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1974-03-07 第72回国会 参議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月七日(木曜日)    午前十時八分開会     —————————————    委員の異動  三月五日     辞任         補欠選任      稲嶺 一郎君     桧垣徳太郎君  三月六日     辞任         補欠選任      桧垣徳太郎君     稲嶺 一郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         伊藤 五郎君     理 事                 木内 四郎君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 田  英夫君     委 員                 稲嶺 一郎君                 杉原 荒太君                 増原 恵吉君                 山本 利壽君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 渋谷 邦彦君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        法務省入国管理        局長       影井 梅夫君        外務省欧亜局長  大和田 渉君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  松永 信雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        外務省アジア局        外務参事官    中江 要介君        外務省アメリカ        局外務参事官   角谷  清君        外務省情報文化        局文化事業部長  堀  新助君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国ベルギー王国との間の文化協定締結  について承認を求めるの件(内閣提出) ○航空業務に関する日本国ギリシャ王国との間  の協定締結について承認を求めるの件(内閣  提出) ○国際情勢等に関する調査  (中国批林批孔運動及び外交政策に関する  件)  (日中航空協定交渉に関する件)  (アジア卓球選手権大会参加のための未承認国  選手団の入国問題に関する件)  (シベリア資源共同開発問題に関する件)  (バングラデシュに対する経済協力問題等に関  する件)  (インド洋の米軍ジェゴ・ガルシア基地拡張問  題に関する件)     —————————————
  2. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  日本国ベルギー王国との間の文化協定締結について承認を求めるの件  航空業務に関する日本国ギリシャ王国との間の協定締結について承認を求めるの件(いずれも本院先議)  以上両案を便宜一括して議題といたします。  両件につきましては、去る二月十九日の委員会において趣旨説明及び補足説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は御発言を願います。
  3. 田英夫

    田英夫君 最初外務省にお願いをしておきたいんですが、本日のこのベルギーとの文化協定あるいはギリシャとの航空協定、特に文化協定というようなものは、まあ問題がなければ、内容が詳しくわかれば、ここでわざわざ引き延ばしのような意味質疑をするつもりは私のほうは毛頭ありませんので、どうか資料を十分にあらかじめお出しいただきたい。いろいろ御説明を伺いましてたいへん勉強になりましたけれども、できましたら過去のベルギーとの交流の実績とか、まあそういうものなどを含めて、これは文化協定に限りませんが、今後こうした御提案の背景になるような資料をなお十分にお出しいただきたいということをお願いしておきたいと思います。  で、最初問題点として一つ気になりますのでこの文化協定について伺いたいと思いますが、ベルギーのほうから、この協定締結について向こう側から申し入れがあったというふうに聞いておりますが、それが事実かどうか、そしてそれがいつごろなのか、伺いたいと思います。
  4. 堀新助

    説明員(堀新助君) この協定交渉の当初にベルギー側から申し入れがあったことは事実でございます。それは昭和三十六年に向こうのほうから文化協定締結しようではないかという意味意向打診がございました。
  5. 田英夫

    田英夫君 いまお答えのように申し入れがあったのが三十六年ということになりますと、実は非常に古い話なんですが、その後、本日、今回の国会に御提案になるまでの間にたいへん年月がたっているわけですが、その間の交渉経過はどうなのか、内容を拝見すると、別に交渉が難航するような内容はないと思うんですがへその辺の事情をお知らせいただきたいと思うのです。
  6. 堀新助

    説明員(堀新助君) 三十六年の申し入れ打診程度であったわけでございますが、実を申しますと、現在まで十三の文化協定をわが国は外国締結いたしておりますが、そのうち九つまでは三十二年までに締結されたものでございまして、終戦後、平和回復文化国家ということで、当初は外国との文化協定締結にかなり熱心でございましたが、三十二年ごろになりまして、文化協定というものをわざわざつくる必要があるかどうかという疑義が生じてまいりました。と申しますのは、文化協定をつくりましても、特にそれによって新しく予算を要求したり、予算がつくわけでもない。したがいまして、協定がなくても文化交流はやっていけるのじゃないかという疑義が生じまして、三十二年の最初にできました協定を最後に、しばらくどこの国とも協定締結には消極的になっていたという事実がございます。したがいましてベルギーとの間におきましても、ほんとう交渉を開始いたしましたのは、実は昭和四十四年の六月になってからのことでございます。おっしゃるとおり、内容に特に議論をしたり、お互いに困ることがあるわけではございませんが、そのような状況でおそくなったわけでございます。
  7. 田英夫

    田英夫君 たいへんよくわかりましたが、外務大臣に伺いたいのですが、いま文化部長お答えになったとおり、文化協定というものを一体どう考えるかという基本の問題に触れているわけですね。何か両国間の友好を象徴するような場合にしばしば文化協定が結ばれていると、いまはしなくも日中間で、いわゆる実務協定ということが問題になっているわけですけれども航空協定とか貿易に関する協定というようなことはまさに実務であって、非常に具体的でありますけれども、しばしば文化協定というものは友好を象徴するような意味でしかない。確かに予算がつくものでもないし、同時にその協定によって両国間で何らかの行動をとらなきゃならぬというような義務も負うことはほとんどないということになりますと、文化協定というものを一体どう考えるかという、政府としての基本的なお考えをこの際伺っておきたいと思います。
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外交というのは、これまでの経過を見ますと、軍事安全保障、あるいは政治というものが重要な分野を占めてまいっておりまして、その後経済外交といいますか、戦後になりまして、経済外交というものが非常に大きな分野になってまいったわけでございまして、経済軍事が大事であってほかのものが大事でないということでは私はないと思うのでございます。最近考えてみますと、スポーツ、それから学術をはじめといたしまして、文化的な分野仕事もだんだん出てまいりましたばかりでなく、非常に重要性を帯びてまいりまして、行く行くはこの分野があるいは外交の非常に重要な分野になってくるのではないかというように感じられます。時代もだんだんと進んでまいりまして、経済時代というのはもう終わったのじゃないか、いまは宗教時代じゃないかということをいわれるような変化が見られるわけでございまして、したがって、外交分野でも仰せのようにこの分野というものは、これから留学生交換であるとか、あるいは出版物交換であるとかいうようなことが手始めに行なわれておりますけれども、もっと広範な分野においての交流が今後われわれの想像を越えて出てくる可能性を予見しておかなければならないのじゃないか、そういう感じを持っておりますので、外務省といたしましてもそういう問題意識を持ちまして、これからこの分野につきましては、いままでと違った精力を割愛しなければならないのではないか。それからまた一般の国民にもそういうことで御理解をいただき御協力をいただく分野が非常に広がってくるのではないかと、そのように感じておりますので、結論といたしまして、文化外交ということばが許されるならば、こういう文化外交活動というものにひとつ力点を指向していきたいと、そう考えております。
  9. 田英夫

    田英夫君 私も全くいまの外務大臣のお考え賛成でございますが、これからの外交の非常に重要な部分を占めるのじゃないか。で、文化交流は、義務を負うような形はおかしいとは思いますけれども、もっと積極的に考えれば、いろいろ文化協定内容考え得るのじゃないだろうか。ただ何となく交流しましょうというようなうたい文句が並んでいるだけではなくて、もう少し実質的なものを伴ったことが考え得るのじゃないだろうか。たとえばスポーツ交流というようなときに、スポーツ選手出入国の問題とか、あるいは国内での宿泊、旅行というような問題とか、そういうようなものに特別に便宜をはかるというようなことがお互い考えられても、これは世界的に考えられてもいいんじゃないかという気もいたします。あるいはこれはすでにあるかもしれませんが、美術品などの展示に伴って、それが出入国といいますか、持ち込まれ、さらに出ていくというときの税関での取り扱いの問題における特例とか、そういうような点をお考えになっているかどうか、考え得るかどうかですね、その点はいかがですか。
  10. 堀新助

    説明員(堀新助君) いま田先生から例示としておあげになりましたようなことは、内容が多岐にわたりますので、いままで各国文化協定においてもそこまで詳しく書いておる例はございません。ただ、ベルギーとの文化協定にも規定がございますが、混合委員会というものをつくりまして、そこで今後一年間、できれば二年間のお互い交流計画をつくる。またそのときに国によりましては、こちらは派遣費を持つけれども、そちらの国で滞在費を持ってくれないかというような話し合いもいたします。そういうことでございますので、文化協定はやはり基本になる協定でございますので、いろんなこまかいことまではやはり書くのは非常に困難かと存じますが、あとで実際的に話し合いをして問題を解決しておる状況でございます。
  11. 田英夫

    田英夫君 この点をひとつ外務省も積極的にお進めになる姿勢をいろいろお考えいただきたいという気が非常にいたします。  もう一つ文化交流という点での問題点ですけれども、これは大平外務大臣、この前田中総理東南アジアを回られて、たいへん苦い経験をされたわけですけれども、そんな問題とも関連をして考えさせられますのは、従来日本文化協定を結んでいる国というのが、やはり欧米先進国と言われているところが中心ではないかというふうに思いますが、若干私のほうも調べましたけれども文化部長から過去にすでに結ばれている国の内容を概略でけっこうですがお答えいただきたいと思います。
  12. 堀新助

    説明員(堀新助君) つくりました順番に申し上げます。古いほうから順番に申し上げます。フランス、イタリー、タイ国、メキシコ、インド、エジプト、ドイツ、パキスタン、イラン、イギリス、ブラジル、ユーゴスラビア、アフガニスタン、以上十三でございます。
  13. 田英夫

    田英夫君 やや、私の申し上げた感じがするわけなんで、やはり確かに欧米から学ぶということもあるかもしれません、文化が進んでいるということもあるかもしれません。しかし、東南アジア国々にも古い歴史のある国がたくさんあるわけですし、事実、現在日本文化協定を結びたいという国が十二カ国あるというふうに聞いております。アルゼンチンとかウルグアイ、クウェート、ルーマニア、中央アフリカ、アルジェリア、ギリシア、イラク、その他トルコ、ボリビア、カメルーン、コロンビア、こう名前を調べてみますといわゆる新しくこれから世界の中で活動しようという国々だという気がするわけですね。こういう国とのつき合いということこそ非常に重要じゃないか、先ほどの文化協定基本的に重要視しようというお考え大臣も述べられたわけです。こういう国がすでに協定を申し込んでいるなら、内容をそんなにたいへんなことに考えていないということであれば、ベルギーと同じようなものでずっと全部結んでいるということであれば、こういうところともとにかく結ぶということは非常にいいことではないかと思いますが、そういうお考えはありませんか。
  14. 堀新助

