運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-05-14 第72回国会 参議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十四日(火曜日)    午後零時五十七分開会     —————————————    委員異動  五月十日     辞任         補欠選任      藤田 正明君     増原 恵吉君      桧垣徳太郎君     長谷川 仁君  五月十三日     辞任         補欠選任      増原 恵吉君     吉武 恵市君      渋谷 邦彦君     沢田  実君      栗林 卓司君     萩原幽香子君  五月十四日     辞任         補欠選任      大竹平八郎君     藤田 正明君      稲嶺 一郎君     西村 尚治君      長谷川 仁君     木村 睦男君      山本 利壽君     鍋島 直紹君      加藤シヅエ君     工藤 良平君      萩原幽香子君     村尾 重雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         伊藤 五郎君     理 事                 木内 四郎君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 田  英夫君     委 員                 木村 睦男君                 佐藤 一郎君                 杉原 荒太君                 鍋島 直紹君                 西村 尚治君                 藤田 正明君                 吉武 恵市君                 工藤 良平君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 森 元治郎君                 沢田  実君                 村尾 重雄君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        外務政務次官   山田 久就君        外務大臣官房長  鹿取 泰衛君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁警備局参        事官       星田  守君     —————————————   本日の会議に付した案件日本国中華人民共和国との間の航空運送協定  の締結について承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付) ○国際協力事業団法案内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (大平外務大臣の訪米に関する件)  (朝鮮問題に関する件)  (沖繩のVOAに関する件)  (韓国における日本人学生の逮捕問題に関する  件)     —————————————
  2. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) ただいまから外務委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十日藤田正明君及び桧垣徳太郎君が委員辞任され、その補欠として増原恵吉君及び長谷川仁君が選任されました。  また、昨十三日増原恵吉君、渋谷邦彦君及び栗林卓司君が委員辞任され、その補欠として吉武恵市君、沢田実君及び萩原幽香子君が選任されました。  また、本日大竹平八郎君、山本利壽君、稲嶺一郎君、長谷川仁君、加藤シヅエ君及び萩原幽香子君が委員辞任され、その補欠として藤田正明君、鍋島直紹君西村尚治君、木村睦男君、工藤良平君及び村尾重雄君が選任されました。     —————————————
  3. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 日本国中華人民共和国との間の航空運送協定締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は御発言を願います。
  4. 羽生三七

    羽生三七君 運輸省が帰られてしまったので、外務省にお尋ねするのはどうかと思いますが、簡単に二点だけお伺いをいたします。  この協定が成立後、今秋から日本航空機業務を開始する場合に、中国以遠はどこまで運航するつもりなのか、中国どまりなのかどうか、これが第一点。  それから第二点は、将来中国以遠にまで運航するとなると、以遠地点のある第三国と交渉して、中国経由当該国乗り入れることができるようにその同意を得て、場合によっては、当該国との航空協定路線表改正しなければならないことになるのではないかと思いますが、どうです。
  5. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) ただいま先生の御質問の第一点は、日中航空路開設時点において、北京以遠の線をどこまでやる予定になっているかという御質問でございます。先ほども質問がございまして、たしか運輸省航空局長から御答弁があったと思いますけれども、私どもの理解しておるところでは、もちろん一応目標といたしましては、最終路線であるパリ、ロンドンまでということを目標にいたしておりまするけれども、その途中の通過路線地点におきまして、それぞれの国との間の交渉が必要でございますので、いまの時点において、はっきりそういう最終目標までいけるかどうかという点についての、はっきりしたことは申し上げられません。  それから、第二点の、途中の中間地点については、以遠路線中間地点につきましては、いまも申しましたとおり、これからその地点のある国との間の交渉によって確定するわけでございます。そういうことになっております。
  6. 羽生三七

    羽生三七君 もう一点、この以遠地点相手国は、わが国交渉する場合に、わが国に対して中国経由乗り入れを認めるかわりに、当然、自国の航空機中国経由日本乗り入れを要求してくるものと予想されます。これは当然だろうと思います。そういう場合にはどう対処されるのか。
  7. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) これも運輸省所管事項だと思いますけれども、すでに中国経由日本への権利を持っている国もございますし、またそうでない国もございまするが、これからの地点交渉におきまして、いま先生の御指摘のような、相手国からもそういう要求があると思われるがどうかという点につきましては、いろいろ、運輸省の従来から主張しております経済的な等価値性というような点も考慮に入れまして、路線交渉が行なわれるものというふうに考えております。
  8. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 別に御発言もなければ、本件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより本件の討論に入ります。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  日本国中華人民共和国との間の航空運送協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  10. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 全会一致と認めます。よって、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後二時三十分まで休憩いたします。    午後一時三分休憩      ——————————    午後三時七分開会
  12. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案衆議院送付)を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。山田外務政務次官
  13. 山田久就

    政府委員山田久就君) ただいま議題となりました在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案におきましては、先般わが国ベトナム民主共和国及びドイツ民主共和国との間の外交関係設定に伴い、取り急ぎ政令により設置いたしておりました在ベトナム民主共和国及び在ドイツ民主共和国の各日本国大使館法律規定するとともに、所要規定整備を行なうこととしています。  また、昨年十二月に自治を達成しましたパプア・ニューギニア首府ポートモレスビー総領事館を新設し、同館に勤務する職員在勤手当の額を定めることとしております。  次に、本法案は、在勤手当につきまして、最近の著しい物価上昇、また外国為替相場変動等にかんがみ、その額を改定せんとするものであります。さらに、今後国際通貨経済情勢の急激な変動に即応し得るよう本法の改正により在勤基本手当については、その基準額を法定化し、その支給額については為替相場変動等に応じ基準額の百分の七十五から百分の百二十五の範囲内で弾力的に政令で定めることにしております。また、住居手当については、法律では実費補償のたてまえを明示するとともに、限度額設定変更については政令に委任することとしたものであります。また、研修員手当については号別区分範囲を拡大することにしています。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  なお、本法律案は、四月一日に公布、施行されることを想定して規定しておりましたが、これが実現されませんでしたので、所要の調整を行なうため、衆議院においてその附則の一部が修正されましたので申し添えます。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  14. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 引き続き、本案補足説明を聴取いたします。鹿取官房長
  15. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案についての補足説明をさせていただきます。  今回の改正点の主なものの第一は、在外公館設置関係であります。まず、在ベトナム民主共和国及び在ドイツ民主共和国の各日本国大使館についてですが、ベトナム民主共和国昭和四十八年九月二十一日、ドイツ民主共和国は同年五月十五日にそれぞれ外交関係設定いたしましたので、外務省設置法第二十四条及び在外公館名称位置給与法第九条に基づきまして昨年十月十九日在外公館増置令で措置されました。したがいまして、これを法律化する必要がありますので、本改正法に組み入れることといたしました。  また、ベトナム民主共和国及びドイツ民主共和国との外交関係設定に伴い、現行法規定されております在ベトナム及び在ドイツの各日本国大使館等名称欄及び国名欄につきましても所要整備を行なうものであります。  次にポートモレスビー日本国総領事館につきましては、パプア・ニューギニアは昨年十二月に自治を達成しましたが、この際ポートモレスビー総領事館を設置し、今後アジア太平洋外交を展開していく上で、近い将来この地域の新独立国として誕生し、この地域国際関係の一要素となるべきパプア・ニューギニアとの友好関係を増進することは、有意義かつ、必要なことであると考えます。  改正の第二点は、在外公館職員在勤手当関係であります。在勤基本手当につきましては、前回昭和四十七年の改正以来据え置かれてまいりましたが、この二年間に、世界的な物価上昇もあり、また、多数の国について著しい為替変動がありましたので、その是正をはかることとし、その額を平均約八・五%増額せんとするものであります。また、従来公使参事官クラス上級館員基本手当が、長期間にわたり昇給しないまま据え置かれるという問題がありましたので現在の公使すなわち特命全権公使の号と一号との間に一段階として特号を設け、この是正をはからんとするものであります。  また、本法案提案理由説明にありますとおり、今後の国際通貨経済情勢変動に迅速かつ効果的に対応し、在勤手当実質的価値を維持し得るようにするため、在勤手当支給額の決定について若干の弾力化をはかることを意図しております。すなわち、在勤基本手当につきましては、基準額を法定化し、その基準額の百分の七十五から百分の百二十五までの範囲内において政令支給額を定めることとしております。また、住居手当につきましては、法律では家賃に相当する額を支払うことを規定して実費補償のたてまえを明示するとともに、限度額設定変更につきましては、予算の範囲内において政令に委任することとしたものであります。  なお、在勤手当支給規定改正に伴ない、国会閉会中の緊急措置に関する現行法の第九条につきましても一部改正をすることといたしております。また、研修員手当につきましては、最近の諸外国における研修費等経費上昇等を考慮いたしまして号別区分を一号から十八号までに改正することといたしております。  以上補足説明を終わります。     —————————————
  16. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 次に、国際協力事業団法案衆議院送付)を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。山田外務政務次官
  17. 山田久就

