体がそういうことはもうどうせ税金でやることだからあんまりさとくないのか、あるいは大蔵省のほうがそういうことについての指導を非常にアンバランスに、不公平にやっているんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、まとめて申しましたので、それらの点について総裁からと大臣からと御説明をいただきたい。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この問題は予算委員会でかなり詳細に御説明したところでございますが、結局こういうことなんです。各政府機関が三月になりますと資金需要がある。その資金需要、どうせ三月になったら資金運用部といたしますとこれら政府関係機関に貸し出しをしなきゃならぬというのを繰り上げて一月末に実行した、こういう本質なんです。なぜそういうことをしたか、こういうことでございます。ですから、まあ額の問題、これは予定のものが繰り上がったというだけでありますが、繰り上げた理由いかんと、こういうことですが、これは一般金利を上げることにした、それに伴いまして政府関係機関の融資そういうものも順次利率を、金利を上げなきゃならぬ、こういう問題がありまして、そこでいろいろ政府関係機関のほうの事情も聞いてみたんです。そうしますと、まあ特に住宅公庫について申し上げますれば、住宅公庫は国民の住宅政策に即応いたしまして低利長期のお金を調達しておる、こういうのですが、そこでその二月一日から金利が上がるということになりますと、これらの住宅耐乏の方々に対しまして何がしかの期待を裏切る、こういうことになるわけでございます。  とにかく、政府関係機関の金利引き上げの際ではありまするけれども、この際、ひとつ安い金利のお金が引き続いて使えるようにというようなことで、三月に貸すべきものを二カ月繰り上げて一月末にこれを貸し付けた、こういう性格のものなんです。そういう性格のものでありまして、まああの際、大蔵省といたしましては金利体系が一段と上がったんだと、その際に、市中のほうもまた国のほうも肩を並べて金利水準を上げなきゃならぬ、そういうふうに考えまして、かなりの各省からの抵抗もあったわけなんであります、また各機関からも抵抗があったんですが、その妥協というか調整措置といいますか、それじゃひとつ三月に貸す予定のものだけにつきましては一月末にこれを融資する、そういうことにいたしまして、そしてひとつ調和というか、妥協しましょうという、そういう調整的な考え方の結果こういう措置をとったわけであります。それでないと、なかなか金利引き上げ全体の問題がきまらぬ、こういうむずかしい問題もあったわけでございます。  そこで、まあしかしお金は三月に要るんだと、その三月に要る金を資金運用部から政府関係各機関に二カ月先立って融資をしたということになる。予算委員会での御質問は、それならば総需要抑制政策に反するじゃないかというお話なんです。でありまするけれども、この点につきましては、お金は資金運用部から開銀なり、輸銀なり、中小公庫なり、あるいは住宅公庫なり、そういうものに移りまするけれども、その使用は何も一月に、あるいは二月に実行するわけじゃございませんで、これは予定の計画に従いまして各機関が逐次融資をしてまいる、こういうことでありまして、総需要抑制政策のその目的には反しないようにいたします。つまり資金のある場所が資金運用一部から、ただ単に政府関係機関に変わっただけでありますと、こういうお答えをしておるのですが、そのとおりに実行いたしておる次第でございます。
  18. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま厳重管理するとおっしゃったのは、どういうふうにしてするかということ。それから機関によって貸したのと貸さないのがあって、三月に高い金利で借りているところがたくさんあるわけですよ。その査定の基準はどういうところにあるんですか。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは政府委員のほうからお答えいたします。
  20. 竹内道雄

    政府委員(竹内道雄君) ただいま国民公庫あるいは地方公共団体について繰り上げの貸し付けと申しますかそういうものがなかったじゃないかというお話がございましたので御説明いたしますと、国民公庫の場合には、実際国民公庫としては繰り上げて貸し付けをしてほしいというようなお申し出は特になかったわけでございますけれども、御承知のように、二月一日から政府関係機関の金利が上げられるということはまあいわば政府関係機関の間ではみんなわかっていたことでございますので、そこでお申し出のあった機関もありなかった機関もあるということでございますが、国民公庫の場合にはこれは先生たいへんよく御承知なのであれでございますけれども、大体において資金運用部の貸し付けと申しますものは年度後半にずれる場合が多いわけでございますけれども、国民公庫の場合にはわりと零細な資金の貸し付けが多いものでございますから大体年に五、六十回ぐらいに分けられてどんどん貸されていくということで、まあ第三・四半期までに七割方の貸し付けがすでに済んでおったというような状況で、先生からも御指摘ございましたように、三月末に資金運用部に対する返済金があるわけでございますが、大体その返済金に見合う分ぐらいが貸し残っておったという状況でございますので、それを一月に早く借りますとそれに対する支払い利息の問題などもございまして、いままで実質的には長期なんだけれども短期で処理をしてきて、最後に長期に借りかえるというようなものを、むしろそっちのほうを繰り上げて自分のほうの資金の収支のめんどうを見てほしいというお申し出がございましたので、そちらのほうで御要望に応じたというような次第でございます。  なお地方公共団体につきましては、これも御承知と思いますが、大体は地方債の許可というものは地方の議会の議決を経て起債の許可がございまして、それに基づいて正式な自治省の起債の許可があって、それに基づいて長期資金が貸し付けられていくというようなことでございまして、地方債の大部分は三月の地方議会にかけられてそこで正式に起債を受けられるということになるものですから、そこで三月末に一括地方債の起債許可をする、それに基づいて長期貸し付けをするというようなことになっておりますものですから、一月にさかのぼってそいつを貸し付けようとしましてもなかなか地方議会の許可がとれない、地方議会の承認がとれていないというものが多いというようなこともありましておそらくお申し出がなかったんだろうと思いますが、地方団体につきましても特にそういうお申し出はなかったというのが実情でございます。ただ、地方資金の出方につきましては、これはいろいろ金融情勢との関係もあるわけでございますが、一般的に言って金融が引き締まっておりますので例年よりは地方に対する資金運用部の出方は例年よりは早かった、一般的に早かったということは申し上げられると思いますけれども、特に一月の繰り上げというようなことは大体なかったということでございます。
  21. 田中寿美子

    田中寿美子君 国民金融公庫は三月にまた千七百三十四億貸しているんですよね。ですからほんとうならばそれも安い金利のうちに、一月の末に借りたかったわけですよ。で、私はきょうは、国民金融公庫総裁はここにお出にならなくてもいいと申しましたのは、零細な小口の金融をやっていて、たいへん一生懸命にやっている人を、大臣やら主務官庁の前で、そういうことを言わせたくなかったんで、ほんとうならば、そこまで言いたかったけども、この四千二百五億円という、例年なら年度末に長期の借りかえにするべきものを、この際一月末にしてもらったもんだから、第四・四半期に出るべき金まではよう言わなかったというのが現実ですね。私は非常におかしいと思う。これは国民の——何べんも言いますけれども、庶民の積み立てている金、貯金なんかを使うんですから、だから最初に申し上げましたように、ほんとうに福祉的な使い方をしてほしい。だから安いうちに貸してあげるという調整をなさるときには、そういうものを十分考慮してもらわなければならないと、こういうふうに思うわけなんです。その辺で、大蔵省の指導が、何か貸してやる基準というものが、どうももう一つ、ほんとうに庶民福祉という立場からよりは、効率的にここならちゃんと返せるとか、使えるとかというところを考えたんではないか、あるいは大蔵省とたいへん近くて、情報の近いものということになったんではないかというふうに思います。  私はもっとこまかく見た点があるんですけれども、いまそれまで申し上げる時間がありませんから飛ばしますけれども、そこでそういう一月末の資金運用部資金の集中融資をなさった、まあ一兆円余という、一兆九百億という金を動かすというのは、想像しただけでも、一月二十五日一日で動いたんですから、私は、これは使われた理財局当局は目が回るようなことだったろうと思うんです。一体どのようにして、一兆九百七十二億円もの貸し出しをなさったか、その経過です。どっちからどう一まあたぶん短期証券でなければ動かされないと思うんですが、それどういうふうにして貸し付けをなさったのかをちょっと伺いたいんです。
  22. 竹内道雄

    政府委員(竹内道雄君) いま先生のお話しのようなことでございまして、運用部が一兆円の貸し出しをいたしますのには、お金がないともちろんいけないわけでございますけれども、そのお金をどこから持ってきたかということでございますが、運用部の持っておりまする、さしあたり貸し付けに回さないで持っておりまするような金は、いろいろ国債とか短期証券に運用しているわけでございます。今度の場合は、さしあたって手持ちの短期証券を日本銀行に売り戻しまして、そうしてお金をつくって、それを各機関に貸したということでございます。各機関のほうは、それではどうしたかという問題があるわけでございますが、一兆円のお金を借りましたけれども、その大部分はさしあたりすぐ使わなくてもいいお金だったわけでございます。本来ならば二月あるいは三月に借り入れてもいいお金を、繰り上げて一月に借りたわけでございますから、その金を現金で持っているわけにはまいりません。そこでそのお金を各機関が、運用部からお金を借りた政府機関が、どういうふうに運用したかと申しますと、これはまた、日本銀行から短期証券を買って運用したと。これはちょうど、その金利引き上げ前の安い金利で運用部は貸したわけでございますから、六分七厘五毛で借りているわけでございますね。それに対してちょうど、短期証券の金利は六分七厘五毛でございましたから、いわば損得なし、ツーツーで運用部から借りて、そいつを持っておるということができたわけでございます。したがいまして、運用部から日本銀行に短期証券がいき、その短期証券を、しるしはございませんけれども、そのまま政府機関がまた抱いておったというようなことで、いわば先ほどちょっとお話ございましたけれども、そういう意味で短期の金融市場に影響を及ぼしたとか波乱を呼んだというようなことは、全くないというふうに考えておるわけでござ  います。
  23. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまおっしゃったように、資金運用部資金が持っていた短期証券を割り当てた各機関に貸し付けるために、一たん日銀から現金化して渡して、それをまた短期証券に各機関が切りかえるということになるわけですね。それで実際上は、おそらく帳面の上でなさったものだろうと思いますけれども、たいへん大量な金が動いた、そこで混乱がなかったか。いまですともうツーツーで何にも混乱がなかったみたいなんですけれども、その一月末に貸し付けた一兆円が市場に流れ出たといううわさがあるわけですね。だからこそ、その後私はこれは新聞紙上で拝見したんですけれども、大蔵省や日銀が公社、公団の資金運用を規制し始めたという新聞記事が幾つか出ているわけですよ。これは私は初めてこういうことばを知ったんですけれども、現先市場という、これは三月二十六日の日経ですが、それは現先市場の売買レートが、日歩五銭五厘から二〇%にもはね上がった、その理由は陰の金融市場といわれているこの現先市場ですね、公社、公団が手に持っていた剰余金を運用していた。それでそれを大蔵省が、これは予算委員会でも問題になったもんですから、これの引き揚げを命令した。これはそれだけじゃないと思う。やはり今日でもいわれておりますように、企業によっては手持ち資金がダブついているところがまだあるじゃないか。それで銀行の規制をすると、検査を始めていらっしゃるわけですね。それで、そういうことなんですよ。  ちょっとその部分を読みますと、「現先売買とは、一定期間(たいていは半年以内)後にあらかじめ定めた価格で売り戻したり買い戻したりすることを条件にした公社債の取引をいう。」、「公社、公団の現先での運用残は一千億−一千五百億円と推定されているが、これが問題となった。要は、「資金運用部の資金を使っているところが勝手に現先などで余剰資金運用するのは問題」というわけ。公社、公団の中には、あわてて既契約分を破棄するものまであらわれている。」、そうやって一たん市場に流れ出た資金をまた引き揚げてきた。そのために金融が逼迫してきて、現先市場の売買レートが二〇%にもいまはね上がってきたという報道なんですね。  こういうのを見ますと、確かに一月末に大量に出した金が二月、三月に向かって流れ出ていたという疑いがあるわけですよ。大蔵大臣はこれを厳重管理して、ちゃんと内部に保留しておくんですと、そうして小出しにそれが安い金利で借りたものなんだから、資金コストが安いわけだから、小出しに引き揚げることによって庶民を潤していくんだという論法だったと思うんですね。ですから、これこういうことが、事実があるんではありませんか、大蔵大臣
  24. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府委員から。
  25. 竹内道雄

    政府委員(竹内道雄君) 私ども現先市場というものについてたいへん精通しているわけではございませんのであれでございまするけれども、例の一兆円の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、そのお金は大体短期証券の形で保有されておるという状況でございますので、そういうものが現先市場に流れ出て金融市場を混乱さしたということはないと思っております。  それから短期証券に関する限りは、日本銀行との間の取引でございますから、一般的な金融市場の問題とは別でございますので、そういうことはなかったというふうに思っております。
  26. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 現先市場のお話が出ましたので、若干御説明いたしますが、これは金融がやはり詰まってまいりますと、どうしても一部金のダブついているようなところが、現先の出し手になるというようなことで、また詰まってまいりますから、その資金がほしいところが、非常に高金利で高いコールをとるようなかっこうでとっておるというような状況が一部あらわれておったことば確かでございます。これはやはり金融引き締め、総需要抑制を強化いたしてまいりますと当然に出てくる——当然と申してはあれでございますが、出てくる一種の現象でございますけれども、これは現先についての何と申しますか、指導というものをわれわれいろいろの窓口を通じてやっておりますので、現在においては非常にそういう状況は完全におさまっておるとわれわれ考えております。  それからいま理財局長から御説明ございましたように、資金運用部の金を借りた機関が政府短期証券を運用しておるところで、その運用した段階においてはすでに金は日銀に入るわけでございますから、その金が再び現先の市場に飛び出してくるというようなことは絶対にないわけでございます。
  27. 田中寿美子

    田中寿美子君 それじゃ公社、公団に大蔵省、日銀が交通整理をして市場に流れ出したものの引き揚げを指令しているということは事実としてはないんですか。いまおっしゃったように、それはもういまはそういう事態はないというふうにおっしゃったんで、確かにそういう事実があったというふうに考えていいですか。
  28. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 政府関係金融機関が現先市場に資金を出しておったということに対してそれをまた取り締まるというような指示、一連の操作をやった事実はございません。またそういう私どもは事実はないと考えております。
  29. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、この日経の記事はうそということですね。公社、公団の金が残が一千億から一千五百億円と推定されるものが現先市場に出ていた、それで大蔵省は、そういうことは好ましくないといってあわてて引き揚げを命令して、すでに契約のあったものも破棄した、これは陰の金融市場だからわかりにくいですよね。私らも想像つかないことなんですけれども、そういうことを報道されるということは、確かに一月末に借りたその金が動いたんじゃなくて、そういうものがあればこっちに余裕ができてくるわけでしょう。それでそれがそういう市場に出ていったということが想像されるわけなんです。
  30. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 公庫は余裕金の運用方法については法律上制限がなされております。したがいましてまたこれは大蔵大臣の厳重な監督下に入っておりますので、そういうおそれは私はないと確信いたしております。
  31. 田中寿美子

    田中寿美子君 大蔵大臣ね、ないと確信していますと、あるとは言えないと、私は思うんですけれども現実にそういうことがあったからそういう報道がされていると私は思うんですね。こういうような情報は、私はおたくがときたまこういうものに、「財政金融統計月報」なんかに出されるものではわからないわけなんです。それで「金融財政事情」ですか、ああいう雑誌で見なくちゃしょうがないという状況なんですね。これはやはり資金を提供しております国民立場から、私は財投に関してはあとでもう一度念を押して御要求したいと思うのですけれども、財投運用の実情に関してはもっと刻々にわかるような資料を提供してもらいたいと思っているわけなんです。いまのようなことを言われても、あったでしょうと言っても、なかったと確信いたしますではちょっと話になりませんけれども、現実にそういうことが幾つかの記事に見えているということですね。大量な融資をしたときにはそういうことも起こり得るので、だから大蔵大臣予算委員会で厳重に管理しますとおっしゃったことは、ほんとうにそういうふうに管理されることが必要だと思います。それから安い金利で借りた分は必ずそれが、資金運用部資金の提供者のほうは損したことになるわけですから、その分が生きてこなきゃいけない、政府機関を通じて、そういう措置を大蔵大臣はもうちゃんと指令していただきたいのですが、いかがですか。
  32. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 田中さんのお話を伺っておりますと、まあ二つ問題を分けて考えたらいいじゃないかという感じを持ちましたですが、一月末の臨時融資ですね、繰り上げ融資、これにつきましてはその当時それを受ける各政府機関に対しまして、これは繰り上げである、したがってこれをみだりに使うという趣旨ではないということを厳重に申し渡してありますので、これは私はいま政府委員がお答えいたしたとおり、間違いなくそういうふうになっておると、こういうふうに承知し、報告を受けておる、そういうことでございます。一般の場合に、政府関係機関が余裕資金があるという場合が間々あろうと思うのです。これ毎日毎日所用に従って資金を渡すわけではございませんから、したがってその余裕資金のある場合がある。それをどういうふうに運用するかというと、政府関係機関はこれを政府関係機関としての使命達成ということを考える、またそのためにはなるべくそれを有利に運用すると、こういうことを考えるわけでありますから、その運用のしかたというものはいろいろ通常の時期におきましてはあろうかと、こういうふうに思いますが、まあとにかくいま政府は総需要抑制政策、その一環としての金融引き締め政策というものを厳重に推進しているという、そういう最中でありますから、その趣旨に沿った運用法がなされなきゃならぬ。運用の方法は多様でありましょう。ありましょうけれどもそういう趣旨は厳重に守っていかなければならぬ、こういうふうに思います。まあいろいろ実例をあげてのお話でございますが、それらの実例につきましては取り調べまして、その運用のしかたが適正であったかなかったか、適正でない運用方法が考えられているということでございますればこれは是正するというふうにいたしたいと、かように考えます。  それから第二の問題は、資金運用部資金運用状況、これもっと国会に明らかにすべきじゃないかと、こういうお話でございますが、これも二つの面があるのです。予算編成段階でということになりますと、これはなかなかそう明らかにできないのです。ことに融資関係の銀行、公庫、そういうものにつきましては、他の金融機関と同じようにこれは年度の初めにどこへ貸すんだというようなことを予定をしてやるわけじゃありませんし、またそういうこともできません。ですからまあ大体の目途を、目標を御説明いたしまして御理解を願うというほかはない、こういうふうに思います。  もう一つの問題は、その実績の問題であると、こういうふうに思うのですが、実績につきましてはこれは何らかくふうをさらにいたしまして、国会にも御理解を深めるということにつきましては、さらに検討してみるということで御理解願いたいと、かように思います。
  33. 田中寿美子

    田中寿美子君 政府関係の金融機関ですね、それはまあ大蔵省そんなに中まで立ち入れないわけですよね、輸銀や開銀はたいへんみな自主性を持っておるし、公庫、公団だって全体としての計画を承認するという程度でございますから、またそんなに立ち入れないと思いますけれども、今度のようなことをした場合には、やはり一方に資金運用部資金が得べかりし収益を利益を失わせたと、片っ方では。それは私は、資金運用部資金の積み立て残高というものは非常に大きい、それから年金資金として考えても大きいと、もう十兆にもなっている、資金運用部資金は三十兆をこえている。しかしこれらはインフレで私減価しているというふうに思っているわけです。ですからそういう意味でもここでまた手に入るべき利益を失わせているということを考えますと、それを運用するほうはそれだけの国民を潤すような計画を持って実行しなければいけないと、その辺を申し上げているわけです。それは一般的に大蔵大臣のほうから強く指導をしていただきたい。そうでないと、片方失ったけれどもだいじょうぶだという保証がどこにもないと、このことなんです、申し上げたいことは。  そこで輸出入銀行、開発銀行のことに移りたいと思いますが、大体輸銀、開銀たいへん優遇されてきまして、いままでは輸出第一主義というような使命を持って特別の優遇を受けてきたと思います。まあ資金コストを下げるために政府はたくさんの出資金を出して、これは四十八年度で出資金が六千三百九十三億になっている。それに資金運用部資金からの借り入れ残ですか、一兆四千四百四十三億——これは四十七年度の数字ですか。四十八年九月の残が二兆二千百七十三億とたいへん大きな金を運用しているわけです。それで今度の一月末にも輸銀は千四百五十億を借りた、安い金利で借りました。ところが現在の金利は皆さん上げたわけですね。大蔵省の銀行局からいただいたものの中に輸銀の金利は入ってないんですが、輸銀はいままでどおりの金利で貸し付けるようにするつもりなのかどうかということを一点お伺いしておきます。  それで、この間の予算委員会でも問題になりましたように輸銀からの貸し出し、それからこの決算委員会でも私のほうの工藤委員が輸銀の貸し出しが商社に非常にたくさん流れていて、そしていわゆる不当利得で問題になった商社のところにたくさんいっているじゃないかということで、資料を要求なさいました。会社名は伏せてあったけれども、この間予算委員会で発表されましたからね、これをわがほうの鈴木委員が発表されたので申しますと、三井物産が一社で千六百四十九億、三菱商事が一千四百五十四億、丸紅が八百九十億、伊藤忠が六百二十九億、住友商事が四百四十九億、日商岩井が四百三十億、トーメン三百五十一億というふうに、輸銀の資金が現在大部分が郵便貯金です、かつては年金資金も入っていたと思いますが。こういうふうな金がいま非常に問題になっている商社に集中して貸し付けられていた。輸銀の総裁は今度の一月末の貸し付けのとき何らかこれについて厳重に内部に留保しておけというような指示を受けられたんでしょうか。さっきの金利のことと……。
  34. 澄田智

