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1974-04-01 第72回国会 参議院 決算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月一日(月曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  三月二十三日     辞任         補欠選任      中尾 辰義君     田代富士男君      高山 恒雄君     藤井 恒男君      野末 和彦君     喜屋武眞榮君  三月二十五日     辞任         補欠選任      寺下 岩蔵君     大松 博文君      中村 登美君     林田悠紀夫君      和田 静夫君     杉原 一雄君      藤井 恒男君     萩原幽香子君  三月二十六日     辞任         補欠選任      須原 昭二君     和田 静夫君      加藤  進君     沓脱タケ子君  三月二十七日     辞任         補欠選任      峯山 昭範君     藤原 房雄君      田代富士男君     中尾 辰義君  三月二十八日     辞任         補欠選任      杉原 一雄君     須原 昭二君  三月三十日     辞任         補欠選任      橋本 繁蔵君     内藤誉三郎君      林田悠紀夫君     中村 登美君      大松 博文君     寺下 岩蔵君      工藤 良平君     中村 波男君      藤原 房雄君     柏原 ヤス君      喜屋武眞榮君     野末 和彦君  四月一日     辞任         補欠選任      内藤誉三郎君     橋本 繁蔵君      小林 国司君     鍋島 直紹君      佐田 一郎君     平泉  渉君      佐藤 一郎君     柳田桃太郎君      中村 波男君     工藤 良平君      柏原 ヤス君     峯山 昭範君      沓脱タケ子君     加藤  進君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         田中寿美子君     理 事                 温水 三郎君                 松岡 克由君                 小谷  守君                 中尾 辰義君                 加藤  進君     委 員                 河口 陽一君                 寺下 岩蔵君                 長屋  茂君                 鍋島 直紹君                 平泉  渉君                 柳田桃太郎君                 工藤 良平君                 佐々木静子君                 中村 波男君                 野末 和彦君    国務大臣        通商産業大臣   中曽根康弘君    政府委員        行政管理庁行政        監察局長     大田 宗利君        通商産業審議官  森口 八郎君        通商産業大臣官        房会計課長    大永 勇作君        通商産業省立地        公害局長     林 信太郎君        中小企業庁次長  小山  実君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        公正取引委員会        事務局取引部取        引課長      伊従  寛君        公正取引委員会        事務局取引部景        品表示監視課長  樋口 嘉重君        大蔵省銀行局総        務課長      米山 武政君        大蔵省銀行局特        別金融課長    山田 幹人君        郵政省電波監理        局放送部長    河野  弘君        会計検査院事務        総局第四局長   田中  稔君        会計検査院事務        総局第五局長   中村 祐三君    参考人        国民金融公庫理        事        角  政也君        中小企業金融公        庫総裁      吉岡 英一君        中小企業信用保        険公庫総裁    近藤 止文君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○昭和四十六年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十六年度特別会計歳入歳出決算昭和四十六年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十六  年度政府関係機関決算書(第七十一回国会内閣  提出)、(継続案件) ○昭和四十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十一回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和四十六年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十一回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る三月二十七日、峯山昭範君が委員辞任され、その補欠として藤原房雄君が、また三十日、藤原房雄君及び工藤良平君が委員辞任され、その補欠として柏原ヤス君及び中村波男君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 次に、橋本君、中尾君及び加藤君の一時委員異動に伴い、理事が現在三名欠員となっておりますので、この際理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御異議ないと認めます。  それでは理事橋本繁蔵君、中尾辰義君及び加藤進君をそれぞれ指名いたします。     —————————————
  5. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 次に、昭和四十六年度決算外二件を議題といたします。  本日は、通商産業省とそれに関係する中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫決算について審査を行ないます。  この際おはかりいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれも口頭報告を省略して本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか、   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) それでは、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 小谷守

    小谷守君 通産大臣御苦労さまです。  最近の通産行政は、石油だとか商社だとかメーカーだとか、そういう方面にばかり何か焦点が当たっておるようでありますが、私は大切な中小企業対策が何かものの陰に隠れておるような気がしてなりません。きょうは中小企業対策についてどういう御苦労になっておるか、こういう点をお尋ねをしてみたいと思います。  まず、昨年の十月以来の石油危機狂乱物価の中で、そのしわ寄せをもろにかぶっておる者は第一に消費者、あるいは年金受給者、そして中小企業者であろうと思います。中小企業倒産は四十九年に入りましてからその数をたいへん増しておるように伺うのでありますが、中小企業倒産状況、そういった中小企業をめぐる情勢について、中小企業庁のほうからでも事情をお知らせ願いたいと思います。
  9. 小山実

    政府委員小山実君) 中小企業倒産状況でございますが、最近の負債金額一千万円以上の倒産状況を見てまいりますと、昨年の八月ごろから騰勢が高まってまいりまして、四十八年、年間では前年比一四・九%増の八千二百二件ということに相なっております。で、四十九年に入りましてからも、一月は八百二十一件、これは対前年同月比で八二・九%の増でございます。それからまた二月は八百五十七件、これは対前年同月比七三%の増と、高い水準の倒産が続いておるわけでございます。  このような最近の倒産の要因を見てまいりますと、金融引き締めのもとで原材料不足とか原材料価格の上昇による採算割れ等を直接の契機とするものが逐次増加する傾向が見られまして、全倒産件数の中に占めますもの不足金融引き締めを直接の契機とする倒産件数の割合も、四十八年の一月から六月にかけましては八・八%、それから七月−十二月におきましては一八・二%でございましたものがことしの一月では三一・一%、それから二月では三二・四済、こういうふうに逐次ふえてまいっております。で、今後の倒産動向について考えてみますと、石油をはじめといたします物資需給につきましては若干緩和のきざしが見られるわけでございますが、総需要の抑制というものが次第にきいてまいりますし、金融面等につきましても今後予断を許されないものがございますので、倒産が四月以降増加していくという心配もございますので、その動向を注意深く見守りながら適時適切に対処してまいりたいと、かように考えておるわけでございまして、三月におきましても四十八年度末の臨時の措置といたしまして三機関に緊急に必要な運転資金貸し出し円滑化をはかるため五百億、沖繩振興開発金融公庫と合わせまして五百五億の貸し出しワクの追加を行なっているわけでございます。
  10. 小谷守

    小谷守君 中小企業倒産石油危機の十月から急激にふえて、十月には八百八十九件、十一月に八百五十八件、十二月が九百三十一件、四十九年に入って一月は八百二十一件の二月八百五十七件、これまでの四百件から七百件台の件数から大きく増加しておるようであります。原因別に見ましても四十八年九月まで第一位を占めておりました放漫経営というふうなこういう原因を抜いて、ことしに入ってからは販売不振が群を抜いておるように見えます。一体これは何を物語っておるのでありましょうか。明らかに昭和四十八年代より商社、大企業の買い占め、売り惜しみによるもの不足、特に中小製造業者に対する原材料入手難高騰に伴う影響が多かったのではないか。中小企業金融公庫昭和四十八年九月時点のアンケート調査によりますれば、原材料高入手難によって生産受注販売計画影響を受けたものは約四分の三の企業がある。製造業を例にとれば受注成約上支障があるとするものは二六・六%、納期がおくれがちであるとするものが三五・九%、生産の増加が思いどおりできないとするものが一五・八%、生産減少を余儀なくされるもの七・九%、その他一・六%となっており、影響のないものは二三・七%とされております。さらに加えて燃料価格高騰生産減少コストアップに拍車をかけておるこれらの現状に対しまして、この際大臣中小企業のこういった情勢に対する御認識とこれに対する対策の基本についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  11. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中小企業につきましては先生指摘のとおり昨年の年末にかけて倒産件数がふえておりますが、ことしに入りましてからもその増勢がやまない、むしろ心配される傾向にありますのは総需要カットというものが非常にきいてまいりまして、金融引き締めが下部に非常に浸透してきた結果ではないかと思われます。最近におきましては特に生産減不況的な情勢を呈している産業としては繊維がございます。それから自動車関係の下請、それから家電、それから機械産業、これらがかなり不況の様相も呈してきております。それからもう一つは、デパートの売れ行きがかなり低下してまいりました。そういう意味において小売り関係とスーパーとデパートとの商戦が激しくなってくるのではないかとにらんでおりまして、こういう場合における小売り関係不況ということをわれわれはいまから心配しておかなきゃならぬと思っております。根本的には、やはり総需要カットということが如実にしみてきたという原因がそれらの産業を通じ、また商業機構を通じて如実に出てきておるのでありまして、この影響を見ますというと、六月にかけてこの傾向はさらに強まるものとわれわれ心配しております。十二月末におきましては三千四百億円ほどの三機関特別融資をやりました。またこの年度末については五百五億円ほどのものをやりましたが、この六月にかけましてどういう情勢が出てくるか深甚の注意をもって見守りながら、われわれとしてはそれらの資金的手当てについて十全の策を行なうようにいたしたいと思っております。  なお、今回国会信用補完制度改革法を御提案申し上げておりまして、いろいろ御審議をわずらわしておるところでございますが、これらも信用保証協会を通ずる融資ワクの拡大に貢献できると思っておりまして、これらも至急成立を希望しておるわけでございます。
  12. 小谷守

    小谷守君 中小企業に対する資金手当て、これをひとつ中小企業庁のほうから伺いたいのでありますが、最大の問題の一つ金融だと思います。数次にわたります公定歩合及び預金準備率の大幅止き上げ、あるいは従来の引き締め政策ワク外に置かれてきました中小企業金融機関にも窓口規制がだんだん及んでまいりまして、資金繰りはたいへん苦しい。中小企業信用保険公庫が行なった四十八年十月から十二月までの保証先企業アンケート調査によりますと、金融機関からの借り入れの難易は、前期に比べて困難とするものが四三・五%とふえておる。借り入れ金利率も低下したとするものは二・五%である。上昇したとするものが七三%にふえておる。貸し出し約定平均金利昭和四十八年九月全国銀行が七・四九八%、十月に七・七〇六%、十一月が七・八四四%、中小企業専門金融機関といわれる相互銀行で九月七・九五七%、十月が八・〇五四%、月を追って上昇しておる。こういう市中金融機関からの資金繰りについて政府はどういうふうにお考えになっておるか。中小企業庁のほうはどういうふうにこれを把握しておいでになりますか。
  13. 小山実

    政府委員小山実君) 先生の御指摘のとおり、中小企業は、手当てをしております資金面におきましては政府系機関シェアも最近だんだん上がってまいりまして、約一〇%程度にまで上がってきてはおるわけでございますけれども、やはりその残りの九割以上というものは市中銀行から調達をしているわけでございます。その九割に当たります市中銀行の分が窓口規制等によりまして非常に詰まってきておるわけでございます。私どもといたしましては、たえず大蔵省を通じ、あるいは直接銀行協会等に対しまして政府系機関貸し出しワクを増加するにあたりましても、市中銀行中小企業に対して不当にしわ寄せをすることのないように十分配慮してほしいということを再三にわたって要望しているわけでございます。ただ非常に規制がきついわけでございますので、一方におきまして、先ほど大臣も申されましたように、適時適切に三機関貸し出し規模の増大ということをもって配慮してまいりたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
  14. 小谷守

    小谷守君 政府系金融機関役割りでありますが、政府市中金融機関によるこのような資金繰りの苦しさを補完するものとして中小企業金融公庫国民金融公庫商工中金等いわゆる中小企業機関役割りを誇大に宣伝をしておられますけれども、しかしこの三機関中小企業に向けている貸し出し残高は、これは四十八年十月現在で全金融機関中、中小企業金融公庫が二・六%ですね、あるいは国民金融公庫が二・一%、商工中金が三・六%にすぎない。全国銀行の五〇・七%、相互銀行の一五・五%、信用金庫の一九・一%に比べると額において問題にならぬではありませんか。これでいて補完機能を云々することはどうでしょう。このシェアでは、中小企業の当面しておる苦しみに対する対策としては非常に弱いと、こういう感が深いんですが、いかがですか。
  15. 小山実

    政府委員小山実君) 政府系機関補完的機能と申しますのは二つあるんではないかというふうに考えます。一つは、質的に中小企業民間金融機関から融資を受けることが困難なような性質の資金を融通すると、こういう面が一つあると思います。それからもう一つのほうにつきましては、いま先生のお話のございましたように、まあ市中銀行融資というものは、これは国の金融政策とのからみもございますけれども、景気の動向にかなり左右されやすいわけでございます。そういう点を量的にある程度補完をしていくと、こういう役割りと、この二つは政府系機関機能ではないかと、こういうふうに考えているわけでございます。  で、御指摘の全中小企業向け貸し出しに占める三機関の比率が非常に低いと、この程度で十分かという点でございますが、これは確かに多ければ多いほどいいということも言えるのかもしれませんけれども、やはり補完的な意味というところにおのずから常識的な線があろうかと思います。まあ昨年前半までの非常な金融緩和期におきましては、中小企業機関シェアというものはある程度低下しておりましたわけでございますが、最近のように詰まってまいりまして政府自身も三機関貸し出しワクを逐次ふやしているということで、先ほども申し上げましたようにシェアがかなり上がってきて一〇%に近づいておると、こういうことでございまして、まあ今後の推移を見ながらその必要な措置をすることによってこのシェアもときによっては上がっていくというふうに考えておるわけでございます。
  16. 小谷守

    小谷守君 中小企業機関貸し出し条件でありますが、政府系中小企業機関一般市中金融機関から融資を受けにくい中小企業者一般の庶民に貸し出すことを目的としておるのでありますので、そういう意味での存在価値は高いと思います。それならば、なぜもっと金利貸し出し期間、賃し付け限度緩和しないか。金利にしましても中小企業金融公庫平均八%でしょう。昭和四十九年二月からは八・九%であります。また国民金融公庫もほぼ同じ、商工中金では四十九年一月から九・四%という高利であります。もちろん法令または特別の制度による貸し付けにつきましては、金利も六・五%とか、据え置き期間も認めるとか、除外例はありますけれども、それはきわめて限られておる範囲である。中小企業金融逼迫、そして倒産、これは少し言い過ぎかもわかりませんけれども、やはり国の政策の誤りである。それが大きな原因であるという立場をとるならば、この責任をとるために長期、低利による金融手当をするように金利の六%以下の切り下げあるいは期間の二十年くらいの思い切った措置考えていただかなくてはならぬと思います。相互銀行は四十八年十月八・〇五四%、十二月は八・二三五%という平均貸し出し金利であって、政策金融機関がこれと同等またはより高い金利はおかしいのではありませんか。必要ならば中小企業関係政府系機関原資一般会計資金を投入する。つまり出資を多くすべきではありませんか。輸銀などでは無利子産投会計からの出資が多いので輸銀自体貸し出し利子は、場合によっては異なりますけれども、大体五・五%から八・五%前後である。このくらいの弾力的な取り扱いはできないか。資本構成が、いわば輸銀のほうが楽だからということであるならば、大臣いかがでしょうか、思い切って一般会計から原資を入れるべきではありませんか。こういう点について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まさに御指摘のとおりであると思います。原資投入不足の感は免れません。われわれとしてもできるだけ一般会計から原資を入れまして金利を安くするように努力をしてきたところでございますが、必ずしも十分でないことをまことに遺憾に存じます。中小企業関係政府関係機関金利は大体八%から九%の間ぐらいであると思いますけれども、いかに高金利時代とはいえ、中小企業対策としてはやはり高いような気がいたします。大蔵省に対しては公定歩合の引き上げと同時に、連動して政府関係機関金利を上げているときに、われわれとしてはいつも抵抗して中小企業関係は据え置いてもらうように、あるいはできるだけ避けてもらうように努力をしてきたところでございます。中小企業関係ではまたそのほかに中小企業振興事業団がございまして、集団化事業等についてはそちらの面からこれはかなり低い三分とか、場合によっては無利子お金を貸すという制度も片っ方ではあります。また一面において、中小小売商業振興法という法律を去年つくっていただきまして、これは商店街等が連携してパーキングプレイスをつくるとか、あるいは街路灯をつくるとか、そういう場合にはまた非常に安い金利お金もめんどうをみるようにいたしておりますが、個々の企業に対するものについてはまだ必ずしも十分でございません。そういう点は今後大いに努力していきたいと思います。
  18. 小谷守

