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1974-03-08 第72回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月八日(金曜日)    午前十時三十一分開議  出席分科員    主査 渡辺 栄一君       塩谷 一夫君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    渡部 恒三君       上原 康助君    金子 みつ君       中村  茂君    八木 一男君       山中 吾郎君    木下 元二君       津川 武一君    高橋  繁君       林  孝矩君    兼務 井上 普方君 兼務 大柴 滋夫君    兼務 岡田 春夫君 兼務 小林  進君    兼務 山田 耻目君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)     町村 金五君  出席政府委員         内閣官房長官 大村 襄治君         厚生大臣官房長 曾根田郁夫君         厚生大臣官房審         議官      三浦 英夫君         厚生大臣官房会         計課長     木暮 保成君         厚生省環境衛生         局長      石丸 隆治君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 高木  玄君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君         厚生省保険局長 北川 力夫君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         厚生省援護局長 八木 哲夫君         社会保険庁医療         保険部長    柳瀬 孝吉君         社会保険庁年金         保険部長    出原 孝夫君  分科員外出席者         警察庁刑事局保         安部防犯少年課         長       武田 安雄君         行政管理庁行政         管理局管理官  門田 英郎君         大蔵省主計局主         計官      梅澤 節男君         文部省大学学術         局審議官    笠木 三郎君         社会保険庁長官 加藤 威二君         日本電信電話公         社営業局長   玉野 義雄君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月八日  辞任         補欠選任   塩谷 一夫君     左藤  恵君   多賀谷真稔君     山中 吾郎君   八木 一男君     土井たか子君   木下 元二君     寺前  巖君   山田 太郎君     新井 彬之君 同日  辞任         補欠選任   左藤  恵君     塩谷 一夫君   土井たか子君     八木 一男君   山中 吾郎君     中村  茂君   寺前  巖君     多田 光雄君   新井 彬之君     林  孝矩君 同日  辞任         補欠選任   中村  茂君     金子 みつ君   多田 光雄君     紺野与次郎君   林  孝矩君     高橋  繁君 同日  辞任         補欠選任   金子 みつ君     上原 康助君   紺野与次郎君     津川 武一君   高橋  繁君     山田 太郎君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     多賀谷真稔君   津川 武一君     梅田  勝君 同日  辞任         補欠選任   梅田  勝君     木下 元二君 同日  第一分科員大柴滋夫君、山田耻目君、第四分科  員岡田春夫君、第五分科員井上普方君及び小林  進君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十九年度一般会計予算厚生省所管  昭和四十九年度特別会計予算厚生省所管      ――――◇―――――
  2. 渡辺栄一

    渡辺主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和四十九年度一般会計予算及び昭和四十九年度特別会計予算中、厚生省所管を議題とし、前回に引き続き質疑を続行いたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。山中吾郎君。
  3. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私は酒害問題についてお聞きいたしますが、毎回同じ質問を繰り返しておるので、厚生省ではもうおそらく有名になっているはずでありますが、厚生大臣は年々交代するものですから、交代するたびに厚生大臣関心を深めて、何とかもう少しアルコール中毒患者に対する対策とか、あるいは酒害予防をもっと予算裏づけの上で前進するようにしたい、そういう念願でお聞きいたしますので、厚生大臣もお聞き願いたいと思うのであります。  実は、前の質問によって前厚生大臣酒害相談事業は何とか進めたいという答弁があったわけでありますが、これもなかなか実現をいたしません。幸い、最近武蔵野市に、市が直接取り上げて、この酒害相談事業が自治体の予算裏づけ実現をいたしておりますので、これを先例として厚生省で全国的に助長行政をひとつ推進していただきたい。その例として申し上げますが、武蔵野市の保健所幸池主事という非常に熱心な主事がおりまして、また幸いに、武蔵野市には酒害問題の日本の草分けである小塩さんという人がおりますが、さらに精神病院に何回かごやっかいになって、そして自分の意思でアルコール中毒を克服した人々によって断酒会という組織をつくり、アルコール中毒救済するボランタリー団体がある、その指導者三人がちょうど呼吸が合って、あそこに一つ酒害相談というものが軌道に乗っておるわけであります。そうして市のほうでは会場を無料で貸す、それから精神病院に入っておるアル中患者を、病院連絡して断酒会の会合に参加をさす、そのときの入会金とかあるいは交通費とか、それを市が持ってそこに参加さしておる。で、幸池主事の話によりますと、アル中にかかった者はたいてい生活の道が断たれて生活保護の対象になっております。年間大体八十万ぐらいの金がそのために使われておる。しかし何回か精神病院に入り、その間酒をやめたが、しゃばに出るとまた飲む。繰り返し家族を非常に不幸におとしいれ、家庭が崩壊するような姿の中で、自分はやめたいけれどもやめられない。入っては出、入っては出、そうして生活保護を十年も続けておる。そういう者をこの断酒会参加をさすことによって、昨年もそれを克服した者があります。そのために市としては八十万を生活保護からはずすことができて、そういう意味の節約にもなっておる。むだなアル中家庭生活保護に八十万使うよりは、断酒会関連を結びつけながら何名でもそこで救済をすれば、もともと素質の優秀な者でありますから、酒さえやめればまた社会活動が十分でき、家庭もまた楽しいものにし、就職すれば能力を発揮するので、すぐ保護家庭から卒業できるわけであります。そういうことが行なわれておる。私は、非常にいい例でありますので、ぜひこれを、各市町村において保健所中心断酒会連絡をしながら、アルコール中毒患者救済する事業予算裏づけを持ちながら、国が補助をしながら、全国的の市町村アル中患者救済する事業予算裏づけをもって実施をしてもらいたい。非常に大きい意味があると思うのであります。その点について厚生省の皆さんもよく御存じのはずでありますので、具体的な来年度からの出発でけっこうでありますから、御意見を承っておきたいと思うのであります。
  4. 三浦英夫

    三浦政府委員 私ども新年度アルコール中毒対策につきましての予算というか政策の概要を御説明させていただきます。  第一点といたしましては、やはりアルコール中毒患者の方が早く病気がなおるようにということから、臨床研究を四十八年度に引き続きましてやっていきたいと思っておる次第でございまして、所要研究費計上させてもらっている次第でございます。  第二点といたしましては、アルコール中毒患者さん方の専門ベッド増床していきたい、こういう観点から来年度精神ベッド関係で約六百床の増床をする予算計上させてもらっておりますが、相当部分をアルコール中毒患者のための専門ベッドのほうに充てていきたい、かように思っている次第でございます。  第三点といたしましては、各都道府県に精神衛生相談所あるいは保健所がございます。そこにおける相談機能充実強化をしてまいりたいと思いまして、所要補助金計上させてもらっておる次第でございます。  第四点といたしましては、やはり民間の方の御協力を得ていくことが必要でございますし、アルコール中毒につきましての正しいなおすための知識普及、こういうことから、民間協力を得まして、知識普及のための活動費計上しておる次第でございまして、大体この四点を主眼にいたしまして四十九年度に臨みたいと思っておる次第でございます。
  5. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 その具体的な内容について、いま申し上げたように武蔵野市がやっておるような実態がどこの市町村でも実現できるような方向予算計上のしかたで努力してもらいたいと思うのであります。大体全国的に精神病院に一定の期間自分アルコール中毒をなおすために入っておる患者が年々ふえており、おそらく十万近くになっておるのではないか。希望するけれどもベッドがないために入れない者もその三倍ぐらいはあると私は見ておるわけであります。ところが入院をしても、そのまま社会に出ては、また繰り返すだけであり、断酒会という集団の中に参加することによって、そういう者だけが長い間のアル中をみずから克服しているということが実験上明らかである。したがって、この民間断酒会普及するように、それに参加するための交通費とか必要な費用を援助してやるという予算裏づけがないと、そういうものは実現しないと思う。そういう内容について具体的にまた御相談したいと思いますが、実現できる方向予算計上のしかたを研究してもらいたい。そのために私は武蔵野市の話をしたわけであります。  それをなぜ私は申し上げるかといいますと、正式にいえば、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為防止等に関する法律、国会の婦人議員団体中心となって、そうしてできたいわゆる泥酔防止法、これが現実にあるのでありますけれども、どの程度に実施をされておるかどうかについて、この機会に警察当局からもお聞きしたいのでありまするが、特にその中の第七条に、警察官は、「酩酊めいてい)者を保護した場合において、当該酩酊めいてい)者がアルコール慢性中毒者又はその疑のある者であると認めたときは、すみやかに、もよりの保健所長通報しなければならない。」という条文がある。これは現実に実行されておるかどうか。
  6. 武田安雄

    武田説明員 お答え申し上げます。  警察といたしましては、これを厳重にやっておりまして、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為防止等に関する法律が施行されました翌年の三十七年に比較いたしますと、昨年四十八年は、その三条に基づいて保護した者の数は約二・七倍になっております。
  7. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 第七条に基づいて保健所長通報しなければならぬという義務があるのだが、酔っぱらいを保護した、それはアル中患者らしい、そういう者を保健所通報しておりますか。それだけお答え願いたい。
  8. 武田安雄

    武田説明員 通報いたしております。その数は、四十八年で千九百五十八人にのぼっております。
  9. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 これを受けて第八条に、保健所長はそういう者を「当該通報に係る者の治療又は保健指導に適当な他の医療施設を紹介することができる。」その前に「医師の診察を受けるようにすすめなければならない。」という義務づけがあります。ここのところに一つの問題があるので、医師診療というと結局精神病院なんですね。アルコール中毒患者は普通の精神病院じゃなくて、酒を飲まないときは普通の人間である。むしろ優秀な人間である。飲むと別人のごとくになる。したがって、それを普通の精神病院にほうり込んでも、その精神病担当医師も、ああアル中というものはなおらないものだ、入れて適当なときに出すということだけなんです。特別の治療も何もしていない。そのために少しも効果を発揮していない。むしろ精神病院から出たあと、精神病院に入った経験者の中でみずから克服した人々によって、そういう同じ苦しみから救済しようとしてできておる民間団体である断酒会、そこに参加させること、また参加した者のみが自分アル中を克服しているのであるから、どうも第八条の医療施設というものの中に普通に入らないものですから、そこには少しも通報したりしていないために繰り返しが行なわれておる。そして保護家庭として何十万という金をずっと同じように使っておるのが現実である。それで、第八条についての「他の医療施設」という点を拡大解釈をして、精神病院体験者組織しておる断酒会通報する。その断酒会を、この第八条に規定しておる「他の医療施設」の中に含んで通報されてはどうか。あるいはそれができなければ第八条を改正して、医療または保健指導に適当な他の施設ぐらいに改正をして、ぜひこのボランタリー組織である断酒会とそれから保健所、そして警察有機的関連を結ぶようにしてもらいたい。これは事実上まずそういう実行をしてもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  10. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かにおっしゃいますとおり、お酒というのはなかなか一人では、私自身もそうですが、やめにくい。やはりみんなが力を合わせてやめていく。断酒会組織という力というものは非常に大きいものだと思います。私も先生のお説に従いまして、各保健所連絡をとりまして、別に法律改正の必要がなくても運用でもできると思いますので、警察のほうから通報がありましたら、断酒会のほうにも連絡をとるという行政指導をやってまいりたいと思っております。
  11. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 厚生大臣、大体やりとりをお聞きになったと思いますが、私はよく前々から質問論理に、日本酒税は大体年間七千億も取っておる。それを、酒の値段の半分ぐらいは酒税だから、アルコール中毒になる者は毎日五合、一升飲んで、二十年、三十年飲んでおる者だから、酒税を一番飲んだ者がアル中になっているのだ。そしてアル中になった者が家庭を崩壊しつつあり、近隣に迷惑をかけておる。御本人も苦労しながら卒業できない。だから、この酒税目的税でないのでそういうものに還元するという論理はないけれども、酒税を七千億も取っておるのだから、このアル中救済するために国の施設において十分に救済をしてやるぐらいの手当ては、酒税の収入七千億を考えれば当然考えてやるべきものではないか。かりに千分の一を考えても七億である。これで国立アル中療養所設置もできるではないか。こういう論理を出しておるわけであります。そういうことでありますので、一昨日も税制についての質疑の中で、大蔵委員会で、私は主税局長も呼んで、その辺の厚生省の要求ある場合は十分考えるべきでないかという質問に対して、十分の理解ある答弁をしておるわけであります。ぜひひとつ齋藤厚生大臣のときに、この点についての予算に忘れないで努力してもらいたい。これは毎年厚生大臣がかわるものですから、しり切れトンボになって、なかなか十分の予算計上されない。今度の厚生大臣のところでひとつその辺を十分に御検討願って、もう何回も質問する必要のないように処理していただきたい。この間まで大蔵委員長もしておられた齋藤大臣でありますから、大臣の在職中にひとつよろしく願いたいと思うので御所見伺いたいと思う。
  12. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 このアルコール中毒、私もいろいろな悲惨な例を承っております。先ほど来お述べになりましたように、こうした対策を進めまするためには、やはり民間の方々の非常な御協力が絶対に私は必要だと思います。まあ断酒会と申しますか、そういうふうな民間組織の御協力というものは絶対必要である。そこで、先ほど先生がお述べになりましたように、警察保健所断酒会、こういう三者が一体になって、お互いに助け合って、アルコール中毒患者が出ないように、出ましたときにはこれを早く隔離、予防をするというような措置を講じていかなければならぬ、私も同感でございます。そういうふうな民間協力を得られるような予算、これは私絶対に必要だと思います。本年度多少芽は出しておりますけれども、まだまだ十分ではないと思います。それと同時に、やはりアルコール中毒患者に対する専門病棟をつくるということについても、厚生省も多少はやっているわけですが、まだまだこんなものではある意味からいえば十分ではないと思います。酒税との関係でそのうちの何分の一というふうなお話もございましたが、それはそれといたしまして、厚生省アルコール中毒に対する措置というものは十分でないと私も率直に思いますから、民間協力を得られるような相談事業の拡充なりあるいは病棟増設なりといったふうな方面に今後ともできるだけの努力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  13. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 それで、なお具体的に御提案願う参考に提案的な質問をして終わりたいと思うのですが、現在、アル中患者に対する特別の病棟のあるところは、久里浜国立病院それから国立武蔵野療養所、この二カ所だけであります。合わせて百九十ベッドぐらいしかないと思うのであります。そこに入りたい希望者の三分の一ぐらいしか収容できていないのではないか。また各府県に国立療養所がありますが、そこでもやはり特別の治療をできるように、別棟のベッドでなくてもアル中患者ベッドを指定をして増設を願いたい。そして、そのアル中患者保健所民間断酒会との三者が共同して初めて救済ができるのでありますから、そういう意味の全国的に希望者は全部入れるだけのベッドを準備するように予算要求を願いたい。それが一つ。  それから、お医者さんのほうでありますけれども、アル中患者に対する特別の知識と技術というものを身につけておる精神病のお医者さんは非常に少ない。したがって、診療医研修等について、厚生省において計画的に予算計上して実施するようにしてもらいたい。岩手の精神病のお医者さんなどの話でも、ああいうものはなおるものじゃないのだ、医学的に科学的にさばっとして、しばらく休養して、また帰って飲み、また入るものだ、こういう認識が大体多い。そこに精神病院に入った体験者組織しておる民間団体協力して初めてなおるということを認識をしておくことと、医者自身がそういうところに入れて初めてなおるのだという認識を持っていかなければならぬし、そういう知識を特に担当医師に対して厚生省学習計画といいますか研修計画を立ててもらいたい。これが第二点の提案です。  それから第三に、そういう種々の団体が入り、または断酒会を開き、またいろいろの研修会を持つ、あるいは、おとうさんあるいは夫がアル中にかかって困っておるおかあさんあるいは妻の相談する場所をも含んで、酒害予防センターというようなものを、私は一つ東京都の周辺でもいいが、この付近につくってやってほしい。この点、私は十月にヨーロッパに短期間視察に行ってまいりまして、酒害問題について非常に関心がありますので、その点禁酒組織の非常に発達したスウェーデンに参りまして、いろいろ視察をしてまいりましたが、向こうには国の補助民間協力によってりっぱな禁酒会館があります。ちょうど日曜日でありましたけれども、主義として禁酒をしておる人々が日曜日を利用して各部屋でいろいろの研究をし、社会奉仕計画を立て、一方においては社会教育的な事業を非常に広く進めているのを見て、非常に敬意を表してまいりました。ある部屋に行きますと、禁酒主義警察官が日曜日を利用して研究会を開いておりまして、交通安全のあり方について研究しておりました。アルコールをやめた余力を社会奉仕に使っておる姿を見て、私も非常に敬意を表したのでありますが、そのときに私との会話で、日本にはわれわれのような警察官禁酒組織はないのかと言われたのだが、私も残念ながらあるとは言えなかった。帰りまして警察庁のほうにも、警察官禁酒組織をぜひつくって、泥酔交通事故その他を取り締まる立場の中で、やはり主義として自分の節度ある生活一つのシンボルとして酒をやめようとする者の組織をつくり、スウェーデンからの要望もありましたが、そういう組織ができればひとつ警察官の交流をしたいという申し出もあったから、そういうものをつくったらどうかという提案をいましておるわけであります。そういうものができますと、たとえば警察官禁酒者組織、教師の禁酒者組織あるいは運転手禁酒者組織ができますと、そういう中に入っていろいろと学習をし研究をし、そして仕事を通じて社会奉仕事業一つのプランを立てるセンターになる。そういうものをつくっていただく中で、エゴイズムの中で、構造的に世相が退廃している中で私は新しい芽というものもできると思うのであり、アル中になってしまった人々家庭救済もあり、非常に大きな意味があると考えるわけであります。国立のそういうセンターというまでいかなければ、何か補助をする立場において、せめて東京厚生省中心になってつくってもらいたい。文部省には国立教育会館があり、全国の先生学習、集会その他の場所があそこにできております。厚生省にもそういうものがあってしかるべきであるというふうに思いますので、そういうことも含んで来年度予算計上について御検討願いたい。  三つほど御質問の形で提案を申し上げましたが、最後に厚生大臣の具体的な御所見を承って終わりたと思うのであります。
  14. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 アルコール中毒患者の収容、療養医療のための病床の増設の問題、さらにまたこうした医療に関する医師研修の問題、それから禁酒会館と申しますか断酒会館と申しますか、民間協力を得られるような形の会館設置三つの御提案があったわけでございます。私もこのアルコール中毒の悲惨な例を承知もいたしておりますから、何とかこれは食いとめなければならぬ大きな社会的な問題だと思います。そういう意味において、来年度予算において、どの程度できるか別といたしまして最大の努力をいたし、こういう悲惨な事例というものを少しでも減らすように今後とも努力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  15. 渡辺栄一

    渡辺主査 山中君の質疑は終了いたしました。  次に、中村茂君。
  16. 中村茂

    中村(茂)分科員 中村でございます。  最初に、韓国在住日本人妻の里帰り問題についてひとつ質問を申し上げ、的確なる対処をお願いいたしたい、こういうふうに思います。いまわかっているだけで韓国韓国人の妻になっている方が大体七百人程度いる、こういうふうにいわれております。このほとんどの人たちは、いまの中国の東北、敗戦当時の満州に報国団とかまたは開拓団員として行った人たちが、終戦のどさくさのときに韓国人たちに助けられて、それでいま韓国にいて韓国人の妻になっている。しかし、生活状態が非常に悲惨でありまして、李承晩前大統領当時は反日政策から非常に迫害されたり、その後現在の政権になって若干はよくなってきておりますけれども、全くの難民状態にほとんどの人が置かれています。しかも、ほとんどの人たちが子供を持ち亭主を持って、しかも橋の下に生活しているというような状態で、日本に帰って永住して生活するということもそういう事情の中から困難だし、そうかといって日本へたまに帰ってきてまた韓国に帰っていくというふうにいっても旅費すらない。こういう人たちがつくっている芙蓉会という会が組織されているわけでありますが、毎月七十円、五十円、二十円というような会費をきめて、その二十円ですら払う能力がない、こういう悲惨な状態にいます。したがって、せめても里帰りしたいという人については何らかあたたかい手を差し伸べて、手当というか補助というか、そういうことを厚生省としてひとつ考えていただきたい、こういうふうに思うわけであります。この点についてのお考えをお聞きいたします。
  17. 八木哲夫

    八木政府委員 韓国にいます日本人妻等の問題につきましては、先生から御指摘のように、終戦時大陸方面から引き揚げの途中に韓国に残留したという方々もおりますし、それ以外に、戦前から韓国に渡りまして引き続き居住しておった方、あるいは終戦後韓国へ渡った方、いろいろあるわけでございますけれども、人数は大体先生の御指摘のようなところではないかというふうに思われるわけでございます。  そこで、先生からお話がございましたように、かなり生活に困窮しているという方々もあるのではないかというふうに思われるわけでございまして、従来から外務省とも相談いたしまして、日本に永住帰国を望むという方々につきましては、いわゆる引き揚げの途中あるいは引き揚げ者、初めて日本へ帰るという方々も含めまして、厚生省あるいは外務省というところで旅費を負担する。それから日本へ来られました場合の生活の問題等につきましては、社会局等とも御相談いたしまして、生活保護等の援護措置を講じている次第でございます。  なお、里帰りの問題でございますけれども、里帰りの問題につきましては、現在やっておりますのは、つい昨年の暮れでございますが、中国につきまして里帰りの制度ができたわけでございますが、中国の場合には、韓国と非常に異なりまして、長いこと国交回復が行なわれなかった。したがいまして、戦後長いこと中国におられて一ぺんもお墓参りなり、あるいは親類や御家族とも話せないという、中国の場合非常に特殊な事情があった。それから旅費につきましても、中国の場合には相当の経費がかかるというようなことから、初めて中国につきましては認められたわけでございますけれども、韓国につきましては、すでに相当長い期間自由往来ができておるわけでございますし、さらに旅費等の問題につきましても、中国に比べましてそれほどの負担はないのではないかというふうな問題もあり、さらに現地の大使館等に永住帰国の問題につきましてはいろいろ希望が出ておりますけれども、具体的に里帰りの問題につきましては現地の大使館等にそういうような希望等のお話が出ておりませんので、私どものほうでは現在の段階では考えておらないわけでございます。  なお、最近韓国からお帰りになりました実績等を見ますと、昭和四十六年が六十七世帯、百七十四名、昭和四十七年が六十二世帯、百七十八名、昭和四十八年が三月七日現在で七十六世帯、二百二十一名という方々がお帰りになっておりますけれども、このうち引き揚げ者としてお帰りになっている方はその三分の一強程度でございまして、戦後渡航されたという方でお帰りになっているという方もかなりあるのではないかというふうに思われるわけでございます。  私ども、永住帰国という面での非常に生活にお困りになっているという面の援護措置につきましては十分考えたいと思いますが、里帰りの問題につきましては、先ほど申し上げましたような経緯もございますし、さらに現地の大使館等につきましてもそういうような話が出ておりませんので、先生からのお話でもございますので、現地の大使館等と十分連絡をとりまして調査等をいたしてみたいと思います。
  18. 中村茂

    中村(茂)分科員 私は、永住帰国はそれなりにこちらへ永住するわけですから、それはそれとして対処していただきたいというふうに思うわけですけれども、永住帰国したくても、やはり向こうのほうに亭主がまだいるとか、または子供が教育盛りであるとか、そういうことで、日本へ帰りたい気持ちはやまやまあるわけですけれども、永住ということは困難だ、しかしたまには日本へ帰りたい、しかし生活があまりにも困窮なために帰ることすらできない、里帰りすらできない、こういう人たちが非常に多くいるわけであります。御存じのように、そういう人たちに対して韓国人たちは、もう捨てられた民だ、こういう非難すら現地では起きているようなみじめな生活をしているわけであります。現地の大使館でそういう申し込みがないとか、または把握が不十分だ。把握することすら不十分なような難民的な生活をしているわけであります。ですから、自分で金があれば、国交回復しているわけでありますし、手続をとればきちっと帰ってこれるわけでありますが、帰りたくてもそういう事情で里帰りが全然できない。そういうことでありますから、特に先ほどお話がありましたように、中国からの人はそういう事情の中から道が開かれたわけでありますから、きちっとした手続と申請が行なわれれば何らかのそういう金銭的な措置をするように重ねて強く要望いたしたい、こういうふうに思います。大臣の御所感をひとつお願いいたしたい。
  19. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お述べになりましたこと、私も非常にごもっともだと思って拝聴いたしておるわけでございます。生活が非常に苦しくて、一時里帰りしたいと思っても、帰る金もない。私はほんとうに悲惨なことだと思います。こういう人々に対して何らかの旅費を支給するとかいうことの必要性は、私もそうだと思いますので、この問題はもう少し外務省とも十分相談いたしまして、何とか解決の道をさがすようにいたしたい、かように考えております。
  20. 中村茂

    中村(茂)分科員 この問題については、ひとつ積極的にお願いいたしたいというふうに思います。  次に、難病対策の問題について。これは私が申し上げるまでもなく、原因が全然不明ですから、治療方法もいまだに未定の人たちが難病ということで、四十八年で二十の指定を受けて、四十九年度で十増して三十のそれぞれ難病の指定を受ける、こういうふうに聞いておりますが、特に原因が不明であり、したがって治療方法が全く未定である、したがって難病。この面についての対策というのは、こういう難病についての調査、研究というものが前提にならなければならないというふうに思うわけであります。ところが、四十八年度には二十に指定して五億三千万円、今度四十九年度予算では十ふえて三十の指定になり、七億三千万円であります。確かに額はふえましたけれども、指定が十ふえたわけでありますから、一つ一つの病気というか、その指定からいくと、かえって研究費が少なくなった。難病はいま申し上げておりますように、そこのところが一番必要なんです。調査、研究、これは国際的にも連携を保って研究していただかなければならない問題であります。特に最近の生活様式というか、そういう中から難病というふうにいわれる人たちが非常に多くふえてきておる。この点については全く遺憾であります。したがって、調査、研究の若干の内容と、ふえたけれどもどうして一つ一つのこういう調査研究費が減ったのか、そういう点について考え方を明らかにしていただきたい。
  21. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かに、おっしゃいますように、そのままでまいりますと、五億三千万円が七億三千万円、二十を割る、三十を割りますと、先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、私どもが実際に難病の研究をやります場合に、かなりたくさんの医師団その他の研究者のチームをつくりまして、三十人あるいは五十人くらいの班編成で研究をいたしております。さような関係で、これから新年度に新しくやらせてもらうのは十疾病でございますけれども、実際にそういうチームをつくりましてやる準備段階がございます。そういたしますと、おそらく実際に研究に着手できるのは本年の後半のような状態になってまいりますので、もし私どもの七億三千万円の予算が通過した場合の予算執行の方法といたしましては、既存の二十疾病、特に先生昨年御指摘いただきました多発性硬化症等も含めまして、従来から研究をやっております分につきましては、五億三千万円よりもむしろふやして既存の分は研究をいたして、新しくまいります十疾病につきましては、そういう準備段階がございますので、やはり今年度既存の二十疾病よりは若干予算の執行その他がおくれてくるというような関係から、七億三千万あれば必要にして十分な研究ができるという所存でおる次第でございます。
  22. 中村茂

    中村(茂)分科員 その点については、これからもひとつ努力していただきたいというふうに思います。  同じ難病対策で、これは研究すると同時に積極的にお願いしたいということで申し上げるわけでありますけれども、離病という一つのはっきりした原因はわからないけれども病気、こういう人たちが非常に多いわけであります。一たん入院する、しかし完全になおらないけれども退院して、気持ちのいいときにはある程度仕事もできる。しかし療養というか通院しなければならない。療養しながらある程度仕事もしたい。ところが、そういうかっこうでありますから、いままでの形の中では、確かに身体障害者とかまたは精薄児、精神障害者、こういう人たちについては、それぞれの自治体とかまたは厚生省補助などを出して、仕事を訓練したり就職のための訓練をしたり、それから仕事をする場がそれなりにそれぞれできつつあるわけであります。ところが病気ですから、身障者ということになれば一つの手がない、したがって、片方の手と足を通じて一つの仕事の訓練ができるけれども、おまえは病気だからということで、仕事の訓練なり仕事をするところがない。また頼んで一つの企業に就職しても、常に通院し療養していかなければならない。こういう形の中で結果的には就職すらできない。しかも病原不明の病気で難病という名のもとに、言いかえれば、いまの状態では半永久的に、言い方は悪いけれども、半なま殺しのような状態生活していかなければいけない。こういう人たちの仕事の施設というものを考えるか、それとも、いま申し上げましたように、身障者とか精薄児、精神障害者等の職場訓練または収容、そういうところにそういう人たちも入れることもできるような制度にしていくか、それと次に、こういう人たちがそういう状況ですから、話し合って、自分でなけなしの金を出してそういう施設をつくって、五、六人寄り集まって、仕事の内容は非常に勤務時間も短くなりますし、または運動をしたり通院したり、そういう職場を自分たちがつくりたい、こういう意欲もあるわけであります。したがって、二番目の問題として、個人でありますけれども、そういう何らかの補助みたいなものを出すことができるような道があるのかないのか。ないとすれば、積極的にそういうことも考えていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
  23. 三浦英夫

    三浦政府委員 難病の患者さん方にはいろいろな症状がございます。確かに、難病におかかりになって、一ぺんなおってしまえばほとんど再発のおそれのないような難病の方もございますし、あるいは先生が御指摘いただきましたような、一ぺん緩解はするけれども、また悪くなる、また緩解をする、悪くなる、こういう繰り返し合いをしながらだんだん慢性化していくような種類の疾病状況もあるようでございます。多発性硬化症とかベーチェット病というのは、どうもそういうような長い闘病生活に入っていく方の疾病のようでございます。確かに、そういう関係から、先生の御指摘のようなことは御意見だと思います。  ただ、いわゆる身体障害者の施設とか精神薄弱の施設になりますと、症状の固定された方を対象としておりますけれども、いま申し上げましたような慢性化された患者さんは、常に再発の危険性を持った患者さん方のものでございますので、それはそれといたしまして、そういう患者さんの組織でするとか、あるいはそういう施設をするほうがいいかどうかも含めまして、十分慎重に検討してまいりたいと思っております。
  24. 中村茂

    中村(茂)分科員 いまの点についてはひとつよろしくお願いいたしたいというふうに思います。  それから難病、特に多発性硬化症に関連してもう一点お願いしたいというふうに思いますのは、国際的な機関であるMSとの関係については相当関係も持たれてきているようでありますけれども、患者人たちとMSの機関との関係については相当な経費もかかるということで、いまだに実施できないような状況にいるわけであります。昨年も私は何とか関連がとれるように、しかも若干の経費がかかるわけでありますから、こういう人たちに対してあたたかい手をこういう面からも望んだわけであります。したがって、相当内容等についても研究されてきたと思いますので、その辺のところをひとつ明らかにしていただきたい。  それから難病というのは、先ほど申し上げましたように、ことしで三十種類も指定されるというように非常に拡大されてきた。そういう患者さんも難病患者連絡会議というようなものを最近つくって、自分たちでもお互いに精神的にも励まし合って病気に耐えていこう、こういう運動が非常に強くなってきているわけであります。ですから国際的にはMSというような機関等の援助、それから国内的には難病患者連絡会議というものについて金銭的な若干の援助、保護というようなものについて積極的にひとつ研究し、対処していただきたい、こういうふうに思うわけであります。
  25. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かに多発性硬化症につきましては、先生の御指摘のとおり、現在ウイーンに国際MS協会というかなり権威の高い協会があるようでございます。多発性硬化症が日本だけの疾病でなくて、先進国のアメリカその他にもかなり多発されているような現状でございまして、こういうようなことから国際的な研究組織ができたものじゃないかと思う次第でございます。私どもといたしましても、特にこういう疾病につきましては、国際的な連携をとって、治療研究をさらに促進していくような努力を続けてまいりたいと思う次第でございます。  それから、特に患者さんの組織がどうかということでございますけれども、そういう組織に国費というのはなかなかむずかしいかもわかりませんが、いろいろ何らかの方法で患者さんを励ませるようなことの方途は研究してまいりたいと思っている次第でございます。
  26. 中村茂

    中村(茂)分科員 国費を直接出すということは非常に技術的にもむずかしい問題だと思いますけれども、何か中間的なそういう組織等を研究されて、それから医療機関というかそういうところ、学者先生などの御協力をいただいて、国も参加しながら中間的な組織をつくって、それでこういう人たち組織に対してあたたかい手を伸ばしていただく、こういう研究を早急にひとつしていただきたい、こういうふうに思います。  職の問題とそれからMS難病患者連絡会議等についての対策というか、全般的なこういう人たち対策に対しての大臣の所見をひとつお願いいたしたいと思います。
  27. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 こういうふうな難病と申しますか、疾病の原因もさだかでなく、治療法も開発されない、こういう方々がたくさんおるということはまことに遺憾なことでございます。そこで、先年来調査研究費、さらに疾病によっては公費負担という制度まで拡充してまいりました。しかし先ほど来お述べになりましたように、そういう方々でも、完全になおらぬにしても軽い仕事はやれる場合があるとかいうお話を承りました。それを聞いて、なるほどそういう方々には、精薄の施設にすぐ入れるかどうかは別として、そういうことも考えてあげるとか、いろいろな問題があると私は思います。でございますから、それぞれの疾病の症状によって違いますが、そういう方々の団体等の意見も十分承って、こういう方々が治療をしながらまた軽い作業もやれるならば作業に従事していくとか、そういうふうな方向で総合的に考えてあげるように今後とも検討をいたしてみたい、かように考えておる次第でございます。
  28. 中村茂

    中村(茂)分科員 お願いします。  次に、拠出国民年金に関連して、いま私がこれから申し上げたいというふうに思いますのは、拠出国民年金が三十六年四月一日に発足して、一年掛け金を行なえばそれぞれこの規定に基づいて手当が出るわけでありますけれども、特にこの発足前から難病にかかっていた人たちについては、その後制度ができたわけでありますから、その前にかかっていた人たちはこの規定が適用にならないで障害福祉年金が適用になる。それからこれが発足になってずっと掛け金をかけてきて、それで難病だというようになった人たちは、この拠出年金の国民年金のほうが支給になる。前から難病だといわれていた人たちもあとから難病になった人も、どちらも拠出年金はそれぞれかけている。ところがどういう結果が出てくるかといえば、その拠出国民年金のほうは、御存じのように一級で二万五千円、二級で二万円、これが物価とどういうふうにスライドしていくかという問題が確定してくればこれより上がってくる。ところが障害福祉年金のほうは、一級七千五百円、二級五千円、四十九年度予算からいけば、十月になって一級が一万一千三百円、二級が七千五百円、現在の状態では障害福祉年金のほうは三分の一の額にしかならないわけです。同じ病気で、現在の状態では同じに拠出国民年金をかけていて、この制度ができる前からの人は福祉年金のほうが適用になって額が少ない。その後なった人たちについては拠出年金のほうが適用になって額が三倍も多い。患者人たちから見れば全く理解のできない状態が起きているわけであります。こういう問題に対しての対策をひとつ明らかにしていただきたい。
  29. 横田陽吉