    政府委員山田久就君) ただいま議題となりました国際協力事業団法案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案趣旨につきましては、すでに本会議において御説明したとおりでございまして、政府は、開発途上地域等経済及び社会発展に寄与し、国際協力促進に資するため、国際協力事業団を設立して、この事業団開発途上地域に対する技術協力実施及び青年海外協力活動促進に必要な業務開発途上地域等社会開発並びに農林業及び鉱工業開発に必要な資金供給及び技術提供を行なう等の業務並びに中南米地域等への海外移住の円滑な実施に必要な業務を行なわせようとするものであります。  次に、この法案概要を御説明いたしますと、この事業団資本金は、当初資本金としましては、設立に際して政府から出資される四十億円と、この事業団承継される海外技術協力事業団及び海外移住事業団に対する政府出資金等との合計額約二百二十四億円でございますが、このほか政府は、必要があると認めるときは、事業団に追加して出資することができるものとしております。この事業団には、役員として総裁一人、副総裁二人、理事十二人以内及び監事三人以内を置き、また、業務運営に関する重要事項審議するため、総裁諮問機関としまして、四十人以内の委員で構成される運営審議会を置くことといたしております。  この事業団業務といたしましては、第一は、従来、海外技術協力事業団が行なってきました条約その他の国際約束に基づく技術協力実施に必要な業務及び条約その他の国際約束に基づき海外協力活動を志望する青年開発途上地域へ派遣すること等の業務であり、第二は、海外移住事業団が行なってきました移住者援取及び指導その他海外移住の円滑な実施に必要な業務であります。次に第三は、新規業務でありまして、開発途上地域等社会開発並びに農林業及び鉱工業開発に必要な資金供給及び技術提供を行なう等の業務であります。この新規業務特徴について申し上げますと、第一の特徴といたしましては、この事業団は、日本輸出入銀行及び海外経済協力基金から資金供給を受けることが困難な事業につきまして円滑な資金供給を確保しようとするもので、具体的には各種開発事業に付随して必要となる関連施設であって周辺地域開発に資するものの整備ないし試験的事業であって技術の改良または開発一体として行なわれなければその達成が困難であると認められるもの等を対象としております。第二の特徴といたしましては、このような資金供給を受ける事業等に必要な技術提供をあわせて行なうこととしており、資金技術一体的な結びつきをはかることとしたことであります。第三の特徴といたしましては、条約その他の国際約束に基づきまして開発途上地域政府等からの委託を受けて事業団みずからがこれらの地域開発に資する施設等整備事業を行なうこととした点であります。さらに、第四の業務といたしまして、ただいま申し上げました技術協力業務社会開発農林業及び鉱工業開発業務に従事する技術者の充実をはかるため、これら技術者の養成及び確保の事業を行なうこととしております。  このほか、事業団事業年度事業計画等の認可、財務諸表、区分経理、借入金及び債券、余裕金の運用、罰則等について規定いたしております。  なお、附則におきましては、海外技術協力事業団及び海外移住事業団の解散及びこれに伴う権利義務承継並びに海外貿易開発協会からの一部権利義務承継等について規定しております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  18. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 引き続き本案補足説明を聴取いたします。御巫経済協力局長
  19. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 国際協力事業団法案提案理由につき、補足して御説明申し上げます。  第一に、わが国国際協力ないし経済協力実施体制の中において国際協力事業団がいかなる役割りを果たすべきものかについて御説明いたします。  この事業団は、昭和三十七年に設立されました技術協力の機構である海外技術協力事業団と、昭和三十八年に設立され、移住事業を通じて国際協力に貢献している海外移住事業団とを統合し、これら事業団からの業務を引き継ぐほか、開発途上地域等社会開発並びに農林業及び鉱工業開発協力するための新規業務を行なうことを目的としており、このことは、これらの業務が相互に関連の深いものであり、これらを一つ特殊法人のもとで一体的に実施することが、政府国際協力に関する事業効率を一そう高め、かつ、その質量両面における改善に資するとの考えに基づいているものであります。  このように、この事業団は、国際協力にかかるすべての事業を行なうものではなく、たとえば、国際交流基金海外経済協力基金日本輸出入銀行等の諸機関は、従来どおり国際協力に役立つそれぞれの分野での事業を続けていくこととなっております。すなわち、この事業団は、従来の海外技術協力事業団及び海外移住事業団業務を行なうほか、一つ事業体としての適当な規模という点をも考慮しつつ、現行わが国経済技術協力体制では十分に行ない得なかったところを補強することをねらいとし設立されるものであります。  たとえば、この事業団新規資金供給業務についてやや具体的に述べますと、この事業団は、わが国開発途上地域等における社会開発並びに農林業及び鉱工業開発に対する協力を進めていく上で、これらの開発にかかる事業のリスク、収益性技術的問題その他の観点から、日本輸出入銀行あるいは海外経済協力基金等をもっては資金供給を期待しがたい事業に対し、技術提供有機的関連をはかりつつ資金の円滑な供給を可能にするものであり、基本的に日本輸出入銀行あるいは海外経済協力基金事業を補完し、かつ、これら金融機関と協調して投融資業務等を行なうものであります。  第二に、青年海外協力活動に関する業務がこの事業団の中でいかに位置づけられているかにつき御説明いたします。青年海外協力活動は、従来、海外技術協力事業団における政府ベースの技・術協力の中の人員の派遣の一形態として行なわれていたものでありますが、この協力活動は、派遣される青年技術をもって協力するという意味技術協力役割りを果たすものであると同時に、開発途上地域において住民福祉向上等のために住民一体となって奉仕活動を行ないたいというわが国青年の純粋な意思に基づく活動であるとの性格をも有しております。この事業団法におきましては、かかる協力活動の独特の性格に着目して、一つ独立業務として特記したものであります。  第三に、この事業団の行なう海外移住業務について御説明いたします。本来、海外移住とは、わが国から他国への移住を志す人々がその幸福追求の手段の一つとして、みずからの意思により行なう行為であります。政府としては、かかる海外移住が十分円滑に実施され得るよう側面的な援助を行なうことは、その責務であると考え、これまで海外移住事業団その他の方法で実施してきた次第であります。しかしながら、このような移住者に対する援助は、これらの移住者が直接または間接に移住地及びその周辺をも含めた地域全体の経済及び社会発展に寄与しているという点にも着目して行なうことが適当であると考えられ、この意味において、海外移住事業は、全体として国際協力の重要な役割りを果たしているものということができます。したがいまして、従来独立した事業団により実施してまいりましたこの事業をも本事業団業務範囲に加えたのでありまして、このことにより、今後ますますわが国移住事業発展が期待されるところであります。  次に、この事業団内閣法の一部を改正する法律案の形で政府が別途提案しております国務大臣一名の増員の問題との関連につきまして御説明いたします。両法案は、いずれも、わが国国際協力ないし経済協力強化推進をはかることをねらいとしているという点において共通の目的を持っておりますが、新設される国務大臣は、いわゆる無任所国務大臣であり、わが国経済協力積極的推進をはかる等のために増設されるものであります。他方、この事業団監督等は、法文の上で明らかにされているとおりであり、おのおのの主務大臣でありますから、この増設される国務大臣は、この事業団実施業務を監督するというような意味では直接には関係がありません。この無任所国務大臣に期待される役割りは、わが国経済協力のために実施される特定の大型案件などを積極的に推進することにあり、この目的のために関係諸官庁、あるいは、この事業団をも含む関係実施機関による実施業務が総合的に円滑に行なわれるよう支援し、あるいは、その実施促進を要請するところにあるのであります。  最後に、この事業団主務大臣意味について一言付け加えて御説明いたします。この事業団は、外務大臣主務大臣としておりますが、事業団新規事業のうち、農林業開発に関する事項につきましては、外務大臣農林大臣との共管鉱工業開発に関する事項につきましては外務大臣通商産業大臣との共管ということに定められております。したがいまして、特にこれらの事項については、その業務の円滑かつ効率的実施をはかるため、関係省の間で密接に協議していく所存であります。  以上で補足説明を終わります。     —————————————
  20. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 再び在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案衆議院送付)を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  21. 田英夫

    田英夫君 ただいまの在給法の問題について、まずお伺いしたいのは、この法案のまず第一の問題点は、さきにベトナム民主共和国ドイツ民主共和国との間に外交関係設定されたのに伴いまして、政令で設置していた公館大使館をこの法律規定するという内容でありますが、そこで実は、ベトナムとの間には国交関係が樹立をされたにもかかわらず、いまだにこの法律案規定しようとしている大使館の設置が、政令によって行なおうとしていたものが実際にできないでいるという現実があります。これは、国会でも何度か取り上げられた問題でありますけれども、あらためて、なぜこれが設置できないでいるのか、ただお答え——先にくぎをさしてしまうようでありますけれども、従来のお答えは、物理的にハノイに建物というようなものがない、こういうようなことを言っておられるようでありますけれども、私もハノイを知っておりますが、物理的にそういう状況が絶無とは申しませんけれども、これが理由ということで大使館が置けないということではないと思いますので、それ以外の理由をひとつ御説明いただきたい。
  22. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) 昨年九月二十一日に日本ベトナム民主共和国との間に外交関係を樹立いたしましたけれども、いまだに、大使館の相互設置がまだできておらないというのはたいへん残念に思っております。私ども、一刻も早くハノイに大使館を設置し、また、ベトナム民主共和国側としましても、東京に早く大使館を設置いただくように、いろいろ話し合いを進めておりますけれども、現在の段階において、まだはっきりしためどが立っておりません。その理由につきましても、実はこれは、いま田先生のほうから御指摘ございましたような、受け入れ体制の問題ということも確かに一つの理由であろうとは想像しておりまするけれども、実は、この点につきまして、はっきりこういう理由で大使館の相互設置がまだできないということを御披露するほどの確たる理由はございません。ただ、私ども、ベトナム民主共和国側とは、数回にわたりまして経済協力の問題を含めて非常に誠意を持って話し合いを進めていることは事実でございまして、この問題と並行しまして、大使館の相互開設の問題についても随時先方に注意を促して、早急に設置するということの要請をいたしております。しかし、初めに申しましたとおり、いまだにそのようなめどが立っておらないというのはたいへん残念に思っておりまして、今後も鋭意話し合いを促進しまして、できるだけ早い機会に、相互に大使館を設置したいというふうに考えております。
  23. 田英夫