    説明員(堀新助君) ただいま十三の日本が結びました文化協定を申し上げましたが、ちょっと念のために申し上げますと、いわゆる先進国というのはヨーロッパの四つだけでございまして、あと九つは、アジアそれからラテンアメリカの二つ、中近東の二つ、それからアフリカ一カ国となっておりますので、必ずしも先進国偏重ではないと存じますのでその点御理解いただきたいと思います。なお、例示いただきました主として中南米の諸国からは御指摘のとおり文化協定締結申し入れがございますので、逐次協定交渉していきたいと考えております。
  15. 田英夫

    田英夫君 これは日本のほうから申し込みをしているという国は過去にないんですか。
  16. 堀新助

    説明員(堀新助君) 先ほど御説明申しましたように、いっとき文化協定締結に対する熱意が非常に薄くなりまして、先ほど申しましたように、文化協定をつくらなくてもやっていけるんじゃないかという議論、それから今度は逆に文化協定をつくりますと、相手国はたちまち文化交流が活発化するであろうという希望を抱く、その場合に予算裏づけがないというようなことがございまして、非常に消極的になったわけでございますが、最近におきましては国際交流基金を設立していただきまして、かなりの予算もついておりますので、文化協定をつくったから特に予算の手配をしなければいけないというような事情もなくなりましたからもっと積極化すべきである。かつ、先ほど大臣から言われましたように、文化交流外交のきわめて重要な部門であるという認識が広まってまいりましたので、御審議ベルギー手始めに、その他申し入れの国と締結していくつもりでございますが、いま申しましたような状況で、向こうから申し入れを受けたのにも答えなかったような状況が一時続きましたので、こちらから進んで申し入れたというような例はほとんどないと了解しております。
  17. 田英夫

    田英夫君 どうも大臣、そういうことで文化外交を積極的に進めるというお答えにはならぬと思うんですが、少なくとも十二カ国から、向こうから申し入れられてプロポーズを受けているんですから、日本ももてるわけですからね。ひとつこれは早急に御検討になるほうがいいと思うんですが、中国文化協定を結ぶというようなことは現在お考えになっておりますか。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中国との間は御案内のように、まず実務協定を仕上げたいと、それから平和友好条約締結したいということが当面の仕事になっておりまして、そういったものをまず仕上げてからという手順にいたしておるわけでございまして、文化協定の話につきましてはまだ双方でコンタクトをもっておりませんが、将来は考えなければならぬことは当然だと思います。
  19. 田英夫

    田英夫君 これはもう外務大臣十分お考えと思いますけれども中国の場合の文化協定はひとつ外務省で腰を据えてお考えいただいて、これこそほんとう文化協定だと、従来の協定文をただ中国に当てはめるのではなくて、もう言うまでもなく、日本中国の古い文化交流歴史の中のことですから、これは十分、これこそ本物だという見本をあらゆる分野について交流できるように御検討なさるべきではないかと思うんです。  で、もう一つ文化協定についての問題ですが、文化交流ということの中の最大の問題は、やはり若い人たちお互い理解し合うという意味から留学生の問題だと思います。この留学生の問題が文化協定の中で必ずしもきちんとされていないように思うんですけれども、この点は留学生という問題と文化協定との関係をどういうふうにお考えですか。
  20. 堀新助

    説明員(堀新助君) ベルギーとのただいま御審議をいただいております協定にも第二条に「教授、学者、学生」ということで、「交換を奨励する。」と入っております。それから過去につくりました協定におきましても、たとえばフランスとの協定におきまして「給費留学生その他の留学生滞在」という項目が一つ。それからもう一つ学位を相互に認める。これは全部が留学生関係あることではございませんが、日本の大学を出た人が相手国に行ったときに、日本でとった学位を認めるかどうかという問題に本来出たものでございますが、やはり留学生にも関係いたしまして、たとえばアジア留学生日本医学博士称号をとる、あるいは法学士称号をとる、これが国に帰ってから認められるか、そういう点で留学生関係あるわけでございますが、そのような規定がございます。  なお、留学生の待遇とか、そういうことに関しましては、文化協定一般的なワクでございますので、こまかいことは書いてございません。
  21. 田英夫

    田英夫君 そこだと思うんです。ベルギーとの文化協定を拝見して、交流をするということだけ書いてあって、一体これはやらなければやらないで済んでしまうということで、先ほど文化協定義務予算も伴わないという話がありましたけれども、こういうところこそやはり義務というのはおかしいかもしれませんけれども、やはり積極的に文化協定を結ぶ国とは少なくとも留学生交換を実際にやるんだと、やれるんだということで、場合によっては文部省との関係その他あるでしょうけれども予算裏づけも含めてやるべきじゃないか。で、実は気になる新聞記事が出ておりましたけれども、二月六日付の朝日新聞ですが、日本に来ている留学生が差別をされて、逆に反日の気持ちを持って帰ってしまう、こんなことが出ております。これはYWCAの母親たち日本に来ている留学生について調べた結果だということなんですけれども、特に、アジア中心にした三十カ国四百三十人の留学生を対象にして調べた。これはまあ文化事業部長なら当然お読みだと思いますが、こういう調査の結果で、結局は日本で非常に孤独で、受け入れ体制が十分でないために、しかも私費留学生が多いわけですけれども、何か反日感情を持って帰ってしまうという、これは調査結果で、新聞記事に出ているわけですからそのとおりだと思いますけれども、こういう問題につながってくるとまことに残念なことだと思うんです。ですから先ほど申し上げたように、もっと積極的に、特に東南アジアをはじめ開発がおくれている国といいますか、これから発展途上にある国々の若者を日本に迎え入れて十分に勉強をしてもらい、日本理解してもらうと、こういうことの中で文化協定というのは生きてくるんじゃないかと思いますが、外務大臣、こういう基本の問題についてのお考えを伺いたいと思います。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうお話は関係者からたびたび聞いておるわけでございます。何か改善の道がないものかということについての御相談も受けておるわけでございます。政府でやっておる面につきましては、欧米各国に劣らないだけの一応の予算はつけておるわけでございますけれども仰せのように、大部分、八割見当は私費留学生でございまして、その方面のテークケアが十全でないということ、私どもよく承知いたしておるわけでございます。欧米先進国の場合はそういうものを受け入れる場合の一応の、政府がやらなくても民間の各種の団体におきまして相当施設的な何というか蓄積がございまするし、それに相当慣熟した経験も持っておるのに比べまして、日本の場合はいかにもまだ地につかないという状況であることは率直に認めなければならぬと考えておるわけでございます。したがって、政府としても官費でお招きいたしておる者ばかりでなく、そういう私費留学生につきましても何らかお手伝いをするくふうをしなければならぬとも考えるわけでございますが、非常にむずかしい問題でございまするので、いま的確にどうすればいいかということにつきまして即答はいたしかねるわけでございますけれども、いろいろくふうを考えておるところでございます。しかし、何よりも受け入れる国全体の体質というものが問題なのでございまして、これはひとり私ども外向き仕事をおあずかりしておる者だけの力ではできないわけでございますので、われわれはもとよりでございますけれども一般理解と御協力と、またそれについての御関心を十分持っていただくようにお願いしたいものと思っております。
  23. 田英夫

    田英夫君 時間がまいりましたのでギリシア航空協定の問題はまた別の機会に質問をすることにいたします。
  24. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 両件に対する質疑は本日はこの程度といたします。     —————————————
  25. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 国際情勢等に関する調査議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  26. 田英夫

    田英夫君 では続けて国際情勢の問題に移りたいと思います。  外務大臣に伺いたいんですが、中国との問題いま航空協定中心にしていわゆる実務協定締結の段階で努力をしておられるわけですけれども、きょうは中国の問題、基本的にどう考えておられるのか、日中関係というものをどういうふうにしようとしておられるのか、そうした点をまず伺いたいと思います。  いま中国内部でいわゆる批林批孔といわれる運動——運動といっていいと思いますが、起こっているわけでありますけれども、この中国動き、いま日本中国関係日中国交回復以後改善し、進めようという中で、相手側のことは非常に重要だと思いますので、相手側動き批林批孔という問題の動き日本政府としてどういうふうに理解をしておられるか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 正直に申しまして、いま中国内部で展開されておる批林批孔という運動が何を意味しているものか、何をねらっているものかということにつきましては的確な判断ができていないのでありまして、十分の関心は持っておりますけれども、こうであろうというようなことを申し上げるまで熟した理解を持っていないことを申し上げざるを得ないと思うのでございます。ただ、このことが、中国のいま展開されておる外交政策に影響があるかと問われるならば、私どもそれはないのではないかというように見ておるということだけを申し上げさせていただきたいと思います。
  28. 田英夫

    田英夫君 この中国の新しい動きというのは実はたいへんに重要だと思います。これはまあ敵ではありませんからこのことばは当てはまらないと思いますが、昔から敵を知りおのれを知ってということばがあるとおり、相手側状況考え方を十分知っていて初めてほんとうの正しい外交ができると思いますので、中国の中のこうした動きをやはり的確に理解をされるということ、私どもも実はほんとうに的確に理解できているかどうかということを自分でも考えますけれども、かつてのいわゆる文化大革命というものにつきましても実はいろいろな考え方が述べられ、現在も理解、解釈はある意味でまちまちだと思います。同時に、いまおっしゃったように、はたして批林批孔という動き中国外交政策に全く関係がないのかという点になりますと、なかなか問題があると思うんですが、そうなると、大臣のおっしゃったようなことになると、これはあくまでも中国の内政の問題であると、こういうふうにお考えになっているのかどうか、その点はいかがですか。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は、そういうように思っております。
  30. 田英夫

    田英夫君 これは批林批孔と言われておりますけれども、たとえば、中国との関係がいま悪化しているソ連の側のこの運動に対する批判といいますか、これは相当きびしいものだと思いますけれども外交に全く関係がないと言われましたけれども、この運動は明らかにやはり劉少奇、林彪というものを批判し、孔子という中国の伝統的な考え方を否定をするということで、そのほこ先というのは、ほんとうの社会主義は何かということを考えている——文化大革命もそうであったと思いますけれども、そういうふうに思われるんですけれども、だとすれば、特にソ連に対する考え方では明らかにこれは影響が出てくるんではないかと思いますけれども、この点はいかがですか。
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中国の対ソ外交についての批判は慎みたいと思いますが、御案内のような経過で、中ソ論争に象徴されるような激しいやりとりがいまなお続いておるということは、われわれも承知いたしておるわけでございますが、私が外交政策に影響がないのではないかという意味外交政策は、中国が国連に入り、既存の国際秩序の中にあって、そのみずからの主張を国際的なメカニズムの中を通して実行に移してまいるというそういう姿勢、言いかえれば、既存の国際秩序というものに背を向けたもの、そういう方向ではないと、そういう意味外交関係には私はその基調は変わらないんではないかという意味で申し上げたのであります。
  32. 田英夫

