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1974-05-21 第72回国会 参議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十一日(火曜日)    午前十時十六分開会     —————————————    委員異動  五月十六日     辞任         補欠選任      沢田  実君     渋谷 邦彦君  五月二十日     辞任         補欠選任      森元 治郎君     足鹿  覺君      村尾 重雄君     萩原幽香子君  五月二十一日     辞任         補欠選任      増原 恵吉君     竹内 藤男君      足鹿  覺君     森元 治郎君      加藤シヅエ君     村田 秀三君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         伊藤 五郎君     理 事                 木内 四郎君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 田  英夫君     委 員                 稲嶺 一郎君                 杉原 荒太君                 竹内 藤男君                 山本 利壽君                 足鹿  覺君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 星野  力君    国務大臣        外務大臣臨時代        理        二階堂 進君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        外務政務次官   山田 久就君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省欧亜局長  大和田 渉君        外務省経済局長  宮崎 弘道君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       鈴木 文彦君        文化庁長官    安達 健二君        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林水産技術会        議事務局長    小山 義夫君        林野庁長官    福田 省一君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        外務省大臣官房        領事移住部長   穂崎  巧君        通商産業省通商        政策局経済協力        部長       森山 信吾君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際協力事業団法案内閣提出衆議院送付) ○欧州共同体委員会代表部の設置並びにその特  権及び免除に関する日本国政府欧州共同体委  員会との間の協定締結について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付) ○所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税の防止のための日本国とアイルランドとの  間の条約締結について承認を求めるの件(内  閣提出衆議院送付) ○所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国スペイン国との間の条約締結に  ついて承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付) ○千八百八十六年九月九日に署名され、千八百九  十六年五月四日にパリで補足され、千九百八年  十一月十三日にベルリンで改正され、千九百十  四年三月二十日にベルヌで補足され、千九百二  十八年六月二日にローマで改正され及び千九百  四十八年六月二十六日にブラッセルで改正され  に文学的及び美術的著作物の保護に関するベル  ヌ条約締結について承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十六日沢田実君が委員辞任され、その補欠として渋谷邦彦君が選任されました。  また、昨二十日森元治郎君及び村尾重雄君が委員辞任され、その補欠として足鹿覺君及び萩原幽香子君が選任されました。     —————————————
  3. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 国際協力事業団法案衆議院送付)を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 足鹿覺

    足鹿覺君 わが国経済協力は最近著しく拡大し、これを金額で見ますと昭和四十六年で二十一億四千万ドル、四十七年で二十七億三千万ドルという膨大なものになっております。  さらに政府は、国際的な要請をも踏まえまして、今後その一そうの拡大をはかることを内外に対して表明をいたしております。  しかるに、これまでかかる経済協力についての基本的な考え方を必ずしも明確な形で打ち出されておらないように思います。  専門同僚委員からすでにお尋ねになったと思いますが、重ねてこの際、国民の各層の理解と支持を得られないままにこれを進めてきた点を振り返って見られまして、国際協力の今後の理念とでも申しましょうか、そういったような点について明らかにしていただきたいと、かように存じます。いかがでしょうか。
  5. 山田久就

    政府委員山田久就君) 御承知のように、わが国国際社会における地位というものは、逐次非常な重要性を増してきておることは御承知のとおりであります。この重要な一員としての立場において、したがって、世界の平和の維持発展ということ、そしてまた、昨今のこの国際的な連帯関係というものが一段と強くなってきた中において、世界各国との共存共栄というようなものについて十分の責任の分担を果たしていかなければならないという、そういう認識のもとに、この国際経済協力というものにも十分の責務を果たしていかなければならないという立場でやっているわけでございます。したがいまして、そういうような関係から、経済協力発展途上国経済社会開発国民福祉向上ということを考えて、このために特にその国の自動的な努力、これに対して援助を与える。しかも、この間において、相手国立場というものを十分に尊重して、しかも相手希望と申しまするか、真に相手国にそういう意味で相手希望し、また役に立つというような面で協力をやっていかなければいかぬと、こういう考え方各種協力を行なっているという、そういう現状でございます。
  6. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいまも申しましたように、わが国経済協力が拡大しておりますにもかかわりませず、開発途上国わが国に対する信頼の気持ちが高まるどころか、むしろ逆にわが国に対する批判が増大している傾向にあるのではないかと憂慮いたすのであります。このことは、先般田中総理東南アジア訪問の際にもはっきりあらわれておると思います。これは、従来のわが国経済協力農業だとか医療、教育等、これら関係諸国の住民の生活と福祉向上に直接寄与するという点が少なくて、むしろそれが往々にしてわが国輸出振興企業海外進出等の手段とされ、経済協力の名のもとに経済侵略を進めてきた面があるからではなかろうかと思うのであります。たとえば、わが国経済協力の実績で見ますと、輸出信用及び直接投資等に当たる部分が、昭和四十六年では全体の五十九%、四十七年で五七%となっておる、この点にもそれが私は明らかに示されておると思うのです。  このようなわが国経済協力あり方に対する開発途上諸国の不満や批判に直面して、政府は、ただいまも御答弁がありましたが、きょうは残念ながら外務大臣がおいでにならない、別に次官で悪いということではございませんが、外務大臣代理として、二階堂官房長官に伺いますが、政府全体としてこの点をどういうふうに反省しておられますか。また、その反省の上に立って、今後わが国経済協力を思い切ってどのように方向転換していく御所信でありますか、これが私の質問の基調でありまして、われわれがこの法案に対する基本的な考え方なり、この法案の取り扱いに対する態度を決定する上においても非常に大きい問題でありますので、しかと承っておきたいと思います。
  7. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) 私は、いまお尋ねの問題につきましては、昨日臨時代理を仰せつかったばかりでございまして、当を得た答弁になるかどうかわかりませんが、その点はひとつあらかじめ御了承の上、お聞き取りを願いたいと思いますが、いま足鹿先生からいろいろおっしゃいましたとおり、わが国が最近における国際経済協力技術協力等世界の至るところの各国政府間の協定民間協定等を結んでやっておることは事実でございますが、またそうした協力が拡大されるに伴いまして、各国からも日本経済協力に対するあり方等について批判が出てきていることも、いま足鹿先生がおっしゃったとおりだと私も思います。反省をしていかなければならない点も多々あると思います。したがいまして、総理東南アジアから帰られてから、特に経済協力あり方については、政府間でもう少し詰めて、話をちゃんときめて、そして適切な、効果のある、また相手国から真に喜ばれるような経済援助技術援助をすべきであるということを強く主張されておるわけでございまして、私はそういう点につきましては、やっぱり従来民間ベースで行なわれておった経済協力技術協力等にまかせることなく、民間協力があっても、政府がそれに対してやっぱり責任を持つという体制をとっていかなきゃならぬのではないかと思いますが、同時に、やはり経済協力技術協力は単に日本の利益だけで行なわれるべきものではない。相手国のやはり社会民生の安定に寄与する、経済発展に寄与する、相手国立場に立ってそういう協力が行なわれていかなければならないものではないか、かように考えるわけでございまして、私どもは、いろいろ批判がありますが、その批判を十分受けとめて、今後、せっかく経済協力をやっても相手の国からいろいろと批判をされるような経済協力あり方ではいけないという点をいろいろ反省もし、また、正すべきものは正して、相手国をどう発展させるか、民生安定、経済協力をどう相手国立場に立って実施していくかということを重点的に考えていかなければならないのではないか、かように私は考えるわけでございます。
  8. 足鹿覺

    足鹿覺君 従来のわが国経済協力の内容については、先ほどもちょっと触れましたが、資金面協力中心に置かれておって、技術協力が軽視されてきたということは、統計資料を見ても明らかになっております。たとえば昭和四十七年を見ますと、わが国技術協力経済協力全体に占める割合は一・三%で、先進諸国の平均九・四%と比べてみますとこれは著しい立ちおくれと言わざるを得ません。これは先ほど述べたように、従来のわが国経済協力が、輸出振興企業海外進出に備していたということの表裏一体の関係にあることを裏づけていると思うのです。こういう点は、私はこの際政府もすなおにお考えになって、方向を転換するというただいまの官房長官の御言明をわれわれは期待をし、その実のあがることを今後も十分施策の面であらわしていただきたいと思います。  そこで、経済協力の問題に関連しまして、農林業における海外協力中身はやはり技術問題が大きなウエートを私は占めると思いますので、この問題から少し入ってみたいと思うのです。直接専門家じゃないから御答弁求めても無理な点もあろうと思いますけれども、お聞きになって、今後の施政の参考にしていただきたいと思います。  農林大臣に伺いますが、農業農林業の場合の海外協力、なかんずく技術者研究者確保の問題でありますが、発展途上国にとって農林業文字どおり基幹産業であります。したがって、その開発経済開発のための基本的な課題であることは言うまでもありません。途上国国際協力事業団の実施する農業開発あるいは技術協力に寄せる期待には大きいものがあると私は思います。農林業開発あるいは技術協力を円滑に進めるためには、質量ともに十分な技術者研究者確保することが必要であろうと思います。しかし、わが国農林漁業関係技術者研究者の層は決して厚いとは言えないと思うのです。特に、果樹、蔬菜等でこの傾向が目立ち、技術者研究者海外派遣の余力に乏しいと言わざるを得ません。こうした実態の中で、事業団では、今後その必要が予想される大量の農林業関係技術者研究者をどのようにして確保養成していく御所存でありますか、この点を農林省から伺いたいと思います。
  9. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに先生指摘のとおり、今後、海外農林業開発事業を推進するにあたりましては、資金確保ももちろん重要でございますけれども、やはり技術を持った人材確保、これなくしては海外農林業開発事業は成功しないというふうに考えております。また、じゃ、そういうような人材国内に豊富にあるかと言いますと、おっしゃるとおり、必ずしも十分には確保されておらないという現状でございますので、私どもは、いま御審議いただいております国際協力事業団法によりまして、この事業団発足いたしますならば、その事業一つといたしまして、国際協力事業に従事する技術者養成確保というものを、この事業団の重要な仕事一つ考えているわけでございます。その際特に必要なことは、わが国農林業経営に必要な技術のみではやはり海外農林業経営には適さないという面もございます。やはり現地現地地域の諸条件に適合した技術を習得した人々現地派遣されるということが何よりも必要でございますので、私どもは、そういうような技術を取得した技術者を、早期に、かつ必要な量を確保いたしたい。そのためにはこの協力事業団で一そう養成及び確保事業には力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  10. 足鹿覺

    足鹿覺君 技術協力拡充していくということはなかなか言うべくしてむずかしいことです。これに携わる優秀な人材、あるいは技術者で、優秀な技術を持っておっても語学面等、いろいろと問題があると思うんです。この処遇上の問題が私は非常に隘路になってきやしないかと思うんです。特に、地方公務員の中に練達たんのうな士がたくさんおられます。これを活用していく上に政府は今後どういうふうに対処していく考えであるか。たとえば、河野農林大臣当時に愛知用水公団をつくって初めて外資を導入したかつての経験、これには膨大な地方技術者愛知公団に吸収した。将来の身分を保証してやる、決して不利にはしない、こういう政府約束をし、大きな将来への希望を持ってこの技術者たちは長い間愛知用水公団の建設という難事業に取り組んだ。いざ済んだら、県庁に帰るにもポストはない。自分の元の古巣の研究所へ帰ってみてもポストはない。何らこれに対する保証がなく——どもはあの法案に対してもずいぶん疑問を持っておりましたが、結局検討してみて、日本農業開発につながる大きな問題として、これを、和田さんの——まだ存命中でありましたが、御指導のもとに現地の調査もやりまして、御協力を申し上げた。ところが、十数年たって完成後、愛知用水公団労働組合が私どものところへ来て訴えたことは、約束が違う、自分たちはもうすでに年をとった、行き場がないと、待遇をどうしてくれるかという悲痛な叫びがあったことを忘れることはできません。今度の技術協力海外にたくさん技術者が出ていくでしょう。その人々に対して、もし、あの愛知用水公団法の際の約束と、その完成後における各地方自治体や専門研究機関から動員した人々に対する政府の冷たい態度を改められない限り、技術者は喜んで現地へ出ていくことは私はできないと思うんです。いかがですか。
  11. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに、優秀な人材確保するというためには、そういう人たちが喜んで、また、安心して仕事に打ち込めるような裏づけがなければならないわけでございます。農林業海外における技術者の問題は、大体、そういう技術者は国と都道府県に大部分がいるというのが実情でございます。そこで、国の技術者または都道府県技術者につきまして、先生のおっしゃるように、安心して海外農林業開発に従事できるような、そういう制度の確立ということを私ども考えておるわけでございます。筆いにして、国家公務員につきましては、昭和四十五年に、国際機関等派遣される一般職国家公務員処遇等に関する法律というのができまして、当核職員海外における派遣期間におきます不利がないように、また、帰った場合のポスト等につきましても、この法律の精神に従いまして処遇をするというようなことが行なわれまして、以前のような問題が解消されていると考えておりますけれども、ただ残念なことには、まだ都道府県職員につきましてはそういう制度がございません。したがって、都道府県職員の方々に海外農林業開発に従事していただくためにはいろいろ問題があるわけでございます。私どもは、この点につきましては、早急に、必要ならば法律の制定をも含めまして、少なくとも国家公務員と同じような待遇が受けられるように、安心して海外農林業開発事業に従事できるように措置をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  12. 足鹿覺

    足鹿覺君 二階堂さんと倉石さん、両大臣に、いまの岡安局長答弁大臣答弁として受けとめてよろしいでしょうか。この辺はたいへん大事な問題ですよ。
  13. 山田久就

    政府委員山田久就君) いまのお話しの点、これは、経済協力関係を進めていく実はその根本問題だと思うんです。いろいろ政府のほうでも改善の道を講じておりまするけれども、まだまだ至らぬ点が多いと思います。一つは、やはり、わが国における雇用関係が、どちらかと言えば封鎖的な雇用関係になっておると。そういうことのために、一定の相当な知識、経験技術を持って帰ってきても、自由自在に行けるというような関係になっていないという点が非常に大きなわが国の欠陥と言うか、ハンデキャップであると。しかし、にもかかわらず、そういう制度が存する限りは、中央公務員についていろいろ改善されている点が出ているわけですけれども地方公務員あるいはその他の面においてもそういう面を改善することによって、初めて、喜んで出かけていって、それで十分報いられるということができるんで、根本問題として、さらに政府として考えていかなきゃならないというふうに思っておる次第でございます。
  14. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いまお話のございました点はたいへん大事なことだと思っております。外務省側からもお答えございましたが、現在、民間でやっております海外事業等に、かって農林省につとめておりました技術者が相当数勤務して現地でやっておられますが、大体は指導的役割を持ってやっておるようであります。しかし、これからやろうとしておる問題は、私のほうの所管に関する事業だけでもかなり数が多くなるわけでありまして、先ほど政府委員からお答え申し上げましたように、まず、これを充足してまいる技術者養成ということ、それがたいへん大事なことであります。そういうことにつれて、政府全体としてやはりこういうような新しい構想のもとに海外協力を進めてまいるのでありますから、その人たち現地で安心して、将来を楽しみに働いていかれるようなシステムをつくっていかなきゃいかぬと思う。これは政府が今度協力事業団というふうな構想考え出します基礎になるものでありますので、われわれといたしましては、そういう点について政府部内で十分検討いたしまして、優秀な人たち、国際的にも信頼されるような人を養成するのでありますから、そういう人々の将来の保証につきましても、やはり十分に考えてあげるということが必要なことだと思っております。
  15. 足鹿覺

    足鹿覺君 倉石農林大臣ね、これは熱帯農業研究センターというのを農林省がおつくりになったんです。で、私ども内閣委員会でこれを賛成して、ずいぶん苦言を呈しながら賛成して通した。で、その後、この資料もらって見ますと、いかにわれわれの当時の考えが浅かったかということを自己批判しておるわけなんです。で、この熱帯農業研究センター体制の立ちおくれをあらわすこれはいい例だと私は申し上げて差しつかえないと思う。で、これにも載っておりますが、熱帯農業研究センターで働いております者は、昭和四十五年できたわけでありますが、大部分発展途上国が属しております熱帯亜熱帯地域農業研究する機関として発足はいたしましたものの、本センター在外研究員として派遣をした者、あるいは共同研究を行なうというような人員は、年間で一年以上滞在した者が四十一名しかありません。短期で三、六ヵ月ぐらいの者が八人ぐらいです。で、延べにしましても長期でたった七十四人、短期で四十四人にすぎません。このわずかな人数で東南アジア一帯を対象として、研究の部門も水田、畑作、飼料作、畜産、家畜衛生、園芸、農業土木土壌肥料病害虫等にきわめて多岐にわたっております。また派遣期間も、これは他の政府研究機関からの派遣の場合も同じだが、せいぜい二、三年のもので、五年にわたるというようなものはあまり多くありません。農業研究は五年以上のものが多いわけでありまして、現状派遣期間では私は短過ぎるという批判を聞くのも当然じゃないかという気もします。しかし、こういう悪条件の中で技術者諸君海外で米の多収、耐病品種の育成、多毛作の研究作物多様化研究等かなりの成果をあげておるということは、私はその技術者諸君に敬意を表せざるを得ません。問題は、このセンター相手国との共同研究を目的とした援助のみでありますので、やや性格は異にしておりますが、今度の事業団発足するのを機会に、そして農林業開発途上国に対する協力を進めていく上におきまして、このセンターをどういう形に位置づけていかれますか。この中身は、とてもいま開発途上国から求めておるような、そういうスタッフでもありませんし、体制でもありません。どうせ改組をなさらねばならぬと私は思いますが、その点どういうふうにお考えですか。
  16. 小山義夫