    小谷守君 行政管理庁おいでになっておりますか。——中小企業系金融機関について行政管理庁は昨年十月十一日公庫に対して勧告を出されております。またそれに対する対応通産省として御発表になっておるわけでありますが、まず勧告の趣旨はどういう点であったか、これに対する通産省の回答と申しますか、対応はどういうことであったか、要約してひとつ御説明を願いたいと思います。
  19. 大田宗利

    政府委員大田宗利君) 公庫関係監察につきましては、これは四十四年度から特殊法人監察を毎年計画しております。その一環といたしまして、金融公庫関係監察を実施したものでございます。公庫関係は非常にたくさんございますので、中小企業関係について申し上げますと、第一が経営成績の適正な把握の問題でございます。これは第一に滞り貸し償却引き当て金処理の問題がございます。これは現在の滞り貸し償却引き当て金の額が、実際の、毎年処理されました実績と非常に大きい開きがあります。その点を検討をいただきたいということでございます。それから第二に債券発行費及び債券発行差金処理の問題でございます。これは債券発行費調達資金の全利用期間にわたって配分計上すべきものだと考えておりますけれども、これについて公庫国庫納付金に関する政令に定めがないために、債券発行費として支出した全額を支十年度の費用として計上されている問題でございます。第三番目に退職手当処理の問題でございます。退職手当退職者の全在職期間にわたって配分計上すべきものだという考え方で勧告しております。それから第四番目に、損益計算書表示の問題がございます。これは非常に事務的な問題でございますが、これは同公庫の重要な業務一つとして受託業務がございます。これに基づく受託手数料を雑収入の中に計上しているという問題でございます。  それから次に、理事等専決規程の整備をはかるということで勧告をしておりますが、これは現在理事等専決規程が整備されてないということに基づきまして、これを理事等の権限と責任を明確にするために専決規程を整備する必要があるということでございます。  それから理事会設置運営に関する規程を整備するということでございます。  大体主要なものは以上のようなものでございます。     —————————————
  20. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 委員異動について御報告いたします。  ただいま中村波男君及び柏原ヤス君が委員辞任され、その補欠として工藤良平君及び峯山昭範君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  21. 小谷守

    小谷守君 行政管理庁指摘、ただいま御説明がありましたように、第一に中小企業金融公庫等に対して経営成績の適正な把握がなないという点、その一つとして滞り貸し償却引き当て金処理がおかしい、こういった財務処理の問題が第一、第二には理事等機能、第三には委託業務等、数点にわたった指摘でありますが、財投を主に運用し、中小企業者を相手にしている公庫財務が不適正であるという指摘を受けたことはまことに遺憾であると申し上げなくてはなりません。通産大臣としてはこれをどう具体的に処理される御所存でございますか。一応通産省としての回答が出ておりますが、問題の滞り貸し償却引き当て金については通産省の現行のやり方を是認しておいでになるのか。これは財務整理を怠った焦げつきであり、国庫納付を渋っているとしか思われません。大臣の御見解を承りたいと思います。
  22. 山田幹人

    説明員(山田幹人君) 私から、全体を統一的に処理いたしましたので、銀行局の特別金融課のほうからお答えさしていただきます。  ただいまの行政管理庁の御指摘は、公庫経営成績の適正な把握という観点から行なわれておるわけでございますが、その要旨と申しますか、それは一つは、公庫決算におきます滞り貸し償却引き当て金の繰り入れの方式が民間の企業の一定率洗いがえ方式と異なっている点に着目していらっしゃること、それから滞り貸し償却実績に比較いたしまして総体的に高い積み立てが行なわれる結果となっていること、第三番目には、繰り入れ前のいわば償却前利益の全額が繰り入れられる結果となっておりまして、損益が常にゼロになっておるということから経営成績がよくわからぬではないかと、こういう問題意識であると思われます。これらの点につきましては、全額政府出資の公法人でございまして、その予算について国会の議決を必要とし、かつ決算の御審議をいただく公庫でございますし、かつ国の政策に沿った業務運営を行なうことを使命としている政府関係金融機関でございますので、そうしたところでは滞り貸し償却引き当て金の繰り入れ方法等につきまして私企業の一定率洗いがえ方式と全く同様の方法によらなければならないとは必ずしも考えられないこと。第二番目に、公庫は、それぞれの目的とするところによりまして、中小企業の振興安定のためなど民間金融機関融資することが困難とするような低利長期の融資を行なうことが設立の目的でございまして、それだけに基本的に民間金融機関よりはリスクが高いという性質がございまして、今後とも経済の変化に即応した業務運営が要請されることを考えますと、民間金融機関と率の点でも同一の繰り入れ率でなければならないとは私どもとして考えがたい。第三番目に、政府関係金融機関としての公庫経営成績なるものは、むしろそれぞれの公庫に求められております政策金融がそれぞれの目的に沿って適切に運営されているかという点で御判断いただくべきではないか。民間金融機関のように利益を追求するものではございませんで、もっぱら損益の点から判断していただくのは必ずしも適当とは考えないというぐあいにお答えしたわけでございます。  ただ、公庫について見ますならば、確かに行管の御指摘のように設立以来相当の年月が経過しておりまして、しかも公庫及び企業努力もありまして、この間の貸し倒れ実績がそれほど高くない実情は千分に私どもとしても認めますので、今回の行管の御指摘契機といたしまして、四十八年度決算以降滞り貸し償却引き当て金の繰り入れ率であるとか、あるいはその累積限度の考え方であるとか、そういったものの見直しを行なうことにしたいと考えております。で、具体的な率の策定にあたりましては、中小企業の振興安定のために一般金融機関が融通を困難とする資金の供給を行なうといった公庫の使命の遂行に支障のないような率にしたいと考えている次第でございます。
  23. 小谷守

    小谷守君 いろいろあなた言われましたが、結局、行管の指摘したことを今後はこれを尊重してやろうということですか。何かああでもない、こうでもない、いろいろ評論家みたいなことをあなたおっしゃったが、どうなんですか。
  24. 山田幹人

    説明員(山田幹人君) 基本的に公庫経営成績把握が適切に行なわれがたいという点につきましては私どもとしても言い分がございますけれども、御指摘のように実績に比べてかなり高いではないかという点につきましては、十分反省もいたしまして適切な率に改定することを考えたいと、こういうことでございます。
  25. 小谷守

    小谷守君 国民金融公庫の小企業経営改善資金融制度について伺いたいと思いますが、この制度は従来から中小企業対策で一番軽視されていた小企業者、すなわち商業、サービス業には、常時雇用者二人以下、製造業者にあっては常時雇用者五人以下の企業者に対して百万円以下二年間の期間で年利七%無担保無保証で貸し出す制度であります。これはかなり期待をされて発足した制度だと思いますが、発足後今日まで日が浅いわけでありますけれども、これの運用の状況はどういうことになっておりましょうか。私どもの手元にもいろんな意見が寄せられておりますが、まず当局としてはこれを大事に伸ばしてもらわなきゃいかぬと思いますが、現状どういうふうに把握しておられますか。
  26. 小山実

    政府委員小山実君) 昨年の十一月から発足いたしました。当初いろいろふなれな点もございまして、若干ごたごたしたこともございますが、その後ルートに乗りまして非常に順調に消化されてきておるわけでございます。で、ただその間たとえば金額が百万円ではどうも少ないと、もっとこれをふやしてほしいとかあるいは返済期間につきましても二年では短いと、もう少し長くしてほしいとかいろいろ声がございました。来年度、四十九年度におきましては貸し付け限度百万円を設備資金の場合には二百万円までと、従来は運転資金は五十万までと、設備資金を込みで百万円ということでございましたけれども、運転資金はとりあえず据え置きまして設備資金を込みの場合に二百万までと、こういうことに引き上げることにしております。また、返済期間につきましても、百万円以上の設備資金につきましては三年以内で伸ばせると、こういうことに改善を加えておるわけでございます。その他いろいろな事務手続の細部につきまして、実際に実務を担当しております商工会とか商工会議所の経営指導員の皆さんからもいろんな意見が出ておりますので、こういうものは全部が全部直ちに実行できないものもございますが、できるだけこれは第一線に立っている人の声を尊重して改善できるものは四十九年度からでもすみやかに改善をしてまいりたいと、こういうふうに考えている次第でございます。
  27. 小谷守

    小谷守君 これはぜひそういうことでお願いしたいと思います。私どものほうにもいろんな、性急な意見が寄せられておりますけれども、まだ発足して早々のことでありますからそういうことをいま持ち出すべきでないと思いますが、いろんな商工会議所なり商工会の実務者の意見を十分ひとつ取り上げてやっていただきたいと思います。  さて、中小企業設備近代化資金の貸し付けの状況であります。中小企業設備近代化資金中小企業近代化資金等助成法に基づく資金でありまして、都道府県が国の補助金と自己資金によって資金を造成し、中小企業者に対し設備の近代化に必要な資金を無利子で所要資金の半額を融資する制度でありますが、これが毎年のように会計検査院から不当事項に指摘をされておる。一体これは何が原因であるのか、会計検査院のほうでこれは何が原因であるとお考えになっておりますか。会計検査院のほうからまずひとつ伺っておきたいと思います。
  28. 田中稔

    説明員田中稔君) 設備近代化資金につきましては、会計検査の結果毎年度、特に四十六年度以降は相当多くの件数指摘をやっておる状況でございますが その原因といたしましては、貸し付け事務に当たる県の担当の職員の事務ふなれ、特に私どもが検査いたしまして目立ちますのは、貸し付けたあとの事後管理といいますか、貸し付けの目的どおりに使われたかどうかということに対する確認が不十分であるということが一つあげられると思います。  それからもう一点多分に目立ちます点は、機械販売業者の中には自分のほうから作為的な書類を書いてやって、それによって自分の売り上げをあげて伸ばすというような点も見受けられるように思っております。そういうことでございますので、私どもといたしましては、通産省におかれまして職員のより一そうの指導、それから機械販売業者に対する適正な指導という面を今後ともお願いいたしたいというふうに思っております。
  29. 小谷守

    小谷守君 昭和四十五年度には九百五十九万余円、四十六年度には三千四百十四万余円、四十七年には三千百六十三万円余が国庫補助の目的に沿わないということで指摘をされておる。たいへん遺憾と言わなくてはなりません。ただ会計検査院もたいへん御苦労でありまして、毎年こういう指摘をしておりますが、一向に改善をされない。会計検査院も何かマンネリになっているんじゃないかと私は思っております。もっと大きなほうはあまりやらずに、こんな設備近代化の小さいのをつまようじでつつくようにしてこうやっておる。これは不当事項があったんですから、そのことは是正されなければなりませんけれども、会計検査院も何か同じ軌道の上だけを走って、ほかのほうにもたくさんいろいろなものが、大口があると思うけれども、そのほうにはあまり目を向けずにこういうところだけをほじくっておる。こういう気持ちも率直にするわけでありますが、そこで通産省では貸し付け対象が手続にふなれな零細事業者で、しかも非常に多数の貸し付け申請が一時的に集中してなされるため県としても診断、審査、支払い検査等の事務がふくそうするため十分な監視が行き届かぬ。中小企業庁としてもこれを改善するために貸し付け担当者の研修、事故の事例に関する情報の交換、違約金の徴収等の特例による制裁の強化につとめるというふうに言われておるのでありますけれども、要するに申請者のふなれ、都道府県の手不足、通産局、中小企業庁の連絡の不備ということが大きな原因であろうと思われます。申請から貸し付け検査までのいろんな手続のめんどう、これもかなり煩項ではなかろうか。私は少し乱暴かもわかりませんけれども、これを全部都道府県にまかしたらどうかと、思い切って。責任を半分持たせておるようなことをしておりますから、これに対する監督に腰が入っていない、こういうことも言えると思うんです。したがって全部都道府県にこれはまかしたらどうだ、あるいは通産局が直接監督するとか、手続をもっと簡素化していく方法はないか、あるいは少し乱暴かもわかりませんけれども、この制度政府系金融機関に全部移管してしまったらどうだと、少し乱暴かもわかりませんけれども、いままでの姿で毎年毎年うじうじ会計検査院の指摘を受けて、それがだんだん数が多いんです。少しも減っていないんです。これに対する改善策を抜本的に考え直してみたらどうだろうかと、こういうふうに思いますが、大臣、いかがですか。
  30. 小山実