    田英夫君 いまそうしたベトナム民主共和国側との接触は、ビエンチャン——ラオスに、予定されるハノイ在勤のための方が二人行っておられるそうで、そこを通じてやっておられるのか。あるいは北京なりパリなり、ほかでやっておられるのか。その辺の交渉の状態を伺いたいと思います。
  24. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) 現在、在ラオス大使館がハノイに設置されるべきわがほう大使館の仕事を兼任いたしておりまして、そこに現実にハノイに在勤する予定の者を二人置いております。  それと、日本ベトナム民主共和国側とのいろいろな話し合いは、先生いまお話しのとおり、ビエンチャンにおいて進められております。
  25. 田英夫

    田英夫君 そうしますと、その話し合いの中で、従来、国交樹立が成功いたしました後に、実は伝えられたところによると、ベトナム民主共和国側は、賠償の問題、南ベトナム臨時革命政府の問題、それから在日米軍基地から、日本からのサイゴンへの武器の援助の問題、こういったことを一つの問題として提起をしてきているということがいわれておりますが、この点は事実でしょうか。
  26. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) いま先方と随時話し合いを進めておるおもな内容は、経済協力の問題、それから大使館の相互設置の問題を中心にいたしております。  それからなおGRPの問題、これにつきましては、もちろん先方から提起されたことはございます。しかし、これは先方がその問題を出したということだけでございまして、この問題についてのわがほうの態度は、もう再三国会でも御説明しているとおりでございまして、その問題が日本ベトナム民主共和国との間の特別な問題になっているという事情にはございません。
  27. 田英夫

    田英夫君 さきに、この委員会でも、横浜の卓球大会にGRPの選手団を迎えるということも、一つの、存在を認めるということになるのではないかというような御提案もしたわけでありますけれども、私どもの知る限りでは、賠償の問題や武器援助の問題も含めて、特にGRPの問題についての日本政府の態度を不満にしているということは事実だと思います。そういう中で、日本政府のお考えを——出先の方も鋭意努力をしておられることはよくわかりますけれども、政府の責任者のお立場から、向こう側と、ベトナム民主共和国側と接触をなさる御計画はないかどうか。いま大臣おいでになりませんが、山田政務次官に伺いたいのですが、そうした政治的な接触をはかる時期に来ているのじゃないか。解決のためには、出先の事務的な話も必要でしょうけれども、せっかく国交が樹立できたものが、大使館が設置できないというようなことの中で、戦後復興に日本協力をするという善意の気持ちも、これはなかなか通じない、実現できないというようなことも起こってきておるようでありますので、そういう御計画はないかどうか、伺いたいと思います。
  28. 山田久就

    政府委員山田久就君) ただいまお話しのような点を含めて、実際大使館が設置されれば、一そう能率的に話し合いがいくのじゃないかということを考えて、実はその一日も早からんことを念じてやっているわけでございます。むろん潜在的には、いまお話のあったような点、いろいろあろうかと思いまするけれども、いま申し上げたような方針でやりたいと思っておりまするが、早くそれができて、そういうような話し合いがうまくいくようにということがわれわれの非常に強い希望でございます。
  29. 田英夫

    田英夫君 これはもう御存じと思いますけれども、ここにおられる星野委員や、社会党の、あるいは超党派の衆参両院の皆さんの御努力によって、近くベトナム民主共和国から政治的な代表団が来日をされるということであります。で、かなり高いレベルの人たち——高いといいますか、つまり政治的なレベルとして高いレベルの人たちが予定をされているわけでありますから、大臣クラスの人が団長で来るようであります。そういう機会に、政府として代表団と接触をなさる、これは国交樹立がすでにできている国との問題でありますから何の支障も当然ない。しかも、超党派で来日のお招きをした代表団でありますから、これはぜひそうした機会に、この問題の解決のための機会をつくられるのがたいへんいいのではないかと思いますが、いまそういう御計画があるかどうか、その点もあらためて伺いたい。
  30. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) 私ども、ベトナム民主共和国から議員団が日本に来られるということは、非常に日本と北越との関係発展、好転のためにけっこうなことだと思っております。具体的に、いつ、どこで、大臣がお会いになるというような案まであるわけではございませんけれども、この機会に、大臣及び党の方がお会いできるような、そういうことがあれば、非常にけっこうだと思っております。
  31. 田英夫

    田英夫君 ベトナムの問題について、もう一つは、先ほどもアジア局長が言われた経済問題、経済交流の問題が非常に大きなこれからの問題点になると思いますが、昨年度、四十八年度の補正予算に計上されました北ベトナム向けの援助五十億円、これが実はそのままになっていると思います。南に対しては実際に使用されましたけれども、北に対しては、大使館が置けないというような状況で進展がないこともあると思いますが、そのままになって繰り越されておりますが、これはどういう理由なのか、今後どういう御計画なのか、この機会に承りたいと思います。
  32. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) いま田先生御指摘のとおり、昨年度の補正予算で五十億円まだ使っておらない予算がございまして、これは南越と大体バランスのとれた援助を北越にするという考えに基づきましてとってある金でございます。現在、先ほど申しましたビエンチャンでの話し合いの過程におきまして、この問題を一つの大きな問題といたしまして話し合いを進めておりまして、話し合いがつきますれば、当然五十億円の無償援助というものが北越に対して与えられるということになるわけであります。このことと、ハノイに大使館が設置されるということとは別問題でございまして、設置されなくてもこの問題は進めなければならない、こう思っております。
  33. 田英夫

    田英夫君 これは、その点は確かに大使館の問題とは直接は関係ないと思いますが、今年度、四十九年度予算でも百二十億円ですか、繰り越しを入れて百七十億になるわけですが、インドシナ向けというふうに予算の上ではなっているわけですが、インドシナの中での配分についてはどういうふうになっているか、その点はいかがですか。
  34. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) 四十九年度のインドシナ援助関係経費としまして、いま先生の御指摘のとおり、百二十億円が計上されているわけでございまするけれども、実はこの内訳はきめておりません。今後、インドシナ各国からの援助の要請その他が出そろった段階で、適当な援助の額を各国別に考えるというようになっておりまして、現在の段階で、どこの国に幾らというようなことはまだきめておりません。
  35. 田英夫

    田英夫君 これは、インドシナということになれば、当然南ベトナム、しかもそれはGRPの支配地域も含まれるわけでありますけれども、これはそういう百二十億の中に入ると、国交の問題とは別にしてですね。これは従来、大平外務大臣も、ベトナム援助は全ベトナムを対象とすると繰り返して言っておられるわけですが、そう理解してよろしゅうございますか。
  36. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) その点につきましては、実は昨年度も、国際赤十字のいわゆるインドシナ救援グループ、IOGというものに対しまして十億円出しておりまして、これはインドシナ全域に対する人道上の援助ということになっておりまして、したがって、これをどのように配分するかはもちろん赤十字できめる問題でございまするけれども、われわれの了解では、当然GRP地域住民にも均てんするというふうになっておるわけでございます。そのほか、昨年は国連児童基金、ユニセフに対しましても、百万ドルの拠出を行ないまして、これも地域を指定しておりませんので、GRPが当然援助の対象に含まれております。  以上でございます。
  37. 田英夫

    田英夫君 これは、政務次官も、ぜひひとつベトナム民主共和国との関係は、せっかく国交樹立ということに踏み切られました中で、その後、大使館の設置あるいは経済援助という問題について進展がないと、しかも今度来る代表団が実情を詳しく話されると思いますけれども、まさにいまこそベトナム民主共和国の側からすれば、あるいはGRPの地域を含めた南も含めて、戦後復興ということに非常にいま経済的な援助を必要とする、あるいは日本との関係の改善も非常にいい意味で必要だという状況だと思います。ぜひこの点は御推進をいただきたいということをお願いをして、次の問題に入ります。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと関連して。  五十億円が予算化されておりながら、それが実際に北ベトナムに使用されない、消化されない障害といいますか、理由はどこにあるのか、お伺いします。
  39. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) これは通常の無償援助の場合と全く同様でございまして、先方の要請及びその要請の内容等についての具体的な結論がまだ得ておらないと、したがいまして、現在話し合いの過程にございまするところのこの話し合いがうまく進展しまして、無償援助の問題についての先方の要請と、この可能性に対するわがほうの態度がはっきりきまった段階で、初めてこの五十億円の金の使途が明らかになるということでございまして、それ以外に特別の理由はございません。
  40. 田英夫

    田英夫君 いまの基本的な問題について。
  41. 山田久就

    政府委員山田久就君) アジア、ことに東南アジアの方面の平和の維持のためには、何といってもこの相互理解の増進、交流の促進ということが全体として非常に重要な点でございまするので、したがって、いま田委員からお話がございましたように、いい機会というものは十分これを活用して、そういうような目的に資するように努力すべきだと思いますし、まあいままで促進されていないような点も、そういう趣旨を踏まえて、ひとついまのお話しのような点、大いに尽力すべきものだと考えておりまするので、今後ともそのようなふうに尽力いたしたいと思います。
  42. 田英夫