    ○横田政府委員 難病にかかっておられる方の中では、障害の状態が固定しておられれば、御指摘のように障害年金の対象になっておるわけです。難病の方がすべて障害年金の対象になるかどうかということは、病気の進行状態にある方は御承知のように障害年金の対象になるわけであります。問題は、御指摘の拠出制の国民年金制度が三十六年の四月に発足したわけでございますが、この拠出制の年金制度は、一言で言いますと、非常に小回りのきかない制度でございます。被保険者期間内に発生いたしました事故に対してだけ給付が行なわれる仕組みになっておるわけでございまして、この点は私どもも、拠出制の国民年金制度自体が発足が非常におそかったという点にかんがみまして、可能な限りその修正を試みてきたつもりでございますけれども、ただいかんせん拠出制のワク内ということでありますと、どのように修正いたしましても、被保険者期間内に発生いたしました事故以外の事故に対して保険給付を行なうことは非常に困難なわけでございます。したがって、御指摘のように福祉年金制度によりまして拠出制年金制度を補完しておるわけでございますが、この点につきましてはやはり全額国庫負担であるというようなことで、たとえば福祉年金全体について申しますと、今度改正をお願いすることにいたしておりますその制度による必要な金額は四千億円近くかかるというふうに、非常に膨大な国庫負担が必要なわけでございますので、拠出制年金に入りたくともその制度がなかった時代の方のことでございますから、可能な限り、財政負担の面を考慮しながら、この是正には努力してきているつもりでございます。  御指摘には明確にございませんでしたけれども、たとえば障害等級の問題につきましても、今度新しく二級障害も加えるというようなことで、相当対象範囲も広まっているし、それから制度のワク内として考えられる本人並びに扶養義務者の所得制限の問題でありますとか、あるいは他の年金との併給の調整の問題でございますとか、いろいろな点について可能な限りの改善はいたしておるつもりでございますし、今後もいたしますが、ただ、拠出制年金と同じようなレベルにリンクさせるという点については、やはり拠出制と無拠出制という問題、国庫負担の限度の問題等もございますので、たいへんむずかしい問題であります。しかし、財政の許す範囲内、制度間の均衡をそれほどそこなうことのない範囲内で今後ともこの改善には努力いたしたいと思っております。
  30. 中村茂

    中村(茂)分科員 いまになって考えてみれば、この拠出年金が発足するときに、その以前にあった、適用になるだろう、こういうふうに思われる人については、暫定措置か何かで、やはりそれが実施になった場合にその適用というようなふうにしておけば、こういう問題が起きてこなかったのではないかというふうに考えるわけですけれども、しかし発足しているわけでありますから、そういうものの幅をどれだけ縮めていくかということについては、これからも最大の努力をしていただきたい、こういうふうに思います。  それから、これは簡単ですから、時間がきましたけれども、もう一つ、申し上げてだけおきたいと思いますけれども、実は時間外診療の問題ですが、最近時間外診療が非常に多くなってきているわけであります。ところが、この報酬が、点数が非常に低い。三点で三十円というようなことで、この問題を解決するには私は二つの問題があるというふうに思うわけでありますけれども、医者側は、これは何といっても相当昼間やって、また時間外が多くなってきて過労になるわけですから、最近はいろいろな理由で拒否するというか、うまく拒否する、こういう事情が非常に多くなって、中小企業等が多いところにつとめている人たちは、そうかといって時間中には行けない、時間外を利用する。ところが診療の手当が安いために拒否するお医者が多くなってきている。この点をどういうふうに解決していくかということが一つあります。企業等にも協力を願って、やはり時間中に診療できるようなふうに患者側のほうでも体制をつくっていく必要があるのではないか。非常に拒否する、行きたい、しかしその時間中には行けないというような多くの問題が起きておりますので、この点についてもひとつ研究をして、きちっとした対策と指導をしていただきたいということを、回答はけっこうですから、最後にお願いして終わりたいと思います。ありがとうございました。
  31. 渡辺栄一

    渡辺主査 中村君の質疑は終了いたしました。  木下元二君。
  32. 木下元二

    木下分科員 私は、国の重症心身障害児に対する福祉対策について、その抜本的改善を要求する立場から、民間の重障児施設で起きている具体的な問題を取り上げまして質問いたしたいと思います。  昭和四十五年度厚生省の実態調査によりますと、重症心身障害児は全国で一万七千名、措置を必要と判断される者一万六千五百名と推定されていますが、これに対しまして施設国立五十四、公立、法人など三十六、合計九十施設で、しかも国立の場合は療養所に委託ベッドがあるというお粗末な内容も見られます。そして、こうした施設措置されておるのは昭和四十八年九月一日現在で八千二百三十五名でありまして、措置を必要とされる者全体の半数以下にすぎません。  事態は兵庫県においても同じであります。兵庫県では本年二月現在、重障児は約九百三十名と推定されておりますが、施設国立一カ所、民間一カ所、合計二カ所あるのみであります。定員は合わせてわずか三百名であります。しかも重大なことは、定員に対する措置の割合は、職員不足のため八〇ないし八五%でありまして、特に民間における充足率が国立、公立に比べて極端に低いのであります。施設に入ることのできない子供とその家庭はまことに悲惨であります。障害児殺しや一家心中事件があとを絶たないという現状であります。わが国の重障児に対する福祉対策はまさに重大な立ちおくれをいたしております。国はこうした福祉対策のおくれの現状をどう認識しておるのか。簡単にお答えいただきたいと存じます。
  33. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいま御指摘になりました重症心身障害児施設につきましては、率直に申し上げまして、国としては全力をあげてこれの解決に努力をしておると申し上げたいのでございます。  まず施設整備の点から申し上げますと、御指摘になりましたように、現在国立療養所を主として、なお民間の三十六施設、さらに今後の計画といたしましては、来年度民間国立合わせまして千六百床、大体一万六千五百人の要収容重症障害児に対しまして昭和五十年には施設整備を完了したいということで、他の社会福祉施設の進捗状況に比べましては相当大幅な伸びを見ていると思っております。  ただ、御指摘がございましたように、遺憾ながら職員確保の点に非常に問題がございます。したがいまして、ただいま具体的な例をおあげになりました兵庫県等に見られるような、なお待機児童がおることも事実でございます。国といたしましては、こういったことをさらに改善をはかりますために、来年度におきましては、御承知と思いますけれども、この二月から医療費の大幅改定によりまして、重症障害児施設については四七、八%のいわゆる収入増、さらに重障指導費といたしまして、金額で申し上げますと六万七千円程度、現在四十八年度で三万九千三百五十九円でございますが、それの約六割以上多い六万七千円というものをつけております。さらに重症障害児施設につきましては、そのほかに特定疾患管理料というものを新たにこの二月からつけるようにいたしまして、これは主として児童に着目しておるわけでございますけれども、もちろんそれが職員の処遇改善ということになるわけでございます。そういったことによりまして、できるだけ御指摘のありました看護婦さんあるいはこれの指導員等の確保をはかってまいるというのが国の方針でございます。
  34. 木下元二

    木下分科員 次に、民間の重障児施設で起きている具体的な問題を取り上げたいわけでありますが、ここでは時間の都合もありますので、二つの側面から質問をいたしたいと思います。  第一は児童の人権問題についてであります。御承知のとおり、重障児施設での療育は、更衣、洗面、排せつ、食事、入浴などの生活介助をはじめといたしまして、機能訓練、保育、看護、学習指導に至るまで多くの分野にわたっておりますが、民間施設では、これらすべての分野で児童の人間としての尊厳と権利とが著しく踏みにじられております。これが現状であります。民間施設の子供たちは、人手不足の中で、あたたかい愛情を注いでもらうことができず、また人間らしい扱いを受けていないのであります。     〔主査退席、渡部(恒)主査代理着席〕 生活環境も、昼間でも太陽を浴びることなく、部屋に閉じ込められたままという状態であります。日常生活における自立と機能回復という点につきましても、その道が閉ざされ、手足の拘縮、変形が進むというゆゆしき事態も起こっております。二十歳を越えた男女が同室で寝起きをする、あるいは男女が混浴をするという事態も中にあると聞いております。民間施設の重障児たちの現状は、よい環境のもとで心身ともにすこやかに育てられ、愛護されるというような状態ではないのが現状であります。子供たちの人間としての尊厳と権利は不当に踏みにじられておるということであります。国はこうした現状をよく知っておられるのでしょうか。
  35. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御指摘になりました問題について、私も重症障害児施設については機会あるごとに見に行っております。私が見ております限りにおきましては、ただいま御指摘になったような事実については承知をしておらないのでございますけれども、具体的な例をおあげになりましたので、そのことについて私どもの考え方を申し上げたいと思います。  混浴問題でございますけれども、御承知のようにこの重症障害児施設に収容されておる児童は非常に重症でございます。と同時に、年齢はいっておりますけれども、その発育の状況は、率直に申し上げてきわめて悪い。それで、具体的な例でお示しになりました寝たきりの施設における問題でございますけれども、これはやはり、十二歳から十三歳までの子供につきましても、具体的な例で申し上げますと、浴槽が三つございまして、その二つについてはこれは男女それぞれ別々に、男の子と女の子でございますけれども、入浴をさせている、非常に知能指数が低くて、さらに重症で動かせないという障害児の入っている棟におきましても、これは時間を限るというような、時間を分けて入浴させるというようなことをいたしまして、できるだけそういったことは避けているというように承知しております。少なくとも、私が見た限りの重症障害児施設では、まだそういうことは経験がございません。  なお、日常の起臥等の問題でございますけれども、たとえば排便等につきましても、御承知の寝たきり老人が例でございますが、こういった人たちはやはり寝たきりであるために定時の排便が非常にできにくい。したがってかん腸等を用いる例が多いわけでございますけれども、重症障害児におきましてもやはり寝たきりでございますから、そういった例があるわけでございまして、これは医学上もそういった例はやむを得ない、またそうしないと重症障害児の発育にも影響がある、このように承知している次第でございます。
  36. 木下元二

    木下分科員 民間施設では職員の不足、腰痛者続出という中で、おむつの交換も満足にしてやれない、こういう状況が出ておりまして、深刻なところでは、いまも言われましたけれども、子供の自然排便を待っている余裕がなくて、かん腸で排便調節を行なうということがあるようであります。こうしたことが何の反省もなく繰り返されて、もうそれが常態化してしまう、その結果自然便が出なくなってしまう、こういう事実があるようなのですね。  子供の看護についての問題でも、もう民間施設では職員にかまってもらえない、そういうことで欲求不満が重なりまして、ほかの子供にかみついたり物をこわしたりする、そういう子供が出ております。こうした行為というものは、もっとそばにいてほしい、甘えたい、外に連れていってほしい、そういうふうな満たされない思いを自由にことばで表現することができない子供たちのせつない意思表示だと思うのです。子供たちははだとはだの触れ合いに飢えております。おとなのあたたかい愛情を求めております。しかし、この重障児たちは、かみついたり物をこわしたりする以外に自分たちの意思をあらわすことができないという状況なんです。しかし、かみついたり物をこわしたりできる子供はまだましであります。もう機能訓練を受けることもできず、手足の拘縮や変形が進んだ子供たちというのは、もう自分たちの意思をあらわすことすらできないという状況です。こうした子供たちに対して職員のしてやれることは、しかりつけて押えるということだけであります。人手さえあって、あたたかい愛情をかけてよく話して聞かせてやれば、こういうことはなくなると思うのです。こうした子供たちにとって、人間として生きていく上で機能回復訓練、言語訓練、あたたかい血の通った生活介助が最小限度私は必要だと思うわけであります。そのために必要な職員を国が責任をもって確保すべきである、こう私は思うのでありますが、お考えをこれも簡単でけっこうです。
  37. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御指摘になりました点につきまして、特に機能訓練を中心に申し上げますと、重症障害児は、御指摘のとおり、ほんとうにからだの動きのとれない重症の子供が多いわけでございます。施設によりましては、たとえば日光のよく当たる芝生に、昼間外へ出して、ただ寝ころがす溶けでもその子の機能にプラスになるというような経験を積み重ねまして、必ず施設にはそういった意味のプレイルームと申しますか、普通の肢体不自由児施設とは違った意味の機能訓練、いわば子供が動き回れる、あるいははい回れる、あるいはころがれるというようなことを配慮した空間を設けておりまして、ことばどおり、字義どおりにおける機能訓練ということではございませんけれども、そういったものを大体御指摘の施設におきましては備えておるわけでございます。ただ、施設整備その他の問題で、今後こういったことをさらに重視していく必要があるということについては十分承知もしておりますし、施設施設についてその相談にも応じて、こういったものの中身の改善をはかっていくことについてはさらに積極的に努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  38. 木下元二

    木下分科員 事態はもっともっと深刻なのであります。ここに、ある民間施設の労働組合がつくった報告書がありますが、これによりますと、ほかの子供にかみついたり物をこわしたりする子供に対しまして、精神安定剤を注射して、まっ昼間からもうろう状態にして押え込んでしまう、そしてそのことを継続するという、人道上許すことのできない異常な事態が報告されております。現場の職員は、施設であるというだけでこんなことが許されてもいいのかと自問自答いたしまして、その責任について、児童をこのような状態に追いやる医者、職員の責任は重いが、それ以上に、こうしなくては何ともできない方向にまで追いやった国と地方自治体の責任はなお重いと訴えております。国はいま言ったような事実を黙認されるつもりでしょうか。国としてどのように責任を感じておられますか。簡単明瞭にお答えいただきたいと思います。
  39. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいま御指摘になりました点が、収容児の医療上必要なものであるか、あるいはただ単に動かすことをさせないための強制的な措置であるかどうか、この点についてただいまにわかにお答えすることは、私専門家ではございませんので、ちょっと控えさせていただきたいと思いますが、近く、この障害児施設を所掌している全国の課長を本省に集めることになっております。これは大臣の強い御指示で、個々の施設の問題について、局みずからが把握してこれに具体的な指導をしろということでございまして、最近のうちにこれを行ないまして、ただいま御指摘になった事実がどの程度であるか、さらにそれが医学上あるいは医療上適切であるかどうか、あるいは行き過ぎであるかどうかというようなことについては十分討議を進めてまいりたいと考えます。
  40. 木下元二

    木下分科員 次に進みますが、児童の学習する権利についてであります。  施設の子供は憲法で保障された教育を受ける権利を不当に踏みにじられております。重症児といえども、その能力に応じた教育を受ける権利を保障されておることは申すまでもありません。国として、重症児の教育権を責任をもって保障する義務があると考えるが、いかがでしょうか。  もう一点、重症児の教育権を保障するため、さしあたり教員、設備、教材を国の責任で保障する必要があると思いますが、国としての考えはいかがでしょうか。
  41. 翁久次郎

    ○翁政府委員 すべての収容施設におきます教育についてはあとう限りのことをするということが基本的な原則でございます。重症障害児施設におきましても例外ではございません。ただ、御承知のとおり、収容されている子供は非常に重うございますし、先ほどもお述べになりましたように、中には手足の動かない子供もおります。したがいまして、その教育というのは、単にわれわれが普通考えておる教育とはおのずから違ったものであろうと考えます。民間施設におきましても、一、二の施設におきましては、教育委員会と話し合いをいたしまして、派遣教員を受けまして、そこで教育を実施しているところがございます。その中身は、たとえば図画をかくとか、あるいは反復して器楽を行なう、これはその子供たちに応じたやり方で社会に適応させるための教育をやっておるわけでございます。私どもといたしましては、施設がそういうことができる、またすることが可能であるならば、教育委員会との話し合いをしていただきまして、派遣教員という形を進めてまいるということが一つと、さらにこれにつきましては若干の国費の補助も出るようになっております。
  42. 木下元二

    木下分科員 いま言われた派遣教員などの施策を早急にこれから進めていかれるというふうに伺っていいわけですか。
  43. 翁久次郎

    ○翁政府委員 この点につきましても、先ほど申し上げました近々招集いたします各県の課長等に実情の的確な把握を依頼し、必要があればそういう方向でやっていくということにはやぶさかではございません。
  44. 木下元二

    木下分科員 それはぜひひとつ前向きに積極的に進めていただきたいと思います。  次は、職員の健康と権利の問題について伺います。  施設の職員不足は、いま申しましたように重症児の重大な人権問題を引き起こしておると思います。しかしそればかりではありません。職員不足は、他方で職員みずからの身体と健康を破壊し、職員不足に拍車をかけるという深刻な悪循環を引き起こしております。事態は国がよほど思い切った手を打たなければどうにもならないところまで来ております。そのためには施設に収容しておいて他人に迷惑をかけないようにすればよいのだというふうな考え方を根本的に転換する必要があると思います。  そこで伺いたいのでありますが、療育とはそもそも子供の正常な発達、全面発達を促す行為でなければならないと考えますが、いかがでしょうか。簡単にお答えいただきたい。
  45. 翁久次郎

    ○翁政府委員 そのとおりと思います。
  46. 木下元二

    木下分科員 今日、私立の施設における職員不足は深刻であります。第一に、厚生省の子供一・五人に職員一人という重症指導費の算定基準は実情に見合っておりません。それだけではないのであります。施設ではこうした基準すら維持できていないのであります。たとえば、兵庫県西宮市に所在いたします砂子療育園では、本年二月七日現在、病棟内職員は九十六名でありますが、職業病続出等によりまして、実労働者数は一日六十人ないし七十人というありさまでありまして、これだけの職員で百十五名ないし百三十名の子供の生活介助をしておるのです。  第二に、看護婦不足が特に深刻です。兵庫県では百八十名をこえる待機児童があるといわれておりますが、それにもかかわらず、看護婦不足から五十ベッドも遊ばせております。さらに、措置をしておる子供のうち、常時十五人前後が里帰りを余儀なくされております。  第三に、病棟外職員の不足も深刻であります。たとえば洗たくなどをしている職員でありますが、この砂子療育園を例にとりますと、現在六名の職員で、一日、衣服、パジャマなど六百着、エプロン、タオルなど千六百枚、おむつ一万枚と、膨大な量にのぼっておりまして、まさに殺人的であります。こうした職員不足は、腰痛、頸腕症候群などの職業病を多発させております。これが母体をむしばみ、健康を破壊するもとになっております。砂子療育園では健康を害していると訴える人が全体の八割にも及んでおります。腰痛、頸腕症候群で職業病の認定を受けた者が、昨年六月に八名、本年二月に十一名にものぼっております。病棟内女子職員は、四人のうち一人が労災の認定を受けておるという状況です。ここの労働組合ではさらに認定申請を続けると言っておりますが、このままいけば半数以上の職員が認定されるだろうといわれております。  事態はまさに異常であります。これはひとりこの砂子療育園だけではないと思うのです。全国のこうした療育園での問題であります。勤労婦人福祉法に明記をされました基本理念というのはまさに空文化いたしております。国は勤労婦人の福祉を増進する責務を放棄しておるのではないかといわれてもいたしかたないと思うのです。国はこうした事態を異常と思わないでしょうか。
  47. 翁久次郎

    ○翁政府委員 全国の私立の重症障害児施設、それぞれいろいろな態様がございます。ただいま御指摘になったような、たとえば砂子の例、これは腰痛症をはじめ問題があることも承知しております。しかしながら、国は、特に来年度では、冒頭に申し上げましたように、あとうる限りの財政的な措置をとり、そして労働条件の改善ということに最大の努力を傾けたのでございます。  砂子の例で申し上げますと、確かに腰痛症の患者さんが出ております。その根本原因が看護婦さんの不足にあることも事実でございます。看護婦の不足は全国的な問題でございますけれども、兵庫県におきましては、県の広報、あるいは市町村長に直接依頼する、国は財政的な措置を、あとうる限り、極力これを講ずるというような、三者一体の立場からその人員不足の解消につとめております。  なお腰痛症の問題につきましては労働省とも話し合いをいたしまして、いわば専門的な整形外科の先生その他権威者を網羅いたしまして、この対策のための研究会を発足させまして、二月にすでに第一回の会合を開き、早急にその改善方あるいはその対症療法ということについての努力をすることにいたしております。  そういうようなことでございまして、施設個々の問題につきましては、先ほど申し上げたように、施設それぞれの問題について直接われわれが聴取をする、問題のあるところについてはできる限りの対策を講ずる、しかしながら基本的には財政的な措置の万全をはかるということで四十九年度予算を編成した、こういうことでございます。
  48. 木下元二

    木下分科員 最後に伺いますが、労働省は四十七年五月に、こうした福祉施設に働く職員の実態調査を行なっておりますが、その報告によりますと、労基法に違反している施設が八七・一%にのぼっております。特に私立では九二・九%の高率になっております。賃金をはじめとする労働条件につきましても、他産業と比べて低いのです。私立においては特に公立と比べてさらに低いのであります。職業病につきましても、介護等による腰痛者が増加傾向にありまして、健康診断のほか、これら職員の作業全般にわたって検討を加え、健康管理を進める必要があると指摘しております。さらに、労働条件の向上の問題につきましても、施設管理者等による改善努力には限界があるので、施設運営上の大きな要素である措置費等の改善によって抜本的な解決をはかることが望まれると報告をいたしております。  そこで、具体的に伺いたいのでありますが、まとめてお尋ねいたします。第一に、労働省のこの報告に基づいて、労働基準法違反の是正、労働条件の改善、職員の健康管理などについて抜本的な解決をはからなければならないと考えますが、具体的にどのような措置をとっていかれるか。  第二点として、この異常な事態を解決をするために、措置費算定基準の単価を実情に合わせまして大幅に是正すべきと思いますが、これは四十九年度からそういう方向で進むということでありますが、さらに腰痛、頸腕症候群などの職業病対策といたしまして、昨年第二びわこ学園に対して行ないましたように、さしあたり措置費特別基準に基づく緊急措置資金を出すべきであると考えますが、どうか。これが第二点です。  第三点といたしまして、福祉施設における看護婦不足を解決するために、養成機関なり制度なりの確立をいつまでにどうするのか、具体的にお答えをいただきたいと思います。あわせて、こうした重症児施設では簡単な治療をするだけであって、またベッドの回転が少ないために診療報酬だけではやりくりがむずかしいという現状でありますので、大幅な助成が必要であると考えられるのでありますが、この点の考えもいただきたいと思います。最後でありますので、大臣のほうからも最後に答弁をいただきたいと思います。
  49. 翁久次郎

    ○翁政府委員 お答えいたします。  労働基準法との関係でございますが、従来社会福祉施設全般につきまして言えることは、労働基準的な配慮というのが比較的足りなかったために、主として形式的な違反が多かったように聞いております。しかしながら、実質こういった労働基準との関係についてはこれは改善すべきであるということで、厚生省、労働省とも密接な連絡をとりまして、施設について労基法違反のない指導を今年から特に強化してまいっております。さらにこの点については強化をしてまいるという考え方でございます。措置費につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。  なお、看護婦さんの不足等におきましては、全般的に先ほど申し上げましたように、看護婦不足全体の問題ではございますけれども、重症施設につきましては特に看護婦さんの働きやすい環境をつくる、たとえば休養室をつくるとか、あるいはところによっては職員宿舎をつくるとか、そういったいわゆる環境改善というものをはかって、生きがいのある働き場所とすることが何よりも必要であるという観点で、来年の施設整備についてはそういったものを重点としてわれわれのほうでは配慮をいたしております。  それから、先ほどおっしゃいました大幅な助成でございますけれども、これは来年度におきましては、いわゆる省力機器と申しますか、人間がなるべく人力によらないで、たとえばエレベーターであるとか、あるいは浴槽の改善であるとかということにつきましては、各施設について施設整備をさらに強化してまいるという方向でこの面の改善をはかっていくというようにわれわれとしては用意をしている次第でございます。
  50. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 重症心身障害者の保護の問題は、厚生省は最重点を置いている問題でございます。したがいまして、本人が希望する限り、昭和五十年度末までに全員収容の計画を立てて、その計画で進んでおるわけでございます。そこで、収容施設のほうはそういう計画で着々進んでおりますが、それと並行しまして、いろいろ内容において改善すべきものはたくさんあると私は思います。そういう問題は具体的に取り上げまして、きめのこまかい改善策を講じまして、りっぱな収容施設にしていくようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  51. 木下元二

    木下分科員 もう時間が来ました。事態はきわめて深刻、緊迫化いたしております。抜本的、具体的な対策を強力に推し進めていただくことを強く要請いたしまして、質問を終わります。
  52. 渡部恒三

    ○渡部(恒)主査代理 午後一時に再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時六分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  53. 渡辺栄一

    渡辺主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管について質疑を続行いたします。金子みつ君。
  54. 金子みつ

    金子(み)分科員 きょうは与えられました時間がたいへん短うございますので、簡単に質問させていただきたいと思いますので、お答えのほうもできるだけ時間をかけないようにお返事をいただきたいと思います。実はこの二月一日に実施になりました社会保険の診療報酬改定の問題につきまして、その中の看護料金に関する部分について二、三お尋ねしたいと思っております。  まず最初に伺いたいと思いますことは、今度の改定で一人の一日に関する看護婦の所要の金額、これは一体幾らになっておりますのかということと、それを算定されました内容はどういうふうになっておりますのか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  55. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 前段の所要経費の算定の問題は、実は今回の改定におきましては、あるいは先生お尋ねのような意味での厳密な計算はいたしておらないかもしれません。ただ今度の改定の趣旨が、全体といたしましては、最近の物価あるいは人件費の変動に見合った全体の大幅決定をいたしまして、その引き上げ幅の中で所要の点数を所要の部門に適正に配分をするということでやったものでございます。それでその結果、いまお尋ねにありました看護料につきましては、前段にも申し上げましたように、人件費の伸びに対応した評価ということでございますので、大体四〇%程度の引き上げをはかったところでございます。
  56. 金子みつ

    金子(み)分科員 そういたしますと、結果といたしまして幾らになりましたでしょうか。先ほどお尋ねいたしましたが、所要経費、一人一日、一カ月幾らに当たりますでしょうか。
  57. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 いま申し上げたように、一人一日幾らかかるという、そういう計算は実はしてないのでございます。全体的に人件費の変動というふうなものを考えまして四割程度の増額をした、こういうことでございます。
  58. 金子みつ

    金子(み)分科員 それでは続けてお尋ねいたします。今度お考えくださいました人件費の四割程度アップという計算、だから計算すればわかるじゃないかということになるかもしれませんけれども、その四割アップをなさいましたその考え方の中に、実は先般、一年前になりますけれども、国立病院療養所の看護婦については、夜勤の手当が三百五十円から一回について千円に引き上げられましたのを御承知と思います。そのことがきまりました際に、国立病院療養所勤務の看護婦と申しますれば、御承知のように全体の数の中の約一割程度の人たちでございます。大部分の人たちはこの恩典に浴さなかったわけなんですけれども、この問題について、そうでなくても国公立に看護婦の数が集中いたしまして、そして民間病院には非常に少ないという問題がずっとございましたのを、一そうひどくするじゃないかという心配がございまして、この点については国立以外の施設、特に民間病院なんかについてはどういうふうにしてくださるのかという、二月二十二日の社会労働委員会の私の質問厚生大臣がお答えくださいましたその内容では、国立病院療養所については千円になったけれども、この問題については中医協がそのことをも踏まえてりっぱな診療報酬改定をしてもらえるものだと期待もし、確信もしているとお答えくださったわけですが、その点につきましては今回含められておりますのでしょうか。それとも含まっていなかったのでございましょうか、伺わせていただきたい。
  59. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 お尋ねの夜間看護手当千円の問題は、結論から申しますと、今回の診療報酬の改定の中において、これを加味してやっておるつもりでございます。御参考までに申し上げておきますと、すでに先生御承知かと存じますけれども、人事院の国家公務員給与実態調査の中で、医療職(三)表の給与につきましては、四十六年の四月から四十八年の四月までの間に二七・九九%の上昇なのでございます。それと若干時日はずれ込んでおりますけれども、今回の診療報酬の改定にあたりまして、看護婦さん等の人件費の算定にあたりましては、前回の改定の四十七年の二月から四十八年十二月末までの見込みを立てて、それに基づいて上昇率を計算いたしまして、その上昇率が結果的には三七・一%というふうになっておるわけでございます。したがいまして、期間のずれ込みが八カ月間あるわけでございますけれども、私どものほうが八カ月間新しいデータでございますし、いま申しましたように二七・九九%に対して三七・一%でございますから、そういう中に私どもとしてはこの問題は織り込んだつもりでございます。さらに詳細な計算の中で、従来の三百五十円と千円との差額を計算の基礎に見ているということでございます。その結果の数字が三七・一%、こういうことでございます。
  60. 金子みつ

    金子(み)分科員 いまの御説明ですと、含めていらっしゃったという御返事、そういうふうに解釈してよろしゅうございますね。
  61. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 そのとおりでございます。
  62. 金子みつ

    金子(み)分科員 そうですね。そういたしますと、その含まれた金額が三百五十円と千円の差額を考えてというお話でしたけれども、今度の新しい分は千円になっているわけですよね。ですから含めて考えてくだすったのでしたならば、千円がまるまる考慮されて入っているものだと考えてよろしいわけでしょうか。
  63. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 いろいろ全体のワクとの関係もございまして、いまの問題は、私どもとしてはその差額の分について今回は計算の基礎に盛り込んだというふうに御理解を願いたいと思います。
  64. 金子みつ

    金子(み)分科員 わかりました。そうしますと、くどいですが、いままでは三百五十円は入っていたのだ、こういうふうに逆に考えることができますが、これはそう理解してよろしゅうございますか。
  65. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 従来の診療報酬の改定にあたりましては、そういうような厳密な算定の基礎をとっておりませんでしたので、今回の改定に対応したようなものの考え方としてそういうふうに申し上げられるかどうかわかりませんけれども、これはやはり物価、人件費の上昇に見合ってやっておったわけでございますから、従来も入っておったものというふうに御理解願ってけっこうでございます。
  66. 金子みつ

    金子(み)分科員 それではいま一つお尋ねしたいと思いますけれども、詳しく一つ一つ考えてしなかったという大ざっぱなつかみ方の御算定のようでございますので、この質問はお答えいただけるかどうかと思いますけれども、病院には看護婦だけでなくてその他の職員がおるわけでございます。看護職員といたしましても、看護婦以外に保健婦もおれば助産婦もおる、あるいは看護ではございませんが、栄養士もおりますし、ソシアルワーカーもおりますし、こういう人たち患者の直接の世話と指導に当たっておるわけでございますが、この人たちが行ないます指導あるいは相談に関する料金、こういうものは計算の中に入っておりますのか、あるいは別ワクとして新しく設定なさいましたのかどうか、その辺をわからせていただきたい。
  67. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 今回の診療報酬の改定にあたりまして、医師の技術料、あるいはその他のいま御指摘になりましたような医療従事者の方々の人件費、物件費あるいは減価償却費、その他必要経費の変動に見合う適正な医療費の上げ幅を決定したことは、すでに御承知のとおりであります。御指摘になりました保健婦さん、あるいは助産婦さん、あるいは栄養士さんとかケースワーカーとか、いろいろあるわけでございますけれども、こういう方々についてのいわば相談指導料というものにつきましては、項目としては設定いたしておりません。ただ、それぞれの項目の中に、医療上必要なものでございますので、こういったものは診療報酬全体として考えますと、適正に評価をして組み込まれているものというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  68. 金子みつ

    金子(み)分科員 そういたしますと、組み込まれているものと考えておられるのであるから、各医療施設では進んでそういう指導内容を持った質の高い医療を行なうということを積極的にお進めになる自信はおありになるわけでしょうか。
  69. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 これはそれぞれの医療施設によって、先生も御承知のとおり、いろいろな色合いの違い、色合いと申しますか、その医療内容の充実の度合いとかあるいは体制整備の違い等もございますので、一概には申しかねると思いますけれども、全般的に申しますと、私どもは診療報酬の改定のたびごとに全体を含めて診療報酬の適正化ということを考えておりますので、特に今回は人件費、物件費、あるいは国民所得に応じた改定を考えましたので、そういう意味合いでは相当な充実した指導あるいは治療治療介助、そういったものが行なわれることを期待をいたしております。
  70. 金子みつ

    金子(み)分科員 そういたしますと、いまの御説明で急いでちょっとここで計算してみましたら、一人一カ月というのを人件費の四割アップということで計算してみますと、大体十二万円前後くらいになるんじゃないかというふうに思われますけれども、もしそういうような費用であるといたしますならば――そちらにございますか、その分が。そういうふうに出さなかったからないというふうなお話だったんですけれども……。
  71. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 いま言われたような形で計算をいたしますと、確かに約十二万、月額でございますが、十二万六千円程度と思います。
  72. 金子みつ

    金子(み)分科員 大体同じような数字が出たように思いますけれども、そうだといたしますと、実際に現在病院で勤務しております看護婦たちの給与、必要な所要経費に比べますと、かなり低くなりますね。私の手元に全国平均の看護婦一人一カ月の所要原価というのが届いてきておるのでございますけれども、これから見ますと、これはいろいろと中に入っておりまして、自治体病院民間病院国立病院も全部、各種の病院を網羅して平均を出しているわけでございます。それからまた、一緒に勤務しております看護助手等の問題も含めまして出された計算のようでございますが、それによると十五万四千三十一円という数字になっております。これが全国の平均の看護婦の一人一カ月の所要原価であるということになりますと、ただいまお示しいただきました十二万六千円何がしという数字では、かなり開きが出てまいります。逆に二万八千円以上の開きが出てまいりますけれども、非常に低く評価されたというふうに理解できると思いますが、その点いかがでしょう。
  73. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 私どもも、いまお話しになりました十五万四千三十一円という数字は、病院関係団体からいただいております書類の中にあるので承知をいたしております。ただ、これはまたいろいろ、この問題についてのほんとうの専門家である金子先生のほうにはたいへん専門的な御意見がおありかとは存じますけれども、看護婦さんなら看護婦さんの業務というものをどういうふうに評価をするか、基本的な業務としては診療の介助と患者さんのお世話であると思います。そういうふうに分けて考えました場合に、診療報酬の点数配分をいたします場合に、看護婦さんの分は、その中で診療介助のほうについては医師サイドに配分をして、それから患者さんのお世話のほうは看護婦さんのほうに配分をするというようなことをかりにいたしますと、その割合が一割五分から二割くらいということであるとする。その割合と申しますのは、診療介助をかりに前提にいたしますと、この十五万四千三十一円というもの、それから先ほどの十二万六千円というもの、こういうものは分離をして考える、また考えることが可能であるならば、そんなに違った額ではないではないかと思うわけであります。  なお、より基本的に私どもは、最初にも申し上げましたけれども、こういう計算を実はやっていないわけでございまして、マクロで全体の人件費が大体四割上がっておるということで四割アップをいたしましたので、その点は前提が違っておりますことも、この際重ねてあわせて御了解をいただいておきたいと思います。
  74. 金子みつ