    田英夫君 よくわかります。それで、大平外務大臣は、つい先日中国に行かれて、直接中国の指導者、特に毛沢東主席とも会われたわけですから、中国基本的な考え方、そして感触といいますか、それをはだで感じてきておられると思いますので、むしろそういう意味で伺いたいわけですけれども中国は、確かに基本的な路線というものは非常にきびしくて、しかも実際の外交の面では、場合によって非常に柔軟な姿勢をとると言われてきたわけですね。そういうふうに現在もお考えなのかどうか、今度の批林批孔という問題も、それは基本のきびしさの部分に属するんであって、外交の現実の姿の中では変わりがないと、こういうふうにお考えなのかどうか、このところをお伺いいたします。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 的確なお答えになるかどうかわかりませんけれども、一年四カ月前に訪中いたしましたときと、ことしの一月初めに訪中いたしました場合と、私には少なくとも何らの変化が見られないのであります。対日関係はもとよりでございますが、対米——日本関係の深い対米関係等につきましても、そのときと何らの変化を読み取ることは私はできませんでした。
  34. 田英夫

    田英夫君 その辺がたいへん私は大事なところだということで、実はきょう伺っているわけですけれども、たとえば一九七四年、つまりことしの中国共産党中央委員会機関紙「紅旗」第一号、この中に「独立自主、自力更生の方針を堅持しよう」という論文が出ております。これは経済関係の論文であるわけですけれども、筆者は中国共産党中央委員という肩書きの人であります。その中身を見ると、非常に私はきびしい姿があると思います。いわゆる文化大革命を進めた当時にも匹敵するような、自分たちに対してきびしい姿勢があると思うんですね。この自力更生ということば中国でよく使われることばですけれども、そのことをあらためて強調をしております。これはおそらく、日本の財界の首脳の方などはぜひお読みになって、十分に御検討をなさる必要があるのではないかと、そう思って私も読んだわけですけれども大臣か担当の方で、これをお読みになった方があるかどうか、中江参事官は御存じですか。
  35. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私ども、その論文も含めまして、田先生がおっしゃいますようなきびしい面をあらわしている幾つかの論文を検討しております。
  36. 田英夫

    田英夫君 となれば、すでに、その中国の変化と言っていいかどうかわかりませんけれども、現状、最近におけるそうした考え方を御理解だと思いますけれども、つまり、その中に出てくるのは自力更生という形で、中国経済、工業の建設は、外国の先進資本主義国の技術は確かにすぐれている部分があるけれども、それにたよってはならないということをはっきり書いているわけですね。そうすると日中国交回復後、日本の財界、経済界の中から、怒濤のごとく、中国貿易、プラント輸出だという声が起こって、その動きがあったわけでありますけれども、これは明らかに中国のこの基本的な考え方とは矛盾するわけですね、この辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  37. 中江要介

    説明員(中江要介君) ただいま御指摘の、中国が特に経済面で自力更生という原則を掲げておりますことは、もうこれは御高承のとおり今日に始まった問題でなくて、建国以来の一つの重要な原則になっておるわけでございます。したがいまして、日中国交正常化されたあと日中間経済関係について、この原則が引き続き守られるであろう、中国がその原則を固く維持するであろうことは予測されておったところでございますし、具体的にも、よく話題になります油田の開発の問題につきましても、中国は自力更生ということで、まず自分で開発する努力をする、そういう、中国が自力更生の線で開発するにあたって、日本として協力できるものがあるならば協力する用意はあるということは、これはおりに触れて中国側には伝わり、理解されているところであろうと、こういうふうに私どもは期待しておるわけでございます。で、最近そういう原則を再確認するような論文が出ましたことから、直ちに中国の政策に、特に対外政策に変更なり、修正があるのではないかという観測が、一時、非常に行なわれたんですけれども、最近は、先ほど外務大臣お答えになりましたように、これはやはり文化大革命の延長線上のものと現段階では見るのが妥当ではないかと。ただ、このただいまの批林批孔運動は相当長期続くだろう。したがって、これから続いている過程でどういうふうになるかということについては予断は許さないという点は引き続き警戒したければならないと思いますけれども、現実に日中間の諸般の商談その他貿易、民間の方の日中間の商談について顕著に何らかの先方の反応に変化があったというようなことは現在のところでは認められておらないわけでございまして、いまこの時点では中国の対外政策の基調には変化がないというふうに見ておるわけでございます。
  38. 田英夫

    田英夫君 そこのところが非常に重要だと思います。つまり確かに中国は昨年後半からことしにかけて現在に至るまであらためて原則を確認するという態度があらゆる面で出てきているんじゃないかと。で、批林批孔という運動に象徴をされる形で出てきているんじゃないだろうかと。それで日本のほうもその動きほんとうに的確にとらえて考えないと、あとから触れますけれども、日中航空協定の問題もまさに具体的な問題としてそう楽観ばかりはしていられないんじゃないだろうかと。実は私昨日東京の中国大使館の幹部の人と話をする機会がありまして、そういう中でも感じたわけであります。非常にきびしさを増しているんじゃないだろうかという気がしてならないわけです。ですからいまのこの論文にしても、実際に日本の商社との現在の商談の進め方というようなところで変化がないということで済ましていいのかどうか。逆に日中国交回復後、私はさっき怒濤のように言いましたけれども、非常に甘い考え方中国市場が開けたというムードが日本の企業、財界の中にびまんしたのは事実だと。この辺を政府として十分お考えにならないと、せっかく開けた門が、閉じることはもちろん大臣おっしゃったとおり私もないと思う。そういう意味で変化はないと思いますけれども、正しい発展をしなくなってしまうんではないかと、そういう心配をするわけです。大臣、いま中江参事官が言われた、そういう点含めて基本的なそのお考えを聞かしていただきたい。
  39. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 自力更生でございますが、この基本は少しも変わっていない、それの現実的な適用にあたりまして、端的に言えますことは、経済協力を受けるというような気持ちは毛頭ない、ございません。しかし、正当な経済交流は活発に進めていこうということでございまするし、現実のいわゆる商談なるものも非常にきびしいといいますか、非常にタフネゴシエーションが続いておるわけでございまして、日本の財界の諸君も決して私は甘い幻想は持っていないと思うのであります。つまり合理的な条件で、技術にいたしましても資本にいたしましても、の交流は活発に確保していこうというラインは貫かれるものと思いまするし、したがってわがほうといたしましても、そういう心がまえで終始対処していくべき性質のものと私は思っております。
  40. 田英夫

    田英夫君 いまのところが非常に大臣考えいただきたいところなんです。つまり日本中国との関係は、大平外務大臣の御努力を含めて日中国交回復という形で大きく前進をした、この方向というのは、これから私どもも含めまして日本人みんなで協力をして、最も古いつき合いであるこの中国との関係を、これから大きく子孫の代まで将来にわたって円満なものにしていきたい、こう願うべきだと思います。そういう中で考えたときに、ややもすると、まあこれは事実かどうか、財界の企業の方の動きを推測するわけですけれども、それ中国だと、こう言ってきたら、実はうま味がないじゃないかと、まさにエコノミックアニマル的な発想が私はなかったわけではないと思う。そうすると中国に対して熱がさめてしまうというような形のことが現実に私はあると思います。そういうことであってはならないので、そこを政治、外交でどう正しく方向づけていくかというのが、外務大臣政府あるいは政治の役割りじゃないかと、こう思うわけですから、そこでこの問題をあえて長々と伺っているわけなのです。そうした基本を、いま門を開かれた、開く役目をされた外務大臣としては、それが、門が開いたその先の道路が延々と続いていくという方向に切り開かれる役目があると、門をあけてみたら、この先は坦々たる道路ではなくて、なかなかきびしい、いろいろ手を入れたり苦労をしなければならない、それがあけてみたら門の向こう側はなかなかきびしかった。それではここ進んでいくのをやめたという気持ちが商売人なんかの間に出てくるということをおそれるわけですね。そのことが逆に日本外交中国との関係を逆行させてしまうということをおそれるわけです。その動きが現にやや出てきているのじゃないか、この私の考え方に対して大臣どうお考えになるか、お伺いいたします。
  41. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先方の首脳もたびたび言われておることは、日中間で、いまあなたが言われたように、子々孫々にわたる友好関係を発展させていきたいということを言われておるわけでございまして、このことは座してそういう平坦な道が開けるというものでは決してないのでありまして、双方が無限の努力を積み重ねていく中で切り開いていかなければならない険しい道であると思うのであります。そういう十分の覚悟をもって、政治におきましても経済におきましても文化におきましても、私は当たっていかなければならぬと思うのであります。したがって、すぐ顕著な成果を期待するというようなことでなくて、きわめて着実なじみちな努力を営々として積み上げていくということであらねばならぬと思います。
  42. 田英夫

    田英夫君 そこで、やや具体的な問題について伺いたいんですけれども、いまの問題になりました中国の原則に立ち返るというか、原則を確認するというか、そういう動き、全体のムードとして批林批孔にあらわれているような動きの中で、これが、たとえば台湾の問題について出てきているのじゃないかと思います。これはやはり中国通信によって伝えられている二・二八の決起、台湾の決起の問題にからんで北京で行なわれた集会、そうしたものでの発言がいろいろ伝えられているのを読んでみても非常にきびしい。一つは、これは中国通信で伝えている二・二八に関連をした北京での座談会における傅作義副主席の発言というのがありますけれども、むしろこれは読みようによっては、台湾を積極的に解放しようというようなふうに読める部分さえありますね。ただ、それは北京政府がやるのではなくて、台湾の人に呼びかけて、つまり大陸から台湾に渡った、現在台湾にいる人に呼びかけている形で、「きみたち」と言ってますが、「きみたちが機を失することのないよう望むことである。きみたちは時を移さず行動を起こすべきである。台湾の早期解放をめざして共に努力しようではないか。」というようなことを言っています。これは中江参事官御存じですか。
  43. 中江要介

    説明員(中江要介君) 承知しております。
  44. 田英夫

    田英夫君 こうした動き外務省はどういうふうに理解をしておられますか。
  45. 中江要介

    説明員(中江要介君) 台湾に対する中国の姿勢というのは一貫してきびしい原則に立っておるということは私どもも認識しておりますし、今回、台湾から中国に渡った同胞に対して、そういった呼びかけのような形で台湾の解放を強く訴えるという例は過去にもあったわけでございますが、いまのところは、私、先ほども申し上げましたように、台湾の解放について中国が積極的に具体的な手を下すというきざしはまだ見えない。ただ、中国の台湾問題に関する強い姿勢、原則というものが引き続き堅持されているものだ、こういうふうに認識しておるわけでございます。
  46. 田英夫