    参考人(澄田智君) まず最初に、輸銀の金利についてのお尋ねがございましたのでそれからお答え申し上げます。  輸銀の金利は、案件によりまして、また相手国が発展途上国であるかそうでないかというような、そういう場合等もございまして、金利には幅を持って、その幅の中で運用する。そして、それは輸出金融あるいは輸入金融、海外投資金融あるいは経済協力、経済援助のためのクレジットと、こういうように分けてございますが、そのうちで純粋の経済協力のための借款、これはむしろ援助条件を緩和するというような要請が非常に強いというようなことで、この点は引き上げるというわけには国際的な情勢からいってもまいらないわけでございますが、そのほかの金利につきましては、それぞれ、この幅をいずれも引き上げまして、その引き上げた幅で運用すると、こういうことにいたしております。  たとえて申し上げれば、輸出金融につきましては、従来は四・七五%から七・七五%の間であったわけでありますが、それを五・五%から八.五%の間ということにいたしております。いまの運用状況からまいりますと、通じて見ましておよそ〇・七五%、今回の資金運用部からわれわれが借りておりますその金利の引き上げの幅にちょうど応ずる程度の金利の引き上げをする、こういうことで輸出金融については運用いたしておる次第でございます。それから輸入金融並びに海外投資金融につきましては、現在の国際収支状況にもかんがみまして、いま申し上げました輸出の〇・七五をさらに〇・五%高いところで、通じまして一・二五%程度引き上げる、そういうふうなことで運用いたしておる次第でございます。以上が貸し出し金利の状態でございます。  こういうふうに幅があるような形で運用しておりますために、大蔵省のほうから先生のほうに出しました資料においてはほかの機関のような形で例示されていなかったのではないかと、かように思う次第でございます。  それから、前の、商社に対する融資についてお話ございましたが、これは、もちろん商社の一般的な金融ではございませんので、個々の輸出でありますとか、あるいは輸入とか、海外投資、さらには経済協力、そういうものの案件につきまして、商社がその案件に参画いたしましてそれを推進しておりますと、そういうような場合に、その商社の所要資金を、輸出であれば船積みが行なわれたときにその船積み相当分を融資をする。こういうようなことで、一件一件につきまして、厳重に目的に結びつけた融資をいたしておる次第でございます。  それから、一月に、御指摘のように、千四百五十億の資金運用部の資金の貸し出しを受けたわけでございますが、これは、一月及び二月分の貸し出しというものを見込みまして、大体それに充てるということで一括一月に貸し出しを受けたと、こういう次第でございますが、ちょうどこの時期が石油危機の時期に当たりまして、たとえばプラント輸出につきましてその配船がおくれるとか、あるいは造船につきまして造船の工程の進行がおくれるとか、あるいは国際収支の問題がございましてから、海外投資についての、あるいは輸入について、これを抑制ぎみに融資をする、こういうような方針がちょうどたまたまその時期でございまして、全体としては非常に抑制された形で融資が行なわれた。したがいまして、余裕金という形で千四百五十億が三月まで持ち越された次第でございます。これにつきましては、私ども輸銀の場合は輸銀法の、法律の規定によりまして、余裕金の運用は、これは輸銀法の四十条でございますが、規定によりまして、「国債の保有」、それから「資金運用部への預託」、「日本銀行への預金」と、こういうことに限定をいたしております。で、一月のその千四百五十億につきましては、国債、これは短期証券でございますが、それの保有と、それから日本銀行の預け金と、こういう形で運用いたしました。そして、その国債の、短期証券の保有につきましては、これは、登録債でございまして、日銀に登録されておるわけでございます。日銀からは登録済みの通知書というものをわれわれは受け取るだけでございまして、現物は一切手にいたしておりません。こういう次第でございまして、先ほどの現先というようなことはとうてい考えられないといいますか、そういうことのないような厳重な運用になっておる次第でございます。
  35. 田中寿美子

    田中寿美子君 先ほど大蔵大臣ね、いわゆる反社会的な商社に対するあるいは企業に対する融資を規制せよという要求が予算委員会で出されたときに、大蔵大臣は、反社会的企業というものの定義がたいへんむずかしいので、いま関係している各省と調整中とか検討中とかということばを使っている。それはその後どういうふうになって進んでいるのかということが一点です。  それから、輸銀の繰り越しとか不用額の問題なんですけれども、資金運用部資金のことを考えてみますと、六分五厘の資金を産投会計からの無利子の出資金で薄めて、たいへん資金コストは安くいっているわけですね。ところが、この予算のつくり方というのは、私は全体に問題があると思うんですけれども、四十六年度には八百億の不用額とそれから繰り越し額を出しているわけです。それから、その次四十七年度はもっとひどくて千四百五十億の不用額を出して、そして七百五十億の繰り越しをしている。しかも資金コストのほうから見ますと、産投の出資金六百三十億を受けているわけです。そうすると、これだけ不用額や繰り越しを出しているとすると、まあ六百三十億の出資金のうち三百億ぐらいは不要だったのじゃないかというふうな気がするんですよね。それほど優遇を受けている。で、住宅金融だとか還元融資なんかに比べてみると、あるいは中小企業関係の金融機関から見てみると、あんまり優遇され過ぎているというふうな気がするんですよね。その辺をですね、これは輸銀だけじゃなくて開銀にもそういうことがあるし、それから経済協力基金についても同じようなことが言えるのですが、予算の積み上げ方式というのがたいへん災いしているように思うのです。ですからこれは大蔵大臣に、さっきの反社会的企業への融資の規制の問題と、それからこういう予算の組み方ですね、不用額をどんどん残していきながら出資金のほうはそのまま全部いただくというようなやり方、これは改めなければいけないと思いますが、どうですか。
  36. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず反社会的行為を行なった企業に対する政府資金の融資の問題ですが、これは非常にむずかしい問題がありまして、それはですね、まあ一種の行政的な制裁を加えると、こういう問題である点であります。そこで、大蔵省である案をつくりましていま関係各省と相談をしている、こういう段階ですが、大体煮詰まってまいりまして、私の気持ちとしては、来週閣議報告をするというふうにいたしたいと思いますが、反社会的行為をなした企業、これは個人でもそうですが、それに対しては制裁の規定がちゃんとそれぞれの法規に書いてあるわけであります。つまり、わが国は憲法の規定に従いまして罪刑法定主義をとっておるわけです。今度いま考えている問題は、罪刑法定主義そのものでなくて、そのワク外において行政的に措置しようという、そういう問題でありまするが、罪刑法定主義の精神というものはあくまでもこれは尊重しなければならぬ、こういうふうにまあ考えておるわけなんです。  そこで、どういう行為、どういう企業に対してそういう行政的制裁を加えるかということについては、ちゃんとしたルールが必要である。そのルールについて相談をいままでしてきた、こういうことなんですが、やっと目鼻がついてきた、こういう段階でありますので、来週中には発表できる、かように考えます。  それからもう一つの輸銀の問題につきましては輸銀総裁がお答え申し上げます。
  37. 田中寿美子

    田中寿美子君 全般的に私言っているんですけれどもね、積み上げ方式ということで。
  38. 澄田智

    参考人(澄田智君) 大臣のお答えの前に、私から輸銀の状況を申し上げます。  輸銀の資金コストにつきましては、これは先生御承知のように、輸銀の中のたとえば経済協力の円借款で申しますと、インド、パキスタン等は輸銀の場合は四%まで最近は金利を下げてきております。これはそれでもなお、もっと下げろという要請が非常に強い、あるいは国際的にその債権国が申し合わせをして金利を下げる、こういうようなことも行なわれておるわけでございます。で、四%よりもっと低いところは輸銀としては資金コストの関係で担当できません。これは経済協力基金のほうが融資をしている、こういうような状態でございます。そのほか輸出につきましても、あるいは輸入、投資等につきましても国際金利等の関係がございまして、金利を引き上げるという場合にもおのずから制約がございます。平均の貸し出し金利でございますが、四十七年度は五%をちょっとこして五・一までいかないと、このくらいが貸し出し平均金利でございます。四十八年度は先ほどからの御指摘の資金運用部の金利が引き上げになりましたので、これが四十八年度の上期においては五・四ぐらいになっております。下期はもうちょっと上がるのではないか。貸し出し金利を引き上げておりますので、上がるのではないかと思っております。こういうようなぐあいでございまして、資金運用部から現在は七・五%で借りる。引き上げ前でも六・七五%で借りる。そして貸し出しの平均が五・一とか五・四とかこういう状態でございまして、そこは出資金で金利を薄める、こういうことでございます。したがいまして、まあ国際的な関係でございますので、どうしても国際情勢の動き、国際経済の動き等によってずれが出て、繰り越しが出るんでございますが、その場合に、その出資のほうは、四十八年度でいえば六百三十億全額出資を政府からちょうだいする、こういうことで、やっといまの金利の差を埋めることができる。もしそれが繰り越しがあるから出資の六百三十億を削るということになりますと、それは四十九年度の出資が今度は政府のほうに今度の予算で御審議願いましたものよりもっと大きな出資をいただかないと輸銀の貸し出し金利がつじつまが合わない、あるいは国際金利との関係がうまくいかない、こういうような状態でございますので、実際には出資を全額いただいているということで、翌年度の出資分がその分だけ予算上ふえないで済んでいる、こういう実態があるということを申し上げさせていただく次第でございます。
  39. 福田赳夫

  40. 田中寿美子

    田中寿美子君 ちょっとお待ちください。ついでに関連しますので、経済協力基金のほうの問題ばかりおっしゃっているから……。だけれども、やっぱりいままでの輸銀の貸し出しというのは、さっき申し上げましたように、残高で見れば三井物産、三菱商事というふうな大きな商社に一番最大額を貸し付けているという仕事をしているわけです。ですから、いまのおっしゃることはちょっと聞こえませんです。  で、経済協力基金のことがいま関連してきましたので、ついでに申し上げますけれども、これは大蔵大臣も覚えていらっしゃると思いますが、去年参議院の予算委員会のとき、経済協力基金も毎一年毎年繰り越しはまだしも、不用額をたくさん残して使い切れない、全くの消化不良なんですね。それにもかかわらず、もう毎年予算は積み上げしてふやしていっているわけなんですよ。こういうようなことをして、ただ金額をふやしていくだけが能じゃない。これだけやっているはずなのに、田中総理が東南アジアへ行けば反日感情があんなふうに起こっているじゃないか。金は使い方を——財政投融資資料、私が去年古本屋で買ったあれなんかで見ますと、全く数限りなくばらばらに貸し付けているわけでしょう。それで貸し付けるというよりももうほとんどただのような形で上げるわけですから、まあ借款という形ですけども。で、それほどお金をばらまきながら効率をちっともあげていなくて、そして反日感情をあおっている。これは日本国民からしますと、国民のこれ簡保資金も入っていますし、郵便貯金も入っているわけですね。ですから、こういう国民に対しても申しわけないことだと思うし、それから協力を受ける対象の国の国民に対してもちっとも効率をあげないような状況になると。これは経済企画庁が責任者に一応なっているけれども、外務省も大蔵省も農林省も通産省も、それぞれ自分のほうに関係したことで資金をばらまくというような形なんですね。で、そのあれを申しますと、四十八年度六百九十五億が財投のほうからは出ているというわけですね。で、これにもうちょっとそれより少ないと思いますけど一般会計からも出ている、大体同じぐらい出ている。ところが四十八年度から二百六十五億の繰り越しがきていますから、合計したら九百億をこえる繰り越しがある。ところがいま実行状況を見ますと六十億しか使ってないんですよ。そうしたらもうほとんどまるまる四十九年度に回っていくわけでしょう。それでまた四十九年度の予算額を積み上げてまたよけい要求している。こういうふうなおかしなことを経済協力基金がやっているということ自体もおかしくないか。つまり、財投のその予算の組み方、それが実行状況をひとつも反映しないで総花的にみんな何%かずつ積み上げると、こういうことは、大蔵大臣ね、去年予算委員会のときにもおかしいと、行政管理庁長官をしていらっしゃいまして、それでそれは検討してみるというふうにおっしゃったんですがね、その後私は行政管理庁が経済協力基金あるいはそういう問題について監察なすったかどうかも伺いたいと思いますけども、大蔵大臣、そういう予算の組み方はおかしいとお思いになりませんか。
  41. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 経済協力基金は、これも政策金融ではありまするものの一種の金融でございまするので、予定したものが一般の予算のように的確に実行できるというふうにはならないんです。そういうようなことで、ある年はえらい足らなくなりましたり、ある年は繰り越しがたくさん出ると、こういうことになる。その傾向はやむを得ないと思うんですが、まあ田中さんがいまおっしゃるように、昭和四十八年度でもうこれは終わろうとしているその時点で六十億しか消化していないんだということはどうも考えられないくらいな小さい数字であります。私もその点まだ承知しておりませんけれども、よく調べてみまして、はたしてそういうようなことであるというようなことであれば、これはそれを繰り越しするかという問題もあります、あるいは不用にしちゃうという問題もありますから、これは適正な結論を出すということにいたしたいと、かように考えております。
  42. 田中寿美子

    田中寿美子君 経済協力基金だけじゃないんです。経済協力のあり方については、去年経済協力白書というのを通産省が出して、これまでのやり方は改めなければいけないということでいろいろと提案もしているし、それから国際協力事業団ですか、あれが発足して、もうちょっと一元的に運営をするべきだというようなことが言われておりますので、今後その経済協力のあり方に対応して経済協力基金の予算というものは考えるべきではないかということを私は申し上げておきたいと思います。  時間があれですから開銀のことをついでに言わしていただきますが、日本開発銀行の場合も資金はたいへんたくさん政府の出資金を受け取っております。現在資金の残高は一兆八千三百億、そして貸し付け残が二兆三千二百四十三億とたいへん大きい。ところがこれも予算委員会でも指摘されましたように、海運業に最大の貸し付け額を持っている。七千四百二十四億、たいへん保護されてきた。それから電力、エネルギー、これには石油も入っております。三千五百六十億、この石油の中には問題になった東亜石油、三菱石油、大協石油、丸善石油なんかもみんな入っている。それから地方開発というのが二千七百十八億も計上されておりまして、地方開発はいまや国民福祉のために生活環境をつくるという意味で大事なんだということは私はわかるんですけれども、実際にはそういう金をもってコンビナートをつくろうとしてむつ小川原の事件なんかを引き起こすと、こういうようなふうに金が使われていったんでは、私は過去の高度経済成長のための大きな役割りを果たして、いまや転換期に来つつあるはずなのに、こういうやり方では非常に困る。国民福祉を指向するというようなことがうたわれていますけれども、はたしてそういうふうに向かっているかということを問題にしたいと思います。  そこで、ほんとうに福祉の方向を指向するなら、まあ開銀総裁おいでになりますが、どういう方向にこれから融資の重点を置いていくべきだとお考えになっているかということです。いまの地方開発でも、むつ小川原やら苫小牧のような問題を引き起こす。志布志湾のような問題を引き起こす。それから流通近代化という項目がありますけれども、これなんかも実際にはコンテナ船の入る専用埠頭をつくる、そういうようなところの施設に使われたりしている。やっぱり産業開発が中心であったと思うんですが、これは転換すべき時期に来たというふうに私は思っておりますし、政府も今度は福祉のほうに向かっていこうと言っているときですので、一体福祉のほうに向かっていく、指向する開銀のあり方、融資のしかた、どういうふうな方法があるとお考えになりますか。
  43. 石原周夫

    参考人(石原周夫君) 開発銀行のまず全体の方向のことを申し上げたいと思いますが、御承知のように、開発銀行ができまして十年足らずの間というのは、非常に日本基幹産業を再建をするという任務がございまして、毎年度融資額の多いときは八割から九割をこす額を基幹産業に充てていた時代がございます。その後だんだん産業の高度化ということになりまして、機械産業とか、電子工業とか、あるいは石油化学とかいうようなものが出てまいったわけでありまするが、最近におきましては一昨年に法律改正をいたしましたわけであります。開発銀行法の第一条の改正をいたしまして、産業の開発と並びまして経済社会の発展ということを政策目標として掲げたわけであります。したがいまして社会開発というものを中心にし、そこに重点を置いた銀行の経営をいたすということに方向を切りかえてきているわけであります。  若干数字を申し上げますると、田中委員のお手元に差し上げてあるかと思いまするが、四十四年度には——私ども社会開発ということば、非常にいろんな解釈のしかたがございまするので、どこまでが社会開発かということは疑問がございまするけれども、一応都市開発と国民生活の改善、これは公害防止並びに公害予防を含むわけでありまするが、それと地域開発の三項目を便宜社会開発ということで呼びますると、四十四年には三割をちょっと下回る、二十九%何がしという数字でございます。それが四十九年度には五八%ということに相なっておるわけでありまして、現在におきましてはすでに過半が社会開発に向けられているという状況でありまするし、毎年その三つの部分が一番伸びておるということであります。  なお、残りについて簡単に申し上げますると、エネルギーの関係が約一一%ございます。それから先ほど御指摘がございました海運の関係が一五%ほどございます。それから技術開発、技術振興の関係が同じく一〇%ほどございます。それで大体開発銀行の最近におきまする融資の形が成り立っておるわけでありまして、大体経済社会基本計画においてもそういうことをいっておるわけでありまするが、今後の基本的な方向としては社会開発と技術振興というようなことに重点が置かるべきだということで、いま申し上げたような数字が、逐年見ますると、そういう方向になってきつつある、こういうことであろうかというふうに考えるわけであります。  なお、海運の御指摘がございましたので、海運のことを申し上げておきまするが、かつて海運に私どもが融資を非常にたくさん出しました時期は、一番高い時期には年度融資額の四割をこした時期がございます。現在は、ごらんをいただいておると思いまするが、一五%ほどに減りまして、絶対額におきまして大体横ばいの状況でございまするから、海運のウエートというのは急速に減少いたしてきておると、こういうことでございます。  それから第二点の地域開発の点でございまするけれども、御承知のように、地域開発のやり方というのはいろいろな点がございまして、私ども便宜三つほどの項目にひとつ分けておるわけであります。第一は、地方の都市機能の充実という問題でございます。第二番目は、工業拠点の開発という問題であります。御承知のような新産都市とか、工特地域とかという問題であります。第三点は、地元の地域産業の振興という問題でございます。その三つに分けて考えてみますると、都市機能の整備の関係は、やはり四、五年前には一五、六%でございます。今日は三割をこえる状態に相なっておりまして、地方都市の機能整備をするという問題に非常に重点が置かれている点が一点。それから工業地域の工業拠点の開発という点は、一時四割をこえるウエートを持っておったんでありまするが、最近におきましては三割ぐらいに減少いたしてきております。かわりまして、地元産業の開発というものが四割ぐらいを占める。そういうふうに内容的にも変わってきておるわけでありまして、今後もだんだんそういう方向が強くなってまいってくるかというふうに考えるわけであります。  それから流通近代化のお話がございました。流通近代化に応じて、これはいろいろな項目に分かれておるわけでございまするけれども、金額的に一番大きいのは流通業務市街地法というものがございまして、大きな都市地域にある団地をきめまして、そこに輸送の関係、卸売りの関係、倉庫の関係、そういうものを集中いたしまして、そこで大きなさばきをいたすという、いわゆる流通センターというものがございます。これが大体大きな割合を占めておるわけであります。東京の近郊にもございまするし、大阪の近郊にもございます。名古屋の近郊にもございます。こういうのが非常に大きな投資額を占めておるわけでありまして、これによりまして、外から入ってくる大型のトラックはそこでさばいてしまうというようなことをやりまして、あとは小運送の小回りの車で回すというようなことをやりまして、都市交通の合理化の問題にもなりまするし、同時に流通機構の改善にもなるというようなものがおもなものでございます。なお、それ以外に、流通機構の一般的な改善といたしまして、卸しセンターの問題でありまするとか、ボランタリーチェーンの問題でありまするとか、そういうようなものがございまするが、一番主力を置いて従来も金額的に大きくなっておりまするのは、大きな都市圏を中心といたしまする流通機構を幾つかの結節点にまとめてまいるという点でございます。
  44. 田中寿美子

    田中寿美子君 大蔵大臣、輸銀も、開銀も過去には非常に——いまもですけれども、優遇され、そして日本経済の開発に大きな働きをした、そのための資金財投からたくさん使ってきた、また政府からの出資もあった。しかし、いまの状況で、私はもう輸銀も一応一段落使命を果たしたのじゃないかという感じがするわけです。これからの輸出入、貿易なんかに関しても、私は、商社にしても、企業にしても、たいへんもう十分な力を持っている。だから、これは今後は輸銀をこれまでの使命と違ったものに変えていかなければならない。あるいは人によっては輸銀はもう解散せよという人もあるわけですね。そういうようなこと。それから開銀の場合も——日本経済力はもうつき過ぎるぐらいついてしまった、確かにその跛行性はあると思いますけれどもね。それで開銀も、私はこの際、福祉開発銀行というふうにでも名前も変えて切りかえていくべきじゃないかというふうに思うのですが、その辺最後に、大蔵大臣の輸銀、開銀、経済協力基金その他についての姿勢をお伺いして、午前中を終わりたいと思います。
  45. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話しのように、わが国の力も非常についてきた、そういうような情勢の中で輸銀は廃止したらどうだと、こういうことでございますが、まあ時勢の流れに応じまして、輸銀におきましても、また開銀につきましても、同様にその使命が社会の流れに応ずるように流動的に調整されつつあるのであります。輸銀はいま資源開発ということが非常に大事な段階になってきておる。そこに重点を指向するということになってきております。かたがた、わが国が政策として対外経済協力を進める、そのための任務を尽くすということでありまして、そういう重大な一まあ、輸出増進ということ、これがいままでは非常に大事であったけれども、それにかわって資源、また対外経済協力というものが大きく浮かび上がってきておる。こういうことで、そっちのほうに運用上の重点を持っていくということで、機構としてこれを廃止するというようなことは、季まだそういう時期ではないと、かように考えます。  それから開銀につきましても同じようなことを申し上げられるのであります。いままでは基幹産業の育成というようなことで重要な任務を果たしてきましたが、それは非常に制約をされた範囲にとどまるわけであります。主たる重点は社会開発といいますか、公害でありますとか、あるいは地方開発でありますとか、そういうこれからわが国が国づくりの上で取り組むべき諸問題そういう方向へ重点を移すと、こういうことでありますので、これもいま廃止すると、そういうような時期ではなかろうと考えております。この上とも、両銀行ともその使命達成のために誤りなきを期するように私としても注意してまいりたいと、かように考えております。   〔理事小谷守君退席、委員長着席〕
  46. 工藤良平