    金子(み)分科員 いまの御説明では、たいへん失礼ですけれども、詭弁なような感じがします。そういう考え方は、保健婦助産婦看護婦法の規定による看護婦の業務ということからいきますと、いずれも看護婦の業務になっておるわけでございますから、分離して計算して、そしてそれを片一方のほうに入っているのを持ってくれば同じようになるというふうな考え方は、私どもといたしましては納得しにくいと思います。しかし、きょうのお話は、基本的に今度の算定の根拠が違うという御説明が最初から何べんもございましたので、いまこの問題をここで議論する時間もございませんし、保留させていただこうと考えますけれども、看護婦の看護料金のきめ方というものについてはもう少し慎重に、そして看護婦の業務内容をよく検討なさった上でその料金が決定されるということを私は強く要望したいと思いますが、この点大臣も同じように考えていただけるでしょうか。
  75. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 看護業務の基本的な内容でございますので、医務局長のほうからお答えがあると思いますけれども、非常にむずかしい問題でございますし、長年にわたってこの問題は重要な問題であり、かつまた、病院業務の変遷というものに応じて変わっていく問題でございますから、絶えず必要な検討が加えられているものと考えております。また、今後必要な検討を急いでますます加えていかなければならないというふうに考えております。
  76. 金子みつ

    金子(み)分科員 いまそういうことを申し上げたのじゃなくて、今後この問題についてはとくと考慮してやるということについて、大臣の御決意が伺いたかったわけです。
  77. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 今回の改定は御承知のように、最近における賃金、物価の動向にかんがみまして改定をいたしたものでございます。看護婦さんの待遇というものと看護料との関係なんでございましょうが、私どもは、御承知のように、看護婦の処遇の改善ということで夜勤手当一人千円ということも十分頭に描きながら、そしてさらに、人件費のアップ等を見込んで看護料を四〇%上げる、こういう仕組みでしたわけでございます。たとえば看護婦さんの俸給を幾らにする、家政婦の俸給を幾らにするなどという考え方では出てない。全体の医療費の中でこういうことを加味してありますから上げようと思えば上げられます、こういう仕組みでできておるわけであることはもう御承知のとおりでございます。しかし、これに対して看護協会から私に対して非常に不満の意を表されておる書面もいただいております。そこで、こういう問題についてはやはり、いろんな診療報酬の項目の意味をお互いに理解し合ってないという点も私はあると思うのです。そういうふうなことで今後十分話し合いをいたしながら、そしてまた将来の改定の際に看護婦の方々の御意見が十分反映できるような仕組みに改めるものがあれば改めていかなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございまして、今後とも改正の検討については十分努力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  78. 金子みつ

    金子(み)分科員 それでは次に、基準看護の問題についてお尋ねしたいと思います。  基準看護のことにつきましてはいろいろな問題もございますけれども、現状といたしましては、入院料の加算看護料として基準看護というものがきめられて看護料金が加算されているかっこうになっておりますけれども、現在の基準看護の種類では不十分だという問題が前々からも問題になっておりました。それは御承知のことだと思います。それから特に看護婦の夜勤体制等を含めた勤務体制ということから考えれば、いわゆるニッパチ体制というあり方を実現することが今日ではもう常識の形になっているわけでございますし、厚生省では医務局が看護婦の問題を直接御所管なすっているわけでございますが、その医務局における看護婦の需要供給に対する計画というものも従来からの考え方からはずれて、いわゆるニッパチ体制を実現させるということを基本的な考え方として需給計画を立てていらっしゃるというふうに私は理解いたしておりますが、いかがでございましょうか。その点、間違いはございませんでしょうか。医務局長お見えになっていらっしゃいますので、お願いします。
  79. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 看護婦の需給計画の立案につきまして、特に社会保障長期計画懇談会等で御検討いただいたわけでございますが、わが国の全体の看護婦の処遇改善あるいは看護業務というものを通じての看護婦の魅力のある職場としてということ等も関連ございますが、人事院がニッパチ体制というものを判定として出しまして以来、国立は直接的に、また地方公務員の関係病院等でもこれに対して努力をいたしておるわけでございますが、現状につきましては約八〇%には達成いたしておりますが、八の問題につきましては必ずしも十分な達成の状況にございません。われわれが長期計画を立てますときに、このニッパチ体制というものを一応のめどとしては考えますけれども、具体的な過去における特に公立病院国立病院等の看護婦の充足されてきた状態というものを無視して急速に充足し、またニッパチ体制をある年度実現するというような目標を立ててみましても、これは養成計画先生御存じのような、マンパワー全体が三年かからないと養成施設をつくっても出てこない、こういうような観点から、基本には先生にもこの前お答えしておりますように、ニッパチ体制というものは一つの条件として、われわれ目標の一つには考えておりますけれども、全般としてはそれだけにこだわると申しますか、それだけを目標にするのじゃなくて、わが国のほんとうに円滑な、しかも停滞しないで看護婦の養成と確保と処遇改善ができる仕組みを検討した上に立ちまして、例の一学年定員二万人、五年間の養成計画というようなものを基盤にいたしまして、その他もろもろの施策を充実して看護婦の確保につとめたい、こういうことでございます。
  80. 金子みつ

    金子(み)分科員 よく承知いたしました。ニッパチ体制を唯一の目標にするということではないということはよくわかっております。しかし、それが非常に大きな基盤になっているということ、そしてそれを行なうためには看護婦の数を患者二・五人に一人置かなければ最低は確保できないんだということも理解していただいていると思います。  私がお尋ねしたいと思っておりますことは、そうならば、いまの基準看護では最高がいわゆる患者三人に一人になっているわけです。ですから二・五人に一人というもう一つ別のワクをつくらなければ、そのことは実現しにくくなるのじゃないかということなんです。それで、施設側に対してこれを指導するにしても、あるいは施設がこれを実現したいと考えておっても、裏づけになる何のささえもなければ、点数として何のささえもなければ、施設側はむしろやりにくくて今後やらなくなるのじゃないか。ますます人件費も上がりますしね。ですから、いままで無理してやっていたのを、何も国はバックアップしてくれないじゃないか、それじゃやる必要はなかろうというようなことになって、体制は低下していくのじゃないかということを私は非常に心配するわけです。ですから、今回二・五人に一人という線が出せなかったその理由が伺いたかったわけです。これはまあ保険局長のほうから伺いたいわけでございますが、私は、医務局はいまのようなお考えであるとすれば、医務局からは積極的にこれを要請なさったのじゃないか、むしろ希望なさってお出しになっていたのじゃないかと思うのです。そうすれば、これが今度できなかったということについては、保険局のほうでこれを反対なすったのか、あるいは中医協がこれを反対してだめにしておしまいになったのか、その辺がよくわかりませんけれども、なぜに二・五人に一人というこのワクが今回つくられなかったのか。しかも、そちらでおっしゃいましたように、看護団体もあるいは公私立病院団体も非常に強くこれを要望していたということも承知いたしておりますのに、何ゆえこれが今回成立できなかったのかということについて、簡単に御説明いただければと思っております。
  81. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 私のほうから……。二・五人の問題は、確かに実態をとらえますと、二・五というのは、われわれが看護婦という資格のある人をニッパチ体制に組み込んだときの数字が十六という数字が出まして、それをもとにしていろいろ需給体制の計算等に使っておるわけでございます。保険の場合の二・五というものについては、先生御存じのような看護力全体としての把握でございまして、この点についてはわれわれとしても、実態はかなりそれに近いものがございますけれども、先生御発言のように、それをもってリーダーシップをとっていくべきだという立場と、それから現状を踏まえて、わが国の民間医療機関も含めましてこれをいっその裏づけをし、リーダーシップをとることを決断するかという問題については、私は若干先生との判断の違いがあるだけでございまして、基本的には、この基準看護の体制そのものの検討はまた別にいろいろ問題があるといたしましても、現行の姿でやる場合にはそのタイミングの問題はあったろうと私は思うのでございます。総体的に、今回の診療報酬の改定という場面と、全体のベースアップと、先ほど保険局長から御説明のございましたような全体を把握してアップしていくという段階では、現状の基準の三、四、五、六を使わざるを得なかったというふうに私も判断いたしておりまして、この点につきましては、われわれは積極的に保険局とこの問題の次のステップを考えなければならないというふうに私の立場では考えておる次第でございます。
  82. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 私どものほうも、いま医務局長からお答えがありましたように、非常に重要な問題でございますし、また現在の看護の実態といたしましても、実際上一対二とか一対一とか、そういった濃厚な看護を要する方々をかかえている病院が少なくないことも私はよく承知しております。そういう意味合いで、基準看護についていまお話のありました特類の上にさらにもう一つ特一類というふうなものをつくる、この問題は関係部局の間でいろいろ相談したわけでございますけれども、いまお話のありましたようないろんな事情等も考えまして、なお引き続き、どういう形でやるべきかということを検討をする必要があるではなかろうかということで、今回の改定では一応見送りの中に入ったようなわけでございます。ただ、この加算の中でも特類につきましては特に改定前の五割に近いかさ上げをしておりまして、そういうことでできるだけこの看護力の確保については配慮をしたつもりでございますが、確かに現状は看護の実態というものが非常に変わっておるわけでございますから、引き続いて厚生省の中におきましても十分連絡をとってこの問題は検討させていただきたい、かように考えております。
  83. 金子みつ

    金子(み)分科員 患者が入院していて一番希望することは、いつもきめこまかく看護の世話を受けたいということと、そしてもう一つは経費のことを心配しないで入院治療ができるということ、この二つに限られると思うのです。このことを実現するためには、やはり必要なだけの看護職員というものは確保しなければならないことだと思います。そのためには看護料金というものが大きなウエートを占めると思いますので、私はこの問題を取り上げたわけなんです。  時間も参りましたのでここで質問はやめさせていただきますけれども、医務局のほうで幾ら看護婦をふやす計画を立てて、そして年間何千も何万も、何年先には何十万もという数をお立てになりましても、その人たちがみんな病院なり診療所へ勤務して働かなければ、幾らつくっても意味がないわけです。仕事をするということになりますと、その人たちに対する処遇というものが一番大きく出てまいります。そこで、日本医療社会保険診療でございますので、この中で看護料金というものがよほど有利にと申しますか適確に――いまは有利というよりもう一つ手前の段階ですから、適正な料金が設定されなければ、看護婦がやめていくことを防ぐこともできなければ、新たに採用することも困難になるのではないだろうか。今度は非常に大きな期待をみんな寄せていたわけですけれども、この程度では私は非常に期待薄れがいたしまして、がっかりしていると思います。ですからこのことによって、新たに看護婦がふえても勤務していかなくなるのではないかということをたいへん心配いたします。  そこで厚生大臣にお願いでございますが、今回これで一応切れておりますが、しかしまだ機会がないわけじゃございませんので、できるだけ早い機会にもう一ぺんこの問題を再検討してくださるというお考えがおありかどうかを伺わしていただいて、質問を終わりたいと思います。
  84. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 看護婦の確保、それがためには看護婦の処遇の改善をはかることは絶対に必要なことだと私は思います。そこで私は今回の診療報酬の改定につきましてはできるだけのことをいたしたつもりでございますが、まだまだ当事者のほうには不満の点もあるということも承っておりますので、これは今回がおしまいではございませんし、次の機会にはもっとわかりやすい形において看護婦の処遇が改善をされるように努力をいたしたい、かように考えます。
  85. 渡辺栄一

    渡辺主査 金子君の質疑は終了いたしました。  続いて、上原康助君。
  86. 上原康助

    上原分科員 これまでも沖繩の医療問題についてお尋ねをしてまいりましたが、きょうもあらためて二、三の具体的問題と沖繩の医療体系といいますか医療施設、設備の充実化について、政府がどう進めようとしておられるのかという点を含めてお尋ねさせていただきたいと思います。  限られた時間でありますので、最初に一、二の具体的な問題についてお尋ねしますが、せんだっても国会の委員会審議の合い間を見て大臣にもお会いをしたわけですが、いわゆる本土で被爆して戦後沖繩に帰って沖繩に在住する被爆者の問題、特に沖繩の被爆者が原爆医療法の適用を受けたのは御承知のように本土とは十年の差が出ております。復帰前のことは不問に付すということであるならばまた別の議論もあるかと思うのですが、こういう特別な事情にあった方々の医療費の問題というのが、今日、該当者の生活面に大きく影響をしている。そういう面で、本土の被爆法ができた時点にさかのぼって沖繩の被爆者に対しても何らかの、医療費なりあるいはその他の方法で手当てをすべきである、そういう関係者からの強い要求が出されていることは御案内のとおりでございます。そこで、せんだってお尋ねをしたときには、たいへんむずかしい問題であるが一応省内で検討さしてもらいたいというようなお話だったかと思うのですが、この問題について政府はどうお考えになっておられるのか、また関係者の要望を受けてどういうふうに御検討をされたのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  87. 三浦英夫

    三浦政府委員 過般、沖繩県御在住の原爆被爆者の方々が厚生大臣にお会いになって、その御要請の向きは私どもも承っております。ただ、御承知のとおり、原爆に対する援護が始まりましたのが昭和四十一年かと記憶いたしておりますが、いずれにいたしましても、本土に御復帰になるまでは行政権が及んでいなかったというような経緯もございますし、他の、私どもの局でとらえてみましても結核予防法が昭和三十七年から、精神衛生に関する御援助が四十年からというようにそれぞれ他の法体系の関係もございます。さような関係から、御要請のお気持ちはわかりますけれども、過去にさかのぼって医療費の御援助をするということは非常に困難かと思っておるような次第でございます。ただそれにつきましても、それはそれといたしまして、沖繩県というのは本土から非常に距離的に離れておる、あるいは医療機関が不足しておる、かような現状にかんがみまして、従来から被爆者に対しまして、たとえば本土の広島あるいは長崎の原爆関係専門病院のお医者さんが巡回診療に行かしていただくとか、あるいは本土で御治療されたほうがいい被爆者につきましては、こちらにおいでいただく渡航費を御援助していくとか、こういうような措置は続けてまいりましたが、かような沖繩県の特殊な御事情に関します措置につきましては、今後とも特段に考えてみたいと思っております。  なお、私どもといたしましても、沖繩県が地理的関係その他を比べていろいろな御不自由があるかどうかという点につきましては将来また調査等をさせていただきまして、特段の施策も検討してまいりたいと思っておりますが、ただいずれにいたしましても、先生の御意見ではございますけれども、過去にさかのぼっての医療費の御負担ということにつきましては、ちょっと困難かと思っておる次第でございます。
  88. 上原康助

    上原分科員 この被爆者の件だけじゃないのですけれども、確かに行政権が分離をされておった。まあたてまえ論といいますかあるいは行政分野でいうとそういうお答えしか出てこないであろうということは、この間お話しした面からも想像できるわけですが、しかしそれだけで不問に付すということはやはりどうかと思うのですね。医療費のめんどうをさかのぼって見るということは、むしろ政府の考え方、腹の中は、この問題に何らかの措置を講ずるとほかの面にも波及をしていくんだ、いま結核予防法あるいはまた精神衛生法、そういう面も昭和三十七年ないし四十年ごろから適用されたんだ、そういう考えですべてを片づけられては困るわけです。正直申し上げて、特に原爆によって被爆を受けて、いわゆる健康状態、いろんな面で相当高度の専門医の診察を受けなければ、被爆者という取り扱いといいますか処遇を受けなかった。これとて非常に社会問題になって初めて、政府もそういった特別措置法をつくる、あるいは沖繩の関係者に対しても本土並みの法律の適用をさせるというところまで出てきたわけですね。違憲訴訟なども現に起こされた。そういった背景などもあるわけですよ。これを考えた場合に、単に行政が分離をされておった、あるいは法律が及ばなかったということだけで片づけていい問題じゃ私はないと思うのです。確かに関係者から出された医療費の、いわゆる個々人のどれだけ医療費がかかったのだ、そういう計算もあります、その証明はどうするのかというようないろんなむずかしい面はあるということは私も理解をいたします。それはそれなりにまた考えようによっては処理できる問題じゃないのか。いまの御答弁のように、復帰前のことだし法律が及ばなかった時点のことだからなかなかむずかしいと思うということで片づけていい筋の問題じゃないと思うのですね。この点は大臣に政治的な御判断を仰がなければいかない点だと思うのです。とにかくこの原爆被爆者の方々がどれだけみずからのそういった被爆を受けた不利な健康状態生活状況の中で、いわゆる社会保障制度もない時点で、みずからの健康回復のために苦労をしてきたか、そういうことなども考えた場合に、ストレートにいまおっしゃるような答弁で片づけられないにしても、政府は何らかの形でこの種の問題に対しても前向きに対応していくということは私はあってしかるべきだと思うのです。それがまた行政でなければいかないし、政治でなければいかないし、そもそもそういうことで片づけられ――じゃ沖繩の施政権を分離をし、日本国民でありながら日本国民としての扱いを受けられなかった百万近い県民のいろんな不満や要求というものは、一体どうなるのか。復帰前のことはすべて不問に付すということで、この問題だけじゃありませんが、片づけていい問題じゃないと思うのですね。したがって私はこの点は確かにむずかしい面があるということは理解はいたしますけれども、何らかの形でこの被爆者の方々に対して政府として、過去の医療費に見合う、あるいは医療費をこれだけ個人で負担をして治療を受けた、また本土との格差が実際にあったというようなことを考えた場合に、それに対してはやはりこたえていかなければいかないのじゃないかという気がするわけです。不問に付すということではなくして、ぜひ御検討をいただいて、この切実な要求に報いる方途というものをお考えになっていただきたい。このことを強く要求をしたいし、ぜひまたそういう考え方に立って皆さんとしても処理をしていただきたい。大臣のほうから御所見を賜わっておきたいと思うのです。
  89. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この問題については先般、予算委員会の合い間を縫いまして、沖繩からおいでになった方々の話を承りました。確かに昭和三十二年に原爆医療法が本土においてできて、沖繩では四十一年度からということできておるわけです。その間約十年、ほんとうに苦しい生活の中で特殊な疾病と申しますか、症状に悩まされ続けてきた方々に対しましては、私はほんとうに深甚な御同情を申し上げておるわけでございます。  そういうわけでございまして、法律論的に申しますれば、私から申し上げるまでもなく、本土復帰前のことですから、それは法は及びませんよ、まあこう言って済まそうと思えば済む。法律的にはそのとおりだと思います。しかしながら、現実ああした特殊な症状に悩み、生活の苦しい中で苦労してきた方々に対して、ただもうそれだけで、それ以上はできません、こう突っぱねることが適切であるかどうかということになりますと、私もまたいろいろ考えなければならぬ問題があると思います。したがって、きょうの時点において、どういう形でこれをこういたしますということを私は確約はできません。そしてまた非常に困難な問題であるということはきょうの時点で申し上げなければなりませんが、これでいいかということになりますと、ちょっと私も割り切れない気持ちを持っておるわけでございますので、今後ともこうした方々の医療費といいますか、今日までのそういう御苦労に対して何らかの方法がないだろうか、今後とも私は検討を続けてまいりたい、こんなふうに考えておる次第でございます。
  90. 上原康助

    上原分科員 いま幾ぶん前向きに検討を継続してやっていきたいという大臣のお考えのようですが、あらためて念を押しておきたいことは、確かに法律的にいうと、いまおっしゃるように復帰前のことだから施政権が及ばなかったのだということで片づけられないこともないと思うのですね。しかし、この種の問題についてそう冷ややかなものであってはいかぬと思うのです。特に今日のインフレあるいは、後ほどちょっと触れますが、沖繩の医療体制の不十分さなども考えた場合に、そう簡単に片づけていいものでないと思うのですよ。せんだって公衆衛生局長でしたかお会いしたときに、いわゆる関係被爆者団体から資料もそろえて提出されているわけですね。その実態についても十分調査をしていきたい、また補償の問題に対してもほんとうにむずかしい、きわめてむずかしい問題ではあるのだが、いろいろ方途があるのか検討してみたい、事務局でも検討してみたい、しかし最終的には政治的な判断が必要になってくるでしょうという内容の話し合いが持たれたわけですね。そういう意味でぜひ実態というものもつかんでいただいて、いま大臣がおっしゃったように、片づければ片づけられないこともないのだが、そうかといって割り切れないものもお感じになるということであるならば、きょうの段階で確約はできないにいたしましても、何らかの方法で、集団的に該当者に報いるという方法もあるでしょう、医療施設として。あるいはその他のいろいろな面があると思うのですね。要求は要求として十分受けとめて、方途については省内でまたあるいは関係者の意向なども聞いてみて、県側とも相談の上で片づけていくというふうに特段の御配慮をお願いをしたいし、そういった実態調査をやる御意思もあるのかどうか、これは事務局に確かめておきたいと思うのです。
  91. 三浦英夫

    三浦政府委員 実は私ども、昭和五十年度にちょうど三十周年に当たりますので、実態調査をしてまいりたいと思っております。その際に、特に沖繩県につきましてはつまびらかな調査をする努力をしてみたいと思っております。
  92. 上原康助

    上原分科員 その五十年に本土全体を含めて被爆者の関係者をやるというのは、これは一つのスケジュールになっているわけですね。私が申し上げているのは、それもそれなりのあれがあるでしょうが、しかし沖繩の場合にこの法律適用前の補償の問題をどうするかということと、あらためてそういう実情もつかまなければいかないということが、皆さんのほうからそういうお話も出たわけですね。ただ、タイミングとして五十年にするか、次年度、四十九年度にするかはもう少し考えてみたいということでしたが、そういった画一的なことでなくして、実態をつかんでみないとわからないということであるならば早めてもいいのじゃないかという気もしますし、そこいらもきょうくどくど申し上げませんが、ぜひひとつ御検討をいただきたいと思います。  次にお尋ねしたいことは、これは県側の、沖繩県のかかわり合いもあると思うのですが、いわゆる沖繩はああいう特殊な事情の地域であったがゆえに、混血児問題が非常に重要な政治課題、社会問題になっているということは御案内いただけるかと思うのです。約三千人余の混血児が現在おるといわれているわけですが、その大半は日本人である母親の籍に入っておって、児童手当あるいは医療保険などは大かたは適用されている面があるわけです。しかし、離婚その他の事情によって、いわゆる母子家庭の混血児というものが四百ないし五百名程度おる。これらの児童というものは、いわゆる籍がアメリカであったりフィリピンであったり、これは第三国ですから児童手当も医療保険も全然受けられない。こういう差別といいますか、非常に児童福祉の面で問題を投げかけているわけですね。したがってこういうものについては、県側からどういう要求がいま政府に出されているか、私もそこまでは確かめてございませんが、こういうインフレの状況で、しかも母子家庭として女手一つ、母親一人で育てなければいけない、児童手当もない、ほかの医療制度も受けられないとなると、生活を圧迫するということは申し上げるまでもないんですね。そういうわけで、この種の問題に対しても、やはり政府としてももっと積極的に取り上げていく必要があるんじゃないのか。この実態についてはどういう把握をしておられるのか。また、この種の問題というのは、地方自治体だけにまかしていいような問題なのか、見解を賜わっておきたいと思います。
  93. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいまの御指摘でございますが、児童扶養手当は、児童本人が日本国籍を持ち、それを監護するおかあさんなりあるいはおじいさん、こういう人もあわせて日本国籍を持つということが法律の要件になっております。おっしゃいました日本国籍のおかあさんのもとで他国籍の児童の場合、遺憾ながら現在の法律では児童扶養手当の支給対象になっておりません。ただいま御指摘のありましたことにつきましては、至急実情を調査いたしまして、その調査の結果を待ちまして何らかの措置を講じたい、かように考えております。
  94. 上原康助

    上原分科員 ぜひ実情をお調べになっていただいて、県側とも相談をする必要もあるでしょうし、いま、法律のたてまえはそうであっても、実際には母親のもとで学校へも行っている。日本の教育を受けているわけですよ。ただ、たまたまアメリカ人の籍におって、戦場へ行ったり、あるいは離婚をしたり、置き去りにされたりというふうに、非常に家庭環境においてもそういった不遇といいますか、恵まれない状態にある。それは個人の責任じゃないかといえばそれまでのことかもしれませんが、親同士はそうであっても、子供にまでは罪はないはずなんですね。子供まで、ただでさえ偏見の目で見られないとも限らない環境において、児童扶養手当なりあるいは医療保険、そういうものが受けられない。学校に行ってもいろいろ肩身の狭い思いをしなければいけないということになると、その子供の教育に対して、将来に対しては大きな社会問題、政治問題だと思うのですね。したがって、私はこの種の問題というものも、単に地方自治やあるいは地域、県側にまかすということではなくして、国籍問題、いろいろなのがあるわけですから、そうなると国としても何らかの行政的な指導といいますか、それに対する財政的な援助というものもやらなければいけない問題だと思うのです。そういう意味で、いま実情を調べた上でやっていくということでしたが、早急にそういった面もひとつ確立をしていただきたいと思います。この点、ひとつ大臣もぜひよろしく御検討のほどお願いしたいと思います。
  95. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 沖繩県における特殊な事情でございます。先ほど局長から答弁いたしましたように、実情を十分把握いたしまして、児童扶養手当法その他に準じた措置が必要であるかどうか、そういうことも十分判断いたしまして前向きに解決の策を講じてまいりたいと思います。
  96. 上原康助

    上原分科員 あと一点。これも前から私はお尋ねをし、またいろいろ御要望も申し上げてきたことで、復帰後かなり改善された面もありますし、政府の関係者の御努力に対しても敬意を表するにやぶさかじゃございません。沖繩のいわゆるハンセン氏病対策の件なんですが、御承知のように、先ほどもいろいろ看護婦問題などで議論がありましたが、特に公立に移管した後のハンセン氏病対策、愛楽園、宮古南静園の問題なども職員数の増員というものが強く要求されてきておるのですが、医師の問題やら看護婦あるいは職員の絶対数が足りないどころか、いわゆる定員にも満たないという状況にあるわけですね。この問題については、本土全体含めて、こういう特殊な病院というか療養所であるということもあるいはあるかもしれませんが、沖繩の場合の南静園あるいは愛楽園の場合、本土の類似の療養所と比較をしてみても六割ないし七割程度しか満たされていないという状況に置かれているわけです。四十九年度予算でもかなり検討するということであったのですが、関係者のお話を聞いてみると、とてもじゃないという不満が強いわけです。なぜこうなるのかということと、今後せめて定員だけでも確保できるような条件というものが一体生まれるのか生まれないのか、そのあたりについての御説明と考え方をお聞かせいただきたいと思うのです。
  97. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 沖繩のハンセン氏病についての国立に復帰後の対策につきましては、施設についてもございますが、特に先生御指摘の職員の問題につきましては、四十七年と八年で三十八名の職員の増員をはかりまして、四十九年度では十二名、特にそのうち一名は医師を増員いたしまして、ただいまの予定では宮古南静園の増員をはかる予定でおります。  最後に先生が、今後これらの問題について適正な定員の確保ができるのかということでございますが、この点につきましてはわれわれは計画的に――御希望のように多数増員ということは現在の国の総定員法のワク内ではなかなか困難でございまして、今回の十二名というようなものといままでの三十八名、こういうものも御勘案願えれば、大体われわれの今後の定員達成という目標に向かって努力することは御理解いただけると思うのでございまして、ただこの場合、沖繩のハンセン氏病は先生も御存じのようにやや南方亜熱帯型のハンセン氏病でございますので、本土のような寒冷地のハンセン氏病と病状がやや異なりまして、幸いなことでございますが比較して軽症でございます。そういう意味で、たとえば不自由者の数の割合なども、沖繩のほうが本土に比較して若干軽い面もございます。しかしそう大きな差はございませんけれども、そのようなことも適正に判断いたしまして、たとえば不自由者の付き添いの職員の確保というようなものも当然はかりますけれども、数の問題で本土並みという議論そのものを適用することは、私たちとしてはやはり適正にやりたい、こういうふうに考え、また沖繩の実情も十分勘案いたしまして、今後ともほぼその目的が達成できるように計画的に運んでいきたい、こういうふうに考えております。
  98. 上原康助

    上原分科員 私も、先ほど若干申し上げましたように、まあ皆さんが、政府が御努力をしているということはそれなりに評価もするし、理解しないわけでもないという前置きをしていまお尋ねをしているわけですが、確かに、定員法というのもあるし、また医師の確保あるいは職員の確保というのも、ハンセン氏病対策という面から考えても、なかなかむずかしい事情にあるということも理解をしないわけじゃありません。  それから南静園の場合ですと、職員数十九名くらい四十九年度は増員をしてもらいたいということに対して、いま医師一人を含めて十二名ということですが、これは愛楽園と両方に十二名の増員というわけでしょう。絶対数からいって、あまりにも要望にはかけ離れている。せめて半分ぐらいでも満たすならば、関係者としてもまあまあというお気持ちになるかもしれませんが、こういう状態ではなかなか療養者の方々の療養面あるいは、現に患者自体で管理をしなければいけないという面が療養所にあるわけですからね。しかも老齢化をしていくというような問題、施設の不備などを考えた場合に、国立に移管をした手前もありますので、いま少し積極的な対策というものがとられてしかるべきでありますので、今後ともそういった恵まれないといいますか、あるいは政治の日の当たらない方々に対する福祉政策というものは、より積極的にとらるべきだと思いますので、継続した御配慮を強くこの点も要望をしておきたいと思います。  そこで、時間が参りましたので、あと二、三点あったのですが、先ほどの原爆問題を一つの例としてあげたのですが、まだ沖繩においては、復帰特別措置などで処理されなかった問題も厚生省関係にも幾つかあると思うのですね。どうかそういった面は、単に特別措置やその他で拾い上げられてこなかったのだからと不問に付されずに、かかえている問題についてはぜひ解決をしていただくように強くお願いといいますか、要求いたしまして質問を終えますが、最後に、大臣の、そういった問題を含めてやるという、一言お答えをいただいて、終えたいと思います。
  99. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 沖繩の本土復帰に際し、措置しなければならなかったのに落ちこぼれが多少あることは、私も承知いたしております。そういう問題については、気がついたそのつど解決をしてきたわけでございますが、今後ともそういう問題については、本土と一体になった以上、中身も一体的な形になるように、落ちこぼれについては善処をいたしてまいる考えでございます。
  100. 渡辺栄一

    渡辺主査 上原君の質疑は終わりました。  次に、大柴滋夫君。
  101. 大柴滋夫

    大柴分科員 私は、身体障害者対策、とりわけ盲人について日本政府の恩恵がどのようなものであるか、そのことについて二、三の点をお聞きしたいと思います。  第一点は乗りものでありますが、例を東京都にとりますと、いま身体障害者、とりわけ盲人は東京都の乗りものはただであります。都バスあるいは地下鉄。国の乗りものは、いろいろの換算の基礎があるのでありますが、大体半額であります。私鉄もおそらく半額のようになっているのではないか。これは、全額無料にしてほしいという要求が非常にあるのでありますが、日本厚生省の方針としては、全額無料化への方針を目ざして進んでいるのでありますか、それともやはり当分の間はこれだけだ、こういうようなつもりでいるのでありますか、その辺のところの目標についてお尋ねをしたいんです。
  102. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 現在身体障害者につきましては、国鉄運賃割引が大体五割引き。それから運輸省が行政指導されまして、私鉄なり乗り合いバスにつきましても、国鉄に準じた割引制度が実施されております。さらにこの割引制度を拡充することにつきまして、身体障害者の関係の方々の御要望は非常に強いのでございますので、私どもとしましては、そういった御意見を体して運輸省なり国鉄当局に申し入れをいたし、種々協力方を要請をいたしておるところでございます。
  103. 大柴滋夫

    大柴分科員 したいんですか、それともしているんですか、どっちなんですか。
  104. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 もっと割引制度の内容を拡充したいと思っております。
  105. 大柴滋夫

    大柴分科員 ひとつどうか、日本も金持ちになったのだし、政府の方針も福祉国家というようなことを言っているのでありますから、できるだけ、一ぺんにはできぬだろうと思いますが、半分のところは六割あるいは来年は七割というように、その方向を急いでほしいのであります。  ただ一つ、ここでお尋ねしたいのは、まことにけっこうでありますけれども、近来、御存じのように私鉄の駅などは人がいなくて、まあいるところもありますけれども、あるいはこれは国鉄もそうでありますが、非常に機械化されているわけですね。そうすると、目の見えない盲人はどこへ行って買っていいのかわからないし、六十円の区間と百円の区間とたいへんいろいろ――盲人に聞けば、とにかく乗りかえてどこかへ行くときには、駅で切符を買うのが死ぬる苦しみだというんです。これは、何かうまい方法はないのでありますか。
  106. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 最近国鉄等におきまして、盲人の方が使用できる自動販売機を整備してまいっております。これは自動販売機に点字表示をしてあるわけでございまして、現在のところ、駅名、区間まで点字表示いたしておりまするのは全国で四カ所、東京の高田馬場、大阪、沼津、明石、この四駅におきまして、区間までも点字で表示した自動販売機を整備しているそうでございます。  そのほか、料金のところだけ点字表示したものが、約五十駅整備されているそうでございまして、今後国鉄の方針といたしましては、県庁所在地の市及び厚生省が身体障害者福祉モデル都市に指定した市は、優先的にこういう盲人の利用できる点字表示のある自動販売機を整備していく、こういう方針だと承っております。
  107. 大柴滋夫

    大柴分科員 たいへんけっこうなことだろうと思いますが、不幸にして盲人というのは、全国津々浦々にいるわけなんですね。全国津々浦々の駅までそういうことをすることは、こういうことばが適当であるかどうか知らぬが、百年河清を待つようなことだろうと私は思うんですよ。いっそどうですか、これ、盲人パスというものをやって、どうせ乗りかえあるいは乗り越しというような各駅には精算所があるのでありますから、そこで半分の金は払う、こういうように厚生省と国鉄なり私鉄なりで話し合うようなことはできないものでありますか。大臣、いかがですか。
  108. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 先生ただいま御提案の、下車時に精算するような乗車券が発行できないかと、こういう……(大柴分科員「いやいや、パスをやっておいて」と呼ぶ)パスを発行できないかという問題でございますが、この点につきまして、それが技術的に実施可能性がどうであるかという点は、私どもちょっとわかりかねますけれども、御提案の趣旨に沿って国鉄当局とは話し合ってみたいと思います。
  109. 大柴滋夫