    田英夫君 この点は、逆に日本の中での動きに対しても中国は非常に鋭敏になっている。自民党の一部の動きに対して廖承志さんがはっきりと演説の中で言っていることは御存じのとおりであります。そうした中で、これ一つ気になるんですが。これ事実を確認したいんで、御本人がおいでになりますから。  中江参事官が五日の衆議院の内閣委員会発言されたということで、私はその席にいたわけではありませんので確認をしたいのですが、自民党の藤尾議員の質問に対して、台湾の帰属の問題ですね、「台湾がどこに帰属するか、その表示方法をどうすべきかを意思表示するのは、日本政府として国際的合意ができるまでは慎まなければならない」と、こういうふうに答えられたと報道されているんですけれども、これは藤尾議員の前後の質問もわかりませんし、中江参事官の全体のお答えもわからないので、この報道が事実とすれば、この部分に関する限りはこの報道でも指摘をしているようになかなか問題の多い発言だと思いますが、この点を伺いたいと思います。
  47. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私の答弁のかぎカッコで書かれて報道されている部分にも不正確な部分がございまして、これはあとで速記録その他でお確かめいただければ明らかになることだと思いますが、私が答弁いたしました中で重要な部分がまず抜けておる。それは日中共同声明によって日本政府の台湾に対する考え方、台湾の帰属に関する考え方というものは明らかになっておって、それは結局のところポツダム宣言第八項の立場を堅持するんだということを締めくくりに私は申し上げたわけですが、その部分が抜けておる。他方、私が言わなかったと私は思うんですが、入っておりますのは、国際的合意が見られるまで云々というようなことは、私はたしか申し上げなかったと思うのですが、そのこまかい表現はともかくといたしまして、日中共同声明にありますように、日本政府としては、中華人民共和国が台湾は中華人民共和国の不可分の領土の一部であるという立場をとっておる、そのことを十分理解し尊重する、しかし日本はどうかといえば、これはポツダム宣言第八項の立場を堅持するということを一歩も出ないし、また、そこからも下がらないということを申し上げたつもりであります。
  48. 田英夫

    田英夫君 実は、それで安心したといいますか、中国側もこの発言を非常に気にしております。これは昨日、私が大使館の人に会ったときに向こう側から指摘をされたところで、本日のこの委員会で御本人からそうした発言があって、報道が誤りであるといいますか、そういうことがあって初めてこれは納得してもらえると思いますし、共同声明第三項の点から一歩も後退もしていないし、変わりはないんだという点、この点は大平外務大臣もひとつ確認をしていただきたいと思いますが、そう考えてよろしいですね。
  49. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのとおりでございます。
  50. 田英夫

    田英夫君 この台湾の問題については、先ほど申しましたような中国側の原則、そして日本側のポツダム宣言第八項というこの態度、これに変わりがないということで確認をして、この点は、ひとつ私も報道が間違いだというふうに考えます。  そこで、問題の日中航空協定の問題なんですけれども、現在、あの航空協定の六項目ある中で台湾との関係についてはいわゆる民間の協定ということになっているわけですけれども、いわゆる六項目の第一項目ですね、日台路線については民間協定を結んで維持すると、こうあるわけですが、この台湾との民間の話し合いの現状をお教えいただきたいと思います。
  51. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま交流協会の理事長の板垣さんが台北を訪れまして、先方、これに対応する——交流協会と実務上の相手の当事機関である亜東関係協会理事長の張研田氏と会いまして、接触を持ったことは事実でございます。で、どういう話し合いが行なわれ、先方がどういう反応を示しておるかということにつきましては、せっかくでございますが、ただいまそういう交渉中の段階でございますので、御遠慮さしていただきたいと存じます。
  52. 田英夫

    田英夫君 その交渉の過程で、大臣の口からは言いにくいかもしれませんが、台湾からの報道によると、あるいは板垣さんのほうの筋かもしれませんけれども、亜東協会のほうは六項目中、特に二項目について不満を表明しているということがあります。一つは、六項目中の第三項にある、中華航空の社名と旗の変更は求めないが、その性格に関する日本政府の認識を別途明らかにし、日本側当局が言及する際は、これを中華航空(台湾)とするというこの部分、それから第六項目の、中華航空の日本における営業所、事務所、その他の地上サービスは代理店その他別の事業主体に委託をし、ただし運航の安全、従業員の生活の安定には所要の配慮をする。これは、北京で大臣が結ばれた六項目のうちの三項目と六項目目であります。この点について、台湾側が不満を示しているということが伝えられておりますけれども、この点はいかがですか。
  53. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) でございますから、まあ交渉中でございますので、その点はしばらく公にいたしますことは差し控えさしていただきます。
  54. 田英夫

    田英夫君 そこで、北京での大臣交渉の、向こうとの話し合いのことに触れてくるわけですけれども大平外務大臣は最終的に毛沢東主席と会われて、その上で最後にこの六項目ということで妥結といいますか、話し合いがついて帰国をされたというふうに考えられるわけですけれども、この六項目というものは、いま台湾側が不満を示しているというような報道がありますけれども、変更し得る余地があるのかどうかということですね。これが台湾側あるいは自民党内部事情によって変更せざるを得ないということになると、日中航空協定そのものも締結できないということになるのではないかと思います。それは中国外交の進め方、従来の進め方の基本的な姿勢、最近の、先ほどから問題になっているような原則を守るという動き、そういうようなものからも判断してそう思われるんですが、その点はいかがですか。
  55. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その六項目云々でございますが、それはあくまでも外務省、運輸省案でございます。外務省、運輸省の対処方針であるということをまず御理解をいただきたいと思います。  それから第二の変更云々の問題でございますが、こういうお答えで御満足がいくかどうかわかりませんけれども、私としては、日中間におきましては、政府間の日中航空協定を結ぶと、日台間におきましては民間協定の姿において航空需要を充足していくということ、この両方をやり遂げにゃいけない責任を持っておるわけでございます。それが達成できないようでは、私は職責を全うしたことにならないということだけ申し上げたいと思います。
  56. 田英夫

    田英夫君 これは実は、六項目というのは外務省、運輸省の案であるということですけれども、実際にはこれは中国との間に最終的にこの線でいこうという話し合いがついたと理解せざるを得ないと思うのですけれども外務大臣は、向こうでの中国との交渉の過程で、きわめて中国側のきびしい態度に直面をされて、一時は話し合いがつかぬまま帰られようと決意までされたと聞いているのですけれども、そういう状態の中で最終的にこの線で話がついたと、こうなると、台湾あるいはそれと関係を持たれるといっていいと思う自民党の一部の方々のはっきり言えば圧力によってこの線が変更になるということになれば、日中航空協定そのものもこれは実を結ばなくなるのじゃないか、こう思いますが、重ねて伺います。
  57. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外務省、運輸省案で御提示申し上げました案を作案するにつきましては、われわれといたしまして可能な限り中国基本的な考え方も念頭に置き、台湾側の基本的な要請も考慮に入れて、政府協定と民間協定が成り立つ条件をこういう姿においてつくりあげようということで苦心をいたして作案したものであることに間違いはございません。そして先ほども申し上げましたように、このことはなし遂げなければならない、しかも早期になし遂げなければならないわれわれの任務であるということに間違いはないわけでございまして、せっかくそのために全力をあげておるということで御理解をいただきたいと思います。
  58. 田英夫

    田英夫君 最後に一つ伺いますが、本交渉に入るということは現時点でもすでに可能ですか。本交渉というのは、つまり中国政府との政府交渉の本交渉です。
  59. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは先方の御都合も伺って、私としてはなるべく早く本交渉に入りたいということでいま準備を進めております。
  60. 田英夫

    田英夫君 一両日中にという報道もありますが、これはいかがですか。
  61. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのことのために準備を急ぐようにという指示はいたしておるわけでございますので、私としては一日も早くそういう準備が整うことを期待いたしております。
  62. 田英夫

    田英夫君 この日中航空協定の問題は、先ほどからるる述べてまいりました中国との問題について最も、何といいますか、これからの道を切り開いていくという意味で非常に重要な出発点と思いますので、いろいろ御苦心のことはよくわかりますけれども、御努力をお願いしたいと思います。  最後に、時間がなくなりましたので一つだけ伺いますが、問題は別ですが、この前もこの委員会で伺いました四月二日から横浜で開かれますアジア卓球選手権大会に対しての未承認国選手団の入国の問題であります。これはきのうの衆議院の予算分科会で、外務省側の発言として、そうした国々、特に南ベトナム臨時革命政府あるいはカンボジア、さらにラオス愛国戦線、こうした国々選手団も入国させると。国々という言い方をすると政府お答えにくいかもしれませんので、そうした政府の支配地域の選手団の入国も認めるというふうに外務省お答えになったということですが、きょうは入国管理局長来ておられますので、この問題の所管である法務省の態度を伺いたいと思います。
  63. 影井梅夫

    政府委員(影井梅夫君) 私どものほうには、先月、二月の半ばにこの組織委員会のほうからこういうふうな大綱と申しますか、考え方で卓球大会を開きたいというお申し出を受けました。これはごく一般的な要望書という形で出ております。私どもといたしましては、その大きな御趣旨は了解しておりますけれども、しかしながら、どういう方々が、どういうふうな形で日本にお入りになりまして、それからどういうふうな計画と申しますか、予定をしておいでになるかというふうなことをさらに伺いまして態度をきめたいと、このように考えております。
  64. 田英夫

    田英夫君 これは実はタイムリミットがありますし、手続はすでに取りつつあるようでありますから、もう少し明確な態度を早急に打ち出していただきたいと思うんですが、この機会にひとつお願いといいますか、確認をしておきたいのは、こうした選手団を入れるとなった場合には、日本政府の入国査証——ビザは北京の日本大使館で発給をしてほしいというのが向こう側の要求であり、すでにそうした国々選手団は、ラオスもカンボジアもそれから南ベトナム臨時革命政府の側も、すでに北京に選手団は入っております。それから北ベトナムの選手団は十日に北京に到着をいたします。北京で待機をしていて、日本のビザが北京の日本大使館から出されればすぐに入りたい、こういう態勢で待ち受けているわけなんで、これはそういう手続でやっていただけるかどうか、この点はいかがですか。
  65. 影井梅夫

    政府委員(影井梅夫君) まず、この大会の細目につきましていろいろ私のほうに資料提出していただくということ、先ほど申し上げたとおりでございますが、その結果によりまして入国を認めるという方向が出ました場合に、先方のいろいろ御都合もおありだと思います。それから私のほうといたしまして、手続的に可能な面、不可能な面もあろうかと思います。御要望は十分に承りまして考えたいと、このように考えております。
  66. 田英夫