    工藤良平君 私は、予備費の問題につきましていまから二、三点の問題で御質問をいたしたいと思います。  予備費の問題につきましては、すでに昨年当委員会におきましてわが党の小谷理事からいろいろとこの問題についての質問がなされておるわけでありますが、その後の予備費状況を見ますと、依然として、当初予算の計上に対しまして補正予算段階で大幅に減額がなされておりまして、このことはすでに指摘されておりますように、補正予算の財源としての予備費のような性格を持ちつつあるわけで、この点については、憲法八十七条の規定基づいた予見しがたい予算不足に充当するというたてまえからいたしますこの予備費使用について疑問を持たざるを得ないのでありますが、この点について大蔵大臣の御見解をまずお伺いいたしたいと思います。
  47. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま予備費補正予算の財源としての性格を持つというようになっておるというお話でございますが、客観的に見ますと、近年そういうふうな傾向を示しておるんです。しかし、私どもが予算を編成する時点におきましては、これはもう全然そういうことは考えておらないわけであります。こういう経済の変動の時期でありますので、むしろ予備費の少なきことを憂  いながら予算の編成に当たっておる、こういうような状況でございます。確かに御指摘のように、もう毎年ように秋には補正予算が編成される、その際には予備費が減額される、こういうことになりまするが、予備費に対しましてはそういう措置をとるほど厳粛にこれを考えておるんです。たとえば十月の時点で補正予算が編成されたというと、その十月先の不時の需要というようなものを考えますと、もうおそらく通常国会が一月の末には開かれるだろう、国会の開会中ということになれば、ほんとうに大きな金の支出を要するということになれば、もう国会にそれこそまた補正としてお願いをしなければならぬと、こういうことになりまするし、またその十月の時点になりますると、予算編成するその年の正月ごろ見通し見通しよりも、もうあと六カ月のことでありまするから先々の見通しもついてくると、こういうようなことで予備費を最小限にしておく必要がある。そういうようなことから毎年毎年予備費補正予算編成の時点において、大体このくらい最小限度必要だろうというものに限定する、したがって、予備費は一部が不用になる、たまたま補正予算の編成でございまするからその際にその財源として引き充てられる、こういうかっこうになるので、これは客観的にはどうもそういうことになっておるんでありまするけれども、決して予備費が持つところの意味を、これを阻害するというようなことになっておるものではない、かように御理解をいただきたいと思います。
  48. 工藤良平

    工藤良平君 いま大蔵大臣そのような御答弁でありますけれども、いままでの経緯を見ますと、予備費が大幅にふえましたのは四十三年度予算で補正なし予算というのが、これは水田大蔵大臣のときですか、組まれたように記憶しているわけであります。それは当時、国家公務員のベースアップ分を予備費の中に年度当初から五%組み入れる、こういうようなことで予備費の大幅な増額というものが計画されたように私は記憶しているわけでありますが、その後四十四年には若干それは減りましたけれども、傾向としてはかなり大幅な部分が予備費として計上され、しかもそれが補正の段階で相当減額をされて、結局いま私が申し上げましたように、補正予算の財源的要素を持ってきたということを実は指摘申し上げたわけでありますが、やはり本来予算というものが年度当初国会の場で十分に議論をされて、その大要に基づいた予算の執行というものがたてまえでなければならないと思いますし、そういうことから考えてみましても、実は四十九年度予算というものを見ても、やはりかなり大幅な当初予算予備費が計上されておるというような実情を考えてみますと、いまの大蔵大臣の御答弁は表面的にはそのようでありますけれども、事実を見てみるとかなり私は違った意味の要素が含まれておるように思うわけでありまして、この点についてはいま大蔵大臣が明確に御答弁でありますので、もうすでに予算は本年度は通過いたしましたけれども、やはりこの点について来年度予算あたりからは十分な予備費に対する考え方というものを基本的にひとつ貫くような立場で編成というものが必要ではないか、こういうことを申し上げておきたいと思うわけであります。  そこで私は具体的にお聞きをしてまいりたいと思いますけれども、四十七年度の予備費のその二の資料を見てみますと、その中に、中小企業信用保険公庫出資四十億、それから商工中金出資六十億というのが予備費の中から支出をされているわけでありますが、この出資の緊急性に私は疑問を持つと同時に、またこれは予備費の趣旨からいたしまして、本来これらの出資は当然年度当初の予算の中から組まれるべきものではないか、このように理解をするのでありますけれども、その点について御見解を伺います。
  49. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず政府委員からお答えいたします。
  50. 田中敬

    政府委員田中敬君) 昭和四十八年二月十四日の変動相場制の移行に伴いまして、その影響を非常に受けます輸出関連中小企業者に対しまして、対策といたしまして特別の低利融資を実行したすことにいたしました。特別の低利融資を実行いたします機関は、いわゆる政府関係中小三機関——国民金融公庫中小企業金融公庫、それと商工中金でございますが、この商工中金は政府関係機関とは申しましても、これは純粋の政府機関ではございませんで、民間の金融機関でございまして、これが特別の中小企業者の対策のための低利の融資を行なうということをいたしますと、通常、通利で七・九%で貸しておりますのを、この際の特別融資は六・二%で貸すということにいたしました。そういたしますと商工中金のコスト割れが生じますので、政府といたしましては商工中金が積極的にこれらドルショックを受ける零細企業者に対して融資ができるように、その減収分を積極的に直ちに補てんしてやる必要があると、こういう見解に立ちまして予備費の支出をいたしたわけでございます。同じように、中小保険公庫につきましても零細業者が借ります際には地方の信用保証協会に参りまして保証を受けますが、地方の信用保証協会がこれら保証を求めてまいります中小企業者に対して保証をしやすくしてやるためには保証協会の再保険機関と申しますか、保険機関である中小保険公庫に保険準備金を充足いたしまして、保険公庫が積極的に保証協会が融資申し込みをする中小企業者に保証ができるような体制を整えてやる必要がある、こういう判断に基づきまして当時の国際金融情勢上、変動相場制の移行というのが緊急の事態でございましたので、緊急にこれら中小企業者を救済する必要がある、こういう趣旨で設けたものでございまして、やはり予見しがたい緊急な経費ということで予備費の支出は妥当であろうかと、かように存じます。
  51. 工藤良平

    工藤良平君 確かにこの四十七年の暮れから四十八年の初めにかけまして円のフロートによって大きな影響をこうむるという予想は確かに出て、いりました。もちろんその手立てというものは私は緊急に必要であったと思います。ただそれが中小企業融資の緊急性という意味において、たとえば利子補給を見るとかいうような形というものがやはりとられてしかるべきものではないのか、いわゆる出資という形でやるということは今日まで商工組合中央金庫の出資というものは法律事項として進められてきた、もちろんそれは一部改正をなさっておりますけれども、法律事項として行なわれてきた、そういうものが年度末、しかも三月十四日に閣議決定がなされ、金庫のほうは三月二十三日に総会で出資をきめるというような、何か逆の、予算が余ったからさてこれを機会に出資をしてあげますよというような、そのような印象を私は非常に強くするのでありますけれども、やはりその点においては中小企業融資に対する緊急対策としての方策とあるいはこのような金融機関に対する出資金増額するということについては若干混同した面が出てきているのではないか、これはやはり会計運営上若干問題があるのではないかという気がいたしますので、その点についてもう少し詳しく御説明いただきたいと思います。
  52. 田中敬

    政府委員田中敬君) 先生の御指摘の点は確かにそういう面もあろうかと存じます。先ほども申し上げましたように、非常に緊急の事態という認識のもとにかかる出資をしたわけでございますが、これらの経験を踏まえまして、たとえば四十九年度予算編成におきましては、現在の金融引き締めの影響というものが、あるいはこの四月、五月、中小企業に相当及ぶかもしれないという予見が予算編成時にございましたものですから、四十九年度予算におきましては、あらかじめ商工中金とそれからただいま問題になっております中小保険公庫ともに従来にないその出資を四十九年度当初予算で組み込みまして、これらに備えるということをいたしております。お説のようなこともございますので、今後ともそういうふうにやっきいきたいと存じますが、緊急事態で中小企業者を救済するという緊急の場合には、予備費をもって今後とも出資をする必要がないとは申せませんので、あるいはそういう事例が起きるかとも存じます。
  53. 工藤良平

    工藤良平君 非常にその点は重要な発言だと私は思うわけです。それはいま田中委員もお話がありましたけれども、財政投融資の問題から輸銀とかあるいは開銀に対するいろんな問題が指摘をされましたけれども、たとえばこのように緊急に商工中金なりあるいは中小企業信用保険公庫に対して出資がなされた、これは別の形で、私は緊急対策として予備費を支出するというたてまえは貫いていかなければいけないのじゃないか。やはりそういうことが行なわれてまいりますと、それじゃ輸銀やあるいは開銀についても非常に現在石油問題を中心として緊急な事態である、低利の出資をしなければならないという、貸し付けをしなければならないという状態のときに、それじゃそれに対しても同じような適用をやって出資をするということが可能になってくるわけで、私はそういう点でこれを拡大していくということについては問題があるし、昨年の、これは商工中金の資料ですけれども、昨年もやはりかなりの、四十八年の三月までの間にかなりやはりこの出資がなされているわけですね。そうすると同じようなかなり高額な出資がなされているにもかかわらず四十八年三月の段階でしかも年度末ぎりぎりに予備費がかなりな部分上がっている、そういうような状態を見越してはやはり私は閣議としてそういうものを安易にきめていったんじゃないか、もちろんこの緊急対策というのはわかるのですけれども、その点非常に問題があると思う。  さらにもう一つこれに関連をしてお伺いしたいのは、商工組合中央金庫法の第六条の、「政府ハ前項ノ規定ニ依ル資本金ノ増加ノ為予算ノ範囲内ニ於テ商工組合中央金庫ニ出資スルコトヲ得」、こう書いているこの「予算ノ範囲内」というものは予備費まで含めたものをさしていっているのか、そうじゃなくて、これはあくまでも年度当初に予定をされた予算の中でそれははかられるべきものであって、予備費まで含めたものをさしているのかどうかという疑問も実は出てくるわけなので、この点はやはりきちんとしておかないと、緊急な事態だからということで安易にそういうことをやっていくということになると、さらにそれが拡大をして一般的なことになってしまうということでは問題がありますから、この点はきちんとしておきたいと私は思うのですが、これはできれば最後にひとつ大臣のほうから見解を伺っておきたいと思います。
  54. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、法律論でございますが、「予算ノ範囲ニ於テ」出資し得る、こういうふうになっておりますのは、予備費支出がありました場合のその予算、それを含めての意味であります。つまり予備費はこれを支出するまでは予備費でありまするけれども、これを支出決定するということになりますると、それは予算現額という立場に変わっていくわけであります。それを含めての出資をなすことができる、こういうふうに御理解を願いたい、かように存じます。  それから先ほど来政府委員との間にお話がありましたが、これは四十八年の二月という時点は、これは非常に大きな国際社会との関連を持ったできごとでございます。まあ円の価値が非常な勢いで上がってくる、こういうような事態がありました。さようなことで輸出関連の中小企業が困却する、そういうような意味から臨時緊急の措置としてとった措置でありまして、まさに私はこれは予備費というものがそういう際に大きく取り上げられた、こういうふうに考えております。予備費はとにかく工藤さんの強調されるように、予見しがたい予算不足を補う、こういう性格のものでありますから、これはどこまでも予備費の性格、これはもう憲法に尾を引いている、そういう予備費でございまするから、これはほんとうに厳重にこの趣旨を守っていかなければならない、こういうふうに考えますから、いま御指摘の事例なんか、私はこれはまさに予備費を充当し、これで困窮した中小企業者を救済する、こういう使命を達すべき、そういう予備費として本来の性格を端的にあらわしている、こういうケースである、かように考えます。
  55. 工藤良平

    工藤良平君 そうしますと、こういう事例は他に今日までございましたですか。
  56. 田中敬

    政府委員田中敬君) 先例を申し上げます。  昭和二十三年に食糧配給公団出資というのを予備費支出をいたしております。同じく三十六年、炭鉱保安の緊急対策といたしまして、当時石炭鉱業合理化事業団に対しまして、三十六年、四十年、二回にわたりまして出資をいたしております。それから昭和四十六年に繊維工業構造改善事業協会に対しまして繊維の緊急対策ということから出資をいたしております。そのほか一般会計予備費以外に、特別会計予備費におきましても昭和三十四年、三十六年、三十七年にわたりまして失業保険特別会計から労働福祉事業団に対しまして、総合職業訓練所の整備でございますとか、港湾労務者用の宿舎の整備とか、こういう種類の金のための出資をいたした先例がございます。
  57. 工藤良平

    工藤良平君 この問題につきましては、たとえばいま農業問題が非常に緊急な事態、特に畜産関係を中心にいたしましてたいへんな自殺者も出ているというような状態が生まれているわけでありますけれども、私はもちろんこれらにつきましてはそれぞれ各省ごとに現在の予算の範囲内において最大限の努力をするということは当然でありますけれども、こういう緊急な事態に限られて、もしも行なうとするならばそういうことでかなりきびしい規制の中で最大限の措置をするということが必要ではないか。したがって、さっき私が言っているように輸銀あるいは開銀等につきましても、緊急な事態としてそういうことが拡大されてまいりますと、たいへん大きな問題でありますから、これにつきましては十分なひとつ判断の上に立って、遺憾のない措置を講じていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  時間がありませんから次にまいりますが、さらに次に予備費の中で、私ちょっとこれをお聞きをしたいと思うのですが、先日、予算委員会でも田中総理が本年度さらにいわゆる親善外交という意味で国外に出かけるというような発言を、私新聞で聞いたのでありますけれども、この総理の海外に対する旅行というものが、すべて予備費から支出をされているわけでありますが、もちろん先般のフランス大統領の死亡に対してその葬儀に参列をするとか、あるいは三木大臣がアラブに対して石油の問題で訪問をするということについては私はわかるのでありますけれども、一般的に過去の、この池田総理から今日までの状態を見ますと、年間を通じましてやはりかなり親善的な訪問というものが恒常化しているようでありますが、こういう点から考えますと、総理大臣の外国訪問というものをすべて予備費からそのつど支出していくということについては、これは現在の外交政策上から言いまして、もっときちんとした形の中でやるべきで、一国の総理が他の国を訪問をするというときに予備費的な考え方でいくということについて、私若干疑問を持つのでありますけれども、この点についてひとつ大蔵大臣の御見解をいただきたいと思います。
  58. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 総理の外遊、これがもう予算編成の時点においてきまっておると、こういうことでありますれば、これはもちろん予算に計上すべきものだと思います。たとえば一昨々年両陛下が海外へ旅行されると、こういうことがあらかじめきまっておりましたので、これは予備費を使いませんで、皇室費の中にその経費を計上すると、こういう措置をとっておりますが、総理につきましても、あらかじめどこへ行くんだということがきまっておりますれば予算に計上すべきものと思います。ただ、今日になりましても、まだ総理が海外へ行かれるのか行かれないのか、そういうことがきまっておりませんものですから、したがって、そういうことがきまったと、しかもこれは重要なる用務であるということであれば、予算編成当時予見し得なかった予算不足、それに該当するものとして予備費使用するということになろうかと、こういうふうに思います。ただ、立法論というか、予算編成論とすれば、ずっと毎年毎年そういうことがあるじゃないかというようなことで、あるいは海外訪問諸費なんというようなことで、あらかじめ何がしかを予算に見積っておくということも一つの考え方かもしれませんけれども、まだそこまで毎年毎年同じ程度の額が使われるというような実績もまあ固まっておりませんし、ただいまとしては予備費をもってこれに充当するということが妥当だと思います。将来ずっとどうも総理大臣が毎年毎年行くんだというようなことが固まってきますれば、ただいま申し上げたような予算の組み方もこれは考えてよかろうかと、かように考えます。
  59. 工藤良平

    工藤良平君 特に近ごろの傾向として、何か思いつき外交という批判を受けるような傾向が非常に強いわけであります。少なくとも一国の総理が外国を訪問をするという場合には、やはりきちんとしたそれなりの方針と、そういうものに基づいて訪問をするということが本来のたてまえではないか。もちろん今度のようなフランスの大統領が死亡したとかいうような場合は別でありますけれども、やはり本来いわゆる親善的な訪問というものについては、一つの方向として、その年次における計画というものをある程度外交政策の中で位置づけをしてやるということは、私は必要ではないか、もちろんこれは自民党の総裁として行く場合には別でありますけれども、一国の総理として行く場合には、少なくともそういうものが予算の中でも審議をされ、その上に立って行くということは、権威の上からも私は必要ではないか、予備費的な考え方でいくというのはどうも問題があるような気がいたしますので、この点についてはぜひひとつ御検討いただきたいと思いますし、たいへん小さなことでありますけれども、たとえば予算執行の際にも、先日私説明聞きましたけれども、あまりよくわからないんですが、たとえば報償費なんというものがかなりの部分あるようでありますけれども、もちろんこれは領収書を取ったりそういうようなことということではなくて、私はもっともっとやはり慎重にはかられるべきものがあるのではないか、安易にやはり予備費から支出をするということであってはいけないというような気がいたしますので、この点についてはぜひひとつ予算編成の際に十分に大蔵大臣のほうで閣議で御検討願って措置をとるように私はお願いをいたしたい。この点をもう一ぺん大臣からお答えをいただきたいと思います。
  60. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この問題はただいま申し上げたようなわけでございますが、毎年どうも閣僚が海外へ臨時に出張するというようなケースが多くなる、あるいは総理大臣が毎年のように行くというような実績が固まってまいりますれば、これは私は予備費から支出するというのでなくて、閣僚海外渡航費というようなものを予算に組んでおくということも一案ではなかろうかと、こういうふうに思います。皆さんがそういうふうにおっしゃられるならば、そういうことも私は検討していい問題であると、かように考えます。十分考えてみることにいたします。
  61. 工藤良平

    工藤良平君 次に私は、昨年たいへん問題になりました水銀の汚染にかかる環境調査、いわゆる汚染魚の調査を実施いたしまして、これは大臣のいるうちにちょっと私お聞きをしておきたいと思うのですが、詳細なことはそれぞれ私はまた担当の委員会で説明を聞きたいと思いますけれども、あれだけ騒がれましたあの水銀並びにPCBの汚染魚に対する予備費の支出というものが行なわれたわけでありますけれども、この結末は一体どうなっているのか、予備費まで支出をして非常に緊急な問題としてやってきたわけですけれども、その結末を私どもはやはりきちんとけじめをつけて、じゃ次の予算にどのようにそれを反映をしていくかということを見ていかなければならぬと思いますし、そういう点から、この点についてはたしか環境庁にその対策委員会を設置いたしまして、各省の調整をはかりながらやってきたと思いますので、その大まかな経緯でよろしゅうございますが、お聞きをし、対策を私はお聞きをいたしたいと思います。
  62. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その問題は、予備費それからその次の年度の予算、そういうようなものを使いまして、環境庁において十分な対策をとっておるわけでありますが、いま環境庁のほうで来ておりますので、詳細お答えすることにいたします。
  63. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 昨年予備費十一億六千二百三十二万九千円を使用いたしまして、いま御指摘でございましたような環境調査あるいは健康調査その他をやってまいっているわけでございます。その分担につきましては詳細は申し上げませんが、環境庁、厚生省、水産庁、通産省、運輸省、それぞれ分担をいたしてやってまいりまして、その総まとめ的な仕事及び環境調査——環境調査は一部でございます、それに健康調査、これを環境庁としてやってまいっているわけでございます。私どものほうでは、環境庁長官を議長としまして置かれました水銀等汚染対策推進会議中心にしまして仕事を進めてまいりまして、現在まで三回会議を開いております。なおまた技術的な点につきましては、水銀汚染調査検討委員会というものを設けまして、その中に環境調査と健康調査の二つの分科会を設けて、いろいろと企画だとかあるいは解析評価を行なっていく上の意見を聴取しているわけでございます。  それで、その中の環境調査でございますが、これは現在まで、問題九水域といわれているものにつきましての環境調査は水銀についてはすでに終わっているわけでございまして、その概要を昨年十一月に発表いたしております。  要点を申し上げますと、漁獲の自主規制を要するのは、九水域のうち、水俣湾の四魚種、それから徳山湾の五つの魚種でございまして、これを除きます七水域につきましては、魚介類の汚染は見られなかったわけでございます。また底質の除去の対策が必要でございますのは、水俣湾のほぼ全域とそれから徳山湾、酒田港の一部及び流入河川の一部でございます。  それから厚生省であわせて行なっております問題九水域の産地市場の魚介類調査というのがございますが、これでは現在まで一万二千の検体を採取しておりますが、その中の八千について取りまとめが済んでおりまして、発表がされておりますが、問題がございますのは、暫定規制値をこえるものがございますのは二検体だけであったわけでございます。  それから住民の健康調査でございますが、これは現在約十二万人を対象に進めているわけでございまして、その中の佐賀県と福岡県、この両県分につきまして、本年の三月に、調査結果としまして、有機水銀中毒症と判定したる者はなかった旨の公表がされております。したがってあと残りましたのは、九水域以外の環境調査あるいは福岡、佐賀県両県以外の健康調査でございまして、現在取りまとめがなされている段階でございまして、これが県からあがってまいりましたら、先ほど申し上げました二つの分科会にはかりまして、最終的に問題点を煮詰めて発表したいと、こう思っているわけでございます。
  64. 工藤良平

    工藤良平君 この予備費の四十八年度その二を見なければ全体的なことはわかりませんし、現在のところでは中間的な報告みたいなかっこうになるわけですけれども、ほぼ現在の段階で私どもが承知し得るのは、結局、昨年予備費として支出を認めた事項については、ほとんどそれがそのまま完全に実施をされると、このように理解してよろしゅうございますか。
  65. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 私ども、当初予定しましたところに従って各省協力して全部実施しておりますので、さように御承知いただいてけっこうでございます。
  66. 工藤良平

    工藤良平君 そこで、私ちょっと気になりますのは、ちょうど先般予算委員会でも問題になりましたこの分析委託機関の問題についてでありますけれども、日本分析化学研究所の調査がきわめてずさんであったということが実は衆議院の予算委員会でも問題になったわけでありますが、この点、今回のこの調査が、もしこの日本分析化学研究所に委託をされて、その信憑性が問われるという事実があるとするならば、その支出についてはきわめて大きな問題を残すのでありますけれども、その点について、この研究所に委託をし、その信憑性について問題はないのか、その点をひとつお聞きをいたしたいと思います。
  67. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) ただいまの予備費によりまして実施しております事業のうちで、環境調査につきましては、水質、底質等六千九百七検体、それから健康調査のうち、山口県に関連いたしまして毛髪の水銀五百三十検体の分析を分析研に委託をしてございます。このうち、九水域の関係につきましては、関係の水質、底質につきましては千三百五十検体でございますが、これと山口県の毛髪中水銀、この両者につきましてはすでに分析研に県と環境庁とで立ち入り調査をいたしまして、その結果を専門家からなります検討委員会で十分検討いたしてもらいました結果、作為性は認められないということで、九水域につきましての先ほど申し上げましたような判定というのは問題はないと、こう判断しております。それからなお、九水域以外の委託分につきましては、現在同じような方向で——件数が多いわけでございますから、作為性があるかないかということを逐次調査、検討をいたしておる段階でございます。
  68. 工藤良平