    大柴分科員 私どもいろいろ駅で見ていてまことにお気の毒なんですよ。ぜひどうか、できるかできぬか、できる方向でひとつ国鉄なり私鉄なりとお話しを願いたい、こういうように思います。  それから高田馬場の駅に、子供あるいは盲人のために、小さな音楽で青色信号のときには、通りゃんせ通りゃんせというような信号、音声つき信号があるのでありますが、これもひとつ各県あるいは中には金持ちの市もあるかもしれませんが、できるだけ所要な点には、小さな音楽でそういうものをするような信号をつけてほしいと思うのであります。それから同時に、その場合に、大体日本の、そこの青信号を見てもわかるように、全部、普通の人が出るように、段階があるわけですね。十五センチなら十五センチ、これは、すとんと落ちると必ずけがすることきまっているのですが、これもひとつ何とかして、そこですとんと落ちないような対策をとってほしいと思うのでありますが、その方向へ進んでいただけますか。
  110. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 盲人などの身体障害者の方々の社会活動を促進するために、生活環境につきまして、そういった障害者の方々の利用の便や安全性を十分配慮しつつ施設を整備していく必要があると思います。最近、自治体におきまして、点字ブロック等によりまする盲人交通安全誘導施設や盲人用の音響信号機、こういったものの整備が進んでおります。厚生省といたしましても、盲人の方々が安全にそういう外歩きができるというふうにいたしますために、四十八年度から身体障害者福祉モデル都市という制度をつくりまして、それに対して補助金を交付し、そういった盲人をはじめ、あるいは車いすに乗っておられる方々、そういった方々が安全に町を歩ける、あるいはいろいろな施設にそういった方々の利用できるような設備をする、そういったようなことをこのモデル都市を通じてまず普及してまいりたい。四十八年度は六市指定いたしましたが、四十九年度予算でこれを十七市指定をしておりまして、行く行くは各都道府県には必ず一市、身体障害者の福祉のモデル都市をつくって、そういった施設を整備してまいりたい。そういった各県に一市整備されましたその市を見習って、ほかの市もそういうふうな設備をしていくというふうな方向に指導してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  111. 大柴滋夫

    大柴分科員 ぜひひとつその度合いを大きくしていただきたいというのが要請であります。  それから盲人といえども、生活をするためには電気の設備、ガスの設備、とりわけ近代においては電話の設備等が要るだろうと思いますが、これについて何か設備とか料金について恩典がありますか。
  112. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 ガス、電気、電話等の設備につきまして、現在のところ特別の恩典はございませんが、たとえば盲人の方がその職業に関連してこういった設備をなさる場合には、世帯更生資金の貸し付け制度がございますが、そこで五十万円まで資金を低利で融資する道が開けております。なお、電話の架設費について何か考える必要があるのではないかという御要望が非常に強いわけでございますが、ことし初めて老人福祉対策のほうでひとり暮らし老人のために、福祉電話ということで電話の架設費についての補助金制度が初めて四十九年度予算実現する運びになりましたので、将来はこういった面におきまして重度身体障害者についても同様の方向で考慮する必要があるのではないか、かように考えている次第でございます。
  113. 大柴滋夫

    大柴分科員 電電公社にお尋ねしたいのですが、ガス、電気に比べて電電公社というのはたいへん政府と関係が深いのですが、電電公社自身はそれほど損をしていない公社だろうと思うのですよ。何かこういうことについて、前向きな議論をしたような状況にあるのですか。それともそういうことは一切関係ない、どういうようなおつもりでいるか、いままでこういうことの話をしてきたかどうか、ちょっと聞きたいのですよ。
  114. 玉野義雄

    ○玉野説明員 最初に盲人用の関係でございますが、これにつきましては、盲人の方で電話がかけられますように、ダイヤル盤のところに数字がわかるようにダイヤル盤を変えましてつけておるわけでございますが、これは現在約七万ほどついております。  それから、いまお話ございました料金の関係でございますが、これにつきましては、国のいまの現行法ではちょっと料金減免ができないようになっておるのでございますから、できるだけ関係方面とお話しいたしまして、市町村で福祉事業としてやっておられる電話がだんだんふえておるわけでございますが、それに対しましては、社会福祉法上の福祉事業でございますと、その名前で電話をつけていただきますと債券が免除になります。そういうお話をいたしまして、市町村の福祉事業としてそういう方のお宅へ電話をつけていただくというふうにしまして債券を免除しておりますが、そのほかに市町村補助をいたしまして、現在では福祉事業でやっております分につきましては、市町村が設備料も負担しております。それから基本料も負担していただいております。それで、度数料につきましては、これは市町村によっていろいろ違っておりますが、月四百円とか八百円とか市町村で負担するということで、御本人の負担が軽くなるような状況になっておるわけでございますが、そういう市町村を順次ふやしていただくということで私たちは拡大をはかっておるわけであります。
  115. 大柴滋夫

    大柴分科員 電電公社と政府との間の関係がよくわからないのですよ。つまり、あなたの言っていることはよくわかりましたけれども、こういう時世であるから特別な身体障害者に対しては債券をただにするようにしようではないか、あるいは料金をまけようではないかというようなことは、政府の何か厚生省なら厚生省の強い指示がなければできないのか、あるいは電電公社でも時代的使命観を感じて、そういうようにしようではないかと厚生省に呼びかける、いまの日本の政府と電電公社の関係は、その辺のことはどうなっているのですか。政府が言わなければやらないのか、電電公社も何か積極的にやろうとする気がまえがあるのかどうか。
  116. 玉野義雄

    ○玉野説明員 先ほど申し上げましたように、郵政省ともそういうお話をしておりまして、それで、なお一般の市町村等にもそういうお話をいたしまして、できるだけ社会福祉事業ということでやっていただく。そうしますと、私どもも債券免除ができますし、そういう点がございますので、そういう打ち合わせは十分しながらそれの拡大をはかっておるわけであります。
  117. 大柴滋夫

    大柴分科員 いずれにしても日本の福祉国家というのは、そのポスト、ポストにおる人がそのつもりにならぬとできないだろうと思うのです。だから電電公社も、厚生省のそういう強い要請があるなしにかかわらず、ひとつ時代的使命というものを十分お考え願って、とりわけひどい身体障害者の施設料はただにするとかなんとかという、その方向を急いでほしい、こういう要請であります。
  118. 玉野義雄

    ○玉野説明員 郵政省その他とも十分打ち合わせをいたしまして対処していきたいと思います。
  119. 大柴滋夫

    大柴分科員 次に私は、盲人のあんま、マッサージというものが、晴眼者のために彼らの職種というものがたいへん狭められているのではないか。そこでお尋ねしたいのでありますが、官公立病院等においてはり、きゅう、マッサージ、あんま、そういうものを必要とするときには、できるだけ盲人をその位置にとにかく置くというような、こういう行政指導はやっておるのでありますか。できないのでありますか。この辺はどうなっておるのでありますか。
  120. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 国立病院の実態を申し上げたいと思いますが、マッサージ師等の職員がただいま三百六十四名おりまして、そのうち、視覚の障害者が百七十二名、全盲が三十一名の二百三名でございます。先生お尋ねの国公立等の病院の問題でございますが、基本的にはやはり身体障害者の雇用促進法に基づく、たとえば特定職種等の規則できめられておりますが、あんま、マッサージの場合、全盲の度合いの方を七割くらいは採用しなければならぬ、こういうことになっておりまして、国立の数字を申しますと、ただいま重度の障害者四十名のうち三十一名が全盲でございまして七割以上の実態になっておるわけでございます。この三百何名という数字そのものが決して多いものではないと思いますが、やはり一度採用されますと、定員として採用された方がおやめになるとか、あるいはその身分、定員そのものが変動しませんと、なかなか新規の採用は困難でございますので、今後御指摘を待つまでもなく身障者の雇用という問題、特に適切な職業でございますマッサージなどには、視覚障害者の採用というものに意を用いていきたい。  なお、一般的な公的病院も、具体的な数字はただいまつかんでおりませんけれども、やはり雇用促進法の趣旨にのっとって、県立その他の点でもこのような配慮がなされておるというふうに期待いたしております。  なお、これらの問題について、先生からの御要望でぜひ調査しろということであれば、若干日時をいただけば、どのような実態であるかをお調べすることができる、こういうふうに思っております。
  121. 大柴滋夫

    大柴分科員 ぜひひとつ、一般県立、市立病院も調査なされて――私は結果は局長がおっしゃるようなこととは違うだろうと思うのですよ。ですから、国がやっておるような方向で強い指導をしていただきたいと思います。  それからもう一つの問題は、あんま、はり、きゅう、マッサージというのが大体盲人の仕事でありますが、新職種の開発というものを厚生省はほんとうにやっておるのですか。
  122. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 盲人に適した新職業の開発につきましては、厚生省といたしましては、昭和四十三年度から国立東京視力障害センターにおきまして、盲人のカナタイピストの養成事業を行なっております。それから、四十四年度からは委託費を社会福祉法人の日本ライトハウスに出しまして、電話交換手の養成をいたしております。また四十八年度からは、同じく日本ライトハウスに委託いたしましてコンピューター要員の養成をやっております。
  123. 大柴滋夫

    大柴分科員 昨年もそういう返事をいただいたのですよ。速記録をお調べになればよくわかるだろうと思います。そうして局長、数はあなた四つくらいあげられたけれども、その数はまことに微々たるものなんですね。だから問題は、四つあげられてたいへんけっこうですから、その数をふやすような御努力を願いたいのです。ここで私が数を言うとおかしいけれども一昨年の数と全く同じだろうと思うのですよ。恥をかかせるつもりはありませんから、ひとつどうかその数をふやすように、ことし二人であったものは来年は四人になる、再来年は八人になるというような、国会の答弁だけがから回りをして、実際は進まないということはたいへん悲しいことなんです。どうぞよろしくお願いします。  それからもう一つの問題は、公営住宅、公団住宅等に対して厚生省としては、盲人並びに身体障害者を積極的に入れてくれというような指導を、公営にはやっているようであります。しかし公団住宅等に対してやっているのでありますか。銭が高いからそれはやってはおらない、こういうふうな方針でありますか。
  124. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 公団住宅につきまして現在私どもが承知いたしておるところでは、身体障害者福祉法の障害等級で一級から四級のものについて、この公団住宅入居の抽せんにあたりまして、その当せん率を普通の一般の方の五倍に高めて入りやすいようにしている、そういう措置を講じているというふうに承っておりますけれども、特に公団住宅については、盲人用としてたとえば何戸確保するというような戸数の確保はいたしておらないで、その抽せんの場合に当せん率を高める、普通の場合の五倍に高める、こういう措置を講じておる、こういうふうに聞いております。
  125. 大柴滋夫

    大柴分科員 公団住宅なら公団住宅ができますね、二千戸なら二千戸。先般住宅公団へ聞いたら、入った人で歯医者などの免許状のある人はそこにおいて開業をさせるようなことをやっております。大体あんま、はり、きゅう、マッサージというのは普通の民家が二千五百軒ぐらいあれば一軒の営業が成り立つそうなんです。そうすると千五百戸以上あるというような公団住宅においては、そういう盲人のあんま、マッサージ師が入っていっても十分営業は成り立つのではないか。そうすると、そういうこまかい配慮をしていただけると、一般の公団住宅の人にとってもたいへんありがたいし、また盲人対策として、政府の政策としてもたいへん愛情のこもったものだろうと思うのですが、こういうようなことをひとつ建設省なりあるいは住宅公団なりに対して要請をしていただきたいのですが、いかがですか。
  126. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 公団住宅の中にあんまの整復師を確保するという御提案でございますが、この点につきましては住宅公団とよく話し合ってみたいと思います。
  127. 大柴滋夫

    大柴分科員 ぜひお願いいたします。  それから、あと五分だそうですから急ぎますが、現在、盲人なるがゆえの、あるいは身体障害者なるがゆえの所得税の特別な控除額というのは、ことしから二十四万円だろうと思うのであります。つまり税金における、われわれ正しい目を持っている者と盲人とのハンディは二十四万円だろうと思うのです。これはあまりにも盲人並びに身体障害者に対して――ハンディ二十四万円というのは月に二万円であります。一日にして七百円くらいでありますけれども、これは今年度はどうもならぬとしても、ひとつ来年度あたりから厚生省は大いにがんばって福祉国家の実をあげていただきたいと思うのでありますが、要するに今年度は二十四万円、昨年度は二十万円、この率よりも来年度はよけい伸ばしていく、こういう決意に立ってほしいと思うのでありますが、いかがですか。
  128. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 この所得税の所得控除の中で障害者控除が現行十三万円が十六万円に、それから特別障害者控除が現行十九万円が二十四万円に四十九年度において改善されるというふうに聞いておりますが、御趣旨を体しまして今後ともこの控除額が引き上げられるように努力してまいります。
  129. 大柴滋夫

    大柴分科員 これはわれわれ大衆団体関係ある者も、自分の給料を上げろというばかりでなくて、こういうことも大いにやりますから、厚生省のほうも大蔵省その他を叱咜激励していただきたいと思うのです。  それから最後の問題でありますが、今日東京都は年収百八十万円までの盲人というか身体障害者に対して月五千円、六万円の福祉年金というのをとにかく送っているわけであります。百八十万円です。ところが国のほうは、五十万円の収入があれば福祉年金は送らない。これは東京都がたいへん金持ちだといえば別でありますけれども、あまりにも差が開き過ぎて、大体かっこうが悪いのじゃないですか。
  130. 横田陽吉

    ○横田政府委員 福祉年金は御存じのように全額租税負担の年金でございますので、従来のたてまえから申しますと、税金を納めておられる方については福祉年金の受給資格がない、こういうふうな考え方をとっておるわけでございます。ただ、そう申しましても、たとえば扶養義務者等につきましては、現実の扶養関係がだいぶ変わってまいっておりますので、去年から御承知のように実質撤廃に近いような措置は講じてあるわけです。ただ、本人につきましては、やはり税金負担の福祉年金でございますので、一挙にそういったことをやるということもできませんが、いままで受給されておられた方で、税金の非課税ラインだけでもって処理したのでは受けられなくなるというような問題があっては困るということで、実は御提案申し上げております本年度の制度改正におきましては、非課税というものを多少離れまして、多少それを上回る所得制限の水準を引いたわけです。ただ、いまおっしゃったような東京都内のそういった非常に大きな支給制限の緩和ということは、全体の制度を運用いたします際にはたいへん無理な考え方ではないかと思います。しかし、御指摘のような障害者の生活実態でございますので、私どもも今後とも所得制限の緩和につきましては努力いたすことをお約束いたしたいと思います。
  131. 大柴滋夫

    大柴分科員 福祉年金が税金で成り立っているなんということは、私が幾らとんまでも知っているわけですよ。あなたに聞きますが、それじゃ東京都の福祉年金というのは一体そのもとは何なのですか。
  132. 横田陽吉

    ○横田政府委員 私が申し上げましたのは、国の年金制度を運用いたします際の制度の仕組みと申しますか、そういったものを申したわけでございまして、東京都の福祉年金も国の制度と同じ性格の福祉年金だろうと思います。ただ、東京都でおやりになっておる実態が御指摘のようなことでございましても、制度全体の問題としてそのようなやり方をすることはきわめて困難だということを申し上げたわけでございます。
  133. 大柴滋夫

    大柴分科員 時間がありませんし、あなたをあまり詰問してもどうもなるわけでもない、大きな問題ですから。しかしそういう考えを持ってもらっては困るのです。とにかく既存の隊列から新しい福祉国家をつくろうとするときに、国の重要な発言権を政府に対して持っているあなたがそういうかたくななことを言って、盲人の福祉年金制度、わが国の社会保障というのが進むとは思われません。どうかあなたのかたくなな考えをもう少し時代に合うように修正していただきたい。あなたにできないことはわかっていますよ。しかし、それをやろうというのがいまの時代的要請だろうと私は思うのです。あなたの返事は要りませんけれども、そういう考えでおられたんではわれわれも幾らでももの申すことがあるということを申し伝えて、たいへん失礼でありますけれども私の質問を終わります。
  134. 渡辺栄一

    渡辺主査 大柴君の質疑は終了いたしました。  次に林孝矩君。
  135. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 私は、看護婦不足のためにいまの医療行政というものが十分福祉の目的を達していない。それどころかいまやその問題は、一方で福祉行政を叫び、一方でそれを充足できないという矛盾した社会問題を引き起こしつつあるという現実を踏まえまして厚生大臣にお伺いしたいと思います。  最初に具体的な例を申し上げます。  奈良県に国立療養所奈良病院という療養所があります。この療養所は昨年の六月、難病治療の一環として四十ベッドの筋ジストロフィー病棟が建設されたわけであります。建設費は八百十九万八千円、このようになっております。ところが看護婦がいない、そういうことでオープンされない、いまだ閉鎖されたままになっております。筋ジス患者またその家族にとって非常に期待され、また非常に楽しみにされておった病棟が、いまや逆に落胆と、一体厚生省は何をやっているのかというような政治不信の声にまで大きくなっておるところであります。また三重県の鈴鹿市にある国立鈴鹿療養所、ここを見ますと、定員百四名のところ現在六十一名、四十三名の欠員、それがために重度身体障害者の病棟を昨年末閉鎖してしまった、このような実情があります。その他近畿圏を見ましてもまた全国が調べてみましても、時間がありませんので多くは申し上げませんが、看護婦不足という問題が原因となって、このように病棟ができベッドがそろってもオープンできないという現実、こういう問題があるわけであります。大臣はこのような実態をつまびらかに掌握をされておりますか、まずお答え願いたいと思います。
  136. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生具体的御指摘の西奈良病院、鈴鹿ともに実態は先生おっしゃるとおりでございます。そのほかにもちょうど西奈良病院と同じように、建物整備が四十七年度予算がつきましても、実際に使用可能になるのが四月を越し六月になって、また看護婦の採用は年度の卒業期を控えて採用というようなこともございますけれども、全般的に看護婦の不足というものが基本的にございまして、国立にもかなり看護婦さんが、総体の数字では九四%くらいの看護婦の充足にはなっておりますけれども、個々の施設、たとえば東京では、国立第一病院が看護婦の不足のために約五百床程度の開棟がまだできない状態を持っております。そのほかにも施設単位に若干そのような看護婦不足を理由にした病棟の開棟ができない、使用ができない状態のところが約六百床程度ございます。
  137. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 大臣、このような状態、いまこれが初めて国会の議論になったのではないわけであります。過去において多くの同僚委員がこの問題を指摘しました。そうして厚生大臣立場から、いろんな過去の厚生大臣答弁をしております。その議事録の一部始終を調べてみますと、答弁を聞いておって非常に安心するような、また期待を持たせるような、もう近い将来に解決するようなそうした答弁ばかりであります。ところが現実問題としてますますこうした傾向が出てきておる。いま私がここで二つの具体的な例をあげましたけれども、これは解決できますか。
  138. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お述べになりましたような、看護婦が不足をしておるために療養所がその機能を発揮することができない、それから病院も、せっかく建物ができてベッドができましても開業ができない、そういう例のあることを十分私も承知いたしております。  そこで、こういう問題を解決するために、明年度看護婦の養成なりあるいは確保のためにできるだけの力をいたさなければならぬということで、昭和四十九年度予算編成にあたりましては、看護婦の養成、確保に、従来の欠点でありましたと思われる点について、特に重点を置いて予算措置を講じたつもりでございます。養成所の増設の問題あるいは看護婦の養成所の施設につきましての、いろんな経常運営費の補助がないために思うようにいかない、こういうふうな問題等もありましたので、運営費の補助の範囲を拡大するとか、あるいは潜在看護婦を確保するためにナースバンクという新しい制度をつくるとか、実は具体的な問題は別といたしまして、ほんとうに私も頭を痛めておる問題が看護婦の問題なんです。でございますので、来年度厚生省予算をごらんいただきましてもわかりますように、看護婦の養成、確保に対しましては、従来以上に力をいたしたつもりでございます。
  139. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この二つの具体的な問題に処理ができるかということでございますが、西奈良病院の情報によりますと、三月中に学院卒業者を十九名新採用いたしますし、四月に入りましても二名、これは引き続き努力いたしますが、二十一名の採用が内定いたしておりまして、先生御指摘の筋ジスの四十床につきましては、その後退職者等が出るために――これは通例的にどうしても六月のボーナスのころまでに、現在いる方の退職がございます。したがって、この四十床の筋ジスを開棟するのには、看護婦で少なくとも十九名、それからそのほかの職員を含めて三十三名ぐらいが標準になっておりますので、これを完全に確保できなくとも、たとえば四十のうちの二十は開くというようなことで、大体施設も判断いたしておりますし、私もその方向で開棟できるようにいたしますことをここでお約束をいたしたいというふうに思います。  三重県の鈴鹿についても同様でございますが、現時点の具体的な数字は持っておりません。やはり新卒業者を把握することで最大の努力をいたして、先ほどちょっと触れましたように、年度の途中の建物の完成と看護婦確保とのズレというものが非常に施設を悩ましておる問題でございまして、鈴鹿も同様な努力をいたすことをお約束いたします。
  140. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 そこで大臣にお伺いいたしますが、看護婦がやめていくという問題、それから看護婦になり手がいないという問題、こうした二つの問題は、いま一番頭を痛めていると言われた厚生大臣の頭の中にあると思うのです。それで、中学を卒業してそして看護婦になろう、そういう気持ちで受験をする。養成を一定期間受けて卒業して看護婦になる。看護婦といっても、内科だとか外科だとか、私がいま指摘しましたような重度の身障者だとか、あるいは筋ジスのようなそういう人たちを相手にする看護婦もおりますし、看護婦にいろいろあるわけですね。そういう一貫した流れの中で、いま大臣が指摘されたとおりでありますけれども、一番問題は、看護婦の数が少ない。その数が少ないというのは、なってもやめていくというケースと、私はもう一つなり手がいないというケースと、二つの面から考えていかなければならないと思うのです。  そこで、ではなぜ、なってからやめていくか、それから、なぜなり手が少ないか、こういう点に関して、大臣はどのような見解をお持ちになっておるか、お伺いしたいと思います。
  141. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この問題に対しましては、結局私は結論的に申しますと、看護婦という職業は女性の従事する職業のうちで非常に貴重な、重要な職業であるという認識が国民の中に植えつけられることが一番大事だと思います。それにはやはり看護婦の社会的地位を高める。それには待遇をやはりよくするということが基本だと私は思うのです。そういう意味合いにおいて、私どもも今日まで、看護婦の待遇を向上させるためにいろいろ努力をいたしてまいっておりますが、人事院などにおきましても、最近この点を十分理解をしてきておりまして、昨年、人事院の勧告もございましたけれども、さらに、近く看護婦の処遇改善のための第二次勧告を出していただけることを実は期待をいたしておるわけでございます。もちろんそれだけで十分だとは思いませんけれども、そういうふうな処遇改善の積み重ね、それによってやはり看護婦の社会的地位というものを高めるようにするということ、これが一番大事な問題だと思います。そのことが魅力ある職業たらしめ、また看護婦をやめていくことを減らす一つの理由になるのではないかと思うのであります。  それと同時に、やはりこれは御婦人の職業でございますから、結婚されてもやはりしばらく続けていただくようなことも政府において努力していかなければならぬ問題だと思います。そういうふうなわけで、子供さんがあっても、働いている間は子供さんを預かるといったふうな、病院の中に保育施設をつくってあげるとか、そういうふうな施設の拡充、これなどもやっていかなければならぬ大きな問題だと思います。  要は、看護婦という職業が社会的に尊敬される職業であるような、精神面において、また経済的な面において、そういうふうな処遇を受けられるようにしてあげることに全力を尽くすことが国の責任である、こういうふうに理解して今後とも努力を続けてまいりたいと思います。
  142. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 私の見解も同じであります。  そこで、労働条件の改善だとかあるいは社会的地位の向上、また処遇、待遇、生活環境、そうした面にわたる改善等に関して大臣の見解がいまあったわけでありますが、私、実際問題として非常に強く印象を持ったのは、国立療養所の実態で説明いたしますけれども、看護婦がいまどういうところに住んで生活をしておるかということです。この例は奈良県の療養所の例ですが、定員百十三名のところ、九十一名、これが実数です。そのうち六十三名が療養所の宿舎に入っておるわけです。この宿舎へ行ってみますと、まず宿舎の建物は平屋建てでありますが、建築物自体が非常に老朽化しておる、これが第一印象です。そして部屋の割り振りがどうなっておるかといいますと、八畳の部屋に三人のところが七部屋、六畳に二人のところが四部屋、こういうふうになっておるわけです。この療養所は結核病棟と脳性小児麻痺病棟と二つあるわけでありますが、結核病棟患者というのは非常に老人が多いわけです。そして療養している間に思考力だとか判断力あるいはからだの動かし方、いろんな面がやはりお年寄りですから自由にならない、そういう状態。看護婦の側に立って考えれば非常に手間がかかる、心身ともに疲れる、こういう状態。それから脳性小児麻痺のほうに至っては、これはもう常に一緒にいないと何をやるかわからぬような状態で、これまた非常に手間がかかる、心身ともに疲れる、こういう状態に置かれているわけであります。そして疲れて自分部屋に戻っても、このように三人あるいは二人と同居しておって、自分が非常に疲れておるから寝ようという気持ちになっておっても、やはり人に気を使わなければならない。設備も十分整っていない。建物も非常に老朽化しておる。何かこうむなしさを感じるような状態に置かれておるわけです。そうしますと、ほんとうに大臣が先ほど言われたように、こうしなければならないという理想、目的というものははっきりしておるわけです。また、今後多くの若い人たちが看護婦を目ざしていくことだと私は思います。そういう人たちの気持ちの中に、一回見てこようといってその現場を見たことがあったとします。どういう印象を受けてその後輩は帰るだろうか。これでは幾ら制度、対策が進んで予算がつけられて、そして養成をなさろうということを考えても、現実の問題としてこういう状態では、ほんとうにそこに夢だとか生きがいだとかそういうものを求められるかどうか、感じられるかどうかということに対して私は非常に残念にも思いましたし、疑問も持ちました。こういう状態をやはり実態としてすなおに見なければならない、私はそう思うわけであります。  ここの所長さんは何とか解決したいというわけで、施設整備工事をやって、四階建ての宿舎を何とかつくりたいという予算要求もしているわけでありますが、この看護婦の宿舎の実態というものに対して大臣が今後――これはもうここだけじゃないと思います。資料もちゃんとありますけれども、全国各地にこうした問題がある。これをやはり考えていかなければならないのじゃないか。ナースバンクあるいは院内保育所の問題もあとからお伺いしますが、まず第一点として、この問題に対して大臣はどのように今後対処されるか。また私が具体的に例をあげましたこの療養所の宿舎の新しい姿というもの、大臣が責任ある立場として、いつ対処してその要望にこたえられようとするか、その点をお伺いしたいと思います。
  143. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 確かに看護婦さんに落ちついて気持ちよく働いていただくためには、待遇の改善、俸給を上げることも大事でございますが、いまお話しのように、仕事が済んだあと生活をするその場が、いまお述べになりましたようなことであれば、まことにあじけない生活だろうと思います。そういう中において長いことつとめてくださいなんというのは、私もどうも言うほうが無理な感じがしてきました。全部が全部そうではないとは思いますが、そういうものがあることはほんとうに望ましいことではありません。実はせめて国立病院とか療養所くらいは、私はその現場は何も知りませんが、もう少しりっぱな寄宿舎などがあるのではないかと私も想像しておったわけでございますが、そういうことであればまことに私としても責任を痛感いたします。  そこで、私も直観的に考えたことなんですが、やはりこういうことが一番大事なんですね。病院の建物を大事にすること、これはもちろん基本でしょう。しかし働く人々が気持ちよく生活できる環境をつくる、これが一番大事ですよ。ということを考えてみますれば、医務局長にきょう会議でも済んだらよくお話をして、全国的に少なくとも国立病院とか療養所の寄宿舎くらいは住みよい寄宿舎にするように実態を明らかにして、そうして年次別計画で整備する、そのくらいのことは当然厚生省はなすべきですよ。民間病院までは手が及びませんにしても、厚生省が所管する国立病院療養所において、そういうあじけない生活をさせるということは、私は情においてまことに忍びないということを感想として申し上げます。したがって、その気持ちで今後ひとつ医務局長計画を立てさすようにいたします。
  144. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 西奈良病院の実態につきまして先生から御指摘を受けたわけでございます。具体的には、実は四十八年度二十四名分計画したのでございますが、ほかの難病病棟の整備の資金との関係もございまして、そちらの病棟を優先させたのでございまして、この点の判断につきましては私は若干判断をどうするか、看護婦を優先するか、もう少し慎重にやるべきだったと思います。これは西奈良の具体的な問題でございます。四十九年度以降には看護婦宿舎を具体的に建てかえることをいたします。
  145. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 それからいまの大臣答弁に対する局長の……。
  146. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 実は看護婦の宿舎につきましては、従来国立病院療養所全体が特別会計でございましたが、このような宿舎につきましては一般会計からめんどうを見ていただいておりまして、率直にいってなかなか促進が困難でございましたが、今度は財投のほうでめんどうを見ていただくことに切りかわりまして、医師住宅と看護婦住宅は財政投融資の中から資金ワクを見ていただくことになりましたので、従来以上に促進できると思いますから、大臣の御下命を待つまでもなく、われわれも計画的に看護婦宿舎、医師住宅等は優先的に確保するように計画を立てております。
  147. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 先ほど大臣が、この会議が終わってから話し合ってすぐその計画――いま立てているわけですね、計画は。あとは実施するだけですか。その辺ちょっと。
  148. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 具体的にはただいま大臣の御発言がございましたので、われわれの計画大臣にお見せいたしまして、御承認をいただくようにいたしたいというふうに考えます。
  149. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 わかりました。  それから次に、先ほど大臣答弁の中で触れられておりました潜在看護婦に対する就業促進の問題についてお伺いしておきます。  すなわちナースバンク、院内保育所を設置するという予算厚生省が組むことになったわけであります。またこれも具体的な例で説明いたしますと、これも奈良県の例でございますが、未就業看護婦をすでに調査して、カード化するために人件費として六十万円、それからカードセレクター費として百万円、百六十万円という費用を見込んでおるわけです。ところが厚生省の基礎調査費は全国で二千六百三万九千円、こういう予算になっておりますね。そうしますと、これを四十七地区に分配したら一体幾ら各県にいくかということを計算しますと、実際五十五万程度になってしまう。したがって、大臣の言われております、こうした潜在看護婦に対する就業促進ということを新しく予算化したという中においてすら、この地元負担というものが非常に大きいということを私はまず指摘したいわけであります。  いまのは、これは厚生省が都道府県に委託するわけですから申し上げておくわけであります。が、ナースバンクについてはいま申し上げましたけれども、さらに院内保育所の問題について指摘しますと、すでに県や府においては講習会なんかを開いて、この院内保育所の問題に対しては努力をしてきたところであるわけです。この実情というのは非常にきびしいものがありまして、たとえば免許を持ちながら就業していない人が、奈良県の場合は、県でつかんでいるのは三十人いる。講習会を呼びかけて集まってこられる、そして直接説得したりして来るのもひっくるめて、再就職というものを考えますと二割か三割程度でとまっているわけです。そういう潜在看護婦の発掘作業というものはたいへんきびしい状態におかれているということをまず認識していただきたいという点があります。これが第二点目の指摘であります。  それからもう一つは院内保育所の問題でありますけれども、国がこうした形で予算をとって進めていくという以上は――この院内保育所についてはすでにあるところもあります。そういうところは組合だとかそういうのが負担をして、そして保母さんを雇ってやっているところもあるわけでして、今後の問題として一括してそういうものを国でやろうとなされるのか。それから、そういう保育所の維持運営というものに対してどのような計画をお持ちになっておるのか、こういう点もはっきりさせておいていただかなければならない問題だと思うわけです。  いま三点の問題をあげましたけれども、時間がございませんので、先にもう一点申し上げます。それは、先ほど第二回の人事院の勧告が出るということでありますが、きょうは行管庁から来られておると思います。そこで定員削減という問題、これは今度は再就職をしようという動きがあっても、定員削減ということが壁になって入る余地がないという問題がまた起こってきているわけです。詳しいことを話したいのですけれども、時間がありませんからはしょります。これは非常にゆゆしき問題だと思うわけです。行管庁のほうとして、こうしたパートについては定員削減という問題を画一的に考えるのではなしに、特に別途考慮して考えなければならないのではないか。こういうことはこれからますます大きな問題となって起こってくると思います。こういう点に対する見解を明確にしていただきたい。この四点をお伺いしたいと思います。
  150. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 ごく要点だけを申します。  先生が例にあげられた六十万、百万というのは、二千六百万の調査委託費のあとの、むしろその調査の結果、十二の県にまず試験的にナースバンクをつくってみたいということの予算内容でございまして、その六十万、百万程度の機械を購入してもうすでに分類までできるとなると、奈良県と御相談して、ナースバンクの二千六百万以外の予算のワクとしてのバンクのほうの仕事になじむものではなかろうかというふうに思います。  それから二点の、再就職は、従来講習会程度では困難であった。これをやはり登録制度をやり、また職場を離れておるための再教育というものを加えながら、あるいは医療看護に関する新しい情報を無料で配付する、こういうようなPRをしながらやりまして、この再就職の促進をはかりたいというふうに考えます。しかし非常にむずかしい問題であることは認識しております。  それから三番目の院内保育所のすでにあるところにつきましても、運営費については内容その他を県と御相談して検討し、対象にふさわしければ運営費の補助対象にしたい、こういうことでございまして、具体的な個々の例に当って検討いたしたい、こういうように考えております。
  151. 門田英郎

    ○門田説明員 先生御指摘の計画削減についてでありますが、計画削減というのは先生御案内のとおり、定員の全体のワクというものを抑制しながら、そのワクの中で弾力的に定員の再配分を行なうというふうなための措置でございます。したがいまして、医療関係職員についてお尋ねがあったわけでございますけれども、看護婦さんはじめ医療関係の職員につきましては、簡素合理化の余地が全くないとは申せません。たとえば機械化とかあるいは民間委託というふうな簡素合理化の余地もあるわけでございますので、全体として定員配分の合理化を推進する、こういった見地から、医療関係職員だけを定員削減目標数の算出基礎からはずすということはしなかったわけでございます。ただ、削減の計算にあたりましては、医療関係職員につきましては格段の配慮を加えるということを申し上げておきたいと思います。  他方、医療関係の需要というものの拡大に伴いまして、四十三年度以降四十九年度まで、看護婦さんをはじめ医療関係職員の相当の定員増というものをはかってきている次第であります。
  152. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 終わります。
  153. 渡辺栄一