    田英夫君 次の問題は、ポートモレスビー総領事館を置くということですけれども、パプア・ニューギニアとの従来の関係、あるいは現在の関係からいって、わざわざここに置く必要が新たに生じたという理由はちょっと私は見当らないんですが、その点はいかがですか。
  43. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) パプア・ニューギニアは、従前からも日本との経済関係はあったわけでございますけれども、近年、特にわが国の資源を外国に依存するというような度合いが大きくなるにつれまして、パプア・ニューギニアに関します日本の財界、産業界の関心が深まりまして、現に、ポートモレスビーを中心といたしまして、在外邦人の活動も相当な程度に達しまして、オーストラリアの本土からその在留邦人の保護、あるいは通商利益の保護ということを行なうにはだんだんむずかしくなってまいりましたので、設置に踏み切った次第でございます。  以上でございます。
  44. 田英夫

    田英夫君 これは、すでに自治を達成をして、独立に向かっているという状況で、まあ日本との交流が深まるだろうということなのか、すでに、いま鹿取さんのお話しでは、相当交流があるということですが、経済的な交流、総領事館を設置する必要があるほど、日本の企業が出入りをしているというふうに理解をしていいですか。
  45. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 田先生御指摘のとおり、いずれこの地域はオーストラリアから独立して、独立国家になるわけでございますので、その暁には、大使館を設置することをお願いするということになると思いますが、現に、現在の時点におきましても、先ほど申しましたとおり、わが国の企業なり、いろいろな商社なりが、パプア・ニューギニア全域にわたりまして、先方との経済協力なり経済活動に対する寄与なりをしておりますので、私どもとしては、直ちに総領事館を設置する必要があるというふうに判断した次第でございます。
  46. 田英夫

    田英夫君 たいへん次は事務的な問題になりますけれども、今回のこの在給法案の後段の部分は、主として在外公館勤務員の手当の問題になっておりますが、住居手当あるいは研修員の手当、こうしたものの一連のアップを規定しているわけですけれども、ちょっとアップ率を比較を実はしてみると、たとえば住居手当は、昨年度一八%改善されているということですけれども、在勤手当のほうは八・六七%ですか、こういうふうにいろいろ差があるのは一体どういうふうに考えたらいいのか。これは大体現地で通貨の関係とか、物価関係とかいうことになれば同じだろうと思うんですが。
  47. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 在外の基本手当住居手当研修員手当、それぞれにつきまして、アップ率が違うのはいかなる理由に基づくかという御質問であったと理解しておりますけれども、まずそれぞれにつきまして、在外公館からの報告に基づいて、それを公正な額にまあ査定と申しますか、きめたわけでございますが、特に在勤手当につきましては、まず基準となりますワシントンにおける生活費等が基準になるわけでございますので、しかしその場合、ワシントンのわが公館員が体面を維持し、あるいは責任をもって勤務できるにふさわしい額、そしてそのワシントンにおける物価とか生活水準とかを考慮いたしまして、きめた額から本俸を差し引きました額を、在外の基準額といたしたわけでございます。それに対しまして、住居手当あるいは研修員手当は、むしろ実費をそのままなるべく認めたいということで計算いたしましたので、それぞれにつきまして率が違ってきた次第でございます。
  48. 田英夫

    田英夫君 すると、住居手当のアップ率が高いということは、世界的に見て住宅費が上がっていると、まあ簡単に言ってしまえば。そう理解していいわけですか。
  49. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) そう理解をしていただいてけっこうと存じます。
  50. 田英夫

    田英夫君 もう一つは、この住居手当についても円建てですね。つまり、本邦通貨建てというふうにこの法案で書いてます。これを廃止したというのは、まあ為替相場がたいへんここ数年来変動が激しくて、円が強くなったと思ったら、今度は弱くなってきたというようなことが理由なのではないかと思いますけれども、その点はいかがですか。
  51. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 在勤基本手当は円で基準額を定めておるのに対しまして、住居手当が本邦通貨の額ではないのはいかなる理由かという点でございますが、まず第一に、在勤手当は本邦との関連を考えます上におきましても、円建てが適当と考えたわけでございますし、また在勤手当は、必ずしもその在勤地でのみ使うわけではなくて、本邦からいろいろなものを取り寄せる場合もございますし、在勤地以外の第三国から買う場合もございますので、必ずしもその地における通貨とする必要がないと考えた次第でございます。  それに対しまして、住居手当のほうは、これは家賃の額でございますので、家賃の支払い通貨で全部きめればほんとうは適当なわけでございますが、あらゆる通貨を規定することもむずかしい次第でございましたけれども、性質として、やはり家賃の支払い通貨で規定するということで、外貨建てにしたわけでございます。
  52. 田英夫

    田英夫君 いや、まさにそのとおりといいますか、官房長言われたとおりですね、住居手当というのは、それぞれの地域の家賃ですから、当然これは円建てではおかしいんでね、もともと。それぞれの地域の通貨を基準にしなければおかしいと思いますね。で、同時に、かといって地域によってたいへん——たとえば日本のように住宅費が非常に高いところに、かりに外から来ている人、これはたとえばアメリカの外交官が日本に来てアメリカ建ての家賃で計算されたら、これはとてもたまらない。あるいはもっと家賃の安いところから来ればもっとたまらないということであるはずですから、もともとそれぞれの地域の通貨でなけりゃならぬのだと思います。同時にですね、あまり今度はそこに地域によって差があってもおかしいと思いますが、その辺の計算をどういうふうにされるつもりなのか、これから。
  53. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 住居手当を設けましたそもそもの基本的な理由は、館員がそれぞれの地位にふさわしい住居に居住して、住居を利用しながら外交活動を活発にしてもらうということが趣旨でございましたので、一応われわれといたしましては、その地における住宅事情あるいは住宅の価格ということも、もちろんそれが基本ではございますけれども、同時に、それぞれの館員はこの程度の家に入るべきだというような、一つの理想的な住居条件を備えるようにということのまあ希望もいれてつくったわけでございます。したがいまして、場合によりますと、在外公館の館員が、その他において借りられる家が、適当な家がない場合には、やはり国の経費によりまして住宅をつくって、そうしてその館員に貸し与えるというようなことも考えているわけでございます。
  54. 田英夫

    田英夫君 最後に、この在給法と直接関係はないわけですけれども、いまのその在給法の中の諸手当をアップする問題などを含めまして、私どもも最近外務省に対して非常にいろいろ世論の風当たりも強いと思います、その在外公館に勤務しておられる方々の問題についてですね。しかし、それはやはり十分活動できるだけの待遇といいますか、態勢といいますか、そういうものがなければならないと思いますので、それを強化することがむしろたいへん必要なんじゃないだろうか。少ない人員や少ない手当の中でたいへん苦労しておられるという状況が確かにあると思うのです。ですから、この委員会でもたしか問題になったと思いますが、外務省の人員の問題をどういうふうに考えておられるのか。私どもの得た資料でも、各省に比べて非常に少ないのではないか。特にいまこういうふうに多局化をして、しかも、政治体制の違う国とも国交を樹立していこうという方針になっておられる中で、戦前の人員に比べても非常に少ない。一方で行管のほうからは毎年五%削減というような機械的なものがまあきていると思いますね。こういう問題について、外務省のこの人員問題について、基本的にどうお考えなのか、伺いたいと思います。
  55. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 田先生御指摘のとおり、確かに現在の日本外務省の人数は、戦前の水準に比べましても、また、日本と比較し得るような国力のある国と比べましても、また、これは比較がむずかしいわけでございますけれども、ほかの省庁に比較いたしましても、やや少ないということは確かでございます。で、その点につきまして、従来外務省といたしましても、行管なり大蔵省なりにも説明をし、順次、ちょうど昨年あたりからことしにかけまして、漸増と申しますか、人員におきましても、定員の削減を差っ引きました純粋な増加の数におきましても、増加の傾向をやっと示すようになったわけでございますけれども、やはり全体の行管なり大蔵省の方針が基本にございますので、その伸び率は確かに少なかったわけでございます。で、来年度以降の問題といたしましては、先生御指摘の点は非常に重要と考えまして、計画的な人員増加をつくる作業を開始いたしておりますし、行管その他、あるいは外務省に対し非常に理解を示されている筋に対しても、いろいろ御説明し、お願いして、来年度以降飛躍的に外務省の定員の数を充実させる方向で努力しているところでございます。
  56. 田英夫

    田英夫君 終わります。
  57. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 本案に対する質疑は本日はこの程度といたします。     —————————————
  58. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  59. 羽生三七