    工藤良平君 大臣、時間がないようでありますから、これ、ちょっと話がとぎれてしまいますけれども、政府保証債の弾力条項の発動と国会承認の問題について、これは私あとでお聞きしたいと思ったのですが、大臣時間がないようでありますから、この点について、歳出と債務保証を区別する根拠は私はない。やはり、この債務保証の弾力条項についても国会の承認を求める、こういうようなことがたてまえとして樹立をされるべきではないかと、こういうように考えますので、この点をひとつ御答弁をいただきまして、大臣は退席をしていただきたいと思います。
  69. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 弾力条項問題につきましては、財政制度審議会で答申がありまして、大体その線に沿いまして処置をいたしております。その詳細につきましては、後刻政府委員のほうから御説明をいたさせます。  また、債務保証について国会の承認と、こういう話でございますが、これは報告をちゃんといたしております。それで御了承願いたいと思います。
  70. 田中敬

    政府委員田中敬君) 恐縮でございますが、御質問の御趣旨、大臣がお答えした以外何かございましょうか。
  71. 工藤良平

    工藤良平君 その点、いま大臣が全般について政府委員から御答弁をいたさせますということで、もう少しその点を詳しく。
  72. 田中敬

    政府委員田中敬君) 弾力条項の事項につきましては、御承知のとおり昭和四十五年にいろいろ問題になりました結果を踏まえまして、財政制度審議会から答申をいただいております。弾力条項の発動の根源と申しますのは、財政法の二十二条に根拠を置きまして、予算総則で定めるということになっております。その予算の執行に関する事項の一つとして、弾力条項規定を置かしていただいておるわけでございまして、財政審の答申に基づきましても、収入金支弁、その他経理の健全性を害さない範囲においては、弾力条項を設けることも適当であるという趣旨の御答申を受けておりますけれども、なおそういう前提を踏まえながらも、従来の弾力条項規定の中には広範に過ぎるものがある、あるいは廃止すべきものがある等、いろいろ問題の御指摘を受けております。それを受けまして、私どものほうにおきましては、たとえば広範に過ぎるものというもので改善をいたしたものといたしましては、国立学校特会、あるいは病院特会等におきまして、収入金支弁で、弾力条項の定め方におきましては、事業のために直接必要な金というものが支出できるというふうに、従来やや広範に読める規定がありましたものを、事業量の増加に伴い必要な経費、たとえば患者がたくさん来る、投薬をたくさんしなければならない、お金は入ってくるけれども患者が来るために薬を買うための経費が、当初見込んだ予算額よりも多くなる、こういうものは事業量の増に直接つながるものであるから、薬品の購入費には支弁してもいいと、そういうふうな制限的な改正を加えますとともに、あるいはすでにあまり必要がないのではないかというようなものにつきましては、国有財産整備特会の弾力条項を廃止した事例がございます。これは、従来国有財産整備特会で、一つの土地の交換等で、たくさん売れれば売れた金に見合って、またある程度交換の土地が買えるというような感じのものを、それは別に緊急性もないし、弾力条項を設けるまでのこともないということで、そういう許容範囲を制限する意味で、これは廃止した例もございます。あるいは弾力条項で食管特別会計等におきましては米麦の買い入れ増加に伴いまして、食糧証券の発行限度ワクを増ワクできる規定がございますが、これも一がいに増ワクをして、政府が無制限に米麦を買い入れるのもどうかというような観点から、国会で御承認をいただいた限度額の百分の三十を限度としてというふうに、従来青天井でございましたものを制限規定を設けるというようなこともいたしました。  それから、これらの弾力条項を発動しました際に、たとえば一般会計から特別会計に金が入りまして、その特別会計で支弁をいたします際は、それを受けます特別会計のほうは、他会計からの、あるいは他勘定からの繰り入れがあった場合には、それを弾力と——その限度内におきまして支出を増大できるという弾力がございましたが、これは本来片方の一般会計等が補正あるいは予備費支出ということでふくらむものであるとすれば、それを受ける特別会計も当然補正をすべきであると、こういうたてまえから、それらにつきましては事後補正をきちんといたしまして、国会の御承認を受けるというふうに改めております。なおまた、弾力条項国会事後承諾の件につきましては、従来明文の規定がございませんでございましたが、新たに予算総則の中に国会事後承諾を受けなければならない、御承諾を受けなければならないという明文の規定予算総則の中に入れまして、これに対処するというふうな改善措置を加えてまいったわけであります。
  73. 工藤良平

    工藤良平君 話がとぎれとぎれになってしまいましたけれども、したがってこの債務保証の弾力条項の発動後におきましても、これを国会の承認事項としてやるということが同様にやれないのかどうか、その点をもう少し明確にお伺いしておきたいと思います。
  74. 田中敬

    政府委員田中敬君) 通常の弾力は、当面の歳出そのものにつながるわけでございますので、これははっきり承諾を受けるべきものというふうに私ども観念いたしておりますが、債務保証につきましては、直接歳出につながるというものでもございませんので、若干そこに両者の差異があるのではないかという感じで、いまのところまだ承諾をお求めするというところまでには踏み切っておりません。
  75. 工藤良平

    工藤良平君 この点については昨年も同じような議論がなされておりますが、まだすっきりとした形のものにならないわけです。ぜひ私は、時間がまいりましたから打ち切らなければなりませんけれども、この問題については、ぜひ前向きの御検討をいただきたい、このように思います。  それから先ほどの公害予算の関係でございますけれども、これにつきましては、特に先ほども御指摘を申し上げましたように、日本分析化学研究所の調査そのものに対しての疑問が出ておるわけで、この点については環境庁をはじめとして、調査を依頼いたしました機関につきましても、なお今後再調査をするというような発言をなさっておるやに私も聞いているわけでありますが、特にこれらの問題につきましては、人間の健康、生命に関する問題でありますので、その化学分析につきましては非常に慎重を要すると同時に、また的確な分析というものがなされなければならないと思いますし、そういうものに対してやはり予算の執行というものが正しく行なわれるということが私はたてまえだと思いますし、問題が提起をされておる事項でありますから、やはり複数の調査機関に依頼をするとか、そういうようないろいろな措置を講じて、この調査というものが疑問を残さないような形で万全の対策がとられ、それに対する的確な予算的な措置が行なわれる、こういうことを、ぜひ私は行なっていただきたいということを申し上げて、もっともっとやりたいわけですけれども、これはまた日を改めまして、公害等の委員会等で私は質問をいたしたいと思いますけれども、その点を最後に申し上げておきたいと思います。
  76. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) それでは、午後三時より再開することにし、暫時休憩いたします。    午後一時五十三分休憩      —————・—————    午後三時三分開会
  77. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和四十六年度決算外二件中、大蔵省とそれに関係する日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行日本輸出入銀行決算並びに予備費関係八件を便宜一括して議題とし、審査を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  78. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ、金融政策に入る前に、大蔵大臣に、まず物価問題を若干お伺いしたいと思います。  大蔵大臣は、過日の衆議院におきまして、狂乱物価はかなり克服できたと、そういったような意味の発言があったわけでありますが、われわれといたしましては、必ずしもそうは受け取れないわけでありまして、おっしゃるように、一部の物資、物品におきましては、若干の値くずれがあったことは認めますけれども、基礎物資の五十三品目あるいは生活関連物資の百四十八品目の凍結価格等も、これは三月十五日の高値で凍結をしておると、こういうような状態なんですね。具体的に一例をあげますというと、チリ紙等は一年前の約二・一倍、さらに便せんは二倍近い、インスタントラーメンでもこれは七、八割も上昇しておるわけです。それで、狂乱物価が落ちついたと言っても、それは何も安くなったというわけじゃなしに、一応三月中旬程度の高値で安定をした、こういうふうに受け取っておるわけでありますが、今後もまだ値上げが予想されるものが、これはメジロ押しにあるわけであります、御承知のとおり。公共料金だけを取り上げましても、電気、ガス料金、国鉄、私鉄、バス運賃に消費者米価と、こういうふうに続きそうでございますが、大蔵大臣は、今後の物価の動向をどのようにとらえておるのか、まず最初にお伺いをしましょう。
  79. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 物価につきましては、申し上げるまでもありませんが、需給要因コスト要因とあるわけなんです。去年の下半期に起こったあの狂乱状態、これは需給要因から起きてきているわけですね。皆さんが物価は先高だ、これはインフレになるにきまっているというようなことで物を買いあさるし、物を持ってもそれを売り惜しむと、こういう状態。私は、その状態はもう物価と呼ぶべきもんじゃない。投機相場であるというふうに考えておるわけですが、そういう状態です。つまり、仮需要というものが先高インフレ、そういう中から生まれてきた。その仮需要、つまり投機需要ですね、これによって普通の価格形成と違った価格形成、そういうことになってきた。私は水ぶくれ物価だと言っておるんです。ですから、その水を抜くことを考えるほかはない。こういうので総需要抑制政策——需要を減らす政策をとったんですが、その効果が端的に今日出てきているわけです。ですから、物価一つの側面である需給要因、この面におきましては、おおむね政策は軌道に乗ったと、もうこの総需要抑制政策を進めていく限りにおきましては、再び仮需要が起こる、すなわち、物価体系が紊乱をするという事態は起こり得ない、こういうふうに考えております。  したがって、物価対策といたしてみると、第二の段階に入っておる。なるほど需給要因からの不安はないけれども、いま御指摘のように、コストが上がる要因というものがある。その最大のものは春闘であります。この影響が非常に大きいですね。それから、それほどではないけれども、電気料金の値上げの問題、これをどうしても来月ぐらいには片づけなけりゃならぬという事情に迫られておる。また、これはまだ最終的な結論はありませんけれども、いずれはこの私鉄運賃の値上げ問題というものも出てくるであろう、国鉄料金の引き上げもこれも予定されておる、米価の引き上げも予定されておる、こういうような状態です。  そういうコスト要因物価押し上げ圧力、これを物価に影響させずに、どういうふうに処理していくかということが、これから数カ月の間の重要な課題になるであろう、こういうふうに考えておるんですが、総需要抑制政策は、需給要因の解決に成功しつつあるわけでございまするけれども、また第二段階に入ったコスト要因の解消、物価引き上げへのコスト圧力、これへの対処策としてもまた中心的政策でなければならないと、こういうふうにいま考えておるんですが、この方策をとりますれば、総需要抑制政策による物価の下がり歩調、それとコスト要因による上がり歩調、それが相反する方向に動くわけです。その二つの平行線というものがどの辺で調和されますか、その辺が新しい価格水準、新価格体系ということになってくるだろうと、こういうふうに考えておるのであります。  とにかく、需給要因というものに対する施策は私は大体成功しておる、そこで再び狂乱は起こらない、こういうふうに考えておりますが、これからコスト要因をどういうふうにうまく総需要抑制政策下において鎮圧していくか、私は、昨年のような混乱が起こるとは考えません。まあ何とかなだらかに解決したい、かように考えております。
  80. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 新しい価格体系、いま政府は、このことばを盛んにPRをされておるようでございます。ということは、いまも大臣がお答えになりましたが、結局は、昨年末からこの石油の値上げがあった、それに伴っていろんな諸物価の便乗値上げというようなものがあって、物価が混乱をしたと。それから、金融引き締めのもとに政府の行政指導、あるいは法に基づく標準価格、そういうようなものの設定で一応は需給の関係だけは落ちついたと、こういうふうに理解をいたしました。ですから、これは物価は落ちついたということだけであって、何も安くなったとかいうことでもない。一応高値で安定したと。しかし、かりにここまでを物価値上げの第一波と、こういうふうに考えますと、これから、いま大臣がおっしゃったようなコストプッシュによって電力料金の値上げ幅、これも申請等を見ておりますと、かなり高いようでございますし、電力は七、八割、そのほか運賃等もこれに伴って二、三〇%上がるような気配もございますし、あるいは私鉄の運賃、民営トラックの運賃と、そういうことになります。それをいま大臣は、そういう値上がりをこれからも認めざるを得ないというような発言でありますね。それがいつになるか、その辺がこの物価にどのように波及していくのか、つまり、これを物価値上げの第二波と、こういうふうに理解しますと、大体どういうことですか。第二波の値上げが終わったような時点が新しい物価体系である、こういうふうに理解してよろしいんですか。
  81. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあコスト要因は次々あります。同時に、総需要抑制政策、これで物価は下降傾向をたどる、そこで、その上がり傾向と下がり傾向がどの辺で調和しますか、また、その時期はどうなりますか、これは私は数カ月後以降の問題じゃないかと、こういうふうに思います。ただ、どの辺で物価がどういうふうになるかという見当は、もう夏ごろになれば大体見当はつけるんじゃないか。と申しますのは、コスト要因という中で、賃金のほうはかなりのこれは圧力になってきます。電力料金になりますと、いま申請が出ているあの大幅なものでありましても、卸売り物価に対する影響は一%だ、消費者物価に対する影響は〇・三%だと、こう言う。米を、いま予算案について説明したあの線で引き上げをいたすといたした場合に、どのくらいの消費者物価への圧力になるか、〇・四ぐらいだ、こう言う。それから国鉄の料金を引き上げる、これがやはり同じく〇・四である、こう言う。ですから、これはこれから総需要引き締め、水抜き——水ぶくれ物価の水抜き工作をずって続けていく、こういうことになりますが、私は、そう大きな影響はなしに収拾し得るのではあるまいか。いまそういう種類のもので最後に予定されておるのが、国鉄運賃と消費者米価、この二つですが、これが十一月一日の時点前後で行なわれると、こういうことになる。まあその辺へいきますれば、これからの物価水準は一体どうなるんだということがかなりはっきり読めてくる、こういうふうに思います。ただしかし、そのあと物価は横ばいで行くのかというと、そうじゃありません。これは海外要因というものがある。これだけは私は何ともなしがたいと思うんです。しかし、いやしくも国内要因物価を乱るというような事態は、それ以外においては起こしたくないし、また起こさないで済むようになし得ると、こういうふうに考えております。
  82. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、いわゆる新価格体系物価が一応高値で落ちついたと。そうしますと、いまも少しおっしゃいましたけれども、現在の三月の物価水準、それから、これから予想される新物価体系がほぼ落ちついたころの物価水準とどの程度これ値上がりをするのか。それが一つ。  それから、それがことしの経済見通し物価九・八%、これに織り込まれておるのかどうか。その辺まずお伺いします。
  83. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) どうも九・八%という四十九年度の見通しは、三月の物価の動きを見てみると、非常にこれはむ、ずかしいことになってきていると思います。しかし、それにしてもあの経済見通しでは昭和四十九年度、つまり四十九年の四月から昭和五十年の三月までのこの十二カ月間ですね。この上がりは非常に低く見ておるんです。非常に低く見ておりまして、卸売り物価につきましては四・八であります。それから消費者物価につきましては五・二と、こういうふうに見ておるわけでございます。私は、この年間の物価の推移というもの、これにつきましては、経済見通しというものは大体この辺でいくんじゃあるまいか、そういうふうに見ておるのであります。努力すればその辺で収拾し得るのではあるまいかと、そういうふうに考えております。全力を尽くしてそれを実現すると、むしろそれをさらに割り込むというところまで持っていきたいと、こういうふうに考えておるわけです。それから、新しい物価水準というものが一体どの辺になるのかということにつきましては、これは下がっていく傾向と上がっていく傾向、その調整点がどこになるかと、下がり傾向が強くなるのか、上がり傾向が強く出るのか、ちょっとこれは見当がつかないんですが、私は現在の物価水準、それをそう離れることはないんじゃないか。いずれにしても、いま的確にこれを判断するというには、あまりに流動的な現実であると、こういうふうに見ております。
  84. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ、金融問題についてお伺いしますが、これは大蔵大臣並びに日銀総裁にお伺いします。  物価上昇の対策といたしまして、いままでおっしゃったような総需要抑制政策、これがとられたわけですが、金融面におきましてはきびしい引き締めが行なわれておる。その金融引き締めは一年三カ月の長期にわたって続けられておって、きびしい日銀の窓口指導、あるいは大蔵省の選別規制によって、主要企業の手元流動性も四−六月期にはもう〇・八四カ月分へと低下をしそうでありますし、三十七年九月以来十一年ぶりの低水準が見込まれておる。また、中小企業の倒産も最近は非常にふえて、千件以上こえておる、さらに今後も激増しそうであると、こういうように予測されるわけですが、そこで、政策の運用はここに至って非常に重大な場面を迎えておるように思われるわけです。はたしてこの景気の冷え込み、オーバーキルを回避して、真に安定的な正常値を全うするにはどのような政策の展開をしようとするのか。この点具体的に明示をされたいと思います。現在のような物価上昇のさなかにおきまして、企業経営者、特に中小企業の経営者にとっては、現在のような景気状態や金繰りの混乱がいつまで続くのか、政府が今後どのような政策をとろうとしているのか、これは企業の存廃をかけて前途を見きわめようとしているわけですね。非常に力の弱い中小企業は神経過敏になっておりますし、政策当事者である大蔵大臣、日銀総裁にその所見を伺いたいと思います。
  85. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政策がだんだん浸透してまいりまして、景気は沈滞の傾向をたどりつつあるわけです。それで、おそらく四−六にはもっと沈滞の色を深くすると、こういうふうに見ております。その間、中小企業問題というものを常に私は注視しておりますが、わりあいに予測よりは、中小企業状態もそう大きな混乱なしに今日まで推移してきておる。三月には倒産件数が千件の大台をこえるということになったわけでありますが、四−六になりますと、これは中小企業問題というのはかなり深刻になってくるのじゃないか、そういうふうに見ておるわけであります。そういう事態に対しましては、金融面からは四十九年度予算におきましても、三機関の融資を大幅に増額するとか、あるいは無担保、無保証融資の融資幅を拡大するとか、あるいは信用保証の機能を強化するとか、いろいろの施策をとっております。また、市中金融機関のほうでは、自発的に三千二百億円をイヤマークいたしまして、そうして中小企業の緊急時の所用に充てようというかまえをとるとか、かなり手厚い対策をとっておるんです。  ただ、そういう政策はとりまするけれども、総需要引き締め、つまり財政は緊縮に、また、金融は詰める、そういう政策につきましては、これは当面微動だもさせない、そういうかまえでいこうと思っております。とにかく、これだけ混乱した物価を尋常に戻そうと、こういうわけでございまするから、これはなまはんかな施策では片づかない、やっぱり、かなりきびしい試練を経て初めてこの問題は解決し得ると、こういうふうに考えておるのでありまして、それによる摩擦現象、これは出てくる、出てくるくらいこの方策はきびしくなければならぬ、こういうふうに考えており、その出てくる現象に対しましては対策はとります。とりまするけれども、基調といたしまして総需要抑制政策、これは寸分ゆるめることはない、状況によってはあるいはむしろ強化しなければならぬということさえ考えられる。そのくらいの気持ちでこれから対処していきたいというふうに考えております。
  86. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま私どもは、金融政策の基調といたしましては、物価抑制ということを第一の目標といたしております。したがって、総需要抑制のために、現在の引き締め基調を堅持するというふうに考えております。ただいま御指摘がございましたように、引き締めを始めましてすでに一年三カ月以上たってきておりますので、あちらこちらにいろいろ問題が生じておることは、私どもも非常に警戒して見ておるのでございます。今週の初めから私どもも支店長会議をやりまして、各方面の事情などを聴取いたしたのでありますが、確かに二月、三月を境といたしまして経済の需給関係、こういうものは非常に落ちついてきております。ただ、各支店長からほとんど同様に報告がありましたのは、やはりインフレマインドと申しますか、やがてまた物の値段が上がるんじゃないかと、そういうことで、いまは苦しいけれども、その先は何とか値上げによってやり繰りをするといったような考え方が非常に強いようでございまして、いまの引き締めのおもしをはずしますと、また値上げムードというものが広がってくるおそれがございます。したがって、私どもとしては、繰り返しになりますが、当分の間、いまの政策を緊持してまいらなければいけないと考えております。  ただ、倒産の増加などにつきましては、もちろん十分注意しておりますし、倒産の原因などにつきましても、個別にそれぞれ具体的な調査をいたしております。ただいままでのところ多いのは、やはり景気がよかった時代に、金がある程度ありましたので、それで商売違いの不動産を買ってみたり何かしたのが相当ございますし、ほんとうに堅実な経営を続けておるものが、たとえば資金難ということだけで倒産という事例はほとんど見当たりませんし、それからまた、他に非常に大きな影響を与えるような、そういうものの倒産も現在のところは出ておりません。中小企業は、この二、三年来相当経済基盤を強くしてきておりますし、それからまた、昨年中に相当利益を上、げたものも少なくございません。そういう意味から申しまして、一時よりは意外に抵抗力が強くなってきておるような感じでございます。ことしの二月に私どものほうでいたしました、これは三カ月ごとにやっておる調査でございますが、中小企業の手元流動性などは、大企業よりも少し高目になっておるというような状態でございます。しかし、具体的に、中小企業についてはしょっちゅういろいろなルートから事情を調べておりまして、私のほうは、支店長が各地で財務局長、通産局長などと一緒に中小企業金融連絡協議会というものをつくっておりまして、そういうところでも具体的な問題を取り上げて、絶えず実情の把握につとめておるわけでございます。  それからまた、私どものほうの金融の運びにおきましても、たとえば預金準備率をたびたび引き上げましたが、そのときにも、中小金融機関はできるだけ引き上げないで置いておくとか、あるいは窓口指導にあたりましても、貸し出しの抑制率を、中小企業金融機関には多少ゆるやかにするといったような具体的な配慮もいたしておるわけでありまして、今後も私どもは、引き締めの大筋は堅持しなきゃならないと思っておりますが、個々の事態に対しては具体的な適応策を講じてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  87. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ、日銀総裁に再度お伺いしますけれども、この日銀の四−六月期の窓口指導ですね、窓口規制につきましていろいろと新聞等にも報道されておるようでありまするが、都銀、長銀、信託銀行について、一−三月期並みの貸し出しワクの規制を行なうことが出ております。また、最近では地方銀行、相互銀行も四−六月期は都市銀行並みの強い引き締め基調と、こういうことが伝えられておるわけでありますが、具体的には数字も出ておるようです。これは、都市銀行十三行で貸し出しの増加額は八千四百億円、前年の同期比一五・七%、これは減ですか。長銀三行で二千四百億円の増、八・三%。信託銀行七、三千百億、一四%。地銀六十三行、四千三百億、一一%。相銀六十七、これは日銀の取り引きのあるもの二千七百五十億、四%減と、信用金庫は出ておりませんが、こういうふうに出ておりますが、これは、日銀といたしましては大体これでよろしいんですか、それともこういうものを一むしろ私は、公表してもいいんじゃないかと思う。何もこそこそやる必要もないし、これからどういうような金融政策で金融当局は臨むのか、これはやっぱり国民も注目をしておりますからね、この点いかがですか。
  88. 佐々木直