    渡辺主査 林君の質疑は終了いたしました。  次に、高橋繁君。
  154. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 私はあまり国会で従来問題にならなかった点について質問をいたします。この問題はたいへんな問題を含んでおりますので、いずれまた機会を見て厚生大臣質疑をかわしたいと思いますが、与えられた時間の中で質問いたします。     〔渡辺主査退席、渡部(恒)主査代理着席〕  屠畜検査、食肉検査の問題で、まず第一に食肉行政といいますか、屠畜行政といいますか、これがたいへんに国民から敬遠されておるということは御承知のとおりであります。ということは、たいへんきたないものであるとか、殺すということで非常に残酷な面もあるということで、ある程度国民から遊離をされておる。そういうことをいいことにして、行政がたいへん粗雑にされておるという基本的な問題があると私は思うのです。この姿勢を変えない限り、この屠畜行政の問題はなかなか解決つかないと思うのです。これを言っていますと時間がきてしまいますから、厚生省の屠畜行政に関する指摘をしながら質問をしてまいりたいと思います。  まず屠畜検査員のことでありますが、この厚生省の調べた検査員について、いかに厚生省が怠慢であるかということを私は追及したいと思う。  あなたのほうからもらった資料と私たちの調べた屠畜検査員の資料にかなりの開きがあるということ、こういう資料をもとにしておって一体屠畜行政がはたしてうまくいくかどうか。例をあげますと、北海道が百九十五名になっておる。ところが実際に調べた数は七十一名。それから東京都が百五十四名になっておりますが、五十二名。ずいぶん開きがあります。それから新潟にしても十五名でありますが、実際は四名。神戸は三十九名になっておりますが、実際は六名、こういう調査の結果がまず屠畜検査員の数で違うわけですね。これは明らかに私はいいかげんな屠畜行政をしておるということにこれをもっていえると思うのです。その辺についての厚生省の見解なりをまず第一にお聞きいたしたい。
  155. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 先生御指摘のように、この屠畜検査というものは非常に特殊な仕事でございまして、御指摘のようなことがあろうかと思うわけでございますが、ただいま先生御指摘の屠畜検査員数でございますが、これはただいま厚生省の資料として先生お述べになりました数字は、実は四十七年十二月末現在の数字でございまして、これは各都道府県から年末に報告を受けまして、それを統計調査部のほうで集計いたした数字でございますが、あるいはこの食い違いというもの、いま数字を見ましたところ神戸三十九名が六名ではないかという御指摘でございますが、この六名はおそらく食肉検査所の数字が六名になっておるわけでございまして、そのほかに県あるいは市の本庁の検査員もおるわけでございまして、あるいはそういった数字の違いではなかろうかと推察いたすわけでございますが、われわれの数字もこれは毎年定期的に各都道府県から集計をいたしている数字でございます。
  156. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 違いが明らかにあるということは、これは認めますね。ですから、そういうところからいって、いかにこの食肉検査という問題がいいかげんにされているかということが私はあると思うのです。やはり基本的な問題は、検査員の待遇の問題とあるいは検査員を充足するという問題がたいへん隘路になっていると思うのです。その隘路になっている問題は、たとえばこれは基本的な問題になりますけれども、屠畜検査員は獣医師でなければならない、これは間違いないですね。したがって、この獣医師たる者は、こうした世間からいやがられている屠殺とか、そういう残酷さ、あるいはきたない、よごれている、そういうようにイメージを打たれておるその屠畜検査所で検査すること自体がいやである、こういうのがあると思う。  もう一つは、獣医師はやはり家畜の試験所に入ってみずから持っておる能力というものを発揮して国民に貢献したい、こういう要望もあるわけです。あるときは食肉検査もしてやっていきたい。ところが行政が農林省と厚生省に分かれておる、したがって地方へ行けば衛生部、したがって衛生部でその人をつかまえるとなかなか放さない、本人の希望がかなえられない、そこにぼくは最大の理由があると思うのですが、こうした行政姿勢上の問題でこの屠畜検査員を充足するということがはなはだ困難な隘路になっている、この点について大臣は基本的にはどのようにお考えですか。
  157. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 と畜場法に基づきまして屠畜検査員の資格が獣医師でなければならないという点は先生御指摘のとおりでございまして、従来から獣医師をもってこの屠畜検査員に当てておるわけでございます。なぜわれわれがこの屠畜検査を行なっているかと申し上げますと、屠畜場は御案内のとおり食用に供する獣畜を検査いたしまして、食肉からわれわれ国民の健康を阻害することを守ろう、こういう意図から、すなわち人間の健康との関係で従来から衛生部がこれを所管して行なっておるわけでございます。  で、この屠畜検査員の充足の問題について御説明申し上げたいと思いますが、一般に獣医師というような非常に高い資格をこの屠畜検査員に要求いたしておるわけでございまして、従来この獣医師というのは先生御指摘のように生産面に携わる人が非常に多くいるわけでございます。特に最近におきましては食品加工業が非常に発達いたしておりまして、そういった民間への就職が非常に多くて、公務員に勤務を求める者が現在非常に少なくなっておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、国民の健康を守るためには、こういった勤務をする獣医師の人も非常に必要とするわけでございまして、その獲得には従来から各都道府県非常に苦労いたしておるわけでございます。特にその特殊な勤務の関係上、そういった待遇改善ということは先生御指摘のとおりでございまして、従来も特に屠畜いたします動物の病気が屠畜検査員にうつるとかそういった問題もあるわけでございます。したがいましてこういった職員に対しまして、従来からも特殊勤務手当というような制度があるわけでございますが、今後なおそういった特殊勤務手当の増額等待遇改善につとめまして、この獣医師である屠畜検査員の確保に努力してまいりたいと思っております。
  158. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 先ほど申し上げたように、屠畜検査にあまり関心を持ってないという証拠はこの数字を見ても認めると思うのです。したがって屠畜検査員の充足、いま待遇という話も出たので、特殊勤務手当ですか、どれほど現在おやりになっているのですか。
  159. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 これはほとんどすべての県で行なっておりますが、その内容につきましては各都道府県あるいは政令市によって非常にまちまちでございます。大体多いところで月額一万円程度になっております。
  160. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 屠畜検査員と現場で話してみると、たいへんな神経を使ってやっておる。たとえばトキソプラズマのように人畜共通の病源体を持っている場合に、自分の子供が生まれるときにどういう子供が生まれるかということを心配するというのですよ。あるいはこの血液が目に入った場合は目のつぶれる場合もあるということで、たいへんな神経の使いようで、この検査員の業務は重労働です。あとからも私指摘をしたいのですけれども、たいへんな労働力と時間を越して勤務をしておるというこの検査員の待遇改善をしない限り充足ができない。待遇改善しても本人の研究や何やらなかなかうまくいかないと思うのですが、まず第一に、私は待遇改善が緊急の課題であるというように思います。こういった特殊な、ほんとうに人の知らない、毎日心配しながら検査に応じているわけですから。  次に、食肉検査の問題につきまして質問を続けてまいりますが、この厚生省の通達のようなかっこうで適正検査頭数基準というものが一人当たり一日三十頭と示されておりますが、これは一体何の根拠をもってこういうふうにきめられたのか、その根拠をひとつ示してもらいたい。
  161. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 これは昭和三十三年に出ております通達でございますが、その当時の技術といたしましてその当時定められた頭数が適正な頭数と考えておるわけでございまして、それ以上の頭数をこなすということは勤務員に非常にオーバーワークを課するのじゃないか、そういうような観点からこの基準を定めたものでございます。
  162. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 確かに定めてありますが、一体いま平均して一日何頭ぐらい検査しておると思いますか。
  163. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 これは屠場によって非常にばらつきがございますが、多いところで一倍半から二倍ぐらい、一番ひどい例で百頭という数字があるようでございます。
  164. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 一番ひどい例でなくて、それが大体普通になっていますね。一日百頭、これで一体正常な検査ができるかどうかということです。ほんとうに食肉検査は大事な問題であると私は思うのですが、一体一旦百頭の検査をしている場所で、この厚生省で示された検査実施要領というのがありますが、あの規程でやっているところなんか一カ所もないといっていいくらいだと思う。まあ進んだところでやっておる個所が全国で指摘すれば一、二カ所ある程度でしょう。通達ではこれを三十頭とすべしという通達を出しておいて、あとは百頭も二百頭も検査されておるというのに無関心でいるところに、先ほど言った屠畜検査員のオーバー労働があるし、検査がたいへん徹底を欠いておるという最大の理由があると私は思う。この問題は先ほど言ったように充足という問題になりますが、これはもう一度、そういう一日百頭も行なわれているということに対して、厚生省はどういう見解を持っておるのですか。
  165. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 先生御指摘のような状態現実にあることは事実でございまして、この点につきましては、屠畜検査員の充足につとめることが最も最良の方法だと思うわけでございますが、国民の食生活の向上等に伴いまして屠畜頭数もどんどんふえておる一方、この屠畜検査員の確保ということが非常に困難になっておるわけでございます。したがいまして、確保につとめると同時にこの施設の能率化等によりまして、一人当たりの検査頭数の向上ということにも今後つとめてまいりたいと思っております。
  166. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 この問題はたいへんな問題ですが、そういうようにお答えはいたしますけれども、現実はなかなかできない、これが現状であろうと思うのです。このと畜場法、屠畜検査要領という問題については根本的な改正をしない限りなかなか解決はつかない、こういうように私は判断します。  そこで解体料、使用料、検査料というものは現在各検査所によって若干の差がありますが、高いところは一頭五百円、低いところは百円ということで格差が非常にあります。これが全部生産者にかけられているわけです。いま生産者は家畜の飼料等でたいへんな問題にぶつかっておる、そこまで生産者に負わすべきが妥当であるのかどうか。あるいはこれは国庫補助等でやるべきではないかというように私は判断しますが、この辺の見解はどうですか。
  167. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 屠畜検査手数料は地方公共団体手数料条令というものがございまして、それに基づきまして五百円以内で各自治体がその財政的な規模を勘案しながら手数料を徴収している、こういう現実でございますので、最高は先生御指摘のように五百円という額になっておるわけでございます。この手数料をどこから取ればいいかという問題でございますが、これは従来から牛肉を食用に供しようとする受益者と申し上げましょうか、先生御指摘のように家畜の所持者から取るということにしているわけでございまして、これは今後いろいろ検討はいたしたいと思いますが、従来から受益者負担の原則で所有者から徴収いたしておる、こういう経過になっております。
  168. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 各地方自治体によって検査料あるいは解体料等について差がありますね。これはどういうところからその差が出ているのか。地方自治体できめられるようになっているんですか。
  169. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 先生御指摘のように、各地方自治体がその自治体の財政規模を勘案しながら、五百円以内で自由に規定し徴収し得るようにしてございます。
  170. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 それから、屠畜検査実施要領がつくられた。前は検査規程でしたが、これが検査実施要領に改められた。そのときに、全国の検査員によって協会がつくられているその協会で案を審議されて答申を出したように記憶をいたしておりますが、その答申されたものが実施されておらない。たとえば第八の二項ですか、「枝肉及びその内側に見られるリンパ節」とあるが、中身のリンパの検査をしなくてもよくなっている。例を出して申し上げますが、それはどういうわけか。次にじん臓検査を取ってしまった点は、一体何でじん臓検査を取ってしまったのか。こまかくやっていますと時間がありませんから一、二の例を引いて申し上げますが、どうして検査実施要領に示されなかったのか伺いたい。
  171. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 屠畜検査につきましては、政省令に規定しておるわけでございますが、政省令に規定するもの以外につきましては、先生御指摘のように屠畜検査実施要領でこれを示しておるわけでございますが、この屠畜検査実施要領をつくる際、いろいろな学者の御意見等も参考にしながらこれを作成いたしたわけでございます。御指摘のようにいろいろな点があるわけでございますが、これはやはりその検査の対象の実態を見ながら、適宜必要な部分を検査する、こういうような取り扱いで従来取り扱っております。
  172. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 大事なじん臓検査や中身のリンパの検査を抜いてしまったというところに私は問題があると思うのです。ほんとうに食肉の清潔な、あるいは検査をするという目的からすれば、それはもちろん検査員の重労働にもなってくるということならば、その検査員に対して国がもっと待遇改善して、適正に確実にやれるようにすべきである。私はそれが政治だと思うのです。それをいいかげんにしておいて、いいかげんな検査を奨励しているといっては語弊があるかもしれぬが、そのように私は思えてならない。  それから次に進みますが、切迫屠殺という問題があります。これは不慮の災害や、厚生省令で定める疾病にかかった牛や豚を生産者が屠畜場に連れていこうと思っても時間外で認めてくれない、こういう問題でやむを得ず殺して未検査肉として出回るという問題がある。消費者の口にそのまま入るという場合があるように私は見受けられますが、その辺の心配はありませんか。
  173. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 いわゆる切迫屠殺に対しまして、従来各屠場でこれが実施できるような措置をとっておったわけでございますが、やはり屠畜検査員の勤務が非常に過重になっている実情から、通常の公務員の勤務時間以外はそれを義務づけるということは非常に困難でございますので、一つの方法といたしまして、切迫屠殺の要求がございましたとき、特定の屠畜場におきまして当直制をとっておりましてこの検査に当たる。したがって、すべての屠畜場で切迫屠殺を実施はいたしていないわけでございますが、やはり必要に応じては、そういった切迫屠殺が可能なように当直制等もとっておるわけでございます。ただいま先生から未検査の食肉が市場に流通していることが考えられないかという御指摘があったわけでございますが、そういったことのないよう、切迫屠殺が可能なように当直制をとっておるわけでございまして、食肉は、屠畜検査を終了いたして合格をしたという判こがなければ市場に流通させないようにいたしておりますので、先生御指摘のような心配は現在のところない、私どもとしてはこういうふうに確信をいたしておるわけでございますが、今後各都道府県市を厳重に指導してまいりたいと思います。
  174. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 それはそういうふうに答えるでしょう。答えるでしょうが、実際は、夜中に死んだという場合、夏の暑いときなどはすぐさま解体をしなければならない。しかし、検査員は来ない。その検査員が来ないということは、「執務時間外の検査については応ずべき義務はないものと思料される。」という通達が厚生省から出ているんですよ。これは反面では未検査肉を奨励しているととってもいいんじゃないですか。まあそういう言い方はちょっとあれかもしらぬけれども、そういう通達を出しておいて、夜中に死んだ場合に検査しろといっても、これはやはり待遇改善の問題だろうと思うのです。これがなされないで未検査肉を取り締まれといったって、これは無理な話だ。ということは資料を見たっていえるんですよ。少しでも関心があれば――たとえば北海道で昨年、頭数にして約三万三千余の牛を食肉センターで殺しています。ところが切迫屠殺はわずか七頭です、統計から見ると。片や宮城では、食肉検査所で九千頭に対して切迫屠殺が二百四十六頭出ております。これは、伝染病があったというふうに答えるかもしれないけれども、そのほかに例をあげればたくさんありますが、頭数に比例して都道府県の切迫屠殺の数が平均されておれば問題ないと思うが、そのようにきわめて低い。食肉センターでたくさん殺しても切迫屠殺が七頭、一方わずかその三分の一でも二百四十六頭という頭数が出ている。これを見ただけでもいかに切迫屠殺が行なわれているかということが明らかである。ということになりますと、未検査肉というものが市場に出ていることは間違いない。こういうふうに考えるわけです。だから、食肉行政全体にわたってもっと検討すべきときが来ているし、検討しなければならない。こういうことが国会でもあまり問題にならなかったところにきわめて重大な問題があるということを私は指摘したい。そのことについてどうなんですか。
  175. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 この屠畜検査の問題につきましては、先ほど来先生御指摘のように、非常にいろいろな大きな問題を含んでおるわけでございまして、私どもといたしましても、従前からいろいろ努力はいたしておるわけでございますが、さらに今後そういった点の改善に全力をあげてまいりたいと思います。
  176. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 また機会を利用して大臣とも論戦をしたいというふうに考えておりますから、以上で終わります。
  177. 渡部恒三

    ○渡部(恒)主査代理 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。  岡田春夫君。
  178. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 時間が限られておりますから、ひとつ簡明、率直に御答弁をいただきたいと思います。  私のお伺いをいたしますのは、実は昨年もこの同じ分科会において質問をいたしまして、幾つかのお約束をいただいているアイヌ民族の問題であります。  そこで、ここに齋藤厚生大臣がおりますけれども、昨年私に対してお約束されたことがある。というのは、アイヌ民族の問題について今後政府としては思い切ってやっていきたい、審議会を設けるなり、その審議会のための窓口を一つきめて、そして審議会としてはひとつアイヌ民族の代表も入ってもらってやってまいりたい、こういう意味の御答弁があったわけです。私は正確を期するために、昨年の速記録をもう一度ここで読み直しますが、齋藤厚生大臣は、「きょうお約束申し上げておけるのは、総理府を中心として関係各省一緒になってこのウタリの問題をどう基本的に考えたらいいかということを積極的にひとつ研究いたします。そのことだけはきょうの段階でお約束を申し上げておきたいと思います。」こうはっきり言っている。それと同時に、いまは町村さんですけれども、当時の開発庁長官であった江崎長官からは、同じく、「そういう過去の経緯等も十分調べまして、まさにそういう総合対策を今後樹立してウタリのためにはかっていく、これは大事なことだと思いますので、むしろ北海道開発庁長官としては各関係省庁に激励、懇請するというような立場をとってでも推し進めてまいりたいと思います。」こういうように非常にはっきりとした答弁をされた。ところが、今日の段階で、審議会のことは言うまでもなく、窓口さえもこの一年間にできてないというような状態だ。これはやはり国会での答弁齋藤さん――町村さんはあとでかわられたんだから一応あれとしても、齋藤さん、責任を持ってこれについてどうしたのか、この点ひとつはっきりした責任のある御答弁をいただきたいと思います。  なお、あまり長々とおやりになると三十分済んでしまいますから、要点をついて御答弁をいただきたい。
  179. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 ウタリの問題につきましては、いろいろな対策というのは厚生省以外に各省にまたがっておるわけでございます。そういうふうなわけでございまして、総合的に施策を講ずる必要があるという点については、やはり去年もことしも私は一つも変わっておりません。  そこで、これをやりますためには、やはり各省が連絡を緊密にやっていくということ、そしてできるならばその窓口をはっきりするということが大事だと思っているのです。私はいまでも心からそう思っています。実は事務的には厚生省文部省、自治省、その他各省について連絡の会議も一、二度かやってきたということを私も承知しておりますし、やはりこの問題については総合的に考えなければならない問題があると思うのです。そういう意味において、私は窓口をはっきりさせる必要があるのではないかということをいまでも考えております。  そこで、関係各省にいろいろ呼びかけておるわけでございますが、私の非力いかんともしがたく、いまだにそういう窓口がどうもはっきりしていないことは、私ははなはだ遺憾だと思っております。私も関係各省にできるだけ今後呼びかけまして、この問題について窓口をはっきりさせるように、今後とも私は努力をいたしてまいりたいと思います。
  180. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 これは町村さん、同じように私も北海道、あなたも北海道なんだが、アイヌ民族の問題は非常に重要なんですが、この窓口を一本化する、そういうのが一年たってもまだきまらない、こんなことでは話にならないわけです。しかも、私がいろいろ聞いておりますところによると、何か昨日からけさの閣議のあとにかけて、あなたと総務長官との間でいろいろ話があって、そして窓口一本化の問題を具体化するというような問題について、相当具体的に進んでいるようでございますが、同じ北海道の立場においても、これはあなたは一生懸命おやりになるんだろうと思いますが、ひとつ窓口問題がどういう経過になっているか、お答えをいただきたい。
  181. 町村金五

    ○町村国務大臣 いまウタリ対策関係する政府の窓口の問題につきましては、齋藤厚生大臣もたいへん御熱心にこの問題については取り組んでおられるということを、私はあとになって、入閣をいたしまして、その間の事情を伺っておるところでございます。  いろいろこれから、ウタリの対策のためには、政府といたしましてもなすべきことが非常にあると私は思いまするので、やはりこういった問題を処理をいたしてまいりまするのには、私も、窓口が早くきまるということがたいへん必要だと考えております。実は、総務長官ともこういった問題について話し合いをいたしておりまするが、きょうのところでは、まだこうなったというふうにはっきり申し上げる段階には至っていないということだけをお答えいたします。
  182. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 私のところへ入っている情報では、町村さんは、北海道の関係もあるのでおれがひとつやってみようか、こういう考え方らしいようでございますが、ここに開発庁の人もだいぶ来ておって、事務干渉だからやっちゃいけませんといって妨害している向きもあるようだけれども、ひとつ町村さん、本気でおやりになったらどうですか。
  183. 町村金五

    ○町村国務大臣 事は北海道に在住をしておられる方にとどまる問題でございます。それだけに、北海道という名前を冠しておりまする私どもの北海道開発庁がお引き受けしたほうがいいんじゃないかという考えの方がかなりあることも、これは事実だと思います。  私も実は、この問題が起きましてから、多少部内で検討をさせてみたわけであります。ところが、御承知のとおり、いまの北海道開発庁というお役所は、岡田議員も非常によく御承知のとおり、開発法というものに基づきまして、北海道に関係する公共事業だけをやるというたてまえになっており、また、役所の構成も、そこにおりまする人的関係も、およそこういうことにはなじまないような役所だということが、どうもだんだん検討いたしてみまするとはっきりいたしましたので、やはり北海道開発庁以外のところで窓口はきめていただくのがよろしかろうというふうに、いまは私考えております。
  184. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 どうも役所の役人たちの言うことにだんだん沿ってきたということらしいんですが、しかし町村さん、これは認識を改めてもらわなければならないのは、アイヌ民族というのは北海道だけではありませんよ。東京に七千人もいるんですよ。それから開西にもいるんですよ。これは北海道が多いのです。多いけれども、北海道だけの問題ではありません。しかし、そんなことを言ったら、町村さん、おれのほうの関係じゃないなんて言うかもしれないが、そうじゃありません、やはり北海道が中心ですから、しかも、あなたは知事もやっていたのだから、責任があるのですよ。  そこで、どこでやるかということについては、私は、北海道開発庁がやるのがいいと思う。それはあなた、所管事務なんというのは、官僚のほうが何と言おうと、閣議できめれば幾らでもやれるんだから、そんなことはたいした問題じゃないですよ。あなたが国務大臣としてそういうことをおやりになる気になれば、やれるはずですよ。そういう点もひとつとっくりお考えになって、大体役所の仕事がふえていいじゃないですか。予算もふえるじゃないですか。思い切っておやりなさいよ。私、特にあなたにあれしますが、特に北海道開発庁でやるということで、ひとつここははっきり厚生大臣と両方に伺っておきたいのは、いつごろまでにめどをつけますか。私は、去年一年間待たされたんだから、何だかんだ言ってまた来年になってもまだきまっておりませんなんて言われたんじゃ困りますよ。本年度中にひとつおきめいただきたい。そういうことについてお約束ができるかどうか、ひとつ両大臣からお答えいただきたい。
  185. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 確かに昨年来の問題でございます。私もできるだけ早く窓口をきめて対策を進める必要があると考えておりますので、年度内と申しましても、これは日にちはあまりありませんね、まあできるかどうかわかりませんが、関係大臣とよく相談をいたしまして、できるだけ結論の早く出るように努力をいたします。
  186. 町村金五

    ○町村国務大臣 これはもう私も、いま齋藤厚生大臣が言われたと同様に、極力早く解決するようにいたします。
  187. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 政府の答弁というのは、極力といって、一年ぐらい待たされるんです。だから、これはもう極力というのは、厚生大臣、ほんとうの意味に早くという意味だと理解してもいいですね。年度内三週間ではできなくても、四月の初めになるとか、それぐらいのつもりでおりますよ、間違いありませんね。
  188. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は、極力とは、なるべく早くというふうに御理解いただいて、それが三月末になるか四月になるか、そういうお約束はできませんが、なるべく早くしなくちゃならぬと思います。
  189. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 長官もよろしいですね。
  190. 町村金五

    ○町村国務大臣 私も同様に考えております。
  191. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 アイヌ民族の原点の問題、時間がありませんから簡単にあれしますが、私は、やはりアイヌ民族の問題については、町村さんも私も同じ北海道の人間として、過去百年間の開道以来、われわれ和人はアイヌ民族の土地を奪ってきたのです。それから、漁業権やあるいは猟銃権を奪ってきたのです。そういう結果としてアイヌ民族は今日、苦しい状態になっているわけです。こういう過去の問題についてやはりわれわれ反省をしなければいかぬと思う。そういう点は、私がここで言うまでもなく、これは基本問題ですけれども、堂垣内北海道知事もはっきり言っています。去年の三月九日に北海道議会の本会議で、「開道百年をこえる長い歴史の中で、ウタリの方々は御指摘のように一部の心ない人々の偏見などにより幾多の苦難の道を歩んでこられました。私としましてもまことに遺憾に存ずる次第であります。私はこのような反省に立ちまして、積極的な努力を致してまいる決意であります。」こういう反省を出発点として、それに基づく対策をつくるということでなければならないと思いますが、町村さんいかがでしょう。
  192. 町村金五

    ○町村国務大臣 それはもうまさに堂垣内北海道知事が御指摘になるとおりだと思います。何と申しましても、北海道は、開道百年前には、わずかに人口は、いわゆる和人、内地の人は数万にすぎなかった。おそらくそのころはアイヌ民族もやはり数万以上はおられたんじゃないか。しかも各地の開発につとめておられた。そのあとに和人が入りまして、次第に彼らの生活圏をだだんと縮めていってしまったというようなことで、現在は御承知のように、例の旧土人保護法というようなものができ上がりまして、わずかばかりの土地等を彼らに確保するというようなことが、明治時代に行なわれたというようなことでありまして、まさにそのとおりであり、われわれとしてはこれをこのままに放置しておいてはまことに相済まぬことと、こう思っております。
  193. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 やはりそういう反省があれば、今後の政策は積極的な政策をやらなければだめです。  そこで、アイヌ民族の問題については、北海道庁としては七カ年計画で五十四億の予算を組んでいる。これを四十九年度、新年度から実行しようとしている。ところが五十四億ではとても足りない。この案だけでは私は賛成できないのですが、しかし五十四億でさえ、私はこれについて国費のほうで十分見られているとは考えていない。大体五十四億の道庁案というものは私は賛成でないけれども、たとえばいま担当しておられる厚生省としてはこの案に賛成なんですか、反対なんですか。
  194. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 その五十億云々という内容を私は実はあまり承知しておりません。
  195. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 それぐらい熱意がないのですよ。五十四億の中で七カ年計画で国費としての期待額は三十億です。そうすると、七カ年間で割ってみると一年間四億三千万です。ところがどうですか。あなたのほうで、局長来ていると思うのだが、ことしの予算は一億四千万円です。三分の一しかとられていない。これでは話にならぬじゃありませんか。一億四千万円というのは去年と比べて三千万円増です。しかも要求項目は新旧、いままでの項目と新規項目合わせて十五項目の要求をした。その中で認められたのはたった四項目なんです。それも既設のものだけなんです。一体こんなことで、アイヌに対して積極的にやりますなんて、実績を口ではない、行動で示す必要がありますよ。厚生大臣どう思いますか。
  196. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 現在までのところ、昨年とことしの予算だけで考えてみますと、お述べになりましたように三千万きりふえていない。私もこれで十分だなどとは一つも考えておりません。そこで私も、先ほど町村国務大臣から仰せになりましたように、過去のいろいろないきさつを踏まえて、こうした問題についてもっと積極的な対策を講じていく必要がある、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
  197. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 それじゃ伺いますが、第一次査定があったあと復活要求しましたか。復活要求しているのは、どの項目について復活要求したのですか。何ぼ要求したのですか。局長来ているでしょう。
  198. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 詳しい額はちょっと忘れましたが、当初内示額に比べまして、施設整備費を復活いたしたと思います。それで結論におきましては、先生、先ほど申しましたように、一億一千四百万円でございますが、これは前年度予算に対しまして二六%増でございまして、(岡田(春)分科員「一億四千万でしょう」と呼ぶ)失礼しました。一億四千四百万です。  それで、ただ四十九年度におきましては、従来にない新規の予算といたしまして、保健福祉推進費というのが入っておりまして、これは道のほうからも御要望のございましたウタリ地区に対する巡回保健相談指導費、それからウタリ対策の特別保育事業費、これが新視として入っています。
  199. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 時間がもう十分しかないから簡単に頼みますが、就学関係予算を要求したが、それはとれましたか、どうですか。
  200. 笠木三郎

    ○笠木説明員 たいへん恐縮でございますが、私、所管が学術関係でございますので、いまの御質問についてはちょっとお答えしかねます。
  201. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 もう時間ないから私のほうで教えてあげます。就学対策費としては、就学資金給付事業、入学支度金給付事業、この二つを出したのだが、全然認められなかったのです。  そこで、伺っておきたいのだが、きょうは加藤さん来ていますね。――加藤さん、あなた、約束を実行してもらわないと困るのだが、加藤さんは二年間にわたって、私と島本君に、こういう約束をした。いまは確かに社会局長ではないけれども、読んでみましょう、四十七年には島本君にこう言っている。「できれば四十八年度からそれを予算上も実施に移したい、大蔵省もウタリに対してある程度の予算を組むということは反対ではございませんので、計画さえしっかりしたものを持っていけば、これは実現可能だと思います。」こう答えている。四十八年、私に対しては、「今後につきましては、この実態調査を踏まえましてウタリ福祉基金という形でやったらいいのかどうか、あるいは補助金政策でやったらいいのかどうか、そういう点を含めまして十分考えたいと思います。とにかく対策を打ち出すということにいたしたいと思います。」こう言っているのだね。  ウタリ福祉対策基金というのは就学資金ですよ。学校へ行くためのお金ですよ。ここまで言っておって、ことしの予算に就学資金というのは全然ないじゃありませんか。あなたはいま社会保険庁長官になったかしらないが、おれは役所を違ったのだからそのほかのほうはどうでもいいのだ、役人はそのときだけ約束しておいても、かわったらいいのだ、そんなことはどっちでもいいんだなんというおつもりじゃないのだろうと思うのだが、どんな努力をされたのですか。
  202. 加藤威二

    ○加藤説明員 先生御指摘のとおり私、答弁いたしたわけでございますが、このウタリ対策四十九年度予算につきましては、私は七月まで社会局に在職いたしておりましたので、予算編成の途中で新しい局長に引き継いだということで、私自身もこの予算編成については責任があるわけでございますが、ただいま先生の御指摘の問題につきましては、ウタリ資金の問題につきましては、これは私どもも四十七、四十八と検討いたしまして、そして私どもは、このウタリ対策予算といたしまして、やはり一番詳しいのは北海道道庁でございます。したがいまして、道庁の意見を十分取り入れて予算要求をやる、こういう考え方でやったわけでございます。  四十九年度の北海道庁のウタリに対する予算要求の要望書、これによりますと、厚生省関係では項目が四つございまして、不良環境地区の改善事業の充実、社会福祉施設の整備、それから保健相談事業、世帯更生資金貸し付け事業、この四項目の要望があったわけでございます。それに従いまして、私どもは四十九年度予算要求をいたしたということでございます。
  203. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 それはあなた、ここに書いてあるのだ。いまさっき言った項目は、北海道の道庁の出した資料なんだ。これは厚生省じゃありませんけれどもというような話かもしれないが、こういう点はあなた、保険庁長官になってからでも、社会局長と一緒に相談して、ウタリ福祉基金については、あなた、ここまではっきり約束したのだから、今後努力してくださいよ。  その福祉基金で、子供たち学校へ行けなくて困っているのですから、これは厚生大臣、約束してくださいよ。簡単に一言大臣から、もう来年度はどうしてもこれはとるという努力してくださいよ。
  204. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 そういうことを私も実は詳細存じておりませんでしたが、最大の努力を、五十年度ですか、予算においては努力をいたします。
  205. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 もう時間がありません。  最後に、今度は文部省その他皆さんの御努力に対してむしろ私は敬意を表しようと思っているのです。去年私はウエペケレの問題を出したのです。こういうウエペケレという――そこに資料ありますね。こういう重要な文化資産というものは、文部省補助金を出してこういうものを残すべきだということを言いましたら、その当時の河野政務次官が、やりましょうと言って、金額は少なかったのだ、たった三十二万しか出さなかった。こういうりっぱな本ができたのです。――これをちょっと見せてあげてください。  しかも、これは、テープでその声まで入れているのです。こういうもの、これは五十巻やるのです。毎年一巻ずつ出すのです。こういうものを出すために、文部省来ておられると思いますが、これはひとつ今後とも努力してください。  特に私ここで言いたいのは、三十二万でも、出さないよりもまあいい。しかし、これについては、文書を印刷する費用だけなんです。  それをいいますと、こういうことなんです。学術成果刊行費から印刷代だけの補助を出した。むしろこの研究がたいへんなんですよ。研究のためのいろいろな経費をひとつお考えいただけるように努力をしてもらいたい、その点が一点ですね。  第二点は、これは近いうちに文部省から国立民族学博物館というものの設置法を出すはずです。ところがこの民族学博物館というのは、これは政府のほうとの意見が、ほんとうは時間があればこれからそれをやりたかったのですが、私たち社会党としては、アイヌ民族は少数民族であるという考え方です。よく皆さんのほうは、齋藤さんなんかこの前答弁しているんだけれども、日本民族は一つ、単一でございますから云々と言うんだけれども、そうじゃないんです。日本民族という和人――われわれ和人ですね。それとアイヌ民族と二つあるのです。この民族問題というものを、民族学の博物館をつくるというのならば、これが博物館の問題として、これは町村さんにもぜひお願いしたいのですが、こういう博物館をつくるというのならば、しかもこの博物館は、単に研究だけではなくて市民に公開して交流をする機関にするという、設置法で今度は博物館をつくるそうですが、やはり国立のアイヌ民族博物館というものを北海道につくってアイヌ民族をどんどん交流させる、そしてそういう苦しい状態から解放してあげる、また学者はそれを研究する、こういう博物館を、今度近いうちに文部省設置法を出しますので、こういうときにぜひひとつ文部省としても研究いただきたいし、町村長官としても、さっきは反省に立って大いにがんばりますというお話だから、これはひとつ実現のできるように、四十九年度がどうしても無理だというのならば、来年度においても実現するとか何とかという努力をひとつやってもらわないと困るわけなんです。  そこで、時間がありませんので、まず文部省から御答弁をいただいて、それから長官にもお伺いをいたしたいと思います。
  206. 笠木三郎

    ○笠木説明員 ただいまお話しのございましたウエペケレ刊行につきましては貴重な業績というふうに考えておりますので、なお引き続き刊行の助成につきましてはできるだけの努力をしたいと思っております。  なおその刊行以前に、関係研究費の問題でございますが、これはいま先生おっしゃいましたように、研究成果刊行費のほうでは、直接出版費についての助成というたてまえでございますので、別に科学研究費補助金というのがございますので、そちらのほうへの申請をしていただければ具体的に検討するつもりでございます。一般の研究機関からの申請は一応締め切ったわけでございますが、なお奨励研究という種目につきましてはまだ締め切りに猶予がございますので、すぐにも申請が行なわれればすみやかに検討したいと思います。  それから第二点につきまして、民族学博物館につきましては、現在国会へ国立学校設置法の一部改正という形で審議をお願いしているわけでございます。この民族学博物館は、その研究機能といたしましては、世界の諸民族の文化と社会に関する比較研究ということを主たる目的にしておりますので、その中にはアイヌ文化に関する研究も含まれると考えております。なお、北海道大学には付属の施設もございますので、そういう面の整備もあわせて行なうことによりまして、その方面の研究の水準の向上をはかるということに努力してまいりたいと考えます。
  207. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 長官、いまのようなことで、実は大阪につくるのですよ。大阪なんかにつくられたって困るのですよ、ほんとうのことを言うと。やはり北海道に独立したアイヌ民族のそういう研究博物館で、アイヌ民族自身がどんどんそこへ交流できるようにならなければだめなんですよ。そういう意味で、ひとつこれはおれは全力をあげてやりましょう、こういういい答弁を聞かしていただきたいのですが、長官、いかがですか。
  208. 町村金五