    政府委員小山実君) 非常に制度の技術的な問題の御質問が多うございましたので、私からかわってお答えをさせていただきます。  先生指摘のように、この設備近代化資金というのは、最近、毎年非常に多数会計検査院から不当事項の指摘を受けておりますことは、非常に私どもとしても遺憾に存じておる次第でございます。まあいまお話しのございましたように、いろいろな改善策を講じておるわけでございますが、一つには非常に零細な企業の方を主として対象にしていると。実績から見ましても従業員四十九人以下というのが半分以上占めておると、こういう実績になっておるわけでございます。件数も、たとえば四十六年度だけを見ましても一万九百三十五件という非常に多くの件数をこなしているわけでございまして、この辺が県の職員の能力等との関係からアフターケアが十分できないということでいろいろ問題を起こしているわけでございまして、私どもとしましては、たとえば現在、設備といたしましては一千万まで、その半分でございますから貸し付け金額で五百万までということになっておりますのをもう少し上げて、あまり件数をこまかいところばかりじゃなしに少し上までもできるようにということを考えるとか、いろいろ改善策を考えておるわけでございますが、抜本的には、たとえばいま先生の御指摘のありました中小企業系の金融機関にまかしてしまったらどうかという御意見もあろうかと思います。ただ、中小企業の施策全般が、何と申しますか、公共団体と国との二人三脚というような形でできておる制度が非常に多うございまして、この制度もいろいろそういうマイナスの面はあるにいたしましても、非常に小口、零細企業の方に無利子の金が出るというところが非常に高く評価されているわけでございます。これをたとえば金融機関に頼むとかいろんなことにいたしますと、なかなか無利子手当てもいきにくいと。それで、これは県と国が半分ずつ出資といいますか、まあ補助金という名目でございますが、無利子の金を出しているというところでそれが非常に評価されておるわけでございますので、そこをいろいろ変えることによってまあ無利子というところ自身にまたいろいろ影響が出てくるというところが非常に簡単に改善方法が見つからないゆえんでございます。  ただ、県にまかしたらどうかという点につきましては、この制度自身が原則として貸し付けを受ける方は県へ申し込めばいいということになっておりまして、ただこれも無利子という特別の恩典であるがゆえにいろいろ、業種とか用途とか一定の制約が国と県との間に結ばれていて、それが貸し付けのときにも適用されるという意味で、通産局なり中小企業庁が県との間でいろいろ手続が要るということでございまして、中小企業の方は県へ申し込んでいただければそれでいいということにしてあるわけでございます。しかも無利子であるということのためにだれでもいいというわけではなしに、県の総合指導所の診断を受けて、ほんとうにこれは特定の事業の近代化に著しく寄与するという認定を受けたものに限ると、こういうことをやっておるわけでございまして、まあ確かにやかましいことを言うから違反も出るという言い方もできるのかもしれませんけれども、要するに、公共団体と国の税金で利子のつかない金が半分ずつ入っておるというところに一定の制約もあるということでございます。まあ、毎年毎年こういうことで御指摘を受けるのは非常に私ども遺憾でございまして、今後その改善につきましては、できるだけ実施の段階で努力をしてまいりたいと、こういうように考えておるわけでございます。
  31. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体いま小山君が申し述べたようなことであると私も思います。しかし、事態はそのまま推移を見守っておくべきものではなく、毎年毎年改善していくべきものであると思いますので、関係各省とも至急連絡を密にいたしまして、積極的に改善していく必要があると思います。特に都道府県との関係というものは、ひとつ通産局にも力を入れさせまして、改革させたいと思います。
  32. 小谷守

    小谷守君 拘束預金——歩積み両建て等いわゆる拘束預金について、公取は拘束預金の実態というアンケート調査報告を四十八年五月三十一日現在の時点のものを発表しておいでになる。いわゆる貸し付けの際に一定の預金を強要する両建て預金、手形割り引き等についても一定の預金を強制する歩積み預金は、昭和三十九年に公取から、「自己の取引上の地位が相手方に対して優越していることを利用して、正常な商慣習に照して相手方に不当に不利益な条件で取引する」という、独禁法第二条第七項に基づく公取告示「不公正な取引方法」の第十号に該当するおそれがあるとして警告をされた経緯があるものであります。そして公取としては過去十八回定期的に調査を実施し、今回は十九回目であると承知をいたします。ところが、この調査によりますると、拘束預金は一応は改善されつつあるという結果にはなっているものの、拘束性預金は依然として中小企業にとって一般貸し出しより高率になっている。また、いままで金融機関が預かっていた預金証書は返してくれたが、口頭で引き出さないように言われた、あるいは新規貸し出しに際しては拘束をせず時期をずらして預金を拘束するようになった等、金融機関側の巧妙な手段による拘束預金の強制がむしろ多くなっていることが報告されている。大蔵省はこういう事実をどう判断しておられるか。金融行政の正当な指導をしておると言えるかどうか。公取のこの拘束預金に対する調査のその後の概要を御報告願うとともに、大蔵省の御見解を伺いたいと思います。
  33. 伊従寛

    説明員伊従寛君) 先生指摘のように、公正取引委員会としましては、拘束預金につきまして毎年二回中小企業側から調査を行なっております。で、最近の傾向としましては、この数年来拘束預金は改善されてきております。先生指摘の昨年五月末の調査によりますと、狭義の拘束預金率すなわち中小企業借り入れあるいは手形割引の際に拘束を受けている預金の借り入れ金額に対する率は前々回の一昨年十一月末が五・三%でございましたが、昨年の五月末では五・四%とやや増加しております。それから狭義の拘束預金率にさらに事実上中小企業側で引き出せない預金を加えましてこれを広義の拘束率といっておりますが、これは一昨年の十一月末が一九・二%でございましたが、昨年の五月末では一九・一%とやや減少しております。計数上はこのように減少傾向あるいは改善をされつつある傾向が示されておりますが、先生いま御指摘のように、アンケート調査によりますと、一昨年の十一月末に比べまして昨年の五月末では、いままで金融機関が預かっていた預金証書は返してくれたが口頭で引き出さないように言われた、あるいは新規貸し出しに際して拘束せず時期をずらして預金を拘束するようになったというものがかなり大幅にふえておりますが、これはただ注意しなければなりませんのは、この回答はかなり少ない数字からの比率であるということでございます。私たちの調査は中小企業九千社に対して出しておりますが、この回収率は二割の約千八百余社でございますが、そのうちいまのアンケートにつきましての回答はやはりそれぞれの項目につきまして今回は口頭で引き出さないように言われたといいますのは百二十四、あるいは拘束せず時期をずらして預金を拘束するようになったというのが百二というふうな形で、一〇%に満ちませんので、この点からすぐに全体として悪化したという回答があるというふうにとりますのは危険かと思いますが、いずれにしましても、こういうふうに計数上は改善されつつあるけれども実際には改善されていないというふうに考えるものがふえておりますので、今後ともこの面の拘束預金につきましては厳重に監視していきたいと思っております。
  34. 米山武政

    説明員(米山武政君) いま公取のほうからお答えありましたように、私ども拘束性預金の報告は五月、十一月に定期的にとっております。この結果によりますと、だんだん改善されるという形にはなっておりますが、これはしかし表面的にはそうですが、事実がこのままであるかどうかきわめて疑わしいということもまたほんとうの形だろうと思っております。私どもはこの点につきましては銀行検査をする際には必ず三、四店は歩積み両建ての問題のみを特別に検査するというふうにいたしております。その結果によりますと、非常に残念なことではございますが、銀行から報告を受けたその正確性というのは大体五〇%ぐらいである、まあ検査した結果によりますと半分はどうも報告と違った実態の歩積み両建てをしている、こういう結果が出ております。非常にそうした点で遺憾なことと思っております。特に最近のように引き締めが強化されますとどうしてもこの傾向が多く出てくるということでございます。  私どもこれに対しまして、特に銀行の歩積み両建てを整理するために特別に担当役員をきめてその整理に当たらせるように措置しております。そしてこれを、この担当役員の名簿を役所のほうにも届けてもらいまして、この報告の結果と検査の結果が著しく乖離するようなところがございますれば、この担当役員の責任の追及その他きびしい行政上の措置をとるということをきびしく申し伝えておるわけでございます。今度また間もなく五月の報告があるわけでございますが、検査の結果その報告が事実と違うようなことが判明した場合にはきびしい措置をとるつもりでおるわけでございます。
  35. 小谷守

    小谷守君 私の手元にあります資料によりますと、いままで金融機関が預かっていた預金証書は返してくれたが口頭で引き出さないように言われた、というのが百二十四件。新規貸し出しに際しては拘束せず時期をずらして預金を拘束するようになった、これが百二件。当座預金の残高をやかましく言うようになった、これが二百三十四件。債務者名義でない個人名あるいは無記名の預金を要求されるようになった、これが五十五件。歩積み預金の全部または一部の廃止のかわりに定期預金または積み立て定期預金をさせられるようになった、これが百二十二件。特に手形の審査がきびしくなり、いままでと同じ条件の手形でも割り引いてくれなくなったり、信用保証協会の保証を新たに要求するようになった、これが十九件。割引ワクを少なくされた、十二件。口約束や念書による拘束預金がなくなったかわりに、事実上引き出せない暗黙の拘束預金が増加した、これが百三十五件。拘束預金に見合う分についての借り入れ金利または割引料は引き下げられたが、そのかわりにその他の部分についてはいままでより金利を引き上げられた、これが三十五件。預金担保による借り入れを申し入れたが断わられた、四十一件。定期預金等を拘束扱いにし金利措置をしてくれるよう申し入れたが断わられた、四十六件。こういう実情であると承知をいたしておりますが、大蔵省銀行局では実情を、いま申し上げたような点について御認識があるかどうか。加えて、あなたのほうの指導に服さない金融業者については厳正な態度で臨む、こういう強いおことばでありましたが、あなたのほうの指導に服さない銀行その他金融機関に対しては具体的にどういう措置をおとりになりますか、ことばだけでなしにどういうことをおやりになるか、伺っておきたいと思います。
  36. 米山武政

    説明員(米山武政君) ただいま先生がおっしゃいましたこの最近の傾向としまして、公取委員会でアンケート調査した内容につきましては、私どもこの中をよくいろいろ検討しているわけでございますが、ただ、この中で、確かに口頭で引き出さないように言われたとか、それから暗黙の拘束預金が増加した、こういうものは私どもは厳に禁止しているものでございます。ただ、いまその中で、先生がおっしゃいました、たとえば当座残高をやかましく言うようになったとか、割引ワクを少なくされたとか、まあこういうところが実質的な拘束性を持つことになるかどうか、これが議論の分かれるところでございます。どうしてもやはり借りるほうから見ますと、銀行員のそうしたちょっとしたことばの端がそういうふうにとられると、こういうふうなことになってはいけないわけでございまして、御承知のように拘束している預金につきましては、これは拘束しているということ。それから拘束していないものについては、それ以外のものは全部拘束していないので、自由に引き出してもけっこうでありますということを全債務者に通知するようにということで、銀行からそれは励行されているわけでございます。したがいまして、まあ形式的に申しますと、拘束しているというふうに通知がないものに対しては自由に引き出せるわけでございますが、いま申しましたように借りる者と貸す者の立場というものがありますので、そうした点について口頭で引き出さないようにとか、あるいは暗黙の拘束を要求されたような場合につきましては、これはなかなか事実上引き出すことは無理だということはわかりますので、そうしたことは私ども先ほど申しましたように銀行検査の際、そういうことがあるかどうか、一件一件全部検討しておるわけでございます。その結果が先ほど申しましたように約半分くらいの銀行が、数の多い少ないはございますが、そうした事実があるということで、これはきわめて遺憾なことでございます。そのつど従来担当重役を呼んで厳重に注意し、次回以後そういうことのないようにということをやっておりますが、今回さらにこれは前からそういうふうな、一応銀行には通達して、もしそうしたその整理が事実上、報告と違うような事実があるならば、厳重なその責任を追及すると、こういう通達を出しておりますが、今回こうした事実、特に最近の引き締め下におけるいろいろな諸情勢から見て、この五月以降の報告で、もし万一そういうことがありましたら、担当重役の責任追及等を含めて厳重な措置をとる、こういうことにしております。
  37. 小谷守

    小谷守君 この歩積み両建ての問題は古い問題であって、同時にこれは新しい問題だと思います。大蔵省のほうでは特にひとつ中小企業保護のために、厳格な金融機関に対する指導を強めていただきたいと思います。  さて、商社中小企業への再建融資の是非、最近の新聞報道によりますると、丸紅が倒産状態にある八幡鋼機という会社に対して融資援助などを行なうとともに、代表権を持つ出向社員を送り込んだというふうなことが伝えられております。これはまあ新聞の報道でありますが、商社が膨大な資金力と機動力を利用して、いわゆる市場支配に乗り出し、消費者に迷惑をかけておることは明らかでありますが、こういうケースは本来は金融機関政府の手で何らかの措置を講ずべきであると思うんであります。政府中小企業対策は、正直のところ制度ばかり多くつくって、実際運用面で中小企業の救済に役立たぬ点が多い。そういう意味商社の出番が多くなってきておる。中小企業としては政府金融機関も当てにならないとすれば、乗っ取られることを承知の上でも、わらをつかむような気持ちで商社等にすがりつく場合もあろうと思うのです。実際問題として金融機関については大蔵省の監督があり、メーカー等についてはまた通産省の意向が浸透する。しかし、商社については全く野放しといわれておる。かろうじて公取などが行き過ぎを是正する程度である。このような商社中小企業支配は、これから厳に警戒を要する問題であると思いますが、通産大臣はこれらの点についてどういうお考えでございましょうか、お聞かせを願っておきたいと思います。
  38. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 商社の経営につきましては、今議会におきましても各党から御批判があり、社会的にもきびしく批判されておるところでございます。対外活動、対内活動ともに批判を受けましたが、特に対内活動におきましては中小企業分野に対して商社が自由を乱用して進出してきていると、こういう部面はわれわれは非常に重大な関心を持って考えなければならぬところであると思っております。しかしまた一面に見ますと、これが刺激になって流通界にある意味における改革を起こさせるインセンチブを与えて、それがために小売りやあるいはスーパー、その他等においても非常に近代化を促進するという刺激剤になっている点もあるわけです。しかし、概して見れば強い力のものがその力を利用して、弱いものに対して事実上の力を及ぼしていくというようなケースが多いと思いますので、そういう面からもわれわれは重大な関心を持っていま見つめて、必要あらば行政指導あるいは情勢によっては野党からも中小企業の事業分野の確保に関する法律のような構想もございますので、われわれも注目しておるところでございます。それで金融的な面等については、この商社の系統と申しますか、影響を受けておる中小企業等はまあ一種の有機的な関係ができておって、それに甘んじているのもあるし、またそれがある意味においては商業活動を活発にさせる一つの根拠になっておる点もあります。ただ役員を全部派遣するとか、資本を一〇〇%持ってダミーみたいに使っているというような場合は、これはわれわれは考えなきゃならぬと思いますが、中小企業商社と組んでやって、そして自分たちの商売を発展さしているという面も実はなきにしもあらずであります。商社の中にはそういういままでの因縁のある会社等に対しては、あんまり金融逼迫のおりからめんどう見たくないけれども、長い取引もあるし、泣きつかれた場合に、もしそれが倒れた場合には、関連倒産でかなり小口の債権者に迷惑をかけると、そういうような配慮もあって金を出したりして、その場を助けて、そして、そのときはそれでがまんをして損はするがまたあとでうんともうけようと、そういう手口の形態もあるだろうと思うんです。ですからこれはケース・バイ・ケースでよく厳重に内容を見きわめて見ないとわかりません。御指摘の新聞に出たものにつきましては、丸紅がやった件でございますけれども、われわれのほうでも両方の言い分を聞いてみました。聞いた結果ではこれは小口債権が相当あるので、これが倒れてしまうというと、債権者に相当な迷惑が出てきて、関連倒産も出るという危険性もあるということから、その八幡鋼機のほうで頼んでそしてやってもらった——と当事者は言っているようです。それでまあ当事者が言っていることがはたして真実であるかどうかわかりませんが、一応、両方の当事者の意見はそういうことであったようです。具体的には審議官から詳細に御報告申し上げます。
  39. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 大臣から申し上げましたように、本件は八幡鋼機側の経営の不始末から非常に苦境におちいりまして、八幡鋼機のほうから丸紅のほうに経営援助を依頼したという内容でございます。依頼を受けました丸紅のほうでは、関連事業者が非常にたくさんおるので、やはり連鎖倒産のおそれがある、社会不安を惹起するかもしれないというような点、それから当社がH型鋼の生産におきましては白川産業、三晃金属と並びます関東地区での三大メーカーの一つであるというような点から、当社の要請に応じまして援助に乗り出すことといたしたわけでございます。  なお、丸紅側といたしましては、全然この乗っ取りとかそういう意図はないというように言っておりますし、両者で取りかわした契約内容を見てみましても、株式は一応金融機関のほうで凍結はいたしますけれども、三年間たって経営が軌道に乗れば当然株券はもとのところに返すというような契約の内容になっておるというようなことを承知しておりますので、本件については言われるような経営乗っ取りというような実態はないのではないかというのが私どもの見解であります。  なお、八幡鋼機側も、社長自体は丸紅の援助に対して非常に感謝をしておるというように私のほうでは聞いております。
  40. 小谷守