    参考人佐々木直君) いま、御指摘がありました数字はそのとおりでございまして、実は正確にその数字には間違いございません。ただ、まあこそこそやるとかいうことでございますけれども、こういう問題は、個々の銀行に対して幾らというふうに申し渡すわけでございまして、実はその総額というものは、これは個々の金融機関としては、総額の中で自分たちがどれぐらいあるかということを非常に重大な関心事としておりますから、そういう意味では総額が問題であろうと思いますけれども、そういう意味で、私どものこういう窓口の指導のしかたは、個々の金融機関に、たとえば四−六にはこれぐらいの見当で融資をしてほしいというお話をしておる。それでまた、個々の銀行の金繰りもその前にあらかじめずいぶんいろいろこまかく聞いて、その上の決定ということになっておるわけでございまして、したがって、たとえば準備預金の率を二%上げるといったような、そういう政策上の数字の出し方と性格が違うものでございますので、個々に申し渡しておる、それが結局は、みんないろいろお互いが横に連絡をとって総額が出るということになっておりまして、私どもといたしましては、まず総額を発表して中の割り振りをきめていくという性格のものではないので、運びが現状のようなふうになっておるのだと、それでやっぱり個々にお話をすることが、個々の銀行の貸し出しの増加額でございますので、現状のやり方が適当であると、こういうふうに考える次第でございます。
  89. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、個々の銀行でふえる場合もあり、減る場合もあると、こういうように理解していいですか。
  90. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 大体の傾向は、同じ方向でやっておりまして、いまのような状態でございますと、前年同期の増加額に比べまして総体としても減っておりますし、それから、各銀行でもふえるという銀行はございません。ただ、減る方向でやっております。
  91. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは、大蔵大臣にちょっとお伺いしますが、重々御存じでございましょうが、物価対策の面だけとらえていきますと、それは引き締めざるを得ない、引き締めの強化ということも一応はうなずけるわけでございますけれども、最近の物価というのは、海外要因等もかなり影響いたしております。輸入原材料のコスト高、そういうものですね。したがって、需給以外の要因が相当なウエートを占めておる場合もあるので、ただ、財政金融の抑制というだけで物価安定ということはむずかしいんじゃないか、こういうように思うのですが、その辺いかがですか。
  92. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまの状態国民の期待するような方向に誘導していくと、こういうことは、ほんとうにこれは容易なことじゃないと思うんです。しかし、結局私は、先ほど申し上げましたが、これは総需要抑制政策財政金融がしんであるということがかなめでなきゃならぬ、それから同時に、これはそればかりじゃいけないのでありまして、いわゆる生活三法を適時に運用いたしますとか、あるいは自由競争ということで公正取引法、これの運用を誤らないようにやっていくとか、いろんな補助的な手はあると思うのです。しかし、かなめというか、基本になるものは、やはりこれは総需要抑制政策ということになってくるんじゃないか、つまり財政、金融、この二つを中心とする施策だということではないか、そういうふうに考えております。
  93. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いま私が聞きたいのは、物価安定ということが至上命令ということで、政府もそれに総力をあげているわけですけれども、その安定ということで、物価が安定するまで、それじゃ、まあ当分の間は引き締めを強行していく、こうなりますと、金融政策の転換というのは一体どの辺なんだろう、物価が安定してからのこれからぼちぼち腰を上げようというようなことになれば、これは一体物価の安定はいつなんだと、そういうことになるわけですがね。ところが、物価の安定というものが先ほどからお話がありますように、これからまだ、需給の関係だけは一応おさまったようだけれども、今後はコストプッシュによってかなり突き上げがある、そして、将来は新価格体系というようなコースをたどっていくようになりますと、これから物価が安定するというようなのは、ずっと先の話ですわ。それまで基調としては引き締めをしていく、その間にかなりばたばたと倒産が出てくるのじゃないか、こういうような気配もするのですが、それでお伺いしておるわけですね。その辺いかがですか。
  94. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私が申し上げておることは、多少摩擦も出てくるだろう。しかし、この摩擦現象をおそれておったらいまの物価問題は克服できない。物価問題を克服するためには財政、金融を通ずる総需要抑制政策、これをとっていかなければならぬ。もちろん私は、摩擦現象が起きたらその摩擦をどういうふうに緩和し、解消するかということにつきましては、局部的な手法というものを、これはもうもちろん考えています。しかし、だからといって全体の抑制基調をゆるめることであっては相ならぬ、こういうことに考えておりますが、私は、総需要抑制政策というのは、これはちょっとやそっとでは解除はできないと思うのです。物価が安定いたしましたという時点になりますれば、もう日本経済には何も混乱のあと傷は残らないのかというと、そうじゃないのです。国際収支という問題がある。この問題はまた相当大きな問題です。そういう国際収支対策を考えましても、これは総需要抑制政策というものが主軸でなければならぬ、こういう意味でありますから、それは抑制政策の手綱の引き締め方、ゆるめ方、これはありますよ。これは物価がもう安定して、あと国際収支の問題だけになりましたというような時点におきまして、また硬直した今日の姿勢というものを続けるという、そういうことはないのですが、姿勢としては、考え方としては、総需要抑制政策というものはやはり物価国際収支でしょう、この辺で見通しがつきました、そういう時点まではこれはとり続けていかなければならぬ。もとより緩急ということはある、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  95. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ大蔵、日銀両当局に聞きますけれども、最近の物価は、御存じのとおり、景気、不景気にかかわらずこれは上がっていますね。そういう傾向がこれは多分にあるわけです。ですから、私もいろいろとそういうような質問もしておるわけですけれども、物価安定、物価安定、それはけっこうですよ、それはやらなければならぬですが、景気、不景気にかかわらずかなりやはり物価は上がっていく傾向が十分あります。そうしますと、いままでの答弁をお伺いしますと、それは当分引き締めの基調には、これは変わりはないというようなことですけれども、そうすると、これからの景気の動向といいますか、端的に言いますと、かなり不景気の中で物価だけは上がっていく、つまり不景気物価高ですか、大蔵大臣は、こういうことばはきらうかもしれませんが、スタグフレーションといいますか、そういうふうな方向をたどっていくように思いますが、その辺はいかがですか。
  96. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 過渡的にはあるいはそういうことがあるかもしれないのです。つまり、これから数カ月の間コストを上げる要因が続くと。一方、マイナスの要因としまして、マイナスというか物価が下がる要因といたしまして総需要抑制政策がしみ通っていく、こういうこと、その間におきまして、どうしたって総需要抑制ですから、景気は沈滞ですから不景気です。そういう中において物価が一体どういう状態になるか、こう言いますと、とにかく二十数%というような賃上げ、これが一体どういう作用をするか、総需要抑制政策で全部吸収し切れるかどうか、吸収し切れるということになりますれば、そういう賃上げがあってもさしたることはないわけでありますが、吸収し切れないというと、プラスマイナス総決算して、あるいはプラスというか、物価上昇というような結論が出るか、あるいはマイナス、つまり、物価水準が下がるというような形になるか、その辺はちょっといま見当がつかないんです。ですから、そういう物価コスト要因の積み重ねによって上昇の要因をはらむという際におきまして、私は、確かに場合によっては、不況下で多少物価水準が上がったというような結果になるかもしれませんけれども、そのコスト上昇要因というものが解消されましたと、そういうあと状態は、私は物価はそう変動はしない。ただし、海外要因というものがあれば格別だ、こういうふうに見ておるのですが、まあたいへんな不況であります。しかし、物価がうんと上がりましたと、こういうような事態は、私としては想定いたしておりません。
  97. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 景気停滞というものの具体的な内容でございますけれども、たとえば、政府の四十九年度の見通しが、実質成長率二・五でございますが、これは欧米のレベルで見ますと、二・五という上昇率というものは、それほど低いものではございませんけれども、日本の場合にはいままでが高かったために、二・五というのが非常に低い感じがいたします。したがって、二・五という程度の上昇率をもって不況だともし定義されますならば、不況下における物価上昇ということは、四十九年度の物価がいまさっき話がありましたように、ある程度上昇が見込まれ、かつ、四十九年度へのいわゆるげたが相当大きい状態でありますので、そういうことだと、その程度の物価上昇ということと成長率と並べましてスタグフレーションと言うこともできるかと思います。しかしながら、日本の場合には、そういう事態がそういつまでも続くというふうには考えておりません。一時的にそういう現象が起こりましても、これはまたある程度時間がたちますれば、だんだん修正されていくのではないかというふうに考えております。
  98. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは、選別融資の問題ですが、これは現在どういうふうになっておるのか。それから、選別融資強化いうものはどういう方向へいくか、お伺いしたい。
  99. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは大蔵省で指導しておる面と、日本銀行が中心になって指導している面と両方あるのです。それで、日本銀行の中心になっている面につきましては、日本銀行総裁から申し上げることにいたしますが、大蔵省中心になっておるのは、大蔵省から各金融機関に通達を出しまして、そして、投機的な資金でありますとか、あるいは特に土地の融資につきまして、あるいは設備の新設、そういうような融資につきまして、あるいはその他不要不急の融資につきまして、これは抑制せられたいと、こういうふうにいたしております。それは、対象は民間の事業であることはもちろんでありまするけれども、民間の事業にとどまらず、地方公共団体の行なう事業についてもまたしかりと、こういうふうにいたしておるわけであります。これはかなり実績をあげつつあると、こういうふうに見ております。
  100. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 日本銀行がやっておりますやり方でございますが、大筋たとえばどういう業種に対して抑制をするか、どういう程度に抑制するかということにつきましては、ただいま大臣からお話がありました大蔵省からの通達、それが出されるときによく相談してきめていただいておりまして、それで、われわれは先ほどもお話がありましたような毎月毎月窓口指導の実績のトレース、その他こまかくいろいろ金融機関の話を聞いておりますので、そういう金融機関の実績の中でいまの選別融資の方針がどういうふうに生かされているか、それをトレースするというやり方で政策の浸透をはかっておる、こういう状態でございます。
  101. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いまの段階では、大体具体的にはどういうような業種になりますか。
  102. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 具体的にはというのは、数字でございますか。
  103. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 大体、業種。
  104. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 業種はちょっと、私こまかく……
  105. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 具体的には、現在、実はこの選別融資につきましては二度通達を出しておりまして、最初の通達にさらに加えまして二月の二十八日に出しました通達は、現在の銀行がすでに貸しております融資の中身も洗って、場合によっては回収できるものは回収するように、たとえば土地融資等について不要の融資をいたしておるものについては、回収できるかどうかというような具体的なものにまで立ち入っての見直しをさせておりますので、これは各金融機関とも現在、事後の、やっております融資の実態を見直しをやっておるという段階でございます。と同時に、大蔵省といたしまして、この三月からやはり同じように銀行に対する特別調査というのを始めております。これは、四月現在まだ目下各銀行を調べておるわけでございますが、これと相まって、五月の中旬以降に大体結果が出てくるという状況でございます。
  106. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは、これは少し議題が違いますけれども、三月の上旬でありましたか、大蔵省が金融機関の融資、特に大手企業への大口融資の実態調査、これを行なっておるわけでありますが、大手十一銀行並びに百二十三の企業、これは、最終的にその結果はいつごろ判明するのか、それから、現在までのところの調査の概要が明らかになっておるのか、それから、その結果に基づいてどのような政策をおとりになるのか、その点ひとつお伺いします。
  107. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 御指摘の調査は、現在ちょうど最盛期でございまして、各金融機関の対象を一応きめまして、これは調査の前にあらかじめどういうことについてこちらから調査をするからということで、かなり能率をあげますために、資料等を送りまして、その資料基づいたものによって銀行に準備をさせております。ねらいといたしますのは、従来から金融機関を通じて聞いておりましたことにつきましては、たとえば金融機関は商社の融資については、商社の資金繰りだけ、しりだけを見ているというようなことではなくて、むしろその資金の内容についてまで立ち入て調べるようにというようなこまかい指示が入っております。そういうようなことで、現在そういう指示に従って銀行が用意いたしております銀行の融資状況について、目下まだ調査を続行中でございます。したがいまして、これが集計が終わりまするのは、どうしましても五月に入ってからということで、先ほど申し上げましたように、まだ、集計いたしてからの作業もかなりございますので、いつごろになったら終わるかということは正確には申し上げられませんけれども、大体五月中旬、半ば過ぎぐらいをめどに考えております。
  108. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ次に入りまして、いろいろと聞きたいことがありますが、時間がありませんので。  金融政策に対する、これは大蔵省と日銀との関係につきましてお伺いをしたいと思いますが、金融政策に関しては、しばしば大蔵省と日銀の両者におかれまして、それぞれ異なる発言内容と受け取れるようなものもあったやに思われるわけであります、きょうの問題は別として。国民の側から見てみますると、一体、金融政策の中枢はどうなっているのか、二つあるようなふうに錯覚を起こしやすい場面もあって、非常に戸惑いを感ずるようなこともあるわけであります。また、昨年からの引き締め政策を見てみましても、公定歩合の引き上げ時期が非常に大幅におくれたじゃないかと、これはだれでも認めておるような議論でありますが、政府・自民党が一昨年の衆議院選挙対策等も考慮したのか知りませんけれども、経済政策の転換が非常におくれて金融対策等も後手後手になったと、こういうふうにわれわれも言っておるわけですけれども、日銀と大蔵省の金融政策の権限に対する基本的な考え方、これをこの際に大蔵大臣と日銀総裁に承っておきたいと思うわけであります。
  109. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 金融政策と申しましても、ずいぶん幅が広いのでございまして、公定歩合の操作、それから預金準備率の上げ下げ、それから窓口指導の決定とその実行と、こういうようなことは日本銀行が中心でやっておりまして、公定歩合の問題は政策委員会決定でございます。それから預金準備率の操作は、これは大蔵大臣の承認が必要でありますが、日本銀行が発議してやっておるのであります。そういうことで、私どもは日本銀行としての決定、権限をちゃんと守ってきておるのでありまして、ただ、いまのような経済政策、それから特に管理通貨制度のもとにおきましては、金融だけで問題を考えてまいるわけにはなかなかまいりません。したがいまして、絶えず大蔵省とは現状判断、それからそれに対して金融財政の面でどういうふうに考えていくかというようなことについては一緒に勉強し、連絡もとっておるわけでございまして、こういう点で両者の食い違いがあったというふうには考えておりません。ただ、新聞などにときどき違うような記事が出て、それが何か非常にこう差があるようにお受け取りになることがあるかと思いますが、少なくとも正式に発表いたしますものについて、そういうそごがあったということは私は記憶いたしておりません。
  110. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大蔵省は、国の財務を統括する、すなわち財政、金融、そういう問題につきまして包括的な行政を行なうわけであります。そこで、日本銀行の行なう業務もこれと密接なる関係がある。これは日本銀行法によってきめられておる任務を執行するということになりますが、これは私は、日本銀行は中立性というものを尊重されなければならないと、こういうふうには存じます。しかし同時に、これが国の包括的な財政、金融運営とかけ離れてということは、これは妥当ではない、やっぱり車の両輪というか、そういう形において通貨価値の安定、そういうものを実現していく、こういうことでなければならぬ、こういうふうに思います。私は、日本銀行の自主性を極力尊重します、しかし同時に、緊密なる連絡、協調をとるということで、与えられた両者の使命を実現をするということに努力したい、かように考えております。
  111. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 これは参考に聞きますが、外国の中央銀行等はどうなっておりますか。
  112. 佐々木直