    ○町村国務大臣 私どもいわゆる和人と申しましょうか、内地人は、アイヌ民族の持っておりまするきわめて貴重な文化というものを、われわれの時代にこれを消滅させてしまってはまことに相済まぬことだと考えております。アイヌ民族は、御承知のとおりことばがありましたけれども、文字を持っていない。したがって、いまだんだん古老などが次第に減っていってしまうというような状態でありまするので、そういう方々の現存しておられるうちにこういう文化の遺産というものを一つ残さず保存するということは、ほんとうに私はわれわれ和人の重大な責任だと考えておりまするので、いま御指摘になりましたようなことにつきましては、私もまた一人としてできるだけの努力をいたしたいと考えます。
  209. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 これで終わりますが、先ほど文部省では、研究補助費か何かについては今後努力しますと言いますが、あと具体的にはまた文部省に直接話をいたしますから、ひとつその際には具体的にやっていただきたいと思います。  厚生大臣もひとつ全力をあげて、最初に言われたようにできるだけ早く窓口をとおっしゃるから、私は毎日のように厚生大臣に会いに行きますから、ですからあなたは約束を果たしてなかったら、来年はこんな程度の質問で終わりにしません。総括質問の段階でやりますから、あなたは約束を必ず守っていただく、開発庁の長官も約束を守っていただく、こういうことを私はここではっきり約束したということで質問を終わらしていただきます。
  210. 渡部恒三

    ○渡部(恒)主査代理 これにて岡田君の質問を終わりました。  山田耻目君
  211. 山田耻目

    山田(耻)分科員 昨年の八月でございますが、齋藤大臣にもいろいろ御報告しながら実際の措置をお願いいただいたのですが、例の御存じの広島の原爆を受けまして陸軍軍人が山口陸軍病院に移送されまして、そこで死没をいたしました。かなり膨大な数になるわけですが、当時の陸軍病院のカルテを追跡してみまして、どうしても七、八十名遺骨の授受もなされていないし、一体どこへ埋葬されたのだろうか、遺族にも渡っていない。そういうことが提起されましたのが四、五年前からなんです。いろいろと厚生省の世話になってできました山口県原爆被爆者福祉センターなどが追跡調査をいたしております。その方向の中で昨年八月二日読売新聞が大々的にスクープいたしまして、どうも山口市内の中に埋葬されたまま放置されているのではないか。戦後三十年近くなるけれども何ら弔いをすることなく放置されたのではないか、こういう報道がございまして、そういたしましたところ、実は当時私が陸軍軍人としてその死体処理に当たったのだ、場所もここまでくれば申し上げたいというふうな証人等も出てまいりまして、実は私も、現地を見たという人たちを含めて数名出てまいりまして、その人たちを伴いまして現地の視察を含めての調査をいたしましたところ、山口市の中にいま自衛隊の演習場がありますが、そこのそば――正確に言いましたら山口市芝崎町江良地区、ここに共同墓地がございます。その片すみに埋没されておるということがどうやら間違いない地域のようになりました。現地はカヤとか樹木がおい茂りまして、二メートル近いまさに荒れ果てた地域でございまして、これがそうであったとしたらたいへんなことだということで、県にも報告するし、県も厚生省に報告しまして、雑草の刈り取りなど清掃いたしまして、大体間違いない、それで地質の検査をいたしましたところ、どうも木をたいたあとの灰が一メートル半くらいの地帯から出てくる。大体間違いないだろうということで厚生省の御援助もいただきまして、八月十一日に慰霊祭をやって収骨の作業にかかったわけです。戦後三十年近くたちまして、お参りする人もなく、遺族も自分の身寄りの者が死んだままここに埋められていたということも知らないまま過ぎ去ってきたわけです。  最近の新聞報道でも小野田元少尉がどうやら生存されている、そういうことで援護局の柏井審査課長が現地に行かれて具体的な調査活動に入っておられるわけですけれども、戦後三十年たちましてまだこのような事件があるということを思いますときに、大東亜戦争のつめあとの深さということをしみじみと感じさせられます。特にこうした終戦処理、戦後処理と言いますか、放置された中で日本が世界屈指の経済大国になったと言いましても、いつまた軍国主義的な方向日本が逆戻りするかわからないと外国の皆さんが心配をするふうな条件が、やはりこういう取り扱いの中にも残されているということを思いますときに、こうした終戦処理の始末については完璧を期していただきたいという気が第一点としてあるわけです。そこで昭和四十八年のこうした終戦処理、遺骨収集、記念碑の建立などで、どれだけの予算措置がなされていたのか、これをお伺いいたしたいと思います。     〔渡部(恒)主査代理退席、主査着席〕
  212. 八木哲夫

    八木政府委員 遺骨収集の問題につきましては、先生御指摘のとおり、来年は戦後三十年を迎えようとするときでございますし、私ども全力をあげてやらなければいけないというふうに考えておるわけでございますが、従来政府ベースでいろいろやっておりましたけれども、特に昭和四十八年度からは大がかりな遺骨収集を行なわなければいけないのではないかというようなことから、民間団体等も含めまして、昭和四十八年度から大がかりな遺骨収集を実施しているわけでございますが、昭和四十八年度予算におきましては二億二千百万円、来年度昭和四十九年度におきましては二億五千万円予定している次第でございます。
  213. 山田耻目

    山田(耻)分科員 四十八年は二億三千万円、四十九年が二億五千万円ということでございますが、これはほとんど外地の遺骨収集なりあるいは慰霊碑の建立等に使われておるわけでございます。ほとんどというか全額といっていいでしょうね。国内の問題につきましては、沖繩なり硫黄島の問題、俗に言う内地というわけですが、ここに振り向けられておりまして、本土のこうした事件については具体的にその霊をよく慰めてあげる、そういう措置というのがどうしておとりいただけないのだろうかということについてお伺いしたいと思います。
  214. 八木哲夫

    八木政府委員 内地の御遺骨の問題でございますけれども、外地の遺骨収集の場合と異なりまして、沖繩は別といたしまして本土の場合には外地のような――空襲あるいは戦災、原爆等の問題はあるにいたしましても、直接戦場になったということではなかったわけでございますので、戦後各部隊が復員するという際に一応完全に処理されておったというようなことになっておったわけでございます。その後厚生省が復員官署から引き継いだわけでございますが、ただ、一応戦場ではなかったので、当時の部隊が復員する際に完全に処理しておったということではございますけれども、場合によりましては、やはり山の中で飛行機が墜落したあとの残骸から御遺骨が出たというようなケースもその後ございまして、昭和四十一年に一斉調査を行ないまして、各県のほうにもお願いしまして、その後の結果の報告なり調査というものを求めたわけでございます。したがいまして、私ども内地の場合にはそういう事態はほとんどないのではないかというふうに考えておった次第でございますけれども、最近の例でただいま山田先生から御指摘ございました山口県の芝崎町の江良地区の共同墓地の中から、先生はじめ、財団法人山口県原爆被爆者団体福祉会館等の関係者の御努力によりまして、江良地区の共同墓地の一角に、広島に投下されました原爆に被爆しましたために、もとの山口陸軍病院、それから中国管区歩兵第三補充隊に収容されておりました旧陸軍軍人の死亡した方々につきましての当時の状況を調べますと、火葬に付したようでございますけれども、遺骨の一部を御遺族に渡して、その後の残りがそのまま埋葬されたというような事実があったわけでございますので、こういう事実が判明した以上、そのままにとうてい放置しておくわけにはまいりませんというようなことで、山口県あるいは団体の皆さんの御協力を賜わりまして、御遺骨の収納を終わりまして、ことしの春千鳥ヶ淵にございます戦没者の墓苑にお納めをするという予定にいたしておる次第でございます。  それから、ただいま先生から御指摘ございました慰霊の問題についてはどうかということでございますが、私どもといたしましては、毎年八月十五日に全国戦没者追悼式を挙行いたしまして、内外地を問わず、戦没者に対する慰霊のまことをささげるという意味の追悼式を行なっておるわけでございますし、さらに氏名の判明しておりません御遺骨につきましては千鳥ヶ淵の墓苑にお納めするということによりまして、一応全国的な内外地を含めましての戦没者の方々の慰霊の誠をささげているといったような状況でございます。
  215. 山田耻目

    山田(耻)分科員 そういう慰霊などをおやりになっているということについてはまた論点が別になるわけですけれども、私は、召集をし入隊をさせた国の責任というのが、三十年近くも全然放置をされておってその死体の追跡もされないまま、いま局長のおっしゃっていたように放任をされていた、全く放置をされていた、しかも草ぼうぼう、樹木がはえるにまかせるままの状態に置かれていた、しかも、この死体を焼いて始末をするということで一メートル半くらいの円形の穴を掘って焼いていたけれども、焼けなくなったので、しまいにはその中にけ込んで、そしてそのままどろをかぶせてしまった、こういう事実が明らかになってきているわけですよ。私は、遺族にとっては、内外地を問わずたいへんなショックだと思うのです。しかも、この収骨の作業に私も被爆者ですから従事をいたしましたが、掘ってみますと、白くなって焼けた骨の収骨はできないのです。みんな茶褐色になったなまの骨が出てくるわけです。これはほんとうに悲惨だな、しかもこのように放置をされていた責任というものは一体だれなんだ、こういう気持ちを私は強く抱いたものです。厚生省からもお見えになりまして、あとまたその骨を火葬場に移して焼いてもらって、厚生省に持ち帰って安置室に安置をしていただいたのですけれども、当時現地の人もいろいろな苦しみもあったようです。それは、その骨をあばくことによって、終戦直後ですから金冠を拾ったりしたというような事件もあったようですが、それが、事件がこのように深く隠されていった理由の一端にもなったのだろうとも思いますけれども、いずれにいたしましても国としての責任は免れられない。だから、いま団地になっておりますけれども、そこの人たちがそこの下の道を通るたびにいま一本木が建てられて、その碑の銘が書き上げられておりますけれども、いま線香とか花輪の絶え間がないのです。しかも、その共同墓地の一角は、やはり霊を慰めてあげたいということで、いま被爆者団体の皆さんたちが金を出し合ってその土地を買いまして、そこにいまの一本の柱の慰霊碑を建てておるのですけれども、何とかしてこれは国にお願いをして、ほんとうに心のこもったものでけっこうだ、形は貧しいものでいいから、国としてささやかな慰霊碑というものを建てていただけないか、こういう気持ちが強く出ているわけです。私は無理からぬことだと思う。三十年近くも放置されていたし、参る人もいなかったし、遺族も知らなかった。まあ、私もここに席を置きまして前後十五年近くなりますけれども、広島の原爆の被災者一般人に対しては、ああいうふうな平和公園などをつくりまして、毎年八月六日慰霊の祭りを行なっておりますが、いまの山口の人たちは、これは山口の兵隊さんではないわけです。全国各地からお集まりになっていた人ですし、しかも、遺骨を持って帰られた家族はほんとうに少ないのですね。あとの人は遺骨の引き取り手もなかった。しかも、この中には――当時朝鮮は日本の国民としてあずかっていたわけですから、朝鮮の人もいるのじゃないか、そういうことに議論が発展などをいたしたりしまして、いまカルテの追跡調査なり分析が行なわれておりますけれども、山口県の人でなかったということも含めて、かなりいろいろな議論が巻き起こされております。県も市も全然知らぬ顔もできないということでいろいろ協議はしておるようでございますけれども、この遺骨を収骨するときのいろいろな作業計画の中でも、厚生省に戦後処理としてその責任があるのだから、厚生省の方針明示の中で県や市がお手伝いをすることはできるだけいたしますと、責任の主体を厚生省、国にかけておるわけであります。ところが、いまのような事情、背景にありますこの問題につきましては、やはりささやかな慰霊の碑でも建てて、そうして山口県の人たちも通りすがりにお祈りをしてあげたい、冥福を祈ってあげたいというために、しるしを残す慰霊碑に対しても、県も市も、主体は国がめんどうを見てほしいのだ、こういう立場にどうしても立つわけです。  そこで私はお伺いをいたしましたのは、外地の関係に対しては、四十八年で二億三千万、四十九年で二億五千万経費がかけられて収骨の作業なり、あるいは多くの経費をかけてのいろいろな諸措置なり、具体的にはサイパンに四十八年につくりました一千五百万かけての慰霊碑なり、私はそういうりっぱなものをつくってほしいとは思いませんけれども、本島だから、内地だからどういう事情があってもそれはできません、千鳥ヶ淵に無縁の人は慰霊をする措置がございます、こういう言い方だけでは、何だか、憲法のたてまえからいう平等の権利をささえてあげるという立場から見たら、私はさびしい気がいたします。外地でなくなった人たちも、当然その慰霊は国の行事としてするわけでしょうから、それはそれと同じものであります。しかし、いまのこの山口県で起きたこの案件については、やはりそういうふうな諸措置を行なっていくということが、つめあとを深く残していった大東亜戦争のあと始末をするという立場に国が立たなくてはならないのですから、その立場に立って措置をしていただくということに、大臣いかがでございましょうか、なっていただけないものでしょうか。ひとつあなたの考えをお聞かせいただきたいと思うのです。
  216. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先般山口市の江良丘陵におきまして、原爆被爆の元軍人の遺骨が収集されたということは、山田委員から私も直接電話で報告を受けたことを覚えております。民間の方々の非常な御協力によって、いままで全然気がつかなかったその地に、数十の元軍人が眠っておられたということを知ったということでございます。私どもは、遺骨の収集にあたりましては、内地であると外地であると、そうあまり区別をする筋のものでない、私はさように思います。そういう意味合いにおいて、今回収集されました遺骨につきましては、千鳥ヶ淵にお祭りすることになるわけでございましょうが、その地においてまた敬弔の誠を皆さん方がささげたいというお気持ちも私よくわかります。どういう形がいいのか、私もいま確たる名案も浮かびませんが、県当局と十分相談をいたしまして、そうした地元の方々のお気持ちの敬弔の誠をいたすというその気持ちが具現されるような何らかの道がないかどうか、国として措置するべきものがないのかどうか、十分県と打ち合わせをして善処をいたしたいと考えます。
  217. 山田耻目

    山田(耻)分科員 ひとつ善処を期待するわけです。ただ齋藤大臣、やはり冒頭申したように今日非常に高い経済大国になり、インフレで非常に国民も苦しんでおるのですけれども、こうした一つの動向の中から、新しい植民地主義の台頭が日本にもあるということは、東南アジア諸国をはじめ多くの国々が指摘をしております。これが軍国主義的傾向を持つという方向に断定する国もございます。国内的に見てみまして、靖国神社法の問題が議員立法で提起をされてみたり、いなかに参りますと忠魂碑というものがかなり整備をされてみたり、私はやはり純粋な意味で、そうした人たちの遺骨の収集も放置され、何らの慰霊の措置もとってあげることのできなかったというこの一事実、このことについて大臣の深い協力と理解と、終戦処理という責任の立場からの仕事をお願いをしておるわけです。県のほうにも御相談いただきまして検討していただくと同時に、私いま大蔵に所属しておるものですから、大蔵省のほうにもそのことについての配慮をやはりしてもらわないと、国の内外で差別が起こってもなりませんし、そうして国の中では多くの人たちが、いま私が例示しましたように、他方の軍国主義的な傾向が強化される方向も片目で見ながら、片一方ではこうした事態が放置されている中で平和というものに対するいろいろな憶測がかわされていくという、きわめて好ましくない状態が将来起こり得るんじゃないだろうかと私は懸念をいたします。そういうことも十分ひとつ御判断をいただきまして、どうか問題の発生しました山口県の県の段階での御相談なり御検討をいただくと同時に、国の責任という終戦処理の立場からの重要な課題を果たしていただくということのために、厚生大臣と大蔵大臣との折衝も深めていただきまして、やはり私は現地の人たちの気持ちの中にかげりを起こさないように御配慮をいただきたいということも重ねてお願い申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  218. 渡辺栄一

    渡辺主査 山田君の質疑は終了いたしました。次に、小林進君。
  219. 小林進

    小林(進)分科員 局長八人に来ていただきましたが、大体一人四分ずつの質問でございますので、そのお気持ちで要領よくひとつお答えを願いたいと思います。  まず第一に、大臣でいいのでありまするけれども、大臣ができなければ社会局。これはもうわが党の八木委員等からきめのこまかい質問があったのでございますが、私自身まだなかなか理解ができないのでありまするので、同じことを繰り返して質問いたします。  四十八年度生活保護費をおきめになった基準の年月日。何月何日を基準にして四十八年度生活費をおきめになったか、その年月日をお聞かせ願いたいと思います。
  220. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 現在の生活保護基準につきましては格差縮小方式をとっております。(小林(進)分科員「年月日だけでいい」と呼ぶ)年月日でございますか。これは政府の経済見通しの発表になった時点できめた、こういうふうに申し上げられると思います。
  221. 小林進

    小林(進)分科員 その時点は何月何日ですか。御答弁
  222. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 四十八年度予算は一月に予算編成したと思いますので、予算編成の大蔵省の当初原案が示される直前だったと思います。
  223. 小林進

    小林(進)分科員 はっきり言ってください。委員長、注意してくださいね、一局長に四分しかないのですから。昭和四十八年一月二十一日ですか。
  224. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 そのころだと思います。
  225. 小林進

    小林(進)分科員 明確にぼくは言ってもらいたいな、大事なことですから。じゃ四十八年の一月二十一日。いまは四十九年の三月です。それから今月まで毎月物価が上がりましたが、卸売り物価、消費者物価の毎月の値上がりをここでひとつお聞かせ願いたい。
  226. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 四十八年度に入りましてからの消費者物価指数の上昇率の状況でございますが、全国で四月が九・四%、五月が一〇・九%、六月が一一・一%、七月が一一・九%、八月が一二%、九月が一四・六%、十月が一四・二%、十一月が一五・九%、十二月が一九・一%、一月が二三・一%、いずれも対前年同月比でございます。
  227. 小林進

    小林(進)分科員 四十八年の一月二十一日におきめになったいわゆる四十八年度生活保護費、その基準年度を基準にしてずっと今年の一月まで、いまおっしゃったように二三%近くの値上がりをしたのであります。その二三%の物価値上がりにどう一体行政の中で対処して生活保護費を処置されたか、お聞かせを願いたい。まさかそのままにされたわけではないでございましょうから。
  228. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 四十八年度年度当初の生活扶助基準は、四十七年度基準に対しまして年度当初一四%引き上げております。ところが四月以降物価が上がりましたので、十月の時点において、さらに四十七年度基準に対して五%引き上げました。それで四十七年度に対して一九%のアップになったわけでございます。この五%引き上げましたのは、四十八年度生活扶助基準をきめますときの消費者物価上昇率は五・五%を予定しておりましたところ、四月から七月までの対前年同期の物価上昇率が一〇・八%でございましたので、五%の引き上げをいたした次第でございます。その後も物価の上昇が続きましたので、十二月に一級地一人二千円当たりの特別一時金を支給いたしまして、さらに本年三月に、先般発表いたしましたように、十二月同様一級地一人二千円の特別一時金を支出することにいたした次第でございます。
  229. 小林進

    小林(進)分科員 いかに巧妙にあなたたちが現状をごまかしていられるかということが、これで私はよくわかった。しかし時間がありませんから、これはこれでまた予算委員会の総括に行って仕上げをいたしますから、いいです。これはインチキですよ。たいへんなインチキです、あなたのおっしゃるのは。  それから級地の縮小の問題はきのうの質問に出まして、一級地、二級地、三級地、四級地は大臣答弁で、八木質問に対して縮めるとお答えになりましたから、それはいいとして、いまの値上げはたいへんインチキです。  次の問題として、今度は保険局ですが、老人の医療無料化に伴う四十九年度予算、これは幾らでしたか。それが各市町村に分配した場合には一体幾らになるのか、七十歳以上の老人の医療の問題。
  230. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 四十九年度予算は、保険局の場合はおそらく国保関連でございます。この場合には財政調整交付金のほかに、臨時財政調整交付金として三百五十億をお願いしておりますが、その中の二百三十億を、これは老人医療といわずに、そういったこともあって非常に財政が困難になってきておりますので、そういう問題も含めて配分をする予定でございます。
  231. 小林進

    小林(進)分科員 あなたにお伺いしますけれども、この老人医療の無料化でいま町村は新しい財政負担でみんな泣いている。これは事情はわかりますね。何で泣いているかわかりますね。老人医療の場合は国が六分の四、つまり三分の二、それから県で六分の一、市町村が六分の一、こういう分配になる。その六分の一の負担にもたえかねて、町村は非常に財政難におちいって苦しみ抜いている。それをあなた方は特別交付金で見ようというのか。出た赤字はしようがない、地方は特別新しい保険税でも取り上げてあと始末をせいというお考えなのかどうか。そんなことまで言っていると容易じゃありませんから……。  老人医療の無料化、老人医療の問題と高額医療の問題が一つありますね。高額医療に対する負担金は、今度は国が二分の一、市町村が二分の一ですね。あまりやっていると時間がありませんから先に行きますが、そうすると、いわゆる七十歳以上のお年寄りが高額医療のほうへ回った場合に、一体町村の負担はどうなりますか。
  232. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 高額医療の問題は、御承知のように五十年十月からは法定給付になります。それまでの間はいろいろ含めまして、いまおっしゃったとおりの補助金でございます。それで先生のおっしゃっている意味は、おそらく高額療養費が保険の給付になりましたので、その分だけは従来の六分の一に食い込んでくるんじゃないか、より以上に町村の負担がふえるじゃないか、こういう御指摘だと思います。ただしそのことは、先ほども申し上げました三百五十億円の中で百二十億円というものを高額療養費のための二分の一補助金に充てる予定でございますので、これによって高額療養費の制度の財政的なバックアップをいたしますならば、全体としてみるならば六分の一がさらにふえるということ、計算上そうなりますけれども、その百二十億という大きな補助金を配りますれば、そういうトータルな問題としては相当にこれは負担増を抑制できるのじゃないか、このように考えております。
  233. 小林進

    小林(進)分科員 君は頭がいいから、北川君、ぼくが言わないうちに先を読んじゃったんだよ。先を読んだのだが、君の説明のとおりにいかないのだよ、現状の市町村、末端で行政を担当している諸君は。  ぼくはここで、勘定がいいように六十億円の老人医療の負担があったとする。そうすると六分の四は国が持つから、四十億円は国の負担、老人医療の場合は。あとの残った二十億は、県が十億、市町村が十億、これで六十億。ところが七十歳以上のお年寄りの中で、同じ六十億の中に今度は高額医療が――年寄りはみんな高額医療に該当するのですよ。それを低目に見積もって半分、三十億が高額医療のほうに回ったと仮定する。その三十億は――前の三十億は老人医療のほうだから、いわゆる六四、六一、六一でいいから、いまの三十億の六分の四だから二十億は国が持つ。いいですか。あとの五億、五億は県と市町村が持つ。老人の高額医療のほうに回した三十億は、今度は国が半分、市町村が半分だから国は十五億でよろしい。市町村のほうは十五億持たなくちゃならぬ。だから老人医療の場合は十億でいいものを高額医療に回すために、市町村は今度は二十億の負担を持たなければならない。県も負担が減る、国も負担が減るが、国と県の負担が減った分をいわゆる末端の市町村がよけいにかぶらなくちゃならない、こういう行政上の矛盾が出ているのですよ。それをあなた方はわれわれに向かって、いやどうも、今度は高額負担は全部国が持つようになりましたなんて調子のいいことを言っているけれども、こうやってみんな末端へ行政がしわ寄せになっている、たいへんな悪政です。  これは厚生大臣、これ一つでもあなたの首に関する問題だ。こういうことは重大な責任です。羊頭を掲げては狗肉を売る、みんな末端へしわ寄せしている。これは改めなさい。改めますか。
  234. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 いま先生の計算をされましたところによりますと、確かにそういう計算になると思うのでございますが、ただ最初申し上げたとおり、とにかく百二十億という大きなお金を配りますので、私は、老人の高額医療という問題でも、市町村によっては相当ばらつきがあると思います。でありますから、これを公平に分配をいたしますると、結果的には必ずしもそういう先生の計算――まあ一つの断面でございますけれども、にはならぬのじゃないかというトータルな考えをいま持っておるわけでございます。
  235. 小林進

    小林(進)分科員 これだけでも議論していたら、時間も尽きませんから私は言いませんけれども、ただしかし、老人医療が六四、六一、六一ならば、それに準じて高額負担の場合も六四、六一、六一でいくべきだというのが私の主張です。さもなければ数字が合わないのじゃないか。赤字が出たら、つかみ勘定の百二十億のほうで、つかみ勘定でやればいい、それは皆さん方中央にいらっしゃる人が末端の行政機関を掌握して権力で押えつけるにはいいだろうけれども、そういうようなつかみ勘定があるために末端は泣かされる。むしろ、そんな法律の上につくったら、きちっと、あるいは行政の上にきちっときめていたほうが、これは行政としては正しいということを言っているのですけれども、保険局はそれでよろしいです。  次に、老人医療の無料化に伴う予算の配分ということで、たいへん市町村は負担が多くて困っているわけだ。特に、社会局長、老人医療はあなたのほうだけれども、それをいま市町村は、やはりこういう福祉国家だとか福祉財政とか福祉政策と国が盛んに言うものだから、だんだんやはり末端の世論に押されて、七十歳のお年寄りではとてもお気の毒だ、それで六十九歳からはひとつ老人医療の無料化をやろう、あるいは六十八歳から老人医療の無料化をやろう、これはまた年を追うて、来年、再来年になれば、やむを得ず六十五歳から老人医療の無料化をやらなければ、とてももう末端の行政を担当していくわけにはいかないという声が多い。その世論に押されて、六十九歳とか六十八歳の老人医療の無料化をやった、そういう行政に対して、あなた方は一体どういうめんどうを見る考え……。めんどうを見る考えはない、むしろ逆に弾圧をする。そういう六十九歳や六十八歳から老人医療の無料化をやるのは、地方財政が豊富なんだろうから、豊かなんだろうから、特別交付金を減らしたほうがよろしいだろうなんというようなことで、減らす方向に行政を進めていく考えなのかどうか、これもひとつここで一言答弁をきちっといただきたいと思う。
  236. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 昨年の一月から、七十歳以上の老人につきまして、いわゆる保険と相乗りの、保険の自己負担分を県に肩がわりするという、いわゆる老人医療の無料化制度を実施いたしまして、さらに昨年十月からは、寝たきり老人につきましては……(小林(進)分科員「それもわかっている、それは六十五歳だろう、わかっている」と呼ぶ)それをやりました。  それで、その後、国のほうで、現在の老人医療無料化制度の七十歳という年齢を引き下げるかどうかという問題があるわけでございます。そういう問題があるのでございますが、これにつきましては、やはり医療機関の受け入れの体制でありますとか、その他医療保障制度全般の動向をかんがみて慎重に検討すべきものと考えております。
  237. 小林進

    小林(進)分科員 これは私の問いに答えていないのです。国がこれからどうするなんて聞いているのじゃないのだ。現実にもう地方の行政では引き下げているじゃないか。現実に地方の自治体で引き下げている問題に対して中央はどう処置するか。かつては、東京都の美濃部さんが、七十歳以上の老人にあるいは若干の無料の手当てもしたときに、東京都の財政はいいのだろうから、それでは財政の補助はもうやめたなどいって非常に弾圧をした。そういう弾圧をまた繰り返すのかどうかということが心配だから私は聞いた。あなたの答弁、なっておりません。これはだめです。しかし、時間がないから、これはあらためてまた次にひとつ引き延ばしておきます。答弁になっておりませんよ。  次に私は、児童家庭局長いらっしゃいますか、あなたに聞きますけれども、老人医療の問題に関連してやはり出てくるものは、乳幼児の無料医療の問題あるいは妊産婦の定期検査の無料の問題。福祉国家でありまするから、しかもこういう行政はもはや地方末端ではみんな先取りして、進歩的な自治体の長はその行為実施している。あなたは、局長として、これをどうお考えになっておりますか。
  238. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御指摘のように、市町村等ですでにいろいろな方法で実施していることは承知しております。ただ、国といたしましては、御指摘がありましたように、妊産婦、乳幼児の定期検診の強化拡充、それと、生まれた赤ちゃんに対する健康な育成ということを中心といたしまして、四十八年までやっておりました慢性疾患に対する医療費の公費負担制度を四十九年度はさらにこれを広げるということで、乳幼児医療に対処しているわけでございます。  さらに、現在の医療保障制度全般との関係から考えまして、国としていま直ちに乳幼児医療の無料化を踏み切ることはいかがかというのが厚生省の考え方でございます。
  239. 小林進

    小林(進)分科員 それはあなた方行政官としてはそう言うでしょう。大臣、どうですか。これから先は政治の問題だ。大臣、どうです。
  240. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いま局長から御答弁申し上げましたように、国の制度として医療費の無料化、公費負担というものをやるということの決心はまだついておりません。いろいろむずかしい問題があります。しかし、この問題は、医療保険制度全般にわたる問題でもございますので、医療保険制度と公費負担との関係、そういう問題について今後とも検討を続けてまいりたい、かように考えております。
  241. 小林進

    小林(進)分科員 何回も私が公式にも非公式にも言うように、あなたの答弁は行政官の答弁になってだめだというのです。政治家の答弁をしなさいと言っているのですよ。いつもあなたは、答弁をすると途中から、むずかしい問題がありますの、何がありますのと言って、半分は行政ベースの話になってしまう。手続上とかなんとかということは、行政でやることはこうだとか言っているんじゃない。われわれ政治家は哲学を論じているんだ、アイデアを論じているんだ。政治というものは理想を実現し、夢を実現し、哲学を実現するというのが政治なんだよ。手続上のことを言っているんじゃないのです。だから私はいつも、あなたはまだ厚生大臣になれないと言うのです。ようやくまだ局長の段階じゃないか。それだから私はだめだと言っているのです。大臣大臣らしく、政治答弁をしてください。いまの答弁ではとてもだめだ。  もう時間がないから次に、年金局長いますか。――年金局長、大体あなたは四十八年度から一つの年金の大きな改革をおやりになって、スライド制もお用いになったのだが、そのスライドが実施される年月はいつから、年金も各種ありますから、各種の年金がそれぞれスライドを実施される期日をひとつ言ってください。
  242. 横田陽吉

    ○横田政府委員 厚生年金は今年の十一月分から、国民年金の拠出制年金は来年の一月分から、それから福祉年金の引き上げは今年の十月分からでございます。
  243. 小林進

    小林(進)分科員 それは先ほども出たことだ。もう局長はいいです。これは大臣の問題ですが、これも八木君がしばしば言ったことで、先ほども社会局長が言ったように、昨年の一月を基準にして、物価も卸売り物価で三四%、それから消費者物価でも二四、五%値上がりをしているというたいへんな狂乱怒濤の物価高になって、ほんとうに低所得者は泣いているんだが、それは新しく去年の年金改正が行なわれて、初めてこのスライド制というものが十一月をスタートにして開始されるわけだ。私はここで言うんだ。第一十一月はおそ過ぎる。いままでも泣いているんだから、何でそれを早くやらないかと言うと、あなたは繰り返していわゆる大臣じゃない行政官としての答弁で、手続上むずかしい、コンピューターにかけてもそれはできない、そういう答弁だけを繰り返している。残念しごくであります。残念しごくだが、コンピュータにかけてもだめだなんという手続はそれは局長にまかせておいて、大臣大臣らしい決意の表明をされたらどうかと私は思う。これが一つです。これは同じことを社会党は繰り返し聞いているわけだ。  それで新しい質問は、いま一つとして、十一月にスライドをおやりになるとすれば、今度はそのときには法律だから、手続上間に合わないなんて言っていられない。いまからもうコンピューターにかけていられると思うのだが、大体予想としては十一月に、これは賃金ではなくて物価にスライドさせることになっているが、一体どれくらいスライドされる見通しか。もはや見通しくらい立てて準備をしていなくてはならぬ。どれぐらいスライドによって上げられるつもりですか。
  244. 横田陽吉

    ○横田政府委員 このスライドのやり方は、四十八年度の消費者物価指数の年度平均でまいりますから、その見込みによります。その実績は一〇〇%反映させます。もしかりに、あくまでも、もしかりにですが、二〇%上がったといたしますと、いわゆる五万円年金は一回のスライドで六万円年金になるということも御理解いただきたいと思います。
  245. 小林進

    小林(進)分科員 明快に出ましたな。二〇%は一年の平均ですな。そのときにちゃちな値切り方なんかしませんな。かりに二〇%スライドする、厚生年金が十一月、国民年金は一月、一体それに要する概算はどれぐらいになりますか。概算は出るでしょう。
  246. 横田陽吉

    ○横田政府委員 一四%の予算要求を一応しておりますが、二〇に直した場合のあれは、いま計算してあとからお答えいたします、間違うとたいへんでございますから。
  247. 小林進

    小林(進)分科員 それじゃ年金局長それでよろしい。  医務局長いますかな。――厚生省で一番ともかく行政としておくれているのは医務局です。これはどうも残念しごくだ。あなた首ばかり振っているけれども、それはみずから責任を感じてもらわなければいけない。やっぱり医務局というものがいま少ししゃんとしなければ、国民の生命と健康を守るというぐらいのき然たる姿勢がなくちゃだめだ。厚生省の中でも端っこにいっているじゃないか。時勢の進展とともに、新しい病気というものは次から次へと生まれてくる。やっぱりその中で中心になってこれから考えなければならぬのが老人病だと思う。人間が長生きしているのだから、お年寄りがふえているのだから、それに加えて多くの難病が次々に出てくるわけでございます。さしあたり私はこの老人病、しかも老人病というものは、むしろ都会よりかえって農村に多い。あるいは農夫病になったとか、しびれ病になったとか、いろいろなものが出てきて、それが老人病という名にはね返ってみんな苦しんでいるわけです。  そこで私は厚生省に、公式非公式を問わず、そういう老人病を中心にした総合病院をそういう地域、東京都のまん中ばかり置かないで、そういう地域に画期的なる総合病院をおつくりになって、新しいひとつ医療行政、医療学というものを進めていったらどうかということを何回も繰り返しているのでありますが、一体四十九年度予算の中にそういう新しい、特に老人病を中心にしたような総合病院計画がどうあらわれているかということをお聞きしたいわけであります。
  248. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 四十九年度予算の中には、老人病棟、総合病院の中に老人に向く病棟、特にその施設、設備を老人向きに設計いたしました老人病棟を、モデル的に国立病院につくる予算が入っております。それから、先生の御意見の老人の研究ということも私はきわめて大事な問題だと思います。これはむしろ老人病という前の、一つ人間の加齢現象全体をどうとらえていくか。したがって、老人病の研究というよりも、人間が成長し老化していく現象の研究という意味でおっしゃる意味を取り上げて、研究機関の設置は検討いたしたいと思います。  それから老人の総合病院という構想は、私はいつもお答えの中で申し上げますが、老人だけの総合病院というのは非常にむずかしい問題であろうというふうに私は考えております。各科を集めなければならぬ、しかも対象が老人だけであるということによる、現状のわが国の医療関係者の、いわゆる率直に言って医学に対する興味の持ち方その他も踏まえまして、この問題については先生御指摘の老人病の研究という体制の設置とあわせながら、老人総合病院というものは実現していくものと考えております。
  249. 小林進