    田英夫君 もう時間がないんですが、問題の未承認国は、いわゆる北朝鮮——朝鮮民主主義人民共和国、北ベトナムこれは国交がありますね、したがって、朝鮮と南ベトナム臨時革命政府、それにラオス、カンボジアと、この四つだと思うんですけれども、それに北ベトナムを含めて五つのグループは、一国でも入国を認められない場合は共同歩調をとって参加をしないと言っています。それからアジア卓球大会の規約の第八条に、主催国が参加を希望した国の入国を認めない場合には大会は開催できないと、こうはっきり規定をしています。そしてもう一つの材料は、今度の横浜大会の幹事国である日本——というよりこのアジア卓球連盟の幹事国です日本中国と朝鮮民主主義人民共和国、それにシンガポール、この四代表団が東京に三月二十六日に集まって幹事会を開く、そこで一国でも入国が認められないという状況があれば大会中止ということも起こり得る、そうならざるを得ないということであります。したがって、おそくとも三月二十五日までにこの四カ国は入国をしたいし、それまでにいま申し上げた未承認政府の地域の選手団が入国できる状況になっていなければ、日本政府がこのアジアの地域の多くの、四十カ国になんなんとする国々が集まるというスポーツ大会の開催を不能にする責任を負わなくちゃならぬと、こういう状況であります。この点をひとつお含み置きいただいて善処をしていただきたい。この点を最後にお願いをして私の質問を終わります。     —————————————
  67. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) この際、御紹介申し上げます。  バングラデシュ人民共和国国会議員セラジュール・ハックさん御一行が参議院に参られまして、ただいま当委員会を傍聴にお見えになりましたので、どうぞ御起立の上、拍手をもってお迎えしたいと思います。   〔総員起立、拍手〕     —————————————
  68. 黒柳明

    ○黒柳明君 いま、日中航空協定が、正常化から一年と四カ月たちますが、ブランクになったまま異常な状態が続いているんですが、総理の訪ソからこれまた半年たちますけれども、訪ソの唯一の成果であろうと言われていた経済協力の問題——チュメニ、サハリンあるいはヤクート天然ガス、油田、森林、輸出の問題、輸入の問題等々についての交渉ですね、その後どのようになっているのか、まずお教えいただきたいと思います。
  69. 大和田渉

    政府委員(大和田渉君) 御承知と思いますが、現在先方と話し合が行なわれておりますシベリア開発案件五件ございます。チューメニの石油の問題、それからヤクーチョの天然ガスの問題それから南ヤクーチョの石炭の問題、それから森林資源開発に関する第二次契約の問題、それから北樺太沖合いの天然ガス、石油の探鉱の問題、この五件ございます。  現状御説明申し上げますと、まずチューメニの問題でございますが、これについての計画の概要は御高承のとおりでございますが、現在、日本側のこの関係の小委員長をつとめております今里さんから先方に対して、なるべく早く基本契約を結ぶ交渉を再開したいという申し入れをいたしております。これは昨年十二月でございます。それに対しまして現在は先方の返事待ちということになっております。ただ、その返事は近く来るであろうということをソ連側の大使がわがほうに伝えてきております。それからヤクーチョの天然ガスの問題でございますが、これにつきましては先般わがほうの、これも関係の小委員長である安西さんが訪ソされまして、これはアメリカとも協議しておりますが、具体的な話がかなり煮詰まりつつあります。それから南ヤクーチョの石炭の問題でございますが、これは小委員長は横田さんという日本鋼管の社長の方でいらっしゃいますが、現在訪ソ中でございまして、基本契約の詰めをいまやっている段階でございます。それから森林資源の問題につきましては、昨年先方から代表団が参りましてかなり話を詰めましたが、値段の問題それからローンの問題、まだ最終的な合意に達していないという段階でございます。それから北樺太の沖合いの大陸だなのガス、石油資源の探鉱という問題につきましては、先月二月にわが方から専門家がさらに派遣されまして、引き続き調査を実施中という段階でございます。以上でございます。
  70. 黒柳明

    ○黒柳明君 五項目につきまして、まあ相当具体的にまとまっているものもあるし、調査中ないしは返事待ちというものもある。なかんずくチュメニの油田のことなんですが、けさの一部の報道ですと、もうすでに総理がブレジネフ書記長に、何かアメリカ抜きでもこの共同開発をすることを提案したとか何とか、こういう報道が一部出ておりますが、この点についてどうですか、外務大臣は。どの程度お知りになってるんでしょうか。あるいは外務大臣もこれについてどういう接触をなされたんでしょうか。
  71. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これはチュメニだけでございませんで、日ソ経済協力基本のたてまえといたしまして、これはあくまで日ソ間の経済協力でなければならぬと。当事者は日本とソ連であると。日ソ間の、サイベリヤですね。サイベリヤの資源開発についての基本的な態度といたしましては、当事国はソ連と日本である。しかしながら、第三国の参加は拒まない。しかしその第三国は日本がその第三国と話し合いの上参加する。ソ連は直接その第三国とのコンタクトは持たないと、そういう筋合いで了解ができております。
  72. 黒柳明

    ○黒柳明君 私もそういう理解しておりますけれども、どうなんですか。総理がこのチュメニということを特に具体的にこう固有名詞をあげて、アメリカ抜きでも日ソで共同開発をするという意向はもう伝わっているということが有力筋から流れているとこういうことなんですが、これだけにしぼった場合にどうなんですか。いまの基本的な条件はもうすでに私どもも了解しておりますけれどもね、このチュメニについて特に。
  73. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日ソ間の首脳の話し合いとして、その両者の間で第三国抜きでも日本だけでやりますというコミットをいたしたことはございません。したがって、これは当事者は日本とソ連との間でございますから、日本側がどう決意するかの問題だと思います。
  74. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、当然総理がチュメニの油田共同開発についてアメリカ抜きでも日ソだけでもやるという意思表示、コミットはしてないと、こういうことですか。重ねてすみませんが。
  75. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ソ連側に対してそういうコミットをした事実はございません。
  76. 黒柳明

    ○黒柳明君 ないと——わかりました。  そうすると、外務大臣としてはどうでしょうか。これは日ソ間の当事者両国の意思の問題でもありますし、またアメリカがそれに対してどう意思を表示するかという問題もさらにからんでくるわけですけれども、原則としてはアメリカの参加というものがあったほうがいいという理解なのか、それともなければなくても日ソ間の両国だけでも共同開発を進めようという意思があるのか。その点、いかがでしょうか。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま欧亜局長から御説明申し上げました五つのプロジェクトは、過去ソ連との間にやりました三つのプロジェクトに比べまして一つ単位が大きなプロジェクトでございます。したがって、信用供与の量も非常にばく大なものになりますし、私どもといたしまして、アメリカばかりでなく、第三国が参加する姿において実行されることのほうが望ましいと考えておりますが、問題は政府がいまものを申す段階ではないのでありまして、責任を持つ当事者、つまり業界とソ連の専門当局との間の話し合いがフィージビリティスタディを十分遂げた上で満足すべき成果をまずあげなけりゃならぬわけでございますが、そういうものはまだ私も拝見していないわけでございますので、いま先走って政府がどうこういうコメントを申し上げる段階ではないと思います。ただ一般的にたいへん信用量が多いわけでございます。技術も高度なものが要るわけでございまするので、第三国の参加が一般的に望ましいのではないかと、私の意見を聞かれれば。私はそう思います。
  78. 黒柳明

    ○黒柳明君 アメリカのみならず第三国の参加があったほうが基本的には望ましいと、だけれどもこれはまあいろんな先ほど申したような委員長のレベルで具体的な交渉をやっておると、そうすると、もう一回繰り返すようで申しわけありませんけど、何かけさはテレビでもやっていましたしね。あるいはいま言いましたような一部の報道、新聞でも報道されていますし、石田日ソ議員連盟会長に会ったときに総理はそのことをはっきり言ったと、アメリカ抜きでも共同開発をやると言ったというようなことについては、まあ外務大臣が知らないということは、そういう事実はないと、正式に政府間でコミットしたことはないと、こういうことで了解するとともに、また第三国の加盟があったほうがさらに望ましい。  そこで欧亜局長さん、すでにソ連として天然ガスあるいは油田についてのこの日本以外の国でこう協定結んでいる国があるわけですが、まあその国でいわゆるソ連とその当事国の間でのまあ契約も当然ありますし、約束事もあるんですが、やっぱりそれがうまくいっていないと、いわゆるこういう表現がいいのかどうか、圧力がかけられると、まあそこにどうしても第三国の加入、なかんずくいまのアメリカの参加というものがあったほうがいいという、その国からいろいろ示唆も私じかに聞いたことがあるんです。やっぱりそういう第三国の、まあ力と力という問題じゃありませんけれどもね、やっぱり国際経済というものの背景にどうしてもその国の何らかの力というものが出るときがあると、スムーズにいっているときはいいけれども。こういうことも聞きまして、その当事国は非常にやっぱりいわゆるその圧力をかけられたと、こういうことがありまして、日本がやるときには、まあできるならばいま外務大臣が言ったように第三国あるいはアメリカの加盟があったほうがそういう点の回避という可能性につながるのじゃないかと、こういうことも聞いたんですが、局長さんあたりその点どう理解していますか。すでにもうソ連と天然ガスなり油田なりの契約を結んでそれがスムーズにいっているかどうか、当然そういうものも参考にしてこれからのわが国のあり方というものに対して対処しなければならないと思うのですけどね。そういう状況というものはどの程度つかんでいらっしゃいますでしょうか。
  79. 大和田渉

    政府委員(大和田渉君) 日ソ以外の第三国がいろいろ意見を述べているということは承知しております。ただ、必ずしもわれわれはその圧力と感じているのではなくて、むしろ好意的にいろいろ助言してくれるものの一つであろうというふうに感じ取っております。  それから第三国、たとえばアメリカがいまソ連と天然ガスのやはり契約を結びつつございますけれども、これは最終的にはまだなっておりません。いわゆるムルマンスクプロジェクトと申しまして、北海のほうのムルマンスクへパイプを敷くということでございますが、この点もいまの政治的な問題ではなしに、むしろ値段の問題その他でまだ最終的な結論が出ていないというふうに承知しております。
  80. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ私別に圧力ということがね、それが適切であるかどうかということは別にしまして、またこれが好意的なことも含んでのある程度のまあおせっかいということもあるかもわかりません。まあ全面的には好意的なことかもわかりません。しかしやっぱりそういう第三国、具体的にいえばアメリカの参加があったほうが何かあったときに日本としてはね、交渉がやりやすいぞと、そのことを事前にやっぱり考えてやったほうがいいという示唆をそのすでにソ連と契約している当事国から私も聞いています。当然ですから外務大臣がもう基本的には第三国の参加が望ましいと、アメリカも含めて。局長さんもそういう情報をつかまれていますから外務大臣と同じ意見だと思いますけれども、その点あらためて、もう外務大臣お答えがあったわけですが、いまみたいな情報を周知しているということは、やっぱりそれが好意的であるとは思いますけれども、その好意的ならなお好意的なものにするために、日本とソ連だけの当事者じゃなくて、何か第三国の加盟があったほうがいいということはやっぱりお考えになってきたわけですか。その点いかがですか。
  81. 大和田渉