    政府委員小山義夫君) 熱帯農業研究センター設立の際には、先生にも非常に御尽力をいただきまして、四十五年に発足をいたしまして、おかげさまで、非常に苦しい道でございましたけれども、少しずつ拡充をして事業を進めてまいってきております。御指摘がありましたように、このセンターに対する要望あるいはセンターの任務から申しますと、いまの体制は必ずしも十分でないことは私も自覚をいたしております。定員事情の非常にきびしい中でございますけれども各種研究機関の中では優先的に拡充努力をしておるつもりでございますけれども、まだ発足後、日が浅いこともございまして、現段階では必ずしも当初の計画どおりにいっておりません。現在このセンター定員は八十四名、研究者が五十九名という体制で進めておるわけでございます。  そこで、これからの問題でございますが、一番冒頭に御指摘がございましたように、この種の分野を専門としております研究者技術者の数がわが国で非常に少のうございまして、その少ない人員をどうやって国内での研究と同時に現地での駐在研究死面についてどのように充実をしていくかということが私どもの一番の悩みでございます。で、この研究勢力をあまり分散をいたしますと、そうでなくても少ない研究者業績がなかなかあがらないということもございますので、今度の事業団設立構想が練られました段階で、本来の研究プロパーのことにつきましては、できるだけこの熱帯農業研究センター中心としまして、国全体の研究者業績をここに持ち寄って、この新事業団が取り組みます事業裏づけになる研究を従来以上に充実をしてまいりたい。しかし、そうは言いましても、今度は現地で個々具体的に毎日の技術開発事業を進めていく上で当面する技術上の問題まで全体熱研のこのセンターが扱っていくことも、実際問題としてむずかしいというふうな面もございますので、たとえば品種の選定、現地現地に即しての品種の選定とか、あるいは具体的な栽培管理技術というふうなことについては、熱研、このセンター自分でやることは少しむずかしかろう、そのかわりにそれを事業団のほうでできるだけやっていただいて、そのかわり、その裏づけになる研究については熱研が全力をあげてこれから取り組んでいくというふうな形で連絡を密にしてまいるようにいたしたいというふうに実は考えておる次第でございます。
  17. 足鹿覺

    足鹿覺君 私が聞いているのは、この現在事業団発足をするにあたって、約五年の日子が経過した現在において、これでは足りないと、事業団というものとこの熱研というものの関係をどういうふうに結ぶのか、また、この熱研というものの海外協力に占める位置づけを大きく評価するならば、思い切った対策を講ずる用意があるかということを聞いているんですよ。あまり技術的なことでなしに、やっぱり太い線で、これはこういう画期的な法律をつくるときには、従来のちゃちなものでは間に合わぬときには、思い切ってこれを改組するとか、新しく構想を一変して再発足するとか、何らかのことがなけらねば、私はその事業団をつくったからと言って現地人々に喜んでもらえるような仕事がなかなか農業の性格上、息の長い仕事ですからできないのではないかというこを聞いているのですよ。
  18. 小山義夫

    政府委員小山義夫君) 新事業団事業を進めていく上で、熱研がその裏づけとなる技術研究を十分に拡充していかなければならないということは、御指摘のとおりでございます。熱研の当初のスタートは、五十三名でスタートをいたしましたけれども、その間、だんだん拡充をしてまいりまして、やっと今日の約八十数名という段階にまできております。これとても、当初の構想に比べるとまだ不足をしております。ただ、国全体の研究機関の中での全国に散らばっております、約三十のいま研究機関が農林水産関係全体でございますけれども、その研究機関の総力をどこかの窓口で結集して、そして新しいこの熱帯農業研究センター熱帯農業研究に取り組んでいくという体制は、やはり今後どうしても必要であろうというふうに実は考えております。なかなか定員事情もきびしいときでございますけれども、今後ともそういう意味では従来のテンポを非常に……、熱研の研究体制充実に取り組んでまいりたいというふうに考えております。まだ数年でございますけれども、従来のあげました研究実績についてもかなり現地の実情に即した病虫害の抵抗性の強い品種の育成であるとか、あるいはわが国にも同時に役立つような研究の成果が幾つかあがっております。そういう意味で、今後ともこの研究センターの果たす役割りというものを重視してまいりたいというふうに思っております。ただ、一つ反省をしていかなければならないと思いますのは、どちらかといえば、若干基礎研究に片寄り過ぎて今日まで行なってきた経緯がございます。というのは、やはり蓄積がないものですから、そういう形で進んできたのかと思いますが、これから事業団が新しく事業をやっていく段階では、もっと現地の実情に即した研究のほうに重点を移していく必要があるというふうな点を考えておる次第でございます。
  19. 足鹿覺

    足鹿覺君 もっと突っ込んで聞きたいのですけれども、時間がありませんのできょうは先へ進みます。  この開発途上国の人口の増加率というものは、年率二・五%という、非常に高率で今日に至っております。このような人口増や、さらにこれらの人々の生活水準の向上によりまして、これらの諸国の食糧事情は急激に拡大する一方であります。しかるに、これら諸国の農業生産は、かつての世界の注目を浴びましたフィリピンの稲作研究所が発表いたしまして、成果をあげたIR8、これも必ずしもその後の経過があまりよくない。それから緑の革命といういろんな施策が注目を浴びましたけれども、これも限界に当たったといわれておる。こういう状態で、現地人々の求めておるものは、自分たちの食べるもの、しかも、どんどん増大していく人口をまかない得るために非常に苦しんでいる。これに対して日本がどういう態度でもって今後協力していくかということによって、私はこの事業団の評価はおのずから定まると思うのです。私は、やはり現地の自給農業というものをまず重視するということが基本姿勢でなければならぬと思います。東南アジア熱帯事業は、プランテーション農業と原住民農業と二つに分かれております。そういう中で、もっぱらいままで原料輸出を目的とする大規模な企業農業が一方にあり、また一方には、原住民のいま申しました自給的農業がある、こういう形になっておると思うのです。途上国の場合は、ほとんどの農民が自給的農業に従事しております。したがって、農民の所得向上と生活の安定、ひいては途上国経済の発展を目ざすために、まずこの自給的農業の改革から私は始めていかないと、現地住民の協力を得ることはむずかしいのではないか。あまりにも日本のいままでの開発途上国に対する態度は短兵急で、利潤追求一本やりで評判がよくない。これはさっき申し上げたとおりであります。で、やはり自給農業と言えば稲作なんです。東南アジアでは、稲の収量は平均してヘクタール当たりもみ収量で二トンですね。まことに低いものです。常に不足状態に置かれているといわれておりますが、この地帯は、いまも申しましたように人口が非常に増大しつつある。したがって、IR8が失敗したのも、水に対する対応がまずかったとも聞いております。やはりいい品種を開発いたします。しかも、これはアメリカの財団がフィリピンに世界的な研究所を設けてやって仕事であります。非常にわれわれも注目しておりましたが、やはりその総合的な水の問題との関係がうまくいってなかったのじゃないか、現地住民にこれを移した場合に非常に耐性の、インディカ系統の品種としては最高のものではないか、こういうふうに思っておったわけでありますが、どうも芳しくない。こういう点を考えてみますと、やはり基盤整備、それから畑作の場合はかんがいですね。それから機械化の問題、こういった問題が出てくるのですが、現地農業経営は、まだ手やからだでやる農業です。そこへ企業的な農業が進出をしますと、すぐに大きな機械を持ってきてこれになじませようとするから、現地住民は必ずしもこれについて歩かない、こういう、いままでの経過があるわけなんです。したがって、そういう点から企業的な農業への協力に一方で進められておりましても、一方においては、現地住民と歩調を大体合わせながらこれを漸進的に指導して、自給度を高めていく、そういうやはり方法がとられなければならぬと思いますが、いずれにしましても短兵急な協力体制、短兵急な成果をあげていくということにあまり重点を置かないで、ほんとうに親切に、現地住民が感謝をしていくような方法に立っていただかなければならぬと私は思います。非常にこういうじみな仕事を積み重ねられなければ、私はこのような法律をつくっても、通産ベースの、鉱工業の資源を、一方ではばく大な資源開発のためのこれは日本のサービスにすぎないのじゃないかというような批判を私は受けないという保証はないと思うのです。その辺を私は十二分に考えていかなければならぬ、かように思います。  この熱研の位置づけの問題、これは農林大臣、すでに発足しておるわけです。これをつくったときの状況と、今日の現状があまりにも開いておりますので、十分大臣も、主管大臣農業に関する主管大臣でありますので、構想を一新して対応していただきたいと思いますが、御所信、御決意の一言でも承りたいと思います。
  20. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) たいへんわれわれにとりまして大事な点を御指摘いただいたわけでありますが、先年私、これは私が農林省におりますときでありますが、まず最初に亜熱帯農業研究所を沖繩の先島につくりまして、そのころの構想も、やっぱり将来、そのころすでに東南アジア諸国からいろいろ農業に対する協力の申し出があったものでありますから、それらを考慮いたしまして、まず沖繩にそういうものをつくりましたが、昭和四十五年か六年、これも私が農林省におりますときに、皆さまの御尽力によりまして、熱帯農業研究所をつくりまして、いまタイ国、インドネシア等で稲の改良等について種々検討いたして、その内容につきましては、先ほど事務局長からお答え申し上げましたが、私どもはやっぱりこういう事業団というふうな考え方協力事業団、これはまあ海外に、国際協力ということが基礎に考えられておることでありますが、昨今のような国際社会における食糧の緊迫状況等を考えてみますというと、非常にいまの時宜に適した考え方であると思うのでありますが、御指摘のございましたように、私どもは、開発途上国もやはり国によってそれぞれ状況は違いますが、まあ私、国の名前をあげることはいま政府立場におりますから御遠慮いたしますが、ある国では非常に稲作に適しておると思われる地域が荒廃した状況であったり、先年日本農業専門のある学者が六ヵ月頼まれてその国へ行きまして、野鼠を退治する教育を、訓練をしましたが、その教授が帰ってきてしまったら、おる間は野鼠は出てこなかったそうですが、帰ったらまたもとのとおりになってしまったというふうなこともあります。またある国では、稲の背の高さと雑草の高さが並んでおるのを私どもはまのあたりに見まして、実にびっくりしたような次第であります。この熱研の中には、やはり現地の若者たちの訓練をしてあげるというようなこともたいへん必要なことだと思っております。そこで、今度やります事業団考え方、いま申し上げましたように、国際協力という考え方に立ちますのが一つ。もう一つは、せっかくりっぱな耕地を持って、農地に適している土地を持っており、人口も十分あるにもかかわらず、その生産が十分でないようなところが、だんだんこれから生活環境がよくなるに従って、食べものにつきましてもだんだん高度化してまいるでありましょう。したがって、それらの人々のそういう食生活が改善されるに従って、世界全体の穀物に対する需要がふえてくるわけでありますので、そういう意味で私どもは、ぜひこの開発途上諸国に対する農業指導援助ということは、いろんな意味においてたいへん必要である。ことに、これらの国々には技術的、資金的な援助をいたしまして、政府間ベースで話をして、そして先方で必要なものもあるはずであります、たくさん。そういうものはできるだけ先方に供給してあげる。なお、余力を持って、われわれのほうで——足鹿さん御存じのように、どうしても国内で生産量の足りないものがありますので、そういうものをやっぱり安定的な価格で、計画性のある一定量を国内にもってくるようにいたしたい。しかも、そういうものは一、二カ国に限らないで、やはり多国間でそういう協定ができて、わが国の需要量を満たすということができれば非常にしあわせであると、こういう考え方でおりますので、相手方の国と政府間ベースで十分に協定をいたしまして、先方の望みもかなえられるような方向で進めてまいりたいと、こう考えておるわけであります。
  21. 足鹿覺

    足鹿覺君 時間の制約がありまして、考えておった三分の一もお尋ねすることができませんので、これはまた別の機会に譲るといたしまして、開発途上国との農業開発についての現地農民の自主性という問題を基礎にする場合は、やっぱり現在タイやフィリピンで農業協同組合の育成につとめておるようでありますが、その他の国にも固有の組織があると思うんです。そういう現地人々の農民の組織と自主性を尊重する、またそれに対して協力もしてあげる、こういう考え方に立たないと、日本のものを押しつけてもいけませんし、そこの協力関係というものが私は大事だと思う。で、そういう観点から、本事業団法案につきましては、日本国内農業団体が一致してその実現を期待しておるように私も受けとめております。特に、農協関係がそういう方針を強く持っておるようでありますが、一つには、わが国農業についての長期展望から、やはりいま大臣がお話しになりましたように、米などは現地人々の自給のために、そして日本が必要としておる飼料というようなものについては、ある特定国にのみ依存しないで、これを多国間に求めていくという基本方針をやはりもとにしていかなければならぬと思うんです。そういう点で農業団体や畜産関係人々は、現在一番飼料に注目をしておる。またそれを、多国間方式によってこの事業団の大きな成果があがることに期待しておるからだろうと思うんです。で、トウモロコシにしろマイロにいたしましても、一昨年から世界的な凶作もありますし、それからやっぱり資源を持っておる国、食糧を持っておる国が、戦略としてこれを使いだしてきた。だから市場操作なんかはきわめて簡単だ。この間も本会議で、私、白書のときに大臣に申し上げましたが、この二年間に小麦が四倍になっているんですからね。去年なんかにいたしましても、えさは一年間に、一年とちょっとの間に三回ないし四回値上げをしなければならぬというていたらくであります。ですから、飼料の供給源をオーストラリア、南米、さらには東南アジア諸国に分散、多元化していくということは、これは現在日本にとって課せられた大きな問題だろうと思うのです。で、こうした供給の安定方式を商業ベースだけにいままでは依存しておりましたが、これからは農協間における協同が成り立たないものか。相互扶助という原則に立ちまして、供給側には生産の計画化を、輸入側には安定確保の計画化を進めていくと。長い目で安定供給のシステムを進めていかなければならぬからだと思うんです。特に東南アジアですが、開発途上国におきまして、向こうさんの農協側では、わが国の農協と提携できるにふさわしいパートナーとしての組合の育成を急がねばならぬ、この面の努力を続けておると聞いております。こうした推進の立場に立つ意見の反面におきまして、団体側にも法案に対する若干の不安感は私どもにも漏らしております。それは事業団農業開発協力を通じて開発輸入産品の輸入が著しく増加して、わが国農業の自給度向上努力の芽をつぶす結果をもたらさないかというやはり不安感というものは持っておると思うんです。にわかにそういう状態は私はこないと思いますけれども、長期展望に立ったときには、そういうことに危惧を持っておると思う。しかし、事業団農林業開発について農林大臣を主務大臣として外務大臣と共管なさるわけでありますから、こうした農民の不安は私は十分解消できるんではないかと思います。こういう見地から、農林大臣に、具体的な事業団の今後の運営にあたって二、三申し上げて、御所信を承りたいんですが、その第一点は、国内農業の自給度向上の要請と海外農林業開発の基本の調整をどういうふうにはかっていかれますか。これは自明のことだと思いますけれども、やはり一応これは大きな原則でありますから承っておきます。それから開発の方式については、先刻来述べておりますが、協同組合間協同による農林業開発のプロジェクトと、一般企業サイドによる開発プロジェクトと、その支援にあたり、両者の支援条件に差を設け、前者を優先して取り扱い、何らかの育成助長の方策を講ずるということが私は必要ではないか、かように思うわけでありますが、この点、農林大臣に特に御所信を承っておきたいと思います。
  22. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 農協でございますが、御存じのように、東南アジアと申しましてもいろいろな諸国があるわけであります。それから南米にも協力を求めてきている国もありますが、それらの国々の政治体制によって農業協同組合というものがだいぶ形が違っておりますし、また、私ども日本で見ておりますような、ああいう組織立った農協というのは、私どもの調べております範囲においてはほとんどございません。私どもに、たとえばタイ国でもそうでありますが、農業協同組合というものが日本では非常にうまくいっているので、それを研究したいということを先年来たいへん熱心に言っておいでになりますけれども、まだそういうところまではいっておりませんが、私は、農協というものが、政治体制にかかわらず、できることを待望いたすわけでありますが、そういう点で、農協というものを相手に、わが国の農協がこういう開発に対して特段のリーダーシップをとるというふうなところには、これはまだなかなか先のことではないかと思うんでありますが、しかし、いずれこれらの諸国とこの開発事業について接触するわけでありますので、私どもはやっぱり協同組合というものが自主的にできることがけっこうだと思っております。  それから国によりましては、御承知のように、大きな資本で種からすべての物資の資金的供与を受けて、そして農業をしまして、生産されたものがその大きな資本にほとんど吸収されていくというふうなところもあります。なかなかその国々によってむずかしい状態でありまして、したがって、私どもやっぱりなるべく早く実効をあげ得るためには、先ほどお話ございましたように、こういう農業の問題は一年や二年で何か効果があがるように考えるのはそもそも間違いでありまして、やはり国と国との政府間ベースで、十分に信頼し合える人たちで意見の交換をした上で、その国にふさわしいような形態を編み出すことが大事なことではないかと思っております。したがって、私どもは機会あるごとに、協同組合ができますことはけっこうなことであると思いますので、そういうつもりで対処いたしたいと思っております。  それから内外の需給関係のことでございますが、私ども日本国内において農業協同組合の方々ともこの法律提案のときにいろいろ御意見を承り、また交換したんでありますが、私ども政府の方針として、しばしば国会のあらゆる機会で申し上げておりますように、国内で生産可能なものは、可能な限り国内生産の自給度を維持向上していくんだと、こういう方針はもう一貫して変わらない政府の方針でございます。内閣総理大臣も、あらゆる機会にそのことを強調しておりますことは、御存じのとおりでありますが、しかしながら、やむを得ざるものがございます。たとえばトウモロコシ、マイロ等、まあ麦にしてもそうであります。ことに飼料関係はそうであります。それの自給度も高めるためにできるだけの援助は予算的にもいたしておりますが、なおかつ、これを海外に依存しなければならぬものがあります。そういうものを、先ほどもお答えいたしましたように、多角的にやはり輸入可能な方法を講じておくということが必要なことである、こういうことで、これから開発途上国と協議をいたします場合におきましても、水田等の改良その他希望があれば助成はいたしますが、私どもはこれはわがほうに持って.くる意思は、必要もありませんし、全然そういう希望もございません。したがって、トウモロコシ、大豆、マイロ、木材、そういうようなものでありますので、これは国内自給度の関係からは断ち切られておる問題でありますことは御存じのとおりでございます。そういう方針でやってまいるつもりであります。
  23. 足鹿覺