    参考人佐々木直君) やはり国によりまして、政府と中央銀行の関係には多少の差がございます。たとえば、イギリスなどは第二次大戦後だいぶ姿が変わりまして、たとえば公定歩合の——これはいまちょっとイギリスは公定歩合の制度が変わって、ミニマム・レンディング・レート・システムということになっておりますが、日本とちょっと形が違いますが、イギリスの場合には、中央銀行が金融政策の変更を発表いたしますときに、大蔵大臣の口から発表されるようなこともありますし、それから中央銀行——英蘭銀行が発表しますときに、大蔵大臣の承認を得てというようなことばをわざわざつける例もございます。それからまた、西ドイツの場合などは、中央銀行と政府の間がわりあいに離れておるといいますか、両方が自主性を持っておるという感じがいたします。しかしながら、先ほども申し上げましたように、とにかくある程度の経済成長を目標にし、かつまた、完全雇用を経済運営の非常に大事な目的とするというようないまの経済運営の中では、中央銀行と政府の関係というものは非常に密接になってきつつある、昔の金本位時代に比べますと、非常に関係が密接になってきておるということは申し上げられると思います。
  113. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 じゃ、大蔵大臣にお伺いしますが、いま日銀は中立でなけりゃならぬとおっしゃったわけですけれども、日銀の独立性ということにつきましてはどういうお考えですか。大蔵、日銀両当局非常に密接な関係ございましょうけれども、あまり密接になり過ぎては、また変なふうになるという弊害もございますけれども、その点等も踏まえてどういうような御意見なのか、これは大臣にお伺いしましょう。
  114. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、日本銀行は与えられた任務を執行する面におきましては、極力これは中立という立場であってほしい、それを尊重したいと思うんです。しかし同時に、日本銀行の行なう金融政策というものが、国の目ざす方向とかけ離れて動いておるというのじゃまた困る、こういうふうに思います。したがって、日本銀行が自主的な金融調整を行なう、こういうことに対しましては、自主的な立場ではあるけれども、国の施策というものがどういう方向に動いておるかということを十分に洞察して、懸命なる判断をしつつ対処してもらいたい。とにかく自主と協調というのですから、二律相反するわけです。それをうまくやっていくところに運用の妙というものがあるのだと、その妙を発揮してもらいたい、発揮していきたい、これが私の念願でございます。
  115. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは、日銀はいまのままでよろしいとおっしゃるわけですか。それとも、何か日銀法というものを改正する必要がある、改正すればどういうようなところを改正をされるのか、その辺の御意見をちょっとお伺いしておきましょう。御両人。
  116. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 現在、日本銀行がその業務を運営してまいります上において、いまの日本銀行法が非常に都合が悪いということはございません。いまの条文の中で十分仕事はやっていけるわけであります。ただ、たびたび指摘されておりますように、現在の日本銀行法が昭和十七年、戦争が始まりました年にできておりますだけに、ことばの点その他において現在では必ずしも適当でない面がありますので、機会がありましたときにこれを新しい姿に直していくということはけっこうだと思いますけれども、現実の仕事の運営上どうしても直さなきゃならぬという点はございません。
  117. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 総裁の申されたような次第です。いま金融政策を推進するという上において、日銀法に何らか支障がある、こういうふうなことはございませんです。ただ、何ぶんにも戦時中の立法でございます。もう国をあげて軍事目的に奉仕するという、そのころにできた法案でございますから、随所にそういう色彩が出ておる。ことに日本銀行の使命、任務、そういうものを書いた第一条、第二条なんというのには、非常に一般的にそういうものが出てきておりますが、とにかく戦後の新しいわが国の体制のもとに、いつの日にかはこれは書き直す必要がある問題である、さように考えております。当面何ら必要はございません。
  118. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 どうもお二人、仲のいい発言をしているようですけれども、これは何回も議題にのぼった、議論されておるところでございますけれども、確かに日銀法によりますと、政策委員会によりまして基本的な運営を決定する、こういう点から考えますと、自主性といいますか、独立性というか、そういう点もあるように思うわけですけれども、やはりこれはいま日本は政党政治でございまして、大蔵大臣は自由民主党の党籍もある。したがって、この辺のところが中立でなければならぬけれども、どういう表現をしていいんですかな、党サイドの方向に持っていかれるようなこともあるように私は心配をするわけです。そういう点が問題にもなるわけでして……。  それと、なお法律の中身につきましても、昭和十七年につくられた古い法律であると、これはいまおっしゃったわけですけれども、国債の問題を取り上げましても、第二十二条の二項には、「日本銀行ハ国債ノ応募又ハ引受ヲ為スコトヲ得」と、こうなっているのですね。ところが、財政法第五条になりますと、国債の日銀引き受けの禁止、こういう規定があるわけでありまして、これは明らかに相反しているんじゃないかというようなことも考えられるのですね。そういうようなことで、当然これは日銀法の改正というものは早急にやってもいいんじゃないかと、改正の内容は、まあとにかく検討されればよろしいんですけれども、と思うんですが、その点いかがですか。
  119. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この日銀法問題というのは、改正せぬでも別に実害を感ずるというような問題ではないんであります。したがって、いつの日にか整理をする必要があると、こういうふうには考えておりますけれども、そのいつの日にかというのはよほどまあ天下太平の御代であって、そして、精力をそういうほうにさいても支障のない、そういう時期だと思うんですよ。まあ、日銀法の改正ともなれば、これは特に国会では大蔵委員会あたりは相当大きな問題になるわけなんです。その前提としては、大蔵省としてもこれは総力をあげて取り組まなければならぬ。日銀もまたしかり。実害のない問題にそれだけの精力を注ぐいま余裕があるかというと、そういう余裕はありません。いまはもう物価抑制と、こういうことで精一ぱいでありまするから、それが片づいたら、今度は国際収支を直さなければいかぬ、それが済んだら今度は新しい国づくりの方向を打ち出さなきゃいかぬ、まあ難問が次々と山積しておるんです。そういう問題が全部片づいて幾らかすきができたなと、こういう時期に取り上げらるべき問題だろうと、こういうふうに考えております。
  120. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですけれども、私がいま申し上げたように、国債の問題、これは、財政法と日銀法はこれは相反しているんじゃないか、こういったようなこともあるわけですからね。それはまあさしあたって痛痒を感じないと、こういうような答弁だったのですが、その点いかがです。
  121. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) と申しますのは、これはそういう財政法規定がありましても、そのとおりにいたしております。つまり、日本銀行は国債の引き受けはいたしておりませんです。それでもう十分じゃないか。
  122. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 してもいいといっているんですよ、日銀のほうは。
  123. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただ、してもいいという、そういう規定があるが、それを直せという話でございますが、直さぬでも、引き受けはいたしませんと、こういう方針でやっておりますので、そういう条文の整理的なことは、これはまあ天下太平になってからのことでいいじゃないかというのが私の考えでございます。
  124. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 あなた、物価がどうの、総需要がどうの、忙しからそんなものはあとでいいと、そういう答弁はあまり適切でないと思いますよ。これはもういろいろと条文の字体から非常に古い用語を使ってあるし、当然これは検討されていい問題だと思うんです。ですから、ある時期に来たら大蔵大臣はやってもいいというような御答弁でしたけれども、どういうところを改正の焦点に考えていらっしゃいますか。
  125. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、やはり日本銀行の任務ということを、これをはっきりさせる必要があるだろうと思うんです。つまり、これは国家目的に奉仕すると、こういうことが中心になった日本銀行法です。ですから、いまの国債の問題につきましても、これは引き受け機関だと、こういうような考え方になってくるわけです。ですから、やはり日本銀行は、他の先進諸国の多くの中央銀行同様に、これは通貨価値の安定が日本銀行の任務だと、こういうことを明らかに打ち出し、そういう思想の中で、その思想とたがうもろもろの案件を、案件というか、もろもろの条項を改正していくと、こういうことだろうと思います。日本銀行の任務というものをどういうふうにとらえるか、そういうところが中心課題になってくると、かように考えております。
  126. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 じゃ、時間がありませんので、次に参りましょう。  それから、最近問題になっております商社等への大口融資、不動産融資の規制が法律上何ら規定もないという点について、当然の方向として考えられておるわけですけれども、これは中小金融機関——相銀とか信金に対しましては、御承知のとおり、一つ企業に対しましては自己資本の二〇%以内の額に融資を押えてある、こういうことになっているのですが、これは都市銀行等は制限が全然ないわけですね。ですから、その辺のところは改正をするような考えはないのかどうか、その辺はいかがですか。
  127. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 最近の経済混乱の経験にかんがみまして、やはり大口融資問題につきましては、何らか考うべきだというふうに考えております。金融行政という立場から見ましても、とにかく集まる預金、これはなるべく多くの人に貸し出される、つまり、利用していただくということになることが好ましいし、また同時に、貸し出しが集中して行なわれますというときには、対象企業が倒産だというような事態が起こった場合に、金融機関に重大な影響を及ぼすということにもなる。そのようなこともまた考えますときに、一企業に集中融資をするということにつきましては、何らかの規制を必要とするというふうに考えまして、それでどんな仕組みがいいだろうか、これは各国の中では、規制している国もあり、規制しておらぬ国もありますが、規制をいたしておる国の中の多くは、これは資本金の二十倍の貸し出しを限度とするというようなことになっております。  わが国においてそれがいいかどうか、まあいずれにいたしましても、これは金融制度調査会がありますので、金融制度調査会にその規制をしてみたいと思うが、どんな方式を可とするであろうかというようなことを諮問してみたいと、こういうふうに考えておるんです。この規制という問題は、言うはやすいが行なうはなかなかがたい。というのは、規制の仕方にもよるんでありましょうけれども、まあ分散して融資を受けると、こういうような傾向になってくるわけです。そういう弊害がある。それからまた、ひいては貸し出し競争というようなことにもなりかねない。そういうようなことで、非常に金融の効率を妨げるというような一面があるわけであります。そういうようなことを考えると、これはやはりよほど慎重にやったほうがよかろうというので、まあひとつ金融制度調査会あたりの各位の御意見もよく伺った上結論を出したほうがよかろうかと、こういうふうにいま考えておるわけであります。
  128. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから、これも本会議等でも議論があったところですけれども、インフレによるところの預貯金の目減りのことですね。これは、最近のように物価がどんどん上がっておったのでは、まじめなサラリーマン、年金受給者等の預金あるいは貯金、こういうものの金利がいまの状態では実質的にはだんだん減っていくと、こういうことでいろいろと社会的な問題までも出てきておるようであります。四十八年三月、日銀の資金循環勘定による個人の預貯金額、これは六十二兆一千六百八十二億円、これが本年三月には対前年同月比二一・六%の消費者物価上昇により、実質額では五十一兆一千二百五十六億円となり、十一兆四百二十六億円の目減りが生じた、こういうことになっておるわけです。  大蔵大臣も何べんも聞いていらっしゃると思いますが、こういった問題に対してどうお考えになっていらっしゃるのか。やっぱりああいうのは優遇をしないと、貯金したってしょうがないじゃないか、こういうふうになって、大臣がおっしゃる総需要抑制の面からも非常にこれはぐあいが悪い、こう考えているのですがね。予算委員会も終わりましたし、この辺で大蔵大臣の腹のうちを御答弁いただいて、少しは前向きの御答弁があってもよろしいんじゃないか、こういうふうに思うんですがいかがですか。
  129. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 目減り問題は、国会でも各党からずいぶん熱心に御鞭撻を受けておるわけでありますが、これはいろいろ考えてみまするけれども、対策は、これはもうインフレを即刻やめると、これ以外に私はないと思います。そうは申しまするけれども、それには多少の間がある。その間を持たせなきゃならぬ、こういう問題もあることは私もよく承知しております。したがって、二けたの貯金金利にせいというような議論もありますが、それはまあとうてい考えられません。そんなようなことをしたら、わが国の金利水準というのはずっと上がってしまいます。そして、また同時に、それはこの物価対策上から見て非常に好ましくない結果になるし、また、国際収支の面から見ましても、これはわが国のような資源のない国といたしますと、外国から資源を買って、そして海外に加工して輸出をしなきゃならぬ、そういう対外競争上非常に弱い立場になる。そういうようなことを考えますと、それはそう金利水準を動かすような、そういう大幅な金利引き上げ、貯金金利の引き上げということはこれはできません。ただ、その金利水準という問題まで波及しない範囲内において何か手はないかということ、それは慎重にいま考えております。  いま割り増し金つき定期預金というものを売り出しておるわけなんですが、これは皆さんからずいぶん評判が悪かったんですが、やってみますと、なかなか国民の皆さんのほうからは評判がいいんでありまして、大蔵省が予定いたしました額なんかじゃとても満足しない。二倍も三倍も出せと、こういうようないま態勢でございます。それがいま売られておるというような時節でありますので、いま新しい貯蓄手段を打ち出すということはいかがかと、こういうふうに思っておりますが、六月には、たまたま暮れに設定いたしました六カ月定期も満期になるときが来るわけであります。その機会に、ちょうどボーナス期にも当たりますので、これは何か新しい貯蓄手段というものをくふうしてみたいなといま考えておりまして、その勉強をいたしておる最中でございます。
  130. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いま大臣がおっしゃった何かというのは、大体どういうようなことですか。
  131. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いままだ、ここで具体案をお示しいたすところまで来ておらないのですが、六カ月定期が終わるとまた六カ月定期を始めるかと、こういうことも一応考えますよ。しかし、それでいくということになりますれば、これは簡単でございますが、何かその辺にくふうの余地はないものかというので、日銀総裁にも何か知恵はありませんかといってお願いをしておる、そういう段階でありまして、いずれ六月のことでありまするから、もうしばらくお待ち願いたい、かように存じます。
  132. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 もう少し勤労者向けに、まじめな預金をしておるような人に対して何か私は与えてやらなきゃかわいそうだと思うのですよ。それはひとつ前向きで検討してみてください。  時間が来たようでありますので、最後に、大蔵大臣が盛んに国際収支のことを御心配のようでございますので、これは私が質疑で質問をいたしますので、大臣の御見解を承って終わりにいたします。  四十八年度のわが国の国際収支、それは総合収支で百三十五億ドル前後の赤字。これは米国の一九七二年度の百三十九億ドルの赤字に匹敵すると、こういうふうにもいわれておるわけですが、四十九年度は輸入の三〇%を占める原油価格が一バーレル当たり十ドルに上昇した。そういうものを考えて、四十九年度の貿易収支の黒字を縮小し、総合収支の赤字はさらに拡大するおそれがあるわけであります。そこで政府は、長期資本重視対策として、外債の発行、インパクトローンの導入の促進、海外不動産投資の抑制、原油輸入を抑制するための国内石油消費節約の推進、まあこういうような方針を立てられておるように聞いておるわけでありますが、貿易収支、貿易外収支、資本収支等、項目別に四十九年度の動向の見通し並びにその対策をどうおやりになるのか、大臣御心配のようでありますから、私は最後にそれをお伺いしましょう。
  133. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国際収支は、ほんとうにこれは心配なことでありまするが、そういう心配を固定化しちゃいかぬ。何としてもこれは安心のできるような状態にしなきゃならぬというので、鋭意努力をいたしておるんです。  とにかく、いま中尾さんが御指摘のように、昨年は百億ドルの赤字だと。暦年にいたしてそうなら、これを会計年度にすると百三十億ドルぐらいの赤字になる。これは基礎収支での赤字。まあ一月は二十億ドルの赤字、二月は十六億ドルの赤字、三月も十億ドルをこすであろう。まだ締めくくりはできておりませんけれども、そのような感じがいたします。この情勢をほっておきますと、これは物価という問題なら国内だけで苦しみ合えばということでありまするが、これは国際収支に破綻がくるということになると、日本まで引っくり返りますからね、非常に深刻な問題だと、こういうふうに思っております。  で、まず私は、ことし、昭和四十九年度はこの赤字を、四十八年度に出た赤字を半減する、こういう目標をもちましてやってみたい。そして、来年度はその半分になった赤字をさらにどのくらいまで減らしますと、そして、国際社会において日本の先々はこれは明るいのだという見方が出てくるようにいたしたい。そうなれば、円の価値にいたしましてもゆるぐことはないし、また、必要な資金につきましては、わが国は海外からも調達し得ると、こういう状態になるだろうと思いまして、計画的に赤字を解消し、そして収支のバランスをとる、これは一年じゃ片づきませんから三−五年ぐらいの期間、できれば三年と思いますが、その期間内にちゃんとその国際収支の混乱した状態を再建をいたしたいと、かように考えております。  それで、改善の第一の項目は何といっても貿易収支であります。これは、やはり非常にぐあいの悪いことになってきました根本的な原因は、石油の価格が暴騰したこと、これにあるわけであります。その他の要因といたしましては、景気が非常に高い高さで成長、発展したと、そういうことも作用し、したがって、設備投資、その他産業必要資材の輸入というものが多くなった。その多くなった中には石油も入るのですが、石油のほうはその量の増加に加えて、また、値段が四倍も高くなったという問題があるわけです。これを何とか改善していかなければならぬ。それには、従来輸出についてあまり関心はなかったんでありますが、輸出というものを重視しなきゃならぬ。しかし、輸出はこれを強化するということを人為的にやりますと、たとえば政府が援助するとか、そういうようなことをやりますと、これは国際ルール違反になります。そこで、やはりこの輸出を刺激する、また同時に、輸入を抑制ぎみに持っていくというためには、これは総需要抑制政策が必要になるんです。つまり経済が鎮静化すると、こういうことになりますれば、輸入資材は減ります。同時に、国内で売れないものですから、輸出しようという意欲が業界に高まってくると、これが一番のきめ手になるであろうと、こういうふうに考えております。したがって、この国際収支の面から見ましても総需要抑制政策はこれを進めていくと。  それからもう一つは、貿易外収支でございます。貿易外収支、これはこまかい点、いろいろ検討しなきゃならぬですが、たとえば昨年の動きを見ますと、海外旅行者が外貨をかえる、円を外貨にかえる、この海外旅費ですね、これが実に十二億ドルになる。そのほかにこれは見当はつきませんけれども、胴巻きに入れて旅行に出るという人もあるわけでありまして、その額がかなりのものになるだろうと、こういうふうに見るのであります。そういう方面に対しまして、そういうあまりにも多額な海外費用というものが何とかならぬかということもいろいろとくふうをいたしておるわけであります。たとえば、こまかいことでありまするけれども、持ち出しの外貨を、これを許可制にするとか、許可制の限度を非常に低くするとか、そういうようなことまでも考えておる次第でございまするし、また、運輸省に頼みましてチャーター便、団体旅行というものをなだらかにやっていただきますとか、そういうこともくふうしなきゃならぬ。  それから、量的には一番大きな問題は、これは何といっても長期資本の流出でございます。これは四十八年の水準のどうしても半分以下ぐらいには押えたい、こういうふうに考えておるのであります。いままでは、たとえば少のうございまするけれども、実需を伴なわない土地の買い入れ、つまり国内で買い占めが行なわれた、それを海外で行なうというような風潮まであったんですから。そのために長期資本が流出すると、こういうようなことになる。その長期資本につきましてかなり思い切った抑制をいたしたい。そして、総体といたしまして、大体国際収支上の基礎収支面の赤字、これを半分ぐらいのところまで本年度は改善をしたい、こういうのが基本的な考え方です。
  134. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 これで終わりますが、いろいろお伺いしましたが、若干気になる点もありますのでお伺いしますが、総需要抑制ということは、当面物価の安定に全力をあげるというようなことで、その大きな基本的政策とも受け取ってきたわけですが、これはやはり、どうもいろいろとそこに疑いを持っておるような人もありまして、政府物価抑制を言っている、そのための総需要抑制というようなにしきの御旗を掲げておるけれども、実際は、あれは国際収支の改善のために総需要抑制をして、不景気にして、どんどん輸出のほうにそれを向けていくんじゃないか、そういうような疑いも出てくるわけでありますが、この際、大蔵大臣の御見解、それと貿易収支改善のために今後輸出振興対策をとるのかどうか、この二点をお伺いしまして終わりましょう。
  135. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、総需要抑制物価対策の面もにらんでおりまするし、国際収支の面もにらんでおる、両にらみでございます。一般には、いま中尾さんがおっしゃられましたが、政府は、物価対策のために総需要抑制政策をとっておるが、実は国際収支対策のためだというような考え方は、私は聞いたことがありません。
  136. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いや、そういうふうに流れていますよ。
  137. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、寡聞にして聞いたことはございません。そのくらい国際収支の面を、国民の皆さんが理解してくださるということになれば、私はけっこうだというくらいに思うくらいでございます。いずれにいたしましても、この総需要抑制政策をとる、これは物価対策に非常に裨益するところがあると同時に、国際収支の面におきましても、国内が不況になる、そのために海外へ出ていくというその傾向を刺激し、なお国内が不況になりますから、海外から輸入するものも少なくなるという、国際収支対策上の面並びに物価対策上両面に寄与する、そういう効果を持つと、そういうふうに考えております。ただ、こういうことはあるんですよ。輸出が盛んになるということになれば、それだけ景気を刺激するじゃないか、こういう一面があります。けれども、これは総需要抑制ということを厳重にやっていきますれば、その輸出による景気刺激作用というものをのみ込んでしまう。また、のみ込まさなきゃならぬ、こういうふうに考えております。
  138. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 もう一つある。
  139. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 何でしたか。
  140. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 輸出振興対策をとるんですか。
  141. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) しかしながら、輸出振興政策を政府が補助金を出しますとか、あるいは税をまけますとか、そういうような形において、政策としての輸出振興対策は、これはとりませんです。あくまでも総需要抑制政策の自然的な経過としてそういう効果が出てくる、こういうことを期待すると、かようなことでございます。   〔委員長退席理事小谷守君着席〕
  142. 田中寿美子

    田中寿美子君 けさほどの私の質問が、工藤委員の都合で中断いたしまして、政府委員の方、朝からいらっしゃっていた方、たいへん御迷惑をおかけいたしました。二十分しかございませんから、その点ほんとうに要約して申し上げますので、お答えも要約していただきたいと思います。  年金資金の問題なんですけれども、私は、財投の中でも、特に資金運用部資金というのは、庶民の預貯金と、それから国民年金厚生年金その他の積み立て金からなっているという意味で、この資金運用部資金運用についてたいへんいろいろと申し上げてきたわけなんですが、特に、私どもの年来の主張は、年金資金を分離運用してくださいと。それは、いまのような年金対策として、特にインフレがどんどん進んでいく中で、インフレに非常に弱いいまの年金方式ではなくって、賦課方式に変えていくために、ぜひともこの分離運用が必要だという立場から、私はそういう主張を申し上げているわけなんですが、なぜそれに対して大蔵省並びに厚生省が反対であるかということの理由をはっきり聞かしていただきたいわけなんです。  で、なくなられました愛知大蔵大臣もたいへん強硬に、この分離運用はどうしてもできない、統合運用の原則というのが資金運用部資金の中にあって、それで大蔵省で統合運用するのが一番望ましいのであるという言い方をしていらっしゃるわけなんです。  それで、ある程度使途別分類によって福祉のために使うんだと言われましても、けさも私は指摘しましたけれども、使途別分類の中身を見ますと、必ずしも(1)−(6)分類の中が全部福祉じゃない。それから(7)−(10)にかけては、そうでないものが非常に多い。その中に年金資金や何かがみんな入り込んでいるということ。それから、三分の一いま還元融資に使わしているわけです。年金資金の預託金の増加分の三分の一を使わしているわけなんですけれども、この三分の一といっても、還元融資も毎年のように不用額が出てくるわけです。そうしますと、やっぱり資金運用部資金から還元融資のワクに入り込んでこないわけです。三分の一ではないという現実がある。それから、たいへん私がいつも問題にしておりますのは、回収金が全く不明、資金運用部資金の中で四十九年度一兆九千九百四十三億というのが、これがその他という項になっておりまして、そのその他の中に回収金が入っているわけです。回収金は一兆六千七百十五億、その中身が不明なんですよ。幾らが郵便貯金の原資から貸し出したものの回収金なのか、どれだけが厚生年金から貸し出したものの回収金なのか、長年の運用の中で全然回収金の分け方がはっきりしない。だから、私は、回収金をせめてはっきりさしてくださいということを愛知大蔵大臣のときもお願いしたんです。そうしたら、これはフィクションなら数字は作成することができるけれども、はっきりとしたことは言えない、これではどんぶり勘定と言われてもしょうがないわけなんです。回収金の行くえがわからないというのもおかしい話です。七カ年の期限で貸すなら、それをことしからでもはっきりさせるべきではないかと考えているわけです。大蔵省が言われるのは統合運用の原則、これは厚生省も合意していらっしゃる。だから、統合運用の原則があるから大蔵省資金運用部資金の中で運用すべきであるという考え方、それから使途別の分類でちゃんと福祉に回すからいいじゃないかと、これも私は不確実だということ。それから拠出している者の側から言いますと——これは株主ですよ。金を出している者がその回収金の行くえもわからないということ、これはおかしいと思うんです。もうすでに十兆円も一年金資金の残高はあるわけなんです。ですから、これはたいへん大口の資金です。一つの大きな銀行よりまだ大きいぐらいの金を本来持っているわけなんです。だから、これを次第次第に分離していくだけの熱意があってもいいんではないか。それを一向に賦課方式のほうに持っていこうとしない。厚生省に計算を私は毎回出してもらっているわけなんだけれども、昭和八十五年ころになったらその年金が成熟度に達するからと、この前のときは四百何十兆でした、今度は修正されて三百七十兆くらいの金が、年金資金がふえたときに初めて賦課方式にすることができるということを年来主張していらっしゃる。何で八十五年まで三十年も待たなければならないかということに対して、私はたいへんに不審に思っているわけなんです。常に厚生省のほうは、もちはもち屋だ、資金運用するのは大蔵省でなければよくできないというふうな、そういう気持ちがあるのではないか。つまり一番の分離運用に反対する理由は何であるかということ。これは大蔵大臣、それから厚生省側から簡単にお答えいただきたいと思います。
  143. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 分離運用は妥当でないというのは、これはいま積み立て方式との関連でそう主張しているのではないかと、こういうようなニュアンスのおことばですが、そうじゃないんです。これは別個の問題というふうに考えておるんですが、要するに、年金資金がこれは相当多額なシェアを占める、資金運用部資金の中では多額なシェアを占める資金でございますが、それだからそういうことをおっしゃられるかもしれませんけれども、これは多額であればあるだけに、これを分離して運用するということになると、いわゆる国の行政効率の面から言いまして、分離運営、つまり重複という問題が起きてくるわけです。それで、要するに、社会福祉というような問題をにらみますれば、これは統一的に事を見て、そうして運用をするということが行政効率から見まして妥当な行き方である、重複、そういうようなことは避けていきたい、こういうような考え方に基づくわけであります。お話のような年金の制度改正と関連をいたして考えていると、こういうわけじゃないんです。
  144. 横田陽吉

    政府委員(横田陽吉君) 運用の問題につきましては大蔵大臣の御答弁のとおりでございますが、年金立場から申しますと、この積み立て金は、先生は専門家でいらっしゃいますから、非常に簡単に申し上げますが、将来の一番大事な給付財源でございます。それで、大体、年金財政の設計といたしましては、成熟化いたしました段階で大体二年半から三年分ぐらいの単年度支払いに匹敵するくらいの積み立て金は持たなければ、財政運営として非常に危険である、こういうふうに考えております。したがって、現段階は被保険者に対しまして受給者が非常に少ないわけでございますので、そういった定常化いたしました段階での年金財政に至るまでのプロセスといたしまして、相当多額の積み立て金を毎年毎年ふやしていくと、こういうふうになるわけでございます。あくまでもそれは給付財源としての必要なものを積み立てていくということでございまして、別に財政投融資のための原資を提供するために積み立てるわけでも何でもございません。したがって、私どもといたしましては、こういった積み立て金が最も有利に、そしてまた安全に運用されることを考えなければならないわけでございまして、そのために、言うならば、資金運用部という銀行にこれを預金をいたしておる、こういうふうなかっこうになっておるわけでございます。  ただ、現実問題といたしまして相当多額のものが毎年積み立てられまして、それが、御指摘のように、零細な年金の掛け金でございますから、たまっておるその積み立て金の運用につきましては、現在の保険料を拠出いたしております被保険者の福祉に還元するような面も手厚くしていただくというふうな観点から、先ほど御指摘のような還元融資のワクの拡大、それからまた還元融資対象事業の拡大等も毎年いろいろ御相談をしてふくらましてきておる、こういうことでございます。
  145. 田中寿美子

