○
政府委員(林信太郎君) コンビナートの事故の因を徹底的に究明するという作業の結果出てまいりました
原因は、ただいま
先生が御
指摘になられました六点に要約されるわけでございます。
第一番目のコンピューター化が進むことが、
企業の姿勢もございまして、かえって保安体制を弱めておるのではなかろうかとう点でございますが、この点につきましては、通常コンピューターを導入いたしますと、
計算記憶あるいは検索、解析等の作業を迅速正確に
処理することができるわけでございますが、これらの作業と連動いたしまして運転操作を自動化いたしますと、いわゆる的確な自動制御が可能になります。これが
一般的には、安全をより高めるという形になるわけでございます。ただし、こういう好ましい方向を進めます際に、他の安全装置が省略されることがあってはならないわけでございますので、高圧ガス取締法に基づきます製造方法の認可あるいは技術基準の認可、こういうところで十分県及び私どものほうで監督してまいっております。それから、コンピューターを使いましても、いろんな異常な反応というものが十分コンピューターに組み込まれるわけではございませんで、どんな形でどういう事故が、異常状態が起きるかわかりませんので、そういう場合に備えまして、この設備が自動的に安全なほうに作動するような装置を備えつけさせるとか、あるいは異常時にはどういう作業をやるかということを平素十分整備をしておく、さらにそれを作業員全員に訓練、徹底させておくというふうな
措置もあわせて指導いたしております。
それから第二点の、この設備のシャットダウンあるいはスタートアップのときに事故が多くなっております。これは事故例を見ましてもそのとおりでございます。したがいまして、これを具体的にこういう形の事故を防止するためには作業標準を的確に見直してみる。それから休日、夜間作業を極力避ける。それからシャットダウンをするとかスタートアップをするときには、管理者——管理級の技術職員が必ず立ち会う。それから四番目に、シャットダウン、スタートアップを必要とするような部門には極力熟練者を配置する、こういうふうな指導を具体的にやってまいっております。
それから人為ミスの事故防止でございますが、これは先ほど総点検の際にあげました項目、こういったものの周知徹底をはかってまいっております。ソフトウエアの面とそれから設備の面と両方にわたってやってまいっております。さらに異常時の
対応を的確にさせるためには、平素十分な訓練が必要でございますが、
企業内では全装置がコンピューターナイズされておりますので、なかなかその事故を再現するというわけにはまいりません。そこでただいま大型のシミュレーター、要するに一種の異常事故を想定して、それにどう反応するかということをモデルで、模型で訓練させる、実地訓練させるパイロット設備です、こういったものをいまつくるべく進めている段階でございます。
それから四番目に御
指摘の、設備の老朽化が事故を起こしているのではなかろうかという点でございますが、十分
考えられる点でございますので、私どものほうもこういった見地からの検討をずいぶんやってみました。そこで、事故を起こしました設備につきまして、経年変化をずっと調べてみましたところ、必ずしも古い設備に事故が集中しているというふうな結果が出てまいりませんで、むしろ設備が二年くらいで、あるいは五、六年くらいというふうなところでけっこう大きな事故が起きております。この辺から判断いたしますと、老朽化は確かに
一つの事故が起きるかもしれないという遠因ではございますけれども、起きた事故を結果として見てみますと、やはり操作ミス、あるいは保安管理といったような面に、より大きな
原因があるのではなかろうかと判断いたしております。ただし設備がやはり常に十分的確な形で運転されなければならないことは言うまでもございませんので、消耗いたします部分、あるいは回転いたします部分の取りかえについては総点検の際、あるいは定期検査の際、重点を置いてチェックいたしております。
それから五番目に
先生が御
指摘になられました、設備の大型化に伴って設備間距離あるいは民家との保安距離の拡大が必要になってくるわけでございますが、これが十分かどうかという点でございます。御
指摘のようにコンビナートは集積の危険を伴っておりますので、大きくなればなるほど事故防止に、より万全の
措置を講ずる必要があるわけでございます。したがいまして、まず事故が起こらないように事業所内の保安体制あるいは各装置、弁等につきまして二重、三重あるいは四重の安全がかかるような設計にすること、あるいは先ほど来御
指摘がございましたような従業員の教育訓練、あるいは作業マニュアルの完璧さといったようなことを、まずより徹底してやるという姿勢で指導いたしておりますが、なお
通産省といたしましては現行高圧ガス取締法に基づきまして、事業の許可、設備の許可、製造方法の許可、技術基準の許可あるいは危害防止規定の認可、それから保安教育計画の修正と、こういった権限を持っておりますので、これと県の直接的な監督権限を総合いたしまして、より的確な監督体制を整備すべく
努力をいたしておる段階でございます。その中で、万が一にも事故が起きた場合に周辺民家に災害を与えないようにするという見地から保安距離の問題がやはり重大な問題になっております。現行法規によりますと、二十メートルないし三十メートル以上というふうな形になっております。これはコンビナートというふうな集積の危険を持ったものには適合いたしませんので、これを根本的に直すべく目下
審議会で検討中でございますけれども、昨年の九月でございますか、
審議会の結論が出るまでの間、この暫定
措置といたしまして、新増設の場合には二百メートル、それから既存設備の場合には百五十メートルというふうなエチレンセンターに関します暫定保安距離基準をきめまして、目下その指導に当たっておりますし、
企業側でもその指導を受けまして、修正を、改善をやっておる段階でございます。
それから、最後の第六番目に御
指摘になりました増産第一主義が事故を起こしているのではなかろうかという御
指摘でございますが、ものの、私どもの
考え方といたしまして、保安最優先という
考え方に立っておりまして、いやしくも保安を犠牲にして増産に当たるというふうなことは絶対避けなければならぬという方針を堅持いたしておりますし、御
指摘の、昨年爆発事故が多発いたしました際も、
大臣みずからそういった方針を関係者に強く
指摘をされた次第でございます。先ほど申し上げました各
企業のトップに対します保安意識のあり方等につきまして書面で回答を求めました際に、その答え……。