    羽生三七君 当面の問題を二、三お伺いをいたしたいと思います。  外務大臣は、近くアメリカを訪問されるようでありますが、当然キッシンジャー国務長官、あるいはニクソン大統領にも会われるのではないかと思います。ニクソン政権は目下不安定な条件下にあることは申すまでもありませんが、しかし、そういう事情はあるにしても、国際情勢を話し合われる時期としては当を得ておると思います。私は、内容のいかんはこれは別としまして、時期的には当を得ていると思います。特に、さきに英国の政変があり、さらにフランス、西独、それにカナダ、オーストラリアも総選挙の最中というように、西側の諸国が大きくゆらいでおる際に、国際情勢全般について話し合われることは、それなりの意味があると思いますが、特にどういう問題を中心に、柱としてお話し合いになられようとするのか、この点をまずお伺いをいたしておきます。
  60. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今度お許しを得て、短期日でございますけれども、渡米いたしたいということにいたしましたゆえんのものは、前々から日米協会で講演を依頼されておったわけでございます。私としては、国会がそのころ終わっているだろうというような想定もございましたし、また、前広に会員に知らせなけりゃならぬという先方の都合もございまして、二カ月ほど前に内諾を与えたのでございます。それを実行いたしたいということが主たる目的でございまして、米国政府の首脳と会う、この機会に会うためにもくろんだ渡米ではないわけでございます。日米間におきまして、目下特に首脳の間で話し合わなけりゃならぬという問題は出来していないわけでございます。しかし、そういう問題がないときのつき合いが実は私は大事だと思うんでございまして、たまたまそういう機縁がございまして渡米する機会に、議題を特に設けないで、きわめてフランクに、双方関心がある問題について隔意のない意見の交換をしたらどうかと考えておるわけでございます。  したがって、特定のテーマ、こういう問題をひとつ持ち出してみたいと特にいまそういう気がまえを持っているわけではございません。ただ、いまの国際情勢が、羽生先生も御案内のように、たいへん不安定な状態でございまして、日米間は日米間だけのバイラテラルな関係を調整しているだけでは十分でございませんので、こういう不安定な状況、ばらついた状況でアメリカ政府もいろいろ苦心いたしておると思うのでございますが、そういった問題についてまずアメリカ当局がどういう考えを持っておるのか、どういうアプローチを試みておるのか、まあそのあたりは当然なこととして話題になるのではないかと考えております。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 先ほど申し上げた西側諸国の政治的激動に対してお話し合いが及ぶこともあり得ると思いますが、日本と韓国との——日本と韓国とに限りません、アメリカと韓国の関係もあるわけですが、韓国問題、あるいはシベリア開発に対するアメリカの参加というような問題、そういう問題にも触れられることはあるでしょうか。
  62. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日韓関係につきましては、実は米韓関係にからむ問題と申しますよりは、私の見るところは、やはり日韓間固有の問題でございますので、特にこの問題につきまして先方の意向を探る必要は私はないと考えます。なるほど、ことしの秋には国連総会で朝鮮問題が取り上げられることでございましょうけれども、これには、まず、事務レベルで十分の検討をしなければならぬ問題でございまして、いきなりハイハンドに首脳間で話し合うにはまだ熟していないと考えております。それからシベリア開発の問題でございますが、これはまた別な意味で、民間レベルでいま話し合いが行なわれておる段階でございます。なるほど通商法案関連で、政府やコングレスとの関係がないとはいえないわけでございますけれども、これはアメリカのエグジムバンクの信用を使う限りにおいて問題になってくるわけでございまして、民間プロパーのファンドを使うというケースもあり得るわけでございまして、何よりも民間レベルで十分問題を消化していかなければならない、そういう段階でございまして、政府レベルで取り上げるまで、そういう熟成した問題であるというようには私はまだ考えていないわけでございます。  しかし、そういう問題でございましても、話題になれば先方の意向は伺うし、お尋ねいただければ私どもも、私どもが考えておるところを申し上げることにやぶさかでございませんけれども、特に持ち出すというつもりは私のほうは特段ございません。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 大臣の訪米問題はこの程度にしまして、次にいまの質問の中でちょっと触れました韓国の問題でありますが、去る九日韓国当局が、ソウル在留の日本人に対するテロのおそれがあると発表して、しかもそれが北側のそそのかしによるテロという含みをもって日本側に警告したようであります。これについて朝鮮民主主義人民共和国側は、これは全くのでっち上げで政治的謀略である、朝鮮人民と日本人民との間の友好関係にくさびを打ち込まんとするものであると、こう報道しておるわけであります。これを、外務省当局としてはこの問題をどう理解されておるのか。何かこれは先日の新聞で見ると韓国に行く旅行者の自粛を要請したとも聞いておるんですが、具体的にはどういうことなのか、お伺いをいたします。
  64. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) ただいま羽生先生の御指摘の問題は、実は韓国政府当局のほうから大使館を通じまして、情報によればということで、そういう内報があったわけでございます。私どもその情報のソースについてとやかくせんさくする立場にもございませんし、また、それを確認する方法もございませんので、とにかく在留の邦人、大使館を含めまして邦人一般に危害が及ぶという可能性があれば、何としてもこれを事前に、未然に防止するという責任がございますので、そういう観点から、ソウルにおきまして必要な措置を講じたわけでございます。また、一般日本人の韓国への旅行そのものにつきましては、国会等でもいろいろ御注意がございまして、現在韓国がとっておる緊急措置等について十分に旅行者自体が認識をした上で旅行するようにしなければいけないというサゼスチョンもございましたし、また、ただいまの問題もございましたので、そういう両方の問題を含めまして、一般旅者行に対する注意喚起ということを、旅行社あるいは地方公共団体を通じましてお知らせした次第でございます。
  65. 羽生三七

    羽生三七君 日本人の韓国における行動に自粛を求めることは、私はいいと思います。いわゆるひんしゅくを買うような旅行者に、日本人らしい行動をするように自粛を求めるのはいいと思いますが、それに関連して、テロ行為があたかも北鮮側のそそのかしによって行なわれるようにということで、その自粛を求めるというのは、少し行き過ぎではないんですか、これ。まだ問題が明白でないのに、片っ方を敵国といいますか、何か特別の謀略が、陰謀があるような形で日本人に自粛を求めるということは、私非常に行き過ぎのように思うんですが、これいかがですか。
  66. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) 私どもの問題意識はそういうことではなくて、とにかく韓国政府が正式に言ってきたことでございますので、その事の真偽は別としまして、とにかく日本人に何か危害が及ぶ可能性があるということである以上は、これをどうしても未然に防止しなきゃいけないという観点から、一般の韓国におります在留邦人に注意を喚起したというのが真相でございまして、そのソース自体について、いま先生の御指摘のような認識をもって、一般邦人に周知せしめたというわけではございません。
  67. 羽生三七

    羽生三七君 この機会に、簡単に一、二、この韓国の政情と関連をして、基本的な問題についてお伺いしたいことがあるんですが、それは、日本が戦後処理の一環として、朝鮮との国交問題で韓国を先に承認したということ、この基本的な理由は一体何なのか、つまり朝鮮問題における戦後処理の一環として国交を回復する場合に、現実にはあそこに二つの朝鮮があるわけですが、その南を選択したという場合の基本的な理由はどこにあるのか、どう理由づけてきたものであったのか、この点をお伺いしたいと思います。
  68. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その問題は、私が前に外務省をおあずかりしておったときの問題であったわけでございます。   〔委員長退席、理事八木一郎君着席〕 それで、私どもの考え方は、いまおっしゃるように、朝鮮半島全体と、まとまった関係を持つということは望ましいことは申すまでもないわけでございます。けれども、現実に半島がああいう姿に分かれておるし、それがいつどういう条件が整えば統一ができるという展望もさだかでないという段階におきまして、現実のアプローチといたしまして、南側と国交を持つということも、いろんな批判、評価がありましょうけれども、実際的な道行きではなかろうかと思ったわけでございます。当時、御案内のように、李ラインが引かれて、漁業上のトラブルが毎日絶えませんし、何とかそこに、朝鮮海峡にも平和をもたらさなければならぬし、あれやこれや考えまして、これはまあ最善の道ではない、最善の道がとれない場合には次善の策を考えるということだろうという選択を行なったわけでございます。ちょうど日本が全面講和か多数講和かでいろいろ選択に苦吟いたしましたように、実際的な道をとったと御理解をいただきたいと思います。
  69. 羽生三七

    羽生三七君 そういう現実に即してとった選択ということもあるでありましょうが、同時に、私は、やはり韓国が反共自由国家群に属しておったということ、もちろん資本主義的な意味での自由ですが、そういう意味の自由主義国家群であったということが私は一つの韓国を選択した理由であったと思うんです。そうでなければ、北もあったわけですから、そういうことであったと思うんですね。ところが、その韓国が今日どういう体制にあるのか、はたして自由主義国家という自由主義体制の名に値するのかどうかという、これ非常に問題だと思いますね。特に韓国人民のあらゆる政治的自由を弾圧して、それから、さきに日本国内で起こった金大中氏事件、これに対してもまだ明確な回答が出ておらない、引き続いて日本の学生の逮捕問題というものもある。そういうように、これら一連の事実を見れば、少なくとも韓国が、日本が最初考えておったような自由体制の国ではないということを結論しても行き過ぎではないと思うんですが、現在の韓国をどのようにお考えになっておるか、お伺いをいたします。
  70. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは国会でたびたび聞かれる御質問でございまして、私の立場で国交を持っておる国の政治体制というふうなものに採点をするということはたいへんむずかしいことでございますので、ごかんべんいただきたいと思うんでございます。ただ、どの国も、世界全体、主権国家それぞれ非常に個性的な道行きをとっておりまして、いろんなカテゴリーになかなか入れにくい状態であるわけでございまして、それぞれの国から見ると、それぞれの国にいろいろな理由がおありのことと思うわけでございまして、韓国の場合も、韓国の側に立てばいろんな解明が行なわれると思うんでございましょうけれども、私の立場では、ちょっとそれに対して、どなたにもまあお返事申し上げていないので、羽生先生だけにお答えするというわけにまいりませんので、(笑声)お許しをいただきたいと思います。
  71. 羽生三七