    足鹿覺君 大臣のいまの御所信でよくわかりました。要するに、国内農業海外農業開発というようなものは無縁のものではないという、そういう基本認識は明確に述べられましたので、私ども安心して、日本の農民もただいまの大臣答弁によって安心をして、この事業に対する認識を深めるでありましょう。  そこで、この国内の農民や農業団体の理解と支持を得るということは、そういう意味からも必要でありますし、それから事業団の運営について伺っておきたいと思いますが、法何条かに審議会というものがありますね。あの審議会が四十名になっておりますね。法十九条ですか、総裁が一人、副総裁が二人、この四十人の審議会というか運営委員会といいますか、そういうものに対してどういう構成についての御構想がありますか。やはり国内農業団体の意向が反映されるような人材、そういうようなものについては当然御配慮になってしかるべきだと思いますし、民間の有為な人材を吸収されていくということも私はとられるものだと思っております。  第十九条、事業団の運営審議会の問題、その点についていかがでありますか。
  24. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 運営審議会につきましては、人数が四十人ということに定められております関係もございまして、まだどういう分野からどういう審議会の委員をお願いするかにつきましては、定まった考え方はございません。したがいまして、いま足鹿先生指摘のように、農業関係につきましても十分な学識経験のおありになる方に参加していただくということは、十分にこれから考えてまいりたいと思う次第でございます。  御参考までですが、従来この新しい事業団の基礎になります海外技術協力事業団には十五人の運営審議会、それから同じく海外移住事業団にも十五人の運営審議会がございまして、それぞれその方面の学識経験のある者に委員を委嘱してまいっておりますので、当然農業関係もその中にも入っておりますが、新しく入る方も当然出てくるかというふうに考えられます。
  25. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は口が悪いので、ちょっとごかんべん願いたいんですが、この種の審議会だとか運営委員会だとかいうものの構成を見ておりますと、なるべく批判的な立場の学者だとか評論家だとか団体代表というような者を政府は毛ぎらいしておると思うんです。みんな外へ出しちゃう。  そして、その息のかかった者だけを、元官僚、高級官僚の古手、それから言論界でも政府におべんちゃらを言うような者だとか、農業団体をあごで使えるような者だとか、そういう者を、今度はやられるとは私は思いませんが、いままでの分も運営を改めてもらわなければいかぬ。そういうやかましい批判的なことを言う人間こそ、ほんとうにその問題に対して真剣に考えとる、こういう理解と広い視野に立たない限り、官庁のなわ張り争いによって、どこが何人ならうちは何人だというような機械的な分散じゃなしに、局長、やっぱりそういう考えでやってもらいたいんですが、いいですか。
  26. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 足鹿先生のただいまの御意見、まことにごもっともと存じますので、今後選任にあたっては、そういうような考え方でやっていけるようにつとめてまいりたいと思います。
  27. 足鹿覺

    足鹿覺君 ぜひよろしくお願いいたします。私は口は悪いけれども、そんなに毒は持っておりませんから。  そういうことで、やはり日本が食糧自給という大きな壁にぶつかって、死にものぐるいでこれから自給度向上をはかっていかなきゃならぬ、また、日本でどうしてもできないものは海外にこれを依存していかなきゃならぬ、この相関関係の上に立って、広く人材を活用していただきたい。少し批判精神を持った連中も喜んで入れて、毒舌を吐くやつも少し入れて——やはりテレビのあの毒舌が相当受けておることをごらんになっても、これはお考えになってもらわなければならぬと、私は、倉石農林大臣二階堂官房長官政府としてもよく考えておいていただきたいと思います。これ以上時間はつぶしません。合点をしておられますから、そうやってもらえるものだと思います。よろしくお願いします。  最後に林業関係——もう二分しか私に与えられた時間がありませんが、委員長ちょっとごかんべん願いたいんですが、林業についてであります。こいつが一番大きな問題をいまかかえておると思うんです。木材の輸入依存率は現在すでに六割になっておりますね。わが国の森林資源の現状から見て、当分の間きわめて高い外材依存率にならざるを得ないし、世界的な資源問題の台頭、森林資源の状況、さらには丸太輸出の規制強化などの木材輸出国側の動きなどから見ますと、林業についての海外協力をこの際十分に反省をし、新しい方向へ転換していかなければならぬと思います。  したがって、この林業に関する海外協力についての政府の基本的な方針を伺うわけですが、林業は、発展途上国の林業開発が私はやはり主体とならねばならぬと思うんです。それが一点。そのおもな地域熱帯地方でありますから、わが国は従来から林業先進国として期待され、留学生の受け入れ、技術者派遣、あるいは最近のブラジルにおける四十万ヘクタールに及ぶ大規模なユーカリの造林など、民間ベース経済協力が進んでおりますが、何といっても熱帯林業に関する研究調査がきわめて不十分ではないか、かように思うんです。伐採、運搬の技術よりも造林保育の技術が重要なのに、わが国では杉だとかヒノキだとか、その他温帯林及び暖帯林の技術しかない。  現在国は、先ほど来問題にしまして、福田さん、あなたはおられなかったけれども、私は熱研を問題にしたんです、林野庁長官。その中においても研究陣はきわめて弱体ですね。こんなことでは私は海外協力に林業の面でどう成果をあげるかということではうまくいかないと思いますが、その点どう反省し、今後どう対処しますか。
  28. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 第一点のお尋ねでございますけれども、御指摘のように、六割が外材でございまして、そのうちの半分は東南アジア方面の広葉樹が主体でございますが、したがいまして、そういう発展途上国中心にしまして今後の外材の輸入対策、これを技術協力資金協力の面で推進してまいりたいと思っております。  第二点の御指摘にございました、熱帯林業について従来の技術体制が不備じゃないか、まさに御指摘のとおりでございますが、従来は、先ほど先生指摘ございました熱帯農業研究センター協力しまして、一部長期あるいは短期海外派遣した例はございます。また、林業試験場の中で研究グループをつくりまして、そういった熱帯林業の研究のためのデータを集めておる事実もございます。  ただ、造林につきましては、日本の造林技術は、一つは土壌の研究の面、あるいは病虫害の問題それから育苗の問題では、私から申し上げるのも少し口幅ったいのではございますけれども世界的にもその基礎的な点では認められておると思っております。でございますので、それをもとにしまして具体的に東南アジア熱帯林業についての樹種の問題、それから栽培技術、それから造林、それから保育の技術をさらに強化してまいりたい、かように思っております。
  29. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は、課題として申し上げておきますが、熱帯研究所のようなものがやはりほしい。これはやらざるを得ない。今後のこの木材需給の問題を見たときに、根本から、いまのあなたの当面講ぜられておることはわかりますが、やはり基本的な問題として一ぺん考え直してみる必要があるんじゃないか、このことだけを提言しておきますが、おそらくあなたも否定なさらぬと思うのです。これは官房長官倉石さんに申し上げて、十分今後対処していただきたいと思うことがあるのです。  それは、この南洋材の伐採ですね、ボルネオ島カリマンタンその他各地で大規模に行なわれておりますが、切りっぱなしで、あと地利用などは商社は一つ考えておりません。これが現地住民から指弾を受けておるんです。要するに、資源を日本は持って逃げるばっかりだと、あとのことなんか一つもかまってくれないと、こういうやはり商社ベースのやり方というものは、当然現地人々から指弾を受け非難を受けると思うのです。聞くところによりますと、南洋材の伐採は、価値の高いラワン系の大径木だけを伐採し、その他の雑木や小径木はそのまま放置しておる。これじゃ、あと地の再造林は現状ではできない実情のようですね。一ぺん現地へ行ってごらんになって、事業団ができるまでもなく、価値の低い雑木林になってしまうおそれがほっておけばなしとしない。これはまことに遺憾な状態でありますから、やはり伐採あと地を価値の高い森林に再生をしていくような、そういう伐採を一面において指導をし、そしてあと地の林地としての開発に遺憾なきを期してもらいたいと思います。この問題は、一番問題になっておるところなので、両大臣から高度の政治判断で御所信を承っておきたいと思います。
  30. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) この問題は、国内で、大切な問題であります。そこで今回設立されます事業団ができます機会に、このあと地につきまして、これを保存等について継続のできますように十分指導してまいるつもりであります。
  31. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) ただいま足鹿先生お尋ねの点につきまして、農林大臣からお述べになりましたとおりでございまして、大事な問題だと思いますから、十分留意をしていくつもりでございます。
  32. 足鹿覺

    足鹿覺君 もう一問で、これで終わりますが、先ほどの運営の際に続けて申し上げるべきでありましたが、たとえばフィリピンでの稲作、トウモロコシ等の開発、森林の造成、タイではトウモロコシの開発、ブラジルでは大豆、マイロ等の開発、あるいはオーストラリアでは燕麦、マイロ等の開発、これらについてわが国協力期待しておると聞いております。私も先年オーストラリア、ニュージーランド、あの方面を回りました際にも、ずいぶん聞かされました。旅行中に、農業協同組合の三カ月以上現地を踏査しておる職員にも偶然出会いました。そういうような点から、各国別の開発事業等についても、国際事業団の基本的な運営業務の中に十分生かされるようにお願いをしたいと、それが倉石大臣が言われましたような先ほどの御答弁中身になってくると思うんです。これは第二十三条の「業務実施方針」、それから第二十五条の「業務方法書」、二十四条の「業務の委託」、ここらが結局中身になってくると思うんです。で、これらの点がすべて政令に依存しておるようでありますし、あるいは主務省令に依存しておるようであります。これらの点は、まだこれから発足をするわけでありますが、十分いま申しましたような問題を具体的に頭に描きながら、この主務省令あるいは政令等によって新しいこの種の事業団の運営に全きを期していただきたい、このことを最後に申し上げ、これに対応する御所信があれば両大臣から承りまして、私の質疑を終わりたいと思います。
  33. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいま御指摘の点は、先ほど来私どもがお答えいたしておる趣旨と全く同様でございまして、それぞれ各国の状況を十分調査いたしまして、それに対応するようにつとめてまいるつもりであります。
  34. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) ただいま農林大臣がお述べになりましたような、同様な考え方でございます。
  35. 羽生三七

    ○羽生三七君 運営上のことで簡単に二点だけお伺いをいたします。  第三十条の二項に、「前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。」と、こうなっていますが、この欠損が異積するような場合には、欠損金についてどの程度までというワクがあるのかどうか。
  36. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 特にそういったワクを設けて考えてはおりません。
  37. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、幾ら欠損が生じてもかまわぬということですか。
  38. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) この事業団の行ないます事業と申しますものは、経済協力と申しますか、技術協力と申しますか、そういったような部面でございますので、もととも営利を目的としたものではございませんし、欠損とか、そういうことにあまり大きな問題を考えておらなかったというのが、いま申し上げたようなワクを設けなかった理由でございます。
  39. 羽生三七

    ○羽生三七君 これと関連して、この事業団は有償もあるでしょうが、無償の協力援助中心となると思います。これはいまの答弁の中にもあったことと関連するわけですが、そこでこの事業団の基本方針からいってそういうことになるならば、予算というか、事業費には何らかのワクがあるのかないのか。これは幾らでも計画すれば無制限に予算は出てくるのか。しかし、一定のワクがあるのか。特に民間ベースでなしに、政府援助協力というものはこれが中心になりますから、どうしたって国の予算を使うのがこの事業団中心になると思う。その場合に、一定の予算のワクがあるのか。請求があれば無制限に出てくるのか、その辺はどうですか。
  40. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 従来の海外技術協力事業団、それから海外移住事業団のやっておりました業務につきましては、従来と全く同様に考えておりまして、毎年予算をいただきまして、その範囲の中でやると。新規業務につきましては、大体において、考え方としては経済協力基金が従来やってまいりましたものと同じような考え方、ただ借り入れ金というようなことを考えるかどうかは別といたしまして、やはり予算のワクをつくりまして、その中で仕事をしていくという考え方でございます。
  41. 星野力

    ○星野力君 国際協力事業団は、既存の海外技術協力事業団海外移住事業団を合併してその業務を引き継ぎ、海外貿易協会の業務の一部を引き継ぐ、こうなっておりますが、そうしますと、事業団設立によって新たに行なわれる事業というものは、二十一条三の「開発途上地域等の社会の開発並びに農林業及び鉱工業の開発協力するため」の事業ということになると思います。要するに、新規事業中心は、開発事業に付随して必要となる関連施設の整備、言いかえれば、開発事業に関連する周辺の社会基盤整備のために、道路、港湾、河川改修、ダム、上下水道、あるいは学校も入るのかもしれませんが、それら等々の整備、そのために融資することと思うが、そういうことになりますか。
  42. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 星野先生指摘のとおり、新しい事業として考えておりますのは、一番大きなものは第二十一条一項三号の規定にありますもので、その中におきましては、社会の開発ということ並びに農林業及び鉱工業の開発協力するということを主たる目的として、イ号の場合には融資、口号の場合には投融資というようなこと、あるいはまたハ号の場合には事業団みずからも仕事をする、受託業務と称しておりますが、そういうようなことを考えております。
  43. 星野力

    ○星野力君 従来この種の業務に関連する仕事は、官庁のどこで扱っておったんでしょうか。
  44. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 農林業につきましては、従来こういったような仕事をする事業団があったわけではございません。鉱工業につきましては、通産省からお答えいただいたほうがいいかと思いますが、財団法人が存在しておりました。
  45. 星野力

    ○星野力君 そうしますと、従来は各省ばらばらであった国際経済協力政府窓口を簡素化する、一本化したというだけのことになるのか、それだけではなくて、開発事業関連の社会基盤整備に対しては、これまでは不十分な援助しかできなかったのを、事業団設立によって一そう積極的にやれるようにするというねらいがあるのか、その辺どうですか。
  46. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) この事業団を新しくつくらなければいけないというふうに感じました最も大きな原因は、第一番目には、従来、技術協力事業団が主としてやっておりました技術協力と、それから海外経済協力基金もしくは輸出入銀行等で行なわれておりました資金協力との間のつながりの部分が必ずしもじょうずに運営されておらなかったという点、それからまた、たびたび問題になりますが、民間のやっておりますいわゆる経済協力と、それから政府のやっております経済協力というものの間に必ずしも有機的な斉合性がなかった、こういうような点に着目して、そういう点でいささかなりともいい方向に向かうようにしようということが一番大きな理由であったというふうに考えております。
  47. 星野力

    ○星野力君 そういう機構上の整備の問題だけではなくて、先ほども申しましたように、開発事業関連の社会基盤整備に対しては、これまでは不十分なことしかやれなかった、それをこの事業団設立によって一そう積極的にやれるようにする、そういうことも含まれておるんでございましょうね。
  48. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 先ほど御指摘になりました第二十一条一項三号の中に「社会の開発」ということを特に入れましたのは、御趣旨のような点を頭に置いているというふうに御理解いただきたいと思います。
  49. 星野力

    ○星野力君 農林業、鉱工業の開発事業自体には、輸銀や海外経済協力基金が金を出し、日本企業の手で開発をやる、関連する社会基盤整備には事業団が金を出して、これも主として日本企業がやるということになると思いますが、そうなりますと、事業団設立は、相手国にとっての利害ということは、これは別問題としましても、日本の大企業にとって海外進出の非常に有力な武器になると思うのでありますが、そうでしょうな。
  50. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 先ほど申し上げましたように、民間で行なっておりました経済協力というものの向かっております方向が、ときどき批判を招くようなものもあるいは含まれておったかと思いますが、この事業団がそれと政府ベースの経済協力との間につながりを設けることによって、むしろ先生のおっしゃるのとは逆に、もっといい方向に導いていこうということが考えの底にあるというふうに申し上げたほうがよろしいのではないかと思います。
  51. 星野力