    小谷守君 最後に、総需要抑制策が中小企業に対して非常にむごい犠牲をしていることに結果的に相なっておるのではなかろうか。総需要抑制策が狂乱する物価の抑制という大義名分のもとに、財政、金融の引き締めを行なおうとするものでありますが、確かに設備投資を圧縮し、個人をはじめとする消費抑制から物価の鎮静に役立てるための一つの方式には違いありません。しかし、それは成功すればの話であって、石油はキロリットル当たり八千九百四十六円を値上げされ、それに伴う石油関連製品、電力も値上げする、それに国鉄等の値上げもある。このようにして燃料、原材料がまたまた値上げされるとなりますと、これを使って物をつくる中小企業はまたまた製品価格への転嫁に進まざるを得ないことになると思うのであります。しかも、通産省は生活関連物資の値上げ抑制を百貨店やスーパーに要請しておいでになる。百貨店やスーパーがもし通産省の指示どおりに事を行なえば、仕入れ値段をたたくことになる。通産省が参考にあげられた生活関連品目リストの大半は中小企業の製品でございます。通産省では、仕入れ先の中小零細メーカーや卸売業者等に不当なしわ寄せを行なわせないようにと言っておりますが、そういうことが一体守られるであろうかどうか、こういう点に心配をいたしますが、いかがでございますか。
  41. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) こまかいところは審議官から御説明申し上げますが、総需要の抑制ということが最近みしみしと中小企業に響いてきておることは事実でございます。特に繊維関係が非常にひどくなりつつあるように思います。それから、自動車の下請産業機械産業等に相当しみてきておりますし、それから建設関係、不動産関係というのは一番打撃を受けてきております。石油関係でストレートに受けたのはネオン業者等でもあります。そういう面については一々われわれとしてはこまかい手配をいたしまして、通産局等も通じて三機関等とも連携をとらしてやっておるところでございますが、この総需要抑制がスーパーやあるいは百貨店に響いてきて、それがさらにその下請関係、納入業者等に響いてくるということは、われわれとしては一番これから注意しなければならぬところであると思います。われわれとしては、スーパーとか、あるいは百貨店とか、力のあるものについては自分たちのワク内でこれは消化しなさい、それをさらに自分たちの関係している出入り業者等に圧力を及ぼさないようにするように、この商品であまり損を、得はしなくてもほかの商品でもうけておるだろうから、それで平準化したら会社としてはそれほどの損害にはならぬ、大体そういう見当だとわれわれは踏んでおる。だから、その商品による利益の縮減というものを、それによってほかの小さいものに及ぼさないようにということを中心にしていま指導を徹底さししおるところであります。  具体的には審議官から御答弁申し上げます。
  42. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 物価対策の一環といたしまして、生活関連物資等につきまして百貨店、スーパー等に値上げ抑制を要請したわけであります。私どもは百四十八品目の基準を示しておりますが、員体的にいかなる品目を当核百貨店が値上げ抑制品目とするかという点については、百貨店側にその選択をまかしておるわけでございます。選択をまかしておるというのは、一つは、先生指摘になりましたように、機械的にこれをやりますと、生活関連品目はどうしても中小企業製品が多いというようなわけで、百貨店側が無理やりに中小卸売り業者等をたたくというような事態が考えられますので、そういうような点も配慮いたしまして百貨店側の自主的な選択にゆだねたわけでございます。したがいまして、百貨店のほうでは長期的に安定供給ができる、一定の価格で安く供給できる、大量仕入れでやれるというような品目を選んでやるというような考え方で、現在品目の選定を各百貨店が行なっておるわけでございます。  それから第二に御指摘の点は確かにあるわけでございまして、そういうようなわけで、まず第一に、百貨店側は大きな企業でありますから、当然自己の経営努力によって、仕入れ価格が上がっても自分の中でできる限り吸収をしなさいということを第一眼目といたしておるわけでございます。  次に、値上げ抑制品目であるというような理由から中小卸売り業者あるいは中小メーカーの現実の仕入れ価格ないしは生産価格が上がっておるのに無理にたたくということはいけないというようなことで、先生指摘のとおり、通牒に明記をいたしておるわけでございまして、私どもは、個々に、中小企業者からの申し入れによりまして、そういうような該当ケースがありますれば取り締まっていくことはもちろんでございますが、百貨店業者にもその趣旨をさらに強く要請をしてまいりたいというように考えております。
  43. 小谷守

    小谷守君 きょうは中小企業対策を中心に、当面気がかりな問題をお尋ねをいたしました。二十年ばかり前でございましたか、池田さんが、中小企業の二軒や三軒倒れても……云々というふうなことで、辞職をされたことがありました。まあ、そのことばの表現がどうというふうなことではなしに、当時は中小企業に対する対策にきびしさがやはりあったと思います。職を賭して中小企業を守るんだというふうなきびしさがそれぞれあったと思います。最近は、何か大きな波の中にのまれてしまって、中小企業問題が陰のほうに追いやられておるような気持ちがしてなりません。  大臣をはじめ、きょうはいろいろ御答弁をいただきましたが、どうか、ひとつ、苦しい中小企業に対して一段と対策を強化していただくように希望して、質問を終わりたいと思います。
  44. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) それでは、午後零時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時三十分休憩      —————・—————    午後零時三十五分開会
  45. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前中に引き続き、昭和四十六年度決算外二件を議題とし、通商産業省とそれに関係する中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫決算について審査を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  46. 中尾辰義

    中尾辰義君 私は、先月の二十六日に出光興産の千葉製油所の工場事故によりまして、硫化水水素が噴出をして、一人の死亡者と五人が倒れたと、こういう事故があったわけであります。なお、同日に三重県ではオキシラン化学三重工場が爆発事故を起こした。こういう情報が新聞等に出ておりますが、これらの事故につきまして、その概要並びに原因、それから通産省がどのような対策を講じたか、一括してお願いをいたします。
  47. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) ただいま御指摘の出光興産千葉製油所の三月二十六日の事故でございますが、これは第二灯軽油脱硫装置につきまして、四月一日から定期検査を実施いたすべくシャットダウンの準備に入っておりました。その一環といたしまして、廃ガス処理設備でございます第三ガス回収装置内の凝縮液分離槽——これがただいま先生が御指摘の硫化水素が入っておる槽でございます——の上部に設置されておりますベントバルブキャップをはずそうといたしまして、社員一名とそれから下請三名がこの槽の上のほうに上がりまして、あやまってバルブのキャップをはずさないで、そのフランジ——パイプを接合しておりますフランジ部分のボルトをゆるめましたために硫化水素が噴出してああいった事故になったわけでございます。それで、直ちに通産局から専門家を出し、県もすぐ現地調査を実施いたしております。  で、私どもといたしましては、なぜこのベントバルブのキャップをはずさなければならなかったのかという点が第一の問題点でございます。第二番目、この社員に対して指揮者がどういう形で指示を出したのか、この辺が第二点でございます。それから第三点といたしまして、このバルブのキャップとフランジのボルトを間違うというのは、どうみても理解できませんので、なぜこういうミスが起きたのかという三点に着眼いたしまして、県と協力して目下調査中でございます。
  48. 中尾辰義

    中尾辰義君 この出光興産の千葉の製油所は、これは二月七日もハイオクガソリンのオイル漏れ事故を起こしておる、そして自然発火を起こしたという事故もあるわけですね。そうすると、今回は再度の事故である、こういうことになるわけですが、にもかかわらず、市原署に事故の届け出があったのは発生後二時間も時間がたっておった、このように聞いておるわけですが、そこでいまあなたがおっしゃったように、私といたしましてもなぜ作業員がバルブ操作をあやまったのか、またその背後の原因が何かあるんじゃないか、こういうような気もするわけですね。そのほか設備や保安上の問題点があるんじゃなかろうかと、こういうことも聞きたいわけですが、わかっておる範囲でお答え願いたい。
  49. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 御指摘の点につきましては、直接の監督責任者でございます知事がきわめて重大な問題であるという認識を持ちまして、私のほうとも平素から緊密に連絡をとっておりますが、本件につきましても、三十日に知事が社長に改善事項を文書で手渡ししております。それによりますと、保安教育の徹底がまず第一。二番目に、特殊な例かと思われますが、下請業者に対します保安教育の徹底をうたっております。第三番目、現実に現場作業をやります際に十分な安全対策を確立することといたしまして、次のような具体的な事項を指示しております。作業前の打ち合わせ会議において全員に対しまして装置全体の運転状況なりガスの流体性質等を十分説明するようにと。そういうものに基づきまして安全な的確な作業を指示すること。それから工事の確認書につきましては、作業の内容と保安安全に関します注意事項を具体的に明細を記入すること。それから運転をいたします場合、現場に責任者が立ち会うということ。それから誤操作を防止するために工具の選定に留意すること。これはキャップをはずすというのと、ボルトをはずすということとは作業の性質が全く違いますので、ボルトをはずすためにはスパナを持ってまいらなければなりません。そういたしますと、作業に取りかかる際に持ちます道具、工具の種類によって事前に予知し得るはずだという前提での指示でございます。大きな四番目といたしまして、安全環境室がございますが、ここで製油所内全体の作業が常にわかるような連絡体制を整備することと。それから硫化水素のガスの存在する部分に危険防止の表示をした札をかける等、色分けをきちっとすること。それから、これは停止のためのシャットダウン工事でございまして、シャットダウン工事の準備作業をいたします際に、それ以外の作業は実施しないこと。それから七番目に、定期保全検査に対しまして日程、工事方法、安全対策を事前に県工業課によく説明するように。それから八番目に、ただいま御指摘がございましたように、二時間おくれておりますが、この連絡は敏速、的確にするようにと、こういう指示が出ております。  それで通産省といたしましても、御指摘のようにこの二月にもございまして、それ以前にもささいでございますがございましたので、県と十分打ち分わせをし、県のこういった指導に対して全面的な支持をいたしますとともに、技術的な問題があれば私のほうでも積極的に専門家を選定して現場の安全点検等に派遣する用意をいたしております。  以上でございます。
  50. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうしますと通産省としてはまだ何もしてないと、そういうことですか、いまあなたの説明を聞いていると。
  51. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 事故が起きましてすぐ責任者を役所に呼びまして、御指摘のように二度の事故でございまするので厳重な警告をまず出しております。それから事故の原因につきまして、会社側に対して事故点検をやるようにという指示も出しております。さらに事故の性質がきわめて初歩的なミスによるものでございますから、これはある意味で事業所なりあるいは企業内におきます保安意識の高揚に欠陥があるのではなかろうかという前提で、そういった事業所あるいは会社全体の保安意識あるいは保安体制について再度再点検をするようにという指示をいたしております。
  52. 中尾辰義