    政府委員(大和田渉君) 大臣が御説明になりましたように、やはり第三国の参加は望ましいというのは、もちろん私、同意見でございますが、その意味は、大臣仰せられましたように、やはりプロジェクトが非常に大きいので、したがって財政上、金融上その他の要素を考えますと、そのほうが望ましいという意味なんでございます。  それから、実際に総理が訪ソされまして先方と話されましたときに先方が言っているのは、やはり契約は日ソ間で結びたい。しかし、日本が第三国、たとえばアメリカ、あるいはドイツも考えられるかもしれませんですが、第三国とさらに契約を結ばれるということはもちろん御自由でけっこうです、こういう返事をソ連側からもらっております。したがってわれわれとしても、具体的な契約はやはり日本とソ連が結ぶという基本的な考えでおります。その際、いまの金融面を少し分担してもらうというような意味で第三国ということは当然考えてしかるべきだし、またそのほうがよかろうというふうに考えております。
  82. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほど五つの進行状況をお教えいただきましたけれども、何か、ヤクートの天然ガスが一番まとまる可能性があるんじゃないかと。その点いかがですか。進行している最中なものですから、いまから、航空協定と同じように、いっその時期なんというようなことは明確にできないと思うんですが、当然めどを持って進んでいるんだと思うんですけれども、それ、どうでしょうか。いつごろ、どういう形で……。まあ形はいいわけだけれども、いつごろのめどを想定されますでしょうか。
  83. 大和田渉

    政府委員(大和田渉君) 先ほど私、御説明申し上げましたように、かなり具体的な詰めが進んでいるということを申し上げましたのですが、ヤクーチョの天然ガスの計画というのは、いわば第一次的には埋蔵量の確認というプロジェクトが一つございまして、その確認がされたあと本体をどうするか、二つに分けて考えられると思います。現在詰められておりますのは、その埋蔵量を確認するための探鉱作業と申しますか、ということについての話し合いでございまして、いつとおっしゃられると、私も、実際にいまわがほうの民間の方々が交渉を続けておりますので、言いにくいのでございます。  それからもう一つ、先生がおっしゃいました、どれが一番先であろうかという予想も非常ににつきにくい点がございます。たとえば石炭の問題、先ほども説明申した、いますでに代表団が行っております。話し合いを詰めておる段階で、うまくいけばあるいはそれが先かもしれませんですし、正直のところ、何とも言いかねるということでございます。
  84. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほど非常に大型プロジェクトだと、経費はうんとかかると、こういうことで、きのうも輸銀の総裁が、チュメニの共同開発だけでも借款がやっぱり二十億ドルくらいになるだろうと……。もうすでに先般交渉したときの倍の額になっている。これからまたおくれればおくれるほど、当然この額がふえていくことは、これは間違いないと思うんですけれども、だからといって急にと言ったって、これは相手があることなんですけれども、これはどうですか。石油問題がこういうときでありますし、将来ともこれは必要であることは間違いないんですけれども、相当これ、時期によって、おくれればおくれるほど常識としては額がのぼることは間違いなかろうと、こういうふうに予想されます、輸銀の総裁あたりの発言から想定しますと、また常識的に考えますと。これはもうやっぱり早い時期にやるということのめどと同時に、ある程度の借款のワクも、幾らでも高くなったからそれでもしょうがないということでもないとは思うんですけれども、その点あたりどうでしょうか。大型プロジェクトであればあるほど、その経費についても考慮しながら進めていかないと、いざまとまる段になったらこんな巨額なものになっちゃった、これはもう規模を縮小しなければならないと、こういう事態も出てくると思うんですが、その点外務大臣、どうですか。なかなかめどはつかない、やっているんだけれども。一方、やっぱり経済問題がこれに伴うわけですよ。そのあたりについても並行して当然考えていらっしゃると思いますけれども外務大臣の判断はいかがでしょうか。
  85. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これはむしろ大蔵大臣からのお答えのほうがしかるべきと思いますが、大体御案内のように、毎年輸銀なり基金なりというものが一定の融資のワクと申しますか、限度を持っておるわけでございまして、その範囲内で消化してまいらなければならぬわけでございまして、全世界にわたって、いろいろなプロジェクトないし商談が行なわれておるわけでございまして、その中で消化してまいるわけでございますから、仰せのように無限ではないわけでございます。したがって、大きなプロジェクトにつきまして総額がなるほどどのくらいかという問題もありまするけれども、それがどういう年次にわたって支出されてまいるかということもはっきりしなければなりませんし、また、その条件がどういう条件であるかという点も、輸銀等につきましては特に資金コストの上から申しまして非常に重大な関心でございますので、私どもの配慮だけからいけないので、財政当局、輸銀当局等がまず十分吟味をお願いせにゃいかぬことだと思います。同時に、外向きのことでございまして、日本の国際収支が非常に弾力的な余裕があるということなのか、それとも手から口への非常に窮屈な状況になるのかどうか、そういった点も、そういうことを進めてまいる場合の一つの大きな要素になるのではないかと思います。したがって、いろいろな要素を総合的に政府としては判断せにゃなりませんが、基本は、あくまでも当事者同士の基本契約というものが一体どういうものなのかというものを十分たたいた上で、掌握した上で政府で考慮せにゃいかぬいろいろな要素を判断して、そして政府が最終的には処置しなければならぬ問題ではなかろうかと考えております。
  86. 黒柳明

    ○黒柳明君 最後に。  社会主義国との交渉は往々にして時間がかかりますので、私は、その交渉を進めていること、それについて時間がかかることもしようがないと思うんですが、財政問題というものを並行して、たえず大蔵省と煮詰めながらやらないと、規模の問題がいざとなったときには今度は財政問題でネックが出てきたと、こういう可能性もありますもので、私いろんなところからこの問題を聞いておりますので、心配するとともに、ひとつ外務大臣にもその面も相あわせて進めていってほしいと、こう思います。  時間でありますので、以上。
  87. 西村関一

    ○西村関一君 本日はバングラデシュ人民共和国の国会議員さんが本委員会においでになりましたが、最近私はバングラデシュを訪問いたしました日本の国会議員といたしまして深く敬意を表する次第であります。先ほど委員長が御紹介をされ、拍手をもってお迎えをいたしましたが、私は、この質問をするにあたりまして、まずバングラデシュ人民共和国の新しい歩みの上に心から祝福を祈りながら若干の質問を政府にいたしたいと思います。  バングラデシュ人民共和国は、社会主義、非同盟、中立主義、平和共存政策、議会民主主義、非宗教主義の諸原則をもって建国をせられました。二年数カ月前のあの言語に絶する悲惨な流血の惨事を経て輝かしい建国の宣言をなさいました。そのときシェイク・ムジブル・ラーマン首相がパキスタンから歴史的な帰還をせられまして演説をなさいました。あの歴史的な演説は、世界の心ある人々に多くの感激を与えたと思うのであります。われわれは一切を忘れましょう、一切を許しましょうと、こういう趣旨の演説をなさいました、私はその演説の全文を読みまして、いまさらのごとくシェイク・ムジブル・ラーマン首相の人格に対して、あらためて敬意を表さしていただいたものでございます。私どもの願いは、一日も早くインド亜大陸の三つの国々に平和と友好が完全に樹立せられますようにということを願いながら、一月の七日にダッカを振り出しに、ニューデリー、イスラマバード等々を訪問いたしてまいりました。そのときにはまだパキスタンのバングラデシュ人民共和国承認のこともなかなかむずかしい情勢でありました。日本外務省も、そうにわかにはいかないという御見解のようでございました。しかし、すでに御承知のとおり、この前私がここで質問をいたしましたときには、まだそのことがなっておりませんでしたけれども、ラホールにおいて開かれました回教国首脳会議の招待を受けられまして、ムジブル・ラーマン首相がラホールに行かれて、ブット・パキスタン首相と歴史的な握手をなされ、抱擁なさった。このことは大きく日本新聞にも取り上げられ、われわれは心ひそかに、そのことのなったことを喜んだのであります。承認が先か、戦犯の釈放が先かという問題が残っておりましたけれども、パキスタンが、ブット首相がバングラデシュを承認なされ、そういうような歴史的な会見がなされたということでございました。こういうふうに、インド亜大陸の平和は著しく進展しておると考えるのであります。これらの点にかんがみまして、大平外務大臣は今後どのような、日本政府としてバングラデシュ人民共和国に対する協力、援助について日本政府の政策を進めていこうというお考えでございましょうか。何しろあれだけの大きな戦禍を受けて、いまなおその傷あとのいえない状態にあるバングラデシュ人民共和国に対して相当な協力、援助をすることが望ましいと思うんでございますが、その点、外務大臣の御所信を承りたいと思います。
  88. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) バングラデシュの国会議員の各位の御来日を政府としても心から歓迎いたします。そしてまた、西村先生御指摘のように、バングラデシュとパキスタンの間に和解が成立いたしましたことは、日本政府としても心から祝福いたしたいと思います。  で、今後バングラデシュに対するわが国の協力の方針についてのお尋ねでございます。一九七二年の二月に同国を承認いたしまして以来、緊急人道援助、それから捕虜の送還促進に対する拠出金の形で、相当巨額の貢献をわが国としてもやってまいったわけでございまするし、ラーマン首相も御来日になりましたし、また、それにこたえて、先般日商会頭永野氏を団長とする使節団も派遣いたしました。ただいまわれわれが検討いたしておりますのは、ラーマン首相御来日の際のお話し合いの結果、九十億円の円借款の検討を進めておりまして、これはわが国の経済協力史上最も有利な条件、一・八七五%という一番低率の円借款でございますが、その細目をいま交渉いたして詰めを急いでおるわけでございます。今後の問題といたしまして、何といたしましても、食糧生産、農業協力中心といたしまして、技術協力、農業技術協力を中核とする御協力を精力的につとめてまいらなければならぬと考えておりまするし、その他もろもろの案件がバングラデシュ側から出てまいりましたときには、誠意をもって検討をいたしまして、政府として可能な限りの援助は惜しまないつもりでおります。
  89. 西村関一

    ○西村関一君 インド亜大陸は七二年に大干ばつがあり、七三年には大洪水があった。干ばつに次ぐ大洪水に見舞われて、かなり食糧難におちいっていなさるというふうに承知いたしておりますが、農業の基盤の整備の問題、農業の技術協力の問題等について、ただいま大臣から、バングラデシュに対する協力を惜しまないというお話がございましたが、その点につきまして、ただいま外務省経済協力局長がお見えになりましたが、具体的にバングラデシュに対してどういう協力援助をお考えになっていらっしゃるか、また、バングラデシュ側からどういう御要求があって、これにどのように対応しようとなすっていらっしゃるかということを伺いたいと思います。
  90. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 御承知のように、バングラデシュは、開発途上国を分けましていろいろなふうな分け方がございますが、いわゆる後発開発途上国という中に入り得る国かと思うんで、こういう国に対しましては、日本といたしましても、特にアジアにありますこういう国に対しましては、極力援助を続けなければいけない、特にまた、いい条件でやらなければいけないということは、非常に気にしておる点でございます。そこで、もちろん人口がたいへん多いというような点、食糧に非常にむずかしい問題があるというような点に特に目をつけまして、先方からの要請もございまするので、農業技術の改良とか、あるいはさらに農業の、特にお米等と思いますが、いいものを普及させるとか、そういうような点に今後重点を置いて協力をしていったらと存じております。パキスタン時代に、すでに、バングラデシュ、当時の東パキスタンに農業センターのようなものをつくりまして、協力したことがございますが、これはすでに期限が切れて、先方が運営している形になっておりますが、こういうところを中心に、さらにまた新たな構想に基づいて、技術協力、資金協力等兼ねて、こういう新しい農業技術を普及していくというようなことができればたいへんけっこうじゃないかというふうに考えております。
  91. 西村関一