    ○星野力君 通産省の通商政策局で作成しました「経済協力現状と問題点——一九七三」、これを読んでみました。その中に、直接投資が前年に比べて二九・二%とかなり大幅に増加した要因としまして、こう書いてありますね。「天然資源の確保国内労働力需給の逼迫、国内での立地難、」とこういうことばがあります。要するに、資源、労働力、立地、この三つの要因をまっ先にあげております。これは一九八ページです。また、この本の「海外投資を通ずる協力」という部分——二一五、六ページ——には同じようなことをこういうふうに言っております。「これらのわが国の投資は、事業経営面では現地労働力及び現地資源の活用、市場面では市場の防衛及び確保中心的な動機をなしている。」、また、「発展途上国の豊富な労働力、新規市場、工業用地等を求めての製造業中心海外投資も一層活発化するものと考えられる。」とあります。要するに、政府も認めておりますように、資源、労働力、立地、この三つのものが対外経済進出のてこになっておる。そしてこの日本側の三つの動機というか、原因といいますか、それが非常にしばしば開発途上国国民日本によるところの資源略奪、奴隷的低賃金、公害輸出という反日感情の原因になっていることは、政府の皆さんよく御存じだと思います。資源略奪という非難、それからチープレーバー、これは非難というよりも客観的な事実と思います。それから公害輸出という声、これらに対処して今後の対外経済進出をどのような方針で進められるか、どのような方針で指導されるのか、それをまずお聞きしたいと思います。
  52. 森山信吾

    説明員(森山信吾君) ただいま先生から御指摘のございました私どもで発行いたしております「経済協力現状と問題点」におきまして、企業の進出の要因といたしまして幾つかあげておるわけでございますが、その中に、天然資源の確保の問題あるいは国内労働力需給の逼迫の問題あるいは国内での立地難の問題、こういう問題が一つの促進剤になったんではないか、こういう想定を私どもは実はいたしたのでございます。ただ、先生承知のとおり、現在、投資は自由化されておりまして、ごく一部分の例外を除きまして自由化されておるということでございます。同時に、投資を受け入れる国におきましては、おおむね、それぞれ外資法を制定いたしておりまして、その国の好ましくないと思うようなものにつきましては、投資の受け入れをやってない、こういう現状でございます。したがいまして、私どもが投資を行ないます際は、日本側は、先ほど言いましたように、若干の例外を除きましてほとんど自由化されております。一方において、向こう側の規制を受けて、向こう側の、投資相手国側の要請に応じたような、向こうの国内法規に合致するようなものだけが受け入れられる、こういうかっこうでございまして、まあ労働力の問題も裏を返して申しますと、相手国で労働力を活用して、向こうの相手国国民経済の発展の武器にしたい、こういうような問題がある場合は、それに合致して投資が行なわれる。また、資源の問題につきましても、相手国開発のポテンシャルとして、その相手国の持っておる地下資源あるいは天然資源等を開発することが、その国の開発のポテンシャルにつながると、こういう考え方があれば向こうが投資を受け入れる。それがたまたま私どもの投資の概念と合致して投資が行なわれる、こういうような仕組みで、メカニズムで投資というものが行なわれていくんではないかと。まあそういうことでございますが、一方、私どもが投資の自由化を行なっておりますものの、投資というものが完全に自由化されて相手国で受け入れられれば、相手国国内法で受け入れられれば、すべてそれでよろしいというようなことにもまいらない、こういう感じでございまして、実は昨年の六月に経済関係の五団体で投資に関する行動基準というものをつくりました。これは私どもも十分この趣旨に協力いたしまして、投資行動基準を十分守るべしという指導をやっておりますし、また、ごく最近に至りましては、在外企業懇話会というものをつくりまして、これは先ほど申し上げました五団体に関経連を加えました六経済団体が集まりまして、在外企業懇話会というものを、もうこれは近々のうちに設立されると思いますが、それによりまして、現地の投資の状況の的確なる把握、あるいは円滑に地元と調和のとれた企業活動が行なわれるような業界の自主的な調整を行なわしめる、こういう方向で臨みたい、かように考えております。
  53. 星野力

    ○星野力君 私、午前中十分間ということで、あとは午後やれというお話でございますから、残念ながら午後に回します。
  54. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十三分休憩      —————・—————    午後一時十一分開会
  55. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国際協力事業団法案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  56. 西村関一

    ○西村関一君 私は、国際協力事業団法案につきまして、前回に引き続いて外務省当局に質問をいたします。  先般の委員会におきましては、きょうも足鹿委員が触れられましたように、わが国経済協力の基本問題、基本理念、経済外交のあり方という点について、私もこの前意見を交えながら政府答弁を求めました。さらに、海外投資のあり方につきましても、前回質問をいたしました。前回には満足な資料を得ることができませんでしたが、通産当局からかなり詳細な資料をその後いただきましたので、この点につきましては重ねて質問をいたしません。  なおこれは、海外投資のあり方につきましては検討しなければならぬ点がございますが、それらの点につきましては後日に譲りたいと思います。  三つ目には、中東諸国に対するところの経済協力についてお尋ねをいたしました。資源ナショナリズムと言われますあり方に対する経済協力の問題、そういうことにも触れて質疑をいたしたのであります。中東諸国に対するところの経済協力あり方につきましても、あくまでも石油ほしさの協力であってはならないと、この資源問題につきましては、もっと深い角度から、また広い角度から検討すべきであって、いわゆるギブ・アンド・テークというような考え方で、石油がほしいからこれこれの協力もするというようなことであってはならないと思うんでございますが、先般、政府は中東諸国に特使を派遣せられて、いろいろな約束をしてこられた、その約束してこられたところの経済協力の内容、規模、実行の時期、効果に対する見通し等々についてもお尋ねをいたしまして、一応の御答弁がございました。これもなお掘り下げてお尋ねしなければならないんでございますけれども、本日は一応、先日の委員会において質疑をいたしました点を省きまして、この事業団法の中の事業団によるところのプロジェクト、これはどういう具体的な内容を持っておいでになりますか。これはこの法案一つの大事な柱になっておりますので、この点からお尋ねをしてまいりたいと思います。
  57. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) お答え申し上げます。  事業団法案第二十一条事業団の「業務の範囲」というところをお読みいただければ、事業団におきます仕事の内容がほぼおわかりいただけると思うんでございますが、その中でも特にいま西村先生指摘のプロジェクトということに当たるようなものは、従来から第一号の中でも技術協力関係でプロジェクトというようなかっこうで取り上げているものもございますが、第三号の新規業務の中では、特にそのプロジェクト的なものが含まれておると、その中身といたしましては、この第三号の冒頭に書いてございます「社会の開発並びに農林業及び鉱工業の開発」というところの、そういう分野におきます各種の融資のためのプロジェクトとか、投融資のためのものとかいうものがこの法案の中に書いてあるとおりでございます。ただ具体的にはどういうところを意味しているかと、この前、たしか通産省のほうからも御答弁ございましたが、若干の具体的に考えられているものはございますが、発足後にすべてゆだねられておるというのがむしろ現状でございます。
  58. 西村関一

    ○西村関一君 それでは少し具体的にお尋ねをしたいと思いますが、通産省の公団構想というのがございました。この通産省の公団構想におけるところの対象プロジェクト、これが本事業団になりますとどういうことになりますか。その関係並びに変化などお伺いしておきたい。
  59. 森山信吾

    説明員(森山信吾君) 通産省におきまして、昨年の予算要求の段階におきまして、ただいま西村先生から御指摘のございましたように、海外貿易開発協力公団という構想を出したわけでございます。それは御承知のとおり、財団法人海外貿易開発協会というものがございまして、それが昭和四十五年の二月以来事業をやっております。そのおもなる事業を申し上げますと、四点ございまして、第一点は、海外に進出いたしました日本企業現地におきましていろいろな社会的な活動を営むために、いわゆるインフラストラクチュアの融資をするという業務、これは合理化資金の貸し付けというふうに呼んでおりますが、これが第一点。  それから第二点は、開発試験事業でございまして、まだ具体的に事業を行なったことのないものを、気候、風土等の危険性はありますものの、そういうところでやってみればあるいは成功するかもしれない、そういうようなプロジェクトに金を貸そうという事業開発試験事業でございます。  それから第三点は、中小企業海外資金融でございます。これは日本の中小企業相手国の中小企業と合併企業を持ちまして事業を行なう際に運営資金を貸すという制度がございます。  それから第四点が輸入資金でございまして、海外で生産されました割り高商品をできるだけ低利で融資運営できるような資金考える。  この四つの業務を、いま申し上げました財団法人組織で実施いたしておりましたが、財団法人組織でやりますのはやはり限界がございますし、これはやはり国のセクターでやるべきではないかということで、私どもは公団構想を打ち出したわけでございますが、農林省のほうからも同じような構想が出されておりまして、これを調整いたしまして、今回OTCA並びに移住事業団と一体となりました、つまり、私ども資金協力の面を公団構想で打ち出したわけでございますけれども、従来のOTCAでやっておられました技術協力の面と資金協力を結びつけるということで、今回事業団構想に実を結びまして、ただいま御審議をお願いしている、こういうような状況でございます。
  60. 西村関一

    ○西村関一君 たしか二月の十四日の日経新聞であったかと思いますが、それによりますと、通産省選定のプロジェクト、選定基準、事業内容、融資額、参加企業等について報ぜられておりましたが、通産省はこの記事に対しまして、なお詳しく御説明をいただきたいと思います。
  61. 森山信吾

    説明員(森山信吾君) 一部新聞等に記事が報道されたことはございますが、先ほど申し上げましたように、私どもが予算を要求する段階におきまして、海外貿易開発協力公団という構想で鉱工業関係のプロジェクトをたしか選定したことはございます。ただし、前回の委員会でも御答弁申し上げましたように、このプロジェクトといいますものは、やはり日本側から出ていくというだけの性格ではございませんで、相手国の要請によりましてそれに対応するというかまえでございますので、私どもが頭に描きました構想というものがはたして海外でそのまま受け入れられるかどうか、十分にこれは向こうの御意見も聞かなくちゃいかぬ、こういうことでございまして、プロジェクトは先ほど外務省の御巫局長からお話がございましたように、外国の要請等も踏まえまして、今後慎重に検討していかなくちゃいかぬ、こういうふうに考えております。
  62. 西村関一

    ○西村関一君 相手国の要望またはその必要性、将来に対する効果の見通し等を勘案しながらやっていかなきゃならぬことは当然のことだと思うんでございますが、相手国側からいろんな要求が出てきた場合に、その順位をどういう基準によっておきめになりますか、いかがですか。
  63. 森山信吾

    説明員(森山信吾君) 相手側からプロジェクトがたくさん出てまいった場合に、どういうプライオリティーをつけるかという問題につきましては、これは相手側といたしましても当然プライオリティーはございましょうし、また、外交上の観点もございましょうし、また、私どもが担当いたしております通商経済上の観点もございましょう。そういうものを総合的に判断いたしまして順位をきめさしていただきたい、かように存じております。
  64. 西村関一

    ○西村関一君 その場合に総花式といいましょうか、相手国——できるだけ多くの国にばらまいてしまうということであっては私はいけないと思うんですけれども、また場合によりますと、逆効果も生じないとは限らないと思いますが、そこで日本政府としてはどういう基準、どういう基本方針でこれをきめられるかということをもう少しお聞きをいたしたい。
  65. 森山信吾

    説明員(森山信吾君) この事業団法律をお認めいただきますならば、いわゆる事業団活動として本年度から開始するわけでございますけれども、この事業団に対しまして「業務実施方針」というような形で業務の内容をきめる、こういうことになっておりまして、大体年度の初めにおきましてその年度間にやるべき業務をきめる。御承知のとおり、鉱工業につきましては通商産業大臣外務大臣の共管、あるいは農林業につきましては農林大臣外務大臣の共管、こういうことになっておりますので、それぞれの官庁間で十分協議をさしていただき、かつまた、関係のある行政機関とも十分連絡をとらしていただきながら、そのプロジェクトを年度当初にきめていく、こういう次第にさしていただきたい、かように存じております。
  66. 西村関一

    ○西村関一君 次に、本事業団海外移住事業団を統廃合するということになっておりますが、海外移住事業につきましては歴史があり、また盛んになったときもあれば、衰えていった時代もある。現在は成果があがっていない。しかし、この海外移住行政というものは変遷がございますけれども、今日なおその重要性を失ってないと思うのです。本事業団の中において統廃合していくというときにあたって、どういう移住行政を進めていこうとお考えになっておられるか、当局のお考えを承っておきたい。
  67. 山田久就

    政府委員山田久就君) いまいろいろ移住事業についての変遷があったというのは、西村先生のお話しのとおりであります。しかしながら、全般としてながめて見れば、やはりその国とのいろいろな面についての社会あるいは経済的あるいは農業的な、広い基盤でのつまり協力関係ということに役に立っているという点では、やはり一貫したものがあるんじゃないかと、こう思います。農業移民というものが今度は技術移民というようなものにだんだん変わってくるという客観情勢もございまして、そういう意味でも、広い意味でのやはりこの協力関係ということに資してくるということでございまして、したがいまして、本事業団の全般としての広い目的で、その中に包摂して、総合的な意味で従来の伝統を持ったこの海外移住事業というものを生かしていき得ると、また、生かしていかなきゃいかぬという考えでやっていきたいと、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  68. 西村関一

    ○西村関一君 いま山田政務次官からの御答弁がありましたが、言うまでもなく、私は今日まで相当な成果があがってきておる。二世、三世の方々がその地域、その国、それぞれの国々において社会的、経済的、政治的基盤を、抜くことのでない力強い基盤を築きあげ、それぞれの国に貢献しておられる。二世の大臣もできておるということでございまして、私はそれなりに日本の移住行政、これはそれぞれの方々の個人の努力というものが重要な成功の要素になっておりますけれども、私は決して日本の移住行政が他の国の移住行政に対して劣っておったと思いません。また、いま技術移民、技術移住ということをおっしゃいましたが、単なる口減らし、あるいは農耕を中心とする移住ではなくって、日本の優秀な技術海外においてそれぞれの相手国にそういう形で協力をする、新しい考え方のもとに移住を行なうべきであると思うんでございますが、それがあまり成果があがってないと思うんでございます。いま直ちにお答えをいただかなくてもよろしいですけれども、現在の移住の現況につきまして、年次的に本委員会に私は報告を出していただきたい。そのつどそれぞれの角度から私は目を通しておりますけれども、総合的に基本的な判断をする、日本の移住行政のあり方について判断をするために、総合的な統計資料をお出しをいただきたいと思うんです。現在お持ちであれば、いまこの機会に伺っておきたいと思います。もしなければ、後ほど委員長のお許しを得て、そういう資料を出していただきたいと思います。
  69. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) ただいま御質問のありました点は、主として私は技術移住者の問題であると了解いたしますが、確かに農業移住者は減ってはおります。それに対しまして他方技術移住者、特に若い単身の移住者がふえておりまして、これらの移住者が一番多く行っておりますのはカナダでございます。そのほかにブラジルその他中南米の国々へ参っております。数字的に申し上げますと、カナダの移住者につきましては、たとえば昭和三十七年から大体四十年までは百から二百の間でございます。それが四十一年になりまして五百になりまして、四十二年八百五十八、四十三年六百二十八、四十四年六百九十八、四十五年七百八十五、四十六年八百十五、四十七年は六百八十四、昨四十八年は千二十でございます。非常にカナダに対する移住者はふえております。これは一つは、カナダではありとあらゆる職種を必要としておるということで、単なる工業技術者だけではなくて、たとえば歯科の技工士であるとか、研究所の助手であるとか、そういう者まで行っておるということでございます。われわれといたしましては、そのほかにブラジルの技術移住者について申し上げますと、三十九年から大体四十八年現在までのところ一番多い年で二百二十八、少ない年でも大体百四、五十の移住者が出ておるわけであります。で、ブラジルの移住者はこれからもどんどんそういう技術者がふえてまいると思います。その他の中南米の国はそれほどたくさんございません。したがいまして、技術者の大宗はカナダであり、ブラジルでございますが、ブラジルの移住者につきましては、大体機械とか設計、製図、電気、仕上げ技能者等、当初は日系の企業につとめまして、そのあとは、大体数年たちますとブラジルの企業に移っていくと、その一部は何年かたちますと、十年くらいたちますと自営の企業を始めるということでございまして、この点おそらくカナダの移住者よりブラジルの移住者のほうが何と申しますか、自分のそういう能力を伸ばすという面においては将来性があるのではないかと思います。われわれといたしましても、これに対処いたしますために、海外技術協力事業団では移住者に対しまして渡航前に訓練をやっておりますし、ブラジルの者は訓練をやりますし、カナダの者につきましても語学を主として訓練をやっておるということでございまして、将来こういう技術者の移住というものが伸びていくという前提で、いろいろな対処方針を考えていきたいと考えております。
  70. 西村関一