    中尾辰義君 まあ指示は当然これはやらなければなりませんが、一昨年並びに昨年と引き続いて大きな事故を起こしておるわけですから、これはやはり指示だけじゃいけないですよ。通産省が現場へ行って調査をして何らかの結論を出してそして実行させないと——当然おやりになるだろうと思いますけれどもね。  それじゃ私はこれに関連いたしましてちょっとお伺いしますが、まあ一昨年並びに昨年にかけて石油化学系統工場の事故が非常にたくさん起こったわけですね。その中でも出光石油化学徳山工場の大火災、それから信越化学工業直江津工場の爆発、こういうのはまだ記憶に新しいし、生々しい事件を引き起こしたわけですが、そこで私はこの際、過去二年間の石油化学工場の事故を振り返ってみたい、そういう意味でずっとこれ拾ってみますよ。去年もずいぶんやったのですがね、大体災いは忘れたころ起こってくるもので、まあ御存じでしょうけれども、一ぺん読んでみましょう。  まず、四十七年の二月の十五日出光興産徳山製油所、これが事故を起こしておる。中毒二名。六月十三日は丸善石油千葉製油所、これは酸欠失神四名の被害です。六月二十二日三井石油化学千葉工場酸欠死亡一名、四月三十日日本合成ゴム四日市工場、七月九日三井東圧化学、九月二十九日日本エタノール四日市工場、これはまあ幸いにも人的被害はありませんでしたけれども、一時間も燃え続けておった、こういうことですね。十一月八日に旭ペンケミカル千葉工場、死亡二名重傷一名、十二月四日化成水島水島工場、これは大火傷三名、それから昨年、四十八年になりまして、三月三十日ゼネラル石油精製堺製油所、これは二時間火災を起こして燃え続けたということです。四月二十三日化成水島水島工場、さらに七月七日例の出光石油化学徳山工場、これは八十三時間二十五分燃えて死者一名を出しておる。八月二十三日興亜石油化学大阪製油所、八月二十五日東洋曹達南陽工場、九月十六日大阪石油化学泉北工業所、この三件は幸いに人的の被害はありませんでしたけれども、工場の被害はあったわけですね。それから十月八日チッソ石油化学五井工場、死亡四名重軽傷九名、十月十三日住友化学大江製造所さらに十月十八日日本石油化学浮島工場、死亡者二名、火傷二名、四時間十六分燃え続けたと、十月二十五日日本ユニカー川崎工業所、さらに十月二十六日日本石油精製、十月二十六日東亜燃料工業、さらに十月二十八日信越化学工業の直江津工場、死亡一、重軽傷二十三、四十五時間三十分燃え続けたと、十一月五日三菱化成工業黒崎工場、中毒二十三名、そして今回の出光興産千葉製油所、これは死亡一、中毒四名。  いま思い出して拾ってみた。これは去年もずいぶん商工委員会でも議論になったんですが、この中で今回の千葉製油所はバルブ操作の誤りということですが、いま私が読み上げた中で同じような事故をやっておる。これは幾つかありますよ。こういった事故は、いろんな事故がありますけれども、たいがいエチレンガスだとかあるいは硫化水素、窒素ガス、そういうようなものが漏れる、あるいは噴出をする、それから爆発を起こして大火災が起こると、こういうような事件ですね、これ。そしてこういうような被害者を出している。ですからいま私が拾い上げたこの中で、今度の千葉製油所みたいなバルブ操作の誤りと、それと同じ事故を起こした、これは事故がどこどこですか。
  53. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 一番典型的な例は出光の石油化学、それから大阪石油化学、それから千葉のチッソ石油化学、それから信越化学、この辺がいま先生が御指摘になられました中で同様な誤操作による事故かと思われます。出光の石油化学の場合には初めに幾つかの誤操作がダブっておりまして、一つは、初めに間違って違うバルブを操作した、そのために計器が乱れてしまって、それからあと始末を、一たんシャットダウンをいたしまして事後処理をしようとする段階で、これは処理の異常時に対応する措置の中でございますけれども、水素の注入をとめるバルブを十分締め切ってなかった。そのために水素の流入が続いたというふうな事故が起きております。それから大阪石油化学でございますが、これは停電になりましてシャットダウンをしたわけでございますが、原料の供給もとめてしまいました。そういたしますと、徐々に冷やすべきところを原料が入りませんのでいわゆるからだきというふうな現象が起きまして、装置が損傷いたしております。それから千葉のチッソの石油化学でございますが、これはやはり二重の安全装置になっております。その一つのほうを常時開いておりました、非常に甘い管理でございますが。そういう条件のもとで現場で手動で操作するバルブを誤ってやはり開いております。そのためにすぐガスが大量に噴出するということで事故が起きたわけであります。それから信越化学のほうは使ってはならないてこを使いましてバルブを締めたわけでございます。そのためにバルブがこわれてしまうというような形で、やはりガスが大量に出るということでございます。さらに日本ユニカーでございますが、これは定期修理をいたしまして、その際にスパナを装置の中に忘れてしまった、それが原因で後刻事故が起きております。それから興亜石油というのがございます。これは定期修理をします際に、徐々に炉を冷やすわけでございますが、作業員が十分監視をしておりませんので、途中で火が消えたわけでございます。しかし他方でガスの供給がずっと続く、そこでその原料ガスが充満いたしまして事故に至る、こういうふうなケースになっております。  以上でございます。
  54. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、あなたの説明を聞くと、同じような事故が何べんも起こっておるんですよ、さっきから指示を出した、指示を出したとおっしゃるけれども。指示をお出しになった、——まあほかのいろいろ問題がありますがね、今回の事故がやはり操作ミスから起こっておりますから、この点について聞いておるんですが、昨年の出光の徳山工場の事故があって、その直後あなた方通産省はコンビナート総点検をおやりになったんでしょう。総点検をおやりになって、そしていろんな問題点を九項目についてチェックされて、そしてそれをコンビナートにこういうような問題点につきまして指示をされたと私は聞いておりますがね。それはどうなんですか。
  55. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 昨年の七月七日の出光の事故が御指摘のようにたいへんな大問題を起こしたわけでございます。このままに放置しておきますと、化学工業そのものの存立にもかかわると同時に一般社会に対しますたいへんな不安を惹起するということで、どうしてもこうしたことを徹底的に究明しなければならない、そういう観点からエチレンセンターにつきまして総点検を直ちに実施いたしました。実施いたしましたポイントは、安全意識がどうか、それから従業員に対します教育訓練がどうか、それからいわゆる作業いたします際の標準と申しますか、通常マニュアルといっておりますが、こういったものが整備されておるかどうか、あるいはそれが十分周知徹底されておるかどうかと、それから誤操作が起こらないような設備面での配慮がなされておるかどうか、たとえば動かしてはならないバルブにはかぎをかけてあるかどうかとかあるいは常時動かすものと異常時だけ動かすものとの間には識別を明らかにするとか、こういった点、それから誤操作が起こらないように運転管理の面できちっとしておるかどうか、たとえばダブルチェックだとかあるいは指差し呼称だとか、こういったことの状況、そういった点に力点を置きまして点検をしたわけでございますが、あわせまして誤操作が起きた場合でもなおかつ安全なように設備がなされておることが大切でございまして、そういう観点から安全弁、緊急遮断弁あるいは緊急脱圧弁あるいはインターロック、こういった主としてバルブ系統の点検、それから各種の警報装置、圧力だとか温度だとかガス漏れだとか、こういったことが自動的に警報されるような施設装置が十分かどうか、さらにおもなパイプにつきましては二重、三重にやるということが通常の観念でございますので、あわせてこれも含めまして設備面の点検をやったわけでございます。その結果でございますけれども、各工場につきまして以上申し上げましたような項目につきまして一番すぐれた工場の例等を基準にいたしまして、その他の工場に具体的な改善事項といたしまして指示を出しております。各エチレンセンターではそれを受けて改善をいたしております。
  56. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、そういったような指示をお出しになったのが、七月七日これは出光石油化学徳山工場が爆発したと、その後総点検をしてそういう指示をお出しになったんでしょう。その後ずっとこれ、十数ヵ所の工場がこういったような事故を起こしているわけですな。ですから、あなた方が指示を出して、これ出しっぱなし——まあ出しっぱなしということはなかろうでしょうが、なぜそういったような厳重な指示を出してそのあと、むしろその後はふえていますよ、かえってこれは。十月はもう集中しています、十月なんかは。十月八日チッソ石油化学五井工場でしょう。十月十三日は住友化学大江製造所、十月十八日は日本石油化学浮島工場、十月二十五日日本ユニカー川崎工業所、十月二十六日日本石油精製根岸製油所、十月二十六日東亜燃料工業川崎工場、十月二十八日信越化学工業直江津工場。それだけの指示をされたけれどもずっとこうふえているわけでしょう。これはどういうことなんですか。
  57. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 七月七日の出光の事故のあと、ただいま御説明申し上げましたような措置をとったわけでございますけれども、残念ながらただいま先生が御指摘のように十月に入りまして十月だけで七件起きております。通常各年の事故の件数を高圧ガス取締法に基づきますこういった化学工場の事故の件数を見ますと、六件ないし八件ということでずっと過去からきております。それが十月だけで一年分の事故が起きたということでございますが、この事故の原因を徹底的に究明したわけでございますが、その原因は先ほども申し上げましたように、直接的には大体従業員の誤操作あるいは点検監視にゆるみがあった、油断しておったということ、それからもう一点は異常反応、異常事態になった際の適応が不的確である、こういったことから事故が起きております。したがいまして、こういうことのないようにということで、さらにもう一度この範囲を広げまして総点検を実施いたしましたわけでございますが、あわせまして大臣がじきじき高圧ガス関係の企業責任者を招致いたしまして、厳重に再度こういうことのないようにという注意をされ、かつ単なる注意だけでは定着いたしませんので、各企業におきまして社長が責任を持ってこの保安確保、事故防止について方針並びに具体的な計画を提出するようにという指示が出ております。私どもそれを受けまして文書で各企業から回答をもらっております。それによりますと、いずれも社長が陳頭指揮で意識を高めなければならないという認識を新たにいたしまして、その認識のもとに具体的な対策あるいは体制、措置、教育、訓練等々が出てまいっておる状況でございます。したがいまして、若干統計で申し上げますと、十月の集中的なそういう事故のあと急速にいま事故が何と申しますか通常のベースのような姿に戻っているような統計値にはなっております。
  58. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、こういったような指示は今度の出光の千葉製油所にも当然行っておるはずでしょう。またこれは同じようなことをやっておるのですね。ですから、そういうような指示が行っておる、また通産大臣も社長陳頭指揮でやれというような指示もいまあなたの話によりますとあったようですけれども、なおかつこういうのが起こるということは、それも小さい事故ならいいですがね、一人は死んでいるのですね、あと五人は倒れたと、こういう事故ですから、これをそんなに簡単に見のがすというわけにはいかないですよ。ですから、私は本日昨年の問題と関連してこれを取り上げたわけですが、結局なんですか、通産省のそういったような指示というのが守られておらぬのですか。この点はどうです。それで今回の千葉製油所は一体そういったような操作ミスですけれども、守られておったのかどうなのか、あなたのさっきおっしゃったような指示に対してですね、その点どうですか。
  59. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 私どものほうが総点検をいたしまして改善事項を先ほど御説明申し上げましたように出しておりますが、これはいずれも守られております。と申しますのは、現在八通産局にそれぞれ化学保安対策本部を設けまして、通産局長を本部長に据えまして、それで関係機関——消防だとか……。
  60. 中尾辰義

    中尾辰義君 詳しくはあとでまた聞きますけれどもね。——守られておるとおっしゃるけれども、昨年も議論になったんですが、十月八日に事故を起こしたチッソ石油化学の五井工場なんかは、これもいまおっしゃったようなバルブの誤った操作から起こったわけですが、これなんか通産省の指示に従っていなかったと、こういうようなふうに私は聞いておりますがね。いま言ったようなバルブ操作、つまりバルブを間違わないように、あなたがおっしゃったような色分けをするとか、そういうような指示をチッソ五井工場なんか守ってなかったと、こういうような結論が出たんですかね。これは何か指示を出した直後じゃないですか、十月八日ですから。
  61. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 千葉のチッソ石油化学の五井工場の事故でございますけれども、これは御指摘のとおり、出光の経験にかんがみましてバルブ操作事故を防止するために色分け識別を明示しろと、こういう一つの結論が出ております。それは関係企業全部に配ってございます。したがいまして、このチッソの五井工場でも知っております。知っておりますが、それを実行しなかったということは事実でございますので、社長を招致いたしまして厳重に注意をしたところでございます。
  62. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、そういうふうに守られておらなかったわけでしょう。今度の千葉製油所の問題はどうですか、守られておったのですか。
  63. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) バルブの誤操作が起こらないように常時使うものと危険な注意して操作するバルブとの間に識別をつけるという点につきましては、今度の千葉製油所のほうには問題はございません。今度は先ほど御説明申し上げましたように、残ガスの処理等の上にキャップがついておりますそのキャップを——帽子でございますが、取る作業に下請の三人の者と出光の社員がのぼったわけです。そのときにキャップでなくてフランジーパイプをつないでおります、接合しておりますねじをはずしております。これはバルブの誤操作というよりはたいへんな思い違いでございます。したがいまして、先ほど御説明申し上げましたように、なぜ、だれがどうしてそんな命令を出したのかという点を一番問題にしておるわけでございます。
  64. 中尾辰義

    中尾辰義君 それはよくひとつ調査して厳重に指示してくださいよ。ほんとうになくなられた方に対しましては申しわけないことで、本人が間違えたんじゃないか——そう簡単にいかないでしょう。人命にかかわることですからね。これはいろいろ問題もあるわけです。  私は昨年来の一連の事故に、爆破事故等につきまして、当時問題になりましたいろいろな問題、それを一つずつその後どういうふうに対策を講じられたのかお伺いしていきますけれども、まず一番目は、コンピューターがどんどん大型になっていく、このコンピューター化が進むにつれまして、あまり機械にたより過ぎて安全性を確保するための設備の欠陥が生じてなかったか。これが一つと、それから二番目は、点検中の事故が多い。これも当時いわれたことですね。点検をして、あるいはバルブを締めたそのあと、いろんな事故が起こっておる。三番目が、人為ミスの問題、それから四番目が装置の老朽化の問題、それから五番目が設備の大きさ、だんだん設備が大型化になってまいりまして、工場配置の距離の問題等ですね。これもありました。さらに、六番目は、増産第一主義で非常に無理しているんじゃないかと、そこから弊害が出ているのじゃないか、こういうような項目につきまして、これは問題になったわけですが、これに対しまして通産省はどういう見解をとっておるのか、それからその後どういう対策を講じたのか、その点をまずお伺いしましょう。
  65. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) コンビナートの事故の因を徹底的に究明するという作業の結果出てまいりました原因は、ただいま先生が御指摘になられました六点に要約されるわけでございます。  第一番目のコンピューター化が進むことが、企業の姿勢もございまして、かえって保安体制を弱めておるのではなかろうかとう点でございますが、この点につきましては、通常コンピューターを導入いたしますと、計算記憶あるいは検索、解析等の作業を迅速正確に処理することができるわけでございますが、これらの作業と連動いたしまして運転操作を自動化いたしますと、いわゆる的確な自動制御が可能になります。これが一般的には、安全をより高めるという形になるわけでございます。ただし、こういう好ましい方向を進めます際に、他の安全装置が省略されることがあってはならないわけでございますので、高圧ガス取締法に基づきます製造方法の認可あるいは技術基準の認可、こういうところで十分県及び私どものほうで監督してまいっております。それから、コンピューターを使いましても、いろんな異常な反応というものが十分コンピューターに組み込まれるわけではございませんで、どんな形でどういう事故が、異常状態が起きるかわかりませんので、そういう場合に備えまして、この設備が自動的に安全なほうに作動するような装置を備えつけさせるとか、あるいは異常時にはどういう作業をやるかということを平素十分整備をしておく、さらにそれを作業員全員に訓練、徹底させておくというふうな措置もあわせて指導いたしております。  それから第二点の、この設備のシャットダウンあるいはスタートアップのときに事故が多くなっております。これは事故例を見ましてもそのとおりでございます。したがいまして、これを具体的にこういう形の事故を防止するためには作業標準を的確に見直してみる。それから休日、夜間作業を極力避ける。それからシャットダウンをするとかスタートアップをするときには、管理者——管理級の技術職員が必ず立ち会う。それから四番目に、シャットダウン、スタートアップを必要とするような部門には極力熟練者を配置する、こういうふうな指導を具体的にやってまいっております。  それから人為ミスの事故防止でございますが、これは先ほど総点検の際にあげました項目、こういったものの周知徹底をはかってまいっております。ソフトウエアの面とそれから設備の面と両方にわたってやってまいっております。さらに異常時の対応を的確にさせるためには、平素十分な訓練が必要でございますが、企業内では全装置がコンピューターナイズされておりますので、なかなかその事故を再現するというわけにはまいりません。そこでただいま大型のシミュレーター、要するに一種の異常事故を想定して、それにどう反応するかということをモデルで、模型で訓練させる、実地訓練させるパイロット設備です、こういったものをいまつくるべく進めている段階でございます。  それから四番目に御指摘の、設備の老朽化が事故を起こしているのではなかろうかという点でございますが、十分考えられる点でございますので、私どものほうもこういった見地からの検討をずいぶんやってみました。そこで、事故を起こしました設備につきまして、経年変化をずっと調べてみましたところ、必ずしも古い設備に事故が集中しているというふうな結果が出てまいりませんで、むしろ設備が二年くらいで、あるいは五、六年くらいというふうなところでけっこう大きな事故が起きております。この辺から判断いたしますと、老朽化は確かに一つの事故が起きるかもしれないという遠因ではございますけれども、起きた事故を結果として見てみますと、やはり操作ミス、あるいは保安管理といったような面に、より大きな原因があるのではなかろうかと判断いたしております。ただし設備がやはり常に十分的確な形で運転されなければならないことは言うまでもございませんので、消耗いたします部分、あるいは回転いたします部分の取りかえについては総点検の際、あるいは定期検査の際、重点を置いてチェックいたしております。  それから五番目に先生が御指摘になられました、設備の大型化に伴って設備間距離あるいは民家との保安距離の拡大が必要になってくるわけでございますが、これが十分かどうかという点でございます。御指摘のようにコンビナートは集積の危険を伴っておりますので、大きくなればなるほど事故防止に、より万全の措置を講ずる必要があるわけでございます。したがいまして、まず事故が起こらないように事業所内の保安体制あるいは各装置、弁等につきまして二重、三重あるいは四重の安全がかかるような設計にすること、あるいは先ほど来御指摘がございましたような従業員の教育訓練、あるいは作業マニュアルの完璧さといったようなことを、まずより徹底してやるという姿勢で指導いたしておりますが、なお通産省といたしましては現行高圧ガス取締法に基づきまして、事業の許可、設備の許可、製造方法の許可、技術基準の許可あるいは危害防止規定の認可、それから保安教育計画の修正と、こういった権限を持っておりますので、これと県の直接的な監督権限を総合いたしまして、より的確な監督体制を整備すべく努力をいたしておる段階でございます。その中で、万が一にも事故が起きた場合に周辺民家に災害を与えないようにするという見地から保安距離の問題がやはり重大な問題になっております。現行法規によりますと、二十メートルないし三十メートル以上というふうな形になっております。これはコンビナートというふうな集積の危険を持ったものには適合いたしませんので、これを根本的に直すべく目下審議会で検討中でございますけれども、昨年の九月でございますか、審議会の結論が出るまでの間、この暫定措置といたしまして、新増設の場合には二百メートル、それから既存設備の場合には百五十メートルというふうなエチレンセンターに関します暫定保安距離基準をきめまして、目下その指導に当たっておりますし、企業側でもその指導を受けまして、修正を、改善をやっておる段階でございます。  それから、最後の第六番目に御指摘になりました増産第一主義が事故を起こしているのではなかろうかという御指摘でございますが、ものの、私どもの考え方といたしまして、保安最優先という考え方に立っておりまして、いやしくも保安を犠牲にして増産に当たるというふうなことは絶対避けなければならぬという方針を堅持いたしておりますし、御指摘の、昨年爆発事故が多発いたしました際も、大臣みずからそういった方針を関係者に強く指摘をされた次第でございます。先ほど申し上げました各企業のトップに対します保安意識のあり方等につきまして書面で回答を求めました際に、その答え……。
  66. 中尾辰義