    田中寿美子君 昭和八十五年までに、いまの物価がどういうふうになるかわからないとして、いまの段階で厚生省が計算なすって、三百七十兆あるいは四百兆というような金を積み立てていくということ、これは資金運用部資金の中ではもう膨大な財源になってしまうわけです。私は、そういうようなことは、行政の中にたいへんな財力をぶち込んでしまって、これは非常にアンバランスな支配をするという心配がある。やはりこれはきちんと年金の事業団みたいなものでもつくって、そこで分離して運用していったらいいんじゃないかというのが私の意見です。そして、そのやり方は、何もそこまで、八十五年まで待たなくたって、いろいろな方法が私はあると思いますが、いまそれを議論しているひまがありません。  それで、厚生省は、けさ私が指摘しました一月末の一兆円をこえる資金運用部資金の貸し出しですね、いろいろな政府関係金融機関に、公庫.公団に貸し出したときに、その当時のあれを見てみますと、資金運用部への厚生省からの年金の預託額、これはなかなかりこうなことに、一月までちょっと控えていらっしゃいますね。ですから一月は減っているわけですね、去年に比べて預託額が。そして二月になってまとめて千七百二十一億預けていらっしゃいます。これはやっぱり二月に入ったほうが利子が大幅に上がるんですから、向こう七年間にわたって貸し付けに使うところの年金資金ですから、有効に使いたいと思われてとめ置いていたんじゃないかというふうに思っているわけです。それぐらいの頭が働くんでしたら、年金の財源として分離運用するということも一できるはずだというふうに思います。しかし、それをいま議論していても、きっといつまでも同じことをおっしゃると思うんで、それで回収金の問題として提起しておきますけれども、この四十九年の予算説明の中に財投説明がことしは入ったんですけれども、資金運用部資金のその使途別分類の中で、回収金の行くえ不明ですね、回収金はどこに入っているのか、さっぱりわからない。これは見ておいてください、あとで。回収金というのは大きいですね、ことしでも六千七百億もある。そういう膨大な資金が戻ってきているのに、どこへ使われているのかわからないような状況だし、どこから戻ってきたのかもわからない。この辺はもっとはっきりしてもらいたいということを要望をしておきたいと思います。  それから、もし分離運用ということ、分離会計を設けるということがすぐにできないというなら、私は、賦課方式にしなきゃとてもこのインフレには追いつかないと思いますので、そのための一歩前進として、資金運用部資金の中に別勘定を設けることを考えてみてくださることはできないか。たいへん大口の預金者であるところの年金拠出者に対して、これはまあ強制的に取られる税金のようなものなんですから、この拠出者に対して、別勘定をまず設けて、これから先貸し出すものに関しては、回収なんかきちんとしておいてもらいたいわけです。全くどんぶり勘定じゃ困ったもんだし、この辺のことは、これは大蔵省理財局か、あるいはどこになりますか、理財局だと思うんですが、いかがですか。
  146. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 非常に技術的な点もございますので、私から御説明をさせていただきたいと思いますが、基本的な考え方は、先ほど大臣からお話しになったとおりでございます。  したがいまして、技術的に申し上げますと、還元融資につきまして、四分の一から三分の一に割合を引き上げて、財投全体の福祉性を高める、あるいは年金の使い道につきまして、国民生活に密着した分野に資金が流れるようにすると、こういう措置をとったわけでございますが、その三分の一、四分の一というのは、いわば計画を編成するときの指針というものでございまして、実際の金の動き方といたしましては、年金のほうからお預りをいたしましたときに、資金運用部の中へ一体となってこれが運用されるということに相なってまいるわけでございます。したがいまして、個々の貸し出しにつきましては、これが郵便貯金の中からきたものだ、あるいはどの特別会計からきたものだ、あるいは年金のほうからきたものだ、こういう区分けをいたしておりません。したがいまして、回収金につきましても、その区分けが不可能なわけでございます。これは基本的なその統一運用の考え方から出てきておるわけでございまして、先生御指摘のように、区分けをするという問題になりますと、非常に手数をかけますればあるいは可能かもしれませんが、しかし、従来すでに十兆円に近いものが運用されておるわけでございます。したがいまして、今後これをやるということは、たいへん手数のわりには、私どもの考え方からすれば、むしろ実益がないのではなかろうか。むしろ財投全体の運用福祉性を先ほど午前中にも使途別分類等からごらんをいただきましたように、全体の福祉性を高めると、こういうことで国の御期待にこたえてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  147. 田中寿美子

    田中寿美子君 それは考え方の相違だし、それから資金運用部資金法によって統合運用になっているからこうするのだというふうに、もうきめつけていらっしゃるんで、この資金運用部資金というのは大きな銀行ですよ、そこへ預けているところの株主みたいな拠出者の意思も私たちは聞いてくれということを申し上げている。もういままでのやり方以外に方法はないという考え方に対して私は反対しているわけだし、それから厚生年金国民年金を積み立てている人たちの代表も、そういうことを要求しているわけですね。これはもう厚生省よく御存じですが、年金に関しては年金資金を分離してくれという要求が絶えず出ているということなんです。  それでもう時間がありませんから、大蔵大臣、いままでいつでも、それはもうこういうふうになっております、これ以上動かされませんという言い方なんですね。これでは政治も何もないと思うんです。法律は一たんできたら、昭和二十六年にできた資金運用部資金法は一切変えられないなんというものじゃないと私は思うんですね。ですから、一番必要な方法に変えていくということが必要であったら、そういう姿勢をとってもらわなければいけない。もう少し私どもの言い分も聞いてもらわなきゃいけないし、回収金は絶対に分離は不可能ですよというふうにおっしゃらないで、これから先分離しようと思えばできる、分離というか計算を、回収金計算をしていこうと思えばできるし、現に私は理財局の方から昨年から以後の計算資料いただいたりしているわけですね。ですから、過去の一緒くたになっているものの回収金を分けるということは、非常にむずかしいかもしれないけれども、その気になれば、これから入ってくる、厚生省から持ち込んでくるちゃんと厚生年金会計というものがある、あすこから預託してくるものをこれからやる気になればできる、ただ、そういうふうになっていないからやらないということだと思うんです。私は、それは検討して考えてみていただきたいということなんです。というのは、年金資金を分離し運用してほしいという立場から申し上げているわけで、還元融資のこともおっしゃったけれども、たとえば、年金福祉事業団なんかも、四十八年度千三百七十一億を還元融資から受けて、七百五十億を実行しておりますけれども、残が六百二十一億ある。で、不用額を出しますと、それは結局還元融資に回ってこないわけですね。だから、そういうようなことを考えますと、たいへんおかしいことがたくさんあると思いますが、大蔵大臣に一切これまでどおりの方針以外には考えられないというふうな態度をとっていただかないで、非常に多くの労働者や労働組合や、それから年金の拠出者たちが要求していることについても、検討してみるというぐらいの態度を出していただきたいということと、それから、いきなり分離運用をできないとしたら、別勘定にするような手だてを加えてみていただくことができないのかというこの二点についてお答えいただいて、もう時間がございませんので、非常にたくさん申し上げたい点があるわけですが……。
  148. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 田中さんのおっしゃろ御趣旨はよくわかりましたが、一番徹底した考え方でいけば、この年金資金資金運用部資金から分離せよと、こういうことのようですが、そこまでいかなくとも、資金運用部資金の中で別勘定をつくったらどうかというのが第二だろうと思うのです。また、そこまでいかぬでも、せめて回収金ぐらいこの勘定を明らかにしておいたらどうだろうと、こういう三段階のお話のようでございますが、これはいずれの考え方も、統合運用という行政効率の向上という趣旨からいうと、これはちょっと問題のあるところだろうと、こういうふうに思うのです。特に第一の考え方、第二の考え方、これはそうだと思うのです。  第三の考え方、つまり回収金だけは整理しておけと、こういうお話、これは多分に技術的な問題のようでございますが、さあ、検討せいと言われて、はい検討いたしますと言うと、かっこうはいいようでございますが、検討いたしましても、あんまりいい結論は出てこないんじゃないかと、こういうような感じがするわけです。とにかくそういうような気持ちではありまするけれども、せっかく決算委員長がそう言われるんですから、とにかく一生懸命勉強してみることにいたします。
  149. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま一点。  簡保資金運用が別なんですよね、財投の中にあって、資金運用部資金の中にあるけれども。
  150. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そうです。
  151. 田中寿美子

    田中寿美子君 だから、そうやっても支障が起こっていないわけです。だから、年金資金もそういうふうに考える方向になってもらいたいということで、これはほんとうはその原局である厚生省がうんと熱情を持たないといけないんですけれども、実に私はその点で厚生省がたよりないと思っております。これはまた別の機会にやりたいと思いますけれども、ほんとうに自分たちの年金年金らしい年金にするために使おうという意欲があって、そして、私は、能力の点も一つはあると思うのです。確かに大蔵省、お金を扱うことは非常にすぐれていると思うんです。だけれども、もし分離したときには、そこに能力ある人を連れてくればいいわけでしょう。ですからね、そのほか運用のしかたもいろいろあると思いますので、その点と、それからさっきの回収金というのも、三段階じゃないんです。いまでも回収金だけじゃない、財投の実行状況計画その他について、もっと詳しいデータを出してほしいということ、それから白書を出してほしいということ、その他私はたくさん要望を持っておりますが、時間がありませんので、あらためてお願いしたいと思います。以上です。
  152. 中村利次

    中村利次君 この決算の審査をするにあたりまして、私は、非常に鮮烈に思い起こしますのは、昭和四十六年のドルショックでございまして、   〔理事小谷守君退席、委員長着席〕 四十六年の八月にドルショックがあって、変動相場制に移行をして、そしてその年の暮れに三百八円の基準レートが設定をされた経過があるわけです。当時は、これはまことに容易ならざる事態だったわけですけれども、それから二年半余りをたったわけでありますが、この三年に近い間の政府経済政策が今日の日本経済の実態を生んだということは、これは客観的に否定できないと思います。もちろんいろいろ国際的な影響もありますけれども、とにかく経済政策そのものが今日の日本経済の実態を生んでおるということは、客観的には否定できないと思います。  まあ、ドルショック当時は、大臣も大蔵大臣をおやりになっておらない。しかし、その直前まで大蔵大臣の地位にいらしたわけなんですけれども、その当時は、円の切り上げなんということはもう絶対やらない、頭のすみにもないんだという、こういうたいへんはっきりした姿勢を示していらした。しかし、いわゆる国際的にいえば、こういう表現がいいのか悪いのか知りませんが、四面楚歌の中で円の切り上げをやらざるを得なかったんじゃないかと思うのですよ。そういう経過を経て、いろいろあと曲折はございましたけれども、今日、これは中身はまるっきり違っても、やはり同じ変動相場制にあるわけであって、そして、当時ときわめてやっぱりたいへんな違いがあのは、国際収支が容易ならざる危機に瀕しておる。これは私は午前中から大蔵大臣の御答弁を伺っていて、国際収支はこれはもうたいへんなんだと、危機なんだという御答弁が何回もあった。やっぱりほんとうにそう思うんですよ。これは私は非常に単純な、今日の事態は残念ながら想定できませんでしたけれども、おととしから去年にかけて外貨減らしが盛んに国策みたいなムードの中でも、私は、非常に中期、長期の見通し国際収支というものに対して危機感があったんです。これはしかし、私の想定したものとはたいへん違った形で危機を迎えておると思いますがね。私は、やっぱりおととしから去年のペースでいきますと、ことしは、おそらく原油の輸入量も三億キロリッターをこえるんではないかという、あるいは三億キロリッター程度になることは間違いあるまいという感じでありました。これが三億五千万あるいは四億というぐあいに伸びていく。原油高ということは、これはもう見通せたことでありますから、その場合の国際収支ははたして、たまり過ぎたたまり過ぎたといって外貨減らしに狂奔しているんだが、とにかくどうなんだろうということでだいぶ質問もしてきました。ところが、当時、まあ去年あたりは、いまの大蔵大臣の認識というのは政府の中にあったのかなと、少なくとも私の質問に対してはそういう深刻な国際収支の危機というお答えは出なかった。ですから、大いにいまの大蔵大臣の認識はけっこうだと思うんですけれども、とにかく、そういう状態になってきたわけです。ですから、これは決して皮肉な意味じゃなく、大蔵大臣にひとつ正直にお答えいただきたいと思うんですけれども、今日のそういう事態で、今日の為替問題あるいは国際収支についてどういう御所見、どういう対策というよりも、まずどういう御所見をお持ちか、伺いたい。
  153. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国際収支についてですか。
  154. 中村利次

    中村利次君 ええ。為替問題、国際収支等についてですね。
  155. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、国際収支物価、これはもう日本丸を運営する上において車の両輪として、かなめとして重視していかなきゃならぬ問題だ、この二つをにらんでおれば、にらんでかじとりをしていけば間違いがない、こういう性格のものだと、こういうふうに考えているんです。国際収支の問題には、もちろん新しく出てきた資源の問題もある。これも関連をしてきますから、あるいは国際収支物価、資源と、こう言っても差しつかえないかとも思うんですが、その中で私が非常に心配しますのは、物価という問題は、国民の日常の生活あるいは事業活動、これに直接関連してくる。ですから、国民的関心というものが物価の高い低いについて非常に敏感に響いてくるわけです。ところが国際収支のほうは国民生活と直接の関係がないものですから、ややもすれば国民の関心から遠ざかる、そういう性格である。それだけにこの問題はほうっておかれる可能性というものが高い。そういうふうに思うのです。その傾向のある国際収支がいま非常にむずかしい段階にきておる。このむずかしい段階にきておる国際収支問題を放置しますと、日本丸の転覆というところまで発展する。壁に全くぶち当たります。そういうことをあらしめてはならない、こういうふうに考えまして、国民のすみずみから国際収支国際収支と言って騒がれはしませんけれども、財政当局者といたしましては、深くこの状態を憂えて——憂えるばかりじゃありません。この状態を何とかして改善して、内外に対して信頼を博し得るような状態にもっていかなきゃならぬ、こういうふうにいま考えておる次第でございます。
  156. 中村利次

    中村利次君 私は、国際収支については、先ほどから中尾さんの質問にも相当丁寧にお答えになっておりますから、しかし、後ほどなおお伺いをしたいと思いますけれども、その前に、四十八年度の外貨の準備高は、フロート中にもたいへんに大幅に流出しておると思いますね。となりますと、本来ならば為替レートにそのまま反映しなきゃならないものでなければならないと思うのですね。ところが、これは何と言うのですか、通貨当局の介入によって必ずしも正しく為替レートに反映をしていない。四十六年のドルショック後のフロート当時は、これは国際的にはダーティ・フロートという非難を浴びたと思うのですが、しかし、私は、通貨当局の介入がいけないというつもりはないんです。これはやっぱり介入すべきは介入すべきだと思いますけれども、しかしながら、とにかく準備高が減っているときの、逆ダーティというんですか、こういう点については大いに批判的立場をとらざるを得ないと思うのですが、こういう点についていかがでしょう。
  157. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまわが国はフロート制をとっておるわけですが、世界各国とも全部フロートに移行したと、こういう状態の中でやむを得ないことだと思います。その世界的フロート体制の中では、このフロートを、フロートではありまするけれども、秩序正しくこの制度を運用していくと必要があるかと思うのです。ですから、国際社会全体がフロート制につきまして何らかのルールをつくるということは、私は、緊急の課題である、こういうふうに考え、わが国も率先して世界各国にこのことを呼びかけておるわけなんです。このルールができますると、フロートの運営と申しましても、これはわりあいにスムーズに動いていく、こういうふうに思いますが、ただいまの段階ではルールも何もない。主要国がときどきフロートをどうする、レートをどうする、こういう際には電話で連絡をするということも間々ありますけれども、とにかくルールはない、こういう状態です。そういう状態の中でわが国がどういう態度をとるかというと、介入ですね、これはなるべく避けたがいい、こういうふうに思うのです。ただし、国際社会全体が変調である、そういう中でわが国の円の対外相場が乱高下する、こういうような事態があることは、これは好ましくないことでありますから、そういう際には買いなり売りなりと、これは出動するという必要もあろうかと、こういうふうに思うのですが、国際社会で変調ということがない、そういう中におきましては、これはいわゆるクリーン・フロートといいますか、政府・日銀がこれに介入するということがないことが好ましい形である、現にそういう姿勢で運営いたしているわけであります。
  158. 中村利次

    中村利次君 これはクリーン・フロートが一番好ましいのは皆さんが異論のないところだと思いますけれども、乱高下をするようなことがあっては、これは国際的にもやはりいろいろ問題があるから介入をする場合もある、これは私は否定をするものではないのです。しかし、少なくともたいへんに大幅な流出があると、たいへんな赤字を計上しておるというようなときに、それがやっぱり乱高下というよりも、それなりの、そのままダイレクトにこれがレートに反映するかどうかは別として、させることがいいのかどうかは別として、どうも介入が強過ぎて、たいへんに売りが強過ぎるような気がするのですよ、いまのレートはですね。だから、こういうものに対して、しかるべき時期といいますかね、たとえば五、六月ごろには、おそらくこの石油ショックの決済のほぼ済むころ合いではないかと思いますけれども、これは当たっておるか当たっておらないか、そういう時期にくると、介入をやめるというか、ゆるめるといいますかね、クリーン・フロートに移行をしていくというお考えがあるのかないのか、お伺いいたします。   〔委員長退席理事小谷守君着席〕
  159. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) もう今日すでにクリーン・フロートというか、介入をしていないんです。あの石油ショックのときには介入しております。しかし、それ以降は介入せずと。今日出ておる二百七十円台の相場というのは、自然のままにああいうふうなのが出てきておる、こういうことでございます。
  160. 中村利次

    中村利次君 しかし、これほど大幅な流出があって、二百七十円台のレートというのは、そいつがやっぱり正しく反映しているという見方をしていらっしゃるわけですか。
  161. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 為替相場は、これは外貨の流入、流出、それによって動く要因もありまするけれども、同時に実際の取引、そのケース・バイ・ケースの少量のものさえも為替相場に影響してくると、こういうような状態でございます。いまはもう現実に二百七十円台の相場が出ておりますが、国際収支の実態から言いますると、少し円高に評価されておると、こういうふうに思いますが、しかし、その評価というものがまたどういうものであろうか、円の将来に対する評価というものが入っているかもしらぬ。現実の外貨の流出入だけでなくて、円は財政運営よろしきを得て、そのうちに強くなるだろうというような評価をあるいはしておるのかもしれませんからね。なかなかこれは微妙なことできまってくる性格のものでありまするが、いま、とにかくはっきり申し上げますが、何らの介入もせず、二百七十円台の相場が出ておる、こういう状態でございます。
  162. 中村利次

    中村利次君 介入をしていないという御答弁でありますから、私は、そのことを信用いたします。しかし、これはくどいようですけれども、どうもやっぱり何か介入しているのではないかという疑いではなくて、今度はそういうはっきりした御答弁いただいたわけですから。何か首をかしげるのは、とにかく、それじゃ実勢を正しく反映しているのかどうか、これはいま大臣がおっしゃったように、円に対する評価というものはやっぱり高く評価されているのだろうということでありましたが、どういう理由でそれだけ高く評価されているのかということについて分析されたことがおありでしょうか。
  163. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 別に刻々の動きに対してこれを一々分析するというようなことはやっておりませんけれども、一時、円がたいへん安くなりまして、どこまで下がるのか、三百十円までいくのか、三百六十円までいくのかなんというようなうわささえあった時期があります。確かに、オイルショックですね、あのときは世界中が日本経済の前途に対して非常にこれを悲観的に評価したわけです、つまり日本は石油をあんなにたくさん輸入する、それからさらにそれに関連いたしまして、日本は資源を持たない、石油ばかりじゃない、この資源小国たる日本というものはいままで経済大国なんだといって言われてきたけれども、その地位がゆらいだ、こういうような見方が一般化したと思うのです。そういう時期には、私は、そういうわが国の経済の前途に対する見方というものがかなり反映いたしまして相場にも出てきておるというふうに思いますが、しかし、最近になりまして、また、日本見方が変わってきておるように思うのです。日本は過去難局に何回か当面しておる、しかし、それを巧みに乗り切っておる、今度もどうもその動きを見ておると、非常なショックであるけれども、日本はこれを懸命に乗り切りそうだというような見方がまた一般化しょうとしておるのであります。根強い一部には資源小国日本という見方もありますけれども、海外での見方はがらりとまた変わってきておる。そういう点がまた円相場にもその背景として影響しておるのじゃあるまいか、そういうふうに見ておるのです。その日その日かなりの変動がありますけれども、それには技術的——技術というか、いろんなこまかい需給の要因というものが働いておりますが、大勢としては、どうも一時は日本の将来を悲観してみたがさほどでもないなという信任感が出てきておるのではあるまいか、そういうふうに考えております。
  164. 中村利次