    ○西村関一君 私は、日本の外交の面におきまして、新しく環境外交というものが脚光をあびてまいります。と同時に、古い課題でございますが、移住政策、外交の中における移住政策というものが、新しい時代とともに、新しい考えのもとに進められていかなければならぬと思うんでございます。いま移住部長が述べられました点につきまして、私は若干の意見がございます。また、若干の私の経験もございます。それを一々ここで申し述べるいとまはございませんが、何か外務省は移住政策というものを少し横のほうへ置いている。主流に乗せていないという感じがするんであります。これでは担当部長局長の方が、まあいまはこれは移住部ということになっている、そこで一生懸命やっておられるんですが、少しわきのほうに置かれておるという感じがするんでございます。この事業団法の中においてどういう位置を占めるか、海外移住政策。この海外移住事業団を統廃合するということで縮小をされるのか、さらに新しい角度で進展をはかるのか、その点いかがですか。
  71. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) 移住行政につきましての御批判でございますが、われわれ当事者は一生懸命やっておるわけでございますし、それから今度の事業団に移住事業団が一緒になることにつきまして、このような考え方で一緒にしておるわけでございます。従来移住者というものは、それぞれ個人の発意に基づきまして海外に移住したわけでございますが、従来の長い移住の歴史を通じて見ますと、先ほど先生から御指摘がありましたように、移住者がそれぞれの国においてところを得、それぞれの国との関係において非常にいい影響を与えるということでございまして、そういう点、確かにわれわれとしては従来の移住が成功しておったと考えるわけでございます。他方、よく考えてみますと、そういう移住者というものが置かれている相手の国の中において活躍している場合、国はいろいろ援助いたすわけでございますけれども、われわれといたしましては、その移住というものが国際的にいろんないい影響を与えているという点も考え、さらに、今後それらの移住者をそれらの移住者の置かれている地域の社会的、経済的な開発にも結びつけていく、いわば移住者をこめてその地域開発していくというような観点から考え直しまして、この際、移住事業団国際協力事業団に入るにあたりましては、そのような観点からひとつ移住行政も考え直す、いわば国際協力の中に移住行政を位置づけていこう、このような考え方を取っているわけでございまして、従来とかく批判のありました移住者に対する援助等につきましても、こういう点をひとつ頭に入れまして、日本と向こうの国で手を取り合ってそういう地域開発にも進みたい、このように考えておるわけであります。そういう意味におきまして、移住行政というものはこの際反省すべき点は反省いたしまして、新しい観点からもう一回刷新強化していく、このように考えている次第でございます。
  72. 西村関一

    ○西村関一君 この問題につきましては、なお私はお尋ねしたい点がたくさんございますが、ただ一点だけこの機会にお尋ねをしておきたいと思います。  この移住行政に対する専門家養成、私は、かつてだいぶ前のことでございますが、移住船に乗りまして海外に移住して行かれるところの人たちの状態を見たのであります。私は、神戸から横浜まで移住船に乗ったんであります。どうも外務省からついて行っておられる方が専門家でない。何か海外に出かける順位みたいなものが、そういうかっこうでこの船に乗っておられる、全然何にも知っておられない、そういうことがあっては私は効果があがらないと思うんであります。だから、そういうことも私はみな悪いとは言いませんが、やはり移住船に乗り込んでいく人は教育もでき、相談にも乗り、きちんとした識見と経験を持っている人を移住船に乗せなければならない。私は、それはたまたま私が乗ったのがそうであったからそれだけを言うのではございませんけれども、私は、ぜひ使命を感じているところの、そうしてまた熱意を持っているところの、移住行政に対して熱意を持っているところの若い専門家を外務省は養成してこれに当たらせるということをしないとならないと思うのです。ほかのこといろいろ聞きたいんですが、一点だけ申し上げておきます。その点簡単にお答えをください。
  73. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) 先ほど御指摘のありました移住船の点は、確かにそういう方がおったことも事実でございましょうし、同時に、移住船には海外移住事業団の方も乗っておりますわけでございます。移住事業団の方は専門家でございますから、これはもちろんでございますが、われわれ外務省の中に移住の専門家ももちろんおるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、移住者が少なくなるということに従いまして、そういう専門家もよそへ散っていったことも事実でございますので、いまお話しのありました点、私はこの際移住行政というものを何とか立て直してみたいというふうに考えておりますので、そのような、いま御指摘の点も含めまして、いろいろ検討さしていただきたいと考えます。
  74. 西村関一

    ○西村関一君 次に、海外農林業開発に関連をいたしまして、世界の食糧事情とわが国の需給の見通し、そういうものと本事業団事業との関係でございます。が、技術協力する、そして相手国の農産物の振興農林業振興をはかっていく、そのことが世界の、またひいては日本の食糧事情に貢献するということを期待しながらやっていくのであっては私はいけない。あくまでも当初から申しておりますように、相手国のニードに応じて相手国の経済の発展と民主の振興をはかっていくということが主眼であって、結果的にはそれが世界の食糧事情に貢献する、ひいては日本の食糧事情にも貢献するということが将来は考えられるかもわからぬけれども、あくまでも相手国の要求、相手国の繁栄ということを主眼として事業が行なわれなければならないと思うんです。そして技術協力も、融資の問題も、いろんなこれに関連するところの施設の充実もはかっていかなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  75. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 事業団の使命といたしましては、まさに御指摘のとおりであって、発展途上国経済開発が一日でも早く進むということがまずその第一番目の使命であるというふうに心得ておるという点は、先生とは全く同意見でございます。
  76. 西村関一

    ○西村関一君 田委員が関連がありますので、私はもうやめなきゃならぬのですけれども、どうしても最後に一点だけ伺っておきたいと思うのです。それば、この事業団事業の対象は社会主義国、共産主義圏にも及ぶのであるのかどうか。いまちょうどベトナム民主共和国からの国会議員団が日本に来ておられます。ゆうべ参りました。間もなくここへ、この委員会にこられると思いますが、そういう点につきまして、そういうことについての取り扱いの差別はないのでございますか。
  77. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 前々から御答弁の中で触れておりますように、この事業団の対象といたします地域発展途上国でございまして、その国の持っております政治的、社会的体制のいかんには関係がございませんので、そういうニーズがあればどういうような政治体制を持っているところにでも協力はいたしたいというふうに考えております。
  78. 田英夫

    ○田英夫君 関連して、一、二伺いたいのでありますが、一つは、すでに衆議院の外務委員会の附帯決議の中にありますが、今度の国際協力事業団は、海外技術協力事業団海外移住事業団がその中に統合されるわけでありますけれども、従来のこの二つの事業団の職員の待遇には、かなりの格差があるようでありますけれども、この点について、新しい事業団の中でいやしくもその人たちが不利益をこうむるようなことがあってはならないと思いますし、むしろはっきり言えば、格差がある場合にはいいほうに統一すべきであるということ、当然そうだと思いますが、この点についてのお考えを伺いたいと思います。
  79. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 事業団に、二つの事業団が基礎になって新しい事業団ができるということから、従来の二つの事業団の間の給与、待遇等に格差があるという御指摘は、そのとおりだと存じますが、新しい事業団の給与の基準その他のことは、本来、事業団ができ上がりましてから、事業団の総裁以下の関係者の間できめていかれるべきことでございまして、そのきめる際に、そういったでこぼこの調整が行なわれるものと期待しております。しかし、監督官庁といたしましての外務大臣等の立場からは、できる限り早い機会に、そういったようなことが、それぞれの人間にとりまして満足のいくような公正妥当な解決がはかられるというふうな方向で指導をしてまいりたいというふうに存じております。
  80. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つは、午前の足鹿委員の質問の中でも足鹿さんが言われましたが、この事業団の問題について根本的に私どもが危惧いたしますのは、従来の日本経済協力というものが、とかく一政権に対する援助であったり、ある一国の特定の階層に対する援助であるという印象を与えている。そのことが、東南アジアを含めて、せっかくの援助が向こうの側からは経済侵略と見られてしまうという結果を招いている。この根本姿勢を改めない限り、私は、新しい事業団をここで発足させるということは、きわめて危険なのではないかという感じがぬぐい去れないのであります。そういう中で、具体的に言えば、韓国に対してすでに最も明快にそういう危惧があらわれていて、反日感情というようなものも醸成をされている。実は、今回二人の日本人が逮捕をされて、最近送検をされたという事実がありますが、しかも、それは日本政府外務省と韓国外務省との間でそうした取り扱いについては事前に了解を、通告をするということがあったにもかかわらず、全く通報なしのままに処分を、送検をされている。この辺のところには、やはり韓国政府の側からは日本政府に対する甘えといいますか、そういうものがにじみ出ているし、韓国の国民の間に反日感情というようなものが経済問題を中心にしてある、こういうことがどうしても底流にあるのをぬぐい去れないと思います。この二人の日本人の送検の問題について、外務省は事前に知らなかったということは事実なのか、そしてこれに対してどういう処置をされたか、最後に伺いたいと思います。
  81. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) ただいま田先生がお述べになりました留学生につきましての送検の事実については、私ども両名につけられました弁護士から伺いまして、非常にふしぎに思いまして、直ちに韓国外務部に尋ねたわけでございますけれども、事実、韓国の外務部といたしましても、この送検の事実を承知しておりませんで、これは韓国内部の問題ではございまするけれども、そういう事情から、事前にわがほうに連絡がなかったということを確認いたしました。こういうことでございますので、昨日さっそくその点とらえまして、外務部に対しまして、十分韓国政府内部で連絡をよくした上で、必ず事前にこういう重大なステップをとられる場合に通報をするようにということを厳重に申し入れた次第でございます。
  82. 星野力

    ○星野力君 まず、いまの問題に関連いたしましてお聞きしたいんですが、二人の青年のこれからの運命というものを非常に危惧されるんですが、危険なものを感じるんですが、これはどういうふうに救済されるお考えか、もう一度お答え願いたい。
  83. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 二学生の今後の問題でございまするが、わが国といたしましては、韓国内で起こった事件につきまして、とやかく一つ一つについて韓国の内政に干渉するということはもちろんできませんけれども、しかし、外国人であるところの日本人の学生が、韓国で起きた事件に関連しまして逮捕されたという事実を踏まえまして、特別な考慮を払ってもらいたい、できれば国外退去というようなことによって本件の早期解決をはかってもらいたいという点は、私どもしばしばあらゆる機会をとらえて韓国政府に申し入れてありまして、そういう点については、韓国政府上層部においても、十分日本政府の気持ちを理解していると思います。私ども政府といたしましては、本件の今後の見通しをとやかく言う立場にございませんし、いま何か言うことは、かえって問題を紛糾させるということになりますので、これ以上のことは申し上げられませんけれども、わがほうの立場は、以上のような次第でございます。
  84. 星野力

    ○星野力君 外相代理の二階堂さんに聞きますが、政府はこの問題についてまだ十分の容疑内容もつかんでおられないと、まず、それを把握することが先決だというような御答弁がこれまであったわけでございますが、客観的に見ましても——きょうは時間がございませんから、その点に詳しく触れるわけにはいきませんが、客観的に見ましても、これは著しく国際的正義に反する問題であると思うのであります。したがって、政府としては、日本国民の生命身体を守っていくという上からも、また、国際正義を貫いて守っていくという上からも、当然厳然たる態度で臨んでいただきたいと思うのでありますが、大臣その点についてどういうふうにお考えになりますか。
  85. 山田久就

    政府委員山田久就君) われわれの持っておる在外日本人の保護、また、そういう特に基本的な人権というようなものを守っていくという基本方針、それに基づいて韓国政府に対してはわがほうの所信、要望を率直に先方に申し入れて、できるだけの保護に欠けることがないようにと、こういうことに対しての友好国としての協力をわれわれは要請しておることは、先ほどアジア局長から答弁のとおりでございます。ただこれについては、わがほうの強い要求にかかわらず、一つの限界点があるということもおわかりいただけると思いまするけれども、にもかかわらず、こっちのとっている方針、行動、それは不変でございまして、先ほど説明したとおりなので、その点わがほうの立場を御了解いただきたいと、こう思うわけであります。
  86. 星野力

    ○星野力君 政務次官、いま率直に申し入れるということを言われたんですね、この態度をぜひとってもらいたいと思うのです、いままで率直じゃないんだから。  大臣は、五十五分に退席されるといいますから、大臣にぜひお聞きしたいことがあるのですが、これは後刻にいたしまして、いま大臣がおいでにならぬ間に二、三のことを他の方にお聞きして、大臣に対する質問は保留しておきます。  私、午前の質問におきまして、日本企業海外進出の主要な要因として政府も認めておるところの資源、それから低賃金、立地、こういう問題をあげたんでありますが、その中の低賃金の問題に関連してお聞きしたいと思います。  韓国の馬山輸出自由地域などにおける日本企業の低賃金について、さきの本委員会におきまして私質問いたしましたが、韓国の賃金は、東南アジアの諸国に比べますと、まだしも低いほうとは言えないのではないかと思います。タイでも、現地での日本人従業員の月の給与が二万ないし五万バーツ、一バーツ十二円として二十四万円ないし六十万円になりますが、これに対してタィ人の一カ月の給与が三百バーツ、三千六百円ということが問題になったことがあります。単にこの賃金水準が低いだけではないのでありまして、労働者が少しでも要求がましい態度に出たり、日本人にとって気に食わない行動をすれば解雇をもっておどかされる。日本の労働基準法などでは許されないような状況で若年労働者や婦人を激しい労働に従事させるとか、また、一般に労働者の長時間労働もやらせる。この奴隷的な労働条件、無権利状態のもとでひどい低賃金が維持されているというところに重大な問題があると思うのであります。このことは、社会正義に反することでありますし、同時に、日本国内の労働者の賃金や労働条件にはね返ってくる問題であります。だから、私たち二重の意味でこれを重視いたしておるんでありますが、私が馬山などのフリーゾーンにおける低賃金について質問しましたのが三月二十六日の本委員会でありますが、偶然でありましょうが、翌々日の三月二十八日、それから二十九日の韓国国会でも、馬山の日本企業の低賃金が問題になったことは、外務省、関係の省庁の方々よく御存じのことと思います。そして朴正煕大統領も馬山を視察に行かざるを得なかった。当時釜山の日本領事官がこの問題を調査するということが新聞に報道されましたが、あれだけ大きな問題にもなったのでありますから、当然日本政府としても調査もやり、対策も検討されたと思うのであります。その現在まで調査されたところ、検討された対策、そういうものをひとつ御報告願いたいと思うんです。
  87. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) ただいま星野先生の御指摘の馬山フリーゾーンにおける日本企業の賃金水準の問題でございますが、この点につきまして、わがほうの釜山総領事館のほうで、現地におもむきまして、現地のこの馬山輸出自由地域管理所及び労働庁の馬山事務所を通じまして、馬山フリーゾーンにおける日本企業の賃金水準を調査いたしました。  調査の結果、なるほど低い水準にある企業があることは事実でございまするけれども、平均いたしまして、全国の平均賃金水準よりも高いことは事実であるということを確認いたしております。  いろいろ賃金のとり方につきましては、基本給のほかに給食の費用、あるいはその他の費用、それからまた、能率給と称しまして特別な手当を出す制度等、いろいろ各企業によって千差万別でございますけれども、そういうものをひっくるめまして、全国的な平均水準と比べましたその比率が、明らかに馬山フリーゾーンは全国の平均水準より高い。もちろん高いと申しましてもごくわずかでございまして、昨年の全国平均、これは八月の水準しかまだございませんけれども、一万三千六百十ウォンというのがございまして、これと比較しまして、八月の水準においては一万四千六百九十ウォンである。それから全国平均水準は、まだ十二月においてはございませんが、馬山におきましては一万六千八百五十五ウォン、その後、若干の賃金の引き上げがございまして、幾らか上がっております。これに対応する全国平均賃金の額が出ておりませんので、正確な比較はできませんけれども、依然として全国よりは幾らか高い水準にあるというのではなかろうかというふうに私たち思っております。  したがいまして、韓国国会及び新聞の伝える馬山地区での低賃金云々というのは、私どもの調査の結果によりますと、事実と相違しているという結論でございます。
  88. 星野力

    ○星野力君 決して韓国の賃金水準に比べて低くはないと、こうおっしゃって、いま若干の数字もおあげになりましたんですが、いまの御答弁だけで、私、十分御趣旨を把握することができませんし、そういう調査結果が出ておるなら、これをひとつ発表なさったらよろしかろうと思うんであります。どちらにしても、そう自慢できるような状態にないことは、いまの御説明からも、私、想像できました。  それから低賃金、実際賃金水準が低いという問題と、もう一つ、朴大統領自身が、日本企業は韓国の労働法を悪用しておるということを言っております。あすこにも一応名目的には労働基準法みたいなものもありますし、そのほかの労働関係法もあるわけでありますが、そういう労働者に対する保護——賃金だけじゃありません。それから権利の尊重、そういう点についても調査なされたんだろうと思いますが、どうですか。
  89. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 賃金問題以外にも若干問題ございます。仰せのとおりでございます。  馬山フリーゾーンに進出しております日本企業は、先生承知のとおり、いわゆる中小企業でございまして、海外進出経験のない中小、特に小企業かなり多く出ております。そういう関係もございまして、いろいろ私ども非常に憂慮すべき事件を起こすようなケースも全然ないわけではございません。したがいまして、釜山総領事館に対しましては、常時この馬山フリーゾーンにおもむいて、日本の進出している中小企業に対して、そういうような労働法違反、あるいはその他韓国の国民の目から見てひんしゅくを買うような行為を行なわないような、そういう指導をするようにということで注意いたしておりまして、今後そういうことが起こらないように注意していきたいと考えております。
  90. 星野力