    羽生三七君 私は、韓国と日本、特に事をかまえていいという考えでものを言っておるんではないんです。問題は、私の質問そのものが必ずしも韓国に対する内政干渉でもないと私は思っております。   〔理事八木一郎君退席、委員長着席〕 採点をしようとは言いませんが、実際問題として、それは当時の李ライン問題、その他不都合なことが生じておって、韓国との国交を選択しなければならなかったという、そういう現実的な事情もあったでしょうが、先ほど申し上げたように、私は、その主たる理由は、やはり北と比べて韓国がいわゆる自由主義、いわゆる自由主義陣営に属する国であったと、これが選択の主たる理由であったと思うのですね。それがいまは、率直に申し上げて、自由主義とはおよそ似ても似つかない国家体制になっておる。しかも、いま申し上げましたように、日本の国内において、土足で座敷へ上がったようなやり方をして、それについても明確な決着がついておらない。また、日本が韓国に賠償以外の経済援助協力を与えて、いろいろ国民から疑惑も出るような援助協力までしておるわけですが、そういう援助が実は独裁政治体制の強化につながるようなことになっておる。こういう事実を見た場合に、日本は、つまり韓国の政治体制を採点するんではなしに、日本自身は韓国にいかなる対韓姿勢をもって臨むべきかという日本自身の問題だと私は思うのです。私は、韓国の政治体制に点数をつけてもらおうとは思わないのです。日本は韓国にいかなる姿勢をもって臨むべきであるかという、この点から私は申し上げておるので、そういう意味で言うならば、私は、これは外務省としても最近相当にお考えになっておるようでありますけれども、やはり韓国に対してもっとき然たる態度をもって、事をかまえる必要はないけれども、言うべきことははっきり言う、けじめをつけるという、そういう姿勢がいままでよりもっと強く要請されるんではないかと、こう思いますので、この点に関する大臣の御見解を承りたいと思います。
  72. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 韓国自体の内政の干渉ではなくて、日韓関係自体をどのように切り盛りしていくかということは、日本が自主的に主体的にき然としてやらなければならぬじゃないかという御趣旨は、全く私も仰せのとおりだと思うわけでございます。私どもも、そういう考え方で対韓政策に臨んでおるつもりでございます。  で、世上、われわれの対韓政策がなまぬるいじゃないかとか、あるいは向こうの政権との癒着がありはしないかとか、いろいろな批判がなされておりますけれども、私どもはそういうことは考えていないわけでありまするし、そう考えてはならぬと戒めておるわけでございまして、われわれの対韓政策につきましては、仰せのとおり、日本が主体的に分別を出してやらなければいかぬと。その関係は、第三国が日韓関係を見ておりまして、これは、日本の日韓関係の切り盛りのしかたは十分理解できるという筋道のものでなければならぬという境は十分心得てやっておるつもりでございます。現実に、しかしながら、外交関係というのは現実の関係でございまして、神の国の関係じゃございませんから、なかなかいろんな批判が私は起こり得ると思いますし、現にわれわれも批判を受けておることでございます。けれども、少なくとも今日の与えられた条件のもとで、第三国が見ましてもおかしくない、日本のやっていることはよくわかる、当然のことだという筋道だけは踏まえてやっておるつもりでございまするし、今後もその筋道ははずさないつもりでおります。
  73. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、この金大中氏事件や、逮捕されておる学生等について、もっとやはり言うべきことは今後さらに引き続いて言うと、そう理解してよろしいですか。
  74. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) さようでございます。
  75. 羽生三七

    羽生三七君 この問題の最後に、朝鮮民主主義人民共和国の問題も含めて、朝鮮全体を新しい角度から見直すべき時期にきているんではないかという気がするんです。特に北鮮が、正規の国連加盟ではないにしても、オブザーバーでという資格にしても、とにかく国連の場で発言の機会を得てきておる今日、私は、あらためてこの朝鮮問題全体を再検討すべき時期にきておるんではないか。  それともう一つは、先日、日中航空協定の際の質問でもちょっと触れましたが、たとえば日米共同声明の中における台湾条項の問題と同じように、日米共同声明の中における韓国条項についても、いつまでもこういうものを存置しておく、つまり存置することがきわめて不自然なような条件になっているんではないかと思いますが、これらの問題を含めて、朝鮮問題全体についての外相の御見解を承りたいと思います。
  76. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、ここ二、三年、朝鮮問題は相当国際政治的には私は前進してきたというように感じます。南北それぞれの問題というよりは、朝鮮半島全体について、両当事者ばかりでなく、世界全体として、これに少なくとも、初歩的であるけれどもアプローチを考え出してきているということは、確かに仰せのようにちょっと前進が見られつつあるということにおいては、全く私も同感でございます。ただ、その場合は、だからすぐその成果が顕著に出るというようにはなかなか楽観できないんじゃないかと。相当の時間と過程を経なければならぬのじゃないかとは思いますけれども、少なくとも大きな前進を見つつあるのではないかという感じはいたします。  それから第二の点でございますけれども、台湾条項、韓国条項の問題でございますが、私は、安保条約というようなものが非常に緊張した中において維持されておる。あるいは場合によってはそれが火をふいておるというような状況にございますならば、こんなゆうちょうな議論もできないのじゃないかと思うのでございますけれども、朝鮮半島におきましても、台湾海峡におきましても、私ども火をふく事態というようなものを一応予想しなくてもいいといいますか、そういうことが予想できるような事態になったことを喜んでおるわけでございます。そしていま羽生さんが提起された問題を、とにかく周辺の国々が非常に神経質にいま取り上げるという事態になっていないことも、そういう環境が比較的落ちついてきておる証左ではないかと思うのであります。論理的に詰めてまいりますならば、いろいろな問題が当然提起されるように、あることはわれわれも承知いたしておるわけでございますが、現実の国際政治の問題といたしまして、ともかく事がないというのがめでたいのだ、何とか事がない状態をきょうもあしたも、できればあさっても続けていくために汗をかこうじゃないかというような状態にいまあることを、むしろわれわれは喜んでおるわけでございます。それだからといって、羽目をはずしてはいけないわけでございますので、私どもとしては、安保条約は安保条約として一つのワク組みはきちんと守っていくという態度を貫きながら、それが新たな緊張を呼ぶことのないように、外交的なくふうをこれに配してやってまいるということを積み重ねていこう、そう考えておるわけでございます。  論理的な問題がないなんて強弁するつもりは一つもございませんけれども、そういう新たな緊張を呼ぶような事態を起こさないように努力することによって、そういう問題が先鋭な問題にならないようにすることこそがわれわれの任務ではないかと、そう考えております。
  77. 田英夫

    田英夫君 関連で一言お伺いしたいのですが、いま大臣お答えになりました中で、特に、最後の朝鮮問題については、新たな緊張をつくり出さないように努力するのが日本政府としての任務だと思うというお答えは、たいへん意義の深いことだと思います。といいますのは、先週、実は私朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮へ行きまして、朝鮮側の外交の責任者といろいろ話し合ったのであります。そういう中で、いまいわゆる北朝鮮が非常に重視をしておりますのが、一昨年七月四日の南北統一についての共同声明の延長線上で、それを現実の事態に当てはめていかに目的を達成していくか。つまり、南北統一ということを、平和統一を達成するかということであるわけで、その点は、いま大臣の言われました新しい緊張をつくり出してはならないということと全く一致していると思うのです。  そういう意味から、つい最近の北朝鮮側の態度表明としては、去る三月四日にアルジェリアの代表団に対して金日成首席が三つの点をあげて南北統一についての当面の基本的な態度を示しているわけです。これは外務省も御存じだと思いますが、一つは、南北の対話は引き続き続けなければならない。二番目に、いわゆる朴政権が言っている不可侵条約ということではなくて、朝鮮戦争の結果を和平協定にアメリカとの間は切りかえ、南北の間は平和協定に切りかえていかなければならないということです。三番目に、その南北の間で実際の和平を進めるために、各政党、社会団体、各界人種を網羅した大民族協商会議を開くべきである、こういう三つの点をあげているわけであります。さらにそのあとで三月二十五日に、その線に沿ってアメリカ議会に対して書簡を送って、アメリカとの間に和平協定を結びたい、そして国連軍の名前のついた南朝鮮にいるアメリカ軍が撤退すべきである、こういう線を打ち出していることは御存じのとおりであります。  そこで、いまの大臣の朝鮮問題に対する基本的なお考えからすれば、少なくとも韓国にいるアメリカ軍、しかもそれは、米韓の間で協定を結んで駐留をしているのならば、これはある意味では日本政府が口を差しはさむ余地はないかと思いますけれども、国連軍という名前がついている以上は、国連のメンバーである日本として、これに対しては当然一つの態度をきめなければいけない。北朝鮮側の対米呼びかけという問題について、日本政府として態度をきめなければならない。北朝鮮側は、この三月二十五日の対米呼びかけの線を世界的に大きく広げて、ことしの秋の国連総会に臨もう、こういうのが基本的な態度のように受け取れます。  そこで伺いたいのですが、この北朝鮮側の対米呼びかけ、つまり朝鮮戦争を完全に終結するための北朝鮮とアメリカとの間の和平協定を結ぼうではないか、そして韓国から国連軍の帽子をかぶったアメリカ軍は撤退すべきである、この態度をどういうふうにお考えになるか。念のために申し上げると、北朝鮮側の外交首脳は、国連軍の帽子をとっても、アメリカ軍の帽子をかぶってそのまま南に居残るということに結果的になってもいいのかということを質問したところが、これに対しては、アメリカと韓国の間でそういう協定を結んで、アメリカ軍として居残るということは十分あり得るということを知っている、しかし、国連軍の帽子をとるということは一つの進歩である、こういう言い方をしているわけであります。となると、新たな緊張をつくり出してはならないだけではなくて、すでに南に駐留をしているという、国連軍の名において駐留をしているという米軍を、少なくとも国連軍という帽子をとらせるということは確かに一歩前進であることは間違いない。そういう問題を含めて、この北朝鮮側の態度をどういうふうにお考えになるか、その点をお伺いいたします。
  78. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) 北朝鮮側の対米平和協定提案は、現在の朝鮮戦争後の休戦協定の仕組みにかわる提案として出されたものというふうにわれわれ了解いたしております。この休戦協定にかわる何らかの仕組みを提案しないことには、国連軍をいきなり解体するといいましてもできない相談でございますし、そういう観点から、北朝鮮側はこのような提案をしたものというふうに思っておりますが、本来この休戦協定と、それからそれの結果として国連軍の役割りというものが、国連安保理事会の決議以来、国連におきまして認められておりまするけれども、やはり、この現在の休戦協定の仕組みを新しい平和協定によって取りかえるということにつきましては、私どもとしましては、国連の安保理事会における協議、討議を経た上でなければできない相談ではないかというふうに思っております。  それから、もう一つ問題点といたしましては、北朝鮮側は、ただいま先生御指摘のとおり、アメリカの議会に対してこの提案をしておるわけでございまして、米国政府としましても、私どもいろいろ意見を伺っておりますが、あまりこれを真剣に取り上げておらないという感じでございまして、実際にこの平和協定をもしほんとうに行なうと、協議するということになりますると、韓国との関係も当然考えなければならない、にもかかわらず、韓国に対しては何らこのような提案に対して通報もされておらないということでございまして、米国政府としては、一応北朝鮮側のそういう提案があることは承知いたしておりまするけれども、これをまともに取り上げるという態度ではないように承っております。日本としまして、韓国側及び北朝鮮側からいろいろな相互に提案が出ていることはよく承知いたしておりますけれども、現状におきましては、北朝鮮側のこの対米平和協定提案というものについては、これ以上の進展はあまり期待されないのではないかというふうに見ております。
  79. 羽生三七