    ○西村関一君 農業以外の点につきましては、どういうことを考えておりますか。   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕
  92. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 農業以外の点ではいろんな点がございますと思いますが、さしあたりの緊急な問題でありますことは別といたしましても、長期的には、たとえば交通とか通信とか、そういういわゆる基礎的な問題点と取っ組むのが一番優先的に考えられる点かと存じております。
  93. 西村関一

    ○西村関一君 まだ、戦後処理の問題につきまして、これら三国の間に十分な処理ができてないのでございますが、これはシムラ協定、ニューデリー協定の成果がまだ十分期待されていない。これに対して日本国政府も国連を通じて援助をなすっておられるということも承知いたしております。一日も早く戦後処理が完全に遂行されますようにわれわれは期待しておるんでございますが、政府としては、この時点で今後どういう援助をしていこうとお考えになっているのか、外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  94. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほどもお答え申し上げましたように、バングラデシュ側から、いわゆる食糧援助、円借款中心に御協力の要請がございまして、それにとりあえず応じてまいっておるわけでございますが、今後、仰せの戦後復興等につきまして、どういうプロジェクトがどういう姿において御要請がございますか、具体的な御要請を待ちまして検討するにやぶさかでないわけでございますが、一つの大きな橋の御計画でありますことは御案内のとおりでございますが、これ自体、十キロにも及ぶ大きな橋でございまして、どの時点にどうするかというような意味調査につきましては御協力を申し上げておるわけでございますが、これを本格的に取り上げるまでにはまだ至っていないわけでございます。その他、どういう案件が持ち出されてまいりますか、私どもまださだかでございませんけれども、先方の政府といたしましても、国づくりのためにいろいろな御計画を今後あみ出されることと思いまして、日本に御相談がございましたならば、われわれとしても真剣に考慮する、検討いたしますことにやぶさかではございません。
  95. 西村関一

    ○西村関一君 前回の本委員会においても私は少し質問をいたしましたが、インド亜大陸の三国に対しては、アメリカ合衆国、それから中国、ソビエト連邦、それぞれの立場で援助活動をやっている。それはただ単に経済技術援助にとどまらないで、軍事援助も続けてやっている。こういう状態の中で、わが国といたしましては、アジア外交を推進するという日本政府外交方針の一つの柱に立つならば、これらの三つの国に対して、特に新しいバングラデシュ人民共和国に対しては、まず戦後処理の問題、それから経済技術援助の問題、これには格段の力を添えていかなければならない。アメリカがどうであれ、ソ連がどうであれ、中国はバングラデシュには協力いたしておりませんけれども、そういう軍事援助をやっておろうとやっておるまいと、われわれのほうとしては、それ以上の援助をしていかなければならぬ。戦後処理の問題と経済技術援助の問題につきまして、より多くの援助をしていかなければならぬと思いますが、これは、いま私が申し上げました三つの国、その他の諸外国の援助に対しまして、まだまだ十分だとは言えないと思うんでございますが、そういう点について、ソ連からどれだけの援助を受けているか、またアメリカからはどのような援助を受けているかということについて、ひとつ大臣を補佐している政府委員の方々から伺えればけっこうだと思います。
  96. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) どうも申しわけございませんが、これらのインド亜大陸におきます三カ国につきましての、ソ連の援助が現実にどうなっているか、アメリカの援助が現実にどうなっているかという資料を、きょう持ってまいりませんでしたので、お許しを得られるならば、後ほど調べてお答えさしていただきたいと思いますが、仰せのように、ソ連、中国は別にいたしまして、その他の国は、インドにつきましても、パキスタンにつきましても、コンソーシアムというのを形成しております。これは普通のコンソーシアムということばとちょっと違いまして、援助の協議のためのグループのようなものでございます。バングラデシュにつきましても、昨年三月三十一日と四月一日に、これはコンソーシアムという名前じゃございませんが、協議グループという名前で、会合がダッカで開かれまして、私が日本を代表して行ってまいりました。その際、いままで申し上げましたように、バングラデシュに対します援助については種々前向きの発言をするように訓令を受けて参ったわけでございますが、一つここで、先ほどの先生おっしゃいました戦後処理ということと関連して問題のございますのは、インドにつきましては、御承知のように、過去の債務の返済を繰り延べるという問題がございまして、円借款の中の多くの部分がそれに使われておる。パキスタンも同様なことがございます。バングラデシュにつきましては、本来ならば過去の債務というのはないわけでございますが、パキスタン側の主張がございまして、東パキスタンに使われた、つまり東パキスタンに実際に存在しているプロジェクトに対して使われた援助については、もうことしの六月三十日以後はパキスタン側が責任を持たないというようなことを言っておりまして、その点について、もしかりにその返済が行なわれないというようなことになりますと、わが国といたしましては非常に困難な地位に立たされますので、この点につきましてバングラデシュ側とも御相談しなければいけないという問題が一つ残っておりますので、それがありますために、思うようにバングラデシュとの援助の問題、特に資金協力の問題が話が進んでいかないというのが現実でございます。ただ、技術協力等につきましては、そういうことと関係なしに協力を進めてまいっておりますということだけは申し上げられると思います。
  97. 西村関一

    ○西村関一君 いまの旧東パキスタンを含めてのパキスタンに対する円借款の問題の債務の問題、それのパキスタン側の意見が出ておりますが、バングラデシュ側からは、まだ折衝の段階には入ってないのですか。
  98. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) バングラデシュとも、いま申し上げた昨年の三月三十一日と四月の一日にございました援助会議の席上、協議グループのメンバー諸国とバングラデシュの政府の当局者との間の非公式な話し合いがございましたが、その後いろんな意味で非公式に話し合いは続いてきております。ただ問題は、パキスタンのほうの側が言っております、ここまでが自分の責任だと言っておりますものと、バングラデシュのほうの側が、ここまでが自分の責任だと考えておられると想像されますものとの間にギャップができると、つまりその部分だけ返済が行なわれないという問題が生じますので、そういうことが終局的には起こらないように両方の話をうまくまとめるということが肝要なこと、日本の目から見て肝要なことでございます。これには、最近までパキスタンがバングラデシュの承認を行なっておりませんでしたものですから、直接の話し合いができないという状態にございましたが、最近のイスラム首脳会議を契機に承認ということが行なわれましたので、今後はもう少しこの話し合いの進度が速くなるのではないかと期待しておる次第でございます。
  99. 西村関一

    ○西村関一君 いまお話しのような問題につきましては、できるだけ早く、また双方のよき了解のもとに日本との問題が解決することを期待いたします。現地の大使等を督励せられて、一日も早くこれらの問題の処理に当たっていただきたいということを私はこの機会に期待をいたします。  ただ、この際、その戦後処理の問題で、百九十五名の戦犯をどうするかということに対する点でありますが、これは、パキスタン側にはパキスタン側の意見がある、バングラデシュ側には国民感情がある。三百人からの人たちがあの騒乱のときに犠牲者になったんでありますから。非常な傷あとが深いのでございますから、そう簡単には、この百九十五名については、どう処理するかということはなかなかむずかしいと思いますけれども、これは何とか早く処理する方向に日本政府としても側面的な努力をしていく必要があるんじゃないか。たとえば、当時はまだ東パキスタンの領内で起こったことでありますから、パキスタンの国内法によってこれらの戦犯下の人たちが刑を受ける、つまり裁判にかけられて処刑される、刑を受けるというようなことになることが一番願わしいと思いますが、バングラデシュ側の国民感情がありますから、なかなかそれはむずかしいと思いますけれども、そういうこともあって、日本政府としてはにわかに、こうしろ、ああしなさいというようなアドバイスはできないかもわかりませんが、これを早く処理することが、このせっかく和解の方向に踏み切った時点において、非常に大事な点ではないかと思うのでございます。これは、参事官、中江さん、どうお考えでしょうか。
  100. 中江要介

    説明員(中江要介君) 御指摘の百九十五名の戦犯の取り扱いというのは、ずっと、ただいま先生もおっしゃましたように、関係三国間でむずかしい問題になっておりますし、またその背景も非常に入り組んでおりますし、御指摘の国民感情もありますので、もちろん日本政府として、こうしろ、ああしろということはできない相談でございますけれども、バングラデシュ独立をわが国が承認しまして以来、一貫して私どもの主要関心事の一つで、パキスタンに対しても、バングラデシュに対しても、またインドに対しても、このインド亜大陸の早い安定した、定着した和平のために、この問題について鋭意検討して、いい解決に向かっていただきたいという関心のほどは繰り返し表明しております。で、この問題が、御承知のように、一応当面の重大な目標であるバングラデシュの国連加盟にも関連しておるように聞いておりますし、日本政府としては、早くこの問題がいまの好転した雰囲気を背景にして解決を見て、バングラデシュが国連に迎えられる日を早く招来するように私どもも努力していきたい、こういうふうに考えております。
  101. 西村関一

    ○西村関一君 まだ質問が残っておりますけれども、私の持ち時間が終わりましたから。
  102. 星野力

    ○星野力君 私は、インド亜大陸ではなくて、インド洋の問題について質問をしたいと思います。  アメリカがインド洋のジエゴガルシア島に新しい軍事基地を設ける計画は、三月四日アメリカ議会に提出されたシュレジンジャー国防長官のことしの国防報告でも言及されております。このジエゴガルシア島の基地の問題は、いろいろの意味日本にとっても無関心では済まされない問題だと思うのでありますが、政府の見解はどうかということを、まずお聞きしたいのです。
  103. 角谷清

    説明員(角谷清君) ジエゴガルシア島のアメリカの基地というお話でございますが、この件につきましては、元来英国の基地でございますが、これをアメリカとイギリスとの間におきまして話し合いが行なわれまして、近々ここに基地を拡張するという話になった模様でございまして、そのための補正予算、一九七四年度の補正予算に二千九百万ドルを要求するという話になったようでございます。これにつきまして日本政府の態度というお話でございますけれども、まあこれは日本政府として特にコメントする立場にはないと存ずるわけでございます。この基地自体は、これは補給の基地、元来この基地は通信関係の基地でございまして、これを補給支援の目的に拡張するという趣旨とわれわれは了解いたしておるわけでございます。
  104. 星野力