    ○星野力君 あと、官房長官にお聞きする時間がなくなりますので、あと十三分だと思いますが、残して、ここでもってやめます。
  91. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 本案に対する質疑は、大臣の都合により、後刻行なうことにいたします。     —————————————
  92. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 次に、欧州共同体委員会代表部の設置並びにその特権及び免除に関する日本国政府欧州共同体委員会との間の協定締結について承認を求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国とアイルランドとの間の条約締結について承認を求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国スペイン国との間の条約締結について承認を求めるの件  千八百八十六年九月九日に署名され、千八百九十六年五月四日にパリで補足され、千九百八年十一月十三日にベルリンで改正され、千九百十四年三月二十日にベルヌで補足され、千九百二十八年六月二日に日ローマで改正され及び千九百四十八年六月二十六日にブラッセルで改正された文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約締結について承認を求めるの件  以上四件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。山田外務政務次官
  93. 山田久就

    政府委員山田久就君) ただいま議題となりました欧州共同体委員会代表部の設置並びにその特権及び免除に関する日本国政府欧州共同体委員会との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、欧州共同体委員会側のかねてからの希望により、欧州共同体委員会代表部の設置並びにその特権及び免除に関する協定締結するため、昭和四十九年一月以来交渉を行ないました結果、昭和四十九年三月十一日にブラッセルにおいて、わがほう安倍駐ベルギー大使と欧州共同体委員会側オルトリ委員長との間でこの協定に署名を行なった次第であります。  この協定は、本文四カ条から成り、欧州共同体委員会代表部日本国における設置に対する日本国政府の同意、欧州石炭鉄鋼共同体、欧州経済共同体及び欧州原子力共同体が、日本国において、それぞれ法人格を有すること、これらの共同体が契約、財産取得等を行なう能力を有し、このことに関し、委員会によって代表されること、委員会の代表部、その長及び職員並びにこれらの者の家族は、日本国が接受する外交使節団、その長及び職員並びにこれらの者の家族に対し外交関係に関するウィーン条約に従って与えられる特権及び免除に相当する特権及び免除を享有すること等を内容としております。  この協定締結によりまして、欧州統合を目標としてその基礎を固めつつある欧州共同体とわが国との関係は、一そう緊密なものとなることが期待されます。  よって、ここにこの協定締結について御承認を求める次第であります。  次に所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国とアイルランドとの間の条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、アイルランドとの間に所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための条約締結するため、昭和四十七年以来、東京及びダブリンにおいて交渉を行ないました結果、昭和四十九年一月十八日に東京において、わがほう大平外務大臣と先方フォガーティ駐日大使との間でこの条約に署名を行なった次第であります。  この条約は、本文三十一カ条から成り、そのおもな内容は、次のとおりであります。事業利得につきましては、一方の国の企業相手国において支店等の恒久的施設を通じて事業を営む場合に限り、かつ、当該恒久的施設に帰属する利得に対してのみ相手国課税できるものとし、船舶または航空機を国際運輸に運用することによって生ずる利得につきましては、相互に全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での課税率につきましては、配当に関しては、日本国においては、親子会社間の配当については一〇%、その他の場合は一五%をこえないものとし、アイルランドにおいては、付加税を免除することとしており、利子及び使用料に関しては、一〇%をこえないものとしております。  この条約締結によりまして、二重課税回避制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化の面での交流は、一そう促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国スペイン国との間の条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、スペインとの間に所得に対する租税に関する二重課税回避のための条約締結するため、昭和四十六年以来マドリッド及び東京において交渉を行ないました結果、昭和四十九年二月十三日にマドリッドにおいて、わがほう佐藤駐スペイン大使と先方コルティーナ外務大臣との間でこの条約に署名を行なった次第であります。  この条約は、本文二十九カ条及び附属議定書から成り、そのおもな内容は、次のとおりであります。事業利得につきましては、一方の国の企業相手国において支店等の恒久的施設を通じて事業を営む場合に限り、かつ、当該恒久的施設に帰属する利得に対してのみ相手国課税できるものとし、船舶または航空機を国際運輸に運用することによって生ずる利得につきましては、相互に全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での課税率につきましては、配当に関しては、親子会社間の配当については一〇%、その他の場合は一五%、利子及び使用料に関しては一〇%をこえないものとしております。  この条約締結によりまして、二重課税回避制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化の面での交流は、一そう促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、千八百八十六年九月九日に署名され、千八百九十六年五月四日にパリで補足され、千九百八年十一月十三日にベルリンで改正され、千九百十四年三月二十日にベルヌで補足され、千九百二十八年六月二日にローマで改正され及び千九百四十八年六月二十六日にブラッセルで改正された文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  著作者の権利の国際的保護をはかるため、一八八六年に初めてベルヌ条約と呼ばれる「文学的及美術的著作物保護万国同盟創設ニ関スル条約」が作成され、これがその後、七回にわたって補足、改正されて今日に至っております。  このブラッセル改正条約は、一九四八年にブラッセルで開催されたベルヌ条約改正会議で作成されましたが、戦後の新しい時代に即応するように一九二八年のローマ改正条約に比べて、著作物の保護期間を著作者の死後五十年とすることを義務づけ、放送権の内容を詳細化し、朗読権を新たに規定するなど、著作者の権利保護の一そうの充実をはかったものであります。  わが国は、一八九九年以来、ベルヌ同盟の一員となっておりますが、このブラッセル改正条約につきましては、一九七一年に旧法を全面的に改正した新著作権法が施行されましたので、いまやこれを締結する体制が整うに至っております。わが国がこのブラッセル改正条約締結することは、著作者の権利の保護における国際協力を促進する見地から有益であると考えられます。  なお、この改正条約締結に際しては第二十七条(3)の規定に基づき、翻訳に関する従来の留保を一九八〇年十二月三十一日まで維持する宣言を行なう方針であります。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上四件につきまして、何とぞ御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  94. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) それではこれより四件の質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  95. 田英夫

    ○田英夫君 四つの条約が一括議題となっておりますので、順次御質問したいと思います。  最初に、ECの代表部設置の問題についてでありますが、ECそのものの内部の問題について、政府でどのように判断をしておられるかということですが、つまり、ヨーロッパの最近の政情を見ておりますと、たいへん流動的であり、一つの大きな変革の時期にきているのではないかという気がいたします。西ドイツでブラント首相が失脚をする、さらにフランスでは新しい大統領が誕生する。これは、フランスの場合、大きな変化とは言えないかもしれませんが、一つの曲がりかどであることは間違いないし、その票数などから見ても非常に僅差であるということ。また、イギリスも労働党政権ということになりまして、ECとの関係で言うと、これは直接影響があると、こう見なければならないと思うのですが、最近のECの動きについて、状況について、あるいはヨーロッパのと言ったほうがいいかもしれませんが、西ヨーロッパの状況についてどういうふうにお考えなのか、まずお伺いしたい。
  96. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) ただいま御指摘がございましたように、ECにおきましては、英国のEC加入条件の再交渉要求でございますとか、あるいはまた、先般の石油危機をめぐります域内の足並みの若干の乱れとか、いろいろ問題が重なっておりまして、ECの理想として掲げられておりますところと現実との間の隔離が見られるような節もございます。しかしながら、そのほか、これまた御指摘のございましたように、おもな国におきます政権の交代、あるいはまた、いろんな国におきますインフレの進行、その他政治的にも、経済的にも、あるいはまた社会的にも、若干不安定の要素があることは否定できないところでございます。したがいまして、場合によりましては、各国政府の目も当面は欧州統合の推進よりも、むしろ差し迫りました国内の問題に向けられるという傾向もございまして、欧州統合は必ざしも順調には進捗しておりません。しかしながら、ECの長期的な統合の推進ということは、各国一つの政治的な目標として掲げられていることでございまして、現にフランスの大統領選挙におきましての選挙演説その他から見ましても、新フランス政権がやはり統合について積極的な意思を持っていること、また、西ドイツの新政権もやはりそのEC統合の問題を前向きに考えていることがうかがえるわけでございます。もちろん、これらの新しい政府の具体的な政策は、それぞれの政府、特にフランスの場合には政府の各閣僚もきまりまして、具体的に宣明されるのを待たなくちゃならないわけでございますけれども、いままでの状況に関します限り、そういう意思があるやに見受けられます。また、英国の場合も、加入条件の交渉を要求しておりますが、その具体的内容はまだ明らかにされておりません。したがいまして、ECの統合につきましては、若干足踏みはしておりますが、やはり長い目で見ますと、このような条件は今後また改善され、統合作業が進み出すということが一応予想されるかと存じます。
  97. 田英夫

    ○田英夫君 そうすると、一九八〇年に欧州同盟を完成するという当初からの目標というものは、いまの情勢でも変わらないだろう、こう見ておられるわけですか。
  98. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) ECにおきましては、個々の問題につきましてそれぞれの目標が設定されております。そのうちで関税同盟はほぼ完成していると申してよろしいかと思います。それからまた、たとえば共通農業政策につきましては、最近若干の後退も見られますけれども、これを例外といたしますとほぼ合意に達して、かつ、一応軌道に乗ってきたというふうに考えられます。通貨同盟につきましては、最近の通貨情勢もございまして、やはり足踏み状態にあるということが言えるかと思います。  これらを全部ひっくるめまして、経済統合あるいは欧州統合の実現という目標につきましては、その目標が掲げられていることは事実でございますが、はたしてその目標の年次どおりにいくかどうか、これは私ども外部から見ておりまして必ずしも確信できないところかと存じます。
  99. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つ伺いたいのは、ECとアメリカとの関係をどういうふうにごらんになっているかということなのですが、例のキッシンジャー構想のいわゆる新大西洋憲章というものに対して、ヨーロッパのほうではEC諸国は冷たい反応を示してきて、結局、どうも日本も、はっきり言って、田中総理大臣が遠い大西洋のほうまでたいへん口を出されるような風潮がありましたけれども、にもかかわらず、ヨーロッパ諸国は冷たくて、結局このキッシンジャー構想は、いまやどうも立ち消えのような状態だと思われるわけですね。そういう中で、アメリカとEC諸国との関係というのは冷たい、こう考えられますけれども、この辺の状況をどう判断されるか。
  100. 山田久就

    政府委員山田久就君) いまお話しのような、必ずしもキッシンジャー構想のようなところに進んでいないということは、それは確かに事実だと思います。ただ、基本的にはこの間からのフランスのドゴール主義といいますか、抵抗なんというものが非常に強く出てきておったわけですけれども、ECが基本的にはこのアメリカとの関係というものにおいて、やはり協力体制というものを保持していかなければならないという底流はみんな理解しておられるのが現在の情勢じゃないかと、こう思います。アメリカ側のほうには、この点においてはやや欧州よりも制度的にというのもちょっと行き過ぎかもしれませんけれども、もう少し協力体制というものを、次善の状態で考えてくれていいんじゃないかというような考えを持っておるようで、その点については、欧州のほうでは、きみのほうでは逆に頭越しにやっているじゃないかというような反発もあって、必ずしも継ぎはぎにはなっている点はあろうと思います。しかしながら、両方の関係は両方がやはり基本的に必要としているという点、そういう点は頭に置いて、両方の関係というものを見ていくことが必要じゃないか、こういうふうに見ております。
  101. 田英夫

    ○田英夫君 私は、EC代表部設置の問題について、いまこういうことを伺ったのは、代表部設置ということで、今後ECとの関係を密接にしようという意思のあらわれというふうに受け取っているわけで、その点はもちろん反対ではありませんけれども、その底流としてどういうお考えなのかを実は伺ったわけです。そういうことから考えますと、今度は日本とECとの関係というのは、あるいは西ヨーロッパと言ってもいいかもしれませんが、日本の外交全体の中でのウエートが、従来やや低過ぎたのではないかということを感じるわけですね。そういう意味では、したがって、EC代表部設置というようなことを一つのステップにして進まれることは賛成でありますけれども、外交全体の中で、アジア外交、あるいは西ヨーロッパ外交が、やはり比率としてアメリカ、あるいはむしろ大国との外交に偏重して、軽いんじゃないかという印象があるわけです。そういう論議はきょうは別として、そういう中でECと日本との関係も、たとえば日本から輸出をしている、つまりEC諸国が輸入をしているものについては、いまだにかなり制限規制があるように思いますが、こういう状態は、やはりいま申し上げたような意味からすると好ましくない。この点について何か具体的に打開の道なり計画をお持ちなのかどうか。
  102. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) 御指摘のとおり、ECの各国の中では、日本からの輸入に対しましてこれを押えるような制度を持ち、あるいは運用を行なっている国がございます。この点につきましては、日本各国との間の交渉で漸次改善が見られてまいりまして、たとえば、いわゆる対日差別輸入制限品目も、このブラッセルの関税表で、ドイツのごときは二十一、これは千百のうちの二十一品目に縮小してまいっております。この大半は繊維でございます。これに対しまして、まだその倍近く差別制限品目を有している国もございます。そのほかに、いわゆるセーフガードと称します条項につきまして、日本とEC諸国との間に必ずしも意見の一致が見られていないわけでございます。先般EC側におきましては、通商政策に関しましては、個々の国の権限からこれをECの理事会——ECのほうに移していくという方針をきめまして、日本との間でも、ECの各国別との協定ではなくて、EC一本の、つまりECを一方の当事者とし、日本を他方の当事者とする協定を結んだらどうかというような動きもございました。これにつきましてかなりのやりとりがあったわけでございますが、たまたまガットの場におきまして、多角的な貿易交渉が本格化するということも予想される事態に至りましたので、日本とECとの共通の交渉は、ガットの場におきます多角的交渉の一環として行なってはどうかということを日本側から主張いたしまして、EC側もこれを一応受け入れまして、ガットの場における多角的交渉の際に、セーフガードの問題も、あるいは輸入制限の問題も、その他の問題とあわせて交渉を行なってみようということに相なっております。ただ、ガットの交渉がまだいま準備作業を進めておる段階で、本格化いたしておりませんので、私どもといたしましては、この交渉が本格化いたしました際に、わがほうとしてEC側に要求すべきことは十分に要求し、また、わがほうとしてECに対して、あるいはわがほうの自由化の問題だとか、あるいはわがほうの非関税障壁の問題とか、こういうようなものもにらみ合わせまして交渉して双方の自由化を拡大したい、かように考えておる次第でございます。
  103. 田英夫

    ○田英夫君 今回の協定によって、まずECの代表部日本に置かれるということになるわけですが、日本側の代表部をどうされるかという計画は、当面はベルギー大使の兼任ということになるのか、そのままでいくのか、この点はどういうふうにお考えですか。
  104. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) 当面は、在ベルギーの大使がECに対しましてもわがほうを代表しているということで、そのように相なっております。いずれ将来におきましては、この問題をどういうふうに改めるかということを検討する段階がまいるかと思いますが、さしあたりそのような現状を前提といたしまして、質的にこれを強化していくということを考えている次第でございます。
  105. 田英夫

    ○田英夫君 EC外交について基本的なことでもっと伺いたいことがありますが、きょうは時間もありませんし、四条約が一括してありますので、それに移りたいと思います。  租税関係のアイルランドとスペインとの条約、これを一括して伺いたいんですが、この租税条約について、まず、共産圏諸国とは全く締結をしていないわけですけれども、社会主義諸国との間でこういう条約を結ぶというお考えがあるのかどうか。最近の状況を見ておりますと、ソ連との間では、シベリア開発問題というようなことで非常にやりとりが多いわけですし、経済的にももちろん密接になってきています。東欧もかなり関係が多い。あるいは中国につきましては、もう言うまでもなく、たいへんこれからも一そう経済交流が多くなると思いますが、そういう中で租税条約を結ばれるというようなお考えがあるかどうか。
  106. 山田久就

    政府委員山田久就君) 特に、たとえば政治的な理由で差別をするとか何とかという考えは存在していません。ただ、しかしながら、やはり経済の体制が非常に違っておりますし、税の体系も非常に違っておりまするから、事実上適用対象になる関係の要請が起こってないということで、結局そういう実際上の要請ということから問題になってきてない、こういうのが実情だと御了解いただいて差しつかえないかと思います。
  107. 田英夫

    ○田英夫君 先日も、中国との貿易協定の審議のときにも申し上げたのですけれども、いま政務次官おっしゃるとおり、確かに政治体制が違う。そういう中で法体系も違いますし、あるいは国民生活そのものも違うということがありますから、なかなか西欧諸国と同じような条約協定を結びにくいことは事実と思いますけれども、同時に、そこの間に貿易が盛んになれば、その貿易に従事している商社の人たちというような立場からすると、非常にやりにくい点があるということも事実だと思うんですね。そういう点から、社会主義国との間の経済交流を進める、経済交流を進めるということは、やはり友好の促進にもなるし、大きな意味の平和ということから非常にけっこうなことだと思いますので、この点はひとつ技術的な問題これは日本だけの問題ではないかもしれませんが、技術的な問題を乗り越えていく御努力がほしいと思います。  今度の二つの租税条約については特別、問題はないんですけれども、スペインについては、国情に対してやや危惧の念を持ちます。直接には、先日のポルトガルの政変の影響が直接早くもスペインに出ているというふうに思われますけれども、この辺の状況は外務省ではどういうふうに把握されておられますか。
  108. 大和田渉