    羽生三七君 最後に、このVOA問題についてお聞きしたいと思いますが、去る七日と八日にこのVOA沖繩中継局問題について、日米協議が行なわれたようでありますが、この問題は沖繩返還協定の際、相当大きな問題になったことは御承知のとおりであります。あの場合、撤去を要求する日本側と、存続を主張する米側とが対立して、その結果として復帰から五年間、その存続を認めて復帰から二年後にこの施設の将来の運営について日米間で協議に入るようにきめたものであります。あの場合の論議は、五年後には当然撤去される含みとした妥協であると私たちは理解をしておったのでありますが、さきの七日、八日の日米協議において、日本側は基本的にはどういう方針でアメリカと話し合いをなさったのか、まず最初にこの点をお伺いいたします。
  80. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 沖繩返還協定の第八条に、VOAの取り扱いに関する規定がありますのは、ただいま御指摘がありましたとおりでございます。この問題につきまして、協定第八条の規定に基づきまして、五月七日、八日と二日間、米側とVOA中継局の将来の運営についての協議を行なったわけでございます。なお、これに先立ちまして、三月二十八日に日米間でこの問題についての予備的な話し合いを行ないました。その際、日本側からは、かねて国会等で政府が御説明いたしておりますように、この協定規定に従いまして、五年の期間が過ぎた後においては、沖繩における中継局の運営は停止される。撤去になるのか、移転になるのか、それは米側の問題として、いずれにしましても、その段階で沖繩における運営はおしまいになるというのが日本側の了解である。したがって、その立場に立って協定八条による協議を行なうということを伝えまして、米側はそれを踏まえまして七日、八日の会議に臨んだということがいえるわけでございます。  七日、八日の協議におきまして、米側はVOAの放送の内容というものはニュースなどを主体とするもので、教育的な、あるいは文化的なもので、挑発的な要素は全くありません。したがいまして、米側の立場からいえば、VOAの放送は意義のあるものだというふうに考えております。もう一ついうならば、VOAの放送が向けられております国々からは、VOAの放送について米側は特別の異議に接しておらないということも申し述べておったわけでございます。これに対しまして、日本側は、先ほど申し上げましたように、VOAの放送というものは、協定第八条の規定に従って、なるべくすみやかに、おそくとも一九五五年の五月までには終了すべきものであるという基本的な立場を繰り返し述べたわけでございます。したがいまして、米側は協議が終わりました段階におきまして、米側としては、米側の考え方は伝えたけれども、日本側の基本的な立場というものは十分本国政府に報告いたしますということを約し、今後とも両国間で協議を続けていくということについて合意をした上で七日、八日の協議を終えた、こういう状況でございます。
  81. 羽生三七

    羽生三七君 アメリカ側がこの放送を、教育とかあるいは文化とかいう面のニュースを中心としたもので、差しつかえないのではないかといっておるようでありますが、これは実際問題として、これが当時沖繩返還協定の際に問題になったのは、この放送が中国大陸や朝鮮半島を対象としたものであるということは、もう各方面一致したこれは見解であったわけであります。しかも、その後情勢が大きく変化をして、たとえば日中国交回復に続いて、きょうも日中航空協定が本委員会において成立をした、そういうことにもなっているし、先ほども触れましたように、この朝鮮民主主義人民共和国も今日ではオブザーバーの資格であれ、国連で発言の場を得ている、そういう情勢になってきているわけであります。そういう意味で、日本を取り巻くアジア情勢が大きく変化している今日、このVOAのような施設を沖繩に存続させなければならない理由は毛頭ないと思います。いま当面教育的、文化的ニュースを中心と言いましても、何か問題が起こったときにどのような放送に転化するかは保証の限りでない。また、それはあり得るわけであります。そうでなければ、そんなことでアメリカがあくまでこれを沖繩に存続することを固執するという理由はないと思います。何らかのやはり将来にわたっての含みというものを持って主張しているのではないか。単なる教育的、文化的な問題なら、何も沖繩に置かなくても、アメリカがどういうところからでも自由におやりになったらいいわけで、特に日本沖繩にこれを存続させなければならない理由は私は毛頭ないと思います。もしアメリカがこれの存続を強く要求するとすれば、一体その主たる理由は他に問題がないからというだけなのか。それだけのことなら沖繩返還協定の際の話し合いに基づいてすみやかに撤去するのが当然であるし、また日本がそれを堂々と私は要求すべきであると思います。さらに、引き続いて日本はこれの撤去を強く要求すべきであると思いますが、その間の事情をもう少し御説明いただきたい。
  82. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) アメリカ側がVOAの放送というものの意義を、先ほど御説明申し上げましたようにとらえているということは、会議でも米側が言ったところでございますが、日本側といたしましては、そもそも沖繩返還交渉の際に、沖繩の本土復帰と同時にVOAの撤去ということを要求し、先ほど御指摘ございましたような交渉経緯を踏まえて、五年間はとにかく沖繩でのVOAの運営継続を認めるという合意ができたという事情があるわけでございまして、したがいまして、日本側といたしまして、米側がVOAの放送にいかなる意義を見い出しているか、いかなる意義を与えているかということは別としまして、返還協定規定に従がって適正な措置がなるべくすみやかにとられるべきであるという考え方を持っておりますし、この基本的な考え方に基づきまして、今後とも米側とこの問題について話し合いを進めていくと、こういう考えでおります。
  83. 羽生三七

    羽生三七君 大臣のお考えはいかがですか。
  84. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま大河原君が申しましたとおり、VOAの機能、役割りの評価という問題という観点からでなくて、協定上の約束というものを踏まえて、私ども既定の方針で引き続き折衝を続けていきたいと思っております。
  85. 羽生三七

    羽生三七君 要するに、撤去を求めることで交渉を引き続いて行なうと、こういうことですね。
  86. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) さようでございます。
  87. 羽生三七

    羽生三七君 終わります。
  88. 星野力

    ○星野力君 一九六九年の日米共同声明の中の韓国条項について先ほど大臣の御発言がございました。大臣は、朝鮮の最近の動向からしても、あの条項がいま問題になる事態ではないではないかと、そういう意味の御発言だったと思いますが、裏返して申しますと、現在は朝鮮半島に火がふくような事態はもう予想されないと、がしかし、万一不幸にして緊迫した事態が生じたならば、あの条項がそのときはものをいうと、こういう含みが感ぜられるんです。これはまあ、いままでの御発言からしてもそうではないかと思うんですが、これはこれとして非常に重大な発言だと思いますし、私たちとしては、この韓国条項も台湾条項も、すっぱりこれは公式に廃棄するという処置がとられることを望んでおるわけでありますが、それだけきょうは申し上げまして、きょう私お聞きしたいと思っておりますのは、四月以来ソウルで逮捕、投獄されております早川嘉春、太刀川正樹、この二人の日本人の問題についてでございます。  この二人の日本人は、大統領緊急措置第四号違反という容疑によって逮捕されたわけでありますが、その容疑の内容が具体的にどういうことか、これは外務省として把握しておられると思うんでありますが、ごく簡単でよろしゅうございますから、まず御説明願いたいと思います。
  89. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) 現在までのところ、太刀川、早川両名の容疑事実について、完全に把握しておるという状況にはございません。しかし、これまでのところわかった範囲で御説明申し上げますと、まず太刀川氏につきましては、昨年末から、いわゆる全国民主青年学生総連盟の指導者であるところの李哲氏と接触してきたということです。それから四月一日に、ただいまの総連盟の指導者柳寅泰氏にデモの計画を聞いた。このことは、大使館の館員と当人との最初の面会の時点において本人が確認いたしております。それからさらに、同日ではございませんけれども、この総連盟に対しまして金を与え、活動計画を支援した。また、暴力革命の計画を激励、扇動したというように説明をいたしております。それから四月の三日にデモの現場写真をとり、ビラを携行した。それから五日に当局に通報することなく出国しようとした。この二点につきましては、本人も確認いたしております。なお、韓国政府の説明によりますと、同人は観光ビザで入国しておりまして、学生デモその他の取材活動はいわゆる入管法違反であるということを申しております。  それから早川氏につきましては、やはり同じように、昨年末以来、柳寅泰氏及び李哲氏と数回接触しておるということでございまして、前者につきましては、本人も確認いたしております。それから四月一日、太刀川氏に対しましてデモの情報を伝達し、太刀川氏に柳寅泰を紹介した。これは本人も確認いたしております。それから太刀川氏と同様に、この総連盟に対して金を与え、活動計画を支援した。暴力革命の計画を激励、扇動した。四月三日にデモの現場でビラを太刀川氏に手交した。これは本人も確認いたしております。  以上が現在までの段階におきまして外務省が承知しておる両人の容疑事実でございまして、これだけでは不十分でございますので、再三再四韓国、政府に対しまして、容疑事実をさらに詳しく具体的に説明してもらうよう要請いたしております。
  90. 星野力