    中村利次君 これは大臣の御弁どおりであればまことにけっこうなことだと思いますけれども、私はどうもやっぱり相当の不安を感じています。ぜひこれはそうでありたいと思いますし、いまの現状がクリーンフロートであるということになれば、私は、あえてそれ以上の質問を続けようと思いません。  先ほども申し上げましたように、相当丁寧に大臣から国際収支の問題はお答えをいただきましたので、重複はできるだけ避けたいと思いますけれども、少なくとも、おととしから去年にかけては、国をあげての外貨減らし時代であったと思いますね。政府もいろんなやっぱり政策をおとりになった。ところが、現在は全く百八十度転換せざるを得なくなっておると思いますね。もちろん、これは地球は回り、あるいは世界経済はきわめて流動化して、それから日本経済もまた高度に国際化しておるわけでありますから、外貨がたまり過ぎて、その面での国際的な批判を受けるときと、国際収支が重大な危機に当面をしておるときと、これは国民のために百八十度の転換も私はあながち否定するものではありません。しかし、憎まれ口をたたけば、あまりにもこれはやっぱり一貫性がないという、場当たりであるという非難もこれは免れない面もあると思うのですね。ですから、そういう意味で、四十七年の十月に対外経済政策推進関係閣僚懇談会で、輸入の拡大あるいは輸出の適正化、資本の自由化等対外経済政策をおきめになって、外貨減らしを積極的にはかられたのでありますけれども、それからたった一年ですね。昨年の十一月以降には、もう国際収支に対する重大な危機を迎えて、先ほどからも中尾さんの御質問の中でも、あるいは大臣の答弁の中でも言われましたような、いろいろな対策が講じられてきておるのです。いま申し上げましたように、まさにこれは百八十度の転換だと思うのです。こういう点について、私は先ほど申し上げましたように、そのときどきの情勢に対応するということはもちろん必要だと思うのですけれども、やっぱり先見性がないとあぶなっけを感ぜざるを得ないと思うのですよ。こういう点についてはいかがでしょう、大臣。ひとつ率直にお答えをいただきたい。
  165. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ率直に申しまして、田中総理も、国際情勢の変動に対応する手順がおくれた、こういうふうに言っております。私も、まさにそのとおりだったと思うのですよ。去年のいまごろは、大蔵省は何だと、何を言っておったかと、こういうと、トリレンマ、こういうことを申し上げておったわけですね。それから財政方針を聞いてでは、国際収支の改善ということが言われておる、改善というのは一体何だろうか、もう少し円の立場を強くすることというふうに受け取られるわけですが、実際はそうじゃなくて、国際収支は黒字基調からこれをだんだんと均衡基調に変えていく、それが改善だと。普通なら赤字基調を黒字基調にするのが改善なんですが、改善というのはそういう意味だと、こういう財政演説の原案でありまして、私は、閣議で、それはおかしいじゃないですかと言って、国際収支の調整というふうに、あるいは是正でしたか、というふうに直していただいたことを記憶しておりますが、ドル減らしですね、これに非常に頭を使った時期があるわけなんです。これはドイツがとった立場と全く対照的な立場に立ったわけですね。ドイツは、ドルは幾らたまってもいいじゃないか、それよりは国の経済の安定だというので、ああいう際にも総需要抑制政策をとった。そうしてそれによって物価をしずめるという対策をとった。そのかわりドルが三百億ドルをこえるという保有高になりまして、国際社会では多少ぶつぶつは言われます。言われまするけれども、今日厳然たる体制をとっておる。わが国のほうは、それとまた対照的に、トリレンマというか、物価も大事だ、だが福祉政策というか、国内の諸施策を進めるという必要もあるし、同時に黒字を減らすという問題もある。まさに三つの矛盾に当面しているというので、国内の拡大政策、それがとられたわけなんです。日米繊維交渉があった、あのあとあたりですから、黒字減らし、外貨減らし、こういうものには非常に敏感であったわが日本でありますから、私は、それは理解はできますよ。その当時の事情は理解はできますけれども、それにしてもその物価問題というものがおろそかにされた。そして外貨は流入してくる、その半面流動性が拡大をされると、これはたいへんな拡大だったわけです。その拡大と並行して予算の規模の拡大が大幅に行なわれる。また、金融面では流動性回収という対策が強くとられておられなかったというようなことで、ドイツと全く違った行き方をしてしまって、物価問題では非常な困難な状態になる。また、拡大政策がきき過ぎまして、外貨事情は逆転をすると、こういう状態になってきたんだろうと思うんですよ。しかし、そのときはそのときの事情があったんで、とやかく私は申しませんけれども、そういうことを反省して、今後はよほどかじとりは気をつけていかなきゃならぬ。気をつける要点は何だといえば、物価国際収支であると、こういうふうに考えております。
  166. 中村利次

    中村利次君 何といいましても、この日本丸のかじとりであり船頭ですから、ひとつぜひ先見性を持ってこれらの問題には対処をしていただきたいと思います。  それにつけても、やはり先見性を持った誤りのない対策を持つということは、何といっても情報を正しく把握できるのかどうかということがないと、幾らどうも力んでみても先見性を持った正しい政策というものは打ち出されないと思うんですね。そういう意味では、これは失礼な話ですけれども、オイルショックに関連をして、あまりにも情報活動の頼りなさというか、貧弱さというのか、そういうものがたいへんにかんかんがくがく指摘をされたわけでありますけれども、おせじを言うわけじゃありませんが、大蔵省は幾らかまだましだといううわさですけれども、外務省の情報なんというものは全く頼りにならぬという、貧弱だという指摘があるようです。また、資源問題については、きょうは残念ながら通産大臣、御出席願えなかったんですけれども、通産省の情報というのも十分ではないような気がします。しかし、幾らかましだと言われる大蔵省にしても、商社等のあの小回りのきくすばやさに比べますと、やっぱり相当見劣りがするんじゃないかと思いますけれども、こういう対策ですね、何かこう対策がおありかどうか、あるいはこういうことをやっていくんだというような、そういう所信等がございましたらお伺いをしたいと思います。
  167. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、国際情勢の動きにつきましては、これは主として経済面でございますが、大蔵省としても、かなりのネットシステムを持っておるわけなんです。いままでの状態を顧みましても、かなり機微の状況、情勢というものを早目に判断しておると、こういうことは私は御報告申し上げることができると思うんですが、激動する世界情勢ですから、情報を的確にキャッチしておくということは、これは非常に大事なことであろうと思いますが、この上とも全機能を発揮いたしまして、遺憾なきようにいたさなければならぬ。ちょっとした情報の不足のためにたいへんな間違いを起こすというようなことが間々あり得るわけでありますから、そういうことがあっては断じて相ならぬ、そういう気がまえでこの問題には取り組んでいきたい、かように考えます。
  168. 中村利次

    中村利次君 やっぱりこの商社は利潤追求の団体ですから、それは情報活動についても、あるいは変身術についてもたいへんに、生活の知恵かもしれませんけれども、私は、国民の利害を預かる行政府としても、何も悪いところをまねる必要は全くありませんけれども、そういう点についての対策というのか、配意というのか、そういう現実にたいへん小回りのきく、つぶさな情報をとっているものすらあるわけでありますので、これは強く期待をしておきたいと思うんです。  そこで、この際、通産省お見えになっておりますので、お伺いをしておきたいと思いますが、四十九年度の原油輸入量の見通しですね。それから四十八年度の——これはまだまとまっていないかもしれませんが、輸入原油量の集計、これは大体これくらいということを伺いたい。
  169. 平林勉

    説明員(平林勉君) 御説明申し上げます。  四十八年度につきましては、御指摘のとおり、三月の統計が近日中に出てまいりますので、それまでは確定しておりませんが、一応政府のつくりました石油供給目標の二千四百五十万キロリットルということで計算いたしますと、四十八年度は合計で二億八千八百万キロリットル程度でございます。四十九年度につきましては、非常に流動的でございますが、一応現在の試算といたしましては、約二億七千万キロリットルの輸入量を見込んでおります。
  170. 中村利次

    中村利次君 価格はどれくらいに見ていらっしゃいますか。
  171. 平林勉

    説明員(平林勉君) 価格につきましては、通関統計によりますキロリットル当たりの単価ではじきまして、それで計算いたしますと、四十九年度につきましては約百五十億ドルと考えられます。四十八年度は約七十億ドルでございます。
  172. 中村利次

    中村利次君 それでききますか。大体その通関ベースでどれくらいに見ていらっしゃるんですか。
  173. 平林勉

    説明員(平林勉君) 一バーレル当たりの単価が四十八年度につきましては、金部平均いたしまして——御承知のように、油にはいろんな種類がございます。高い油、安い油、ございますが、全部平均いたしまして一バーレル当たり三・八ドルでございます。
  174. 中村利次

    中村利次君 いや、四十九年度の見通しです。
  175. 平林勉

    説明員(平林勉君) 四十九年度につきましては、前途非常に流動的でございまして、現在、御承知のように、アラビアンライトで公示価格十一ドル六十五セントでございまして、これは実際の取引価格で八ドル三十二セント、これがメージャーの供給する価格でございますが、そのほか、インドネシアのミナスの原油等、若干高い原油もございます。今後の原油の価格の動向が非常に流動的でございますが、一応先ほど申し上げました百五十億ドルという数字の積算といたしましては、バーレル当たり約九ドルの単価を見込んでおります。
  176. 中村利次

    中村利次君 私はね、たいへんにどうも甘い数字じゃないかと思うんですよ。追徴金は入っているのですか、入っていないのですか。
  177. 平林勉

    説明員(平林勉君) この数字を計算いたしました当時は、まだ追徴金は考慮に入れておりません。
  178. 中村利次

    中村利次君 きわめてやっぱり日本丸のかじ取りとしては、私は不安を感ずるのですね。現実にメジャーズはやっぱり追徴金をかけてきていますしね。通関ベースで九ドル原油というのは事実上それはないと断定するのは、これはいかぬでしょうけれども、甘い見通しで、かりにバーレル当たと一ドル違うとたいへんなんですよ。二億七千万キロリッターと仮定をしましてもね、おそらくどれくらい違うのですか、十七億ドル前後ぐらい違うのじゃないのですか。ですから、私は、先ほど大蔵大臣にも質問で申し上げましたように、そういう見通しを誤った上に立てられた対策なんていうものは、まことにこれは危険千万であり、迷惑千万、国民にとっては。だから、そういう想定で今度は国際収支見通しを立てられますと、みんな狂っちゃいますね。もう一つは、この二億七千万キロリッターという輸入量についても、はたして二億七千万キロリッターにとどまるのかどうかという不安があるんです、いかがでしょう。もう少し正確に、これは大蔵大臣にお伺いしたいと思いますね。
  179. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、数量につきましては、二億七千万キロリッターが入ってくるかこないか、これは入ってくるといたしますれば、それはぜひ買いたいと、かように考えております。しかし、それ以上に入ってくるという場合におきましてどうするか、これはそういう入ってくる世界情勢でありましても、私は、それ以上は入れさせないと、こういうふうに考えておりますから、一応二億七千万キロリッターで考えられてしかるべしと、こういうふうに思いますが、価格については、中村さんの御指摘のように、九ドルじゃどうもおさまりそうもないと思うんです。   〔理事小谷守君退席、委員長着席〕 あるいは十ドルぐらいになるか、その辺のことも考えておるわけですが、一方、輸出価格がこれは案外また上がるんです。そういうような関係がありまして、かりに十億、二十億ドル、百五十億ドルに対し上積みになる、支払いが。油の関係で支払いが上積みになるといたしましても、そのくらいのものは輸出のほうでカバーする、こういう傾向のように見ております。でありまするから、私は、経済見通しにおきましては百五十億ドルと、こういうふうに言っておりまするけれども、実際は多少これは上がる。上がった場合にはどうするかということについては、十分これは腹に置きながら国際収支の運営を考えておる、かように了承願います。
  180. 中村利次

    中村利次君 これは私がよけいな試算をしてみて、かりに二億七千万キロリッターとして、十ドル程度の原油価格としますと約百七十億ドル、私は、十一ドルの可能性も、むしろ、ないよりもあるほうのほうが強いんじゃないか。そうなりますと約百九十億ドル、相当の狂いになりますよ、これは。ですから、私は、そういう点、確かに輸出価格も上がってくるでしょうから、しかし、かと言ってこれは相殺できるかどうか、たいへんやっぱり重要なこれは課題だと思いますね。それからもう一つは、二億七千万キロリッター以上は使わせない、使わないということでありましたけれども、私は、やはり総需要抑制、これは決して反対も否定もしません。しかしながら、それからまた、よく言われますように、省エネルギー型に産業構造の転換をする、これはそうでなきゃならぬと思うのですよ。それじゃ、目先四十九年度そういう転換も全部できるなんて、だれも思いませんけれども、そういう方向にある程度の効果が出るような転換がまずはできていく、少しずつでも。総需要抑制にも成功をしたと、こういう仮定をもちましても、はたして二億七千万キロリッターで足りるのかどうか。何といっても、これは資源がないんですからね、わが国は。そして、総需要抑制しながらでも物価を鎮静をさして、福祉社会実現のやっぱり基盤をつくらなきゃならないということになります。原油の輸入の九九・七なんというものは、これは別格にしましても、食糧から何から全部これは輸入しなきゃならない、貿易収支のバランスも考えていかなければならないということになりますと、すべての日本の生産活動、国民生活というものがまだまだ石油に依存せざるを得ないというようなときに、あまりにそいつを押え過ぎますと、——私は、だから、石油をよけい輸入すべきであるという暴論ではありませんよ。現実問題として角をためて牛を殺すようなことになってはならない。したがって、そこに量の上でも二億七千万キロリッター以上は買わないということがはたして現実問題として断言できるのかどうか、相当の憂いを持つのです。いかがでしょうか。
  181. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま大体二億七千万キロリッターで日本経済は動いているんです。すなわち二千二百万キロリッター・パー・マンスですね、そういうことで動いておるわけなんです。これ以上、いまよけいに石油を使いますという動きは、総需要抑制体制下においては出てこない。また一方、そういう情勢下において物価はどうだというと、上げどまりというか、鎮静傾向をたどっておる、こういう情勢でございまするから、大体二億七千万キロリッター、この水準でそうその需給なんかにきしみが出てくるという事態なしに本年度は推移し得ると、こういうふうに考えております。来年は来年で国際収支状態は、そういう二億七千万キロリッターの石油を輸入した上でどういうふうな形になってくるか、その辺よく見定めて考えなければならぬかと思いまするけれども、ことしはとにかく二億七千万キロリッターは確保したい。しかし、それ以上は売るという人があっても買いたくない、そういうふうにいたして日本丸の運営に支障はない、こういう形であります。
  182. 中村利次

    中村利次君 ということであれば、私は非常にけっこうだと思います。これは何といっても、今日以降、原油は、石油は量よりも価格の面で日本はだんだん使えなくなる。しかしながら、やっぱり貿易収支のバランスをとりながら立国をしていかなければならないという至上命題があるわけですから、そことのかね合いというのがどうなっていくのか、これは私はたいへんに現実問題として憂えるものでありますけれども、私は、やっぱり原油輸入量を増大をしないで、ぜひバランスのとれた経済政策というものがとられ得るように期待をしたいと思いますが、また来年あたりになって、あのときには大蔵大臣ああいう答弁をされたけれども、見通しを誤ったじゃないですかというような、そういうことにならないように、ぜひ要望をしたいと思います。  そこでそうなりますと、この貿易収支ですけれども、これは四十七年度は八十億ドルをこえる黒字であったのが四十八年度はたった約十億ドルぐらいになりそうです。これも四十八年の四月から十二月までは黒字であったのが四十九年の一月から赤字に転落をしておる。そういう相殺によって四十八年度は約十億ドルぐらいの黒字のようでありますけれども、これはもちろんオイルショックが決定的要因でしょう。やっぱりそのほかに輸入の増大等もこの原因になっておると思いますけれども、四十九年度の貿易収支の見通しについてどういうぐあいに……
  183. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国際収支ですか。
  184. 中村利次

    中村利次君 貿易収支について。
  185. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十九年度は石油の価格問題があるわけです。そういうことで非常に窮屈な経常収支にならざるを得ない、そういうふうに見ておりますので、まあ数億ドル程度の赤字になるのはどうもやむを得ないんじゃないか、そんなふうに考えておりますが、しかし、何とかして赤字でなくて、多少なりと黒字になるようにということを期待はいたしておりまするけれども、一応いまのところでは数億ドル程度の赤字になっても、その辺はまあやむを得ないことではあるまいか、そういうふうにいま考えておるんです。それが幾らかでもいい、黒字になったといえばまず幸いであるというくらいな見通しでございます。
  186. 中村利次

    中村利次君 時間がだんだんなくなってまいりましたから、やっぱり関連をして、いわゆるオイルダラーについて質問をしてみたいと思います。  まあ、先進工業国といわれる日本なんかはオイルショックによって容易ならざる事態を迎えておりますけれども、開発途上国にしても、これは相当やっぱりこのオイルショックの影響を受けておるし、また今後も受けるものと想定をされますが、どうも逆に産油国にはいわゆるオイルダラーがたまってたまってたまっちゃって、国際通貨が重大な危機に瀕するような事態も考えなきゃならないというような、そういうことのようでありますけれども、このオイルダラーについて、その見通し対策ですね、これはもう国際的な問題ですから、もちろん日本だけがどうも力んでみてもしょうがないと思うんですけれども、見通し対策について。
  187. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ石油価格が四倍に上がりましたと、こういう結果、産油国には多額の外貨が蓄積されるわけです。その外貨は、これらの国々の国内建設、そういうものにも使われるというわけでありますが、それにしてもまだ余剰が残る。その余剰、つまりそれは裏腹をなすわけでありまするが、必然の結果として今度は石油消費国の国際収支上の赤字と、こういうことになってくるわけですね。その赤字がどのくらいなるかということにつきましては、これは非常に小さく見る人は、世界銀行あたりでは、まあ五百五十億ドルぐらいになりゃしないかと、こう言う。IMF当局あたりは、六百五十億ドルぐらいになりゃしないかと、こう言うんですがね、もっと大きく見る人もありますけれども、世界経済の総合的機構である世界銀行、IMF当局はそんな見方をいたしております。その影響を一番大きくこうむるのは、これは発展途上国です。量的にはわが日本なんかもずいぶん被害をこうむるわけでございまするけれども、幸いにして、わが日本は外貨の蓄積もありまするし、強大な抵抗力を持っておりまするから、影響度から見まするというと、その実態からいいますると、開発途上国、これは二つの面があるんですね。一つは外貨が非常に窮屈な状態になる、こういう状態。さなきだに、これは世界各国からの経済協力を受けなければならぬ。それがまた油の関係でたいへんな窮屈な状態になる。こういう面と、それからもう一つは、開発途上国は先進工業国から必要な物資、資材を買わなければならぬ。東南アジア諸国について言いますれば、肥料を買わなければならぬ、あるいは食糧を買わなければならぬ、あるいは鉄材を買わなければならぬ。そういうような国々が多いわけでありまするけれども、先進工業国が、石油ショックの影響を受けまして、みんな生産を低下させるわけです。そうすると、順調にいままでのような状態で発展途上国にそういう資材、物資が供給されるかというと、それが非常にまた窮屈なことになる。そういうことで、発展途上国、これはたいへん影響を受けるだろうと思うんです。そういうことをできる限り緩和しなければならぬと、こういうので、石油産油国に蓄積されるそのドル、これを再配分する、そういう動きが国際社会であるわけなんです。あるいはIMFが一案をいま出しておる。それはIMFを通じて主として発展途上国のほうへ資金を流すというふうなことを考えたらどうだろうかと、こういう案がありまして、そのワーキンググループといいますか、それにはわが日本も参加いたしましてやっておる。それからもう一つは、世界銀行にもこれは同様の考え方があるわけなんです。それからアメリカでワシントン会議をやった。そのワシントン会議の結果、調整グループというのができまして、そして幾つかのグループに分かれまして総合的に石油問題の検討をする。その中にこの国際収支関連のグループがあるわけなんですが、わが日本はこれにも参加をいたしまして、そして鋭意何らかの調整案はできないかというので作業が行なわれていると、こういうわけなんです。  なお、いま国連を舞台にいたしまして、資源国連総会というのが開かれておる。そういう会議にはわが国もまた水田特使を代表として派遣しておると、こういうわけなんでして、いずれ何かの形が固まってくると思うんです。そして、ある程度の再配分機能というものが発揮されるであろう、こういうふうに見ておりますが、それにいたしましても、なかなか各国の利害関係が錯綜いたしまして、それが一つの結論が出てくるというまでには多少のまだ時間がかかりそうな気がいたします。
  188. 中村利次

    中村利次君 時間がなくなりましたので、これはもうほんとうにすべてがからんじゃうんですよね。やはり原油高というのがわが国にとってもたいへんなショックでありますと同時に、いま大臣おっしゃったように、これは開発途上国に対しても容易ならざる事態になってくる。はたして過去の実績で、日本経済援助をやっておる開発途上国からもたいへんな非難を受けておる。これを何とかやっぱりそれこそ改善をしなければならぬということなんですけれども、その対外援助も、国際収支の面から見ると、見直さなければならぬ。そういう対策政府はおとりになるはずですね。そういうことは、これは開発途上国からすると、きわめてデメリットですね。あわせてやはり日本が石油の輸入量を押えなければいけない。二億七千万キロリッター以上は、これはもう買わないのだというぐらいにしなければいけない。しからば、たとえばアジアの工業基地としての日本が発展途上国に対する役割りが果たせるのかということになると、また今度は量のほうに戻ってやっぱり関連が出てくる。しかし、これはもう時間がございませんので、そういういろいろな重大な関連をもって日本国際収支の問題があり、あるいはこの国際経済政策の問題があり、あるいはオイルダラーの問題がありというぐあいに、全部がひっからんでくるのですけれども、これはひとつ私は要望として、ぜひそういうきわめて困難な時代に誤りのない先取りの対策をおとりいただくことを要望したいと思うのです。  時間がなくなりましたので、まだだいぶこれは残っているのですけれども、最後に隠し外貨の減少状況ですね。それから新しいやはり価格体系に見合う為替レートとはどういうぐあいにお考えになっておるのか、これもいろいろ疑問点なり、あるいはいろいろな課題を申し上げて質問をしたいと思ったのですが、時間がなくなりましたので、私の質問は簡単にそのものずばりですけれども、御答弁はひとつこれはできれば丁寧な御答弁を要望をして、私の質問を終わります。
  189. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、隠し外貨というか、そういうことがよく言われるのですが、わが国は為替集中制をとっておりませんものですから、集中政策をとる場合におきましては、外貨保有高の中に数え得るものが別に存在するという状況があるわけなんです。その額が幾らであるかということは、これは非常にデリケートな問題でございまして、なぜデリケートかというと、これは通常の為替資金として使われておるのです。それを無理やりというか、あえて集中政策によって召し上げるというか、こう集めるとすれば集まると、あるというような性格のものでありますから、これはその程度によりまして、その集中政策の強度の程度によりまして額も変わってくるというのですが、非常に常識的に見まして、隠し外貨といわれるものは、今日六十億ドル程度と見ていいんじゃないかと思います。しかし、その政策の考え方によりまして、これは少なくもなるし、あるいは多少多くにもなり得る額であります。しかし、そう大きなぶれはありません。  それから、第二は、正常な為替相場は一体どうなんだ、こういうお話でございますが、これはなかなか私は見通しはつきがたいいま世界環境ではないかと思うのです。つまり世界為替がフロート制下で相当ゆれ動いているわけであります。ドルにいたしましても、あるいは高くなったり、あるいは安くなったりいろいろしておる。ヨーロッパ市場でもいろいろな変化がある。そういう際に、それらとの関連においてきめらるべき円レート、これが幾らであるか、正常値というものは、ちょっとこれは予測も困難でありまするし、また一つの目標がつくにいたしましても、先々はこうなりますよなんということを私が申し上げたら、これはまたたいへんな投機材料を提供すると、こういうことになるので、この点はごかんべんをお願いしたいと、お許しを願いたいと思います。
  190. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ほかに発言もないようですから、大蔵省とそれに関連する日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行日本輸出入銀行決算並びに予備費関係八件につきましてはこの程度といたします。  なお、本日をもちまして、昭和四十六年度決算外二件中各省別審査を終わります。  次回から締めくくり総括質疑に入ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時七分散会      —————・—————