    小林(進)分科員 君はぼくに答えて、ぼくと同じなのは声の大きいのだけだよ。内容は何もないんだ。だめだよ、そんなのは。いま少し内容のある答弁をしたまえ。老人病棟をふやすなんというのは、そんなことは何も新しい医術じゃないよ。それよりは、老人という一つのものをとらえて、総合的に研究機関、育成機関、あるいはそれに付随するもろもろの機関というものを、大きく構想を持ってやれというんだけれども、だめだよ。持ち時間がなくなったから、君はそれでよろしい。  薬務局にひとつお伺いしますが、薬務局はいわゆる保険薬の再点検をおやりになった。何年からおやりになったか忘れましたけれども、もうそろそろ仕上がっていて、いいのと悪いのと、廃止するのと加えるのができているのじゃないですか。そういう調査の結果がどういうふうになっているのか、お尋ねをしておきたいと思うのであります。
  250. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 御質問は、医薬品の再評価の問題であろうと思いますが、医薬品の再評価につきましては中央薬事審議会に再評価の特別部会を設け、その下に十三の専門調査会を設置いたしまして、医療用の単味の医薬品から順次審議が行なわれておりまして、昨年の十一月二十一日に精神神経用剤の一部、抗菌性剤の一部につきましての第一回目の答申を得まして、必要な行政措置を行なっております。引き続き審議を行なっておりまして、ことしは相当の薬効分の医薬品につきまして、順次答申を得次第、必要な行政措置を講ずるという考えでございます。近く鎮痛剤、循環器官用剤、精神神経用剤、ビタミン剤、そういったものの一部につきまして調査会の調査が終了いたしまして、特別部会の審議にかけられるという見通しで作業を進めております。
  251. 小林進

    小林(進)分科員 保険薬が非常に多過ぎる。といって進歩的な薬はうんと入れなくちゃならぬけれども、もう用をなさないものはどんどん廃止するという方向で作業をもっと促進してもらいたいと思う。  それから、第二番目に私は申し上げたい。地方から非常にたくさん来ている問題であります。いよいよ春が近づいて、各末端行政には衛生行政、やれ下水を掃除する、環境衛生をよくする、あるいはトイレを清掃するというふうなことがこれからずっと進んでいくわけでありますけれども、衛生に要する薬品がたいへん高くなっていて、末端行政の衛生は成り立たない悲惨な状態だ、厚生省は何をしているのだ、こういう非難が来ているわけでございます。おもな防疫用の殺虫剤の小売り価格をあなたのところへお尋ねしたら、この資料が出てきたのでありますけれども、第一はオルソ剤、これなんかも二百八十九品目もあって、メーカーが百二十二社もあるというのでありますが、この中のたとえば中央化学というパンゾールを製造している会社は、四十八年四月が十八キロで四千二百円、四十八年の十月も四千二百円でちっとも値上げをしていない。非常に良心的な薬屋があると思えば、呉羽化学などというものは、同じ十八キロで六千二百円にも値上げをしているということです。非常にばらばらだ。同じくバイテックスという殺虫剤、防疫用の薬も、会社によって価格をうんと上げているところと現状にとどめているところがあるが、ともかく原因は一体どこにあるのかということとあわせて、公衆衛生に関する薬剤の価格の値上げについては厳重に監視をしてもらって、衛生行政がもっとスムーズにいくように厚生省の指導力を発揮していただきたい。  時間が来たようでございますが、いま一つ。援護局長、せっかく来ていただいたのに問わないと君はひがむだろうから質問します。私は援護局長にあえて言いますけれども、この前は横井庄一君があらわれてきた。いま皆さん方は、厚生省の一家をあげて、ああやってフィリピンで小野田寛郎君の捜査のために演じておられる。私はそれを悪いというのではないのです。人の命は大切だから大いにやっていただきたいが、しかし、率直に言って、速記録を読んだら彼らは逃亡兵でしょう。逃亡がいい悪いというのではないのですよ。しかし、行政というものは公平でなければならぬ。というならば、旧軍刑法によって逃亡兵という汚名を着せられて、いまなお軍人恩給ももらわなければ、遺族年金ももらえないで、まだそのままの罪名をしょっている国民が、この日本国内にも何万人といるじゃないか。一体小野田寛郎君がなぜ逃げているかといえば、かつて東条大将以下旧陸海軍は何と言ったか。生きて虜囚のはずかしめを受けず、旧軍人たる者は捕虜のはずかしめを受けるな、これは一番罪が重いんだぞと言われたから、彼らは旧軍人精神に横溢して、旧軍隊の教えるままに彼らは逃亡して虜囚にならなかった。ところが、生きて虜囚のはずかしめを受けるなと言った東条大将、何々元帥以下が、終戦になるとみんな手を上げて、みずからが捕虜になった。そして今日は軍人恩給をもらったり、未亡人になっても遺族年金をみんなもらったりしている。その中で、いままだ君たちの足元に、いわゆる旧軍刑法でやられて、逃亡罪だとか併合罪だとかの罪に基づいてはずかしめを受けているのが山ほどいるじゃないか。なぜそれを始末しないか。フィリピンあたりまで行って、小野田さん、小野田さんと呼んでいれば、厚生省というのは人道に富んでいると新聞も書いてくれる。君たちは人道のチャンピオンのようなことになっているけれども、フィリピンに行くなというのではないが、君たちの足元に泣いている者の始末をなぜしないかと私は言っている。なぜこの区別をはっきりしないかと私は言うのだ。断じてそんなことではだめです。そんな不公平な行政はだめだ。私は了承するわけにいかないから、この問題をいま少しきちっと始末してからフィリピンに行けばいい。厚生大臣も行きなさい。しかし、足元の始末をそのままにしておくことは了承できないというのが、私が援護局長に言う主張です。質問ですから答えてください。
  252. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 殺虫剤の問題につきましては、これは一般用医薬品の一環といたしまして、かねがね御説明申し上げておりますような方向で、価格の値上げの自粛あるいは一部のものについては値下げを指導いたしておりますし、この方針は今後も持続するつもりでございます。
  253. 八木哲夫

    八木政府委員 小野田元少尉につきましては、陸軍中野学校の二俣分校で特殊教育を受けまして、ルバング島に特殊任務でおもむいたわけでございまして、その後日本軍が投降した際も最後まで勧告に応じないで、いまだにルバング島に残留しているということで、最近鈴木青年が小野田少尉に会った話でも、上官の命令がなければ出られないと言っておりますので、逃亡兵ではないと思います。  それから、遺族援護の問題で敵前逃亡等の名誉の問題につきましては、これは法務省の問題でございますので、私どものほうでお答えする限りではございませんが、遺族援護の問題につきましては、四十五年の法改正によりまして、他の遺族と全く同様な取り扱いがされているわけでございますので、今後とも遺族援護の問題につきましては十分努力いたしたいと思います。
  254. 小林進

    小林(進)分科員 平等に取り扱われておりません。それから、横井庄一さんや小野田少尉殿と同じような立場、同じような境遇でいながら、いまなおわが日本においては汚名もそそがれずに泣いている者が何万人もいるということだけでも、私は、はっきりいって、あなたの言うことは了承できないし、言っていることはうそです。  これで終わります。
  255. 渡辺栄一

    渡辺主査 小林君の質疑は終了いたしました。  次に、津川武一君。
  256. 津川武一

    津川分科員 私は、いつでも、どこでも、だれでも安心して医療を受けられるように、いまの物価高、物不足から医療を守る立場から、若干の質問をしてみますが、いていただく方は、一つには医療用ガーゼとか、こういうことをやります。二つ目には医療材料をやります。三つ目には臨床検査の材料なんかをやります。四つ目には入院患者の寝具、これをやります。五つ目には医薬品をやります。六つ目には今度の豪雪地帯における医療の問題、最後に中医協の再開、このことをやりますので、その関係者だけいてくださればよろしいです。  ガーゼの値段は最近どうなっておりますか。
  257. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 医療用ガーゼにつきましては、昨年の二月ごろから品不足及び高騰が伝えられまして、厚生省として鋭意指導につとめたわけでございますけれども、綿糸の異常な値上がりあるいは工賃の値上がり等の関係もございまして、価格は昨年の五月、六月ごろで、医療機関、病院における納入価格でありますが、一反三百五十円程度まで上がったわけでございます。その後七月に特定物資に指定をいたしまして、なお増産を指示し、通産省等にも協力を要請いたしまして、原反の供給等につとめるというようなことで、その後価格は鎮静いたしまして、昨年の十一月ごろで大体三百十円程度に下がったわけでございますが、昨年の暮れからの石油関係の問題等の影響、そういったことも影響いたしまして綿糸が異常に高騰いたしました。そういったことから、これは病院の平均価格でございますが、十二月で三百二十五円、一月には三百五十円程度にまでまた高騰いたしております。ただその後、綿糸についての上限価格を設けたというようなこと、実勢としても新聞等に伝えられておりますように、その後下落しておりますのと同時に、私ども業界に対しまして強い行政指導をいたしまして、現在ガーゼの価格は相当下降傾向に向かっております。近く昨年の十一月程度の段階にまで鎮静させる、鎮静することができる、そういう見通しで強い行政指導をいたしておるところでございます。
  258. 津川武一

    津川分科員 話を聞いているともっともらしいのだけれども、これはきょう京都で確めた。綿花が五百グラムで二百八十円から八百円に値上がりしておる。去年の八月から比べてことしの三月です。包帯が一反五列三百二十円から五百六十円、弾力包帯オルテックス一箱は千二百円から千六百円、ギプス包帯一巻NO2は百二十五円から二百五十円、問題のガーゼは二百七十円から五百五十円、こうなっております。この状態を御存じですか。
  259. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 局方の脱脂綿につきましては、これは薬価基準にも収載されておりまして、薬事法上の医薬品でございまして、私ども価格についてもトレースをいたしております。いまガーゼのお尋ねでございましたので、ガーゼについてお答え申し上げたわけでございますが、脱脂綿につきましても同様に業界に対し強い指導をいたしまして、相当価格の鎮静をはかり、近くかなりの値下げを見られる見通しで指導いたしております。それからいまおあげになりましたいろいろな包帯あるいは弾力包帯、ギプス包帯等につきましては、これは同じく薬事法の適用品目でございますが、医療用具といたしまして、多少別途の規制をしておるわけでございまして、そういったものの価格につきましても、衛生材料という意味では同じような価格の動向があることは承知いたしておりますし、そういったものについてもできるだけの価格の鎮静をはかるということは、一般的な方針として指導いたしておる次第でございます。
  260. 津川武一

    津川分科員 ガーゼが京都でいま一反五百五十円しておる、この事実を御存じかというのです、私は。
  261. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 ガーゼの価格、これはガーゼの流通経路が区々でございまして、メーカーから直送しておるところ、あるいは相当大きな卸から入っておるところ、あるいは小さい医療機関等におきまして、民間で開局しておるいわゆる小売りの薬局から購入しておるところ、いろいろな形がございますので、非常に小量購入いたしますような極端な場合には、そのような価格があることも私どもとしても聞き及んでおります。ただ、価格全体について申しますと、やはり薬価基準の考え方の一環といたしまして、できるだけ大数的な観察をいたしまして、そういったものを鎮静させるということがまず当面の急務という考え方で指導いたしておりまして、そういった基本的なメーカーあるいは大きな卸の価格が鎮静に向かいました場合には、当然末端価格もそれにつれて鎮静するもの、そういう方針で指導しておる次第でございます。
  262. 津川武一

    津川分科員 局長に注意してほしいのです。私の聞いているのは京都で三月に五百五十円しているのを知っているかと聞いているのです。そういうことでないと、大事な質問が展開されない。あなたのるるくどくどしい説明を聞きに来たのじゃない。そこで、ガーゼはあなたが御承知のとおり増産になっている。この京都はかなり大きな病院なんです。それで五百五十円になっている。この事実を知っているのか知っていないのか、これだけ答えてくださればよろしい。さあ、どうです。
  263. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 一月の終わりから二月にかけまして、調査した中には、京都は直接調査しておりませんので、その具体的におあげになりました病院の価格は私も承知いたしておりません。
  264. 津川武一

    津川分科員 そこで、あなたのほうからいただいた医療用ガーゼの実地調査、四十九年二月十九日薬務局から出ております。「昭和四十九年一月末から二月上旬にかけて、生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置法に基づき、生活関連物資等に指定されている医療用ガーゼについて、国の価格調査官八名が全国主要十六都府県、四十七個所を現地調査するとともに事情聴取した概況は次のとおりである。」そして実際に調査した地域を全部列挙しております。私はこれは一生懸命やったと思います。  ところで今度は調査した実績をここに報告しております。「医療用ガーゼ実地調査の事例」、「I大判メーカーについて」、関東地区、生産、出荷、在庫、昨年の一月からことしの一月までやっております。よくやっております。「関西地区のCメーカーの場合」、これもやっております。生産、出荷、在庫。どうしてガーゼの価格調査をおやりにならなかったのか、それともこの書類にうそを書いたのか、いかがでございますか。
  265. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 ちょっと御質問の御趣旨がよくわからなかったのでございますが……。
  266. 津川武一

    津川分科員 あなたが私たちによこした資料の四ページでいきましょうか。関西だから関西でもいいです。五ページ、「関西地区のCメーカーの場合」、「同社の概要」、「同社の四八年一月-四十九年一月の生産、出荷、在庫の状況」、そして一月から十二月、ことしの一月まである。どこを見ても価格調査の結果が書いてないのですよ。あなたたちも指摘しているとおり、物が出てきた、いまは価格だけと書いてある。価格が大事だと書いてある。調査は、物が出てきた、生産、出荷、在庫、価格はノーコメント、これはどういう意味なんです。
  267. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 失礼いたしました。これは最初に書いてございますように、生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律の第三条に基づく調査でございます。したがいまして、この調査の目的になりますものは主として在庫状況、流通状況、そういった買い占め売り惜しみが行なわれていないかどうかというような調査でございますけれども、私どもといたしましては、同時にいま先生御指摘のように、価格も大きな問題でございますので、各メーカーあるいは卸に参りました際は、納入価格等の調査はいたしております。
  268. 津川武一

    津川分科員 一ページ下段の「(2)価格の動向は、昨年五月、六月をピークとし、特定物資に指定した七月以降は安定的に低下傾向にあったが、十一月頃より綿糸の価格の上昇、石油、電力等の供給削減措置等の影響を受け再び騰勢の傾向がみられたが、本年一月後半から綿糸の価格が急降しているので、価格の引下げについては、関係業界団体を通じてメーカーに対し強力に指導することにより、安定的供給の確保を図っていきたい。」これが載っている。だから、価格に対して知らぬふりしているのじゃないか。しかもここには、一月になってから綿糸の価格が急降下している。それに対して京都は現実に五百五十円、したがって、価格安定調査官を派遣してこの状態を調べてみませんか、いかがでございます。
  269. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 調査いたします。
  270. 津川武一

    津川分科員 厚生大臣、出荷、在庫、生産、これも調べていただかなければならないけれども、こんな状態なんです、おたくの行政というのは。これからは、医療材料は高値安定しておるので、引き下げることが第一だと思うのですが、この点大臣の所見はいかがです。
  271. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私も、値段を高値安定ではなくて安く安定させる、これはもう当然のことだと思います。
  272. 津川武一

    津川分科員 その次は医療材料、これは岡山県、私たちの調査です。重症患者医療に欠かすことのできない酸素、いわゆる酸素ボンベ、酸素吸入というものです。これが四十八年九月には七千リットル気体で千五百円、この二月は三千三百円、二・二倍の値上がりです。人の命を維持していくときに、あの酸素吸入がどれほど大事かということは国民の目には明らかになっている。こういう医療材料は気をつけていただかなければならないのだけれども、この状態を政府は存じておりますか。
  273. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 酸素は、日本薬局方に収載されております局方の医薬品でございますので、薬価基準に基づいての価格の指導をいたしております。いま酸素自体がどういう実勢価格にあるかということは、ちょっと手元に資料がございませんが、こういったものの動向につきましては、薬価調査の一環といたしまして、私どもとしても把握しておるつもりでございます。
  274. 津川武一

    津川分科員 岡山県に行くとすれば私は病院を教えてあげます。ぜひ価格安定調査官をやって――非常に大事なものがこういうかっこうになっている。薬、薬とはかり言っていて――いま物価高、物不足の状態で、ここに国民の医療の隘路がある、これをやっていただく、いかがです。
  275. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 酸素の価格につきましては、実勢価格を至急に把握するようにいたしたいと思います。
  276. 津川武一

    津川分科員 その次は、臨床検査の試薬、溶媒、私たちが調べたのは大阪です。時間がないので一つだけ言うと、あの血液のガンといわれる白血病のとき、血液を染めるときに欠くことのできない、染色顕微鏡で見るもの、染めなければならぬね。あなたたちも技術者だからわかっている。これを染めるヘマトキシリン、これがびっくりした。去年の八月、二十五グラム入りで二百六十円、ことしの二月、六千五百円、二十五倍、こういうところで医療がつかえている、良心的な医者が困っている、患者が困っている、こういう細部が必要なんだけれども、この点も調べていただいて私に報告していただきたいのです。下げなければならぬ。いかがでございます。
  277. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 いまおあげになりましたヘマトキシリンが、医薬品に入っておりますかどうか、いま調べておりますが、そういった検査用に使います試薬は、必ずしも医薬品として厚生省の所管に入ってない場合がございます。それからまた、いろいろおあげになりましたような検査用の溶媒等につきましても、確かに医療上の問題があることは私ども承知をいたしておりまして、ただこれは、物資の所管といたしましては、医薬品に入っておりません場合には通産省の所管になりますので、私どもといたしましても、特に石油関連等の、そういった検査用の医薬品あるいは溶媒等につきましては、価格の安定及び物自体の安定的供給を行ない得るように通産省に対しまして申し入れをいたしまして、通産省の協力を得て行政を進めておるところでございます。ヘマトキシリン自体につきましては、いま調べまして後ほど御返事を申し上げたいと思います。
  278. 津川武一

    津川分科員 私は局長の弁解を聞きに来たのじゃないのです。国民に必要な医療をどう前進せしめるかで来たのです。あなたたちの職権がどこだということではないのです。あなたたちの組織厚生省組織令によると、医療材料を整備するのはあなたの仕事なんですよ。あなたたちの、薬務局長の任務というのは、ちゃんと厚生省設置法の中に規定してある。だから、そんな議論をしに来たのじゃないのです。しかし、これは欠かすことのできないもの、これなしに診断できないのです。隣の医務局長に聞いてごらんなさい。血液のガンの診断ができないのだよ。そういう基本的な問題。  そこで大臣、こういう状態なんで、ここでおれの仕事だ、おれの仕事だと争っておれない。要するに、どうしたならば安心して国民に必要ないい医療をやれるかという点では、こういう点、大所にかまえて大臣なら皆さんを指導してくださると思うのですが、これはいかがでございます。
  279. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は、あくまでも国民の医療上必要な医薬品とか、あるいは衛生材料というのですか、そういうふうなものが、そう高値でなく、安定的に供給が確保されるようにすることが当然のつとめだと考えております。そういうふうな意味において、権限があるとかないとかいうことは別として、相当上がっているという話を聞けば、どうして上がっているのだろうか、これにはそれぞれ理由もあるだろうけれども、こういう際でもあるから、あまり上げないようにしてくださいというふうに行政指導をしていく、こういうふうなのが私は基本的な考え方でございます。医薬品等については御承知のように買占め売惜しみ防止法の中の生活関連物資には指定しておりませんけれども、私はそういうことの法律の規定があるかないかとかいうことは別として、医薬品等が安定的に供給が確保されるということのために全力を尽くすべきものであり、必要な価格については勧告、指導をしていく、これは私は当然のことだと思います。
  280. 津川武一

    津川分科員 そこで大臣、そこまで言ってくれたのだが、ただ私もびっくりしたのは、二十五倍なんです。医療関係の製品が二十五倍値上がりすることは、どんなことがあっても認めることができないので、このヘマトキシリンの一件は、大臣の責任でメーカーと、蔵出しと、医療機関に届くまで追跡していただきたいのです。大臣いかがでございます。
  281. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 津川委員が仰せになりましたこと、間違っているとは思いませんが、私、実際内容を知らないのです。知りませんから、実態を調べさせるようにいたします。
  282. 津川武一

    津川分科員 その次は、入院患者の寝具です。この二月の医療報酬の単価の緊急是正によって――改正前までは、一人一日当たり五点、五十円、その中で、五十円病院に払われると、病院が寝具屋に二十七円、したがって、病院人たちが寝具を運んだり世話するために残るのが二十三円、これが今度の緊急改正によって、八点、八十円になった。よかったです。ぼくも喜んだ。  ところが、これも京都の綿久という寝具屋が八十円に上がった中から七十五円よこせというのです。すったもんだのあげく、七十円にきまったわけだ。八十円に上がって、病院のほうで皆さんでこれをやったり処理するのに残るのは十円なんです。こういう状態。これは私もびっくりしたわけだ。これはだれに答えていただけばいいか、こういう状態がわかっているかどうか。
  283. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 寝具の問題は、先生のあげた数字のとおり、五十円が八十円になりました。国立は、寝具リースを、療養所はほとんど全部のベッドに対し、病院は約三分の一程度実施しております。それで、各地でそれぞれ業者と随意の契約によりまして、ほとんど年間契約でございます。したがいまして、具体的には、二月一日から八十円になりましても、現状の私に入っている情報では、国立関係は三月三十一日までは現状の契約、たとえば先生のおっしゃった二十七円見当のものもございますし、三十四、五円程度もございますが、そのことで実施しております。  それから、具体的な例をあげました京都の例でございますが、八十円、七十円という問題は、これは契約の問題でございますから、当面われわれとしては、八十円、七十円が著しく不当であるといえるかどうか問題はございますが、従来五十円のときに、大体業者は、一般的には三十円台ないし一部二十円台の契約をしております。もちろん、人件費その他も上がっておりますので、業者としてもそれ相応の理由はございましょうけれども、私はやはり問題としては、これが四月以降具体的にどのような形で、かりに業者間の協定のようなことで出てくるというようなことがあれば、これはいま問題になっているようなことを含めて非常に問題だと思いますが、原則は、申し上げましたように、個々の施設のそれぞれの契約でございますし、全国に、資料もございますが、業者の数はずいぶんございまして、価格はもうばらばらでございますから、例をあげた七十円というのは、私はやはり、病院に八十円入りましても、病院そのものも寝具の管理の仕事がございます。したがいまして、八十円で七十円ということが契約であれば、これは別に批判する余地はございませんけれども、一般的には、八十円の今度の設定に対して七十円という問題については、国立としてはこのような契約はあまり好ましくない。やや感想的なお答えで恐縮でございますけれども、私はそのように感じております。
  284. 津川武一

    津川分科員 医務局長、そうはいかないのです。八戸に京都の大手のふとん屋が入ってきて、小さい業者を食いつぶしてしまった。このいまの問題の京都の綿久。伊藤忠がふとん屋さんに材料を提供して、ふとんをつくらせて、そしてかなりのシェアを京都で占めて、ここで皆さんが苦労して上げたものを吸い上げてしまっているのですよ。随意契約で業者と医療機関と簡単にいかない事情が出てしまっている。それが今度の伊藤忠なんです。  これは私、国会で質問するために、もう一日、二日あれば、もっと追及してから来ればよかったのだけれども、そこまで私も時間がなかった。伊藤忠からこの京都のふとん屋に、何ぼも行っているんです。材料指定して、ずっとバーチカルインテグレーション、ここで医療機関が選択の自由がないところまで追い込んで、この形が出ている。これはぜひとも厚生省あげて調べて、できるならばこの予算委員会、衆議院にいる間に私に報告していただきたいのです。いかがでございます。
  285. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先ほどもお答えしましたように、原則は随意契約で各病院ともやっておられると思いますし、いまお話しの伊藤忠と綿久というもののこの関連につきましては、われわれ従来、知識としてもございませんでした。先生からそのような御指摘がございましたので、この問題が、先ほども私、ちょっと触れましたように、これがシェアも多く、あるいは価格協定的な感覚で出てくるようなことがあれば、われわれとしても医療行政の指導上十分注意して、実態に応じた指導をいたしたいというふうに考えております。
  286. 津川武一

    津川分科員 京都府の、何というんですか、あすこには、医療部というか薬務部というか厚生部というか、何か部があるんでしょう、それを通じてもいいから、この予算がこっちにいる間に、緊急に調べて委員会に報告していただきたいと思うのです。委員長にもこの善処方をひとつお願いいたします。
  287. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 ちょっと御質問しておきたいのですが、京都だけの実情でけっこうですか。
  288. 津川武一

    津川分科員 京都だけでけっこうです。この綿久と伊藤忠だけでいいです。――委員長、あなたはいいです。いまやると言っておりましたから……。  そこで、昨日、うちの小林政子議員が物価特別委員会で一般用の医薬品を質問したので、私はきょう、医療用の薬品に少し及んでみたいと思います。  日本の薬品の中で、医療用の薬品が七〇%近く占めておるので、これもまた、いまの国民医療一つの障害になって、そのものが不足したり物価高になっているといけませんので、質問させていただきますが、二、三日前の新聞の報道によると、東京都の美濃部知事が、医薬品の引き上げなど国が指導するように国に要請したというのですが、そういう事実はございますか。
  289. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 東京都が、一部の医療用医薬品、いわゆる薬価基準の設定されております医薬品につきまして、逆ざやのものがあるという調査資料を私どものほうに届けてまいりまして、調査並びに善処方を申し入れてまいりましたことは事実でございます。承知いたしております。
  290. 津川武一

    津川分科員 そこで、薬務局長、薬価基準というのは何でございます。
  291. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 薬価基準は、これはもう先生御案内のように、医療機関が健康保険に基づく診療をいたしました場合に使用いたしました医薬品を、支払い基金に医療費を請求いたします場合の請求価格、法律上の性格は、かなり詳しく書いてございますが、実態的に申し上げればそういうことであると申してよろしいかと存じます。
  292. 津川武一

    津川分科員 薬価基準というのは法律事項ですか。
  293. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 厚生大臣の告示でございます。
  294. 津川武一

    津川分科員 そこで、ことしの二月、薬価基準が二年ぶりに改正された、こういうことですか。
  295. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 薬価基準は、ことしの二月に診療報酬の改定とセットになりまして、四十七年の八月分について九月に調査したものを基本にいたしまして、その後の経時的な薬価の変動を加味して改定したものでございます。
  296. 津川武一

    津川分科員 前回に比べて上がりましたか、下がりましたか。下がったとすればどのくらい下がっております。
  297. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 三・四%でございます。
  298. 津川武一

    津川分科員 下がりましたね。
  299. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ええ、下がりました。
  300. 津川武一

    津川分科員 そのことしの二月一日改定した薬価基準の下げるに至った基準、いつごろの実勢、実態でその基準をつくりました。
  301. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 いま申し上げましたが、四十七年の八月分について四十七年の九月に薬価調査をいたしました。それが基本でございます。ただ、その後の経時的な薬価の変動というものがございますので、それを現段階の薬価適正化委員会とかそういったものを通じて把握をいたしまして、それを加味をして改定いたしたものでございますので、ごく最近までの実勢を織り込んでおるつもりでございます。
  302. 津川武一

    津川分科員 ごく最近の実勢というと、去年の十一月、十二月ごろは入っていますか。
  303. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 昨年十一月まででございます。
  304. 津川武一

    津川分科員 そこで二、三の例をとります。これから薬のことで私があげる例は、私たちが全日本民主医療関連合会、民医連、民医連というふうに略称している、そこで私たちが一緒に調べた調査結果のものなんですが、これから出る薬はすべてそこの調査です。かぜ薬のアスピリンですが、薬価基準で九十銭、二月一日に告示になって二月七日に買ってみたら一円三十四銭。あのかゆいとき、中毒なんか起こしてじんましんをなおすときに使うレスカル、五ミリの注射液、薬価基準では十五円、二月十二日に買ってみたら二十六円四十銭。私は神経科の医者なので自分の領域を調べてみたら、てんかん患者のけいれんを押えるに使うヒダントールFは、薬価基準では一円二十銭、二月二十一日には一円八十銭になっています。これはほんの一例ですが、もっとひどいのは二月一日改正になって、その日のうちに、あの酒飲みを少し退治するノックビンという抗酒剤、改正された薬価基準では四十九円十銭というのが、二月一日に買ってみたら五十円四十銭、告示されたその日のうちにもう薬価基準をこしてしまった。これはほんの一例なんです。どうしてこうなったかということをお考えになっておりますか。どんなふうに考えておりますか。
  305. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 薬価基準の設定につきましては、ただいま保険局長から御説明申し上げたとおり、四十七年夏の八月時点の価格について大調査をいたしましたものを加えて、繁用いたします医薬品等について、昨年の十一月ごろまでの経時変動調査を加味いたしたものでございます。そういった経時変動調査によりまして、いまおあげになりましたアスピリン、ブドウ糖等が非常に問題になっておったわけでございますが、全体では三・四%引き下げました中でも、相当数の品目につきまして、特に局方品が中心でございますが、そういったものがすでに逆ざやになるという傾向が見られましたために、そういったものについては実勢に従って相当の引き上げも行なったわけでございます。  ただ、先ほど先生が御指摘になりましたように、昨年の暮れから十一月ごろまでの経時変動調査の結果でございますので、十二月ごろからの石油問題等に端を発しましたいろんな資材の不足等が影響いたしまして、やや、調査時点、設定の基礎になりました時点以後の資材の値上がり等が反映しておる。そのために逆ざやになっておるというような品目も若干あるということは、私ども承知をいたしております。そういったものにつきましてはやはり一つは、先ほど申し上げましたように、各省庁の協力を求めまして、資材面の手当てをできるだけ安価に、しかも物不足のないようにするということと、もう一つは、大臣から申し上げましたように、できるだけ業界等に強い行政指導をいたしまして、そういった現象を来たさないようにする。そういったことを行ないますために、いま御指摘のようなものも含めまして鋭意調査及び指導をいたしておる段階でございます。
  306. 津川武一

    津川分科員 そこで、局方というのは何です。
  307. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 失礼いたしました。  日本薬局方に収載されております医薬品を私ども内部で局方と称しております……(津川分科員「局方というのは何です、内容は」と呼ぶ)厚生省の告示でございます。
  308. 津川武一

    津川分科員 日本薬局方にきまっている局方薬というのは、どういうものなんです。
  309. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 局方に収載いたします基準は、これは一律ではございませんけれども、それぞれ十年ごと――法律では十年ごと、実際は五年ごとに改定をいたしておりまして、改定いたします際に中央薬事審議会の局方部会にはかりまして、その時点時点におきまして、繁用されており、かつ医療上ベーシックな医薬品というものを、局方品として収載をいたしております。
  310. 津川武一

    津川分科員 局方薬二つなり三つなりを砂糖で囲んだり錠剤にしたりすると、そのでき上がったものは局方薬ですか。
  311. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 局方に収載されております医薬品は単味だけではございませんので、いま御指摘になりましたような配合剤も、局方に収載されておるものもございます。ただし、全部が局方薬になるわけではございません。局方外になる場合もございます。
  312. 津川武一

    津川分科員 その局方外になったものは、皆さんのお力が及ばないのですか、及ぶのですか。
  313. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 薬事法に基づきまして、日本薬局方外の医薬品につきましては、製造及び輸入販売にあたって厚生大臣の承認が必要であり、かつ製造いたします際には、製造所ごとに厚生大臣の許可を必要とするという二重の規制を課せられております。
  314. 津川武一

    津川分科員 そこで、薬務局長が言ったブドウ糖、ほんとに足りなくて困りました。しかし、いいあんばいに回ってきました。足りなくなる前、メーカーによってブドウ糖の値段が倍も違うのだ。今度、皆さんの基準出して指導していったら、もののみごとに全メーカーのものが、同じ値段で、薬価基準にまで一緒に全部そろえている。ブドウ糖、リンゲル、その他の水液、今度は非常に、もののみごとなんです。全部薬価基準です。いままではメーカーによってこんなに違ったのが、メーカーの差がなくなって、こうなってしまった。非常によかったと思うのですが、どうやら、カルテル、価格協定、安かったのを薬価基準があるからそこまで上げて、高値で協定した形勢があるわけなんです。こういう点は、疑ってみていませんか。
  315. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 現在薬価基準に収載されております医薬品は約八千品目、銘柄別に分けますと、一万以上の品目になるわけでございます。各メーカーとも、単品メーカーというのは非常に少のうございまして、いろいろな医薬品を製造いたしまして、それで総合的な収支を考えておるというのが製薬企業の実情でございまして、特にいま御指摘のブドウ糖、業界では水ものなどといっておりますが、いま申し上げましたような繁用されるベーシックなものではございますが、同時に、新薬に比べまして、かなり単価の安いものであります。そういったものにつきまして、特に価格協定を行なうという動向があるということは、私ども考えておりません。
  316. 津川武一

    津川分科員 単価は安いけれども、たくさん使うわけだね。しかも、いままではこんなに、二倍以上の差があったのが、もののみごとに来ている。ここの点が、ほかのものを調べてみたら、ほかのものはメーカーによってまだ違っている。あなたの言う水ものだけが一本に上がってしまった。これはあとで調べていただきたい。私も伺いに行きます。これは委員会で報告は要りません。  そこで、薬価基準以上に上がったものは、八千ぐらいの中で、どのくらいありますか。
  317. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 薬価基準八千の中には相当まれにしか使わないものも含まれているわけでございまして、全数を調査するということは、大調査の場合でないとなかなか困難なわけでございますけれども、先生からもきょういろいろの御指摘がございましたように、そういう声もございまして、私どもが把握いたしました限りでは百品目余り、現在までに把握いたしておりますのは、その程度のものではないかというふうに考えております。
  318. 津川武一