    政府委員(大和田渉君) いま先生おっしゃいましたとおり、先般ポルトガルで革命が起きまして、その結果、従来のいわゆる植民地政策というものに対する批判ということを行なってまいりましたスピノラ将軍が大統領についたわけでございます。ポルトガル政府自身が、従来、力によって植民地の、いわゆる解放運動を抑圧していたということに対する批判ということから始まったことでありまして、現政権自身が解放勢力との話し合いということをはっきり申しまして、事実その話し合いが近く行なわれる予定になっております。その影響としまして、スペイン政府は、御承知のように一九三九年のいわゆる内乱を踏まえまして、フランコ統領が引き続き政権を維持しておりますが、引き続き維持という意味では安定しておりまするけれども、先般ポルトガルでいま申し上げましたような革命が起きまして、その結果、従来のような、たとえば言論の自由が全然ないというようなことでは、やはりまずいという認識になりまして、スペイン自身も言論の自由を認める方向にいきつつあるというふうに考えております。     —————————————
  109. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) この際、御紹介申し上げます。  ベトナム民主共和国国会議員チャン・ザイン・トゥエンさん御一行が参議院に参られまして、ただいま当委員会の傍聴にお見えになりましたので、拍手をもってお迎えしたいと思います。    〔拍手〕     —————————————
  110. 田英夫

    ○田英夫君 この問題もいろいろ伺いたいことがありますけれども、時間の関係で著作権に関するブラッセル条約に移りたいと思います。  この問題についても非常に問題点がたくさんありますので、伺いたい点はたくさんありますけれども、まず、この著作権条約は、非常に段階的に改正されてきていて、国によってきわめて段階が違っていると、そういう中で、国と国との間に非常に広くまたがる約束をするわけですから、違った段階にとどまっている国同士が約束ごとをするという、まことに困難な状態じゃないか。日本はそういう中で、今回ブラッセル条約を批准しようということになるわけですけれども、一歩前進をするということの基本的なお考えをこの際まず伺います。
  111. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 御指摘のように、このベルヌ同盟の条約につきましては、数回の改正を経ております。わが国は、ほとんど当初からこの条約、同盟に参加しておりまして、ベルリン改正以後、ローマ改正規定の加盟国として今日に至っているわけでございます。ちなみにローマ改正規定は、一九二八年の条約でございました。その後、不幸にして戦争等の関係もあって、ベルヌ同盟条約の改正は進まなかったわけでございますが、一九四八年に至りまして、ブラッセルにおきまして、現在御審議をお願いしておりますブラッセル改定規定ができ上がった次第でございます。ブラッセル改定規定は、二十年の間の世の中の進歩というものに応じまして、いろいろと著作権の保護に関して手厚い保護を、ローマと比較しまして加えておるということから、わが国もこの条約に入ることを目途といたしまして、国内法の整備をいたしてきたわけでございます。これは文部省、文化庁等のほうにおいてお願いしてきたわけでございますが、大体ブラッセル条約の内容を満たす国内法の整備が昭和四十六年から実施される運びに至りましたので、わが国としてもベルヌ同盟の一員として、ベルヌ同盟におきましても非常に重要なブラッセル条約というものに加盟いたしまして、国際間における著作権の保護というものに遺憾なからしめようという趣旨でございます。
  112. 田英夫

    ○田英夫君 たいへんこれは基本的なことなんですけれども文化庁長官おいでになっているので伺いたいのですが、著作権というもの、そのものの基本的な考え方ですね。これは実は矛盾するというか、できるだけ著作権というものを尊重していこうということになりますと、ある部分で非常に窮屈なことが出てくるわけですね。だからこそ、国によって非常に哲学が違っていて、段階的にとどまってしまっていると、たとえばカナダの場合などは、自分のほうから意識的にもうこれは、ブラッセルには進まないということをはっきり言っていると思います。いま世界で三大国といわれているアメリカ、ソ連、中国は、このベルヌ条約自体に参加をしていないという、そういうことがある中で、日本は前進を続けているわけで、一方ではこれがおそ過ぎると、進み方がおそ過ぎると、国内法の整備もおそいのじゃないかという御意見があると同時に、一方では、外国の場合はとどまっているじゃないかという、その立場からの御意見もあるわけですね。文化庁あるいは政府としては、その基本的な哲学をどういうふうにお考えなのか、それを伺いたい。
  113. 安達健二

    政府委員(安達健二君) まず第一に、日本はほとんど当初以来ベルヌ同盟の同盟国となって、ベルヌ条約の規定に従いまして著作権の保護をはかってまいったわけでございます。ところが、アメリカあるいは中南米の諸国では、ベルヌ同盟の体制とは違ったところの保護体制がございます。  その最も大きな違いは、ベルヌ同盟のほうでは無方式で保護する、登録その他の形式的な要件を備えることなく、著作が完成すればそこで保護が始まるという主義をとっているわけでございます。ところがアメリカ等では、これを登録しなければ保護しない、登録することによってはっきりした保護を与える、こういうところの違いがあるわけでございます。そこで、アメリカ等とは事情が違うというのが一つございます。  それから、従来日本がブラッセル改正条約に入ることにつきましての難点となっておりましたのは、著作者の保護期間が、日本では従来原則といたしまして死後三十年ということでございました。それを今度の著作権法改正で死後五十年という体制ができたわけでございます。  そこで、日本といたしましては国際的な水準まで達することになった、ベルヌ同盟の水準にまで達することになったという観点で、今度ブラッセル改正条約への加入の批准の承認をお願いいたしておるところでございます。  ソ連につきましては、最近万国著作権条約に加入をいたしたわけでございますけれども、保護期間が死後二十五年でございますので、その辺でベルヌ同盟体制に入るにはなお困難があるということはございます。  中国につきましては、現在なお著作権的な法制が確立していないというような事情があるわけでございまして、それぞれの国の事情があると思うのでございますけれども日本におきましては、やはり文化的な創造というものを尊重する、それを権利として保護することが、使用者にとって若干の不便であるけれども、結局よい文化的創造が得られるということによってやはり文化が向上し、また、使用者のほうでもそれなりの利益が得られるという観点に立って、著作権の保護をできるだけ厚くしようと。しかしながら、使用の円滑を欠いたりしてはいけないということで、著作権法におきましても、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。」と、こういう考え方をとっておるところでございます。
  114. 田英夫

    ○田英夫君 著作権の問題についても、テレビその他最近非常に関心が深くなってきましたし、また、関係する部門が広がってまいりました。そういう状態の中で、規制を強める方向に進んでいいのかどうかという意味からも、われわれのところにもいろいろな御意見が寄せられているわけで、いまおっしゃいました政府のお考えは、一つのはっきり言えば妥協的な線をいかざるを得ないという、これは事実またそうでなければならないとも思いますが、ひとつ確認をしておきたいんですが、たいへん具体的なことですけれども、このブラッセル条約に参加をすることがきまった場合でも、たとえば従来どおりパチンコ屋さんとかあるいは喫茶店というところの音楽の使用、レコードの使用は影響がないのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  115. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 現行の著作権法では、ただいまお話のございました点におきまして、附則の十四条という規定がございまして、その附則の十四条によりまして、録音物による音楽の著作物の演奏についての経過措置がございます。そこで有線放送、それから営利を目的として音楽の著作物を使用する事業で政令で定めるもの、すなわち、直接音楽を営利のために使っておる、たとえば音楽喫茶であるとかキャバレー、ナイトクラブ、あるいは音楽を伴って行なわれる演劇その他の場合、こういうような場合を除きましては、そういう場合の音楽の使用につきましては演奏権が一応当分の間はなお適用しない、こういうことになっておるわけでございますが、ベルヌ条約との関係からいたしました場合におきましては、この現行の規定がありましても、レコードによる音楽の演奏権につきましての権利が確立され、その根幹が確立されておりますので、ブラッセル規定の要件を満たしていると申しますか、その間に問題はないと考えられます。その意味におきまして、この条約に加入したことのゆえをもって、直接この十四条の改正をする考えは持っておらないわけでございます。
  116. 田英夫

    ○田英夫君 これは外務省に伺いたいんですが、ブラッセル規定を今回批准をしないと閉鎖されるという話を聞くんですけれども、これは事実なのかどうか。どういう御連絡があったのか、その辺お聞かせ願いたい。
  117. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 御説明申し上げます。  ベルヌ同盟におきまして種々の改正を経てきたわけでございますが、今般御審議を願っておりますこのブラッセル条約よりも新しいパリ改正規定というものがございます。このパリ改正規定が発効いたしますと、従前のそれよりも古い条約、すなわち、ブラッセル以前の条約というものには入れないということになっておりますために、パリの改正規定が発効いたしますと、わが国としましてはブラッセルの条約に入れないわけでございます。ところが、現状におきましてはパリの改正規定は発効はいたしておりませんけれども、大体発効要件をそろそろ満たし始めたということでございまして、この五月六日の事務局からの通報によりますと、七月十日をもってブラッセルヘの門戸は閉ざされるという意味の通報がございました。  ところで、実は私ども条約文の解釈といたしまして、ベルヌのパリ条約の発効日が七月十日であるというのはいささか解せなかったわけでございます。したがいまして、私どもはそれよりも三ヵ月おくれて十月十日が正しいパリ条約の発効日ではないかということで、実は先週来、国際事務局に照会していたわけでございますが、本日参りました電報によりますと、日本側の解釈が正しくて、十月十日が正式なパリ条約の発効日であるということになりました。  私どもといたしましては、七月十日ということでございまして、若干は疑問を持ちつつも、国際事務局が七月十日というので用心をいたしまして御審議の促進をお願いしたわけでございますが、いずれにいたしましても、たった三ヵ月しかおくれませんので、今国会におきまして御承認いただければ非常に幸甚に存ずる次第でございます。
  118. 田英夫

    ○田英夫君 どうも日取りの点で審議促進の材料にされたような気がしますが、いずれにしても、この問題でもう一つ最後に伺いたいのは、ここにいただいているこの日本文の条約文は、外務省で翻訳されたものだと思いますが、それで間違いありませんか。
  119. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 翻訳文は、形式的には外務省で翻訳したものということでございますが、実際上は外務省で素訳をいたしまして、その後、国内法との関連や、あるいは日本語としての正確度というものにつきましては、関係庁である文化庁の実体面からの検討、なお、日本語の法律用語としての正しい使用ぶりというものにつきましては内閣法制局との検討というものを経ましてでき上がったものでございます。
  120. 田英夫

    ○田英夫君 なぜ私がこういう御質問をしたかというと、二国間の協定条約の場合ならば、正文をつくりまして、必ず日本語の文章がその一つになるはずですからいいんですが、こういう国際条約の場合は、この著作権条約でいえば、従来フランス語が正文で、その後、英文も正文に加えられたというふうになりますが、日本語は正文ではない。ところが、日本で著作権に関係をする問題について、たとえばテレビの人だとかあるいは文章を書く人だとか音楽——作曲家であるとか、そういう人たちが見ますのはこの文章を見るわけですね。したがって、これがむしろ日本国内においては著作権法と並んで非常に重要な文章になるわけで、この翻訳というのは実はきわめて重要だと思います。だからこそいま、伊達さんが言われたような翻訳後の手続も踏まれているんだと思いますが、それにもかかわらず、著作権の専門家の意見を聞きますと、今回のこの翻訳文は、従来の翻訳文と、英文の原文が同じことばであるにもかかわらず、日本語が違ってきている。これは、何かの意図がおありになるのか、たまたま翻訳者が以前と違うからそうなってしまったのか。  たとえば、第一条の最後のほうに「同盟を形成する。」と、こういうふうにあります。これは、従来の著作権条約の翻訳文ではどこをとっても「同盟ヲ組織ス」ると、こうなっているのが、「形成する。」と。日本語で言えば同じようなものかもしれませんけれども、そういうことばにあえて今回初めて変えられているというところに疑問といいますか、まだほかにも条文の中で従来と違う点が幾つかありますが、そういう疑問を投げかけている専門家がいます。つまり、「コンスティテュート」というのを「形成する。」と翻訳されたあたりに何らかの意図があるのか、それともそうなってしまったのか。その辺のいきさつはどうなんですか。
  121. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) まず一般論といたしまして、先生もよく御了解いただけると思うんでございますが、なかなかヨーロッパ語を日本語に直すという作業はたいへんむずかしい作業でございます。したがいまして、文学的な翻訳でございますと、ある程度翻訳者の文学的な見地からの翻訳ということで、原文を離れて訳すようなことも可能かとも思いますけれども、やはり法律文、条約文でございますので原文からそう離れるわけにもいかないという苦労もございます。したがいまして、いろいろとこの用語につきまして、また表現の方法につきましては、日本語としてなるべくわかりやすく、かつまた、原文に書いてあることよりも以上でもなければ以下でもないという内容をあらわさなければなりませんので、そこが実は私どもの苦労の存するところでございます。  それを申し上げました上で、具体的な御指摘がございましたので、第一条についての「形成する。」、従来なるほど確かに、御指摘のように、ローマ規定におきましては「同盟ヲ組織ス」るというふうに訳をしてございまして、フランス文におきましては何ら今回の場合にも変更はないわけでございますが、それを「形成する。」と今回は訳しているわけでございますが、これは別に何らの意図があるわけではございません。いろいろ、翻訳をつくります際には、先ほど申した、実体面ではたして正しい用語であるか、ないしは日本語として適当な表現法であるかということと同時に、先ほど申し忘れましたが、従来の前例ということも非常な参考となるわけでございます。したがいまして、ローマ条約を参考にとれば「組織ス」るということでございましたのですが、何ぶん戦前の条約でございまして、かたかな書きのものでございました。そこで、同様の表現を使っている工業所有権のリスボン改正条約というのが戦後にできて、わが国も国会の御承認を経て加盟国になっております。その工業所有権のリスボン規定が、まあこれは私もどういうわけかわからないんでございますが、「同盟を形成する。」というふうになっておると。これが戦後における例でございましたので、フランス語の文章も変わっておりませんので、それにならいまして「形成する。」というふうにしたわけでございまして、そこで意味を変えようという下心は別にあるわけでもございません。  なお、いろいろと、確かにローマ規定と比較いたしまして同じことばのところでも若干異なったことばづかいを使っているところもございますが、これは、日本語の変化ということと、それからより正確なことばづかいが、こちらのほうがよいのではないかという結論を得た上で使ったものでございますが、その間に条約の意図する内容を変更しようという意図は毛頭ございません。
  122. 田英夫

    ○田英夫君 最後に、いまの点ですが、確かに他意はないということだと信じますけれども、第二条の点でも、英文で見ると冒頭から「ザ・ターム」ということばから始まっているんですね。ところが日本語のほうを見ると、「用語」ということばは全く条文の中に出てこないで、「文学的及び美術的著作物」には、」と、これこれこれこれのもの「を含む。」と。これは確かに日本としては、意訳としては正しいかもしれませんが、こうした法律用語を意訳していいかどうかという点で疑問を差しはさむ専門家もいるわけで、この点も、しかしいまのお答えで意味はのみ込めます、わかります。したがって、あらためてお聞きしませんけれども、そういう疑問を持っておられるということをこの際申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  123. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 他に御発言もなければ、四件に対する質疑は終局したものと見て御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 御異議ないと認めます。  議事の都合により採決は後刻行ないます。     —————————————
  125. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 再び国際協力事業団法案を議題とし、質疑を行ないます。
  126. 星野力