    ○星野力君 どういう基地かということをお聞きしておるのではなしに、この基地がアメリカの基地としてつくられることに対して日本政府がどういうふうな考えを持っておられるかということを聞いたのです。  インド洋を平和の地域にしなければいけない、非核武装地帯にしろというのが、多くのインド洋沿岸国の願いであります。政府の声明なども、しばしばこれは出ておる。そのインド洋のまん中に、いま申された通信施設や艦艇が利用する施設がつくられる。それだけではなくて、戦略空軍も使用できる施設や、さらに核貯蔵所もつくられるというふうに伝えられておる。そのような軍事基地がつくられることに、私は、インドをはじめ多くの政府がいち早く反対の意思表示をしておると思うのです。七四年の予算と言われましたが、今度の国防報告、七五年度の問題の報告だと思いますが、そこで新たな追加予算も要請しておるということをシュレジンジャー国防長官は言っております。政府では、どこの国とどこの国の政府がこの基地に対する反対の意思表示をしたか御存じだろうと思いますが、私全部は知らないので、ひとつ名前をあげていただきたいと思います。
  105. 角谷清

    説明員(角谷清君) われわれが了知いたしております国といたしましては、ソ連、中国あるいはインド、バングラデシュ、スリランカ、マレーシア、インドネシア等、いろいろトーンの違いはございましょうけれども、反対とか、ないしは懸念を表明しておるというように了解いたしております。
  106. 星野力

    ○星野力君 アフリカはタンザニアでしたか、それからオーストラリアやニュージーランド政府も反対意思を表明しておるのではなかったでしょうか。
  107. 角谷清

    説明員(角谷清君) タンザニアについてはちょっとはっきりいたしておりませんけれども、オーストラリア、ニュージーランド——オーストラリアの外務大臣が、本件につきましてはインド洋における長期目的の達成には貢献しないというような趣旨の発言をされておられるようであります。ニュージーランドも、ニュージーランドの首相は、特に本件に言及しておるわけではございませんけれども、インド洋におけるいかなる国の海軍のプレゼンス増強も歓迎しないという趣旨の発言をしておられるようであります。
  108. 星野力

    ○星野力君 そのように、インド洋周辺、それから南太平洋の諸国も含めまして、それからそれらの沿岸国ではございませんけれども、ソ連や中国にしましても反対の意思表示をしておる。たくさんの国の政府が反対の意思表示をしておる、そういう問題でありますね。それで、日本政府はどうなのかと、こうお聞きしておるわけであります。この基地がつくられることを歓迎するのか、反対はしないのか、大臣、いかがでございますか。
  109. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本政府として特にコメントするつもりはありません。
  110. 星野力

    ○星野力君 これは日本としても関心を持たざるを得ない問題だと思うのですが、コメントできない、意思表示できないと、こうおっしゃるのですね。なぜでしょうか。まだ検討しておって結論が出ないということですか、将来にわたってもこの問題については発言する考えはない、こういうことでございましょうか。
  111. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ、インド洋について関心の深い国々からいろいろな意思表示がされておるということは承知しておりますが、日本といたしまして特にこの案件を取り上げてコメントするつもりはありません。
  112. 星野力

    ○星野力君 この関係の深い国がいろいろ意思表示をしておるけれど、日本はその意思表示をする考えはないと、こうおっしゃるわけですが、日本はあまり関係がないと、こういう見地でございますか、この問題には。
  113. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 特にコメントをする立場にはないと思います。
  114. 星野力

    ○星野力君 シュレジンジャーの報告、私もこれはまだテキストを見ておるわけじゃないのですが、新聞報道によりますと、インド洋から太平洋にかけての海上交通路を保護するというような問題も、このことに関連して言われておるようでありますが、そういうこと。また、直接今度の国防報告じゃありませんが、インド洋−太平洋の海上交通を保護するために日本の海上自衛隊との協力も望ましいということを、アメリカはしばしば、こう表明しておる。そういう関係のある問題でもあるわけでありますが、大臣、これはコメントする必要のない問題ということで済ましていいのでしょうか。重ねてお聞きします。
  115. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 星野議員の御意見として承っておきますが、日本政府としては特にコメントするつもりはありません。
  116. 星野力

    ○星野力君 まるでこれでは取りつく島がないわけでございますが、それではひとつ解釈をお聞きしたいと思うのですが、このジエゴガルシアの基地は、一体どういう目的で新たにアメリカが軍事基地として整備しようとしておるのか、その辺のことを、ひとつ外務省の情報に基づいてお聞きしたいと思います。
  117. 角谷清

    説明員(角谷清君) この基地は、先ほど御説明申し上げましたとおり、元来海軍の通信施設があった所でございまして、それを、アメリカといたしましては、おそらく当該地域の一般的な国際情勢というようなものを考慮いたしまして、この基地を拡張するということがアメリカの国益あるいは世界の平和のためによいのであろうという考慮のもとに行なったものであろうと、われわれは推測するわけでございます。基地の拡張と申し上げましたけれども、具体的には、艦艇に対する支援施設の改善とか、現存の滑走路を若干延長するとか、貯油施設、宿舎の増設等を行なう、こういうことであるとわれわれは了解いたしております。
  118. 星野力

    ○星野力君 今度のシュレジンジャー国防長官の国防報告では、このジエゴガルシア島の基地の問題に関連しまして、「中東の現状とソ連海軍力の拡張およびその全世界への展開からみて、」云々と、こういうふうに関係づけられておるのでありますが、明らかにソ連海軍力の拡張というようなことを一つの対象にしておりますし、それから中東情勢というものをにらんでおるかとも思うのでありますが、ソ連は別にインド洋に基地を持っておると思わないですが、持っておりますか、どうですか。
  119. 角谷清

    説明員(角谷清君) まあ、私ちょっと、ソ連が基地をどこに特に持っておるということは所管もございましてよく存じませんけれども、ソ連のインド洋における海軍力が増強しておるんではないかということは、これは一般によく現在考えられておる、推測されておるところであろうと思います。
  120. 星野力

    ○星野力君 このジエゴルシア島の基地というのはどの面から見ても非常にこれは挑戦的な、挑発的なアメリカの戦略の展開だと思わざるを得ないんです。大体、中東でアメリカに戦争をいどむような国などはこれはもちろんありゃしません。それだけの力を持った国はどこにもないわけでありますが、中東というならアメリカのほうがアラブ諸国をおどかしておると言わなければいけない。イスラエルに軍事援助をやる一方で、軍事力でアラブ産油国の油田地帯を占拠する作戦というものが計画されておるということが伝えられております。イギリスやフランス軍事権威筋からもそういうことが伝えられておることは御存じだろうと思うんですが、実際にアラブ産油国はアメリカの軍事介入に不安を感じております。それらの産油国がそのような事態に備えて、みずからの手でまさかの場合には油田を爆破する手はずを整えておるということがしばしば報道もされておりますが、そのようなことになったら中東が第二のインドシナ化するだけでなしに、それこそ日本は正真正銘の石油危機に見舞われると思うんであります。ジエゴガルシアの基地なんというものはそういう情勢を鎮静させるんじゃない、インド洋の緊張を増し、中東の緊張を増す、その方向にしか作用しないと思うんであります。コメントはしませんと、そういう立場でありませんということで無関心を装っておっていい問題だとは私思わないんであります。日本政府に勇気があるならば、アメリカに警告すべきだと思うし、はっきりと反対の意思を示すべきだと思うんであります。そのお考えはございませんか。
  121. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほどお答え申し上げたとおりでございます。
  122. 星野力

    ○星野力君 じゃこの問題ではまたあらためて大臣の答弁を引き出す方法を考えてみましょう。  私、前に金大中事件について質問したんでありますが、きのう、きょうあたりの新聞にちょっとこの問題にも触れて報道がされておりますが、政府はこの問題をこのまま時日の推移にまかせておくしかない、当面手の打ちようがないと考えておられるのかどうか、もう一度この機会にお聞きしたいと思います。
  123. 中江要介

    説明員(中江要介君) 金大中事件につきましては、昨年十一月二日に日韓両国の首脳の間で外交上の決着をつけたということを踏まえてその後外交が進められているわけでございますが、外交上の決着がつきましたときにはっきりさせられておりましたように、この事件は国際的な刑事事件であるので日韓双方で捜査を引き続き継続する、そうして継続された捜査の結果から新たな事実が出て、そのことによって公権力の行使が日本であったということが新たに判明した場合には、本件はもう一度取り上げて外交上の問題とすることあり得べしという点は留保されておるわけでございます。したがいまして、この日韓両国で行なわれております捜査についてその結果を注目して待っているというのが一つの面でございます。もう一つの面は、外交的決着を見ましたときに、金大中氏は出国を含めて自由であるということが韓国の首脳によって明らかにされておりますが、その出国を含めて自由である金大中氏が、はたして自由にその後行動していかれるのかどうか、この点は常時日本政府としてはきわめて高い関心を持って見詰めておりますし、機会あるごとに韓国政府に金大中氏の自由についての注意を喚起し続けてきておりますが、現在までのところ残念ながら金大中氏に出国のための旅券が交付されたという事態には至っておりませんけれども、このことは政府がただ時にまかせて放置しているということではないことは御理解いただきたいと、こう思うわけでございます。
  124. 星野力

    ○星野力君 時間が来たそうですから中途半端で打ち切りますが、放置しておくのではないと言われるけれど、実際何もしておられない、こう思わざるを得ないわけですね。手の打ちようがないようなことを毎々これは大臣も言っておられるんで、それで重ねてお聞きしたんですが、放置しているわけじゃないって、どういう手を打っておいでになるんですか。
  125. 中江要介

    説明員(中江要介君) 第一の問題点である捜査についてはわがほう捜査当局も捜査の進行、それから韓国における捜査の状況について、随時日本政府から韓国政府に対してその状況を照会し、早くその結果の出ることを期待しているということは重ね重ね申しておるわけでございます。金大中氏の自由につきましても、これは東京におきましてもソウルにおきましても、機会あるごとに日本の注意の存するところを先方に強く申し入れているわけでございますけれども、これは何ぶん韓国の国内の一私人としての金大中氏の出国手続ということで処理しているということでございますので、おのずからそこに外交上の制約がございますけれども、そのぎりぎりのところまで先方に要請し続ける、それが私どものできる精一ぱいのことではないか、こういうふうに思っております。
  126. 星野力

    ○星野力君 毎度毎度同じことを言っておられるわけでありますが、それで実際の事態はちっとも進まないということに私たち不満を持っておるんであります。しかしいまもう時間がないからやめろということでございますし、これ以上続けても結論出そうもありませんからこれで打ち切ります。
  127. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後零時三十七分散会      —————・—————