    ○星野力君 警察庁の方にお聞きしますが、韓国中央情報部発表によりますと、早川嘉春が日本共産党員であるとか、彼を通じて在日朝鮮総連と日本共産党が結びついた形で韓国内で反政府的学生運動に積極的に関与しておると、こういうことを言っておるんですが、これが事実に反すること、全くのでたらめであるということは明白であります。  そこで、質問でございますが、韓国中央情報部が日本に来て公安調査庁あるいは警察庁とも接触したというふうに聞いておりますが、そういう接触があったかどうか、まず結論だけでよろしゅうございますから。
  91. 星田守

    説明員(星田守君) 韓国中央情報部が来日して調査をしたというふうな事実も聞いておりませんし、それからまた、私ども接触したという事実も全くございません。
  92. 星野力

    ○星野力君 それではこの問題で日本の官憲に照会がございましたか。
  93. 星田守

    説明員(星田守君) 照会もございません。
  94. 星野力

    ○星野力君 先方の政府が、先ほど申しましたように、日本共産党員であるとか、彼らを通じて在日朝鮮総連、日本共産党が韓国内で反政府的学生運動に関与しておるとか、こういうことを発表しておるんでありますから、日本政府としても、当然可能な調査を国内においておやりになったと思うんですが、たとえば早川氏について韓国中央情報部が発表したような事実はあったかどうか、いかがでございますか。
  95. 星田守

    説明員(星田守君) 私どもの立場からは、韓国の動きにつきましては把握いたしておりませんが、経緯を申し上げますと、四月の二十五日の朝、お二人の逮捕を韓国中央情報部が発表いたしまして、当日外務省からお二人の前科などについて照会がございまして、調査いたしましたが、前科もございませんし、それからまた虞犯者として視察対象にもなっておりませんので、その旨、私どものほうから回答いたしました。  以上でございます。
  96. 星野力

    ○星野力君 日本共産党員であるかどうかという点は、お確かめになりましたか。
  97. 星田守

    説明員(星田守君) 日本共産党員であるかどうかについては、調査いたしておりません。
  98. 星野力

    ○星野力君 よろしゅうございます。  東郷外務次官が先日、この問題は韓国政府の国内法に基づく主権行為であるから、法律的には抗議できない問題であるという意味のことを語られたということが報道されておりますが、外務省の正式な見解としてもそうでございますか。
  99. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) この問題は、基本的には韓国のいわゆる国内管轄権の問題であると考えております。日本人が外国に参りました場合に、その国の法令を尊重すべきは当然でございますし、その法令に違反して罪を問われることがあるという場合もこれはあるわけでございますが、それはその国の主権的な国内管轄権の行使だろうと思います。ただ、その場合、日本人であるということから、日本政府として全く無関心であるというわけではございませんで、日本の国民がその外国において不当な待遇を受けたり、あるいは著しい差別を受けるというような事態が出てまいりますれば、それを救済するようにいろいろと措置をするというのは、これはまた当然のことであろうと考えております。
  100. 星野力

    ○星野力君 早川氏が現在どういう思想の持ち主であるかということを私は知りません。しかし、先ほど申し上げました韓国中央情報部の発表がでたらめであるということは、われわれ確実にこれは知っております。また、太刀川氏は、まあ学生といわれておりますけれども、日本の週刊誌のルポライターであり、韓国の問題に非常に深い関心は持っておったそうでありますが、いわゆるこれはノンポリの人であると、学生というよりもむしろジャーナリストとして現地で仕事をしておられたのではないか、韓国で仕事をしておられたのであろうと思うんです。先ほど申されました学生総連盟との接触にしましても、デモの計画を聞いたということ、デモの写真をとったということ、これはジャーナリストとしての仕事の範囲を出ておらぬわけでありますし、また、金を出したといいますけれど、その金額にしましても、日本の金にして一万円程度のものといわれておりますが、その程度のことは、資料や情報の提供、取材した場合の謝礼としてこれは常識的になさるべきことでありまして、一万円で韓国政府幾らぐらついておったって、これは転覆させることもできませんし、蜂起を組織することもできないわけであります。要するに、KCIAがいっているような容疑は実際には何もなかったのではないか、少なくともそう考える根拠は大いにあると思うんであります。それにもかかわらず、情報によりますと、日本共産党、総連、朝鮮民主主義人民共和国と韓国内の学生運動を結びつける中心人物として、この人々が事件の元凶にでっち上げられる危険さえあるといわれております。実際には何もやっておらない者が、でっち上げで逮捕され、軍事裁判にかけられ、重罪を宣告されるようなことになって、それでも法律的に抗議できない問題といったのでは、日本政府の責任、日本国民に対する責任はどうなるかという問題が当然起きてくると思うんですが、その点はいかがでございますか。
  101. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 現在、私どもが了解しておりまするところでは、逮捕されました日本人の二学生についてのその後の措置、処分というのはまだなされていないということであろうと思います。かりに、たとえば裁判に付せられると、その結果不当な判決を受けて、不当な待遇を受けるというような事態がもしかりに出てまいりますれば、それは当然日本政府としても韓国政府に申し入れその他によって救済するというような措置を、その時点においては考えていくべきことであろうと思います。しかし、あらかじめそういう事態を想定しまして措置を講ずるということは適当ではないと、こういうふうに考えております。
  102. 星野力

    ○星野力君 この早川、太刀川両氏だけの問題ではなくて、韓国へは年に何十万という日本人が日本政府の旅券を持って行っておるわけであります。その日本人の生命身体に対する不当な侵害をどうすることもできないようでは、日本政府としてこれは重大な責任を免れないと思うんであります。しかも、日本政府からの再三の要求にもかかわらず、容疑内容については先ほど程度、あれでは言いがかり程度のことだろうと思うんですが、詳しい容疑内容も伝えてこないし、家族や大使館員との面会も拒否しておると、こういうことは外交上の国際慣行にも反することではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  103. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 自国民が逮捕されて、犯罪の容疑がかけられているという場合に、いかなる容疑によって逮捕されたのかということを照会すること自体は、これは当然のことでありますし、また、接受国側においても、その容疑について相手国側に対して通報するというのは、当然の義務であろうと思います。ただ、犯罪捜査が行なわれます場合に、その捜査の過程におきまして、なかなかその容疑の事実を過早に外へ出すことができないと、あるいは発表することができないということがあり得ることも理解をしなければならないかとは思っております。しかし、容疑の事実が判明しないというようなことは認められないことであろうとも考えております。
  104. 星野力

    ○星野力君 まあ韓国の刑事上の手続がどうなっておるのか、ことにこれは軍事独裁下で、いわば戒厳令下でありますから、そういう点はもう問題にならないのかもしれませんが、すでにもう一カ月以上たっておるわけであります。私は、事の性質からいえば、これは外交関係の断絶にも値する問題であろうと思うんであります。韓国においては、民衆が日本人に対してテロを加えておるのではなくて、権力が日本人旅行者にテロを加えているのであります。私も、民衆のテロとか、北朝鮮がそういうテロを組織しておるなどということは、韓国政権の側の逆宣伝だと思っております。現実にテロを加えておるのは、韓国政府自体であります。で、こういう事態のもとでは、韓国政府のテロから日本人旅行者の生命身体を守るという意味なら、私は韓国への旅行禁止さえもやむを得ないと思うんであります。まして、事態が正しく解決をしない限り、当然一切の経済援助などは停止すべき事態だと、こう考えておりますが、最後に、それでは大臣から、この問題に対して今後どういうふうに対処していかれる方針か、それだけをお聞きして質問を終わります。
  105. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) われわれは、在外邦人に対しまして外交的保護を加えなけりゃならぬ責任があるわけでございます。したがいまして、いま、韓国の法令を犯した容疑をもちまして取り締まりを受けておるということでございますので、仰せのとおり、その容疑事実につきまして詳細に照会をいたしておるわけでございまして、まずそれを掌握しなけりゃならぬと考えております。で、この人たちが不当な取り扱いを受けないようにしなければならぬと考えております。しかし、そういう手続を踏んでおる過程におきましても、人道的な立場から、この人たちの取り扱いについて周到な配慮を求めてまいらにゃいかぬと思いまして、その点につきましては、先方も心得てやっておるということでございます。  一般に、それでは、韓国ばかりでなく、外国に対して、予防的な意味で邦人の海外旅行等につきまして何か措置をするかということでございますが、先ほど御披露申し上げましたように、一応の注意喚起はいたしておるわけでございますが、旅行を禁止する、あるいは制限する、そういったところまでまだ政府として考えていないわけでございまして、日本人の自制した判断と行動に期待をかけておるのがいまのわれわれの立場でございます。
  106. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時十分散会      ——————————