    中尾辰義君 あとで聞きますよ、それは。質問もありますからね。
  67. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) はい。増産第一主義のところは、ただいま申し上げましたような形で指導いたしておるところでございます。
  68. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、この五番目の設備の大きさと保安距離の問題、これは、いまあなたがおっしゃったように、市街地とコンビナートとの距離は従来二十ないし三十メートルだった、これを百五十メーターから二百メーターに改めたと、こうおっしゃったわけですが、昨年、これ、問題になりましたですね。この保安距離が百五十メートル未満のもの、これが日石化学川崎工場ですか、三井石油化学の岩国工場、住友化学大江工場、昭和電工川崎工場、三菱石油川崎工場、日本合成ゴム四日市工場、三井東圧大竹工場、三井ポリケミカル大竹、こういったような工場はこの新しい保安距離の基準に合わない百五十メートル未満のものである、こういうふうに聞いておるわけですが、これは間違いないのか。それから、こういったようなものをあなた方が指示されてから、その指示を守って対策を講じておるのかどうか、この点、ひとつお伺いします。
  69. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 昨年暫定指導基準といたしまして、新増設の場合に二百メートル、既存の場合でも百五十メートルの保安距離をとるようにという点でございますが、この指導の対象といたしましたエチレンセンターにつきまして、これに達していないところは四事業所がございます。事業所は四つございます。一つは日石の川崎でございます。これは実は港湾事務所が一つあるだけでございまして、この港湾事務所の立ちのきの話はずっと具体的に進められておりまして、ほぼ移駐につきまして話がついております。それから三井石油化学の岩国、大竹、これが二工場いずれも民家に接近いたしております。この工場につきましては動かし得る設備はもうすでに動かし始めております。ただし、設備をどうしても動かし得ない場合、民家の立ちのきということは非常にむずかしいわけでございますので、専門家の技術的な指導を得まして防護壁をつくることになっておりまして、目下その設計が完了して私どものほうに提出されております。それから第四番目は、住友化学の大江工場でございますが、これは実は百六十メートルぐらいでございますが、新居浜に大きなプラントをつくる計画がございまして、そちらができ次第いまの民家に近い部分の設備は移すということになっております。
  70. 中尾辰義

    中尾辰義君 すると、あと私があげたのは、これは問題ないわけですか。
  71. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) それ以外に先生が御指摘になりました事業所は誘導品の工場全部を調べております。その誘導品の関係で申し上げますと、保安距離百五十メートル未満のものが二十七、さらにそれを百メートル未満というふうに限定しましても十三工場ございます。この誘導品の場合の保安距離を幾らにするかということは、いま高圧ガス審議会の基本政策部会で根本的な検討がなされております。その検討の基本的な考え方は、ガスの量、種類、それからどういう状態かというふうなことを諸元にいたしまして一定の危険な算式をつくる作業が進んでおります。その結果、問題がない程度の——爆発か民家に問題がない程度というのはどういう距離にすればいいのかということを、いまの要素を前提にしながら客観的、科学的に出てくるわけでございます。その算式の検討が続いておる段階でございまして、その結果に従いまして処置してまいりたいというふうに考えております。
  72. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ、もう時間がありませんが、最後に、これ、通産省では最近石油関係企業に対しまして自主点検調査を行なったと、こういうふうに聞いておりますが、これはどういう内容のものなのか、その結果はどうなったのか、その辺ちょっとお聞かせ願いたい。
  73. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 保安の確保のためには、本社におきます幹部の保安意識の高揚が一つ、もう一つは、現実の作業が行なわれます現場におきます緊張あるいは引き締まった体制が堅持されるということが、双方相まつ必要がございます。したがいまして、現場におきます保安管理体制を常にきちっとしておくという見地から、八通産局に化学保安対策本部を設けまして、これが約二千の工場に対しまして百四十項目にわたります項目について各事業所がどういう事故防止保安確保の措置をとっておるかということを自己診断させ、その回答を文書でとっております。それに基づきまして、主として地元の保安安全関係の先生方の協力を得まして、抜き打ちで事業所を調べております。そういう形をとることによりまして、各現場が常に保安意識を高度に堅持すると、こういう形で保安の確保を進めておる状況でございます。
  74. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、そういった二千の工場に調査のための何かこうアンケートみたいなものをお出しになったんでしょう。その結果はどういうようなデータが出たのか、それをちょっと教えてもらいたいのです。
  75. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 百四十項目は、設備だとか、あるいはパイプあるいは弁、あるいはオペレーションのしかた、あるいは従業員の作業標準、あるいは作業標準の中で異常時にどうするか、休日にどうするかといったような項目がずっと百四十並んでおるわけです。そういう項目を並べることによって、現場で漏れておるところ、気がつかないところをも指摘をする。で、そういう項目について具体的に文書で、あるいは具体的なマニュアル、とかそういうもので、あるいは図面というようなものを提出させるという形をとっております。出てまいりましたものを、ただいま申し上げましたような各対策本部ごとに設けられました保安調査委員会、これは地元の学者先生方に多数入ってもらっておりますが、そこで点検をして具体的に修正させると、あるいは甘いところは補整させる。あわせまして、その書かれたとおりやっておるかどうかを抜き打ちで検査をすると、こういうやり方をとっておるわけでございます。これには当然直接の監督者としての県庁も一半の責任をとって参画をしておる状況でございます。
  76. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、あなたがそういったような調査資料を見てどういう判断、お考えをお持ちになられたのか、それをあなた説明してもらわぬとわからぬがな。詳しいことはいいですからね。
  77. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 各工場から出ました資料は、一部県、一部通産局、コピーが本省にまいっておりまして、それを目下、先生が御指摘のような形で横で見まして、どういう形になるかはただいま集計中でございます。ただし、その集計を待つまでもなく、個々の現場ではただいま私が御説明申し上げましたように、抜き打ちで検査をすると、こういう形で注意力の喚起に、保安意識の喚起につとめておると、こういう状況でございます。
  78. 中尾辰義

    中尾辰義君 いや、まだあなた見てないんだな、あんまり。集計ができてない。
  79. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) まだです。
  80. 中尾辰義

    中尾辰義君 あんた、もう日経新聞なんかにもあれだけ出ているじゃないですか、社説等にもですな。それから未回答、回答を出してない会社も幾つかあったと、こういうのは非常にこれはけしからぬと思いますね。保安体制に対して、保安管理に対してあんまり関心がないのか。未回答の回答は、これはどこどこの会社ですか。
  81. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 御質問に対しまして、若干私が勘違いしておりましたが、回答——日経新聞に出ておりましたのは、実は昨年の十月の爆発集中時に大臣が注意をされまして、それを受けまして、事務次官名で約五百社の社長あてに文書をもって保安確保の方針と計画の提出を求めた、それに対する回答でございます。  これにつきましては、具体的には社長直轄の安全対策本部を設けると、これは大企業の場合には全部そういう回答が出ております。で、社長がじきじき本部長になるというのがほとんど大部分でございます。それから本部の構成といたしましても、もちろん保安関係は全部でございますが、製造、総務、経理、人事等、関連部門の管理者が参画するという形の構成をとっております。それからさらに保安担当重役の選任ということが新たに多くの企業で行なわれております。それから本社のスタッフが現場に保安特別査察を実施するということもあげられております。さらに親会社が系列会社に対して保安確保の点検のためのチームを派遣すると、こういった計画も提出されております。それからマニュアルの見直しと教育訓練の集中実施。それからこの次は現場重視の措置といたしまして、学卒者や適任者を現場に重点的に配置をする。それから現実のオペレーションに当たります従業員の給与体系を見直しする。割り増しを特別つけるということでございます。あるいは昇進制度を改善いたしまして、保安現場の作業員を優遇する。それから夜間、休日の非定常作業を禁止する。あるいは夜間、休日におきます予備保安要員を常に確保しておく。それから労使によります現場の総点検を実施する。それから各種保安に関します提案制度を奨励する。あるいは保安に関して優秀なものに対して特別な表彰制度を設ける。こういったきわめて具体的な措置が回答としてすでに返ってきております。私どもはそれを受けまして、そういった計画を評価すると同時に、それを的確に実行するように重ねて返信を出しております。さらに四十九年の事業計画として各企業が年間計画を立てる際に私どもに提出されました保安計画を的確に反映するようにという要請も文書で出しておる状況でございます。
  82. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、その際に未回答の会社も幾つかあったんでしょう。それはどこどこですか。
  83. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 出しました——大企業は全部回答を出しております。で、この書簡を出しました中に、中小企業あるいは若干零細企業も入っております。高圧ガス取締法で申し上げますと、ガスの消費者まで、使用者まで監督することになっておりますので、一律に文書を出したわけでございます。そういった零細なところが答えがなかったということでございます。具体的にはもし御必要がございますれば、あとで後刻文書でお届け申し上げたいと思います。
  84. 中尾辰義

    中尾辰義君 それですから、まあ未回答のところは、まあどういうわけですかね、そういう保安管理に熱意がないのか、その辺からまた問題、いろいろな事故も起こってまいりますので、それに対する対策はこれは当然おやりになるでしょうけれども、厳重にひとつ指示をしていただきたいと思います。その後いまあなたがおっしゃったように二千ヵ所にお出しになったわけですな。それは現在集計中であると……。  それでは、大臣はずっと聞いておいでになったわけですが、最後に大臣に、いま石油事情が今日こういったように非常に悪化をしている状態の中で、こういったような石油化学工場等がいろいろな事故を出す、火災、爆発と、昨年にああいう事故を出したわけですが、今日こういう事故を出しますと、またこれはまあ物価対策の面からも問題もございますしね。ですから、全力をあげてひとつ昨年のようなことがないようにやっていただきたい。ところが、現在すでに出光興産千葉製油所がこれだけ何人かの犠牲者を出した事故がもう始まったわけです。どうもまた何か起こりそうな私は気配がするわけですがね。  それで質問をお聞きになって最後に今後のこの未然防止に対する大臣の御所見をお伺いをいたしまして、終わりにいたします。
  85. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一昨年以来石油化学工場を中心にして事故が起こりまして、たいへん御迷惑をおかけした次第でありますが、われわれとしても社長等も集めてじきじきに社長直轄の監査体制をつくり、また従業員の末端に至るまでマニュアル教育を徹底させて事故を再発させないように強く要望をし、また適時不意打ちに行って検査するというようなこともやってきておるわけです。私らの感じではやはり機械にたより過ぎるとか、コンピューターを信用し過ぎるとか、あるいは増産体制に追いまくられたとか、いろいろそういう要因があったようでありますが、何と言っても現場の第一線でバルブを操作する人たち及びこれを監督する工場長とか、検査課長とか、そういう人たちが真剣になってもらわないとこれはだめだと、それでバルブの操作というようなことは、あんまりマンネリズムになるというと事故が起きやすい。われわれはあのときからバルブについても色を違えなさい、それから流れの方向を矢印でつけて、現場へ行ってこれは何のバルブだと、すぐわかるようにしておきなさいというような具体的な指導までもし、それから一番大事な現場員の教育をもっと徹底するように、昔——古い話で恐縮ですが、やはり昔の海軍あたり見ましても、昔のいわゆる特務士官とかあるいは将校になる前の人たちあたりが一番第一線で責任感を持ってやっておったので、上下ともに一生懸命やるというところがあったと思うんです。ところが近ごろはそういうようなものは工場の第一線で薄れてきてしまって、そうしてその人のチームワークのもとに十人なり二十人の人間が職場に責任を持つという風潮は非常になくなったんじゃないかという気がいたします。そういうような点を特に社長にも注意をして、いわばフォアマンといいますか、第一線の一番の現場の責任者を中心に、人間関係をももう一回考え直してもらって、責任体制をつくるように、そして細心の注意を行なうということと、そういうようないわゆるケアレスミステークというものを起こさせないような目印とかあるいは用具の色とか、そういうものまで注意してやってもらいたいという考えを持ってやってきたわけです。私らはそういうことをさらに徹底いたしまして、事故を起こさないようにいたしたいと思います。     —————————————
  86. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 委員異動について御報告いたします。  ただいま小林国司君、佐田一郎君及び佐藤一郎君が委員辞任され、その補欠として鍋島紹君平泉渉君及び柳田桃太郎君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  87. 野末和彦

    野末和彦君 私はテレビによる商品販売の問題について質問したいと思うんですが、どこまでが通産省の分野かよくわかりませんので、大臣には初めのうちは聞いてていただきまして、あとでまとめていろいろ御見解を伺いたいと思います。  まず郵政省に聞きます。最近御存じと思いますが、テレビでもって茶の間の主婦に直接物を売るという番組が多くなりまして、独立の番組である場合もあるし、またワイドショーの長い時間の一コーナーを取りましてコマーシャルともあるいは情報伝達ともつかないような形で物を売っていると、こういう販売のやり方が放送法に抵触しないかどうか。
  88. 河野弘

    説明員(河野弘君) 電波法、放送法におきましては、先生ただいま御指摘の商品あっせん等を行なう放送番組を放送することを法律上におきまして禁止あるいは規制する規定が置かれておらぬわけでございます。また法律の上におきまして、放送番組の編集は憲法の表現の自由に関連いたしまして、放送事業者の自主的判断によりましてこれを行なうということにされているところでもありますので、このような番組の放送を行なうことは、電波法上あるいは放送法上におきましては問題はございません。郵政省といたしましては、個々の放送番組の内容につきましてとやかく申し上げるという立場にはございませんけれども、放送番組の編集にあたりましては、放送事業者がその与えられた社会的な責任を十分認識してくれまして良識をもってこれにあたりますとともに、国民生活にとってほんとうに役立つ番組を放送されるということを常に期待しておるところでございます。
  89. 野末和彦