    津川分科員 私のこれは、全国民医連傘下の医療機関全部で調べてもらったのですよ。薬価基準以上のものと、薬価基準とぴったりのものが大体同じ数です。そこで、ぴったりになることは望ましいことなんだけれども、問題は、皆さんの指導なんです。昭和四十九年一月三十一日、あなたの名前で通達を出している。「貴会加盟会員各社においては、」これは薬会社ですね。「都道府県のあっせんにより医薬品等の供給の要請があった場合には、極力これに応じるとともに、」これはよろしい。「当該製品についての薬価基準価格等の基準価格が定められているものについては、」つまり、薬価基準がある医療薬品については、「当該価格を標準として適正な価格で供給されるよう努められたい」、こういう指導なんです。中心が薬価基準なんで、いままで薬価基準を通じてばらばらなんです。今度は皆さんのところでこうなっておる。そこで、全部が薬価基準に集まりつつある。薬の値上げの推進者、命令者、あなたの通達によって薬価基準まで一斉に薬が上がっている。これが実態なんです。この点は、御反省ありますか。
  319. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 薬価基準の制定の方式は、先ほど保険局長からも御説明申し上げましたように、それぞれの時点におきます薬価調査をいたしまして、いわゆる九〇%バルクライン方式をもって行なっておるわけでございます。したがって、実勢といたしましては、大部分は薬価基準内におさまるべきものである。しかし、例外的には薬価基準を越えるものもあり得るというのが、薬価基準の一応の考え方であります。しかし、現時点におきまして、先生が御指摘になりましたように、そういう薬価基準の性格ということに藉口いたしまして、逆ざやというような現象が起こることは、これは医療上非常に支障のあることでございます。したがいまして、先ほど大臣から申し上げましたように、少なくとも医療用の医薬品につきましては、薬価基準以内に価格がおさまるということを基本的な指導方針といたしまして、メーカーに対する指導をいたしましたのがその通牒でございます。あるいは先生御指摘のような誤解をいたしておる向きが――私は十分趣旨を、あらゆる機会に説明しておりますし、大臣のところへ業界の代表も呼びまして自粛を要請しておりますので、さような誤解はないと存じますが、もし一部にでもそういうような誤解があるようでございましたら、さらに十分指導をさせていただきます。
  320. 津川武一

    津川分科員 一部では、いいものをもらったと喜んでいるのですよ、大っぴらに薬価基準まで上げられると。それはもう一回指導し直してくださいね。これが一つ。  そこで、私も医師であるし、病院の経営者でもある。薬価基準よりも薬屋さんから買う値段が安かった。そこでわれわれは差益もある。この差益が、われわれにとって大事な経営の宝ものだった。ところが政府は、われわれの医療技術に報いてくれないから、これで皆さんの医療技術に報いてやるのだと、レントゲン技師、臨床検査技師に言ってきたわけなんです。それなりに役割りを果たしてきたわけですね。今度その利ざやがそっくりメーカーに持っていかれて、ここで逆転してしまった。したがって、製薬会社がしこたまもうけてきた、こういうのが実態なんです。  そこで聞きたいのは、薬価基準をどうしてきめたか、薬価基準をきめた根拠、これを明らかにしていただきたい。もっと言うと、メーカーの原価が幾らで、蔵出しが幾らで、卸が幾らで、病院に行ったのが幾らで、卸から小売り店に行って診療所に行ったのは幾らで、こういうことでないと、いまの薬価基準にはたいへんな疑念を持って、この薬価基準をめぐってみんなてんやわんやというのがいまの実情です。この薬価基準をつくった基準、これを天下に明らかにするのが、いまや厚生行政の、医薬品行政の核心になっているわけです。中枢的な課題になっているわけです。これはいかがでございますか。
  321. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 薬価基準の制定のしかたにつきましては、私どものサイドから申し上げますと、そのときどきの実勢価格を忠実に反映したものを、皆保険下の保険医療で取り入れるということでございます。要するに、実勢価格を忠実に反映する、そのために必要な調査もいたしますし、また経時変動的な追跡もする、それによって現在まではきめております。
  322. 津川武一

    津川分科員 大臣、これは製薬会社の有価証券報告書にそうなっている。これを見ると、材料何ぼで、どういうふうなかっこうで生産されて、価格が幾らになるかということを書いているのです。うそかほんとうかわからないけれども、とにかく書いている。それに対して厚生省自身が薬価基準の基準を明らかにしていない。これを算定した基準を大臣からひとつ部下に命令して、天下に公表さしていただきたいのです。
  323. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は、その何を公表しろとおっしゃるのかよくわかりませんが、一昨年の八月調査いたしまして、その後の経時的な変動も見合いながら薬価基準をきめているということを知っておるわけでございまして、私は個々の薬について具体的なことを承知しておりません。それは専門家にひとつお聞きとりいただきたいと思います。
  324. 津川武一

    津川分科員 委員長のとりなしで、この委員会にその基準をとっていただきたい、こうお願いする次第でございます。
  325. 渡辺栄一

    渡辺主査 分科会ではそれはやらないのです。
  326. 津川武一

    津川分科員 それじゃうちのほうの理事から申し込めばよろしいわけですか。
  327. 渡辺栄一

    渡辺主査 予算委員会のほうでひとつ……。
  328. 津川武一

    津川分科員 その前に、厚生省自身はこれは公表する腹があるかどうか伺います。
  329. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 ただいま先生のお尋ねがございましたメーカーの製造原価、蔵出し価格、流通経費等の問題でございますが、いま保険局長からお答え申し上げましたように、現在の薬価基準の制定は、自由な市場における企業の競争による実勢価格を反映する、それがまた医薬品を安定的に供給いたしますのに最も適当な方法であるという前提でもって薬価調査をいたし、その薬価調査を反映して、先ほど申し上げたような方式をもって設定しておるわけでございます。したがいまして、いま先生のお尋ねのような原価的なものが薬価基準の策定に使われておるというわけではございません。
  330. 津川武一

    津川分科員 たとえばアスピリン、それから胃のユモール、幾つかの会社でつくっている。これにあなたたちは薬価基準をきめた。したがって基準がなければきまらないのだ、こっち側の。このまん中をきめている。必ず根拠がある。根拠なしに薬価基準がきまるはずがない。根拠なしに薬価基準をきめていたらたいへんな国政上の問題です。必ずあなたたちは、薬価基準をきめたから、根拠を持っている。公表できないはずはない。いかがです。
  331. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 いま申し上げましたように、薬価基準はそのときどきの実勢価格を調査いたしまして、それに従って薬価基準を設定しておるわけでございます。
  332. 津川武一

    津川分科員 だからその実勢を、どこをどう見たのか、これを明らかにしていただきたい。
  333. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 薬価調査をいたしますのは、これはやり方といたしましては、全国の全数、いま申し上げました八千余りの品目につきまして全数を一月間、多量のものにつきましては一週間単位にする場合もございますが、全数について全国の卸からの納入価格を調査するということと、それから抽出的に医療機関の購入価格を調査する。その両方を整理いたしまして薬価基準の基礎となる薬価調査をいたしておる。これが大調査でございます。そのほかに経時変動調査といたしまして……
  334. 津川武一

    津川分科員 いいです、時間がなくなってしまったので……。私が言うのは、私がいまあげたアスピリン……
  335. 渡辺栄一

    渡辺主査 ちょっと待ってください。いま薬務局長の発言中ですから……。
  336. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 そういうような調査でございますので、これ全国の卸の協力を得て――法律によるものでないわけでございます。任意的な協力を得て正確な調査をするというたてまえのものでございます。取引価格は、それぞれの企業によりまして相当幅のあるものでございまして、こういった調査につきましては、その内容の個々の数字は公表しないということを前提といたしまして協力を求めて調査をいたしておるわけでございます。したがいまして、この資料につきましてはいままで一切公表はいたしておりません。
  337. 津川武一

    津川分科員 私が先ほど指摘したアスピリン、その次に、じんましんのときのレスカル、けいれん抑制剤のヒダントールF、これについて――それじゃぼくも妥協する。個々のメーカーの名前は要らない。記号でよろしい。これはみな出しています。とにかく三つの製品。メーカーがたくさんある。それらをあなたたちが調べた。医療機関も調べた。そうでなければアスピリンの値段がきまらない、薬価基準が。きまった根拠。この三つについて報告していただきたい。
  338. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 重ねてお断わりして恐縮でございますが、いま申し上げましたように、個々の調査の数字につきましては、いま申し上げたような前提がございまして、一切公表しないというたてまえをもって調査をいたしておりますので、たいへん申しわけございませんが、御要望に沿いかねるわけでございます。
  339. 津川武一

    津川分科員 そういう事情であれば、後刻われわれが物特委に証人として局長を呼ぶことを前提にして、私進めていきます。
  340. 渡辺栄一

    渡辺主査 津川さんに申し上げます。資料は理事さんを通じて委員会のほうでひとつ……。
  341. 津川武一

    津川分科員 はい、わかりました。そういう態度で進むということを表明して次へ進みます。  そこで今度の豪雪、これはたいへんでした。秋田県の中通病院、ここは人工じん臓の患者を入院と外来で見ておる。十二キロ通わしておった。豪雪でとまっちゃった。ほうっておくと死んでしまう。そこで、市に救急車をお願いしたら断わられた。中通病院は、しかたなく自分の費用で救急車をしたくしてもらって、雇って連れてきてやっと命が助かった。  新潟県。病院で僻地に出張所を持っておる。今度の豪雪で行けなくなっちゃった。寝たきり老人を往診しているのだ。今度は医者もだれも行けなくなっちゃって、その寝たきり老人、だれもみとる人なく死んじゃった。  新潟で、山形で、秋田で豪雪地帯を診療区域としている医療機関の外来患者が三割減った。患者が減ることはいいことなんだけれども、実態はこの患者さんたちが医療を受けてないという、これが今度の豪雪。したがって私は、国と県と地方自治体が全部一緒になって救急医療の体制、救急車をしたくしなければならない。もう一つは、こういう豪雪地帯の県には多目的でいいから、救急医療も兼ねたヘリコプターが今度は絶対必要だと思ったのですが、今度の豪雪の教訓でこんなことを考えてみませんか。いかがでございます。
  342. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 手元に東北六県の雪害のためのヘリコプター出動状況というのがございまして、先生の例に引かれましたものは出ておりませんが、山形、新潟、岩手等で医療関係で出動する、その他物資輸送等で出動いたしております。  結論を申し上げますと、ただいま自衛隊等のへリコプターの分布状況もわれわれ地図の上でつかんでおりまして、それぞれの地域のヘリコプターの出動は、県が要請する場所、範囲、連絡先等も定めてございますので、当面は自衛隊関係等、あるいは一部県によっては民間との契約等によりましてヘリコプターの出動対策をいたしておりますが、医療を目的としてのヘリコプターというものは、ドイツあたりでは専門の、中に設備が全部あるヘリコプターがあると聞いております。これらの問題は今後の僻地医療対策の充実の上での検討課題であるというふうに私は思っておりますが、当面はそのような自衛隊その他の御協力によって、それぞれの府県の連絡方法等によって一部出動し、一部は雪上車あるいは救急車等によってまかなっておるというのが実態でございます。
  343. 津川武一

    津川分科員 そこで、自衛隊のヘリコプターは借り上げるヘリコプターなんだ。時間がかかってしようがない。知事が持っているとすぐ出るんだ。そこのところに根本の問題があるのですよ。この間、岩手県と秋田県の県境で一人の人が閉じ込められて、救出に来た三人が閉じ込められて、救出に行った十二人が全部閉じ込められた。ヘリコプター一つあれば、これは全部できた。それ、自衛隊といって借り上げては、それでは間に合わない。そこで大臣、これは多目的でけっこうだけれども、知事が直接発動できる形のヘリコプターを、各県で、こういう豪雪地帯で持つべきだと思うのですが、いかがでございますか。援助してほしいのです。
  344. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 今回の豪雪は、近来まれに見るということは、私もよく承知をいたしております。そういうものに対処したヘリコプターその他の施設の問題については、私は、今後とも十分考える必要がある、かように考えております。
  345. 津川武一

    津川分科員 もう一つ今度の豪雪で困ったことは、寒い、ふるえている、たいした寒かった。病院診療を受けるのに、暖房用の医療費がない。これがまた今度非常に困難させている。したがって、こういうところに医療費の暖房加算、新潟の一部、東北の一部に――北海道ではみなある。これは考える時期に――今度ほど痛切にそれを必要と思ったときはないのです。いかがでございます。
  346. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 現在暖房料は、いま先生御指摘のとおり北海道でございます。それで、それ以外のところについても暖房料をどうするかという問題があることは私も承知をしております。ただこれは非常に大きな問題でございますし、相当慎重に検討すべき問題でございますので、時間をかけて、今後の検討課題としてやってまいりたいと思います。
  347. 津川武一

    津川分科員 最後に、厚生大臣にお伺いしますが、昨年十二月七日付で厚生大臣が中医協に諮問したその諮問事項の二項「診療報酬を人件費・物価の変動に対応するいわゆるスライド方式を導入すること」について、本年度、三月三十一日以内をめどに答申を求めたのですが、国民医療の見地からは緊急に中医協の審議を再開し、人件費だとか物価の変動に対応したスライド制を持ち込まなければ、物価がこう高くなっている、労働者が食べれなくなっていくとすれば、春闘でまた賃金の値上げはする。医療機関だけできないとすれば、医療の非常な停滞、ときによると病院の閉鎖にまで発展するので、大臣、諮問したとおりこの年度内に中医協を再開して、スライド制を導入しなければならないと思いますが、御所見、御決意、いかがでございます。
  348. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 診療報酬の改定についてスライド方式を導入することについては、すでに諮問をいたしておるわけでございますが、最近までまだ開かれてない実情にございますが、私としては一日も早く開いて、慎重に審議をして、答申を出すものは出すということを期待いたしております。
  349. 津川武一

    津川分科員 終わります。
  350. 渡辺栄一

    渡辺主査 津川君の質問は終了いたしました。  次に、井上普方君
  351. 井上普方

    井上(普)分科員 きょうは、もう私が最後のようでございますので、ごゆっくりお聞き願いたいと思います。いま津川さんから薬の話が出ましたので、私も薬のことを少しお伺いしたいと思います。  去年の暮れから非常に物が不足いたしますというと、医者が使う薬まで足らなくなって、医療担当者は非常に困惑したのでございますが、それに対してどういうような処置を厚生省としてはおとりになりましたか。
  352. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 医薬品の不足に対処いたします方策としては、先生御指摘のように、去年の暮れあたりから非常に原材料等が不足して、原材料あるいは資材が不足いたしましたために、製造に困難を来たして不足をいたしたという状況と、それからもう一つは、そういったことのためにいまお答えいたしましたように、一部逆ざやの品目が生じまして、メーカーが品薄になってきたというような状況、そういったものがいろいろと混合して見られたと理解いたしております。  したがって、そのための施策といたしましては、原料、資材等につきましては、先ほどお答えいたしましたように、それぞれの所管官庁に対しまして手当てを求め、それと同時に個々に業界からの訴えがありました際に、個々にさらに通産省等に連絡をいたしましてその手配をするということと、それから有効成分以外のもので代替し得るような賦形剤等につきましては、入手しやすいものと処方を変更いたす場合に、できるだけ手続を簡易に早くするというような方策、そういったことを講じまして、製造面の障害をできるだけ少なくする。  それから価格につきましては、いま申し上げましたようにブドウ糖その他の局方医薬品につきましては、実勢に合わせて一応ペイし得る価格に薬価基準を修正する、そういうような方策を講じまして、医薬品の不足に対処いたしております。  なお、ガーゼにつきましては先ほど申し上げたとおりでございます。
  353. 井上普方

    井上(普)分科員 ほんとうに足らなんだんですか。原料はほんとうに不足だったんでしょうか。どうです、お調べになりましたか。
  354. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 医薬品は御承知のように、非常に少量多品種でございますので、それに使われます原料あるいは資材等もかなり区々にわたっております。したがって、その全品目について私どもも正確な需給状況を承知しておるわけではございませんけれども、たとえば苛性ソーダあるいは乳糖あるいはアンプル用のガラス、そういったものが相当不足をいたしまして、あるいはその価格の高騰を来たした、あるいは輸入にたよっております一部の生薬、麝香、牛黄あるいは柴胡というようなものが非常に高騰したというような事情は事実でございます。
  355. 井上普方

    井上(普)分科員 外国から入っておるその生薬類につきましては、私はわかります。あるいは入らなかったこともあり得るでしょう。しかし、国内においてたとえば重曹がなくなるというようなことがはたして考えられるだろうか、常識で。これはあなた方はおっしゃいますけれども、重曹がない、こう言って製薬メーカーから医者のところに送ってこない、こういうケースが非常にたくさん起こった。値段を上げたとたんに、どんどんと出てくる。まさにつくられた薬不足じゃなかろうか、このような感がするのであります。したがいまして、薬務局というのは、製薬会社に対してもやはり監督権限を持っておるのでしょう。持っておるのですね。持っておられるなら、なぜそこまで立ち入ってやられないのです。現在でも利益につきまして、まあその重曹の話をしましょうや。重曹にいたしましても、非常に一時は不足したといわれた。ところが、いまは出回りつつあるでしょう、しかも単価が上がった場合。こういうようなことを製薬会社は半ば意図的にやられておるのじゃなかろうかと私どもには思われてならないのであります。現に、いいですか、こういうケースがあるのを御存じですか。いま医者の仲間で、たとえば去年の年末に五百万円なら五百万円卸問屋へ積み上げる。そして来年の薬代をこの金の中から支払ってくれと言ったらどんどんと出てきた事実を私は知っている。あなた、そういうことを知っていますか。ありますか。御存じですか。
  356. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 いまおあげになりました事例は私存じません。
  357. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、こういう現象が、一般開業医では薬屋の問屋に五百万円、一千万円あらかじめ預けておけば、重曹でも必要なだけ入るのであります。まさにつくられた品不足であると思う。私は確信をもって言える。したがって、薬務当局は――しかもその重曹がないために、違う高い薬を医者は買わされるのです。ために保険の支払いも、それに応じて高くなっていきつつあります。こういう現象で一番困るのはだれだというと、これは国民でございます。金の面においても、また最もきくと思われる薬品が手に入らない、そのときに高い薬を使わされるということで困るのは国民であります。したがいまして、どういたしましても製薬会社に対して監督権限を持つ薬務局としては、立ち入った調査なり、その臨機応変の処置を講じなければならないと思うのでございますが、大臣いかがでございましょう。
  358. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 御承知のように、今回の診療報酬の改定に伴う薬価基準の改定は、ものによっては上がったものもあり、下がったものもありますが、総体的には三・四%下がっているのです。これは一昨年来の調査、その後の経時的なものを踏まえて行なったものでございます。したがって、私どもはお医者さんが買う医薬品の値段というものは、薬価基準の範囲に押えてもらう。薬価基準の下であればこれは問題がないわけでございます、薬価基準の下でどの程度に売買されるか、その範囲はこれは別といたしまして。これはどの程度でお医者さんが買うか、お互いの自由な契約ですから、これは私は言いませんが、しかし、薬価基準の中であっても、薬の値段がそう暴騰するということは好ましいことではありません。これは私はほんとうにそう思います。薬価基準の下であればいいと、上げっぱなしにするわけにはやはりいかぬと思うのです。そこで、薬価基準の下であっても、そうたくさん上げることは好ましいことではありませんので、私は今後とも薬価の値下げその他については厳重に指導していく、これは当然のことだと思います。
  359. 井上普方

    井上(普)分科員 それじゃ大臣、いま薬屋がいかにしてあくどいもうけ方をしておるか一例をあげましょう。  からだが弱ってきますと、皆さん方はよくリンゲルを打つということばを御存じでございましょう。ところが、いまリンゲルというのはほとんどありません。これは単価が安いからなんです。当然リンゲルで間に合うものであっても、使おうと思っても、リンゲルがないのです、安いから。そして他の添加物を少し加えた薬が横行いたしておるのであります。医者は使わざるを得ないのです。安い薬であればつくらない現在の製薬会社であります。あなた方は、ブドウ糖、リンゲル水液を何ぼにして売ろうか、これに対して少しの添加物を加えますと、一本千円だって売れるのです。五百円するのです。でございますので、製薬会社のほうはそればかりを医者に使うように、安い薬をつくらない、そういう現象があるのですが、大臣、どうお考えになります。いやお考えになりますよりも、厚生大臣としては、保健行政もあなたは預かっておるのでございましょうし、国民の健康というものを預かっておられる大臣としての御所見を承りたい。政治家としての御所見を承りたいのです。
  360. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 昨年来、実はリンゲルとかブドウ糖、これはアンプル剤が非常に上がったということが理由だということで、引き合わないというふうなこともあったのでありましょうか、あまりつくらないというふうな話を聞きました。うわさを聞きました。そこで、実は私も去年の何月でありましたか、主としてブドウ糖などをつくっておる大きな会社四社ほどの社長を呼んで、あなた方は苦しいだろうけれども、薬価基準がこうなっているのだから、ひとつ大いに協力してくれということで、生産をすることをお願いをしたこともございます。  そこで、私は製薬会社のモラルとして、安いものはつくらないというのはどうも理解できませんね。安いものはもうつくらぬのだ、ちょっとまぜると高くなるからそれだけつくりましょう、それは気持ちはわかりますよ、営利企業ですからね。しかし、営利企業といってもそれはほどほどでなければならぬ。やはり製薬会社というものは、国民医療に欠くべからざるところの薬をつくっておるという社会的責任というものを果たすように、それを守りながら医薬品の生産に従事すべきものである、私はさように考えております。具体的なものについては私もあまり詳細に存じておりませんが、一般的に国民医療上必要な薬品というものは、できるだけ安く安定的に供給する。安い薬はもうからないからつくらない、これは好ましいことではありません。モラルとしても好ましいことではない、かように私は考えております。
  361. 井上普方

    井上(普)分科員 そこなんです、問題は。いまなお薬屋はそのように安いものはつくらない、いいものであってもつくらない。そして少し何かまぜれば高く売れる製品をつくる。あなたのおっしゃるように、ブドウ糖とかあるいは他の、リンゲルなんかが少なかったといううわさがあったときに、他の類似の高い輸液はどんどんと出回ったのであります。これも御存じでしょう。製薬会社の使命からいきますと、大臣、あなたは営利会社だからといって、一片のことばで片づける問題ではありますまい。営利会社だから利益を追求する、当然だ、まあわかるけれどもというその話は、私はちょっとうなずけぬのであります。といいますのは、医療機関の医療報酬につきましては、いま健康保険は全国民健康保険になっておりますので、一応国家管理の様相を呈しております。しかし、製薬会社は野放しになっておる。ここに私は大きな矛盾を感ぜざるを得ないのであります。あなたのおっしゃるように、もうければいいんだ、営利会社なんだからといって放置すべきではない。製薬会社の会社の使命はそれでいいんだろうか。片っ方のその薬を使う医者のほうは、いわば国家管理的様相を呈しておる今日であります。しかも、その機関が使う薬が安いものが手に入らない、ために高い薬を請求せざるを得ない。保険財政で――保険財政といいましても国民の負担です。これに転嫁していくこの現状を、ただ単に営利会社だからといって見のがすのは、私は、どうも政治はもう少し強い態度でもって製薬会社に臨む必要があると思うのですが、大臣いかがでございましょう。政治家として私はお伺いするわけです。
  362. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いや私は、営利会社だから何ぼもうけてもいいといったことではないのですよ。営利会社でございますから営利を追求するということは当然でございましょうが、問題は営利追求の幅なり態度なりがやはり問題でしょう、こう申し上げておるわけですから、その点はひとつ誤解のないようにしていただきたいと思います。  私は、先ほども申し上げているように、医薬品というものは国民医療上欠くべからざるものなんですね、これは実際のところ。ある病気になれば、この薬がなければほんとうに参ってしまう、こういうことはあたりまえのことなんですから、そういうふうに国民医療上欠くべからざる医薬品を生産しておるという社会的責任、これは十分自覚して生産会社というものは企業の経営に当たるべきものである。したがって、もしそれが便乗的な値上げを試みるようなことがあったりいろいろなことがあれば、法律の権限があるとかないとかいうことは別として、行政指導をして、できるだけ薬の値段は下げるように努力することは私は当然のことだ、かように考えております。
  363. 井上普方

    井上(普)分科員 それが実際に行なわれてないから問題があるわけなんです。だから、もう少し強い行政権限を持つような法改正を考えてもいいのじゃないだろうかというのが私の質問の趣旨なんです。いまの薬務局におきましても、製薬会社に対しては監督する権限はありましょう。あるけれども、それに立ち入って経理面にまでタッチする権限は私はないと思う。しかし、使われる薬というものは、これは保険医という国の社会的な権限といいますか、責任を持ったものなのであります。でありますから、先ほど申しますように、国の国家管理的な様相を帯びた機関で使う薬に対しまして、安定した薬を与えるようにすべきであると私は思うのであります。大臣、この点につきましては、強い決意を持って行政指導というよりも行政権限をもう少し発動さしていただきたい。それには法改正がありますならば、私どもも及ばずながら御協力するにやぶさかではございません。大臣、どうです、取り組む御用意がありますか。
  364. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は、法律的にどうする、こうするという考えは、いまのところ持っておりませんが、さしあたり私は、こういうことをひとつ薬務局長にやってもらおうかと思っておるのですが、最近薬価基準の改定をして、逆ざやになっているのが百種類くらいあるというのです。逆ざやになって薬価基準よりも上回っている値段の薬が百種類ほどあるという。そういうものは私常識的に考えてみると去年の十一月末までのいろいろな資料をもとにしてやっているわけですから、その後上げる積極的な理由はなかったのじゃないかと思うのです。とたんにことしの二月ごろ逆ざやになるほど上げなければならぬ積極的な理由があったとは思えません。というわけですから、さしあたり逆ざやになっているような薬品があるとするならば、そういう薬品を生産している会社について、なぜそんなに上げたのだ、十一月末の調査でやったのですから、その後十二月、一月、二月、上げなければならぬ積極的な理由は私はないと思うのです。というわけでございますから、逆ざやのようなものからまずさしあたり薬の値段をどうして上げたのだということの監督をして、必要があれば引き下げさせるというふうな監督をすべきであると考えておりますから、そういうふうに強く監督をいたしたいと思います。
  365. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、私きのう中曽根さんと問答していまして、中曽根さんはなかなかいいことを言うのです。役人よりも商売人のほうがはるかに頭がいいのだそうです。皆さん方は商売人よりも頭が悪いのですよ、中曽根さんの言によると。いかに法の網をくぐって金もうけをするかにたけておる、こう言うのです。なるほどなと思って、私も考えさせられる点があったのです。そうでありますので、営利会社といえども社会的責任というものはあるし、その使われておる薬というものが、先ほど来申すような性格のものなんだから、ひとつさらに強い態度でもって臨んでいただきたいということを、私は強く要求いたしたいと思います。  ほかに四つ、五つ質問を用意してきたのでありますが、時間があまりございませんので、ひとつ保育所の建築の問題についてお聞きしましょう。と申しますのも、私は昨年建設委員をしておる際に、公園の建築の問題につきましていろいろと小委員会を部内につくりまして、そして研究し、政府に要求を出したのであります。いま保育所の補助対象はどのくらいになって、どういうような補助をやっていますか。
  366. 翁久次郎

    ○翁政府委員 保育所につきましては、国といたしましては従来から整備費の半額を、国がきめました基準のもとで負担するということで、その補助をしてまいっておりまして、年次的に申し上げますと、昨年、四十七年度におきましては総額二十七億円、それからその個所数につきましては六百八十カ所、四十八年度につきましては単価を改定いたしまして、児童一人当たり五平米ということで、それぞれ木造、鉄筋、モルタルという単価をつくりまして、それによりまして五百五十カ所五十八億円の国庫負担をしておる次第でございます。
  367. 井上普方

    井上(普)分科員 そこで、あなたのほうの単価は、文部省とか建設省の単価と比べてみて、非常に低いのであります。現在何ぼにしていますか。予算案でいきましょう。過去のはよろしい。四十九年度の単価は幾らにしていますか。
  368. 翁久次郎

    ○翁政府委員 四十九年度の単価についてはまだ具体的にはきめておりません。(井上(普)分科員「四十八年度」と呼ぶ)四十八年度におきましては、定員によって規模が違っておりますけれども、鉄筋を例にとりますと、百五十人定員の鉄筋の保育所に対しまして、補助額が、昨年十月改定をいたしました段階で千九百九十八万七千円、約二千万円でございます。ブロックでは千七百三十万円。それから定員百二十名のところでは、鉄筋で千五百九十万円、約千六百万円の補助額。ブロックで約千四百万円、木造一千万円でございます。
  369. 井上普方

    井上(普)分科員 そうすると、百五十人定員といいますと、一人五平米で四百五十平米の建物だ、こういうことですね。いいですか、四百五十平米の建物でいま実際幾らします。去年の平均の単価でよろしい。幾らしています。
  370. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいまの段階で幾らしているかということを、寡聞にして私承知しておりません。
  371. 井上普方

    井上(普)分科員 これから言う数字は、あなた責任持たなくていいですよ。常識的に、鉄筋で平米幾らかかると思いますか。
  372. 翁久次郎

    ○翁政府委員 これは都市部、農村部それぞれによって違うと思いますが、鉄筋で平米当たり大体五万から八万ぐらいの間じゃないだろうかという感じがいたします。
  373. 井上普方

    井上(普)分科員 五万から八万といいますと、そこで六割違ってくるのですよ。いいですか。しかも八万にしましても、四百五十で三千五百万円かかる。あなたのおっしゃる約千九百九十五万円で、半分以上の補助をあなたは与えておるおつもりなんだろうと思う。しかし、実際平米八万円でできますか。大臣、できるとお考えですか、常識的に言って。こう言ったからと言って、何もあなたを責めるつもりはさらさらございませんから、そのつもりでお答え願いたい。
  374. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は古いものですから、どうも平米というのはよくわからないのです。坪でいいますと、これはやはり相当なものじゃございませんか。坪単位で考えてみますと、私は相当高いものになっておるんじゃないかと思いますがね。私はよくわかりません。
  375. 井上普方

    井上(普)分科員 平米八万円をあなたのお話の坪にしますと二十四万円ですな。やっぱりあなたは建つとお考えになりますか。――大臣でよろしい、政治家だから。責任を持たなくてよろしい。
  376. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私はこういうことの学と知識はあまりないのです。無責任な話ですが、やはり坪三十万ぐらいかかるんじゃございませんか。という感じがしますが、しかし、私は責任を持ちませんね、これは。
  377. 井上普方

    井上(普)分科員 私は、責任を持ってもらう話でいま言っているんじゃない。坪にしましょう、大臣がよくわかるから。坪二十四万円でできるかということなんです。あるいは敷地の点につきましても、補助金は出ているのですか。
  378. 翁久次郎

    ○翁政府委員 敷地については負担の対象になっておりません。
  379. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、でございますので、いま市町村は困っているのです。単価におきましても非常に低いのです。単価をいまあなたの言う三十万で計算しますと、鉄筋で四千五百万かかる。そうしますと、いかにもよけい出したように千九百九十五万円までとおっしゃいましたけれども、持ち出しがある。その上へ持ってまいりまして、敷地も全部対象外なんです。非常に困っているわけです。特に団地におきましては困る。何とか処置をお考えになりませんか。私はあえてこうせいああせいということは言いません。大臣として今後真剣にこの問題に取り組んでいただけるならば、私は幸いだと思うのです。あげ足とか、そんなの私はとるつもりはございません。大臣、どうでしょう。
  380. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この保育所の要望というのが全国各市町村に非常に強いわけです。私は、やはりその年度において計画した個所数ぐらいは完全にその年度内で消化してあげるということが、もう絶対必要だと思うのです。そこで今日まで、去年の十月も単価の改定をやり、さらにまた今度二月に改定もやるということをいたしておるわけでございますが、これだけで十分足りるのかどうか、私は非常に心配しております。しかしまた、その各市町村が実際にかかっただけの金について何分の一というわけにもいきますまい。(井上(普)分科員「いや、いや」と呼ぶ)これは実際のところいきますまい。やはりそれは、かかっただけの金の半分出すというわけにいきません。やはりそこには、国として出す以上は一定の基準をつくって、あとは地元の熱意というものが大事だと私は思うのです。そういうような御協力もいただきながら、国は国の面でできるだけの単価の改定をしてあげる、お互い相まって保育所をつくってあげるということでなければならぬのじゃないか、こう思うのです。一方的に国だけ単価を直せ、かかっただけ金出せ、これは困ります。やはりお互いに出し合ってりっぱな保育所をつくるようにしていきたいものだ。その意味において国の側もできるだけの努力をいたしたい、こう考えております。
  381. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、あなたのそういうお考え方でございますと、最も必要とするところは全然できませんよ。いま多摩市あるいはまた町田市で新しい人口流入がどんどんある。そして、それらの人たちはほとんどが共かせぎなんです。でございますので、保育所の要望というものは非常に大きいのです。最も強いといっていいと思います。ところが、その土地におきましては、土地は自分でつくらなければならない、あるいはまた建築費についても持ち出さなければならない。半分は市町村が持つのですよ。国の基準の半分は出してやると言うけれども、その基準どおりできたとしても、市町村はそれを持つのですよ。ところが基準が低いがために、それよりもはるかに多く持たされる。でございますので、一般財政が非常に圧迫せられて、道路一つ生活道路である市道もできておらぬというのが実態なんです。したがいまして、いま町田であるとか多摩であるとか、ああいうような人口急増地帯が最も苦しんでおるのはこの問題なんです。持ち出しをいかにして少なくするか、これをひとつ考えてくれろ、そうでなかったらわれわれは小学校を建てるのもお断わりだ、中学校を建てるのもお断わりだ、こういうことで、せっかく公営住宅、公団住宅を建てても入居していないというような現状がありますし、また多摩ニュータウンのごときは、昭和四十六年から全然工事が進んでおらないのであります。その原因も、先ほど申しましたように、市町村の持ち出し分が多いがために市町村財政が極度に疲弊いたしまして、もう団地が来るのはお断わりという声になって、現在国が最も考えなければいけない住宅問題が一とんざを来たしておるのが現状じゃありますまいか。あなたは厚生大臣であると同時に国務大臣なんです。そういう立場からするならば、基準が低過ぎて、そのために市町村の持ち出しが多い、この現状を直さなければならない責任が私はあると思う。いまの御答弁でございましたならば、基準が低くて、その上にそれくらいよけい持つのは当然だ、しかもそれは地元の熱意だなどというようなお考え方で進まれるならば、日本の住宅事情というものは永久に直らない、このことを私は強く主張しておきたいと思います。いずれあらためて、この点につきましては大臣と話をしたいと思っております。  以上で、私時間が参りましたので、質問を終わらしていただきます。
  382. 渡辺栄一

    渡辺主査 井上君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして昭和四十九年度一般会計予算及び昭和四十九年度特別会計予算中、厚生省所管に対する質疑は終了いたしました。  次回は、明九日午前十時から開会し、労働省所管について審査を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十一分散会