    ○星野力君 それでは残りの質問をいたします。  国際経済協力経済援助を進めるにあたって一番大切なことは何かといえば、互いに相手の他民族を理解し、尊重する心がまえだと思います。  ところで、日本はアジアにおける唯一の先進工業国であり経済大国であるという意識、その反面は、アジアの諸民族を後進民族視し軽べつする、この意識が日本人の鼻先にぶら下がっているんではないかと思うんであります。一般の国際経済行為というものは、損得を離れた慈善行為ではないのでありますが、それにもかかわらず、経済援助といえば何か他国、他民族に恩恵を施すことのような考え日本人の中にあって、これが相手国国民感情とぶつかるわけであります。一般の旅行者や現地企業関係者だけではなくて、日本の政界、財界の指導的な立場にある人々、特に政権の座にある者にその点の反省が必要に思われます。それから、アジア諸国に対する過去の侵略についての反省の問題、この点では、私は歴代の自民党政府というものは、現内閣を含めて全く落第であると思うんであります。「日本がその戦争観を改めないかぎり、その東南アジア観を徹底的に改めることはできない」、これはことしの一月、田中総理東南アジア訪問直後にシンガポールの一華字紙にあらわれた論調であります。日本の新聞にも紹介されたものであります。東南アジアにおいては、あの当時、同じような論調は二、三にとどまらないわけであります。朝鮮についてみましても、歴史的に見るならば、人類文化の実に多くのものを日本民族は朝鮮を通じて受け取り学んだ、それは今日の日本の文化社会形成の上に大きく貢献してきたわけであります。ひるがえって、日本から朝鮮に何を貢献したかと考えてみますと、どうもあまりなさそうであります。貢献したものがないだけでなく、過去において、侵略や植民地統治者としての罪悪の歴史を残している。日本と朝鮮の友好関係を発展させる上ではその点の反省が必要であります。卑屈になる必要はありませんけれども反省すべきは反省しなければならぬ。ことに、為政者がそれをやらなければならぬ。その点、私は一月の国会における田中総理の日朝合邦論のごときは、さたの限りであると思います。この問題は、今国会で起きた事柄であり、私もその問題について質問の機会を得たいと思っておりましたが、機会もなく、今国会は終わりそうであります。  そこで、外務大臣代理というだけでなしに、内閣の大番頭であり、田中総理側近の第一人者、総理のもり役というか、もり立て役、そういう人物であられるところの二階堂官房長官に申し上げておくわけであります。そうじゃないですか。田中総理が朝鮮民族にノリの栽培を教えて感謝された、私はあのぐらいの言いぐさはまだいいと思うんです。もっともこの点でも朝鮮のほうでは、ノリを食用に供したのは文献的には朝鮮のほうが二百五十年早い、こう言っているのです。私はその間の真偽を知りません。それはまあいいといたしまして、教育制度を持ち出したのは、これ、求めて朝鮮民族の一番深い恨みのその根源に触れるようなしわざであったと思います。総理が一月二十四日の衆議院本会議であの発言をやられて、これは二月六日にソウル大学生がパコダ公園で配布した宣言文の中の文句でありますが、あの田中総理の発言に対して、五臓六脈が裂けるうっぷんと恨みを覚える、こう言っている。また義務教育云々という言及に対して、植民地圧殺教育をほしいままに敢行した世界文化の反逆者である、日本帝国主義は。こういうことも言っております。総理は合邦の歴史の中で、教育、特に義務教育制度を朝鮮に与えた、こう言っておられるんでありますが、そんな歴史的な事実もない。朝鮮統治の歴史の中で義務教育などという歴史があったかどうか。総理を守っていかなければならぬ官房長官として、その点どういうふうにお考えになりますか。総理は、経済協力は精神的な理解が大切だという意味であれを言ったのだ、こう弁解しておりますが、そういう重大な問題を不用意に口にするということの根底に、過去の侵略に対する無反省ということがあると思うんでありますが、まずこの点について二階堂さんの御見解をお聞きしたい、こういうことであります。
  127. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) きょう私は、本委員会には外務大臣代理として出席いたしておりまして、その立場で御答弁を申し上げたいと存じますが、戦後のこのわが国の外交は、平和に徹するということであります。国際情勢の緊張緩和、平和という方向に向かっておるときでありますし、したがって、わが国の外交も当然平和外交、善隣友好の外交を推進していかなければならぬわけであります。戦後の歴代内閣、自由民主党内閣は、その方針をずっと守り続けてきたものと私は確信いたしております。田中総理も、いま申し上げたような方針といささかも違った外交を進めておるものとは私は思っておりません。特に経済外交、国際技術協力——非常に多くの国々との間に日本協力をしていく立場にもありますし、しておりますが、特にこれからの経済協力関係は、他国の立場に立ち、しかもまあ、海外事業団法の中にも書いてあるとおり、社会経済開発というようなものを重視していくべきである、相手国民立場に立ってそういうものを進めていかなければならぬと、こういうことを強く主張いたしておりますし、総理もしばしばそういうことは国会におきましても申し添えているとおりでございます。  先ほどお述べになりました日本と韓国との関係における歴史的な問題等を例にあげて総理が発言されたということは、いささかも、かつての侵略といわれた、日本が朝鮮に対する政策を合法化しようという意図では毛頭あるわけではございません。なんとしてもこれからのやはり国際協力、善隣友好の関係というものは、物の面におきましては応分の協力をすることは当然としながらも、やはり心の触れ合うような関係を築いていくことが何よりも大事だということを、私は、総理は強く考えてそのことを強調されたということを信じて疑っておりません。ただ、あの表現の中で、星野さんのおっしゃったような誤解を招く点があったとするならば、それは遺憾に存じますが、真意は、私が先ほど申し上げましたように、やはり国民的な理解、協力、その柱にはやはり心のつながりというものが何よりも大事だということを強調されたものだと、かように私は確信いたしております。     —————————————
  128. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日増原恵吉君、足鹿覺君及び加藤シヅエ君が委員辞任され、その補欠として竹内藤男君、森元治郎君及び村田秀三君が選任されました。     —————————————
  129. 星野力

    ○星野力君 私は、経済外交をやるにしましても、その根底において一番大事なことは何かということで問題を提起しておるわけです。すなわち、相互の民族に対して理解し、相互に尊重すると、この心がまえがなくてはならないということと、日本立場からすれば、過去の罪悪に満ちたところの帝国主義的な侵略というものに対する真剣な反省がなければならぬと、こう言っておるのです。いま二階堂さんの御答弁を聞いておりますと、総理もそのような心がまえであるかのごとく聞こえる。また、あの日朝合邦論といわれる発言についても、そういうような立場から言われたかのように聞こえるんでありますが、実際あの発言が、南北といわず、朝鮮民族の怒りを燃え立たせた。朴正煕大統領といえどもこれを無視することができなくて、日本に抗議的な態度を示さなきゃならなかった。実際に民族の理解、友好、それを妨げるようなことを総理自身がやっておる。そういうことを官房長官外務大臣代理なら外務大臣代理という立場でけっこうでございますが、もっと真剣に考える必要があるとはお考えにならないのかどうか。
  130. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) 先ほど申し上げましたとおり、過去の外交については深い反省をいたしていることは、日韓正常化のときにも政府が明らかにそのことを表明しているわけでございます。いま平和外交、善隣友好の外交を進めるときに、日本立場は、いずれの国ともお互いの主権を尊重し、立場を理解して協力していこうという立場を貫いていることは、これはもう事実でございますので、自由民主党政府になって、ほかの外国を敵視したとか、敵国だとか言ったようなことは一ぺんもありません。私どもはそういうことを考えてみましても、田中総理といえども、前佐藤総理といえども反省すべきは外交上反省して、そしてその上に徹してから平和外交に徹していこう、推進しようという決意を幾たびも国会において、委員会において表明していることをひとつ十分理解していただきたいと思います。
  131. 星野力

    ○星野力君 私、なぜこんなことを繰り返し言うかといいますと、いま日本政府は専任の国務大臣を置き、新しい機構を設けて国際協力、対外援助の課題に対処しようとしておるんであります。外では大東亜共栄圏の恐怖についての論議が再びやられておる、そういうときである。そういう情勢であるだけに、過去の帝国主義侵略に対する反省、それを口に出すか出さないかは別の問題でありますが、それがなくてはならないということを強調したいんであります。そういう反省に基づいて、間違っても田中総理の日朝合邦論、合邦云々ということだけじゃない、あの具体的な内容を含めてのことでありますが、あのようなことは口にすべきではない、こう言っておるんであります。  これ以上お聞きしても、おそらく同じ返事しか返ってこないと思いますから、私、時間がなくなりましたからやめますが、最後に法案に関連して一点だけお聞きしておきたいのであります。  二十三条の「業務実施方針」でございますが、これは大臣が定めることになっておるが、主務大臣というのは業務によって、三通りになっている。外務大臣、それから外務と農林、外務と通産、あの「業務実施方針」というのは、おそらくいろいろ協議があって、外務大臣の名前で出されるんではないかと思うのでありますが、その点はどうなっているのか。  それから、私は当然多額の国費を使ってやられる業務をこの事業団はやるわけであります。その方針、この「業務実施方針」については、当然国会に提出して国会の承認を求めるのが正しい、こう思うのでありますが、その二点についてお答え願いたいと思います。
  132. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 星野先生指摘のとおり、業務方針というものは、事業団のその年その年の業務の方針を示すものでございますので、主務大臣が示すことになっております。で、その主務大臣の意味は、法文の中にも明らかにされておりますように、外務大臣だけが主務大臣である場合と、それから農林大臣または通産大臣が共管で外務大臣とともに主務大臣になられる場合と両方ございまして、外務大臣だけが主務大臣の場合には外務大臣の名前で、共管大臣がございますときは双方の大臣の名前でそういう方針が示されるということになっております。  ただ、これはあくまでもこの事業団の業務の実施方針を、監督の立場にある大臣事業団に対して示すものでございまして、現在のところ、通常の場合ではこれを国会に御報告するというようなことを義務づけている法律上の規定はございません。
  133. 星野力

    ○星野力君 大臣として、いまの国会に提出して承認を求めるという点についてお考えございませんか。
  134. 山田久就

    政府委員山田久就君) ただいま局長から御答弁申し上げましたように、内部の運営というものをよく経済協力の基本方針と精神にのっとってやっていくという注意をこれに与えていくということでございまするので、特にこれを国会に提出するということをいま考えておりません。
  135. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  137. 田英夫

    ○田英夫君 私は、日本社会党を代表して、本法案に反対の討論を行ないます。  もとより私どもも、開発途上国への経済技術協力そのものには賛成であり、むしろこれを大いに推進すべきであるという立場に立っています。しかしながら、従来わが国が行なってきたいわゆる経済援助は、明確な理念を欠き、ともすればわが国企業進出、輸出振興をはかるための援助であり、開発途上諸国国民の真の福祉につながらなかったものであります。むしろ、特定の政権をささえ、一部の階層を豊かにする反面、貧しい人々の生活を一そう貧しくするというひずみを生み、このため、わが国経済協力あり方に多くの批判が起こっていることは、さきの田中総理大臣東南アジア訪問の際にも、はっきりとあらわれたと思います。したがって、いまわが国に必要とされるのは、何よりもこれまでの経済協力あり方を真剣に反省をし、新たな理念のもとにそれを根本から改めることにあると思われます。しかるに、このような真剣な反省のないまま、ただ機構いじりをすることは、むしろ将来に禍根を残す危険があります。  第二に、本法案提出経緯を見ますと、各省のいわゆるなわ張り争いと、それをめぐる政治的な取引があまりにも露骨に示され、明確な理念に基づいた新事業団発足というよりは、いわばどろなわ的に決定されたという印象をぬぐい去ることができません。  第三に、このように政治的妥協の結果として発足する事業団は、その組織及び運営の面でもきわめてあいまいであります。移住事業といった、本来経済協力とかけ離れた事業が含まれている反面、海外経済協力基金や輸銀といった経済協力プロパーの最も密接に関連をする組織が依然としてばらばらのままに残され、むしろこの結果、わが国経済協力の仕組みを複雑にし、従来の弊害を一そう大きくするおそれなしとしません。  これらの理由に加えて、私どもは次のような具体的な改善が加えられない以上は、本法案に反対の立場を変えるわけにはいかないのであります。  その第一は、わが国経済協力が、開発途上諸国国民大衆の真のニードに即応したものであるべきだという点であります。そのためには、特に農業開発への協力が重視されるべきであり、その際、相手国農業生産性を高めると同時に、わが国農業の発展を期し、双方の農業協同組合の間で協力拡充するという方向に進むべきであります。また、開発途上国からの木材の開発輸入にあたっては、自然保護及び森林の保続生産をそこなうことのないよう万全の配慮が払われるとともに、世界的な森林資源の減少傾向にかんがみ、国内における木材自給量を飛躍的に高めるための諸施策を推進をして、木材の需給と価格の安定をはかるべきであります。  第二に、経済協力が一部の業界、一部の企業、あるいは一部の政治家の利益増進につながり、いやしくも黒いうわさを生むようなことがあっては絶対にならないということであります。この点において、わが国援助は、これまであまりにも国民の目から離れたところで決定をされ、実施をされた面があります。新事業団法案においても、この危惧はぬぐい去ることができません。少なくとも、政府は、事業団の業務の実態を毎年詳細に国会に報告をし、これを広く国民に周知させると同時に、わが国経済協力あり方について国民的な討議と批判を真剣に仰ぐべきだと思います。  第三に、本法案においては、各省のなわ張り争いと天下りの危険がきわめて濃厚に出ている。経済協力はいわば国民事業であり、真に有為な人材を広く活用して初めてその実をあげることができるのであります。いやしくも、これを官僚の天下りの場にすることは絶対に避けるべきであります。特に、これまで海外技術協力事業団などにおいてじみちな努力を行なってきた職員は、厚く遇するべきだと思います。  以上の諸点について十分な改善がなされない以上、私どもは遺憾ながら本法案に反対せざるを得ないのであります。それゆえ、政府に真剣な反省と改善措置を求めて、私の討論を終わります。
  138. 平島敏夫

    ○平島敏夫君 私は、自由民主党を代表して、本法案に賛成いたします。  わが国海外経済協力は、近年目ざましい進展を見せ、一昨年の実績で総額二十七億二千五百万ドルを記録し、米国に次ぐ援助供与国となっておるのであります。戦後、援助の受け入れ国として再出発したわが国が、今日これほどまでも発展を見たことは、わが国の経済成長もさることながら、政府及び民間が一体となって行なった海外経済協力に対する努力の成果として高く評価できるのであります。  しかし、この過程にあって幾つかの問題がありましたことは、われわれとしても率直に反省しなければならないところであります。  その一つは、経済協力の進展に伴って実施機構が次第に複雑化し、今後この傾向は一そう強化するおそれがある点であります。また、受け入れ国の社会開発国民福祉向上という点で、わが国経済協力は必ずしも十分な実績をあげていなかったうらみもあるという点でございます。  ただいま審議されております国際協力事業団法案は、このような反省に立って、わが国のこれまでの経済協力実施体制に改善を加え、わが国経済協力の一そうの拡充強化をはかろうとするものであります。すなわち、これまで経済協力の機構として多くの実績をあげてきた海外技術協力事業団と、移住事業を通じて国際協力に貢献してきた海外移住事業団とを統合して、有機的な統一をはかるとともに、新たに開発途上国の社会開発農林業及び鉱工業開発協力するための業務を行なわしめ、政府ベースと民間ベースとの協力の連携強化、あるいは資金協力技術協力との一体化をはかろうとするものであります。  かくして、この事業団を通じ、わが国がこれまでに蓄積してきた経済力と技術力とを十分に活用し、国際協力をますます積極的に推進できることになれば、開発途上国経済社会の発展と国民福祉向上のために貢献するところ大であると考えられるのであります。  かかる趣旨から、私は本法案に賛成するものであります。
  139. 星野力

    ○星野力君 私は、日本共産党を代表して、国際協力事業団法案に反対の討論を行なうものであります。  本法案に反対する理由の第一は、開発途上地域等の社会経済発展に寄与するという美名のもとに、海外に進出する大企業にあらゆる便宜を供与しようとするものであることであります。これまで日本の大企業は、農林業、鉱工業の開発事業においては海外経済協力基金や日本輸出入銀行、その他の政府機関からのきわめて有利な融資を受け、擁護されてきたのであります。本事業団では、このプロジェクト実施や資源開発に関連する産業基盤、つまり道路、港湾、橋、上下水道、学校、病院等に至るまで事業団が融資をし、海外での日本企業活動に必要なあらゆるものを国民の税金で整備しようというものであります。これは海外進出の大企業にとっては非常に有力な武器になるものであり、政府みずからが大企業の新植民地主義的経済進出を激励するものであります。  第二の理由は、日本の対外経済進出と、それに対する日本政府反省の問題に関連してであります。発展途上国への日本企業の進出動機として、天然資源の確保国内労働力需給逼迫、国内での立地難という三つの主要な要因を政府も認めているように、これらの三つの要因は、しばしば、開発途上国国民にとって、資源略奪、奴隷的低賃金、公害輸出という反日感情の原因になっているものであります。ところが、政府は、このような反日感情の原因を取り除くための真剣な対策、政策の根本的転換を回避しているのであります。このことに関連して特に指摘しなければならないことは、今国会における田中総理の日朝合邦論に端的に見るように、日本の過去の帝国主義的侵略に対する歴代自民党政府反省のない態度であります。東南アジア国民から、日本がその戦争観を改めない限り、その東南アジア観を徹底的に改めることができないと指摘されているときだけに、私は特にこの問題の重大性を強調したいのであります。  反対の第三の理由は次の点にあります。わが党は、政府の対外経済協力計画、事業内容等を国民の前に明らかにし、国民の同意を求める、具体的には本法案二十三条に定められている毎年の「業務実施方針」を国会に提出し、承認を求めるべきであると主張し、そのことを要求してきたのでありますが、本案ではそのことが拒否されております。  おおむね以上の理由によって、わが党は本法案に反対します。
  140. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより本案の採決に入ります。  国際協力事業団法案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  141. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  143. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 次に、先ほど議題といたしました四条約について討論に入ります。——別に御発言もないようですから、これより順次採決に入ります。  まず、欧州共同体委員会代表部の設置並びにその特権及び免除に関する日本国政府欧州共同体委員会との間の協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  144. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国とアイルランドとの間の条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  145. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国スペイン国との間の条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  146. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、千八百八十六年九月九日に署名され、千八百九十六年五月四日にパリで補足され、千九百八年十一月十三日にベルリンで改正され、千九百十四年三月二十日にベルヌで補足され、千九百二十八年六月二日にローマで改正され及び千九百四十八年六月二十六日にブラッセルで改正された文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  147. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、以上四件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十七分散会      —————・—————