    野末和彦君 良識なんていいますとモラルの問題だと思うんですが、いまのおことば、あっせん販売というけれども、現実にマージンとっているような場合もあるわけです。それから電波料をとって売らしている場合も現実にあるわけですね。で、これらのテレビのバーゲン番組に対して、放送法は何ら問題なくても、民放である場合民放連の基準があるわけですね、放送基準が。その基準にこういうバーゲン番組はどうあるべきかという条項とか基準は何にもつくっていないわけです。ですから結果として公共の電波が特定業者の利潤追求の道具になっている。通信販売的な行為によって電波が利用されていると、こういうふうに結果としてなっているわけですね。だからこれがはたして放送法とは触れないが、しかし電波の正しい使い方と言えるかどうかと、その辺もうちょっと御見解を伺いたいんですがね。
  90. 河野弘

    説明員(河野弘君) 重ねてお答え申し上げます。  ただいま申し上げましたとおり、結局放送番組の内容につきましては、放送法の規定あるいは基本的な観念からいたしまして、私どもの介入すべからざるものであるというふうに考えております。したがいまして、いま先生指摘ありましたように、電波の使用、特定業者に利用されている、あるいは電波の使用から見て好ましくないんじゃないかというお話でございますけれども、われわれとしては、放送事業者が、繰り返しになりますけれども、この放送法の定めるところに従って、みずからの自主的判断によりまして良識ある行為をとっていただきたいということを期待しているのみでございます。
  91. 野末和彦

    野末和彦君 内容に介入できないというけれども、物を売るのがはたして番組の内容かどうかということになると非常にむずかしいんで、ここらが放送のあり方そのものの問題にあたりますからここでは、その放送法なり、民放連の基準というものを議論する場所ではありませんから、売り方のほうに焦点を合わせていきたいと思うんですよ。普通、これを売るやり方というは、ブラウン管で司会者なりだれかが出てきましてね、紹介者が、市価は幾らであるが、テレビを見ている人に限って特別の値段の幾ら幾らで売りますと、だからお買い得というようなことなんですけれどもね。で、そういう形で茶の間にアピールしている。扱う品物は日用雑貨、食料品、和服、洋服、高級品、いろいろありまして、お墓まで売ってるんですね、墓石を。で、この墓石というのは特殊中の特殊だと思うんですが、実は内輪ですけれども、このお墓についてはうちのおふくろがだまされたわけなんですよ。(笑声)いやいや、ほんとですよ、大臣。だまされましたが、これについては解決しましたから別におきますがね。いずれにしてもこれだけ雑多な商品を常に市価幾らだが特別幾らとこうやる。しかし見ていて市価というやつが、テレビ見ただけで根拠全然わからないですよ、説明しないんだから。うそだかほんとだかもちろんわからないし、なぜ安いんだろうかと、あるいはなぜこういう特別価格になるのかという説明が全くありませんから、主婦としては疑いもしないで、テレビだということで無条件に信頼して買うわけですね。買ってもちろん悪い品があるという意味ではありませんけれども、こういう売り方が、どうでしょう、公正取引委員会にお伺いするんですけれども、このバーゲン価格というものの実態ね、テレビ販売のこれをどういうふうに見ておりますか。
  92. 樋口嘉重

    説明員(樋口嘉重君) ただいまの先生の御質問にお答えいたします。  ただいま先生が御質問なさったとおり、テレビではそのような商品販売、あるいはあっせんと申しますか、そういうことが実際に行なわれております。そして御指摘のとおり、市価とか、それ以外にも標準価格とか一般価格とかいうことを表示いたしまして、実売価格——実際には幾らで売りますということで、実際に売る価格が安い価格をつけておると、そういう実態でございまして、その市価とか何かの根拠がはっきりしないところがあるように思われます。そうしますと、これは不当な二重価格表示になるのではないか、不当景品類不当表示防止法に抵触する疑いがあるのではないかというようなことで、現在資料を収集する等調査を進めております。
  93. 野末和彦

    野末和彦君 まあそうしたら、いずれその調査の結果についてまた御報告いただきたいんですが、いずれにしても、常識的にもね、大臣、二重価格というような疑いがすごく濃いわけですね。そこで、その前に、公正取引委員会でどのような番組を調査なさっているか、ちょっと説明してください。
  94. 樋口嘉重

    説明員(樋口嘉重君) お答えいたします。  ただいま私どもが調査いたしておりますのは、日本テレビ放送網株式会社、番組名は、「テレショップお役に立ちます」、株式会社日本教育テレビ「奈良和モーニングショー」週末ディスカウントセール、フジテレビ「リビングイレブン」テレショップ、それから東京12チャンネル「奥さん二時です」、それから「ザ・ロンゲストショウ」、日本テレビ放送網、ダブりますが、「土曜イレブン」というのがございます。大体そのようなところで、まだこのほかにもございますが、現在調査中でございます。
  95. 野末和彦

    野末和彦君 まあそれは東京中心であって、関西とか、あれですね、地方テレビ局とか、まだあるわけなんですけれども、そこで扱う商品がたくさんありましてね。私のところでもずいぶん一々買って調べたわけですがね。まああるんですよね、大臣ね、これ包み紙、来るんですよ。デパートが配達するんですけど、別の会社の包み紙が来たり、いろいろ複雑で、この辺にからくりがあるんですけどね。まず、私のほうで調べまして、はっきり言いまして、日用雑貨類、三千円以下の品物というのは、おおむね市価よりも、つまりデパートあたりで売っている値段よりも安いですね。はっきり安いと思います。中には安くないのもあったんですよ。これはもうはっきりここに伝票がありますからね。テレビの伝票がついてきたのがこれで、(現物を示す)それからデパートで買った伝票がこれで、はっきり同じ品、品番も同じで、値段は全く同じですから、テレビはいいかげんなことをいったわけですね。何千円のところを幾らで売りますといったけど、デパートでも同じ、全く同じ品物をこうやって買えるわけですよ。こっちはテレビから委託して配達するんだということですが、こういうのも中にはあるんですが、品数が多いですから、この辺一々言ってたら切りがないと思うんで、問題は三千円以上、まあ五千円、一万円、二万円というような中級品から高級品、ここがどうもあぶないんですよ。  具体的に言いますと、ふとんとか和服、洋服、時計、くつ、そういうような品物はもともと材料とか、つくり方とか、まあいろいろ値幅がかなりこう出てくるものですね。見ただけじゃわからない。市価が幾らと言い切れないものがありまして、それが画面に出てきますと、これは画面は虚像ですからね、虚像でこう映すわけですよ。そして、司会者がまた悪いんだなあ。やあ安いですねとか、いいですね、買いたくなりますって、こうあおるんですよ。そうすると、見ているといかにも安くていい品のように見えるんですが、いざ手に取って見ると、はたして安いかどうかもわからぬと、で、われわれが調査すると割高であるとはっきり言えるものもあるんですね。こういうようなところがどうも二重価格なんで、ぼくの考えでは、これはかんぐりですから、事実かどうか別ですが、どうも日用品でもってサービスして、実際目玉商品としてサービスして、中級品、高級品でもってその分カバーして埋め合わせして、むしろそっちのほうでもうけているという疑いがすごく濃いんですね。  そこで、こういうように何となく市価に幅があるような和服、洋服、寝具とか、くつとか、そういうものに関しては、やはり二重の価格を出すんじゃなくて、ワンプライスでいって、そしてあとで買う人が判断するという形をとるのがいいんじゃないかと、安いと思わせて購買意欲をそそるというのは、どう考えてもテレビなるがゆえに一そう好ましくないと、不当表示防止法の面から見て問題があり過ぎるんだというふうに思いますが、公取の立場ではいかがでしょうかね、さっきもちょっとそのお話出ましたけども。
  96. 樋口嘉重

    説明員(樋口嘉重君) お答えいたします。  ただいまおっしゃいましたダイヤモンドとか……
  97. 野末和彦

    野末和彦君 いえ、ダイヤモンドはまだ言っていない。
  98. 樋口嘉重

    説明員(樋口嘉重君) 家具とか、そういうようなもので、市価というものが非常に算定しづらいと、商品一つ一つとってみても品質が一様でないというようなもの、そういうものについて市価というふうな表示をする場合には、十分市場の価格——大体私どもが市価と言っていいという場合いろいろ基準できめておりますけれども、当該商品が売られている市場、地域において相当多数の小売り業者がつけているような価格、それを市価というというふうにいっておりますので、十分な調査をした上でないと、市価というものをつけるのは非常にむずかしいんじゃないかと、そういうふうに考えております。
  99. 野末和彦

    野末和彦君 そうすると、妥当だと思われれば、市価幾らを特別価格幾らということをいってもかまわぬということになりますか。そうなると、その市価を厳密に検討して最終決定をする機関というものが、テレビ局なり、商品提供業者のほうに必要であるということになってくるんですがね。
  100. 樋口嘉重

    説明員(樋口嘉重君) まあそういう機関を置くかどうかは別といたしまして、表示する主体のほうに市価を十分調査するということが必要だと思います。
  101. 野末和彦

    野末和彦君 大臣ね、ここまでは罪が軽いんですよ。通産省にちょっと関係のないようなものが出てきましたがね。ここまでが罪が軽いんで、このあと、いまちょっと公取の方も言われましたが、ダイヤモンドとか、こういうのが出てきて、これが非常に流行しちゃってんです、いまね。で、一番問題は、まず宝石類、ダイヤとかエメラルドとか、いろいろいっているんですけどね、こういうもの。それから、ちょっと季節はずれましたが毛皮、それからいまの公取の話にも出ました家具ね。こういうものになりますと、まあ特殊商品——ぼくは特殊商品だと思うんですがね。これらの品はいずれにしても市価というのは形成されにくいんですよね。ダイヤとかエメラルドがどうというのは、これははっきり言って市価があるわけないんで、その一つについて一つの値段があるというような品物ですね。  で、ダイヤを例にとりますと、こういうやり方をやってんですよ。百万円だ、ダイヤ縦詰め〇・七カラット、百万円を六十八万だと、こうですよ。百万円に赤線引っぱっているんですよ。それで六十八万、で、限定五人と、こうやるんですよ。しかし、考えてみるとね、この百万円の〇・七カラットのこのカットしたこういうものが、限定五人たって、五つ同じ値段で同じものがあるだろうかと、疑問があるんですね。こっちにいきますと、二十五万が十七万五千と、こうやってディスカウントやってんですがね。これが限定五十人ていうんですよ。五十も百もね、こういう宝石類をバーゲンにするといっても、どう考えても信用できないんですが、まあほんとうにそうかどうか知りませんよ。それを売るのに、電話一本で出す。電話一本ですよ。テレビ局、売るんじゃないんですよ。ここの電話に申し込めってんですよ。お申し込みはといって、電話番号書いてあるんですよ。あとでごらんに入れますがね。そうすると、この電話番号がテレビ局とは全く関係ない。業者なんですよね。しかも、業者にもいろいろありまして、宝石に関しては幾つもテレビを通して売っているのありますがね。電話一本でかばんを持ってくるというのがいるんですよ。これはどうかと思うんですがね。くどくなりますがね、電話かけますね、そうすると、お宅の住所と名前を教えてくれと、後日伺いますといって、かばんを持ってセールスマンが来る。テレビ局一切関係ない。そうして、セールスマンが来て、テレビに出たのはこれですが、こっちにもいろいろありますよ、こういう商法ですな。まあこれが法的にどうかは別ですが、いずれにしても、ダイヤを扱う場合に、市価より三割も安くて、お買い得だと、あるいは値上がり寸前だからとか、いろんなこと言うんですが、この売り方はどう考えても、いわゆる宝石に弱い主婦をだますというふうにぼくらは思っているわけです、事実。  それから郵政省のお話ですが、公正取引委員会も聞いていただきたいのは、番組の内容じゃなく、コマーシャルでやっているんですよ。一分なら一分のコマーシャルの中で電波料を払って、そこでやっているんで、完全にこれは法に触れるんですよ、番組内容じゃありませんから。家具なんかもそうですね。見かけはいいんですよ、映すと。大臣、すごくよく見える。あけてみて、中の造作とか材料なんかによって値段というのはずいぶん幅がありますよね、家具の場合。それがやっぱり例の司会者が出まして、これはお嫁に行くときほしいわとか、持っていきたいわと、(笑声)こうあおるわけですよ。現実にはほんとうに安いのかどうかと、こういうわけだから安く提供できるんだというような説明がないだけにどうも不明朗な、フェアーじゃないような気がする。  そこでこういう市価の形成されにくい宝石類、毛皮とか家具とか、そういうふうなものも含めまして、特殊商品の価格表示は、どう考えてもテレビ局の信用に乗っかって、商社の錯覚と誤認を与えるということで、極端に言いますと、公共の電波を利用したやくざ商法だと、ぼくははっきりそう——お墓もそれなんてすがね、実は。——断定できるんですよ。それでくどく言うのは、宝石がいますごい。一番の目玉商品——目玉じゃないんだな、一番もうかる商品になって、いま公取であげられた番組のほとんどが宝石を扱っている。そして二重の価格を出しているが、これがまた実にずさん。はっきり言って、電話一本で、かばん持って来るセールスマン、それから業界ではCクラスで名前の知れた業者もいますが、こういうことをやっているんです。  そこで大臣にお伺いしたいのは、ここまでお聞きになりまして、扱う商品によってはかまわぬだろうと、それから、実際安く提供するんだったら、これもかまわぬとぼく思うんですが、しかし、こういう特殊な商品は扱うべきじゃないんだと、もともとテレビというものを悪用する結果におちいるということを考えるわけなんですね。そして現にこの毛皮、ダイヤ類、宝石類に限っては都会では売れないのです、地方へ売る。それは地方の方は買いに行く手間がなかったり、いろいろすることもあるでしょう。しかし反面、都会の人より地方の人がこういうものに乗りやすいということもいえるんですね。ですから、業者の選別ということも非常に大事で、それをテレビ局がどういうふうにやっているか私は知りませんが、少なくもブラウン管を通して、あやふやな値段でこれら特殊商品を扱うことは非常に問題があるんじゃないかと思います。まだ大臣にお聞きしたいことがあるんですが、とりあえずこの点はいかがでしょうか。
  102. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はいま初めてそういう話を承りました。いまの場合はコマーシャルの時間にやるんですか、それとも普通の番組の時間にやるんですか。
  103. 野末和彦

    野末和彦君 両方ひっくるめてやるんです。コマーシャルの時間にやっているのもあるし、番組の中でもって情報伝達であると、しかし、情報を伝達しただけじゃだめだから、完結までやるには物も売らなければいかぬということでやっているのもあるんですよ。
  104. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 法的なことは私、よくわかりませんが、通産省のそういう商品販売を監督している者の立場から感触を申し上げますと、なかなか問題があるような気がいたします。  まず第一に、百貨店法というのが昔ありまして、いまは大規模小売り店における小売り云々という、百貨店やスーパーを込めて規制する法律ができました。これは中小企業擁護という面や流通組織の調整という意味があってやったわけで、それに該当するものはある一定以上の店舗面積を持っておる会社、あるいは商店が該当されるわけです。そうすると、テレビというものによって不特定多数の何万というお客さんに瞬間にそれが展示されるというと、売り場面積というのは、何万人ものお客さんに見られる売り場面積という形になりますね。これはしかし一面においては通信販売というものがありますね。通信販売の場合は、カタログをやっぱり何万というお客さんに送って購買を求めるというやり方で、通信販売の進歩した一つのやり方ではあると思うけれども、通信販売の場合には特定の人間にいくわけです、何のたれべえ殿といって。ところが、これは不特定多数の人にいくので、ちょうどデパートやスーパーみたいなところへひやかしにみんな行く不特定多数とちょっと似ているわけですね。そういう意味中小企業の中でも特に小売り商店、専門店の立場というものがこれでどうなるだろうかと、それにリンケージを持った専門店や何かならいいかもしれぬが、そうでないと、非常に多くのものがあると、そういう点で、いままでわれわれがスーパーや百貨店やあるいは一般の商店街、小売り商業との商業調整、流通調整、公正取引という面から考えていた面で、これは一つ問題を提供するのではないかという気がいたします。  それからもう一つは、これは公取のほうの御関係かもしれませんが、品質の保証ということがはたして得られるかどうか。いまのものを手紙で申し込むなり電話で申し込んで、あるいはセールスマンが来るという場合もあるそうですが、断われないのかどうかということですね。
  105. 野末和彦

    野末和彦君 断われる。
  106. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 断われるのですか。手紙で申し込んでも、それはまた断われる、品物がきた場合に。
  107. 野末和彦

    野末和彦君 品物をまた送り返せば、また現金がくる。二重、三重の手間になりますが、それは選択の自由があります。
  108. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 断わることはできるのですね。そうすると、その点はよさそうですね。  それからテレビ局というものが、そのときにそういうコマーシャルとか番組みをしておって、一体どの程度の得をしているのだろうかと、マージンを取っているのだろうか、手数料を取っているのだろうかと、それが普通のコマーシャル料だけを取っておるのか、あるいはその紹介したことによって利益の何%をテレビ局が取っておるのかということも一つ問題になりそうですね。そうすると公共の電波を使って税金の免除とか、公共なるがゆえにかなり保護をテレビ局というのは受けているわけですね。それがそういう媒体になって、その一定のコミッションを取るという形になると、これは商売をしているという形になって、それが公共放送としての保護に値するものであるかどうかという問題が出てまいりますね。その辺ひとつ検討してみたいと思います。
  109. 野末和彦

    野末和彦君 かなり大臣がそういうふうに理解を示されたので、非常に安心しているのですがね。いろいろ問題があるのですよ。番組によって違うのですな、また。いまのマージンの問題とかいろいろ。ですから一がいに全部がいかぬということもできないし……。
  110. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) おたくのお墓の場合、ちょっと教えてくれませんか、どんなケースか。
  111. 野末和彦

    野末和彦君 それで時間食っちゃうと、ぼくは先までいけないのですよ。——ですから、まず郵政省にお願いしたいのは、放送法に関係がないと言わずに、少なくも特殊商品は扱っちゃいけないのだというぐらいの自粛を警告してほしいのですね、民放連なり何なりに。民放連とかテレビ局会社の間でもいろいろ意見はこれはあるようですが、全部ひっくるめちゃうのでだめなんですよ。ほんとうにサービス品も、いい加減な品も、あるいはあやふやな業者もまともな業者もみんなひっくるめてしまうのですね。そこで問題があると、こう思うのです。まあいままで売り方の面で疑問をただしたのですが、大臣のおことばに出てきましたデパートの問題だとか、そういうのがありますですね。で、今度は商品を提供している業者のことで聞きたい。  放送番組とデパートの間に特殊な関係があるわけですよ。特殊な関係というのも変ですが、配達を専門に受け持つといいますか、商品を専門に提供するという意味の提携ですか、いずれにしてもA局はそごう、大丸とおもに提携しているとか、あるいはB局は高島屋と提携しているとか、C局はちょっと地方のほうに行きまして十字屋と提携しているとか、いろいろな組み合わせができているのですね。これは公正取引委員会も御承知ですね。
  112. 樋口嘉重

    説明員(樋口嘉重君) はい、承知しております。
  113. 野末和彦

    野末和彦君 そこで大臣、さっきのお話になるのですよ。結局いかがわしい業者も確かにいるわけですよ、宝石など扱いますとね。ところが今度はデパートが配達を専門に受け持っていると、この辺が非常に、先ほどの売り場面積の問題が出たんですが、私、考えるのですがね、特定のデパートが公共性の強い電波に乗って、結果的には売り上げを伸ばしている。表面的には放送局がお客さんの注文を受けて、それをデパートに頼んだという形にしてるんですが、結果はいずれにしてもデパートの売り上げがたいへんな売り上げで、月間一億をこえるということも言われているんです、月間ね。そこで、いまの売り場の面積なんです。百貨店法というか、大規模小売店舗法でしたか、それによりますと平米という物理的面積だけを規定してるんですね。でも、どうでしょうか、大臣のおことばがありましたが、もう少し通産省のほうで詰めて、これはやはりちょっと問題だと、物理的面積に換算できない空間というか、電波というものは、事実、物を並べ、物を売り、利益を結果的にあげてるんだから、やはり売り場に換算し得るものであると、これはやはり野放しにはしてはまずいと、こう思うんですがね。
  114. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 先ほど大臣から御発言ございました大規模小売店舗法との関係についてまず申し上げます。  同法は店舗面積の一定面積以上をこえるものについて調整の必要ありということで規制をいたしておるわけでございます。この店舗面積は、小売り業を営むために店舗の用に供せられる床面積ということでございますので、いま問題になっておりますテレショップ方式で直接消費者から注文を受けても同法の対象とはならないということでございます。——形式的には以上のとおりでございますが、実態的に申しますと、先生御存じのとおり、このテレショップ方式はデパートは全然表面に出ておらないわけでございます。全部テレビ局が一切注文を受けるというようなことになっておりまして、たまたまデパートが商品購入についてわりあいすぐれた力を持っており、しかも配送網も持っておるというような関係から、テレビ局とデパートが結びついて当該商品を販売しておるということになっておるのであろうかというように思うわけでございます。したがって大規模店法の関係からいいますと、やはり百貨店等が大規模な店舗をかまえ、これによって消費者を引きつけ、あるいは百貨店というブランドイメージを使って消費者に物を売ると、これは小売り業者に影響があるだろうということで取り締まっておりますのが大規模店法でありますから、本件のように百貨店が全く表面に出ておらない、単なるいわば卸売り業者の立場で商品をテレビ局の要請に応じて納入し、テレビ局の要請に応じて配送しておるというような点では、大規模店法の関係とするにはやはり関係が薄いのではないかというのが私どもの見解でございます。
  115. 野末和彦

    野末和彦君 事実そのとおりなのかもしれませんが、やはりデパートが表面に出ていないということ、それからテレビ局の要請に応じて物を配達するという、この形が実は法に抵触しないように研究された結果の形じゃないかと思うわけですよ。買ってる人はもうどこのデパートから来てるとわかってるんですから。ああ、この番組を見ていると、これはどこそこのデパートのものよというのは、もう伝票ではっきり来ているわけですからね。ですから、私は触れないのはあたりまえで、裏をうまく使ってるんだと考えるのですよ。  で、私の調べたところでは、大臣ね、デパートは表面に出てないというけれども、裏でほんとうに計画しているのはデパートじゃないかという面もあるんですよ。季節商品なぞはデパートがいままで売れる分以外にテレビで売る分を別に発注、製作しておりまして、あらかじめ用意してるわけですよ。で、それをテレビにのせると。そうなると、見てる人はどこのデパートで売ってると関係なく、テレビの物、ああ安くていい物だと買うが、結果的にはデパートがまず主導権を持って売っている品物も現実にあるわけですね。そのために局側とのマージンの問題なんかでうまくいかなくて手を引くデパートも現実に出てるわけですよ。  そんなようなことを考えますと、やはりこれは大規模小売店舗法ですか、それだけの問題ではどうも実態とはかけ離れているんだというふうに考えてるわけなんです。ただし、これは実態を調べましてもなかなか、マージンがどうだろう、電波料の問題はどうだろうということは表に出てこないと思うんで、やはりむずかしいかもしれませんが、いずれにしてもいま心配するのは大臣、いい——いい番組と言っては変ですね、信用のおけるというか、まともな売り方をし、まともな業者がやってる番組もある。しかし一方においては、同じブラウン管だが、かなりいかがわしいのもある。これがごっちゃになってる。これがこのままいきますと、うまみのある商売ですから、非常に短期間に大量販売できて人件費がかからないんです。ですから、かりに一割ディスカウントしたところで相当もうかるわけですね。そんなことから考えて、地方局に非常に波及しかかってるんですね。で、今度は地方局にいったら大臣のさっきのお話なんですよ。東京だからまだ通信販売だってやってるから新しい通信販売かもしれぬと言えますが、地方にいきまして大デパートが進出する、あるいは地方デパートと組んで地方局がこういう番組を一時間、二時間、三時間続けられるわけですね、いろんなことをやりながらどんどん続けて、放送法には関係ないですからね。そういうふうになりますともう完全に中小企業なり小売り店を圧迫する、あるいは流通機構を混乱させるとか、いろんな不安要素が出てくる。お客にとってはサービスであるかもしれないが、業界には非常に問題が出る。それと同時に、さっきから言う、ほんとにサービスになっていないのをブラウン管という魔力でもってサービスさせた錯覚におちいらせてると、このような問題がかなりありますのでね。この辺でデパートと番組の結びつきというものの歯どめになるような基準が、通産省からとは言わないんですが、郵政省の立場でも何でもあるべきじゃないかと。これも番組内容でテレビの内容にあまり介入できないからといって何か手を出しかねてるという状態は、いずれは災いを招くんじゃないかということを考えまして、いかがでしょうか、その、デパートといわゆるテレビ局の、商品販売の受け持ち方がいろいろありますが、結びつきというものに歯どめをかける基準がそろそろ検討されなければいかぬと、こう思いますが、大臣
  116. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろな問題点があるように思います。しかし合法的に行なわれておるのかもしれません。そういう点はわれわれとしていま問題点を指摘されましたものでございますから、持って帰ってよく検討して、関係各省庁とも相談はしてみたいと思います。
  117. 野末和彦

    野末和彦君 郵政省にお願いしますが、まあこれは非常にややこしい問題を含んでると思うんです。公正取引委員会の立場もあるし、通産省の立場、郵政省の立場ありますが、私は全廃する必要はないと思うんですよ、やはり便利をしてるのもあるんです。いまのうちのおふくろの話はですね、うちのおふくろはお店やってて年取ってるから買い物行けないんですね。ですからショッピングの楽しみっていうんで、まあ非常に楽しみにしてぽっぽぽっぽ買ってるという。で、便利してるわけですから、こういう意味の新しいサービス、ましてやほんとに値段が安ければぼくはそれはそれなりにいいと思うんです。しかし、少なくも公共の電波を利用するんであったら、扱う商品というものを責任を持って品質と価格というものを検討吟味しなきゃいかぬと、これあたりまえです。そのあたりまえなことがテレビ局ではいま非常に手薄で、全然してないところもある、している番組もあるというようなことですね。ですから、郵政省にお願いしたいのは、こういう番組の放送基準というものを民放連なぞを促してつくらせなくちゃいけないと、それは決して番組内容に介入することではないと、こういうふうに考えまして、このテレビによるバーゲンセールの健全化を進める主導権をとるのは郵政省じゃないかなあと、こう思うんですが、最後にその辺のことも……。
  118. 河野弘

    説明員(河野弘君) ただいま御指摘ございましたコマーシャルでございますが、これは番組内容、いわゆる番組そのものの内容でございませんけれども、私どもは広告放送といたしましてこれを番組といたしております。番組の一種でございます。先ほど番組でないと申しましたが、放送法のワク内でございます。念のためにちょっと訂正させていただきます。
  119. 野末和彦

    野末和彦君 じゃ、公取はいいわけですね、広告であれば。
  120. 河野弘

    説明員(河野弘君) それから、いまのお話の番組基準の問題でございます。御承知のとおりでございまして、民放連が番組基準を設けまして、これに基づきまして各民放がそれぞれの社ごとの特別な基準を設けてるわけでございます。それでまあ私どものほうから警告するとかなんとかということは非常にむずかしいことでございますし、まあ指導といいますか、お話がございましたように、こういう件があったという点は今後の放送基準の検討にあたって留意するように十分連絡いたしたい、こう思います。
  121. 野末和彦

    野末和彦君 大体要点出ましたから、いまのお話、この時間使ってあれするのまずいですがね、いわゆるお墓——お墓といっても変ですけれども、新しい形のちょっと変わったお墓をテレビで宣伝して、そして注文とったわけですよ。それで、うちもどういうわけか早とちりで注文しちゃったわけですよ、これ高いですからね、お墓。そして、結果はどうなったかといいますと、確かに来たわけですよ、セールスマンが。それで半金渡したわけですよ。それっきりなんですよ。そして、その名刺のところに電話かける。ないんですよ。そして、その墓をつくるのはちゃんとした、れっきとしたメーカーなんです。これは存在がちゃんとあるんです、九州に。何とか塔碑、つまり墓石をつくる株式会社。そこはいいんですが、来た人は、お金持って行った人は東京営業所と書いてあるんですよ。ないんですよ。東京営業所そのものも存在しないんですよ。そして電話も、テレビで放送した近辺だけは存在したようなんですが、あとはいないんですよ。それでえらい目にあいましてね、うちでも。そして、いろんな点でもって調べまして、まあある意味の解決といいますか、詐欺にはならなかったんですが、こういうのが、まあ特例だろうと思いますが、あるんですよ。ということは、テレビ局は業者のチェックを全然していない。要するに、お金出して三十秒なら三十秒、一分を買った人はだれでもいいんだということも一、二あるわけですね。それが宝石の場合は完全にあるわけですよ。ですから、返せるとはおっしゃいますが、宝石も返せるんですよ。要らないわと言えばそうなんですが、もうほしくなってきているんですから、どうしても購買欲をそそられている。  それからもう一つは、郵便局で申し込めというのもあるんですよ、宝石の場合。郵便局に送りますから、そうすると郵便局から知らせがいくからお金持って郵便局へ行って現品取ってきてください、そしてあなたが見て気に入らなかったら、直接今度は私のところに、この住所に返してください、そうしたら受け取り次第現金を返しますといって、別にインチキやっているわけじゃないんですが、そういうくどい商法をやっている。テレビ局と関係ない。この辺に問題があるんじゃないかと思うんです。  時間超過しましたが、そんなような事情ですから……。終わります。
  122. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ほかに御発言もないようですから、通商産業省とそれに関係する中小企業金融公庫中小企業信用保険公庫決算につきましてはこの程度といたします。  次回の委員会は、明後三日午前十時から運輸省関係を行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時二十三分散会      —————・—————